[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法を説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
本実施形態に係る医用画像処理装置は、例えば核医学診断装置に搭載される。核医学診断装置は、検出器リング内の複数の検出器モジュールにより、放射性同位体を投与された被検体から放射される放射線を検出する。複数の検出器モジュールは、検出器リングにおいて、リング形状に配列されている。核医学診断装置は、例えば、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)装置やPET/コンピュータ断層撮影(CT)装置、PET/磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、単光子放射コンピュータ断層撮影(Single Photon Emission CT:SPECT)装置、SPECT/CT装置、SPECT/MRI装置である。なお、医用画像処理装置が搭載された核医学診断装置を医用画像処理装置と表現してもよい。
以下、PET装置に搭載されている医用画像処理装置及びPET装置における医用画像処理方法を一例として説明する。
図1は、本実施形態に係るPET装置1の構成の一例を示す図である。図2は、図1のガントリ10に搭載される検出器リング11の模式的な縦断面図である。
図1に示すように、PET装置1は、ガントリ10、寝台50及びコンソール70を有する。なお、説明の都合上、図1にはガントリ10が複数描画されている。典型的には、ガントリ10及び寝台50は、共通の検査室に設置され、コンソール70は、検査室に隣接する制御室に設置される。
ガントリ10は、被検体PをPET撮像する撮像装置である。ガントリ10は、図1及び図2に示すように、複数の検出器リング11、複数の信号処理回路13及び同時計数回路15を有する。
複数の検出器リング11は、図2に示すように、ガントリ10において、円周の中心軸Zに沿って配列されている。図2においては、例示のため、3つの検出器リング11が示されている。検出器リング11の開口部には、画像視野(FOV:field of view)が形成される。被検体Pの撮像部位がFOVに入るように、被検体Pが載置された天板53が検出器リング11の開口部に挿入される。被検体Pは、体軸が中心軸Zに一致するように天板53に載置される。被検体Pには、PET撮像のため、放射性同位元素で標識された薬剤が注入される。各検出器リング11は、図2に示すように、中心軸Z周りの円周上に配列される複数の検出器110を有する。ここで、検出器110は、PET検出器の一例である。なお、複数の検出器110の配列は、図1及び図2に示すリング形状に限定されず、例えば、楕円状、三角形状等であってもよい。複数の検出器110の各々は、被検体Pの内部から放出される対消滅ガンマ線を検出し、検出された対消滅ガンマ線の光量に応じたパルス状の電気信号を生成する。具体的には、複数の検出器110は、複数のシンチレータ113と複数の光電子増倍管115とを有する。
複数のシンチレータ113の各々は、被検体Pの内部に注入された放射性同位元素に由来する対消滅ガンマ線を受けてシンチレーション光を発生する。複数のシンチレータ113は、検出器110において、例えば2次元状に配列される。各シンチレータ113は、各シンチレータ113の長軸方向が検出器リング11の径方向に略一致するように配置される。本実施形態に係るシンチレータ113は、既存の如何なる種類のシンチレータ材料により形成されてもよい。例えば、シンチレータ113は、NaI(ヨウ化ナトリウム)やBGO(ビスマス酸ジャーマネイト)、LSO(ケイ酸ルテチウムにセリウムを一定量添加したもの)、LaBr3:Ce、LYSO(LSOとケイ酸イットリウムの混晶)等のシンチレータ材料により形成される。シンチレータ113の材料としては、ルテチウム結晶がよく用いられる。上述の材料以外にも、例えば、シンチレータ113は、例えば、ガリウム系結晶やガーネット系結晶により形成されてもよい。
複数の光電子増倍管115の各々は、中心軸Zに直交する径方向に関する、シンチレータ113の一端部に設けられている。典型的には、シンチレータ113と光電子増倍管115との間には、ライトガイド(図示せず)が設けられている。検出器リング11に含まれる複数のシンチレータ113と複数の光電子増倍管115とは、同心円(同心円筒)状に配列される。シンチレータ113において発生されたシンチレーション光は、シンチレータ113を伝播し光電子増倍管115に向かう。光電子増倍管115は、シンチレーション光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。発生された電気信号は、図1に示すように、信号処理回路13に供給される。また、光電子増倍管115はシリコン光電子増倍素子(SiPM)であってもよい。
なお、検出器リング11の列数や検出器リング11内の検出器110の数、検出器110内のシンチレータ113の数、検出器110内の光電子増倍管115の数は、図1及び図2に示される数に限定されない。
複数の信号処理回路13は、それぞれ複数の検出器110の電気信号に基づいてシングルイベントデータを生成する。具体的には、信号処理回路13は、検出時刻計測処理、位置計算処理及びエネルギ計算処理を施す。信号処理回路13は、検出時刻計測処理、位置計算処理及びエネルギ計算処理を実行可能に構成されたApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)等により実現される。
信号処理回路13は、検出時刻計測処理により、検出器110によるガンマ線の検出時刻を計測する。具体的には、信号処理回路13は、検出器110からの電気信号の波高値をモニタリングし、波高値が予め設定された閾値を超える時刻を検出時刻として計測する。換言すれば、信号処理回路13は、波高値が閾値を超えたことを検知することにより電気的に消滅ガンマ線を検出する。
信号処理回路13は、位置計算処理により、検出器110からの電気信号に基づいて対消滅ガンマ線の入射位置を計算する。消滅ガンマ線の入射位置は、消滅ガンマ線が入射したシンチレータの位置座標に対応する。
信号処理回路13は、エネルギ計算処理により、検出器110からの電気信号に基づいて、検出した対消滅ガンマ線のエネルギ値を計算する。シングルイベントに関する検出時刻のデータと位置座標のデータとエネルギ値のデータとは関連付けられる。シングルイベントに関するエネルギ値のデータと位置座標のデータと検出時刻のデータとの組合せは、シングルイベントデータと呼ばれている。シングルイベントデータは、消滅ガンマ線が検出される毎に次々に生成される。生成されたシングルイベントデータは、同時計数回路15に供給される。
同時計数回路15は、信号処理回路13からのシングルイベントデータに同時計数処理を施す。ハードウェア資源としては、同時計数回路15は、同時計数処理を実行可能に構成されたASICやFPGA、CPLD、SPLD等により実現される。同時計数回路15は、同時計数処理により、繰り返し供給されるシングルイベントデータの中から、予め定められた時間枠内に収まる2つのシングルイベントに関するシングルイベントデータを繰り返し特定する。この対のシングルイベントは、同一の対消滅点から発生された対消滅ガンマ線に由来すると推定される。対のシングルイベントは、まとめて同時計数イベントと呼ばれる。この対消滅ガンマ線を検出した対の検出器110(より詳細にはシンチレータ)を結ぶ線は、Line of Response(LOR)と呼ばれる。LORを構成する対のイベントに関するイベントデータは、同時計数イベントデータと呼ばれる。同時計数イベントデータとシングルイベントデータとは、コンソール70に伝送される。なお、同時計数イベントデータとシングルイベントデータとを特に区別しないときはPETイベントデータと呼ぶことにする。
なお、上記構成において信号処理回路13と同時計数回路15とは、ガントリ10に含まれるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、同時計数回路15又は信号処理回路13と同時計数回路15との双方が、ガントリ10とは別体の装置に含まれていてもよい。また、ガントリ10に搭載される複数の信号処理回路13に対して1つの同時計数回路15が設けられていてもよいし、ガントリ10に搭載される複数の信号処理回路13を複数のグループに区分し、各グループに対して1つの同時計数回路15が設けられていてもよい。
寝台50は、スキャン対象の被検体Pを載置し、載置された被検体Pを移動させる。寝台50は、基台51、支持フレーム52、天板53及び寝台駆動装置54を有する。基台51は、床面に設置される。基台51は、支持フレーム52を、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。支持フレーム52は、基台51の上部に設けられるフレームである。支持フレーム52は、天板53を中心軸Zに沿ってスライド可能に支持する。天板53は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板である。寝台駆動装置54は、寝台50の筐体内に収容される。寝台駆動装置54は、被検体Pが載置された支持フレーム52と天板53とを移動させるための動力を発生するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動装置54は、コンソール70等による制御に従い作動する。
コンソール70は、ガントリ10及び寝台50を制御するコンピュータを有する。コンソール70は、処理回路71、PETデータメモリ72、入力回路73、表示回路74及びメモリ75を有する。処理回路71、PETデータメモリ72、入力回路73、表示回路74及びメモリ75間のデータ通信は、例えば、有線のバス又は無線を介して行われる。ここで、処理回路71は、医用画像処理装置の一例である。なお、コンソール70が、医用画像処理装置の一例であると表現されてもよい。
処理回路71は、PET装置1の全体の動作を制御する。処理回路71は、検出器110が故障した状態で得られた故障画像の補正に関するプログラム(以下、故障画像補正プログラムと呼ぶ)を実行して、機械学習モデルの学習及び/又は強化学習に係る処理や機械学習モデルを用いた故障画像の補正に係る処理を実行する。処理回路71は、ハードウェア資源として、Central Processing Unit(CPU)、Micro Processing Unit(MPU)、Graphics Processing Unit(GPU)等のプロセッサと、Read Only Memory(ROM)やRandom Access Memory(RAM)等のメモリとを有する。
本実施形態に係る処理回路71は、故障画像補正プログラムにより、再構成機能711、画像処理機能712、撮像制御機能713、表示制御機能714及び補正処理機能716等を実行する。また、処理回路71は、学習プログラムにより、モデル生成機能715等を実行する。ここで、再構成機能711を実現する処理回路71は、取得部の一例である。また、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、特定部の一例である。また、補正処理機能716を実現する処理回路71は、処理部の一例である。
再構成機能711において、処理回路71は、PETデータメモリ72から取得した同時計数イベントデータに基づいて、被検体Pに投与された陽電子放出核種の分布を示すPET画像を再構成する。ここで、PET画像は、故障画像及び模擬故障画像を含む。例えば、処理回路71は、PETデータメモリ72から取得した故障データに基づいて、PET画像(以下、故障画像と呼ぶ)を再構成する。故障データは、いずれかの検出器110が故障している状態で得られた同時計数イベントデータである。例えば、処理回路71は、モデル生成機能715の生成する故障データ(以下、模擬故障データと呼ぶ)に基づいて、故障画像(以下、模擬故障画像と呼ぶ)を再構成する。画像再構成アルゴリズムとしては、Filtered Back Projection(FBP)法や逐次近似再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。処理回路71は、生成されたPET画像や模擬故障画像、故障画像をメモリ75及び/又は表示回路74へ出力する。ここで、故障画像は、第1の医用データの一例である。また、故障画像の再構成に用いられた故障データが収集されたPET撮像時に故障していた検出器110は、第1のPET検出器の一例である。
画像処理機能712において、処理回路71は、再構成機能711により再構成されたPET画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路71は、PET画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、Multi-Planer Reconstruction(MPR)処理、Curved MPR(CPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
撮像制御機能713において、処理回路71は、PET撮像を行うためにガントリ10と寝台50とを同期的に制御する。処理回路71は、ガントリ10による位置決めスキャンや撮像範囲の設定を実行可能である。また、処理回路71は、縮退運転時の各部の動作を制御する。処理回路71は、縮退運転時には、故障した検出器110が停止した状態でPET撮像に係る制御を行う。処理回路71は、ガントリ10から出力されたエラーメッセージに基づいて、故障した検出器110を停止させる。
表示制御機能714において、処理回路71は、種々の情報を表示回路74に表示する。例えば、処理回路71は、再構成機能711により再構成されたPET画像を表示回路74に表示する。また、処理回路71は、各種設定及び入力のためのGUIを表示回路74に表示する。また、処理回路71は、縮退運転時には、機械学習モデルを用いた画像の補正が行われたことの通知や故障した検出器110の検出器番号等を表示回路74に表示する。
モデル生成機能715において、処理回路71は、PETデータメモリ72から読み出した収集データを用いて検出器ごとの模擬故障データを生成する。処理回路71は、模擬故障データから再構成された模擬故障画像と、元の収集データから再構成された正常画像と、模擬故障データに対応する検出器番号とを用いて学習用データを生成する。処理回路71は、生成された学習用データを用いて機械学習モデルを学習及び/又は強化学習する。ここで、模擬故障画像は、学習用の第1の医用データの一例である。また、正常画像は、学習用の第2の医用データの一例である。また、模擬故障データに対応する検出器番号が示す検出器110は、第1のPET検出器の一例である。
補正処理機能716において、処理回路71は、取得した故障検出器番号に従って、メモリ75に記憶された機械学習モデルを選択する。処理回路71は、選択された機械学習モデルに、再構成機能711が生成した故障画像を入力する。処理回路71は、故障画像が入力された学習済みの機械学習モデルの出力を、補正画像として取得する。処理回路71は、生成された補正画像をメモリ75及び/又は表示回路74へ出力する。ここで、補正画像は、第2の医用データの一例である。
なお、処理回路71は、ASICやFPGAにより実現されてもよい。また、処理回路71は、CPLD又はSPLDにより実現されてもよい。
なお、各機能711~716は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能711~716を実現するものとしても構わない。
PETデータメモリ72は、ガントリ10から伝送されたシングルイベントデータ及び同時計数イベントデータを記憶する記憶装置である。PETデータメモリ72は、Hard Disk Drive(HDD)やSolid State Drive(SSD)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、PETデータメモリ72は、HDDやSSD等以外にも、Compact Disc(CD)-ROMドライブやDigital Versatile Disc(DVD)ドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。また、PETデータメモリ72の記憶領域は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。PETデータメモリ72に記憶されるイベントデータは、リストモードデータやヒストグラムデータ等、いずれのデータ形式であってもよい。本実施形態では、PETデータメモリ72に記憶されたこれらのデータを総称して、収集データと記載する。
入力回路73は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路71に出力する。入力回路73としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力回路73は、入力機器からの出力信号を、バスを介して処理回路71に供給する。具体的には、入力回路73は、被検体Pに対するPET撮像の実施に先立って、操作者の指示に従って検査名等の検査内容や撮像条件等を入力する。なお、検査内容は、放射線情報システム(Radiology Information System:RIS)からネットワークを介して入力された検査のオーダ情報であってもよい。このとき、処理回路71は、オーダ情報から検査内容を抽出する。また、入力回路73は、PET画像の用途又は画質を、操作者の指示により入力してもよい。
表示回路74は、表示制御機能714を実現する処理回路71による制御を受けて、種々の情報を表示する。表示回路74は、例えば、検査内容及び撮像条件等の入力に関するGraphical User Interface(GUI)を表示する。表示回路74は、再構成機能711を実現する処理回路71により生成されたPET画像及び画像処理機能712を実現する処理回路71により生成された医用画像を表示する。なお、表示回路74は、例えば、画質又は用途等の入力に関するGUIを表示してもよい。表示回路74は、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示対象を表すデータ(表示情報)を映像信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、種々の任意の1又は2以上のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えば表示機器として、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescence Display:OELD)、Light Emitting Diode(LED)ディスプレイ又はプラズマディスプレイが適宜利用可能である。
なお、表示回路74は、制御室の如何なる場所に設けられてもよい。また、表示回路74は、デスクトップ型でもよいし、無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、表示回路74の表示機器として、1又は2以上のプロジェクタが用いられてもよい。
メモリ75は、HDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ75は、HDDやSSD等以外にも、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。また、メモリ75の記憶領域は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
メモリ75は、入力回路73を介して入力された各種条件や情報、処理回路71において実行される複数の機能各々に対応するプログラム及び処理回路71において各機能が実行されるときの処理中のデータを記憶する。また、メモリ75は、再構成機能711により生成された各種のPET画像、画像処理機能712により生成された表示画像及びモデル生成機能715により生成された模擬故障データや学習用データを記憶する。また、メモリ75は、機械学習モデルを記憶する。本実施形態に係る機械学習モデルは、複数の検出器110に対応する複数のモデルを含む。
以下、本実施形態に係るPET装置1の各部の動作例について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る学習用データセットの生成について説明する。図3は、図1のPET装置1において実行される学習用データ生成処理の一例を示すフローチャートである。図4は、図3の学習用データ生成処理において生成される学習用データセット810を用いた機械学習モデル820の学習及び/又は強化学習について説明するための図である。
本処理は、PET装置1においてPET撮像が実施された後に行われるとする。つまり、本処理が開始されるとき、PET撮像により得られた収集データは、PETデータメモリ72に記憶されているとする。ここで、当該収集データは、同時計数後のイベントデータであるとする。また、当該収集データは、全ての検出器110が正常に動作している状態においてPET撮像により得られた、PET撮像の開始から終了までのイベントデータのセットであるとする。
以下、説明の簡単のために、本実施形態に係るPET装置1において、複数の検出器リング11の各々は、N個の検出器110を有するとする。N個の検出器110には、それぞれ、検出器番号1~検出器番号Nが割り当てられているとする。
また、以下の説明は、複数の検出器リング11のうち、任意の検出器リング11に関して行うものとする。このとき、他の検出器リング11も同様に取り扱われるものとする。例えば、任意の1つの検出器110に関する記載は、体軸方向に並ぶ複数の検出器110に関する記載とみなすことができる。
ステップS101において、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、PETデータメモリ72から収集データを読み出す。
ステップS102において、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS101で読み出した収集データを用いて、模擬故障データを生成する。ここで、模擬故障データは、複数の検出器110のうちいずれかの検出器110が故障したときに得られる収集データを模擬したデータである。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、N個の検出器110に関して、それぞれの検出器110に係る収集データを除くことにより、N個の模擬故障データを生成する。例えば、処理回路71は、収集データから、模擬的に故障した任意の検出器110に関するLORのイベントデータを除去することにより、当該検出器に関する模擬故障データを生成する。
ステップS103において、再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS101で読み出された収集データに関して画像再構成を行うことにより、正常画像813を生成する。つまり、正常画像813は、元の収集データの再構成により得られた再構成画像である。すなわち、正常画像813は、全ての検出器110が正常に動作している状態において収集されたイベントデータに基づく再構成画像である。
ステップS104において、再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS102で生成されたN個の模擬故障データの各々に関して画像再構成を行うことにより、模擬故障画像817を生成する。つまり、模擬故障画像817は、模擬故障データの再構成により得られた再構成画像である。
ステップS105において、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、学習用データセット810を生成する。図4に示すように、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS104で生成されたN個の模擬故障画像817の各々を、各検出器番号815及びステップS103で生成された正常画像813に関連付けて、N個の学習用データ811を生成する。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、生成されたN個の学習用データ811を含む学習用データセット810を生成する。
ステップS106において、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS105で生成された学習用データセット810をメモリ75に記憶する。
なお、任意の収集データに関して学習用データ生成処理が行われる場合を例として説明したが、学習用データセット810には、複数セットの収集データから生成された複数セットの学習用データ811が含まれる。複数セットの収集データから生成された複数セットの学習用データ811は、検出器番号815ごとに関連付けられたり、グループ分けされたりして記憶されてもよい。
ここで、本実施形態に係る機械学習モデル820の学習及び/又は強化学習について説明する。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、メモリ75から、学習用データ生成処理により生成された学習用データセット810を読み出す。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、図4に示すように、検出器番号815ごとに、模擬故障画像817と正常画像813とを用いて機械学習モデル820を学習及び/又は強化学習する。具体的には、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、検出器番号815ごとに、機械学習モデル821の入力端に模擬故障画像817を入力し、出力端に正常画像813を入力する。このようにして、複数の検出器番号815に対応した複数の機械学習モデル821が生成される。つまり、機械学習モデル821は、検出器番号815ごとの機械学習モデル820であると表現できる。
次に、複数の検出器110のうちいずれかの検出器110の故障が検知されたときに実施される縮退運転における各部の動作例について説明する。図5は、図1のPET装置1において実行される縮退運転処理の一例を示すフローチャートである。図6は、図5の縮退運転処理において実行される機械学習モデル820を用いた画像補正について説明するための図である。
ステップS201において、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、縮退運転を実施するか否かを判定する。本判定では、例えばガントリ10からエラーメッセージを受信したときに縮退運転を実施すると判定される。エラーメッセージは、例えば、いずれかの検出器110の出力が検知できない等、いずれかの検出器110の出力が所定の閾値以下であるときに出力される。所定の閾値は、ガントリ10の信号処理回路13内の記憶領域やメモリ75等に予め設定されて記憶されているとする。処理は、縮退運転を実施すると判定されるまで、本ステップの処理を繰り返す。このとき、PET装置1では、通常のPET撮像等が実施される。処理は、縮退運転を実施すると判定された場合はステップS202へ進む。
なお、本ステップにおいて縮退運転を実施すると判定されたとき、表示制御機能714を実現する処理回路71は、縮退運転が実施されることをユーザへ通知してもよい。このとき、表示制御機能714を実現する処理回路71は、機械学習モデルを用いて画像の補正が行われることをさらにユーザへ通知してもよい。
なお、エラーメッセージは、いずれかの検出器110の出力が所定の閾値以下であるときに限らず、いずれかの検出器110の温度が所定の閾値以上であるとき、いずれかの検出器110の出力が所定の閾値以上であるとき等に出力されてもよい。
なお、本判定は、エラーメッセージを受信したか否かに限らず、ユーザ操作に応じた入力回路73の出力に基づいて行われてもよい。このとき、表示制御機能714を実現する処理回路71は、縮退運転の実施を案内する通知に先立って、操作用のGUIを表示する。
以下、ステップS201において、検出器番号1~検出器番号NのN個の検出器110のうち、検出器番号1及び検出器番号3の2つの検出器110に関して故障が検知された場合を例として説明を続ける。
ステップS202において、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110を停止させる。ここで、検出器110の停止は、例えば、信号処理回路13が当該検出器110から検出値の読出しを行わないことにより実現される。
なお、検出器110の停止は、例えば、当該検出器110に関して、電源の供給を止めることにより実現されてもよいし、同時計数を行わないことにより実現されてもよいし、収集データを画像再構成に使用しないことにより実現されてもよい。
ステップS203において、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110が停止した状態で、PET撮像を実行する。PET撮像により、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110が停止した状態に関する故障データが収集される。故障データは、PETデータメモリ72に記憶される。なお、機械学習モデル820の学習に用いた模擬故障データは、本ステップで得られる故障データを模擬した収集データであると表現できる。
ステップS204において、再構成機能711を実現する処理回路71は、故障画像801を生成する。故障画像801は、PETデータメモリ72から読み出した故障データを再構成して得られた再構成画像である。本実施形態において故障画像801は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110が停止した状態において収集された故障データに基づく再構成画像である。すなわち、故障画像801は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110に関するLORのイベントデータが欠落した収集データのセットに基づく再構成画像である。従って故障画像801は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110に関するLORの欠落に起因するアーチファクト成分を有する。なお、機械学習モデル820の学習に用いた模擬故障画像817は、本ステップで生成される故障画像801を模擬した再構成画像であると表現できる。
ステップS205において、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障検出器番号803を取得する。故障検出器番号803は、ステップS203のPET撮像時に故障していた検出器110の検出器番号である。このことから、補正処理機能716を実現する処理回路71は、特定部の一例であるとも表現できる。
ステップS206において、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障検出器番号803に応じて機械学習モデル820を選択する。例えば、故障検出器番号803が検出器番号1及び検出器番号3であるとき、故障検出器番号803に応じて選択される機械学習モデル820は、検出器番号1に関する機械学習モデル821及び検出器番号3に関する機械学習モデル821である。図6に示すように、選択された機械学習モデル823において、検出器番号1に関する機械学習モデル821及び検出器番号3に関する機械学習モデル821は、直列に接続される。
ステップS207において、補正処理機能716を実現する処理回路71は、選択された機械学習モデル823を用いて、補正画像805を生成する。具体的には、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障画像801を検出器番号1に関する機械学習モデル821へ入力する。検出器番号1に関する機械学習モデル821の出力は、検出器番号3に関する機械学習モデル821へ入力される。補正処理機能716を実現する処理回路71は、検出器番号3に関する機械学習モデル821の出力を、補正画像805として取得する。このように、補正画像805は、故障画像801を入力としたときの、選択された機械学習モデル823の出力であり、機械学習モデル820の学習に用いた正常画像813の画質と同等の画質を有する画像であると表現できる。補正画像805は、検出器番号1及び検出器番号3の検出器110が正常に動作している状態、すなわち、全ての検出器110が正常に動作している状態において収集されたイベントデータに基づく再構成画像と同等の画質を有する。
ステップS208において、表示制御機能714を実現する処理回路71は、ステップS207で生成された補正画像805を表示回路74に表示する。ここで、表示回路74に表示される表示画像は、補正画像805に限らず、補正画像805が機械学習モデル820を用いて補正された画像であることを示す通知や補正前の故障画像801、故障検出器番号803等を含んでいてもよい。
このように、本実施形態に係る医用画像処理装置が搭載された核医学診断装置の一例であるPET装置1において、処理回路71は、いずれかの検出器110が故障している状態を想定した模擬故障画像817と、全検出器110が正常な状態での正常画像813とを用いて機械学習モデル820を検出器番号815ごとに学習及び/又は強化学習する。また、処理回路71は、故障検出器番号803に従って機械学習モデル820を選択する。また、処理回路71は、故障した検出器110に応じて選択された機械学習モデル820を用いて故障画像801を補正する。この構成によれば、検出器110が故障している状態であっても、正常時に相当する画質の画像データを生成することができる。
なお、図6に示す例では、検出器番号1に関する機械学習モデル821の後段に検出器番号3に関する機械学習モデル821が接続されているが、これに限らない。例えば、検出器番号3に関する機械学習モデル821の後段に検出器番号1に関する機械学習モデル821が接続されていてもよい。また、補正処理機能716を実現する処理回路71は、ユーザの入力に応じた入力回路73の出力に基づいて機械学習モデル821の順序を決定してもよい。このような構成であっても、上述と同様の効果が得られる。
なお、補正処理機能716を実現する処理回路71は、複数の順序で接続された機械学習モデル821から複数の補正画像805を取得してもよい。表示制御機能714を実現する処理回路71は、取得された複数の補正画像805を表示回路74に表示する。このような構成によれば、上述の効果に加えて、ユーザは、複数の補正画像805を確認して、より適切な補正画像805を選択することができるという効果がある。
また、メモリ75には、モデル選択のための機械学習モデルが記憶されていてもよい。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、故障検出器番号803と、ユーザにより選択された補正画像805の生成に用いられた機械学習モデル821の接続順序とを用いて、モデル選択のための機械学習モデルを学習及び/又は強化学習する。このとき、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障検出器番号803が入力されたモデル選択のための機械学習モデルの出力に従って、選択された機械学習モデル823を決定する。このような構成によれば、上述の効果に加えて、適切な補正画像805を簡易に生成できるという効果がある。
また、本実施形態に係る機械学習モデル820は、上述のモデル選択のための機械学習モデルを含んでいてもよい。このとき、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、故障画像801と、故障検出器番号803と、ユーザにより選択された補正画像805と、選択された補正画像805の生成に用いられた機械学習モデル821の接続順序とを用いて、機械学習モデル820を学習及び/又は強化学習する。このとき、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障画像801及び故障検出器番号803が入力された機械学習モデル820の出力を、補正画像805として取得する。このような構成によれば、上述の効果に加えて、適切な補正画像805をより簡易に生成できるという効果がある。
[第2の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
第1の実施形態では、故障検出器番号803に応じて、検出器番号815ごとに学習及び/又は強化学習された機械学習モデル820の機械学習モデル821を選択し、選択された機械学習モデル823を用いて故障画像801を補正する場合を例として説明した。一方で、機械学習モデルは、想定される故障パターンに応じた検出器番号の組合せに関して学習及び/又は強化学習されてもよい。
まず、本実施形態に係る学習用データセット830の生成について説明する。図7は、本実施形態に係る機械学習モデル840の学習及び/又は強化学習と、機械学習モデル840を用いた画像補正とについて説明するための図である。なお、以下の説明は、図3の第1の実施形態に係る学習用データ生成処理と比較しながら行う。
モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS101と同様にしてPETデータメモリ72から収集データを読み出す。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、読み出した収集データを用いて模擬故障データを生成する。本実施形態では、検出器110ごとの模擬故障データが生成されるステップS102とは異なり、想定される複数の故障パターンに応じた複数の模擬故障データが生成される。想定される故障パターンは、例えば、任意の1つの検出器110が故障している状態と、任意の2つ以上の検出器110が故障している状態とを含む。想定される故障パターンに応じた検出器110又は検出器110の組合せは、予め設定されてメモリ75に記憶されているとする。再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS103及びステップS104と同様にして、正常画像833及び複数の模擬故障画像837を生成する。つまり、正常画像833及び模擬故障画像837は、それぞれ、元の収集データ及び模擬故障データに関する画像再構成により得られた再構成画像である。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS105と同様にして、学習用データセット830を生成する。図7に示すように、学習用データセット830には、複数の故障パターンに応じた複数の学習用データ831が含まれる。各学習用データ831には、学習用データ811と同様に、正常画像833、検出器番号835及び模擬故障画像837が含まれる。生成された学習用データセット830は、メモリ75に記憶される。
次に、本実施形態に係る機械学習モデル840の学習及び/又は強化学習について、図7を参照して説明する。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、メモリ75から、学習用データ生成処理により生成された学習用データセット830を読み出す。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、図7に示すように、各学習用データ831を用いて機械学習モデル840を学習及び/又は強化学習する。具体的には、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、各学習用データ831に関して、機械学習モデル840の入力端に検出器番号835及び模擬故障画像837を入力し、出力端に正常画像833を入力する。このようにして、複数の故障パターンに対応した機械学習モデル840が生成される。
次に、本実施形態に係る縮退運転における各部の動作例について、図7を参照して説明する。なお、以下の説明は、図5の第1の実施形態に係る縮退運転処理と比較しながら行う。以下、検出器番号1~検出器番号NのN個の検出器110のうち、検出器番号3及び検出器番号5の2つの検出器110に関して故障が検知される場合を例として説明する。ここで、検出器番号3及び検出器番号5の2つの検出器110は、第1のPET検出器及び第2のPET検出器の一例である。
撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS201と同様にして、縮退運転を実施するか否かを判定する。縮退運転が開始された後、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS202と同様にして、故障が検知された検出器番号3及び検出器番号5の2つの検出器110を停止させる。撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS203と同様にして、PET撮像を実行し、故障データを取得する。再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS204と同様にして、取得された故障データに関する画像再構成により、故障画像801を生成する。補正処理機能716を実現する処理回路71は、ステップS205と同様にして、故障検出器番号803を取得する。
なお、本実施形態に係る機械学習モデル840は、第1の実施形態に係る機械学習モデル820とは異なり、検出器番号ごとに学習されていない。このため、本実施形態に係る縮退運転処理では、ステップS206に相当する処理は実行されない。
その後、補正処理機能716を実現する処理回路71は、機械学習モデル840を用いて補正画像805を生成する。具体的には、補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障画像801及び故障検出器番号803が入力された機械学習モデル840の出力を、補正画像805として取得する。表示制御機能714を実現する処理回路71は、ステップS208と同様にして、生成された補正画像805等を表示回路74に表示する。
このように、本実施形態に係る医用画像処理装置が搭載された核医学診断装置の一例であるPET装置1において、処理回路71は、複数の故障パターンを想定した模擬故障画像837と、検出器番号835と、全検出器110が正常な状態での正常画像833とを用いて機械学習モデル840を学習及び/又は強化学習する。また、処理回路71は、故障パターンに応じて学習された機械学習モデル840を用いて故障画像801を補正する。この構成によれば、故障した検出器110の組合せに対応する学習用データ831を用いて機械学習モデル840が学習されているため、正常時に相当する画質の画像データを、より精度良く生成することができる。
[第3の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
第1の実施形態では、検出器番号815ごとに機械学習モデル820が学習及び/又は強化学習される場合を例として説明した。一方で、機械学習モデルは、任意の1つの検出器110に関して学習及び/又は強化学習されてもよい。
まず、本実施形態に係る学習用データセット850の生成について説明する。図8は、本実施形態に係る機械学習モデル860の学習及び/又は強化学習と、機械学習モデル860を用いた画像補正とについて説明するための図である。なお、以下の説明は、図3の第1の実施形態に係る学習用データ生成処理と比較しながら行う。以下、検出器番号3の検出器110の故障を想定して機械学習モデルが学習及び/又は強化学習される場合を例として説明する。
モデル生成機能715を実現する処理回路71は、ステップS101と同様にしてPETデータメモリ72から収集データを読み出す。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、読み出した収集データを用いて模擬故障データを生成する。本実施形態では、検出器110ごとの模擬故障データが生成されるステップS102とは異なり、検出器番号3の検出器110に関する収集データを除くことにより、検出器番号3に関する模擬故障データが生成される。再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS103及びステップS104と同様にして、正常画像853及び模擬故障画像857を生成する。つまり、正常画像853及び模擬故障画像857は、それぞれ、元の収集データ及び検出器番号3に関する模擬故障データに関する画像再構成により得られた再構成画像である。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、検出器番号3に関する学習用データ851を生成する。本実施形態に係る学習用データセット850には、複数の収集データに関して同一の検出器110の故障を想定して生成された複数の学習用データ851が含まれ得る。学習用データ851は、正常画像853及び模擬故障画像857を含む。本実施形態に係る学習用データ851は、任意の1つの検出器110の故障を想定して生成されている。このため、学習用データ851には、ステップS105で生成された学習用データ811とは異なり、検出器番号は含まれていない。ただし、図8に示す例では、学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器110を示すために、学習用データ851内に検出器番号855が示されている。生成された学習用データセット850は、メモリ75に記憶される。
次に、本実施形態に係る機械学習モデル860の学習及び/又は強化学習について、図8を参照して説明する。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、メモリ75から、学習用データ生成処理により生成された学習用データセット850を読み出す。モデル生成機能715を実現する処理回路71は、図8に示すように、学習用データ851を用いて機械学習モデル860を学習及び/又は強化学習する。具体的には、モデル生成機能715を実現する処理回路71は、学習用データ851に関して、機械学習モデル860の入力端に模擬故障画像857を入力し、出力端に正常画像853を入力する。このようにして、任意の1つの検出器110の故障を想定した機械学習モデル840が生成される。
次に、本実施形態に係る縮退運転における各部の動作例について、図8を参照して説明する。なお、以下の説明は、図5の第1の実施形態に係る縮退運転処理と比較しながら行う。以下、検出器番号1~検出器番号NのN個の検出器110のうち、検出器番号5の検出器110に関して故障が検知される場合を例として説明する。
撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS201と同様にして、縮退運転を実施するか否かを判定する。縮退運転が開始された後、撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS202と同様にして、故障が検知された検出器番号5の検出器110を停止させる。撮像制御機能713を実現する処理回路71は、ステップS203と同様にして、PET撮像を実行し、故障データを取得する。再構成機能711を実現する処理回路71は、ステップS204と同様にして、取得された故障データに関する画像再構成により、故障画像801を生成する。補正処理機能716を実現する処理回路71は、ステップS205と同様にして、故障検出器番号803を取得する。
なお、本実施形態に係る機械学習モデル860は、第1の実施形態に係る機械学習モデル820とは異なり、検出器番号ごとに学習されていない。このため、本実施形態に係る縮退運転処理では、ステップS206に相当する処理は実行されない。一方で、本実施形態に係る縮退運転処理では、学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器110と、故障検出器番号803の示す実際に故障した検出器110とが異なり得る。
そこで、本実施形態に係る補正処理機能716を実現する処理回路71は、故障画像801を、学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器110の検出器番号855に相当する故障画像802に変換する。ここで、本実施形態に係る補正処理機能716を実現する処理回路71は、補正部の一例である。具体的には、補正処理機能716を実現する処理回路71は、検出器番号5に関する故障画像801に対して座標系を回転する回転処理を施すことにより、検出器番号3に相当する故障画像802を生成する。故障画像801全体が回転されてもよいし、故障画像801に含まれる、検出器番号5の検出器110に関するLORの欠落に起因するアーチファクト成分のみが回転されてもよい。ここで、回転処理は、検出器番号3の検出器110と、検出器番号5の検出器110との間の検出器リング11における取り付けの角度(検出器リング11の中心軸回りの角度)の差に基づいて行われる。検出器110の検出器リング11における取り付けの角度は、例えば、各検出器110から検出器リング11の中心に向かう方向により規定することができる。学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器110の検出器番号855及び各検出器110の取り付けの角度は、例えばメモリ75に記憶されている。
なお、各検出器110の取り付けの角度に限らず、学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器110に対する各検出器110の取り付けの角度の差が記憶されていてもよい。また、隣接する2つの検出器110に関する相対角度が検出器リング11の全周に亘って一定であるときには、隣接する2つの検出器110に関する相対角度が記憶されていてもよい。また、取り付けの角度(検出器リング11の中心軸回りの角度)は、故障を想定した検出器110の位置と相関がある。このため、取り付けの角度に代えて、取り付けの位置(検出器リング11内の位置)に関する情報が記憶されていてもよい。取り付けの角度や取り付けの位置に関する情報は、位置情報の一例である。
その後、補正処理機能716を実現する処理回路71は、機械学習モデル860を用いて検出器番号3に相当する補正画像804を生成する。具体的には、補正処理機能716を実現する処理回路71は、検出器番号3に相当する故障画像802が入力された機械学習モデル860の出力を、検出器番号3に相当する補正画像804として取得する。補正処理機能716を実現する処理回路71は、検出器番号3に相当する補正画像804に対して回転処理を施すことにより、検出器番号5に関する補正画像805を生成する。補正画像804に対して施される回転処理では、故障画像801に対して施された回転処理に応じて、補正画像804全体が回転されてもよいし、補正画像804に含まれる、検出器番号3に関する検出器110の欠落に起因するアーチファクト成分のみが回転されてもよい。表示制御機能714を実現する処理回路71は、ステップS208と同様にして、生成された補正画像805等を表示回路74に表示する。
なお、本実施形態では、故障した検出器110が検出器番号5の1つの検出器110である場合を例として説明したが、本技術は、2つ以上の検出器が故障した場合であっても適用可能である。例えば、故障検出器番号803に、検出器番号5に加えて検出器番号7が含まれるとする。このとき、補正画像805は、上述したように検出器番号5に関しては補正されているが、検出器番号7に関しては補正されていない。そこで、補正処理機能716を実現する処理回路71は、補正画像805を、検出器番号7に関する故障画像801として、機械学習モデル860を用いた補正処理をさらに実行する。このとき、補正画像805には、検出器番号3及び検出器番号7の2つの検出器110の間の相対角度に基づいて回転処理が施される。なお、検出器番号7に関する故障画像801として、検出器番号3に相当する補正画像804が用いられてもよい。このとき、回転処理は、検出器番号3に対する検出器番号5及び検出器番号7の相対角度の差に基づいて施されればよい。
なお、複数の検出器110のうち、任意の1つの検出器110に関して学習用データ851が生成される場合を例として説明したが、これに限らない。例えば、検出器番号9に関する模擬故障データを再構成して得られた模擬故障画像を変換することにより、検出器番号3に相当する模擬故障画像が生成されてもよい。この構成によれば、1つの収集データから、検出器110の数だけ学習用データ851を生成することができる。つまり、学習用データセット850の生成が容易になるという効果がある。
なお、本実施形態では、検出器番号5に関する故障画像801を回転させることにより、検出器番号3に相当する故障画像802が生成される場合を例として説明したが、これに限らない。例えば、検出器番号3に相当する故障画像802は、検出器番号3に相当するように回転された検出器番号5に関する模擬故障データの画像再構成により生成されてもよい。
このように、本実施形態に係る医用画像処理装置が搭載された核医学診断装置の一例であるPET装置1において、処理回路71は、任意の1つの検出器110の故障を模擬した模擬故障画像857と、全検出器110が正常な状態での正常画像853とを用いて機械学習モデル860を学習及び/又は強化学習する。また、処理回路71は、任意の1つの検出器110の故障に関して学習された機械学習モデル840を用いて、学習用データ851の生成時に故障を想定した検出器番号855に相当する故障画像802を補正する。また、処理回路71は、補正後の故障画像804を変換して補正画像805を生成する。この構成によれば、より簡易に機械学習モデル860を学習及び/又は強化学習することができる。
上記の各実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法において、図5に示すように、ステップS203でPET撮像が行われた後、ステップS205で故障検出器番号803が取得される。このため、PET撮像中に新たに検出器110が故障した場合であっても、正常時に相当する画質の画像データを生成することができる。なお、上記の各実施形態では、機械学習モデルを用いた画像補正が縮退運転中に実行される場合を例として説明しているが、これに限らない。通常のPET撮像中に検出器110が故障した場合であっても、PET撮像の後に故障検出器番号803が取得されるため、正常時に相当する画質の画像データを生成することができる。
上記の各実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法において、補正画像805とともに通知や補正前の故障画像801、故障検出器番号803が表示される。この構成によれば、ユーザは、正常時に相当する画質の画像データであっても、機械学習モデルを用いて補正された画像であることを認識できる。また、ユーザは、故障した検出器110を修理した後に、再度PET撮像を実施するかを判断することもできる。
なお、上記の各実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法において、各機械学習モデルは、縮退運転時等に得られた故障画像801と、故障画像801が入力された機械学習モデルが出力する補正画像805とを用いて強化学習されてもよい。
なお、上記の各実施形態では、任意の検出器番号に関する収集データを除外することにより生成された模擬故障データを用いて学習用データを生成する医用画像処理装置及び医用画像処理方法を例として説明したが、これに限らない。模擬故障データは、任意の検出器番号の検出器110を停止させた状態でPET撮像を行うことにより収集されてもよい。この構成によれば、故障時と同様の状態で模擬故障データを得ることができるため、より故障時に得られる故障データに近似した模擬故障データを生成できる。
なお、上記の各実施形態では、複数の検出器リング11に亘って体軸方向に並ぶ複数の検出器110が同様に取り扱われる医用画像処理装置及び医用画像処理方法を例として説明したが、これに限らない。上記の各実施形態に係る技術は、複数の検出器リング11の全検出器110に対して適用されてもよい。例えば、第1の実施形態に係るPET装置1では、複数の検出器リング11の全検出器110に関する学習用データ811が生成される。例えば、第2の実施形態に係るPET装置1では、複数の検出器リング11の全検出器110に関して故障パターンが設定される。
なお、上記の各実施形態では、機械学習モデルを用いて故障時に得られた故障画像801を補正する医用画像処理装置及び医用画像処理方法を例として説明したが、これに限らない。故障画像801の補正は、例えば、確率的にLORの数を補間することにより行われてもよい。確率的なLORの数の補間は、例えば、同時計数時間幅(Time Window)や放射性同位体の投与量、放射性同位体の投与位置等に基づいて行われる。
なお、上記の各実施形態では、機械学習モデルの入力及び出力として再構成画像が用いられる医用画像処理装置及び医用画像処理方法を例として説明したが、これに限らない。機械学習モデルの入力及び/又は出力は、収集データや模擬故障データ、故障データ等の生データであってもよい。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。また、生データは、同時計数前のデータであってもよい。この構成の場合データ数が多くなるが、故障検出器の対向データが含まれるため、より精度の高い補正が可能となる。
なお、上記の各実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法において、収集データ及びPET画像は、それぞれ、各実施形態に係る医用画像処理装置を搭載したPET装置1の外部において収集及び再構成されていてもよい。
なお、上記の各実施形態では、医用画像処理装置がPET装置1に搭載される場合を例として説明したが、これに限らない。各実施形態に係る医用画像処理装置は、例えば、PET装置以外の核医学診断装置や核医学診断装置の外部に設けられた画像処理サーバ等に搭載されていてもよい。また、各実施形態に係る医用画像処理装置は、単体の独立した装置として構成されていてもよい。医用画像処理装置としては、少なくとも、PETデータメモリ72及びメモリ75に相当する記憶回路と、モデル生成機能715及び補正処理機能716を実現する処理回路71に相当する処理回路とを有していればよい。ユーザ操作を伴う場合には、医用画像処理装置は、入力回路73及び表示回路74にそれぞれ相当する入力回路及び表示回路をさらに有する。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、検出器が故障している状態であっても、正常時に相当する画質の画像データを生成することができる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、ASIC、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、SPLD、CPLD、FPGAを含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
なお、処理回路71は、故障画像801を入力して補正画像805を出力するようにパラメータが学習された各実施形態に係る機械学習モデルと同様の機能を実現する回路構成を有していてもよい。当該回路構成は、例えば、ASICやPLD等の集積回路により実現される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。