JP2021523228A - 物質乱用の治療方法 - Google Patents

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Abstract

本開示は対象の物質使用障害を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本願は2018年5月4日に出願された米国仮特許出願第62/666813号の優先権利益を主張するものであり、その内容全体を参照により本願明細書に援用する。
技術分野
本発明は物質使用障害の治療及び神経生物学分野と薬物療法分野に関する。より具体的には本発明はR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物、及びR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない物質使用障害の治療用の医薬組成物に関する。
2016年ではアルコール又は違法薬物の使用に関連した物質使用障害に苦しむ12歳以上の米国人は約2010万人であった。これにはアルコール関連使用障害を有する1510万人、マリファナ関連物質使用障害を有する400万人、及びオピオイド類関連物質使用障害を有する210万人が含まれる。820万人の成人と333000人の若者には精神障害と物質使用障害の両方があった。2100万人が物質使用障害の治療を必要としていたが、何らかの治療を受けた者はわずかに380万人であった(米国薬物乱用精神保健サービス局(2017年) Key substance use and mental health indicators in the United States: Results from the 2016 National Survey on Drug Use and Health(HHS公開番号第SMA17−5044号、NSDUHシリーズH−52))。薬物又はアルコールの悪用による毎年の年間の経済的影響は4000億億ドルを超えると推定されている。治療を受けている者の間でも再発率は1年の治療期間内で85%もの高率であり得る。したがって、物質使用障害を治療するための新規方法の差し迫った必要性が当技術分野において満たされずに存在する。本発明は必要とする対象にR(−)−ケタミンを含む組成物を投与するという1つのそのような方法を提供する。
本開示は対象の物質使用障害を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法を提供する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記物質使用障害はアルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの乱用を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態ではR(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記治療有効量によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記物質使用障害はオピオイド類の乱用を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記物質使用障害はアルコールの乱用を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記オピオイドはヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む。幾つかの実施形態では前記興奮剤はアンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む。幾つかの実施形態では前記ベンゾジアゼピンはアプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む。幾つかの実施形態では前記バルビツール酸系化合物はフェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む。幾つかの実施形態では前記睡眠薬はエスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象において離脱症状が抑制され、又は前記物質使用障害の再発が防止される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は物質乱用に対する追加の薬物療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記追加の薬物療法は段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の物質に対する耐性が低下する。幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の物質への依存症が抑制される。幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の治療法に対するアドヒアランスが改善される。幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象における前記物質使用障害の物質に対する嗜好度が低下し、又は前記物質使用障害の物質に対する愛好度が低下する。幾つかの実施形態では前記組成物の投与により前記対象における前記物質使用障害の物質からの離脱が亢進する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は行動療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記行動療法はカウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む。幾つかの実施形態では前記カウンセリングは対面式又はデジタル介入によるものである。幾つかの実施形態では必要な行動療法の量は前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は物質乱用に対する追加の薬物療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記追加の薬物療法は段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む。幾つかの実施形態では前記物質使用障害はオピオイドの乱用を含み、且つ、前記補充療法はメサドン又はブプレノルフィンを含む。幾つかの実施形態では前記物質乱用障害はオピオイドの乱用を含み、且つ、前記投薬支援治療はナルトレキソンを含む。幾つかの実施形態では前記物質使用障害はアルコールの乱用を含み、且つ、前記投薬支援治療はジスルフィラム、アカンプロサート、又はナルトレキソンを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法の前に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法と同時に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法の後に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は毎日、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩はR(−)−ケタミン塩酸塩である。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される。
本開示は対象の少なくとも1つの物質使用離脱症状を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法を提供する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記少なくとも1つの物質使用離脱症状はアルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの離脱症状を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態ではR(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記治療有効量によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記少なくとも1つの物質使用離脱症状はオピオイド類の離脱症状を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記少なくとも1つの物質使用離脱症状はアルコールの離脱症状を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記オピオイドはヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む。幾つかの実施形態では前記興奮剤はアンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む。幾つかの実施形態では前記ベンゾジアゼピンはアプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む。幾つかの実施形態では前記バルビツール酸系化合物はフェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む。幾つかの実施形態では前記睡眠薬はエスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記少なくとも1つの物質使用離脱症状は肉体的離脱症状、精神的離脱症状、又はそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では前記肉体的離脱症状は震え、不眠症、睡眠障害、頭痛、発汗、吐き気、嘔吐、筋肉痛、筋硬直、高血圧、心拍数不整、心拍数上昇、心動悸、めまい、ぐらつき、震え、脳卒中、脱水症状、浅呼吸、疲労、食欲不振、冷や汗、顔色の悪化、又はそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では前記精神的離脱症状は不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、物質の切望、又はそれらの組合せを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は離脱に対する追加の薬物療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記追加の薬物療法は段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は行動療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記行動療法はカウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む。幾つかの実施形態では前記カウンセリングは対面式又はデジタル介入によるものである。幾つかの実施形態では必要な行動療法の量は前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は離脱に対する追加の薬物療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記追加の薬物療法は段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む。幾つかの実施形態では前記離脱症状はオピオイドの離脱症状を含み、且つ、前記補充療法はメサドン又はブプレノルフィンを含む。幾つかの実施形態では前記離脱症状はオピオイドの離脱症状を含み、且つ、前記投薬支援治療はナルトレキソンを含む。幾つかの実施形態では前記離脱症状はアルコールの離脱症状を含み、且つ、前記投薬支援治療はジスルフィラム、アカンプロサート、又はナルトレキソンを含む。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症よりも前に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症と同時に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症の後に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は24時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩はR(−)−ケタミン塩酸塩である。幾つかの実施形態では組成物は静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物により前記対象における前記少なくとも1つの物質使用離脱症状が抑制又は除去される。
本開示は対象の物質使用障害に関連する精神症状を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法を提供する。
開示される前記方法の幾つかの実施形態では前記精神症状はアルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの精神的離脱症状を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では治療有効量のR(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記対象への投与によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記精神症状は前記物質使用障害の合併症である気分障害の精神症状を含む。幾つかの実施形態では前記気分障害は大うつ病性障害、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、又は認知症を含む。
幾つかの実施形態では前記オピオイドはヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む。幾つかの実施形態では前記興奮剤はアンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む。幾つかの実施形態では前記ベンゾジアゼピンはアプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む。幾つかの実施形態では前記バルビツール酸系化合物はフェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む。幾つかの実施形態では前記睡眠薬はエスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記精神症状は不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、物質の切望、又はそれらの組合せを含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は追加の薬物療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記追加の薬物療法は段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記方法は行動療法をさらに含む。幾つかの実施形態では前記行動療法はカウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む。幾つかの実施形態では前記カウンセリングは対面式又はデジタル介入によるものである。幾つかの実施形態では必要な行動療法の量は前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症よりも前に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症と同時に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症の後に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は24時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記組成物は約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩はR(−)−ケタミン塩酸塩である。幾つかの実施形態では前記組成物は静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される。
本開示の方法の幾つかの実施形態では前記組成物により前記対象における前記少なくとも1つの精神症状が抑制又は除去される。
相互参照されている、又は関連付けられているあらゆる特許又は特許出願を含む本明細書中の全ての引用文献は、除外又は限定されると明示されない限り、その全体が参照により本明細書に援用される。どの文献の引用もその文献が本明細書中で開示又は請求されるあらゆる発明の先行技術であること、又はその文献が単独で、又は他のいずれかの参照文献とのあらゆる組合せによってこのようなあらゆる発明を教示、示唆、又は開示することを認めるものではない。さらに、本文書内の用語のいずれかの意味又は定義が参照により援用される文書内の同じ用語のいずれかの意味又は定義と一致しない場合では本文書内でその用語に割り当てられている意味又は定義が優先されるものとする。
本開示の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本開示の主旨と範囲から逸脱することなく他の様々な変更と改変を実施することが可能である。添付されている特許請求の範囲に本開示の範囲内の全てのこのような変更と改変が含まれている。
D(−)−酒石酸及びL(+)−酒石酸(酒石酸)をそれぞれ使用するRS(+/−)−ケタミンからのR(−)−ケタミン塩酸塩及びS(+)−ケタミン塩酸塩(ケタミンHCl)の調製を例示する図である。 R(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用を調査するための試験プロトコルを例示する図である。うつ病の新しい動物モデルとして新生児期にデキサメタゾンで処理されたマウス(以後、DEX処理マウスと呼ぶ)を使用して試験を実施した。図2AではDEXはデキサメタゾンを意味し、LMTは自発運動試験を意味し、TSTは尾懸垂試験を意味し、FSTは強制水泳試験を意味し、SPTは1%ショ糖飲水試験を意味する(実施例1)。 ケタミンの注射後の翌日にLMTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2BではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表し、生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Bの縦軸は運動量(回数/60分)を表す(実施例1)。 ケタミンの注射後の翌日(27時間後)にTSTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2CではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表し、生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Cの縦軸はTSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例1)。 ケタミンの注射後の翌日(29時間後)にFSTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2DではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表し、生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Dの縦軸はFSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例1)。 ケタミンの注射から2日後にSPTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2EではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Eの縦軸はSPTにおけるショ糖嗜好度(%)を表す(実施例1)。 ケタミンの注射から7日後にTSTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2FではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Fの縦軸はTSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例1)。 ケタミンの注射から7日後にPSTにより調査されたDEX処理マウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図2GではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図2Gの縦軸はPSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例1)。 社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用を調査するための試験プロトコルを例示する図である。C57/B6雄マウスをICR雄マウスと連続10日間(D1〜10)にわたって接触させることによってこれらの社会的敗北ストレスマウスを作製した。その後、R(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンのうちのいずれか一方を注射し、その注射後の1日目、2日目、6日目、及び7日目(P1、P2、P6、及びP7)に様々な試験を実施した。図3AではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。図3AではLMTは自発運動試験を意味し、TSTは尾懸垂試験を意味し、PSTは強制水泳試験を意味し、SPTは1%ショ糖飲水試験を意味する(実施例2)。 ケタミンの注射から1日後(P1)にSPTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3BではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Bの縦軸はSPTにおけるショ糖嗜好度(%)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から2日後(P2)にLMTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3CではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Cの縦軸はLMTにおける運動量(回数/60分)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から2日後(P2)にTSTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3DではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Dの縦軸はTSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から2日後(P2)にPSTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3EではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Eの縦軸はPSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から6日後(P6)にSPTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3FではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Fの縦軸はSPTにおけるショ糖嗜好度(%)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から7日後(P7)にTSTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3GではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Gの縦軸はTSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から7日後(P7)にPSTにより調査された社会的敗北ストレスマウスにおけるR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用の結果を示すグラフである。図3HではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。図3Hの縦軸はPSTにおける無動時間(秒)を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける前頭皮質の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3IではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す。また、mPFCは内側前頭前皮質を意味する(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける海馬歯状回の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3JではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける海馬CA1領域の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3JではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける海馬CA3領域の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3JではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける側 坐核の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3JではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す(実施例2)。 ケタミンの注射から8日後に調査された社会的敗北ストレスマウスにおける線条体の樹状突起棘密度に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの作用の結果を示すグラフである。図3JではR−Ket及びS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群を表す。生理食塩水は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群を表し、対照は生理食塩水を注射された対照マウス群を表す(実施例2)。 R(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの注射後の対照マウスの運動量の時間依存的変化を示すグラフである。図4ではR−Ket、S−Ket、及び生理食塩水はそれぞれR(−)−ケタミン、S(+)−ケタミン、及び生理食塩水を注射された群を表す。図4の縦軸は運動量(回数/10分)を表す(実施例3)。 対照マウスにおけるR(−)−ケタミンの注射後のプレパルス抑制の変化を示すグラフである。図5AではR−Ket及び生理食塩水はそれぞれR(−)−ケタミン及び生理食塩水を注射された群を表す。PP69、PP73、PP77、及びPP81はそれぞれ69dB、73dB、77dB、及び81dBでの20ミリ秒を超える時間にわたる刺激が110dBのパルスの100ミリ秒前に加えられたことを意味する。データ分析は多変量分散分析であるウィルクスのラムダによって実施された(実施例3)。 対照マウスにおけるS(+)−ケタミンの注射後のプレパルス抑制の変化を示すグラフである。図5BではS−Ket及び生理食塩水はそれぞれS(+)−ケタミン及び生理食塩水を注射された群を表す。PP69、PP73、PP77、及びPP81はそれぞれ69dB、73dB、77dB、及び81dBでの20ミリ秒を超える時間にわたる刺激が110dBのパルスの100ミリ秒前に加えられたことを意味する。データ分析は多変量分散分析であるウィルクスのラムダによって実施された(実施例3)。 条件付け場所嗜好性試験を用いて対照マウスに対するR(−)−ケタミン、S(+)−ケタミン、及びRS(+/−)−ケタミンの報酬効果を調査するための試験プロトコルを示す図である。15分間の馴化を3日間にわたって実施した。その後、30分間の条件付けを4日目から10日目にかけて実施し、行動評価試験を11日目に実施した。生理食塩水を5日目、7日目、及び9日目に注射した。図6AではR−Ket、S−Ket、及びRS−KetはそれぞれR(−)−ケタミン、S(+)−ケタミン、及びRS(+/−)−ケタミンを注射された群を意味する。これらの群の各々においてこの注射を3回、すなわち4日目、6日目、及び8日目に実施した。生理食塩水は生理食塩水を注射された群を意味する。この群ではこの注射を3回、すなわち5日目、7日目、及び9日目に実施した(実施例3)。 条件付け場所嗜好性試験を用いた対照マウスに対するR(−)−ケタミンの報酬効果の結果を示すグラフである。図6BではR−ケタミン及び生理食塩水はそれぞれR(−)−ケタミン及び生理食塩水を注射された群を表す。図6Bの縦軸は条件付け場所嗜好性試験スコア(CPPスコア)を表す(実施例3)。 条件付け場所嗜好性試験を用いた対照マウスに対するS(+)−ケタミンの報酬効果の結果を示すグラフである。図6CではS−ケタミン及び生理食塩水はそれぞれS(+)−ケタミン及び生理食塩水を注射された群を表す。図6Cの縦軸は条件付け場所嗜好性試験スコア(CPPスコア)を表す(実施例3)。 場所嗜好性試験を用いた対照マウスに対するRS(+/−)−ケタミンの報酬効 果の結果を示すグラフである。図6DではRS−ケタミン及び生理食塩水はそれぞれRS(+/−)−ケタミン及び生理食塩水を注射された群を表す。図6Dの縦軸は条件付け場所嗜好性試験スコア(CPPスコア)を表す(実施例3)。 モルヒネにより誘起された条件付け場所嗜好性を減弱化させる傾向がモルヒネと共投与されたR(−)−ケタミンによって生じる(p=0.06)ことを示す図である。図7Aはこの条件付け場所嗜好性試験のための実験方法の概略図である。 モルヒネにより誘起された条件付け場所嗜好性を減弱化させる傾向がモルヒネと共投与されたR(−)−ケタミンによって生じる(p=0.06)ことを示す図である。図7Bは薬物に対応付けられた場所に対するマウスの条件付け場所嗜好性を示すグラフである。X軸上に生理食塩水+生理食塩水、生理食塩水+モルヒネ、又はR(−)−ケタミン+モルヒネという実験条件が示されている。Y軸は秒単位の時間を表す。 R(−)−ケタミンによってラットにおける亜慢性的モルヒネ曝露からのナロキソン誘発性離脱に由来する離脱症候が緩和されることを示すグラフである。R(−)−ケタミン(10mg/kgと20mg/kgが腹腔内(i.p.)投与される)はラットにおいて用量依存的に総合モルヒネ離脱スコアを低下させる。データは一群8匹のラットの平均値±SEMである。F(4、39)=14.2。p<0.001。認可済みのオピオイド離脱薬であるロフェキシジン(0.25mg/kg、i.p.)も有効であった。モルヒネ+ナロキソン(ケタミン又はロフェキシジンを使用しないモルヒネからの離脱)との比較で**はp<0.01であり、***はp<0.001である。 R(−)−ケタミンによってエタノールに対する耐性の発生が有意に減弱化されることを示すグラフである。1日目に様々な処理を行った後の2日目の握力/体重という尺度に対するエタノール単独の効果が示されている。高用量のエタノールが1日目に与えられなかったときにはエタノール処理の2日目での握力は低かった。握力に対するこの効果に対する耐性が実証された(エタノール投与から30分後の時点における1番目の棒と2番目の棒を比較されたい)。R(−)−ケタミン(3mg/kg)がエタノールと共に1日目に与えられたときにはこの耐性は著しく減少した(30分の時点における2番目の棒と4番目の棒を比較されたい)。X軸上の左から右に向かって以下の投与計画、すなわちD1(1日目):V+V+V、D1:V+ET2.3+ET1.7、D1:R−Ket1+ET2.3+ET1.7、D1:R−Ket3+ET2.3+ET1.7、D1:R−Ket10+ET2.3+ET1.7、D1:R−Ket1+V+V7という投与計画を受けたラットが投与から30分後と60分後のそれぞれに評価された。Vはベヒクル単独であり、ET2.3は腹腔内(i.p.)投与された2.3mg/kgのエタノールであり、ET1.7は腹腔内投与された1.7mg/kgのエタノールであり、R−Ket1は1mg/kgの用量で投与されたR(−)−ケタミンであり、R−Ket3は3mg/kgの用量で投与されたR(−)−ケタミンであり、R−Ket10は10mg/kgの用量で投与されたR(−)−ケタミンである。 R(−)−ケタミン及びベヒクルの頭蓋内自己刺激(ICSS)に対する効果についての周波数応答曲線を示し、且つ、R(−)−ケタミンによって頭蓋内自己刺激機能が変化しないことを示すグラフである。ATDP33,988はR(−)−ケタミンである。1mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのR(−)−ケタミンと生理食塩水ベヒクルについての周波数応答が示されている。値は10提示周波数(1.75〜2.20という周波数(Hz)の対数まで)にわたる平均正規化応答率(パーセント最大応答率)である。処理効果が重なっているため、エラーバーを省略してわかりやすくしている。ベヒクルと比較してどの用量のR(−)−ケタミンでも有意差が無かった。 S(+)−ケタミン及びベヒクルの効果についての周波数応答曲線を示し、且つ、S(+)−ケタミンによって頭蓋内自己刺激曲線が右側へ変移することを示し、このケタミンにより快感消失ネガティブ情動応答が生じることを示唆するグラフである。ATDP33,989はS(+)−ケタミンである。1mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのS(+)−ケタミンと生理食塩水ベヒクルについての周波数応答が示されている。値は10提示周波数(1.75〜2.20という周波数(Hz)の対数まで)にわたる平均正規化応答率(パーセント最大応答率)である。エラーバーを省略してわかりやすくしている。各周波数におけるベヒクルと比較した有意差が星印によって示されている(p<0.05、****p<0.0001)。 R−ヒドロキシノルケタミン及びベヒクルの効果についての周波数応答曲線を示し、且つ、R(−)−ケタミンの代謝産物であるR−ヒドロキシノルケタミンがR(−)−ケタミンのようにラットの頭蓋内自己刺激行動に影響を及ぼさないことを示すグラフである。ATDP33,990はR−ヒドロキシノルケタミンである。1mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのR−ヒドロキシノルケタミンと生理食塩水ベヒクルについての周波数応答が示されている。値は10提示周波数(1.75〜2.20という周波数(Hz)の対数まで)にわたる平均正規化応答率(パーセント最大応答率)である。処理効果が重なっているため、エラーバーを省略してわかりやすくしている。ベヒクル条件と比較してどの用量のR−ヒドロキシノルケタミンでも有意差が無かった。 ラットにおけるコカインのICSSに対する効果を示すグラフである。コカイン(10mg/kg)は周波数曲線を左側に変移させる。R(−)−ケタミンは周波数曲線を左側に変移させない。
ラセミ体ケタミンには長期にわたるオピオイド使用後に生じる患者の離脱症状の軽減に役立つ可能性があることが示されており(Jovaisa et al.,2006)、ラセミ体ケタミンが麻薬とエタノールの両方の薬物耐性と依存症という中毒関連現象の軽減に役立つ可能性があることが動物モデルのデータから示唆されている(Herman et al.,1995、Khanna et al.,1993、Trujillo, 1995)。しかしながら、ラセミ体ケタミンには多数の問題が付きまとっており、それらの問題のためにラセミ体ケタミンは患者への投与について厄介な選択肢になっている。例えば、ラセミ体ケタミンは患者の安全に負の影響を及ぼす多くの作用を引き起こすことが知られている。ラセミ体ケタミンは精神異常発現作用、鎮静・運動障害作用、及び認知機能障害を引き起こす。ラセミ体ケタミンはそれ自体が潜在的に中毒を引き起こすことも知られており、このことがラセミ体ケタミンを物質使用障害の治療にとって厄介な選択肢にしている(Cooper et al.,2017、Ke et al.,2018、Liu et al.,2016)。また、ラセミ体ケタミンの投与には、特に長期間の使用の後には中枢神経系の損傷が付随する(Wang et al.,2013)。したがって、より安全なラセミ体ケタミンの代替物が必要である。
ラセミ体ケタミンのS(+)−ケタミン異性体とR(−)−ケタミン異性体の両方が麻酔及び精神障害の治療などの様々な用途について検討されている。S(+)−ケタミンはR−異性体よりも約4倍高いNMDA受容体への親和性を有しており、且つ、NMDARアンタゴニストとして作用するラセミ体ケタミンの能力がラセミ体ケタミンの作用に関係すると考えられているため歴史的にはS(+)−ケタミンに焦点が当てられてきた。例えば、(R)−ケタミンではなく(S)−ケタミンによって線条体におけるドーパミン放出が増加すること、及びこの放出には精神異常発現作用が関連することが近年の非ヒト霊長類動物でのイメージング研究から示唆された(Hashimoto et al.,2017)。また、S(+)−ケタミンはR−異性体と比較すると約3〜4倍高い麻酔効果を有する(非特許文献12)。さらに、R(−)−ケタミンではなくS(+)−ケタミンが近年になってうつ病治療法として米国食品医薬品局(FDA)により認可された。
S(+)−ケタミン又はラセミ体ケタミンの1つの代替物はR(−)−ケタミンである。発明者らはR(−)−ケタミンが物質乱用障害の治療のための優れた、且つ、意外に効果的な薬品として働くことを示す特性をR(−)−ケタミンが有することを初めて発見した。発明者らはR(−)−ケタミンによって離脱症状を軽減でき、薬物耐性を減少でき、且つ、薬物への愛好度を低下できることを発見した。これらは薬物中毒のサイクルに寄与することが知られている全ての因子である。また、発明者らはR(−)−ケタミンがS(+)−ケタミンと違ってネガティブな気分の発生、又は快感消失若しくはネガティブ情動の発生といった薬物乱用治療の禁忌とされる特性を有していないことを発見した。さらに、R(−)−ケタミンによって発生する主観的副作用はS(+)−ケタミンによって発生するものよりも少ない(Persson et al.,2002)。R(−)−ケタミンは(S)−ケタミンよりも効果があり、且つ、長続きすることも示されており(Fukumoto et al.,017、Zhang et al.,2014)、R(−)−ケタミンは改善された忍容性と安全性プロファイルを提供する(Yang et al.,2015)。
したがって、本発明は対象の物質使用障害を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法に関する。この方法によって離脱症状などの物質使用障害の症状、物質使用障害を発生させやすいことに関連する症状、障害の物質の使用に関連する症状が治療される。さらに、この方法によって物質使用障害を有する対象における物質使用の再発が防止又は抑制され、対象の物質使用障害において使用された物質への耐性が減少するか、その物質への依存症が抑制されるか、又はその物質への嗜好度又は愛好度が低下し、物質使用障害の治療に対するアドヒアランスが改善されるか、又はその物質使用障害の物質からの離脱が亢進する。幾つかの実施形態ではこの方法によって物質使用障害に関連する離脱症状又は精神症状などの症状が治療され、耐性及び/又は愛好度が低下し、離脱及び/又は治療アドヒアランスが向上し、又はこれらの組合せが起こる可能性がある。
本発明は物質使用障害の治療のための薬剤であって、R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩からなる前記薬剤に関する。
本発明は物質使用障害の症状の抑制に有効な量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない物質使用障害の治療用の医薬組成物にも関する。R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩はうつなどの物質使用障害に関連する精神症状の治療に関して迅速かつ長期的に継続する効果を有し、且つ、ラセミ体混合物又はS(+)−ケタミンよりも副作用が少なく、したがって物質使用障害の治療に有効である。さらに、R(−)−ケタミンによって離脱症状を軽減でき、薬物耐性を減少でき、且つ、薬物の愛好又は切望を抑制できる。これらの全てが薬物中毒のサイクルに寄与することが知られている因子である。R(−)−ケタミンはネガティブな気分の発生又は快楽を感じる能力の不全若しくは低下(快感消失又はネガティブ情動)といった物質使用障害治療の禁忌とされる特性を有していないという点でもラセミ体ケタミン又はS(+)−ケタミンよりも優れている。したがって、R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む前記組成物、及びR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない前記医薬組成物は物質使用障害治療の分野の新規医薬品として有用である。
物質使用障害の物質
薬物の乱用はヒトにおける特定の主観的効果(例えば、多幸感)を生み出すそれらの薬物の能力に関連する。対象に物質使用障害を引き起こし得る物質は多数存在する。本明細書において使用される場合、「薬物」という用語は連続的に使用すると中毒又は依存症を引き起こし得る物質を意味する。合法物質と非合法(違法)物質の両方が物質使用障害を引き起こし得る。アルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、及びニコチンなどの薬物がこの用語に含まれる。しかしながら、中毒又は依存症を引き起こし得るあらゆる物質が本発明の範囲内にあると考えられる。
大半の物質が3つの主要な分類、すなわち興奮剤、抑制剤、及び幻覚剤又は解離性物質に入る。幾つかの実施形態、限定されないが特に前記物質がマリファナなどの複雑な植物の産物である実施形態では前記物質は1種類より多くの有効成分を有し、且つ、これらの3種類の分類のうちの1つよりも多くの分類に入ることがある。幾つかの実施形態では前記物質は複数の効果を有する単一の有効成分を有し、したがってこれらの3種類の分類のうちの1つよりも多くの分類に入ることがある。幾つかの実施形態では前記物質は興奮剤、抑制剤、又は幻覚剤若しくは解離性物質として単一の分類に入る場合がある。
抑制剤は中枢神経系の働きを遅くし、且つ、対象にくつろぎを感じさせ、緊張を感じにくくし、周囲の出来事に気づきにくくする物質である。多くの抑制剤がγ−アミノ酪酸(GABA)神経伝達物質シグナル伝達系の活性を高めることにより作用する。処方オピオイド類及びヘロインなどの抑制剤は内在性神経伝達物質であるエンドルフィン及びエンケファリンによって生じる効果に類似している(が、それらの効果よりも顕著な)効果を引き起こすこともできる。抑制剤の例にはアルコール、ヘロイン、睡眠薬、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、及びオピオイド類が挙げられるがこれらに限定されない。
逆に、興奮剤は敏感になったように対象に感じさせ、その対象の肉体的エネルギーを増大させるように作用する。幾つかの興奮剤は幸福感、社交性、注意力の改善、及び食欲低下、又はこれらの組合せを引き起こすこともできる。精神障害の治療に使用される興奮剤もある。例えば、メチルフェニデートは注意欠陥多動性障害の治療に使用される。多くの興奮剤が少なくとも部分的には中枢神経系のドーパミンシグナル伝達のレベルを高めることにより作用する。例えば、コカインの使用により脳内の利用可能なドーパミンの量が増加し、このことが気分の高揚と多幸感を引き起こす。コカインはノルエピネフリン系及びグルタミン酸系の変化も引き起こす。例となる興奮剤にはコカイン及びアンフェタミン類が挙げられるがこれらに限定されない。
幻覚剤又は解離性物質は対象の知覚、思考、及び/又は感情を変化させる。幻覚剤は幻覚を引き起こし、それらの幻覚はたとえ現実ではなくても個人にとって現実であるように見える感覚又は像である。幾つかの幻覚剤は脳と脊髄との間の化学物質の伝達を一時的に混乱させることにより機能する。気分、感覚認知、睡眠、空腹感、体温、性行動、及び筋肉制御を調節することが知られているセロトニンシグナル伝達に干渉する幻覚剤もある。痛覚認知、環境への応答、感情、学習、及び記憶を調節するグルタミン酸シグナル伝達に干渉する幻覚剤もある。例となるが非限定的な幻覚剤にはアヤワスカ、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、ペヨーテ、シロシビン及びデキストロメトルファン(DXM)が含まれる。
物質が対象の精神状態を変えられる多くのメカニズムが存在する。しばしば物質は体内で1つ以上の神経伝達物質系を改変することにより神経機能及び精神状態を変えるように作用する。幾つかの物質は天然の神経伝達物質を模倣しており、前記対象の中枢神経系においてこれらの神経伝達物質の同族の受容体と結合する。例えば、ヘロインなどのオピオイド系薬物は天然のオピオイド類を模倣しており、オピオイド受容体に結合する。しかしながらヘロインは天然のオピオイド類よりも強力にμオピオイド受容体の活性を刺激する。マリファナはカンナビノイド神経伝達物質を模倣している。ニコチンは天然のコリン作動性神経伝達物質であるアセチルコリンの受容体に結合する。代わりに又は加えて、物質は神経伝達に関与する受容体以外の分子又はタンパク質と相互作用し、それらの分子又はタンパク質の機能を変更することにより神経伝達を改変することができる。非限定的な例には細胞表面への受容体のリサイクル、神経伝達物質の再取り込み、又はシナプスでのタンパク質輸送に関与するタンパク質が含まれる。さらに、物質は他のメカニズムと同様にシナプスにおける受容体のレベルを上昇又は低下させることができ、輸送体などのシナプスにおける神経伝達物質レベルに影響するタンパク質に結合でき、又は天然の神経伝達物質に対する神経応答を調整できる。
本開示の物質は天然物であり得、例えば植物、動物、又は真菌を起源として精製された天然物(例えば、マリファナ、タバコ)であり得、合成物(例えば、合成カチノン、LSD)であり得、又はこれらの組合せであり得る。本開示の物質は元々天然物を起源として精製された物質の合成物版であり得る。例となるが非限定的な本開示の物質のリストが表1に示されている。対象において物質使用障害を引き起こすことができる全ての薬剤と全ての生物学的機序が本発明の範囲内にあると考えられる。
Figure 2021523228
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物質使用障害
物質使用障害は、否定的な帰結(例えば、社会的、経済的、及び/又は医学的帰結)にもかかわらず持続し続け、徐々に管理不可能になる物質使用を特徴とする。物質使用障害はよく管理されている物質使用から制御されておらず、且つ、破滅的な物質使用への移行を特色とする。この移行は突然であるか、又は漸進的であり得る。物質使用障害は物質への中毒又は依存症を特徴とする。対象が物質への依存症であるか、又は中毒であるとき、このことはこの物質とこの対象の肉体的、生理的、又は精神的な反応及び/又は相互反応が存在することを意味し、この結果として前記対象は目的、又は疾患治療の必要性を認識せずにこの物質の抗し難い、又は何かにとりつかれたような使用を示すか、又はそのような使用がある。どちらかというとこの目的は前記の所望の効果を達成すること、及び/又は以下に定義されるような離脱症状を回避することであり、これらの離脱症状はこの物質が中断されたとき、又は使用量が減少したときに生じる。物質使用障害は時に「物質乱用」と呼ばれ、前記対象が中毒になっている、又は依存症になっている物質又は複数の物質が例えばオピオイド又はアルコールの乱用のように「乱用」される。
物質への依存症にはこの依存症を永続させるように作用し、且つ、問題の物質使用の治癒を難しくするか、そうでなければ管理を難しくする多数の症状が伴う。例えば、多くの場合に物質の中毒になっている対象はこの物質に対する高い耐性を発達させる。耐性のため、耐性によって生じ得るこの物質の効果の減少を補償しようとして物質使用がしばしば増加することになる。難しくするその他の症状にはこの物質の使用が中断又は抑制されると生じる離脱症状、切望、他の報酬刺激に対する意欲の低下、ストレス刺激に対する感受性の上昇、物質関連手掛かりに対する感受性又は応答性の増強、衝動性、報酬の遅れを正確に評価できないこと、及び破滅的行為、例えば物質使用によって引き起こされる破滅的行為を変える意欲の喪失が含まれる。
幾つかの実施形態では個人の中で物質使用障害を永続させるように作用する前記症状は物質の反復使用によって引き起こされる脳内の変化から生じる。代わりに又は加えて、衝動性及びストレス感受性などの症状は物質使用障害の発症前から個人に存在する場合があり、その個人の物質使用障害へのなりやすさに寄与する場合がある。遺伝的要因、環境的要因、及び精神的要因も全て個人の物質使用障害へのなりやすさに寄与する場合がある。
幾つかの実施形態では物質使用障害は気分障害、不安障害、又は強迫性障害に結び付く。例えば、気分障害と診断された対象は気分障害が無い対象よりも物質を乱用する可能性が2倍高いことが米国国立薬物乱用研究所(NIDA)により示されている。報酬機能の喪失と脳ストレスシステムの動員が組み合わさることで中毒による強迫行為を少なくとも部分的に引き起こす負の強化の原因である否定的な情緒状態の強力な神経科学的基盤が実現する。本明細書において使用される場合、「気分障害」は気分の深刻な変化を伴うメンタルヘルス障害を指す。例となる気分障害には大うつ病性障害、双極性障害、認知症、低い意欲、不安感、不眠症、食欲不振、強迫性障害、外傷後ストレス障害、持続性うつ病性障害、気分循環症、及び季節性感情障害が挙げられるがこれらに限定されない。気分障害の症状には快感消失又はネガティブ情動、気分の落ち込み、低い意欲、不安感、不眠症、食欲不振、衝動性、及びストレス感受性が挙げられるがこれらに限定されない。
1組の特に急性の物質使用障害はオピオイド系の物質使用障害である。米国には破壊的なオピオイドの使用と過剰摂取という危機が存在する。約2550万人の成人が疼痛に苦しんでおり、その人達の治療に処方されることが多いオピオイド類によってオピオイドの悪用と依存症が引き起こされ得ることが報告されている。200万人を超えるアメリカ人がオピオイド使用障害(OUD)を有し、多くが処方されたオピオイド類で常用を始めたことも報告されている。オピオイドの悪用の最も破壊的な結果のうちの1つはオピオイドの過剰摂取であり、それは呼吸抑制と死を引き起こし得る。薬物の過剰摂取は米国内の事故死の主要な死因であり、2016年では60,000件の死亡が推定されており、20,101件の過剰摂取による死亡が処方鎮痛剤に関連し、12,990件の過剰摂取による死亡がヘロインに関連する。
オピオイド使用障害のための、及び過剰摂取の防止/反転のための安全で有効な薬物療法が存在するが、それらの薬物療法の利用には幾らか制限があり、又はそれらの薬物療法は大部分が十分に利用されていない。オピオイド使用障害(OUD)を治療するためにメサドンとブプレノルフィンがFDAによって認可されているが、長期間の効力と治療アドヒアランスは最適とは言い難い。オピオイド類への肉体的依存症が無い人々におけるオピオイド使用の再発を防止するためにナルトレキソンがFDAによって認可されているが、治療の開始とアドヒアランスは低い。オピオイドの過剰摂取を反転させるためにナロキソン(ナルカン)が認可されているが、ナロキソンは短期間の作用を有し、オピオイド離脱を誘発させる場合があり、その人を過剰摂取の危険にさらす場合がある。ロフェキシジンはオピオイド離脱症状の軽減に役立つとしてFDAにより認可される唯一の薬品である。しかしながら、ロフェキシジンは肉体的症状を治療するだけであり、薬物からの離脱の精神的要素には対処しない。ガバペンチン、プレガバリン、ブプレノルフィン、カンナビノイド、ケタミン、及び超低用量の経口ナルトレキソンなどの他の医薬品、並びに麻酔下の急速オピオイド離脱が評価されているが、結果は結論の出ないものである。したがって、オピオイド使用障害のその他の治療法に対する要求が存在する。本開示はR(−)−ケタミンを含む組成物及びこの要求を満たすことができる治療方法を提供する。
神経生物学
複数の神経伝達物質系が物質使用障害に関係するとされている。例となる神経伝達物質にはモノアミン(ドーパミン、セロトニン、及びノルアドレナリン等)、ノルエピネフリン、内在性オピオイド類(例えばエンドルフィン及びエンケファリン)、アセチルコリン、内在性カンナビノイド(エンドカンナビノイド、例えばアナンダマイド)、グルタミン酸及びγ−アミノ酪酸(GABA)が挙げられるがこれらに限定されない。幾つかの実施形態では物質使用障害は単一の神経伝達物質系に影響を及ぼす場合がある。幾つかの実施形態ではこの物質使用障害が1つ以上の神経伝達物質系に影響を及ぼす場合がある。例えば、アルコールは脳内で抑制性神経伝達物質であるGABA、グルタミン酸、その他を含む幾つかの神経伝達物質系と相互作用して多幸感を生み出し、運動機能を損ない、不安感を低下させる。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系におけるドーパミン神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。例となるドーパミン機能は快感や報酬の処理、運動、注意、及び記憶を含む。ドーパミンは中脳、腹側被蓋野(VTA)、大脳皮質、及び視床下部に見られる。ドーパミン伝達に影響を及ぼす例となる物質にはコカイン、メタンフェタミン、及びアンフェタミンが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、実質的に全ての乱用物質が報酬経路内でドーパミンを直接的または間接的に増加させる。物質使用を介したドーパミンシグナル伝達の過剰活性化によって快感や多幸感が生じ得る。しかしながら、ドーパミンシグナル伝達の過剰活性化は結果としてドーパミン細胞の活性化とドーパミンシグナル伝達に必要とされる閾値を上げることにより物質誘発神経可塑性を引き起こし得る。長期ではこれによりD2受容体の減少とドーパミン放出の減少が引き起こされ、最終的には帯状回(抑制制御及び衝動性に関与)及び前頭前皮質(実行機能に関与)などの脳の領域における領域活動の低下が引き起こされる。ドーパミンの過剰活性化は脳内の様々な報酬経路のサリエンシーを変えることもできる。これによりうつ、衝動性、又は異常報酬情報処理などの症状が引き起こされる場合がある。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系におけるセロトニン神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。例となるセロトニン機能は気分の調節、睡眠、性欲、及び食欲を含む。セロトニンは中脳、VTA、大脳皮質、及び視床下部に見られる。セロトニン神経伝達に影響を及ぼす物質の非限定的な例はMDMA、LSD、及びコカインである。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の脳におけるノルエピネフリン神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。例となるノルエピネフリン機能は感覚処理、運動、睡眠、気分、記憶、及び不安感を含む。ノルエピネフリンは中脳、VTA、大脳皮質、及び視床下部に見られる。ノルエピネフリン神経伝達に影響を及ぼす物質の例はコカイン、メタンフェタミン、及びアンフェタミンである。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系における内在性オピオイド(例えばエンドルフィン及びエンセファリン)神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。内在性オピオイド神経伝達物質は脳及び脊髄に広く分布し、様々な受容体に結合する。例となる内在性オピオイド機能は鎮痛や鎮静における役割、呼吸などの身体機能の速度調節、及び気分の調節を含む。内在性オピオイド神経伝達に影響を及ぼす物質の例はヘロイン、モルヒネ、及び処方鎮痛剤などのオピオイド類である。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系におけるコリン作動性神経伝達物質シグナル伝達、例えばアセチルコリン神経伝達が物質によって影響を受ける。アセチルコリンは海馬、大脳皮質、視床、基底核及び小脳に見られる。例となるアセチルコリン機能は運動、認知、及び記憶を含む。アセチルコリン神経伝達に影響を及ぼす例となるが非限定的な物質はニコチンである。ニコチンはアセチルコリンの受容体に結合する。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系における内在性カンナビノイド(例えばアナンダマイド)神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。内在性カンナビノイドは大脳皮質、海馬、視床及び基底核に見られる。例となる内在性カンナビノイド機能は運動制御、認知、及び記憶を含む。内在性カンナビノイド神経伝達に影響を及ぼす例となるが非限定的な物質はマリファナである。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系におけるグルタミン酸神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。グルタミン酸は脳に広く分布する。例となるグルタミン酸機能は神経活動の速度調節(速度の上昇)、学習、認知、及び記憶を含む。グルタミン酸神経伝達に影響を及ぼす物質の非限定的な例はケタミン、フェンシクリジン、及びアルコールである。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する対象の中枢神経系におけるγ−アミノ酪酸(GABA)神経伝達物質シグナル伝達が物質によって影響を受ける。GABAは脳に広く分布する。例となるGABA機能は神経活動の速度調節(速度の低下)、不安感、記憶、及び麻酔を含む。GABA神経伝達に影響を及ぼす物質の例は鎮静剤、精神安定剤、及びアルコールである。
物質障害に関連付けられる脳の変化はその物質の反復使用に神経系が適応することから適応又は神経適応と呼ばれる。これらの変化は神経伝達物質受容体の発現若しくはレベルの変化、神経伝達物質の発現若しくはレベルの変化、神経構造の変化、神経連絡の変化、又はこれらの組合せを含み得る。神経適応は反復使用によって物質に対する個人の反応が低下する耐性の発生に関連する。この現象の一例はオピオイド使用者におけるμオピオイド受容体の下方制御である。他の受容体に基づく適応はN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)型受容体、セロトニン作動性受容体、及びドーパミン作動性受容体などのグルタミン酸受容体に対する変化を含む。これらの受容体の変化は離脱症状、並びに物質使用障害に関連する他の症状に関与することがある。物質使用に対する適応は物質使用障害を非常に治療し難いものにする症状の多くに寄与していると考えられる。これらの症状には耐性、離脱症状、切望、物質関連手掛かりに対する感受性の増強、ストレス感受性、物質使用などの破滅的行為を変えることに対する低い意欲、不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、異常報酬情報処理、又はこれらの組合せが含まれ、前記症状はこれらに限定される。
物質使用障害によって混乱し得る、且つ/又は物質使用により引き起こされる適応を起こし得る中枢神経系の領域には中脳、腹側被蓋野(VTA)、大脳皮質、前頭前皮質、視床下部、視床、海馬、基底核、扁桃体延長部、及び小脳が挙げられるがこれらに限定されない。中脳の機能には運動制御、視覚及び聴覚処理、睡眠覚醒サイクルの制御、覚醒、及び体温調節への寄与が挙げられるがこれらに限定されない。VTAの機能にはVTAを側坐核に接続する中脳辺縁系経路とVTAを前頭用に接続する中脳皮質経路という2つの主要なドーパミン経路における役割が挙げられるがこれらに限定されない。大脳皮質は視床及び基底核などの様々な皮質下構造体に接続されている。大脳皮質の機能には運動と感覚の処理、言語能力、記憶、実行機能、人格、及び社会行動への寄与が挙げられるがこれらに限定されない。大脳皮質の一部分である前頭前皮質の機能には予想、判断、計画、及び決定などの高度認知機能への寄与が挙げられるがこれらに限定されない。視床下部の機能には自律神経系の恒常性の維持、意欲、及び感情への寄与が挙げられるがこれらに限定されない。視床の機能には感覚信号と運動信号の伝達、並びに意識、睡眠、及び注意力の調節への寄与が挙げられるがこれらに限定されない。海馬の機能には感情の制御及び記憶が挙げられるがこれらに限定されない。基底核の機能には運動制御への関与、実行機能と行動、気分の調節、報酬回路、及び学習が挙げられるがこれらに限定されない。扁桃体延長部の機能には恐れ、ストレス、不安感、いらつき、怒り、及び喜びなどの感情の処理における役割、並びに意欲、覚醒、及び記憶における役割が挙げられるがこれらに限定されない。小脳の機能には脊髄からの感覚情報の受信、及び運動の制御、例えばバランスや協調に関わる運動の制御が挙げられるがこれらに限定されない。
物質使用障害の関連症状
物質使用障害の症状は使用されている物質、使用期間と使用量、及び対象に左右される。これらの症状は肉体的又は精神的な症状、又はこれらの組合せであり得る。物質使用の肉体的症状には震え、不眠症、睡眠障害、頭痛、発汗、吐き気、嘔吐、筋肉痛、筋硬直、高血圧、心拍数不整、心拍数上昇、心動悸、めまい、ぐらつき、震え、脳卒中、脱水症状、浅呼吸、疲労、食欲不振、冷や汗、顔色の悪化、又はこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。物質使用の精神症状には不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、切望、又はこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
離脱症状は本開示の関連物質使用障害である。離脱症状は比較的に安定したレベルの物質に慣れた対象からその物質が急に奪われたときに生じる。離脱症状は肉体的又は精神的な症状、又はこれらの組合せであり得る。これらの特定の離脱症状は取り上げられた物質、物質の使用量と使用期間、及び個人に左右され得る。離脱症状の発症は即時の場合も遅れる場合もある。肉体的な離脱症状には震え、不眠症、睡眠障害、頭痛、発汗、吐き気、嘔吐、筋肉痛、筋硬直、高血圧、心拍数不整、心拍数上昇、心動悸、めまい、ぐらつき、震え、脳卒中、脱水症状、浅呼吸、疲労、食欲不振、冷や汗、顔色の悪化、又はこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。精神的な離脱症状には不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、(取り上げられた物質の)切望、又はこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。幾つかの実施形態ではアルコール及びオピオイド類などの物質の離脱症状は治療有効量の本開示のR(−)−ケタミンを含む組成物の投与によって抑制又は防止される。例えば、ラットへのR(−)−ケタミンの投与によりオピオイド離脱症状が抑制される(図8)。
耐性は本開示の物質使用障害に関連する。耐性は個人が反復使用した物質に対する応答を低下させると生じる。耐性の発生により、その個人はしばしば耐性が発生する前のその物質の効果を再現しようとしてその物質の量を増やして摂取することになる。幾つかの実施形態ではアルコール及びオピオイド類などの物質に対する耐性は治療有効量の本開示のR(−)−ケタミンを含む組成物の投与によって低下し得る。例えば、ラットへのR(−)−ケタミンの投与によってアルコールに対する耐性が低下した(図9)。本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法は耐性を阻止することにより摂取される物質の量を減らす。例えば、R(−)−ケタミンの投与によるアルコール耐性の低下は飲酒者がアルコールの摂取量を増やす妨げになることによって依存症を発症する可能性を低下させることになる。幾つかの実施形態ではR(−)−ケタミンはアルコール耐性の発生を抑制することでアルコール依存症のリスクを低下させる。
切望は本開示の物質使用障害の関連症状である。切望は物質に対する欲求の亢進を意味する。切望はその物質に対する高いレベルの欲求を招くことなく手掛かり、例えば環境的手掛かりを経験することの困難さと結び付けられることが多い。切望にはその物質を使用したいという衝動への抵抗に繰り返し失敗すること、及びその物質を使用しない場合の耐え難い精神又は肉体の状態も含まれ得る。幾つかの場合では切望はアゴニストの投与(補充療法)によって治療され得る。例となるが非限定的なこのアプローチの例はオピオイド切望に対するメサドンの投与、ニコチン切望に対するバレニクリンの投与、カンナビス切望に対するドロナビノール、ナビロン及びTHC類似体の投与、並びにコカイン切望に対するアンフェタミンなどの興奮剤の投与を含む。
物質関連手掛かりに対する応答性の増強は本開示の物質使用障害の関連症状である。手掛かり反応性は学習によって獲得された反応であり、その状態で物質依存症の人はその物質に関連する刺激が提示されると生理的及び/又は主観的な反応を発生させる。これらの刺激には紙巻きたばこ(タバコ)、アルコールの瓶(アルコール)、又は薬物の道具が挙げられ得るがこれらに限定されない。物質関連手掛かりに対する感受性の増強は切望の一要素であり得る。手掛かり反応性は扁桃体、腹側線条体及び前頭前野領域における活動増加に関連付けられている。
異常報酬情報処理は本開示の物質使用障害の関連症状である。時に動機サリエンスと呼ばれる報酬サリエンスは対象が刺激と報酬の組合せ(例えば、物質使用、及び愉快な気持ち)を介して発生させる意欲である。物質使用障害では正常な報酬サリエンスが混乱している。この対象は当の物質ではない報酬に対しては意欲が低く、当の物質に基づく報酬に対しては意欲が不釣り合いに高い。ドーパミンシグナル伝達がこの報酬系の重要な要素であり、物質使用障害に見られる異常報酬情報処理はドーパミンシグナル伝達の低下を伴うことが多い。
無力感、すなわち無能感は本開示の物質使用障害の関連症状である。幾つかの実施形態ではこの無力感は学習によって獲得された無力感である。学習によって獲得された無力感ではこの物質使用障害を有する前記対象はその物質の使用を通して無力さを感じ、物質使用障害の治療の試みを止める。幾つかの実施形態ではこの無力感は物質使用障害に先行し、前記対象の物質使用障害へのなりやすさに寄与する。幾つかの実施形態ではこの無力感は物質使用障害に先行するものであって、その物質使用障害によって悪化するものでもある。
ストレスに対する感受性(「ストレス感受性」)の増強は本開示の物質使用障害の関連症状である。ストレスは物質使用障害の発症の、及び以前になんとかして物質の使用を止めた対象の物質使用障害の再発のよく知られたリスク因子である。一般的なストレス要因には若齢期(小児期)のストレス、経済的ストレス、及び慢性的又は急な人生の有害事象が含まれる。ストレスは気分障害及び不安障害、並びに外傷後ストレス障害などの様々な精神障害とも関連する。ストレスはアドレナリン、コルチゾル、及びノルエピネフリンなどのホルモンの放出を引き起こすことがあり、これによって中枢神経系における神経伝達物質シグナル伝達が直接的または間接的に変化することがある。例えば、ストレスは脳内のセロトニン及びドーパミンのレベルを低下させることがある。幾つかの実施形態ではストレス感受性は物質使用障害に先行する場合があり、個人の物質使用障害へのなりやすさに寄与する場合がある。例えば、物質乱用障害はストレスを治療するための対処方法(例えば、自己治療方法)として展開する場合がある。幾つかの実施形態ではストレス感受性は物質使用障害によって引き起こされる症状である。例えば、物質使用障害はより強いストレスの原因、及びストレスに対する感受性増強の原因となる場合がある。幾つかの実施形態ではストレス感受性は物質使用障害の発症に先行するものであって、その物質使用障害によって引き起こされる症状でもある。
快感消失とネガティブ情動は本開示の物質使用障害に関連する症状である。本明細書において使用される場合、快感消失はうつ及び双極性障害などの気分障害の臨床的な特徴であり、快感を体験する能力の低下又は喪失のことを指す。ネガティブ情動は幸福とは反対のネガティブな気分及び感情が対象の中で優位にあることを指す。快感消失とネガティブ情動は物質使用の再発と物質使用の再発から過剰な物質使用までの移行の両方に関与する重要な因子であると考えられる。理論に捉われることを望むものではないが、快感消失とネガティブ情動はドーパミン作動性中脳辺縁系と中脳皮質の報酬回路に起源を有すると考えられている。驚くべきことに、本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法は快感消失又はネガティブ情動を誘導しない。対象が物質使用障害の状態で物質を乱用しており、且つ、物質乱用を止めようと試みているときに対象は快感消失とネガティブ情動を経験するため、快感消失又はネガティブ情動を発生させることがない、又は悪化させることがない治療法が好ましく、そのような治療法が物質使用障害のより有効な治療法である。
快感消失とネガティブ情動の1つのモデルは本明細書に記載される頭蓋内自己刺激アッセイ(ICSS)である。ICSSは例えばニコチン離脱症状の要素としてのネガティブ情動状態の尺度としてかなりの予測妥当性を有する(Muelken, P. et al.,A Two−Day Continuous Nicotine Infusion Is Sufficient to Demonstrate Nicotine Withdrawal in Rats as Measured Using Intracranial Self−Stimulation (2015)PLoS ONE10(12):e0144553)。簡単に説明すると、ラットに脳の報酬領域、例えば内側前脳束に向けて電極を移植し、応答レバーを押し下げることにより電流をこの脳の領域に送らせる。その後、行動に対するこの電流の周波数の変化の効果を単独(ベヒクル)で、並びに乱用物質の存在下でR(−)−ケタミンと共に、及びR(−)−ケタミン無しで観察することができる。R(−)−ケタミンは対象に快感消失応答及びネガティブ情動を引き起こすことがある他の治療法、例えばS(+)−ケタミン又はS(+)−ケタミンを含むラセミ体ケタミンと比較して物質使用障害の治療法として優れていることがR(−)−ケタミン、S(+)−ケタミン、及びR−ヒドロキシノルケタミンを使用したICSSデータ(図10〜図12)から実証される。したがって、ここで提示される前臨床データから物質使用障害の治療に関してラセミ体R,S−ケタミン又はS(+)−ケタミンのどちらに対しても優れたR(−)−ケタミンのプロファイルが予測される。ラセミ体ケタミンは物質使用障害の治療を受けている患者に必要な変化とは方向性が反対の多数の生理的変化及び行動変化を生じさせる。これらには解離反応及び精神分裂病の症状が含まれる(Krystal et al.,1994)。重要なことに、ラセミ体ケタミンは気分症状に対して負の影響を引き起こす(Nugent et al.,2018)。精神病症状を引き起こすS(+)−ケタミンと対照的にR(−)−ケタミンはヒトではくつろいだ状態を生じさせる(Vollenweider et al.,1997)。物質使用障害を有する対象、特に治療を受けている対象におけるうつ症状及び不安症状は物質使用の再発の可能性を軽減するよりもむしろ高める(Hatzigiakoumis et al.,2011、Krupitsky et al.,2016、Nunes et al.,2004)。ラセミ体ケタミン及びS(+)−ケタミン(図11)と対照的にR−ケタミン(図10)もその代謝産物(図12)もネガティブな気分症状を引き起こさない。さらに、モルヒネなどの乱用物質(図7B)、ラセミ体ケタミン(図6D)、又はS(+)−ケタミン(図6C)と異なりR(−)−ケタミン(図6B)は報酬効果を引き起こさない。
物質使用障害には意識的に動いてもいなければ人生の目標に向かってもいない中毒のパターンに当てはまる行動が含まれる(Bell,1995)。中毒の否定は治療及び回復に対する別の障壁である(Vayr et al.,2019)。意識のトレーニングとマインドフルネス療法が物質乱用障害の帰結の改善と結び付けられている(Perry,2019)。理論に捉われることを望むものではないが、S−(+)−ケタミンではなくR(−)−ケタミンによるくつろいだ状態によって誘発される自覚と内省の増加(Vollenweider et al.,1997)が追加のメカニズムを提供し、そのメカニズムによりR(−)−ケタミンが治療的価値を物質使用障害治療に加えることになると考えられる。幾つかの実施形態では本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法は自覚と内省を増加させることにより物質使用障害を治療する。
気分障害と不安障害は本開示の物質使用障害にしばしば併発する精神障害である。物質使用障害はドーパミン報酬回路などの動機付け回路の調節不全を伴い、その調節不全は気分障害と不安障害にも関係するとされている。物質使用障害には3つの主要な神経生物学的回路である基底核、扁桃体延長部、及び前頭前皮質も関与し、これらは気分障害と不安障害にも関係するとされている。気分障害と不安障害は対象の気分の変化を伴う。例となる気分障害と不安障害はうつ、双極性障害、不安障害、強迫性障害、及び外傷後ストレス障害を含む。うつの症候には活動に対する関心の喪失、睡眠パターンの変化、食欲の変化、罪悪感、絶望感、活力喪失、集中できないこと、ストレス、気分の落ち込み、意欲低下、認知機能障害、思考能力の低下、不安感、不眠症、快感消失又はネガティブ情動、食欲不振、疲労及び自殺念慮が挙げられるがこれらに限定されない。不安感の症候には心配、苦悩、恐怖、及びパニック発作が挙げられるがこれらに限定されない。双極性障害の症候には時にエピソードと呼ばれる気分、行動、及び活力の大きな変化が挙げられるがこれらに限定されない。エピソードは躁、うつ、又は混合型であり得る。双極性障害は気分の変動も特徴とする。幾つかの実施形態では物質使用障害は(1)バカ騒ぎ/興奮、(2)脱離/ネガティブ情動、及び(3)夢中/期待(切望)という繰り返しサイクル内の3つのステージを伴うものであると考えることができる。このサイクルは時間と共に悪化する場合があり、脳の報酬系、ストレス系、及び実行機能系における神経可塑性変化を伴う。物質使用障害は衝動から強迫的行動までの変化によって物質を摂取することになる慢性的な再発性の障害であると考えることもできる。したがって、物質使用障害は強迫性障害にも見られる症状を含む。強迫性障害は強迫観念と衝動を伴う不安障害である。
気分の変動は本開示の物質使用障害の関連症状であり、双極性障害を含む。気分の変動は突然で極端な、一見したところ説明できない気分の変化である。例えば、全く、又はほとんど対外的な根拠無く幸福な気持ちからうつに急に変動するのが気分変動である。
パニック発作は本開示の物質使用障害の関連症状である。パニック発作はこの感情を説明できるような恐怖を引き起こす刺激が存在しない状況での突然の強烈な恐怖感又はパニックである。パニック発作は不安障害と物質乱用障害の両方に関連する症状である。アンフェタミン類、MDMA、メフェドロン、メタンフェタミン、又はコカインなどの興奮剤の使用は不安感及びパニック発作の発症と悪化に関連付けられている。アルコール、ベンゾジアゼピン、又はバルビツール酸系化合物などの抑制剤は不安感及びパニック発作を自己治療するために短期間使用される場合がある。しかしながら、抑制剤からの離脱はしばしば不安感及びパニック発作を症状として引き起こす。
物質使用障害と精神障害
物質使用障害の症状は精神障害の症状でもあり得る。これらの症状には不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、異常報酬情報処理、又はこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
物質使用障害にはうつ、双極性障害又は精神分裂病、不安障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、反社会的人格障害、及び自閉症スペクトラム障害などの精神障害がしばしば併発する。幾つかの実施形態では精神障害が物質使用障害を引き起こす。例えば、うつ病を有する個人はアルコール又はコカインなどの気分を高揚させる物質を使用することで自己治療しようとすることがある。幾つかの実施形態では物質使用障害が精神障害を引き起こす。例えば、アルコールの使用は悲しい気持ち及び/又はうつに関連する疲労感を高める場合がある。幾つかの実施形態では精神障害は物質使用障害に先行するものであって、その物質使用障害によって変化又は悪化するものでもある。物質使用障害及び精神障害は脳内の同じ領域及び同じ神経伝達物質シグナル伝達系の関与、例えば報酬処理、ストレス又は不安感に対する応答、又は気分の調節に関与する脳の領域及び系の関与を介して機能的に関係する場合がある。幾つかの実施形態では物質使用障害は快感消失及びネガティブ情動などの精神症状を引き起こす。本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法を使用して物質使用障害と精神障害の両方を治療することが可能である。
治療法
うつ、双極性障害、精神分裂病、不安障害、外傷後ストレス障害、及び自閉症スペクトラム障害などの物質使用障害に関連する精神障害の治療では投薬が必須であり、抗うつ薬(例えば、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、及びセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)、抗精神病薬(例えば、フェノチアジン系化合物、ブチロフェノン系化合物、ベンズアミド系化合物、イミノジベンジル化合物、チエピン系化合物、インドール系化合物、及びセロトニン/ドーパミン受容体アンタゴニスト)、及び抗不安薬が投与される。しかしながら、臨床分野で実際に使用されるこれらの薬品はある患者及びある症状には有効であるが、これらの薬品が有効ではない患者、いわゆる治療抵抗性患者も存在することが知られている。したがって、精神障害と物質使用障害の両方のための新規治療薬の開発への強い要求が存在する。既存の薬品がこれらの精神障害及び/又は物質使用障害に対して充分な治療効果を示すとは言い難い。実際には現時点で実質的に無効な予防法及び治療法が存在する。
精神障害又は物質使用障害におけるうつ治療の重大な問題のうちの1つは前記抗うつ薬の効果及びその補助療法の効果が限られていることである。現在の抗うつ薬がそれらの薬効を発現するには数週間以上かかる。加えて、これらの抗うつ薬が有効ではない治療抵抗性患者が存在する。したがって、うつ病患者のわずかに50%しか寛解に達しないともいわれている。また、寛解に達するように抗うつ薬の用量を上げるとその結果として患者が様々な副作用に苦しむことになる。さらに、うつは自殺の原因の1つである。高齢者のうつは認知症発生リスク、特にアルツハイマー病及び脳血管性認知症の発生リスクを上昇させることが知られている(非特許文献1)。
現在では物質使用障害を治療するために使用されている薬物治療方法には3つの主要な薬物治療方法、すなわち段階的減薬療法、補充療法、及び投薬支援治療が存在する。補充療法及び投薬支援治療に使用される治療薬のリストが下の表2に示されている。これらの方法は物質からの離脱を容易にし、その物質使用障害に関連する症状を治療し、その物質の摂取を止めた物質使用障害を有する対象における再発の防止に役立つ。
Figure 2021523228
第1の薬物治療方法は段階的減薬療法である。この方法では対象が中毒になっている物質の量を徐々に減らしてその対象に提供する。その物質が突然に無くなるのではなく次第に減少することが物質使用の停止時における離脱症状の重篤度の低下に役立つ。
第2に、補充療法を用いて物質使用障害を有する対象を治療することが可能である。この場合、この個人が中毒になっている物質に似た効果をこの対象の神経回路に対して有する薬剤、例えばアゴニストをこの対象に投与する。幾つかの場合ではこの薬剤の使用が停止されたときの離脱症状の重篤度の管理又は抑制に役立つようにこの薬剤の量が徐々に減らされる。この種類の治療に使用される例となる薬剤としてアルコール離脱にはGABAに対して類似の効果を有するベンゾジアゼピン、タバコにはニコチン代替物、カンナビスにはテトラヒドロカンナビノール(THC)類似体、及びオピオイド中毒にはメサドン又はブプレノルフィンが挙げられるがこれらに限定されない。
本開示の補充療法の幾つかの実施形態では離脱が段階的減薬又は急速退薬のどちらかを介して達成されることはない。どちらかというと切望などの物質使用障害の症状が補充療法によって治療される。
最後に、物質使用障害のその他の治療方法は投薬支援治療によるものである。この方法では物質使用障害の症状を管理するための1種類以上の医薬品が前記対象に投与される。この方法は離脱症状の管理に役立ち得る。例えば、不眠症又は睡眠障害などの離脱症状、吐き気及び/又は嘔吐などの消化器症状、並びにうつ、焦燥感、又は緊張などの気分の問題は全てが投薬支援治療の援用によって治療可能である。物質使用障害症状を治療するために使用される医薬品にはゾルピデム、ベンゾジアゼピン、及び興奮剤が挙げられるがこれらに限定されない。幾つかの物質、例えばオピオイド類及びカンナビスからの離脱にはノルアドレナリンの急上昇が付随し、その急上昇は高血圧、頭痛、発汗、心拍数不整、不安感、パニック発作、及び顔色の悪化などの症状の原因になる。クロニジン、ロフェキシジン、及びグアンファシンなどのα2アゴニストは全てがこれらの症状の治療に使用可能である。物質使用障害の他の症状を治療するために他の神経伝達物質を調節する、例えばグルタミン酸作動性シグナル伝達を調節するために他の医薬品が使用可能である。
投薬支援治療は再発に寄与する症状、例えば精神症状を治療するためにも用いることができる。投薬支援治療は物質関連手掛かりに対する反応性の増強、ストレス感受性、異常報酬情報処理、又は物質切望に関与する可能性がある神経伝達物質系を標的とすることができる。これらの神経伝達物質系にはグルタミン酸作動性の系、モノアミン作動性の系、及びオピオイド系が含まれる。例えば、ブプロピオンはニコチン依存症の場合に切望を抑制し、離脱を促進することができるドーパミン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。トピラマートはコカイン依存症とアルコール依存症の場合に切望を抑制する部分的グルタミン酸アンタゴニストである。ガバペンチンは脳内のGABA濃度を高め、はアルコール使用者及びカンナビス使用者の症状を治療するために使用可能である。低親和性NMDARアンタゴニストであるメマンチンは手掛かり反応性を低下させることができる。オピオイド受容体アンタゴニストであるナルトレキソンはアルコールとオピオイドの依存症の対象において切望を抑制する。
投薬支援治療は神経伝達に対するそれらの治療の効果に加えて、又はそれらの治療の効果の代わりに対象の物質に対する条件反応を変化させることにより作用し、且つ、報酬処理に影響することもできる。例えば、ナルトレキソンもオピオイド類の効果を妨害し、切望とその実現との間の連関を断ち切る。ジスルフィラムはアルコール代謝を阻害し、アルコール摂取による有毒なアルデヒド類の蓄積を引き起こす。ジスルフィラムとナルトレキソンは両方とも前記対象が物質使用から快感を得ることを妨害し、そうして物質使用の報酬サリエンスを変化させる。
投薬支援治療はドーパミンシグナル伝達又はセロトニンシグナル伝達などの神経伝達物質シグナル伝達系を標的とすることにより物質使用障害に関連する異常報酬情報処理を正常化することができる。例えば、ドーパミンシグナル伝達がこの報酬系の重要な要素であり、物質使用障害に見られる異常報酬情報処理はドーパミンシグナル伝達の低下を伴うことが多い。投薬支援治療に対する1つの臨床アプローチはドーパミンシグナル伝達を改善するための方法を伴っている。アンフェタミンやモダフィニルなどの興奮剤、パーキンソン病薬、及びネピシスタット(nepicistat)やジスルフィラムなどのドーパミン代謝を妨害する医薬品は前記対象の中枢神経系のドーパミンレベルを上昇させるために使用可能である。代わりに又は加えて、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬は快感を体験する能力、及び意欲に関連する他の神経伝達物質、例えばセロトニンを標的とすることにより異常報酬情報処理を治療するために使用可能である。他の薬物治療アプローチは異常報酬情報処理を有する個人において過剰活性化している扁桃体及び線条体でのグルタミン酸神経伝達を調整する。例えば、システイン・グルタミン酸交換輸送体を上方制御するN−アセチルシステイン(NAC)はカンナビス依存症を治療するために使用可能である。
しかしながら、既存の薬物療法はそれら自体が問題のあるものであり得る。物質使用障害を治療するために使用される医薬品の中にはそれら自体が動揺などの症状を誘発させ得るものがある。他の医薬品も離脱症状を引き起こすか、又は一時的な軽減を実現するだけであり、その医薬品の投与を停止すると物質使用障害に関連する症状が再発する。段階的減薬療法、例えばオピオイドの用量を段階的に減少させる治療法は長期間の治療を必要とする。さらに、この方法では前記対象が根本的に物質依存症から抜け出すことにならず、治療後に再発する割合が高い。しばしば用いられる1つの補充療法ではメサドンが別のオピオイド、例えばヘロイン又はモルヒネの代わりにされる。しかしながら、メサドンは鎮痛薬であり、薬物依存症を引き起こす可能性もある。例えば、100mgの経口メサドンが依存症を引き起こす力は10mgの注射されたモルヒネのそれと等価である。また、メサドン自体が多数の副作用、例えばニューモシスチス肺炎、免疫学的症状、インポテンツ、並びに中毒に至る体内でのその薬品の蓄積、より重篤なものでは両眼の失明などを有する。メサドン中毒の母親から産まれた幼児は離脱症状を示す可能性がある。物質使用障害を治療するための追加の薬物療法、例えば本開示のR(−)−ケタミンを含む組成物と方法の必要性が当技術分野に存在する。
本開示の薬物療法は行動療法と組み合わせてよい。例となるが非限定的な行動療法は随伴性マネジメントシステム、カウンセリング、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む。カウンセリングは対面式又はデジタル介入(例えば、ウェッブベース又は電話ベースのカウンセリング)によるものであってよい。カウンセリングは一対一、例えばセラピストと一対一、グループと一対一、又は両方であってよい。随伴性マネジメントはオペラント条件付けを用いる一種の行動療法である。随伴性マネジメントは望ましい行動(例えば、物質の不使用)に対して報酬を与えるものであり、望ましくない行動(例えば、物質使用)に対応して懲戒的手段を取る場合がある。認知行動療法は元々うつ病を治療するために開発されたものであり、その他の精神障害と物質使用障害の症状の治療に拡大されたものである。認知行動療法では前記対象は1人以上の教師又はセラピストと作業してこれらの教師又はセラピストの考え又は行為を認識し、精神障害又は物質使用障害に寄与している精神的な歪みを特定し、これらの歪みを変える方法を学習する。マインドフルネス療法は瞑想及び呼吸法などのマインドフルネスの実践を取り入れている一種の認知療法である。幾つかの実施形態ではマインドフルネス療法は集団療法である。幾つかの実施形態ではこの行動療法は仮想現実利用療法であってよい。仮想現実利用療法は精神障害を有する対象の妄想症や不安感などの症状の治療に使用されてきた。仮想現実利用療法によって対象は制御された仮想の環境の中で刺激に曝され、その刺激に応答する。
幾つかの実施形態では治療有効量の本開示のR(−)−ケタミンを含む組成物の投与によって治療方法に対するアドヒアランスが向上し得る。例えば、げっ歯類動物に対するR(−)−ケタミンの投与はモルヒネに対する条件付け場所嗜好性応答がR(−)−ケタミンにより抑制されることを示した(図7)。このことはR(−)−ケタミン組成物の投与により物質使用障害の物質に対する対象の嗜好性又は愛好度が低下し得ることを示している。本明細書に記載される離脱症状を抑制するR(−)−ケタミン組成物の能力に加えて本開示のR(−)−ケタミン組成物のこの効果は物質使用障害の治療方法に対するアドヒアランスを向上させることができ、又は物質の中毒を引き起こす力を低下させることができる。したがって、本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法は物質使用障害の医学(投薬)支援治療方法、例えばオピオイド中毒の医学支援治療に対するアドヒアランスを向上させることができる。本開示のR(−)−ケタミン組成物と本開示の方法は物質使用障害の物質の摂取を止めた対象の離脱したままでいる能力を高めることもできる。
前記薬物療法又は行動療法のうちのいずれかを単独で、又は組み合わせて本開示のR(−)−ケタミン組成物及び方法と共に使用することが考えられる。近年の研究ではグルタミン酸作動性伝達、特にN−メチル−D−アスパラギン酸(以下、NMDAと略する)受容体を介するグルタミン酸作動性神経伝達の異常が大うつ病性障害(以下、MDDと略する)及び双極性障害などの気分障害の病態生理学に関連することを示唆する証拠が増えている。NMDA受容体は神経生物学及びMDDの治療にも同様に重要な役割を果たす(非特許文献2)。
NMDA受容体アンタゴニストであるケタミンがMDD及び治療抵抗性双極性障害のうつ症状を有する治療抵抗性患者に対して急性で確固とした抗うつ作用を示すことが報告されている(非特許文献3〜5)。また、ケタミンが治療抵抗性強迫性障害及び治療抵抗性外傷後ストレス障害(以後、PTSDと略する)にも有効であることが報告されている(非特許文献6〜8)。ケタミンは自殺念慮を抑制する効果を有することも報告されている(非特許文献9)。さらに、自閉症スペクトラムを有する成人のケタミンによる治療が報告されている(非特許文献10)。ケタミンは1962年に麻酔薬として開発された化合物であり、1965年にケタミンの臨床適用が開始された。しかしながら、ケタミンは幻覚や妄想などの精神病症状と薬物依存の問題のために管理物質に指定されている。現在ではケタミンは麻酔薬として、及び慢性疼痛の治療のために臨床分野で使用されている。
ケタミンの臨床的抗うつ作用はその単回投与の数時間後から1〜2日間の短期間にわったって継続することが報告されている。一方、これらの作用は2週間以上にわたって継続する場合もあることが報告されている(非特許文献3、4、及び11)。また、ケタミンは副作用として精神異常発現作用を有しており、ケタミンの抗うつ作用はこれらの副作用が消えて初めて現れたことが報告されている(非特許文献3及び4)。
ケタミン(時にRS(+/−)−ケタミンと呼ばれる)は等量のR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンを含むラセミ体混合物である。R(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンはそれぞれケタミンのR−異性体及びS−異性体とも呼ばれる。S(+)−ケタミンはR−異性体よりも約4倍高いNMDA受容体に対する親和性を有する(非特許文献12)。さらに、S(+)−ケタミンはR−異性体と比べると約3〜4倍の麻酔効果を有し、R−異性体よりも高い精神異常発現副作用を有する(非特許文献12)。上で説明したように、ケタミンの精神異常発現作用の力はNMDA受容体をブロックする力と相関する(非特許文献12)。健康なボランティアでの陽電子放射断層撮影法(PET)研究から精神異常発現用量のS(+)−ケタミン(すなわち、5分間にわたって15mgの静脈内点滴とその後のその用量(0.014〜0.02mg/kg/分、53分間にわたる)の点滴)は前頭皮質及び視床においてグルコースの脳代謝率(以後、CMRgluと略する)を顕著に上昇させることが実証された(非特許文献13)。対照的に、等モル用量のR(−)−ケタミンは脳の領域全体にわたってCMRgluを低下させる傾向があり、精神病症状を引き起こすのではなく、くつろいだ状態と幸福感を生じさせた(非特許文献13)。
上で説明したように、ケタミンの鎮痛作用と精神異常発現作用は両方とも主としてNMDA受容体のブロックを介してもたらされると一般に理解されている。ケタミンのS−異性体はNMDA受容体に対して高い親和性を有する。したがって、これらのケタミンの作用は主にS−異性体によって引き起こされると考えられる。
現在のところ、ケタミンはMDD、治療抵抗性双極性障害のうつ症状、治療抵抗性強迫性障害、治療抵抗性PTSD(非特許文献5〜12)、及び物質使用障害の症状を有する治療抵抗性患者の治療について注目されている薬品のうちの1つである。MDDを有する治療抵抗性患者におけるS(+)−ケタミン(0.25mg/kg、静脈内投与)の抗うつ作用はRS(+/−)−ケタミン(0.5mg/kg、静脈内投与)の抗うつ作用よりも弱いことが以前の症例報告によって示された(非特許文献14)。さらに、うつ病の患者で有効なRS(+/−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの経口用量はそれぞれ0.5mg/kg及び1.25mg/kgであることが非盲検試験(非特許文献15)と症例報告(非特許文献16)によって示された。また、ケタミンの鼻腔内投与がMDDを有する治療抵抗性患者において抗うつ作用を示し(特許文献1及び非特許文献17)、S(+)−ケタミンは近年になってFDAによりこの同じ適応症用に認可された。
NMDA受容体アンタゴニストであるケタミンはうつ病の治療抵抗性患者において急速な抗うつ作用を示すことが報告されている。NMDA受容体を介するグルタミン酸作動性神経伝達はうつに関与すると考えられており、ケタミンは光学異性体、すなわち、S−異性体とR−異性体を含み、S−異性体はR−異性体よりも高いNMDA受容体に対する親和性を有する。したがって、S−異性体又はラセミ体混合物はケタミンを使用するうつ病の治療の研究に使用されてきており、S(+)−ケタミンは近年になってFDAによりうつ病の治療用に認可された。しかしながら、ケタミンは幻覚や妄想などの精神病症状と依存症を含む副作用の問題を有しており、管理物質に指定されている。したがって、臨床分野でケタミンを実際に使用することは難しい。
本開示の目的は物質乱用障害に対する迅速かつ長期的に継続する効果を有する新規化合物であるR(−)−ケタミンを提供することである。さらに、重要なことにR(−)−ケタミンはS(+)−ケタミン異性体と異なり快感消失又はネガティブ情動などの物質使用障害に関連するネガティブ症状を引き起こす可能性がS(+)−ケタミンよりも低い。R(−)−ケタミンは中毒を引き起こす力もS(+)−ケタミンよりも弱い。対象が物質離脱状態であるときに解離性症状又は不安感が進むと離脱症状が悪化し、治療が成功する可能性が低下し得るのでラセミ体ケタミン及びS(+)−ケタミンの使用は快感消失、ネガティブ情動又は解離性効果などのネガティブ情動症状、及び他の有害事象によって制限される。物質乱用障害はうつ、双極性障害、強迫性障害、PTSD及び自閉症スペクトラム障害などのうつ症状を示す精神障害と併発する場合があり、それらの精神障害も本開示のR(−)−ケタミンで治療可能である。
R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩は物質使用障害の治療に使用され得る。物質使用障害を有する対象へのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩の投与によってその障害の症候又は症状が抑制又は除去され得る。例えば、物質使用障害を有する対象へのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩の投与によって本明細書に記載されるような広範囲の不安症状及び気分症状が抑制又は除去され得る。さらに、R(−)−ケタミンはS(+)−ケタミンと異なり前記対象に投与されたときに物質使用障害によって誘起される快感消失又はネガティブ情動を悪化させない。R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩は活動に対する関心の喪失、睡眠パターンの変化、食欲の変化、罪悪感、絶望感、活力喪失、集中できないこと、ストレス、気分の落ち込み又は気分の落ち込み、意欲低下、認知機能障害、思考能力の低下、不安感、不眠症、快感消失及びネガティブ情動、食欲不振、疲労、及び自殺念慮などの物質使用障害に関連するうつ症状の治療及び/又は予防に使用され得る。
幾つかの実施形態では物質使用障害を有する個人へのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩の投与は例えば側坐核におけるドーパミン神経伝達に影響を及ぼし得る。R(−)−ケタミンの投与によって物質切望などの症状が抑制され、(例えば、物質乱用行為を止める)意欲が改善され、離脱症状が治療され、異常報酬情報処理が正常化され得る。R(−)−ケタミンの投与は物質使用に至る手掛かり反応性を含む衝動性及び行動反応性に影響を及ぼし得る。R(−)−ケタミンの投与によって物質使用に対する衝動を含む衝動が抑制され、過剰評価しがちな思考過程が抑制され得る。R(−)−ケタミンの投与は物質使用によって変化がもたらされた後の脳の前頭前野領域においてグルタミン酸の恒常性を復元することができ、前頭前野領域と中脳辺縁系領域との間のシナプス剪定を元に戻し、且つ、デフォルトモードネットワーク(DMN)内の安静時過結合の減衰を維持することができる。これらは全て強迫性障害に関連する。
さらに、R(−)−ケタミンを物質使用障害に関連するうつの状態の対象に投与することでこの対象のうつ病を治療できる。本開示ではR(−)−ケタミンが迅速かつ長期的に継続する抗うつ作用を有することがうつ病の新しい動物モデルの使用から実証された。この動物モデルは新生児期にDEXに曝露されたマウスにおいてうつ様の挙動が幼若期と成熟期に見られるという本願の発明者らの発見に基づいて本発明者らによって作製された(非特許文献18;実施例1を参照されたい)。この動物モデルは幼若期でもうつ様の挙動を示すため、成人のうつ病と同様に小児のうつ病の動物モデルとして有用である。
本開示ではR(−)−ケタミンが社会的敗北ストレスモデルでも同様に抗うつ作用を有することも明らかにされた。この社会的敗北ストレスモデルはうつ病、ストレス、及び不安感の典型的な動物モデルであり、世界中で使用されている(非特許文献19)。
R(−)−ケタミンはその単回投与によって迅速かつ長期的に継続する抗うつ作用を新生児期DEX曝露後の幼若マウス及び社会的敗北ストレスマウスモデルのうつ様の挙動に対して示した(実施例1及び実施例2を参照されたい)。一方、副作用の評価系である運動増強効果、プレパルス抑制不全、及び条件付け場所嗜好性試験を用いる依存症検査については重大な変化がS(+)−ケタミンに見られ、一方でR(−)−ケタミンではそのような副作用が見られなかった(実施例4、5、及び6を参照されたい)。また、条件付け場所嗜好性試験ではRS(+/−)−ケタミンが条件付け場所嗜好性(CPP)スコアを増やし、RS(+/−)−ケタミンの薬物依存症を示した。さらに、R(−)−ケタミンはS(+)−ケタミンと比較すると低いNMDA受容体に対する親和性を有し、したがって精神異常発現作用などの副作用が少ないと考えられる。したがって、R(−)−ケタミンはS(+)−ケタミン及びRS(+/−)−ケタミンと比較すると有望で安全な抗うつ薬として働く可能性がある。
R(−)−ケタミン又は薬理学的に許容されるその塩は抗うつ薬として使用される場合があり、具体的には物質使用障害に関連するうつ症状、例えば気分の落ち込み、意欲低下、不安感、付随的な不眠症や食欲不振、及び自殺念慮の治療及び/又は予防に使用される薬剤として使用される場合がある。
本開示の薬剤と医薬組成物はうつ症状、例えばMDD又は小児うつ病などのうつ症状を示す物質使用障害、及びうつ症状とそれらの症状の反対の症状である躁症状の繰り返しを伴う双極性障害に適用可能であり、より好ましくは小児うつ病と成人うつ病に適用可能である。また、ケタミンは治療抵抗性強迫性障害及び治療抵抗性PTSDにも有効であることが報告されている(非特許文献6、7、及び8)。したがって、本開示の薬剤と医薬組成物は物質使用障害に関連する強迫性障害及びPTSDに適用可能である。強迫性障害は一種の不安障害であり、強迫観念と衝動を特徴とする病状を有する疾患であるが、うつ病に関連すると考えられている。強迫性障害を有する患者はうつも有し、非常に多くの事例で強迫観念と衝動に加えてうつ症状を示す。PTSDを有する患者は多くの事例でうつ症状を示す。実際にSSRIなどの抗うつ薬がPTSDの治療薬として使用されているがその治療効果は弱い。強迫性障害及びPTSDの予防及び/又は治療のための医薬組成物であって、強迫性障害及びPTSDの症状を抑制するために有効な量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない前記医薬組成物が本開示の範囲に含まれる。また、自閉症スペクトラムを有する成人のケタミンによる治療が報告されている(非特許文献10)。したがって、本開示の薬剤と医薬組成物は自閉症スペクトラム障害に適用可能であることが好ましい。さらに、高齢者のうつは認知症発生リスク、特にアルツハイマー病及び脳血管性認知症の発生リスクを上昇させることが知られている(非特許文献1)。したがって、本開示の薬剤と医薬組成物はアルツハイマー病及び脳血管性認知症を含む認知症の有望な予防薬又は治療薬である。
投与
本開示の薬剤と医薬組成物は経口投与されても非経口投与されてもよい。経口投与では錠剤、カプセル剤、コーティング錠、トローチ剤、又は水剤若しくは懸濁剤などの液剤をはじめとする公知の投与剤形が用いられてよい。また、非経口投与の例には注射による静脈内投与、筋肉内投与、又は皮下投与、スプレー剤、エアロゾル剤、又はそのような剤を使用する経鼻投与又は口腔内投与などの経粘膜投与、坐剤又はそのような剤を使用する直腸投与、及びパッチ剤、リニメント剤、ゲル剤、又はそのような剤を使用する経皮投与又は舌下投与が含まれ得る。好ましい非経口投与の例には口腔内投与、経鼻投与、舌下投与、及び静脈内投与が含まれ得る。
R(−)−ケタミン
発明者らはこれまでケタミンを使用する物質使用障害の治療の研究に使用されてこなかったR(−)−ケタミンに注目した。発明者らはモルヒネ中毒のマウスモデルでR(−)−ケタミンがマウスに共投与されるとモルヒネの中毒性を著しく減弱化できることを発見した。さらに、発明者らはラットに投与されたR(−)−ケタミンが誘発されたモルヒネ離脱の症状を著しく緩和できることを発見した。さらに、R(−)−ケタミンはラットにおいてアルコール耐性の効果を軽減できた。驚くべきことに、R(−)−ケタミン及びその代謝産物R−ヒドロキシノルケタミンはS(+)−ケタミンと異なりラットにおいて快感消失副作用又はネガティブ情動副作用を示すことも無かった。本開示はS(+)−ケタミン及びラセミ体ケタミンと比較すると優れたオピオイド使用障害及びアルコール使用障害などの物質使用障害の治療法がR(−)−ケタミンによって提供されることを意味するこれらの発見に基づいて達成されたものである。
加えて、発明者らはうつ病のマウスモデルを使用する研究でR(−)−ケタミンが幼若期のこのマウスモデルのうつ様症状に対してS(+)−ケタミンよりも強力な抗うつ作用を示し、より長い期間にわたって効果が続くことを発見した。発明者ら社会的敗北ストレスモデルマウスでもR(−)−ケタミンがS(+)−ケタミンと比較してより強力、且つ、長期継続する抗うつ作用を示すことを発見した。さらに、S(+)−ケタミンの投与によって自発運動亢進、プレパルス抑制欠損、及び薬物依存症などの幾つかの副作用が誘発されたが、R(−)−ケタミンの投与では誘発されなかった。ケタミンのR−異性体はそのS−異性体と比較すると低いNMDA受容体に対する親和性を有しているのでそのR−異性体は副作用としての精神異常発現作用が弱く、且つ、薬物依存症を引き起こすことがほとんどないと考えられる。本開示はこれらの発見に基づいて達成されたものである。
R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩は迅速かつ長期的に継続する抗うつ作用と少ない副作用を有し、したがって物質使用障害の予防及び/又は治療に有効である。幾つかの実施形態ではこれらの物質使用障害は精神障害及び/又はうつ症状と関連する。したがって、R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩からなる前記薬剤、及びR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない前記医薬組成物は物質使用障害の予防及び/又は治療の分野の新規医薬品として有用である。
「S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない」という言葉はS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が全く含まれないこと、又はS(+)−ケタミン若しくはその薬学的に許容される塩が効果と副作用を示さないほどの量でしか含まれていない場合、又はS(+)−ケタミン若しくはその薬学的に許容される塩が前記薬剤及び前記医薬組成物の製造時に必然的に混ざってしまう程度の不純物として含まれる場合を意味する。幾つかの実施形態ではR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩はこのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が約5%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約4%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約3%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約2%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約1%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.9%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.8%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.7%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.6%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.5%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.4%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.3%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.2%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.1%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、約0.005%未満のS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含むとき、又は約0.001%未満のS(+)−ケタミン若しくはその薬学的に許容される塩を含むときにS(+)−ケタミンを実質的に含まない。
R(−)−ケタミンは遊離塩基とその薬学的に許容される塩の両方の形態で使用され得る。この薬学的に許容される塩は好ましくは薬学的に許容される酸付加塩であり、より好ましくは塩酸塩である。R(−)−ケタミン塩酸塩の化学構造式は以下の式(I)によって表される。
Figure 2021523228
R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩は誘導体の製造のために修飾、例えば、置換基としての塩素分子の別のハロゲン分子による置換及び/又は置換基としてのメチル基の別のアルキル基による置換を受けてもよい。例となるハロゲンにはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、及びテネシンが挙げられる。結果としてより好ましい効果を有する化合物が得られる場合がある。さらに、本発明の化合物が安定同位体13C又はH(D)などの同位体で標識されると例えばインビボでのこの化合物の動態についてこの化合物を測定することができ、脳内のNMDA受容体に対するこの化合物の親和性についてこの化合物を定量的に測定することができる。
本発明の医薬組成物は、物質乱用症状に有効な薬効を有する他の成分であって、S(+)−ケタミン以外の成分をR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩に加えて含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は薬効を有するそれらの成分に加えて当業者に周知の適切な薬学的に許容される担体を投与形態等に応じて適切に含んでもよい。この薬学的に許容される担体の例には抗酸化剤、安定化剤、保存剤、矯味剤、着色剤、可溶化剤、溶解補助剤、界面活性剤、乳化剤、消泡剤、粘度調節剤、ゲル化剤、吸収促進剤、分散剤、賦形剤、及びpH調節剤が含まれ得る。
本発明の薬剤と医薬組成物がそれぞれ注射用製剤として調製されるとき、この製剤は水剤又は懸濁剤の形態であることが好ましい。この薬剤と医薬組成物がそれぞれ経鼻投与又は口腔内投与などの経粘膜投与用の製剤として調製されるとき、この製剤は水剤又は粉剤、ドロップ剤、又はエアロゾル剤の形態であることが好ましい。また、この薬剤と医薬組成物がそれぞれ直腸投与用の製剤として調製されるとき、この製剤はクリーム剤又は坐剤などの半固形製剤の形態であることが好ましい。この薬剤と医薬組成物がそれぞれ舌下投与用の製剤として調製されるとき、この製剤は急速溶解性ストリップ剤又は錠剤の形態であってよい。これらの製剤の各々が例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing社、イーストン、ペンシルバニア州、1970年)内に開示される医薬の当業者に知られている方法のいずれか1つによって調製され得る。この注射用製剤では例えばアルブミンなどの血漿由来タンパク質、グリシンなどのアミノ酸、及びマンニトールなどの糖がそれぞれ担体として添加されてよく、緩衝剤、溶解助剤、等張剤等も添加されてよい。また、前記製剤が水溶性製剤又は凍結乾燥製剤として使用されるとき、凝集を防止するためにツイーンTM80又はツイーンTM20などの界面活性剤を添加することが好ましい。さらに、この注射用製剤以外の非経口投与用の剤形は蒸留水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物油、水素化ナフタレン等を含んでよい。例えば、坐剤などの直腸投与用の製剤はポリアルキレングリコール、ワセリン、並びにカカオ油及びカカオ脂などの一般的な賦形剤を含む。膣用製剤は胆汁塩、エチレンジアミン塩、及びクエン酸塩などの吸収促進剤を含んでよい。吸入用の製剤は固形であってよく、ラクトースなどの賦形剤を含んでよい。さらに、点鼻薬は水性液剤又は油性液剤であってよい。
投薬量
本発明の薬剤と医薬組成物のそれぞれの正確な投薬量と投与計画は個々の治療標的にとっての必要量、治療方法、疾患、必要度等に応じて調節され得る。この投薬量は年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排出速度、薬品の組合せ、患者の医学的状態等に応じて特異的に決定されてよく、他の因子を考慮して決定されてよい。本発明の医薬組成物が不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、又は物質切望などの症状を示す物質使用障害を有する個体に投与されるとき、その医薬組成物に含まれる有効成分はその物質使用障害の症状を抑制するために有効な量で含まれることが好ましい。R(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩はS(+)−ケタミン及びRS(+/−)−ケタミンに見られる副作用が少ないため安全に使用可能である。一日当たりのその投薬量は患者の病状と体重、化合物の種類、投与経路等に応じて変化する。有効成分の量に関する幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.01〜1,000mg/人/日、好ましくは0.1〜500mg/人/日であり、経口投与の場合の投薬量は約0.01〜500mg/人/日、好ましくは0.1〜100mg/人/日である。有効成分の量に関する幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.01〜1,000mg/人/2日、好ましくは0.1〜500mg/人/2日であり、経口投与の場合の投薬量は約0.01〜500mg/人/2日、好ましくは0.1〜100mg/人/2日である。有効成分の量に関する幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.01〜1,000mg/人/3日、好ましくは0.1〜500mg/人/3日であり、経口投与の場合の投薬量は約0.01〜500mg/人/3日、好ましくは0.1〜100mg/人/3日である。有効成分の量に関する幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.01〜1,000mg/人/週、好ましくは0.1〜500mg/人/週であり、経口投与の場合の投薬量は約0.01〜500mg/人/週、好ましくは0.1〜100mg/人/週である。幾つかの実施形態では前記組成物は24時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される。有効成分の量に関する幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.01〜100mg/kg/人/日である。幾つかの実施形態では非経口投与の場合の投薬量は約0.1〜50mg/kg/人/日である。幾つかの実施形態では経口投与の場合の投薬量は約0.01〜100mg/kg/人/日である。幾つかの実施形態では経口投与の場合の投薬量は約0.01〜50mg/kg/人/日である。
幾つかの実施形態では前記方法は「治療有効量」のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、S(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を実質的に含まない前記組成物を投与することを含む。本明細書において使用される場合、治療有効量は本明細書に記載される物質使用障害の少なくとも1つの症状又は態様を治療又は予防するのに充分な本明細書に記載されるR(−)−ケタミン組成物の量のことを指す。例えば、本明細書に記載されるR(−)−ケタミン組成物の治療有効量によって物質使用障害を有する対象における物質使用の再発を防止又は抑制でき、耐性を減少でき、依存症を抑制でき、又は物質に対する嗜好度若しくは愛好度を低下し、治療に対するアドヒアランスを改善でき、又は物質からの離脱を亢進できる。その他の例として、本明細書に記載されるR(−)−ケタミン組成物の治療有効量によって物質使用障害に関連する離脱症状又は精神症状などの症状を治療できる。
対象の離脱症状を治療するために前記組成物が投与される実施形態が含まれる幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症の前に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症と同時に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症の後に投与される。
追加の薬物療法、行動療法、又はそれらの組合せと共に前記組成物が投与される実施形態を含む幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法の前に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法と同時に投与される。幾つかの実施形態では前記組成物は前記追加療法の後に投与される。
引例リスト
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以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は決して以下の実施例に限定されるものではない。さらに、本発明の技術概念から逸脱することなく様々な改変が可能である。
実施例1:新生児デキサメタゾン曝露モデル
うつ病の新しい動物モデル(非特許文献18)を使用してこの動物モデルのうつ様の挙動に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用を調査した。千葉大学動物実験委員会の認可の下に全ての試験を実施した。
1.材料と方法
以前の報告(特許文献2)に開示されている方法によってそれぞれD(−)−酒石酸とL(+)−酒石酸を使用してRS(+/−)−ケタミン(ケタラール(商標)、ケタミン塩酸塩、第一三共株式会社、東京、日本)からR(−)−ケタミン塩酸塩とS(+)−ケタミン塩酸塩を調製した(図1)。高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK(商標)IA、カラムサイズ:250×4.6mm、移動相:n−ヘキサン/ジクロロメタン/ジエチルアミン(75/25/0.1)、S(+)−ケタミンの保持時間=6.99分、R(−)−ケタミンの保持時間=10.56分、株式会社ダイセル、東京、日本)によりこれらの異性体のそれぞれの純度を確認した。
新生児期にマウスをデキサメタゾン(以後、DEXと略する)に曝露することによりうつ病の新しい動物モデルを作製した。この新生児期のDEX曝露により幼若マウスと成熟マウスのそれぞれでうつ様の挙動が観察された。こうしてこのマウスモデルがうつ病の新規動物モデルとして働き得ることが示された。このマウスモデルは本願の発明者らと共同研究者によって作製され、最近になって報告されたばかりである(非特許文献18)。具体的には、新生児期にDEXに曝露されたこれらの幼若マウス及び新生児期にDEXに曝露されたこれらの成熟マウスは対照マウスと比較すると新奇物体認識試験における新奇物体探索時間の著しい減少を示し、このことからこのモデルマウスにおける社会的学習特性の低下が示された。また、社会的記憶検査において新生児期にDEXに曝露されたこれらのマウスは刺激標的追跡時間の著しい減少を示し、このことから社会的認識能力の低下が示された。オープンフィールド試験ではフィールドの中央部で過ごす時間が著しく減少し、このことから自発的行動の減少が示された。明暗箱試験では白色の箱の中で過ごす時間が著しく減少し、このことから不安様行動が引き起こされたことが示された。尾懸垂試験(TST)と強制水泳試験(FST)の各々では無動時間の増加が見られ、このことからうつ様の挙動が見られることが示された。一方、自発運動試験(LMT)ではDEXに曝露されたマウスと対照マウスとの間で運動量に差がなかった。さらに、新生児期DEX曝露後のマウスの脳においてアミノ酸(グルタミン酸、グルタミン、グリシン、D−セリン、及びL−セリン)のレベルに変化が見られた(非特許文献18)。これらのアミノ酸はNMDA受容体介在性神経伝達に関連することが知られている。したがって、新生児期DEX曝露後のNMDA受容体を介したグルタミン酸作動性伝達の変化が前記幼若マウス及び前記成熟マウスにおけるうつ様の挙動に関わる可能性があると考えられる(非特許文献18)。
前記うつ病動物モデルの作製と前記薬剤の投与を以下に記載されるように具体的に実施した(図2A)。雄と雌のICRマウス(9週齢、日本SLC株式会社、浜松、日本)を使用した。これらのマウスに水と餌を自由に摂取させた。飼育法は1匹の雄につき3〜4匹の雌を14日間にわたって飼育することからなった。この期間の最終日にこれらの雌を隔離し、出産予定日辺りでは毎日これらの雌の状態を確認した。出産日を0日目として定義した。生理食塩水中に溶解したDEX(和光純薬工業株式会社、東京、日本)を1日目、2日目、及び3日目にそれぞれ0.5mg/kg体重、0.3mg/kg体重、及び0.1mg/kg体重の用量でこれらのマウスに腹腔内注射した。また、正常対照には等体積(10ml/kg)の生理食塩水を注射した。生後36日目の幼若マウスには10mg/kg体重の用量のR(−)−ケタミン又はS(+)−ケタミン、又はベヒクル(生理食塩水10ml/kg)を腹腔内注射した。
前記薬剤の抗うつ作用をTST、PST、LMT、及び1%ショ糖飲水試験(SPT)などの行動試験により幼若マウスについて調査した(図2A)。TSTとPSTを2回、すなわちケタミン注射の当日(それぞれ27時間後と29時間後)と7日後に実施し、LMTとSPTをケタミン注射の当日と2日後に実施した。以下に記載されるようにTSTを実施した。先ず前記マウスをケージから取り出し、その後でこれらのマウスの尾の先端から約2cmの部位に接着テープの小片を付けた。この小片に小さい穴を開け、この小さい穴を通してフックに掛けてこれらのマウスをそれぞれ逆さまに固定した。各マウスの無動時間を10分間にわたって記録した。無抵抗につるされ、完全に動きが無いときにのみマウスが無動であるとした。この無動時間はうつ状態で増加する。以下に記載されるようにPSTを実施した。まず、15cmまで水を含む円筒(直径23cm、高さ31cm)の中に前記マウスを個々に配置し、22〜24℃で維持した。SCANET MV−40(有限会社メルクエスト、富山、日本)を使用する自動化強制水泳装置内でこれらのマウスを試験した。この装置の分析ソフトウェアを使用して全時間から活動時間を差し引くことにより得られる値として無動時間を計算した。試験期間中に6分間にわたって累積無動時間を記録した。以下に記載されるようにLMTを実施した。先ず、実験ケージ(長さ×幅×高さ:560×560×330mm)の中に前記マウスを配置した。SCANET MV−40を使用してこれらのマウスの運動活動を計測し、これらのマウスの累積運動量を60分間にわたって記録した。試験セッションと次の試験セッションとの間にこれらのケージを清掃した。この無動時間はうつ状態で増加する。前記マウスが自由に摂取できるように一般的な飲料水と1%ショ糖溶液を用意し、摂取されたこのショ糖溶液の量の割合を測定することによりSPTを実施した。このショ糖溶液の摂取は報酬反応であり、うつ状態では減少する。
統計的分析を一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とその後の最小有意差検定(LSD検定)により実施した。データは平均値±標準誤差として提示されている(n=8〜12マウス/群)。p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001は生理食塩水を注射されたDEX処理マウス群に対して比較されたときの有意差を表し、及びp<0.05及び##p<0.01はS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウス群に対して比較されたときの有意差を表す。
2.結果
対照マウスと比較するとTST及びFSTにおける無動時間の有意な増加、及びSPTにおけるショ糖摂取嗜好度の低下が新生児期にDEXに曝露されたマウスで見られた。他方、LMTではDEX処理マウスと対照マウスとの間で運動量に差がなかった。ケタミンの両異性体の注射の翌日に実施されたLMTでは対照マウス、生理食塩水を注射されたDEX処理マウス、及びR(−)−ケタミン又はS(+)−ケタミンを注射されたDEX処理マウスの間で運動量に差がなかった(図2B)。
ケタミンの両異性体の注射の翌日に実施されたTST及びFSTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射されたDEX処理マウスにおいて無動時間の有意な増加が見られた。ケタミンの両異性体の各々によりその注射から27時間後又は29時間後のDEX処理マウスにおいてこの無動時間の増加が著しく減少した(図2C及び図2D)。有意差は見られなかったもののR(−)−ケタミンはS(+)−ケタミンと比較してわずかに高い抗うつ作用を示した。
ケタミンの両異性体の注射の2日後に実施されたSPTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射されたDEX処理マウスにおいてショ糖摂取嗜好度の低下が見られた。ケタミンの両異性体によりそれらの注射から48時間後のDEX処理マウスにおいてこのショ糖摂取嗜好度の低下が有意に回復した(図2E)。
ケタミンの両異性体の注射の7日後に実施されたTST及びFSTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射されたDEX処理マウスにおいて無動時間の有意な増加が見られた。また、R(−)−ケタミンによりDEX処理マウスにおいてこの無動時間の増加が有意に減少する一方でS(+)−ケタミンによりDEX処理マウスにおいてこの無動時間の増加が減少することはなかった。R(−)−ケタミンとS(+)−ケタミンとの間の差は統計学的に有意であることが分かった(図2F及び図2G)。
10mg/kgの用量のR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンは新生児期DEX曝露後の幼若マウス(1〜3日目)において抗うつ作用を示すことが上記の結果から明らかになった。TST及びFSTではケタミンの両異性体の抗うつ作用がそれらの異性体の単回注射から27〜29時間後には見られた。特筆すべきことにTST及びFSTではR(−)−ケタミンの抗うつ作用がその異性体の単回注射から7日後でも検出可能であった一方でS(+)−ケタミンの抗うつ作用はその異性体の単回注射から7日後には検出できなかった。これらの結果はR(−)−ケタミンがS(+)−異性体よりも長く継続する抗うつ作用を有することを示している。ケタミンの両異性体は短時間でのインビボクリアランスを示すことが知られている。R(−)−ケタミンはその異性体の単回注射から7日後までに体内から排除されると考えられるにもかかわらず抗うつ作用が見られた。このことはケタミンの両異性体の注射から7日後の抗うつ作用の差が薬物動態の差から生じたものではないことを表している。
実施例2:社会的敗北ストレスモデル
うつ病の社会的敗北ストレスモデル(非特許文献19)を使用してこの動物モデルのうつ様の挙動に対するR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの抗うつ作用を調査した。千葉大学動物実験委員会の認可の下に全ての試験を実施した。
1.材料と方法
以前の報告(特許文献2)に開示されている方法によってそれぞれ0(−)−酒石酸とL(+)−酒石酸を使用してRS(+/−)−ケタミン(ケタラール(商標)、ケタミン塩酸塩、第一三共株式会社、東京、日本)からR(−)−ケタミン塩酸塩とS(+)−ケタミン塩酸塩を調製した(図1)。高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK(商標)IA、カラムサイズ:250×4.6mm、移動相:n−ヘキサン/ジクロロメタン/ジエチルアミン(75/25/0.1)、S(+)−ケタミンの保持時間=6.99分、R(−)−ケタミンの保持時間=10.56分、株式会社ダイセル、東京、日本)によりこれらの異性体のそれぞれの純度を確認した。
以前の報告(非特許文献19)に従って「社会的敗北ストレス」と呼ばれるストレスを加えるために連続10日間にわたってC57/B6雄マウスをICR雄マウス(大型の攻撃的なマウス)と接触させることによりうつ病の社会的敗北ストレスモデルを作製した。この社会的敗北ストレスを受けたマウスにおいてうつ様の挙動が観察された。具体的には、尾懸垂試験(TST)及び強制水泳試験(FST)の各々において無動時間の増加が見られた。また、1%ショ糖飲水試験では飲まれたショ糖水の割合が著しく低下し、うつ様の挙動(例えば快感消失又はネガティブ情動)が見られることがこのことから示唆された。他方、自発運動試験(LMT)では社会的敗北ストレスマウスと対照マウスとの間で運動量に差がなかった。
前記うつ病動物モデルの作製と前記薬剤の投与を以下に記載されるように具体的に実施した(図3A)。雄のC57/B6マウス(7週齢、日本SLC株式会社、浜松、日本)とICRマウス(9週齢、日本SLC株式会社、浜松、日本)を使用した。これらのマウスに水と餌を自由に摂取させた。1匹のC57/B6マウスを1匹のICRマウスと共に10日間にわたって飼育することにより社会的敗北ストレスを加えた。11日目にうつ症状を示すマウスを選択するために社会的相互作用テストを実施し、その後の行動評価のためにこれらのマウスを使用した。対照マウスにはベヒクル(生理食塩水、10ml/kg)を注射し、うつ症状を示す前記マウスにはR(−)−ケタミン又はS(+)−ケタミンを10mg/kg体重の用量で、又はベヒクル(生理食塩水、10ml/kg)を腹腔内注射した。
前記薬剤の抗うつ作用をTST、PST、LMT、及び1%ショ糖飲水試験(SPT)などの行動試験により調査した(図3A)。1%ショ糖飲水試験(SPT)をケタミン注射の1日後と6日後に実施した。TSTとPSTのそれぞれをケタミン注射の2日後と7日後に実施した。以下に記載されるようにTSTを実施した。先ず前記マウスをケージから取り出し、その後でこれらのマウスの尾の先端から約2cmの部位に接着テープの小片を付けた。この小片に小さい穴を開け、この小さい穴を通してフックに掛けてこれらのマウスをそれぞれ逆さまに固定した。各マウスの無動時間を10分間にわたって記録した。無抵抗につるされ、完全に動きが無いときにのみマウスが無動であるとした。この無動時間はうつ状態で増加する。以下に記載されるようにPSTを実施した。まず、15cmまで水を含む円筒(直径23cm、高さ31cm)の中に前記マウスを個々に配置し、22〜24℃で維持した。SCANET MV−40(有限会社メルクエスト、富山、日本)を使用する自動化強制水泳装置内でこれらのマウスを試験した。この装置の分析ソフトウェアを使用して全時間から活動時間を差し引くことにより得られる値として無動時間を計算した。試験期間中に6分間にわたって累積無動時間を記録した。以下に記載されるようにLMTを実施した。先ず、実験ケージ(長さ×幅×高さ:560×560×330mm)の中に前記マウスを配置した。SCANET MV−40を使用してこれらのマウスの運動活動を計測し、これらのマウスの累積運動量を60分間にわたって記録した。試験セッションと次の試験セッションとの間にこれらのケージを清掃した。この無動時間はうつ状態で増加する。前記マウスが自由に摂取できるように一般的な飲料水と1%ショ糖溶液を用意し、摂取されたこのショ糖溶液の量の割合を測定することによりSPTを実施した。このショ糖溶液の摂取は報酬反応であり、うつ状態では減少する。ケタミン注射の5日後にこれらのマウスの首を切り、素早く解剖して脳を取り出し、ゴルジ染色した。KEYENCE顕微鏡(BZ−9000、大阪、日本)を使用する観察により樹状突起棘密度を定量的に評価した。
前記社会的敗北ストレスモデルの結果の統計的分析を一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とその後の最小有意差検定(LSD検定)により実施した。データは平均値±標準誤差として提示されている(n=8〜11マウス/群)。p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001は生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群に対して比較されたときの有意差を表し、p<0.05はS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群に対して比較されたときの有意差を表す。
2.結果
対照マウスと比較するとTST及びFSTにおける無動時間の有意な増加、及びSPTにおけるショ糖摂取嗜好度の有意な低下が社会的敗北ストレスマウスで見られた。他方、LMTでは社会的敗北ストレスマウスと対照マウスの間で運動量に差がなかった。
ケタミンの両異性体の注射の1日後に実施されたSPTでは対照群と比較すると社会的敗北ストレスマウスにおいてショ糖摂取嗜好度が有意に低下し、うつ症状が示された。生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス群と比較するとR(−)−ケタミン又はS(+)−ケタミンを注射された社会的敗北ストレスマウス群ではショ糖摂取嗜好度が有意に上昇し、うつ症状が軽減された。また、R(−)−ケタミンの抗うつ作用はS(+)−ケタミンの抗うつ作用よりも効果があった(図3B)。
ケタミンの両異性体の注射の2日後に実施されたLMTでは正常マウス、生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウス、及びR(−)−ケタミン又はS(+)−ケタミンを社会的敗北ストレスマウスの間で運動量に差がなかった(図3C)。
ケタミンの両異性体の注射の2日後に実施されたTST及びFSTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウスにおいて無動時間の有意な増加が見られた。ケタミンの両異性体の各々によりその注射から2日後の社会的敗北ストレスマウスにおいてこの無動時間の増加が著しく減少した(図3D及び図3E)。R(−)−ケタミンはS(+)−ケタミンの抗うつ作用と比較して有意に高い抗うつ作用を示した(図3D及び図3E)。
ケタミンの両異性体の注射から6日後に実施されたSPTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウスにおいてショ糖摂取嗜好度の低下が見られた。ケタミンの両異性体によりそれらの注射から6日後の社会的敗北ストレスマウスにおいてこのショ糖摂取嗜好度の低下が有意に回復した。R(−)−ケタミンとS(+)−ケタミンとの間の差は統計学的に有意であることが分かった(図3F)。
ケタミンの両異性体の注射の7日後に実施されたTST及びFSTでは対照マウスと比較すると生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウスにおいて無動時間の有意な増加が見られた。ケタミンの両異性体の各々によりその注射から7日後の社会的敗北ストレスマウスにおいてこの無動時間の増加が有意に減少した(図3G及び図3H)。R(−)−ケタミンはS(+)−ケタミンと比較して有意に高い抗うつ作用を示した(図3G及び図3H)。
ケタミンの両異性体の注射の8日後に実施されたゴルジ染色では対照マウスと比較すると生理食塩水を注射された社会的敗北ストレスマウスの前頭皮質及び海馬歯状回において樹状突起棘密度の有意な低下が見られた。ケタミンの両異性体の各々によりその注射の8日後の社会的敗北ストレスマウスにおいてこの樹状突起棘密度の低下が有意に改善した(図3I及び図3J)。海馬歯状回ではR(−)−ケタミンによりS(+)−ケタミンと比較して有意な樹状突起棘密度の回復の改善が見られた(図3J)。海馬CA1領域及び線条体では樹状突起棘密度に明確な変化が認められず(図3K及び図3N)、一方で海馬CA3領域では社会的敗北ストレスによる樹状突起棘密度の低下が観察され、その樹状突起棘密度の低下はR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンにより有意に改善された(図3L)。側坐核では社会的敗北ストレスによる樹状突起棘密度の有意な上昇が観察され、その樹状突起棘密度の上昇はR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンにより有意に改善された(図3M)。
10mg/kgの用量のR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンは社会的敗北ストレスマウスにおいて抗うつ作用を示すことが上記の結果から明らかになった。特筆すべきことにSPT、TST、及びPSTではR(−)−ケタミンの抗うつ作用はS(+)−ケタミンの作用と比較すると有意に強力であった。これらの結果はR(−)−ケタミンがS(+)−異性体よりも長く継続する抗うつ作用を有することを示している。ケタミンの両異性体は短時間でのインビボクリアランスを示すことが知られている。R(−)−ケタミンはその異性体の単回注射から7日後までに体内から排除されると考えられるにもかかわらず抗うつ作用が見られた。このことはケタミンの両異性体の注射から7日後の抗うつ作用の差が薬物動態の差から生じたものではないことを表している。
実施例3:その他のR(−)−ケタミン投与の効果
対照C57/B6マウスを使用してR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの副作用を調査した。千葉大学動物実験委員会の認可の下に全ての試験を実施した。
1.材料と方法
R(−)−ケタミン塩酸塩とS(+)−ケタミン塩酸塩の調製及びそれらの純度の確認を実施例2に記載される方法により実施した。
薬剤の投与を実施例2に記載される方法と同じ方法により実施した。
副作用を評価するための系である運動増強効果、プレパルス抑制不全、及び条件付け場所嗜好性試験を用いる依存症検査によってR(−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンの副作用を調査した。
SCANET MV−40(有限会社メルクエスト、富山、日本)を使用してマウスの運動量に対するケタミンの効果を試験した。具体的には、注射前の60分間から注射後の120分間までの合計180分間にわたって運動量を測定し、これを10分間毎の運動量として算出した。この運動量の結果の統計的分析を反復一元配置分散分析(反復一元配置ANOVA)とその後の最小有意差検定(LSD検定)により実施した。データは平均値±標準誤差として提示されている(n=7又は8マウス/群)。**p<0.01及び***p<0.001は生理食塩水を注射された群に対して比較されたときの有意差を表す。
驚愕反応システム(SR−LAB、サンディエゴ・インスツルメンツ、サンディエゴ、カリフォルニア州米国)を使用してプレパルス抑制試験を実施した。プレパルス抑制の結果の分析を多変量分散分析(MANOVA)とその後の最小有意差検定(LSD検定)により実施した。データは平均値±標準誤差として提示されている(n=10〜12マウス/群)。p<0.05及びp<0.01は生理食塩水を注射された群に対して比較されたときの有意差を表す。
条件付け場所嗜好性試験装置(株式会社ブレインサイエンス・イデア、大阪、日本)を使用して場所嗜好性試験を実施した。場所嗜好性試験の結果の分析を一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とその後の最小有意差検定(LSD検定)により実施した。データは平均値±標準誤差として提示されている(n=9又は10マウス/群)。p<0.05及び**p<0.01は生理食塩水を注射された群に対して比較されたときの有意差を表す。
2.結果
ケタミンの両異性体の注射後の運動量の測定では生理食塩水を注射された対照マウスと比較するとS(+)−ケタミン(10mg/kg又は20mg/kg)を注射されたマウスではこの注射から10分後と20分後に運動量の有意な増加が見られた。運動量がS(+)−ケタミン(10mg/kg又は20mg/kg)によって一時的に増加したが、この注射から30分後には正常値まで戻った。他方、R(−)−ケタミン(5、10、又は20mg/kg)の注射は運動量に影響を及ぼさなかった(図4)。
ケタミンの両異性体の注射後のプレパルス抑制試験ではS(+)−ケタミン(5mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kg)の注射によってプレパルス抑制が用量依存的に混乱した(図5B)。他方、R(−)−ケタミン(5mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kg)の注射がプレパルス抑制を混乱させることはなかった(図5A)。
ケタミンの両異性体及びラセミ体混合物の注射後の条件付け場所嗜好性試験ではS(+)−ケタミン(5mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kg)の注射によってCPPスコアが用量依存的に上昇し、薬物乱用を引き起こす力がこのことから示された(図6C)。他方、R(−)−ケタミン(5mg/kg、0mg/kg、又は20mg/kg)の注射はCPPスコアを上昇させることがなく(図6B)、薬物乱用を引き起こす力のないことがこのことから示された。また、RS(+/−)−ケタミン(10mg/kg)の注射によってCPPスコアが有意に上昇し、薬物乱用を引き起こす力がこのことから示された(図6D)。
上で説明したように、副作用の観点からS(+)−ケタミンの注射は運動増強効果を示し、プレパルス抑制を混乱させ、薬物依存症を引き起こすことが分かった。また、RS(+/−)−ケタミンの注射も薬物依存症を引き起こすことが示唆された。他方、R(−)−ケタミンは運動増強効果を示さず、プレパルス抑制を混乱させず、薬物依存症等を引き起こさず、したがって現時点で臨床に使用されているRS(+/−)−ケタミン及びS(+)−ケタミンと比較すると高い安全性を有する薬剤である。
実施例4:R(−)−ケタミンはモルヒネ誘導条件付け場所嗜好性を減弱化する
薬物の乱用はヒトにおける特定の主観的効果(例えば、多幸感)を生み出すこれらの物質の能力に関連する。モデルラットにおけるモルヒネの乱用傾向はヒトにおける乱用を予測するものである(Napier et al.,2014、Tzschentke,2007)。ヒトのようにげっ歯類動物はモルヒネが投与される場所への嗜好性を示し(Suzuki et al.,2000)、この条件付け場所嗜好性は薬物の乱用傾向を予測するために使用されている。薬物に関連付けられた場所への嗜好性を引き起こす薬物はヒトによって乱用される薬物である。ラットにおける条件付け場所嗜好性(CPP)はモルヒネによって誘導される。R−ケタミンの存在下ではこの条件付け場所嗜好性は減少した(p=0.06)。ケタミン自体がCPPを引き起こし得るため(Li et al.,2008、Suzuki et al.,2000)、モルヒネにより誘起されたCPPがR−ケタミンによって妨害されるという発見は予期せぬものであった。
モルヒネの報酬効果の減弱化に対するR(−)−ケタミンの効果を決定するためにマウスにおいて条件付け場所嗜好性試験を実施した。
Suzukiら(2000年)の全般的な方法を用いて条件付け場所嗜好性についての方法とR−ケタミンの評価方法を実施した。生理食塩水+生理食塩水、生理食塩水+モルヒネ、又はR−ケタミン+モルヒネのいずれかをマウスに投与し、モルヒネに関連付けられた場所へのそれらのマウスの嗜好性を評価することが大体の計画であった。モルヒネは5mg/kgの用量で腹腔内投与され、R−ケタミンは10mg/kgの用量で腹腔内投与された。図7Aにトレーニングと試験のスキームが示されている。
雄ddYマウス(20〜23g)を東京実験動物株式会社(東京、日本)から得た。これらのddYマウスは閉鎖的コロニー内で養育された。12時間明暗周期(午前8:30〜午後8:30まで明期)を用いてこれらのマウスを22±1℃の温度で飼育した。餌と水を自由に摂取させた。
Suzukiら(2000年)の方法に寄せたわずかな改変を含む方法を用いて場所条件付けを以前に記載されたように実施した。その装置はアクリル樹脂板製のシャットル箱(幅15cm×長さ30cm×高さ15cm)から構成された。スライドする仕切りによってこの箱を等サイズの2つの区画に分けた。一方の区画は白色であり、布張りの床を有し、他方の区画は黒色であり、すべすべした床を有した。条件付けのために薬物の注射後に直ぐにマウスをこの白色の区画に対して条件付けられるようにし、ベヒクルの注射後にはこの黒色の区画に条件付けられるようにした。
条件付けセッションを連続6日間にわたって毎日一回実施した。モルヒネ(5mg/kg)+ベヒクル又はR(−)−ケタミン(10mg/kg)+モルヒネ(5mg/kg)をマウスに注射し、これらのマウスを前記チャンバーの一方の区画の中に入れた。翌日にマウスに生理食塩水を注射し、これらのマウスを他方の区画の中に入れた。3日目から条件付けのためのこのサイクル(セッション)をさらに2回繰り返した。各セッションの時間は60分であった。7日目に試験を以下のように実施した。前記の2つの区画を分ける仕切りを床から7cm上げ、それらの区画を分ける継ぎ目に沿って中間プラットフォームを挿入した。これらの動物をこの中間プラットフォームの上に配置し、両方の区画へ自由に立ち入らせた後に薬物を使用していない状態での特定の場所への嗜好性を評価した。その後、900秒のセッションの間に各区画で過ごした時間を前記白色と黒色の区画のカバー(中央と側面から3cm)上の2つの赤外線センサー(KN−80、株式会社夏目製作所、東京、日本)により盲検的に自動測定した。マウスの位置をその体全体の位置によって規定した。薄暗い照明、且つ、ホワイトノイズを遮蔽した条件下で全てのセッションを実施した。
条件付けスコアは薬物に対応付けられた場所で過ごした時間からベヒクルに対応付けられた場所で過ごした時間を差し引いたものであり、平均値±標準誤差として表される。行動データを一元配置分散分析(ANOVA)とその後のダネット検定により統計的に評価して有意な条件付けが個々の用量によって引き起こされるか判定した。
R−ケタミンがモルヒネの報酬効果を妨害することはないと仮定すると有意な減弱化の傾向(F(2、29)=2.2、p=0.064)が図7Bのデータから示された。この効果からモルヒネによって引き起こされるモルヒネの乱用と関連する強化効果又は報酬効果がR(−)−ケタミンによって減弱化されることが示唆された。
薬物の乱用はヒトにおける特定の主観的効果(例えば、多幸感)を生み出すこれらの物質の能力に関連する。モルヒネの乱用傾向を示すげっ歯類動物の条件付け場所嗜好性モデルはヒトにおける乱用を予測するものである(Napier et al.,2014、Tzschentke,2007)。ヒトのようにげっ歯類動物はモルヒネが投与される場所への嗜好性を示し(Suzuki et al.,2000)、この条件付け場所嗜好性は薬物の乱用傾向を予測するために使用されている。薬物に関連付けられた場所への嗜好性を引き起こす薬物はヒトによって乱用される薬物である。図7Bはラットにおけるモルヒネ誘導条件付け場所嗜好性(CPP)を示している。R−ケタミンの存在下ではこの条件付け場所嗜好性は減少した(p=0.06)。ケタミン自体がCPPを引き起こし得るため(Li et al.,2008、Suzuki et al.,2000)、モルヒネにより誘起されたCPPがR−ケタミンによって妨害されるという発見は予期せぬものであった。
実施例5:R(−)−ケタミンは亜慢性的モルヒネ曝露からのナロキソン誘発性離脱に由来する離脱症候を緩和する
乱用薬物を摂取することの1つの結果は薬物からの離脱時に現れる薬物依存症の発生である。モルヒネなどのオピオイド類は使用停止時に有害な離脱状態として現れることがある肉体的依存症を反復利用時に誘起する。この離脱状態の回避が使用継続の大きな原因であると考えられている。毎日二回のモルヒネ投与によりオピオイド依存症をラットにおいて誘導することができる。9〜12日間の処理後にオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンの急性注射により離脱を引き起こすことができる(Erami et al.,2012)。次の30分間にわたって驚愕応答/反応性の向上、眼瞼下垂(閉眼)、自発運動の抑制、咀嚼、及び震え/痙攣をはじめとした多くの行動がこの動物によって示され、これらの行動がヒトにおけるオピオイド離脱の臨床症候のうちの幾つかとして解釈される(Higgins and Sellers,2004を参照されたい)。これらのラットは自発運動の抑制状態を示す場合もあり、それは離脱状態の不快さを反映する可能性もある。本試験の目的はここでナロキソン誘発性オピオイド離脱の体性症候に対するR−ケタミンの効果を調査することである。α2Aアドレナリン受容体のアゴニストであるロフェキシジン(ルセミラ(登録商標):オピオイド離脱の治療用にFDAにより認可された薬品)を陽性対照として含める。
ラットにおける亜慢性モルヒネ曝露からのナロキソン誘発性離脱に由来する離脱症候がR(−)−ケタミンによって減弱化するか決定するために試験を実施した。
全般的な方法はHigginsら(1993年)の方法に従っており、毎日の投与によりラットを肉体的なモルヒネの依存症にした。ナロキソンにより誘導された離脱症候を減弱化するR(−)−ケタミンの能力を圧制した。10mg/kg及び20mg/kgというR(−)−ケタミンの用量は公開されたケタミンの投与範囲(Gastambide et al.,2013、Hillhouse and Porter,2013、Nikiforuk & Popik, 2014を参照されたい)に基づく。
40匹の雄Wistarラットをこの試験の検査対象とした。動物をペアで飼育し、げっ歯類用の餌と水(SOP ROD.03.01、SOP ROD.04.01、SOP ROD.18)を自由に摂取させた。12時間明期/12時間暗期のサイクルでこれらのラットを飼育した。全ての実験活動はこの動物の明期サイクルの間に生じる。全ての動物利用法はカナダ動物管理協会(CCAC)の原則に準拠して実施された。
ナロキソン誘発性オピオイド離脱の体性離脱症候に対するR(−)−ケタミンの効果を測定した。ナロキソン(ナルカン、Evzio)はオピオイドの過剰摂取を急速に反転させるように設計されている医薬品である。ナロキソンはオピオイド受容体に結合するオピオイドアンタゴニストであり、モルヒネなどの他のオピオイド類の作用を妨害する。
40匹の雄Wistarラットを群当たりN=8匹のラットからなる5群に割り当てた。A群には12日間にわたって毎日二回(およそ08:00±1時間と18:00±1時間)生理食塩水ベヒクルを投与した(Sal;皮下(SC)経路)。B群、C群、D群、及びE群には12日間にわたって毎日二回(およそ08:00±1時間と18:00±1時間)モルヒネ溶液を投与した(10mg/kg、SC経路)。この治療方法はオピオイド依存症を誘発するように計画された(Erami et al.,2012)。この注射スケジュールによって約550ng/mlの血漿中モルヒネレベルになる(3日目、6日目、9日目、及び12日目に投与から2時間後に測定)ことが以前の社内の研究から実証されている。ナロキソン誘発性離脱についてラットを9日目と12日目に検査した。クロスオーバー計画(表4:処理群を参照)によると各群の全てのラットが行動試験の5分前にSC経路により生理食塩水かナロキソン塩酸塩(1mg/kg、体積ベースの用量では2ml/kg)のどちらかの急性注射を受けた。各処理(10分間)に先んじてラットは両日とも生理食塩水(A群とB群)、R(−)−ケタミン(B群とC群)、又はロフェキシジン(E群)のいずれかを受けた。このようにしてオピオイド誘発性離脱に対するR(−)−ケタミンの効果を検討した。ロフェキシジンの用量は文献中(例えばShearman et al.,1979)の値に基づいている。ベヒクル又はナロキソンの注射後直ぐにラットを30分間にわたって活動チャンバーに移し、そこでオピオイド離脱に関連する体性症候(例えば、もがき、咀嚼、眼瞼下垂、WDS、揺動、震え、陰茎のグルーミング、体重変化;Higgins and Sellers,1994を参照されたい)についてそれらの動物を目で見て評価した。同時に各ラットの活動パターン(移動距離、立ち上がり)を自動的に記録した。
自発運動活動。10分間のタイムビンで30分間にわたって自動化Med Associates活動試験チャンバーを使用してラットの自発性活動を測定した。活動追跡アレーナは幅17インチ×長さ17インチ×高さ12インチであり、移動距離を追跡するためにセンサバーを床から1インチ上に固定しており、縦方向の移動と立ち上がり活動を測定するために2セット目のセンサバーを床から約5インチ上に設置した。追跡ソフトウェア上のパラメーターセットは以下の通り、すなわち分解度が50ミリ秒(ms)、ボックスサイズが4ビーム、静止遅延(resting delay)が500ms、及び移動トリガー(ambulatory trigger)が2であった(SOP ROD.25)。総移動距離、立ち上がり回数、及び移動回数がデータに含まれた。
12日目の行動試験後直ぐにナロキソン処理したB群、C群、及びD群のN=3匹のラットから末梢血試料を採取した(SOP ROD.14.03)。全ての試料(すなわち合計9試料)からモルヒネ濃度を測定し、C群とD群(すなわち合計6試料)からR(−)−ケタミンを測定した。血液をEDTAチューブの中に採取し、採取後に穏やかに混合し、そして氷上に静置した。血液試料を遠心分離し(2500g、約4℃で10分間)、血漿を抽出した。輸送するまで試料を−80℃で保存した。
図8に示される総合離脱スコアを計算するためにこのデータを使用した。
Figure 2021523228
Figure 2021523228
物質使用障害の1つの結果は薬物からの離脱時に現れる薬物依存症の発生である。モルヒネなどのオピオイド類は使用停止時に有害な離脱状態として現れることがある肉体的依存症を反復利用時に誘起する。この離脱状態の回避が使用継続の大きな原因であると考えられている。毎日二回のモルヒネ投与によりオピオイド依存症をラットにおいて誘導することができる。9〜12日間の処理後にオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンの急性注射により離脱を引き起こすことができる(Erami et al., 2012)。次の30分間にわたって驚愕応答/反応性の向上、眼瞼下垂(閉眼)、自発運動の抑制、咀嚼、及び震え/痙攣をはじめとした多くの行動がこの動物によって示され、これらの行動がヒトにおけるオピオイド離脱の臨床症候のうちの幾つかとして解釈される(Higgins and Sellers, 2004を参照されたい)。これらのラットは自発運動の抑制状態を示す場合もあり、それは離脱状態の不快さを反映する可能性もある。ここでナロキソン誘発性オピオイド離脱の体性症候に対するR−ケタミンの効果を調査した。α2Aアドレナリン受容体のアゴニストであるロフェキシジン(ルセミラ(登録商標):オピオイド離脱の治療用にFDAにより認可された薬品)を陽性対照として含めた。
毎日の投与によりモルヒネ依存症をラットにおいて引き起こした。その後、オピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンを投与して離脱症状を誘発させた。ナロキソン後の離脱症候には非モルヒネ依存症ラットでは引き起こされない(p<0.05)身震い等が含まれた。R−ケタミンはナロキソンの直前に投与され、FDA認可済みの薬品であるロフェキシジン(p<0.05)のようにナロキソン誘発性離脱症候を有意に減弱化した(p<0.05)。R(−)−ケタミンはナロキソンの直前に投与されるとこれらの離脱症候を有意に減弱化した。
実施例6:R(−)−ケタミンはエタノール耐性を阻害する
耐性は乱用薬物に対する曝露の共通した効果であり、以前の薬物曝露の後に薬物の効果が減少することが薬物乱用と薬物依存症において重要な役割を果たす(Miller et al.,1987)。ラットにおいて1日目の2回の高用量のエタノール曝露の後にエタノールの効果への耐性が2日目に生じた。運動障害に対するエタノールの効果(p<0.05)への耐性はR−ケタミンによって阻害された(p<0.05)。
エタノールの効果に対する耐性がR(−)−ケタミンによって阻害されるか確認するためにラットにおける試験を実施した。1日目に2回の高用量のエタノールをラットに投与した(2.3mg/kgと1.7mg/kg、腹腔内、i.p.)。その後、エタノールの握力への効果についてラットを2日目に試験した。結果が図9に示されている。1日目にエタノールを投与されなかったラットは1日目にエタノールを受領したマウスと比較して有意な握力の低下を示した(図9中の投与後30分の時点の1本目の棒と2本目の棒を比較されたい)。このエタノールの運動障害作用に対する耐性がこのことから実証される。1日目にエタノールの前にR−ケタミンで前処理されると耐性が有意に失われた(投与30分後の時点の赤色の棒と緑色の棒を比較されたい)。
Khannaら(1993年)の全般的な投与方法と試験方法に従った。1日目に2回の高用量のエタノール(2.3g/kgとその後の1.7g/kg)をラットに投与した。異なる群のラットにエタノールを単独で、又は様々な用量のR−ケタミンの存在下で投与した。2日目にエタノールを単独で投与し(2.3mg/kg、i.p.)、Popikら(2006年)の方法によって握力についてこれらのラットを試験した。
次に握力計(Columbus Instruments社、コロンバス、オハイオ州)を使用して筋弛緩の程度を決定した。ラットの前足をこの計測器に取り付けられている金属メッシュの上に置き、このラットがこの金網を放すまで優しく体を引っ張った。各ラットについて3回の握力測定値を連続して取り、平均し、体重に対して補正した。最後に6rpmで回転する棒の上にラットを配置した。2分以内にこの装置から落ちなかった動物が正常なバランスと協調を有していると考えられた。
耐性、すなわち反復使用後の薬物に対する反応の低下は乱用薬物への曝露の共通した効果である。以前の薬物曝露の後に薬物の効果がこのように減少することが物質使用障害と薬物依存症において重要な役割を果たす(Miller et al.,1987)。ラットにおいて1日目の2回の高用量のエタノール曝露によってエタノールの効果への耐性が2日目に生じた。運動障害に対するエタノールの効果(p<0.05)への耐性はR−ケタミンによって阻害された(p<0.05)。
実施例7:R(−)−ケタミンは快感消失又はネガティブ情動を引き起こさない
薬物中毒の治療はこの乱用薬物からの離脱を始めることを必要とする。これらの乱用薬物からの離脱ではこの薬物によって引き起こされる効果とは性質が反対の多数の生理的効果と行動的効果が生じる。したがって、この乱用薬物によって幸福状態と多幸感が誘導される一方で離脱により不安感、うつ、快感消失、ネガティブ情動、及び薬物の切望が生じる(Deneau and Seevers,1964)。したがって、この精神生理状態を減弱化するか、又は悪化させない物質乱用治療が物質乱用治療の中で価値のあるものになる(Huhn et al., 2016、Koob,1992、Langdon et al.,2019)。対照的に、不安感、うつ、及び/又は快感消失若しくはネガティブ情動を亢進する薬品は禁忌とされることになる(Koob et al.,1992、Langdon et al.,2019)。
S(+)−ケタミンはラットにおいて快感消失状態又はネガティブ情動状態を誘発し、これは用量依存的であった。頭蓋内自己投与又はICSS(Negus and Miller, 2014)と呼ばれるモデルにおいて脳内の報酬検出神経細胞の刺激に対する応答を観察することによりこれをラットにおいてモデル化した。対照的にR(−)−ケタミンはげっ歯類動物においてS−ケタミンよりも効果があるにもかかわらず快感消失状態がこれらの同じ用量のR(−)−ケタミンによって誘導されなかった。同様にコカインの薬物乱用と対照的にR(−)−ケタミンは曲線を左側に変移させず、R(−)−ケタミンの乱用傾向が無いことがこのことから示唆された。
ラットにおける頭蓋内自己刺激に対するS−ケタミンの効果に対するR−(−)−ケタミンの相対的効果を評価するために試験を実施した。頭蓋内自己刺激(ICSS)は(1)乱用薬物の効果、及び(2)薬品の副作用を検出するアッセイ系である(Negus and Miller,2014)。
ラットに脳の報酬領域である内側前脳束に向けて電極を移植し、応答レバーを押し下げることにより電流をこの脳の領域に送らせた。その後、行動に対するこの電流の周波数の変化の効果を単独(ベヒクル)で、及び薬物の存在下で観察した。
10匹の雄成熟Sprague−Dawleyラット(Harlan社、インディアナポリス、インディアナ州)を個別に温度制御(20〜22℃)AAALAC認証施設内で飼育し、その中で380〜420gの体重範囲を維持するためにそれらのマウスに食餌(7012 Teklad LM−485マウス/ラット滅菌可能食、Harlan社、インディアナポリス、インディアナ州)を管理して与え、且つ、水を自由に摂取させた。これらのラットを実験期間にわたって12時間明期/12時間暗期サイクル(0600〜1800まで明期)で飼育し、このサイクルの明期の間にトレーニングと試験をこれらのラットに実施した。イソフルラン吸入(約3%)によりラット(外科手術時に360〜420g)を麻酔し、電極を以下の脳定位座標に従って、すなわち、前後方向はブレグマから−2.8mm、横方向は正中線から1.7mm、腹背方向は頭蓋骨から−8.8mmに従って内側前脳束内に移植した(Paxinos & Watson,2007)。
前方のインテリジェンスパネル上に2本の引き込み可能レバーを装備し、各レバーの上に刺激ランプを装備し、且つ、5ワットのハウスライトを装備した市販のオペラント条件付けチャンバー(ENV−007CT、Med Associates社、フェアファックス、バーモント州)内で実験セッションを実施した。換気ファンをそれぞれ装備した消音室内に試験チャンバーを封じ込めた。このオペラントチャンバー内での自由運動を可能にするカウンタバランステザー(Plastics One社、ロアノーク、バージニア州)によってこの移植電極をICSS刺激装置(PHM−152/2、Med Associates社、セント・オールバンズ、バーモント州)に接続した。刺激の制御とデータの記録はこのオペラント試験チャンバーにインターフェースで接続されたコンピュータ制御ソフトウェア(MedPC IV、Med Associates社、セント・オールバンズ、バーモント州)により取りまとめられた。
手術から1週間後に前記ラットは自己刺激トレーニングを開始した。最初に左レバーと右レバーの両方が延ばされ、ハウスライトが点灯し、右側のレバー(すなわち、固定比率1、「FR1」)を押すたびに刺激(100μA、158Hz)が送達された。左レバーでの応答についてはプログラムされた結果が無かった。刺激の送達期間(500ms)中にハウスライトが消え、各レバー上のキューライトが3Hzの頻度で点滅した。最も高い頻度で安定した最大行動速度(35応答/分以上)を維持することが必要であるときには電流の強度を個別に調節した。この強度レベルはこの実験の残りを通して一定に保たれた。
周波数法(Carlezon & Wise, 1996より改変)はそれぞれが10回の1分からなるFR1強化期間からなる複数の応答コンポーネントから構成された。それぞれの1分からなる強化期間中に右レバーに対するFR1応答に付随して単回の計画周波数が送達された。各コンポーネントの間に周波数を158〜56Hzまで0.05という対数の増分ずつ(すなわち、2.2〜1.75という周波数(Hz)の対数まで)徐々に減少させた。5秒からなる試料収集期間がそれぞれの1分からなる強化期間に先行し、その試料収集期間の間に計画刺激周波数で5回の行動条件と無関係の刺激を送達した。それぞれの1分からなる応答期間の後に5秒からなるタイムアウト(TO)期間が続き、そのタイムアウト期間ではハウスライトが消え、ICSSは利用できなかった。前記の方法を用いてラットを毎日(月曜日から金曜日まで)トレーニングした。トレーニングセッションは午前中に実施され、トレーニングセッションはそれぞれが10回の1分からなるFR1強化期間を含む3回の連続応答コンポーネント(すなわち、30回の1分からなるFR1応答期間)から構成された。閾値(すなわちシータ0;T0)及びM50(以下のデータ解析参照)の10%以下の変化によって実証されるような安定な挙動が連続3日間のトレーニング期間に確立されたところでラットが試験を開始し、実験期間を通してベースライン安定性をモニターした。閾値(T0)を周波数曲線の直線部分が横軸と交差するところ(すなわちゼロ応答)の理論周波数として定義した。M50を最大半量応答率が維持される推定周波数として定義した。
試験日に2回のICSS実験セッションを実施した。ベースラインセッションでは各ラットをトレーニング期間にとって理想的な連続3回のコンポーネントの間に試験した。このベースラインの決定の完了後にラットをホームケージに戻し、試験セッションの2時間前にこれらのラットにR(−)−ケタミン(ATDP33,988)(3mg/kg、10mg/kg、又は30mg/kg)又はベヒクルのどちらかを腹腔内(i.p.)投与した。連続2回の応答コンポーネント(すなわち、20回の1分からなるFR1応答期間)から構成される試験セッションのためにラットをオペラントチャンバーに戻した。R(−)−ケタミン(ATDP33,988)は用量の昇順で投与された。
最大で週に2回(典型的には火曜日と金曜日)の試験を対象に対して行い、試験セッション間には少なくとも72時間を空けた。周波数応答の安定性を維持及びモニターするため、試験参加資格を判定するため、及び薬物の洗い流しを確実にするためにその週の試験日以外に周波数トレーニングセッションを実施した。ラットは試験スケジュールに組み込まれるためには安定性基準(最後のベースライン試験セッションからのT0及びM50の10%未満の変化)を満たすことが必要であった。
ATDP33,988(R(−)−ケタミン)は米国国立薬物乱用研究所(NIDA)によって提供され、これを無菌生理食塩水中に溶解した。このベヒクルは0.2μm濾過ディスクを通す濾過により滅菌された。全ての注射液は1ml/kg体重に等価の体積で試験セッションの開始2時間前に腹腔内投与された。
ここで示される結果は10匹のラットに由来するものである。初日のコンポーネントでの行動はその後のコンポーネントでの行動と比べて不安定であることが示されている(Carlezon and Chartoff, 2007)ため、ベースラインセッション中の初日の応答コンポーネントからの結果をデータ分析から除外した。2回の後続のベースラインコンポーネントの各々の間での各周波数で得られた結果を平均して各周波数のベースライン応答を決定した。その後、ベースラインセッション時に全ての周波数について各ラットで独立して生じた個々の最大ベースライン応答率によって最大応答率(MCR)を規定した。後続のデータ分析のため、ベースライン刺激率と試験刺激率を各ラットの一日ベースラインMCRに対して正規化してパーセント最大応答率(%MCR)を算出した。これらの値はベースラインセッションと試験セッションの両方について各周波数で得られた平均応答回数を関連の(すなわち同日の)ベースラインセッションの間に決定されたいずれかの周波数でのラットの最大率によって割り算し、最終的にこの商に100を掛け算することにより計算された。
二元(処理×周波数)反復測定ANOVAを用いて周波数応答データを分析し、
周波数による処理に関連する応答の差異を特定するためにホルム・シダック多重比較検定を続いて行って有意相互作用を分析した(図10)。全ての分析についてベヒクル(生理食塩水)が比較条件として働いた。周波数曲線の左側又は上方への変移は報酬系の促進を表すと考えられており、周波数曲線の右側又は下方への変移は報酬系の減弱化を表すと考えられている。最大応答率での周波数曲線の上方(率の増加)又は下方(率の減少)への変移は運動に対する非特異的効果を表す可能性がある。
周波数応答曲線に加えて追加の要約的従属測定値を計算及び分析した。閾値(T0)は周波数曲線の直線部分が横軸と交差するところ(すなわちゼロ応答)の理論周波数である。M50は最大半量応答(すなわち50%)が維持される推定周波数である。線形回帰分析を用いてT0とM50素周波数を各条件の各ラットについて計算し、これらの値を各ラットの個々のベースライン値に対して正規化し(パーセントベースラインT0とM50)、且つ、反復測定ANOVAを用いて分析した。フィッシャーのLSD検定を用いて多重比較を実施した(図11)。また、後に各条件について線形回帰を用いてT0値とM50値の対数変換値を計算し、ベースラインと試験について独立一元反復測定ANOVAを用いて分析した。ベヒクル対照に対して全ての用量を比較するためにフィッシャーのLSD検定を用いて多重比較を行った(下の表5〜表10)。マイクロコンピューターソフトウェア(Prism 7.04、GraphPad Software社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して全ての統計検定を実施し、全ての種類の比較はp<0.05である場合に統計学的に有意であるとした。
Figure 2021523228
ATDP33,988(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける閾値T値の対数のまとめの表。データは10匹のラットのT周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルのベースライン又は試験のTの対数値とそれぞれ比較してベースライン又は試験のTの対数値には有意な差が存在しなかった。
Figure 2021523228
ATDP33,988(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける最大半量応答(M50)を維持した周波数のまとめの表。データは10匹のラットのM50周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルのベースライン又は試験のM50の対数値とそれぞれ比較してベースライン又は試験のM50の対数値には有意な差が存在しなかった。
Figure 2021523228
ATDP33,989(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける閾値T値の対数のまとめの表。データは10匹のラットのT周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルに対して比較された試験の閾値の有意差を星印により表す(p<0.05、***p<0.001)。ベヒクルのベースラインのT値と比較してATDP33,989による処理後のベースラインのT値には有意な差が存在しなかった。
Figure 2021523228
ATDP33,988(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける最大半量応答(M50)を維持した周波数のまとめの表。データは10匹のラットのM50周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルに対して比較された試験の閾値の有意差を星印により表す(****p<0.0001)。ベヒクルのベースラインのM50と比較してATDP33,989による処理後のベースラインのM50値には有意な差が存在しなかった。
Figure 2021523228
ATDP33,990(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける閾値T値の対数のまとめの表。データは10匹のラットのT周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルのベースライン又は試験のTの対数値とそれぞれ比較してベースライン又は試験のTの対数値には有意な差が存在しなかった。
Figure 2021523228
ATDP33,990(3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg)又はベヒクルを使用して試験されたラットにおける最大半量応答(M50)を維持した周波数のまとめの表。データは10匹のラットのM50周波数の対数(log/Hz)の平均値±SEMである。ベヒクルのベースライン又は試験のM50の対数値とそれぞれ比較してベースライン又は試験のM50の対数値には有意な差が存在しなかった。
薬物中毒の治療はこの乱用薬物からの離脱を始めることを必要とする。これらの乱用薬物からの離脱ではこの薬物によって引き起こされる効果とは性質が反対の多数の生理的効果と行動的効果が生じる。したがって、この乱用薬物によって幸福状態と多幸感が誘導される一方で離脱により不安感、うつ、快感消失、ネガティブ情動、及び薬物の切望が生じる(Deneau and Seevers, 1964)。したがって、この精神生理状態を減弱化するか、又は悪化させない物質乱用治療が物質乱用治療の中で価値のあるものになる(Huhn et al., 2016、Koob, 1992、Langdon et al., 2019)。対照的に、不安感、うつ、及び/又は快感消失若しくはネガティブ情動を亢進する薬品は禁忌とされることになる(Koob et al., 1992、Langdon et al., 2019)。
S(+)−ケタミンはラットにおいて快感消失状態を誘発し、これは用量依存的であった。頭蓋内自己投与又はICSS(Negus and Miller, 2014)と呼ばれるモデルにおいて脳内の報酬検出神経細胞の刺激に対する応答を観察することによりこれをラットにおいてモデル化した。対照的にR(−)−ケタミンはげっ歯類動物においてS(+)−ケタミンよりも効果があるにもかかわらず快感消失状態がこれらの同じ用量のR(−)−ケタミンによって誘導されなかった。同様にコカインの薬物乱用と対照的にR(−)−ケタミンはICSS曲線を左側に変移させず、R(−)−ケタミンの乱用傾向が無いことがこのことから示唆された。
ラセミ体ケタミンはヒトにおいて精神異常発現作用、神経不安感、及び運動障害作用を引き起こすことができ(Rowland, 2005、Cooper et al., 2017、Ke et al., 2018、Liu et al., 2016)、これらの作用はげっ歯類動物においてモデル化可能である(例えば、Ginski and Witkin, 1994)。図11に示されているS(+)−ケタミンの効果はR(−)−ケタミンでは観察されなかったS(+)−ケタミンの副作用の影響である可能性がある(図10)。これらの比較データはR(−)−ケタミンがS−ケタミンよりも悪性でない副作用プロファイルを示すという最近の報告と一致する(Yang et al., 2015参照)。
S(+)−ケタミンで見られる神経不安感/快感消失又はネガティブ情動はR(−)−ケタミンでは認められなかった。これらのデータは、快感消失又はネガティブ情動/神経不安感の誘導が無いことを考慮するとS(+)−ケタミンではなくR(−)−ケタミンが実行可能な物質使用障害の治療法になることを示している。
ラットにおけるICSS条件下ではR(−)−ケタミンはラットの行動をあまり変えなかった(図10)。対照的にS(+)−ケタミンは刺激周波数曲線を有意に下方に変移させた(図11)。同様にR−ケタミンの代謝産物であるR−ヒドロキシノルケタミンはこの周波数応答機能を変更することがなかった(図12)。S−ケタミンに関するこれらの発見は以前に報告されたように幾つかの乱用薬物(例えば、コカイン、図13)を用いて生じた発見と異なる(Negus and Miller, 2014参照)。図10ではR(−)−ケタミンは頭蓋内自己刺激機能を変化させていない。対照的にS(+)−ケタミン(図11)はこの曲線を右に変移させており、快感消失応答がそのケタミンにより発生することが示されている。図11のデータに対する図10のデータの比較からS(+)−ケタミンによってR(−)−ケタミンでは観察されない効果である行動障害性効果がラットにおいて生じることが示される。快感消失応答は物質使用障害向けの医薬品には禁忌とされている。同様に、図12はR(−)−ケタミンの代謝産物であるR−ヒドロキシノルケタミンがR(−)−ケタミンのようにラットの頭蓋内自己刺激行動を変更させていないことを示している。したがってR(−)−ケタミンもそのヒドロキシ代謝産物もS(+)−ケタミンのような快感消失状態を誘導することがない。
実施例8:ケタミン、S(+)−ケタミン、及びR(−)−ケタミンの比較薬理学
物質使用障害向けの医薬品の効力及び/又は副作用を予測するために使用されるモデルにおいてケタミン、S(+)−ケタミン、及びR(−)−ケタミンの薬理学を比較した。概してR(−)−ケタミンはラセミ体R,S-ケタミンとほぼ等効力であった。
R(−)−ケタミンは受容体(NMDA)では効力がS(+)−ケタミンよりも2〜4倍低い。R(−)−ケタミンとラセミ体ケタミンにおいて同用量で効果が観察される場合、このことは定義によると解離及びおそらくは乱用を引き起こす力が用量に関係するためR(−)−ケタミンが安全性について利点を有することを意味する。同用量での効果はR(−)−ケタミンが物質使用障害集団において重要な優れた安全性プロファイルを有していることを示している。また、ケタミンは概してどの直接的効果に関しても(関与する可能性があるが妥当であるか不明の多数の受容体と共に)NMDA受容体を介して作用することが知られているのでこの安全性の利点は予期せぬものである。したがって、R(−)−ケタミンは疼痛の場合のように対象が効果を挙げるためにS(+)−ケタミン又はラセミ体と比較してより多くのR(−)−ケタミンを受け入れる場合にのみ作用すると予期される。
表11中のR(−)−ケタミンの効力は他の効力データから予測されなかった。以前の研究に対する本開示のR(−)−ケタミン、S(+)−ケタミン及びラセミ体ケタミンの比較が下の表11にまとめられている。値はmg/kg単位の用量である。
Figure 2021523228
ラセミ体ケタミン、S(+)−ケタミン、及びR(−)−ケタミンを幾つかのモデル系でも物質使用障害の薬品として使用して比較した。ラセミ体ケタミン、S(+)−ケタミン、及びR(−)−ケタミンの比較薬理学が下の表12に示されている。
Figure 2021523228
疼痛患者における静脈内(i.v.)R,S−ケタミン投与後の血漿中S(+)−ケタミン濃度も望ましくない効果(Persson et al.,1998より、図3参照)の主観的報告と相関した。
R(−)−ケタミンは効力がS(+)−ケタミン又はR,S−ケタミンよりも低い。これらの効力推定値は上の表11中の物質使用アッセイの効力を推定したものではない。
上で説明したように、物質使用障害の予防及び/又は治療のための本開示の薬剤及び医薬組成物は迅速かつ長期的に継続する抗うつ作用を有し、精神異常発現作用などの副作用が少なく、したがってうつ症状を示すものもある多数の物質使用障害の予防及び/又は治療の分野の新規医薬品として有用である。

Claims (96)

  1. 対象の物質使用障害を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない、方法。
  2. 前記物質使用障害が、アルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの乱用を含む、請求項1に記載の方法。
  3. R(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記治療有効量によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記物質使用障害がオピオイド類の乱用を含む、請求項1又は3に記載の方法。
  5. 前記物質使用障害がアルコールの乱用を含む、請求項1又は3に記載の方法。
  6. 前記オピオイドが、ヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記興奮剤が、アンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む、請求項2又は3に記載の方法。
  8. 前記ベンゾジアゼピンが、アプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む、請求項2又は3に記載の方法。
  9. 前記バルビツール酸系化合物が、フェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む、請求項2又は3に記載の方法。
  10. 前記睡眠薬がエスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む、請求項2又は3に記載の方法。
  11. 前記組成物の投与により前記対象において離脱症状が抑制され、又は前記物質使用障害の再発が防止される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の物質に対する耐性が低下する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の物質への依存症が抑制される、請求項1〜10及び12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記組成物の投与により前記対象において前記物質使用障害の治療法に対するアドヒアランスが改善される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記組成物の投与により前記対象における前記物質使用障害の物質に対する嗜好度が低下し、又は前記物質使用障害の物質に対する愛好度が低下する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記組成物の投与により前記対象における前記物質使用障害の物質からの離脱が亢進する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記方法が物質乱用に対する追加の薬物療法をさらに含む、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記追加の薬物療法が、段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記方法が行動療法をさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
  20. 前記行動療法が、カウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記カウンセリングが対面式又はデジタル介入によるものである、請求項20に記載の方法。
  22. 必要な行動療法の量が、前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 前記物質使用障害が、オピオイドの乱用を含み、且つ、前記補充療法がメサドン又はブプレノルフィンを含む、請求項18に記載の方法。
  24. 前記物質使用障害が、オピオイドの乱用を含み、且つ、前記投薬支援治療がナルトレキソンを含む、請求項18に記載の方法。
  25. 前記物質使用障害が、アルコールの乱用を含み、且つ、前記投薬支援治療がジスルフィラム、アカンプロサート、又はナルトレキソンを含む、請求項18に記載の方法。
  26. 前記組成物が前記追加療法の前に投与される、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記組成物が前記追加療法と同時に投与される、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
  28. 前記組成物が前記追加療法の後に投与される、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記組成物が、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
  30. 組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記組成物が、約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記組成物が約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項30に記載の方法。
  33. 前記組成物が約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項30に記載の方法。
  34. 前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩がR(−)−ケタミン塩酸塩である、請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記組成物が、静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される、請求項30〜34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 対象の少なくとも1つの物質使用離脱症状を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない前記方法。
  37. 前記少なくとも1つの物質使用離脱症状がアルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの離脱症状を含む、請求項36に記載の方法。
  38. R(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記治療有効量によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない、請求項36又は37に記載の方法。
  39. 前記少なくとも1つの物質使用離脱症状がオピオイド類の離脱症状を含む、請求項36又は38に記載の方法。
  40. 前記少なくとも1つの物質使用離脱症状がアルコールの離脱症状を含む、請求項36又は38に記載の方法。
  41. 前記オピオイドが、ヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む、請求項37に記載の方法。
  42. 前記興奮剤が、アンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記ベンゾジアゼピンが、アプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む、請求項37に記載の方法。
  44. 前記バルビツール酸系化合物が、フェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む、請求項37に記載の方法。
  45. 前記睡眠薬が、エスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む、請求項37に記載の方法。
  46. 前記少なくとも1つの物質使用離脱症状が肉体的離脱症状、精神的離脱症状、又はそれらの組合せを含む、請求項36〜45のいずれか1項に記載の方法。
  47. 前記肉体的離脱症状が、震え、不眠症、睡眠障害、頭痛、発汗、吐き気、嘔吐、筋肉痛、筋硬直、高血圧、心拍数不整、心拍数上昇、心動悸、めまい、ぐらつき、震え、脳卒中、脱水症状、浅呼吸、疲労、食欲不振、冷や汗、顔色の悪化、又はそれらの組合せを含む、請求項46に記載の方法。
  48. 前記精神的離脱症状が、不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、物質の切望、又はそれらの組合せを含む、請求項46に記載の方法。
  49. 前記方法が離脱に対する追加の薬物療法をさらに含む、請求項36〜48のいずれか1項に記載の方法。
  50. 前記追加の薬物療法が段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む、請求項49に記載の方法。
  51. 前記方法が行動療法をさらに含む、請求項49又は50に記載の方法。
  52. 前記行動療法が、カウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む、請求項51に記載の方法。
  53. 前記カウンセリングが対面式又はデジタル介入によるものである、請求項52に記載の方法。
  54. 必要な行動療法の量が前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する、請求項51〜53のいずれか1項に記載の方法。
  55. 前記離脱症状が、オピオイドの離脱症状を含み、且つ、前記補充療法がメサドン又はブプレノルフィンを含む、請求項50に記載の方法。
  56. 前記離脱症状が、オピオイドの離脱症状を含み、且つ、前記投薬支援治療がナルトレキソンを含む、請求項50に記載の方法。
  57. 前記離脱症状が、アルコールの離脱症状を含み、且つ、前記投薬支援治療がジスルフィラム、アカンプロサート、又はナルトレキソンを含む、請求項50に記載の方法。
  58. 前記組成物が、前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症よりも前に投与される、請求項36〜57のいずれか1項に記載の方法。
  59. 前記組成物が、前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症と同時に投与される、請求項36〜57のいずれか1項に記載の方法。
  60. 前記組成物が、前記対象における前記少なくとも1つの離脱症状の発症の後に投与される、請求項36〜57のいずれか1項に記載の方法。
  61. 前記組成物が、24時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される、請求項36〜60のいずれか1項に記載の方法。
  62. 組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項36〜61のいずれか1項に記載の方法。
  63. 前記組成物が、約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項62に記載の方法。
  64. 前記組成物が約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項62に記載の方法。
  65. 前記組成物が約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項62に記載の方法。
  66. 前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩がR(−)−ケタミン塩酸塩である、請求項62〜65のいずれか1項に記載の方法。
  67. 前記組成物が、静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される、請求項62〜66のいずれか1項に記載の方法。
  68. 前記組成物により前記対象における前記少なくとも1つの物質使用離脱症状が抑制又は除去される、請求項36〜67のいずれか1項に記載の方法。
  69. 対象の物質使用障害に関連する精神症状を治療する方法であって、治療有効量のR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記組成物にS(+)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩が実質的に含まれていない、方法。
  70. 前記精神症状が、アルコール、マリファナ、合成カンナビノイド、オピオイド類、興奮剤、バルビツール酸系化合物、ベンゾジアゼピン、デキストロメトルファン(DXM)、睡眠薬、カート、合成カチノン、コカイン、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、フェンシクリジン(PCP)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、吸入薬、ロヒプノール、γ−ヒドロキシ酪酸(GHB)、N,N−ジメチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカ、メスカリン、サルビア、又はニコチンの精神的離脱症状を含む、請求項69に記載の方法。
  71. 治療有効量のR(−)−ケタミンを含む前記組成物の前記対象への投与によって前記対象に快感消失又はネガティブ情動が生じることがない、請求項69又は70に記載の方法。
  72. 前記精神症状が前記物質使用障害の合併症である気分障害の精神症状を含む、請求項69〜71のいずれか1項に記載の方法。
  73. 前記気分障害が大うつ病性障害、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、又は認知症を含む、請求項71に記載の方法。
  74. 前記オピオイドがヘロイン、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン(ジヒドロコデイノン)、ヒドロモルフォン、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、又はオキシモルフォンを含む、請求項70に記載の方法。
  75. 前記興奮剤が、アンフェタミン、硫酸アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、レボアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、オキシメタゾリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、又はこれらの組合せ物を含む、請求項70に記載の方法。
  76. 前記ベンゾジアゼピンが、アプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ロラゼパム、又はトリアゾラムを含む、請求項70に記載の方法。
  77. 前記バルビツール酸系化合物が、フェノバルビタール、ペントバルビタール、メトヘキシタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、又はブタルビタールを含む、請求項70に記載の方法。
  78. 前記睡眠薬が、エスゾピクロン、ザレプロン、又はゾルピデムを含む、請求項70に記載の方法。
  79. 前記精神症状が、不安感、いらつき、集中力の低下、思考力の低下、気分の変動、悪夢、うつ、緊張、パニック発作、短期記憶喪失、焦燥感、無力感、ストレス感受性、物質関連手掛かりに対する応答性の増強、異常報酬情報処理、物質の切望、又はそれらの組合せを含む、請求項69〜78のいずれか1項に記載の方法。
  80. 前記方法が追加の薬物療法をさらに含む、請求項69〜79のいずれか1項に記載の方法。
  81. 前記追加の薬物療法が段階的減薬療法、補充療法、又は投薬支援治療を含む、請求項80に記載の方法。
  82. 前記方法が行動療法をさらに含む、請求項80又は81に記載の方法。
  83. 前記行動療法が、カウンセリング、随伴性マネジメントシステム、マインドフルネス療法、認知行動療法、デジタル介入行動療法、又は仮想現実利用行動療法を含む、請求項82に記載の方法。
  84. 前記カウンセリングが、対面式又はデジタル介入によるものである、請求項83に記載の方法。
  85. 必要な行動療法の量が、前記方法により前記組成物の投与を含まない行動療法と比較して減少する、請求項82〜84のいずれか1項に記載の方法。
  86. 前記組成物が、前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症よりも前に投与される、請求項69〜85のいずれか1項に記載の方法。
  87. 前記組成物が前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症と同時に投与される、請求項69〜85のいずれか1項に記載の方法。
  88. 前記組成物が前記対象における前記少なくとも1つの精神症状の発症の後に投与される、請求項69〜85のいずれか1項に記載の方法。
  89. 前記組成物が24時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、7日毎、10日毎、14日毎、又は30日毎に投与される、請求項69〜88のいずれか1項に記載の方法。
  90. 前記組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項69〜89のいずれか1項に記載の方法。
  91. 前記組成物が、約0.01mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項90に記載の方法。
  92. 前記組成物が、約0.1mg〜約500mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項90に記載の方法。
  93. 前記組成物が、約0.1mg〜約100mgのR(−)−ケタミン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項90に記載の方法。
  94. 前記薬学的に許容されるR(−)−ケタミンの塩がR(−)−ケタミン塩酸塩である、請求項90〜93のいずれか1項に記載の方法。
  95. 前記組成物が、静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与、皮下投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、又は経皮投与向けに製剤される、請求項90〜93のいずれか1項に記載の方法。
  96. 前記組成物により前記対象における前記少なくとも1つの精神症状が抑制又は除去される、請求項69〜95のいずれか1項に記載の方法。
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