JP2022034397A - スタビライザシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両に搭載されるスタビライザシステムの実用性を向上させる。【解決手段】 スタビライザバー16,60と、そのスタビライザバーによる車体のロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える切換機構42,80とを有するスタビライザ装置12,14とを備えたスタビライザシステムを、車両が旋回しているときにスタビライザ装置のロール抑制効果を有効化するとともに、車両の旋回中において、車体の横加速度がある程度小さくなったときに、一時的に、スタビライザ装置のロール抑制効果を無効化するように構成する。車体が比較的大きく傾いた状態でスタビライザ装置のロール抑制効果を有効化したとしても、車両が直進状態になってロール抑制効果が無効化されるときの車体の姿勢変化を小さく抑えることができる。【選択図】 図1
Description
本発明は、車両に搭載されるスタビライザシステムに関する。
スタビライザシステムは、スタビライザバーを主要構成要素とするスタビライザ装置を備えており、例えば、下記特許文献に記載されたスタビライザシステムでは、スタビライザ装置を液圧式ロータリアクチュエータ若しくは液圧式シリンダを含んで構成し、切換機構としての電磁式開閉弁の作動をコントローラによって制御することで、スタビライザバーによる車体のロールの抑制効果を制御している。
スタビライザシステムは、車両の旋回時における車体のロールを抑制することを目的とするシステムであり、上記特許文献のスタビライザシステムでは、コントローラは、車両の旋回において、スタビライザバーによる車体のロールの抑制効果を制御している。しかしながら、スタビライザ装置のロール抑制効果を有効化する時点で、既に車体が傾いていることも予想される。車体がある程度大きく傾いた状態でロール抑制効果を有効化した場合、車両が直進状態に戻ってロール抑制効果を無効化したときに、車体が大きく挙動する。詳しく言えば、例えば、ロール抑制効果を有効化する時点での車体の傾きが、無効化させたときに、一気に戻ってしまうのである。このような車体姿勢の変化は、乗員の乗り心地を害することにも繋がり、その変化の抑制によって、スタビライザシステムの実用性は向上する。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いスタビライザシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のスタビライザシステムは、
車両に搭載されるスタビライザシステムであって、
スタビライザバーと、そのスタビライザバーによる車体のロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える切換機構とを有するスタビライザ装置と、
そのスタビライザ装置の前記切換機構を制御して、車両が旋回しているときに当該スタビライザ装置のロール抑制効果を有効化するコントローラと
を備え、
そのコントローラが、
車両の旋回中において、車体の横加速度が、設定横加速度未満となった場合、若しくは、前記スタビライザ装置のロール抑制効果が有効化されたときの車体の横加速度である有効化時横加速度から設定横加速度差を超えて小さくなった場合に、一時的に、前記スタビライザ装置のロール抑制効果を無効化するように構成される。
車両に搭載されるスタビライザシステムであって、
スタビライザバーと、そのスタビライザバーによる車体のロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える切換機構とを有するスタビライザ装置と、
そのスタビライザ装置の前記切換機構を制御して、車両が旋回しているときに当該スタビライザ装置のロール抑制効果を有効化するコントローラと
を備え、
そのコントローラが、
車両の旋回中において、車体の横加速度が、設定横加速度未満となった場合、若しくは、前記スタビライザ装置のロール抑制効果が有効化されたときの車体の横加速度である有効化時横加速度から設定横加速度差を超えて小さくなった場合に、一時的に、前記スタビライザ装置のロール抑制効果を無効化するように構成される。
本発明のスタビライザシステムによれば、車体が比較的大きく傾いた状態でスタビライザ装置のロール抑制効果を有効化したとしても、車両が直進状態に至る前に、詳しくは、車両の旋回中において車体の横加速度がある程度小さくなったときに、ロール抑制効果の有効化の時点での車体の傾きが、ある程度解消される。そのため、車両が直進状態になってロール抑制効果が無効化されるときの車体の姿勢変化が小さく抑えることが可能となる。つまり、車両が直進状態に至るときの車体の挙動を小さくすることができるのである。ちなみに、旋回中における一時的なロール抑制効果の無効化は、一旋回中に、1度だけ行ってもよく、段階的に複数回行ってもよい。
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例であるスタビライザシステムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
[1]スタビライザシステムの構成
実施例のスタビライザシステムは、図1に模式的に示すように、車両の左右の前輪10FL,10FRに対して搭載された前輪側スタビライザ装置である第1スタビライザ装置12と、車両の左右の後輪10RL,10RRに対して搭載された後輪側スタビライザ装置である第2スタビライザ装置14とを含んで構成されている。なお、以下の説明において、左右の前輪10FL,10FRのうちの1つを、前輪10Fと、左右の後輪10RL,10RRのうちの1つを、後輪10Rと呼び、左右の前輪10FL,10FR,左右の後輪10RL,10RRのうちの1つを、前後左右を区別する必要がないときには、車輪10と呼ぶ場合があることとする。ちなみに、左右の前輪10Fが、当該車両の旋回において転舵される転舵輪である。
実施例のスタビライザシステムは、図1に模式的に示すように、車両の左右の前輪10FL,10FRに対して搭載された前輪側スタビライザ装置である第1スタビライザ装置12と、車両の左右の後輪10RL,10RRに対して搭載された後輪側スタビライザ装置である第2スタビライザ装置14とを含んで構成されている。なお、以下の説明において、左右の前輪10FL,10FRのうちの1つを、前輪10Fと、左右の後輪10RL,10RRのうちの1つを、後輪10Rと呼び、左右の前輪10FL,10FR,左右の後輪10RL,10RRのうちの1つを、前後左右を区別する必要がないときには、車輪10と呼ぶ場合があることとする。ちなみに、左右の前輪10Fが、当該車両の旋回において転舵される転舵輪である。
(a)第1スタビライザ装置の構成
前輪10FL,10FRの各々は、独立懸架式のサスペンション装置であるダブルウィッシュボーン型のサスペンション装置によって懸架されている。第1スタビライザ装置12は、スタビライザバー16を、主要構成要素として、備えている。スタビライザバー16は、互いに一体化された中央のトーションバー部16tと左右のアーム部16aL,16aRとを含んで構成されており、左右のアーム部16aL,16aRの延びる方向は、トーションバー部16tの延びる方向である車幅方向と交差している。スタビライザバー16の両端、すなわち、左右のアーム部16aL,16aRの各々の先端は、左右のロアアーム18L,18Rに、それぞれ、リンクロッド20L,20Rを介して連結されている。
前輪10FL,10FRの各々は、独立懸架式のサスペンション装置であるダブルウィッシュボーン型のサスペンション装置によって懸架されている。第1スタビライザ装置12は、スタビライザバー16を、主要構成要素として、備えている。スタビライザバー16は、互いに一体化された中央のトーションバー部16tと左右のアーム部16aL,16aRとを含んで構成されており、左右のアーム部16aL,16aRの延びる方向は、トーションバー部16tの延びる方向である車幅方向と交差している。スタビライザバー16の両端、すなわち、左右のアーム部16aL,16aRの各々の先端は、左右のロアアーム18L,18Rに、それぞれ、リンクロッド20L,20Rを介して連結されている。
ちなみに、ロアアーム18L,18Rは、左右の前輪10Fをそれぞれが保持して、その保持した前輪10Fとともに車体に対して上下動する1対の車輪保持部として機能する。また、ロアアーム18L,18Rの各々には、図示を省略しているが、一端が車体のマウント部に支持されたサスペンションスプリングおよびショックアブソーバのそれぞれの他端が連結されている。なお、アーム部16aL,16aR,ロアアーム18L,18R等、符号に添え字L,Rが付されている左右1対の構成要素については、それら左右1対のうちの1つを、左右を区別する必要がないときには、アーム部16a,ロアアーム18等と呼ぶ場合があることとする。
後に詳しく説明するが、スタビライザバー16のトーションバー部16tの車幅方向の中央には、被保持部16hが設けられており、スタビライザバー16は、被保持部16hにおいて、ホルダ22によって、車体の一部(図では、車体の一部を網掛けで示している)24に保持させられている。ホルダ22は、図2(a)に示すように、被保持部用ブッシュ26を含んで構成されている。被保持部用ブッシュ26は、外筒26oと、外筒26oとスタビライザバー16のトーションバー部16tとの間に介装されたゴム弾性体26gとを含んで構成されており、スタビライザバー16は、被保持部16hを中心とした回動(図1に白抜き矢印でしめす)が許容されている。なお、被保持部用ブッシュ26は、スタビライザバー16のトーションバー部16tの軸線まわりの回転、つまり、捩じりを許容している。
また、第1スタビライザ装置12は、1対のシリンダ28L,28Rを備えている。1対のシリンダ28L,28Rの各々は、ハウジング28hと、ハウジング28h内に配設されたピストン28pと、基端部がピストン28pに連結されて先端部(下端部)が下方に向かってハウジング28hから延び出すピストンロッド28rとを有している。1対のシリンダ28L,28Rの各々のハウジング28hは、車体の一部24に、固定的に連結され、1対のシリンダ28L,28Rの各々のピストンロッド28rの先端部は、スタビライザバー16のトーションバー部16tの左右に設けられた1対の被支持部16sL,16sRの対応するものと、サポート30を介して連結されている。
サポート30は、図2(b)に示すように、被支持部用ブッシュ32を含んで構成されている。被支持部用ブッシュ32は、外筒32oと、外筒32oとスタビライザバー16のトーションバー部16tとの間に介装されたゴム弾性体32gとを含んで構成されている。なお、被支持部用ブッシュ32は、被保持部用ブッシュ26と同様に、スタビライザバー16のトーションバー部16tの軸線まわりの回転、つまり、捩じりを許容している。
ちなみに、図2(a)と図2(b)とを比較して解るように、被支持部用ブッシュ32のゴム弾性体32gよりも、被保持部用ブッシュ26のゴム弾性体26gの方が厚くされている。ゴム弾性体32g,ゴム弾性体26gは、ともに同じ素材のものであるため、上下方向のばね定数が、被支持部用ブッシュ32よりも被保持部用ブッシュ26の方が小さくされている。つまり、簡単に言えば、被保持部用ブッシュ26が、被支持部用ブッシュ32よりも柔らかくされているのである。したがって、スタビライザバー16は、被支持部16sL,16sRにおいて、しっかりと支持されるとともに、被保持部16hを中心とした回動に対する抵抗が比較的小さなものとされているのである。
1対のシリンダ28L,28Rの各々は、図1に白抜き矢印で示すように、スタビライザバー16のトーションバー部16tの左右に設けられた1対の被支持部16sL,16sRの対応するものの上下動によって伸縮可能とされ、ハウジング28hの内部は、ピストン28pによって、その伸縮によって容積が変動する2つの液室である上室28cUと下室28cLとに区画されている。詳しく言えば、1対のシリンダ28L,28Rの各々は、その各々が伸長する際、すなわち、対応する前輪10Fがリバウンド動作する際に容積が増大し、その各々が収縮する際、すなわち、対応する前輪10Fがバウンド動作する際)に容積が減少する第1液室である上室28cUと、その各々が伸長する際に容積が減少し収縮する際に容積が増大する第2液室である下室28cLとを有しているのである。
第1スタビライザ装置12は、シリンダ28Lの上室28cUとシリンダ28Rの下室28cLとを連通させるための第1連通路34と、シリンダ28Lの下室28cLとシリンダ28Rの上室28cUをと連通させるための第2連通路36とを備えている。また、第1スタビライザ装置12は、第1連通路34と第2連通路36とを相互に連通させるための通路間連通路38を備え、さらに、その通路間連通路38に配設された開閉弁40を備えている。開閉弁40は、励磁されることによって開弁状態となる常閉型の電磁弁であり、通路間連通路38の開通と遮断とを切り換える。開閉弁40が開弁状態とされることで、第1連通路34と第2連通路36とが相互に連通する通路間連通状態が実現され、開閉弁40が閉弁状態とされることで、第1連通路34と第2連通路36とが連通しない通路間非連通状態が実現される。
換言すれば、第1スタビライザ装置12は、第1連通路34,第2連通路36をそれぞれクロス配管とし、それぞれが、そのクロス配管によって接続された一方のシリンダ28の上室28cUと他方のシリンダ28の下室cLとが接続された2つの液圧系統を有しており、また、それら2つの液圧系統の互いの連通に関して、通路間連通路38と開閉弁40とを含んで構成される切換機構、すなわち、通路間連通状態と通路間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構42を備えているのである。
詳しい説明は省略するが、第1スタビライザ装置12は、2つの液圧系統の少なくとも一方、詳しくは、第1連通路34と第2連通路36のとのそれぞれに対して、作動液の流出入を許容する機構として、弁機構44を備えている。弁機構44は、第1スタビライザ装置12の温度変化に起因する作動液の体積変化に伴って、第1連通路34と第2連通路36との両方に対する作動液の流出入を許容する。この作動液の流出入の機能を果たすために、弁機構44は、装置間連通路46を介して、後述する第2スタビライザ装置14が備えるアキュムレータ48に接続されている。また、弁機構44には、第1スタビライザ装置12に作動液を注入するための注入ポート50が設けられている。
当該スタビライザシステムは、第1スタビライザ装置12のコントローラとして機能する電子制御ユニット(以下、「ECU」という場合がある)55を備えており、開閉弁40の作動の制御は、そのECU55によって行われる。詳しい説明は省略するが、ECU55は、CPU,ROM,RAM等を含んで構成されるコンピュータと、開閉弁40の駆動回路とを有している。
(b)第2スタビライザ装置の構成
後輪10RL,10RRは、リジッドアクスル型サスペンション装置によって懸架されており、第2スタビライザ装置14は、それら後輪10RL,10RRに対して設けられている。第2スタビライザ装置14は、第1スタビライザ装置12と同様、スタビライザバー60を、主要構成要素として備えている。第2スタビライザ装置14のスタビライザバー60も、互いに一体化された中央のトーションバー部60tと左右のアーム部60aL,60aRとを含んで構成されており、左右のアーム部60aL,60aRの延びる方向は、トーションバー部60tの延びる方向である車幅方向と交差している。
後輪10RL,10RRは、リジッドアクスル型サスペンション装置によって懸架されており、第2スタビライザ装置14は、それら後輪10RL,10RRに対して設けられている。第2スタビライザ装置14は、第1スタビライザ装置12と同様、スタビライザバー60を、主要構成要素として備えている。第2スタビライザ装置14のスタビライザバー60も、互いに一体化された中央のトーションバー部60tと左右のアーム部60aL,60aRとを含んで構成されており、左右のアーム部60aL,60aRの延びる方向は、トーションバー部60tの延びる方向である車幅方向と交差している。
スタビライザバー60のトーションバー部60tには、左右に被支持部60sL,60sRが設けられており、スタビライザバー60は、それら被支持部60sL,60sRにおいて、アクスルハウジング62に、サポート64を介して支持されている。アクスルハウジング62は、両端がそれぞれ後輪10RL,10RRを保持する車輪保持部として機能し、後輪10RL,10RRの車体に対する上下動に応じて、図1に白抜き矢印で示すように、揺動可能とされている。また、サポート64は、図示を省略するが、先に説明した第1スタビライザ装置12のサポート30と同様、外筒とゴム弾性体とを含んで構成された被支持部用ブッシュを有するものであり、スタビライザバー60のトーションバー部60tの軸線まわりの回転、つまり、捩じりを許容している。
スタビライザバー60の両端、すなわち、左右のアーム部60aL,60aRの各々の先端は、車体の一部24に、詳しく言えば、車幅方向における左右に位置する部分に連結されている。具体的には、右側のアーム部60aRの先端は、リンクロッド66を介して連結され、左側のアーム部60aLの先端は、リンクロッド68,70,シリンダ72を介して連結されている。シリンダ72は、第1スタビライザ装置12のシリンダ28と同様、ハウジング72hと、ハウジング72h内に配設されたピストン72pと、基端部がピストン72pに連結されて先端部(下端部)が下方に向かってハウジング72hから延び出すピストンロッド72rとを有している。ハウジング72hは、車体の一部24にブッシュを介して揺動可能に支持され、リンクロッド68の一端がアーム部60aLの先端と、リンクロッド68の他端がリンクロッド70の一端と、リンクロッド70の他端がシリンダ72のハウジング72hに、それぞれ、連結されている。そして、ピストンロッド72rの先端が、リンクロッド68の中間部に連結されることで、端的に言えば、スタビライザバー60の左側のアーム部60aLの先端、すなわち、スタビライザバー60の一端に連結されている。
シリンダ72は、図1に白抜き矢印で示すように、アクスルハウジング62の揺動に伴って伸縮可能とされ、第1スタビライザ装置12のシリンダ28と同様、ハウジング70hの内部は、ピストン72pによって、その伸縮によって容積が変動する2つの液室である上室72cUと下室72cLとに区画されている。詳しく言えば、シリンダ72は、伸長する際に容積が増大し収縮する際に容積が減少する第1液室である上室72cUと、伸長する際に容積が減少し収縮する際に容積が増大する第2液室である下室72cLとを有しているのである。
第2スタビライザ装置14は、シリンダ72の上室72cUと下室72cLとを連通させるための室間連通路74を備えており、その室間連通路74には、互いに直列的に第1開閉弁76,第2開閉弁78が配設されている。第1開閉弁76,第2開閉弁78は、ともに、励磁されることによって閉弁状態となる常開型の電磁弁であり、室間連通路74の開通と遮断とを切り換える。詳しく言えば、第1開閉弁76,第2開閉弁78の両方が開弁状態とされることで、上室72cUと下室72cLとが相互に連通する室間連通状態が実現され、第1開閉弁76,第2開閉弁78の両方が閉弁状態とされることで、上室72cUと下室72cLとが連通しない室間非連通状態が実現される。換言すれば、第2スタビライザ装置14は、第1開閉弁76,第2開閉弁78を含んで構成される切換機構、すなわち、室間連通状態と室間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構80を備えているのである。
なお、後に詳しく説明するが、シリンダ72は、いわゆるロッド片側延出シリンダであり、伸縮に伴って、ハウジング72hの内容量、すなわち、上室72cUの容量と下室72cLの容量との合計が変化する。言い換えれば、伸縮に伴う上室72cUに対する作動液の流出入量と、下室72cLに対する作動液の流出入量とに差が存在する。この差、つまり、容積変化を補償するために、第2スタビライザ装置14では、先に説明したアキュムレータ48が、第1開閉弁76,第2開閉弁78の間において、室間連通路74に接続されている。このアキュムレータ48に関してさらに言及すれば、そのアキュムレータ48は、第1スタビライザ装置12に必要とされるアキュムレータと、第2スタビライザ装置14に必要とされるアキュムレータとの両方の機能を果たすものであり、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14が共用するものとされている。その結果、本スタビライザシステムでは、アキュムレータの数が少なくされているのである。ちなみに、先に説明した装置間連通路46によって、本スタビライザシステムでは、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のそれぞれの液圧系統が結合されていると考えることができる。
なお、第2スタビライザ装置14への作動液の注入も、第1スタビライザ装置12に設けられている注入ポート50から、装置間連通路46を介して行われる。つまり、注入ポート50は、第1スタビライザ装置12と第2スタビライザ装置14とが共用する単一の注入ポートと考えることができ、その注入ポート50を利用することで、本スラビライザシステムでは、作動液の注入を簡便に行うことが可能とされている。なお、注入ポート50は、アキュムレータ48と弁機構44との両方に作動液を注入するためのものと考えることもできる。また、先に説明したECU55は、第1開閉弁76,第2開閉弁78の駆動回路をも有して第2スタビライザ装置14のコントローラとしても機能し、第1開閉弁76,第2開閉弁78の作動の制御は、ECU55によって行われる。
本第2スタビライザ装置14は、スタビライザバー60のトーションバー部60tがアクスルハウジング62に支持され、アーム部60aL,60aRの先端が車体の一部24に連結されている。本スタビライザシステムでは、そのようなスタビライザ装置に代え、スタビライザバー60のトーションバー部が車体に支持され、1対のアーム部の各々の先端がアクスルハウジングの両端にそれぞれ連結された構造のスタビライザ装置を採用することも可能である。
[2]スタビライザシステムの作動
以下に、本スタビライザシステムの作動を、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のそれぞれについて説明する。
以下に、本スタビライザシステムの作動を、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のそれぞれについて説明する。
(a)第1スタビライザ装置の作動
先に説明したように、第1スタビライザ装置12の切換機構42を構成する開閉弁40を閉弁状態とされているときは、第1連通路34と第2連通路36とが連通しない通路間非連通状態が実現される。シリンダ28は、図2(c)に示すように、下室28cLにピストンロッド28rが貫通しているものの上室28cUにはピストンロッドが貫通していないため、伸縮による上室28cUの体積変化量と下室28cLの体積変化量とが相違している。したがって、第1連通路34と第2連通路36とが連通しない通路間非連通状態では、シリンダ28Lの上室28cUとシリンダ28Rの下室28cLとの間では、第1連通路34を介した作動液の流出入は行われず、また、シリンダ28Rの上室28cUとシリンダ28Lの下室28cLとの間では、第2連通路36を介した作動液の流出入は行われない。つまり、シリンダ28L,28Rは、ともに、伸縮が禁止されることになる。
先に説明したように、第1スタビライザ装置12の切換機構42を構成する開閉弁40を閉弁状態とされているときは、第1連通路34と第2連通路36とが連通しない通路間非連通状態が実現される。シリンダ28は、図2(c)に示すように、下室28cLにピストンロッド28rが貫通しているものの上室28cUにはピストンロッドが貫通していないため、伸縮による上室28cUの体積変化量と下室28cLの体積変化量とが相違している。したがって、第1連通路34と第2連通路36とが連通しない通路間非連通状態では、シリンダ28Lの上室28cUとシリンダ28Rの下室28cLとの間では、第1連通路34を介した作動液の流出入は行われず、また、シリンダ28Rの上室28cUとシリンダ28Lの下室28cLとの間では、第2連通路36を介した作動液の流出入は行われない。つまり、シリンダ28L,28Rは、ともに、伸縮が禁止されることになる。
図3(a)に示すように、車両が旋回する場合、車体は、左右方向に傾斜、つまり、ロールする。ちなみに、図3(a)は、左方に旋回し、車体が右方に傾斜している状態を示している。シリンダ28L,28Rの伸縮が禁止されている状態では、シリンダ28L,シリンダ28Rのピストンロッド28rの先端によってそれぞれ支持されているスタビライザバー16のトーションバー部16tの被支持部16sL,16sRは、車体に対する上下動が禁止されるため、トーションバー部16tは、捩じられることになる。この捩じりの反力が、左右のアーム部16aL,16aRを介してロアアーム18L,18Rに作用することで、車体のロールが抑制されることになる。
一方で、図3(b)に示すように、開閉弁40が開弁状態とされているときは、第1連通路34と第2連通路36とが相互に連通する通路間連通状態が実現され、シリンダ28L,28Rの各々の上室28cU,下室28cLに対する作動液の流出入が許容される。その結果、シリンダ28L,28Rは、一方が伸長した場合に、その伸長と同じ量の他方の収縮が許容され、一方が収縮した場合に、その収縮と同じ量の他方の伸長が許容されることになる。
図3(b)に示すように、シリンダ28L,28Rの上述のような伸縮が許容されている状態で左右の前輪10FL,10FRに外部入力が作用した場合を考える。ちなみに、図3(b)では、車両がオフロード(地面が荒れているところ)を走行し、左前輪10FLがリバウンド動作し、右前輪10FRがバウンド動作するような外部入力が作用した場合を示している。この場合、スタビライザバー16の被支持部16sL,16sRは、車体に対する上下動が許容されるため、スタビライザバー16は、左右の前輪10FL,10FRの上下動(厳密には、相対上下動)に応じて、被保持部16hを支点として回動することになる。詳しく言えば、左右の前輪10FL,10FRのリバウンド動作,バウンド動作の際にシリンダ28L,28Rが伸縮し、スタビライザバー16の回動が許容されるのである。この回動を伴ったスタビライザバー16の被支持部16sL,16sRの上下動により、スタビライザバー16は、殆ど捩じられない。つまり、スタビライザバー16は、ロアアーム18L,18Rに対して力を及ぼさないのである。したがって、荒れた地面を走行するときでも、左右の前輪10FL,10FRの各々への路面入力を、効果的に吸収することが可能となる。
なお、第1スタビライザ装置12において採用されているシリンダ28は、図2(c)に示すようないわゆるロッド片側延出シリンダ、つまり、ピストンロッド28rが2つの液室の一方である下室28cLを通過して延び出すようなシリンダとされている。そのため、上室28cUの作動液の圧力がピストン28pに作用する受圧面積SUと、下室28cLの作動液の圧力がピストン28pに作用する受圧面積SLとを比較すれば、受圧面積SUの方が大きい。したがって、上室28cUの作動液の圧力と下室28cLの作動液の圧力とが等しい場合であっても、ピストン28pは、下方に向かう力を受けることになり、シリンダ28は、伸長させられることになる。このようなシリンダ28の伸長は、ときによっては、いわゆるキャビテーション現象を伴い、通路間連通状態とされている場合に特に問題となる。本第1スタビライザ装置12は、スタビライザバー16が、被保持部16hにおいて、ホルダ22によって保持されているため、上記シリンダ28の伸長が効果的に防止されている。ちなみに、キャビテーション現象を防止するために、本第1スタビライザ装置12では、第1連通路34によって構成される液圧系統と、第2連通路36によって構成される液圧系統との圧力の低い方が、弁機構44を介してアキュムレータ46に連通するようにされている。
ちなみに、シリンダ28に代えて、図2(d)に示すようなシリンダ28’、すなわち、いわゆるロッド両側延出シリンダを採用することもできる。シリンダ28’では、上述の受圧面積SLと受圧面積SUとは等しく、シリンダ28’は、上述のように伸長することはない。しかしながら、作動液のシール等、シリンダ28’の構造が比較的煩雑であり、また、シリンダの配設スペースが長く必要とされるというデメリットを抱えることになる。
(b)第2スタビライザ装置の作動
先に説明したように、第2スタビライザ装置14の切換機構80を構成する第1開閉弁76と第2開閉弁78とが両方とも閉弁状態とされているときは、シリンダ72の上室72cUと下室72cLとが連通しない室間非連通状態が実現される。この状態では、上室72cUおよび下室72cLに対する作動液の流出入が禁止されて、シリンダ72の伸縮が禁止される。
先に説明したように、第2スタビライザ装置14の切換機構80を構成する第1開閉弁76と第2開閉弁78とが両方とも閉弁状態とされているときは、シリンダ72の上室72cUと下室72cLとが連通しない室間非連通状態が実現される。この状態では、上室72cUおよび下室72cLに対する作動液の流出入が禁止されて、シリンダ72の伸縮が禁止される。
図4(a)に示すように、車両が旋回する場合、車体は、左右方向に傾斜、つまり、ロールする。ちなみに、図4(a)は、左方に旋回し、車体が右方に傾斜している状態を示している。車体が傾くことで、スタビライザバー60のトーションバー部60tを被支持部60sL,60sRにおいて支持しているアクスルハウジング62が、車体に対して相対的に揺動することになる。シリンダ72の伸縮が禁止されている状態では、スタビライザバー60のアーム60aL,60aRの各々の先端の車体に対する上下方向の位置は概ね変動しない。したがって、アクスルハウジング62の揺動によって、スタビライザバー60のトーションバー部60tは捩じられることになる。この捩じりの反力が、左右のアーム部60aL,60aRおよびシリンダ72を介して車体の一部24に作用することで、車体のロールが抑制されることになる。
一方で、図4(b)に示すように、第1開閉弁76,第2開閉弁78がともに開弁状態とされているときは、シリンダ72の上室72cUと下室72cLとが互いに相互に連通する室間連通状態が実現され、上室72cU,下室72cLに対する作動液の略自由な流出入が許容される。シリンダ72は、殆ど制限のない伸縮が許容されることになる。
図4(b)に示すように、シリンダ72の伸縮が許容されている状態で左右の後輪10RL,10RRに外部入力が作用した場合を考える。ちなみに、図4(b)では、オフロードにおいて、左後輪10RLがリバウンド動作し、右後輪10RRがバウンド動作するような外部入力が作用した場合を示している。この場合、アクスルハウジング62が揺動し、その揺動によって、被支持部60sL,60sRにおいてアクスルハウジング62に支持されたスタビライザバー60も揺動する。しかしながら、シリンダ72の伸縮が許容されているため、スタビライザバー60の揺動によっても、スタビライザバー60のトーションバー部60tは、殆ど捩じられない。つまり、スタビライザバー60は、車体に対するアクスルハウジング62の揺動に対して力を及ぼさないのである。したがって、荒れた地面を走行するときでも、左右の後輪10RL,10RRの各々への路面入力を、効果的に吸収することが可能となる。
なお、第2スタビライザ装置14においても、シリンダ72に代えて、図2(d)に示すようなシリンダ28’、すなわち、いわゆるロッド両側延出シリンダを採用することもできる。ロッド両側延出シリンダを採用することにより、アキュムレータ48を必要としないスタビライザ装置が実現可能となり、第1開閉弁76,第2開閉弁78という2つの開閉弁を必要とせず、1つの開閉弁で、室間連通状態と室間非連通状態とを切り換えることが可能となる。
(c)スタビライザ装置によるロール抑制効果およびロール剛性
以上説明したように、第1スタビライザ装置12は、通路間非連通状態が実現されたときに、また、第2スタビライザ装置14は、室間非連通状態が実現されたときに、それぞれロール抑制効果を発揮することになる。したがって、第1スタビライザ装置12において、通路間連通状態と通路間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構42は、スタビライザバー16によるロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える機構と考えることができ、第2スタビライザ装置14において、室間連通状態と室間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構80は、スタビライザバー60によるロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える機構と考えることができるのである。
以上説明したように、第1スタビライザ装置12は、通路間非連通状態が実現されたときに、また、第2スタビライザ装置14は、室間非連通状態が実現されたときに、それぞれロール抑制効果を発揮することになる。したがって、第1スタビライザ装置12において、通路間連通状態と通路間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構42は、スタビライザバー16によるロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える機構と考えることができ、第2スタビライザ装置14において、室間連通状態と室間非連通状態とを選択的に実現させるための切換機構80は、スタビライザバー60によるロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える機構と考えることができるのである。
ロール抑制効果の発揮の程度について言及すれば、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14の両方がロール抑制効果を発揮した場合において、前輪10F側のロール剛性が、後輪10R側のロール剛性より高くなるように、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14が構成されている。このように構成することで、車両は、アンダーステア傾向を有して、安定した旋回挙動を呈することとなる。
[3]スタビライザシステムの制御
(a)制御の概要
本スタビライザシステムは、車両の旋回時の車体のロールを抑制することを主目的とするシステムであり、ECU55は、車両が旋回したときに、切換機構42,切換機構80を制御することで、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14の両方のロール抑制効果を有効化する。ECU55は、車両が旋回しているか否かを、ステアリング操作部材であるステアリングホイール92(図1参照)の操作角δ(操作角センサ94によって検出されている)と車両の走行速度(車速)vとから推定するヨーレートγに基づいて、判定する。具体的には、推定したヨーレートγが、閾ヨーレートγTHを超えているときに、車両が旋回していると判定する。ちなみに、車速vは、各車輪10に設けられた車輪速センサ88によって検出された車輪回転速度(車輪速)vWに基づいて特定される。
(a)制御の概要
本スタビライザシステムは、車両の旋回時の車体のロールを抑制することを主目的とするシステムであり、ECU55は、車両が旋回したときに、切換機構42,切換機構80を制御することで、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14の両方のロール抑制効果を有効化する。ECU55は、車両が旋回しているか否かを、ステアリング操作部材であるステアリングホイール92(図1参照)の操作角δ(操作角センサ94によって検出されている)と車両の走行速度(車速)vとから推定するヨーレートγに基づいて、判定する。具体的には、推定したヨーレートγが、閾ヨーレートγTHを超えているときに、車両が旋回していると判定する。ちなみに、車速vは、各車輪10に設けられた車輪速センサ88によって検出された車輪回転速度(車輪速)vWに基づいて特定される。
しかしながら、上記判定によれば、例えば、車体が比較的大きく傾いた(ロールした)状態で、ロール抑制効果が無効化から有効化に切り換えられることも予測される。その場合、車両が直進状態に戻って、ロール抑制効果が有効化から無効化に切り換えられると、そのときに、ロール抑制効果が無効化から有効化に切り換えられたときの車体の傾きが一気に除去されるため、車体の挙動が大きくなる。言い換えれば、車体の姿勢変化が大きくなる。このことは、乗員の車両の乗り心地を悪化させる一因となる。そこで、本スタビライザシステムでは、車両の旋回中において、ECU55は、一時的にロール抑制効果を無効化する一時的無効化処理を実行する。
一時的無効化処理では、具体的には、ECU55は、第1スタビライザ装置12の開閉弁40、および、第2スタビライザ装置14の第1開閉弁76,第2開閉弁78を、短い時間(例えば、0.1~1sec)だけ開弁する。この処理により、旋回の初期において第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のロール抑制効果が無効化から有効化に切り換わったときの車体の傾き(ロール)の一部が除去され、車両が直進状態に戻ってロール抑制効果が有効化から無効化に切り換わったときの車体の姿勢変化を抑制することが可能となる。つまり、ロール方向の車体の挙動を小さくすることができるのである。
車両には、車体の横加速度Gyを検出するための横加速度センサ90が設けられており(図1参照)、ECU55は、横加速度センサ90からの信号に基づき、現時点での車体の横加速度Gyを把握しているとともに、ロール抑制効果が無効化から有効化に切り換わった時点での車体の横加速度Gyを、有効化時横加速度GyINとして記憶している。ECU55は、一時的無効化処理を、車両が旋回して最初にロール抑制効果が無効化から有効化に切り換わった時点での有効化時横加速度GyINが第1設定横加速度Gy1を超えていたことを前提として、当該一旋回中において、一時的無効化処理を行う。
また、ECU55は、一時的無効化処理を行う場合は、一旋回中において、段階的に複数回行う(場合によっては、1回の場合もある)。詳しく言えば、ECU55は、ロール抑制効果が無効化から有効化に切り換わってから、横加速度Gyの有効化時横加速度GyINからの減少量が、設定横加速度差である設定減少量ΔGy0を超えた都度、一時的無効化処理を行う。つまり、一時的無効化処理を1回行った後でも、その一時的無効化処理の直後に、有効化時横加速度GyINを更新し、横加速度Gyがさらに設定減少量ΔGy0を超えて減少したときに、再び、一時的無効化処理を行うのである。なお、更新された有効化時横加速度GyINが、第2設定横加速度Gy2を下回っている場合には、ECU55は、以後、一時的無効化処理を行わないようにされている。ちなみに、第1設定横加速度Gy1と第2設定横加速度Gy2との差が設定減少量ΔGy0よりも大きくなるように、第1設定横加速度Gy1,第2設定横加速度Gy2は設定されている。
(b)制御フロー
本スタビライザシステムの制御、つまり、上記ロール抑制効果の有無の切換に関する制御は、ECU55のコンピュータが、図5にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムを、短い時間ピッチ(「プログラム実行ピッチ」という場合がある。例えば、数~数十msecである。)で繰り返し実行することによって行われる。以下に、そのプログラムに従う処理を、フローチャートに沿って簡単に説明する。
本スタビライザシステムの制御、つまり、上記ロール抑制効果の有無の切換に関する制御は、ECU55のコンピュータが、図5にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムを、短い時間ピッチ(「プログラム実行ピッチ」という場合がある。例えば、数~数十msecである。)で繰り返し実行することによって行われる。以下に、そのプログラムに従う処理を、フローチャートに沿って簡単に説明する。
スタビライザ制御プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、ステアリングホイール92の操作角δと車速vとに基づいて、当該車両のヨーレートγを推定する。S2では、推定されたヨーレートγが閾ヨーレートγTHを超えているか否かが判定される。ヨーレートγが閾ヨーレートγTH以下である場合は、当該車両は旋回していないとみなされて、S3において、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のロール抑制効果が無効化される。具体的には、第1スタビライザ装置12の切換機構42の開閉弁40が開弁され、第2スタビライザ装置14の切換機構80の第1開閉弁76,第2開閉弁78が開弁される。そして、S4において、後述する一時的無効化処理の実行の状況を示すフラグである処理フラグFLの値が“0”にリセットされる。ちなみに、処理フラグFLは、初期値が“0”であり、本旋回において一時的無効化処理が未だ行われていないときに、“0”と、本旋回において一時的無効化処理が行われたときに、“1”と、本旋回においてもはや一時的無効化処理を行う必要がないときに、“2”とされるフラグである。
S2においてヨーレートγが閾ヨーレートγTHを超えていると判定されたときは、S5において、第1スタビライザ装置12,第2スタビライザ装置14のロール抑制効果が有効化される。具体的には、第1スタビライザ装置12の切換機構42の開閉弁40が閉弁され、第2スタビライザ装置14の切換機構80の第1開閉弁76,第2開閉弁78が閉弁される。
ロール抑制効果の有効化の後、S6において、今回のプログラムの実行において、その有効化が無効化から切り換えられたか否かが判定される。言い換えれば、前回のプロクラムの実行においてロール抑制効果が無効化されており、今回のプログラムの実行においてロール抑制効果が有効化されたか否かが判定される。今回が最初の有効化である場合、つまり、一旋回において最初にロール抑制効果が有効化された場合には、S7において、現時点での横加速度Gyが、上述の有効化時横加速度GyINとされる。当該一旋回において既に一度でも有効化されている場合には、S7は、スキップされ、有効化時横加速度GyINは、更新されずに前回の値が維持される。
続くS8において、処理フラグFLが“1”であるか否かが判定される。処理フラグFLが“1”でない場合には、S9において、処理フラグFLが“0”であるか否かが判定される。処理フラグFLが“0”でない場合、すなわち、処理フラグFLが“2”である場合には、本プログラムの1回の実行は終了される。S9において処理フラグFLが“0”であると判定された場合には、S10において、有効化時横加速度GyINが、詳しくは、車両の旋回の開始に伴ってロール抑制効果が有効化された時点での横加速度Gyが、第1設定横加速度Gy1より大きいか否かが判定される。有効化時横加速度GyINが第1設定横加速度Gy1以下の場合には、本プログラムの1回の実行は終了される。
一方で、S8において処理フラグFLが“1”であると判定された場合、若しくは、S10において有効化時横加速度GyINが第1設定横加速度Gy1より大きいと判定された場合には、S11において、一時的無効化処理の開始条件を充足しているか否か、つまり、横加速度Gyの有効化時横加速度GyINからの減少量が、設定減少量ΔGy0を超えたか否かが判定される。減少量が設定減少量ΔGy0以下の場合は、横加速度Gyの減少量が未だ小さいため、一時的無効化処理が行われることなく、本プログラムの1回の実行は終了される。
それに対して、S11において横加速度Gyの有効化時横加速度GyINからの減少量が、設定減少量ΔGy0を超えていると判定された場合には、S12において、上述したように、一時的無効化処理が実行され、S13において、処理フラグFLが“1”とされる。そして、S14において、有効化時横加速度GyINが、現時点での横加速度Gyに更新される。ちなみに、一時的無効化処理が実行される場合には、本プロクラムの今回の実行時間は、上述のプログラム実行ピッチを超えることになる。
次のS15では、一時的無効化処理が終了したときの有効化時横加速度GyINが第2設定横加速度Gy2よりも小さいか否かが判定される。有効化時横加速度GyINが第2設定横加速度Gy2より小さい場合には、これ以上一時的無効化処理を行う必要がないとして、S16において、処理フラグFLが“2”とされる。一方で、有効化時横加速度GyINが第2設定横加速度Gy2以上である場合には、再度の一時的無効化処理の実行を許容すべく、処理フラグFLは、“1”のまま維持される。
(c)一時的無効化処理に関する典型的作動
上述のような一時的無効化処理を行った場合、当該ステアリングシステムは、ロール抑制効果の有効化,無効化に関して、図6に示すグラフのように、作動する。言い換えれば、図6のグラフは、旋回中において、スタビライザ制御プログラムに従う典型的な処理の様子を示している。グラフは、旋回を開始してからの横軸が時間tの経過を示し、縦軸が横加速度を示している。
上述のような一時的無効化処理を行った場合、当該ステアリングシステムは、ロール抑制効果の有効化,無効化に関して、図6に示すグラフのように、作動する。言い換えれば、図6のグラフは、旋回中において、スタビライザ制御プログラムに従う典型的な処理の様子を示している。グラフは、旋回を開始してからの横軸が時間tの経過を示し、縦軸が横加速度を示している。
車両が旋回するときは、時間tの経過に伴って、横加速度Gyが上昇し、ピークを過ぎたときから、横加速度Gyは減少する。横加速度Gyが、上記第1設定横加速度Gy1より大きな有効化時横加速度GyIN-1となった時点t1で、ロール抑制効果が有効化された場合、横加速度Gyの減少過程において、横加速度Gyが有効化時横加速度GyIN-1から設定減少量ΔGy0を超えて減少した時点t2から、設定時間経過後の時点t3までの間で、一時的無効化処理が実行される。この一時的無効化処理の直後の横加速度Gyが、有効化時横加速度GyIN-2とされる。
その後、さらに横加速度Gyが減少して、横加速度Gyが有効化時横加速度GyIN-2から設定減少量ΔGy0を超えて減少した時点t4から、設定時間経過後の時点t5までの間で、再度、一時的無効化処理が実行される。この一時的無効化処理の直後の横加速度Gyが、有効化時横加速度GyIN-3とされる。有効化時横加速度GyIN-3が第2設定横加速度Gy2より小さいため、以降、一時的無効化処理は実行されない。
グラフで示す典型的な処理の様子では、複数回、詳しくは、2回の一時的無効化処理が、横加速度Gyの減少に伴って、段階的に実行される。このような一時的無効化処理によって、車両が旋回から直進へ移行してロール抑制効果が無効化されたときの車体の姿勢変化が小さくされるのである。つまり、車両が直進状態に至るときの車体のロール挙動が小さくされるのである。ちなみに、グラフにおいては、一時的無効化処理が行われている時間帯に、網掛けが施されている。
(d)変形例
上記スタビライザ制御プログラムによって、段階的な複数回の一時的無効化処理の実行が許容される。一旋回中において、1度だけしか一時的無効化処理を行わないようにしてもよく、1度だけしか一時的無効化処理を行わないようにするために、図7にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムを、ECU55が実行するようにしてもよい。
上記スタビライザ制御プログラムによって、段階的な複数回の一時的無効化処理の実行が許容される。一旋回中において、1度だけしか一時的無効化処理を行わないようにしてもよく、1度だけしか一時的無効化処理を行わないようにするために、図7にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムを、ECU55が実行するようにしてもよい。
このプログラムに従う処理におけるS21~S27の処理は、先に説明したスタビライザ制御プログラムのS1~S7の処理と同じである。このプログラムに従う処理では、S28~S30の条件を充足したときに、S31において、上述の一時的無効化処理が行われ、S32において、処理フラグFLが“1”とされる。詳しく言えば、一旋回において未だ一時的無効化処理が行われておらず、有効化時横加速度GyINが第1設定横加速度Gy1より大きく、かつ、現時点での横加速度が、第3設定横加速度Gy3より小さいときに、一時的無効化処理が行われる。第3設定横加速度Gy3は小さな値に設定されており、旋回において横加速度Gyが充分に小さくなったときに、一時的無効化処理が行われるようにされている。
このように一旋回において一度だけしか一時的無効化処理を行わないようにしても、車両が旋回から直進へ移行してロール抑制効果が無効化されたときの車体の姿勢変化、つまり、車両が直進状態に至るときの車体のロール挙動が、充分に小さくされるのである。
10:車輪 12:第1スタビライザ装置 14:第2スタビライザ装置 16:スタビライザバー 28L,28R:シリンダ 28cU:上室 28cL:下室 34:第1連通路 36:第2連通路 38:通路間連通路 40:開閉弁 42:切換機構 55:電子制御ユニット(ECU)〔コントローラ〕 60:スタビライザバー 72:シリンダ 72cU:上室 72cL:下室 74:室間連通路 76:第1開閉弁 78:第2開閉弁 80:切換機構
Claims (1)
- 車両に搭載されるスタビライザシステムであって、
スタビライザバーと、そのスタビライザバーによる車体のロール抑制効果の有効化と無効化とを切り換える切換機構とを有するスタビライザ装置と、
そのスタビライザ装置の前記切換機構を制御して、車両が旋回しているときに当該スタビライザ装置のロール抑制効果を有効化するコントローラと
を備え、
そのコントローラが、
車両の旋回中において、車体の横加速度が、設定横加速度未満となった場合、若しくは、前記スタビライザ装置のロール抑制効果が有効化されたときの車体の横加速度である有効化時横加速度から設定横加速度差を超えて小さくなった場合に、一時的に、前記スタビライザ装置のロール抑制効果を無効化するように構成されたスタビライザシステム。
Priority Applications (1)
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