JP2022017827A - サーマルヘッド用基板、及びサーマルヘッド用基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 駆動回路形成領域と発熱体形成領域とを有するサーマルヘッドでは、駆動回路形成領域と発熱体形成領域との間隔を小さくできず、小型化が困難である。【解決手段】 サーマルヘッド用基板は、主面上に、発熱体が形成された発熱抵抗体領域と駆動回路が形成された駆動回路形成領域とを有する基板と、発熱抵抗体領域上に形成された無機層を含む蓄熱層と、蓄熱層上に設けられた放熱板とを備える。発熱体、及び駆動回路とは、基板の主面上に一体に形成されており、基板の主面に対向する裏面であって、蓄熱層に対応した領域に凹部を有し、凹部が、耐摩耗層として機能する。【選択図】 図1

Description

本発明は、サーマルヘッド用基板、及びサーマルヘッド用基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、ファクシミリ、カラープリンター、バーコードプリンター等に用いられるサーマルヘッド用基板、及びサーマルヘッド用基板の製造方法に関する。
特許文献1は、感熱記録紙に対して発熱抵抗体の選択的発熱により感熱記録を行うサーマルヘッドを開示する。特許文献1において、発熱抵抗体と駆動回路が形成された基板を裏返して基板を一様に薄くして耐摩耗層として機能させる、又は傾斜させて研削して先端の薄い部分を耐摩耗層として機能させたサーマルヘッドが記載されている。
特許文献2は、薄膜トランジスタ―を駆動回路に用いたサーマルヘッドを開示する。特許文献2において、発熱抵抗体や駆動回路が形成された基板の厚さを10~800μmと変化させて放熱板に接着し、基板の熱抵抗を変化させることで、放熱量を制御して蓄熱による印字品質を改善するが記載されている。
特許文献3は、ファクシミリ、ワープロ等のサーマルプリンターヘッドを開示する。特許文献3において、薄膜トランジスタ―を駆動回路に用い、駆動回路の温度上昇や発熱抵抗体形成領域の蓄熱を改善するため発熱抵抗体の近傍と薄膜トランジスタ―で構成される駆動回路と発熱抵抗体形成領域からの熱伝搬を金属パターンを介在させることで改善することが記載されている。
特開昭63-222866号公報 特開昭62-242552号公報 特開平4-140152号公報
特許文献1に記載のサーマルヘッドでは、プラテンローラー(以下プラテンと記)径と感熱媒体走行に影響する突起部が無いので、サーマルヘッドの奥行寸法の小型化が容易である。しかし高速、低速印字用途に対応した放熱性の制御が困難であり、印字品質の改善が課題である。
特許文献2は、薄膜トランジスタ―を駆動回路に用いたサーマルヘッドを開示する。特許文献2において、発熱抵抗体や駆動回路が形成された基板の厚さを一様に10~800μmと変化させて放熱板に接着し、基板の熱抵抗を変化させることで放熱量を制御し、蓄熱による印字品質を改善することが提案されている。しかし、高速印字用途で放熱性が求められる用途の場合、基板の厚さを薄くする必要があり、この場合、基板の強度が弱く、ハンドリングや製造が困難になる。
また、低速印字用途で放熱性が比較的求められない場合は、基板の厚みを厚くすることができるので、基板の強度は比較的強くなる。しかし、発熱体から駆動回路形成領域方向への温度伝搬は増して、駆動回路領域を放熱板温度と同等に保つ為には、基板の厚さと同等以上の距離まで駆動回路を発熱体から離して形成させなければならないので小型化が困難になる。
特許文献3において、発熱体と駆動回路との間に放熱用金属パターンを配置し蓄熱を改善する提案がされている。しかし、放熱用金属パターンが介在することで発熱体と駆動回路間の距離が長くなり小型化が困難である。
つまり、前記サーマルヘッドでは発熱体が形成された領域と駆動回路が形成された領域下に形成された蓄熱層が一様の厚さなのでそれら領域の熱時定数を個々に制御することが困難であり、両領域の間隔を最小にした、小型化が困難である。
本発明に係るサーマルヘッド用基板は、主面を有し、発熱体形成領域と駆動回路形成領域を有する基板と、前記主面上の前記発熱体形成領域と前記駆動回路形成領域のそれぞれの領域に一体に形成された発熱体及び駆動回路と、前記主面上に形成され、前記発熱体と前記駆動回路を接続するための配線と、前記発熱体形成領域上に形成された無機層を含む蓄熱層と、前記蓄熱層上に設けられた放熱板と、を備える。また、前記基板の前記主面に対向する裏面であって、前記蓄熱層に対応した領域に凹部を有し、前記凹部が、耐摩耗層として機能することを特徴とする。
本発明に係るサーマルヘッド用基板は、主面上に発熱体及び駆動回路が一体に形成された基板の裏面であって、発熱体に対応した領域に凹部を有している。このように、サーマルヘッド用基板の基板は、一様に薄い基板ではなく、局所的に凹部を有するので、基板強度が増し、基板の割れや破損を防止することができる。
その結果、サーマルヘッド用基板の寿命や信頼性を向上することができる。また、発熱体形成領域上に形成された無機層を含む蓄熱層を備えており、この無機層の厚さを変えることで放熱板への放熱を制御し、高速、低速印字用途のサーマルヘッド用基板が提供できる。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板において、前記蓄熱層は、前記発熱体を被覆して形成されていることを特徴としてもよい。また、蓄熱層の断面積(幅*厚さ)を一定にすることで熱時定数を一定にする。例えば、幅を減少させて厚さを増やすことで熱時定数を一定にできる。この幅を減少させることでサーマルヘッド用基板の小型化を達成するものである。一方、駆動回路形成領域の熱時定数はその形成面積が一定なら厚さを変化させて制御する。
また、放熱板の接着面にサーマルヘッド用基板に突起形成された無機層に篏合する溝を設けたことを特徴としてもよい。また、放熱板の一部に開口や貫通孔を設けたことを特徴としてもよい。また、放熱板の外形をサーマルヘッド用基板外形より大きくしたことを特徴としてもよい。
本発明に係るサーマルヘッド用基板では、蓄熱層が、発熱体を被覆して形成されているので、蓄熱層の厚さを変化させて、発熱体形成領域の熱時定数を可変することができるので、高速、低速印字用途のサーマルヘッド用基板が提供できる。
また、駆動回路形成領域の一部又は全部を被覆して形成してもよい。駆動回路形成領域の熱時定数を可変することができるので、高速、低速印字用途のサーマルヘッド用基板が提供できる。また、発熱体と駆動回路領域を無機層で被覆して形成された無機層は凹部基板の厚さの薄い部分の補強材として機能することを特徴としてもよい。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板において、前記凹部の基板の厚さが、2μm以上100μm以下であることを特徴としてもよい。基板の厚さが2μmより小さい場合は、製品の製造バラツキから品質を維持することが困難であり、また、基板の厚さが100μmより大きい場合は、印刷した際に印字にボケが生じてしまい、印字品質が悪化する。
一方、凹部の基板の厚さが、10μm以上の厚みを有することもできることにより、従来の真空装置を用いた蒸着法やスパッター法では困難であった10μm以上の比較的厚膜の耐摩耗層が形成でき寿命の長いサーマルヘッド用基板が提供できる。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板において、前記基板の裏面の前記蓄熱層に対応した領域に凹部状の溝が設けられていることを特徴としてもよい。凹部状の溝構造を設けることにより、基板強度が増し、加工時や印字時の外部応力に対する耐久性が向上する。
また、感熱媒体の摺動面が平坦になり電極段差の影響による偏摩耗が低減でき、サーマルヘッド用基板の長寿命化が実現できる。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板において、前記蓄熱層を構成する前記無機層は、粒径が1μm以上100μm以下である粒状のアルミナ、またはシリカを含むことを特徴としてもよい。蓄熱層を構成する無機層に含まれるアルミナ、またはシリカの粒径が1μm以上100μm以下の範囲に調整することで、粒径に応じて蓄熱層が所望の熱抵抗を有するように、熱抵抗の値を制御することができる。一方、粒径が1μmmより小さい場合は、硬化後、ち密になり過ぎて、蓄熱層の熱抵抗が小さくなり、その熱抵抗を制御することが困難である。また、粒径が100μmより大きい場合は、硬化後の面粗度が悪化して均一な厚さが得難くなる。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板において、前記発熱体は、複数の発熱部を有し、前記複数の発熱部の一端は、共通電極に接続されており、前記複数の発熱部の他端のそれぞれは、対応する分岐電極に接続されており、前記共通電極及び分岐電極の厚さが1μm以上50μm以下であることを特徴としてもよい。本発明に係るサーマルヘッド用基板では、共通電極及び分岐電極の厚さが1μm以上の比較的厚い厚みとすることができるので、電極幅が小さくした場合でも電極の配線抵抗を小さくすることができる。
また、本発明に係るサーマルヘッド用基板の製造方法は、基板の主面上に、発熱体、駆動回路、及び前記発熱体と前記集積回路を接続するための配線を形成する工程と、
前記発熱体を覆う無機層を含む蓄熱層を形成する工程と、前記蓄熱層の表面に放熱板を接着する工程と、前記放熱板を接着する工程の後に、前記基板の前記主面に対向する裏面であって、前記蓄熱層に対応した領域に凹部を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係るサーマルヘッド用基板の製造方法では、凹部の溝加工をする前に、放熱板と厚い基板を接着一体化する工程を備えるので、放熱板が裏打ち補強板の効果を有し、基板の局所を凹部加工する時の外力やサーマルヘッド用基板の完成後の基板端面にかかる外部応力に耐えることができる。また、蓄熱層を形成する工程では、耐熱性が高く、固い無機層で発熱体又は駆動回路形成領域の一部又は全部を覆うようにすることで印字時の発熱と感熱媒体の摺動や印字時の圧力に耐えて、変形せず良好な印字品質を維持できる。
本発明に係るサーマルヘッド用基板では、発熱体が形成された領域と駆動回路が形成された領域の熱抵抗を個々に制御することができるので、両領域の間隔を小さくしても、両領域間の熱の影響を最小にすることができる。 この結果、サーマルヘッド用基板の小型化が可能である。
また、サーマルヘッド用基板の凹部は、耐摩耗層としても機能する。この凹部は発熱抵抗体と駆動回路が形成された主面と対向する基板の裏面に形成されているので、基板の強度が強く、厚さを厚くできるので長寿命のサーマルヘッド用基板が提供できることである。
図1(a)及び(b)は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の構成を模式的に示す平面図、及び断面図である。 図2(a)及び(b)は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板と放熱板を模式的に示す平面図、及び断面図である。 図3は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板を模式的に示す図である。図3(a)は、サーマルヘッド用基板上の発熱抵抗体、駆動回路、共通電極、分岐電極及び端末電極の配置を示す図である。図3(b)は、図3(a)の平面図であり、図3(c)は、図3(a)のX3a-X3a線の断面図を示す図である。 図4は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の回路配線を模式的に示す図である。 図5は、ハイブリッド型のサーマルヘッドを説明するための図である。 図6は、サーマルヘッドの構造と蓄熱層内の熱伝搬を説明するための図である。 図7は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の製造工程を模式的に説明するための図である。 図8は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の実施例を示す図である。 図9は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の無機層の形状や配置の実施例を示す図である。 図10は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の他の実施例を模式的に示した図であり、多面付けされたサーマルヘッド用基板を個片に分割する工程を示した平面図と断面図と放熱板の平面図と断面図である。 図11は、本実施形態に係るサーマルヘッド用放熱板の他の実施例を模式的に示した図である。 図12は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板の凹部形状や配置の実施例を模式的に示した図である。 図13は、本実施形態に係るサーマルヘッド用放熱板の他の実施例を模式的に示した図である。 図14は、本実施形態に係る、サーマルヘッド用基板の熱伝搬を説明する図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(サーマルヘッド用基板における問題)
まず、サーマルヘッド用基板の問題点について説明する。図5は、ハイブリッド型のサーマルヘッドを説明するための図である。図5に示すように、ハイブリッド型のサーマルヘッドでは、アルミナ基板上のガラス層(基板101)上に形成された発熱体と、ガラス層上にマウントされた駆動回路を含む駆動ICチップ104と、発熱体と駆動ICチップとを接続するための配線から構成されている。
図5には、駆動ICチップ104を実装したサーマルヘッド基板101とプラテン105、感熱媒体P、発熱体及び駆動ICチップの位置関係を示した。図5において、駆動ICチップを実装した領域に突起部が形成されている。
図5に示すように、駆動ICチップ101は、ガラス層上の表面から高さ(図5の「t」)だけ凸状に突起している。発熱体と駆動ICチップとを近づけると、プラテンと駆動ICチップとが接触してしまうため、所定距離以上近づけることが困難である、発熱体と駆動ICチップとの距離W1は、プラテンの直径と、シリコンチップ領域101との高さによって決まるが、一般的に発熱体と駆動ICチップとの距離W1は、プラテン径が16mmの場合は2mm以上となるように設計される。この場合、発熱体からの駆動ICチップへの熱の影響はほとんど無視することができる。
一方、薄膜トランジスタを用いた駆動回路と発熱体を一体形成された本願発明に係るサーマルヘッド用基板(以下、全薄膜型サーマルヘッド用基板と言う。)では、ハイブリッド型のサーマルヘッドにおける駆動ICチップの凸部が形成されず、サーマルヘッド用基板は、ほぼ平坦な表面を有することができる。この場合、発熱体と駆動回路との距離を小さくすることができるので、小型化が可能となる。しかし、発熱体と駆動回路との距離を小さくし、近づけると、発熱体からの熱伝搬で駆動回路の動作保証温度範囲を短時間で超えて動作不良を生じるという課題が生じることが明らかになった。
まず、全薄膜型サーマルヘッド用基板の場合、その課題はどのようになるか考察する。図6は全薄膜型サーマルヘッド用基板における発熱体からの熱伝搬を示す構成例を示す図である。図6(a)は断面構成を示している。蓄熱層が一様な厚さで形成された全薄膜型サーマルヘッド用基板である。最上層は耐摩耗層104でその下層は順に耐酸化膜103、電極(図示せず)、発熱体29の積層構造である。発熱体29からW1の距離に薄膜トランジスターからなる駆動回路が形成されている。その駆動回路形成領域を3Bと表示している。基板3は蓄熱層と呼ばれ、材質はガラスで厚さをtとし、放熱板4に接着されている。また、表示、3A(29)の意味は発熱体29の形成領域を3Aと表示していることを表している。
次に、印字状態での発熱体からの蓄熱層中への熱伝搬を考察する。
図の破線T1,T2,T3、は単パルス通電した時の熱伝搬の様子を模式的に描いた等温度曲線である。温度はT1>T2>T3と変化する。ガラス基板3のX,Y方向は均一物質なので等方的に伝搬すると仮定する。また、放熱板4は室温に維持されているとする。そうするとX方向は距離tで室温(T2)に降下しているとする。等方的伝搬なのでY方向も距離tで室温まで降下していると考えられる。
つまり、一様厚さの蓄熱層で構成されたサーマルヘッドでは駆動回路の温度上昇を放熱板温度程度に保つ為には距離W1はガラス層厚さt以上の距離に配置しなければならない。この蓄熱層の厚さは一般に20~500μm程度である。
つまり、距離W1は20~500μm程度以上離した配置にする必要がある。ちなみに蓄熱層の厚さが変わる理由は高速印字用途(熱時定数が小さい)と低速印字用途(熱時定数が大きい)と用途によって変えているからである。これは用途によって距離W1の異なるパターンを持つ全薄膜型サーマルヘッド用基板が必要になり品種数が増え管理が困難になるという課題が生じる。
例えば図6の構成の蓄熱層(ガラス層)は高速印字用途では20~40μm程度で低速印字用途では100~500μm程度の厚さで経験的に設定される。
また、図6(b)は、図6(a)のY方向の平面上の熱伝搬を模式化した等温度曲線で表した平面図である。
説明しやすくするため、各層を透視した形で各層の配置位置を示している。図の破線T0、T1,T2,T3、は単パルス通電した時の熱伝搬の様子を模式的に描いた等温度曲線である。温度はT0>T1>T3と変化する。駆動回路の一端と発熱体端との距離W1は蓄熱層厚さ以上の距離を持った配置にする必要があり、サーマルヘッド用基板を小型化することが難しかった。
(実施形態1)
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態のサーマルヘッド用基板1の構造を説明する為の平面図、及び断面図である。
図1(b)は図1(a) のX1-X1線の断面図である。サーマルヘッド用基板1は、耐摩耗層として機能する基板8a部と、基板8aと発熱体29と放熱板4との間に設けられた無機層9Mと接着層5とから構成されている。基板3の主面上には、発熱体形成領域3A及び駆動回路形成領域3Bが設けられている。発熱体形成領域3Aには、発熱体29が形成されており、駆動回路形成領域3Bには、発熱体に供給する電流を制御するための駆動回路が形成されている。基板3の主面上に設けられた発熱体を覆う無機層9Mが形成されている。
少なくても、発熱体形成領域3Aを覆うように配置された、無機層9Mが蓄熱層として機能する。また、駆動回路形成領域は熱伝導率の高い接着剤5で放熱板に接着されて放熱をする。しかし、その領域にも無機層は形成でき、その厚さや幅(体積)を変えて熱抵抗を変化させることで、蓄熱量を変化させることができる。
ここで、駆動回路形成領域3Bにおいては、駆動回路を放熱板に接着している接着剤5が、蓄熱層の機能を有している。換言すれば、発熱体形成領域の無機層9Mを第一の蓄熱層とし、駆動回路領域の接着剤5を第二の蓄熱層として構成することもできる。この場合、第一の蓄熱層の幅W1を小さくして厚さtを増やすことで小型化を図ることができる。一方、第二の蓄熱層により、第一の蓄熱層からの熱伝搬を遮断して駆動素子の発熱を放熱させることができる。
また、放熱板4の基板との接着面には無機層9Mの断面と篏合する形状の溝11が形成されている。接着層5は少なくても、無機層9Mと基板3の主面上の駆動回路形成領域3B面に形成されている。
また、放熱板4の大きな役割は無機層の放熱と駆動回路形成領域3Bへの熱伝搬を制御することと駆動回路形成領域の放熱である。
ここで、本実施形態のサーマルヘッド用基板1の構造について更に、詳しく説明する。図14は図1の発熱体周辺部の構成図である。図14(a)は断面構造を示している。基板の一部に凹部8を形成し凹部の底は薄い厚さ8aを持つ。凹部が形成された基板の反対面の主面上には駆動回路と発熱体29が形成してある。接着剤5で放熱板4と基板の主面と接着されている。
発熱体は無機層9Mで覆われている。放熱板には無機層の断面形状に篏合する断面形状の溝11が形成されている。ここで熱伝搬を考察すると、無機層内の破線Tnは無機層内の等温度曲線を示し、発熱体から等方的に伝搬していることを示している。ちなみにプラテン105と感熱媒体Pと発熱体との位置関係も参考まで示してある。
次に、図1(b)の断面構成を更に詳細に説明するために、図14は、サーマルヘッド用基板1の発熱体からの熱の伝搬の様子を模式的に示した補足図である。
図14(a)は断面構成と温度伝搬を説明するための図である。図14はプリンター機構として、プラテン105、と感熱紙P、がガラス基板3の凹部8、薄型化した基板8a部に圧接して摺動することを説明するための図である。
プラテン径の中心の直下に基板3の発熱体29(領域3A)があり、覆う様に無機層9M,を形成してある。同じ主面には駆動回路が領域3Bを形成している。また、無機層9Mの突起部に篏合する溝11を持つ放熱板4、を接着剤5、で接着してある。無機層内に示した破線Tnは等温度曲線を示し無機層9M、内を等方的に伝搬する。この構成によって、無機層の3面周囲を放熱板4で囲まれているため無機層形成領域以外の領域は放熱板温度に維持されることを示している。発熱体を覆う無機層の幅と厚さと位置を調整することで、本来は無機層厚さと同じ距離を必要とするよりも駆動回路形成領域3Bを無機層9に接近させることができる。
更に説明すると、図14(b)は、図14(a)を上側(プラテン105側)から見た図で平面の温度伝搬を説明するための図である。各素子や領域の位置関係を説明するために、それらを透視した位置関係を示す図である。寸法W1は発熱体29の端部から駆動回路形成領域3Bの端部までの距離を示している。無機層の3面を放熱板で囲っているので、本来このW1は無機層厚さと同等以上の寸法を必要とするが、本構造では原理的にW1をほぼゼロにすることができる。しかし、実際は無機層形成にもスクリーンマスクとの位置合わせ誤差を考慮してあるので一定値としている。
更に、サーマルヘッド用基板の動作時に於いて、基板3表面の任意時間の発熱体29からの熱伝搬を説明する。破線T0,T1,T2,T3,は等温度曲線である。温度はT0>T1>T2>T3,と低くなる。透視した無機層9M領域内では等方的に伝搬するが無機層9の無い領域では急激な温度低下をして放熱板4、とほぼ同じ温度になる。つまり、駆動回路領域3Bが低温度化でき誤動作を防ぐことができる。また、駆動回路形成領域3B、との距離W1、をほぼゼロとしたサーマルヘッド用基板の奥行きW、の小型化が可能であることを説明する図である。
つまり、今までは蓄熱層の厚さと同等以上のW1の距離が必要だったが無機層形成領域まで駆動素子28を接近させてサーマルヘッド用基板を小型化できる。無機層の厚さは、減少させたW1に相当する熱容量を持った厚さ程度に、厚さを大きくすることができる。
また、無機層の厚さが薄い場合は基板3の主面の沿面方向の熱伝搬距離は短いので敢えて放熱板で周囲を囲まなくても放熱板への熱伝搬が行われる。この場合は平板の放熱板で構成することができる。
また、駆動回路形成領域3Bに対応する領域にも無機層9Mを薄く形成することで駆動回路の温度も制御できることは勿論である。ここで領域Cは共通電極を表し、分岐電極109の形成領域をDと表している。発熱体をスイッチングする素子を28で表している。発熱体29の形成領域を3Aで表している。スイッチング素子を含む駆動回路形成領域を3Bで表している。
基板は、例えば無アルカリガラス、石英(SiO2)、シリコン(Si)、又は結晶化ガラスなどからなることができる。基板の厚みは、例えば、0.1mm~1.0mmとすることができる。放熱板4は、アルミニウムや鉄、SUS、アンバー材、42合金からなることができる。放熱板として、基板と熱膨張率がほぼ同等な金属などが選択できる。放熱板4の厚みは、1~10mm程度とすることができる。発熱量によって熱容量を変える為である。また、接着層5は、エポキシ系からなることができる。熱伝導性を高める為アルミナやシリカ等の粒子を混合させてもよい。接着層5の厚みは、例えば約5μm~100μmとすることができる。
また、無機層を形成している、無機接着剤はシリカの微粉末で粒径が2~10μmからなり、粘度は1万CP、スクリーン印刷で90番メッシュを用い、一回の印刷で150度30分硬化して形成した。硬化後の厚さは50μmで、塗布直後は約、倍の100μmであった。厚さの調整は無機接着剤の粘度、スクリーン版のメッシュ番手及び塗布回数で調節する。
また、熱伝導率は今回の実施例で用いた無機接着剤は0.5w/m2kである。ガラスは1,1w/m2kである。蓄熱層として機能する無機層の厚さはガラスの約半分程度を目安に設計することができる。よって、高速印字用途では10~20μm程度、低速印字用途では50~250μm程度の厚さに設定できる。
また、凹部8の底部8aは、印刷される感熱媒体が摺動する際に、基板が磨滅することを防止するための耐摩耗層としても機能することができる。このため凹部8の底部厚さ8aは、印字品質を向上するためには、その厚みが薄い方が好ましいが、機械的強度を保持するためには、2μm以上の厚みを有することが好ましい。一方、凹部8の底部8aの厚みが厚すぎると、発熱体からの熱の伝導が劣化し、印字品質が低下することがあるので、凹部8の底部8aの厚みは、100μm以下とすることができる。
図2は、図1のサーマルヘッド用基板1を接着層面で分解して示した図面である。図2(a)及び(b)は、サーマルヘッド用基板1の平面図と断面図を示している。図2(a)の平面図とX2a-X2a線断面図に於いては、座グリ状に加工された凹部8、の領域内に、発熱体形成領域3A、と駆動回路形成領域3Bと無機層形成領域9Mが形成されていることを示す透視図である。
図2(b)は放熱板4の平面図とX2b-X2b線の断面図を説明している。基板3の主面と接着する面には無機層9、と篏合する形状の溝11が形成してあり、凹部8、形成個所以外の接着面領域に基板の元厚さ3の部分が露出する開口10を有している。これはケーブル7と基板3の電源及び信号端子との接合時に加圧に耐え、また接合後の基板強度を確保するためである。また、開口10は貫通穴形状でもよいことは勿論である。
また、溝11の深さは0.1~0.5mm程度で印字密度や用途によって無機層の厚さが変化することで2次的に決まってくる。幅は0.1~0.5mm程度で発熱体29を覆う長さである。また、断面形状は無機層9Mの断面形状に等しくでき、製法によって方形や台形や半円などの形状にすることができる。例えば、スクリーン印刷を用いた場合は台形にデイスペンサーを用いた場合は半円になりやすい。また、加工法としてはアルミニウムの場合は研削やプレスや押し出し成形等が利用できる。また、無機層の厚さが薄い場合は平板の放熱板で構成できる。
また、放熱板4の外形は基板3の外形より0.1~1.0mm程大きくして、ガラス基板3を接着後その端部を外力からの割れや欠けを防ぐ大きさとすることもできる。
図3は、本実施形態に係るサーマルヘッド用基板を模式的に示す図である。図3(a)は、全薄膜型サーマルヘッド用基板の基板3上の発熱抵抗体29、駆動回路、共通電極106、分岐電極109、及び端末電極108、などを含む回路パターン全体の配置示す図である。図3(c)は、図3(a)のX3a-X3a線の断面拡大図を示す図である。図3(b)に於いては、発熱体と駆動回路の周辺部の拡大図面で基板3、はガラス、石英、等を用いることができる。発熱体29、は活性層ポリシリコン10a、で形成され、駆動回路を構成する薄膜トランジスタ―の製造プロセスで同時に形成されることを示している(図中には、電極層の接合箇所を「X」で示している)。
図4は実施例に用いた、サーマルヘッド用基板の回路図とすることができる。発熱体29、に電流を流す電源VH、(領域C)とグラウンド電極GH,(領域D)間に、多数の発熱体を結線させることができる。個々の発熱体29、の一端は共通電極C、に結線させることができる。他の一端は分岐電極(その形成領域E)を通り、個々のスイッチング素子28、に結線させることができる。そして、スイッチング素子28で電流のオン・オフとその時間を制御する駆動回路に結線させることができる。駆動回路はシリアルイン、パラレルアウトのシフトレジスタ―22、と分割印字をするゲート回路27、とデータ保持のラッチ回路25、と駆動回路用電源(図示せず)から構成させることができる。
信号の種類としては分割印字に用いるストローブ26、データを保持するラッチ24、データ21、クロック23、の各信号端子を導出させることができる。一般に領域38、の回路部を駆動回路と呼ぶことができる。3Aは発熱抵抗29、が一列に並んだ領域を示し、3Bは駆動回路が配置された領域を示し、上記各信号及び電源の端子が図3(a)の端末電極108、108a箇所に集約されている。
更に、サーマルヘッド用基板の動作時に於いて、基板3表面の任意時間の発熱体29からの熱伝搬を説明する。破線T0,T1,T2,T3,は等温度曲線である。温度はT0>T1>T2>T3,と低くなる。透視した無機層9M領域内では等方的に伝搬するが無機層9の無い領域では急激な温度低下をして放熱板4、とほぼ同じ温度になる。つまり、駆動回路領域3Bが低温度化でき誤動作を防ぐことができる。また、駆動回路形成領域3B、との距離W1、をほぼゼロとしたサーマルヘッド用基板の奥行きW、の小型化が可能であることを説明する図である。
図7(a)~(e)に、サーマルヘッド用基板の製造工程を説明するための概略図(平面図と断面図)を示す。図7(a)は、基板上に発熱体及び駆動回路を形成するための薄膜形成工程を説明するための図である。図7(b)は、無機層を形成するための無機層形成工程を説明するための図である。図7(c)は、放熱板を接着固定するための放熱板接着工程を説明するための図である。図7(d)は、基板に凹部を形成するための凹部形成工程を説明するための図である。
また、図7(e)は、サーマルヘッド用基板にFPC(フレキシブルプリント基板)からなる端末ケーブルを形成するためのFPC形成工程を説明するための図である。また、図7(c)~(e)に於いて、発熱体形成領域3A及び駆動回路形成領域3Bは位置関係を示す為、放熱板を透視した位置を示している。以下、サーマルヘッド用基板の製造工程について、詳細に説明する。
[薄膜形成工程]
まず、図7(a)は基板3の主面の発熱体形成領域3Aに発熱体29を形成する。また、駆動回路形成領域3Bに発熱体29に流す電流を制御するための駆動回路、信号端子108の電極を形成する。その後、最上層表面に保護膜を形成する。
図3(b)及び(c)はガラス基板3上に薄膜工程で形成する素子構成及び配置を示した図である。まず、LPCVD法(low-pressure chemical-vapor deposition法)を用いて、ガラス基板3上にポリシリコン層29を堆積した。ポリシリコン層29の厚みは、約1000Å程度である。次に、ポリシリコン層29上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて、発熱体形成領域3A及び駆動回路形成領域3Bとなる領域に、発熱体29及び薄膜トランジスタ(TFT)の活性領域10aを含む駆動回路のためのパターンを形成した。
次に、ゲート絶縁膜206(厚み約750Å程度)を形成した後、再びポリシリコン層(厚み約3000Å程度)を堆積した。次に、薄膜トランジスタのゲート電極となる部分205を、フォトリソグラフィ技術を用いてエッチングし、ゲート電極205パターンを形成した。
その後、イオン注入法を用いて、リン(P)、及びボロン(B)をポリシリコン層に順次、イオン注入することにより、駆動回路を構成するC-MOS薄膜トランジスタ(TFT)のソース領域203a、及びドレイン領域207aを形成した。同時に、発熱体領域29を形成した。イオン注入の工程では、薄膜トランジスタ(TFT)のソース領域203a、及びドレイン領域207aの不純物濃度、及び発熱体領域29の抵抗値が所望の値となるように、注入する不純物(リン(P)、又はボロン(B)のドーズ量及びイオン注入の深さ(イオン加速エネルギーなど)を制御し、調整した。
次に、LPCVD法を用いて、層間絶縁膜204を形成する。層間絶縁膜204は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)から成り、厚みは、約500nm程度とすることができる。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて電極形成領域の層間絶縁膜204をエッチングし、コンタクトホールを開け、多層電極金属(Ti/Al/Ti)をスパッター法により形成した後、リフトオフ法を用いて、配線106、及び109を形成した。多層電極金属(Ti/Al/Ti)の各金属層の厚みは、例えば、(Ti膜100nm/Al膜800nm/Ti膜100nm)とすることができる。
最後に、ガラス基板3の最上層に保護層209を形成した。(図3(c)にのみ表示)保護層209は、例えば、窒化ケイ素(SiN)などのシリコン系無機絶縁膜を用いることができ、厚みは約1000Å程度とすることができる。以上の工程により、ガラス基板3上に発熱体(抵抗体)と駆動回路とを形成した。本実施形態では、発熱体(抵抗体)と駆動回路とは、ポリシリコン層10aから成り、同時に形成される。
また、液晶表示素子のアレイ基板の製造プロセスを適用することができるので、量産効果が大きい。また、発熱体を構成する抵抗体材料としては、ポリシリコン層以外に、Ti金属層を用いることもできる。
また、発熱体としてTaSiO2、NiCr、TaN等の別材料を成膜してパターン形成後上記薄膜形成工程で作成することもできることは勿論である。
図7(a)に示した薄膜形成工程において形成されるサーマルヘッド用基板の仕様と発熱体の構造の一例を以下に示す。
・印字幅:3 inch
・1ラインの総発熱体数:304 dots/line
・発熱体密度:4dot/mm
・発熱体のピッチ:125μm
・発熱体のサイズ((幅W*長さL):100μm)*130μm
・基板の外形サイズ:L=80mm、W=10mm
また、図3(a)に示した各部位の寸法の一例として、以下のような数値を用いた。
・L1=76mm、W1=0.1mm(一定)、W2=2mm、W3=2mm
また、ガラス基板3は、例えば、所謂、液晶用基板用のガラス基板で無アルカリガラスから成り、厚さは0.5mmである。以上の工程は液晶表示素子製造時のLTPS TFTのアレイ工程として知られているものである。
また、薄膜形成工程完了後の基板に共通電極及び分岐電極の厚さを無電解や電気メッキ手法を用いて厚くすることにより、配線抵抗を変えずに電極幅を狭くできるので、電極の専有面積を減少させ、サーマルヘッド用基板の小型化をすることができる。何故なら、サーマルヘッド用基板1では、電極の上に積層して耐摩耗層を形成しないので、電極厚さが原因で生じる、耐摩耗層の偏摩耗を気にせず、電極厚さは任意の厚みが可能だからである。
さて、先に示したサーマルヘッド用基板の仕様の中で、基板奥行寸法Wを10mmから更に7mmに小型化できることを説明する。方法は電極層の厚さを4倍以上にすることで配線抵抗を同等にすることである。その結果、前記仕様寸法のW2とW3を各々、約4分の一の0,5mmにすることができる。
その方法は図3に於いて、薄膜形成工程終了後のサーマルヘッド用基板の電極上に更にCrとCuメッキ処理をし、Crを0,1μmとCuを4μm形成できる。手法としては無電解と電気メッキ手法を用いることができる。メッキ個所は共通電極106と分岐電極形成領域109aと個々の分岐電極が一体に連結された電極109上である。その為に、保護膜のSiNx膜209を感光性レジストを用いて共通電極106と分岐電極形成領域109aと個々の分岐電極が一体に連結された電極109上のSiNx膜209部に、窓開けパターンを作成し、プラズマエッチでSiNx膜を除去後、Cr+Cuメッキ処理をして、Crを0,1μmとCuを4μm形成できる。ところで、電極の厚さは1μm以下では配線抵抗が大きくなるので実用的ではない。また、50μm以上になると密着性が悪化して剥がれやすくなり限界がある。
[無機層形成工程]
次に、図7(b)を参照しながら、蓄熱層として機能する無機層を形成するための無機層形成工程を説明する。図7(b)に示すように、ガラス基板3の主面上の発熱体形成領域3Aに無機層9を形成する。本実施形態では、無機層は、発熱体形成領域3Aの発熱体を覆って形成され、無機層9Mを構成することができる。また、発熱体形成領域3A以外の領域にも、無機層9を形成することができる。
無機層9Mを形成することにより、蓄熱量を制御して高速、低速印字用途に適合したサーマルヘッド用基板を提供できる。また、耐熱性が高く、固いので発熱体29が瞬時に高温になっても変質や軟化が生ぜず感熱媒体の良好な接触摺動を保ち印字品質を維持することができる。
また、無機層9Mは、例えば、アルミナやシリカの粉末を混合した、無機接着剤用いることができ、デイスペンサーやスクリーン印刷により形成する。
無機接着剤を用い幅、0.2mmのラインを発熱体形成領域3Aの主面に形成する。発熱体パターンの長さRLは130μmであり、印刷時の位置合わせ誤差を考慮して幅を決め、全面を覆う設計とした。
無機接着剤はシリカの微粉末で粒径が2~10μmからなり、粘度はほぼ1万CPで、スクリーン印刷で90番メッシュを用い、一回塗布で150度30分硬化して形成した。硬化後の厚さは50μmで、塗布直後は約倍の100μmであった。厚さの調整は無機接着剤の粘度、スクリーン版のメッシュ番手及び塗布回数で調節できる。
また、無機層として常温硬化ガラスも使用できる。液状のガラスを塗布し室温乾燥でガラス化できるもので高温処理が不要になる。
また、熱伝導率は今回の実施例で用いた無機接着剤は0.5w/m2kである。ガラスは1,1w/m2kである。蓄熱層として機能する無機層の厚さはガラスの約半分程度を目安に設計することができる。
[放熱板接着工程]
次に、図7(c)を参照しながら、放熱板接着工程について説明する。図7(c)に示すようにガラス基板3に、放熱板4を接着剤5を用いて接着する。まず、あらかじめデイスペンサー等を用いてガラス基板3の放熱板を接着するための接着面に、接着剤5を塗布しておく。本実施形態では、無機層形成工程後、ガラス基板3の主面上のガラス基板3面上に、接着材5をデイスペンサーで塗布した。
次に、接着剤5が塗布された接着面に放熱板4を圧接し、そのままの状態で、150度の温度で10分間加熱し、接着剤5を硬化させ接着した。放熱板4は、例えばアルミニウムから成り、厚さは、例えば約1.0mm程度とすることができる。また、接着剤5は、例えば、アルミナ粒子を混合したエポキシ接着剤を用いることができる。放熱板4を接着した後の接着材5の厚さは、約10μm程度であり薄い程好ましい。また、接着剤5は、例えば、熱伝導率が高い、液状アンダーフィル材として用いられるエポキシ接着剤を用いることもできる。
また、本実施形態では、高温部の発熱抵抗体部を、一般的に耐熱性の高い無機物から成る無機層9Mで被覆して構成しているため、接着剤5として、比較的耐熱温度の低い接着剤を用いることができる。また、放熱板4は、信号端子導出部108が露出するように開口部10が設けられている。この開口部は、後の凹部形成工程でガラス基板3の厚みが減じられることはないので、ガラス基板3の本来の厚さ部分であるので、FPCの熱圧着に耐えるための十分な強度を有する。また、放熱板4とガラス基板3を貼り合わせた構造によって、強度が増し次の凹部形成工程において凹部を形成する際に、薄く加工された凹部の底の裏打ち補強材として機能させることができる。
[凹部形成工程]
次に、図7(d)を参照しながら、凹部形成工程を説明する。凹部8の底部の薄膜部8aは耐摩耗層となる部分である。ガラス基板3の主面と対向する裏面において、耐摩耗層形成領域8になる領域に凹部を形成する。凹部を形成する領域は、プラテンの直径にほぼ依存する。例えばその直径が16mmの場合、図7(d)において、発熱体列Aの中心から+/-2mm、幅76mmの領域とすることができる。本実施形態では、ガラス基板3の裏面をエッチングして、凹部を形成することができる。凹部をエッチングにより形成することにより、加工精度が高く、加工歪の無い、平坦な加工が可能となる。
凹部形成工程のプロセスについて以下に説明する。まず、ガラス基板3と放熱板4が接着合体された、放熱板4の側の面をエッチング液から保護するために、その全面にレジストをスプレー塗布する。その後、ガラス基板3側の面に全面に感光性レジストをスプレー塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて、ベーク、露光、現像、ポストベークの各工程を行うことにより、凹部形成領域のためのパターンを形成する。この凹部形成領域は、耐摩耗層形成領域8に対応している。次に、フッ化水素酸(HF)液に約50時間浸漬し、約480μm程度の深さでエッチングした。図7(d)の凹部形成領域におけるガラス基板3の厚さ8aは、約10μm程度である。
また、ガラス基板3側の面に塗布するレジストとして、感光性レジスト以外に、フィルムレジスト等を用いることができる。レジストの塗布法は、浸漬塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷等を用いることができる。凹部8のガラス基板3の厚さ(エッチング後の残し厚さ)8aは、210μm以上の厚さとすることができる。この凹部8(又は凹部形成領域)が耐摩耗層として機能する。このエッチングプロセスは液晶表示素子製造工程のスリミング工程と同様である。
次に、サーマルヘッド用基板の個片分割工程(図示せず)について説明する。
個片分割工程は、以下の2つの方法を採用することができる。
まず、マザーガラス基板3を分割し、個片化した後、放熱板4を接着する方法について説明する。図10(a)に示したように、マザーガラス3aの主面に薄膜形成工程終了後の基板1を示している。サーマルヘッド用基板1のパターンが3個面付けされている。個々の基板3の周囲にスクライブラインSを形成し、スクライブラインSに沿ってスクライバーで分割し、個片化した後、放熱板4と接着する方法である。また、研削装置のダイサーを用いることができることは勿論である。
一方、図10(b)、及び(c)に示したように、複数の放熱板4を接着した後(図10(b))、マザーガラス基板3を分割し(図10(c))、個片化することもできる。また、図10(d)に放熱板4の平面図と断面図を示してある。周囲が薄く鍔加工4aを施してある放熱板4を接着する。鍔部の高さh4,は0,1mm~0.5mm程度に設定する。幅w4は0.1mm~1.0mm程度に設定する。サーマルヘッド用基板1の端部が放熱板よりはみ出さない設定である。その後、図10(c)に示したように、あらかじめ設けられたスクライブラインSに沿ってマザーガラス基板3の主面をスクライブし、マザーガラス基板3を分割し、個片化した。この鍔を設ける効果は接着剤が端部ではみ出しても分割がスムーズにできる為であり、放熱板は鍔の無いものでも構わないことは勿論である。
この放熱板4を接着した後、マザーガラス基板3を分割し、個片化する方法では、大きなガラス基板を用いて、より多くの面付けをする場合にコスト面で有利である。図13に鍔付き放熱板を用いた時のサーマルヘッド用基板の完成外形図を示す。放熱板4の鍔4aがガラス基板3の端部を外力から保護して割れや欠けを防ぐことができることを示している。
[端末ケーブル形成工程]
次に、図7(e)を参照しながら、端末ケーブル形成工程を説明する。図7(e)に示したように、端末ケーブルとしてFPCをACF(異方導電膜)で熱圧着する。FPCは、例えば、ポリイミドシート(厚み50μm)にフラッシュ金メッキ付き銅厚18μmを配線として形成されたものを用いることができる。ACFは180℃、5秒、圧力3MPs圧着、加熱硬化させた。
以上の工程によりサーマルヘッド用基板1が完成する。
[実施例1]
図1は、実施例1のサーマルヘッド用基板1を概略的に示す図である。基板3と放熱板4を接着して各種信号及び電源端子が配置された電極端子部と端末ケーブルを接合してある。図2は図1の完成したサーマルヘッド用基板1を発熱体及びその駆動回路が形成された基板3と放熱板4に分解して構成を説明した図面である。図2(a)において、サーマルヘッド用基板1の基板3の裏面には凹部8が形成されており、基板3の主面には発熱体を覆うように無機層が形成されている。発熱体形成領域3A、駆動回路形成領域3B、及び無機層形成領域9Mは基板3を透視した位置関係を示す。図2(b)に示したように、放熱板4は、無機層断面形状に篏合する溝を有し、基板3の主面に配置された端子電極を露出する為に、所定の位置に開口部を有する。
図3はサーマルヘッド用基板の発熱抵抗体や駆動回路等を形成した薄膜形成工程を終了した基板の素子及びパターン配置を示す図である。駆動回路が薄膜トランジスタ―で構成されている。
凹部の底の厚さ8aは2~50μmで2μm以下の厚さでは製造バラツキの面で困難になる。50μm以上の厚さになると印字がボケ、品質低下が著しくなる。接着層は5~50μm程度で薄くて熱伝導性の高い接着剤である。
また、図8(a)にL1~L8部の本実施例の各部の寸法例を示した。L1は無機層の幅で0.3mm、L2は接着層の厚さでほぼ10μm、L3は発熱体の長さ(RL)で0.13mm、L4は発熱体端と駆動回路形成領域端間距離で0.1mm、L5は凹部の幅で発熱体中心から+/-2.0mm(4.0mm)、L6は凹部底面の厚さ(耐摩耗層)で10μm、L7はガラス基板の厚さで0.5mm、L8は無機層の厚さで50μmである。
[実施例2]
図8(b)、(c)、(d)、及び図9は、実施例2のサーマルヘッド用基板301を概略的に示す図である。駆動回路形成領域の熱時定数を無機層で変化させる応用例である。この領域にも無機層を形成して厚さを変えてその領域の熱時定数を変えることができる。図8(b)は発熱体部だけでなく駆動回路部も覆う様に無機層を形成した構成図を示したものである。図8(c)は、発熱体を覆う無機層の厚さが薄い場合のサーマルヘッド用基板の断面図を示したものである。図8(d)は、無機層が複数箇所に設けられたサーマルヘッド用基板の断面図を示したものである。図9(a)~(d)はサーマルヘッド用基板の平面図を示し、図9(e)~(j)は各々の平面図に対応した断面図の概略を示した図である。例えば図9(b)のX9b-X9b線断面図は(f)と(i)である。
サーマルヘッド用基板において、高速印字用途では無機層の厚さが10~40μm程度、中速印字用途では40~100μm程度、低速印字用途では100~500μm程度と経験的数値として設計がされる。高速用途で厚さが薄い場合は無機層の形成領域を駆動回路形成領域まで広げ、放熱板の溝の深さが浅くなるので溝無しの平板の放熱板を用いることができる。
図8(b)において、無機層の厚さは駆動回路領域9Maでは薄く、発熱体部9Mは厚く形成する。特に基板8a部に厚さが数μm程度と薄い時はプラテンによる圧力による基板8a部の変形を防ぐことができる。
また、無機層を形成する工程では、スクリーン印刷技術を用いて薄い層と厚い層に分けて無機層を形成することができる。更に、図8(c)は、高速印字用途の示したサーマルヘッド用基板の一例を示す。図8(c)において、平板放熱板4を用い駆動回路形成領域にも一様な厚さの無機層9Mを形成しているので、薄くなった基板8a部の補強材の効果を持たせることができる。
更に、熱抵抗を均一にするためには接着層の厚さも均一にする必要がある場合は、図8(d)のように無機層9Mを複数箇所(本実施例では2箇所)に形成してもよい。放熱板は、溝の無い平板上の放熱板を用いることができ、複数箇所に設けられた無機層の厚さが接着時のスペーサの役割をする。この結果、基板3と放熱板4の平行度を保ちながら接着層厚さを均一にすることができる。
図9(a)は2箇所に無機層9Mを形成した例を示す図である。図9(a)において、一方の無機層9Mは、発熱体形成領域3Aを覆うように直線状に形成されている。一方、他方の無機層9Maは,駆動回路形成領域3B上に形成されている。この無機層9Mは基板3上の任意の位置に形成できる。
図9(b)は一箇所に無機層9Mが形成されている例を示す。図9(f)と図9(i)図は無機層9の断面形状の変化例を示す図である。図9(f)はスクリーン印刷技術を用いて形成した場合のサーマルヘッド用基板の断面図である。また、図9(i)はデイスペンサー塗布で形成した場合のサーマルヘッド用基板の断面を示す。無機層の断面形状によって、それに篏合する放熱板の溝の形状を選択できる。
図9(c)、図9(g)、及び図9(j)は、無機層9 Mの厚さと形成領域を変えた実施例を説明する図である。無機層9Maは9Mより薄く形成されその厚さで熱抵抗を制御するものである。図9(j)図は無機層厚さが薄い場合で駆動回路形成領域にも無機層を形成した例である。
図9(d)と(h)は駆動回路がブロック毎に分けて配置した場合でそのブロック毎に無機層9Mnを形成した例の平面図と断面図である。
以上のように発熱体形成領域と駆動回路形成領域の熱時定数を無機層の厚さや塗布面積を変えて各領域の熱時定数を制御できる。
先に説明したように、図11は、無機層の断面に篏合した溝を持つ放熱板の形状を説明した図である。図11は無機層の断面変形例に対応した放熱板の形状例を示した図である。また、図11(a)は、一箇所に無機層を形成した場合であり、図11(b)は複数箇所に無機層を形成した場合の例である。
その他、図示しないが平板状の放熱板やその他の溝形状の放熱板も実施できることは勿論である。
[実施例3]
図12は、実施例3のサーマルヘッド用基板401を概略的に示す図である。ガラス基板3にも連続印字が続いたときは蓄熱が生じてくる。そこでガラス基板の元厚の領域の熱容量を下げて蓄熱を防ぐことが必要になる。次に、凹部形成領域以外のガラス基板の領域の熱容量を下げることが可能なサーマルヘッド用基板について、以下に説明する。
図12に、幾つかの異なる形状の凹部を有するサーマルヘッド用基板の実施例を示す。図12(a)~(d)はサーマルヘッド用基板の全体概略平面図を示し、発熱体形成領域3Aと駆動回路形成領域3Aを透視してその位置を示した図である。図12(e)~(i)は各平面図の断面図を表している。例えば、図12(b)の平面図のX12b-X12b線断面図は(f)と(i)図である。
まず、平面図から見た凹部8の形状は大きく2種類である。図12(a)~(c)には、所謂座グリ形状の凹部8を示し、図12(d)に、溝形状を有する凹部8を示す。
座グリ形状の凹部を持つサーマルヘッド用基板は強度を増す利点はあるがプラテンをその凹部に収めることが必要になる。一方、溝形状の凹部を持つサーマルヘッド用基板では、基板3の強度が若干劣るがプラテンの長さの制約が無くプリンター機構の設計に余裕ができる。
次に、図12(a)及び(e)は、凹部を複数設け基板3の表面積を高め放熱性を向上したサーマルヘッド用基板を示す。図12(e)において、端末電極端子形成領域以外で他の支障のない基板3の領域に複数の座グリ8aが形成されている。なお、図12(e)において、凹部8が座グリ形状を有する場合を示したが、溝形状であってもよい。
図12(f)及び(i)は、凹部が、一様に薄い厚みの場合と異なる厚みを有する例を示す。図12(f)及び(i)に示したサーマルヘッド用基板では、主面の発熱体形成領域3Aや駆動回路形成3B以外の領域の反対面に、主面の端子形成領域以外を薄型化した凹部8を持つことができる。特に図12(i)に示したサーマルヘッド用基板では、発熱体形成領域3A上のみ突起を形成しているので、感熱媒体への食い込みによる接触性を高めることができる。この結果、印字品質の向上を図ることができる。図12(c)及び(g)に示したサーマルヘッド用基板では、駆動回路ブロック毎に島状に座グリ状凹部8nを有することができる。図12(d)及び(h)に示したサーマルヘッド用基板では、溝形状の凹部8を有する。図12(j)に示した断面図(平面図は図示せず)のサーマルヘッド用基板では、L字状の溝を形成して感熱媒体の走行経路の自由度上げた機構設計をすることができる。
図12に示したようにサーマルヘッド用基板の凹部には、様々な異なる形状を有する凹部を適用することができる。この凹部8を形成する工程では、例えばエッチング法を用いることができる。しかし、エッチング法だけでは形成できない箇所や構造の場合は、研削やサンドブラスト等の加工法を採用することができる。重要なことは加工歪の除去で最終仕上げとしてエッチング処理をして加工歪を除去することである。加工歪が残るとサーマルヘッド用基板の動作時の温度サイクルで欠けやクラックの発生を生じて動作不良を発生するからである。
1、301,401 サーマルヘッド用基板
3 基板
3A 発熱体形成領域
3B 駆動回路形成領域
4 放熱板
5 接着層
6 ACF(異方導電膜)
7 FPC(端末ケーブル)
8 凹部
9 9M,9Ma 無機層
11 溝

Claims (7)

  1. 主面を有し、発熱体形成領域と駆動回路形成領域を有する基板と、
    前記主面上の前記発熱体形成領域と前記駆動回路形成領域のそれぞれの領域に一体に形成された発熱体及び駆動回路と、
    前記主面上に形成され、前記発熱体と前記駆動回路を接続するための配線と、
    前記発熱体形成領域上に形成された無機層を含む蓄熱層と、
    前記蓄熱層上に設けられた放熱板と、を備え、
    前記基板の前記主面に対向する裏面であって、前記蓄熱層に対応した領域に凹部を有し、
    前記凹部が、耐摩耗層として機能することを特徴とするサーマルヘッド用基板。
  2. 前記蓄熱層は、前記発熱体を被覆して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド用基板。
  3. 前記凹部の基板の厚さが、2μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーマルヘッド用基板。
  4. 前記基板の裏面の前記蓄熱層に対応した領域に凹部状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のサーマルヘッド用基板。
  5. 前記蓄熱層を構成する前記無機層は、粒径が1μm以上100μm以下である粒状のアルミナ、またはシリカを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のサーマルヘッド用基板。
  6. 前記発熱体は、複数の発熱部を有し、
    前記複数の発熱部の一端は、共通電極に接続されており、
    前記複数の発熱部の他端のそれぞれは、対応する分岐電極に接続されており、
    前記共通電極及び前記分岐電極の厚さが1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のサーマルヘッド用基板。
  7. 基板の主面上に、発熱体、駆動回路、及び前記発熱体と前記集積回路を接続するための配線を形成する工程と、
    前記発熱体を覆う無機層を含む蓄熱層を形成する工程と、
    前記蓄熱層の表面に放熱板を接着する工程と、
    前記放熱板を接着する工程の後に、前記基板の前記主面に対向する裏面であって、前記蓄熱層に対応した領域に凹部を形成する工程と、を備えることを特徴とするサーマルヘッド用基板の製造方法。
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