JP2021533162A - プロセス及びワクチン - Google Patents

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Abstract

少なくとも1つの生体分子又はベクターを含む生物学的医薬を製造する方法であって、a)酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に、生体分子又はベクターを製剤化して、酸化防止剤を含む生物学的医薬を製造するステップ、b)生物学的医薬でコンテナを充填するステップ、及びc)コンテナを密封又は部分的に密封するステップを含み、そのうちの1つ以上が過酸化水素を使用して表面滅菌処理された無菌エンクロージャー内で実施される方法、並びに酸化防止剤を含む生物学的医薬、免疫原性組成物、及びワクチン。【選択図】 なし

Description

本発明は、酸化を防止し又は低下させる酸化防止剤の添加を含む、生物学的医薬を製造する方法、及び酸化防止剤を含有する生物学的医薬、及び関連する態様に関する。より具体的には、本発明は、生物学的医薬を製造する方法であって、その期間中に製造機器を表面滅菌処理するのに過酸化水素が使用される方法に関する。
生物学的医薬のコンシステンシー及び保管寿命は、製造プロセス期間中若しくは長期保存期間中の酸化、若しくはプロセスステップ、例えば凍結ステップ、乾燥ステップ、及びフリーズドライ化ステップ等に起因する酸化、又はこれらの組み合わせに起因する酸化により影響を受け得る。酸化は、空気又は光又は化学物質、例えば過酸化水素等への曝露に起因し得る。これは、ポリペプチド、例えばワクチン抗原に特に当てはまるが、おそらくは酸化を受けやすいと考えられる任意の生体分子、更にはベクター、例えば組換えウイルスベクター等にも当てはまる可能性がある。
最も高度に反応性の酸化剤は、ラジカルを含め、生体物質、例えばタンパク質、DNA、RNA、脂質、及び炭水化物等と反応することができる。酸化のすべてが完全にランダムであるわけではなく、一般的に酸化剤の反応性が低いほど、酸化部位は選択的である。例えば、H2O2が、例えばフリーラジカルと比較して非常に反応的というわけではないという事実は、H2O2がその酸化標的においてより選択的であることを意味する。タンパク質及びペプチドは生体系内で酸化剤の標的となり得る。それらは、タンパク質骨格(骨格の断片化を引き起こす可能性がある)、及びアミノ酸側鎖の両方において酸化の標的となり得る。側鎖の酸化は、高次構造変化及び二量体化又は凝集を引き起こす可能性がある。酸化は、したがってタンパク質の損傷を引き起こす可能性があり、またタンパク質の構造及び機能に対して重大な結果を有する可能性がある。システイン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、及びチロシンの側鎖は、その順番で酸化の主要な標的である(Jiら、2009年、下記参照)。イオウ中心が酸化されやすいことから、タンパク質内の酸化にとってシステイン及びメチオニン残基は好ましい部位となる。
蒸気性過酸化水素(VHP)技術が、医薬的処理機器及びクリーンルームを滅菌するのに10年以上にわたり使用されてきた。VHPは、細菌胞子を含む多くの微生物に対して有効である強力な酸化剤であり、また細菌負荷の有意な低下を示す(ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus Stearothermophillus)において最低6対数単位の低下により表現される)。
ワクチン及び医薬品を含むその他の生物学的製剤、特に注射を意図した生物学的医薬品の製造は無菌条件下で実施される。特に最終ステップ、例えば製剤化、充填、及びフリーズドライ化等は、コンテナ、例えば賦形剤を収納する容器及び/又はワクチン製剤若しくはその他の医薬品で充填されたバイアル等の通過(transit)(所定の作業が実施されている間、外部環境から機器を分離するアイソレーターとして知られている無菌エンクロージャーを経由する)と関係する。あらゆる望ましくない汚染を防止するために、アイソレーター内部表面は、VHP技術を使用することにより定期的に滅菌処理される。滅菌処理ステップの後、次にVHPは、1つ以上の通気サイクルを適用することによりアイソレーターから取り除かれる。通気サイクル期間中に、清浄な空気がエンクロージャー内の空気を置換し、任意選択で触媒コンバーターを通じてそれを搬送するが、そこではエンクロージャー内の空気が水と酸素に変換される。清浄な空気は、残留VHP濃度が許容レベルに到達するまで、継続して更新される。
メチオニンの酸化は、多くのタンパク質医薬品における主要な分解経路の1つであり、したがって広範に試験されてきた。過酸化物、例えば過酸化水素等は、タンパク質中のメチオニン酸化の反応速度及び機構を試験するのに幅広く使用されている。
Yinら、2004年、Pharmaceutical Research Vol 21, No. 12, 2377〜2383頁は、治療用タンパク質である顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及びヒト副甲状腺ホルモン(hPTH)断片の非部位特異的酸化、並びに様々な酸化防止剤の効果を考察するための過酸化水素の使用について記載する。
Jiら、2009年, J Pharmaceutical Sciences, Vol 98, No 12, 4485〜4500頁は、モデルタンパク質として副甲状腺ホルモンPTHを、及び酸化剤として過酸化水素を使用して、酸化を防止するための安定化剤のスクリーニングについて記載する。
Lamら、1997年, J Pharmaceutical Sciences, Vol 86, No 11, 1250〜1255頁は、組換えヒト化モノクロナール抗体HER2の温度誘発型のメチオニン酸化を防止するための酸化防止剤の使用について記載する。
Chengら、2016年, J Pharmaceutical Sciences, Vol 105, 1837〜1842頁は、モデルタンパク質を使用して、凍結乾燥中のタンパク質の酸化及び凝集に対する過酸化水素(VHPを含むいくつかの起源に由来して存在し得る)の影響について考察する。
Liら、2003年、米国出願公開第2003/0104996号は、アルブミンが存在せず、且つ酸化防止剤、例えばメチオニン等を安定剤として含めることで安定化したエリスロポエチンを含有する製剤について記載する。
Osterbergら、1999年、米国特許第5,962,650号は、アミノ酸、例えばメチオニン等が共存する第VIII因子の製剤化について記載する。
Hubbardら、2018年、J Pharmaceutical Science and Technology, doi:10.5731/pdajpst.2017.008326 “Vapor Phase Hydrogen Peroxide Sanitization of an Isolator for Aseptic Filling of Monoclonal Antibody Drug Product - Hydrogen Peroxide Uptake and Impact on Protein Quality"は、モノクロナール抗体医薬品の品質に対する残留VHPの影響について考察し、また過酸化水素が医薬品により取り込まれるリスクを低下させるために制御され得るプロセスパラメーターに関する推奨案を提供する。
Hambly及びGross、2009年、Analytical Chemistry, 81, 7235〜7242頁は、H2O2が存在する場合の、フリーズドライ化した後の固体状態におけるタンパク質アポミオグロビンの酸化について記載する。
Luo及びAnderson、2006年及び2008年、Pharm Research 23, 2239〜2253頁、並びにJ Pharm Sciences 97, 3907〜3925頁は、フリーズドライ化した製品(ポリビニルピロリジン)内のシステイン酸化について調査し、そして分子の動き及び酸化について観察した。
本発明者らは、生物学的医薬、特に特定の免疫原性組成物及びワクチンは酸化を受けやすい可能性があり、ひいてはコンシステンシー及び/又は有効性及び/又は保管寿命に影響を及ぼし得ることを見出した。空気、又は製造で使用される試薬又は条件、例えば機器を滅菌するのに使用される過酸化水素への曝露に起因する酸化が関与している可能性がある。多くのワクチン又はその他の生物学的医薬をフリーズドライ化するのに使用される凍結乾燥プロセスも関与している可能性がある、又は例えば、医薬の成分の低温濃縮(cryocentration)を通じて問題を悪化させるおそれがある。
更に、ワクチン製造においてアイソレーターユニットの滅菌処理で使用される過酸化水素は、ワクチン製品に対して影響を有し得ることが判明した。過酸化水素滅菌処理後に、清浄な空気を用いてアイソレーターを入念にパージングしても、痕跡量の過酸化水素が残留し、アイソレーターを通過するバイアルに見出される場合もあり、そして免疫原性組成物又はワクチン製品中に吸収されることも考えられる。この残留過酸化水素は、それが接触することとなる生物学的医薬の成分の酸化を引き起こす可能性があり得る。
したがって、少なくとも1つの生体分子又はベクターを含む生物学的医薬を製造する方法であって、以下のステップ;
(a)酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に、生体分子又はベクターを製剤化して、酸化防止剤を含む生物学的医薬を製造するステップ、
(b)生物学的医薬でコンテナを充填するステップ、及び
(c)コンテナを密封又は部分的に密封するステップ
を含み、それらのうちの1つ以上が過酸化水素を使用して表面滅菌処理された無菌エンクロージャー内で実施される方法が提供される。
本明細書に記載される製造方法により製造される生物学的医薬も提供される。
メチオニンを含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチンも提供される。
酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチンであって、免疫原性組成物がフリーズドライ化されている、免疫原性組成物又はワクチンが更に提供される。
異なる保存条件下、及び酸化防止剤を含む/含まないRSV PreFに関するRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。図1Aは、4℃保存及び37℃で14日目(14D37℃、この約束事は全体を通じて使用される)の0μMスパイクについて取得されたが、これらの保存条件は、過酸化水素に曝露されないサンプルにおいてプロファイルの改変を引き起こさないことを示している。y軸の縦方向の順序(最上部から最下部)は、1676、167.6、83.8、26.8、13.4、及び0である。 異なる保存条件下、及び酸化防止剤を含む/含まないRSV PreFに関するRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。図1Bは、0μMスパイク、13.4μMスパイク、26.8μMスパイク、83.8μMスパイク、167.6μMスパイク、及び1676μMスパイクについて取得されたが、7D4℃保存した後のFC lyoが、スパイキングされた過酸化水素濃度に依存して、プロファイルの改変を示す。y軸の縦方向の順序(最上部から最下部)は、1676、167.6、83.8、26.8、13.4、及び0である。 異なる酸化防止剤が存在する/しない場合でスパイキング後の液体(liquid)及び凍結乾燥された状態(lyophilised)のRSV PreF製剤におけるH2O2濃度の進展を示す図である。各シリーズにおいて、棒グラフはスパイキング済み、スパイキング後4時間、4℃lyo(凍結乾燥された固形物(cake)の再水和後の1.25×希釈係数を考慮して補正済み)を表す(左側から右側)。 H2O2でスパイキング後のモデルタンパク質(サブスタンスP)酸化比を示す図であり、各シリーズにおいて、棒グラフは0、27、及び168μMスパイクを表す(左側から右側)。 H2Oでスパイキング後のRSV PreFの酸化比を示す図であり、各シリーズにおいて、棒グラフは0及び27μMスパイクを表す(左側から右側)。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するN-アセチルシステインの効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図であり、酸化された不純物は、「酸化剤無し」(灰色の線)において最も顕著である。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するグルタチオンの効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。「酸化剤無し」(灰色の線)。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するL-システインの効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。「酸化剤無し」(灰色の線)。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するアスコルビン酸の効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。「酸化剤無し」(灰色の線)。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するL-メチオニンの効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。「酸化剤無し」(灰色の線)。 H2O2でスパイキングしたRSV PreFに対するL-メチオニンの効果を表すRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。「酸化剤無し」(灰色の線)。 クロマトグラム内のメインピークの積分面積とすべてのピーク面積との比として表すRSV PreFの純度分析を示す図であり、テストされた様々な酸化防止剤について、これまでの図において提示されている。各シリーズにおいて(左側から右側):0及び27μMスパイク。 RP-HPLCにより分析されたRSV PreF含有サンプルに関するSDS-PAGEを示す図である(還元条件)。 RP-HPLCにより分析されたRSV PreF含有サンプルに関するSDS-PAGEを示す図である(非還元条件)。 RSV PreFを含有する凍結乾燥された組成物中のH2O2含有量に対するメチオニン添加の効果のグラフ表現を示す図である(5μMスパイクの場合)。 RSV PreFを含有する凍結乾燥された組成物中のH2O2含有量に対するメチオニン添加の効果のグラフ表現を示す図である(44μMスパイクの場合)。 基底酸化レベルを提供するための、実施例2で使用されるRSV preFのRP-HPLCによる純度を表すクロマトグラムを示す図である。 漸増濃度のメチオニンの存在下、H2O2スパイキング後に、4℃及び7D37℃で保存された凍結乾燥された組成物中のRSV preF純度の進展を示す図である。 漸増濃度のメチオニンの存在下、H2O2スパイキング後に、4℃及び7D37℃で保存された凍結乾燥された組成物中のRSV preF純度の進展を示す図である。 漸増濃度のメチオニンの存在下、H2O2スパイキング後に、4℃及び7D37℃で保存された凍結乾燥された組成物中のRSV preF純度の進展を示す図である。 RSV PreFをH2O2スパイキングした際のメチオニン濃度に関連するMet343 Ox比の進展を示す図である。 RSV PreFを含有する組成物中の漸増メチオニン濃度に関連する数学的に予測されたMet343 Ox比を示す図である。 タンパク質Dの経時的Met192酸化に関するマススペクトロメトリー結果を示す図である。 酸化されたタンパク質DのRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。 非還元条件のSDS-PAGEにより取得されたタンパク質D、UspA2、及びPE-PilAに関する抗原プロファイルを示す図である。 メチオニン又はシステインが存在する/しない場合の、タンパク質Dの経時的Met192酸化に関するマススペクトロメトリー結果を示す図である。 メチオニン又はシステインが存在する/しない場合の、酸化されたタンパク質DのRP-HPLCクロマトグラムを示す図である。 メチオニン又はシステインが存在する/しない場合で、H2O2スパイキング後に、非還元条件のSDS-PAGEにより取得されたタンパク質Dに関する抗原プロファイルを示す図である。 H2O2及び5mMメチオニンが存在する/しない場合の、タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物に関する疎水性バリアントHPLCを示す図である。 H2O2及び10mMメチオニンが存在する場合の、タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物に関する疎水性バリアントHPLCを、タンパク質Dピークについて示す図である。 タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物中のタンパク質Dに関する疎水性バリアントRP-HPLCのピーク3の割合(%)を示す図であり、左側パネルは酸化防止剤を含まない非H2O2酸化サンプルであり、右側パネルは異なる濃度でメチオニンを含むH2O2酸化サンプルである。 タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物中のタンパク質Dについて、異なる濃度でメチオニンを含むH2O2酸化サンプルの疎水性バリアントRP-HPLCのピーク3の割合(%)を示す図である。 RP-HPLCによる、ピーク1、2、及び3の面積の合計を示す図である。 37℃において1ヶ月後のタンパク質D M192酸化(%)に関する液体クロマトグラフィー連結型マススペクトロメトリーを示す図である。左側パネルはH2O2無し、右側パネルは、メチオニンが存在する/しない場合において、フリーズドライ化する前に1mL当たり1300ngのH2O2を含む。 図30と同様に、タンパク質DのM192酸化に関する液体クロマトグラフィー連結型マススペクトロメトリーを示す図である。左側は、H2O2又はメチオニンが存在しない場合、及び右側は、メチオニン+フリーズドライ化する前に添加された1mL当たり1300ngのH2O2を含むサンプルを表す。 FACS分析によるアデノウイルス感染性を示す図であり、ベクターは異なる濃度のH2O2でスパイキングされた。 Picogreenアッセイ法によるアデノウイルス完全性(DNA放出)を示す図であり、ベクターは異なる濃度のH2O2でスパイキングされた。 FACS分析によるアデノウイルス感染性を示す図であり、ベクターはH2O2でスパイキングされ、異なる濃度で存在するメチオニンを含む。 Picogreenアッセイ法によるアデノウイルス完全性(DNA放出)を示す図であり、ベクターはH2O2でスパイキングされ、異なる濃度で存在するメチオニンを含む。 H2O2を含む/含まない場合、及び漸増濃度のメチオニンを含む場合についてLC-MSにより測定したアデノウイルスヘキソンメチオニン酸化を示す図である。
配列識別番号の説明
配列番号1 本明細書の実施例において使用されるRSV preF抗原を代表する、立体構造的に制限されたRSV preF抗原ポリペプチド配列。
配列番号2 メチオニンの番号を表示する配列番号1のpreF配列の一部分。
配列番号3 更なるRSV preF配列。
配列番号4 更なるRSV preF配列。
配列番号5 更なるRSV preF配列。
配列番号6 例えば配列番号1、4、及び5の場合と同様の、三量体形成配列として使用され得る代表的コイルドコイル(イソロイシンジッパー)配列。
配列番号7 配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟ポリペプチドのF1鎖。
配列番号8 配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟ポリペプチドのF2鎖。
配列番号9 サブスタンスP(実施例で使用されるモデルペプチド)
配列番号10 H.インフルエンザ(H. influenzae)タンパク質D配列
配列番号11 タンパク質Dのバリアント
配列番号12 タンパク質Dの断片
配列番号13 H.インフルエンザタンパク質Eの断片
配列番号14 タンパク質Eの断片
配列番号15 H.インフルエンザpilA配列
配列番号16 pilA断片
配列番号17 PE-pilA融合タンパク質
配列番号18 PE-pilA融合タンパク質-(マイナス)シグナルペプチド
配列番号19 M.カタラーリス(M. catarrhalis) UspA2タンパク質
配列番号20 UspA2の断片
配列番号21 ChAd155アデノウイルスヘキソンタンパク質IIメジャーカプシドタンパク質
残留H2O2が、過酸化水素を用いて滅菌処理された商業用の製剤化/充填/移送アイソレーター内で製剤化及び充填された免疫原性組成物及びワクチン中に、特にアイソレーターが蒸気性過酸化水素(VHP)技術を使用して滅菌された場合に拡散することを見出した。このような痕跡物は、タンパク質の酸化、特にタンパク質のメチオニン残基の酸化に関与し得ることを見出した。
本発明者らは、マススペクトロメトリーにより、RSV preFはそもそも空気による酸化を本質的に受けやすいこと、酸化はフリーズドライ化プロセスとも関係していること(代表的preFタンパク質中のMet343 Ox、すなわち酸化型メチオニン343のレベルにおいて最大2倍の増加を引き起こす)、及び残留VHPを模倣するように設計された、規定された量の液体過酸化水素を製剤中に導入するステップと関係するH2O2スパイキングは酸化レベルを更に増加させること(同一のpreF内のMet343 Oxレベルにおいて、最大10倍の増加を引き起こす)を明らかにした。更に、その他の生物学的医薬も同様に酸化を受けやすいことを明らかにした。追加の例は、メチオニン192酸化(メチオニン192は配列番号14のメチオニン192に対応する)により測定される、タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物中の無莢膜型(non-typeable)H.インフルエンザ(NTHi)由来のタンパク質D、並びにヘキソンタンパク質上のメチオニン(配列番号21のChAd155ヘキソンタンパク質IIメジャーカプシドタンパク質由来のメチオニン270、299、383、468、及び512に対応する、Met270、299、383、468、及び512と命名された5つのメチオニン)の酸化により、及び生存性のウイルスベクターの完全性や感染性を測定する技術により測定されるような生存性のアデノウイルスベクターである。
無菌エンクロージャー及びアイソレーター技術
生物学的医薬を含む医薬品の医薬製造は無菌環境で行われる。これは、無菌エンクロージャー、例えばクリーンルーム等、又はエンクロージャーと周囲の部屋とを分離して、ワークステーションとクリーンルーム(時にアクセス制限バリアシステム若しくはRABSとして知られている)との間の接触を制限するバリアを備えたクリーンルーム内のワークステーション、又はアイソレーターの形態を採り得る。本明細書に記載されるような無菌エンクロージャーは、例えば有害な細菌、ウイルス、又はその他の微生物による汚染とは無縁、又は実質的に無縁の微生物学的に制御された環境を提供する任意のエンクロージャーであり得る。無菌エンクロージャーは、滅菌と表示される医薬品の製造を目的として無菌処理するための微生物学的に制御された環境を提供する。
用語「アイソレーター」は、環境をより確実に制御するために開発された無菌エンクロージャーと関連するこの文脈において一般的に使用される。アイソレーターはクリーンルーム内に存在し得る。アイソレーターは単一のチャンバーを通常有するユニットであり、1つ以上のピースからなる機器、及び/又は1つ以上のプロセスを取り巻くバリア若しくはエンクロージャーを維持する制御された環境を提供することで、無菌環境がある期間、又はプロセス若しくは一連のプロセスがアイソレーター内で実施される間維持され得る。したがって、アイソレーターは、例えば周辺のクリーンルームや人員であり得る外部環境からその内部を分離することができる。アイソレーターは、時に閉鎖系又は開放系として知られている。閉鎖系は、作業全体を通じて密閉された状態を保つ。開放式アイソレーターシステムは、1つ以上の開口部を通じて、作業する間、システムの内外部において材料が連続的又は半連続的に通過可能なように設計されている。開口部は、外部汚染がアイソレーターチャンバーに進入するのを排除するように工学的に作出される(例えば、アイソレーター内で連続陽圧を使用して)。グローブポートは、オペレーターが、外部とのバリアをなおも維持しながら、したがって内部機器及び製造工程下にある製品と直接接触することを一切なくして、アイソレーター内部でプロセスステップを実施可能なように提供され得る。
1つの実施形態では、無菌エンクロージャーは、滅菌製品製造のための医薬品製造管理及び品質管理基準に対するEUガイドに準拠するグレードB内部環境を提供する能力を有するクリーンルームである。
更なる実施形態では、無菌エンクロージャーは、クリーンルーム内のワークステーションであり、該ワークステーションは、滅菌製品製造のための医薬品製造管理及び品質管理基準に対するEUガイドに準拠するグレードA内部環境を提供する能力を有する。
別の実施形態では、無菌エンクロージャーは、滅菌製品製造のための医薬品製造管理及び品質管理基準に対するEUガイドに準拠するグレードA内部環境を提供する能力を有するアイソレーターである。
医薬品製造を目的として無菌作業するための制御された環境は、ワークステーションを収容するグレードBに該当する従来型のクリーンルーム、PIC/S(医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム)及びGMP(医薬品製造管理及び品質管理基準)に対するECガイドを順守するグレードAに該当する同様のクリーンルームにより主に提供される。より少ない数の制御された環境が、グレードA環境を提供する複数のアイソレーターを収容するグレードD又はそれより上位の複数のクリーンルームにより提供される。
エアロックが、アイソレーター中に材料を導入するのに使用可能である。エアロック内では、コンテナをアイソレーター中に導入する前に、材料が存在するコンテナの表面を滅菌するために滅菌処理が実施され得る。無菌エンクロージャー、例えばアイソレーター等は、生物学的医薬の製造中に様々な作業を実施するのに使用され得る。1つのそのような作業は製品をバイアルに充填することであり、その場合、バイアルは医薬で充填され、そして栓止めされ又は最終ステップ、例えば凍結乾燥等に備えて部分的に栓止めされる。別のそのような作業は、別のピースからなる機器への単純な移送、例えば部分的に栓止めされたバイアルの、医薬がフリーズドライ化される凍結乾燥機への移送である。ワクチン製造の場合、無菌エンクロージャー、例えばアイソレーター等内で実施される作業は、例えば、ワクチン抗原又は抗原(複数)を追加の抗原又は担体と結びつけてコンジュゲート型ワクチンを製造すること、賦形剤と共にワクチン抗原(複数)を製剤化すること、コンテナをバルク最終ワクチン製剤で充填すること、又は個々のバイアルを1つ以上のワクチン用量で充填すること、及び充填されたバイアルを更なるステップ、例えば凍結乾燥(フリーズドライ化)等に輸送することを含み得る。本明細書内の説明に関連する作業は非制限的であり、過酸化水素滅菌処理プロセスからの残留H2O2を含有し得る無菌環境内で行われる生物学的医薬の製造において実施される任意の作業又は作業(複数)の組み合わせであり得ると理解される。
無菌エンクロージャーは、エンクロージャー内で実施される次の作業に対して無菌状態を保証するために、例えば異なる材料について実施される作業(複数)の間で、定期的に汚染除去される必要がある。医薬品製造で一般的に使用される汚染除去剤は過酸化水素であり、これは様々な形態で使用され得る。
蒸気性又は蒸気化した過酸化水素(VHP)
1つの実施形態では、本明細書に記載されるプロセス内の過酸化水素は、蒸気の形態の過酸化水素である蒸気性過酸化水素の形態で使用される。これは、多くの場合ドライフォグと呼ばれる、水中に含まれる過酸化水素からなる小滴の形態であるエアゾール過酸化水素とは異なる。
必要とされるレベルの汚染除去を実現するために、規定された濃度及びVHPに対する曝露時間が採用される。無菌エンクロージャーの滅菌処理に採用されるVHPレベルは、安全性標準の世界的な要求に応じて、ppm v/v (百万分の一)又はmg/m3として一般的に表される。VHPはヒトに有害として等級化され、したがって多くの国々は職業上の曝露制限を課している。作業者が曝露されてもよい最大量の過酸化水素は、国毎に異なる規制に基づき変化し得る、又は国毎に異なる用語で表現され得る。例えば、ベルギーでは、8時間作業シフト全体にわたる平均値として1.0ppm v/v又は1.4mg/m3の許容曝露制限が存在する一方、英国では制限は15分間で2.0ppm v/vである。
VHPを使用する滅菌処理サイクルの終了時に、部屋又はエンクロージャーは新鮮な空気で通気され、そしてスタッフが入室するのを許可される前に、又は別の製造ステージのための更なる材料がアイソレーター中に導入可能となる前に、空気分析が必要とされる。過酸化水素の濃度は、非危険性レベル、通常1ppm v/v以下、例えば0.1ppm v/v、又は0.1〜1.0ppm v/vまで低下させなければならない。
過酸化水素は水に完全に可溶性である。H2O2及び水からなる水溶液を積極的に蒸気化させることによりVHPが生成されるが、また該目的のために特別に設計されたジェネレーターにより生成され得る。好適なジェネレーターは蒸気化プレートを備える。VHPの製造で使用されるH2O2溶液は、一般的に20〜70%若しくは30〜50%、又はより具体的には30〜35%、例えばおよそ35%w/wの濃度であり得る。ジェネレーターは、水性過酸化水素を蒸気化器上部に通過させることによりVHPを生成させ、そして蒸気は、次に無菌エンクロージャーが使用される目的に応じてプログラムされた濃度、一般的に140ppm〜1400ppm (75ppmの濃度は、ヒトの「生命又は健康に対する差し迫った危険」と考えられる)で空気中を循環する。ジェネレーター内では、空気/H2O2/H2O混合物の温度は、それが気体状態であるほどに十分に高い。気体はジェネレーターからアイソレーターエンクロージャー中に搬送され、その表面を滅菌し、無菌状態にする。
VHPが閉鎖されたスペース内を事前に規定された期間循環した後、VHPは、それが例えば触媒コンバーターにより水と酸素に分解され得るジェネレーター経由で再循環することにより除去される。或いは、VHPは外部に通気され得る。エンクロージャー内のVHPのレベルは、VHPの濃度が安全レベル、例えば特定の国、例えばベルギー又は英国等の安全標準に必要とされるレベルに下がるまで、一般的に換気により低下させる。又はVHPは、特定の目的(製造中の生物学的医薬に基づき変化し得る)で必要とされるより低いレベルまで低下させ得る。
1つの実施形態では、滅菌処理後のエンクロージャー内のVHPレベルは、1ppm v/v以下、又は0.5ppm v/v以下、又は0.1ppm v/v以下、或いは0.05ppm v/v〜1.0ppm v/v又は0.1ppm v/v〜1.0ppm v/vに到達するまで抑えられる。
エンクロージャー、例えばアイソレーター等内の目標とするVHP低下レベルは、例えば機器により提供される規定された作動セットポイントを使用することにより達成され得る。
1つの実施形態では、アイソレーターはVHPについて0.1〜1.0ppm v/vの作動セットポイントを有するが、それは、VHPが0.1〜1.0ppm v/v VHPの範囲のセットポイント以下のレベルになったらアイソレーターは使用可能となることを意味する。
別の実施形態では、アイソレーターは、1.0ppm v/v VHP作動セットポイントを有するが、それはVHPが1.0ppm v/v VHP以下のレベルになったらアイソレーターは使用可能となることを意味する。
1つの実施形態では、エンクロージャー内の残留VHPレベルの測定は、視覚的な比色分析チューブ、例えばドレーゲルチューブ(Draeger Tube)等による。
VHPを使用する代表的な滅菌処理サイクルは、下記の段階から構成され得る:
第1段階-プレコンディショニング:表面滅菌処理のための必要開始条件は、プレコンディショニング段階の期間中にシステム内に創出される(溶液が用意され、蒸気化プレートが準備され、任意選択で湿度が調整される)。
第2段階-コンディショニング:所望の汚染除去効果を実現するのに必要とされる気体状態のH2O2の投与量がエンクロージャー内に生成される。
第3段階-滅菌処理:適用用量のVHPが規定された時間にわたり導入される。
第4段階-通気:エンクロージャーにおいて必要とされる残留H2O2濃度(ppm v/v)に到達する。
Figure 2021533162
滅菌処理(第3段階)の後、アイソレーターからVHPを取り除く又は除去するために通気(第4段階)が実施される。通気段階後の許容される残留VHPの最大濃度は、視覚的な比色分析チューブ(ドレーゲルチューブ)により測定される場合、一般的に1ppmである。エンクロージャーの加熱、換気、及びエアコンディショニングが継続する間、VHP濃度は継続して減少する。
エアゾール過酸化水素(aHP)
別の実施形態では、過酸化水素は、水中に溶解した過酸化水素溶液の小滴から構成されるエアゾールの形態で使用される(ドライフォグとしても公知)。aHPは、H2O2溶液をエンクロージャー中にノズル経由で噴霧することによりエンクロージャーに導入され得る。aHPは、VHPよりも古い技術であるが、しかしこの技術及びその他の過酸化水素滅菌処理技術も、本明細書に記載されるプロセスにおいて採用可能であることは明白である。
残留過酸化水素の測定
処理期間中のH2O2の使用に起因して、本明細書に記載される製品又は医薬製剤中に存在する残留H2O2の見込み量を理解するために、模擬的な製造プロセスが実施可能である。最悪条件シナリオの製造プロセスが、製品が水又は代表的なプラセボ溶液に置き換えられるようなプロセスで使用される機器においてシミュレートされ得る。製造プロセスは、H2O2の取込みに関して最も好ましくない条件を使用して、すなわち高残留H2O2濃度及び長処理時間において実施される。その後、製品(水又はプラセボ)内のH2O2の量が、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼAmplex Redアッセイ法を使用して決定される。
そのような方法により製品に見出されるH2O2の量は、次にH2O2スパイキング実験(酸化に対する製品の感受性を評価するために、H2O2が規定された濃度で製品に添加される)のための基準として使用可能である。
代替的又は付加的に、滅菌処理サイクルで採用された過酸化水素、例えばVHP又はaHPに起因して、また接触した機器に由来して医薬製剤中に存在し得る潜在的残留H2O2は、最悪条件シナリオに基づき数学的に計算可能である。実際、医薬製剤内の最終H2O2含有量に対する異なる寄与を数学的に定量化し、それを説明するために、予備的な実験が実施された場合、このような数学的アルゴリズムが製品中のH2O2量を推定するのに使用可能である。
VHPプロセス由来の残留H2O2は、エンクロージャー内に蒸気の形態で最初存在し、そして製剤との空気接触が存在するとき、医薬製剤中に拡散し、ひとたび吸収されるとH2O2溶液となる。残留H2O2は、医薬品製造で使用される材料及び機器上に液体形態で存在することも可能であり、ここから、空気がエンクロージャー内を循環する際に気体状態で、又は直接的な接触により、製剤中に移動することができる。例えば、いくつかの材料、例えばシリコン等が、H2O2に対して浸透性であることが公知である。
予備的実験及び得られた数学的計算では、可変因子、例えばエンクロージャー内のコンテナ滞留時間、機器のコンポーネント材料、曝露された製剤の表面積、充填容積、気相状態の残留H2O2量、バイアルの栓止め又は部分的な栓止め等を考慮すべきである。
様々な製剤及びプロセスについて計算を行うための基準を設けるために、数学的アルゴリズムが医薬製剤内の最終H2O2量に対するこれらの寄与に関して開発され得る。例えば、Vuylstekeら、2019年、J. Pharmaceutical Sciences、1〜7頁: “The Diffusion of Hydrogen Peroxide Into the Liquid Product During Filling Operations Inside Vaporous Hydrogen Peroxide Sterilized Isolators Can Be Predicted by a Mechanistic Model"を参照。
酸化防止剤
本明細書に記載されるプロセス又は組成物で使用される酸化防止剤は、プロセス又は組成物内の生体分子又は生物学的ベクターの酸化を防止する又は低下させるために、製剤に添加可能である医薬的に許容される試薬である。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、ポリペプチド、例えばワクチン抗原等の酸化を防止する又は低下させる。ポリペプチド(例えばワクチン抗原等)上のメチオニン残基は、酸化、例えば過酸化水素の存在に起因する酸化、又は周囲空気と単に接触することによる酸化、又はプロセス(例えば凍結乾燥等)期間中の酸化の影響を受けやすいと考えられる。過酸化水素は、生物学的医薬の製造で使用される機器の滅菌処理に由来して残存する可能性があり(残留過酸化水素)、そして製剤中に吸収又は拡散される。製剤は空気と接触する可能性があり、及び/又は例えばプロセス(例えば製剤がフリーズドライ化されて固体の製品(凍結乾燥された固形物)を生成する凍結乾燥等)の期間中に酸化の影響をより受けやすい可能性がある。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、ポリペプチド上のメチオニン基の酸化を低下させる。特別な実施形態では、酸化防止剤は、過酸化水素が存在しない場合の酸化レベル以下のレベルまでメチオニン基の酸化を低下させる。本明細書に記載される複数の実施形態では、ポリペプチドの酸化は、当技術分野において公知の方法、例えば本明細書の実施例に記載される方法等により観察可能又は測定可能である。タンパク質の酸化は、例えばマススペクトロメトリー、RP-HPLC、及びSDS-PAGEによって観察又は測定可能である。1つの実施形態では、これら3法のうちの2法、例えばマススペクトロメトリー及びRP-HPLCが、酸化のレベルを観察又は測定するのに使用される。別の実施形態では、3法すべてが使用される。本明細書に記載される更なる実施形態では、ウイルスベクター表面上のタンパク質の酸化が、例えばマススペクトロメトリーにより観察可能又は測定可能である。
プロセス及び組成物、例えば本明細書に記載される免疫原性組成物等で使用される医薬的に許容される酸化防止剤の例として、チオール含有賦形剤、例えばN-アセチルシステイン、L-システイン、グルタチオン、モノチオグリセロール等、及びチオエーテル含有賦形剤、例えばL-メチオニン又はD-メチオニンの形態のメチオニン等、及びアスコルビン酸が挙げられる。アミノ酸酸化防止剤、例えばメチオニン等には、メチオニン又はその他のアミノ酸又はアミノ酸(複数)からなる単量体若しくは二量体若しくは三量体の形態、又は更なる多量体の形態が含まれる。多量体アミノ酸は、例えば、全部で最大3若しくは4若しくは5若しくは6若しくは7若しくは8個のアミノ酸を含有し得るが、そのすべてが同一、例えばすべてメチオニン又はすべてシステインであり得る、或いは、例えば少なくとも1つのメチオニン若しくはシステインを含む、又は主として例えばメチオニン若しくはシステインを含む、又は主としてメチオニンとシステインとの混合物を含むアミノ酸の混合物であり得る。メチオニン若しくはシステインの短鎖ペプチド、又はメチオニンの混合物の短鎖ペプチドが含まれる。そのようなアミノ酸酸化防止剤は、ポリペプチドの酸化を防止する又は低下させることを目的とした添加剤である。
特定の製剤では、メチオニンは酸化防止剤として特に有効である。特定の製剤では、RP-HPLC又はLC-MSにより測定されるように、メチオニンは抗原の純度に悪影響を及ぼさないので、酸化防止剤として更に有効である。
1つの実施形態では、酸化防止剤はL-メチオニンである。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、生体分子又はベクターの純度に悪影響を及ぼすことなく、生体分子又はベクターの酸化に対して保護を提供する酸化防止剤であり、例えば酸化防止剤は、RP-HPLC及び/又はLC-MSにより検出可能な分解生成物を生じさせない。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、ベクターの感染性及び/又は完全性により示される又は測定されるように、生存性のベクター、例えばウイルスベクター等、例えばアデノウイルスベクター、例えばChAd155又はChAd157等の酸化に対して保護を提供する酸化防止剤である。特別な実施形態では、酸化防止剤は、ベクターの酸化に対して、或いは例えばベクターにより宿主細胞中に導入された導入遺伝子の発現を測定するためのFACS分析により、及び/又はベクターからのDNA放出を測定するためのDNA定量アッセイ法、例えばPicoGreenアッセイ法により観察又は測定されるようなベクターの完全性又は感染性に対する酸化の効果に対して保護を提供する。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、最終液体製剤中に0.05mM〜50mM、又は0.1〜20mM若しくは0.1〜15mM若しくは0.5〜15mM若しくは0.5〜12mM、例えばおよそ10mM若しくはおよそ5mM、又は0.1mM〜10mM若しくは0.1〜5mM若しくは0.5mM〜5mM、又はおよそ1mMの濃度で存在する。最終液体製剤とは、使用の準備ができた液体製剤(したがって、必要とされる成分のすべてを含有する)、又はフリーズドライ化し、後に使用前に水溶液を用いて復元する準備ができた液体製剤(この場合、追加の成分、例えばアジュバント等が復元中に添加され得る)を指す。最終液体製剤が投与前に1つ以上の更なる製剤と組み合わせ可能であることは除外されない。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、最終液体製剤中に最大20mMで、又は最終液体製剤中に最大15mM若しくは最大12mM若しくは最大10mM若しくは最大8mM若しくは最大7mM若しくは最大6mM若しくは最大5mMの濃度で存在する。
1つの実施形態では、酸化防止剤は、0.1mM以上又は0.5mM以上の濃度で存在する。
1つの実施形態では、酸化防止剤は天然に存在するアミノ酸、又は天然に存在する酸化防止剤である。特別な実施形態では、アミノ酸又は天然に存在する酸化防止剤は、天然に存在するアミノ酸、又はL-メチオニン、L-システイン、及びグルタチオンから選択される天然に存在する酸化防止剤である。別の実施形態では、酸化防止剤はL-メチオニン又はL-システインである。
1つの実施形態では、酸化防止剤はメチオニン(例えば、L-メチオニン)である。特別な実施形態では、酸化防止剤は、最終液体製剤中に0.05mM〜50mM、又は0.1〜20mM若しくは0.1〜15mM若しくは0.5〜15mM若しくは0.5〜12mM、例えばおよそ10mM若しくはおよそ5mM、又は0.1mM〜10mM若しくは0.1〜5mM若しくは0.5mM〜5mM、又はおよそ1mMの濃度で存在するメチオニンである(例えば、L-メチオニン)。
1つの実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)は、最終液体製剤中に最大20mM、又は最終液体製剤中に最大15mM若しくは最大12mM若しくは最大10mM若しくは最大8mM若しくは最大7mM若しくは最大6mM若しくは最大5mMの濃度で存在する。
1つの実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)は、0.1mM以上又は0.5mM以上の濃度で存在する。
必要とされる酸化防止剤の量は様々なパラメーターに依存する。一連の投与において所定の酸化防止剤の有効性を明確にし、これにより最適用量を選択するために、用量範囲探索試験が生体分子又はベクター毎に実施される。関連するパラメーターとして、例えば、
-機器の構成、滅菌処理以降の経過時間、及び機器の使用と関係する残留H2O2の量、H2O2閾値、例えば1ppm又は異なる値(これは、酸化防止剤をテストするのに必要とされるスパイキングレベルを決定するのに役立つ)、
-H2O2又は空気/プロセスステップによる酸化に対する特定の生体分子又はベクターの感受性、
-生体分子又はベクターの基底酸化レベル、
-特定の生体分子又はベクターに関する最大許容酸化レベル
が挙げられる。
生物学的医薬
生物学的医薬は生体成分を含有する医薬製剤である。それは無菌条件下で製造される必要があり、そして製造プロセス期間中に酸化を受けやすいと考えられる生体成分を有する、ワクチンや免疫原性組成物を含む任意の医薬製剤であり得る。生体成分は一般的に生物学的医薬の有効成分(複数可)であるが、但し必ずしもそうではない。
1つの実施形態では、生物学的医薬は注射による投与が意図されている。1つの実施形態では、本明細書に記載されるプロセスは、滅菌された注射可能な製剤、例えばヒトで使用される注射可能な製剤、例えば注射により投与するための免疫原性組成物又はワクチン等の製造を目的とする。
生物学的医薬は製剤とも呼ばれ得ること、及び単一コンテナ内のバルク製品、又は単回投与若しくは多数回投与の形態を採り得ることは明白である。最終医薬は、液体又は固体(例えば、凍結乾燥された)であり得るが、また酸化防止剤に付加して追加の医薬的に許容される賦形剤を含み得る。医薬はアジュバントを更に含み得る。
凍結乾燥
本明細書に記載される医薬及び製剤は液体又は固体の形態であり得る。
1つの実施形態では、生物学的医薬は液体形態である。
別の実施形態では、生物学的医薬は固体形態であり、例えばそれは、例えばワクチン投与を目的として復元するためにフリーズドライ化され得る。フリーズドライ化は、三重点(固相、液相、及び気相の物質が共存し得る最低温度)より低い温度での製剤の凍結、圧力降下、並びに一次乾燥ステップでの昇華による氷の除去、及び第2乾燥ステップにおける残留水の除去と関係する低温脱水プロセスである。温度を上げ下げすることにより氷結晶のサイズを増加させるために、乾燥前に、アニーリングが任意選択で使用され得る。アニーリングは、製剤のガラス転移温度(Tg')より高い温度に維持し、それを所定時間維持した後、Tg'より低い温度まで下げることにより実施される。制御された核生成も氷結晶のサイズを増加させるのに使用可能であり、マトリックスに対して同一の効果を有する。凍結乾燥はワクチン製造で一般的に使用される。
1つの実施形態では、凍結乾燥は下記のステップ、
-凍結するステップ(三重点未満)、
-任意選択でアニーリングステップ又は制御された核生成ステップ、
-一次乾燥ステップ、
-二次乾燥ステップ
を使用して実施される。
凍結乾燥は、低温濃縮(cryoconcentration)として知られているプロセスにおいて、製剤の成分の濃度を増加させる。その結果、本明細書に記載される残留過酸化水素の濃度が上昇し、過酸化水素の有害な効果、例えば生体成分、例えば製剤中のポリペプチドの酸化等を引き起こす又は顕在化させるおそれがある。
成分、例えば本明細書に記載される凍結乾燥された製剤中の酸化防止剤等の濃度(量)は、凍結乾燥前の液体製剤と関連して一般的に表現又は規定される。
生体分子及びベクター
生体分子として、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、脂質、及び任意のその他の成分又は生物の産物、例えば抗体、ホルモン等が挙げられる。これらの生体分子は、生物学的起源に由来し、それにおいて合成され若しくはそれから抽出され得る、又は生体分子は、生物学的産物、例えばペプチドを再現するために化学的に合成され得る。生体分子には、1つ以上の異なるウイルス及び細菌胞子に由来する1つ以上のポリペプチドを含むウイルス様粒子が更に含まれる。
生物学的ベクターには、細菌ベクター、酵母菌ベクター、及びウイルスベクター、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス等が含まれる。ベクターには、レプリコン、例えばプラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)等が更に含まれ得る。ベクターは、宿主細胞中に発現される1つ以上の組換えヌクレオチド配列と作動的に結合した1つ以上の発現制御配列を含む組換えベクターであり得るが、その場合該組換えヌクレオチド配列又は配列(複数)は抗原又は抗原(複数)をコードする。
本教示が適用され得る生体分子及びベクターは広範囲にわたることは、当業者にとって明白である。本明細書に記載されるプロセスは、任意の生物学的有効成分、例えば酸化、特に過酸化水素の存在に起因する酸化により、有効性が低下しやすい、又は純度が低下しやすい、又は保管寿命が低下しやすい生体分子又はベクター等におそらくは適用可能である。
1つの実施形態では、生体分子又はベクターは抗原である。
1つの実施形態では、抗原はRSV抗原、例えばRSV融合前(prefusion)F等である。
1つの実施形態では、抗原は水痘帯状疱疹(Varicella Zoster)ウイルス由来、例えばgE等である。
1つの実施形態では、抗原はH.インフルエンザ由来である。特別な実施形態では、抗原は、タンパク質D(タンパク質Dのバリアント、例えば配列番号11等を含む)である。
1つの実施形態では、抗原はアデノウイルスベクターである。特別な実施形態では、アデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルスベクター、例えばChAd155又はChAd157、例えばChAd155-RSV(例えば本明細書の実施例に記載されるようなもの)である。
主に、但し非排他的に、本発明は免疫原性組成物及びワクチンに関する。特に、本発明は注射により投与するための医薬に関する。1つの実施形態では、生体分子又はベクターは、ヒト又は動物に感染する微生物に由来する。別の実施形態では、生体分子又はベクターは、ヒト又は動物に感染する微生物に由来するタンパク質又は糖タンパク質抗原である。1つの実施形態では、生体分子又はベクターは抗体ではない又は抗体に由来しない。1つの実施形態では、生体分子又はベクターはサイトカインではない。1つの実施形態では、生体分子又はベクターはホルモンではない。1つの実施形態では、生体分子又はベクターはヒト起源ではない。
ワクチン及び免疫原性組成物
本明細書に提示される免疫原性組成物には、メチオニンを含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物が含まれ、同組成物は、フリーズドライ化されてもよく、またされなくてもよい。
酸化防止剤、例えばメチオニンを含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原を含む免疫原性組成物(この場合、免疫原性組成物はフリーズドライ化されている)が更に提供される。
1つの実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)は、液体製剤において0.05〜50mM、又は0.1〜5mM、又は約1.0mMでそのような免疫原性組成物中に存在する。
特別な実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)が、最終液体製剤中に0.05mM〜50mMで、又は0.1〜20mM若しくは0.1〜15mM若しくは0.5〜15mM若しくは0.5〜12mMで、例えばおよそ10mM若しくはおよそ5mM、又は0.1mM〜10mM若しくは0.1〜5mM若しくは0.5mM〜5mM、又はおよそ1mMの濃度で存在する。
1つの実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)が、最終液体製剤中に最大20mMの濃度で、又は最終液体製剤中に最大15mM若しくは最大12mM若しくは最大10mM若しくは最大8mM若しくは最大7mM若しくは最大6mM若しくは最大5mMの濃度で存在する。
1つの実施形態では、メチオニン(例えば、L-メチオニン)が、0.1mM以上又は0.5mM以上の濃度で存在する。
1つの実施形態では、免疫原性組成物は本明細書に記載されるようなRSV融合前Fタンパク質を含む。
1つの実施形態では、免疫原性組成物は、水痘帯状疱疹ウイルス由来の抗原、例えばgE等を含む。
1つの実施形態では、免疫原性組成物はH.インフルエンザ由来の抗原を含む。特別な実施形態では、抗原は、タンパク質D(タンパク質Dのバリアント、例えば配列番号11等を含む)である。
1つの実施形態では、免疫原性組成物はアデノウイルスベクターを含む。特別な実施形態では、アデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルスベクター、例えばChAd155又はChAd157等、例えばChAd155-RSV(例えば本明細書の実施例において記載されるようなもの)である。
免疫原性組成物は、哺乳動物、好適にはヒトに送達された後、抗原に対して免疫応答、例えば体液性応答(例えば、抗体)及び/又は細胞媒介性応答(例えば、細胞傷害性T細胞)を誘発する能力を有する組成物である。
ワクチンとして、予防ワクチン及び治療ワクチンが挙げられる。ワクチンとして、任意選択でアジュバントと共に1つ以上の抗原を含むサブユニットワクチン、生ワクチン、例えば生存性のウイルスワクチン、及びベクター、例えばウイルスベクター等によって送達されるワクチン抗原が挙げられる。
本発明の「ワクチン」又は「ワクチン組成物」又は「ワクチン製剤」に関係する本明細書における実施形態は、本発明の「免疫原性組成物」に関係する実施形態にも適用可能であり、その逆も成り立つ。
ワクチン及び免疫原性組成物はアジュバントを更に含み得る。「アジュバント」とは、本明細書で使用する場合、免疫原に対する免疫応答を強化する組成物を意味する。そのようなアジュバントの例として、無機アジュバント(例えば、無機金属塩、例えばリン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム等)、有機アジュバント(例えばサポニン、例えばQS21又はスクアレン等)、水中油型エマルジョン(例えば、MF59若しくはAS03、いずれもスクアレンを含有する、又はスクアレンを含有する類似した水中油型エマルジョン)、サポニンオイルベースアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-2、IL-7、IL-12、IL-18、GM-CFS、及びINF-γ)、粒子状アジュバント(例えば、免疫刺激性複合体(immuno-stimulatory complex)(ISCOM)、リポソーム、又は生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えば、モノホスホリルリピドA、例えば3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、又はムラミルペプチド等)、合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチド類似体、又は合成リピドA)、合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えばポリアルギニン又はポリリジン)、及び非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドが挙げられるが、但しこれらに限定されない。
1つの好適なアジュバントは、モノホスホリルリピドA(MPL)、特に3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。化学的には、それは、3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAと4、5、又は6アシル化鎖との混合物として多くの場合供給される。それは、英国特許第2122204B号で教示される方法により精製及び調製され得るが、同参考文献は、ジホスホリルリピドA、及びその3-O-デアシル化されたバリアントの調製についても開示する。その他の精製された合成リポ多糖類が記載されている(米国特許第6,005,099号、及び欧州特許第0 729 473 B1号; Hilgersら、1986年、Int.Arch.Allergy.lmmunol., 79(4):392〜6頁; Hilgersら、1987年、Immunology, 60(1):141〜6頁;及び欧州特許第0 549 074 B1 I号)。
またサポニンも、好適なアジュバントである(Lacaille-Dubois, M及びWagner H、A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363〜386頁(1996年)を参照)。例えば、サポニンQuil A (南アメリカの木キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)、及びその分画が、米国特許第5,057,540号、及びKensil、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst, 1996年, 12:1〜55頁;及び欧州特許0 362 279 B1号に記載されている。Quil Aの精製された分画は、免疫賦活薬、例えばQS21及びQS17等としても公知であり、その製造方法は、米国特許第5,057,540号及び欧州特許第0 362 279 B1号に開示されている。これらの参考文献には、QS7(QuiL-Aの非溶血性分画)についても記載されている。QS21の使用は、Kensilら(1991年, J. Immunology, 146: 431〜437頁)に更に記載されている。QS21とポリソルベート又はシクロデキストリンとの組み合わせも公知である(国際公開第99/10008号)。QuilAの分画、例えばQS21及びQS7等を含む粒子状アジュバント系が、国際公開第96/33739号及び国際公開第96/11711号に記載されている。
別のアジュバントは、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含有する免疫賦活性オリゴヌクレオチドである(Krieg, Nature 374:546 (1995))。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略号である。CpGは、全身経路及び粘膜経路の両経路により投与される場合のアジュバントとして公知である(国際公開第96/02555号、欧州特許第468520号、Davisら、J.Immunol, 1998年, 160:870〜876頁; McCluskie and Davis, J.Immunol., 1998年, 161 :4463〜6頁)。CpGは、ワクチン中に製剤化され場合、遊離抗原と共に自由溶液中に投与され得る(国際公開第96/02555号)、又は抗原に共有結合され得る(国際公開第98/16247号)、又は担体、例えば水酸化アルミニウム等と共に製剤化され得る(Brazolot-Millanら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1998年, 95:15553〜8頁)。
アジュバント、例えば上記アジュバント等は、担体、例えばリポソーム、水中油エマルジョン(例えばMF59又はAS03、又はスクアレンを含有する水中油エマルジョン)、及び/又は金属塩(アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム等を含む)と共に製剤化され得る。例えば、3D-MPLは水酸化アルミニウム(欧州特許第0 689 454号)又は水中油エマルジョン(国際公開第95/17210号)と共に製剤化することができ、QS21はコレステロール含有リポソーム(国際公開第96/33739号)、水中油エマルジョン(国際公開第95/17210号)、又はミョウバン(国際公開第98/15287号)と共に製剤化することができ、CpGはミョウバン(Brazolot-Millan、前出)と共に、又はその他のカチオン担体と共に製剤化することができる。
アジュバントの組み合わせ、特にモノホスホリルリピドA及びサポニン誘導体の組み合わせ(例えば、国際公開第94/00153号;同第95/17210号;同第96/33739号;同第98/56414号;同第99/12565号;同第99/11241号を参照)、より具体的には、国際公開第94/00153号に開示されるようなQS21と3D-MPLとの組み合わせ、又は国際公開第96/33739号に開示されるように、QS21がコレステロール含有リポソーム(DQ)中でクエンチされる組成物が本発明で利用され得る。或いは、CpG+サポニン(例えばQS21等)の組み合わせは、本発明での使用に適するアジュバントである。水中油エマルジョン中にQS21、3D-MPL及びトコフェロールを含む強力なアジュバント製剤が、国際公開第95/17210号に記載されており、本発明で使用される別の製剤である。サポニンアジュバントがリポソーム中で製剤化され、そして免疫賦活性オリゴヌクレオチドと併用され得る。したがって、好適なアジュバント系として、例えばモノホスホリルリピドA、好ましくは3D-MPLとアルミニウム塩との組み合わせ(例えば、国際公開第00/23105号に記載されるような)が挙げられる。更なる代表的アジュバントは、QS21及び/又はMPL及び/又はCpGを含む。QS21は、国際公開第96/33739号に開示されるように、コレステロール含有リポソーム中でクエンチされ得る。
AS01は、MPL(3-O-デアシル-4'-モノホスホリルリピドA)、QS21((キラヤ、フラクション21) Antigenics社、New York、NY、米国)、及びリポソームを含有するアジュバント系である。AS01Bは、MPL、QS21、及びリポソームを含有するアジュバント系である(50μg MPL及び50μg QS21)。AS01Eは、MPL、QS21、及びリポソームを含有するアジュバント系である(25μg MPL及び25μg QS21)。1つの実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンはAS01を含む。別の実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンはAS01B又はAS01Eを含む。特別な実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンはAS01Eを含む。
抗原
用語「抗原」は当業者にとって周知である。抗原は、ヒト又は動物において免疫応答を惹起する能力を有するタンパク質、多糖類、ペプチド、核酸、タンパク質-多糖類コンジュゲート、分子又はハプテンであり得る。抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、プロトゾア、又は菌類から得られる分子に由来し、それと相同であり得る、又はそれを模倣するように合成され得る。代替的実施形態では、抗原は、腫瘍細胞又は新生物から得られる分子に由来し、それと相同であり、又はそれを模倣するように合成される。更なる実施形態では、抗原は、アレルギー、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、肥満、及びニコチン依存症と関わる物質から得られる分子に由来し、それと相同であり、又はそれを模倣するように合成される。
抗原は酸化を受けやすい任意の抗原であり得るが、特にその場合、酸化は有効性又は純度又は保管寿命の低下を引き起こすおそれがある。1つの実施形態では、抗原は生体分子、例えば酸化されやすいアミノ酸残基、例えばメチオニン残基を含有するポリペプチド等である。1つの実施形態では、抗原はタンパク質又は糖タンパク質である。
抗原は、例えばヒト及びヒト以外の脊椎動物に感染するウイルス、細菌、菌類、寄生的微生物、若しくは多細胞寄生虫を含むヒト若しくはヒト以外の病原体、又はがん細胞若しくは腫瘍細胞に由来し得る。
RSV抗原
1つの実施形態では、抗原はヒト呼吸系発疹ウイルス(RSV)ポリペプチド抗原である。特定の実施形態では、ポリペプチド抗原は、RSV由来のFタンパク質ポリペプチド抗原、例えば立体構造的に制限されたFポリペプチド抗原である。立体構造的に制限されたFタンパク質は、融合前(PreF)及び融合後(PostF)立体構造の両方について記載されている。そのような立体構造的に制限されたFタンパク質は、工学的に作出されたRSV Fタンパク質エクトドメインを一般的に含む。Fタンパク質エクトドメインポリペプチドは、RSV Fタンパク質の細胞外ドメインの全部又は一部を含むRSV Fタンパク質の一部分であり、また機能的膜貫通ドメインを欠いており(例えば、欠損又は置換により)、例えば細胞培養物中に可溶性(膜に非結合性)の形態で発現され得る。
融合前の立体構造において立体構造的に制限された代表的Fタンパク質抗原は、当技術分野において記載されており、また例えば米国特許第8,563,002号(国際公開第2009079796号);米国公開特許許出願第2012/0093847号(国際公開第2010/149745号);米国特許第2011/0305727号(国際公開第2011/008974号);米国特許第2014/0141037号、国際公開第2012/158613号、国際公開第2014/160463号(DS-Cav1として知られているpreFを含有する)、国際公開第2017/109629号及び国際公開第2018/109220号に詳細に開示されており、そのそれぞれは、融合前Fポリペプチド(及び核酸)、及びその製造方法を例証する目的で本明細書において参照により組み込まれている。一般的に、抗原は、三量体ポリペプチドの形態である。融合前立体構造内のFタンパク質の例を提供する追加の公開資料として、McLellanら、Science, Vol. 340: 1113〜1117頁; McLellanら、Science, Vol 342: 592〜598頁, Rigterら、PLOS One, Vol. 8: e71072、及びKrarupら、Nat. Commun. 6:8143 doi: 10.1038/ncomms9143が挙げられ、そのそれぞれも、本明細書で開示されるワクチン製剤の文脈においてやはり使用可能である。
例えば、融合前立体構造において安定化しているFタンパク質ポリペプチドには、Fタンパク質の融合前立体構造を安定化する少なくとも1つの改変を含むFタンパク質のエクトドメイン(例えば、可溶性Fタンパク質ポリペプチド)が一般的に含まれる。例えば、改変は、三量体形成ドメインの付加(一般的にC末端に対する)、フューリン切断部位(複数)のうちの1つ以上の欠損(アミノ酸105〜109付近及び133〜136付近における)、pep27ドメインの欠損、疎水性ドメイン(例えば、HRA及び/又はHRB)における親水性アミノ酸の置換又は付加から選択され得る。1つの実施形態では、立体構造的に制限されたPreF抗原は、中間に位置するフューリン切断部位を有さないRSV Fタンパク質ポリペプチドのF2ドメイン(例えば、アミノ酸1〜105)及びF1ドメイン(例えば、アミノ酸137〜516)を含み、その場合、該ポリペプチドは、F1ドメインに対してC末端側に位置する異種三量体形成ドメインを更に含む。任意選択で、PreF抗原は、グリコシル化を変化させる(例えば、グリコシル化を増加させる)改変、例えばRSV Fタンパク質のアミノ酸500〜502付近に対応する位置における1つ以上のアミノ酸の置換等も含む。オリゴマー化配列が存在する場合、それは好ましくは三量体形成配列である。好適なオリゴマー化配列は当技術分野において周知されており、また例えば酵母菌GCN4ロイシンジッパータンパク質のコイルドコイル、バクテリオファージT4フィブリチン(fibritin)由来の三量体形成配列(「フォルドン(foldon)」)、及びインフルエンザHAの三量体ドメインを含む。付加的又は代替的に、融合前立体構造において立体構造的に制限されたFポリペプチドは、相互に近接しており、そして融合前RSV Fポリペプチドを安定化するジスルフィド結合を形成する少なくとも2つの導入されたシステイン残基を含み得る。例えば、2つのシステインは互いに約10Å以内であり得る。例えば、システインは、位置165及び位置296又は位置155及び位置290に導入され得る。代表的PreF抗原は配列番号1により表される。
本明細書の実施例に記載され、配列番号1に基づくpreFは、7つあるメチオニンのうち、優先的に酸化される3つのメチオニン(Met317、Met343、Met74)を有することが公知である。メチオニンのナンバリングは配列番号2に基づき、またMet317、Met343、及びMet74を含むメチオニンの位置を、配列番号1の一部分である配列番号2に示す。これら3つのメチオニンについて、酸化の程度はMet317 > Met343 > Met74の順番で観察される。Met343はトリプシン消化した後、唯一つのペプチド(IMTSKペプチド)上に分布しているので、定量化するのに最もわかりやすいものとして本明細書の実施例において選択された。H2O2でスパイキングしたこのpreFを含むワクチンにおいて、3つのメチオニン酸化比の間で相関関係が認められ、Met343とMet317、及びMet343とMet74の酸化比の間でそれぞれ±3倍及び±0.5倍の関連性が明らかとなった。
配列番号1
Figure 2021533162
配列番号2
Figure 2021533162
本明細書で使用され得る更なるRSV preF分子は、下記配列番号3の前駆体配列を有する。処理されたタンパク質のF1及びF2鎖は、下記の配列番号7及び8に記載される通りである。
配列番号3
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号3の下線付き太字部分は、三量体形成を実現するためにRSV Fエクトドメインに付加されたバクテリオファージT4フィブリチン(「フォルドン」)ドメインである。
使用され得る別のRSV preF配列は下記配列番号4を有する。これは配列番号6として国際公開第2010/149745号に見出され得る。
配列番号4
Figure 2021533162
使用され得る更なるRSV preF配列は下記配列番号5を有する。
配列番号5
Figure 2021533162
配列番号1、4、及び5に見出される代表的コイルドコイル(イソロイシンジッパー)配列は、下記配列番号6として提示される。
配列番号6
Figure 2021533162
配列番号7(配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟したポリペプチドのF1鎖)
Figure 2021533162
配列番号8(配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟したポリペプチドのF2鎖)
Figure 2021533162
VZV抗原及びその他の起源に由来する抗原
別の実施形態では、抗原はプラスモジウム(plasmodium)種(例えば、熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)等)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis) (TB)等)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、モラクセラ(Moraxella)種(例えば、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)等)、又は無莢膜型H.インフルエンザ(ntHi)に由来する。
1つの実施形態では、抗原は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に由来する。本発明で使用されるVZV抗原は、任意の適するVZV抗原又はその免疫原性誘導体、好適には精製されたVZV抗原、例えばVZV糖タンパク質gE (gp1としても知られている)又はその免疫原性誘導体であり得る。
1つの実施形態では、VZV抗原は、VZV糖タンパク質gE (gp1としても知られている)又は本明細書の免疫原性誘導体である。野生型又は完全長gEタンパク質は、シグナルペプチド、タンパク質の主要部分、疎水性アンカー領域(残基546〜558)、及びC末端テール部を含む623個のアミノ酸から構成される。1つの態様では、gEのC末端トランケート(トランケートされたgE又はgEトランケートとも呼ばれる)が使用されるが、その場合、トランケーションによってカルボキシ末端の総アミノ酸残基の4〜20パーセントが取り除かれる。更なる態様では、トランケートされたgEはカルボキシ末端アンカー領域を欠く(好適には、野生型配列のアミノ酸547〜623付近)。
gE抗原、そのアンカー領域を欠く誘導体(やはり免疫原性誘導体である)、及びその製造は、欧州特許第0405867号及び同号中の参考文献に記載されている[Vafai A.、Antibody binding sites on Truncated forms of varicalla-zoster Virus gpI(gE) glycoprotein, vaccine 1994年 12:1265〜9頁も参照)。また欧州特許第192902号も、gE及びその製造について記載する。トランケートされたgEは、Haumontら、Virus Research (1996年) vol 40, 199〜204頁によっても記載されており、本明細書において参照により完全に組み込まれている。本発明に基づく使用に適するアジュバント化されたVZV gE組成物、すなわちQS-21、3D-MPL、及びコレステロールを更に含有するリポソームを含むアジュバントと組み合わされたカルボキシ末端トランケートVZV gEが、国際公開第2006/094756号に記載されている。Leroux-Roels I.ら(J. Infect. Dis. 2012,206: 1280〜1290頁)は、アジュバント化されたVZVのトランケートされたgEサブユニットワクチンを評価する第I相/II臨床トライアルについて報告した。
HIV抗原
別の実施形態では、抗原はHIVに由来する。抗原は、HIVタンパク質、例えばHIVエンベロープタンパク質等であり得る。例えば、抗原は、HIVエンベロープgp120ポリペプチド若しくはその免疫原性断片、又は例えばHIVの異なるクレード若しくは菌株に由来する2つ若しくはそれより多くの異なるHIVエンベロープgp120ポリペプチド抗原若しくは免疫原性断片の組み合わせであり得る。その他の好適なHIV抗原として、Nef、Gag、及びPol HIVタンパク質、並びにその免疫原性断片が挙げられる。HIV抗原の組み合わせが存在し得る。
ヘモフィルス インフルエンザ(Haemophilus influenzae)抗原
別の実施形態では、抗原は、例えばフィンブリンタンパク質[(米国特許第5,766,608号-オハイオ州立研究財団(Ohio State Research Foundation))]及びそれに由来するペプチドを含む融合体[例えば、LB1(f)ペプチド融合体;米国特許第5,843,464号(OSU)、又は国際公開第99/64067号]; OMP26[国際公開第97/01638号(Cortecs)]; P6[欧州特許第281673号(State University of New York)]; TbpA及び/又はTbpB; Hia; Hsf; Hin47; Hif; Hmw1; Hmw2; Hmw3; Hmw4; Hap; D15(国際公開第94/12641号);タンパク質D(欧州特許第594610号); P2;及びP5(国際公開第94/26304号);タンパク質E(国際公開第07/084053号)及び/又はPilA(国際公開第05/063802号)から選択される無莢膜型H.インフルエンザ抗原(複数可)に由来する。組成物は、例えばOMP106 [国際公開第97/41731号(Antex)及び国際公開第96/34960号(PMC)]; OMP21; LbpA及び/又はLbpB [国際公開第98/55606号(PMC)];TbpA及び/又はTbpB [国際公開第97/13785号及び国際公開第97/32980号(PMC)]; CopB [Helminen MEら(1993年) Infect. Immun. 61:2003〜2010頁]; UspA1及び/又はUspA2[国際公開第93/03761号(University of Texas)]; OmpCD; HasR (PCT/EP99/03824);PilQ (PCT/EP99/03823); OMP85 (PCT/EP00/01468); lipo06 (英国特許第9917977.2号); lipo10 (英国特許第9918208.1号); lipo11 (英国特許第9918302.2号); lipo18 (英国特許第9918038.2号); P6 (PCT/EP99/03038); D15 (PCT/EP99/03822); OmplA1 (PCT/EP99/06781); Hly3 (PCT/EP99/03257)、
及びOmpEから選択されるモラクセラ・カタラーリスタンパク質抗原(複数可)を含み得る。
1つの実施形態では、医薬又は製剤は、無莢膜型H.インフルエンザ(NTHi)タンパク質抗原(複数可)及び/又はM.カタラーリスタンパク質抗原(複数可)を含む。組成物は、H.インフルエンザ由来のタンパク質D (PD)を含み得る。タンパク質Dは、国際公開第91/18926号に記載の通りであり得る。組成物は、H.インフルエンザ由来のタンパク質E (PE)及び/又はピリンA (PilA)を更に含み得る。タンパク質E及びピリンAは、国際公開第2012/139225号に記載の通りであり得る。タンパク質E及びピリンAは、融合タンパク質、例えば国際公開第2012/139225号に記載されるようなLVL735として存在し得る。例えば、組成物は、3つのNTHi抗原(PD、PE、及びPilA、但し最後の2つはPEPilA融合タンパク質として組み合わされる)を含み得る。組成物はM.カタラーリス由来のUspA2を更に含み得る。UspA2は、国際公開第2015125118号に記載される通りであり、例えば国際公開第2015125118号に記載されているMC-009 ((M)(UspA2 31-564)(HH))であり得る。例えば、組成物は3つのNTHi抗原 (PD、PE、及びPilA、但し最後の2つはPEPilA融合タンパク質として組み合わされる)、及び1つのM.カタラーリス抗原(UspA2)を含み得る。そのような抗原の組み合わせは、疾患、例えば正常な呼吸を妨害し、また完全に可逆的ではない肺気流の慢性閉塞により特徴付けられる肺疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)等を予防又は治療する際に、及び/又はCOPDの急性増悪(AECOPD)を予防若しくは治療する際に有用であり得る。AECOPDは、通常の日々の変動を上回る患者の呼吸器系症状の増悪により特徴付けられる急性事象である。一般的に、AECOPDは薬物治療の変更を引き起こす。
1つの実施形態では、抗原は、NTHiタンパク質D又はその免疫原性断片であり、好適にはタンパク質D配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドである。
タンパク質Dは、国際公開第91/18926号に記載の通りであり得る。1つの実施形態では、タンパク質Dは、欧州特許第0594610号の図9に由来する配列を有する(図9a及び図9bの両方、364個のアミノ酸) (本明細書の配列番号10)。このタンパク質は、ヘモフィルス インフルエンザ関連の中耳炎に対してあるレベルの保護を提供し得る(Pyrmulaら、Lancet 367; 740〜748頁(2006年))。タンパク質Dは、完全長タンパク質として又は断片として使用され得る(例えば、タンパク質Dは国際公開第0056360号に記載される通りであり得る)。例えば、タンパク質D配列は、配列SSHSSNMANT (SerSerHisSerSerAsnMetAlaAsnThr)(配列番号12)から開始し、及び欧州特許第0594610号の図9に由来する19個のN末端アミノ酸を欠き、任意選択で前記タンパク質D断片のN末端に融合したNS1由来のトリペプチドMDPを有する欧州特許第0594610号に記載されているタンパク質D断片を含み得る、又はそれから構成され得る(348個のアミノ酸) (本明細書の配列番号11)。1つの実施形態では、タンパク質Dポリペプチドは、多糖類、例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来の多糖類にコンジュゲートしていない。1つの実施形態では、タンパク質Dポリペプチドは、フリーのタンパク質である(例えば、非コンジュゲート型)。1つの態様では、タンパク質D又はタンパク質Dの断片は脂質付加されない。
配列番号10:タンパク質D(364個のアミノ酸)
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号11: NS1由来のMDPトリペプチドを有するタンパク質D断片(348個のアミノ酸)
Figure 2021533162
Figure 2021533162
1つの実施形態では、抗原は、タンパク質D又はその免疫原性断片であり、好適には配列番号10に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドである。タンパク質Dの免疫原性断片は、配列番号10の少なくとも7、10、15、20、25、30、又は50個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含み得る。免疫原性断片は、配列番号10と結合可能である抗体を誘発し得る。別の実施形態では、抗原はタンパク質D又はその免疫原性断片であり、好適には配列番号11に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドである。タンパク質Dの免疫原性断片は、配列番号11の少なくとも7、10、15、20、25、30、又は50個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含み得る。
タンパク質D抗原を含む免疫原性組成物は、NTHi由来のタンパク質E又はその免疫原性断片、好適にはタンパク質E配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを更に含み得る。
タンパク質E (PE)は接着特性を有する外膜リポタンパク質である。タンパク質Eは、上皮細胞に対する無莢膜型ヘモフィルス インフルエンザ(NTHi)の接着/浸潤において役割を演じている。(J. Immunology 183: 2593〜2601頁(2009年); The Journal of Infectious Diseases 199: 522〜531頁(2009), Microbes and Infection 10: 87〜96頁(2008年))。タンパク質Eは、カプセル化されたヘモフィルス インフルエンザ及び無莢膜型H.インフルエンザの両方において高度に保存性であり、また保存された上皮結合ドメインを有する(The Journal of Infectious Diseases 201:414〜419頁(2010年))。参照系統としてのヘモフィルス インフルエンザRdと比較した場合、13個の異なる点突然変異が異なるヘモフィルス(Haemophilus)種において記載されている。その発現は対数増殖期及び静止期の細菌の両方において観察される。(国際公開第2007/084053号)。
タンパク質Eは、結合ビトロネクチンを通じてヒト補体抵抗性(human complement resistance)にも関与している(Immunology 183: 2593〜2601頁(2009年))。PEは、結合ドメインPKRYARSVRQ YKILNCANYH LTQVRにより(配列番号13のアミノ酸84〜108に対応する)、終末補体経路(terminal complement pathway)の重要な阻害剤であるビトロネクチンと結合する(J. Immunology 183:2593〜2601頁(2009年))。
本明細書で使用される場合、「タンパク質E (Protein E)」、「タンパク質E (protein E)」、「Prot E」、及び「PE」は、H.インフルエンザ由来のタンパク質Eを意味する。タンパク質Eは、配列番号13のアミノ酸配列(国際公開第2012/139225A1号の配列番号4に対応する): (MKKIILTLSL GLLTACSAQI QKAEQNDVKL APPTDVRSGY IRLVKNVNYY IDSESIWVDN QEPQIVHFDA VVNLDKGLYV YPEPKRYARS VRQYKILNCA NYHLTQVRTD FYDEFWGQGL RAAPKKQKKH TLSLTPDTTL YNAAQIICAN YGEAFSVDKK)、並びに配列番号13に対して全長にわたり少なくとも又は厳密に75%、77%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又は100%の同一性を有する配列から構成され得る又はそれを含み得る。1つの実施形態では、タンパク質E又はその免疫原性断片は、好適には配列番号13に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドである。タンパク質Eの免疫原性断片は、配列番号13の少なくとも7、10、15、20、25、30、又は50個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含み得る。免疫原性断片は配列番号13と結合可能である抗体を誘発し得る。
別の実施形態では、タンパク質E又は免疫原性断片は、好適には配列番号14(国際公開第2012/139225A1号の配列番号125に対応する)に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドである。
配列番号14:タンパク質Eのアミノ酸20〜160
Figure 2021533162
タンパク質D抗原を含む免疫原性組成物は、PilA又はその免疫原性断片、好適にはPilA配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを更に含み得る。別の実施形態では、免疫原性組成物は、PilAの免疫原性断片、好適にはPilA配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを含み得る。
ピリンA (PilA)は、収縮運動に関与するH.インフルエンザIV型線毛(Tfp)の主要なピリンサブユニットである可能性がある(Infection and Immunity, 73: 1635〜1643頁(2005年))。NTHi PilAは、in vivoで発現される保存されたアドヘシンである。NTHi PilAは、NTHiの接着、コロニー化、及びバイオフィルム形成に関与していることが明らかにされている。(Molecular Microbiology 65: 1288〜1299頁(2007年))。
本明細書で使用される場合、「PilA」とはH.インフルエンザ由来のピリンAを意味する。PilAは、配列番号15のタンパク質配列(国際公開第2012/139225A1号の配列番号58に対応する) (MKLTTQQTLK KGFTLIELMI VIAIIAILAT IAIPSYQNYT KKAAVSELLQ ASAPYKADVE LCVYSTNETT NCTGGKNGIA ADITTAKGYV KSVTTSNGAI TVKGDGTLAN MEYILQATGN AATGVTWTTT CKGTDASLFP ANFCGSVTQ)、並びに配列番号15に対して80%〜100%の同一性を有する配列から構成され得る又はそれを含み得る。例えば、PilAは、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%同一であり得る。1つの実施形態では、免疫原性組成物は、PilA又はその免疫原性断片、好適には配列番号15に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを含み得る。
PilAの免疫原性断片は、配列番号15の少なくとも7、10、15、20、25、30、又は50個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含み得る。免疫原性断片は配列番号15と結合可能である抗体を誘発し得る。
別の実施形態では、免疫原性組成物は、PilAの免疫原性断片、好適には配列番号16(国際公開第2012/139225A1号の配列番号127に対応する)に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを含む。
配列番号16: H.インフルエンザ系統86-028NP由来のPilAのアミノ酸40〜149:
Figure 2021533162
タンパク質E及びピリンAは融合タンパク質(PE-PilA)として存在し得る。別の実施形態では、免疫原性組成物は、タンパク質E及びPilAを含み、その場合、タンパク質E及びPilAは、融合タンパク質として、好適にはLVL-735配列番号17(国際公開第2012/139225A1号の配列番号194に対応する)に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドとして存在する。
配列番号17: LVL735 (タンパク質): (pelB sp)(ProtE aa 20〜160)(GG)(PilA aa40〜149):
Figure 2021533162
別の実施形態では、免疫原性組成物はタンパク質E及びPilAを含み、その場合、タンパク質E及びPilAは、融合タンパク質として、好適にはLVL-735に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドとして存在するが、但しシグナルペプチドは除去されている、配列番号18 (国際公開第2012/139225A1号の配列番号219に対応する)。
配列番号18:シグナルペプチドを含まないPE-PilA融合タンパク質:
Figure 2021533162
タンパク質E (PE)及びピリンA (PilA)ポリペプチドの免疫原性は、国際公開第2012/139225A1号の記載に従い測定することができ、その内容は本明細書において参照により組み込まれている。
タンパク質D抗原を含む免疫原性組成物は、M.カタラーリス由来の免疫原性ポリペプチド又はその免疫原性断片を更に含み得る。1つの実施形態では、免疫原性組成物はUspA2又はその免疫原性断片を含む。
ユビキタス表面タンパク質A2 (ubiquitous surface protein A2) (UspA2)は、電子顕微鏡写真においてロリポップ共有構造(lollipop-shared structure)として現れる三量体オートトランスポーターである(Hoiczykら、EMBO J. 19: 5989〜5999頁(2000年))。これは、N末端ヘッド部、後続する両親媒性ヘリックスで終了するストーク、及びC末端膜ドメインから構成される。(Hoiczykら、EMBO J. 19:5989〜5999頁(2000年))。UspA2は、非常に良く保存されたドメイン(Aebiら、Infection & Immunity 65(11) 4367〜4377頁(1997年))を含有し、同ドメインは、マウスのモラクセラ・カタラーリス負荷モデルにおいて、受動伝達に対して保護性であることが明らかとなったモノクロナール抗体によって認識される(Helminnenら、J Infect Dis. 170(4):867〜72頁(1994年))。
UspA2は、宿主構造及びフィブロネクチン(Tanら、J Infect Dis. 192(6):1029〜38頁(2005年))及びラミニン(Tanら、J Infect Dis. 194(4):493〜7頁(2006年))のような細胞外マトリックスタンパク質と相互作用することが明らかにされており、UspA2がモラクセラ・カタラーリス感染の初期段階において役割を演じている可能性を示唆する。
UspA2は、正常ヒト血清の殺菌活性に抵抗するモラクセラ・カタラーリスの能力にも関与していると思われる(Attia ASら、Infect Immun 73(4):2400〜2410頁(2005年))。UspA2は、(i)補体阻害因子C4bpに結合して、モラクセラ・カタラーリスが古典的補体系を阻害することを可能にし、(ii)血清由来のC3を吸収することによって代替的補体経路の活性化を阻止し、そして(iii)補体調節タンパク質であるビトロネクチンに結合することによって、補体系の終末段階である膜侵襲複合体(MAC)を妨害する(de Vriesら、Microbiol Mol Biol Rev. 73(3):389〜406頁(2009年))。
本明細書で使用される場合、「UspA2」は、モラクセラ・カタラーリス由来のユビキタス表面タンパク質A2を意味する。UspA2は、配列番号19 (ATCC 25238より) (国際公開第2015/125118A1号の配列番号1に対応する)のアミノ酸配列:
Figure 2021533162
(配列番号19)、
並びに配列番号19に対して全長にわたり、少なくとも又は厳密に63%、66%、70%、72%、74%、75%、77%、80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する配列から構成され得る又はそれを含み得る。
配列番号19に記載されるUspA2は、シグナルペプチド(例えば、配列番号19のアミノ酸1〜29)、ラミニン結合ドメイン(例えば、配列番号19のアミノ酸30〜177)、フィブロネクチン結合ドメイン(例えば、配列番号19のアミノ酸165〜318) (Tanら、JID 192:1029〜38頁(2005年))、C3結合ドメイン(例えば、配列番号19のアミノ酸30〜539(国際公開第2007/018463号)、又は配列番号19のアミノ酸30〜539の断片、例えば配列番号19のアミノ酸165〜318 (Hallstrom Tら、J. Immunol. 186:3120〜3129頁(2011年))、両親媒性ヘリックス(例えば、異なる予測方法を使用して特定された、配列番号19のアミノ酸519〜564又は配列番号19のアミノ酸520〜559)、及びC末端アンカードメイン(例えば、配列番号19のアミノ酸576〜630のアミノ酸(Brooksら、Infection & Immunity、76(11)、5330〜5340頁(2008年))を含有する。
1つの実施形態では、UspA2の免疫原性断片は、ラミニン結合ドメイン及びフィブロネクチン結合ドメインを含有する。追加の実施形態では、UspA2の免疫原性断片は、ラミニン結合ドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン、及びC3結合ドメインを含有する。更なる実施形態では、UspA2の免疫原性断片は、ラミニン結合ドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン、C3結合ドメイン、及び両親媒性ヘリックスを含有する。
UspA2アミノ酸の差異は、様々なモラクセラ・カタラーリス種について記載されている。例えば、J Bacteriology 181(13):4026〜34頁(1999年)、Infection and Immunity 76(ll):5330〜40頁(2008年)、及びPLoS One 7(9):e45452 (2012年)を参照。モラクセラ・カタラーリスの38系統に由来するUspA2アミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2018/178264号及び国際公開第2018/178265号に提示されている。
UspA2の免疫原性断片は、配列番号19の少なくとも450、490、511、534、又は535個の連続したアミノ酸からなる免疫原性断片を含み得る。UspA2の免疫原性断片は、例えば参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2015/125118A1号に記載されるような、UspA2コンストラクトMC-001、MC-002、MC-003、MC-004、MC-005、MC-006、MC-007、MC-008、MC-009、MC-010、又はMC-011のいずれか、例えば本明細書における配列番号20のMC-009を含み得る、又はそれから構成され得る。免疫原性断片は完全長配列(それから断片が派生する)と結合可能である抗体を誘発し得る。
別の実施形態では、免疫原性組成物は、UspA2の免疫原性断片、好適にはMC-001、MC-002、MC-003、MC-004、MC-005、MC-006、MC-007、MC-008、MC-009 (配列番号20)、MC-010、又はMC-011からなる群から選択されるポリペプチド、例えばMC009配列番号20 (国際公開第2015/125118A1号の配列番号69に対応する)に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を保持する単離された免疫原性ポリペプチドを含み得る。
配列番号20 MC-009(タンパク質)-(M) (UspA2 31〜564) (HH)
Figure 2021533162
UspA2ポリペプチドの免疫原性は、国際公開第2015/125118A1号に記載されるように測定することができ、その内容は本明細書において参照により組み込まれている。
本明細書に記載される免疫原性組成物は、タンパク質D、PE、PilA (PE-PilA融合体の形態であり得る)、及びUspA2を含む、NTHi及びM.カタラーリス由来の複数の抗原、例えば:
-PD 10μg / PE-PilA (国際公開第2012/139225号に記載されるようなLVL735コンストラクト) 10μg / UspA2 (国際公開第2015125118号に記載されるようなMC009コンストラクト) 10μg / AS01E、
-PD 10μg / PE-PilA (国際公開第2012/139225号に記載されるようなLVL735コンストラクト) 10μg / UspA2 (国際公開第2015125118号に記載されるようなMC009コンストラクト) 3.3μg / AS01E
を含み得る。
上記2つの具体的な免疫原性組成物を、国際公開第2015125118号(実施例14)のマウスのモラクセラ・カタラーリス肺炎症モデルにおいて評価した。
したがって、1つの実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバント(例えば、AS01E)有り/無しで、10μgのタンパク質D (例えば、配列番号11)、10μgのPE-PilA融合タンパク質(例えば、配列番号17又は18)、及び10μgのUspA2 (例えば、配列番号20)を含む。別の実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバント(例えば、AS01E)有り/無しで、10μgのタンパク質D (例えば、配列番号11)、10μgのPE-PilA融合タンパク質(例えば、配列番号17又は18)、及び3.3μgのUspA2 (例えば、配列番号20)を含む。
抗原の組み合わせ
複数の抗原が提供され得ることは明白である。例えば、誘発された免疫応答を強化するように複数の抗原が提供され得るが(例えば、強力な保護を確実にするために)、複数の抗原が免疫応答を広げるために提供される場合もあり(例えば、一連の病原系統に対して、又は対象集団の大部分において保護を確実にするために)、又は複数の抗原がいくつかの障害に関して免疫応答を同時に誘発するために提供される場合もある(これにより投与プロトコールを単純化させる)。複数の抗原が提供される場合、抗原は、異なるタンパク質として又は1つ以上の融合タンパク質の形態で提供され得る。
抗原投与
抗原は、ヒトへの投与1回につき1抗原当たり0.1〜200μg、例えばヒトへの投与1回につき1抗原当たり0.1〜100μgの量で提供され得る。
ヒト用量は固定された用量、例えば0.5mlであり得る。ワクチンの個々の用量がバイアル内に提供され得る、又は複数用量のワクチン、例えば複数の0.5ml用量が単一のバイアル内に提供され得る。したがって、1つの実施形態では、本明細書に記載される製剤又は組成物が、単回用量(例えば、0.5ml用量)としてバイアル内に、又は複数回用量(例えば、0.5mlの倍数)として単一のバイアル内に提供される。バイアルの内容物は、液体、又は投与前に水溶液を用いた復元の準備ができた固体(例えば、液体製剤がフリーズドライ化されている場合)であり得る。
ベクター
好適には、用語「ベクター」とは、野生型配列と比較して実質的に変更されている(例えば、遺伝子又は機能的領域が削除及び/又は不活性化されている)、及び/又は異種配列、すなわち異なる起源から得られ、そして細胞(例えば、宿主細胞)に導入された場合、挿入されたポリヌクレオチド配列を複製及び/又は発現する核酸(「インサート」とも呼ばれる)が組み込まれた核酸を指す。ベクターは、任意の遺伝要素、又はネイキッドDNA、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージベクター、例えばラムダベクター等、人工染色体、例えばBAC (細菌人工染色体)等、若しくはエピソームを含む好適な核酸分子を含み得る。ウイルスベクターが本明細書において特に興味深い。ワクチン抗原の送達に有用であり得るベクターについて本明細書において特に考察されるが、しかしベクターは限定されないこと、及び治療又はワクチンを目的として任意のタンパク質、通常異種タンパク質を細胞に送達するのに有用であり得、或いはアンチセンス核酸の送達及び遺伝子療法において有用であり得ることは明白である。
1つの実施形態では、ベクターは、治療又はワクチンを目的として、タンパク質、好適には異種タンパク質を細胞に送達するウイルスベクターである。そのようなベクターは、発現カセット(選択された異種遺伝子(導入遺伝子)と、宿主細胞において遺伝子産物の翻訳、転写、及び/又は発現を推進するのに必要なその他の調節エレメントとの組み合わせである)を含有する。そのようなウイルスベクターは、任意の適するウイルス、例えばポックスウイルス、例えばワクシニアウイルス(例えば、改変されたウイルスアンカラ(MVA))、NYVAC (ワクシニアのコペンハーゲン系統に由来する)、アビポックス、カナリア痘(ALVAC)及び鶏痘(FPV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、例えば5型AAV等、アルファウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus) (SIN)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus) (SFV)、及びVEE-SINキメラ)、ヘルペスウイルス、はしかウイルス、水疱性口内炎ウイルスベクター、レトロウイルス、例えばレンチウイルス、ヘルペスウイルス、例えばCMV等、パラミクソウイルスに基づくことができる。ベクターには、発現ベクター、クローニングベクター、及び宿主細胞内で組換えウイルス、例えばアデノウイルス等を生成するのに有用であるベクターも含まれる。
アデノウイルスベクター
1つの実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、例えばRSV、HCV、HPV、又はHSVに由来する抗原をコードするアデノウイルスベクターである。
アデノウイルスは種特異的であり、また異なる血清型、すなわち抗体により交差中和されない型として生ずる。アデノウイルスは、ヒトから、並びに非ヒト類人猿、例えばチンパンジー、ボノボ、アカゲザル、及びゴリラ等から単離された。類人猿アデノウイルスベクター、例えばチンパンジーアデノウイルスベクター等が特に興味深い。代表的なアデノウイルスベクターは、国際公開第2010/085984号、同第2014/139587号、同第2016/198621号、同第2018/104911号、及び同第2016/198599号に記載されている。代表的なアデノウイルスベクターとしてChAd155やChAd157が挙げられる。
例えば、アデノウイルスベクターは、ウイルス遺伝子、例えばE1若しくはその他のウイルス遺伝子又は機能的領域等の1つ以上の欠損又はその不活性化された遺伝子を含むチンパンジーアデノウイルスベクターであり得る。そのようなウイルスベクターはそのまま使用され、又は抗原若しくは抗原をコードする1つ以上の配列の追加を含む、ベクターに対する追加の改変を行うための起点として使用され得る「骨格」として記載され得る。
用語「複製コンピテント」アデノウイルスとは、細胞に含まれる組換えヘルパータンパク質が一切存在しなくても、宿主細胞内で複製することができるアデノウイルスを指す。好適には、「複製コンピテント」アデノウイルスは、下記の原型状態の又は機能的な必須初期遺伝子:E1A、E1B、E2A、E2B、E3、及びE4を含む。特定の動物から単離された野生型アデノウイルスは、その動物において複製コンピテントである。
用語「複製インコピテント」又は「複製欠陥性」アデノウイルスとは、少なくとも機能的欠損(又は「機能の喪失」突然変異)、すなわち遺伝子を完全に除去することなくその機能を害する欠損又は突然変異、例えば人工的終止コドンの導入、活性部位若しくは相互作用ドメインの欠損若しくは突然変異、遺伝子の制御配列の突然変異若しくは欠損等、又はウイルスの複製にとって必須の遺伝子産物をコードする遺伝子、例えばE1A、E1B、E2A、E2B、E3、及びE4 (例えばE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2、及び/又はE4 ORF1等)から選択されるアデノウイルス遺伝子のうちの1つ以上等の完全な除去を含むように工学的に操作されているので複製する能力を有さないアデノウイルスを指す。特に好適には、E1並びに任意選択でE3及び/又はE4が欠損している。
アデノウイルスベクター(Ad)ベクターには、例えば非複製Ad5、AdI l、Ad26、Ad35、Ad49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAdIO、ChAdI l、ChAdlo、ChAdl7、ChAdl9、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63、ChAd82、及びChAd155、ChAd157、ChAdOx1、及びChAdOx2ベクター、又は複製コンピテントAd4及びAd7ベクターが含まれる。
1つの実施形態では、アデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルスベクター、例えばRSV抗原、例えばRSV F抗原等、及び任意選択で1つ以上の更なるRSV抗原、例えばRSV N抗原及びRSV M2抗原等をコードするChAd155等である。1つの実施形態では、アデノウイルスベクターは、RSV F、RSV N、及びRSV M2抗原をコードするChAd155-RSVベクターである。
ベクターにより発現される抗原
本明細書に記載されるアデノウイルスベクター又はその他のベクターにより発現される免疫原は、例えばヒト及びヒト以外の脊椎動物に感染する細菌、菌類、寄生微生物、若しくは多細胞寄生虫を含む病原体に対して、又はがん細胞若しくは腫瘍細胞に対して、ヒト又はヒト以外の動物を免疫化するのに有用である。
本明細書に記載されるベクターにより発現される免疫原は、すでに記載されている抗原のいずれかであり得る。
例えば、ベクターにより発現される免疫原は、様々なウイルスファミリーから選択され得る。免疫応答が生ずるのが望ましいウイルスファミリーの例には、リッサウイルス、例えば狂犬病ウイルス等、呼吸器系ウイルス、例えば呼吸系発疹ウイルス(RSV)等、及びその他のパラミクソウイルス、例えばヒトメタニューモウイルス、hMPV、及びパラインフルエンザウイルス(PIV)等が含まれる。
好適な抗原の更なる例は、HCV、HPV、及びHSVに由来する抗原である。
ヒト又はヒト以外の動物を免疫化するための免疫原として有用である狂犬病抗原は、狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)、RNAポリメラーゼ(L)、マトリックスタンパク質(M)、核タンパク質(N)、及びリンタンパク質(P)から選択され得る。用語「Gタンパク質」又は「糖タンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」又は「糖タンパク質ポリペプチド」とは、狂犬病糖タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。用語「Lタンパク質」又は「RNAポリメラーゼタンパク質」又は「Lタンパク質ポリペプチド」又は「RNAポリメラーゼタンパク質ポリペプチド」とは、狂犬病RNAポリメラーゼタンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。用語「Mタンパク質」又は「マトリックスタンパク質」又は「Mタンパク質ポリペプチド」又は「マトリックスタンパク質ポリペプチド」とは、狂犬病マトリックスタンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。用語「Nタンパク質」又は「核タンパク質」又は「Nタンパク質ポリペプチド」又は「核タンパク質ポリペプチド」とは、狂犬病核タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。用語「Pタンパク質」又は「リンタンパク質」又は「Pタンパク質ポリペプチド」又は「リンタンパク質ポリペプチド」とは、狂犬病リンタンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。
ヒト又はヒト以外の動物を免疫化するために、ベクターにより発現される免疫原として有用であるRSVの好適な抗原は、融合タンパク質(F)、付着タンパク質(G)、マトリックスタンパク質(M2)、及び核タンパク質(N)から選択され得る。用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」とは、RSV融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。同様に、用語「Gタンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」とは、RSV付着タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。用語「Mタンパク質」又は「マトリックスタンパク質」又は「Mタンパク質ポリペプチド」とは、RSVマトリックスタンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指し、また、M2-1(本明細書ではM2.1として表記され得る)及びM2-2遺伝子産物のずれか又はその両方を含み得る。同様に、用語「Nタンパク質」又は「ヌクレオカプシドタンパク質」又は「Nタンパク質ポリペプチド」とは、RSV核タンパク質のアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。
1つの実施形態では、ウイルスベクター、特にアデノウイルス、例えばChAd155内でコードされるRSVの抗原は、RSV F抗原及びRSV M及びN抗原を含む。より具体的には、抗原は、RSV FATM抗原(膜貫通領域及び細胞質領域が欠損している融合(F)タンパク質)、並びにRSV M2-1 (抗転写終結(transcription anti-termination))及びN (ヌクレオカプシド)抗原である。
1つの実施形態では、免疫原は、レトロウイルス、例えばレンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)等に由来し得る。そのような実施形態では、免疫原はHIV-1又はHIV-2に由来し得る。
HIVゲノムはいくつかの異なるタンパク質をコードし、そのそれぞれは、その全体において、又は本発明のベクターにより発現される場合断片として免疫原性であり得る。エンベロープタンパク質には、例えばgp120、gp41、及びEnv前駆体gp160が含まれる。HIVの非エンベロープタンパク質には、例えば内部構造タンパク質、例えばgag及びpol遺伝子の産物等、並びにその他の非構造タンパク質、例えばRev、Nef、Vif、及びTat等が含まれる。1つの実施形態では、本発明のベクターは、HIV Gagを含む1つ以上のポリペプチドをコードする。
Gag遺伝子は、プロテアーゼにより切断されて、マトリックスタンパク質(p17)、カプシド(p24)、ヌクレオカプシド(p9)、p6、及び2つのスペースペプチド(p2とp1)を含む生成物(そのすべてはGagの断片の例である)をもたらす前駆体ポリタンパク質として翻訳される。
Gag遺伝子は、スプライシングされていないウイルスmRNAから発現される55キロダルトン(kD) Gag前駆体タンパク質(p55とも呼ばれる)を生じさせる。翻訳中に、p55のN末端はミリストイル化され、その、細胞膜の細胞質側への会合を誘発する。膜会合性のGagポリタンパク質は、ウイルスゲノムRNAの2つのコピーを、感染した細胞の表面からのウイルス粒子の発芽を誘発するその他のウイルス及び細胞タンパク質と共に動員する。発芽後、p55は、ウイルス成熟過程において、ウイルス的にコードされたプロテアーゼ(pol遺伝子の産物)により、4つのより小型のタンパク質(MA (マトリックス[p17])、CA (カプシド[p24])、NC (ヌクレオカプシド[p9])、及びp6と命名され、そのすべてがGagの断片の例である)に切断される。
生体分子又はベクターの酸化レベルを評価する方法
様々な方法が、例えば下記の方法を含め、H2O2との接触の効果、及び潜在的酸化防止剤の効果を評価するのに使用され得る:
間接的方法の例:
Amplex Red比色方法が、異なる段階、例えば最終バルク(FB)ワクチン、コンテナがワクチン用量又は用量(複数)で充填された最終コンテナ(FC)、又は凍結乾燥された製品の復元後(該当する場合)において、H2O2を定量するのに使用され得る。
直接的方法:
●分解能が高い逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)は、抗原の純度を評価するのに使用可能である。この高分解能クロマトグラフィー方法が、異なる酸化形態に起因する抗原のバリアントを分離するのに使用される。抗原が酸化された場合、親水性バリアントが生成される可能性があり、またクロマトグラム上でより早期に溶出する。非酸化型のクロマトグラムは、1抗原当たりたった1つのピークを示す(純粋なピーク)一方、酸化が生じた場合、純粋なピークのサイズは減少し、そして非酸化型の抗原(純粋なピーク)の前に溶出する新しいピークが酸化された形態として現れる。これは、ピークを観察することによる定性的な測定、及び他のすべてのピーク面積と比較して純粋なピーク面積の割合(%)を計算することによる定量的な方法の両方に該当する。取得される数値は、したがって純粋な生成物についてほぼ100%であり、また酸化生成物の存在に伴い減少する。
●液体クロマトグラフィーと連結したマススペクトロメトリー(LC-MS)は、例えば抗原においてメチオニン残基の酸化比を数値化するのに使用可能である。例えば、配列番号1のpreFでは、7つのメチオニン残基のうち3つは容易に酸化される(Met317 > Met343 > Met74)。Met343は最も酸化されやすいものではないが、最も追跡しやすいので(単一の消化ペプチド上に分布している)、それを示した。アデノウイルスベクターでは、ヘキソンタンパク質内の1つ以上のメチオニンがベクターの酸化を示すのに使用可能であり、例えばChAd155では、5つのヘキソンメチオニン:Met270、299、383、468、及び512を酸化について調査した。H.インフルエンザ由来のタンパク質D抗原を含む組成物(例えば、配列番号11)では、M192酸化とタンパク質Dの他のメチオニンの酸化レベルとの間で相関関係が成り立ち得るので、M192を酸化に関するプローブとして使用した。
●酸化が製品の潜在的重要品質特性(pCQA)に影響を及ぼすかどうかを検出することができるその他の方法
〇抗原性(ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、Gyros)
〇立体構造(フーリエ変換赤外共鳴(FTIR)、円偏光二色性(CD))
H2O2及び酸化防止剤の影響を考察するために生存性のベクターと共に使用される更なる方法として下記事項が挙げられる:
●DNA放出アッセイ法、例えばPicogreenアッセイ法等は、DNA放出を測定するのに使用可能であり、したがってウイルスカプシドの完全性の指標である。
●ウイルスの感染性は、例えばFACS分析を使用して、感染した宿主細胞内の導入遺伝子発現を観察することにより測定可能である。
本発明の実施形態は、後続する数字付きのパラグラフに更に記載されている:
1. 少なくとも1つの生体分子又はベクターを含む生物学的医薬を製造する方法であって、
(a)酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に、生体分子又はベクターを製剤化して、酸化防止剤を含む生物学的医薬を製造するステップ、
(b)生物学的医薬でコンテナを充填するステップ、及び
(c)コンテナを密封又は部分的に密封するステップ
を含み、そのうちの1つ以上が過酸化水素を使用して表面滅菌処理された無菌エンクロージャー内で実施される方法。
2. 滅菌処理で使用される過酸化水素が、蒸気性の形態(VHP)又はエアゾール化した形態(aHP)である、パラグラフ1に記載の方法。
3. 生体分子又はベクターがポリペプチドを含む、パラグラフ1又はパラグラフ2に記載の方法。
4. 生体分子が組換えタンパク質である、パラグラフ1〜3に記載の方法。
5. 生体分子又はベクターが酸化を受けやすい、パラグラフ1〜4に記載の方法。
6. 生体分子又はベクターが1つ以上のメチオニン基を含み、酸化防止剤が、過酸化水素により引き起こされる、生体分子上の1つ以上のメチオニン基の酸化を低下させる、パラグラフ3〜5に記載の方法。
7. 酸化防止剤が、メチオニン基の酸化を過酸化水素が存在しない場合の酸化レベル以下まで低下させる、パラグラフ6に記載の方法。
8. 酸化防止剤がアミノ酸である、パラグラフ1〜7に記載の方法。
9. 酸化防止剤がチオエーテル含有分子である、パラグラフ1〜8に記載の方法。
10. 酸化防止剤がメチオニンである、パラグラフ9に記載の方法。
11. 酸化防止剤がL-メチオニンである、パラグラフ10に記載の方法。
12. 酸化防止剤が0.05mMより多く製剤中に存在する、パラグラフ1〜11に記載の方法。
13. 酸化防止剤が50mM未満で製剤中に存在する、パラグラフ1〜12に記載の方法。
14. 無菌エンクロージャーがアイソレーターである、パラグラフ1〜13に記載の方法。
15. アイソレーターが、VHPについて0.1〜1.0ppmの作動セットポイントを有する、パラグラフ14に記載の方法。
16. アイソレーターが、1.0ppm VHPにおいて作動セットポイントを有する、パラグラフ15に記載の方法。
17. 生物学的医薬が免疫原性組成物又はワクチンであり、及び生体分子又はベクターが抗原又は抗原をコードするベクターである、パラグラフ1〜16に記載の方法。
18. 抗原がRSV抗原である、パラグラフ17に記載の方法。
19. 抗原がRSV融合前F抗原である、パラグラフ18に記載の方法。
20. 抗原が水痘帯状疱疹ウイルスである、パラグラフ17に記載の方法。
21. 抗原がVZV gE抗原である、パラグラフ20に記載の方法。
22. 抗原がH.インフルエンザ由来である、パラグラフ17に記載の方法。
23. 抗原が、H.インフルエンザタンパク質D抗原(例えば、配列番号11)である、パラグラフ22に記載の方法。
24. 抗原をコードするベクターがアデノウイルスベクター、例えばChAd155等である、パラグラフ17に記載の方法。
25. アデノウイルスベクターがRSV抗原をコードする、パラグラフ24に記載の方法。
26. アデノウイルスベクターが、モラクセラ・カタラーリス由来の抗原をコードする、パラグラフ24に記載の方法。
27. 製剤を凍結乾燥(フリーズドライ化)する更なるステップを含む、パラグラフ1〜26に記載の方法。
28. 凍結乾燥するステップが、
-凍結するステップ(三重点未満)、
-任意選択でアニーリングするステップ及び/又は制御された核生成ステップ、
-一次乾燥ステップ、
-二次乾燥ステップ
を含む、パラグラフ27に記載の方法。
29. 生物学的医薬が滅菌された注射可能な製剤(液体形態の場合)である、パラグラフ1〜28に記載の方法。
30. パラグラフ1〜29に記載の方法により製造される生物学的医薬。
31. メチオニンを含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチン。
32. RSV融合前F抗原を含む、パラグラフ31に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
33. H.インフルエンザタンパク質D抗原(例えば、配列番号11)を含む、パラグラフ31に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
34. PE-PilA融合タンパク質(例えば、配列番号17又は18)、及びM.カタラーリスUspA2抗原(例えば、配列番号20)を更に含む、パラグラフ33に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
35. アデノウイルスベクター、例えばChAd155等を含む、パラグラフ31に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
36. メチオニンが0.05〜50mMで存在する、パラグラフ31〜35に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
37. メチオニンが0.1〜20mMで存在する、パラグラフ36に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
38. メチオニンが0.1〜15mMで存在する、パラグラフ37に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
39. メチオニンが0.5〜15mMで存在する、パラグラフ38に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
40. メチオニンが0.1〜5mMで存在する、パラグラフ38に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
41. 組成物がフリーズドライ化された形態である、パラグラフ31〜40に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
42. 水溶液、例えばアジュバントを含む水溶液中での復元に適する、パラグラフ41に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
43. 酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチンであって、免疫原性組成物がフリーズドライ化されている、免疫原性組成物又はワクチン。
44. 酸化防止剤が天然に存在する酸化防止剤である、パラグラフ43に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
45. 酸化防止剤がアミノ酸である、パラグラフ44に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
46. 酸化防止剤がメチオニンである、パラグラフ45に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
47. メチオニンが、フリーズドライ化する前の液体製剤中に0.05〜50mMで存在する、パラグラフ46に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
48. メチオニンが、フリーズドライ化する前の液体製剤中に0.1〜20mMで存在する、パラグラフ47に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
49. メチオニンが、フリーズドライ化する前に0.1〜15mMで存在する、パラグラフ48に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
50. メチオニンが、フリーズドライ化する前に0.5〜15mMで存在する、パラグラフ49に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
51. メチオニンが、フリーズドライ化する前に0.1〜5mMで存在する、パラグラフ49に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
52. 水溶液、例えばアジュバントを含む水溶液等を用いた復元に適する、パラグラフ43〜51に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
53. 水溶液、例えばアジュバントを含む水溶液等を用いて復元されている、パラグラフ52に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
54. RSV融合前F抗原を含む、パラグラフ43〜53に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
55. H.インフルエンザタンパク質D抗原(例えば、配列番号11)を含む、パラグラフ43〜53に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
56. PE-PilA融合タンパク質(例えば、配列番号17又は18)、及びM.カタラーリスUspA2抗原(例えば、配列番号20)を更に含む、パラグラフ55に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
57. アジュバント、例えばASO1Eを用いて復元されている、パラグラフ56に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
58. アデノウイルスベクター、例えばChAd155等を含む、パラグラフ43〜53に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
本開示は下記の実施例を参照することにより更に詳述される。
[実施例]
実施例で使用される用語の用語集:
Figure 2021533162
[実施例1]
RSV PreF2抗原に対する残留HPの影響の評価、及び抗原を酸化から保護するための酸化防止剤の選択
緒言:
ワクチンに対する残留HPの影響を評価するように戦略を設計したが、それには、ワクチン製造プロセスにおいて最終バルク(FB)を製剤化した後に、代表的な量の液体HPを導入すること(スパイキングすること)により、HP曝露を模倣することが含まれた。これには、次にバイアル充填ステップ、バイアル栓止めステップ(液体ワクチンの場合、完全な栓止め、又は凍結乾燥されるワクチンの場合、部分的な栓止め)、凍結乾燥プロセス(必要な場合)、及びバイアルキャッピングステップが続いた。
凍結乾燥されたワクチンの場合、残留HPへの曝露後に初期凍結ステップが存在する。このステップは、可溶化されたHP及びワクチン内容物(すなわち、抗原及びその他の製剤成分)の両方を低温濃縮するが、またHPからの酸化を増強するおそれがある最悪条件シナリオとみなすことができる。
該現象を理解し、そして製剤化された抗原に対するHPの影響を評価するためには、したがって完全なプロセスをやはり模倣する必要がある。残留HPがワクチンに影響を及ぼすおそれのあるワクチン製造プロセスについて、そのすべての考え得る要素を含めるために、下記のステップが使用され得る:
(i) H2O2を用いてスパイキングするステップ-
〇液体ワクチンの場合、完全栓止めステップの直前、及び
〇凍結乾燥されるワクチンの場合、フリーズドライヤーにロードする直前
である、充填ステップ後に、すなわち最終コンテナ液(FC液)に見出される可能性がある過酸化水素の量が用いられるが、但しより高い濃度も用いられる(酸化挙動を試験するために)
(ii)製造手順において代表的な、HPスパイキングとフリーズドライヤー棚へのロードとの間の保持時間を維持するステップ、
(iii)標準的な凍結乾燥サイクルを実施するステップ(製品を代表的な低温濃縮ステップに曝露するために)
(iv)分析前に行われる最終コンテナ凍結乾燥製品(FC lyo)のエージングをシミュレートするステップ(酸化反応を強制するため)
同時に、酸化防止剤の添加がRSV PreF2抗原に対する残留HPの効果を阻止するのに有効であり得るか理解するために、ワクチン製剤を酸化防止剤の有り/無しでスクリーニングした。この場合、最終バルク製造期間中に酸化防止剤の添加を実施したが、これは商業生産設備においてRSV PreF2が過酸化水素に最初に曝露されるおそれのあるポイントに最も近いポイントである。酸化源、例えばHP等への曝露が予想される場合には、酸化防止剤の添加はこの前(例えば、抗原製造期間中)にも実施され得る。
残留VHP濃度が1ppm VHPとなるように操作されたアイソレーター内で製造プロセスを行った後に見出されるH2O2の予想される量に基づき、スパイキングに使用するH2O2の濃度を規定した。この代表的な濃度は、製造プラント設計の特殊性、及び最悪条件をシミュレートする試験の実施を確実にするために適用されるセキュリティーマージンに応じて一般的に変化する。
この場合、抗原の酸化挙動の特徴付けに役立つように、最大VHPを代表する量よりも高いH2O2の量も使用した(すなわち、168.0μMのスパイク)。
Figure 2021533162
方法
RSV PreF2抗原の酸化の評価
RSV PreF2抗原の酸化を、2つの直接的な分析方法及び1つの間接的な分析方法を通じて測定した:
液体クロマトグラフィーと連結した質量分光測定法(LC-MS)。RSV PreF2タンパク質上の酸化されたメチオニン343(Met343 Ox)の、それと同一のメチオニン残基の総量に対する比を数値化するのに使用した。この方法は、RSV PreF2酸化に対する[H2O2]の影響が非直線的であることを明らかにした(高濃度において飽和現象)。RSV PreF2は、7つのメチオニンのうち、次の順番、すなわちMet317 > Met343 > Met74で優先的に酸化される3つ(Met317、Met343、Met74)を有することが公知である。Met343は、トリプシンを用いてサンプルを消化した後、唯一つのペプチド(IMTSKペプチド)上に分布していることから、これが定量するのに最も容易な残基としてここでは選択された。注記: H2O2でスパイキングした原薬(DS)において、3つのメチオニン酸化比の間に相関関係が認められ、Met343とMet317との酸化比、及びMet343とMet74との酸化比の間で、それぞれ±3倍及び±0.5倍の関連性が明らかとなった。
逆相高圧液体クロマトグラフィー -還元条件で実施され、タンパク質の親水性バリアント(一般的に酸化により生成される)を分離するその能力の恩恵により抗原の純度が評価される。この方法は、抗原構造に対する酸化防止剤の添加の影響に関するいくつかの情報も提供することができる。
Amplex red -西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)アッセイ - H2O2の運命をAmplex redにより確認した - 異なるプロセスステップ(すなわち、FC液中、FC lyo中、エージングシミュレーション後)において存在するH2O2を定量するための間接的方法としてのHRPアッセイ法。
SDS-PAGE -還元条件及び非還元条件において実施され、RSV PreF2抗原の構造に対する残留HP及び酸化防止剤の添加の影響を決定するのに使用した。
サブスタンスPのLC-EIC-MS (特定のサブ実験において) -モデルタンパク質としてRSV PreF2製剤に添加され、同時凍結乾燥されたサブスタンスPの酸化比を決定するのにやはり使用した。酸化防止剤の効力を評価するスクリーニングツールとして使用した。
実験スクリーニング用の初期酸化防止剤の選択(及び初期用量)
10個の酸化防止剤及びそれらの酸化防止剤が投与され得る最大濃度を文献に基づき規定した。次の実験的スクリーニングは、RSV PreF2ワクチン組成物内へのこれら賦形剤の添加がpHに与える効果を立証して、該賦形剤がワクチン製剤中に添加され得る最大濃度を更に選択することを目的とした。
サンプル製造及びマネジメント
実験の際のサンプル製造及びマネジメントの一般的模式図をフロー図で以下のように表した:
●FC liq (500μL)を3mLのシリコン化されたバイアル中で直接製剤化した。
●異なる12の酸化防止剤条件(酸化防止剤無し1条件、及び異なる2濃度のMETを含む)をスクリーニングした(表2)
●次に、異なる3つの[H2O2]スパイキング(10μL)を、製剤化ステップの後にFC liq中で実施した(0、27、168μM)
●商業設備における最悪条件シナリオとみなされるFC liqの4時間曝露を保持した後、フリーズドライヤー内にバイアルをロードした。保持時間中、サンプルを暗光内に維持した。
●フリーズドライヤーの棚を事前冷却した。実施したサイクルには凍結ステップ、一次乾燥ステップ、及び二次乾燥ステップが含まれ、全体で45時間継続した。
〇次にサンプルを暗光内、4℃で保存した。
●最初FC liq、次にFC lyoにおいて、1処置群(arm)をH2O2の定量に割り当てた(処置群#1、1酸化防止剤条件当たり、1スパイキング当たり、及び1時点当たり1バイアル)。
●1処置群を、Met343酸化比を決定するためのLC-MS、RP-HPLC、及びSDS-PAGE操作に割り当てた(処置群#2、1酸化防止剤条件当たり、1スパイキング当たり、及び1時点当たり2バイアル)。
●特定のサブ実験では、1処置群を、モデルタンパク質としてのサブスタンスPと共に製剤内に製剤化し、同時凍結乾燥した(処置群#3、1酸化防止剤条件当たり、1スパイキング当たり、及び1時点当たり1バイアル)。
●[H2O2]定量の前に、処置群#1のFC lyoを4℃で保存した。
●分析前に、処置群#2及び#3のFC lyoを7D37℃において保存した(強制エージング条件)。
Figure 2021533162
Figure 2021533162
FC液とFC lyoにおけるHRPによるH2O2消費(処置群#1)
上記で示す通り、製剤化期間中に、残留H2O2を異なるステップ(複数)において、第1回目はH2O2スパイキング後4時間経過したFC liqステップにおいて、及びFC lyo (4℃で10D保存した後)においては復元媒体として150mMのNaClを使用して定量した。7D37℃保存後には定量を行わなかった(これまでの実験において、このような保存条件下ではH2O2を見出すことはできなかったため(データ示さず))。
LC-EIC-MSによるモデルタンパク質としてのサブスタンスPの酸化比(処置群#3)
サブスタンスP (SP)は、タキキニンペプチドファミリーの11個のアミノ酸(ウンデカペプチド)からなる小型の神経ペプチドである。サブスタンスPの配列は、Arg-Pro-Lys- Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Metであり、本明細書では
配列番号9 RPKPQQFFGLM
と表す。
サブスタンスPを、単一のMETアミノ酸を有する易酸化性のモデルタンパク質としてこのサブ実験で使用した。ペプチドのサイズが小さいこと、及びその場所がペプチドのN末端領域内にあることから、MET残基は自由に接近可能である。
SPの酸化比を数値化することができる直接的な方法、すなわちLC/UV-MS検出法を使用する抽出イオンクロマトグラフィー(EIC)を使用した。
この処置群では、サンプルの製剤化を、選択された酸化防止剤、RSV PreF2抗原、及び1バイアル当たり6.25μgのSPを含有する異なる製剤を用いて、バイアル内で直接実施した。これは、SPに由来する総METがRSV PreF2に由来する総METと等量であることを保証する(いずれの条件も3.5nmol)。次に、サンプルを上記したスパイキング/凍結乾燥に付し、そして分析前に7D37℃で保存した。
LC-MSによるMet343酸化比(処置群#2)
処置群#1及び処置群#3の結果に基づきサンプルを選択する際に、FC lyoに含まれるRSV PreF2のMet343残基の酸化比をLC-MSにより評価した。処置群#2のFC lyoを、分析前に7D37℃の強制エージング条件で保存した。非スパイキングサンプルをコントロールとして使用した。
RP-HPLCによる純度に対する影響(処置群#2')
最良結果(Met343酸化比が最低)を示した酸化防止剤を、次にRP-HPLCによるFC lyo分析用として選択した。下記事項を評価するために、0μMと27μMにおいてH2O2スパイキングに付されたサンプルを用いてこれを実施した:
●クロマトグラムに対する視覚的影響
●純度値に対する影響(メインピークの積分値と全ピークの合計との比)
これを、SDS-PAGEによる特徴付けと並行して実施した(同一処置群、同一サンプル)。
SDS-PAGEによる立体構造に対する影響(処置群#2')
記載される通り、LC-MS結果に基づき、最も有効な酸化防止剤のみを含むFC lyoについて、製剤への酸化防止剤の添加がRSV PreF2立体構造に対する影響を有するか立証するために、非還元及び還元条件においてSDS-PAGEにより分析した。これを1μgの析出タンパク質及び銀染色手順を用いて実施した。
結果:
RSV PreF2抗原に対する過酸化水素の効果:
図1は、以下に示すような代表的RP-HPLCクロマトグラムを表す:
図1a: 0μMスパイクについて4℃保存と14D37℃保存との間で取得したが、これらの保存条件は、過酸化水素に曝露されないサンプルにおいてはプロファイルの改変を引き起こさないことを示している。
図1b: 0μMスパイク、13.4μMスパイク、26.8μMスパイク、83.8μMスパイク、167.6μMスパイク、及び1676μMスパイクについて取得したが、7D4℃保存後のFC lyoは、過酸化水素のスパイク濃度に依存してプロファイルの改変を示した。
酸化防止剤の効力及び立体構造に対する影響
酸化防止剤存在下でのH2O2消費(処置群#1)
図2は、スパイキング後4時間経過したFC液における、並びに168及び27μMのH2O2スパイキング後、異なる酸化防止剤が存在する/しない場合で4℃保存した後のFC lyoにおける[H2O2]の進展を示す。
図2に示すように、このステップにおいて、選択された異なる賦形剤について、その酸化防止剤の効力を比較するために、FC lyoを製造した。RSV PreF2抗原を含むFB製剤に添加された、異なる12の酸化防止剤条件(酸化防止剤を含まない1条件、及び異なる2濃度のMETを含む)が存在したが、それには、次に0、27、及び168μMのH2O2をそれぞれスパイキングした。
図2に示すように、製剤中に酸化防止剤が存在しない場合:
●スパイキング後4時間経過して見出されるH2O2の量は、分析のばらつきを考慮すれば、最初にスパイキングした量と同一であった。
●同様の観察が、より低い(27μM)及びより高い(168μM) H2O2スパイクについてなされた。
●凍結乾燥後、H2O2含有量について約75%の減少が、復元されたワクチン(RV)に認められた(Fc lyoを10D4℃保存した後評価した)。
●匹敵する比が、より低い及びより高いH2O2スパイクについて認められた。
●注記:これまでの実験(結果は示さない)から、37℃で7日間保存した後、残留H2O2はFC lyo中にほとんど見出されなかったことが判明している。
いくつかの酸化防止剤(MET、NAC、GSH、アスコルビン酸、L-シスチン)が存在する場合、凍結乾燥後に見出されたH2O2量(FC lyoの棒グラフは1.25倍の希釈係数を考慮して調整済み)は、酸化防止剤を含まないコントロール群内のH2O2量よりも低かった。
50mMの最高濃度におけるMET及び5mMのNACの場合、H2O2の完全消費が凍結乾燥ステップ前にすでに観察された。
5mMの最低濃度におけるMET及び2.5mMのL-シスチンの場合、H2O2の部分的消費が凍結乾燥ステップ前にすでに観察された。
これは、FC液では、凍結乾燥(重要な低温濃縮ステップを誘起することが公知である)を実施する前の4時間という短いタイムフレームにおいて、MET、NAC、及びL-シスチンはH2O2を消費するのに十分強力であったことを示唆する。
いくつかのサンプル(すなわち、CYS)は、スパイキング後、スパイキングした量よりも高いH2O2含有量を示したが、それは分析テストの妨害により説明された(結果はこのステップにおいて考慮されなかった)。更に、酸化防止剤を含有するがH2O2でスパイキングしなかったサンプルを使用するブランクの吸収の分析(データ示さず)では、FC liq中にいくつかの酸化防止剤が存在し、それが非常に高いブランク吸収を引き起こした可能性があることが明らかとなった。これは、校正曲線は酸化防止剤を含まないRSV PreF2バッファー中で稀釈されたH2O2標準からすべて得られたことを特に考慮すれば、これらのサンプルの分析は信頼性がないことを示している。特に、クエン酸3Na及びL-シスチンについて取得された結果は、このステップにおいて廃棄された。
結論:
●5つの候補を、H2O2による酸化からRSV PreF2を保護するその効力に基づき選択し、以下のようにクラス分けした:NAC 5mM = MET 50mM = GSH 5mM > MET 5mM≒アスコルビン酸。
●これらの実験条件において、HIS及びMSGについて、陰性コントロールからの改善は観察できなかった。
●分析上の妨害(ブランク吸収が高いこと)により、CYS、クエン酸3Na、及びL-シスチンについて、結果の信頼性が乏しいと考えられた。
LC/UV-MSにより評価されたモデルタンパク質としてのサブスタンスPの酸化比
サブスタンスP及び12の酸化防止剤条件(酸化防止剤を含まない1条件、及び異なる2濃度のMETを含む)を、FB製剤に添加し、RSV PreF2と同時凍結乾燥し、次に0、27、及び168μMのH2O2でそれぞれスパイキングし、次に4時間の保持時間後に標準的な45時間凍結乾燥サイクルを使用して凍結乾燥した。次に、FC lyoを7D37℃の強制エージング条件下で保存し、そしてLC/UV-MSにより分析してSP酸化比を数値化した。
この実験結果(図3)より明らかなこととして下記事項が挙げられる:
●FB製剤中に酸化防止剤が存在しなければ、SPは、
〇0μMスパイキングしたとき、5.4%のSP酸化
〇27μMスパイキングしたとき、48.6%のSP酸化
〇168μMスパイキングしたとき、86.9%のSP酸化
の酸化比を有した。
●HIS 50mM及びMSG 50mMは、スパイキングしたH2O2に起因する酸化に対するSPの保護において無効であった。
●EDTA 5mM、クエン酸3Na 30mM、アスコルビン酸30mM、及びL-シスチン2.5mMは、スパイキングしたH2O2に起因する酸化に対して部分的な酸化防止剤効力を示した。
●MET 5及び50mM、NAC 5mM、GSH 5mM、及びCys 50mMは、スパイキングしたH2O2に起因する酸化に対して非常に高度な保護を示した。
●0μMスパイキング(H2O2無し)の場合:製剤/充填/凍結乾燥プロセスは、非スパイキングサンプルにおいてSPのベースライン酸化を引き起こすが(5.4%の酸化)、FB製剤中に最も強力な酸化防止剤を添加することにより防止可能であると思われる:
〇MET 5及び50mM:1.08及び1.24%のSP酸化
〇NAC 5mM:1.73%のSP酸化
〇GSH 5mM: 2.12%のSP酸化
〇CYS 50mM: 1.24%のSP酸化
〇L-シスチン 2.5mM: 1.58%のSP酸化
●27μM H2O2スパイキングの場合、最も強力な酸化防止剤を添加すると、陰性コントロールのSP酸化48.6%から下記のようにSP酸化を防止した:
〇MET 5及び50mM: 3.08及び1.73%のSP酸化
〇NAC 5mM: 2.69%のSP酸化
〇GSH 5mM: 2.49%のSP酸化
〇CYS 50mM: 1.29%のSP酸化
〇L-Cys 2.5mM: 6.53%のSP酸化
●168μM H2O2スパイキングの場合、最も強力な酸化防止剤を添加すると、陰性コントロールのSP酸化86.9%から下記のようにSP酸化を防止した:
〇MET 5及び50mM: 7.37及び3.42%のSP酸化
〇NAC 5mM: 5.11%のSP酸化
〇GSH 5mM: 2.98%のSP酸化
〇CYS 50mM: 1.26%のSP酸化
L-シスチンは、このスパイキングにおいてはSP酸化を十分に防止しなかった(56%のSP酸化)。
アスコルビン酸 30mMは、様々な結果、つまり、0μMスパイキングにおけるSP酸化の増加(17.8%)、並びに27及び168μMスパイキングにおいても匹敵するレベル(19.4及び19.1%のSP酸化)をもたらしたが、これは分析上の妨害により、又は平衡状態に至ったときの可逆的酸化プロセスにより引き起こされた可能性があり、この賦形剤の酸化防止剤特性及び酸化促進剤特性の両方を表している。
結論として、SP酸化に対するその効力に基づき、下記の酸化防止剤が選択され得る:CYS 50mM > MET 50mM > GSH 5mM > NAC 5mM > MET 5mM。
この分類は、H2O2含有量の進展に関して取得されたこれまでの結果(但し、HRP分析法を妨害することからこれまでに除外されたCYSを除く)を確認する。
アスコルビン酸については、両方法を用いて観察された結果は分析上の妨害によりもたらされた結果であり得るので、スクリーニングにおいて更に維持された。
LC-MSにより評価された酸化(Met343 Ox比)
これまでの観察に基づき、より代表的な条件の27μM H2O2においてスパイキングされたMET 50mM、MET 5mM、NAC 5mM、GSH 5mM、アスコルビン酸30mMのみを0μMスパイクに対して分析した。FC lyoを7D37℃の強制エージング条件下で保存した。
図4に示すスクリーニングより明らかなこととして下記事項が挙げられる:
●0μMスパイキング(H2O2無し)の場合:製剤/充填/凍結乾燥プロセスは、非スパイキングサンプルにおいてRSV PreF2のベースライン酸化を引き起こすが(1.99%の酸化)、FB製剤中に最も強力な酸化防止剤を添加することにより防止可能であると思われた:
〇MET 5及び50mM: 1.01及び1.06% Met343 Ox
〇NAC 5mM: 1.02%のSP酸化
〇GSH 5mM: 1.04%のSP酸化
〇CYS 50mM: 1.12%のSP酸化
●27μM H2O2スパイキングの場合、最も強力な酸化防止剤を添加すると、陰性コントロールの27.17% Met343酸化から下記のようにRSV PreF2酸化を防止した:
〇MET 5及び50mM: 1.37及び1.16%のSP酸化
〇NAC 5mM: 1.2%のSP酸化
〇GSH 5mM: 1.01%のSP酸化
〇CYS 50mM: 1.16%のSP酸化
●MET 50及び5mM、NAC 5mM、GSH 5mM、並びにCYS 50mMは、H2O2の27μMスパイクに起因するRSV preF2酸化に対して保護性である。
●下記事項が明らかとなったことから、実験はアスコルビン酸30mMが酸化防止剤特性と酸化促進剤特性の両方を有することを確認した:
〇0μM H2O2スパイクに対して、Met343 Ox比は陰性コントロールよりも高い(3.54% Met343 Ox)
〇27μM H2O2スパイクに対して、Met343 Ox比は陽性コントロールよりも低い(3.54% Met343 Ox)
●製剤化/充填/凍結乾燥プロセスに関連する酸化(例えば空気による酸化)は、酸化防止剤の添加により防止可能であることも確認した(酸化防止剤を含まない0μMスパイクの1.99% Met343 Ox比に対して、最も強力な酸化防止剤を含む0μMスパイク後の±1.0%)。
留意すべき点として、このアッセイ法は破壊的であり、したがって酵素消化に起因する特定ペプチド(すなわち、IMTSKペプチド)の酸化されたメチオニン比を数値化できるに過ぎないことが挙げられる。したがって、このアッセイ法は、全体的なRSV PreF2構造に対する酸化の影響又は酸化防止剤添加の影響に関する情報をもたらさなかった。
酸化及びRP-HPLCクロマトグラムに与える影響
RSV PreF2酸化が高分解能RP-HPLCによる純度のリードアウトに影響を及ぼすか、またその酸化は、酸化防止剤を使用することにより回避可能であるか確認するために、LC-MS (Met343 Ox比)により分析した条件と同一の条件をRP-HPLCにより分析した。FC lyoを、7D37℃の強制エージング条件下で保存した。クロマトグラムを図5〜9に示し、そして以下で考察する。このリードアウトについて異なる潜在的酸化防止剤を比較する結果を図10に示す。
基底状態の非スパイキングプロファイル(黒色)、及び27μMスパイキングプロファイル(薄い灰色)を有するクロマトグラムの定性的分析を図5〜9に示す。この分析は、0μMスパイキング陰性コントロールと比較して、27μMスパイキングのプロファイルに対する特筆すべき影響を明らかにする。
酸化防止剤条件は下記事項を明らかにした:
●NAC 5mM (図5)及びGSH 5mM (図6)は、0μMのH2O2でスパイキングした場合、RSV PreF2に対する酸化防止剤添加の影響を示さなかったが、27μMのH2O2でスパイキングした場合、非常に良好な保護を示した。
●CYS 50mM (図7)は、13〜15分の間で溶出した新規の小さい親水性ピークの出現を示したが、総じて、0μMのH2O2でスパイキングした場合、RSV PreF2に対する酸化防止剤添加の影響はほとんどなかったが、27μMのH2O2スパイキング後、メインピークを非常に良好に保護する能力を示した。
●アスコルビン酸30mM (図8)は様々な結果を示し、0μM H2O2のとき非常に高い影響を有し、また27μM H2O2スパイキング存在下では改善をもたらした。これはこの酸化防止剤の両向的挙動を確認する。
●0μM H2O2でスパイキングした場合、MET 5及び50mM (図9a及び図9b)はRSV PreF2に対する酸化防止剤添加の影響を示さなかったが、27μM H2O2でスパイキングした場合、非常に良好な保護を示した。
クロマトグラム内のメインピーク積分値と全ピークの積分値との比として求められる純度の分析を図10に提示するが、FBステップにおいて0又は27μMのH2O2を用いてスパイキングしたFC lyoでは、選択された酸化防止剤に関して、RP-HPLCにより得られたRSV PreF2純度に進展が見られた。
27μM H2O2スパイクの影響に起因して、純度は89.4%から73.1%に低下するが、製剤中に最も強力な酸化防止剤(NAC 5mM、GSH 5mM、CYS 50mM、MET 5mM、及び50mM)を添加することで、高純度のRSV PreF2抗原(> 88.0%)を維持することができることが明らかとなった。アスコルビン酸 30mMは改めて様々な結果を示し、H2O2が存在しなければ酸化促進剤活性を有し、また27μM H2O2スパイク存在下では保護効果を有した。
留意すべき点として、このアッセイは変性及び還元条件(ドデシル硫酸ナトリウムSDS 1%、ジチオスレイトールDTT 32mM)においてサンプル調製した後に実施され、したがってタンパク質の四次又は三次構造に対する変化を検出できなかったことが挙げられる。
SDS-PAGEによる立体構造に対する影響
RP-HPLCについて選択されたサンプルと同一のサンプルを、還元剤としてβ-メルカプトエタノール及び検出用として銀染色を使用して、SDS-PAGEにより還元条件及び非還元条件で分析した。更に、酸化の影響を、内部コントロール(DS、FC (FBステップにおいて0、27、及び168μM H2O2でスパイキングした)、ウェル#1〜#4及び#11〜#14)を使用して評価した。DS (ウェル#1)を除くすべてのFC lyoサンプルを、分析前に7D37℃の強制エージングに付した。
図11及び図12に示すように、27及び168μM H2O2スパイキングは、FC lyo内RSV PreF2の酸化に対して目視可能な影響を示さなかった。その結果として、非還元条件及び還元条件でのSDS-PAGEに対する更なる影響は、酸化防止剤を添加した際のタンパク質構造における改変と関係するにすぎず、RSV PreF2の酸化とは関係しないと考えられる。
NAC 5mM (ウェル#5及び#6)、GSH 5mM (ウェル#7及び#8)、及びCYS 50mM (ウェル#9及び#10)は、還元条件において目視可能な影響を示さなかった(図11)。しかしながら、非還元条件において(図12)、約150kDa〜約120kDa領域のより高次の構造の分子量減少が明確に観察された。タンパク質サブユニットに関して、明らかな改変が目視可能であり、コントロールに認められるような約70kDaにおけるオリジナルのメインピークが、H2O2曝露に関わらず、約50kDa〜約40kDaの間の2つのピークに分裂した。
スクリーニングされたチオールベース(R-S-H)の酸化防止剤(NAC、GSH、CYS)のいずれも、非還元条件で得られた天然のSDS-PAGEプロファイルについて明白な改変を示し、非還元条件において観察されたプロファイルに匹敵するプロファイルを有した。すなわち、酸化防止剤は還元性の種であり、また製剤中に強い還元特性を有するチオールが存在すれば、その存在は、したがって天然のRSV PreF2タンパク質内のジスルフィド結合の変更に関与し得る。脱プロトン化したチオール(チオレート)は公知の求核試薬であり、また条件(pKa、求核性)に応じて、多くの場合既存のジスルフィド結合への攻撃を引き起こす。
アスコルビン酸30mM (ウェル#15及び#16)は、還元条件及び非還元条件の両方において匹敵する改変を示した。いずれの条件でも、より高次の構造に関連する約150kDaのピークは、コントロールに認められるピークよりも強いようにみえる。移動したピークの分子量に関して、改変を認めることはできない。H2O2条件に曝露された製剤と曝露されなかった製剤間で、影響は観察できない。
メチオニン5及び50mM (それぞれウェル#17及び#18及び#19及び#20)は、移動したピークの分子量について、またピーク強度についても改変を示さない、評価対象とされた唯一の酸化防止剤であった。酸化の影響もやはり観察できなかった。
結論として、SDS-PAGEにより分析されたRSV PreF2構造は、強い還元剤であるチオールベースの酸化防止剤(NAC、GSH、CYS)の存在により影響を受けた。それらの酸化防止剤は立体構造及びおそらくは抗原の免疫原性プロファイルを変化させるので、その使用は、したがってRSV PreF2製剤において許容されない。それほど反応性ではないチオエーテル酸化防止剤であるメチオニンが最良のアプローチであった。
結論:
メチオニンは、RSV PreF2にとって、残留VHPによる酸化及び凍結乾燥期間中の空気による酸化に対抗する最も好適な酸化防止剤である。メチオニンは下記のような更なる長所を有する:
●不活性成分としてFDAより承認されている。
●市販されている注射可能な製品中に最高15mMの濃度で存在する。
●その毒性について十分に特徴付けがなされている
〇アミノ酸であるので、その毒性は本質的に低い。
〇非常に低い急性毒性(LD50が高い)及び慢性毒性(有害効果が認められないレベルが高い)を有することが明らかである。
●FB中5及び50mMの濃度(RV中では4及び40μM)の残留VHPを代表するH2O2スパイクに対して強力な酸化防止剤活性を示した。
〇直接H2O2消費(FB中及びFC lyo中)を通じて
〇直接測定を通じて
◆モデルタンパク質(SP)において
◆メチオニン酸化により、RSV preF2において
◆RP-HPLCにより観察されるクロマトグラフィープロファイルの保護により、RSV preF2において
●スクリーニングの対象とされたその他のすべての酸化防止剤とは異なり、SDS-PAGEにより評価されたタンパク質の高次構造に対して影響を示さなかった。
RSV PreF2製剤において理想的な酸化防止剤の濃度を選択するために、異なる濃度のH2O2スパイキング及び最終的にVHPを使用して、用量定義試験を実施した(実施例2を参照)。
[実施例2]-酸化に対してRSV PreF2を保護するための最適メチオニン濃度を決定するための用量範囲探索試験
緒言
最も適する酸化防止剤がMETと決定された実施例1に続いて、本実験は、用量範囲探索試験とその後の残留VHP曝露を模倣するHPスパイキングを含む代表的なプロセスを通じて、RSV PreF2のFB製剤に添加すべき最良濃度を決定することに重点が置かれた。
方法
製剤化
テストしたRSV PreF2量は下記の通りであった:
●低抗原用量LD (実施例1に同じ)
●中抗原用量MD (低用量よりも2倍高い)
●高抗原用量HD (低用量よりも5倍高い)
製剤中に含まれた賦形剤は、実施例1の場合と同一の組成物及び割合であった。
この実施例でテストした最終バルクワクチン中のMET量は下記の範囲であった:
●5μM H2O2で最終的にスパイキングされたサンプルの製造用として0 / 0.05 / 0.075 / 0.1 / 0.125 / 0.150 / 0.175 / 0.2mM。
●44μM H2O2で最終的にスパイキングされたサンプルの製造用として0 / 0.25 / 0.5 / 0.625 / 0.75 / 0.875 / 1mM。
●0μM H2O2でスパイキングされたサンプル(ブランク製造)用として0 / 0.125 / 0.875mM。
実施例1と同じ製造及び評価プロセスを実施した(酸化防止剤、スパイキングを含む/含まないRSV PreF2FBの製剤化、4時間の保持時間、実施例1と同じ45時間の凍結乾燥サイクル、7D37℃の強制エージング下でのFC保存)。
この用量範囲探索試験においてスパイキングされたH2O2に関して、下記の表3に示すようにスパイキング用のH2O2濃度は、より広いマージンが含まれるように増加された一方、より低い0.1ppm残留VHPを代表するより低いH2O2濃度にも設定された。
Figure 2021533162
保存
凍結乾燥した後、FCを、4℃において又は安定性試験を加速させるために37℃で7日間保存した。Met343 Ox及びRP-HPLCにより、この期間は酸化のプラトーに到達するのに十分であることが証明済みである。
分析
製造されたFC lyoについて実施した分析は、酸化に関係する分析に限定された。実施例1において、タンパク質構造に対する影響は酸化又はMETの添加からは観察できなかったことを考慮しながら、この分析を実施した。
実施した分析は下記の通りであった:
●H2O2の定量: RSV PreF2中用量におけるFC 4℃のみ
●RP-HPLC (純度):スクリーニングツールとして全サンプル
●LC-MS (Met343 Ox): RP-HPLC結果に基づくサンプルの選択(LC-MSのスループット上の制約)
基底の酸化レベルにあるコントロールの数を増加させるために、追加の測定(原薬の基底の純度及び酸化)をこの実験中に実施した。
結果
4℃で保存したFC lyo中のHP含有量
図13は、5μMスパイクの場合においてMET添加がFC lyo中のH2O2含有量に及ぼす効果のグラフ表現を示す。
0.1ppm VHPへの曝露を代表する5μM H2O2でスパイキングしたサンプルの場合:
●遊離METを含まないサンプルに限りH2O2が検出され、しかも定量されたレベルは非常に低かった。
●0.05mMで開始したMETレベルにおいて、残留H2O2は見出されなかった一方、0mM METを含有するFCにおいて、20%の平均残留H2O2 (FBにスパイキングされたH2O2とFC lyo中で測定されたH2O2の間の割合)が定量された。
図14は、44μMスパイクの場合に、MET添加がFC lyo中のH2O2含有量に及ぼす効果のグラフ表現を示す。
1.0ppm VHPへの曝露を代表する44μM H2O2でスパイキングしたサンプルの場合:
●44μM H2O2スパイキング後、0.25mM METが存在する場合に限りH2O2が検出され、FC lyoステップにおいて0.29μM H2O2が検出された。これは、スパイキングされた濃度由来のH2O2含有量において99.3%の低下に等しい(METが存在しない場合には、同じステップにおける低下はより低く73.6%である)。
●テストされたより高いMET濃度(0.5mM以上)では、FC lyo中にH2O2は見出されなかった(H2O2含有量はスパイキング濃度から100%低下した)
結論として:下記のような最低濃度であってもMETが存在すれば、H2O2はFC lyoから完全に取り除かれた:
●0.05mMの濃度(FBが5μM H2O2でスパイキングされた場合)
●0.5mM METの開始濃度(FBが44μM H2O2でスパイキングされた場合)
RP-HPLCによる純度
実施例1の方法と同じ方法に従い、この実施例で使用される原薬ロットの純度を、基底酸化レベルの参照値を規定するのに使用した。DSの純度は91.77%の数値に設定された(n=1)。参考までに、取得されたクロマトグラムを図15に示す。
これに、4℃及び7D37℃保存後のFC lyoにおけるRSV PreF2のRP-HPLCによる純度分析が後続し、下記事項が明らかとなった:
●RSV PreF2用量(低用量と中用量と高用量)は、METが存在せず、44又は5μM H2O2スパイキング後のFC lyoステップにおいて測定された純度に影響を及ぼさなかったが、また主要な数値は下記の通りであった:
〇44μM H2O2スパイキング後の7D37℃における純度レベル、50〜60%
〇5μM H2O2スパイキング後の7D37℃における純度レベル、80〜85%
〇それに対して、DS及び非スパイクFCにおける値は92%
●酸化は、通常の保存条件下、FC lyo中においては比較的遅いプロセスであるので、4℃で非常に短期間(< 10D)保存した後の純度レベルは大きな影響を受けなかった。
●44μM H2O2スパイクの場合、METのレベルが0.625mM〜0.75mMの間で含まれるときに純度は回復したが、必要とされるMETのレベルはRSV PreF2用量とは無関係であった。
●5μM H2O2スパイクの場合、METのレベルが0.075mMのときに純度は回復したが、また必要とされるMETのレベルはRSV PreF2用量とは無関係であった。
●これはH2O2スパイキング濃度とRSV PreF2純度を制御するためにFBで必要とされるMET濃度との間に直線関係が成り立つ可能性を示している。
図16は、濃度を漸増させながらMETを共存させ、そしてFBステップにおいて実行された5及び44μM H2O2スパイキング後に、4℃及び7D37℃で保存したFC lyo中のRSV PreF2純度の進展を示す。
結論として、この実施例において、44μM H2O2スパイクに対してMETが少なくとも0.625mMのレベルであることが、抗原用量に関わらず純度を制御するのにふさわしいと思われた。この実施例において、RP-HPLCにより、5μM H2O2スパイクに対してMETが少なくとも0.075のレベルであることが純度を制御するのにふさわしいと思われた。
LC-MSによるMet343 Ox比
図17は、H2O2をスパイキングした際の(FBステップにおいて)メチオニン濃度に関連して、FCのMet343 Ox比の進展を示す。
RSV PreF2抗原のMet343 Ox比を決定するためのLC-MSにより実施した分析(実施例1の場合と同様に実施した)から、下記事項が明らかとなった:
●この実施例で使用したDSロットは、2.4% RSV preF2 Met343 Oxの天然酸化比を示した。
●LDにおけるRSV preF2のDSと同一のDSに基づき、但し0μMの水でスパイキングされた参照FCは、4.6% Met343 Oxの酸化比を示した(参照DSロットに対して1.9倍の増加)。
●44μMのH2O2でスパイキングされ、そして0mM METを含有するサンプルは、基底の40.2% RSV preF2 Met343 Oxを示した(非スパイキング参照FCに対して8.7倍の増加)。
●H2O2曝露前に0.75mM METをFB製剤に添加すると(純度に対する影響を制御するのに十分であることが明らかな量)、RSV preF2 Met343 Oxは、6.1% RSV preF2 Met343 Oxまで低下した(非スパイキング参照FCに対して1.3倍の増加)。
●MET濃度を更に増加させると(0.875及び1.0mM)、RSV preF2 Met343 Ox比は、それぞれ5.7及び5.7%まで更に低下した(非スパイキング参照FCに対して1.2倍の増加)。
●凍結乾燥プロセスにのみ関係する抗原の酸化(DSロットと非スパイキングFCとの間のMet343 Oxレベルに増加)は、0.875μMのMET添加により完全に制御された-酸化防止剤の添加は、H2O2が存在しない場合でも有効であることを示している。
ところで、これまでの実験から得られたデータを用いて、下記事項が明らかとなった:
●44μMスパイク及びより高いMET濃度(2.0mM)を用いると、Met343 Ox比は継続して減少し(3.6%)、また非スパイキングFC値の酸化値(この場合3.3%)に到達可能であった。しかしながら、このようなMETレベルを使用しても、製剤化するのに使用したDSのMet343 Oxレベル(2.4%)には到達しなかったが、しかし用量範囲の数学的予測(図18)では、Met343 Oxレベルを1.5%に制御してDSロットの酸化レベルに戻すのに、6mM METで十分であることが明らかとなった。
一般的結論
LC-MSにより評価された酸化から、RP-HPLCにおいて決定され得る濃度よりも高いMET濃度を必要とすることが示唆された。後者は、直線関係が純度の制御に適用可能と思われることを示唆したが、LC-MSにより評価された酸化の場合、該方法は酸化に対してはるかに高感度且つ特異的であるので、そうではなかった。この場合、MET添加の有効性において飽和現象が認められ、また図表予測は指数減衰(power decay)に従うと思われ、より高いMET添加(必要とされる酸化制御レベルに応じて2〜13mMの間で含まれる)が推測される。
最終コンテナワクチンの酸化比は、オリジナルの原薬の酸化比と直接関係した。更に、データから、H2O2が存在しなくても酸化は凍結乾燥期間中に起きたこと、及びこの現象はMETの添加により制御可能であることが判明した。
[実施例3] -タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物用の酸化防止剤
タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物中に存在する抗原のVHPによる酸化に対する感受性を評価した。
タンパク質D中のメチオニンは酸化に対して敏感であり、またタンパク質Dではメチオニン192が特に敏感であることが下記の実験において実証された。
最初の実験は、0、150、800、1300、及び5000ng/mLの濃度範囲の液体H2O2でスパイキングすることから構成された。H2O2でスパイキングされなかった(0ng/mL)ワクチンバッチは参照に相当し、非ストレス、非酸化状態の参照サンプルを生成する。150及び1300ng/mLでスパイキングされたサンプルは、アイソレーター内で0.1及び1ppm v/v VHPにおいて製造する場合の曝露をそれぞれ代表する。生成したサンプルは、次にフリーズドライ化され、そして25℃、37℃、及び45℃での加速式安定性実験プラン及び4℃でのリアルタイム安定性実験に提供された。
H2O2スパイキングの影響を、異なる加速式安定性実験後に分析テストを実施することにより評価した。タンパク質Dが、マススペクトロメトリーにより実証されるように、酸化に対して最も敏感な抗原であることが判明した。酸化されたメチオニンの割合(%)が高いことが観察され、また分子量シフトが、SDS pageにより、及びRP-HPLCクロマトグラムにおいて観察された。酸化Met192レベルに対するH2O2レベルの明確な影響が観察され、H2O2の量が多いほど、より多くのMet192が酸化された。M192酸化に基づいて相関関係を立証し、タンパク質Dのその他のメチオニンの酸化レベルを決定することができると考えられ、したがってM192を酸化に対するプローブとして使用した。更に、製造における0.1ppm v/vと同等のストレスであっても、M192の酸化が生じることが実証された。
結果を以下の図19〜21に示す。
図19は、異なる温度における0及び1300ng/mL H2O2について、経時的なタンパク質D Met192酸化に関するマススペクトロメトリー結果を示す。45℃において7日後、±55%の酸化に達する。
図20は、1300ng/mL H2O2により酸化され、45℃において3日間保存されたタンパク質D、及び4℃で保存された非スパイキングタンパク質DのRP-HPLCクロマトグラムを示す。
図21は、酸化された/されない、4℃で保存、37℃で15日間保存、及び45℃で7日間保存されたサンプルについて、SDS-PAGEにより非還元条件で取得された抗原プロファイルを示す。レーン4、6、及び8は、タンパク質Dプロファイルに対する酸化ストレスの影響を示す。
酸化防止剤の評価
酸化防止剤を使用すれば、製造スケールにおいて遭遇するVHP酸化ストレスによりタンパク質Dが酸化するのを防止し得るか解明し、またそうであるならば、どの酸化防止剤が最も好適か決定するように、実験を設計した。
繰り返しになるが、三価ワクチンをH2O2でスパイキングし(又はスパイキングせず)、次にフリーズドライ化した。L-メチオニン又はシステインを含む/含まない製剤をテストした。製剤は、フリーズドライ化する前に、50mMのL-メチオニン又は30mMのシステインを含有した。
SDS-PAGE、疎水性バリアントRP-HPLC (RP-HPLCによる純度とも呼ばれる場合がある)、及びマススペクトロメトリーを、酸化防止剤として50mMメチオニン若しくは30mMシステインを含有する、又は酸化防止剤を全く含有しない、酸化及び非酸化サンプルについて37℃で2ヶ月後に実施した。結果を図22、23、及び24に示す。
非還元条件でSDS-PAGEにより取得された抗原プロファイルを図24に示す。サンプルをH2O2でスパイキングした場合、システイン及びメチオニンのいずれもタンパク質Dの分子量シフトを阻止した。30mMシステインが存在する場合、PE-PilAのプロファイルの改変が観察された。これは、H2O2でスパイキングされたサンプル及びH2O2でスパイキングされなかったサンプルの両方に当てはまった。メチオニンが存在する場合、3抗原についてプロファイルの改変は観察されなかった。
疎水性バリアントRP-HPLCでは、メチオニンが存在した場合、非酸化参照サンプルと比較して3抗原についてプロファイルの改変は観察されなかった。システインでは、酸化ピークは観察されなかったが、H2O2がスパイキングされたコントロールサンプルと同様に、タンパク質Dメインピーク面積の減少が認められた。タンパク質Dに関するRP-HPLCクロマトグラムを図23に示す。
マススペクトロメトリーによる%メチオニン酸化では、酸化防止剤の添加は、タンパク質Dに対する酸化を防止するという明確な有効性を有した。メチオニンが存在する場合の酸化レベルは、システインが存在する場合の酸化レベルよりもわずかに低かった。H2O2、システイン又はメチオニンが存在する場合、PE-PilA又はUspA2について酸化の有意な増加は観察されなかった。タンパク質Dに関する結果のみを図22に示す。図22において、50mMのメチオニンを含むサンプルに関する60日目の結果は、30mMのシステインを含むサンプルに関して60日目の結果を表すドットに隠れて見えないことに留意すること。
これらの結果に基づき、タンパク質D、UspA2、及びPE-PilAを含む本ワクチンにおいて、H2O2媒介式の酸化に対して保護する最も好適な酸化防止剤としてメチオニンが特定された。したがって、メチオニン用量範囲探索実験を実施して、酸化を防止するのに十分である正確なメチオニン濃度を決定した。
[実施例4] - 酸化に対するタンパク質Dの保護を目的として最適メチオニン濃度を決定する用量範囲探索試験
この実施例は、タンパク質Dの酸化を回避するための最適なL-メチオニン濃度を定義するために生成されたRP-HPLC及びマススペクトロメトリーデータを示す。
酸化防止剤としてのL-メチオニンの最適濃度を、タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有し、異なる濃度のL-Metを含有する組成物中に、1mL当たり1300ngのH2O2をスパイキングすることにより決定した(下記の表4)。その後、医薬品をフリーズドライ化し、そして安定性実験プランに提供した(表5)。
Figure 2021533162
Figure 2021533162
下記のテストを選択した:
●RP-HPLCによる疎水性バリアント:
1条件/1時点当たり3バイアル。稼働時間54分(タンパク質Dに限定)を全サンプルに適用したが、但し稼働時間154分(3抗原に対して)が適用された45℃で15日後のバッチ18COP1401、18COP1402、及び18COP1407を除く。サンプルをサンプルセット内でランダム化した。
●マススペクトロメトリーによるメチオニン酸化(タンパク質DのMet192):
37℃で1ヶ月後のバッチ18COP1401(参照サンプル)、18COP1403 (10mM Metを含む酸化サンプル)、及び18COP1407 (酸化参照サンプル)について6バイアル。37℃及び45℃で7日及び14日後の全サンプルに関するRP-HPLCデータに基づき、10mM L-Metを含有するサンプルをマススペクトロメトリー分析用として選択した。
この実験の主目的は、医薬品を酸化から保護するための酸化防止剤としてのL-Metについて最適濃度を選択することであった。最適濃度のメチオニンは、少なくとも非H2O2スパイキングコントロールサンプルと同程度に良好であるように、H2O2スパイキングサンプルの酸化レベルを保証する。
この範囲を決定するために、第1ステップは、コントロールサンプルと比較して非劣性を実証し得る最低L-Met濃度を見出すことであった。最高用量から開始して最低用量まで減らすことでこれを評価した。この用量を選択するための合否判定基準は、マススペクトロメトリーによる差異マージン6% (すなわち、マススペクトロメトリー測定によるM192酸化において参照から6%以下の偏差を期待した)、又は疎水性バリアントRP-HPLCにおける酸化ピーク表面積に関する等価基準に基づいた。
マススペクトロメトリーによりメチオニン酸化のみを直接測定するだけでなく、またRP-HPLCによっても見積もられた。RP-HPLCによる酸化ピーク1、2、及び3の合計(下記参照)は、M192酸化に対するマススペクトロメトリー測定と良好な相関関係を有することが判明した。更に、ピーク3単独の面積割合(%)は、マススペクトロメトリーと十二分なほどに許容される相関関係を有することが判明した。RP-HPLC方法は、より迅速であり、且つ低酸化値において変動がより小さいという利点を有した。
結果及び考察
RP-HPLCによる疎水性バリアント
純度を考察するのにRP-HPLCを使用した。
図25は、サンプル18COP1407 (0mM L-Met + H2O2)、18COP1402 (5mM L-Met + H2O2)、及び18COP1401 (0mM Met + H2O2無し)について、45℃で2週間後の疎水性バリアントHPLCの154分クロマトグラムを示す。
図26は、サンプル18COP1403 (10mM L-Met + H2O2)について、45℃で2週間後の疎水性バリアントHPLC分クロマトグラムを示す。
図27は、疎水性バリアントRP-HPLC %ピーク3を、酸化防止剤を含まない非酸化サンプル(左側パネル)、異なる濃度でメチオニンを含む酸化サンプル(右側パネル)について示す。
図28は、異なる濃度でメチオニンを含む酸化サンプルの疎水性バリアントRP-HPLC %ピーク3を示す。
図29は、RP-HPLCによるピーク1、2、及び3の面積の合計を示す。
5mM L-Met及びH2O2を含有するサンプル、及びメチオニンを含有せず且つH2O2を含まない参照サンプルについて、45℃で2週間の後、60〜62分付近にピークは観察されなかった(図25)。67分後、これらサンプルの両方について若干の酸化ピークが観察された。但し、ピークは類似した強度を示した。一方、H2O2を含有するがメチオニンを含まないサンプルでは、60分、62分、及び67分付近に、ピーク1、2、及び3とそれぞれ命名された明確なピークが観察された。10mMのメチオニンを含むオーバーレイ(タンパク質Dに注目してクロマトグラフィー測定が実施された)について、45℃で1週間後に同じ観察がなされた。
メチオニンが存在することにより、PE-PilA及びUspA2のプロファイルに変化は観察されなかった(図25)。クロマトグラム上で、38分及び108分付近にPE-PilA及びUspA2をそれぞれ認めることができた。H2O2を含有するがメチオニンを含まないサンプルについて、PE-PilAがH2O2でスパイキングされた場合、約32分付近の小さなピークが、PE-PilA分析ストレステスト試行中にやはり観察された。
45℃で2週間の後、H2O2及び10mMメチオニンを含有するサンプルについて、H2O2及び5mMメチオニンを含有するサンプルの場合(図25)と同様に、タンパク質Dメインピークの前に酸化ピークは観察されなかった(図26)。45℃で1週間の後、H2O2並びに5、10、及び15mMのメチオニンを含有するサンプルのオーバーレイは十分に重なりあい、そしてこれらのサンプルのいずれについても、タンパク質Dメインピークの前に意味のある酸化ピークは観察されなかった(図示せず)。
疎水性バリアントRP-HPLC %ピーク3面積は、全ピーク面積を合算した面積に対するピーク3面積の占める割合(%)として表される。%ピーク3面積は、非スパイキング参照サンプル(0mM Met)の約2%からメチオニンを含まないが1mL当たり1300ngのH2O2でスパイキングされたサンプルの約27%に至る明白な増加を示した(図27を参照)。H2O2でスパイキングされ、5mM又はそれより多くのメチオニンを含有するサンプルでは、疎水性バリアントRP-HPLC %ピーク3面積のそのような増加は観察されなかった。0mM及び5mM L-メチオニン間のRP-HPLC %ピーク3面積の進展は不明であったが、H2O2でスパイキングされたメチオニン非含有サンプルについて約27%の増加が認められたので、いずれにせよ%ピーク3の増加はシャープであったはずであることが指摘された。
更に、メチオニン及びH2O2を含むサンプルにおける%ピーク3面積が、メチオニン非含有及びH2O2スパイキング無しの参照サンプルのそれよりも小さいことが観察された(図28を参照)。これは、製剤、充填、及びフリーズドライ化プロセス期間中、この酸化から保護するメチオニンが製剤中には存在しないので、参照サンプルが若干酸化されたことに起因すると仮定された。メチオニンを含有する(及びH2O2でスパイキングされた)サンプルは、メチオニンの存在に起因してこの処理ステップ期間中の酸化から保護された。これは、H2O2でスパイキングされたメチオニン含有サンプルでは、非スパイキング非メチオニン含有の参照サンプルと比較して、それよりも小さな%ピーク3面積が観察される理由を説明する。
これ以降、ピーク3面積について実施した統計分析の要約を提示する。ピーク2について観察されたシグナルは弱かったので、ピーク3の方がピーク2よりも分析に適することが判明した。1300ng H2O2/mLでスパイキングされたサンプルでは、ピーク3は37℃又は45℃の7日目及び14日目に観察された。群差[処置群-(マイナス)コントロール群]に対する両側標準化漸近的90% CI(2-sided standardized asymptotic 90% CI)の上限は、それぞれ387000及び260000未満[非劣性に対する限界値])であったので、少なくとも5mMのメチオニンを含有したサンプルでは、ピーク3面積に関する結果は非劣性基準に到達した。これは、マススペクトロメトリーにより測定した場合の9%及び6%の許容される差異にそれぞれ相当した。
非劣性基準は、メチオニンが存在しない場合には、1300ng H2O2/mLでスパイキングされたサンプルについて満たされなかった。
液体クロマトグラフィー連結式マススペクトロメトリーによるメチオニン酸化
タンパク質D
図30は、37℃で1ヶ月後のタンパク質D M192酸化の%について、液体クロマトグラフィー連結式マススペクトロメトリーを示す。左側パネルは、H2O2でスパイキングされなかったサンプルを含み、右側パネルでは、サンプルはフリーズドライ化する前に1mL当たり1300ngのH2O2が添加された。エラーバーは95%信頼区間を示す。
図31は、37℃で1ヶ月後のタンパク質D M192酸化の%について、液体クロマトグラフィー連結式マススペクトロメトリーを示す。左側パネルは、H2O2でスパイキングされなかったサンプルを含み、右側パネルでは、サンプルはフリーズドライ化する前に1mL当たり1300ngのH2O2が添加され、そして10mMのメチオニンを含有した。エラーバーは95%信頼区間を示す。
タンパク質Dメチオニン192 (M192)に関するマススペクトロメトリーデータを図30に示す。H2O2でスパイキングされず、メチオニンを含有しないサンプルでは、M192酸化レベルが非常に限定的であることが明らかになった一方、H2O2でスパイキングされた、メチオニン非含有サンプルは、高レベル-約50%のM192酸化を明確に示し、統計的非劣性基準を満たさなかった。10mMのL-Metを含有し、H2O2でスパイキングされたサンプルは、非スパイキング参照よりも低い又はそれに等しい酸化レベルを有した。群差[処置群-(マイナス)コントロール群]に対する両側標準化漸近的90% CIの上限は6%未満[非劣性に対する限界値]であったので、このサンプルは統計的非劣性基準を満たした。疎水性バリアントRP-HPLCに関しては、メチオニンを含有するサンプルでは、非スパイキング非メチオニン含有サンプルと比較して、酸化はそれよりもわずかに少ないと思われる(図31)。この観察に対する可能な説明は、上記したRP-HPLC結果の考察に提示されている。
PE-PilA
PE-PilA M215酸化では、37℃で30日後に観察された酸化レベルは、テストされた全サンプルについて同一範囲内に収まった(データ示さず)。H2O2がスパイキングされない参照と10mMメチオニンを含有するH2O2スパイキングサンプルとの間の差異は見出すことができなかった。
UspA2
UspA2 M530酸化の場合、H2O2でスパイキングされず、メチオニンを含有しないサンプルが示すM530酸化レベルは非常に限定的であった(約2%)。H2O2でスパイキングされ、メチオニンを含有しないサンプルは、より高いM530酸化レベル(約8%)を明確に示したが、統計的非劣性基準を確かに満たした。10mMのL-Metを含有し、H2O2でスパイキングされたサンプルは、スパイキングされない参照よりも低い酸化レベルを有した(データ示さず)。
モル数の検討
酸化は化学反応であるので、酸化剤及び酸化防止剤の量をモル数で表してモル比の概念を得ることは興味深い。
モル数で表す反応物質及び試薬の量は下記の通り。
Figure 2021533162
タンパク質Dと比較して63倍過剰のH2O2分子が存在することがわかる。しかしながら、10mMのメチオニンを医薬品に添加した場合、1300ng/mLでスパイキングされたH2O2の1分子毎に263分子のメチオニンが存在する。したがって、メチオニンを添加すれば、H2O2がタンパク質Dと反応する機会は大幅に減少する。
結論
本発明者らは、製造プロセスと等価なプロセスを0.1ppm v/v又は1ppm v/vの気相H2O2に曝露させて実行した場合、タンパク質Dの酸化が観察されたことを明らかにした。また、酸化防止剤、特にL-メチオニン又はシステインを添加すれば、そのような酸化を防止し得ることを実証した。
医薬品に添加されるべきメチオニン濃度を決定する際に、下記のポイントを考慮した。
- [Met]は、製造のフレキシビリティーを保証するために、アイソレーター内の1ppm v/v H2O2プロセスを保護すべきであること
- 10mMのMetは十分な安全マージンを提供し、より低濃度(5mM)におけるデータポイント(RP-HPLCピーク3面積が、未酸化の参照(H2O2のスパイキング無し)を下回ったまま留まる)を実現すること
- 10mMのメチオニンは、高感受性のメチオニンに対するマススペクトロメトリー結果に基づき、タンパク質D、PEPilA、及びUspA2を含有する組成物中に存在する3抗原において、良好な対酸化保護を実証したこと。
-これらの理由から、この実施例ではこのワクチン用として10mM L-Metの濃度を選択したこと
[実施例5]-生存性のベクターワクチンに対する酸化防止剤
ChAd155-RSVアデノウイルスベクターを、商業的充填/移送ラインの衛生化で使用される残留VHPによる酸化の可能性について評価した。
本実施例で使用されるChAd155-RSVベクターは、呼吸系発疹ウイルス由来のF、N、M2構造タンパク質をコードするRSV導入遺伝子を含有する。ChAd155 E1及びそのE4領域のほとんどを欠損させた後、導入遺伝子をアデノウイルスベクターに挿入した。更に、Ad5 E1領域を発現するヒトパッケージング細胞系におけるChAd155ベクターの生産性を改善するために、天然のチンパンジーE4領域をAd5 E4orf6で置換する。
商業設備における0ppm、0.1ppm、及び1ppm VHPの条件を代表する0、150、及び1300ng/mL H2O2において、生存性のベクターワクチンをH2O2でスパイキングした。
メチオニンを含め/含めずに、及び異なる用量のメチオニンを用いて実験を実施した。ワクチン用量を次に充填及びフリーズドライ化し、そして加速安定性試験を実施した。
下記の方法を使用して、生存性のベクターワクチンに対するH2O2/酸化防止剤の影響を評価した。
ウイルス感染性をFACS分析により測定した。ウイルス粒子含有量をHPLCにより測定した。ウイルスDNA含有量をqPCR(定量的PCR)により測定した。ウイルスカプシドの完全性を、Picogreenアッセイ法を使用してDNA放出により測定した。詳細を以下に提示する。
Figure 2021533162
DSの新鮮なコントロール及び分解したコントロール(これらのコントロールは、サンプルについて得られた標準化された数値を正規化するのに必要とされる)において、PicoGreenアッセイを実施した。標準化された数値をDNA試薬キットの標準曲線から取得した。次に、サンプルの数値を両コントロール間で計算された標準直線に関連付けることにより、新鮮なコントロール(マトリックス内DNA放出は0%とみなされる)及び分解したコントロール(マトリックス内DNA放出は100%とみなされる)の標準化された数値から正規化の計算を実施した。分解したコントロールは、製剤濃度まで稀釈されたDSを60℃に30分間置くことにより取得した。
Figure 2021533162
HPLC及びqPCRに関する結果は、H2O2によるスパイキングについて有意な影響を示さなかった。これより、酸化はウイルス粒子又はDNAの完全性を完全に変化させることはなく、したがって粒子含有量及び全DNAはH2O2スパイキング後でも安定なまま留まることが明らかとなった。
しかしながら、FACS分析による感染性、及びPicogreenアッセイによるDNA放出は影響を受け、それらを図32及び図33に示す。これらのテスト(平均±SD、N=2)から、0.1及び1ppm残留VHPを代表する条件は、25℃で1ヶ月(1M25℃)後の両CQAに有意な影響を及ぼすことが明らかとなった。これより、酸化はカプシドの完全性を変化させると共に、ウイルスが細胞に感染する能力を減少させることが明らかとなった。
用量範囲探索試験を、0〜25mMのメチオニン濃度、1M25℃を使用して実施した。
用量範囲探索試験について、FACSによる感染性を図34に示す。結果はこれまでの試験と一致した(1ppm VHPについて、T0及びT1M25℃の間で0.4対数単位の喪失)。VHPが存在しない場合、T1M25℃及びT1M4℃間の感染性の差異は、メチオニン濃度全般にわたり比較的安定であった。VHPが存在する場合、メチオニン濃度を増加させると、T1M25℃及びT1M4℃間の感染性の差異は有意に改善し、5mMメチオニン付近でプラトーに達したと思われる。
Picogreenによるカプシドの完全性を図35に示す。Picrogreen %は、サンプル及び分解したコントロールについて測定された蛍光間の比である。分解したコントロールは、製剤の濃度まで稀釈され、60℃において30分置かれた組成物のサンプルであった。
ChAd155ヘキソンメチオニン酸化をLC-MSにより測定し、5つのメチオニン(Met270、299、383、468、及び512)について結果を図36に示す。ヘキソンタンパク質は、アデノウイルスの主要外被タンパク質であり、また多数のメチオニンを有する。Met270、299、383、468、及び512を、その場所、感受性、及び酸化速度に基づき選択した。ChAd155ヘキソンタンパク質IIメジャーカプシドタンパク質配列を配列番号21に提示する。
結果より、5mM又はそれより高濃度のメチオニンは、生存性ベクターワクチンに対する1ppm VHPの効果を阻止すること、及びメチオニンは、H2O2が存在しないような凍結乾燥の効果からもワクチンを保護することが明らかとなった。図36において、各メチオニンについて最初の5つの棒グラフは、H2O2が存在しない場合に添加された漸増量のメチオニン(ゼロより開始)を示す。2番目の5つの棒グラフは、1ppm VHPと等価な量が存在する場合の漸増メチオニンを示す。メチオニンの保護効果は、図36に示す5つのメチオニンの平均を計算した場合でも明確に認めることができる。
したがって、5mM又はそれより高濃度のメチオニンは、T1M25後のCQA及びMet Ox比に対するVHPの影響を制御することができる濃度として立証された。
この実施例は、メチオニン添加は、繰り返しとなるが、プロセスのストレス(フリーズドライ化及びH2O2曝露)と関係する酸化による、今回は生存性のウイルスワクチンに対する効果を相殺するのに有効な解決策であることを示している。
配列
配列番号1 RSV PreF配列
Figure 2021533162
配列番号2 配列番号1の一部分であるRSV PreF配列
Figure 2021533162
配列番号3 更なるRSV PreF配列
Figure 2021533162
配列番号4 更なるRSV PreF配列
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号5 更なるRSV PreF配列
Figure 2021533162
配列番号6 コイルドコイル(イソロイシンジッパー)配列
Figure 2021533162
配列番号7 配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟したポリペプチドのF1鎖
Figure 2021533162
配列番号8 配列番号3に示す前駆体配列から生み出される成熟したポリペプチドのF2鎖
Figure 2021533162
配列番号9 サブスタンスP(実施例で使用されるモデルペプチド)
Figure 2021533162
配列番号10 タンパク質D(364個のアミノ酸)
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号11 NS1由来のMDPトリペプチドを含むタンパク質D断片(348個のアミノ酸)
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号12 欧州特許第0594610号に記載されているタンパク質D断片の開始部分
Figure 2021533162
配列番号13 H.インフルエンザ由来のタンパク質E
Figure 2021533162
配列番号14 H.インフルエンザ由来のタンパク質Eのアミノ酸20〜160
Figure 2021533162
配列番号15 H.インフルエンザ由来のPilA
Figure 2021533162
配列番号16 H.インフルエンザ系統86-028NP由来のPilAのアミノ酸40〜149
Figure 2021533162
配列番号17
Figure 2021533162
配列番号18 シグナルペプチドを含まないPE-PilA融合タンパク質
Figure 2021533162
Figure 2021533162
配列番号19 モラクセラ・カタラーリス由来のUspA2 A2 (ATCC 25238より)
Figure 2021533162
配列番号20 UspA2の免疫原性断片(31〜564)
Figure 2021533162
配列番号21 ChAd155ヘキソンタンパク質IIメジャーカプシドタンパク質
Figure 2021533162
Figure 2021533162

Claims (19)

  1. 少なくとも1つの生体分子又はベクターを含む生物学的医薬を製造する方法であって、
    (d)酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に、生体分子又はベクターを製剤化して、酸化防止剤を含む生物学的医薬を製造するステップ、
    (e)生物学的医薬でコンテナを充填するステップ、
    (f)コンテナを密封又は部分的に密封するステップ
    を含み、そのうちの1つ以上が過酸化水素を使用して表面滅菌処理された無菌エンクロージャー内で実施される方法。
  2. 滅菌処理で使用される過酸化水素が、蒸気性の形態(VHP)又はエアゾール化した形態(aHP)である、請求項1に記載の方法。
  3. 酸化防止剤がアミノ酸である、請求項1及び2に記載の方法。
  4. 酸化防止剤がメチオニン(例えば、L-メチオニン)である、請求項3に記載の方法。
  5. 生物学的医薬が免疫原性組成物又はワクチンであり、及び生体分子又はベクターが抗原又は抗原をコードするベクターである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 製剤を凍結乾燥(フリーズドライ化)する更なるステップを含み、前記凍結乾燥する更なるステップが、
    凍結するステップ(三重点未満)、
    任意選択でアニーリングするステップ及び/又は制御された核生成ステップ、
    一次乾燥ステップ、
    二次乾燥ステップ
    を任意選択で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. メチオニン(例えば、L-メチオニン)を含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチン。
  8. 免疫原性組成物が、水溶液、例えばアジュバントを含む水溶液内で復元するのに適する、フリーズドライ化された形態である、請求項7に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
  9. 酸化防止剤を含む1つ以上の賦形剤と共に製剤化された、少なくとも1つの抗原又は少なくとも1つの抗原をコードするベクターを含む免疫原性組成物又はワクチンであって、免疫原性組成物がフリーズドライ化されている、免疫原性組成物又はワクチン。
  10. 水溶液、例えばアジュバントを含む水溶液を用いて復元するのに適する、請求項9に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
  11. 酸化防止剤が、アミノ酸、例えばメチオニン等(例えば、L-メチオニン)である、請求項9又は10に記載の免疫原性組成物又はワクチン。
  12. メチオニン(例えば、L-メチオニン)が、0.05〜50mMで製剤又は組成物中に存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  13. メチオニンが、0.1〜20mM、又は0.1〜15mM、又は0.1〜5mM、又は0.5〜15mMで存在する、請求項12に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  14. 生物学的医薬、免疫原性組成物又はワクチンが、RSV融合前F抗原を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  15. 生物学的医薬、免疫原性組成物又はワクチンが、H.インフルエンザ(H. influenzae)タンパク質D抗原(例えば、配列番号11)を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  16. PE-PilA融合タンパク質(例えば、配列番号17又は18)及びM.カタラーリス(M. catarrhalis) UspA2抗原(例えば、配列番号20)を更に含む、請求項15に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  17. 生物学的医薬、免疫原性組成物又はワクチンが、アジュバント、例えばASO1Eと共に復元されている、請求項16に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  18. 生物学的医薬、免疫原性組成物又はワクチンが、アデノウイルスベクター、例えばChAd155等(例えば、RSV抗原をコードするChAd155)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
  19. 生物学的医薬、免疫原性組成物又はワクチンが、滅菌された注射可能な製剤(液体形態の場合)である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法、或いは免疫原性組成物又はワクチン。
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