JP2021520845A - マイクロペプチドとその使用 - Google Patents

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バルベルデ、イニャキ メリノ
バルベルデ、イニャキ メリノ
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フンダシオ プリバド インスティチュ デインベスティガシオ オンコロジア デ ヴァル ヘブロン
フンダシオ プリバド インスティチュ デインベスティガシオ オンコロジア デ ヴァル ヘブロン
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Abstract

本発明は、新しいペプチド化合物、より具体的には癌及び細胞可塑性に関与するlncRNAに由来するマイクロペプチドに関する。それはまた、増殖性疾患の治療、より具体的には癌の治療における前記マイクロペプチドの使用にも関する。

Description

発明の技術分野
本発明は、生物医学の分野に含まれる。具体的には、マイクロペプチド及び癌の治療におけるその使用に関する。
発明の背景
癌は、世界中の罹患率と死亡率の主要な原因の1つである。現在、世界で死者6人中に約1人がそれによるものであり、今後20年間で新たな症例数は約70%増加すると予想されている。
癌は、制御されない細胞分裂(または生存またはアポトーシス耐性の増加)及び前記細胞が他の隣接組織に侵入(浸潤)し、該細胞が通常位置していない体の他の領域に広がる(転移する)能力を特徴とする疾患群である。腫瘍は、浸潤や転移によって広がるかどうかによって良性または悪性のいずれかに分類される。良性腫瘍は、浸潤または転移によって広がらない腫瘍であり、即ち、局部でしか増殖しない。一方、悪性腫瘍は、浸潤及び転移によって広がることができる腫瘍である。
癌には、発生源の細胞の種類と該細胞の位置によって分類できるいくつかの種類がある。即ち、皮膚、消化管または腺等のような体の外表面と内表面を覆う細胞から発生する細胞腫、骨髄等の造血組織で始まり、異常な血液細胞が大量に生成され、血流に入る白血病、リンパ節と体の免疫系の組織に発生するリンパ腫、メラニン形成細胞で発生する黒色腫、骨または筋肉の結合組織で発生する肉腫、及び生殖細胞の中で発生する奇形腫である。
現在、癌の治療に使用できる多くの薬物が利用可能である。しかし、多くの場合、癌は抗癌療法に反応しないか、その増殖及び/または転移のみが遅くなる。腫瘍が最初に抗癌療法に反応してサイズが減少するか、寛解する場合でも、腫瘍はしばしば薬剤に対する耐性を発生する。これらの理由により、まだ治療法が利用できない癌の治療、及び多剤耐性の癌に使用できる新しい抗癌剤及び薬物が必要である。
本発明の著者らは、3つの長い非翻訳RNA(LncRNAs) Linc00086、TINCR及びZEB2AS1がマイクロペプチドをコードする領域を含み、前記マイクロペプチドが腫瘍抑制活性を有することを見出した。従って、本発明は、抗癌剤として作用する能力を有するマイクロペプチドの提供に関する。LncRNAは、組織や種に固有の方法で発現する200 bp以上の不均一な転写産物群として知られているが、それらのほとんどは機能上の特徴が知られていない。
従って、第1態様では、本発明は、配列番号:1、2及び3またはその機能的に同等な変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むマイクロペプチドに関する。
第2態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチドに特異的に結合できる抗体に関する。
第3態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。ただし、該ポリヌクレオチドが、2017年9月10日付バージョンに対応するNCBI受託番号NM_203306.2を有する配列からなるまたはそれを含むポリヌクレオチド、2017年8月29日付バージョンに対応するNCBI受託番号NR_027064を有する配列からなるまたはそれを含むポリヌクレオチド、及び2017年4月23日付バージョンに対応するNCBI受託番号NR_040248を有する配列からなるまたはそれを含むポリヌクレオチドではないことを条件とする。
第4態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
第5態様では、本発明はまた、本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
第6態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、または宿主細胞を含む組成物に関する。
第7態様では、本発明はまた、本発明の組成物及び薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
第8態様では、本発明は、医療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
さらなる態様では、本発明は、癌の治療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
最後に、別の態様では、本発明は、線維症の治療に使用するための本発明の配列番号:2のマイクロペプチド、前記マイクロペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
配列番号:1のマイクロペプチドのコンピュータシミュレーション分析(A)哺乳動物(霊長類及びげっ歯類)にわたる配列番号:1のマイクロペプチドのアミノ酸配列保護。(B)配列番号:1のマイクロペプチドの三次元構造予測(iTasserソフトウェア)及びユビキチン構造との比較。 配列番号:2のマイクロペプチドのコンピュータシミュレーション分析(A)配列番号:2のマイクロペプチド相同分子種のアミノ酸配列整列。(B)配列番号:2のマイクロペプチドの三次元構造予測(iTasserソフトウェア)。 配列番号:3のマイクロペプチドのコンピュータシミュレーション分析(A)哺乳動物にわたる配列番号:3のアミノ酸保護。(B)配列番号:3のマイクロペプチドの三次元構造予測(iTasserソフトウェア)。 感染したBxPC-3細胞における配列番号:1のマイクロペプチドの検出。(A)qPCR測定によるBxPC-3におけるドキシサイクリン処理時の配列番号:1のマイクロペプチド発現の分析。mRNA発現は、未処理の対照と比較して示されている。(B)HA-tagに対する抗体を用いた、配列番号:1のマイクロペプチド過剰発現のウエスタンブロット分析。(C)自家製抗配列番号:1抗体を用いて、BxPC-3感染細胞における配列番号:1のマイクロペプチドの細胞質局在を示す免疫染色。 配列番号:1のマイクロペプチド過剰発現は、細胞周期の停止と細胞の老化を誘発する。BxPC-3細胞に、HA-配列番号:1をコードする誘導性レンチウイルスを形質導入した。配列番号:1のマイクロペプチド発現は、4日間のドキシサイクリン処理によって誘導された。(A)配列番号:1発現細胞と対照細胞の位相差画像。(B)CellTiter-Gloアッセイによる細胞生存率分析。(C)フローサイトメトリーによる細胞周期分析。左:ヒストグラムプロット。右:すべての細胞周期フェーズにおける細胞数の定量。(D)qPCRによるp27及びp21発現の分析。(E)抗HA抗体と抗p21抗体を用いた前記細胞のウエスタンブロット。(F)ドキシサイクリン処理細胞及び未処理細胞におけるSA-β-Gal陽性細胞の数の定量。(G)(F)で定量された細胞の代表的な写真。グラフは、少なくとも3回の技術的繰り返しを使用した平均値±SEMを示す。**P<0.01 ***P<0.001 ****P<0.0001、両側t検定。 配列番号:1のマイクロペプチド発見は、細胞ストレスにより細胞死を誘発する。SkBR-3、HPAF II、MIA PaCa-2及びBxPC-3細胞を空のまたは配列番号:1-HAレトロウイルスに感染させ、ピューロマイシンによって選択した。qPCR(A)及びウエスタンブロット(B)により配列番号:1のマイクロペプチド発現を分析した。(C)ピューロマイシンによる選択から3日後の前記細胞の位相差画像。(D)フローサイトメトリーで分析したピューロマイシン処理あり及びなしのBxPC-3感染細胞のアネキシンV/PI染色。(E)BXPC-3細胞を、配列番号:1-HAをコードする誘導性レンチウイルスに感染させ、ネオマイシンで選択した。配列番号:1のマイクロペプチド発現はドキシサイクリンによって誘導され、該細胞はドキソルビシンまたはアクチノマイシンDで処理された。(E)クリスタルバイオレット染色で測定した前記細胞の細胞生存率。 A549及びH10細胞における過剰発現された配列番号:1のマイクロペプチドの検出。(A)qPCR測定によるA549及びH10におけるドキシサイクリン処理時の配列番号:1発現の分析。mRNA発現は対照と比較して示されている。(B)HA-tagに対する抗体を用いた配列番号:1過剰発現のウエスタンブロット分析。(C)自家製抗配列番号:1抗体を用いたA549及びH10感染細胞における配列番号:1の細胞質局在を示す免疫染色。 配列番号:1過剰発現は細胞増殖を低下させる。A549及びH10細胞は、HA−配列番号:1をコードする誘導性レンチウイルスで形質導入された。配列番号:1発現は、14日間のドキシサイクリン処理によって誘導された。(A)配列番号:1発現の14日間にわたる形質導入細胞の増殖曲線。(B)フローサイトメトリーによる細胞周期分析。左:ヒストグラムプロット。右:すべての細胞周期フェーズにおける細胞数の定量。グラフは、少なくとも3回の技術的繰り返しを用いた平均値±SDを示す。****P<0.0001、両側t検定。 配列番号:1過剰発現は、A549及びH10細胞株における侵襲性を損ない、間葉性形質を低下させる。マトリゲルでコーティングされたインサートにおいて前記細胞の浸潤を分析した。(A)浸潤細胞を含むメンブレンインサートの下側を固定し、クリスタルバイオレットで染色し、プレーティングの24時間後に撮影した。(B)イメージJソフトウェアを用いて浸潤細胞の数を計算した。バープロットは、チャンバーに侵入する細胞の相対数を示す。(C)qPCRによるいくつかの間葉性遺伝子の分析。mRNA発現は対照と比較して示されている。*P<0.05、**P<0.01両側t検定。 配列番号:1は、遺伝毒性ストレスによってp53依存的に誘導される。HCT116、HCT116 p53KO、A549及びBxPC3は、ドキソルビシン(1μM)またはアクチノマイシンD(1nM)及びNutlin-3a(10μM)で処理した。配列番号:1の転写レベルは、A549とHCT116(A)及びHCT116 p53KOとBxPC-3(B)においてqPCRによって測定した。mRNA発現は、未処理の対照と比較して示す。配列番号:1タンパク質は、A549とHCT116(A)、及びHCT116 p53KOとBxPC-3(B)において自家製抗配列番号:1抗体を用いてウエスタンブロット分析によって測定した。(C)自家製抗配列番号:1抗体を用いたドキソルビシン処理時にA549細胞における配列番号:1の増加を示す免疫染色。 配列番号:1のマイクロペプチド発見は、細胞のユビキチン化パターンを変化させる。(A)抗HA及びウエスタンブロット実験を用いた共免疫沈降は、配列番号:1を発現する細胞のプルダウンにおけるユビキチン化タンパク質の存在を示している。(B)MG132によるプロテアソーム遮断処理後の、配列番号:1または空のベクターBxPC-3感染細胞におけるウエスタンブロットによるユビキチン化タンパク質レベルの分析。 (A)qPCR分析による配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染したIMR90、MIA PaCa-2及びBxPC-3細胞株における配列番号:2のマイクロペプチドmRNA発現。値は、コントロールとして空のベクターを発現する細胞に対する相対値である。バーは平均値±SDに対応する。(B)配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染したIMR90、MIA PaCa-2及びBxPC-3細胞のHA-tagに対するウエスタンブロット。 形質導入されたmCAF細胞における配列番号:2のマイクロペプチドの検出。(A)qPCR分析による配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染したmCAF細胞における配列番号:2のマイクロペプチドmRNA発現。値は、空のベクターをコントロールとして発現する細胞に対する相対値である。バーは平均値±SDに対応する。(B)配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染したHA-tag mCAF細胞に対するウエスタンブロット。 BxPC-3細胞株における配列番号:2のマイクロペプチドの細胞内局在。自家製抗配列番号:2抗体を用いた配列番号:2のマイクロペプチドの細胞質局在を示す免疫染色。核はDAPIで対比染色されている。 配列番号:2のマイクロペプチドの発現は、IMR90(A)、MIA PaCa-2(B)、及びBxPC-3(C)細胞株における間葉性同一性の喪失を誘導する。qPCR測定による前記遺伝子のmRNAレベル。値は、コントロールとして空のベクターを発現する細胞に対する相対値である。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001 統計にはStudent’s t検定を使用。エラーバーは、n = 3の技術的繰り返しの標準誤差を表す。 配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、間葉性同一性の喪失を誘発する。mCAF(A-B)細胞における前記遺伝子のmRNAレベルは、qPCRによって測定した。値は、コントロールとして空のベクターを発現する細胞に対する相対値である。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001 統計にはStudent’s t検定を使用。エラーバーは、n = 3の技術的繰り返しの標準誤差を表す。 配列番号:2のマイクロペプチドは、膵臓癌細胞株の転移力を損なう。MIDORIまたは空のベクターに感染したMIA PaCa-2細胞(A)及びBxPC-3細胞(B)において創傷治癒アッセイを行った。位相差画像は、スクラッチが行われた後の所定時点における創傷を示す。 配列番号:2のマイクロペプチドの発現は、膵臓癌細胞における細胞浸潤を損なう。(A)配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターで形質導入されたBxPC-3細胞のマトリゲルでコーティングされたたインサートにおける浸潤。播種24時間後の浸潤細胞の代表的な写真。(B)浸潤細胞の相対数。バーは、2つの独立した実験の平均値±SD(n = 2)を空のベクター条件での浸潤細胞に対する相対値として表す。*p<0.05、Student’s t検定を使用。 配列番号:2のマイクロペプチドの発現は、mCAF細胞のプロ腫瘍性活性を低下させる。(A)マトリゲルでコーティングされたインサートにおけるWT PDAC膵臓癌細胞の浸潤。そのボイデンチャンバーの下部コンパートメントには配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターを発見するmCAFが播種された。播種24時間後の浸潤細胞の代表的な写真。(B)浸潤細胞の相対数。±SD(n = 3の技術的繰り返し)、空のベクター条件における浸潤細胞に対する相対値として。 形質導入されたMDA-MB-231細胞における配列番号:2のマイクロペプチドの検出。(A)qPCR分析による配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染されたMDA-MB-231細胞株における配列番号:2のマイクロペプチドmRNA発現。値は、コントロールとして空のベクターを発現する細胞に対する相対値である。バーは平均値±SDに対応する。(B)配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターに感染されたMDA-MB-231細胞におけるHA-tagに対するウエスタンブロット。 配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、間葉性同一性の喪失を誘発する。MDA-MB-231細胞株における前記遺伝子のmRNAレベルは、qPCRによって測定した。値は、コントロールとして空のベクターを発現する細胞に対する相対値である。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001 統計にはStudent’s t検定を使用。エラーバーは、n = 3の技術的繰り返しの標準誤差を表す。 配列番号:2のマイクロペプチドの発現は、乳癌細胞の細胞浸潤を減少させる。(A)配列番号:2のマイクロペプチドまたは空のベクターで形質導入されたMDA-MB-231乳癌細胞のマトリゲルでコーティングされたインサートにおける浸潤。播種24時間後の浸潤細胞の代表的な写真。(B)浸潤細胞の相対数±SD(n = 3の技術的繰り返し)、空のベクター条件における浸潤細胞に対する相対値として。*p<0.05、Student’s t検定を使用。 癌細胞株における配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現。(A)A459細胞における配列番号:3の過剰発現のqPCR分析。(B)A459細胞における配列番号:3のマイクロペプチド発現のウエスタンブロットによる検出。(C)配列番号:3過剰発現後の前記細胞株の位相差画像。 配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現は、p21の増加及びプロアポトーシスプログラムを誘導する。(A)配列番号:3過剰発現時のHCT116及びA549癌細胞株におけるp21発現のqPCR分析(B)A549配列番号:3を過剰発現する細胞におけるp21タンパク質のウエスタンブロット分析。Nutlin-3(10μM)で処理した細胞を、p21増加の陽性対照として使用した。(C)配列番号:3を過剰発現するHCT116細胞における前記アポトーシス関連遺伝子のqPCR分析。 配列番号:3は、p53によって遺伝毒性ストレスで転写的に増加される。(A)HCT116及びHCT116 p53KO細胞をMDM2阻害剤Nutlin3a(10μM)で48時間処理した。配列番号:3の転写レベルは、RT-qPCRで試験した。mRNAレベルは、未処理のコントロール(B)に対して規準化する。 (B)HCT116及びHCT116 p53KO細胞は、遺伝毒性物質ドキソルビシン(1μM)で24時間処理した。配列番号:3mRNAのレベルはRT-qPCRで試験した。mRNAレベルはGAPDH参照遺伝子に対する相対値として示す。バーは、n = 3の技術的繰り返しの平均値±SDを表す。
発明の詳細な説明
本発明は、癌の治療のための新規化合物の提供に関する。
配列番号:1、2及び3のマイクロペプチド
第1態様では、本発明は、配列番号:1、2及び3またはそれらの機能的に同等な変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むマイクロペプチドに関する。
本明細書で使用される用語「マイクロペプチド」は、4〜100個のアミノ酸、好ましくは20〜90個のアミノ酸を有するペプチドを指すために使用される。それらは天然由来のものまたは合成されたものであってもよい。自然界では、それらは、lncRNA、非タンパク質コーディングと注釈されたRNA分子、または「遺伝子間領域」と注釈されたRNA分子に含まれるオープンリーディングフレームによってコードされる。
用語「オープンリーディングフレーム」は、ペプチドまたはタンパク質をコードする可能性のあるDNAまたはRNA分子におけるヌクレオチド配列に対応する。前記オープンリーディングフレームは、開始コドン(一般に開始コドンはメチオニンをコードする)で始まり、その後に一連のコドン(各コドンはアミノ酸をコードする)が続き、そして終止コドン(終止コドンは翻訳されない)で終わる。本明細書で使用される用語「長い非コーディングRNA」または「lncRNA」は、200個のヌクレオチドより長い転写物を含み、非コーディングと注釈されている。
用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。該ポリマーは、線状または分枝状であってもよく、改変アミノ酸を含んでもよく、また非アミノ酸で中断されてもよい。
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成されたアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。さらに、用語「アミノ酸」は、D-及びL-アミノ酸(立体異性体)の両方を含む。
用語「天然アミノ酸」または「天然に存在するアミノ酸」は、天然に存在する20個のアミノ酸、in vivoでよく翻訳的に改変されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホスレオニン)、及びその他格別なアミノ酸(2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンを含むが、これらに限定されない)を含む。
本明細書で使用する場合、用語「非天然アミノ酸」または「合成されたアミノ酸」は、位置「a」でアミン基で置換され、構造的に天然アミノ酸に関連するカルボン酸またはその誘導体を指す。改変されたまたは珍しいアミノ酸の例には、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2'-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アリオヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチル-リジン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン等が含まれるが、これらに限定されない。
以下の表1及び2は、本発明に使用できる天然に存在するアミノ酸(表1)及び非通常のまたは改変されたアミノ酸(表2)を列挙する。
Figure 2021520845
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「機能的に同等な変異体」は、その機能が実質的に維持される限り、配列番号:1、2または3の配列から1つまたは複数のアミノ酸を改変、置換、挿入及び/または削除して得られるすべてのマイクロペプチドを意味すると理解される。
好ましくは、配列番号:1、2または3の配列の「変異体」は、次のものである:(i)その中の1つまたは複数のアミノ酸残基が保護的または非保護的アミノ酸残基(好ましくは保護的アミノ酸残基)によって置換され、そのような置換されたアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされてもされなくてもよいマイクロペプチド(ii)その中に1つ以上の改変アミノ酸残基(例えば、置換基結合によって改変された残基)が存在するマイクロペプチド、(iii)類似したmRNAの代替処理から生じるマイクロペプチド、(iv)マイクロペプチド断片、及び/または(v)配列番号:1、2または3の配列または上記(i)から(iii)で定義された変異体が、精製(例えば、His-tag)、検出(例えば、Sv5エピトープタグ)、または特定の標的細胞への送達に用いられる配列である分泌リーダー配列のような別のポリペプチドと融合して生じるマイクロペプチド。該断片には、元の配列のタンパク質を切断(マルチサイトタンパク質分解を含む)して生じるポリペプチドが含まれる。該機能的に同等な変異体は、翻訳的にまたは化学的に改変された結果であってもよい。そのような変異体は、当業者には明白であろう。
配列番号:1、2または3の配列の変異体は、天然及び人工のものの両方であってもよい。「天然変異体」という表現は、他の種に自然に現れるヒト配列番号:1、2または3のそれらの変異体すべて、即ち、配列番号:1、2または3の相同分子種に関する。
配列番号:1、2または3の配列の機能的に同等な変異体は、1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、置換または改変を含む配列番号:1、2または3の配列に由来するアミノ酸配列であってもよい。例として、配列番号:1、2または3の配列の機能的に同等な変異体は、配列番号:1、2、または3の配列のアミノ末端に1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、15個アミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、30個のアミノ酸、35個のアミノ酸、40個のアミノ酸、45個のアミノ酸、50個のアミノ酸、60個のアミノ酸、70個のアミノ酸、80個のアミノ酸、90個のアミノ酸、100個のアミノ酸、150個のアミノ酸、200個のアミノ酸、少なくとも500個のアミノ酸、少なくとも1000個のアミノ酸、またはそれ以上のアミノ酸の付加を含み、及び/または配列番号:1、2または3の配列のカルボキシ末端に1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、30個のアミノ酸、35個のアミノ酸、40個のアミノ酸、45個のアミノ酸、50個のアミノ酸、60個のアミノ酸、70個のアミノ酸、80個のアミノ酸、90個のアミノ酸、100個のアミノ酸、150個のアミノ酸、200個のアミノ酸、少なくとも500個のアミノ酸、少なくとも1000個のアミノ酸、またはそれ以上のアミノ酸の付加を含み、そして配列番号:1、2または3の配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の活性を維持する配列を包含する。
本明細書で使用される用語「保護的置換」または「保護的アミノ酸残基」は、天然の配列に存在するアミノ酸の、天然に存在するアミノ酸または非天然のアミノ酸を有するペプチド、または類似した立体特性を有するペプチド模倣体による置換を指す。置換される天然アミノ酸の側鎖が極性または疎水性である場合、該保護的置換は、(置換されたアミノ酸の側鎖と同様な立体特性を有すること以外に)天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、または極性または疎水性のペプチド模倣部分を有するものである必要がある。
通常、天然に存在するアミノ酸はその特性で分類されるため、本発明に従い、立体的に類似した非荷電のアミノ酸で荷電のアミノ酸を置換することは保護的置換として考えられることから、天然に存在するアミノ酸による保護的置換基は容易に測定できる。
天然に存在しないアミノ酸による保護的置換をするために、当技術分野で周知されるアミノ酸類似体(合成されたアミノ酸)を使用することも可能である。
保護的置換基に影響を与える場合、置換するアミノ酸は、側鎖に元のアミノ酸と同様または類似の官能基を有する必要がある。
本明細書で使用される語句「非保護的置換」または「非保護的アミノ酸残基」は、親配列に存在するアミノ酸の、異なる電気化学的及び/または立体特性の異なる天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸による置換を指す。従って、置換するアミノ酸の側鎖は、置換される天然アミノ酸の側鎖よりも著しく大きく(または小さく)、及び/または置換されているアミノ酸とは著しく異なる電子特性を持つ官能基を持つことができる。この種の非保護的置換の例には、アラニンの代わりにフェニルアラニンまたはシクロヘキシルメチルグリシン、グリシンの代わりにイソロイシン、またはアスパラギン酸の代わりに-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-CO-の置換が含まれる。本発明の範囲に含まれるこれらの非保護的置換は、依然として抗増殖特性を有するペプチドを構成するものである。
本発明のペプチドはまた、例えば、ペプチドに結合した非アミノ酸部分、例えば、疎水性部分(様々な直鎖、分岐、環状、多環式または複素環式炭化水素及び炭化水素誘導体)等、及び特に化合物が直鎖状である場合、化合物の末端に結合して分解を減らす様々な保護基を含んでもよい。適切な保護官能基は、Green及びWutsの「有機合成における保護基」、John Wiley及びSons、第5章及び第7章、1991に記載されている。
様々な生理学的特性(例えば、分解またはクリアランスの減少;様々な細胞ポンプによる相反の減少、免疫原性活動を改善し、様々な投与モードを改善する(様々なバリアを通過したり、腸を通過したりできる様々な配列のアタッチメント等)、特異性の向上、親和性の向上、安定性、バイオアベイラビリティや溶解性の向上、毒性の低下等)を改善するために、化合物には化学基(非アミノ酸)が含まれてもよい。
本発明の変異体は、天然ペプチド(分解産物、合成ペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、類似体、誘導体、塩、レトロインベルソ異性体、模倣物、模倣体、またはペプチド模倣体(通常、合成ペプチド)、ならびにペプトイド及びセミペプトイドを包含することができる。「類似体」、「誘導体」及び「模倣物」は、ペプチドの化学構造を模倣し、その機能的特性を保持する分子を含む。ペプチドの類似体、誘導体及び模倣体の設計方法は、当技術分野で知られている。例えば、Farmer, P. S. in Dmg Design (E. J. Ariens, ed.) Academic Press, New York, 1980, vol. 10, pp. 119-143、Ball, J. B.及びAlewood, P. F. (1990) J. Mol. Recognition 3:55、Morgan, B. A.及びGainor, J. A. (1989) Ann. Rep. Med. Chem. 24:243、及びFreidinger, R. M. (1989) Trends Pharmacol. Sci. 10:270を参照されたい。また、Sawyer, T. K. (1995) 「ペプチド模倣設計とテイラーのペプチド代謝への化学的アプローチ」、M. D.及びAmidon, G. L. (eds.) 「ペプチドベースのドラッグデザイン:輸送と代謝の制御」, 第17章、Smith A. B. 3rd,ら. (1995) J. Am. Chem. Soc. 117:11113-11123、Smitha. B. 3rd, ら (1994) J. Am. Chem. Soc. 116:9947-9962、及びHirschman, R.ら(1993) J. Am. Chem. Soc. 115:12550-12568も参照されたい。
「誘導体」(例えば、ペプチドまたはアミノ酸)には、化合物上の1つまたは複数の反応基が置換基で誘導体化されている形態が含まれる。ペプチド誘導体の例には、アミノ酸側鎖、ペプチド骨格、またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端が誘導体化されたペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が含まれる。化合物Xの「類似体」は、機能的活性に必要な化学構造を保持するが、異なる特定の化学構造も含む化合物が含まれる。天然に存在するペプチドの類似体の例は、1つまたは複数の天然に存在しないアミノ酸を含むペプチドである。
化合物の「模倣体」は、機能的活性に必要な化合物の化学構造が、該化合物の立体配座を模倣する他の化学構造で置き換えられた化合物を含む。ペプチド模倣体の例には、ペプチド骨格が1つまたは複数のベンゾジアゼピン分子で置換されているペプチド化合物(例えば、James、G. L.ら、(1993)Science 260:1937-1942を参照)、または、アミド結合アイソスターの使用及び/または鎖伸長またはヘテロ原子の取り込みを含む天然ペプチド骨格の改変を介してペプチドの二次構造を模倣するオリゴマーが含まれ、その例には、アザペプチド、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、ベータペプチド、癌マペプチド、オリゴ(フェニレンエチニレン)、ビニル性スルホノペプチド、ポリ-N-置換グリシン(ペプトイド)等が含まれる。ペプチド模倣化合物を調製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、「定量的な薬物設計」 C.A. Ramsden Gd.,第17.2章, F. Choplin Pergamon Press (1992)に具体化されている。
上記に加えて、本発明のマイクロペプチドはまた、1つまたは複数の改変アミノ酸または1つまたは複数の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合炭水化物等)を含んでもよい。
本教示はさらに、環状ペプチドまたはペプチド内の環状構造を企図する。環化の方法は、当技術分野において周知であり、例えば、WO2010/041237を参照されたい。
本発明のマイクロペプチドは、標準的な固相技術を使用すること等によって生化学的に合成することができる。これらの方法には、排他的固相合成、部分的固相合成法、断片縮合、従来的溶液合成が含まれる。固相ポリペプチドの合成手順は、当技術分野において周知であり、さらに、John Morrow Stewart及びJanis Dillaha Youngによる「固相ポリペプチド合成」(第2版、Pierce Chemical Company社、1984)に記載されている。
合成ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィー(Creighton T.社(1983)「タンパク質、構造、分子原理」WH Freeman and Co. NY)で精製でき、その組成はアミノ酸配列測定で確認できる。
また、本発明のマイクロペプチドを生成するために組換え技術も使用できる。組換え技術を用いて、本発明のペプチドを生成するために、本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドを、シス調節配列(例えばプロモーター配列)の転写制御下のポリヌクレオチド配列を含む核酸発現ベクターに連結する。該シス調節配列は、宿主細胞における本発明のモノマーの構成的、組織特異的または誘導可能な転写を指示するのに適している。
本発明のペプチドは宿主細胞において合成可能であることに加えて、in vitroの発現システムを用いて合成されてもよい。これらの方法は当技術分野において周知であり、該システム組成物は市販されている。
配列番号:1、2、または3の配列及びそれらの機能的に同等な変異体の活性または機能は、本願の実施例に示される方法でペプチドの抗増殖活性をアッセイすることにより測定できる。
配列番号:1、2、または3の配列の機能的に同等な変異体には、配列番号:1、2または3の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性のあるアミノ酸配列も含まれる。
特定の実施形態では、本発明のマイクロペプチドの機能的に同等な変異体は、配列番号:1、2または3の配列と少なくとも80%の同一性を示す配列を有する。2つまたはそれ以上のアミノ酸またはヌクレオチド配列の文脈における用語「同一性」、「同一な」または「パーセント同一性」は、保護的アミノ酸置換は配列同一性の一部として考慮せずに最大対応と比較または整列させた場合(必要時にギャップを導入)に、同じであるか、または特定の割合のアミノ酸残基が同じである2つまたはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。該パーセント同一性は、配列比較ソフトウェアまたはアルゴリズムを用いて、または目視検査で測定できる。アミノ酸またはヌクレオチド配列の整列を得るために使用できる様々なアルゴリズム及びソフトウェアは当技術分野で知られている。そのような配列整列アルゴリズムの非限定的な1例は、KarlinらのProc. Natl. Acad. Sci., 87:2264-8、1990年に記載され、Karlinらが1993年に改変されたProc. Natl. Acad. Sci., 90:5873-7であり、またN BLAST及びAltschulらが1991年にXBLASTプログラムに組み込まれた方法、「核酸研究」25:3389-402)のアルゴリズムである。特定の実施形態では、Gapped BLASTは、Altschulらが1997年の「核酸研究」25:3389-402に記載されているように使用できる。BLAST-2、WU-BLAST-2 (Altschulら、1996,「酵素学における方法」266:460-80)、ALIGN、ALIGN-2 (Genentech, South San Francisco, California)またはMegalign(DNASTAR)は、配列を整列させるために使用できる他の公的に利用可能なソフトウェアプログラムである。特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア中のGAPプログラム(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックス使用、ギャップ重み付け40、50、60、70、または90、及び長さ重み付け1、2、3、4、5、または6で)を用いて測定される。代替の特定な実施形態では、Needleman及びWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:444-53(1970))を組み込んだ該GCGソフトウェアパッケージ中の該GAPプログラムを用いて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定できる(例えば、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかを使用、ギャップ重み付け16、14、12、10、8、6、または4、及び長さ重み付け1、2、3、4、5で)。あるいは、特定の実施形態では、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Myers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS, 4:1 1 -7 (1989))を用いて測定される。例えば、パーセント同一性は、ALIGNプログラム(Ver. 2.0)を用いて、また、残基テーブル付きのPAM120、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4で測定できる。特定の整列ソフトウェアによる最大整列のための適切なパラメータに関して、当業者は測定でき得る。特定の実施形態では、整列ソフトウェアのデフォルトパラメータが使用される。特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列に対する第1のアミノ酸配列のパーセント同一性「X」は、100×(Y/Z)として計算され、ここでYが、第1と第2配列の整列(目視検査または特定の配列整列プログラムによって整列されたもの)における同一な一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数である。またZが、第2配列の残基の総数である。第2配列が第1配列より長い場合、両方の配列全体となる総配列が使用されるため、各配列のすべての文字とヌルを整列させる必要がある。この場合、上記と同じ式を使用できるが、Z値として、第1配列と第2配列が重なる領域の長さ値を用いる。該領域の長さは、実質的に第1配列の長さと同じである。
非限定的な1例として、特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、参照配列に対して特定の割合の配列同一性を有するかどうか(例えば、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一であり、また、いくつかの態様では、少なくとも95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、または99%同一である)は、特定の実施形態では、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wl 5371 1)を用いて測定できる。Bestfitは、SmithとWatermanのローカルホモロジーアルゴリズム、「応用数学の進歩 2」:482-9(1981)を用いて、2つの配列間のホモロジーの最良のセグメントを発見した。Bestfitプログラムまたは他の配列整列プログラムを用いて、本発明に従って、特定の配列が、例えば、参照配列と95%同一であるかどうかを測定する場合、同一性のパーセンテージが参照アミノ酸配列の全長にわたって計算され、また、参照配列内のヌクレオチドの総数の5%までの相同性のギャップが許容されるようにパラメータが設定される。
いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸配列は実質的に同一であり、それらは、最大の一致について比較及び整列した時に、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査で測定した場合、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、いくつかの実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のアミノ酸残基の同一性を有することを意味する。同一性は、長さが少なくとも約10、約20、約40〜60残基またはそれらの間の任意の整数値である配列の領域にわたって、また、例えば、少なくとも約90〜100残基等のように60〜80残基よりも長い領域にわたって存在することができ、いくつかの実施形態では、該配列は、実質的比較される配列の全長にわたってに同一である。
本発明のマイクロペプチドに対する抗体
別の態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチドに特異的に結合することができる抗体に関する。
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、測定された抗原または該抗原内のエピトープに結合でき、また、その軽鎖または重鎖の全部または一部を有する1つ以上のポリペプチドを含む単量体または多量体タンパク質に関する。
該用語抗体には、各種の既知抗体も含まれる。例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び遺伝子組み換え抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体及び二重特異性抗体(ダイアボディを含む)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片(それらが所望の生物学的活性を示す限り)。
本発明は、実質的に抗体の抗血管新生活性を保持する、上記各種の抗体の断片の使用も含む。用語「抗体断片」は、Fab、F(ab')2、Fab'、単鎖Fv断片(scFv)、ダイアボディ及びナノボディ等の抗体断片を含む。
抗体及びその抗原結合断片を指す場合の語句「特異的に結合する」は、該抗体が他のヒトタンパク質に結合しないかまたはほとんど結合せずに、その変異体の本発明のマイクロペプチドに結合することを意味する。しかしながら、該用語は、本発明の抗体がまた、本発明のマイクロペプチドの他の形態とも交差反応性できるという事実を排除しない。通常、該抗体は、少なくとも約1×10-6 M〜10-7 M、または約10-8 M〜10-9 M、または約10-10 M〜10-11 M、またはそれ以上の結合定数(Kd)で結合し、そして、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対する親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で所定の抗原に結合する。本明細書では、語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
ペプチドを指す場合、語句「特異的に結合する」または「特異的に結合する」は、標的分子に対して排他的または優勢に、中程度または高い結合親和性を有するペプチド分子を指す。語句「に特異的に結合する」は、タンパク質及び他の生物製剤の異種集団の存在下での標的タンパク質の存在に決定的な結合反応を指す。従って、指定されたアッセイ条件下で、所定の結合部分は特定の標的タンパク質に優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の成分には有意な量で結合しない。そのような条件下での標的タンパク質への特異的結合は、特定の標的抗原に対するその特異性について選択される結合部分を必要とする可能性がある。様々なアッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に反応するリガンドを選択できる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、Biacore、及びウエスタンブロットを使用し、本発明のマイクロペプチドまたはそれらの変異体と特異的に反応するペプチドを同定する。通常、特定の反応または選択的反応は、バックグラウンドのシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10倍以上である。
本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに前記ポリヌクレオチドを含有するベクター及び宿主細胞
第3態様では、本発明は、本発明のマイクロペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。ただし、前記ポリヌクレオチドが、2017年9月10日バージョンに対応するNCBI受託番号NM_203306.2、2017年8月29日バージョンに対応するNCBI受託番号NR_027064、及び2017年4月23日バージョンに対応するNCBI受託番号NR_040248を有する配列からなるポリヌクレオチドではない。
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合を介して連結された複数のヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその関連構造変異体またはその合成類似体)から構成されるポリマーを指す。該用語ポリヌクレオチドには、二本鎖または一本鎖のゲノム及びcDNA、RNA、合成及び遺伝子操作されたポリヌクレオチド、ならびにセンス及びアンチセンスポリヌクレオチドの両方が含まれる(ただし、本発明ではセンススタンドのみが開示されている)。これには、一本鎖及び二本鎖分子、即ち、DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNAハイブリッドが含まれる。
本発明のポリヌクレオチドは、それ自体が単離されているか、または適切な宿主細胞中での前記ポリヌクレオチドの増殖を可能にするベクターの一部を形成している。従って、別の態様では、本発明は、上記の本発明のポリヌクレオチドをコードするベクター(以下、本発明のベクター)に関する。
前記ポリヌクレオチドの挿入に適したベクターとしては、pUC18、pUC19等の原核生物の発現ベクターに由来するベクター、Bluescriptとその派生物、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColEl、pCR1、RP4、ファージ、また、pSA3及びpAT28等の「シャトル」ベクター;例えば2ミクロンプラスミドのタイプのベクター、組み込みプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミド等の酵母中の発現ベクター;pACシリーズ及びpVLのベクター等の昆虫細胞中の発現ベクター;pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズ等の植物中の発現ベクター;市販のバキュロウイルスシステムを用いて昆虫細胞を遺伝子導入するのに適したバキュロウイルスを含む、真核細胞中の発現ベクターがある。好ましくは、真核細胞用のベクターには、ウイルスベクター(アデノウイルス、レトロウイルス等のアデノウイルスに関連するウイルス、特にレンチウイルス)、及び非ウイルスベクター(例えば、pSilencer 4.1-CMV(Ambion)、pcDNA3, pcDNA3.1/hyg、pHMCV/Zeo、pCR3.1、pEFI/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pV、Xl、pZeoSV2、pCI、pSVL、PKSV-10、pBPV-1、pML2d、及びpTDTl等)が含まれる。
ベクターは、ベクターと接触した後にベクターを組み込んだ細胞を同定することを可能にするレポーターまたはマーカー遺伝子も含んでもよい。
本発明の文脈において有用なレポーター遺伝子には、lacZ、ルシフェラーゼ、チミジンキナーゼ、GFP等が含まれる。本発明の文脈において有用なマーカー遺伝子には、例えば、ネオグリコシドG418に耐性を与えるネオマイシン耐性遺伝子;ハイグロマイシンへの耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子;オルニチンデカルボキシラーゼの阻害剤(2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(DFMO))への耐性を付与するODC遺伝子;メトトレキサートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子;ピューロマイシン耐性を付与するピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子;ゼオシンへの耐性を与えるble遺伝子;9-ベータ-D-キシロフラノースアデニンへの耐性を与えるアデノシンデアミナーゼ遺伝子;N-(ホスホンアセチル)-L-アスパラギン酸の存在下で細胞の増殖を可能にするシトシンデアミナーゼ遺伝子;アミノプテリンの存在下で細胞を増殖させるチミジンキナーゼ;細胞がキサンチンの存在下及びグアニンの非存在下で成長することを可能にするキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子;トリプトファンの代わりにインドールの存在下で細胞を増殖させる大腸菌のtrpB遺伝子;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチジノールを使用できるようにする大腸菌のhisD遺伝子が含まれる。選択遺伝子は、真核細胞(例えば、CMVまたはSV40プロモーター)、最適化された翻訳開始部位(例えば、いわゆるコザックのルールまたはIRESに従う部位)、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ポリアデニル化)、またはホスホグリセリン酸キナーゼ部位イントロン(例えば、ベータ-グロブリン遺伝子イントロン)における前記遺伝子の発現に適したプロモーターをさらに含むことができるプラスミドに組み込まれる。あるいは、同じベクターに該レポーター遺伝子と該マーカー遺伝子両方の組み合わせを同時に使用することが可能である。
一方、当業者が知っているように、ベクターの選択は、その後に導入される宿主細胞に依存するであろう。例として、前記ポリヌクレオチドが導入されるベクターはまた、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはPI由来の人工染色体(PAC)であってもよい。YAC、BAC及びPACの特徴は、当業者に知られている。上記種類のベクターに関する詳細情報が提供されている。例えば、Giraldo及びMontoliu (Giraldo, P. & Montoliu L., 2001 Size matters:「トランスジェニック動物におけるYAC、BAC及びPACの使用」、トランスジェニックリサーチ10(2):83-110)。本発明のベクターは、当業者に知られている従来の方法で取得できる(Sambrook J.ら, 2000「分子クローニング、実験室マニュアル」、第3
版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. Vol 1-3)。
本発明のポリヌクレオチドは、in vivoでネイキッドDNAプラスミドとして宿主細胞に導入できるが、当技術分野で公知の方法によりベクターも使用する。これらの方法には、トランスフェクション、エレクトロポレーション(例えば、経皮的エレクトロポレーション)、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターの使用を含むが、これらに限定されない。Wu C.ら, J. Biol. Chem. 1992; 267:963-967、Wu C.及びWu G, Biol. Chem. 1988;263:14621-14624、及びWilliams R.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991; 88:2726-2730を参照されたい。ネイキッドDNAを処方して哺乳類の筋肉組織に投与する方法も知られている。Feigner P,らのUS 5,580,859及びUS 5,589,466を参照されたい。カチオン性オリゴペプチド、DNA結合タンパク質に由来するペプチド、またはカチオン性ポリマー等の他の分子も、in vivoでの核酸のトランスフェクションを促進するのに有用である。Bazile D.らのWO 1995021931及びByk G.らのWO 1996025508を参照されたい。
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために使用できる別の周知された方法は、粒子衝突(別名:バイオリスティック変換)である。形質転換は、一般的にいくつかの方法の1つで達成される。一般的な方法の1つは、細胞に不活性または生物学的に活性な粒子を推進することである。Sanford J.らのUS 4,945,050、US 5,036,006、及びUS 5,100,792を参照されたい。
あるいは、該ベクターは、in vivoでリポフェクションによって導入され得る。カチオン性脂質を使用すると、負に帯電した核酸のカプセル化が促進され、負に帯電した細胞膜との融合も促進される。Feigner P.及びRingold G. Science 1989; 337:387-388を参照されたい。核酸の移入に特に有用な脂質化合物及び組成物が記載されている。Feigner P.らのUS 5,459,127、Behr J.らのWO1995018863、及びByk G.のWO1996017823を参照されたい。
従って、別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含む宿主細胞(以下、本発明の細胞)に関する。該細胞は、当業者に知られている汎用の方法で得ることができる(例えば、Sambrookら、cited ad supraを参照されたい)。
本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、本発明によるポリヌクレオチドまたはベクター等のような本発明の核酸が導入され、本発明のマイクロペプチドを発現することができる細胞を指す。本明細書では、用語「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」は、互換的に使用される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことを理解されたい。突然変異または環境の影響により後継世代で特定の改変が発生する可能性があるため、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、ここで使用される用語の範囲内に含まれる。該用語は、異種DNAの導入によって改変できる培養可能な全ての細胞を含む。好ましくは、宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドが安定して発現され、ポスト翻訳的に改変され、適切な細胞内区画に局在化され、適切な転写機構を作動させることができるものである。適切な宿主細胞の選択はまた、検出シグナルの選択によって影響を受ける。例えば、上記のように、レポーター構築物は、転写調節タンパク質に応答して遺伝子転写が活性化または阻害されると、選択可能またはスクリーニング可能な特性を提供することができる。最適な選択またはスクリーニングを達成するために、該宿主細胞の表現型が考慮される。本発明の宿主細胞には、原核細胞及び真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性の生物、例えば、大腸菌または桿菌が含まれる。原核細胞は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む転写制御配列の増殖のために使用されることを理解されたい。形質転換に適した原核宿主細胞には、例えば、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、そして、シュードモナス、ストレプトミセス、及びブドウ球菌属の他の様々な種が含まれる。真核細胞には、酵母細胞、植物細胞、真菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)、哺乳動物細胞、及び寄生生物細胞、例えば、トリパノソーマの細胞が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、酵母には、厳密な分類学的意味での酵母、即ち単細胞生物だけでなく、糸状菌の酵母様多細胞真菌も含まれる。代表的な種には、Kluyverei lactis、Schizosaccharomyces pombe、及びUstilaqo maydisが含まれ、Saccharomyces cerevisiaeが好ましい。本発明の実施に使用できる他の酵母は、Neurospora crassa、Aspergillus niger、Aspergillus nidulans、Pichia pastoris、Candida tropicalis、及びHansenula polymorphaである。哺乳類宿主細胞培養システムには、COS細胞、L細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、胚性幹細胞等の確立された細胞株が含まれ、BHK、HeK、またはHeLa細胞が好ましい。好ましくは、真核細胞は、本発明の転写制御配列または発現ベクターを適用することにより、組換え遺伝子発現に使用される。
本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞を含む組成物及び医薬組成物
さらなる態様では、本発明は、本発明によるマイクロペプチド、または本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターまたは宿主細胞を含む組成物に関する。
本明細書で使用される用語「組成物」は、上記成分を含む材料組成物、ならびに異なる成分のその任意な量の組み合わせから直接または間接的に得られる任意の製品に関する。当業者は、該組成物が単一の製剤として製剤化され得るか、または組み合わせた調製物としての併用のために組み合わされ得る各成分の別個の製剤として提供され得ることを検討する。該組成物は、部品キットであってもよく、ここで、各成分は、個別に製剤化されて包装される。
別の態様では、本発明は、本発明の組成物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物にも関する。
本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、治療的有効量の本発明による薬剤及び少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤を含む組成物を指す。本発明による医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、及び乳濁液等の注射剤として調製することができる。
本発明の医薬組成物に含まれる本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞に関連して本明細書で使用される用語「治療的有効量」は、所望の効果を提供するための十分な量の本発明によるマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞に関する。該所望の効果とは、疾患に由来する1つまたは複数の症状のかなりの予防、治癒、遅延、重症度の軽減または改善を達成することである。一般的に、これは、他の原因の中でもとりわけ、薬剤自体の特徴及び達成されるべき治療効果によって決定される。また、これは治療される被験者、該被験者が罹患する疾患の重症度、選択された剤形等にも依存する。このため、本発明で言及される用量は、当業者のためのガイダンスとしてのみ考慮されなければならない。彼らは、前記の変動要素に応じて用量を調整しなければならない。一実施形態では、該有効量は、治療されている疾患の1つまたは複数の症状の改善をもたらす。
個々のニーズは様々であるが、本発明の化合物の有効量の最適範囲の決定は、当業者の一般的な経験に属する。一般的に、当業者が調整できるそのような化合物の有効量を提供するのに必要な投与量は、年齢、健康状態、フィットネス、性別、食事、体重、受容体の変化の程度、治療頻度、障害または病気の性質と程度、患者の病状、投与経路、また、システムドラッグデリバリーを用いる場合及び該化合物が薬物の組み合わせの一部として投与される場合には、使用した特定の化合物の活性、有効性、薬物動態及び毒性学プロファイル等の薬理学的考察に依存する。
当業者は、広く知られる入手可能な情報源の中で議論されている原理及び手順に精通している。例えば、Goodman及びGilmanの「Remingtonの薬学」(第17版, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985)を参照されたい。用語「医薬的に許容される賦形剤」または「薬剤的に許容される担体」は、使用される用量及び濃度で被験者には本質的に非毒性であり、医薬組成物の他の成分と適合する任意の化合物または化合物の組み合わせを指す。従って、賦形剤は、前記有効成分を含有する組成物を増量する目的で医薬組成物の有効成分と共に製剤化される不活性物質である。増量により、剤形を製造する際に原薬を便利にかつ正確に調剤することが可能になる。賦形剤は様々な治療増強の目的も果たせる。例えば、化合物(薬物)の吸収または溶解性の促進、または他の薬物動態学的考察等。また、賦形剤は製造工程においても有用である。例えば、粉末流動性または非粘着の性質を促進すること等によって、該活性物質の取り扱いを補助し、また、予想される保存期間にわたる変性の防止等のin vitroでの安定性を補助する。適切な賦形剤の選択は、投与経路及び剤形、ならびに有効成分及び他の要因に依存する。賦形剤は、無毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料、または任意の従来型の製剤補助剤であってもよい。賦形剤または担体の例として、水、塩の溶液(生理食塩水)、アルコール、デキストロース、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド、脂肪酸エステル石油、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が含まれるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、本発明で使用するための化合物を含有する医薬組成物は、非経口投与用の医薬組成物である。従って、非経口注射に適した前記医薬組成物は、生理学的に許容される無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液を含み、または無菌注射液または分散液に再構成するための無菌粉末を含んでもよい。適切な水性または非水性の賦形剤または担体、希釈剤、溶媒または媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの適切な混合物、オリーブオイル等の植物油を含むトリグリセリド、またはオレイン酸エチル等のような注射可能な有機エステルが含まれる。特定の実施形態では、本発明で使用するための化合物を含有する医薬組成物は、静脈内、筋肉内または皮下投与用の医薬組成物である。典型的には、静脈内、筋肉内または皮下投与用の医薬組成物は、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、本発明に従って使用するための化合物を含む医薬組成物は、注射部位の痛みを改善するための局所麻酔薬も含む。一般的に、該成分は、別々に、または共に単位剤形の中で混合される。例えば、活性成分の量を示すアンプルまたはサシェ等の密閉容器中の凍結乾燥された乾燥粉末または無水濃縮物として、単位剤形の中で混合される。医薬組成物が注入により投与される場合、無菌の医薬等級の水または生理食塩水を含む注入ボトルで調剤することができる。医薬組成物が注射により投与される場合、投与前に該成分を混合できるように注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供される。
別の特定の実施形態では、本発明で使用するための化合物を含有する医薬組成物は、経口投与用の医薬組成物である。
経口投与用の固体剤形には、汎用のカプセル、徐放性カプセル、汎用の錠剤、徐放性錠剤、チュアブル錠、舌下錠、発泡錠、丸剤、懸濁液、粉末、顆粒及びゲルが含まれる。固形剤形では、前記有効成分(即ち、a)配列番号:1、2または3のペプチド;b)a)に記載のペプチドと機能的に同等な変異体;c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド;d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;e)a)またはb)によるペプチドを培地に分泌できる細胞;f)a)またはb))によるペプチドを含むナノ粒子からなる群から選択される化合物)は、1種以上の適切な賦形剤または担体と混合される。該賦形剤または担体の例として、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、または(a)デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはケイ酸のような充填剤または増量剤;(b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、またはアカシアのような結合剤;(c)グリセロールのような保湿剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、または炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(e)パラフィンのような溶解遅延剤;(f)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(g)セチルアルコールまたはモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(h)カオリンまたはベントナイトのような吸着剤;及び/または(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような滑沢剤、またはそれらの混合物等が挙げられる。カプセル及び錠剤の場合、該剤形は緩衝剤も含んでもよい。
類似した種類の固形製剤は、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子ポリエチレングリコール等の賦形剤を用いて、軟質または硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することもできる。コーティング錠、カプセル及び顆粒等の固体剤形は、腸溶コーティングのようなコーティングまたはシェル及び当技術分野における既知方法で調製できる。また、それらは乳白剤を含んでもよく、それらが1種または複数種の活性成分を遅延の方式で放出するように製剤化されてもよい。使用できる包埋製剤の例は、高分子物質及びワックスである。また、適切な場合には、活性成分は、前記1種または複数種の賦形剤のと共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
経口投与用の液体剤形には、例えば、医薬的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルのような当技術分野で使用される適切な賦形剤または担体を含む。前記活性成分(即ち、a)配列番号:1、2または3のペプチド;b)a)に記載のペプチドと機能的に同等な変異体;c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド;d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;e)a)またはb)によるペプチドを培地に分泌できる細胞;f)a)またはb))によるペプチドを含むナノ粒子からなる群から選択される化合物)に加えて、該液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される1種または複数種の賦形剤または担体を含んでもよい。該賦形剤または担体の例として、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、Miglyol(登録商標)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物等が挙げられる。前記不活性希釈剤に加えて、該製剤は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤のようなアジュバント、甘味剤、香味剤及び芳香剤を含んでもよい。懸濁液は、有効成分の他に懸濁剤を含んでもよい。例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールまたはソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、またはトラガカント、またはこれらの物質の混合物等である。
別の特定の実施形態では、本発明で使用するための化合物を含有する医薬組成物は、局所投与用の医薬組成物である。局所投与のために、前記医薬組成物は、クリーム、ゲル、ローション、液体、ポマード、スプレー溶液、分散液、固形バー、エマルション、マイクロエマルション等に製剤化されてもよく、例えば、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤のような適切な賦形剤及び2種以上のそれらを組み合わせた賦形剤等を使用する従来の方法で製剤化されてもよい。
本発明に従って使用するための化合物を含む医薬組成物は、経皮パッチの形態またはイオン導入装置で投与されてもよい。従って、特定の実施形態では、本発明による使用のための化合物は、例えば徐放性経皮パッチの形態で経皮パッチとして投与される。適切な経皮パッチは、例えば、US5262165、US5948433、US6010715、及びUS6071531に詳しくに記載されている。
いくつかの薬物送達システムが知られており、本発明に従って使用するための化合物の投与に使用できる。これは、例えば、リポソーム、マイクロバブル、エマルション、微粒子、マイクロカプセル内へのカプセル化、または例えばポリマー治療薬等のような他のナノテクノロジーシステムによるカプセル化を含む。必要な投薬量は、単一の単位として、または持続放出形態で投与することができる。
持続放出形態ならびにそれらの調製のための適切な材料及び方法は、当技術分野において記載されている。特定の実施形態では、本発明に従って使用するための化合物を含む医薬組成物の経口投与可能な形態は、さらに少なくとも1種のコーティングまたはマトリックスを含む持続放出形態である。該コーティングまたは徐放性マトリックスには、天然ポリマー、半合成または合成の水不溶性の改変されたワックス、脂肪、脂肪アルコール、脂肪酸、天然の半合成または合成可塑剤、またはそれらの2種以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。腸溶コーティングは、当業者に知られ汎用のプロセスを使用して適用できる。
特定の実施形態では、本発明に従って使用するための化合物が核酸を含む場合、該医薬組成物は、遺伝子治療での使用を目的とする組成物に製剤化されてもよい。その例として、限定的ではないが、その医薬組成物は、適切なポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含むウイルスまたは非ウイルスベクターを含んでもよい。前記ベクターの例として、限定ではないが、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス等に基づくウイルス性、またはADN-リポソーム、ADN-ポリマー、ADN-ポリマー-リポソーム複合体等の非ウイルス性(「遺伝子治療のための非ウイルスベクター」、Huang、Hung及びWagner編集、Academic Press (1999)を参照されたい)であってもよい。対応するポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含有する前記ベクターは、汎用の方法で被験者に直接に投与されてもよい。あるいは、前記ベクターを用いて、細胞、例えば、ヒトを含む哺乳動物細胞(ex vivo)を形質転換、または遺伝子導入し、または感染させ、その後、人体または動物に移植し、所望の治療効果を得ることができる。人体または動物への投与のため、前記細胞は、細胞の生存率に悪影響を及ぼさないであろう適切な培地で製剤化される。
さらなる態様では、本発明は、医療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド及びベクターの癌における治療的使用
本願の実施例に示されているように、本発明の著者らは、本発明のマイクロペプチドが腫瘍抑制剤として作用でき、従って、癌治療の興味深いツールとなることを見出した。
従って、別の態様では、本発明は、癌の治療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
本明細書で使用される用語「治療」は、臨床状態、例えば、本明細書に記載されるように癌に対する感受性を終了させたり、防止したり、改善したり、及び/または軽減することを目的とする任意のタイプの治療を含む。従って、本明細書で使用される「治療」、「治療すること」等は、ヒトを含む哺乳動物の病的状態または障害の任意の治療をカバーする、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指す。該効果は、障害またはその症状を完全にまたは部分的に防止することに関して予防的であってもよく、及び/または障害の部分的または完全な治癒及び/または該障害に起因する悪影響について治療的であってもよい。即ち、「治療」には、(1)被験者における障害の発生または再発の防止、(2)その発生を阻止する等の障害の抑制、(3)障害または少なくともそれに関連する症状を停止または終了させることにより、患者は、該障害または症状にもはや苦しむことはないこと(例えば、失われたものの復元または修復により、または機能の欠落または欠陥、または非効率的なプロセスの刺激により、該障害またはその症状の退行を引き起こす等)、また、(4)障害またはそれに関連する症状の軽減、緩和、または改善(ここで、改善は、少なくともパラメータの大きさの減少を指すために広い意味で使用される)が含まれる。また、「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存と比べて生存の延長を意味する。治療を必要とする人には、すでに状態または障害を患っている人、ならびに該状態または障害を起こしやすい人、または状態または障害が予防されるべき人が含まれる。
本明細書で使用される用語「癌」または「腫瘍」または「腫瘍疾患」は、無秩序な細胞増殖を含み、悪性新生物とも呼ばれる広範な疾患群を指す。通常、該用語は、制御されない細胞分裂(または生存またはアポトーシス耐性の増加)、及び上記の細胞が他の隣接組織に侵入し(浸潤)、リンパ管や血管を通して細胞が通常位置していない体の他の領域に拡大し(転移)、血流を通って循環し、その後、体のどこかの正常組織に侵入する能力を特徴とする疾患に適用する。腫瘍は、浸潤及び転移によって拡大できるかどうかによって、良性であるかまたは悪性であるかのいずれかに分類される:良性腫瘍は、浸潤または転移によって拡大できない腫瘍である。つまり、局所的にしか増殖しない。一方、悪性腫瘍は、浸潤及び転移によって拡大できる腫瘍である。癌に関連する既知の生物学的プロセスには、血管新生、免疫細胞浸潤、細胞遊走及び転移が含まれる。癌は、通常次の特徴を共有する:増殖シグナル伝達の持続、成長抑制因子の回避、細胞死への抵抗、複製不死化の有効化、血管新生の誘導、浸潤の活性化、最終的には転移。癌は体の近くの部分に浸潤し、リンパ系または血流を通って体のより離れた部分に拡大することもある。癌は、腫瘍細胞が類似する細胞の種類によって分類される。これは腫瘍の起源であると推測される。
癌または腫瘍の例としては、これらに限定されないが、乳癌、心臓癌、肺癌、小腸癌、結腸癌、脾臓癌、腎臓癌、膀胱癌、頭癌、首癌、卵巣癌、前立腺癌、脳癌、直腸癌、膵臓癌、皮膚癌、骨癌、骨髄癌、血液癌、胸腺癌、子宮癌、睾丸癌、肝胆管癌及び肝腫瘍が含まれる。具体的には、前記癌または腫瘍は、腺腫、血管肉腫、星細胞腫、上皮性細胞腫、胚細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、肝胆管腺腫、骨肉腫、肉腫性肉腫、黒色腫、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫嚢胞性癌、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、癌肉腫、胆管癌、嚢胞腺腫、内胚葉性洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺腫、類内膜腺腫、腺腫過形成、胚細胞腫瘍、グルカゴノーマ、血管芽腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫、肝細胞癌、インスリノーマ、上皮内腫瘍、上皮間扁平上皮腫瘍、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、平滑筋肉腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄上皮腫、粘表皮癌、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、乳頭状漿液性腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、腎細胞癌、漿液性癌、小細胞性悪性腫瘍、扁平上皮癌、扁平上皮癌、未分化癌、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌、乳腺腫、ウィルムス腫瘍からなる群から選択できる。
特定の実施形態では、本発明は、癌の治療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。ここで、前記癌が原発性腫瘍または癌転移である。
本明細書で使用される用語「原発性腫瘍」は、それが存在する場所または器官に由来し、別の場所からその場所に転移しなかった腫瘍を指す。
本発明の文脈において、「転移」は、それが始まった器官から異なる器官への癌の伝播として理解される。それは一般的に血液またはリンパ系を介して発生する。癌細胞が拡大し、新しい腫瘍を形成する場合、後者は二次性または転移性腫瘍と呼ばれる。二次腫瘍を形成する癌細胞は、元の腫瘍のものと似ている。例えば、乳癌が肺に拡大(転移)すると、二次腫瘍は悪性の乳癌細胞から形成される。肺の病気は転移性乳癌であり、肺癌ではない。
別の実施形態では、マイクロペプチドが、配列番号:1または配列番号:3の配列のマイクロペプチドである該マイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、p53遺伝子に不活性化変異を含むことを特徴とする癌の治療に使用される。
従って、特定の実施形態では、該癌細胞は、p53遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に不活性化変異を持つ。
本明細書で使用される用語「不活性化変異」は、該変異ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの活性を部分的または完全に無効にする変異を指す。p53の特定のケースでは、不活性化変異は、DNA修復応答を開始させる能力の部分的なまたは完全な欠損をもたらす変異である。
p53の不活性化をもたらす適切な変異は、通常、ミスセンス変異であり、例えば、当技術分野で知られているものである(Michalovitzら, J. Cell. Biochem., 1991, 45(l):22-9、Vogelstein及びKinzler, Cell, 1992, 70(4):523-6、Donehower及びBradley, Biochim. Biophys. Acta., 1993, 1155(2):181-205、及びLevine, Cell, 1997, 88(3):323-31)。一部の不活性化変異は、N末端トランス活性化ドメインまたはC末端四量体化ドメインに記載されている(Beroud 及びSoussi, 「核酸研究」, 1998, 26(l):200-4、Carielloら, 「核酸研究」, 1998, 26(1):198-9、及びHainaut P.ら, 「核酸研究」 1998;26:205-213)が、これらの変異はp53のDNA結合部位との接触に関与するp53のコアDNA結合ドメインにほぼ影響する。
別の特定の実施形態では、本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、完全に欠陥のあるp53遺伝子(p53-/-)についてホモ接合性である。
特定の実施形態では、本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、細胞腫の癌の治療に使用される。
本明細書で使用する場合、用語「細胞腫」は、呼吸器系癌、消化器系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、及び黒色腫を含む上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。
別の特定の実施形態では、本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、扁平上皮癌、腺癌、移行上皮癌または基底細胞癌から選択される癌の治療に使用される。
さらなる特定の実施形態では、本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、肺癌、乳癌、膀胱癌、前立腺癌、結腸直腸癌、皮膚癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肝細胞癌または腎細胞癌から選択される癌の治療に使用される。
細胞腫の種類は、以下ものを含めるが、これらに限定されない。腺房細胞癌、光線性角化症腺癌、腺癌、腺様嚢胞癌、腺扁平上皮癌、副腎皮質癌、未分化癌、未分化膵臓癌、甲状腺未分化癌、バルトリン腺癌、基底細胞癌、基底様癌、気管支腺癌、癌in situ、CASTLE、嫌色素性細胞癌、明細胞癌、集合管癌、コロイド癌、非浸潤性乳管癌、管細胞癌、胚性癌、子宮内膜癌、上皮癌、上皮筋上皮癌、線維層癌、濾胞癌、巨細胞癌、ガラス状細胞癌、肝細胞癌、ハースル細胞癌、炎症性癌、上皮内癌、管内癌、粘膜内癌、若年性癌、クレブス癌、肺の大細胞未分化癌、喉頭癌、上皮内小葉癌、髄様癌、メルケル細胞癌、微小浸潤癌、子宮頸部の最小逸脱腺癌、ムコ表皮癌、‘乳腺細胞’癌、上咽頭癌、神経上皮腺癌、肺の非小細胞癌、オート麦細胞癌、卵巣小細胞癌-高カルシウム型、多形性癌、多形性小葉癌、腎細胞癌、肉腫様癌、スキルス癌、分泌癌、漿液性癌、軟部組織癌、紡錘細胞癌、扁平上皮癌、扁平上皮癌、断端癌、表在拡大癌、終末管癌、声門癌、移行期細胞癌、尿細管癌、及び未分化癌。
特定の実施形態では、配列番号:1のマイクロペプチド、または該配列番号:1のマイクロペプチドをコードするもしくは含み、または該配列番号:1のマイクロペプチドをコードする該ポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、膵臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌または皮膚癌の治療に、より具体的には膵臓癌、乳癌、肺癌または結腸癌、または扁平上皮癌の治療に使用される。
特定の実施形態では、配列番号:2のマイクロペプチド、または該配列番号:2のマイクロペプチドをコードするもしくは含み、または該配列番号:2のマイクロペプチドをコードする該ポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、膵臓癌及び乳癌の治療に、より具体的には、癌はトリプルネガティブ乳癌と膵臓腺癌である。
別の特定の実施形態では、配列番号:2のマイクロペプチド、または該配列番号:2のマイクロペプチドをコードするもしくは含み、または該配列番号:2のマイクロペプチドをコードする該ポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、腫瘍と腫瘍の間質コンパートメント(癌に関連する線維芽細胞)の両方を標的とする。
別の特定の実施形態では、配列番号:3のマイクロペプチド、または該配列番号:3のマイクロペプチドをコードするもしくは含み、または該配列番号:3のマイクロペプチドをコードする該ポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物は、結腸癌及び肺癌の治療に、より具体的には結腸細胞腫及び肺細胞腫の治療に使用される。
線維症の治療における使用
本願の実施例に示されているように、配列番号:2の配列のマイクロペプチドが、コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン及びCD44等の接着因子の減少を誘導することが証明されている。これらの因子の増加は、線維症の発症に関連している。これは、コラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰沈着に起因する組織の異常増殖、硬化、及び/または瘢痕で定義された慢性炎症性疾患に関連する病理学的特徴である(Wynn TAら, 2012, Nat. Med. 18:1028-40)。さらに、CD44、ヒアルロン酸の受容体、及びコラーゲンやメタロプロテイナーゼ等の細胞接着に関連する他のリガンドは、細胞外マトリックスの接着や線維化に必要であることが示されている(Li Y.ら、2011; J Exp Med. 208, 1459-71及びYang LWら, 2018, doi:10.1097/SHK.0000000000001132)。
従って、別の態様では、本発明は、線維症の治療に使用するための本発明の配列番号:2のマイクロペプチド、該マイクロペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。
本明細書で使用する場合、用語「線維症」は、線維組織の過剰な沈着を特徴とする状態を指し、それは多くの疾患状態の根本的な症状である。線維症は瘢痕化のプロセスに似ており、どちらもコラーゲンやグリコサミノグリカン等の結合組織を形成する刺激された細胞を含む。これは、反応性、良性、または病理学的状態である可能性がある。器官及び/または組織における結合組織の沈着は、下にある器官または組織の構造及び機能を破壊する可能性がある。
線維症は、様々な組織や臓器で発生する可能性がある。これらの線維症状態には、皮膚線維症(例えば、強皮症に関連する)が含まれる。皮膚線維症は、皮膚(または真皮)に現れる線維症である。線維性状態には、肥厚性瘢痕、ケロイド、火傷、ペイロニー病、デュピュイトラン拘縮も含まれる。線維症状態には、非皮膚線維症も含まれる。非皮膚線維症は、皮膚(または真皮)以外の器官に現れる線維症である。非皮膚線維症の重要な例として、肺(または肺性)線維症がある。肺線維症は間質性肺疾患及びびまん性増殖性肺疾患に関連している可能性がある。肺線維症の例は、重度の気道制限を伴うIPF(本明細書では重度IPFと呼ばれる)を含む、特発性肺線維症(JPF)である。
非皮膚線維症の他の例としては、肝臓/肝線維症、眼線維症、腸の線維症、腎臓/腎線維症、膵線維症、血管線維症、心臓線維症、骨髄線維症等が含まれる。線維症のいくつかの形態は間質性線維症と呼ばれ、それらには皮膚または非皮膚の間質性線維症が含まれる。
線維症は、病因が知られている限り、その病因によってさらに分類されてもよい。例えば、線維症は、感染症(例えば、ウイルス感染症または寄生虫感染症)に関連するか、またはそれに起因する場合があり、または薬物誘発性線維症(例えば、化学療法)である場合があり、または、薬物乱用(例:アルコール誘発性線維症)に関連しているか、それに起因する場合があり、または、手術またはその他の侵襲的手技に関連しているか、またはそれらに起因する場合があり、または、基礎となる状態またはイベント(例:心筋梗塞または糖尿病)に関連しているか、またはそれらに起因する場合があり、または、それは放射線被ばくに関連するか、またはそれに起因する場合がある(例:癌の放射線治療)。その例として、アルコール摂取に伴う肝臓/肝線維症、ウイルス性肝炎及び/または住血吸虫症、心筋梗塞後の心臓線維症、糖尿病に関連する腎臓/腎線維症、炎症後の腎臓/腎線維症が含まれる。線維症は、移植誘発性であるか、または移植と関係せずに発生する場合がある(即ち、移植を受けていない被験者や移植を必要としない被験者において)
用語「コラーゲンI」、「I型コラーゲン」、「アルファ1」または「アルファ−1のI型コラーゲン」は、本願では区別なく使用される。それらは、(それぞれCOL1A1遺伝子とCOL1A2遺伝子によってコードされる)2本のアルファ1鎖と1本のアルファ2鎖を含む三重らせんタンパク質を指す。
本明細書で使用される用語CD44は、細胞間相互作用、細胞接着及び遊走に関与する細胞表面糖タンパク質に関連する。ヒトでは、CD44抗原は第11染色体上のCD44遺伝子によってコードされている。CD44は、HCAM(ホーミング細胞接着分子)、Pgp-1(食作用性糖タンパク質-1)、Hermes抗原、リンパ球ホーミング受容体、ECM-III、及びHUTCH-1とも呼ばれる。
特定の実施形態では、本発明は、線維症の治療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。ここで、該線維症は、臓器または組織における機能の喪失、及びに手術及び/または整容手術による合併症に関連している。
別の特定の実施形態では、本発明は、線維症の治療に使用するための本発明のマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物に関する。ここで、該線維症は、肺線維症、肝線維症(肝硬変)、腎線維症、角膜線維症、皮膚及び腹膜手術に関連する線維症、火傷に関連する線維症、骨関節線維症またはケロイドから選択される。
本発明を以下の実施例によって説明するが、これらは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
方法
化学的処理
ドキソルビシン、アクチノマイシンD及びNutlin-3aはSigma-Aldrich社から購入した。薬物治療実験には、1μMドキソルビシン、5nMアクチノマイシンD、及び10μMNutlin-3aを使用した。
クローニング手順
配列(ORF)をコードする配列番号:1、配列番号:2、及び配列番号:3を合成し(IDTテクノロジー)、C末端にアミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSの柔軟なリンカーとHA-tagを融合し、そして、EcoRI及びXhoI酵素制限部位と隣接させた。EcoRI及びXhoIによる温浸の後、該構築物をpMSCV-Puroレトロウイルスベクターに連結した。Gateway(登録商標)クローニング技術を用いて製造元の取り扱い説明書に従い、配列番号:1をpINDUCER20ベクター(Invitrogen社)にクローニングした。
細胞培養
BxPC-3及びA549細胞株は、10%FBS及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMIの中で培養した。患者由来のH10皮膚扁平上皮癌細胞株を、B27及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM-F12の中で培養した。癌関連線維芽細胞(CAF)及びPDAC細胞株は、LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+;Pdx-1-Creマウスに由来し、10%FBS及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM-F12の中で培養した。他のすべての細胞株は、10%FBSとペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEMの中で培養した。培養物をマイコプラズマについて定期的に検査し、常に陰性であった。
レトロウイルス及びレンチウイルスの形質導入
Fugene HD(Roche社)を用いて、5×106個のHEK293T細胞に、レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクター及びパッケージングベクター(レトロウイルス形質導入の場合はpCL-Ampho、レンチウイルス形質導入の場合はpLP1 pLP2及びpLP-VSVG)を遺伝子導入した。遺伝子導入の36時間後から2日間連続して1日2回ウイルス上清を収集し、予めに10 cmプレートあたり8×105細胞の密度で播種されたIMR90及び癌細胞株に感染させるために使用した。感染させる前に、ポリブレンを8 mg/mlの濃度で該ウイルス上清に添加した。
mRNAレベルの分析
総RNAはTrizol(登録商標)を抽出し、プロバイダーの推奨に従ってTURBOTM DNaseで処理した。1μg RNAをiScriptTMcDNA合成キット(BioRad社)を用いて逆転写した。7900HT高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)でPowerUp SYBR Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社)を用いた定量的リアルタイムPCRによって遺伝子発現を分析した。サイクル閾値(Ct)値はGAPDHに規準化した。
ウエスタンブロット法
細胞ペレット(4-5* 106細胞)を培地-塩溶解緩衝液(150 mM NaCl、50 mM Tris pH 8、1%NP40及びタンパク質阻害剤カクテル)でホモジナイズした。レーンあたり50 μgのタンパク質を12%アクリルアミドゲルに負荷し、Tris-Glycine SDS流動緩衝液の中で電気泳動した。次の抗体を使用した:抗HA-Tag(Abcam社、1:5000)、抗p53(Santa Cruz社、1:1000)、抗p21(Thermo Fisher社、1:1000)、抗GAPDH(Thermo Fisher社、1:5000)。
免疫蛍光
細胞は、フィブロネクチンでコーティングされたカバーガラスに5×104細胞/mlの細胞密度で播種した。次に、細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBSで2回洗浄した後、0.2%(v/v)Triton X-100で室温で15分間透過処理した。ブロッキング工程は、3%BSAで1時間行った。一次抗体HA Tagモノクローナル抗体5B1D10((1:150、Thermo Scientific社)及びAbyntek(1:150)によって生成されたカスタム抗体を含む同じブロッキング緩衝液の中で、細胞を4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞をPBSで3回洗浄し、二次抗体Alexa-Fluor488ヤギ抗マウスとAlexa-Fluor 488ヤギ抗ウサギを1:500希釈で加え、暗所で室温で1時間インキュベートした。最後に、細胞をPBSで3回洗浄し、DAPIを含むVECTASHIELD(登録商標)マウンティング培地(PALEX MEDICAL社、S.A.)の中にマウントし、Nikon Eclipse Ti-E倒立顕微鏡システム(Nikon社、Melville、NY)を用いて488〜500 nmの励起を観察した。
アネキシンVアッセイ
レンチウイルス感染と72時間のピューロマイシン選択の後、感染した細胞を冷却PBSで2回洗浄し、1×106細胞/mLの細胞密度で結合緩衝液に再懸濁した。メーカーの取扱説明書(BD PharmingenTM社)に従い、100μLの細胞を5μLのアネキシンV-FITCで処理した。暗所及び室温で15分間インキュベートした後、400μlの結合緩衝液を加え、各サンプルに10μLのヨウ化プロピジウムを補充した。LSRフォルテッササイトメーターを用いてフローサイトメトリー分析を行った。
細胞周期分析と細胞生存率アッセイ
配列番号:1のマイクロペプチド発現は、ドキシサイクリン(2μg/ml)で4日間処理することによりBxPC3細胞に誘導した。細胞を4℃で100%エタノールを用いて固定し、ヨウ化プロピジウムで染色し、細胞周期をフローサイトメトリー(LSR-Fortessaサイトメーター)で分析した。配列番号:1のマイクロペプチド発現細胞の細胞生存率は、CellTiter-Glo 2.0(Promega社)を用いて、製造元の取扱説明書に従って評価した。
薬物感受性アッセイでは、ドキシサイクリン誘導をドキソルビシン(1.5 mM)またはアクチノマイシンD(5nM)と組み合わせた(2〜4日目)。細胞生存率は、クリスタルバイオレットを用いた染色により測定した。
SA-β-G染色アッセイ
SA-β-gal染色では、市販の老朽β-ガラクトシダーゼ染色キット(Cell Signalling社)を用いて、製造元のプロトコルに従って細胞を固定し、染色した。
細胞増殖アッセイ
A549及びH10細胞株をトリプシン消化により分離し、密度5×103細胞/ウェルで24ウェル細胞培養プレートに播種した。2日ごとに細胞をウェルから分離し、ノイバウアーチャンバーを用いてカウントした。細胞増殖曲線を14日間観察した。
創傷治癒アッセイ
MIA PaCa-2及びBxPC-3細胞をトリプシン処理し、カウントし、400,000細胞/ウェルを6ウェルプレートに播種した。翌日、ピペットチップを用いて細胞単層の表面を引っ掻き、創傷を形成した。浜松C9100カメラを搭載したオリンパスCellR顕微鏡を用いて、創傷の治癒を追跡した。
侵入アッセイ
BxPC-3、MDA-MB-231、A549、及びH10の細胞株をトリプシン処理し、カウントし、20,000細胞/ウェルを、中の多孔質膜が細胞外マトリックス(ECM)を模倣するためにマトリゲル(登録商標)の層でコーティングされているCorning(登録商標)細胞培養インサート(Boydenチャンバー)の中に3連で播種した。37℃の細胞インキュベーターの中で、細胞をコーティングされた膜を通して24時間侵入させた。該インキュベーション時間の後、室温で培養インサートをメタノールで5分間固定し、クリスタルバイオレットを用いて室温で20分間染色した。過剰なクリスタルバイオレット染色剤をPBSで洗浄して除去し、チャンバーの写真をOlympus CellR顕微鏡で撮影した。侵入細胞をImageJでカウントし、対照に対して倍率変化を規準化して計算した。
CAFの侵襲性促進活性を試験するために、40,000 CAF/ウェルを24ウェルプレートに播種した。48時間後、PDAC細胞をトリプシン処理し、カウントし、20,000細胞を、ウェルを含むCAFの上に配置されたMatrigel(登録商標)コーティングインサートの上部コンパートメントに播種した。この方法でCAF及びPDAC細胞を24時間共培養し、上記のように染色した。
実施例1:マイクロペプチドの同定
本発明の著者らは、配列番号:1、2及び3の配列に対応する3つのマイクロペプチドを同定した。
配列番号:1のマイクロペプチドは、高度に保護された87個のアミノ酸を有するマイクロペプチドであり、その配列は次の通りである:
MEGLRRGLSRWKRYHIKVHLADEALLLPLTVRPRDTLSDLRAQLVGQGVSSWKRAFYYNARRLDDHQTVRDARLQDGSVLLLVSDPR(図1A)
該アミノ酸配列のコンピュータシミュレーション分析は、タンパク質UBIQUITINに似た3D構造(図1B)を予測する。配列番号:1マイクロペプチドは、lncRNA TINCR(ヒトではLINC00036、また、マウスではGm20219)によってコードされている。
配列番号:2のマイクロペプチドは、64個のアミノ酸を有するマイクロペプチドであり、その配列は次の通りである:
MVRRKSMKKPRSVGEKKVEAKKQLPEQTVQKPRQECREAGPLFLQSRRETRDPETRATYLCGEG(図2A)
これは、ZEB2アンチセンス1(ZEB2AS1)の長い非コードRNA(lncRNA)によってコード化されている。ZEB2AS1は、ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス2(ZEB2)の5'非翻訳領域(UTR)に対応する天然のアンチセンス転写物である。該マイクロペプチドをコードするORFは、lncRNAの2番目と3番目のエクソンの一部をスパムする。3Dタンパク質構造予測因子であるI-Tasserは、配列番号:2マイクロペプチドの3D構造のモデルを構築するために使用されている(図2B)。さらなるコンピュータシミュレーション分析により、種全体にわたる高いアミノ酸配列保護、及び該配列番号:2のマイクロペプチドの潜在的な細胞質局在が明らかになった。
配列番号:3のマイクロペプチドは、LINC0086 lncRNAの1番目のエクソンによってコードされる78個のアミノ酸を有するマイクロペプチドである。進化全体で高度に保護されているその配列は次の通りである:
MAASAALSAAAAAAALSGLAVRLSRSAAARGSYGAFCKGLTRTLLTFFDLAWRLRMNFPYFYIVASVMLNVRLQVRIE(図3A)
該配列のコンピュータシミュレーション分析により、該タンパク質のC末端に膜貫通ドメイン、及び最初の25個のアミノ酸にシグナルペプチドのある三次構造(図3B)が予測された。
実施例2:配列番号:1のマイクロペプチドの過剰発現は、細胞周期の停止や細胞の老化を誘発し、膵臓及び乳癌細胞において癌細胞をストレスに対して感作させる。
マイクロペプチドの生物学的機能を測定するために、配列番号:1をコードするORFを、レトロウイルス発現ベクター(pMSCV)及びドキシサイクリン誘導性レンチウイルスベクター(pINDUCER20)の両方にHAエピトープタグを付けてインフレームでクローニングした。BxPC-3膵臓癌細胞株にpINDUCER20-配列番号:1-HAベクターを形質導入し、感染細胞をネオマイシンで選択した。ドキシサイクリンで処理すると、配列番号:1発現がqPCR(図4A)及びウエスタンブロット(図4B)で検出され、該マイクロペプチドが細胞内で発現し、安定していることが示された。配列番号:1に対する自家製抗体を用いた免疫染色により、細胞質の細胞局在が明らかになった(図4C)。配列番号:1のマイクロペプチド発現は、細胞増殖を著しく減少させ(図5A及び5B)、CDK阻害剤p27及びp21の増加(図5D及び5E)、及び老化細胞(SA-β-Gal陽性細胞)の数の増加(図5F及び5G)とともに、G1期における細胞周期の停止を誘導する(図5C)。驚くべきことに、該配列番号:1のマイクロペプチド発現は、細胞ストレスと相まって、広範な細胞死を誘発する。例えば、いくつかの膵臓及び乳癌細胞株に示されるような(図6C)感染細胞の選択中にピューロマイシンによって生成されるもの等(pMSCV非誘導性ベクターを使用する場合)、アネキシンV/PIアッセイから、配列番号:1-ピューロマイシン条件下でコントロールと比べて、初期アポトーシス細胞(22.4%)及び後期アポトーシス細胞(58.6%)の割合の大幅な増加(図6D)が明らかになった。これらの結果と一致し、配列番号:1のマイクロペプチド発現は、ドキソルビシン及びアクチノマイシンD等の薬物によって誘発された細胞死に感受性を示す(図6E)。
実施例3:配列番号:1のマイクロペプチドの過剰発現は、細胞増殖を減少させ、肺腺癌細胞及び扁平上皮癌細胞における細胞周期の停止を誘導する。
肺癌細胞株A549及び扁平上皮癌細胞株H10を発現する誘導可能な配列番号:1-HAベクターを前記のように確立した。配列番号:1発現をqPCR(図7A)及びウエスタンブロット(図7B)により検出した。配列番号:1に対する自家製抗体を用いた免疫染色により、繊維状パターンを伴う主な細胞質局在が明らかになる。該データに示されるように、該マイクロペプチドはこれらの細胞株においても発現され、検出されることができる。
増殖に対する配列番号:1の効果を評価するために、配列番号:1-HAベクターまたは対照ベクターで形質導入されたA549及びH10細胞を14日間モニターした。成長曲線は、マイクロペプチド配列番号:1を過剰発現している細胞が、コントロールと比べて一貫して低い成長率を有すること(図8A)を示している。該増殖効果には、G1期で停止した細胞の増加も伴う(図8B)。以前に膵臓細胞株BxPC-3で示されたデータをまとめると、数種類の癌(膵臓、肺、及び扁平上皮癌)において、配列番号:1のマイクロペプチドが細胞増殖の減少に強い役割を果たすことの証拠がある。
実施例4:配列番号:1のマイクロペプチドは、細胞浸潤能力を損ない、間葉系プログラムを減少させる。
配列番号:1の過剰発現の影響を考慮し、別の重要な発癌特性である細胞浸潤におけるその影響を研究するためにさらなる実験を行った。Boydenチャンバーアッセイを用いて、配列番号:1のドキシサイクリン誘導4日後のA549及びH10癌細胞の浸潤性を測定し、該マイクロペプチドの発現が浸潤の著しい減少を誘導することが示された(図9A及びB)。該観察と一致して、配列番号:1のマイクロペプチドの過剰発現は、H10 SCC細胞株において、EMTレギュレーターVIMENTIN、SLUG、SNAIL、N-CADHERIN、TWIST1、TWIST2、ZEB1及びZEB2の発現を抑制する(図9C)。該間葉系プログラムの減少は、配列番号:1のマイクロペプチドの腫瘍抑制因子としての役割をさらに検証する。
実施例5:配列番号:1のマイクロペプチドの転写及び翻訳は、遺伝毒性ストレスによりp53依存的に増加する。
腫瘍抑制遺伝子p53は、アポトーシス、細胞周期の停止、老化、DNAが損傷したときの活性化時の細胞移動と浸潤の制御に役割を果たすことがよく知られている。配列番号:1のマイクロペプチドの潜在的な腫瘍抑制機能により、両方のタンパク質をどのように接続できるかを研究するために、さらなる研究を行った。異なる細胞株(A549、BxPC-3及びHCT116)は、癌治療で一般的に使用される異なるDNA損傷剤(ドキソルビシン及びアクチノマイシンD)と1つのp53安定剤(Nutlin-3a)で処理し、p53の活性化を促進した。次に、配列番号:1の発現を測定し、配列番号:1が遺伝毒性ストレスにより誘導されること(mRNA及びタンパク質レベル)が観察された(図10A、B及びC)。重要なことに、野生型p53を持つ細胞(HCT116及びA549)のみが、配列番号:1の転写及び翻訳の増加を示す(図10A)。一方、p53の状態が改変された細胞、タンパク質ノックアウト(HCT116 p53KO)または病原性変異体p53(BxPC-3)は、同様な応答を示さない(図10B)。
p53は、腫瘍抑制因子として発癌性の変化から細胞を保護する。p53の活性化は腫瘍細胞のアポトーシスを促進することができ、ドキソルビシンと同様に、いくつかの抗腫瘍薬の主要な作用機序と考えられている。p53の不活性化変異は、様々なヒトの癌で頻繁に観察され、腫瘍耐性を与えることが知られている。これらの結果は、配列番号:1がp53依存的に調節され、それにより、おそらくp53の変異性不活性化を伴うすべての癌において減少されることを示唆している。従って、その腫瘍抑制活性はp53機能と関連している可能性がある。これは、該マイクロペプチドの癌治療薬としての使用をサポートしている。
実施例6:配列番号:1のマイクロペプチドは、細胞のユビキチン化パターンを変化させるユビキチン様タンパク質をコードする。
コンピュータツールによる構造モデリングにより、配列番号:1のマイクロペプチドがユビキチン様タンパク質として予測された(図1B)。ユビキチンは、すべての真核細胞に広く存在する高度に保護された小タンパク質であり、固定されていないか、別のタンパク質に共有結合して存在することができる。その標的タンパク質に結合すると、プロテアソーム、DNA修復、細胞周期調節、シグナル伝達カスケード、及びDNA損傷応答を介したタンパク質分解として重要な生物学的プロセスを調整する。最近、ユビキチンと構造的に類似しているユビキチン様タンパク質(ULP)も細胞に存在し、ユビキチン化に似たタンパク質結合能を有することが示されている(Hochstrasser、2009)。配列番号:1のマイクロペプチドの構造的特徴を考慮して、該マイクロペプチドのユビキチン関連機能について試験した。免疫沈降実験により、配列番号:1の配列のマイクロペプチドがユビキチン化タンパク質に結合することが示された(図11A)。さらに、配列番号:1のマイクロペプチド過剰発現が、BxPC-3感染細胞におけるタンパク質ユビキチン化パターンを変化させる(図11B)。
まとめると、我々の結果は、配列番号:1のマイクロペプチドが細胞周期の停止、細胞の老化を誘発し、癌細胞をストレスに感作し、おそらく細胞のユビキチン化パターンを変えることによって、細胞浸潤と間葉の特徴を軽減させることを示唆している。これにより、腫瘍増殖及び侵襲性を低減させ、それらを併用療法における化学療法/放射線療法に対してより感受的にするための療法としての配列番号:1のマイクロペプチドを使用することの可能性が開く。
実施例7:配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、EMT因子を減少させ、膵臓腺癌の移動と浸潤を減少させる。
配列番号:2のマイクロペプチドをコードするORFを、HA-tagに融合したpMSCVレトロウイルスベクターにクローン化した。得られた構築物を用いて、ヒト一次線維芽細胞(IMR90)、膵臓癌細胞株(MIA PaCa-2及びBxPC-3)及びマウス膵臓癌関連線維芽細胞(mCAF)をレトロウイルスで形質導入した。配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、定量的PCR及びHA-tag抗体を使用したウエスタンブロット分析により、すべての細胞株で確認された(図12及び13)。配列番号:2のマイクロペプチドに特異的なカスタムポリクローナル抗体を用いた免疫染色により、配列番号:2のマイクロペプチドが発現され、細胞質に存在すること(図14)が示された。
次に、発明者らは、上皮間葉転換(EMT)関連遺伝子発現における配列番号:2マイクロペプチドの過剰発現の効果について試験した。注目すべきことに、EMTレギュレーターSNAIL、SLUG、ZEB1、ZEB2、TWIST1、及びVIMENTIN(表現されている場合)、及びコラーゲンI、コラーゲンIV、CD44、フィブロネクチン等の接着因子の減少(図15及び16)が示されるように、該配列番号:2のマイクロペプチドは、原発性線維芽細胞及び膵臓癌細胞株ならびに膵臓癌関連線維芽細胞において間葉性同一性の喪失を誘導する。注目すべきことに、mCAFにおける接着分子の発現の低下には、メタロプロテイナーゼ2の減少も伴う(図16)。接着分子は、メタロプロテイナーゼと同様に、転移性環境を作り出すために必要とされる癌関連線維芽細胞から分泌される因子である(Hwang RFら, Cancer Res. 2008;68:918-26及びVonlaufen Aら, Cancer Res. 2008;68:2085-93)。
これらの結果と一致して、配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、MIA PaCa-2及びBxPC-3細胞株での創傷治癒アッセイにおける遊走能力の低下(図17A及びB)、及びBxPC-3細胞株の浸潤の減少(図18A及びB)につながる。
さらに、コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン等の細胞外マトリックス因子の減少は、癌関連線維芽細胞における分泌されたメタロプロテイナーゼ-2とともに、腫瘍内、及び一般的には病的線維症状態における該特定の細胞群の腫瘍促進活性を標的とする抗線維化剤として配列番号:2のマイクロペプチドを使用する可能性に対処する。
CAFの侵襲性促進作用について試験するために、CAFを、PDAC細胞をMatrigel(登録商標)コーティングインサートの上部コンパートメントに播種されたPDAC細胞と共培養し、マトリゲル層に侵入させた。図19A及びBに示されるように、CAFにおける配列番号:2のマイクロペプチド発現が非細胞自律的に膵臓癌細胞浸潤を減少させる。これは、癌細胞と間質対応物の両方を潜在的に標的とすることができる治療薬として、配列番号:2のマイクロペプチドを使用することをサポートしている。
実施例8:配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、EMT因子を減少し、トリプルネガティブ乳癌における浸潤を阻害する。
配列番号:2のマイクロペプチドを含む構築物(実施例7で説明)を用いて、ヒトのトリプルネガティブ乳癌細胞株(MDA-MB-231)をレトロウイルスで形質導入した。
配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、定量的PCR及びHA-tag抗体を用いたウエスタンブロット分析により、MDA-MB-231細胞において確認された(図20A及びB)。
配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、ヒトトリプルネガティブ乳癌細胞株における間葉性同一性の喪失を誘発する。注目すべきことに、MDA-MB-231におけるEMTレギュレーターSLUG、ZEB1、ZEB2及びVIMENTINの減少に続いて、E-カドヘリン及びサイトケラチン-5等の上皮マーカーの増加が続く(図21)。これは、上皮表現型の促進における配列番号:2のマイクロペプチドの役割をさらに検証する。
これらの結果と一致して、配列番号:2のマイクロペプチドの過剰発現は、MDA-MB-231乳癌細胞株の浸潤アッセイにおける浸潤能力の低下につながり(図22)、全体として、配列番号:2のマイクロペプチドがEMTネガティブレギュレーターとして機能し、浸潤、転移、化学療法薬への耐性等の癌の悪性特徴を軽減させる可能性があることを示している。
実施例9:配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現は細胞死を誘発する。
配列番号:3のマイクロペプチドをコードするORFをpMSCVレトロウイルスベクターのHAエピトープタグとインフレームでクローニングした。ウエスタンブロット及びqPCR分析により、レトロウイルス形質導入後に配列番号:3のマイクロペプチドが連続的に発現され、該タンパク質の生成物が安定であることが実証された(図23A及び23B)。
重要なことに、配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現は、癌細胞株(A549、ヒト肺癌及びHCT116、ヒト結腸直腸癌)において大量の細胞死を誘発する(図23C)。
実施例10:配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現は、p21とプロアポトーシスプログラムを誘発する。
CDK阻害剤(及び腫瘍抑制因子)p21の発現に対する配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現の影響について試験した。興味深いことに、配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現により、A459細胞及びHCT116細胞において実質的なp21増加が生じた(図24A)。これは、図24Bに示されるように、配列番号:3のマイクロペプチド過剰発現時の増加したp21タンパク質レベルと相関した。
配列番号:3のマイクロペプチドによる細胞死の誘導及びアポトーシスにおけるp21の役割を考慮して、本発明の著者らは、アポトーシス関連遺伝子の発現について試験した。配列番号:3のマイクロペプチドの過剰発現は、HCT116結腸直腸癌細胞株においてプロアポトーシス遺伝子BAX及びBAKの増加と抗アポトーシス遺伝子BCL-2の減少を誘導する(図24C)。
実施例11:配列番号:3は、遺伝毒性ストレスによりp53依存的にアップレギュレートされる。
前述のように、p53は重要な腫瘍抑制因子である。腫瘍抑制におけるマイクロペプチド配列番号:3の潜在的な役割を考慮して、本発明の著者らは、ストレス及びp53タンパク質による配列番号:3の潜在的な調節について試験した。本発明の著者らは、同質細胞株HCT116及びHCT116 p53ノックアウトをp53活性化因子Nutlin3a(10μM)及び遺伝毒性化学療法剤ドキソルビシン(1μM)で処理した。興味深いことに、配列番号:3はHCT116において遺伝毒性ストレスにより増加したが、HCT116 p53 KOにおいては該増加が損なわれた(図25)。これらの結果は、配列番号:3がp53依存的にストレス/損傷によって調節され、それによってp53の変異による不活性化を伴うすべての癌においておそらく減少されることを示唆している。従って、その腫瘍抑制活性はp53機能と関連している可能性があり、該マイクロペプチドの癌治療薬としての使用をサポートしている。

Claims (18)

  1. 配列番号:1、2および3またはそれらの機能的に同等な変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、マイクロペプチド。
  2. 前記機能的に同等な変異体が、配列番号:1、2または3の配列と少なくとも80%の同一性を示す配列を有する、請求項1に記載のマイクロペプチド。
  3. 請求項1および2に記載のマイクロペプチドに特異的に結合できる、抗体。
  4. 請求項1または2に記載のマイクロペプチドをコードする、ポリヌクレオチドであって、ただし、該ポリヌクレオチドが、2017年9月10日付バージョンに対応するNM_203306.2、2017年8月29日付バージョンに対応するNR_027064、及び2017年4月23日付バージョンに対応するNR_040248のNCBI受託番号を有する配列からなるポリヌクレオチドではない、ポリヌクレオチド。
  5. 請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
  6. 請求項4に記載のポリヌクレオチドまたは請求項5に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
  7. 請求項1または2に記載のマイクロペプチド、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載の発現ベクターまたは請求項6に記載の宿主細胞を含む、組成物。
  8. 請求項7に記載の組成物及び薬剤的に許容される担体を含む、医薬組成物。
  9. 医療に使用するための請求項1または2に記載のマイクロペプチド、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載の発現ベクター、請求項6に記載の宿主細胞、請求項7に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 癌の治療に使用するための請求項1または2に記載のマイクロペプチド、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載の発現ベクター、請求項6に記載の宿主細胞、請求項7に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物。
  11. 前記癌が、原発性腫瘍または癌転移である、請求項10に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  12. 前記マイクロペプチドが、配列番号:1または3の配列のマイクロペプチドであり、また前記癌が、p53遺伝子において不活性化変異を含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  13. 前記癌が、細胞腫である、請求項10に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  14. 前記細胞腫が、扁平上皮癌、腺癌、移行上皮癌または基底細胞癌から選択される、請求項13に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  15. 前記細胞腫が、肺癌腫、乳癌、膀胱癌、前立腺癌、結腸直腸癌、皮膚癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肝細胞癌または腎細胞癌から選択される、請求項13または14に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  16. 前記マイクロペプチドが、線維症の治療に使用するための配列番号:2の配列のマイクロペプチドである、請求項1または2に記載のマイクロペプチド、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載の発現ベクター、請求項6に記載の宿主細胞、請求項7に記載の組成物、または請求項8に記載の医薬組成物。
  17. 前記線維症が、臓器または組織における機能の喪失、ならびに手術および/または整容手術による合併症に関連している、請求項16に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。
  18. 前記線維症が、肺線維症、肝線維症(肝硬変)、腎線維症、角膜線維症、皮膚および腹膜手術に関連する線維症、火傷に関連する線維症、骨関節線維症またはケロイドから選択される、請求項16または17に記載の使用のためのマイクロペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、組成物または医薬組成物。

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