JP2021188035A - 水分散体、金属用コーティング剤及び塗膜 - Google Patents

水分散体、金属用コーティング剤及び塗膜 Download PDF

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亜沙子 小笠原
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Abstract

【課題】金属に対する密着性に優れ、しかも、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができる水分散体、該水分散体を含む金属用コーティング剤、並びに、該水分散体から形成される塗膜を提供する。【解決手段】本発明の水分散体は、構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体と、非反応性乳化剤(C)とを含む。斯かる水分散体から得られる塗膜は、金属に対する密着性に優れ、しかも、耐摩耗性にも優れる。【選択図】なし

Description

本発明は、水分散体、金属用コーティング剤及び塗膜に関する。
ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルに硫酸化剤やリン酸化剤を反応させた硫酸エステル(塩)やリン酸エステル(塩)が知られている。例えば、特許文献1および2には、前記リン酸エステル(塩)を、乳化重合用の反応性乳化剤として用いることが記載されている。例えばリン酸エステル金属塩を反応性乳化剤として使用して乳化重合を行うと、リン酸エステル金属塩は得られる重合体において構成単位として含まれる。
前記リン酸エステル金属塩を反応性乳化剤として使用することにより、乳化重合時の安定性が向上し、また、斯かる乳化重合で得られた重合体の水分散体(ポリマーディスパージョン)は泡立ちが起こりにくく、この水分散体から得られたポリマーフィルムは、耐水性等の諸特性が改善される。
国際公開第2013/108588号 特開2015−013921号公報
前記リン酸エステル金属塩を構成モノマーとして含む重合体の水分散体を金属表面に塗布して形成される塗膜は耐水性に優れることから、例えば、金属へのコーティング用途として好適であるものの、金属に対する密着性については、さらに向上させることが望まれていた。加えて、前記塗膜に優れた耐久性能をもたらすべく、塗膜の耐摩耗性能を向上させることも求められていた。特に近年、金属等にコーティングする用途においては、形成した塗膜が金属に強く密着していること、その塗膜が耐摩耗性に優れることが要求されており、この観点から、金属に対する密着性および耐摩耗性に優れる塗膜を形成できる水分散体の開発が急務となっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、金属に対する密着性に優れ、しかも、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができる水分散体、該水分散体を含む金属用コーティング剤、並びに、該水分散体から形成される塗膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造の構成単位を有する重合体と、非反応性の乳化剤を含むことにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体と、
非反応性乳化剤(C)と
を含む、水分散体。
項2
前記非反応性乳化剤(C)が、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、及び、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩を除く)である、項1に記載の水分散体。
項3
重合性不飽和基及びポリオキシアルキレン基を含有する反応性乳化剤は含まない、項2に記載の水分散体。
項4
前記非反応性乳化剤(C)が、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含む、項1に記載の水分散体。
項5
前記非反応性乳化剤(C)が、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含む、項1に記載の水分散体。
項6
前記重合体は、構成モノマーとして更に(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)を含有する、項1〜5のいずれか1項に記載の水分散体。
項7
前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルの塩(A)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩及びアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜6に記載の水分散体。
項8
項1〜7のいずれか1項に記載の水分散体を含む、金属用コーティング剤。
項9
項1〜7のいずれか1項に記載の水分散体または項8に記載の金属用コーティング剤を用いて得られる塗膜。
本発明に係る水分散体によれば、金属に対する密着性に優れ、しかも、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.水分散体
本発明の水分散体は、構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体と、非反応性乳化剤(C)とを含む。斯かる水分散体によれば、金属に対する密着性に優れる塗膜を形成することができ、しかも、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができる。
本明細書において、前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を「モノマー(A)」と略記する。
(重合体)
本発明の水分散体において、重合体は、構成モノマーとして前記モノマー(A)を含有する。念のための注記に過ぎないが、本明細書において、重合体の構成モノマーとは、重合体を形成するための繰り返しの構成単位を意味する。より厳密にいうと、前記重合体は、モノマー(A)に由来する構成単位を含むものである。本明細書において「モノマーに由来する構成単位」とは、モノマーが重合して形成される構成単位もしくはその誘導体のことをいう。ここでいう誘導体は、モノマーが重合して形成される構成単位がさらに中和または加水分解等されて形成される構成単位等を意味する。例えば、モノマーが前記モノマー(A)である場合であって、重合後に形成される構成単位が塩型である場合、この塩型を酸型に変換した構成単位が前記誘導体に相当する。あるいは、モノマーがモノマー(A)である場合であって、重合後に形成される構成単位が酸型である場合、この酸型を中和して塩型に変換した構成単位も前記誘導体に相当する。
モノマー(A)は、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステル(以下、酸型のリン酸エステルということもある)であってもよいし、その塩の形態であってもよい。あるいは、モノマー(A)はそれらの混合物であってもよい。つまり、前記重合体は、構成モノマーとして、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステル(酸型のリン酸エステル)と、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルの塩の両方を構成モノマーとして有することもできる。
モノマー(A)が塩の形態である場合、塩の種類は特に限定されず、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩及びアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種とすることができる。アルカリ金属としては、Na、K等が例示され、アルカリ土類金属としては、Mg、Ca等が例示される。アルキルアンモニウムとしては、モノメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム等が例示され、アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が例示される。
モノマー(A)は、酸型のリン酸エステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、この場合、水分散体は、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れ、さらに耐水白化にも優れる塗膜を形成することができる。
例えば、モノマー(A)がアンモニウム塩である場合、水分散体の加熱および乾燥時に大部分のアンモニアが脱離する。これにより、モノマー(A)は前述の酸型のリン酸エステルになり得るので、後記する塗膜の状態において、重合体は酸型のリン酸エステルを構成モノマーとして含み得る。
モノマー(A)は、リン酸モノエステルであってもよいし、あるいは、リン酸ジエステルであってもよい。モノマー(A)は両者の混合物とすることもできる。
モノマー(A)のさらなる具体例としては、例えば、下記一般式(1)
(X)P(=O)(OL)3−k (1)
で表される化合物が挙げられる。
式(1)中、kは1又は2であり、Lは、水素原子もしくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム残基、アルキルアンモニウム残基及びアルカノールアミン残基からなる群より選択される少なくとも1種を示す。式(1)中、Xは、下記(2)で表される1価の基である。
Figure 2021188035
式(2)中、Rは、1−プロペニル基又はアリル基(即ち2−プロペニル基)を表し、Aは、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは1〜3の範囲にある置換基数を表す。
式(1)において、一分子中にLを複数有する場合、複数のLは同一であってもよいし、一部又は全部が異なっていてもよい。
式(1)において、Lがアルカリ金属である場合、アルカリ金属としては、Na、K等が例示され、Lがアルカリ土類金属である場合、アルカリ土類金属としては、Mg、Ca等が例示される。式(1)において、Lがアルキルアンモニウム残基である場合、アルキルアンモニウム残基としては、モノメチルアンモニウム残基、ジプロピルアンモニウム残基等が例示され、式(1)において、Lがアルカノールアミン残基である場合、アルカノールアミン残基としては、モノエタノールアミン残基、ジエタノールアミン残基、トリエタノールアミン残基等が例示される。
式(1)において、Lは水素原子、もしくは、アルカリ金属、アンモニウム残基及びアルカノールアミン残基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、この場合、水分散体は、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れ、さらに耐水白化にも優れる塗膜を形成することができる。
式(1)で表される化合物において、Rは好ましくは1−プロペニル基である。Rの置換位置は、オルト位及び/又はパラ位であることが好ましく、より好ましくはオルト位である。
式(2)において、AOで表されるオキシアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。
式(2)において、AOが炭素数2〜4のアルキレンオキサイドである場合は、(AO)鎖部位は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキサイド)等の1種又は2種以上を用いた付加重合体とすることができる。オキシアルキレン基の付加形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキサイドを用いた単独付加体でもよく、2種類以上のアルキレンオキサイドを用いたランダム付加体、ブロック付加体、或いはそれらランダム付加とブロック付加の組み合わせでもよい。
上記オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましく、2種類以上のオキシアルキレン基を含む場合、その1種類はオキシエチレン基であることが好ましい。(AO)鎖部位は、好ましくは(AO)の全モル数に対してオキシエチレン基を50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%含有する。
式(2)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜9の範囲の数であることが好ましく、より好ましくは2〜8である。一実施形態として、nは2〜6でもよく、2〜4でもよい。
式(2)中、mは、α−メチルベンジル基の置換基数を表し、平均値で1〜3の範囲にあり、好ましくは1〜2の範囲にある。α−メチルベンジル基の置換位置は、オルト位及び/又はパラ位であることが好ましい。
式(2)で表される1価の基(つまり、式(1)におけるX)において、好ましくは、下記式(2−1)で表される基である。
Figure 2021188035
式(2−1)中、nおよびmは、式(2)中のnおよびmと同義である。
モノマー(A)は、式(1)で表される化合物において、Lが水素原子である酸型の化合物と、Lが各種塩の形態である化合物との混合物とすることもできる。
また、モノマー(A)は、式(1)で表される化合物において、k=1である化合物(リン酸モノエステル)と、k=2(リン酸ジエステル)である化合物の混合物とすることもできる。モノマー(A)がリン酸モノエステルまたはリン酸ジエステル、あるいは、これらの混合物である場合、リン酸モノエステルは、下記式(1−1)で表される化合物を例示することができ、リン酸ジエステルは、下記式(1−2)で表される化合物を例示することができる。
Figure 2021188035
式(1−1)および式(1−2)中、R、A、L、n、mは、前記式(1)及び(2)中のR、A、L、n、mと同義である。モノマー(A)が両者の混合物である場合、双方のR、A、L、n、mは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、モノマー(A)が式(1−2)で表される化合物を含む場合、一分子中のRは同一でも異なってもよい。
式(1−1)および式(1−2)で表される化合物において、Rは好ましくは1−プロペニル基である。Rの置換位置は、オルト位及び/又はパラ位であることが好ましく、より好ましくはオルト位である。
モノマー(A)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を採用することにより、モノマー(A)を合成することができる。例えば、スチレン化フェノールとハロゲン化アリルを原料として、モノマー(A)を製造することができる。具体的には、スチレン化フェノールとハロゲン化アリルを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質と反応させることにより、スチレン化アリルフェニルエーテルを得て、これを加熱することでアリル基を転位させてスチレン化アリルフェノールを得る。次いで、該スチレン化アリルフェノールにアルカリ触媒のもとでアルキレンオキサイドを高温、高圧下で付加させることにより、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルを得て、これに公知のリン酸化剤を反応させることによりリン酸エステルを得ることができる。その後、必要に応じてアルカリ中和剤で中和することにより中和塩とすることもできる。中和剤は特に限定されない。
本発明の水分散体において、前記重合体は、前記モノマー(A)を構成モノマーとして含む他、更に(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)を構成モノマーとして含有することもできる。つまり、重合体は、モノマー(B)に由来する構成単位を含むことができる。
重合体がモノマー(B)を構成モノマーとして含むことによって、水分散体から得られる塗膜は、金属に対する密着性が向上しやすくなる。従って、モノマー(B)は、重合体を形成する構成モノマーの主成分であることが好ましい。
モノマー(B)において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデセニル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらはいずれか1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマー(B)において、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、o−,m−,p−エチルスチレン、o−,m−,p−イソプロピルスチレン、o−,m−,p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。これらはいずれか1種用いても、2種以上併用してもよい。
モノマー(B)において、カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ、これらはいずれか1種用いても、2種以上併用してもよい。
好ましいカルボン酸ビニルは、酢酸ビニルである。
モノマー(B)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。モノマー(B)は、市販品等から入手することもできる。
重合体は、本発明の効果が阻害されない程度である限り、モノマー(A)およびモノマー(B)以外の他のモノマーを構成モノマーとして含むことができる。他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジオレフィンモノマー、エチレン、無水マレイン酸、マレイン酸メチル等が挙げられる。
以上のように、本発明の水分散体において、重合体は前述のように、モノマー(A)を必須の構成モノマーとして含み、好ましくは、モノマー(B)も含む。
重合体の全構成モノマー中、モノマー(A)の含有量は特に限定されない。例えば、重合体の全質量に対し、モノマー(A)の含有割合は0.1〜20質量%とすることができ、0.2〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
重合体の全構成モノマー中、モノマー(B)の含有量は特に限定されない。例えば、重合体の全質量に対し、モノマー(B)の含有割合は70〜99.8質量%とすることができ、80〜99.4質量%であることが好ましく、85〜99質量%であることがより好ましい。
重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば、10万〜1000万とすることができ、100万〜500万であることが好ましい。ここで、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。
重合体の形状及び大きさも特に限定されず、例えば、金属コーティング剤で適用されている形状及び大きさとすることができ、特には、公知の乳化重合で形成される形状及び大きさを広く採用することができる。
(非反応性乳化剤)
本発明の水分散体は、非反応性乳化剤(C)を含む。非反応性乳化剤(C)は、ラジカル重合性の官能基を有さず、乳化重合において、重合反応性を示さない乳化剤である。
非反応性乳化剤の種類は特に限定されない。例えば、非反応性乳化剤(C)としては、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤を挙げることができる。ただし、本発明の一態様として、前記アニオン性乳化剤は、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、及び、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩は除く。
非反応性乳化剤(C)において、アニオン性乳化剤は、例えば、公知のアニオン性乳化剤を広く挙げることができる。例えば、アニオン性乳化剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル部位を有する化合物、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル部位を有する化合物、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル部位を有する化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル部位を有する化合物、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル部位を有する化合物を挙げることができる。これらの化合物において、「オキシアルキレン」の炭素数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは2〜4、更に好ましくは2である。また、これらの化合物において、オキシアルキレンの繰り返し単位数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは1〜100、より好ましくは3〜50、さらに好ましくは5〜20である。これらの化合物において、アルキル又はアルケニル基を含む場合、その炭素数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは4〜30、より好ましくは8〜20である。
具体的なアニオン性乳化剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル硫酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテルリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルスルホコハク酸およびその塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、ジアルキルスルホコハク酸およびその塩、アルケニルスルホコハク酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル酢酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル酢酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル酢酸エステルおよびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、アルキル硫酸およびその塩、並びに、アルキルリン酸およびその塩が例示される。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アニオン性乳化剤は、塩である形態と塩でない形態との混合物であってもよい。
非反応性乳化剤(C)において、アニオン性乳化剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルおよびその塩、並びに、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルおよびその塩からなる群より選ばれる1種を含むことが好ましい。
本発明の他の一態様としては、非反応性乳化剤(C)としての前記アニオン性乳化剤は、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、及び、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩を含むこともできる。この場合において、重合安定性が向上しやすいという点で、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩であることが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩であることが好ましい。
非反応性乳化剤(C)において、非イオン性乳化剤は、例えば、公知の非イオン性乳化剤を広く挙げることができる。例えば、非イオン性乳化剤として、ポリオキシアルキレン部位を有する化合物を挙げることができる。
具体的な非イオン性乳化剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテル、ポリオキシアルキレントリブロックポリマー(例としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)が例示される。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物において、「オキシアルキレン」を含む場合、その炭素数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは2〜4、更に好ましくは2である。また、これらの化合物において、オキシアルキレン部位を含む場合、その繰り返し単位数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは1〜200、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは10〜50である。これらの化合物において、アルキル又はアルケニル基を含む場合、その炭素数は特に限定されず、例えば、公知の乳化剤と同様の範囲とすることができ、好ましくは4〜30、より好ましくは8〜20である。
非反応性乳化剤(C)は、金属に対する塗膜の密着性が向上しやすく、耐摩耗性も向上しやすいという観点から、少なくともアニオン性乳化剤を含むことが好ましい。この場合、非反応性乳化剤(C)は、アニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤との併用とすることができ、あるいは、アニオン性乳化剤のみであってもよい。アニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤との併用の場合、例えば、アニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤の総質量に対するアニオン性乳化剤の含有割合を50質量%、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
(水分散体)
本発明の水分散体は、前記重合体と非反応性乳化剤(C)とを少なくとも含む。水分散体において、重合体と、非反応性乳化剤(C)との含有割合は特に限定されない。例えば、重合体100質量部に対し、非反応性乳化剤(C)を0.01質量部以上とすることができ、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましい。また、重合体100質量部に対し、非反応性乳化剤(C)を20質量部以下とすることができ、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
水分散体は、媒体として水系溶媒を含む。水系溶媒は、水、低級アルコール(例えば、炭素数1〜3のアルコール)、もしくはこれらの混合溶媒が挙げられる。重合体の分散性が安定しやすいという点で、水系媒体は水であることが好ましい。
水分散体において、重合体の濃度は特に限定されない。水分散体からの塗膜が形成されやすいという点で、水分散体中の重合体の濃度は、20〜70質量%とすることができ、35〜55質量%とすることが好ましい。
水分散体は、重合体及び非反応性乳化剤(C)の他、反応性乳化剤を含むことができる。好ましくは、水分散体には反応性乳化剤が含まれないことであり、中でも重合性不飽和基及びポリオキシアルキレン基を含有する反応性乳化剤は含まないことが特に好ましい。
水分散体はその他、本発明の効果が阻害されない限り、重合体及び非反応性乳化剤(C)以外に各種の添加剤を含むこともできる。添加剤としては、例えば、着色剤、pH調整剤、増粘剤、顔料、防腐剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種又は2種以上が水分散体に含まれていてもよい。添加剤は、例えば、重合体100質量部あたり、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
本発明の水分散体によれば、前記重合体と非反応性乳化剤(C)とを含むことから、水分散体を用いて得られる塗膜は、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れる。加えて、斯かる塗膜は、前記モノマー(A)を構成モノマーとして含む重合体を含有することから、耐水白化性及び防錆性にも優れる。
(水分散体の製造方法)
本実施形態に係る水分散体の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の乳化重合法を広く適用することができる。乳化重合法の一例として、重合用溶媒として水を用い、重合用モノマーを、乳化剤を用いて水中に乳化させ、これに重合開始剤を加えて反応させることにより重合体が合成され、必要に応じてアルカリで中和することにより、水分散体が得られる。アルカリとしては、公知の化合物を広く使用することができ、中でもアンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;モノメチルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン;が挙げられる。
前記重合用モノマーは少なくともモノマー(A)を含む。モノマー(A)は、一実施形態において、前述の酸型のリン酸エステルを用いることが好ましい。前記重合用モノマーはモノマー(A)の他、モノマー(B)を含むことができる。前記重合用モノマーの全量に対し、モノマー(A)の含有割合は0.1〜20質量%とすることができ、0.2〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。また、前記重合用モノマーの全量に対し、モノマー(B)の含有割合は70〜99.8質量%とすることができ、80〜99.4質量%であることが好ましく、85〜99質量%であることがより好ましい。
前記重合用モノマーが前述のその他モノマーを含む場合、その含有量は、例えば、重合体の全質量に対し、20質量%以下とすることができ、10質量%であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
水分散体の製造方法で使用する乳化剤は少なくとも前記非反応性乳化剤(C)を含む。乳化剤は前記非反応性乳化剤(C)のみであってもよいし、目的の水分散体を製造できる限りは、その他の乳化剤、例えば、反応性乳化剤を併用することもできる。反応性乳化剤を併用する場合、反応性乳化剤の全て又は一部がモノマー(A)等とともに共重合されて重合体に取り込まれてもよく、あるいは、一部が重合体に取り込まれ、一部は取り込まれずにそのまま残り乳化剤または分散剤として水分散体に含まれてもよい。反応性乳化剤の種類は特に限定されず、たとえば、公知の反応性乳化剤を広く適用することができる。水分散体の好ましい一実施形態では、反応性乳化剤は使用しないことであり、特に、重合性不飽和基及びポリオキシアルキレン基を含有する反応性乳化剤を使用しないことが好ましい。
前記非反応性乳化剤(C)の使用量は、例えば、重合用モノマー100質量部に対し、0.01質量部以上とすることができ、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。また、重合用モノマー100質量部に対し、非反応性乳化剤(C)の使用量20質量部以下とすることができ、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
乳化重合において、重合反応に用いる重合開始剤は、例えば、公知の乳化重合で用いられる重合開始剤を広く使用することができる。例えば、過酸化水素、過硫酸塩化合物、及び、アゾ化合物等を挙げることができる。過硫酸塩化合物は、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなど等が挙げられ、アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等が挙げられる。また、公知の反応促進剤を併用してもよい。
乳化重合において、重合温度や重合時間等の重合条件については特に限定されず、使用するモノマーの種類等に応じて適宜設定することができる。
2.金属用コーティング剤及び塗膜
本発明の水分散体は、各種用途の適用することができ、特に、本発明に係る水分散体を用いることで、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができることから、金属用コーティング剤の使用に適している。
(金属コーティング剤)
本発明の金属用コーティング剤は、前記水分散体を含む限りは特に限定されない。金属用コーティング剤は、前記水分散体のみからなるものであってもよいし、その他の添加剤等を含むものであってもよい。金属用コーティング剤のその他添加剤は特に制限されず、公知の金属用コーティング剤に含まれる添加剤を広く挙げることができる。
本発明の金属用コーティング剤によれば、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れる塗膜を形成することができる。金属用コーティング剤でコーティングさせる金属の種類は特に限定されず、金属単体の基板、二種以上の金属を含有する金属アロイ、金属合金等、各種の金属基板を対象とすることができる。中でも、金属用コーティング剤は、ステンレスに対して優れた密着性を有する塗膜を形成することができる。
(塗膜)
塗膜は、水分散体又は金属用コーティング剤を用いて得ることができる。塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の塗膜の形成方法を広く採用することができる。塗膜の形成方法の一例として、水分散体又は金属用コーティング剤を基材に塗布し、加熱及び乾燥することにより、基材表面に塗膜を形成することができる。従って、塗膜は、水分散体または金属用コーティング剤の乾燥物を含む。基材は、前記金属基板を用いることができる。
上記塗膜は、水分散体又は金属用コーティング剤から形成されるため、金属に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れ、加えて、耐水白化性及び防錆性にも優れるものである。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(モノマーA)
[合成例1:モノマー(A−1)の合成]
撹拌機、温度計、還流管を備えた反応容器に、スチレン化フェノール(モノスチレン化フェノール:ジスチレン化フェノール:トリスチレン化フェノール=80:19:1(モル比)の混合物)230g(1.0モル)、NaOH40g(1.0モル)およびアセトン210gを仕込み、撹拌しながら内温を40℃に昇温した。次にアリルクロライド91g(1.2モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに40℃に2時間保ち、反応を行った。反応生成物を濾過し、副生したNaClを除去した後、減圧下にアセトンを除去し、スチレン化アリルフェニルエーテル314gを得た。
このスチレン化アリルフェニルエーテルをオートクレーブに仕込み、200℃で5時間撹拌保持した。この段階で転位反応が起こり、スチレン化1−プロペニルフェノールとした。このスチレン化1−プロペニルフェノール290gをオートクレーブに移し、水酸化カリウムを触媒とし、圧力147kPa、温度130℃の条件にて、エチレンオキサイド(EO)132g(3モル)を付加させた。
次に、このスチレン化1−プロペニルフェノールEO3モル付加体422g(1モル)に、20℃を超えないように冷却しながら無水リン酸71g(0.5モル)を滴下し、滴下終了後70℃に昇温して5時間反応した。斯かる反応により、下記式(1−1−1)で表されるポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステル(以下、(A−1)と略記する)を得た。なお、式中、EOはオキシエチレン基を表す(以下も同じ)。
Figure 2021188035
[合成例2:モノマー(A−2)の合成]
無水リン酸の使用量を47g(0.33モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、前記式(1−1−1)で表されるリン酸モノエステルと、下記式(1−2−1)で表されるリン酸ジエステルとの混合物(モル比1:1)であるポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸セスキエステル(以下、(A−2)と略記する)を得た。
Figure 2021188035
[合成例3:モノマー(A−3)の合成]
無水リン酸の使用量を36g(0.25モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、前記式(1−2−1)で表されるポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸ジエステル(以下、(A−3)と略記する)を得た。
[合成例4:モノマー(A−4)の合成]
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、下記式(1−1−2)で表されるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステル(以下、(A−4)と略記する)を得た。
Figure 2021188035
[合成例5:モノマー(A−5)の合成]
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例2と同様の操作を行うことにより、前記式(1−1−2)で表されるモノエステルと下記式(1−2−2)で表されるジエステルとの混合物であるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸セスキエステル(以下、(A−5)と略記する)を得た。
Figure 2021188035
[合成例6:モノマー(A−6)の合成]
エチレンオキサイドの使用量を220g(5モル)とした以外は合成例3と同様の操作を行うことにより、前記式(1−2−2)で表されるポリオキシエチレン(5モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸ジエステル(以下、(A−6)と略記する)を得た。
[合成例7:モノマー(A−7)の合成]
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A−1)49.3gと水酸化ナトリウム4.0gを反応させる事で、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのナトリウム塩(以下、(A−7)と略記する)を得た。
[合成例8:モノマー(A−8)の合成]
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A−1)49.3gと25%アンモニア水6.8gを反応させ、水を留去する事で、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのアンモニウム塩(以下、(A−8)と略記する)を得た。
[合成例9:モノマー(A−9)の合成]
合成例1と同様の操作で得たモノマー(A−1)49.3gとモノエタノールアミン6.1gを反応させ、ポリオキシエチレン(3モル)スチレン化1−プロペニルフェニルエーテルリン酸モノエステルのモノエタノールアミン塩(以下、(A−9)と略記する)を得た。
(モノマーB)
モノマーBとして、下記の(B−1)〜(B−4)を準備した。
・(B−1):アクリル酸ブチル
・(B−2):メタクリル酸メチル
・(B−3):スチレン
・(B−4):酢酸ビニル
(非反応性乳化剤C)
非反応性乳化剤としては、下記表1に示す(C−1)〜(C−12)のアニオン性乳化剤、及び、(C−13)〜(C−19)の非イオン性乳化剤を準備した。なお、非反応性乳化剤はすべて第一工業製薬社製とした。
Figure 2021188035
(その他モノマー)
その他モノマー(a)として、下記の(a−1)〜(a−3)を準備した。
・(a−1):アクリル酸
・(a−2):ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸モノエステル(製品名:ライトエステルP−1M、共栄社化学(株)製)
(実施例1)
後掲の表2に示すように、モノマー(A)として合成例1で得られた(A−1)2.5質量部と、モノマー(B)として(B−1)123.75質量部及び(B−2)123.75質量部の混合物と、非反応性乳化剤(C)として(C−1)5質量部と、水107.15質量部とを混合し、乳化させることによりプレエマルションを得た。別途、滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、水117.11質量部及び炭酸水素ナトリウム0.25質量部を仕込み、上記プレエマルションのうち36.46質量部を加えて80℃に昇温して15分間混合した。次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.38質量部を水10質量部に溶解した水溶液を加えて15分間反応させた後、残りのプレエマルションを3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。続いて、過硫酸アンモニウム0.12質量部を水10質量部に溶解した水溶液を添加して1時間反応させた後、40℃に冷却し、中和剤としてアンモニア水でpH8に調整することにより、重合体と非反応性乳化剤(C)とを含む水分散体を得た。なお、アンモニア水で中和したことにより、水分散体の段階では、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはアンモニウム塩になった。
(実施例2〜7)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表2に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。なお、実施例7では、中和剤としてアンモニア水の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を使用したので、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはナトリウム塩になった。
(実施例8〜14)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表3に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。なお、実施例9では、中和剤としてアンモニア水の代わりにモノエタノールアミンを使用したので、重合体の構成モノマー中、モノマー(A)のリン酸エステルはモノエタノールアミン塩になった。
(実施例15〜21)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表4に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
(実施例22〜28)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表5に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
(実施例29〜33)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表6に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
(比較例1〜5)
モノマー(A)、モノマー(B)、非反応性乳化剤(C)及びその他モノマー(a)の種類及び使用量(質量部)を後掲の表7に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水分散体を得た。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた水分散体について、下記の密着性1、密着性2、耐水白化性、防錆性および耐摩耗性を評価した。
<密着性1>
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、105℃で10分乾燥し、試験片を得た。この試験片を用いて、JIS K 5400−8.5に準じて、碁盤目試験を実施し、剥がれの割合から、下記基準により判定を行った。
≪判定基準≫
A:剥がれの割合が0%
B:剥がれの割合が0%超25%未満
C:剥がれの割合が25%以上50%未満
D:剥がれの割合が50%以上75%未満
E:剥がれの割合が75%以上
<密着性2>
塗布後の乾燥温度を60℃に変更した以外は密着性1と同様の方法で判定した。
<耐水白化性>
水分散体をガラス板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、105℃で10分乾燥して得たフィルムを、25℃の水に浸漬し、白化度を評価した。10ポイントの文字の上にフィルムを形成したガラス板を置き、フィルムを通して見た文字の識別性を下記基準により判定を行った。
≪判定基準≫
A:3日浸漬後も文字が見える。
B:1日浸漬後には文字が見えるものの、3日浸漬後には文字が見えない。
C:1日浸漬後には文字が見えない。
<防錆性>
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、60℃で10分乾燥して得たフィルムに、JIS K 5600−5−6のクロスカット法に準拠して切り込みを入れた。このフィルムを3質量%の塩水に20℃で10日間浸漬後の状態を評価した。評価は錆の発生の具合について行い、下記基準により判定した。
≪判定基準≫
A:錆なし
B:クロスカット部のみ錆が見られる
C:全体に錆が見られる
<耐摩耗性>
水分散体をステンレス(SUS)板に膜厚が22μm(wet)となるように塗布し、60℃で10分乾燥して得たフィルムに、JIS K 5600−5−10に準拠し、摩耗減量を測定した。比較例1で得られた水分散体で形成されたフィルムの摩耗減量(g)を基準として(100%として)、各フィルムの摩耗減量の割合を算出し、下記基準により判定した。
≪判定基準≫
A:50%以下
B:50〜80%
C:80%以上
Figure 2021188035
Figure 2021188035
Figure 2021188035
Figure 2021188035
Figure 2021188035
Figure 2021188035
表2〜7には、各実施例又は比較例で調製した水分散体の配合条件、並びに、水分散体から得られた塗膜の評価結果を示している。なお、各表の配合条件において、空欄部分はその原料を使用していないことを意味する。
表2〜6に示す評価結果と、表7に示す評価結果との対比からもわかるように、構成モノマーとして特定のリン酸エステル(A−1)〜(A−9)のいずれかを含む重合体と、非反応性乳化剤(C)とを含む水分散体から得られた塗膜は、金属(ステンレス)に対する密着性に優れ、耐摩耗性にも優れるものであった。さらに、これらの塗膜は、優れた耐水白化性および防錆性も兼ね備えるものであった。

Claims (9)

  1. 構成モノマーとしてポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルおよび/またはその塩(A)を含有する重合体と、
    非反応性乳化剤(C)と
    を含む、水分散体。
  2. 前記非反応性乳化剤(C)が、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤(ただし、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、及び、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩を除く)である、請求項1に記載の水分散体。
  3. 重合性不飽和基及びポリオキシアルキレン基を含有する反応性乳化剤は含まない、請求項2に記載の水分散体。
  4. 前記非反応性乳化剤(C)が、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含む、請求項1に記載の水分散体。
  5. 前記非反応性乳化剤(C)が、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含む、請求項1に記載の水分散体。
  6. 前記重合体は、構成モノマーとして更に(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびカルボン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(B)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水分散体。
  7. 前記ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテルリン酸エステルの塩(A)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩及びアルカノールアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜6に記載の水分散体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水分散体を含む、金属用コーティング剤。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水分散体または請求項8に記載の金属用コーティング剤を用いて得られる塗膜。
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