JP2022039537A - 酸化物膜、積層構造体、および、スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【課題】塩素や水分の侵入を抑制し、これらに対するバリア膜として適用可能な酸化物膜、この酸化物膜を備えた積層構造体を提供する。【解決手段】金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなることを特徴とする。基材11と、基材の表面に成膜された積層膜20と、からなる積層構造体であって、前記積層膜は、Ag又はAg合金からなるAg膜21と、このAg膜の前記基材とは反対側に配置された上述の酸化物膜27とを有しており、前記酸化物膜の膜厚が20nm以上とされていることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含む酸化物膜、この酸化物膜を備えた積層構造体、酸化物膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、タッチパネル等においては、配線として、例えば特許文献1,2に示すように、透明導電酸化物膜とAg又はAg合金からなるAg膜との積層構造とされた積層膜が適用されている。この積層膜には、可視光域の光の透過率が高く、かつ、電気抵抗の低いものが要求される。
また、低放射ガラス等においては、例えば特許文献3に開示されているように、ガラス表面に、Ag合金膜と透明誘電体膜とを積層した積層膜(遮熱膜)を成膜した構造とされている。この低放射ガラス等に用いられる積層膜においては、赤外線の反射率が高く、かつ、可視光の透過率が高いことが求められる。
なお、ガラス基板等に、上述の積層膜を成膜する場合には、各種組成のスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法が広く利用されている。
また、低放射ガラス等においては、例えば特許文献3に開示されているように、ガラス表面に、Ag合金膜と透明誘電体膜とを積層した積層膜(遮熱膜)を成膜した構造とされている。この低放射ガラス等に用いられる積層膜においては、赤外線の反射率が高く、かつ、可視光の透過率が高いことが求められる。
なお、ガラス基板等に、上述の積層膜を成膜する場合には、各種組成のスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法が広く利用されている。
ところで、最近では、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、タッチパネル等においては、さらなる高輝度化が求められており、可視光域の透過率に優れた積層膜が求められている。
しかしながら、Ag膜を備えた積層膜においては、パーティクル(空中微粒子)や指紋等が、膜上あるいは膜端部に付着することにより、塩素を原因としてAg膜においてAgの凝集が発生し、斑点等の欠陥が生じるおそれがあった。
特に、透過率を向上させるためにAg膜を薄くした場合には、Agが凝集しやすいため、上述の欠陥が発生しやすくなる傾向にある。
しかしながら、Ag膜を備えた積層膜においては、パーティクル(空中微粒子)や指紋等が、膜上あるいは膜端部に付着することにより、塩素を原因としてAg膜においてAgの凝集が発生し、斑点等の欠陥が生じるおそれがあった。
特に、透過率を向上させるためにAg膜を薄くした場合には、Agが凝集しやすいため、上述の欠陥が発生しやすくなる傾向にある。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、塩素や水分の侵入を抑制し、これらに対するバリア膜として適用可能な酸化物膜、この酸化物膜を備えた積層構造体、酸化物膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の酸化物膜は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなることを特徴としている。
本発明の酸化物膜によれば、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されているので、緻密なアモルファス(非晶質)構造となるとともに、膜自体の塩水に対する耐性が向上し、この酸化物膜を、塩素や水分に対するバリア膜として適用することができる。
ここで、本発明の酸化物膜においては、さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
上述の酸化物膜が、金属成分として、ZnとAlとSiとTi以外に、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を上述の範囲で含有しても、緻密なアモルファス(非晶質)構造となるとともに、膜自体の塩水に対する耐性が向上することになる。よって、この酸化物膜を、塩素や水分に対するバリア膜として適用することができる。
上述の酸化物膜が、金属成分として、ZnとAlとSiとTi以外に、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を上述の範囲で含有しても、緻密なアモルファス(非晶質)構造となるとともに、膜自体の塩水に対する耐性が向上することになる。よって、この酸化物膜を、塩素や水分に対するバリア膜として適用することができる。
本発明の積層構造体は、基材と、基材の表面に成膜された積層膜と、を備える積層構造体であって、前記積層膜は、Ag又はAg合金からなるAg膜と、このAg膜の前記基材とは反対側に配置された上述の酸化物膜と、を有しており、前記酸化物膜の膜厚が20nm以上とされていることを特徴としている。
本発明の積層構造体によれば、Ag膜の前記基材とは反対側に上述の酸化物膜が配置されており、この酸化物膜の膜厚が20nm以上とされているので、緻密なアモルファス構造とされた酸化物膜が塩素や水分のバリア膜として機能し、塩素や水分がAg膜に接触することを抑制でき、Ag膜におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生を抑制することが可能となる。
ここで、本発明の積層構造体においては、前記Ag膜と前記基材との間に、金属成分としてGaとTiとZnを含むGaTiZn酸化物膜が配設されており、前記Ag膜と前記GaTiZn酸化物膜とが隣接していることが好ましい。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜とAg膜との親和性が高く、Agの密着性が向上する。よって、Agの原子移動が妨げられることで、塩素を原因とするAg膜におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生を抑制することができる。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜とAg膜との親和性が高く、Agの密着性が向上する。よって、Agの原子移動が妨げられることで、塩素を原因とするAg膜におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生を抑制することができる。
また、本発明の積層構造体における前記GaTiZn酸化物膜は、全金属成分量に対して、Gaが0.5原子%以上20.0原子%以下、Tiが0.5原子%以上20.0原子%以下、残部がZnと不可避不純物からなる酸化物で構成されていることが好ましい。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜の組成が上述のように規定されているので、GaTiZn酸化物膜とAg膜との親和性が確実に高くなり、Ag膜におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜の組成が上述のように規定されているので、GaTiZn酸化物膜とAg膜との親和性が確実に高くなり、Ag膜におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
さらに、本発明の積層構造体においては、前記GaTiZn酸化物膜の厚さが5nm以上であることが好ましい。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜の厚さが5nm以上とされているので、前記GaTiZn酸化物膜とAg膜との密着性がさらに向上し、Ag膜におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
この場合、前記GaTiZn酸化物膜の厚さが5nm以上とされているので、前記GaTiZn酸化物膜とAg膜との密着性がさらに向上し、Ag膜におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
また、本発明の積層構造体においては、前記Ag膜は、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素の少なくとも1種以上を合計で0.01原子%以上20.00原子%以下の範囲で含有し、残部がAgと不可避不純物とした組成であることが好ましい。
この場合、Ag膜が、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Mg,Ca,Ti,Pdから選択される1種又は2種以上を合計で0.01原子%以上20.0原子%以下の範囲で含有しているので、塩素を原因とするAg膜におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
この場合、Ag膜が、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Mg,Ca,Ti,Pdから選択される1種又は2種以上を合計で0.01原子%以上20.0原子%以下の範囲で含有しているので、塩素を原因とするAg膜におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
さらに、本発明の積層構造体においては、前記Ag膜の厚さが5nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましい。
この場合、Ag膜の厚さが5nm以上とされているので、膜の耐久性を十分に確保することができる。一方、Ag膜の厚さが20nm以下とされているので、製造コストが増加することを抑制できる。
この場合、Ag膜の厚さが5nm以上とされているので、膜の耐久性を十分に確保することができる。一方、Ag膜の厚さが20nm以下とされているので、製造コストが増加することを抑制できる。
本発明のスパッタリングターゲットは、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなることを特徴としている。
この構成のスパッタリングターゲットによれば、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されているので、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物を成膜することができる。
また、酸化物で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時に放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
また、酸化物で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時に放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
ここで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
この場合、上述のA群金属元素を含んでいても、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜を成膜することが可能となる。
この場合、上述のA群金属元素を含んでいても、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜を成膜することが可能となる。
本発明のスパッタリングターゲットは、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金からなることを特徴としている。
この構成のスパッタリングターゲットによれば、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分されたZn合金で構成されているので、スパッタ時に酸素を導入することにより、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物を成膜することができる。
また、Zn合金で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時に放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
また、Zn合金で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時に放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
ここで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、さらに、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
この場合、上述のA群金属元素を含んでいても、スパッタ時に酸素を導入することにより、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜を成膜することが可能となる。
この場合、上述のA群金属元素を含んでいても、スパッタ時に酸素を導入することにより、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜を成膜することが可能となる。
本発明によれば、塩素や水分の侵入を抑制し、これらに対するバリア膜として適用可能な酸化物膜、この酸化物膜を備えた積層構造体、酸化物膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供することが可能となる。
以下に、本発明の一実施形態である酸化物膜、積層構造体、スパッタリングターゲットについて、添付した図面を参照して具体的に説明する。
なお、本実施形態である積層構造体10は、各種ディスプレイおよびタッチパネルの透明導電配線膜や透明電極、あるいは、低放射ガラス(Low-Eガラス)における遮熱膜を構成するものである。
なお、本実施形態である積層構造体10は、各種ディスプレイおよびタッチパネルの透明導電配線膜や透明電極、あるいは、低放射ガラス(Low-Eガラス)における遮熱膜を構成するものである。
本実施形態である積層構造体10は、図1に示すように、基材11と、この基材11の一面に形成された積層膜20と、を備えている。
ここで、基材11としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルム等を用いることができる。本実施形態では、基材11は、ガラス基板とされており、その厚さが0.1mm以上2mm以下の範囲内とされている。
ここで、基材11としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルム等を用いることができる。本実施形態では、基材11は、ガラス基板とされており、その厚さが0.1mm以上2mm以下の範囲内とされている。
積層膜20は、Ag又はAg合金からなるAg膜21と、このAg膜21と基材11との間に配設されるとともに膜厚方向においてAg膜21に隣接するように積層された下地酸化物膜23と、このAg膜21の基材11とは反対側に配置された酸化物膜27と、を備えている。
なお、酸化物膜27は、上述のようにAg膜21に隣接していてもよいが、Ag膜21に隣接している必要はなく、Ag膜21の基材11とは反対側に配置されていればよい。例えば、Ag膜21は、基材11と酸化物膜27との間に配置されている。本実施形態では、図1に示すように、酸化物膜27とAg膜21との間には、中間層の中間膜25が配設されている。
なお、酸化物膜27は、上述のようにAg膜21に隣接していてもよいが、Ag膜21に隣接している必要はなく、Ag膜21の基材11とは反対側に配置されていればよい。例えば、Ag膜21は、基材11と酸化物膜27との間に配置されている。本実施形態では、図1に示すように、酸化物膜27とAg膜21との間には、中間層の中間膜25が配設されている。
そして、Ag膜21の基材11とは反対側に配置された酸化物膜27は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが金属成分の主成分とされた酸化物で構成されている。なお、本実施形態において、Siは金属成分に含まれる。
また、本実施形態の酸化物膜27においては、さらに金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素(添加金属元素)を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされた酸化物で構成されていてもよい。なお、前記A群金属元素の合計含有量は5.0原子%以下でもよい。また、本実施形態において、Geは金属成分に含まれる。
ここで、本実施形態の積層構造体10においては、酸化物膜27の膜厚は20nm以上とされている。
また、本実施形態の酸化物膜27においては、さらに金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素(添加金属元素)を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされた酸化物で構成されていてもよい。なお、前記A群金属元素の合計含有量は5.0原子%以下でもよい。また、本実施形態において、Geは金属成分に含まれる。
ここで、本実施形態の積層構造体10においては、酸化物膜27の膜厚は20nm以上とされている。
Ag膜21は、Ag又はAg合金で構成されている。本実施形態では、Ag膜21は、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素の少なくとも1種以上を合計で0.01原子%以上20.00原子%以下の範囲で含有し、残部がAgと不可避不純物とした組成であることが好ましい。
また、Ag膜21の厚さは、5nm以上20nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
また、Ag膜21の厚さは、5nm以上20nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
下地酸化物膜23は、金属成分としてGaとTiとZnを含むGaTiZn酸化物膜で構成されていることが好ましい。なお、本実施形態では、GaTiZn酸化物膜は、金属成分としてGaとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物からなるGaTiZn酸化物膜で構成されていることが好ましい。
具体的には、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜は、全金属成分に対してGaの含有量が0.5原子%以上20.0原子%以下、Tiの含有量が0.5原子%以上20.0原子%以下、残部がZn及び不可避不純物とした組成の酸化物で構成されていることが好ましい。
また、本実施形態においては、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜の厚さは、5nm以上とされていることが好ましい。
具体的には、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜は、全金属成分に対してGaの含有量が0.5原子%以上20.0原子%以下、Tiの含有量が0.5原子%以上20.0原子%以下、残部がZn及び不可避不純物とした組成の酸化物で構成されていることが好ましい。
また、本実施形態においては、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜の厚さは、5nm以上とされていることが好ましい。
ここで、本実施形態である積層構造体10において、酸化物膜27の組成および厚さ、Ag膜21の組成および厚さ、下地酸化物膜23の組成および厚さ、中間膜25を、上述のように規定した理由について説明する。
(酸化物膜27)
Ag膜21の基材11とは所定方向(例、膜厚方向)において反対側に配置された酸化物膜27は、透明膜であり、塩素や水分に対するバリア膜として機能し、塩素や水分がAg膜21に接触することを抑制し、Ag膜21の劣化を抑制するものである。
Ag膜21の基材11とは所定方向(例、膜厚方向)において反対側に配置された酸化物膜27は、透明膜であり、塩素や水分に対するバリア膜として機能し、塩素や水分がAg膜21に接触することを抑制し、Ag膜21の劣化を抑制するものである。
基材11およびAg膜21より上方に配置された酸化物膜27においては、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されている。本実施形態では、酸化物膜27は、金属成分としてAlとSiとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物とされた酸化物で構成されている。
このような組成である酸化物膜27においては、緻密なアモルファス構造とされており、塩素や水分に対するバリア性を確保することが可能となる。
このような組成である酸化物膜27においては、緻密なアモルファス構造とされており、塩素や水分に対するバリア性を確保することが可能となる。
なお、酸化物膜27における金属元素の原子比は、Al/(Al+Si+Ti+Zn)が0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Al+Si+Ti+Zn)が5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)が20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)が40.0原子%以上であることが好ましい。
Alは、Zn酸化物に添加されることにより、Zn-O間結合を安定化し、酸化物膜27を緻密化する作用効果を有している。
ここで、Al/(Al+Si+Ti+Zn)を0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内とすることで、膜をさらに緻密化させることができる。
なお、Al/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は1.0原子%以上とすることがより好ましく、2.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Al/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は20.0原子%以下とすることがより好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、Al/(Al+Si+Ti+Zn)を0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内とすることで、膜をさらに緻密化させることができる。
なお、Al/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は1.0原子%以上とすることがより好ましく、2.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Al/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は20.0原子%以下とすることがより好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
Siは、Zn酸化物に添加されることにより、酸化物膜27を緻密なアモルファス膜とする作用効果を有している。
ここで、Si/(Al+Si+Ti+Zn)を5.0原子%以上とすることで膜を確実にアモルファス化させることができる。一方、Si/(Al+Si+Ti+Zn)を30.0原子%以下とすることで、酸化物膜27における塩素透過性をより低下させ、塩素バリア性をより向上させることが可能となる。
なお、Si/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は10.0原子%以上とすることがより好ましく、15.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Si/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は28.0原子%以下とすることがより好ましく、25.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、Si/(Al+Si+Ti+Zn)を5.0原子%以上とすることで膜を確実にアモルファス化させることができる。一方、Si/(Al+Si+Ti+Zn)を30.0原子%以下とすることで、酸化物膜27における塩素透過性をより低下させ、塩素バリア性をより向上させることが可能となる。
なお、Si/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は10.0原子%以上とすることがより好ましく、15.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Si/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は28.0原子%以下とすることがより好ましく、25.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
Tiは、Zn酸化物に添加されることにより、酸化物膜27の耐塩素性を向上させる作用効果を有している。
ここで、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)を20.0原子%以上とすることで酸化物膜27の塩素に対する化学的な耐性がより向上し、塩素バリア性をより向上させることができる。一方、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)を40.0原子%以下とすることで、酸化物膜27をより緻密化させることが可能となる。
なお、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は21.0原子%以上とすることがより好ましく、23.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は38.0原子%以下とすることがより好ましく、35.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)を20.0原子%以上とすることで酸化物膜27の塩素に対する化学的な耐性がより向上し、塩素バリア性をより向上させることができる。一方、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)を40.0原子%以下とすることで、酸化物膜27をより緻密化させることが可能となる。
なお、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は21.0原子%以上とすることがより好ましく、23.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)の上限は38.0原子%以下とすることがより好ましく、35.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
Znは、酸化物膜27の主成分となるものである。Znを主成分とすることは、酸化物膜27の全金属成分においてZnの金属原子比が最も高いことを含む。
酸化物膜27における金属成分の主成分としてZn/(Al+Si+Ti+Zn)を40.0原子%以上とすることで、酸化物膜27をより緻密化させることができる。
なお、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は45.0原子%以上とすることがより好ましく、50.0原子%以上とすることがさらに好ましい。
酸化物膜27における金属成分の主成分としてZn/(Al+Si+Ti+Zn)を40.0原子%以上とすることで、酸化物膜27をより緻密化させることができる。
なお、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)の下限は45.0原子%以上とすることがより好ましく、50.0原子%以上とすることがさらに好ましい。
ここで、本実施形態の酸化物膜27においては、さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
なお、これらのA群金属元素を含む場合には、Al/(Zn+Al+Si+Ti+A群金属元素)を0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Zn+Al+Si+Ti+A群金属元素)を5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Zn+Al+Si+Ti+A群金属元素)を20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn+A群金属元素)を40.0原子%以上、A群金属元素/(Zn+Al+Si+Ti+A群金属元素)を5.0原子%以下とすることがより好ましい。
また、上述の酸化物膜27は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた複合酸化物で構成されていることが好ましい。
また、上述の酸化物膜27は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた複合酸化物で構成されていることが好ましい。
また、本実施形態である積層構造体10において、酸化物膜27の厚さを20nm以上とすることにより、塩素や水分に対するバリア性を十分に確保でき、Ag膜21の劣化をさらに抑制することが可能となる。
なお、酸化物膜27の厚さの下限は30nm以上とすることがさらに好ましく、50nm以上とすることがより好ましい。酸化物膜27の厚さの上限に特に制限はないが、200nm以下とすることが好ましく、150mm以下とすることがより好ましい。
例えば、酸化物膜27の膜厚は20nm以上200nm以下の範囲内とされている。また、酸化物膜27の膜厚は、20nm以上150nm以下の範囲内、30nm以上200nm以下の範囲内、30nm以上150nm以下の範囲内、50nm以上200nm以下の範囲内、又は50nm以上150nm以下の範囲内であってもよい。
なお、酸化物膜27の厚さの下限は30nm以上とすることがさらに好ましく、50nm以上とすることがより好ましい。酸化物膜27の厚さの上限に特に制限はないが、200nm以下とすることが好ましく、150mm以下とすることがより好ましい。
例えば、酸化物膜27の膜厚は20nm以上200nm以下の範囲内とされている。また、酸化物膜27の膜厚は、20nm以上150nm以下の範囲内、30nm以上200nm以下の範囲内、30nm以上150nm以下の範囲内、50nm以上200nm以下の範囲内、又は50nm以上150nm以下の範囲内であってもよい。
(Ag膜21)
Ag膜21は、電気特性および光学特性に優れており、各種ディスプレイの配線膜や赤外線反射膜を構成する金属膜として特に適している。
ここで、Agに、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素を添加した場合には、Ag膜21におけるAgの凝集を抑制することができ、耐塩素性を向上させることが可能となる。
Ag膜21は、電気特性および光学特性に優れており、各種ディスプレイの配線膜や赤外線反射膜を構成する金属膜として特に適している。
ここで、Agに、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素を添加した場合には、Ag膜21におけるAgの凝集を抑制することができ、耐塩素性を向上させることが可能となる。
Ag膜21において、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量を0.01原子%以上とすることにより、Ag膜21におけるAgの凝集を十分に向上させることが可能となる。一方、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量を20.0原子%以下とすることにより、Ag膜21の電気特性および光学特性が劣化することを抑制できる。
なお、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量の下限は0.1原子%以上とすることが好ましく、0.5原子%以上とすることがより好ましい。一方、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量の上限は10.0原子%以下とすることが好ましく、8.0原子%以下とすることがより好ましい。
なお、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量の下限は0.1原子%以上とすることが好ましく、0.5原子%以上とすることがより好ましい。一方、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiから選択される1種又は2種以上の合計含有量の上限は10.0原子%以下とすることが好ましく、8.0原子%以下とすることがより好ましい。
また、Ag膜21の厚さを5nm以上とすることにより、Ag膜21の耐久性を十分に確保することができる。一方、Ag膜21の厚さを20nm以下とすることにより、Ag膜21の電気特性および光学特性を高く維持することができる。
なお、Ag膜21の厚さの下限は6nm以上とすることが好ましく、7nm以上とすることがより好ましい。一方、Ag膜21の厚さの上限は15nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。
なお、Ag膜21の厚さの下限は6nm以上とすることが好ましく、7nm以上とすることがより好ましい。一方、Ag膜21の厚さの上限は15nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。
(下地酸化物膜23)
所定方向(例、膜厚方向)においてAg膜21と隣接して積層された下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜は、Ag膜21との密着性が高く、Agの原子移動が妨げられることでAg膜21におけるAgの凝集を抑制する作用を有している。
所定方向(例、膜厚方向)においてAg膜21と隣接して積層された下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜は、Ag膜21との密着性が高く、Agの原子移動が妨げられることでAg膜21におけるAgの凝集を抑制する作用を有している。
Gaは、Zn酸化物に添加されることによって、Ag膜21におけるAgとの密着性を向上させる作用効果を有している。
ここで、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜がGaを0.5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することで、下地酸化物膜23とAg膜21との密着性を確実に向上させることが可能となる。
なお、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるGaの含有量の下限は2.0原子%以上とすることが好ましく、5.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるGaの含有量の上限は18.0原子%以下とすることが好ましく、15.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜がGaを0.5原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することで、下地酸化物膜23とAg膜21との密着性を確実に向上させることが可能となる。
なお、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるGaの含有量の下限は2.0原子%以上とすることが好ましく、5.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるGaの含有量の上限は18.0原子%以下とすることが好ましく、15.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
Tiは、Zn酸化物に添加されることによって、Zn酸化物の耐塩素性を向上させる作用効果を有している。
ここで、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜がTiを0.5原子%以上含有することにより、下地酸化物膜23の耐塩素性を十分に向上させることが可能となる。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量を20.0原子%以下に制限することにより、下地酸化物膜23のAgとの密着性を向上させることができる。
なお、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量の下限は1.0原子%以上とすることが好ましく、2.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量の上限は15.0原子%以下とすることが好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜がTiを0.5原子%以上含有することにより、下地酸化物膜23の耐塩素性を十分に向上させることが可能となる。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量を20.0原子%以下に制限することにより、下地酸化物膜23のAgとの密着性を向上させることができる。
なお、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量の下限は1.0原子%以上とすることが好ましく、2.0原子%以上とすることがさらに好ましい。一方、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜におけるTiの含有量の上限は15.0原子%以下とすることが好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
また、下地酸化物膜23の厚さを5nm以上とすることにより、下地酸化物膜23とAg膜21との密着性をさらに向上させることが可能となる。
なお、下地酸化物膜23の厚さの下限は10nm以上とすることが好ましく、20nm以上とすることがより好ましい。一方、下地酸化物膜23の厚さの上限に特に制限はないが、100nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
なお、下地酸化物膜23の厚さの下限は10nm以上とすることが好ましく、20nm以上とすることがより好ましい。一方、下地酸化物膜23の厚さの上限に特に制限はないが、100nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
(中間膜25)
なお、本実施形態では、図1に示すように、酸化物膜27とAg膜21との間に中間膜25が配設されているが、中間膜25の組成や厚さに特に制限はない。
本実施形態においては、中間膜25は、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜と同一組成としている。中間膜25もAg膜21に隣接していることから、中間膜25はAg膜21との密着性に優れる。なお、中間膜25としては、ITO膜、IZO膜を用いてもよい。
なお、本実施形態では、図1に示すように、酸化物膜27とAg膜21との間に中間膜25が配設されているが、中間膜25の組成や厚さに特に制限はない。
本実施形態においては、中間膜25は、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜と同一組成としている。中間膜25もAg膜21に隣接していることから、中間膜25はAg膜21との密着性に優れる。なお、中間膜25としては、ITO膜、IZO膜を用いてもよい。
本実施形態である積層構造体10は、基材11に対して、例えば各種スパッタリングターゲットを用いたスパッタ法によって、それぞれの膜を成膜することにより製造することができる。
すなわち、基材11の上に、Ga,Ti,Znを含む酸化物スパッタリングターゲットを用いて下地酸化物膜23を成膜する。次に、下地酸化物膜23の上に、Ag又はAg合金からなるAgスパッタリングターゲットを用いてAg膜21を成膜し、さらに、Ag膜21の上にGa,Ti,Znを含む酸化物スパッタリングターゲットを用いて中間膜25を成膜する。最後に、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなるスパッタリングターゲット、あるいは、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金からなるスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜27を成膜する。これにより、本実施形態である積層構造体10が製造されることになる。なお、下地酸化物膜23や中間膜25の成膜は、必要に応じて省略してもよい。
すなわち、基材11の上に、Ga,Ti,Znを含む酸化物スパッタリングターゲットを用いて下地酸化物膜23を成膜する。次に、下地酸化物膜23の上に、Ag又はAg合金からなるAgスパッタリングターゲットを用いてAg膜21を成膜し、さらに、Ag膜21の上にGa,Ti,Znを含む酸化物スパッタリングターゲットを用いて中間膜25を成膜する。最後に、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなるスパッタリングターゲット、あるいは、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金からなるスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜27を成膜する。これにより、本実施形態である積層構造体10が製造されることになる。なお、下地酸化物膜23や中間膜25の成膜は、必要に応じて省略してもよい。
次に、本実施形態である酸化物膜27を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットについて説明する。
本実施形態である酸化物膜27を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットとしては、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されたスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)と、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金で構成されたスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)とがある。
本実施形態である酸化物膜27を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットとしては、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されたスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)と、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金で構成されたスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)とがある。
(酸化物ターゲット)
上述のスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されている。本実施形態では、金属成分としてAlとSiとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物からなる酸化物で構成されている。
このスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)においては、本実施形態である酸化物膜27を成膜することが可能となる。また、酸化物の単相組織とされており、スパッタ時における放電が均一化し、安定してスパッタ成膜することが可能となる。
なお、Znを主成分とすることは、スパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)の全金属成分においてZnの金属原子比が最も高いことを含む。
また、スパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)における金属元素の原子比は、Al/(Al+Si+Ti+Zn)が0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Al+Si+Ti+Zn)が5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)が20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)が40.0原子%以上であることが好ましい。
さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
上述のスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)は、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されている。本実施形態では、金属成分としてAlとSiとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物からなる酸化物で構成されている。
このスパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)においては、本実施形態である酸化物膜27を成膜することが可能となる。また、酸化物の単相組織とされており、スパッタ時における放電が均一化し、安定してスパッタ成膜することが可能となる。
なお、Znを主成分とすることは、スパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)の全金属成分においてZnの金属原子比が最も高いことを含む。
また、スパッタリングターゲット(酸化物ターゲット)における金属元素の原子比は、Al/(Al+Si+Ti+Zn)が0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Al+Si+Ti+Zn)が5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)が20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)が40.0原子%以上であることが好ましい。
さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
(Zn合金ターゲット)
上述のスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)は、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされたZn合金で構成されている。本実施形態では、AlとSiとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物からなるZn合金で構成されている。
このスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)においては、スパッタ時に酸素を導入することにより、本実施形態である酸化物膜27を成膜することが可能となる。また、Zn合金の単相組織とされており、スパッタ時における放電が均一化し、安定してスパッタ成膜することが可能となる。
なお、Znを主成分とすることは、スパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)においてZnの金属原子比が最も高いことを含む。
また、スパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)における金属元素の原子比は、Al/(Al+Si+Ti+Zn)が0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Al+Si+Ti+Zn)が5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)が20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)が40.0原子%以上であることが好ましい。
さらに、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
上述のスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)は、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされたZn合金で構成されている。本実施形態では、AlとSiとTiを含み、残部がZnおよび不可避不純物からなるZn合金で構成されている。
このスパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)においては、スパッタ時に酸素を導入することにより、本実施形態である酸化物膜27を成膜することが可能となる。また、Zn合金の単相組織とされており、スパッタ時における放電が均一化し、安定してスパッタ成膜することが可能となる。
なお、Znを主成分とすることは、スパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)においてZnの金属原子比が最も高いことを含む。
また、スパッタリングターゲット(Zn合金ターゲット)における金属元素の原子比は、Al/(Al+Si+Ti+Zn)が0.5原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Si/(Al+Si+Ti+Zn)が5.0原子%以上30.0原子%以下の範囲内、Ti/(Al+Si+Ti+Zn)が20.0原子%以上40.0原子%以下の範囲内、Zn/(Al+Si+Ti+Zn)が40.0原子%以上であることが好ましい。
さらに、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていてもよい。
以上のような構成とされた本実施形態である酸化物膜27においては、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されているので、緻密なアモルファス(非晶質)構造となるとともに、膜自体の塩水に対する耐性が向上し、この酸化物膜27を、塩素や水分に対するバリア膜として用いることができる。
また、本実施形態において、さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされている場合であっても、酸化物膜27は、密なアモルファス(非晶質)構造となるとともに、膜自体の塩水に対する耐性が向上することになる。よって、この酸化物膜を、塩素や水分に対するバリア膜として用いることができる。
本実施形態である積層構造体10は、Ag膜21の基材11とは反対側に上述の酸化物膜27が配置されており、この酸化物膜27の膜厚が20nm以上とされているので、緻密なアモルファス構造とされた酸化物膜27が塩素や水分のバリア膜として機能し、塩素や水分がAg膜21に接触することを抑制でき、Ag膜21の劣化を抑制することが可能となる。
本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21と基材11との間に、金属成分としてGa、Ti、Znを含むGaTiZn酸化物膜からなる下地酸化物膜23が配設され、Ag膜21と下地酸化物膜23とが隣接している場合には、下地酸化物膜23とAg膜21との親和性が高く、これらの密着性が向上する。よって、Agの原子移動が妨げられることで、塩素を原因とするAg膜21におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生を抑制することができる。
また、下地酸化物膜23を構成するGaTiZn酸化物膜が、全金属成分量に対して、Gaが0.5原子%以上20.0原子%以下、Tiが0.5原子%以上20.0原子%以下、残部がZnと不可避不純物からなる酸化物で構成されている場合には、下地酸化物膜23とAg膜21との親和性が確実に高くなり、Ag膜21におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態の積層構造体10において、下地酸化物膜23の厚さが5nm以上である場合には、下地酸化物膜23とAg膜21との密着性がさらに向上し、Ag膜21におけるAgの凝集をさらに抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
また、本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21の上に隣接するようにGaTiZn酸化物膜からなる中間膜25を成膜した場合には、中間膜25とAg膜21との密着性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21の上に隣接するようにGaTiZn酸化物膜からなる中間膜25を成膜した場合には、中間膜25とAg膜21との密着性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21が、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素の少なくとも1種以上を合計で0.01原子%以上20.00原子%以下の範囲で含有し、残部がAgと不可避不純物とした組成である場合には、Ag膜21における耐塩素性が向上し、塩素を原因としたAg膜21におけるAgの凝集を抑制でき、欠陥の発生をさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21の厚さが5nm以上20nm以下の範囲内である場合には、膜の耐久性を十分に確保することができるとともに、製造コストが増加することを抑制できる。
さらに、本実施形態の積層構造体10において、Ag膜21の厚さが5nm以上20nm以下の範囲内である場合には、膜の耐久性を十分に確保することができるとともに、製造コストが増加することを抑制できる。
本実施形態のスパッタリングターゲットにおいては、金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物で構成されているので、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物を成膜することができる。
また、酸化物で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時の放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
また、酸化物で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時の放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされている場合であっても、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜27を成膜することが可能となる。
また、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいては、ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分されたZn合金で構成されているので、スパッタ時に酸素を導入することにより、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物を成膜することができる。
また、Zn合金で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時の放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
また、Zn合金で構成されているので、ターゲット組織中の抵抗値分布が均一となり、スパッタ時の放電が安定し、異常放電の発生を抑制することができる。
本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、さらに、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされている場合であっても、緻密なアモルファス(非晶質)構造の酸化物膜27を成膜することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ガラス基板に積層膜を成膜するものとして説明したが、これに限定されることはなく、樹脂基板や樹脂フィルム等に本実施形態である積層膜を成膜してもよい。
例えば、本実施形態では、ガラス基板に積層膜を成膜するものとして説明したが、これに限定されることはなく、樹脂基板や樹脂フィルム等に本実施形態である積層膜を成膜してもよい。
さらに、本実施形態では、Ag膜21と酸化物膜27との間に中間膜25を積層したものとして説明したが、これに限定されることはなく、Ag膜21の基材11と反対側に酸化物膜27が配置されており、この酸化物膜27がAg膜21のバリア膜として機能する構造であれば、その他の層構造に特に制限はない。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
<実施例1>
酸化物からなるスパッタリングターゲットを、以下のようにして製造した。
原料として、純度99.9mass%以上の各種酸化物粉(ZnO粉末、Al2O3粉末、SiO2粉末、TiO粉末、MgO粉末、MnO粉末、Fe3O4粉末、CoO粉末、NiO粉末、Ga2O3粉末、GeO2粉末、Nb2O5粉末、MoO粉末、WO3粉末、In2O3粉末、SnO2粉末、Ta2O5粉末、HfO2粉末、Y2O3粉末、CuO粉末)を用意した。用意した原料粉を秤量し、ボールミル装置により混合・粉砕して焼結原料粉を得た。
得られた混合粉(焼結原料粉)を、温度900℃、圧力350kgf/cm2の条件にて3時間ホットプレスを行い、焼結体を得た。
得られた焼結体を機械加工することにより、直径4インチ(101.6mm)、厚み6mmのスパッタリングターゲットを得た。
酸化物からなるスパッタリングターゲットを、以下のようにして製造した。
原料として、純度99.9mass%以上の各種酸化物粉(ZnO粉末、Al2O3粉末、SiO2粉末、TiO粉末、MgO粉末、MnO粉末、Fe3O4粉末、CoO粉末、NiO粉末、Ga2O3粉末、GeO2粉末、Nb2O5粉末、MoO粉末、WO3粉末、In2O3粉末、SnO2粉末、Ta2O5粉末、HfO2粉末、Y2O3粉末、CuO粉末)を用意した。用意した原料粉を秤量し、ボールミル装置により混合・粉砕して焼結原料粉を得た。
得られた混合粉(焼結原料粉)を、温度900℃、圧力350kgf/cm2の条件にて3時間ホットプレスを行い、焼結体を得た。
得られた焼結体を機械加工することにより、直径4インチ(101.6mm)、厚み6mmのスパッタリングターゲットを得た。
また、Zn合金からなるスパッタリングターゲットを、以下のようにして製造した。
原料として、純度99.9mass%以上の各種金属粉(Zn粉末、Al粉末、Si粉末、Ti粉末、Mg粉末、Mn粉末、Fe粉末、Co粉末、Ni粉末、Ga粉末、Ge粉末、Nb粉末、Mo粉末、W粉末、In粉末、Sn粉末、Ta粉末、Hf粉末、Y粉末、Cu粉末)を用意した。用意した原料粉を秤量し、ボールミル装置により混合・粉砕して焼結原料粉を得た。
得られた混合粉(焼結原料粉)を、温度380℃、圧力350kgf/cm2の条件にて3時間ホットプレスを行い、焼結体を得た。
得られた焼結体を機械加工することにより、直径4インチ(101.6mm)、厚み6mmのスパッタリングターゲットを得た。
原料として、純度99.9mass%以上の各種金属粉(Zn粉末、Al粉末、Si粉末、Ti粉末、Mg粉末、Mn粉末、Fe粉末、Co粉末、Ni粉末、Ga粉末、Ge粉末、Nb粉末、Mo粉末、W粉末、In粉末、Sn粉末、Ta粉末、Hf粉末、Y粉末、Cu粉末)を用意した。用意した原料粉を秤量し、ボールミル装置により混合・粉砕して焼結原料粉を得た。
得られた混合粉(焼結原料粉)を、温度380℃、圧力350kgf/cm2の条件にて3時間ホットプレスを行い、焼結体を得た。
得られた焼結体を機械加工することにより、直径4インチ(101.6mm)、厚み6mmのスパッタリングターゲットを得た。
得られたスパッタリングターゲットを用いて、以下の条件により、酸化物膜をスパッタ成膜した。
(酸化物からなるスパッタリングターゲットによる成膜条件)
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン98vol%+高純度酸素2vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン98vol%+高純度酸素2vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
(Zn合金からなるスパッタリングターゲットによる成膜条件)
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン75vol%+高純度酸素25vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン75vol%+高純度酸素25vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
上述のスパッタリングターゲット、および、酸化物膜について、以下の項目について評価した。
(組成)
スパッタリングターゲットの組成は、焼結体からサンプルを採取し、ICP発光分光分析法により分析した。評価結果を表1~3に示す。
また、酸化物膜の組成は、厚さ1000nmに成膜したものからサンプルを採取し、ICP発光分光分析法により分析した。その結果、スパッタリングターゲットの組成と同等であることを確認した。
スパッタリングターゲットの組成は、焼結体からサンプルを採取し、ICP発光分光分析法により分析した。評価結果を表1~3に示す。
また、酸化物膜の組成は、厚さ1000nmに成膜したものからサンプルを採取し、ICP発光分光分析法により分析した。その結果、スパッタリングターゲットの組成と同等であることを確認した。
(異常放電)
スパッタ装置内を5×10-5Paまで排気した後、Arガス圧:0.4Pa、投入電力:直流500W、ターゲット基板間距離:70mmの条件で予備スパッタとして1時間放電を実施したのち、本スパッタとして6時間連続放電を実施し、本スパッタ中の異常放電合計回数を計測した。異常放電の計測には、MKSインスツルメント社製DC電源(RPDG-50A) のアークカウント機能を用いた。
スパッタ装置内を5×10-5Paまで排気した後、Arガス圧:0.4Pa、投入電力:直流500W、ターゲット基板間距離:70mmの条件で予備スパッタとして1時間放電を実施したのち、本スパッタとして6時間連続放電を実施し、本スパッタ中の異常放電合計回数を計測した。異常放電の計測には、MKSインスツルメント社製DC電源(RPDG-50A) のアークカウント機能を用いた。
厚さ100nmの酸化膜について、分光光度計(株式会社日立ハイテクテクノロジーズ製U-4100)を用いて測定した。波長380nmから780nmの可視光における透過率および吸収率の平均値を表1-3に示した。なお、透過率の平均値は、1nm刻みで測定した380~780nmの透過率スペクトルデータの平均をとることで算出した。吸収率の平均値については、反射率スペクトルを取得した上で、
吸収率=100-(透過率+反射率)
として算出した。
吸収率=100-(透過率+反射率)
として算出した。
本発明例1-37、比較例1-6のスパッタリングターゲットにおいては、異常放電発生回数が10回未満であり、安定して成膜することができた。本発明例1-37、比較例1-6のスパッタリングターゲットは、いずれも酸化物相又は合金相の単相組織とされており、スパッタ面内で抵抗値が均一であったためと推測される。
また、本発明例1-37、比較例1-6のスパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物膜においては、可視光の吸収率は1%未満であり、酸化物相で構成されていることが確認された。
また、本発明例1-37、比較例1-6のスパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物膜においては、可視光の吸収率は1%未満であり、酸化物相で構成されていることが確認された。
<実施例2>
各種スパッタリングターゲットを用いて、基材の表面に積層膜を成膜し、表4~7に示す構造の積層構造体を作製した。
4インチサイズの各種組成のスパッタリングターゲットを無酸素銅のバッキングプレートにボンディングし、これをスパッタ装置に装着して、以下の条件でスパッタ成膜を実施した。ここで、酸化物膜の成膜条件は、実施例1に示したものとした。また、スパッタ成膜は、同一のチャンバー内で連続的に行った。
なお、電源としては、例えばDCの他に高周波(RF)電源、中周波(MF)電源又は交流(AC)電源を用いることが可能である。
各種スパッタリングターゲットを用いて、基材の表面に積層膜を成膜し、表4~7に示す構造の積層構造体を作製した。
4インチサイズの各種組成のスパッタリングターゲットを無酸素銅のバッキングプレートにボンディングし、これをスパッタ装置に装着して、以下の条件でスパッタ成膜を実施した。ここで、酸化物膜の成膜条件は、実施例1に示したものとした。また、スパッタ成膜は、同一のチャンバー内で連続的に行った。
なお、電源としては、例えばDCの他に高周波(RF)電源、中周波(MF)電源又は交流(AC)電源を用いることが可能である。
成膜する基板(基材)としては、例えばガラス基板や樹脂フィルム、樹脂基板等を用いることが可能である。本実施例では、ガラス基板(コーニング社製のEAGLE XG)を用いている。
成膜時における基板の動きの方式は、例えば静止対向式や基板搬送式(インライン式)を用いることができる。本実施例では基板搬送式を用いている。
成膜時における基板の動きの方式は、例えば静止対向式や基板搬送式(インライン式)を用いることができる。本実施例では基板搬送式を用いている。
(Ag膜の成膜条件)
スパッタリングターゲット:Ag又はAg合金
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:100W
スパッタリングターゲット:Ag又はAg合金
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:100W
(GaTiZn酸化物膜の成膜条件)
スパッタリングターゲット:GaTiZn酸化物
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン98vol%+高純度酸素2vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
スパッタリングターゲット:GaTiZn酸化物
成膜開始真空度:7.0×10-4Pa以下
スパッタガス:高純度アルゴン98vol%+高純度酸素2vol%
チャンバー内スパッタガス圧力:0.4Pa
直流電力:200W
上述のようにして得られた積層構造体について、光学特性、および、耐塩水性を評価した。
(積層構造体の光学特性)
積層構造体の透過率を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U-4100)を用いて測定した。表には波長380nmから780nmの可視光における透過率の平均値を記載した。なお、透過率の平均値は、1nm刻みで測定した380~780nmの透過率スペクトルデータの平均をとることで算出した。吸収率の平均値については、反射率スペクトルを取得した上で、
吸収率=100-(透過率+反射率)
として算出した。
積層構造体の透過率を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U-4100)を用いて測定した。表には波長380nmから780nmの可視光における透過率の平均値を記載した。なお、透過率の平均値は、1nm刻みで測定した380~780nmの透過率スペクトルデータの平均をとることで算出した。吸収率の平均値については、反射率スペクトルを取得した上で、
吸収率=100-(透過率+反射率)
として算出した。
(耐塩水性評価)
耐塩水性評価として、積層構造体の表面に濃度5mass%のNaCl水溶液をスプレー噴霧器にて噴霧し、その後恒温恒湿槽内で温度85℃、相対湿度85%の環境下で168時間保持したのち、取り出して純水で洗浄、乾燥したサンプルについて光学顕微鏡(250倍)で観察し、欠陥発生の程度を評価した。
図2(a)に示すようにほとんど欠陥が確認されないものを「◎」、図2(b)に示すように欠陥が分散しているものを「〇」、図2(c)に示すように全面に欠陥が確認されたものを「×」と評価した。
耐塩水性評価として、積層構造体の表面に濃度5mass%のNaCl水溶液をスプレー噴霧器にて噴霧し、その後恒温恒湿槽内で温度85℃、相対湿度85%の環境下で168時間保持したのち、取り出して純水で洗浄、乾燥したサンプルについて光学顕微鏡(250倍)で観察し、欠陥発生の程度を評価した。
図2(a)に示すようにほとんど欠陥が確認されないものを「◎」、図2(b)に示すように欠陥が分散しているものを「〇」、図2(c)に示すように全面に欠陥が確認されたものを「×」と評価した。
Alを含有しない比較例1のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例101の積層構造体、Siを含有しない比較例2のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例102の積層構造体、Tiを含有しない比較例3のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例103の積層構造体においては、耐塩水性が不十分であった。
AlをZnよりも多く含む比較例4のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例104の積層構造体、TiをZnよりも多く含む比較例5のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例105の積層構造体、SiをZnよりも多く含む比較例6のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜した比較例106の積層構造体においては、耐塩水性が不十分であった。
本発明例2のスパッタリングターゲットを用いて厚さ5nmの酸化物膜を成膜した比較例107の積層構造体においては、耐塩水性が不十分であった。
これに対して、本発明例1~38のスパッタリングターゲットを用いて、Ag膜の上に厚さ20nm以上の酸化物膜を成膜した本発明例101~154においては、耐塩水性試験が「〇」又は「◎」となった。なお、本発明例101、012においては、Al,Ti,Siの含有量が比較的少ない本発明例1のスパッタリングターゲットを用いて酸化物膜を成膜したため、耐塩水性試験が「〇」となった。
また、本発明例101~153、比較例101~107の積層構造体においては、いずれも可視光の平均透過率が80%以上を超えていた。
また、本発明例101~153、比較例101~107の積層構造体においては、いずれも可視光の平均透過率が80%以上を超えていた。
以上のことから、本発明例によれば、塩素や水分の侵入を抑制することが可能な酸化物膜、この酸化物膜を備えた積層構造体、酸化物膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットを提供可能であることが確認された。
10 積層構造体
11 基材
20 積層膜
21 Ag膜
27 酸化物膜
11 基材
20 積層膜
21 Ag膜
27 酸化物膜
Claims (12)
- 金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなることを特徴とする酸化物膜。
- さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、
全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物膜。 - 基材と、基材の表面に成膜された積層膜と、を備える積層構造体であって、
前記積層膜は、Ag又はAg合金からなるAg膜と、このAg膜の前記基材とは反対側に配置された請求項1または請求項2に記載の酸化物膜とを有しており、
前記酸化物膜の膜厚が20nm以上とされていることを特徴とする積層構造体。 - 前記Ag膜と前記基材との間に、金属成分としてGaとTiとZnを含むGaTiZn酸化物膜が配設されており、前記Ag膜と前記GaTiZn酸化物膜とが隣接していることを特徴とする請求項3に記載の積層構造体。
- 前記GaTiZn酸化物膜は、全金属成分量に対して、Gaが0.5原子%以上20.0原子%以下、Tiが0.5原子%以上20.0原子%以下、残部がZnと不可避不純物からなる酸化物で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の積層構造体。
- 前記GaTiZn酸化物膜の厚さが5nm以上であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の積層構造体。
- 前記Ag膜は、In,Sn,Cu,Ge,Sb,Au,Pd,Mg,Ca,Tiのいずれかの元素の少なくとも1種以上を合計で0.01原子%以上20.00原子%以下の範囲で含有し、残部がAgと不可避不純物とした組成であることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の積層構造体。
- 前記Ag膜の厚さが5nm以上20nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の積層構造体。
- 金属成分としてZnとAlとSiとTiを含み、Znが前記金属成分の主成分とされた酸化物からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- さらに、金属成分として、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、
全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていることを特徴とする請求項9に記載のスパッタリングターゲット。 - ZnとAlとSiとTiを含み、Znが主成分とされたZn合金からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- さらに、Mg,Mn,Fe,Co,Ni,Ga,Ge,Nb,Mo,W,In,Sn,Ta,Hf,Y,Cuから選ばれる1種または2種以上からなるA群金属元素を含有し、
全金属成分量に対する前記A群金属元素の合計含有量が10.0原子%以下とされていることを特徴とする請求項11に記載のスパッタリングターゲット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020144624A JP2022039537A (ja) | 2020-08-28 | 2020-08-28 | 酸化物膜、積層構造体、および、スパッタリングターゲット |
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JP2022039537A true JP2022039537A (ja) | 2022-03-10 |
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JP2020144624A Pending JP2022039537A (ja) | 2020-08-28 | 2020-08-28 | 酸化物膜、積層構造体、および、スパッタリングターゲット |
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- 2020-08-28 JP JP2020144624A patent/JP2022039537A/ja active Pending
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