以下、図面を参照しながら、医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るX線コンピュータ断層(Computed Tomography:CT)撮像装置1(以下、X線CT装置1という)の構成の一例を示す図である。X線CT装置1は、本実施形態における医用画像診断装置の一例である。
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、移動ベース110と、レール60a、60bと、移動制御装置50と、スケールテープ51と、センサ52と、清掃機構53と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。図1では、説明の都合上、架台装置10を複数描画しているが、実際のX線CT装置1の構成としては、架台装置10は、一つである。
架台装置10及び寝台装置30は、コンソール装置40を介したユーザからの操作、或いは架台装置10、または寝台装置30に設けられた操作部を介したユーザからの操作に基づいて動作する。架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の検出データから投影データを収集する撮影系を有する装置である。より具体的には、架台装置10は、X線管11(X線発生部)と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data Acquisition System)18と、回転フレーム13と、制御装置15とを有する。X線管11(X線発生部)、ウェッジ16、コリメータ17、X線検出器12、X線高電圧装置14、DAS18、回転フレーム13、および制御装置15は、本実施形態における撮像系の一例である。なお、移動ベース110、レール60a、60b、移動制御装置50、スケールテープ51、センサ52、および清掃機構53も、架台装置10に含まれても良い。
本実施形態においては、架台装置10は、後述の移動ベース110上に設けられ、被検体Pを撮像するために、レール60a,60b上を水平移動する。本実施形態の架台装置10および後述の移動ベース110は、移動部の一例である。なお、架台装置10は、ガントリともいう。
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管11における管球焦点で発生したX線は、例えばコリメータ17を介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。複数の検出素子の各々は、X線の入射量を検出する。なお、X線CT装置1には、X線管11とX線検出器12とが一体として被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管11のみが被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下、説明を具体的にするために、本実施形態のX線CT装置1は、第3世代CTを例にとり説明する。
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、光子計数型X線検出器であってもよい。X線検出器12は、X線検出部の一例である。
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転可能に支持する。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13は、アルミニウム等の金属により形成された固定フレームに回転可能に支持される。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。
なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とに加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持する。このような回転フレーム13は、撮影空間をなす開口(ボア)が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口の中心軸は、回転フレーム13の回転軸に一致する。
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線をX線照射範囲に絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のプロセッサにより実現されてもよい。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
なお、以下、本実施形態における各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
例えば、本実施形態の制御装置15は、移動制御装置50に制御信号を送信することにより、架台装置10および移動ベース110をレール60a,60b上で水平移動させる。また、制御装置15は、移動制御装置50から、架台装置10および移動ベース110の位置、およびレール60a,60bの清掃の要否についての情報を取得する。
レール60a,60bは、X線CT装置1が備えられた検査室の床に、架台装置10の移動経路に沿って埋設される。以下、個々のレール60a,60bを特に区別しない場合には、単にレール60という。レール60は、所定の長さごとに、複数の区間に分けられている。
また、レール60は、複数の区間の各々に対応する複数の表示器を、側面に備える。表示器は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光部を備える。当該発光部は、移動ベース110に設けられた制御装置15による制御の下、発光色を変化させる。表示器は、後述のディスプレイ42と同様に、本実施形態における表示部の一例である。表示器の詳細については後述する。
移動ベース110は、架台装置10を下方から支持する。移動ベース110は、レール60と嵌合する凹部を備え、レール60上に水平移動可能に設置される。例えば、移動ベース110は、レール60と接した状態で回転可能な車輪(不図示)と該車輪を回転させるモータおよびアクチュエータ等の駆動機構(不図示)とを備える。移動ベース110は、移動制御装置50による制御の下、駆動機構が車輪を回転させることにより、架台装置10を載せたままレール60上を水平移動する。なお、移動ベース110の移動方式はこれに限定されるものではない。
図2は、本実施形態に係る架台装置10、移動ベース110、およびレール60の外観の一例を示す図である。図2に示すように、架台装置10は、移動ベース110の上に固定される。また、移動ベース110は、2本のレール60a,60bの上に設置され、レール60a,60bの長手方向に沿って水平移動することにより、架台装置10を移動させる。
図1に戻り、スケールテープ51と、センサ52とは、レール60上の移動ベース110の位置を計測する位置計測装置である。本実施形態においては、スケールテープ51と、センサ52とを総称してリニアスケールまたはリニアエンコーダという。
スケールテープ51は、レール60a,60bの少なくともいずれか一方に設けられる。スケールテープ51には、位置の基準となるスケール(目盛)が設けられている。目盛は、光を反射する反射部と、光を反射しない非反射部とによって刻まれる。スケールテープ51は、本実施形態における反射部の一例である。スケールテープ51は、単にスケールともいう。
センサ52は、レール60に設けられたスケールテープ51に入射された光の反射光を検出し、該反射光に基づいて、レール60上の移動ベース110の位置、つまり架台装置10の位置を計測する光学式センサである。レール60上の移動ベース110および架台装置10の位置は、例えば、移動ベース110および架台装置10の初期位置からの距離によって表される。
センサ52は、スケールテープ51からの反射光を、信号として読み取る。当該信号の強度は、スケールテープ51に埃などの異物が付着することにより低下する。センサ52は、スケールテープ51からの反射光の強さを計測する。本実施形態において、当該反射光の強度を、信号強度という。センサ52は、レール60の区間ごとに、信号強度を計測する。
図3は、本実施形態に係るスケールテープ51およびセンサ52の構成の一例を示す図である。図3では、図2における範囲A1を拡大して図示する。なお、図3ではスケールテープ51の目盛は図示を省略している。図3に示す例では、レール60b上に設けられたスケールテープ51上を、移動ベース110に設けられたセンサ52が移動ベース110の移動と共に移動しながら位置を計測する。
図4は、本実施形態に係るセンサ52の詳細構成の一例を示す図である。図4に示すように。センサ52は、発光素子521と受光素子522とを備える。発光素子521から発せられた光は、スケールテープ51に目盛として刻まれた反射部と反射部によって規則的な光の信号となって反射する。センサ52は、該反射光を受光素子によって読み取ることにより、架台装置10の移動距離および位置を計測する。
仮に、スケールテープ51上に埃等の異物が付着した場合、受光素子522に入射される反射光が弱くなるため、信号強度が低下する。信号強度が大幅に低下すると、センサ52が架台装置10の位置を計測することが困難になる場合がある。
センサ52は、計測した架台装置10および移動ベース110の位置、およびレール60の区間ごとの信号強度を移動制御装置50に送出する。なお、センサ52ではなく、移動制御装置50が、センサ52が読み取った信号から、架台装置10および移動ベース110の位置、およびレール60の区間ごとの信号強度を算出しても良い。
なお、リニアスケールによる位置の計測方式には、基準位置からの移動量を計測するよりにより位置を計測する「アブソリュート式」と、任意の位置からの移動量を計測する「インクレメンタル式」の2種類があるが、いずれを適用しても良い。なお、本実施形態においては、架台装置10の初期位置を基準として移動量を計測するアブソリュート式を採用する。初期位置は、Park位置ともいう。
図1に戻り、清掃機構53は、スケールテープ51を清掃する機構である。また、清掃機構53は、レール60全体を清掃する機能を備えても良い。清掃機構53は、少なくとも、スケールテープ51が設けられた側のレール60の近傍に設けられる。清掃機構53は、本実施形態における清掃部の一例である
例えば、清掃機構53は、ヘラまたはブラシ等の拭き取り部と、該拭き取り部を格納または露出させるように移動させる駆動機構等を備える。本実施形態においては、拭き取り部は、樹脂等の弾性のある素材で生成されたヘラとする。また、駆動機構は、例えば移動制御装置50の制御の下で動作するモータおよびアクチュエータ等を備える。
拭き取り部は、通常時は移動ベース110内に、スケールテープ51に接触しない状態で格納される。また、拭き取り部は、スケールテープ51の清掃の際、駆動機構によってスケールテープ51に接触する状態まで突出するように移動する。拭き取り部がスケールテープ51に接触した状態のまま移動ベース110が移動することにより、スケールテープ51の表面が清掃される。
本実施形態においては、移動ベース110と、レール60a,60bと、スケールテープ51と、センサ52とを総称してレールユニットという。なお、清掃機構53もまた、レールユニットに含まれても良い。
移動制御装置50は、制御装置15またはコンソール装置40の制御の下、架台装置10および移動ベース110のレール60上の水平移動を制御する。
具体的には、移動制御装置50は、CPU等を有する処理回路500を有する。処理回路500は、例えば、ハードウェア資源として、CPUやMPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、移動制御装置50は、例えば、GPU、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス等のプロセッサにより実現されてもよい。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
図1に示すように、処理回路500は、取得機能511、移動制御機能512、清掃制御機能513、判定機能514、および出力機能515を備える。取得機能511は取得部の一例である。移動制御機能512は移動制御部の一例である。なお、移動制御装置50全体を移動制御部と称しても良い。清掃制御機能513は、清掃制御部の一例である。判定機能514は、判定部の一例である。出力機能515は、出力部の一例である。
取得機能511は、センサ52から、センサ52が計測した架台装置10および移動ベース110の位置、およびレール60の区間ごとの信号強度を取得する。なお、取得機能511は、移動制御装置50側で架台装置10および移動ベース110の位置、および信号強度を算出する場合には、取得機能511は、単にセンサ52が読み取った信号を取得する。取得機能511は、取得した架台装置10および移動ベース110の位置を、移動制御機能512に送出する。また、取得機能511は、取得した架台装置10および移動ベース110の位置、および信号強度を判定機能514に送出する。
移動制御機能512は、制御装置15またはコンソール装置40からの入力信号を受けて、移動ベース110の駆動機構の動作制御をする。例えば、移動制御装置50は、制御装置15またはコンソール装置40から指示された位置まで架台装置10および移動ベース110を移動するように、移動ベース110の駆動機構に制御信号を送信して動作制御する。また、移動制御機能512は、センサ52が計測した架台装置10および移動ベース110の位置に基づいて、架台装置10および移動ベース110が目標位置まで移動したか否かを判定する。
図5は、本実施形態に係る架台装置10の移動の一例を示す図である。図5では、架台装置10の側方から架台装置10、レール60、および移動ベース110を図示する。なお、図5では、スケールテープ51およびセンサ52を図示しているが、実際には、スケールテープ51およびセンサ52はレール60の内側に位置するため、側方からは視認されない。また、図5では、レール60の外側の側方に設けられた表示器は図示を省略する。
移動制御機能512は、スキャンの実行中に架台装置10を移動させる。このように、X線CT装置1は、架台装置10を移動させながらスキャンする、架台装置10が被検体Pの全身をスキャンすることができる。図5に示す例では、架台装置10は図5の右側から左側に向けて移動する。架台装置10のスキャン前の位置が、架台装置10の初期位置である。移動制御機能512は、スキャン後は、架台装置10を、初期位置に戻すために、再び移動させる。
図1に戻り、清掃制御機能513は、レール60に含まれる複数の区間のうち、後述の判定機能514によって清掃が必要と判定された区間を清掃するように、清掃機構53を制御する。より詳細には、清掃制御機能513は、清掃が必要と判定された区間におけるスケールテープ51を清掃するように、清掃機構53を制御する。
例えば、清掃制御機能513は、清掃機構53および移動ベース110の駆動機構に対して、レール60に含まれる複数の区間のうち、判定機能514によって清掃が必要と判定された区間を清掃するように指示する制御信号を出力する。
例えば、清掃制御機能513は、移動ベース110を清掃が必要な区間の近傍まで移動させた後に清掃機構53を制御して拭き取り部を突出させる。清掃制御機能513は、拭き取り部をスケールテープ51に接触させた状態で清掃が必要な区間を通過するように移動ベース110の駆動機構を制御することにより、拭き取り部によってスケールテープ51に付着した埃等の異物を清掃する。また、清掃制御機能513は、移動ベース110が清掃が必要な区間に位置するか否かを、センサ52によって計測された位置に基づいて判定する。なお、清掃時における移動ベース110の移動は、移動制御機能512が実行しても良い。
また、清掃制御機能513は、後述の判定機能514によって判定された清掃を要する度合いに応じて、レール60の複数の区間ごとの清掃の強度を変化させても良い。例えば、清掃制御機能513は、後述の判定機能514によって“要清掃”と判定された区間については“可”と判定された区間よりも多い回数で拭き取りを行うように、清掃機構53および移動ベース110の駆動機構を制御しても良い。
なお、上述のように、清掃機構53は、少なくとも、スケールテープ51が設けられた側のレール60の近傍に設けられるため、少なくともスケールテープ51が設けられた側のレール60は、清掃制御機能513による制御によって清掃される対象となる。清掃するように指示する制御信号の出力のタイミングは、例えば、後述のコンソール装置40より、清掃実行の指示を受けた場合であるが、これに限定されるものではない。
判定機能514は、センサ52が計測した反射光の強度に基づいて、レール60の清掃要否を判定する。より詳細には、判定機能514は、取得機能511がセンサ52から取得したレール60の区間ごとの信号強度が閾値以下である場合、該信号強度に対応する区間を要清掃と判定する。また、判定機能514は、取得機能511がセンサ52から取得したレール60の区間ごとの信号強度が閾値よりも強い場合、該信号強度に対応する区間を清掃不要と判定する。本実施形態においては、判定機能514による信号強度に基づく清掃要否の判定を、信号強度チェックという。
本実施形態においては、センサ52は、架台装置10が被検体Pのスキャンのために移動する際に、架台装置10の位置計測のために検出した反射光の強度を計測する。このため、判定機能514は、架台装置10が被検体Pのスキャンのために移動する際に、信号強度チェックを実行する。
より具体的には、本実施形態においては、判定機能514は、信号強度に応じて、レール60の複数の区間ごとの清掃を要する度合いを判定する。例えば、判定機能514は、レール60の区間ごとに、スケールテープ51の異物の付着の状態を“良”、“可”、“要清掃”の3段階に分類する。“良”、“可”、“要清掃”の順に、清掃を要する度合いが高いことを段階的に表す。
判定機能514は、信号強度が第1の閾値以下の場合に“要清掃”と判定し、信号強度が第1の閾値より強く第2の閾値以下である場合に“可”と判定し、信号強度が第2の閾値よりも強い場合に“良”と判定する。第2の閾値は第1の閾値よりも大きい値とする。なお、第1の閾値および第2の閾値の値は特に限定されるものではない。レール60の区間ごとの“良”、“可”、“要清掃”の判定結果は、本実施形態におけるレール60の清掃要否に関する情報の一例である。また、信号強度の段階の分け方および清掃要否の判定結果は、上述の例に限定されるものではない。例えば、判定機能514は、レール60の区間ごとの清掃を要する度合の強さを数値で判定しても良い。あるいは、判定機能514は、単に“要清掃”、“清掃不要”の2段階で判定してしても良い。
判定機能514は、レール60の区間ごとの清掃要否の判定結果を、出力機能515に送出する。
出力機能515は、レール60の清掃要否に関する情報を出力する。より具体的には、出力機能515は、判定機能514によるレール60の清掃要否の判定結果を出力する。また、本実施形態において、「出力」は、表示部に表示させること、または情報を送信することを含む。
例えば、出力機能515は、制御装置15またはコンソール装置40に、移動ベース110および架台装置10の位置、およびレール60の複数の区間ごとの清掃要否を送信する。また、出力機能515は、判定機能514によるレール60の清掃要否の判定結果に応じて、レール60の側面に設けられた表示器の色を変化させる。
図6は、本実施形態に係るレール60の側面に設けられた表示器80a~80hの一例を示す図である。図6は、図5における範囲A2を拡大して図示したものである。図6に示すように、表示器80a~80hは、スケールテープ51が敷設されたレール60bにおける複数の区間の各々に対応して設けられる。表示器80a~80hは、レール60の外側の側面に設けられるため、例えば、X線CT装置1の保守管理業者が、X線CT装置1の外部から表示器80a~80hの点灯色を視認することができる。なお、図6に示す表示器80a~80hの数および形状は一例であり、これに限定されるものではない。以下、個々の表示器80a~80hを区別しない場合に、単に表示器80という。
なお、表示器80は、レール60の長手方向の全てに渡って設けられる必要はなく、架台装置10の移動範囲に対応する位置に設けられれば良い。表示器80は、より詳細には架台装置10が初期位置にある場合におけるセンサ52の位置から、架台装置10が移動範囲うち初期位置から最も遠い位置まで移動した場合におけるセンサ52の位置までの間の各区間に1対1で対応して設けられる。
出力機能515は、判定機能514による判定結果に基づいて、レール60の清掃を要する度合いを表示する。図6に示す例では、出力機能515は、判定機能514によって判定されたレール60の区間ごとの信号強度に応じて、表示器80の色を段階的に変化させることにより、レール60の区間ごとの清掃を要する度合いを表示する。例えば、出力機能515は、“良”の区間は緑色、“可”の区間は黄色、“要清掃”の区間は赤色で表示器80を発光させても良い。
図6に示す例では、表示器80a~80c,80e,80f,80hに対応する区間では、スケールテープ51の異物の付着の状態は“良”である。これらの区間においては、スケールテープ51の清掃は現時点では必要ではない。
これに対して、表示器80dに対応する区間では、スケールテープ51上に埃90aが付着していることによって信号強度が低下し、スケールテープ51の異物の付着の状態は“要清掃”である。当該区間では、スケールテープ51の清掃が推奨される。
また、表示器80gに対応する区間では、表示器80dに対応する区間よりは異物の程度は経度であるものの、スケールテープ51上に埃90bが付着していることによって信号強度が低下している。該区間におけるスケールテープ51の異物の付着の状態は“可”である。該区間においては、スケールテープ51の清掃は緊急ではないものの、経過観察または清掃が推奨される。
また、出力機能515は、判定機能514によってレール60の清掃が必要であると判定される頻度に基づいて、レール60の清掃または点検を依頼する通知を出力する。
例えば、出力機能515は、直前のスキャン時の信号強度チェックを含む過去の規定の回数の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在した回数の割合が閾値以上となった場合、X線CT装置1の保守管理業者に、レール60の清掃または点検を依頼する通知を出力する。保守管理業者は、当該通知を受けた場合に、例えば、レール60の清掃、点検、または部品交換等を行う。通知の要否の条件となる閾値の値は、特に限定されるものではない。また、当該通知は、サービスコールともいう。例えば、出力機能515は、ネットワークを介して、保守管理業者のコンピュータに通知を出力する。なお、当該通知の出力は、制御装置15またはコンソール装置40を介して保守管理業者に送信されても良い。
また、レール60の清掃または点検を依頼する通知は、自動的に保守管理業者へ送信されなくとも良い。例えば、出力機能515は、コンソール装置40に、レール60の清掃または点検を依頼する通知を出力し、後述のコンソール装置40の処理回路44が、ディスプレイ42に、レール60の清掃または点検を保守管理業者に依頼することを推奨する通知を表示しても良い。なお、本実施形態において「通知」という場合には、文字等による表示だけではなく、音声による通知も含むものとする。
図1に戻り、寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、天板支持フレーム34とを備えている。基台31は、天板支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動させるモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、コンソール装置40による制御、または制御装置15による制御に従い、天板33を移動する。天板支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、天板支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
コンソール装置40は、架台装置10の制御、および架台装置10によるスキャン結果に基づくCT画像データの生成等を実行する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。メモリ41は、記憶部の一例である。ディスプレイ42は、表示部の一例である。入力インターフェース43は入力部の一例である。
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムを記憶する。メモリ41は、プリスキャンにより生成されたボリュームデータを記憶する。
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイまたは他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。
なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、入力部の一例である。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、処理回路44は、例えば、GPU、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス等のプロセッサにより実現されてもよい。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
図1に示すように、コンソール装置40の処理回路44は、制御機能441と、前処理機能442と、再構成処理機能443と、表示制御機能444とを備える。制御機能441は、制御部の一例である。また、前処理機能442は前処理部の一例である。再構成処理機能は再構成処理部の一例である。また、前処理機能442および再構成処理機能443を総称して生成部としても良い。表示制御機能444は、表示制御部の一例である。また、表示制御機能444を、本実施形態における出力部の一例としても良い。あるいは、移動制御装置50の出力機能515と、コンソール装置40の処理回路44の表示制御機能444とを総称して出力部の一例としても良い。
制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各種処理を制御する。具体的には、制御機能441は、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、制御機能441は、X線高電圧装置14、X線検出器12、制御装置15、移動制御装置50、DAS18及び寝台駆動装置32の動作を制御することで、架台装置10における被検体Pを通過したX線の収集処理を制御する。
前処理機能442は、DAS18から転送された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータを生データ(検出データ)、前処理後のデータを投影データと称する。
再構成処理機能443は、前処理機能442によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。
表示制御機能444は、メモリ41が記憶する各種画像データに基づく画像などをディスプレイ42に表示させる。また、表示制御機能444は、移動制御装置50によって判定されたレール60の区間ごとの清掃要否に基づいて、レール60の清掃の要否をディスプレイ42に表示させる。表示のタイミングは、例えば、信号強度チェックにおいて“要清掃”と判定された区間が存在した後に、操作者によってX線CT装置1のウォームアップが実行された場合である。
ウォームアップとは、X線管11を安定して使用するために、検査前に被検体Pが載置されていない状態でスキャンを実行することである。ウォームアップは例えば、1日の初回の検査の前に実行される。また、1日の間でも、前回のスキャンから時間が空いた場合には、ウォームアップが実行される場合がある。
図7は、本実施形態に係るディスプレイ42の表示の一例を示す図である。表示制御機能444は、例えば、X線CT装置1がウォームアップを実行する際に、前回のスキャンの際の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在したか否かを判定する。なお、回のスキャンの際の信号強度チェックにおけるレール60の区間ごとの清掃要否の判定結果は、例えばメモリ41に保存されているものとする。表示制御機能444は、“要清掃”と判定された区間が存在した場合、ディスプレイ42に、“要清掃”と判定された区間が存在することを表す通知400を表示させる。
なお、表示の態様は図7に示す例に限定されるものではない。例えば、表示制御機能444は、レール60の区間ごとに、異物の付着の状態を“良”、“可”、“要清掃”の3段階に分類した結果を、ディスプレイ42に表示しても良い。
また、表示制御機能444は、移動制御装置50から、レール60の清掃または点検を依頼する通知を受信した場合には、ディスプレイ42に、レール60の清掃または点検を保守管理業者に依頼することを推奨する通知を表示しても良い。
次に、以上のように構成された本実施形態におけるX線CT装置1で実行される清掃要否判定処理の流れについて説明する。
図8は、本実施形態に係る清掃要否判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態においては、技師等の操作者がウォームアップ実行の操作をした場合に、このフローチャートの処理は開始する。
まず、制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、架台装置10を制御してウォームアップを開始する(S1)。例えば、S1は、1日の初回のスキャンの前のウォームアップ処理の実行であるものとする。
ここで、表示制御機能444は、前回のスキャンの際の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在したか否かを判定する(S2)。
表示制御機能444は、前回のスキャンの際の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在した場合(S2“Yes”)、ディスプレイ42に、“要清掃”の通知400を表示する(S3)。また、出力機能515は、レール60の複数の区間ごとの清掃要否の判定結果に応じて、レール60の側面に設けられた表示器80の色を変化させる。なお、出力機能515による表示器80の色の変化は、通常のウォームアップ時には必須ではなく、保守管理業者の点検時に実行されれば良い。
そして、制御機能441は、操作者によってレール60の清掃を実行する操作が入力されたか否かを判定する(S4)。
制御機能441は、清掃実行の操作が入力されたと判定した場合(S4“Yes”)、移動制御装置50に清掃実行の指示を出力する。この場合、移動制御装置50の処理回路500の清掃制御機能513は、清掃機構53を制御して、清掃が必要な区間の清掃を実行する(S5)。例えば、清掃制御機能513は、清掃機構53および移動ベース110の駆動機構に対して、レール60に含まれる複数の区間のうち、判定機能514によって清掃が必要と判定された区間を清掃するように指示する制御信号を出力する。
また、制御機能441が清掃実行の操作が入力されなかったと判定した場合(S4“No”)、例えば、操作者によって清掃を実行しないことが入力された場合、(S4“No”)、清掃は実行されずに次のS6の処理に進む。なお、このフローチャートでは、操作者が清掃の実行を指示する例を説明しているが、操作者の指示に寄らず、自動的に清掃を開始する構成を採用しても良い。
前回のスキャンの際の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在しかった場合(S2“No”)、ウォームアップ時の清掃は事項されず、スキャンの処理に進む。スキャンが開始すると、移動制御装置50の移動制御機能512は、移動ベース110の駆動機構を制御して移動ベース110および架台装置10を移動させる。
移動制御装置50の判定機能514は、移動制御機能512による移動が開始するか否かを、例えばコンソール装置40からのスキャン開始の制御信号に基づいて判定する(S6)。移動ベース110および架台装置10の移動開始前と判定した場合、判定機能514は、移動開始まで待機する(S6“No”)。なお、ウォームアップからS6までの間には、被検体Pの載置などの作業が行われる。
判定機能514は、移動ベース110および架台装置10の移動が開始する場合(S6“Yes”)、移動ベース110および架台装置10の移動とともに、レール60の各区間における信号強度チェックを開始する(S7)。
そして、架台装置10によるスキャン開始され(S8)、スキャン終了まで(S9)に、移動制御機能512は、移動ベース110および架台装置10を、レール60上を水平移動させる。スキャン中の移動ベース110および架台装置10の移動と共に、判定機能514は、レール60の各区間における信号強度チェックを継続する。また、スキャン終了後、移動制御機能512は、移動ベース110および架台装置10を初期位置に戻す。判定機能514は、復路においても、信号強度チェックを行っても良い。
移動ベース110および架台装置10の移動が終了すると(S10)、判定機能514による信号強度チェックも終了する(S11)。
そして、判定機能514は、レール60の各区間の信号強度チェック結果において、“要清掃”の区間があったか否かを判定する(S12)。
“要清掃”の区間があった場合には(S12“Yes”)、出力機能515は、直前のスキャン時の信号強度チェックを含む過去の規定の回数の信号強度チェックにおいて、“要清掃”と判定された区間が存在した頻度が閾値以上か否かを判定する(S13)。出力機能515は、“要清掃”と判定された区間が存在した頻度が閾値以上となった場合(S13“Yes”)、保守管理業者に、レール60の清掃または点検を依頼する通知を出力する(S14)。
また、出力機能515は、“要清掃”と判定された区間が存在した頻度が閾値未満である場合(S13“No”)、現段階では保守管理業者に通知をしない。
そして、コンソール装置40の制御機能441は、次のスキャンが実行されるか否かを判定する(S15)。次のスキャンが実行される場合であって(S15“Yes”)、スキャン前にウォーミングアップが実行される場合(S16“Yes”)、S1の処理に戻る。また、次のスキャンが実行される場合であって(S15“Yes”)、スキャン前にウォーミングアップが実行されない場合(S16“No”)、S6の処理に戻る。
また、次のスキャンが実行されない場合(S15“No”)、このフローチャートの処理は終了する。
このように、本実施形態のX線CT装置1は、レール60上の架台装置10の位置を計測するセンサ52が検出した反射光の強度に基づくレール60の清掃要否に関する情報を出力する。このため、本実施形態のX線CT装置1によれば、センサ52が異物によって位置計測エラーを発生させる前に、X線CT装置1の移動ベース110および架台装置10の位置を計測するために用いられるスケールテープ51近傍の清掃の要否を容易に検出することができる。
一般に、レールは検査室の床面に埋設されているため、埃等の異物がスケールテープに付着しやすい環境にある。また、操作者等が目視によってスケールテープの異物の有無を確認することは作業負荷が高い。また、仮に、異物の付着の有無に関わらず、架台装置の移動の際に常にスケールテープの拭き取り等の清掃を実行すると、必要以上にスケールテープに負荷をかける恐れがある。また、エアーの吹きかけ等の非接触の清掃方法を採用する場合は、該エアーによって吹き上がった異物が新たにスケールテープに付着する可能性がある。これに対して、本実施形態のX線CT装置1は、センサ52が検出した反射光の強度によってレール60の清掃要否を自動的に判定し、清掃が必要な場合にのみ、操作者に清掃を促すことができるため、スケールテープ51に必要以上の負荷をかけずに効率的にスケールテープ51近傍の清掃を行うことが可能となる。
また、本実施形態のX線CT装置1では、センサ52は、レール60の複数の区間ごとの反射光の強度を計測し、X線CT装置1は、レール60の複数の区間のうち、反射光の強度が閾値以下の区間を、要清掃と判定する。このため、本実施形態のX線CT装置1によれば、スキャンのために架台装置10を移動させる際に、レール60上の架台装置10の位置を計測する際に読み取った反射光を、清掃要否の判定に活用することができる。このため、本実施形態のX線CT装置1によれば、清掃要否のチェックをスキャンの実行の度に実行することができ、チェック頻度を向上させることができる。
また、本実施形態のX線CT装置1は、架台装置10が被検体Pの撮像のために移動する際に、レール60の清掃要否を判定し、次回のウォームアップの際に、判定結果を出力する。レール60の清掃の際には架台装置10を移動させることになるため、被検体Pが天板33に載置されておらず、かつ架台装置10を移動可能なウォームアップは、清掃をするタイミングに適している。本実施形態のX線CT装置1によれば、ウォームアップ時に、操作者の指示に応じて清掃を実施することにより、効率的に清掃を実施することができる。
また、本実施形態のX線CT装置1は、レール60の複数の区間ごとの反射光の強度に応じて、レール60の複数の区間ごとの清掃を要する度合いを出力する。このため、本実施形態のX線CT装置1によれば、清掃の必要性の度合を、操作者または保守管理業者が容易に把握することができる。
また、本実施形態のX線CT装置1では、レール60における清掃の要否を表示することにより、操作者または保守管理者に清掃の要否を容易に把握させることができる。
例えば、本実施形態のX線CT装置1は、レール60の外部側面に、レールの規定の区間ごとに設けられた複数の表示器80の各々に、各区間における清掃の要否を表示させる。このため、X線CT装置1の清掃または点検を行う保守管理者は、異物の付着等によって信号強度が低下する区間を、容易に特定することができる。
また、例えば、本実施形態のX線CT装置1は、コンソール装置40に設けられたディスプレイ42にレール60における清掃の要否を表示することにより、スキャンを実行する操作者に、清掃の要否を容易に把握させることができる。
また、本実施形態のX線CT装置1は、レール60に含まれる複数の区間のうち、清掃が必要と判定された区間を清掃するように、清掃機構53を制御する。このため、本実施形態のX線CT装置1によれば、異物の付着等によって清掃の必要がある区間に限定して清掃を実行することができるため、スケールテープ51に必要以上に負荷をかけることを低減することができる。
また、本実施形態のX線CT装置1は、レール60の清掃が必要であると判定される頻度に基づいて、レール60の清掃または点検を依頼する通知を出力する。例えば、清掃機構53によって清掃を実施しているにも関わらず、頻繁に“要清掃”の判定が出る場合、清掃機構53では除去することが困難な異物が付着している可能性、あるいは、スケールテープ51自体に破損が生じている可能性がある。このような場合、専門の保守管理業者などに依頼することにより、清掃機構53による清掃では解決が困難な状態を解消することができる場合がある。また、X線CT装置1はこのような通知を表示させることにより、操作者が保守管理業者に依頼すべき状態か否かの判断に迷う場合に、操作者の意思決定を支援することができる。
(変形例1)
なお、上述の実施形態では、X線CT装置1を医用画像診断装置の一例としたが、他のモダリティを医用画像診断装置の一例としても良い。例えば、PET(Positron Emission computed Tomography)装置を医用画像診断装置の一例としても良い。
(変形例2)
上述の実施形態では、架台装置10および移動ベース110を移動部の一例としたが、移動部はこれに限定されるものではない。
例えば、寝台装置30が、移動部の一例であっても良い。この場合、例えば、寝台装置30は、検査室に埋設されたレールにそって水平移動し、寝台装置30の位置が、リニアスケールによって計測される構成となる。なお、1つのX線CT装置1に、複数の移動部が設けられても良い。
(変形例3)
上述の実施形態では、スケールテープ51とセンサ52とを備えるリニアスケールを例としたが、光学式の読み取りセンサを含む構成であればこれに限定されるものではなく、他の位置計測装置を採用しても良い。
(変形例4)
上述の実施形態では、処理回路500によって実現される出力機能515または処理回路44によって実現される表示制御機能444を出力部の一例としたが、出力部はハードウェア構成を表すものとしても良い。例えば、表示器80またはディスプレイ42が、出力部の一例であっても良い。
(変形例5)
上述の実施形態において移動制御装置50の機能として説明した機能は、制御装置15またはコンソール装置40の処理回路44で実行されても良い。また、制御装置15またはコンソール装置40の処理回路44の機能として説明した機能が、移動制御装置50で実行されても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像診断装置の移動部の位置を計測するためのスケール近傍の清掃の要否を容易に検出することができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。