本出願の一態様によると、単一分子は、複数の別々の光パルスに曝露された際に、上記分子から放射される一連の光子の1つまたは複数の特性に基づいて識別されることが可能である(例えば、反応試料中の他の考え得る分子から判別されることが可能である)。いくつかの実施形態では、放射光子は、異なる発光寿命に基づいて分子を識別/判別するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、発光寿命は、算出されることが可能である。いくつかの実施形態では、実際の寿命は、算出されなくともよい。例えば、発光寿命を示唆する1つまたは複数の特性が、使用されてもよい(例えば放射のローカルタイム、検出された放射の時間分布)。いくつかの実施形態では、放射光子は、分子の発光強度を決定するために使用されてもよく、発光強度は、分子を識別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、放射光子は、分子の発光寿命および発光強度を決定するために使用されてもよく、発光寿命または発光強度は、分子を識別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、分子の同一性は、発光寿命および発光強度の両方の組合せに基づいていてもよい。
いくつかの実施形態では、分子は、発光標識で標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、発光標識は、フルオロフォアである。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光標識の特性に基づいて識別または判別されることが可能である。発光標識(例えば、フルオロフォア)の特性としては、これらに限定されないが、発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、および発光強度が挙げられる。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光寿命に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光強度に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、放射光子を観察するのに必要な加えられた励起エネルギーの波長に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、放射光子の波長に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光寿命と、放射光子を観察するのに必要な加えられた励起エネルギーの波長との両方に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光強度と、放射光子を観察するのに必要な加えられた励起エネルギーの波長との両方に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光寿命、発光強度、および放射光子を観察するのに必要な加えられた励起エネルギーの波長に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光寿命および放射光子の波長の両方に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光強度および放射光子の波長の両方に基づいて識別または判別される。いくつかの実施形態では、発光標識は、発光寿命、発光強度、および放射光子の波長に基づいて識別または判別される。
ある実施形態では、反応混合物中または実験中の異なるタイプの分子が、異なる発光マーカーで標識される。いくつかの実施形態では、異なるマーカーは、判別されることが可能である異なる発光特性を有する。いくつかの実施形態では、異なるマーカーは、異なる発光寿命、異なる発光強度、放射光子の異なる波長、またはそれらの組合せを有することにより判別される。異なる発光マーカーを有する複数のタイプの分子が存在することにより、複合反応の異なるステップがモニターされること、または複合反応産物の異なる成分が識別されることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、異なるタイプの分子が反応または相互作用する順序が決定されることが可能である。
いくつかの実施形態では、異なるヌクレオチドが、異なる数の同じ発光分子で(例えば、同じ蛍光色素の1つまたは複数で)発光標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、発光標識の発光分子の数を変更することは、異なるヌクレオチドが、異なる強度に基づいて判別されることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、異なるヌクレオチドの各々が、異なるタイプの発光分子および/または異なる数の各発光分子で標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、異なるタイプの発光分子は、異なるヌクレオチドが、異なる強度および/または異なる寿命に基づいて判別されることを可能にする。
ある実施形態では、核酸またはタンパク質等の生体分子の配列を識別するために、異なる発光マーカーを有する複数のタイプの分子の発光特性が使用される。いくつかの実施形態では、異なる発光マーカーを有する複数のタイプの分子の発光特性が使用されて、それらが生体分子の合成中に組み込まれるときに単一分子を識別する。いくつかの実施形態では、異なる発光マーカーを有する複数のタイプのヌクレオチドの発光特性が使用されて、それらが配列決定反応中に組み込まれる時に単一ヌクレオチドを識別する。これにより、核酸鋳型の配列の決定が可能になり得る。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、核酸鋳型に相補的な核酸鎖に組み込まれる。いくつかの実施形態では、相補鎖は、プライマーを含む。
ある実施形態では、異なる発光マーカーを有する複数のタイプのヌクレオチドは、4つのタイプの発光標識ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドは、1つのスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、第1のスペクトル範囲内で放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、第1のスペクトル範囲内で放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲内の発光を放射する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、第1のスペクトル範囲内で放射し、第3のヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射し、第4のヌクレオチドは、第3のスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なるスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、同じスペクトル範囲内の光子を吸収および/または放射する各タイプの発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命または発光強度またはそれらの両方を有する。
いくつかの実施形態では、反応混合物中の4つの異なるタイプのヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン/ウラシル)は各々が、1つまたは複数の発光分子で標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、各タイプのヌクレオチドは、1つを超える同じ発光分子に接続されていてもよい(例えば、2つ以上の同じ蛍光色素がヌクレオチドに接続されている)。いくつかの実施形態では、各発光分子は、1つを超えるヌクレオチド(例えば、2つ以上の同じヌクレオチド)に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、1つを超えるヌクレオチドが、1つを超える発光分子に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、保護分子が、1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプの)および1つまたは複数の発光分子(例えば、同じタイプの)を付着させるためのアンカーとしての役目を果たす。いくつかの実施形態では、4つのヌクレオチドは全て、同じスペクトル範囲(例えば、520〜570nm)内で吸収および放射する発光分子で標識されている。
いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物を含む色素から選択されることが可能であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチラート、アントラニラート、クマリン、フルオロセイン(fluoroscein)、ローダミン、または他の類似化合物であってもよい。例示的な色素としては、フルオレセイン色素またはローダミン色素等のキサンテン色素、ナフタレン色素、クマリン色素、アクリジン色素、シアニン色素、ベンゾオキサゾール色素、スチルベン色素、ピレン色素、フタロシアニン色素、フィコビリタンパク質色素、およびスクアライン色素等が挙げられる。
いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、アレクサフルオル(Alexa Fluor)(登録商標)546、Cy(登録商標)3B、Alexa
Fluor(登録商標)555、およびAlexa Fluor(登録商標)555、ならびにFRET対であるAlexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、Alexa
Fluor(登録商標)546、およびディライト(DyLight)(登録商標)554−R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、アットロー(ATTO Rho)6G、およびDyLight(登録商標)554−R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554−R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびDyLight(登録商標)554−R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびAlexa Fluor(登録商標)546を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554−R1を含む。
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、6−TAMRA、5/6−カルボキシローダミン(Carboxyrhodamine)6G、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)647、アベリオスター(Aberrior Star)635、アット(ATTO)425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO ロー(Rho)6G、ATTO542、ATTO647N、ATTO Rho14、クロミクス(Chromis)630、Chromis654A、クロメオ(Chromeo)(商標)642、CF(商標)514、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)546、CF(商標)546、CF(商標)555、CF(商標)568、CF(商標)633、CF(商標)640R、CF(商標)660C、CF(商標)660R、CF(商標)680R、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)5、Cy(登録商標)5.5、ディオミクス(Dyomics)−530、Dyomics−547P1、Dyomics−549P1、Dyomics−550、Dyomics−554、Dyomics−555、Dyomics−556、Dyomics−560、Dyomics−650、Dyomics−680、DyLight(登録商標)554−R1、DyLight(登録商標)530−R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)635−B2、DyLight(登録商標)650、DyLight(登録商標)655−B4、DyLight(登録商標)675−B2、DyLight(登録商標)675−B4、DyLight(登録商標)680、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)532、HiLyte(商標)Fluor555、HiLyte(商標)Fluor594、ライトサイクラ(LightCycler)(登録商標)640R、セタ(Seta)(商標)555、Seta(商標)670、Seta(商標)700、Seta(商標)u647、およびSeta(商標)u665からなる群から選択される発光色素を含むか、または本明細書に記載の式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは各々、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、DyLight(登録商標)554−R1、Alexa Fluor(登録商標)546、ATTO Rho6G、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO Rho6G、およびATTO542からなる群から選択される発光色素を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)546を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、2つのAlexa Fluor(登録商標)555を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)546を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554−R1を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554−R1を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554−R1を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO542を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554−R1を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO542を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドはAlexa Fluor(登録商標)546を含む。
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554−R1を含む。
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、CF(商標)594、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530−R2、DyLight(登録商標)554−R1、DyLight(登録商標)590−R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610−B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
いくつかの実施形態では、第1および第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530−R2、DyLight(登録商標)554−R1からなる群から選択される発光色素を含み、第3および第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)594、DyLight(登録商標)590−R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610−B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチド分子のタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、TagBFP、mTagBFP2、アズライト(Azurite)、EBFP2、mKalama1、シリウス(Sirius)、サファイア(Sapphire)、T−Sapphire、ECFP、セルリーン(Cerulean)、SCFP3A、mTurquoise、mTurquoise2、単量体Midoriishi−Cyan、TagCFP、mTFP1、EGFP、エメラルド(Emerald)、スーパーフォルダ(Superfolder)GFP、単量体アズミグリーン(Azami Green)、TagGFP2、mUKG、mWasabi、クローバ(Clover)、mNeonGreen、EYFP、シトリン(Citrine)、ヴィーナス(Venus)、SYFP2、TagYFP、単量体クサビラ−オレンジ(Kusabira−Orange)、mKOK、mKO2、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP−T、mApple、mRuby、mRuby2、mPlum、HcRed−Tandem、mKate2、mNeptune、NirFP、TagRFP657、IFP1.4、iRFP、mKeima Red、LSS−mKate1、LSS−mKate2、mBeRFP、PA−GFP、PAmCherry1、PATagRFP、カエデ(Kaede)(緑色)、カエデ(Kaede)(赤色)、KikGR1(緑色)、KikGR1(赤色)、PS−CFP2、mEos2(緑色)、mEos2(赤色)、PSmOrange、またはドロンパ(Dronpa)からなる群から選択される発光タンパク質を含む。
本出願の態様は、識別しようとする分子に対して励起エネルギーを加え、励起後の放射光子を検出するための方法、ならびにそのような方法に有用なシステムおよびデバイスを提供する。ある実施形態では、検出は、各検出された発光について、発光と事前の励起エネルギーのパルスとの間の経過時間を記録することを含む。ある実施形態では、検出は、複数の検出された発光の各々について、発光と事前の励起エネルギーのパルスとの間の経過時間を記録することを含む。ある実施形態では、励起エネルギーの複数のパルスが加えられる。識別しようとする分子の発光マーカーは、上記パルスの各パルスまたはその部分により励起されることが可能である。ある実施形態では、複数の発光が、1つまたは複数のセンサにより検出される。識別しようとする分子の発光マーカーは、各励起または励起の部分の後で発光を放射してもよい。発光をもたらす励起事象の割合は、マーカーの発光量子収量に基づく。いくつかの実施形態では、発光マーカーを含む発光分子の数を増加させると、量子収量を増加させることができる(例えば、発光放射の数を増加させることができる)。加えて、マーカーにより放射された発光が全て検出されるとは限らないだろう。例えば、いくつかの発光は、センサから遠ざかるように向かうだろう。ある実施形態では、1つまたは複数の励起エネルギーは、吸収スペクトル、および所与のスペクトル範囲での励起後にマーカーが光子を放射する波長を含む、発光マーカーの発光特性に基づいて選択される。
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、検出しようとする発光標識分子の発光特性(例えば、発光寿命)に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、パルス間の間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも、約2倍〜約10倍、約10倍〜約100倍、または約100倍から約1000倍長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも約10倍長い。
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、モニターされている化学プロセスに基づいて選択される。配列決定反応の場合、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に標的容積部に加えられるパルスの数は、検出される放射光子の数を部分的に決定することになる。いくつかの実施形態では、周波数は、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に十分な数の光子が検出されることができるように選択され、十分な数とは、複数のタイプの発光標識ヌクレオチドの中から、その発光標識ヌクレオチドを判別するのに必要な光子の数である。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射光子の波長に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光放射寿命、例えば、パルス励起と放射検出との間の時間に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射光子の波長および発光放射寿命に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射シグナルの発光強度に基づいて(例えば、放射の周波数またはある期間内の放射事象の総数に基づいて)判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射シグナルの発光強度および発光寿命に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光強度および波長に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光強度、波長、および発光寿命に基づいて判別される。
本出願の一態様によると、励起源モジュールおよび一体型デバイスを含むシステムが提供される。励起源モジュールは、第1の継続期間を有する励起エネルギーのパルスを放射するように構成されている励起源を含む。一体型デバイスは、励起エネルギーのパルスとカップリングされた際に発光を放射する分子を受容するように構成されている標的容積部;励起エネルギーのパルスがエネルギー源カップリング部品から標的容積部まで移動する第1のエネルギー経路;上記第1の継続期間よりも長い第2の継続期間にわたって発光を検出するセンサ;発光が標的容積部からセンサまで移動する第2のエネルギー経路;および励起エネルギーのパルスが、励起源からエネルギー源カップリング部品まで移動する第3のエネルギー経路を含む。
本出願の別の態様によると、標的容積部およびセンサを備える一体型デバイスが提供される。標的容積部は、各々が異なる寿命値を有する複数の発光マーカーの1つで標識されている試料を受容するように構成されている。センサは、複数の発光マーカーの1つからの発光を、複数の経過時間にわたって検出するように構成されている。複数の経過時間は、複数の発光マーカーを区別するように選択される。
本出願の別の態様によると、標的容積部および複数のセンサを備える一体型デバイスが提供される。標的容積部は、複数の発光マーカーの1つで標識されている試料を受容するように構成されている。複数の発光マーカーの各々は、複数のスペクトル範囲の1つ内にて発光を放射し、複数のスペクトル範囲の1つにて発光を放射する複数の発光マーカーの部分は各々、異なる発光寿命を有する。複数のセンサの各センサは、複数の経過時間にわたって複数のスペクトル範囲の1つを検出するように構成されており、複数の経過時間は、複数の発光マーカーの部分を区別するように選択される。
本出願の別の態様によると、複数の励起源および一体型デバイスを備えるシステムが提供される。複数の励起源は、複数の励起エネルギーを放射する。複数の励起源の各々は、複数の励起エネルギーの1つのパルスを放射する。一体型デバイスは、複数の発光マーカーの1つで標識されている試料を受容するように構成されている標的容積部;および複数の励起エネルギーの1つのパルス後の複数の経過時間にわたって、複数の発光マーカーの1つからの発光を検出するように構成されているセンサを含む。複数の励起エネルギーの1つにより照射された後で発光を放射する複数の発光マーカーの部分は各々、異なる寿命値を有する。パルス事象と発光放射との間の所要期間の複数のデータタイミングの蓄積は、複数の発光マーカーを区別する。
本出願の別の態様によると、標的核酸を配列決定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、標的核酸を配列決定するための方法は、以下の工程を備える:(i)(a)前記標的核酸、(b)前記標的核酸に相補的なプライマー、(c)核酸ポリメラーゼ、および(d)前記標的核酸に相補的な成長中の核酸鎖に組み込むためのヌクレオチドを含む混合物を用意する工程であって、前記ヌクレオチドが、異なるタイプの発光標識ヌクレオチドを含み、前記発光標識ヌクレオチドが、前記成長中の核酸鎖への順次組み込み中に検出可能なシグナルを産出し、前記異なるタイプの発光標識ヌクレオチドからの検出可能なシグナルが、時間領域で互いに区別可能である(例えば、検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数を決定することにより)、工程、(ii)前記プライマーを伸長させることにより前記成長中の核酸鎖を産出するのに十分な条件下で、(i)の前記混合物を重合反応に供する工程、(iii)前記成長中の核酸鎖への順次組み込み中に、前記発光標識ヌクレオチドからの前記検出可能なシグナルを測定する工程、ならびに(iv)前記成長中の核酸鎖への順次組み込み時に前記発光標識ヌクレオチドからの前記測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数を決定して、前記成長中の核酸鎖への前記発光標識ヌクレオチドの組み込みの時系列を識別し、それにより前記標的核酸の配列を決定する工程。
いくつかの実施形態では、標的核酸または核酸ポリメラーゼは、支持体に付着している。いくつかの実施形態では、組み込みの時系列は、(i)の混合物を重合反応に供した後で識別される。いくつかの実施形態では、検出可能なシグナルは、光学的シグナルである。いくつかの実施形態では、光学的シグナルは、発光シグナルである。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数の決定は、(i)前記検出可能なシグナルを1つまたは複数のセンサで受信する工程、および(ii)前記1つまたは複数のセンサで受信した前記検出可能なシグナルに応答して生成される複数の電荷担体の電荷担体を、前記電荷担体が生成された時間に基づいて、少なくとも1つの電荷担体保管領域内へと選択的に向かわせる工程を備える。
いくつかの実施形態では、前記測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、減衰寿命の測定値を含む。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、検出可能なシグナルを検出する1つまたは複数のセンサにおける、検出可能なシグナルの到着時間の測定値を含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、検出可能なシグナルにより生成された電荷担体を、検出可能なシグナルの到達時間に基づいて、1つまたは複数のセンサと関連付けられているビンに分離する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、非スペクトル測定値である。
当業者であれば、本明細書に記載されている図面は図示のためにすぎないことを理解するであろう。ある場合には、本発明の理解を容易にするために、本発明の様々な態様を誇張してまたは拡大して表すことがあると理解されたい。図面では、同様の参照符号は、一般に、様々な図を通して、同様の特色、機能的に類似および/または構造的に類似の要素を指す。図面は必ずしも縮尺ではなく、むしろ教示の原理を図示することに重点が置かれている。図面は、決して、本教示の範囲を限定する意図はない。
本発明の特色および利点は、図面と併せれば、以下に述べる詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
図面を参照して実施形態を説明する場合、方向の参照(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」など)を使用してもよい。そのような参照は単に、読者が図面を通常の向きで見ることを助けることを意図するものに過ぎない。これらの指向性の参照は、具現化されたデバイスの好ましい向きまたは唯一の向きを記述することを意図するものではない。デバイスは、他の向きで具現化されてもよい。
詳細な説明から明らかなように、図面(例えば、図1〜図37)に示され、本出願を通して図示の目的でさらに説明されている例は、非限定的な実施形態を記載しており、場合によっては、より明確に図示する目的のために、ある一定のプロセスを単純化するか、または特色もしくはステップを省略し得る。
(詳細な説明)
本発明者らは、単一分子を、その分子の1つまたは複数の発光特性に基づいて識別するための新しい方法、組成物、およびデバイスを開発した。いくつかの実施形態では、分子は、その発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、発光強度、またはそれらの2つ以上の組合せに基づいて識別される。識別は、分子の正確な分子同一性を帰属させることを意味してもよく、または1組の考え得る分子から特定の分子を判別または区別することを意味してもよい。いくつかの実施形態では、分子は、異なる発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、発光強度、またはそれらの2つ以上の組合せに基づいて、互いに判別されることが可能である。いくつかの実施形態では、単一分子は、分子を一連の個別の光パルスに曝露し、分子から放射される各光子のタイミングまたは他の特性を評価することにより識別される(例えば、他の分子と判別される)。いくつかの実施形態では、単一分子から順次放射される複数の光子の情報が統合および評価されて分子が識別される。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光寿命は、分子を識別するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光強度は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光強度は、分子を識別するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命および発光強度は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光寿命および発光強度は、分子を識別するために使用されることが可能である。
本出願の一態様は、1つまたは複数の生物学的または化学的分子を検出および/または識別するのに有用である。いくつかの実施形態では、化学的または生物学的反応は、1つまたは複数の時点にて、1つまたは複数の試薬または産物の存在または非存在を決定することにより評価されることが可能である。
本出願の一態様では、分子を光に曝露し、分子から放射される1つまたは複数の光子の1つまたは複数の特性を決定することにより分子を調査する。本出願のある態様では、分子を光のパルスに曝露し、分子から放射される光子の1つまたは複数の特性を決定することにより、分子が調査される。いくつかの実施形態では、分子を複数の個別の光パルス事象に曝露し、個別の光パルス事象の後で放射される個別の光子の1つまたは複数の特性が決定される。いくつかの実施形態では、分子は、各光パルスに応答して光子を放射しない。しかしながら、複数の放射光子は、分子を一連の個別の光パルスに曝露し、光パルス事象のサブセットの後で放射される個別の光子(例えば、パルス事象の約10%の後で放射される光子、またはパルス事象の約1%の後で放射される光子)を評価することにより評価されることが可能である。
本出願の一態様は、1つまたは複数の時点にて、1つまたは複数の試薬、中間体、および/または産物の存在または非存在を決定することにより、化学的または生物学的反応をモニターするのに有用である。いくつかの実施形態では、経時的な反応の進行は、反応試料を一連の個別の光パルスに曝露し、各光パルスの後で検出される任意の放射光子を分析することにより分析されることが可能である。
したがって、本出願のいくつかの態様では、反応試料を複数の個別の光パルスに曝露し、一連の放射光子が検出および分析される。いくつかの実施形態では、一連の放射光子は、反応試料に存在し、実験時間にわたって変化しない単一分子に関する情報を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態では、一連の放射光子は、異なる時点にて(例えば、反応またはプロセスが進行すると共に)反応試料中に存在する一連の異なる分子に関する情報を提供する。
いくつかの実施形態では、本出願の一態様は、生物学的試料を分析するために、例えば、試料中の1つまたは複数の核酸またはポリペプチドの配列を決定するために、および/または試料中の1つまたは複数の核酸またはポリペプチド変異体(例えば、目的の遺伝子の1つまたは複数の突然変異)の存在または非存在を決定するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、診断、予後、および/もしくは治療のために、核酸配列情報を提供するため、または1つまたは複数の目的核酸の存在または非存在を決定するために、患者試料(例えば、ヒト患者試料)に対して検査が実施される。いくつかの例では、診断検査には、例えば、対象の生物学的試料中の無細胞デオキシリボ核酸(DNA)分子および/または発現産物(例えば、リボ核酸(RNA))を配列決定することにより、対象の生物学的試料中の核酸分子を配列決定することを含む。
いくつかの実施形態では、発光寿命および/または強度を使用して分析中の(例えば、調査および/または識別中の)1つまたは複数の分子は、標識分子(例えば、1つまたは複数の発光マーカーで標識されている分子)でもよい。いくつかの実施形態では、生体分子の個々のサブユニットが、マーカーを使用して識別されてもよい。いくつかの例では、発光マーカーが、生体分子の個々のサブユニットを識別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、発光マーカー(本明細書では「マーカー」とも呼ばれる)が使用される。発光マーカーは、外因性マーカーであってもよくまたは内因性マーカーであってもよい。外因性マーカーは、発光標識用のリポーターおよび/またはタグとして使用される外部発光マーカーであってもよい。外因性マーカーの例としては、これらに限定されないが、蛍光分子、フルオロフォア、蛍光色素、蛍光染色剤、有機色素、蛍光タンパク質、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に寄与する種、酵素、および/または量子ドットを挙げることができる。当技術分野では他の外因性マーカーも公知である。そのような外因性マーカーは、特定の標的または成分と特異的に結合するプローブまたは官能基(例えば、分子、イオン、および/またはリガンド)とコンジュゲートされていてもよい。外因性タグまたはリポーターをプローブと付着させることにより、外因性タグまたはリポーターの存在の検出による標的の識別が可能になる。プローブの例としては、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA)分子、脂質、および抗体プローブを挙げることができる。外因性マーカーおよび官能基を組み合わせると、分子プローブ、標識プローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(例えば、ビオチン結合プローブ)、酵素標識、蛍光プローブ、蛍光タグ、および/または酵素リポーターを含む、検出に使用される任意の好適なプローブ、タグ、プローブ、および/または標識を形成することができる。
本開示では、発光マーカーが参照されているが、本明細書で提供されているデバイス、システム、および方法と共に、他のタイプのマーカーが使用されてもよい。そのようなマーカーは、質量タグ、静電気タグ、電気化学標識、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
外因性マーカーは、試料に添加されてもよく、内因性マーカーは、既に試料の一部であってもよい。内因性マーカーとしては、励起エネルギーの存在下で発光または「自己蛍光」することができる、存在するあらゆる発光マーカーを挙げることができる。内因性フルオロフォアの自己蛍光は、外因性フルオロフォアの導入を必要とせず、無標識で非侵襲性の標識を提供することができる。そのような内因性フルオロフォアの例としては、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、コラーゲンおよびエラスチン架橋、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、酸化型フラビン(FADおよびFMN)、リポフスチン、ケラチン、ならびに/またはポルフィリンを挙げることができるが、これらは例として挙げられており、限定ではない。
本発明者らは、単一分子検出および/または核酸配列決定を実施するための単純でより簡単な装置が必要とされていることを認識したうえで、複数の組の発光タグ(例えば、発光マーカー、発光標識)を使用して異なる分子を標識する、単一分子を検出するための技法に想到した。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチドまたはアミノ酸であってもよい。タグは、単一分子と結合されている状態で検出されてもよく、その単一分子から放出される際に検出されてもよく、または単一分子と結合されている状態でおよび単一分子から放出される際に検出されてもよい。いくつかの例では、タグは、発光タグである。選択された組の各発光タグは、それぞれの分子と関連付けられている。例えば、1組の4つのタグは、DNAに存在する核酸塩基を「標識」するために使用されてよい。この組の各タグは、異なる核酸塩基と関連付けられており、例えば、第1のタグはアデニン(A)と関連付けられており、第2のタグは、シトシン(C)と関連付けられており、第3のタグは、グアニン(G)と関連付けられており、第4のタグは、チミン(T)と関連付けられている。さらに、この組のタグの発光タグの各々は、この組の第1のタグをこの組の他のタグと判別するために使用されることができる異なる特性を有する。このようにして、各タグは、こうした判別特徴の1つまたは複数を使用して一意的に識別可能である。例として挙げられているものであり、限定ではないが、1つのタグを別のタグと判別するために使用されることが可能なタグの特徴としては、励起エネルギーに応答してタグにより放射される光の放射エネルギーおよび/または波長、特定のタグにより吸収されて、そのタグを励起状態にする励起光の波長、および/またはそのタグの放射寿命を挙げることができる。
配列決定
本出願のいくつかの態様は、核酸およびタンパク質等の生物学的ポリマーの配列決定に有用である。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法、組成物、およびデバイスは、核酸またはタンパク質に組み込まれる一連のヌクレオチドモノマーまたはアミノ酸モノマーを識別するために使用されてよい(例えば、一連の標識ヌクレオチドモノマーまたは標識アミノ酸モノマーの組み込みの時間的経過を検出することにより)。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法、組成物、およびデバイスは、ポリメラーゼ酵素により合成される鋳型依存性核酸配列決定反応産物に組み込まれている一連のヌクレオチドを識別するために使用されてよい。
ある実施形態では、鋳型依存性核酸配列決定産物は、天然核酸ポリメラーゼにより実施される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、天然ポリメラーゼの突然変異体または修飾変異体である。いくつかの実施形態では、鋳型依存性核酸配列産物は、鋳型核酸鎖に相補的な1つまたは複数のヌクレオチドセグメントを含むことになる。1つの態様では、本出願は、その相補的な核酸鎖の配列を決定することにより、鋳型(または標的)核酸鎖の配列を決定するための方法を提供する。
別の態様では、本出願は、複数の核酸断片を配列決定することにより標的核酸を配列決定するための方法であって、標的核酸が上記断片を含む方法を提供する。ある実施形態では、上記方法は、複数の断片配列を組み合わせて、親標的核酸の配列または部分配列を提供する工程を備える。いくつかの実施形態では、組合せ工程は、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアにより実施される。本明細書に記載の方法は、染色体全体またはゲノム等の、1組の関連標的核酸の配列決定を可能にすることができる。
配列決定中、重合酵素は、標的核酸分子のプライミング位置にカップリングしてもよい(例えば、付着してもよい)。プライミング位置は、標的核酸分子の部分に相補的なプライマーであってもよい。その代わりとして、プライミング位置は、標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されているギャップまたはニックである。ギャップまたはニックは、長さが、0個から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40個ヌクレオチドまでであってもよい。ニックは、二本鎖配列の一方の鎖の切れ目を提供することができ、例えば、鎖置換ポリメラーゼ酵素等の重合酵素のプライミング位置を供給することができる。
いくつかの場合、配列決定用プライマーは、固体支持体に固定されていてもよくまたは固定されなくともよい標的核酸分子にアニーリングされることが可能である。固体支持体は、例えば、核酸配列決定に使用されるチップ上の試料ウェル(例えば、ナノ開口部(反応チャンバ))を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、配列決定用プライマーは、固体支持体に固定されていてもよく、標的核酸分子がハイブリダイゼーションすると、標的核酸分子も固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、固体支持体に固定されており、可溶性プライマーおよび標的核酸が、ポリメラーゼと接触する。しかしながら、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が、溶液中で形成され、この複合体が、固体支持体に固定されている(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸を固定することにより)。いくつかの実施形態では、試料ウェル(例えば、ナノ開口部(反応チャンバ))中の成分はいずれも、固体支持体に固定されていない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が溶液中で形成され、この複合体は、固体支持体に固定されていない。
適切な条件下では、アニーリングされたプライマー/標的核酸と接触したポリメラーゼ酵素は、1つまたは複数のヌクレオチドをプライマーに追加または組み込むことができ、ヌクレオチドは、5’から3’へと鋳型依存的様式でプライマーに追加されることが可能である。プライマーへのヌクレオチドのそのような組み込み(例えば、ポリメラーゼの作用による)は、一般的に、プライマー伸長反応と呼ばれる場合がある。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応中に検出および識別されることが可能であり(例えば、その発光寿命および/または他の特徴に基づいて)、伸長されたプライマーおよびしたがって新たに合成された核酸分子の配列に組み込まれた各ヌクレオチドを決定するために使用されることが可能である検出可能なタグと関連付けられることが可能である。また、標的核酸分子の配列は、新たに合成された核酸分子の配列相補性により決定されることが可能である。いくつかの場合、配列決定用プライマーの標的核酸分子とのアニーリングおよびヌクレオチドの配列決定用プライマーへの組み込みは、同様の反応条件(例えば、同じまたは同様の反応温度)で生じる場合もあり、または異なる反応条件(例えば、異なる反応温度)で生じる場合もある。いくつかの実施形態では、合成法による配列決定は、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)を存在させる工程、および/または標的核酸を増幅して、標的核酸の集団を達成する工程を備える。しかしながら、いくつかの実施形態では、合成による配列決定が、評価中の各反応中の単一分子の配列を決定するために使用される(配列決定用の標的鋳型の調製には核酸増幅は必要とされない)。いくつかの実施形態では、複数の単一分子配列決定反応が、本出願の一態様に従って並列で実施される(例えば、単一チップ上で)。例えば、いくつかの実施形態では、複数の単一分子配列決定反応は各々、単一チップ上の個別の反応チャンバ(例えば、ナノ開口部、試料ウェル)で実施される。
実施形態では、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、もしくは99.9999%の正確性および/または約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、もしくは100,000bp以上の解読長等の、高い正確性および長い解読長で単一核酸分子の配列決定が可能である。いくつかの実施形態では、単一分子配列決定に使用される標的核酸分子は、試料ウェルの底部または側壁等の固体支持体に固定または付着されている配列決定反応の少なくとも1つの追加成分(例えば、DNAポリメラーゼ等ポリメラーゼ、配列決定用プライマー)を含有する試料ウェル(例えば、ナノ開口部)に追加または固定される一本鎖標的核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型である。標的核酸分子またはポリメラーゼは、試料ウェルの底部または側壁等の試料壁に直接的にまたはリンカーを介して付着されていてもよい。また、試料ウェル(例えば、ナノ開口部)は、例えば、好適な緩衝剤、コファクター、酵素(例えば、ポリメラーゼ)、および例えば、フルオロフォア等の発光タグを含むデオキシアデノシン三リン酸(dATP)dNTP、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)dNTP、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)dNTP、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)dNTP、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTP等のデオキシリボヌクレオシド三リン酸等の、プライマー伸長反応による核酸合成に必要な任意の他の試薬を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、タグから放射された光の検出が、新たに合成された核酸に組み込まれたdNTPの同一性を示すように、各クラスのdNTP(例えば、アデニン含有dNTP(例えば、dATP)、シトシン含有dNTP(例えば、dCTP)、グアニン含有dNTP(例えば、dGTP)、ウラシル含有dNTP(例えば、dUTP)、およびチミン含有dNTP(例えば、dTTP))が、異なる発光タグにコンジュゲートされている。発光タグからの放射光は、本明細書の他所に記載されている検出デバイスおよび検出方法を含む、任意の好適なデバイスおよび/または方法により検出されることが可能であり、その適切な発光タグ(およびしたがって関連dNTP)に帰属させることができる。発光タグは、発光タグの存在が、新たに合成された核酸鎖へのdNTPの組み込みまたはポリメラーゼの活性を阻害しないような任意の位置でdNTPにコンジュゲートされることが可能である。いくつかの実施形態では、発光タグは、dNTPの末端リン酸(例えば、ガンマリン酸)にコンジュゲートされる。
いくつかの実施形態では、一本鎖標的核酸鋳型は、配列決定用プライマー、dNTP、ポリメラーゼ、および核酸合成に必要な他の試薬と接触することができる。いくつかの実施形態では、dNTPの組み込みが連続的に生じ得るように、全ての適切なdNTPが同時に一本鎖標的核酸鋳型と接触してもよい(例えば、全てのdNTPが同時に存在する)。他の実施形態では、dNTPは、一本鎖標的核酸鋳型と順次接触してもよく、その場合、一本鎖標的核酸鋳型は、異なるdNTPを一本鎖標的核酸鋳型と接触させる間に洗浄ステップを設けることにより、各適切なdNTPと別々に接触する。一本鎖標的核酸鋳型を各dNTPと別々に接触させ、その後洗浄を行うそのようなサイクルは、識別しようとする一本鎖標的核酸テンプレートの各連続塩基位置にわたって繰り返されることが可能である。
いくつかの実施形態では、配列決定用プライマーは、一本鎖標的核酸鋳型にアニーリングし、ポリメラーゼは、一本鎖標的核酸鋳型に基づいて、dNTP(または他のデオキシリボヌクレオシドポリリン酸)を連続してプライマーに組み込む。各組み込まれたdNTPに関連付けられた固有な発光タグは、プライマーへのdNTPの組み込み中にまたは組み込み後に、適切な励起光で励起されることが可能であり、その後、その放射は、本明細書の他所に記載されている検出デバイスおよび方法を含む任意の好適なデバイスおよび/または方法を使用して検出されることが可能である。特定の光の放射(例えば、特定の放射寿命、強度、スペクトル、および/またはそれらの組合せを有する)の検出は、組み込まれた特定のdNTPに帰属させることが可能である。その後、検出された一群の発光タグから得られる配列は、一本鎖標的核酸鋳型の配列を配列相補性により決定するために使用されることが可能である。
本開示では、本明細書で提供されているdNTP、デバイス、システム、および方法が参照されているが、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド等の種々のタイプのヌクレオチド(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個のホスフェート基を有するデオキシリボヌクレオシドポリリン酸)と共に使用されることが可能である。そのようなリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドは、種々のタイプのタグ(またはマーカー)およびリンカーを含んでいてもよい。
核酸配列決定の例
以下の例は、本明細書に記載されている方法、組成物、およびデバイスのいくつかを例示するためのものである。例の全ての態様は非限定的である。図1には、一分子核酸配列決定法のセットアップが模式的に例示されている。1−110は、核酸ポリメラーゼ1−101、配列決定しようとする標的核酸1−102、およびプライマー1−104を含む単一複合体を含有するように構成されている試料ウェル(例えば、ナノ開口部、反応チャンバ)である。この例では、試料ウェル1−110の底部領域は、標的容積部(例えば、励起領域)1−120として図示されている。
本明細書の他所に記載されているように、標的容積部は、励起エネルギーが向けられる容積部(volume)である。いくつかの実施形態では、容積部は、試料ウェル容積部および試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングの両方の特性である。標的容積部は、標的容積部に限局される分子または複合体の数を制限するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、標的容積部は、単一分子または単一複合体を限局するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的容積部は、単一ポリメラーゼ複合体を限局するように構成されている。図1では、ポリメラーゼ1−101を含む複合体が、標的容積部1−120に限局されている。複合体は、任意選択で、試料ウェルの表面に付着させることにより固定されていてもよい。試料ウェル表面調製および官能化の例示的なプロセスは、図7〜9に図示されており、本出願の他所でさらに詳細に考察されている。この例では、複合体は、ポリメラーゼ1−101にリンカーを付着させるのに好適な1つまたは複数の生体分子(例えば、ビオチン)を含むリンカー1−103により固定されている。
また、開口部の容積部は、好適な溶媒、緩衝剤、およびポリメラーゼ複合体が核酸鎖を合成するのに必要な他の添加剤を有する反応混合物を含有する。また、反応混合物は、複数のタイプの発光標識ヌクレオチドを含有する。各タイプのヌクレオチドは、*−A、@−T、$−G、#−Cという記号で表されており、A、T、G、およびCは、ヌクレオチド塩基を表し、記号*、@、$、および#は、リンカー「−」を介して各ヌクレオチドに付着している固有の発光標識を表す。図1では、#−Cヌクレオチドが、相補鎖1−102に組み込まれているところである。組み込まれたヌクレオチドは、標的容積部1−120内に存在する。
また、図1には、標的容積部の近傍に加えられている励起エネルギーおよび検出器に向かって放射されている発光が概念的に矢印で示されている。矢印は模式的であり、励起エネルギーを加える特定の向きまたは発光の特定の向きを示す意図はない。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、発光源からの光のパルスである。励起エネルギーは、発光源と標的容積部の近傍との間を、導波路またはフィルター等の1つまたは複数のデバイス部品を通って移動してもよい。また、放射エネルギーは、発光分子と検出器との間を、導波路またはフィルター等の1つまたは複数のデバイス部品を通って移動してもよい。いくつかの発光は、検出器に(例えば、試料ウェルの側壁に)向かわず、検出されることができないベクトルで放射する場合がある。
図2には、単一の試料ウェル(例えば、ナノ開口部)での経時的な配列決定プロセスが模式的に例示されている。段階AからDに、図1のような、ポリメラーゼ複合体を有する試料ウェルが図示されている。段階Aには、任意のヌクレオチドがプライマーに付加される前の初期状態が図示されている。段階Bには、発光標識ヌクレオチド(#−C)の組み込み事象が図示されている。段階Cには、組み込み事象の間の期間が図示されている。この例では、ヌクレオチドCが、プライマーに付加されており、発光標識ヌクレオチド(#−C)にそれまで付着していた標識およびリンカーは切断されている。段階Dには、発光標識ヌクレオチド(*−A)の第2の組み込み事象が図示されている。段階D後の相補鎖は、プライマー、Cヌクレオチド、およびAヌクレオチドからなる。
段階AおよびCの両方には、組み込み事象前または組み込み事象の間の期間が図示されており、この例では約10ミリ秒間継続することが示されている。段階AおよびCでは、ヌクレオチドが組み込み中ではないため、標的容積部に(図2には描かれていない)発光標識ヌクレオチドは存在しないが、バックグラウンド発光および組み込み中ではない発光標識ヌクレオチドからの疑似発光が検出される場合がある。段階BおよびDには、異なるヌクレオチド(それぞれ、#−Cおよび*−A)の組み込み事象が表示されている。また、この例では、これら事象は、約10ミリ秒間継続するように示されている。
「生ビン(raw bin)データ」と表記されている行には、各段階中に生成されたデータが図示されている。実験例の全体にわたって、複数の光のパルスが、標的容積部の近傍に加えられている。検出器は、検出器により受信されるあらゆる放射光子を、各パルス毎に記録するように構成されている。放射光子は、検出器により受信されると、複数の時間ビンの1つに分離される。この例では、そのうち3つが存在している。いくつかの実施形態では、検出器は、2〜16個の時間ビンを有するように構成されている。「生ビンデータ」は、それぞれ最短ビン、中間ビン、および最長ビンに対応する、1(最短のバー)、2(中間のバー)、または3(最長のバー)の値を記録する。各バーは、放射光子の検出を示す。
標的容積部には発光標識ヌクレオチドが存在しないため、段階AまたはCでは、光子は検出されない。段階BおよびDの各々では、複数の光子放射事象(発光事象、または本明細書で使用される場合は「発光」)が、組み込み事象中に検出される。発光標識「#」は、発光標識「*」よりも短い発光寿命を有する。したがって、段階Bデータは、ビン値がより高い段階Dよりも、より低い平均ビン値を記録したように図示されている。
「加工データ」と表記されている行には、各パルスに関する複数時点での放射光子の数(カウント)を示すように加工されている生データが図示されている。各バーは、特定の時間ビンの光子カウントに対応するため、加工データを図示する例示的な曲線は、図に記載されている3つの時間ビンを超える数の時間ビンを含む生ビンデータに対応する。この例では、データは、発光寿命を決定するために加工されるだけではなく、データは、発光強度または吸収光子もしくは放射光子の波長等の、他の発光特性について評価されてもよい。例示的な加工データは、標的容積部中の発光標識の発光寿命の指数関数的な崩壊曲線の特徴に近似する。発光標識「#」は、発光標識「*」よりも短い発光寿命を有するため、段階Bの加工データは、より長い経過時間でより少数のカウントを有するが、段階Dの加工データは、より長い経過時間で比較的より多くのカウントを有する。
図2の実験例では、相補鎖に付加された最初の2つのヌクレオチドがCAとして識別されることになる。したがって、DNAの場合、プライマーにアニーリングした領域の直後の標的鎖の配列がGTであると識別されることになる。この例では、ヌクレオチドCおよびAは、発光寿命のみに基づいて、複数のC、G、T、およびAの中から判別されることが可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の特定のヌクレオチドを判別するためには、発光強度または吸収光子または放射光子の波長等の他の特性が必要である場合がある。
ヌクレオチドの組み込み時に放射されるシグナルは、標的核酸テンプレートの配列を決定するために、メモリに格納され、後の時点で加工される。これは、シグナルを参照シグナルと比較して、組み込まれたヌクレオチドの同一性を時間の関数として決定することを含む。その代わりにまたはそれに加えて、ヌクレオチドの組み込み時の放射されるシグナルは、標的核酸鋳型の配列をリアルタイムに決定するために収集され、リアルタイムに(例えば、ヌクレオチドの組み込み時に)加工されることが可能である。
用語「核酸」は、本明細書で使用される場合、一般的に、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を指す。核酸としては、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそれらの変異体から選択される1つまたは複数のサブユニットを挙げることができる。いくつかの例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、またはリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体である。核酸は、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。核酸は、環状であってもよい。
用語「ヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、一般的に、A、C、G、T、またはUを含んでいてもよい核酸サブユニット、またはその変異体もしくは類似体を指す。ヌクレオチドは、成長中の核酸鎖に組み込まれることが可能なあらゆるサブユニットを含んでいてもよい。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、またはUであってもよく、あるいは1つもしくは複数の相補的なA、C、G、TもしくはUに特異的な、またはプリン(例えば、AもしくはG、またはそれらの変異体もしくは類似体)もしくはピリミジン(例えば、C、T、もしくはU、またはそれらの変異体もしくは類似体)に相補的な任意の他のサブユニットであってもよい。サブユニットは、個々の核酸塩基または塩基のグループ(例えば、AA、TA、AT、GC、CG、CT、TC、GT、TG、AC、CA、またはそれらのウラシル相当物質)を見分けることを可能にすることができる。
ヌクレオチドは、一般的に、ヌクレオシドおよび少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のリン酸(PO3)基を含む。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)、および1つまたは複数のホスフェート基を含んでいてもよい。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸またはヌクレオシドポリリン酸であってもよい。ヌクレオチドは、例えば、発光タグまたはマーカー(例えば、フルオロフォア)等の検出可能なタグを含むデオキシアデノシン三リン酸(dATP)dNTP、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)dNTP、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)dNTP、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)dNTP、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTPから選択されることが可能なデオキシリボヌクレオシド三リン酸等の、デオキシリボヌクレオシドポリリン酸であってもよい。
ヌクレオシドポリリン酸は、「n」個のホスフェート基を有していてもよく、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の数である。ヌクレオシドポリリン酸の例としては、ヌクレオシド二リン酸およびヌクレオシド三リン酸が挙げられる。ヌクレオチドは、末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸等の、末端リン酸標識ヌクレオシドであってもよい。そのような標識は、発光(例えば、蛍光または化学発光)標識、蛍光発生標識、有色標識、発色性標識、質量タグ、静電気標識、または電気化学標識であってもよい。標識(またはマーカー)は、リンカーを介して末端リン酸とカップリングされていてもよい。リンカーは、例えば、少なくとも1つまたは複数のヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基、またはハロアルキル基を含んでいてもよく、これらは、例えば、天然または修飾ヌクレオチドの末端リン酸でのリン酸エステル連結、チオエステル連結、ホスホルアミデート連結、またはアルキルホスホナート連結の形成に好適であってもよい。リンカーは、重合酵素等により、末端リン酸から標識を分離するように切断可能であってもよい。ヌクレオチドおよびリンカーの例は、米国特許第7,041,812号明細書に提供されており、この文献は、その全体が参照により本願明細書に援用される。
ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドポリリン酸)は、メチル化核酸塩基を含んでいてもよい。例えば、メチル化ヌクレオチドは、核酸塩基に付着している(例えば、核酸塩基の環に直接付着している、核酸塩基の環の置換基に付着している)1つまたは複数のメチル基を含むヌクレオチドであってもよい。例示的なメチル化核酸塩基としては、1−メチルチミン、1−メチルウラシル、3−メチルウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、7−メチルアデニン、N6−メチルアデニン、N6,N6−ジメチルアデニン、1−メチルグアニン、7−メチルグアニン、N2−メチルグアニン、およびN2,N2−ジメチルグアニンが挙げられる。
用語「プライマー」は、本明細書で使用される場合、一般的に、A、C、G、T、および/またはU、またはそれらに変異体もしくは類似体を含む配列を含んでいてもよい核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)を指す。プライマーは、DNA、RNA、PNA、またはそれらの変異体もしくは類似体を含む合成オリゴヌクレオチドであってもよい。プライマーは、そのヌクレオチド配列が標的鎖に相補的であるように設計されていてもよく、またはプライマーは、ランダムヌクレオチド配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、尾部(例えば、ポリA尾部、インデックスアダプター、分子バーコード等)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、5〜15個の塩基、10〜20個の塩基、15〜25個の塩基、20〜30個の塩基、25〜35個の塩基、30〜40個の塩基、35〜45個の塩基、40〜50個の塩基、45〜55個の塩基、50〜60個の塩基、55〜65個の塩基、60〜70個の塩基、65〜75個の塩基、70〜80個の塩基、75〜85個の塩基、80〜90個の塩基、85〜95個の塩基、90〜100個の塩基、95〜105個の塩基、100〜150個の塩基、125〜175個の塩基、150〜200個の塩基、または200個を超える塩基を含んでいてもよい。
発光特性
本明細書に記載されているように、発光分子は、1つまたは複数の光子を吸収し、その後、1つまたは複数の経過時間後に1つまたは複数の光子を放射することができる分子である。分子の発光は、これらに限定されないが、発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、および発光強度を含む、いくつかのパラメータにより記述される。「吸収」および「励起」という用語は、本出願の全体にわたって同義的に使用される。典型的な発光分子は、複数の波長の光を吸収することができるか、または複数の波長の光で励起を起こすことができる。ある波長でのまたはあるスペクトル範囲内での励起は、発光放射事象により緩和し得るが、ある他の波長でのまたはスペクトル範囲での励起は、発光放射事象により緩和しない場合がある。いくつかの実施形態では、発光分子は、単一の波長でまたは単一のスペクトル範囲内でのみ、適切に励起されて発光する。いくつかの実施形態では、発光分子は、2つ以上の波長でまたは2つ以上のスペクトル範囲内で適切に励起されて発光する。いくつかの実施形態では、分子は、励起光子の波長または吸収スペクトルを測定することにより識別される。
発光放射事象からの放射光子は、考え得る波長のスペクトル範囲内の波長で放射することになる。典型的には、放射光子は、励起光子の波長と比較して、より長い波長を有する(例えば、より少ないエネルギーを有するか、または赤色側にシフトする)。ある実施形態では、分子は、放射光子の波長を測定することにより識別される。ある実施形態では、分子は、複数の放射光子の波長を測定することにより識別される。ある実施形態では、分子は、発光スペクトルを測定することにより識別される。
発光寿命は、励起事象と放射事象との間の経過時間を指す。いくつかの実施形態では、発光寿命は、指数関数的崩壊の数式の定数として表現される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のパルス事象により励起エネルギーが加えられ、経過時間は、そのパルスとその後の放射事象との間の時間である。
分子の「発光寿命の決定」は、任意の好適な方法で実施されることが可能である(例えば、好適な技法を使用して寿命を測定することにより、または放射の時間依存的特徴を決定することにより)。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、1つまたは複数の分子(例えば、配列決定反応では、異なる発光標識ヌクレオチド)についての寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、基準物についての寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、寿命(例えば、蛍光寿命)を測定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、寿命を指し示す1つまたは複数の時間的特徴を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、励起パルスについての、1つまたは複数の時間ゲート窓にわたって生じる複数の放射事象の分布に基づいて決定されることが可能である(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、または100回以上の放射事象)。例えば、単一分子の発光寿命は、励起パルスに関して測定された光子到達時間の分布に基づき、異なる発光寿命を有する複数の分子から判別されることが可能である。
単一分子の発光寿命は、単一分子が励起状態に達した後で放射される光子のタイミングを指し示し、単一分子は、光子のタイミングを指し示す情報により判別されることが可能であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態は、分子を、その分子により放射される光子と関連付けられる時間を測定することにより、その分子の発光寿命に基づいて複数の分子から判別することを含んでいてもよい。時間の分布は、その分布から決定されることが可能な発光寿命の指標を提供することができる。いくつかの実施形態では、単一分子は、時間の分布を既知分子に対応する基準分布と比較すること等により、時間の分布に基づいて複数の分子から判別可能である。いくつかの実施形態では、発光寿命の値は、時間の分布から決定される。
発光量子収量は、放射事象に結び付く、所与の波長でのまたは所与のスペクトル範囲内の励起事象の割合を指し、典型的には、1未満である。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されている分子の発光量子収量は、0〜約0.001、約0.001〜約0.01、約0.01〜約0.1、約0.1〜約0.5、約0.5〜0.9、または約0.9〜1である。いくつかの実施形態では、分子は、発光量子収量を決定または推定することにより識別される。
本明細書で使用される場合、単一分子の発光強度は、パルス励起エネルギーを加えることにより励起されている分子により放射される単位時間当たりの放射光子の数を指す。いくつかの実施形態では、発光強度は、パルス励起エネルギーを加えることにより励起されている分子により放射され、特定のセンサまたは特定の組のセンサにより検出される単位時間当たりの放射光子の検出数を指す。
発光寿命、発光量子収量、および発光強度は、異なる条件下での所与の分子に応じて様々であり得る。いくつかの実施形態では、単一分子で観察される発光寿命、発光量子収量、または発光強度は、分子の集合体の場合とは異なるだろう。いくつかの実施形態では、試料ウェル(例えば、ナノ開口部)に限局されている分子で観察される発光寿命、発光量子収量、または発光強度は、試料ウェルに限局されていない分子の場合とは異なるだろう。いくつかの実施形態では、別の分子に付着している発光標識または発光分子は、別の分子に付着していない発光標識または発光分子とは異なる発光寿命、発光量子収量、または発光強度を有するだろう。いくつかの実施形態では、巨大分子複合体(例えば、タンパク質複合体(例えば、核酸ポリメラーゼ))と相互作用する分子は、巨大分子複合体と相互作用しない分子とは異なる発光寿命、発光量子収量、または発光強度を有するだろう。
ある実施形態では、本出願に記載されている発光分子は、1つの光子を吸収し、ある経過時間後に1つの光子を放射する。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、経過時間を測定することにより決定または推定されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の経過時間を測定することにより決定または推定されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、経過時間を測定することにより、複数のタイプの分子の発光寿命と区別されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の経過時間を測定することにより、複数のタイプの分子の発光寿命と区別されることが可能である。ある実施形態では、分子は、分子の発光寿命を決定または推定することにより、複数のタイプの分子から識別または区別される。ある実施形態では、分子は、その分子の発光寿命を複数のタイプの分子の複数の発光寿命と区別することにより、複数のタイプの分子から識別または区別される。
ある実施形態では、発光放射事象は、蛍光である。ある実施形態では、発光放射事象は、リン光である。本明細書で使用される場合、用語「発光」は、蛍光およびリン光の両方を含む全ての発光事象を包含する。
1つの態様では、本出願は、単一発光分子の発光寿命を決定するための方法であって、標的容積部中に発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、各対のパルスおよび発光間の複数の経過時間の分布を評価する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に単一発光分子を固定する工程をさらに備える。
別の態様では、本出願は、複数の分子の発光寿命を決定するための方法であって、標的容積部中に複数の発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、各対のパルスおよび発光間の複数の経過時間の分布を評価する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に複数の発光分子を固定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、複数は、2個〜約10個の分子、約10個〜約100個の分子、または約100個〜1000個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数は、約1000〜約106個の分子、約106〜約109個の分子、約109〜約1012個の分子、約1012〜約1015個の分子、または約1015〜約1018個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数の分子は、全て同じタイプの分子である。
図3には、異なる発光寿命(最長から最短、上から下)を有する4つの発光分子の例示的な減衰プロファイル3−1が表示されている。多数の分子を含む試料からの発光の強度は、振幅と呼ばれる場合がある。振幅は、初期励起後、発光寿命に従って指数関数的に経時減少する。あるいは、振幅は、例えば単一分子に対する励起エネルギーの複数のパルス後のある経過時間後に検出される放射の数またはカウントを指す場合がある。異なる発光寿命(最短から最長、上から下)を有する4つの発光分子の場合、正規化された累積分布関数3−2は、3−1に対応する。CDFは、発光振幅が、初期励起後に発光寿命に従って経時的にゼロに到達する正規化確率を表すことができる(例えば、発光した全ての励起分子の累積確率)。あるいは、CDFは、励起エネルギーの単一パルス後または複数のパルスの各々後のある経過時間で発光を放射する単一分子の正規化確率を表わすことができる。
1つの態様では、本出願は、単一発光分子の発光強度を決定するための方法であって、標的容積部中に発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、単位時間当たりの複数の検出発光の数を決定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に単一発光分子を固定する工程をさらに備える。
別の態様では、本出願は、複数の分子の発光強度を決定するための方法であって、標的容積部中に複数の発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、単位時間当たりの複数の検出発光の数を決定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に複数の発光分子を固定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、複数は、2個〜約10個の分子、約10個〜約100個の分子、または約100個〜1000個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数は、約1000〜約106個の分子、約106〜約109個の分子、約109〜約1012個の分子、約1012〜約1015個の分子、または約1015〜約1018個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数の分子は、全て同じタイプの分子である。
励起エネルギー
本明細書に記載されている方法の1つの態様では、1つまたは複数の励起エネルギーが、識別または判別しようとする分子の発光標識を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、可視スペクトル内である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、紫外スペクトル内である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、赤外スペクトル内である。いくつかの実施形態では、1つの励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、3つ以上の励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、各発光標識分子は、加えられる励起エネルギーの1つのみにより励起される。いくつかの実施形態では、発光標識分子は、加えられる励起エネルギーの2つ以上により励起される。ある実施形態では、励起エネルギーは、単色であってもよく、またはスペクトル範囲に限局されていてもよい。いくつかの実施形態では、スペクトル範囲は、約0.1nm〜約1nm、約1nm〜約2nm、または約2nm〜約5nmの範囲を有する。いくつかの実施形態では、スペクトル範囲は、約5nm〜約10nm、約10nm〜約50nm、または約50nm〜約100nmの範囲を有する。
ある実施形態では、励起エネルギーは、光のパルスとして加えられる。ある実施形態では、励起エネルギーは、光の複数のパルスとして加えられる。ある実施形態では、発光標識分子を励起させるために、2つ以上の励起エネルギーが使用される。いくつかの実施形態では、各励起エネルギーは、同時に加えられる(例えば、各パルスで)。いくつかの実施形態では、各励起エネルギーは異なる時点で加えられる(例えば、各エネルギーの個別のパルスで)。異なる励起エネルギーは、標的分子からの発光の検出を可能にするのに十分な任意のパターンで加えられることが可能である。いくつかの実施形態では、各パルスで2つの励起エネルギーが加えられる。いくつかの実施形態では、第1の励起エネルギーおよび第2の励起エネルギーが、交互のパルスで加えられる。いくつかの実施形態では、第1の励起エネルギーは、一連の順次パルスで加えられ、第2の励起エネルギーは、その後の一連の順次パルスで、またはそのような一連の交互パターンで加えられる。
ある実施形態では、光のパルスの周波数は、発光標識分子の発光特性に基づいて選択される。ある実施形態では、光のパルスの周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの発光特性に基づいて選択される。ある実施形態では、光のパルスの周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの発光寿命に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、周波数は、パルス間の間隔が、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光寿命より長くなるように選択される。いくつかの実施形態では、周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの最長発光寿命に基づいて選択される。例えば、4つの発光標識ヌクレオチドの発光寿命が、0.25、0.5、1.0、および1.5nsである場合、光のパルスの周波数は、パルス間の間隔が1.5nsより大きくなるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも、約2倍〜約10倍、約10倍〜約100倍、または約100倍から約1000倍だけ長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも約10倍だけ長い。いくつかの実施形態では、間隔は、約0.01ns〜約0.1ns、約1ns〜約5ns、約5nsから約15ns、約15ns〜約25ns、または約25ns〜約50nsである。いくつかの実施形態では、間隔は、パルスにより励起された分子が発光減衰することになる確率または励起状態が別の機序で緩和することになる確率が、50%、75%、90%、95%、または99%になるように選択される。
ある実施形態では、複数の励起エネルギーが存在する場合、各励起エネルギーのパルスの周波数は同じである。ある実施形態では、複数の励起エネルギーが存在する場合、各励起エネルギーのパルスの周波数は異なっている。例えば、0.2nsおよび0.5nsの寿命を有する発光分子を励起させるために赤色レーザーが使用され、5nsおよび7nsの寿命を有する発光分子を励起させるために緑色レーザーが使用される場合、各赤色レーザーパルス後の間隔は、各緑色レーザーパルス後の間隔(例えば、20ns)よりも短くともよい(例えば、5ns)。
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、モニター中の化学プロセスに基づいて選択される。配列決定反応の場合、周波数は、いくつかのパルスが加えられて、検出しようとする十分な数の放射光子の検出が可能になるように選択されることが可能である。光子検出の文脈における十分な数とは、発光標識ヌクレオチドを、複数の発光標識ヌクレオチドから識別または判別するのに必要な光子の数を指す。例えば、DNAポリメラーゼは、追加のヌクレオチドを、平均で20ミリ秒毎に組み込むことができる。発光標識ヌクレオチドが複合体と相互作用する時間は、約10ミリ秒であってもよく、発光マーカーが切断されてから、次の発光標識ヌクレオチドが相互作用し始めるまでの時間は、約10ミリ秒であってもよい。その後、パルス励起エネルギーの周波数は、十分な数の放射光子が、発光標識ヌクレオチドの組み込み中の10ミリ秒間で検出されるように、10ミリ秒間にわたって十分なパルスを加えるように選択されることが可能である。例えば、100MHzの周波数では、10ミリ秒間(組み込み事象のおおよその長さ)のパルスは100万回となる。これらパルスの0.1%が、光子検出に結び付く場合、組み込み中の発光標識ヌクレオチドの同一性を決定するために分析されることが可能な発光データポイントは1,000個になるだろう。上記の値はいずれも、非限定的である。いくつかの実施形態では、組み込み事象は、1ms〜20ms、20ms〜100ms、または100ms〜500msの時間を要する場合がある。複数の励起エネルギーが時間的に隔てられているパルスで加えられるいくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、パルスの部分によってのみ励起されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の励起エネルギーのパルスの周波数およびパターンは、パルスの数が、複数の発光標識ヌクレオチドのいずれか1つを励起させて、検出しようとする十分な数の放射光子の検出を可能にするのに十分であるように選択される。
いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約1MHz〜約10MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約10MHz〜約100MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約100MHz〜約1GHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約50MHz〜約200MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約100MHzである。いくつかの実施形態では、周波数は、確率論的である。
ある実施形態では、励起エネルギーは、約500nm〜約700nmである。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、約500nm〜約600nm、または約600nm〜約700nmである。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、約500nm〜約550nm、約550nm〜約600nm、約600nm〜約650nm、または約650nm〜約700nmである。
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、2つの励起エネルギーを加える工程を備える。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーは、約5nm〜約20nm、約20nm〜約40nm、約40nm〜約60nm、約60nm〜約80nm、約80nm〜約100nm、約100nm〜約150nm、約150nm〜約200nm、約200nm〜約400nm、または少なくとも約400nmだけ隔てられている。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーは、約20nm〜約80nmまたは約80nm〜約160nmだけ隔てられている。
励起エネルギーが、特定の範囲にあると参照されている場合、励起エネルギーは、波長が範囲の間にあるかまたは範囲の終点であるような単一波長を含んでいてもよく、または励起エネルギーは、最大強度が範囲の間にあるかまたは範囲の終点であるような最大強度を有する波長のスペクトルを含んでいてもよい。
ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm〜500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、500nm〜550nm、550nm〜600nm、600nm〜650nm、または650nm〜700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm〜500nm、550nm〜600nm、600nm〜650nm、または650nm〜700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm〜600nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm〜500nm、500nm〜550nm、600nm〜650nm、または650nm〜700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、600nm〜650nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm〜500nm、500nm〜550nm、550nm〜600nm、または650nm〜700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、650nm〜700nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm〜500nm、500nm〜550nm、550nm〜600nm、または600nm〜650nmの範囲である。
ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm〜500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、500nm〜550nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm〜500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm〜600nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm〜500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm〜600nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm〜600nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm〜510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、510nm〜550nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm〜510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm〜580nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm〜510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm〜620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm〜510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm〜580nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm〜620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm〜550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm〜580nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm〜620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm〜580nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm〜670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、580nm〜620nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm〜670nmの範囲である。
標的容積部へと励起エネルギーパルスを加えるための励起エネルギー源およびデバイスのある実施形態は、本明細書の他所に記載されている。
発光標識ヌクレオチド
1つの態様では、本明細書に記載の方法および組成物は、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドを含む。ある実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、デオキシリボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、ヌクレオチドは全て、デオキシリボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、リボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、ヌクレオチドは全て、リボースヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、修飾リボース糖またはリボース類似体(例えば、ロックド核酸)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、天然塩基(例えば、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、またはウラシルの誘導体または類似体を含む。
ある実施形態では、方法は、ポリメラーゼ複合体を、複数の発光標識ヌクレオチドに曝露する工程を備える。ある実施形態では、組成物またはデバイスは、複数の発光標識ヌクレオチドを含む反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、複数のヌクレオチドは、4つのタイプのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、4つのタイプのヌクレオチドは各々、シトシン、グアニン、アデニン、およびチミンの1つを含む。いくつかの実施形態では、4つのタイプのヌクレオチドは各々、シトシン、グアニン、アデニン、およびウラシルの1つを含む。
ある実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約50nM〜約200nM、約200nM〜約500nM、約500nM〜約1μM、約1μM〜約50μM、または約50μM〜250μMである。いくつかの実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約250nM〜約2μMである。いくつかの実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約1μMである。
ある実施形態では、反応混合物は、配列決定反応に使用される追加の試薬を含有する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約1mM〜約100mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、MOPSの濃度は、約50mMである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1つまたは複数の塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、酢酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、酢酸カリウムの濃度は、約140mMである。いくつかの実施形態では、塩は、約1mM〜約200mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、マグネシウム塩(例えば、酢酸マグネシウム)を含む。いくつかの実施形態では、酢酸マグネシウムの濃度は、約20mMである。いくつかの実施形態では、マグネシウム塩は、約1mM〜約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、還元剤を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、ジチオトレイトール(DTT)である。いくつかの実施形態では、還元剤は、約1mM〜約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、DTTの濃度は、約5mMである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1つまたは複数の光安定剤を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、抗酸化剤、脱酸素剤、または三重項状態クエンチャーを含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、プロトカテク酸(PCA)を含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、4−ニトロベンジルアルコール(NBA)を含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、約0.1mM〜約20mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、PCAの濃度は、約3mMである。いくつかの実施形態では、NBAの濃度は、約3mMである。また、光安定剤(例えば、PCA)を有する混合物は、光安定剤を再生するための酵素(例えば、プロトカテク酸ジオキシゲナーゼ(PCD))を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、PCDの濃度は、約0.3mMである。
本出願には、ヌクレオチドを複数のヌクレオチドと区別するための様々な方法が企図されている。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つ以上は、同じ発光寿命または実質的に同じ発光寿命(例えば、上記方法またはデバイスにより判別されることができない寿命)を有する。
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命または発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命を有し、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命または発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
配列決定中、ヌクレオチドを識別するための方法は、配列の種々の塩基対間で様々であってもよい。ある実施形態では、2つのタイプのヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収するように標識されていてもよく、それら2つのタイプのヌクレオチド(例えば、A、G)は、異なる発光強度に基づいて判別され、2つの追加のタイプのヌクレオチド(例えば、C、T)は、第2の励起エネルギーを吸収するように標識されていてもよく、それら2つの追加のタイプのヌクレオチドは、異なる発光寿命に基づいて判別される。そのような実施形態の場合、配列決定中、配列のあるセグメントは、発光強度のみに基づいて決定されてもよく(例えば、AおよびGのみが組み込まれているセグメント)、その配列の他のセグメントは、発光寿命にのみに基づいて決定されてもよい(例えば、CおよびTのみが組み込まれているセグメント)。いくつかの実施形態では、2〜4つの発光標識ヌクレオチドは、発光寿命に基づいて区別されることになる。いくつかの実施形態では、2〜4つの発光標識ヌクレオチドは、発光強度に基づいて区別される。いくつかの実施形態では、2〜4つの発光標識ヌクレオチドは、発光寿命および発光強度に基づいて区別される。
図4には、例示的な発光標識ヌクレオチドの発光寿命4−1および同じ例示的なヌクレオチドの発光強度4−2が表示されている。例えば、第4の行には、フルオロフォアAlexa Fluor(登録商標)555(AF555)に連結されているデオキシチミジン六リン酸(dT6P)ヌクレオチドのデータが表示されている。この発光標識ヌクレオチドは、およそ0.25nsの寿命を有し、およそ20000カウント/秒の発光強度を呈する。任意の発光標識ヌクレオチドの観察される発光寿命および発光強度は、一般的に、4−1および4−2のもの等の他のより典型的な条件と比べて、組み込み条件下のヌクレオチドでは異なる場合がある(例えば、ナノ開口部中の単一分子複合体)。
発光検出
本明細書に記載の方法の1つの態様では、放射光子(発光)または複数の放射光子は、1つまたは複数のセンサにより検出される。複数の発光標識分子またはヌクレオチドは、分子の各々が、単一のスペクトル範囲の光子を放射してもよく、または分子の部分は、第1のスペクトル範囲の光子を放射してもよく、分子の別の部分は、第2のスペクトル範囲の光子を放射してもよい。ある実施形態では、放射光子は、単一のセンサにより検出される。ある実施形態では、放射光子は、複数のセンサにより検出される。いくつかの実施形態では、第1のスペクトル範囲で放射される光子は、第1のセンサにより検出され、第2のスペクトル範囲で放射される光子は、第2のセンサにより検出される。いくつかの実施形態では、複数のスペクトル範囲の各々で放射される光子は、異なるセンサにより検出される。
ある実施形態では、各センサは、励起エネルギーと放射光子との間の経過時間に基づいて、時間ビンを放射光子に帰属させるように構成されている。いくつかの実施形態では、より短い経過時間後に放射された光子には、より初期の時間ビンに帰属され、長い所要期間後に放射された光子は、後期の時間ビンに帰属されるだろう。
いくつかの実施形態では、励起エネルギーの複数のパルスが標的容積部の近傍に加えられ、光子放射事象を含んでいてもよい複数の光子が検出される。いくつかの実施形態では、複数の発光(例えば、光子放射事象)が、核酸産物への発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの組み込みは、約1ms〜約5ms間、約5ms〜約20ms間、約20ms〜約100ms間、または約100ms〜約500ms間継続する。いくつかの実施形態では、約10〜約100回、約100〜約1000回、約1000〜約10000回、または約10000〜約100000回の発光が、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に検出される。
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドが組み込み中でない場合、発光は検出されない。いくつかの実施形態では、発光バックグラウンドが存在する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドが組み込み中でない場合、疑似発光が検出される。励起エネルギーのパルス中に、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドが標的容積部中に存在するが(例えば、標的容積部へと拡散するか、またはポリメラーゼと相互作用するが組み込まれない)、配列決定反応により組み込み中ではない場合、そのような疑似発光が生じる場合がある。いくつかの実施形態では、標的容積部中に存在するが組み込み中ではない発光標識ヌクレオチドから検出される複数の発光は、発光標識ヌクレオチドからの複数の発光よりも低い(例えば、10倍、100倍、1000倍、10000倍)。
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する複数の検出された発光は各々、パルスと放射光子との間の経過時間に基づいて時間ビンに帰属させる。このように組み込み事象が複数生じることは、本明細書では「バースト」と称される。いくつかの実施形態では、バーストは、ベースライン(例えば、ノイズ閾値)を超える一連のシグナル(例えば、測定値)を指す。この場合、シグナルは、発光標識ヌクレオチドが励起領域内に存在する場合に生じる複数の放射事象に対応する。いくつかの実施形態では、バーストは、ベースラインを表すシグナルの時間間隔だけ、その前および/またはその後のバーストと隔てられる。いくつかの実施形態では、バーストは、複数の経過時間に基づいて発光寿命を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストは、単位時間当たりに検出された発光の数に基づいて発光強度を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストは、検出された発光のスペクトル範囲を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストデータの分析は、組み込まれた発光標識ヌクレオチドの同一性の帰属を可能にするか、または1つもしくは複数の発光標識ヌクレオチドが複数の発光標識ヌクレオチドと区別されることを可能にするだろう。帰属または区別は、発光寿命、発光強度、放射光子のスペクトル範囲、またはそれらの任意の組合せのいずれか1つに依存してもよい。
図5には、例示的な鋳型核酸の配列決定が図示されている。配列決定実験は、4つの発光標識ヌクレオチド:Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシアデノシン(A−AF647)、Alexa Fluor555に連結されたデキソイチミジン(dexoythymidine)(T−AF555)、DyLight(登録商標)554−R1に連結されたデオキシグアニジン(deoxyguanidine)(G−D554R1)、およびDyLight(登録商標)530−R2に連結されたデキソイシチジン(dexoycytidine)(C−D530R2)を用いて行われた。ヌクレオチドA−AF647は、赤色スペクトル範囲の励起エネルギーにより励起され、T、G、およびCヌクレオチドは、緑色スペクトル範囲の励起により励起される。約200秒間の配列決定反応にわたって検出された光子の数は、強度トレース5−1に表示されている。各スパイクは、検出された発光のバーストに対応し、点で標示されている。各バーストは、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する場合があり、数千の検出された発光を含む。異なる色のトレースは、異なる励起パルスを標記するために利用されることが可能である。例えば、紫色トレースは、緑色励起パルスに使用されてもよく、青色トレースは、赤色励起パルスに使用されてもよい。青色トレースのバーストは、ヌクレオチドA−AF647(この例では、赤色発光分子を有する唯一のヌクレオチド)の組み込みに帰属されることが可能である。
図5には、強度対寿命プロット5−2を使用して、同じ色のバーストを区別するために(例えば、T、G、およびC間の紫色トレース)、生データを低減させる1つの方法が表示されている。各円は、紫色トレースのバーストを表わす。各バーストは、パルスと各検出光子の放射との間の経過時間に基づいて、発光標識ヌクレオチドの発光寿命を決定するために分析された。加えて、各バーストは、1秒間に検出された光子の数に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光強度を決定するために分析された。組み込み事象は、3つの発光標識ヌクレオチドの各々に対応する3つのグループにクラスター化される。プロットの下部分(点線より下のプロット区域)の暗色クラスターは、最長の発光寿命および最小の発光強度を有するC−D530R2に帰属される。プロットの下部分(点線より下のプロット区域)の明色クラスターは、中間の寿命および強度を有するG−D554R1に帰属される。また、プロットの上部分(点線より上のプロット区域)の明色クラスターは、最短の寿命および最大の強度を有するT−AF555に帰属される。図5には、データから決定された配列と鋳型核酸の既知配列とのアラインメント5−3が表示されている。縦線は、実験的に決定された塩基と標的配列とが合致していることを示している。ダッシュは、決定配列ではヌクレオチドが帰属されなかった鋳型配列の位置、または鋳型配列のどの位置にも対応しない決定配列中の余分な位置を示している。
図6には、鋳型核酸の配列決定の第2の例が図示されている。配列決定実験は、4つの発光標識ヌクレオチド:Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシアデノシン(A−AF647)、Alexa Fluor555に連結されたデキソイチミジン(T−AF555)、Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシグアニジン(G−AF647)、およびAlexa Fluor(登録商標)546に連結されたデキソイシチジン(C−AF546)を用いて行われた。ヌクレオチドA−AF647およびG−AF647は、赤色スペクトル範囲の励起エネルギーにより励起され、TおよびCヌクレオチドは、緑色スペクトル範囲の励起により励起される。この実験では、AおよびGは、同じ発光マーカーを有しており、分別されない。図6には、約300秒間の配列決定反応にわたって検出された光子の数が強度トレース6−1に表示されている。各スパイクは、検出された発光のバーストに対応し、点で標示されている。各バーストは、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する場合があり、数千の検出された発光を含む。トレースには、緑色励起パルスで検出された発光が表示されている(塩基TおよびCに対応する)。
図6には、強度対寿命プロット6−2を使用してTおよびCを区別するために生データを低減する1つの方法が表示されている。各円は、強度トレース6−1のバーストを表わす。各バーストは、パルスと各検出光子の放射との間の経過時間に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光寿命を決定するために分析された。加えて、各バーストは、1秒間に検出された光子の数に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光強度を決定するために分析された。組み込み事象は、2つの発光標識ヌクレオチドの各々に対応する2つのグループにクラスター化される。プロットの右部分(点線の右側のプロット区域)の暗色クラスターは、最長の発光寿命および最小の発光強度を有するC−AF546に帰属される。プロットの右部分(点線の右側のプロット区域)の明色クラスターは、最短の寿命および最大の強度を有するT−AF555に帰属される。図6には、データから決定された配列と鋳型核酸の既知配列とのアラインメント6−3が表示されている。縦の線は、実験的に決定された塩基と標的配列とが合致していることを示している。横の線は、決定配列ではヌクレオチドが帰属されなかった鋳型配列の位置、または鋳型配列のどの位置にも対応しない決定配列中の余分な位置を示している。
いくつかの実施形態では、配列決定反応の1つまたは複数の成分は、例えば、配列決定反応の文脈で発光標識を分析するために、図7〜9に表示されている非限定的な実施形態に図示されているように調製され、試料ウェルで使用されることが可能である。
発光標識
「発光タグ」、「発光標識」、および「発光マーカー」という用語は、全体にわたって同義的に使用され、1つまたは複数の発光分子を含む分子に関する。ある実施形態では、組み込まれる分子は、例えば、異なる発光標識が付着されていない発光分子である。典型的なヌクレオチドおよびアミノ酸は、発光性ではないか、または好適な範囲内の励起エネルギーおよび放射エネルギーで発光しない。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識を含む。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識ヌクレオチドである。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識アミノ酸または発光標識tRNAである。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、ヌクレオチドおよび発光標識を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、ヌクレオチド、発光標識、およびリンカーを含む。いくつかの実施形態では、発光標識は、フルオロフォアである。
ある実施形態では、発光標識および任意選択でリンカーは、組み込まれた分子に付着したままである。ある実施形態では、発光標識および任意選択でリンカーは、組み込みのプロセス中またはプロセス後に分子から切断される。
ある実施形態では、発光標識は、シアニン色素またはその類似体である。いくつかの実施形態では、シアニン色素は、以下の式:
またはその塩、立体異性体、もしくは互変異性体であり、
式中、A
1およびA
2は一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
B
1およびB
2は一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
R
1およびR
2の各々は、独立して水素、任意選択で置換されているアルキルであり、
L
1およびL
2の各々は、独立して水素、任意選択で置換されているアルキルであるか、またはL
1およびL
2は一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式の炭素環式環を形成する。
ある実施形態では、発光標識は、ローダミン色素またはその類似体である。いくつかの実施形態では、ローダミン色素は、以下の式:
またはその塩、立体異性体、もしくは互変異性体であり、
式中、A
1およびA
2の各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルであるか、あるいはA
1およびA
2は一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式の炭素環式環を形成する。
B1およびB2の各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルであるか、あるいはB1およびB2は一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
R2およびR3の各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、または任意選択で置換されているアシルであり、
R4は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルである。
いくつかの実施形態では、R4は、任意選択で置換されているフェニルである。いくつかの実施形態では、R4は、任意選択で置換されているフェニルであり、その場合、少なくとも1つの置換基は、任意選択で置換されているカルボニルである。いくつかの実施形態では、R4は、任意選択で置換されているフェニルであり、その場合、少なくとも1つの置換基は、任意選択で置換されているスルホニルである。
典型的には、発光標識は、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチラート、アントラニラート、クマリン、フルオロセイン、ローダミン、または他の類似化合物であってもよい。例示的な色素としては、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、6−カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)を含む、フルオレセインまたはローダミン色素等のキサンテン色素が挙げられる。また、例示的な色素としては、アルファ位またはベータ位にアミノ基を有するナフチルアミン色素が挙げられる。例えば、ナフチルアミノ化合物としては、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホナート、1−アニリノ−8−ナフタレンスルホナート、および2−p−トルイジニル−6−ナフタレンスルホナート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)が挙げられる。他の例示的な色素としては、以下のものが挙げられる:3−フェニル−7−イソシアナトクマリン等のクマリン;9−イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ等のアクリジン;N−(p−(2−ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド;インドジカルボシアニン3(Cy(登録商標)3)、(2Z)−2−[(E)−3−[3−(5−カルボキシペンチル)−1,1−ジメチル−6,8−ジスルホベンゾ[e]インドール−3−イウム−2−イル]プロパ−2−エニリデン]−3−エチル−1,1−ジメチル−8−(トリオキシダニルスルファニル)ベンゾ[e]インドール−6−スルホナート(Cy(登録商標)3.5)、2−{2−[(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ]−2−オキソエチル}−16,16,18,18−テトラメチル−6,7,7a,8a,9,10,16,18−オクタヒドロベンゾ[2’’,3’’]インドリジノ[8’’,7’’:5’,6’]ピラノ[3’,2’:3,4]ピリド[1,2−a]インドール−5−イウム−14−スルホナート(Cy(登録商標)3B)、インドジカルボシアニン5(Cy(登録商標)5)、インドジカルボシアニン5.5(Cy(登録商標)5.5)、3−(−カルボキシ−ペンチル)−3’−エチル−5,5’−ジメチルオキサカルボシアニン(CyA)等のシアニン;1H,5H,11H,15H−キサンテノ[2,3,4−ij:5,6,7−i’j’]ジキノリジン−18−イウム、9−[2(または4)−[[[6−[2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル)オキシ]−6−オキソヘキシル]アミノ]スルホニル]−4(または2)−スルホフェニル]−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−内塩(TRまたはテキサスレッド(Texas Red)(登録商標));ボディパイ(BODIPY)(登録商標)色素;ベンゾオキサゾール;スチルベン;およびピレン等。
ヌクレオチド配列決定の場合、発光標識ヌクレオチドのある組合せが、好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも2つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも2つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも3つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも3つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも4つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも4つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含み、第4の発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含み、第3および任意選択で第4の発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含み、第3および任意選択で第4の発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標識ヌクレオチドは、2つ以上の色素(例えば、同じ色素の2つ以上のコピーおよび/または2つ以上の異なる色素)に連結されている。
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含み、少なくとも2つの追加の発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有し、追加の少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。
ある実施形態では、発光標識は、表1から選択される色素である。表1に列挙されている色素は、非限定的であり、本出願の発光標識は、表1に列挙されていない色素を含んでいてもよい。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表1から選択される。ある実施形態では、4つ以上の発光標識ヌクレオチドの発光標識が、表1から選択される。
また、色素は、最大吸光または放射発光の波長に基づいて分類されることが可能である。表2には、例示的なフルオロフォアが提供されており、最大吸光のおおよその波長に従って列にグループ化されている。表2に列挙されている色素は、非限定的であり、本出願の発光標識は、表2に列挙されていない色素を含んでいてもよい。正確な最大吸光または放射波長は、示されているスペクトル範囲に対応していない場合がある。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「赤色」グループから選択される。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「緑色」グループから選択される。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「黄色/オレンジ色」グループから選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、全てが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、または「緑色」グループの1つから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、3つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、3つ目および4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、3つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択され、4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第3のグループから選択されるように選択される。
ある実施形態では、発光標識は、以下の式(NHSエステル形態)の(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)、またはそれらの類似体であってもよい。
いくつかの実施形態では、各スルホナートまたはカルボキシラートは、独立して、任意選択でプロトン化されている。いくつかの実施形態では、上記の色素は、示されている付着地点でのアミド結合の形成によりリンカーまたはヌクレオチドに付着している。
ある実施形態では、発光標識は、第1および第2の発色団を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の発色団の励起状態は、第2の発色団へのエネルギー移動により緩和させることが可能である。いくつかの実施形態では、エネルギー移動は、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)である。そのようなFRET対は、複数の発光標識との標識の区別をより容易にする特性を発光標識に提供するのに有用であり得る。ある実施形態では、FRET対は、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第2のスペクトル範囲の発光を放射することができる。
1組の発光標識分子(例えば、発光標識ヌクレオチド)の場合、発光標識FRET対の特性は、複数の判別可能な分子(例えば、ヌクレオチド)の選択を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光強度を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命および発光強度を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なるスペクトル範囲の光子を放射する。いくつかの実施形態では、FRET対の第1の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、FRET対は、複数の他の発光標識分子とは異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収することができる。ある実施形態では、FRET対は、複数の他の発光標識分子の1つまたは複数と同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収することができる。
いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチドは、発光標識に接続されていてもよく、その場合、ヌクレオチドは、発光標識の異なる位置に接続されている。非限定的な例としては、ヌクレオチド類似体の反応性部分と適合する2つの独立反応性化学部分(例えば、アジド基、アセチレン基、カルボキシル基、アミノ基)を含有する発光分子を挙げることができる。そのような実施形態では、発光標識は、独立したリンカーにより2つのヌクレオチド分子に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、発光標識は、2つ以上のヌクレオチドとの2つ以上の独立した接続を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチドは、リンカー(例えば、ヌクレオチドおよび/または色素が付着することが可能である2つ以上の反応部位を有する分岐リンカーまたはリンカー)により発光色素と接続されていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)が、2つ以上の色素(例えば、同じタイプ)に連結されていてもよい。
いくつかの実施形態では、発光標識は、発光特性を有する量子ドットを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、量子ドットに接続されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、タンパク質の異なる部位との接続により量子ドットに接続されている。いくつかの実施形態では、量子ドットの表面は、ヌクレオチド分子でコーティングされている。ある実施形態では、量子ドットは、1つまたは複数のヌクレオチドと共有結合で接続されている(例えば、反応部分を介して各成分に)。ある実施形態では、量子ドットは、1つまたは複数のヌクレオチドと非共有結合で接続されている(例えば、適合する非共有結合パートナーを介して各成分に)。いくつかの実施形態では、量子ドットの表面は、1つまたは複数のビオチン化ヌクレオチドと非共有結合で結合されている1つまたは複数のストレプトアビジン分子を含む。
いくつかの実施形態では、発光標識は、発光特性を有するタンパク質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、発光タンパク質に接続されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、タンパク質の異なる部位との接続により発光タンパク質に接続されている。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、1つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りの3つのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りの2つのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、3つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。いくつかの実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、4つのヌクレオチドが全て蛍光タンパク質で標識されるように選択される。
本出願のいくつかの態様によると、発光標識(例えば、色素、例えばフルオロフォア)は、励起光に曝露された配列決定反応のポリメラーゼを損傷する場合がある。いくつかの態様では、この損傷は、発光分子がポリメラーゼ酵素の極近傍に保持されている場合、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に生じる。損傷反応の非限定的な例としては、ポリメラーゼと発光分子との共有結合の形成、および発光分子から酵素への放射性崩壊または非放射性崩壊の放射が挙げられる。これは、ポリメラーゼの有効性を短縮し、配列決定が実行される長さを低減する場合がある。
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドおよび発光標識は、標識ヌクレオチドの組み込み中に発光標識をポリメラーゼから離間させておくために、比較的長いリンカーまたはリンカー構成により接続されている。用語「リンカー構成」は、本明細書では、発光分子をヌクレオチドに接続する構造全体を指すために使用され、発光分子またはヌクレオチドを包含しない。
いくつかの実施形態では、単一のリンカーにより、発光分子がヌクレオチドと接続されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)のヌクレオチドが、各発光分子に接続されるか、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)の発光分子が、各ヌクレオチドに接続されるか、または2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)のヌクレオチドが、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)の発光分子に接続されるように、1つまたは複数の分岐点を含有している。
いくつかの実施形態では、リンカー構成は、発光標識とヌクレオチドとの距離を決定する。いくつかの実施形態では、距離は、約1nmまたは2nm〜約20nmである。例えば、2nm超、5nm超、5〜10nm、10nm超、10〜15nm、15nm超、15〜20nm、20nm超。しかしながら、発光標識は、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際は照射容積内に存在する必要があるため、発光標識とヌクレオチドとの距離は長過ぎてはならない。したがって、いくつかの実施形態では、全体的なリンカー長さは、30nm未満、25nm未満、約20nm、または20nm未満である。
いくつかの実施形態では、保護分子が、リンカー構成内に含まれている。保護分子は、酵素と発光標識との間に生じ得る損傷反応からポリメラーゼを保護することができるタンパク質、タンパク質ホモダイマー、タンパク質ヘテロダイマー、タンパク質オリゴマー、ポリマー、または他の分子であってもよい。保護分子の非限定的な例としては、タンパク質(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、Traptavidin、NeutrAvidin、ユビキチン)、タンパク質複合体(例えば、トリプシン:BPTI、バルナーゼ:バルスター、コリシンE9ヌクレアーゼ:Im9免疫タンパク質)、核酸(例えば、デオキシリボ核酸、リボ核酸)、ポリサッカライド、脂質、およびカーボンナノチューブが挙げられる。
いくつかの実施形態では、保護分子は、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、またはそれらの変異体)である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、一本鎖である。いくつかの実施形態では、発光標識は、一本鎖オリゴヌクレオチドの一方の末端(例えば5’末端または3’末端)に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドの他方の末端(例えば、3’末端または5’末端)に直接的または間接的に付着している。例えば、一本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端に付着した発光標識、およびオリゴヌクレオチドの3’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、二本鎖である(例えば、オリゴヌクレオチドは、2つのアニーリングされた相補的なオリゴヌクレオチド鎖を含む)。いくつかの実施形態では、発光標識は、二本鎖オリゴヌクレオチドの一方の末端に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチドは、二本鎖ヌクレオチドの他方の末端に直接的または間接的に付着している。いくつかの実施形態では、発光標識は、二本鎖オリゴヌクレオチドの一方の鎖に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチドは、二本鎖ヌクレオチドの他方の鎖に直接的または間接的に付着している。例えば、二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの一方の鎖の5’末端に付着した発光標識、および他方の鎖の5’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチドを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、保護分子は、1つまたは複数の発光分子に、および1つまたは複数のヌクレオチド分子に接続されている。いくつかの実施形態では、発光分子は、ヌクレオチドと隣接していない。例えば、1つまたは複数の発光分子は、保護分子の第1の側に接続されていてもよく、1つまたは複数のヌクレオチドは、保護分子の第2の側に接続されていてもよく、保護分子の第1および第2の側は、互いに離れている。いくつかの実施形態では、それらは、保護分子のほぼ反対側にある。
保護分子が発光標識と接続されている地点と、保護分子がヌクレオチドに接続されている地点との距離は、空間を通じた直線的な測定値であってもよく、または保護分子の表面に沿った非直線的な測定値であってもよい。保護分子における発光標識およびヌクレオチドの接続地点間の距離は、保護分子の三次元構造をモデル化することにより測定されることが可能である。いくつかの実施形態では、この距離は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20nm以上であってもよい。あるいは、保護分子における発光標識およびヌクレオチドの相対的位置は、保護分子の構造を二次曲面(例えば、楕円体、楕円柱)として扱うことにより記述されることが可能である。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表わす楕円形状の周囲の距離の少なくとも8分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表わす楕円形状の周囲の距離の少なくとも4分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表わす楕円形状の周囲の距離の少なくとも3分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表わす楕円形状の周囲の距離の少なくとも2分の1の距離だけ隔てられている。
図10には、保護分子(100)によりヌクレオチド(250)から隔てられている発光分子(200)の非限定的な例10−1が例示されている。発光分子(200)は、リンカー(300)を介して保護分子(100)に接続されており、リンカー(300)は、保護分子(100)に付着している。ヌクレオチド(250)は、リンカー(350)を介して保護分子(100)に接続されており、リンカー(350)は、保護分子(100)に付着している。保護分子は、発光標識がポリメラーゼに接近することを防止する立体障壁を提供するのに有用であってもよい。保護分子は、発光分子により放射される放射性崩壊および非放射性崩壊を吸収するのに、またはそのような崩壊からポリメラーゼを保護するのに有用であってもよい。保護分子は、発光標識とポリメラーゼとの間の立体障壁および崩壊障壁の両方を提供するのに有用であってもよい。
保護分子のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、発光標識がポリメラーゼと直接的に接触することができないかまたは接触しにくいような大きさであるべきである。また、保護分子のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、付着している発光標識が、励起させようとする照射容積内に存在するような大きさであるべきである。保護分子のサイズは、発光標識を保護分子に接続するために選択されているリンカーおよびヌクレオチドを保護分子に接続するために選択されているリンカーを考慮して選択されるべきである。保護分子ならびに発光標識およびヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)を接続するために使用されるリンカーは、リンカー構成を構成し、リンカー構成のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、発光標識がポリメラーゼと直接的に接触することができないような大きさであるべきである。
保護分子(および/または保護分子を含むリンカー構成)は、好ましくは水溶性である。いくつかの実施形態では、保護分子(および/または保護分子を含むリンカー構成)は、正味負電荷を有することが好ましい。
いくつかの実施形態では、標識(例えば、発光分子)は、1つまたは複数の非共有結合連結で標識がヌクレオチドに接続されているため、ヌクレオチドと共有結合で連結されていない。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、非共有結合で保護分子および/または発光分子と付着している。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、非共有結合で保護分子および/またはヌクレオチドと付着している。いくつかの実施形態では、発光標識は、共有結合でリンカーに付着しており、リンカーは、非共有結合で保護分子と付着している(例えば、1つまたは複数の結合パートナーを介して)。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、共有結合でリンカーに付着しており、リンカーは、非共有結合で保護分子と付着している(例えば、1つまたは複数の結合パートナーを介して)。
図10〜15には、保護分子を介して接続されている1つまたは複数の発光分子および1つまたは複数のヌクレオチドの非限定的な例が例示されており、1つまたは複数の発光分子および1つまたは複数のヌクレオチドは、非共有結合で保護分子と付着している。
図10には、10−1の要素を含む非限定的な例10−2が例示されており、リンカーは、発光分子を保護分子の非共有結合部位(110)(暗色形状)に非共有結合で付着させる非共有結合リガンド(400)を含み、第2のリンカーは、ヌクレオチドを保護分子の第2の非共有結合部位(120)に非共有結合で付着させる非共有結合リガンド(450)を含む。
図10には、10−2の要素を含む非限定的な例10−3が例示されており、保護分子(暗所形状)は、4つの独立した非共有結合部位を含む。第2の独立した発光分子は、非共有結合リガンド(401)を介して保護分子の非共有結合部位(111)に非共有結合で付着することが可能である。第2の独立した発光分子は、非共有結合リガンド(451)を介して保護分子の非共有結合部位(121)に非共有結合で付着することが可能である。保護分子の4つの独立した非共有結合部位にて非共有結合で結合されている2つの独立した発光分子および2つの独立したヌクレオチドが図示されているこの実施形態では、発光分子およびヌクレオチドの数は自由裁量で選択されていた。いくつかの実施形態では、保護分子の4つの独立した非共有結合部位は、1つの部位に1つの発光分子および残りの3つの部位の各々に1つヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、保護分子の4つの独立した非共有結合部位は、1つの部位に1つのヌクレオチドおよび残りの3つの部位の各々に1つの発光分子を含む。
図10には、10−3の要素を含む非限定的な例10−4が例示されており、リンカー(301)は、単一の発光分子を、保護分子の2つの独立した非共有結合部位(暗色形状)を介して非共有結合で付着させる2つの独立した非共有結合リガンド(400、401)を含み、リンカー(351)は、単一のヌクレオチドを、保護分子の残りの2つの独立した非共有結合部位を介して非共有結合で付着させる2つの独立した非共有結合リガンド(450、451)を含む。
図11には、10−4の要素を含む非限定的な例11−1が例示されており、リンカー(301)は、2つの発光分子の付着を可能にする分岐点(302)を含む。
図11には、11−1の要素を含む非限定的な例11−2が例示されており、リンカー(351)は、2つのヌクレオチドの付着を可能にする分岐点(352)を含む。
図11には、11−2の要素を含む非限定的な例11−3が例示されており、リンカー(302)は、4つの発光分子の付着を可能にする2つの追加の分岐点(304)を含み、リンカー(352)は、4つのヌクレオチドの付着を可能にする2つの追加の分岐点(354)を含む。
図11には、11−3の要素を含む非限定的な例11−4が例示されており、(304)に図示されている各分岐点は、合計6つの発光分子の追加の発光分子の付着を可能にする追加の付着部分を含み、(354)に図示されている各分岐点は、合計6つのヌクレオチドの追加のヌクレオチドの付着を可能にする追加の付着部分を含む。
図12には、配列決定反応で使用されることが可能である1組の標識ヌクレオチド分子の非限定的な例が例示されている:チミン12−1、アデニン12−2、シトシン12−3、およびグアニン12−4。この実施形態では、4つの非共有結合部位を含む保護分子は、6つの同じタイプのヌクレオチドを1つまたは複数の発光分子に接続するために使用される。この実施形態では、6つの同じタイプのヌクレオチドは、2つの別々のリンカーを介して保護分子に付着しており、各リンカーは、3つの同じタイプのヌクレオチドに共有結合で連結されている独立した非共有結合リガンドを含む。12−1、12−2、および12−3に図示されているように、単一の発光分子は、保護分子の2つの独立した結合部位に非共有結合で付着している2つの独立した非共有結合リガンドを含むリンカーを介して保護分子に非共有結合で付着している。12−4に図示されているように、発光リンカーの分岐点は、第2の発光分子の付加を可能にする。
4つの例示的なヌクレオチドを含む配列決定実験では、12−1、12−2、および12−3の発光標識は、3つの固有な発光分子(例えば、3つの異なるフルオロフォア)を含むことができる。これらの例示的な分子は各々が単一のフルオロフォアしか含有していないため、固有なフルオロフォアが使用されていない場合、チミン、アデニン、またはシトシン組み込みを判別するために使用される特性(例えば、発光寿命、発光強度、放射波長)は、高度に類似しているかまたは判別不能だろう。グアニン12−4は、2つの発光分子に接続されている。いくつかの実施形態では、12−4の発光標識は、2つの同じ発光分子を含むことができ、選択される分子は、12−1、12−2、および12−3で使用されているフルオロフォアとは異なる。4つの固有なフルオロフォアに接続されている4つの固有なヌクレオチドを含む配列決定反応では、各フルオロフォアは、各々が複数のものから判別されることを可能にする1つまたは複数の固有な発光特性(例えば、発光寿命、強度、放射波長、またはそれらの2つ以上の組合せ)を有するはずである。いくつかの実施形態では、12−4の2つのフルオロフォアは、2つの同じフルオロフォアを含むことができ、選択されるフルオロフォアは、12−1、12−2、および12−3のフルオロフォアの1つと同一である。異なる数の同じ発光分子に接続されている固有なヌクレオチドを含む配列決定反応では、異なる数のフルオロフォアは、1つのヌクレオチドが複数のものから判別されることを可能にするために、固有な特性(例えば、発光強度の増加)を付与するはずである。あるいは、12−4の2つのフルオロフォアは、FRET対を含んでいてもよい。
図12には、配列決定実験、および複数の発光標識ヌクレオチドから判別するために固有な発光特性がどのように使用されることが可能であるかの非限定的な例12−5がさらに例示されている。各塩基(チミン、アデニン、シトシン、グアニン)に接続されている発光標識は、各標識ヌクレオチドが複数の標識ヌクレオチドから判別されることを可能にする発光特性(例えば、発光寿命、発光強度、および/または放射波長)を有する。同じタイプの複数のヌクレオチドを介在させることは、配列決定反応の組み込み速度を加速させる機能を果たす。
発光標識ヌクレオチドを利用する配列決定実験12−5は、例示的な反応槽12−6で実施されることが可能である。反応は、導波路上方のチャンバで起こり、導波路は、励起エネルギーの導管としての役割を果たし、導波路からのエバネッセント波により、反応チャンバの底部にある試料に励起エネルギーを加える。開口部は、導波路からバルク試料へと放散する光、ならびに周囲光および/またはセンサからの迷光を阻止するだけなく、反応チャンバの製造経路を提供する。反応チャンバは、底部に、および導波路のエバネッセント波からの高励起領域内に試料を配置するエッチング構造である。選択的な表面化学は、反応チャンバの底部および側壁に異なる組成物を提供するために使用されることが可能であり、そのため、試料は、反応チャンバの底部に選択的に限局されることが可能である。表面調製ための例示的ワークフローが図7に表示されており、とりわけ選択的表面化学の達成に関するプロセスを含むプロセスが図示されている。例えば、表面のパッシベーションは(例えば、図8に表示されている非限定的な実施形態に図示されているような)、表面の官能化中に有用となるであろう選択的表面基質(例えば、図9に表示されている非限定的な実施形態に図示されているような)を提供することができる。
特定のヌクレオチドの組み込みは、配列決定反応中に例示的なワークフロー12−7に従って4つの発光標識ヌクレオチドから判別されることが可能である。実験の経過全体にわたって、2つの異なる期間:パルス期間および検出期間がある。20ピコ秒間継続するパルス期間中、発光光は収集されない。パルス期間後、検出期間は10ナノ秒間継続し、4つの時間ビンにより、検出期間にわたって生じる放射事象が捕捉される(i)。パルス期間および検出期間は、1つのサイクルを構成する。放射事象は、100万サイクルの経過わたってに連続的にビンに分類され、蓄積される(ii)。時間ビンにわたる放射事象の全体的分布は、発光寿命を表し、特定の組のデータを既知の寿命分布と一致させるために使用されることが可能である(iii)。いくつかの実施形態では、放射事象の分布(例えば、発光寿命)では、1つの発光標識塩基は、複数の他の標識分子から判別されない。放射事象の分布に加えて、放射事象の量(例えば、発光強度)は、単一分子を複数の他のものから識別するために使用されることが可能である。
図13には、10−4の要素を含む非限定的な例13−1が例示されており、保護分子の非共有結合部位は、非官能性結合部位(461)となるように操作されている。いくつかの実施形態では、13−1の保護分子は、ストレプトアビジンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、結合部位は、非共有結合でビオチン分子と結合することができないため非官能性である。非限定的な実施形態13−1には、2つの独立した非共有結合相互作用により保護分子に付着している単一の発光分子、および単一の非共有結合相互作用により保護分子に付着している6つのヌクレオチドが図示されている。いくつかの実施形態では、3つの官能性非共有結合部位を有する保護分子は、単一の非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数の発光分子、および2つの独立した非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、3つの官能性非共有結合部位を有する保護分子は、2つの独立した非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数の発光分子、および単一の非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数のヌクレオチドを含むことができる。
図13には、10−3の要素を含む非限定的な例13−2が例示されており、保護分子の2つの非共有結合部位は、非官能性結合部位(411、461)となるように操作されている。いくつかの実施形態では、13−2の保護分子は、ストレプトアビジンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、結合部位は、非共有結合でビオチン分子と結合することができないため非官能性である。非限定的な実施形態13−2には、単一の独立した非共有結合相互作用により保護分子に付着している単一の発光分子、および単一の非共有結合相互作用により保護分子に付着している6つのヌクレオチドが図示されている。いくつかの実施形態では、2つの官能性非共有結合部位を有する保護分子は、単一の非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数の発光分子、および単一の独立した非共有結合相互作用により付着している1つまたは複数のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、2つの非官能性非共有結合部位は、cis結合部位またはtrans結合部位であり、「cis結合部位」は、「trans結合部位」よりも極近傍にあると定義される。図13には、2つの非官能性trans結合部位を有するストレプトアビジン分子生成の非限定的な例13−3がさらに図示されている。
いくつかの実施形態では、リンカーは、ヌクレオチドで構成されていてもよい。図14には、発光分子およびヌクレオチドが保護分子を介して接続されている非限定的な例示的反応スキームが例示されており、発光分子およびヌクレオチドを保護分子に付着させるリンカーは、二価リンカーを介して付着しているオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、PNA、またはそれらの修飾形態を含むオリゴヌクレオチド)を含む。オリゴヌクレオチドで構成される二価リンカー(360)が、保護分子の2つの独立した非共有結合部位に非共有結合で結合されている(a)。リンカー(360)に相補的なオリゴヌクレオチドに融合されている発光分子(201)が、発光標識保護分子を生成するために導入される(b)。オリゴヌクレオチドで構成される第2の二価リンカー(361)が、導入される(c)。リンカー(361)に相補的なオリゴヌクレオチドに融合されているヌクレオチド(251)が、最終産物を生成するために導入される(d)。
図15には、アニーリングされた相補的オリゴヌクレオチドを介して発光分子が保護分子に付着している非限定的な例示的反応スキームが例示されており、各オリゴヌクレオチド鎖は、保護分子の結合部位と適合する1つの非共有結合リガンドを含有している。発光分子および非共有結合リガンドに融合されている第1のオリゴヌクレオチド(362)は、非共有結合リガンドに融合されている相補的オリゴヌクレオチド(363)にアニーリングされる(i)。アニーリング産物(364)は、保護分子に結合され(ii)、精製される。精製された発光標識保護分子は、本明細書で開示されている任意の技法または構成を使用して、ヌクレオチドと結合される(iii)。また、図15には、反応スキームの非限定的な例と類似した二本鎖DNAリンカーを使用してCy(登録商標)3色素で標識されていたヌクレオチドを使用して実施された例示的な配列決定実験が図示されている。
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、保護分子および/または発光分子と共有結合で付着している。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、保護分子および/またはヌクレオチドと共有結合で付着している。
図16〜20には、保護分子を介して接続されている発光分子およびヌクレオチドの非限定的な例が例示されており、発光分子およびヌクレオチドは、保護分子と共有結合で付着している。
図16には、一般的保護分子(暗色形状)を生成するための反応スキーム16−1が図示されており、保護分子は、2つの遺伝子学的にコードされたタグを含んでいる。遺伝子学的にコードされたタグ(325)は、発光分子に融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成するように設計されており(i)、別の遺伝子学的にコードされたタグ(375)は、ヌクレオチドに融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成して(ii)、最終産物(c)を形成するように設計されている。図16には、アジド、アルデヒド、またはアルキン等のバイオ直交性官能基(星型形状)を含む一般的基質を、遺伝子学的にコードされたタグ(曲線)を介して、共有結合により付着させるためのスキーム16−2の非限定的な実施形態が、遺伝子学的にコードされたタグおよび動力学速度定数の非限定的な例16−3と共にさらに図示されている。
図17には、一般的保護分子(暗色形状)を生成するための反応スキーム17−1の非限定的な例が例示されており、保護分子は、N末端の反応基およびC末端の反応基を含むタンパク質である。タンパク質の第1の末端の第1の反応基(326)は、発光分子に融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成するように設計されている。タンパク質の残りの末端の第2の反応基(376)は、ヌクレオチドに融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成するように設計されている。反応性N末端基および反応性C末端基ならびに対応する反応基の非限定的な例17−2が、さらに図示されている。
図18には、一般的保護分子(暗色形状)を生成するための反応スキーム18−1の非限定的な例が例示されており、保護分子は、タンパク質の1つの部分に反応性非天然アミノ酸を含み、タンパク質の別の部分に反応性非天然アミノ酸を含むタンパク質である。タンパク質の第1の部分の第1の反応性非天然アミノ酸(327)は、発光分子に融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成するように設計されている。タンパク質の第2の部分の第2の反応性非天然アミノ酸(377)は、ヌクレオチドに融合されている特定の反応基との共有結合による付着を形成するように設計されている。図18には、標的タンパク質の化学標識の一般的で非限定的なスキーム18−2がさらに図示されている。この例では、固有の双直交性官能性を担持する非天然アミノ酸(例えば、非限定的な例18−3から選択される非天然アミノ酸)が、遺伝子コード拡張により部位特異的にタンパク質に導入され、その後、外部的に付加されたプローブで化学選択的に標識される。
図19Aには、非タンパク質保護分子(101)により隔てられている発光分子およびヌクレオチドの非限定的な例である。非タンパク質保護分子の非限定的な例としては、核酸分子(デオキシリボ核酸、リボ核酸)、脂質、およびカーボンナノチューブを挙げることができる。表示されているように、発光分子およびヌクレオチドは、非タンパク質保護分子に直接的に付着している(例えば、共有結合で付着している)。いくつかの実施形態では、発光分子およびヌクレオチドは、非タンパク質保護分子の近接部分に直接的に付着している。例えば、いくつかの実施形態では、非タンパク質保護分子は核酸分子であり、発光分子および/またはヌクレオチドは、核酸分子のヌクレオチドに直接的に結合されている。いくつかの実施形態では、発光分子および/またはヌクレオチドは、非タンパク質保護分子の近接部分ではない非タンパク質保護分子にリンカーを介して付着している。例えば、いくつかの実施形態では、非タンパク質保護分子は核酸分子であり、発光分子および/またはヌクレオチドは、リンカーを介して核酸に付着している。
いくつかの実施形態では、図19Bに図示されているように、発光分子およびヌクレオチドは、反応性部分を介して非タンパク質保護分子に付着していてもよい。この例では、発光分子における反応性部分(550)は、非タンパク質保護分子の対応する反応性部分(500)を介して非タンパク質保護分子に共有結合で付着している。ヌクレオチドにおける反応性部分(551)は、非タンパク質保護分子の対応する反応性部分(501)を介して非タンパク質保護分子(101)に共有結合で付着している。いくつかの実施形態では、反応性部分500および/または反応性部分501は、非タンパク質保護分子の近接部分に直接的に付着している。いくつかの実施形態では、反応性部分500および/または反応性部分501は、非タンパク質保護分子の近接部分ではない非タンパク質保護分子にリンカーを介して付着している。
いくつかの実施形態では、保護分子は、タンパク質−タンパク質対で構成される。タンパク質−タンパク質対は、任意の組のポリペプチド結合パートナーを構成してもよい(例えば、タンパク質−受容体、酵素−阻害剤、抗体−抗原)。図20には、タンパク質−タンパク結合対で構成されている保護分子の非限定的な実施形態が図示されている。この非限定的な例では、結合対の一方のポリペプチド(102)は、発光分子と直交的に標識され、第2のポリペプチド(103)は、ヌクレオチドと直交的に連結されている。タンパク質−タンパク結合対の非限定的な例としては、トリプシン−BPTI、バルナーゼ−バルスター、およびコリシンE9ヌクレアーゼ−Im9免疫タンパク質が挙げられる。
図21には、非共有結合リガンドに付着している1つまたは複数の発光分子を含むリンカー構成の非限定的な例が図示されている。実施形態21−1では、非共有結合リガンド(410)、スペーサーリンカー(310)、および反応性部分(510)を含む第1のリンカー層が、適合する反応性部分(211)を含む発光分子(210)に付着している。第1のリンカー層の反応性部分は、適合する反応性部分を介して発光分子またはヌクレオチドに直接的に付着するために使用されることが可能である。第1のリンカー層の反応性部分は、適合する反応性部分を介して第2のリンカー層を付着させるために使用されることが可能である。実施形態21−2では、2つの発光分子が、第2のリンカー層を介して第1のリンカー層に付着されており、第2のリンカー層は、第1の層の反応性部分と適合する反応性部分、分岐点を含むスペーサーリンカー(312)、および発光分子の反応性部分と適合する2つの反応性部分(522)を含んでいる。第2のリンカー層の2つ反応性部分は、発光分子またはヌクレオチド分子に直接的に付着するために使用されることが可能である。第2のリンカー層の2つの反応性部分は、第3のリンカー層と付着して、リンカー構成を含む発光分子またはヌクレオチドの数をさらに増加させるために使用されることが可能である。実施形態21−3では、6つの発光分子が、各反応性部分(522)に結合されている第3のリンカー層を介して第2のリンカー層に付着しており、各第3のリンカー層は、適合する反応性部分(513)、三官能化されているスペーサーリンカー(313)、および発光分子の反応性部分と適合する3つの反応性部分(523)を含んでいる。
したがって、発光標識は、分子に直接的に、例えば結合により付着していてもよく、またはリンカーもしくはリンカー構成を介して付着していてもよい。ある実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のリン酸を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、1つまたは複数のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。本明細書で使用される場合、1つまたは複数のリン酸を有すると記載されているリンカーは、リンカー構造内に存在し、ヌクレオチドの1つまたは複数のリン酸に直接的に付着していない1つまたは複数のリン酸を含むリンカーを指す。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、3つ以上のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、4つ以上のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。
ある実施形態では、リンカーは、脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、−(CH2)n−を含み、式中、nは、1以上20以下の整数である。いくつかの実施形態では、nは、1以上10以下の整数である。ある実施形態では、リンカーは、ヘテロ脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリプロピレングリコール部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、−(CH2CH2O)n−を含み、式中、nは、1以上20以下の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、−(CH2CH2O)n−を含み、式中、nは、1以上10以下の整数である。ある実施形態では、リンカーは、−(CH2CH2O)4−を含む。ある実施形態では、リンカーは、1つまたはアリーレンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のフェニレン(例えば、パラ置換フェニレン)を含む。ある実施形態では、リンカーは、キラル中心を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリンヘキサマーまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、クマリンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ナフタレンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、アントラセンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリフェニルアミドまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、クロマノンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、4−アミノプロパルギル−L−フェニルアラニンまたはその誘導体を含む。ある実施形態では、リンカーは、ポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、リンカーは、オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つのアニーリングされたオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースヌクレオチド、リボースヌクレオチド、またはロックドリボースヌクレオチドを含む。
ある実施形態では、リンカーは、光安定剤を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、以下の式:
であり、式中、P
Sは光安定剤であり、dと表記されている位置は、発光標識に付着しており、bと表記されている位置は、ヌクレオチドに付着している。いくつかの実施形態では、dと表記されている位置は、本明細書に記載されているリンカーにより発光標識に付着している。いくつかの実施形態では、bと表記されている位置は、本明細書に記載されているリンカーによりヌクレオチドに付着している。
ある実施形態では、リンカーは1つまたは複数のリン酸、脂肪族鎖、ヘテロ脂肪族鎖、および1つまたは複数のアミド(例えば、−C(=O)NH−)を含む。ある実施形態では、1つまたは複数のリン酸および脂肪族鎖を含むリンカーは、図22に図示されている例示的な反応スキーム22−1を介して合成されることが可能である。例示的なリンカー構造は、22−2および22−3にさらに図示されている。ある実施形態では、リンカーは、表3に図示されているリンカーから選択される。表3のある例示的なリンカー構造は、ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシド六リン酸)および/または色素に連結されて表示されている。
ある実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のリン酸、脂肪族鎖、ヘテロ脂肪族鎖、1つまたは複数のアミド(例えば、−C(=O)NH−)、および1つまたは複数のビオチン部分を含む。ある実施形態では、ビオチン化リンカーは、1つまたは複数の官能化可能な反応性部分(例えば、アセチレン基、アジド基)を含有する。ある実施形態では、リンカーは、表4に図示されている非限定的なリンカーから選択される。表4のある例示的なリンカー構造は、ヌクレオチド(例えば、ヌクレオシド六リン酸)に連結されて表示されている。
いくつかの実施形態では、リンカーは、第1の層ならびに任意選択で第2のおよび/または第3の層を含む前駆体から合成される。いくつかの実施形態では、「第1の層」は、1つまたは複数のビオチン部分を含有する。ある実施形態では、リンカーの第1の層は、単一のビオチン部分を含有する。ある実施形態では、リンカーの第1の層は、2つのビオチン部分を含有する。いくつかの実施形態では、第1の層は、1つまたは複数の反応性部分(例えば、アジド基、アセチレン基、カルボキシル基、アミノ基)を含有する。いくつかの実施形態では、リンカーの第1の層は、表5に図示されている構造から選択される。
いくつかの実施形態では、リンカーの第1の層は、以下の例示的な反応スキームに従って合成されることが可能である。
更なる実施形態では、リンカーの第1の層は、以下の例示的な反応スキームに従って合成されることが可能である。
また更なる実施形態では、リンカーの第1の層は、以下の例示的な反応スキームに従って合成されることが可能である。
いくつかの実施形態では、「第2の層」は、1つまたは複数の反応性部分(例えば、アジド基、アセチレン基、カルボキシル基、アミノ基)を含有している。いくつかの実施形態では、第2の層は、リンカーの第1の層に共有結合で付着している。いくつかの実施形態では、第2の層により、第1の層が第3の層と共有結合で接続されている。いくつかの実施形態では、第3の層は、1つまたは複数の反応性部分(例えば、アジド基、アセチレン基、カルボキシル基、アミノ基)を含有する。いくつかの実施形態では、第3の層は、リンカーの第1の層に共有結合で付着している。いくつかの実施形態では、第3の層は、第2の層を介して第1の層と共有結合で接続されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1および第2の層を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1および第3の層を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1、第2、および第3の層を含む。ある実施形態では、第2および/または第3のリンカー層は、表6に図示されている構造から選択される。
いくつかの実施形態では、第1の層を超える層(例えば、第2の層および/または第3の層)を含むリンカーは、以下の例示的な反応スキームに従って合成されることが可能である。
いくつかの実施形態では、少なくとも第2および第3の層を含むリンカーは、以下の例示的な反応スキームに従って合成されることが可能である。
ビオチン化リンカーを有する例示的な発光標識が、表7に表示されている。表7に図示されている色素の代わりに、異なる発光標識が用いられることが可能であることが理解されるべきである。
試料ウェル(例えば、ナノ開口部)表面調製物
ある実施形態では、1つ以上の発光標識分子を検出する方法を、標的容積部(例えば、反応容積)に拘束された分子を使用して、実施する。いくつかの実施形態では、標的容積部は、試料ウェル内の領域(例えば、ナノ開口部)である。試料ウェル(例えば、ナノ開口部)の実施形態および試料ウェル(例えば、ナノ開口部)の作製は、本明細書の他の箇所に記載されている。ある実施形態では、試料ウェル(例えば、ナノ開口部)は、第1の材料を含む底面と、複数の金属または金属酸化物層によって形成される側壁とを備える。いくつかの実施形態では、第1の材料は、透明な材料またはガラスである。いくつかの実施形態では、底面は平坦である。いくつかの実施形態では、底面は湾曲したウェルである。いくつかの実施形態では、底面は、複数の金属または金属酸化物層によって形成された側壁の下の側壁の一部を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、溶融シリカまたは二酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、複数の層はそれぞれ、金属(例えば、Al、Ti)または金属酸化物(例えば、Al
2O
3、TiO
2、TiN)を含む。
パッシベーション
1つ以上の分子または複合体が底面に固定化されている実施形態では、側壁をパッシベーションして側壁表面に固定するのを防止することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、側壁は、側壁表面上に金属または金属酸化物バリア層を堆積させる工程と、バリア層に被覆を施す工程とによってパッシベーションされる。いくつかの実施形態では、金属酸化物バリア層は、酸化アルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、堆積する工程は、側壁表面および底面上に金属または金属酸化物バリア層を堆積させる工程を包含する。いくつかの実施形態では、堆積する工程は、底面から金属または金属酸化物バリア層をエッチングする工程をさらに包含する。
いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、ホスホナート基を含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、アルキル鎖を有するホスホナート基を含む。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素基を含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、ヘキシルホスホン酸(HPA)を含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、高分子ホスホナートを含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、ポリビニルホスホン酸(PVPA)を含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、置換アルキル鎖を有するホスホナート基を含む。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、1つ以上のアミドを含む。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、1つ以上のポリ(エチレングリコール)鎖を含む。いくつかの実施形態では、被覆は、式:
のホスホナート基を含み、
式中nは、0以上100以下の整数であり、
かつ、
は、水素または表面への結合点である。いくつかの実施形態では、nは3以上20以下の整数である。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、異なる種類のホスホナート基の混合物を含む。いくつかの実施形態では、バリア層被覆は、異なるPEG重量のポリ(エチレングリコール)鎖を含むホスホナート基の混合物を含む。
ある実施形態では、バリア層はニトロドーパ基を含む。ある実施形態では、バリア層被覆は、式:
の基を含み、
式中、R
Nは必要に応じて置換されているアルキル鎖であり、かつ、
は、水素または表面への結合点である。いくつかの実施形態では、R
Nはポリマーを含む。いくつかの実施形態では、R
Nは、ポリ(リシン)またはポリ(エチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、バリア層は、リシンモノマーを含むポリ(リシン)のコポリマーを含み、ここでリシンモノマーは、独立してPEG、ニトロドーパ基、ホスホナート基、または第1級アミンを含む。ある実施形態では、バリア層は、式(P)のポリマーを含む:
いくつかの実施形態では、Xは−OMe、ビオチン基、ホスホナートまたはシランである。いくつかの実施形態では、i、j、kおよびlのそれぞれは、独立して0以上100以下の整数である。
図8は、金属酸化物表面をパッシベーションする2つの方法を示す。8−1において、金属酸化物表面を(2−アミノエチル)ホスホン酸で処理し、(2−アミノエチル)ホスホナート基で被覆した表面を得る。第2のパッシベーション工程では、表面をポリ(エチレングリコール)NHSエステルで処理する。NHSエステルと表面ホスホナート基のアミン基との反応は、アミド結合を形成して、PEG官能化ホスホナート基で被覆された表面を形成する。8−2において、金属酸化物表面を、PEG官能化ホスホン酸で処理して、PEG官能化ホスホナート基で被覆された表面を1つの工程で得る。例示的な実施形態8−2はさらに、2種類のPEG官能化ホスホナート基で被覆された表面を得るための、第2のPEG官能化ホスホン酸の添加を示す。この例では、平均分子量が550である第1のPEGホスホン酸、および平均分子量が180の第2のPEGホスホン酸がある。示されているように、より短いPEG鎖ホスホン酸は、より長いPEG鎖を有する最初のPEGホスホン酸での処理後に残る表面被覆中にギャップ中への充填を補充し得る。
ポリメラーゼ固定化
1つ以上の分子または複合体が底面に固定される実施形態では、1つ以上の分子または複合体の結合を可能にするように底面を官能化することが望ましい場合がある。ある実施形態では、底面は透明ガラスを含む。ある実施形態では、底面は、溶融シリカまたは二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、底面は、シランで官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、イオン荷電ポリマーで官能化される。いくつかの実施形態では、イオン荷電ポリマーは、ポリ(リシン)を含む。いくつかの実施形態では、底面は、ポリ(リシン)−グラフト−ポリ(エチレングリコール)で官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、ビオチン化ウシ血清アルブミン(BSA)で官能化される。
ある実施形態では、底面は、ニトロドーパ基を含む被覆で官能化される。ある実施形態では、被覆は、式:
の基を含み、
式中、R
Nは、必要に応じて置換されているアルキル鎖であり、かつ、
は、水素または表面への結合点である。いくつかの実施形態では、R
Nはポリマーを含む。いくつかの実施形態では、R
Nはポリ(リシン)またはポリ(エチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、R
Nはビオチン化ポリ(エチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、被覆は、PEG、ビオチン化PEG、ニトロドーパ基、ホスホナート基、またはシランを独立して含むリシンモノマーを含む、ポリ(リシン)のコポリマーを含む。ある実施形態では、被覆は、式(P)のポリマー:
いくつかの実施形態では、Xは−OMe、ビオチン基、ホスホナートまたはシランである。いくつかの実施形態では、i、j、kおよびlのそれぞれは、独立して0以上100以下の整数である。
いくつかの実施形態では、底面は、アルキル鎖を含むシランで官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、必要に応じて置換されているアルキル鎖を含むシランで官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含むシランで官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、カップリング基を含むシランで官能化される。例えば、カップリング基は、アミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、金属、キレート剤などのような化学的部分を含んでもよい。あるいは、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、レクチン、SNAP−tag(商標)またはその基質、会合性または結合性のペプチドまたはタンパク質、抗体または抗体断片、核酸または核酸類似体などの特異的結合要素を含んでもよい。さらに、または代替的に、カップリング基は、場合によっては化学官能基および特異的結合要素の両方を含み得る、目的の分子とカップリングまたは結合するために使用されるさらなる基をカップリングさせるために使用されてもよい。一例として、カップリング基、例えばビオチンは、基板表面上に堆積されてもよく、所与の領域において選択的に活性化されてもよい。次に、中間結合剤、例えばストレプトアビジンを、第1のカップリング基にカップリングさせてもよい。この特定の例では、ビオチン化される目的の分子は、次にストレプトアビジンにカップリングされる。
いくつかの実施形態では、底面は、ビオチンまたはその類似体を含むシランで官能化される。いくつかの実施形態では、底面は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含むシランで官能化され、ここでポリ(エチレングリコール)鎖はビオチンを含む。ある実施形態では、底面は、少なくとも1種類のシランがビオチンを含み、かつ少なくとも1種類のシランがビオチンを含まないシラン混合物で官能化される。いくつかの実施形態では、混合物は、ビオチンを含まないシランより約10倍少ない、約25倍少ない、約50倍少ない、約100倍少ない、約250倍少ない、約500倍少ない、または約1000倍少ないビオチン化シランを含む。
図9は、官能化されたガラス底面を生成する2つの例示的な経路を示す。頂部経路では、ガラス表面を、PEG−シランとビオチン化−PEG−シランの混合物に250:1の比で曝露する。底部経路では、まず、ガラス表面を、イソシアナト−プロピル−トリエトキシシラン(IPTES)に曝露する。イソシアネート基とPEG−アミンおよびビオチン化−PEG−アミンの混合物との反応は、尿素結合を形成し、シラン基を介して表面に結合したPEGおよびビオチン化−PEG鎖を有する表面を生じる。
図7は、製造されたチップから配列決定反応の開始まで試料ウェル表面を調製するための非限定的な例示的プロセスを示す。試料ウェルは、底面(網掛けのない長方形)および側壁(網掛けの棒グラフ)で描かれている。側壁は、複数の層(例えば、Al、Al2O3、Ti、TiO2、TiN)で構成されてもよい。工程(a)において、側壁は、Al2O3のバリア層を堆積される。次いで、Al2O3バリア層を、工程(b)において、例えば、表面を1つ以上のPEG−ホスホン酸で処理することによってPEGホスホナート基で被覆する。工程(c)において、底面を、例えば、PEG−シランとビオチン化−PEG−シランとの混合物で官能化する。楕円は、ポリメラーゼ複合体のような単一分子または複合体の結合のための部位を提供し得る個々のビオチン基を表現する。工程(d)において、ポリメラーゼ複合体は、底面上のビオチン基に結合される。ポリメラーゼは、ストレプトアビジンなどの結合剤およびポリメラーゼ複合体上のビオチンタグによって結合されてもよい。ポリメラーゼ複合体はさらに、鋳型核酸およびプライマー(表示せず)を含んでもよい。工程(e)は、発光標識ヌクレオチドへの固定化ポリメラーゼ複合体の曝露による配列決定反応の開始を示す。
ポリメラーゼ複合体は、複合体を結合混合物中の官能化表面に曝露することによって表面上に固定化され得る。いくつかの実施形態では、結合混合物は、1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は酢酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、塩は、塩化カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、塩は、約1mM〜約10mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約10mM〜約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約50mM〜約100mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、塩は、約100mM〜約250mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、酢酸カリウムの濃度は約75mMである。いくつかの実施形態では、塩化カルシウムの濃度は約10mMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は還元剤を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、約1mM〜約20mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ジチオスレイトールの濃度は約5mMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液はMOPSを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約10mM〜約100mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、MOPSの濃度は約50mMである。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約5.5〜約6.5のpHで存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約6.5〜約7.5のpHで存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約7.5〜約8.5のpHで存在する。いくつかの実施形態では、結合混合物は、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む。いくつかの実施形態では、デオキシヌクレオチド三リン酸は、250nM〜10μMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、dNTPの濃度は約2μMである。いくつかの実施形態では、結合混合物は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、Tween界面活性剤(例えば、Tween20)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.01%〜約0.1%の容積パーセントで存在する。いくつかの実施形態では、Tweenの容積パーセントは約0.03%である。
ポリメラーゼ
本明細書で使用される「ポリメラーゼ」という用語は、一般に、重合反応を触媒し得る任意の酵素(または重合酵素)を指す。ポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、核酸ポリメラーゼ、転写酵素またはリガーゼが挙げられる。ポリメラーゼは重合酵素であってもよい。
単一分子核酸伸長(例えば、核酸配列決定のための)に関する実施形態は、標的核酸分子に相補的な核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはそれらの1つ以上の変異体もしくは改変型であってもよい。
ポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、修飾ポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼψ29(プサイ29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、Vent(登録商標)ポリメラーゼ、Deep Vent(商標)ポリメラーゼ、Ex Taq(商標)ポリメラーゼ、LA Taq(商標)ポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfuturbo(登録商標)ポリメラーゼ、Pyrobest(商標)ポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、クレノウ断片、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、およびそれらの改変体、改変生成物および誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、単一サブユニットポリメラーゼである。DNAポリメラーゼの非限定的な例およびそれらの特性は、とりわけ、DNA複製第2版、KornbergおよびBaker、W.H. Freeman、New York、N.Y.(1991)に詳細に記載されている。
標的核酸の核酸塩基と相補的なdNTPとの間の塩基対合の際に、ポリメラーゼは、新たに合成された鎖の3’ヒドロキシル末端と、dNTPのαリン酸との間にホスホジエステル結合を形成することにより、dNTPを、新たに合成された核酸鎖に組み込む。dNTPにコンジュゲートされた発光タグがフルオロフォアである例では、その存在は、励起によってシグナル伝達され、組み込みの工程中または工程後に放射のパルスが検出される。dNTPの末端(ガンマ)リン酸にコンジュゲートされる検出標識については、新たに合成された鎖へのdNTPの組み込みにより、βおよびγリン酸塩ならびに試料ウェル中で自由に拡散する検出標識が放出されて、フルオロフォアから検出される放射が減少する。
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは高い加工性を有するポリメラーゼである。しかし、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは加工性が低下したポリメラーゼである。ポリメラーゼ加工性とは、一般に、核酸鋳型を解放することなくdNTPを核酸鋳型に連続的に組み込むポリメラーゼの能力を指す。
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、低5’−3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’−5’エキソヌクレアーゼを有するポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、対応する野生型ポリメラーゼと比較して5’−3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’−5’活性が低下するように(例えば、アミノ酸置換によって)修飾される。DNAポリメラーゼのさらなる非限定的な例としては、9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)およびクレノウエキソポリメラーゼのP680G変異体が挙げられる(Tuskeら(2000)JBC 275(31):23759〜23768)。いくつかの実施形態では、減少した加工性を有するポリメラーゼは、1つ以上のヌクレオチドリピートのストレッチ(例えば、同じ種類の2つ以上の連続塩基)を含む配列決定する鋳型の精度を高める。
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、標識されていない核酸よりも標識されたヌクレオチドに対して高い親和性を有するポリメラーゼである。
単分子RNA伸長(例えば、RNA配列決定のため)に向けた実施形態は、RNA鋳型から相補的DNA(cDNA)を合成し得る任意の逆転写酵素を使用してもよい。このような実施形態では、逆転写酵素は、RNA鋳型にアニーリングした逆転写プライマーにdNTPを組み込むことを介して、cDNAをRNA鋳型から合成することができるという点で、ポリメラーゼと同様に機能し得る。次いで、cDNAは、配列決定反応に関与し得、その配列は、上記および本明細書の他の箇所のいずれかで決定される。次いで、決定されたcDNAの配列を、配列相補性を介して使用して、元のRNA鋳型の配列を決定してもよい。逆転写酵素の例としては、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(M−MLV)、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス逆転写酵素(HIV−1)およびテロメラーゼ逆転写酵素が挙げられる。
核酸ポリメラーゼの加工性、エキソヌクレアーゼ活性、異なる種類の核酸に対する相対的な親和性、または他の特性は、対応する野生型ポリメラーゼに関連する突然変異または他の修飾によって、当業者によって増大されるか、または減少され得る。
テンプレート
本開示は、核酸分子のような生体分子またはそのサブユニットを検出するためのデバイス、システムおよび方法を提供する。そのような検出は、配列決定を含み得る。生体分子は、対象(例えば、ヒトまたは他の対象)から得られた生物学的試料から抽出してもよい。いくつかの実施形態では、対象は患者であってもよい。いくつかの実施形態では、標的核酸は、診断目的、予後予測目的および/または治療目的のために検出および/または配列決定され得る。いくつかの実施形態では、配列決定アッセイに関する情報は、疾患または状態の診断、予後予測、および/または処置を支援するために有用であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、疾患(例えば、癌)などの健康状態を有する疑いがある場合もある。いくつかの実施形態では、対象は、疾患の治療を受けている場合もある。
いくつかの実施形態では、生物学的試料は、呼吸、唾液、尿、血液(例えば、全血または血漿)、便、または他の体液もしくは生検試料などの対象の体液または組織から抽出され得る。いくつかの例では、1つ以上の核酸分子が、対象の体液または組織から抽出される。この1つ以上の核酸は、対象の組織の一部のような、対象から得られた1つ以上の細胞から抽出されてもよいし、または対象の無細胞体液、例えば全血から得てもよい。
生物学的試料は、検出の準備(例えば、配列決定)において処理されてもよい。そのような処理は、生物学的試料からの生体分子(例えば、核酸分子)の単離および/または精製、ならびに生体分子のより多くのコピーの生成を含み得る。いくつかの例において、1つ以上の核酸分子は、対象の体液または組織から単離および精製され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような核酸増幅によって増幅される。次いで、配列決定を通じるなどして、1つ以上の核酸分子またはそのサブユニットを同定してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、増幅を必要とせずに、本出願に記載のように核酸試料を、評価(例えば、配列決定)してもよい。
この出願に記載されているように、配列決定には、鋳型生体分子(例えば、核酸分子)の個々のサブユニットの決定であって、その鋳型に対して相補的または類似の別の生体分子を合成することによる、例えば、鋳型核酸分子に相補的である核酸分子を合成すること、および時間とともにヌクレオチドの組み込みを同定すること(例えば、合成による配列決定)による、決定を包含し得る。代わりに、配列決定は、生体分子の個々のサブユニットの直接的な同定を含んでもよい。
配列決定の間、生体分子の個々のサブユニットを示すシグナルは、生体分子の配列を決定するために、リアルタイムで、または後の時点で、メモリに収集され、処理されてもよい。そのような処理には、場合によっては読み取りを生じる、個々のサブユニットの同定を可能にする参照シグナルに対するシグナルの比較を含んでもよい。読み取りは、より大きな配列または領域を同定するために使用され得る、例えば、染色体またはゲノム領域もしくは遺伝子上の位置に整列され得る、十分な長さ(例えば、少なくとも約30、50、100塩基対(bp)またはそれ以上)の配列であってもよい。
配列読み取りを使用して、(例えば、アライメントによって)対象のゲノムのより長い領域を再構成してもよい。読み取りを使用して、染色体領域、染色体全体、またはゲノム全体を再構築してもよい。そのような読み取りから生成された配列の読み取りまたはより大きな配列を使用して、改変体または多型を同定するためなど、対象のゲノムを分析してもよい。改変体の例としては、限定するものではないが、一塩基多型(SNP)、例としては、タンデムSNP、小規模の多塩基の欠失または挿入(indelまたは欠失挿入多型(DIP)とも呼ばれる)、マルチヌクレオチド多型(MNP)、ショートタンデムリピート(STR)、微小欠損を含む欠失、挿入、例としては、マイクロインサーション、構造変化、例としては、重複、逆位、転座、増倍、複合多重部位改変体、コピー数変動(CNV)が挙げられる。ゲノム配列は、改変体の組合せを含んでもよい。例えば、ゲノム配列は、1つ以上のSNPと1つ以上のCNVとの組合せを包含し得る。
「ゲノム」という用語は、一般には、生物体の遺伝情報の全体を指す。ゲノムは、DNAにコードされても、またはRNAにコードされてもいずれでもよい。ゲノムは、タンパク質および非コード領域をコードするコード領域を含んでもよい。ゲノムは、生物体中にすべての染色体の配列を一緒に含んでもよい。例えば、ヒトゲノムは、全部で46の染色体を有する。これらの全ての配列は、ともにヒトゲノムを構成する。いくつかの実施形態では、ゲノム全体の配列が決定される。しかし、いくつかの実施形態では、ゲノムのサブセット(例えば、1つまたはいくつかの染色体またはその領域)または1つ以下の遺伝子(またはその断片)の配列情報では、診断の適用、予後診断の適用および/または治療の適用に十分である。
複数の一本鎖標的核酸鋳型の核酸配列決定は、本明細書の他のいずれかに記載されているデバイスの場合のように、複数試料ウェル(例えば、ナノ開口部)が利用可能である場合に完了することができる。各試料ウェルは、一本鎖標的核酸鋳型を提供されてもよく、配列決定反応は、各試料ウェル内で完了され得る。プライマー伸長反応の間に、核酸合成に必要な適切な試薬(例えば、dNTP、配列決定プライマー、ポリメラーゼ、補因子、適切な緩衝液など)と、各々の試料ウェルとを接触させてもよく、配列決定反応を、それぞれ試料ウェル中で進行させてもよい。いくつかの実施形態では、複数の試料ウェルを、すべての適切なdNTPと同時に接触させる。他の実施形態では、複数の試料ウェルを、それぞれ適切なdNTPと別々に接触させ、それぞれ異なるdNTPとの接触の間に洗浄する。組み込まれたdNTPは、各試料ウェルで検出可能であり、本明細書の他のいずれかの箇所に記載されているように、各試料ウェル内の一本鎖標的核酸について決定された配列が検出され得る。
いくつかの実施形態は、検体中の単一分子を検出することによる診断試験に向けられ得るが、本開示の単一分子検出能力を使用して、例えば、遺伝子の1つ以上の核酸セグメントのポリペプチド(例えば、タンパク質)配列決定または核酸(例えば、DNA、RNA)の配列決定を行ってもよいこともまた本発明者らによって理解された。
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、以下でより詳細に説明する1つ以上のデバイスまたは装置を使用して行ってもよい。
器具の概要
本発明者らは、単一分子または粒子の検出および定量を行うためのコンパクトな高速器具が、生体試料および/または化学試料の複雑な定量的測定を行うコストを削減し、生化学技術的発見の速度を急速に早め得ることをさらに認識し、理解している。さらに、容易に運搬できるコスト効果が高いデバイスは、先進国においてバイオアッセイが行われる方法を変え得るだけでなく、発展途上地域の人々がその健康および幸福を劇的に改善し得る基本的診断検査に初めてアクセスできるようにする可能性がある。例えば、本明細書に記載された実施形態は、家庭において個人により、または発展途上国の遠隔地の診療所において医師により使用され得る血液、尿および/または唾液の診断検査のために使用され得る。
多数の画素(例えば、数百、数千、数万またはそれ以上)を有する画素化センサデバイスは、複数の個々の分子または粒子を並行して検出することを可能にする。分子は、例として、および限定するものではないが、タンパク質および/またはDNAであってもよい。さらに、1秒あたり100フレーム超でデータを取得することができる高速デバイスは、分析中の試料内に時間と共に生じる動的プロセスまたは変化の検出および分析を可能にする。
本発明者らは、バイオアッセイ装置をよりコンパクトにすることを妨げている1つのハードルは、望ましくない検出事象をセンサにおいて引き起こす励起光をフィルタリングする必要性であったことを認識し、理解している。所望のシグナル光(発光)を透過し、励起光を十分にブロックするのに使用される光学フィルターは、分厚く、かさばり、高額で、光の入射角の変動に耐えられず、小型化の妨げとなる可能性がある。しかし、本発明者らは、パルス励起源の使用が、そのようなフィルタリングに対する必要性を低減し、またはいくつかの場合において、そのようなフィルターに対する必要性を完全に取り除き得ることを認識し、理解した。励起光パルスに対して光子が検出される時間を決定することができるセンサを使用することにより、シグナル光は、受信される光のスペクトルよりむしろ光子が受信される時間に基づき励起光から分離することができる。したがって、かさばる光学フィルターに対する必要性が低減し、および/またはいくつかの実施形態では取り除かれる。
本発明者らは、発光寿命測定が試料中に存在する分子を識別するのにも使用され得ることを認識し、理解している。光子が検出されるときを検出することができる光学センサは、多くの事象から集められた統計を用いて、励起光により励起されている分子の発光寿命を測定することができる。いくつかの実施形態では、発光寿命測定は、発光のスペクトル測定に加えてなされてもよい。あるいは、発光のスペクトル測定は、試料分子を識別する工程において完全に省略されてもよい。発光寿命測定は、パルス励起源を用いてなされてもよい。さらに、発光寿命測定は、センサを含む一体型デバイス、または光源が一体型デバイスから切り離されたシステム内にあるデバイスを用いてなされてもよい。
本発明者らはまた、生体試料から放射される発光光を測定することができる単一の一体型デバイスに試料ウェル(例えば、ナノ開口部)およびセンサを統合することが、使い捨て生化学分析チップが形成され得るようにそのようなデバイスを作製するコストを低減することも認識し、理解している。ベース機器と連動する使い捨ての単回使用一体型デバイスは、試料分析のために高コストの生物学実験室を必要とする制約なしに世界中どこでも使用することができる。故に、以前は生体試料の定量的分析を行うことができなかった世界の地域に、自動生化学分析を持ち込むことができる。例えば、乳児のための血液検査は、血液試料を使い捨て一体型デバイスに入れ、分析のために使い捨て一体型デバイスを小型の携帯型ベース機器に入れ、ユーザによる即時検討のために結果をコンピュータにより処理して行うことができる。データは、データネットワークを通じて遠隔地に伝送して分析することもでき、および/またはその後の臨床分析のためにアーカイブに保管することもできる。
本発明者らはまた、使い捨ての単回使用デバイスが、チップに光源を含まないことによってより簡単に、およびより低コストで作製され得ることも認識し、理解している。代わりに、光源は、使い捨てチップと連動して試料を分析するシステムに組み込まれた再利用可能なコンポーネントであってもよい。
本発明者らはまた、試料が複数の異なるタイプの発光マーカーでタグ化される場合、発光マーカーの任意の適切な特性は、チップの特定の画素内に存在するマーカーのタイプを識別するのに使用され得ることも認識し、理解している。例えば、マーカーにより放射される発光の特性、および/または励起吸収の特性がマーカーを識別するのに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、発光の放射エネルギー(光の波長と直接関係している)が、第1のタイプのマーカーと第2のタイプのマーカーとを区別するのに使用されてもよい。さらに、またはあるいは、発光寿命測定は特定の画素に存在するマーカーのタイプを識別するのにも使用され得る。いくつかの実施形態では、発光寿命測定は、寿命情報を得るのに十分な分解能により光子が検出される時間を区別することができるセンサを用いて、パルス励起源によりなされてもよい。さらに、またはあるいは、異なるタイプのマーカーにより吸収される励起光のエネルギーが、特定の画素に存在するマーカーのタイプを識別するのに使用されてもよい。例えば、第1のマーカーは第1の波長の光を吸収することができるが、第2の波長の光を同じように吸収することはできず、一方、第2のマーカーは第2の波長の光を吸収することができるが、第1の波長の光を同じように吸収することはできない。このように、各々が異なる励起エネルギーを有する1つを超える励起光源が、試料をインターリーブ方式で照射するのに使用され得る場合、マーカーの吸収エネルギーは、どのタイプのマーカーが試料中に存在するかを識別するのに使用することができる。異なるマーカーは、異なる発光強度も有し得る。したがって、発光の検出された強度は、特定の画素に存在するマーカーのタイプを識別するのにも使用することができる。
I.システムの概要
システムは、一体型デバイスおよび一体型デバイスと連動するように構成されている機器を含む。一体型デバイスは画素のアレイを含み、画素は試料ウェルおよび少なくとも1つのセンサを含む。一体型デバイスの表面は複数の試料ウェルを含み、試料ウェルは、一体型デバイスの表面に置かれた標本から試料を受け取るように構成される。標本は複数の試料を含有してもよく、いくつかの実施形態では、異なるタイプの試料を含有してもよい。複数の試料ウェルは、少なくとも一部の試料ウェルが1つの試料を標本から受け取るような適切なサイズおよび形状を有することができる。いくつかの実施形態では、試料ウェル内の試料の数は、いくつかの試料ウェルが1つの試料を含有し、他の試料がゼロ、2つ以上の試料を含有するように試料ウェル間で分配されてもよい。
いくつかの実施形態では、標本は複数の一本鎖DNA鋳型を含有してもよく、一体型デバイスの表面の個々の試料ウェルは、一本鎖DNA鋳型を受け取るためのサイズおよび形状であってもよい。一本鎖DNA鋳型は、一体型デバイスの少なくとも一部の試料ウェルが一本鎖DNA鋳型を含有するように、一体型デバイスの試料ウェル間で分配されてもよい。標本は、タグ化dNTPも含有することができ、タグ化dNTPは次いで試料ウェルに入り、試料ウェル中の一本鎖DNA鋳型に相補的なDNAの鎖にヌクレオチドが組み込まれるとき、ヌクレオチドの同定を可能にすることができる。そのような例において「試料」は、一本鎖DNA、および現在ポリメラーゼにより組み込まれているタグ化dNTPの両方を指し得る。いくつかの実施形態では、標本は一本鎖DNA鋳型を含有してもよく、タグ化dNTPはその後、ヌクレオチドが試料ウェル内のDNAの相補鎖に組み込まれるときに試料ウェルに導入されてもよい。このようにして、ヌクレオチドの組み込みのタイミングは、タグ化dNTPがいつ一体型デバイスの試料ウェルに導入されるかにより制御することができる。
励起エネルギーは、一体型デバイスの画素アレイから切り離されて位置された励起源から提供される。励起エネルギーは、一体型デバイスの素子により、少なくとも一部は1つまたは複数の画素へと向けられて試料ウェル内の照射領域を照射する。マーカーまたはタグは次いで、照射領域内にある場合および励起エネルギーによる照射に応答して、放射エネルギーを放射し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の励起源は、機器のコンポーネントおよび一体型デバイスが、励起エネルギーを1つまたは複数の画素に向かわせるように構成されるシステムの機器の一部である。
試料により放射される放射エネルギーは、次いで一体型デバイスの一画素内の1つまたは複数のセンサにより検出することができる。検出された放射エネルギーの特性は、放射エネルギーと関連付けられたマーカーを識別するための指標を提供することができる。そのような特性は、センサにより検出される光子の到達時間、センサにより時間と共に蓄積される光子の量、および/または2個以上のセンサにわたる光子の分布を含む任意の適切なタイプの特性を含み得る。いくつかの実施形態では、センサは、試料の放射エネルギーと関連付けられた1つまたは複数のタイミング特性の検出を可能にする構成を有してもよい(例えば、蛍光寿命)。センサは、励起エネルギーのパルスが一体型デバイスを通って伝播した後の光子到達時間の分布を検出することができ、到達時間の分布は、試料の放射エネルギーのタイミング特性の指標を提供することができる(例えば、蛍光寿命の代理)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサは、マーカーまたはタグにより放射される放射エネルギーの確率の指標を提供する(例えば、蛍光強度)。いくつかの実施形態では、複数のセンサは、放射エネルギーの空間分布をとらえるためのサイズおよび配列であってもよい。1つまたは複数のセンサからの出力シグナルは、次いで複数のマーカーの中から一マーカーを区別するのに使用され得、複数のマーカーが標本内の試料を識別するのに使用され得る。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、試料は複数の励起エネルギーにより励起されてもよく、複数の励起エネルギーに応答して試料により放射される放射エネルギーおよび/または放射エネルギーのタイミング特性は、複数のマーカーから一マーカーを区別することができる。
システム23−100の概略図が図23Aおよび23Bに例示されている。システムは、機器23−104と連動する一体型デバイス23−102の両方を備える。いくつかの実施形態では、機器23−104は、機器23−104の一部として統合された1つまたは複数の励起源23−106を含んでもよい。いくつかの実施形態では、励起源は、機器23−104および一体型デバイス23−102の両方の外側にあってもよく、機器23−104が励起源から励起エネルギーを受信し、これを一体型デバイスに向かわせるように構成されてもよい。一体型デバイスは、一体型デバイスを受け止め、これを励起源との正確な光学アライメント状態に保つための任意の適切なソケットを用いて機器と連動することができる。励起源23−106は、励起エネルギーを一体型デバイス23−102に提供するように構成されてもよい。図23Bに概略的に例示されているように、一体型デバイス23−102は複数の画素を有し、画素23−112の少なくとも一部は試料の独立分析を行うことができる。そのような画素23−112は、画素が画素から切り離された源23−106から励起エネルギーを受信し、該源が複数の画素を励起するため、「受動源画素(passive source pixel)」と呼ばれ得る。画素23−112は、試料および、励起源23−106により提供される励起エネルギーによる試料の照射に応答して、試料により放射される放射エネルギーを検出するためのセンサ23−110を受け取るように構成されている試料ウェル23−108を有する。試料ウェル23−108は、一体型デバイス23−102の表面近くで試料を保持して励起エネルギーを試料に加えやすくし、試料からの放射エネルギーを検出しやすくすることができる。
励起エネルギーを試料ウェル23−108に導き、カップリングするための光学的素子は、一体型デバイス23−102および機器23−104の両方にある。そのような源からウェルへ(source−to−well)素子は、励起エネルギーを一体型デバイスにカップリングするための、一体型デバイス23−102上にある1つまたは複数の格子カプラ、および機器23−104からの励起エネルギーを画素23−112の試料ウェルに加えるための導波路を備えてもよい。いくつかの実施形態では、一体型デバイス上にある素子は、放射エネルギーを試料ウェルからセンサへと向かわせるように働いてもよい。試料ウェル23−108は、励起源からウェルへ(excitation source−to−well)光学の一部であり、試料ウェルからセンサへ(sample well−to−sensor)光学は一体型デバイス23−102上にある。励起源23−106、および源からウェルへ(source−to−well)コンポーネントの一部は、機器23−104中にある。いくつかの実施形態では、単一コンポーネントが、励起エネルギーを試料ウェル23−108にカップリングする工程、および放射エネルギーを試料ウェル23−108からセンサ23−110に加える工程の両方において役割を果たしてもよい。励起エネルギーを試料ウェルにカップリングし、および/または放射エネルギーをセンサに向かわせるための、一体型デバイスに含める適切なコンポーネントの例は、「分子をプローブし、検出し、分析するための一体型デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」と題された米国特許出願第14/821,688号明細書、および「分子をプローブし、検出し、分析するための外部光源を備える一体型デバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING,DETECTING,AND ANALYZING MOLECULES)」と題された米国特許出願第14/543,865号明細書に記載されており、これらはいずれもその全体が参照により援用される。
図23Bに例示されているように、一体型デバイスは複数の画素を備え、画素23−112は、それ自体の個々の試料ウェル23−108および少なくとも1つのセンサ23−110と関連付けられている。複数の画素はアレイに配列されてもよく、アレイ中に任意の適切な画素数があってもよい。一体型デバイス23−102中の画素数は、約10,000画素〜1,000,000画素の範囲、またはこの範囲内の任意の値もしくは値の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、画素は512画素×512画素のアレイに配列されてもよい。一体型デバイス23−102および機器23−104は、大きな画素アレイ(例えば、10,000画素を超える)と関連付けられたデータを扱うための多チャンネル高速通信リンクを含んでもよい。
機器23−104は、一体型デバイスインタフェース23−114を通じて一体型デバイス23−102と連動する。一体型デバイスインタフェース23−114は、励起源23−106からの励起エネルギーの一体型デバイス23−102へのカップリングを改善するように、一体型デバイス23−102を機器23−104に対して配置および/または整列させるためのコンポーネントを含んでもよい。励起源23−106は、励起エネルギーを少なくとも1つの試料ウェルに加えるように配列された任意の適切な光源であってもよい。適切な励起源の例は、その全体が参照により援用される、「分子をプローブし、検出し、分析するための一体型デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR
PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」と題された米国特許出願第14/821688号明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、励起源23−106は、励起エネルギーを一体型デバイス23−102に加えるように組み合わされた複数の励起源を含む。複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成されてもよい。一体型デバイスインタフェース23−114は、一体型デバイス上にある画素中のセンサからの読み出しシグナルを受信することができる。一体型デバイスインタフェース23−114は、一体型デバイスを一体型デバイスインタフェース23−114に固定することにより一体型デバイスが機器に取り付くように設計されてもよい。
機器23−104は、機器23−104の作動を制御するためのユーザインタフェース23−116を含む。ユーザインタフェース23−116は、機器の機能を制御するのに使用されるコマンドおよび/または設定など、ユーザが情報を機器に入力するのを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース23−116は、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および音声コマンド用のマイクロホンを含んでもよい。さらに、ユーザインタフェース23−116は、適切なアライメントおよび/または一体型デバイス上のセンサからの読み出しシグナルにより得られた情報などの、機器および/または一体型デバイスのパフォーマンスに関するフィードバックをユーザが受け取るのを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース23−116は、可聴フィードバックを提供するスピーカー、ならびに視覚的フィードバックを提供する表示灯および/または表示画面を用いてフィードバックを提供してもよい。いくつかの実施形態では、機器23−104は、計算デバイス23−120と接続するのに使用されるコンピュータインタフェース23−118を含む。任意の適切なコンピュータインタフェース23−118および計算デバイス23−120が使用され得る。例えば、コンピュータインタフェース23−118は、USBインタフェースまたはファイアワイヤインタフェースであってもよい。計算デバイス23−120は、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであってもよい。コンピュータインタフェース23−118は、機器23−104と計算デバイス23−120との間の情報の通信を促進する。機器23−104を制御および/または構成するための入力情報は、機器のコンピュータインタフェース23−118に接続された計算デバイス23−120を通じて提供され得る。出力情報は、コンピュータインタフェース23−118を通じて計算デバイス23−120により受信され得る。そのような出力情報は、機器23−104および/または一体型デバイス23−112のパフォーマンスについてのフィードバック、ならびにセンサ23−110の読み出しシグナルからの情報を含み得る。機器23−104は、センサ23−110から受信されたデータを分析し、および/または制御シグナルを励起源23−106へ送信するための処理デバイス23−122も含むことができる。いくつかの実施形態では、処理デバイス23−122は、汎用プロセッサ、特別適応プロセッサ(例えば、1つもしくは複数のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラコアなどの中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(application−specific integrated circuit)(ASIC)、カスタム集積回路、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、またはそれらの組合せ)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、センサ23−110からのデータの処理は、処理デバイス23−122および外部計算デバイス23−120の両方により行われてもよい。他の実施形態では、計算デバイス23−120は省略されてもよく、センサ23−110からのデータの処理は、もっぱら処理デバイス23−122により行われてもよい。
画素の列を例示する一体型デバイス24−102の断面概略図が、図24Aに示されている。各画素24−112は、試料ウェル24−108およびセンサ24−110を含む。センサ24−110は、センサ24−110が試料ウェル24−112内の試料により放射される放射エネルギーを受信するように、試料ウェル24−112に対して整列および配置されてもよい。適切なセンサの例は、その全体が参照により援用される、「受信光子の時間的ビニングのための一体型デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」と題された米国特許出願第14/821,656号明細書に記載されている。
一体型デバイスにカップリングされた励起源は、一体型デバイス24−102の1つまたは複数の画素に励起エネルギーを提供することができる。図24Bは、励起エネルギー24−130(破線で示されている)を一体型デバイス24−102に提供するための、一体型デバイス24−102への励起源24−106のカップリングを例示する概略図である。図24Bは、励起エネルギー源24−106から画素24−112中の試料ウェル24−108に至る励起エネルギーの経路を例示する。一体型デバイスから離れて位置されたコンポーネントは、一体型デバイスに対して励起源24−106を配置および整列させるのに使用され得る。そのようなコンポーネントは、レンズ、ミラー、プリズム、開口部、減衰器、および/または光ファイバを含む光学コンポーネントを含むことができる。追加の機械的コンポーネントは、1つまたは複数のアライメントコンポーネントの制御を可能にするように機器に含まれてもよい。そのような機械的コンポーネントは、アクチュエータ、ステッパモータ、および/またはノブを含み得る。
一体型デバイスは、励起エネルギー24−130を一体型デバイス中の画素へと向かわせるコンポーネントを含む。各画素24−112内で励起エネルギーは、画素と関連付けられた試料ウェル24−108にカップリングされる。図24Bは、1列の画素中の各試料ウェルにカップリングしている励起エネルギーを例示するが、いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、1列の画素の全てにカップリングしなくてもよい。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、一体型デバイスの画素の一部または1列の画素中の試料ウェルにカップリングしてもよい。励起エネルギーは、試料ウェル内にある試料を照射することができる。試料は、励起エネルギーによる照射に応答して励起状態に達することができる。試料が励起状態にあるとき、試料は放射エネルギーを放射し得、放射エネルギーはセンサにより検出され得る。図24Bは、画素24−112の試料ウェル24−108からセンサ24−110に至る放射エネルギー24−140の経路(実線として示されている)を概略的に例示する。画素24−112中のセンサ24−110は、試料ウェル24−108からの放射エネルギーを検出するように構成および配置され得る。いくつかの実施形態では、センサ24−110は複数のサブセンサを含んでもよい。
分析される試料は、画素24−112の試料ウェル24−108に導入され得る。試料は、生体試料、または化学試料などの任意の他の適切な試料であってもよい。試料は複数の分子を含む場合があり、試料ウェルは単一分子を単離するように構成され得る。いくつかの例において、試料ウェルの寸法は、単一分子を試料ウェル内に限局する役割を果たし、単一分子について測定が行われるようにすることができる。励起源24−106は、試料が試料ウェル24−108内の照射エリア内にある間、試料を、または試料に付着されたもしくはさもなければ試料と関連付けられた少なくとも1つの発光マーカーを励起するために、励起エネルギーを試料ウェル24−108に加えるように構成されてもよい。
励起源が励起エネルギーを試料ウェルに加えるとき、ウェル内の少なくとも1つの試料は発光し得、生じた放射はセンサにより検出され得る。本明細書で使用されるとき、句「試料は発光し得る」または「試料は放射線を放射し得る」または「試料からの放射」は、発光タグ、マーカー、またはレポーター、試料自体、もしくは試料と関連付けられた反応産物が、放射放射線を生成し得ることを意味する。
一体型デバイスの1つまたは複数のコンポーネントは、放射エネルギーをセンサへと向かわせることができる。放射エネルギーはセンサにより検出され得、少なくとも1つの電気信号へと変換され得る。電気信号は、図23Bに示された機器23−104の一体型デバイスインタフェース23−114などの一体型デバイスインタフェースを通じて機器に接続された一体型デバイスの回路中の伝導ラインに沿って送信され得る。電気信号は、その後、処理および/または分析され得る。電気信号の処理または分析は、機器23−104上にある、または図23Bに示された計算デバイス23−120などの機器から離れている適切な計算デバイスで生じ得る。
励起源を用いてウェル内の試料を励起すること、およびセンサで試料放射からシグナルを検出することにより、作動中、試料ウェル内の試料の平行分析が実施される。試料からの放射エネルギーは、対応するセンサにより検出され、少なくとも1つの電気信号へと変換され得る。生じたシグナルは、いくつかの実施形態では一体型デバイス上で処理され、または処理デバイスおよび/もしくは計算デバイスによる処理のために機器へ送信され得る。試料ウェルからのシグナルは、他の画素と関連付けられたシグナルから独立して受信および処理され得る。
いくつかの実施形態では、試料は1つまたは複数のマーカーで標識されてもよく、マーカーと関連付けられた放射は機器により判別可能である。例えばセンサは、放射エネルギーからの光子を電子へと変換して、特定のマーカーからの放射エネルギーに依存する寿命を判別するのに使用され得る電気信号を形成するように構成されてもよい。寿命が異なるマーカーを使用して試料を標識することにより、特定の試料は、センサにより検出される生じた電気信号に基づき識別され得る。
試料は複数のタイプの分子を含有する場合があり、異なる発光マーカーは、分子タイプと一意に関連付けることができる。励起中または励起後、発光マーカーは放射エネルギーを放射することができる。放射エネルギーの1つまたは複数の特質は、試料中の1つまたは複数のタイプの分子を識別するのに使用され得る。分子のタイプ間で区別するのに使用される放射エネルギーの特質は、蛍光寿命値、強度、および/または放射波長を含み得る。センサは、放射エネルギーの光子を含む光子を検出し、1つまたは複数のこれらの特質を示す電気信号を提供することができる。いくつかの実施形態では、センサからの電気信号は、1つまたは複数の時間間隔にわたる光子到達時間の分布について情報を提供することができる。光子到達時間の分布は、励起エネルギーのパルスが励起源により放射された後、光子が検出されるときに対応し得る。時間間隔の値は、時間間隔中に検出された光子の数に対応し得る。複数の時間間隔にわたる相対値は、放射エネルギーの時間特性(例えば、寿命)の指標を提供することができる。試料の分析は、分布内の2つ以上の異なる時間間隔の値を比較することによるマーカー間での区別を含んでもよい。いくつかの実施形態では、強度の指標は、分布中の全ての時間ビンにわたる光子の数を決定することにより提供され得る。
II.一体型デバイス
一体型デバイスは、外部励起エネルギー源から励起エネルギーを受信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、デバイスの領域は、一体型デバイスから離れて位置された励起エネルギー源にカップリングするのに使用されてもよい。一体型デバイスのコンポーネントは、励起エネルギーを励起源カップリング領域から少なくとも1つの画素へ導くことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの導波路は、試料ウェルを有する少なくとも1つの画素へ励起エネルギーを加えるように構成されてもよい。試料ウェル内にある試料は、励起エネルギーによる照射に応答して放射エネルギーを放射することができる。画素内にある1つまたは複数のセンサは、放射エネルギーを受信するように構成される。
図25に示されたいくつかの実施形態による一体型デバイス25−200のコンポーネントおよび/または層は、1つのデバイスに統合された試料ウェル25−203、導波路25−220、およびセンサ25−275を含む。試料ウェル25−203は、一体型デバイス25−200の試料ウェル層25−201に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、試料ウェル層25−201は金属であってもよい。試料ウェル25−203は、試料ウェルの断面寸法を示し得る寸法Dtvを有してもよい。試料ウェル25−203はナノ開口部の機能を果たしてもよく、試料ウェル25−203中の試料の励起強度を高める場の増強効果をもたらす1つまたは複数のサブ波長寸法を有してもよい。導波路25−220は、デバイス25−200から離れて位置された励起源25−230から、励起エネルギーを試料ウェル25−203へ加えるように構成される。導波路25−220は、試料ウェル層25−201とセンサ25−275との間の層に形成されてもよい。一体型デバイス25−200の設計は、試料ウェル25−203中の試料から放射された発光をセンサ25−275が収集できるようにする。少なくとも時々、試料は励起エネルギーを吸収し、放射エネルギーまたは発光と呼ばれる励起エネルギーより少ないエネルギーを有する光子を放射する。
一体型デバイス25−200に試料ウェル25−203およびセンサ25−275を有することは、光が試料ウェル25−203からセンサ25−215まで移動する光学距離を低減し得る。一体型デバイス25−200またはデバイス内のコンポーネントの寸法は、特定の光学距離に対して構成されてもよい。デバイスのコンポーネントおよび/または1つもしくは複数の層の材料の光学的特質は、試料ウェルとセンサとの間の光学距離を決定することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層の厚さは、画素中の試料ウェルとセンサとの間の光学距離を決定することができる。さらにまたはあるいは、一体型デバイス25−200の1つまたは複数の層を形成する材料の屈折率は、画素中の試料ウェル25−203とセンサ25−275との間の光学距離を決定することができる。画素中の試料ウェルとセンサとの間のそのような光学距離は、1mm未満、100μm(ミクロン)未満、25ミクロン未満、および/または10ミクロン未満であってもよい。導波路25−220から試料ウェル25−203への励起エネルギーのカップリングを改善するために、1つまたは複数の層が試料ウェル層25−201と導波路層25−220との間に存在してもよい。図25に示された一体型デバイス25−200は、単層25−210のみを例示しているが、複数の層が試料ウェル25−203と導波路25−220との間に形成されてもよい。層25−210は、導波路25−220から試料ウェル25−203への励起エネルギーのカップリングを改善する光学的特質を備えて形成されてもよい。層25−210は、励起エネルギーの散乱および/もしくは吸収を低減し、ならびに/または試料ウェル25−203中の試料からの発光を増大させるように構成されてもよい。層25−210は、いくつかの実施形態によれば、光がほとんど減衰することなく試料ウェル25−203へおよび試料ウェル25−203から移動し得るように光学的に透明であってもよい。いくつかの実施形態では、層25−210を形成するのに誘電材料が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、層25−210内および/または層25−210と試料ウェル層25−201との間のインタフェースにおける励起エネルギーカップリングコンポーネントが、導波路25−220から試料ウェル25−203への励起エネルギーのカップリングを改善するために提供されてもよい。一例として、試料ウェル層25−201と層25−210との間のインタフェースに形成されるエネルギー収集コンポーネント25−215は、導波路25−220から試料ウェル25−203への励起エネルギーのカップリングを改善するように構成されてもよい。エネルギー収集コンポーネント25−215は任意選択であり、いくつかの実施形態では、導波路25−220および試料ウェル25−203の構成は、励起エネルギー収集コンポーネント25−215の存在なしに励起エネルギーの適切なカップリングを可能にすることができる。
試料ウェル25−203中の試料から放射される発光光またはエネルギーは、様々な方法でセンサ25−275に送信され得、そのいくつかの例が以下に詳細に記載される。いくつかの実施形態は、特定の波長の光が、この特定の波長の光を検出することに特化されたセンサ25−275のエリアまたは部分へ向けられる可能性を増大させるための光学コンポーネントを使用してもよい。センサ25−275は、異なる発光マーカーからの放射に対応し得る異なる波長の光を同時に検出するための複数の部分を含んでもよい。
試料ウェル25−203からセンサ25−275までの発光の収集を改善するように構成され得る1つまたは複数の層が、試料ウェル25−203とセンサ25−275との間に存在してもよい。発光誘導コンポーネントは、試料ウェル層25−201と層25−210との間のインタフェースにあってもよい。エネルギー収集コンポーネント25−215は、センサ25−275への放射エネルギーに集中してもよく、さらにまたはあるいは、異なる特性のエネルギーまたは波長を有する放射エネルギーを空間的に分離してもよい。そのようなエネルギー収集コンポーネント25−215は、発光をセンサ25−275へと向かわせるための格子構造を含み得る。いくつかの実施形態では、格子構造は、一連の同心円リング、すなわち「ブルズアイ」の格子構造構成であってもよい。同心円状格子は、試料ウェル層25−201の底面から突き出てもよい。円形格子は、シグナル光の拡散を減少させシグナル光を関連センサ25−275へと向かわせるのに使用され得るプラズモン素子の機能を果たすことができる。そのようなブルズアイ格子は、発光をより効率的にセンサ25−275へと向かわせることができる。
層25−225は、導波路に隣接して形成され得る。層25−225の光学的特質は、試料ウェルからセンサ25−275までの発光の収集を改善するように選択され得る。いくつかの実施形態では、層25−225は誘電材料であってもよい。バッフルが試料ウェル層25−201とセンサ25−275との間に形成されてもよい。バッフル25−240は、センサ25−275が試料ウェル25−203に対応する発光を受信し、他の試料ウェルからの発光および反射/散乱励起を低減するように構成されてもよい。フィルタリング素子25−260は、センサ25−275に到達する励起エネルギーを低減するように配置および構成されてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタリング素子25−260は、試料を標識するのに使用される1つまたは複数のマーカーの放射エネルギーを選択的に送信するフィルターを含んでもよい。各試料ウェルが対応するセンサを有する、試料ウェルのアレイおよびセンサのアレイを用いた実施形態では、各試料ウェルに対応するバッフルは、試料ウェルに対応するセンサにより収集される他の試料ウェルからの発光、ならびに反射および/または散乱励起光を低減するように形成され得る。
センサへの励起エネルギーの送信を低減するように、1つまたは複数の層が、導波路25−220とセンサ25−275との間に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタリング素子が、導波路25−220とセンサ25−275との間に形成されてもよい。そのようなフィルタリング素子は、センサ25−275への励起エネルギーの送信を低減し、一方で試料ウェルからの発光がセンサ25−275により収集されるようにするために構成されてもよい。
放射エネルギーは、センサ25−275により検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。電気信号は、その後のシグナル処理のため、1つまたは複数の列または行伝導ライン(不図示)に沿って基板25−200上の統合電子回路へ送信され得る。
図25の上記の記載は、いくつかの実施形態による器具のいくつかのコンポーネントの概要である。いくつかの実施形態では、図25の1つまたは複数の素子はなくてもよく、または異なる位置にあってもよい。一体型デバイス25−200のコンポーネントおよび励起源25−230は、以下により詳細に記載される。
A.励起源カップリング領域
一体型デバイスは、外部励起エネルギー源とカップリングし、一体型デバイスの画素エリア中の少なくとも1つの画素へと励起を導くように構成されている励起源カップリング領域を有することができる。励起源カップリング領域は、光を少なくとも1つの導波路にカップリングするように構成されている1つまたは複数の構造を含むことができる。励起エネルギーを導波路にカップリングするための任意の適切なメカニズムが使用され得る。
一体型デバイスの励起源カップリング領域は、外部励起源とカップリングするように構成されている構造コンポーネントを含んでもよい。一体型デバイスは、一体型デバイスの表面に近接して配置された外部励起源とカップリングし、一体型デバイスの少なくとも1つの導波路へと光を導くように構成されている格子カプラを含んでもよい。サイズ、形状、および/または格子構成などの格子カプラの特徴は、励起源からの励起エネルギーの導波路へのカップリングを改善するように形成され得る。格子カプラは、構造コンポーネント間の間隔が光を伝播するように働き得る1つまたは複数の構造コンポーネントを含むことができる。格子カプラの1つまたは複数の寸法は、特定の特徴的な波長を有する光の望ましいカップリングを提供することができる。
一体型デバイスは、導波路の一端にテーパー領域を有する導波路も含むことができる。導波路における光伝播の方向に対して垂直な導波路の1つまたは複数の寸法は、導波路の一端でより大きく、導波路のテーパー領域を形成してもよい。いくつかの実施形態では、導波路のテーパー領域は、導波路の一端でより大きく、および導波路の長さに沿ってより小さくなる、光の伝播に対して垂直なおよび一体型デバイスの表面に対して平行な寸法を有してもよい。格子カプラを含む実施形態では、テーパー領域は、テーパー領域のより大きな末端が格子カプラの最も近くに位置するように、格子カプラに近接して配置され得る。テーパー領域は、導波路の1つまたは複数の寸法を拡大して、導波路と格子カプラとのモード重複の改善を可能にすることにより、格子カプラと導波路との間の光のカップリングを改善するためのサイズおよび形状であってもよい。このようにして、一体型デバイスの表面に近接して配置された励起源は、格子カプラを介して光を導波路にカップリングすることができる。格子カプラおよび導波路テーパーのそのような組合せは、一体型デバイスに対する励起源のアライメントおよび位置決めにおいてより多くの公差を可能にし得る。
格子カプラは、一体型デバイスの画素の外部の一体型デバイスの領域内に配置されてもよい。一体型デバイスの表面において、画素の試料ウェルは、励起源カップリング領域から離れた表面の領域を占めてもよい。励起源カップリング領域の表面に近接して配置された励起源は、格子カプラとカップリングすることができる。試料ウェルは、画素のパフォーマンスに対する励起源からの光の干渉を低減するために、励起源カップリング領域から離れて配置されてもよい。一体型デバイスの格子カプラは、導波路を含む一体型デバイスの1つまたは複数の層内に形成されてもよい。このようにして、一体型デバイスの励起源カップリング領域は、一体型デバイスの、導波路と同じ平面内に格子カプラを含み得る。格子カプラは、ビーム幅、入射角度、および/または入射励起エネルギーの偏光を含む、ビームパラメータの特定のセットに対して構成されてもよい。
一体型デバイス26−200の断面図が図26に示されている。一体型デバイス26−200は、一体型デバイス26−200の層26−223中に形成された少なくとも1つの試料ウェル26−222を含む。一体型デバイス26−200は、一体型デバイス26−200の実質的に同じ平面に形成された格子カプラ26−216および導波路26−220を含む。いくつかの実施形態では、格子カプラ26−216および導波路26−220は、一体型デバイス26−200の同一層から形成され、同一材料を含み得る。一体型デバイス26−200の励起源カップリング領域26−201は、格子カプラ26−216を含む。図26に示されているように、試料ウェル26−222は、励起源カップリング領域26−201の外部の一体型デバイス26−200の表面に配置される。一体型デバイス26−200に対して配置された励起源26−214は、励起源カップリング領域26−201内の一体型デバイス26−200の表面26−215への入射励起エネルギーを提供することができる。格子カプラ26−216を励起源カップリング領域26−201内に配置することにより、格子カプラ26−216は、励起源26−214からの励起エネルギーとカップリングし、励起エネルギーを導波路26−220にカップリングすることができる。導波路26−220は、1つまたは複数の試料ウェル26−222の近くに励起エネルギーを伝播するように構成される。
格子カプラは、1つまたは複数の材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、格子カプラは導波路中の光の伝播に対して平行な方向に沿って異なる材料の交互領域を含んでもよい。図26に示されているように、格子カプラ26−216は、材料26−224により囲まれた構造を含む。格子カプラを形成する1つまたは複数の材料は、光をカップリングおよび伝播するのに適切な1つまたは複数の屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、格子カプラは、より大きな屈折率を有する材料により囲まれた1つの材料から形成される構造を含んでもよい。一例として、格子カプラは、窒化ケイ素から形成され、二酸化ケイ素により囲まれた構造を含んでもよい。
任意の適切な寸法および/または格子間間隔は、格子カプラを形成するのに使用され得る。格子カプラ26−216は、導波路を通じた光の伝播に対して垂直な寸法、例えば、図26に示されているようにy方向に沿って約50nm、約100nm、約150nm、または約200nmなどを有することができる。導波路中の光伝播に対して平行な方向に沿った、例えば、図26に示されているようにz方向に沿った格子カプラの構造間の間隔は、任意の適切な距離を有し得る。間隔格子間は約300nm、約350nm、約400nm、約420nm、約450nm、または約500nmであってもよい。いくつかの実施形態では、格子間間隔は格子カプラ内で可変であってもよい。格子カプラ26−216は、外部励起源26−214とカップリングするのに適切な面積を提供する、一体型デバイス26−200の表面26−215に対して実質的に平行な1つまたは複数の寸法を有することができる。格子カプラ26−216の面積は、ビームが格子カプラ26−215と重複するように、励起源26−214からの光ビームの1つまたは複数の寸法と一致してもよい。格子カプラは、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、または約40ミクロンのビーム直径に対して構成される面積を有してもよい。
一体型デバイスは、光を反射するように構成されている、励起源の反対側の格子カプラの側面に形成された層を含むことができる。層は、格子カプラを通過する励起エネルギーを格子カプラに向かって反射することができる。一体型デバイスに層を含めることにより、導波路への励起エネルギーのカップリング効率が改善され得る。反射層の例は、図26に示された一体型デバイス26−200の層26−218である。層26−218は、一体型デバイス26−200の励起源カップリング領域26−201内に配置され、格子カプラ26−216に向かって光を反射するように構成される。層26−218は、励起源26−214からの入射励起エネルギーの反対側の格子カプラ26−216の側面に近接して形成される。一体型デバイス26−200の画素の外部の層26−218を配置することは、画素のパフォーマンス能力に対する層26−218の干渉を低減し得る。層26−218は、任意の適切な材料を含むことができる。層26−218は、1つまたは複数の励起エネルギーに対して実質的に反射され得る。いくつかの実施形態では、この層は、Al、AlCu、および/またはTiNを含んでもよい。
B.導波路
一体型デバイスは、所望の量の励起エネルギーを一体型デバイスの1つまたは複数の試料ウェルへ加えるように配列された1つまたは複数の導波路を含んでもよい。導波路は、励起エネルギーが導波路に沿って伝播するとき、励起エネルギーの一部が1つまたは複数の試料ウェルにカップリングするように1つまたは複数の試料ウェルの近傍に配置される。導波路は、励起エネルギーを複数の画素にカップリングし、バス導波路としての機能を果たすことができる。例えば、単一導波路は、励起エネルギーを一体型デバイスの画素の列または行へ加えることができる。いくつかの実施形態では、導波路は、複数の特徴的な波長を有する励起エネルギーを伝播するように構成されてもよい。一体型デバイスの画素は、励起エネルギーを導波路から試料ウェルの近傍へと向かわせるように構成されている追加の構造(例えば、マイクロキャビティ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、導波路は、試料ウェルおよび/または試料ウェルの近傍の領域に伸長するように構成されているエバネッセントテールを有する光学モードを有してもよい。試料ウェル近くに位置された追加のエネルギーカップリング構造は、エバネッセントテールからのエネルギーを試料ウェルへカップリングすることができる。
一体型デバイスの導波路の1つまたは複数の寸法は、導波路に沿ったおよび/または1つまたは複数の試料ウェルへの励起エネルギーの所望の伝播を提供し得る。導波路は、断面幅と見なされ得る、光の伝播に対して垂直なおよび導波路の平面に対して平行な寸法を有することができる。導波路は、約0.4ミクロン、約0.5ミクロン、約0.6ミクロン、約0.65ミクロン、約0.8ミクロン、約1ミクロン、または約1.2ミクロンの断面幅を有してもよい。導波路は、断面高さと見なされ得る、光の伝播に対して垂直なおよび導波路の平面に対して垂直な寸法を有することができる。導波路は、約0.05ミクロン、約0.1ミクロン、約0.15ミクロン、約0.16ミクロン、約0.17ミクロン、約0.2ミクロン、または約0.3ミクロンの断面高さを有してもよい。いくつかの実施形態では、導波路は断面高さより大きな断面幅を有する。導波路は、試料ウェル26−222と導波路26−220との間の、約0.3ミクロン、0.5ミクロン、または約0.7ミクロンである図26に示された距離Dなどの、一体型デバイス内の1つまたは複数の試料ウェルから特定の距離に配置されてもよい。
例示的な実施形態では、導波路は、約0.5μmの断面幅および約0.1μmの断面高さを有してもよく、ならびに試料ウェル層の約0.5μm下に配置されてもよい。別の例示的な実施形態では、導波路は、約1μmの断面幅および0.18μmの断面高さを有してもよく、ならびに試料ウェル層の0.3μm下に配置されてもよい。
導波路は、単一横放射モードを支持する寸法であってもよく、またはマルチ横放射モードを支持する寸法であってもよい。いくつかの実施形態では、導波路の1つまたは複数の寸法は、導波路が単一横モードのみを維持するように働いてもよく、TEまたはTM偏光モードを選択的に伝播してもよい。いくつかの実装において、導波路は、これが導波路内の縦方向直立モードを支持するように、その末端に形成された高反射セクションを有してもよい。1つのモードを支持することにより、導波路は、異なる伝播定数を有するモードのクロスカップリングからのモード干渉効果が低減され得る。いくつかの実施形態では、高反射セクションは単一の高反射表面を備える。他の実施形態では、高反射セクションは、全体として高反射率をもたらす複数の反射構造を備える。導波路は、単一励起源から複数の励起エネルギービームを生み出す導波路ビームスプリッタを用いて、より高い出力強度を有する単一励起源から励起エネルギーを分割するように構成され得る。そのようなビームスプリッタは、エバネッセントカップリングメカニズムを含み得る。さらにまたはあるいは、フォトニック結晶が、励起エネルギーの伝播を改善するために導波路構造において、および/または励起エネルギーの散乱を低減するために導波路を取り囲む材料において使用されてもよい。
一体型デバイスの画素中の他のコンポーネントに関して、導波路の位置および配列は、試料ウェルに向かう励起エネルギーのカップリングを改善し、センサによる放射エネルギーの収集を改善し、および/または励起エネルギーにより導入されるシグナルノイズを低減するように構成され得る。導波路は、試料ウェルから放射される放射エネルギーによる導波路中で伝播している励起エネルギーの干渉を低減するように、試料ウェルに対してサイズおよび/または配置決めされてもよい。一体型デバイス内の導波路の位置決めおよび配列は、導波路および導波路を取り囲む材料の屈折率に依存し得る。例えば、導波路に沿った光伝播の方向に対して垂直な導波路、および導波路の平面内の寸法は、試料ウェルからの放射エネルギーの相当量が、画素のセンサへ伝播するときに導波路を通過できるように増大されてもよい。いくつかの実装において、試料ウェルと導波路との間の距離および/または導波路厚さは、導波路と周囲材料との間の1つまたは複数のインタフェースからの反射を低減するように選択されてもよい。いくつかの実施形態によれば、導波路による放射エネルギーの反射は、いくつかの実施形態では約5%未満、いくつかの実施形態では約2%未満、およびいくつかの実施形態ではさらに約1%未満まで低減され得る。
励起エネルギーを伝播する導波路の能力は、導波路の材料および導波路を取り囲む材料の両方に依存し得る。このようにして、導波路構造は、図26に例示されているように導波路26−220などのコア材料、および領域26−224などのクラッド材料を含み得る。導波路および周囲材料の両方の材料は、特徴的な波長を有する励起エネルギーの導波路を通じた伝播を可能にすることができる。導波路または周囲材料のどちらかの材料が、特定の屈折率または屈折率の組合せについて選択されてもよい。導波路材料が導波路周囲材料より低い屈折率を有してもよい。例示の導波路材料には、窒化ケイ素(SixNy)、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル(TaO2)、二酸化アルミニウムが含まれる。例示の導波路周囲材料には、二酸化ケイ素(SiO2)および酸化ケイ素が含まれる。導波路および/または周囲材料は、1つまたは複数の材料を含むことができる。いくつかの例において、導波路および/または周囲材料の所望の屈折率は、1つを超える材料を含む導波路および/または周囲材料を形成することにより得られ得る。いくつかの実施形態では、導波路は窒化ケイ素を含み、周囲材料は二酸化ケイ素を含む。
導波路を単一導波路から複数の導波路に分割することは、励起エネルギーが一体型デバイスの試料ウェルの複数の列または行に達するのを可能にし得る。励起源は入力導波路にカップリングされてもよく、入力導波路は複数の出力導波路に分割されてもよく、各出力導波路は試料ウェルの列または行へ励起エネルギーを加える。導波路を分割するおよび/または組み合わせるための任意の適切な手法が使用され得る。そのような導波路分割および/または組合せ法には、スタースプリッタもしくはカプラ、Yスプリッタ、および/またはエバネッセントカプラが含まれ得る。さらにまたはあるいは、マルチモード干渉スプリッタ(MMI:multi−mode interference splitter)が、導波路を分割するおよび/または組み合わせるのに使用されてもよい。これらの導波路の分割および/または組合せ法の1つまたは複数が、励起エネルギーを試料ウェルへ向かわせるのに使用され得る。
C.試料ウェル
いくつかの実施形態によれば、試料ウェル27−210は、一体型デバイスの1つまたは複数の画素において形成されてもよい。試料ウェルは、一体型デバイスの単一画素27−100を例示する図27Aおよび図27Bに描かれているように、基板27−105の表面に形成された、ならびに試料27−101が基板の表面に沈殿された標本から試料ウェルの内外へ拡散し得るように配列された小さな容積または領域を備えてもよい。様々な実施形態では、試料ウェル27−210は、導波路27−240からの励起エネルギーを受信するように配列されてもよい。試料ウェルへ拡散する試料27−101は、接着剤27−211により試料ウェルの励起領域27−215内に一時的または永久的に保持され得る。励起領域において、試料は励起エネルギー(例えば、励起放射27−247)により励起され得、その後、観察および評価されて試料を特徴付けることができる放射を放射し得る。
作動のさらなる詳細において、分析される少なくとも1つの試料27−101は、例えば、試料の流体懸濁液を含有する標本(不図示)から試料ウェル27−210へ導入されてもよい。導波路27−240からの励起エネルギーは、試料が試料ウェル内の励起領域27−215内にある間に、試料または試料に付着された少なくとも1つのマーカーもしくは試料と関連付けられたタグに含まれる少なくとも1つのマーカーを励起することができる。いくつかの実施形態によれば、マーカーは発光分子(例えば、フルオロフォア)または量子ドットであってもよい。いくつかの実装において、試料を分析するのに使用される1つを超えるマーカーがあってもよい(例えば、その全体が参照により援用される、J.エイドら(J.Eid,et al.)による「単一ポリメラーゼ分子からのリアルタイムDNA配列決定(Real−Time DNA Sequencing from Single Polymerase Molecules)」、Science 323、p.133(2009)に記載された単一分子遺伝子配列決定のために使用される異なるマーカーおよびタグ)。励起中および/または励起後、試料またはマーカーは放射エネルギーを放射し得る。複数のマーカーが使用される場合、これらは異なる特性のエネルギーで放射し得、および/または異なる寿命を含む異なる時間特性で放射し得る。試料ウェルからの放射エネルギーは、センサ27−260へ放射またはさもなければ移動することができ、そこで放射エネルギーは検出され、試料を特徴付けるのに使用され得る電気信号に変換される。
いくつかの実施形態によれば、試料ウェル27−210は、図27Bに描かれているように部分的に密閉された構造であってもよい。いくつかの実装において、試料ウェル27−210は、材料27−230の少なくとも1つの層に形成されたサブミクロンサイズの穴または間隙(少なくとも1つの横断寸法Dswにより特徴付けられた)を備える。いくつかの場合において、穴は「ナノ開口部」と呼ばれ得る。試料ウェルの横断寸法は、いくつかの実装においてより大きなおよびより小さなサイズが使用され得るが、いくつかの実施形態によれば約20ナノメートル〜約1ミクロンであってもよい。試料ウェル27−210の容積は、いくつかの実装において約10−21リットル〜約10−15リットルであってもよい。試料ウェルは、伝播モードを支持し得る、または支持し得ない導波路として形成されてもよい。試料ウェルは、伝播モードを支持し得る、または支持し得ない導波路として形成されてもよい。いくつかの実施形態では、試料ウェルは、直径(または最大横断寸法)Dswを有するシリンダー形状(または類似の形状)を有するゼロモード導波路(ZMW:zero−mode waveguide)として形成されてもよい。ZMWは、穴を通じた伝播光学モードを支持しないナノスケール穴として単一金属層に形成されてもよい。
試料ウェル27−210は容積が小さいため、試料が、天然の環境において見出される濃度に類似した濃度で調査標本中に濃縮されることがあっても、各画素における単一試料事象(例えば、単一分子事象)の検出が可能となり得る。例えば、マイクロモル濃度の試料が、一体型デバイスと接触して置かれた標本中に存在してもよいが、画素レベルでは約1つの試料(または単一分子事象)のみが常時、試料ウェル内にあり得る。統計的に、いくつかの試料ウェルは試料を含有し得、いくつかは1つを超える試料を含有し得ない。しかし、かなりの数の試料ウェルが単一試料を含有し得(例えば、いくつかの実施形態では少なくとも30%)、その結果、単一分子分析が多数の画素について同時に実施され得る。単一分子事象または単一試料事象は各画素で分析され得るため、一体型デバイスは、さもなければアンサンブル平均では気づかれ得ない稀な事象を検出できるようにする。
試料ウェルの横断寸法Dswは、いくつかの実施形態では約500ナノメートル(nm)〜約1ミクロン、いくつかの実施形態では約250nm〜約500nm、いくつかの実施形態では約100nm〜約250nm、およびさらにいくつかの実施形態では約20nm〜約100nmであってもよい。いくつかの実装によれば、試料ウェルの横断寸法は約80nm〜約180nm、または励起波長もしくは放射波長の約4分の1〜8分の1である。他の実装によれば、試料ウェルの横断寸法は約120nm〜約170nmである。いくつかの実施形態では、試料ウェル27−210の奥行きまたは高さは、約50nm〜約500nmであってもよい。いくつかの実装において、試料ウェル27−210の奥行きまたは高さは、約80nm〜約250nmであってもよい。
サブ波長の横断寸法を有する試料ウェル27−210は、少なくとも2つの方法で一体型デバイスの画素27−100の作動を改善することができる。例えば、標本の反対側から試料ウェルへの入射励起エネルギーは、指数関数的に減少する力で励起領域27−215にカップリングし、試料ウェルを通じて標本へ伝播しないことがある。結果として、励起エネルギーは、これが対象の試料を励起する励起領域において増大され、バックグラウンドノイズに寄与する他の試料を励起する標本において低減される。また、試料ウェルを通って上方へ伝播する放射が高度に抑制されることから、(例えば、センサ27−260により近い)ウェルの底部で保持されている試料からの放射は、好ましくはセンサへ向けられる。これらの効果は両方とも、画素におけるシグナル対ノイズ比を改善することができる。本発明者らは、画素におけるシグナル対ノイズレベルをさらに引き上げるために改善され得る試料ウェルのいくつかの態様を認識している。これらの態様は試料ウェル形状および構造に関し、また、試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングおよび試料ウェルから放射される放射を助ける、隣接する光学およびプラズモン構造(以下に記載された)にも関する。
いくつかの実施形態によれば、試料ウェル27−210は、対象の特定の波長に対する伝播モードを支持しないように構成されているナノ開口部として形成されてもよい。いくつかの例において、全てのモードが閾値波長以下であるナノ開口部が構成され、該開口部はサブカットオフナノ開口部(SCN:sub−cutoff nanoaperture)であってもよい。例えば、試料ウェル27−210は、伝導層にシリンダー形状の穴または穿孔を備えてもよい。試料ウェルの横断面は丸い必要はなく、いくつかの実施形態では楕円形、正方形、長方形、または多角形であってもよい。励起エネルギー27−247(例えば、可視または近赤外放射)は、図27Bに描かれているように、ウェルの第1の末端の試料ウェルの壁27−214により規定され得る入口開口部27−212を通じて試料ウェルに入ることができる。SCNとして形成される場合、励起エネルギーは、ナノ開口部の長さに沿って(例えば標本の方向に)指数関数的に減衰し得る。いくつかの実装において、導波路は試料から放射される放射のためのSCNを備えてもよいが、励起エネルギーのためのSCNでなくてもよい。励起エネルギーは、放射される放射より短い波長を有し得ることから、例えば、試料ウェルにより形成される開口部および導波路は、励起エネルギーのための伝播モードを支持するのに十分大きくなり得る。より長い波長の放射は、導波路における伝播モードのカットオフ波長を超える可能性がある。いくつかの実施形態によれば、試料ウェル27−210は、励起エネルギーの最大強度が、試料ウェル27−210の入口の試料ウェルの励起領域27−215に局在化される(例えば、図に描かれているように層27−235と層27−230との間のインタフェース近くに局在化される)ように、励起エネルギーのためのSCNを備えてもよい。励起エネルギーのそのような局在化は、試料からの放射エネルギーの局在化を改善し、単一試料(例えば、単一分子)から放射される観察される放射を限定することができる。
いくつかの実施形態によれば、画素27−100は追加の構造を含んでもよい。例えば、画素27−100は、試料ウェル内の試料への励起エネルギーのカップリングに影響を与える1つまたは複数の励起カップリング構造27−220を含むことができる。画素は、試料ウェル内の試料からの放射エネルギーをセンサ27−260へ向かわせることに影響を与える放射誘導構造27−250も含むことができる。
試料ウェルに局在化された励起エネルギーの強度を改善するために、本発明者らにより他の試料ウェル構造が開発さおよび試験された。図27Cは、試料ウェルの励起端に空洞またはディボット27−216を含む試料ウェルの実施形態を描く。ディボット27−216を試料ウェルに加えることにより、いくつかの実施形態によれば、試料がより高い励起強度の領域に移動できるようになる。いくつかの実装において、ディボットの形状および構造は局所励起場を変化させ(例えば、層27−235と試料ウェル中の流体との間の屈折率の差のために)、ディボット中の励起エネルギーの強度をさらに増大させることができる。ディボット27−216は、試料ウェル27−214を占める試料容積の一部およびディボット27−216が、層27−216を形成する材料により取り囲まれるように、層27−235内に形成されてもよい。
ディボットは任意の適切な形状を有することができる。ディボットは、試料ウェルの横断形状に実質的に等しい横断形状、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形等を有することができる。いくつかの実施形態では、ディボットの側壁は、試料ウェルの壁のように実質的に一直線および垂直であってもよい。いくつかの実装において、ディボットの側壁は、図に描かれているように傾斜および/または湾曲していてもよい。ディボットの横断寸法は、いくつかの実施形態では試料ウェルの横断寸法とほぼ同じサイズであってもよく、いくつかの実施形態では試料ウェルの横断寸法より小さくてもよく、またはいくつかの実施形態では試料ウェルの横断寸法より大きくてもよい。ディボット27−216は、試料ウェル層27−230を約10nm〜約200nm超えて伸長してもよい。いくつかの実装において、ディボットは、試料ウェル層27−230を約50nm〜約150nm超えて伸長してもよい。いくつかの実施形態では、ディボットは、試料ウェル層27−230を約150nm〜約250nm超えて伸長してもよい。ディボットを形成することにより、励起領域27−215は、図27Cに描かれているように試料ウェルの外側に伸長することができる。
いくつかの実施形態は、ディボットが導波路に近接して配置された試料ウェルを有する一体型デバイスに関する。図28は、層28−630および層28−636に形成された試料ウェル28−632を有する一体型デバイスを示す。層28−630は金属層であってもよく、1つまたは複数の金属(例えば、Al)を含んでもよい。層28−636は誘電層の機能を果たしてもよく、1つまたは複数の誘電材料(例えば、二酸化ケイ素)を含んでもよい。試料ウェル28−632は、層28−630および/または層28−636に対して平行な方向に可変寸法を有してもよい。試料ウェル28−632は、一体型デバイスの少なくとも層28−630内でz方向に沿って寸法D2を有してもよく、いくつかの実施形態では、寸法D2は、試料ウェル28−632の直径と見なされてもよい。試料ウェル28−632の寸法D2は、約700nm、約800nm、約900nm、約1ミクロン、または約1.1ミクロンであってもよい。試料ウェル28−632は、一体型デバイスの層28−636内でz方向に沿って寸法D1を有してもよく、いくつかの実施形態では、試料ウェル28−632の表面における直径と見なされてもよい。寸法D1は、約100nm、約150nm、約200nm、または約250nmであってもよい。寸法D1を有する試料ウェル28−632の表面は、導波路28−634からx方向に沿って寸法d1に配置される。距離d1により導波路28−634に近接して試料ウェル28−632を配置することは、導波路28−634から試料ウェル28−632への励起エネルギーのカップリングの改善を可能にし得る。寸法d1は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、または約250nmであってもよい。
D.試料ウェルへの励起エネルギーのカップリング
一体型デバイスの1つまたは複数の試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングは、1つまたは複数の手法により生じ得る。先に論じられているように、いくつかの実施形態では、導波路は、1つまたは複数の試料ウェルに対する励起源とカップリングするように配置される。励起エネルギーが導波路に沿って伝播するとき、励起エネルギーの一部は、様々な光カップリング法により1つまたは複数の試料ウェルにカップリングされ得る。例えば、導波路は、励起エネルギーを実質的に一方向に導き得、この一方向に対して垂直なエバネッセント波またはテールが形成され、およびいくつかの例においては導波路構造の外側に位置され得る。そのようなエバネッセントテールは、励起エネルギーの一部を1つまたは複数の試料ウェルへと向かわせることができる。いくつかの実施形態では、試料ウェル層は、励起エネルギーを試料ウェル内の局在化領域へ向かわせるように設計および構成されてもよい。試料ウェルは、励起エネルギーが試料へと向けられるように、試料を試料ウェルの局在化領域内に保持するように構成されてもよい。
さらに、1つまたは複数のコンポーネントが、試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングを改善または増強するために一体型デバイスに形成されてもよい。これらの追加のコンポーネントは、画素内に形成されてもよく、導波路からの励起エネルギーの、画素および試料ウェルへのカップリングをもたらしてもよい。画素内に位置される1つまたは複数のコンポーネントは、導波路からの励起エネルギーの一部を画素に入り込ませるように働くことができる。そのようなコンポーネントは、格子構造、散乱構造、マイクロキャビティおよび/またはナノアンテナなどの光学的構造を含むことができる。1つまたは複数のこれらのコンポーネントの特徴または構成は、試料ウェルの列または行内の特定の量の励起エネルギーを各試料ウェルへカップリングするために選択され得る。励起エネルギーを1列の画素に提供するように構成されている導波路は、各画素領域中のコンポーネントにカップリングして、画素の該列中の各画素に励起エネルギーの一部を提供することができる。導波路が、励起源からの励起エネルギーを1つまたは複数の画素へと向かわせるように構成される場合、導波路はバス導波路と呼ばれ得る。
試料ウェルに隣接して配置されたコンポーネントは、導波路からの励起エネルギーの試料ウェルへのカップリングを改善することができる。そのようなコンポーネントは、タップおよび/またはマイクロキャビティと呼ばれ得る。マイクロキャビティは、励起エネルギーが試料ウェルに達するように、導波路からの励起エネルギーの一部をそらせることができる。1つまたは複数のマイクロキャビティは、励起エネルギーを試料ウェルにカップリングするのに使用され得る。1つまたは複数のマイクロキャビティは、金属損失を含む導波路からの励起エネルギーの損失を低減することができる。1つまたは複数のマイクロキャビティは、励起エネルギーを試料ウェルに集中させるレンズの機能を果たすことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマイクロキャビティは、試料ウェル中のマーカーからの発光のセンサへの誘導を改善することができる。マイクロキャビティは、シリンダー、凸面状、凹面状、長方形、球形、もしくは楕円形構成、または任意の他の適切な形状を有することができる。マイクロキャビティは、任意の適切な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロキャビティは窒化ケイ素を含んでもよい。
1つまたは複数のマイクロキャビティは、試料ウェルが存在する一体型デバイスの最上部から眺められる場合、励起エネルギーを試料ウェルへと向かわせる導波路の少なくとも一部と重複する場合がある。導波路の厚さは、励起エネルギーの損失を低減し、1つまたは複数のマイクロキャビティへの励起エネルギーのカップリングを改善するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、試料ウェルの列に沿ったマイクロキャビティは、各試料ウェルに対する導波路間でカップリング強度が異なってもよい。マイクロキャビティは、励起エネルギーが導波路から各試料ウェルへ向けられるときの導波路内のパワーの低下を調整するために、励起エネルギーの伝播方向に沿ってカップリングを増大させることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマイクロキャビティは試料ウェルに隣接している。試料ウェルの中心とマイクロキャビティの中心の位置の間にオフセット距離があってもよい。他の実施形態では、1つのマイクロキャビティは、試料ウェルが存在する一体型デバイスの最上部から眺められる場合、少なくとも試料ウェルの一部およびマイクロキャビティの一部が重複するように、試料ウェルの下に位置される。
一体型デバイスの導波路の1つまたは複数の寸法は、導波路の中を通る光伝播の方向に導波路の長さに沿って異なってもよい。導波路に沿って1つまたは複数の寸法を変えることにより、導波路により複数の試料ウェルへ提供される励起エネルギーのカップリング効率および量の実質的な均一性を改善することができる。いくつかの実施形態では、導波路の断面幅は、画素の列または行に沿って異なってもよい。導波路は、導波路の中を通る励起エネルギーの伝播の方向に沿って導波路の断面幅が減少するようにテーパーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、テーパー導波路は、列中の画素がマイクロキャビティおよび試料ウェルを含む1列の画素に関する類似したカップリング効率のために構成されてもよい。テーパー導波路および/またはマイクロキャビティの1つまたは複数の寸法を変える組合せは、励起エネルギーが列中の各試料ウェルにカップリングされるときの導波路の長さに沿った励起エネルギーのパワーの低下を調整することができる。
いくつかの実施形態では、導波路は、エバネッセント場により試料ウェルにカップリングすることができる。いくつかの実施形態では、試料ウェルに近接して配置された同心円の格子リングを有するブルズアイ格子構造は、導波路から試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングを改善することができる。いくつかの実施形態では、導波路は、導波路中で伝播している励起エネルギーからのエバネッセント場が試料ウェルにカップリングするように、試料ウェルの近傍において断面幅が減少した領域を含んでもよい。1列の画素に対して、導波路は、列中の試料ウェル間のカップリング均一性および効率を改善するために、導波路の長さに沿って断面幅が減少した複数の領域を含んでもよい。このようにして、導波路は、導波路に沿った特定の位置においてすぼまったセクションを有すると見なされ得る。
1つまたは複数の試料ウェル有する一体型デバイスの層は、導波路の中を通る光の伝播を干渉する場合がある。いくつかの実施形態では、試料ウェル層は金属(例えば、アルミニウム)で形成される。デバイスのパフォーマンスの損失を低減および改善するように、導波路から特定の距離に試料ウェル層を配置することが望ましい場合がある。これらの手法は、導波路から特定の距離に試料ウェル層を配置することにより達成される所望のパフォーマンスを可能にし得、一方で層内の試料ウェルが十分な量の励起エネルギーを受信できるようにする。
E.センサへの放射エネルギーの誘導
一体型デバイスは、試料ウェル中の試料からのセンサによる発光の収集を改善するように画素の試料ウェルとセンサとの間に配置された1つまたは複数のコンポーネントを含んでもよい。そのようなコンポーネントは、発光シグナル対バックグラウンドシグナルのシグナル対ノイズ比を改善して発光マーカーの検出を改善させることができる。いくつかのコンポーネントは、試料ウェルからの発光を対応する画素中のセンサへ向かわせることができる。いくつかの実施形態では、コンポーネントは、試料ウェルへの励起エネルギーの適切なカップリングおよび試料ウェルからの発光のカップリングの両方を提供してもよい。他のコンポーネント(例えば、フィルター)は、センサにより取得されたシグナルに対して寄与する、試料および/またはマーカーと関連付けられない励起エネルギーおよび他の光を低減することができる。
ブルズアイ格子は、試料ウェルの周囲の同心円の格子リングから形成され得る。ブルズアイ格子は、試料ウェルとカップリングして試料ウェルからの発光の伝播を改善することができる。ブルズアイ格子構造は、試料ウェルを有する画素中のセンサへと発光を向かわせることができる。いくつかの実施形態では、ブルズアイ格子により向けられる発光の有効直径は約5ミクロンである。いくつかの実施形態では、試料ウェルへ励起エネルギーを伝播させるための導波路および試料ウェルのカップリングのために提供される1つまたは複数のマイクロキャビティも、発光を試料ウェルからセンサへ向かわせることができる。
センサを中心とした間隙を有するバッフルが、試料ウェルとセンサとの間に形成されてもよい。図26に示されているように、バッフル層26−226は、試料ウェル26−22とセンサ層26−230との間に配置される。画素中のバッフルは、該画素に関する発光以外のエネルギーの収集を抑制するように設計され得る。試料ウェルおよびセンサと関連付けられたバッフルは、該センサと関連付けられた試料ウェルからの発光と関連付けられない近隣の画素からの発光、励起エネルギー、および他のエネルギーを低減しながら、試料ウェルからの発光がセンサに達するのを可能にすることができる。バッフルの間隙の寸法は、同じ画素上のブルズアイにより発光が向けられるように構成されてもよい。図26に示されているように、バッフル26−226は、層26−230に配置されたセンサまで発光を通過させるための、z方向に沿った間隙を有する。バッフルの材料は、特定の入射角での特定の光波長またはエネルギーの送信を低減することなど、特定の光学的特質について選択され得る。いくつかの実施形態では、バッフルは、異なる屈折率を有する材料の複数の層により形成されてもよい。バッフルは、シリコン、窒化ケイ素(Si3N4)、シリコン、窒化チタン(TiN)、およびアルミニウム(Al)の1つまたは複数の層を含んでもよい。バッフルを形成するように構成されている層は、約20nm、約20nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、または約90nmの断面高さを有してもよい。
フィルタリングコンポーネントが、センサによる励起エネルギーの収集を低減するために導波路とセンサとの間に形成されてもよい。励起エネルギーをフィルタリングするための任意の適切な方法が提供され得る。励起エネルギーをフィルタリングする手法は、光の1つまたは複数の特性に基づくフィルタリングを含んでもよい。そのような特性は、波長および/または偏光を含み得る。フィルタリングコンポーネントは、センサまで発光を通過させる一方、励起エネルギーの散乱を選択的に抑制することができる。図26に示された層26−228は、本明細書に記載された1つまたは複数のフィルタリングコンポーネントを含んでもよい。
一体型デバイスは、1つまたは複数の特徴的な波長の光を反射し、異なる特徴的な波長を有する光の送信を可能にするように構成されている波長フィルターを含んでもよい。いくつかの実施形態では、波長フィルターにより反射される光は、波長フィルターにより送信される光より短い特徴的な波長を有してもよい。マーカーを励起するのに使用される励起エネルギーは、典型的には、励起エネルギーによる励起状態に達する応答においてマーカーにより放射される発光より短い特徴的な波長を有することから、そのような波長フィルターは励起エネルギーを反射し、発光の送信を可能にすることができる。
F.センサ
時間ビン情報を取得することができる任意の適切なセンサが、発光マーカーの寿命を検出する測定のために使用されてもよい。例えば、「受信光子の時間的ビニングのための一体型デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」と題された米国特許出願第14/821,656号明細書は、光子の到達時間を決定することができるセンサを記載し、その全体が参照により援用される。センサは、各試料ウェルが試料ウェルからの発光を検出するための少なくとも1つのセンサ領域を有するように整列される。いくつかの実施形態では、一体型デバイスは、ガイガーモードアバランシェ光ダイオードアレイおよび/または単一光子アバランシェダイオードアレイ(SPAD:Geiger mode avalanche photodiode arrays and/or single
photon avalanche diode array)を含んでもよい。
本明細書に記載されるのは、入射光子の到達のタイミングを正確に測定する、または「時間ビニングする(time−bin)」ことができ、例えば、核酸の配列決定(例えば、DNA配列決定)などの様々な適用において使用され得る一体型光検出器である。いくつかの実施形態では、一体型光検出器は光子の到達をナノ秒またはピコ秒分解能で測定することができ、入射光子の到達の時間領域分析を容易にすることができる。
いくつかの実施形態は、入射光子に応答して電荷担体を生成し、時間基準(例えば、トリガ事象)に関して電荷担体が入射光子の到達により生成されるタイミングを区別することができる、光検出器を有する集積回路に関する。いくつかの実施形態では、電荷担体分離構造は、異なる時間に生成された電荷担体を分離し、異なる期間内に生成された電荷担体を集める1つまたは複数の電荷担体保管領域(「ビン」と呼ばれる)内へと電荷担体を向かわせる。各ビンは、選択された時間間隔内に生成された電荷担体を保管する。各ビン中に保管された電荷の読み出しは、各時間間隔内に到達した光子数に関する情報を提供することができる。そのような集積回路は、本明細書に記載されたものなど様々な適用のいずれかにおいて使用され得る。
光検出領域を有する集積回路および電荷担体分離構造の例が記載される。いくつかの実施形態では、集積回路は画素のアレイを含んでもよく、各画素は、以下に論じられるように、1つまたは複数の光検出領域および1つまたは複数の電荷担体分離構造を含んでもよい。図29Aは、いくつかの実施形態による画素29−900の略図を示す。画素29−900は、光子吸収/担体生成領域29−902(光検出領域とも呼ばれる)、担体移動/捕捉領域29−906、本明細書で「電荷担体保管ビン」または簡単に「ビン」とも呼ばれる1つまたは複数の電荷担体保管領域を有する担体保管領域29−908、および電荷担体保管ビンからの読み出しシグナルに対する読み出し回路29−910を含む。
光子吸収/担体生成領域29−902は、入射光子を光生成電荷担体に変換することができる半導体材料(例えば、シリコン)の領域であってもよい。光子吸収/担体生成領域29−902は光に曝露されてもよく、入射光子を受信してもよい。光子が光子吸収/担体生成領域29−902により吸収されるとき、該領域は電子/正孔対などの光生成電荷担体を生成し得る。光生成電荷担体は、本明細書で簡単に「電荷担体」とも呼ばれる。
電場は、光子吸収/担体生成領域29−902内に確立され得る。いくつかの実施形態では、電場は、担体移動/捕捉領域29−906内の変化する電場と区別された、「静的」であってもよい。光子吸収/担体生成領域29−902内の電場は、横方向コンポーネント、縦方向コンポーネント、または横方向および縦方向コンポーネントの両方を含むことができる。電場の横方向コンポーネントは、矢印により示されているように図29Aの下方向にあってもよく、光生成電荷担体を担体移動/捕捉領域106へと駆動する力を誘導する。電場は様々な方法で形成され得る。
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電極が光子吸収/担体生成領域29−902の上に形成されてもよい。電極は、これに電圧を加えて光子吸収/担体生成領域29−902内に電場を確立することができる。そのような電極は「フォトゲート」と呼ぶこともある。いくつかの実施形態では、光子吸収/担体生成領域29−902は、電荷担体が完全に枯渇しているシリコン領域であってもよい。
いくつかの実施形態では、光子吸収/担体生成領域29−902内の電場は、PN接合などの接合により確立されてもよい。光子吸収/担体生成領域29−902の半導体材料は、担体移動/捕捉領域29−906へと光生成電荷担体を駆動する力を誘導する電場を生成する方向および/または形状でPN接合を形成するようにドープされてもよい。いくつかの実施形態では、PN接合ダイオードのP単子は、この電圧を設定する単子に接続されてもよい。そのようなダイオードは、「ピン止め」光ダイオードと呼ばれてもよい。ピン止め光ダイオードは、その電圧を設定し、暗電流を低減することができる担体を引きつける単子により、表面で担体再結合を促すことができる。捕捉されることが望まれる光生成電荷担体は、表面の再結合エリアの下を通過することができる。いくつかの実施形態では、横方向電場は、半導体材料中の段階的ドーピング濃度を用いて確立されてもよい。
図29Aに例示されているように、光子は捕捉されてもよく、電荷担体29−901A(例えば、電子)は時間t1で生成されてもよい。いくつかの実施形態では、電位勾配は、光子吸収/担体生成領域29−902、および電荷担体29−901Aを図29Aの下方向に移動させる(図29Aに示された矢印により説明されているように)担体移動/捕捉領域29−906に沿って確立されてもよい。ポテンシャル勾配に応答して、電荷担体29−901Aは、時間t1の位置から時間t2の第2の位置、時間t3の第3の位置、時間t4の第4の位置、および時間t5の第5の位置まで移動することができる。電荷担体29−901Aは故に、ポテンシャル勾配に応答して担体移動/捕捉領域29−906へ移動する。
担体移動/捕捉領域29−906は半導体領域であってもよい。いくつかの実施形態では、担体移動/捕捉領域29−906は、担体移動/捕捉領域29−906が入射光から保護され得る(例えば、金属層などの、上を覆う不透明な材料により)ことを除いて、光子吸収/担体生成領域29−902(例えば、シリコン)と同じ材料の半導体領域であってもよい。
いくつかの実施形態では、および以下にさらに論じられるように、ポテンシャル勾配は、光子吸収/担体生成領域29−902および担体移動/捕捉領域29−906内で、これらの領域の上に配置された電極により確立されてもよい。しかし、本明細書に記載された手法は、電位勾配を生成するのに使用される電極の特定の位置については限定されない。また、本明細書に記載された手法は、電極を用いる電位勾配の確立にも限定されない。いくつかの実施形態では、電位勾配は、空間段階的ドーピングプロファイルを用いて確立されてもよい。任意の適切な手法が、電荷担体を光子吸収/担体生成領域29−902および担体移動/捕捉領域29−906に沿って移動させる電位勾配を確立するのに使用され得る。
電荷担体分離構造は、異なる時間に生成された電荷担体を分離できるように画素中に形成され得る。いくつかの実施形態では、電荷担体分離構造の少なくとも一部は、担体移動/捕捉領域29−906の上に形成されてもよい。以下に記載されるように、電荷担体分離構造は、担体移動/捕捉領域29−906の上に形成された1つまたは複数の電極を含むことができ、その電圧は、担体移動/捕捉領域29−906の電位を変える制御回路により制御され得る。
担体移動/捕捉領域29−906の電位は、電荷担体を捕捉できるように変えられ得る。ポテンシャル勾配は、担体移動/捕捉領域29−906を覆う1つまたは複数の電極の電圧を変えて、担体を所定の空間領域に限局することができる電位バリアを生成することにより変えられ得る。例えば、図29Aの担体移動/捕捉領域29−906の破線を覆う電極の電圧は、図29Aの担体移動/捕捉領域29−906の破線に沿って電位バリアを作り、これにより電荷担体29−901Aを捕捉するように時間t5で変えられてもよい。図29Aに示されているように、時間t5で捕捉された担体は、担体保管領域29−908のビン「ビン0」へ移され得る。電荷担体保管ビンへの担体の移動は、担体移動/捕捉領域29−906および/または担体保管領域29−908内の電位を変えて(例えば、これらの領域を覆う電極の電圧を変えて)担体を電荷担体保管ビンへ移動させることにより行われてもよい。
担体移動/捕捉領域29−906の所定の空間領域内の電位を特定の時点で変えることにより、特定の時間間隔内に生じた光子吸収により生成された担体の限局が可能になり得る。異なる時間および/または位置で光生成電荷担体を限局することにより、電荷担体が光子吸収により生成された時間が判別され得る。この意味において、電荷担体は、トリガ事象の発生後、電荷担体を特定の時点および/または空間で限局することにより「時間ビニング」され得る。特定のビン内の電荷担体の時間ビニングは、光生成電荷担体が入射光子の吸収により生成された時間、および故に同じく、トリガ事象に関する「時間ビン」、光生成電荷担体を生成した入射光子の到達に関する情報を提供する。
図29Bは、異なる時点および空間での電荷担体の捕捉を説明する。図29Bに示されているように、担体移動/捕捉領域29−906の破線を覆う電極の電圧は、図29Bの担体移動/捕捉領域106の破線に沿って電位バリアを作り、これにより担体29−901Bを捕捉するように時間t9で変えられてもよい。図29Bに示されているように、時間t9で捕捉された担体は、担体保管領域29−908のビン「ビン1」へ移され得る。電荷担体29−901Bは時間t9で限局されることから、該担体は、時間t5で捕捉される担体29−901Aに関する光子吸収事象(すなわち、t1)と異なる時間(すなわち、時間t6)で発生した光子吸収事象を表す。
複数の測定を行うこと、および電荷担体が捕捉される時間に基づき担体保管領域29−908の電荷担体保管ビン中の電荷担体を集めることにより、光子吸収/担体生成エリア29−902で光子が捕捉される時間に関する情報を提供することができる。そのような情報は、上で論じられているように様々な適用において有用であり得る。
いくつかの実施形態では、励起パルス後にビンが捕捉するたびに経過時間は異なってもよい。例えば、より短い時間ビンは、励起パルスの直後に発光を検出するのに使用され得、一方、より長い時間ビンは、励起パルスから離れた時間に使用され得る。時間ビン間隔を変えることにより、各時間ビンと関連付けられた電気信号を測定するためのシグナル対ノイズ比は、所与のセンサについて改善され得る。光子放射事象の確率は、励起パルスの直後により高いことから、この時間内の時間ビンは、検出するより多くの光子の電位を説明するのにより短い時間間隔を有する。より長い時間の間に光子放射の確率は低くなり得、光子のより少ない電位数を説明するのに、この時間内で検出する時間ビンはより長くなり得る。いくつかの実施形態では、著しく長い経過時間を有する時間ビンが複数の寿命を区別するのに使用されてもよい。例えば、時間ビンの大多数は約0.1〜0.5nsの範囲の時間間隔を捕捉し得、一方、ある時間ビンは約2〜5nsの時間間隔を捕捉し得る。時間ビンの数および/または各ビンの時間間隔は、試料物体から放射された光子を検出するのに使用されるセンサに依存し得る。各ビンの時間間隔の決定は、試料を分析するのに使用される発光マーカーを区別する、センサにより提供される時間ビンの数に対して必要とされる時間間隔を識別する工程を含む場合がある。記録されたヒストグラムの分布は、類似した条件下のマーカーおよび試料ウェル中のマーカーのタイプを識別する時間ビンの既知のヒストグラムと比較され得る。本出願の異なる実施形態はマーカーの寿命を測定することができるが、マーカーを励起するのに使用される励起エネルギー、各画素中のセンサ領域の数、および/またはセンサにより検出される波長において異なる可能性がある。
III.励起源
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の励起源は、一体型デバイスの外部に位置してもよく、試料ウェルを有する一体型デバイスに光のパルスを送達するように配置されてもよい。例えば、2015年5月20日に出願された「PULSED LASER」と題される米国仮特許出願第62/164,485号、および2016年3月18日に出願された「PULSED LASER」と題する米国仮特許出願第62/310,398号は、各々その全体を援用される、励起源として使用され得るパルスのレーザー光源の例を記載する。光のパルスを、複数の試料ウェルにカップリングして、例えば、ウェル内の1つ以上のマーカーを励起するために使用してもよい。1つ以上の励起源は、いくつかの実施態様によれば、1つ以上の特徴的な波長の光のパルスを送達し得る。いくつかの場合において、励起源は、一体型デバイスが装填され得るベース機器内に取り付けられるか、またはカップリングされる交換可能なモジュールとしてパッケージされてもよい。励起源からのエネルギーは、少なくとも1つの試料ウェルに、または少なくとも1つの試料ウェルの少なくとも1つの試料に、放射性に送達されても、または非放射性に送達されてもよい。いくつかの実施形態では、制御可能な強度を有する励起源を、一体型デバイスの複数の画素に励起エネルギーを送達するように配置してもよい。画素は、線形アレイ(例えば、行または列)、または2Dアレイ(例えば、画素のアレイのサブエリアまたは画素の完全なアレイ)に配置されてもよい。
任意の適切な光源を励起源として使用してもよい。いくつかの実施形態は、インコヒーレントな光源を使用してもよく、他の実施形態は、コヒーレントな光源を使用してもよい。非限定的な例として、いくつかの実施形態によるインコヒーレント光源としては、有機LED(OLED)、量子ドット(QLED)、ナノワイヤLED、および(非)有機半導体LEDなどの異なる種類の発光ダイオード(LED)が挙げられる。非限定的な例として、いくつかの実施形態によるコヒーレント光源は、半導体レーザー(例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、エッジ放射レーザー、および分布帰還(DFB)レーザダイオードなど)の異なる種類のレーザーを含んでもよい。さらに、またはこれに代えて、スラブ結合光導波路レーザー(SCOWL)または他の非対称単一モード導波路構造を使用してもよい。いくつかの実施態様では、コヒーレント光源は、有機レーザー、量子ドットレーザー、および固体レーザー(例えば、レーザダイオードまたはフラッシュランプによって励起されるNd:YAGまたはND:ガラスレーザ)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、レーザダイオード励起ファイバレーザを使用してもよい。コヒーレント光源は、超短パルスを生成するために受動的にモード同期されてもよい。一体型デバイス上の画素のアレイに対して複数の種類の励起源が存在してもよい。いくつかの実施形態では、異なる種類の励起源を組み合わせてもよい。励起源は、選択された種類の励起源を作成するために使用される従来の技術に従って作成されてもよい。
導入の方法として、本発明を限定することなく、コヒーレント光源の配置の例を図30Aに示す。この図は、超短パルスレーザ励起源30−110を励起源として備え得る、分析機器30〜100を図示している。超短パルスレーザ30−110は、利得媒質30−105(いくつかの実施形態では、固体材料であり得る)、利得媒質を励起するポンプ源(表示せず)、および少なくとも2つのキャビティミラー30−102、30−104(光学レーザキャビティの端部を画定している)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、ビーム成形、波長選択、および/またはパルス形成の目的で、レーザキャビティ内に1つ以上の追加の光学素子が存在してもよい。動作時に、パルスレーザ励起源30−110は、キャビティの端部ミラー30−102,30−104の間でレーザキャビティ内を前後に、そして利得媒質30−105を通って循環する超短光学パルス30−120を生成し得る。キャビティミラー30−104のうちの1つは、循環パルスの一部を部分的に透過し得、光学パルス30−122の列が、パルスレーザ30−110から、光学構成要素および一体型デバイスなどの後続の構成要素30−160に放射される。放射されたパルスは、ビームウエストwによって特徴付けられるビーム(点線で示される)を掃引し得る。放射されたパルス30−122の測定された時間的な強度プロファイルは、図30Bに示されるように現れる場合がある。
いくつかの実施形態では、放射されたパルスのピーク強度値はほぼ等しくてもよく、このプロファイルはガウス時間プロファイルを有してもよいが、他のプロファイル、例えば、sechプロファイルも可能である。ある場合には、パルスは、対称時間プロファイルを有さない場合があり、他の時間形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、利得および/または損失のダイナミクスによって、非対称プロファイルを有するパルスが生じ得る。各パルスの持続時間は、図30Bに示すように、半値全幅(FWHM)値によって特徴付けてもよい。超短光学パルスは、100ピコ秒未満のFWHM値を有してもよい。
レーザー励起源から放射するパルスは、規則的間隔Tで隔てられ得る。いくつかの実施形態では、Tは、レーザーにおける能動利得および/または損失変調速度によって決定されてもよい。モード同期レーザーの場合、Tは、キャビティ端部ミラー30−102、30−104の間の往復移動時間によって決定されてもよい。いくつかの実施形態によれば、パルス分離時間Tは、約1ns〜約100nsの間であってもよい。場合によっては、パルス分離時間Tは、約0.1ns〜約1nsの間であってもよい。いくつかの実施態様では、パルス分離時間Tは、約100ns〜約2μsの間であってもよい。
いくつかの実施形態では、光学系30−140は、レーザー励起源30−110からのパルスのビーム30−122に対して動作し得る。例えば、光学系は、ビームを形状変更するか、および/またはビームの発散を変更するための1つ以上のレンズを備えてもよい。ビームの形状変更には、ビームウエストの値を増大もしくは減少させる工程、および/またはビームの断面形状を変更する工程(例えば、楕円形から円形、円形から楕円形など)を備えてもよい。ビームの発散を変更する工程は、ビーム束を収束させる工程または発散させる工程を備えてもよい。いくつかの実施態様では、光学系30−140は、ビームエネルギーの量を変更するための減衰器または増幅器を備えてもよい。場合によっては、光学系は、波長フィルタリングを備えてもよい。いくつかの実施態様では、光学系は、パルス成形要素、例えば、パルス伸張器および/またはパルス圧縮器を備えてもよい。いくつかの実施形態では、光学系は、パルス長を低減するための可飽和吸収体のような、1つ以上の非線形光学素子を備えてもよい。いくつかの実施形態によれば、光学系30−140は、レーザー励起源30−110からのパルスの偏光を変更する1つ以上の要素を備えてもよい。
いくつかの実施態様では、光学系30−140は、励起源30−110からの出力波長を、周波数倍化を介してより短い波長に、またはパラメトリック増幅を介してより長い波長に変換するための非線形結晶を備えてもよい。例えば、レーザーの出力は、非線形結晶(例えば、周期的にポーリングされたニオブ酸リチウム(PPLN))または他の非ポーリング非線形結晶において周波数倍化されてもよい。そのような周波数倍化プロセスは、より効率的なレーザーが、選択されたフルオロフォアの励起に関してさらに適切な波長を生成することを可能にし得る。
「特徴的な波長」または「波長」という句は、励起源によって生成される限定された照射の帯域幅内の中心波長または主波長を指してもよい。ある場合には、これは、励起源によって生成された照射の帯域幅内のピーク波長を指してもよい。励起源の特徴的な波長は、例えば、生物学的分析デバイスで使用される発光マーカーまたはプローブの選択に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施態様では、励起エネルギー源の特徴的な波長を、選択されたフルオロフォアの直接励起(例えば、単一光子励起)について選択する。いくつかの実施態様では、励起源の特徴的な波長を、間接励起(例えば、多光子励起または直接励起を提供する波長への高調波変換)のために選択する。いくつかの実施形態では、励起照射は、試料ウェルへの適用のために特定の波長で励起エネルギーを生成するように構成されている光源によって生成されてもよい。いくつかの実施形態では、励起源の特徴的な波長は、試料からの対応する放射の特徴的な波長よりも小さくてもよい。例えば、励起源は、500nmと700nmの間の特徴的な波長(例えば、515nm、532nm、563nm、594nm、612nm、632nm、647nm)を有する照射を放射し得る。いくつかの実施形態では、励起源は、例えば、532nmおよび593nmのような2つの異なる波長を中心とする励起エネルギーを提供し得る。
いくつかの実施形態では、発光マーカーの放射寿命を測定するために、パルス励起源を使用して発光マーカーを励起してもよい。これは、放射色または波長ではなく、放射寿命に基づいて発光マーカーを識別するのに有用であり得る。一例として、パルス励起源は、マーカーの寿命を決定するために使用される後続の光子放射事象を生成し検出するために、発光マーカーを周期的に励起し得る。発光マーカーの寿命測定は、励起源からの励起パルスが、ピークのパルス電力または強度から発光マーカーの寿命よりも短い時間にわたって、より低い(例えば、ほぼ消滅した)パワーまたは強度へ遷移するとき、可能であり得る。このことは、発光マーカーの寿命が評価されているとき、励起後段階の間に発光マーカーが再励起しないように励起パルスが迅速に終了する場合は、有益であり得る。限定ではなく一例として、パルス電力は、250ピコ秒後にピーク電力よりも約20dB、約40dB、約80dB、または約120dB低下し得る。いくつかの実施態様では、パルス電力は、100ピコ秒後にピーク電力よりも約20dB、約40dB、約80dB、または約120dB低下し得る。
発光マーカーを励起するために超短励起パルスを使用することのさらなる利点は、マーカーの光退色を低減することである。連続した励起エネルギーをマーカーに加えることは、経時的に発光マーカーを退色および/または損傷させ得る。励起源のピークパルス電力が、連続曝露でマーカーを急速に損傷するレベルよりもかなり高い場合でさえ、超短パルスを使用すると、マーカーが励起エネルギーによって損傷されるまでの時間および有用な測定値の数が増大する可能性がある。
発光マーカーの寿命を見分けるためにパルス励起源を使用する場合、励起エネルギーのパルス間の時間は、各励起パルス後の放射事象を観察し評価するために、マーカーの最長寿命程度の長さであっても、それより長くてもよい。例えば、励起パルス間の時間間隔T(図30Bを参照のこと)は、検査されたフルオロフォアのいずれの放射寿命よりも長くてもよい。この場合、前のパルス由来の励起されたフルオロフォアが蛍光を発するのに妥当な時間になる前に、後続のパルスが到着しない場合もある。いくつかの実施形態では、間隔Tは、励起パルスの終了後および次の励起パルスの前に、フルオロフォアを励起する励起パルスと、フルオロフォアによって放射される次の光子との間の時間を決定するために十分長い必要がある。
励起パルスの間の間隔Tは、フルオロフォアの減衰特性を観察するのに十分な長さでなければならないが、Tは、短時間で多くの測定を行うのに十分短いことも望ましい。限定ではなく例として、いくつかの用途で使用されるフルオロフォアの放射寿命は、約100ピコ秒〜約10ナノ秒の範囲であり得る。したがって、そのような寿命を検出および/または見分けるために使用される励起パルスは、約25ピコ秒〜約2ナノ秒の範囲の持続時間(FWHM)を有してもよく、約20MHz〜約1GHzの範囲のパルス繰り返し率で提供されてもよい。
さらに詳細には、寿命測定のためのパルス励起源を生成するために励起エネルギーを変調するための任意の適切な技術を使用してもよい。レーザーなどの励起源の直接変調は、励起源の電気駆動シグナルを変調して、放射される電力がパルスの形態になるようにする工程を包含し得る。光学ポンピングパワーを含む光源の入力電力、および利得領域の一部からの励起状態担体注入および/または担体除去を、利得媒質の利得に影響を及ぼすように変調して、動的利得の成形を通じて励起エネルギーのパルスの形成を可能にしてもよい。さらに、光学共振器の品質(Q)係数は、Qスイッチ技術を使用してパルスを形成するための様々な手段によって変調されてもよい。そのようなQスイッチ技術は、能動的であっても、および/または受動的であってもよい。レーザーの共振キャビティの長手方向モードは、モード同期を通じて放射光の一連のパルスを生成するために位相ロックされてもよい。そのようなモード同期技術は、能動的であっても、および/または受動的であってもよい。レーザキャビティは、担体密度の変調、およびその部分の吸収損失の制御を可能にする別個の吸収セクションを備えてもよく、これによって、励起パルスを成形するための追加の機構が提供される。いくつかの実施形態では、光学変調器を使用して、連続波(CW)光のビームを励起エネルギーのパルスの形態に変調してもよい。他の実施形態では、励起源にカップリングされた音響光学変調器(AOM)に送られるシグナルを使用して、出力された光の偏向、強度、周波数、位相および/または偏光を変化させて、パルス励起エネルギーを生成してもよい。AOMは、連続波ビーム走査、Q−スイッチング、および/またはモード同期のために使用してもよい。上記の技術は、パルスの励起源を生成するために記載されているが、パルス励起源を生成するための任意の適切な方法を、発光マーカーの寿命を測定するために使用してもよい。
いくつかの実施形態では、寿命測定に適したパルス励起源を形成するための技術は、光子放射を駆動する入力電気信号の変調を含み得る。いくつかの励起源(例えば、ダイオードレーザおよびLED)は、入力電流などの電気信号を、光シグナルに変換する。光シグナルの特徴は、電気信号の特徴に依存し得る。パルス光シグナルを生成する際に、電気信号は、可変光シグナルを生成するために経時的に変化してもよい。特定の波形を有するように電気信号を変調することにより、特定の波形を有する光学シグナルを生成してもよい。電気信号は、ある一定の周波数を有する正弦波形を有してもよく、結果として得られる光パルスは、周波数に関連する時間間隔内で生じ得る。例えば、500MHzの周波数を有する電気信号は、2ナノ秒毎にパルスを有する光シグナルを生成し得る。別個のパルス励起源によって生成された結合ビームは、互いに類似していても異なっていても、1mm未満の相対的な光路差を有してもよい。
レーザダイオードなどのいくつかの励起源では、電気信号は、担体密度を変化させ、電子と正孔対との再結合を通じて光子が生成される。担体密度は、光シグナルに関連し、その結果、担体密度が閾値を上回るとき、相当な数のコヒーレント光子が誘導放出によって生成される。レーザダイオードに供給される電流は、電子または担体をデバイスに注入し、それによって担体密度を増大させ得る。担体密度が閾値を上回る場合、光子は、担体に供給される電流よりも速い速度で生成され得、したがって、担体密度が閾値未満に低下し、光子生成が減少する。光子生成が減少すれば、継続した電流注入および光子の吸収に起因して、担体密度は再び増大し始め、最終的に閾値を再び上回って増大する。このサイクルは、光子生成のための閾値付近の担体密度の振動をもたらし、これが発振光シグナルを生じる。緩和振動として知られているこれらの動態は、担体密度の振動に起因して光シグナルにアーチファクトを引き起こし得る。電流が最初にレーザーに供給されるとき、担体密度の振動に起因して光シグナルが安定電力に達する前に、振動が存在してもよい。パルス励起源を形成するとき、担体密度の振動は、パルス光シグナルのアーチファクトを導入し得る。このような緩和振動によるアーチファクトは、励起シグナルが発光マーカーによって放射された光子と重複し得るので、パルス光シグナルを広げ、および/または光シグナルにテールを生成し、そのようなパルス光源によって検出され得る寿命を制限し得る。
いくつかの実施形態では、励起パルスの持続時間を短くする技術を使用して、発光マーカーを検出し、それによって発光マーカーに対する退色および他の損傷を低減または遅延させるのに必要な励起エネルギーを低減し得る。励起パルスの持続時間を短くする技術を使用して、より短い寿命の検出を可能にすることができる、励起パルスの最大値またはピークの後の励起エネルギーの電力および/または強度を低減してもよい。このような技術は、ピーク電力後の励起電力を低減するために、励起源を電気的に駆動し得る。電気駆動シグナルは、ピークパルスの後に可能な限り迅速に励起エネルギーのパルスの強度をゼロに駆動するように調整されてもよい。このような技術は、ピーク電力が生成された後に、電気駆動シグナルの符号を反転させる工程を包含し得る。電気信号は、光学シグナルの第1の緩和振動または第1の振動後の担体密度を迅速に低下させるように調整され得る。第1の振動後に担体密度を低減することによって、第1の振動だけの光パルスを生成してもよい。電気信号は、シグナルのピーク後に放射される光子の数を減らすことによって、光シグナルを迅速にオフにする短パルスを生成するように構成されてもよい。ピコ秒レーザダイオードシステムは、いくつかの実施形態によれば、光パルスを放射するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、半導体可飽和吸収体(SESAM)を含む可飽和吸収体を使用して、光学テールを抑制してもよい。そのような実施形態では、可飽和吸収体を使用することにより、光学テールを3〜5dBだけ、または場合によっては5dBを超えて抑制し得る。励起パルスにおけるテールの影響を低減することは、励起エネルギーの追加のフィルタリングに関する任意の要件を低減および/または排除するか、測定可能な寿命の範囲を増大させるか、および/またはより速いパルス速度を可能にし得る。励起パルス速度を増大させることにより、所定の時間でさらに多くの実験を行うことが可能になり、これによって、試料物を標識するマーカーの寿命を同定するのに十分な統計値を取得するのに必要な時間が短縮され得る。
さらに、これらの技術のうちの2つ以上を一緒に使用して、パルス励起エネルギーを生成してもよい。例えば、直接変調された発生源から放射されるパルス励起エネルギーは、光学変調技術を使用してさらに変更されてもよい。励起パルスを変調し、電気パルス駆動シグナルを調整する技術を任意の適切な方法で組み合わせて、寿命測定を実行するためのパルス励起エネルギーを最適化してもよい。調整された電気駆動シグナルは、直接変調された発生源からのパルス励起エネルギーに加えられてもよい。
いくつかの実施形態では、特定の数のワイヤボンドを有するレーザダイオードをパルス励起源として使用してもよい。より多くのワイヤボンドを有するレーザダイオードは、励起源のインダクタンスを減少し得る。より低いインダクタンスを有するレーザダイオードは、レーザーへの電流をより高い周波数で作動させ得る。インダクタンスを最小にするようにパッケージング方法を選択することにより、より高い周波数で励起源に供給される電力を改善し、より短い励起パルスを可能にし、ピーク後の光学パワーのより迅速な減少および/または発光マーカーを検出するためのパルス繰り返し率増大が可能になる。
いくつかの実施形態では、励起源と組み合わせた伝送回路を、光パルスを生成するために使用してもよい。伝送回路は、光パルスの性能および/または品質を改善するために、レーザダイオードのインピーダンスと適合し得る。いくつかの実施形態では、伝送回路インピーダンスは、50オームであってもよい。いくつかの例では、終端抵抗は、反射を避けるために、ラインの抵抗と同様であってもよい。代替的または追加的に、終端インピーダンスは、反射を避けるためにラインのインピーダンスと同様であってもよい。終端インピーダンスは、負のパルスを反射するためにラインのインピーダンスより小さくてもよい。他の実施形態では、終端インピーダンスは、負の反射パルスの形状を制御するために容量性または誘導性構成要素を有してもよい。他の実施形態では、伝送回路は、より高い周波数のパルスを可能にし得る。伝送回路を使用することにより、40MHzから500MHzの範囲内の周波数を有する電気パルスを生成してもよい。伝送回路は、ある一定の時間間隔および特定の時間間隔を有する光パルスを有するパルス光源を生成するために、上記の調整された電気信号と組み合わせて使用してもよい。
光パルスの生成を改善するために電気信号を調整する技術は、負のバイアス能力を有する回路に励起源を接続する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、光パルス中でテールの放射を減少させるために、光パルスが放射された後に、励起源に負のバイアスを提供してもよい。例示的な回路は、光パルス内のテールの存在を低減するように実施され得る、電流源、ダイオードレーザ、抵抗器、コンデンサ、およびスイッチを備えてもよい。このような回路は、スイッチが閉じられているとき、または導通状態のときに、ダイオードレーザを迂回する一定の電流を生成し得る。スイッチが開いているとき、スイッチは高抵抗を有してもよく、電流はダイオードレーザを通って流れてもよい。光パルスは、間欠的な電流をダイオードレーザに供給するためにスイッチを開閉することによって、生成してもよい。いくつかの例では、抵抗器は十分に高く、コンデンサが充分に小さくて、それによって、スイッチが開いてダイオードレーザが発光するときにコンデンサにかかる電圧が存在するようになる。スイッチが閉じられると、コンデンサにかかる電圧が、ダイオードレーザを逆バイアスする。このような逆バイアスは、光パルス内のテールの存在を低減しても、または排除してもよい。そのような場合、スイッチは、ピーク光パルスの直後に、レーザー出力を減少させるために、光パルスのピーク後に閉じるように構成されてもよい。回路内の抵抗器の値は、コンデンサ上の電荷が、スイッチがその後に開かれる前に放電し、および/またはその後の光パルスがレーザダイオードによって生成されるように選択され得る。
光パルスを生成するために、レーザダイオードの電気信号を調整するために、追加の回路構成要素を設けてもよい。いくつかの実施形態では、レーザダイオードに供給される電気信号の波形を制御するために、複数のコンデンサ、抵抗器、および電圧を、ネットワーク回路として接続してもよい。制御された波形は、N個のコンデンサのサブ回路が存在するときに、対応するシグナルS1、S2、...、SNによって多数の電圧V1、V2、...、VNを切り替えることによって生成され得る。
いくつかの実施形態では、光パルスを生成するための電気信号は、無線周波数(RF)および/またはマイクロ波構成要素を含む、個別の構成要素を有する回路を使用してもよい。このような回路に含まれ得る個別の構成要素は、DCブロック、アダプタ、論理ゲート、終端装置、移相器、遅延器、減衰器、コンバイナ、および/またはRF増幅器である。そのような構成要素を使用して、ある一定の振幅を有する正の電気信号を生成し、その後に別の振幅を有する負の電気信号を生成してもよい。正および負の電気信号間には遅延が存在し得る。他の実施形態では、回路は、励起源を駆動するように構成されている電気パルス信号を形成するように結合された複数の電気信号を生成し得る。そのような回路は、光パルスのパワーを増大させるために使用され得る差動出力を生成し得る。回路の個別の構成要素を調節することによって、電気出力シグナルを調節して、寿命測定に適した光パルスを生成してもよい。
いくつかの実施形態では、励起源を組み合わせて、寿命測定のための光パルスを生成してもよい。同期化されたパルス源は、ある一定の距離にわたって回路または負荷にカップリングされてもよい。いくつかの実施形態では、励起源を回路に並列にカップリングしてもよい。励起源は、同じ発生源からであっても、複数の発生源からであってもよい。複数の発生源を有するいくつかの実施形態では、複数の発生源は、励起源の種類が異なってもよい。発生源を組み合わせる場合、励起源に十分な電力を供給するために、回路と励起源のインピーダンスを考慮することが重要である場合がある。供給源の組み合わせは、パルス励起源を生成するための上述の技術の1つ以上を使用することによって達成されてもよい。
励起源は、バッテリまたは励起源に電力を供給するように配置された任意の他の電源を備えてもよい。例えば、励起源は、ベース機器内に位置してもよく、その動作電力は、(例えば、導電性電力リードを介して)それがカップリングされる集積生体分析デバイスを通じて受信されてもよい。励起源は、集積生体分析デバイスの制御とは独立して、または連携して制御されてもよい。ほんの一例として、励起源の制御シグナルは、パーソナルコンピュータおよび/または集積生物分析デバイスと無線で、または有線相互接続(例えば、USB相互接続)を介して励起源に提供されてもよい。
いくつかの実施態様では、励起源は、一体型デバイスの1つ以上のセンサと時間ゲート、および/または同期して動作し得る。例えば、励起源をオンにして発光マーカーを励起し、次にオフにしてもよい。センサは、励起源がオンにされている間はオフにされ、次いで、励起源がオフにされた後にサンプリング間隔の間にオンにされてもよい。いくつかの実施形態では、励起源がオンにされている間、サンプリング間隔の間センサをオンにしてもよい。
IV.一体型デバイスおよび励起源による測定の例
試料中の分子を検出、分析および/またはプロービングするための測定は、本出願に記載の一体型デバイスまたは一体型デバイスと励起源との任意の組み合わせを使用して得ることができる。励起源は、パルス励起源であってもよいし、場合によっては、連続波源であってもよい。特定の試料にタグ付けされた発光マーカーは、試料の存在を示し得る。発光マーカーは、励起エネルギー、発光放射波長、および/またはマーカーによって放射される放射エネルギーの寿命によって識別され得る。類似の発光放射波長を有するマーカーは、各マーカーの寿命を決定することによって同定され得る。さらに、同様の寿命を有するマーカーは、各マーカーについて発光放射波長によって同定してもよい。放射された発光の時間的および/またはスペクトル特性の組み合わせによって同定されるマーカーを使用することにより、マーカーおよび関連する試料の定量分析および/または同定を行ってもよい。
寿命測定を使用して、マーカーが試料ウェルに存在することを決定してもよい。発光マーカーの寿命は、発光マーカーが励起状態に励起され、次いで光子が放射される時間が測定される、複数の実験を行うことによって同定され得る。励起源は、励起エネルギーのパルスを生成するようにパルスされ、マーカーに向けられる。励起パルスと発光マーカーからの後続の光子放射事象との間の時間を測定する。このような実験を、複数の励起パルスで繰り返すことによって、特定の時間間隔内に光子が放射する事例の数を決定してもよい。そのような結果は、一連の離散的時間間隔または時間ビン内で起こる光子放射事象の数を表現するヒストグラムを埋めることができる。時間ビンの数および/または各ビンの時間間隔は、特定のセットの寿命および/またはマーカーを同定するように調節され得る。
以下に続くのは、いくつかの実施形態では、発光マーカーを同定するために実施され得る測定の例の記載である。具体的には、発光寿命測定のみ、結合スペクトルおよび発光寿命測定、ならびに発光寿命測定のみを使用するが、ただし2つの異なる励起エネルギーを使用する発光マーカーを識別する例を考察する。実施形態は以下に詳述する実施例には限定されない。例えば、いくつかの実施形態は、スペクトル測定のみを使用して発光マーカーを同定し得る。
任意の適切な発光マーカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、市販のフルオロフォアを使用してもよい。例としては、限定するものではないが、以下のフルオロフォアを使用してもよい:Atto Rho14(「ATRho14」)、DyLight(登録商標)650(「D650」)、Seta(商標)Tau 647(「ST647」)、CF(商標)633(「C633」)、CF(商標)647(「C647」)、Alexa Fluor(登録商標)647(「AF647」)、BODIPY(登録商標)630/650(「B630」)、CF(商標)640R(「C640R」)および/またはAtto 647N(「AT647N」)。
加えて、および/または必要に応じて、発光マーカーは、試料分析プロセスの速度および精度を高めるために、任意の適切な方法で改変してもよい。例えば、光安定化剤は、発光マーカーにコンジュゲートされてもよい。光安定化剤の例としては、限定するものではないが、酸素スカベンジャーまたは三重項クエンチャーが挙げられる。光安定化剤を発光マーカーにコンジュゲートさせることにより、放射される光子の速度を増大してもよく、発光マーカーが光子を放射しない「点滅(blinking)」効果を減少してもよい。いくつかの実施形態では、生物学的事象がミリ秒のスケールで発生する場合、光子放射の増大した速度は、生物学的事象の検出の確率を増大し得る。光子事象の速度の増大は、その後、発光シグナルのシグナル対ノイズ比を増大させ、寿命測定が行われる速度を増大させ、より迅速かつより正確な試料分析がもたらされる。
さらに、一体型デバイスの試料ウェル内の環境を調整して、必要な場合はマーカーの寿命を設計するために調整してもよい。これは、マーカーの寿命が、環境を使用して調整できるマーカーの状態密度によってもたらされることを認識することによって達成され得る。例えば、マーカーが試料ウェルの底部金属層から遠いほど、寿命は長くなる。したがって、マーカーの寿命を長くするために、ディボットなどの試料ウェルの底面の深さは、金属層からある一定の距離だけ伸びていてもよい。また、試料ウェルを形成するために使用される材料は、マーカーの寿命に影響を及ぼし得る。異なるマーカーは、典型的には、それらの寿命が同じ方向にシフトされる(例えば、より長くても短くても)が、異なるマーカーに対しては異なる程度の影響を与え得る。したがって、自由空間における寿命測定を介して識別し得ない2つのマーカーを、試料ウェル環境を作製することによって識別可能に設計して、様々なマーカーの寿命を調節してもよい。
A.寿命測定
寿命測定を、1つの励起エネルギー波長を使用して実行し、試料ウェル内でマーカーを励起してもよい。寿命測定に基づいて個々のマーカーの間を識別するために、明確な寿命を有するマーカーの組合せを選択する。さらに、マーカーの組合せは、使用される励起源によって照射される場合、励起状態に到達し得る。1つの励起を使用して寿命測定用に構成された一体型デバイスは、各試料ウェルが同じ導波路にカップリングするように構成されている行に沿って配置された複数の画素を備えてもよい。画素は、試料ウェルおよびセンサを備える。1つ以上のマイクロキャビティまたはブルズアイ格子を使用して、導波路を各画素の試料ウェルにカップリングしてもよい。
パルス励起源は、上述の技術を使用するパルス励起源の1つであってもよい。場合によっては、パルス励起源は、レーザダイオードの直接変調電気ポンピングを通じてパルスを放射するように構成されている半導体レーザダイオードであってもよい。パルスのパワーは、ピーク後、約250ピコ秒でパルスピークパワーの20dB未満である。各励起パルスの時間間隔は、20〜200ピコ秒の範囲内である。各励起パルス間の持続時間は、1〜50ナノ秒の範囲内である。測定の例がどのように実行され得るかの概略図を図31Aに表す。1つの励起エネルギーが使用されるので、励起エネルギーのセンサへの伝達を低減するのに適した励起フィルターを、上記で考察された波長励起フィルターなどの一体型デバイスに形成してもよい。
各画素のセンサは、1画素あたり少なくとも1つの感光領域を有する。光子は、光子がセンサに達する時間間隔内で検出される。時間ビンの数を増やすことで、一連の時間ビンにわたって収集された光子の記録されたヒストグラムの分解能が向上され得、かつ異なる発光マーカー間の相違が改善され得る。センサが、特定の波長を検出するように構成されている場合、4つの発光マーカーは、特定の波長と同様の発光を放射し得る。あるいは、4つの発光マーカーは、異なる波長で発光し得る。
寿命測定に基づいて識別可能な4つの発光マーカーのセットの例は、図31Bのプロットによって表されるように、ATRho14、Cy(登録商標)5、AT647N、およびCF(商標)633である。これらの4つのマーカーは、少なくとも4つの時間ビンが使用されるとき、種々の寿命を有し、識別できるヒストグラムを生成する。図31Cは、16個の時間ビンにわたるこれらのマーカーの各々についてのシグナルプロファイルを概説する。シグナルプロファイルは、各マーカーについて正規化される。時間ビンは、マーカーのそれぞれに固有のシグナルプロファイルを提供するために、時間間隔が変化する。図32Aおよび図32Bは、寿命測定に基づいて、識別可能なマーカーの別の例示的なセット、ATTO Rho14、D650、ST647およびCF(商標)633のそれぞれの連続的および離散的な両方のシグナルプロファイルを図示する。マーカーの他のセットとしては、ATTO Rho14、C647、ST647、CF(商標)633;Alexa Fluor(登録商標)647、B630、C640R、CF(商標)633;およびATTO Rho14、ATTO 647N、AlexaFluor647、CF(商標)633が挙げられる。
B.スペクトル−寿命測定
寿命測定は、1つ以上の発光マーカーのスペクトル測定と組み合わせてもよい。スペクトル測定は、個々のマーカーの発光の波長に依存し、画素あたり少なくとも2つのセンサ領域を使用して捕獲される。一体型デバイスの例示的な構造は、各々が異なる波長を検出するように構成されている、2つの別個の領域を有するセンサをそれぞれ有する画素を備える。多波長フィルターを使用して、異なる波長の光を各センサ領域に選択的に透過させてもよい。例えば、1つのセンサ領域とフィルターの組合せを構成して、赤色光を検出してもよいが、別のセンサ領域とフィルターの組合せを構成して、緑色光を検出してもよい。
寿命測定とスペクトル測定の両方を組み合わせることは、試料ウェル内のマーカーを励起するために、1つの励起エネルギー波長を使用して行ってもよい。少なくとも2つの別個の発光波長を有するマーカーの組合せを選択し、別個の寿命を有する、ある波長で放射するマーカーを選択して、寿命およびスペクトル測定に基づいて個々のマーカーの間を識別する。さらに、マーカーの組合せを選択して、使用される励起源によって照射されたときに励起状態に達することができるようにする。
励起源は、パルス励起源であり、上述の技術を使用する励起源の1つであってもよい。場合によっては、パルス励起源は、レーザダイオードの直接変調電気ポンピングを通じてパルスを放射するように構成されている半導体レーザダイオードであってもよい。パルスのパワーは、ピーク後250ピコ秒後にピークパワーが20dB未満である。各励起パルスの持続時間は、20〜200ピコ秒の範囲内である。各励起パルス間の時間間隔は、1〜50ナノ秒の範囲内である。測定の例がどのように実行され得るかの概略図を図33Aに示す。1つの励起エネルギーが使用されるので、励起エネルギーのセンサへの伝達を低減するのに適した励起フィルターを使用してもよい。
各画素のセンサは、1画素あたり少なくとも2つの感光領域を有する。いくつかの実施形態では、1画素あたり2つの感光領域がある。他の実施形態では、1画素あたり4つの感光領域がある。各感光領域は、異なる波長または波長範囲を検出するように構成されている。光子は、センサに達する時間間隔内で検出される。時間ビンの数を増やすと、一連の時間ビンにわたって収集された光子の記録されたヒストグラムの分解能が改善され得、個々の寿命によって異なる発光マーカー間の差異が改善され得る。いくつかの実施形態では、センサの1領域ごとに2つの時間ビンが存在する。他の実施形態では、センサの1領域ごとに4つの時間ビンが存在する。
寿命測定に基づいて識別可能な4つの発光マーカーのセットの例は、ATTO Rho14、AS635、AlexaFluor(登録商標)647、およびATTO 647Nである。これらの4つのマーカーは、1つの同様の波長および別の同様の波長で放射する2つのマーカーを有する。同様の波長で放射するマーカーの各対の中で、一対のマーカーは、少なくとも4つの時間ビンが使用されるとき、異なる寿命を有し、識別できるヒストグラムを生成する。この例では、ATTO Rho14およびAS635は、同様の発光波長を放射し、明確な寿命を有する。AlexaFluor(登録商標)647およびATTO 647Nは、ATTO Rho 14およびAS635によって放射される波長とは異なる、同様の発光波長を放射し、明確な寿命を有する。図33Bは、このマーカーのセットに対する放射波長の関数としてのプロット寿命を表しており、これらのマーカーの各々が寿命と放射波長の組合せに基づいてどのように識別可能であるかが図示される。図34Aは、ATT Rho14、Alexa Fluor(登録商標)647、およびATT)647Nの波長の関数としてのパワーのプロットを表す。図34Bは、135nmの直径を有する試料ウェル中に存在する場合、これらのマーカーのそれぞれ1つについての経時的な蛍光シグナルのプロットを表す。図35Aは、4つの感光領域にわたるこれらのマーカーのシグナルプロファイルを図示し、各領域は4つの時間ビンを捕獲する。シグナルプロファイルを正規化し、これを使用して、4つの時間ビンのそれぞれについて感光領域によって捕獲された光子の相対数によって異なるマーカー間を識別する。そのようなスペクトル寿命測定のための4つのフルオロフォアの他のセットは、ATRho14、D650、ST647、CF(商標)633;ATTO Rho14、C647、ST647、CF(商標)633;Alexa Fluor(登録商標)647、B630、C640R、CF(商標)633;およびATTO Rho 14、ATTO 647N、Alexa Fluor(登録商標)647、CF(商標)633である。図35Bは、ATRho14、D650、ST647、およびC633の経時的な強度のシグナルプロファイルのプロットを表す。図35Cは、ATRho14のシグナルプロファイルを図示する。
C.寿命−励起エネルギー測定
少なくとも2つの励起エネルギー波長を使用することと組み合わせた寿命測定を使用して、複数のマーカーの間を識別してもよい。1つの励起波長が使用され、別の励起波長が使用されない場合、いくつかのマーカーが励起され得る。寿命測定に基づいて個々のマーカーの間を識別するために、各励起波長に対して、明確な寿命を有するマーカーの組合せを選択する。この実施形態では、一体型デバイスは、各画素を1つの領域を有するセンサを備えるように構成してもよく、外部励起源は、時間的インターリービングを有する電気的に変調されたパルスダイオードレーザである2つの励起エネルギー波長を提供するように構成されてもよい。
励起源は、少なくとも2つの励起エネルギーの組合せである。励起源は、パルス励起源であり、上述した技術を使用する1つ以上の励起源であってもよい。いくつかの例では、パルス励起源は、レーザダイオードの直接変調電気ポンピングを通じてパルスを放射するように構成されている2つの半導体レーザダイオードであってもよい。パルスのパワーは、ピーク後の250ピコ秒でのパルスピークパワーよりも20dB低い。各励起パルスの時間間隔は、20〜200ピコ秒の範囲内である。各励起パルス間の時間間隔は、1〜50ナノ秒の範囲内である。1つのパルスについて1つの励起波長が放射され、励起波長を知ることによって、明確な寿命を有するマーカーのサブセットが一意的に同定される。いくつかの実施形態では、励起のパルスが異なる波長の間で交互になる。例えば、2つの励起波長が使用される場合、後続のパルスは1つの波長と他の波長との間で交互になる。測定の例がどのように実行され得るかの概略図を、図36Aに表す。異なる波長を有する複数の励起源とインターリービングパルスを組み合わせるための任意の適切な技術を使用してもよい。1つ以上の励起波長のパルスを、図示された試料ウェルの列に送達するためのいくつかの技術の例を、本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、試料ウェルの列ごとに単一の導波路があり、組み合わせられた2つの励起源があり、その結果励起エネルギーのパルスが2つの励起波長の間で交互になる。いくつかの実施形態では、試料ウェルの1行ごとに2つの導波路があり、各導波路は2つの励起波長のうちの1つを搬送するように構成される。他の実施形態では、画素の1行あたり単一の導波路があり、1つの波長は、導波路の一端にカップリングし、別の波長は他の端にカップリングする。
各画素のセンサは、1画素あたり少なくとも1つの感光領域を有する。感光領域は、5ミクロン×5ミクロンの寸法を有し得る。光子は、センサに達する時間間隔内で検出される。時間ビンの数を増やすと、一連の時間ビンにわたって収集された光子の記録されたヒストグラムの分解能が向上し、異なる発光マーカー間の差異が改善され得る。センサは、少なくとも2つの時間ビンを有する。
寿命測定に基づいて識別可能な4つの発光マーカーのセットの例は、AlexaFluor(登録商標)546、Cy(登録商標)3B、AlexaFluor(登録商標)647、およびATTO 647Nである。図36Bに表すように、Alexa Fluor(登録商標)546およびCy(登録商標)3Bは、1つの波長、例えば532nmで励起し、明確な寿命を有する。Alexa Fluor(登録商標)647およびATTO 647Nは、別の波長640nmで励起し、図37Aに表すように明確な寿命を有する。640nmで両方とも励起されるATTO647NおよびCF(商標)333についての16個の時間ビンにわたる識別可能な正規化されたシグナルプロファイルが、図37Bに表されている。既知の励起波長の後に光子を検出することによって、これらの2つの対のマーカーの1つを、前の励起波長に基づいて決定し、対の各マーカーを寿命測定に基づいて同定する。
等価物と範囲
本出願の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に考察されていない様々な配置で使用されてもよく、したがって、その適用において、前述の詳細な説明に示されるか、または図面に図示される構成要素の詳細および配置に対するその適用には限定されない。例えば、一実施形態に記載される態様は、他の実施形態に記載される態様と任意の方式で組み合わされてもよい。
また、本発明は、少なくとも1つの実施例が提供された方法として具体化されてもよい。方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けされてもよい。従って、図示されている実施形態では連続的な行為として表されているが、いくつかの行為を同時に実行することを含み得る、図示されていない順序で行為が行われる実施形態が構築されてもよい。
特許請求の範囲の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などのような序数の用語の使用は、それ自身では、ある方法の行為を行う際、1つのクレーム要素の任意の順序的優先順位、重要性優先順位、または順序が、別の順序または時間的順序を上回っていることを暗示するのではなく、クレーム要素を識別するために同じ名前を有する(ただし、序数の用語の使用について)別の要素から、ある一定の名称を有する1つのクレーム要素を識別するための標識としてのみ使用される。
また、本明細書で使用される専門用語および用語は、説明のためのものであり、限定的であると見なされるべきではない。「含む、包含する、が挙げられる(including)」、「含む、包含する(comprising)」、または「有する(having)」、「含む、備える(containing)」、「含む、包含する、備える(involving)」、およびそれらの変形とは、その後に列挙された項目およびその等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。