詳細な説明
別途定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法及び他の科学用語は、当業者に遍く理解されている意味を有することが意図されている。いくつかの事例において、遍く理解されている意味を有する用語が、明確にするために、及び/または参照容易性を期して、本明細書中に定義されている。そのような定義を本明細書中に含めることは、必ずしも、当該技術分野において遍く理解されている定義と相違することを表すものと解釈すべきではない。本明細書で説明または参照される技法及び手順は、概ねよく理解されており、当業者によって従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載の繁用されている分子クローニング方法論を使用して遍くに採用されている。市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は、別途注記のない限り、製造元が定義したプロトコール及び条件に従って適宜に遂行されるのが、一般的である。
本明細書において、文脈上別の意味を示すことが明白でない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には、複数の指示対象が含まれる。「含む(include)」、「のような(such as)」及びそれらに類するものの用語は、特に明記されていない限り、制限なく包含を伝達することを意図としたものである。
本明細書において、「含む」という用語は詳細には、特に別段の指示がない限り、列挙された要素「からなる」及び「から本質的になる」実施形態も含む。例えば、「ダイアボディを含む」多重特異的ABPには、「ダイアボディからなる」多重特異的ABPと、「ダイアボディから本質的になる」多重特異的ABPとが、含まれる。
「約」という用語は、指示された値、ならびにその値を超える及びその値未満の値の範囲を、指示し且つ包含する。或る特定の実施形態において、「約」という用語は、指定された値±10%、±5%、または±1%を指示する。或る特定の実施形態において、該当する場合、「約」という用語は、指定された値(複数可)±その値(複数可)の1つの標準偏差を指示する。
「免疫グロブリン」という用語は、1対の軽(L)鎖と1対の重(H)鎖の構造的に関連するタンパク質のクラスで、概ね2対のポリペプチド鎖を含むものを指す。「無傷の免疫グロブリン」において、これら4つの鎖はいずれも、ジスルフィド結合によって相互接続されている。免疫グロブリンの構造は、十分に特性評価されてきた。例えば、Paul,Fundamental Immunology 7th ed.,Ch.5(2013)Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PAを参照のこと。簡単に言うと、各重鎖は、典型的に、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とを含む。重鎖定常領域は、典型的に、CH1、CH2、及びCH3と略される3つのドメインを備える。各軽鎖は、典型的に、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、典型的に、CLと略される1つのドメインを備える。
「抗原結合タンパク質」または「ABP」という用語は、その最も広範な意味にて本明細書中に使用されており、抗原またはエピトープに対し特異的に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを備える、或る特定のタイプの分子を含む。
いくつかの実施形態において、ABPは、抗体を含む。いくつかの実施形態において、ABPは、抗体からなる。いくつかの実施形態において、ABPは、抗体から本質的になる。ABPには、完全な抗体(完全な免疫グロブリンなど)、抗体断片、ABP断片、及び多重特異性抗体が含まれる。いくつかの実施形態において、ABPは、代替足場を含む。いくつかの実施形態において、ABPは、代替足場からなる。いくつかの実施形態において、ABPは、代替足場から本質的になる。いくつかの実施形態において、ABPは、抗体断片を含む。いくつかの実施形態において、ABPは、抗体断片からなる。いくつかの実施形態において、ABPは、本質的に抗体断片からなる。いくつかの実施形態において、ABPは、TCRまたはその抗原結合部分を備える。いくつかの実施形態において、ABPは、TCRまたはその抗原結合部分からなる。いくつかの実施形態において、ABPは、本質的にTCRまたはその抗原結合部分からなる。いくつかの実施形態では、CARがABPを含む。「HLA−PEPTIDE ABP」、「抗HLA−PEPTIDE ABP」または「HLA−PEPTIDEに対し特異的なABP」は、抗原HLA−PEPTIDEに対し特異的に結合する、本明細書中に提供されているようなABPである。ABPは、B細胞(例えば、抗体)またはT細胞(例えば、TCR)に由来する可変領域のような可変領域を介して抗原またはエピトープに対し特異的に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを備える、タンパク質を具備する。
本明細書において「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用されており、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む。例としては、無傷の抗体及び機能的(抗原結合)抗体断片、例えば、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、抗原に対し特異的に結合できる可変重鎖(VH)領域、一本鎖抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、ならびに単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片が挙げられる。この用語には、遺伝子操作及び/またはその他の方法で修飾された免疫グロブリンの形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性、抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ(タンデムジ−scFv、タンデムトリ−scFv)が包含される。別途明記されていない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含するものと理解すべきである。また、この用語には、無傷または全長抗体、例えば、IgGならびにそのサブクラスであるIgM、IgE、IgA及びIgDをはじめとする、任意のクラスまたはサブクラスの抗体が包含される。
本明細書において、「可変領域」とは、組み換え事象から生する可変ヌクレオチド配列を指す。B細胞またはT細胞(例えば、活性化T細胞もしくは活性化B細胞)由来の免疫グロブリンまたはT細胞受容体(TCR)配列のV、J及び/またはD領域を備え得る。
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原またはエピトープに対し特異的に結合する能力を有するABPの部分を意味する。ABPの抗体VH−VL二量体によって形成される抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインの一例である。抗原結合ドメインのもう1つの例は、アドネクチンの第10のフィブロネクチンIII型ドメインからの或る特定のループの多様化によって形成される、抗原結合ドメインである。抗原結合ドメインは、重鎖からの抗体CDR1、2及び3をこの順序で含む場合もあれば、軽鎖からの抗体CDR1、2及び3をこの順序で含む場合もある。抗原結合ドメインは、TCR CDR(例えば、αCDR1、αCDR2、αCDR3、βCDR1、βCDR2、及びβCDR3)を含み得る。TCR CDRは、本明細書中に記載されている。
抗体のVH領域及びVL領域は、超可変領域(別称:「超可変領域(HVR)」;「相補性決定領域(CDR)とも呼称される」)に更に細分化される場合があり、これらのHVRには、高度に保存された領域が点在している。高度に保存された領域は、フレームワーク領域(FR)と呼称されている。各VH及びVLは、通常、3つの抗体CDRと4つのFRとを含む。これらの配置されている順序(N末端からC末端の順序)は、次の通り:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4である。抗体のCDRは抗原結合に関与しており、ABPの抗原特異性及び結合親和性に影響を与える。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th ed.(1991)Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDを参照のこと。この文献は、その全体が、参照により援用されている。
任意の脊椎動物種由来の軽鎖は、その定常ドメインの配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼称される2つのタイプのうちのどちらか一方に対し割り当てられ得る。
任意の脊椎動物種由来の重鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5通りのクラス(またはアイソタイプ)のいずれか1つに対し割り当てられ得る。
これらのクラスは、それぞれα、δ、ε、γ及びμとも呼称される。IgG及びIgAクラスは、配列及び機能の違いに基づいて、サブクラスに更に分類される。ヒトにおいて発現するサブクラスは、次の通り:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2である。
抗体CDRのアミノ酸配列境界は、数多くある公知の番号付けスキームのいずれかを使用して、当業者により決定され得る。このスキームの編者としては、上記のKabat et al.(「Kabat」番号付けスキーム);Al−Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.,273:927−948(「Chothia」番号付けスキーム);MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.262:732−745(「Contact」番号付けスキーム);Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27:55−77(「IMGT」番号付けスキーム)、及びHonegge and Pluckthun,J.Mol.Biol.,2001,309:657−70(「AHo」番号付けスキーム)が挙げられる。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
Kabat及びChothiaスキームによって同定された、抗体CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2、及びCDR−H3の位置は、表20に提供されている。CDR−H1の場合、KabatとChothiaの両方の番号付けスキームを使用して、残基の番号付けが提供されている。
抗体CDRは、例えばABP番号付けソフトウェアを使用して割り当てることが可能である。例えば、Abnumの場合、本ソフトウェアが、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で入手可能である。抗体CDRは、Abhinandan and Martin,Immunology,2008,45:3832−3839,に記載されており、該文献は、その全体が参照により援用されている。
(表20)CDRにおけるKabat及びChothia番号付けスキームによる残基
*CDR−H1のC末端は、Kabat番号付け規則を使用して番号付けされている場合、CDR長に応じてH32とH34との間で異なる。
「EU番号付けスキーム」は通例、ABP重鎖定常領域の残基(例えば、上記のKabat et al.に報告されているもの)を指す場合に使用される。別途明記されていない限り、EU番号付けスキームは、本明細書に記載のABP重鎖定常領域の残基を指す場合に使用される。
「全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において同義に使用されており、天然に存在する抗体構造と実質的に同様な構造を有する抗体で、Fc領域を備える重鎖を有する抗体を指す。例えば、「全長抗体」は、IgG分子を指すために使用されている場合、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む抗体とされる。
TCR CDRのアミノ酸配列境界は、数多くある公知の番号付けスキームのいずれかを使用して、当業者により決定され得る。これらの番号付けスキームとしては、限定されるものではないが、LeFranc,M.−P,Immunol Today.1997 Nov;18(11):509;Lefranc,M.−P.,”IMGT Locus on Focus:A new section of Experimental and Clinical Immunogenetics”,Exp.Clin.Immunogenet.,15,1−7(1998);Lefranc and Lefranc,The T Cell Receptor FactsBook;and M.−P.Lefranc/Developmental and Comparative Immunology 27(2003)55−77に記載されているIMGTの一意の番号付けが挙げられる。該文献はいずれも、その全体が、参照により援用されている。
「ABP断片」は、無傷のABPの抗原結合または可変領域のような、無傷のABPの一部を含む。ABP断片としては、例えば、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、scFv(sFv)断片、及びscFv−Fc断片が挙げられる。ABPの断片には、抗体断片が包含される。抗体断片としては、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、scFv(sFv)断片、scFv−Fc断片、及びTCR断片が挙げられる。
「Fv」断片には、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの非共有結合で連結された、二量体が含まれる。
「Fab」断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインだけでなく、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、例えば、組み換え法により生成される場合もあれば、または全長ABPのパパイン消化により生成される場合もある。
「F(ab’)2」断片は、ヒンジ領域の近くで、ジスルフィド結合によって結合された2つのFab’断片が含まれている。「F(ab’)2」は、例えば、組み換え法により生成される場合もあれば、または無傷のABPのペプシン消化により生成される場合もある。F(ab’)断片は、例えば、β−メルカプトエタノールで処理することにより、解離させることが可能である。
「単鎖Fv」断片または「sFv」断片または「scFv」断片は、単一ポリペプチド鎖中にVHドメイン及びVLドメインを備える。VH及びVLは通常、ペプチドリンカーを介して連結される。出典:Pluckthun A.(1994)。リンカーとしては任意の好適なものを使用することができる。いくつかの実施形態では、リンカーを、(GGGGS)nとし、いくつかの実施形態では、n=1、2、3、4、5、または6としている。出典:ABPs from Escherichia coli.In Rosenberg M.& Moore G.P.(Eds.),The Pharmacology of MonoclonalABPs vol.113(pp.269−315)。Springer−Verlag,New York。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
「scFv−Fc」断片は、Fcドメインに付着したscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC末端に結合し得る。scFv内での可変ドメインの配向(つまり、VH−VLまたはVL−VH)に応じて、VHまたはVLの後にFcドメインが続くことがあり得る。Fcドメインは、当該技術分野において公知の、または本明細書中に記載されている任意の好適なものを、使用することができる。いくつかの事例において、FcドメインはIgG4 Fcドメインを備える。
「単一ドメイン抗体」という用語は、ABPの或る可変ドメインが他の可変ドメインの介在なしに抗原に対して特異的に結合する、分子を指す。単一ドメインABP、及びその断片については、Arabi Ghahroudi et al.,FEBS Letters,1998,414:521−526、及びMuyldermans et al.,Trends in Biochem.Sci.,2001,26:230−245に記載されている。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。単一ドメインABPは、sdAbsまたはナノボディとしても公知である。
「Fc領域」または「Fc」という用語は、天然に存在する抗体において、Fc受容体及び補体系の特定のタンパク質と相互作用する免疫グロブリン重鎖の、C末端領域を意味する。様々な免疫グロブリンのFc領域の構造、及びその構造内に含まれるグリコシル化部位は、当該技術分野において公知である。出典:Schroeder及びCavacini,J.Allergy Clin.Immunol.,2010,125:S41−52。該文献は、その全体が、参照により援用されている。Fc領域は、天然に存在するFc領域とされる場合もあれば、あるいは当該技術分野または本開示における他の箇所に記載されているような修飾Fc領域とされる場合もある。
「代替足場」という用語は、1つ以上の領域が多様化して、抗原またはエピトープに対し特異的に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを生成し得る、分子を指す。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、抗原またはエピトープに結合するドメインであり、その特異性及び親和性はABPと同等とされる。例示的な代替足場としては、フィブロネクチン(例えば、Adnectins(商標))、β−サンドイッチ(例えば、iMab)、リポカリン(例えば、Anticalins(登録商標))、EETI−II/AGRP、BPTI/LACI−D1/ITI−D2(例えば、Kunitzドメイン)、チオレドキシンペプチドアプタマー、プロテインA(例えば、Affibody(登録商標))、アンキリンリピート(例えば、DARPins)、γ−B−クリスタリン/ユビキチン(例えば、Affilins)、CTLD3(例えば、テトラネクチン)、Fynomers、及び(LDLR−Aモジュール)(例えば、Avimers)から誘導されたものが挙げられる。代替足場の追加的な情報については、Binz et al.,Nat.Biotechnol.,2005 23:1257−1268;Skerra,Current Opin.in Biotech.,2007 18:295−304、及びSilacci et al.,J.Biol.Chem.,2014,289:14392−14398に提供されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。代替足場は、ABPの一種である。
「多重特異性ABP」とは、2つ以上の異なる抗原結合ドメインを備えるABPで、集合的に2つ以上の異なるエピトープに対し特異的に結合するものを言う。2つ以上の異なるエピトープは、同じ抗原上のエピトープ(例えば、細胞によって発現される単一のHLA−PEPTIDE分子)、あるいは、異なる抗原上のエピトープ(例えば、同じ細胞によって発現される異なるHLA−PEPTIDE分子、またはHLA−PEPTIDE分子及び非HLA−PEPTIDE分子)であり得る。いくつかの態様において、多特異性ABPは2つの異なるエピトープに結合する(すなわち、「二重特異性ABP」である)。いくつかの態様において、多特異性ABPは3つの異なるエピトープに結合する(すなわち、「三重特異性ABP」である)。
「単一特異性ABP」とは、単一エピトープに対し特異的に結合する1つ以上の結合部位を備える、ABPである。単一特異性ABPの例は、二価でありながらも(すなわち、2つの抗原結合ドメインを有しながらも)、2つ各抗原結合ドメインの各々にある同じエピトープを認識する、天然に存在するIgG分子である。結合特異性は、任意の好適な原子価内に存在し得る。
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団からの抗体を指す。実質的に均一な抗体の集団は、実質的に類似し、同じエピトープ(複数可)に結合する抗体を含み、ただし、モノクローナル抗体の産生中に通常生じる可能性のある変異体を除く。そのような変異体は、一般に少量でのみ存在する。モノクローナル抗体は、典型的に、複数の抗体から単一の抗体を選択することを含むプロセスによって得られる。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローン、または他の組み換えDNAクローンのプールなど、複数のクローンからの一意なクローンを選択することであり得る。選択された抗体を更に変更して、例えば、標的に対する親和性を改善し(「親和性成熟」)、抗体をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、及び/または対象におけるその免疫原性を低下させることも可能である。
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖及び/または軽鎖の残部が異なる供給源または種に由来する、抗体を指す。
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含む、キメラ抗体である。ヒト化抗体とは一般に、1つ以上のCDRからの残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)の1つ以上のCDRからの残基で置き換えられる、ヒト抗体(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、任意の好適な非ヒト抗体、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、または所望の特異性、親和性もしくは生物学的効果を有する非ヒト霊長類抗体であり得る。いくつかの実例において、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基は、ドナー抗体からの対応するフレームワーク領域残基で置換される。また、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにおいても見られない残基を、ヒト化抗体に含めることも可能である。そのような修飾が、抗体機能を更に洗練させることを目的に施される場合がある。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,1986,321:522−525;Riechmann et al.,Nature,1988,332:323−329、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992,2:593−596を参照のこと。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
「ヒト抗体」とは、ヒトまたはヒト細胞によって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものであるか、あるいは、ヒト抗体レパートリーまたはヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来するもの(例えば、ヒト供給源から得られたかまたは新規にデザインされたもの)である。ヒト抗体とは、特にヒト化抗体を除外したものを言う。
「親和性」とは、分子(例えば、ABP)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原またはエピトープ)との間の非共有相互作用の合算の強さを指す。別途明記されていない限り、本明細書中に用いられている「親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、ABPと抗原またはエピトープ)どうしの間での1:1の相互作用が反映された、生来的な結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、解離平衡定数(KD)で表すことが可能である。解離平衡定数に寄与する速度論的成分については、以下に詳述されている。親和性は、当該技術分野において公知の一般的な方法によって測定することが可能である。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジー(BIACORE(登録商標)など)またはバイオレイヤーインターフェロメトリー(FORTEBIO(登録商標)など)のような、本明細書に記載の方法が挙げられる。
「結合する」、「特異的結合」、「特異的に結合する」、「特異的に結合する」、「選択的に結合する」及び「選択的に結合する」という用語は、ABPから標的分子への結合という点で、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープが、非特異的または非選択的な相互作用(例えば、非標的分子との相互作用)とはかなり異なる結合を意味する。特異的結合の測定は、例えば、標的分子への結合を測定し、これを非標的分子に対する結合と比較することにより、行うことが可能である。また、特異的結合は、標的分子に認識されたエピトープを模倣する対照分子との競合によっても、判別することが可能である。その事例において、ABPの標的分子に対する結合が対照分子により競合的に阻害される場合、特異的結合が示唆される。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約50%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約40%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約30%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約20%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約10%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約1%未満とされる。いくつかの態様において、非標的分子に対するHLA−PEPTIDE ABPの親和性は、HLA−PEPTIDEに対する親和性の約0.1%未満とされる。
本明細書中に用いられている「kd」(sec−1)という用語は、特定のABP−抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値は、koff値とも呼称される。
本明細書中に用いられている「ka」(M−1×sec−1)という用語は、特定のABP−抗原相互作用の結合速度定数を指す。この値は、kon値とも呼称される。
本明細書中に用いられている「KD」(M)という用語は、特定のABP−抗原相互作用の解離平衡定数を指す。KD=kd/ka。いくつかの実施形態では、KDが、そのようなABPとその抗原との間の相互作用に対応しているという観点から、ABPの親和性が説明される。明確にするために、当該技術分野において公知であるように、KD値が小さいほど親和性相互作用が高いことを示し、KD値が大きいほど親和性相互作用が低いことを示す。
本明細書中に用いられている「KA」(M−1)という用語は、特定のABP−抗原相互作用の結合平衡定数を指す。KA=ka/kd。
「免疫複合体」は、1つ以上の異種分子(複数可)、例えば、治療剤(サイトカインなど)または診断剤に接合された、ABPである。
「Fcエフェクター機能」とは、Fc領域を有するABPのFc領域によって媒介される生物学的活性を指す。これらの活性はアイソタイプに応じて異なる場がある。ABPエフェクター機能の例としては、補体依存性細胞毒性(CDC)を活性化するためのC1q結合、ABP依存性細胞毒性(ADCC)を活性化するためのFc受容体結合、及びABP依存性細胞貪食(ADCP)が挙げられる。
「〜と競合する」または「〜と競合する」という用語が、本明細書で2つ以上のABPの文脈で使用される場合、2つ以上のABPが抗原(例えば、HLA−PEPTIDE)に対する結合について競合することを示す。或る例示的なアッセイでは、HLA−PEPTIDEを表面に被着させ、第1のHLA−PEPTIDE ABPと接触させてから、第2のHLA−PEPTIDE ABPを添加する。別の例示的なアッセイでは、第1のHLA−PEPTIDE ABPを表面に被着させ、HLA−PEPTIDEと接触させてから、第2のHLA−PEPTIDE ABPを添加する。いずれかのアッセイにおいて、第1のHLA−PEPTIDE ABPの存在が第2のHLA−PEPTIDE ABPの結合を低減させる場合、ABPどうしが互いに競合している。「〜と競合する」という用語は、あるABPが別のABPの結合を低減するABPの組み合わせで、ただしABPを逆の順序で添加したときに競合が観察されない、ABPの組み合わせも包含する。一方、いくつかの実施形態において、第1及び第2のABPは、両ABPの添加された順序には関係なしに、互いの結合を阻害し合う。いくつかの実施形態では、或るABPが、別のABPのその抗原に対する結合を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減させる。競合アッセイで使用されるABPの濃度は、当業者は、HLA−PEPTIDEに対するABPの親和性及びABPの価数に基づいて選択することができる。この定義に記載されているアッセイは例証であって、当業者は、任意の好適なアッセイを利用して、ABPが互いに競合するかどうかを決定することができる。好適なアッセイは、例えば、Cox et al.,“Immunoassay Methods,” in Assay Guidance Manual [Internet],Updated December 24,2014(www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/;accessed September 29,2015);Silman et al.,Cytometry,2001,44:30−37、及びFinco et al.,J.Pharm.Biomed.Anal.,2011,54:351−358に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
「エピトープ」という用語は、ABPに対し特異的に結合する抗原の一部を意味する。エピトープは、多くの場合、表面にアクセス可能なアミノ酸残基及び/または糖側鎖からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。その点で、高次構造及び非高次構造のエピトープの区別は、前者の高次構造エピトープ(すなわち後者の非高次構造エピトープでない)に対する結合が、変性溶媒の存在下では消失する可能性があるという点で、区別される。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基、及び結合に直接的に的に関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。ABPの結合先となるエピトープは、エピトープ決定のための公知の技術(例えば、異なる点変異を有するHLA−PEPTIDE変異体、またはキメラHLA−PEPTIDE変異体に対するABP結合試験)を使用して決定することが可能である。
ポリペプチド配列と参照配列との間のパーセントの「同一性」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後、参照配列のアミノ酸残基と同一であるポリペプチド配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性割合(%)を決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、MEGALIGN(DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGA、またはMUSCLEソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用するといったような、当業者の範囲内である様々な方法で達成することができる。配列を整列させるための適切なパラメーター(例えば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズム)は、当業者であれば決定することができる。
「保存的置換」または「保存的アミノ酸置換」とは、化学的または機能的に類似したアミノ酸によるアミノ酸置換を指す。類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野において周知である。例として表21〜23に提供されるアミノ酸グループは、いくつかの実施形態において互いの保存的置換と見なされる。
(表21)或る特定の実施形態において、互いの保存的置換と見なされる選択されたアミノ酸グループ
(表22)或る特定の実施形態において、互いの保存的置換と見なされる、追加的なアミノ酸グループ
(表23)或る特定の実施形態において、互いの保存的置換と見なされる、更に選択されたアミノ酸グループ
更なる保存的置換は、例えば、Creighton,Proteins:Structures及びMolecular Properties 2nd ed.(1993)W.H.Freeman & Co.,New York,NYに見出すことができる。親ABPのアミノ酸残基の1つ以上の保存的置換を行うことによって生成されるABPは、「保存的に修飾された変異体」と呼称される。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する一般的な20種のアミノ酸を指す。天然アミノ酸には、アラニン(Ala;A)、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C);グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G);ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、及びバリン(Val;V)が包含される。
本明細書中に用いられている「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を増殖させる能力を有する核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびにそのベクターが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが包含される。或る特定のベクターは、該ベクターに対し作動可能に連結されている核酸を発現させるよう、指示する能力を有する。そのようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と呼称されている。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」という用語は同義に使用されており、外因性核酸が導入された細胞、及びそのような細胞の子孫を指す。宿主細胞には、「形質転換体」(または「形質転換細胞」)及び「形質転換体」(または「形質移入細胞」)が包含され、これらにはそれぞれ、一次形質転換または形質移入細胞及びそれらに由来する子孫が包含される。このような子孫は、核酸含有量が親細胞と必ずしも完全に同一であるとは限らず、変異を伴う可能性がある
「治療する」という用語(及び「治療する」または「治療」などのその変形)は、それを必要とする対象における疾患もしくは病態の自然な経過を変えようと試みた際の、臨床的介入を指す。治療は、予防目的、及び臨床病理の経過中、の両方において実施される場合がある。治療による望ましい効果としては、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的影響の軽減、転移の防止、疾患の進行率の低下、疾患状態の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。
本明細書において、「治療有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与したときに疾患または障害を治療するのに有効とされる、本明細書中に提供されているABPまたは医薬組成物の量を指す。
本明細書において、「対象」という用語は、哺乳動物の対象を意味する。例示的な対象としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギ、及びヒツジが挙げられる。或る特定の実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象の疾患または病態は、本明細書中に提供されているABPで治療することが可能である。いくつかの態様において、疾患または病態は、がんである。いくつかの態様において、疾患または病態は、ウイルス感染である。
「添付文書」という用語は、治療薬または診断薬の市販パッケージ(キットなど)に通常含まれている使用説明書を指すために使用されており、そのような治療または診断製品の使用に関する指示、利用能、投与量、管理、併用療法、禁忌及び/または警告に関する情報を含む。
「腫瘍」という用語は、悪性または良性にかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されている場合、相互に排他的ではない。「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、或る程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。いくつかの実施形態において、細胞増殖性疾患は、がんである。いくつかの態様において、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は血液悪性腫瘍である。
「医薬組成物」という用語は、その中に含有されている有効成分の生物活性を対象を治療するのに有効にし得るような形態であって、且つ医薬組成物で提供されている量では対象に対し許容できないほど毒性である追加成分を含有しないものを指す。
「調節する」及び「調節」という用語は、列挙された変数を低減または阻害するか、代替的に、活性化または増加することを指す。
「増加」及び「活性化」という用語は、列挙された変数において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれを超える増分を指す。
「低減させる」及び「阻害する」という用語は、列挙された変数において10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、で2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれを超える減分を指す。
「刺激する」という用語は、受容体シグナル伝達を活性化して、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導することを指す。「アゴニスト」とは、受容体に結合して刺激する実体である。
「拮抗する」という用語は、受容体シグナル伝達の阻害によって、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害することを指す。「アンタゴニスト」とは、受容体に結合して拮抗する実体である。
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で同義に使用される場合があり、任意の長さのヌクレオチドの多量体型、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかまたはその類似体を指す。ポリヌクレオチドとしては、限定されるものではないが、遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義された遺伝子座(遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離DNA、単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーを挙げることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体のような、修飾ヌクレオチドを含み得る。例示的な修飾ヌクレオチドとしては、例えば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−置換アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオN6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6−ジアミノプリンが挙げられる。
単離されたHLA−PEPTIDE標的
主要組織適合性複合体(MHC)は、連結された遺伝子座のグループによってコードされた抗原の複合体である。これら抗原は、マウスではH−2、ヒトではHLAと総称される。MHC抗原の2つの主要なクラスであるクラスIとクラスIIはそれぞれ、組織のタイプと移植の適合性を決定する役割を果たす、一連の細胞表面糖タンパク質を含む。移植反応では、細胞障害性T細胞(CTL)は主にクラスI糖タンパク質に反応し、ヘルパーT細胞は主にクラスII糖タンパク質に反応する。
ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子(本明細書においてHLAクラスI分子と互換的に呼ばれている)は、ほぼ全ての細胞の表面上に発現している。これらの分子は、α−βT細胞受容体との相互作用を介して、そのほとんどが内因性合成タンパク質に由来するペプチドを、例えばCD8+T細胞に提示する際に機能する。クラスI MHC分子は、12kDaの軽鎖β2マイクログロブリンと非共有結合的に会合した46kDaのα鎖で構成されるヘテロ二量体を含む。α鎖は一般に、α1及びα2ドメインを備え、これらのドメインは、HLA制限ペプチドを提示するための溝、及びT細胞のCD8共受容体と相互作用するα3原形質膜貫通ドメインを形成している。図1(従来技術)には、クラスI HLA分子の一般的な構造が描かれている。一部のTCRは、CD8コレセプターとは無関係にMHCクラスIに結合できる(出典:例えば、Kerry SE,Buslepp J,Cramer LA,et al.Interplay between TCR Affinity and Necessity of Coreceptor Ligation:High−Affinity Peptide−MHC/TCR Interaction Overcomes Lack of CD8 Engagement.Journal of immunology(Baltimore,Md:1950)。2003;171(9):4493−4503)。
クラスI MHC制限ペプチド(本明細書中で、互換的にHLA制限抗原、HLA制限ペプチド、MHC制限抗原、制限ペプチド、またはペプチドとも呼称される)は一般的に、MHC分子の対応する結合ポケットと相互作用する約2つまたは3つのアンカー残基を介して重鎖α1−α2溝に結合する。β−2マイクログロブリン鎖は、MHCクラスIの細胞内輸送、ペプチド結合、構造安定性に重要な役割を果たしている。ほとんどのクラスI分子では、MHCクラスI重鎖、ペプチド(自己、非自己、及び/または抗原性)とβ2マイクログロブリンのヘテロ三量体複合体の形成によって、タンパク質が成熟し細胞表面に輸送される。
所与のHLAサブタイプのHLA制限ペプチドへの結合により、例えばT細胞上のTCRまたは抗体もしくはその抗原結合断片などのABPによって特異的に認識され得る固有かつ新規な表面との複合体が形成される。HLA制限ペプチドと複合体を形成したHLAは、本明細書ではHLA−PEPTIDEまたはHLA−PEPTIDE標的と呼称されている。いくつかの事例において、制限ペプチドはHLA分子のα1/α2溝内に位置する。いくつかの事例において、制限ペプチドは、HLA分子の対応する結合ポケットと相互作用する約2つまたは3つのアンカー残基を介してHLA分子のα1/α2溝に結合する。
したがって、HLA−PEPTIDE標的を含む抗原が本明細書中に提供されている。HLA−PEPTIDE標的は、特定のHLAサブタイプと複合体を形成した定義済アミノ酸配列を有する特定のHLA制限ペプチドを含み得る。
本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、がん免疫療法に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、腫瘍細胞の表面上に提示される。本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、ヒト対象の腫瘍細胞によって発現され得る。本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、ヒト対象の集団における腫瘍細胞によって発現され得る。例えば、本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、がんを有するヒト対象の集団で一般的に発現される共有抗原であり得る。
本明細書中に同定されているHLA−PEPTIDE標的は、個々の腫瘍タイプの有病率を有し得る。個々の腫瘍タイプの有病率は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であり得る。個々の腫瘍タイプの有病率は、約0.1%〜100%、0.2〜50%、0.5〜25%、または1〜10%であり得る。
HLA−PEPTIDE標的は通常、ほとんどの正常組織内で発現しないことが、好ましい。例えば、HLA−PEPTIDE標的が、遺伝子型組織発現(GTEx)プロジェクトの組織で発現しない場合もあれば、免疫特権組織または非必須組織でのみ発現される場合もある。例示的な免疫特権組織または非必須組織には、精巣、小唾液腺、子宮頸部及び甲状腺が含まれる。いくつかの事例において、HLA−PEPTIDE標的が、必須組織または非免疫特権組織では発現しないと見なされる可能性があるのは、制限ペプチドが由来する遺伝子の中央値の発現がGTEx試料全体で0.5RPKM(転写産物リード数(キロ塩基)/100万回マッピング済リード数)未満とされる場合、遺伝子がGTEX試料全体で10RPKMを超えて発現しない場合、遺伝子が全ての必須組織試料またはその任意の組み合わせで2つ以下の試料で5RPKM以上で発現した場合である。
HLA−PEPTIDE標的の例示的なHLAクラスIサブタイプ
ヒトには、多くのMHCハプロタイプが存在する(本明細書では、MHCサブタイプ、HLAサブタイプ、MHCタイプ、及びHLAタイプと互換的に呼称されている)。例示的なHLAサブタイプとしては、ほんの一例として、HLA−A*01:01、HLA−A*02:01、HLA−A*02:03、HLA−A*02:04、HLA−A*02:07、HLA−A*03:01、HLA−A*03:02、HLA−A*11:01、HLA−A*23:01、HLA−A*24:02、HLA−A*25:01、HLA −A*26:01、HLA−A*29:02、HLA−A*30:01、HLA−A*30:02、HLA−A*31:01、HLA−A*32:01、HLA−A*33:01、HLA−A*33:03、HLA−A*68:01、HLA−A*68:02、HLA−B*07:02、HLA−B*08:01、HLA−B*13:02、HLA−B*15:01、HLA−B*15:03、HLA−B*18:01、HLA−B*27:02、HLA−B*27:05、HLA−B*35:01、HLA−B*35:03、HLA−B*37:01、HLA−B*38:01、HLA−B*39:01、HLA−B*40:01、HLA−B*40:02、HLA−B*44:02、HLA−B*44:03、HLA−B*46:01、HLA−B*49:01、HLA−B*51:01、HLA−B*54:01、HLA−B*55:01、HLA−B*56:01、HLA−B*57:01、HLA−B*58:01、HLA−C*01:02、HLA−C*02:02、HLA−C*03:03、HLA−C*03:04、HLA−C*04:01、HLA−C*05:01、HLA−C*06:02、HLA−C*07:01、HLA−C*07:02、HLA−C*07:04、HLA−C*07:06、HLA−C*12:03、HLA−C*14:02、HLA−C*16:01、HLA−C*16:02、HLA−C*16:04、及びその全てのサブタイプ(4桁、6桁、および8桁のサブタイプなど)が挙げられる。当業者に知られているように、上記のHLA型の対立遺伝子変異体があり、それらの全てが本発明に包含されている。HLAクラス対立遺伝子の完全なリストは、http://hla.alleles.org/alleles/で検索できる。例えば、HLAクラスI対立遺伝子の完全なリストは、http://hla.alleles.org/alleles/class1.htmlで検索できる。
HLA制限ペプチド
「制限ペプチド」としてのHLA制限ペプチド(本明細書では互換的に参照される)は、腫瘍特異的遺伝子、例えばがん特異的遺伝子のペプチド断片であり得る。がん特異的遺伝子は、がん試料内に発現することが、好ましい。がん試料で異常に発現している遺伝子は、データベースを介して同定できる。データベースの例としては、ほんの一例であるが、以下のものが挙げられる。The Cancer Geonome Atlas(TCGA)Research Network:http://cancergenome.nih.gov/;the International Cancer Genome Consortium:https://dcc.icgc.org/。いくつかの実施形態において、がん特異的遺伝子に関しては、TCGAデータベースの少なくとも5つの試料内で少なくとも10RPKMの発現が観察されている。がん特異的遺伝子は、観察可能な二峰性分布を有し得る。
がん特異的遺伝子では、少なくとも1つのTCGA腫瘍組織で、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100転写物(TPM)を超える発現が観察されることがある。好ましい実施形態において、がん特異的遺伝子は、少なくとも1つのTCGA腫瘍組織で100TPMを超える発現が観察されている。いくつかの事例において、がん特異的遺伝子で、TCGA試料全体の二峰性の発現分布が観察されている。理論に拘束されるものではないが、そのような二峰性の発現パターンは、全ての腫瘍試料のベースラインでの発現は最小限であり且つエピジェネティックな調節異常を経験している腫瘍のサブセットではより高い発現が見られる生物学的モデルと一致している。
がん特異的遺伝子は通常、ほとんどの正常組織内で発現しないことが、好ましい。例えば、がん特異的遺伝子が、遺伝子型組織発現(GTEx)プロジェクトの組織で発現しない場合もあれば、免疫特権組織または非必須組織でのみ発現される場合もある。免疫特権組織または非必須組織の例としては、精巣、小唾液腺、子宮頸部及び甲状腺が挙げられる。いくつかの事例において、がん特異的遺伝子が必須組織または非免疫特権組織では発現しないと見なされる可能性があるのは、がん特異的遺伝子の発現の中央値が、GTEx試料全体で0.5RPKM(転写産物リード数(キロ塩基)/100万回マッピング済リード数)未満とされる場合、遺伝子がGTEX試料全体で10RPKMを超えて発現しない場合、遺伝子が全ての必須組織試料で2つ以下の試料で5RPKM以上で発現した場合、またはこれらの任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、がん特異的遺伝子は、GTExの評価による下記基準を満たしている。(1)脳、心臓、または肺におけるGTEx発現の中央値は、100万あたり0.1転写産物(TPM)未満であり、5TPMを超える試料は1つも存在しないこと。(2)他の必須器官(精巣、甲状腺、小唾液腺を除く)でのGTEx発現の中央値は2TPM未満であり、10TPMを超える試料は1つも存在しないこと。
いくつかの実施形態では、がん特異的遺伝子は、免疫細胞内では一般的に発現する可能性が低い。例えば、がん特異的遺伝子は、インターフェロンファミリー遺伝子ではなく、眼関連遺伝子ではなく、嗅覚または味覚受容体遺伝子ではないし、概日周期に関連する遺伝子でもない(例えば、CLOCK、PERIOD、CRY遺伝子でない)。
制限ペプチドは、腫瘍の表面に提示され得るものが、好ましい。
制限ペプチド残基のサイズは、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、または約15アミノ分子、及び該サイズから導出可能な任意の範囲であり得る。特定の実施形態では、制限ペプチドサイズは、約8、約9、約10、約11、または約12のアミノ分子残基とされる。制限ペプチドは、約5〜15アミノ酸長とされる場合もあれば、好ましくは、約7〜12アミノ酸長とされる場合もあれば、またはより好ましくは、約8〜11アミノ酸長とされる場合もある。
例示的なHLA−PEPTIDE標的
HLA−PEPTIDE標的の例は、表Aに示す通りである。表Aの各行に、各複合体のHLA対立遺伝子及び対応するHLA制限ペプチド配列を示す。ペプチド配列は、表Aの各行に示す各配列からなり得る。代替的に、ペプチド配列は、表Aの各行に示す各配列を含み得る。代替的に、ペプチド配列は、表Aの各行に示す各配列から本質的になり得る。
いくつかの実施形態において、HLA−PEPTIDE標的は、表Aに示す標的である。
いくつかの実施形態において、HLA制限ペプチドは、WT1またはMART1から選択された遺伝子由来のものではない。
制限ペプチドリガンドと会合しないHLAクラスI分子は一般に不安定である。したがって、制限ペプチドとHLA分子のα1/α2溝との会合によって、HLAサブタイプのβ2マイクログロブリンサブユニットとHLAサブタイプのαサブユニットとの非共有結合的会合が安定化し得る。
HLAサブタイプのβ2マイクログロブリンサブユニットとHLAサブタイプのαサブユニットとの非共有結合的会合の安定性は、任意の好適な手段を使用して決定することが可能である。例えば、そのような安定性は、高濃度の尿素(例えば、約8M尿素)にHLA分子の不溶性凝集体を溶解し、例えば、透析による尿素除去など、尿素除去中に制限ペプチドの存在下でHLA分子がリフォールディングする能力を判別することによって、評価することができる。このようなリフォールディングアプローチは、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.89,pp.3429−3433,April 1992に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
他の例において、そのような安定性は、条件付きHLAクラスIリガンドを使用して評価される場合もある。条件付きHLAクラスIリガンドは、一般に短い制限ペプチドとしてデザインされており、HLA分子のα1/α2グルーブに結合することにより、HLAクラスI分子のβ2とαサブユニットの会合を安定化させ、且つ、1つ以上のアミノ酸修飾を具備することにより、条件刺激に曝露されたときに制限ペプチドが開裂するのを可能にしている。条件付きリガンドが開裂された際に、そのような条件付きリガンドが、α1/α2グルーブに結合してHLA分子を安定化する制限ペプチドと交換されない限り、HLA分子のβ2及びαサブユニットが解離する。条件付きリガンドは、公知のHLAペプチドリガンドまたは予測された高親和性HLAペプチドリガンド内にアミノ酸修飾を導入することによってデザインされ得る。また、構造情報が利用可能なHLA対立遺伝子の場合、側鎖の水へのアクセス性を利用して、アミノ酸修飾を導入する位置を選択することも可能である。条件付きHLAリガンドを使用するのが、有利な場合もある。なぜなら、安定したHLA−ペプチド複合体のバッチ調製を可能にし、これを利用して試験制限ペプチドをハイスループットで調査することが可能となるからである。条件付きHLAクラスIリガンド、及び製造方法は、例えば、Proc Natl Acad Sci U S A.2008 Mar 11;105(10):3831−3836;Proc Natl Acad Sci U S A.2008 Mar 11;105(10):3825−3830;J Exp Med.2018 May 7;215(5):1493−1504;Choo,J.A.L.et al.Bioorthogonal cleavage and exchange of major histocompatibility complex ligands by employing azobenzene−containing peptides.Angew Chem Int Ed Engl 53,13390−13394(2014);Amore,A.et al.Development of a Hypersensitive Periodate−Cleavable Amino Acid that is Methionine− and Disulfide−Compatible and its Application in MHC Exchange Reagents for T Cell Characterisation.ChemBioChem 14,123−131(2012);Rodenko,B.et al.Class I Major Histocompatibility Complexes Loaded by a Periodate Trigger.J Am Chem Soc 131,12305−12313(2009)、及びChang,C.X.L.et al.Conditional ligands for Asian HLA variants facilitate the definition of CD8+T−cell responses in acute and chronic viral diseases.Eur J Immunol 43,1109−1120(2013)に記載されている。これらの参照文献は、その全体が参照により援用されている。
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されている(例えば表Aに記載されている)HLA制限ペプチドが、HLA分子のβ2とαサブユニットの会合を安定化させる能力は、条件付きリガンド媒介交換反応及びHLA安定性のアッセイを実行することによって評価される。HLAの安定性は、任意の好適な方法を使用してアッセイできる。それらの方法としては、例えば、質量分析、イムノアッセイ(ELISAなど)、サイズ排除クロマトグラフィー、HLAマルチマー染色、それに続くT細胞のフローサイトメトリー評価などが挙げられる。
HLAサブタイプのβ2マイクログロブリンサブユニットとHLAサブタイプのαサブユニットとの非共有結合的会合の安定性を評価するための方法の例としては、ほかにも、ジペプチドを使用するペプチド交換が挙げられる。ジペプチドを使用したペプチド交換は、例えば、Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Sep 17,110(38):15383−8;Proc Natl Acad Sci U S A.2015 Jan 6,112(1):202−7に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
HLA−PEPTIDE標的を含む有用な抗原が、本明細書中に提供されている。HLA−PEPTIDE標的は、特定のHLAサブタイプ対立遺伝子と複合体を形成した定義済アミノ酸配列を有する特定のHLA制限ペプチドを含み得る。
HLA−PEPTIDE標的は、単離されたものとされる場合もあれば、及び/または実質的に純粋な形態とされる場合もある。例えば、HLA−PEPTIDE標的は、自然環境から単離されたものとされる場合もあれば、あるいは、技術プロセスによって生成されたものとされる場合もある。いくつかの事例において、HLA−PEPTIDE標的は、他のペプチドまたはタンパク質を実質的に含まない形態で提供される。
HLA−PEPTIDE標的は、可溶な形で提供される場合もあり、任意で、組み換えHLA−PEPTIDE標的複合体とされる場合もある。当業者であれば、組み換えHLA−PEPTIDE標的を生成及び精製するための任意の好適な方法を使用することができる。好適な方法としては、例えば、大腸菌発現系、昆虫細胞、及びそれらに類するものを使用することが挙げられる。それ以外に、例えば、無細胞系を使用する合成生産のような方法も、挙げられる。好適な無細胞系の例は、WO2017089756に記載されている。この文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
また、HLA−PEPTIDE標的を含む組成物も、本明細書中に提供されている。
いくつかの事例において、本組成物は、固体支持体に付着したHLA−PEPTIDE標的を含む。固体支持体の例としては、限定されるものではないが、ビーズ、ウェル、メンブレン、チューブ、カラム、プレート、セファロース、磁気ビーズ、及びチップが挙げられる。例示的な固体支持体は、例えば、Catalysts 2018,8,92;doi:10.3390/catal8020092に記載されている。該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
HLA−PEPTIDE標的は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法によって固体支持体に付着させることが可能である。いくつかの事例において、HLA−PEPTIDE標的は、固体支持体に共有結合されている。
いくつかの事例において、HLA−PEPTIDE標的は、親和性結合対を介して固体支持体に付着している。親和性結合対は、通例、2つの分子間の特定の相互作用を伴っていた。その結合パートナー分子に対して親和性を有するリガンドを、固体支持体に共有結合させることができる。したがって、このリガンドは、固定化用の餌として使用される。一般的な親和性結合対としては、例えば、ストレプトアビジンとビオチン、アビジン及びビオチンのほか、銅、ニッケル、亜鉛及びコバルトのような金属イオン含有のポリヒスチジンタグ、ならびにそれらに類するものが挙げられる。
HLA−PEPTIDE標的は、検出可能標識を含み得る。
HLA−PEPTIDE標的を含む医薬組成物。
HLA−PEPTIDE標的を含有する組成物は、医薬組成物であり得る。そのような組成物は、複数のHLA−PEPTIDE標的を含む場合がある。例示的な医薬組成物は、本明細書中に記載されている。本組成物は、免疫応答を誘発する能力を有し得る。本組成物は、アジュバントを含む場合がある。好適なアジュバントの例としては、限定されるものではないが、1018 ISS、ミョウバン、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP−870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM−CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタニドIMS 1312、モンタニドISA 206、モンタニドISA 50V、モンタニドISA−51、OK−432、OM−174、OM−197−MP−EC、ONTAK、PepTelベクターシステム、PLG微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及びその他のウイルス様粒子、YF−17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、ならびにAquila製のQS21スティミュロン(Aquila Biotech、Worcester、Mass.,USA、)で、サポニン、マイコバクテリア抽出物、合成細菌の細胞壁模倣物及び他のプロプラエタリー(例えば、Ribi’s Detox.QuilまたはSuperfos)のアジュバント由来のものが、挙げられる。アジュバントは、不完全フロイントまたはやGM−CSFのようなものが、有用とされる。樹状細胞及びそれらの調製に対し特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)は、これまでにも記載されてきた(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18−27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3−11)。また、サイトカインが使用される場合もある。サイトカインによっては、例えば、TNF−αは、リンパ系組織への樹状細胞の遊走に影響を与えることに直接的に関与していて、樹状細胞がTリンパ球(GM−CSF、IL−1及びIL−4など)用の効率的な抗原提示細胞に成熟するのを、加速させるものもあれば(その全体が本明細書において参照により具体的に援用されている米国特許第5,849,589号)、免疫アジュバント(例えばIL−12)として作用するものもある(Gabrilovich D I,et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.1996(6):414−418)。また、細胞内タンパク質をHLA表面上に発現させ、ペプチドにプロセシングしてHLA上に提示することは、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)によって増強させることが可能である。出典:例えば、York IA,Goldberg AL,Mo XY,Rock KL.Proteolysis and class I major histocompatibility complex antigen presentation.Immunol Rev.1999;172:49−66;及びRock KL,Goldberg AL.Degradation of cell proteins and the generation of MHC class I−presented peptides.Ann Rev Immunol.1999;17:12.739−779。該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
HLA−PEPTIDE ABP
また、本明細書中に開示されているHLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合するABPも、本明細書中に提供されている。
HLA−PEPTIDE標的は、腫瘍細胞を含む任意の好適な標的細胞の表面上に発現する場合がある。
ABPは、ヒト白血球抗原(HLA)−PEPTIDE標的に対し特異的に結合し得るものであり、このHLA−PEPTIDE標的は、HLAクラスI分子と複合体を形成したHLA制限ペプチドを含み、HLA制限ペプチドがHLAクラスI分子のα1/α2ヘテロダイマー部分のペプチド結合溝に位置する。
いくつかの態様において、HLA制限ペプチドの不在下では、ABPは、HLAクラスIに結合しない。いくつかの態様において、ABPは、ヒトMHCクラスIの不在下では、HLA制限ペプチドに結合しない。一部の態様において、ABPは、HLA制限ペプチドと複合体を形成しているヒトMHCクラスIを提示する腫瘍細胞に結合する。任意で、このHLA制限ペプチドは、がんを特徴的付ける腫瘍抗原とされる。
ABPは、HLA−PEPTIDE複合体の各部分(すなわち、HLAと複合体の各部分を表すペプチド)に結合する場合があり、一体的に結合した場合、ペプチド単独またはHLAサブタイプ単独のみで提示される表面とは異なり、ABPとの相互作用及び結合のための新たな標的及びタンパク質表面を形成する。HLAがペプチドに結合することによって、新規の標的及びタンパク質表面が形成されるのが通例はである。ただし、これらの標的及びタンパク質表面は、HLA−PEPTIDE複合体の各部分の不在下では、存在しない。
ABPは、HLAとHLA制限ペプチド(HLA−PEPTIDE)とを含む複合体で、例えば腫瘍に由来するものに対し、特異的に結合し得る。いくつかの態様において、腫瘍に由来するHLA制限ペプチドの不在下では、ABPはHLAに結合しない。いくつかの態様において、ABPは、HLAの不在下では、腫瘍由来のHLA制限ペプチドに結合しない。いくつかの態様において、ABPは、HLAとHLA制限ペプチドとを含む複合体が、腫瘍細胞などの細胞に自然界にて提示された場合、この複合体に結合する。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDEの1つ以上のリガンドに対するHLA−PEPTIDEの結合を調節するものである。
ABPは、表Aに開示されているHLA−PEPTIDE標的のいずれかに対し特異的に結合する場合がある。いくつかの実施形態において、HLA制限ペプチドは、WT1またはMART1から選択された遺伝子に由来するものではない。
より詳細な実施形態において、ABPは、以下:
配列EVDPIGHVYを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプB*35:01;
配列AIFPGAVPAAを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*02:01;
及び配列ASSLPTTMNYを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*01:01
のいずれかから選択されるHLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する。
更に詳細な実施形態において、ABPは以下:
配列EVDPIGHVYから本質的になるHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプB*35:01;配列AIFPGAVPAAから本質的になるHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*02:01、及び配列ASSLPTTMNYから本質的になるHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*01:01のいずれかから選択されるHLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する。
いくつかの実施形態において、ABPは以下:
配列EVDPIGHVYを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプB*35:01;
配列AIFPGAVPAAを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*02:01;
及び配列ASSLPTTMNYを含むHLA制限ペプチドと複合体を形成しているHLAサブタイプA*01:01
のいずれかから選択されるHLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、ABPは、本明細書中に提供されている例示的なABPと競合するABPである。いくつかの態様において、本明細書中に提供されている例示的なABPと競合するABPは、本明細書中に提供されている例示的なABPと同じエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されているABPは、本明細書では「変異体」と呼称されている。いくつかの実施形態では、そのような変異体は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野において公知の方法または本明細書に記載の他の方法により、本明細書中に提供されている配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのような変異体は、本明細書中に提供されている配列に由来するものではなく、例えば、ABPを得るために本明細書中に提供されている方法に従って新規に単離することが可能である。いくつかの実施形態において、変異体は、本明細書中に提供されている配列で、1つ以上の保存的アミノ酸置換が行われる配列のいずれかに由来する。いくつかの実施形態において、変異体は、本明細書中に提供されている配列で、1つ以上の非保存的アミノ酸置換が行われる配列のいずれかに由来する。保存的アミノ酸置換は、本明細書中に記載されている。例示的な非保存的アミノ酸置換としては、J Immunol.2008 May 1;180(9):6116−31に記載されているものが挙げられる。該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。好ましい実施形態において、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を妨害または阻害しない。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を強化し、結果として、機能的変異体の生物活性は、親ABPと比較して増強される。
抗体またはその抗原結合断片を含むABP
ABPは、抗体またはその抗原結合断片を含み得る。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、軽鎖を含む。いくつかの態様において、軽鎖は、κ軽鎖である。いくつかの態様において、軽鎖は、λ軽鎖である。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、重鎖を含む。いくつかの態様において、重鎖は、IgAである。いくつかの態様において、重鎖は、IgDである。いくつかの態様において、重鎖は、IgEである。いくつかの態様において、重鎖は、IgGである。いくつかの態様において、重鎖は、IgMである。いくつかの態様において、重鎖は、IgG1である。いくつかの態様において、重鎖は、IgG2である。いくつかの態様において、重鎖は、IgG3である。いくつかの態様において、重鎖は、IgG4である。いくつかの態様において、重鎖は、IgA1である。いくつかの態様において、重鎖は、IgA2である。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPは、抗体断片を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、抗体断片からなる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、抗体断片から本質的になる。いくつかの態様において、ABP断片は、Fv断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、Fab断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、F(ab’)2断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、Fab’断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、scFv(sFv)断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、scFv−Fc断片である。いくつかの態様において、ABP断片は、単一ドメインABPの断片である。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABP断片は、本明細書中に提供されている例証的なABPに由来するものである。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABP断片は、本明細書中に提供されている例証的なABPに由来するものではなく、例えば、ABP断片を得るために本明細書中に提供されている方法に従って新規に単離することが可能である。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABP断片は、HLA−PEPTIDE標的に結合する能力を保持している。この結合能力は、本明細書中に記載されている1つ以上のアッセイまたは生物学的効果により測定される。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABP断片は、本明細書中に記載されているように、HLA−PEPTIDEがそのリガンドの1つ以上と相互作用するのを防ぐ能力を、保持している。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、モノクローナルABPである。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ポリクローナルABPである。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPは、キメラABPを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、キメラABPからなる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、キメラABPから本質的になる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒト化ABPを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒト化ABPからなる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒト化ABPから本質的になる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒトABPを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒトABPからなる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、ヒトABPから本質的になる。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、代替足場を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、代替足場からなる。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、代替足場から本質的になる。代替足場としては、任意の好適なものを使用することができる。いくつかの態様において、代替足場が、Adnectin(商標)、iMab、Anticalin(登録商標)、EETI−II/AGRP、クニッツドメイン、チオレドキシンペプチドアプタマー、Affibody(登録商標)、DARPin、Affilin、Tetranectin、Fynomer、及びAvimerから選択される。
また、HLA−PEPTIDEに対する結合に関して本明細書中に開示されているABPと競合する、単離されたヒト化、ヒトまたはキメラABPも、本明細書中に開示されている。
また、単離されたヒト化、ヒトまたはキメラABPで、本明細書中に開示されているABPを介して結合されているHLA−PEPTIDEエピトープに結合するものも、本明細書中に開示されている。
或る特定の態様において、ABPは、ヒトFc受容体への結合を低減する少なくとも1つの修飾を含む、ヒトFc領域を備える。
ABPは、細胞内で発現されると、翻訳後に修飾されることが知られている。翻訳後修飾の例としては、カルボキシペプチダーゼによる重鎖のC末端でのリジンの開裂、ピログルタミル化による重鎖及び軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミン酸への修飾、グリコシル化、酸化、脱アミド、ならびに糖化が挙げられる。そのような翻訳後修飾は、様々なABPにおいて生起されることが公知である(出典:Journal of Pharmaceutical Sciences,2008,Vol.97,p.2426−2447。該文献はその全体が参照により援用されている)。いくつかの実施形態において、ABPは、翻訳後修飾を経たABPまたはその抗原結合断片である。翻訳後修飾を経たABPまたはその抗原結合断片の例としては、ABPまたはその抗原結合断片で、重鎖可変領域のN末端にてピログルタミル化、及び/または重鎖のC末端でリジンの欠失に供されたものが挙げられる。当該技術分野において公知であるように、そのような翻訳後修飾は、N末端でのピログルタミル化、及びC末端でのリジン欠失に起因する場合、ABPまたはその断片の活性に対し影響を及ぼさない(Analytical Biochemistry,2006,Vol.348,p.24−39。該文献はその全体が参照により援用されている)。
単一特異性及び多重特異性HLA−PEPTIDE ABP
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、単一特異性ABPである。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、多重特異性ABPである。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されている多重特異性ABPは、複数の抗原に結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、2つの抗原に結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、3つの抗原に結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、4つの抗原に結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、5つの抗原に結合する。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されている多重特異性ABPは、HLA−PEPTIDE抗原上の複数のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、HLA−PEPTIDE抗原上の2つのエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、HLA−PEPTIDE抗原上の3つのエピトープに結合する。
多くの多重特異性ABPコンストラクトが当該技術分野において公知であり、本明細書中に提供されているABPは、任意の好適な多重特異性好適(multispecific suitable)コンストラクトの形態で提供され得る。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、少なくとも2つの異なる重鎖可変領域を備える免疫グロブリンを含み、これら重鎖可変領域はそれぞれ共通の軽鎖可変領域(すなわち、「共通の軽鎖ABP」)と対合している。共通の軽鎖可変領域は、2つの異なる重鎖可変領域の各々とは異なった抗原結合ドメインを形成している。出典:Merchant et al.,Nature Biotechnol.,1998,16:677−681。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、ABPまたはその断片を含む免疫グロブリンを具備しており、このABPまたはその断片は、そのような免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の1つ以上のN末端またはC末端に付着している。出典:Coloma and Morrison,Nature Biotechnol.,1997,15:159−163。該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの態様において、そのようなABPは、四価の二重特異性ABPを含む。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、少なくとも2つの異なる重鎖可変領域と少なくとも2つの異なる軽鎖可変領域とを備えたハイブリッド免疫グロブリンを含む。出典:Milstein及びCuello,Nature,1983,305:537−540、及びStaerz and Bevan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1986,83:1453−1457。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、多重特異性を有さない副産物の形成を低減させるように改変された、免疫グロブリン鎖を含む。いくつかの態様において、ABPは、1つ以上の「ノブ・イントゥ・ホール」修飾を含む。これは、米国特許第5,731,168号に記載されており、この文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、多重特異性ABPは、Fcヘテロ多量体の組立てを促進するための1つ以上の静電的修飾を伴う免疫グロブリン鎖を含む。参照により全体が組み込まれる国際公開第WO2009/089004号を参照されたい。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、二重特異性一本鎖分子を含む。各々参照により全体が援用される、Traunecker et al.,EMBO J.,1991,10:3655−3659、およびGruber et al.,J.Immunol.,1994,152:5368−5374を参照されたい。
いくつかの実施形態において、多重特異性ABPは、ポリペプチドリンカーによって連結された重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとを備えており、リンカーの長さは、所望の多重特異性を有する多重特異性ABPのアセンブリを促進するように選択される。例えば、単一特異性scFvが形成される条件は、通例、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインが12を超えるアミノ酸残基のポリペプチドリンカーによって結合されていることである。各々参照により全体が援用される、米国特許第4,946,778号および同第5,132,405号を参照されたい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカー長が12アミノ酸残基未満に短縮された場合、同じポリペプチド鎖上の重鎖及び軽鎖可変ドメインの対合が妨げられ、1つの鎖の重鎖及び軽鎖可変ドメインと別の鎖の相補ドメインとの対合が可能になる。それゆえ、結果として得られたABPには多重特異性があり、各結合部位の特異性は複数のポリペプチド鎖によって寄与される。3〜12アミノ酸残基のリンカーによって結合された重鎖及び軽鎖可変ドメインを備えるポリペプチド鎖は、その大部分が二量体(呼称:ダイアボディ)を形成する。リンカーが0〜2アミノ酸残基の場合、優先されるのは三量体(呼称:トリアボディ)及び四量体(呼称:テトラボディ)である。ただし、オリゴマー化の厳密な型は、リンカーの長さに依存するだけでなく、アミノ酸残基の組成及び各ポリペプチド鎖の可変ドメインの順序(例えば、VH−リンカー−VL対VL−リンカー−VH)にも依存すると思われる。当業者であれば、所望の多重特異性に基づいて適切なリンカー長を選択することができる。
Fc領域及び変異体
或る特定の実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、Fc領域を備える。Fc領域は、野生型またはその変異体であり得る。或る特定の実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、天然に存在するFc領域と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、挿入または欠失を伴うFc領域を備える。いくつかの態様では、そのような置換、挿入または欠失によって、安定性、グリコシル化またはその他の特性が改変されたABPが生ずる。いくつかの態様において、そのような置換、挿入または欠失によって、グリコシル化されたABPが生ずる。
「変異Fc領域」または「操作されたFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)を介して、天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域では、約1〜約10のアミノ酸置換、好ましくは約1〜約5のアミノ酸置換)を有する。本明細書において変異Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域に対し少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは少なくとも約90%の相同性、より好ましくは少なくとも約95%の相同性を有する。
「Fc領域を備えるABP」という用語は、Fc領域を備えるABPを指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、ABPの精製中に、またはABPをコードする核酸を組み換え操作することにより、除去することが可能である。したがって、Fc領域を有するABPは、K447を伴うまたは伴わないABPを含み得る。
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPのFc領域は、Fc受容体に対する親和性が改変されたABP、またはより免疫学的に不活性であるABPを生ずるように、修飾されている。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABP変異体は、全てではないにしろ幾らかのエフェクター機能を有する。そのようなABPが有用とされるのは、例えば、ABPの半減期が生体内(in vivo)で重要とされる場合である。一方、或る特定のエフェクター機能(補体の活性化及びADCCなど)が不要または有害とされる場合は、この限りではない。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPのFc領域は、ヒンジ安定化変異S228P及びL235Eのうちの1つ以上を含むヒトIgG4 Fc領域である。出典:Aalberse et al.,Immunology,2002,105:9−19。該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの実施形態では、IgG4 Fc領域は、E233P、F234V、及びL235Aのうちの1つ以上の変異を伴う。出典:Armour et al.,Mol.Immunol.,2003,40:585−593。該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの実施形態において、IgG4 Fc領域は、G236位に欠失を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPのFc領域は、Fc受容体結合を低減させる1つ以上の変異を含むヒトIgG1 Fc領域である。いくつかの態様において、1つ以上の変異は、S228(例えば、S228A)、L234(例えば、L234A)、L235(例えば、L235A)、D265(例えば、D265A)、及びN297(例えば、N297A)から選択される残基におけるものである。いくつかの態様において、ABPは、PVA236変異を含む。PVA236は、アミノ酸配列ELLG(IgG1のアミノ酸233位〜236位)、またはIgG4のEFLGが、PVAで置換されていることを意味する。出典:米国特許第9,150,641号。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPのFc領域の修飾は、Armour et al.,Eur.J.Immunol.,1999,29:2613−2624;WO1999/058572、及び/または英国特許出願第98099518号に記載されている通りである。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPのFc領域は、変異A330S及びP331Sのうちの1つ以上を含む、ヒトIgG2 Fc領域である。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPのFc領域は、238、265、269、270、297、327及び329から選択される1つ以上の位置にてアミノ酸置換を有する。出典:米国特許第6,737,056号。該文献は、その全体が、参照により援用されている。そのようなFc変異体には、265位、269位、270位、297位及び327位のアミノ酸のうちのうちの2つ以上で置換されたFc変異体が含まれ、残基265及び297がアラニンで置換されたいわゆる「DANA」Fc変異体が含まれる。出典:米国特許第7,332,581号。該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの実施形態において、ABPは、アミノ酸265位にアラニンを含む。いくつかの実施形態において、ABPは、アミノ酸297位にアラニンを含む。
或る特定の実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、1つ以上のアミノ酸置換を伴うFc領域を備え、それにより、Fc領域の298、333、334のうちの1つ以上の位置における置換をはじめとするADCCを改善している。いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPは、239、332、及び330位に1つ以上のアミノ酸置換を有するFc領域を備えており、これは、Lazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2006,103:4005−4010に記載されている通りである。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPは、C1q結合及び/またはCDCを改善または低減させる1つ以上の改変を含む。出典:米国特許第6,194,551号;WO99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.,2000,164:4178−4184。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABPは、半減期を延長させるための1つ以上の改変を含む。半減期が増加し、新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善されたABPは、例えば、Hinton et al.,J.Immunol.,2006,176:346−356、及び米国特許出願第2005/0014934号に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。このようなFc変異体としては、下記IgGのFc領域の残基:
238、250、256、265、272、286、303、305、307、311、312、314、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、428、及び434のうちの1つ以上に置換を伴ったものが挙げられる。いくつかの実施形態において、ABPは、半減期を延長させる1つ以上の非Fc修飾を含む。半減期を延長させる例示的な非Fc修飾は、例えば、米国特許出願公開第20170218078号に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されているABPは、米国特許第7,371,826号、5,648,260号、及び同第5,624,821号;Duncan及びWinter,Nature,1988,322:738−740、及びWO94/29351に記載されている1つ以上のFc領域変異体を含む。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
B*35:01_EVDPIGHVY(HLA−PEPTIDE標的「G5」)に対し特異的な抗体
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、HLA−PEPTIDE標的のHLAクラスI分子は、HLAサブタイプB*35:01であり、且つHLA−PEPTIDE標的のHLA制限ペプチドは、EVDPIGHVY(「G5」)の配列を含むか、この配列からなるか、またはこの配列から本質的になる。
CDR
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABP は、1つ以上の抗体相補性決定領域(CDR)配列、例えば、3つの重鎖CDR(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)及び3つの軽鎖CDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3)を含み得る。
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、CDR−H3配列を含み得る。CDR−H3配列は、
から選択され得る。
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、CDR−L3配列を含み得る。CDR−L3配列は、
から選択され得る。
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、特定の重鎖CDR3(CDR−H3)配列及び特定の軽鎖CDR3(CDR−L3)配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ABPは、G5_P7_E7、G5_P7_B3、G5_P7_A5、G5_P7_F6、G5−P1B12、G5−P1C12、G5−P1−E05、G5−P3G01、G5−P3G08、G5−P4B02、G5−P4E04、G5R4−P1D06、G5R4−P1H11、G5R4−P2B10、G5R4−P2H8、G5R4−P3G05、G5R4−P4A07、またはG5R4−P4B01と称するscFvからのCDR−H3とCDR−L3とを含む。同定されているscFvのCDR配列で、B*35:01_ EVDPIGHVYに対し特異的に結合するものを、表5に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のCDR配列が含まれている。例えば、クローン名G5_P7_E7で同定されるscFvは、重鎖CDR3配列CARDGVRYYGMDVWと軽鎖CDR3配列CMQGLQTPITFとを、含む。
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、G5_P7_E7、G5_P7_B3、G5_P7_A5、G5_P7_F6、G5−P1B12、G5−P1C12、G5−P1−E05、G5−P3G01、G5−P3G08、G5−P4B02、G5−P4E04、G5R4−P1D06、G5R4−P1H11、G5R4−P2B10、G5R4−P2H8、G5R4−P3G05、G5R4−P4A07、またはG5R4−P4B01と称するscFvからのCDRを6つとも全て含み得る。
VH
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、VH配列を含み得る。VH配列は、
から選択され得る。
VL
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、VL配列を含み得る。VL配列は、
から選択され得る。
VH−VLの組み合わせ
B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、特定のVH配列及び特定のVL配列を含み得る。いくつかの実施形態において、B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的なABPは、G5_P7_E7、G5_P7_B3、G5_P7_A5、G5_P7_F6、G5−P1B12、G5−P1C12、G5−P1−E05、G5−P3G01、G5−P3G08、G5−P4B02、G5−P4E04、G5R4−P1D06、G5R4−P1H11、G5R4−P2B10、G5R4−P2H8、G5R4−P3G05、G5R4−P4A07、及びG5R4−P4B01と称するscFvからのVH配列及びVL配列を含む。同定されているscFvのVH及びVL配列で、B*35:01_EVDPIGHVYに対し特異的に結合するものを、表4に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のVH及びVL配列が含まれている。例えば、クローン名G5_P7_E7で同定されるscFvには、VH配列
及びVL配列
が含まれる。
A*02:01_AIFPGAVPAA(HLA−PEPTIDE標的“G8”)に対し特異的な抗体
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、HLA-PEPTIDE標的のHLAクラスI分子はHLAサブタイプA*02:01であり、HLA-PEPTIDE標的のHLA制限ペプチドは、配列AIFPGAVPAA(「G8」)を含むか、この配列からなるか、またはこの配列から本質的になる。
CDR
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、1つ以上の抗体相補性決定領域(CDR)配列、例えば、3つの重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)及び3つの軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含み得る。
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、CDR−H3配列を含み得る。CDR−H3配列は、
から選択され得る。
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、CDR-L3配列を含み得る。CDR-L3配列は、
から選択され得る。
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、特定の重鎖CDR3(CDR-H3)配列及び特定の軽鎖CDR3(CDR-L3)配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ABPは、G8−P1A03、G8−P1A04、G8−P1A06、G8−P1B03、G8−P1C11、G8−P1D02、G8−P1H08、G8−P2B05、G8−P2E06、R3G8−P2C10、R3G8−P2E04、R3G8−P4F05、R3G8−P5C03、R3G8−P5F02、R3G8−P5G08、G8−P1C01、またはG8−P2C11と称するscFvからのCDR−H3とCDR−L3とを含む。同定されているscFvのCDR配列で、A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的に結合するものを、表7に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のCDR配列が含まれている。例えば、クローン名G8-P1A03で同定されるscFvには、重鎖CDR3配列CARDDYGDYVAYFQHWと軽鎖CDR3配列CQQNYNSVTFとが含まれる。
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、G8−P1A03、G8−P1A04、G8−P1A06、G8−P1B03、G8−P1C11、G8−P1D02、G8−P1H08、G8−P2B05、G8−P2E06、R3G8−P2C10、R3G8−P2E04、R3G8−P4F05、R3G8−P5C03、R3G8−P5F02、R3G8−P5G08、G8−P1C01、またはG8−P2C11と称するscFvからのCDRを6つとも全て含み得る。
VH
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、VH配列を含み得る。VH配列は、
から選択され得る。
VL
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、VL配列を含み得る。VL配列は、
から選択され得る。
VH−VLの組み合わせ
A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、特定のVH配列及び特定のVL配列を含み得る。いくつかの実施形態において、A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的なABPは、G8−P1A03、G8−P1A04、G8−P1A06、G8−P1B03、G8−P1C11、G8−P1D02、G8−P1H08、G8−P2B05、G8−P2E06、R3G8−P2C10、R3G8−P2E04、R3G8−P4F05、R3G8−P5C03、R3G8−P5F02、R3G8−P5G08、G8−P1C01、またはG8−P2C11と称するscFvからのVH配列及びVL配列を含む。同定されているscFvのVH及びVL配列で、A*02:01_AIFPGAVPAAに対し特異的に結合するものを、表6に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のVH及びVL配列が含まれている。例えば、クローン名G8-P1A03で同定されるscFvには、VH配列
及びVL配列
が含まれる。
A*01:01 ASSLPTTMNY(HLA−PEPTIDE標的「G10」)に対し特異的な抗体
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、HLA−PEPTIDE標的のHLAクラスI分子が、HLAサブタイプA*01:01であり、HLA−PEPTIDE標的のHLA制限ペプチドが、配列ASSLPTTMNY(「G10」)を含むか、この配列からなるか、またはこの配列から本質的になる。
CDR
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、1つ以上の抗体相補性決定領域(CDR)配列例えば、3つの重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)及び3つの軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含み得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、CDR-H3配列を含み得る。CDR-H3配列は、
から選択され得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、CDR-L3配列を含み得る。CDR-L3配列は、
から選択され得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、特定の重鎖CDR3(CDR-H3)配列及び特定の軽鎖CDR3(CDR-L3)配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ABPは、R3G10−P1A07、R3G10−P1B07、R3G10−P1E12、R3G10−P1F06、R3G10−P1H01、R3G10−P1H08、R3G10−P2C04、R3G10−P2G11、R3G10−P3E04、R3G10−P4A02、R3G10−P4C05、R3G10−P4D04、R3G10−P4D10、R3G10−P4E07、R3G10−P4E12、R3G10−P4G06、R3G10−P5A08、またはR3G10−P5C08と称するscFvからのCDR−H3とCDR−L3とを含む。同定されているscFvのCDR配列で、A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的に結合するものを、表9に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のCDR配列が含まれている。例えば、クローン名R3G10-P1A07で同定されるscFvには、重鎖CDR3配列CARDQDTIFGVVITWFDPWと軽鎖CDR3配列CQQYFTTPYTFとが含まれる。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、R3G10−P1A07、R3G10−P1B07、R3G10−P1E12、R3G10−P1F06、R3G10−P1H01、R3G10−P1H08、R3G10−P2C04、R3G10−P2G11、R3G10−P3E04、R3G10−P4A02、R3G10−P4C05、R3G10−P4D04、R3G10−P4D10、R3G10−P4E07、R3G10−P4E12、R3G10−P4G06、R3G10−P5A08、またはR3G10−P5C08と称するscFvからのCDRを6つとも全て含み得る。
VH
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、VH配列を含み得る。VH配列は、
から選択され得る。
VL
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、VL配列を含み得る。VL配列は、
から選択され得る。
VH−VLの組み合わせ
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、特定のVH配列及び特定のVL配列を含み得る。いくつかの実施形態において、A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なABPは、R3G10−P1A07、R3G10−P1B07、R3G10−P1E12、R3G10−P1F06、R3G10−P1H01、R3G10−P1H08、R3G10−P2C04、R3G10−P2G11、R3G10−P3E04、R3G10−P4A02、R3G10−P4C05、R3G10−P4D04、R3G10−P4D10、R3G10−P4E07、R3G10−P4E12、R3G10−P4G06、R3G10−P5A08、またはR3G10−P5C08と称するscFvからのVH配列及びVL配列を含む。同定されているscFvのVH及びVL配列で、A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的に結合するものを、表8に示す。明確にするために、同定されている各scFvヒットがクローン名として指定されており、各行にはその特定のクローン名のVH及びVL配列が含まれている。例えば、クローン名R3G10-P1A07で同定されるscFvには、VH配列
及びVL配列
が含まれる。
受容体
提供されるABP、例えば、HLA−PEPTIDE ABPには、受容体がある。受容体には、本明細書に開示のHLA−PEPTIDE標的に特異的に結合する抗原受容体および他のキメラ受容体が含まれ得る。受容体は、T細胞受容体(TCR)であり得る。受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり得る。
TCRは、可溶性または膜結合型であり得る。抗原受容体の中でも、とりわけ際立っているのが、キメラ抗原受容体(CAR)などの機能的な非TCR抗原受容体である。また、受容体を発現する細胞療法及び養子細胞療法(例えば、HLA−PEPTIDE発現に関連する、がん等の疾患及び障害の治療)における、該細胞の使用も、提供されている。
CARをはじめとする例示的な抗原受容体、及びそのような受容体を操作して細胞に導入する方法としては、例えば、国際特許出願公開第WO200014257号、同第WO2013126726号、同第WO2012/129514号、同第WO2014031687号、同第WO2013/166321号、同第WO2013/071154号、同第WO2013/123061号、米国特許出願公開第US2002131960号、同第US2013287748号、同第US20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、及び同第8,479,118号ならびに欧州特許出願第EP2537416号に記載されているものが挙げられ、及び/またはSadelain et al.,Cancer Discov.2013 April;3(4):388−398;Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338;Turtle et al.,Curr.Opin.Immunol.,2012 October;24(5):633−39;Wu et al.,Cancer,2012 Mar.18(2):160−75に記載されているものが挙げられる。いくつかの態様において、抗原受容体として挙げられるCARは、米国特許第7,446,190号に記載されているほか、国際特許出願公開第WO/2014055668(A1)号にも記載されている。CARの例としては、前述の刊行物、例えば、WO2014031687、米国特許第8,339,645号、米国特許第7,446,179号、米国特許出願公開第2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号のいずれかに開示されているCARが挙げられ、該文献において、例えば、scFvのような抗原結合部分は、本明細書に提供される抗体によって置換されている。
キメラ受容体には、キメラ抗原受容体(CAR)がある。CARなどのキメラ受容体は一般に細胞外抗原結合ドメインを含み、これは、抗HLA−PEPTIDE抗体などの提供される抗HLA−PEPTIDE ABPのうちの1つを含むか、該提供される抗HLA−PEPTIDE ABPであるか、または、該提供される抗HLA−PEPTIDE ABPの中に含まれる。それゆえ、キメラ受容体(例えばCAR)は、典型的に、それらの細胞外部分に1つ以上のHLA−PEPTIDE−ABP(例えば、1つ以上の抗原結合断片、ドメインもしくは部分、または1つ以上の抗体可変ドメインを備え、及び/または、本明細書中に記載されているような抗体分子)を含む。いくつかの実施形態において、CARは、HLA−PEPTIDE結合部分またはABP(例えば抗体)分子の一部(可変重(VH)鎖領域、及び/またはscFv抗体断片のような抗体の可変軽(VL)鎖領域など)を含む。
TCR
一態様において、本明細書中に提供されているABP(例えば、本明細書中に開示されているHLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合するABP)は、T細胞受容体(TCR)を含む。TCRは、単離及び精製が可能である。
大多数のT細胞において、TCRは、アルファ(α)鎖とベータ(β)鎖とを有するヘテロ二量体ポリペプチドであり、これらα鎖及びβ鎖はそれぞれTRA及びTRBによってコードされている。α鎖には、TRAVによってコードされたα可変領域、TRAJによってコードされたα結合領域、及びTRACによってコードされたα定常領域が含まれるのが、一般的である。β鎖は、一般的に、TRBVでコードされたβ可変領域、TRBDでコードされたβ多様性領域、TRBJでコードされたβ結合領域、及びTRBCでコードされたβ定常領域を備える。TCR−α鎖はVJ組み換えによって生成され、β鎖受容体はV(D)J組み換えによって生成される。追加のTCR多様性は、接合部の多様性に起因する。接合部の各々において、塩基(N及びPヌクレオチドと呼称される)によっては、削除されるものもあれば、追加されるものもある。T細胞によっては、TCR内にγ鎖とδ鎖とが含まれるものも、少数ではあるが存在する。TCR γ鎖はVJ再結合によって生成され、TCRδ鎖はV(D)J再結合によって生成される(Kenneth Murphy,Paul Travers、及びMark Walport,Janeway’s Immunology 7th edition,Garland Science,2007。該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている)。TCRの抗原結合部位には、通例、6つの相補性決定領域(CDR)が含まれる。α鎖は、3つの CDR(αCDR1、αCDR2、及びαCDR3)に寄与している。同様に、β鎖は、3つのCDR(βCDR1、βCDR2、及びβCDR3)に寄与している。αCDR3及びβCDR3は、V(D)J組み換えによって最も影響を受ける領域であり、その領域に起因してTCRレパートリーの変動が生ずる。
TCRは、HLA−PEPTIDE標的(例えば、表Aに開示されているHLA−PEPTIDE標的)を特異的に認識できる。それゆえ、TCRは、HLA−PEPTIDEに対し特異的に結合するABPであると考えられる。TCRは、例えば、B細胞によって分泌される抗体と同様、可溶性であり得る。また、TCRは、例えば、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞のような細胞上の膜結合型であり得る。それゆえ、TCRは、可溶性抗体及び/または膜結合CARに対応する状況において使用される場合がある。
本明細書中に開示されている任意のTCRは、α可変領域、α接合領域、任意でα定常領域、任意でβ可変領域、任意でβ多様性領域、β接合領域、及び任意でβ定常領域を備え得る。
いくつかの実施形態では、TCRまたはCARは、組み換えTCRまたはCARである。組み換えTCRまたはCARは、本明細書中に同定されているTCRのいずれかを含み得るが、ただし1つ以上の修飾も含む。例示的な修飾、例えば、アミノ酸置換は、本明細書中に記載されている。本明細書中に記載されているアミノ酸置換は、IMGT命名法及びアミノ酸番号付けを参照して行うことができる。www.imgt.orgを参照のこと。
組み換えTCRまたはCARは、完全なヒト配列、例えば天然のヒト配列を含むヒトTCRまたはCARとしてもよい。組み換えTCRまたはCARは、その天然のヒト可変ドメイン配列を保持し得るが、ただし、α定常領域、β定常領域、またはα定常領域及びβ定常領域の両方に対する修飾を含む。TCR定常領域に対するそのような修飾は、例えば、外因性TCR鎖の優先的対合を駆動することにより、TCR遺伝子療法のためのTCR組立ておよび発現を改善し得る。
いくつかの実施形態において、α及びβ定常領域は、マウス定常領域配列をヒト定常領域配列全体で置換することにより修飾される。そのような「マウス化」TCR及びそれらを作製する方法は、Cancer Res.2006 Sep 1;66(17):8878−86に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、αおよびβ定常領域は、特定のヒト残基をマウス残基に入れ替える(ヒト→マウスアミノ酸交換)、ヒトTCR α定常(TRAC)領域、TCR β定常(TRBC)領域、またはTRACおよびTRAB領域における1つ以上のアミノ酸置換を行うことにより修飾される。TRAC領域における1つ以上のアミノ酸置換としては、残基90におけるSer置換、残基91におけるAsp置換、残基92におけるVal置換、残基93におけるPro置換、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。ヒトTRBC領域における1つ以上のアミノ酸置換としては、残基18におけるLys置換、残基22におけるAla置換、残基133におけるIle置換、残基139におけるHis置換、または上記の任意の組み合わせを挙げることができる。そのような標的化アミノ酸置換は、J Immunol June 1,2010,184(11)6223−6231に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、ヒトTRACは残基210にAsp置換を含み、ヒトTRBCは残基134にLys置換を含む。そのような置換は、α鎖とβ鎖との間の塩橋の形成、及びTCR鎖間ジスルフィド結合の形成を促進し得る。これら標的化された置換は、J Immunol June 1,2010,184(11)6232−6241に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、ヒトTRACおよびヒトTRBC領域は、追加のジスルフィド結合の形成により外因性TCR鎖の優先的対合を改善し得る導入されたシステインを含むように修飾される。例えば、ヒトTRACは、残基48にCys置換を含む場合があり、ヒトTRBCは、残基57にCys置換を含む場合がある。これは、Cancer Res.2007 Apr 15;67(8):3898−903及びBlood.2007 Mar 15;109(6):2331−8に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
組み換えTCRまたはCARでは、α鎖及びβ鎖に対し他の修飾も施し得る。
いくつかの実施形態では、α鎖及びβ鎖の細胞外ドメインを完全なヒトCD3ζ(CD3−ゼータ)分子に連結することによって、α鎖及びβ鎖に修飾を施す。そのような修飾は、J Immunol June 1,2008,180(11)7736−7746;Gene Ther.2000 Aug;7(16):1369−77、及びOpen Gene Therapy Journal,2011,4:11−22に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、α鎖は、α鎖の膜貫通領域に疎水性アミノ酸置換を導入することにより修飾される。これは、J Immunol June 1,2012,188(11)5538−5546に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
アミノ酸配列内のN−グリコシル化部位のいずれか1つを修飾することによって、α鎖またはβ鎖に修飾を施すことが可能である。これは、J Exp Med.2009 Feb 16;206(2):463−475に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
α鎖及びβ鎖はそれぞれ、二量体化ドメイン、例えば、異種二量体化ドメインを備え得る。そのような異種ドメインは、当該技術分野において公知であるように、ロイシンジッパー、5H3ドメインもしくは疎水性プロリンに富むカウンタードメインもしくは他の類似の様式であり得る。一例において、α鎖及びβ鎖は、α及びβ細胞外ドメインのカルボキシル末端に30merのセグメントを導入することにより修飾することが可能であり、それにより、セグメントは選択的に会合して安定したロイシンジッパーを形成する。そのような修飾は、PNAS November 22,1994.91(24)11408−11412;https://doi.org/10.1073/pnas.91.24.11408に記載されている。該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
本明細書で同定されたTCRは、親和性または半減期の増加をもたらす変異を含むように修飾され得る。この変異としては、WO2012/013913に記載されているものが挙げられる。該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
組み換えTCRまたはCARは、一本鎖TCR(scTCR)である場合もある。このようなscTCRは、TCRα鎖定常領域細胞外配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列と、TCRβ鎖定常領域の細胞外配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域と、αセグメントのC末端をβセグメントのN末端に連結するリンカー配列、またはその逆に連結するリンカー配列とを、含み得る。いくつかの実施形態では、scTCRのα及びβセグメントの定常領域細胞外配列は、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、リンカー配列の長さ、及びジスルフィド結合の位置は、α及びβセグメントの可変領域配列は、実質的に天然のαβT細胞受容体と同様に相互に配向するように為されている。例示的なscTCRは、米国特許第7,569,664号に記載されており、この文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。
いくつかの事例において、scTCRの可変領域は、Gene Therapy volume 7,pages 1369−1377(2000)に記載されているような短いペプチドリンカーによって共有結合される場合がある。短いペプチドリンカーは、セリンに富むリンカーまたはグリシンに富むリンカーであり得る。例えば、リンカーは、Cancer Gene Therapy(2004)11,487−496に記載されているような(Gly4Ser)3であり得る。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
組み換えTCRまたはその抗原結合断片は、融合タンパク質として発現され得る。例えば、TCRまたはその抗原結合断片は、毒素と融合される場合もある。そのような融合タンパク質は、Cancer Res.2002 Mar 15;62(6):1757−60に記載されている。TCRまたはその抗原結合断片は、抗体のFc領域と融合し得る。そのような融合タンパク質は、J Immunol May 1,2017,198(1 Supplement)120.9.
いくつかの実施形態では、組み換え受容体、例えば、TCRまたはCAR(その抗体部分など)は、スペーサーを更に含み、このスペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはその変異体もしくは修飾型(例えば、IgG4ヒンジ領域のようなヒンジ領域、及び/またはCH1/CL及び/またはFc領域)の少なくとも一部であり得るか、あるいはそれらのお領域を備え得る。いくつかの実施形態において、定常領域または定常部分は、IgG4またはIgG1のようにヒトIgG由来のものである。いくつかの態様において、定常領域の一部は、抗原認識構成要素、例えば、scFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として機能する。スペーサーの長さは、スペーサーが存在しない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性を増強させるような長さとされる場合がある。いくつかの例において、スペーサーの長さは、約12アミノ酸であるか、または12アミノ酸以下である。例示的なスペーサーとしては、少なくとも約10〜229アミノ酸、約10〜200アミノ酸、約10〜175アミノ酸、約10〜150アミノ酸、約10〜125アミノ酸、約10〜100アミノ酸、約10〜75アミノ酸、約10〜50アミノ酸、約10〜40アミノ酸、約10〜30アミノ酸、約10〜20アミノ酸、または約10〜15アミノ酸を有するもの(列挙されている範囲のいずれかの端点間の任意の整数を含む)が挙げられる。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、約12アミノ酸以下、約119アミノ酸以下、または約229アミノ酸以下を有する。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジのみ、CH2及びCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジが包含される。例示的なスペーサーの例としては、限定されるものではないが、Hudecek et al.(2013)Clin.Cancer Res.,19:3153、または国際特許出願公開第WO2014031687号に記載されているものが挙げられる。いくつかの実施形態において、定常領域または定常部分はIgDである。
受容体(TCRもしくはCARなど)の抗原認識ドメインは、1つ以上の細胞内シグナル伝達成分(シグナル伝達成分など)に連結し得る。これらの細胞内シグナル伝達成分は、CARの場合、抗原受容体複合体(TCR複合体など)を介した活性化、及び/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣する。それゆえ、いくつかの実施形態において、HLA−PEPTIDE特異的結合成分(例えば、抗体またはTCRなどのABP)は、1つ以上の膜貫通及び細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに融合している。一実施形態では、膜貫通ドメインとしては、受容体(例えば、CAR)内のドメインの1つと自然界にて会合するものが、使用される。いくつかの実例では、膜貫通ドメインが、アミノ酸置換によって選択または修飾される。それによって、そのようなドメインが、同じもしくは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合されるのが回避されると共に、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用が最小限に抑えられる。
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来する。供給源が天然の場合、一部の態様のドメインは、膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域としては、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154の、α鎖、β鎖またはζ鎖に由来する(すなわち、少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む)ものが挙げられる。代替的に、いくつかの実施形態における膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインとされる。いくつかの態様において、合成膜貫通ドメインは、ロイシン及びバリンのような疎水性の残基がその大部分を占める。いくつかの態様において、フェニルアラニン、トリプトファン、バリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの両端に見出される。いくつかの実施形態では、連結は、リンカー、スペーサー、及び/または膜貫通ドメイン(複数可)を介して為される。
細胞内シグナル伝達ドメインの中でも、とりわけ際立っているのが、天然の抗原受容体を介したシグナル、そのような受容体と共刺激受容体との組み合わせを介したシグナル、及び/または共刺激受容体のみを介したシグナルを模倣するか、あるいはそのシグナルに近似するものである。いくつかの実施形態では、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、例えば、グリシン及びセリンを含むものなどの、長さが2〜10アミノ酸のリンカー(グリシン−セリンダブレットなど)は、受容体の膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に存在し、連結を形成している。
受容体、例えば、TCRまたはCARは、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達成分を含み得る。いくつかの実施形態では、受容体は、T細胞活性化及び細胞毒性を媒介するTCR CD3鎖などのTCR複合体の細胞内成分、例えばCD3ζ鎖を含む。それゆえ、いくつかの態様において、HLA−PEPTIDE結合ABP(例えば、抗体)が、1つ以上のセルシグナリングモジュールに連結されている。いくつかの実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールとしては、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または他のCD膜貫通ドメインが挙げられる。いくつかの実施形態では、受容体、例えば、CARは更に、1つ以上の追加的な分子、例えば、Fc受容体−ガンマ、CD8、CD4、CD25、またはCD16の一部を含む。例えば、いくつかの態様において、CARには、CD3ζまたはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16との間の、キメラ分子が含まれる。
いくつかの実施形態では、TCRまたはCARのライゲーション時に、受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えば受容体を発現するように操作を施されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを、活性化させる。例えば、いくつかの状況において、受容体は、T細胞の機能、例えば、細胞溶解活性またはTヘルパー活性(サイトカインもしくは他の因子の分泌など)を誘導する。いくつかの実施形態では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分は、例えば、それがエフェクター機能シグナルを伝達する場合、無傷の免疫刺激鎖の代わりに使用される。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメイン(1つもしくは複数)には、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列が含まれ、また、いくつかの態様では、天然の状況(context)において、そのような受容体と協調して作用して抗原受容体の関与に引き続きシグナル伝達を開始する、共受容体の細胞質配列が含まれ、及び/または、そのような分子の任意の誘導体または変異体、及び/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列が含まれる。
天然TCRの状況において、完全な活性化を行うには、TCRを介したシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とされるのが、通例である。それゆえ、いくつかの実施形態では、完全な活性化を促進する目的から、二次または共刺激シグナルを生成するための構成要素もまた、受容体に含まれる。他の実施形態において、受容体は、共刺激シグナルを生成するための構成要素を含まない。いくつかの態様では、追加的な受容体が同じ細胞内で発現し、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための構成要素を提供する。
いくつかの態様において、T細胞活性化は、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介されることが記載されている。すなわち、TCR(一次細胞質シグナル伝達配列)を介して抗原依存の一次活性化を開始する、細胞質シグナル伝達配列、及び抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナル(二次細胞質シグナル伝達配列)を提供する細胞質シグナル伝達配列である。いくつかの態様において、受容体は、そのようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
いくつかの態様において、受容体には、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列が含まれる。刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列には、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフが含まれている場合がある。一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例としては、TCRまたはCD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。いくつかの実施形態ではCARの細胞質シグナル伝達分子(複数可)には、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、またはCD3ζに由来する配列が含まれている。
いくつかの実施形態において、受容体は、CD28、4−1BB、OX40、DAP10、及びICOSなどの共刺激受容体のシグナル伝達ドメイン及び/または膜貫通部分を備える。いくつかの態様において、同じ受容体に、活性化成分、及び共刺激成分の両方が含まれる。
いくつかの実施形態では、活性化ドメインが1つの受容体に含まれているが、共刺激成分は別の抗原を認識する別の受容体によって提供される。いくつかの実施形態では、受容体には、活性化受容体または刺激受容体と共刺激受容体とが含まれており、両方とも同じ細胞内で発現する(出典:WO2014/055668)。HLA−PEPTIDE標的受容体は、いくつかの態様では刺激性または活性化受容体とされ、他の態様態様では共刺激受容体とされる。いくつかの実施形態では、細胞は更に、iCARのような抑制性受容体(例えば、出典:Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(December,2013)、例えばHLA−PEPTIDE以外の抗原を認識する受容体を含み、これにより、HLA−PEPTIDE標的化受容体を介して送達される活性化シグナルを、阻害剤受容体のそのリガンドへの結合によって減退するまたは阻害し、ひいては、例えば標的外効果を低減する。
或る特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインに、CD3(例えば、CD3−ζ)細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通及びシグナル伝達ドメインを備える。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインに、CD3ζ細胞内ドメインに連結されているキメラCD28及びCD137(4−1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインが含まれる。
いくつかの実施形態では、受容体は、細胞質部分における1つ以上、例えば2つ以上の共刺激ドメイン及び活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインを包含する。例示的な受容体としては、CD3ζ、CD28、及び4−1BBの細胞内成分が挙げられる。
いくつかの実施形態において、CARまたはTCRなどの他の抗原受容体は更に、細胞表面マーカーなどのマーカーを含む。このマーカーを使用して細胞の形質導入または遺伝子操作を行い、例えば、切断型EGFR(tEGFR)などの細胞表面受容体の切断型をはじめとする受容体の発現を確証することが可能である。いくつかの態様において、マーカーとしては、CD34、神経成長因子受容体(NGFR)、または上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)の全部または一部(例えば、切断型)が挙げられる。いくつかの実施形態において、マーカーをコードする核酸は、開裂性リンカー配列またはリボソームスキップ配列(例えば、T2Aのようなリンカー配列)をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。WO2014031687を参照のこと。いくつかの実施形態では、T2Aリボソームスイッチによって分離されたCARとEGFRtをコードするコンストラクトの導入によって、同じコンストラクトから2つのタンパク質を発現させる場合がある。EGFRtをマーカーとして使用することで、そのようなコンストラクトを発現する細胞を検出することが可能となる。いくつかの実施形態では、マーカー、任意でリンカー配列は、特許出願公開第WO2014031687号に開示されているもののいずれかであり得る。例えば、マーカーを、任意で、T2Aリボソームスキップ配列などのリンカー配列に連結されている切断型EGFR(tEGFR)としてもよい。
いくつかの実施形態において、マーカーは、T細胞で天然に見出されず、またT細胞の表面上で天然に見出されない、分子(例えば、細胞表面タンパク質)またはその一部である。
いくつかの実施形態において、分子は、非自己分子(例えば非自己タンパク質)、すなわち、細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
いくつかの実施形態において、マーカーは、遺伝子操作(例えば、成功裡に操作を施された細胞の選択)用のマーカーとして使えるが、それ以外には一切の治療機能を果たさず、及び/あるいは一切の効能を発揮しない。他の実施形態において、マーカーは、治療分子または他の何らかの望ましい効果を発揮する分子(例えば、in vivoで遭遇する細胞のリガンド、例えば、養子移入及びリガンドとの遭遇時の細胞の応答を増強及び/または抑制するための、共刺激または免疫チェックポイント分子)であり得る。
TCRまたはCARは、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに、1つまたは修飾された合成アミノ酸を含む場合がある。例示的な修飾アミノ酸としては、限定されるものではないが、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、αアミノn−デカン酸、ホモセリン、S−アセチルアミノメチルシステイン、trans−3−及びtrans−4−ヒドロキシプロリン、4−アミノフェニルアラニン、4−ニトロフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−カルボキシフェニルアラニン、(3−フェニルセリン(3−ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、αナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン−2−カルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’−ベンジル−N’−メチル−リジン、N’,N’−ジベンジル−リジン、6−ヒドロキシリジン、オルニチン、αアミノシクロペンタンカルボン酸、αアミノシクロヘキサンカルボン酸、αアミノシクロヘプタンカルボン酸、α(2−アミノ−2−ノルボルナン)−カルボン酸、α,γ−ジアミノ酪酸酸、α,γ−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα−tertブチルグリシンが挙げられる。
いくつかの事例において、CARは、第1、第2、及び/または第3世代のCARと呼称される。いくつかの態様において、第1世代のCARは、抗原が結合するとCD3鎖誘導シグナルのみを提供するCARである。一部の態様において、第2世代のCARは、そのようなシグナル及び共刺激シグナルを提供するもの(例えば、CD28またはCD137などの共刺激受容体からの細胞内シグナル伝達ドメインを備えるもの)である。いくつかの態様において、いくつかの態様における第3世代CARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを備えるCARである。
いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、本明細書中に記載されている抗体または断片を含む細胞外部分を備える。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、本明細書中に記載されている抗体または断片を含む細胞外部分と、細胞内シグナル伝達ドメインと、を備える。いくつかの実施形態では、抗体または断片にはscFvまたは単一ドメインVH抗体が含まれ、細胞内ドメインにはITAMが含まれる。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3−ζ(CD3)鎖のζ鎖のシグナル伝達ドメインを備える。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、該細胞外ドメインと該細胞内シグナル伝達ドメインとを連結する膜貫通ドメインを備える。
いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分を備える。細胞外ドメイン及び膜貫通は、直接的にまたは間接的に連結し得る。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン及び膜貫通は、本明細書中に記載されているようなスペーサーによって連結されている。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間などに、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを備える。いくつかの態様において、T細胞共刺激分子は、CD28または41BBである。
いくつかの実施形態では、CARは、抗体(抗体断片など)と、CD28もしくはその機能的変異体の膜貫通部分であるかまたはその膜貫通部分を備える膜貫通ドメインと、CD28もしくはその機能的変異体のシグナル伝達部分とCD3ζもしくはその機能的変異体のシグナル伝達部分とを備える細胞内シグナル伝達ドメインとを、具備する。いくつかの実施形態では、CARは、抗体(抗体断片など)と、CD28もしくはその機能的変異体の膜貫通部分であるかまたはその膜貫通部分を備える、膜貫通ドメインと、4−1BBもしくはその機能的変異体のシグナル伝達部分とCD3ζもしくはその機能的変異体のシグナル伝達部分とを備える、細胞内シグナル伝達ドメインとを、具備する。いくつかのそのような実施形態では、受容体は、ヒンジのみのスペーサーなどのIg分子(Igヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ)のようなヒトIg分子など)の一部を含むスペーサーを更に具備する。
いくつかの実施形態において、受容体の膜貫通ドメイン、例えばCARは、ヒトCD28またはその変異体の膜貫通ドメイン、例えばヒトCD28の27アミノ酸膜貫通ドメイン(受託番号:P10747.1)である。
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを備える。いくつかの態様において、T細胞共刺激分子は、CD28または41BBである。
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインに、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体もしくは部分(例えば、その41アミノ酸ドメイン)、及び/またはその種のドメインであって、天然CD28タンパク質の186〜187位にLLからGGへの置換を有するドメインが含まれる。いくつかの実施形態において、細胞内ドメインは、41BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインもしくは機能的変異体、またはその一部分(例えば、ヒト4−1BBの42アミノ酸細胞質ドメイン(受託番号Q07011.1)もしくは機能的変異体、またはその一部分)を含む。
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112AA細胞質ドメイン(受託番号:P20963.2)またはCD3ζシグナル伝達ドメインで、米国特許第7,446,190号または米国特許第8,911,993号に記載されているものが含まれる。
いくつかの態様において、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ(例えば、IgG4またはIgG1のヒンジのみ)を含む。他の実施形態において、スペーサーは、CH2及び/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの実施形態において、スペーサーは、CH2及びCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの実施形態において、スペーサーは、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの実施形態において、スペーサーは、グリシン−セリンに富む配列または他の可動性リンカー(例えば、公知の可動性リンカー)であるか、またはそのリンカーを含む。
例えば、いくつかの実施形態において、CARは、抗体またはその断片(例えば、HLA−PEPTIDE抗体のいずれか)、例えば、本明細書中に記載されているような一本鎖抗体(sdAb、例えばVH領域のみを含有するもの)及びscFv、Igヒンジを含むスペーサーなどのスペーサー、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを備える。いくつかの実施形態において、CARは、抗体またはその断片(例えば、HLA−PEPTIDE抗体のいずれか)、例えば、本明細書中に記載されているようなsdAbs及びscFv、Igヒンジを含むスペーサーなどのスペーサー、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを備える。
A*01:01_ ASSLPTTMNY(配列番号:)[G10]に対し標的特異的なTCR
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合するTCRまたはその抗原結合断片を含み、HLA−PEPTIDE標的のHLAクラスI分子が、HLAサブタイプA*01:01であり、HLA−PEPTIDE標的のHLA制限ペプチドがASSLPTTMNY(「G10」)を含む。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、αCDR3配列を含み得る。αCDR3配列は、表15中のαCDR3配列のいずれかであり得る。同定されたTCRクロノタイプのα及びβCDR3配列は、表15に示す通りである。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、βCDR3配列を含み得る。βCDR3配列は、表15中のβCDR3配列のいずれかであり得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、特定の αCDR3配列及び特定のβCDR3配列を含み得る。例えば、A*01:01_ ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、表15において同定されているTCRのいずれか1つに由来するαCDR3配列とβCDR3配列とを含み得る。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCR ID#1は、αCDR3配列CAGPGNTGKLIFとβCDR3配列CASSNAGDQPQHFとを含む。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、TRAV、TRAJ、TRBV、任意でTRBD、及びTRBJアミノ酸配列、任意でTRAC配列、ならびに、任意でTRBC配列を含み得る。例えば、A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、TRAV、TRAJ、TRBV、TRBD、TRBJアミノ酸配列、TRAC配列、及びTRBC配列で、表14において同定されているTCRのいずれか1つに由来するものを含み得る。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRに割り当てられたTCR ID#1には、TRAV25配列、TRAJ37配列、TRAC配列、TRBV19配列、TRBD1配列、TRBJ1−5配列、及びTRBC1配列が含まれる。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、αVJ配列を含み得る。αVJ配列配列は、表16中のαVJ配列配列のいずれかであり得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、βV(D)J配列を含み得る。βV(D)J配列配列は、表16中のβV(D)J配列配列のいずれかであり得る。
A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、αVJ配列及びβV(D)J配列を含み得る。例えば、A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRは、表16において同定されているTCRのいずれか1つに由来するαVJ配列とβV(D)J配列とを含み得る。同定済みTCRクロノタイプの全長αV(J)及び全長βV(D)J配列は、表16に図示されている通りである。例えば、TCRID#1は、αV(J)配列
及びβV(D)J配列
を含む。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し標的特異的なTCR
いくつかの態様において、本明細書中に提供されているABPは、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的に結合するTCRまたはその抗原結合断片を含み、HLA−PEPTIDE標的のHLAクラスI分子が、HLAサブタイプA*01:01であり、HLA−PEPTIDE標的のHLA制限ペプチドがHSEVGLPVYを含む。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、αCDR3配列を含み得る。αCDR3配列は、表18中のαCDR3配列のいずれか1つであり得る。同定されたTCRクロノタイプのα及びβCDR3配列は、表18に示す通りである。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、βCDR3配列を含み得る。βCDR3配列は、表18中のβCDR3配列のいずれか1つであり得る。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、特定のαCDR3配列及び特定のβCDR3配列を含み得る。例えば、A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、表18において同定されているTCRのいずれか1つに由来するαCDR3配列とβCDR3配列とを含み得る。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCR ID #345に、αCDR3配列CAANPGDYKLSF及びβCDR3配列CASSSNYEQYFが含まれる。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、TRAV、TRAJ、TRBV、任意でTRBD、及びTRBJアミノ酸配列、任意でTRAC配列、ならびに、任意でTRBC配列を含み得る。例えば、A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、TRAV、TRAJ、TRBV、TRBD、TRBJアミノ酸配列、TRAC配列、及びTRBC配列で、表17号において同定されているTCRのいずれか1つに由来するものを含み得る。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRに割り当てられたTCR ID # 345に、TRAV13−1配列、TRAJ20配列、TRAC配列、TRBV7−9配列、TRBJ2−7配列、及びTRBC2配列が含まれる。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、αVJ配列を含み得る。αVJ配列配列は、表19中のαVJ配列配列のいずれか1つであり得る。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、βV(D)J配列を含み得る。βV(D)J配列配列は、表19中のβV(D)J配列配列のいずれかであり得る。
A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、αVJ配列及びβV(D)J配列を含み得る。例えば、A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRは、表19において同定されているTCRのいずれか1つに由来するαVJ配列とβV(D)J配列とを含み得る。同定済みTCRクロノタイプの全長αV(J)及び全長βV(D)J配列は、表19に描かれている通りである。例えば、TCR ID # 345に、αV(J)配列
及びβV(D)J配列
が含まれる。
操作を施された細胞
また、抗原受容体を含む細胞などの細胞で、例えば、本明細書中に記載されている抗HLA−PEPTIDE ABP(例えば、CARまたはTCR)を含む細胞外ドメインを備えたものも、提供されている。また、そのような細胞の集団、及びそのような細胞を含む組成物も、提供されている。いくつかの実施形態では、組成物または集団は、例えば、HLA−PEPTIDE ABPを発現する細胞で、組成物中の全細胞の少なくとも1パーセント、5パーセント、10パーセント、20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、91パーセント、92パーセント、93パーセント、94パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセントもしくは99パーセント超えを構成する細胞、またはT細胞またはCD8+またはCD4+細胞などの特定のタイプの細胞に対し富化されている。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書中に開示されている抗原受容体を含む少なくとも1つの細胞を具備する。組成物の中には、養子細胞療法などの投与のための医薬組成物及び製剤がある。また、細胞及び組成物を対象、例えば患者に投与するための治療方法も、提供されている。
それゆえ、受容体、例えば、TCRまたはCARを含むABPを発現する遺伝子操作された細胞も、提供されている。細胞は一般に哺乳動物細胞などの真核細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの実施形態では、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ器官に由来する細胞は、免疫系の細胞(例えば、先天性の細胞)、または適応免疫(例えば、骨髄球またはリンパ球を含むリンパ球、典型的にはT細胞及び/またはNK細胞)である。他の例示的な細胞としては、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性及び多能性幹細胞が挙げられる。これらの細胞は、典型的に、対象から直接的に単離された及び/または対象から単離されて凍結されたものなどの、初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞に、T細胞または他の細胞型の1つ以上のサブセット、例えばT細胞集団全体、CD4+細胞、CD8+細胞、及びそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大、再循環、局在によって定義されたもの、及び/または持続能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくはパーティションにおける存在、マーカーまたはサイトカイン分泌プロファイル、及び/または分化度が含まれる。治療を受ける対象に関して、細胞は同種異系及び/または自己由来であり得る。方法の中でも、とりわけ際立っているのが、既製の方法である。いくつかの態様において、例えば、既製の技術などの場合、細胞は多能性及び万能性であり、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞である。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書中に記載されているように、対象から細胞を単離すること、それらの細胞を調製、処理、培養、及び/または操作すること、ならびに凍結保存の前または後に同じ患者にそれらを再導入することを含む。
T細胞及び/またはCD4+及び/またはCD8+T細胞のサブタイプ及び亜集団の中でも、とりわけ際立っているのが、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞及びそのサブタイプ(幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化型など)エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MALT)細胞、自然発生及び適応調節性T(Treg)細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞、α/βT細胞、δ/γT細胞などのヘルパーT細胞である。
いくつかの実施形態では、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、及び/または好塩基球である。
細胞を遺伝子修飾して、発現を減少させるか、内因性TCRをノックアウトすることが可能である。そのような修飾は、Mol Ther Nucleic Acids.2012 Dec;1(12):e63;Blood.2011 Aug 11;118(6):1495−503;Blood.2012 Jun 14;119(24):5697−5705;Torikai,Hiroki et al ”HLA and TCR Knockout by Zinc Finger Nucleases:Toward “off−the−Shelf” Allogeneic T−Cell Therapy for CD19+Malignancies..” Blood 116.21(2010):3766;Blood.2018 Jan 18;131(3):311−322.doi:10.1182/blood−2017−05−787598、及びWO2016069283に記載されており、該文献はその全体が参照により援用されている。
細胞を、サイトカイン分泌が促進されるように遺伝子修飾してもよい。そのような修飾は、Hsu C,Hughes MS,Zheng Z,Bray RB,Rosenberg SA,Morgan RA.Primary human T lymphocytes engineered with a codon−optimized IL−15 gene resist cytokine withdrawal−induced apoptosis and persist long−term in the absence of exogenous cytokine.J Immunol.2005;175:7226−34;Quintarelli C,Vera JF,Savoldo B,Giordano Attianese GM,Pule M,Foster AE,Co−expression of cytokine及びsuicide genes to enhance the activity及びsafety of tumor−specific cytotoxic T lymphocytes.Blood.2007;110:2793−802、及びHsu C,Jones SA,Cohen CJ,Zheng Z,Kerstann K,Zhou J,Cytokine−independent growth及びclonal expansion of a primary human CD8+T−cell clone following retroviral transduction with the IL−15 gene.Blood.2007;109:5168−77に記載されている。
T細胞上のケモカイン受容体と腫瘍分泌ケモカインとの不一致は、腫瘍の微小環境へのT細胞の準最適な輸送の主要因となることが明らかにされてきた。治療効果を向上させる目的から、細胞を、腫瘍の微小環境でのケモカインの認識を高めるように遺伝子組み換えすることも可能である。そのような修飾の例は、Moon et al.,Expression of a functional CCR2 receptor enhances tumor localization and tumor eradication by retargeted human T cells expressing a mesothelin−specific chimeric antibody receptor.Clin Cancer Res.2011;17:4719−4730;及びCraddock et al.,Enhanced tumor trafficking of GD2 chimeric antigen receptor T cells by expression of the chemokine receptor CCR2b.J Immunother.2010:33780−788に記載されている。
細胞を遺伝子修飾して、CD28や41BBなどの共刺激/増強受容体の発現を増強することが可能である。
T細胞療法の有害作用として、サイトカイン放出症候群及び長期のB細胞枯渇を挙げることができる。自殺/安全スイッチをレシピエント細胞に導入することにより、細胞ベースの治療の安全性プロファイルが改善される可能性がある。したがって、細胞を、自殺/安全スイッチを含むように遺伝子組み換えする場合がある。自殺/安全スイッチは、遺伝子が発現される細胞に薬剤などの薬剤に対する感受性を付与し、細胞が薬剤と接触または接触したときに細胞を死滅させる遺伝子であり得る。例示的な自殺/安全スイッチは、Protein Cell.2017 Aug;8(8):573−589に記載されている。自殺/安全スイッチは、HSV−TKであり得る。自殺/安全スイッチは、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、またはニトロレダクターゼであり得る。自殺/安全スイッチは、RapaCIDe(商標)であり得る。これは、米国特許出願公開第US20170166877A1号に記載されている。自殺/安全スイッチ系は、CD20/リツキシマブであり得る。これは、Haematologica.2009 Sep;94(9):1316−1320に記載されている。これらの参照文献は、その全体が参照により援用されている。
TCRまたはCARは、ヘテロ二量体化小分子の存在下でのみ組み立てられるスプリット受容体としてレシピエント細胞に導入することが可能である。そのようなシステムは、Science.2015 Oct 16;350(6258):aab4077、及び米国特許第9,587,020号に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
いくつかの実施形態において、細胞は、1つ以上の核酸、例えば、本明細書中に開示されているTCRまたはCARをコードするポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは遺伝子操作により導入され、それにより、本明細書中に開示されている組み換えもしくは遺伝子操作されたTCRまたはCARを発現する。いくつかの実施形態では、核酸は、異種であり、すなわち、通常は、別の生物または細胞から得られたものなどの、細胞または細胞から得られた試料には存在しない、例えば、操作されている細胞および/またはまたはそのような細胞が由来する生物には普通は見られない。いくつかの実施形態では、核酸は、天然に存在しない(例えば、天然には見られない)核酸とされ、例えば、複数の異なる細胞型からのさまざまなドメインをコードする核酸のキメラの組み合わせを含むものが挙げられる。
核酸は、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含み得る。特定の理論またはメカニズムに拘束されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増強するものと考えられている。ヌクレオチド配列をコドン最適化した場合、同じアミノ酸をコードする別のコドンを天然コドンで置き換えることを伴い得るが、その場合には、細胞内で利用容易性に優れたtRNAを介して翻訳を行い、翻訳効率を向上させることが可能となる。また、ヌクレオチド配列をコドン最適化することで、翻訳を妨げる二次mRNA構造を減少させ、翻訳効率が向上させることも可能となる。
コンストラクトまたはベクターを使用して、TCRまたはCARをレシピエント細胞に導入してもよい。例示的なコンストラクトは、本明細書中に記載されている。TCRまたはCARのα鎖及びβ鎖をコードするポリヌクレオチドは、単一のコンストラクトまたは個別のコンストラクト内にある。α及びβ鎖をコードするポリヌクレオチドは、プロモーター、例えば、異種プロモーターに作動可能に連結される場合がある。異種プロモーターは、強力なプロモーター、例えば、EF1α、CMV、PGK1、Ubc、βアクチン、CAGプロモーター、及びそれらに類するものであり得る。異種プロモーターは弱いプロモーターであり得る。異種プロモーターは誘導プロモーターであり得る。例示的な誘導プロモーターの例としては、限定されるものではないが、TRE、NFAT、GAL4、LAC、及びそれらに類するものが挙げられる。他の例示的な誘導性発現系は、米国特許第5,514,578号、同第6,245,531号、同第7,091,038号、及び欧州特許第0517805号に記載されており、該文献はその全体が参照により援用されている。
また、TCRまたはCARをレシピエント細胞に導入するためのコンストラクトは、シグナルペプチド(シグナルペプチド要素)をコードするポリヌクレオチドを含み得る。シグナルペプチドは、導入されたTCRまたはCARの表面輸送を促進し得る。限定されるものではないが、CD8シグナルペプチド、免疫グロブリンシグナルペプチドが挙げられ、具体例には、GM−CSF及びIgGκが挙げられる。そのようなシグナルペプチドは、Trends Biochem Sci.2006 Oct;31(10):563−71に記載されている。Epub 2006 Aug 21、及びAn,et al.“Construction of a New Anti−CD19 Chimeric Antigen Receptor and the Anti−Leukemia Function Study of the Transduced T Cells.”Oncotarget 7.9(2016):10638−10649.PMC.Web.16 Aug.2018に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
いくつかの事例において、例えば、α鎖及びβ鎖が単一のコンストラクトまたはオープンリーディングフレームから発現される場合、またはマーカー遺伝子がコンストラクトに含まれる場合、コンストラクトはリボソームスキップ配列を含み得る。リボソームスキップ配列は、2Aペプチド、例えば、P2AまたはT2Aペプチドであり得る。例示的なP2A及びT2A ペプチドは、Scientific Reports volume 7,Article number:2193(2017)に記載されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。いくつかの事例において、FURIN/PACE切断部位は、2A要素の上流に導入される。FURIN/PACE切断部位は、例えば、http://www.nuolan.net/substrates.htmlに記載されている。切断ペプチドはまた、Xa因子切断部位であり得る。α鎖及びβ鎖が単一のコンストラクトまたはオープンリーディングフレームから発現される場合、コンストラクトは内部リボソーム侵入部位(IRES)を含み得る。
コンストラクトは、1つ以上のマーカー遺伝子を更に含み得る。例示的なマーカー遺伝子の例としては、限定されるものではないが、GFP、ルシフェラーゼ、HA、lacZが挙げられる。マーカーは、当業者に公知のような選択可能なマーカー、例えば、抗生物質耐性マーカー、重金属耐性マーカー、または殺生物剤耐性マーカーとしてもよい。マーカーは、栄養要求性宿主において使用するための補完マーカーであり得る。例示的な相補性マーカー及び栄養要求性宿主は、Gene.2001 Jan 24;263(1−2):159−69に記載されている。そのようなマーカーは、IRES、フレームシフト配列、2Aペプチドリンカー、TCRまたはCARとの融合を介して発現する場合もあれば、または別個のプロモーターとは別個に発現する場合もある。
TCRまたはCARをレシピエント細胞に導入するための例示的なベクターまたはシステムとしては、限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス+修飾ワクシニア、アンカラウイルス(MVA)、アデノウイルス+レトロウイルス、アデノウイルス+センダイウイルス、アデノウイルス+ワクシニアウイルス、αウイルス(VEE)レプリコンワクチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ビフィドバクテリウムロンガム、CRISPR−Cas9、大腸菌(E.coli)、フラビウイルス、遺伝子銃、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、ラクトコッカスラクティス、エレクトロポレーション、レンチウイルス、リポフェクション、リステリア菌、麻疹ウイルス、修飾ワクシニアアンカラウイルス(MVA)、mRNAエレクトロポレーション、裸/プラスミドDNA、裸/プラスミドDNA+アデノウイルス、裸/プラスミドDNA+修飾ワクシニアアンカラウイルス(MVA)、裸/プラスミドDNA+RNAトランスファー、裸/プラスミドDNA+ワクシニアウイルス、裸/プラスミドDNA+水疱性口内炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、非ウイルス、PiggyBac(商標)(PB)トランスポゾン、ナノ粒子系システム、ポリオウイルス、ポックスウイルス、ポックスウイルス+ワクシニアウイルス、レトロウイルス、RNAトランスファー、RNAトランスファー+裸/プラスミドDNA、RNAウイルス、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サルモネラチフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セムリキフォレストウイルス、センダイウイルス、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、シミアンウイルス、siRNA、Sleeping Beautyトランスポゾン、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ワクシニアウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスレプリコン、水疱性口内炎ウイルス、コレラ菌(Vibrio cholera)が挙げられる。
好ましい実施形態において、TCRまたはCARは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、CRISPR−CAS9、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、リポフェクション、mRNAエレクトロポレーション、PiggyBac(商標)(PB)トランスポゾン、レトロウイルス、RNAトランスファー、またはSleeping Beautyトランスポゾンを介してレシピエント細胞に導入される。
いくつかの実施形態では、TCRまたはCARをレシピエント細胞に導入するためのベクターはウイルスベクターである。例示的なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びそれらに類するものが挙げられる。そのようなベクターは本明細書中に記載されている。
TCRまたはCARをレシピエント細胞に導入するためのTCRコンストラクトの例示的な態様は、図2に示す通りである。いくつかの実施形態では、TCRコンストラクトとしては、5’−3’方向に、ポリヌクレオチド配列:プロモーター配列、シグナルペプチド配列、TCRβ可変(TCRβv)配列、TCRβ定常((TCRβc)配列、切断ペプチド(例、P2A)、シグナルペプチド配列、TCRα可変(TCRαv)配列、及びTCRα定常(TCRαc)配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、コンストラクトのTCRβc及びTCRαc配列には、1つ以上のマウス領域、例えば、本明細書に記載の完全なマウス定常配列またはヒト→マウスアミノ酸交換が含まれる。いくつかの実施形態では、コンストラクトは更に、TCRαc配列の3’、開裂ペプチド配列(例えば、T2A)、その後にレポーター遺伝子を含む。一実施形態において、コンストラクトは、5’−3’方向に、ポリヌクレオチド配列:プロモーター配列、シグナルペプチド配列、TCRβ可変(TCRβv)配列、1つ以上のマウス領域を備えるTCRβ定常(TCRβc)配列、切断ペプチド(例、P2A)、シグナルペプチド配列、TCRα可変(TCRαv)配列、及び1つ以上のマウス領域を備えるTCRα定常(TCRαc)配列、切断ペプチド(T2Aなど)、ならびにレポーター遺伝子を含む。
治療開発用のTCRを発現系にクローニングするための、例示的なコンストラク骨格配列は、図3に描かれている通りである。
同定されたA*0201_LLASSILCA特異的TCRを治療開発の目的に発現系にクローニングするための例示的なコンストラクト配列は、図4に描かれている通りである。
同定されたA*0101_EVDPIGHLY特異的TCRを治療開発の目的に発現系にクローニングするための例示的なコンストラクト配列は、図5に描かれている通りである。
ヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、及び関連する方法
また、HLA−PEPTIDE ABPをコードする単離された核酸、核酸を含むベクター、ならびにベクターと核酸とを含む宿主細胞のほか、ABPを生産するための組み換え技術も提供されている。
核酸は、組み換え型としてもよい。組み換え核酸は、天然または合成の核酸セグメントを、生細胞内で複製できる核酸分子またはその複製産物に結合することにより、生細胞の外側で構築することが可能である。本明細書の目的を期して、複製は、インビトロ複製またはin vivo複製であり得る。
ABPを組み換え生産する場合、そのABPをコードする核酸(複数可)を単離し、複製(すなわち、DNAの増幅)用または発現用に複製可能なベクターに挿入してもよい。いくつかの態様では、核酸を相同組み換えによって生成する場合がある。これに関しては、例えば、米国特許第5,204,244号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
多くの異なるベクターが当該技術分野において公知である。ベクター構成要素には、通例、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうち1つ以上が含まれる。これに関しては、例えば、米国特許第5,534,615号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
ABP(例えば、TCR、CAR、抗体、またはその抗原結合断片)を発現するのに適した例示的なベクターまたはコンストラクトとしては、例えば、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla、CA)、pETシリーズ(Novagen、Madison、WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)pEXシリーズ(Clontech、Palo Alto、CA)が挙げられる。また、AGTlO、AGTl 1、AZapII(ストラタジーン)、AEMBL4、及びANMl 149などのバクテリオファージベクターも、本明細書中に開示されているABPを発現させるのに適している。
好適な宿主細胞の例証的な例は、以下に提供する通りである。これらの宿主細胞は、限定することを意味するものではなく、任意の好適な宿主細胞を使用して、本明細書中に提供されているABPを産生することが可能である。
好適な宿主細胞としては、原核生物(例えば、細菌)、下等真核生物(例えば、酵母)、または高等真核生物(例えば、哺乳動物)の細胞が挙げられる。好適な原核生物としては、グラム陰性菌またはグラム陽性菌のような真正細菌、例えば、エシェリキア属(Escherichia)(大腸菌)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)(S.typhimurium)、セラチア属(Serratia)(S.マルセッセンス(marcescans))、シゲラ属(Shigella)、バチルス属(Bacilli)(B.スブチリス(subtilis)およびB.リケニホルミス(licheniformis))、シュードモナス(Pseudomonas)(緑膿菌(P.aeruginosa))、及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。有用な大腸菌クローニング宿主の1つは大腸菌294であるが、大腸菌B、大腸菌X1776、及び大腸菌W3110も適している。
また、原核生物だけでなく、糸状菌または酵母などの真核微生物も、HLA−PEPTIDE ABPをコードするベクターに適したクローニング宿主または発現宿主である。Saccharomyces cerevisiae(すなわち、一般的なパン酵母)は、繁用されている下等真核生物の宿主微生物である。ただし、利用可能且つ有用な属、種、及び系統としては、ほかにも多数あり、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)(K.ラクチス(lactis)、K.フラジリス(fragilis)、K.ブルガリクス(bulgaricus)、K.ウィッカラミイ(wickeramii)、K.ワルチイ(waltii)、K.ドロソフィラウム(drosophilarum)、K.サーモトレランス(thermotolerans)、およびK.マルキサヌス(marxianus))、ヤロウィア属(Yarrowia)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、カンジダ属(Candida)(C.アルビカンス(albicans))、トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)(S.オクシデンタリス(occidentalis))、ならびに、糸状菌類、例えば、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)(A.ニジュランス(nidulans)及びA.ニガー(niger))が、挙げられる。
有用な哺乳動物宿主細胞としては、COS−7細胞、HEK293細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO);マウスセルトリ細胞;アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76)、及びそれらに類するものが挙げられる。
HLA−PEPTIDE ABPの生産に使用される宿主細胞は、さまざまな培地で培養することが可能である。例えば、Ham’s F10、Minimal Essential Medium(MEM)、RPMI−1640、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.,1979,58:44;Barnes et al.,Anal.Biochem.,1980,102:255;ならびに米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、及び同第5,122,469号;またはWO 90/03430及びWO 87/00195に記載されている培地のいずれかを使用してもよい。前述の各参照文献は、その全体が、参照により援用されている。
これらの培地のいずれかに、必要に応じてホルモン及び/または他の成長因子(インスリンなど)、トランスフェリン、または上皮成長因子)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンやチミジンなど)、抗生物質、微量元素(通常、無機化合物として定義される)マイクロモル範囲の最終濃度で存在する)、及びグルコースまたは同等のエネルギー源を補充してもよい。また、他の必要なサプリメントも、当業者に公知の適切な濃度にて含めることができる。
温度、pH、及びそれらに類するものの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞に対し以前に使用されたものであり、当業者にとって明白であろう。
組換え技法を使用する場合、ABPは、細胞内で、細胞周辺腔で産生される得るか、または培地に直接分泌され得る。ABPが細胞内で産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解断片のいずれかである粒子状破片を、例えば遠心分離または限外濾過により除去する。E.coliの細胞周辺腔に分泌されるABPを単離するための手順については、例えば、その全体が参照により援用されているCarter et al.(Bio/Technology,1992,10:163−167)記載されている。簡単に言うと、細胞ペーストは、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍される。細胞破片は遠心分離により取り除いてもよい。
いくつかの実施形態において、ABPは、無細胞系で生産される。いくつかの態様において、無細胞系はin vitro転写及び翻訳系である。これは、Yin et al.,mAbs,2012,4:217−225に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの態様において、無細胞系は、真核細胞または原核細胞からの無細胞抽出物を利用する。いくつかの態様において、原核細胞は、E.coliとされる。例えば、ABPが不溶性の凝集体として細胞内に蓄積する場合、あるいは、細胞周辺発現からの収量が低い場合に、ABPの無細胞発現が有用であり得る。
ABPを培地中に分泌させる場合、まず、そのような発現系からの上清を濃縮するのが通例であり、その際には、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon(登録商標)またはMillipore(登録商標)Pellcon(登録商標)限外濾過ユニットを使用する。プロテアーゼ阻害剤、例えばPMSFは、前述のステップのいずれかに含めることにより、タンパク質分解を阻害することが可能であるし、抗生物質が含めることにより、外来性の汚染物質の成長を防ぐことも可能である。
細胞から調製されたABP組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することが可能である。親和性クロマトグラフィーは特に有用な精製技術とされる。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、ABPに存在する免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに応じて異なる。プロテインAを使用してヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖を含むABPを精製してもよい(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.,1983,62:1−13。該文献はその全体が参照により援用されている)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に有用とされる(Guss et al.,EMBO J.,1986,5:1567〜1575。該文献はその全体が参照により援用されている)。
親和性リガンドが付着している気質は、ほとんどの場合アガロースであるが、他の気質を利用しても差し支えない。制御された細孔ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定した気質は、アガロースで達成し得るのに比べて流速の高速化、処理時間の短縮を可能にする。ABPがCH3ドメインを備える場合、BakerBondABX(登録商標)樹脂は精製に有用とされる。
その他のタンパク質精製技術、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSepharose(登録商標)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、利用可能であり、当業者はそれを応用することができる。
予備的な精製ステップ(複数可)の後、pH約2.5〜約4.5にて溶出バッファーを用いて、関心対象のABPと汚染物質を含む混合物を、低pHの疎水性相互作用クロマトグラフィ(通常、低塩濃度、例えば約0〜約0.25 Mの塩で行われる)に供してもよい。
HLA−PEPTIDE ABPの作製方法
HLA−PEPTIDE抗原の準備
本明細書中に提供されているABPの単離または作製に使用されるHLA−PEPTIDE抗原を、無傷のHLA−PEPTIDEまたはHLA−PEPTIDEの断片としてもよい。HLA−PEPTIDE抗原は、例えば、単離されたタンパク質または細胞の表面で発現されるタンパク質の形態であり得る。
いくつかの実施形態において、HLA−PEPTIDE抗原は、天然には存在しないアミノ酸配列または翻訳後修飾を有するHLA−PEPTIDEタンパク質などのHLA−PEPTIDEの非天然変異体である。
いくつかの実施形態において、HLA−PEPTIDE抗原は、例えば、細胞内または膜貫通配列、またはシグナル配列の除去により切り詰められる。いくつかの実施形態において、HLA−PEPTIDE抗原は、そのC末端にてヒトIgG1 Fcドメインまたはポリヒスチジンタグに融合する。
ABPの同定方法
HLA−PEPTIDEに結合するABPは、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、対象のファージディスプレイまたは免疫化を使用して同定することが可能である。
抗原結合タンパク質を同定するための或る方法は、少なくとも1つのHLA−PEPTIDE標的を提供することと、該少なくとも1つの標的を該抗原結合タンパク質に結合させることとを含み、それによって該抗原結合タンパク質を同定する。抗原結合タンパク質は、複数の個別の抗原結合タンパク質を含むファージディスプレイライブラリー内に存在し得る。
いくつかの実施形態では、ライブラリーはファージディスプレイライブラリーである。ファージディスプレイライブラリーは、HLA−PEPTIDE標的の該HLAに対し非特異的に結合する抗原結合タンパク質を実質的に含まないように、開発することが可能である。抗原結合タンパク質は、複数の個別の抗原結合タンパク質を含んだ酵母ディスプレイライブラリー内に存在し得る。酵母ディスプレイライブラリーは、HLA−PEPTIDE標的のHLAに対し非特異的に結合する抗原結合タンパク質を実質的に含まないように、開発することが可能である。
いくつかの実施形態では、ライブラリーは酵母ディスプレイライブラリーである。
いくつかの実施形態では、ライブラリーはTCRディスプレイライブラリーである。例示的なTCRディスプレイライブラリー及びそのようなTCRディスプレイライブラリーの使用方法は、WO98/39482;WO01/62908;WO2004/044004;WO2005116646、WO2014018863、WO2015136072、WO2017046198、及びHelmut et al,(2000)PNAS 97(26)14578−14583に記載されており、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
いくつかの態様において、結合工程は、2回以上、任意で少なくとも3回、例えば、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回行われる。
追加的に、本方法はまた、抗原結合タンパク質を、HLA−PEPTIDE標的とは異なる1つ以上のペプチド−HLA複合体と接触させて、抗原結合タンパク質がHLA−PEPTIDE標的に選択的に結合するかどうかを決定することを含み得る。
抗原結合タンパク質を同定するもう1つの方法は、少なくとも1つのHLA−PEPTIDE標的を得ることと、任意で、アジュバントと組み合わせて、HLA−PEPTIDE標的を対象(例えば、マウス、ウサギまたはラマ)に投与することと、抗原結合タンパク質を対象から単離することとを、含み得る。抗原結合タンパク質を単離することは、該対象の該血清をスクリーニングして該抗原結合タンパク質を同定することを、含み得る。この方法はまた、抗原結合タンパク質を、HLA−PEPTIDE標的とは異なる1つ以上のペプチド−HLA複合体と接触させて、抗原結合タンパク質がHLA−PEPTIDE標的に選択的に結合するかどうかを決定することを含み得る。同定された抗原結合タンパク質は、ヒト化することが可能である。
いくつかの態様において、抗原結合タンパク質を単離することは、抗原結合タンパク質を発現する対象からB細胞を単離することを含む。このB細胞を、ハイブリドーマを作製する用途に使用してもよい。また、B細胞は、CDRの1つ以上をクローニングする用途にも使用できる。また、例えば、EBV形質転換を使用することによって、B細胞を不死化させる場合もある。抗原結合タンパク質をコードする配列は、不死化B細胞からクローニングすることも、あるいは免疫対象から単離したB細胞から直接的にクローニングすることも可能である。B細胞の抗原結合タンパク質を含むライブラリーを作製することも可能であり、その場合、ライブラリーは、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイとされる。
抗原結合タンパク質を同定するためのもう1つの方法は、該抗原結合タンパク質を含む細胞を得ることと、この細胞を、少なくとも1つのHLA−PEPTIDE標的を含むHLA多量体と接触させることと、HLA多量体と該抗原結合タンパク質の間の結合を介して該抗原結合タンパク質を同定することと、を含み得る。
細胞は、例えばT細胞、任意で細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、または、例えばナチュラルキラー(NK)細胞であり得る。本方法は、該細胞を、任意でフローサイトメトリー、磁気分離または単一細胞分離を使用して単離することを更に含み得る。本方法は、抗原結合タンパク質を配列決定することを更に含み得る。
抗原結合タンパク質を同定するためのもう1つの方法は、該抗原結合タンパク質を含む1つ以上の細胞を得ることと、少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)に提示された少なくとも1つのHLA−PEPTIDE標的で、該1つ以上の細胞を活性化することと、少なくとも1つのHLA−PEPTIDE標的との相互作用によって活性化された1つ以上の細胞の選択によって該抗原結合タンパク質を同定することと、を含み得る。
細胞は、例えばT細胞、任意でCTL、またはNK細胞であり得る。本方法は、該細胞を、任意でフローサイトメトリー、磁気分離または単一細胞分離を使用して単離することを更に含み得る。本方法は、抗原結合タンパク質を配列決定することを更に含み得る。
モノクローナルABPの作製方法
モノクローナルABPは、例えば、ハイブリドーマ法(その全体が参照により援用されているKohler et al.,Nature,1975,256:495−497によって初めてに記載された方法)、及び/または組み換えDNA法(例えば、その全体が参照により援用されている米国特許第4,816,567号を参照)を使用して、得ることが可能である。モノクローナルABPはまた、例えば、ファージまたは酵母ベースのライブラリーを使用して得ることも可能である。出典:例えば、米国特許第8,258,082号及び同第8,691,730号。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物を免疫して、免疫に使用されるタンパク質に対し特異的に結合するABPを産生するか、または産生し得るリンパ球を誘発する。代替的に、リンパ球をin vitroで免疫する場合もある。次いで、リンパ球を、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。出典:Goding J.W.,MonoclonalABPs:Principles and Practice 3rd ed.(1986)Academic Press,San Diego,CA。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
ハイブリドーマ細胞は、融合していない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む好適な培養培地に播種,及び増殖される。例えば、親の骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマの培地には、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含める(HAT培地)。これらはHGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質である。
骨髄腫細胞で有用とされるのは、効率的に融合し、選択したABP産生細胞によるABPの安定した高レベル産生を支持するもの、及び高感受性の培地条件(例えば、HAT培地の有無)とされるものである。これらの好ましい骨髄腫細胞株の中でも、とりわけ際立っているのが、MOPC−21及びMC−11マウス腫瘍(Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,CAから入手可能)に由来するものなどのマウス骨髄腫株、及びSP−2またはX63−Ag8−653細胞(the American Type Culture Collection,Rockville,MDから入手可能)である。また、ヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異型骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナルABPの産生に関しても記載されている。例えば、参照によりその全体が組み込まれる、Kozbor,J.Immunol.,1984,133:3001を参照されたい。
所望される特異性、親和性、及び/または生物活性を有するABPを産生するハイブリドーマ細胞が同定された後で、選択されたクローンを、限界希釈法によってサブクローニングし、標準的な方法で成長させてもよい。上記のGodingを参照のこと。この用途に好適な培地としては、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。追加的に、ハイブリドーマ細胞を、動物の腹水腫瘍としてin vivoで増殖させてもよい。
従来の手順を使用して(例えば、モノクローナルABPの重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に対し特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、モノクローナルABPをコードするDNAを、容易に分離及び配列決定することが可能である。それゆえ、ハイブリドーマ細胞は、所望される特性を備えたABPをコードするDNAの有用な供給源として役立つと考えられる。いったん単離したDNAは、発現ベクター内に投入してもよい。次いで、このDNAを、宿主細胞(例えば、細菌(E.coliなど)、酵母(SaccharomycesまたはPichia sp.など)、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別段ABPを産生しない骨髄腫細胞)に対してトランスフェクトすることによって、モノクローナルABPを産生させる。
キメラABPの作製方法
キメラABPを作製する例示的な方法は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,81:6851−6855に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの実施形態において、キメラABPは、組み換え技術を使用して非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を組み合わせることによって作製される。
ヒト化ABPの作製方法
ヒト化ABPは、非ヒトモノクローナルABPの構造部分のほとんどまたは全てを対応するヒトABP配列で置き換えることによって生成することが可能である。結果として、抗原特異的可変、またはCDRのみが非ヒト配列で構成されるハイブリッド分子が生成される。ヒト化ABPを得る方法にとしては、例えば、Winter及びMilstein,Nature,1991,349:293−299;Rader et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,1998,95:8910−8915;Steinberger et al.,J.Biol.Chem.,2000,275:36073−36078;Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1989,86:10029−10033、及び米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、及び同第6,180,370号に記載されているものが挙げられる。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
ヒトABPの作製方法
ヒトABPは、例えば、トランスジェニック動物(例えば、ヒト化マウス)を使用して、当該技術分野において公知の様々な技術によって生成することが可能である。出典:例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1993,90:2551;Jakobovits et al.,Nature,1993,362:255−258;Bruggermann et al.,Year in Immuno.,1993,7:33、及び米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号及び同第5,545,807号。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。また、ヒトABPを、ファージディスプレイライブラリーから得ることも可能である(出典:例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,1991,227:381−388;Marks et al.,J.Mol.Biol.,1991,222:581−597、及び米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている)。また、ヒトABPは、in vitroで活性化されたB細胞によっても生成される(出典:例えば、米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている)。また、ヒトABPは酵母ベースのライブラリーから誘導される場合もある(出典:例えば、米国特許第8,691,730号。該文献はその全体が参照により援用されている)。
ABP断片の作製方法
本明細書中に提供されているABP断片は、本明細書中に記載されている例示的な方法または当該技術分野において公知の方法をはじめとする、任意の好適な方法によって作成することが可能である。好適な方法としては、組み換え技術及びABP全体のタンパク質分解消化が挙げられる。Illustrative methods of makingABP断片を作製するための例証的な方法は、例えば、Hudson et al.,Nat.Med.,2003,9:129−134に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。scFvABPを作製するための方法は、例えば、Plukthun,in The Pharmacology of MonoclonalABPs,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994);WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
代替足場の作製方法
本明細書中に提供されている代替足場は、本明細書中に記載されている例示的な方法または当該技術分野において公知の方法をはじめとする、任意の好適な方法によって作成することが可能である。例えば、Adnectins(商標)の調製方法は、Emanuel et al.,mAbs,2011,3:38−48に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。iMabsの調製方法は、米国特許出願第2003/0215914号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。アンチカリンの調製方法(登録商標)は、Vogt and Skerra,Chem.Biochem.,2004,5:191−199に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。クニッツドメインを調製するための方法 は、Wagner et al.,Biochem.& Biophys.Res.Comm.,1992,186:118−1145に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。チオレドキシンペプチドアプタマーの調製方法は、Geyer and Brent,Meth.Enzymol.,2000,328:171−208に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。アフィボディの調製方法は、Fernandez,Curr.Opinion in Biotech.,2004,15:364−373に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。DARPinの調製方法は、Zahnd et al.,J.Mol.Biol.,2007,369:1015−1028に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。アフィリンの調製方法は、Ebersbach et al.,J.Mol.Biol.,2007,372:172−185に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。テトラネクチンの調製方法は、Graversen et al.,J.Biol.Chem.,2000,275:37390−37396に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。アビマーの調製方法は、Silverman et al.,Nature Biotech.,2005,23:1556−1561に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。ファイノマーの調製方法は、Silacci et al.,J.Biol.Chem.,2014,289:14392−14398に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。代替足場の更なる情報は、Binz et al.,Nat.Biotechnol.,2005 23:1257−1268、及びSkerra,Current Opin.in Biotech.,2007 18:295−304に提供されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
多重特異的ABPの作製方法
本明細書中に提供されている多重特異的ABPは、本明細書中に記載されている例示的な方法または当該技術分野において公知の方法をはじめとする、任意の好適な方法によって作成することが可能である。一般的な軽鎖ABPの作製方法は、Merchant et al.,Nature Biotechnol.,1998,16:677−681に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。四価の二重特異性ABPを作製するための方法は、Coloma and Morrison,Nature Biotechnol.,1997,15:159−163に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。ハイブリッド免疫グロブリンの作製方法は、Milstein及びCuello,Nature,1983,305:537−540、及びStaerz and Bevan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1986,83:1453−1457に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。ノブ・イントゥ・ホールを用いた免疫グロブリンの製造方法は、米国特許第5,731,168号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。静電修飾を伴う免疫グロブリンを作製する方法は、WO2009/089004に提供されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。二重特異性一本鎖ABPの作成方法は、Traunecker et al.,EMBO J.,1991,10:3655−3659、及びGruber et al.,J.Immunol.,1994,152:5368−5374に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。リンカーの長さが可変であり得る一本鎖ABPの作製方法は、米国特許第4,946,778及び5,132,405に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。ダイアボディの作製方法は、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90:6444−6448に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。トリアボディ及びテトラボディの作製方法は、Todorovska et al.,J.Immunol.Methods,2001,248:47−66に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。三重特異性F(ab’)3誘導体の作製方法は、Tutt et al.J.Immunol.,1991,147:60−69に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。架橋ABPの作製方法は、米国特許第4,676,980号;Brennan et al.,Science,1985,229:81−83;Staerz,et al.Nature,1985,314:628−631、及びEP 0453082に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。ロイシンジッパーによってアセンブルされた抗原結合ドメインを作製する方法は、Kostelny et al.,J.Immunol.,1992,148:1547〜1553に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。DNLアプローチによるABPの作製方法は、米国特許第7,521,056号、同第7,550,143号、同第7,534,866、及び同第7,527,787号に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。ABP分子及び非ABP分子のハイブリッドを作成する方法は、WO93/08829に記載されており、該文献はその全体が、例えばそのようなABPに関して、参照により援用されている。DAF ABPの作製方法は、米国特許出願第2008/0069820号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。還元及び酸化によるABPの作製方法は、Carlring et al.,PLoS One,2011,6:e22533に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。DVD−Igs(商標)の作製方法は、米国特許第7,612,181号に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。DARTs(商標)の作製方法は、Moore et al.,Blood,2011,117:454−451に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。DuoBodies(登録商標)の作製方法は、Labrijn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2013,110:5145−5150号、同第Gramer et al.,mAbs,2013,5:962−972、及びLabrijn et al.,Nature Protocols,2014,9:2450−2463に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。IgGからCH3のC末端に融合したscFvを含むABPを作製する方法は、Coloma and Morrison,Nature Biotechnol.,1997,15:159−163に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。免疫グロブリンの定常領域にFab分子が付着しているABPを作製する方法は、Miler et al.,J.Immunol.,2003,170:4854−4861に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。CovXボディの作成方法は、Doppalapudi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2010,107:22611−22616に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。Fcab ABPの作製方法は、Wozniak−Knopp et al.,Protein Eng.Des.Sel.,2010,23:289−297に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。TandAb(登録商標)ABPの作製方法は、Kipriyanov et al.,J.Mol.Biol.,1999,293:41−56及びZhukovsky et al.,Blood,2013,122:5116に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。タンデムファブの作製方法は、WO2015/103072に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。Zybodies(商標)の製造方法は、LaFleur et al.,mAbs,2013,5:208−218に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
変異体の作製方法
ABPをコードするポリヌクレオチド配列(複数可)に可変性を導入するには、任意の好適な方法を使用することができる。これらの方法としては、例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングのほか、トリヌクレオチド指向変異誘発(TRIM)のようなオリゴヌクレオチド指向変異誘発が挙げられる。いくつかの態様において、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4〜6残基)は、無作為化される。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、詳細に同定することが可能である。特にCDR−H3及びCDR−L3は、突然変異の標的とされることが、しばしばある。
可変領域及び/またはCDRへの多様性の導入を使用して、二次ライブラリーを作成することが可能である。次いで、二次ライブラリーをスクリーニングして、親和性が改善されたABP変異体を同定する。二次ライブラリーの構築と再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology,2001,178:1−37に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
ABPを用いて細胞を操作するための方法
また、ABP(例えば、抗体とCARとTCRとを具備する受容体)を発現させること、ならびにそのようなABPを発現させる遺伝子操作された細胞を生産することを用途とした、方法、核酸、組成物、及びキットも、提供されている。遺伝子操作には、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換などにより、組み換えられたまたは操作された成分をコードする核酸を細胞に導入することを含むのが、一般的である。
いくつかの実施形態では、まず細胞を刺激し、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような、増殖、生存及び/または活性化などの応答を誘発する刺激を組み合わせて用い、続いて、活性化された細胞の形質導入し、臨床用途に十分な程度の数まで培養して拡大させることによって、遺伝子導入を達成する。
いくつかの状況において、刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現は、対象にとって毒性であり得る。それゆえ、いくつかの状況では、操作された細胞には、養子免疫療法における投与時など、細胞をインビボでのネガティブ選択に感受性にする遺伝子セグメントが含まれる。例えば、いくつかの態様では、細胞に操作をすることによって、細胞を投与された患者の生体内状態の変化の結果、除去され得るようにしている。陰性選択可能な表現型は、投与された薬剤、例えば、化合物に感受性を与える遺伝子の挿入から生成され得る。陰性選択可能な遺伝子には、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV−I TK)遺伝子(Wigler et al.,Cell II:223,1977)が含まれ、これにより、ガンシクロビル感受性、細胞のヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞のアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌のシトシンデアミナーゼが付与される(Mullen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:33(1992))。
いくつかの態様において、細胞は、さらに、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するように設計される。遺伝子操作された成分、例えば抗原受容体、例えばCARを導入するための様々な方法が周知であり、これらを、提供される方法および組成物とともに使用してもよい。例示的な方法には、ウイルス、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを含む、受容体をコードする核酸の移入のための方法が含まれる。
いくつかの実施形態では、組み換え核酸を、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組み換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞に移入する。いくつかの実施形態では、組み換え核酸は、組み換えレンチウイルスベクターまたはγレトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターを使用してT細胞に導入される(例えば、Koste et al.(2014)Gene Therapy 2014 Apr.3.doi:10.1038/gt.2014.25;Carlens et al.(2000)Exp Hematol 28(10):1137−46;Alonso−Camino et al.(2013)Mol Ther Nucl Acids 2,e93;Park et al.,Trends Biotechnol.2011 Nov.29(11):550−557)を参照のこと。
いくつかの実施形態において、レトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓形成ウイルス(SFFV)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターを有する。ほとんどのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、レトロウイルスには、鳥類または哺乳類の細胞源に由来するものが包含される。レトロウイルスは通例、両種性である。このことは、レトロウイルスが、ヒトをはじめとするいくつかの種の宿主細胞に感染する可能性のあることを意味する。一実施形態において、レトロウイルスgag、pol及び/またはenv配列は、発現した遺伝子で置換される。いくつかの例証的なレトロウイルスシステムが、記載されてきた(例えば、米国特許第5,219,740号;同第6,207,453号;同第5,219,740号;Miller及びRosman(1989)BioTechniques 7:980−990;Miller,A.D.(1990)Human Gene Therapy 1:5−14;Scarpa et al.(1991)Virology 180:849−852;Burns et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033−8037;及びBoris−Lawrie and Temin(1993)Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109)。
レンチウイルス形質導入の方法は、公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al.(2012)J.Immunother.35(9)689−701;Cooper et al.(2003)Blood.101:1637−1644;Verhoeyen et al.(2009)Methods Mol Biol.506:97−114;及びCavalieri et al.(2003)Blood.102(2)497−505に記載されている。
いくつかの実施形態では、組み換え核酸はエレクトロポレーションを介してT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al,(2013)PLoS ONE 8(3):e60298;Van Tedeloo et al.(2000)Gene Therapy 7(16):1431−1437、及びRoth et al.(2018)Nature 559:405−409を参照)。いくつかの実施形態では、組み換え核酸は転位を介してT細胞に導入される(例えば、Manuri et al.(2010)Hum Gene Ther 21(4):427−437;Sharma et al.(2013)Molec Ther Nucl Acids 2,e74、及びHuang et al.(2009)Methods Mol Biol 506:115−126を参照)。免疫細胞に遺伝物質を導入及び発現させる方法としては、ほかにも、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York.N.Y.を参照),プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子により促進される微粒子衝突(Johnston,Nature,346:776−777(1990))、及びリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al.,Mol.Cell Biol.,7:2031−2034(1987))が挙げられる。
組み換え産物をコードする核酸の導入のための他のアプローチ及びベクターは、例えば、以下の国際特許出願公開第WO2014055668号、及び米国特許第7,446,190号に記載されているものが含まれる。
追加的な核酸、例えば、導入用の遺伝子の中でも、とりわけ際立っているのが、移植された細胞の生存率及び/または機能を促進することなどにより、治療の有効性を改善するもの;細胞の選択及び/または評価のための遺伝的マーカーを提供する遺伝子、例えば、in vivoでの生存または局在を評価するための遺伝子;例えば、細胞をin vivoで陰性選択の影響を受けやすくすることにより、安全性を向上させる遺伝子である。出典:Lupton S.D.et al.,Mol.及びCell Biol.,11:6(1991)、及びRiddell et al.,Human Gene Therapy 3:319−338(1992)。出版物:LuptonらによるPCT/US91/08442号及びPCT/US94/05601号も参照のこと。該文献は、ドミナント陽性選択可能マーカー及び陰性選択可能マーカーの融合に由来する二機能性選択可能融合遺伝子の使用について記載されている。例えば、Riddell et al.,米国特許第6,040,177号の第14〜17段落を参照のこと。
操作を施された細胞の調製
いくつかの実施形態では、操作を施された細胞の調製は、1つ以上の培養及び/または調製工程を含む。HLA−ペプチド−ABP、例えば、TCRまたはCARを導入するための細胞は、生物学的試料、例えば、対象から得られた、またはその対象に由来するものなどの、試料から単離することが可能である。いくつかの実施形態では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは病態を有するか、または細胞療法を必要としているか、または細胞療法薬が投与される対象とされる。いくつかの実施形態において対象は、細胞が単離、処理、及び/または操作を施される養子細胞療法などの、特定の治療的介入を必要としているヒトである。
したがって、細胞は、いくつかの実施形態において、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料としては、対象から直接的に採取された組織、体液、及びその他の試料のほか、分離、遠心分離、遺伝子工学(ウイルスベクターによる形質導入など)、洗浄、及び/またはインキュベーションなどの1つ以上の処理ステップにより得られた試料が挙げられる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接的に得られた試料または処理された試料であり得る。生物学的試料としては、限定されるものではないが、限定されるものではないが、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿及び汗などの体液、組織及び臓器の試料(例えば、それらに由来する処理された試料)が挙げられる。
いくつかの態様において、細胞が由来または単離される試料は、血液または血液由来の試料であるか、またはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物であるか、またはその産物に由来する。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、その他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃腺もしくは他の臓器、及び/またはそれらに由来する細胞が挙げられる。試料としては、細胞療法、例えば養子細胞療法の文脈において、自家及び同種起源の試料が包含される。
いくつかの実施形態において、細胞は、例えばT細胞株などの細胞株に由来する。細胞は、いくつかの実施形態において、異種起源、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類、またはブタから得られる。
いくつかの実施形態において、細胞の単離は、1つ以上の調製及び/または非親和性に基づく細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞を、洗浄し、遠心分離して、及び/または1つ以上の試薬の存在下でインキュベートする。例えば、不要な成分を除去するか、関心対象の成分を富化するか、あるいは特定の試薬に対し感受性の細胞を溶解または除去する。いくつかの例では、細胞を、密度、付着特性、サイズ、感度、特定の構成要素に対する耐性などの、1つ以上の特性に基づいて分離させる。
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞を、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得る。試料には、いくつかの態様では、リンパ球(例えば、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び/または血小板)が含有されており、いくつかの態様では、赤血球と血小板以外の細胞が含有されている。
いくつかの実施形態では、対象から収集された血球を洗浄し、例えば、血漿画分を除去して、且つ後続の処理ステップに備えて、細胞を適切なバッファーまたは培地に入れる。いくつかの実施形態では、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、カルシウム及び/またはマグネシウム及び/または多くのもしくは全ての二価カチオンを欠く。いくつかの態様において、洗浄ステップは、半自動化された「フロースルー」遠心分離機(例えば、Baxter製のCobe 2991セルプロセッサー)を製造元の指示書に従って使用して行う。いくつかの態様では、洗浄ステップを、製造元の指示に従って接線流濾過(TFF)を用いて行う。いくつかの実施形態では、細胞を、洗浄後に、例えばCa++/Mg++不含PBSなどの、様々な生体適合性バッファー中に再懸濁させる。或る特定の実施形態では、血球試料の成分を除去して、細胞を培養液中に直接的に再懸濁させる。
いくつかの実施形態において、本方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば、赤血球を溶解し、パーコールまたはフィコール勾配を介して遠心分離することによる、末梢血から白血球を調製することを含む。
いくつかの実施形態では、単離方法は、1つ以上の特定の分子(例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーもしくは核酸のような表面マーカー)の細胞内での発現または存在に基づいて、異なる細胞型を分離することを含む。いくつかの実施形態では、そのようなマーカーに基づいて分離を行うための、任意の公知の方法が使用される場合がある。いくつかの実施形態において、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの態様において単離することは、細胞の発現または1つ以上のマーカー(典型的には細胞表面マーカー)の発現レベルに基づき、例えば、そのようなマーカーに対し特異的に結合する抗体または結合パートナーと共にインキュベーションすることによって、細胞及び細胞集団を分離することと、続いて、通例は洗浄ステップを実行することと、抗体または結合パートナーに結合していない細胞から抗体または結合パートナーに結合した細胞を分離することとを、含む。
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、及び/または抗体または結合パートナーに結合していない細胞を保持する陰性選択に基づき得る。いくつかの例では、両方の画分を、さらなる使用のために保持される。いくつかの態様において、ネガティブ選択は、分離が所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づくと最適に行われるような、異種集団の細胞型を特異的に同定する抗体が利用できない場合に特に有用である。
分離では、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞のうちの必ずしも100%を富化または除去する必要はない。例えば、特定のタイプの細胞(例えばマーカーを発現する細胞)の陽性選択または富化とは、そのような細胞の数または割合を増加させることを指すが、ただし、その際、マーカーを発現していない細胞を必ずしも完全に存在しないようにする必要はない。同様に、特定のタイプの細胞(例えばマーカーを発現する細胞)の陰性選択、除去または枯渇とは、そのような細胞の数または割合を減少させることを指すが、ただし、その際、そのような細胞を必ずしも全て完全に除去する必要はない。
いくつかの例では、複数ラウンドの分離ステップを実行し、或るステップで陽性もしくは陰性選択された画分を、後続の別の分離ステップ(例えば、陽性もしくは陰性選択)に供する。いくつかの例では、単一の分離ステップで、例えば、細胞を、複数の抗体または結合パートナー(各々が陰性選択の標的となるマーカーに対し特異的なもの)と共にインキュベートすることによって、複数のマーカーを同時に発現する細胞を枯渇させる場合がある。同様に、さまざまな種類の細胞内で発現する複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に陽性選択する場合もある。
例えば、いくつかの態様ではT細胞の特定の亜集団、例えば陽性もしくは高レベルの1つ以上の表面マーカー(CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及び/またはCD45RO+T細胞を発現する細胞など)を、陽性もしくは陰性選択手法によって分離する。
例えば、CD3+、CD28+T細胞を確実に選択するために、CD3/CD28共役磁気ビーズ、例えば、DYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T細胞拡張剤)を使用する場合もある。
いくつかの実施形態では、単離は、陽性選択を行い、特定の細胞集団を富化させるか、あるいは、陰性選択を行い、特定の細胞集団を枯渇させることによって行われる。いくつかの実施形態では、1つ以上の表面マーカーであってそれぞれ陽性または陰性選択された細胞上で発現したマーカー(マーカー+)または比較的高レベルにて発現したマーカー(マーカー高)に対し特異的に結合する、1つ以上の抗体または他の結合剤と共に、細胞をインキュベートすることによって、陽性または陰性選択を達成する。
いくつかの実施形態では、非T細胞(例えば、B細胞、単球、またはCD14などの他の白血球)上に発現したマーカーを陰性選択することによって、T細胞を末梢血単核球(PBMC)試料から分離する。いくつかの態様において、CD4+またはCD8+選択ステップを使用して、CD4+ヘルパー細胞とCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。1つ以上のナイーブ、メモリー及び/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現したマーカー、または比較的高レベルにて発現したマーカーを陽性または陰性選択することによって、そのようなCD4+及びCD8+の集団を、更に亜集団に選別することが可能である。
いくつかの実施形態では、CD8+細胞におけるナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、及び/またはセントラルメモリー幹細胞を、更に富化させるか、または枯渇させる。これに関しては、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づいて、陽性または陰性選択することによって行う。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化を遂行することによって、効能を向上させ、例えば、投与後の長期生存、拡張、及び/または生着を改善し、これは、一部の態様において、そのような亜集団においてとりわけ堅牢となる。出典:Terakura et al.(2012)Blood.1:72−82;Wang et al.(2012)J Immunother.35(9):689−701。いくつかの実施形態では、TCMに富むCD8+T細胞とCD4+T細胞を組み合わせることにより、更に効能を強化させる。
実施形態において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+、及びCD62L−サブセットの両方に存在する。例えば、抗CD8及び抗CD62L抗体を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)の、CD62L−CD8+及び/またはCD62L+CD8+画分を富化または枯渇させてもよい。
いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化を、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、及び/またはCD127の陽性または高い表面発現に基づいて行い、いくつかの態様では、CD45RA及び/またはグランザイムBを発現または高度に発現する細胞の陰性選択に基づいて行う。いくつかの態様では、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、及びCD62Lを発現する細胞の陽性選択または富化によって、TCM細胞が富化されたCD8+集団を単離させる。一態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化を、まず、CD4の発現に基づいて選択された細胞の陰性画分(CD14及びCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lに基づく陽性選択に供したもの)から実行する。このような選択は、いくつかの態様では同時に実行し、他の態様ではいずれかの順序で順次実行する。いくつかの態様では、CD8+細胞集団または亜集団を調製する際に用いたのと同じCD4発現に基づく選択ステップもまた使用して、CD4+細胞集団または亜集団を生成し、例えばCD4ベースの分離による陽性画分及び陰性画分の両方を保持して、本方法の後続ステップで使用する。任意で、1つ以上の追加的な陽性または陰性選択ステップを続ける。
特定の例では、PBMCの試料または他の白血球試料で、負及び陽性画分の両方が保持されているものを、CD4+細胞の選択に供する。次いで、陰性画分を、CD14及びCD45RAまたはROR1の発現に基づいて陰性選択に供し、セントラルメモリーT細胞(CD62LまたはCCR7など)にマーカー特性に基づいて陽性選択に供する。正及び陰性選択順序は、任意とされる。
細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、CD4+Tヘルパー細胞を、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクター細胞に選別する。CD4+リンパ球は、標準的な方法で得ることができる。いくつかの実施形態では、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO−、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞はCD62L+及びCD45RO+である。いくつかの実施形態では、エフェクターCD4+細胞はCD62L−及びCD45RO−である。
一例では、陰性選択によりCD4+細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルには通常、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DR、及びCD8に対する抗体を含める。いくつかの実施形態では、抗体または結合パートナーを、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体または基質に結合することにより、陽性及び/または陰性選択に応じて細胞分離を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、細胞及び細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技術を使用して分離または単離させる(レビュー誌:Methods in Molecular Medicine,vol.58:Metastasis Research Protocols,Vol.2:Cell Behavior In Vitro及びIn Vivo,p 17−25 Edited by:S.A.Brooks and U.Schumacher Humana Press Inc.,Totowa,N.J.)。
いくつかの態様では、分離される細胞の試料または組成物を、小型の磁化可能、または磁気応答性の材料、例えば、常磁性ビーズ(例えば、DynabeadsまたはMACSビーズなど)などの磁気応答性粒子または微粒子とともにインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば粒子は、一般に、分離が所望される、例えば、ネガティブ選択またはポジティブ選択が所望される細胞(単数または複数)または細胞の集団に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に直接的または間接的に付着する。
いくつかの実施形態において、磁性粒子またはビーズは、特定の結合メンバーに結合された磁気応答材料、例えば、抗体または他の結合パートナーを含む。周知の磁気応答材料のなかには、磁気分離法で使用されるものが、数多くある。好適な磁性粒子としては、Molday,米国特許第4,452,773号、及び欧州特許明細書EP452342(B)号に記載されているものが挙げられ、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。コロイドサイズの粒子の例としては、それ以外に、Owenによる米国特許第4,795,698号、及びLibertiらによる米国特許第5,200,084号に記載されているようなものも挙げられる。
インキュベーションは、一般に、磁性粒子またはビーズに付着する、抗体もしくは結合パートナー、またはそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、試料内の細胞に存在する場合、細胞表面に特異的に結合する条件下で実行される。
いくつかの態様では、試料を磁場内に置き、磁気応答性または磁化可能な粒子が付着している細胞を磁石に引き寄せて、非標識細胞から分離させる。陽性選択では、磁石に引き寄せられた細胞が保持されるのに対し、陰性選択では、引き寄せられない細胞(無標識の細胞)が保持される。いくつかの態様では、陽性選択及び陰性選択の組み合わせを同じ選択ステップ中に実行する。このステップでは、陽性画分及び陰性画分を保持して、更に処理されるか、あるいは、更なる分離ステップに供される。
或る特定の実施形態において、磁気応答性粒子は、一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンでコーティングされている。或る特定の実施形態において、磁性粒子は、1つ以上のマーカーに対し特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に付着している。或る特定の実施形態において、ビーズではなく細胞を、一次抗体または結合パートナーで標識し、次いで、細胞型特異的二次抗体または他の結合パートナー(ストレプトアビジンなど)でコーティングされた磁性粒子を添加する。或る特定の実施形態では、ストレプトアビジンでコーティングされた磁性粒子を、ビオチン化一次抗体または二次抗体と併用する。
いくつかの実施形態では、磁気応答性粒子を、引き続き、培養、培養及び/または操作に供する細胞に付着したままの状態に維持する。いくつかの態様では、この粒子を、患者への投与に備えて細胞に付着したままの状態に維持する。いくつかの実施形態では、磁化性または磁気応答性の粒子を、細胞から除去する。細胞から磁化可能な粒子を除去する方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、磁化可能粒子、または切断可能なリンカーに結合した抗体などを使用することが挙げられる。いくつかの実施形態では、磁化可能粒子は、生分解性とされる。
いくつかの実施形態では、親和性ベースの選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)によって為される(Miltenyi Biotech,Auburn,Calif.)。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁性粒子が付着した細胞を高純度にて選択することを可能としている。或る特定の実施形態において、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種及び標的種が順次溶出するモードにて動作する。すなわち、磁化された粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出している間、適所に保持されている。次いで、この第1の溶出ステップが完了した後で磁場に封入されて溶出するのを妨げられた種は、何らかの方法で解放され、結果として、この種の溶出及び回収が可能となる。或る特定の実施形態では、非標的細胞を標識し、不均一な細胞集団から枯渇させる。
或る特定の実施形態において、単離または分離は、本方法における単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養及び/または製剤化ステップの1つ以上を遂行する、システム、デバイス、または装置を使用して実行される。いくつかの態様では、本システムを使用して、これらの各ステップを閉鎖または無菌環境で実行することにより、例えば、エラー、ユーザーの取り扱い、及び/または汚染を最小限に抑えることが可能となる。一例において、本システムは、国際特許出願公開第WO2009/072003号、または米国特許出願公開第20110003380(A1)号に記載されているシステムである。
いくつかの実施形態において、システムまたは装置は、統合または自己完結型システムにて、及び/または自動化されたまたはプログラム可能な方法にて、分離、処理、操作、及び配合のステップのうちの1つ以上(例えば全部)を実行する。いくつかの態様において、システムまたは装置は、システムもしくは装置と通信するコンピューター及び/またはコンピュータープログラムを具備したことによって、ユーザーが、処理ステップ、単離ステップ、操作ステップ、及び製剤ステップのさまざまな態様をプログラム、制御、結果の評価、及び/または調整するのを、可能にしている。
いくつかの態様では、例えば、閉鎖された無菌システムにおいて、臨床規模のレベルにて細胞を自動分離するため、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を使用して分離及び/または他のステップを実行する。構成要素には、統合されたマイクロコンピューター、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、及びさまざまなピンチバルブが包含される。統合型コンピューターは、いくつかの態様において、機器の全ての構成要素を制御し、手順を標準化された順序にて繰り返し実行するようにシステムに指示する。いくつかの態様において、磁気分離ユニットは、可動永久磁石及び選択カラム用のホルダーを含む。蠕動ポンプは、ピンチ弁と共に、チューブセット全体の流量を制御する。これにより、システムをとおしたバッファーの制御された流れ、及び細胞を継続的に懸濁させることが、確実に為される。
いくつかの態様において、CliniMACSシステムでは、無菌の非発熱性溶液中に供給された抗体結合磁化可能粒子が、使用される。いくつかの実施形態では、細胞を磁性粒子で標識した後、この細胞を洗浄して過剰な粒子を除去する。次いで、細胞調製バッグをチューブセットに接続した後、これを、バッファーを含むバッグ、及び細胞収集バッグに接続する。チューブセットは、プレカラムと分離カラムを含む事前に組み立て済み滅菌チューブからなり、単回使用のものとされる。分離プログラムの開始後、本システムでは自動的に細胞試料が分離カラムに塗布される。標識された細胞はカラム内に保持される一方、標識されていない細胞は一連の洗浄ステップによって除去される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により使用される細胞集団は無標識のものであることから、カラム内に保持されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により使用される細胞集団は有標識のものであることから、カラムに保持される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により使用される細胞集団は、磁場を除去した後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
或る特定の実施形態において、分離及び/または他のステップは、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して実行される。CliniMACS Prodigyシステムは、いくつかの態様において、細胞処理ユニティを装備したことによって、遠心分離による細胞の自動洗浄及び分画を可能にしている。CliniMACS Prodigyシステムに、オンボードカメラ及び画像認識ソフトウェアを具備させて、ソース細胞製品の肉眼可視層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントが判別されるようにしてもよい。例えば、末梢血を、自動的に赤血球、白血球、及び血漿層に分離させることが可能である。CliniMACS Prodigyシステムに、統合された細胞培養チャンバーを含めてもよい。これにより、例えば、細胞の分化と増殖、抗原負荷、長期細胞培養などの細胞培養プロトコールが実現する。入力ポートは、培地の無菌除去及び補充を可能にし得る。統合型顕微鏡を使用して細胞を監視することができる。出典:例えば、Klebanoff et al.(2012)J Immunother.35(9)651−660,Terakura et al.(2012)Blood.1:72−82、及びWang et al.(2012)J Immunother.35(9):689−701。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されている細胞集団を、フローサイトメトリーを介して収集及び富化(または枯渇)させ、複数の細胞表面マーカー用に染色された細胞を、流体の流れを介して運搬する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されている細胞集団を、分取規模の蛍光活性化細胞選別(FACS)を介して収集して、富化(または枯渇)させる。或る特定の実施形態では、FACSベースの検出システムと組み合わせて微小電気機械システム(MEMS)チップを使用することにより、本明細書に記載の細胞集団を収集し、富化(または枯渇)させる(例えば、WO2010/033140,Cho et al.(2010)Lab Chip 10,1567−1573、及びGodin et al.(2008)J Biophoton.1(5):355−376を参照のこと。両方の事例において、細胞を複数のマーカーで標識することによって、明確に定義されたT細胞サブセットを高純度で単離することが可能となる。
いくつかの実施形態では、抗体または結合パートナーを1つ以上の検出可能マーカーで標識することで、陽性及び/または陰性選択に合わせて分離させるのを容易にしている。例えば、分離は、蛍光標識抗体への結合に基づいて行うことができる。いくつかの例では、抗体または1つ以上の細胞表面マーカーに対し特異的な他の結合パートナーの結合に基づいて細胞を分離することは、流体の流れを介して行われ、その際には、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)、例えば、分取スケール(FACS)及び/または微小電気機械システム(MEMS)チップ、例えば、フローサイトメトリー検出システムを併用する。そのような方法は、同時的に複数のマーカーに基づく陽性及び陰性選択を可能にするものである。
いくつかの実施形態では、調製方法に、凍結のステップ(例えば、単離、インキュベーション及び/または操作を実施する前または実施した後における、細胞の凍結保存)を含めている。いくつかの実施形態では、凍結及びその後続の解凍ステップで、細胞集団内の顆粒球、及び或る程度まで単球を、除去する。いくつかの実施形態では、例えば、洗浄工程で血漿及び血小板を除去した後に、細胞を凍結溶液中に懸濁させる。いくつかの態様においてさまざまな公知の凍結溶液及びパラメーターのいずれかを使用してもよい。一例では、20%DMSOと8%ヒト血清アルブミン(HSA)とを含有するPBS、または他の好適な細胞凍結培地を、使用することを含む。次いで、これを培地で1:1に希釈して、DMSO及びHSAの最終濃度をそれぞれ10%及び4%にする。他の例としては、Cryostor(登録商標)、CTL−Cryo(商標)ABC凍結培地、及びそれらに類するものが挙げられる。次いで、細胞を毎分1度の速度で−80℃まで凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中に保存する。
いくつかの実施形態において、提供されている方法は、養殖、インキュベーション、培養、及び/または遺伝子操作ステップを含む。例えば、いくつかの実施形態では、枯渇した細胞集団及び培養開始組成物をインキュベート及び/または操作するための方法が提供されている。
それゆえ、いくつかの実施形態では、培養開始組成物中で細胞集団をインキュベートする。インキュベーション及び/または操作を、培養容器(例えば、ユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チュービングセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または培地培養もしくは細胞培養用の他の容器中)で、実施する場合がある。
いくつかの実施形態では、遺伝子操作を施す前またはそれに関連して、細胞をインキュベートし及び/または培養する。インキュベーションステップは、培養、養殖、刺激、活性化、及び/または増殖を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物または細胞を、刺激条件または刺激剤の存在下にて、インキュベートする。そのような条件には、集団内の細胞の増殖、拡大、活性化、及び/または生存を誘発させ、抗原曝露を模倣し、及び/または、遺伝子操作を施すに際して(例えば、組み換え抗原受容体の導入に向けて)細胞を調製することを目的にデザインされた条件が、包含される。
条件としては、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、薬剤(例えば、栄養素)、アミノ酸、抗生物質、イオン、及び/または刺激因子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質)のほか、組み換え可溶性受容体及び細胞を活性化するようにデザインされた他の薬剤のうちの1つ以上を挙げることができる。
いくつかの実施形態では、刺激条件または薬剤としては、1つ以上の薬剤(例えば、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化し得るリガンド)が挙げられる。いくつかの態様では、T細胞内でのTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを、薬剤によって、オンにする(すなわち開始する)。そのような薬剤としては、抗体類、例えば、TCR成分、及び/または共刺激受容体に対し特異的なもの(抗CD3、抗CD28、ビーズなどの固体支持体等)、及び/または1つ以上のサイトカインに結合したものを挙げることができる。任意で、拡張する方法に、培養培地に(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度にて)抗CD3及び/または抗CD28抗体を加える工程を、更に具備させてもよい。いくつかの実施形態では、刺激剤は、IL−2及び/またはIL−15、例えば、少なくとも約10単位/mLのIL−2濃度を含む。
いくつかの態様において、インキュベーションは、米国特許第6,040,177号(Riddell et al.に付与)、Klebanoff et al.(2012)J Immunother.35(9)651−660,Terakura et al.(2012)Blood.1:72−82、及び/またはWang et al.(2012)J Immunother.35(9):689−701に記載されているような技術に従って行われる。
いくつかの実施形態では、T細胞は、非分裂性末梢血単核細胞(PBMC)などの培養開始組成物支持細胞に加えること(例えば、結果として生じる細胞集団が、拡大される初期集団中の各Tリンパ球について、少なくとも約5、10、20、または40個以上のPBMC支持細胞を含むようにする)、および培養物をインキュベートすること(例えば、T細胞の数を増やすのに十分な時間)により拡大される。一部の態様では、非分裂性支持細胞は、ガンマ線照射PBMC支持細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞分裂を防ぐために、PBMCに約3000〜3600ラドの範囲のガンマ線を照射する。いくつかの実施形態では、PBMC支持細胞をマイトマイシンCで不活性化する。いくつかの態様では、T細胞の集団を加える前に、支持細胞を培地に加える。
いくつかの実施形態では、刺激条件には、ヒトTリンパ球の成長に好適な温度、例えば、少なくとも約25℃、一般に少なくとも約30℃、一般に37℃または約37℃が含まれる。任意選択で、インキュベーションは、非分裂性EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)を支持細胞として加えることをさらに含んでもよい。LCLには、約6000〜10,000ラドの範囲のガンマ線を照射し得る。いくつかの態様におけるLCL支持細胞は、任意の好適な量、例えば、LCL支持細胞と初期Tリンパ球との比が少なくとも約10:1で提供される。
実施形態において、抗原特異的CD4+及び/またはCD8+T細胞などの抗原特異的T細胞は、ナイーブもしくは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、感染した対象からT細胞を分離し、同じ抗原でin vitroにて細胞を刺激することにより、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞株またはクローンを作製することが可能である。
アッセイ
当該技術分野において公知の様々なアッセイを使用して、本明細書中に提供されているHLA−PEPTIDEABPを同定し、特性評価してもよい。
結合、競合、及びエピトープマッピングアッセイ
本明細書で提供されるABPの特定の抗原結合活性は、本開示の他の場所で説明されるように、SPR、BLI、RIA及びMSD−SETを使用することをはじめとする、任意の好適な方法によって評価できる。追加的に、抗原結合活性を、ELISAアッセイ、フローサイトメトリー、及び/またはウエスタンブロットアッセイを使用して評価してもよい。
2つのABP、またはABPと別の分子(例えば、TCRなどのHLA−PEPTIDEの1つ以上のリガンド)間の競合を測定するためのアッセイは、本開示における他の箇所、例えば、Harlow and Lane,ABPs:A Laboratory Manual ch.14,1988,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Yに記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
本明細書中に提供されているABPが結合するエピトープをマッピングするためのアッセイは、例えば、Morris,“Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol.66,1996,Humana Press,Totowa,N.J.に記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。いくつかの実施形態において、エピトープは、ペプチドの競合によって決定される。いくつかの実施形態において、エピトープは、質量分析によって決定される。いくつかの実施形態において、エピトープは、変異誘発によって決定される。いくつかの実施形態において、エピトープは、結晶学によって決定される。
エフェクター機能のアッセイ
本明細書中に提供されているABP及び/または細胞での治療後のエフェクター機能は、当該技術分野において公知の様々なin vitro及びin vivoアッセイを使用して評価することができる。これらのアッセイとしては、Rev.Immunol.,1991,9:457−492;米国特許第5,500,362号、同第5,821,337号;Hellstrom et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,1986,83:7059−7063;Hellstrom et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,1985,82:1499〜1502;Bruggemann et al.,J.Exp.Med.,1987,166:1351−1361;Clynes et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,1998,95:652−656;WO2006/029879;WO2005/100402;Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods,1996,202:163−171;Cragg et al.,Blood,2003,101:1045−1052;Cragg et al.Blood,2004,103:2738−2743、及びPetkova et al.,Int’l.Immunol.,2006,18:1759−1769記載されているものが挙げられる。該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
医薬組成物
本明細書中に提供されているABP、細胞、またはHLA−PEPTIDE標的は、任意の好適な医薬組成物に処方され、任意の好適な投与経路により投与することが可能である。好適な投与経路の例としては、限定されるものではないが、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、経鼻、非経口、肺、及び皮下経路が挙げられる。
医薬組成物は、1つ以上の医薬賦形剤を含み得る。医薬賦形剤としては、任意の好適なものを使用することができる。当業者であれば、好適な医薬賦形剤を選択することができる。したがって、以下に提供される医薬賦形剤は、例証を意図したものであって、限定を意図したものではない。追加的な医薬添加剤としては、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,Rowe et al.(Eds.)6th Ed.(2009)に記載されているものが挙げられる。該文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が、消泡剤を含む。消泡剤としては、任意の好適なものを使用することができる。いくつかの態様において、消泡剤は、アルコール、エーテル、油、ワックス、シリコーン、界面活性剤、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、消泡剤は、鉱油、植物油、エチレンビスステアラミド、パラフィンワックス、エステルワックス、脂肪アルコールワックス、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、シリコングリコール、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、ポリジメチルシロキサン−二酸化ケイ素、エーテル、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ソルビタントリオレエート、エチルアルコール、2−エチル−ヘキサノール、ジメチコン、オレイルアルコール、シメチコン、及びそれらの組み合わせから選択されまる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物が、共溶媒を含む。共溶媒の例証的な例としては、エタノール、ポリ(エチレン)グリコール、ブチレングリコール、ジメチルアセトアミド、グリセリン、プロピレングリコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物に、バッファーが含まれる。バッファーの例証的な例として、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、水酸化物、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、グリシン、メチオニン、グアーガム、グルタミン酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物に、担体または充填剤が含まれる。担体または充填剤の例証的な例としては、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、キトサン、ステアリン酸、キサンタンガム、グアーガム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物に、界面活性剤が含まれる。界面活性剤の例証的な例としては、d−αトコフェロール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、ドクセートナトリウム、ベヘン酸グリセリル、グリセリルモノオレエート、ラウリン酸、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポリオキシエチレンアルキルソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エステル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシルグリセリド、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ビタミンEポリエチレン(グリコール)コハク酸塩、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物に、固結防止剤が含まれる。固結防止剤の例証的な例としては、リン酸カルシウム(三塩基性)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
医薬組成物と共に使用できる他の賦形剤にとしては、例えば、アルブミン、抗酸化剤、抗菌剤、抗真菌剤、生体吸収性ポリマー、キレート剤、制御放出剤、希釈剤、分散剤、溶解促進剤、乳化剤、ゲル化剤、軟膏、塩基、浸透促進剤、防腐剤、可溶化剤、溶媒、安定剤、糖、及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの各薬剤の具体例は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,Rowe et al.(Eds.)6th Ed.(2009),The Pharmaceutical Pressに記載されており、該文献は、その全体が、参照により援用されている。
いくつかの実施形態では、医薬組成物に、溶媒が含まれる。いくつかの態様において、溶媒は、無菌等張食塩水またはデキストロース溶液などの食塩水である。いくつかの態様において、溶剤は注射用水である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、微粒子またはナノ粒子などの粒子形態である。マイクロ粒子及びナノ粒子は、ポリマーまたは脂質などの任意の好適な材料から形成してもよい。いくつかの態様において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、ミセル、リポソームもしくはポリマーソームである。
更に本明細書中に提供されている、ABPを具備した医薬組成物及び剤形は、無水物とされる。なぜなら、水は、一部のABPが分解されるのを促進し得るからである。
本明細書中に提供されている無水医薬組成物及び剤形は、無水または低水分含有成分、及び低水分または低湿度条件を使用して調製することができる。製造、包装、および/または保管中に水分及び/または湿度との実質的な接触が予想される場合、ラクトース、および第1級または第2級アミンを含む少なくとも1つの活性成分を含む、医薬組成物および剤形は無水であり得る。
無水医薬組成物の調製及び保存は、その無水の性質が維持されるように行う必要がある。したがって、無水組成物を好適な処方キットをパッケージングする場合、水への曝露を防止することが公知である素材を使用してもよい。好適なパッケージングの例としては、限定されるものではないが、密閉ホイル、プラスチック、単位用量容器(バイアルなど)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
或る特定の実施形態では、本明細書中に提供されているABP及び/または細胞が、非経口剤形として処方される。非経口剤形は、皮下、静脈内(例えば、注入及びボーラス注射)、筋肉内、及び動脈内を含むがこれらに限定されない様々な経路によって対象に投与することができる。それらの投与は通常、汚染物質に対する対象の自然な防御を迂回するので、非経口剤形は、典型的には、無菌とされるか、または対象に投与される前に滅菌される場合がある。非経口剤形の例としては、限定されるものではないが、すぐに注射できる溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁する準備ができている乾燥(例えば、凍結乾燥)製品、注射用の懸濁液、及び乳濁液が挙げられる。
非経口剤形を提供するために使用することができる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、限定されるものではないが、注射用水USPのほか、水性車両(例えば、限定されるものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖注射液、塩化ナトリウム注射液、及び乳酸加リンゲル注射液);水混和性ビヒクル(例えば、限定されるものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール);ならびに、非水性ビヒクル(例えば、限定されるものではないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジル)が挙げられる。
また、本明細書中に開示されている1つ以上のABP及び/または細胞の溶解度を増加させる賦形剤を、非経口剤形に組み込んでもよい。
いくつかの実施形態において、非経口剤形は凍結乾燥されている。例示的な凍結乾燥製剤は、例えば、米国特許第6,267,958号及び同第6,171,586号、及びWO2006/044908に記載されており、該文献の各々は、その全体が、参照により援用されている。
ヒトの治療法において、医師は、最も適切と考える薬量を、予防的または治療的治療法、ならびに治療を受ける対象に対し特異的な年齢、体重、病態、及びその他の要因に応じて、決定する。
或る特定の実施形態において、本明細書中に提供されている組成物は、医薬組成物または単一の単位剤形である。本明細書中に提供されている医薬組成物及び単一の単位剤形は、予防的または治療的有効量の、1つ以上の予防的または治療的ABPを含む。
障害またはその1つ以上の症状の予防または治療に有効とされるABP、細胞または組成物の量は、疾患もしくは病態の性質、及び重症度、ならびにABP及び/または細胞が投与される経路に応じて異なる。また、頻度及び投薬量は、各対象に対し特異的な要因によっても異なる。例えば、投与される特定の治療薬(治療剤もしくは予防剤など)、障害、疾患もしくは病態の重症度、投与経路、ならびに対象の年齢、体重、反応及び過去の既往歴に影響される。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験システムから得られた用量反応曲線から推定し得る。
当業者には容易に分かるように、異なる治療有効量は、異なる疾患及び病態に適用可能であり得る。同様に、そのような障害を予防、管理、治療または改善するのに十分であるが、ただし本明細書中に提供されているABP及び/もしくは細胞に関連する有害作用を引き起こすのには不足しているか、またはその有害作用を低減するのには十分な量はまた、本明細書に提供される投薬量及び投薬頻度スケジュールに包含される。更に、本明細書に提供される組成物の複数投薬量を対象に投与する場合、必ずしも全ての投薬量を同じとする必要はない。例えば、対象に投与される投薬量は、組成物の予防または治療効果を改善する目的で増加させてもよいし、あるいは、特定の対象が経験している1つ以上の副作用を軽減する目的で減少させてもよい。
或る特定の実施形態では、治療または予防を、本明細書中に提供されているABPまたは組成物の1回以上の負荷量で開始し、以降は、1回以上の維持量にて続ける場合もある。
或る特定の実施形態において、本明細書中に提供されている用量のABP、細胞、または組成物を投与することによって、対象の血液または血清中のABP及び/または細胞の定常状態濃度を達成することが可能となる。定常状態の濃度は、当業者に利用可能な技術を用いた測定によって算定してもよいし、あるいは、身長、体重、及び年齢などの対象の身体的特徴を基準として算定してもよい。
本開示の他の箇所でより詳細に記載されているように、本明細書中に提供されているABP及び/または細胞を、任意で、疾患または障害を予防または治療するのに有用な1つ以上の追加的な薬剤と併用投与してもよい。そのような追加的な薬剤の有効量は、製剤中に存在するABPの量、障害または治療の種類、及び当該技術分野において公知のまたは本明細書中に記載されている他の要因に依存する可能性がある。
治療用途
治療用途では、ABP及び/または細胞は、当該技術分野において公知のもの及び上記で論じたものなどの、薬学的に許容される剤形にて哺乳動物(一般的にはヒト)に投与される。例えば、ABP及び/または細胞は、ボーラスとして静脈内にもしくは筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、または腫瘍内経路により、一定期間にわたる持続注入によってヒトに投与される。また、ABPは、腫瘍周囲、病変内、または病変周囲経路を介して好適に投与され、局所的及び全身的な治療効果を発揮する。腹腔内経路は、例えば、卵巣腫瘍の治療において特に有用と考えられる。
本明細書中に提供されているABP及び/または細胞は、HLA−PEPTIDEが関与する任意の疾患または病態の治療にも有用であり得る。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、抗HLA−PEPTIDEABP及び/または細胞による治療から利益を得ることができる疾患または病態とされる。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、腫瘍である。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、細胞増殖性疾患である。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、がんである。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABP及び/または細胞を、医薬として使用する用途に提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABP及び/または細胞を、医薬の製造または調製に使用する用途に提供する。いくつかの実施形態では、医薬は、抗HLA−PEPTIDEABP及び/または細胞から利益を得ることができる疾患または病態の治療用とされる。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、腫瘍である。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、細胞増殖性疾患である。いくつかの実施形態において、疾患または病態は、がんである。
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されている有効量のABP及び/または細胞を対象に投与することにより、それを必要とする対象の疾患または病態を治療する方法が、本明細書中に提供されている。いくつかの態様において、疾患または病態は、がんである。
いくつかの実施形態では、ABP及び/または細胞の有効量を投与することにより、それを必要とする対象の疾患または病態を治療する方法が、本明細書中に提供されている。
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されている有効量のABP及び/または細胞または医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における免疫応答を調節する方法が、本明細書中に提供されている。
併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されているABP及び/または細胞を、少なくとも1つの追加的な治療剤と併用投与する。本明細書中に提供されているABP及び/または細胞と共に、任意の好適な追加的な治療剤を投与しても差し支えない。追加的な治療薬をABPに融合させる場合もある。いくつかの態様において、追加的な治療剤は、放射線、細胞毒性剤、毒素、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、抗ホルモン剤、EGFR阻害剤、免疫調節剤、抗血管新生剤、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、追加的な治療剤は、ABPである。
診断方法
また、対象由来の細胞上の所与のHLA−EPTIDEの存在を予測及び/または検出するための方法も、提供されている。そのような方法を使用することで、例えば、本明細書で提供されるABP及び/または細胞による治療に対する反応性を予測し且つ評価することが可能である。
いくつかの実施形態では、血液または腫瘍試料を対象から採取し、HLA−PEPTIDEを発現する細胞の割合を算定する。いくつかの態様において、そのような細胞によって発現されるHLA−PEPTIDEの相対量を算定する。HLA−ペプチドを発現する細胞の割合及びそのような細胞によって発現されるHLA−ペプチドの相対量は、任意の好適な方法により算定することができる。いくつかの実施形態において、そのような測定には、フローサイトメトリーが使用される。いくつかの実施形態では、そのような測定には、蛍光支援細胞分取(FACS)が使用される。末梢血におけるHLA−PEPTIDEの発現を評価する方法については、Li et al.,J.Autoimmunity,2003,21:83−92を参照のこと。
いくつかの実施形態では、対象の細胞上の特定のHLA−ペプチドの存在を検出することは、免疫沈降及び質量分析を使用して行われる。これは、原発腫瘍標本などの腫瘍試料(例えば、凍結腫瘍試料)を採取し、免疫沈降を適用して1つ以上のペプチドを単離することによって、行われる場合がある。腫瘍試料のHLA対立遺伝子は、実験的に判別することも、または第三者のソースから入手することも可能である。1つ以上のペプチドを質量分析(MS)に供して、これらペプチドの配列(複数可)を判別する場合もある。その後、MSで得られたスペクトルを、データベース検索してもよい。実施例は、下掲の「実施例」の節に示す通りである。
いくつかの実施形態において、対象由来の細胞上の特定のHLA−ペプチドの存在を予測することは、ペプチド配列に適用されたコンピューターベースのモデル、及び/または腫瘍試料からのそのペプチド配列(例えば、RNA seqまたはRT−PCR、またはナノストリング)をはじめとする1つ以上の遺伝子のRNA測定を使用して実行される。使用されるモデルは、国際特許出願第PCT/US2016/067159号に記載されているようなものとしてもよい。あらゆる目的に対応するように、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
キット
また、本明細書中に記載のABP及び/または細胞を含むキットも、提供されている。本明細書中に記載されているように、本キットは、疾患または障害の治療、予防、及び/または診断目的に使用できる。
いくつかの実施形態において、本キットは、容器と、容器上に貼付されているかまたは容器に付随するラベルまたは添付文書とを、具備する。容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及びIV溶液バッグを具備したものが、好適であるとされる。容器を形成する材料としては、ガラスまたはプラスチックのような、多様な種類のものを挙げることができる。容器は、それ自体で、または別の組成物と組み合わされた場合に、疾患または障害を治療、予防及び/または診断するうえで有効な組成物を保持するものである。容器が、無菌のアクセスポートを有する場合もある。例えば、容器が点滴バッグまたはバイアルの場合、針で穿孔できるポートが付属していることがある。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書で提供されるABPである。ラベルまたは添付文書の指示書きによれば、本組成物は、選択された病態を治療する用途に用いられる。
いくつかの実施形態において、本キットは、(a)第1の組成物を収容する第1の容器であって、第1の組成物中に、本明細書で提供されるABP及び/または細胞が含有される、第1の容器と、(b)第2の組成物を収容する第2の容器であって、第2の組成物中に更なる治療剤が含有される、第2の容器とを、具備する。この実施形態のキットには、添付文書が更に付属している場合があり、この添付文書の指示書きによれば、本組成物を、特定の病態(例えば、がん)を治療する用途に使用することができる。
代替的にまたは追加的に、薬学的に許容される賦形剤を含む第2(または第3)の容器を、キットに更に具備させてもよい。いくつかの態様において、賦形剤はバッファーである。商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料(例えばフィルター、針、及びシリンジ)を、キットに更に具備させてもよい。
本発明を実施するための特定の実施形態の例は、下掲の通りである。実施例は、例示のみを目的として提供されているものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。使用されている数値(例えば、量、温度など)に関する精確性を期すための努力が為されてきたが、或る程度の実験誤差及び偏差を考慮に入れる必要がある。
本発明の実施には、別途指示されていない限り、当該技術分野の範囲内のタンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献中に十分に記載されている。出典:例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)。
実施例1:予測されるHLA−PEPTIDE複合体の同定
がん特異的なHLA−ペプチド標的において同定されたクラスは、以下の2通りである。第1のクラス(がん精巣抗原、CTA)は、ほとんどの正常組織内では発現しないか、または最小レベルにて発現し、且つ腫瘍試料中では発現する。第2のクラス(腫瘍関連抗原、TAA)は腫瘍試料で高発現し、正常組織内では低発現とされる場合がある。
遺伝子標的を同定した際に使用された計算ステップは、以下の3つである。第1に、ほとんどの正常組織内での発現が低量であるかまたは皆無である遺伝子を同定した。その際、Genotype−Tissue Expression(GTEx)プロジェクト全体を通じて利用可能なデータを使用した[1]。Genotype−Tissue Expression(GTEx)Project(バージョンV7p2)で、集約された遺伝子発現データを得た。このデータセットは、個体714例に由来する死後試料11,688個と、53通りの組織タイプとを含んでいた。発現の測定は、RNA−Seqを使用して行い、GTEx標準パイプライン(https://www.gtexportal.org/home/documentationPage)に従って計算処理した。遺伝子発現は、RSEM v1.2.22を使用して計算されたアイソフォーム発現の合計を使用して計算した[2]。
次いで、Cancer Genome Atlas(TCGA)Research Network:http://cancergenome.nih.gov/のデータを使用して、がん試料中で異常発現している遺伝子を同定した。TCGA(Data Release 6.0)から入手可能な11,093個の試料を調べた。GTEx及びTCGAには、計算分析でヒトゲノムの異なるアノテーションが使用されることから、2つのデータセット間でENCODEマッピングが利用可能な遺伝子だけを、組み入れ対象とした。
最後に、これらの遺伝子において、MHCクラスIタンパク質によって細胞表面抗原として提示される可能性の高いペプチドを同定し、その際、タンデム質量分析(MS/MS)で配列決定されたHLA提示ペプチド上にトレーニングされたディープラーニングモデルを使用した。これは、国際特許出願第PCT/US2016/067159号に記載されており、あらゆる目的に対応するように、該文献はその全体が本明細書において参照により援用されている。
遺伝子の2つのクラスの特定の基準は、以下に示す通りである。
CTA組み入れ基準
CTAを同定するにあたって、腫瘍の特異性を確保するのに十分厳密な正常組織で発現した遺伝子を除外する一方で、リード不整合などの潜在的なアーチファクトから生じたゼロ以外の測定値は除外されないようにするという、基準を定義しようとした。遺伝子がCTAとして組み込むうえで適格とされたのは、次の基準を満たしている場合である。脳、心臓、または肺の一部である各臓器のGTEx発現の中央値は、100万当たり0.1転写産物(TPM)未満であり、5TPM超の試料は1つもなかった。他の必須臓器におけるGTEx発現の中央値は2TPM未満であり、10TPM超の試料は1つもなかった。非必須に分類された器官(精巣、甲状腺、及び小唾液腺)の発現は、無視した。遺伝子が腫瘍試料中で発現したと見なされたのは、TCGAの発現が、少なくとも30個の試料中で20TPMを超えた場合である。
次いで、TCGA試料全体の残りの遺伝子の発現分布を調べた。公知のCTA、例えば、遺伝子のMAGEファミリーを調べた際に観察されたように、対数空間内でのこれらの遺伝子の発現は、二峰性の分布を概ね特徴としたものであった。この分布は、低い発現値を中心とした左モードと、高い発現レベルでの右モード(または太い尾)とから成っていた。この発現パターンは、生物学的モデルと一致しており、全ての試料中で、検出されたベースラインでのいくつかの発現レベルが最小限であったのに対し、エピジェネティックな調節異常を経た腫瘍のサブセット中では、遺伝子の発現レベルが高いことが観察されるものであった。TCGA試料全体の各遺伝子の発現分布の見直しを行い、TCGA試料のうち、有意な右手尾の無い単峰分布だけが観測されたものは、破棄した。
TAA組み入れ基準
腫瘍組織内での発現量の方が正常組織内での発現量よりもはるかに高量である遺伝子に焦点を当てて、TAAを同定した。まず、全てのGTEx必須とされる、正常組織内でTPMの中央値が10未満の遺伝子を同定し、少なくとも1つのTCGA腫瘍組織で100TPMを超える発現があったサブセットを選択した。次いで、これらの各遺伝子の分布を調べ、二峰性の発現分布を有するもの、及び1つ以上の腫瘍タイプにおいて発現が有意に上昇しているという更なる証拠を有するもの選択した。
リストの見直しを更に行い、GTExにおいて適切に表現していない組織内で発現したことが知られている遺伝子、または腫瘍内の免疫細胞浸潤に由来する可能性のある遺伝子を排除した。これらのステップによって、CTA遺伝子56個とTAA遺伝子58個とからなる最終リストが残った。
また、がん内に存在することが知られている2つの追加のタンパク質由来のペプチドを添加した。EGFR−SEPT14融合タンパク質由来の接合ペプチドを添加し[3]、KLK3(PSA)由来のペプチドを添加した。また、PSAと同じ遺伝子ファミリーの2つの遺伝子KLK2及びKLK4由来のペプチドを添加した。
MHCクラスIタンパク質によって細胞表面抗原として提示される可能性が高いペプチドを同定するため、スライディングウィンドウを使用して、これらのタンパク質の各々をその構成8〜11アミノ酸配列に解析した。これらのペプチドとその隣接配列をHLAペプチドプレゼンテーションディープラーニングモデルで処理し、TCGAでこの遺伝子について観察された最大発現レベルでの各ペプチドが提示される尤度を計算した。ペプチドが提示される(すなわち、候補標的とされる)可能性が高いのは、その分位正規化された表示の確率を、発明者らのモデルにより計算してえられた結果が、0.001を超えた場合であると見なした。
結果は、表Aに示す通りである。明確にするために、各HLA−PEPTIDEには、例えば、HLA−PEPTIDE標的1はHLA−C*16:01_AAACSRMVI、HLA−PEPTIDE標的2はHLA−C*16:02_AAACSRMVIといったように、表A中の標的番号が割り当てられている。
要約すると、この実施例に提供されている腫瘍特異的なHLA−PEPTIDEの大規模なセットは、ABP開発の候補標的として追求可能なものとされる。
実施例2:予測されるHLA−PEPTIDE複合体の検証
それぞれのHLA−PEPTIDE複合体から得られた各HLA対立遺伝子に対して陽性であることが知られている腫瘍試料に対して質量分析(MS)を使用して、表A中のHLA−PEPTIDE複合体由来のペプチドの存在を決定する。
組織試料の溶解及び可溶化の後に、伝統的な免疫沈降(IP)法を使用して、HLA−ペプチド分子の単離を行う(1〜4)。まず、新鮮な凍結組織を、液体窒素で凍結して粉砕した(CryoPrep;Covaris,Woburn,MA)。溶解緩衝液(1%CHAPS、20mM Tris−HCl、150mM NaCl、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤、pH=8)を、組織を可溶化する目的で添加し、プロテオミクス及びゲノム配列決定用に、試料の1/10を分取する。残りの試料を4℃で2時間回転させて破片をペレット化する。清澄化されたライセートを、HLA特異的IPに使用する。
免疫沈降は、抗体がHLA分子に対し特異的なビーズに結合された抗体を使用して、行う。汎クラスI HLA免疫沈降用に、抗体W6/32(5)を使用し、クラスII HLA−DR用に、抗体L243(6)を使用する。一晩のインキュベーションの間中、抗体はNHS−セファロースビーズに共有結合されている。共有結合後、ビーズを洗浄し、IP用に分取する。IP用の追加的な方法としては、それ以外に、限定されるものではないが、抗体のプロテインA/G捕捉、磁気ビーズ分離、または免疫沈降に繁用されるその他の方法も使用可能である。
ライセートを抗体ビーズに加え、4℃で一晩回転させて免疫沈降させる。免疫沈降後、ビーズをライセートから除去し、ライセートは追加のIPをはじめとする追加的な実験に備えて保存する。IPビーズを洗浄して非特異的結合を除去し、HLA/ペプチド複合体を2N酢酸でビーズから溶出させる。タンパク質成分は、分子量スピンカラムを使用してペプチドから除去する。結果として得られたペプチドをSpeedVac蒸発により乾固させる。MS分析に先立って−20℃で保存してもよい。
乾燥したペプチドをHPLCバッファーAで再構成し、C−18マイクロキャピラリーHPLCカラムに充填して、質量分析計への勾配溶出を行う。0〜40%B(溶媒A−0.1%ギ酸、溶媒B− 0.1%ギ酸、80%アセトニトリル)の勾配を180分間かけて用い、ペプチドをFusion Lumos質量分析計(Thermo製)内に溶出させる。ペプチドの質量/電荷(m/z)のMS1スペクトルを、120,000の分解能にてOrbitrap検出器で収集し、続いて20回のMS2走査を行う。MS2イオンの選択は、データ依存取得モードを用いて行い、イオンMS2が選択された後に、30秒間の動的除外を行う。自動ゲイン制御(AGC)は、MS1走査の場合は4×105に設定し、MS2走査の場合は1×104に設定する。HLAペプチドの配列決定では、MS2の断片化用に、+1、+2、及び+3の電荷状態を選択してもよい。代替的に、MS2スペクトルを、マスターゲッティング法を使用して取得してもよい。この方法では、組み入れリストにリストされている質量のみが、単離及び断片化用に選択される。これは一般的に、標的化質量分析法と呼称され、定性的な様式にて、または定量的であり得るように実行される。定量法では、重い標識アミノ酸を使用して合成するために、各ペプチドを定量する必要がある(Doerr 2013)。
各分析からのMS2スペクトルは、Comet(7〜8)を使用してタンパク質データベースに対し検索する。ペプチド同定に対するスコア付けは、パーコレーター(9〜11)を使用するか、または統合されたde novo配列、及びPEAKSのデータベース検索アルゴリズムを使用して行う。標的化されたMS2実験のペプチドは、Skyline(Lindsay K.Pino et al.2017)、または予測される断片イオンを分析するための他の方法を使用して分析する。
それぞれのHLA−PEPTIDE複合体からの各HLA対立遺伝子に対して陽性であることが知られているさまざまな腫瘍試料に対して質量分析(MS)を使用して、予測されたHLA−PEPTIDE複合体からの複数のペプチドの存在を決定する。
アミノ酸の自発的修飾は、多くのアミノ酸において発生し得る。システインは特にこの修飾の影響を受けやすく、酸化または遊離システインで修飾され得る。追加的に、N末端グルタミンアミノ酸を、ピログルタミン酸に変換してもよい。これらの各修飾によって、質量が変化することから、これら修飾をMS2スペクトルにて確実に割り当てる場合がある。これらのペプチドをABPの調製に使用するにあたって、質量分析計にて確認されるように、ペプチドに同じ修飾を含める必要のある場合がある。これらの修飾は、単純な実験室的方法、及びペプチド合成法を使用して作製される場合もある(Lee et al.;参照文献14)。
実施例3:HLA−PEPTIDE標的に結合する抗体及びその抗原結合断片の同定断片
概要
以下の実施例は、腫瘍特異的HLA制限ペプチドを認識する抗体(Abs)を同定できることを実証したものである。そのような抗体に認識される全体的なエピトープは、ペプチドとその特定のペプチドを提示するHLAタンパク質の両方の複合表面を備えるのが、一般的である。ペプチド特異的な方法でHLA複合体を認識する抗体はしばしば、T細胞受容体(TCR)様抗体、またはTCR模倣抗体と呼称される。抗体発見用に選択されたHLA−PEPTIDE標的抗原で、腫瘍特異的遺伝子産物MAGEA6、FOXE1、MAGE3/6に由来するものはそれぞれ、HLA−B*35:01_EVDPIGHVY(HLA−PEPTIDE標的「G5」)、HLA−A*02:01_AIFPGAVPAA(HLA−PEPTIDE標的「G8」)、及びHLA−A*01:01_ ASSLPTTMNY(HLA−PEPTIDE標的)「G10」)であった。これらのHLA−PEPTIDE標的の細胞表面の提示を、実施例2に記載されるように、腫瘍試料から得られたHLA複合体の質量分析によって確証した。代表的なプロットは、図25〜図27に描かれている通りである。
HLA−PEPTIDE標的複合体及びカウンタースクリーンペプチド−HLA複合体
HLA−PEPTIDE標的(G5、G8、G10)のほか、陰性対照ペプチドHLAのカウンタースクリーンを、確立済みの方法を用いて、HLA分子の条件付きリガンドを使用して組み換えにより生成した。全部で、18種類のカウンタースクリーニングHLA−ペプチドを、HLA−PEPTIDE標的ごとに生成した。18通りのカウンタースクリーンHLA−ペプチドは、(A)陰性対照ペプチドが同じHLAサブタイプ(HLA関連の対照)によって提示されることが知られているように、または(B)陰性対照ペプチドが、異なるHLAサブタイプによって提示されることが知られるように、デザインされたものである。標的の群化、及び陰性対照ペプチド−HLA複合体は、スクリーン1については、図3に図示されている通りであり(詳細な配列情報は表1に提供されている)、スクリーン2については、図4に図示されている通りである(詳細な配列情報は表2に記載されている)。
(表1)スクリーン1陰性対照ペプチド及び「G5」標的のHLA−PEPTIDE配列デザイン
(表2)スクリーン2陰性対照ペプチド及びG8及びG10標的*用の、HLA-PEPTIDE配列デザイン
HLA−PEPTIDE標的複合体及びカウンタースクリーンペプチド−HLA複合体の生成及び安定性分析
G5カウンタースクリーン「ミニプール」及びG2標的の結果は、図5に示す通りである。カウンタースクリーンペプチド3つとも全部及びG5ペプチドは、HLA複合体が解離するのを救済した。
追加的なG5「完全」プールカウンタースクリーニングペプチドの結果は、図6にされ、これらのペプチドはまた、安定したHLA−PEPTIDE複合体を形成していることを示す。
カウンタースクリーンペプチド及びG8標的の結果は、図7に示す通りである。カウンタースクリーンペプチド3つとも全部及びG8ペプチドは、HLA複合体が解離するのを救済した。
G10カウンタースクリーン「ミニプール」及びG10標的の結果は、図8に示す通りである。カウンタースクリーンペプチド3つとも全部及びG10ペプチドは、HLA複合体が解離するのを救済した。
追加的なG8及びG10「完全な」プールカウンタースクリーニングペプチドの結果は、図9に示され、これらのペプチドはまた、安定したHLA−ペプチド複合体を形成していることを示す。
ファージライブラリースクリーニング
Distributed Bio Incの非常に多様なSuperHuman 2.0合成ナイーブscFvライブラリーを、ファージディスプレイの入力材料として使用した。これは、超安定で多様なVH/VL足場上で7.6×1010の多様性を備える。画面1(図3を参照)及び画面2(図4を参照)の両方を対象に、標的pHLA複合体を用いた3〜4ラウンドのビーズベースのファージパニング(表3に示す通り)を、確立されたプロトコールを使用して実施することによって、pHLA G5、G8、及びG10へのscFvバインダーをそれぞれ同定した。パニングのラウンドごとに、ファージライブラリーをまず18個のプールされた陰性pHLA複合体で枯渇させてから、標的pHLAに対する結合工程を行った。パニングの全てのラウンドにて、ファージ力価を算定し、非結合ファージの除去を確立した。また、出力ファージの上清に対し、ELISAでの標的結合に関する試験を行った。これにより、G5、G8及びG10結合ファージが漸進的に富化することが示唆された(図10参照)。
その後、確立済みプロトコールを使用して、96ウェルプレートで、個々の出力クローンの細菌ペリプラズム抽出物(PPE)を生成した。PPEを使用して、ハイスループットPPE ELISAによる標的pHLA抗原への結合を試験した。陽性クローンを配列決定し、再配列決定して、配列に固有のクローンを選択した。陽性クローンを配列決定し、再配列決定した。配列固有のクローンを選択してから、配列固有のクローンを、標的pHLAとHLAが一致する陰性対照pHLA複合体のパネルとの結合に関して二次ELISAで試験した。このようにして、標的の特異性が確立された。G8陰性対照HLA複合体(すなわち、A*24:02)は、G8標的HLA複合体(すなわち、A*02:01)とは、HLAが一致しなかった。ゆえに、scFvライブラリーから取得したTCR模倣抗体の更なる生化学的及び機能的特性評価アッセイで、G7のペプチドLLFGYPVYV、GILGFVFTL、またはFLLTRILTIを示すHLA−A*02:01複合体を、G8の陰性対照のHLA対応ミニプールとして使用した。
scFvヒットの分離
PPEで発現したときに選択的であることが判明したscFvクローン用に、個々の可溶性scFvタンパク質断片を生成して精製した。scFv PPE ELISAによって明らかにされたように、これらのクローンは、陰性対照pHLAのミニプールに結合された場合と比較して、標的pHLAに対する選択的結合が、少なくとも3倍に及んだことが認められた。可溶性scFvが生成されたことによって、更なる生化学的及び機能的特性評価が可能になった。
標的G5に結合するscFv用に得られたVH及びVL配列を、表4に示す。表4の編成を分かり易くするため、表4には、各scFvにクローン名が割り当てられている。例えば、クローンG5_P7_E7由来のscFvは、VH配列
及びVL配列
を有する。
標的G5に結合するscFv用に得られたCDR配列を、表5に示す。表5の編成を分かり易くするため、表5には、各scFvにクローン名が割り当てられている。例えば、クローンG5_P7_E7のscFvは、Kabat番号付け体系によるYTFTSYDINであるHCDR1配列、GIINPRSGSTKYAであるHCDR2配列、CARDGVRYYGMDVWであるHCDR3配列、RSSQSLLHSNGYNYLDであるLCDR1配列、LGSYRASであるLCDR2配列、及びCMQGLQTPITFであるLCDR3配列を有する。
標的G8に結合するscFv用に得られたVH及びVL配列を、表6に示す。表6は、表4と同じように編成されている。
標的G8に結合するscFv用に得られたCDR配列を、表7に示す。表7は、表5と同じように編成されている。
標的G10に結合するscFv用に得られたVH及びVL配列を、表8に示す。表8は、表4と同じように編成されている。
標的G8に結合するscFv用に得られたCDR配列を、表9に示す。表9は、表5と同じように編成されている。
いくつかのクローンをscFv、Fab、及びIgGにフォーマットしたことによって、生化学的、構造的及び機能的な特性評価を容易にしている(表10を参照)。
(表10)スクリーニングキャンペーンのヒット率。クローンを、(a)生化学的及び機能的特性評価用のIgG、(b)タンパク質結晶学及びHDX質量分析用のFabコンストラクト、及び(c)HDX質量分析用のscFvコンストラクトに、再フォーマットした。
図11は、抗体選択プロセス、例えば、scFv、Fab、及びIgGフォーマットの基準及び意図される適用を説明したフローチャートを描いたものである。簡単に言うと、配列多様性、結合親和性、選択性、CDR3の多様性に基づいて、クローンを更なる特性評価用に選択した。
配列多様性を評価するため、樹形図を、clustalソフトウェアを使用して作成した。VHタイプに基づいて、予測されたscFv配列の3D構造も考慮した。平衡解離定数(KD)によって決定される結合親和性を、Octet HTX(ForteBio)を使用して測定した。特定のペプチド−HLA複合体の選択性は、陰性対照pHLA複合体またはストレプトアビジンのみのミニプールと比較して、精製されたscFvのELISA滴定にて、算定した。KDと選択性のカットオフ値を、各セット内のFabについて得られた値の範囲に基づき、各標的セットについて算定した。最終的なクローンを、配列ファミリー及びCDR3配列多様性に基づいて選択した。
ファージライブラリースクリーニング及びscFv単離後のヒットの総数は、上記の表10に記載されている通りである。
材料及び方法
HLAの発現及び精製:
組み換えタンパク質を、確立済みの手順を使用して細菌を発現させることによって得た(Garboczi,Hung,&Wiley,1992)。簡単に言えば、さまざまなヒト白血球抗原(HLA)のα鎖及びβ2マイクログロブリン鎖を、BL21コンピテントE.Coli細胞(New England Biolabs)内で別々に発現させた。自動誘導に続いて、Bugbuster(登録商標)とベンゾナーゼタンパク質抽出試薬(Novagen)とを併用して超音波処理して細胞を溶解させた。結果として得られた封入体を洗浄し、0.5%Triton X−100(50mM Tris、100mM NaCl、1mM EDTA)を含むまたは含まない洗浄バッファーで超音波処理した。最後の遠心分離後、封入ペレットを尿素溶液(8M尿素、25mM MES、10mM EDTA、0.1mM DTT、pH6.0)に溶解した。ブラッドフォードアッセイ(Biorad)を使用して濃度を定量化し、封入体を−80℃で保存した。
pHLAのリフォールディング及び精製:
HLA複合体は、確立された手順を使用して、組み換えにより生成されたサブユニット及び合成的に得られたペプチドをリフォールディングすることにより得られた(Garboczi et al.,1992)。簡単に言えば、精製されたα及びβ2マイクログロブリン鎖を、標的ペプチドまたは開裂性リガンドのいずれかを含むリフォールディングバッファー(100mM Tris pH8.0、400mM L−アルギニンHCl、2mMEDTA、50mM酸化型グルタチオン、5mM還元型グルタチオン、プロテアーゼ阻害剤タブレット)を用いて、リフォールディングした。リフォールディング溶液は、Vivaflow 50または50Rクロスフローカセット(Sartorius Stedim製)で濃縮した。20mM Tris(pH8.0)中で3回の透析をそれぞれ少なくとも8時間行った。抗体スクリーニング及び機能アッセイ用に、リフォールディングされたHLAを、BirAビオチンリガーゼ(Avidity)を使用して酵素的にビオチン化した。リフォールディングされたタンパク質複合体を、AKTA FPLCシステムに取り付けられたHiPrep(16/60 Sephacryl S200)サイズ排除カラムを使用して精製した。SDS−PAGEに先立って、リフォールディングしたタンパク質を過剰のストレプトアビジンと共に室温で15分間インキュベートすることによって、非還元条件下でのストレプトアビジンゲルシフトアッセイで、ビオチン化を確証した。ペプチド−HLA複合体を分取し、−80℃で保存した。
ペプチド交換:
HLA−ペプチドの安定性は、条件付きリガンドペプチド交換及び安定性ELISAアッセイにより評価した。簡単に言うと、条件付きリガンド−HLA複合体を、カウンタースクリーンまたはテストペプチドの存在下または非存在下で、±条件付き刺激に供した。条件刺激に曝露させることによって、HLA複合体から条件リガンドを切断させ、HLA複合体が解離する。カウンタースクリーンまたはテストペプチドが、HLA複合体のα1/α2グループに安定して結合している場合、それによってHLA複合体の解離が「救済」される。要するに、50μMの新規なペプチド(Genscript製)100μLと0.5μM組換生成済み切断性リガンド充填HLAとの混合物(20mM Tris HCl及び50mM NaCl中に溶かしたpH8溶液)を、氷上に置いた。365−nmのUVランプを装備したUVクロスリンカー(CL−1000、UVP)内で、混合物を約10cmの距離にて15分間照射させた。
MHC安定性アッセイ:
MHC安定性ELISAを、確立済み手順を使用して実行した。(Chew et al.,2011;Rodenko et al.,2006)。384ウェルの清澄な平底ポリスチレンマイクロプレート(Corning)を、2μg/mLストレプトアビジン(Invitrogen)PBS溶液50μlで予備被覆した。ウェルを37℃で2時間インキュベートした後、0.05%Tween 20のPBS溶液(4回、50μl)洗浄バッファーで洗浄し、50μlのブロッキングバッファー(2%BSAのPBS溶液)で処理して、室温で30分間インキュベートした。引き続き、20mM Tris HCl/50mM NaClで300倍に希釈した25μLのペプチド交換試料を4重に添加した。試料を室温で15分間インキュベートし、0.05%Tween洗浄バッファー(4×50μL)で洗浄し、室温で25μLのHRP結合抗β2m(1μg/mL PBS溶液)で15分間処理して、0.05%Tween洗浄バッファー(4×50μL)で洗浄してから、25μLのABTS溶液(Invitrogen製)で10〜15分間展開した。12.5μLの停止バッファー(0.01%アジ化ナトリウム含有0.1Mクエン酸溶液)を添加することによって反応を停止させた。その後、分光光度計(SpectraMax i3x;Molecular Devices)を使用して、415nmで吸光度を測定した。
ファージパニング:
パニングの各ラウンドでは、開始ファージのアリコートを投入力価測定用に分取し、残りのファージを、Dynabead M−280ストレプトアビジンビーズ(Life Technologies)に対して3回枯渇させ、続いて、100ピコモルのプールされた陰性ペプチド−HLA複合体を、事前に結合させたストレプトアビジンビーズに対して枯渇させた。パンニングの第1のラウンドで、ストレプトアビジンビーズに結合させた100ピコモルのペプチド−HLA複合体を、回転させながら室温で2時間、枯渇させたファージと共にインキュベートした。0.5%BSA含有1X PBST(PBS+0.05%Tween−20)溶液で5分間の洗浄を3回行った後、0.5%BSA含有1X PBS溶液で5分間の洗浄を3回行い、ペプチド−HLA複合体結合ビーズに結合していないファージを除去した。結合したファージを洗浄済みビーズから溶出させるため、1mLの0.1M TEAを加え、回転させながら室温で10分間インキュベートした。溶出したファージをビーズから回収し、0.5mLの1M Tris−HCl pH7.5で中和させた。その後、中和されたファージを使用して、対数増殖TG−1細胞(OD600=0.5)に感染させ、37℃で1時間感染させた後、細胞を、100μg/mLのカルベニシリンと2%グルコース(2YTCG)寒天プレートとを含む2YT培地にプレーティングし、その後のパンニングラウンドの出力力価及び細菌の増殖を確認した。その後のパニングのラウンドでは、選択抗原の濃度が低下した一方、表3に示すように、洗浄力の増強は、洗浄時間量及び長さに応じていた。
入力/出力ファージ力価:
入力力価の各ラウンドを、2YT培地で1010に達するまで段階希釈した。対数期のTG−1細胞を希釈したファージ力価(107−1010)で感染させ、37℃で30分間振盪せずにインキュベートし、更に穏やかに振盪しながら30分間インキュベートした。感染した細胞を2YTCGプレートにプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。個々のコロニーを計数して、投入力価を算定した。出力力価の算定は、溶出したファージをTG−1細胞に1時間感染させた後で行った。1μL、0.1μL、0.01μL、及び0.001μLの感染した細胞を2YTCGプレートにプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。個々のコロニーを計数して、出力力価を算定した。
細菌ペリプラズム抽出物の選択的標的結合:
scFv PPE ELISAでは、96ウェルまたは384ウェルのストレプトアビジンコーティングプレート(Pierce)を、2μg/mLペプチド−HLA複合体含有のHLAバッファーでコーティングしてから、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBST(PBS+0.05%Tween−20)で各ステップの間に3回洗浄した。抗原でコーティングしたプレートを、3%BSA含有のPBS(ブロッキングバッファー)で室温で1時間ブロックした。洗浄後、scFv PPEをプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ブロッキングバッファー中のマウス抗v5抗体(Invitrogen)を添加してscFvを検出し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、HRP−ヤギ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄した。続いて、HRP活性をTMB 1成分マイクロウェルペルオキシダーゼ基質(Seracare)が検出された後、2Nの硫酸で中和した。
陰性ペプチド−HLA複合体のカウンタースクリーニング用に、scFv PPE ELISAを、上記のようにして(ただし、コーティング抗原を除き)実施した。つまり、3つの陰性ペプチド−HLA複合体(特定のpHLA複合体に対する結合を比較するため、プールされ、ストレプトアビジンプレートにコーティングされたもの)の各々2μg/mLからなるHLAミニプール(表1及び表2を参照)を使用した。代替的に、HLAの完全なプールは、18種類全ての陰性ペプチド−HLA複合体(特定のpHLA複合体に対する結合を比較するために、一体的にプールされ、ストレプトアビジンプレートにコーティングされたもの)各々2μg/mLからなるものとされた。
scFvタンパク質断片の構築及び生産:
発現プラスミドをBL21(DE3)株に形質転換し、400mLのE. coli培養液でペリプラスミドシャペロンと共発現させた。細胞ペレットを再構成することによって、以下:10mL/1gバイオマス(25mM HEPES、pH7.4、0.3M NaCl、10mM MgCl2、10%グリセロールと、0.75%CHAPS、1mM DTT)にリゾチームを添加したものと、ベンゾナーゼ及びレイクファーマとを合わせて、プロテアーゼ阻害剤カクテルとした。細胞懸濁液を、振盪台上で室温で30分間インキュベートした。ライセートを4℃、13,000x rpmで15分間の遠心分離により清澄化した。清澄化したライセートを、IMACバッファーA(20mM Tris−HCl、Ph7.5;300mM NaCl/10%グリセロール/1mM DTT)で事前に平衡化した5mLのNi NTA樹脂に充填した。樹脂を10カラム容量(CV)のバッファーAで(または安定したベースラインに達するまで)洗浄し、続いて、10 CVの8%IMACバッファーB(20mM Tris−HCl、Ph7.5;300mM NaCl/10%グリセロール/1mM DTT/250mMイミダゾール)で洗浄した。標的タンパク質を、20CV勾配で100%IMACバッファーBに溶出させた。カラムを5CVの100%IMAC Bで洗浄して、タンパク質を完全に除去した。溶出画分をSDS−PAGE及びウエスタンブロット(抗His)で分析し、各々に応じてプールした。プールを最終製剤バッファー(20mM Tris−HCl、Ph7.5、300mM NaCl/10%グリセロール/1mM DTT)で透析し、最終タンパク質濃度>0.3mg/mLに濃縮し、1mLバイアルに分取して、液体窒素で瞬間冷凍させた。最終的なQCステップに、SDS−PAGE及びA280吸光度測定を含めた。
Fabタンパク質断片の構築及び生産
選択したG5、G8、及びG10 Fabのコンストラクトを、哺乳動物での発現用に最適化されたベクターにクローニングした。各DNAコンストラクトをトランスフェクション用に規模拡大し、配列を確認した。HEK293細胞(Tuna293(商標)Process)で、それぞれ100mLの一時的産生が完了した。タンパク質を抗CH1精製により精製し、その後、HiLoad 16/600 Superdex 200を介したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。SEC研磨に使用された移動相は、20mM Tris、50mM NaCl(pH7)であった。最終確認CE−SDS分析を実施した。
IgGタンパク質の構築及び生産
Gシリーズ抗体の発現コンストラクトを、哺乳動物発現用に最適化されたベクターにクローニングした。各DNAコンストラクトをトランスフェクション用にスケールアップし、配列を確認した。HEK293細胞(Tuna293(商標)Process)で、それぞれ10mLの一時的産生を完了した。タンパク質A精製によりタンパク質を精製し、最終的なCE−SDS分析を実施した。
実施例4:HLA−PEPTIDE標的に対するFabクローンの親和性
Fabフォーマットの抗体は、IgG抗体フォーマットとの2価相互作用の交絡効果を回避しながら、それぞれのHLA−PEPTIDE標的への単量体結合の正確な評価を可能にしている。結合親和性は、オクテットQke(ForteBio)を使用したバイオレイヤーインターフェロメトリー(BLI)により評価した。簡単に言えば、ビオチン化pHLA複合体含有の動態バッファーを、使用した最高濃度の各Fabに最適なnmシフト応答(約0.6nm)を与える濃度で、ストレプトアビジンセンサーに300秒間充填した。続いて、リガンドが充填されたチップを、反応バッファーで120秒間平衡化した。次いで、リガンドが充填されたバイオセンサーを、2倍希釈に滴定されたFab溶液に200秒間浸した。開始Fab濃度を、100nM〜2μMの範囲で、FabのKD値に基づいて繰り返し最適化した。速度論バッファー中での解離ステップを、200秒間測定した。データを、ForteBioデータ分析ソフトウェアを使用して、1:1結合モデルを使用して分析した。
結果は、下表11に示す通りである。Fabフォーマットの抗体は、それぞれのHLA−PEPTIDE標的に高い親和性で結合する。
(表11)標的ペプチド−HLA複合体に結合するFabに関する、最適化Octet BLI親和性測定
図12A、図12B及び図12Cは、HLA−PEPTIDE標的B*35:01−EVDPIGHVY(12A)に対するFabクローンG5−P7A05、HLA−PEPTIDE標的A*02:01−AIFPGAVPAAに対するFabクローンR3G8−P2C10及びG8−P1C11(12B中、左側がP2C10、右側がP1C11)、ならびにHLA−PEPTIDE標的A*01:01−ASSLPTTMNY(12C)に対するFabクローンR3G10−P1B07、の各々に対するBLIの結果を示したものである。
実施例5:G5、G8及びG10制限ペプチド配列の位置走査
G5、G8、及びG10制限ペプチドの位置走査を行って、選択されたFabクローンの接触点として機能するアミノ酸残基、またはHLA−PEPTIDE標的とFabとの相互作用に対し直接的または間接的に影響を与える重要な残基を、決定する。
位置走査実験の一般的な実験計画は、図13に描かれている通りである。全ての位置を対象として走査し、変異体G5、G8、及びG10制限ペプチドの位置走査ライブラリーを、G5、G8、及びG10ペプチド配列の単一位置にてアミノ酸置換により生成した。特定の位置でのアミノ酸置換は、アラニン(保存的置換)、アルギニン(正に帯電)、アスパラギン酸(負に帯電)のいずれかであった。位置走査ライブラリーメンバーとHLAサブタイプ対立遺伝子とを含むペプチド−HLA複合体を、実施例3に記載されているようにして、生成した。結果として得られた複合体の安定性を、実施例3に記載されているようにして、条件付きリガンドペプチド交換及び安定性ELISAを使用して算定した。そのような安定性分析で、HLA分子を結合させて安定化させるのに重要とされる制限ペプチド上の残基を、同定することが可能である。選択されたFabクローンの変異ペプチド−HLA複合体への結合親和性を、実施例4に記載されているようにして、BLIによって評価した。HLA複合体を安定的に形成し、且つFab結合を弱化させる位置変異体によって、HLA−PEPTIDE標的に選択的に結合する抗体の重要な接点である残基を、同定することが可能である。
図14Aは、G5位置変異体−HLAの安定性の結果を描写し、ペプチド変異の大部分は、関連するpHLAに対するペプチド結合に影響を及ぼさないことを示唆する。
図14Bは、FabクローンG5−P7A05のG5位置変異体−HLAへの結合親和性を描写し、制限ペプチドの位置P2〜P8が、直接的にまたは間接的に、FabクローンとのペプチドHLA複合体の相互作用の決定に関与している可能性が高いことを示唆する。
図15Aは、G8位置変異体−HLAの安定性の結果を描写し、P2位、P7位、及びP10位は、Arg−またはAsp−残基での置換の影響を受けておらず、それゆえ、HLAタンパク質に対するペプチド結合が重要であると考えられることを示唆する。
図15Bは、FabクローンG8−P2C10のG8位置変異体−HLAへの結合親和性を描写し、制限ペプチドの位置P1〜P5が、直接的にまたは間接的に、FabクローンとのペプチドHLA複合体の相互作用の決定に関与している可能性が高いことを示唆する。
図46は、FabクローンG8−P1C11のG8位置変異体−HLAへの結合親和性を描写し、制限ペプチドの位置P3〜P6が、直接的にまたは間接的に、FabクローンとのペプチドHLA複合体の相互作用の決定に関与している可能性が高いことを示唆する。
図16Aは、G10位置変異体−HLAの安定性の結果を描写し、2位、5位、8位、及び10位は、アミノ酸置換の影響を受けておらず、それゆえ、HLAタンパク質に対するペプチド結合が重要であるものと考えられることを示唆する。
図16Bは、FabクローンG10−P1B07のG10位置変異体−HLAへの結合親和性を描写し、制限ペプチドの位置P4、P6及びP7が、直接または間接的に、FabクローンとのペプチドHLA複合体の相互作用の決定に関与している可能性が高いことを示唆する。
実施例6:HLA−PEPTIDE標的抗原を提示する細胞に対する抗体の結合
同定されたTCR様抗体が、そのpHLA標的G5、G8及びG10に対し、自然界での状況にて(例えば、抗原提示細胞の表面上で)結合するのを確証するに際して、選択されたクローンをIgGに再フォーマットし、同種のHLA−PEPTIDE標的を発現するK562細胞との結合実験で使用した。手短に言えば、細胞を、G5標的ペプチドのHLA−B*35:01、G8標的ペプチドのHLA−A*02:01、またはG10標的ペプチドのHLA−A*01:01のいずれかで形質導入させた。次いで、確立済みの方法を用いて、表1及び表2に指定されているようにして、細胞を標的または陰性対照ペプチドで外因的にパルスして、細胞表面上に、関連するpHLA複合体を生成した。
フローサイトメトリーで検出された、G5、G8、またはG10を提示するK562細胞への抗体結合の4つの代表的な例は、図17A、図17B、及び図17Cに図示されている通りである。抗体結合は、関連する標的ペプチドに対して選択的な、用量依存的に観察された。
別のフローサイトメトリー実験では、G5については表1に、G8及びG10については表2にリストされているようにして、HLAで形質導入されたK562細胞を、50μMの標的または対照ペプチドでパルスした。pHLA特異的抗体は、フローサイトメトリーで検出した。HLA形質導入K562細胞を、50μMの標的または陰性対照ペプチドでパルスした。抗体結合ヒストグラムは、G5−P7A05:20μg/mL、G8−2C10:30μg/mL、G10−P1B07:30μg/mL、及びG8−P1C11:30μg/mLにてプロットした。ヒストグラムは、図18及び図47に描かれている通りである。
材料及び方法
K562細胞株の生成
Phoenix−AMPHO細胞(ATCC(登録商標)、CRL−3213(商標))は、10%FBS(Seradigm,97068−091)及びGlutamax(Gibco(商標)35050079)を添加したDMEM(Corning(商標)17−205−CV)中で培養した。K−562細胞(ATCC(登録商標)、CRL−243(商標)は、10%FBSを添加したIMDM(Gibco(商標)31980097)中で培養した。Lipofectamine LTX PLUS(Fisher Scientific,15338100)には、Lipofectamine試薬とPLUS試薬が含まれている。Opti−MEM(Gibco(商標)31985062)は、Fisher Scientificから購入されたものである。
Phoenix細胞を6ウェルプレートに5×105細胞/ウェルで播種し、37℃で一晩インキュベートした。トランスフェクション用に、10μgのプラスミド、10μLのプラス試薬、及び100μLのOpti−MEMを室温で15分間インキュベートした。同時に、8μLのリポフェクタミンを92μLのOpti−MEMと共に室温にて15分間インキュベートした。これら2つの反応を併用し、再び室温で15分間インキュベートしてから、800μLのOpti−MEMを添加した。培養培地をPhoenix細胞から吸引してから、5mLの予熱したOpti−MEMで洗浄した。細胞からOpti−MEMを吸引し、リポフェクタミン混合物を添加した。細胞を37℃にて3時間インキュベートし、3mLの完全培地を添加した。次いで、プレートを37℃にて一晩インキュベートした。培地をPhoenix培地に交換し、プレートを、37℃で更に2日間インキュベートした。
培地を収集し、45μmフィルターに通して、清潔な6ウェル皿に濾過した。20μLのPlus試薬を各ウイルス懸濁液に添加し、室温で15分間インキュベートした。その後、リポフェクタミン8μL/ウェルを添加して、更に15分間室温でインキュベートした。K562細胞を計数し、5E6細胞/mL中に再懸濁させて、100μLを各ウイルス懸濁液に添加した。6ウェルプレートを700gで30分間遠心し、37℃で5〜6時間インキュベートした。次いで、細胞及びウイルス懸濁液をT25フラスコに移し、7mLのK562培地を添加した。続いて、細胞を3日間インキュベートした。その後、形質導入されたK562細胞を、0.6μg/mLのピューロマイシン(Invivogen,ant−pr−1)が添加された培地で培養して、選択をフローサイトメトリーでモニターした。
フローサイトメトリー法:
HLAで形質導入したK562細胞を、6ウェルプレートに1%FBSを含むIDMEM中の50μMペプチド(Genscript)で前夜にパルスし、標準的な組織培養条件下でインキュベートした。細胞を回収し、PBSで洗浄してから、eBioscience Fixable Viability Dye eFluor 450で室温にて15分間染色した。細胞を、PBS+2%FBS中で更に洗浄した後、さまざまな濃度のIgGと共に再懸濁させた。細胞を抗体と4℃で1時間インキュベートした。別の洗浄後、PE結合ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を、1:100で4℃で30分間加えた。PBS+2%FBSで洗浄後、細胞をPBS+2%FBSで再懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリー分析を、Attune NxTソフトウェアを使用して、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher)で行った。FlowJoを使用してデータを分析した。
実施例7:標的遺伝子とHLAサブタイプを発現する腫瘍細胞株に対する抗体の結合
公的に入手可能なデータベース(TRON http://celllines.tron−mainz.de)で評価されているように、HLAサブタイプ及び関心対象の標的遺伝子の発現に基づいて、腫瘍細胞株を選択した。細胞結合アッセイ用の腫瘍細胞株の選択は、下表12に示す通りである。
LN229、BV173、及びColo829腫瘍細胞株を、標準的な組織培養条件下で増殖させた。フローサイトメトリーを、実施例6に記載されているようにして実施した。細胞を、30μg/mLまたは0μg/mLの抗体、続いてPE結合抗ヒト二次IgGと共にインキュベートした。
結果は、図19に描かれえている通りである。パネルAは、神経膠芽腫株LN229へのG5−P7A05の結合のヒストグラムプロットを図示したものである。パネルBは、白血病株BV173へのG8−P2C10の結合のヒストグラムプロットを図示したものである。パネルCは、CRC株Colo829へのG10−P1B07の結合のヒストグラムプロットを図示したものである。
実施例8:HLA−PEPTIDE標的HLA−A*01:01 ASSLPTTMNYまたはHLA−PEPTIDE標的HLA−A*01:01_HSEVGLPVYに結合するTCRの同定
末梢血単核細胞(PBMC)を、健常ドナー由来の白血球除去試料を処理することによって得た。凍結PBMCを解凍し、ビオチン化CD45RO、CD14、CD15、CD16、CD19、CD25、CD34、CD36、CD57、CD123、抗HLA−DR、CD235a(グリコフォリンA)、CD244、及びCD4抗体のカクテルと共にインキュベートした。その後、PBMC集団から除去するのに備えて、抗ビオチンマイクロビーズで磁気標識した。富化されたナイーブCD8 T細胞を、標的ペプチドと適切なMHC分子とを含む四量体で標識し、生/死マーカー及び系統マーカーで染色して、フローサイトメトリーセルソーターで選別した。ポリクローナルの拡張に続いて、2つのパスのうちの1つを採択してもよい。集団の大部分がHLA−PEPTIDE標的に対し特異的とされる場合、T細胞集団を全体として配列決定する。代替的に、HLA−PEPTIDE標的に対し特異的なTCRを保持する細胞を再選別してもよい。再選別後に単離された細胞のみを、10x Genomics単一細胞解像度対免疫TCRプロファイリングアプローチを使用して配列決定する。この時点で、HLA−PEPTIDE標的HLA−A*01:01 ASSLPTTMNYに対し特異的なTCRを保持する細胞が、上記のように再選別され、配列決定された。具体的には、2000〜8000の生存T細胞を単一細胞エマルジョン中にパーティション化させ、後続の単一細胞cDNA生成及び全長TCRプロファイリングに備えた(定常領域を介した5’UTRによってαとβとの対合が確実に為されるようにした)。このアプローチでは、転写産物の5’末端にて分子的にバーコード化された鋳型スイッチングオリゴを利用した。代替アプローチでは、3’末端にて分子バーコード化された定常領域オリゴを利用する。別の代替アプローチでは、RNAポリメラーゼプロモーターをTCRの5’または3’末端に結合する。これらのアプローチはいずれも、単一細胞レベルにてα及びβTCR対の同定及びデコンボリューションを可能にする。結果として得られたバーコード化されたcDNA転写産物は、最適化された酵素及びライブラリー構築ワークフローを経て、バイアスを低減し、細胞のプール内のクロノタイプが正確に表現されるようにしたものである。ライブラリーを、Illumina製のMiSeq及びHiSeq 4000機器(ペアエンド150サイクル)で配列決定し、細胞当たり約5〜5万リードの標的シーケンシング深度を得た。
シーケンシングリードは、10x提供のソフトウェアCell Rangerを介して処理された。シーケンシングリードにタグ付けされているChromiumセルラーバーコード及びUMIを使用して、細胞ごとにV(D)J転写産物をアセンブルする。次いで、組み立てられたコンティグをEnsemble v87 V(D)J参照配列にマッピングすることによって、各細胞に対してアセンブルしたコンティグに注釈を付けた。クロノタイプを、一意なCDR3アミノ酸配列のα、β鎖対として定義した。2細胞を超える頻度で存在する単一α及び単一β鎖の対に対して、クロノタイプをフィルタリングし、特定のドナーの標的ペプチドごとのクロノタイプの最終リストを得た。
ASSLPTTMNYの6つの実験及びHSEVGLPVY標的の2つの実験で、2つの異なるドナーを分析した。図20A及び図20Bには、実験ごとに単離された標的特異的T細胞の数、及び実験ごとに同定された標的特異的独特のクロノタイプの数が、それぞれ描かれえている。1つの実験によるデータは、各色で表されている。
表13は、全ての実験で特定されたT細胞の累積数及び一意なTCR、ならびに300万のナイーブCD8 T細胞当たりの標的特異的T細胞の平均数は、表を描写する。
HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプの注釈付き配列が、下表14に描かれている。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRに割り当てられたTCR ID#1には、TRAV25配列、TRAJ37配列、TRAC配列、TRBV19配列、TRBD1配列、TRBJ1−5配列、及びTRBC1配列が含まれる。
(表14)HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに結合するTCRの注釈付き配列
HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプのα及びβCDR3配列は、表15に図示されている通りである。明確にするために、表14と同様に、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRID#1は、αCDR3配列CAGPGNTGKLIFとβCDR3配列CASSNAGDQPQHFとを含む。
HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプの全長αV(J)及び全長βV(D)J配列は、表16に図示されている通りである。例えば、TCR ID#1は、αV(J)配列
及びβV(D)J配列
を含む。
HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプの注釈付き配列が、下表17に図示されている。明確にするために、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRに割り当てられたTCR ID # 345に、TRAV13-1配列、TRAJ20配列、TRAC配列、TRBV7-9配列、TRBJ2-7配列、及びTRBC2配列が含まれる。
(表17)HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに結合するTCRの注釈付き配列
HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプのα及びβCDR3配列は、表18に図示されている通りである。明確にするために、表17と同様に、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRID #345には、αCDR3配列CAANPGDYKLSF及びβCDR3配列CASSSNYEQYFが含まれる。
HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプの全長αV(J)及び全長βV(D)J配列は、表19に図示されている通りである。明確にするために、表17と同様に、同定済み各TCRにTCR ID番号が割り当てられている。例えば、TCRID #345に、αV(J)配列
及びβV(D)J配列
が含まれる。
実施例9:HLA−PEPTIDE複合体に結合する抗体またはその抗原結合断片の同定
腫瘍抗原を提示するMHCクラスI分子を標的とする一本鎖可変断片(scFv)抗体の同定
関心対象の腫瘍抗原を提示するヒトクラスI MHC分子を標的とする強力且つ選択的な単鎖抗体は、ファージディスプレイを使用して同定される。ファージライブラリーは、非特異的なクラスI MHCバインダーを除去することにより、スクリーニング用に調製される。標的pMHCとは異なる複数の可溶性ヒトペプチドMHC(pMHC)分子を利用して、既存のファージライブラリーをパニングし、クラスI MHCに対し非特異的に結合するscFvを除去する。関心対象のpMHCに選択的に結合するscFvを同定するため、標的pMHCを、準備されたファージライブラリーでのパニングの少なくとも1〜3ラウンドで使用する。次いで、スクリーン内で同定されたscFvヒットを無関係なpMHCのパネルに対して評価し、標的pMHCに選択的に結合するscFvリードを同定する。リードscFvを、標的結合の特異性及び親和性が判別されるように特性評価する。強力且つ選択的な結合が実証済みであるリードscFvを、全長IgGモノクローナル抗体(mAb)コンストラクトに変換する。追加的に、リードscFvを、CAR T細胞の生成に使用できる二重特異性mAbコンストラクト及びキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクト内に組み込む。全長の二重特異性またはscFVベースの二重特異性を構築してもよい。
in vitroにてヒト腫瘍細胞の標的化を実証する
免疫組織化学技術を利用して、標的pMHC分子を発現するヒト腫瘍細胞または細胞株へのリード抗体の特異的結合を実証する。CAR−TコンストラクトをトランスフェクトされたT細胞株を、ヒト腫瘍細胞と共にインキュベートして、in vitroでの腫瘍細胞の死滅を実証する。代替的に、標的を発現する腫瘍細胞を、二重特異性コンストラクト(ABP及びエフェクタードメインをコードするもの)及びPBMCまたはT細胞と共に、インキュベートする。
in vivoでの概念実証
リード抗体またはCAR−Tコンストラクトをin vivoで評価して、ヒト化マウス腫瘍モデルにおける指向性腫瘍殺傷を実証する。リード抗体またはCAR−Tコンストラクトを、ヒト腫瘍及びPBMCを移植した異種移植腫瘍モデルで、評価する。抗腫瘍活性を測定し、対照コンストラクトと比較して、標的特異的な腫瘍殺傷を実証する。
ウサギB細胞クローニング技術を用いて、腫瘍抗原を提示するMHCクラスI分子を標的とするモノクローナル抗体(mAb)を同定する
関心対象の腫瘍抗原を提示するヒトクラスI MHC分子を標的とした、強力且つ選択的なmAbを、同定する。ヒト腫瘍抗原を提示する可溶性ヒトpMHC分子を用いて、複数のマウスまたはウサギを免疫し、その後、免疫された動物に由来するB細胞をスクリーニングして、標的クラスI MHC分子に結合しているmAbを発現するB細胞を同定する。マウスまたはウサギのスクリーニングによって同定されたmAbをコードする配列が、単離されたB細胞からクローニングされる。次いで、回収されたmAbを不適切なpMHCのパネルに対して評価してから、標的pMHCに選択的に結合するリードmAbを同定する。リードmAbを十分に特性を明らかにして、標的の結合親和性及び選択性を決定する。強力且つ選択的な結合が実証済みであるリードmAbをヒト化し、全長ヒトIgGモノクローナル抗体(mAb)コンストラクトを生成する。追加的に、リードmAbを、CAR T細胞の生成に使用できる二重特異性mAbコンストラクト及びキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクト内に組み込む。全長の二重特異性またはscFVベースの二重特異性を構築してもよい。
in vitroにてヒト腫瘍細胞の標的化を実証する
免疫組織化学技術を利用して、標的pMHC分子を発現するヒト腫瘍細胞株に対するリード抗体の特異的結合を実証する。CAR−TコンストラクトをトランスフェクトしたT細胞株をヒト腫瘍細胞と共にインキュベートして、in vitroでの腫瘍細胞の死滅を実証する。代替的に、標的を発現する腫瘍細胞を、二重特異性コンストラクト(ABP及びエフェクタードメインをコードするもの)及びPBMCまたはT細胞と共に、インキュベートする。
in vivoでの概念実証
リード抗体またはCAR−Tコンストラクトをin vivoで評価して、ヒト化マウス腫瘍モデルにおける指向性腫瘍殺傷を実証する。リード抗体またはCAR−Tコンストラクトを、ヒトPBMCを移植した異種移植腫瘍モデルで評価する。抗腫瘍活性を測定し、対照コンストラクトと比較して、標的依存性の腫瘍殺傷を実証する。
腫瘍抗原を提示するヒトクラスI MHC分子を選択的に標的とする強力且つ選択的なABPを、ファージディスプレイまたはB細胞クローニング技術を使用して同定する。ABPの有用性に関する実証は、抗体またがCAR−T細胞コンストラクト中に組み込まれている場合に、ABPがin vitro及びin vivoで腫瘍細胞殺傷を媒介することを明らかにすることによって行う。
実施例10:HLA−PEPTIDE複合体に結合するTCRの同定
天然の高親和性TCRを選択するには、共有抗原MHC/ペプチド標的(SAT)を具体的に認識して、以下の実験手順を実行する。
1. MHC/ペプチド標的反応性TCRの同定及び分離
2. 人工TCR T細胞の生産
3. TCR特異性の検証
MHC/ペプチド標的反応性TCRの同定
T細胞を、患者の血液、リンパ節、または腫瘍から単離させる。患者は、SATとHLAが一致していることから、標的保持タンパク質の発現に基づいて選択されている。その後、例えば、SAT−MHC四量体結合細胞を選別することによって、またはT細胞とSATパルス抗原提示細胞のin vitro共培養で刺激された活性化細胞を選別することによって、T細胞をSAT特異的T細胞に対して富化させる。
SAT関連のα−βTCRダイマーを、SAT特異的なT細胞のTCRの単一細胞配列により同定する。代替的に、SAT特異的T細胞のバルクTCR配列を実行し、一致する可能性の高いα−β対を、TCR対合方法を使用して判別する。
代替的にまたは追加的に、SAT特異的なT細胞を、健常ドナー由来のナイーブT細胞をin vitroプライミングすることによって得ることもできる。PBMC、リンパ節、または臍帯血から得られたT細胞を、SATでパルスされた抗原提示細胞によって繰り返し刺激して、抗原経験済みT細胞の分化をプライミングする。その後、TCRの同定を、患者のSAT特異的T細胞に関して上記されているのと同様にして行う。
人工TCR T細胞の生産
TCRα及びβ鎖配列を、適切なコンストラクトにクローニングした。TCR自己または異種バルクT細胞を、コンストラクトで形質導入して、人工TCR T細胞を生成する。これらのT細胞を、以後の実験での使用に備えて、抗CD3抗体とIL−2サイトカインの存在下にて拡張させる。或る特定の実施例では、天然TCRを欠失させるか、または、挿入されたTCRを、適切な多量体化が増強されるように修飾する。
TCR特異性のin vitro検証
まず、操作を施されたTCRを保持するT細胞を、適切なMHCを発現する抗原提示細胞を使用して、標的認識に対してスクリーニングしてから、適切な標的(複数可)でパルスした。
次いで、スクリーニングの第1のラウンドで同定されたTCRを対象として、天然標的の認識に関する試験を行った。リードTCRを、HLAが一致する原発腫瘍及びSAT保有タンパク質を発現する腫瘍細胞株の特異的認識に基づいて命名する。
特異性が保証されるように、リードTCRを、オフターゲット認識に基づいて選択解除する。それらリードTCRを、複数の組織及び臓器タイプを対象とするHLA一致及び不一致の細胞株のパネルに対して、及び感染症抗原のパネルでパルスされたHLA一致及び不一致の抗原提示細胞に対してスクリーニングする。自己抗原または一般的な非自己抗原を特異的及び非特異的にオフターゲット認識するTCRを、選択解除する。
実施例11:MHC/ペプチド標的反応性TCRの同定
T細胞を、患者の血液、リンパ節、または腫瘍から単離させる。患者は、SATとHLAが一致していることから、標的保持タンパク質の発現に基づいて選択されている。その後、例えば、SAT−MHC四量体結合細胞を選別することによって、またはT細胞とSATパルス抗原提示細胞のin vitro共培養で刺激された活性化細胞を選別することによって、T細胞をSAT特異的T細胞に対して富化させる。
SAT関連のα−βTCRダイマーを、SAT特異的なT細胞のTCRの単一細胞配列により同定する。代替的に、SAT特異的T細胞のバルクTCR配列を実行し、一致する可能性の高いα−β対を、TCR対合方法を使用して決定する。
代替的にまたは追加的に、SAT特異的なT細胞を、健常ドナー由来のナイーブT細胞をin vitroプライミングすることによって得ることもできる。PBMC、リンパ節、または臍帯血から得られたT細胞を、SATでパルスされた抗原提示細胞によって繰り返し刺激して、抗原経験済みT細胞の分化をプライミングする。その後、TCRの同定を、患者のSAT特異的T細胞に関して上記されているのと同様にして行う。
実施例12:人工TCR T細胞の生産
TCRα及びβ鎖配列を、適切なコンストラクトにクローニングした。TCR自己または異種バルクT細胞を、コンストラクトで形質導入して、人工TCR T細胞を生成する。これらのT細胞を、以後の実験での使用に備えて、抗CD3抗体とIL−2サイトカインの存在下にて拡張させる。或る特定の実施例では、天然TCRを欠失させるか、または、挿入されたTCRを、適切な多量体化が増強されるように修飾する。
TCR特異性のIn vitro検証
まず、操作を施されたTCRを保持するT細胞を、適切なMHCを発現する抗原提示細胞を使用して、標的認識に対してスクリーニングしてから、適切な標的(複数可)でパルスした。
次いで、スクリーニングの第1のラウンドで同定されたTCRを対象として、天然標的の認識に関する試験を行った。リードTCRを、HLAが一致する原発腫瘍及びSAT保有タンパク質を発現する腫瘍細胞株の特異的認識に基づいて命名する。
特異性が保証されるように、リードTCRを、オフターゲット認識に基づいて選択解除する。それらリードTCRを、複数の組織及び臓器タイプを対象とするHLA一致及び不一致の細胞株のパネルに対して、及び感染症抗原のパネルでパルスされたHLA一致及び不一致の抗原提示細胞に対してスクリーニングする。自己抗原または一般的な非自己抗原を特異的及び非特異的にオフターゲット認識するTCRを、選択解除する。
実施例13:ウサギB細胞クローニング技術を用いて、腫瘍抗原を提示するMHCクラスI分子を標的とするモノクローナル抗体(mAb)を同定する
関心対象の腫瘍抗原を提示するヒトクラスI MHC分子を標的とした、強力且つ選択的なmAbを、同定する。ヒト腫瘍抗原を提示する可溶性ヒトpMHC分子を用いて、複数のマウスまたはウサギを免疫し、その後、免疫された動物に由来するB細胞をスクリーニングして、標的クラスI MHC分子に結合しているmAbを発現するB細胞を同定する。マウスまたはウサギのスクリーニングによって同定されたmAbをコードする配列が、単離されたB細胞からクローニングされる。次いで、回収されたmAbを不適切なpMHCのパネルに対して評価してから、標的pMHCに選択的に結合するリードmAbを同定する。リードmAbを十分に特性評価して、標的の結合親和性及び選択性を算定する。強力且つ選択的な結合が実証済みであるリードmAbをヒト化し、全長ヒトIgGモノクローナル抗体(mAb)コンストラクトを生成する。追加的に、リードmAbを、CAR T細胞の生成に使用できる二重特異性mAbコンストラクト及びキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクト内に組み込む。全長の二重特異性またはscFVベースの二重特異性を構築してもよい。
in vitroにてヒト腫瘍細胞の標的化を実証する
免疫組織化学技術を利用して、標的pMHC分子を発現するヒト腫瘍細胞株に対するリード抗体の特異的結合を実証する。CAR−TコンストラクトをトランスフェクトしたT細胞株をヒト腫瘍細胞と共にインキュベートして、in vitroでの腫瘍細胞の死滅を実証する。代替的に、標的を発現する腫瘍細胞を、二重特異性コンストラクト(ABP及びエフェクタードメインをコードするもの)及びPBMCまたはT細胞と共に、インキュベートする。
in vivoでの概念実証
リード抗体またはCAR−Tコンストラクトをin vivoで評価して、ヒト化マウス腫瘍モデルにおける指向性腫瘍殺傷を実証する。リード抗体またはCAR−Tコンストラクトを、ヒトPBMCを移植した異種移植腫瘍モデルで評価する。抗腫瘍活性を測定し、対照コンストラクトと比較して、標的依存性の腫瘍殺傷を実証する。
腫瘍抗原を提示するヒトクラスI MHC分子を選択的に標的とする強力且つ選択的なABPを、ファージディスプレイまたはB細胞クローニング技術を使用して同定する。ABPの有用性に関する実証は、抗体またはCAR−T細胞コンストラクト中に組み込まれている場合に、ABPがin vitro及びin vivoで腫瘍細胞殺傷を媒介することを明らかにすることによって行う。
実施例14:水素/重水素交換及び質量分析によるscFv−pHLAまたはFab−pHLA構造の評価
実験手順
水素/重水素交換
20μMのHLA−ペプチドを、3倍モル過剰のscFvタンパク質と共に室温(20〜25℃)で20分間インキュベートして、交換実験用の複合体を生成した。Apo対照については、HLA−ペプチドを等量の50mM NaCl、20mM Tris pH8.0と共にインキュベートした。後続の全ての反応ステップは、Chronos 4.8.0ソフトウェア(Leap Technologies,Morrisville,NC)を介して制御される自動HDX PALシステムで4℃にて実行した。重水素交換を二連で行った。5μlのタンパク質複合体を、50mM NaCl、20mM Tris pH8.0(0分の制御時点にて)、または30秒間、D2Oで作成した同じバッファーで10倍に希釈した後、0.8M塩酸グアニジン、0.4%酢酸(v/v)、及び75mM Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィン中で3分間急冷した。急冷された約50pmolのタンパク質複合体を、統合型オンラインタンパク質消化用の、固定化されたタンパク質XIII/ペプシンカラム(NovaBioAssays,Woburn,MA)に移した。
液体クロマトグラフィー、質量分析、及びHDX分析
ペプチドのクロマトグラフィー分離は、トラップC18カラム(粒子サイズ5μM、直径2.1 mm)と分析用C18カラム(粒子サイズ1.9μM、直径1 mm)とを装備したUltiMate 3000基本マニュアルUHPLCシステム(ThermoFishsher Scientific,Waltham,MA)を使用して行った。試料を10%アセトニトリル、0.05%トリフルオロ酢酸で40μl/minの流速にて2分間脱塩してから、ペプチドを40μl/minの流速にて95%アセトニトリル、0.05%トリフルオロ酢酸の濃度を上昇させて溶出させた。質量分析は、ESIソースを3800 Vの正イオン電圧に設定して、Orbitrap Fusion Lumos質量分析計(ThermoFisher,Waltham,MA)で行った。水素−重水素交換実験に先立ち、各HLA−ペプチド複合体のペプチド断片の分析を、データ依存のLC/MS/MSを用い、PEAKS Studio(Bioinformatics Solutions Inc.,Waterloo、ON、Canada)を使用して検索されたデータを用いて行った。ペプチド前駆体の質量許容誤差は10 ppm、断片イオンの質量許容誤差は0.1 Daであった。HLA、β2M及びペプチドの配列を検索し、誤検出率を、デコイデータベース戦略を使用して同定した。LC/MSで、水素−重水素実験によるペプチドを検出し、これをHDX Workbench(Omics Informatics、Honolululu、HI)で分析した。保持時間ウィンドウサイズは0.22分で、誤差は7.0ppmであった。重水素の取り込み差分は、Pymol(Schrodinger,Cambridge,MA)を使用して関連するタンパク質の結晶構造にマッピングした。
結果
図21Aは、scFvクローンG8−P1H08と共にインキュベートされたG8 HLA−PEPTIDE複合体のHLA部分の、例示的なヒートマップを描いたものであり、統合された摂動ビューを使用して全体が明視化されている。
実施例15に記載されている結晶構造にプロットされたscFv G8−P1H08によるデータの例は、図21Bに示す通りである。
図45Aは、scFvクローンG8−P1C11と共にインキュベートされたG8 HLA−PEPTIDE複合体のHLA部分の、例示的なヒートマップを描いたものであり、統合された摂動ビューを使用して全体が明視化されている。
実施例15に記載されている結晶構造にプロットされたscFv G8−P1C11によるデータの例は、図45Bに示す通りである。
図23Aは、scFvクローンR3G10−P2G11と共にインキュベートされた場合のG10 HLA−PEPTIDE複合体のHLA部分の例示的なヒートマップを描いたものであり、統合された摂動ビューを使用して全体が明視化されている。
結晶構造PDB5bs0にプロットされたscFv R3G10−P2G11によるデータの例は、図23Bに示す通りである。α1及びα2ヘリックスによって形成されたHLA結合クレフトの制限されたペプチドを示す結晶構造は、URL https://www.rcsb.org/structure/5bs0(Raman et al)
特定のHLA−PEPTIDE標的について試験されたABP間でデータをより詳細に比較するため、各ABPのデータをエクスポートして、ヒートマップをExcelで生成した。図22Aに、HLA−PEPTIDE標的G8(HLA−A*02:01_AIFPGAVPAA)に対して試験された全てのABPのHLAα1ヘリックス全域における、結果として得られたヒートマップを示す。図22Bに、HLA−PEPTIDE標的G8(HLA−A*02:01_AIFPGAVPAA)に対して試験された全てのABPのHLAα2ヘリックス全域における、結果として得られたヒートマップを示す。図22Cに、試験された全てのABPを対象とした制限ペプチドAIFPGAVPAA全域における結果のヒートマップを示す。ヒートマップは、HLA−PEPTIDE標的とG8特異的抗体ベースのABPとの間の相互作用を判別する際に、HLA−PEPTIDE標的G8(HLA−A*02:01_AIFPGAVPAA)のHLAタンパク質(α1ヘリックス内)の45位〜60位が、直接的または間接的に関与している可能性があることを示唆している。
図24Aに、HLA−PEPTIDE標的G10(HLA−A*01:01_ ASSLPTTMNY)に対して試験された全てのABPのHLAα1ヘリックス全域における、結果として得られたヒートマップを示す。図24Bに、HLA−PEPTIDE標的G10(HLA−A*01:01_ASSLPTTMNY)に対して試験された全てのABPのHLAα2ヘリックス全域における、結果として得られたヒートマップを示す。図24Cに、試験された全てのABPを対象とした制限ペプチドASSLPTTMNY全域における結果のヒートマップを示す。ヒートマップは、HLA−PEPTIDE標的とG10特異的抗体ベースのABPとの間の相互作用を決定する際に、HLA−PEPTIDE標的G10(HLA−A*01:01_ASSLPTTMNY)のHLAタンパク質(α1ヘリックス内)の49位〜56位が、直接的または間接的に関与している可能性があることを示唆している。
実施例15:結晶構造解析によるFab−pHLA構造の評価
材料及び方法
複合体の精製及び結晶スクリーニング
例えば、HLA−PEPTIDE標的G8(A*02:01_AIFPGAVPAA)に対応するFab断片を5mg/mL(100μM)に濃縮した後、対応するHLA−MHC(1:1のモル比)を添加して、4℃で30分間インキュベートした。次いで、混合物を、複合体の精製用に1X PBSバッファーで平衡化したサイズ排除クロマトグラフィーカラム(S200 16/60)に注入した。Fab及びHLAの両方を含み、溶出量が約94kDaの複合体と一貫した画分をプールし、10〜12mg/mL(1AU=1mg/mL)に濃縮した。精製された各複合体を、PEGIon(Hampton research)、JCSG+(Molecular Dimensions)、JBS Screen 3及び4(Jena Biosciences)の商用スクリーンを使用して、結晶化条件に対してスクリーニングした。沈殿剤としてPEG3350またはPEG4000のどちらを使用するかに概ね基づいて、HLA−Fab複合体の既知の結晶条件の特性に応じて、キットの選択を行った。スクリーニング後3〜4週間目に、いくつかの結晶化条件でHLA−Fabの組み合わせにて、回折に適した結晶が出現した(表24)。結晶のタンパク質の性質を、UVで検査した。結晶を凍結保護剤溶液(25%グリセロールを補充した結晶化溶液)に移し、液体窒素で瞬間凍結した。
データの収集及び処理
SOLEILシンクロトロン(Gif sur Yvette,France)のProxima 2Aビームラインで回折データを収集した。データ処理及びスケーリングは、XDSを使用して実行した(1)。分子置換は、CCP4スイートのMolRep及びArp/Warpを使用して実行した(2)。その際、エントリーモデルとして、HLA(100%の配列同一性)用にPDB 5E6Iを使用し、Fab用に5AZE(VHに対し90%配列同一性)及び5I15(VLに対し97%配列同一性)を使用した。Coot(CCP4スイート)で、バスターTNT(GlobalPhasing、Inc)及び手動モデル修飾を使用して、微調整を行った。
複合体の精製
組み合わせによって、個々のタンパク質ピークと形成された複合体ピークとの間に良好な分離が生じた(図28A)。インキュベーション時間を16時間(一晩)に延長したにもかかわらず、形成された複合体の比率は変化しなかった(タンパク質の約50%が複合体として存在し、50%が遊離タンパク質として存在する)。還元条件下でのSDS PAGEでのピーク分析によって、プールされた画分に両方のFab鎖(30kDa)、HLA重鎖(約35kDa)、及びHLA軽鎖(BLMにて10kDa未満)が存在することが、明らかにされた(図28B)。
結晶化及びデータ収集
複合体がプールされた画分を濃縮し、スクリーニングした。3〜4週間後に、一部のHLA−Fabの組み合わせにて結晶が出現した。A*02:01_AIFPGAVPAA−G8−P1C11 Fab複合体の結晶構造解析、及び結果として生じた結晶形成の要約は、表24に示す通りである。
試験された条件のうちの4つの条件において、結晶を生成された。2つの条件において生成された結晶は、(1.7〜2.0Åの解像度にて)十分に回折され、P1空間群に統合された(表24)。Arp/Warpを使用して、分子置換(MolRep)とソフトウェア自動モデル構築とを併用することによって、構造の解決が可能であった。
FabクローンG8−P1C11及びHLA−PEPTIDE標的A*02:01_AIFPGAVPAA(「G8」)を含む複合体の例示的な結晶は、図29に示されている。この結晶は、25%(w/v)PEG 3350 100mM Bis−Tris/塩酸pH5.5を用いた市販のスクリーンJCSGを使用して成長させた。この結晶を使用して生成されたのが、下記の構造データである。
構造解析
FabクローンG8−P1C11とHLA−PEPTIDE標的A*02:01_AIFPGAVPAA(「G8」)の結合によって形成された複合体の全体構造を、図30に示す。個々のタンパク質は表面として表されている。HLAとVH及びVLとの間の界面領域はそれぞれ747Å2及び285Å2である。
精製中に、ペプチドに対応する電子密度領域が明視化され、提供された10残基のペプチド配列AIFPGAVPAAでペプチド側鎖の明確な配置(図31)が可能になった。相互作用界面に関連する全ての領域が洗練されたが、抗体の定常領域では、まだ幾分かの精製が必要とされる。
以下のデータで参照されている、錯体中のモノマーのコーディングを、下掲の表25に示す。
(表25)結晶分析で使用されるモノマーコーディング
HLA−ペプチドの相互作用
制限ペプチドAIFPGAVPAAは、その大部分がHLA A*02:01結合ポケットに埋め込まれており、残基P4G5A6は、Fabに向かって突出している。ペプチドとHLAと間の相互作用表面は926Å2であり、これは、ペプチド溶媒がアクセス可能な表面全体(1215Å2)の76%に相当する。HLAに対するペプチドの結合には、9つの水素結合とファンデルワールス相互作用(図32)とが含まれ、結合エネルギーは−16.4kcal/molとなる。
水素相互作用のリストを、下掲の表26に示す。
(表26)制限ペプチドとHLAとの間の水素結合相互作用
HLA及び制限ペプチドの完全な界面の要約を、図37に示す。
制限ペプチド及びHLAからの相互作用残基の完全なリストを図38に示す。
Fab−制限ペプチド相互作用
ほとんどのペプチドはHLAの結合ポケットに埋め込まれているため、Fab鎖との相互作用に利用できるのは、その一部だけに限られている。このことは、ペプチドの溶媒アクセス可能領域の76%がHLAとの相互作用によって占有されているという観察によって、確証される。ペプチドとFabの重鎖及び軽鎖との間の相互作用表面は、それぞれ114.3及び113.9 Å2である。これは、ペプチド溶媒がアクセス可能な領域全体の18%に相当する。PISA分析により明らかにされているように、Fabとペプチドとの間の相互作用に関与しているのは、2つの水素結合だけである。軽鎖のTyr32のヒドロキシル基は、ペプチドのGly5のバックボーンカルボニルと相互作用しており、Tyr100A骨格アミドは、ペプチドのPro4の骨格カルボニル基と相互作用している(以下の水素相互作用のリストについては、表27を参照のこと)。
制限ペプチドに対するFabの認識モードは、そのほとんどが、疎水性相互作用及び溶媒分子が関与する水素結合を介して行われる(図33及び図34)。Fabと制限ペプチドとの間の相互作用の結合エネルギーは、VH鎖及びVL鎖でそれぞれ−2.0と−1.9kcal/molである。
Fab VH鎖及び制限ペプチドの完全な界面の要約、ならびにFab VH鎖及び制限ペプチドからの相互作用残基の完全なリストは、図39に図示されている。
Fab VL鎖及び制限ペプチドの完全な界面の要約、ならびにFab VL鎖及び制限ペプチドからの相互作用残基の完全なリストは、図40に図示されている。
Fab−HLA相互作用
Fab及びHLAの部分は、HLAとFabとの間の界面領域に合計1032 Å2と図示されているように、広範囲に相互作用する。HLAとVH鎖との間の相互作用は、疎水性相互作用、6H結合、及び3つの塩橋で構成される(図35は、VHとHLAとの間の相互作用、図36は、VLとHLAとの間の相互作用である)。この相互作用は、主要な相互作用が747Å2(総接触面積の72%)であることを表している。
FabのVH鎖とHLAタンパク質との間の水素結合の接触は、下表に示す通りである。
FabのVH鎖とHLAタンパク質との間の塩橋接触は、下表に示す通りである。
Fab VH鎖HLAタンパク質の完全な界面の要約を、図41に示す。
Fab VH鎖及びHLAタンパク質からの相互作用残基の完全なリストは、図42に図示されている。
FabのVL鎖とHLAタンパク質との間の水素結合の接触は、下掲の表30に示す通りである。
Fab VL鎖HLAタンパク質の完全な界面の要約を、図43に示す。
Fab VL鎖及びHLAタンパク質からの相互作用残基の完全なリストは、図44に図示されている。
好ましい実施形態及び様々な代替実施形態を参照して、本発明を詳細に図示し説明してきたが、当然のことながら、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、形態及び詳細における様々な変更を施すことができる。
本明細書の本文内で引用された全ての参照文献、発行された特許及び特許出願は、あらゆる目的に対応するように、それらの全体が参照により本明細書に援用されている。
配列
(表4)標的G5に結合するscFvヒットのVH及びVL配列
(表5)Kabat番号付けスキームに従って番号付けされた、G5に対する同定済みscFvのCDR配列
(表6)標的G8に結合するscFvヒットのVH及びVL配列
(表7)Kabat番号付けスキームに従って番号付けされた、G8に対する同定済みscFvのCDR配列
(表8)標的G10に結合するscFvヒットのVH及びVL配列
(表9)Kabat番号付けスキームに従って番号付けされた、G10に対する同定済みscFvのCDR配列
(表15)(G10 TCR用のCDR3配列)
HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに結合するTCRのCDR3配列
(表16)全長αTCR配列及び全長βTCR配列(G10)
HLA−PEPTIDE A*01:01_ASSLPTTMNYに結合するTCRの全長αVJ及び全長βV(D)J配列
(表18)HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的なTCRクロノタイプのCDR3配列
(表19)HLA−PEPTIDE A*01:01_HSEVGLPVYに対し特異的な同定済みTCRクロノタイプの、全長αV(J)及び全長βV(D)J配列
表A
配列表の配列番号1−102842を参照のこと。明確にするために、各HLA−PEPTIDE標的に一意の配列番号が割り当てられている。上記の各配列同定子は、標的タイプが、腫瘍関連抗原(TAA)またはがん/精巣抗原(CTA)、及び制限ペプチドのアミノ酸配列であるかどうかに関係なく、表Aの標的番号、HLAサブタイプ、制限されたペプチドに対応する遺伝子名、遺伝子アンサンブルIDに関連付けられている。例えば、配列番号:1は、表Aの標的1を参照している。表Aの標的1は、HLA−PEPTIDE標的C*16:01_AAACSRMVI(ABCB5遺伝子(アンサンブルID ENSG00000004846、すなわちTAA)に対応する制限ペプチドAAACSRMVI)を指す。
表Aは、その全体が、2017年12月28日出願の米国特許仮出願第62/611,403号に開示されており、該文献は、その全体が、本明細書において参照により援用されている。