JP2022000518A - ポリイミドおよびポリイミド前駆体 - Google Patents

ポリイミドおよびポリイミド前駆体 Download PDF

Info

Publication number
JP2022000518A
JP2022000518A JP2021152309A JP2021152309A JP2022000518A JP 2022000518 A JP2022000518 A JP 2022000518A JP 2021152309 A JP2021152309 A JP 2021152309A JP 2021152309 A JP2021152309 A JP 2021152309A JP 2022000518 A JP2022000518 A JP 2022000518A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
monomer
polyimide
carbon atoms
mol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021152309A
Other languages
English (en)
Inventor
大輔 渡部
Daisuke Watabe
亜紗子 京武
Asako Kyobu
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
Eneos Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Eneos Corp filed Critical Eneos Corp
Priority to JP2021152309A priority Critical patent/JP2022000518A/ja
Publication of JP2022000518A publication Critical patent/JP2022000518A/ja
Priority to KR1020247007876A priority patent/KR20240042064A/ko
Priority to CN202280059087.2A priority patent/CN117957268A/zh
Priority to PCT/JP2022/031168 priority patent/WO2023042595A1/ja
Priority to TW111132196A priority patent/TW202328289A/zh
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G73/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing nitrogen with or without oxygen or carbon in the main chain of the macromolecule, not provided for in groups C08G12/00 - C08G71/00
    • C08G73/06Polycondensates having nitrogen-containing heterocyclic rings in the main chain of the macromolecule
    • C08G73/10Polyimides; Polyester-imides; Polyamide-imides; Polyamide acids or similar polyimide precursors
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G73/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing nitrogen with or without oxygen or carbon in the main chain of the macromolecule, not provided for in groups C08G12/00 - C08G71/00
    • C08G73/06Polycondensates having nitrogen-containing heterocyclic rings in the main chain of the macromolecule
    • C08G73/10Polyimides; Polyester-imides; Polyamide-imides; Polyamide acids or similar polyimide precursors
    • C08G73/1003Preparatory processes
    • C08G73/1007Preparatory processes from tetracarboxylic acids or derivatives and diamines

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

【課題】高い水準の光透過性を有しつつ、耐熱性をより高い水準のものとすることが可能なポリイミドを提供する。【解決手段】下記一般式(1):[式(1)中、R1はそれぞれ独立に水素原子等を示し、R2はそれぞれ独立に水素原子等を示す。]で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重縮合物であり、かつ、前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするポリイミド。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミドおよびポリイミド前駆体に関する。
従来より、高度な耐熱性を有しかつ軽くて柔軟な素材としてポリイミドが着目されている。このようなポリイミドの分野においては、ガラス代替用途等に使用可能な高度な光透過性とともに耐熱性を有するポリイミドが求められており、近年では、様々なポリイミドが開発されている。
例えば、国際公開第2017/030019号(特許文献1)においては、下記式(A):
Figure 2022000518
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子等を示し、R及びRそれぞれ独立に水素原子等を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合して得られるポリイミドが開示されている。このような特許文献1に記載されているポリイミドは、高度な光透過性を有しつつ、十分に高い水準の耐熱性を有するものであった。しかしながら、このようなポリイミドの分野においては、光透過性を高い水準に維持しつつ、より高い耐熱性を有するポリイミドの出現が望まれている。
国際公開第2017/030019号
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い水準の光透過性を有しつつ、耐熱性をより高い水準のものとすることが可能なポリイミド、および、そのポリイミドの製造に好適に利用可能なポリイミド前駆体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく研究を重ね、先ず、前記特許文献1に記載されている方法を採用して得られる前記式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物を分析したところ、かかるテトラカルボン酸二無水物の合成時に得られる生成物には数%程度の反応中間体(下記一般式(2)〜(9)で表されるような化合物)が含まれていることを見い出した。そこで、本発明者らが更に研究を重ね、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)とを反応させる際に、そのモノマー(A)中に含まれているテトラカルボン酸二無水物の反応中間体の分量程度、テトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)の使用量を増加させたところ、驚くべきことに、得られるポリイミドにおいて、光透過性の水準を高い水準に維持しつつ耐熱性をより高い水準のものとすることが可能となることを見い出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリイミドは、下記一般式(1):
Figure 2022000518
[式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基およびニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのRが一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、
はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重縮合物であり、かつ、
前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするものである。
また、本発明のポリイミド前駆体は、前記一般式(1)で表されるで表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重付加物であり、かつ、
前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするものである。
また、前記本発明のポリイミドおよび前記本発明のポリイミド前駆体において、前記モノマー(A)が、下記一般式(2)〜(9):
Figure 2022000518
[式(2)〜(9)中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される化合物の中から選択される少なくとも1種のエステル化合物を、前記エステル化合物の総量が前記モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対して5質量%以下となる割合で含むものであってもよい。
本発明によれば、高い水準の光透過性を有しつつ、耐熱性をより高い水準のものとすることが可能なポリイミド、および、そのポリイミドの製造に好適に利用可能なポリイミド前駆体を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値XおよびYについて「X〜Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
〔ポリイミド〕
本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重縮合物であり、かつ、前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするものである。
〈モノマー(A)について〉
モノマー(A)は、下記一般式(1):
Figure 2022000518
[式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基およびニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのRが一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、
はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー成分(酸二無水物系モノマー成分)である。
このような一般式(1)中のRとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10以下である場合には、炭素数が10を超えた場合と比較して、ポリイミドのモノマーとして用いた場合に、得られるポリイミドの耐熱性がより高くなる。また、このようなRとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、ポリイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなRとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、このような一般式(1)中の複数のRのうち、同一の炭素原子に結合している2つのRは、それらが一緒になってメチリデン基(=CH)を形成していてもよい。すなわち、前記一般式(1)中の同一の炭素原子に結合している2つのRが一緒になって、該炭素原子(ノルボルナン環構造を形成する炭素原子のうち、Rが2つ結合している炭素原子)に二重結合によりメチリデン基(メチレン基)として結合していてもよい。
前記一般式(1)中の複数のRとしては、ポリイミドを製造した際により高い耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。また、このような式(1)中の複数のRは、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
前記一般式(1)中のRはそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種である。このようなRとして選択され得るアルキル基の炭素数が10以下である場合には、炭素数が10を超えた場合と比較して、ポリイミドのモノマーとして用いた場合に、得られるポリイミドの耐熱性がより高くなる。また、このようなRとして選択され得るアルキル基としては、ポリイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなRとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
また、前記一般式(1)中のRは、ポリイミドを製造した際により高い耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。また、このような式(1)中のRは、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
また、前記一般式(1)中の複数のRおよびRはいずれも、水素原子であることが特に好ましい。このように、前記一般式(1)で表される化合物において、R、Rで表される置換基がいずれも水素原子である場合には、ポリイミドを製造した際に、より高い耐熱性が得られる傾向にある。
このような本発明のテトラカルボン酸二無水物を製造するための方法は特に制限されるものではないが、国際公開第2017/030019号に記載されている方法を採用することができる。また、このような一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ENEOS株式会社製の商用サンプルを利用してもよい。
なお、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、国際公開第2017/030019号に記載されているように、基本的に、下記一般式(10):
Figure 2022000518
[式中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表されるテトラエステル化合物を原料化合物として用い、これを低級カルボン酸中で加熱して製造する。このような製造方法を採用した場合、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得る際に、生成物中には、一般に、反応中間体である前記一般式(2)〜(9)で表される化合物のうちの少なくとも1種が数%程度は混入してしまう(なお、このような一般式(2)〜(9)で表される化合物からなる反応中間体としては、反応を十分に進行させた場合、基本的に、前記一般式(4)で表される化合物が主たる成分となるものと考えられる)。そのため、本発明において、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)は、前記一般式(2)〜(9)で表される化合物の中から選択される少なくとも1種のエステル化合物を、前記エステル化合物の総量が前記モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対して5質量%以下となる割合で含むものであってもよい。なお、エステル化合物を総量で5質量%以下の割合で含むモノマー(A)は、工業的に製造が容易なものとなる傾向にある。
このようなモノマー(A)が含んでいてもよいエステル化合物は、前記一般式(2)〜(9)で表される化合物のうちの1種であるか、あるいは、それらの2種以上の混合物である。このような一般式(2)〜(9)中のRおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義である(好適なものも同義である)。
また、前記一般式(2)〜(9)中のRはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。
前記一般式(2)〜(9)中のRとして選択され得るアルキル基は炭素数が1〜10のアルキル基である。このようなアルキル基の炭素数が10以下の場合、炭素数が10を超えた場合と比較して精製がより容易となる。また、このようなRとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。また、このような複数のRとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
前記一般式(2)〜(9)中のRとして選択され得るシクロアルキル基は、炭素数が3〜10のシクロアルキル基である。このようなシクロアルキル基の炭素数が10以下の場合、炭素数が10を超えた場合と比較して精製がより容易となる。このようなRとして選択され得るシクロアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、3〜8であることがより好ましく、5〜6であることが更に好ましい。
さらに、前記一般式(2)〜(9)中のRとして選択され得るアルケニル基は、炭素数が2〜10のアルケニル基である。このようなアルケニル基の炭素数が10以下の場合、炭素数が10を超えた場合と比較して精製がより容易となる。このようなRとして選択され得るアルケニル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、2〜5であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。
また、前記一般式(2)〜(9)中のRとして選択され得るアリール基は、炭素数が6〜20のアリール基である。このようなアリール基の炭素数が20以下の場合、炭素数が20を超えた場合と比較して精製がより容易となる。また、このようなRとして選択され得るアリール基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることが更に好ましい。
また、前記一般式(2)〜(9)中のRとして選択され得るアラルキル基は、炭素数が7〜20のアラルキル基である。このようなアラルキル基の炭素数がが20以下の場合、炭素数が20を超えた場合と比較して精製がより容易となる。このようなRとして選択され得るアラルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、7〜10であることがより好ましく、7〜9であることが更に好ましい。
さらに、前記一般式(2)〜(9)中のRとしては、精製がより容易となるという観点から、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、前記一般式(2)〜(9)中の複数のRは、それぞれ、同一のものであっても異なっていてもよいが、合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。
また、このような一般式(2)〜(9)で表される化合物(反応中間体)としては、各素反応が分子間反応と分子内反応から構成され、一般的に分子間反応の方が分子内反応に比べて反応速度が非常に遅いことを考慮すると、基本的に、前記一般式(4)で表される化合物が主たる成分となるものと考えられる。なお、前記一般式(2)〜(9)中のR、RおよびRは、前記一般式(10)で表されるテトラエステル化合物(原料化合物)中のR、RおよびRに由来するものとなる。そのため、前記一般式(10)中のR、RおよびRは前述の一般式(2)〜(9)中のR、RおよびRと同義である。
なお、本発明者らは、前述のように、国際公開第2017/030019号に記載されている方法を採用して得られた前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を分析し、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造時に、反応中間体である一般式(2)〜(9)で表される化合物(エステル化合物:反応中間体)が、数%程度(例えば、2〜5質量%程度の割合で)混入してしまうことを見い出している。このように、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、基本的に、前記一般式(10)で表されるテトラエステル化合物を原料として用いており、その合成時に、生成物中に前記原料化合物に由来する前述のような特定の反応中間体が含まれる。このような知見に基いて、本発明においては、前記エステル化合物の総量(含有量)が前記モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対して5質量%以下(より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下)となる割合で前記エステル化合物を含む、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の合成時に得られる生成物をそのままモノマー(A)として好適に利用しつつ、そのようなモノマー(A)を利用した場合においても、本発明の効果が得られるように、その使用量を本願で規定する特定の範囲としている。このような観点から、本発明においては、モノマー(A)は、前記エステル化合物を、前記エステル化合物と前記テトラカルボン酸二無水物との総量(合計量)に対して、5質量%以下含むものであってもよい。このようなエステル化合物の含有量が前記範囲内にある場合には、国際公開第2017/030019号に記載されている方法を採用してモノマー(A)をより容易に入手することが可能となる傾向にある。
なお、本発明において、モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対する前記エステル化合物の総量(前記一般式(2)〜(9)で表される化合物の総量)の割合は、以下の測定方法によって測定される値を採用する。
すなわち、先ず、モノマー(A)に利用する前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなる測定試料(例えば、国際公開第2017/030019号に記載されている方法を採用して得られる生成物、前記商用サンプル等)に対してH−NMR測定を行い、H−NMRスペクトルを得る。次いで、H−NMRスペクトルにおける全シグナルの積分値を求める。そして、H−NMRスペクトルにおけるδ1.0付近のダブレットのシグナル(ノルボルナン橋頭位の4つのプロトンのうちの2プロトン分)の積分値を求める。次いで、δ1.0付近のダブレットのシグナル(ノルボルナン橋頭位の4つのプロトンのうちの2プロトン分)の積分値を100に換算した場合の値として、エステル基のプロトン由来のシグナルの全量(例えば、エステル基が式:−COOCHで表されるメチルエステル基である場合、δ3.5付近のシングレットのシグナルが、メチルエステル基のプロトン由来のシグナルになる)の積分値Aを求める。次いで、積分値Aで求められた値(エステル基のプロトン由来のシグナルの全量)が全て、前記式(4)で表されるエステル化合物に由来(6プロトン分)したものであるとみなして、下記計算式(I):
[B(質量%)]=(A×M×100)/(300×M) (I)
[式中、Aは、ノルボルナン橋頭位の4つのプロトンのうちの2プロトン分)の積分値を100に換算した場合のエステル基のプロトン由来のシグナルの全量の積分値を示し、Mは前記測定試料(例えば、前記生成物、前記商用サンプル等)中の前記一般式(1)で表される化合物の分子量の値を示し、Mは前記測定試料中の前記一般式(4)で表される化合物の分子量の値を示す。]
を計算してBの値を求める。そして、得られたBの値を全エステル化合物(反応中間体)の残存率とみなす。次いで、計算式(I)により求めたBの値(全エステル化合物の残存率)を利用し、下記計算式(II):
[エステル化合物の含有量(質量%)]=B/(100+B) (II)
を計算することにより、エステル化合物の含有量(総量)の割合(質量%)を求める。このように、本発明においては、モノマー(A)に利用するテトラカルボン酸二無水物からなる測定試料に対してH−NMR測定を行い、H−NMRスペクトルを利用して、前記計算式(I)および(II)を計算して求められる値を、モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対する前記エステル化合物の総量(前記一般式(2)〜(9)で表される化合物の総量)の割合として採用する。なお、このような計算に際しては、積分値Aで求められた値(エステル基のプロトン由来のシグナルの全量)が全て、前記一般式(4)で表されるエステル化合物に由来(6プロトン分)のものであるとみなして計算を行うが、これは、前記一般式(4)で表されるエステル化合物が当該エステル化合物群の主成分であるためである。
このように、モノマー(A)に、国際公開第2017/030019号に記載されている方法を採用して得られた前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を利用する場合、前述のように、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造物(生成物)には、反応中間体である前記エステル化合物が混入するため、モノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、前記エステル化合物とを含むものとなる。
また、モノマー(A)は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物および前記エステル化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、他のテトラカルボン酸二無水物を更に含んでいてもよい。このような他のテトラカルボン酸二無水物としては、ポリアミド酸やポリイミドの製造に用いることが可能な公知のテトラカルボン酸二無水物(例えば、国際公開第2015/163314号の段落[0137]に記載されているテトラカルボン酸二無水物、国際公開第2017/030019号の段落[0220]に記載されているテトラカルボン酸二無水物、特開2013−105063号公報の段落[0012]〜[0016]に記載されているテトラカルボン酸二無水物)を適宜利用することができる。
〈モノマー(B)について〉
モノマー(B)は、ジアミン化合物からなるモノマー成分(ジアミン系モノマー成分)である。このようなジアミンとしては、特に制限されず、ポリアミド酸やポリイミドの製造に用いることが可能な公知のジアミン化合物を適宜利用でき、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。なお、このようなジアミン化合物としては、例えば、公知のもの(例えば、特開2013−105063号公報の段落[0017]〜[0022]に記載されているジアミン化合物、国際公開第2017/030019号報の段落[0211]に記載されている芳香族ジアミン、国際公開第2015/163314号の段落[0089]や段落[0129]に記載されているジアミン化合物、国際公開第2018/159733号の段落[0030」〜[0078]に記載されているジアミン化合物等)を適宜利用することができる。また、前記ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、このようなジアミン化合物としては、芳香族ジアミンが好ましく、例えば、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABAN)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(略称:DDE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(略称:3,4−DDE)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、p−ジアミノベンゼン(略称:PPD)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:m−tol)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン)、4,4’−ジフェニルジアミノメタン(略称:DDM)、4−アミノフェニル―4−アミノ安息香酸(略称:BAAB)、4,4’−ビス(4−アミノベンズアミド)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル(略称:BABB)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(略称:3,3’−DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB−N)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−R)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:4−APBP)、4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(略称:BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(略称:BAPK)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(略称:4,4’−DDS)、(2−フェニル−4−アミノフェニル)−4−アミノベンゾエート(4−PHBAAB)、4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル(略称:Terphenyl)、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(略称:ASD)、ビスアニリンM、ビスアニリンP、2,2’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、2,3’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、2,4’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、3,3’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、3,4’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、4,4’’’−ジアミノ−p−クォーターフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、および、1,4−ジアミノナフタレンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジアミンを好適に利用できる。
〈ポリイミドについて〉
本発明のポリイミドは、前記モノマー(A)と、前記モノマー(B)との重縮合物であり、かつ、前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするものである。
なお、一般的に、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを開環付加反応させることにより、これらの重付加物(付加重合体、開環重付加体)であるポリアミド酸を形成し、その後、得られたポリアミド酸を閉環縮合(脱水閉環:分子内縮合)させることにより得られるものである。そのため、前記テトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、前記ジアミン化合物からなるモノマー(B)とを重縮合して得られるポリマーは、ポリイミドであるといえる。
また、本発明においては、前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モル(より好ましくは100.2モル〜104モル、更に好ましくは100.2モル〜103モル、特に好ましくは100.2モル〜102モル)である(なお、前記モノマー(A)の含有割合は、モノマー(B)のモル量を100モルに換算した場合の含有量の割合である)。このようなモノマー(A)の含有割合が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、より高い耐熱性が得られ、他方、前記上限以下とした場合には、前記上限を超えた場合と比較して、高い機械物性が得られる。なお、モノマー(A)に前記エステル化合物(前記一般式(2)〜(9)で表される化合物)が含まれる場合には、前記エステル化合物の総量を前述のようにして求めた後、その値に基いて、前記エステル化合物がいずれも前記一般式(4)で表される化合物であるものとみなして、モノマー(A)中に含まれるエステル化合物のモル量を算出する。なお、前記モノマー(A)の含有割合の下限値は、耐熱性の点で更に高い効果が得られることから、100.5モルであることがより好ましい。
なお、本発明においては、前記モノマー(A)の含有割合がモノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルとなるように、前記モノマー(A)を利用するが、特に、モノマー(A)が反応中間体として前記エステル化合物を含むものである場合には、反応中間体の分量を考慮して、前記モノマー(A)の使用量を前述の範囲となるよう増加させることで、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル比を理論量(1:1)としつつ、別途、少量の反応中間体の前記エステル化合物が含まれているような状態とすることも可能となるため、化合物同士を効率よく反応させることが可能となるばかりか、ポリマーの末端に前記エステル化合物に由来するエステル基を導入することが可能となり、末端が少し嵩高くなることから、得られるポリイミドの自由体積が減少してガラス転移温度(Tg)を更に向上させることが可能となり、これに起因して、更に高い耐熱性を得ることが可能となるものと本発明者らは推察する。
また、前記ポリイミドは、少なくとも、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、前記ジアミン化合物との反応により形成される、下記一般式(20):
Figure 2022000518
[式中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり(好適なものも同義である)、R10は前記ジアミン化合物(好ましくは芳香族ジアミン)から2つのアミノ基を除いた残基(2価の基)である。]
で表される繰り返し単位(I)を有するものとすることができる。なお、前記繰り返し単位(I)中の式:−R10−で表される部位は、ポリイミドの製造に利用したジアミン化合物を式:HN−R10−NHで表した場合に、そのジアミン化合物から2つのアミノ基(NH)の部位を除いた場合に残る2価の基(残基)となる。
また、本発明のポリイミドが前記繰り返し単位(I)を有するものである場合、前記繰り返し単位(I)の含有量は特に制限されないが、ポリイミド中の全繰り返し単位に対して80〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。前記繰り返し単位(I)の含有量を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して得られるポリイミドの耐熱性を向上させることが可能となる。
また、本発明のポリイミドは、フィルムを形成した場合に透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上)であるものがより好ましい。このようなポリイミドとしては、ヘイズ(濁度)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。また、このようなポリイミドとしては、黄色度(YI)が5〜−2(更に好ましくは4〜−2、特に好ましくは3〜−2)であるものがより好ましい。なお、このような全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求めることができ、ヘイズ(濁度)はJIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求めることができ、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めることができる。
また、本発明のポリイミドとしては、耐熱性を十分に高い状態のものとするといった観点から、ガラス転移温度(Tg)が300〜550℃のものがより好ましく、350〜550℃のものが更に好ましい。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を使用して引張モードにより測定することができる。
さらに、本発明のポリイミドとしては、5%重量減少温度が450℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。また、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000〜5000000であることが好ましく、5000〜5000000であることがより好ましく、10000〜500000であることが更に好ましい。さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められたデータに基づいてポリスチレンで換算して求めることができる。なお、このようなポリイミドにおいては、分子量の測定が困難な場合には、そのポリイミドの製造に用いるポリアミド酸の粘度に基づいて、分子量等を類推して、用途等に応じたポリイミドを選別して使用してもよい。
なお、このようなポリイミドは、モノマー(A)とモノマー(B)を前記特定のモル比で利用する以外は、ポリイミドの製造方法として公知の方法(例えば、国際公開第2017/030019号に記載されている方法等)と同様の方法を採用して製造することができる。
また、本発明のポリイミドは、その用途に応じ、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤・ヒンダードアミン系光安定剤、核剤・透明化剤、無機フィラー(ガラス繊維、ガラス中空球、タルク、マイカ、アルミナ、チタニア、シリカなど)、重金属不活性化剤・フィラー充填プラスチック用添加剤、難燃剤、加工性改良剤・滑剤/水分散型安定剤、永久帯電防止剤、靱性向上剤、界面活性剤、炭素繊維等の添加成分を更に含有していてもよい。
また、このようなポリイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
このようなポリイミドは、各種用途に利用でき、例えば、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、複写機用シームレスポリイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、透明電極基板(有機EL用透明電極基板、太陽電池用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)、層間絶縁膜、センサー基板、イメージセンサーの基板、発光ダイオード(LED)の反射板(LED照明の反射板:LED反射板)、LED照明用のカバー、LED反射板照明用カバー、カバーレイフィルム、高延性複合体基板、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、カラーフィルタ基材等を製造するための材料として特に有用である。
〔ポリイミド前駆体〕
本発明のポリイミド前駆体は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重付加物であり、かつ、前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするものである。
本発明において、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、モノマー(A)、モノマー(B)は、それぞれ、前述の本発明のポリイミドにおいて説明したものと同様のものである(その好適なものも同様である)。また、モノマー(A)の含有割合の範囲およびその好適な範囲も、前述の本発明のポリイミドにおいて説明したものと同様である。
また、本発明のポリイミド前駆体は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)の重付加物である。このようなポリイミド前駆体は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)を重付加反応させて得られるポリアミド酸であってもよく、あるいは、前記ポリアミド酸の誘導体であってもよい。また、このようなポリイミド前駆体は、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と前記ジアミン化合物とを重付加反応させるため、下記一般式(21):
Figure 2022000518
[式中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり(好適なものも同義である)、R10は前記ジアミン化合物(好ましくは芳香族ジアミン)から2つのアミノ基を除いた残基(2価の基)であり、Yはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示し、ノルボルナン環を形成する炭素原子aには*1で表される結合手および*2で表される結合手のうちの一方が結合し、ノルボルナン環を形成する炭素原子bには*1で表される結合手および*2で表される結合手のうちのもう一方が結合し、ノルボルナン環を形成する炭素原子cには*3で表される結合手および*4で表される結合手のうちの一方が結合し、ノルボルナン環を形成する炭素原子dには*3で表される結合手および*4で表される結合手のうちのもう一方が結合する。]
で表される繰り返し単位(II)を有するものとすることができる。なお、前記繰り返し単位(II)中の式:−R10−で表される部位は、ポリイミド前駆体の製造に利用したジアミン化合物を式:HN−R10−NHで表した場合に、そのジアミン化合物から2つのアミノ基(NH)の部位を除いた場合に残る2価の基(残基)となる。
前記一般式(21)中のYはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基および炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。このようなYは、その置換基の種類、および、置換基の導入率を、その製造条件を適宜変更することで変化させることができる。このようなYが、いずれも水素原子である場合(いわゆるポリアミド酸の繰り返し単位となる場合)には、ポリイミドの製造がより容易となる傾向がある。かかる観点から、前記ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸であることが好ましい。
前記一般式(21)中のYが炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である場合、ポリイミド前駆体の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。また、Yが炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である場合、Yはメチル基又はエチル基であることがより好ましい。また、前記一般式(21)中のYが炭素数3〜9のアルキルシリル基である場合、ポリイミド前駆体の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。また、Yが炭素数3〜9のアルキルシリル基である場合、Yはトリメチルシリル基又はt−ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。
前記繰り返し単位(II)中のYに関して、水素原子以外の基(アルキル基及び/又はアルキルシリル基)の導入率は、特に限定されないが、式中のYのうちの少なくとも一部をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とする場合、前記繰り返し単位(I)中のYの総量の25%以上(より好ましくは50%以上、更に好ましくは75%以上)をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とすることが好ましい(なお、この場合、アルキル基及び/又はアルキルシリル基以外のYは水素原子となる)。前記繰り返し単位(II)中のYのそれぞれについて、総量の25%以上をアルキル基及び/又はアルキルシリル基にすることで、ポリイミド前駆体の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。
なお、本発明のポリイミド前駆体が前記繰り返し単位(II)を有するものである場合、前記繰り返し単位(II)の含有量は特に制限されないが、ポリイミド前駆体中の全繰り返し単位に対して80〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。前記繰り返し単位(II)の含有量を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、そのポリイミド前駆体を用いて得られるポリイミドの耐熱性を向上させることが可能となる。
このようなポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)としては、対数粘度ηintが0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような対数粘度ηintが0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような対数粘度ηintとしては、N,N−ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させた測定試料(溶液)を調製し、該測定試料の粘度を30℃の温度条件下において動粘度計を用いて測定することにより求められる値を採用する。なお、このような動粘度計としては、Cannon社製の自動粘度測定装置(商品名「MINIシリーズ PV−HX型」)を用いることができる。
また、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法としては、モノマー(A)とモノマー(B)を前記特定のモル比で利用する以外は、ポリイミドの製造方法として公知の方法(例えば、国際公開第2017/030019号に記載されている方法等)と同様の方法を採用して製造することができる。なお、前記一般式(21)中のYが水素原子以外となるような繰り返し単位(II)を含有するポリイミド前駆体を製造する場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物として前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物を用いる以外は、国際公開第2018/066522号公報の段落[0165]〜[0174]に記載されている方法と同様にして製造する方法を適宜採用してもよい。
なお、このような本発明のポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)は、有機溶媒中に含有せしめて、ポリイミド前駆体の樹脂溶液(ワニス)として利用してもよい。このような樹脂溶液における前記ポリイミド前駆体の含有量は特に制限されないが、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。なお、かかるポリイミド前駆体の樹脂溶液は、本発明のポリイミドを製造するための樹脂溶液(ワニス)として好適に利用することができ、各種形状のポリイミドを製造するために好適に利用できる。例えば、このようなポリイミド前駆体樹脂溶液を各種基板の上に塗布し、これをイミド化して硬化することで、容易にフィルム形状のポリイミドを製造することもできる。なお、このような樹脂溶液(ワニス)に利用する有機溶媒としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、例えば、国際公開第2018/066522号公報の段落[0175]および段落[0133]〜[0134]に記載されている溶媒等を適宜利用することができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<各実施例等で得られたポリマーの特性の評価方法について>
先ず、各実施例等で得られたポリアミド酸およびポリイミドの特性の評価方法について説明する。なお、以下の評価方法を採用して得られた評価結果は表1に示す。
〈ポリアミド酸の対数粘度ηintの測定方法〉
各実施例等で得られた反応液中のポリアミド酸の対数粘度ηintは、かかる反応液からポリアミド酸をサンプリングし、測定試料としてN,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とした濃度0.5g/dLのポリアミド酸の溶液を調製し、測定装置としてCannon社製の自動粘度測定装置(商品名「MINIシリーズ PV−HX型」)を用いて、30℃の温度条件下において測定することにより求めた。
〈ポリイミドのガラス転移温度(Tg)の測定方法〉
ガラス転移温度(単位:℃)は、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム)から縦20mm、横5mm、の大きさのフィルムをそれぞれ切り出して測定試料(かかる試料の厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みのままとした)とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、各実施例等で得られたフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を求めた。
〈ポリイミドの全光線透過率の測定方法〉
全光線透過率(単位:%)は、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム)をそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用いて、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
〈ポリイミドの線膨張係数(CTE)の測定方法〉
線膨張係数(単位:ppm/K)は、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム)から縦20mm、横5mmの大きさ(厚みは各実施例等で得られたフィルムの厚みのままとした)のフィルムをそれぞれ切り出して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における前記試料の長さの変化を測定して、100℃〜200℃の温度範囲における長さの変化から1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより算出した。
(実施例1)
〈BNBDAの合成工程(1)〉
下記式(30):
Figure 2022000518
で表されるテトラメチルエステル化合物を原料化合物として用いて、下記式(31):
Figure 2022000518
で表される化合物(BNBDA)を、国際公開第2017/030019号に記載された方法に沿って合成し、得られた生成物(BNBDAと反応中間体とを含む合成物)をそのままBNBDAからなるモノマー(A)として利用した。
なお、かかる生成物中に含まれる反応中間体のエステル化合物(なお、かかるエステル化合物は、原料化合物の種類から、前記一般式(2)〜(9)で表される化合物のうちの少なくとも1種であって、式中のRおよびRがいずれも水素原子であり、かつ、式中のRがいずれもメチル基である化合物からなることは明らかである)の総量を、以下のようにして測定した。すなわち、先ず、前記生成物に対してH−NMR測定を行い、H−NMRスペクトルにおける全シグナルの積分値を求めた。次に、H−NMRスペクトルにおけるδ1.0付近のダブレットのシグナル(ノルボルナン橋頭位の4つのプロトンのうちの2プロトン分)の積分値を100とした場合における、δ3.5付近のシングレットのシグナルの積分値Aを算出した(なお、δ3.5付近のシングレットのシグナルは、エステル化合物のメチルエステル基のプロトン由来のシグナルである)。次いで、積分値Aとして求められた値(メチルエステル基のプロトン由来のシグナルの全量)が、前記一般式(4)で表され、式中のRおよびRがいずれも水素原子であり、かつ、式中のRがいずれもメチル基であるエステル化合物(以下、場合により、単に「ハーフエステル」と称する)に由来(6プロトン分)したものであるものとみなして、下記計算式(1):
[B(質量%)]=(A×376×100)/(300×330) (1)
(なお、このような式(1)中において、376は前記ハーフエステルの分子量の値を示し、330はBNBDAの分子量の値を示し、Aは前記積分値Aの値を示す。)
を計算することにより、前記ハーフエステルの残存率Bの値を算出した。そして、求められたハーフエステルの残存率Bの値を、生成物中に含まれる全エステル化合物の残存率であるものとみなし、下記計算式(2):
[エステル化合物の含有量(質量%)]=B/(100+B) (2)
を計算することにより、生成物中に含まれるエステル化合物(前記一般式(2)〜(9)で表される化合物)の含有量(総量)を求めた。このような測定の結果、生成物中に含まれるエステル化合物の総量は2.21質量%であった。以下において、「BNBDAの合成工程(1)」を利用して得られた生成物(BNBDAと反応中間体とを含む合成物)を、便宜上、単に「BNBDA(I)」と称する。
〈ポリアミド酸の調製工程〉
先ず、窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として4,4’−ジアミノジフェニルアミン(4,4’−DDE)を2.00g(10.0mmol)導入するとともに、モノマー(A)として前記BNBDA(I)(エステル化合物の含有量:2.21質量%)3.37g(10.2mmol(BNBDA:10mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.2mmol))を導入した。
次いで、前記スクリュー管内に、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を21.5g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温下(25℃)で3時間撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する反応液(ポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.733dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、102:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
ガラス基板として大型スライドグラス(松浪硝子工業株式会社製の商品名「S9213」、縦:76mm、横52mm、厚み1.3mm)を準備し、上述のようにして得られた反応液(ポリアミド酸の溶液)を、前記ガラス基板の表面上にスピンコートして、前記ガラス基板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を真空下、70℃で30分乾燥させた(乾燥工程)。次いで、イナートオーブン内に、前記塗膜が形成されたガラス基板を設置し、窒素雰囲気下で室温から350℃まで昇温して1時間保持することにより加熱して、前記塗膜を硬化せしめた。このようにして、前記ガラス基板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドからなるフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。
次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃のお湯の中に浸漬して、前記ガラス基板からフィルムを剥離することにより、ポリイミドフィルム(縦76mm、横52mm、厚み13μmの大きさのフィルム)を得た。
(比較例1)
〈BNBDAの合成工程(2)〉
前記式(30)で表されるテトラメチルエステル化合物を原料として用いて、前記式(31)で表される化合物(BNBDA)を、国際公開第2017/030019号に記載された方法に沿って合成し(ただし、実施例1で採用したBNBDAの合成工程に対して合成時のスケールを1/10倍とした)、得られた生成物(BNBDAと反応中間体とを含む合成物)をそのままBNBDAからなるモノマー(A)として利用した。なお、かかる生成物中に含まれるエステル化合物(前記一般式(2)〜(9)で表される化合物のうちの少なくとも1種であって、式中のRおよびRがいずれも水素原子であり、かつ、式中のRがいずれもメチル基である化合物)の総量を、実施例1で採用している方法と同様にして測定したところ、得られた生成物中に含まれるエステル化合物の総量は2.16質量%であった。なお、以下において、「BNBDAの合成工程(2)」で得られた生成物(BNBDAと反応中間体とを含む合成物)を、便宜上、単に「BNBDA(II)」と称する。
〈ポリアミド酸の調製工程〉
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として4,4’−ジアミノジフェニルアミン(4,4’−DDE)を0.74g(3.7mmol)導入するとともに、モノマー(A)としてBNBDA(II)(エステル化合物の含有量:2.16質量%)1.22g(3.7mmol(BNBDA:3.62mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.07mmol))を導入した。次いで、前記スクリュー管内に、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を7.84g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、80℃で3時間撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する比較用反応液(比較用のポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.582dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、100:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
上述のようにして得られた比較用反応液を用い、前記塗膜の形成されたガラス基板を真空下で乾燥する工程を施さず、かつ、イナートオーブンでの加熱条件として、室温から350℃まで昇温して1時間保持する条件を採用する代わりに、室温から70℃に昇温して2時間保持した後に70℃から350℃に昇温して1時間保持する条件を採用した以外は、実施例1で採用しているポリイミドの調製工程と同様の工程を採用することにより、ポリイミドフィルムを得た。
(実施例2)
〈ポリアミド酸の調製工程〉
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として、4,4’−ジアミノジフェニルアミン(4,4’−DDE)を1.14g(5.0mmol)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABAN)を1.00g(5.0mmol)含むジアミンの混合物を導入するとともに、モノマー(A)として前記BNBDA(I)(エステル化合物の含有量:2.21質量%)3.37g(10.2mmol(BNBDA:10mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.2mmol))を導入した。次いで、前記スクリュー管内に、テトラメチルウレアを22g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温下(25℃)で3時間撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する反応液(ポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.648dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、102:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
このようにして得られた反応液(ポリアミド酸の溶液)を用い、前記乾燥工程において乾燥時間を30分から1時間に変更し、かつ、イナートオーブンでの加熱条件として、室温から350℃まで昇温して1時間保持する条件を採用する代わりに、室温から135℃に昇温して30分保持した後に135℃から350℃に昇温して1時間保持する条件を採用した以外は、実施例1で採用しているポリイミドの調製工程と同様の工程を採用することにより、ポリイミドフィルムを得た。
(比較例2)
〈ポリアミド酸の調製工程〉
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として、4,4’−ジアミノジフェニルアミン(4,4’−DDE)を1.00g(5.0mmol)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABAN)を1.14g(5.0mmol含むジアミンの混合物を導入するとともに、モノマー(A)として前記BNBDA(II)(エステル化合物の含有量:2.16質量%)3.30g(10.0mmol(BNBDA:9.78mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.19mmol))を導入した。次いで、前記スクリュー管内に、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を21.8g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、60℃で3時間撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する比較用反応液(比較用のポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.563dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、100:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
上述のようにして得られた比較用反応液(ポリアミド酸の溶液)を用い、前記塗膜の形成されたガラス基板を真空下で乾燥する工程を施さず、かつ、イナートオーブンでの加熱条件として、室温から350℃まで昇温して1時間保持する条件を採用する代わりに、室温から60℃に昇温して4時間保持した後に60℃から350℃に昇温して1時間保持する条件を採用した以外は、実施例1で採用しているポリイミドの調製工程と同様の工程を採用することにより、ポリイミドフィルムを得た。
(実施例3)
〈ポリアミド酸の調製工程〉
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(APBP)を1.84g(5.0mmol)導入するとともに、モノマー(A)として前記BNBDA(I)(エステル化合物の含有量:2.21質量%)1.68g(5.1mmol(BNBDA:4.99mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.1mmol))を導入した。次いで、前記スクリュー管内に、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を14.1g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温下(25℃)で3日撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する反応液(ポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.731dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、102:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
このようにして得られた反応液(ポリアミド酸の溶液)を用い、かつ、イナートオーブンでの加熱時の温度条件を350℃から300℃に変更した以外は、実施例1で採用しているポリイミドの調製工程と同様の工程を採用することにより、ポリイミドフィルムを得た。
(比較例3)
〈ポリアミド酸の調製工程〉
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、モノマー(B)として4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(APBP)を1.02g(2.77mmol)導入するとともに、モノマー(A)として前記BNBDA(II)(エステル化合物の含有量:2.16質量%)0.91g(2.76mmol(BNBDA:2.71mmolおよび前記エステル化合物(反応中間体):0.05mmol))を導入した。次いで、前記スクリュー管内に、ジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を7.98g添加し、混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、70℃で3時間撹拌することにより、ポリアミド酸を生成せしめ、かかるポリアミド酸を含有する反応液(ポリアミド酸の溶液)を得た。得られたポリアミド酸の対数粘度は0.564dL/gであった。なお、ポリアミド酸の製造に利用したモノマー(A)とモノマー(B)のモル比[(A):(B)]は、100:100であった。
〈ポリイミドの調製工程〉
前記乾燥工程の温度条件を70℃から60℃に変更し、かつ、イナートオーブンでの加熱時の温度条件を350℃から300℃に変更した以外は、実施例1で採用しているポリイミドの調製工程と同様の工程を採用することにより、ポリイミドフィルムを得た。
Figure 2022000518
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたポリイミドと、比較例1〜3で得られたポリイミドとを、モノマー(B)の種類が同じもの同士で対比すると、モノマー(A)とモノマー(B)の比率が本発明において規定した範囲内にある実施例1〜3で得られたポリイミドは、比較例1〜3で得られたポリイミドと比較して、Tgがより高い値となっており、Tgを基準とした耐熱性がより高い水準のものとなることが確認された。また、実施例1〜3および比較例1〜3で得られたポリイミドはいずれも全光線透過率が80%以上となっており、光透過性が高い水準にあることが確認された。更に、実施例1〜3で得られたポリイミドと、比較例1〜3で得られたポリイミドとを、モノマー(B)の種類が同じもの同士で対比すると、モノマー(A)とモノマー(B)の比率が本発明において規定した範囲内にある実施例1〜3で得られたポリイミドは、比較例1〜3で得られたポリイミドに対して、CTEが同等の数値となるか、あるいは、より低い値となることも分かった。
以上説明したように、本発明によれば、高い水準の光透過性を有しつつ、耐熱性をより高い水準のものとすることが可能なポリイミド、および、そのポリイミドの製造に好適に利用可能なポリイミド前駆体を提供することが可能となる。このように、本発明のポリイミドは、耐熱性と透明性に優れるため、例えば、ガラス基板の代替に利用される樹脂基板や、各種の樹脂フィルム(例えばフレキシブル配線基板用フィルム、フレキシブル基板フィルム等)等を製造するための材料等として特に有用である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2022000518
    [式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基およびニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのRが一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、
    はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
    で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重縮合物であり、かつ、
    前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするポリイミド。
  2. 前記モノマー(A)が、下記一般式(2)〜(9):
    Figure 2022000518
    [式(2)〜(9)中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
    で表される化合物の中から選択される少なくとも1種のエステル化合物を、前記エステル化合物の総量が前記モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対して5質量%以下となる割合で含むものであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド。
  3. 下記一般式(1):
    Figure 2022000518
    [式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基およびニトロ基よりなる群から選択される1種を示すか、又は、同一の炭素原子に結合している2つのRが一緒になってメチリデン基を形成していてもよく、
    はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
    で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるモノマー(A)と、ジアミン化合物からなるモノマー(B)との重付加物であり、かつ、
    前記モノマー(A)の含有割合が、前記モノマー(B)100モルに対して100.2モル〜105モルであることを特徴とするポリイミド前駆体。
  4. 前記モノマー(A)が、下記一般式(2)〜(9):
    Figure 2022000518
    [式(2)〜(9)中、RおよびRはそれぞれ前記一般式(1)中のRおよびRと同義であり、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
    で表される化合物の中から選択される少なくとも1種のエステル化合物を、前記エステル化合物の総量が前記モノマー(A)中に含まれる前記一般式(1)〜(9)で表される化合物の総量に対して5質量%以下となる割合で含むものであることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド前駆体。
JP2021152309A 2021-09-17 2021-09-17 ポリイミドおよびポリイミド前駆体 Pending JP2022000518A (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021152309A JP2022000518A (ja) 2021-09-17 2021-09-17 ポリイミドおよびポリイミド前駆体
KR1020247007876A KR20240042064A (ko) 2021-09-17 2022-08-18 폴리이미드 및 폴리이미드 전구체
CN202280059087.2A CN117957268A (zh) 2021-09-17 2022-08-18 聚酰亚胺及聚酰亚胺前体
PCT/JP2022/031168 WO2023042595A1 (ja) 2021-09-17 2022-08-18 ポリイミドおよびポリイミド前駆体
TW111132196A TW202328289A (zh) 2021-09-17 2022-08-26 聚醯亞胺及聚醯亞胺前驅體

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021152309A JP2022000518A (ja) 2021-09-17 2021-09-17 ポリイミドおよびポリイミド前駆体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022000518A true JP2022000518A (ja) 2022-01-04

Family

ID=79241944

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021152309A Pending JP2022000518A (ja) 2021-09-17 2021-09-17 ポリイミドおよびポリイミド前駆体

Country Status (5)

Country Link
JP (1) JP2022000518A (ja)
KR (1) KR20240042064A (ja)
CN (1) CN117957268A (ja)
TW (1) TW202328289A (ja)
WO (1) WO2023042595A1 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008163090A (ja) * 2006-12-27 2008-07-17 Mitsubishi Chemicals Corp テトラカルボン酸二無水物およびその製造方法並びに重合物
US20180237638A1 (en) 2015-08-14 2018-08-23 Jxtg Nippon Oil & Energy Corporation Tetracarboxylic dianhydride, carbonyl compound, polyamic acid, polyimide, methods for producing the same, solution using polyamic acid, and film using polyimide
JP2017115164A (ja) * 2017-03-30 2017-06-29 Jxtgエネルギー株式会社 熱硬化性樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物
JP2019070813A (ja) * 2018-11-29 2019-05-09 Jxtgエネルギー株式会社 液晶配向剤、液晶配向膜、及び、液晶表示素子

Also Published As

Publication number Publication date
WO2023042595A1 (ja) 2023-03-23
CN117957268A (zh) 2024-04-30
KR20240042064A (ko) 2024-04-01
TW202328289A (zh) 2023-07-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2019108552A (ja) ポリイミド前駆体組成物、ポリイミドの製造方法、ポリイミド、ポリイミドフィルム、及び基板
KR102430152B1 (ko) 폴리아믹산 용액, 이를 이용한 투명 폴리이미드 수지 필름 및 투명 기판
KR20200006626A (ko) 수지 전구체 및 그것을 함유하는 수지 조성물, 수지 필름 및 그 제조 방법, 그리고, 적층체 및 그 제조 방법
CN103842409A (zh) 树脂组合物及使用其的膜形成方法
KR102429867B1 (ko) 폴리이미드 전구체 수지 조성물
WO2015083649A1 (ja) ポリイミドの製造方法及びその製造方法により得られるポリイミド
TW201821482A (zh) 聚醯亞胺、聚醯胺酸、聚醯胺酸溶液、及聚醯亞胺薄膜
EP3348598B1 (en) Polyimide-based block copolymers and polyimide-based film comprising the same
KR20180047322A (ko) 폴리이미드 필름 형성용 조성물 및 이를 이용하여 제조된 폴리이미드 필름
Mi et al. Transparent and soluble polyimide films containing 4, 4′‐isopropylidenedicyclohexanol (Cis‐HBPA) units: Preparation, characterization, thermal, mechanical, and dielectric properties
KR100717377B1 (ko) 지방족 폴리이미드-실록산 및 그 제조방법
JP7050382B2 (ja) ポリイミドフィルム及びその製造方法
JP2022000518A (ja) ポリイミドおよびポリイミド前駆体
KR20200092628A (ko) 폴리아미드계 (공)중합체의 제조방법, 및 이를 이용한 폴리아미드계 (공)중합 수지 조성물, 고분자 필름
Xu et al. Preparation and characterization of novel polyimides with hydroxyl groups
KR20180110794A (ko) 고분자 수지 조성물 및 고분자 필름
TW202102583A (zh) 聚醯亞胺、聚醯胺酸、樹脂溶液、塗劑及聚醯亞胺膜
JP6638744B2 (ja) ポリイミド前駆体組成物、ポリイミドの製造方法、ポリイミド、ポリイミドフィルム、及び基板
KR102078761B1 (ko) 폴리(아미드-이미드) 공중합체 및 고분자 필름
WO2019172460A2 (ja) テトラカルボン酸二無水物、カルボニル化合物、ポリイミド前駆体樹脂、及び、ポリイミド
JP2020193272A (ja) ポリイミド前駆体組成物、及びポリイミド膜の製造方法
JP2015134843A (ja) 高透明性ポリイミド樹脂
JPH0565342A (ja) ポリイミド前駆体及びポリイミド硬化物
KR101827801B1 (ko) 아이소헥사이드 다이안하이드라이드 단량체, 이로부터 제조된 폴리이미드 및 이들의 제조방법
WO2019181699A1 (ja) 樹脂、樹脂前駆体及び樹脂前駆体溶液

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20240306

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20240306

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240424