JP2022135542A - 鉄系酸化物磁性粉の製造方法 - Google Patents

鉄系酸化物磁性粉の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】εタイプの鉄系酸化物磁性粉の製造において、前駆体のシリコン酸化物被覆層のシリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いた場合であっても、異相であるα相の生成を抑制可能な鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供する。【解決手段】3価のFeイオンとFeサイトを一部置換する金属のイオンを含む溶液にアルカリを添加し、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄分散液を得る中和工程と、前記の中和工程で得られた分散液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加し、シリコン酸化物ゲルで被覆された、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄を得るシリコン酸化物ゲル被覆工程と、前記の被覆工程で得られたシリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄を水洗して、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属量を低減させる水洗工程とを含む鉄系酸化物磁性粉の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、高密度磁気記録媒体、電波吸収体等に好適なFeサイトの一部を他の金属元素で置換したε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉(以下、置換型鉄系酸化物磁性粉と表記する。)の製造方法において、置換型鉄系酸化物磁性粉の前駆体となる、Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄(以下、置換型オキシ水酸化鉄と表記する。)を被覆するシリコン酸化物ゲルとして、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するシリコン酸化物ゲルを使用する、鉄系酸化物磁性粉の製造方法に関する。
なお、本明細書では、ε-FeのFeサイトの一部を他の金属元素で置換した鉄系酸化物をεタイプの鉄系酸化物、結晶系がα-Feのそれと同一の置換型α酸化鉄をαタイプの鉄系酸化物とそれぞれ呼ぶことがある。
ε-Feは酸化鉄の中でも極めて稀な相であるが、室温において、ナノメートルオーダーのサイズの粒子が20kOe(1.59×10A/m)程度の巨大な保磁力(Hc)を示すため、ε-Feを単相で合成する製造方法の検討が従来よりなされてきている(特許文献1)。しかし、ε-Feを磁気記録媒体に用いた場合、現時点ではそれに対応する、高レベルの飽和磁束密度を有する磁気ヘッド用の材料が存在しないため、実用的にはε-FeのFeサイトの一部をAl、Ga、In等の3価の金属で置換し、保磁力を調整する必要があり、電波吸収材料として使用する場合にも、要求される吸収波長に応じてFeサイトの置換量を変化させる必要がある(特許文献2、非特許文献1)。
一方、εタイプの鉄系酸化物の磁性粒子は極めて微細であるため、耐環境安定性、熱安定性の向上のために、ε-FeのFeサイトの一部を、耐熱性に優れた他の金属で置換することも検討されており、一般式ε-AFe2-x-yまたはε-AFe2-x-y-z(ここでAはCo、Ni、Mn、Zn等の2価の金属元素、BはTi等の4価の金属元素、CはIn、Ga、Al等の3価の金属元素)で表される、耐環境安定性、熱安定性にも優れた各種のε-Feの一部置換体が提案されている(特許文献3)。また、特許文献4にはεタイプの鉄系酸化物中に含まれる異相のα相の低減方法が開示されている。
ε-Feおよびεタイプの鉄系酸化物は熱力学的な安定相ではないため、通常は、その前駆体であるオキシ水酸化物をシリコン酸化物で被覆した後に焼成することにより得られる。シリコン酸化物の被覆方法としては、いわゆるゾル-ゲル法を用いることが一般的である。ゾル-ゲル法を用いた場合、シリコン源を加水分解可能な有機シリコン化合物とし、その加水分解生成物により前駆体を被覆した後加熱し、前駆体のオキシ水酸化物を脱水することによりεタイプの鉄系酸化物を得ることになる。
上述の特許文献1~4には、液相法で生成したオキシ水酸化鉄もしくは置換元素を含むオキシ水酸化鉄の微細結晶を前駆体として用いる、ε-Feまたはεタイプの鉄系酸化物の製造方法が開示されており、液相法としては反応媒体として有機溶媒を用いる逆ミセル法と、反応媒体として水溶液のみを用いる方法がそれぞれ開示されているが、シリコン酸化物の被覆方法の実施例としては、シリコン源としてアルコキシシランを用いたゾル-ゲル法が開示されているのみである。
特開2008-174405号公報 国際公開第2008/029861号 国際公開第2008/149785号 特開2016-130208号公報
A. Namai, M. Yoshikiyo, K. Yamada, S. Sakurai, T. Goto, T. Yoshida, T. Miyazaki, M. Nakajima, T. Suemoto, H. Tokoro and S. Ohkoshi, Nature Communications, 3, 1035/1-6(2012)
上述のように、シリコン酸化物被覆を施すためのシリコン源としてテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを用いると、ε相にとっては異相であるα相の含有量の少ないεタイプの酸化鉄を効率的に製造することが可能である。
しかし、アルコキシシランは高価であるため、εタイプの酸化鉄の製造コスト増の要因となり、εタイプの酸化鉄の実用化にあたり、その用途が限定されてしまうという問題点があった。そのため、εタイプの酸化鉄の汎用性を高めるために、シリコン酸化物被覆のためのシリコン源として、アルコキシシランより安価なものを用いて製造コストを低減することが求められてきた。
安価なシリコン源の候補として、アルカリ金属ケイ酸塩を用いることが考えられる。特許文献1の段落0022や特許文献4の段落0045には、シリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩の一種である珪酸ソーダ(水ガラス)を用いることの可能性について言及している。しかし、上述のように、εタイプの酸化鉄の製造にアルカリ金属ケイ酸塩を用いた実施例は存在しない。
本発明者等は、εタイプの酸化鉄の製造において、シリコン源としてアルコキシシランに代えて安価なアルカリ金属ケイ酸塩を単に用いると、αタイプの鉄系酸化物の含有量の大きな酸化鉄しか得られないが、シリコン酸化物被覆中のアルカリ金属含有量を低減すると、得られる置換型ε酸化鉄中のα相の含有量を低減できることを見出し、その技術を特願2020-047808号として出願した。当該発明により得られるεタイプの酸化鉄は、αタイプの酸化鉄の含有量が6.5%~21%程度であり、シリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を単に用いた場合と比較して、αタイプの酸化鉄の含有量を低減することが可能であったが、実用化を考えると、その含有量のさらなる低減が要求される。
そこで本発明では、シリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いた場合であっても、異相であるα相の生成をさらに抑制可能な鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意研究を行ったところ、Feサイトの一部を他の金属元素で置換したε酸化鉄(以下、置換型ε酸化鉄と表記する。)の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法において、前駆体であるFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄もしくはオキシ水酸化鉄と置換元素の水酸化物の混合物(以下、これらを置換型オキシ水酸化鉄と表記する。)をシリコン酸化物で被覆するためのシリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いた場合、当該アルカリ金属ケイ酸塩を反応系に添加する際のpHを変化させると、最終的に得られる置換型ε酸化鉄中のα相の含有量が変化することを見出した。また、特願2020-047808号で開示したように、シリコン酸化物ゲルで被覆された置換型オキシ水酸化鉄(以下、シリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄と表記する。)中のアルカリ金属の含有量を低減させることにより、得られる置換型ε酸化鉄中のα相の含有量を低減することができる。
以上の知見を基に、本発明者等は、以下に述べる本発明を完成させた。
上記の課題を解決するために、本発明においては、
[1]Feサイトの一部を他の金属元素で置換したε酸化鉄(置換型ε酸化鉄)の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法であって、3価のFeイオンと前記Feサイトを一部置換する金属のイオンを含む溶液にアルカリを添加してpH2.0以上5.0以下まで中和する中和工程と、前記の中和工程で得られた中和後液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加し、シリコン酸化物ゲルで被覆されたFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄もしくはオキシ水酸化鉄と置換元素の水酸化物の混合物(以下、これらを置換型オキシ水酸化鉄と呼ぶ)を得るシリコン酸化物ゲル被覆工程と、前記の被覆工程で得られたシリコン酸化物ゲルを被覆した置換型オキシ水酸化鉄を水洗して、当該Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属量を低減させる水洗工程とを含む、鉄系酸化物磁性粉の製造方法が提供される。
[2]前記[1]項に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法においては、前記の水洗工程後に、置換型オキシ水酸化鉄が、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属の量をAモルとし、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるFeおよび置換金属元素Mの量の和をFe+Mモルとした時、モル比A/(Fe+M)が0.08以下となるように前記水洗を実施することが好ましい。
[3]前記[1]項に記載のシリコン酸化物ゲル被覆工程においては、前記のアルカリ金属ケイ酸塩を添加した後に得られた反応液に、さらにアルカリを添加してpH7.0以上10.0以下とすることができる。
[4]前記[1]項に記載のFeサイトを一部置換する他の金属元素は、Co、Ti、GaおよびAlから選ばれる1種以上であることが好ましい。
[5]前記[1]項に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法においては、前記の水洗工程で得られたシリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄を焼成し、シリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄を得る焼成工程と、前記の焼成工程で得られたシリコン酸化物で被覆された置換型ε酸化鉄のシリコン酸化物を除去して鉄系酸化物磁性粉を得る酸化物被覆除去工程とをさらに含むことができる。
以上、本発明の製造方法を用いることにより、シリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いた場合であっても、異相であるα相の生成を抑制可能な鉄系酸化物磁性粉の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法の概略を示すフロー図である。
[鉄系酸化鉄磁性粉]
本発明の製造方法は、ε-FeのFeサイトの一部を他の金属元素で置換したεタイプの酸化物を主として含む鉄系酸化物磁性粉を製造するためのものであり、当該磁性粉には、その製造上生成が不可避的な異相が混在する。異相は主としてαタイプの鉄系酸化物であり、本発明により得られる鉄系酸化物磁性粉は実質的にεタイプの鉄系酸化物磁性粒子とαタイプの鉄系酸化物からなる。本発明の製造方法を用いると、後述するシリコン源としてアルカリ金属ケイ酸塩を用いた場合であっても、異相であるαタイプの鉄系酸化物の含有量を低減した鉄系酸化鉄磁性粉を得ることができる。
ε-FeのFeサイトの一部を他の金属元素で置換した一部置換体がε構造を有するかどうかについては、X線回折法(XRD)、高速電子回折法(HEED)等を用いて確認することが可能である。本発明においては、εタイプおよびαタイプの鉄系酸化物の同定は、XRDによって行っている。
鉄系酸化物磁性粉を磁気記録媒体もしくは電波吸収体に適用するにあたっては、鉄系酸化物磁性粉中の異相の含有割合をできるだけ低減することが好ましい。本発明の製造方法により得られる鉄系酸化物磁性粉の場合には、具体的には、X線回折法のリートベルト解析によるα相の含有率が6.5%以下であることが好ましい。本発明の製造方法により得られる鉄系酸化物磁性粉を電波吸収材として使用して電波吸収体を製造することにより、優れた電波吸収特性が得られると期待される。
本発明の製造方法により製造が可能な一部置換体については、以下が挙げられる。
一般式ε-CFe2-z(ここでCはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素、0<z<1)で表されるもの。
一般式ε-AFe2-x-y(ここでAはCo、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、BはTi、Snから選択される1種以上の4価の金属元素、0<x<1、0<y<1)で表されるもの。
一般式ε-AFe2-x-z(ここでAはCo、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素、0<x<1、0<z<1)で表されるもの。
一般式ε-BFe2-y-z(ここでBはTi、Snから選択される1種以上の4価の金属元素、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素、0<y<1、0<z<1)で表されるもの。
一般式ε-AFe2-x-y-z(ここでAはCo、Ni、Mn、Znから選択される1種以上の2価の金属元素、BはTi、Snから選択される1種以上の4価の金属元素、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価の金属元素、0<x<1、0<y<1、0<z<1)で表されるもの。
ここでC元素のみで置換したタイプは、磁性粒子の保磁力を任意に制御できることに加え、ε-Feと同じ空間群を得易いという利点を有するが、熱的安定性に劣る場合がある。特にCとしてGaおよびAlを用いた場合には、得られた鉄系酸化物磁性粉の熱的安定性がやや劣るので、さらにAおよび/またはB元素で同時に置換することが好ましい。A、BおよびCの三元素置換タイプは、上述の特性のバランスが最も良く取れたもので、耐熱性、単一相の得易さ、保磁力の制御性に優れる。
Feサイトを置換する元素としては、鉄系酸化物磁性粉の耐熱性を向上させる効果を有するTiまたはCoを含むことが好ましい。熱的安定性と磁性粒子の常温における保磁力を高く維持する観点からは、TiおよびCoの2元素で同時に置換することがより好ましい。三元素置換タイプは、熱的安定性、保磁力制御に加えてε-Feと同じ空間群を得易いという利点を有するので、Feサイトを置換する元素がTi、Co、GaおよびAlから選ばれる1種以上であることが好ましく、Ti、CoおよびGaであることがさらに好ましい。
[平均粒子径およびBET比表面積]
本発明においては、本発明の製造法により得られる鉄系酸化物磁性粉の平均粒子径は特に規定するものではないが、各粒子が単磁区構造となる程度に微細であることが好ましい。通常は、透過電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以上40nm以下のものが得られる。また、BET比表面積としては、30~80m/g程度のものが得られる。
[製造方法]
以下に、本発明の製造方法を、図1に示すフロー図に従って説明する。
[出発物質および前駆体]
本発明の製造方法においては、鉄系酸化物磁性粉の出発物質として3価の鉄イオンと最終的にFeサイトを置換する金属元素の金属イオンを含む酸性の水溶液(以下、原料溶液と言う。)を用いる。もし、出発物質として3価のFeイオンに替えて2価のFeイオンを用いた場合には、沈殿物として3価の鉄の水和酸化物のほかに2価の鉄の水和酸化物やマグネタイト等をも含む混合物が生成し、最終的に得られる鉄系酸化物粒子の形状にバラつきが生じてしまうため、本発明のようなαタイプの鉄系酸化物の含有量が低減された、鉄系酸化物磁性粉を得ることができない。これらの鉄イオンもしくは置換元素の金属イオンの供給源としては、入手の容易さおよび価格の面から、硝酸塩、硫酸塩、塩化物のような水溶性の無機酸塩を用いることが好ましい。これらの金属塩を水に溶解すると、金属イオンが解離し、水溶液は酸性を呈する。その場合、3価の鉄イオン濃度と置換金属元素の金属イオン濃度、および、用いた塩のアニオン種により異なるが、原料溶液のpHは2.0未満になる。この金属イオンを含む酸性水溶液にアルカリを添加して中和し、pHを2.0以上にすると、オキシ水酸化鉄と置換元素の水酸化物の混合物、もしくは、Feサイトの一部を他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄(本明細書では、以下これらを、置換型オキシ水酸化鉄と総称する。)の沈殿が生成し始める。本発明の製造方法においては、これらの置換型オキシ水酸化鉄を置換型ε酸化鉄磁性粉の前駆体として用いる。
原料溶液中の全金属イオン濃度は、本発明では特に規定するものではないが、0.01mol/kg以上0.5mol/kg以下が好ましい。0.01mol/kg未満では1回の反応で得られる鉄系酸化物磁性粉の量が少なく、経済的に好ましくない。全金属イオン濃度が0.5mol/kgを超えると、急速な水酸化物の沈澱発生により、反応溶液がゲル化しやすくなるので好ましくない。
[中和工程]
本発明の製造方法においては、原料溶液にアルカリを添加し、そのpHが2.0以上5.0以下になるまで中和し、置換型オキシ水酸化鉄の分散液、すなわち中和後液を得る。なお、3価の鉄イオンの水酸化物は主としてオキシ水酸化物からなる。ここで中和後液のpHを2.0以上にするのは、置換型オキシ水酸化鉄の沈殿を十分に生成させるためであり、pHが2.0未満では置換型オキシ水酸化鉄の沈殿が不十分になる恐れがある。pHを5.0以下にするのは、後述するように、生成する置換型オキシ水酸化鉄の沈殿物の分散性を良好に保つためである。
中和に用いるアルカリとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類の水酸化物、アンモニア水、炭酸水素アンモニウムなどのアンモニウム塩のいずれであっても良いが、最終的に熱処理してεタイプの鉄系酸化物としたときに不純物が残りにくいアンモニア水や炭酸水素アンモニウムを用いることが好ましい。これらのアルカリは、出発物質の水溶液に固体で添加しても構わないが、反応の均一性を確保する観点からは、水溶液の状態で添加することが好ましい。
前記のように、原料溶液にアルカリを添加して中和処理を行うと、置換型オキシ水酸化鉄の沈澱物が析出するので、中和処理中は前記の沈殿物を含む分散液を公知の機械的手段により撹拌する。
原料溶液へのアルカリの添加は、添加を開始してから終了するまで、連続的に行っても良く、間歇的に行っても良い。
本発明の製造方法においては、中和処理時の反応温度は特に規定しないが、常温で行うことができる。また、中和反応を加速するために反応系を加温しても構わないが、その場合は60℃以下とする。
なお、本明細書に記載のpHの値は、JIS Z8802に基づき、ガラス電極を用いて測定した値であり、pH標準液として、測定するpH領域に応じた適切な緩衝液を用いて校正したpH計により測定した値をいう。また、本明細書に記載のpHは、温度補償電極により補償されたpH計の示す測定値を、反応温度条件下で直接読み取った値である。
[アルカリ金属ケイ酸塩]
前記の工程で生成した鉄系酸化物磁性粉の前駆体である置換型オキシ水酸化鉄は、そのままの状態で熱処理を施してもεタイプの鉄系酸化物に相変化しにくいので、熱処理に先立ってシリコン酸化物を被覆し、拘束状態で熱処理を施す必要がある。
本発明の製造方法においては、置換型オキシ水酸化鉄にシリコン酸化物被覆を行うためのシリコン源として、アルカリ金属ケイ酸塩を用いる。
アルカリ金属ケイ酸塩は一般式AO・xSiO・yHO(Aはアルカリ金属、x>0、y≧0)で表される物質であり、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等がある。これらのケイ酸塩は、代表的にはNaSiO、KSiO、LiSiO等のメタケイ酸塩であるが、重合度や水和度の異なる物質も存在し、工業的には水溶液の形態で供給される場合もある。
[シリコン酸化物ゲル被覆工程]
前記のpHが2.0以上5.0以下になるまで中和した中和後液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加することにより、置換型オキシ水酸化鉄の表面にゲル状のシリコン酸化物を被着させる。その場合、アルカリ金属ケイ酸塩は水溶液中で解離してケイ酸イオンとなっており、ケイ酸イオンの水酸化物等がゲル状になって被着するものと考えられる。前記のpH範囲でアルカリ金属ケイ酸塩の添加を行うと、最終的に得られる置換型ε酸化鉄中のα相の含有量が低減するとともに、鉄系酸化物磁性粉の粒度分布が狭くなる。その機構は現時点では明らかではないが、本発明者等は以下のように推定している。
原料溶液にアルカリをpH2.0以上5.0以下の範囲まで添加した段階においては、核発生した置換型オキシ水酸化鉄粒子は成長の途中であり、その粒子径が小さいため、中和後液中で良好な分散性を示すものと考えられる。その時点で中和後液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加することにより、粒度分布の狭いシリコン酸化物ゲル被覆されたオキシ水酸化鉄が得られ、鉄系酸化物磁性粉の粒度分布が狭くなり、結果として最終的に得られる置換型ε酸化鉄中のα相の含有量が低減するものと考えられる。pHが5.0を超えると、置換型オキシ水酸化鉄粒子の分散性が悪くなり、結果として得られる置換型ε酸化鉄磁性粉のα相量が多くなるものと考えられる。
なお、アルカリ金属ケイ酸塩はそれ自身が強アルカリなので、中和後液に添加すると、反応系のpHが上昇し、シリコン酸化物ゲル被覆されたオキシ水酸化鉄がさらに成長を続け、その粒子径が増大するものと考えられる。
アルカリ金属ケイ酸塩の添加は、置換型オキシ水酸化鉄への被着の均一性を確保し、また後述する水洗工程においてアルカリ金属をシリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄から分離しやすくするために、水溶液の形態で添加することが好ましい。本発明において、アルカリ金属ケイ酸塩を添加する際の温度は特に規定しないが、常温で行うことができる。また、被着反応を加速するために反応系を加温しても構わないが、その場合は60℃以下とする。
アルカリ金属ケイ酸塩の添加量は、添加するシリコンのモル数をS、原料溶液中に含まれるFeイオンのモル数をF、置換金属元素イオンの全モル数をMとしたとき、S/(F+M)を0.50以上10.0以下とすることが好ましい。S/(F+M)が0.50未満であると、置換型オキシ水酸化鉄の沈殿の表面に被覆されるシリコン酸化物の被覆量が少なくなり、その結果αタイプの鉄系酸化物が生成しやすくなるので好ましくない。またS/(F+M)が10.0を超えると後述の加熱工程とシリコン酸化物の除去工程の処理量が増大し、製造コストが増大するので、好ましくない。
アルカリ添加後液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加した後、撹拌状態で所定の時間保持し、置換型オキシ水酸化鉄の表面に被着したゲル状の被覆の熟成を行う。前記の保持時間は、アルカリ添加後液のpHおよび温度を勘案し、3~24hになるように設定すれば良い。
アルカリ金属ケイ酸塩の添加量は上述の条件により規定されるが、原料溶液中に含まれる3価の鉄イオンと置換金属元素の金属イオンを有効利用するという観点からは、アルカリ金属ケイ酸塩添加終了後の反応液のpHを7.0以上10.0以下とすることが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩の添加後に当該反応液のpHが7.0未満の時は、当該反応液にさらにアルカリを添加してpH7.0以上10.0以下とすることができる。また、アルカリを添加した反応液を、所定の時間保持しても構わない。
[水洗工程]
本発明の鉄系酸化物鉄磁性粉の製造方法においては、前記のシリコン酸化物ゲル被覆工程に引き続いて水洗工程を設ける。水洗は、公知の方法を用いることができ、例えばブフナー漏斗によりシリコン酸化物ゲル被覆工程で得られたスラリーを濾過して得られた固形物に通水する方法や、限外濾過膜を用いたクロスフロー濾過による方法とすることができる。
水洗は、前記の工程で得られたシリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄中の、置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属の量をAモルとし、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるFeおよび置換金属元素Mの量の和をFe+Mモルとした時、モル比A/(Fe+M)が0.08以下となるように前記水洗を実施することが好ましく、モル比A/(Fe+M)が0.06以下となるように前記水洗を実施することがより好ましい。A/(Fe+M)を0.08以下にすると、最終的にα相の含有率が6.5質量%以下の鉄系酸化物鉄磁性粉を得ることができる。置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属とは、例えばNa、KおよびLiから選ばれる1種以上であり、例えばアルカリ金属がNaの場合には、上記のモル比はNa/(Fe+M)と表記できる。
ここで、A/(Fe+M)が0.08以下にするとα相の含有量が低減する理由は現時点で明らかではないが、本発明者等は以下のように推定している。すなわち、置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属は、後述する加熱工程においてアルカリ金属の酸化物となり、そのアルカリ金属酸化物が鉄系酸化物の焼結助剤として作用するものと考えられる。したがって、置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属の量が増大すると、加熱後の鉄系酸化物の粒子径が増大して粗大粒子となり、結果として熱力学的安定相であるα相が生成し易くなるものと考えている。
なお、前記のシリコン酸化物ゲル被覆工程におけるアルカリ金属ケイ酸塩の添加を、反応液のpHが7.0以上で行うと、A/(Fe+M)を0.08以下にしても、α相の含有量の低減に対する効果は少なくなる。
シリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄を水洗することにより、その中に含まれる置換型オキシ水酸化鉄中のアルカリ金属量が低下するのは、添加したアルカリ金属ケイ酸塩が置換型オキシ水酸化鉄の表面にシリコン酸化物として被着された後に、シリコン酸化物ゲルで被覆された置換型オキシ水酸化鉄の表面や、被着されたシリコン酸化物ゲルの隙間などに残存するアルカリ金属(イオン)が洗浄水によって洗い流されるためであると考えられる。
上記のA/(Fe+M)の測定は、破壊分析なので、鉄系酸化物磁性粉の製造においては、シリコン酸化物ゲル被覆の条件と水洗条件との関係を把握しておく必要がある。簡易的には、前記の濾過後の濾液の導電率を測定することにより、A/(Fe+M)の値を推定することが可能であり、当該導電率を1000mS/m以下になるまで水洗を行うと、A/(Fe+M)を0.08以下にすることができる。
本発明の鉄系酸化物磁性粉の製造方法においては、前記の熟成工程以降の工程は、例えば特許文献1~4に記載されている、従来の製造方法と同じ工程を用いることができる。具体的には、以下のような工程が挙げられる。
[加熱工程]
本発明の製造方法においては、前記の置換型オキシ水酸化鉄中のアルカリ金属量を低減させたシリコン酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄を、公知の固液分離法を用いて回収した後、加熱処理を施してεタイプの鉄系酸化物磁性粉を得る。加熱処理前に、洗浄、乾燥の工程を設けても良い。加熱処理は酸化雰囲気中で行われるが、酸化雰囲気としては大気雰囲気で構わない。加熱は概ね700℃以上1300℃以下の範囲で行うことができるが、加熱温度が高いと熱力学安定相であるα-Fe(ε-Feに対して異相である)が生成し易くなるので、好ましくは900℃以上1200℃以下、より好ましくは950℃以上1150℃以下で加熱処理を行う。
熱処理時間は0.5h上10h以下程度の範囲で調整可能であるが、2h以上5h以下の範囲で良好な結果が得られやすい。
[酸化物被覆除去工程]
前記の鉄系酸化物磁性粉がシリコン酸化物による被覆を必要としない場合には、加熱処理後に前記のシリコン酸化物被覆を除去すれば良い。
具体的な方法としては、シリコン酸化物は、アルカリ性の水溶液に可溶なので、加熱処理後のシリコン酸化物で被覆された鉄系酸化物磁性粉をNaOHやKOHなどの強アルカリを溶解させた水溶液中に浸漬し、撹拌することにより溶解・除去できる。溶解速度を上げる場合は、アルカリ水溶液を加温するとよい。代表的には、NaOHなどのアルカリをシリコン酸化物に対して3倍モル以上添加し、水溶液温度が60℃以上90℃以下の状態で、粉末を含むスラリーを撹拌すると、シリコン酸化物を良好に溶解することができる。
[X線回折法(XRD)による結晶性の評価]
得られた試料を粉末X線回折(XRD:リガク社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV、線源CuKα線、電圧40kV、電流40mA、2θ=10°以上70°以下)に供した。得られた回折パターンについて、統合粉末X線解析ソフトウェア(PDXL2:リガク社製)を用いICSD(無機結晶構造データベース)のNo.173025:Iron(III)Oxide-Epsilon、No.82134:Hematiteをもとにしてリートベルト解析による評価を行い、結晶構造およびα相の含有率を確認した。
[磁気ヒステリシス曲線(B-H曲線)の測定]
得られた置換型ε酸化鉄磁性粉の磁気特性を以下の条件で測定した。
磁気特性測定装置として振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製VSM-5)を用い、印加磁場1193kA/m(15kOe)、M測定レンジ0.005A・m(5emu)、印加磁場変化速度15(kA/m・s)、時定数0.03秒、ウエイトタイム0.1秒で磁気特性を測定した。また、本測定には東英工業社製付属ソフト(Ver.2.1)を使用した。
[鉄系酸化物磁性粉の化学組成について]
置換型ε酸化鉄磁性粉およびシリコン酸化物で被覆された鉄系酸化物磁性粉の組成分析にあたっては、アジレントテクノロジー製ICP-720ESを使用し、測定波長(nm)についてはFe;259.940nm、Ga;294.363nm、Co;230.786nm、Ti;336.122nm、Al;396.152nm、Si;288.158nmにて分析を行った。
また、シリコン酸化物で被覆された鉄系酸化物磁性粉のアルカリ金属分析方法は以下の通りである。PTFE製ビーカーの中に試料1gを入れた後に、超純水10mlと35質量%HCl水溶液10mLおよび46質量%ふっ化水素酸水溶液0.5mLを加え、加熱して溶解させた。加熱を続けて乾固させた後、放冷し、超純水10mLと35質量%HCl水溶液10mLを加え、加熱溶解した後、再度乾固させて放冷した。さらに超純水10mLと35質量%HCl水溶液5mLを加えて加熱溶解した後、放冷し、100mLメスフラスコに移し入れ、定容した。日立ハイテクサイエンス社製ZA3300を用い、原子吸光分析法によりアルカリ金属の濃度を測定して溶解量を算出し、その溶解量の値を試料の質量で除することにより、試料に含有されるアルカリ金属の質量基準の含有量を算出した。
[BET比表面積]
BET比表面積は、株式会社マウンテック製のMacsorb model-1210を用いて、BET一点法により求めた。
[実施例1]
1L反応槽にて、純水738.54gに、Fe濃度11.65質量%の硫酸第二鉄(III)溶液102.75g、Ga濃度11.55質量%の硝酸Ga(III)溶液14.04g、純度97%硝酸コバルト(II)6水和物1.88g、Ti濃度15.1質量%の硫酸チタン(IV)1.98gを大気雰囲気中、撹拌羽根により機械的に撹拌しながら溶解し、原料溶液とした(手順1)。この原料溶液のpHは約1であった。この原料溶液中の金属イオンのモル比は、Fe:Ga:Co:Ti=1.714:0.186:0.050:0.050である。なお、試薬名の後の括弧内のローマ数字は、金属元素の価数を表している。
大気雰囲気中、この原料溶液を30℃の条件下で、撹拌羽根により機械的に撹拌しながら、22.14質量%のアンモニア水溶液50.63gを10minかけて添加した(手順2)。アンモニア水溶液の添加終了時点の反応液(中和後液)のpHは3.0であった。
アンモニア水溶液の添加から30min後に、Si濃度12.10質量%、Na濃度5.27質量%のケイ酸ソーダ水溶液(富士化学社製5号ケイ酸ソーダ溶液)145.15gを10minかけて滴下した。ケイ酸ソーダ水溶液を全て添加した後、20hそのまま撹拌し続け、シリコン酸化物ゲルで置換元素を含むオキシ水酸化鉄の沈殿物を被覆した(手順3)。ケイ酸ソーダ水溶液添加後および前記20hの撹拌をしている間を通じての反応液のpHは9.0であった。なお、この条件下では分散液に滴下する5号ケイ酸ソーダ水溶液に含まれるSi元素の全量と、原料溶液中に含まれる鉄、ガリウム、コバルト、チタンイオンの量とのモル比S/(F+M)は2.5である。
手順3で得られたスラリーを、ブフナー漏斗を用いて濾過し、得られた固形分に純水を通水して通水後の濾液の電気伝導率が20mS/m以下になるまで水洗することで、水洗後のケイ素酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄のケーキを得た。ここで水洗は、2kgの純水を通水して廃棄後に、0.2kgの純水を通水して通水後液の電気伝導率を測定し、その後電気伝導率が20mS/m以下になるまで0.2kgの純水通水と電気伝導率測定を繰り返すことにより実施した。得られたケーキを大気中110℃で乾燥した(手順4)。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.052であった。
手順4で得られた乾燥品を、箱型焼成炉を用い、大気中1000℃で4h加熱処理し、シリコン酸化物で被覆された鉄系酸化物磁性粉を得た(手順5)。なお、前記のシリコン酸化物ゲルは、大気雰囲気で熱処理した際に、脱水して酸化物に変化する。
本実施例の原料溶液の仕込み条件等の製造条件を、表1に示す。表1には他の実施例および比較例の製造条件も併せて示してある。
手順5で得られた、ケイ素酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄の乾燥品に熱処理を施した熱処理粉を、20質量%NaOH水溶液中で約60℃、24時間撹拌し、粒子表面のシリコン酸化物被覆の除去処理を行った(手順6)。次いで、手順6で得られたスラリーを遠心分離処理により固液分離し、得られた固形分を水洗および乾燥し、得られた置換型ε酸化鉄磁性粉の組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。それらの測定結果を表2に示す。表2には他の実施例および比較例で得られた置換型ε酸化鉄磁性粉の物性値も併せて示してある。
[実施例2]
実施例1の手順1において、純水738.54g、Fe濃度11.65質量%の硫酸第二鉄(III)溶液92.32g、Al濃度1.88質量%の硫酸Al(III)溶液64.78g、純度97%硝酸コバルト(II)6水和物1.88g、Ti濃度15.1質量%の硫酸チタン(IV)1.98gを用いて原料溶液を調製し、加熱処理温度を1040℃とした以外は、実施例1と同じ手順で置換型ε酸化鉄磁性粉を得た。得られた置換型ε酸化鉄磁性粉を、組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。原料溶液中の金属イオンのモル比は、Fe:Al:Co:Ti=1.54:0.36:0.050:0.050である。アンモニア水溶液の添加終了時点の反応液のpHは3.0であり、ケイ酸ソーダ水溶液添加後および20hの撹拌をしている間を通じての反応液のpHは9.0であった。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.064であった。
[実施例3]
実施例2において、原料溶液中の金属イオンのモル比がFe:Al:Co:Ti=1.48:0.45:0.035:0.035となるように硫酸第二鉄(III)溶液、硫酸Al(III)溶液、硝酸コバルト(II)6水和物および硫酸チタン(IV)の量を変更し、S/(F+M)が1.5となるようにケイ酸ソーダ水溶液の量を変更し、ケイ酸ソーダ水溶液を添加後に、反応液のpHが9.0となるまで22.14質量%のアンモニア水溶液を添加した後に20hの撹拌を実施した以外は、実施例2と同様の手順により、置換型ε酸化鉄磁性粉を得た。手順2においてアンモニア水溶液の添加を終了した時点の反応液のpHは3.0であった。得られた置換型ε酸化鉄磁性粉を、組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.036であった。
[実施例4]
硝酸コバルト(II)6水和物に代えてCo濃度5.01質量%の硫酸Co(II)溶液を用い、硫酸チタン(IV)に代えてTi濃度16.9質量%の四塩化チタン(IV)溶液を用いた以外は実施例3と同様の手順により置換型ε酸化鉄磁性粉を得た。原料溶液中の金属イオンのモル比はFe:Al:Co:Ti=1.48:0.45:0.035:0.035である。手順2においてアンモニア水溶液の添加を終了した時点の反応液のpHは3.0であった。得られた置換型ε酸化鉄磁性粉を、組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.026であった。
[比較例1]
5L反応槽にて、純水3482.14gに、Fe濃度11.65質量%の硫酸第二鉄(III)溶液513.77g、Ga濃度9.37質量%の硝酸Ga(III)溶液86.54g、純度97%硝酸コバルト(II)6水和物9.38g、Ti濃度15.1質量%の硫酸チタン(IV)9.91gを大気雰囲気中、撹拌羽根により機械的に撹拌しながら溶解し、原料溶液とした(手順1)。この原料溶液のpHは約1であった。この原料溶液中の金属イオンのモル比は、Fe:Ga:Co:Ti=1.714:0.186:0.050:0.050である。なお、試薬名の後の括弧内のローマ数字は、金属元素の価数を表している。
大気雰囲気中、この原料溶液を30℃の条件下で、撹拌羽根により機械的に撹拌しながら、21.24質量%のアンモニア水溶液407.83gを10minかけて添加した(手順2)。アンモニア水溶液の添加終了時点の反応液のpHは8.7であった。
アンモニア水溶液の添加から30min後に、Si濃度12.10質量%、Na濃度5.27質量%のケイ酸ソーダ水溶液(富士化学社製5号ケイ酸ソーダ溶液)725.77gを10minかけて滴下した。ケイ酸ソーダ水溶液を全て添加した後、20hそのまま撹拌し続け、シリコン酸化物ゲルで置換元素を含むオキシ水酸化鉄の沈殿物を被覆した(手順3)。ケイ酸ソーダ水溶液添加後および前記20hの撹拌をしている間を通じての反応液のpHは11であった。なお、この条件下では分散液に滴下する5号ケイ酸ソーダ水溶液に含まれるSi元素の全量と、原料溶液中に含まれる鉄、ガリウム、コバルト、チタンイオンの量とのモル比S/(F+M)は2.5である。
手順3で得られたスラリーを濾過し、得られたケイ素酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄の沈殿物の水分をできるだけ切ってから、得られたケーキを大気中110℃で乾燥して、ケイ素酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄の乾燥品を得た(手順4)。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.259であった。
手順4で得られた乾燥品を、箱型焼成炉を用い、大気中1000℃で4h加熱処理し、シリコン酸化物で被覆された鉄系酸化物磁性粉を得た(手順5)。
手順5で得られた、ケイ素酸化物ゲル被覆置換型オキシ水酸化鉄の乾燥品に熱処理を施した熱処理粉を、17.58質量%NaOH水溶液中で約60℃、24時間撹拌し、粒子表面のシリコン酸化物被覆の除去処理を行った(手順6)。次いで、手順6で得られたスラリーを遠心分離処理により固液分離し、得られた固形分を水洗および乾燥し、得られた置換型ε酸化鉄磁性粉の組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。
[比較例2]
実施例1の手順2において、22.14質量%アンモニア水溶液を8.02g/minの添加速度で、反応液のpHが8.6になるまで添加した以外は実施例1と同様の手順により置換型ε酸化鉄磁性粉を得た。得られた置換型ε酸化鉄磁性粉を、組成の化学分析、XRD測定および磁気特性の測定等に供した。手順4で得られた乾燥品に対して組成分析を実施したところ、Na/(Fe+M)モル比は0.049であった。
Figure 2022135542000002
Figure 2022135542000003

Claims (5)

  1. Feサイトの一部を他の金属元素で置換したε酸化鉄の粒子からなる鉄系酸化物磁性粉の製造方法であって、
    3価のFeイオンと前記Feサイトを一部置換する金属のイオンを含む溶液にアルカリを添加してpH2.0以上5.0以下まで中和する中和工程と、
    前記の中和工程で得られた中和後液にアルカリ金属ケイ酸塩を添加し、シリコン酸化物ゲルで被覆されたFeサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄もしくはオキシ水酸化鉄と置換元素の水酸化物の混合物(以下、これらを置換型オキシ水酸化鉄と呼ぶ)を得るシリコン酸化物ゲル被覆工程と、
    前記の被覆工程で得られたシリコン酸化物ゲルを被覆した置換型オキシ水酸化鉄を水洗して、当該Feサイトの一部が他の金属元素で置換されたオキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属量を低減させる水洗工程と、
    を含む、鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  2. 前記の水洗工程後に、置換型オキシ水酸化鉄が、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるアルカリ金属の量をAモルとし、当該置換型オキシ水酸化鉄に含まれるFeおよび置換金属元素Mの量の和をFe+Mモルとした時、モル比A/(Fe+M)が0.08以下となるように前記水洗を実施する、請求項1に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  3. 前記のシリコン酸化物ゲル被覆工程において、前記のアルカリ金属ケイ酸塩を添加した後に得られた反応液に、さらにアルカリを添加してpH7.0以上10.0以下とする、請求項1に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  4. 前記のFeサイトを一部置換する他の金属元素がCo、Ti、GaおよびAlから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
  5. 前記の水洗工程で得られた、シリコン酸化物ゲルを被覆した置換型オキシ水酸化鉄を焼成し、シリコン酸化物で被覆された置換金属元素を含む酸化鉄を得る焼成工程と、
    前記の焼成工程で得られたシリコン酸化物で被覆された置換金属元素を含む酸化鉄のシリコン酸化物を除去して鉄系酸化物磁性粉を得る酸化物被覆除去工程と、
    をさらに含む、請求項1に記載の鉄系酸化物磁性粉の製造方法。
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