JP2022010679A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】トランスポンダの通信性及び耐久性を確保しながら、タイヤの操縦安定性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備え、各ビード部3のビードコア5の外周上にビードフィラー6が配置され、一対のビード部3間にカーカス層4が装架され、ビードフィラー6のタイヤ幅方向外側に隣接するように有機繊維コードからなる補強層14が配置され、補強層14の上端14eの高さはビードフィラー6の上端6eの高さと同等以上であり、ビードコア5の上端5eからタイヤ径方向外側に15mmの位置と補強層14の上端14eとの間にトランスポンダ20が配置されている。【選択図】図1
Description
本発明は、トランスポンダが埋設された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、トランスポンダの通信性及び耐久性を確保しながら、タイヤの操縦安定性を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、RFIDタグ(トランスポンダ)をタイヤ内に埋設することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。トランスポンダをタイヤ内に埋設し、ビード部を補強するために、ビードフィラーの側方に金属部材(例えばスチールコード)からなる補強層を配置した場合、補強層の配置によってトランスポンダの電波が阻害され、トランスポンダの通信性が悪化するという問題がある。また、トランスポンダを補強層とカーカス層との間に配置すると、カーカス層におけるカーカスラインが乱れ、タイヤの操縦安定性が悪化することがある。更に、トランスポンダのタイヤ径方向の位置によってはトランスポンダの通信性及び耐久性が悪化するという問題がある。
本発明の目的は、トランスポンダの通信性及び耐久性を確保しながら、タイヤの操縦安定性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記カーカス層に沿ってタイヤ内表面にインナーライナー層が配置され、前記カーカス層が前記ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に隣接するように有機繊維コードからなる補強層が配置され、前記補強層の上端の高さは前記ビードフィラーの上端の高さと同等以上であり、前記ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mmの位置と前記補強層の上端との間にトランスポンダが配置されていることを特徴とするものである。
本発明では、ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に隣接するように有機繊維コードからなる補強層が配置され、補強層の上端の高さはビードフィラーの上端の高さと同等以上であるので、補強層による補強効果を十分に得ることができ、タイヤの操縦安定性を改善することができる。また、補強層は有機繊維コードで構成されているので、トランスポンダの電波を阻害することがなく、トランスポンダ周辺の通信性能を確保することができる。これにより、トランスポンダの通信性を改善することができる。更に、トランスポンダを上述したタイヤ径方向の位置に配置することによって、トランスポンダの通信性及び耐久性を十分に確保することができる。
本発明の空気入りタイヤにおいて、カーカス層の巻き上げ部の端末は補強層の上端からタイヤ径方向外側に5mm以上離間して配置されていることが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ部の端末とトランスポンダの間のタイヤ径方向の距離を十分に確保できるため、トランスポンダの耐久性を効果的に改善することができる。その際、トランスポンダがカーカス層のタイヤ幅方向内側又は外側のいずれに配置されていても、勿論、トランスポンダの電波が阻害されることはなく、トランスポンダ周辺の通信性能を確保することができる。
トランスポンダはカーカス層とサイドウォール部でカーカス層の外側に配置されたゴム層との間に当該ゴム層に当接しながら配置されていることが好ましい。これにより、タイヤの操縦安定性を悪化させことなく、トランスポンダの通信性及び耐久性を効果的に改善することができる。
トランスポンダはカーカス層とインナーライナー層との間に配置されていることが好ましい。これにより、サイドウォール部の損傷に起因するトランスポンダの損傷を防ぐことができる。
トランスポンダの中心はタイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
補強層を構成する有機繊維コードの2.0%伸張時の張力は300N/50mm~6000N/50mmの範囲にあることが好ましい。これにより、補強層のビード部に対する補強効果を高め、タイヤの操縦安定性を効果的に改善することができる。
補強層を構成する有機繊維コードの総繊度は500dtex~5000dtexの範囲にあることが好ましい。これにより、補強層のビード部に対する補強効果を高め、タイヤの操縦安定性を効果的に改善することができる。
トランスポンダはエラストマー又はゴムからなる被覆層により被覆され、被覆層の比誘電率は7以下であることが好ましい。これにより、トランスポンダが被覆層により保護され、トランスポンダの耐久性を改善することができると共に、トランスポンダの電波透過性を確保し、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
被覆層の総厚さGacとトランスポンダの最大厚さGarとは1.1≦Gac/Gar≦3.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、トランスポンダの通信距離を十分に確保することができる。
トランスポンダは基板と基板の両端から延びるアンテナとを有し、トランスポンダはタイヤ周方向に沿って延在し、アンテナのタイヤ周方向の端末と被覆層のタイヤ周方向の端末との距離Lは2mm~20mmの範囲にあることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信距離を十分に確保することができる。
トランスポンダが基板と基板の両端から延びるアンテナとを有し、アンテナはタイヤ周方向に対して±20°の範囲内で延在していることが好ましい。これにより、トランスポンダの耐久性を十分に確保することができる。
トランスポンダの厚さ方向の中心は被覆層の厚さ方向の一方側の表面から被覆層の総厚さGacの25%~75%の範囲内に配置されていることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信距離を十分に確保することができる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1~8は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
一対のビード部3間には、複数本のカーカスコードをラジアル方向に配列してなる少なくとも1層(図1では1層)のカーカス層4が装架されている。カーカス層4を構成するカーカスコードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。各ビード部3には環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ外周側には、複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
ベルト層7のタイヤ外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層(図1では2層)のベルトカバー層8が配置されている。図1において、タイヤ径方向内側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の全幅を覆うフルカバーを構成し、タイヤ径方向外側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の端部のみを覆うエッジカバー層を構成している。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の両端末4eは、各ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返され、ビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように配置されている。カーカス層4は、トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分である本体部4Aと、各ビード部3においてビードコア5の廻りに巻き上げられて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分である巻き上げ部4Bとを含む。
また、タイヤ内表面には、カーカス層4に沿ってインナーライナー層9が配置されている。トレッド部1にはキャップトレッドゴム層11が配置され、サイドウォール部2にはサイドウォールゴム層12が配置され、ビード部3にはリムクッションゴム層13が配置されている。サイドウォール部2でカーカス層4の外側に配置されたゴム層10は、サイドウォールゴム層12とリムクッションゴム層13とを含む。
更に、ビードフィラー6のタイヤ幅方向外側には、ビード部3の補強を目的として、ビードフィラー6に隣接するように補強層14が配置されている。この補強層14は、ゴム中に複数本の有機繊維コードが埋設されて構成される。例えば、ナイロンやポリエステル、アラミド等の有機繊維コードを用いることができ、特にアラミドの有機繊維コードが好ましい。補強層14の上端14e(タイヤ径方向外側の端部14e)の高さは、ビードフィラー6の上端6e(タイヤ径方向外側の端部6e)の高さと同等以上である。特に、補強層14の上端14eは、ビードフィラー6の上端6eからタイヤ径方向外側に5mm以上離間して配置されていることが好ましく、ビードフィラー6の上端6eからタイヤ径方向外側に10mm以上離間して配置されていることがより好ましい。
カーカス層4の巻き上げ部4Bとゴム層10との間にはトランスポンダ20が埋設されている。即ち、トランスポンダ20は、タイヤ幅方向の配置領域として、カーカス層4の巻き上げ部4Bとサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に配置されている。また、トランスポンダ20は、タイヤ径方向の配置領域として、ビードコア5の上端5e(タイヤ径方向外側の端部5e)からタイヤ径方向外側に15mmの位置P1と補強層14の上端14eとの間に配置されている。即ち、トランスポンダ20は、図2に示す領域S1に配置されている。
なお、図1及び図2の実施形態では、図1及び図2の実施形態では、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがサイドウォール部2の中腹に配置された例を示したが、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eはビードコア5の側方に配置することもできる。このようなロータンナップ構造の場合、トランスポンダ20は、補強層14とサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に配置される。他の構造として、トランスポンダ20を補強層14とビードフィラー6との間に配置することもできる。
トランスポンダ20として、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いることができる。トランスポンダ20は、図3(a),(b)に示すにように、データを記憶する基板21と、データを非接触で送受信するアンテナ22とを有している。このようなトランスポンダ20を用いることで、適時にタイヤに関する情報を書き込み又は読み出し、タイヤを効率的に管理することができる。なお、RFIDとは、アンテナ及びコントローラを有するリーダライタと、基板及びアンテナを有するIDタグから構成され、無線方式によりデータを交信可能な自動認識技術である。
トランスポンダ20の全体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図3(a),(b)に示すにように柱状や板状のものを用いることができる。特に、図3(a)に示す柱状のトランスポンダ20を用いた場合、タイヤの各方向の変形に対して追従することができるので好適である。この場合、トランスポンダ20のアンテナ22は、基板21の両端部の各々から突出し、螺旋状を呈している。これにより、走行時におけるタイヤの変形に対して追従することができ、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。また、アンテナ22の長さを適宜変更することにより、通信性を確保することができる。
上述した空気入りタイヤでは、ビードフィラー6のタイヤ幅方向外側に隣接するように有機繊維コードからなる補強層14が配置され、補強層14の上端14eの高さはビードフィラー6の上端6eの高さと同等以上であるので、補強層14による補強効果を十分に得ることができ、タイヤの操縦安定性を改善することができる。また、補強層14は有機繊維コードで構成されているので、トランスポンダ20の電波を阻害することがなく、トランスポンダ20周辺の通信性能を確保することができる。これにより、トランスポンダ20の通信性を改善することができる。更に、トランスポンダ20がビードコア5の上端5eからタイヤ径方向外側に15mmの位置P1と補強層14の上端14eとの間に配置されることにより、トランスポンダ20の通信性及び耐久性を十分に確保することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eは、補強層14の上端14eからタイヤ径方向外側に5mm以上離間して配置されていることが好ましい。ここで、カーカス層4が複数層(例えば2層)である場合には、少なくとも1層のカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eが補強層14の上端14eからタイヤ径方向外側に5mm以上離間していれば良い。このようにカーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eを配置することで、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eとトランスポンダ20の間のタイヤ径方向の距離を十分に確保できるため、トランスポンダ20の耐久性を効果的に改善することができる。その際、トランスポンダ20がカーカス層4のタイヤ幅方向内側又は外側のいずれに配置されていても、勿論、トランスポンダ20の電波は阻害されることはなく、トランスポンダ20周辺の通信性能を確保することができる。
また、トランスポンダ20は、カーカス層4とサイドウォール部2でカーカス層4の外側に配置されたゴム層10との間にゴム層10に当接しながら配置されていることが好ましい。このようにトランスポンダ20を配置することで、タイヤの操縦安定性を悪化させことなく、トランスポンダ20の通信性及び耐久性を効果的に改善することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、補強層14を構成する有機繊維コードの2.0%伸張時の張力は300N/50mm~6000N/50mmの範囲にあることが好ましく、3000N/50mm~5000N/50mmの範囲にあることがより好ましい。このように補強層14の張力を適度に設定することで、補強層14のビード部3に対する補強効果を高め、タイヤの操縦安定性を効果的に改善することができる。
また、補強層14を構成する有機繊維コードの総繊度は500dtex~5000dtexの範囲にあることが好ましく、2000dtex~4000dtexの範囲にあることがより好ましい。このように補強層14の総繊度を適度に設定することで、補強層14のビード部3に対する補強効果を高め、タイヤの操縦安定性を効果的に改善することができる。
図4に示すように、トランスポンダ20はエラストマー又はゴムからなる被覆層23により被覆されていると良い。この被覆層23は、トランスポンダ20の表裏両面を挟むようにしてトランスポンダ20の全体を被覆する。被覆層23は、サイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13を構成するゴムと同じ物性を有するゴムで構成しても良く、異なる物性を有するゴムで構成しても良い。このようにトランスポンダ20が被覆層23により保護されていることで、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。なお、被覆層23の断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、三角形や長方形、台形、紡錘形を採用することができる。
被覆層23の組成として、被覆層23は、ゴム又はエラストマーと20phr以上の白色フィラーとからなることが好ましい。このように被覆層23を構成することで、カーボンを含有する場合に比べ、被覆層23の比誘電率を比較的低くすることができ、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、本明細書において、「phr」は、ゴム成分(エラストマー)100重量部あたりの重量部を意味する。
この被覆層23を構成する白色フィラーは、20phr~55phrの炭酸カルシウムを含むことが好ましい。これにより、被覆層23の比誘電率を比較的低くすることができ、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。但し、白色フィラーに炭酸カルシウムが過度に含まれると脆性的になり、被覆層23としての強度が低下するため好ましくない。また、被覆層23は、炭酸カルシウムの他に、20phr以下のシリカ(白色フィラー)や5phr以下のカーボンブラックを任意に含むことができる。少量のシリカやカーボンブラックを併用した場合、被覆層23の強度を確保しつつ、その比誘電率を低下させることができる。
また、被覆層23の比誘電率は7以下であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。このように被覆層23の比誘電率を適度に設定することで、トランスポンダ20が電波を放射する際の電波透過性を確保し、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、被覆層23を構成するゴムの比誘電率は、常温において860MHz~960MHzの比誘電率である。ここで、常温はJIS規格の標準状態に準拠し、23±2℃、60%±5%RHである。当該ゴムは23℃、60%RHで24時間処理された後に比誘電率が計測される。上述した860MHz~960MHzの範囲は、現状のUHF帯のRFIDの割り当て周波数に該当するが、上記割り当て周波数が変更された場合、その割り当て周波数の範囲の比誘電率を上記の如く規定すれば良い。
上記空気入りタイヤにおいて、被覆層23の総厚さGacとトランスポンダ20の最大厚さGarとは、1.1≦Gac/Gar≦3.0の関係を満たすことが好ましい。被覆層23の総厚さGacは、トランスポンダ20を含む位置での被覆層23の総厚さであり、例えば、図5に示すように、タイヤ子午線断面においてトランスポンダ20の中心Cを通って最も近いカーカス層4のカーカスコードと直交する直線上での総厚さである。
上述したようにトランスポンダ20の最大厚さGarに対する被覆層23の総厚さGacの比を適度に設定することで、トランスポンダ20の通信距離を十分に確保することができる。ここで、上記比が過度に小さい(被覆層23の総厚さGacが過度に薄い)と、トランスポンダ20が隣接するゴム部材と接触し、共振周波数がずれて、トランスポンダ20の通信性が悪化し、逆に上記比が過度に大きい(被覆層23の総厚さGacが過度に厚い)と、タイヤの耐久性が悪化する傾向がある。
上記空気入りタイヤにおいて、図5に示すように、トランスポンダ20の厚さ方向の中心Cは被覆層23の厚さ方向の一方側の表面から該被覆層23の総厚さGacの25%~75%の範囲内に配置されていると良い。これにより、トランスポンダ20が被覆層23によって確実に被覆されるので、トランスポンダ20の周辺環境が安定し、共振周波数のずれを生じることがなく、トランスポンダ20の通信距離を十分に確保することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、図6(a)~(c)に示すように、トランスポンダ20は基板21と該基板21の両端から延びるアンテナ22とを有し、トランスポンダ20がタイヤ周方向Tcに沿って延在していると良い。より具体的には、トランスポンダ20は、タイヤ周方向に対する傾斜角度αが±20°の範囲内にあると良い。また、アンテナ22のタイヤ周方向の端末と被覆層23のタイヤ周方向の端末との距離Lは2mm~20mmの範囲にあると良い。これにより、トランスポンダ20の全体が被覆層23によって確実に被覆されるので、トランスポンダ20の通信距離を十分に確保することができる。
ここで、トランスポンダ20のタイヤ周方向Tcに対する傾斜角度αの絶対値が20°よりも大きいと、走行時の反復的なタイヤ変形に対してトランスポンダ20の耐久性が低下する。また、アンテナ22のタイヤ周方向の端末と被覆層23のタイヤ周方向の端末との距離Lが2mmよりも小さいと、アンテナ22のタイヤ周方向の端末が被覆層23からはみ出てしまい、走行中にアンテナ22が破損する恐れがあり、また、走行後の通信距離が短くなる懸念がある。一方、距離Lが20mmよりも大きいと、タイヤ周上において局所的な重量増を生じるため、タイヤバランスが悪化する要因となる。
上記空気入りタイヤにおいて、図7(a),(b)に示すように、トランスポンダ20は基板21と該基板21の両端から延びるアンテナ22とを有し、少なくとも一方のアンテナ22が基板21に対して屈曲するように延在していても良い。この場合、各アンテナ22はタイヤ周方向Tcに対する角度βが±20°の範囲内にあると良い。このようにトランスポンダ20を構成するアンテナ22の傾斜を規制することにより、トランスポンダ20の耐久性を十分に確保することができる。
ここで、トランスポンダ20のタイヤ周方向Tcに対する傾斜角度βの絶対値が20°よりも大きいと、走行時の反復的なタイヤ変形に対してアンテナ22の基端部に応力が集中し、トランスポンダ20の耐久性が低下する。なお、アンテナ22は必ずしも直線ではないため、アンテナ22の傾斜角度βはアンテナ22の基端と先端とを結ぶ直線がタイヤ周方向に対してなす角度とする。
図8に示すように、タイヤ周上には、タイヤ構成部材の端部同士が重ねられてなる複数のスプライス部がある。図8には各スプライス部のタイヤ周方向の位置Qが示されている。トランスポンダ20の中心は、タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。即ち、トランスポンダ20は、図8に示す領域S2に配置されていると良い。具体的には、トランスポンダ20を構成する基板21が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していると良い。更には、アンテナ22を含むトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることがより好ましく、被覆ゴムにより被覆された状態のトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることが最も好ましい。また、スプライス部がトランスポンダ20から離間して配置されるタイヤ構成部材は、トランスポンダ20と隣接する部材であると良い。このようなタイヤ構成部材として、例えば、カーカス層4、サイドウォールゴム層12、リムクッションゴム層13、補強層14を挙げることができる。タイヤ構成部材のスプライス部から離間させた位置にトランスポンダ20を配置することで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
なお、図8の実施形態では、各タイヤ構成部材のスプライス部のタイヤ周方向の位置Qが等間隔に配置された例を示したが、これに限定されるものではない。タイヤ周方向の位置Qは任意の位置に設定することができ、いずれの場合であってもトランスポンダ20は各タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間するように配置される。
図9は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの変形例を示すものである。図9において、図1~8と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
図9に示すように、トランスポンダ20は、カーカス層4とインナーライナー層9との間に配置されている。このようにトランスポンダ20を配置することで、サイドウォール部2の損傷に起因するトランスポンダ20の損傷を防ぐことができる。また、スプライス部Sがトランスポンダ20から離間して配置されるタイヤ構成部材は、トランスポンダ20と隣接する部材であると良い。このようなタイヤ構成部材として、例えば、カーカス層4、インナーライナー層9を挙げることができる。タイヤ構成部材のスプライス部から離間させた位置にトランスポンダ20を配置することで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
タイヤサイズ235/60R18で、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、一対のビード部間にカーカス層が装架され、カーカス層に沿ってタイヤ内表面にインナーライナー層が配置され、カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、トランスポンダが埋設され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向、タイヤ径方向及びタイヤ周方向)、補強層(構成材料、上端位置、張力及び総繊度)、カーカス層の巻き上げ部の端末位置、被覆層(構成材料、比誘電率及びGac/Gar)について表1及び表2のように設定した比較例1~4及び実施例1~15のタイヤを製作した。
なお、表1及び表2において、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「X」の場合、トランスポンダがカーカス層とサイドウォールゴム層との間にサイドウォールゴム層に当接して配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Y」の場合、トランスポンダがカーカス層とリムクッションゴム層との間にリムクッションゴム層に当接して配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Z」の場合、トランスポンダがカーカス層とインナーライナー層との間に配置されていることを示す。トランスポンダの位置(タイヤ径方向)は、図10に示すA~Eのそれぞれの位置に対応する。トランスポンダの位置(タイヤ周方向)は、トランスポンダの中心からタイヤ構成部材のスプライス部までのタイヤ周方向に測定された距離[mm]を示す。また、表1及び表2において、補強層の上端位置は、ビードフィラーの上端を基点としてタイヤ径方向に測定された距離[mm]を示し、カーカス層の巻き上げ部の端末位置は、補強層の上端を基点としてタイヤ径方向に測定された距離[mm]を示しており、数値が正値の場合は上端が基点からタイヤ径方向外側に位置していることを意味し、負値の場合は上端が基点からタイヤ径方向内側に位置していることを意味する。
比較例1のタイヤは補強層を有しないが、比較例1のタイヤにおけるカーカス層の巻き上げ部の端末位置は実施例1のタイヤと同じ高さに設定されており、それを便宜的に示すために実施例1のタイヤと同じ数値を表示した。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、タイヤ評価(操縦安定性及び耐久性)並びにトランスポンダ評価(通信性及び耐久性)を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
操縦安定性(タイヤ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、テストドライバーによるテストコースでの官能評価を実施した。評価結果は、非常に良好である場合を「◎(優)」で示し、良好である場合を「○(良)」で示し、若干劣る場合を「△(可)」とする3段階で示した。
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、テストドライバーによるテストコースでの官能評価を実施した。評価結果は、非常に良好である場合を「◎(優)」で示し、良好である場合を「○(良)」で示し、若干劣る場合を「△(可)」とする3段階で示した。
耐久性(タイヤ及びトランスポンダ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付け、空気圧120kPa、最大負荷荷重に対して102%、走行速度81kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施し、タイヤに故障が発生した際の走行距離を測定した。評価結果は、走行距離が6480kmに達した場合を「◎(優)」で示し、走行距離が4050km以上6480km未満の場合を「○(良)」で示し、走行距離が4050km未満の場合を「△(可)」の3段階で示した。更に、上記走行終了後、各試験タイヤに埋設されたトランスポンダの破損の有無を確認し、評価結果はその破損の有無を示した。
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付け、空気圧120kPa、最大負荷荷重に対して102%、走行速度81kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施し、タイヤに故障が発生した際の走行距離を測定した。評価結果は、走行距離が6480kmに達した場合を「◎(優)」で示し、走行距離が4050km以上6480km未満の場合を「○(良)」で示し、走行距離が4050km未満の場合を「△(可)」の3段階で示した。更に、上記走行終了後、各試験タイヤに埋設されたトランスポンダの破損の有無を確認し、評価結果はその破損の有無を示した。
通信性(トランスポンダ):
各試験タイヤについて、リーダライタを用いてトランスポンダとの通信作業を実施した。具体的には、リーダライタにおいて出力250mW、搬送波周波数860MHz~960MHzとして通信可能な最長距離を測定した。評価結果は、通信距離1000mm以上の場合を「◎(優)」で示し、通信距離が500mm以上1000mm未満の場合を「○(良)」で示し、通信距離が500mm未満の場合を「△(可)」の3段階で示した。
各試験タイヤについて、リーダライタを用いてトランスポンダとの通信作業を実施した。具体的には、リーダライタにおいて出力250mW、搬送波周波数860MHz~960MHzとして通信可能な最長距離を測定した。評価結果は、通信距離1000mm以上の場合を「◎(優)」で示し、通信距離が500mm以上1000mm未満の場合を「○(良)」で示し、通信距離が500mm未満の場合を「△(可)」の3段階で示した。
これら表1及び表2から判るように、実施例1~15は、タイヤの操縦安定性、トランスポンダの通信性及び耐久性がバランス良く改善されていた。特に、実施例1~5,7,9~14については、タイヤの耐久性に対して十分な改善効果が得られた。
一方、比較例1においては、補強層を有していないため操縦安定性が悪化し、更に、トランスポンダが本発明で規定する範囲よりもタイヤ径方向内側に外れていたため、トランスポンダの通信性が悪化した。比較例2においては、補強層が金属部材からなるため、操縦安定性が向上したもののトランスポンダの通信性が悪化した。比較例3においては、補強層の上端がビードフィラーより低く設定されていたため、タイヤの操縦安定性が悪化した。比較例4においては、トランスポンダが補強層の上端より高く設定されていたため、トランスポンダの耐久性が悪化した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4A 本体部
4B 巻き上げ部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
14 補強層
20 トランスポンダ
CL タイヤ中心線
P1 位置
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4A 本体部
4B 巻き上げ部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
14 補強層
20 トランスポンダ
CL タイヤ中心線
P1 位置
Claims (12)
- タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記カーカス層に沿ってタイヤ内表面にインナーライナー層が配置され、前記カーカス層が前記ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に隣接するように有機繊維コードからなる補強層が配置され、前記補強層の上端の高さは前記ビードフィラーの上端の高さと同等以上であり、前記ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mmの位置と前記補強層の上端との間にトランスポンダが配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記カーカス層の巻き上げ部の端末が前記補強層の上端からタイヤ径方向外側に5mm以上離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが前記カーカス層と前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接しながら配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが前記カーカス層と前記インナーライナー層との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダの中心がタイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記補強層を構成する有機繊維コードの2.0%伸張時の張力が300N/50mm~6000N/50mmの範囲にあることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記補強層を構成する有機繊維コードの総繊度が500dtex~5000dtexの範囲にあることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダがエラストマー又はゴムからなる被覆層により被覆され、該被覆層の比誘電率が7以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記被覆層の総厚さGacと前記トランスポンダの最大厚さGarとが1.1≦Gac/Gar≦3.0の関係を満たすことを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが基板と該基板の両端から延びるアンテナとを有し、前記トランスポンダがタイヤ周方向に沿って延在し、前記アンテナのタイヤ周方向の端末と前記被覆層のタイヤ周方向の端末との距離Lが2mm~20mmの範囲にあることを特徴とする請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが基板と該基板の両端から延びるアンテナとを有し、前記アンテナがタイヤ周方向に対して±20°の範囲内で延在していることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダの厚さ方向の中心が前記被覆層の厚さ方向の一方側の表面から該被覆層の総厚さGacの25%~75%の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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