本発明の目的は、特に開業医が遠隔地の患者を診断又は治療する場合など、実験装置にアクセスできない状況において、ヘモグロビン及びヘマトクリットの信頼できる決定を行うことができる容易さを高めることである。
したがって、本発明の一態様は、全血サンプル中の平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)を決定するための装置を提供し、開口端と閉口端を有する細長いサンプルチャンバを含むサンプルホルダーと、保持部材が回転軸の周りを回転してもよく、サンプルホルダーが保持部材によって受け取られ保持されるとき、サンプルチャンバが回転軸に対して実質的に垂直であり、サンプルホルダーを受け取り保持するように適合された保持部材と、サンプルホルダーの一方の側に配置され、それぞれ異なる周波数で光を照出するように構成された第1及び第2の光源と、光源からの光が、サンプルホルダーの少なくとも1つの回転位置において、サンプルチャンバを通過してもよく、少なくとも1つの光センサに衝突するように、第1の面とは反対側のサンプルホルダーの第2の面に配置された少なくとも1つの光センサと、を含む。
有利には、光が、第1及び第2の光源のそれぞれから照出され、サンプルチャンバを通過しない経路に沿って移動し、少なくとも1つの光ホルダーに衝突してもよい。
好ましくは、保持部材は、サンプルホルダーから離間して、それを通して形成された開口又は窓を有し、それを通って光が通過することができる。
好都合には、光は、回転軸の周りのサンプルチャンバの回転によって定義される環状領域を通過せず、少なくとも1つの光ホルダーに衝突する経路に沿って移動することができる。
有利には、サンプルホルダーは、第1及び第2の光源によって放射される光に対して透過性を有する材料から少なくとも主に形成されており、光は、そのサンプルチャンバから離間してサンプルホルダーの領域を通過してもよく、材料の1つ以上の層を含む。
好ましくは、少なくとも1つの光センサは、細長い配列の光センサを含む。
好都合には、サンプルホルダーの少なくとも1つの回転方向において、光センサの細長い配列は、サンプルチャンバに少なくとも実質的に整列している。
有利には、装置は、サンプルチャンバを通過し、少なくとも1つの第1の光センサ又は1つ以上の代替光センサのいずれかによって受光され、赤血球によって占有されるサンプルチャンバの長さ、及び他の血液成分によって占有されるサンプルチャンバの長さを決定するために、位置決めされ、かつ、サンプルチャンバを通過してもよい光を照出するように適合された少なくとも1つの光源をさらに含む。
好ましくは、少なくとも1つのさらなる光源は、細長い配列の光源からなる。
好都合には、サンプルホルダーの少なくとも1つの回転方向において、光センサの細長い配列は、サンプルチャンバに少なくとも実質的に整列している。
有利には、光センサの細長い配列は、光源の細長い配列に実質的に整列している。
好ましくは、装置は、周囲光がエンクロージャの内部に入らないように囲まれた、又は実質的に囲まれたエンクロージャを含み、第1及び第2の光源及び少なくとも1つの光センサがエンクロージャ内に配置されている。
好都合には、装置は、さらに回転軸を中心に回転を駆動するように適合されたモーターを含む。
有利には、装置はさらに、第1及び第2の光源及び少なくとも1つの光センサからの信号を受信し、第1及び第2の光源及び少なくとも1つの光センサに命令を提供するように適合された少なくとも1つのプロセッサを含む。
好ましくは、装置は、少なくとも1つの光センサからの出力信号を受信するために操作可能なプロセッサをさらに含み、出力信号から血液サンプルの赤血球ヘモグロビンの平均赤血球濃度(MCHC)を計算する。
好都合には、プロセッサは、出力信号から血液サンプルのヘマトクリット値を計算するように動作可能である。
有利には、プロセッサは、MCHC及びそのヘマトクリットから血液サンプルのヘモグロビン濃度を計算するように動作可能である。
好ましくは、この装置は、血液サンプルのMCHC、ヘマトクリット値、又はヘモグロビン濃度を出力するように動作可能な出力装置をさらに含む。
好都合には、出力装置はスクリーンを含む。
本発明の別の側面は、サンプルホルダーを提供する血液サンプルをサンプルホルダーに導入するステップと、サンプルホルダーを保持部材に取り付けるステップと、サンプルチャンバが回転軸に対して実質的に垂直に配置されるように、保持部材を回転軸について回転させるステップと、サンプルチャンバの第1の側に少なくとも1つの第1の光源を提供するステップと、サンプルチャンバの第1の側とは反対側の第2の側に少なくとも1つの第1の光センサを提供するステップと、光がサンプルチャンバを通過し、少なくとも1つの第1の光センサによって検出されるように、少なくとも1つの第1の光源から光を照出するステップと、サンプルチャンバを通過する光の減衰を決定し、それによって血液サンプルの赤血球の平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)を決定するステップと、を含む血液サンプルの赤血球の平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)を決定する方法を提供する。
有利には、方法はさらに、決定されたMCHCを血液サンプルのヘマトクリットに乗算して、血液サンプルの総ヘモグロビン濃度を決定するステップをさらに含み、ヘマトクリットは、血液サンプルの総体積に対する遠心分離中の血液サンプルの赤血球の体積の比を含む。
好ましくは、方法は、血液サンプルが保持部材に取り付けられている間に、血液サンプルのヘマトクリットを測定するステップをさらに含む。
好都合には、方法のステップが、保持部材、第1の光源及び第1の光センサからなる装置を使用して実行され、装置はさらに、第1の光センサから受信した出力信号から血液サンプルのMCHCC、ヘマトクリット及び/又はヘモグロビン濃度を計算するように動作可能なプロセッサをさらに含む。
有利には、装置はさらに、血液サンプルの計算されたMCHC、ヘマトクリット及び/又はヘモグロビン濃度を出力するように構成された出力装置をさらに含む。
好ましくは、出力装置はスクリーンを含む。
好都合には、保持部材が回転軸について回転している間に、光がサンプルチャンバを通過して、少なくとも1つの第1の光センサによって検出されるように、少なくとも1つの第1の光源から光を照射するステップが実行される。
本発明は、実施形態の以下の説明を添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
本発明の実施形態では、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の直接測定が行われる。血液サンプルの場合、MCHCは赤血球そのものに含まれるヘモグロビンの濃度を示す指標となる。MCHCは、先行技術の方法では、直接測定されるのではなく、以下の式に従って、ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット(他の技術によって直接測定されているであろう)の測定から導き出される。
MCHCを直接測定するために、本発明の実施形態では、血液サンプルは、赤血球が血液サンプルの他の成分から分離されるように、最初に遠心分離される。当業者は気付くであろうが、これを達成する便利な方法は、サンプルチャンバを含むキュベットを使用して血液のサンプルを採取することである。次に、サンプルチャンバの長手方向の軸が、キュベットが回転する回転軸と一致するように、キュベットを遠心分離機に装填することができる。その後、キュベットを遠心分離し、赤血球(血液の他の成分よりも著しく高密度である)は、回転軸から最も遠いサンプルチャンバの端に集まり、一緒に圧縮される。
図1a及び図1bは、サンプルチャンバ1内の血液サンプルの概略図であり、これは、一般的に細長い長方形であることが示されている。本発明の好ましい実施形態では、分析されるサンプルは全血サンプルであるが、これは必須ではない。図1Aにおいて、血液サンプルはまだ遠心分離されておらず、赤血球を含む血液の成分はサンプル全体に概ね均一に分布している。
回転軸2の周りの遠心分離に続いて、血液サンプルは、回転軸から最も遠いサンプルチャンバ1の容積4に圧縮された赤血球3と、回転軸2に近い第2の容積5に圧縮された血液サンプルの残りの成分(すなわち血漿)とからなる2つの異なる相に分離している。
その後、修正されたBeer−Lambertの法則が、血液サンプルのMCHCの決定に使用される。背景として、修正されたBeer−Lambertの法則は、材料の特性に光の減衰に関連する。ここでは、光の減衰と物質の濃度を関連付ける形で使用する。修正されたBeer−Lambertの法則を適用するためには、検査される物質についていくつかの仮定があることに留意すべきである。また、Beer−Lambertの法則では考慮されていない散乱を説明するために、修正されたBeer−Lambertの法則がここで使用されていることにも注意すべきである。単一物質の場合、この関係は次のように書かれている。
ここで、Aは吸収率、∈はモル吸光係数、cは物質の濃度、lは光の経路の長さ、Dは差動経路係数、Gは独立した散乱・吸収係数である。吸光度は光の強さで書き換えると次のようになる。
ここで、I
0は基準強度値(通常、サンプルが存在しない状態でセットアップを透過した光の強度)であり、Iはサンプルが存在する状態で実際にセットアップを透過した光の強度である。サンプル中に複数の光学活性物質(N種類の物質)がある場合、これは一般的な式に変換される。
したがって、ある波長での全吸収は、光の経路に沿って存在するすべての物質に関係している。
血液中のヘモグロビンには、少なくともいくつかの酸素を運ぶ酸素化ヘモグロビン(HbO2)と、酸素を運ばない還元型ヘモグロビン(RHb)の2つの主な種類がある。この2つの種を合わせると、血液サンプル中の総ヘモグロビンのすべて、又はほぼすべてを構成している。この2つの種は、図2に示すように吸収スペクトルが異なる。
血液サンプル中のヘモグロビンの濃度を決定するために、光がサンプルを通過する際の1つ以上の選択された波長の光の吸収を測定することができる。RHbとHbO2の濃度を別々に決定するために、その波長の吸収がRHbとHbO2で大きく異なるスペクトルの部分に対応する波長を選択する。図2を参照すると、660nm(赤)と940nm(近赤外)は、RHbとHbO2の吸収が大きく異なる領域に対応していることがわかる。さらに、これらの領域では、スペクトル線は比較的「平坦」(すなわち、波長の小さな変化に対して比較的不変)であり、両方の理由から、スペクトルのこれらの領域は、RHbとHbO2の両方の種による光吸収を決定することを可能にする測定を提供するのに有効である。
当業者は、これが、人の体の一部、例えば人の指先を透過する光を測定することを含むパルスオキシメトリ(コオキシメトリ)で使用される技術と特定の点で類似していることを理解するであろう。
上述したように、2つの異なる波長を用いることで、血液中の2つの主要なヘモグロビン種を区別することができる。
ヘモグロビンの総濃度は、次のように表すことができる。
Beer−Lambertの法則の観点からは、これは次のように解釈される。
ここで、O及びRの添え字はそれぞれHbO
2及びRHbに関連する定数を示し、
1及び
2は2つの波長を示す。C
OとC
Rをそれぞれ解くと、次のようになる。
したがって、この方法を効果的に行うためには、定数∈O1、∈O2、∈R1及び∈R2を正確に決定する必要がある。単一帯域幅又は狭帯域幅の光源に対し、これは、図2の吸収曲線を使用できるので相対的に容易である。しかしながら、実際にはブロードバンドLEDは、装置のコストとスペースの要件を抑えるために使用する必要がある。定数l1、l2、D1、D2、及びGもまた決定する必要があるが、一般的には設定の特性が使用される。
LED光源の定数を決定するためには、広いスペクトルを平均化して1つの消光係数にすることができると仮定して、経験的な研究を行う必要がある。これは通常、多変量解析によって行われ、当業者は、これがどのようにして達成され得るかを容易に理解するであろう。
図3及び4は、本発明を実施するのに適した装置の特徴を示す。上述したように、血液サンプル6は、細長いサンプルチャンバ8を含むキュベット7に装填される。サンプルチャンバ8は、血液サンプルが最初に導入される開口端9と閉口端10とを有する。示された例では、サンプルチャンバ8は、その長さに沿って一般的に長方形の断面形状を有しているが、他の断面形状も可能である(ただし、以下の議論から明らかになるように、サンプルチャンバ8の断面サイズ及び形状は、その長さのすべてに沿って、又は実質的にすべてに沿って同じままであることが好ましい)。閉口端10に隣接して、キュベットの基準領域11が設けられており、これは、キュベット7の深さ全体が、単一で一体的な比較的透過性材料から形成されている領域を構成している。好ましい実施形態では、キュベットは、比較的透過性のガラス又はプラスチック材料から形成され、キュベット7の基準領域11は、この時点でキュベット7の深さ全体を占めるこの材料の一体的で切れ目のない領域から構成される。
図3に示された実施形態では、キュベットは、開口端9からサンプルチャンバ8の閉口端10に向かって通過し、サンプルチャンバ8の閉口端10を越えてキュベット7自体の第2の端12に到達する長さを有する。本実施例のキュベット7の基準領域11は、キュベット7が形成されている材料の固体の一体的な領域からなり、サンプルチャンバ8の閉口端10とキュベット7自体の第2の端部12との間の少なくともある方法で延びている。
好ましい実施形態では、キュベットは、キュベット7が遠心分離を受ける間、安定した方法でキュベット7を受け取り、保持するように適合されたサンプルホルダー18に装填される。サンプルホルダー18は、遠心分離機の中央駆動軸に取り付けられるように適合された中央開口部を有する一般的な円盤状の部品の形をしていてもよい。サンプルホルダー18は、サンプルチャンバ8の領域において、サンプルホルダー18が回転軸13と一般的に平行な方向にサンプルチャンバ8を通過する光に対して光学的な障害物を提示しないように、少なくともサンプルチャンバ8と整列している開口部19を含む。
いくつかの実施形態では、開口部19は、キュベット7の全体が開口部19に取り付けられるように、キュベット7自体とほぼ同じ大きさ及び形状であってもよい。
本発明の実施形態では、基準領域は、キュベット7ではなくサンプルホルダー18内に設けられ、例えば、キュベット7が保持されている位置から半径方向に離間した位置でサンプルホルダー18の深さを通る窓又は開口部を含んでもよい。
血液サンプル8がキュベット7のサンプルチャンバ6内に導入されると、キュベット7は遠心分離機に装填される(好ましくは、上述したように、遠心分離機のサンプルホルダー18内に装着されることによって)。遠心分離機は回転軸13を有しており、キュベット7は、サンプルチャンバ6がその長さが回転軸13に対して概ね垂直な状態で配置されるように導入される。サンプルチャンバ6の開口端9は回転軸13に最も近くにあり、サンプルチャンバ6の閉口端10は回転軸13から最も遠い。
2つの光源14は、キュベット7の一方の側に配置されている(図3に示す向きでは、光源14はキュベット7の上方に配置されている)。この実施形態では、光源14の一方は、660nmの領域で、又は660nmの領域で放射線を放射するように構成され、光源14の他方は、940nmの領域で、又は940nmの領域で放射線を放射するように構成されている。2つの光源14は、好ましくは近接して提供される。好ましい実施形態では、2つの光源14は、サンプルチャンバの長さに関して同じ位置、すなわち横並びに、実質的に同じ位置に提供される。
キュベット7の反対側(図3に示す向きでキュベット7の下側)に配置された1つ以上の光センサが設けられている。光センサは、光源14から発せられた光を検出するように構成されている。
図3に示す実施形態では、線状光センサ15が設けられており、光源14に概ね対向して配置され、線状光センサ15の長手方向軸が回転軸から概ね離れて延びるように配置されている。線状光センサ15は、軸に沿って配置された複数の個別光センサを有しており、例えば細長いCCDで構成されていてもよい。
全体的な構成要素の配置は、遠心分離機の回転軸13を中心としたキュベット7の回転における少なくとも1点において、各光源14からの光19が出射され、キュベット7のサンプルチャンバ8を通過し、線状光センサ15の少なくとも一部で受光されてもよいように配置されている。
また、キュベット7の回転の少なくとも1つの点では、光20が光源14の各々から出射され、キュベット7の基準領域11を通過し、光センサ15の領域によって受光されてもよいように、構成要素が配置されている。他の実施形態では、各光源によって照出された光は、サンプルホルダー18の異なる部分の基準領域を通過してもよい。
本発明を実施化する方法では、血液サンプルの赤血球が、その閉口端10に最も近いサンプルチャンバ8の第1の領域16に安定した方法で圧縮されるまで、キュベット7を回転軸13の周りに回転させる。血液の残りの成分(すなわち血漿)は、その開口端9に最も近いサンプルチャンバ8の第2の領域17に蓄積される。
サンプルチャンバ8が光源14と光センサ15との間に整列されているとき、光源14の各々からの光は、サンプルチャンバ8の第1の領域16を通過して光センサ15に衝突するような方向に放射される。光センサ15からの信号は、光センサ15に到達した光源14からの光の強度を決定することを可能にする。
好ましい実施形態では、光源14は、キュベット7の任意の特定の回転において、1つの光源からの光のみが照出されるように、順次点灯される。これにより、光センサ15によって受光された各読取値は、キュベット7を透過した特定の既知の波長の光に対応するものとして決定される。
さらに、キュベット7の少なくとも1つの回転の間に、光源の各々からの光が照出され、キュベット7の基準領域11を通過し、光センサ15に衝突する。他の実施形態では、キュベット7の少なくとも1つの回転の間に、各光源からの光が照出され、サンプルホルダー18の異なる部分の基準領域を通過し、光センサ15に衝突する。
本発明の実施形態では、光源14からの光は「指向性」を持たず、サンプルチャンバ8の第1の領域16を通過して光センサ15に衝突する少なくとも第1の方向に放射され、キュベット7の基準領域11を通過して光センサ15に衝突する第2の方向に放射される。
しかしながら、他の実施形態では、光源14からの光は、第1の構成において、各光源14が、サンプルチャンバ8の第1の領域16を通過して光センサ15に衝突する第1の方向と、キュベット7の参照領域11を通過して光センサ15に衝突する別個の第2の方向とに照明光を放射するように向けてもよい。
本発明の他の実施形態では、光源14からの光は、「指向性」を持たず、サンプルチャンバ6の第1の領域16を通過して光センサ15に衝突する少なくとも第1の方向と、サンプルホルダー18上の別の位置の参照領域を通過して光センサ15に衝突する第2の方向とに出射される。
当業者であれば理解するであろうが、キュベット7の基準領域11を通って光センサ15に到達する光源14からの光の測定された強度は、光の基準強度値I0を表す。これは、サンプルの赤血球を通過した光の測定された強度とともに、上述の式に従って、特定の波長の光に対する吸光度を決定するために使用することができる。
他の実施形態では、当業者は、サンプルホルダー18上の異なる位置の基準領域を通って光センサ15に到達する光源14からの光の測定された強度が、光の基準強度値I0を表すことができることを理解するであろう。これは、サンプルの赤血球を通過した光の測定された強度とともに、上述の式に従って、特定の波長の光に対する吸光度を決定するために使用することができる。
先行技術の方法では、サンプル中の総ヘモグロビン濃度を決定するためには、典型的には、赤血球がサンプル全体に均一に分布していなければならない。次いで、サンプル又はサンプルの一部を通る光の減衰が、総ヘモグロビン濃度を決定するために使用される。しかしながら、上述の方法を使用すると、赤血球のすべてが一箇所に圧縮されており、これはパックされた細胞体積を構成している。したがって、サンプル中のヘモグロビンの全てがパックされた細胞体積内に含まれているため、局所的なヘモグロビン濃度が上昇する。赤血球のみがパックセル体積内に含まれているため、この体積から測定されるヘモグロビン濃度は、サンプルの平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)となる。したがって、パックセル体積内の光の減衰量はMCHCに直線的に関係している。
キュベット7の第1の領域16を通過する光の減衰の程度を、キュベット7の基準領域11を通過する光の減衰と比較することにより、MCHCの直接測定を行うことができる。
本発明の好ましい実施形態では、サンプルのヘマトクリットの測定も行われる。本発明の側面において、サンプルのヘマトクリットの測定は、血液サンプルがサンプルを通過する光の減衰を測定するために使用されるのと同じ装置内にある間に行われる。さらなる好ましい実施形態では、上述したように、MCHCの測定は、遠心分離機からキュベット(又は血液サンプルを保持する他の装置)を取り外すことなく、サンプルのヘマトクリットの測定を行うことができる。2つの測定は、遠心分離の同じセッション中に行うこともできる。すなわち、サンプルを遠心分離し、2つの測定の間にキュベットを停止させることなく、サンプルが回転している間に2つの測定を行うことができる。
当業者であれば理解するであろうが、ヘマトクリットの測定は、サンプルチャンバ8の長さの実質的に全体に沿って延びる、又は血液サンプル8が含まれるであろうサンプルチャンバ8の長さの少なくとも全てに沿って延びる、キュベットの一方の側に光源の細長い配列を提供することによって行われ得る。光センサの直線状の配列は、光源の配列からキュベット7の反対側に配置されてもよい。光源からの光は、サンプルチャンバ8を通過して、直線状に配列された光センサによって受光されてもよい。光センサの直線状の配列から受信した情報から、血液サンプル8の第1の部分16の長さが、血液サンプル8の第2の部分17の長さとともに導出されてもよい。当業者であれば理解するであろうが、赤血球は放射線の透過性が最も低く、血液の他の成分がそれに続く。キュベットの他の領域(血液サンプルの一部が含まれていない領域)は、さらに透過性が高くなる。光センサの直線状の配列に衝突する光の相対的な強度から、血液サンプル8の第1及び第2の部分16,17の長さが計算されてもよい。
上記の代替として、サンプルのヘマトクリットの測定は、サンプル中の赤血球による光の減衰の測定に使用される同じ光源14の一方又は両方を使用して行われてもよいが、ヘマトクリットを測定するために別個の光源配列が使用されることが好ましい。
本発明の実施形態では、ヘマトクリットの測定には光源の直線状の配列が使用され、サンプル中の赤血球による光の減衰の測定に使用される2つの光源14は、この直線状の配列の両側に配置される。
次に、(a)第1の長さと(b)2つの長さの合計との間の比を計算して、(上述したように)血液サンプルの総体積に対する赤血球の体積の比として定義されるヘマトクリットを与えることができる。
MCHCとサンプルのヘマトクリットが測定されると、式を使用して、総ヘモグロビン濃度を決定することができる
当業者は、上記が、比較的コンパクトな装置を使用して比較的低コストで実施できる、血液サンプルのヘモグロビン及びヘマトクリットを決定するための簡単な装置及び方法を表していることを理解するであろう。
上述の議論では、異なる周波数で光を発する2つの光源が、血液中の2つの主要なヘモグロビン種の濃度を決定するために使用される。実際には、ほぼ任意の2つの周波数が使用されてもよく、本発明は上記で議論された周波数に限定されない。別法として、1つの光源を使用してもよく、好ましくは、2つの種の透過率が同じか、実質的に同じである波長で発光する(これは、等辺点として知られている)。図2に戻るが、800nmは血液中のヘモグロビン種の分析に適した等辺点の一例である。
アイソスベスティックポイントでの減衰量を効果的に測定するためには、レーザーや、適切な周波数に慎重に調整された狭帯域フィルタリング光源が必要となる可能性が高い。執筆時点では、この種のレーザーを含めることは法外に高価であり、装置のサイズが大きくなり、また、比較的厳しい安全対策を遵守する必要があると思われる。その可能性も否定できないが、現在では光源としてLEDを使用することが好まれている。
上述の議論では、光は、血液サンプルの赤血球を通過する方向に光源14から放射され、光センサ15に衝突するように示されている。しかし、好ましい実施形態では、赤血球の透過率のいくつかの異なる読み取りが行われる。これは、複数の異なる、間隔をあけて配置された多数の経路に沿って光源15によって受光された光の強度を測定することによって達成されてもよく、それぞれの経路は赤血球を通過し、光センサに衝突する。言い換えれば、第1の光の経路は、サンプルチャンバの閉口端に比較的近い赤血球を通過してもよく、第2の光の経路は、サンプルチャンバの閉口端からより大きな距離で赤血球を通過してもよい。
図3を参照すると、どのような特定のセットアップにおいても、放射線が血球を通過する角度は、1つの光の経路から次の光の経路へと変化し、したがって、赤血球を通過する放射線の経路長も変化することがわかる。様々な光の経路に沿って光センサで受光する光の強度を考慮する場合、これは、幾何学を使用して、光が通過した赤血球を通る正しい経路の長さを考慮することによって補正することができる。基準領域を通る光の経路についても同様である。
上述したように、各光源14からの照明は、サンプルチャンバの長さにわたって一般的に均一な方法で放射されてもよく、この場合、いくつかの異なる位置で光センサ15によって受光された光の強度が測定されてもよく、各測定は、サンプルの赤血球を通る異なる経路に沿って移動した光に対応している。他の実施形態では、光源14からの光が指向されてもよく、光センサ15で受光された光の強度がそれぞれの場合に測定されるように、光は多数の異なる経路に沿って指向されてもよい。
サンプルホルダーは、装置内のサンプルホルダーの回転位置を決定することを可能にする1つ以上の較正又はタイミング機能を含んでいてもよい。例えば、サンプルホルダーは、(キュベットの位置から半径方向に離間して)既知のサイズ、間隔及び位置の一連の開口部を有していてもよい。サンプルホルダーが回転すると、装置の光源の1つが照明されてもよく、光センサは、較正/タイミング機能がそれぞれ光源と光センサの間で整列されるように、いくつかの「閃光」を受ける。装置の動作を調整するためにこのような機能を使用することは知られており、ここでは詳細には論じられない。
実際には、本発明を実施化する装置は、内部を有する選択的に開閉可能なエンクロージャを構成してもよく、このエンクロージャは、エンクロージャが閉位置にあるときに、すべて又は実質的にすべての周囲光が内部から遮断される。エンクロージャは、例えば、一般的に、蓋を有する箱の形態をとることができる。
エンクロージャ内にはドライブシャフトがあり、これにサンプルホルダーが取り付けられ、遠心分離のために適切な速度で回転するように駆動される。駆動軸を駆動するために適当な種類のモーターが提供され、好ましくは装置内にコンパクトに配置される。
好ましくは、装置はまた、モーター22及び装置の様々な光源14に命令を提供し、様々な光センサ15から信号を受信するように適合された(図5に示すように)1つ又は複数のプロセッサ21を含んでいる。プロセッサはまた、MCHC、ヘマトクリット、及びヘモグロビン濃度のうちの1つ以上の値を生成するために、光センサ15から収集されたデータを操作することができるかもしれない。装置は、これらの値の一部又は全部が表示されるスクリーン23を構成してもよい。
別法として、又はそれに加えて、装置は、データ出力を構成してもよく、これにより、装置によって収集されたデータが、さらなるコンピューティング装置に送信されてもよい。いくつかの実施形態では、装置によって収集された「生」データは、1つ又は複数のさらなるコンピューティング装置に送信され、この装置は、この生データからMCHC、ヘマトクリット、及び/又はヘモグロビン濃度を計算する。
好ましくは、装置はまた、装置の構成要素の動作のための命令が記憶されている第1のメモリと、装置によって収集されたデータが記憶されていてもよい第2のメモリとから構成される。第1のメモリと第2のメモリは、同じメモリの異なる領域/割合で構成されていてもよく、任意の好適な形態をとってもよい。
好ましくは、装置はまた、装置の構成要素を駆動するための電力を供給する電源を構成する。電源は、1つ以上の電池(充電式電池であってもよい)、及び/又は主電源などの外部電源への接続で構成されていてもよい。この装置は、主電源などが容易に利用できない遠隔地で特に有用性を見出すことが想定されており、したがって、この装置は電池を使用して動作可能であることが好ましい。
本発明は、患者から採取された血液サンプルの分析に関する。血液が患者に戻されることは意図されておらず、好ましくは、分析後に血液サンプルが破壊されるか、又は廃棄される。分析はインビトロ(すなわち、ex vivo)で行われ、サンプルは患者から単離される。
本発明は、血液サンプルのヘモグロビン及びヘマトクリットを決定するための簡単で堅牢で信頼性の高い方法を提供することが理解されるであろう。当業者は理解されるであろうが、本発明の実施形態では、血液サンプルはキュベットを使用して収集され、コンパクトで便利な装置(これは、簡単に手に持って持ち運べるように十分に小さいかもしれない)に装填されてもよい。この装置は、サンプルを迅速に分析し、装置自体のスクリーン上で、サンプルのヘモグロビン、ヘマトクリット及び/又はMCHC濃度の信頼性の高い直接測定を提供する。当技術分野に熟練した者は気づくであろうが、これは、既存の方法と比較して、ヘモグロビン及びヘマトクリットの決定のための簡単な解決策である。
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、用語「構成する」及び「含む」及びその変形は、指定された特徴、ステップ又は整数が含まれることを意味する。用語は、他の特徴、ステップ又は化合物の存在を排除するように解釈されるべきではない。
説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、それらの特定の形態で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又はプロセスの観点から、適宜表現され、別々に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明の多様な形態を実現するために利用することができる。