JP2022035192A - ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法 Download PDF

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【課題】プライマーとの密着性が良好な鋼面を形成し、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管を提供する。【解決手段】一対の搬送ロールを連続的に配置した設備で回転させながら搬送してブラスト処理を行う際、ブラスト処理により同一鋼面への一回当たりの研掃材投射密度が350kg/m2未満のブラスト処理を複数回行う事によって、鋼面に形成したへげの長さが100μm以下とし、加えて鋼面の除錆度を維持し、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管が得られる。【選択図】図2

Description

本発明は、パイプラインや土木用途等に使用される表面処理層、プライマー層、変性ポリオレフィン樹脂層、ポリオレフィン樹脂層から構成されるポリオレフィン被覆鋼管の製造方法、詳しくはブラスト処理方法に関するものである。
ポリオレフィン被覆鋼材は、長期の防食性が優れていることから、鋼管、鋼管杭、鋼矢板等に利用されている。また、海底、極寒冷地、熱帯での使用を前提とした原油、重質油、天然ガスを輸送するパイプラインにも、ポリオレフィン被覆鋼管が使われている。塗膜の耐剥離性能には鋼材とプライマーの接着性が影響するため、被覆する際の鋼材表面状態が重要となる。通常、被覆前の前処理としてブラスト処理を行い、鋼材表面の異物を除去し、表面に凹凸を形成させアンカー効果によりプライマーの密着力を向上させる。ブラスト処理方法には羽根車の遠心力によるインペラーブラスト法、圧縮空気を用いるエアーブラスト法、水圧によるウェットブラスト法等が挙げられるが、特にインペラーブラスト法は鋼管に対する処理効率が高いため多用される。
ブラストでは「へげ」と呼ばれるかさぶたの様な薄片形状部を形成することがあり、これは容易に鋼面から脱落するため、塗膜剥離の起点となる。図1にへげの一例を示す。エアーブラスト法やウェットブラスト法では投射角度調整が容易であるため、投射角度を垂直とし、へげの形成を抑制できる。しかし処理効率がインペラーブラスト法に比べ圧倒的に低いため、工場での連続生産には不向きである。
一方インペラーブラスト法では、投射量及び投射幅が大きくかつ種々の角度で研掃材が鋼面に投射されるため処理効率には優れているが、へげの抑制ができる垂直方向のみの投射角度とならず、結果、へげが発生しやすい。
この様に鋼管のインペラーブラスト処理方法においてへげを抑制し、プライマーとの密着性が良好な鋼面を得ることは通常困難である。
特許文献1、2ではブラスト後の鋼面に存在する粉じんを除去したポリエチレン被覆鋼管が提案されている。しかしへげは粉じんに比べ除去が非常に困難である。
特開2017-043089号公報 特開2017-043090号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、プライマーとの密着性が良好な鋼面を形成し、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管の製造方法を得ることを目的とする。
耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管を得るには鋼面のへげを可能な限り抑制する必要がある。へげは同一箇所を同一方向から長時間研掃材が投射されることで大きく成長する。そのため本発明者らは同一鋼面に連続して投射される研掃材投射密度に着目し、へげの抑制方法と塗膜剥離について鋭意検討を行った。図2に研掃材投射密度とへげ長さの関係のグラフを示す。ここで研掃材投射密度は鋼面に連続して投射される研掃材の鋼面単位面積当たりの投射量を表す。その結果、同一鋼面への投射密度を小さくすることでへげの成長を抑止できることが判明した。研掃材投射密度が350kg/m未満のブラスト処理を行えば、へげの長さを100μm以下に抑制することができ、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管が得られることを見出した。へげ長さが100μmを超えると剥離の起点となる部分が大きいため、へげ上に塗装されたプライマーがへげと共に容易に剥離する。
さらに、前記実験結果と同様に被覆鋼管の製造ラインにおいて検討した結果、次の(1)式を満足する条件でブラスト処理を行うと、へげの長さを100μm以下に抑制できることを見出した。
A<350 ・・・(1)
A:研掃材投射密度(kg/m
A=W/(V・cosθ・L)
W:研掃材投射量(kg/min)
:鋼管回転速度(m/min)
θ:スキュー角(度)
L:鋼管の長さ方向の研掃材投射幅(m)
以下(1)式について説明する。
プライマーとの密着性が良好な鋼面を得るためには、鋼面に大きなへげを形成させないブラスト処理方法が必要である。一般的には研掃材を鋼面に対し垂直方向から投射することでへげ形成を抑制するが、インペラーブラストでは一定の投射角度に統一することは困難である。そこで本発明者らはへげの成長過程に着目し検討した結果、被覆鋼管の製造ラインにおいても、へげの成長は研掃材投射密度Aが最も影響することを見出した。
図3に鋼管のブラスト処理方法の上面図を示す。一般的な鋼管被覆における鋼管1のブラスト処理方法は、一対の搬送ロール2が搬送方向に対し角度(スキュー角θ)を有するように複数配置され、鋼管を回転方向7に回転させながら鋼管進行方向8に進行させ、ブラストブース内を通過させることで行う。インペラー4は鋼管1の進行方向と平行に回転し、鋼管の長さ方向に一定の幅Lを有する投射パターン5を形成する。
従って、鋼管の場合には、研掃材投射量W、鋼管回転速度V、スキュー角θ、鋼管の長さ方向の研掃材投射幅Lを調整することによって研掃材投射密度Aをコントロールし、へげの成長を抑制する。その結果へげ起因の耐剥離性低下を抑止できる。
さらに、本発明者らは鋼面の除錆度に着目した。一般的にポリオレフィン被覆鋼材では耐剥離性の観点からISO8501-1で定義されるSa2 1/2以上の除錆度が求められる。上記のように研掃材投射密度を低下させると、研掃能力の不足により充分な除錆度が得られない懸念がある。鋼面の研掃は研掃材投射密度と同一箇所への研掃回数に依存すると考えた。研掃材投射幅よりも鋼管が一回転して進む距離(ピッチ)が小さい場合は同一箇所に複数回投射されることになり、その研掃回数は研掃材投射幅をピッチで除した値となる。これらと除錆度の関係を調査した。図4に研掃材投射密度と研掃回数の積と除錆度との関係のグラフを示す。その結果、研掃材投射密度と研掃回数の積が300{(kg/m)・回}以上あるときは、十分な除錆によりSa2 1/2以上を確保し、耐剥離性に優れた鋼面が得られることを見出した。
研掃材投射密度Aと研掃回数nの積が300{(kg/m)・回}未満では鋼面に投射される研掃材の総量が少なく、その結果十分な除錆がされず耐剥離性(冷熱サイクル試験に対する耐剥離性)が劣る。
以上の範囲を、研掃材投射密度Aと研掃回数nを用いて示すと次の(2)式で表すことができる。
300≦A・n ・・・(2)
n:研掃回数(回)
よって(1)式及び(2)式を満足する投射条件でブラスト処理を行うことでへげの長さを100μm以下に抑制し、かつSa2 1/2以上を確保する事によって、さらに耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管が得られる。
すなわち本発明は同一鋼面への研掃材投射密度をコントロールすることでへげの成長を抑制し、プライマーとの密着性が良好な鋼面を形成する、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管の製造方法を提供するものである。
以上述べたように、研掃材投射密度Aをコントロールすることによってへげの成長を抑制し、耐剥離性に優れたポリオレフィン被覆鋼管が得られる。
鋼材のへげの一例である。 研掃材投射密度とへげ長さの関係のグラフである。 鋼管のブラスト処理方法の上面図である。 研掃材投射密度と研掃回数の積と除錆度との関係のグラフである。
以下、本発明につき詳細に説明を行なう。被覆構成はブラストした鋼管に対し、プライマー層、変性ポリオレフィン樹脂層、ポリオレフィン層を順次積層したものとする。鋼管とプライマー層の間に表面処理層を設けることもできる。
本発明に使用する鋼管としては普通鋼、あるいは高合金鋼など、どのような鋼種でも適用可能である。なお、従来重防食被覆が適用されていた鋼管、また、海洋構造物等で使用される鋼管杭、鋼管矢板等にも適用可能である。
ブラスト処理における研掃材の投射方法は羽根車の遠心力によるインペラーブラスト法とする。
ブラスト処理で使用する研掃材の材質、粒径、形状については特に指定はないが、JIS Z 0311に規定される「ブラスト処理用金属系研削材」を用いることが望ましい。また研掃材の硬度は対象鋼材よりも硬いものとすることで錆やスケールの除去が効率よく行うことができる。
ブラスト処理時の鋼管の搬送方法は鋼管を周方向に回転させながら搬送する方式であり、搬送方向に対し角度(スキュー角)を有する一対の搬送ロール上を回転させながら搬送する方式とする。ブラスト処理における研掃材投射量、鋼管回転速度、スキュー角、投射幅、研掃回数は請求項を満足する条件であれば特に制限はない。
プライマー層には耐熱性に優れ、高温環境でも高い防食性を発揮する粉体エポキシ樹脂プライマーを使用するのが好ましい。
粉体エポキシ樹脂プライマーの塗布前に鋼材を加熱する必要がある。加熱温度範囲は160~260℃である。160℃未満では粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応が不十分となり、プライマー層自体の破壊が起きる可能性がある。加熱温度が260℃を超える場合は、形成されたプライマー層の劣化が始まり密着性、防食性が低下する。鋼材の加熱方法は高周波誘導加熱、遠赤外加熱、ガス直火加熱などの方式を適用することができる。
プライマー層に使用する粉体エポキシ樹脂プライマーの材料成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を単独、もしくは混合して使用する。更に高温特性が要求される場合、多官能性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂やハロゲン化樹脂を上記のビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と組み合わせて用いることが出来る。エポキシ樹脂硬化剤はジシアンアミド系、芳香族ポリアミン系、フェノール系硬化剤等が使用でき、中でもフェノール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤を用いることで低温衝撃性に優れた塗膜が得られる。また、硬化促進剤、レベリング剤、流動化助剤、脱気剤等の添加剤や助剤を含有してもよい。
粉体エポキシ樹脂プライマーのガラス転移温度(Tg)は80℃以上、好ましくは100℃以上である。Tgが80℃より低いと操業温度が高温である時に耐食性が低下する。
粉体エポキシ樹脂プライマーは静電粉体塗装や流動浸漬塗装等の一般的な粉体塗装方法で塗布することができる。膜厚は50~1000μmの範囲で塗布する。膜厚が50μmより薄い場合にはピンホールが多数発生する。一方、1000μmを超える厚膜塗装では低温での耐衝撃性等の特性が低下しやすい。
変性ポリオレフィン樹脂層に使用する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の公知のポリオレフィン樹脂を、酸無水物でグラフト変性したもの、あるいは、その変性物をポリオレフィン樹脂で適宜希釈したものである。中でも無水マレイン酸の変性物が好ましく、プライマーとの接着に優れ、被覆条件に依らず高密着力が得られる。
グラフト変性率は0.1%~3%である。0.1%より少ない場合はプライマー層との化学結合が少なく、密着力に乏しい。対して3%を超える場合では変性の過程で低分子量成分が増大し、接着界面に拡散し接着力が低下する。グラフト変性率の測定は赤外分光法にて行う。本発明で用いることができる変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)(ポリエチレン:190℃、ポリプロピレン:230℃、荷重2.16kg)は、0.1~10g/10分、より好ましくは0.1~2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
接着剤の被覆方法としては、押出機のダイスを用いて加熱溶融した変性ポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形した変性ポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕した変性ポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融し被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、0.05~1mmの膜厚を有する変性ポリオレフィン樹脂層を形成する。膜厚が0.05mm未満ではプライマー層との溶融濡れが悪く、接着力が不十分である。また、1mmを越えると経済性の観点から好ましくない。
最外層のポリオレフィン樹脂層に使用する材料としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-プロピレン共重合体等の従来公知のポリオレフィン樹脂等であっても、またこれらのブレンド樹脂であってもよい。
本発明で用いることができるポリオレフィン樹脂のMFR(ポリエチレン:190℃、ポリプロピレン:230℃、荷重2.16kg)は、0.1~5g/10分、より好ましくは0.1~2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
最外層のポリオレフィン樹脂層には、ポリオレフィン樹脂以外の成分としては、耐熱性、耐候性対策としてカーボンブラック又はその他の着色顔料、充填強化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を任意の組み合わせで添加することができる。
ポリオレフィン樹脂の被覆方法としては、接着剤と同様に押出機のダイスを用いて加熱溶融したポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形したポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕したポリオレフィン樹脂を粉体塗装し溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、1mm~6mmの膜厚を有するポリオレフィン樹脂層を形成する。膜厚が1mmより薄いと、防食性、耐衝撃性が劣るため好ましくない。また膜厚が6mmを超えると寒暖差による塗膜の収縮により、端部からポリオレフィン樹脂層が剥離しやすいため好ましくない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
鋼管として、直径609.6mm、厚さ6.4mm、長さ12mのUO鋼管を用意した。この鋼管を搬送ロール上でインペラーブラストによりブラスト処理を行った。使用した研掃材は粒径0.5mmのスチールショット(IKKショット(株)社製)である。
実施例1~10ではブラスト時の投射量W、鋼管回転速度V、スキュー角θ、投射幅L、研掃回数n(ラップ数)を請求項の範囲内で変化させ、ブラスト処理を行った。比較例1~2では請求項の範囲外の条件でブラスト処理を行った。
各条件でブラスト処理を行った後、鋼管を200℃に加熱し、粉体エポキシプライマー200μm(Basepox PE50-1081:Arsonsisi社製)を静電粉体塗装し、予め200℃に加熱した無水マレイン酸変性ポリエチレン200μm(ME0420:Borouge社製)、高密度ポリエチレン3mm(HE3450:Borouge社製)を順に被覆した。被覆鋼管は150×100mmのサイズに切断し試験材とした。評価試験はへげ長さ測定と冷熱サイクル試験を実施した。
〔へげ長さ測定〕
上記被覆鋼管サンプルにおいて、試験材の断面を200倍で観察し、断面方向に連続して3視野中に存在する10μm以上のへげの長さの平均値をへげ長さとした。
〔耐剥離性(耐冷熱サイクル性)の評価〕(へげと除錆度の評価)
上記被覆鋼管サンプルにおいて、四辺の外側から10mmの被覆を切断・削除して被覆層端部を露出させ、-30℃で1時間、60℃で1時間保持を100回繰り返した後、被覆層をタガネではぎ取り、プライマーの被覆層端部からの剥離距離(mm)を測定し「冷熱サイクル」欄に記載した。
本発明の実施例及び比較例の結果を表1に示す。
Figure 2022035192000002
実施例1~10は(1)式を満たし、へげ長さが100μm以下であり、冷熱サイクル試験での剥離距離も比較例に比して小さく、耐剥離性に優れている。
特に実施例1~9は(1)式とともに(2)式を満たし除錆度も高いため、比較例に比して剥離距離は非常に小さく好ましい。
比較例1、2は(1)式を満足しないため、へげが長くなり冷熱サイクルによる剥離距離が大きく増大した。
1 鋼管
2 搬送ロール
4 インペラー
5 投射パターン
L 鋼管の長さ方向の研掃材投射幅
θ スキュー角
7 鋼管回転方向
8 鋼管進行方向

Claims (2)

  1. 鋼管外面を塗装するに先立ち行われる鋼面のインペラーブラスト処理において、研掃材投射密度Aが(1)式を満足することを特徴とするポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
    A<350 ・・・(1)
    A:研掃材投射密度(kg/m
    A=W/(V・cosθ・L)
    W:研掃材投射量(kg/min)
    :鋼管回転速度(m/min)
    θ:スキュー角(度)
    L:研掃材投射幅(m)(鋼管の長さ方向)
  2. 鋼面のインペラーブラスト処理について、研掃材投射密度Aと研掃回数nの積が(2)式を満足することを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
    300≦A・n ・・・(2)
    n:研掃回数(回)
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