JP2022016210A - 細胞培養容器、細胞培養容器の製造方法、細胞の製造方法、及び細胞培養装置 - Google Patents

細胞培養容器、細胞培養容器の製造方法、細胞の製造方法、及び細胞培養装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 細胞を高密度に培養するためのガス透過性と強度に優れた細胞培養容器を提供する。【解決手段】 少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材11によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器1であって、平面状器材11の少なくとも一方がガス透過性フィルムからなり、少なくとも1つのガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部111を備えると共に、当該ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間Sを備え、当該ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、突起部111によって、当該ガス透過性フィルムと平面との間に通気可能な空間が形成される細胞培養容器。【選択図】 図1

Description

本発明は、細胞培養技術に関し、特に細胞を高密度で培養するための細胞培養容器に関する。
近年、医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法等の分野において、細胞や組織などを人工的な環境下で効率良く大量に培養することが求められている。
このような状況において、袋状の細胞培養容器を用いて閉鎖系で細胞を自動的に大量培養することが提案されている。
袋状の細胞培養容器を用いて細胞を培養する場合、容器をインキュベータ内に載置して用いたり、容器内での培養液の移動を抑制して培養環境を安定させるために、容器を押圧治具に挟み込んだ状態で用いることがある。
ところが、袋状の細胞培養容器は、通常2枚のフィルムを貼り合わせて形成され、その外面が平坦であるため、インキュベータ内に載置すると、容器の底面を介したガス透過が不足することがあるという問題があった。
すなわち、インキュベータの載置台には、通常パンチングメタルと呼ばれる穴開き板が用いられているが、その開口率は50%以下であることが多いため、穴開き部分以外では、細胞培養容器の表面と載置台が密着して容器内へのガス透過が妨げられ、高密度培養時に細胞の酸素消費が多くなった場合、容器内における細胞周辺の酸素濃度が低下してしまうという問題があった。
また、押圧治具に挟み込んだ状態で用いると、押圧治具の架台や押圧部材に容器表面が密着するため、この場合も容器のガス透過性能が阻害されて、細胞周辺の酸素濃度が低くなり、細胞増殖効率が低下するという問題があった。
また、袋状の細胞培養容器を用いて細胞を大量培養する場合には、容器の強度とガス透過性の大きさが重要となる。
例えば、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニルなどのガス透過性フィルムを用いて細胞培養容器を製造する場合、容器の強度を確保するためには、通常100μm以上の厚みが必要であった。
しかしながら、この場合、培養細胞の密度が50万個/cm以上の高密度になると容器のガス透過性能が不十分となり、細胞周辺の酸素濃度が低下して、増殖効率が低減してしまうという問題があった。
一方、例えば50μm以下の厚みのガス透過性フィルムを用いて細胞培養容器を製造した場合、培養細胞が高密度の状態でもガス透過性能は十分であるものの、容器の強度が不十分となって破袋の恐れが生じ、取り扱いが困難になるという問題があった。
特許第4806761号公報
ここで、特許文献1には、培養用トレイの押さえ板の袋状容器と接する位置に複数の通気孔を設けることによって、袋状容器のガス透過性能を向上させることが記載されている。
しかしながら、袋状容器内において通常細胞は下面側に堆積するため、押さえ板に通気孔があるだけではガス透過性能の向上効果は小さく、この培養用トレイは、容器内における細胞周辺の酸素濃度が低下するという問題を十分に解消可能なものではなかった。
そこで、本発明者らは鋭意研究して、容器を構成するガス透過性フィルムの外面に突起部を備え、ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、突起部によってガス透過性フィルムと平面との間に通気可能な空間を形成させることで、細胞培養容器のガス透過性能を高密度培養時でも十分なものにすることに成功して、本発明を完成させた。
また、このような細胞培養容器によれば、ガス透過性フィルムの厚みを100μm未満にした場合でも取り扱い時の強度を確保することが可能である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細胞を高密度で培養するためのガス透過性と強度に優れた細胞培養容器、細胞培養容器の製造方法、細胞の製造方法、及び細胞培養装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の細胞培養容器は、少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器であって、前記平面状器材の少なくとも一方がガス透過性フィルムからなり、少なくとも1つの前記ガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を備えると共に、当該ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を備え、当該ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、前記突起部によって、当該ガス透過性フィルムと前記平面との間に通気可能な空間が形成される構成としてある。
また、本発明の細胞培養容器を、前記培養空間の外側にあたる前記ガス透過性フィルムの外面領域において、前記突起部として、複数の略三角柱がそれぞれ山脈状に並列して形成された構成とすることが好ましい。
さらに、本発明の細胞培養容器を、対向する前記平面状器材の両方がガス透過性フィルムからなり、それぞれのガス透過性フィルムの外面に前記突起部が備えられた構成とすることも好ましい。
また、本発明の細胞培養容器の製造方法は、少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器の製造方法であって、前記平面状器材の少なくとも一方にガス透過性フィルムを用い、前記ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、前記ガス透過性フィルムと前記平面との間に通気可能な空間が形成されるように、前記ガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を形成し、対向する前記平面状器材の周縁部を貼り合わせて、前記ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を形成する方法としてある。
さらに、本発明の細胞の製造方法は、上記の細胞培養容器を用いて細胞を培養する方法としてある。
また、本発明の細胞培養装置は、上記の細胞培養容器と、前記細胞培養容器を載置する平坦な架台、並びに、前記架台に載置された前記細胞培養容器を押圧する押圧部材を備え、前記細胞培養容器に形成された前記突起部によって、前記ガス透過性フィルムと前記架台との間、及び/又は、前記ガス透過性フィルムと前記押圧部材との間に通気可能な空間が形成される培養用治具とを有する構成としてある。
本発明によれば、細胞を高密度で培養するためのガス透過性と強度に優れた細胞培養容器、細胞培養容器の製造方法、細胞の製造方法、及び細胞培養装置の提供が可能となる。
本発明の一実施形態に係る細胞培養容器の平面図(a)及びAA断面図(b)を示す図である。 本発明の一実施形態に係る細胞培養容器に用いられるガス透過性フィルムの拡大図(a)及び同容器による細胞培養の様子を示す模式図(b)である。 本発明の一実施形態に係る細胞培養容器を培養用治具に固定して培養を行う様子を示す図である。 試験1の細胞培養容器(実施例1,比較例1)のガス透過性能の測定結果を表すグラフを示す図である。 試験2の細胞培養容器(実施例2,比較例2)を用いた細胞培養の結果を示す図である。
以下、本発明の細胞培養容器、細胞培養容器の製造方法、細胞の製造方法、及び細胞培養装置の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態及び実施例の具体的な内容に限定されるものではない。
本実施形態の細胞培養容器は、少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器であって、平面状器材の少なくとも一方がガス透過性フィルムからなり、少なくとも1つのガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を備えると共に、当該ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を備え、当該ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、突起部によって、当該ガス透過性フィルムと平面との間に通気可能な空間が形成されることを特徴とする。
具体的には、図1(a)に示すように、本実施形態の細胞培養容器1は、例えば矩形状の2枚の平面状器材11の周縁部Hをヒートシールにより熱溶着させることによって得ることができる。2枚の平面状器材11の間に形成された空間は、細胞を培養するための培養空間Sとして用いられる。平面状器材11における培養空間Sを形成する領域は、細胞培養容器1において培養部を構成する。なお、平面状器材11の全体形状や周縁部Hの形状、及び培養空間Sの形状は特に限定されず、任意の形状のものを用いることができる。
平面状器材11の少なくとも一方は、ガス透過性フィルムからなり、両方にガス透過性フィルムからなるものを用いることが好ましい。
なお、平面状器材11の「平面状」は、器材表面が凹凸のない平坦であることを意味せず、器材の全体形状が概ねであることを意味しており、平面状器材11の表面に凹凸が形成されたものも含まれる。
図1(b)に示すように、本実施形態の細胞培養容器1において、ガス透過性フィルムである平面状器材11の外面には突起部111が備えられ、ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、突起部111によって、ガス透過性フィルムと平面との間に通気可能な空間が形成されるようになっている。
本実施形態における突起部111の形状は、特に限定されないが、例えば図1(b)及び図2に示すように、複数の略三角柱が山脈状に並列して形成されたもの(以下、山脈状パターンと称する場合がある)とすることが好ましい。
このように突起部111を山脈状パターンに形成することで、ガス透過性フィルムと平面との接触面積を小さくすることができ、細胞培養容器1のガス透過性能が阻害されることを防止することができる。
また、このような山脈状パターンによれば、突起部111における突起の強度を向上させることができ、例えば押圧部材による押圧力で突起がゆがむなど損傷することを防止できる。
さらに、突起部111を、複数の直方体が並列して配置されたものとしてもよく、その他の種々の形状にすることも可能である。
本実施形態における突起部111は、培養空間Sの外側にあたるガス透過性フィルムの外面領域に形成することが好ましい。
また、対向する平面状器材11の両方にガス透過性フィルムを用いて、それぞれのガス透過性フィルムの外面に突起部111を備えることも好ましい。
本実施形態の細胞培養容器1にこのような突起部111を備えることによって、細胞培養容器1を平面に載置した場合、当該平面に対面するガス透過性フィルムと、当該平面との間に通気可能な空間が形成されるため、細胞培養容器1のガス透過性能を大きく向上させることが可能になっている。
また、細胞培養容器1の上面を押圧部材により押圧する場合、当該押圧部材の平面に対面するガス透過性フィルムと、当該平面との間に通気可能な空間が形成されるため、この場合にも、細胞培養容器1のガス透過性能を大きく向上させることが可能になっている。
さらに、突起部111によって形成されたガス透過性フィルムと平面との間の空間に対して、送風を行うことにより、細胞培養容器1のガス透過性能をより向上させることも可能である。
また、このように本実施形態の細胞培養容器1に突起部111を形成することで、細胞培養容器1の強度を向上させることも可能になっている。
また、本実施形態の突起部111の形状は、ガス透過性フィルムの内面形状とは異なるものにすることが好ましく、例えば複数のウェルが容器の内面に形成され、当該ウェルの外面が容器の外側に半球を形成したようなものとは異なっている。
すなわち、本実施形態の細胞培養容器1におけるガス透過性フィルムの外面に形成される突起部111は、ガス透過性フィルムの内面形状に拘わりなく、ガス透過性フィルムと平面との間の通気をより好適に行うことが可能な形状であることが好ましい。
したがって、本実施形態の細胞培養容器1におけるガス透過性フィルムの内面の形状は、突起部111の形状に拘わりなく設定することができ、凹凸のない平坦状にすることも好ましく、突起部111の形状に拘わりなくガス透過性フィルムの内面に凹凸を形成して、容器内の培養面積を大きくすることもまた好ましい。
平面状器材11としては、樹脂フィルムなどを好適に用いることができ、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。例えば、ポリエチレン、エチレンとα-オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとアクリル酸やメタクリル酸共重合体と金属イオンを用いたアイオノマー等を挙げることができる。また、ポリオレフィン、スチレン系エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂等を用いることもできる。さらに、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、例えば、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、SEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂等を用いてもよい。
ガス透過性フィルムとしては、上記の平面状器材11の材料のうち、特にガス透過性能に優れた熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE,Linear Low Density Polyethylene)などのポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。また、細胞培養容器1の内部を視認可能にするために、ガス透過性フィルムは、透明材であることが好ましい。
ここで、ガス透過性フィルムは、一般にその厚みが小さければ小さい程、ガス透過性能が高くなる一方で、ガス透過性フィルムの厚みが小さくなればなる程、その取り扱いが困難となり、特に厚みが30μmや20μmのものは食品用ラップ(厚み約10μm)のような状態であるため、容器の強度が不足して破袋の恐れがある。
しかしながら、本実施形態の細胞培養容器1は、ガス透過性フィルムの外面に突起部を備えているため、ガス透過性フィルムの厚みを比較的薄くしても取り扱うことができる。
このため、本実施形態の細胞培養容器1におけるガス透過性フィルムの厚みは、100μm未満であることが好ましく、70μm以下で10μm以上であることがより好ましく、35μm以下で20μm以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の細胞培養容器1による細胞培養の様子を、図2(b)に示す。
同図において、細胞培養容器1の中に、培養液を充填すると共に、培養液によって容積が拡大した培養空間Sに細胞2を播種して、培養が行われる様子が示されている。突起部111と細胞培養容器1の載置面との間には、通気空間Vが形成されている。
このように、本実施形態の細胞培養容器1によれば、細胞培養を行うに際して、ガス透過性能に優れたものとすることができ、細胞を高密度で培養することが可能となっている。
本実施形態の細胞培養容器1において、少なくとも1つのポート12が、2枚の平面状器材11の周縁部Hに挟み込まれ、熱溶着されて備えられている。
図1では、ポート12が平面状器材11の長手方向両端に対向して2つ備えられているが、ポート12の個数はこれに限定されず、1個でも3個以上であってもよい。
ポート12の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン系エラストマー、FEPなどの熱可塑性樹脂等を用いることができる。
本実施形態の細胞の製造方法は、前述した細胞培養容器1を用いて細胞を培養することを特徴とする。
細胞培養容器1を用いて培養する細胞は、特に限定されず、培養液中に浮遊させて培養が行われるリンパ球や樹状細胞などの浮遊性細胞であっても、容器内の培養部に接着させて培養が行われる人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、肝細胞、膵島細胞、心筋細胞、角膜内皮細胞、及び活性化工程のリンパ球等の接着性細胞であってもよい。
本実施形態の細胞培養容器の製造方法は、少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器の製造方法であって、平面状器材の少なくとも一方にガス透過性フィルムを用い、ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、ガス透過性フィルムと平面との間に通気可能な空間が形成されるように、ガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を形成し、対向する平面状器材の周縁部を貼り合わせて、ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を形成することを特徴とする。
また、本実施形態の細胞培養容器の製造方法において、対向する平面状器材の両方にガス透過性フィルムを用い、それぞれのガス透過性フィルムの外面に突起部を形成することが好ましい。
さらに、この突起部を、熱転写、キャスト製膜、又はインフレーション製膜によって形成することも好ましい。
このような細胞培養容器の製造方法によれば、ガス透過性能と強度に優れた細胞培養容器を製造することが可能である。
本実施形態の細胞培養装置は、前述した細胞培養容器と、細胞培養容器を載置する平坦な架台、並びに、架台に載置された細胞培養容器を押圧する押圧部材を備え、細胞培養容器に形成された突起部によって、ガス透過性フィルムと架台との間、及び/又は、ガス透過性フィルムと押圧部材との間に通気可能な空間が形成される培養用治具とを有することを特徴とする。
すなわち、図3に示すように、本実施形態の細胞培養装置3は、細胞培養容器1、架台31、押圧部材32、及びガイドピン33を備えている。
細胞培養容器1は架台31に載置され、細胞培養容器1の上面を押圧部材32が押圧している。架台31の四隅にはガイドピン33が立設され、ガイドピン33は押圧部材32に設けられたガイド穴に貫通している。そして、押圧部材32はこれらのガイドピン33に沿って垂直方向に移動可能に支持されている。
このとき、押圧部材32の自重によって、細胞培養容器1を一定の圧力で押圧するように固定することができる。また、ガイドピン33にバネ材を設置して、押圧部材32を細胞培養容器1に適宜押し付けることもできる。
本実施形態の細胞培養装置3をこのような構成にすることにより、細胞培養容器1への培養液の注入又は排出に伴って、押圧部材32を垂直方向に移動可能とすることができる。
本実施形態の細胞培養装置3において、細胞培養容器1に突起部111が備えられているため、架台31の上面に対面するガス透過性フィルムと、当該架台31の上面との間に通気可能な空間が形成されている。また、押圧部材32の下面に対面するガス透過性フィルムと、当該押圧部材32の下面との間に通気可能な空間が形成されている。
このため、本実施形態の細胞培養装置3によれば、架台31と押圧部材32に挟まれて細胞培養容器1のガス透過性能が阻害されることを、抑制することが可能になっている。
以下、本発明の実施形態に係る細胞培養容器の効果を確認するために行った試験について説明する。
[試験1]
本実施形態の細胞培養容器と従来の細胞培養容器を準備して、それぞれのガス透過性能を比較する試験を行った。
具体的には、本実施形態の細胞培養容器(実施例1)として、両表面に突起部を形成したものを準備した。すなわち、厚み90μmの直鎖状低密度ポリエチレン(東洋製罐グループホールディングス株式会社製)からなるフィルムの一方の表面全体に高さが0.2mm、幅が0.2mm、ピッチが0.42mmの突起部を熱転写によって形成したものを準備した。このとき、突起部として、複数の略三角柱を山脈状に並列して形成した。フィルムの他方の表面は平坦とした。そして、2枚のフィルムを突起部が外側になるように重ねてその間に1つのポートを挟み込み、周縁部を熱溶着により袋状に形成した。外形のサイズは120mm×65mmであり、培養空間の底面積は48cmであった。
また、従来の細胞培養容器(比較例1)として、厚み90μmの直鎖状低密度ポリエチレン(東洋製罐グループホールディングス株式会社製)からなるフィルムの表面に突起部を形成せず、両表面が平坦なものを準備した。そして、2枚のフィルムの間に1つのポートを挟み込み、周縁部を熱溶着により袋状に形成した。外形のサイズは120mm×65mmであり、培養空間の底面積は48cmであった。
次に、各細胞培養容器内に非接触式酸素濃度計を設置して、純水20mlを充填した。各容器の液厚は4mmであった。そして、各細胞培養容器内における底面付近の水の溶存酸素濃度の変化を測定した。
このとき、各細胞培養容器を培養用治具に固定して、37℃のCOインキュベータに入れて一旦放置し、容器内の溶存酸素を大気中の酸素濃度である約21%にした。容器内の酸素濃度が安定した後、COインキュベータ内の酸素濃度を5%に下げた。
また、培養用治具としては、細胞培養容器が配置される架台の上面全体と、細胞培養容器を上方から押圧する押圧部材の下面全体とが平坦なものを使用した。なお、細胞培養容器は、架台の上面及び押圧部材の下面のサイズより小さい。以下の試験においても同様である。
ここで、容器周囲の酸素濃度が21%から5%に変化することによって容器内外に酸素分圧差が生じるため、容器内の酸素がガス透過性フィルムを介して容器の中から抜け出す。このとき、酸素濃度の変化速度は、フィルムのガス透過性能と相関があるため、これによってガス透過性能を定量的に測定することができる。その結果を図4に示す。
なお、図4において、測定開始時の実施例1の細胞培養容器内の酸素濃度が20%程度であるのに対し、比較例1の細胞培養容器内の酸素濃度が24%程度であった理由は、本試験で用いた非接触式酸素濃度計による測定は、容器内に取り付けた素子の変化を測定器で非接触にて行う仕組みであり、素子と計測部が接触している場合が正確な値であって、素子と測定部が離れるにつれ値が大きくなる特性であるため、通常37℃の溶存酸素は21%であるが、容器の厚みや設置状態によって大きい値となる。ただし、変化量については影響がなく、酸素透過性を変化量にもとづき判断しているため、性能評価の上では問題のない測定である。
図4に示されるように、実施例1の細胞培養容器における1分あたりの酸素濃度変化量の最大値は、0.6%/分であった。これに対して、比較例1の細胞培養容器における1分あたりの酸素濃度変化量の最大値は、0.2%/分であった。すなわち、実施例1のガス透過性能は、比較例1の3倍大きく、本実施形態の細胞培養容器は、優れた酸素透過性を示すことが分かった。
[試験2]
本実施形態の細胞培養容器と従来の細胞培養容器を用いて細胞培養を行い、これらの培養性能を比較する試験を行った。
具体的には、本実施形態の細胞培養容器(実施例2)として、両表面に突起部を形成したものを準備した。すなわち、厚み90μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE,Linear Low Density Polyethylene,東洋製罐グループホールディングス株式会社製)からなるフィルムの表面全体に高さが0.2mm、幅が0.2mm、ピッチが0.42mmの突起部を熱転写によって形成したものを準備した。このとき、突起部として、複数の略三角柱を山脈状に並列して形成した。フィルムの他方の表面は平坦とした。そして、2枚のフィルムを突起部が外側になるように重ねてその間の長手方向両端に2つのポートを挟み込み、周縁部を熱溶着により袋状に形成した。外形のサイズは120mm×65mmであり、培養空間の底面積は48cmであった。
また、従来の細胞培養容器(比較例2)として、厚み90μmの直鎖状低密度ポリエチレン(東洋製罐グループホールディングス株式会社製)からなるフィルムの表面に突起部を形成せず、両表面が平坦なものを準備した。そして、2枚のフィルムの間の長手方向両端に2つのポートを挟み込み、周縁部を熱溶着により袋状に形成した。外形のサイズは120mm×65mmであり、培養空間の底面積は48cmであった。
さらに、培養用治具として、細胞培養容器が配置される架台の上面全体と、細胞培養容器を上方から押圧する押圧部材の下面全体とが平坦なものを使用した。
培養する細胞としては、iPS細胞(1231A3株)を使用した。また、培養液としては、StemFit AK02N(味の素株式会社)を使用し、これらを各細胞培養容器に充填した。充填した培養液は37℃で10mlであり、各容器の液厚は2mmであった。このとき、細胞培養容器に培養液10mlに10μM Y-27632、接着基質(i-Matrix, ラミニン511-E8)24μlを添加し、細胞7万個を注入して、細胞培養用治具にセットし培養を開始した。細胞播種から1,4,5,6日後に培養液10ml(Y-27632と接着基質を添加していない培養液のみ)を全量交換して、7日間培養を行った。7日後に剥離液TrypLEを用いて細胞回収し、細胞数を計測して、増殖倍率を算出した。これらを各細胞培養容器につき2回行った。その結果を図5に示す。
同図に示されるように、実施例2の細胞培養容器による細胞の増殖倍率は、比較例2によりも優れた結果を示しており、本実施形態の細胞培養容器によれば、適切なガス透過性能が得られていることが分かった。
本発明は、以上の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、細胞培養容器に形成する突起部の形状を実施形態とは別個の様々な形状にするなど適宜変更することが可能である。
本発明は、細胞培養バッグを使用して、細胞を高密度で大量培養する場合などに、好適に利用することが可能である。
1 細胞培養容器
11 平面状器材
111 突起部
12 ポート
2 細胞
3 細胞培養装置
31 架台
32 押圧部材
33 ガイドピン
S 培養空間
H 周縁部
V 通気空間

Claims (12)

  1. 少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器であって、
    前記平面状器材の少なくとも一方がガス透過性フィルムからなり、少なくとも1つの前記ガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を備えると共に、当該ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を備え、当該ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、前記突起部によって、当該ガス透過性フィルムと前記平面との間に通気可能な空間が形成される
    ことを特徴とする細胞培養容器。
  2. 前記培養空間の外側にあたる前記ガス透過性フィルムの外面領域において、前記突起部として、複数の略三角柱が山脈状に並列して形成されたことを特徴とする請求項1記載の細胞培養容器。
  3. 対向する前記平面状器材の両方がガス透過性フィルムからなり、それぞれのガス透過性フィルムの外面に前記突起部が備えられたことを特徴とする請求項1又は2記載の細胞培養容器。
  4. 前記ガス透過性フィルムの内面が、凹凸のない平坦状であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の細胞培養容器。
  5. 前記ガス透過性フィルムの内面に凹凸が形成されたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の細胞培養容器。
  6. 前記ガス透過性フィルムにおける前記突起部が形成されていない領域の厚みが、100μm未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の細胞培養容器。
  7. 前記ガス透過性フィルムにおける前記突起部が形成されていない領域の厚みが、70μm~10μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の細胞培養容器。
  8. 少なくとも1つのポートを有し、対向する平面状器材によって形成された袋状の閉鎖系の細胞培養容器の製造方法であって、
    前記平面状器材の少なくとも一方にガス透過性フィルムを用い、前記ガス透過性フィルムを平面に接触させたときに、前記ガス透過性フィルムと前記平面との間に通気可能な空間が形成されるように、前記ガス透過性フィルムの外面に、当該ガス透過性フィルムの内面形状とは異なる形状の突起部を形成し、
    対向する前記平面状器材の周縁部を貼り合わせて、前記ガス透過性フィルムの内面側に細胞を培養するための培養空間を形成する
    ことを特徴とする細胞培養容器の製造方法。
  9. 対向する前記平面状器材の両方にガス透過性フィルムを用い、それぞれのガス透過性フィルムの外面に前記突起部を形成することを特徴とする請求項8記載の細胞培養容器の製造方法。
  10. 前記突起部を、熱転写、キャスト製膜、又はインフレーション製膜によって形成することを特徴とする請求項8又は9記載の細胞培養容器の製造方法。
  11. 請求項1~7のいずれかに記載の細胞培養容器を用いて細胞を培養することを特徴とする細胞の製造方法。
  12. 請求項1~7のいずれかに記載の細胞培養容器と、
    前記細胞培養容器を載置する平坦な架台、並びに、前記架台に載置された前記細胞培養容器を押圧する押圧部材を備え、前記細胞培養容器に形成された前記突起部によって、前記ガス透過性フィルムと前記架台との間、及び/又は、前記ガス透過性フィルムと前記押圧部材との間に通気可能な空間が形成される培養用治具と、を有する
    ことを特徴とする細胞培養装置。
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