JP2021534826A - がんの処置のためのペプチド治療薬およびその使用 - Google Patents

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Abstract

本開示は、BI−1調節ペプチドおよび、有効量のBI−1調節ペプチドを投与することにより、対象におけるがんを処置するための方法を提供する。本明細書に開示されるのは、BI−1調節ドメイン(modulating domain)を含むBaxインヒビター−1(BI−1)調節ペプチドである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、哺乳動物細胞の形質膜を横切る能力をBI−1調節ペプチドに対して付与することができる標的化ドメインを含む。これらのBI−1調節ペプチドは、がんを処置するために使用することができる。

Description

1.関連出願の相互参照
本願は、2018年8月27日に出願された米国仮出願第62/723,428号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
2.配列表
本願は、EFS−Webを通じて提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。20XX年XX月に作成された前記ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtという名前であり、サイズはX,XXX,XXXバイトである。
3.背景
Baxインヒビター−1(Bax−1)は、細胞内で多様な役割を果たしており、アポトーシス、小胞体ストレス、活性酸素種(ROS)の産生、アクチン細胞骨格の動態および細胞質ゾルのカルシウムレベルを調節することが示されている(Robinsonら、Oncogene 30:2391−2400,2011)。BI−1の発現はヒトのがんの種類によって大きく異なり、このタンパク質は乳がん、神経膠腫、前立腺がん、子宮がんおよび卵巣がんでは高度に発現されているが、胃がん、結腸がん、腎臓がん、肺がんおよび直腸がんでは下方調節されている(Grzmilら、J Pathol 208:340−349,2006;Schmitsら、Int J Cancer 98:73−77,2002;およびdel Carmen Garcia Molina Wolgienら、Eur J Gynaecol Oncol 26:501−504,2005)。
乳がんおよび前立腺がん細胞中のBI−1発現をノックダウンするためにRNA干渉(RNAi)を使用する以前の研究は、すべての細胞株ではないが、一部の細胞株において自発的アポトーシスをもたらし、BI−1が一部のがんサブタイプにおけるがん生存に不可欠であることを示している(Grzmilら、J Pathol 208:340−349,2006;Grzmilら、Am J Pathol 163:543−552,2003;Limaら、Cancer Gene Ther 11:309−316,2004)。RNAiによるBI−1ノックダウン後に自発的アポトーシスを起こさなかった細胞は、細胞ストレスの徴候を示し、アポトーシス誘導に対して高度に感作された。したがって、BI−1は、他に類を見ないが未だ試験が為されていない、がん治療薬の標的候補として提示される。
Robinsonら、Oncogene 30:2391−2400,2011 Grzmilら、J Pathol 208:340−349,2006 Schmitsら、Int J Cancer 98:73−77,2002
4.概要
本明細書に開示されるのは、BI−1調節ドメイン(modulating domain)を含むBaxインヒビター−1(BI−1)調節ペプチドである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、哺乳動物細胞の形質膜を横切る能力をBI−1調節ペプチドに対して付与することができる標的化ドメインを含む。これらのBI−1調節ペプチドは、がんを処置するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号22の配列もしくは配列番号22の配列と1つ以下のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチドセグメントおよび/または配列番号23の配列もしくは配列番号23の配列と1つ以下のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号22および/または配列番号23のアミノ酸を有するペプチドセグメントを含む。特定の実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号22の配列を有するペプチドセグメントおよび配列番号23の配列を有するペプチドセグメントを含む。特定の実施形態において、配列番号22の配列を有するペプチドセグメントは、配列番号23の配列を有するセグメントに対してアミノ末端側にある。特定の実施形態において、配列番号22および配列番号23の配列は、セグメント内で重複する。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号16の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号17の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号18の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号19の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号20の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号21の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号24の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号25の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号26の配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号27の配列を有する。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、BI−1タンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列内のBI−1タンパク質内の部位に結合することができる。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドを、リポソームに結びつけることができる。いくつかの実施形態において、ペプチドを、ナノ粒子にコンジュゲートすることができる。
いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、細胞透過性ペプチド(CPP)である。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、抗体または抗体の断片である。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、腫瘍関連抗原を結合することができる。特定の実施形態において、標的化ドメインは、BI−1調節ペプチドのアミノ末端にある。特定の実施形態において、標的化ドメインは、ペプチドのカルボキシ末端にある。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、5〜400アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、8〜40アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、15〜45アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、22〜50アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、30〜60アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、45〜75アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、6〜100アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、80〜110アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、280〜320アミノ酸の長さである。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、配列番号19〜23および48〜87のいずれか1つの配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、配列番号19の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列番号20の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列番号23の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、化学修飾は、リン酸化、グリコシル化および/または脂質化である。いくつかの実施形態において、化学修飾は、脂肪酸の共有結合である。いくつかの実施形態において、化学修飾は、ペプチドの末端アミン基の化学的封鎖である。いくつかの実施形態において、化学修飾は、ペプチドの末端カルボキシ基の化学的封鎖である。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、Fcポリペプチドまたはドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、非ペプチドリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態において、ペプチドを、1またはそれを超えるPEG分子にコンジュゲートする。
特定の実施形態において、BI−1調節ペプチドは、哺乳動物細胞の形質膜を通過することができる。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞はヒト細胞である。
別の態様において、本明細書で提供されるのは、BI−1調節ペプチドと薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、非経口投与に適している。いくつかの実施形態において、医薬組成物は静脈内投与に適している。いくつかの実施形態において、医薬組成物は皮下投与に適している。
いくつかの実施形態において、医薬組成物中の有効成分の濃度は、100nMまたはそれを超える。
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、単回投与プレフィルドシリンジ内にある。
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、BI−1調節ペプチドの溶解度を増加させるのに適した薬学的に許容され得る担体を含む。
別の態様において、本明細書では、患者中の増殖性疾患を処置する方法であって、有効量のBI−1調節ペプチドまたはBI−1調節ペプチドを含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、増殖性疾患はがんである。いくつかの実施形態において、がんは、乳がん、卵巣がん、肺がん、子宮がんおよび結腸がんのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、がんは乳がんである。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドまたはBI−1調節ペプチドを含む医薬組成物を投与することは、対象の細胞中の細胞質ゾルのカルシウムレベルをもたらす。いくつかの実施形態において、ペプチドまたはペプチドを含む医薬組成物を投与することは、対象の細胞中のHイオンの細胞質ゾル濃度の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、投与は、対象における新生物性細胞におけるミトコンドリア膜の透過性の増加をもたらす。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドまたはBI−1調節ペプチドを含む医薬組成物を投与することは、対象における新生物性細胞の死を誘導する。いくつかの実施形態において、投与は、対象における新生物性細胞のアポトーシスおよび/またはパラトーシス(paraptosis)を誘導する。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドまたはBI−1調節ペプチドを含む医薬組成物は、静脈内投与によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドまたは医薬組成物は、皮下投与によって投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドまたは医薬組成物は、くも膜下腔内または大槽内投与によって投与される。
いくつかの実施形態において、この方法は、第2の有効量のさらなる処置を投与することをさらに含む。特定の実施形態において、さらなる処置は、化学療法剤、放射線処置または抗体もしくは抗体断片を含む。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドまたはBI−1調節を含む医薬組成物が投与される対象は、哺乳動物である。特定の実施形態において、対象はヒトである。
本発明のこれらおよびその他の特徴、態様および利点は、以下の記載および添付の図面に関連してさらによく理解される。
図1A、図1B、図1C、図1Dおよび図1Eは、MQ001およびMQ002がBI−1と相互作用することを示している。図1Aは、HAタグを付けたMQ001およびMQ002のBI−1との共免疫沈降後のイムノブロットの結果を示している。図1Bは、BI−1とMQ001との相互作用およびBI−1とMQ002との相互作用を確認する酵母ツーハイブリッド分析の結果を示す。図1Cは、BI−1のN末端とMQ001との相互作用およびBI−1のN末端とMQ002との相互作用を確認する酵母ツーハイブリッド分析の結果を示す。図1Dは、MQ001とBI−1との相互作用およびMQ001とBI−1のN末端40アミノ酸との相互作用を示すβ−ガラクトシダーゼアッセイの結果を表す。図1Eは、HAタグを付けたMQ001またはHAタグを付けたMQ002のいずれかおよびMycタグを付けたBI−1で共形質移入されたHeLa細胞の免疫蛍光画像を表し、MQ001とBI−1の共局在およびMQ002とBI−1の共局在を示している。 同上。
図2A、図2Bおよび図2Cは、MQ001およびMQ002がヒト乳がん細胞において細胞死を選択的に誘導することを示している。図2Aのグラフは、正常な乳房組織に由来するMCF−10F細胞と比較した、MQ001およびMQ002で処理したMCF−7乳がん細胞において凝縮核および外部アネキシン−vを有する細胞のパーセンテージを示す。図2Bは、MQ001およびGFP−CPP(対照)で処理したMCF−7細胞のフローサイトメトリー分析を示す。図2Cは、MQ001およびMQ002で処理したMCF−7およびMCF−10F細胞に対するMTT細胞生存率アッセイの結果を表す。 同上。
図3A、図3Bおよび図3Cは、MQ001およびMQ002がいくつかの乳がんサブタイプにおいて細胞死を誘導し、BI−1が乳がん細胞に対するペプチドの治療効果にとって重要であることを示すデータを表す。図3Aは、MQ001およびMQ002での処理に応答して試験されたすべての乳がん細胞株において凝縮核の増加が見られたことを示すグラフを表す。図3Bは、試験された7つの乳がん細胞株が3つの異なる乳がんサブタイプを代表することを示している。図3Cは、BI−1のsiRNAノックダウンの結果を示しており、MQ001およびMQ002が、BI−1の不存在下では、乳がん細胞における細胞死を誘導しないことを示している。 同上。
図4は、MQ001およびMQ002での処理に応答した7つの乳がん細胞株における外部化されたアネキシン−vを有する細胞のパーセンテージを示すグラフを表す。
図5は、定量された細胞死データがMQ70Cで処理したMCF−7細胞の位相差顕微鏡法による画像と相関することを示し、MQ70Cが用量依存的に細胞死を誘導することを示している。
図6Aおよび図6Bは、様々なBI−1調節ペプチドでの処理後におけるMCF−7細胞の位相差顕微鏡法による画像を表し、試験されたペプチドの全てがMCF−7細胞において細胞死を誘導することを示している。 同上。
図7A、図7B、図7C、図7D、図7E、図7F、図7G、図7Hおよび図7Iは、BI−1調節ペプチドMQ001およびMQ002が乳がん以外のがん細胞において細胞死を誘導することを実証する結果を表す。図7Aは、MQ001およびMQ002での処理後に凝縮核を有する肺がんおよび乳がん細胞のパーセンテージを示している。図7Bおよび図7Cは、BI−1調節ペプチドMQ30Cで処理した肺がんおよび結腸がん細胞の経時的位相差顕微鏡法による画像を示す。図7Dは、MQ16での処置後の卵巣がん細胞におけるリソソームおよびミトコンドリア膜を評価するために染色された免疫蛍光画像を示す。図7Eは、4つの卵巣がん細胞株のそれぞれにおけるMQ16処理の用量反応曲線を示している。図7Fは、様々なBI−1調節ペプチドでの処置後の卵巣がん細胞におけるカルシウム流出を示している。図7Gは、MQ16での処理後の子宮がん細胞におけるリソソームの形成とミトコンドリア膜の透過性を示す免疫蛍光画像を表す。図7Hは、5つの子宮がん細胞株のそれぞれにおけるMQ16処理の用量反応曲線を示す。図7Iは、様々なBI−1調節ペプチドでの処理に応答した子宮がん細胞におけるカルシウム流出を示している。 同上。 同上。 同上。 同上。
図8Aおよび図8Bは、MQ001、MQ002ならびにアポトーシスの内因性および外因性誘導物質での処理後の、切断されたカスパーゼ3を有するMCF−7細胞のパーセンテージを示す。図8Aに示されている結果は、MQ001およびMQ002が、アポトーシスの内因性誘導物質にさらされたMCF−7細胞に対して抗アポトーシス効果を有するが、アポトーシスの外因性誘導物質に曝露された細胞に対して同じ保護効果を有さないことを実証する。図8Bに示されている結果は、BI−1発現がMQ001およびMQ002の抗アポトーシス効果に必要であることをさらに実証する。
図9Aおよび図9Bは、MQ001およびMQ002での処理後の、凝縮核および外部アネキシン−vを有する非がん性細胞のパーセンテージを示す。
図10A、図10Bおよび図10Cは、MQ001またはMQ002での処理後の細胞における(図10A)、BI−1を過剰発現している細胞(図10B)、および様々なBI−1調節ペプチドでの処理後の細胞(図10C)における細胞質カルシウム濃度の相対的変化を示す。
図11Aおよび図11Bは、MQ001およびMQ002での処理後の細胞質ゾルのROSレベルの変化(図11A)、ならびにMQ16での処理後の細胞形態および染色の変化(図11B)を示す。 同上。
図12は、HAタグを付けたMQ001またはHAタグを付けたMQ002で処理され、生きたミトコンドリアについて染色されたMCF−10FおよびMCF−7細胞の免疫蛍光画像を表す。
図13A、図13Bおよび図13Cは、MQ001およびMQ002で処理した細胞の免疫蛍光および位相状態(phase−state)顕微鏡法による画像を表し、処理後のER形態の変化(図13A)および処理後のアクチン局在化の破壊(図13Bおよび図13C)を示している。
図14A、図14Bおよび図14Cは、ER(図14A)、自食作用タンパク質(図14B)およびリソソーム(図14C)に対するマーカーで染色された細胞の免疫蛍光顕微鏡法による画像を表す。
図15A、図15B、図15Cおよび図15Dは、MQ001およびMQ002での処理後のMCF−10FおよびMCF−7細胞中でのホスホ−JNKおよびホスホ−ERK発現を評価する免疫ブロット(図15A)、BCL−2ファミリーメンバーおよびUPRによって誘導された転写因子CHOPのRT−PCR結果を評価するゲル電気泳動(図15B)、MQ001およびMQ002での処理後のMCF−10FおよびMCF−7細胞中におけるホスホ−Bcl−2発現を評価するイムノブロット(図15C)、ならびに対照と比較した、MQ001またはMQ002での処理後に核凝縮を有する細胞の数(黒い棒)の上に重ね合わされたER破壊(白い棒)の定量(図15D)を示す。 同上。
図16Aおよび図16Bは、MQ001での処置後のヒト乳がんのマウスモデルにおける腫瘍体積(図16A)および体重(図16B)の変化を示すグラフを表す。
図17は、ヒト乳がんのマウスモデルにおいてMQ001の毒性を評価するH&E染色の結果を示している。
図18Aおよび図18Bは、血漿(図18A)およびミクロソーム(図18B)におけるMQ001の安定性評価の結果を示す。
6.発明の詳細な説明
定義
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有する。
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体を指す。特に明記しない限り、「アミノ酸」という用語は、それぞれの構造がそのような立体異性体形態を許容すれば、DおよびLの両方の立体異性体を含む。
天然アミノ酸には、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(Ser
またはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)およびバリン(ValまたはV)が含まれる。
非天然アミノ酸(unnatural amino acid)または非天然のアミノ酸(non−natural amino acid)には、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、ナフチルアラニン(「naph」)、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸(3−aminoisbutyric acid)、2−アミノピメリン酸、第三級ブチルグリシン(「tBuG」)、2,4−ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン(「hPro」または「homoP」)、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン(「3Hyp」)、4−ヒドロキシプロリン(「4Hyp」)、イソデスモシン、アロイソロイシン、N−メチルアラニン(「MeAla」または「Nime」)、N−メチルグリシンを含むNアルキルグリシン(「NAG」)、N−メチルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシンを含むN−アルキルペンチルグリシン(「NAPG」)、N−メチルバリン、ナフチルアラニン、ノルバリン(「Norval」)、ノルロイシン(「Norleu」)、オクチルグリシン(「OctG」)、オルニチン(「Orn」)、ペンチルグリシン(「pG」または「PGly」)、ピペコリン酸、チオプロリン(「ThioP」または「tPro」)、ホモリジン(「hLys」)およびホモアルギニン(「hArg」)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび非ヒトの両方を含み、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマおよびブタを含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸のポリマーを指す。ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体および/または修飾されたアミノ酸を含むことができる。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の一部もしくは断片または非天然(合成)タンパク質もしくはポリペプチドであり得る。
本明細書で使用される場合、「変異体ペプチド」という用語は、「野生型」配列と呼ばれる、自然界に存在する最も一般的なバリアントとは異なるアミノ酸配列を有する天然に存在するペプチドのバリアントを指す。変異体ペプチドは、野生型ペプチドと比較して、1またはそれを超えるアミノ酸の置換、欠失または挿入を含むことができる。
本明細書で使用される場合、「保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸の、サイズまたは電荷などの同様の化学的性質を有する別のアミノ酸による置換を指す。本開示において、以下の8つの群のそれぞれは、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)およびグリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)およびグルタミン(Q);
4)アルギニン(R)およびリジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)およびバリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)およびトリプトファン(W);
7)セリン(S)およびスレオニン(T);ならびに
8)システイン(C)およびメチオニン(M)。
天然に存在する残基は、共通する側鎖の特性に基づいてクラスに分類することができる:例えば、極性陽性(ヒスチジン(H)、リジン(K)およびアルギニン(R));極性陰性(アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E));極性中性(セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q));非極性脂肪族(アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M));非極性芳香族(フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W));プロリンおよびグリシン;ならびにシステイン。本明細書で使用される場合、「半保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸の、共通の側鎖特性を有する別のアミノ酸による置換を指す。
いくつかの実施形態において、別段の指定がなければ、保存的または半保存的アミノ酸置換は、天然残基と類似の化学的性質を有する天然に存在しないアミノ酸残基も包含することができる。これらの非天然の残基は、典型的には、生体系内での合成によってではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる。これらには、ペプチド模倣物ならびにアミノ酸部分のその他の逆転された(reversed)または反転された(inverted)形態が含まれるが、これらに限定されない。本明細書の実施形態には、天然アミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体が含まれる。例えば、メチオニンを置換するためにノルロイシンを使用することができる。
非保存的な置換は、あるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーに交換することを含み得る。
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)が同じ配列組成のモノマーサブユニットを有する程度を指す。「配列類似性」という用語は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)が、保存的および/または半保存的アミノ酸置換によってのみ異なる程度を指す。「パーセント配列同一性」(または「パーセント配列類似性」)は、1)比較のウィンドウ(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、指定されたウィンドウなど)にわたって2つの最適に整列された配列を比較する、(2)同一の(または類似の)モノマーを含有する(例えば、同じアミノ酸が両配列中に生じる、類似のアミノ酸が両配列中に生じる)位置の数を決定して、一致する位置の数を得る、(3)一致する位置の数を比較ウィンドウ(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、指定されたウィンドウ)内の位置の総数で割る、(4)結果に100を掛けて、パーセント配列同一性またはパーセント配列類似性を得ることによって計算される。例えば、ペプチドAとBがともに20アミノ酸の長さであり、1つの位置を除いてすべての位置に同じアミノ酸を有する場合、ペプチドAとペプチドBは95%の配列同一性を有する。非同一位置におけるアミノ酸が同じ生物物理学的特性を共有する場合(たとえば、両方が酸性である場合)、ペプチドAとペプチドBは100%の配列類似性を有する。別の例として、ペプチドCが20アミノ酸の長さで、ペプチドDが15アミノ酸の長さであり、ペプチドD中の15アミノ酸のうち14アミノ酸がペプチドCの一部のアミノ酸と同一である場合、ペプチドCおよびDは70%の配列同一性を有するが、ペプチドDはペプチドCの最適な比較ウィンドウに対して93.3%の配列同一性を有する。本明細書において「パーセント配列同一性」(またはパーセント配列類似性)を計算する目的で、整列された配列中の任意のギャップは、その位置でのミスマッチとして扱われる。
配列比較のために、通例、1つの配列が参照配列として機能し、試験配列が参照配列に対して比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験および参照配列がコンピュータ中に入力され、必要であれば、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較した試験配列(複数可)に対するパーセント配列同一性を計算する。
本明細書において、パーセント同一性および配列類似性は、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムを使用して実施される。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に入手可能である。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよびヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽、魚、甲殻類など)を含むがこれらに限定されない任意の動物を広く指す。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒト対象を指す。
別段の明記がない限り、「BI−1調節ペプチド」は、Baxインヒビター−1タンパク質(BI−1)と相互作用するペプチドを指す。BI−1調節ペプチドは、BI−1活性を阻害または刺激し得る。一定のBI−1調節ペプチドは、いくつかの細胞において特定の条件下でBI−1を阻害し得、他の細胞においてはBI−1を刺激し得る。BI−1調節ペプチドは、1またはそれを超えるアミノ酸残基を介してBI−1に直接結合し得る。BI−1調節ペプチドは、1またはそれを超えるシグナル伝達分子を介してなど、間接的にBI−1と相互作用し、BI−1を調節し得る。
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な組成物(例えば、合成ペプチド)の量を指す。有効量は、1またはそれを超える投与、適用または投与量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図するものではない。
「治療有効量」という用語は、疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防は治療と考えることができるので、治療有効量は、「予防有効量」であり得る。
本明細書で使用される場合、「投与」および「投与する」という用語は、対象またはインビボ、インビトロまたはエクスビボ細胞、組織および臓器に薬物、プロドラッグ、または他の薬剤、または治療的処置(例えば、ペプチド)を与える行為を指す。ヒトの身体への例示的な投与経路は、脳または脊髄のくも膜下の空間(くも膜下腔内)、目(眼)、口(経口)、皮膚(局所または経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入剤)、口腔粘膜(頬側または舌側)、耳、直腸、膣、注射による(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)などであり得る。
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、有益なまたは意図された臨床結果を得るためのアプローチを意味する。有益なまたは意図された臨床結果には、症状の緩和、疾患の重症度の軽減、疾患もしくは状態の根本的な原因の阻害、非進行状態での疾患の安定化、疾患の進行の遅延および/または病状の改善もしくは緩和が含まれ得る。
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、有効成分(例えば、単離されたBI−1調節ペプチド)の、不活性または活性な担体との組み合わせを指し、組成物を、インビトロ、インビボまたはエクスビボでの治療または診断的使用に特に適したものにする。
本明細書で使用される「薬学的に許容され得る」または「薬理学的に許容され得る」という用語は、対象に投与されたときに、有害反応、例えば、毒性、アレルギー性および免疫学的反応を実質的に生じない組成物を指す。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、リン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョンなど)、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性溶媒、およびこれらの混合物、ならびに様々なタイプの湿潤剤、可溶化剤、酸化防止剤、増量剤、アルブミンなどのタンパク質担体、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張剤および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)などを含むがこれらに限定されない標準的な薬学的担体のいずれをも指す。組成物は、安定剤および防腐剤も含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,21th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.(2005)を参照されたい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に反対の意味を指示しなければ、複数表記を含むことに留意しなければならない。
6.1.BI−1調節ペプチド
第1の態様において、本明細書に開示されるのは、単離されたBI−1調節ペプチドである。
様々な実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、320アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、340アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、320アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、310アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、300アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、250アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、200アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、175アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、150アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、125アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、100アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、80アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、70アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、60アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、50アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、40アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、30アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、25アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、20アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、15アミノ酸以下の長さである。特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、10アミノ酸以下の長さである。
単離されたBI−1調節ペプチドは、BI−1調節ドメインを含む。
特定の実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、標的化ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、Fcポリペプチドまたはドメインをさらに含む。
6.1.1.BI−1調節ドメイン
特定の実施形態において、BI−1調節ペプチドのBI−1調節ドメインは、BI−1に結合する1またはそれを超える結合部位を含む。1またはそれを超える結合部位のそれぞれは、1またはそれを超えるアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、1またはそれを超える結合部位の少なくとも1つは、隣接する位置に2またはそれを超えるアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、1またはそれを超える結合部位の少なくとも1つは、隣接しない位置に2またはそれを超えるアミノ酸残基を含む。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、異なる結合親和性を有する2またはそれを超えるBI−1結合部位を含む。
いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号20に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号21に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号22に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、BI−1調節ドメインは、配列番号23に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
6.1.2.標的化ドメイン
いくつかの実施形態において、BI−1調節ペプチドは、哺乳動物細胞の形質膜を横切ってBI−1調節ペプチドを輸送することができる標的化ドメインをさらに含む。
いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、細胞透過性ペプチドである。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、配列番号104に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、抗体または抗体の断片を含む。
いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、BI−1調節ペプチドのN末端にある。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、BI−1調節ペプチドのC末端にある。
6.1.3.化学修飾
特定の実施形態において、BI−1調節ペプチドは、少なくとも1つの化学修飾を含む。
いくつかの実施形態において、化学修飾は、結合送達媒体(coupled delivery vehicle)である。いくつかの実施形態において、結合送達媒体はリポソームである。いくつかの実施形態において、結合送達媒体はナノ粒子である。
いくつかの実施形態において、化学修飾は非共有結合性修飾である。特定の実施形態において、化学修飾は共有結合されている。様々な実施形態において、化学修飾は、アミド化、アセチル化、グリコシル化、脂質化、リン酸化、ポリエチレングリコール(PEG)修飾または硫酸化である。
いくつかの実施形態において、化学修飾は、脂肪酸の共有結合である。特定の実施形態において、脂肪酸は飽和である。特定の実施形態において、脂肪酸は不飽和である。
いくつかの実施形態において、化学修飾は、アミノ酸側鎖、末端アミン基または末端カルボキシ基に1またはそれを超える修飾を含む。いくつかの実施形態において、化学修飾は、末端アミン基の化学的封鎖である。いくつかの実施形態において、化学修飾は、末端カルボキシ基の化学的封鎖である。
6.1.4.変異
特定の実施形態において、BI−1調節ペプチドは、少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態において、変異は、BI−1を結合するためのBI−1調節ペプチドの親和性を増加させる。いくつかの実施形態において、変異は、BI−1を結合するためのBI−1調節ペプチドの親和性を減少させる。いくつかの実施形態において、変異は、ペプチドの治療効果を改善する。
いくつかの実施形態において、変異はアミノ酸置換である。いくつかの実施形態において、変異はアミノ酸挿入である。いくつかの実施形態において、変異はアミノ酸欠失である。
いくつかの実施形態において、元のアミノ酸は、天然のアミノ酸によって置換されている。いくつかの実施形態において、元のアミノ酸は、非天然アミノ酸によって置換されている。いくつかの実施形態において、元のアミノ酸は、化学的に修飾されたアミノ酸によって置換されている。
様々な実施形態において、アミノ酸置換は、保存的または半保存的置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、得られるペプチドの活性および/または構造に対して最小限の影響を有する。
様々な実施形態において、アミノ酸置換は非保存的置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、ペプチド特性の有意な変化を生じさせる。特定の実施形態において、親水性残基は、疎水性残基によって置換される。特定の他の実施形態において、疎水性残基は、親水性残基によって置換される。特定の実施形態において、かさ高い側鎖を有する残基は、側鎖を有さない残基によって置換される。特定の他の実施形態において、側基を有さない残基は、かさ高い側鎖を有する残基によって置換される。
6.2.BI−1調節ペプチドの調製
単離されたBI−1調節ペプチドを作製するための方法も本明細書に開示される。
6.2.1.組換え合成
特定の実施形態において、本明細書に開示される単離されたペプチドは、例えば、細菌、酵母または真核生物の発現系を使用して、組換え的に産生される。
組換え産生のために、適切な発現媒体、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳のために必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合には、複製および翻訳のために必要なエレメントを含有するベクター中に、単一またはマルチドメインペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が挿入される。次いで、発現媒体が、単一またはマルチドメインペプチドを発現する適切な標的細胞中に形質移入される。次いで、使用される発現系に応じて、発現されたペプチドは、当技術分野で十分に確立された手順によって単離される。組換えタンパク質およびペプチド産生のための方法は、当技術分野において周知である。
産生の効率を増加させるために、ポリヌクレオチドは、酵素切断部位によって分離された単一またはマルチドメインペプチドの複数のユニットをコードするように設計することができる。得られたポリペプチドは、ペプチドユニットを回収するために(例えば、適切な酵素で処理することによって)切断することができる。これにより、単一のプロモーターによって駆動されるペプチドの収量を増加させることができる。いくつかの実施形態において、各コード領域がキャップ非依存性翻訳制御配列、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)に機能的に連結された、複数のペプチドをコードする単一のmRNAが転写されるように、ポリシストロン性ポリヌクレオチドを設計することができる。適切なウイルス発現系において使用される場合、mRNAによってコードされる各ペプチドの翻訳は、例えばIRESによって、転写物の内部で方向づけられる。したがって、ポリシストロン性構築物は、単一の大きなポリシストロン性mRNAの転写を指示し、次いで、このポリシストロン性mRNAが複数の個々のペプチドの翻訳を指示する。このアプローチは、ポリペプチドの生成と酵素的プロセッシングを取り除き、単一のプロモーターによって駆動されるペプチドの収量を有意に増加させることができる。
本明細書に記載のペプチドを発現させるために、様々な宿主発現ベクター系を利用することができる。これらには、適切なコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNAもしくはプラスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物;適切なコード配列を含有する組換え酵母もしくは真菌発現ベクターで形質転換させた酵母もしくは糸状菌;適切なコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)またはタバコモザイクウイルス(TMV))に感染させた、もしくは適切なコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
発現系の発現エレメントは、その強度と特異性が異なる。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む、多数の適切な転写および翻訳エレメントのいずれをも発現ベクター中で使用することができる。例えば、細菌系でクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターを使用することができる。昆虫細胞系中でクローニングする場合、バキュロウイルス多面体プロモーターなどのプロモーターを使用できる。植物細胞系中でクローニングする場合、植物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、RUBISCOの小サブユニットに対するプロモーター、クロロフィルa/b結合タンパク質に対するプロモーター)または植物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、CaMVの35S RNAプロモーター、TMVのコートタンパク質プロモーター)を使用することができる。哺乳動物細胞系中でクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を使用することができる。
6.2.2.化学合成
いくつかの実施形態において、本開示の単離されたペプチドは、化学合成によって作製される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、液相ペプチド合成技術を使用して作製される。いくつかの他の実施形態において、ペプチドは、固相ペプチド合成技術を使用して作製される。
DまたはL立体配置のいずれかを有するペプチドは、当技術分野で周知の自動化された固相手順によって合成することができる。「Boc」または「Fmoc」手順を利用することにより、適切な合成を行うことができる。固相合成のための技術および手順は、当技術分野において周知である。単一ドメインおよびマルチドメインペプチドは、例えば、Liuら、Tetrahedron Lett.37:933−936,1996;Bacaら、J.Am.Chem.Soc.117:1881−1887,1995;Tam ら、Int.J.Peptide Protein Res.45:209−216,1995;Schnolzer and Kent,Science 256:221−225,1992;Liu and Tam,J.Am.Chem.Soc.116:4149−4153,1994;Liu and Tam,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6584−6588,1994;およびYamashiro and Li,Int.J.Peptide Protein Res.31:322−334,1988)に記載されているように、セグメント縮合によって調製することもできる。これは、特にグリシン含有ペプチドに当てはまる。本開示の単一ドメインおよびマルチドメインペプチドを合成するために有用な他の方法は、Nakagawaら、J.Am.Chem.Soc.107:7087−7092,1985に記載されている。
ペプチドおよびペプチド類似体合成の当業者に公知のさらなる例示的な技術は、Bodanszky,M.and Bodanszky,A.,The Practice of Peptide Synthesis,Springer Verlag,New York,1994;およびJones,J.,Amino Acid and Peptide Synthesis,2nd ed.,Oxford University Press,2002によって教示されている。BodanszkyとJonesの参考文献は、アミノ酸およびアミノ酸誘導体を活性化し、カップリングするためのパラメーターおよび技術を詳述している。さらに、これらの参考文献は、様々な有用な官能基および保護基を選択、使用および除去する方法を教示する。
D−またはL−立体配置のいずれかを有するペプチドは、合成ペプチドの商業的供給業者から購入することもできる。このような供給業者には、例えば、Advanced ChemTech(Louisville,KY),Applied Biosystems(Foster City,CA),Bachem(Torrance,CA),Anaspec(San Jose,CA)およびCell Essentials(Boston,MA)が含まれる。
6.2.3.精製
本開示のペプチドまたはペプチド類似体は、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動など、当技術分野で周知の多くの技術によって精製することができる。特定の単一ドメインまたはマルチドメインペプチドを精製するために使用される実際の条件は、部分的には、合成戦略に、および正味電荷、疎水性、親水性などの要因に依存し、当業者には自明である。
様々な実施形態において、単離されたBI−1調節ペプチドは、精製タグをさらに含む。いくつかの実施形態において、精製タグは、ポリヒスチジンタグ、mycタグまたはHAタグである。
6.3.医薬組成物
有効成分としての本明細書に記載の1またはそれを超える単離されたBI−1調節ペプチドと薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物も本明細書において提供される。これらの組成物は、1またはそれを超えるBI−1調節ペプチドに加えて、薬学的に許容され得る、賦形剤、担体、バッファー、安定剤、増量剤または当業者に周知の他の賦形剤を含む。このような材料は無毒であるべきであり、有効成分の有効性を妨げるべきではない。医薬組成物内の担体または他の材料の正確な性質は、典型的には、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内経路に依存する。BI−1調節ペプチドは、例えば、インスリン、GLP−1アゴニストならびにFDA承認治療用ペプチドおよびタンパク質のTHPdbデータベース(crdd.osdd.net/raghava/thpdb/)中に開示されている全ての承認されたペプチドなどの治療用ペプチドを製剤化するために現在使用されている任意の製法を使用して製剤化することができる。
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であり得る。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含み得る。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水溶液、デキストロースもしくは他の糖類溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれ得る。
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または患部における注射の場合、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容され得る水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射用、リンゲル注射用、乳酸リンゲル注射用などの等張性媒体を使用して、適切な溶液を十分に調製することができる。必要な場合、防腐剤、安定剤、バッファー、酸化防止剤および/または他の添加剤を含めることができる。
6.4.処置の方法
乳がん、脳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、胃がん、甲状腺がんおよび子宮がんを含むがこれらに限定されないがんを処置するための方法も本明細書で提供される。
いくつかの実施形態において、この方法は、本明細書に記載のBI−1調節ペプチドまたは医薬組成物を、がんを有する対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象はがんを発症するリスクがある。
様々な実施形態において、対象は固形腫瘍がんを有する。
特定の実施形態において、対象は哺乳動物である。特定の実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は成体である。特定の他の実施形態において、対象は子供である。
様々な実施形態において、ペプチドまたは医薬組成物は、対象における腫瘍成長を低減するのに十分な量、スケジュールおよび期間で投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、処置の開始直前のレベルと比較して、腫瘍体積および/または腫瘍直径を10%、20%、25%、30%またはそれより多く減少させるのに十分な量、スケジュールおよび期間で投与される。特定の実施形態において、ペプチドは、腫瘍体積および/または腫瘍直径を少なくとも35%、40%、45%、50%またはそれより多く減少させるのに十分な量、投薬スケジュールおよび期間で投与される。特定の実施形態において、ペプチドは、腫瘍体積および/または腫瘍直径を少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれより多く減少させるのに十分な量、スケジュールおよび時間で投与される。
いくつかの実施形態において、前記方法は、静脈内投与によって、本明細書に記載されているBI−1調節ペプチドまたは医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、皮下注射によってペプチドを投与することを含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、くも膜下腔内または大槽内投与によってペプチドを投与することを含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、腫瘍内注射または腫瘍周囲注射によってペプチドを投与することを含む。
いくつかの実施形態において、前記方法は、処置されるべき状態に応じて、同時にまたは逐次に、さらなる処置と組み合わせてBI−1調節ペプチドを投与することを含む。さらなる処置には、化学療法剤、放射線処置、小分子阻害剤および抗体または抗体断片が含まれ得るが、これらに限定されない。
本発明の薬学的に有用なペプチドの投与は、好ましくは「治療有効量」または「予防有効量」(場合によっては、予防は治療と見なすことができるが)であり、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、および投与の速度と時間経過は、処置されているタンパク質凝集疾患の性質と重症度に依存する。処置の処方、例えば投与量の決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、処置されるべき疾患または障害、個々の患者の状態、送達の部位、投与の方法および開業医に公知のその他のエレメントを通例考慮に入れる。上記の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に記載されている。
7.その他の実施形態
1.(i)NleH部分を含む組成物。
2.(ii)NleH部分に結びつけられた標的化部分をさらに含む、実施形態1に記載の組成物。
3.NleH部分が、
(i)配列番号1もしくは配列番号4として本明細書に開示される配列を有するポリペプチド;
(ii)(i)の生物学的に活性な断片;または
(iii)(i)または(ii)の生物学的に活性な配列バリアント
である、またはこれらを含む、実施形態1または2のいずれか1つに記載の組成物。
4.生物学的に活性な断片が、配列番号2、配列番号3、配列番号5または配列番号6として本明細書に開示される配列を有するポリペプチドである、実施形態3に記載の組成物。
5.生物学的に活性な配列バリアントが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6と少なくとも50%の配列同一性を有する、実施形態3または4のいずれか1つに記載の組成物。
6.標的化部分が腫瘍関連抗原を結合する、実施形態2〜5のいずれか1つに記載の組成物。
7.腫瘍関連抗原がヒトエフリン−B2またはその相同体である、実施形態6に記載の組成物。
8.標的化部分が、アズリンまたはアズリンの特徴的な結合活性を保持するその断片もしくはバリアントである、実施形態6または7のいずれか1つに記載の組成物。
9.標的化部分が、本明細書に配列番号8として開示される配列を有するポリペプチドである、またはこれを含む、実施形態8に記載の組成物。
0.組成物が、本明細書に配列番号9として開示される配列を有するポリペプチドとの融合タンパク質である、またはこれを含む、実施形態9に記載の組成物。
11.本明細書に配列番号10として開示される配列を有するポリペプチドからなる、またはこれを含む、実施形態1に記載の組成物。
12.標的化部分が抗体または抗体断片である、実施形態6に記載の組成物。
13.BI−1(配列番号11)への結合についてNleH(配列番号または配列番号4)と競合する結合部分。
14.NleH(配列番号1または配列番号:4)によって結合されるBI−1(配列番号11)中の同一のまたは重複するエピトープを結合する結合部分。
15.結合部分が、配列番号12として本明細書に開示される配列を有するポリペプチドを結合する、実施形態13または請求項14のいずれか1つに記載の結合部分。
16.結合部分が、配列番号13として本明細書に開示される配列を有するポリペプチドを結合する、実施形態13〜15のいずれか1つに記載の結合部分。
17.結合部分が抗体または抗体断片である、実施形態13〜16のいずれか1つに記載の結合部分。
18.機能性部分に結びつけられた実施形態13〜17のいずれか1つに記載の結合部分を含むコンジュゲート。
19.機能性部分がコンジュゲートの細胞内内部移行を促進する、実施形態18に記載のコンジュゲート。
20.先行する請求項のいずれかに記載の組成物、結合部分またはコンジュゲートをコードするヌクレオチド。
21.実施形態20に記載のヌクレオチドを含むベクター。
22.実施形態21に記載のベクターで形質転換された細胞。
23.増殖性障害を有する対象を同定する方法であって、対象中でのまたは対象に由来する試料中でのBI−1の発現または活性のレベルを評価することを含む、方法。
24.増殖性障害を発症する特定のリスクを有する対象を同定する実施形態23に記載の方法であって、対象中でのまたは対象に由来する試料中でのBI−1の発現または活性のレベルを評価することを含み、BI−1発現または活性の増加したレベルが増殖性障害を発症する対象のリスクの増加を示す、方法。
25.対象における増殖性障害関連の予後を予測する方法であって、対象中でのまたは対象に由来する試料中でのBI−1の活性または発現を評価することを含む、方法。
26.対照試料と比較したBI−1の活性または発現の増加が、BI−1活性を阻害することができる薬剤での処置に対する感受性を示す、実施形態25に記載の方法。
27.増殖性状態の処置のための患者、好ましくはヒト患者を選択する方法であって、上昇したBI−1活性または発現を有する患者を特定すること、およびこのように特定された患者をBI−1活性を阻害することができる薬剤での処置のために選択することを含む、方法。
28.BI−1活性を阻害することができる薬剤が、実施形態1〜19のいずれかに記載の組成物、結合部分またはコンジュゲートである、実施形態27に記載の患者を選択する方法。
29.対象が哺乳動物である、実施形態23〜28のいずれか1つに記載の方法。
30.対象がヒトである、実施形態29に記載の方法。
31.増殖性障害ががんである、実施形態23〜30のいずれか1つに記載の方法。
32.がんが乳がんである、実施形態31に記載の方法。
33.対象または対象に由来する試料中での発現または活性のレベルが、対照試料と比較して決定される、実施形態23〜32のいずれか1つに記載の方法。
34.増殖性状態の処置において使用するためのBI−1調節物質。
35.状態ががんである、実施形態34に記載のBI−1調節物質。
36.がんが乳がんである、実施形態35に記載のBI−1調節物質。
37.調節物質がBI−1活性の阻害剤である、実施形態34〜36のいずれか1つに記載のBI−1調節物質。
38.増殖性状態の予防、阻害または処置に有用な医薬化合物を選択する方法であって、試験のための候補医薬化合物の群を準備すること、試験系において候補医薬化合物がBI−1を結合する能力を試験すること、およびBI−1を結合する能力に基づいて候補医薬化合物を選択すること、を含む、方法。
39.インビトロおよび/またはインビボモデルにおいて、乳がん細胞に対する候補化学療法剤の細胞毒性を決定するステップをさらに含む、実施形態38に記載の方法。
40.BI−1を実質的にまたは完全に結合する候補医薬化合物が選択される、実施形態38または39のいずれか1つに記載の方法。
41.候補によって結合される試験系中のBI−1の割合が90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%または20%を超える、実施形態40に記載の方法。
42.先行する実施形態のいずれか1つに記載の組成物、結合部分、コンジュゲート、ヌクレオチド、ベクターまたはBI−1調節物質と、薬学的に許容され得る、希釈剤、担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
43.第2の治療剤をさらに含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
44.処置の方法において使用するための、実施形態42または43のいずれか1つに記載の医薬組成物。
45.増殖性疾患を処置する方法において使用するための、実施形態42または43のいずれか1つに記載の医薬組成物。
46.増殖性疾患を処置する方法において使用するための医薬の製造における、実施形態42または43のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
47.増殖性疾患を有する対象を処置する方法であって、実施形態42または43のいずれか1つに記載の医薬組成物を対象、好ましくはヒト対象に投与することを含み、必要に応じて、BI−1活性または発現の検出されたレベルに従って、対象の処置が調整される、方法。
48.増殖性疾患ががんである、実施形態42〜47のいずれか1つに記載の医薬組成物、使用または方法。
49.がんが乳がんである、実施形態48に記載の医薬組成物、使用または方法。
8.実施例
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は、例示の目的のためにのみ提示されており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力が為されたが、当然ながら、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。
別段の記述がなければ、本発明の実施は、本分野の技術に属する、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の慣用の方法を利用する。このような技術は、文献中に完全に説明されている。
方法
直接的酵母ツーハイブリッド(Y2H)スクリーン
MQ001またはMQ002をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し、GAL4 DNA結合ドメインの下流でpGBT9(Clontech)中にクローニングした。クローニングされた産物をTOP10(Clontech)中で発現させ、Qiagen Miniprep Kitを使用してプラスミドを精製した。pGBT9−MQ001およびpGBT9−MQ002はいずれも、空のpGAD424またはBI−1、BI−140(BI−1の最初の40アミノ酸)のいずれかを有するpGAD424のいずれかとともに、酵母株AH109(Clontech)中に形質転換した。陰性対照として、pGAD424 BI−1/BI−140を空のpGBT9で形質転換した。Clontech Yeast Protocols Handbook(PT3024−1)に記載されているとおりに、AH109を化学的に形質転換受容性とし、熱ショックを加えた。最初に、アデニンとヒスチジンを欠くSD最小寒天上に形質転換された酵母を播種し、pGBT9とpGADT7の両方の共形質転換を確認した。アデニン、ヒスチジン、ロイシンおよびチロシンを欠くSD最小寒天プレート上に陽性コロニーを播種して、プラスミドの存在および関心対象の2つのクローニングされたタンパク質間で起こる相互作用の両方を確認した。
β−ガラクトシダーゼアッセイ
β−ガラクトシダーゼアッセイは、製造元のプロトコル(Clontech PT3024−1マニュアル)に従って実行した。簡単に説明すると、pGADT7−BI−1またはpGADT7−BI−140プラスミドを、単独でまたはpGBT−MQ001(または必要であれば、pGBT9、pGBT9−MQ002)とともに、酢酸リチウム法を使用してSaccharomyce cerevisiae株PJ69−4A中に形質転換した。形質転換体をTrp2 Leu2プレート上で選択し、0.6の光学密度(D600nm)まで成長させた後、溶解し、ONPGを基質として使用してβ−ガラクトシダーゼ活性のレベルをアッセイした。報告されたデータは、3つ組で実行された少なくとも3つの生物学的反復物からのものである。
MTT細胞生存率アッセイ
評価する前に、細胞を未処理にするか、24ウェル組織培養プレート中で24時間処理した。細胞をPBSで1回洗浄し、0.1mg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(Sigma)を含有するDMEMで1時間交換した後、培地を除去し、100mlのジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)を各ウェルに加えた。オービタルシェーカー上で1分間完全に混合した後、FLUOstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して、各ウェルの540nmでの吸光度を取得した。結果は、3つ組で実行された少なくとも3つの生物学的反復物から得られた。
細胞質ゾルのカルシウム(Ca2+)レベルの測定
細胞質ゾルのCa2+レベルは、市販の蛍光指示薬Fluo−4 Direct(Invitrogen)を使用して、製造元の指示に従って測定した。
細胞を96ウェルマイクロプレート中で成長させ、Fluo−4 Directとともに37℃で1時間インキュベートされたMQ001、MQ002、対照(CPP−GFP)または陽性対照(タプシガルジン−Fluo−4添加後約100分)で12時間処理した。蛍光強度は、494nmでの励起と516nmでの発光用に設定された蛍光光度計を使用して決定された。
ROSレベルを評価するためのNBTアッセイ
ニトロブルーテトラゾリウム塩(NBT)の青緑色の生成物への還元を使用して、処理したMCF−7および対照細胞中で生成された細胞内ROSレベルを間接的に推定した。処理した細胞にNBT(1mg/mlの100μl)を加え、次いで、37℃で、CO2チャンバー中にて1時間インキュベートした。形成された結晶を、KOH(120μl)およびDMSO(140μl)の連続添加によって可溶化した。発色した色の強度は、ELISAリーダーを使用して645nmで測定した。生成されたROSに反比例するNBTの還元のパーセンテージは、エタノールで処理した対照と比較して計算された。示されている結果は、各細胞のそれぞれの細胞株に対する非処理対照と比較したROSの代表的なものである。
ウエスタンブロット分析
すべての試料を10〜12%SDS−PAGEゲル上で泳動し、従来の方法によってPVDFまたはニトロセルロース膜に転写して、誘導性プラスミドの発現レベルを比較した。0.1%Tween(登録商標)(Sigma)を含有するTBSで膜を2回洗浄した後、5%BSA(Sigma)(モノクローナル抗体の場合)または5%市販粉乳(ポリクローナル抗体)を含有するTBS 0.1%Tween(登録商標)とともに1時間インキュベートした。膜を一次抗体とともに1時間(RTP)または一晩(4℃)インキュベートした(使用した希釈倍数は、供給業者の指示にしたがった)。使用した抗体のリストを補足図3に示す。次に、膜をTBS.0.1%Tween(登録商標)中で3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Cell Signalling)にコンジュゲートされた抗ウサギまたは抗マウス二次抗体(1:2000)とともにインキュベートし、1時間インキュベートした(RTP)。ECL試薬(GE Healthcare)を用いて膜を発色させ、LAS 3000 Fuji Imager中で検出した。
イムノブロッティング
イムノブロッティングのために以下の抗体を使用した、抗His(Sigma)、抗GST(Abcam)、抗チューブリン(Abcam)、抗Myc(Abcam)、抗Bcl−2、抗Bcl−2(Ser70)、抗Bcl−2(Thr56)、抗ホスホERK、抗ホスホJNK、抗ERK、抗JNK、抗CHOP、抗ATF6、抗PERK、抗IRE1αをイムノブロッティングのために使用した。すべてのブロットは、TBS−0.1%Tween(登録商標)中の5%BSAを使用して実施した。Restore(商標)Western Blot Stripping Buffer(Thermo Scientific)を使用して、ウエスタンブロットに最大4回ストリッピングを行い、さまざまな抗体でプローブした。
組織培養、MQ001/MQ002投与量および形質移入
1000mg/Lグルコースを含有し、10%(v/v)ウシ胎児血清、非必須アミノ酸およびglutamaxが補充されたDMEM中、37℃、5%(v/v)CO2の加湿された雰囲気中で細胞株を成長させた。0.4mg/mlの最終濃度のMQ001/002で細胞を処理し、または、メーカーのプロトコルに従い、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用してpHM6−BI−1またはpEGFP−N1(Clontech)(対照プラスミド)のいずれかで細胞を形質移入し、加湿された雰囲気中で24時間インキュベートした後に、0.4mg/mlの最終濃度でMQ001/002を添加した。次に、細胞をさらに24時間インキュベートした。pHM6−BI−1の形質移入効率は約30〜40%であった。対照プラスミドは、約70%のより高い効率で形質移入された。形質移入効率の差は、カウント中に制御され、視野内に100個の形質移入された細胞がカウントされるようにした。siRNA形質移入は、メーカーのプロトコルに従ってHyperfect(Qiagen)を使用し、20μM BI−1または対照siRNAを用いて行った。72時間後に、製造元の推奨に従ってQIAGEN RNAeasyキットを使用するRNA分離およびBI−1(h)−PR(Santa cruz、sc−37298−PR)またはGADPHプライマーを使用する半定量的RT−PCRによって、BI−1発現のノックダウンを試験した。
免疫蛍光染色と共局在
半集密状態の細胞単層をカバーガラス上で成長させ、リン酸緩衝食塩水(PBS)pH 7.4中の3%パラホルムアルデヒド(Sigma)を用いて、室温で15分間固定した。細胞をPBSで3回洗浄し、パラホルムアルデヒドを塩化アンモニウム(10mM)で10分間中和した。0.2%Triton(登録商標)−X(Sigma)を含有するPBSで細胞を4分間透過処理し、PBS中でさらに2回洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)を含有するPBS中で10分間インキュベートした。次いで、室温で1時間、またはメーカーのガイドラインによって推奨されている場合には4℃で一晩、一次抗体とともに細胞をインキュベートした。カバーガラスをPBS中で2回、1%BSAを含有するPBSでさらに1回洗浄し、適切な二次抗体とともに45分間インキュベートした。共局在の例では、まず、一次抗体とその一次抗体に対応する二次抗体を置いた。第二の一次抗体を加え、二次抗体が異なる源からのものであることが確保された(すなわち、第一の一次抗体がマウス中で産生された場合、第二の一次抗体はウサギ中で産生される)。MitoTrackerまたはDAPIなどの色素は、メーカーの指針に従って使用した。
カバーガラスをPBS中で3回、高圧滅菌した蒸留水でさらに1回洗浄し、ProLong Gold退色防止剤(Invitrogen)を使用してスライド上に載せた。32倍または100倍の倍率で、Zeiss Axioimager免疫蛍光顕微鏡上でカバーガラスを可視化し、Axiovision Rel 4.5ソフトウェアを使用して分析した。細胞は多数の視野内でカウントされ、1つのカバーガラスから少なくとも600〜9000個の細胞がカウントされた。すべての実験は3〜5回繰り返された。すべてのカウントは二重盲検形式で行った。特に明記しない限り、すべての抗体はCell Signalingからのものであった。抗ウサギIgG、HRP結合抗体#7074、抗マウスIgG、HRP結合抗体#7076、抗BI−1抗体(ab18852)(Abcam)、GST抗体#2622、抗GST抗体(ab19256)(Abcam)、His−タグ(27E8)マウスmAb#2366、HA−タグ(6E2)マウスmAb#2367、抗Mycタグ抗体(ab9106)(Abcam)、β−アクチン(8H10D10)マウスmAb#3700、MitoTracker(登録商標)Red CMXRos#9082、抗チューブリン抗体−ローディング対照(ab59680)(Abcam)、α/β−チューブリン抗体#2148、カルネキシン抗体#2433、LC3A/B(D3U4C)XP(登録商標)ウサギmAb(Alexa Fluor(登録商標)594コンジュゲート)#14079、ホスホ−Bcl−2(Ser70)(5H2)ウサギmAb#2827、ホスホ−Bcl−2(Thr56)抗体(ヒト特異的)#2875、Bcl−2(D55G8)ウサギmAb(ヒト特異的)#4223、p44/42 MAPK(Erk1/2)(137F5)ウサギmAb#4695、ホスホ−SAPK/JNK(Thr183/Tyr185)抗体#9251、ホスホ−p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)(197G2)ウサギmAb#4377。
フローサイトメトリーおよび細胞選別
T75フラスコ中で、細胞を約70%の集密状態(1.6e106細胞)まで成長させ、0.2mg/mlの濃度のMQ001または対照で96時間処理した。24時間ごとに試料を採取し、すべての細胞をそれらの前方および側方散乱パターンに基づいて評価した。前方散乱は細胞の体積と相関し、側方散乱は細胞の内部の複雑さ(すなわち、核の形状、細胞質顆粒の量または膜の粗さ)と相関する。フラスコ上の付着細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン処理した(trypsanized)後、DMEM中に再懸濁して単一細胞懸濁液を生成した。BD LSRFortessa(BD Biosciences)上で、細胞懸濁液を直ちに評価した。MQ001と対照はともにGFPタグを有し、MQ001試料においては、MQ001が内部移行された細胞の取り込みおよび処理を示しており、これらは黒で強調表示されている。
アネキシンVおよび凝縮核のカウント
T25フラスコ内で、10%ウシ胎児血清、非必須アミノ酸(Sigma)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地低グルコース(1g/リットル;Invitrogen)中において、細胞を70%の集密状態まで成長させた。次に、MQ001、MQ002、対照(CPP−GFP)で細胞を12時間処理し、または処理せず、アポトーシスを誘導した。次に、浮遊している細胞と付着した細胞の両方を収集し、製造元によって提供されたプロトコルに従って、アネキシンV−フルオレセインイソチオシアナートアポトーシス検出キット(カタログ番号K101−100;BioVision)を使用して標識した。各条件からの104個の細胞をFACSによって分析して、アネキシンV陽性である細胞を特定した。収集された細胞の分割試料も、2g/mlヘキスト色素を加えたPBS中に106細胞/mlで懸濁し、アポトーシス核形態を有する細胞の割合をUV顕微鏡法によって決定した。このデータは、上記のように免疫蛍光を使用した実験の個々のカウントおよび反復によって確認された。
RT−PCR
Verso one−step RT−PCR(Thermo Scientific)を、製造元のプロトコルに従って実行した。プライマーは、アポトーシスマルチプレックスキットの一部としてSigmaから購入した。
免疫沈降/共免疫沈降
記載したとおりに、T75cmフラスコ中で細胞を成長させ、pHM6−MQ001またはpHM6−MQ002で24時間形質移入した後、IP緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.4、150mM NaCl、1%Triton(登録商標) X−100、1mM EDTA、2mMオルトバナジン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、1mM PMSF、EDTA非含有プロテアーゼカクテル阻害剤)中で溶解した。HAタグを付けたMQ001/002を捕捉するためにAnti−HA Magnetic Beads(Pierce)を使用して、内在性BI−1を免疫沈降させた。IP緩衝液でビーズを3回洗浄し、最後に200μlのIP緩衝液中に再懸濁した。20μlの試料に5μlのSDSローディング緩衝液を加えた。すべての試料を5分間煮沸し、SDS−PAGEにかけ、ニトロセルロース膜に転写した。必要な場合、以下の一次抗体で膜をプローブした。イムノブロッティングのために、抗BI−1(Calbiochem)、抗チューブリン(Cell Signaling)および抗HA(Sigma)抗体を使用した。すべての抗体は製造元の指示に従って希釈し、5%BSAを含むTBS−Tween(登録商標)(0.1%)で一晩放置した。画像は、MFChemiBisイメージングステーション(DNR)を使用して視覚化した。
ミクロソームの安定性
ミクロソーム反応系の生存率は、7−エトキシクマリン(m/z 191)の喪失ならびに7−ヒドロキシクマリン(7−OHC、m/z 163)および7−OHCグルクロニド(m/z 339)の形成によって確認された。溶液B(BD Gentest)とともに2μMの反応濃度でのウリジン5’−ジホスホグルクロン酸(UDPGA)補因子溶液A(BD Gentest)、脱イオン水中の、50mM Tris−HCl、8 mM MgCl2および25μgアラメチシンとともに、ミクロソームをインキュベートした。MQ001を個々の反応混合物に加えて10μMの最終濃度とし、37℃で所定の時間、反応混合物(0.5ml)を3つ組でインキュベートし、0.1mlの7%過塩素酸でクエンチし、12,500rpm(11,0009g)で5分間遠心分離した。分析のために、上清をオートサンプラバイアルに移した。基質/代謝物陽性対照(7−エトキシクマリン/7−ヒドロキシクマリン;7−エトキシクマリン/7−ヒドロキシクマリングルクロニド)および基質反応の各組と並行して実施された4つの陰性対照反応を使用して、この反応系を検証した。
動物実験
すべてのマウスは、1986年の動物科学的処置法に従って取り扱い、実験は英国政府内務省が承認したプロジェクトライセンス70/8586の下で実施された。0日目に、すべての動物にMCF−7またはMDA−MB−231ヒト乳がん細胞(ATCC)を与え、5%FBS(Life Technologies)を含有するαMEM中で培養した。両細胞株をT−150フラスコ中で成長させ、集密状態に応じて5〜10×106細胞/フラスコを得た。balb/cマウス中に接種するために、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、遠心分離し、0.3mlのマトリゲル−αMEM中に再懸濁した。
雌のBALB/cマウス(乳がんの種類ごとにn=30、8週齢、18〜20g)を各群(n=10)に無作為に割り当てた。3つの群はPBS、対照、MQ001であった。動物は、22±5℃で12時間の明/暗サイクルで飼育し、げっ歯類の餌と水を自由に与えた。同所性の乳房脂肪体移植は、以下のように実施した。メスのBALB/cマウスに、Matrx VMS麻酔器(Midmark Corporation)を介して、2%イソフルランガスを5〜10分間連続吸入することにより、麻酔下で乳房脂肪体中に前述の細胞懸濁液を接種した。滅菌したピンセットを使用して4番目の乳首を持ち上げ、注射針(BD Biosciences)を使用して、乳房脂肪体中に細胞または組織懸濁液を直接移植した。すべての研究において、マウスに17β−エストラジオール徐放性ペレット(Innovative Research)を皮下移植した。腫瘍の取り込み率は95〜100%の範囲であった。
ノギスを使用して、毎週2回、腫瘍の長さ(L)と幅(W)を測定し、[V=(L×W2)/2]として、腫瘍の体積(V)を計算した。3週間後、平均約200mm3の体積を有する担腫瘍マウスを処置のために利用した。研究では、PBS、対照または10mg/kg(3.4μmol/kg)の用量のMQ001で、5日間毎日、担腫瘍マウスを処置した。腫瘍の体積は、週に3回測定した。体重は、毎週2回測定した。MQ001で処置されたマウスの腫瘍のサイズおよび体積が大幅に減少したので、20日目にマウスを屠殺した。対照群とMQ001処置群の間の有意性(P<0.001)は、統計学的方法において説明されている一連の混合モデル分析を使用して決定された。対数二次混合モデルがデータに適合し、10mg/kgのMQ001が対照またはPBSと有意に異なることを明らかにした。
組織病理学
各マウスの肺、心臓、脳、腎臓、脾臓および肝臓のセグメントを最終終了点(処置後20日)において収集し、内容物をすすぎ落とし、顕微鏡検査のために10%緩衝ホルマリン中で固定した。次に、ホルマリン固定された組織を処理し、パラフィン包埋し、5μmで切片化し、標準的な手法に従ってヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
[実施例1]ペプチド設計
細胞調節因子BI−1と相互作用して、細胞調節因子BI−1をモジュレートするように、BI−1調節ペプチドを設計した。BI−1は、アポトーシス促進性およびアポトーシス抑制性の刺激に適応することにより、細胞経路にシグナルを伝達して、アポトーシスおよび細胞の生存を阻害、遅延または促進することができる(Robinson et al.,Oncogene 30:2391−2400,2011)。細菌タンパク質エフェクターのNIeHファミリーは、BI−1に結合し、アポトーシスシグナル伝達を阻害することが示されている(Hemrajani et al.,Proc Natl Acad Sci 107:3129−3134,2010)。
がん細胞中のBI−1と相互作用してこれをモジュレートする治療上有用なペプチドを作製するために、シュードモナスタンパク質アズリンの28アミノ酸ドメイン(p28)およびNIeHエフェクタータンパク質NIeH1との融合タンパク質を作製した。p28ドメインは、がん細胞中へのアズリンの優先的な侵入に関与していることが示されている(Yamada et al.,Mol.Cancer Ther.8:2947−2958,2009)。
NIeH1をコードするヌクレオチド配列に対して5’に、p28をコードするヌクレオチド配列を有する単一の読み枠内に、p28およびNIeH1をコードするポリヌクレオチドを細菌の発現ベクター中へクローニングすることによって、BI−1調節ペプチドMQ001を作製した。得られたプラスミドDNAを増幅し、大腸菌中に形質転換した。続いて、プラスミドDNAで形質転換された大腸菌の培養物を、上記の方法を使用して成長、採集および精製して、p28−NIeH1融合タンパク質を単離した。p28−NIeH1融合タンパク質MQ001は、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する。
治療用ペプチド、BI−1および潜在的に相互作用する他のタンパク質間での干渉を最小限に抑えるために、構造アルゴリズムに基づいて追加のBI−1調節ペプチドを設計した。いくつかのBI−1調節ペプチドは、NIeH1のC末端配列を変更することによって作製した。BI−1調節ペプチドMQ157(配列番号17)は、NIeH1の157個のC末端アミノ酸を使用して生成された。BI−1調節ペプチドMQ70は、ペプチドのN末端にアラニン、セリンおよびメチオニンを付加することによって修飾されたNIeHの77個のC末端アミノ酸を使用して生成された(配列番号18)。追加のBI−1調節ペプチドMQ30(配列番号19)、MQ22(配列番号20)、MQ16(配列番号21)、MQ8A(配列番号22)、MQ8B(配列番号23)、MQ45(配列番号24)およびMQ60(配列番号25)はすべて、NIeH1のC末端の一部とアラインするアミノ酸配列を有する。
さらなるBI−1調節ペプチドは、以前に生成された治療用ペプチドのNまたはC末端のいずれかに9〜28アミノ酸の範囲のペプチド配列を追加することによって作製した。追加のペプチド配列は、BI−1調節ペプチドに対してがん細胞標的化および細胞膜浸透特性を付与する。これらの追加のBI−1調節ペプチドの配列は、以下の第10節中の配列リストの表中に示されている(配列番号32〜103)。
[実施例2]例示的なBI−1調節ペプチドは、BI−1のアミノ末端と相互作用する
BI−1と直接相互作用する能力について、BI−1調節ペプチドMQ001およびMQ002を評価した。抗HA磁気ビーズとのインキュベーション後に、内在性BI−1が、HAタグを付けたペプチドとともに共免疫沈降したので、HAタグを付けたMQ001、MQ002またはGFP(対照)で形質移入されたHeLa細胞から得た溶解産物の免疫沈降の結果は、MQ001およびMQ002がいずれもBI−1と相互作用することを示している(図1A)。
BI−1調節ペプチドMQ001、MQ002の両方とBI−1との間での相互作用を確認するために、Saccharomyces cerevisiae中で直接的酵母ツーハイブリッドスクリーニングを実施した。結果は、MQ001およびMQ002はいずれも、BI−1と別々に相互作用することを実証した(図1B)。さらなる酵母ツーハイブリッドスクリーニングは、MQ001とMQ002の両方がBI−1の40個のN末端アミノ酸の少なくとも一部と別々に相互作用することをさらに実証した(図1C)。
MQ001がBI−1と相互作用することをさらに確認するために、S.cerevisiaeを使用してβ−ガラクトシダーゼレポーターアッセイも実施した。選択された形質転換体のタンパク質−タンパク質相互作用の相対強度を比較するために、所定のアッセイにおいて測定されたβ−ガラクトシダーゼ活性のレベルを使用することができる。図1Dに示されている結果は、MQ001とBI−1のN末端との間の相互作用の強度が、MQ001と完全長BI−1との相互作用と比較してわずかに低下するに過ぎないことを実証する。
HAタグを付けたMQ001またはMQ002のいずれかおよびMycタグを付けたBI−1で共形質移入されたHeLa細胞を固定し、蛍光発色団がコンジュゲートされた抗HAおよび抗Myc抗体とともにインキュベートした。処理した細胞の免疫蛍光画像は、MQ001およびMQ002がそれぞれBI−1と共局在することを示している(図1E)。
[実施例3]例示的なBI−1調節ペプチドは、乳がんにおいて細胞死を誘導する
がん性乳房組織(MCF−7)および非がん性乳房組織(MCF−10F)に由来する細胞を、MQ001、MQ002またはGFP(対照)で12時間別々に処理し、次いで、上記の方法を使用して、凝縮した核などのアポトーシスのマーカーおよび細胞表面上のアネキシンVの存在に関して評価した。結果(図2A)は、MQ001およびMQ002はいずれも乳がん細胞にはアポトーシスを誘導するが、健康な乳房組織に由来する乳房細胞にはアポトーシスを誘導しないことを示している。
MQ001またはMQ002で処理した後の乳がんおよび非がん性乳房細胞の両方の生存率をさらに評価するために、MQ001、MQ002のいずれかで24時間細胞を処理し、または処理せずに放置して(対照)、次いで、MTTアッセイによって評価した。図2Cの結果は、MQ001またはMQ002のいずれかで処理したMCF−7細胞が有意により低いレベルのMTTの還元型を示したことを示し、MQ001またはMQ002のいずれかでの処理は生存したMCF−7細胞の数を低減させるが、MCF−10F細胞は比較的影響を受けないままであることを示唆する。
その後、GFPタグを付けたMQ001またはGFPのみ(対照)でMCF−7細胞を96時間処理した。24時間ごとにフローサイトメトリーによって、前方および側方散乱パターンについて、細胞試料を評価した。対照と比較して、MQ001で処理した細胞ではかなりより多くの前方および側方散乱が見られ、死亡しつつある細胞のより大きな集団がMQ001で処理した細胞中に存在することを示している(図2B)。
MQ001およびMQ002がすべての乳がん由来細胞株に細胞死を誘導するのかまたはMCF−7細胞のみで細胞死を誘導するのかを評価するために、7つのさらなる乳がん由来細胞株をMQ001、MQ002またはGFP(対照)で処理し、次いで、上記のように、凝縮核および外部アネキシン−Vの存在について評価した。図3Aおよび図4に示されている結果は、MQ001またはMQ002のいずれかでの処理が、96時間以内に、7つの乳がん細胞株すべてに100%の細胞死を誘導したことを実証する。評価された7つの乳がん株は、図3Bで特定されているように、5つの乳がんサブタイプ由来であった。
MQ001およびMQ002がMCF−7細胞において細胞死を誘導する能力に対するBI−1の重要性を評価するために、BI−1アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用してBI−1発現をノックダウンした(BI−1kd)。図3Cの結果は、MQ001またはMQ002での処理がBI−1kdで形質移入されたMCF−7細胞に影響を及ぼさなかったことを示し、BI−1がMQ001およびMQ002の乳がん細胞に対する治療効果にとって重要であることを示している。
乳がん組織に由来する細胞(MCF−7)および非がん性乳房組織に由来する細胞(MCF−10A)に対するBI調節ペプチドMQ70CおよびMQ30Cでの処理の効果を評価するために、さらなる研究を行った。さまざまな濃度のMQ70CまたはMQ30Cのいずれかで細胞を24時間処理した。図5中に示されている定量された結果は、BI−1調節ペプチドMQ30CおよびMQ70Cが用量依存的にMCF−7細胞死を誘導することを実証する。
4時間20分、6時間30分または19時間40分の処理後に、位相差顕微鏡法によって、3μM、6μM、8.4μMおよび12μMのMQ70Cで処理したMCF−7細胞を画像化した。細胞死と合致する細胞の形態学的変化が、より高濃度のMQ70Cで処理した細胞において、より低濃度のMQ70Cで処理した細胞と比較して、より短い期間内に見られ(図6A)、BI−1調節ペプチドが用量依存的に乳がん細胞に細胞死を誘導するという評価と合致した。
複数のBI−1調節ペプチドを評価し、各ペプチドが細胞死を誘導する能力を比較するために、MCF−7細胞を以下のBI−1調節ペプチドのそれぞれで6.5時間別々に処理した。MQ30−TAT(配列番号105)、MQ16C(配列番号71)、MQ30F1C(配列番号49)、MQ70−TAT(配列番号106)、MQ22(配列番号20)、MQ16(配列番号21)、FLMQ31F1C(配列番号57)、FLF1BMQ31(配列番号56)、F1NMQ30(配列番号48)およびMQ22C(配列番号63)。高負荷(1mg/mLペプチド濃度)および中負荷(0.6mg/mLペプチド濃度)での各BI−1調節ペプチドで、MCF−7細胞を処理した。結果が、図6Bに示されている。
[実施例4]例示的なBI−1調節ペプチドは、複数のがんのタイプにおいて細胞死を誘導する
BI−1調節ペプチドが乳がん以外のがん細胞に細胞死を誘導するかどうかを決定するために、乳がん以外のがん組織に由来する細胞株をBI−1調節ペプチドで処理し、細胞死のマーカーについて評価した。肺がん細胞株HOP64およびH460ならびに前立腺がん細胞株PC3において、MQ001およびMQ002での処置の効果を評価した。図7A中の結果は、MCF−7乳がん細胞での細胞死の誘導が約50%および60%であるのと比較して、MQ001は肺がん細胞の約30%で細胞死を誘導し、MQ002は肺がん細胞の約20%で細胞死を誘導することを示している。これに対して、MQ001およびMQ002での前立腺がん細胞の処理は細胞死を誘導しなかった(図7A)。
肺がん細胞(A549)および結腸がん細胞(HCT−116)を、0.14mg/mLのBI調節ペプチドMQ30Cで処理した。48時間(肺がん細胞)または24時間(結腸がん細胞)までの複数の時点で、位相差顕微鏡法によって細胞を画像化した。図7Bおよび図7Cの結果は、MQ30Cで処理したほとんどの細胞の形態が時間とともに変化することを示している。5時間の処理後に撮影された40倍画像は、CPPのみで処理した細胞と比較して、MQ30Cで処理した細胞中でのERの破壊を示しているように見受けられる。MQ30Cで処理したA549およびHCT−116細胞の85%より多くが、96時間の処理後に死滅していた(データは図示せず)。
卵巣がんパネル(ATCC−1021)を、BI調節ペプチドで攻撃し、核の凝縮、ER破壊、リソソーム形成およびミトコンドリアの膜透過性などの形態学的変化について、位相差顕微鏡法および免疫蛍光顕微鏡法によって、細胞を評価した。細胞質ゾルのカルシウムレベル、活性酸素種(ROS)レベルの変化について、ならびにトリパンブルーおよび細胞生存率アッセイによっても、細胞を評価した。卵巣がん細胞株SW626からの細胞の免疫蛍光画像(図7D)は、対照と比較した、BI−1調節ペプチドMQ16で処理した細胞におけるリソソームの形成およびミトコンドリア膜の透過性を示しており、MQ16によって誘導された細胞死と合致する。4つの卵巣がん細胞株のそれぞれにおけるMQ16処理の用量反応曲線が図7Eに示されている。さまざまなBI−1調節ペプチドでの処理後のSW626細胞中で、細胞質ゾルのカルシウムレベルを測定した。図7Fの結果は、各BI−1調節ペプチドでの処理に応答したが、CPP−GFP(対照)での処理には応答しなかった細胞中でのカルシウム流出を示し、治療ペプチドが細胞内カルシウム貯蔵からのカルシウムの放出を誘導し、これによって細胞死を促進することを示唆している。
子宮がんパネル(ATCC−1023)を、BI調節ペプチドで攻撃し、核の凝縮、ER破壊、リソソーム形成およびミトコンドリアの膜透過性などの形態学的変化について、位相差顕微鏡法および免疫蛍光顕微鏡法によって、細胞を評価した。細胞質ゾルのカルシウムレベル、活性酸素種(ROS)レベルの変化について、ならびにトリパンブルーおよび細胞生存率アッセイによっても、細胞を評価した。子宮がん細胞株CRL−1671からの細胞の免疫蛍光画像(図7G)は、対照と比較した、BI−1調節ペプチドMQ16で処理した細胞におけるリソソームの形成およびミトコンドリア膜の透過性を示しており、MQ16によって誘導された細胞死と合致する。5つの子宮がん細胞株のそれぞれにおけるMQ16処理の用量反応曲線が図7Hに示されている。さまざまなBI−1調節ペプチドでの処理後のCRL−1671細胞中で、細胞質ゾルのカルシウムレベルを測定した。図7Iの結果は、各BI−1調節ペプチドでの処理に応答したが、CPP−GFP(対照)での処理には応答しなかった細胞中でのカルシウム流出を示し、治療ペプチドが細胞内カルシウム貯蔵からのカルシウムの放出を誘導し、これによって細胞死を促進することを示唆している。
[実施例5]例示的なBI−1調節ペプチドは、非がん性、非ストレス誘導性細胞に対して負の効果を示さない
MQ001およびMQ002が非がん性細胞において抗アポトーシス効果を誘導するかどうかを評価するために、MCF−10F細胞をMQ001またはMQ002で24時間処理し、次いで、アポトーシスの内因性誘導物質であるスタウロスポリン(STS)、ツニカマイシン(TUN)もしくはブレフェルジンA(BFA)またはアポトーシスの外因性誘導物質であるTNFα(TNF)に曝露した。図8Aの結果は、MQ001およびMQ002がいずれも、アポトーシスの内因性誘導物質にさらされたMCF−7細胞におけるアポトーシスを抑制するが、アポトーシスの外因性誘導物質であるTNFにさらされたMCF−7細胞に対しては抗アポトーシス効果を有さないことを示している。実施例3および4に概説された実験の結果と合わせると、本データは、BI−1のアポトーシス促進機能およびアポトーシス抑制機能はいずれも、BI−1相互作用ペプチドによってモジュレートされ得、BI−1は、細胞の性質に応じて細胞死を誘導または防止するように選択的に機能することを示唆する。
BI−1の重要性をさらに調査するために、BI−1アンチセンス(BI−1kd)を使用してMCF−7およびMCF−10F細胞中でのBI−1発現をノックダウンし、次いで、MQ001、MQ002、対照(GFP−CPP)で24時間処理し、または未処理のままにした。その後、ストレス誘導剤およびアポトーシス誘導剤TUN、BFAまたはSTSに細胞を曝露した。図8Bの結果は、BI−1を欠如し、ストレス誘導剤TUNに曝露されたMCF−10F細胞が、MQ001またはMQ002処理に関係なく、アポトーシスを受けるように誘導されることを示している。本データは、MQ001およびMQ002によって誘導されるアポトーシス促進応答とアポトーシス抑制応答の両方にBI−1が必要であり、治療応答の種類は処理されている細胞株の性質に依存することをさらに確証する。
前述のようにMQ001、MQ002または対照(GFP−CPP)での処理後にアポトーシスのマーカーを評価するために、非がん性ヒト細胞株MCF−10F、HMEC−1およびMCF−12Aに対して追加の研究を実施した。図9Aおよび9Bの結果は、MQ001およびMQ002での処理が、非がん性細胞株MCF−10F、HMEC−1およびMCF−12Aにおいて細胞死を誘導しなかったことを示している。このデータは、実施例3および4に概説されている実験から得られたデータと合わせると、BI−1調節ペプチドMQ001およびMQ002ががん細胞において細胞死を選択的に誘導することを示している。
[実施例6]例示的なBI−1調節ペプチドでの処理は、がん細胞中の細胞質ゾルのカルシウムレベルを特異的に上昇させる
MQ001およびMQ002がERカルシウム濃度、したがって細胞質ゾルのカルシウム濃度のBI−1調節をモジュレートする能力を評価するために、乳がん細胞株(MCF−7およびMDA−MB−231)および非がん細胞株(MCF−10FおよびHMEC−1)をMQ001、MQ002、GFP−CPP(対照)またはタプシガルジン(陽性対照)で12時間処理した後、蛍光カルシウム指示薬のFluo−4 Direct(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。蛍光強度は、各処理条件にさらされた細胞中で測定された。図10Aの結果は、MQ001およびMQ001での処理は乳がん細胞中の細胞質ゾルのカルシウム濃度を有意に増加させたのに対し、MQ001およびMQ002で処理した非がん性細胞では細胞質ゾルのカルシウムの増加が観察されなかったことを示している。非がん性細胞(図10A)もPC3前立腺がん細胞(データは示さず)も、MQ001またはMQ002での処理後に細胞質ゾルのカルシウムレベルの増加を示さないので、データは、したがって、BI−1とのMQ001またはMQ002の相互作用が細胞質ゾルのカルシウム放出を自己誘導しないことを実証する。
BI−1の過剰発現を誘導するために乳がん細胞および非がん性細胞にBI−1を形質移入し、続いて、BI−1調節ペプチドによる処理の不存在下での細胞中で、細胞質ゾルのカルシウムレベルを測定した。図10Bの結果は、BI−1の過剰発現だけでは、乳がんまたは非がん性細胞のいずれかにおいて細胞内カルシウム放出を誘導するのに十分ではないことを示している。
さまざまなBI−1調節ペプチドでの処理によって誘導される細胞質ゾルのカルシウム濃度の相対的変化を評価するために、乳がん細胞をさまざまなBI−1調節ペプチドならびにGFP−CPP(対照)およびタプシガルジン(陽性対照)とともに19時間インキュベートし、次いで、上記のように細胞質ゾルのカルシウムレベルを評価した。図10Cの結果は、細胞を処理するために使用されたBI−1調節ペプチド(the BI−1 modulating)の濃度の増加が、細胞内カルシウム放出の増加、したがって、細胞質ゾルのカルシウムレベルの増加をもたらしたことを示している。
[実施例7]例示的なBI−1調節ペプチドでの処理は、がん細胞における活性酸素種(ROS)の産生をもたらす
BI−1調節ペプチドで処理した細胞における細胞内カルシウム放出がROSの産生の増加を伴うかどうかを評価するために、乳がん細胞(MCF−7およびMDA−MB−231)および非がん性細胞(MCF−10FおよびHMEC−1)をMQ001、MQ002またはGFP−CPP(対照)で24時間処理した後、NBTアッセイを使用してROSの細胞内レベルについて評価した。図11Aの結果は、MQ001またはMQ002での処理後の乳がん細胞中での細胞質ゾルのカルシウムレベルの増加と同様に、MQ001またはMQ002での処理後の乳がん細胞中でのROSの細胞質ゾルのレベルが同様に増加することを示している。細胞質ゾルのカルシウムと同様に、MQ001またはMQ002で処理した非がん性細胞中の細胞質ゾルのROSレベルは変化しないままである(図11A)。
BI−1調節ペプチドMQ16での処理後のROSの産生をさらに評価するために、MQ16ありまたはなしで、MCF−7細胞を8時間処理し、次いで、CellRox Green Reagent(Thermo Fisher)で染色して、酸化ストレスの誘導を調べた。CellRox中の弱い蛍光性色素は、ROSによる酸化時に明るい緑色の光安定性蛍光を示す。図11B(右パネル)の結果は、MQ16での処理後に、酸化ストレスが誘導され、MCF−7細胞中に上昇したレベルのROSが存在したことを示している。
ミトコンドリアを標的とするMitoSox Red試薬(Thermo Fisher)を使用して、MQ16での処理後のスーパーオキシドの存在を評価した。MitoSox中の赤色蛍光色素は、スーパーオキシドによって酸化されるが、他のROSおよび活性窒素種(RNS)によっては酸化されない。酸化された生成物は、生きたミトコンドリア中では非常に蛍光性である。MCF−7細胞をMQ16ありまたはなしで8時間処理した後、MitoSox Redで染色した。図11B(左パネル)の結果は、BI−1調節ペプチドで処理されていない対照細胞中での赤色蛍光のミトコンドリアを示しており、スーパーオキシドの存在を示している。MQ16で処理した細胞は拡散した赤色蛍光を示し、ミトコンドリア膜の透過性および細胞溶解と一致している。これらの結果は、BI−1調節ペプチドでのがん細胞の処理が生きたミトコンドリアの喪失を誘導することを実証する。
[実施例8]例示的なBI−1調節ペプチドでの処理は、がん細胞においてミトコンドリア膜の透過性をもたらす
MQ001およびMQ002で処理した細胞中のミトコンドリア膜の完全性を評価するために、乳がん細胞株MCF−7および非がん性乳がん細胞株MCF−10Fからの細胞を、HAタグを付けたMQ001またはHAタグを付けたMQ002のいずれかで処理した。生きたミトコンドリア(図12、上)および蛍光タグを付けた抗HA抗体(図12、下)について染色するために、MitoTrackerとともに細胞をインキュベートした。図12の結果は、MQ001またはMQ002で処理したMCF−10F細胞中の無傷のミトコンドリアを示しているが、MQ001でMCF−7乳がん細胞を処理すると、細胞内のミトコンドリア膜が透過性になった。
[実施例9]例示的なBI−1調節ペプチドでの処理は、がん細胞中でアクチンの再編成および小胞体(ER)の歪みをもたらす
BI−1調節ペプチドMQ001およびMQ002がアクチンの動態を破壊するかどうかを評価するために、Mycタグを付けたMQ001またはMycタグを付けたMQ002でMCF−7細胞を処理し、蛍光発色団にコンジュゲートした抗体を使用してアクチンおよびMycに対して染色した。免疫蛍光顕微鏡法によって撮影された画像(図13C−D)は、対照と比較して、MQ001およびMQ002で処理した細胞中ではアクチンの局在が破壊されているようであることを示している。アクチンはMQ001およびMQ002と共局在しているようであり、MQ001およびMQ002でのMCF−7細胞の処理は、細胞のアクチン動態の破壊を引き起こし、細胞構造の崩壊をもたらし得ることを示唆している。位相差顕微鏡法による画像(図13A、右パネル)は、対照と比較して、MQ001およびMQ002で処理したMCF−7細胞中でERが歪んでいるようであることを示している。さらに、細胞の免疫蛍光画像は、MQ001およびMQ002ペプチドが、処理した細胞中のERに局在するようであることを示している。
細胞形態およびタンパク質局在化を評価するための追加の実験を上記のように実施した。いくつかの研究では、ERマーカーであるカルネキシン、リソソームマーカーおよび自食作用を媒介するタンパク質LC3を標識するための抗体でも、細胞を染色した。結果は、MQ001とMQ002とが対照細胞と比較してERの構造を破壊しているようであり、さらに、MQ001とMQ002の両方がMCF−7細胞中でERに局在しているようであることを示している(図14A)。
BI−1調節ペプチドで処理したがん細胞での細胞死が自食作用によって媒介されているかどうかを評価するために、抗微小管関連タンパク質1軽鎖3(LC3)抗体を使用して、細胞を蛍光的に探索した。LC3は、自食作用の際のオートファゴソーム形成に関与している。図14Bの結果は、対照(CPP)での処理後ならびにMQ001およびMQ002での処理後に、LC3が細胞全体に拡散していることを示す。LC3は、BI−1調節ペプチドでの処理後、がん細胞中のオートファゴソームに局在しておらず、MQ001およびMQ002によって誘導される細胞死がこれらの細胞中での自食作用によって媒介されていないことを示している。染色された細胞の追加の画像は、BI−1調節ペプチドMQ16Cでの処理がMCF−7細胞中でリソソームの形成を誘導することを示している(図14C)。
BI−1調節ペプチドMQ001およびMQ002での処理が、小胞体ストレス応答(UPR)として知られるERストレス応答を介してがん細胞での細胞死を誘導するかどうかを評価するために、JNK、ERK1/2およびBcl−2のリン酸化の増加に関して、MQ001およびMQ002で処理した細胞からの溶解産物をウエスタンブロットによって評価した。UPRによって誘導される転写因子CHOPの活性化を、PCRによってさらに評価した。結果は、MQ001およびMQ002での処理がJNKのリン酸化の増加をもたらさず(図15A)、CHOPのわずかな活性化のみをもたらすことを実証した(図15B)。MQ001およびMQ002はMCF−10F細胞中でERK1/2リン酸化を誘導し(図15A)、これはROS産生を下方調節し、ミトコンドリアの透過性を阻害することによって細胞の生存を促進する上で重要であることが示されている(Kimら、Biochim Biophys Acta 1823:876−888,2012)。MQ001またはMQ002で処理した後のMCF−7細胞では、ERKリン酸化の上昇は観察されなかった(図15A)。
MQ001およびMQ002がUPRの活性化を抑制することを確認するために、アポトーシス抑制性のBcl−2を上方調節してアポトーシスを阻害するUPR転写因子であるXBP−1のIRE1スプライシングによって媒介される抗アポトーシス遺伝子の上方調節を評価した。MQ001およびMQ002処理は、Bcl−2またはBcl−xLの発現にいかなる変化ももたらさず(図15B)、MQ001およびMQ002ががん細胞中でIRE1を阻害するという考えを支持している。さらに、MQ001またはMQ002での処理後、Bcl−2またはBcl−xLのリン酸化の増加も減少も観察されなかった(図15C)。
MQ001またはMQ002での処理後に破壊されたER形態を有するMCF−7細胞、およびMQ001またはMQ002での処理後に凝縮した核を有するMCF−7細胞(両方とも96時間にわたって)をカウントした。図15Dは、免疫蛍光によってカウントされた、核凝縮を伴う細胞のカウント(黒い棒)上に重ねたER破壊(白い棒)の定量を示す。MQ001およびMQ002で処理した細胞は、同様のER分解率を示し、対照よりも有意に高い核凝縮を有し、どちらも時間の経過とともに増加した(図15D)。
[実施例10]例示的なBI−1調節ペプチドでの処理は、ヒト乳がんのマウスモデルにおいて腫瘍のサイズおよび体積を95%より多く減少させた。
乳がんの生存と腫瘍形成におけるBI−1の役割を評価するために、ルミナルA型MCF−7またはベーサルMDA−MB−231ヒト乳癌細胞のいずれかを8週齢のbalb/c雌マウスに注射した。原発腫瘍がマウス中に定着することを可能にする成長期間の後に、MQ001、対照またはプラセボのいずれかで5日間腫瘍を処置した。MQ001で処置された腫瘍は、処置から20日以内に腫瘍のサイズと体積が有意に減少した(図16A)。MQ001で処置されたマウスは、当初、体重が減少したが、処置の期間中に体重減少が大幅に回復した(図16B)。主要臓器の毒性は、MQ001処置後のH&E染色によって評価した。主要臓器のいずれにおいても、出血やその他の毒性の兆候(indication)は観察されなかった(図17)。
[実施例11]例示的なBI−1調節ペプチドの安定性評価
ヒト、マウスおよび非ヒト霊長類(NHP)血漿中でのMQ001の安定性を、本明細書に記載の方法に従ってインビトロで評価した。結果は、ヒト血漿中での50時間のインキュベーション後にも、MQ001の約50%が無傷のままであることを実証する(図18A)。
MQ001の安定性は、本明細書に記載の方法に従ってミクロソーム中においても評価した。結果は、MQ001の約40%が6時間後にミクロソーム中で無傷のままであることを示している(図18B)。
9.均等物および参照による組み込み
好ましい実施形態および様々な代替実施形態を参照して、本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明中の形態および細部の様々な変更を行うことができることを理解する。
本明細書の本文内に引用されているすべての参考文献、発行された特許および特許出願は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
10.非公式の配列表
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Claims (73)

  1. (a)Baxインヒビター−1(BI−1)調節ドメインと;必要に応じて、
    (b)標的化ドメインと;
    を含む、単離されたペプチド。
  2. 前記BI−1調節ドメインが、
    配列番号22の配列もしくは配列番号22の配列と1つ以下のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチドセグメント;および/または
    配列番号23の配列もしくは配列番号23の配列と1つ以下のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチドセグメント;
    を含む、請求項1に記載の単離されたペプチド。
  3. 前記BI−1調節ドメインが、配列番号22および/または配列番号23の配列を有するペプチドセグメントを含む、請求項2に記載の単離されたペプチド。
  4. 前記BI−1調節ドメインが、配列番号22の配列を有するペプチドセグメントと配列番号23の配列を有するペプチドセグメントとを含む、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  5. 前記配列番号22の配列を有する前記セグメントが、前記配列番号23の配列を有する前記セグメントに対してアミノ末端側にある、請求項4に記載の単離されたペプチド。
  6. 前記BI−1調節ドメインが、配列番号22および配列番号23の配列を有するセグメントを含み、前記配列番号22および配列番号23の配列がセグメント内で重複する、請求項4に記載の単離されたペプチド。
  7. 前記BI−1調節ドメインが配列番号16の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  8. 前記BI−1調節ドメインが配列番号17の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  9. 前記BI−1調節ドメインが配列番号18の配列セットを有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  10. 前記BI−1調節ドメインが配列番号19の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  11. 前記BI−1調節ドメインが配列番号20の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  12. 前記BI−1調節ドメインが配列番号21の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  13. 前記BI−1調節ドメインが配列番号24の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  14. 前記BI−1調節ドメインが配列番号25の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  15. 前記BI−1調節ドメインが配列番号26の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  16. 前記BI−1調節ドメインが配列番号27の配列を有する、請求項3に記載の単離されたペプチド。
  17. 前記BI−1調節ドメインがBI−1タンパク質に結合することができる、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  18. 前記BI−1調節ドメインが、配列番号13のアミノ酸配列内のBI−1タンパク質内の部位に結合することができる、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  19. 前記ペプチドをリポソームに結びつけることができる、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  20. 前記ペプチドをナノ粒子にコンジュゲートすることができる、先行する請求項のいずれか一項に記載の単離されたペプチド。
  21. 前記標的化ドメインが細胞透過性ペプチド(CPP)、抗体または抗体の断片である、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  22. 前記標的化ドメインが腫瘍関連抗原を結合することができる、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  23. 前記標的化ドメインが前記ペプチドのアミノ末端にある、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  24. 前記標的化ドメインが前記ペプチドのカルボキシ末端にある、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  25. 前記ペプチドが5〜400アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  26. 前記ペプチドが8〜40アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  27. 前記ペプチドが15〜45アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  28. 前記ペプチドが22〜50アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  29. 前記ペプチドが30〜60アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  30. 前記ペプチドが45〜75アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  31. 前記ペプチドが60〜100アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  32. 前記ペプチドが80〜110アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  33. 前記ペプチドが280〜320アミノ酸の長さである、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  34. 配列番号19〜23および48〜87のいずれか1つの配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離されたペプチド。
  35. 配列番号19の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34記載の単離されたペプチド。
  36. 配列番号20の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の単離されたペプチド。
  37. 配列番号21の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の単離されたペプチド。
  38. 配列番号22の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の単離されたペプチド。
  39. 配列番号23の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の単離されたペプチド。
  40. 前記ペプチドが化学修飾をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  41. 前記化学修飾がリン酸化、グリコシル化および/または脂質化である、請求項40に記載の単離されたペプチド。
  42. 前記化学修飾が脂肪酸の共有結合である、請求項41に記載の単離されたペプチド。
  43. 前記化学修飾が末端アミン基の化学的封鎖である、請求項40に記載の単離されたペプチド。
  44. 前記化学修飾が末端カルボキシ基の化学的封鎖である、請求項40に記載の単離されたペプチド。
  45. 前記ペプチドがFcポリペプチドまたはドメインをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  46. 前記ペプチドが非ペプチドリンカーをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  47. 前記ペプチドが1またはそれを超えるPEG分子にコンジュゲートされている、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  48. 前記単離されたペプチドが哺乳動物細胞の形質膜を通過することができる、先行する請求項のいずれかに記載の単離されたペプチド。
  49. 前記細胞がヒト細胞である、請求項48に記載の単離されたペプチド。
  50. 先行する請求項のいずれかに記載のペプチドと薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
  51. 非経口投与に適している、請求項50に記載の医薬組成物。
  52. 静脈内投与に適している、請求項51に記載の医薬組成物。
  53. 皮下投与に適している、請求項51に記載の医薬組成物。
  54. 有効成分の濃度が100nMまたはそれを超える、請求項47〜50のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  55. 前記薬学的に許容され得る担体が、前記ペプチドの溶解度を増加させるのに適している、請求項47〜51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  56. 単回投与プレフィルドシリンジ内にある、請求項47〜52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  57. 増殖性疾患を有する対象を処置する方法であって、有効量の、先行する請求項のいずれかに記載のペプチドまたは医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
  58. 前記増殖性疾患ががんである、請求項57に記載の方法。
  59. 前記がんが、乳がん、卵巣がん、肺がん、子宮がんおよび結腸がんからなる群の少なくとも1つである、請求項58に記載の方法。
  60. 前記がんが乳がんである、請求項58または59に記載の方法。
  61. 前記投与することが、前記対象の細胞中の細胞質ゾルのカルシウムレベルの増加をもたらす、請求項57〜60のいずれか一項に記載の方法。
  62. 前記投与することが、前記対象の細胞中のHイオンの細胞質ゾル濃度の増加をもたらす、請求項57〜61のいずれか一項に記載の方法。
  63. 前記投与することが、前記対象における新生物性細胞におけるミトコンドリア膜の透過性の増加をもたらす、請求項57〜62のいずれか一項に記載の方法。
  64. 前記投与することが、前記対象における新生物性細胞の死を誘導する、請求項57〜63のいずれか一項に記載の方法。
  65. 前記投与することが、前記対象における新生物性細胞のアポトーシスおよび/またはパラトーシスを誘導する、請求項57〜64のいずれか一項に記載の方法。
  66. 前記ペプチドまたは前記医薬組成物が静脈内投与によって投与される、請求項54〜65のいずれか一項に記載の方法。
  67. 前記ペプチドまたは前記医薬組成物が皮下投与によって投与される、請求項54〜65のいずれか一項に記載の方法。
  68. 前記ペプチドまたは前記医薬組成物が、脳がんの処置のためにくも膜下腔内または大槽内投与によって投与される、請求項57〜58のいずれか一項に記載の方法。
  69. 第2の有効量のさらなる処置を投与することをさらに含む、請求項57〜68のいずれか一項に記載の方法。
  70. 前記さらなる処置が、化学療法剤、放射線処置および抗体または抗体断片からなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
  71. 前記対象が哺乳動物である、請求項57〜70のいずれか一項に記載の方法。
  72. 前記対象がヒトである、請求項71に記載の方法。
  73. 請求項1〜49のいずれか一項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
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