JP2021190477A - 鉄系酸化物磁性粉およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細粒子の個数割合が低減された、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供する。【解決手段】Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーを水熱処理に供することを特徴とする、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、高密度磁気記録媒体、電波吸収体等に好適な鉄系酸化物磁性粉、特に粒子の平均粒子径がナノメートルオーダーである鉄系酸化物磁性粉、およびその製造方法に関する。
ε−Fe23は酸化鉄の中でも極めて稀な相であるが、室温において、ナノメートルオーダーのサイズの粒子が20kOe(1.59×106A/m)程度の巨大な保磁力(Hc)を示す為、ε−Fe23を単相で合成する製造方法の検討が従来よりなされてきた(特許文献1参照)。
また、ε−Fe23を磁気記録媒体に用いようとした場合、現時点ではそれに対応出来る高レベルの飽和磁束密度を有する磁気ヘッド用の材料が存在しない。この為、ε−Fe23のFeサイトの一部をAl、Ga、In等の3価の金属で置換することにより、保磁力を調整することも行われており、保磁力と電波吸収特性の関係も調べられている(特許文献2参照)。
ε−Fe23は、ナノメートルオーダーのサイズで安定相として得られる為、その製造には特殊な方法を必要とする。上述の特許文献1および2には、液相法で生成したオキシ水酸化鉄の微細結晶を前駆体として用い、当該前駆体へゾル−ゲル法によりシリコン酸化物を被覆した後に、熱処理するε−Fe23の製造方法が開示されている。そして、当該液相法として、反応媒体として有機溶媒を用いる逆ミセル法と、反応媒体として水溶液のみを用いる方法とが、それぞれ開示されている。
一方、磁気記録の分野では、再生信号レベルと粒子性ノイズの比(Carrier to Noise Ratio:C/N比)の高い磁気記録媒体の開発が行われており、記録の高密度化の為に磁気記録層を構成する磁性粒子の微細化が求められている。また、磁気記録の高密度化の為に、鉄系酸化物磁性粉中に含まれる保磁力の小さな微細粒子の存在に起因する、保磁力分布のバラツキを低減させることも求められている。
特許文献3には、ε−Fe23粒子またはFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたε−Fe23粒子を含むスラリーへ、表面改質剤として4級アンモニウム塩を添加するとともに、当該スラリーのpHを11以上14以下とし、ε酸化鉄粒子を分散処理に供した後に、分級操作を実施するεタイプの鉄系酸化物磁性粉の製造方法が開示されている。そして当該文献には、当該製造方法を用いることで、粒子径が小さくかつ粒度分布および保磁力分布が狭いεタイプの鉄系酸化物の磁性粉を得ることができる旨が記載されている。
特開2008−174405号公報 国際公開第2008/029861号 特開2019−175539号公報
特許文献3に開示された製造方法により製造された、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉は、粒度分布が狭く、かつ、磁気記録特性に寄与しない微細粒子の含有量が少なく、その結果として保磁力分布が狭い点で優れたものであった。
しかしながら本発明者らの検討によれば、磁気記録媒体の高記録密度化の観点からは、品質上の問題点があった。
この問題点について、具体的に説明する。
ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を磁気記録媒体に適用するにあたっては、粒子径が平均粒径値からかけ離れて微細な粒子の存在割合が、出来るだけ少ないことが望ましい。これは、当該微細な粒子の存在は、たとえ当該磁性粉に占める体積割合が少ないものであっても、磁気記録媒体の電磁変換特性(SNR)におけるノイズ増の要因となる為である。
そして、特許文献3に開示された製造方法により製造されたFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉は、微細粒子の含有量が十分に低減されたものとは言えず、磁気記録媒体の高記録密度化の観点からは課題を抱えているものであった。
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、微細粒子の含有量が低減された、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供することである。また併せて、微細粒子の含有量が低減された、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を提供することである。
上述の課題を解決する為、本発明者らが鋭意研究を行った結果、微細粒子を含むFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含むスラリーへ、水熱処理を施すことで、当該微細粒子の含有量を低減させることが出来るという画期的な知見を得て本発明を完成させた。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーを水熱処理に供することを特徴とする、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第2の発明は、
前記水熱処理により、前記Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子であって透過電子顕微鏡で測定した粒子径が8nm以下である粒子の個数割合を、低減させることを特徴とする、第1の発明に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第3の発明は、
前記透過電子顕微鏡で測定した粒子径が8nm以下である粒子の個数割合を、4%以下に低減することを特徴とする、第2の発明に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第4の発明は、
前記水熱処理を120℃以上の温度で行うことを特徴とする、第1〜第3の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第5の発明は、
前記水熱処理を0.2MPa以上の圧力で行うことを特徴とする、第1〜第4の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第6の発明は、
前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーとして、pHが6以上14以下であるものを用いることを特徴とする、第1〜第5の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第7の発明は、
前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーとして、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下である、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含むスラリーを用いることを特徴とする、第1〜第6の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第8の発明は、
前記Feサイトの一部を置換する他の金属元素として、Gaを用いることを特徴とする、第1〜第7の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第9の発明は、
前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーへ、超音波を照射および/または金属イオンを添加した後に、水熱処理に供することを特徴とする、第1〜第8の発明のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法である。
第10の発明は、
透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下であり、粒子径が8nm以下の粒子の個数割合が4%以下であり、X線回折法により測定されるαタイプの鉄系酸化物の含有率が10%以下であることを特徴とする、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉である。
第11の発明は、
前記Feサイトの一部を置換する他の金属元素が、Gaであることを特徴とする、第10の発明に記載の鉄系酸化物磁性粉である。
本発明に係るFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法により、微細粒子の含有量が低減されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得ることができる。
実施例1に係る置換型ε酸化鉄粒子のTEM写真である。 実施例1に係る鉄系酸化物磁性粉のTEM写真である。 実施例4に係る鉄系酸化物磁性粉のTEM写真である。 実施例7に係る鉄系酸化物磁性粉のTEM写真である。 実施例10に係る置換型ε酸化鉄粒子のTEM写真である。 実施例10に係る鉄系酸化物磁性粉のTEM写真である。
本発明に係る、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法は、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含むスラリー(本発明において「原料スラリー」と記載する場合がある。)を水熱処理に供することを特徴とする。当該水熱処理は120℃以上の温度で行うことが好ましく、0.2MPa以上の圧力で行うことが好ましく、原料スラリーとしてpHが6以上14以下であるものを用いることが好ましく、原料スラリーとして、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下であり、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含むスラリーを用いることが好ましく、当該原料スラリーに超音波を照射した後に、水熱処理に供することが好ましい。
また本発明は、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉であって、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下であり、置換型ε酸化鉄の所定の粒子個数における粒子径が8nm以下の微細粒子の個数割合(本発明において、置換型ε酸化鉄の所定の粒子個数における微細粒子の個数の割合を、単に「個数割合」と記載する場合がある。)が好ましくは4%以下であり、X線回折法により測定されるαタイプの鉄系酸化物の含有率が10%以下であることを特徴とするものに係る。そして、Feサイトの一部を置換する金属元素をGaとしても良いものである。
以下、本発明について[鉄系酸化物磁性粉の製造方法]、[鉄系酸化物磁性粉]の順で、詳細に説明するが、「Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄」を「置換型ε酸化鉄」と、「Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子」を「置換型ε酸化鉄粒子」と記載する場合がある。
[鉄系酸化物磁性粉の製造方法]
本発明に係る鉄系酸化物磁性粉の製造方法について、1.原料スラリーの製造、2.原料スラリーへの前処理、3.原料スラリーへの水熱処理、の順で詳細に説明する。
1.原料スラリーの製造
まず初めに、原料スラリーとして、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを準備する。ここで、当該原料スラリーに置換型ε酸化鉄粒子が含まれていることで、後述する水熱処理後に本発明に係る置換型ε酸化鉄粒子を得ることが出来る。
置換型ε酸化鉄粒子を準備する方法としては、ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉に係る公知の製造方法を用いることが出来る。当該公知の製造方法としては、例えば、特開2019−175539号公報、特開2017−024981号公報が例示される。
上述した公知の製造方法で得られた置換型ε酸化鉄粒子と溶媒とを混合することで、原料スラリーが得られる。ここで、溶媒は水とすることが好ましい。
尚、特開2017−024981号公報のシリコン酸化物被覆除去工程(0041)段落に記載されているように、シリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを強アルカリの水溶液中に浸漬し攪拌することにより、置換型ε酸化鉄粒子からシリコン酸化物を溶解除去する。その後に、置換型ε酸化鉄粒子は限外濾過膜等を通過出来ず、シリコン酸化物の溶解物や強アルカリを構成する不要イオンは限外濾過膜等を通過出来る性質を利用し、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを水洗して、シリコン酸化物の溶解物や不要イオンを除去することにより、原料スラリーを得ることとしてもよい。
原料スラリーに含まれる置換型ε酸化鉄粒子の組成および粒度については、特に限定されず、最終的に得たい鉄系酸化物磁性粉の組成、粒度に合わせて調整すればよい。また、原料スラリー中の置換型ε酸化鉄粒子の濃度も特に制約はなく、通常は0.1〜10質量%程度とすればよい。
ここで、本発明の製造方法を適用することが可能な置換型ε酸化鉄粒子の組成について説明する。
(1)一般式ε−CzFe2-z3(ここでCは、In、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素)で表されるもの。
(2)一般式ε−AxyFe2-x-y3(ここでAは、Co、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、BはTi、Snから選択される1種以上の4価の金属元素)で表されるもの。
(3)一般式ε−AxzFe2-x-z3(ここでAは、Co、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、Cは、In、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素)で表されるもの。
(4)一般式ε−ByzFe2-y-z3(ここでBは、Ti、Snから選択される1種以上の4価の金属元素、Cは、In、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素)で表されるもの。
(5)一般式ε−AxyzFe2-x-y-z3(ここでAは、Co、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、Bは、Ti、Snから選択される1種以上の4価の金属元素、Cは、In、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素)で表されるもの。
尚、上記(1)〜(5)で説明した各一般式における置換量x、yおよびzは、0<x<1、0<y<1、0<z<1の範囲において任意の量とすることができる。そして、置換量x、yおよびzを調整することにより、保磁力を所望の値に調整することが可能である。
本発明に係る鉄系酸化物磁性粉の製造方法により製造された置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉には、その製造上、生成が不可避的な不純物である異相が混在する場合がある。異相は主としてαタイプの鉄系酸化物である。そして、本発明に係る製造方法により得られる置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉において、αタイプの鉄系酸化物の含有は許容されるが、その含有量は抑制されていることが好ましい。尚、αタイプの鉄系酸化物とは、α−FeおよびFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたα−Feの総称である(本発明において、αタイプの鉄系酸化物を「α相」と記載する場合がある。)。
原料スラリーは、後述する水熱処理後に得られる鉄系酸化物磁性粉におけるα相の含有率増加を抑制する観点から、pHを6以上14以下とすることが好ましい。
原料スラリーのpHを6以上とすることにより、得られる鉄系酸化物磁性粉のα相の含有率を抑制することが出来る。また原料スラリーのpHが14以下とすることで、α相の含有率増加の抑制効果が頭打ちとなることを回避出来ると共に、アルカリ剤の薬品コストの上昇も回避出来、好ましいからである。
原料スラリーとして所望のpH範囲のものが得られない場合は、当該スラリーへ酸やアルカリ等を添加することにより、pHを所望の範囲に調整して原料スラリーとして用いてもよい。添加する酸としては硫酸、硝酸、塩酸および酢酸のような無機酸を用いることができ、添加するアルカリとしては水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物およびアンモニア等の無機アルカリを用いることが出来る。
尚、本発明においてpHの値は、JIS Z8802に基づき、ガラス電極を用いて測定したものであり、pH標準液として測定するpH領域に応じた適切な緩衝液を用いて校正したpH計により測定されたものである。また、本発明に記載のpHは、温度補償電極により補償されたpH計の示す測定値を、反応温度条件下で直接読み取った値である。
2.原料スラリーへの前処理
「1.原料スラリーの製造」で準備した原料スラリーへ、超音波照射および/または金属イオン添加のような前処理を行うことで、「前処理後スラリー」とすることも好ましい構成である。
原料スラリーへの超音波照射は、公知の超音波分散機により実施することができる。原料スラリーへ超音波を照射した後に水熱処理をすることにより、超音波照射をしない場合と比べて、得られる鉄系酸化物磁性粉における微細粒子の含有量をより低減させることが出来る。
原料スラリーへの金属イオン添加は、硝酸第二鉄や硝酸ガリウム等の水溶性金属塩を原料スラリーに添加することにより実施出来る。
尤も、添加する水溶性金属塩の金属元素の種類および各元素の添加割合については、原料スラリーに含まれる置換型ε酸化鉄粒子の化学組成に合わせても良いが、原料スラリーに含まれる置換型ε酸化鉄粒子の化学組成に合わせずに、上記「1.原料スラリーの製造」の(1)〜(5)で説明した、各一般式における置換量の範囲において金属元素の種類および各元素の添加割合を設定しても良い。また、置換金属元素を添加せずに、硫酸第二鉄等の水溶性鉄塩のみを添加してもよい。ここで、金属イオンの添加量は、原料スラリー中の金属イオンの合計濃度が0.1mol/kg以下となる量とすることが好ましい。そして、鉄イオンとしてFe3+イオンを含むことが好ましい。また、添加する水溶性金属塩のアニオン種は、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオンのような無機酸に含まれるアニオン種を用いることが出来る。
3.原料スラリーへの水熱処理
水熱処理とは、処理対象物を100℃超の高温かつ高圧の熱水中で保持する処理のことである。
本発明に係る製造方法において水熱処理を実施することにより、原料スラリーまたは前処理後の原料スラリーに含まれる置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合を低減させることが出来る。当該微細粒子の個数割合を低減出来る理由は明らかではないが、発明者らは以下のようなメカニズムを推定している。
置換型ε酸化鉄の粒子が高温高圧の熱水に曝されることで、置換型ε酸化鉄粒子の溶解再析出反応が起こる。この溶解再析出反応により、原料スラリー中の置換型ε酸化鉄の微細粒子が溶解し、より大きな粒径の置換型ε酸化鉄粒子の周りに再析出する。以上のようなメカニズムにより、微細粒子の含有量が低減するものと考えられる。このような溶解再析出の現象は一般に、オストワルド成長として知られている。
以下に、本発明に係る水熱処理の温度、圧力、時間等の具体的な態様について述べる。
水熱処理の温度は、本発明の目的である置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合を低減させる効果を得る為、120℃以上とすることが好ましく、170℃以上がより好ましい。また、原料スラリーとして、粒子径8nm以下粒子の個数割合が20%以上といった微細粒子の個数割合が多いものを用いる場合には、微細粒子の個数割合低減の十分な効果を担保する観点から、水熱処理の温度を280℃以上とすることが好ましい。
一方、得られる鉄系酸化物磁性粉におけるα相の個数割合を抑制する観点から、温度を450℃以下とすることが好ましく、380℃以下とすることがより好ましい。
水熱処理の圧力は、本発明の目的である置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合を低減させる効果を得る為、0.2MPa以上とすることが好ましく、10MPa以上とすることがより好ましい。一方、水熱処理圧力の上限については特に限定されないが、設備コストの観点から圧力を600MPa以下とすればよく、100MPa以下としてもよい。
水熱処理の時間は、本発明の目的である置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合を低減させる効果を得る為、1分間以上とすることが好ましい。一方、水熱処理時間の上限については特に限定されないが、生産コストの観点から時間を600分間以下とすればよく、100分間以下としてもよい。
以上の操作により、本発明に係るFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法により、微細粒子の個数割合が低減されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を、分級操作を行わずとも得ることができた。
尤も、所望により、当該水熱処理前に予備的な分級操作を実施することは好ましい構成である。また所望により、当該水熱処理を、複数回繰り返して実施することも好ましい構成である。
[鉄系酸化物磁性粉]
以上説明した本発明に係る鉄系酸化物磁性粉の製造方法により、原料スラリーまたは前処理後の原料スラリーへ、上述した水熱処理を実施することで、微細粒子の個数割合が低減された置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーが得られる。得られたスラリーを公知の方法により固液分離して固形分を回収した後に乾燥することで、微細粒子の個数割合が低減された鉄系酸化物磁性粉が得られる。
本発明に係る製造方法で得られた鉄系酸化物磁性粉の態様について、1.TEM粒子径、2.結晶構造、3.α相の含有率、4.組成、の順で詳細に説明する。
1.TEM粒子径
後述する後工程において、磁気記録媒体用途の鉄系酸化物磁性粉を製造するとき、得られる鉄系酸化物磁性粉の保磁力をある程度高くし、かつ磁気記録媒体の優れた電磁変換特性を得る為に、本発明に係る鉄系酸化物磁性粉を構成する置換型ε酸化鉄粒子は、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径(本発明において「TEM平均粒子径」と記載する場合がある。)が10nm以上20nm以下であることが好ましい。
尚、本発明において粒子径とは、透過電子顕微鏡で輪郭が観察される最小単位の粒子(一次粒子)の粒子径を指す。
上述したように、置換型ε酸化鉄粒子の透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が小さくなり過ぎると、磁気特性向上に寄与しない微細粒子の存在割合が増大し、磁性粉単位重量あたりの磁気特性が劣化する。そこで、TEM平均粒子径は10nm以上であることが好ましい。
一方、TEM平均粒子径が20nm以下、さらに好ましくは18nm以下であることにより、鉄系酸化物磁性粉を磁気記録媒体に用いた際の電磁変換特性を向上させることが出来る。
本発明に係る鉄系酸化物磁性粉は、置換型ε酸化鉄の所定の粒子個数におけるTEM粒子径が8nm以下である置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合が4%以下であることが好ましい。これは、TEM粒子径が8nm以下の置換型ε酸化鉄の微細粒子は保磁力が低い為、磁気記録媒体中に存在しても磁気記録が出来ない粒子であることに加え、磁気記録媒体の電磁変換特性においてノイズ成分の増に繋がりうる粒子であることによる。
尚、上述した置換型ε酸化鉄の所定の粒子個数とは200個以上のことである。
従って、置換型ε酸化鉄の所定の粒子個数におけるTEM粒子径が8nm以下の置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合は出来るだけ少ないことが好ましい。本発明に係る鉄系酸化物磁性粉においては、このTEM粒子径が8nm以下である置換型ε酸化鉄の微細粒子の個数割合が、4%以下であることが好ましい。これは、当該鉄系酸化物磁性粉を磁気記録媒体に用いた際の電磁変換特性におけるノイズ成分量を、従来の鉄系酸化物磁性粉を用いた場合よりも低減させることが出来るからである。
2.結晶構造
本発明に係る鉄系酸化物磁性粉がε酸化鉄の結晶構造を有するものであることは、X線回折法(XRD)、高速電子回折法(HEED)等を用いて確認することが出来る。
3.α相の含有率
上述したように、本発明の製造方法により得られる鉄系酸化物磁性粉は、α相を含有する場合がある。そして、本発明に係る鉄系酸化物磁性粉を磁気記録媒体に適用するにあたっては、鉄系酸化物磁性粉中の異相の含有割合をできるだけ低減することが好ましい。具体的には、鉄系酸化物磁性粉中の異相の含有割合をX線回折法のリートベルト解析により測定した場合、α相の含有率が10%以下であることが好ましい。
4.組成
本発明に係る鉄系酸化物磁性粉の組成は、水熱処理の前処理として金属イオン添加を行わなかった場合には、原料として準備した置換型ε酸化鉄と同じ組成となる。
一方、水熱処理の前処理として金属イオン添加を行った場合、当該添加された金属イオンは、全て鉄系酸化物粒子に酸化物として取り込まれるため、最終的に得られる鉄系酸化物磁性粉の組成は、原料として準備した置換型ε酸化鉄と、添加した金属イオンとをあわせた組成となる。
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。尚、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
まず、本発明に係る製造法により得られた置換型ε酸化鉄粒子や、置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の評価方法、評価装置について、1.TEM測定、2.平均粒子径、粒度分布測定、3.X線回折法(XRD)による結晶性評価、4.磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)測定、5.化学組成分析、の順で説明する。
1.TEM観察
TEM観察には日本電子株式会社製JEM−1011を使用した。置換型ε酸化鉄粒子の観察については、倍率100,000倍で撮影したTEM写真を用いた(シリコン酸化物被覆を除去後のものを使用した。)。
2.平均粒子径、粒度分布測定
置換型ε酸化鉄粒子のTEM平均粒子径および粒度分布の評価には、デジタイズを使用した。画像処理ソフトウェアとして、Mac−View Ver.4.0を使用した。この画像処理ソフトウェアを使用した場合、ある粒子の粒子径は、その粒子に外接する長方形のうち、面積が最小となる長方形の長辺の長さとして算出される。個数については200個を測定した。
このとき、TEM写真に映っている粒子のうち、測定する粒子の選定基準は次のとおりとした。
(1)粒子の一部が写真の視野の外にはみだしている粒子は測定しない。
(2)輪郭がはっきりしており、孤立して存在している粒子は測定する。
(3)平均的な粒子形状から外れている場合でも、独立しており単独粒子として測定が可能な粒子は測定する。
(4)粒子同士に重なりがあるが、両者の境界が明瞭で、粒子全体の形状も判断可能な粒子は、それぞれの粒子を単独粒子として測定する。
(5)重なり合っている粒子で、境界がはっきりせず、粒子の全形も判らない粒子は、粒子の形状が判断できないものとして測定しない。
以上の(1)〜(5)の基準で選定された粒子の粒子径の個数平均値を算出し、鉄酸化物磁性粉のTEM観察による平均粒子径とした。また、「選定された粒子の粒子径の標準偏差」を「選択された粒子の粒子径の個数平均値(=平均粒子径)」で除した値を算出して、鉄酸化物磁性粉のTEM観察による粒子径の変動係数とした。また、選択された粒子の個数に対する、選定された粒子のうち粒子径が8nm以下の粒子の個数割合を百分率で算出して、8nm以下の粒子割合とし、選定された粒子のうち粒子径が20nm以上の粒子の個数割合を百分率で算出して、20nm以上の粒子割合とした。
3.X線回折法(XRD)による結晶性評価
得られた試料を、粉末X線回折(XRD:リガク社製試料水平型多目的X線回折装置Ultima IV、線源CuKα線、電圧40kV、電流40mA、2θ=10°以上70°以下)に供した。得られた回折パターンについて、統合粉末X線解析ソフトウェア(PDXL2:リガク社製)を用いICSD(無機結晶構造データベース)のNo.173025:Iron(III)Oxide−Epsilon、No.82134:Hematiteをもとにしてリートベルト解析による評価を行い、結晶構造およびα相の含有率を確認した。
4.磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)測定
得られた鉄系酸化物磁性粉の磁気特性を以下の条件で測定した。
磁気特性測定装置として振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製VSM−5)を用い、印加磁場1035kA/m(13kOe)、M測定レンジ0.005A・m(5emu)、印加磁場変化速度15(kA/m・s)、時定数0.03秒、ウエイトタイム0.1秒で磁気特性を測定した。また、本測定には東英工業社製付属ソフト(Ver.2.1)を使用した。
5.化学組成分析
鉄系酸化物磁性粉の化学組成分析にあたっては、アジレントテクノロジー製ICP−720ESを使用し、測定波長(nm)についてはFe;259.940nm、Ga;294.363nmにて分析を行った。
[実施例1]
(手順1)
原料溶液として、硝酸第二鉄(III)と硝酸ガリウムとの混合水溶液3000gを準備した。当原料溶液において、FeイオンとGaイオンのモル比は1.55:0.45とし、FeイオンとGaイオンとの合計モル濃度を0.50mol/kgとした。
大気雰囲気下、原料溶液を40℃とし撹拌羽根により機械的に撹拌しながら、21.75%のアンモニア水溶液275.6gを一挙添加し、2時間撹拌を続けた。
次に、溶液温度40℃の条件下で、クエン酸濃度20質量%のクエン酸溶液288.8gを、1時間かけて連続添加した後、21.75質量%のアンモニア水溶液を186.1g一挙添加した。その後、溶液温度40℃の条件下で1時間撹拌を保持し、置換元素としてGaを含むオキシ水酸化鉄の結晶を含むスラリーを製造した。
(手順2)
その後、大気雰囲気下、手順1で得られたスラリーを40℃のまま撹拌しながら、テトラエトキシシラン(TEOS)833.7gを35分間かけて添加した。その後、約1日そのまま撹拌し続け、置換元素を含むオキシ水酸化鉄の結晶がTEOSの加水分解生成物で被覆されたスラリーを得た。そして得られたスラリーを固液分離し、分離された固形分を洗浄してケーキとして回収した。
(手順3)
手順2で回収されたケーキを乾燥して乾燥粉とした後、当該乾燥粉へ、大気雰囲気の炉内で、1025℃で4時間の熱処理を施し、シリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄粒子からなる粉末を得た。
(手順4)
手順3で得られたシリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄粒子からなる粉末を、20質量%NaOH水溶液中へ加え、約60℃24時間撹拌して、置換型ε酸化鉄粒子表面のシリコン酸化物の除去処理を行うことで、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
(手順5)
限外濾過膜を用い、手順4で得られたスラリーを、ろ液の導電率が≦10mS/mとなるまで純水により洗浄することで、置換型ε酸化鉄粒子を含む原料スラリーを得た。このとき得られた原料スラリー中には、置換型ε酸化鉄粒子が1質量%含有されていた。そして、得られた原料スラリーのpHは9であった。
以上の手順5で得られた原料スラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.3nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は23.0%、変動係数(CV値)は36%であった。原料スラリーに対するTEM観察とは、原料スラリーをグリッド上のコロジオン膜に滴下して付着させ、自然乾燥させた後にカーボン蒸着を施して、TEM観察に供することを指す。図1に、当該スラリーに含有されている置換型ε酸化鉄粒子のTEM写真を示す。なお、TEM写真の右下部に表示した白い横線で示す長さが100nmである(以下のTEM写真についても同様)。
手順5で得られた原料スラリーへ、1質量%の硫酸水溶液を添加してpHを6.5に調整して置換型ε酸化鉄粒子を凝集させた後にメンブレンフィルター(孔径0.2μm)で濾過し、固形分を回収した。回収された固形分を乾燥することで、置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。得られた鉄系酸化物磁性粉に対してFeおよびGaの組成分析を実施したところ、モル比でFe:Ga=1.57:0.43であった。また、得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
(手順6)
手順5で得られた原料スラリー4.7mLを、容量5mL密閉容器に入れ、処理温度150℃、処理時間5分間、圧力30MPaの条件で水熱処理を行うことにより、実施例1に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。
(手順7)
手順6で得られたスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.4nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は17.4%、変動係数(CV値)は33%であった。図2に、実施例1に係る置換型ε酸化鉄粒子のTEM写真を示す。
次に、手順6で得られたスラリーに、1質量%の硫酸水溶液を添加してpHを6.5に調整した後にメンブレンフィルター(孔径0.2μm)で濾過し、固形物を回収した後に乾燥することで実施例1に係る鉄系酸化物磁性粉を得た。
得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
得られた鉄系酸化物磁性粉の磁気特性を測定した結果を、α相の含有率の測定結果、化学組成とまとめて表に示す。尚、鉄系酸化物磁性粉の化学組成は、実施例1に係る原料スラリーに含まれる置換型ε酸化鉄粒子と同等であった。(以下の実施例2〜10についても同様)
以上説明した、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例2]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー4.4mLを用い、処理温度200℃の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例2に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例2に係る置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例2に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は12.7nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は12.0%、変動係数(CV値)は32%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例3]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー4.1mLを用い、処理温度250℃の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例3に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例3に係る置換型ε酸化鉄粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例3に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.9nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は13.8%、変動係数(CV値)は28%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例4]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.8mLを用い、処理温度300℃の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例4に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例4に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例4に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は13.1nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は4.2%、変動係数(CV値)は30%であった。図3に、本実施例において得られた鉄系酸化物磁性粉のTEM写真を示す。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ3%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例5]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.2mLを用い、処理温度350℃の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例5に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例5に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例5に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は14.2nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.4%、変動係数(CV値)は28%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ5%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例6]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.2mLを用い、処理温度350℃、処理時間10分間の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例6に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例6に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例6に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は15.4nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.4%、変動係数(CV値)は45%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ7%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例7]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.2mLを用い、処理温度350℃、処理時間30分間の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例7に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例7に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例7に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は15.1nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.6%、変動係数(CV値)は36%であった。図4に、実施例7において得られた鉄系酸化物磁性粉のTEM写真を示す。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ8%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例8]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.2mLを用い、処理温度350℃、処理時間60分間の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例8に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例8に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例8に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は15.4nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.6%、変動係数(CV値)は36%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ12%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例9]
実施例1の手順6において、原料スラリーとして、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー3.2mLを用い、処理温度400℃、処理時間5分間の条件で水熱処理を実施した以外は、実施例1と同様の手順により、実施例9に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例9に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた実施例9に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は16.0nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.0%、変動係数(CV値)は36%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ14%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[比較例1]
実施例1の手順6において、実施例1の手順5で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、水熱処理を実施しなった以外は、実施例1と同様の手順により、比較例1に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および比較例1に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例1の手順7で説明したように、得られた比較例1に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.3nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は23.0%、変動係数(CV値)は36%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例10]
(手順1)
原料溶液として、塩化第二鉄(III)と硝酸ガリウムとの混合水溶液6000gを準備した。当該原料溶液において、FeイオンとGaイオンのモル比は1.90:0.10とし、FeイオンとGaイオンの合計モル濃度は0.50mol/kgとした。
大気雰囲気中、原料溶液を40℃とし撹拌羽根により機械的に撹拌しながら、22.46%のアンモニア水溶液546.1gを一挙添加し、2時間撹拌を続けた。
次に、溶液温度40℃の条件下で、クエン酸濃度20質量%のクエン酸水溶液577.5gを、1時間かけて連続添加した後、22.46質量%のアンモニア水溶液を368.7g一挙添加した。その後、溶液温度40℃の条件下で1時間撹拌を保持し、置換元素としてGaを含むオキシ水酸化鉄の結晶を含むスラリーを製造した。
(手順2)
その後、大気雰囲気中、手順1で得られたスラリーを40℃のまま撹拌しながら、テトラエトキシシラン(TEOS)1692.7gを35分間かけて添加した。その後、約1日そのまま撹拌し続け、置換元素を含むオキシ水酸化鉄の結晶がTEOSの加水分解生成物で被覆されたスラリーを得た。そして得られたスラリーを固液分離し、分離された固形分を洗浄してケーキとして回収した。
(手順3)
手順2で回収されたケーキを乾燥して乾燥粉とした後、当該乾燥粉へ、大気雰囲気の炉内で、957℃で4時間の熱処理を施し、シリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄粒子からなる粉末を得た。
(手順4)
手順3で得られたシリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄粒子の粉末を、20質量%NaOH水溶液へ加え、60℃24時間撹拌して、置換型ε酸化鉄粒子表面のシリコン酸化物の除去処理を行うことで、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
(手順5)
手順4で得られたスラリーを遠心分離装置にて遠心分離処理後、上澄み液を除去し、純水を追加してスラリー化し、再度、遠心分離装置にて遠心分離処理する操作を繰り返して、手順4で得られたスラリーの上澄み液が、導電率:≦15mS/mとなるまで洗浄した。
(手順6)
次に、手順5で得られた洗浄後のスラリーへ、表面改質剤として25質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAOHと称する)水溶液を添加して、表面改質剤含有スラリーを得た。TMAOH水溶液の添加量は、表面改質剤含有スラリー中のTMAOH濃度が0.065mol/kgとなる量とした。
(手順7)
手順6で得られた表面改質剤含有スラリー40gへ、超音波洗浄機(ブランソン(ヤマト科学)社製、Yamato5510)にて1時間、超音波分散処理を行った後、以下に説明する水熱処理前の予備的分級を行った。
超音波分散処理後の表面改質剤含有スラリー40gへ、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR21GII)のR20A2ローターにて、回転数20000rpmで30分の遠心分離処理を行い、上澄みスラリー30gを回収した。遠心分離処理における重力加速度は48000Gとした。
一方、沈殿側のスラリー10gに対して、0.065mol/kgのTMAOH水溶液30gを添加した後、再度、超音波分散を行った。そして、再度、20000rpm、48000Gで30分間の遠心分離処理および上澄みスラリー30gの回収を行った。一方、沈殿側のスラリー10gに対して、再度、0.065mol/kgのTMAOH水溶液30gを添加した。当該操作をさらに9回繰り返すことで、合計300gの上澄みスラリーを回収した。回収された300gの上澄みスラリーを混合した後、ここから40gの上澄みスラリーを分取した。
分取した上澄みスラリー40gへ、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR21GII)のR20A2ローターにて、回転数20000rpmで60分間の遠心分離処理を行い、微粒子を含む上澄みスラリー30gを除去して、沈殿側のスラリー10gを得た。遠心分離処理における重力加速度は48000Gとした。
そして、沈殿側のスラリー10gに対して、0.065mol/kgのTMAOH水溶液30gを添加した後、再度、超音波分散を行った。そして、再度、20000rpm、48000Gで60分間の遠心分離処理を行った後、上澄みスラリー30gを除去し、沈殿側のスラリー10gを得た。当該操作をさらに9回繰り返すことで、沈殿側スラリー10gを得た。
得られた沈殿側のスラリー10gへ、0.065mol/kgのTMAOH水溶液30gを添加した後に、超音波洗浄機(ブランソン(ヤマト科学)社製、Yamato5510)にて1時間、超音波分散処理を行った。その後、超音波分散処理後の沈殿側のスラリー40gへ、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CR21GII)のR20A2ローターにて、回転数20000rpmで45分の遠心分離処理を行い、上澄みスラリー30g除去し、沈殿側のスラリー10gを得た。遠心分離処理における重力加速度は48000Gとした。
一方、沈殿側のスラリー10gに対して、0.065mol/kgのTMAOH水溶液30gを添加した後、再度、超音波分散を行った。そして、再度、20000rpm、48000Gで45分間の遠心分離処理し、上澄みスラリー30g除去し、沈殿側のスラリー10gを得た。当該操作をさらに9回繰り返すことで、沈殿側スラリー10gを得た。
得られた沈殿側スラリー10gへ、純水30gを加えて超音波洗浄機(ブランソン(ヤマト科学)社製、Yamato5510)にて1時間、超音波分散処理を行った後、1質量%の硫酸水溶液を添加してpHを6.5に調整した。pH調整後の沈殿側スラリーを遠心分離装置にて遠心分離処理後、上澄み液を除去し、純水を追加してスラリー化し、再度、遠心分離装置にて遠心分離処理する操作を繰り返して、スラリーの上澄み液が導電率:≦1mS/mとなるまで洗浄した。その後に、スラリーへ純水および20質量%NaOHを添加してpHを10に調整し、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
(手順8)
手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、1質量%の硫酸水溶液を添加してpHを6.5に調整し、置換型ε酸化鉄粒子を凝集させた後にメンブレンフィルター(孔径0.2μm)で濾過し、固形分を回収した。回収した固形分を乾燥することで、鉄系酸化物磁性粉を得た。得られた鉄系酸化部磁性粉に対してFeおよびGaの組成分析を実施したところ、モル比でFe:Ga=1.92:0.08であった。また、得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
一方、手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は10.9nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は7.8%、変動係数(CV値)は19%であった。
(手順9)
手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、純水と4質量%NaOH水溶液とを加え、置換型ε酸化鉄粒子の含有量が2質量%、pHが12となるように調整した。そして、調整後のスラリー4.5mLを5mL密閉容器に入れ、処理温度200℃、処理時間5分間、圧力40MPaで水熱処理を行うことにより、実施例10に係る置換型ε酸化鉄粒子のスラリーを得た。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。
(手順10)
手順9で得られたスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.0nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は3.9%、変動係数(CV値)は19%であった。図5に、実施例10に係る置換型ε酸化鉄粒子のTEM写真を示す。
得られた実施例10に係る置換型ε酸化鉄粒子のスラリーを乾燥することで、実施例10に係る鉄系酸化物磁性粉を得た。図6に、実施例10に係る鉄系酸化物磁性粉粒子のTEM写真を示す。
得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。得られた鉄系酸化物磁性粉の磁気特性を測定した結果を、α相の含有率の測定結果、化学組成とまとめて表2に示す。
以上説明した、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[実施例11]
実施例10の手順9において、実施例10の手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、純水、4質量%NaOH水溶液および硝酸第二鉄を加えて、置換型ε酸化鉄粒子の含有量が2質量%、pHが12、Fe(III)イオン濃度0.056mol/kgとなるように調整した。調整後のスラリー2.2mLを用いて、処理時間10分間で水熱処理を実施したこと以外は実施例10と同様の手順により、実施例11に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例11に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例10の手順10で説明したように、得られた実施例11に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は11.8nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は1.3%、変動係数(CV値)は15%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。尚、化学組成は、実施例10の手順7で得られたスラリーに含まれる置換型ε酸化鉄粒子と、当該スラリーに添加された硝酸鉄に含まれる鉄とが、全て固形分として回収されたものとして算出した(以下、実施例12についても同様である。)。
[実施例12]
実施例10の手順9において、実施例10の手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、純水、4質量%NaOH水溶液および硝酸第二鉄を加えて、置換型ε酸化鉄粒子の含有量が2質量%、pHが12、Fe(III)イオン濃度0.056mol/kgとなるように調整し、その後超音波ホモジナイザー(装置名:ブランソン(ヤマト科学)社製、Yamato4500)にて120分間、超音波を照射した後に、得られたスラリー2.2mLを用いて、処理時間10分間の条件で水熱処理を実施したこと以外は実施例10と同様の手順により、実施例12に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および実施例12に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例10の手順10で説明したように、得られた実施例12に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は12.0nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は0.4%、変動係数(CV値)は14%であった。また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件および水熱処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[比較例2]
実施例10の手順9において、実施例10の手順7で得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーへ、水熱処理を実施しなった以外は、実施例10と同様の手順により、比較例2に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー、および比較例2に係る置換型ε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉を得た。
実施例10の手順10で説明したように、得られた比較例2に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに対してTEM観察を行い、当該スラリーに含有されている200個の粒子について粒子径を測定したところ、TEM平均粒子径は10.9nm、粒子径8nm以下粒子の個数割合は7.8%、変動係数(CV値)は19%であった。
また得られた鉄系酸化物磁性粉についてXRD測定を行い、α相の含有率を求めたところ0%であった。
以上説明した、原料スラリーへの処理条件を表1に記載する。また、置換型ε酸化鉄粒子および鉄系酸化物磁性粉の測定結果を表2に記載する。
[比較例3]
原料スラリーとして、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに代えて、鉄の水酸化物を含むスラリーを用いた実験例である。
硝酸第二鉄(III)水溶液(Fe(III)イオン濃度0.055mol/L)に4質量%NaOH水溶液を添加してpH12に調整した液4.455mLを5mL密閉容器に入れ、処理温度200℃、処理時間10分間、圧力40MPaで水熱処理を行うことにより、比較例3に係る鉄酸化物粒子を含むスラリーを得た。
得られた比較例3に係る鉄酸化物粒子を含むスラリーを、固液分離した後に洗浄、乾燥することで、比較例3に係る鉄酸化物粉を得た。得られた鉄酸化物粉についてXRD測定を行った結果、α−Feおよびα-FeOOHの結晶構造を持つことが確認された。
以上説明した、水熱処理条件を表1に記載する。また、鉄の水酸化物粒子および鉄系酸化物粉の測定結果を表2に記載する。
Figure 2021190477
Figure 2021190477

Claims (11)

  1. Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーを水熱処理に供することを特徴とする、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  2. 前記水熱処理により、前記Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子であって透過電子顕微鏡で測定した粒子径が8nm以下である粒子の個数割合を、低減させることを特徴とする、請求項1に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  3. 前記透過電子顕微鏡で測定した粒子径が8nm以下である粒子の個数割合を、4%以下に低減することを特徴とする、請求項2に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  4. 前記水熱処理を120℃以上の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  5. 前記水熱処理を0.2MPa以上の圧力で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  6. 前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーとして、pHが6以上14以下であるものを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  7. 前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーとして、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下である、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子を含むスラリーを用いることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  8. 前記Feサイトの一部を置換する他の金属元素として、Gaを用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  9. 前記ε酸化鉄の粒子を含む原料スラリーへ、超音波を照射および/または金属イオンを添加した後に、水熱処理に供することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  10. 透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上20nm以下であり、粒子径が8nm以下の粒子の個数割合が4%以下であり、X線回折法により測定されるαタイプの鉄系酸化物の含有率が10%以下であることを特徴とする、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉。
  11. 前記Feサイトの一部を置換する他の金属元素が、Gaであることを特徴とする、請求項10に記載の鉄系酸化物磁性粉。
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