JP2021191237A - 褐藻類の種苗製造方法、及び褐藻類の種苗 - Google Patents

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Abstract

【課題】より短い時間で種苗を作製でき、さらには、芽胞体の発芽率を高めることができる技術を提供する。【解決手段】褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する種液準備工程と、前記第1の種液、及び前記第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る種糸作製工程と、前記第1の種糸と、前記第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程と、を含む、褐藻類の種苗製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、褐藻類の種苗製造方法、及び褐藻類の種苗に関する。
褐藻類は、種苗を用いた養殖等によって生産され、食品や飼料等の用途で利用される。
ここで、褐藻類の一般的な生活史の概要は、以下のとおりである。
まず、母藻から放出された遊走子は、基質(藻礁等)に着生した後に発芽し、配偶体(雌性又は雄性)を形成する。次いで、雄性配偶体の造精器から放出された精子が、雌性配偶体の生卵器の卵と受精して発芽すると芽胞体を形成し、芽胞体が生長することで、幼い胞子体を経て成体となる。
種苗を用いた養殖等においては、配偶体を糸等に付着させたものを種苗として藻礁等に固定し、褐藻類を繁殖させる方法が主に採用されている。
種苗を用いた養殖において採用される具体的な方法としては、例えば、種付け糸設置法、根固定法、スポアパック法等が挙げられる。
種付け糸設置法は、褐藻類の養殖において最も広く用いられる方法である。この方法では、配偶体等を着生させた糸等を水槽等で培養した後、これを種苗として基質(藻礁等)に巻き付けて設置する方法である。
特許文献1には、所定の低水温の滅菌人工海水及び/又は滅菌濾過海水を含む海水中で褐藻類の成熟した胞子体から放出された遊走子及び/又は前記遊走子から生長した配偶体を種苗糸基質に付着させて遊走子・配偶体付着種苗糸を作製する遊走子・配偶体付着種苗糸作製工程等を含む方法が提案されている。
特開2012−080797号公報
しかし、種苗を用いた従来の方法は、種苗の作製に時間を要するうえ、芽胞体の発芽率が低いという課題があった。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、より短い時間で種苗を作製でき、さらには、芽胞体の発芽率を高めることができる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、褐藻類の雌性配偶体を含む種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養する工程を含む方法によれば、上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する種液準備工程と、
前記第1の種液、及び前記第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る種糸作製工程と、
前記第1の種糸と、前記第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程と、
を含む、
褐藻類の種苗製造方法。
(2) さらに、前記雌雄配偶体付着種糸における配偶体を成熟させる成熟工程を含む、(1)に記載の種苗製造方法。
(3) 前記培養の期間が14日間以下である、(1)又は(2)に記載の種苗製造方法。
(4) 褐藻類の雌性配偶体又は雄性配偶体を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる、褐藻類の種苗。
本発明によれば、より短い時間で種苗を作製でき、さらには、芽胞体の発芽率を高めることができる技術が提供される。
実施例で行った種糸接触工程における各種糸の配置を示した模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<褐藻類の種苗製造方法>
本発明の褐藻類の種苗製造方法(以下、「本発明の種苗製造方法」ともいう。)は、以下の3つの工程を少なくとも含む。
(種液準備工程)褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する工程
(種糸作製工程)種液準備工程で得られた第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る工程
(種糸接触工程)第1の種糸と、第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程
本発明の種苗製造方法は、配偶体等を付着させた糸等を種苗として得るため、種付け糸設置法に属する方法であるが、以下の点で従来の方法とは異なる。
まず、従来の方法は、主に以下の工程からなる。以下のように、従来の方法では配偶体から種苗を得るために通常2ヶ月以上の時間を要する。
(工程1−a)滅菌海水等の中で褐藻類から遊走子を放出させ、生長させた雌性配偶体及び雄性配偶体を単離し、次いで、培地中で、雌性配偶体及び雄性配偶体を別個に拡大培養する。本工程に要する期間は、通常1〜3ヶ月である。
(工程1−b)上記(工程1−a)の培養後、各配偶体を適宜せん断し、雌性配偶体及び雄性配偶体の混合物を糸状基質に付着させる。この工程は通常、雌性配偶体及び雄性配偶体の混合溶液を糸状基質等に塗布することで行われる。本工程に要する期間は、通常1日間程度である。
(工程1−c)上記(工程1−b)後、雌性配偶体及び雄性配偶体から精子と卵とが放出され、受精が行われる。さらに、短日処理や水温低下処理等によって、発芽促進(成熟促進)を行う。本工程に要する期間は、通常14〜21日間である。
(工程1−d)上記(工程1−c)後、受精確認、芽胞体の発芽確認、芽胞体培養等を行い、種苗が得られる。本工程に要する期間は、通常14〜21日間である。得られた種苗は、適宜、沖出し(実際の養殖を行う海域の定位置等へ種糸を移動すること)等に供される。
他方で、本発明者らの検討の結果、従来の方法では、種苗を得るために長い時間を要するだけではなく、(工程1−b)において糸状基質等に充分な量の配偶体が付着されていない結果、受精した卵の数が少ないこと、(工程1−d)における芽胞体の発芽率が低いこと、(工程1−b)における配偶体の塗布量は特定しがたく、該塗布量の制御が困難であること等を見出した。
そこで、本発明者らがさらに検討した結果、(工程1−a)において、雌性配偶体及び雄性配偶体を別個に培養する際に、糸状基質の存在下で培養を行うことで(換言すれば、雌性配偶体及び雄性配偶体を含む種液と、糸状基質とを接触させた状態で培養を行うことで)、種苗を得るための期間を短縮できるだけではなく、芽胞体の発芽率を高めることもできるという知見を見出した。
すなわち、本発明の種苗製造方法は、通常、以下の工程を含む。以下のように、本発明の種苗製造方法によれば、雌雄配偶体の付着、成熟、受精から芽胞体を得るための時間を通常15〜54日間、又はさらにより短い期間に短縮できる。
(工程1−A)滅菌海水等の中で褐藻類から遊走子を放出させ、遊走子から形成させた雌性配偶体及び雄性配偶体を単離し、次いで、培地中で、雌性配偶体及び雄性配偶体を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に拡大培養する。本工程に要する期間は、通常14日間以下である。
(工程1−C)上記(工程1−A)後、雌性配偶体又は雄性配偶体が付着した種糸を接触させる。これにより、種糸に雌性配偶体及び雄性配偶体が付着しつつ、雌性配偶体及び雄性配偶体から精子と卵とが放出され、受精が行われる。さらに、必要に応じて、短日処理や水温低下処理等によって、発芽促進(成熟促進)を行う。本工程に要する期間は、通常1〜40日間である。(工程1−C)後、種苗が得られる。得られた種苗は、適宜沖出し等に供される。
上記のとおり、本発明の種苗製造方法においては、従来要した(工程1−b)や(工程1−d)を省くことができる。その理由は、(工程1−A)において糸状基質等に充分な配偶体が付着され、さらには雌雄配偶体から充分量の精子及び卵が放出され、受精する結果、(工程1−C)後に芽胞体の発芽率が充分高くなるためである。
以下、本発明の種苗製造方法における各工程について説明する。
(種液準備工程)
種液準備工程は、褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する工程である。
種液準備工程で用いられる褐藻類の種類、配偶体の単離方法、培地の組成等は、従来の種付け糸設置法等で用いられるものを任意に採用できる。
本発明において「褐藻類」(学名:Phaeophyceae)とは、種苗によって生産され得る任意のものであり得る。
本発明における好ましい褐藻類としては、コンブ目等の褐藻が挙げられ、さらに、ワカメ属、アラメ属、カジメ属等の褐藻が挙げられる。
より具体的には、ワカメ(学名:Undaria pinnatifida)、コンブ(学名:Laminariaceae)、アラメ(学名:Eisenia bicyclis)、カジメ(学名:Ecklonia cava)等の大型褐藻類が挙げられる。
これらのうち、ワカメ、アラメ、カジメ等が好ましく、ワカメが特に好ましい。
本発明において雌性配偶体及び雄性配偶体を単離する方法としては藻類から配偶体を単離できる任意の方法を採用でき、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水等で洗浄した後、干出処理によって遊走子を滅菌濾過海水の容器に放出させる。次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで培養する。培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体(又は雄性配偶体)を一個体ずつ採取し、培養容器(マルチプレート等)等に収容して適宜培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ別個に得ることができる。
本発明において「種液」とは、培養対象(配偶体、卵、精子等)が入れられた培地を意味する。
本発明においては、褐藻類の雌性配偶体を主に含む種液を「第1の種液」と称し、褐藻類の雄性配偶体を主に含む種液を「第2の種液」と称する。ただし、第1(又は第2)の種液に雄性(又は雌性)配偶体が少量含まれることは阻害されない。
本発明において、「種液が褐藻類の雌性(又は雌性)配偶体を主に含む」とは、種液に含まれる配偶体のうち、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは90%以上が雌性(又は雌性)配偶体であることを意味する。
種液に含まれる配偶体の割合は、培養によって所望の増殖を実現できる量であれば特に限定されず、例えば、種液全体に対して0.1〜5質量%であってもよい。
種液に含まれる培地の種類は、種液に含まれる褐藻類の配偶体が増殖できるものであれば特に限定されず、例えば、PESI培地(例えば実施例で作製したもの)、市販の植物用液体肥料、市販の植物栄養剤等が挙げられる。
(種糸作製工程)
種糸作製工程は、第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る工程である。
種糸作製工程で用いられる糸状基質、培養手段等は、従来の種付け糸設置法等で用いられるものを任意に採用できる。
[糸状基質]
本発明において「糸状基質」とは、種液中で培養された配偶体を付着させるためのものである。したがって、糸状基質としては、配偶体の培養、増殖、生長、付着等を妨げない任意のものを選択できる。
糸状基質としては、例えば、糸、紐、ロープ、テープ等が挙げられる。糸状基質の素材としては、繊維(綿、麻等)、ウレタン等が挙げられる。糸状基質の表面には、配偶体を付着しやすくするために接着性物質(ゲル等)等が塗布されていてもよい。
糸状基質の長さは培養規模等に応じて適宜設定できる。
糸状基質の径は培養規模等に応じて適宜設定できる。例えば、糸状基質の直径は1〜5mmであってもよい。
[培養]
培養条件としては、第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養でき、かつ、種液中の褐藻類の配偶体が充分に増殖できる条件であれば特に限定されない。
本発明において「第1の種液、及び第2の種液を別個に培養する」とは、第1の種液、及び第2の種液を混合せずに、それぞれを個別に培養することを意味する。第1の種液、及び第2の種液の培養条件は同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明において「第1(又は第2)の種液を糸状基質と接触させる」とは、種液の培養期間中の一部(好ましくは全部)において、糸状基質の一部(好ましくは全部)が種液に浸されていることを意味する。通常は、種液に糸状基質の全体を浸した状態で培養することで、容易に上記接触を実現できる。
上記のとおり、本発明においては、第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、種苗を得るための期間を短縮できる。
例えば、種糸作製工程における培養時間は、好ましくは14日間以下、より好ましくは7日間以下、さらに好ましくは4日間以下である。種糸作製工程における培養時間の下限は特に限定されないが、好ましくは1日間以上である。
種糸作製工程における培養温度は、特に限定されないが、通常、水温(すなわち、種液の温度)が16〜25℃であることが好ましい。
種糸作製工程における種液のpHは、特に限定されないが、通常、7.8〜8.5が好ましい。
種糸作製工程における培養においては、必要に応じてエアレーションを行ってもよい。
培養に用いる容器は種液を保持でき、培養が可能であるものであれば特に限定されず、フラスコ、水槽等が挙げられる。培養に用いる容器の大きさ、形状等は、培養規模等に応じて適宜選択できる。
[種糸]
種糸作製工程における培養が完了後、褐藻類の雌性配偶体が付着された種糸である「第1の種糸」、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された種糸である「第2の種糸」が得られる。
第1の種糸及び第2の種糸は、それぞれ適宜乾燥させることで長期保存が可能であり得る。第1の種糸及び第2の種糸は、それぞれ充分に雌性(又は雄性)配偶体が付着しているため、そのまま種苗として用いてもよい。
(種糸接触工程)
種糸接触工程は、第1の種糸と、第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る工程である。
本工程により、第1の種糸及び第2の種糸のそれぞれに付着した雌雄配偶体から卵と精子を受精させることが容易となり、芽胞体の発芽率を高めることができる。
本発明において「雌雄配偶体付着種糸」とは、褐藻類の雌性配偶体、及び褐藻類の雄性配偶体の両方が付着した種糸を意味する。
より具体的には、「雌雄配偶体付着種糸」とは、第1及び第2の種糸を接触させた後の第1の種糸若しくは第2の種糸、又は、第1の種糸及び第2の種糸を組み合わせたもの(例えば、第1の種糸及び第2の種糸をより合わせたもの)のいずれかを意味する。
「雌雄配偶体付着種糸」に付着したものとしては、雌雄配偶体に限られず、芽胞体、胞子体、配偶子(卵、精子)等も含まれ得る。
第1の種糸と、第2の種糸とを接触させる方法としては、種糸の表面の少なくとも一部が互いに接触できる方法であれば特に限定されず、種糸同士をより合わせる方法、種糸同士を編む方法、種糸同士を押しつける方法、種糸同士を絡ませる方法等が挙げられる。
第1の種糸と、第2の種糸との接触面積が大きいほど、配偶体から放出された卵及び精子を受精させることがより容易となるため、芽胞体の発芽率をより高めやすい。
種糸接触工程は、滅菌濾過海水、培地(PESI培地、市販の植物用液体肥料、市販の植物栄養剤等)、又はこれらの混合液の中に種糸の少なくとも一部(好ましくは全部)を浸して行われることが好ましい。
本発明において「滅菌濾過海水」とは、固形物質(例えば、粒径1μm以上)が取り除かれ、任意の方法で滅菌処理された海水を意味する。用いる海水は、人工海水であってもよく、天然海水であってもよい。
種糸接触工程における温度条件は、特に限定されないが、通常、水温が16〜24℃であることが好ましい。
種糸接触工程における種糸同士の接触時間は、特に限定されないが、通常、好ましくは1〜40日間、より好ましくは1〜14日間である。本発明においては、種糸に充分な量の配偶体が付着しているため、接触時間を短く設定したとしても、雌雄配偶体から放出された卵及び精子を容易に受精させることができる。
種糸接触工程においては、必要に応じてエアレーションを行ってもよい。
種糸接触工程においては、種糸の固定等のために、適宜支持棒等を用いてもよい。
(成熟工程)
本発明の種苗製造方法は、必要に応じて、雌雄配偶体付着種糸における配偶体を成熟させる成熟工程を含んでいてもよい。
このような成熟工程を設けることにより、雌雄配偶体から放出された卵及び精子の受精や、芽胞体の発芽を促進させることができ、芽胞体の発芽率をより高めることができる。
成熟工程における、配偶体を成熟させるための方法としては、褐藻類の成熟促進や発芽促進の方法等として知られる従来知られる任意の方法を採用できる。このような方法として、例えば、短日処理、水温低下処理、光質条件調整(LED等を用いた方法)、植物生長調整剤添加処理等が挙げられる。
短日処理における条件としては、例えば、照度2000〜6000lx、明期8〜10時間、暗期14〜16時間のサイクルが挙げられる。このようなサイクルで、例えば1〜14日間処理してもよい。
水温低下処理としては、例えば、雌雄配偶体付着種糸における配偶体を、水温14〜20℃にて1〜14日間低温に曝露する方法が挙げられる。
成熟工程を行うタイミングは特に限定されず、種糸作製工程後の任意の時点で行うことができる。例えば、種糸接触工程と並行して行ってもよく、種糸接触工程後に行ってもよい。
(その他の工程)
本発明の種苗製造方法は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて褐藻類の種苗製造方法に含まれる任意の工程が含まれていてもよい。このような工程として、殺菌工程、塊状の配偶体の細断工程、培養容器や基質の洗浄工程、滅菌濾過海水等の調製工程等が挙げられる。これらの工程は、目的等に応じて任意のタイミングで実施できる。
<褐藻類の種苗>
本発明の褐藻類の種苗(以下、「本発明の種苗」ともいう。)は、褐藻類の雌性配偶体又は雄性配偶体を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られるものである。
本発明の種苗としては以下の3形態があり得る。
(形態1)褐藻類の雌性配偶を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる種苗
(形態2)褐藻類の雄雌性配偶を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる種苗
(形態3)上記(形態1)の種苗と、上記(形態2)の種苗とを接触させることで得られる種苗
本発明の種苗を得るための褐藻類の種類、種液、糸状基質、培養方法、その他の条件等は、上記<褐藻類の種苗製造方法>の項で説明したものを採用できる。
本発明の種苗は、本発明の種苗製造方法から得られた種苗(すなわち、種糸接触工程後に得られた雌雄配偶体付着種糸等)であり得る。
本発明の種苗は、従来のより短い期間(例えば、1〜60日間)で作製できるうえ、褐藻類の雌性配偶体又は雄性配偶体が充分に付着しているため、本発明の種苗同士(例えば上記(形態1)の種苗、及び上記(形態2)の種苗)を接触させることで、受精を容易にし、芽胞体の発芽率を高めることができる。
本発明の種苗が上記(形態3)の態様である場合、種苗同士を接触させた状態(例えば、種苗同士が編まれた状態等)で、海域における基質(藻礁、フィルタユニット等)に任意の方法で固定し、沖出し等に供することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<褐藻類の種苗製造>
以下の方法で褐藻類の種苗を製造した。なお、褐藻類としてワカメを用いた。
(種液準備工程)
下記の方法で褐藻類の雌性配偶体及び雄性配偶体(それぞれ、雌性配偶子である卵、及び雄性配偶子である精子を含む。)をそれぞれ単離した。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水で数回洗浄した後、干出処理によって、遊走子を、滅菌濾過海水を含む容器内に放出させた。
次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで滅菌濾過海水中で培養した。
培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体(又は雄性配偶体)を一個体ずつ採取し、マルチプレートに収容し、さらに滅菌濾過海水中で培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ別個に得た。
得られた雌性配偶体及び雄性配偶体を0.5〜2.0mm角程度の大きさに裁断した後に、それぞれを10mLの培地を含むガラス製三角フラスコ(200mL)に入れ、褐藻類の雌性配偶体を含む「第1の種液」、及び褐藻類の雄性配偶体を含む「第2の種液」を得た。
種液準備工程における培地としては、PESI培地含有海水(滅菌濾過海水:PESI培地=100:2(質量比))を用いた。PESI培地含有海水を構成する成分の詳細は以下のとおりである。
[滅菌濾過海水]
神奈川県葉山町地先で汲み上げた海水を濾過(ポアサイズ1μmのろ紙を用いた。)し、得られた濾過海水を加温加圧で滅菌処理したものを用いた。
[PESI培地]
表1に示すPESI培地の各成分を、300mL程度の蒸留水に充分に溶解させ、得られた溶液のpHを7.8に調整し、蒸留水で1000mLまでメスアップした。次いで、得られた溶液をオートクレーブ(121℃、20分)により滅菌し、滅菌済みPESI培地を得た。滅菌PESI培地は使用するまで4℃で冷蔵保管した。

Figure 2021191237
(種糸作製工程)
第1の種液又は第2の種液を含む三角フラスコのそれぞれに、糸状基質を全体が浸かるように入れ、第1の種液及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養した。これにより、褐藻類の雌性配偶体が付着された「第1の種糸」、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された「第2の種糸」を得た。
糸状基質としては、綿100%、直径1.4mm、長さ6〜12cmの糸を使用した。
種糸作製工程における培養条件は、水温18℃、24時間、pH7.8〜8.5に設定した。
種糸作製工程における培養は、通気管でエアレーションしながら行った。
(種糸接触工程及び成熟工程)
ガラス製三角フラスコ(200mL)に、支持棒、第1の種糸及び第2の種糸を入れ、以下の条件で培養を行った。
支持棒としては、直径0.3cm、長さ10cmの樹脂製の棒を用いた。
図1に示すように、種糸接触工程における培養は、3つのパターンで、第1の種糸及び第2の種糸を支持棒に固定した状態で行った。
各パターンの詳細は以下のとおりである。
(1)「接触−なし」:6cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)と、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)とを、離して培養を行った。
(2)「接触−少」:9cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)を、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)に絡ませて培養を行った。
(3)「接触−多」:12cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)を、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)に絡ませて培養を行った。
上記パターンにおいて、「接触−多」では、「接触−少」よりも、第1の種糸と第2の種糸との接触面積が多い。
「接触−なし」では、第1の種糸と第2の種糸とが全く接触していない。
上記パターンにおいて、「接触−多」又は「接触−少」である状態で培養された第1の種糸及び第2の種糸のそれぞれは、本例における「雌雄配偶体付着種糸」に相当する。
種糸接触工程における培養条件は、水温14℃、40日間、pH7.8〜8.5に設定した。
種糸接触工程における培養期間中、照度2600lx、短日処理条件(明期10時間、暗期14時間)で発芽促進を行った。この工程は「成熟工程」に相当する。したがって、本例は、種糸接触工程及び成熟工程を同時に行った例に相当する。
種糸接触工程における培養は、通気管でエアレーションしながら行った。
種糸接触工程における培地としては、上記同様のPESI培地含有海水を用いた。
<芽胞体の観察>
以下の方法により、上記「(種糸接触工程)」後の種糸を観察し、発芽(芽胞体)の有無を確認した。
種糸接触工程における培養後、第1の種糸及び第2の種糸のそれぞれを1cm程度に切断し、各糸断片(各群につき任意に3検体ずつ)の表面を観察し、芽胞体数を数えた。その結果を表2に示す。
なお、表2中、「芽胞体検体数/総検体数」とは、全検体数(=3)に対する、芽胞体の存在が認められた検体数を意味する。「芽胞体検体数/総検体数」は、芽胞体の発芽率に相当する。
表2中、「芽胞体総数」とは、各群の検体において確認された芽胞体の総数を意味する。
Figure 2021191237
表2に示されるとおり、「接触−なし」では、芽胞体の出現が全く認められなかった。
これに対し、「接触−少」及び「接触−多」のいずれでも芽胞体の出現が認められた。さらに、「接触−少」よりも「接触−多」の方が芽胞体の出現数が多く、換言すれば、第1の種糸と第2の種糸との接触面積が多いほど芽胞体の出現数が多かった。
上記のとおり、本発明に係る一態様によれば、24時間の種糸作製工程、並びに、40日間の種糸接触工程及び成熟工程、換言すれば合計41日間程度の短期間で、芽胞体の高い発芽率を実現することができた。

Claims (4)

  1. 褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する種液準備工程と、
    前記第1の種液、及び前記第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る種糸作製工程と、
    前記第1の種糸と、前記第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程と、
    を含む、
    褐藻類の種苗製造方法。
  2. さらに、前記雌雄配偶体付着種糸における配偶体を成熟させる成熟工程を含む、請求項1に記載の種苗製造方法。
  3. 前記培養の期間が14日間以下である、請求項1又は2に記載の種苗製造方法。
  4. 褐藻類の雌性配偶体又は雄性配偶体を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる、褐藻類の種苗。
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