JP2022014403A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を抑制又は解消するように前後輪の駆動力配分比を制御すること。【解決手段】 本発明の装置は、前輪及び後輪のタイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値を取得し、前輪と後輪のうちのタイヤ磨耗指標値の表すタイヤの磨耗の程度が小さい方の駆動力の配分比がタイヤの磨耗の程度が大きい方の駆動力の配分比よりも大きく設定されるように、前後輪にて発生させる駆動力の配分比を制御する。【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車等の車両の駆動力制御装置に係り、より詳細には、車両の前後輪のタイヤの磨耗の程度に差が生じた場合の前後輪の駆動力配分比を制御する装置に係る。
自動車等の車両の挙動を安定化する制御に於いては、車両のアンダーステア傾向やオーバーステア傾向などの運動状況に応じて各輪に発生するタイヤ力(前後力、横力)を制御することによりヨーモーメントを発生し、過剰なアンダーステア状態又は過剰なオーバーステア状態の解消又は抑制が図られる。そのような車両の運動安定化制御或いは挙動安定化制御に於いて、各輪のタイヤの磨耗の程度は、各輪で発生するタイヤ力の大きさに直接影響するので、従前より、車両の各輪のタイヤの磨耗の程度を考慮してタイヤ力の制御或いは車両の運動安定化制御を実行する構成が提案されている。例えば、本発明の発明者による特許文献1に於いては、目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差に基づいて決定されるアンダーステア度が第1作動閾値を越えると車両安定制御を実行し、アンダーステア度が第2作動閾値を超えると、リア内輪に制動力を印加するリアブレーキ制御を実行する構成に於いて、フロントタイヤの摩耗度或いはフロントタイヤとリアタイヤとの間の摩耗度の差である摩耗度パラメータが閾値を超えると、第2作動閾値をそのデフォルト値及び第1作動閾値よりも小さい調整し、これにより、フロントタイヤの磨耗の程度がリアタイヤよりも大きいときには、リアブレーキ制御を実行しやすくして、リアタイヤの摩耗を促進し、フロントタイヤとリアタイヤとの間の摩耗度の差を低減することが提案されている。また、本発明の発明者による特許文献2に於いては、目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差に基づいて決定されるアンダーステア度が作動閾値を越えると車両安定制御を実行する構成に於いて、フロントタイヤの磨耗の程度がリアタイヤよりも進むと、目標ヨーレートの算出に於いて使用するスタビリティファクタの実際の値が大きくなり、目標ヨーレートがより低く算出されるべきであることを考慮し、フロントタイヤの摩耗度又はフロントタイヤとリアタイヤとの間の摩耗度の差である摩耗度パラメータが摩耗閾値を超えると、目標ヨーレートの算出に用いるスタビリティファクタの値を大きく補正する構成が提案されている(スタビリティファクタの補正をしない場合、目標ヨーレートの算出値が過大となり、無用に車両安定制御が実行されることとなる。)。なお、特許文献1、2では、タイヤのスリップ比に対する車両の加速度の変化率として算出される「タイヤ係数」がタイヤの磨耗の程度と共に増大するところ、タイヤの磨耗量が、概ね、タイヤの種類によらず、「タイヤ係数」の変化量に対応することを見出し、タイヤの磨耗の指標であるタイヤ磨耗度として、「タイヤ係数」の変化量を用いることも提案されている。更に、特許文献3に於いては、車両の各車輪のドライビングスティフネス又はドライビングパワーの値を用いて車輪毎に値が求められる制御パラメータにより各車輪の制駆動力を制御して、車両の運動を制御する構成に於いて、各車輪の制御パラメータを算出するためのドライビングスティフネス又はドライビングパワーの値が車両の走行距離等から推定されるタイヤ摩耗量に応じて決定され、車両の運動制御にタイヤ摩耗量を反映させることが提案されている。特許文献4では、四輪駆動車に於いて、転舵輪にてタイヤ反力センサ等で計測されたタイヤ反力が所定値以上のときに車両の走行している路面が高μ状態であると判定して、その判定結果に基づき駆動力制御を実行することが提案されている。
特開2019-98778 特開2019-93741 特開2009-149246 特開2018-58446 特開2008-247126
上記の如く、車両の各輪のタイヤの磨耗の程度は、各輪のタイヤ力の大きさに影響し、特に、車両の運動に於いては、車両の前後輪のタイヤの磨耗の程度の差によって、車両の旋回特性が変化することとなる。一方、車両の運動安定化制御又は挙動安定化制御は、車両の元々の旋回特性に基づいて算出された目標ヨーレートなどの運動状態量の目標値が達成されるように安定化ヨーモーメント、各輪前後力、舵角などの制御量を算出し、車両の各部に付与するように構成されているので、もし運動状態量の目標値の前提となる車両の旋回特性が変化してしまうと、制御の精度の低下や制御の実行のタイミングの的確性の低下(タイミングが早過ぎたり遅すぎたりする)といった不具合が起き得ることとなる。従って、そのような不具合を回避するためには、車両の前後輪のタイヤの磨耗の程度の差が発生しないようにすればよいが、例えば、車両のタイヤは、通常、或る程度に磨耗するまで交換されず、また、車両の制動の際には、後輪が先にロック状態となることを回避するために、前輪の制動力が後輪よりも相対的に高く付与される前後輪の制動力配分が実行されることなどから、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差は、通常、タイヤが交換されるまで、車両の使用と共に増大し、従って、上記の如き車両の旋回特性の変化が増大しまうこととなり得る。そこで、もしタイヤを交換しなくても、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の増大を抑制でき、或いは、かかる差を解消でき、車両の旋回特性の変化をできるだけ小さく抑える手法があれば、有利である。この点に関し、前記の特許文献1に於いては、前輪タイヤの磨耗の程度が後輪よりも大きくなると共に、車両の旋回時に旋回内側の後輪に制動力を付与するリアブレーキ制御をより容易に実行しやすくし、後輪タイヤの摩耗を促進され、これにより、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の解消が図られるようになっている。しかしながら、この構成に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の解消のための処置が実行されるのは、前輪タイヤの磨耗の程度が後輪よりも大きくなったときの車両の旋回時のリアブレーキ制御実行中だけとなっている。従って、もし前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の解消のための処置が、より多くの頻度にて実行され、或いは、後輪タイヤの磨耗の程度が前輪よりも大きくなったときにも実行されるようになっていれば、より効果的に前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の増大の抑制又は解消が達成され、旋回特性の変化を抑制できると考えられる。ところで、前後輪の駆動力配分比が種々変更可能な形式の四輪駆動車の場合には、前後輪に付与する駆動力配分比を調節することにより、前後輪のタイヤの磨耗の進み具合が調節可能である。従って、かかる前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車については、その加速時に、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差に基づいて前後輪の駆動力配分比を制御することによって、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差がいずれの方向にも増大しないように且つより多くの頻度にて前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の解消のための処置が実行できそうである。
かくして、本発明の一つの課題は、前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を抑制又は解消するように前後輪の駆動力配分比を制御する駆動力制御装置を提供することである。
本発明によれば、上記の課題は、前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車両の駆動力制御装置であって、
前記前輪及び前記後輪のそれぞれのタイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値を取得するタイヤ磨耗指標値取得手段と、
前記前後輪にて発生させる駆動力の配分比を制御する前後輪駆動力配分比制御手段にして、前記前輪と前記後輪のうちの前記タイヤ磨耗指標値の表す前記タイヤの磨耗の程度が小さい方の駆動力配分比が前記タイヤの磨耗の程度が大きい方の駆動力配分比よりも大きく設定される前後輪駆動力配分比制御手段と
を含む装置によって達成される。
上記の構成に於いて、本発明が適用される「四輪駆動車両」は、前後輪の駆動力配分比が可変な形式の任意の車両であってよく、具体的には、前輪と後輪のそれぞれに駆動用モータが装備された車両(前輪又は後輪のいずれかがハイブリッド型のエンジンであってもよい。)、各輪にインホイールモータが装備された車両、前輪と後輪とへ駆動力を配分比を可変に分配するセンタディファレンシャルが搭載された車両、或いは、各輪の制動力を独立に制御して各輪の駆動力配分が可変となる車両などであってよい。「タイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値」とは、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を表わすことのできる任意の指標値であってよい。タイヤの磨耗の程度は、典型的には、タイヤに於ける新品の状態からの磨り減り量(磨耗量、即ち、タイヤ半径の減少量)で表わされるところ、かかる磨耗量に相関を有する任意の値がタイヤ磨耗指標値として採用されてよい。具体的には、例えば、特許文献1、2に記載されている如く、タイヤのスリップ比に対する車両加速度の変化率として算出される「タイヤ係数」がタイヤの磨耗の程度に相関を有し、「タイヤ係数」の変化量が、概ね、タイヤの種類によらず、磨耗量に対応することが見出されているので、かかる「タイヤ係数」の変化量(以下、磨耗度と称する。)がタイヤ磨耗指標値として採用されてよい。或いは、任意の手法で計測又は推定されたタイヤ磨耗量がタイヤ磨耗指標値として採用されてもよい。
上記の本発明の構成に於いては、タイヤ磨耗指標値取得手段により取得された前後輪のタイヤ磨耗指標値を参照して、前後輪駆動力配分比制御手段により、前輪と後輪のうちで、タイヤ磨耗指標値の表すタイヤの磨耗の程度が小さい方の駆動力配分比がタイヤの磨耗の程度が大きい方の駆動力配分比よりも大きく設定されることとなる。かかる構成によれば、各輪への駆動力の付与時に、磨耗の程度が小さい方のタイヤの駆動力が相対的に大きくなることから、前輪と後輪のうちでタイヤの磨耗の程度の大きい方の更なる磨耗を抑制し、タイヤの磨耗の程度の小さい方の更なる磨耗を促進し、これにより、前輪と後輪との間のタイヤの磨耗の程度に於ける差が解消されることが期待される。かくして、既に述べた如く、前輪と後輪との間でタイヤの磨耗の程度に差ができてしまったときには、車両の旋回特性が設計時の特性から変化してしまうところ、本発明の作用によれば、適時、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差をできるだけ解消し、車両の旋回特性の設計時の特性からの変化が抑制されることとなる。そうすると、上記の説明からも理解される如く、車両の旋回特性の変化に起因する車両の運動安定化制御又は挙動安定化制御の精度や制御の実行のタイミングの的確性の低下なども抑制できることが期待される。また、特に、本発明の場合には、上記の前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を解消するための処置は、加速時に、タイヤの磨耗の程度が前後輪のいずれに偏っている場合にも実行されることとなるので、従前に比して、より多くの頻度にて実行され、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の発生がより効果的に抑制されることが期待される。
上記の構成に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差が生じたときの駆動力配分比は、任意の態様にて実行されてよい。具体的には、前後輪のそれぞれの駆動力配分比は、前輪のタイヤの磨耗の程度が後輪より大きいとき、或いは、その逆のときに、前輪のタイヤの磨耗指標値の差又は比に応じて設定された値に調節されてよい。例えば、前後輪の駆動力配分比は、前輪のタイヤの磨耗の程度が後輪より大きいほど、後輪の駆動力配分比が大きくなるように設定されてよい。また、前後輪の駆動力配分の変更は、前後輪のタイヤ磨耗指標値の差若しくは比が所定の閾値を超えたときに実行されるようになっていてもよい。実施の形態に於いて、前後輪の駆動力配分比は、前輪のタイヤの磨耗の程度と後輪のタイヤの磨耗の程度との差を表わす前後輪のタイヤ磨耗度差に応じて決定されてよく、前後輪のタイヤ磨耗度差が、適合により決定される所定の範囲に概ね収まるように決定されてよい。また、前後輪の駆動力配分比は、前後輪のタイヤ磨耗度差の増減に対して、適宜設定されてよいヒステリシスをもって変化するように設定されてもよい。
ところで、車両に於いて、前後輪にて駆動力が発生させられて、加速度が生じたとき、前輪から後輪への荷重移動が起き、車体の重心周りに前方が浮き上がり後方が沈み込む方向にピッチングモーメントが作用する一方、前後輪のサスペンションのジオメトリにより、前輪側には、ばねを収縮させる方向のアンチリフト力が作用して、車体の浮き上がりが抑制され、後輪側には、ばねを伸長させる方向のアンチスクォート力が作用して、車体の沈み込みが抑制されることとなる。そして、かかるアンチリフト力とアンチスクォート力とは、通常、それぞれ、前輪及び後輪にてそれぞれ発生される駆動力の大きさが大きいほど大きくなる。そうすると、上記の本発明の構成により、前後輪の駆動力配分比が前後輪のタイヤの磨耗の程度の差に応じて変更される場合には、前後輪の駆動力の総和が等しくても、タイヤの磨耗の程度の差に応じて車両のピッチング方向の姿勢が変化することとなり、その姿勢変化に対して乗員が違和感を覚える可能性がある。そこで、上記の本発明の構成に於いては、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差に応じて前後輪の駆動力配分比が変更されることに起因する車両のピッチング方向の姿勢変化が緩和されるように前後輪のサスペンションの制御が実行されてよい。
かかる前後輪のサスペンションの制御に於いては、具体的には、一つの態様に於いては、ショックアブソーバの減衰力が駆動力配分比に応じて制御されてよい。かかる制御に於いては、後輪の駆動力配分比が増大すると、アンチスクォート力が増大し、前輪の駆動力配分比が増大すると、アンチリフト力が増大するので、それらの効果を低減すべく、後輪及び前輪のショックアブソーバの減衰力は、それぞれ、後輪及び前輪の駆動力配分比が増大したときには、相対的に低減するように制御されてよい。かかる制御は、後輪側のみにて、前輪側のみにて或いは前後輪の両方にて実行されてよい。減衰力の制御幅は、適合により調整されてよい。
前後輪のサスペンションの制御の別の態様に於いては、サスペンションとして、アクティブサスペンションやエアサスペンションなど、車高制御が可能な形式のものが車両に搭載されている場合には、車高が駆動力配分比に応じて制御されてよい。その場合、上記のアンチスクォート力又はアンチリフト力の効果を低減すべく、後輪及び前輪の車高が、それぞれ、後輪及び前輪の駆動力配分比が増大したときに、相対的に低減するように制御されてよい。かかる制御は、後輪側のみにて、前輪側のみにて或いは前後輪の両方にて実行されてよい。車高の制御幅は、適合により調整されてよい。なお、上記のショックアブソーバの減衰力制御と車高制御とは、同時に実行されてもよい。
かくして、上記の本発明の装置によれば、前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度に差が生じている場合には、車両の加速時に、前後輪のうちのタイヤの磨耗の程度の小さい方の駆動力配分比を磨耗の程度の大きい方に比して相対的に大きくして、タイヤの磨耗の程度の大きい方の磨耗を抑制し、タイヤの磨耗の程度の小さい方の磨耗を促進して、タイヤの磨耗の程度の差の解消が図られ、これにより、車両の旋回特性の設計時の状態からの変化の抑制が図られる。かかる本発明に於ける前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を解消するための処置は、車両の加速時に、タイヤの磨耗の程度の差が前輪と後輪のいずれに偏っている場合にも実行されることとなり、車両の旋回特性が設計時の状態により良く保持されることが期待される。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1(A)は、本発明による車両の駆動力制御装置の好ましい実施形態が搭載される車両の模式図である。図1(B)は、本発明による車両の駆動力制御装置の一つの実施形態に於けるシステムの構成をブロック図の形式にて表した図である。 図2(A)は、車両の旋回時の横加速度とドリフトステート値との関係を表わすグラフ図であり、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差に依存した車両の旋回特性の変化によって、横加速度に対するドリフトステート値の増大のタイミングが変化することを説明する図である。図2(B)は、車両の加速時の前後輪の駆動力配分を前輪寄りにした状態(左)と後輪寄りにした状態(右)の各輪の駆動力の状態を説明する車両の模式的な平面図である。図2(C)は、本実施形態による前後輪のタイヤの磨耗の程度に応じた駆動力配分比の制御を実行した場合の前後輪のタイヤの磨耗度差(前輪磨耗度-後輪磨耗度)の推移を模式的に表わした図である。 図3(A)、(B)は、タイヤのスリップ比と車両加速度との関係を表わす図であり、タイヤの磨耗量が増大すると共に、スリップ比に対する車両加速度の変化率(傾き)が増大することを示している。(A)は、サマータイヤの場合であり、(B)は、スタッドレスタイヤの場合である。 図4(A)、(B)は、本実施形態の車両の駆動力制御装置に於ける前後輪のタイヤの磨耗度差に依存して設定される後輪駆動力配分比を示したマップ図である。 図5は、本実施形態の車両の駆動力制御装置に於ける図4(B)の場合の駆動力配分比の決定処理をフローチャートの形式に表した図である。 図6(A)は、前後輪のタイヤに駆動力が発生した場合にばね上、ばね下に作用する力について説明する車両の模式的な側面図である。図6(B)、(C)は、本実施形態の車両の駆動力制御装置のショックアブソーバの減衰力制御に於ける後輪の駆動力配分比に依存して設定される後輪ショックアブソーバの減衰力を示したマップ図である。図6(D)は、本実施形態の車両の駆動力制御装置の車高制御に於ける後輪の駆動力配分比に依存して設定される後輪車高を示したマップ図である。
10…車両
12FL,FR,RL,RR…車輪
14…アクセルペダル
16FL,FR,RL,RR…サスペンション
22…エンジン
26F…前輪モータ
26R…後輪モータ
28F、R…差動装置
50…電子制御装置
60…前後加速度センサ
62…GPS装置
Bs…車体(フレーム)
G…重心
Fd…駆動力
kf…前輪駆動力配分比
kr…後輪駆動力配分比
車両の構成
図1(A)を参照して、本発明の駆動力制御装置の好ましい実施形態が搭載される自動車等の車両10は、前後輪の駆動力の配分比が可変の任意の形式の四輪駆動車であってよい。車両10には、通常の態様にて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRと、左右前輪12FL、12FRのための駆動力を発生する前輪モータ26Fと、その駆動力を左右前輪12FL、12FRへ伝達する差動装置28Fと、右後輪12RL、12RRのための駆動力を発生する後輪モータ26Rと、その駆動力を左右後輪12RL、12RRへ伝達する差動装置28Rとが搭載され、また、通常に態様にて、車輪の舵角を制御するための操舵装置(図示せず)と、各輪に制動力を発生する制動装置(図示せず)とが搭載される。操舵装置には、運転者によって作動されるステアリングホイール(図示せず)の回転を、その回転トルクを倍力しながら、タイロッド(図示せず)へ伝達し前輪12FL、12FRを転舵するパワーステアリング装置が採用されてよい。制動装置は、運転者によりブレーキペダル(図示せず)の踏込みに応答して各輪に制動力を与える任意の形式のものであってよい。左右前輪12FL、12FRに制駆動力を与える駆動装置としては、エンジン22とモータ26Fの双方を有するハイブリッド式の駆動装置であってもよい。また、左右前輪12FL、12FR、左右後輪12RL、12RRにそれぞれインホイールモータが設けられ、各輪が駆動されてもよい。或いは、四輪駆動車は、エンジン又はモータの発生する制駆動力を前輪と後輪へ配分比が可変に分配するセンタディファレンシャルを搭載した形式の車両であってもよく、更に、前後輪の駆動力配分比が制動装置による制動力を付与して調節されて前後輪の駆動力の配分比が可変となった車両であってもよい。更に、各輪12i(i=FL、FR、RL、RR)は、それぞれ、通常の態様にて、サスペンション16iにより、車両の車体に対して懸架される。サスペンション16iとしては、好適には、ショックアブソーバの減衰力が制御可能な形式、或いは、更に好適には、車高が制御可能な形式のアクティブサスペンション、エアサスペンションが採用される。前後輪の駆動力は、アクセルペダル14の踏込みに応答して発生されるところ、前輪と後輪の駆動力の大きさ又は前後輪の駆動力の配分比は、後に詳細に説明される如く、電子制御装置50により、前後輪のタイヤの磨耗の程度に応じて制御される。
上記の本実施形態による駆動力制御装置の作動制御は、上記の如く、電子制御装置50(コンピュータ)により実行される。電子制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。後に説明される本発明の駆動力制御装置の各部の構成及び作動は、それぞれ、プログラムに従った電子制御装置50の作動により実現されてよい。電子制御装置50には、アクセルペダル14の操作量又は踏込量θa、各輪の車輪速センサからの車輪速Vwi(i=FL、FR、RL、RR)、前後Gセンサ60からの前後加速度axなど、後述の態様にて実行される本発明の駆動力制御のためのパラメータとして用いられる種々のセンサからの検出値が入力され、駆動力の大きさと前後輪の駆動力配分比とが決定されて、前輪モータ26F、後輪モータ26Rへ、それぞれ、駆動力を生成するための制御指令Cf、Crが出力される。なお、車速を検出するためにGPS装置62からのGPS情報が用いられてもよい。また、図示していないが、電子制御装置50へは、本実施形態の車両に於いて実行されるべき各種制御、例えば、挙動安定化制御など、に必要な種々のパラメータ、例えば、ブレーキペダルの踏込量、操舵角、ヨーレート、横加速度などの各種検出信号が入力され、各種の制御指令が対応する装置へ出力されるようになっていてよい。
装置の構成
図1(B)を参照して、本実施形態による駆動力制御装置は、概して述べれば、各輪タイヤ磨耗指標値算出部(タイヤ磨耗指標値取得手段)、駆動力決定部、駆動力配分決定部(駆動力配分比制御手段)、前輪駆動制御部、後輪駆動制御部から構成される。より詳細には、各輪タイヤ磨耗指標値算出部は、任意の手法にて各輪のタイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値を検出する。後に詳細に説明される如く、一つの態様に於いて、タイヤ磨耗指標値としては、各輪のスリップ比に対する車両加速度の変化率、即ち、タイヤ係数、の相対的変化量であるタイヤ磨耗度Ωiであってよい。ここで、「相対的変化量」としては、タイヤの新品の状態に於けるタイヤ係数からの変化量であってよい。各輪のスリップ比は、各輪の車輪速センサからの車輪速値Vwiと、任意の手法にて決定されてよい車速Vb(車速は、例えば、GPS情報に於ける車両の単位時間当たりの移動距離から、或いは、各輪の車輪速値Vwi若しくは車両の前後加速度などから任意のアルゴリズムを用いて算出されてよい。)とから算出され、車両加速度は、前後加速度センサ60にて計測された前後加速度値axであってよい。或いは、タイヤ磨耗指標値としては、任意の手法(例えば、特許文献5参照)にて検出又は推定されるタイヤ半径の減少量であってもよい。駆動力決定部は、アクセルペダル14の操作量又は踏込量θaに基づいて車両に発生させる目標駆動力Fdを決定する。駆動力配分決定部は、後に説明される態様にて、前輪と後輪のタイヤ磨耗指標値を参照して、前輪と後輪とのうちでタイヤの磨耗の程度が小さい方の駆動力が相対的に大きくなるように前輪と後輪とのそれぞれの駆動力配分比kf、krを決定し、その駆動力配分比に目標駆動力Fdを乗じて、前輪にて発生させる駆動力の目標値kf・Fdと後輪にて発生させる駆動力の目標値kr・Fdとを決定して、それぞれ、前輪駆動制御部と後輪駆動制御部とへ送信する。そして、前輪駆動制御部と後輪駆動制御部とから、それぞれ、前輪モータ26Fと後輪モータ26Rへ、対応する駆動力の目標値を達成するための制御指令Cf、Crが送信される。
なお、本実施形態の装置に於いては、追加的にサスペンション制御部が設けられてよい。サスペンション制御部には、駆動力配分決定部から前後輪の駆動力配分比の情報が与えられ、後に説明される如く、サスペンション制御部は、駆動力配分と共に、ショックアブソーバの減衰力制御又は車高制御を実行するべく、対応するサスペンションへ制御指令Csiを送信するように構成されていてよい。
装置の作動
(1)概要
「発明の概要」の欄に於いても説明されている如く、車両が使用され、各輪のタイヤが磨耗してきたときに、前後輪のタイヤの磨耗の程度に差が生ずると、車両の旋回特性が元々の状態(例えば、設計上の状態)から変化することとなる。一方、車両の走行挙動を安定化するための運動安定化制御或いは挙動安定化制御に於いては、通常、目標ヨーレートなどの運動状態量の目標値は、車両の元々の旋回特性に基づいて算出されているので、変化後の旋回特性の下で生ずる実際の運動状態量のずれが過大又は過小となり、制御の精度の低下や制御の実行のタイミングの的確性の低下などが起きる場合がある。
例えば、図2(A)を参照して、典型的な挙動安定化制御に於いては、目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差に基づいて決定されるドリフトステート値が所定の作動閾値を超えると、車両のドリフトアウト抑制のための安定化ヨーモーメントの付与が実行される。その場合、目標ヨーレートは、舵角、車速、旋回特性を表わすスタビリティファクタ等を基づいて算出され、スタビリティファクタとしては、通常、車両の設計上の値が用いられ、これにより、ドリフトステート値は、横加速度に対して、図中、Kth1、Kth2と付された実曲線の如く推移し、ドリフトステート値に対する作動閾値は、安定化ヨーモーメントの付与が適当であると判断される範囲の横加速度が車両に発生したときに算出されるドリフトステート値に設定される。しかしながら、前後輪のタイヤの磨耗の程度に差が生じ、車両の実際のスタビリティファクタが設計上の値からずれると、或る舵角と車速の場合に発生されるべきヨーレートは、スタビリティファクタの設計値を用いて算出された目標ヨーレートから常に乖離することとなる。そうすると、ドリフトステート値が作動閾値を超えるタイミングが、安定化ヨーモーメントの付与の的確なタイミングから外れてしまったり、付与されるべき安定化ヨーモーメントの精度が低下するといったことが起き得る。例えば、前輪タイヤの磨耗が後輪よりも進んでいる場合には、実際の旋回特性は、設計時の特性よりもアンダーステア側に変化するので、目標ヨーレートと実ヨーレートとの偏差が常に過大となり、ドリフトステート値は、図中の点線の如く、横加速度が予定されているよりも低いときに増大し(図中、値の推移が実線よりも左側に変移してしまう)、安定化ヨーモーメントの付与の的確なタイミングよりも早い時期に、作動閾値を超えてしまうこととなる。また、後輪タイヤの磨耗が前輪よりも進んでいる場合には、逆に、ドリフトステート値が安定化ヨーモーメントの付与の的確なタイミングよりも遅い時期に作動閾値を超えることとなる。
そこで、本実施形態では、前後輪のタイヤの磨耗の程度を検出し、車両の加速時に前後輪に駆動力を付与する際に、前後輪のうちのタイヤの磨耗の程度の小さい方の駆動力の配分比が大きく設定される。これによれば、駆動力の配分比が大きいほど、タイヤの磨耗が進むので、前後輪のうちのタイヤの磨耗の程度の大きい方の磨耗の進行が抑制されると共に、タイヤの磨耗の程度の小さい方の磨耗が進行し、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差が生じても、その差が適時解消され、かくして、旋回特性の変化が抑制され、運動安定化制御或いは挙動安定化制御の精度や制御の実行のタイミングの的確性が維持されることが期待される。
本実施形態の制御に於いて、具体的には、図2(B)に模式的に描かれている如く、前輪のタイヤの磨耗の程度が後輪よりも大きい場合には、(ii)の如く、後輪駆動力配分比krを前輪駆動力配分比kfよりも増大し、これにより、後輪タイヤの磨耗の促進が図られ、後輪のタイヤの磨耗の程度が前輪よりも大きい場合には、(i)の如く、前輪駆動力配分比kfを後輪駆動力配分比krよりも増大し、これにより、前輪タイヤの磨耗の促進が図られる。かかる(i)の状態と(ii)の状態との駆動力配分比の設定は、交互に繰り返すように実行され、これにより、図2(C)に模式的に描かれている如く、前後輪の磨耗の程度の差(前輪磨耗度-後輪磨耗度)が、概ね、所定のKth1とKth2との間の範囲に収まるように調整されてよい(図示の例では、前後輪タイヤ磨耗度差がKth1とKth2の範囲が逸脱する度に駆動力配分比が逆転するように制御される。)。かかる制御構成によれば、前後輪の磨耗の程度の差が概ね解消され、旋回特性が設計時の特性から大幅に変化することが回避され、これにより、図2(A)に模式的に描かれている如く、横加速度に対するドリフトステート値の推移が、設計に於いて想定された実曲線Kth1とKth2との間(調節範囲)に、概ね、収まり、運動安定化制御或いは挙動安定化制御の精度や制御の実行のタイミングの的確性が維持されることが期待される。
(2)タイヤ磨耗指標値の検出
上記の如く、本実施形態に於いては、各輪タイヤ磨耗指標値算出部にて、前後輪のタイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値が検出される。既に述べた如く、タイヤ磨耗指標値として、一つの態様に於いては、各輪のスリップ比に対する車両加速度の変化率である「タイヤ係数」の相対的変化量であるタイヤ磨耗度Ωiが採用されてよい。特許文献1、2に於いても記載されている如く、タイヤの磨耗量は、図3(A)、(B)にそれぞれ示されているように、タイヤのスリップ比sに対する車両加速度aの変化率(da/ds)である「タイヤ係数」に相関があり、特に、タイヤ係数の、新品の状態のタイヤ係数からの相対的な変化量Δは、タイヤの種類(図では、サマータイヤの場合と、スタッドレスタイヤの場合)が異なっても、殆ど変わらないことが見出されている。そこで、本実施形態に於いては、前輪と後輪のそれぞれについて、各輪のスリップ比siと車両加速度aとから変化率(da/ds)が算出され、タイヤ磨耗指標値として、タイヤ磨耗度Ωiが
Ωi=(da/ds)[現在値]-(da/ds)[新品時] …(1)
により算出されてよい。なお、前輪のタイヤ磨耗度Ωfは、左右前輪のタイヤ磨耗度の平均値であってよく、後輪のタイヤ磨耗度Ωrは、左右後輪のタイヤ磨耗度の平均値であってよい。そして、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差として、前後輪の磨耗度差ωは、
ω=Ωf-Ωr …(2)
により与えられてよい。具体的な前後輪の磨耗度差ωの検出処理に於いては、予め、タイヤ係数の初期値を検出し記憶しておき、車両の走行中に於いては、逐次的に各輪の車輪速Vwiと車速Vbとから各輪のスリップ比sが算出され、そのスリップ比sで車両加速度aを除することにより、タイヤ係数(da/ds)の現在値が算出され(スリップ比sに対する車両加速度aの変化は、線形なので、タイヤ係数は、a/sにより与えられる。)、かくして、式(1)、(2)を用いて、前後輪の磨耗度差ωが算出されてよい。
なお、既に触れた如く、前後輪のタイヤの磨耗指標値として、任意の手法で計測又は推定されたタイヤ半径の減少量が採用されてもよい。その場合、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差は、(前輪タイヤ半径の減少量)-(後輪タイヤ半径の減少量)により与えられてよい。
(3)駆動力配分比の決定
上記の如く前後輪のタイヤ指標値が算出されると、駆動力配分決定部にて、前後輪のタイヤ指標値の差又は比に応じて前後輪の駆動力配分比kf:krが決定される(ここで、kf+kr=1である。)。一つの態様に於いては、図4(A)に示されている如く、式(2)で与えられる前後輪の磨耗度差ωが大きいほど(前輪の磨耗量が大きいほど)、後輪の駆動力配分比krが増大するように、駆動力配分比kf:krが決定されてよい。なお、ω=Kth2のとき、kr=0%に設定され、ω=Kth1のとき、kr=100%に設定されてよく、これにより、ωは、概ね、Kth2~Kth1の範囲に収まることが期待される。Kth1及びKth2の値は、適合により設定されてよい。
また、別の態様に於いては、図4(B)の点線矢印にて示されている如く、前後輪のタイヤ磨耗度差ωの変化に対して後輪駆動力配分比krがヒステリシスをもって変化するように駆動力配分比kf:krが決定されてよい。より詳細には、例えば、タイヤの使用開始時のタイヤの磨耗がない状態(st)に於いて、kf:kr=50:50に調整され、車両の使用と共に、前後輪タイヤ磨耗度差ωが増大し、ω>Kth1となったとき、図中の線a(傾きα)に沿って後輪駆動力配分比krが増大される。そうすると、前輪タイヤの磨耗が抑制され、後輪タイヤの磨耗が促進されることとなり、前後輪タイヤ磨耗度差ωの増大が止ると(ωが最大値ωmaxに達したとき)、後輪駆動力配分比krは、そのときの値に固定される。しかる後、前後輪タイヤ磨耗度差ωが低減し、後輪駆動力配分比krが図中の線b(傾きα)にて与えられる後輪駆動力配分比kr(m2の位置)に達すると、前後輪タイヤ磨耗度差ωの低減と共に、後輪駆動力配分比krは、図中の線bに沿って低減される。そして、ω<Kth2となると(後輪のタイヤの磨耗の程度が前輪よりも大きな状態となっている。)、前後輪の駆動力配分比が逆転し、後輪タイヤの磨耗が抑制され、前輪タイヤの磨耗が促進されることとなり、前後輪タイヤ磨耗度差ωの低減が止ると(ωが最小値ωminに達したとき)、後輪駆動力配分比krは、そのときの値に固定される。その後、前後輪タイヤ磨耗度差ωが増大し、後輪駆動力配分比krが図中の線aにて与えられる後輪駆動力配分比kr(m1の位置)に達すると、前後輪タイヤ磨耗度差ωの増大と共に、後輪駆動力配分比krは、図中の線aに沿って増大され、ω>Kth1となると(前輪のタイヤの磨耗の程度が後輪よりも大きな状態となっている。)、前後輪の駆動力配分比が再度逆転し、上記の一連の過程が繰り返されることとなる。
図5は、図4(B)にて説明されたように前後輪タイヤ磨耗度差ωに対して後輪駆動力配分比krを設定する処理をフローチャートに形式にて表わした図である。同図を参照して、後輪駆動力配分比krの設定処理に於いては、まず、タイヤ磨耗度Ωiの算出(ステップ1)と前後輪タイヤ磨耗度差ωの算出(ステップ2)の実行後、駆動力配分比の変更が既に実行されているか否かが判定され(ステップ3)、駆動力配分比の変更が未実行のとき(フラッグF=0のとき)、ω>Kth1が成立しているか否かが判定される(ステップ4)。ここで、タイヤの使用開始後から暫くの間は、ω<Kth1であるところ、車両の使用と共に、前輪タイヤの磨耗が進み(通常、前輪のタイヤの磨耗が進みやすい。)、ω>Kth1が成立すると、フラッグFが1に設定されて(ステップ5)、図4(B)の線aに沿って後輪駆動力配分比krの増大(前輪駆動力配分比kfの減少)が開始され、かかる処理は、上記の如く、前後輪タイヤ磨耗度差ωがその最大値ωmaxに達するまで継続される。ここで、線aは、kr=α(ω-Kth1)にて表わされるところ、前後輪タイヤ磨耗度差ωが増大する間は、最新の値が最大値となるので、後輪駆動力配分比krは、
ωmax←max(ω,ωmaxf) …(3)(ステップ7)
(ここで、ωmaxfは、前のサイクルに於ける最大値)
kr=α(max(ω,ωmax)-Kth1) …(4)(ステップ8)
により与えられる。更に、前後輪タイヤ磨耗度差ωがその最大値ωmaxに達すると、後輪駆動力配分比krは、kr=α(ωmax-Kth1)に固定されるところ、前後輪タイヤ磨耗度差ωが減少に転じ、前後輪タイヤ磨耗度差ωの最大値ωmaxは変わらないので、結局、後輪駆動力配分比krは、式(3)、(4)にて与えられることとなる。
その後、前後輪タイヤ磨耗度差ωが減少し、図4(B)の線b上の状態に達したとき、即ち、kr=α(ω-Kth2)の状態が成立すると(ステップ9)(Kth2<0である。)、フラッグFが-1に設定され(ステップ10-それまでの最大値ωmaxもリセットされる。)、次に、図4(B)の線bに沿った後輪駆動力配分比krの減少(前輪駆動力配分比kfの増大)が開始され、かかる処理は、前後輪の駆動力配分比が逆転するω=Kth2の点を通過して、前後輪タイヤ磨耗度差ωが最小値ωminに達するまで実行される。ここで、前後輪タイヤ磨耗度差ωが低減する間は、最新の値が最小値となるので、後輪駆動力配分比krは、
ωmin←min(ω,ωminf) …(5)(ステップ11)
(ここで、ωminfは、前のサイクルに於ける最小値)
kr=α(min(ω,ωmin)-Kth2) …(6)(ステップ12)
により与えられる。更に、前後輪タイヤ磨耗度差ωがその最小値ωminに達すると、後輪駆動力配分比krは、kr=α(ωmin-Kth2)に固定されるところ、前後輪タイヤ磨耗度差ωが増加に転じ、前後輪タイヤ磨耗度差ωの最小値ωminは変わらないので、結局、後輪駆動力配分比krは、式(5)、(6)にて与えられることとなる。次いで、前後輪タイヤ磨耗度差ωは更に増加し、図4(B)の線a上の状態に達したとき、即ち、kr=α(ω-Kth1)の状態が成立すると(ステップ13)、フラッグFが1に設定され(ステップ14-それまでの最小値ωminもリセットされる。)、再度、図4(B)の線aに沿った後輪駆動力配分比krの増大(前輪駆動力配分比kfの減少)が、前後輪の駆動力配分比が逆転するω=Kth1の点を通過して、前後輪タイヤ磨耗度差ωが最大値ωmaxに達するまで実行される。
上記の図5の一連の処理が繰り返されると、前後輪タイヤ磨耗度差ωと後輪駆動力配分比krの状態は、図4(B)の点線矢印に沿ったサイクルにて変化していくこととなり、その場合、図2(C)に例示されているごとく、前後輪タイヤ磨耗度差ωは、概ね、Kth2~Kth1の範囲内にて収まるよう変動することが期待される。なお、Kth1及びKth2の値、線a、bの傾きαは、適合により設定されてよい。そして、前後輪タイヤ磨耗度差ωが上記の範囲に概ね維持されることにより、車両の旋回特性が、前後輪タイヤ磨耗度差ωのない設計時の特性から大きく逸脱せずに保持されることとなる。
なお、タイヤの使用開始後から後輪のタイヤの磨耗が先に進行する場合も、上記の処理と同様に実行されてよい。後輪のタイヤの磨耗が前輪よりも先に進む場合には、ω<Kth2が成立してから、上記のサイクルが実行されてよい。
(4)サスペンションによるピッチング方向の姿勢制御
ところで、上記の如く、前後輪タイヤ磨耗度差ωに応じて前後輪の駆動力配分比が変更される場合、前後輪の駆動力の総和が或る同じ値であるときでも、前後輪の駆動力配分比によって、車両のピッチング方向の姿勢が異なり得ることとなる。より詳細には、図6(A)を参照して、車両10に於いて、前輪駆動力Fdfと後輪駆動力Fdrとが発生し、トータルで駆動力Fdが付与されると、重心G周りには、車体Bsの前方が上向きに、車体Bsの後方が下向きに、それぞれ、変位する方向にピッチングモーメントMpが発生し、前輪12Fから後輪12Rへの方向に荷重移動ΔWが発生して、前方が浮き上がり、後方が沈み込む作用が発生することとなる。一方、前輪12Fでは、サスペンション16fのアンチリフトジオメトリの作用により、前輪駆動力Fdfが発生することで、サスペンション16fのばねを収縮するアンチリフト力Afが発生し、車体Bsの前方を沈み込ませる作用が発生し、後輪12Rでは、サスペンション16rのアンチスクォートジオメトリの作用により、後輪輪駆動力Fdrが発生することで、サスペンション16rのばねを伸長するアンチスクォート力Arが発生し、車体Bsの後方を持ち上げる作用が発生する。かくして、車両の加速時のピッチング方向の姿勢は、ピッチングモーメントMp、アンチリフト力Af及びアンチスクォート力Arの作用を受けたサスペンション16f、rのばねの伸縮量で決定されるところ、アンチリフト力Afとアンチスクォート力Arとの大きさは、それぞれ、前輪駆動力Fdfと後輪駆動力Fdrの大きさで決定されるので、ピッチング方向の姿勢が前後輪のトータルの駆動力Fdだけでなく、前後輪の駆動力配分比によっても変化することとなる。そうすると、例えば、車両が或る同じ加速度にて走行している場合でも、後輪駆動力配分比が高いときには、前輪駆動力配分比が高いときよりも車体Bsの後方が持ち上がることとなって、車両のピッチング方向の姿勢が異なることとなり、かくして、運転者や乗員にとって車両の加速時に受ける感覚も異なり、違和感を覚える可能性がある。そこで、本実施形態に於いては、前後輪の駆動力配分比の変化に起因する車両のピッチング方向の姿勢の変化が緩和又は解消されるように、サスペンション制御部が前後輪の駆動力配分比を参照してサスペンションの制御を実行するよう構成されていてよい。
上記のサスペンション制御の一つの態様に於いては、後輪駆動力配分比が高いときには、低いときに比べて、後輪のサスペンションのショックアブソーバの減衰力を低く設定するか、前輪のサスペンションのショックアブソーバの減衰力を高く設定するか、或いは、その両方が実行されてよい。具体的には、一つの態様に於いて、図6(B)に例示されている如く、後輪駆動力配分比krが増大すると共に後輪アブソーバの減衰力が徐々に低減されるか、或いは、前輪アブソーバの減衰力が徐々に増大されてよい。また、別の態様として、図6(C)に例示されている如く、後輪駆動力配分比krが増大すると共に後輪アブソーバの減衰力をステップ状に低減されるか、或いは、前輪アブソーバの減衰力がステップ状に増大されてよい。
また、サスペンション制御の別の態様に於いては、アクティブサスペンション又はエアサスペンションが採用されている場合には、後輪駆動力配分比が高いときには、低いときに比べて、後輪側の車高を降下するか、前輪側の車高を上昇するか、或いは、その両方が実行されてよい。具体的には、一つの態様に於いて、図6(D)に例示されている如く、後輪駆動力配分比krが増大すると共に後輪側車高が徐々に降下されるか、或いは、前輪側車高が徐々に上昇されてよい。或いは、後輪駆動力配分比krが増大すると共に後輪側又は前輪側の車高が段階的に変化されてもよい。なお、上記のショックアブソーバの減衰力制御と車高制御とは、同時に実行されてもよい。
かくして、上記の例の如く、本実施形態の装置によれば、前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車に於いて、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を低減又は解消するように前後輪の駆動力配分比が制御され、かくして、車両の旋回性能の大幅な変化の防止が図られる。また、本実施形態に於いては、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差を低減又は解消するための処理が、車両の加速の度に実行されることとなるので、特許文献1の如く、旋回時に旋回内輪に制動力を付与する制御に比して、実行頻度が多く、より確実に、前後輪のタイヤの磨耗の程度の差の低減又は解消が図られることとなる。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。

Claims (1)

  1. 前後輪の駆動力配分比が可変な形式の四輪駆動車両の駆動力制御装置であって、
    前記前輪及び前記後輪のそれぞれのタイヤの磨耗の程度を表わすタイヤ磨耗指標値を取得するタイヤ磨耗指標値取得手段と、
    前記前後輪にて発生させる駆動力の配分比を制御する前後輪駆動力配分比制御手段にして、前記前輪と前記後輪のうちの前記タイヤ磨耗指標値の表す前記タイヤの磨耗の程度が小さい方の駆動力配分比が前記タイヤの磨耗の程度が大きい方の駆動力配分比よりも大きく設定される前後輪駆動力配分比制御手段と
    を含む装置。
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