JP7290604B2 - 褐藻類の種苗製造方法、及び褐藻類の種苗 - Google Patents
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まず、母藻から放出された遊走子は、基質(藻礁等)に着生した後に発芽し、配偶体(雌性又は雄性)を形成する。次いで、雄性配偶体の造精器から放出された精子が、雌性配偶体の生卵器の卵と受精して発芽すると芽胞体を形成し、芽胞体が生長することで、幼い胞子体を経て成体となる。
前記第1の種液、及び前記第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る種糸作製工程と、
前記第1の種糸と、前記第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程と、
を含む、
褐藻類の種苗製造方法。
本発明の褐藻類の種苗製造方法(以下、「本発明の種苗製造方法」ともいう。)は、以下の3つの工程を少なくとも含む。
(種液準備工程)褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する工程
(種糸作製工程)種液準備工程で得られた第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る工程
(種糸接触工程)第1の種糸と、第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程
(工程1-a)滅菌海水等の中で褐藻類から遊走子を放出させ、生長させた雌性配偶体及び雄性配偶体を単離し、次いで、培地中で、雌性配偶体及び雄性配偶体を別個に拡大培養する。本工程に要する期間は、通常1~3ヶ月である。
(工程1-b)上記(工程1-a)の培養後、各配偶体を適宜せん断し、雌性配偶体及び雄性配偶体の混合物を糸状基質に付着させる。この工程は通常、雌性配偶体及び雄性配偶体の混合溶液を糸状基質等に塗布することで行われる。本工程に要する期間は、通常1日間程度である。
(工程1-c)上記(工程1-b)後、雌性配偶体及び雄性配偶体から精子と卵とが放出され、受精が行われる。さらに、短日処理や水温低下処理等によって、発芽促進(成熟促進)を行う。本工程に要する期間は、通常14~21日間である。
(工程1-d)上記(工程1-c)後、受精確認、芽胞体の発芽確認、芽胞体培養等を行い、種苗が得られる。本工程に要する期間は、通常14~21日間である。得られた種苗は、適宜、沖出し(実際の養殖を行う海域の定位置等へ種糸を移動すること)等に供される。
(工程1-A)滅菌海水等の中で褐藻類から遊走子を放出させ、遊走子から形成させた雌性配偶体及び雄性配偶体を単離し、次いで、培地中で、雌性配偶体及び雄性配偶体を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に拡大培養する。本工程に要する期間は、通常14日間以下である。
(工程1-C)上記(工程1-A)後、雌性配偶体又は雄性配偶体が付着した種糸を接触させる。これにより、種糸に雌性配偶体及び雄性配偶体が付着しつつ、雌性配偶体及び雄性配偶体から精子と卵とが放出され、受精が行われる。さらに、必要に応じて、短日処理や水温低下処理等によって、発芽促進(成熟促進)を行う。本工程に要する期間は、通常1~40日間である。(工程1-C)後、種苗が得られる。得られた種苗は、適宜沖出し等に供される。
種液準備工程は、褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する工程である。
本発明における好ましい褐藻類としては、コンブ目等の褐藻が挙げられ、さらに、ワカメ属、アラメ属、カジメ属等の褐藻が挙げられる。
より具体的には、ワカメ(学名:Undaria pinnatifida)、コンブ(学名:Laminariaceae)、アラメ(学名:Eisenia bicyclis)、カジメ(学名:Ecklonia cava)等の大型褐藻類が挙げられる。
これらのうち、ワカメ、アラメ、カジメ等が好ましく、ワカメが特に好ましい。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水等で洗浄した後、干出処理によって遊走子を滅菌濾過海水の容器に放出させる。次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで培養する。培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体(又は雄性配偶体)を一個体ずつ採取し、培養容器(マルチプレート等)等に収容して適宜培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ別個に得ることができる。
本発明において、「種液が褐藻類の雌性(又は雌性)配偶体を主に含む」とは、種液に含まれる配偶体のうち、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは90%以上が雌性(又は雌性)配偶体であることを意味する。
種糸作製工程は、第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る工程である。
本発明において「糸状基質」とは、種液中で培養された配偶体を付着させるためのものである。したがって、糸状基質としては、配偶体の培養、増殖、生長、付着等を妨げない任意のものを選択できる。
培養条件としては、第1の種液、及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養でき、かつ、種液中の褐藻類の配偶体が充分に増殖できる条件であれば特に限定されない。
例えば、種糸作製工程における培養時間は、好ましくは14日間以下、より好ましくは7日間以下、さらに好ましくは4日間以下である。種糸作製工程における培養時間の下限は特に限定されないが、好ましくは1日間以上である。
種糸作製工程における培養が完了後、褐藻類の雌性配偶体が付着された種糸である「第1の種糸」、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された種糸である「第2の種糸」が得られる。
種糸接触工程は、第1の種糸と、第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る工程である。
本工程により、第1の種糸及び第2の種糸のそれぞれに付着した雌雄配偶体から卵と精子を受精させることが容易となり、芽胞体の発芽率を高めることができる。
より具体的には、「雌雄配偶体付着種糸」とは、第1及び第2の種糸を接触させた後の第1の種糸若しくは第2の種糸、又は、第1の種糸及び第2の種糸を組み合わせたもの(例えば、第1の種糸及び第2の種糸をより合わせたもの)のいずれかを意味する。
本発明の種苗製造方法は、必要に応じて、雌雄配偶体付着種糸における配偶体を成熟させる成熟工程を含んでいてもよい。
このような成熟工程を設けることにより、雌雄配偶体から放出された卵及び精子の受精や、芽胞体の発芽を促進させることができ、芽胞体の発芽率をより高めることができる。
本発明の種苗製造方法は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて褐藻類の種苗製造方法に含まれる任意の工程が含まれていてもよい。このような工程として、殺菌工程、塊状の配偶体の細断工程、培養容器や基質の洗浄工程、滅菌濾過海水等の調製工程等が挙げられる。これらの工程は、目的等に応じて任意のタイミングで実施できる。
本発明の褐藻類の種苗(以下、「本発明の種苗」ともいう。)は、褐藻類の雌性配偶体又は雄性配偶体を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られるものである。
(形態1)褐藻類の雌性配偶を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる種苗
(形態2)褐藻類の雄雌性配偶を含む種液を、糸状基質と接触させた状態で培養することで得られる種苗
(形態3)上記(形態1)の種苗と、上記(形態2)の種苗とを接触させることで得られる種苗
以下の方法で褐藻類の種苗を製造した。なお、褐藻類としてワカメを用いた。
下記の方法で褐藻類の雌性配偶体及び雄性配偶体(それぞれ、雌性配偶子である卵、及び雄性配偶子である精子を含む。)をそれぞれ単離した。
まず、生殖器官(芽株、子嚢斑等)を切り出し、滅菌濾過海水で数回洗浄した後、干出処理によって、遊走子を、滅菌濾過海水を含む容器内に放出させた。
次いで、遊走子が着底し配偶体を形成するまで滅菌濾過海水中で培養した。
培養後、実体顕微鏡による観察下、ピペット等で雌性配偶体(又は雄性配偶体)を一個体ずつ採取し、マルチプレートに収容し、さらに滅菌濾過海水中で培養することで、雌性配偶体及び雄性配偶体をそれぞれ別個に得た。
神奈川県葉山町地先で汲み上げた海水を濾過(ポアサイズ1μmのろ紙を用いた。)し、得られた濾過海水を加温加圧で滅菌処理したものを用いた。
表1に示すPESI培地の各成分を、300mL程度の蒸留水に充分に溶解させ、得られた溶液のpHを7.8に調整し、蒸留水で1000mLまでメスアップした。次いで、得られた溶液をオートクレーブ(121℃、20分)により滅菌し、滅菌済みPESI培地を得た。滅菌PESI培地は使用するまで4℃で冷蔵保管した。
第1の種液又は第2の種液を含む三角フラスコのそれぞれに、糸状基質を全体が浸かるように入れ、第1の種液及び第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養した。これにより、褐藻類の雌性配偶体が付着された「第1の種糸」、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された「第2の種糸」を得た。
種糸作製工程における培養は、通気管でエアレーションしながら行った。
ガラス製三角フラスコ(200mL)に、支持棒、第1の種糸及び第2の種糸を入れ、以下の条件で培養を行った。
各パターンの詳細は以下のとおりである。
(1)「接触-なし」:6cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)と、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)とを、離して培養を行った。
(2)「接触-少」:9cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)を、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)に絡ませて培養を行った。
(3)「接触-多」:12cmの第1の種糸(雌性配偶体付着)を、6cmの第2の種糸(雄性配偶体付着)に絡ませて培養を行った。
「接触-なし」では、第1の種糸と第2の種糸とが全く接触していない。
上記パターンにおいて、「接触-多」又は「接触-少」である状態で培養された第1の種糸及び第2の種糸のそれぞれは、本例における「雌雄配偶体付着種糸」に相当する。
以下の方法により、上記「(種糸接触工程)」後の種糸を観察し、発芽(芽胞体)の有無を確認した。
なお、表2中、「芽胞体検体数/総検体数」とは、全検体数(=3)に対する、芽胞体の存在が認められた検体数を意味する。「芽胞体検体数/総検体数」は、芽胞体の発芽率に相当する。
表2中、「芽胞体総数」とは、各群の検体において確認された芽胞体の総数を意味する。
Claims (3)
- 褐藻類の雌性配偶体を含む第1の種液、及び褐藻類の雄性配偶体を含む第2の種液を準備する種液準備工程と、
前記第1の種液、及び前記第2の種液を、それぞれ糸状基質と接触させた状態で別個に培養することで、褐藻類の雌性配偶体が付着された第1の種糸、及び褐藻類の雄性配偶体が付着された第2の種糸を得る種糸作製工程と、
前記第1の種糸と、前記第2の種糸とを接触させることで雌雄配偶体付着種糸を得る種糸接触工程と、
を含む、
褐藻類の種苗製造方法。 - さらに、前記雌雄配偶体付着種糸における配偶体を成熟させる成熟工程を含む、請求項1に記載の種苗製造方法。
- 前記培養の期間が14日間以下である、請求項1又は2に記載の種苗製造方法。
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