JP2022032471A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低温下の乗り心地性と高速走行時の操縦安定性を両立するタイヤを提供する。【解決手段】タイヤ断面幅をWt(mm)、外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、陸部全体の面積をSr、センター陸部の合計面積をSceとしたとき、SrおよびSceが、下記式(2)を満たし、トレッド部は周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で測定した、5℃におけるtanδ(5℃tanδ)、20℃におけるtanδ(20℃tanδ)、および50℃におけるtanδ(50℃tanδ)が、下記式(3)および下記式(4)を満たす空気入りタイヤ。式(1)1963.4≦(π/4)×(Dt^2/Wt)≦2827.4、式(2)0.35≦Sce/Sr≦0.80、式(3)0.01≦|20℃tanδ+50℃tanδ|/2≦0.17、式(4)0.30≦|5℃tanδ+20℃tanδ|/2≦0.60【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤに関する。
近年、自動車の装備や性能の著しい充実に加え、道路網が拡充発展したことで、高速走行することが多くなっており、特に高速走行時において、常に安定した操縦安定性および乗り心地性を向上させるようなベーストレッドを有するタイヤが要求されている。
例えば、特許文献1には、コラーゲン粒子を配合したベーストレッドを有する空気入りタイヤが開示されている。しかし、高速走行時における操縦安定性および乗り心地性を充分に満足するものではなかった。
特開2004-269684号公報
本発明は、低温下での乗り心地性および高速走行時の操縦安定性を両立したタイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、タイヤの断面幅およびタイヤの外径が所定の要件を満たすタイヤにおいて、トレッドゴムの粘弾性およびトレッド部の陸部面積を特定の条件とすることにより、低温下での乗り心地性および高速走行時の操縦安定性を両立したタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1〕トレッド部を備える空気入りタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤの周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と、前記周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置するセンター陸部と、幅方向溝とを有し、任意にサイプを有していてもよく、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、前記陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、SrおよびSceが、下記式(2)を満たし、前記トレッド部は、ゴム成分を含有するゴム組成物からなる少なくとも1つのゴム層を有し、前記ゴム組成物の、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で測定した、5℃におけるtanδ(5℃tanδ)、20℃におけるtanδ(20℃tanδ)、および50℃におけるtanδ(50℃tanδ)が、下記式(3)および下記式(4)を満たす空気入りタイヤ、
式(1) 1963.4≦(π/4)×(Dt^2/Wt)≦2827.4
式(2) 0.35≦Sce/Sr≦0.80
式(3) 0.01≦|20℃tanδ+50℃tanδ|/2≦0.17
式(4) 0.30≦|5℃tanδ+20℃tanδ|/2≦0.60
〔2〕前記式(3)の値が0.15未満である、〔1〕記載の空気入りタイヤ、
〔3〕前記式(4)の値が0.35~0.55である、〔1〕または〔2〕記載の空気入りタイヤ、
〔4〕前記式(3)の値が0.14未満である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔5〕前記式(4)の値が0.40~0.55である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔6〕前記ゴム組成物の5℃tanδが0.65以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔7〕前記ゴム組成物の5℃tanδが0.70以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔8〕前記ゴム組成物の20℃tanδが0.25以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔9〕前記ゴム組成物の20℃tanδが0.20以下である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔10〕前記ゴム組成物の20℃tanδが0.15以下である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔11〕前記タイヤの周方向の長さをLa、前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb1および前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、LaおよびLbが、下記式(5)を満たす、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
式(5) 0.10≦La/Lb≦0.50
〔12〕前記ショルダー陸部における前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbsh1および前記ショルダー陸部における前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbsh2の総和Lbshと、前記センター陸部における前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbce1および前記センター陸部における前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbce2の総和Lbceとの比Lbsh/Lbceが、Lbsh/Lbce<1である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔13〕少なくとも1つの前記センター陸部の陸部幅が、タイヤ幅方向で隣接する周方向溝の溝深さの1.4倍以上である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔14〕前記トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、StおよびSgが、下記式(6)を満たす、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
式(6) 0.15≦Sg/St≦0.35
〔15〕Sg1/Stが0.09~0.16であり、Sg2/Stが0.08~0.14である、〔14〕記載の空気入りタイヤ、
〔16〕前記式(2)の値に対する前記式(3)の値の比が0.15~0.30である、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔17〕前記式(2)の値に対する前記式(4)の値の比が0.80~1.30である、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔18〕前記式(5)の値に対する前記式(3)の値の比が0.30~1.05である、〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔19〕前記式(5)の値に対する前記式(4)の値の比が2.1~3.8である、〔11〕~〔18〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔20〕前記式(6)の値に対する前記式(4)の値の比が1.7~2.7である、〔14〕~〔19〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
〔21〕前記タイヤが乗用車用タイヤである、〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の空気入りタイヤ、に関する。
本発明の空気入りタイヤによれば、タイヤの断面幅および外径、トレッドゴムの粘弾性ならびにトレッド部の陸部面積を特定の条件とすることにより、低温下での乗り心地性および高速走行時の操縦安定性を両立させることができる。
本開示の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す部分展開図である。
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態の空気入りタイヤを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本開示の空気入りタイヤは、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、トレッド部1の展開図である。トレッド部1には、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンが形成されている。トレッド部1のトレッドパターンは、タイヤ赤道Cに関して、非対称形状で形成されている。
トレッド部1は、外側トレッド端Toおよび内側トレッド端Tiを有している。外側トレッド端Toは、車両装着時に車両の外側(図1では右側)に位置する。内側トレッド端Tiは、車両装着時に車両の内側(図1では左側)に位置する。
各トレッド端To、Tiは、正規状態のタイヤに正規荷重が負荷されキャンバー角0度で平面に接地したときの、最もタイヤ幅方向W(図1における左右方向。以下、単に幅方向Wと呼ぶ)外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法(タイヤ断面幅Wt、タイヤ外径Dt等)は、前記正規状態で測定された値である。正規状態において、外側トレッド端Toと内側トレッド端Tiとの間の幅方向Wの距離は、トレッド幅TWと定義される。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
トレッド部1は、周方向Cに連続して延びる複数の周方向溝11、12、13を有している。図1においては、周方向溝11、12、13は3本設けられている。しかし、周方向溝の数は特に限定されず、例えば2本~5本であってもよい。また、周方向溝11、12、13は、本開示では、周方向Cに沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向Cに沿って波状、正弦波状、ジグザグ状等に延びていてもよい。
周方向溝11、12、13のそれぞれの溝幅は、慣例に従って任意に定めることができる。トレッド部1のパターン剛性を維持しながら十分な排水性能を提供するために、周方向溝11、12、13のそれぞれの溝幅は、例えばトレッド幅TWの2.5%~5%程度が好ましい。周方向溝11、12、13のそれぞれの溝深さは、特に限定されないが、5.0~12.0mmが好ましく、6.0~11.0mmがより好ましく、7.0~10.0mmがさらに好ましい。
本開示において「ショルダー陸部」は、タイヤ赤道Cから幅方向Wの最外側に位置する周方向溝と各トレッド端To、Tiとの間に形成された一対の陸部を指す。図1では、車両装着時に最外側に位置する周方向溝12と外側トレッド端Toとの間に形成された外側ショルダー陸部16、および、車両装着時に最内側に位置する周方向溝11と内側トレッド端Tiとの間に形成された内側ショルダー陸部17がそれぞれ設けられている。
ショルダー陸部16、17には、ショルダー陸部16、17を横切る方向に延びる複数のショルダー幅方向溝21、22と、複数のショルダーサイプ23、24とが設けられている。複数のショルダー幅方向溝21、22および、複数のショルダーサイプ23、24は、一対のショルダー陸部16、17のそれぞれに設けられている。なお、本明細書において、外側ショルダー陸部16に設けられたショルダー幅方向溝、ショルダーサイプをそれぞれ、外側ショルダー幅方向溝21、外側ショルダーサイプ23と呼ぶ。また、内側ショルダー陸部17に設けられたショルダー幅方向溝、ショルダーサイプをそれぞれ、内側ショルダー幅方向溝22、内側ショルダーサイプ24と呼ぶ。
本開示において「センター陸部」は、前記の一対のショルダー陸部に挟まれる全ての陸部を指す。図1では、タイヤ赤道Cに沿って設けられた周方向溝13と車両装着時に最外側に位置する周方向溝12との間に形成された外側センター陸部18、および、タイヤ赤道Cに沿って設けられた周方向溝13と車両装着時に最内側に位置する周方向溝11との間に形成された内側センター陸部19がそれぞれ設けられているが、センター陸部の数は特に限定されず、例えば1つ~5つであってもよい。
センター陸部18、19には、センター陸部18、19を横切る方向に延びる複数のセンター幅方向溝25、26と、複数のセンターサイプ27、28とが設けられている。複数のセンター幅方向溝25、26および、複数のセンターサイプ27、28は、センター陸部18、19のそれぞれに設けられている。なお、本明細書において、外側センター陸部18に設けられたセンター幅方向溝、センターサイプをそれぞれ、外側センター幅方向溝25、外側センターサイプ27と呼ぶ。また、内側センター陸部19に設けられたセンター幅方向溝、センターサイプをそれぞれ、内側センター幅方向溝26、内側センターサイプ28と呼ぶ。
幅方向溝21、22、25、26のそれぞれの溝幅は、例えばトレッド幅TWの2.5%~5%程度が好ましい。幅方向溝21、22、25、26のそれぞれの溝深さは、特に限定されないが、5.0~12.0mmが好ましく、6.0~11.0mmがより好ましく、7.0~10.0mmがさらに好ましい。なお、本明細書において、「サイプ」は、幅が2.0mm以下、好ましくは0.5~1.5mmの細い切り込みをいう。
ショルダー陸部16、17には、タイヤ周方向にのびるショルダー細溝29、30を設けてもよい。これにより、ショルダー陸部16、17は、ショルダー細溝29、30とトレッド端To、Tiとの間に配される外側片16A、17Aと、該外側片9Aよりもタイヤ赤道C側に配される内側片16B、17Bとに区分される。
かかるショルダー細溝29、30を設けることにより、タイヤ周方向のエッジ成分を増加させ、旋回性能を向上させる。また、外側片16A、17Aおよび内側片16B、17Bのタイヤ周方向の剛性が大きく確保されるため、乾燥路での走行性能が向上する。なお、ショルダー細溝29、30は、本開示では、周方向Cに沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向Cに沿って波状や正弦波状やジグザグ状に延びていてもよい。ショルダー細溝29、30の溝幅W2は、例えば、トレッド幅TWの1.0%~2.0%が好ましい。ショルダー細溝29、30の溝深さは、例えば、周方向溝11、12、13の最深部の溝深さの0.40~0.60倍が好ましい。
また、本開示では、図1に示されるように、センター陸部18、19のサイプ27、28は、センター陸部18、19の幅方向Wでの両縁部を結ぶように延びている。センター陸部18、19のサイプ27、28の幅方向Wの両端を結ぶ直線と、周方向溝12とがなす角θは60~80度の範囲であることが好ましい。この場合、センター陸部18、19において水膜を掻き出すことができ、ウェット路面での制動性能を向上させることができる。
本開示のタイヤは、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たすことを特徴とする。なお、本明細書において、「タイヤ断面幅」とは、正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
式(1) 1963.4≦(π/4)×(Dt^2/Wt)≦2827.4
また、本開示のタイヤは、陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、SrおよびSceが、下記式(2)を満たすことを特徴とする。
式(2) 0.35≦Sce/Sr≦0.80
式(2)の値(Sce/Sr)は、0.35以上であり、0.38以上が好ましく、0.40以上がより好ましく、0.42以上がさらに好ましく、0.44以上が特に好ましい。また、式(2)の値(Sce/Sr)は、0.80以下であり、0.70以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましく、0.55以下が特に好ましい。タイヤ陸部全体の面積に対するセンター陸部の合計面積の比を上記範囲とすることにより、センター陸部の体積を大きくすることができ、陸部剛性を大きくできるため、より優れた操縦安定性を得ることができる。
また、同様の効果が得られる点から、少なくとも1つのセンター陸部の陸部幅は、タイヤ幅方向外側で隣接する周方向溝の溝深さの1.4倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.6倍以上がさらに好ましい。
本開示のタイヤは、トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、StおよびSgは、下記式(6)を満たすことが好ましい。なお、本明細書において「トレッド部の接地面積」とは、トレッド部1の全ての溝を埋めた状態でのトレッド部の接地面積を意味する。
式(6) 0.15≦Sg/St≦0.35
式(6)の値(Sg/St)は、0.15以上が好ましく、0.18以上がより好ましく、0.21以上がさらに好ましい。また、式(6)の値(Sg/St)は、0.35以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。
Sg1/Stは、0.09以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.11以上がさらに好ましい。また、Sg1/Stは、0.16以下が好ましく、0.14以下がより好ましく、0.13以下がさらに好ましい。
Sg2/Stは、0.08以上が好ましく、0.09以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。また、Sg1/Stは、0.14以下が好ましく、0.13以下がより好ましく、0.12以下がさらに好ましい。
接地面積に対する全溝面積、周方向溝の合計面積、ならびに幅方向溝およびサイプの合計面積の割合を上記範囲とすることにより、トレッドの陸部剛性を大きくすることができ、かつ本開示に係るトレッド用ゴム組成物の有するゴムのしなやかさとの相乗効果により、高速走行時において、高い操縦安定性を発揮しつつ、低温下における乗り心地性を改善することができる。接地面積に対する全溝面積、周方向溝の合計面積、ならびに幅方向溝およびサイプの合計面積の割合が上記範囲未満の場合には、陸部の割合が多くなりすぎるため、排水性やグリップ性が低下する傾向がある。一方、接地面積に対する全溝面積、周方向溝の合計面積、ならびに幅方向溝およびサイプの合計面積の割合が上記範囲を超える場合には、充分なトレッドの陸部剛性を得ることができないために、操縦安定性が低下する傾向がある。
なお、本明細書において、陸部全体の面積Sr、センター陸部の合計面積Sce、周方向溝の合計面積Sg1、並びに幅方向溝およびサイプの合計面積Sg2は、正規状態において、正規荷重を負荷してトレッドを平面に押し付けたときの接地形状から計算される。接地形状は、タイヤを正規リムに装着させ、正規内圧を保持させた後、例えば、トレッド部1にインクを塗布し、正規荷重を負荷して厚紙等に垂直に押し付け、(キャンバー角は0°)、トレッド部1に塗布されたインクを転写することにより得られる。また、得られた接地形状の外輪により得られる面積を、全ての溝を埋めた状態でのトレッド部の接地面積をStとする。
本開示のタイヤは、タイヤ1の周方向Cの長さをLa、幅方向溝21、22、25、26の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb1およびサイプ23、24、27、28の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、LaおよびLbが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5) 0.10≦La/Lb≦0.50
式(5)の値(La/Lb)は、0.10以上が好ましく、0.12以上がより好ましく、0.13以上がさらに好ましく、0.14以上が特に好ましい。また、式(5)の値(La/Lb)は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましく、0.25以下が特に好ましい。幅方向溝21、22、25、26およびサイプ23、24、27、28のエッジ成分の長さと、タイヤ1の周方向Cの長さLaとの関係を上記範囲とすることによって、トレッド部1の変形を所定範囲とし、トレッド部1の陸部16、17、18、19の面積を所定以上に確保することができ、後述するゴム組成物をトレッドに用いた際に、高速走行時の操縦安定性を向上させることができる。
なお、幅方向溝21、22、25、26およびサイプ23、24、27、28の「幅方向Wのエッジ成分の長さ」とは、幅方向溝21、22、25、26およびサイプ23、24、27、28の幅方向Wの投影長さ(幅方向成分および周方向成分のうち、幅方向成分)をいう。
また、タイヤの周方向Cの長さLaと、幅方向溝21、22、25、26の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb1との比La/Lb1は、0.18~0.70が好ましく、0.21~0.60が好ましく、0.24~0.50がより好ましい。幅方向溝21、22、25、26の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb1とタイヤの周方向Cの長さLaとの関係を上記範囲とすることによって、後述するゴム組成物の効果をさらに高めることができる。
また、ショルダー陸部16、17における幅方向溝21、22の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lbsh1およびショルダー陸部16、17におけるサイプ23、24の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lbsh2の総和Lbshと、センター陸部18、19における幅方向溝25、26の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lbce1およびセンター陸部18、19におけるサイプ27、28の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lbce2の総和Lbceとの比Lbsh/Lbceが、Lbsh/Lbce<1を満たすことが好ましい。この場合、ショルダー陸部16、17におけるエッジ成分が小さくなり、ショルダー陸部16、17の剛性が高まる。これにより、ショルダー陸部16、17の摩耗が抑制され、高速走行時の操縦安定性能を向上させることができる。
本開示における「5℃tanδ」、「20℃tanδ」、および「50℃tanδ」は、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で測定した、5℃におけるtanδ、20℃におけるtanδ、および50℃における損失正接tanδそれぞれを指す。本開示のゴム組成物は、5℃tanδ、20℃tanδ、および50℃tanδが、下記式(3)および下記式(4)を満たすことを特徴とする。
式(3) 0.01≦|20℃tanδ+50℃tanδ|/2≦0.17
式(4) 0.30≦|5℃tanδ+20℃tanδ|/2≦0.60
本開示の効果の観点から、式(3)の値(|20℃tanδ+50℃tanδ|/2)は、0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.07以上がさらに好ましく、0.09以上が特に好ましい。また、式(3)の値(|20℃tanδ+50℃tanδ|/2)は、0.17以下であり、0.16以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.14以下がさらに好ましく、0.13以下が特に好ましい。
本開示の効果の観点から、式(4)の値(|5℃tanδ+20℃tanδ|/2)は、0.30以上であり、0.32以上が好ましく、0.34以上がより好ましく、0.36以上がさらに好ましく、0.38以上が特に好ましい。また、式(4)の値(|5℃tanδ+20℃tanδ|/2)は、0.60以下であり、0.58以下が好ましく、0.56以下がより好ましく、0.54以下がさらに好ましく、0.52以下が特に好ましい。
本開示の効果の観点から、5℃tanδは、0.65以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.80以上がさらに好ましく、0.85以上が特に好ましい。また、5℃tanδの上限値は特に制限されないが、1.50以下が好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、20℃tanδは、0.25以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましく、0.10以下が特に好ましい。また、20℃tanδの下限値は特に制限されないが、0.01以上が好ましく、0.03以下がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、式(2)の値に対する式(3)の値の比は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましい。また、式(2)の値に対する式(3)の値の比は、0.40以下が好ましく、0.35以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、式(2)の値に対する式(4)の値の比は、0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.80以上がさらに好ましい。また、式(2)の値に対する式(4)の値の比は、1.50以下が好ましく、1.30以下がより好ましく、1.10以下がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、式(5)の値に対する式(3)の値の比は、0.15以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。また、式(2)の値に対する式(3)の値の比は、1.05以下が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.85以下がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、式(5)の値に対する式(4)の値の比は、1.8以上が好ましく、2.1以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましい。また、前記式(2)の値に対する前記式(4)の値の比は、3.8以下が好ましく、3.6以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。
本開示の効果の観点から、式(6)の値に対する式(4)の値の比は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましい。また、式(6)の値に対する式(4)の値の比は、3.0以下が好ましく、2.7以下がより好ましく、2.4以下がさらに好ましい。
本開示のトレッド部は、少なくとも1層のゴム層を有している。該ゴム層は、単一のゴム層により形成されていてもよく、外面がトレッド面を構成するゴム層(キャップゴム層)のタイヤ半径方向内側に、さらに1以上のゴム層を有していてもよい。ゴム層が2層以上によって構成されている場合、2層以上のゴム層のうち少なくとも1つが上述した所定のゴム組成物によって構成されていればよく、キャップゴム層が上述した所定のゴム組成物によって構成されていることが好ましい。
上述した所定のゴム組成物は、周方向溝11、12、13および幅方向溝21、22、25、26のうち最も深さが大きい溝の溝底の最深部よりタイヤ半径方向外側に一部または全部が存在するゴム層に使用されることが好ましく、最も深さが大きい溝の溝底の最深部よりタイヤ半径方向外側に全部が存在するゴム層に使用されることがより好ましい。上述した所定のゴム組成物をキャップゴム層に使用する場合、該キャップゴム層は、周方向溝11、12、13および幅方向溝21、22、25、26のうち最も深さが大きい溝の溝底の最深部よりタイヤ半径方向外側に全部存在することが好ましい。
[ゴム組成物]
本開示のタイヤは、前述したタイヤの構造、特にトレッドの形状と、ゴム組成物の前記の物性とが協働することにより、低温下での乗り心地性および高速走行時の操縦安定性をより効果的に改善することができる。
<ゴム成分>
本開示に係るゴム組成物は、ゴム成分としてイソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、SBRを含むことがより好ましく、SBRおよびBRを含むことがさらに好ましく、SBRおよびBRのみからなるゴム成分としてもよい。
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでもS-SBRおよび変性SBRが好ましい。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。これらSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本開示で使用できるS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
SBRのスチレン含量は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性能の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐ブロー性能の観点からは、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量は、1H-NMR測定により算出される。
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保、ウェットグリップ性能、ゴム強度、および耐摩耗性能の観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、温度依存性の増大防止、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、ウェットグリップ性能の観点から、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましく、150万以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
SBRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。また、SBRのゴム成分中の含有量の上限値は特に制限されず、100質量%としてもよい。
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率(シス含量)が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるスズ変性BRやシリカ用変性BRが挙げられる。
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、BRの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
BRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。また、BRを含有する場合の含有量の下限値は特に制限されないが、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上とすることができる。
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
イソプレン系ゴムを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。また、イソプレン系ゴムを含有する場合の含有量の下限値は特に制限されないが、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上とすることができる。
(その他のゴム成分)
本開示に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBR、およびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<フィラー>
本開示に係るゴム組成物は、フィラーとしてシリカを含むことが好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含むことがより好ましい。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、タイヤ工業において一般的なものを適宜利用することができる、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、100m2/g以下がさらに好ましく、80m2/g以下がさらに好ましく、50m2/g以下が特に好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定された値である。
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能およびウェットグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g以上が好ましく、170m2/g以上がより好ましく、200m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、130質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、110質量部以下がさらに好ましい。
シリカとカーボンブラックのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、耐摩耗性能の観点から、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および破断時伸びの観点からは、160質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましい。
シリカとカーボンブラックの合計含有量に対するシリカの割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
(その他のフィラー)
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーとしては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、下記のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、メルカプト系シランカップリング剤がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メルカプト系シランカップリング剤は、下記式(7)で表される化合物、および/または下記式(8)で表される結合単位Aと下記式(9)で表される結合単位Bとを含む化合物であることが好ましい。
Figure 2022032471000002
(式中、R101、R102、およびR103は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または-O-(R111-O)z-R112(z個のR111は、それぞれ独立して、炭素数1~30の2価の炭化水素基を表し;R112は、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、炭素数6~30のアリール、または炭素数7~30のアラルキルを表し;zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表し;R104は、炭素数1~6のアルキレンを表す。)
Figure 2022032471000003
Figure 2022032471000004
(式中、xは0以上の整数を表し;yは1以上の整数を表し;R201は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシルもしくはカルボキシルで置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、または炭素数2~30のアルキニルを表し;R202は、炭素数1~30のアルキレン、炭素数2~30のアルケニレン、または炭素数2~30のアルキニレンを表し;ここにおいて、R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
式(7)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式(10)で表される化合物(エボニックデグサ社製のSi363)等が挙げられ、下記式(10)で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Figure 2022032471000005
式(8)で示される結合単位Aと式(9)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社等より製造販売されているものが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、シリカの分散性を高める観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、4.0質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、9.0質量部以下が特に好ましい。
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ以外に、さらにその他のフィラーを用いてもよい。そのようなフィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等この分野で一般的に使用されるフィラーをいずれも用いることができる。これらのフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、軟化剤、ワックス、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
(軟化剤)
本開示に係るゴム組成物は、軟化剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、樹脂成分、オイル、液状ゴム、エステル系可塑剤等が挙げられる。
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、
クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
樹脂成分の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義され得る。
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、発熱性抑制の観点からは、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
液状ゴムは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。これらの液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、液状ゴムの含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。これらのエステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル系可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、エステル系可塑剤の含有量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
軟化剤のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、ウェットグリップ性能の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、加工性の観点からは、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下が特に好ましい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレキシス社等より市販されているものを使用することができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)が好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
本開示に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
前記ゴム組成物から構成されるトレッドを備えたタイヤは、前記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、トレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
前記ゴム組成物は、各種タイヤのトレッド、例えば、乗用車用タイヤ;トラック・バス用タイヤ;二輪車用タイヤ;高性能タイヤ;スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。これらのタイヤは、サイド補強層を備えるランフラットタイヤ;スポンジ等の吸音部材をタイヤ内腔に備える吸音部材付タイヤ;パンク時に封止可能なシーラントをタイヤ内部またはタイヤ内腔に備える封止部材付タイヤ;センサや無線タグ等の電子部品をタイヤ内部またはタイヤ内腔に備える電子部品付タイヤ等であってもよい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR1:後述の製造例1で製造したS-SBR(スチレン含量:30質量%、ビニル含量:52モル%、Mw:25万、非油展品)
SBR2:JSR(株)製のHP755(S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:38モル%、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品)
BR1:宇部興産(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(シス含量:97%、Mw:44万)
BR2:JSR(株)製のBR500(シス含量:32%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイヤブラックN220(N2SA:115m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ社製のNXT-Z45(メルカプト系シランカップリング剤)
エステル系可塑剤:大八化学工業(株)製のTOP(トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート)
樹脂成分:クレイトン社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD-G(N,N’-ジフェニルグアニジン)
製造例1:SBR1の合成
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR1を得た。
表1に示す配合内容に従い、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度160℃で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用加硫ゴムシートを得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物を用いて各ゴムシートをトレッドの形状となるように作製し、これを他の部材とともに貼り合わせ、生タイヤを作製した。次に加硫工程において170℃で20分間プレス成形し、195/65R15サイズの試験用タイヤを作製した。
<tanδの測定>
シート状の加硫ゴム組成物から幅4mm、長さ20mm、厚さ2mmの短冊状試験片を打ち抜き、試験に供した。GABO社製の動的粘弾性測定装置イプレクサー(登録商標)シリーズを用いて、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で、5℃におけるtanδ(5℃tanδ)、20℃におけるtanδ(20℃tanδ)、および50℃におけるtanδ(50℃tanδ)を測定した。
<高速走行時の操縦安定性>
各試験用タイヤを排気量660ccの国産FF車の全輪に装着し、気温20℃~30℃においてドライアスファルト面のテストコースにて実車走行を行った。テストドライバーによる120km/hでの走行時の、直進、車線変更、加減速時の各々のフィーリングに基づき、ハンドリング特性を評価した。評価は1点~5点の整数値で行い、評点が高いほどハンドリング特性に優れる評価基準のもと、テストドライバー10名の合計点を算出した。基準比較例(表3および表4では比較例1、表5および表6では比較例5)の合計点を基準値(100)に換算し、各試験用タイヤの評価結果を合計点に比例するように指数化して表示した。
<低温下での乗り心地性>
各試験用タイヤを排気量660ccの国産FF車の全輪に装着し、気温-1℃~-6℃においてドライアスファルト面のテストコースにて実車走行し、乗り心地性をテストドライバーが官能評価した。評価は1点~5点の整数値で行い、評点が高いほど乗り心地性に優れる評価基準のもと、テストドライバー10名の合計点を算出した。基準比較例(表3および表4では比較例1、表5および表6では比較例5)の合計点を基準値(100)に換算し、各試験用タイヤの評価結果を合計点に比例するように指数化して表示した。
Figure 2022032471000006
Figure 2022032471000007
Figure 2022032471000008
Figure 2022032471000009
Figure 2022032471000010
Figure 2022032471000011
表1~表6の結果より、タイヤの断面幅および外径、トレッドゴムの粘弾性ならびにトレッド部の陸部面積を特定の条件とした本開示の空気入りタイヤは、低温下での乗り心地性および高速走行時の操縦安定性がバランスよく改善されていることがわかる。
1 トレッド部
11、12、13 周方向溝
16 外側ショルダー陸部
17 内側ショルダー陸部
18 外側センター陸部
19 内側センター陸部
21 外側ショルダー幅方向溝
22 内側ショルダー幅方向溝
23 外側ショルダーサイプ
24 内側ショルダーサイプ
25 外側センター幅方向溝
26 内側センター幅方向溝
27 外側センターサイプ
28 内側センターサイプ
29 外側ショルダー細溝
30 内側ショルダー細溝
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端
W タイヤ幅方向

Claims (21)

  1. トレッド部を備える空気入りタイヤであって、
    前記トレッド部は、タイヤの周方向に連続して延びる2つ以上の周方向溝と、前記周方向溝によって仕切られた一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置するセンター陸部と、幅方向溝とを有し、任意にサイプを有していてもよく、
    タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、
    前記陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、SrおよびSceが、下記式(2)を満たし、
    前記トレッド部は、ゴム成分を含有するゴム組成物からなる少なくとも1つのゴム層を有し、
    前記ゴム組成物の、周波数10Hz、伸長歪み2.5%の条件下で測定した、5℃におけるtanδ(5℃tanδ)、20℃におけるtanδ(20℃tanδ)、および50℃におけるtanδ(50℃tanδ)が、下記式(3)および下記式(4)を満たす空気入りタイヤ。
    式(1) 1963.4≦(π/4)×(Dt^2/Wt)≦2827.4
    式(2) 0.35≦Sce/Sr≦0.80
    式(3) 0.01≦|20℃tanδ+50℃tanδ|/2≦0.17
    式(4) 0.30≦|5℃tanδ+20℃tanδ|/2≦0.60
  2. 前記式(3)の値が0.15未満である、請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記式(4)の値が0.35~0.55である、請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記式(3)の値が0.14未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記式(4)の値が0.40~0.55である、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ゴム組成物の5℃tanδが0.65以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ゴム組成物の5℃tanδが0.70以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記ゴム組成物の20℃tanδが0.25以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記ゴム組成物の20℃tanδが0.20以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記ゴム組成物の20℃tanδが0.15以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記タイヤの周方向の長さをLa、前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb1および前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、LaおよびLbが、下記式(5)を満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
    式(5) 0.10≦La/Lb≦0.50
  12. 前記ショルダー陸部における前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbsh1および前記ショルダー陸部における前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbsh2の総和Lbshと、前記センター陸部における前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbce1および前記センター陸部における前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lbce2の総和Lbceとの比Lbsh/Lbceが、Lbsh/Lbce<1である、請求項1~11のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  13. 少なくとも1つの前記センター陸部の陸部幅が、タイヤ幅方向で隣接する周方向溝の溝深さの1.4倍以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、StおよびSgが、下記式(6)を満たす、請求項1~13のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
    式(6) 0.15≦Sg/St≦0.35
  15. Sg1/Stが0.09~0.16であり、Sg2/Stが0.08~0.14である、請求項14記載の空気入りタイヤ。
  16. 前記式(2)の値に対する前記式(3)の値の比が0.15~0.30である、請求項1~15のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  17. 前記式(2)の値に対する前記式(4)の値の比が0.80~1.30である、請求項1~16のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  18. 前記式(5)の値に対する前記式(3)の値の比が0.30~1.05である、請求項11~17のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  19. 前記式(5)の値に対する前記式(4)の値の比が2.1~3.8である、請求項11~18のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  20. 前記式(6)の値に対する前記式(4)の値の比が1.7~2.7である、請求項14~19のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
  21. 前記タイヤが乗用車用タイヤである、請求項1~20のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
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