JP2022048664A - 全固体電池用正極および全固体電池 - Google Patents

全固体電池用正極および全固体電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 負荷特性および充放電サイクル特性に優れた全固体電池、並びに前記全固体電池を形成するための全固体電池用正極を提供する。【解決手段】 本発明の全固体電池用正極は、正極活物質を含む正極材料、強誘電体材料、固体電解質および導電助剤を含有する正極合剤の成形体を有しており、前記正極活物質は、Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有し、前記固体電解質の少なくとも一部が、結晶性の硫化物系固体電解質であることを特徴とするものである。また、本発明の全固体電池は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に介在する固体電解質層とを有し、前記正極が、本発明の全固体電池用正極であることを特徴とするものである。【選択図】 図1

Description

本発明は、負荷特性および充放電サイクル特性に優れた全固体電池、並びに前記全固体電池を形成するための全固体電池用正極に関するものである。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型・軽量で、かつ高容量・高エネルギー密度の二次電池が必要とされるようになってきている。
現在、この要求に応え得るリチウム二次電池、特にリチウムイオン二次電池では、正極活物質にリチウム含有複合酸化物が用いられ、負極活物質に黒鉛などが用いられ、非水電解質として有機溶媒とリチウム塩とを含む有機電解液が用いられている。
そして、リチウムイオン二次電池の適用機器の更なる発達に伴って、リチウムイオン二次電池の更なる長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化が求められていると共に、長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化したリチウムイオン二次電池の安全性および信頼性も高く求められている。
しかし、リチウムイオン二次電池に用いられている有機電解液は、可燃性物質である有機溶媒を含んでいるため、電池に短絡などの異常事態が発生した際に、有機電解液が異常発熱する可能性がある。また、近年のリチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化および有機電解液中の有機溶媒量の増加傾向に伴い、より一層リチウムイオン二次電池の安全性および信頼性が求められている。
以上のような状況において、有機溶媒を用いない全固体型のリチウム二次電池(全固体電池)が注目されている。全固体電池は、従来の有機溶媒系電解質に代えて、有機溶媒を用いない固体電解質の成形体を用いるものであり、固体電解質の異常発熱の虞がなく、高い安全性を備えている。
また、全固体電池においては、種々の改良が試みられている。例えば、全固体電池の正極に強誘電体である材料を使用することで、正極活物質と固体電解質との界面抵抗の増大を抑制して、全固体電池の特性を高める試みがなされている(特許文献1など)。
特開2012-28231号公報
ところで、近年の全固体電池では、イオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質を用いたものの開発が進んでいるが、従来から使用されているガラス状の硫化物系固体電解質に代えて、Liイオン伝導性がより高い結晶性の硫化物系固体電解質の適用が試みられている。
ところが、結晶性の硫化物系固体電解質は、一般にガラス状の硫化物系固体電解質に比べて耐電圧性が低く、電池の充電電圧が高いと分解しやすいといった問題を抱えている。特に、より高出力とすべく、例えば4.4V以上の電位で作動する正極活物質を使用した場合には、結晶性の硫化物系固体電解質の分解による全固体電池の内部抵抗の増大から引き起こされる問題が顕著に発現する。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷特性および充放電サイクル特性に優れた全固体電池、並びに前記全固体電池を形成するための全固体電池用正極を提供することにある。
本発明の全固体電池用正極は、正極活物質を含む正極材料、強誘電体材料、固体電解質および導電助剤を含有する正極合剤の成形体を有しており、前記正極活物質は、Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有し、前記固体電解質の少なくとも一部が、結晶性の硫化物系固体電解質であることを特徴とするものである。
また、本発明の全固体電池は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に介在する固体電解質層とを有し、前記正極が本発明の全固体電池用正極であることを特徴とするものである。
本発明によれば、負荷特性および充放電サイクル特性に優れた全固体電池、並びに前記全固体電池を形成するための全固体電池用正極を提供することができる。
本発明の全固体電池の一例を模式的に表す断面図である。 本発明の全固体電池の他の例を模式的に表す平面図である。 図2のI-I線断面図である。
<全固体電池用正極>
本発明の全固体電池用正極は、正極活物質を含む正極材料、強誘電体材料、固体電解質および導電助剤を含有する正極合剤の成形体を有している。また、本発明の全固体電池用正極においては、固体電解質の少なくとも一部が結晶性の硫化物系固体電解質であり、正極活物質はLi(リチウム)金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有している。
硫化物系固体電解質は、Liイオン伝導性に優れる固体電解質として知られているが、特に、結晶性の硫化物系固体電解質は、ガラス状の硫化物系固体電解質に比べてLiイオン伝導性に優れており、これを使用することで、例えば全固体電池の負荷特性を高めることが可能となる。
ところが、結晶性の硫化物系固体電解質は、ガラス状の硫化物系固体電解質と比較して、正極合剤の成形体内において正極活物質と接触した際に酸化分解しやすい。硫化物系固体電解質が分解すると抵抗層を形成するため、正極合剤の成形体内でのLiイオン伝導性が低下して全固体電池の内部抵抗が増大する。特に、正極活物質としてLi金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する材料を使用する全固体電池においては、充電終止電圧を高くして使用するため、結晶性の硫化物系固体電解質がより分解しやすく、例えば充放電の繰り返しによって容量低下が生じやすい。また、こうした問題は、正極活物質としてLi金属との電位差が4.5V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する材料を使用する全固体電池において、より顕在化しやすく、前記電位差が5.0VでLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する材料を使用する全固体電池において、さらに顕著となる。
そこで、本発明の全固体電池用正極では、これを構成する正極合剤の成形体において、正極活物質を含む正極材料や、結晶性の硫化物系固体電解質などと共に、強誘電体材料を含有させた。強誘電体材料は電場をかく乱させる作用を有していることから、これが正極活物質と共存していると、電池の充放電に伴う結晶性の硫化物系固体電解質の分解反応が抑制される。よって、本発明の全固体電池用正極を使用することで、全固体電池の充放電を繰り返した際の容量低下を抑制することが可能となる。
本発明の全固体電池用正極によれば、前記の各作用によって、負荷特性に優れ、かつ充放電サイクル特性も良好な全固体電池を構成することができる。
全固体電池用正極としては、例えば、正極活物質を含む正極材料、強誘電体材料、結晶性の硫化物系固体電解質および導電助剤などを含有する正極合剤の成形体のみからなる正極や、前記成形体と集電体とが一体化してなる構造の正極などが挙げられる。
正極材料は、Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質を含むものであり、前記正極活物質のみで構成されていてもよく、また、例えば、前記正極活物質と、その表面に形成された機能層とで構成されていてもよい。
Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質としては、LiCo1-t 2-u (Mは、Al、Mg、Ca、Ba、Na、K、Ni、Mn、Fe、Cr、Cu、Zr、Ti、Bi、P、W、Nb、Si、Zn、Mo、V、Sn、Sb、Ta、Ge、La、SrおよびErよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、S、F、ClおよびBrよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.9<s<1.1、0≦t<0.5、0≦u<0.1);LiNiMn2-p-q (MはTi、Al,Fe、Cu、SiおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.45≦p≦0.55、0≦q≦0.2)、LiCoPO、LiCoP、LiCoPOF、LiM10 Mn2-r(M10はCo、Fe、CrおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.45≦r≦0.55)などの、Li金属との電位差が4.5V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質;LiCoMnO、LiNiPO、LiNiPOFなどの、Li金属との電位差が5.0V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質;などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書でいう「Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能」を有する正極活物質とは、正極活物質を含む正極10mgを電池から取り出し、これを直径10mm、80mgのアルジロダイト型の硫化物系固体電解質の円板の片面に圧着し、前記固体電解質を介して対向する面に、厚みが100μmのLi金属と厚みが150μmのIn金属とを圧着することで評価用電池を作製し、この評価用電池の電圧が2.38Vから4.88Vの範囲において、毎秒1mVの速度で電圧掃引した際、3.78V以上の電圧範囲で酸化ピークと還元ピークの対が一つ以上ある材料を意味している。なお、電位差が4.5V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質の場合は、当該評価用電池で3.88V以上の電圧範囲で酸化ピークと還元ピークの対が一つ以上ある材料であり、電位差が5.0V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質の場合は当該評価用電池で4.38V以上の電圧範囲で酸化ピークと還元ピークの対が一つ以上ある材料を意味している。
正極活物質の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。なお、正極活物質は一次粒子でも一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。平均粒子径が前記範囲の正極活物質を使用すると、固体電解質との界面を多くとれるため、電池の負荷特性がより向上する。
本明細書でいう正極活物質およびその他の粒子(強誘電体材料、固体電解質)の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」など)を用いて、粒度の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(D50)を意味している。
正極材料が、正極活物質と、その表面に形成された機能層とで構成される場合、その機能層としては、結晶性の硫化物系固体電解質との反応を抑制するための反応抑制層が挙げられる。正極材料が、その表面に反応抑制層を有する場合、正極活物質と結晶性の硫化物系固体電解質との直接の接触が防止されるため、結晶性の硫化物系固体電解質の分解による成形体内のLiイオン伝導性の低下を、より良好に抑制することができる。
反応抑制層は、Liイオン伝導性を有し、正極活物質と固体電解質との反応を抑制できる材料で構成されていればよい。反応抑制層を構成し得る材料としては、例えば、Liと、Nb、P、B、Si、Ge、TiおよびZrよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む酸化物、より具体的には、LiNbOなどのNb含有酸化物、LiPO、LiBO、LiSiO、LiGeO、LiTiO、LiZrOなどが挙げられる。反応抑制層は、これらの酸化物のうちの1種のみを含有していてもよく、また、2種以上を含有していてもよく、さらに、これらの酸化物のうちの複数種が複合化合物を形成していてもよい。これらの酸化物の中でも、Nb含有酸化物を使用することが好ましく、LiNbOを使用することがより好ましい。
反応抑制層は、正極活物質:100質量部に対して0.1~1.0質量部で表面に存在することが好ましい。この範囲であれば正極活物質と固体電解質との反応を良好に抑制することができる。
正極活物質の表面に反応抑制層を形成する方法としては、ゾルゲル法、メカノフュージョン法、CVD法、PVD法、ALD法などが挙げられる。
なお、正極材料は、Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有する正極活物質を含むため、全固体電池の充電電圧下では、前記例示の反応抑制層の分解反応が生じる虞がある。しかし、本発明の全固体電池用正極は、正極合剤の成形体が強誘電体材料を含有しているため、その作用によって反応抑制層の分解も抑制できることから、それによる結晶性の硫化物系固体電解質の分解も良好に抑えることができる。また、正極材料において、反応抑制層が表面全体に形成できておらず、正極活物質の一部が露出している場合には、結晶性の硫化物系固体電解質の分解抑制による全固体電池の充放電サイクル特性向上効果が限定的になる虞もあるが、本発明の全固体電池用正極は、正極合剤の成形体が強誘電体材料を含有しているため、正極材料の一部に反応抑制層が形成できていない部分があっても、結晶性の硫化物系固体電解質の分解を良好に抑制して、全固体電池の充放電サイクル特性を高めることができる。
正極合剤における正極材料の含有量は、50~95質量%であることが好ましい。
正極合剤に含有させる強誘電体材料としては、例えば、Ba1-x TiO(Mは、Ca、La、SrおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1)、CaZrO、HfZr1-y(0≦y≦1)、SrBiTa、BiFeOなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強誘電体材料は、量子サイズ効果でキュリー温度が低下し、常温における自発分極を失うことから、その平均粒子径が10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、強誘電体材料と活物質粒子との接点を増やし、かつ強誘電体材料の添加量を少なくして正極のエネルギー密度を高める観点から、強誘電体材料の平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
なお、強誘電体材料の使用による前記の効果をより良好に確保する観点からは、正極合剤の成形体内において、正極活物質の表面近傍に強誘電体材料が分布しており、正極活物質の少なくとも一部と強誘電体材料の少なくとも一部とが接触していることが好ましい。正極活物質の表面近傍に強誘電体材料が分布していることは、イオンミリングで平滑な正極断面を作製して、エネルギー分散型X線分光法を用いた元素マッピング分析モードで走査型電子顕微鏡観察することで確認できる。
正極合剤における強誘電体材料の含有量は、その使用による効果を良好に確保する観点から、正極活物質100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤における強誘電体材料の量が多いと、効果が飽和することに加えて、正極合剤の成形体を構成する他の成分の量が少なくなって、それらによる効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤における強誘電体材料の含有量は、正極活物質100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。
正極合剤に含有させる結晶性の硫化物系固体電解質としては、アルジロダイト型硫化物系固体電解質、Li10GeP12やLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3に代表される下記組成式(1)で表されるthio-LISICON型硫化物系固体電解質などが挙げられる。
Li12-12a-b+c+6d-e 3+a-b-c-d 12-e (1)
前記組成式(1)中、MはSi、GeまたはSn、MはPまたはV、MはAl、Ga、YまたはSb、MはZn、Ca、またはBa、MはSまたはSおよびOのいずれかであり、XはF、Cl、BrまたはI、0≦a<3、0≦b+c+d≦3、0≦e≦3である。
また、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質としては、例えば、下記組成式(2)や下記組成式(3)で表されるものが挙げられる。
Li7-f+gPS6-fClf+g (2)
前記組成式(2)中、0.05≦g≦0.9、-3.0f+1.8≦g≦-3.0f+5.7である。
Li7-hPS6-hClBr (3)
前記組成式(3)中、h=i+j、0<h≦1.8、0.1≦i/j≦10.0である。
硫化物系固体電解質が結晶性であることは、正極の粉末X線回折(XRD)パターンより判別される。満充電状態の電池の正極と、下限電圧まで放電した電池の正極との、粉末XRD測定をそれぞれ実施し、ピーク位置と強度に変化が無いものが結晶性の硫化物系固体電解質のピークに帰属され、このようなピークが得られる正極に含まれる硫化物系固体電解質は、結晶性であるといえる。また、放電状態の正極をエタノールで洗浄して残った固形分の粉末XRD測定を行い、これを、エタノール洗浄をしていない放電状態の正極の粉末XRD測定結果と比較し、洗浄によって消失したピークを結晶性の硫化物系固体電解質に帰属してもよく、このようなピークが得られる正極に含まれる硫化物系固体電解質は、結晶性であるといえる。
正極合剤には、結晶性の硫化物系固体電解質と共に、他の固体電解質も含有させることができる。このような他の固体電解質としては、ガラス状の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが挙げられる。
ガラス状の硫化物系固体電解質としては、一部が微結晶に変性したものも含むが、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiS-P-GeS、LiS-B系ガラスなどが挙げられる。
水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH、LiBHと下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBHとアルカリ金属化合物とのモル比が1:1~20:1のもの)などが挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型のLiLaZr12、NASICON型のLi1+kAl1+kTi2-k(PO、Li1+mAl1+mGe2-m(PO、ペロブスカイト型のLi3nLa2/3-nTiOなどが挙げられる。
ただし、結晶性の硫化物系固体電解質以外の固体電解質の、正極合剤における固体電解質全量中の割合は、30質量%以下であることが好ましい。なお、正極合剤における固体電解質は、全て結晶性の硫化物系固体電解質であってもよいため、結晶性の硫化物系固体電解質以外の固体電解質の固体電解質全量中の割合の下限値は、0質量%である。
正極合剤における固体電解質の含有量は、4~50質量%であることが好ましい。
正極合剤に含有させる導電助剤には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などを使用することができる。正極合剤における導電助剤の含有量は、1~10質量%であることが好ましい。
正極合剤には、樹脂製のバインダは含有させなくてもよく、含有させてもよい。樹脂製のバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。ただし、樹脂製のバインダは正極合剤中において抵抗成分として作用するため、その量はできるだけ少ないことが望ましい。よって、正極合剤においては、樹脂製のバインダを含有させないか、含有させる場合にはその含有量を3質量%以下とすることが好ましい。正極合剤における樹脂製のバインダの含有量は0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、樹脂製のバインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
正極に集電体を使用する場合、その集電体としては、アルミニウムやステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
正極合剤の成形体は、例えば、正極材料、強誘電体材料、結晶性の硫化物系固体電解質および導電助剤、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した正極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
集電体を有する正極の場合には、前記のような方法で形成した正極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで製造することができる。
また、前記の正極合剤と溶媒とを混合して正極合剤含有組成物を調製し、これを集電体や全固体電池用正極と対向させる固体電解質層といった基材上に塗布し、乾燥した後にプレス処理を行うことで、正極合剤の成形体を形成してもよい。
正極合剤含有組成物に使用する溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。
正極合剤の成形体の厚み(集電体を有する負極の場合は、集電体の片面あたりの正極合剤の成形体の厚み。以下、同じ。)は、通常は50μm以上であるが、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。なお、電池の負荷特性は、一般に正極や負極を薄くすることで向上しやすいが、本発明によれば、正極合剤の成形体が200μm以上と厚い場合においても、その負荷特性を高めることが可能である。よって、本発明においては、正極合剤の成形体の厚みが例えば200μm以上の場合に、その効果がより顕著となる。また、正極合剤の成形体の厚みは、通常、3000μm以下である。
<全固体電池>
本発明の全固体電池は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に介在する固体電解質層とを有する二次電池であり、正極が本発明の全固体電池用正極である。
本発明の全固体電池の一例を模式的に表す断面図を図1に示す。図1に示す全固体電池1は、外装缶40と、封口缶50と、これらの間に介在する樹脂製のガスケット60で形成された外装体内に、正極10、負極20、および正極10と負極20との間に介在する固体電解質層30が封入されており、正極10が本発明の全固体電池用正極である。
封口缶50は、外装缶40の開口部にガスケット60を介して嵌合しており、外装缶40の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット60が封口缶50に当接することで、外装缶40の開口部が封口されて素子内部が密閉構造となっている。
外装缶および封口缶にはステンレス鋼製のものなどが使用できる。また、ガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
また、図2および図3に、本発明の全固体電池の他の例を模式的に表す図面を示す。図2は全固体電池の平面図であり、図3は図2のI-I線断面図である。
図2および図3に示す全固体電池100は、2枚の金属ラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体500内に、本発明の全固体電池用正極、固体電解質層および負極からなる電極体200を収容しており、ラミネートフィルム外装体500は、その外周部において、上下の金属ラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、図3では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体500を構成している各層や、電極体を構成している正極、固体電解質層および負極を区別して示していない。
電極体200の有する正極は、電池100内で正極外部端子300と接続しており、また、図示していないが、電極体200の有する負極も、電池100内で負極外部端子400と接続している。そして、正極外部端子300および負極外部端子400は、外部の機器などと接続可能なように、片端側をラミネートフィルム外装体500の外側に引き出されている。
(負極)
全固体電池の負極は、例えば、負極活物質、導電助剤および固体電解質などを含む負極合剤の成形体を有するものであり、前記成形体のみからなる負極や、前記成形体と集電体とが一体化してなる構造の負極などが挙げられる。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などのリチウムを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金;リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物;リチウム金属;リチウム/アルミニウム合金;も、負極活物質として用いることができる。例えば、LiTi12やTiO、NbO2.5-δ(0≦δ≦0.5)、MoO3-δ(0≦δ≦1)、WO3-δ(0≦δ≦1)、TiNbなどの金属酸化物;WS、MoSなどの金属硫化物;の1種または2種以上の混合物を、負極活物質として用いることもできる。
負極合剤における負極活物質の含有量は、50~95質量%であることが好ましい。
負極の導電助剤には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などを使用することができる。負極合剤における導電助剤の含有量は1~10質量%であることが好ましい。
負極の固体電解質には、正極合剤に含有させ得る固体電解質として先に例示した結晶性の硫化物系固体電解質、ガラス状の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。前記例示の固体電解質の中でも、Liイオン伝導性が高く、また、負極合剤の成形性を高める機能を有していることから、硫化物系固体電解質(結晶性の硫化物系固体電解質またはガラス状の硫化物系固体電解質)を用いることがより好ましく、結晶性の硫化物系固体電解質を用いることがさらに好ましい。
負極合剤における固体電解質の含有量は、4~70質量%であることが好ましい。
負極合剤には、樹脂製のバインダは含有させなくてもよく、含有させてもよい。樹脂製のバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。ただし、樹脂製のバインダは負極合剤中においても抵抗成分として作用するため、その量はできるだけ少ないことが望ましい。よって、負極合剤においては、樹脂製のバインダを含有させないか、含有させる場合にはその含有量を0.5質量%以下とすることが好ましい。負極合剤における樹脂製のバインダの含有量は0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、樹脂製のバインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
負極に集電体を用いる場合、その集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
負極合剤の成形体は、例えば、負極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した負極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
集電体を有する負極の場合には、前記のような方法で形成した負極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで製造することができる。
また、前記の負極合剤と溶媒とを混合して負極合剤含有組成物を調製し、これを集電体や負極と対向させる固体電解質層といった基材上に塗布し、乾燥した後にプレス処理を行うことで、負極合剤の成形体を形成してもよい。
負極合剤含有組成物に使用する溶媒も、正極合剤含有組成物に使用する溶媒と同様に固体電解質を劣化させ難いものを選択することが望ましく、正極合剤含有組成物用の溶媒として先に例示した各種溶媒を使用することが好ましく、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することが特に好ましい。
負極合剤の成形体の厚み(集電体を有する正極の場合は、集電体の片面あたりの正極合剤の成形体の厚み。以下、同じ。)は、通常は50μm以上であるが、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。また、負極合剤の成形体の厚みは、通常、2000μm以下である。
(固体電解質層)
全固体電池における固体電解質層には、正極合剤に含有させ得る固体電解質として先に例示した結晶性の硫化物系固体電解質、ガラス状の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。前記例示の固体電解質の中でも、電池特性をより優れたものとするためには、硫化物系固体電解質(結晶性の硫化物系固体電解質またはガラス状の硫化物系固体電解質)を用いることがより好ましく、結晶性の硫化物系固体電解質を用いることがさらに好ましい。
固体電解質層は、固体電解質を加圧成形などによって圧縮する方法;固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行う方法:などで形成することができる。
また、固体電解質層は、樹脂製の不織布などの多孔質体を支持体として有していてもよい。
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒も、正極合剤含有組成物に使用する溶媒と同様に固体電解質を劣化させ難いものを選択することが望ましく、正極合剤含有組成物用の溶媒として先に例示した各種溶媒を使用することが好ましく、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することが特に好ましい。
固体電解質層の厚みは、10~500μmであることが好ましい。
(電極体)
正極と負極とは、固体電解質層を介して積層した積層電極体や、さらにこの積層電極体を巻回した巻回電極体の形態で、電池に用いることができる。
なお、電極体を形成するに際しては、正極と負極と固体電解質層とを積層した状態で加圧成形することが、電極体の機械的強度を高める観点から好ましい。また、正極(例えばペレット状の正極合剤の成形体)と固体電解質層と負極(例えばペレット状の負極合剤の成形体)とを、前記の加圧成形によって一体化することもできる。この場合、例えば、正極合剤(または負極合剤)を成形し、形成された正極合剤の成形体上に固体電解質層を成形し、さらに形成された固体電解質層上に負極合剤の成形体(または正極合剤の成形体)を形成することで、正極と固体電解質層と負極とが一体化した電極体としてもよい。
本発明の全固体電池は、従来から知られている二次電池と同様の用途に適用し得るが、有機電解液に代えて固体電解質を有していることから耐熱性に優れており、高温に曝されるような用途に好ましく使用することができる。本発明の全固体電池用正極は、本発明の全固体電池を構成できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極材料の調製>
394gの脱水エタノール中で、0.86gのリチウムおよび38.7gのペンタエトキシニオブを混合し、反応抑制層形成用コート液を調製した。次に、転動流動層を用いたコート装置にて、1000gの正極活物質(LiNi0.5Mn1.5)上に、前記反応抑制層形成用コート液を毎分2gの速度で塗布した。得られた粉末を350℃で熱処理することで、正極活物質:100質量部に対して、2質量部のLiNbOで構成された反応抑制層が表面に形成された正極材料を得た。
前記正極材料と、BaTiO(強誘電体材料、平均粒子径:25nm)と、気相成長炭素繊維(導電助剤)とを混合し、得られた混合物と、Li5.8PS4.6Cl1.6(硫化物系固体電解質)とを混合して正極合剤を調製した。前記正極材料と強誘電体材料と導電助剤と硫化物系固体電解質の混合比は、質量比で67.0:0.5:4.0:28.5であった。この正極合剤:65mgを直径:7.5mmの粉末成形金型に投入し、プレス機を用いて1000kgf/cmの圧力で成形を行い、円柱形状の正極合剤成形体よりなる正極を作製した。
<固体電解質層の形成>
前記粉末成形金型内の前記固体電解質層の上に、正極に使用したものと同じ硫化物系固体電解質:17mgを入れ、プレス機を用いて1000kgf/cmの圧力で成形を行い、正極合剤成形体の上に固体電解質層を形成した。
<負極の作製>
チタン酸リチウム(LiTi12、負極活物質)と、固体電解質層に使用したものと同じ硫化物固体電解質と、グラフェン(導電助剤)とを、質量比で55:36:9の割合で混合し、よく混練して負極合剤を調製した。次に、前記負極合剤:83mgを前記粉末成形金型内の前記固体電解質層の上に投入し、プレス機を用いて6000kgf/cmの圧力で成形を行い、前記固体電解質層の上に負極合剤成形体よりなる負極を形成することにより、正極、固体電解質層および負極が積層された積層電極体を作製した。
<全固体電池の組み立て>
東洋炭素株式会社製の可撓性黒鉛シート「PERMA-FOIL(製品名)」(厚み:0.1mm、見かけ密度:1.1g/cm)を前記積層電極体と同じ大きさに打ち抜いたものを2枚用意し、そのうちの1枚を、ポリプロピレン製の環状ガスケットをはめ込んだステンレス鋼製の封口缶の内底面上に配置した。次に、前記黒鉛シートの上に、負極を前記黒鉛シート側にして前記積層電極体を重ね、その上に前記黒鉛シートのもう1枚を配置し、さらにステンレス鋼製の外装缶をかぶせた後、外装缶の開口端部を内方にかしめて封止を行うことにより、封口缶の内底面と前記積層体との間、および、外装缶の内底面と前記積層電極体との間に、それぞれ前記黒鉛シートが配置された、直径約9mmの扁平形全固体電池を作製した。
比較例1
実施例1で用いたものと同じ正極材料と、気相成長炭素繊維(導電助剤)と、実施例1で用いたものと同じ硫化物系固体電解質とを、67:4:29の質量比で混合して正極合剤を調製した。そして、この正極合剤を用いた以外は、実施例1と同様にして全固体を作製した。
実施例1および比較例1の全固体電池について、以下の各評価を行った。
〔インピーダンス測定〕
実施例1および比較例1の全固体電池について、0.07Cの電流値で電圧が3.5Vになるまで定電流充電し、続いて電流値が0.005Cになるまで定電圧充電を行った後に0.07Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させた。その後、各電池について、前記と同じ条件で定電流充電および定電圧充電を行い、その状態で、交流電流の実効値:0.02mAで1Hzでのインピーダンスを測定した。
〔負荷特性〕
実施例1および比較例1の全固体電池について、インピーダンス測定時と同じ条件で定電流充電、定電圧充電および定電流放電を行って初期容量を求めた後に、再度定電流充電および定電圧充電を行い、その後に、定電流ステップ放電を行い、各電流値での放電容量(定電流ステップ放電容量)を測定した。前記定電流ステップ放電は、充電後の電池について、1Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させ、次に0.6Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させ、次に0.3Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させ、次に0.1Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させ、次に0.02Cの電流値で電圧が1.5Vになるまで定電流放電させることによって行った。そして、前記1C~0.02Cの全ての定電流ステップ放電容量の和(0.02C放電容量)を求め、1C放電容量(定電流ステップ放電時の、1Cで放電した際のステップ放電容量と同じ)を0.02C放電容量で除して、負荷特性を評価した。
〔充放電サイクル特性〕
実施例1および比較例1の全固体電池について、インピーダンス測定時と同じ条件で定電流充電、定電圧充電および定電流放電を行って初期容量を求めた後に、再度負荷測定時と同じ条件で定電流充電、定電圧充電、および、1C~0.02Cの定電流ステップ放電行い、1C放電容量と0.6Cステップ放電容量との和(0.6C放電容量)を測定した。続いて、前記各電池について、0.3Cの電流値で3.5Vになるまで定電流充電し、0.005Cになるまで定電圧充電を行った後に、前記と同じ条件で1C~0.02Cの定電流ステップ放電を行った。さらに、前記各電池について、0.6Cの電流値で3.5Vになるまで定電流充電し、0.005Cになるまで定電圧充電を行った後に、前記と同じ条件で1C~0.02Cの定電流ステップ放電を行った。続いて、前記各電池について、1Cの電流値で3.5Vになるまで定電流充電し、0.005Cになるまで定電圧充電を行った後に、前記と同じ条件で1C~0.02Cの定電流ステップ放電を行い、1C放電容量と0.6Cステップ放電容量との和(0.6C放電容量)を測定した。
前記の一連の充放電操作のうち、初期容量測定時の操作を1サイクル目とし、最後の、定電圧充電を1Cの電流値で行い、続いて定電流ステップ放電を行った操作を5サイクル目としたときに、5サイクル目の0.6C放電容量を、定電流充電を0.07Cの電流値で行った充放電サイクル(2サイクル目)の0.6C放電容量で除して、充放電サイクル特性を評価した。
実施例1および比較例1の全固体電池における前記の評価結果を、比較例1の全固体電池の結果を100としたときの相対値で表1に示す。
Figure 2022048664000002
表1に示す通り、結晶性の硫化物系固体電解質と共に強誘電体材料を含有する正極合剤成形体からなる正極を用いた実施例1の全固体電池は、強誘電体材料を使用していない正極合剤成形体からなる正極を用いた比較例1の電池に比べて、インピーダンスが低く内部抵抗の増大が抑えられており、負荷特性、充放電サイクル特性のいずれもが優れていた。
実施例2
負極合剤成形体の成形時の圧力を10000kgf/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして全固体電池を作製した。
実施例3
強誘電体材料であるBaTiOを平均粒子径が50nmのものに変更した以外は、実施例2と同様にして全固体電池を作製した。
比較例2
負極合剤成形体の成形時の圧力を10000kgf/cmに変更した以外は、比較例1と同様にして全固体電池を作製した。
比較例3
正極合剤の固体電解質を、ガラス状の硫化物系固体電解質(Li11)に変更した以外は、比較例2と同様にして全固体電池を作製した。
比較例4
正極合剤の固体電解質を、ガラス状の硫化物系固体電解質(Li11)に変更した以外は、実施例2と同様にして全固体電池を作製した。
実施例2~3および比較例2~4の全固体電池について、実施例1の全固体電池と同様にしてインピーダンス測定、負荷特性評価および充放電サイクル特性評価を行った。それらの結果を、比較例2の結果を100とした場合の相対値で表2に示す。
Figure 2022048664000003
表2に示す通り、結晶性の硫化物系固体電解質と共に強誘電体材料を含有する正極合剤成形体からなる正極を用いた実施例2の全固体電池は、強誘電体材料を使用していない正極合剤成形体からなる正極を用いた比較例2の電池に比べて、インピーダンスが低く内部抵抗の増大が抑えられており、負荷特性、充放電サイクル特性のいずれもが優れていた。このように、負極合剤成形体の成形時の圧力を10000kgf/cmに変更した実施例2の電池と比較例2の電池との比較においても、実施例1の電池と比較例1の電池とを比較した場合と同様の傾向が確認された。
なお、平均粒子径が25nmの強誘電体材料よりも、平均粒子径が50nmの強誘電体材料の方が、室温における誘電率が高く、重さあたりの嵩密度も小さい。このことに起因して、強誘電体材料に平均粒子径が50nmのものを使用した実施例3の電池は、平均粒子径が25nmのものを用いた実施例2の電池よりも、正極材料表面と固体電解質との間でのLiイオンの移動が容易になり、正極活物質と固体電解質との反応も良好に抑制されたことで、電池特性が向上した。
なお、結晶性の硫化物系固体電解質に代えてガラス状のものを用いた正極を有する比較例3および比較例4の電池は、ガラス状の固体電解質のイオン伝導率が低いため、電池の抵抗が大きくなり、実施例2と同じ試験条件での評価が困難であった。
1、100 全固体電池
10 正極
20 負極
30 固体電解質層
40 外装缶
50 封口缶
60 ガスケット
200 電極体
300 正極外部端子
400 負極外部端子
500 ラミネートフィルム外装体

Claims (5)

  1. 全固体電池に使用される正極であって、
    正極活物質を含む正極材料、強誘電体材料、固体電解質および導電助剤を含有する正極合剤の成形体を有しており、
    前記正極活物質は、Li金属との電位差が4.4V以上でLiイオンを吸蔵・放出する機能を有し、
    前記固体電解質の少なくとも一部が、結晶性の硫化物系固体電解質であることを特徴とする全固体電池用正極。
  2. 前記正極材料は、表面の少なくとも一部に、前記硫化物系固体電解質との反応を抑制する反応抑制層を有している請求項1に記載の全固体電池用正極。
  3. 前記強誘電体材料として、Ba1-x TiO(Mは、Ca、La、SrおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1)、CaZrO、HfZr1-y(0≦y≦1)、SrBiTa、およびBiFeOよりなる群から選択される少なくとも1つの材料を含有している請求項1または2に記載の全固体電池用正極。
  4. 前記硫化物系固体電解質として、アルジロダイト型硫化物系固体電解質、またはthio-LISICON型硫化物系固体電解質を含有している請求項1~3のいずれかに記載の全固体電池用正極。
  5. 正極、負極、および前記正極と前記負極との間に介在する固体電解質層とを有し、前記正極が、請求項1~4のいずれかに記載の全固体電池用正極であることを特徴とする全固体電池。
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