JP2021187813A - マクロファージ泡沫細胞化阻害剤 - Google Patents

マクロファージ泡沫細胞化阻害剤 Download PDF

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Fumio Fukai
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Abstract

【課題】新規なマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を提供する。【解決手段】以下の(a)〜(c)のいずれかであるペプチドを有効成分として含有する、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤。(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。(b)ペプチド(a)において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。(c)ペプチド(a)とのアミノ酸配列同一性が90%以上であり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。【選択図】図6

Description

本発明は、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤に関する。
近年、種々の生活習慣病の根底には慢性炎症病態が存在するとの理解が一般的となっている。炎症の惹起から収束に至るまでの応答にはマクロファージを中心とした調節機構が存在しており、炎症の慢性化を伴う生活習慣病の進行において、マクロファージに異常がもたらされる仕組みが注目されている。
生活習慣病の一つであり、かつ異常なマクロファージの蓄積が病態形成の中心的な役割を負う疾患に、アテローム性動脈硬化症がある。アテローム性動脈硬化症は、動脈壁の内部の局所的な肥厚を特徴とする動脈の慢性炎症性疾患であり、泡沫細胞の形成と蓄積により引き起こされる。
泡沫細胞は、細胞質に脂質が過剰に蓄積されたマクロファージであり、動脈壁内部の特定の箇所に泡沫細胞が蓄積するとプラークが形成され、血管の狭窄や閉塞が起こる。また、このプラークに対して何らかの刺激が加わりプラークが破綻すると、血栓が形成され、動脈硬化病態の進行に繋がる。
マクロファージ泡沫細胞化の抑制を目的として、例えば特許文献1には、ε−ビニフェリンを有効成分とする動脈硬化組織内マクロファージ泡沫化抑制剤が提案されている。また、特許文献2には、トマチジンを有効成分とする動脈硬化の予防・治療剤が提案されている。
マクロファージ泡沫細胞化が引き起こす疾患の更なる改善のため、新規なマクロファージ泡沫細胞化阻害剤の開発が望まれる。
特開2012−97012号公報 特開2009−209099号公報
本発明は、上記に鑑みて提案されたものであり、新規なマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のアミノ酸配列からなるペプチドがマクロファージ泡沫細胞化を阻害することを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
<1> 以下の(a)〜(c)のいずれかであるペプチドを有効成分として含有する、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)ペプチド(a)において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
(c)ペプチド(a)とのアミノ酸配列同一性が90%以上であり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
<2> <1>に記載のマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を有効成分として含有する、マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患の予防又は治療薬。
<3> マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患がアテローム性動脈硬化関連疾患である、<2>に記載の予防又は治療薬。
本発明によれば、新規なマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を提供することができる。
試験例1に係るマクロファージの脂質蓄積を確認した結果を示す染色図である。 試験例1に係るマクロファージの脂質蓄積を確認した結果を示すグラフである。 試験例1に係るp38阻害剤を添加した場合のマクロファージの脂質蓄積を確認した結果を示す染色図である。 試験例2に係るマクロファージの貪食作用を確認した結果を示すグラフである。 試験例3に係るMAPKファミリの活性化を確認した結果を示す図である。 試験例4に係る代表的な炎症性メディエーターのmRNA発現量を確認した結果を示す図である。 試験例5に係るABCA1及びABCG1のmRNA発現量を確認した結果を示す図である。 試験例5に係るABCA1及びABCG1のタンパク質発現量を確認した結果を示す図である。 試験例6に係るマクロファージの貪食作用を確認した結果を示すグラフである。 試験例7に係るABCA1のmRNA発現量を確認した結果を示すグラフである。 試験例7に係るABCG1のmRNA発現量を確認した結果を示すグラフである。 試験例8に係るコントロールペプチドを添加した場合の動脈硬化病態の形成を確認した結果を示す図である。 試験例8に係るFNIII14ペプチドを添加した場合の動脈硬化病態の形成を確認した結果を示す図である。 試験例8に係るSudan−red陽性面積の割合を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。アミノ酸配列の記載は左側がN末端側であり、アミノ酸残基は当該技術分野で周知の三文字表記(例えば、グリシン残基を「Gly」)で表記する場合がある。
<マクロファージ泡沫細胞化阻害剤>
本実施形態に係るマクロファージ泡沫細胞化阻害剤は、以下の(a)〜(c)のいずれかであるペプチド(以下、特定ペプチドともいう)を有効成分として含有する。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)ペプチド(a)において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
(c)ペプチド(a)とのアミノ酸配列同一性が90%以上であり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
特定ペプチドは、化学合成法又は遺伝子組み換え法により製造してもよく、市販品を使用してもよい。化学合成法により特定ペプチドを製造する場合、液相法、固相法、Boc法、Fmoc法等を単独で又は組み合わせて製造すればよい。遺伝子組み換え法により特定ペプチドを製造する場合、例えば、発現ベクターを用いて、大腸菌、酵母等の微生物;植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等に特定ペプチドをコードする遺伝子を導入し、発現させればよい。
上記(a)であるペプチドのアミノ酸配列は、細胞外マトリックスタンパク質分子の一つであるフィブロネクチンを構成するフィブロネクチンIII型ドメインに由来するもの(FNIII14)である。
特定ペプチドが(b)である場合、欠失、置換、又は付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドがマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1個〜4個であることが好ましく、1個〜3個であることがより好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることが更に好ましい。
特定ペプチドが(c)である場合、上記ペプチド(a)とのアミノ酸配列同一性が90%以上であれば特に限定されない。該アミノ酸配列同一性は93%以上であってもよく、95%以上であってもよく、97%以上であってもよい。
マクロファージ泡沫細胞化阻害剤によるマクロファージ泡沫細胞化の阻害は、種々の態様で観察されうる。例えば、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤を用いる前後におけるマクロファージ細胞内へのコレステロールの取り込みの抑制、減少、消失等によって観察されうる。また、取り込んだLDL(悪玉コレステロール)をHDL(善玉コレステロール)に変換し、循環系へと戻す役割を担う、ABCA1及びABCG1の発現の調節によるものであってもよい。なお、ABCA1及びABCG1は、マクロファージにおけるコレステロールの細胞外排出に重要な役割を担う輸送体である。
マクロファージ泡沫細胞化阻害剤に含まれる特定ペプチドは、用途に応じて種々の改変を施してもよい。例えば、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー、硫酸基、水溶性アミノ酸などを特定ペプチドの末端に連結して水溶性を向上させたり、多量体化したりしてもよい。また、特定ペプチドを構成するアミノ酸残基のそれぞれは本発明の効果が達成される限りL体又はD体のいずれであってもよい。体内での特定ペプチドの分解を抑制する観点からは、アミノ酸配列の少なくとも一部(例えば、第2位のGlu)をD体とすることが好ましい。
このように、特定ペプチドは、マクロファージ泡沫細胞化を阻害するように作用する。したがって、特定ペプチドを用いることにより、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤を製造することができる。マクロファージ泡沫細胞化阻害剤は、医薬用途に用いることができ、また、医薬以外の用途(研究用途等)に用いることもできる。
<予防又は治療薬>
本実施形態に係る予防又は治療薬は、上述した本実施形態に係るマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を有効成分として含有する。このため、本実施形態に係る予防又は治療薬は、マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患に対して有効である。なお、「予防」には、疾患の発症を防ぐことのほか、発症の時期を遅らせることも含まれる。また、「治療」には、疾患の症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。
マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患の一例としては、アテローム性動脈硬化関連疾患が挙げられる。アテローム性動脈硬化関連疾患の具体例としては、冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳虚血、閉塞性動脈硬化症、間欠性跛行、壊疽、腸管膜虚血、一過性の動脈炎、腎動脈狭窄等が挙げられる。
予防又は治療薬は、医薬品の分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。
予防又は治療薬は、使用態様に応じてマクロファージ泡沫細胞化阻害剤以外の成分を含んでいてもよい。マクロファージ泡沫細胞化阻害剤以外の成分としては、薬剤の調製に一般に用いられる媒質及び製剤用添加物を挙げることができる。媒質及び製剤用添加物の種類は、特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖等)及び液体媒質(例えば、アルコール、水、生理食塩水等)が挙げられる。製剤用添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等が挙げられる。
予防又は治療薬の剤形は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤、リモナーデ剤等の経口剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。
予防又は治療薬の適用対象は特に限定されず、哺乳類等を好ましく挙げることができる。哺乳動物としては、ヒト、及び非ヒト動物(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)のいずれであってもよい。
予防又は治療薬の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。
予防又は治療薬は、投与目的等に応じて、他の薬剤と併用して投与してもよい。予防又は治療薬とともに併用される薬剤の種類や量等は、得ようとする効果等に基づき適宜選択され、予防又は治療薬とともに投与してもよく、別々に投与してもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
<試験例1>
動脈硬化等の炎症関連領域に特異的かつ一過的に高発現する細胞外マトリックス分子であるテネイシンCの分子構造内に、TNIIIA2領域が存在する。試験例1では、TNIIIA2刺激マクロファージの泡沫細胞化における影響を確認した。
以下の試験では、Raw264.7細胞(マウスマクロファージ細胞株)を用いた。Raw264.7細胞の培養には、非動化済の牛胎児血清を10%含むDMEM培地を使用した。Raw264.7細胞は、25×10 cells/mLとなるように調整して、FBSでコートされた24ウェルプレートに播種し、2時間培養した後に、上記培地からFBSを抜いた培地に変更して、更に2時間培養を行った。このように準備した細胞を試験に用いた。
TNIIIA2領域に対応する、アミノ酸配列Arg−Ser−Thr−Asp−Leu−Pro−Gly−Leu−Lys−Ala−Ala−Thr−His−Tyr−Thr−Ile−Thr−Ile−Arg−Gly−Val−Thr−Cys(配列番号2)からなるペプチドを、常法により合成した。本明細書において、このペプチドを「TNIIIA2ペプチド」ということもある。
上記で準備したRaw264.7細胞の培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)及びox−LDL(酸化LDL)(終濃度50μg/mL)を添加した。37℃で20時間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、4%ホルミアミドで固定した後に、Oil−Red−O染色を行った。
図1A上段及び図1Bに示されるように、TNIIIA2刺激を受けたマクロファージでは赤色の粒子(脂肪滴)が細胞内に観察され、細胞内への脂質蓄積すなわち泡沫細胞化が有意に亢進していることが確認された。
次に、上記と同様に、培地にTNIIIA2ペプチド及びox−LDLを添加し、更にLPS(Lipopolysaccharide)の阻害剤であるPolymyxin−B(終濃度10μg/mL)を添加した。なお、LPSは、テネイシンCによる炎症反応の刺激において重要な役割を果たすTLR4のアゴニストであり、マクロファージの貪食作用の活性化因子として知られている。37℃で20時間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、4%ホルミアミドで固定した後に、Oil−Red−O染色を行った。
図1A下段に示されるように、Polymyxin−Bを添加した場合でも、TNIIIA2刺激を受けたマクロファージにおいて、細胞内への脂質蓄積すなわち泡沫細胞化が有意に亢進していることが確認された。この結果より、TNIIIA2による泡沫細胞化作用は、TNIIIA2溶液に混入したLPSの効果ではないことが確認された。
次に、上記と同様に、培地にTNIIIA2ペプチド及びox−LDLを添加し、更にp38阻害剤であるSB203580(終濃度10μM)を添加した。37℃で20時間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、4%ホルミアミドで固定した後に、Oil−Red−O染色を行った。
図1Cに示されるように、SB203580を添加した場合には、TNIIIA2刺激を受けたマクロファージにおける脂質蓄積が確認されなかった。このことより、TNIIIA2による泡沫細胞化の促進は、p38活性化依存的な作用であることが示された。
<試験例2>
試験例2では、TNIIIA2刺激マクロファージの貪食作用を確認した。
本試験では、播種した容器をFBSでコートされたカバーガラスとした以外は、試験例1と同様の方法で準備したRaw264.7細胞を用いた。培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)、LPS(終濃度100ng/ml)、蛍光FITC標識ラテックスビーズ(終濃度50×10 beads/mL)、又はSB203580(終濃度10μM)を添加した。37℃で20分間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄した後に、蛍光顕微鏡を用いて解析した。結果を図2に示す。なお、図2における「vehi」は、SB203580を添加していないサンプルを示す。また、「*」は、TNIIIA2ペプチド、LPS、及びSB203580のいずれも添加していないサンプルと比較して、統計学的に有意であることを示す。「**」は、TNIIIA2ペプチドを添加し、SB203580を添加していないサンプルと比較して、統計学的に有意であることを示す。
図2に示されるように、TNIIIA2ペプチドを添加すると、LPSを添加した場合と同様に、貪食作用が増強することが示された。これにより、試験例1で観察された脂質の異常蓄積は、許容量を超えた脂質の細胞内取り込みによりもたらされたことが推測される。また、LPS刺激マクロファージは、SB203580による影響を受けなかったのに対し、TNIIIA2刺激マクロファージは、SB203580の添加により貪食作用が抑制された。このことより、TNIIIA2は、p38依存的にマクロファージの貪食作用を増強することがわかった。
<試験例3>
試験例3では、TNIIIA2刺激マクロファージにおける、MAPKファミリの活性化の確認を行った。
本試験では、播種した容器をFBSでコートされた6ウェルプレートとした以外は、試験例1と同様の方法で準備したRaw264.7細胞を用いた。培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)を添加し、37℃で0.5、1、3、5、8、20時間のインキュベートを行った。細胞をPBSで3回洗浄後、プロテアーゼインヒビターカクテルを含むLysis buffer(62.5mM Tris,2% SDS,10% Glycerol,0.005% BPB,5% 2−ME)で細胞を溶解し、一定量のタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。その後、抗p−ERK抗体(cell signaling社製)、抗p−p38抗体(cell signaling社製)、及び抗actin抗体(Sigma社製)を一次抗体として、HRP標識抗ウサギIgG抗体(cell signaling社製)を二次抗体として用いて、ウェスタンブロッティングによる解析を行った。結果を図3に示す。
図3に示されるように、TNIIIA2刺激を行うと、マクロファージ内においてp38が活性化することが確認された。他方で、ERKの活性化は示されなかった。このことより、TNIIIA2は、ERK活性を伴わずに、p38活性化を誘導することがわかった。
<試験例4>
試験例4では、TNIIIA2刺激マクロファージの貪食作用の亢進における、代表的な炎症性メディエーターのmRNA発現量を確認した。
本試験では、播種した容器をFBSでコートされた6ウェルプレートとした以外は、試験例1と同様の方法で準備したRaw264.7細胞を用いた。培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)、LPS(終濃度100ng/ml)、又はSB203580(終濃度10μM)を添加した。37℃で3時間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、トータルRNAの抽出を行った後に、cDNAの合成を行った。その後、合成したcDNAを用いてPCR増幅を行った。結果を図4に示す。なお、図4における「vehi」は、SB203580を添加していないサンプルを示す。また、使用したプライマーの配列は以下のとおりである。
Figure 2021187813
図4に示されるように、MCP−1、KC、MIP−2、IL−6のいずれにおいても、TNIIIA2刺激によるmRNA発現量の変化は示されなかった。このことより、TNIIIA2によるマクロファージの貪食作用の亢進は、炎症性の貪食亢進とは異なり、代表的な炎症性メディエーターの産生を伴わないものであることがわかった。
<試験例5>
試験例5では、TNIIIA2刺激マクロファージにおける、ABCA1及びABCG1のmRNA発現量及びタンパク質発現量を確認した。
まず、試験例4と同様の方法で、TNIIIA2ペプチド、LPS、又はSB203580の添加を行った後に、cDNAの合成を行い、以下に示すプライマーを用いてPCR増幅を行った。GAPDHのプライマーは試験例4で用いたものと同じである。結果を図5Aに示す。なお、図5Aにおける「vehi」は、SB203580を添加していないサンプルを示す。
Figure 2021187813
図5Aに示されるように、ABCA1及びABCG1のいずれにおいても、TNIIIA2刺激によりmRNA発現量が減少した。また、このmRNA発現量の減少は、SB203580の添加により回復することが示された。
次に、試験例3と同様の方法でTNIIIA2ペプチドの添加を行い、5時間又は7時間インキュベートした後に、抗ABCA1抗体(Millipore社製)、抗ABCG1抗体(Santacruz社製)、及び抗tubulin抗体(Sigma社製)を一次抗体として、HRP標識抗マウスIgG抗体(cell signaling社製)又はHRP標識抗ウサギIgG抗体(cell signaling社製)を二次抗体として用いて、ウェスタンブロッティングによる解析を行った。結果を図5Bに示す。
図5Bに示されるように、ABCA1及びABCG1のいずれにおいても、TNIIIA2刺激によりタンパク質発現量が減少した。
これらの結果より、試験例1で観察された脂質の異常蓄積は、試験例2で確認した許容量を超えた脂質の細胞内取り込みだけでなく、取り込んだ脂質の排出能の低下によっても発生していることがわかった。
<試験例6>
試験例6では、FNIII14がマクロファージの貪食作用に及ぼす影響を確認した。
アミノ酸配列Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)からなるペプチドを、常法により合成した。本明細書において、このペプチドを「FNIII14ペプチド」ということもある。
本試験では、播種した容器をFBSでコートされたカバーガラスとした以外は、試験例1と同様の方法で準備したRaw264.7細胞を用いた。培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)、FNIII14ペプチド(終濃度5μg/mL)、蛍光FITC標識ラテックスビーズ(終濃度50×10 beads/mL)を添加した。37℃で20分間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄した後に、蛍光顕微鏡を用いて解析した。結果を図6に示す。なお、図6における「vehi」は、いずれのペプチドも添加していないサンプルを示す。
図6に示されるように、TNIIIA2ペプチドの添加により増強したマクロファージの貪食作用は、FNIII14ペプチドを添加することで抑制された。
<試験例7>
試験例7では、FNIII14ペプチドを添加した場合の、ABCA1及びABCG1のmRNA発現量を確認した。また、TNIIIA2領域はβ1インテグリン活性化能を示すことが知られていることから、他のβ1インテグリン活性化試薬を用いた場合における、これらのmRNA発現量の確認も行った。
本試験では、播種した容器をFBSでコートされた6ウェルプレートとした以外は、試験例1と同様の方法で準備したRaw264.7細胞を用いた。培地に、TNIIIA2ペプチド(終濃度2.5μg/mL)、FNIII14ペプチド(終濃度5μg/mL)、MgCl(終濃度1mM/L)、抗9EG7抗体(IgG)(終濃度30μg/mL)、又はコントロールIgG(終濃度30μg/mL)を添加した。37℃で3時間インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、トータルRNAの抽出を行った後に、cDNAの合成を行った。その後、合成したcDNAを用いてSYBR(登録商標)Green systemによるリアルタイムPCR増幅を行った。ABCA1の結果を図7Aに、ABCG1の結果を図7Bに示す。なお、図7A及びBにおける「vehi」は、いずれのペプチド又は試薬も添加していないサンプルを示す。また、「*」は、vehiと比較して、統計学的に有意であることを示す。「**」は、コントロールIgGを添加したサンプルと比較して、統計学的に有意であることを示す。「#」は、TNIIIA2ペプチドを添加したサンプルと比較して、統計学的に有意であることを示す。使用したプライマーは試験例5で用いたものと同じである。
図7A及び図7Bに示されるように、TNIIIA2ペプチドの添加により減少したABCA1及びABCG1のmRNA発現量は、FNIII14ペプチドを添加することで回復した。また、MgCl及び抗9EG7抗体の添加により、ABCA1及びABCG1のmRNA発現量が減少することも確認された。
試験例6及び7の結果より、TNIIIA2によるマクロファージ泡沫細胞化の機序と推定される「貪食作用亢進」及び「ABCA1/ABCG1発現抑制」には、β1インテグリンの活性化が関係していること、また、FNIII14ペプチドの添加により、その効果がキャンセルされることがわかった。
<試験例8>
試験例8では、高脂肪食負荷LDLR−KOマウスを用いて、動脈硬化病態の形成にFNIII14が及ぼす影響を確認した。
まず、アミノ酸配列Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Leu−Ile−Val−Tyr−Ala−Thr−Tyr−Ile(配列番号17)からなるペプチドを、常法により合成した。該ペプチドは、FNIII14ペプチドの活性部分のアミノ酸配列をシャッフルして活性を喪失させたものである。本明細書において、このペプチドを「コントロールペプチド」ということもある。
10週齢の雄のLDL−R KOマウスをランダムに3つのグループに分けて、高脂肪食の投与を開始した。12週齢の時点から1日おきに、FNIII14ペプチド(100μg)、コントロールペプチド(100μg)、又は生理食塩水を投与した。20週齢の時点で屠殺し、大動脈を切除した。その後、SudanIVを用いて染色を行った。コントロールペプチドを投与した場合の染色結果を図8Aに、FNIII14ペプチドを投与した場合の染色結果を図8Bに示す。また、Sudan−red陽性面積の割合を図8Cに示す。なお、図8Cにおける「vehicle」は、生理食塩水を投与した群を示す。また、「*」は、コントロールペプチドを投与した群と比較して、統計学的に有意であることを示す。
図8A〜図8Cに示されるように、FNIII14ペプチドを投与した群では、生理食塩水やコントロールペプチドを投与した群と比較して、Sudan−red陽性面積の割合が有意に低下した。このことより、FNIII14ペプチドが動脈硬化病態の形成を妨げることが、動物レベルで確認された。

Claims (3)

  1. 以下の(a)〜(c)のいずれかであるペプチドを有効成分として含有する、マクロファージ泡沫細胞化阻害剤。
    (a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)ペプチド(a)において1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
    (c)ペプチド(a)とのアミノ酸配列同一性が90%以上であり、かつマクロファージ泡沫細胞化阻害作用を有するペプチド。
  2. 請求項1に記載のマクロファージ泡沫細胞化阻害剤を有効成分として含有する、マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患の予防又は治療薬。
  3. マクロファージ泡沫細胞化阻害が有効な疾患がアテローム性動脈硬化関連疾患である、請求項2に記載の予防又は治療薬。
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