JP2022045858A - 木炭成型物 - Google Patents

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Shuhei Morii
俊教 曽我部
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Abstract

Figure 2022045858000001
【課題】吸着性を保持した完全耐水の炭成型物を提供する。
【解決手段】粉炭又は粉炭と木粉の混合物と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方を混錬した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmで圧縮成型し、乾燥して固化した成型物にする。これを恒温機又は窯に入れて、中心温度が200~210℃に達するまで加熱した後冷却する炭成型物。
【選択図】図1

Description

本発明は、粉炭を使用して陶磁器製作同様に任意の形に造形でき、炭の吸着性を保持し同時に耐水性も得る成型技術である。
木炭粉を袋に入れて運ぶために体が汚れるし、運ぶのに手間がかかった課題を木炭粉粒をセメント、または接着剤で形成させた木炭板は公知であり、床下、壁、屋根に使用できる。(実登3040902)
オレフィン系合成樹脂を主体とする熱可塑性合成樹脂材料に木炭粉末を全量中の5~30重量%となる割合で混合し、この混合物を溶融混練して成形型内に充填し、150~300kg/cmの加圧下で成形硬化させることにより、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝の製造方法は公知である。(特開2000-179033)
炭類3%~30%(重量)含むことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板がある。また方法の発明は、木材繊維20%~30%(重量)と、炭類3%~30%(重量)と、セメント40%~65%(重量)とに、適量の塩化マグネシウム溶液を加えて撹拌混合し、この混合物を加圧成形した後、炭類の露出手段を施すことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板の製造方法が公知である。(特開2000-007462)
木炭を破砕して得られる木炭破砕片の100重量%に対して、25~40重量%の木屑片と100~180重量%の水と1.5~10重量%のカルボキシルメチルセルロース粉末とを混練し、該混練材料を型枠に充填してホットプレスにより板状体に成型してなることを特徴とする木炭ボードの製造方法や、型枠内に和紙を敷くと共にその上に混練材料を充填し、上から和紙を被せて、その状態でホットプレスすることを特徴とする木炭ボードの製造方法は公知である。(特願2005-373503)
実登3040902
特開2000-179033
特開2000-007462
特願2005-373503
実登3040902は木炭を扱う者にとって、汚れない木炭成型物は画期的な発想であり大いに役立つが、セメントに木炭を10%以上混入すると強度が失われ、コンクリートとして役立たない。また、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は水に弱く屋外では使用できない欠点がある。
特開2000-179033にある、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝は軽量で非劣化性に優れていると考えられるが、明細書の0011項目に、高多孔質である木炭の粉末を多量に含有しており、この木炭粉末が雑菌の繁殖を抑制すると共に、排水中や周辺空気中の悪臭成分及び有害物質を効率よく吸着して分解する作用を発揮するため、側溝内が清浄に保たれて悪臭を発生せず、逆に周辺の臭気を吸収除去する機能があると記されている。しかし、溶融した熱可塑性樹脂と木炭粉を混合した時点で表面が樹脂に覆われて多孔質機能は失われ、当然有害物質の吸着や悪臭を除去することは不可能である。
特開2000-007462にある炭類混入木毛セメント板は脱臭性、殺菌性、防湿性、電磁波障害防止性を得るために実施されたものであり、木毛セメント板の木材繊維によってセメントの脆さを補って曲げ強度を補強し軽量化する技術と共に、空気を浄化する低コストの優れた商品であるが、触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。
特願2005-373503の木炭粉とカルボキシルメチルセルロース粉末を混練した木炭ボードは、脆さや、形状の不揃いという課題は解決し、空気浄化に関しては優れた特性を有すと考えられるが、水に弱く触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。更に和紙で覆うと木炭が発する電磁波が吸収されてカビの抑制作用が失われる。
先行技術では、吸着性と耐水性を併せ持つ炭成型物はない。本発明は、細孔を保持して、吸着性に依る水や空気の浄化作用があり、陶磁器同様に造形が自由で、耐水性を得て汚れを防止する、低コストの炭成型物を得る事が目的である。
炭の特性は調湿性、吸着性、非劣化性、防音性、カビ抑制である。吸着性は細孔に依り、調湿性とカビ抑制は炭が発する電磁波に因ると考えられ、非劣化性は分子構造に因り、防音性は分子構造と細孔によると考えられる。吸着性、調湿性、防音性は広く知られているが、カビ抑制についてはあまり知られてなく商品も少なく、非劣化性を特徴とした商品も少ない。
非劣化性は炭の量に依ると考えられ、炭の重量比が樹脂の重量に比べて50%以上が望ましい。更に炭は籾殻炭が使用でき、熱可塑性樹脂粉には廃プラスチックの破砕粉が使用でき、木粉は鋸屑を使用することでコストが低減できて環境問題の一部も解決できる。
溶融した樹脂と粉炭を混錬すれば、容易に曲げ強度が強い炭成型物が低コストで得れるが、細孔が塞がれて吸着性が失われ炭の吸着性と一体である防音性の多くも失われる。更にゴムなどと違って樹脂は粘度が強いため粉炭の混合量は限られ、通常の方法では50%以上混合することは困難である。一方、水溶性接着剤を使用すれば粉炭量を多くでき、吸着性が保持できるが、耐水性を得ることは困難である。
添付書類1に示されたように、炭が有する調湿作用は、珪藻土や土壁のように水分の吸収&放出が主ではなく、他の要因であることが明らかとなり、その強弱は炭の表面積と開口面積に比例することを確認した。更に発明者は2009年12月に、実験で使用したのと同じ木炭塗料を生産販売すると共に、自宅の浴室の床と外壁の一部に塗工し、カビが発生しない、劣化しないことも発見した。カビが発生しない明確な要因は不明であるが、カビが完全に防除される場所と防除され難い場所から判断すると、調湿作用と同様に炭が発する電磁波が関与すると推測でき、外壁が劣化しないのは紫外線等の短波長を吸収するためと考えられる。よって、炭を使用した成型物は、腐食や腐敗、カビの発生がなく劣化しないので長期間の使用に耐えると考えられる。
吸着性は多孔質構造に依る。多孔質性を妨げないで、汚れを防止するためには、孔部分を含む表面を樹脂層で覆うのが望ましい。水溶性接着剤を粉炭が吸収すると、水の浸透に伴って樹脂が表面を覆う為、表面と孔の一部の面が共に樹脂で覆われて、孔を塞ぐことなく粉塵が生じ難い構造となり、触れても汚れない。この時、液状PVA糊や酢酸ビニル樹脂接着剤を使用すると、耐水性が無く水に浸すと崩壊する。耐水性のエチレン酢酸ビニル樹脂やエポキシ樹脂接着剤を使用すると、濡れた手で触った程度では汚れないが、水中や屋外では軟化して脆くなると共に汚れも生じ、完全な耐水性を得ることはできない。
本発明は、PVAの特異な性質を発見したのが契機であった。液状化したPVAは乾燥して固化しても加水すれば復元するので、切手や封筒などに使用されている。しかし、210℃に加熱して冷却するとゼリー状の軟質性樹脂となり、浸水しても変化しない。このようにPVAは加熱冷却によって水溶性から耐水性に変化する。酢酸ビニル樹脂は200℃に加熱して冷却すると、スポンジ状となり耐水性を獲得する。
下記表1に示すようにPVA,酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか又は複数と粉炭を混錬して乾燥し加熱した炭成型物は、吸水量にばらつきはあるが長時間吸水が継続することから、細孔を保持していると判断され、陶磁器作成時の粘土の性質と近似して任意の形に造形できる。加熱する時は、水分が多いと割れが生じるので乾燥した後で加熱しなければならない。
Figure 2022045858000002
Figure 2022045858000003
上記A~Eは成型して乾燥した炭成型物原型を200~210℃で30分間加熱した炭成型物であり、Fは210℃で溶融したPEと粉炭を混錬した炭成型物である。
粉炭と結着剤との重量比率は、A=粉炭:PVA=15:10、B=粉炭:PVA:酢ビ=10:3:3、C=粉炭:エチレン酢ビ=10:60、D=粉炭:酢ビ:水=10:8:1、E=粉炭:樹脂粉:PVA=10:6:2、F=粉炭:溶融樹脂=10:8
使用材料の名称及び成分内容は、粉炭=30μm以下の白炭粉、PVA=8%濃度の液状PVA糊、酢酸ビニル=酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル=エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、樹脂粉=30μm以下のポリエチレン樹脂粉末
樹脂は溶融しても粘度が強く、水のように広く拡散せず、隣接する物だけと結着する働きであることを実験を通じて知った。そこで図3に示すように、高温で溶融したPE樹脂と粉炭を混合すると細孔が塞がれ、吸水性と共に吸着性を失うが、PE樹脂粉と粉炭を混合し成型後に加熱すると、吸着性は保持できることが判明した。
液状PVA糊、液状PVA糊と酢酸ビニル樹脂接着剤の混合、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤、熱可塑性樹脂粉、の5種類と粉炭を混錬し乾燥後加熱した炭成型物と、加熱溶融した熱可塑性樹脂と粉炭を混錬して得た炭成型物の計6種類のサンプルで、時間別に吸水量を測定すると、図3で示す炭成型物の結着剤別吸水量比較表になる。吸着試験ではないので断定できないが、常温で粉炭と水溶性接着剤又は樹脂粉のいずれか双方を混錬し、乾燥後加熱した炭成型物は長時間に渡り吸水量が増加することから細孔が有効であると考えられる。
請求項1は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方(B)を混錬した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、乾燥して固化した成型物にする。これを恒温機又は窯に入れて、中心温度が200~210℃に達するまで加熱した後、冷却して炭成型物(X1)を得る生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(B)=100:50~120である。粉炭は炭化温度600~1200℃、粒子径=20μm~3mmで炭化方式や原材料にはこだわらない、木粉は木材の鋸屑である。液状PVA糊はPVA粉を温水で溶解したものであり、酢酸ビニル接着剤はポリ酢酸ビニル樹脂を水でエマルジョン化したものである。
型枠から取り出す時、容易に成型物が剥離するよう離型剤を使用しなければならないが、離型剤には接着剤などに混合するセロゾール920等や型枠に噴霧するシリコーンスプレー等があるが、本発明ではどちらを使用してもよい。
請求項2は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、熱可塑性樹脂粉(C)と水又は接着剤のいずれか双方(D)を混合した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、(C)が溶融する温度160~250℃に加熱して得る炭成型物(X2)の生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(C):(D)=100:40~100:50~100である。粉炭、木粉は請求項1に同じである。(C)は粒子径=20~500μmである。(D)は圧縮成形する時、形を安定させる目的であり、接着剤成分は限定しない。
本発明の請求項2で使用する熱可塑性樹脂粉は、PET、PE、PP他に関わらず、どのような廃棄プラスチックも使用できるが、樹脂の種類によって溶融温度が異なるため、複数の樹脂を使用する場合の加熱温度は、溶融温度の高い樹脂に合わせる。
使用する粉炭は主に木材を炭化したものであるが、吸着性、非劣化性、調湿性、防音性、カビ抑制に関しては竹炭やコメ殻炭を使用しても大きな相違はないことも発見した。このように炭化物であれば、製法、原料には関わらないので、コメ殻炭が使用でき、コスト低減と共に環境に貢献できる。
木粉は鋸の切り屑で寸法は鋸刃の幅によるが、どのような鋸刃で出来たものでも本発明で使用できる。
酢酸ビニル樹脂接着剤、液状PVAについては多くのメーカから発売され様々な種類があるが、加熱による耐水性の獲得に関しては一様であり、その種類は限定しない。酢酸ビニル樹脂接着剤の樹脂重量比は、樹脂:水=4~4.5:6~5.5であり、液状PVA糊の樹脂重量比は8%前後である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉250gを混合した混合物(1)を得る。(1)と液状PVA1.2kgを混錬し、手で水盤を造形する。次に100℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを210℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の水盤を得る。使用した液状PVAは商品名=合成洗濯糊クラノール、成分=クラレポバール、製造販売元=佐伯澱粉工業(株)である。
30μm以下の粉炭1kgと酢酸ビニル樹脂接着剤0.7kgと水0.1kgを混錬し、手で花瓶を造形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを200℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の花瓶を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤はコニシ(株)製の木工用CH18である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉200gと30μm以下の樹脂粉400gを混合した混合物(1)を得る。液状PVA600gと水500gとセロゾール920を60g混合した混合物(2)を得る。(1)と(2)を混錬し、これを型枠に収めて3tの力で圧縮成形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に50分間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した縦17×横100cm×厚み1.7cmの炭成型物を得る。使用した樹脂粉はポリエチレン(PE)をミキサーで破砕し、30μm穴のメッシュでろ過したPE樹脂粉、炭はクヌギを炭化した黒炭で、30μm以下の粉炭である。セロゾール920は中京油脂(株)製造の剥離剤である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.3mm以下のPE樹脂粉600gと水250mlを混合攪拌した後、17×100cmのシリコンを塗布した型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの力で圧縮する。蓋を外した後、送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に40分間入れPE樹脂粉を溶融させる。窯から取り出して冷却し型枠を外すと、厚み1.4cmの炭成型物を得る。
0.5mm以下の粉炭1kg、木粉200g、0.3mm以下の熱可塑性樹脂破砕粉600g、酢酸ビニル樹脂接着剤200g、水300mlとセロゾール920を25g加えて混合攪拌した後、型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの圧力で圧縮する。蓋を外して送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、210℃の窯に50分間入れる。窯から出し150℃で蓋を被せて再度3トンの圧力で圧縮する。冷却して型枠を外すと、上部表面の綺麗な縦17cm×横100cm×厚み=1.8cmの炭成型物を得る。熱可塑性樹脂破砕粉はポリ袋を溶融して塊にした後破砕して得たものであり、30μm以下である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.2mm以下のオレフィン系合成樹脂粉400gを混合し、これに酢酸ビニル樹脂接着剤300gと水300mlの混合液を混錬する。これをシリコーンを塗布した型枠に均等に充填して蓋を被せ3tの圧力で圧縮する。次に80℃に設定した温風乾燥室で24時間乾燥した後、型枠から取り出すと、一定の強度がある炭成型物原型となる。これを200℃の窯に40分間入れ加熱した後、窯から取り出して冷却すると、縦17×横100cm×厚み1.5cmの炭成型物を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤は、生産=セメダイン(株)、商品名=木工ボンド、樹脂重量比=40%、使用したオレフィン系合成樹脂粉=HebeiYuebaoTechnology;Co,Ltd製ポリマー
流し台や風呂などカビが発生しやすい場所に、木炭成型物を置くと、カビが生えない。また、屋外などに設置するベンチやテーブル、床材などでは、冬でも冷たさを感じないので快適に座れ、腐敗、腐食がなく、劣化しないので、長期間使用できる。
図1は請求項1の生産工程図である
図2は請求項3の生産工程図である
(A)は粉炭又は粉炭と木粉の混合物
(B)は液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方
(C)は熱可塑性樹脂粉
(D)は水又は接着剤のいずれか双方
(X1)は請求項1の炭成型物
(X2)は請求項2の炭成型物
本発明は、粉炭を使用して陶磁器製作同様に任意の形に造形でき、炭の吸着性を保持し同時に耐水性も得る成型技術である。
木炭粉を袋に入れて運ぶために体が汚れるし、運ぶのに手間がかかった課題を木炭粉粒をセメント、または接着剤で形成させた木炭板は公知であり、床下、壁、屋根に使用できる。(実登3040902)
オレフィン系合成樹脂を主体とする熱可塑性合成樹脂材料に木炭粉末を全量中の5~30重量%となる割合で混合し、この混合物を溶融混練して成形型内に充填し、150~300kg/cmの加圧下で成形硬化させることにより、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝の製造方法は公知である。(特開2000-179033)
炭類3%~30%(重量)含むことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板がある。また方法の発明は、木材繊維20%~30%(重量)と、炭類3%~30%(重量)と、セメント40%~65%(重量)とに、適量の塩化マグネシウム溶液を加えて撹拌混合し、この混合物を加圧成形した後、炭類の露出手段を施すことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板の製造方法が公知である。(特開2000-007462)
木炭を破砕して得られる木炭破砕片の100重量%に対して、25~40重量%の木屑片と100~180重量%の水と1.5~10重量%のカルボキシルメチルセルロース粉末とを混練し、該混練材料を型枠に充填してホットプレスにより板状体に成型してなることを特徴とする木炭ボードの製造方法や、型枠内に和紙を敷くと共にその上に混練材料を充填し、上から和紙を被せて、その状態でホットプレスすることを特徴とする木炭ボードの製造方法は公知である。(特願2005-373503)
実登3040902
特開2000-179033
特開2000-007462
特願2005-373503
実登3040902は木炭を扱う者にとって、汚れない木炭成型物は画期的な発想であり大いに役立つが、セメントに木炭を10%以上混入すると強度が失われ、コンクリートとして役立たない。また、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は水に弱く屋外では使用できない欠点がある。
特開2000-179033にある、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝は軽量で非劣化性に優れていると考えられるが、明細書の0011項目に、高多孔質である木炭の粉末を多量に含有しており、この木炭粉末が雑菌の繁殖を抑制すると共に、排水中や周辺空気中の悪臭成分及び有害物質を効率よく吸着して分解する作用を発揮するため、側溝内が清浄に保たれて悪臭を発生せず、逆に周辺の臭気を吸収除去する機能があると記されている。しかし、溶融した熱可塑性樹脂と木炭粉を混合した時点で表面が樹脂に覆われて多孔質機能は失われ、当然有害物質の吸着や悪臭を除去することは不可能である。
特開2000-007462にある炭類混入木毛セメント板は脱臭性、殺菌性、防湿性、電磁波障害防止性を得るために実施されたものであり、木毛セメント板の木材繊維によってセメントの脆さを補って曲げ強度を補強し軽量化する技術と共に、空気を浄化する低コストの優れた商品であるが、触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。
特願2005-373503の木炭粉とカルボキシルメチルセルロース粉末を混練した木炭ボードは、脆さや、形状の不揃いという課題は解決し、空気浄化に関しては優れた特性を有すと考えられるが、水に弱く触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。更に和紙で覆うと木炭が発する電磁波が吸収されてカビの抑制作用が失われる。
先行技術では、吸着性と耐水性を併せ持つ炭成型物はない。本発明は、細孔を保持して、吸着性に依る水や空気の浄化作用があり、陶磁器同様に造形が自由で、耐水性を得て汚れを防止する、低コストの炭成型物を得る事が目的である。
炭の特性は調湿性、吸着性、非劣化性、防音性、カビ抑制である。吸着性は細孔に依り、調湿性とカビ抑制は炭が発する電磁波に因ると考えられ、非劣化性は分子構造に因り、防音性は分子構造と細孔によると考えられる。吸着性、調湿性、防音性は広く知られているが、カビ抑制についてはあまり知られてなく商品も少なく、非劣化性を特徴とした商品も少ない。
非劣化性は炭の量に依ると考えられ、炭の重量比が樹脂の重量に比べて50%以上が望ましい。更に炭は籾殻炭が使用でき、熱可塑性樹脂粉には廃プラスチックの破砕粉が使用でき、木粉は鋸屑を使用することでコストが低減できて環境問題の一部も解決できる。
溶融した樹脂と粉炭を混錬すれば、容易に曲げ強度が強い炭成型物が低コストで得れるが、細孔が塞がれて吸着性が失われ炭の吸着性と一体である防音性の多くも失われる。更にゴムなどと違って樹脂は粘度が強いため粉炭の混合量は限られ、通常の方法では50%以上混合することは困難である。一方、水溶性接着剤を使用すれば粉炭量を多くでき、吸着性が保持できるが、耐水性を得ることは困難である。
添付書類1に示されたように、炭が有する調湿作用は、珪藻土や土壁のように水分の吸収&放出が主ではなく、他の要因であることが明らかとなり、その強弱は炭の表面積と開口面積に比例することを確認した。更に発明者は2009年12月に、実験で使用したのと同じ木炭塗料を生産販売すると共に、自宅の浴室の床と外壁の一部に塗工し、カビが発生しない、劣化しないことも発見した。カビが発生しない明確な要因は不明であるが、カビが完全に防除される場所と防除され難い場所から判断すると、調湿作用と同様に炭が発する電磁波が関与すると推測でき、外壁が劣化しないのは紫外線等の短波長を吸収するためと考えられる。よって、炭を使用した成型物は、腐食や腐敗、カビの発生がなく劣化しないので長期間の使用に耐えると考えられる。
吸着性は多孔質構造に依る。多孔質性を妨げないで、汚れを防止するためには、孔部分を含む表面を樹脂層で覆うのが望ましい。水溶性接着剤を粉炭が吸収すると、水の浸透に伴って樹脂が表面を覆う為、表面と孔の一部の面が共に樹脂で覆われて、孔を塞ぐことなく粉塵が生じ難い構造となり、触れても汚れない。この時、液状PVA糊や酢酸ビニル樹脂接着剤を使用すると、耐水性が無く水に浸すと崩壊する。耐水性のエチレン酢酸ビニル樹脂を使用すると、濡れた手で触った程度では汚れないが、水中や屋外では軟化して脆くなると共に汚れも生じ、完全な耐水性を得ることはできない。
本発明は、PVAの特異な性質を発見したのが契機であった。液状化したPVAは乾燥して固化しても加水すれば復元するので、切手や封筒などに使用されている。しかし、210℃に加熱して冷却するとゼリー状の軟質性樹脂となり、浸水しても変化しない。このようにPVAは加熱冷却によって水溶性から耐水性に変化する。酢酸ビニル樹脂は200℃に加熱して冷却すると、スポンジ状となり耐水性を獲得する。
下記表1に示すようにPVA,酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか又は複数と粉炭を混錬して乾燥し加熱した炭成型物は、吸水量にばらつきはあるが長時間吸水が継続することから、細孔を保持していると判断され、陶磁器作成時の粘土の性質と近似して任意の形に造形できる。加熱する時は、水分が多いと割れが生じるので乾燥した後で加熱しなければならない。
Figure 2022045858000006
粉炭と結着剤との重量比率は、A=粉炭:PVA=15:10、B=粉炭:PVA:酢ビ=10:3:3、C=粉炭:エチレン酢ビ=10:60、D=粉炭:酢ビ:水=10:8:1、E=粉炭:樹脂粉:PVA=10:6:2、F=粉炭:溶融樹脂=10:8
使用材料の名称及び成分内容は、粉炭=30μm以下の白炭粉、PVA=8%濃度の液状PVA糊、酢酸ビニル=酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル=エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、樹脂粉=30μm以下のポリエチレン樹脂粉末
樹脂は溶融しても粘度が強く、水のように広く拡散せず、隣接する物だけと結着する働きであることを実験を通じて知った。そこで表1のFに示すように、高温で溶融したPE樹脂と粉炭を混合すると細孔が塞がれ、吸水性と共に吸着性を失うが、PE樹脂粉と粉炭を混合し成型後に加熱すると、吸着性は保持できることが判明した。
液状PVA糊、液状PVA糊と酢酸ビニル樹脂接着剤の混合、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤、熱可塑性樹脂粉、の5種類と粉炭を混錬し乾燥後加熱した炭成型物と、加熱溶融した熱可塑性樹脂と粉炭を混錬して得た炭成型物の計6種類のサンプルで、時間別に吸水量を測定すると、表1で示す炭成型物の結着剤別吸水量比較表になる。吸着試験ではないので断定できないが、常温で粉炭と水溶性接着剤又は樹脂粉のいずれか双方を混錬し、乾燥後加熱した炭成型物は長時間に渡り吸水量が増加することから細孔が有効であると考えられる。
請求項1は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方(B)を混錬した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、乾燥して固化した成型物にする。これを恒温機又は窯に入れて、中心温度が200~210℃に達するまで加熱した後、冷却して炭成型物(X1)を得る生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(B)=100:50~120である。粉炭は炭化温度600~1200℃、粒子径=20μm~3mmで炭化方式や原材料にはこだわらない、木粉は木材の鋸屑である。液状PVA糊はPVA粉を温水で溶解したものであり、酢酸ビニル接着剤はポリ酢酸ビニル樹脂を水でエマルジョン化したものである。
型枠から取り出す時、容易に成型物が剥離するよう離型剤を使用しなければならないが、離型剤には接着剤などに混合するセロゾール920等や型枠に噴霧するシリコーンスプレー等があるが、本発明ではどちらを使用してもよい。
請求項2は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、熱可塑性樹脂粉又は熱硬化性樹脂粉(C)と水又は接着剤のいずれか双方(D)を混合した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し乾燥して固化した成型物にする。これを(C)が溶融する温度に加熱して得る炭成型物(X2)の生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(C):(D)=100:40~100:50~100である。粉炭、木粉は請求項1に同じである。(C)は粒子径=20~500μmである。(D)は圧縮成形する時、形を安定させる目的であり、接着剤成分は限定しない。
本発明の請求項2で使用する熱可塑性樹脂粉は、PET、PE、PP他に関わらず、どのような廃棄プラスチックも使用できるが、樹脂の種類によって溶融温度が異なるため、複数の樹脂を使用する場合の加熱温度は、溶融温度の高い樹脂に合わせる。熱硬化性樹脂を使用する場合は、種類によって溶融温度が大きく異なり、耐熱温度も異なるため、廃棄プラスチックを選別して使用する。
使用する粉炭は主に木材を炭化したものであるが、吸着性、非劣化性、調湿性、防音性、カビ抑制に関しては竹炭やコメ殻炭を使用しても大きな相違はないことも発見した。このように炭化物であれば、製法、原料には関わらないので、コメ殻炭が使用でき、コスト低減と共に環境に貢献できる。
木粉は鋸の切り屑で寸法は鋸刃の幅によるが、どのような鋸刃で出来たものでも本発明で使用できる。
酢酸ビニル樹脂接着剤、液状PVAについては多くのメーカから発売され様々な種類があるが、加熱による耐水性の獲得に関しては一様であり、その種類は限定しない。酢酸ビニル樹脂接着剤の樹脂重量比は、樹脂:水=4~4.5:6~5.5であり、液状PVA糊の樹脂重量比は8%前後である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉250gを混合した混合物(1)を得る。(1)と液状PVA1.2kgを混錬し、手で水盤を造形する。次に100℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを210℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の水盤を得る。使用した液状PVAは商品名=合成洗濯糊クラノール、成分=クラレポバール、製造販売元=佐伯澱粉工業(株)である。
30μm以下の粉炭1kgと酢酸ビニル樹脂接着剤0.7kgと水0.1kgを混錬し、手で花瓶を造形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを200℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の花瓶を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤はコニシ(株)製の木工用CH18である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉200gと30μm以下の樹脂粉400gを混合した混合物(1)を得る。液状PVA600gと水500gとセロゾール920を60g混合した混合物(2)を得る。(1)と(2)を混錬し、これを型枠に収めて3tの力で圧縮成形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に50分間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した縦17×横100cm×厚み1.7cmの炭成型物を得る。使用した樹脂粉はポリエチレン(PE)をミキサーで破砕し、30μm穴のメッシュでろ過したPE樹脂粉、炭はクヌギを炭化した黒炭で、30μm以下の粉炭である。セロゾール920は中京油脂(株)製造の離型剤である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.3mm以下のPE樹脂粉600gと水250mlを混合攪拌した後、17×100cmのシリコンを塗布した型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの力で圧縮する。蓋を外した後、送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に40分間入れPE樹脂粉を溶融させる。窯から取り出して冷却し型枠を外すと、厚み1.4cmの炭成型物を得る。
0.5mm以下の粉炭1kg、木粉200g、0.3mm以下の熱可塑性樹脂破砕粉600g、酢酸ビニル樹脂接着剤200g、水300mlとセロゾール920を25g加えて混合攪拌した後、型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの圧力で圧縮する。蓋を外して送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、210℃の窯に50分間入れる。窯から出し150℃で蓋を被せて再度3トンの圧力で圧縮する。冷却して型枠を外すと、上部表面の綺麗な縦17cm×横100cm×厚み=1.8cmの炭成型物を得る。熱可塑性樹脂破砕粉はPP樹脂のポリ袋を溶融して塊にした後破砕して得たものであり、30μm以下である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.2mm以下のオレフィン系合成樹脂粉400gを混合し、これに酢酸ビニル樹脂接着剤300gと水300mlの混合液を混錬する。これをシリコーンを塗布した型枠に均等に充填して蓋を被せ3tの圧力で圧縮する。次に80℃に設定した温風乾燥室で24時間乾燥した後、型枠から取り出すと、一定の強度がある炭成型物原型となる。これを200℃の窯に40分間入れ加熱した後、窯から取り出して冷却すると、縦17×横100cm×厚み1.5cmの炭成型物を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤は、生産=セメダイン(株)、商品名=木工ボンド、樹脂重量比=40%、使用したオレフィン系合成樹脂粉=HebeiYuebaoTechnology;Co,Ltd製ポリマー
流し台や風呂などカビが発生しやすい場所に、木炭成型物を置くと、カビが生えない。また、屋外などに設置するベンチやテーブル、床材などでは、冬でも冷たさを感じないので快適に座れ、腐敗、腐食がなく、劣化しないので、長期間使用できる。
図1は請求項1の生産工程図である
図2は請求項の生産工程図である
(A)は粉炭又は粉炭と木粉の混合物
(B)は液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方
(C)は熱可塑性樹脂粉
(D)は水又は接着剤のいずれか双方
(X1)は請求項1の炭成型物
(X2)は請求項2の炭成型物
本発明は、粉炭を使用して陶磁器製作同様に任意の形に造形でき、炭の吸着性を保持し同時に耐水性も得る成型技術である。
木炭粉を袋に入れて運ぶために体が汚れるし、運ぶのに手間がかかった課題を木炭粉粒をセメント、または接着剤で形成させた木炭板は公知であり、床下、壁、屋根に使用できる。(実登3040902)
オレフィン系合成樹脂を主体とする熱可塑性合成樹脂材料に木炭粉末を全量中の5~30重量%となる割合で混合し、この混合物を溶融混練して成形型内に充填し、150~300kg/cmの加圧下で成形硬化させることにより、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝の製造方法は公知である。(特開2000-179033)
炭類3%~30%(重量)含むことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板がある。また方法の発明は、木材繊維20%~30%(重量)と、炭類3%~30%(重量)と、セメント40%~65%(重量)とに、適量の塩化マグネシウム溶液を加えて撹拌混合し、この混合物を加圧成形した後、炭類の露出手段を施すことを特徴とした炭類混入の木毛セメント板の製造方法が公知である。(特開2000-007462)
木炭を破砕して得られる木炭破砕片の100重量%に対して、25~40重量%の木屑片と100~180重量%の水と1.5~10重量%のカルボキシルメチルセルロース粉末とを混練し、該混練材料を型枠に充填してホットプレスにより板状体に成型してなることを特徴とする木炭ボードの製造方法や、型枠内に和紙を敷くと共にその上に混練材料を充填し、上から和紙を被せて、その状態でホットプレスすることを特徴とする木炭ボードの製造方法は公知である。(特願2005-373503)
実登3040902
特開2000-179033
特開2000-007462
特願2005-373503
実登3040902は木炭を扱う者にとって、汚れない木炭成型物は画期的な発想であり大いに役立つが、セメントに木炭を10%以上混入すると強度が失われ、コンクリートとして役立たない。また、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は水に弱く屋外では使用できない欠点がある。
特開2000-179033にある、左右両側壁部と底壁部とを備えた縦断面U字形の溝状をなす熱可塑性合成樹脂成形物を得ることを特徴とするU字溝は軽量で非劣化性に優れていると考えられるが、明細書の0011項目に、高多孔質である木炭の粉末を多量に含有しており、この木炭粉末が雑菌の繁殖を抑制すると共に、排水中や周辺空気中の悪臭成分及び有害物質を効率よく吸着して分解する作用を発揮するため、側溝内が清浄に保たれて悪臭を発生せず、逆に周辺の臭気を吸収除去する機能があると記されている。しかし、溶融した熱可塑性樹脂と木炭粉を混合した時点で表面が樹脂に覆われて多孔質機能は失われ、当然有害物質の吸着や悪臭を除去することは不可能である。
特開2000-007462にある炭類混入木毛セメント板は脱臭性、殺菌性、防湿性、電磁波障害防止性を得るために実施されたものであり、木毛セメント板の木材繊維によってセメントの脆さを補って曲げ強度を補強し軽量化する技術と共に、空気を浄化する低コストの優れた商品であるが、触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。
特願2005-373503の木炭粉とカルボキシルメチルセルロース粉末を混練した木炭ボードは、脆さや、形状の不揃いという課題は解決し、空気浄化に関しては優れた特性を有すと考えられるが、水に弱く触れると汚れる最大の欠点が解消されていない。更に和紙で覆うと木炭が発する電磁波が吸収されてカビの抑制作用が失われる。
先行技術では、吸着性と耐水性を併せ持つ炭成型物はない。本発明は、細孔を保持して、吸着性に依る水や空気の浄化作用があり、陶磁器同様に造形が自由で、耐水性を得て汚れを防止する、低コストの炭成型物を得る事が目的である。
炭の特性は調湿性、吸着性、非劣化性、防音性、カビ抑制である。吸着性は細孔に依り、調湿性とカビ抑制は炭が発する電磁波に因ると考えられ、非劣化性は分子構造に因り、防音性は分子構造と細孔によると考えられる。吸着性、調湿性、防音性は広く知られているが、カビ抑制についてはあまり知られてなく商品も少なく、非劣化性を特徴とした商品も少ない。
非劣化性は炭の量に依ると考えられ、炭の重量比が樹脂の重量に比べて50%以上が望ましい。更に炭は籾殻炭が使用でき、熱可塑性樹脂粉には廃プラスチックの破砕粉が使用でき、木粉は鋸屑を使用することでコストが低減できて環境問題の一部も解決できる。
溶融した樹脂と粉炭を混錬すれば、容易に曲げ強度が強い炭成型物が低コストで得れるが、細孔が塞がれて吸着性が失われ炭の吸着性と一体である防音性の多くも失われる。更にゴムなどと違って樹脂は粘度が強いため粉炭の混合量は限られ、通常の方法では50%以上混合することは困難である。一方、水溶性接着剤を使用すれば粉炭量を多くでき、吸着性が保持できるが、耐水性を得ることは困難である。
添付書類1に示されたように、炭が有する調湿作用は、珪藻土や土壁のように水分の吸収&放出が主ではなく、他の要因であることが明らかとなり、その強弱は炭の表面積と開口面積に比例することを確認した。更に発明者は2009年12月に、実験で使用したのと同じ木炭塗料を生産販売すると共に、自宅の浴室の床と外壁の一部に塗工し、カビが発生しない、劣化しないことも発見した。カビが発生しない明確な要因は不明であるが、カビが完全に防除される場所と防除され難い場所から判断すると、調湿作用と同様に炭が発する電磁波が関与すると推測でき、外壁が劣化しないのは紫外線等の短波長を吸収するためと考えられる。よって、表面が炭の成型物は、腐食や腐敗、カビの発生がなく劣化しないので長期間の使用に耐えると考えられる。
吸着性は多孔質構造に依る。多孔質性を妨げないで、汚れを防止するためには、孔部分を含む表面を樹脂層で覆うのが望ましい。水溶性接着剤やエマルジョン接着剤を粉炭が吸収すると、水の浸透に伴って樹脂が表面を覆う為、表面と孔の一部の面が共に樹脂で覆われて、孔を塞ぐことなく粉塵が生じ難い構造となり、触れても汚れない。この時、液状PVA糊や酢酸ビニル樹脂接着剤を使用すると、耐水性が無く水に浸すと崩壊する。耐水性のエチレン酢酸ビニル樹脂接着剤を使用すると、濡れた手で触った程度では汚れないが、水中や屋外では軟化して脆くなると共に汚れも生じ、完全な耐水性を得ることはできない。
本発明は、PVAの特異な性質を発見したのが契機であった。液状化したPVAは乾燥して固化しても加水すれば復元するので、切手や封筒などに使用されている。しかし、180~210℃で1~2時間加熱して冷却すると浸水しても溶解しない。 このようにPVAは加熱によって水溶性から耐水性に変化する。酢酸ビニル樹脂は150~200℃で1~2時間加熱して冷却すると耐水性を獲得する。これらの発見からPVA接着剤や酢酸ビニル樹脂接着剤と粉炭を混錬し炭成型物原料を得、成型して乾燥後に150~210℃で1~2時間加熱すると、耐水性を有する炭成型物を得ることを発見した。
下記表1に示すようにPVA,酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか又は複数と粉炭を混錬して乾燥し加熱した炭成型物は、吸水量にばらつきはあるが長時間吸水が継続することから、細孔を保持していると判断され、陶磁器作成時の粘土の性質と近似して任意の形に造形できる。加熱する時は、水分が多いと割れが生じるので乾燥した後で加熱しなければならない。
Figure 2022045858000007
上記A~Eは成型して乾燥した炭成型物原型を200~210℃で30分間加熱した炭成型物であり、Fは210℃で溶融したPEと粉炭を混錬した炭成型物である。
粉炭と結着剤との重量比率は、A=粉炭:PVA=15:10、B=粉炭:PVA:酢ビ=10:3:3、C=粉炭:エチレン酢ビ=10:60、D=粉炭:酢ビ:水=10:8:1、E=粉炭:樹脂粉:PVA=10:6:2、F=粉炭:溶融樹脂=10:8
使用材料の名称及び成分内容は、粉炭=30μm以下の白木炭粉、PVA=8%濃度の液状PVA糊、酢酸ビニル=酢酸ビニル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル=エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、樹脂粉=30μm以下のポリエチレン樹脂粉末
樹脂は溶融しても粘度が強く、水のように広く拡散せず、隣接する物だけと結着する働きであることを実験を通じて知った。そこで表1のFに示すように、高温で溶融したPE樹脂と粉炭を混合すると細孔が塞がれ、吸水性と共に吸着性を失うが、PE樹脂粉と粉炭を混合し成型後に加熱すると、吸着性は保持できることが判明した。
液状PVA糊、液状PVA糊と酢酸ビニル樹脂接着剤の混合、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤、熱可塑性樹脂粉、の5種類と粉炭を混錬し乾燥後加熱した炭成型物と、加熱溶融した熱可塑性樹脂と粉炭を混錬して得た炭成型物の計6種類のサンプルで、時間別に吸水量を測定すると、表1で示す炭成型物の結着剤別吸水量比較表になる。吸着試験ではないので断定できないが、常温で粉炭と水溶性接着剤又は樹脂粉のいずれか双方を混錬し、乾燥後加熱した炭成型物は長時間に渡り吸水量が増加することから細孔が有効であると考えられる。
請求項1は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方(B)を混錬して炭成型物原料を得た後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、乾燥して固化した成型物にする。これを恒温機又は窯に入れて、中心温度が200~210℃に達するまで加熱した後冷却して、耐水性を有す炭成型物(X1)を得る生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(B)=100:50~120である。粉炭は炭化温度600~1200℃、粒子径=20μm~3mmで炭化方式や原材料にはこだわらない、木粉は木材の鋸屑である。液状PVA糊はPVA粉を10倍の温水に溶解したものであり、酢酸ビニル接着剤はポリ酢酸ビニル樹脂を水でエマルジョン化したものである。
型枠から取り出す時、容易に成型物が剥離するよう離型剤を使用しなければならないが、離型剤には接着剤などに混合するセロゾール920等や型枠に噴霧するシリコーンスプレー等があるが、本発明ではどちらを使用してもよい。液状にした炭成型物原料は様々な品物に塗れ、乾燥、焼成すると表面が耐水性を有す炭成型物となる。
請求項2は粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、熱可塑性樹脂粉又は熱硬化性樹脂粉(C)と水又は接着剤のいずれか双方(D)を混合した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し乾燥して固化した成型物にする。これを(C)が溶融する温度に加熱して得る耐水性を有す炭成型物(X2)の生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(C):(D)=100:40~100:50~100である。粉炭、木粉は請求項1に同じである。(C)は粒子径=20~500μmである。(D)は圧縮成形する時、形を安定させる目的であり、接着剤成分は限定しない。
本発明の請求項2で使用する熱可塑性樹脂粉は、PET、PE、PP他に関わらず、どのような廃棄プラスチックも使用できるが、樹脂の種類によって溶融温度が異なるため、複数の樹脂を使用する場合の加熱温度は、溶融温度の高い樹脂に合わせる。熱硬化性樹脂を使用する場合は、種類によって溶融温度が大きく異なり、耐熱温度も異なるため、廃棄プラスチックを選別して使用する。
使用する粉炭は主に木材を炭化したものであるが、吸着性、非劣化性、調湿性、防音性、断熱性、カビ抑制に関しては竹炭やコメ殻炭を使用しても大きな相違はないことも発見した。このように炭化物であれば、製法、原料には関わらないので、コメ殻炭が使用でき、コスト低減と共に環境に貢献できる。粉炭の粒径は小さいほうが仕上がりが綺麗であるが、10~30μm程度がコスト的に望ましい。
木粉は鋸の切り屑で寸法は鋸刃の幅によるが、どのような鋸刃で出来たものでも本発明で使用できる。
酢酸ビニル樹脂接着剤、液状PVAについては多くのメーカから発売され様々な種類があるが、加熱による耐水性の獲得に関しては一様であり、その種類は限定しない。酢酸ビニル樹脂接着剤の樹脂重量比は、樹脂:水=4~4.5:6~5.5であり、液状PVA糊の樹脂重量比は8%前後である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉250gを混合した混合物(1)を得る。(1)と液状PVA1.2kgを混錬し、手で水盤を造形する。次に100℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを190℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の水盤を得る。使用した液状PVAは商品名=合成洗濯糊クラノール、成分=クラレポバール、製造販売元=佐伯澱粉工業(株)である。
30μm以下の粉炭1kgと酢酸ビニル樹脂接着剤0.7kgと水0.1kgを混錬し、手で花瓶を造形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、取り出すと強度を有す炭成型物原型となる。これを160℃の窯に1時間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した炭成型物の花瓶を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤はコニシ(株)製の木工用CH18である。
30μm以下の粉炭1kgと木粉200gと30μm以下の樹脂粉400gを混合した混合物(1)を得る。液状PVA600gと水500gとセロゾール920を60g混合した混合物(2)を得る。(1)と(2)を混錬し、これを型枠に収めて3tの力で圧縮成形する。次に80℃の温風乾燥室に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に50分間入れ加熱した後、取り出して冷却すると、耐水性を獲得した縦17×横100cm×厚み1.7cmの炭成型物を得る。使用した樹脂粉はポリエチレン(PE)をミキサーで破砕し、30μm穴のメッシュでろ過したPE樹脂粉、炭はクヌギを炭化した黒炭で、30μm以下の粉炭である。セロゾール920は中京油脂(株)製造の離型剤である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.3mm以下のPE樹脂粉600gと水250m1を混合攪拌した後、17×100cmのシリコンを塗布した型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの力で圧縮する。蓋を外した後、送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、200℃の窯に40分間入れPE樹脂粉を溶融させる。窯から取り出して冷却し型枠を外すと、厚み1.4cmの炭成型物を得る。
0.5mm以下の粉炭1kg、木粉200g、0.3mm以下の熱可塑性樹脂破砕粉600g、酢酸ビニル樹脂接着剤200g、水300mlとセロゾール920を25g加えて混合攪拌した後、型枠に均等に充填し、蓋を被せて5tの圧力で圧縮する。蓋を外して送風乾燥機に24時間入れて乾燥した後、210℃の窯に50分間入れる。窯から出し150℃で蓋を被せて再度3トンの圧力で圧縮する。冷却して型枠を外すと、上部表面の綺麗な縦17cm×横100cm×厚み=1.8cmの炭成型物を得る。熱可塑性樹脂破砕粉はPP樹脂のポリ袋を溶融して塊にした後破砕して得たものであり、30μm以下である。
0.3mm以下の粉炭1kgと0.2mm以下のオレフィン系合成樹脂粉400gを混合し、これに酢酸ビニル樹脂接着剤300gと水300mlの混合液を混錬する。これをシリコーンを塗布した型枠に均等に充填して蓋を被せ3tの圧力で圧縮する。次に80℃に設定した温風乾燥室で24時間乾燥した後、型枠から取り出すと、一定の強度がある炭成型物原型となる。これを200℃の窯に40分間入れ加熱した後、窯から取り出して冷却すると、縦17×横100cm×厚み1.5cmの炭成型物を得る。使用した酢酸ビニル樹脂接着剤は、生産=セメダイン(株)、商品名=木工ボンド、樹脂重量比=40%、使用したオレフィン系合成樹脂粉=HebeiYuebaoTechnology;Co,Ltd製ポリマー
0.3mm以下の粉炭1kgと酢ビ700gと水900gを混合して液状の炭成型物原料を得て容器に移す、木製のお椀を漬け表面を炭成型物原料で覆った後乾燥して、160℃で1時間焼成すると、表面が耐水性の炭成型物で覆われた椀となる。
流し台や風呂などカビが発生しやすい場所に、木炭成型物を置くと、カビが生えない。また、屋外などに設置するベンチやテーブル、床材などでは、冬でも冷たさを感じないので快適に座れ、腐敗、腐食がなく、劣化しないので、長期間使用できる。
図1は請求項1の生産工程図である
図2は請求項の生産工程図である
(A)は粉炭又は粉炭と木粉の混合物
(B)は液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方
(C)は熱可塑性樹脂粉
(D)は水又は接着剤のいずれか双方
(X1)は請求項1の炭成型物
(X2)は請求項2の炭成型物
請求項1は、粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方(B)を混錬して炭成型物原料を得、これを圧縮成型し乾燥固化した成型物にするか、加水し液状にした炭成型物原料を成型物に塗布し乾燥した後、これを恒温機又は窯に入れて、150~210℃で30分間~2時間加熱して耐水性を獲得することが著しい特徴の炭成型物(X1)である。混合重量比は(A):(B)=100:50~120である。粉炭は炭化温度600~1200℃の炭化物粉体であり粒子径=5μm~3mmで炭化方式や原材料にはこだわらない、木粉は木材の鋸屑である。液状PVA糊はPVA粉を10~15倍の温水で溶解したものである。酢酸ビニル接着剤は樹脂量が40~55%である。

Claims (2)

  1. 粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、液状PVA糊又は酢酸ビニル樹脂接着剤のいずれか双方(B)を混錬した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、乾燥して固化した成型物にする。これを恒温機又は窯に入れて、中心温度が200~210℃に達するまで加熱した後、冷却して炭成型物(X1)を得る生産方式と成分構成が特徴である。混合重量比は(A):(B)=100:50~120である。粉炭は炭化温度600~1200℃、粒子径=20μm~3mmで炭化方式や原材料にはこだわらない、木粉は木材の鋸屑である。液状PVA糊はPVA粉を温水で溶解したものである。酢酸ビニル接着剤はポリ酢酸ビニル樹脂をエマルジョン化したものである。
  2. 粉炭又は粉炭と木粉の混合物(A)と、熱可塑性樹脂粉(C)と水又は接着剤のいずれか双方(D)を混合した後、手で造形するか、型枠に充填して1~10kg/cmの圧力で圧縮成型し、(C)が溶融する温度160~250℃に達するまで加熱して得る生産方式と成分構成が特徴の炭成型物(X2)である。混合重量比は(A):(C):(D)=100:40~100:40~100である。粉炭、木粉は請求項1に同じである。(C)は粒子径=20~500μmである。(D)は圧縮成形する時、形を安定させる目的であり接着剤成分は限定しない。
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