略語及び用語定義
用語「拮抗薬」は、作動薬が受容体に結合するのを妨げることによって、その効果を低下させる薬剤である。中性拮抗薬は、作動薬又は逆作動薬の非存在下では活性を示さないが、どちらの活性も阻害し得る。
用語「逆作動薬」は、作動薬と同じ受容体に結合するが、典型的には標的細胞に対して反対の効果を有し、自発的な受容体作動薬非依存性活性を阻害する薬剤である。逆作動薬の主な薬理学的効果は、受容体拮抗作用である。
拮抗薬及び逆作動薬はどちらも、受容体の活性を低下させる。本文脈において、拮抗薬及び逆作動薬は同義的に使用され、どちらの用語も「拮抗薬」によって表わされる。
本明細書における用語「二重作用剤」は、2つの異なる標的受容体又は酵素に対する、阻害薬又は拮抗薬の役割を果たす薬剤として定義される。本文脈において、式Iの化合物及びその誘導体は、サルポグレラート(化合物50)、その鏡像異性体(化合物51及び化合物52)、及びその代謝産物によって表される、5-HT2A受容体及びCYP2D6に対する活性を有する二重作用剤である。
用語SGLは、サルポグレラートラセミ体又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SGL-E1は、(R)サルポグレラート又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SGL-E2は、(S)サルポグレラート又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語M1は、サルポグレラートラセミ体代謝産物1又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語M1-E1は、(R)サルポグレラート代謝産物1又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語M1-E2は、(S)サルポグレラート代謝産物1又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
薬物のグルクロニド(Glu)は下で示されるようであり、薬物-Gluとして表される。
グルクロン酸抱合は、水溶性基質を形成するための大部分の哺乳類種における生体異物生体内変換の主要経路であり、補因子ウリジン二リン酸-グルクロン酸を必要とし、生体からの生体異物除去のための最も重要な反応の一つでありウリジン5’-二リン酸グルクロン酸ウリジンの反応が関与する。グルクロン酸抱合の部位は、一般に、R-OH、R-NH
2、R-COOH、RSHなどの電子に富む求核性ヘテロ原子(酸素、窒素、又はイオウ)である。ヒト肝臓における多数の薬物のグルクロン酸抱合はまた、立体選択的及び鏡像選択的である。
用語SG1は、サルポグレラートグルクロニド1又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SG2は、サルポグレラートグルクロニド2又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SMG1は、サルポグレラート代謝産物グルクロニド1又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SMG2は、サルポグレラート代謝産物グルクロニド2又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語SMG3は、サルポグレラート代謝産物グルクロニド3又はその薬学的に許容可能な塩を表す。
用語DEXは、式II、デキストロメトルファン(DEX-H
3)からなる群から選択される1種又は複数種の化合物、その鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのハロゲン化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせを表す。代謝産物としては、デキストロルファン(DO)、3-ヒドロキシモルフィナン(HYM)、及び3-メトキシモルフィナン(MEM)が挙げられるが、これに限定されるものではない。重水素化誘導体としては、DEX-D
3及びDO-D
3が挙げられるが、これに限定されるものではない。
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本発明の薬学的に活性な化合物が塩基性である場合は、薬学的に許容可能な無毒の酸から調製される塩を指し、又は本発明の薬理的に活性な化合物が酸性である場合は、薬学的に許容可能な無毒の塩基から調製される塩を指す。薬学的に許容可能な有機及び無機酸塩としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタン-スルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などの酸によって形成された塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。塩は、薬学的に許容可能な無毒の塩基から調製されてもよい。薬学的に許容可能な無毒の塩基性塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などをはじめとする、無機塩基の全ての安定形態から得られる塩、並びに一級、二級、三級アミン、及び天然に存在する置換アミン、環式アミンなどの置換アミンの塩、及びアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リジン、メチル-グルコサミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンなどの塩基性イオン交換樹脂をはじめとする薬学的に許容可能な有機無毒性塩基から得られる塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
陽電子放出断層撮影(PET)は、高解像度(2~3mm)で特定の標的領域に関する定量的情報を提供する、非侵襲的イメージング法である。PETは、典型的には、11C(t1/2=20分間)又は18F(t1/2=110分間)である、陽電子放出核種で標識された放射性リガンドを必要とする。
用語SARPOは、式Iの化合物、サルポグレラート(SGL)からなる群から選択される1種又は複数種の化合物、その鏡像異性体、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、その代謝産物M1、SG1、SG2、SMG1、SMG2、SMG3;又はそれらの組み合わせを表す。
用語SARPODEX(商標)は、上で定義されるようなDEX及びSARPOの組み合わせを表す。
用語SARPODEXTER(商標)は、SGL及びDOのエステルを表す。
用語SARPODEXAMIDE(商標)は、SGL及びMEMのアミドを表す。
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態は、式I:
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、H、置換又は非置換C
1~10アルキル、(ハロ)
n-C
1~10-アルキル、置換又は非置換C
3~10シクロアルキル、置換又は非置換C
5~10アリール、置換又は非置換C
5~10ヘテロアリール、若しくはグルクロニド(Glu)(式中、ハロゲンはF、Cl、又はBrであり、nは1~12の整数である)であり;又はR
1及びR
2は窒素と共に、N、O、及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を有する飽和又は不飽和複素環を形成し;
Xは、結合、C
1~10アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
5~10アリール、-CO-C
1~10アルキル、-CO-C
3~10シクロアルキル、-COC
5~10アリール、CO-C
5~10ヘテロアリール、-CO-NH-C
1~10アルキル、-CO-NH-C
3~10シクロアルキル、-CO-NH-C
5~10アリール、又は-CO-NH-C
5~10ヘテロアリールであり;
R
4は、NH-R
5、S-R
5、-OH、O-R
5、-CO-R
5、-O-CO-R
5、又は-CO-O-R
5(式中、R
5は、アシル遊離基、水素、又はGluである)であり;又はR
5及びR
2は、複素環を形成する);若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのハロゲン化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである)を有する化合物を含む組成物である。
別の実施形態では、化合物は式Iの化合物であり、式中、R5は、モノ、ジ、及びトリカルボン酸遊離基からなる群から選択されるアシル遊離基である。
別の実施形態では、化合物は式Iの化合物であり、式中、R5は、アセテート、アセチルサリチレート、アジペート、ブチレート、カプレート、カプロエート、カプリレート、エナンテート、フォルメート、グルタラート、イソフタレート(isophthallate)、マレエート、マロネート、オキサレート、ペラルゴネート、ピメレート、プロピオネート、フタレート(phthallate)、サリシレート(salicilate)、セバケート、スクシネート、テレフタレート(terephthallate)、チロシン、トリプトファネート、及びバレレートからなる群から選択されるアシル遊離基である。
別の実施形態は、式II
(式中、
R
6、R
7、及びR
8は独立してH、D、置換又は非置換C
1~10-アルキル、(ハロ)
nC
1~10-アルキル(式中、ハロゲンはF、Cl、又はBrであり、nは1~12の整数である)であり;
R
9及びR
10は独立してH;C
1~10-アルキル;(ハロ)
n-C
1~10-アルキル(式中、ハロゲンはF、Cl、又はBrであり、nは1~12の整数である);OHであり;又はR
9及びR
10は一緒になって、ヘテロ原子がO、S、又はNである、五員複素環を形成する)の化合物である。
別の実施形態は、式IIIの化合物であり、式中、YはN又はOであり、R
5及びR
2は、モルホリン、ジヒドロオキサジン、オキサジン、ピペラジン、ジヒドロピペリジン(dihydropiperzine)、及びテトラヒドロピラジン(tetrahydropirazine)などのラジカルから選択される複素環を形成する。
この実施形態の化合物としては、以下の化合物10~24が挙げられるが、これに限定されるものではない。
別の実施形態は、式Ia又はIbから選択される式Iの純粋な鏡像異性体である。
別の実施形態では、Xがエチルではないという条件で、R1、R2、及びR3がメチルである式Iの化合物。
別の実施形態では、組成物は式Iの化合物を含み、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はOR5であり、及びR5はスクシノイル遊離基である。この実施形態の式Iの化合物は、SGL、SGL-E1、及びSGL-E2を含む。
別の実施形態では、組成物は式Iの化合物を含み、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はOHである。この実施形態の式Iの化合物は、M1、M1-E1、及びM1-E2を含む。
別の実施形態では、組成物は式Iを有し、式中、R1及びR2は窒素と共に、N、O、及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を有する飽和又は不飽和複素環を形成し;R3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はOHである。別の実施形態では、複素環は五員環である。別の実施形態は、複素環が六員環である。別の実施形態では、複素環は飽和している。別の実施形態は、不飽和複素環を有する。一実施形態では、複素環は1つのヘテロ原子を有する。別の実施形態では、複素環は2つのヘテロ原子を有する。
別の実施形態、式Iの化合物では、素窒と共にR1及びR2から形成される複素環が、下に列挙される複素環から選択される。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、式中、R5はクエン酸遊離基でない。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とデキストロメトルファンとを含む組成物である。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物と、DEX-H3、DEX-D3、DO、又はDO-D3とを含む組成物である。
本発明の一実施形態は、M1、M1-E1、M1-E2、SGL、SGL-E1、又はSGL-E2;及びDEX-H3、DEX-D3、DO、又はDO-D3を含む組成物である。
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物と式IIの化合物とを含む組成物である。本発明の別の実施形態は、式Iの化合物と式IIa又はIIbの化合物とを含む組成物である。本発明の別の実施形態は、式Iの化合物と式IIaの化合物とを含む組成物である。
別の実施形態は、式Iの化合物と、チオリダジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ズクロペンチキソール、リスペリドン、セルチンドール、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、イミプラミン、フルオキセチン、パロキセチン、アジュマリン、アミオダロン、アミトリプチリン、アプリンジン、アゼラスチン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ジフェンヒドラミン、ドキソルビシン、フルフェナジン、フルバスタチン、ハロペリドール、イミプラミン、インジナビル、ランソプラゾール(lasoprazole)、レボメプロマジン、ロピナビル、ロラタジン、メキタジン、メサドン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、ネルフィナビル、ネビラピン、ニカルジピン、ノルフルオキセチン、ペルフェナジン、ピモジド、テルフェナジン、チオリダジン、シメチジン、キニジン、シサプリド、シタロプラム、クロザピン、コカイン、デシプラミン、ラニチジン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、セルトラリン、テルビナフィン、チクロピジン、トリフルペリドール、ヨヒンバン、クロミプラミン、ドキセピン、ミアンセリン、イミプラミン、2-クロミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ノルトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、シタロプラム、セルトラリン、アリールオキシインダンアミン、ベナクチジン、エスシタロプラム、フルボキサミン、ベンラフェキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、ネファゾドン、セレギリン、シブトラミン、ミルナシプラン、テソフェンシン、ブラソフェンシン、モクロベミド、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ブトリプチリン、ドスレピン、ジベンゼピン、イプリンドール、ロフェプラミン、オピプラモール、及びダポキセチンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物である。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物と、DEXと、チオリダジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ズクロペンチキソール、リスペリドン、セルチンドール、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、イミプラミン、フルオキセチン、パロキセチン、アジュマリン、アミオダロン、アミトリプチリン、アプリンジン、アゼラスチン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ジフェンヒドラミン、ドキソルビシン、フルフェナジン、フルバスタチン、ハロペリドール、イミプラミン、インジナビル、ランソプラゾール(lasoprazole)、レボメプロマジン、ロピナビル、ロラタジン、メキタジン、メサドン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、ネルフィナビル、ネビラピン、ニカルジピン、ノルフルオキセチン、ペルフェナジン、ピモジド、テルフェナジン、チオリダジン、シメチジン、キニジン、シサプリド、シタロプラム、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、ラニチジン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、セルトラリン、テルビナフィン、チクロピジン、トリフルペリドール、ヨヒンバン、ドキセピン、ミアンセリン、イミプラミン、2-クロミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ノルトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、シタロプラム、セルトラリン、アリールオキシインダンアミン、ベナクチジン、エスシタロプラム、フルボキサミン、ベンラフェキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、ネファゾドン、セレギリン、シブトラミン、ミルナシプラン、テソフェンシン、ブラソフェンシン、モクロベミド、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ブトリプチリン、ドスレピン、ジベンゼピン、イプリンドール、ロフェプラミン、オピプラモール、及びダポキセチンから選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物である。
上記の本発明の実施形態では、式Iの化合物は、M1、M1-E1、M1-E2、SGL、SGL-E1、又はSGL-E2である。
上記の本発明の実施形態では、式の化合物IはM1、M1-E1、M1-E2、SGL、SGL-E1、又はSGL-E2であり、DEXはDEX-H3である。
別の実施形態では、式Iの化合物又はサルポグレラート類似体は、以下のカルボン酸を使用して製造される。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物は、化合物25~49及び53~109;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物は、化合物25~49及び53~109、及び式IIの化合物;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポマレートであり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はマレート;化合物25~29;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポメチオネートであり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はメチオネート;化合物30~34;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポフタレート(sarpophthallate)であり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はフタレート;化合物35~37;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポマロネートであり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はマロネート;化合物38~40;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポチロシネートであり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はチロシネート;化合物41~43;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は式Iの化合物であり、化合物はサルポトリプトファネートであり、式中、R1、R2、及びR3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はトリプトファネート;化合物44~46;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
一実施形態では、組成物は、DEXと、化合物10~46、SGL、SGL-E1、SGL-E2、M1、M1-E1、及びM1-E2;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、化合物はサルポグレラート、及びデキストロメトルファンであり;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、化合物はサルポグレラート、及びデキストロメトルファンであり、サルポグレラート及びデキストロメトルファンは、ジアステレオマー混合物を形成する。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、化合物はサルポグレラート、及びデキストロメトルファンであり、サルポグレラート及びデキストロメトルファンは、ジアステレオマー混合物である塩を形成する。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、化合物はサルポグレラート、及びデキストロメトルファンであり、サルポグレラート及びデキストロメトルファンは、純粋ジアステレオマーである塩を形成し;若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物を含む組成物であり、化合物はサルポグレラート代謝産物M1、及びデキストロメトルファンであり;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、デキストロメトルファンと式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポマレートであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポメチオネート、及びデキストロメトルファンであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポフタレート(sarpophthallate)、及びデキストロメトルファンであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポマロネート、及びデキストロメトルファンであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポチロシネート、及びデキストロメトルファンであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はサルポトリプトファネート、及びデキストロメトルファンであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はSGL、及びデキストロメトルファンHClであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、式Iの化合物とを含む組成物であり、化合物はSGL、及びデキストロメトルファンHBrであり、そのジアステレオマー混合物又は純粋ジアステレオマーを含む塩を形成し、若しくはその誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、SGL、M1、SG1、SG2、SMG1、SMG2、SMG3からなる群から選択される化合物;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせを含む、組成物である。
本発明の一実施形態は、SGL、M1、SG1、SG2、SMG1、SMG2、SMG3からなる群から選択される化合物;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせと、デキストロメトルファン若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせとを含む、組成物である。
別の実施形態は、式1の化合物であり、Ra及びR2は五員環又は六員環複素環部分を形成し、例示的化合物は、化合物110~145;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態は、SGL、その鏡像異性体、その代謝産物、M1、SG1、SG2、SMG1、SMG2、SMG3;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのハロゲン化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせと;式IIの化合物又はデキストロメトルファン;及び/又はチオリダジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ズクロペンチキソール、リスペリドン、セルチンドール、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、イミプラミン、フルオキセチン、パロキセチン、アジュマリン、アミオダロン、アミトリプチリン、アプリンジン、アゼラスチン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ジフェンヒドラミン、ドキソルビシン、フルフェナジン、フルバスタチン、ハロペリドール、イミプラミン、インジナビル、ランソプラゾール(lasoprazole)、レボメプロマジン、ロピナビル、ロラタジン、メキタジン、メサドン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、ネルフィナビル、ネビラピン、ニカルジピン、ノルフルオキセチン、ペルフェナジン、ピモジド、テルフェナジン、チオリダジン、シメチジン、キニジン、シサプリド、シタロプラム、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、デシプラミン、ラニチジン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、セルトラリン、テルビナフィン、チクロピジン、トリフルペリドール、ヨヒンバン、ドキセピン、ミアンセリン、イミプラミン、2-クロロイミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ノルトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、トラゾドン、シタロプラム、セルトラリン、アリールオキシインダンアミン、ベナクチジン、エスシタロプラム、フルボキサミン、ベンラフェキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、ネファゾドン、セレギリン、シブトラミン、ミルナシプラン、テソフェンシン、ブラソフェンシン、モクロベミド、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ブトリプチリン、ドスレピン、ジベンゼピン、イプリンドール、ロフェプラミン、オピプラモール、及びダポキセチン;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物とからなる群から選択される化合物とを含む組成物である。
別の実施形態では、組成物は、式IIの化合物又はDEXと、式Iの化合物及び/又はペルヘキシリン(prehexiline)、フレカイニド、キニジン、(R)-プロパフェノン(propaphenone)、(S)-プロパフェノン(propaphenone)、イソニアジド、(R)-フルオキセチン、(S)-フルオキセチン、ネファゾドン、パロキセチン、ケトコナゾール、クロロキン、オキサムニキン、プリマキン、キニーネ、アセブトロール(acetbutolol)、ベタキソロール、ブフラロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、ブジピン、シムバスタチン(simavastatin)、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ペラジン、アジマリシン(ajamlicine)、コリナンチン、ロベリン;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせとを含む。
別の実施形態では、複素環が窒素と合わさったR
1及びR
2から形成される式Iの化合物の例は、飽和(下に示される)及び不飽和複素環を含む、式Ic-Is、
を有する化合物で表わされる。
別の実施形態では、化合物は、式Ic-Isの化合物であり、式中、五員環複素環は不飽和である。
別の実施形態では、組成物は、式I、
を含み、式中、R
1、R
2、及びR
3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はOHであり、以下の化合物M1、M1-E1、及びM1-E2;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせによって表わされる。
別の実施形態では、組成物は、式I、
を含み、式中、R
1、R
2、及びR
3はメチルであり、Xはエチルであり、R4はOHOHスクシノイル基であり、以下の化合物SGL、SGL-E1、及びSGL-E2;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせによって表わされる。
一実施形態では、組成物は、DEX-H
3、DEX-D
3、DO、DO-D
3、レボメトルファン、モルヒネ、コデイン、テバイン、ベンゾカイン、コカイン、アトロピンやスコポラミンなどのトロパンアルカロイドなど;若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせを含む。
別の実施形態では、組成物は、化合物149~157、若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される化合物を含む。
別の実施形態では、組成物は、ケタミン、メサドン、メマンチン、アマンタジン、デキストロプロポキシフェン、ケトベミドン、及びデキストロメトルファンなどのNMDA受容体拮抗薬を含む(Jamero et al., The Emerging Role of NMDA Antagonists in Pain Management, US Pharm. 36(5):HS4-HS8 (2011); Sang, NMDA-receptor antagonists in neuropathic pain: experimental methods to clinical trials, J Pain Symptom Manage 19 (1 Suppl) S21-5 (2000);その全体が参照により本明細書に援用される)。DEXは、σ2受容体作動薬、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬、及びα3β4ニコチン性受容体拮抗薬である。ノルエピネフリン及びセロトニンの取り込みもまた阻害される。アルツハイマー病や、認知症の行動心理学的症状などのいくつかの精神神経疾患及び症候群は、グルタミン酸作動性、コリン作動性、セロトニン作動性、及びノルエピネフリン作動性神経伝達物質系の調節不全(dis-regulation)を伴う。
別の実施形態では、医薬組成物はSARPODEX(商標)を含む。
別の実施形態は、5-HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、式Iの化合物又はSARPOである。別の実施形態では、医薬組成物はSARPODEX(商標)を含む。
別の実施形態は、本発明の1つ又は複数の薬剤、式Iの化合物、SARPO、DEX、又はSARPODEX(商標)を単独で、又は鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン)、抗ヒスタミン剤(例えば、クロルフェニラミン)、充血除去剤(例えば、プソイドエフェドリン)及び/又は去痰剤(例えば、グアイフェネシン)などのその他の薬物との組み合わせで含む組成物である。
一実施形態は、化合物10~170から選択される化合物である。別の実施形態は、化合物10~170からの少なくとも1つの化合物を含む組成物である。
別の実施形態は、10~148及び158~170の化合物、若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせ;及び149~157の化合物からなる群から選択される化合物、若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物である。
別の実施形態は、10~148及び158~170の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせ;及び149~157の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、若しくはその鏡像異性体、その代謝産物、その誘導体、その重水素化誘導体、そのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、そのN-酸化物、又はそれらの組み合わせを含む医薬組成物である。
一実施形態では、式I及び式IIの化合物の薬学的に許容可能な塩は、薬理的に活性の本発明の化合物が塩基性である場合、薬学的に許容可能な無毒の酸から調製され、又は薬理的に活性の本発明の化合物が酸性である場合、塩は、薬学的に許容可能な無毒の塩基から調製される。薬学的に許容可能な有機及び無機酸塩としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタン-スルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などの酸によって形成された塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。塩は、薬学的に許容可能な無毒の塩基から調製されてもよい。薬学的に許容可能な無毒の塩基性塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などをはじめとする、無機塩基の全ての安定形態から得られる塩、並びに一級、二級、三級アミン、及び天然に存在する置換アミン、環式アミンなどの置換アミンの塩、及びアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リジン、メチル-グルコサミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンなどの塩基性イオン交換樹脂をはじめとする薬学的に許容可能な有機無毒性塩基から得られる塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
別の実施形態では、本発明のプロドラッグは、活性代謝産物M1のプロドラッグである、化合物10~148及び160~178である。
別の実施形態では、本発明のプロドラッグは、デキストロルファンのプロドラッグである、化合物149~159である。
水中での非極性溶質の自由エネルギー的に好ましい会合は疎水性効果と称され、これはリガンドのタンパク質への結合に主に寄与する。フッ素は、分子に組み込まれると多くの有益な特性を提供し得る。フッ素置換の近位にある官能基のpKaHの調節は、生理学的pHにおける膜浸透の増加をもたらし得る。フッ素化アレーンは、それらのフッ素化されていない対応物よりもさらに親油性であり、これは薬物開発において有利に使用され得る。医薬品化学では、フッ素が水素の同配体として使用されることもあるが、フッ素のファンデルワールス半径は酸素により類似している(酸素の1.52Å及び水素の1.20Åに対してフッ素では1.47Å)。
薬物デザイン及び開発におけるフッ素の役割は、それに関連する固有の特性に起因する。分子へのフッ素の賢明な導入は、立体配座、pKa、固有の効力、膜透過性、代謝経路、及び薬物動態特性に生産的に影響を及ぼし得る。さらに、
18Fは、創薬研究開発におけるイメージング技術に有用な陽電子放出同位体として確立されている。薬物分子へのフッ素の戦略的組み込みによる薬物中のフッ素の広範囲の用途としては、陽電子放出断層撮影法(PET)が挙げられるが、これに限定されるものではない。フッ素化化合物は、遷移状態阻害薬として戦略的に使用され得る。フッ素の高い電気陰性度は、分極共有結合による炭素とフッ素の間のクーロン引力に起因する、高い炭素-フッ素結合強度に寄与し;大きな結合分極は、C-F断片と、水素結合供与体、その他のフッ素化化合物、カルボニルなどの極性官能基、及び疎水性部分との誘引性相互作用をもたらす(Gillis et al. Applications of Fluorine in Medicinal ChemistryJ. Med. Chem., 2015, 58 (21), pp 8315-8359)。さらに、フッ素化分子は、おそらくは誘引性の極性相互作用のために、タンパク質への結合親和性の増大を示し得る。大部分のフッ素化化合物はまた、望まれない酸化的代謝経路を妨げることによって、代謝安定性の増加も示す(Liang et al., Introduction of Fluorine and Fluorine-Containing Functional Groups, Angewandte Chemie International Edition 52, no.32: 8214-8264 (2013);参照によりその全体が援用される)。したがって、一実施形態では、本発明の化合物は、化合物式I、
であり、
式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、F、Cl、又はBrである1つ、2つ、又は3つのハロゲンで置換されたC
1~10-アルキル基である。式Iのフッ素誘導体の例:
一実施形態では、本発明は、式I及びIIの化合物のN-酸化物に関する。N-酸化物は多数の三次的アミンの代謝産物であり、ほとんどの場合、第三級アミンとそれらのN-脱アルキル化類似体との中間体でもある。本発明のN-酸化物は、対応する第三級アミンから合成される(国際公開第97/036893号、国際公開第00/029397号、米国特許第7750013B2号、及び国際公開第01/085725号;参照により本明細書に援用される)。
別の実施形態では、式Iの重水素化化合物としては、化合物184~190及びその鏡像異性体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態(ebodiments)では、本発明は、式Iの化合物であり、式中、Xは-(CH
2)n-であり、式中、nは0~10であり、その例としては以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は化合物191の位置異性体であり、その例としては以下が挙げられるが、これに限定されるものではなく、式Iを有する化合物について同様の位置異性体が調製され得る。
別の実施形態は、式Ic~Isの群からの化合物である。
別の実施形態は、以下から選択される式Ic-Isの化合物である。
使用方法
エストロゲンなどの抗酸化性芳香族アルコールは、それらのフェノールヒドロキシル基からヒドロキシルラジカル又は脂質ペルオキシラジカルへ水素原子を供与して、酸化的神経細胞死を予防する。様々な芳香族アルコールは、クローン性海馬のHT22細胞及び初代皮質ニューロンにおいて、グルタミン酸によって誘発される酸化的細胞死を予防し得る。例えば、単なるフェノールから4-ドデシルフェノールへの転換は、分子の親油性を著しく増加させ、また神経保護活性も著しく増加させることから、親油性は神経保護作用の増強剤である。4-ドデシルフェノール及び4,4’-ビフェノール誘導体は、グルタミン酸誘発性HT22細胞死に対して高度に保護的であった(Moosmann et al., Neuroprotective potential of aromatic alcohols against oxidative cell death, FEBS Letters 413, 467-472 (1997)、参照によりその全体が援用される)。したがって、一実施形態は、化合物式Iである。別の実施形態は、化合物10~210の群から選択される化合物である。
神経精神症状としても知られている認知症の行動心理学的症状(BPSD)は、認知症を有する対象において発生する非認症状及び行動の不均一群に相当する。BPSDは、そのサブタイプにかかわりなく、認知症症候群の主要構成要素を構成する。それらは機能障害及び認知障害の程度と強く相関するので、それらは認知症状と臨床的に関連する。BPSDには、動揺、異常な運動行動、不安、高揚、過敏性、うつ病、感情鈍麻、脱抑制、妄想、幻覚、及び睡眠又は食欲の変化が含まれる。BPSDは、病気の過程にわたって全ての認知症対象の最大90%に影響を及ぼすと推定され、患者と介護者の苦痛、長期入院、薬の誤用、及び医療費の増加をはじめとする転帰不良と、独立して関連する。これらの症状は個別に存在し得るが、様々な精神病理学的特徴が同じ患者に同時に発生することが、より一般的である。したがって、BPSDの自然経過、予後、及び治療応答を考慮に入れたクラスターでのBPSDの分類は、臨床診療において有用であってもよい。
最近の研究では、BPSDの臨床徴候の根底にある神経化学的要因、神経病理学的要因、及び遺伝的要因の役割が強調されている。非薬理学的介入と薬理学的介入の慎重な使用との組み合わせが、BPSDを管理するための推奨される治療法である。現行のストラテジーの中程度の有効性を考慮すると、新規の薬理学的標的を同定し、新たな非薬理学的アプローチを開発して、BPSDに関連する有害転帰を改善することが急務である。BPSDは認知症を有する患者に非常によく見られ、患者及び介護の苦痛、施設収容リスクの増大、そして重度の認知症及び死亡への進行の加速に関連する。認知症の中心的な特徴は、譫妄中だけに発生するのでなく、以前の機能レベルのからの低下に相当する、複数の認知障害(記憶領域及び少なくとも1つの追加的な認知領域が関与する)の漸進的な発症からなる。臨床的な意義を持つ行動障害の有無はコード化され得るが、これらの症状の診断基準についての指針は提供されていない。認知症に関連する顕著な臨床的特徴をより良く特徴付けるという利点を用いて、認知症をコードする(例えば、軸IIIにアルツハイマー病(AD)及び軸Iに特定の精神障害(例えば、気分障害又は精神病性障害)こともまた可能である。BPSDの精神神経症状の評価には、病歴、患者の主観的経験、及び客観的行動に関する具体的且つ詳細な情報を収集するための徹底的な検査が必要である(Cerejeira et al., Behavioral and psychological symptoms of dementia, Frontiers in Neurology, Volume 3, Article 73 (7 May 2012); DSM-IV-TR: numerical listing of codes and diagnoses; ICD-10-CM Official Guidelines for Coding and Reporting, FY 2018 (October 1, 2017 - September 30, 2018); Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) Educational Pack, the International Psychogeriatric Association (IPA) (2002);参照によりその内容全体が援用される)。
非薬理学的介入が第一選択療法として推奨されるが、多くの患者は応答しないため、薬物療法がしばしば必要とされる。現在市販されている認知症治療法は、BPSDだけでなく、関連するその他の非認知領域についても多大な改善の余地がある。敵意、攻撃性、徘徊、性的に不適切な行動又は失禁のような症状は、介護者及び家族にとって大きな問題を引き起こし、しばしば(高価な)特別養護老人ホームへの入所の前兆であるので、疾患修飾療法の継続的な欠如に面してこれはますます重要性を帯びている。看護及び介護を容易にするために、(「定型又は非定型」)神経弛緩薬を処方するのが慣行である。全ての認知症において発作閾値を下げることは、神経弛緩薬の別の稀であるが非常に望まれない潜在的悪影響である。慢性糖尿病性代謝状況、代謝症候群と、AD病態生理のリスク及び出現との関連が立証されている(Goldwaser et al., Breakdown of the Cerebrovasculature and Blood-Brain Barrier: A Mechanistic Link between Diabetes Mellitus and Alzheimer’s Disease. J Alzheimers Dis 54(2):445-56 (2016 Aug 1);参照により全体が援用される)。
いくつかの大規模な剖検シリーズでは、臨床的に典型的なADと診断された全被験者の3分の1以上が脳血管疾患の証拠を示した(Grandal Leiros et al., Prevalence and concordance between the clinical and the post-mortem diagnosis of dementia in a psychogeriatric clinic, Neurologia S0213-4853(16)30070-6 (2016);その内容全体が参照により援用される)。したがって、血糖コントロールが認知障害の重症度に影響を及ぼすことから、高齢者対象における潜在的糖尿病性代謝状況又はかなり頻繁に起こるII型糖尿病を最適化することによって、認知機能障害に対処することが、臨床的観点から望ましい(Zilliox et al., Diabetes and Cognitive Impairment. Curr Diab Rep 16 (9):87 (2016); その内容全体が参照により援用される)。したがって、本発明の一実施形態は、BPSDの治療のために、本発明の1つ又は複数の薬剤を含む組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む治療方法である。サルポグレラートの特定の抗糖尿病作用により、本発明の一実施形態は、本発明の1つ又は複数の薬剤を含む組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む、ADにおける認知症状及び疾患進行、ADのBPSD、並びに主に血管起源の認知及び非認知障害(多発梗塞性認知症、血管性認知症、血管性認知機能障害)の治療方法である。
世界中で約1000万人がパーキンソン病を有する。パーキンソン病はシヌクレイン病であり、運動機能不全と、精神病をはじめとする非運動症状とを特徴とする、進行性神経変性を引き起こす。パーキンソン病を有する患者の50%以上は、ある時点で精神病を有する。精神病はパーキンソン病認知症を有する患者の最大75%に影響を及ぼし、このグループにおいて症状はより難治性である。このような精神病は主に幻覚及び妄想として発現され、それは患者及びその介護者に大きな苦痛を引き起こし得る。これらの発症は、治療及び看護にとって大きな課題となり、養護老人ホームへの入所の可能性を高め、死亡率の増加に関連する。ベストプラクティスの治療指針は、併存疾患の最初の検討とドーパミン作動性療法の低減とを促進する。しかし、これらのアプローチはしばしば不十分であり、その他の治療選択肢はほとんど存在しない。抗精神病薬は、深刻なドーパミンD2拮抗作用を引き起こし得て、パーキンソン症を悪化させ及び/又は耐容性に劣る。したがって、本発明の一実施形態は、パーキンソン病の行動心理学的症状の治療のために、シグマリガンドに関連する部位に対して高親和性を有し、且つN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに対して低親和性を有する、1つ以上の本発明の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。
薬物及びアルコール依存症は、深刻な公衆衛生問題である。世界中で2640万人から3600万人がオピオイドを乱用していると推定され(UNODC, World Drug Report 2012)、2012年には、米国で210万人が、処方オピオイド系鎮痛剤に関連する物質使用障害に苦しみ、467,000人がヘロインを常習していると推定される(Substance Abuse and Mental Health Services Administration, Results from the 2012 National Survey on Drug Use and Health: Summary of National Findings, NSDUH Series H-46, HHS Publication No. (SMA) 13-4795, Rockville, MD: Substance Abuse and Mental Health Services Administration, 2013; その内容全体が参照により援用される)。この乱用の帰結は壊滅的であり、増加している。例えば、処方鎮痛剤の意図されない過剰摂取による死亡数は、1999年以来4倍を超えて急増している。米国におけるオピオイド鎮痛剤の非医療用使用の増加と、ヘロイン乱用との関係を示唆する証拠が上がってきている(Pradip et al., Associations of Nonmedical Pain Reliever Use and Initiation of Heroin Use in the US, Center for Behavioral Health Statistics and Quality Data Review, SAMHSA (2013);その内容全体が参照により援用される)。個人のオピオイド薬剤使用を漸減させる現在の努力は、高い再発率及び厄介な主観的症状のために、限定的結果しかもたらさないことが多い。オピオイド耐性、依存症、及び常習癖は、全て慢性的なオピオイド乱用に起因する脳の変化の顕在化である。オピオイド乱用者の回復に向けた闘争は、ほとんどがこれらの変化の影響を克服するための闘争である。アルコール、及びヘロインやオキシコドンやその他のモルヒネ由来薬物などの薬物の慢性的な使用に起因する脳の異常が、オピオイド依存症(禁断症候群を回避するために薬物を服用し続ける必要性)、及び常習癖(強烈な薬物渇望及び強迫的使用)の根本的な原因である。
科学によって良く理解されているように、依存症を生じさせる異常は、解毒後、オピオイドの使用が中止されてから数日又は数週間以内に解消するようである。しかし、常習癖を生じさせる異常は、より広範囲に及び、複雑であり、持続性である。それらは、例えばストレス、最初のアヘン剤使用の社会的状況、及び心理学的条件付けなどの環境的影響と、オピオイドの最初の服用前であってさえも異常であった脳経路の形態での遺伝性素因との相互作用を伴うこともある。このような異常は、個人がもはやオピオイド依存症でなくなってから、数ヶ月又は数年後に再発をもたらす渇望を生じさせ得る。ナルトレキソンのような薬剤の入手可能性にもかかわらず、それらの有効性は限られており、それらはしばしば適切な心理社会的治療と併せて使用されなければならない(Kosten et al., The Neurobiology of Opioid Dependence: Implications for Treatment, Sci Pract Perspect 1(1): 13-20 (2002 July)、その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファンはラットにおいてPCP様刺激効果を生じ、サルにおいてPCPの部分的置き換えを生じる。デキストロルファンは、ラット及びサルの双方において、PCPの完全な置き換えを生じた。デキストロメトルファンとデキストロルファンはどちらも、以前にPCPを自己投与するように訓練されたアカゲザルにおいて自己投与を引き起こした(Nicholson et al., Evaluation of the reinforcing and discriminative stimulus properties of the low-affinity N-methyl-D-aspartate channel blocker memantine. Behav Pharmacol 9(3):231-43 (1998)、その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファンは、モルヒネ、コカイン、及びメタンフェタミンなどのいくつかの乱用薬物の自己投与を変化させ得る。それはメタンフェタミン条件付け場所嗜好性及び行動感作を弱めるが、コカイン自己投与、自発運動効果、及び条件付け場所嗜好性に対しては二相効果を有する(Shin et al., Neuropsychotoxicity of abused drugs: potential of dextromethorphan and novel neuroprotective analogs of dextromethorphan with improved safety profiles in terms of abuse and neuroprotective effects. J Pharmacol Sci 106(1):22-7 (2008)、その内容全体が参照により援用される)。したがって、本発明の一実施形態は、薬物乱用及び常習癖の治療のために、シグマリガンドに関連する部位に対して高親和性を有し、且つN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに対して低親和性を有する、1つ以上の本発明の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。
うつ病は現在、下気道感染症、周産期疾患、及びHIV/AIDSに続いて、世界的に能力障害の主要原因の4番目にランクされている。17パーセントの人々が、生存期間中にうつ病に罹患する;さらに悪いことに、既に急性又は慢性の病気を患っている人々は、うつ病に罹患する可能性がさらに高く、具体的な疾患次第で患者のうつ病の発生率は30~50%である。2020年までに、単極性大うつ病は、世界的に、障害調整生存年数損失(DALY)の原因として、2番目にランクされると推定される。米国では、うつ病が女性の間で2番目に高い能力障害(DALY)の原因であり、抗うつ薬の非応答者は、医療財源のヘビーユーザーとして挙げられる。生活の質の明らかな低下及びうつ病に関連する生産性の低下にもかかわらず、それはしばしば過小診断され不適切に治療される。うつ病は、モノアミン機能の低下に関連する。選択的5-HT再取り込み阻害薬(SSRI)並びに5-HT及びNE再取り込み阻害薬(SNRI)は、現在、大うつ病性障害(MDD)治療の第一選択肢である。モノアミン作動性機序は、マルチモーダル薬物及び三重再取り込み阻害剤を用いてモノアミン作動性受容体及び追加的な輸送体を標的化することによって、又は非定型抗精神病薬をSSRI又はSNRI治療に加えることによって、精緻化され得る。
グルタミン酸受容体は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬ケタミンの静脈内点滴を用いて標的化され得る。コリン作動性及びγアミノ酪酸(GABA)作動性伝達、神経可塑性、ストレス/視床下部下垂体副腎(HPA)-軸、報酬系、及び神経炎症などのいくつかの神経伝達物質及び神経調節物質系の同時調節は、いくつかの神経伝達物質及び神経調節物質系を調節する薬剤を投与することを含む、処置及び治療方法を使用することによって達成され得る。したがって、本発明の一実施形態は、いくつかの神経伝達物質及び神経調節物質系を調節する薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。別の実施形態では、それを必要とする患者の治療方法は、いくつかの神経伝達物質及び神経調節物質系を調節する、本発明の1つ又は複数の薬剤を含む組成物を投与することを含む。
10年以上も前の推定で、躁うつ病としても知られている双極性障害(BP)の総費用は、年間最高450億ドルと見積もられた。この費用の大部分は、機能的能力の低下及び仕事の損失に関連する間接的な費用によって占められている。BPを有する患者は、一般集団と比較して、そしてその他の各種精神医学的病状を有する患者と比較して、医療財源の利用率が高い。併存疾患は、BPが社会に課す重い負荷の一因となる。BPは、その他の精神障害、特に不安障害及び薬物乱用と一緒に頻発する。さらに、BPは、精神障害の管理をさらに複雑にする様々な一般的な病状に関連付けられている(Hirschfeld, Bipolar Disorder- Costs and Comorbidity. Am J Manag Care,11: S85-S90 (2005);その内容全体が参照により援用される)。BPは、気分、エネルギー、活動レベル、及び毎日の仕事を行う能力に異常な変化を引き起こす、脳障害である。BPは、気分の調節異常、衝動性、危険な行動、及び対人関係の問題によって特徴付けられる。BPは、機能障害、自殺率の上昇、及び精神衛生システムの利用に関連する、再発性でそしてしばしば慢性的な精神病である。BPについては一般的に認識不足であり、BPを有する患者の40%もが最初に誤診され、自殺、躁病、及び慢性的な心理社会的苦痛のリスク増加をもたらす。正しく診断された場合、診断された患者の50%未満で成功裏の治療が可能であり、10~15%もの患者が自殺の結果として最終的に死亡する(NIMH 2002)。
BPには、双極性I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害、並びにその他の定型及び非定型双極性障害と関連障害の4つの基本タイプがある。全てのBPは気分、エネルギー、及び活動レベルの明らかな変化を伴う。これらの気分は、極端に興奮し、高揚し、活気に満ちた行動の期間(躁病エピソードとして知られている)から、非常に悲しく、落ち込んだ、又は絶望的な期間(うつ病エピソードとして知られている)までの範囲である。重症度の低い躁病期は、軽躁病エピソードとして知られている。双極性I型障害は、少なくとも7日間持続する躁病のエピソード、又は即時の病院看護を要するほどの重度の躁病症状によって定義される。通常、うつ病エピソードもまた起こり、典型的には少なくとも2週間持続する。(うつ病及び躁病の症状を同時に有する)混合した特徴を有するうつ病のエピソードもまた、可能である。双極性II型障害は、うつ病エピソード及び軽躁病エピソードのパターンによって定義されるが、上記の本格的な躁病エピソードではない。気分循環性障害(気分循環症とも称される)、少なくとも2年間(小児及び青少年では1年間)にわたる、多数の期間の軽躁症状、さらに多数の期間の抑うつ症状によって定義される。しかし、症状は軽躁病エピソード及びうつ病エピソードの診断要件を満たさない。その他の定型及び非定型の双極性と関連障害は、上に列挙される3つのカテゴリーと一致しないBPの症状によって定義される(Bipolar Disorder, Mental Health Information, National Institute of Mental Health (April 2016)、参照によりその全体が援用される)。治療のための薬理学的指針は十分に確立されているものの、BPの治療法は依然として理想的とはほど遠い。大多数の個人は、未だに薬物治療中に、破綻的エピソード又は重大な残存症状を有する。さらに、機能的な欠陥は、患者が寛解しているときでさえもしばしば残る(NIMH 2002、参照によりその全体が援用される)。BPを有する多くの患者は、彼らの投薬計画を完全に遵守している間でさえも依然として症候性のままであるので、双極性薬剤の薬理学的機序に関する研究からこの疾患の病因をより深く理解することの必要性は、ますます緊急である。気分安定薬の一般的な神経保護効果は、BPの脳細胞機能不全の役割を果たしており、その機能不全は最終的に神経細胞の喪失を引き起こすこともある。気分調節における様々な脳構造の潜在的な関与を今やますます評価している体積神経画像検査が、気分障害の神経解剖学的モデルを試験するために適用され得る。画像診断は、進行性の神経萎縮がBPに伴うことを示唆した。例えば、脳活動に関する(regarding as)脳血流量及びグルコース代謝速度のPET画像は、双極性うつ病における脳梁膝下野における活性低下を検出した。この活性減少は、少なくとも部分的には、平均灰白質体積の磁気共鳴画像法による実証と同様に、皮質体積の対応する減少によって説明された。BPでは、第三脳室、前頭葉、小脳、そしておそらくは側頭葉の異常もまた認められる。したがって、本発明の一実施形態は、1つ又はいくつかの神経伝達物質及び神経調節物質系を調節する、本発明の1つ又は複数の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法であり、患者はBPの症状に苦しんでいる。
脳腫瘍は異常成長によって形成され、脳の様々な領域に出現し得る。良性(がん性でない)腫瘍は、成長して脳の近傍領域を圧迫することもあるが、その他の組織にはめったに広がらない。悪性(がん性)腫瘍は、急速に成長してその他の脳組織に広がる可能性が高い。腫瘍それ自体が良性か悪性かにかかわらず、脳のある領域内へ成長し、又はその領域を圧迫する腫瘍は、脳のその部分の正常な機能を停止させることもあり、治療が必要になる。脳腫瘍の最も一般的なタイプは脳組織それ自体からは発生せず、むしろ肺がん及び乳がんなどの頭蓋外がんからの転移である。脳腫瘍としては、神経線維腫症1型又は2型、フォンヒッペル・リンダウ病、結節性硬化症、リー・フラウメニ症候群、ターコット症候群1型及び2型、クラインフェルター症候群、及び母斑性基底細胞がん症候群が挙げられる。神経芽腫は、通常は10歳未満の小児において、発達中の神経細胞に見られるがんである。症例のほぼ90%が、5歳までに診断される。様々な要因が、小児の有する神経芽腫の種類及びその予後に影響を及ぼし得る。
神経学的がんの特定の治療法は、患者の全体的な健康状態及び病歴;腫瘍の種類、部位、及び大きさ;病状の広がり;並びにその他の個々の要因などのいくつかの要因に基づく。一般に、脳又は脊髄のがんを有する患者の治療法としては、特に脳における、腫脹を治療及び予防するための手術、化学療法、放射線療法、及び/又はステロイド;頭蓋内圧に関連する発作を治療及び予防するための抗発作薬;シャントの配置(脳内の過剰な水分を排出するのを助けるため);腰椎穿刺/脊椎穿刺(脊髄及び脳内の圧力を測定するため);骨髄移植;リハビリテーション(運動能力及び筋力の喪失を取り戻すため);及び/又は抗生物質(感染症を治療及び予防するため)が挙げられる。化学療法は、がん性細胞を治療するための抗がん剤の使用である。ほとんどの場合、化学療法は、がん細胞が成長し又は増殖する能力に干渉することによって機能する。これらの薬物は、静脈内に投与され、又は錠剤として経口投与されてもよい。
英国ではおよそ4,500万件の脳障害があり、年間1340億ユーロの費用がかかった。最も多く見られたのは、頭痛、不安障害、睡眠障害、気分障害、及び身体表現性障害であった。しかし、最も費用のかかる五大障害(百万ユーロ単位)は以下のとおりであった。認知症:22,164;精神病性障害:16,717;気分障害:19,238;常習癖:11,719;不安障害:11,687。精神病を除いて、これらの五大障害は、対象1人当たりの直接医療費が最も低く(3000ユーロ未満)ランク付けされる。費用の概算内訳は、間接費が50%、直接非医療費が25%、直接医療費が25%であった。(Feinberg et al., The size, burden and cost of disorders of the brain in the UK, J Psychopharmacol.27(9): 761-770 (2013 September)、参照によりその全体が援用される)。2010年には1,380万人のがん生存者が存在し、2020年には(i2020)1,810万人のがん生存者が存在し、関連するがん治療費は、それぞれ1,245億7000万及び1,577億7000万(2010年)米ドルと予測された。2020年の総費用は、1,730億ドルと予測されている。(Mariotto et al., Projections of the Cost of Cancer Care in the United States: 2010-2020, J Natl Cancer Inst. 103(2): 117-128 (2011 Jan 19)、参照によりその全体が援用される)。欧州では、脳疾患は、かなりの社会的及び経済的負荷に相当する。2010年には年間約8,000億ユーロの費用がかかり、推定1億7,900万人の人々が苦しんでいるため、脳疾患は疑いの余地のない緊急事態であり、神経科学者にとって大きな課題である(DiLuca, The Cost of Brain Diseases: A Burden or a Challenge? Neuron 82(6):1205-8 (2014) その内容全体が参照により援用される)。
世界疾病負担研究は、「障害調整生存年数」(DALY)における負担を測定し、これは、現在の健康状態と理想的な健康状態の間の健康上のギャップを定量化する方法である。DALYは、予想より早い死亡で失われた寿命と、障害の重症度で重み付けされた障害によって失われた健康寿命とを組み合わる。1 DALYは1年間の健康的な命の喪失に相当し;例えば、疾病若しくは傷害の結果として平均余命より1年早く死亡し、又は50パーセントの障害で2年間生きる。2010年には、精神障害及び行動障害は、全世界で183,912,000DALYの原因となり、又は10万DALY当たり2,669の原因となった。神経学的障害は、全世界で73,814,100DALY、又は10万DALY当たり1,071を構成した。DALYは金銭的コストに直接翻訳できないが、その他の方法でこれらの障害の費用に関する洞察が得られ得る。
2010年には、精神的健康状態の費用だけでも世界的に2.5兆米ドルと見積もられ、2030年には6兆米ドルを超えると見積もられた。欧州では、全ての脳障害の費用は2010年に7,980億ユーロと見積もられた。米国では、神経学的疾患及び精神障害のために、年間7,600億ドルを超える費用がかかる。(Global Burden of Neurological and Mental Disorders, 10 November 2014; World Health Organization: Neurological Disorders: Public Health Challenges. (2006) Institute for Health Metrics and Evaluation; World Health Organization: The global burden of disease: 2004 update (2004); World Economic Forum. The Global Economic Burden of Non-communicable Diseases (2011); Olesen et al., The economic cost of brain disorders in Europe. European Journal of Neurology. 19: 155-162 (2012); Brain Facts: A Primer on the Brain and Nervous System. Society for Neuroscience (2012); The Numbers Count: Mental Disorders in America. National Institute of Mental Health (2010), その内容全体が参照により援用される)。多形性膠芽腫は成人における最も一般的な悪性原発性脳腫瘍であり、米国では10万人年当たり4.43の発生率であり、診察時年齢中央値は64歳である。症状にはしばしば、頭痛;悪心及び嘔吐;並びに進行性の記憶、人格、又は神経学的欠損が含まれる。治療法は依然として課題であり、過去10年間に複数の新たな治療法が承認されているにもかかわらず、生存率は改善されていない。この患者集団における総支出は、1ヶ月あたり6364ドルと見積もられた(GBD 2010 Results by Cause 1990-2010; The Global Burden of Disease: Generating Evidence, Guiding Policy, 2013 Institute for Health Metrics and Evaluation;その内容全体が参照により援用される)。
世界的な経済状況下では、人口の高齢化に伴って増大すると予想される莫大な社会的費用のために、脳障害は深刻な時限爆弾に相当し得る。欧州だけでも、年間約7,980億ユーロという膨大な金額がかかると見積もられている。毎年、全EU人口の3分の1以上が精神障害を患っている。神経学的障害をはじめとする「脳の障害」の実際の規模は、さらにより大きくさえある。EUにおけるDALYによって測定されるように、脳の障害は原因を問わない病的状態負担の最大の原因である。
神経学的障害は、2005年には920万のDALYに寄与し、2030年には1億300万に増加すると予測される(およそ12%の増加)。一方でアルツハイマー病及びその他の認知症は、2005年から2030年にかけて66%の増加を示すと予測される(Neurological disorders: public health challenges, Chapter 2. global burden of neurological disorders estimates and projections, pp 27-39)。
したがって、本発明の一実施形態は、認知症の行動心理学的症状の治療のために、シグマリガンドに結合する部位に対して高親和性を有し、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに対して低親和性を有する、1つ以上の本発明の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。
デキストロメトルファンは、シグマリガンドと結合する部位に高親和性で結合し、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに低親和性で結合し、NR1サブユニットと、4つのNR2サブユニットの1つ又は複数との五量体(pentametric)又は四量体(tetrametric)錯体を成形する(NR2A-2D)。経口投与後、デキストロメトルファンは胃腸管に急速に吸収され、2~2.5時間以内にピーク血清レベルに達する。デキストロメトルファンは血流から吸収され、およそ33~80%が血液脳(blood-brain)を通過して脳脊髄液に入る(Hollander et al., High-dose dextromethorphan in amyotrophic lateral sclerosis: phase I safety and pharmacokinetic studies. Ann Neurol 36(6):920-4 (1994)、その内容全体が参照により援用される)。デキストロメトルファンの活性はおよそ5~6時間持続し、血漿中半減期は2~4時間である(Pender, et al., Toxicity with dextromethorphan-containing preparations: a literature review and report of two additional cases. Pediatr Emerg Care 7(3):163-5 (1991)、その内容全体が参照により援用される)。したがって、本発明の一実施形態は、認知症の行動心理学的症状の治療のための、シグマリガンドと結合する部位に対して高親和性を有し、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに対して低親和性を有する、本発明の1つ又は複数の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法であり、患者は認知症における行動及び精神症状を有し、薬剤は式IIの化合物である。
チトクロームP450は、デキストロメトルファンを不活性化する2D6イソ酵素ファミリーである。デキストロメトルファンは、未変化で又は脱メチル化代謝産物として腎性に排泄される。ヨーロッパ系白人のおよそ5~10%は、デキストロメトルファンをデキストロルファンに脱メチル化するのに必要なCYP2D6を欠いている。「メガドース」(推奨用量の5~10倍)が投与されると、これはデキストロメトルファンの急性毒性レベルをもたらし得る(Motassim et al., Direct determination of dextromethorphan and its three metabolites in urine by high-performance liquid chromatography using a precolumn switching system for sample clean-up, J Chromatogr 422:340-5 (1987))。主要代謝産物であるデキストロルファンは、薬理学的に活性でおよそ3.5~6時間の半減期を有する、強力なNMDA拮抗薬である(Church et al., Dextromethorphan and phencyclidine receptor ligands: differential effects on K(+)- and NMDA-evoked increases in cytosolic free Ca2+ concentration. Neurosci Lett 124(2):232-4 (1991)、その内容全体が参照により援用される)。デキストロメトルファンは肝臓によって急速に代謝され、O-脱メチル化されてその活性代謝物であるデキストロルファンが生成し、次にさらにN-脱メチル化され、グルクロン酸及び硫酸イオンと部分的にコンジュゲートされる(Woodworth et al., The polymorphic metabolism of dextromethorphan. J Clin Pharmacol 27(2):139-43 (1987)、参照によりその全体が援用される)。デキストロメトルファンは、NR1/NR2A含有NMDA受容体に好ましい拮抗薬である(Avenet et al., Antagonist properties of eliprodil and other NMDA receptor antagonists at rat NR1A/NR2A and NR1A/NR2B receptors expressed in Xenopus oocytes. Neurosci Lett 223(2):133-6 (1997)、参照によりその全体が援用される)一方で、その活性代謝物デキストロルファンはそうでなく、シグマリガンドと結合する部位に低親和性で結合し、PCP部位には高親和性で結合する(Taylor et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther. 164:170-82 (2016 August);その内容全体が参照により援用される)。したがって、本発明の一実施形態は、認知症の行動心理学的症状の治療のために、シグマリガンドに結合する部位に対して高親和性を有し、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のフェンシクリジン(PCP)チャネルに対して低親和性を有する、1つ以上の本発明の薬剤を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法であり、患者は認知症の行動心理学的症状を有し、組成物は認知症の行動心理学的症状の治療に有効な式IIの化合物と、式IIの化合物の急速な代謝を防ぐCYP2D6の阻害剤とを含む。
別の実施形態は、DEXと、5-HT2A受容体拮抗薬、5-HT2A受容体逆作動薬、及びCYP2D6阻害剤の群から選択される1種又は複数種の薬剤とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者において認知症の行動心理学的症状を治療する方法である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体逆作動薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は式Iの化合物である。
別の実施形態は、DEXと、5-HT2A受容体拮抗薬、5-HT2A受容体逆作動薬、及びCYP2D6阻害剤を含む群から選択される1種又は複数種の薬剤とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者を治療する方法である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。
デキストロルファン(DO)は、おそらくNMDA受容体の遮断から生じるその精神活性効果のために、最も注目に値する物質である。DOは、DEXと比較して、NMDA受容体に対して実質的により高い親和性を有する。DEXの有害な精神活性効果は、そのDOへの代謝に関連付けられている(Taylor, et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther. 164:170-82 (2016 August);その内容全体が参照により援用される)。したがって、別の実施形態は、DEXと、5-HT2A受容体拮抗薬、5-HT2A受容体逆作動薬、及びCYP2D6阻害剤を含む群から選択される1種又は複数種の薬剤とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者の治療中にDEXの悪影響を軽減する方法である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体逆作動薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、式Iの化合物又はSARPOである。
認知症の心理学的症状は、グルタミン酸作動性、コリン作動性、セロトニン作動性神経伝達物質系の調節異常(disregulation)に関係する。したがって、一実施形態は、認知症の行動心理学的症状を治療する方法である。別の実施形態は、EEG異常、行動、認知を改善し、発作を軽減し、呼吸異常、運動能力、骨密度、及びGI機能不全を改善するための、式Iの化合物又はSARPOと、式IIの化合物又はDEX又はSARPODEX(商標)とによる治療である。別の実施形態は、不随意情動表現障害(IEED)又は情動調節障害(PBA)、神経変性疾患、神経障害性疼痛、及び脳損傷などのその他の疾患及び病状の治療における、本発明の1つ又は複数の薬剤、式Iの化合物又はSARPO、DEX、又はSARPODEX(商標)による治療である。
デキストロメトルファンは、肝臓内でO-及びN-脱メチル化から出発して一次代謝物が形成されて活性代謝物に代謝され、DO及び3-メトキシ-モルフィナンは、それぞれさらにN-及びO-脱メチル化されて、3-ヒドロキシ-モルフィナンになる。主要代謝触媒は、デキストロメトルファン及び3-メトキシモルフィナンのO-脱メチル化反応に関与する、チトクロームP450酵素2D6(CYP2D6)である。デキストロメトルファン及びDOのN-脱メチル化は、関連するCYP3Aファミリーの酵素によって触媒される。DOと3-ヒドロキシモルフィナンとのコンジュゲートは、その摂取後数時間以内にヒトの血漿及び尿中に検出され得る。DOはその精神活性効果のために、最も注目に値する物質である。したがって、別の実施形態は、デキストロメトルファン、DO、3-ヒドロキシモルフィナン、若しくは3-メトキシモルフィナン、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。
SGLは、5-HT2A受容体逆作動薬及びCYP2D6阻害剤である。SGLは、血小板凝集、血管収縮、及び血管平滑筋増殖などの、5-HT2A受容体によって媒介される5-HTに対する応答を阻害する。SGLは5-HT2A受容体に対して、リタンセリンと同一親和性を有することが示された(Nishio et al., Binding affinity of sarpogrelate to 5-HT2A receptor ligand recognition sites in rat renal cortical and mesangial cells in culture. Gen Pharmacol 33: 51-57 (1999 March-April);参照によりその全体が援用される)。5-HT2A受容体の遮断は、血栓形成を阻害し、血小板凝集を抑制し、血管平滑筋細胞増殖を阻害し得る(Pertz et al., In-vitro pharmacology of sarpogrelate and the enantiomers of its major metabolite: 5-HT2A receptor specificity, stereoselectivity and modulation of ritanserin-induced depression of 5-HT contractions in rat tail artery. J Pharm Pharmacol. 47(4):310-6 (1995 April);参照によりその全体が援用される)。したがって、一実施形態は、式Iの化合物又はSARPOを含む組成物を投与することを含む、それを必要とする患者の治療方法である。
生体外:主要代謝産物(R,S)-M-1は、5-HT2A受容体で5-HTを遮断した。M1の立体化学的配置は、5-HT2A受容体への結合において重要な役割を果たしていなかったと報告されている(Pertz et al., In-vitro pharmacology of sarpogrelate and the enantiomers of its major metabolite: 5-HT2A receptor specificity, stereoselectivity and modulation of ritanserin- induced depression of 5-HT contractions in rat tail artery. J Pharm Pharmacol. 47(4):310-6 (1995 April);参照によりその全体が援用される)。
生体内:PAD患者は、2つの群に分けられた。1つの群は、12週間にわたり経口で1日3回100mgの式Iの化合物又はSARPで処置された(n=10)一方、もう1つの群は、対照群として従来の治療を続けた(n=11)。反応性充血(RH)及びニトログリセリン(NTG)の舌下投与に対する、前腕血流(FBF)及び下肢血流(LBF)応答が、ひずみゲージプレチスモグラフィーによって測定された。投与の12週間後、RH中におけるFBF及びLBF応答は、それぞれ100mLの組織当たり13.2 6 1.7から18.1 6 2.2mL/分への(P 0.01)、100mLの組織当たり8.2 6 0.9から14.2 6 2.1mL/分への(P 0.05)有意な増加を示した。式Iの化合物又はSARPOによって誘導されたFBF及びLBFの増強、RHに対する応答は24週目に維持された。対照群では、各追跡調査時点で変化は観察されなかった。舌下NTG後におけるFBF及びLBFの変化は、追跡期間中に2つの群で類似していた。これらの知見は、式Iの化合物又はSARPOの長期経口投与が、PADを有する患者の血管機能を改善することを示唆する(Miyazaki et al., Sarpogrelate hydrochloride, a selective 5-HT2A antagonist, improves vascular function in patients with peripheral arterial disease. J Cardiovasc Pharmacol.49(4):221-7 (2007 April);参照によりその全体が援用される)。
本発明の組成物を投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法であって、前記方法は、対症療法及び疾病修飾療法であり、疾患又は障害は、神経変性疾患、脳損傷及びその続発症、器質性脳症候群、慢性外傷性脳症、慢性又は難治性疼痛、網膜症に関連する眼科的徴候、不安障害、心的外傷後ストレス障害、うつ病、糖尿病、神経障害性疼痛を伴う又は伴わない末梢神経障害、バージャー病、レイノー病、冠動脈疾患、狭心症、アテローム性動脈硬化、多発梗塞性認知症、血管性認知機能障害、血管性認知症、ビンスワンガー病、腎障害、アルツハイマー病(AD)、ADにおける攻撃性、ADにおける感情鈍麻、パーキンソン病、血管性認知障害(VCI)、血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、行動異常型前頭側頭認知症(bvFTD)、不安障害、恐怖症、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖、強迫性障害、及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)、躁病、躁うつ病、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、身体表現性障害、人格障害、精神病、統合失調症、妄想性障害、統合失調性情動障害、統合失調症傾向、攻撃性、攻撃性、動揺、感情鈍麻、及び攻撃性、感情鈍麻、敵意、攻撃性、徘徊、ADにおける性的に不適切な行動又は失禁、頭痛、睡眠障害、気分障害、身体表現性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、並びにその他の定型及び非定型双極性及び関連障害、薬物乱用及び常習癖、糖尿病性及び代謝症候群、神経線維腫症1型又は2型、フォンヒッペル・リンダウ病、結節硬化症、リー・フラウメニ症候群、ターコット症候群1型及び2型、クラインフェルター症候群、母斑性基底細胞がん症候群、並びに神経芽腫である。
別の実施形態は治療方法であり、患者は末梢動脈疾患を含む疾患又は障害に罹患している(例えば、レイノー病及び間欠性跛行、Norgen et al. Sarpogrelate, a 5-HT2A receptor antagonist in intermittent claudication. A Phase II European study. Vascular Medicine 11: 75-83 (2006))、肺高血圧症(Saini et al., Therapeutic Potentials of Sarpogrelate in Cardiovascular Disease. Cardiovascular Drug Reviews 22: 27-54 (2004);参照により援用される)、狭心症(Kinugawa et al., Effectiveness of a novel serotonin blocker, sarpogrelate, for patients with angina pectoris. Am Heart J 144(2):E1 (2002);参照により援用される)、及び/又は糖尿病(Pietraszek et al., The effect of MCI-9042 on serotonin-induced platelet aggregation in type 2 diabetes mellitus. Thromb Res 70(2):131-8 (1993); Ogawa et al., Reduced Albuminuria with Sarpogrelate Is Accompanied by a Decrease in Monocyte Chemoattractant Protein-1 Levels in Type 2 Diabetes. Clin J Am Soc Nephrol 3: 362-368 (2008);参照により援用される)。別の実施形態では、式Iの化合物又はSARPOを含む冠状動脈ステント術後の患者の治療方法は、再狭窄に対して有用である(to and is useful)(Doggrell SA. Sarpogrelate: cardiovascular and renal clinical potential. Expert Opinion Invest Drugs 13: 865-874 (2004);参照によりその内容全体が援用される)。
DOは、おそらくNMDA受容体の遮断から生じるその精神活性効果のために、最も注目に値する物質である。DOは、DEXと比較して、NMDA受容体に対して実質的により高い親和性を有する。DEXの有害な精神活性効果は、そのDOへの代謝に関連付けられている(Taylor et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther. 164:170-82 (2016 August);その内容全体が参照により援用される)。したがって、別の実施形態は、DEXと、5-HT2A受容体拮抗薬、5-HT2A受容体逆作動薬、及びCYP2D6阻害剤の群から選択される1種又は複数種の薬剤とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者の治療中にDEXの悪影響を軽減する方法である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、5-HT2A受容体逆作動薬及びCYP2D6阻害薬の双方の特性を有する薬剤である。別の実施形態では、薬剤は、式Iの化合物又はSARPOである。
別の実施形態は、5-HT2A受容体拮抗薬/逆作動薬である(6)-1-(2-[2-(3-メトキシフェニル(methoxyphenil))エチル]-フェノキシ)-3-(ジメチルアミノ)-2-プロパノール(M-1))と、CYP2D6阻害剤とを含む組成物である。
別の実施形態は、SGL、M1、SG1、SG2、SMG1、SMG2、SMG3の1つ又は複数の鏡像異性体、或いはそれらの組み合わせを含む組成物である。
遺伝的多型チトクロームCYP2D6は、チオリダジン、ペルフェナジン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ズクロペンチキソール、リスペリドン、及びセルチンドールをはじめとする、数多くの抗精神病薬の代謝に関与するとされている(Michalets, Update: clinically significant cytochrome P-450 drug interactions. Pharmacotherapy 18(1):84-112 (1998)、その内容全体が参照により援用される)。この酵素はまた、例えば、三環式抗うつ薬(ノルトリプチリン、デシプラミン、アミトリプチリン、イミプラミン、及びクロミプラミン)、並びにフルオキセチン及びパロキセチンをはじめとする選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの、精神医学的障害を有する患者に一般的に処方されるその他の薬物の代謝においても重要である(Taylor, Cytochromes and psychotropic drug interactions. Br J Psychiatry 168(5):529-32 (1996); Sproule et al., Selective serotonin reuptake inhibitors and CNS drug interactions. A critical review of the evidence. Clin Pharmacokinet 33(6): 454- 71 (1997);その内容全体が参照により援用される)。これらの酵素を阻害する薬物は、同時投与された抗精神病薬の血漿濃度の増加を引き起こすと予想される(Michalets, Update: clinically significant cytochrome P-450 drug interactions. Pharmacotherapy 18(1):84-112 (1998);参照によりその全体が援用される)。これらの増加は、次に、心臓毒性、抗コリン性副作用、又は起立性低血圧をはじめとする、抗精神病薬誘発性副作用の発生又は悪化を引き起こすこともある(Ereshefsky, Pharmacokinetics and drug interactions: update for new antipsychotics. J Clin Psychiatry 57 (Suppl 11):12-25 (1996);参照によりその全体が援用される)。
いくつかの抗精神病薬は、その他のCYPイソ型触媒性反応と比較して、CYP2D6触媒性DEX O-脱メチル化を阻害する。試験された抗精神病薬のうち、チオリダジン及びペルフェナジンが最も強力な阻害剤であり、DO形成速度を、10μMでは対照活性の19.7%である26.5に、25μMでは対照活性の10.7%である11.4に、それぞれ低下させた。DEX O-脱メチル化に対するこれらの薬物の阻害効力は、10~25μMのキニジンの阻害効果に匹敵した。チオリダジン及びペルフェナジンの推定平均IC50値は、それぞれ2.7+/-0.5及び1.5+/-0.3μMであった。強力なCYP2D6阻害剤であるキニジンのIC50は、これらの条件下では0.52+/-0.2μMであると推定された。クロルプロマジン、フルフェナジン、及びハロペリドールの推定IC50は、それぞれ9.7、16.3、及び14.4μMであった。シスチオチキセン、クロザピン、及びリスペリドンは、試験されたその他の薬物よりも弱い阻害を示し、平均IC50は、それぞれ136.6、92.2、及び39.1μMと推定された(Shin et al., Effect Of Antipsychotic Drugs on Human Liver Cytochrome P-450 (CYP) Isoforms in Vitro: Preferential Inhibition of CYP2D6, Drug Metab Dispos 27 (9): 1078-84 (1999);その内容全体が参照により援用される)。
一実施形態では、本発明の薬剤組成物は、アジュマリン、アミオダロン、アミトリプチリン、アプリンジン、アゼラスチン、セレコキシブ、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ジフェンヒドラミン、ドキソルビシン、フルオキセチン、フルフェナジン、フルバスタチン、フルボキサミン、ハロペリドール、イミプラミン、インジナビル、ランソプラゾール(Lasoprazole)、レボメプロマジン、ロピナビル、ロラタジン、メキタジン、メサドン、メトクロプラミド、ミベフラジル、モクロベミド、ネルフィナビル、ネビラピン、ニカルジピン、ノルフルオキセチン、パロキセチン、ペルフェナジン、ピモジド、テルフェナジン、チオリダジン、シメチジン、キニジン、シサプリド、シタロプラム、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、デシプラミン、ラニチジン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、セルトラリン、テルビナフィン、チクロピジン、トリフルペリドール、ベンラフェキシン、及びヨヒンバンなどであるが、これに限定されるものではない、CYP2D6阻害薬の1種又は複数種を含む。
一実施形態では、本発明は、5HT2A受容体拮抗薬及びCYP2D6阻害剤の組み合わせであり、同時の5HT2A受容体拮抗作用及び2D6阻害という治療上の利点を提供する。別の実施形態では、本発明は、5HT2A受容体逆作動薬及びCYP2D6阻害剤の組み合わせであり、同時の5HT2A受容体逆作動及び2D6阻害という治療上の利点を提供する。式Iの化合物又はSARPOは、CYP2D6阻害及び5HT2A受容体逆作動の双方を組み合わせて、DEXに対する治療応答の大きさを改善することによって、独自の治療上の利点を提供する。したがって、本発明の薬剤は、抗不整脈薬キニジンとDEXとの併用に伴う、潜在的な健康上のリスクを回避する。したがって、一実施形態は、SARPODEX(商標)を含む組成物である。
いくつかの実施形態は、本発明の1つ又は複数の薬剤、式Iの化合物又はSARPO、式IIの化合物又はDEX、又はSARPODEX(商標)の有効量を経口的に投与することを含む、有効性を高め耐容性及び安全性を保護しながら、投与され得るデキストロメトルファン、代謝産物、誘導体又はそのプロドラッグ(DEX)の用量数及び/又は総一日用量を減らす方法を含む。
いくつかの実施形態は、本発明の1つ又は複数の薬剤と式Iの化合物又はSARPOとを治療を必要とする対象に同時投与することを含む、DEXによる治療に関連する有害事象を軽減する方法を含み、対象は、DEX又は式IIの化合物で治療された結果として、有害事象を経験するリスクがある。
いくつかの実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOをDEXによる治療を同時投与することを含む、DO血漿レベルを低下させる方法を含み、式Iの化合物又はSARPOは、少なくとも2日間のDEXによる治療の初日に投与され、DO血漿レベルの低下は、式Iの化合物又はSARPOを含む本発明の1つ又は複数の薬剤なしで投与された同一量のDEXと比較して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとが同時投与された初日に起こる。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、少なくとも8日間連続して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DO血漿レベルを低下させる方法であり、8日目に、DO血漿レベルは、8日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDO血漿レベルより低い。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を使用して、神経学的障害の治療などにおけるDEXの治療特性を改善する方法である。式Iの化合物は、立体配置にかかわりなく、一部の対象におけるDEXの代謝を阻害又は低減するのに有効であり得て、式Iの化合物を同時投与することによって達成される。
別の実施形態は、5-HT2A受容体拮抗薬及びDEXをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、対象はDEXの高代謝個体である。
別の実施形態は、5-HT2A受容体逆作動薬、拮抗薬、及びDEXをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、対象はDEXの高代謝個体である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを対象に同時投与することを含む、DEXによる治療を必要とする対象におけるDEX血漿レベルを増加させる方法であり、対象はDEXの高代謝個体である。
別の実施形態は、式Iの化合物又は式Iの化合物(a compound of formula I or a compound of formulaI)又はSARPOを対象に投与することを含む、DEXの代謝を阻害する方法であり、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは式Iの化合物又はSARPOと同時に対象の体内に存在する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物を投与することを含む、DEXの代謝寿命を延ばす方法であり、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは式Iの化合物又はSARPOと同時に対象の体内に存在する。
別の実施形態は、式Iの化合物をそれを必要とする対象に投与することを含む、DEXの高い代謝を修正する方法である。
別の実施形態は、咳嗽のための治療を必要とする対象に、DEXの投与と併せて式Iの化合物を投与することを含む、DEXの鎮咳特性を改善する方法である。
別の実施形態は、式Iの化合物と式IIの化合物との組み合わせをそれを必要とする対象に投与することを含む、咳嗽を治療する方法である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOとDEXとをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、式の化合物I又はSARPOとDEXとは、少なくとも8日間にわたり少なくとも1日に1回投与される。
別の実施形態は、約5mg/日~約600mg/日、約5mg/日~約300mg/日、約5mg/日~約400mg/日、約5mg/日~約500mg/日、約5mg/日~約600mg/日、約5mg/日~約1,000mg/日、約50mg/日~約1000mg/日、約100mg/日~約1000mg/日、約150mg/日~約1000mg/日、約150mg/日~約5000mg/日、約150mg/日~約300mg/日、又は約150mg/日~約100mg/日、若しくは必要量の式Iの化合物又はSARPO、及び約0.1mg/日~約1mg/日、約0.5mg/日~約15mg/日、約15mg/日~約60mg/日、約15mg/日~約120mg/日、約0.1mg/日~約200mg/日、若しくは必要量のDEXをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを対象に同時投与することを含む、DEXによる治療を必要とする対象におけるDEX血漿レベルを増加させる方法であり、対象はDEXの高代謝個体である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOを対象に投与することを含む、DEXの代謝を阻害する方法であり、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは式Iの化合物又はSARPOと同時に対象の体内に存在する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOを投与することを含む、DEXの代謝寿命を延ばす方法であり、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは式Iの化合物又はSARPOと同時に対象の体内に存在する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEX血漿レベルを増加させる方法であり、式の化合物I又はSARPOは、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの少なくとも2日間の同時投与の初日に投与され、DEX血漿レベルの増加は、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同一量のDEXと比較して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとが同時投与された初日に起こる。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、少なくとも5日間連続して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEX血漿レベルを増加させる方法であり、5日目に、DEX血漿レベルは、5日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDEX血漿レベルよりも高い。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、少なくとも6日間連続して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEX血漿レベルを増加させる方法であり、6日目に、DEX血漿レベルは、6日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDEX血漿レベルよりも高い。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEXのトラフ効果を軽減する方法であり、DEXは、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの同時投与の12時間後に、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろう血漿レベルの少なくとも2倍の血漿レベルを有する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEXのトラフ効果を軽減する方法であり、DEXは、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの同時投与の12時間後に、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろう血漿レベルの少なくとも2倍の血漿レベルを有する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEXのトラフ効果を軽減する方法であり、DEXは、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの同時投与の12時間後に、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろう血漿レベルの少なくとも2倍の血漿レベルを有する。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与することを含む、DEXによる治療に関連した、常習癖、乱用、身体的又は精神的依存などの有害事象又はその他の望まれない帰結を軽減する方法であり、対象はDEXによる処置の結果として有害事象を経験するリスクがある。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPO、治療法を必要とする対象DEXと式Iの化合物又はSARPOとを同時投与することを含む、式Iの化合物又はSARPOによる治療に関連する有害事象を軽減する方法であり、対象は、式Iの化合物又はSARPOによる処置の結果として有害事象を経験するリスクがある。
別の実施形態は、咳嗽のための治療を必要とする対象に、DEXの投与と併せて式Iの化合物又はSARPOを投与することを含む、DEXの鎮咳特性を改善する方法である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの組み合わせをそれを必要とする対象に投与することを含む、咳嗽を治療する方法である。
別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOとDEXとをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、式Iの化合物又はSARPOとDEXとは、少なくとも8日間にわたり少なくとも1日に1回投与される。
別の実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOは、少なくとも8日間にわたりなくとも1日に1回投与される。
別の実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、神経学的障害を治療する方法であり、式Iの化合物又はSARPOとDEXとは、少なくとも8日間にわたりなくとも1日に1回投与される。
別の実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、式Iの化合物又はSARPOと、水溶性ビヒクルとを含む組成物を含む、DEXの経口持続放出送達系である。経口持続放出送達系は、懸濁液中で混合される異なる薬物-樹脂複合体を調製するための薬物-樹脂複合体であるか、1種又は複数種の薬物が薬物-樹脂複合体として提供されて1種又は複数種の薬物が液体担体に溶解される。別の実施形態は、式Iの化合物又はSARPOで被覆され、式IIの化合物又はDEXを含む液体担体に懸濁された、イオン交換樹脂粒子を含む医薬持続放出経口懸濁液である。別の実施形態は、式IIの化合物又はDEXで被覆され、式Iの化合物又はSARPOを含む液体担体に懸濁された、イオン交換樹脂粒子を含む医薬持続放出経口懸濁液である(Savjani et al., Drug Solubility: Importance and Enhancement Techniques, International Scholarly Research Network ISRN Pharmaceutics Volume 2012, Article ID 195727, 10 pages;米国特許第2,780,355A号;米国特許第4,999,189A号;米国特許第5,128,142A号;参照によりその全体が援用される)。
別の実施形態は、式Iの化合物若しくはSARPO及び/又は式IIの化合物若しくはDEX又はSARPODEX(商標)を含む薬学的に有用な活性成分の1重量部と、1重量部の混合物に対して0.5~200重量部の架橋ポリマーの比率で架橋ポリマーに吸着された不活性物質0.1~100重量部との混合物の吸着質を含む放出制御製剤を提供し、前記不活性物質は生体内で架橋ポリマーからの活性薬物の溶解を改変するように選択されるが、ただし、不活性物質が15,000~50,000の範囲の平均分子量を有するポリビニルピロリドンであり、架橋ポリマーが架橋ポリビニルピロリドンである場合、活性成分はジヒドロピリジンでない。別の実施形態では、ポリマーと活性薬物との比率は、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、又は約10:1である。本発明で使用されてもよい膨潤剤の例としては、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。膨潤剤は、組成物の総重量の約5%~約50%、好ましくは約10%~約30%、より好ましくは約10%~約20%の量で存在してもよい。医薬組成物は、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム、アラビアゴムなどの粘稠剤をさらに含有する。さらに、医薬組成物は、マンヌロン酸、グルロン酸、アルギン酸などのポリウロン酸の水溶性塩などのゲル形成ポリマーを含有してもよく、塩は、組成物の総重量の約0.1重量%~約20重量%の量のナトリウム若しくはカリウムなどの金属、又はそれらのアンモニウム塩で形成される。さらに、医薬組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、又は架橋ポリアクリル酸などの親水性水溶性ポリマーもまた含有してもよい(米国特許第5,128,142A号;米国特許第6261601B1号;米国特許第4,777,033号;米国特許第5,651,985号参照によりその全体が援用される)。
別の実施形態は、DEXによる治療を必要とする対象に、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを含む組成物の有効量を経口的に投与することを含む、有効性の損失なしに、投与され得るDEXの用量数を減らす方法である。
別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOの治療的有効量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物、剤形、又は薬剤である。
一態様では、DEXによる治療を必要とする対象に、5-HT2A受容体拮抗薬を投与することを含む、DEXの代謝寿命を延ばす方法が提供され、5-HT2A受容体拮抗薬はCYP2D6酵素の阻害剤であり、DEXはCYP2D6の阻害剤と同時に対象の体内に存在する。別の実施形態では、組成物は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを含む。
別の態様では、DEXによる治療を必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を同時投与することを含む、DEXによる治療に関連する有害事象を予防する方法が提供され、対象はDEXによる処置の結果として有害事象を経験するリスクがある。
別の態様では、式Iの化合物又はSARPOなどの5HT2A受容体拮抗薬を使用して、神経学的障害の治療におけるDEXの治療特性を改善する方法が提供される。
別の態様では、5HT2A受容体拮抗薬とDEXとを含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、障害又は疾患を治療する方法が提供される。別の実施形態では、組成物は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを含む。
別の態様では、それを必要とする対象においてDEXと組み合わせて使用するための5-HT2A受容体拮抗薬を選択する方法が提供される。
別の実施形態、NMDA受容体拮抗薬は、ナロキソン誘発禁断症状によって測定されるように、モルヒネ依存症の発現の身体的側面を軽減し(Popik et al., Inhibition of reinforcing effects of morphine and motivational aspects of naloxone- precipitated opioid withdrawal by N-methyl-D-aspartate receptor antagonist, memantine. J. Pharmacol. Exp. Ther. 280: 854-865 (1997); Popik et al., Inhibition of reinforcing effects of morphine and naloxone-precipitated opioid withdrawal by novel glycine site and uncompetitive NMDA receptor antagonists. Neuropharmacology.37: 1033-1042 (1998);米国特許第8785472B2号;米国特許第20060167032A1号;その内容全体が参照により援用される)、禁欲状態の身体的要素だけでなく情動的要素や動機付け要素も弱めてもよい(Cornish et al., A randomized, double-blind, placebo-controlled safety study of high-dose dextromethorphan in methadone-maintained male inpatients. Drug & Alcohol Dependence. 67(2): 177-83(2002);その内容全体が参照により援用される)。禁断症状を軽減することによって、そのような薬剤は、オピオイド依存症の治療の急性解毒段階の間に、患者に有益なはずである(Cornish et al., A randomized, double- blind, placebo-controlled safety study of high-dose dextromethorphan in methadone- maintained male inpatients. Drug & Alcohol Dependence.67(2): 177-83 (2002);その内容全体が参照により援用される)。
したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを投与することを含む、常習癖及び薬物乱用に関連する障害又は疾患の治療を必要とする対象を治療する方法である。
別の実施形態では、NMDA拮抗薬はモルヒネの自己投与を阻害し、モルヒネ条件付け場所嗜好性の発生及び発現の双方を阻害する(Popik et al., Inhibition of reinforcing effects of morphine and naloxone-precipitated opioid withdrawal by novel glycine site and uncompetitive NMDA receptor antagonists. Neuropharmacology.37: 1033-1042 (1998); Kim et al., Inhibition by MK-801 of morphine-induced conditioned place preference and postsynaptic dopamine receptor supersensitivity in mice. Pharmacol. Biochem. Behav. 55: 11-17 (1996);その内容全体が参照により援用される)。したがって、DEXは条件付け薬物依存効果の発生と発現を予防する。
モルヒネへの長期曝露は、大脳辺縁系におけるグルタミン酸作動性受容体系のいくつかの生化学的適応をもたらす(Fitzgerald et al., Drugs of abuse and stress increase the expression of GluR1 and NMDAR1 glutamate receptor subunits in the rat ventral tegmental area: common adaptations among cross-sensitizing agents. J. Neurosci.16: 274-282 (1996);その内容全体が参照により援用される)。興奮性アミノ酸は、乱用薬物への慢性的な曝露に起因する数多くの神経化学的及び行動的影響の媒介に関与し、そのいくつかはグルタミン酸作動性拮抗薬を使用して、予防又は逆転させ得る(Inturrisi, Preclinical evidence for a role of glutamatergic systems in opioid tolerance and dependence. Semin. Neurosci. 9: 110-119 (1997); その内容全体が参照により援用される)。オピオイドをはじめとする乱用薬物の継続的な自己投与は、脳の報酬センターにおけるドーパミンの過剰刺激と、グルタミン酸をはじめとする興奮性アミノ酸の放出増加とをもたらし、耐性及び依存症の発生につながり、これはグルタミン酸拮抗薬によって遮断され得る(Herman et al., Clinical medication development for opiate addiction: focus on nonopioids and opioid antagonists for the amelioration of opiate withdrawal symptoms and relapse prevention. Semin. Neurosci. 9: 158-172 (1997);その内容全体が参照により援用される)。したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、又は式Iの化合物若しくはSARPOを投与することを含む、アヘン剤禁断症状を改善し再発を予防することによって、オピオイド耐性及び依存症に起因する常習癖及び薬物乱用に関連する障害又は疾患の治療を必要とする対象を治療する方法である。
DEXは、いくつかの炎症に基づく動物のパーキンソン病モデルにおいて、ドーパミンニューロンに対する神経保護を与える(Li et al., Protective effect of dextromethorphan against endotoxic shock in mice. Biochemical Pharmacology. 69(2): 233-40 (2005); Liu et al., Dextromethorphan protects dopaminergic neurons against inflammation-mediated degeneration through inhibition of microglial activation. Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics. 305(1):212-8 (2003); Zhang et al., 3-hydroxymorphinan is neurotrophic to dopaminergic neurons and is also neuroprotective against LPS-induced neurotoxicity. FASEB Journal.19(3): 395-7 (2005); その内容全体が参照により援用される)。1~10μMのDEXは、ラット初代混合中脳神経-グリア細胞培養において、ドーパミン取り込みのリポ多糖(LPS)誘発性低下から、ドーパミンニューロンを保護した。形態学的には、LPS処理された培養物では、ドーパミンニューロンの減少に加えて、残りのドーパミンニューロンの樹状突起が対照のものより有意に少なかった。LPS刺激前にDEX(10μM)で前処理された培養物では、ドーパミンニューロンは有意により多く、樹状突起はそれほど影響を受けなかった。LPS添加後60分以内にDEXが添加された培養物では、有意な神経保護が観察された。したがって、DEXは処理前だけでなく処理後にも、モノアミンニューロンを有意に保護する(Zhang et al., 3-hydroxymorphinan is neurotrophic to dopaminergic neurons and is also neuroprotective against LPS-induced neurotoxicity. FASEB Journal.19(3): 395-7 (2005); その内容全体が参照により援用される)。LPS及びMPTP PDモデルの双方を用いた動物実験もまた、DEXの強力な保護効果を示す(Zhang et al., 3- hydroxymorphinan is neurotrophic to dopaminergic neurons and is also neuroprotective against LPS-induced neurotoxicity. FASEB Journal.19(3): 395-7 (2005);その内容全体が参照により援用される)。したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、式Iの化合物若しくは式IIの化合物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、パーキンソン病の治療を必要とする対象を治療する方法である。
DEXの神経保護効果は、NADPHオキシダーゼからの超酸化物陰イオン生成の阻害による小膠細胞の過剰活性化の阻害に関連しており、DEXのこの神経保護活性は、そのNMDA受容体拮抗特性には関連していない。Zhang et al. (Zhang et al., 3-hydroxymorphinan is neurotrophic to dopaminergic neurons and is also neuroprotective against LPS-induced neurotoxicity. FASEB Journal. 19(3): 395-7 (2005)) は、MK801、AP5、及びメマンチンなどのいくつかのNMDA受容体拮抗薬を試験した。彼らは、NMDA受容体拮抗活性の親和性とドーパミンニューロンに対する神経保護効果の効力との間に、相関関係を見いださなかった。対照的に、抗炎症効力と神経保護との間には、より良い相関関係が観察された。これらの結果は、炎症関連神経変性モデルにおいて、DEXによって提供されるドーパミン神経保護が、NMDA受容体によって媒介されないことを示唆する。この結論は以前の報告と矛盾せず、NMDA受容体遮断が、急性グルタミン酸誘発興奮毒性モデルにおけるDEXの神経保護効果に関連することを示す。したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)又は式Iの化合物を投与することを含む、その障害又は疾患の治療を必要とする対象を治療する方法であり、障害又は疾患は炎症関連神経変性障害である。
オピオイド作動薬は、中枢神経系(CNS)のオピオイド受容体を介して免疫系を調節すると報告されている。免疫細胞に対するアヘン剤の直接作用が、生体外実験で観察された(Madden et al., Opiate binding sites in the cellular immune system: expression and regulation. J Neuroimmunol 83(1-2): 57-62 (1998);その内容全体が参照により援用される)。マイクロ3及びデルタイソ型をはじめとするオピオイド受容体が、免疫細胞中に見いだされた。モルヒネの間接的な作用はまた、免疫学的システムにおいても証明され得る。モルヒネは、生体内で胸腺細胞アポトーシスを誘導した(Fuchs et al., Morphine induces apoptosis in murine thymocytes in vivo but not in vitro: involvement of both opiate and glucocorticoid receptors. J Pharmacol Exp Ther 266(1): 417-23 (1993);その内容全体が参照により援用される)。胸腺形成不全は、グルココルチコイド(GC)依存性であることが示された(Sei et al., Morphine-induced thymic hypoplasia is glucocorticoid-dependent. J. Immunol.146(1): 194-8 (1991);その内容全体が参照により援用される)。したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、式Iの化合物若しくは式IIの化合物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、その障害又は疾患治療を必要とする対象を治療する方法であり、障害又は疾患は胸腺の形成不全である。
モルヒネのGC依存効果は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸を活性化するHPA軸の活性化は、強力な免疫調節ホルモンとしてGCの産物を増加させる(Freier et al., A mechanism of action for morphine-induced immunosuppression: corticosterone mediates morphine-induced suppression of natural killer cell activity. J Pharmacol Exp Ther 270(3): 1127-33 (1994); Mellon et al., Role of central opioid receptor subtypes in morphine-induced alterations in peripheral lymphocyte activity. Brain Res 789(1): 56-67 (1998);その内容全体が参照により援用される)。したがって、一実施形態は、SARPODEX(商標)を投与することを含む、その障害又は疾患治療を必要とする対象を治療する方法であり、障害又は疾患はオピオイド依存症である。退薬下にあるヘロイン常用者に対して、最高約500mg/日のDEXの投与量、120、240、及び480mg/日などのDEX投与量が提言される。高用量のDEXは、心拍数、血圧、体温、及び血漿臭化物の軽度の上昇を引き起こした(Cornish et al., A randomized, double-blind, placebo-controlled safety study of high-dose dextromethorphan in methadone-maintained male inpatients. Drug & Alcohol Dependence. 67(2): 177-83(2002);その内容全体が参照により援用される)。台湾の漢民族のようないくつかの民族グループでは、CYP2D6の発現及び/又は活性の違いのために、DEX代謝プロファイルが西洋人のものと異なり得る(Yeh et al., Analysis of pharmacokinetic parameters for assessment of dextromethorphan metabolic phenotypes. J. Biomed. Sci.10: 552-564 (2003); その内容全体が参照により援用される)。
双極性障害(BP)患者では、躁病及びうつ病のエピソード中に、正常対照よりも有意に高い、インターロイキン-6、インターロイキン-8、及びTNF-α-レベルが顕在化する(Kim et al., Alexithymia and Stress Response Patterns among Patients with Depressive Disorders in Korea. Psychiatry Investig.6(1): 13-8 (2009); O’Brien et al., Cytokine profiles in bipolar affective disorder: focus on acutely ill patients. J Affect Disord.90(2-3): 263-7 (2006); Brietzke et al., Comparison of cytokine levels in depressed, manic and euthymic patients with bipolar disorder. J Affect Disord. 116(3): 214-7 (2009);その内容全体が参照により援用される)。
BP患者の剖検前頭皮質では、IL-1β受容体及び神経炎症マーカー誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)及びc-fosの有意により高いタンパク質及びmRNAレベルが見いだされた(Rao et al., Increased excitotoxicity and neuroinflammatory markers in postmortem frontal cortex from bipolar disorder patients. Mol. Psychiatry.15(4): 384-92 (2010);その内容全体が参照により援用される)。総合すると、免疫系の不均衡は、引き続いて神経細胞の炎症応答を引き起こし、脳萎縮の進行及びBP症状の悪化に関連しているかもしれない。免疫標的療法によるBP治療は、抗うつ効果を示した。例えば、非盲検アセチルサリチル酸はフルオキセチンに添加されると、以前はフルオキセチン単剤療法に非応答性であった大うつ病の個人において、寛解率の増加をもたらした(Mendlewicz et al., Shortened onset of action of antidepressants in major depression using acetylsalicylic acid augmentation: a pilot open-label study. Int. Clin. Psychopharmacol.21(4): 227-31 (2006);その内容全体が参照により援用される)。
したがって、気分安定薬と組み合わされた抗炎症剤を使用することは、BPに対する治療効果を改善する。気分安定薬は、神経発生及びシナプスの可塑性を促進する、相互連結した細胞内シグナル伝達経路を活性化することが示されている。BP患者における脳容積の減少は、バルプロ酸(VPA)による長期治療によって大幅に抑制されることが判明し、VPAはニューロンを様々な傷害の影響を受けにくくするため、神経保護効果がもたらされ(Chen et al., Valproate protects dopaminergic neurons in midbrain neuron/glia cultures by stimulating the release of neurotrophic factors from astrocytes. Mol Psychiatry.11(12):1116-1125 (December 2006);その内容全体が参照により援用される)、成体齧歯類の脳においてさえも神経発生を刺激する。VPAは、Bcl-2、グルコース調節タンパク質78(Grp78)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、及び熱ショックタンパク質70のような細胞保護タンパク質を誘導する。さらに、VPAは神経突起伸長を促進する一方で、治療レベルのVPAは、ヒストンのリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素であるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害し、局所的な神経細胞BDNF生合成を促進すると報告された。したがって、一実施形態は、DEX、SARPODEX(商標)、式Iの化合物、式IIの化合物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、その障害又は疾患治療を必要とする対象を治療する方法であり、障害又は疾患はBPである。
別の実施形態は、
a.DEXを投与すること;及び
b.式Iの化合物又はSARPOを対象に投与すること
を含む、それを必要とする対象におけるDEXの有害事象を軽減する方法である。
いくつかの実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの抗うつ薬の治療的有効量とそれを必要とする個人に投与することを含む、神経精神障害を治療する方法を含む。
いくつかの実施形態は、DEXと式Iの化合物又はSARPOなどの抗うつ薬とを同時投与することを含む、神経精神障害治療におけるDEXの治療特性を増強する方法を含む。
いくつかの実施形態は、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬とDEXとを対象に同時投与することを含む、DEXの高代謝個体である対象において、DEXの血漿レベルを増加させる方法を含む。
いくつかの実施形態は、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を対象に投与することを含む、DEXの代謝を阻害する方法を含み、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは5-HT2A受容体拮抗薬と同時に対象の体内に存在する。
いくつかの実施形態は、DEXの排出半減期(T1/2)を延ばすことをはじめとする、DEXの代謝寿命を延ばす方法を含む。これらの実施形態は、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を対象に投与することを含んでもよく、対象はDEXの高代謝個体であり、DEXは5-HT2A受容体拮抗薬と同時に対象の体内に存在する。
いくつかの実施形態は、疼痛の治療を必要とする対象などのそれを必要とする対象に、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を投与することを含む、DEXの高い代謝を修正する方法を含む。
いくつかの実施形態は、神経精神障害の治療を必要とする対象に、DEXの投与と併せて、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬を投与することを含む、神経精神障害の治療におけるDEXの治療特性を改善する方法を含む。
いくつかの実施形態は、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬とDEXとの組み合わせをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経精神障害を治療する方法を含む。
一実施形態では、治療方法は、DEXを1日6回(4時間毎)、1日4回(6時間毎)、又は1日3回(8時間毎)、それを必要とする対象に投与することを含む、投与計画を含む(OTC Monograph [21CFR341.74])。
DEXは、ヒトの肝臓内で急速に代謝される。この急速な肝代謝は、高代謝個体である個人における全身性薬物曝露を制限してもよい。対象は、以下であり得る。1)DEXの高代謝個体:DEXを急速に代謝する個体。2)DEXの低代謝個体:DEXの代謝が不良の個体;又は3)DEXの中間代謝個体:DEXの代謝が、高代謝個体と低い代謝個体の間のどこかである個体。高代謝個体はまた、超高代謝個体であり得る。DEXの高代謝個体は、ヒト集団のかなりの部分を占めている。DEXは、例えばDOに代謝され得る。
同じ経口用量のDEXを投与した場合、DEXの血漿レベルは、DEXの高代謝個体と比較して、低代謝個体又は中間代謝個体で有意により高い。DEXの低血漿濃度は、DEXの高代謝個体、そしておそらく中間代謝個体にとって、その単剤としての臨床的有用性を制限し得る。式Iの化合物又はSARPOなどのいくつかの抗うつ薬は、DEXの代謝を阻害し、したがってその治療効果を改善し得る。同様に、抗うつ薬は、治療効果の損失なしに、1日2回ではなく1日1回、1日3回ではなく1日1回、1日4回ではなく1日1回、1日3回ではなく1日2回、1日4回ではなく1日2回などのより少ない頻度でDEXを投与できるようにしてもよい。
したがって、本発明の一実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、疼痛又はその他の神経精神障害の治療方法である。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、情動障害、精神医学的障害、脳機能障害、運動障害、認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、PTSD、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、発作性疾患、及び頭痛をはじめとするが、これに限定されるものではない、神経精神障害の治療方法又は有効性の向上した治療方法である。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、うつ病、大うつ病、治療抵抗性うつ病及び治療抵抗性双極性うつ病、気分循環症などのBP、季節性気分障害、躁病、不安障害、注意欠陥障害(ADD)、活動亢進を伴う注意欠陥障害(ADDH)、及び注意欠陥/多動性障害(ADHD)、双極性及び躁状態、強迫性障害、過食症、摂食障害、肥満又は体重増加、ナルコレプシー、慢性疲労症候群、月経前症候群、薬物常習癖又は乱用、ニコチン常習癖、精神的-性的機能不全、情動調節障害、及び情動易変性をはじめとするが、これに限定されるものではない、情動障害の治療方法又は有効性の向上した治療方法である。
うつ病は、気分の変化、強い悲しみの感情、絶望、精神機能低下、睡眠障害、集中力の喪失、悲観的な心配、動揺、及び自己卑下によって顕在化する。うつ病の身体的症状としては、不眠症、摂食障害、体重減少、エネルギー及び性欲の減少、感情鈍麻、及び異常なホルモンの概日リズムが挙げられる。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、恐怖症、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、広場恐怖、強迫性障害、及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)などであるが、これに限定されるものではない不安障害;躁病、躁うつ病、軽躁病、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、身体表現性障害、人格障害、精神病、統合失調症、妄想性障害、統合失調性情動障害、統合失調症傾向、攻撃性、アルツハイマー病における攻撃性、動揺、及びアルツハイマー病における感情鈍麻をはじめとするが、これに限定されるものではない、精神医学的障害の治療方法又は有効性の向上した治療方法である。
感情鈍麻、又は動機の喪失は、アルツハイマー病(AD)における最も一般的な行動変化である。それは、軽度の認知機能障害から重度のアルツハイマー病(AD)までの認知低下の範囲全体にわたって、並びにその他の様々な神経精神障害において一般的である。感情鈍麻は、実行認知機能不全の一形態に相当する。感情鈍麻を有する患者は、日常機能の低下及び特定の認知障害を患っており、より多くの介護の提供を家族に頼っており、その結果、家族に対するストレスをもたらす。感情鈍麻は前頭及び皮質下病理主要症候群の1つであり、ADにおける感情鈍麻は、前頭皮質下ネットワークの構成要素と関係があるとされる複数の神経解剖学的相関を有するようである。この一般的な症候群の重大な影響にもかかわらず、感情鈍麻を具体的に評価するために設計された機器はごくわずかであり、これらの機器は直接比較されていない。ADにおける感情鈍麻の評価は、臨床医が、認知低下に起因する、動機喪失と能力喪失とを区別することを要する。感情鈍麻は、症状の重なりのためにうつ病と誤診されることもあるが、現在の研究は、感情鈍麻が別々の症候群であることを示した。感情鈍麻をうつ病と区別することは、これらの障害が異なる介入に応答するため、治療上重要な意味を有する。
感情鈍麻の全体的評価と、感情的な鈍化、主導権の欠如、及び関心の欠如の別々の評価との評価尺度である、感情鈍麻目録(IA)は、認知症の及び非認知症の高齢者対象において、感情鈍麻候群のいくつかの側面と、対象のこれらの症状に対する自覚とを評価する確かな方法である。IAは、神経精神症状評価感情鈍麻ドメインと同様に、効果的に感情鈍麻を評価する(Robert et al., The Apathy Inventory: assessment of apathy and awareness in Alzheimer’s disease, Parkinson’s disease and mild cognitive impairment, the Journal of Geriatric Psychiatry, Volume 17, Issue 12, Pages 1099-1105 (December 2002); Landes et al., Apathy in Alzheimer’s Disease, the Journal of American Geriatric Society, Volume 49, Issue 12, Pages 1700-1707 (December 2001); Malloy et al., Apathy and Its Treatment in Alzheimer’s Disease and Other Dementias, Psychiatric Times, Vol. XXII, Issue 13 (November 01, 2005); その内容全体が参照により援用される)。感情鈍麻は、前頭皮質、視床、線条体、及び小脳扁桃などの脳の1つ又は複数の領域の損傷の結果であり得る。ほとんどの場合、前頭葉又は前頭葉につながっている皮質下核への直接的な損傷は、感情鈍麻を引き起こす。アルツハイマー病に関連する感情鈍麻は、治療が非常に困難である。抗うつ薬、SSRI、精神刺激薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬などは、感情鈍麻をある程度までのみ緩和した。したがって、本発明の一実施形態は、SARPODEX(商標)と、抗うつ薬、SSRI、精神刺激薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミン作動薬の1種又は複数種との組み合わせである。別の実施形態は、SARPODEX(商標)と、ドネペジル、メマンチン、アマンタジン(amantanidine)、ブプロピオン、ロピニロール、メチルフェニデート、アンフェタミン、モダフィニル、メトリホネート、タクリン、ガランタミン、リバスチグミン、ネフィラセタム、イチョウエキスなどの1種又は複数種との組み合わせである。(Ruthirakuhan et al., Pharmacological interventions for apathy in Alzheimer’s disease (Protocol), Cochran Database of Systemic Studies, 2016, Issue 5. Art. No.: CD012197, Published by John Wiley & Sons, Ltd.; Theleritis et al., Pharmacological and Nonpharmacological Treatment for Apathy in Alzheimer Disease: A Systematic Review Across Modalities, Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology 30 (1): 26-49 (2017);参考文献は、参照によりその全体が援用される)。
神経精神症状は、アルツハイマー病(AD)と、パーキンソン病認知症(PDD)と、レビー小体型認知症(DLB)、血管性認知症(VaD)、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)をはじめとするが、これに限定されるものではないその他の多くの神経変性障害とに罹患している患者に共通する負担である(Kazui et al., Differences of Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia in Disease Severity in Four Major Dementias. PLoS ONE 11(8): e0161092 (2016); Van der Schyf, Psychotropic Drug Development Strategies that Target Neuropsychiatric Etiologies in Alzheimer’s and Parkinson’s Diseases. Drug Dev Res.77: 458-468 (2016))。
多くの精神神経症状は、神経変性病期のごく初期に顕在化し、前駆症状の指標又は疾患進行の指標とさえ考えられる(Kazui et al., Differences of Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia in Disease Severity in Four Major Dementias. PLoS ONE 11(8): e0161092 (2016); Peters et al., Neuropsychiatric Symptoms as Predictors of Progression to Severe Alzheimer’s Dementia and Death: The Cache County Dementia Progression Study. Am J Psychiatry 172: 460-465 (2015))。
ADをはじめとするがこれに限定されるものではない神経変性疾患及び病態における、神経精神症状としても知られている認知症の行動心理学的症状(BPSD)は、多元的起源を有する(McClam et al., Interventions for neuropsychiatric symptoms in neurocognitive impairment due to Alzheimer’s disease: a review of the literature. Harv Rev Psychiatry 23: 377-393 (2015))。したがって、疾患の複数の病因を同時に標的化することを目的としたストラテジー(したがって複数の薬物標的)は、ADをはじめとするが、これに限定されるものではない、一連の疾患に対する治療ストラテジーの開発における最良のアプローチを構成する(Nikolic et al., Drug design for CNS diseases: polypharmacological profiling of compounds using cheminformatic, 3D-QSAR and virtual screening methodologies. Front Neurosci 10: 265 (2016))。
個々のBPSD症状は、互いに相容れないように見えるかもしれないが、それにもかかわらず根本的機序を共有し得る。この共通機序の類似性は、神経化学的及び/又は神経解剖学的レベルで起こり得て、2つ以上のBPSD症状に対処する、標的化されているが機序特異的ではない療法を開発するための基礎の役割を果たす。共通機序は、皮質領域から基底核へ、視床へ、そして皮質に戻るという、神経投射の類似した神経化学組織によって例証される。例えば、側背前頭前皮質は側背尾状核に神経投射し、それは次に内部淡蒼球の側方背内側部を標的化し、それは腹側前側又は背内側視床の主要部分に神経投射を送り、それは次に神経投射を皮質に戻す。対照的に、眼窩前頭皮質は腹内側尾状核に神経投射し、それは内部淡蒼球の内側背内側部に神経投射し、それは、腹側前側又は背内側視床の巨大細胞部に神経投射を送り、それは神経投射を皮質に戻す。したがって、皮質の様々な部分が様々な機能を担っていてもよいが、それに従って皮質ネットワークが機能する共通原理がある(Aouizerate et al., Pathophysiology of obsessive-compulsive disorder: a necessary link between phenomenology, neuropsychology, imagery and physiology. Prog Neurobiol 72(3):195-221 (2004);その内容全体が参照により援用される)。したがって、様々な回路の障害が、様々なBPSD症状の出現の根底にある。神経変性疾患の臨床症状の不均一性は、病理学の優勢な部位によって(すなわち影響を受けるネットワークによって)決定される。例えば、背側前帯状皮質及び側背前頭前皮質は、感情鈍麻の患者においてより影響を受けやすく、bvFTLDを有する患者では、内側軌道前頭皮質が脱抑制される(Massimo et al., Dement Geriatr Cogn Disord 27:96-104 (2009);その内容全体が参照により援用される)。
式Iの化合物又はSARPOによって標的化される5-HT2A受容体については、セロトニンが5-HT2A受容体を介して、前頭前皮質のV層錐体細胞の頂端樹状突起におけるグルタミン酸作動性自発興奮性シナプス後電流を増加させることが、十分に確立されている(Aghajanian et al., Serotonin, via 5-HT2A receptors, increases EPSCs in layer V pyramidal cells of prefrontal cortex by an asynchronous mode of glutamate release. Brain Res 825:161-71 (1999);その内容全体が参照により援用される)。このような過剰な非同期伝達は、大脳皮質のどの部分が影響を受けるかに応じて、聴覚的又は視覚的幻覚から脱抑制及び感情鈍麻に至る様々な形で機能的に発現されてもよいが、ほとんどの場合、様々な皮質領域にわたり存在する5-HT2A受容体が関与する操作に対して感受性である(van Dyck et al., PET quantification of 5-HT2A receptors in the human brain: a constant infusion paradigm with [18F] altanserin. J Nucl Med 41(2):234-41 (2000);その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファンによって標的化されるグルタミン酸作動性シグナル伝達については、それが視床皮質シグナル伝達を媒介し、皮質の対応する領域の活性化を引き起こすことが十分に確立されている(Kharazia et al., Glutamate in thalamic fibers terminating in layer IV of primary sensory cortex. J Neurosci 14(10):6021-6032 (1994); Sherman SM. Thalamus plays a central role in ongoing cortical functioning. Nat Neurosci 19(4):533-41 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
アルツハイマー病のような疾患は、系統的で進行性の、おそらくはトランスシナプス性の神経変性の拡散によって特徴付けられる。それは脳の特定の領域でより多くの細胞が喪失することを意味するだけでなく、病変がその他の脳領域に拡散することも意味する。異なる脳領域は異なる機能的役割を有するので、これは、疾患のより進行した段階がより広範囲の症状を伴う理由を説明する(Kazui et al., Differences of Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia in Disease Severity in Four Major Dementias. PLoS ONE 11(8): e0161092 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
神経精神症状としても知られている認知症の行動心理学的症状は、神経精神科目録などの研究ツールを用いて、診療所で一般的に研究されている(NPI; Cummings, The Neuropsychiatric Inventory: Assessing psychopathology in dementia patients. Neurology 48:S10-S16 (1997))。NPIスケールは、妄想、幻覚、動揺/攻撃性、不快感、不安、多幸感、感情鈍麻、脱抑制、易刺激性/易変性、異常な運動活動、夜間の行動障害、及び食欲異常と摂食異常の12のサブドメインの行動機能を認識する。
臨床認知症評価(CDR)スコア3であってさえも稀な多幸感のようなNPI項目があるので、患者はこれらのありとあらゆるNPI症状を一度に示すことはめったにない。逆に、臨床経験から、特定の項目を1つだけ示し、残りの項目を全く示さない患者もめったにいないことが示されている。むしろ、BPSDの症状は、様々な組み合わせ又はクラスターで発生する。例えば、頻度の高いADクラスターは、例えば、攻撃性、動揺、徘徊、反復性であり得る一方で、頻度の高い血管性認知症クラスターは、例えば、混乱及び情動不安であり得るが、NPI項目の出現頻度及び重症度は、例えば、日毎に変化し、特に疾患進行中に変化する(Kazui et al., Differences of Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia in Disease Severity in Four Major Dementias. PLoS ONE 11(8): e0161092 (2016); Johnson et al., Neuropsychiatric profiles in dementia. Alzheimer Dis Assoc Disord 25(4): 326-332 (2011);その内容全体が参照により援用される)。所与の患者は、臨床的関連性があるいくつかの症状のこのようなクラスターを一度に提示してもよいので、疾患についての現在の支配的な病態生理学的仮説にかかわりなく、症状の様々なクラスター又はBPSD症状の全範囲を標的化し得る治療法に高い医学的ニーズがある。
妄想の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(0.4~2.4%)でかなり低いが、軽度認知障害を有する対象(MCI;3.1~3.4%)では増加し、認知症(18.0~31.0%)では顕著に増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta- analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。幻覚の有病率はまた、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(0.4~0.6%)で低いが、MCI(0.6~1.3%)及び認知症(10.5~16.0%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
妄想及び幻覚はどちらも、様々な神経学的及び精神医学的な疾患及び病態における精神病の部分又は症状である。神経弛緩薬は、認知症では他に良いものがないので、このような症状を治療するために適応外で従来より使用されてきた;しかし、ごくわずかな例外を除いて、「定型」及び「非定型」神経弛緩薬はどちらも、認知症において適応外使用された場合、CV有害事象の発生率を増加させ、死亡率の顕著な増加を示した。それ故、FDAは、統合失調症以外の適応外使用に対する「ブラックボックス」警告を発行し、認知症においてこのようなBPSD症状を治療するための治療上の選択肢はほとんど残されていない。これを背景として、全く異なるクラス、すなわち5-HT2A受容体拮抗薬及び逆作動薬は、前臨床試験において抗精神病薬様の有効性プロファイルを示した(Weiner et al., 5- hydroxytryptamine2A receptor inverse agonists as antipsychotics. J Pharmacol Exp Ther 299(1):268-76 (2001);その内容全体が参照により援用される)。いくつかの5-HT2A受容体拮抗薬及び逆作動薬が、神経精神医学的適応症のために開発中であり、エプリバンセリンなどの化合物を使用して得られた有益な抗精神病効果の報告があった(Meltzer et al., Placebo-controlled evaluation of four novel compounds for the treatment of schizophrenia and schizoaffective disorder. Am J Psychiatry 161: 975-84 (2004);その内容全体が参照により援用される)。中等度から重度のパーキンソン病を有する患者において、5-HT2A受容体逆作動薬ピマバンセリンは、幻覚及び妄想をはじめとする精神病症状を有意に軽減し(Cummings et al., Pimavanserin for patients with Parkinson’s disease psychosis: a randomised, placebo-controlled phase 3 trial. Lancet 383: 533-40 (2014))、 PDDのこれらの症状の治療に関してFDAの承認を受けている。アルツハイマー病認知症を有する患者では、HTR2A T102C多型が精神病の重大なリスク因子であり、C対立遺伝子の対立遺伝子ORは2.191であり、それはホモ接合型CC遺伝子型では5.143に増加した(Ramanathan et al., Serotonergic system genes in psychosis of Alzheimer dementia: meta-analysis. Am J Geriatr Psychiatry 17(10):839-46 (2009);その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファンは、NMDA受容体チャネル遮断特性を有すると記載されており、フェンシクリジン又はケタミンなどのNMDA受容体チャネル遮断薬は、抗精神病薬特性よりもむしろ精神異常発現特性を有することが知られている。ヒトにおいてデキストロメトルファンによって引き起こされた精神病の報告がある(Miller, Dextromethorphan psychosis, dependence and physical withdrawal. Addict Biol 10(4):325-7 (2005)、その内容全体が参照により援用される)。デキストロメトルファンのこれらの精神活性特性は、デキストロルファンの生成をもたらすその代謝的分解の機能であってもよい(Zawertailo et al., Effect of metabolic blockade on the psychoactive effects of dextromethorphan. Hum Psychopharmacol 25(1):71-9 (2010); その内容全体が参照により援用される)。幾人かの対象において観察されたデキストロメトルファンの精神活性効果は、デキストロメトルファンが特定状況下では抗精神病薬特性も有するという可能性を排除しない。実際に、デキストロメトルファンはラットのフェンシクリジン誘発運動行動を弱めるが、その代謝産物であるデキストロルファンはそうでないことが報告されている(Szekely et al., Induction of phencyclidine-like behavior in rats by dextrorphan but not dextromethorphan. Pharmacol Biochem Behav 40(2):381-6 (1991);その内容全体が参照により援用される)。アルツハイマー病を有する患者を対象とした、別のNMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンの無作為化対照試験のメタ分析は、メマンチンが妄想の有意な改善を誘導することを示唆した(Kishi et al., The effects of memantine on behavioral disturbances in patients with Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Neuropsychiatr Dis Treatment 13: 1909-1928 (2017);その内容全体が参照により援用される)。
動揺及び攻撃性は、NPIスケールの1項目としてまとめられている。動揺及び攻撃性の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(2.8~2.9%)で低いが、MCI(9.1~11.3%)及び認知症(30.3~40%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。したがって、このNPI項目は最も多く見られたものの1つであると同時に、臨床的BPSD症状は治療が困難である。
前臨床試験は、5-HT2A受容体の遮断が、実験用齧歯類の攻撃性を低下させることを示している(Sakaue et al., Modulation by 5-hT2A receptors of aggressive behavior in isolated mice. Jpn J Pharmacol 89(1):89-92 (2002);その内容全体が参照により援用される)。ヒト遺伝学データは、Buss-Perry攻撃性質問票の4つのサブスケールのうち3つ(敵意、怒り、及び身体的攻撃性)に対するスコアが、HTR2A rs7322347 T対立遺伝子との有意な関連性を示すことを示唆する(Banlaki et al., Polymorphism in the serotonin receptor 2a (HTR2A) gene as possible predisposal factor for aggressive traits. PLoS One 10(2):e0117792 (2015))。ADを有する中国人対象における症例対照研究では、ADの攻撃性はT102Cなどの5-HT2A受容体多型と有意に関連した(Lam et al., 5-HT2A T102C receptor polymorphism and neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease. Int J Geriatr Psychiatry 19(6):523-6 (2004);その内容全体が参照により援用される)。
様々なNMDA受容体チャネル遮断薬は、マウスの攻撃的行動を弱めることが示されており、これらの効果は鎮静作用から分離するのが困難なこともある(Belozertseva, Effects of NMDA receptor channel blockade on aggression in isolated male mice. Aggr Behav 25:381-396 (1999))。ほぼ確実なアルツハイマー病及び臨床的に有意な動揺を有する患者において、デキストロメトルファン-キニジンの組み合わせは、NPIの動揺/攻撃性スコアを低下させた(Cummings et al., Effect of Dextromethorphan- Quinidine on Agitation in Patients With Alzheimer Disease Dementia: A Randomized Clinical Trial. JAMA 314(12):1242-54 (2015);その内容全体が参照により援用される);この併用療法は動揺の治療に承認されている)。アルツハイマー病を有する患者を対象とした、別の非選択的NMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンの無作為化対照試験のメタ分析は、メマンチンもまた動揺/攻撃性の有意な改善を誘導することを示した(Kishi et al., The effects of memantine on behavioral disturbances in patients with Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Neuropsychiatr Dis Treatment 13: 1909-1928 (2017);その内容全体が参照により援用される)。
不快気分/うつ病の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(7.2~11.4%)で中程度であるが、MCIを有する対象(20.1~27.0%)では増加し、それは認知症において最も多く見られた問題の1つである(32.3~42%)(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
脳刺激報酬を用いた前臨床試験は、5-HT2A受容体拮抗作用が、ハロペリドールなどの従来の神経弛緩薬によって誘発される不快気分を抑制してもよいことを示唆した(Benaliouad et al., Blockade of 5-HT2a receptors reduces haloperidol-induced attenuation of reward. Neuropsychopharmacology 32(3):551-61 (2007);その内容全体が参照により援用される)。臨床的に使用されている抗うつ薬に感受性の前臨床モデルにおいて、5-HT2A受容体拮抗薬は抗うつ薬様効果を発揮する(Marek et al., The selective 5-HT2A receptor antagonist M100907 enhances antidepressant-like behavioral effects of the SSRI fluoxetine. Neuropsychopharmacology 30: 2205-2215 (2005); Patel et al., The highly selective 5- hydroxytryptamine (5-HT)2A receptor antagonist, EMD 281014, significantly increases swimming and decreases immobility in male congenital learned helpless rats in the forced swim test. Synapse 52: 73-75 (2004);その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファンなどのNMDA受容体チャネル遮断薬は、前臨床モデルにおいて抗うつ薬様特性を有することが示されている(Sakhaee et al., The role of NMDA receptor and nitric oxide/cyclic guanosine monophosphate pathway in the antidepressant-like effect of dextromethorphan in mice forced swimming test and tail suspension test. Biomed Pharmacother 85:627-634 (2017);その内容全体が参照により援用される)。NMDA受容体チャネル遮断薬のうち、ケタミンは、治療抵抗性の大うつ病性障害を有する患者において、迅速且つ強力な抗うつ活性を有することが証明されている(Singh et al., A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled, Dose-Frequency Study of Intravenous Ketamine in Patients With Treatment-Resistant Depression. Am J Psychiatry 173(8):816-26 (2016);その内容全体が参照により援用される)。キニジンとの組み合わせで投与されたデキストロメトルファンもまた、ヒトにおいて抗うつ作用を発揮する(Murrough et al., Dextromethorphan/quinidine pharmacotherapy in patients with treatment resistant depression: A proof of concept clinical trial. J Affect Disord 218:277-283 (2017);その内容全体が参照により援用される)。デキストロメトルファンは選択的NMDA受容体チャネル遮断薬ではなく、セロトニン及びノルエピネフリン(norephinephrine)輸送体に対してより効力があり、シグマ-1受容体に対しても同様であり、それがデキストロメトルファンの治療効果に寄与してもよい(Stahl, Mechanism of action of dextromethorphan/quinidine: comparison with ketamine. CNS Spectrums 18: 225-227 (2013); その内容全体が参照により援用される)。モノアミン輸送体は、現在最も使用されている抗うつ薬の標的とされているものの、実験動物ではシグマ-1受容体もまた、デキストロメトルファンの抗うつ薬様効果に寄与することが判明している(Nguyen et al., Involvement of sigma-1 receptors in the antidepressant-like effects of dextromethorphan. PLoS One 9(2):e89985 (2014);その内容全体が参照により援用される)。
感情鈍麻の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(3.2~4.8%)で低いが、MCI(14.7~18.5%)及び認知症(35.9~49%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。ADを有する中国人対象における症例対照研究では、ADの感情鈍麻は、T102Cなどの5-HT2A受容体多型と有意に関連した(Lam et al., 5-HT2A T102C receptor polymorphism and neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease. Int J Geriatr Psychiatry 19(6):523-6 (2004);その内容全体が参照により援用される)。感情鈍麻は統合失調症を有する患者にしばしば見られる症状であり、陰性症状のグループに属する。5-HT2A受容体拮抗薬は、統合失調症を有する患者における陰性症状の重症度を軽減する(Davidson et al., Efficacy and Safety of MIN-101: A 12-Week Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of a New Drug in Development for the Treatment of Negative Symptoms in Schizophrenia. Am J Psychiatry DOI: 10.1176/appi.ajp.2017.17010122 (2017); Meltzer et al., Placebo-controlled evaluation of four novel compounds for the treatment of schizophrenia and schizoaffective disorder. Am J Psychiatry 161(6):975-84 (2004);その内容全体が参照により援用される)。
メマンチンなどのNMDA受容体チャネル遮断薬は、特定の神経変性疾患を有する(Links et al., A case of apathy due to frontotemporal dementia responsive to memantine. Neurocase 19(3):256-61 (2013);その内容全体が参照により援用される)、又は統合失調症の陰性症状を有する(Paraschakis, Tackling negative symptoms of schizophrenia with memantine. Case Rep Psychiatry 2014:384783 (2014);その内容全体が参照により援用される)患者における感情鈍麻を軽減することが報告されている。
不安の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(5.0~5.8%)で低いが、MCI(9.9~14.1%)及び認知症(21.5~39%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al. Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
5-HT2A受容体拮抗薬は、様々な前臨床モデルで、特に条件付け恐怖のモデルで抗不安を発揮する(Adamec et al., Prophylactic and therapeutic effects of acute systemic injections of EMD 281014, a selective serotonin 2A receptor antagonist on anxiety induced by predator stress in rats. Eur J Pharmacol 504(1-2):79-96 (2004); Millan, The neurobiology and control of anxious states. Progr Neurobiol 70: 83-244 (2003); その内容全体が参照により援用される)。ヒトでは、5-HT2A受容体遮断は、社会的に意味のある刺激の評価に関与する、眼窩前頭皮質における情動的処理を減弱する(Hornboll et al., Acute serotonin 2A receptor blocking alters the processing of fearful faces in the orbitofrontal cortex and amygdala. J Psychopharmacol 27(10):903-14 (2013);その内容全体が参照により援用される)。5-HT2受容体拮抗薬セラゼピン(CGS-15040A)は、全般性不安障害を有する患者の臨床試験で有効性が示されている(Katz et al., Serotonergic (5-HT2) mediation of anxiety-therapeutic effects of serazepine in generalized anxiety disorder. Biol Psychiatry 34: 41-44 (1993);その内容全体が参照により援用される)。
NMDA受容体拮抗薬クラスの他のメンバーと同様に(Chojnacka-Wojcik et al., Glutamate receptor ligands as anxiolytics. Curr Opin Investig Drugs 2(8):1112-9 (2001); その内容全体が参照により援用される)、デキストロメトルファンは、特定の用量範囲内で実験動物において抗不安様効果を誘導することが観察された(Dere et al., NMDA-receptor antagonism via dextromethorphan and ifenprodil modulates graded anxiety test performance of C57BL/6 mice. Behav Pharmacol 14(3):245-9 (2003);その内容全体が参照により援用される)。デキストロメトルファンの前臨床抗不安薬効果は、NMDA受容体機能の阻害だけでなく、シグマ-1受容体との相互作用にも関連してもよい(Kamei et al., (+)- SKF-10,047 and dextromethorphan ameliorate conditioned fear stress through the activation of phenytoin-regulated sigma 1 sites. Eur J Pharmacol 299(1-3):21-8 (1996);その内容全体が参照により援用される)。ADを有する患者では、別の非選択的NMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンによる治療は、不安症に対するNPIサブスケールのスコアを有意に減少させる(Ishikawa et al., The effect of memantine on sleep architecture and psychiatric symptoms in patients with Alzheimer’s disease. Acta Neuropsychiatr 28(3):157-64 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
多幸感/高揚の有病率は、一般集団では、及び正常な認知老化を有する人々(0.3~0.4%)で非常に低いが、MCI(0.6~1.3%)及び認知症(3.1~7%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。ヒトPET研究は、多幸感アナログスケールスコアにおける精神刺激薬-誘発性-誘発性(drug-induced-induced)変化と、内因性ドーパミンの増加に一致する、尾状核及び被殻における[11C]ラクロプリド受容体結合能(BP)の減少との正の相関を確立している(Drevets, Amphetamine-induced dopamine release in human ventral striatum correlates with euphoria. Biol Psychiatry 49(2):81-96 (2001))。非選択的5-HT2A受容体作動薬であるプシロシビンは、腹側線条体の[11C]ラクロプリドBPを有意に低下させ、それは多幸感に関連する離人症と相関した(Vollenweider et al., 5-HT modulation of dopamine release in basal ganglia in psilocybin-induced psychosis in man -- a PET study with [11C]raclopride. Neuropsychopharmacology 20(5):424-33 (1999))。前臨床データは、背側縫線核及び腹側被蓋野に突出する前頭前野皮質錐体ニューロンの大部分が、5-HT2A受容体を発現することを示唆している(Vazquez-Borsetti et al., Pyramidal neurons in rat prefrontal cortex projecting to ventral tegmental area and dorsal raphe nucleus express 5-HT2A receptors. Cereb Cortex 19:1678-86 (2009);その内容全体が参照により援用される)。その結果、前頭前野の5-HT2A受容体の遮断は中脳に神経投射する錐体ニューロンを調節し、それによって中脳におけるドーパミン作動系を阻害してもよい(Erbdrup et al., Serotonin 2A receptor antagonists for treatment of schizophrenia. Expert Opin Investig Drugs 20(9):1211-1223 (2011);その内容全体が参照により援用される)。ドーパミン作動性中脳系もまた、手綱に源を発するものなどのコリン作動性神経投射の制御下にあり、これらの神経投射の活性は、α3β4含有ニコチン性アセチルコリン受容体によって調節される(McCallum et al., α3β4 nicotinic acetylcholine receptors in the medial habenula modulate the mesolimbic dopaminergic response to acute nicotine in vivo. Neuropharmacology 63(3):434-40 (2012);その内容全体が参照により援用される)。α3β4含有ニコチン性アセチルコリン受容体における拮抗作用は、ドーパミン緊張低下に帰するとされる様々な効果に関連する(Maisonneuve et al., Anti-addictive actions of an iboga alkaloid congener: a novel mechanism for a novel treatment. Pharmacol Biochem Behav 75(3):607-18 (2003);その内容全体が参照により援用される)。α3β4含有ニコチン性アセチルコリン受容体は、デキストロメトルファンの主要標的の1つである(Taylor et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther 164:170-82 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
脱抑制の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(0.9~1.6%)で低いが、MCI(3.1~4.7%)及び認知症(12.7~17%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
5-HT系内の機能的活性のバランスの変化が衝動制御の根底にあり、前臨床試験は、5-HT2A受容体が固有行動及び誘導行動の双方の抑制を含めて、衝動行動を調節することを示唆する(Anastasio et al., Serotonin (5- hydroxytryptamine) 5-HT(2A) receptor: association with inherent and cocaine-evoked behavioral disinhibition in rats. Behav Pharmacol 22(3):248-61 (2011);その内容全体が参照により援用される)。
ヒトでは、高レベルの行動衝動性と、rs6313のC/C遺伝子型などの特定の5-HT2A多型との間に、有意な関連性が見られる(Jakubczyk A et al. The CC genotype in HTR2A T102C polymorphism is associated with behavioral impulsivity in alcohol-dependent patients. J Psychiatr Res 46(1):44-9 (2012); その内容全体が参照により援用される)。HTR2A 1438A/G多型のA/A遺伝子型を有するヒトは、不適応衝動性のスコアがより高い(Tomson et al., Effect of a human serotonin 5-HT2A receptor gene polymorphism on impulsivity: Dependence on cholesterol levels. J Affect Disord 206:23-30 (2016);その内容全体が参照により援用される)。神経解剖学的観点から、新皮質は5-HT2A受容体に富むことが知られており、行動異常型前頭側頭型認知症などの神経変性疾患における行動的脱抑制は、右海馬傍回、右眼窩前頭皮質、及び右島の皮質厚と相関する(Santillo et al., Grey and White Matter Clinico- Anatomical Correlates of Disinhibition in Neurodegenerative Disease. PLoS One 11(10):e0164122 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファン及びキニジンの組み合わせは、情動調節障害(PBA)を有する患者において治療効果がある(Pioro, Review of Dextromethorphan 20 mg/Quinidine 10 mg (NUEDEXTA) for Pseudobulbar affect. Neurol Ther 3(1):15-28 (2014);その内容全体が参照により援用される)。PBAは、筋萎縮性側索硬化症、錐体外路及び小脳障害、多発性硬化症、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、脳卒中、並びに脳腫瘍などの様々な神経疾患に伴って発生してもよい。PBAは、セロトニン及びグルタミン酸が関与する経路が破壊される、脱抑制症候群である(Ahmed et al., Pseudobulbar affect: prevalence and management. Ther Clin Risk Manag 9:483-9 (2013);その内容全体が参照により援用される)。アルツハイマー病を有する患者を対象とした、別の非選択的NMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンの無作為化対照試験のメタ分析は、メマンチンが脱抑制の有意な改善を誘導することを示唆した(Kishi et al., The effects of memantine on behavioral disturbances in patients with Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Neuropsychiatr Dis Treatment 13: 1909- 1928 (2017);その内容全体が参照により援用される)。
易刺激性/易変性の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(4.6~7.6%)で低いが、MCI(14.7~19.4%)及び認知症(27~36%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
動物及びヒトの機能的磁気共鳴研究は、小脳扁桃に対する前頭前野皮質(PFC)フィードバック調節神経投射における、5-HT2A受容体の特異的関与を指摘している。この受容体は前頭前皮質領域で高度に発現されるため、それは、様々な衝動関連行動などの、情動に基づく行動及び情動に支配される行動の抑制制御に影響を及ぼす(Aznar et al., Regulating prefrontal cortex activation: an emerging role for the 5-HT2A serotonin receptor in the modulation of emotion-based actions? Mol Neurobiol 48(3):841-53 (2013);その内容全体が参照により援用される)。
デキストロメトルファン及びキニジンの組み合わせは、社会的状況に不相応又は不適切であってもよい、情動易変性、無制御な号泣又は笑いによって特徴付けられる情動調節障害を有する患者において、好ましい治療効果をもたらす(Pioro, Review of Dextromethorphan 20 mg/Quinidine 10 mg (NUEDEXTA) for Pseudobulbar affect. Neurol Ther 3(1):15-28 (2014);その内容全体が参照により援用される)。ADを有する患者では、別の非選択的NMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンによる治療は、易刺激性/易変性についてのNPI項目のスコアを有意に減少させる(Ishikawa et al., The effect of memantine on sleep architecture and psychiatric symptoms in patients with Alzheimer’s disease. Acta Neuropsychiatr 28(3):157-64 (2016);その内容全体が参照により援用される)。アルツハイマー病を有する患者を対象とした、メマンチンの無作為化対照研究のメタ分析は、メマンチンが易刺激性/易変性において対照より優れていることを示唆した(Kishi et al., The effects of memantine on behavioral disturbances in patients with Alzheimer’s disease: a meta- analysis. Neuropsychiatr Dis Treatment 13: 1909-1928 (2017);その内容全体が参照により援用される)。
異常な運動活動の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(0.4~0.6%)で低いが、MCI(1.3~3.8%)及び認知症(16~32%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
ADにおける異常な運動行動は、T102Cなどの5-HT2A受容体多型と有意に関連することが判明している(Lam et al., 5-HT2A T102C receptor polymorphism and neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease. Int J Geriatr Psychiatry 19(6):523-6 (2004); Pritchard et al., Role of 5HT 2A and 5HT 2C polymorphisms in behavioural and psychological symptoms of Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 29(3):341-7 (2008))。
パーキンソン病などの様々な神経疾患状態における異常な運動行動は、基底核における異常可塑性プロセスに起因し、それはグルタミン酸/NMDA受容体遮断(Chase et al., Striatal glutamatergic mechanisms and extrapyramidal movement disorders. Neurotox Res 5(1- 2):139-46 (2003);その内容全体が参照により援用される)、及びα3β4含有受容体における拮抗作用(Maisonneuve et al., Anti-addictive actions of an iboga alkaloid congener: a novel mechanism for a novel treatment. Pharmacol Biochem Behav 75(3):607-18 (2003);その内容全体が参照により援用される)、デキストロメトルファンの2つの受容体標的に対して感受性の行動感作として発現されてもよい(Taylor et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther 164:170-82 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
夜間行動障害の有病率は、一般集団では、正常な認知老化を有する人々(10.9%)で中程度であるが、MCI(13.8~18.3%)及び認知症(27.4~39%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
5-HT2A受容体は、睡眠の調節において主要な役割を果たす(Vanover et al., Role of 5- HT2A receptor antagonists in the treatment of insomnia. Nat Sci Sleep 2:139-50 (2010))。中等度から重度のパーキンソン病を有する患者を対象とした、5-HT2A受容体逆作動薬ピマバンセリンの安全性及び有効性を評価する臨床試験では、参加者はプラセボと比較したピマバンセリンの夜間睡眠及び昼間覚醒の改善を報告した(Cummings et al., Pimavanserin for patients with Parkinson’s disease psychosis: a randomised, placebo-controlled phase 3 trial. Lancet 383: 533-40 (2014))。別の5-HT2A受容体逆作動薬であるエプリバンセリンは、不眠症を有する患者における臨床的有効性を実証している(European Medicines Agency. Withdrawal Assessment Report for Sliwens (Eplivanserin), March 18, 2010, London. EMA/CHMP/90435/2010;その内容全体が参照により援用される)。
アルツハイマー病を有する患者を対象とした、別の非選択的NMDA受容体チャネル遮断薬であるメマンチンの無作為化対照試験のメタ分析は、メマンチンが夜間障害/日周リズム障害の有意な改善を誘導することを示唆した(Kishi et al., The effects of memantine on behavioral disturbances in patients with Alzheimer’s disease: a meta-analysis. Neuropsychiatr Dis Treatment 13: 1909-1928 (2017);その内容全体が参照により援用される)。ADを有する患者では、メマンチンは断片化睡眠の減少に有効であり、睡眠ポリグラフは、より長い総睡眠、睡眠効率及びステージIIで過ごした時間の増加、並びに夜間の覚醒及び周期的な四肢運動指数及びステージIで過ごした時間の減少を明らかにした(Ishikawa et al., The effect of memantine on sleep architecture and psychiatric symptoms in patients with Alzheimer’s disease. Acta Neuropsychiatr 28(3):157-64 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
食欲及び摂食異常の有病率は、一般集団で、正常な認知老化を有する人々(5.3%)で低いが、MCI(10.4~10.7%)及び認知症(19.6~34%)を有する対象では増加する(Geda et al., The Prevalence of Neuropsychiatric Symptoms in Mild Cognitive Impairment and Normal Cognitive Aging: A Population-Based Study. Arch Gen Psychiatry 65(10): 1193-1198 (2008); Lyketsos et al., Prevalence of neuropsychiatric symptoms in dementia and mild cognitive impairment: results from the cardiovascular health study. JAMA 288(12):1475-83 (2002); Zhao et al., The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer’s disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord 190:264-71 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
セロトニンは、様々なタイプの摂食障害の出現及び維持において主要な役割を果たす(Steiger, Eating disorders and the serotonin connection: state, trait and developmental effects. J Psychiatry Neurosci 29(1):20-9 (2004);その内容全体が参照により援用される)。5-HT2A受容体(HTR2A)をコードする遺伝子は、摂食障害をはじめとする数多くの精神神経表現型における機能的候補に結びつけられている(Norton et al., HTR2A: association and expression studies in neuropsychiatric genetics. Ann Med 37(2):121-9 (2005);その内容全体が参照により援用される)。摂食行動及び食欲はまた、デキストロメトルファンの受容体標的の1つであるセロトニン輸送体によって調節され、これは摂食障害を有する患者において影響を被る(Spies et al., The serotonin transporter in psychiatric disorders: insights from PET imaging. Lancet Psychiatry 2(8):743-55 (2015);その内容全体が参照により援用される)。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、コカイン、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、覚醒剤、メタンフェタミン)、ニコチン、アルコール、オピオイド、抗不安薬及び催眠薬、大麻(マリファナ)、アンフェタミン、幻覚剤、フェンシクリジン、揮発性溶剤、揮発性亜硝酸に対する薬物依存症、常習癖をはじめとするが、これに限定されるものではない、物質使用障害及び常習癖の治療方法である。ニコチン常習癖には、喫煙タバコ、葉巻及び/又はパイプなどのあらゆる既知の形態のニコチン常習癖、及び噛みタバコの常習癖が含まれる。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、記憶喪失、健忘症/健忘症症候群、てんかん、意識障害、昏睡、注意力低下、言語障害、音声痙攣、パーキンソン病、レノックス・ガストー症候群、自閉症、運動過剰症候群、及び統合失調症などの知的欠陥を伴う障害をはじめとするが、これに限定されるものではない、脳機能障害の治療方法を含む。脳機能障害としてはまた、脳卒中、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症、脳静脈血栓症、頭部損傷などをはじめとするが、これに限定されるものではない、脳血管性疾患によって引き起こされる障害も挙げられ、症状としては、意識障害、認知症、昏睡、注意力低下、感情鈍麻、及び言語障害が挙げられる。虚血の5分前における2.0μLのデキストロメトルファン(DEX、100μモル/L)の海馬内注射は、EEG変化の回復、EEGの全パワースペクトル、及び再灌流後の優位周波数のパワーを速めた。EEGの全パワーは、再灌流後240分で92+/-30(P<0.01)に増加した。DEXは、10分間の脳虚血及び24時間の再灌流後における、重度の虚血性神経細胞損傷を実質的に軽減した。DEXは、スナネズミにおける一過性脳虚血及び再灌流傷害に対して神経保護効果がある(Ying et al., Neuroprotective effects of dextromethorphan against transient cerebral ischemia/reperfusion injury in gerbils, Acta Pharmacol Sinica 16(2):133-6 (March 1995))。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、静座不能、無動症、連合運動、アテトーゼ、運動失調、バリスム、片側バリスム、運動緩徐、脳性麻痺、舞踏病、ハンチントン病、リウマチ性舞踏病、シデナム舞踏病、ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、眼瞼痙攣、痙性斜頸、ドーパミン応答性ジストニア、パーキンソン病、むずむず足症候群(RLS)、振戦、本態性振戦、トゥレット症候群、及びウィルソン病をはじめとするが、これに限定されるものではない、運動障害の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、レビー小体型認知症、混合型認知症、前頭側頭認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、常圧水頭症、ハンチントン病、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、及び前頭側頭葉変性症(FTLD)をはじめとするが、これに限定されるものではない、認知症の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性延髄麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症、ポリオ後症候群(PPS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脊髄性運動萎縮症、テイ・サック病、サンドホフ病、及び遺伝性痙性対麻痺をはじめとするが、これに限定されるものではない、運動神経疾患の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性運動失調症、脊髄小脳性運動失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、延髄性筋萎縮症、フリードライヒ病、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ウィルソン病、メンケス病、副腎白質萎縮症、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、家族性痙性対麻痺、神経線維腫症、オリーブ橋小脳(olivopontine cerebellar)小脳萎縮症又は変性、線条体黒質変性症、ギラン・バレー症候群、及び痙性対麻痺をはじめとするが、これに限定されるものではない、神経変性疾患の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、てんかん発作、非てんかん発作、てんかん、熱性発作;単純部分発作、ジャクソン発作、複合部分発作、及び部分連続てんかんをはじめとするが、これに限定されるものではない部分発作;全身強直間代発作、欠神発作、脱力発作、ミオクローヌス発作、若年性ミオクローヌス発作、及び小児痙攣をはじめとするが、これに限定されるものではない全身発作;並びにてんかん重積状態をはじめとするが、これに限定されるものではない、発作障害の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、片頭頭痛、三叉神経痛、緊張、及びビング・ホートン症候群などの群発性頭痛をはじめとするが、これに限定されるものではない、頭痛の治療方法を含む。
本発明の別の実施形態は、DEXの治療的有効量と、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬の治療的有効量とをそれを必要とする個人に投与することを含む、レット症候群、自閉症、耳鳴症、意識障害、性的機能不全、難治性咳嗽、ナルコレプシー、カタプレキシー;外転筋痙性発声障害、内転筋痙性発声障害、筋張力発声障害、及び声の震えをはじめとするが、これに限定されるものではない、無制御な喉頭筋痙攣に起因する発声障害;糖尿病性ニューロパシー、メトトレキサート神経毒性などの化学療法誘発性神経毒性;ストレス尿失禁、切迫性尿失禁、及び大便失禁をはじめとするが、これに限定されるものではない、失禁;並びに勃起不全をはじめとする、その他の神経学的障害の治療方法を含む。
いくつかの実施形態では、DEXと、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬、これらの化合物のいずれかの代謝産物、誘導体、代謝産物若しくはプロドラッグとの組み合わせを使用して、疼痛、情動調節障害、うつ病(治療抵抗性うつ病を含む)、記憶及び認知に関連する障害、統合失調症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レット症候群、発作、咳嗽(慢性咳嗽を含む)などを治療してもよい。
いくつかの実施形態では、DEXと、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬との組み合わせを使用して、皮膚炎を治療してもよい。
いくつかの実施形態では、DEXと、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬、これらの化合物のいずれかの代謝産物、誘導体、若しくはプロドラッグと、DEX(with DEX)とを同時投与することを含む方法によってDEXの疼痛軽減特性が増強される。
いくつかの実施形態では、これらの方法を使用して筋骨格痛、神経障害性疼痛、がん関連疼痛、急性疼痛、侵害受容疼痛などをはじめとするが、これに限定されるものではない、任意の疼痛を治療し又は緩和を提供する。
筋骨格痛の例としては、腰痛(すなわち、腰仙部痛)、原発性月経困難症、及び関節リウマチ、関節リウマチ、変形性関節症、骨関節症(osteoarthosis)、強直性脊椎炎をはじめとする軸性脊椎関節炎などに関連する疼痛などの関節炎痛が挙げられる。
いくつかの実施形態で、DEXと、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬との組み合わせを使用して、慢性筋骨格痛を治療する。
神経障害性疼痛の例としては、特発性及び糖尿病性末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、単神経根障害、幻肢痛、中枢性疼痛などが挙げられる。神経障害性疼痛のその他の原因としては、がん関連疼痛、腰神経根圧迫、脊髄損傷、脳卒中後疼痛、中枢性多発性硬化症疼痛、HIV関連神経障害、及び放射線療法又は化学療法関連神経障害などが挙げられる。
「治療する」若しくは「治療」という用語は、ヒト若しくは他の動物における疾患の診断、治癒、緩和、治療若しくは予防、又はヒト若しくはその他の動物の体の構造若しくは任意の機能に影響を及ぼす任意の活動を含む。
いくつかの実施形態では、任意の5-HT2A受容体拮抗薬をDEXと組み合わせて使用して、DEXの治療特性を改善してもよい。DEX及び5-HT2A受容体拮抗薬は、別々の組成物若しくは剤形中で投与されてもよく、又は双方を含む単一組成物若しくは剤形中で投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、DEXと同時投与され得る5-HT2A受容体拮抗薬としては、式Iの化合物若しくはSARPO、クロミプラミン、ドキセピン、フルオキセチン、ミアンセリン、イミプラミン、2-クロロイミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ノルトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、パロキセチン、トラゾドン、シタロプラム、セルトラリン、アリールオキシインダンアミン、ベナクチジン、エスシタロプラム、フルボキサミン、ベンラフェキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、ネファゾドン、セレギリン、シブトラミン、ミルナシプラン、テソフェンシン、ブラソフェンシン、モクロベミド、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ブトリプチリン、ドスレピン、ジベンゼピン、イプリンドール、ロフェプラミン、オピプラモール、ノルフルオキセチン、ダポキセチンなど、又はこれらの化合物のいずれかの代謝産物若しくはプロドラッグ、又はこれらの化合物のいずれかの薬学的に許容可能な塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを組み合わせることによって、いずれかの成分を単独で投与することによって達成されるよりも、より大きな疼痛緩和などのより高い効能がもたらされる。質高代謝個体では、DEXは急速且つ徹底的に代謝され得て、高用量であってさえも低い全身的曝露がもたらされる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、抗うつ及び鎮痛特性を有することに加えて、DEX代謝の阻害剤でもある。式Iの化合物又はSARPOをはじめとする式Iの化合物又はSARPOの代謝産物、誘導体、代謝産物もまた、DEX代謝の阻害剤である。したがって、体内で急速に変換される、式Iの化合物又はSARPOの形態などの式Iの化合物又はSARPO(塩、水和物、溶媒和化合物、多形体など)は、式Iの化合物又はSARPOのプロドラッグである。
いくつかの実施形態では、方法は、DEX代謝の阻害を含んでDEX血漿レベルを増強し、疼痛、うつ病、禁煙などをはじめとする神経学的障害の軽減などの、相加的又は相乗的な有効性をもたらす。DEXと式Iの化合物又はSARPOとの組み合わせの同時投与によるDEX代謝の阻害は、数多くの潜在的利益を有する。いくつかの実施形態では、SARPOとDEXとの組み合わせの投与、又はDEXと式Iの化合物若しくはSARPOとの同時投与は、数多くの病状に対する式Iの化合物若しくはSARPOの有効性を増強する。DEXと式Iの化合物又はSARPOの同時投与は、数多くの病状に対する式Iの化合物又はSARPOの鎮痛特性を増強してもよい。DEXと式Iの化合物又はSARPOとの同時投与は、より早い作用開始などの、数多くの病状に対する式Iの化合物又はSARPOの抗うつ特性増強してもよい。
いくつかの実施形態では、DEXと式Iの化合物又はSARPOとを同時投与する方法は、DEXで治療された結果として有害事象を経験するリスクがあるなどの、それを必要とする対象における、DEXによる治療に関連する傾眠状態又は混乱などの有害事象の可能性を低減するためである。
いくつかの実施形態では、DEXと式Iの化合物又はSARPOを同時投与する方法は、式Iの化合物又はSARPOで治療された結果として有害事象を経験するリスクがあるなどの、それを必要とする対象における、式Iの化合物又はSARPOによる治療に関連する発作などの有害事象を軽減するためである。
いくつかの実施形態では、DEXと式Iの化合物又はSARPOとを同時投与する方法は、これらの化合物のいずれかに関連する中枢神経系有害事象、胃腸事象、又はその他の種類の有害事象を軽減するためである。中枢神経系(CNS)有害事象としては、神経過敏、目眩、不眠、浮遊感、振戦、幻覚、痙攣、CNSうつ病、恐怖、不安、頭痛、易刺激性又は興奮の増加、耳鳴症、傾眠状態、目眩、鎮静、傾眠、混乱、見当識障害、倦怠感、共調運動不能、疲労、多幸感、緊張感、不眠症、睡眠障害、けいれん発作、緊張状態、ヒステリー、妄想、妄想、頭痛及び/又は片頭痛、並びに眼精疲労などの錐体外路症状、頻拍、過緊張、筋緊張亢進、そして舌の突起。多幸感、神経過敏、不眠症、睡眠障害、痙攣発作、興奮、緊張様状態、ヒステリー、幻覚、妄想、妄想症、頭痛及び/又は片頭痛、並びに注視痙攣などの錐体外路症状、斜頸、興奮性亢進、筋緊張亢進、運動失調、及び挺舌が挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、DEXと式Iの化合物又はSARPOとを同時投与する方法は、悪心、嘔吐、腹痛、嚥下障害、消化不良、下痢、腹部膨満、鼓腸、消化性潰瘍出血を伴う、軟便、便秘、胃痛、胸焼け、ガス、食欲減退、胃の充満感、消化不良、胃内ガス貯留、胃酸過多、口渇、胃腸障害、及び胃の疼痛をはじめとするが、これに限定されるものではない、胃腸有害事象を軽減する。
いくつかの実施形態では、DEXと式Iの5-HT2A受容体拮抗薬又はSARPOを同時投与する方法は、単回投与剤形での、又は治療の少なくとも一部の時間にわたり対象において双方が一緒にありさえすれば、同時若しくは異なる時点における一斉の若しくは逐次の2つの別々の剤形での投与(administrtion)を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、疼痛緩和を必要とする対象の治療方法であり、方法は、式Iの化合物又はSARPOと式IIの化合物又はDEXとの組み合わせの同時投与を含み、式Iの化合物若しくはSARPO単独と比較して、又はDEX単独と比較して、潜在的により早い作用開始などの改善された疼痛緩和特性のために(due the)、疼痛は組み合わせによる治療によって緩和される。
いくつかの実施形態では、組み合わせ方法は、式Iの化合物又はSARPO単独と比較して、疼痛軽減特性を少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも100%、最大約500%又は最大1000%、約0.5%~約1000%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約90%~約100%、約100%~約110%、約110%~約120%、約120%~約130%、約130%~約140%、約140%~約150%、約150%~約160%、約160%~約170%、約170%~約180%、約180%~約190%、約190%~約200%、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の量の疼痛軽減を改善する。
いくつかの実施形態では、組み合わせは、DEX単独と比較して比較して(as compared to as compared to)、疼痛軽減特性を少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも100%、最大約500%又は最大1000%、約0.5%~約1000%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約90%~約100%、約100%~約110%、約110%~約120%、約120%~約130%、約130%~約140%、約140%~約150%、約150%~約160%、約160%~約170%、約170%~約180%、約180%~約190%、約190%~約200%、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の量の疼痛軽減を改善する。
特に断りのない限り、構造、名称、又はその他のあらゆる手段による、DEX、式Iの化合物又はSARPO、及びSARPODEX(商標)などの本明細書における任意の化合物への言及は、薬学的に許容可能な塩;多形体、溶媒和化合物、水和物などの代替の固体形態;互変異性体;重水素修飾されたDEX及び式Iの化合物又はSARPOなどの重水素修飾された化合物;又は化合物が本明細書に記載されるように使用される条件下で、本明細書に記載される化合物に急速に変換されてもよい任意の化学種を含む。重水素修飾されたDEX及び式Iの化合物又はSARPOとしては、下に示されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
剤形又は組成物は、単独の又はビヒクル内にある、DEXと、式Iの化合物又はSARPOなどのDEXの代謝を阻害する化合物との配合物又は混合物であってもよい。例えば、DEXと式Iの化合物又はSARPOとは、相互内に分散していてもよく、又はビヒクル内に一緒に分散していてもよい。2つの異なる薬物の2つの粉末が固体ビヒクル材料と混合されて混合が固体形態で実施される場合に起こるかもしれないように、分散体は、小さな個々の粒子が実質的に1つの化合物である固体材料の混合物を含んでもよいが、小さな粒子は相互内に分散する。いくつかの実施形態では、DEXと式Iの化合物又はSARPOとは、組成物又は剤形中で実質的に均一に分散されてもよい。代案としては、DEXと式Iの化合物又はSARPOとは、組成物又は剤形中の別々のドメイン又は相内にあり得る。例えば、1つの薬物がコーティング中にあってもよく、別の薬物がコーティング内のコア中に存在してもよい。例えば、1つの薬物が持続放出のために調合されてもよく、別の薬物が即時放出のために調合されてもよい。
いくつかの実施形態は、持続放出をもたらす形態の式Iの化合物又はSARPOと、即時放出をもたらす形態のDEXとを含有する(又は逆もまた同様である)錠剤を投与することを含む。式Iの化合物又はSARPOの持続放出が達成されてもよい数多くの方法がある一方で、いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと組み合わされる。例えば、式Iの化合物又はSARPO、塩酸塩の粒子を微結晶セルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばMETHOCEL(商標))と混合し、配合粉末の混合物が形成され得る。これは次に、単一錠剤中で、即時放出DEXと組み合わされ得る。
DEX及び/又は式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬は、選択された投与経路及び標準製薬法に基づいて選択された薬学的担体と組み合わされてもよい(Troy, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, 2005)。活性成分と担体の相対比は、例えば、化合物の溶解性及び化学的性質、選択された投与経路、並びに標準製薬法によって判定されてもよい。
治療用化合物は、患者の体内における活性剤と所望の部位又は作用部位との接触をもたらしてもよい、任意の手段によって投与されてもよい。化合物は、個々の治療剤として、又は治療剤の組み合わせでのいずれかで、医薬品と組み合わせて使用するために利用できる任意の従来の手段によって投与されてもよい。例えば、それらは医薬組成物中の唯一の活性薬剤として投与されてもよく、又はそれらはその他の治療活性成分と組み合わせて使用され得る。
治療用化合物は、選択された投与経路に適合した様々な形態で、例えば経口的又は非経口的に、対象に投与されてもよい。この点において非経口投与としては、以下の経路による投与が挙げられる:静脈内、筋肉内、皮下、眼内、滑液嚢内;経皮、眼部、舌下及びバッカルなどの経上皮;眼部、皮膚、眼球、直腸などの局所的;並びに吹送、煙霧剤を介した経鼻吸入;並びに直腸全身的。
式Iの化合物又はSARPOに対するDEXの比率は、変動してもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOに対するDEXの重量比は、約0.1~約10、約0.1~約2、約0.2~約1、約0.1~約0.5、約0.1~約0.3、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.5~約0.7、約0.8~約1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.45、約0.6、約0.9、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の比率であってもよい。0.1の比率は、DEXの重量が、式Iの化合物又はSARPOの重量の1/10であることを示す。10の比率は、DEXの重量が、式Iの化合物又はSARPOの重量の10倍であることを示す。
治療用組成物中のDEXの量は、変動してもよい。例えば、いくつかの液体組成物は、約0.0001%(w/v)~約50%(w/v)、約0.01%(w/v)~約20%(w/v)、約0.01%~約10%(w/v)、約0.001%(w/v)~約1%(w/v)、約0.1%(w/v)~約0.5%(w/v)、約1%(w/v)~約3%(w/v)、約3%(w/v)~約5%(w/v)、約5%(w/v)~約7%(w/v)、約7%(w/v)~約10%(w/v)、約10%(w/v)~約15%(w/v)、約15%(w/v)~約20%(w/v)、約20%(w/v)~約30%(w/v)、約30%(w/v)~約40%(w/v)、又は約40%(w/v)~約50%(w/v)のDEXを含んでもよい。
いくつかの液体剤形は、約10mg~約500mg、約30mg~約350mg、約50mg~約200mg、約50mg~約70mg、約20mg~約50mg、約30mg~約60mg、約40mg~約50mg、約40mg~約42mg、約42mg~約44mg、約44mg~約46mg、約46mg~約48mg、約48mg~約50mg、約80mg~約100mg、約110mg~約130mg、約170mg~約190mg、約45mg、約60mg、約90mg、約120mg、又は約180mgのDEX、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある、範囲内の任意の量のDEXを含有してもよい。
いくつかの固体組成物は、少なくとも約5%(w/w)、少なくとも約10%(w/w)、少なくとも約20%(w/w)、少なくとも約50%(w/w)、少なくとも約70%(w/w)、少なくとも約80%、約10%(w/w)~約30%(w/w)、約10%(w/w)~約20%(w/w)、約20%(w/w)~約30%(w/w)、約30%(w/w)~約50%(w/w)、約30%(w/w)~約40%(w/w)、約40%(w/w)~約50%(w/w)、約50%(w/w)~約80%(w/w)、約50%(w/w)~約60%(w/w)、約70%(w/w)~約80%(w/w)、又は約80%(w/w)~約90%(w/w)のDEXを含んでもよい。
いくつかの固体剤形は、約10mg~約500mg、約30mg~約350mg、約20mg~約50mg、約30mg~約60mg、約40mg~約50mg、約40mg~約42mg、約42mg~約44mg、約44mg~約46mg、約46mg~約48mg、約48mg~約50mg、約50mg~約200mg、約50mg~約70mg、約80mg~約100mg、約110mg~約130mg、約170mg~約190mg、約60mg、約90mg、約120mg、又は約180mgのDEX、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある、範囲内の任意の量のDEXを含有してもよい。
治療用組成物中の式Iの化合物又はSARPOの量は、変動してもよい。DEXの血漿レベルを増加させることが所望される場合、式Iの化合物又はSARPOは、DEXの血漿レベルを増加させる量で投与されるべきである。例えば、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同一量のDEXの血漿濃度の少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、又は少なくとも約80倍である、対象におけるDEXの血漿濃度をもたらす量で投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、投与時点からの12時間曲線下面積(AUC0~12)に、又はDEX投与の12時間後(Cavg)の対象における平均血漿濃度に、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同一量のDEXの血漿濃度の少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、又は少なくとも約80倍の血漿濃度をもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同一量のDEXの血漿濃度の少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、又は少なくとも約40倍である、対象におけるDEXの最大血漿濃度(Cmax)をもたらす量で対象に投与される。
式Iの化合物又はSARPOの同時投与では、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同量のDEXと比較して、式Iの化合物又はSARPOが投与された初日にDEX血漿レベルの上昇が起こり得る。例えば、式Iの化合物又はSARPOが投与された初日におけるDEX血漿レベルは、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうレベルの少なくとも約1.5倍、少なくとも約少なくとも2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、又は少なくとも約10倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOが投与された初日のDEX AUCは、式Iの化合物又はSARPOなしで同一の量DEXを投与することによって達成されたであろうAUCの少なくとも2倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOが投与された初日のDEXCmaxは、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうCmaxの少なくとも2倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOが投与された初日のDEXトラフレベル(例えば、投与12時間後の血漿レベル)は、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうトラフレベルの少なくとも2倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、少なくとも2日間のDEXによる治療の初日に投与され、DO血漿レベルの減少は、式Iの化合物又はSARPOなしで投与された同一量のDEXと比較して、式Iの化合物又はSARPOとDEXとを同時投与した初日に起こる。例えば、初日のDO血漿レベルは、式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDO血漿レベルと比較して、少なくとも5%低下してもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、DEXによる治療を必要とする対象に、少なくとも5日連続して同時投与され、5日目に、DEX血漿レベルは、5日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDEX血漿レベルよりも高い。例えば、5日目の(例えば、投与の0時間、1時間、3時間、6時間、又は12時間後)のDEX血漿レベルは、5日間連続して式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうレベルの少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも65倍、又は最大約500倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOとDEXとは、DEXによる治療を必要とする対象に少なくとも6日間連続して同時与され、6日目に、DEX血漿レベルは、6日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDEX血漿レベルよりも高い。例えば、6日目の(例えば、投与の0時間、1時間、3時間、6時間、又は12時間後)のDEX血漿レベルは、6日間連続して式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうレベルの少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも75倍、又は最大約500倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOとDEXとは、DEXによる治療を必要とする対象に少なくとも7日間連続して同時与され、7日目に、DEX血漿レベルは、7日間連続して、式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDEX血漿レベルよりも高い。例えば、7日目の(例えば投与の0時間、1時間、3時間、6時間、又は12時間後)のDEX血漿レベルは、7日間連続して式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうレベルの少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、又は最大約500倍であってもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOとDEXとは少なくとも8日間連続して同時投与され、DEXは、8日目に、例えば、式Iの化合物又はSARPOとDEXとの同時投与の0時間、1時間、3時間、6時間、又は12時間後に、8日間連続して式Iの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろう血漿レベルの少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、又は最大約1,000倍の血漿レベルを有する。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPO、及びDEXは、DEXによる治療を必要とする対象に少なくとも8日間連続して同時投与され、8日目に、DO血漿レベルは、8日間連続して式Iの化合物又はSARPOなしで投与される同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDO血漿レベルより低い。例えば、8日目のDO血漿レベル(例えば、投与の0時間、1時間、3時間、6時間、又は12時間後)は、8日間連続してIの化合物又はSARPOなしで同一量のDEXを投与することによって達成されたであろうDO血漿レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%低下してもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約100nghr/mL、少なくとも約200nghr/mL、少なくとも約500nghr/mL、少なくとも約600nghr/mL、少なくとも約700nghr/mL、少なくとも約800nghr/mL、少なくとも約900nghr/mL、少なくとも約1,000nghr/mL、少なくとも約1,200nghr/mL、少なくとも1,600nghr/mL、又は最大約15,000nghr/mLの式Iの化合物又はSARPOのAUC0~12をもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約10ng/mL、少なくとも約20ng/mL、少なくとも約40ng/mL、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約60ng/mL、少なくとも約70ng/mL、少なくとも約80ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも120ng/mL、又は最大約1,500ng/mLの式Iの化合物又はSARPOのCavgをもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約10ng/mL、少なくとも約20ng/mL、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約110ng/mL、少なくとも約120ng/mL、少なくとも約130ng/mL、少なくとも約140ng/mL、少なくとも200ng/mL、又は最大約1,500ng/mLの式Iの化合物又はSARPOのCmaxをもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、液体組成物は、約0.0001%(w/v)~約50%(w/v)、約0.01%(w/v)~約20%(w/v)、約0.01%~約10%(w/v)、約1%(w/v)~約3%(w/v)、約3%(w/v)~約5%(w/v)、約5%(w/v)~約7%(w/v)、約5%(w/v)~約15%(w/v)、約7%(w/v)~約10%(w/v)、約10%(w/v)~約15%(w/v)、約15%(w/v)~約20%(w/v)、約20%(w/v)~約30%(w/v)、約30%(w/v)~約40%(w/v)、又は約40%(w/v)~約50%(w/v)の式Iの化合物若しくはSARPO、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある任意の量の式Iの化合物若しくはSARPOを含む。
いくつかの実施形態では、液体剤形は、約10mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約10mg~約50mg、約50mg~約100mg、約40mg~約90mg、約200mg~約300mg、約70mg~約95mg、約100mg~約200mg、約105mg~約200mg、約110mg~約140mg、約180mg~約220mg、約280mg~約320mg、約200mg、約150mg、又は約300mgの式Iの化合物若しくはSARPO、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある任意の量の式Iの化合物若しくはSARPOを含有する。
いくつかの実施形態では、固体組成物は、少なくとも約5%(w/w)、少なくとも約10%(w/w)、少なくとも約20%(w/w)、少なくとも約50%(w/w)、少なくとも約70%(w/w)、少なくとも約80%、約10%(w/w)~約30%(w/w)、約10%(w/w)~約20%(w/w)、約20%(w/w)~約30%(w/w)、約30%(w/w)~約50%(w/w)、約30%(w/w)~約40%(w/w)、約40%(w/w)~約50%(w/w)、約50%(w/w)~約80%(w/w)、約50%(w/w)~約60%(w/w)、約70%(w/w)~約80%(w/w)、又は約80%(w/w)~約90%(w/w)の式Iの化合物若しくはSARPO、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある任意の量の式Iの化合物若しくはSARPOを含む。
いくつかの実施形態では、固体剤形は、約10mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約10mg~約50mg、約50mg~約100mg、約40mg~約90mg、約200mg~約300mg、約70mg~約95mg、約100mg~約200mg、約105mg~約200mg、約110mg~約140mg、約50mg~約150mg、約180mg~約220mg、約280mg~約320mg、約200mg、約150mg、又は約300mgの式Iの化合物若しくはSARPO、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある任意の量の式Iの化合物若しくはSARPOを含有する。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約3μM、0.1μM~約1μM、約0.2μM~約2μM、1μM~約10μM、約1μM~約5μM、約2μM~約3μM、又は約2.8μM~約3μM、約1.5μM~約2μM、約4.5μM~約5μM、約2.5μM~約3μM、約1.8μM、約4.8μM、約2.9μM、約2.8μM、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の血漿レベルの式Iの化合物又はSARPOの血漿レベルをもたらす用量で投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約3μM、0.1μM~約1μM、約0.2μM~約2μM、1μM~約10μM、約1μM~約5μM、約2μM~約3μM、又は約2.8μM~約3μM、約1.5μM~約2μM、約4.5μM~約5μM、約2.5μM~約3μM、約1.8μM、約4.8μM、約2.9μM、約2.8μM、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の血漿レベルの式Iの化合物又はSARPOの血漿レベルをもたらす用量で投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約3,000nghr/mL、少なくとも約7,000nghr/mL、少なくとも約10,000nghr/mL、少なくとも約15,000nghr/mL、少なくとも約20,000nghr/mL、少なくとも約30,000nghr/mL、最大約50,000nghr/mL、最大約150,000nghr/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のAUCの式Iの化合物又はSARPOのAUC0~12をもたらす量で、対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約300ng/mL、少なくとも約700ng/mL、少なくとも約1,000ng/mL、少なくとも約1,500ng/mL、少なくとも約2,000ng/mL、少なくとも約4,000ng/mL、最大約10,000ng/mL、最大約50,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCmaxの式Iの化合物又はSARPOのCmaxをもたらす量で対象に与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約200ng/mL、少なくとも約300ng/mL、少なくとも約700ng/mL、少なくとも約1,000ng/mL、少なくとも約1,500ng/mL、少なくとも約2,000ng/mL、少なくとも約4,000ng/mL、最大約10,000ng/mL、最大約50,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCavgの式Iの化合物又はSARPOのCavgをもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物若しくはSARPO、代謝産物;又は式Iの化合物若しくはSARPO、代謝産物のプロドラッグは、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約3μM、0.1μM~約1μM、約0.2μM~約2μM、1μM~約10μM、約1μM~約5μM、約2μM~約3μM、又は約2.8μM~約3μM、約1.5μM~約2μM、約4.5μM~約5μM、約2.5μM~約3μM、約1.8μM、約4.8μM、約2.9μM、約2.8μM、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の血漿レベルの式Iの化合物若しくはSARPO、代謝産物の血漿レベルをもたらす用量で投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約1,000nghr/mL、少なくとも約2,000nghr/mL、少なくとも約4,000nghr/mL、少なくとも約5,000nghr/mL、少なくとも約8,000nghr/mL、最大約10,000nghr/mL、最大約40,000nghr/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のAUCの式Iの化合物又はSARPOのAUC0~12をもたらす量で、対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約200ng/mL、少なくとも約400ng/mL、少なくとも約500ng/mL、少なくとも約600ng/mL、少なくとも約800ng/mL、最大約2,000ng/mL、最大約10,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCmaxの式Iの化合物又はSARPOのCmaxをもたらす量で対象に与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約300ng/mL、少なくとも約400ng/mL、少なくとも約600ng/mL、少なくとも約800ng/mL、最大約2,000ng/mL、最大約10,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCavgの式Iの化合物又はSARPOのCavgをもたらす量で対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約3μM、0.1μM~約1μM、約0.2μM~約2μM、1μM~約10μM、約1μM~約5μM、約2μM~約3μM、又は約2.8μM~約3μM、約1.5μM~約2μM、約4.5μM~約5μM、約2.5μM~約3μM、約1.8μM、約4.8μM、約2.9μM、約2.8μM、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の血漿レベルの式Iの化合物又はSARPOの血漿レベルをもたらす用量で投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約200nghr/mL、少なくとも約400nghr/mL、少なくとも約700nghr/mL、少なくとも約1,000nghr/mL、少なくとも約1,500nghr/mL、少なくとも約3,000nghr/mL、最大約5,000nghr/mL、最大約30,000nghr/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の血漿レベルの式Iの化合物又はSARPOのAUC0~12をもたらす量で、対象に投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約30ng/mL、少なくとも約60ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約150ng/mL、少なくとも約200ng/mL、少なくとも約300ng/mL、最大約1,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCmaxの式Iの化合物又はSARPOのCmaxをもたらす量で対象に与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOは、8日目に、対象において、少なくとも約20ng/mL、少なくとも約30ng/mL、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約80ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約150ng/mL、少なくとも約200ng/mL、少なくとも約300ng/mL、最大約1,000ng/mL、最大約5,000ng/mL、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意のCavgの式Iの化合物又はSARPOのCavgをもたらす量で対象に投与される。
DEXと式Iの化合物又はSARPOとの双方を含む組成物では、一部の液体は、約0.0001%(w/v)~約50%(w/v)、約0.01%(w/v)~約20%(w/v)、約0.01%~約10%(w/v)、約1%(w/v)~約3%(w/v)、約3%(w/v)~約5%(w/v)、約5%(w/v)~約7%(w/v)、約5%(w/v)~約15%(w/v)、約7%(w/v)~約10%(w/v)、約10%(w/v)~約15%(w/v)、約15%(w/v)~約20%(w/v)、約20%(w/v)~約30%(w/v)、約30%(w/v)~約40%(w/v)、約40%(w/v)~約50%(w/v)のDEXと式Iの化合物又はSARPOとの合計、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の量を含んでもよい。いくつかの固体組成物は、少なくとも約5%(w/w)、少なくとも約10%(w/w)、少なくとも約20%(w/w)、少なくとも約50%(w/w)、少なくとも約70%(w/w)、少なくとも約80%、約10%(w/w)~約30%(w/w)、約10%(w/w)~約20%(w/w)、約20%(w/w)~約30%(w/w)、約30%(w/w)~約50%(w/w)、約30%(w/w)~約40%(w/w)、約40%(w/w)~約50%(w/w)、約50%(w/w)~約80%(w/w)、約50%(w/w)~約60%(w/w)、約70%(w/w)~約80%(w/w)、約80%(w/w)~約90%(w/w)のDEXと式Iの化合物又はSARPOとの合計、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の量を含んでもよい。いくつかの実施形態では、単一組成物又は剤形中のDEXと式Iの化合物又はSARPOとの重量比は、約0.1~約2、約0.2~約1、約0.1~約0.3、約0.2~約0.4、約0.3~約0.5、約0.5~約0.7、約0.8~約1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.45、約0.6、約0.9、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の比率であってもよい。
いくつかの実施形態では、治療用化合物の治療的有効量は状況に応じて変動してもよく、例えば、DEXの1日用量は、場合によっては、約0.1mg~約1000mg、約40mg~約1000mg、約20mg~約600mg、約60mg~約700mg、約100mg~約400mg、約15mg~約20mg、約20mg~約25mg、約25mg~約30mg、約30mg~約35mg、約35mg~約40mg、約40mg~約45mg、約45mg~約50mg、約50mg~約55mg、約55mg~約60mg、約20mg~約60mg、約60mg~約100mg、約100mg~約200mg、約100mg~約140mg、約160mg~約200mg、約200mg~約300mg、約220mg~約260mg、約300mg~約400mg、約340mg~約380mg、約400mg~約500mg、約500mg~約600mg、約15mg、約30mg、約60mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mgの範囲、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の1日用量であってもよい。DEXは、1日1回投与され;又は1日用量の約半分、3分の1、4分の1、若しくは6分の1の量で、それぞれ1日2回若しくは12時間毎、1日3回、1日4回、若しくは1日6回投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOの1日用量は、場合によっては、約10mg~約1000mg、約50mg~約600mg、約100mg~約2000mg、約50mg~約100mg、約70mg~約95mg、約100mg~約200mg、約105mg~約200mg、約100mg~約150mg、約150mg~約300mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約200mg約300mg、約300mg~約400mg、約400mg~約500mg、約400mg~約600mg、約360mg~約440mg、約560mg~約640mg、又は約500mg~約600mg、約100mg、約150mg、約200mg、約300mg、約400mg、約600mgの範囲、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある範囲内の任意の1日用量であってもよい。式Iの化合物又はSARPOは、1日1回投与されてもよい;又は1日用量の約半分若しくは3分の1の量で、それぞれ1日2回若しくは12時間毎、若しくは1日3回、投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、
1)約50mg/日~約100mg/日、約100mg/日~約150mg/日、約150mg/日~約300mg/日、約150mg/日~約200mg/日、約200mg/日~約250mg/日、約250mg/日~約300mg/日の式Iの化合物若しくはSARPO、又は約300mg/日~約500mg/日の式Iの化合物若しくはSARPO;及び/又は
2)約15mg/日~約60mg/日、約15mg/日~約30mg/日、約30mg/日~約45mg/日、約45mg/日~約60mg/日、約60mg/日~約100mg/日、約80mg/日~約110mg/日、約100mg/日~約150mg/日、又は約100mg/日~約300mg/日のDEX
が、それを必要とする対象に投与される。
いくつかの実施形態では、約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約5mg/日のDEX、約10mg/日のDEX、約15mg/日のDEX、約20mg/日のDEX、約30mg/日のDEX;約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約60mg/日のDEX;約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約90mg/日のDEX;約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約120mg/日のDEX;約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEX;約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約60mg/日のDEX;約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約90mg/日のDEX;約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約120mg/日のDEX;約300mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEX;約300mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約60mg/日のDEX;約300mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約90mg/日のDEX;又は約300mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約120mg/日のDEXとが対象に投与される。
いくつかの実施形態では、約100mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約15mg/日のDEXとが、1、2又は3日間にわたり対象に投与され、約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEXとがそれに続く。いくつかの実施形態では、約100mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEXとが、1、2又は3日間にわたり対象に投与され、約200mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約60mg/日のDEXとがそれに続く。
いくつかの実施形態では、約75mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約15mg/日のDEXとが、1、2又は3日間にわたり対象に投与され、約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEXとがそれに続く。いくつかの実施形態では、約75mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約30mg/日のDEXとが、1、2又は3日間にわたり対象に投与され、約150mg/日の式Iの化合物又はSARPOと約60mg/日のDEXとがそれに続く。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬は、疼痛、うつ病又は咳嗽などの神経学的病状を治療するのに必要な限り、投与されてもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はSARPOなどの5-HT2A受容体拮抗薬とDEXとが、少なくとも1日に1回、1日1回又は1日2回など、少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも14日間、少なくとも30日間、少なくとも60日間、少なくとも90日間、少なくとも180日間、少なくとも365日間以上投与される。
いくつかの実施形態では、治療用化合物は、例えば、不活性希釈剤と共に、又は食用担体と共に、経口投与のために調合されてもよく、又はそれは、硬又は軟ゼラチンカプセルに封入され、錠剤に圧縮され、又は食餌療法の食物に直接組み込まれてもよい。経口治療投与では、活性化合物は賦形剤に組み込まれて、経口摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用されてもよい。
いくつかの実施形態では、錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤などは、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ若しくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、乳糖、若しくはサッカリンなどの甘味料;又はペパーミント、ウインターグリーン油、若しくはチェリー香料などの香味剤の1種又は複数種もまた含有してもよい。単位剤形がカプセル剤である場合、それは上記の種類の材料に加えて液体担体を含有してもよい。様々なその他の材料がコーティングとして存在してもよく、例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、シェラック、砂糖又はその双方で被覆されてもよい。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素、及び例えば、チェリー又はオレンジ香味料などの香味剤を含有してもよい。剤形又は医薬組成物中の物質は、薬学的に純粋であり、使用される量では実質的に無毒であることが望ましくあってもよい。
いくつかの実施形態では、組成物又は剤形は液体であってもよく、又は液体に分散した固相を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、治療用化合物は、非経口投与又は腹腔内投与のために調合されてもよい。遊離塩基性又は薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散体はまた、それに分散している油を有し、又はグリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中に分散している油を有し得る。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための保存料を含有してもよい。
アルツハイマー病(AD)などの認知症は認知障害によって特徴付けられるが、精神神経症状(認知症の行動心理学的症状、BPSD)は、介護者の負担及び入院の主な要因の一つである。BPSD症状の頻度は、疾患の進行と共に増加する(例えば、軽度及び中等度のADでは最大60%、重度のADでは最大90%)。現在市販されている認知症治療法は、BPSDだけでなく、関連するその他の非認知領域についても多大な改善の余地がある。敵意、攻撃性、徘徊、性的に不適切な行動又は失禁のような症状は、介護者及び家族にとって大きな問題を引き起こし、(高価な)特別養護老人ホームへの入所の前兆であるので、疾患修飾療法の継続的な欠如に面してこれはますます重要性を帯びている。看護及び介護を容易にするために、(定型又は非定型)神経弛緩薬を処方するのが一般的慣行である。しかし、FDAは、神経弛緩薬の適応外使用が、認知症の対象の健康に大きな脅威をもたらすと判断し、重度の心血管系有害事象及び死亡リスク増加を挙げて、ブラックボックス警告を発行した。リスペリドンのEU承認は、自己又は他者に害が及ぶ場合に限って、中等度から重度のAD患者における短期使用を許可する。パーキンソン病では、神経弛緩薬の抗コリン効果は、それに加えて、運動状態及び自律神経系の症状を不可避的に悪化させるので、非常に望まれない。全ての認知症において発作閾値を下げることは、神経弛緩薬の別の稀であるが非常に望まれない潜在的悪影響である。認知症における神経弛緩薬の使用に対するこれらの懸念は、このカテゴリーの患者における神経弛緩薬の使用の減少をもたらし、軽度から中等度のAD患者の大多数では、BPSD症状は本質的に未治療のまま残される。
したがって、いくつかの実施形態は、器質性脳症候群及び慢性外傷性脳症のようなその続発症を含めた神経変性疾患及び脳損傷;慢性又は難治性疼痛、網膜症に関連する眼科的適応症、不安障害、心的外傷後ストレス障害、うつ病、糖尿病及び神経障害性疼痛を伴う又は伴わない末梢神経障害のようなその合併症、バージャー病、レイノー病、冠動脈疾患、狭心症、多発梗塞性認知症のようなCNSを含むアテローム性動脈硬化症、血管性認知機能障害、血管性認知症又はビンスワンガー病、及び腎障害の対症的及び疾患修飾治療に有用な新規組成物及び方法である。
第1の態様では、DEXによる治療を必要とする対象に、M1などの5-HT2A受容体拮抗薬を投与することを含むDEXの代謝寿命を延ばす方法が提供され、5-HT2A受容体拮抗薬はCYP2D6酵素の阻害剤であり、DEXはM1と同時に対象の体内に存在する。
第2の態様では、DEXによる治療を必要とする対象に、M1などの5-HT2A受容体拮抗薬を同時投与することを含む、DEXによる治療に関連する有害事象を予防する方法が提供され、対象はDEXによる処置の結果として有害事象を経験するリスクがある。
第3の態様では、M1などの5HT2A受容体拮抗薬を使用して、精神神経障害の治療におけるDEXの治療特性を改善する方法が提供される。
第4の態様では、M1などの5HT2A受容体拮抗薬とDEXとをそれを必要とする対象に投与することを含む、神経精神障害を治療する方法が提供される。
第1、第2、第3、及び第4の態様の実施形態では、5-HT2A受容体拮抗薬は、式Iの化合物などのM1又はSARPOのプロドラッグ、又はその薬学的に許容可能な塩である。
第1、第2、第3、及び第4の態様の実施形態では、5-HT2A受容体拮抗薬は、(R)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール)又は(S)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール)などのM1の鏡像異性体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
第1、第2、第3、及び第4の態様の実施形態では、5-HT2A受容体拮抗薬5-HT2A受容体拮抗薬(5-HT2A receptor antagonist the 5-HT2A receptor antagonist)は、(R)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール)又は(S)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール)のプロドラッグ、又はその薬学的に許容可能な塩である。
第3、及び第4の態様の実施形態では、神経精神障害はアルツハイマー病である。
第5の態様では、それを必要とする対象においてDEXと組み合わせて使用するための5-HT2A受容体拮抗薬を選択する方法が提供される。
第5の態様の実施形態では、強力なCYP2D6阻害活性を有する5HT2A受容体拮抗薬の特定の鏡像異性体は、より高い血液脳関門の浸透を有する。
第5の態様の実施形態では、強力なCYP2D6阻害活性を有する5HT2A受容体拮抗薬の特定の鏡像異性体は、DEXと組み合わせて投与された場合、中枢効果と末梢効果のより良い比率を有し、中枢効果は直接的又は間接的5HT2A受容体結合方法によって評価される一方で、末梢効果は血糖測定に基づく方法によって評価される。
第5の態様の実施形態では、DEX及び選択された5-HT2A拮抗薬が合わせた用量で投与され、投与されるDEXの量は、約20mg/日~約80mg/日を構成する。
第5の態様の実施形態では、DEXは選択されたM1の鏡像異性体と合わせた用量で投与され、投与されるM1鏡像異性体の量は、約0.1mg/日~約1000mg/日を構成する。
本発明の一実施形態は、強力なCYP2D6阻害活性とそれ自体の複数の治療上の利点とを有する5HT2A受容体拮抗薬と共に、DEXを投与することによって、その治療特性を増強する方法である。
いくつかの実施形態は、約5mg/日~約600mg/日、約5mg/日~約300mg/日、約5mg/日~約400mg/日、約5mg/日~約500mg/日、約5mg/日~約600mg/日、約5mg/日~約1,000mg/日、約50mg/日~約1000mg/日、約100mg/日~約1000mg/日、約150mg/日~約1000mg/日、約150mg/日~約5000mg/日、約150mg/日~約300mg/日、又は約150mg/日~約100mg/日、又は必要量の式Iの化合物若しくはSARPOと、約0.1mg/日~約1mg/日、約0.5mg/日~約15mg/日、約15mg/日~約60mg/日、約15mg/日~約120mg/日、約0.1mg/日~約200mg/日、又はこれらの値のいずれかによって囲まれる、又はその間にある任意の量の式Iの化合物若しくはSARPO、又は必要量のDEXをそれを必要とする対象に投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法を含む。
本発明はまた、DEXとの組み合わせで精神神経障害を治療する医薬組成物の調製のための、ラセミ体又は特定の鏡像異性体としてのM1の使用も提供し、組み合わせは、より広範な症状をカバーし、及び/又は単独で投与されたどちらの成分よりも治療的により効果的であり、相加的又は相乗的な治療効果をもたらす。
方法の全ての実施形態において、式の化合物は、化合物から選択される。
医薬組成物及び製剤
本発明は、使用前に樹脂を無機アルカリ材料で処理すると、薬物-樹脂複合体の安定性が顕著に向上するという発見に基づく。薬物-樹脂複合体の安定性は、最終製剤化の前に薬物-樹脂複合体を含浸することによって、さらに改善されてもよい。薬物-樹脂複合体を拡散障壁でさらに被覆して、望ましい薬物溶解プロファイルが得られてもよい。
一態様では、本発明は、薬物-樹脂複合体を含む改善された安定性がある医薬組成物を提供し、使用される樹脂は無機アルカリ材料で処理されており、薬物-樹脂複合体はアルカリ化剤及び任意選択的に溶媒和剤で含浸されている。
別の態様では、本発明は、薬物-樹脂複合体を含む改善された安定性がある医薬組成物を提供し、使用される樹脂は無機アルカリ材料で処理されており、薬物-樹脂複合体はL-メチオニン、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせで含浸されている。薬物安定性は、リン酸を添加することによって、そして調合中のプロピレングリコールの使用を回避することによってさらに改善されてもよい。
さらに別の態様では、本発明は、薬物-樹脂複合体を含む改善された安定性を有する医薬組成物を提供し、使用される樹脂は無機アルカリ材料で処理されており、薬物-樹脂複合体は薬物溶解プロファイルを変える拡散隔壁で被覆されている。
さらなる態様では、本発明は、改善された薬物安定性を有する医薬組成物を調製する方法を提供する。方法は、(1)樹脂を無機アルカリ材料で処理する;(2)薬物と処理された樹脂とを組み合わせて薬物-樹脂複合体を形成する;(3)薬物-樹脂複合体を適切な試薬で含浸又はコーティングして安定性を改善し又は薬物の溶解プロファイルを変更する;(4)前のステップからの複合体を配合して医薬組成物を形成するステップを含む。
本発明によれば、薬物が樹脂に十分に結合又は吸着され得る限り、任意の無毒の樹脂が使用に適していてもよい。樹脂は、イオン交換樹脂である。本発明での使用に適したイオン交換樹脂は水不溶性であり、イオン性の、又は適切なpH条件下でイオン化できる官能基を含む、薬理学的に不活性な有機及び/又は無機マトリックスを含む。有機マトリックスは、合成(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スルホン化スチレン、スルホン化ジビニルベンゼンのポリマー若しくは共重合体)、又は部分合成(例えば、変性セルロース及びデキストラン)であってもよい。無機マトリックスは、イオン基の付加によって修飾されたシリカゲルを含む。共有結合イオン樹脂もまた、使用されてもよい。共有結合イオン基は、強酸性(例えば、スルホン酸、リン酸)、弱酸性(例えば、カルボン酸)、強塩基性(例えば、第一級アミン)、弱塩基性(例えば、第四級アンモニウム)、又は酸性及び塩基性基の組み合わせであってもよい(Borodkin, Book chapter: Ion-exchange resin delivery system, in ”Polymers for Controlled Drug Delivery ”, Tarcha, P J, Ed., CRC Press, Boca Raton, 1990; その内容全体が参照により援用される)。
本発明において有用であることが知られているイオン交換樹脂は、ナトリウム塩又はカリウム塩のいずれかの形態のジビニルベンゼンスルホン酸カチオン交換樹脂である。一実施形態では、150ミクロン未満の粒度を有するPurolite C 100 E MR/4395が使用される。使用され得るその他の市販の同等の樹脂は、Amberlite IRP-69及びDow XYS-40010.00である。どちらも、約8%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから構成されるスルホン化ポリマーであり、イオン交換容量は約4.5~5.5meq/g乾燥樹脂(H+形態)である。それらの本質的な相違は、物理的形態にある。Amberlite IRP-69は、Amberlite IRP-120の親大型球をミリングすることによって製造された、約5ミクロン~約149ミクロンのサイズ範囲を有する不規則な形状の粒子からなる。Dow XYS-40010.00製品は、45ミクロン~150ミクロンのサイズ範囲の球状粒子からなる。
イオン形態で存在する全ての薬物は、本発明においてイオン交換樹脂と結合させるために使用されてもよい。このような薬物としては、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、殺腫瘍剤、代謝拮抗剤、ポリペプチド、免疫グロブリン、免疫修飾物質、血管拡張剤、抗炎症薬、抗緑内障薬、散瞳化合物、抗うつ薬、鎮痙薬、抗潰瘍薬、抗不安薬、カルシウムチャネル遮断薬、ドーパミン受容体作動薬及び拮抗薬、麻薬拮抗薬、プロテアーゼ阻害剤、呼吸器刺激剤、レトロウイルスプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤などの多数の薬物のファミリーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明から特に恩恵を受ける薬物は、例えば酸化又は加水分解のために、複合体化後に分解しやすい薬物である。いくつかの実施形態では、薬物は、デキストロメトルファン、コデイン、モルヒネ、ヒドロコドン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノールアミン及びその塩からなる群から選択される。一実施形態では、薬物はデキストロメトルファンである。
本発明によれば、樹脂は、薬物と複合体化する前に、水中で無機アルカリ材料で処理される。処理された樹脂から構成された薬物-樹脂複合体は、未処理の樹脂を使用した薬物-樹脂複合体と比較して、顕著に改善された安定性を示すことが観察される。
処理は、樹脂を無機アルカリ材料の水溶液に、撹拌しながら長時間浸漬することで行われ得る。高温を使用して、処理の有効性を高めてもよい。無機アルカリ材料の濃度は、変動してもよい。一実施形態では、無機アルカリ材料は2N水酸化ナトリウムである。処理に必要な時間はまた、前処理される樹脂の量、温度、時間、無機アルカリ材料の種類及びその濃度に応じて変化する。
処理はまた、処理される樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムに無機アルカリ材料の水溶液を繰り返し流すことによって、クロマトグラフィーカラム内で行われ得る。
アルカリ化材料は、例えば、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの形態のリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の薬学的に許容可能な無機塩である。樹脂のアルカリ化剤は、水酸化ナトリウムである。
本発明に使用される全ての水は、蒸留水又は精製水であり、ミネラル、イオンを含まず、イオン交換成分が本発明に使用されてもよい。一実施形態では、脱イオン(DI)水が使用される。
アルカリ前処理の後、処理された樹脂は濾過によって収集され、任意選択的に樹脂は何度も水洗される。次に、樹脂は、周知のカール・フィッシャー法による測定で含水量が8%未満になるまで、約50℃で乾燥される。次に、乾燥処理樹脂は標準技術を用いて薬物と反応され、薬物-樹脂複合体が形成され得る。
一実施形態において、薬物-樹脂複合体は、処理された樹脂を含有する容器に薬物の水溶液を添加し、十分な時間撹拌することによって形成される。得られた薬物-樹脂複合体懸濁液は濾過され、任意選択的に何度も水洗されて、薬物-樹脂複合体が得られる。次に、薬物-樹脂複合体は、カール・フィッシャー法による測定で含水量が8%未満になるまで、乾燥される。
有効な薬物-樹脂複合体を形成するのに必要な薬物及び樹脂の量は、非常に様々である。樹脂に対する薬物の比率を決定する際に考慮すべき要因としては、特定の薬物それ自体、樹脂、反応条件、及び最終剤形がある。樹脂は、当該薬物に対して高い負荷容量を有する。小さい負荷容量は、得られる剤形を過度に嵩高くしたり、又は製造コストを高くしたりすることもある。樹脂粒子上の薬物の実際の負荷量は、約1重量%~90重量%の範囲であるが、樹脂の5重量%~30重量%の範囲であり得る。
薬物-樹脂複合体の安定性はまた、薬物-樹脂複合体にアルカリ化剤を含浸させることによっても改善される。
本発明に適したアルカリ剤は、有機剤又は無機剤であり得る。無機アルカリ剤としては、炭酸塩、アルカリ酸化物、及び水酸化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。無機アルカリ剤としては、MgO、Mg(OH)2、CaCO3、Ca(OH)2、MgCO3が挙げられる。一実施形態では、無機アルカリ剤は酸化マグネシウム(MgO)である。有機アルカリ剤としては、プソイドエフェドリン及びフェニルプロパノールアミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
アルカリ化剤は、樹脂の約5重量%~約30重量%の量で存在する。一実施形態では、アルカリ化剤は樹脂の約10重量%である。
さらに、薬物-樹脂複合体を溶媒和剤で処理してアルカリ化剤の含浸を助けてもよい。このステップは、酸化マグネシウムの含浸と同時に、又はその前に実施され得る。溶媒和剤としては、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、又はPEG3350などのポリオールが挙げられる。溶媒和剤は、樹脂の約5重量%~約35重量%又は約15重量%の量であってもよい。
アルカリ化薬物-樹脂複合体、すなわちPEG及びMgOで含浸された複合体は、そのような含浸のない薬物-樹脂複合体と比較して、有意に改善された安定性を示すことが観察されている。
無機アルカリ材料で前処理された樹脂から製造された薬物-樹脂複合体は、さらにL-メチオニンで含浸され得る。より良い結果を得るために、このステップで溶媒和剤が添加される。L-メチオニン及び溶媒和剤による含浸は、医薬組成物の薬物安定性を改善することが観察されている。一実施形態では、含浸は、数滴の水を添加して、L-メチオニン、PEG、及びアルカリ化薬物-樹脂複合体の混合物を湿らせ、成分を完全に混合し、次に乾燥させることによって行われる。より良い結果を得るために、L-メチオニン及びPEGは使用前に微粉末に粉砕される。L-メチオニンは、樹脂の約5重量%~約30重量%、又は約10重量%の量であってもよい。使用されるPEG量は、樹脂の約5重量%~約35重量%、又は約15重量%である。
抗酸化剤などのその他の成分もまた、L-メチオニンと同時に含浸され得る。抗酸化剤は、樹脂の化学的安定性を改善することが知られている。可能な抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられるが、これに限定されるものではない。抗酸化剤は、樹脂の約0.05重量%~約0.5重量%、又は約0.2重量%の量で使用される。組成物の安定性を改善するために、抗酸化剤を樹脂に含浸させるのではなく、最終調合物に添加することもできることに留意されたい。
本発明の薬物-樹脂複合体は、経口投与、局所投与、直腸投与、膣内投与、経鼻投与、又は眼投与用の任意の医薬剤形に調合され得る。剤形としては、シロップ剤及び懸濁剤が挙げられる。薬物-樹脂医薬組成物を調合するための一般に知られている成分及び手順は、当業者の知識の範囲内である。様々な方法(米国特許第4,221,778号、米国特許第4,762,709号、米国特許第4,788,055号、米国特許第4,959,219号、米国特許第4,996,047号、米国特許第5,071,646号、及び米国特許第5,186,930号;その内容全体が参照により本明細書に援用される)を使用して、組成物が調合され得る。
薬物-樹脂医薬懸濁液の安定性は、試験される。懸濁液を配合するのに使用される一般に知られている成分のうち、プロピレングリコールは懸濁液を不安定化することが見いだされ、リン酸は懸濁液を安定化することが見いだされる。
本発明はさらに、安定化された薬物-樹脂複合体を有するだけでなく、望ましい溶解プロフィールも有する医薬組成物を提供する。これは、最終製剤化の前に、アルカリ化薬物-樹脂複合体をフィルム形成ポリマーでコーティングすることによって達成される。フィルム形成ポリマーは、薬物溶解速度を減速し得ることから、拡散障壁と呼ばれる。可能なコーティング材としては、ヒドロキシプロピル(hydoxypropyl)セルロース(HPC)、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、マンニトール、乳糖などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、HPCがコーティング材である。さらに、例えば、機能性コーティングを使用して、薬物-樹脂複合体からの薬物の放出を持続させ又は遅延させてもよい。同一製剤中で、コーティングの量を変えること、又は被覆複合体と未被覆複合体とを組み合わせることで、所望通りに溶解プロファイルが調節され得る。
従来のコーティング手順(米国特許第4,221,778A号、その全体が参照により援用される)を用いて、粒子をコーティングし得る。一実施形態では、コーティングは、Wurster Columnを備えた流動床コーティング装置内で行われる。コーティング重量増加の影響を受ける放出を評価するために、サンプルを3つの間隔で収集する。コーティングに続いて、複合体は1%のコロイド二酸化ケイ素と共に良く混合され、強制通風炉内で40℃、48時間の硬化がそれに続く。
被覆薬物-樹脂複合体は、望ましい医薬剤形に調合される。本発明に従って調製された医薬組成物は、商標名製品に匹敵する持続放出プロファイルを維持できる。
一実施形態では、経口製剤及び錠剤製剤は、酸感受性物質であるオメプラゾールから、酸性腸溶性コーティング材料を分離するための分離層を含む、腸溶性コーティング層状製剤である。本明細書で開示されるHPC又はその他の適切なポリマーは、記載された製剤中において腸溶性コーティング層からコア材料を隔てる層で使用されてもよい。
合成法
SGL塩酸塩(CAS番号:135159-51-2)、その系統名:ブタン二酸モノ(2-(ジメチルアミノ)-1-((2-(2-(3-メトキシフェニル)エチル)フェノキシ)メチル)エチル)エステル塩酸塩は、数多くの合成法によって製造され得る(Chen et al., A practical synthesis of sarpogrelate hydrochloride and in vitro platelet aggregation inhibitory activities of its analogues, Chinese Chemical Letters, Volume 21, Issue 3, March 2010, Pages 287-28; J Med Chem 33(6) (1990);中国特許第103242179A号;国際公開第2015008973号;参照により本明細書に援用される)。
適切な溶媒中の塩基の手段による、2-ヒドロキシ-3’-メトキシビベンジルとエピクロロヒドリンとの反応は、2-(2,3-エポキシプロポキシ)-3’-メトキシビベンジルを与え、それは適切な溶媒中の還流中におけるジメチルアミンとの反応によって、2-[3-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシプロポキシ]-3’-メトキシビベンジルをもたらす。最後に、この化合物は、適当な溶媒中で酸と共に還流させながら無水コハク酸で処理される。
以下のスキームに示されるように、DMF中の塩基NaHの手段による、2-ヒドロキシ-3’-メトキシビベンジルとエピクロロヒドリンとの反応は、2-(2,3-エポキシプロポキシ)-3’-メトキシビベンジルを与え、それはTHF還流中におけるジメチルアミンとの反応によって、2-[3-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシプロポキシ]-3’-メトキシビベンジルをもたらす。最後に、この化合物は、還流THF中の無水コハク酸と、アセトン中のHClとで処理される(J Med Chem 33(6) (1990)、参照により本明細書に援用される)。
SGL塩酸塩はサリチルアルデヒドベンジルから合成され、保護、還元、塩素化、アルブーゾフ反応、ウィッティヒ・ホーナー反応、接触水素化を通じて、2-2-(3-メトキシフェニル)エチルフェノールが得られ、これはエピクロロヒドリンとの反応、アミノ化、エステル化、及び塩形成に供された。
製剤SGL塩酸塩錠剤に使用されるSGL塩酸塩原薬は、許容可能な純度を達成し、単一ヘテロ含有量は、対応する要件を満たす。SGL塩酸塩は適切な溶媒系から再結晶化され、純粋なSGL塩が得られた。アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの(comprises at)1種又は複数種の溶媒を含む溶媒系、又はこれらの2種以上と、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどとの混合物を含む溶媒系、又は室温から還流温度のC
2~10アルカン、C
3~10ケトン、C
2~10カルボン酸エステル、C
1~10ハロゲン化アルカン、芳香族炭化水素若しくは芳香族誘導体、5%以上の再結晶溶媒としての水若しくは水性有機溶媒が、再結晶溶媒として使用され得る(米国特許第4,485,258A号;中国特許第101,239,920A号;参照によりその全体が援用される)。
鏡像異性的に純粋な形態のSGLは、下で示されるように、キラルリガンドを使用し、選択された単一鏡像異性体の形成を誘導して製造され得る。
キラル有機化合物は、医薬品、農薬、及び有用な生物学的活性を有するその他の物質において重要な役割を果たす。酵素及びその他の天然結合部位は、特定のキラリティーを有する基質を認識し、様々な生物学的機能を生じる。鏡像異性体はキラリティーのために異なる特性を示してもよいので、これらの酵素又は受容体部位は、それらの作用において特異的である。したがって、生物学的に活性な化合物について、1つの鏡像異性体のみが活性でもう1つは活性を欠いているか、どちらの鏡像異性体も活性であるが異なる効力を有するか、又はどちらの鏡像異性体も類似した若しくは等しい活性を有することが可能である。したがって、鏡像異性的に純粋な薬物分子の製造は関心事項であり、方法論は、1)分割、(2)キラル構成要素の使用、及び(3)不斉合成、の3つの基本的なストラテジーを有する。不斉合成は、別のものを製造するための1つのキラル材料のはるかに効率的な使用を提供する。
鏡像異性的に純粋な生物学的に関心のある分子の調製は、不斉合成によって効果的に達成され得る。この方法は、キラル基質の影響下でプロキラル出発原料から、1つ又は複数のキラル中心を生成することを伴う。鏡像異性的に純粋な化合物の調製は、キラル助剤、キラル試薬若しくはキラル触媒、又はそれらの組み合わせの使用を伴う。
別の実施形態では、本開示の化合物は、(2R)-3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール及び(2S)-3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール(スキームVIII)から調製され得る。
マンデル酸、2-メチルマンデル(metylmandelic)酸、2-クロロマンデル酸、3-クロロマンデル酸、4-メトキシマンデル酸、O-アセチルマンデル酸、α-メトキシフェニル酢酸、リンゴ酸、酒石酸などの様々な多用途且つ便利なキラルカルボン酸リガンドが文献で入手可能である。キラルリガンドは、容易に入手可能な構成要素から調製され得る(Moloney et al., Chiral carboxylic acid ligands derived from camphoric acid, Tetrahedron: Asymmetry, Volume 7, Issue 9, September 1996, Pages 2551-2562; US7230135 B2; Product: (S)-2-Amino-1,2,3,4-tetrahydro-6-methoxy-naphthalene, Chiral Quest Corp; Ager (Ed), CHAPTER I CHIRAL HYDROXY COMPOUNDS AS LIGANDS IN ASYMMETRIC SYNTHESIS, Handbook of Chiral Chemicals, Second Edition; Hu et al., Adventure in Asymmetric Hydrogenation: Synthesis of Chiral Phosphorus Ligands and Asymmetric Hydrogenation of Heteroaromatics, Top Organomet Chem 36:313-354 (2011); Ishihara et al., An extremely simple, convenient, and selective method for acetylating primary alcohols in the presence of secondary alcohols, J. Org. Chem., 58 (15), pp 3791-3793 (1993); Edwards et al., The stereoselective replacement of hydroxyl groups by chlorine, using the mesyl chloride-N,N-dimethylformamide reagent, Carbohydrate Research, Volume 35, Issue 1, Pages 111-129 (July 1974);参照により本明細書に援用される)。
鏡像異性的に純粋なサルポグレラートは、ジメチルアミノプロパンジオールから出発して、コハク酸を用いて、選択的にエステル化されたジオール上の第一位にフェノールエーテルを形成することによって調製され得る。反応の進行は、順序を変えることによって変化され得る。鏡像異性的に純粋なサルポグレラートは、ジメチルアミノプロパンジオールから出発して、第一位にフェノールエーテルを選択的に形成し、次に二級ヒドロキシルをコハク酸でエステル化することによって、調製され得る(スキームX)。
化合物197~205を製造するために、上記の全てのスキームにおいて、2-(3-メトキシフェネチル)フェノールは、4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-オール、3’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-オール、2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-オール、4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-オール、4’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール、3’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-オール、3’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール、2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-オール、及び2’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-オールなどの適切な市販のフェノール誘導体で置換される。
同様に、化合物191~196及び同族体を調製するために、上記の全てのスキームにおいて、2-(3-メトキシフェネチル)フェノールは、2-(3-メトキシベンジル)フェノール、2-(3-(3-メトキシフェニル)プロピル)フェノール、2-(4-(3-メトキシフェニル)ブチル)フェノール、2-(5-(3-メトキシフェニル)ペンチル)フェノール、2-(6-(3-メトキシフェニル)ヘキシル)フェノール、2-(7-(3-メトキシフェニル)ヘプチル)フェノール、2-(8-(3-メトキシフェニル)オクチル)フェノール、2-(9-(3-メトキシフェニル)ノニル)フェノール、及び2-(10-(3-メトキシフェニル)デシル)フェノールなどの適切な市販のフェノール誘導体で置換される。
キラル分離
本発明の化合物の鏡像異性分離及びジアステレオマー分離に使用され得るキラルとしては、以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ジアステレオマー化合物及び塩の形成は、適切な反応媒体中で実施される。適切な反応媒体としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン、及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
SARPODEXTER(商標)及びSARPODEXAMIDE(商標)
上記スキームでSARPODEXAMIDE(商標)誘導体の合成において使用され得るリンカーとしては、公知のアミド化及びアシル化技術を使用する(全てChemistry LibreTextsのウェブサイトで利用できる、Synthesis of amides、Organic Chemistry Portal、Making Amides from Acid Anhydrides、Making Amides from Carboxylic Acids、Making Amides from Acyl Chlorides、Making Amides from Nitrile;Chemguide.co.ukで利用できるMAKING AMIDES;国際公開第1998043961号;それぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される)、文献(Simplicio et al., Prodrugs for Amines, Molecules 13, 519-547 (2008); Mahato et al., Prodrugs for Improving Tumor Targetability and Efficiency, Adv Drug Deliv Rev. 63(8): 659-670 (2011 Jul 18); Jornada et al., The Prodrug Approach: A Successful Tool for Improving Drug Solubility, Molecules 21, 42 (2016); Jain et al., Mutual prodrugs containing bio-cleavable and drug releasable disulfide linkers, Bioorganic Chemistry 49C:40-48 (July 2013);米国特許第20130053301号、国際公開第2011089216A1号;国際公開第2006136586A2号;米国特許第7932294号;米国特許第20060046967A1号;米国特許第8357723号;米国特許第8349901号;米国特許第8354455号;米国特許第9550734号;米国特許第20160220694号;米国特許第20160002167号;米国特許第20150328323号;米国特許第9090563号;米国特許第20140058063号;米国特許第20130158271号;米国特許第8288557号;米国特許第20110274695号;国際公開第1998043961号;参照により本明細書に援用される)に記載されるリンカーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
エステル化:エステルはカルボン酸から得られる。カルボン酸は-COOH基を含有し、エステル中では、この基中の水素が、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリール基などの炭化水素基R’によって置換される。エステルは、カルボン酸を酸触媒の存在下でアルコールと共に加熱すると生成する。触媒は酸であり、通常は濃硫酸である。場合によっては、乾燥塩化水素ガスが使用され得る。TsOH(トシル酸)もしばしば使用される。
エステル化反応は、緩慢且つ可逆的である。酸RCOOHとアルコールR’OH(式中、RとR’は同一であるか又は異なり得る)との間の反応式は、次のとおりである:
アルコールは一般に溶媒として使用されるので、大過剰に存在する(ウェブサイトで利用可能なエステル化:Chem Portal、organic chemistry org;master organic chemistry、vigo schools、及びscience jrank org;国際公開第1998043961号;参照により本明細書に援用される)。
SARPODEXTER(商標)の調製
本出願の組成物の調製の別の実施形態では、ジアステレオマー的に純粋なSARPODEXTERは、温和なエステル化条件下で、ラセミサルポグレラートと光学的に純粋なデキストロルファン(DO-H
3、化合物151)とを反応させることによって、ジアステレオマーエステルの混合物、化合物165~166を得て、これを上記の結晶化及びクロマトグラフィー技術並びに本明細書に記載の技術によって分離し、ジアステレオマー的に純粋なSARPODEXTER165及び166を得ることによって、得られる。
SARPODEXAMIDE(商標)誘導体の調製
式Iの化合物又はSarpodexamide(商標)誘導体は、還流トルエン中で、デキストロメトルファンを単一異性体又はその混合物として、2,2,2-トリクロロエチルクロロギ酸エステルと反応させ、このようにしてN-脱メチル化化合物を得ることによって得られ得る。
上記のトリクロロエトキシカルボニルは、氷酢酸中で粉末亜鉛の存在下で加熱して還流させることによって、N-脱メチルデキストロメトルファンに変換され得る。
上記のようにして得られた、又は購入されたN-脱メチルデキストロメトルファン(CAS番号:125-71-3)は、室温で無水トリフルオロメタンスルホン酸及びピリジンで処理され得る(Liebigs Ann. Chem. 1986, 336, 及び国際公開第1998043961号、その内容全体が本明細書に援用される)。
光学的に純粋なSARPODEXAMIDE
スキームXIIIに示されるように、アミド(S)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル4-((4bS,8aS,9S)-3-メトキシ-6,7,8,8a,9,10-ヘキサヒドロ-5H-9,4b-(エピミノエタノ)フェナントレン-11-イル)-4-オキソブタノエート(化合物167)及び(R)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル4-((4bS,8aS,9S)-3-メトキシ-6,7,8,8a,9,10-ヘキサヒドロ-5H-9,4b-(エピミノエタノ)フェナントレン-11-イル)-4-オキソブタノエート(化合物168)は、Huenig塩基と組み合わされたHBTUを使用したN-脱メチルデキストロメトルファンでの1~2時間にわたるアミド化によって、サルポグレラートから得られ得る。ウロニウム塩(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸(COMU)、エチル2-シアノ-2-(2-ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)アセテート(o-NosylOXY)、EDCI及びNaHCO
33、B(OCH
2CF
3)
3、トリメチルアルミニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、ZrOCl
2・8H
2O、塩化メタンスルホニル及びN-メチルイミダゾール、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)などの試薬が使用され得る。
光学的に純粋なSARPODEX(商標)塩
化合物50及び化合物149は、クロロホルム中で又はジクロロメタン、DMFなどのその他の適切な溶媒中で、デキストロメトルファン(S)-4-((1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタノエート(S-SARPODEX(商標))塩、及びデキストロメトルファン(R)-4-((1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタノエート(R-SARPODEX(商標))塩のジアステレオマー塩混合物を形成し、それは、本明細書で言及され説明される、DMFなどの適切な溶媒中での結晶化及び再結晶化及び/又はクロマトグラフィー技術によって分離され得る。
一実施形態では、イオン性液体を使用することによって化合物のジアステレオマーを分離し、分離効率を高める方法が提供される。ジアステレオマーが、例えば、液液抽出などの方法によって分離される場合、1種又は複数種のイオン性液体が抽出剤として使用されてもよい。
一実施形態では、この分離方法は、少なくとも1対のジアステレオマーの混合物を含有する化合物に対して実施されてもよく、ジアステレオマーは、その中でジアステレオマーの1つの溶解性がもう1つのジアステレオマーよりも高い、少なくとも1つのイオン性液体に混合物を接触させ、低溶解性ジアステレオマーを混合物から分離することによって分離されてもよい。したがって、本明細書で開示される発明は、ジアステレオマーの分離方法、そのような方法の使用、及びそのような方法によって得られる、及び得られ得る生成物を含む。
別の実施形態では、この分離方法は、SARPODEX(商標)塩のジアステレオマー混合物などの化合物に対して実施されてもよく、ジアステレオマーは、その中でジアステレオマーの1つの溶解性がもう1つのジアステレオマーよりも高い少なくとも1つのイオン性液体に混合物を接触させ、低溶解性ジアステレオマーを混合物から分離することによって分離される。
さらに別の実施形態では、抽出溶媒として少なくとも1種のイオン性液体を使用する液液抽出によって、双方のジアステレオマーを含む混合物から、SARPODEX(商標)のエリスロ又はスレオジアステレオマーを分離する方法が提供される。
別の実施形態は、その中でジアステレオマーの1つの溶解性がもう1つのジアステレオマーよりも高い少なくとも1つのイオン性液体に、SARPODEX(商標)の1対のジアステレオマーを含む混合物を接触させ、低溶解性ジアステレオマーを混合物から分離することを含む、較正操作、浄化操作、水洗操作、乾燥操作、微粒子除去操作、溶媒操作、分散操作、熱伝達操作、及び断熱操作からなる群から選択される、工業的操作を実施するための方法である。
別の実施形態は、化合物中の1対のジアステレオマー中で、1つのジアステレオマーを別のジアステレオマーから分離するための方法である。このような方法では、イオン性液体を使用して分離が容易にされ、ジアステレオマーは、その中でジアステレオマーの1つの溶解性がもう1つのジアステレオマーよりも高い少なくとも1つのイオン性液体に混合物を接触させ、低溶解性ジアステレオマーを混合物から分離することによって分離されてもよい。
「イオン性液体」という用語は、約100℃以下で流動性の有機塩として定義される
「液液抽出」は、2つの不混和性液相間のそれらの分布によって、溶液中の成分を分離するための方法である。液液抽出は、1つの液相から第2の不混和性液相への物質の移動を伴い、抽出剤又は溶媒を使用して実施される。
液体混合物中の成分は、単一の平衡(又は理論的)段階を用いる、又は多段階を用いる、液液抽出などの方法によって分離され得る。平衡段階又は理論的段階段は、濃度が平衡に近づくように供給物を不混和性液体と密接混合できるようにする装置であり、2つの不混和性液相を物理的に分離することがそれに続く。単段装置は分液漏斗又は撹拌容器であり得て、これにより、供給物と不混和性抽出剤との密接混合が可能になる。密接混合に続いて、片方又は双方の液相が、例えば、デカンテーションによって回収され得る。
液体分離用の多段式装置は、横流装置又は向流装置であり得る。多段装置では、供給原料は第1平衡段階に入り、抽出剤に接触される。2つの液相は混合され、1つの相の液滴が第2の相に懸濁され、次に2つの相が分離され、第1段階からのSARPODEX(商標)が追加的な抽出剤と接触されて、分離工程が繰り返される。(1)SARPODEX(商標)を抽出剤と接触させ、(2)平衡濃度に近づけるようにし、(3)液相を分離させる工程が目的成分の所望の純度が達成されるまで繰り返される。平衡段階の数は、所望の純度、並びに抽出剤中の成分の溶解性、並びに供給原料及び抽出剤の流速に左右されるであろう。
横流システム(又は装置)では、供給原料は、第1の平衡段階で最初に抽出剤と接触される。次に、この段階からのSARPODEX(商標)は、1つ又は複数の追加的な段階を通じてカスケードダウンする。各段階において、SARPODEX(商標)が新鮮な抽出剤と接触され、SARPODEX(商標)中の所望の成分のさらなる精製が達成される。横流システムの一例が図に示され、SARPODEX(商標)のスレオ異性体は、抽出剤としてイオン性液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BF4])を用いて精製される。
向流システム又は装置では、抽出剤は供給物から最も遠い段階で入り、2つの相は2つの異なる(例えば対向する)方向から来て、相互に通過し交差する。図は、その供給物からのSARPODEX(商標)のスレオ及びエリスロ異性体の向流分離を示す。
液液抽出に用いられる装置は、「段階的」又は「連続的(差動的)接触」装置として分類され得る。段階的装置は、「ミキサーセトラー」とも称される。液体の混合は、供給物を抽出剤と接触させることによって起こり、得られる分散体は、2相が分離するにつれて沈降する。混合は整流装置又はインペラを用いて行い得て、分離工程はバッチ様式で又は連続流動で実施されてもよい。セトラーは、デカンターなどの単純な重力セトラーであり得て、又は沈降速度を高めるサイクロン又は遠心機であり得る。
連続接触装置は、典型的には、段階間で液体を互いから繰り返し分離させることなく、不混和性液体を多段向流接触させるために配置される。むしろ、液体は装置を通過する間を通じて、連続的に接触したままである。向流は、液体の密度の差と、重力(垂直塔)又は遠心力(遠心抽出器)のどちらかとによって維持される。重力操作抽出器は、スプレー塔、充填塔又は有孔板(篩板)塔として分類され得る。重力操作塔はまた、当該技術分野で公知のように、回転撹拌機を有する塔及び脈動塔も含む。
SARPODEX(商標)のような化合物のジアステレオマー、特に2,3-ジヒドロデカフルオロペンタンのスレオ及びエリスロ異性体が、液液抽出などの方法によって分離される場合、上記の装置のいずれかを用いて分離が実施され得る。好ましい一実施形態では、分離は有孔板を有する垂直塔を用いて実施される。低溶解性ジアステレオマーを含有する相が、抽出剤及び高溶解性ジアステレオマーを含有する相から分離された後、高溶解性ジアステレオマーが、蒸留などの方法によって抽出剤から分離されてもよい。
液液抽出による1つの液相から別の不混和性相への質量の移動、及びその中で用いられる装置(Robbins and Cusack, ”Liquid-Liquid Extraction Operations and Equipment ” in Perry’s Chemical Engineers’ Handbook, 7.sup.th Ed., (McGraw-Hill, 1997, Section 15)、参照により援用される)。本明細書に記載の分離に適用可能なものと同一又は類似原理で機能する、既知の液液抽出工程は、抽出剤としてエチルエーテル又は酢酸エチルを使用した、水からの酢酸回収(Brown, Chem. Engr. Prog. (1963) 59:65)、 及び抽出剤としてイソブチルケトンを使用した、水からのフェノール類回収(Scheibel, ”Liquid-Liquid Extraction, ” Perry and Weissburg (eds), Separation and Purification, 3rd Ed. (1978) Chapter 3, John Wiley & Sons, Inc., Hoboken, NJ),参照により援用される)を含む。
溶媒の誘電率(dielectrical constant)(溶媒が分割で使用される場合)は、結晶の形成、組成、及び鏡像異性体認識を変化させる(Sakai et al., Tetrahedron: Asymmetry, 14, 3716 (2003)、参照により援用される)。結晶性ジアステレオ異性体の組成はまた、反応混合物のpHによっても影響を受ける(Fogassy et al., J. Chem. Res., S 11, 346 (1981); Fogassy et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2. (1988)、参照により援用される)。ジアステレオ異性体の純度(de)は、構造的に関連した分割剤の混合物を使用することによって改善され得る。これはしばしば文献中で「ダッチ分割法」と称される(Kellogg et al., Synthesis, 1626 (2003)、参照により援用される)。ジアステレオ異性体塩が、分画沈殿によって分離され得ない場合、溶媒和化合物形成溶液からの分画沈殿によって、その結晶性溶媒和物を得ることが実行可能である(Schindler et al., Chirality, 19, 239 (2007)、参照により援用される)。ジアステレオ異性体の分離に不適である溶媒が、溶媒和化合物形成溶液と構造的にある程度類似した化合物を含有する場合、鏡像異性体の分離は、ジアステレオ異性体塩の分画沈殿によって実行可能になる(Palovics et al., Separation of the Mixtures of Chiral Compounds by Crystallization, Advances in Crystallization Processes, pp 1-37 (2012);米国特許第214,720A号;Chem. Abs. 124, 117097 (1995);米国特許第2,133,894A号;Chem. Abs. 139, 90595 (2001)、参照によりその全体が援用される)。
鏡像異性体混合物を形成するラセミ体の溶融物の結晶化においては、通常は共晶組成が、結晶化混合物及び油性残渣の組成を決定する。その共晶組成は、二元融点状態図から知ることができる。初期異性体組成(ee0)が共晶組成よりも高い場合は、純粋な光学異性体が結晶化され得る。
イオン性液体、又はそれらの2つ以上の混合物を本明細書の方法で使用して、化合物のジアステレオマーが分離されてもよい。イオン性液体は、ごく単純に、完全にイオンからなる液体である。例えば、SARPODEX(商標)のジアステレオマーが、液液抽出などの方法によって分離される場合、使用される抽出剤は、イオン性液体又は2つ以上のイオン性液体の混合物であってもよい。イオン性液体は、室温(およそ25℃)で液体の有機化合物である。それらは大多数の塩類と異なり、非常に低い融点を有し、一般に広い温度範囲にわたって液体である傾向がある。それらはまた一般に、非極性炭化水素に可溶ではなく;水と不混和性であり(アニオンに依存する);高度にイオン化する(しかし低い絶縁耐力を有する)、という傾向がある。イオン性液体は、本質的に蒸気圧を有さず、大部分は空気及び水に対して安定であり、中性、酸性又は塩基性のいずれかであり得る。
本明細書で有用なイオン性液体のカチオン又はアニオンは、原則として、カチオン及びアニオンが一緒になって約100℃以下で液体である有機塩を形成するような、任意のカチオン又はアニオンであり得る。しかし、イオン性液体の特性は、カチオン及び/又はアニオンのアイデンティティーを変化させることによって調整され得る。例えば、イオン性液体の酸性度は、使用されるルイス酸のモル当量、種類、及び組み合わせを変化させることによって調整され得る。
多くのイオン性液体は、窒素含有複素環、好ましくは複素環式芳香族をアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アルキル)と反応させて四級アンモニウム塩を形成し、様々なルイス酸又はそれらの共役塩基とのイオン交換又はその他の適切な反応を実施して、イオン性液体を形成することによって形成される。適切な複素環式芳香族環の例としては、置換ピリジン、イミダゾール、置換イミダゾール、ピロール、及び置換ピロールが挙げられる。これらの環は、実質的に任意の直鎖、分岐鎖又は環式C1~20アルキル基でアルキル化され得るが、好ましくはアルキル基はC1~16基であり、その理由は、これより大型の基はイオン性液体よりもむしろ低融点固体を生じてもよいためである。様々なトリアリールホスフィン、チオエーテル、並びに環式及び非環式四級アンモニウム塩もまた、この目的のために使用されてもよい。使用されてもよい対イオンとしては、クロロアルミネート、テトラクロロアルミネート(III)、ブロモアルミネート、塩化ガリウム、テトラフルオロボレート、テトラクロロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ニトレート、トリフルオロメタンスルホネート、メチルスルホネート、p-トルエンスルホネート、ヘキサフルオロアンチモナート、ヘキサフルオロアルセネート、テトラクロロアルミネート、テトラブロモアルミネート、パークロレート、水酸化物アニオン、銅ジクロリドアニオン、三塩化鉄アニオン、亜鉛トリクロリドアニオン、並びに様々なランタン、カリウム、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、及びその他の金属含有アニオンが挙げられる。
イオン性液体はまた、塩複分解メタセシスによって、酸-塩基中和反応によって、若しくは選択された窒素含有化合物を四級化することによって合成されてもよく、又はそれらはMerck (Darmstadt, Germany)又はBASF (Mount Olive, NJ)などのいくつかの会社から商業的に得られてもよい。
一実施形態では、イオン性液体のライブラリーは、例えば、特定のカチオン(四級アンモニウムカチオンなど)の様々なアルキル誘導体を調製し、関連するアニオンを変化させることによって調製されてもよい(米国特許第20090131728A1号、参照によりその全体が援用される)。別の実施形態では、本発明のジアステレオマーは、固相抽出(SPE)手順における混合モード収着剤とのカチオン交換によって、効率的に分離され得る。
一実施形態では、ジアステレオマーは抽出蒸留によって分離され得て、この場合、分離される様々なジアステレオマーの分圧を異なる程度に変化させる助剤は、蒸留によるジアステレオマーの良好な収率での容易な分離を可能にする。分離は、分画カラムを用いて、好ましくは約10-3バールから約1バールの減圧下で達成され得る(米国特許第4874473A号、米国特許第20070225505A1号、参照によりその全体が援用される)。
一実施形態では、逆相(RP-HPLC)及び順相クロマトグラフィー(NP-HPLC)分離を用いて、本発明のジアステレオマーが分離され得る。鏡像異性体の分離に使用され得るカラムは、Primesep C、NUCLEOSIL、セルロース系キラルHPLCカラム、SHISEIDO Chiral CD-Phなどであり得る(Fekete et al., Comparative Study Separation of Diastereomers by HPLC, Chromatographia, 57, No. 3/4 (2003 February)、米国特許第7119211B2号、参照により全体が援用される)。
医薬製剤
本発明の組成物は、調製され得る。式Iの化合物又はSARPODEX(商標)は、適切な溶媒に添加されて溶解される。このようにして得られた溶液を複合ケイ酸アルミニウムマグネシウムに添加して、ペースト状の塊を形成する。前述のステップはほぼ室温で実施されるが、所望ならば高温を用い得る。引き続いて、塩化ナトリウム及びサッカリンナトリウムがペーストに添加され、ペースト全体に均一に分布される。食用着色剤及び香味剤は、調製(ipreparative)方法の任意の段階で、システムに組み込まれ得る。別の実施形態では、可溶性成分が、最初のステップで調製された式Iの化合物又はSARPODEX(商標)溶液に添加される。このようにして得られたペーストは、従来法のハードキャンディ形成塊に容易に組み込み得て、その塊は次に、従来の手順によって、それぞれが均一に分布した治療的に有効な量の式Iの化合物又はSARPODEX(商標)を含有する、魅力的で味の良いロゼンジに仕上げ得る。
本明細書に提示された調製方法におけるバリエーションは、本発明の範囲内である。例えば、本発明の組成物を製造する際に、式Iの(R,S)化合物又はSARPODEX(商標)、式IのR-又はS-化合物又はSARPODEX(商標)、及び複合体ケイ酸アルミニウムマグネシウムを混合し、引き続いてそれに適切な溶媒を添加してペーストを形成させ得る。塩化ナトリウム及びサッカリンナトリウムは、混合物をペーストに形成する前に、デキストロメトルファン複合体ケイ酸アルミニウムマグネシウム混合物に添加され得る。代案では、塩化ナトリウム及びサッカリンナトリウムがペーストに添加され得る。さらに、適切な香味剤及び着色剤が、乾燥混合物又はペーストのどちらかに添加され得る。本発明を実施する際には、医薬的に許容可能であり、その中で式Iの化合物又はSARPODEX(商標)が可溶性である、任意の医薬用途に適した有機溶媒が用いられ得る。したがって、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ベンジルアルコールなどの有機溶媒が使用され得る。本発明の組成物の一実施形態では、ベンジルアルコールがSAPRODEX(商標)のための溶媒として用いられる。
食用着色剤及び食用香味剤を使用して、本組成物が調製され得る。使用に適した香味剤としては、例えば、甘草、ショウガ、天然果実抽出物などが挙げられる。着色剤としては、食品及び医薬品で使用するのに適した、任意の着色が使用され得る。本発明の組成物を調合するのに使用される着色料の量及び香味剤の量は、様々である。
一実施形態では、製剤は、約0.3g~約1.5g、約1.0gの増粘剤;溶解剤としての約1g~約10g、約2.5gの1,2-プロピレングリコール;約0.12g~約0.19g、又は0.15gのメチルパラベンなどの少なくとも1つのパラベン保存料;約0.05g~約0.2g、又は約0.1gのソルビン酸;約30g~約60g、又は40gの糖アルコール溶液;約0.05~約0.2g、又は0.1gの人工甘味料;約2.10gの所望の強度を生じる量の式Iの化合物又はSARPODEX(商標)樹脂複合体(20mlの成人用12時間用量中に60mgの式Iの化合物又はSARPODEX(商標)に相当する量を送達するのに必要な1:6複合体の量);及び容量を100mlにするのに十分な水を含有する。
別の実施形態では、適切な増粘剤としては、トラガカント;ベントナイト;アカシア;及びセルロースの低級アルキルエーテル(セルロースエーテルのヒドロキシ及びカルボキシ誘導体など)が挙げられる。例示的パラベン保存料は、C1~C4アルキルパラベンすなわちメチル、エチル、プロピル、及びブチルパラベンである。一実施形態では、メチル及びプロピルパラベンの双方が、約2.5:1~約7.5:1のメチルパラベン:プロピルパラベンの比率で製剤中に存在する。別の実施形態では、メチル及びプロピルパラベンの比率は4:1である。
一実施形態では、人工甘味料は、サッカリン又はアスパルテームの形態である。一実施形態では、サッカリンは、ナトリウムサッカリン(sacharin)である。その他の実施形態では、例えば、糖アルコールであるソルビトールのなどのその他の既知の甘味剤の同等の甘味剤量で置換してもよい。
別の実施形態では、製剤は、12時間毎に1回投与した際に、このような投与を必要とする患者に、およそ12時間にわたって、式Iの化合物及び/又は式IIの化合物又はSARPODEX(商標)の治療的有効量を送達するのに十分な量のレジネートを含む。
一実施形態では、製剤は、薬物対樹脂の比率が1:6であり100mlの製剤当たり2.10gのレジネートが存在する場合、60mgの式IのA化合物又はSARPODEX(商標)当量を送達する、およそ420mgのレジネートを含有する20mlの成人用用量を含む。投与量は、樹脂と複合体化していないデキストロメトルファンの投与について知られているものと同様に変更され得て、すなわち、典型的な1日1~4回の15mg~30mg/用量のデキストロメトルファン臭化水素酸塩は、1日2回のS-20mlになる。
別の実施形態では、本発明によるNMDA受容体を遮断する無毒性物質を含む製剤は、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、式Iの化合物若しくはSARPODEX(商標)又はその誘導体、及びSaprodexter(商標)、その混合物及び薬学的に許容可能な塩である。
別の実施形態では、製剤は、アマンタジン(1-アミノアダマンチン)、メマンチン(3,5ジメチルアミノアダマントン)、ピロロキノリンキノンキノン及びシス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、その混合物及び薬学的に許容可能な塩をはじめとする、NMDA受容体を遮断する物質を含む。NMDA受容体拮抗剤のうち、式Iの化合物若しくはSARPODEX(商標)又はその薬学的に許容可能な塩。(米国特許第5,891,885号、参照によりその内容全体が援用される(incoprated))。
別の実施形態では、治療用組成物は、例えば、カフェイン(刺激剤)、メトクロプラミド、ドンペリドンなどの鎮吐薬;ベラドンナアルカロイド及びクロルプロマジン、プロクロルペラジン、及びプロメタジンなどのフェノチアジン;例えばアセトアミノフェンなどの非麻薬性鎮痛剤;又はアスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナール、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、ゾメピラックなどの非ステロイド系抗炎症薬などの少なくとも1つのその他の薬理学的に活性な物質を含む。
本発明の化合物及び組成物の合成
特に断りのない限り、全ての反応は乾燥溶媒を用いてアルゴン雰囲気下で実施した。乾燥クロロホルム(CH3Cl)、塩化メチレン(CH2Cl2)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、DMF、DMSO、メタノール、エタノール、及びアセトニトリル(CH3CN)は購入又は調製した。市販の試薬は全て購入し、さらに精製せずに使用した。反応は、可視化剤としてUV光、PMA(ホスホモリブデン酸のエタノール性溶液)又はANISを用いて、シリカゲルプレート(MerckTLCシリカゲル60F254)上で、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。生成物の精製は、シリカゲル60(0.060~0.200mm)を通したカラムクロマトグラフィーによって行った。NMRスペクトルは、内部標準として残留非重水素化溶媒又はTMS(テトラメチルシラン)を用いて、Bruker AVANCE III 500 MHz (Bruker Corporation, Billerica, MA, USA)上で得た。高分解能質量スペクトル(HR-MS)は、EI(電子衝撃)を用いて、JEOLJMS-700(日本国東京のJEOL)で記録した。
実施例1
デキストロメトルファンは、(平面構造を有する)ベンジルイソキノリンからGrewe環化によって合成し、対応するモルフィナンを得たが、この場合、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1-(4-メトキシベンジル)イソキノリンをN-ホルミル誘導体に変換し、N-ホルミルノルモルフィナンに環化し、ホルミル基をN-メチル基に還元し、3-メトキシ-17-メチルモルフィナンを得た。デキストロメトルファンは96%エタノールに溶けやすく、本質的に水不溶性である。デキストロメトルファンは、一水和臭化水素酸塩であり得て、又はポリスチレンスルホン酸ベースのイオン交換樹脂に結合し得る。デキストロメトルファン(Dextrometorphan)の水中での比旋光度は+27.6°(20℃、ナトリウムD線)である。
実施例2
等モルサルポグレラート(429.506g/mol)及びデキストロメトルファン(271.40g/mol)を適切な溶媒中で混合し、撹拌して結晶化させた。式Iの化合物又はサルポグレラート酸アニオン及びデキストロメトルファン陽性カチオンは水素結合を形成し、複合体を形成して結晶化する。
実施例3
1リットルのクロロホルム中の54.28gのデキストロメトルファンの溶液に、70℃でクロロホルム中の85.9gのサルポグレラートの溶液を添加する。酢酸エチルの添加により、塩が熱溶液から沈殿する。冷却後、塩を収集し、酢酸エチルで洗浄して乾燥し、d-3-メトキシ-N-メチルモルフィナン4-[1-ジメチルアミノ-3-[2-[2-(3-メトキシフェニル)エチル]フェノキシ]プロパン-2-イル]オキシ-4-オキソブタノエート塩(式Iの化合物又はSARPODEX(商標))を得る。式Iの化合物又はSARPODEX(商標)を水性ジメチルホルムアミド(DMF)から再結晶化し、135gの式Iの化合物又はSARPODEX(商標)ジアステレオマー混合物を得る。
実施例4
成分量
式Iの化合物又はSARPODEX(商標) 15g
トリステアリン酸グリセリル 15g
四塩化炭素 100ml
トリステアリン酸グリセリルを温かい四塩化炭素に55~60℃で溶解する。次に、式Iの化合物、その誘導体、SARPODEX(商標)又はその誘導体を溶液に添加して懸濁させる。次に、懸濁液を90℃の入口温度及び40℃の出口温度を用いて噴霧乾燥する。次に、約10~約200ミクロンの平均粒度を有する、得られたコーティングされた式Iの化合物又はSARPODEX(商標)を、以下の水性ビヒクル中に懸濁させる。
トラガカント、USP 10.00g
メチルパラベン、USP 1.20g
プロピルパラベン、USP 0.20g
サッカリンナトリウム、USP 0.30g
スーカリルナトリウム、USP 3.00g
ソルビン酸 250.00mL
メチルセルロース、15cps 1.00g
イミテーション黒スグリ 2.00mL
蒸留水 1000.00mL
パラベン、サッカリンナトリウム、スクアリルナトリウム、及びソルビン酸を85℃に加熱した蒸留水の一部に溶解する。次にトラガカントをこの溶液に添加し、均一に分散させる。分散液を再度加熱し、冷却して、ソルビトール溶液、メチルセルロース水溶液、及びイミテーション黒スグリを混合しながら添加してビヒクルを形成する。次に、被覆された式Iの化合物又はSARPODEX(商標)を上記のビヒクルに添加し、粒子が完全に湿潤化して均一に分散するまで混合する。
本発明の薬物放出制組成物は、有機溶媒可溶性で水不溶性の100重量部の有機ポリマー材料;5~60重量部の脂質可溶性低分子量放出助剤;及び1~70重量部の薬物を含むことによって特徴付けられる。
一実施形態では、ポリマー材料は、例えば、生分解性脂肪族ポリエステル、又は脂肪族ポリ(カーボネート)、ポリ(乳酸)、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)など、生分解性若しくは生体適合性、又はその双方である。
一実施形態では、放出助剤は、カルボン酸エステル、グリセリンのモノエステル又はジエステルである。別の実施形態では、放出助剤は、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などから選択される有機酸のエステル、又はグリセリンの一酢酸エステル若しくは二酢酸エステルである。
一実施形態では、組成物は、医療装置の表面に細胞接着材料又は内皮化促進剤をさらに含んでもよい。
一実施形態では、本発明は、本開示の組成物を含有することによって特徴付けられる薬物放出型医療装置である。薬物放出型医療装置は、表面に組成物の層を形成し、生体と接触し、又は生体内に組み込まれ若しくは留置される。装置としては、ステント、カテーテル、クリップ、臓器置換医療装置、カプセルセンサー又は人工臓器が挙げられる。一実施形態におけるステントは、冠状動脈狭窄を治療し、表面から組成物を徐々に放出するために使用される。放出速度は、ステント留置の21日後に、1/103μg/mm2/h~1μg/mm2/hである。さらに、本発明のステントは、徐々に放出される薬物が、ステントを形成する金属の表面に被覆されたポリマー材料中又は多孔質ステント基材中に保有されることを特徴とする。
ステントの表面に被覆されるポリマー材料は、非晶質である。ステントの表面に被覆されるポリマー材料は、非晶質の生分解性ポリマー材料である。ポリマー材料は、生分解性であるポリ(乳酸)又は乳酸-グリコール酸共重合体である。ポリマー材料は、保有される薬物の放出を促進する放出助剤をさらに含む。薬物の放出を促進する助剤は、酒石酸エステル若しくはリンゴ酸エステル、又はグリセリンのモノエステル若しくはジエステルである。ステントを形成する金属の表面は多孔質体であってもよく、徐々に放出される上記薬物は多孔質内に保持されてもよい。一実施形態では、多孔質体は、直径0.01nm~300nmの孔径を有する。
実施例5
光学的に純粋なサルポマレート
リンゴ酸は、我々が毎日食べる多数の食品の成分である。それは様々な果物の天然有機化合物として見いだされているが、多くの人々は健康を増進し、並びに様々な病気を治療するためにリンゴ酸補給剤を摂取することを選ぶ。今日、酸は食品添加物及び防腐剤として最も一般的に使用されている。適切な量で使用される場合、それは穏和で比較的無害な酸である。それは、栄養補助食品として健康に有益であると一般的に考えられており、リンゴ果汁に大量に存在する(Hrenchir, Five Unexpected Benefits Delivered to the Body by Malic Acid, Newsmax, page 1 (31 March 2015);参照によりその全体が援用される)。
不斉炭素を有する天然有機化合物は、通常、光学活性物質として存在し、鏡像異性体とは顕著に異なる生理学的活性を示す。
0℃のリンゴ酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、使用されたM1及びリンゴ酸次第で、それぞれラセミ的又はジアステレオマー的に(diasteriomerically)純粋なサルポマレート(化合物25~29)を得る。ラセミサルポマレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、ジアステレオマー的に(diasteriomerically)純粋なサルポマレートが得られ得る。
実施例6
光学的に純粋なサルポメチオネート
0℃のメチオニン(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、使用されたM1及びリンゴ酸次第で、それぞれラセミ的又はジアステレオマー的に(diasteriomerically)純粋なサルポメチオネート(化合物30~34)を得る。ラセミサルポメチオネートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、ジアステレオマー的に(diasteriomerically)純粋なサルポメチオネートが得られ得る。
実施例7
光学的に純粋なサルポフタレート(SARPOPHTHALLATE)
0℃のフタル(Phthallic)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、使用されたM1及びフタル(phthallic)酸次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポフタレート(sarpophthallate)をもたらし、化合物35~37を得る。サルポフタレート(sarpophthallate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、ジアステレオマー的に(diasteriomerically)純粋なサルポマレートが得られ得る。
実施例8
光学的に純粋なサルポマロネート
0℃のマロン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポマロネートをもたらし、化合物38~40を得る。ラセミサルポマロネートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポマロネートが得られ得る。
実施例9
光学的に純粋なサルポチロシネート
0℃のチロシン(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポチロシネートをもたらし、化合物41~43を得る。ラセミサルポチロシネートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポチロシネートが得られ得る。
実施例10
光学的に純粋なサルポトリプトファネート
0℃のトリプトファン(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポトリプトファネートをもたらし、化合物44~46を得る。ラセミサルポトリプトファネートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポトリプトファネートが得られ得る。
実施例11
光学的に純粋なサルポマレアート
0℃のマレイン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポマレアートをもたらし、化合物47~49を得る。ラセミサルポマレアートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポマレアートが得られ得る。
実施例12
光学的に純粋なサルポグレラート
(+)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール塩酸塩
NMR純度(%)96;HPLC純度(%)99;HPLC条件-カラム:XBridge(登録商標)C18 3.5μm、2.1×50mm;移動相:勾配溶出0.01%TFA中の10%MeCNから0.01%TFA中の95%MeCN;流速:0.5mL/分;検出:UV254nm;サンプル濃度:0.5mg/ml;分子式:C20H28ClNO3;分子量:365.9041;融点(℃):124~125;旋光度、[α]D:+22.2(c0.39、MeOH)。
(-)-1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-オール塩酸塩
NMR純度(%)97;HPLC純度(%)99;HPLC状態カラム:XBridge(登録商標)C18 3.5μm、2.1×50mm;移動相:勾配溶出0.01%TFA中の10%MeCNから0.01%TFA中の95%MeCN;流速:0.5mL/分;検出:UV254nm;サンプル濃度:0.5mg/ml。
分子式:C20H28ClNO3;分子量:365.9041;融点(℃):124~125;旋光度、[α]D:-20.4(c0.53、MeOH)。
サルポグレラート鏡像異性体
0℃のコハク酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第でそれぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポグレラートをもたらし、化合物50~52を得る。ラセミサルポグレラートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的純粋が得られ得る。
本明細書に記載される化合物の鏡像異性体は、クロマトグラフィー技術を用いて分離され得る。キラル固定相(CSP)上のクロマトグラフィーによる鏡像異性体の分取分離は、鏡像選択的合成及び酵素触媒変換などのより慣用的なアプローチに対する有用な代替法であると認識されている(Francotte, Enantioselective chromatography as a powerful alternative for the preparation of drug enantiomers, Journal of Chromatography A, Volume 906, Issues 1-2, Pages 379-397 (12 January 2001); Rajendran, et al., Simulated moving bed chromatography for the separation of enantiomers, Journal of Chromatography A, Volume 1216, Issue 4, Pages 709-738 (23 January 2009); Maier et al., Separation of enantiomers: needs, challenges, perspectives, Journal of Chromatography A, Volume 906, Issues 1-2, Pages 3-33 (12 January 2001); Miller et al., Chromatographic resolution of the enantiomers of a pharmaceutical intermediate from the milligram to the kilogram scale, Journal of Chromatography A, Volume 849, Issue 2, Pages 309-317 (23 July 1999); Andersson et al., Preparative chiral chromatographic resolution of enantiomers in drug discovery, Journal of Biochemical and Biophysical Methods, Volume 54, Issues 1-3, Pages 11-23 (31 December 2002); Pirkle et al., Chapter 6 Separation of Enantiomers by Liquid Chromatographic Methods, Asymmetric Synthesis, pp 87-124, in Volume 1: Analytical Methods covers the major analytical methods used to determine enantiomeric ratios, by Morrison (ed), Elsevier, (December 2, 2012);参照によりその全体が援用される)。本発明のラセミ化合物は、この技術によって分析規模から調製規模まで分離され得る。
擬似移動床クロマトグラフィーは、本発明の化合物の鏡像異性体分離のために使用され得て、実験室からパイロット、製造工場まで、あらゆる製造規模で実施可能である(Juza et al., Simulated moving-bed chromatography and its application to chirotechnology, Trends in Biotechnology, Volume 18, Issue 3, Pages 108- 118 (1 March 2000)、参照によりその全体が援用される)。
サルポグレラート塩酸塩の鏡像異性体の分離
((-)-4-((1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-エトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)-4-オキソブタン酸塩酸)
サルポグレラート塩酸塩は、XBridge(登録商標)C18 3.5μm、2.1×50mmカラムを用いて、移動相:0.01%TFA中の10%MeCNから0.01%TFA中の95%MeCNの勾配溶出を使用して、流速0.5mL/分、UV254nmで、5.30mgの鏡像異性体(99%HPLC純度)を得ることによって分離した。融点(℃):155~156。旋光度、[α]D:-20.0(c0.33、MeOH)。
(+)-4-((1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸塩酸
分子式:C24H32ClNO6;分子量:465.9787;融点(℃):154~155;旋光度、[α]D:+20.8(c0.53、MeOH);NMR純度(%)96;HPLC純度(%)99;HPLC条件:カラム:XBridge(登録商標)C18 3.5μm、2.1×50mm;移動相:0.01%TFA中の10%MeCNから0.01%TFA中の95%MeCNの勾配溶出;流速:0.5mL/分;検出:UV254nm;サンプル濃度:0.5mg/ml。
(+)-4-((1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸塩酸
分子式:C24H32ClNO6;分子量:465.9787;融点(℃):155~156;旋光度、[α]D:-18.1(c0.30、MeOH);NMR純度(%)96;HPLC純度(%)99;HPLC条件カラム:XBridge(登録商標)C18 3.5μm、2.1×50mm;移動相:0.01%TFA中の10%MeCNから0.01%TFA中の95%MeCNの勾配溶出;流速:0.5mL/分;検出:UV254nm;サンプル濃度:0.5mg/ml
実施例13
光学的に純粋なサルポグルタラート
0℃のグルタル酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポグルタラートをもたらし、化合物53~55を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポグルタラートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポグルタラートが得られ得る。
実施例14
光学的に純粋なサルポアジペート
0℃のアジピン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポアジペートをもたらし、化合物56~58を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアジペート(sarpoadipnate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアジペート(sarpoadipnate)が得られ得る。
実施例15
光学的に純粋なサルポピメレート
0℃のピメリン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポピメレートをもたらし、化合物59~61を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポピメレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポピメレートが得られ得る。
実施例16
光学的に純粋なサルポセバケート
0℃のセバシン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポセバケートをもたらし、化合物62~64を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポセバケートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポセバケートが得られ得る。
実施例17
光学的に純粋なサルポフォルメート
0℃のギ酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポフォルメートをもたらし、化合物65~67を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポフォルメートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポフォルメートが得られ得る。
実施例18
光学的に純粋なサルポアセテート
0℃の酢酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポアセテートをもたらし、化合物68~70を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセテートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセテートが得られ得る。
実施例19
光学的に純粋なサルプロピオネート
0℃のプロピオン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルプロピオネートをもたらし、化合物71~73を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルプロピオネート(sarpopriopionate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルプロピオネートが得られ得る。
実施例20
光学的に純粋なサルポブチレート
0℃の酪酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポブチレートをもたらし、化合物74~76を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポブチレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポブチレートが得られ得る。
実施例21
光学的に純粋なサルポバレレート
0℃の吉草酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポバレレートをもたらし、化合物77~79を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポバレレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポバレレートが得られ得る。
実施例22
光学的に純粋なサルポカプロエート
0℃のカプロン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポカプロエートをもたらし、化合物80~82を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポカプロエートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポカプロエートが得られ得る。
実施例23
光学的に純粋なサルポエナンテート
0℃のエナント(Enanthoic)(ヘプタン)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポエナンテート(sarpoenanthoate)をもたらし、化合物62~64を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポエナンテート(sarpoenanthoate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポエナンテート(sarpoenanthoateate)が得られ得る。
実施例24
光学的に純粋なサルポカプリレート
0℃のカプリル酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポカプリレートをもたらし、化合物86~88を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポカプリレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポカプリレートが得られ得る。
実施例25
光学的に純粋なサルポペラルゴネート
0℃のペラルゴン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポペラルゴネートをもたらし、化合物89~91を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポペラルゴネートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポペラルゴネートが得られ得る。
実施例26
光学的に純粋なサルポカプラート
0℃のカプリン酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポカプラートをもたらし、化合物92~94を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポカプラートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポカプラートが得られ得る。
実施例27
光学的に純粋なサルポキサレート
0℃のシュウ酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポキサレートをもたらし、化合物95~97を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポキサレートは結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポキサレートが得られ得る。
実施例28
光学的に純粋なサルポイソフタレート(SARPOISOPHTHALLATE)
0℃のイソフタル(Isophthallic)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポイソフタレート(sarpoisophthallate)をもたらし、化合物98~100を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポイソフタレート(sarpoisophthallate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポイソフタレート(sarpoisophthallate)が得られ得る。
実施例29
光学的に純粋なサルポテレフタレート(SARPOTEREPHTHALLATE)
0℃のテレフタル(Terephthallic)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポテレフタレート(sarpoterephthallate)をもたらし、化合物101~103を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポテレフタレート(sarpoterephthallate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポテレフタレート(sarpoterephthallate)が得られ得る。
実施例30
光学的に純粋なサルポサリチレート(SARPOSALICILATE)
0℃のサリチル(Salicilic)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポサリチレート(sarposalicilate)をもたらし、化合物104~106を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポサリチレート(sarposalicilate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポサリチレート(sarposalicilate)が得られ得る。
実施例31
光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(SARPOACETYLSALICILATE)
0℃のアセチルサリチル(Acetylsalicilic)酸(0.55ミリモル、1.1当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.55ミリモル、1.1当量)、及び4-ジメチルアミノピリジンを、CH2Cl2(5mL)中のラセミ体又は鏡像異性的に純粋なM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に添加し、25℃で30分間加熱し、混合物を25℃で18~24時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈する。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮する。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、M1次第で、それぞれラセミ又は光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)をもたらし、化合物107~109を得る。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)が得られ得る。(Park et al., Aspirination of α-Aminoalcohol (Sarpogrelate M1), Molecules 21(9), 1126 (2016);参照によりその全体が援用される)
実施例32
CH2Cl2(5mL)又はCH3CN(5mL)中のM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に、25℃でアスピリン(0.55ミリモル、1.1当量)及び1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI、0.60ミリモル、1.2当量)を添加した。混合物を12時間撹拌し、CH2Cl2(40mL)及び飽和水性NH4Cl(25mL)で希釈した。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮した。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、化合物107を得た。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)化合物107は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilates)108及び109が得られ得る。
実施例33
THF(5mL)中のM1(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に、0℃でアセチルサリチル酸(0.75ミリモル、1.5当量)、トリフェニルホスフィン(0.75ミリモル、1.5当量)及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD、0.75ミリモル、1.5当量)を添加した。混合物を同じ温度で1時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をEtOAc(30mL)及び飽和水性NH4Cl(15mL)で希釈した。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮した。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、化合物107を得た。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)化合物107は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilates)108及び109が得られ得る。
実施例34
CH2Cl2(5mL)中のアセチルサリチレート(1.00ミリモル、2.0当量)の撹拌溶液に、0℃で塩化オキサリル(2M CH2Cl2中、0.60mL、1.20ミリモル、2.4当量)及びジメチルホルムアミド(DMF、8.0μL、0.10ミリモル、0.2当量)を添加した。次に、温度を徐々に25℃に上昇させた。混合物を同じ温度で12時間撹拌した。次に、別のCH2Cl2(5mL)中のM13(0.50ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液にピリジン(0.24mL、3.0ミリモル、6.0当量)及びあらかじめ調製された塩化アスピリニルを添加した。混合物をさらに12時間撹拌し、CH2Cl2(50mL)及び飽和水性NaHCO3(30mL)で希釈した。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮した。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、化合物107を得た。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)化合物107は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilates)108及び109が得られ得る。
実施例35
ピリジン(2mL)中のサリチル酸エステル(241mg、0.536ミリモル、1.0当量)の撹拌溶液に、0℃でAc2O(76μL、0.81ミリモル、1.5当量)を添加した。温度を25℃に上昇させた。混合物を同じ温度で12時間撹拌した。次に、混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチル(30mL)で希釈し、H2O(10mL)で洗浄した。有機層を分離し、乾燥し(Na2SO4)、濾過して減圧下で濃縮した。粗製残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc)で精製し、化合物107(239mg、90%収率)をもたらした。実施例12で説明されるように、ラセミサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilate)化合物107は結晶化及び/又はキラルクロマトグラフィーによって精製され、光学的に純粋なサルポアセチルサリチレート(sarpoacetylsalicilates)108及び109が得られ得る。
実施例36
1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル2-アセトキシベンゾエート(化合物163):無色の油;Rf=0.25(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc1:1);
実施例37
1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イルアセテート(化合物164):無色の油;Rf=0.19(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc1:2);
実施例38
1-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロパン-2-イル-2-ヒドロキシベンゾエート(化合物165)無色の油;0.23(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc2:1);
実施例39
2-(ジメチルアミノ)-3-(2-(3-メトキシフェネチル)フェノキシ)プロピル-2-アセトキシベンゾエート(化合物166):無色の油;R
f=0.20(シリカゲル、ヘキサン:EtOAc1:1);
実施例40
H-化合物を重水素化してD-化合物を形成する一般的方法
H-化合物(本発明の化合物、約1.25ミリモル)を3mL、100mM、pH=7の重水素化リン酸緩衝食塩水(D-PBS)に溶解し、9.00mLのD2Oで25mMの最終濃度に希釈する。259.5mgのK3PQ4をD2O(12.00mL)に溶解し、264μLの20%DClをD2Oに添加することによって、100mMのD-PBSpH=7(pH紙)緩衝液を調製する。LC/MSによって水素/重水素(HID)交換の完了をモニターしながら、反応混合物を室温で11日間振盪する。
小規模の加工を実施して、重水素化化合物の塩酸塩を調製する。このようにして、反応混合物の1.2mLアリコート(総容積の10%)を5mLの飽和NaHCO3で希釈し、EtOAc(3×5mL)で抽出する。有機層をNa2SO4上で乾燥させ濾過する。溶媒を蒸発させて20mgの無色油を得て、これを数滴のジオキサン中の4M HClの添加によってHCl塩に変換する。塩をエーテルと共に摩砕し、溶媒を蒸発させて重水素化化合物HCl塩を得る。9.6mLのアリコート(総容積の80%)を40mLの飽和NaHCO3で希釈し、EtOAc(200mL)で1回抽出する。有機層をNa2SO4上で迅速に乾燥させる。溶媒を蒸発させると化合物が得られ、これを冷凍庫内に保存する。
実施例41
粗製サルポグレラート塩酸塩の調製
1-ジメチルアミノ-3-[2-[2-(3-メトキシフェニル)エチル]フェノキシ]-2-プロパノール塩酸塩250mlの13.7g及び25mlの水を一口フラスコに入れ、溶解するまで撹拌した。溶液を20%水酸化ナトリウム水溶液で処理してpH約9~約14にし、30mlのトルエンで抽出し、有機層を50℃で減圧下で濃縮して褐色油を得て、これを30mLのテトラヒドロフランに溶解する。次に、ブチリル無水物4.5gを添加し、撹拌しながら約1~約4時間加熱して還流させ、乾燥するまで40℃で減圧下で濃縮した。酢酸エチル(25mL)を添加して残渣を溶解し、約50~60分間撹拌しながら酢酸エチル溶液中の飽和塩化水素を滴下してPH1以下に調節し、サルポグレラート塩酸塩粗製湿潤生成物を得て、45~55℃で減圧下(-0.08~-0.1MPa)で乾燥して、粗製サルポグレラート塩酸塩14.7g、収率86%、HPLC純度98.6%を得る。
実施例42
粗製サルポグレラート塩酸塩の精製
粗サルポグレラート塩酸塩5gをブタノン(20mL)に溶解し、撹拌しながら溶解するまで加熱して0~30分間還流させ、25~35℃に冷却して撹拌を40~60分間継続し、濾過して濾過ケークを55~65℃の少量のメチルエチルケトンで洗浄し、白色の疎性の固体を得て24時間減圧下で乾燥させ、サルポグレラート塩酸塩4.6g、収率92%、HPLC純度99.9%を得た。
実施例43
粗製サルポグレラート塩酸塩の精製
ブタノン30ml中の粗製サルポグレラート塩酸塩5gを撹拌しながら溶解するまで加熱し、20~30分間還流させて25~35℃に冷却し、40~60分間撹拌しながらインキュベートし、濾過して濾過ケークを55~65℃の少量のメチルエチルケトンで洗浄し、白色の疎性の固体を得て24時間減圧下で乾燥させ、サルポグレラート塩酸塩4.55g、収率91%、HPLC純度99.7%を得た。
実施例44
粗製サルポグレラート塩酸塩の精製
ブタノン40ml中の粗製サルポグレラート塩酸塩5gを撹拌しながら溶解するまで加熱し、20~30分間還流させて25~35℃に冷却し、40~60分間撹拌しながらインキュベートし、濾過して濾過ケークを55~65℃の少量のメチルエチルケトンで洗浄し、白色の固体を得て24時間減圧下で乾燥させ、サルポグレラート塩酸塩4.5g、収率90%、HPLC純度99.8%を得た。
実施例45
粗製サルポグレラート塩酸塩の精製
粗生成物は塩酸サルポグレラート5gであり、ブタノン20mlを加え、20~30分間撹拌しながら溶解するまで加熱して還流させ、撹拌しながら室温に緩慢に冷却し-10℃で静置して結晶化、濾過。濾過ケークを少量のメチルエチルケトンで洗浄し、55~65℃の白色の綿毛状の固体を得て、24時間減圧で乾燥させ、塩酸塩サルポグレラート4.62g、収率92.4%、HPLC純度99.2%、最大の単一物質含有量0.09%を得た。
実施例46
1,3,4,9,10,10A-ヘキサヒドロ-6-メトキシ-2H-10,4A-(イミノエタノ)フェナントレン-11-カルボン酸2,2,2-トリクロロエチルエステル
デキストロメトルファン臭化水素酸塩一水和物(5.56g、15ミリモル)を60mlのクロロホルムと、60mlの水中の1.2g水酸化ナトリウムの溶液とに溶解した。1時間撹拌した後に有機層が分離し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)真空中で蒸発させた。得られた油を2.4mlのクロロギ酸2,2,2-トリクロロエチルと共に、50mlのトルエン中で4時間還流させた。反応は、TLC(Kieselgel 60、クロロホルム:メタノール=95:5、Rf=0.7)によって確認した。反応完了後、溶媒を真空中で蒸発させた。残留油をKieselgel 60(0.063~0.200)カラム(溶出剤:クロロホルム:メタノール=95:5)で精製し、6.0gの油(13.86ミリモル、収率:92.42%)を得た。
実施例47
3-メトキシモルフィナンテトラアセタト亜鉛酸塩
上で調製したトリクロロエチルエステル誘導体7(6.0g、13.86ミリモル)を57.5mlの酢酸及び5.89mlの蒸留水に溶解し、これに2.9gのエネルギー供給される(powered)亜鉛を添加した。50分間撹拌した後、反応の完全性をTLCによって確認した。さらに2.9gの亜鉛を反応混合物に添加した。1時間撹拌した後、反応混合物を濾過した。得られた白色粉末をエーテルで3回洗浄した。収率:10.7gの粗生成物;融点161~164℃;
実施例48
N-脱メチル-デキストロメトルファン
上記の調製された10.7gの3-メトキシモルフィナンテトラアセタト亜鉛酸塩8を300mlのクロロホルムと100mlの1N水酸化ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層が分離し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空中で蒸発させて3.1g(12.04ミリモル、収率:86.9%)を得た;GC-MS:99.45%;
実施例49
N-CD3-デキストロメトルファン
265mlのテトラヒドロフラン中の上記の調製されたN-デスメチル-デキストロメトルファン4(3.1g、12.04ミリモル)の溶液に、10.1gの水素化ナトリウム(鉱物油中60%の分散体)を添加した。20分間撹拌した後、1ml(2.329g=16.067ミリモル)のヨードメタン-d3を反応混合物に滴下した。反応はTLCによって制御した。室温で1時間撹拌した後、反応混合物を180mlの蒸留水に注ぎ、これを100mlのジエチルエーテルで3回抽出した。有機層が分離し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空中で蒸発させた。残渣をn-ヘキサン中で結晶化させた。(収率:1.7g、6.195ミリモル、51.5%;融点98~103℃)。
実施例50
N-CD3-デキストロメトルファン(5)塩酸塩
N-CD3-デキストロメトルファン5(1.7g)を酢酸エチル-メタノール混合物に溶解し、酢酸エチル中のHClでpH=2に酸性化し、この溶液にn-ヘキサンを添加した。得られた結晶を濾過した。収率:1.1g(3.54ミリモル、57.1%);融点121~123℃。同位体濃縮97原子%D。
実施例51
N-CD3-デキストロルファン(6)塩酸塩
N-CD3-デキストロメトルファン5(1.25g、4.555ミリモル)を50mlの臭化水素酸(48%)中で110℃で2時間加熱した。冷却後、125mlのクロロホルム及び40mlの水酸化アンモニウム溶液(25%)を反応混合物に滴下して添加した(pH=9)。有機層が分離し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空中で蒸発させた。残渣をエタノール-酢酸エチル混合物に溶解した。溶液を酢酸エチル中のHClでpH=2に酸性化し、得られたHCl塩を結晶化させた。
収率:1.0g(3.369ミリモル、74.0%);融点122~127℃;同位体濃縮97原子%D。
実施例52
式I及びIIのハロゲン化化合物の一般的合成
ジクロロメタン(2mL)中のジルコニウム(IV)塩化物(0.05ミリモル)の懸濁液に、ジクロロメタン(2mL)中の式I又はII(0.5ミリモル)の化合物と1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH;0.25ミリモル)との溶液を室温で添加する。混合物を室内灯下で2時間撹拌する。反応を飽和水性NaHCO3溶液でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出し、それを減圧下で蒸発させるとブロモ化合物が得られる。有機層を1,2-ジクロロベンゼンを内部標準として用いるGC分析に供する。
実施例53
式I及びIIの化合物のN-酸化物の一般的合成30mlの無水エタノール中の5.00mmolの式I又はIIの化合物の懸濁液を、透明溶液が得られるまで加熱する。次に熱い溶液に0.41mlの30%H2O2を一度に添加し、その後混合物を油浴上で加熱し還流させる。5時間の還流後、0.41mlの30%H2O2をさらに加え、還流を16時間継続する。次に少量の10%Pd/Cを添加し、45分間還流した後、反応混合物を室温まで放冷し、褐色懸濁液を得る。懸濁液を回転蒸発器(evaporater)を用いて褐色固体に濃縮し、それをシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(230~400メッシュ、溶出剤DCM:MeOH:NH3 68:30:2)によって精製して、対応するN-オキシドを得る。
生物学的研究
実施例54
DEXの代謝、及び5HT2A受容体遮断による中枢効果
実験用齧歯類において、抗精神病薬は、精神刺激薬及び精神異常発現薬によって誘発される自発運動活動亢進を軽減する。d-アンフェタミンなどのドーパミン作動薬によって誘発される活動亢進は、現在診療所で使用されている定型及び非定型抗精神病薬の双方によって逆転されるものの、5HT2A受容体拮抗剤は、フェンシクリジン様チャネル遮断薬などのNMDA受容体拮抗剤によって誘発される活動亢進に対してより効果的である。(Carlsson et al., The 5-HT2A receptor antagonist M100907 is more effective in counteracting NMDA antagonist- than dopamine agonist-induced hyperactivity in mice, J. Neural. Transm. 106(2):123-9 (1999))。ピマバンセリン(ACP-103)は、試験セッションの15分前に0.3mg/kgMK-801(i.p.)と組み合わせてマウスに投与された、5HT2A受容体拮抗薬の一例である(Vanover et al., Pharmacological and behavioral profile of N-(4- fluorophenylmethyl)-N- (1-methylpiperidin-4-yl) -N’- (4-(2- methylpropyloxy) phenylmethyl) carbamide (2R,3R)-dihydroxybutanedioate (2:1) (ACP-103), a novel 5-hydroxytryptamine (2A) receptor inverse agonist, J Pharmacol Exp Ther.317(2):910-8 (2006 May);参照により援用される)。運動活動データは、照明された部屋における15分間のセッション中に収集した。マウスは、以前に運動ケージに曝露されていなかった。マウスを自発運動チャンバーに入れる直前に、マウスを尾の付け根で保持しながらマウスの各前足を水平ワイヤと接触させることによって、筋弛緩/運動失調に対する効果を判定した。マウスは、「合格」するためには少なくとも片方の後足を10秒以内にワイヤと接触させることを要求され、そうしないことは運動失調と見なされた。各用量又は用量組み合わせを別々の群のマウスで試験した。ACP-103は、0.1及び0.3mg/kgs.c.の用量で、マウスにおけるMK-801誘発活動亢進を有意に減弱させ[F(7,63)=6.010;p<0.0001]、抗精神病薬様効果に一致する。
神経学的疾患を有する患者にキニジンとの組み合わせで投与された場合(Schoedel et al., Evaluating the safety and efficacy of dextromethorphan/quinidine in the treatment of pseudobulbar affect. Neuropsychiatric Disease and Treatment 2014:10 1161- 1174;その内容全体が参照により援用される)、デキストロメトルファンは10mgの用量で使用され、1日2回投与されてもよい。サルポグレラートの現行の公知の臨床用量は100mgであり、典型的に1日3回投与される(Doggrell (2004) sarpogrelate: cardiovascular and renal clinical potential, Expert Opinion on Investigational Drugs, 13:7, 865-874;その内容全体が参照により援用される)。したがって、サルポグレラートの現行の臨床用量は、デキストロメトルファンのそれを有意に超えている。サルポグレラートの分子量が約429であり、デキストロメトルファンの分子量が約271であることを考慮すると、現行の臨床用量でのデキストロメトルファンとサルポグレラートの併用は、1:1のモル比をもたらさない。しかし、このような1:1のモル比は、デキストロメトルファンのサルポグレラート塩を調製し、使用するための前提条件である。サルポグレラートの現在の臨床用途は、末梢(非CNS)適応症に対するものであるため(Doggrell (2004) sarpogrelate: cardiovascular and renal clinical potential, Expert Opinion on Investigational Drugs, 13:7, 865-874; その内容全体が参照により援用される)、CNS適応症に対するサルポグレラートの使用はより低い用量が必要であってもよく、したがって、デキストロメトルファンのサルポグレラート塩としての、又はモル比1:1の混合物としての、デキストロメトルファンとの同時投与が可能になる。実験動物では、サルポグレラートは典型的には25mg/kg以上の用量で投与されて、末梢効果を誘発する(Ma et al., Effective treatment with combination of peripheral 5-hydroxytryptamine synthetic inhibitor and 5-hydroxytryptamine 2 receptor antagonist on glucocorticoid-induced whole-body insulin resistance with hyperglycemia. J Diabetes Investig 7(6):833-844 (2016);その内容全体が参照により援用される)。サルポグレラートのより高いCNS活性の一例は、サルポグレラートが中枢作用性5-HT2A作動薬DOI(3mg/kg;(1(2,5-ジメトキシ-4-ヨードフェニル)-2-アミノプロパン)塩酸塩)の30分間前に、0.3、1、及び3mg/kgの用量でスプラーグドーリー系ラットに投与される例によって提供され、式Iの化合物又はサルポグレラートの同時投与によってDOI誘発性の首振りの頻度が減少する。
式Iの化合物又はSARPO、並びにその一次代謝産物M1の双方の鏡像異性体は、5HT2A受容体拮抗剤である(Pertz et al., In-vitro pharmacology of a compound of formula I or SARPO, and the enantiomers of its major metabolite: 5-HT2A receptor specificity, stereoselectivity and modulation of ritanserin-induced depression of 5-HT contractions in rat tail artery, J Pharm Pharmacol. 47(4):310-6 (1995 April); その内容全体が参照により援用される)。M1S-及びR-鏡像異性体が、中枢神経系内の5HT2A受容体に達する能力を確認するために、ラットは0.1mg/kgのMK801で前処理され、従来の運動活動モニターを使用して行われた120分間の試験セッションにおいて、式Iの化合物又はSARPOとM1鏡像異性体との双方の用量範囲にわたって、MK801刺激による自発運動亢進の減弱がモニターされる。
DEXは多くの受容体に作用し、その標的の1つはNMDA受容体である(Taylor et al., Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther. 164:170-82 (2016 August);その内容全体が参照により援用される)。しかし、DEXは、その代謝産物DOよりも効力が弱いNMDA受容体拮抗薬である。したがって、DEXは、フェンシクリジン様運動活動を誘発する可能性がDOよりも低い。ラットにおけるDEX、DO、及びフェンシクリジン(PCP)の行動効果を比較した。DO(15~120mg/kg)は、用量依存的な自発運動亢進、常同症、及び運動失調の誘発において、PCP(1.25~20mg/kg)と類似していた。DEX(15~120mg/kg)はより高い用量でのみ、処置後約45分間で中等度の活動亢進を誘発した。DEX及びDOは、10mg/kgのPCPによって誘発される自発運動促進を逆方向に修正した。DOによる前処理がPCP誘発活動亢進を促進したのに対して、DEXによる前処理は用量依存的にそれを抑制した(Szekely et al., Induction of phencyclidine-like behavior in rats by DO but not DEX, Pharmacol Biochem Behav, 40(2):381-6 (1991 October); その内容全体が参照により援用される)。
実施例55
式Iの化合物又はSARPO、並びにその一次代謝産物M1の双方の鏡像異性体は、CYP2D6阻害剤である。DEXは、生物学的に活性な物質及び薬物の2D6阻害活性を明らかにするために、生体外代謝研究において一般に使用される基質である。式Iの化合物又はSARPOとM1鏡像異性体とが、DEX処置対象における活動亢進の出現を妨げることを実証するために、一連の専用試験において、式Iの化合物又はSARPOと鏡像異性体とをDEXの前に投与して、ラットの自発運動が120分間モニターされる。これらの研究は、血漿DEXレベルの測定と平行する。薬物動態学(血漿DEX濃度)及び薬力学(MK-801及びDEX誘発活動亢進)試験の組み合わせを使用して、M1鏡像異性体と、抗活動亢進及びDEX代謝抑制効果の最適比率を生じる用量レベルとが同定される。
実施例57
血糖値及びインスリン感受性
ビヒクル治療と比較して有意に高い基礎インスリン分泌をもたらすスルホニル尿素薬とは対照的に、DO及びそのプロドラッグDEXは、マウス若しくはヒトの膵島からの又は生体内における基礎インスリン分泌を有意に変化させなかった(Marquard et al., Characterization of pancreatic NMDA receptors as possible drug targets for diabetes treatment. Nat Med 21(4):363-72 (2015); その内容全体が参照により援用される)。より具体的には、一晩の飲料水(4mg/ml)を介したDEXの適用は、マウスにおける基礎血漿インスリン濃度及び空腹時血糖濃度のどちらも変化させなかったが、非DEX処置対照で見られたものよりも、有意に高いグルコース誘発血漿インスリン濃度及び耐糖能をもたらした(グルコースは1.5mg/kg体重で腹腔内投与された)。
Marguard et al. (2015)は、DEXの効果がNMDA受容体チャンネル遮断薬によって仲介されることを示唆し、特に、NMDA受容体の強力な阻害剤であるDOへのDEXの急速な代謝を指摘した。NMDA受容体の関与を証明するために、Marguard et al.は、NMDA受容体機能を欠くように遺伝子操作されたマウスにおいて、グルコース刺激インスリン分泌及び耐糖能が観察されないことを実証した。
II型糖尿病(T2DM)を有する人々において、DEXがより高い血清インスリン濃度及びより低い血糖濃度をもたらし得るかどうかを試験するために、第2a相、二重盲検プラセボ対照無作為化交差、単回投与概念実証が実施された(Marquard et al., Characterization of pancreatic NMDA receptors as possible drug targets for diabetes treatment. Nat Med 21(4):363-72 (2015);その内容全体が参照により援用される)。メトホルミン単剤療法を受けている(年齢59(46~66)歳(平均(範囲));平均体型指数(BMI)29.2(25.2~34.1)kgm-2;糖化ヘモグロビン(HbA1c)6.9(6.5~7.4)%)のT2DMを有する20人の男性が動員された。各自、60mgのDEX、270mgのDEX、100mgのアマンタジン又はプラセボの単回経口投与を受け、続いて7~14日の休薬期間で隔てられた4治療日の薬物摂取の1時間後に、経口耐糖試験(OGTT)がそれに続いた。マウスにおける結果と一致して、DEXはプラセボと比較して、空腹時血清インスリン濃度の上昇も空腹時血糖濃度の低下も引き起こさず、270mgまでの用量で重度の低血糖事象を誘発しなかった。対照的に、経口グルコース摂取に続いて、60及び270mgDEX用量は、どちらもプラセボで見られたものと比較して有意に(P<0.05)より高い最大血清インスリン濃度をもたらした。
さらに、270mgDEXで主要エンドポイントに達した;すなわち、OGTTの最初の2時間以内の血糖濃度の曲線下面積(グルコースAUC1~3h)は、同じ個人が異なる治療日にプラセボを投与された場合よりも、270mg用量のDEXを投与された場合の方が有意に(P<0.05)小さかった。
血糖値もまた、末梢5HT2A受容体の制御下にある(Yamada et al., Hyperglycemia induced by the 5-HT receptor agonist, 5-methoxytryptamine, in rats: involvement of the peripheral 5-HT2A receptor. Eur J Pharmacol.323(2-3):235-40 (1997);その内容全体が参照により援用される)。より具体的には、5-メトキシトリプタミンなどの非選択的5HT受容体作動薬の投与は高血糖症を誘発し、それは、5-HT2A受容体拮抗薬ケタンセリン並びに末梢作用性5-HT2受容体拮抗薬キシラミジンによる前処置によって予防される。これらの結果は、5-メトキシトリプタミン誘発高血糖症が、末梢5-HT2A受容体によって媒介されることを示唆した。
二重ドーパミン及びセロトニン受容体拮抗作用を有する第二世代抗精神病薬は、耐糖能障害及び真性糖尿病のリスク増加に関連付けられている。これは主に体重増加に起因するとされているが、耐糖能に対する抗精神病薬の直接的な、受容体媒介効果もある。ケタンセリンなどの特定の5HT2A受容体拮抗剤は、インスリン感受性を損なう(Gilles et al., Antagonism of the serotonin (5-HT)-2 receptor and insulin sensitivity: implications for atypical antipsychotics. Psychosom Med.67(5):748-51 (2005));その内容全体が参照により援用される)。Gillesらによる研究では、10人の健康な男性ボランティアが、プラセボと対比される40mgの5-HT2拮抗薬ケタンセリンの単回投与の二重盲検プラセボ対照交差試験に含まれた。インスリン感受性は、正常血糖-高インスリン血症クランプ法によって測定された。対象は、この受容体のレベルに対するケタンセリンの効果について調節するために、試験の双方の部分でα-1アドレナリン作動性拮抗薬フェノキシベンザミンで処置された。プラセボ条件と比較して、対象は、ケタンセリンの後にインスリン感受性の有意な低下を示した(プラセボ:9.4+/-3.6mg/kg/分;ケタンセリン:7.7+/-2.1mg/kg/分;p=.047)。
したがって、DEXと5-HT2A受容体拮抗剤を組み合わせることは、血糖値及びインスリン感受性に相乗効果をもたらしてもよく、それは抗精神病薬で治療された患者で観察されるものと定性的に類似した望まれない代謝副作用を有することもあるため、それは長期治療の場合は望まれないこともある。これらの効果は、組み合わせとして安全に投与され得るDEX及び5-HT2A受容体拮抗剤の用量を制限することもある。
末梢代謝有害作用のリスクを低減しながら、DEXと5HT2A受容体拮抗体の組み合わせの治療的使用を可能にする2つのアプローチがあり、それらは本発明の一部である。
1つのアプローチは、CYP2D6を阻害し、それによってDEXのDOへの変換を減少させる、5HT2A受容体拮抗薬の使用に基づく。DEX及びDOはどちらもNMDA受容体チャネル遮断薬であり、膵島におけるNMDA受容体阻害が、グルコース刺激インスリン分泌、及びDEXとDOとによって増強されるグルコース不耐性の原因であることが示唆された(Marquard et al., Characterization of pancreatic NMDA receptors as possible drug targets for diabetes treatment. Nat Med 21(4):363-72 (2015); その内容全体が参照により援用される)。DOはDEXよりも強力なNMDA受容体チャネル遮断薬であるため(Pechnick et al., Comparison of the Effects of DEX, DO, and Levorphanol on the Hypothalamo-Pituitary- Adrenal Axis, The Journal Of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 309:515-522 (2004);その内容全体が参照により援用される)、CYP2D6を通じたDEX代謝の阻害は、グルコース刺激インスリン分泌及び耐糖能に対するDEXの効果の発現を減少させ、その結果、代謝副作用のリスクを減少させてもよい。
第二のアプローチは、中枢-対-末梢5HT2A受容体占有率の最良の比率を有する5HT2A受容体拮抗薬の選択である。したがって、5HT2A受容体拮抗薬は、グルコース不耐性などであるが、これに限定されるものではない、望まれない代謝効果を生じるリスクが最も低い用量で、治療的に適切な中枢5HT2A受容体占有率を生じるように選択される。
式Iの化合物は、2D6阻害特性を有する5HT2A受容体拮抗薬である。耐糖能及びインスリン抵抗性に対する、式Iの化合物又はSARPOの急性及び慢性効果が調べられている(Takishita et al., Effect of sarpogrelate hydrochloride, a 5-HT2 blocker, on insulin resistance in Otsuka Long-Evans Tokushima fatty rats (OLETF rats), a type 2 diabetic rat model. J Cardiovasc Pharmacol 43(2):266-70 (2004);その内容全体が参照により援用される)。これらの研究では、II型糖尿病のモデルであるOtsuka Long-Evans Tokushima Fattyラットが、30mg/kg体重/日の式Iの化合物又はSARPOでの4週間の処置(HTB群)、及び無処置(対照群)の2群に無作為に割り当てられた。グルコース注入速度は、対照群と比較してHTB群において有意に増加した。耐糖試験後の血糖値及び血漿インスリン及び脂質の値は、対照群よりもHTB群において有意に低かった。式Iの化合物又はSARPOは、グルココルチコイド薬物処置をはじめとする様々な手段によって誘発されるインスリン抵抗性を逆転させることが示された(Ma et al., Effective treatment with a combination of peripheral 5-hydroxytryptamine synthetic inhibitor and 5-hydroxytryptamine- 2 receptor antagonist on glucocorticoid-induced whole-body insulin resistance with hyperglycemia. J Diabetes Investig 7: 833-844 (2016); その内容全体が参照により援用される)。
血糖値及びインスリン感受性に対する式Iの化合物又はSARPOの相乗効果が、カルビドパ(Ma et al., Effective treatment with a combination of peripheral 5-hydroxytryptamine synthetic inhibitor and 5- hydroxytryptamine-2 receptor antagonist on glucocorticoid-induced whole-body insulin resistance with hyperglycemia. J Diabetes Investig 7: 833-844 (2016); その内容全体が参照により援用される)、及びピオグリタゾン(Iizuka et al., Beneficial effects of a compound of sarpogrelate hydrochloride, a 5-HT2A receptor antagonist, supplemented with pioglitazone on diabetic model mice. Endocr Res. 34(1-2):18-30 (2009);その内容全体が参照により援用される)をはじめとするいくつかの薬物について示されている。
式Iの化合物又はSARPOのインスリン増感効果はまた、ヒトにおいても確認されている(Kokubu et al., Persistent insulin-sensitizing effects of sarpogrelate hydrochloride, a serotonin 2A receptor antagonist, in patients with peripheral arterial disease. Circ J 70(11):1451-6 (2006);その内容全体が参照により援用される)。インスリン抵抗性(空腹時免疫反応性インスリン)が、末梢動脈疾患を有する24人の患者(男性19人、76+/-9歳)において、式Iの化合物又はSARPO投与(300mg/日)の前及び2週間後に測定された。24人の患者のうちの16人はまた、治療の3ヶ月後に調べられた。2週間の治療後、空腹時免疫反応性インスリンの有意な減少(p=0.03)が観察された。3ヶ月の治療後、空腹時免疫反応性インスリンの有意な減少(16.0+/-10.3対9.2+/-2.0マイクロU/ml、p=0.03)が維持された。
式Iの化合物又はSARPOはM1に急速に代謝され、それは5HT2A受容体拮抗特性及び2D6阻害的特性の双方もまた有する。M1の鏡像異性体はどちらも生物学的に活性であり、5HT2A受容体及び2D6を遮断する能力を共有する。いずれの鏡像異性体がDEXと組み合わせるのに最適な特性を有するかを確立するために、経口耐糖能に対するこれらの物質の効果が単独で及びDEXとの組み合わせで、評価される(Taniguchi et al., Diabetes, 55, 2371-2378 (2006); その内容全体が参照により援用される)。この方法は、全血糖及び血漿インスリンの測定に基づく。試験物質は、オスのスプラーグドーリー系ラットに投与される(群サイズ:1群当たり8匹)動物は一晩の食物枯渇後に試験され、個別に収容される。試験物質はグルコース負荷の60分前、すなわち、ベースライン血糖測定後に投与される。血糖測定後、T0で強制経口投与として2g/kgのグルコースが動物に負荷される。血糖値は、ベースライン(処置前)、T0(グルコース前)、次にグルコース負荷後15、30、60、90、120、及び180分の8時点で、市販のグルコース計を用いて、尾の切断先端から収集された1滴の血液から測定される。
実施例58
SARPO/M1単独のAD病態生理学に対する影響
慢性の糖尿病性代謝状況とAD病態生理学のリスク及び出現との関連性は長年疑われており、近年実証されている(Goldwasser et al., Breakdown of the Cerebrovasculature and Blood-Brain Barrier: A Mechanistic Link between Diabetes Mellitus and Alzheimer’s Disease. J Alzheimers Dis 54(2):445-56 (2016 Aug 1);その内容全体が参照により援用される)。いくつかの大規模な剖検シリーズでは、定型ADと臨床的に診断された全被験者の3分の1以上が脳血管疾患の証拠を示し、混合型認知症として再分類されなくてはならなかった(Grandal Leiros et al., Prevalence and concordance between the clinical and the post-mortem diagnosis of dementia in a psychogeriatric clinic, Neurologia S0213-4853(16)30070-6 (2016); その内容全体が参照により援用される)。臨床的観点から、現在承認されている薬物及び機序を超えてAD療法を拡張し、潜在的な糖尿病性代謝状況又は高齢者ではかなり頻繁に起こるII型糖尿病を最適化することによって、認知障害にもまた対処することが望ましい実際、血糖コントロールは認知障害の重症度に影響を与えると考えられている(Zilliox et al., Diabetes and Cognitive Impairment. Curr Diab Rep, 16 (9):87 (2016);その内容全体が参照により援用される)。
上記の式Iの化合物又はSARPOの特定の抗糖尿病作用のために、ADにおける症状及び疾患進行の双方に対して、並びに主に血管起源の認知障害(多梗塞性認知症、血管性認知症、血管性認知障害など)において、付加利益を試みることが考えられ得る。
日本の規制ラベルに基づくと、内科における式Iの化合物又はSARPO療法による有害事象の発生率は、内科におけるプラセボと比較してかなり低く、AEの性質は不安を感じさせないと報告されており;したがって、式Iの化合物又はSARPO療法の付加便益リスク比は、高齢の多疾病罹患集団においてもまた擁護できるようである、
実施例59
化合物M1による生体内における精神刺激薬誘発活動亢進の立体選択的逆転
運動活動データは、照明された部屋における15分間のセッション中に収集した。マウスは、以前に運動ケージに曝露されていなかった。マウスを自発運動チャンバーに入れる直前に、マウスを尾の付け根で保持しながらマウスの各前足を水平ワイヤと接触させることによって、筋弛緩/運動失調に対する効果を判定した。マウスは、「合格」するためには少なくとも片方の後足を10秒以内にワイヤと接触させることを要求され、そうしないことは運動失調と見なされた。各用量又は用量組み合わせを別々の群のマウスで試験した。ACP-103は、0.1及び0.3mg/kgs.c.の用量で、マウスにおけるMK-801誘発活動亢進を有意に減弱させ[F(7,63)=6.010;p<0.0001]、抗精神病薬様効果に一致する。
ヒト組換え5HT2A受容体を発現するHEK-293細胞を拮抗薬放射性リガンド結合試験に使用した。SARPOラセミ体などの式Iの化合物及び双方の鏡像異性体を3.0E-11M~1.0E-07Mの範囲の濃度で適用した。M1鏡像異性体を1.0E-11M~3.0E-08Mの範囲の濃度で適用した。IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を引き起こす濃度)及びHill係数(nH)を、Hill方程式曲線適合を用いて、平均反復値で生成された競合曲線の非線形回帰分析によって判定した。阻害定数(Ki)は、Cheng Prusoff式を用いて計算した。どちらのサルポグレラート鏡像異性体も、[3H]ケタンセリン結合の強力な阻害剤であった(表1)。M1鏡像異性体もまた、サルポグレラート鏡像異性体のよりもおよそ1桁分高いKi値で5HT2A受容体に強力に結合する(表1)。サルポグレラート又はその主要代謝産物に対する5-HT2A受容体結合に関して、鏡像異性体間に有意な差異はない。
CNS疾患に関連しており5-HT2A受容体作動薬及び逆作動薬について知られている効果を誘導する、M1鏡像異性体の能力を確認するために、食物及び水を自由摂取できる標準的なコロニー屋内条件下で、ケージ当たり4~5匹で収容されたメスのウィスター系ラット(n=6~9)の別々の群を2つのM1鏡像異性体のうちの1つ(0、3、又は10mg/kg)の異なる用量で腹腔内前処置し、15分後に0.1mg/kgのMK801又はそのビヒクルが続き、その直後にコンピューター制御運動活動記録チャンバー(25×35.5×34cm、L×W×H、透明プレキシガラス性の壁及び不透明プラスチック製の床;防音性がある換気された小個室に囲まれている)に60分間入れて、その間、赤外光電セルの遮断(床から5cm及び14cm)が、運動活動の尺度として記録された。MK-801は、新規抗精神病薬をはじめとする新規療法に関する精神薬理学研究で一般的に使用される、フェンシクリジン様NMDA受容体チャネルブロッカー(channel blocked)である。分散分析(ANOVA)は、(-)M1鏡像異性体について、M1用量の主要効果、及びM1用量とMK-801治療要因との相互作用を明らかにしたが[それぞれF(2,39)=6.154;p=0.0048、F(2,39)=4.613;p=0.0159]、(+)M1鏡像異性体ではそうでなかった[それぞれ、F(2,42)=0.5211;p=0.5977、F(2,42)=0.5229;p=0.5966]。図7に示されるように、(-)M1鏡像異性体の双方の用量、並びに3mg/kgのプロトタイプの5-HT2A受容体拮抗薬M-100,907が、MK-801によって誘発される活動亢進を減少させた(ダネットの多重比較検定)。したがって、5-HT2A受容体への結合に関してM1鏡像異性体間に有意差はないにもかかわらず、驚くべきことに、5-HT2A受容体遮断に感受性があることが知られている精神運動活性化の前臨床モデルにおいて有効性を示す鏡像異性体は1つのみである。
実施例60
ラットの嗅球摘出術によって誘発された運動活動亢進のサルポグレラート誘発逆転
一連の専用試験において、スプラーグドーリー系ラット(Charles River, Germany)をケタミン/キシラジン(xylasine)キシラシン麻酔下で行われた両側嗅球摘出術切除術に供した。動物は手術後14日間にわたり回復させたが、さもなければ生じるであろう攻撃性を排除するために、毎日取り扱った。偽手術動物も同様に処置したが、嗅球は無傷のままであった。薬物投与及び自発運動活動試験を各ラットについて4回実施して、連続試験セッションの間に72時間の休憩をはさんだ。各試験セッションの前に、動物を最初にデキストロメトルファン(0、15、30、又は60mg/kg、経口)で処置し、15分後にサルポグレラート(1、3、及び10mg/kg、腹腔内)が続き、さらに15分後に30分間にわたる自発運動活動の記録のためにOpto-Varimexケージに入れた。嗅球摘出術後のラットの活動亢進は、概して試験セッションの初期に観察される。図8は、嗅球摘出動物の活性が、偽対照の活性よりも有意に高かった試験の最初の15分間にわたって計数された平均活性を示す。ANOVAは、手術とサルポグレラートの用量因子の双方の有意な主要効果を明らかにした[それぞれF(1,88)=5.04、p=0.0273;F(3,88)=5.02、p=0.0029]。事後的ペアワイズ比較(Sidakの多重比較検定)は、試験前にサルポグレラートの代わりにビヒクルで前処理されたラットにおいてのみ、嗅球摘出と偽手術の間に有意差が観察されたことを確認した。サルポグレラートの代わりにビヒクルを投与されたそれぞれの対照と比較して、3又は10mg/kgのサルポグレラートで前処置された嗅球摘出ラットは、歩行により少ない時間を費やした。サルポグレラートのこれらの抗活動亢進効果は、偽手術ラットの活動に影響を及ぼさない用量、したがって全般的な運動能力の非特異的障害を反映しない用量で観察される。したがって、驚くべきことに、以前は、血液脳関門を横切る最小限の浸透しかない末梢制限5-HT2A受容体拮抗薬と称されていたにもかかわらず(Obata H et al. Antinociception in rat by sarpogrelate, a selective 5-HT(2A) receptor antagonist, is peripheral. Eur J Pharmacol 404(1-2):95-102 (2000))、サルポグレラートは、抗うつ薬などのCNS薬を研究するために一般に使用されるモデルである嗅球摘出術後に、ラットにおいて行動特異的な抗活動亢進効果を及ぼすことが観察されている。
実施例61
生体外及び生体内におけるデキストロメトルファン代謝のサルポグレラート誘発阻害
デキストロメトルファンO-デメチラーゼ活性をヒト肝臓ミクロソームで測定した。サルポグレラート(1.0E-8M~3.0E-5M)又はM-1(濃度:3.0E-9M~1.0E-5M)及びデキストロメトルファンをアセトニトリルに溶解し、インキュベーション混合物中で1.0%の最終有機溶媒濃度を与えるのに必要な濃度にアセトニトリルで連続希釈した。インキュベーション混合物は、貯留ヒト肝臓ミクロソーム(最終濃度:0.25mg/ml)、デキストロメトルファン、及びNADPH生成体系(1.3mMのNADP+、3.3mMのグルコース6リン酸、3.3mMのMgCl2、及び0.4U/mlのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)を含んだ。インキュベーション及び遠心分離の後、上清をアセトニトリルで100倍希釈し、次にLC-MS/MSシステムに注入した。全てのインキュベーションは3回実施し、平均値を分析に用いた。IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を引き起こす濃度)及びHill係数(nH)を、Hill方程式曲線適合を用いて、平均反復値で生成された競合曲線の非線形回帰分析によって判定した。双方のサルポグレラート鏡像異性体は、CYP2D6媒介デキストロメトルファンO-脱メチル化を阻害した(表4)。
M1の双方の鏡像異性体が2D6活性を0.038~0.096μMのIC50値で著しく阻害した一方で、サルポグレラート鏡像異性体はおよそ10~15倍効力が低かった(表4)。以前の生体内試験に基づいて、サルポグレラートは弱い2D6阻害剤として分類された。この分類は、基質AUCの2倍未満の増加に基づいた(すなわち、米国食品医薬品局、Draft guidance for industry: drug interaction studies- study design, data analysis, implication for dosing and labeling recommendations. Center for Drug Evaluation and Research, US FDA (2012), http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidance s/ucm292362.pdfによって提供されたガイダンスに従って)。
頸静脈カニューレを装着したオスのウィスターラットにおいて薬物動態学的研究を実施した。Pharmasolv:PBS緩衝液(5:95)混合物中にサルポグレラート塩酸塩を配合し、2mg/kgの用量で静脈内投与した。抗凝固剤としてヘパリンを使用して、5分、15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、及び6時間の時点で血液サンプルを頸静脈から採取した。血漿サンプル中のサルポグレラート及びM1の同時定量のために、LC-MS/MS生物分析法を使用した。2mg/kgの静脈内ボーラス投与後、血漿レベル曲線は小さな個体間変動性を示した(図9)。見かけの最終排出半減期は、1.21±0.159時間と推定された。最高のM1濃度は最初のサンプリング時点で測定されたので、サルポグレラートのM1代謝産物の形成は急速であった。急速な形成にもかかわらず、遊離M1代謝産物の濃度は、循環中で親化合物の濃度よりも数桁低かった(M1/サルポグレラート比2.98±0.597%)。したがって、M1鏡像異性体は親化合物よりも有意に強力な2D6阻害剤であるが、M1とサルポグレラートの血漿中AUCの比から示唆されるように、M1への相対的な曝露が少ないことで、M1の潜在的な影響が軽減される。
実施例62
別の一連の研究において、サルポグレラートが生体内でデキストロメトルファン代謝を阻害する能力をラットで調べた。Janvier Labs (France)から購入した成体オスのスプラーグドーリー系ラット(RjHan:SD)を、12時間明/12時間暗の周期で、食料及び水を自由摂取させながら、気候制御室に収容した。血液採取の2~3日前に、ラットに頸静脈カテーテルを挿入し、その後、手術直後にラットをカルプロフェン(5mg/kg)で1回処置し、カテーテルを毎日ヘパリン(500μl/ml)ですすいだ。(20μl/ラット/日)。実験当日、デキストロメトルファン(50mg/kg)を強制経口投与によって投与し、即座にt=0で血管アクセスポートを介したサルポグレラート(1、3又は10mg/kg;ラセミ体又は鏡像異性体の1つ)又はビヒクルの静脈内ボーラス注射がそれに続いた。デキストロメトルファン投与後6時間までの4時点で血液サンプルを採取した。サンプルサイズは、80μlのLi-ヘパリン全血/時点、すなわち、40μlのLi-ヘパリン血漿/時点であった。全血サンプルは、遠心分離(3000g、4℃で10分間)まで氷上で保存した。収集後45分以内に血漿を調製して-20℃で凍結し、LC-MS分析用に処理するまでこの温度で保存した。
図10に示されるように、サルポグレラート(ラセミ体又は鏡像異性体)で処置されたラットでは、デキストロメトルファンの血漿中濃度が後の時点でも高いままであった一方、ビヒクル処置ラットでは、デキストロメトルファン濃度は6時間目の時点に向けて低下した。
驚くべきことに、デキストロメトルファンについてのAUCの定量化は、10mg/kgの最も高い試験用量で、サルポグレラートが、デキストロメトルファン(dextromethorhan)AUCを5.3~6.9倍増加させたことを示した。3mg/kgのより低い用量でさえ、デキストロメトルファンAUCは、2.7倍((-)鏡像異性体について)から3.3倍((+)鏡像異性体について)増加した。
実施例63
サルポグレラートとデキストロメトルファンの組み合わせにより処置されたラットにおけるフェンシクリジン誘発活動亢進の抑制の阻害
ラットにおけるDEX、DO、及びフェンシクリジン(PCP)の行動効果を比較した。DO(15~120mg/kg)は、用量依存的な自発運動亢進、常同症、及び運動失調の誘発において、PCP(1.25~20mg/kg)と類似していた。DEX(15~120mg/kg)はより高い用量でのみ、処置後約45分間で中等度の活動亢進を誘発した。DEX及びDOは、10mg/kgのPCPによって誘発される自発運動促進を逆方向に修正した。
専用の一連の研究において、SARPOラセミ体及び鏡像異性体をDEXと同時投与し、このような薬物の組み合わせが、精神運動活性化及び活動亢進を抑制する能力を実証した。オスのスプラーグドーリー系ラットに、サルポグレラートラセミ体、(-)サルポグレラート、(+)サルポグレラート又はビヒクルを腹腔内投与し、並びに皮下(ラセミ体実験)又は経口(鏡像異性体実験)デキストロメトルファン又はビヒクル(水)を投与して、Opto-Varimex-4オートトラックに個別に入れた。15分後、ラットをボックスから取り出し、フェンシクリジン(PCP;5mg/kg、皮下)を注射し、さらに105分間(すなわち120分の総記録時間まで)オートトラックに戻した。データ分析は、試験の後半(60~120分)に焦点を当てた。ANOVAは、サルポグレラート用量とデキストロメトルファン用量の間の有意な相互作用を明らかにした(図11、上部パネル;F(9,120)=2.38、P=0.015)。
デキストロメトルファン用量との同様の統計的に有意な相互作用が(-)サルポグレラートで観察された(図11、中央パネル;F(9,141)=3.07、P=0.002)が、(+)サルポグレラートでは観察されなかった(図11、下側パネル;F(9,120)=1.65、P=0.1)。事後分析は、デキストロメトルファンの存在下で、3mg/kgのサルポグレラートラセミ体並びに1mg/kg又は3mg/kgの(-)サルポグレラートが、PCP処置ラットにおいて運動活動亢進を抑制したことを示した(ダネットの多重比較検定)。サルポグレラートの(-)鏡像異性体は、生体外(表4)及び生体内(表5)の双方において、デキストロメトルファン代謝の阻害に関して(+)鏡像異性体よりも効力が低いことを考えると、この結果のパターンは驚くべきことである。
デキストロメトルファンの非存在下で投与された場合、サルポグレラートラセミ体又はサルポグレラート鏡像異性体のどちらもPCP処置ラットの活動を低下させなかった。デキストロメトルファンとの組み合わせで投与された場合、デキストロメトルファンそれ自体が、PCP処置ラットにおいて運動活性を抑制したか(皮下投与、サルポグレラートラセミ体による実験)又は増強したか(経口投与、サルポグレラート鏡像異性体による実験)にかかわりなく、サルポグレラートの抑制効果が観察された。したがって、デキストロメトルファンの存在は、精神異常発現薬PCPへの曝露後に活動亢進を有するラットなどの精神運動活性化を有する対象において、サルポグレラートが抑制効果を発揮するために必要であってもよい。デキストロメトルファンとサルポグレラートの間のこのような超相加的相互作用のパターンは驚くべきことである。
実施例64
血糖値に対するデキストロメトルファンとサルポグレラートの組み合わせの効果
II型糖尿病(T2DM)を有する人々において、DEXなどの式IIの化合物がより高い血清インスリン濃度及びより低い血糖濃度をもたらし得るかどうかを試験するために、第2a相、二重盲検プラセボ対照無作為化交差、単回投与概念実証が実施された(Marquard et al., Characterization of pancreatic NMDA receptors as possible drug targets for diabetes treatment. Nat Med 21(4):363- 72 (2015);その内容全体が参照により援用される)。メトホルミン単剤療法を受けている(年齢59(46~66)歳(平均(範囲));平均体型指数(BMI)29.2(25.2~34.1)kgm-2;糖化ヘモグロビン(HbA1c)6.9(6.5~7.4%)のT2DMを有する20人の男性が動員された。各自、60mgのDEX、270mgのDEX、100mgのアマンタジン又はプラセボの単回経口投与を受け、続いて7~14日の休薬期間で隔てられた4治療日の薬物摂取の1時間後に、経口耐糖試験(OGTT)がそれに続いた。マウスにおける結果と一致して、DEXはプラセボと比較して、空腹時血清インスリン濃度の上昇も空腹時血糖濃度の低下も引き起こさず、270mgまでの用量で重度の低血糖事象を誘発しなかった。対照的に、経口グルコース摂取に続いて、60及び270mgDEX用量は、どちらもプラセボで見られたものと比較して有意に(P<0.05)より高い最大血清インスリン濃度をもたらした。
さらに、270mgDEXで主要エンドポイントに達した;すなわち、OGTTの最初の2時間以内の血糖濃度の曲線下面積(グルコースAUC1~3h)は、同じ個人が異なる治療日にプラセボを投与された場合よりも、270mg用量のDEXを投与された場合に有意に(P<0.05)小さかった。
インスリン抵抗性(空腹時免疫反応性インスリン)が、末梢動脈疾患を有する24人の患者(男性19人、76+/-9歳)において、式Iの化合物又はSARPO投与(300mg/日)の前及び2週間後に測定された。24人の患者のうちの16人はまた、治療の3ヶ月後に調べられた。2週間の治療後、空腹時免疫反応性インスリンの有意な減少(p=0.03)が観察された。3ヶ月の治療後、空腹時免疫反応性インスリンの有意な減少(16.0+/-10.3対9.2+/-2.0マイクロU/ml、p=0.03)が維持された。
実施例65
血糖値と口腔耐糖能の評価方法
食物及び水を自由摂取させてグループで収容したオスのウィスター系(Han)ラット(実験開始時に180~280g;Janvier Labs)に、試験物質を投与した。一晩の食物枯渇後、尾の先端を切断し、各ラットを秤量して個別に収容し、ストレスのない静かな部屋に入れた。およそ1時間後、市販のグルコース計(OneTouch(登録商標),Lifescan)を用いて、尾の先端から採取した1滴の血液からベースライン血糖値を測定し、次にラットにサルポグレラート及び/又はデキストロメトルファンを腹腔内注射し、30分後に血糖値を再度測定し、即座に強制経口投与によってラットに2g/kgのグルコースを負荷した。その後、グルコース負荷後180分までの6時点で血糖値を測定した。図12に示されるように、薬物処置の主な効果があった(F(4,59=12.0、p<0.0001)。事後的ペアワイズグループ比較では、デキストロメトルファンを単独で投与した場合、血糖値が有意に低下したことが示され、デキストロメトルファンのこの効果は、サルポグレラートラセミ体又はどちらかの鏡像異性体と組み合わせて投与した場合は逆転した。
実施例66
ビーグル犬を用いた52週間の慢性毒性試験及び5週間の回復試験(Suzuki et al., Pharmacology & Therapeutics Vol 19 Supplement’91)
化合物50塩酸塩が、ビーグル犬に5、20、80、及び320mg/kg/日の用量レベルで、52週間連続して経口投与された。性別にかかわりなく、動物は死亡せず、又は切迫屠殺されなかった。全身状態については、320mg/kg/日を投与されたオス及びメス並びに80mg/kg/日を投与されたオスに嘔吐が認められ、320mg/kg/日を投与されたメスに流涎が認められた。体重増加は、320mg/kg/日を投与されたオス及びメスで抑制された。摂餌量は80mg/kg/日以上を投与されたメスで抑制された。320mg/kg/日を投与されたメスもまた、水消費の抑制を示した。回復期間中、観察された全身状態は、対照群と処置群との間で差を示さなかった。心電図検査又は検眼鏡検査で、治療に関連した変化はなかった。尿検査では、320mg/kg/日を投与されたメスにおけるタンパク質の増加;血液学的検査では、320mg/kg/日を投与されたオスにおける血小板数の増加;生化学的検査では、80mg/kg/日以上を投与されたオス及び320mg/kg/日を投与されたメスにおけるカリウムの増加が明らかにされた。これらの変化は、薬物の中止後に回復した。甲状腺及び肝臓の相対重量は、80mg/kg/日以上を投与されたオスで増加したが、病理組織学的検査では処置に関連した変化は見られなかった。病理組織学的検査では、320mg/kg/日を投与されたオスの腎臓の皮質-髄質境界領域に脂肪変性が明らかにされた。しかし回復期にはこの変化は見られなかった。52週間の試験で化合物50塩酸塩の用量レベルに影響はなく、20mg/kgと推定された。
本明細書では本発明の特徴を例示し説明してきたが、今や当業者は、多数の修正、置き換え、変更、及び均等物を想起するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に入る全てのこのような修正及び変更をカバーすることを意図していることを理解すべきである。添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び詳細に様々な変更を加えてもよいことが当業者には理解されるであろう。当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識し、又は見極めることができるであろう。このような均等物は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。合理的な変動は、本発明の範囲からの逸脱と見なされない。本発明の精神から逸脱することなく、このように記載された発明が変更され得て、ここに示された例示的な実施例に対する種々の修正、追加、置き換え、及び変更がなされ得ることは明らかであり、したがって、それらは本発明の範囲内と見なされる。印刷された刊行物、並びに仮特許出願及び通常の特許出願をはじめとするが、これらに限定されない、上で参照された全ての文書は、その全体が参照により本明細書に援用される。