JP2021522861A - インターロイキン 2突然変異タンパク質およびi型インターフェロンで構成される融合タンパク質 - Google Patents

インターロイキン 2突然変異タンパク質およびi型インターフェロンで構成される融合タンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、バイサイトカイン(BC)と称されるサイトカインに基づく融合タンパク質が記載され、具体的には、IL2アゴニスト変異タンパク質をI型インターフェロン(IFN)と結合することにより形成され、突然変異によるヒトIgG1のFc領域およびコネクターペプチドによって連結される。バイサイトカインの構築物中のIL2アゴニスト変異タンパク質およびI型IFNの組み合わせは、これらの分子に驚くべき免疫調節性の特性、および親サイトカインまたはその組み合わせの治療効果よりも優れた治療効果を与えることから、それらを癌の治療において魅力的かつ新規の分子にする。本特許の対象である融合タンパク質を有効成分として含む薬学的組成物もまた記載される。
【選択図】図8

Description

本発明は、バイオテクノロジーおよび免疫腫瘍学の分野に関し、具体的には、サイトカインに基づく融合タンパク質の開発に関する。特に、I型インターフェロン(IFN)がインターロイキン2(IL2)アゴニスト変異タンパク質に結合することにより構成される融合タンパク質に関する。
サイトカインの使用に関して、癌免疫療法において何十年にも渡り努力がなされてきたが、今のところ大きな結果が得られていない。これらの分子の毒性が高いこと、半減期が低いこと、並びに患者への有効性が低いことにより、その抗腫瘍特性を向上させる革新的な戦略を創造することが必要とされ、それは癌患者のより上質で、より長い生命を意味することになる。サイトカインの機構の中で、治療効果を妨げるものは、調節性T細胞の誘導であり、腫瘍微小環境における細胞傷害性CD8+T細胞の反応を抑制する(Ovens and Naugler,Theoretical Biology and Medical Modeling,2012,9:44)。
慣例では、組み合わせが癌の治療におけるサイトカインの治療上の使用を最適化することを目的とした戦略のうちの1つであり、可溶性分子の同時投与またはフソカイン(fusokine)ともしばし呼ばれる融合タンパク質の生成のいずれかによる。後者を使用することの利点は、その産生が実行可能であるだけではなく、異なる薬理的特性を有する分子間の化学量論的な関係性を確率する可能性があることである。さらに、いくつかのフソカインは、親サイトカインを個別に投与することと比較して、およびその組み合わせでの使用と比較しても、優れた治療効果を有することが示されている。(Stagg J.et al.,Cancer Research,2004,64:8795−8799;Acres B.,Cancer Research,2005,65:9536−9546);米国特許出願公開第2011/0150828号明細書。フソカインの論文で最近報告された治療方法のうちのひとつは、1型IFNに基づく融合タンパク質およびTGFβ受容体の外部ドメインをコードするmRNAを腫瘍内投与することであり、それは抗腫瘍効果を示す。mRNAの腫瘍内移動技術は、臨床シナリオによく適した非常に用途が広く、再現可能であり、容易であり、かつ順応性のある治療ツールである(Van der Jeught et al,OncoImmunology,2015,4:5)。
抗腫瘍療法に関連する2つのサイトカインは1型インターフェロン:IFNαおよびIL2であり、癌の治療で所望されるTヘルパー細胞1型反応パターンの強力な誘導因子である。悪性細胞へのIFNαの直接抗腫瘍作用はすでに報告されている。細胞増殖抑制、抗増殖効果、および細胞外マトリクスプロテアーゼレベルの低下に関連し、侵入および転移のプロセスに関与しており、疾患の予後不良と関係する。その一方で、このサイトカインは、抗原提示細胞の成熟および遊走、αCD8樹状細胞での交差提示の誘導、およびリンパ球の活性化を促進する(Chikkala et al.,Cancer Research,1990,50:1176−1182)。抗原によって媒介される活性化の結果として、IFNαがミトコンドリア依存性アポトーシスからT細胞を保護し、よって規制された方法で、クローン増殖のプロセスに有利となることが記載されている(Dondi et al,The Journal of Immunology,2004,173(6):3740−3747)。
その一方で、サイトカインIL2は、抗原活性化Tリンパ球の増殖分化を促進するオートクリン因子である。しかし、エフェクター細胞よりも制御性T細胞へより高い親和性で結合することから、抗腫瘍効果に悪影響を与えるかたちでそれらの増殖分化を誘導する(Chaput et al.,JImmunol,2007,179:4969−4978)。この分子の治療効果を向上させるための戦略のうちのひとつは、合理的な設計に基づいて変異タンパク質を開発することである。分子免疫学センター(Center of Molecular Immunology)で生成されたIL2アゴニスト変異タンパク質がそうであり、制御性T細胞で発現した高親和性受容体に結合することができない。IL2アゴニスト変異タンパク質は、以下アルファなしIL2(US9,206,243 配列番号6)と称される。野生型Il2に対して変性することによって、アルファなしIL2は、制御性T細胞よりも優先的にNKおよび記憶CD8T細胞にフェクター集団を拡大する。この分子の毒性が、健康な組織において野生型IL2と比較し低いことも記載されている(Carmenate et al.,of Immunology,2013,190:6230−6238)。
他のIL2のアゴニスト変異体がインビトロ進化(遺伝子工学)から生成されている。IL2のスーパーカインと名付けられたこの変異体(H9)は、IL2受容体のベータ鎖に増加した結合親和性を示し、Tリンパ球の強力な増殖分化、独立的にIL2受容体のCD25アルファ鎖を刺激する。事実、IL2に対し、増加した細胞傷害性Tリンパ球の拡大、インビボでの高い抗腫瘍反応、制限された制御性T細胞の発現、および低減した毒性を誘発することができることを示している(Levin et al.,Nature,2012,48:529−535)。変異体は、以下H9と称される。
いくつかの論文では、癌の治療におけるIL2とIFNαとの併用投与の相乗効果について提案している。IFNαとIL2との組み合わせを使用することにより、BR55−2MAbにより誘発された、HT29結腸直腸癌腫系に対する抗体依存性細胞傷害活性刺激する能力が、別個に使用したサイトカインのその能力と比較して大幅に増加する(Flieger et al.,Cytokine,2000,12:756−761)。2010年に、Konjevicらが、臨床病期IVの転移性黒色腫患者から採取した末梢血液試料から、IL2およびIFNαの両方がNK細胞のインビトロでの活性を増加させることを実証した。IL2およびIFNαの両方のサイトカインが、CD16が多く発現したNK細胞の亜集団においてでさえ、NK細胞中の受容体を活性化させるNKG2Dの発現を刺激することができる;NK細胞活性の誘発に関連する両方のサイトカインによるNKG2Dの誘導(Konjevic et al.,Melanoma Research,2010,20:459−67)。
その文献では、野生型IL2とヒトIFNα2bとの2つのサイトカインを組み合わせる融合タンパク質の生成を記載した報告がある。この分子中、IL2は直接IFNα2bに連結し、その抗腫瘍効果は親サイトカインおよびその組み合わせと比較されておらず(He et al.,J Leukoc Biol,1999,125:77−82)、したがってそれらが親サイトカインおよびその組み合わせよりも優れるかどうかのエビデンスはない。
米国特許出願公開第2011/0150828号明細書
Ovens and Naugler,Theoretical Biology and Medical Modeling,2012,9:44 Stagg J.et al.,Cancer Research,2004,64:8795−8799 Acres B.,Cancer Research,2005,65:9536−9546 Vander Jeughtetal,OncoImmunology,2015,4:5 Chikkala et al.,Cancer Research,1990,50:1176−1182 Dondi et al.,The Journal of Immunology,2004,173(6):3740−3747 Chaput et al.,JImmunol,2007,179:4969−4978 Carmenate et al.,ofImmunology,2013,190:6230−6238 Levin et al.,Nature,2012,48:529−535 Flieger et al.,Cytokine,2000,12:756−761 Konjevic et al.,Melanoma Research,2010,20:459−67 He et al.,J Leukoc Biol,1999,125:77−82 Hezareh et al.,J Virol,2001,75(24):12161−12168
前述のことを考慮しながら、本願の発明者らは、癌治療のための、いくつかのバイサイトカイン(BC)と呼ばれる二官能性融合タンパク質を生成した。I型IFNをIL2アゴニストと組み合わせる2つの二官能性分子を癌の治療のために得た。それらを得るための開始点は2つの変異タンパク質:アルファなしIL−2またはH9およびIFNαを融合することである。Fcγ受容体への限定的な結合を有する免疫グロブリンのFc領域を通じた両方のサイトカインの結合からなるこれらのBCのために提案されたものを、以下ではBC2およびBC3とそれぞれ称する。新生児Fc受容体に結合することができるFc領域の存在により、半減期の時間を増加することができる。これらの組み合わせおよび設計は、このタンパク質型を開発する新規の要素を構成する。得られる分子は、各親サイトカイン(同Fc領域に結合)の投与後に観察されるものよりも優れた免疫調節性の効果、および驚くべきインビボ抗腫瘍特性を有し、等モルでのこれらの組み合わせに対してでさえ優れる。
一実施形態において、本発明の対象は、I型IFNにリンカーを通じて結合されたIL2変異タンパク質を含む融合タンパク質である。具体的には、本発明の融合タンパク質の一部であるIL2変異タンパク質の配列が配列番号1および2に記載される。当該融合タンパク質の構成の一部であるIFNはIFNα(配列番号3)である。
ある特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、リンカーが、変異ヒトIgG1のFc領域、およびコネクターペプチドからなることを特徴とし、その配列は配列番号5に示される。
さらに、本発明に記載される融合タンパク質の配列は配列番号6および7に記載され、それらをコードする核酸配列は配列番号10および11にそれぞれ示される。
その他の実施形態において、本発明は、有効成分として配列番号6および7に示される融合タンパク質並びに薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
その他の実施形態において、本発明の対象は、癌の治療における本明細書に記載される融合タンパク質の使用であり、当該融合タンパク質をコードする核酸分子の腫瘍内投与アプローチを含む。
ヒトIFNα2bの配列。 リンカー断片の配列。 H9の配列。 ELISAによるBC2mおよびHEK293T細胞の単一対照における一過性発現の評価。 ウエスタンブロットによるBC2mおよび単一対照の免疫識別:IFNαに特異的な抗体。 ウエスタンブロットによるBC2mおよび単一対照の免疫識別:IL2に特異的な抗体。 トランスフェクトされたHEK293T細胞の上清で処理されたMB16F10腫瘍細胞におけるMHCI発現の誘導を試験することにより測定される、BC2mおよびIFNα−Fc対照のIFNα様活性。 トランスフェクトされたHEK293T細胞の上清で処理されたナイーブ型マウスの脾細胞の培養から得たTCD8+リンパ球の拡大を試験することにより測定される、BC2mおよび単一対照Fc−アルファなしIL2のIL2様活性。 ELISAによる、形質導入された4T1腫瘍細胞の上清中のBC2mおよび単一対照の検出:Fc領域に特異的。 ELISAによる、形質導入された4T1腫瘍細胞の上清中のBC2mおよび単一対照の検出:FcおよびIL2領域に特異的。 ELISAによる、形質導入された4T1腫瘍細胞の上清中のBC2mおよび単一対照の検出:FcおよびIFNα領域に特異的。 実験の25日目および27日目の、形質導入された4T1腫瘍細胞を使用したBC2mの抗腫瘍効果の評価。 実験の17日目の、BC2mを腫瘍内投与した4T1モデルにおける治療効果の評価。
BCの設計
本発明の融合タンパク質は、意図される病理学上のシナリオを考慮して設計される。配列番号1(以前に米国特許第9,206,243B2号の配列番号6に開示される)に示されるアルファなしIL−2変異タンパク質と本発明の図1Aおよび配列番号3に配列が示されるヒトIFNαとの融合によりBC2は形成される。免疫応答に関与する限定される受容体の活性化能力に関連する、L234A L235A変異体を有する変異されたヒトIgG1のFc領域(Hezareh et al.,J Virol,2001,75(24):12161−12168)、およびリンカー要素からのコネクターペプチド(Gly4Ser)3。IFNα分子は、リンカー断片のN末端(Nt)で結合し、アルファなしIL2分子はC末端(Ct)で結合する。当該リンカーの配列は図1Bおよび配列番号5に記載される。
BC3は、配列が図1Aおよび配列番号3に示されるヒトIFNαが、配列が配列番号2および図2に示される前述のH9変異タンパク質に融合することにより形成される。リンカー要素は、変異体L234A L235A、および免疫応答に関与する受容体の限定された活性化能力を有するヒトIgG1のFc領域、およびリンカーペプチド(Gly4Ser)3により構成される。IFNα分子は、リンカー断片のNtで結合し、H9分子でみられるCtで結合する。当該リンカーの配列は図1Bおよび配列番号5に記載される。
薬学的組成物
本発明のBC対象は有効成分として見出され、それに好適な異なる薬学的組成物の一部および薬学的に許容される担体を形成する。当該薬学的組成物における有効成分の濃度は、1μg/ml〜20μg/ml、好ましくは5μg/ml〜10μg/mlの範囲内である。
薬学的に許容される担体は、食塩溶液、中性リン酸緩衝食塩水および同様の配合物を含むが、それらに限定されない。患者への投与に好適なその他の緩衝剤、分散剤および非中毒性不活性物質が本発明の組成物に含まれる。組成物は投与に好適な溶液であり、通常は無菌であり、所望されない粒子を含まない。
治療上の使用および治療
新規のBCのフォーマットは、それを構成するサイトカインのリンカー要素におけるFc領域の存在による。このFc領域はタンパク質A親和性クロマトグラフィーによってその精製を可能にし、異なる経路(皮下、静脈、皮内、筋肉内、腹腔内)によって可溶性タンパク質として投与することを可能にし、また循環するこれらの薬剤の半減期時間を増加させ、したがって治療効果が向上する。このことは、用量をより低くさせ、その結果毒性を低減する。代替的投与経路は腫瘍内であり、他の投与経路よりも毒性が低い。同様に、アルファなしIL2またはH9の存在は、現在の臨床シナリオで使用されている野生型IL2分子よりも毒性を減少させる。
さらに、これらのBCについて本発明で使用される投与戦略には、例えば、mRNAの腫瘍内投与およびそれらをコードする形質導入粒子などの遺伝子に基づく治療アプローチによる産生物の腫瘍内投与が含まれる。BC2またはBC3の発現について、腫瘍または浸潤腫瘍細胞の遺伝的改変はこれらが腫瘍微小環境に存在することを保証し、免疫調節作用および腫瘍そのものに直接作用することを可能にする。治療薬をコードする核酸の腫瘍内投与の融通性および高い再現性は、異なる種類の腫瘍を治療する上での好適なプラットフォームである。
不特定の方法でのインサイチュでの強化作用に加え、抗腫瘍反応のこれらの分子の免疫調節特性を考慮すると、多種の癌を有する患者の標的治療との考えられる組み合わせにサポートされる特定の抗原免疫応答の刺激を将来の治療として考慮することができる。
この方法では、前述のBCは、現在の癌の治療に使用されているI型IFNおよびIL2個別サイトカインの薬理的作用を強化する新しい治療上のフロントを構成することを目的とする。この効果は、制御性T細胞上よりも細胞傷害性T細胞が優先的に拡大することに関係し、それはより効率の良い抗腫瘍免疫応答につながり、よって腫瘍成長を遅らせること、および治療を受ける患者の生存率を高めることにつながる。その上、使用されるIL2の毒性が低いことにより、野生型サイトカインによる治療と比較して成功する確率が高まる。これらの反応すべてが、治療を受ける患者のより平均余命および生活の質を高めることにつながる。
本発明を以下の実施例および図によってさらに詳述する。しかし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例
実施例1.設計並びにBCおよびサイトカインの単一対照の取得
I型IFNおよびIL2アゴニストに基づく免疫調節性および抗腫瘍作用をマウス内でモデリングするために、配列番号8に記載されるBC2mを生成した。これは、ペプチドコネクター(Gly4Ser)3に結合した変異マウスIgG1のFc領域からなる配列番号12に示されるリンカー断片を通じて、配列番号1に記載される、IL2アゴニストの例である、アルファなしIL2変異タンパク質に融合したマウスIFNα4(配列番号4)であるI型IFNからなる。Fc領域内のD265A突然変異は免疫応答に関与する受容体の活性化能を低減する(Becker J.C.et al(1996)PNAS,93:2702−2707)。アルファなしIL2変異タンパク質はリンカー断片のCt末端に向かって位置し、IFNα4は同じ断片のNt末端に位置する。したがって、BC2mは二量体および4価の分子である。
単一対照が、各々が変異マウスIgG1(D265A)のFc領域に融合した親サイトカインを含み、BC2m構造内で各サイトカインの相対位置を維持する分子として設計される。したがって、単一IFNα対照では、このサイトカインが上記のFc領域のNtに結合し、アルファなしIL2の単一対照では、このサイトカインは上記のFc領域のCtに向かって位置する。したがって、IFNαおよびアルファなしIL2の単一対照は、二量体および2価の分子である。
BC2m並びに単一対照IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2遺伝子は、高次細胞の一過性発現アッセイのために、pLV−CMV−IRES−Neo vectorでクローンされる。得られた遺伝子構築物はまた、腫瘍細胞腫系の遺伝的改変で使用される形質導入粒子を得るためのトランスファーベクターとして使用される。HEK293T細胞中の当該遺伝子の発現はリポフェクタミンを使用して一過性導入によって確認される。上清中の異なる組み換え分子の定量をマウスFc領域に特異的なELISAによって実施される。
BC2およびBC3の生成
BC2およびBC3ヒトBCの構築について、ヒトIFNα(配列番号3および図1A)並びにアゴニスト変異タンパク質アルファなしIL2およびH9(配列番号1および2にそれぞれ記載される)を使用した。L234A L235A突然変異および免疫応答に関与する受容体の限定された活性化能を有する変異ヒトIgG1のFc領域、並びにリンカーペプチド(Gly4Ser)3がリンカーとして使用され、当該リンカーは配列番号5および図1Bに示される。IFNα分子は、リンカー断片のNtで結合し、アルファなしIL2またはH9はCtで結合する。
二官能性タンパク質BC2およびBC3の最終的な設計は配列番号6および7にそれぞれ示される。BC2およびBC3の遺伝子は高次細胞中での安定した発現のために、トランスファーベクターpLV−CMV−IRES−Neoにてクローンされる。これらの遺伝子の機能性を、HEK293T細胞中のリポフェクタミンを用いて一過性発現アッセイで確認し、組み換え分子はヒトFc領域に特異的なELISAによって定量される。
実施例2.BC2mが内在性および機能性タンパク質として発現する
BC2mが構築され単一対照IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2が得られると、一過性導入アッセイをHEK293T細胞で実施し、これらの分子の設計の実行可能性を評価する。72時間培養した後、上清を除去しマウスFc領域に特異的なELISAを実施する。そのために、ポリスチレンプレートをマウスIgG分子に特異的な抗体でコーティングし、各々がBC2mおよび単一対照の遺伝子を含む構築物でトランスフェクトされた細胞の上清で培養する。最後に、マウスIgGのFc領域に特異的な抗体を使用して検出を実行する。492nmで吸光度の検量線にマウスIgGで補間し、組み換えタンパク質の濃度を定量する。この試験によって、対象となる3種のタンパク質の発現を検出することができ、設計されたフォーマットの機能性を確認する(図3)。
同様に、サイトカインIFNαおよびIL2に特異的なウエスタンブロットアッセイを実施し、BC2m構築物内のその存在を確認する(図4AおよびB)。同様に、非還元および還元条件化下での理論上のサイズがそれぞれ2量体で120kDa、単量体で60kDaに相当する電気泳動移動を有するタンパク質としてBC2mが発現されたことが検証された。これらのサイトカインの同定を、対応する単一対照IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2で確認し、設計に従った想定したサイズに相当する電気泳動移動が検出された(図4Aおよび4B)。
実施例3.BC2mがサイトカインIFNαおよびIL2に相当する生物活性を維持する
IFNα4およびアルファなしIL2変異タンパク質の一部分がBC2mおよび単一対照の構築物中で活性であるかどうかを判定するために、相当する遺伝子的構築物でトランスフェクトされたHEK293T細胞の上清、および分子の同モル量を使用してインビトロ実験を実施する。トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清をネガティブ対照として使用する。IFNα様活性の場合、当該上清で処理された24時間中MB16F10黒色腫細胞の表面上のMHCIの発現の増加をフローサイトメトリーにより評価する。BC2mまたはIFNα−Fc対照を含有する上清は、BC2の構築物の中でIFNαの活性機能が維持されることを示すネガティブ対照を使用して得られた結果とは対照的に、処理された腫瘍細胞中にMHCIの発現を刺激することがでる(図5A )。
BC2m中に存在するアルファなしIL2およびFcアルファなしIL2対照が生物活性を示すかどうかの判定をするために、CD8+リンパ球増殖分化刺激アッセイをナイーブ型マウスからの脾細胞培養を用いて実施する。C57BL/6マウスからの脾細胞を、CFSE試薬で標識し、BC2mまたはFcアルファなしIL2対照を含有するトランスフェクトされたHEK293T細胞の上清の存在下で72時間培養する。実験の最後に、増殖分化中のCD8+Tリンパ球の割合を分析する。ネガティブ対照として、トランスフェクトされていないHEK293T細胞と培養された脾細胞を使用し、CD8+Tリンパ球(Pr)の増殖比率を、BC2mまたはFcアルファなしIL2で処理された脾細胞について増殖分化するCD8+T細胞の割合、およびネガティブ対照に相当する値をそれぞれ除することによって計算する。
図5Bでは、BC2およびFcアルファなしIL2を含有する上清は、ネガティブ対照と比較して、それぞれ4倍および5倍の脾細胞増殖分化を誘発することができる。これらの結果は、当該融合タンパク質の構築物中に含まれるアルファなしIL2部分が生物学的特性を保持することを論証する。
実施例4.レンチウイルスの形質導入により遺伝子組換えされた4T1腫瘍細胞によるBC2mの分泌
インビボでのBC2mの抗腫瘍活を評価するために、形質導入する腫瘍細胞のアプローチが選択され、4T1乳房癌腫のモデルとして使用する。細胞をBC2mおよび単一対照をコードするレンチウイルス粒子で形質導入する。ネガティブ対照として、空pLV−CMV−IRES−Neoベクター(モック対照)で形質導入された腫瘍細胞を使用した。形質導入された細胞を、選択された培地(G−418抗生物質を有する)中で10日間保持し、上清中の組み換え分子の濃度をELISAによって測定し、マウス免疫グロブリンのFc部分を検出する。BC2mおよび単一対照が、この技術により形質導入された腫瘍細胞の上清中に検出された(図6A)。
さらに、BC2mおよび単一対照中のアルファなしIL2部分およびIFNαの存在がサンドイッチELISAによって確認された。そのうちの1つに、形質導入された細胞の上清を抗Fc抗体でコーティングされたプレート上に培養し、IL2部分が、IL2に特異的なウサギ抗体および酵素ペルオキシダーゼに共役した抗ウサギ免疫グロブリン抗体を順次加算することで検出された。したがって、Fc−IL2部分がBC2mおよび単一FcアルファなしIL2対照の構築物に検出された(図6B)。他のアッセイにおいて、形質導入された細胞の上清を、抗IFNα抗体でコーティングされたプレート上に培養し、Fc部分が酵素ペルオキシダーゼに共役したマウスIgGのFc領域に特異的な抗体によって検出された。IFNα−Fc部分がBC2mおよび単一IFNα−Fc対照に検出された(図6C)。
実施例5.個別サイトカインIFNα−FcおよびFcアルファなしIL2またはそれらの組み合わせよりも優れた抗腫瘍作用をBC2mが示す
BC2mの抗腫瘍作用をその対照と比較するために、異なる分子を分泌する4T1細胞から移植された腫瘍の成長を評価する。処理される5つのグループの動物が考慮される:そのうち3つが4T1−Mock、4T1−IFNα−Fcまたは4T1−Fc−noalphaIL2細胞を受け、残りの2つグループはアルファなし4T1−IFNα−Fc+4T1−FcIL2または4T1−BC2m細胞と培養した。合計100000個の細胞を皮下投与した。形質導入されたラインが異なるレベルの組み換えタンパク質を発現し、それらは分泌されたタンパク質/合計細胞比が確実に他のグループと同等であるようにするために、いくつかのケースではモック細胞と混合した。
結果を分析するために、フィッシャー直接確率法により、25日目および27日目に、4T1−Mockグループで見出された最小の腫瘍以下の容積の腫瘍を有する動物の頻度の一対比較法を異なるグループ間で実施した。
図7で観察されるように、25日目および27日目の、モック対照グループで観察される最低量以下の腫瘍を有する動物の頻度が、単一個別対照およびそれらの組み合わせと比較して4T1−BC2m細胞を受けたグループにて有意に高かった(フィッシャー直接確率法、p<0.05)。この現象は4T1−IFNα−Fc+4T1−FcアルファなしIL2細胞の組み合わせを受けたグループでは観察されず、評価された頻度は各単独療法で処理されたグループとの比較において差異はなかった(結果は図示されず、フィッシャー直接確率法、p>0.05)。
これらの結果は、IFNαがアルファなしIL2に結合することを示し、強化された抗腫瘍反応を及ぼす質または量的に異なる分子および細胞機構の活性が、サイトカインIFNα−FcおよびFcアルファなしIL2の単一対照を同時投与したもの、またはこれらのサイトカインを個別に投与したものから得られたものよりも高くなることから、BC2mの治療的な優勢を指示する。
実施例6.BC2mの腫瘍内投与が、4T1モデルの単一対照IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2よりも大きい抗腫瘍作用を有する
4T1細胞をBALB/c免疫適格性マウスに播種させる。10日後、事前にトランスフェクトされたHEK293T細胞の上清に含有されたIFNα−Fc、FcアルファなしIL2およびBC2mの同モル量を、腫瘍内投与した。追加的グループには、IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2を含有する上清の混合物を投与し、単一対照およびBC2mに関して確実に各サイトカインが等モルとなるようにする。ネガティブ対照として、トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清を使用する。上清を4日間に渡り毎日投与した。図8に見られるように、実験の17日目に、BC2mで治療したマウスの100%においてネガティブ対照グループの平均腫瘍量を下回り、この結果は他の治療グループでは観察されていない。ネガティブ対照グループの平均サイズを下回る腫瘍サイズとなった動物の頻度は、IFNα−FcまたはFcアルファなしIL2の個別治療を受けたどのグループよりもBC2mで治療されたグループがより高かった(フィッシャー直接確率法;p<0.05)。しかしながら、ネガティブ対照グループの平均腫瘍両を下回る腫瘍量を有する動物の頻度は、IFNα−FcおよびFcアルファなしIL2対照の組み合わせで治療されたグループは、単一対照IFNα−Fcのそれよりも高かった。対照的に、FcアルファなしIL2対照に関しては、頻度はより高くなく、IFNαおよびアルファなしIL2サイトカインを同じ分子内で結合する必要があることを指示している。これは、両方の分子の受容体の同時刺激に関連した分子および細胞機構の起こり得る活性に起因し得る。概して、これらの証拠により、腫瘍にBC2mを局所的投与することによる治療効果が、親サイトカインに対して、優れていることを支持する。

Claims (16)

  1. I型インターフェロン(IFN)に連結したIL2アゴニスト変異タンパク質を含む融合タンパク質。
  2. 前記IL2アゴニスト変異タンパク質がリンカーによりI型IFNに結合する、請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. IL2変異タンパク質が配列番号1に示される配列を有することを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  4. IL2変異タンパク質が配列番号2に示される配列を有することを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  5. 前記I型IFNが配列番号3に示されるヒトIFNαであることを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  6. コネクターペプチドに連結した変異ヒトIgG1のFc領域からなる前記リンカーを有することを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  7. 配列番号5に示される配列を有する前記リンカーを有することを特徴とする、請求項6に記載の融合タンパク質。
  8. 配列番号6に示される配列を有する前記リンカーを有することを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  9. 配列番号7に示される配列を有する前記リンカーを有することを特徴とする、請求項2に記載の融合タンパク質。
  10. 請求項8または9に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
  11. 配列番号10に示される配列を有することを特徴とする、請求項10に記載の核酸分子。
  12. 配列番号11に示される配列を有することを特徴とする、請求項10に記載の核酸分子。
  13. 請求項8または9に記載の融合タンパク質をコードするmRNA分子。
  14. 1μg/ml〜20μg/mlの範囲の濃度での、有効成分として請求項8または9に示される融合タンパク質、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
  15. 癌の治療における請求項8または9に記載の融合タンパク質の使用。
  16. 腫瘍内投与のための、請求項10または11に記載の核酸分子の使用。
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