以下、本発明の様々な態様をより詳細に説明する。詳細な説明は、特許請求の範囲を限定することを意図していないことを理解するべきである。
用語「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」とは、本明細書で使用するとき、少なくとも2つ、好ましくは3つ、4つ、5つ又は6つの二重結合を含む脂肪酸を意味する。さらに、このような脂肪酸は、好ましくは脂肪酸鎖中に18〜24個の炭素原子を含むことが理解されるべきである。より好ましくは、この用語は、脂肪酸鎖中に20〜24個の炭素原子を有する長鎖PUFA(VLC-PUFA)に関する。特に、本発明の意味における多価不飽和脂肪酸は、DHGLA 20:3(8,11,14)、ARA 20:4(5,8,11,14)、ETA 20:4(8,11,14,17)、EPA 20:5(5,8,11,14,17)、DPA 22:5(4,7,10,13,16)、DPA n-3(7,10,13,16,19)、DHA 22:6(4,7,10,13,16,19)、より好ましくは、エイコサペンタエン酸(EPA)20:5(5,8,11,14,17)及びドコサヘキサエン酸(DHA)22:6(4,7,10,13,16,19)である。したがって、最も好ましくは、本発明によって提供される方法は、EPA及び/又はDHAの製造に関することが理解される。さらに、合成中に生じるVLC-PUFAの中間体もまた包含される。そのような中間体は、好ましくは、本発明のポリペプチドのデサチュラーゼ、ケト-アシル-CoA-シンターゼ、ケト-アシル-CoA-レダクターゼ、デヒドラターゼ及びエノイル-CoA-レダクターゼ活性によって基質から形成される。好ましくは、基質は、LA18:2(9,12)、GLA18:3(6,9,12)、DHGLA20:3(8,11,14)、ARA20:4(5,8,11,14)、エイコサジエン酸20:2(11,14)、エイコサテトラエン酸20:4(8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸20:5(5,8,11,14,17)を包含する。多価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸の体系的な名称、本発明に従って使用されるそれらの対応する簡単な名称及び略記を表18(及び表181)に示す。本発明のトランスジェニック植物は、野生型のアブラナ属植物において天然に存在しない多数のVLC-PUFA及び中間体を生成する。これらのVLC-PUFA及び中間体は様々な生物に存在し得るが、野生型のアブラナ属植物には存在しない。これらの脂肪酸は、18:2n-9、GLA、SDA、20:2n-9、20:3n-9、20:3n-6、20:4n-6、22:2n-6、22:5n-6、22:4n-3、22:5n-3及び22:6n-3を含む。
用語「栽培すること」とは、本明細書で使用するとき、細胞が多価不飽和脂肪酸、すなわち上記で言及したPUFA及び/又はVLC-PUFAを生成することを可能にする培養条件下でトランスジェニック植物を維持及び成長させることを意味する。これは、本発明のポリヌクレオチドが、トランスジェニック植物中で発現されて、その結果、デサチュラーゼ、エロンガーゼ、さらにまたケトアシル-CoA-シンターゼ、ケト-アシル-CoA-レダクターゼ、デヒドラターゼ及びエノイル-CoA-レダクターゼ活性が存在することを意味する。宿主細胞を培養するための適切な培養条件を以下により詳細に記載する。
用語「得ること」とは、本明細書で使用するとき、本発明の宿主細胞及び培養培地又は植物若しくは植物部分、特に種子を含む細胞培養物の提供、並びに精製された又は部分的に精製されたそれらの調製物であって、膜リン脂質又はトリアシルグリセリドエステルとして、遊離又はCoA結合形態で多価不飽和脂肪酸、好ましくはARA、EPA、DHAの調製物の提供を包含する。より好ましくは、PUFA及びVLC-PUFAは、例えば、油の形態で、トリグリセリドエステルとして得られるべきである。精製技術に関するさらなる詳細は、本明細書の他の箇所で見出すことができる。
本発明による用語「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸又はリボ核酸を意味する。特に明記しない限り、本明細書における「ポリヌクレオチド」は、DNAポリヌクレオチドの一本鎖又は二本鎖DNAポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドの長さは、多数の塩基対(「bp」)又はヌクレオチド(「nt」)の仕様によって本発明に従って指定される。本発明によれば、両方の仕様は、それぞれの核酸が一本鎖又は二本鎖核酸であるか否かにかかわらず、互換的に使用される。また、ポリヌクレオチドはそれらのそれぞれのヌクレオチド配列によって定義されるため、ヌクレオチド/ポリヌクレオチド及びヌクレオチド配列/ポリヌクレオチド配列という用語は互換的に使用され、したがって、核酸配列への言及はまた、核酸ストレッチを含む又はそれからなる核酸を定義することを意味し、その配列は核酸配列と同一である。
特に、デサチュラーゼ遺伝子又はエロンガーゼ遺伝子に関する限り、本発明に従って使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、デサチュラーゼ活性又はエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、植物中での発現に基づくデサチュラーゼ活性又はエロンガーゼ活性を有する本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、PUFAの量、及び、特にVLC-PUFAの量を、例えば種子油又は植物全体若しくはその一部を用いて増加させることができる。増加が統計的に有意であるかどうかは、例えば、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%の機密性レベルを有するスチューデントt検定などの当該技術分野において周知である統計学的試験によって決定することができる。より好ましくは、この増加は、野生型対照(好ましくは重量)と比較して、特に種子、種子油、抽出された種子油、粗製油、又は野生型対照からの精製油と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%又は少なくとも30%のVLC-PUFAを含有するトリグリセリドの量の増加である。好ましくは、前述のVLC-PUFAは、C20、C22又はC24脂肪酸体、より好ましくはEPA又はDHAを有する多価不飽和脂肪酸である。油試料の脂質分析を添付の実施例に示す。
実施例のセクションの表130に示されるようなデサチュラーゼ又はエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする好ましいポリヌクレオチド(核酸配列及びポリペプチド配列の配列番号は最後の2つの列に示される)。
本発明の植物において、特に本発明の植物から得られた又は得ることができる油において、ある種の脂肪の含量は、対照植物から得られた又は得ることができる油と比較して減少する、又は特に増加する。特に、種子、種子油、粗製油、又は対照植物から精製油と比較して、減少又は増加した。適切な対照植物の選択は、実験設定の通常部分であり、対応する野生型植物又は本明細書で言及されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを含まない対応する植物を含み得る。対照植物は、典型的には、同じ植物種又は評価されるべき植物と同じ品種のものである。対照植物はまた、評価されるべき植物の無接合体であり得る。無接合体(又はヌル対照植物)は、分離によって導入遺伝子を欠失している個体である。さらに、対照植物は、本発明の植物の成長条件と同じ成長条件又は本質的に同じ成長条件下で、すなわち本発明の植物の近傍で、及び同時に成長させる。「対照植物」とは、本明細書で使用するとき、好ましくは、植物全体だけでなく、種子及び種子部分を含む植物部分も意味する。また、対照は、対照植物からの油であり得る。
好ましくは、対照植物は、同質遺伝子対照植物である。したがって、例えば、対照油又は種子は、同質遺伝子対照植物からである。
多価不飽和C20及び/又はC22脂肪酸分子を有する脂肪酸エステルは、油又は脂質の形態で単離され、例えば、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、脂質、糖脂質、例えば糖スフィンゴ脂質、リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール又はジホスファチジルグリセロール、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリド又は脂肪酸エステルの製造に使用された生物由来の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ若しくは6つの、好ましくは5つ若しくは6つの二重結合を有する多価不飽和脂肪酸を含む、他の脂肪酸エステル、例えばアセチルコエンザイムAエステルなどの化合物の形態で単離され得る。好ましくは、それらは、それらのジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドの形態で、及び/又はホスファチジルコリンの形態で、特に好ましくはトリアシルグリセリドの形態で単離される。これらのエステルに加えて、多価不飽和脂肪酸はまた、非ヒトのトランスジェニック生物又は宿主細胞中に、好ましくは植物中に、遊離脂肪酸として又は他の化合物に結合して存在する。概して、上記の種々の化合物(脂肪酸エステル及び遊離脂肪酸)は生物中に存在し、80〜90重量%のトリグリセリド、2〜5重量%のジグリセリド、5〜10重量%のモノグリセリド、1〜5重量%の遊離脂肪酸、2〜8重量%のリン脂質のおよその分布であり、種々の化合物の合計は100重量%である。本発明の方法において、生成されたVLC-PUFAは、上記で言及された非ヒトのトランスジェニック生物又は宿主細胞における総脂肪酸を基準にして、DHAについては、少なくとも5.5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、有利には少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも9重量%、特に好ましくは少なくとも10.5重量%、非常に特に好ましくは少なくとも20重量%の含量で生成され、EPAについては、少なくとも9.5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、有利には少なくとも12重量%、好ましくは少なくとも13重量%、特に好ましくは少なくとも14.5重量%、非常に特に好ましくは少なくとも30重量%の含量で生成される。脂肪酸は、好ましくは、結合した形態で生成される。本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの助けにより、これらの不飽和脂肪酸が、好ましくは生成されるトリグリセリドのsn1、sn2及び/又はsn3位置に配置されることが可能である。
本発明の方法又は製造方法において、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドは、脂肪酸又は脂質生合成の酵素をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドとともに使用され得る。好ましい酵素は、この文脈において、上述されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼであるが、デルタ-8-デサチュラーゼ及び/又はデルタ-9-エロンガーゼ活性を有する酵素をコードするポリヌクレオチドでもある。全てのこれらの酵素は、本発明の方法の最終生成物、例えばEPA又はDHAが出発化合物であるオレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)又はリノレン酸(C18:3)から生成されるここのステップを反映する。概して、これらの化合物は、本質的に純粋な生成物として生成されない。むしろ、少量の前駆体がまた最終生成物中に存在してもよい。例えば、リノール酸とリノレン酸の両方が出発宿主細胞、生物又は出発植物に存在する場合、EPA又はDHAなどの最終生成物は混合物として存在する。前駆体は、有利には、対象とする最終生成物に量に基づいて、20重量%超える量ではなく、好ましくは15重量%を超える量ではなく、より好ましくは10重量%を超える量ではなく、最も好ましくは5重量%を超える量ではない。あるいは、例えば、適切には、3つ全てのオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸が出発宿主細胞、生物又は出発植物に存在する場合、EPA又はDHAなどの最終生成物は混合物として存在する。前駆体は、有利には、対象とする最終生成物の量に基づいて、60重量%を超える量ではなく、好ましくは40重量%を超える量ではなく、より好ましくは20重量%を超える量ではなく、最も好ましくは10重量%を超える量ではない。好都合には、EPAのみ又はより好ましくはDHAのみは、結合して又は遊離酸として、宿主細胞中で本発明の方法において最終生成物(複数可)として生成される。化合物EPA及びDHAが同時に生成される場合、それらは、好ましくは少なくとも1:2(DHA:EPA)の比で生成され、より好ましくはその比は少なくとも1:5、最も好ましくは1:8である。本発明によって生成される脂肪酸エステル又は脂肪酸混合物は、各々の場合において100%及び生物の総脂肪酸含量に基づいて、好ましくは、6〜15%のパルミチン酸、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のワクセン酸、0.1〜1%のアラキジン酸%、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%の一価不飽和脂肪酸、及び60〜85%の多価不飽和脂肪酸を含む。好ましい長鎖多価不飽和脂肪酸としてのDHAは、総脂肪酸含量を基準にして、脂肪酸エステル又は脂肪酸混合物中に、好ましくは少なくとも0.1;0.2;0.3;0.4;0.5;0.6;0.7;0.8;0.9又は1%の濃度で存在する。
化学的に純粋なVLC-PUFA又は脂肪酸組成物はまた、本明細書に記載される方法によって合成することができる。この目的のために、脂肪酸又は脂肪酸組成物は、抽出、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー又はこれらの方法の組合せによって、対応する試料から単離される。これらの化学的に純粋な脂肪酸又は脂肪酸組成物は、食品産業分野、化粧品分野、及び特に薬理学的産業分野における用途に有利である。
用語「デサチュラーゼ」は、異なる長さ及び数の不飽和炭素原子二重結合を有する脂肪酸の不飽和化を触媒する全ての酵素活性及び酵素を包含する。具体的には、これには、4番目及び5番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ4(d4)-デサチュラーゼ;5番目及び6番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ5(d5)-デサチュラーゼ;6番目及び7番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ6(d6)-デサチュラーゼ;8番目及び9番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ8(d8)-デサチュラーゼ;9番目及び10番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ9(d9)-デサチュラーゼ;12番目及び13番目の炭素原子の脱水素化を触媒するデルタ12(d12)-デサチュラーゼ;15番目及び16番目の炭素原子の脱水素を触媒するデルタ15(d15)-デサチュラーゼが含まれる。オメガ3(o3)-デサチュラーゼは、好ましくは、n-3及びn-2の炭素原子の脱水素化を触媒する。
用語「エロンガーゼ」は、異なる長さ及び数の不飽和炭素原子二重結合を有する脂肪酸の伸長を触媒する全ての酵素活性及び酵素を包含する。特に、用語「エロンガーゼ」とは、本明細書で使用するとき、脂肪酸の炭素鎖に、好ましくは脂肪酸の1位、5位、6位、9位、12位及び/又は15位に、特に脂肪酸の5位、6位、9位、12位及び/又は15位に、2つの炭素分子を導入するエロンガーゼの活性を意味する。
さらに、用語「エロンガーゼ」とは、本明細書で使用するとき、好ましくは、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の両方のカルボキシル末端(すなわち、1位)に2つの炭素分子を導入する、エロンガーゼの活性を意味する。
本発明の根底にある研究において、VLC-PUFAの生成のために優れたデサチュラーゼ活性及びエロンガーゼ触媒活性を有する酵素が提供されている。
実施例のセクションの表11及び130は、本発明において使用されるべき好ましいデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードする好ましいポリヌクレオチドを列挙する。したがって、本発明の文脈において使用することができるデサチュラーゼ又はエロンガーゼのポリヌクレオチドをそれぞれ表11及び表130に示す。これらのデサチュラーゼ及びエロンガーゼの配列番号は、表130の最後の2つの列(核酸配列及びアミノ酸配列)に示される。本明細書の他の箇所に記載されるように、前記ポリヌクレオチドの改変体もまた使用することができる。
デルタ-6-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、国際公開第2001/059128号、同第2004/087902号及び同第2005/012316号に記載され、前記文献はヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のこの酵素を記載し、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-5-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、国際公開第2002/026946号及び同第2003/093482号に記載され、前記文献はスラウストキトリウム属の種由来のこの酵素を記載し、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-6-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、国際公開第2005/012316号、同第2005/083093号、同第2006/008099号及び同第2006/069710号に記載され、前記文献はオストレオコッカス・タウリ由来のこの酵素を記載し、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態において、デルタ-6-デサチュラーゼは、CoA(コエンザイムA)依存性デルタ-6デサチュラーゼである。このような酵素は、当該技術分野において周知である。例えば、実施例のセクションにおいて使用されるオストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6-デサチュラーゼは、コエンザイムA依存性デルタ-6-デサチュラーゼである。デルタ-12-デサチュラーゼと組み合わせたCoA(コエンザイムA)依存性デルタ-6-デサチュラーゼの使用は、対照と比較して、種子中の、特に種子油中の18:1n-9の含量を減少させることができる。デルタ-6-エロンガーゼと組み合わせたCoA依存性デルタ-6-デサチュラーゼの使用は、デルタ-6-エロンガーゼとの組み合わせたリン脂質依存性デルタ-6-デサチュラーゼの使用と比較して、種子中の、特に種子油中の18:3n-6の含量を減少させることができる。
デルタ-6-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、国際公開第2005/012316号、同第2005/007845号及び同第2006/069710号に記載され、前記文献はタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来のこの酵素を記載し、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-12-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2006/100241号に記載され、前記文献はフィトフトラ・ソジャ由来のこの酵素を記載し、その全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-4-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2004/090123号に記載され、前記文献はユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)由来のこの酵素を記載し、その全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-5-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば。国際公開第2005/012316号及び同第2007/096387号に記載され、前記文献はオストレオコッカス・タウリ由来のこの酵素を記載し、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
オメガ3-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2008/022963号に記載され、前記文献はピシウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来この酵素を記載し、その全体が本明細書に組み込まれる。
オメガ3-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2005/012316号及び同第2005/083053号に記載され、前記文献はフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)由来のこの酵素を記載し、これらの文献はそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
デルタ-4-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2002/026946号に記載され、前記文献はスラウストキトリウム属の種由来の酵素を記載し、その全体が本明細書に組み込まれる。
パブロバ・ルセリ(Pavlova lutheri)由来のデルタ-4デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、国際公開第2003/078639号及び同第2005/007845号に記載されている。これらの文献は、特に、文献がデルタ-4デサチュラーゼ「PlDES1」、並びにそれぞれ国際公開第2003/078639号の図3a〜3d及び同第2005/007845号の図3a、3bに関連している限り、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
上記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書において「標的遺伝子」又は「目的とする核酸」とも呼ばれる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知である。前記ポリヌクレオチドの配列は、実施例のセクションに開示されているT-DNAの配列中に見出すことができる(例えば、配列番号3に示される配列を有するVC-LTM593-1qczの配列を参照されたい)。好ましいポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の配列番号はまた、実施例のセクションの表130に示される。
本明細書において本発明と関連して言及されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼの好ましいポリヌクレオチドの配列を以下に示す。本明細書の他の箇所に記載されるように、ポリヌクレオチドの改変体もまた使用することができる。本発明に従って使用されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、特定の生物に由来し得る。好ましくは、生物由来(例えば、ヒメツリガネゴケ由来)のポリヌクレオチドは、コドン最適化されている。特に、ポリヌクレオチドは、植物における発現のためにコドン最適化されていなければならない。
用語「コドン最適化された」は、当業者によって十分に理解される。好ましくは、コドン最適化されたポリヌクレオチドは、配列が由来する生物中の核酸配列と比較して修飾されたポリヌクレオチドであり、それは1つ以上の植物種におけるコドン使用頻度に適合される。典型的には、ポリヌクレオチドは、特にコード領域は、少なくとも1つ、又は1を超えるコドンを、所与の生物(特に植物)の遺伝子においてより頻繁に使用される1つ以上のコドンで置換することによって、その生物(特に植物)における発現に適合される。本発明によれば、「生物由来」(又は「生物に由来する」)の特定のポリヌクレオチドのコドン最適化改変体は、好ましくは前記生物に由来するポリヌクレオチドであると考えられる。
好ましくは、コドン最適化ポリヌクレオチドは、非コドン最適化ポリヌクレオチド(すなわち、野生型配列)によってコードされるポリペプチドと同一の配列を有する同一のポリペプチドをコードする。本発明の根底にある研究において、(デサチュラーゼに関して)コドン最適化ポリヌクレオチドを使用した。コドン最適化ポリヌクレオチドは、配列番号3に示される配列を有するベクターのT-DNAによって構成される(表130を参照)。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-6-エロンガーゼは、ヒメツリガネゴケに由来する。前記デルタ-6-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号258に示す。好ましくは、前記デルタ-6-エロンガーゼは、ヒメツリガネゴケ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-6-エロンガーゼは、その(すなわち前記ポリヌクレオチドの)コドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド1267〜2139に示される配列を有するポリヌクレオチドである。このポリヌクレオチドの配列もまた、配列番号257に示される。(したがって、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号257に示す配列を有する)。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-5-デサチュラーゼは、スラウストキトリウム属の種由来である。スラウストキトリウム属の種は、本発明の文脈において、好ましくはスラウストキトリウム属の種ATCC21685を意味する。前記デルタ-5-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号260に示す。好ましくは、前記デルタ-5-デサチュラーゼは、スラウストキトリウム属の種に由来するポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-5-デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、スラウストキトリウム属の種に由来するデルタ-5-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド3892〜5211に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列は、配列番号259に示される。本発明によれば、スラウストキトリウム属の種に由来するデルタ-5-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチド(すなわち、2つ以上のポリヌクレオチドのコピー)を発現することが想定される(好ましくは、2つのポリヌクレオチド)。したがって、本発明のT-DNA、構築物、植物、種子などは、スラウストキトリウム属の種に由来するデルタ-5-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの2つの(又はそれを超える)のコピーを含む。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-6-デサチュラーゼは、オストレオコッカス・タウリ由来である。前記デルタ-6デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号262に示す。好ましくは、前記デルタ-6デサチュラーゼは、オストレオコッカス・タウリ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、上記デルタ-6-デサチュラーゼは、上記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によりコードされる。好ましくは、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド7802〜9172に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列は、配列番号261に示される。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-6-エロンガーゼは、タラシオシラ・シュードナナに由来する。前記デルタ-6-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号264に示す。好ましくは、前記デルタ-6-エロンガーゼは、タラシオシラ・シュードナナ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-6-エロンガーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によりコードされる。好ましくは、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド12099〜12917に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号263に示す。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-12-エロンガーゼは、フィトフトラ・ソジャ由来である。前記デルタ-12-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号266に示す。好ましくは、前記デルタ-12-エロンガーゼは、フィトフトラ・ソジャ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-12-エロンガーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド14589〜15785に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号265に示す。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-5-エロンガーゼは、オストレオコッカス・タウリ由来である。前記デルタ-5-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号276に示す。好ましくは、前記デルタ-5-エロンガーゼは、オストレオコッカス・タウリ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-5-エロンガーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド38388〜39290に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号275に示す。
好ましくは、本発明に従って使用されるオメガ3-デサチュラーゼは、ピレウス・イレグラレ由来である。前記オメガ3-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号268に示す。好ましくは、前記オメガ3-デサチュラーゼは、ピレウス・イレグラレ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記オメガ3デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、ピレウス・イレグラレ由来のオメガ3-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド17690〜18781に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号267に示す。本発明によれば、ピレウス・イレグラレに由来するオメガ3-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチド(すなわち、2つ以上のポリヌクレオチドのコピー)を発現することが想定される(好ましくは、2つのポリヌクレオチド)。したがって、本発明のT-DNA、構築物、植物、種子などは、ピレウス・イレグラレ由来のオメガ3-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの2つの(又はそれを超える)コピーを含む。
好ましくは、本発明に従って使用されるオメガ3-デサチュラーゼは、フィトフトラ・インフェスタンス由来である。前記オメガ3-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号270に示す。好ましくは、前記オメガ3-デサチュラーゼは、フィトフトラ・インフェスタンス由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記オメガ3デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、フィトフトラ・インフェスタンスに由来するオメガ3-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド20441〜21526に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号269に示す。
本発明によれば、植物においてオメガ3-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチドを発現させることが特に想定される。好ましくは、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びピシウム・イレグラレ由来のオメガ3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に、2つのポリヌクレオチド、すなわち2コピーのポリヌクレオチド)が発現される。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-4-デサチュラーゼは、スラウストキトリウム属の種に由来する。前記デルタ-4-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号272に示す。好ましくは、前記デルタ-4-デサチュラーゼは、スラウストキトリウム属の種に由来するポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-4-デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、スラウストキトリウム属の種に由来するデルタ-4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド26384〜27943に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号271に示す。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-4-デサチュラーゼは、パブロバ・ルセリに由来する。前記デルタ-4-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号274に示す。好ましくは、前記デルタ-4-デサチュラーゼは、パブロバ・ルセリ由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-4-デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、パブロバ・ルセリ由来のデルタ-4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド34360〜35697に示される配列を有するポリヌクレオチドである。また、このポリヌクレオチドの配列を配列番号273に示す。
本発明によれば、植物において好ましくは非同一デルタ-4-デサチュラーゼをコードする2つの同一でないポリヌクレオチドを発現させることがさらに想定される。好ましくは、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びパブロバ・ルセリ由来のデルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが発現される。
好ましくは、本発明に従って使用されるデルタ-15-デサチュラーゼは、コクリオボルス・ヘテロストロフス(Cochliobolus heterostrophus)に由来する。好ましくは、前記デルタ-15デサチュラーゼは、コクリオボルス・ヘテロストロフス由来のポリヌクレオチドによってコードされ、特に、前記デルタ-15デサチュラーゼは、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化改変体によってコードされる。好ましくは、コクリオボルス・ヘテロストロフス由来のデルタ-15デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号9のヌクレオチド2151〜3654に示される配列を有するポリヌクレオチドである。
上記のようにデルタ-6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、ヒメツリガネゴケに由来し得る。さらに、デルタ-6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、タラシオシラ・シュードナナに由来し得る。特に、本発明の文脈において、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及び植物中のタラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現することが想定される。したがって、T-DNA、植物、種子などは前記ポリヌクレオチドを含む。
上記で特定されるデサチュラーゼ又はエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、オストレオコッカス属、スラウストキトリウム属、ユーグレナ属、タラシオシラ属、フィトフトラ属、ピチウム属、コクリオボラス属、フィスコミトレラ属の生物から本発明に従って得ることができる又は得られる。しかしながら、オルソログ、パラログ又は他のホモログは、他の種から同定され得る。好ましくは、それらは、植物、例えば、藻類、例えば、イソクリシス属(Isochrysis)、マントニエラ属(Mantoniella)、クリプテコジニウム属(Crypthecodinium)、藻類/珪藻類、例えば、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、苔類、例えば、セラトドン属(Ceratodon)、又は高等植物、例えば、サクラソウ科(Primulaceae)、例えば、アレウリティア属(Aleuritia)、カレンデュラ・ステラータ(Calendula stellata)、オステオスペルマム・スピネセンス(Osteospermum spinescens)又はオステオスペルマム・ヒオセロイデス(Osteospermum hyoseroides)、微生物、例えば、菌類、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)、エントモフトラ属(Entomophthora)、ムコル属(Mucor)、又はモルチエレラ属(Mortierella)、細菌、例えば、シェワネラ属(Shewanella)、酵母、又は動物から得られる。好ましい動物は、線虫、例えば、セノルハブディティス属(Caenorhabditis)、昆虫又は脊椎動物である。脊椎動物の中で、核酸分子は、好ましくは、ユーテレオストミ(Euteleostomi)、アクチノプテリギ(Actinopterygii)、ネオプテリギ(Neopterygii)、テレオステイ(Teleostei)、ユーテレオステイ(Euteleostei)、プロタカントプテリギ(Protacanthopterygii)、サルモニホルメス(Salmoniformes)、サルモニダ(Salmonidae)若しくはオンコリンクス(Oncorhynchus)、より好ましくは、サルモニホルメス目(Salmoniformes)、最も好ましくは、サルモニダ科(Salmonidae)、例えば、サルモ属(Salmo)、例えば、以下の属及び種オンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss)、トラッタ・トラッタ(Trutta trutta)若しくはサルモ・トラッタ・ファリオ(Salmo trutta fario)に由来するものであってよい。さらに、核酸分子は、タラシオシラ属(Thallasiosira)又はクリプテコジニウム属(Crypthecodinium)などの珪藻類から得ることができる。
したがって、用語「ポリヌクレオチド」とは、本発明に従って使用するとき、本発明のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ又は他のホモログを表す前述の特定のポリヌクレオチドの改変体又は誘導体をさらに包含する。さらに、本発明のポリヌクレオチドの改変体又は誘導体はまた、人工的に生成された突然変異タンパク質を含む。前記突然変異タンパク質は、例えば、突然変異誘発技術によって生成され、改良された若しくは変更された基質特異性を示す酵素、又はコドン最適化ポリヌクレオチドを含む。
本発明による核酸改変体又は誘導体は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/又は欠失によって所与の参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである。参照ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする場合、このタンパク質の機能は、改変体又は誘導体ポリヌクレオチドにおいて保存され、その結果、改変体核酸配列は、上記で特定されるデサチュラーゼ又はエロンガーゼ活性を有するポリペプチドを依然としてコードする。改変体又は誘導体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上記の特異的核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は、当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中でのハイブリダイゼーション条件、続いて、50〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄ステップである。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が、核酸のタイプに応じて、例えば、有機溶媒が存在する場合、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることを知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、温度は、核酸のタイプに応じて、0.1〜5×SSC(pH 7.2)の濃度を有する水性緩衝液中で42℃〜58℃の範囲である。有機溶媒が上記緩衝液中に存在する場合、例えば、50%ホルムアミドの場合、標準的な条件下での温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSC及び20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSC及び30℃〜55℃、好ましくは45℃〜55℃である。上記のハイブリダイゼーション温度は、例えば、ホルムアミドの不存在下で、長さが約100bp(=塩基対)であり、G+C含量が50%である核酸について決定される。当業者は、上記の教科書、又は以下の教科書:Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxfordなどの教科書を参照することにより必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を知っている。一実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、1×SSC中65℃、又は1×SSC及び50%ホルムアミド中42℃でハイブリダイゼーションした後、0.2×SSC中で65℃で洗浄することを包含する。別の実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、1×SSC中65℃、又は1×SSC及び50%ホルムアミド中42℃でハイブリダイゼーションした後、0.1×SSC中65℃で洗浄することを包含する。
あるいは、ポリヌクレオチド改変体は、DNAの混合されたオリゴヌクレオチドプライマーに基づく増幅、すなわち、本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する縮重プライマーを使用するなどのPCRに基づく技術によって得ることができる。本発明のポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列又はポリペプチドのアミノ酸配列の配列比較によって同定することができる。PCRプライマーとして適切なオリゴヌクレオチド並びに適切なPCR条件は、添付の実施例に記載されている。鋳型として、細菌、菌類、植物若しくは動物由来のDNA又はcDNAを使用することができる。さらに、改変体は、実施例の対応する表に示されるT-DNA配列のいずれか1つに示される核酸コード配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。当然に、改変体は、それぞれの酵素の機能を保持しなければならない。例えば、デルタ-4-デサチュラーゼの改変体は、デルタ-4-デサチュラーゼ活性を有する。
同一性%値は、好ましくは、アミノ酸又は核酸配列の領域全体にわたって計算される。様々な配列を比較するための種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。好ましい実施形態においては、2つのアミノ酸配列間の同一性%は、Needleman及びWunschアルゴリズム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. (48):444-453)を使用して決定され、このアルゴリズムは、EMBOSSソフトウエアパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice, P., Longden, I., and Bleasby, A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のニードルプログラム中に組み込まれていて、BLOSUM62スコアリングマトリックス、並びに10のギャップ開始ペナルティ10、及び0.5のギャップ伸長ペナルティを使用する。EMBOSSパッケージのローカルインストール並びにウエブサービスへのリンクの手引きはhttp://emboss.sourceforge.netに見出すことができる。ニードルプログラムを使用して2つのアミノ酸配列を並べるために使用するパラメータの好ましい非制限的な例は、デフォルトパラメータであり、EBLOSUM62スコアリングマトリックス、10のギャップ開始ペナルティ及び0.5のギャップ伸長ペナルティ0.5を含む。さらに別の好ましい実施形態においては、2つのヌクレオチド配列間の同一性%は、EMBOSSソフトウエアパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice, P., Longden, I., and Bleasby, A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のニードルプログラムを使用して決定され、EDNAFULLスコアリングマトリックス、並びに10のギャップ開始ペナルティ、及び0.5のギャップ伸長ペナルティ0.5を使用する。ニードルプログラムを使用して2つの核酸配列を並べるために、同時に使用するパラメータの好ましい非制限的な例は、デフォルトパラメータであり、EDNAFULLスコアリングマトリックス、10のギャップ開始ペナルティ及び0.5のギャップ伸長ペナルティ0.5を含む。さらに、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は「クエリー配列」として使用され、公共データベースについて検索を行う、例えば、他のファミリーメンバー又は関係配列を同定することができる。このような検索は、Altschulら(Altschul 1990, J. Mol. Biol. 215:403-10)のBLASTシリーズのプログラム(バージョン2.2)を使用して行うことができる。本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼの核酸配列をクエリー配列として使用するBLASTは、BLASTn、BLASTx又はtBLASTxプログラムによりデフォルトパラメータを使用して、本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼ配列に相同性であるヌクレオチド配列(BLASTn、tBLASTx)又はアミノ酸配列(BLASTx)のいずれかを得ることができる。本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼのタンパク質配列をクエリー配列として使用するBLASTをは、BLASTp又はtBLASTnプログラムによりデフォルトパラメータを使って、本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼ配列と相同性であるアミノ酸配列(BLASTp)又は核酸配列(tBLASTn)のいずれかを得ることができる。比較の目的ためのギャップ付きアラインメントを得るために、デフォルトパラメータを使用するギャップ付きBLASTは、Altschulら(Altschul 1997, Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)に記載されるように利用することができる。
一実施形態において、本明細書で言及されるデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドの改変体は、好ましくは、
a)配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、又は275に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列と少なくとも70%、80%、又は90%同一である核酸配列、
b)配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、又は276に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、80%、又は90%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列、及び
c)ストリンジェントな条件下で、i)配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、若しくは257に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列、又はii)配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、若しくは276に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、にハイブリダイズすることができる核酸配列
からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドである。
上述されるように、前記核酸によってコードされるポリペプチドは、それぞれの酵素の機能を保持していなければならない。例えば、配列番号270に示される配列を有するポリペプチドは、オメガ-3-デサチュラーゼ活性を有する。したがって、このポリペプチドの改変体は、オメガ-3-デサチュラーゼ活性も有する。本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼの機能を実施例22において分析する。
したがって、本明細書で言及されるデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、
a)配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、又は275に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列、
b)配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、又は276に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
c)配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、又は275に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列と少なくとも70%、80%、又は90%同一である核酸配列、
d)配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、又は276に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、80%、又は90%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列、及び
e)ストリンジェントな条件下で、i)配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、若しくは257に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列、又はii)配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、若しくは276に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、にハイブリダイズすることができる核酸配列
からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドである。
事象LBFLFKは、2つのT-DNA挿入を含み、挿入は、LBFLFK遺伝子座1及びLBFLFK遺伝子座2と称される。この挿入を含む植物は、配列番号3に示される配列を有するT-DNAベクターによる形質転換によって生成された。植物に存在する挿入の配列決定は、各遺伝子座がコード配列中に点突然変異を含み、単一のアミノ酸交換を生じさせることを明らかにした。突然変異は、遺伝子の機能に影響しなかった。遺伝子座1は、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼ(d12Des(Ps))のコード配列中に点突然変異を有する。得られたポリヌクレオチドは、配列番号324に示される配列を有する。前記ポリヌクレオチドは、配列番号325に示される配列を有するポリペプチドをコードする。遺伝子座2は、パブロバ・ルセリのデルタ-4デサチュラーゼ(d4Des(Pl))のコード配列中に点突然変異を有する。得られたポリヌクレオチドは、配列番号326に示される配列を有する。前記ポリヌクレオチドは、配列番号327に示される配列を有するポリペプチドをコードする。前記ポリヌクレオチドは、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの改変体、及びパブロバ・ルセリ由来のデルタ-4デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの改変体とみなされる。ポリヌクレオチドは改変体とみなされ、本発明の文脈で使用することができる。
任意の核酸の断片、特に上記の核酸配列のいずれかの断片、を含むポリヌクレオチドはまた、本発明のポリヌクレオチドとして包含される。断片は、上記で特定されるデサチュラーゼ活性又はエロンガーゼ活性を依然として有するポリペプチドをコードする。したがって、ポリペプチドは、前記生物学的活性を付与する本発明のポリペプチドのドメインを含む又はそれからなることができる。本明細書で意味する断片は、好ましくは、上記の核酸配列のいずれか1つの少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個若しくは少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含む、又は上記のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも80個、少なくとも100個若しくは少なくとも150個の連続したアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
上記に言及されている改変体ポリヌクレオチド又は断片は、好ましくは、添付の実施例に示されるT-DNA(特に、表11及び130に列挙されたデサチュラーゼ又はエロンガーゼ)のいずれかに含まれるポリペプチドのいずれかによって示されるデサチュラーゼ活性又はエロンガーゼ活性の有意な程度、好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%でデサチュラーゼ活性又はエロンガーゼ活性を保持しているポリペプチドをコードする。
実施例において詳細に記載されている本発明に有益なさらなる酵素は、アリルトランスフェラーゼ及びトランスアシラーゼ(国際公開第2011/161093A1号参照)である。3つの異なる酵素活性を有するアシルトランスフェラーゼの1つの群は、小胞体(ER)の膜系の細胞質側に位置する「ケネディ経路」の酵素である。ミクロソーム画分中のER結合アシルトランスフェラーゼは、活性型の脂肪酸としてアシル-CoAを使用する。グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)は、グリセロール-3-リン酸のsn-1位置にアシル基の取り込みを触媒する。リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)としても知られている1-アシルグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、リゾホスファチジン酸(LPA)のsn-2位置にアシル基の取り込みを触媒する。ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)によるホスファチジン酸の脱リン酸化後、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)は、ジアシルグリセロールのsn-3位置にアシル基の取り込みを触媒する。前記ケネディ経路の酵素を除いて、TAG生合成に直接関与するさらなる酵素は、膜脂質のsn-2位置からアシル基をジアシルグリセロールのsn-3位置に転移させる酵素であるリン脂質ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)、及び1つのジアシルグリセロール分子のsn-2位置から別のジアシルグリセロール分子のsn-3位置にアシル基を転移させる酵素であるジアシルグリセロールジアシルグリセロールトランスアシラーゼ(DDAT)である。リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ(LPLAT)は、アシル-CoAから膜脂質に活性化されたアシル基を取り込むことができ、場合によっては逆反応も触媒することができるアシルトランスフェラーゼの類を表す。より具体的には、LPLATは、リゾホスファチジルエタノールアミンアシルトランスフェラーゼ(LPEAT)及びリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)としての活性を有することができる。脂質からトリアシルグリセリドへのアシル基の転移に関与し得る。文献の国際公開第98/54302号及び同第WO98/54303号は、ヒトLPAAT、並びに疾患の治療のため、診断として、及びヒトLPAATの調節因子を同定するために、その潜在的使用を開示する。さらに、広範囲の酵素機能を有する様々なアシルトランスフェラーゼは、文献の国際公開第98/55632号、同第98/55631号、同第94/13814号、同第96/24674号、同第95/27791号、同第00/18889号、同第00/18889号、同第93/10241号、Akermoun 2000, Biochemical Society Transactions 28: 713-715、Tumaney 1999, Biochimica et Biophysica Acta 1439: 47-56、Fraser 2000, Biochemical Society Transactions 28: 715-7718、Stymne 1984, Biochem. J. 223: 305-314、Yamashita 2001, Journal of Biological Chemistry 276: 26745-26752、及び国際公開第00/18889に記載されている。
本発明に関連して記載されるデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを発現させるために、ポリヌクレオチドは、発現制御配列に作動可能に連結される。好ましくは、発現制御配列は、それに作動可能に連結されたポリヌクレオチドに関して異種である。各ポリヌクレオチドは、発現制御配列に作動可能に連結されることが理解されるべきである。
用語「発現制御配列」とは、本明細書で使用するとき、目的とする核酸配列の転写、本ケースでは上記の核酸配列の転写を支配する、すなわち開始し及び制御することができる核酸配列を意味する。このような配列は、通常、プロモーター配列、又はプロモーター配列とエンハンサー配列の組合せを含む又はそれからなる。ポリヌクレオチドの発現は、核酸分子の転写、好ましくは、翻訳可能なmRNA中への転写を含む。さらなる調節エレメントは転写並びに翻訳エンハンサーを含んでもよい。追加の調節エレメントは、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサーを含んでもよい。次のプロモーター及び発現制御配列は、好ましくは、本発明による発現ベクターに用いることができる。cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PR又はλ-PLプロモーターは、好ましくは、グラム陰性菌に用いる。グラム陽性菌については、プロモーターamy及びSPO2を用いることができる。酵母又は菌類からは、好ましくは、プロモーターADC1、AOX1r、GAL1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHが用いられる。動物細胞又は生物発現については、プロモーターCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサーが、好ましくは使用される。植物からは、プロモーターCaMV/35S(Franck 1980, Cell 21: 285-294)、PRP1(Ward 1993, Plant. Mol. Biol. 22)、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nos又はユビキチン若しくはファセオリンプロモーターが用いられる。また、この文脈において好ましいものには、誘導性プロモーターであり、例えば、欧州出願公開第0388186A1号(すなわち、ベンジルスルホンアミド誘導性プロモーター)、Gatz 1992, Plant J. 2:397-404(すなわち、テトラサイクリン誘導性プロモーター)、欧州出願特許第0335528A1号(すなわち、アブシジン酸誘導性プロモーター)又は国際公開第93/21334号(すなわち、エタノール又はシクロヘキセノール誘導性プロモーター)に記載されるプロモーターが挙げられる。更なる好適な植物プロモーターは、ジャガイモ由来の細胞質FBPaseのプロモーター若しくはST-LSIプロモーター(Stockhaus 1989, EMBO J. 8, 2445)、ダイズ(Glycine max)由来のホスホリボシル-ピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(Genbank受託番号U87999)又は欧州出願公開第0249676A1号に記載される結節特異的プロモーターである。特に好ましいのは、脂肪酸の生合成に関わる組織中での発現を可能にするプロモーターである。また、特に好ましいものは、種子特異的プロモーター、例えば、慣用のUSPプロモーターなどであるが、他のプロモーター、例えば、LeB4、DC3、ファセオリン又はナピンプロモーターなどがある。さらにとりわけ好ましいプロモーターは、単子葉植物若しくは双子葉植物に使用することができる種子特異的プロモーターであって、米国特許第5,608,152号(菜種由来のnapinプロモーター)、国際公開第98/45461号(シロイヌナズナ由来のオレオシンプロモーター)、米国特許第5,504,200号(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)由来のファセオリンプロモーター)、国際公開第91/13980号(アブラナ由来のBce4プロモーター)、Baeumlein et al., Plant J., 2, 2, 1992:233-239(マメ科植物由来のLeB4プロモーター)に記載されており、これらのプロモーターは双子葉植物に好適である。以下のプロモーター:オオムギ由来のlpt-2又はlpt-1プロモーター(国際公開第95/15389号及び国際公開第95/23230号)、オオムギ由来のホルデインプロモーター、及び好適であり、国際公開第99/16890号に記載されている他のプロモーターが、単子葉植物に好適である。原理的には、新規プロセスに対して、全ての自然のプロモーターを、上記のものなどのそれらの調節配列とともに用いることができる。同様に、合成プロモーターを追加的に又は単独で、特にそれらが、例えば、国際公開第99/16890号に記載されるように種子特異的発現を媒介する場合に、使用することができ、それは有利である。ヌクレオチドは、植物の種子において発現される。特別な実施形態においては、種子特異的プロモーターを利用して所望のPUFA又はVLC-PUFAの生成を増強する。特定の好ましい実施形態において、デサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、実施例のセクションにおいてそれぞれのデサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現に使用される発現制御配列に作動可能に連結される(例えば、VC-LTM593-1qcz rcにおけるエロンガーゼ及びデサチュラーゼの発現に用いられるプロモーター、表11)。このベクターの配列は、配列番号3に示される。
用語「作動可能に連結される」とは、本明細書で使用するとき、発現制御配列と目的とする核酸が連結され、その結果、前記発現制御配列によって、前記目的の核酸を支配することができる、すなわち、前記発現制御配列は、発現すべき前記核酸配列と機能的に連結されることを意味する。したがって、発現制御配列と発現すべき核酸配列は物理的に互いに、例えば、発現すべき核酸配列の5'末端に発現制御配列を挿入することによって、連結される。あるいは、発現制御配列と発現すべき核酸を単に物理的に近位に発現させ、その結果、発現制御配列が少なくとも1つの目的とする核酸配列の発現を支配できるようにしてもよい。発現制御配列と発現すべき核酸は、好ましくは、500bp、300bp、100bp、80bp、60bp、40bp、20bp、10bp又は5bp以下離れている。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、プロモーターに加えて、目的とする核酸配列に作動可能に連結されたターミネーター配列を含む。
用語「ターミネーター」とは、本明細書で使用するとき、転写を終結することができる核酸配列を意味する。これらの配列は、転写すべき核酸配列からの転写機構の解離を引き起こす。好ましくは、このターミネーターは植物、特に植物種子において活性である。好適なターミネーターは当該技術分野において公知であり、好ましくは、発現すべき核酸配列の下流に、ポリアデニル化シグナル、例えば、SV40-ポリ-A部位、又はtk-ポリ-A部位又はLokeら(Loke 2005, Plant Physiol 138, pp. 1457-1468)が示した植物特異的シグナルの1つを含む。
さらに、本発明は、デサチュラーゼ及び/又はエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む組換え核酸分子に関し、このデサチュラーゼ活性及び/又はエロンガーゼ活性は、1つ以上の植物種におけるコドン使用に適合させるという点において、配列が由来する生物の核酸配列と比較して修飾される。
本発明の目的のために、「組換え」は、例えば、本発明による方法において使用される核酸配列、発現カセット(=遺伝子構築物)若しくは該核酸配列を含むベクター、又は本発明による方法において使用される核酸配列、発現カセット若しくはベクターで形質転換された宿主細胞に対して意味し、核酸配列、又は核酸配列に作動可能に連結された遺伝子制御配列、例えば、プロモーターのいずれかが、それらの天然の遺伝的環境に位置していないそれらの全ての構築物は、組換え法によってもたらされ、又は組換え法によって修飾されている。
好ましくは、本発明の植物細胞(又は植物)は、油糧種子作物植物細胞(又は油糧種子作物植物)である。より好ましくは、前記油糧種子は、アマ(アマ属の種(Linum sp.)、アブラナ(アブラナ属の種)、ダイズ(ダイズ属の種(Glycine and Soja sp.))、ヒマワリ(ヒマワリ属の種(Helianthus sp.))、ワタ(ワタ属の種(Gossypium sp.))、トウモロコシ(トウモロコシ(Zea mays))、オリーブ(オリーブ属の種(Olea sp))、ベニバナ(ベニバナ属の種(Carthamus sp.))、ココア(テオブロマ・カカオ(Theobroma cocoa))、ピーナッツ(ラッカセイ属の種(Arachis sp.))、アサ、カメリナ、クランベリー、オイルパーム、ココナッツ、アメリカホドイモ、ゴマ種子、トウゴマの実、レスケレラ(lesquerella)、ナンキンハゼ(tallow tree)、シアナッツ、タングナッツ(tungnut)、カポックフルーツ、ポピーシードオイル、ホホバシードオイル、及びエゴマからなる群から選択される。本発明のポリヌクレオチド又はT-DNAを導入するために使用される好ましい植物は、すべての双子葉植物又は単子葉植物、藻類又はコケなどの脂肪酸を合成することができる植物である。植物由来の宿主細胞はまた、本発明に従って植物を生成するために使用され得ることが理解されるべきである。好ましい植物は、アデロテシアセアエ科(Adelotheciaceae)、アナカディアセアエ科(Anacardiaceae)、アレカセ科(Arecaceae)、キク科(Asteraceae)、アワ科(Apiaceae)、カバノキ科(Betulaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、パパイア科(Caricaceae)、アサ科(Cannabaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、キク科(Compositae)、クリプテコジニアセア科(Crypthecodiniaceae)、アブラナ科(Cruciferae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、キンシゴケ科(Ditrichaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、クルミ科(Juglandaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、アカバナ科(Onagraceae)、ボロボロノキ科(Olacaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、コショウ科(Piperaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、イネ科(Poaceae)、ナス科(Solanaceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)又は栽培植物又は観賞植物、例えば、タゲテス属(Tagetes)の群から選択される。挙げることができる例は、以下から選択される植物である:アデロテシアセアエ科、例えば、フィスコミトレラ属(Physcomitrella)、例えば、以下の属及び種ヒメツリガネゴケ、ウルシ科、例えば、ピスタチア属(Pistacia)、マンギフェラ属(Mangifera)、アナカルジウム属(Anacardium)、例えば、以下の属及び種ピスタチア・ベラ(Pistacia vera)[ピスタチオ]、マンギフェル・インディカ(Mangifer indica)[マンゴー]若しくはアナカルジウム・オシデンタレ(Anacardium occidentale)[カシュー]、キク科、例えば、カレンデュラ属(Calendula)、カルタムス属(Carthamus)、センタウレア属(Centaurea)、シコリウム属(Cichorium)、シナラ属(Cynara)、ヘリアンタス属(Helianthus)、ラクツカ属(Lactuca)、ロカスタ属(Locusta)、タゲテス属、バレリアナ属(Valeriana)、例えば、カレンデュラ・オフィシナリス(Calendula officinalis)[コモンマリゴールド]、カルタムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)[サフラワー]、センタウレア・シアヌス(Centaurea cyanus)[コーンフラワー]、シコリウム・インチバス[ブルーデイジー]、シナラ・スコリムス(Cynara scolymus)[チョウセンアザミ]、ヘリアンタス・アヌス[ヒマワリ]、ラクツカ・サチバ(Lactuca sativa)、ラクツカ・クリスパ(Lactuca crispa)、ラクツカ・エスクレンタ(Lactuca esculenta)、ラクツカ・スカリオラL.種サチバ(Lactuca scariola L. ssp. sativa)、ラクツカ・スカリオラL.変種インテグラタ(Lactuca scariola L. var. integrata)、ラクツカ・スカリオラL.変種インテグリフォリア(Lactuca scariola L. var. integrifolia)、ラクツカ・サチバ亜種ロマナ(Lactuca sativa subsp. romana)、ロカスタ・コミュニス(Locusta communis)、バレリアナ・ロカスタ(Valeriana locusta)[レタス]、タゲテス・ルシダ(Tagetes lucida)、タゲテス・エレクタ(Tagetes erecta)若しくはタゲテス・テヌイフォリア(Tagetes tenuifolia)[アフリカン又はフレンチマリゴールド]、セリ科、例えば、ダウカス属(Daucus)、例えば、以下の属及び種ダウクス・カロタ(Daucus carota)[ニンジン]、カバノキ科、例えば、コリラス属(Corylus)、例えば、以下の属及び種コリラス・アベラナ(Corylus avellana)若しくはコリラス・コラルナ(Corylus colurna)[ヘーゼルナッツ]、ムラサキ科、例えば、ボラゴ属(Borago)、例えば、以下の属及び種ボラゴ・オフィシナリス(Borago officinalis)[ルリヂサ]、アブラナ科、例えば、アブラナ属、メラノシナピス属(Melanosinapis)、シナピス属(Sinapis)、アラバドプシス属(Arabadopsis)、例えば、以下の属及び種ブラシカ・ナプス、ブラシカ・ラパ(Brassica rapa)種[アブラナ]、シナピス・アルベンシス(Sinapis arvensis)、ブラシカ・ジュンセア(Brassica juncea)、ブラシカ・ジュンセア変種ジュンセア(Brassica juncea var. juncea)、ブラシカ・ジュンセア変種クリスピフォリア(Brassica juncea var. crispifolia)、ブラシカ・ジュンセア変種フォリオサ(Brassica juncea var. foliosa)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)、ブラシカ・シナピオイデス(Brassica sinapioides)、メラノシナピス・コミュニス(Melanosinapis communis)[マスタード]、ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea)[飼料用ビート]若しくはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、パイナップル科、例えば、アナナ属(Anana)、ブロメリア属(Bromelia)(パイナップル)、例えば、属及び種アナナ・コモサス(Anana comosus)、アナナス・アナナス(Ananas ananas)若しくはブロメリア・コモサ(Bromelia comosa)[パイナップル]、パパイア科、例えば、カリカ属(Carica)、例えば、以下の属及び種カリカ・パパヤ[ポーポー]、アサ科、例えば、カナビス属(Cannabis)、例えば、以下の属及び種カナビス・サチベ[ヘンプ]、ヒルガオ科、例えば、イポメア属(Ipomea)、コンボルバラス属(Convolvulus)、例えば、以下の属及び種イポメア・バタタス、イポメア・パンデュラタ(Ipomoea pandurata)、コンボルバラス・バタタス(Convolvulus batatas)、コンボルバラス・チリアセウス(Convolvulus tiliaceus)、イポメア・ファスチギアタ(Ipomoea fastigiata)、イポメア・チリアセア(Ipomoea tiliacea)、イポメア・トリロバ(Ipomoea triloba)若しくはコンボルバラス・パンデュラタス(Convolvulus panduratus)[サツマイモ、バテイト(batate)]、アカザ科、例えば、ベタ(Beta)、例えば、以下の属及び種ベタ・バルガリス(Beta vulgaris)、ベタ・バルガリス変種アルチシマ(Beta vulgaris var. altissima)、ベタ・バルガリス変種バルガリス(Beta vulgaris var.Vulgaris)、ベタ・マリチマ(Beta maritima)、ベタ・バルガリス変種ペレニス(Beta vulgaris var. perennis)、ベタ・バルガリス変種コンジチバ(Beta vulgaris var. conditiva)若しくはベタ・バルガリス変種エスクレンタ(Beta vulgaris var. esculenta)[サトウダイコン]、クリプテコディニアカエ科、例えば、クリプテコディニウム属(Crypthecodinium)、例えば、以下の属及び種クリプテコディニウム・コニイ(Cryptecodinium cohnii)、ウリ科、例えば、ククルビタ属(Cucurbita)、例えば、以下の属及び種ククルビタ・マキシマ(Cucurbita maxima)、ククルビタ・ミクスタ(Cucurbita mixta)、ククルビタ・ペポ(Cucurbita pepo)若しくはククルビタ・モスカタ(Cucurbita moschata)[カボチャ/スカッシュ]、キンベラセアエ科(Cymbellaceae)、例えば、アンホラ属(Amphora)、キンベラ属(Cymbella)、オケデニア属(Okedenia)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、レイメリア属(Reimeria、例えば、以下の属及び種フェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornutum)、キンシゴケ科、例えば、ジトリカセア属(Ditrichaceae)、アストミオプシス属(Astomiopsis)、セラトドン属(Ceratodon)、クリゾブラステラ属(Chrysoblastella)、ディトリカム属(Ditrichum)、ディストリチウム属(Distichium)、エクレミジウム属(Eccremidium)、ロフィジオン属(Lophidion)、フィリベルチエラ属(Philibertiella)、プレウリジウム属(Pleuridium)、サエラニア属(Saelania)、トリコドン属(Trichodon)、スコッツバージア属(Skottsbergia)、例えば、以下の属及び種セラトドン・アンタルクチクス(Ceratodon antarcticus)、セラトドン・コルンビア(Ceratodon columbiae)、セラトドン・ヘテロフィルス(Ceratodon heterophyllus)、セラトドン・プルプレウス(Ceratodon purpureus)、セラトドン・プルプレウス、セラトドン・プルプレウス属の種・コンボルタス(Ceratodon purpureus ssp. Convolutus)、セラトドン・プルプレウス属の種ステノカルプス(Ceratodon, purpureus spp. Stenocarpus)、セラトドン・プルプレウス変種トツンジホリウス(Ceratodon purpureus var. rotundifolius)、セラトドン・ラトドン(Ceratodon ratodon)、セラトドン・ステノカルプス(Ceratodon stenocarpus)、クリゾブラステラ・キレンシス(Chrysoblastella chilensis)、ディトリカム・アンビグウム(Ditrichum ambiguum)、ディトリカム・ブレヴィセタム(Ditrichum brevisetum)、ディトリカム・クリスパチシマム(Ditrichum crispatissimum)、ディトリカム・ジフィシレ(Ditrichum difficile)、ディトリカム・ファルシホリウム(Ditrichum falcifolium)、ディトリカム・フレキシカウレ(Ditrichum flexicaule)、ディトリカム・ギガンテウム(Ditrichum giganteum)、ディトリカム・ヘテロマルム(Ditrichum heteromallum)、ディトリカム・リネアレ(Ditrichum lineare)、ディトリカム・リネアレ、ディトリカム・モンタナム(Ditrichum montanum)、ディトリカム・モンタナム、ディトリカム・パリダム(Ditrichum pallidum)、ディトリカム・プンクツラタム(Ditrichum punctulatum)、ディトリカム・プシルム(Ditrichum pusillum)、ディトリカム・プシルム変種トルチレ(Ditrichum pusillum var. tortile)、ディトリカム・リンコステギウム(Ditrichum rhynchostegium)、ディトリカム・スキンペリ(Ditrichum schimperi)、ディトリカム・トルチレ(Ditrichum tortile)、ディトリカム・カピラセウム(Distichium capillaceum)、ディストリチウム・ハゲンイ(Distichium hagenii)、ディストリチウム・インクリナタム(Distichium inclinatum)、ディストリチウム・マコウンイ(Distichium macounii)、エクレミジウム・フロリダヌム(Eccremidium floridanum)、エクレミジウム・ウィテレゲイ(Eccremidium whiteleggei)、ロフィジオン・ストリクタス(Lophidion strictus)、プレウリジウム・アクミナタム(Pleuridium acuminatum)、プレウリジウム・アルテルニホリウム(Pleuridium alternifolium)、プレウリジウム・ホルドリドゲイ(Pleuridium holdridgei)、プレウリジウム・メキシカヌム(Pleuridium mexicanum)、プレウリジウム・ラベネリイ(Pleuridium ravenelii)、プレウリジウム・サブウラタム(Pleuridium subulatum)、サエラニア・グラウセセンス(Saelania glaucescens)、トリコドン・ボレアリス(Trichodon borealis)、トリコドン・シリンドリクス(Trichodon cylindricus)若しくはトリコドン・シリンドリクス変種オブロングス(Trichodon cylindricus var. oblongus)、グミ科、例えば、グミ属、例えば、以下の属及び種オレア・ユーロパエ(Olea europaea)[オリーブ]、ツツジ科、例えば、カルミア属(Kalmia)、例えば
、以下の属及び種カルミア・ラチフォリア(Kalmia latifolia)、カルミア・アングスチフォリア(Kalmia angustifolia)、カルミア・ミクロフィラ(Kalmia microphylla)、カルミア・ポリフォリア(Kalmia polifolia)、カルミア・オシデンタリス(Kalmia occidentalis)、シトラス・カマロデンドロス(Cistus chamaerhodendros)若しくはカルミア・ルシダ(Kalmia lucida)[アメリカシャクナゲ]、トウダイグサ科、例えば、マニホット属(Manihot)、ジャニファ属(Janipha)、ジャトロファ属(Jatropha)、リシナス属(Ricinus)、例えば、以下の属及び種マニホット・ウチリシマ、ジャニファ・マニホット(Janipha manihot)、ジャトロファ・マニホット(Jatropha manihot)、マニホット・アイピル(Manihot aipil)、マニホット・ダルシス(Manihot dulcis)、マニホット・マニホット(Manihot manihot)、マニホット・メラノバシス(Manihot melanobasis)、マニホット・エスクレンタ(Manihot esculenta)[マニホット]若しくはリシナス・コミュニス(Ricinus communis)[トウゴマ]、マメ科、例えば、ピサム属(Pisum)、アルビジア属(Albizia)、カトルミオン属(Cathormion)、フェウイレア属(Feuillea)、インガ属(Inga)、ピテコロビウム属(Pithecolobium)、アカシア属(Acacia)、ミモザ属(Mimosa)、メジカジョ属(Medicajo)、グリシン属(Glycine)、ドリコス属(Dolichos)、ファセオラス属(Phaseolus)、ソヤ属(Soja)、例えば、以下の属及び種ピサム・サチバム(Pisum sativum)、ピサム・アルベンセ(Pisum arvense)、ピサム・ヒュミレ[エンドウマメ]、アルビジア・ベルテリアナ(Albizia berteriana)、アルビジア・ジュリブリシン(Albizia julibrissin)、アルビジア・レベック(Albizia lebbeck)、アカシア・ベルテリアナ(Acacia berteriana)、アカシア・リトラリス(Acacia littoralis)、アルビジア・ベルテリアナ、アルビジア・ベルテリアナ(Albizzia berteriana)、カトルミオン・ベルテリアナ(Cathormion berteriana)、フェウイレア・ベルテリアナ(Feuillea berteriana)、インガ・フラグランス(Inga fragrans)、ピテセロビウム・ベルテリアナム(Pithecellobium berterianum)、ピテセロビウム・フラグランス(Pithecellobium fragrans)、ピテコロビウム・ベルテリアナム(Pithecolobium berterianum)、シュードアルビジア・ベルテリアナ(Pseudalbizzia berteriana)、アカシア・ジュリブリシン(Acacia julibrissin)、アカシア・ネム(Acacia nemu)、アルビジア・ネム(Albizia nemu)、フェウイレア・ジュリブリシン(Feuilleea julibrissin)、ミモザ・ジュリブリシン(Mimosa julibrissin)、ミモザ・スペシオサ(Mimosa speciosa)、セリカンルダ・ジュリブリシン(Sericanrda julibrissin)、アカシア・レベック(Acacia lebbeck)、アカシア・マクロフィラ(Acacia macrophylla)、アルビジア・レベック(Albizia lebbek)、フェウイレア・レベック(Feuilleea lebbeck)、ミモザ・レベック(Mimosa lebbeck)、ミモザ・スペシオサ(Mimosa speciosa)[ネムノキ]、メジカゴ・サチバ(Medicago sativa)、メジカゴ・ファルカタ(Medicago falcata)、メジカゴ・バリア(Medicago varia)[アルファルファ]、グリシン・マックス(Glycine max)、ドリコス・ソヤ(Dolichos soja)、グリシン・グラシリス(Glycine gracilis)、グリシン・ヒスピダ(Glycine hispida)、ファセオラス・マックス(Phaseolus max)、ソヤ・ヒスピダ(Soja hispida)若しくはソヤ・マックス(Soja max)[ダイズ]、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)、例えば、アファノレグマ属(Aphanorrhegma)、エントストドン属(Entosthodon)、フナリア属(Funaria)、フィスコミトレラ属(Physcomitrella)、フィスコミトリウム属(Physcomitrium)、例えば、以下の属及び種アファノレグマ(Aphanorrhegma serratum)、エントストドン・アテヌアタス(Entosthodon attenuatus)、エントストドン・ボランデリ(Entosthodon bolanderi)、エントストドン・ボンプランジ(Entosthodon bonplandii)、エントストドン・カリホルニクス(Entosthodon californicus)、エントストドン・ドラモンジ(Entosthodon drummondii)、エントストドン・ジャメソニ(Entosthodon jamesonii)、エントストドン・レイベルギ(Entosthodon leibergii)、エントストドン・ネオスコチクス(Entosthodon neoscoticus)、エントストドン・ルブリセタス(Entosthodon rubrisetus)、エントストドン・スパツリホリウス(Entosthodon spathulifolius)、エントストドン・ツクソニ(Entosthodon tucsoni)、フナリア・アメリカナ(Funaria americana)、フナリア・ボランデリ(Funaria bolanderi)、フナリア・カルカレア(Funaria calcarea)、フナリア・カリホルニカ(Funaria californica)、フナリア・カルベセンス(Funaria calvescens)、フナリア・コンボルタ(Funaria convoluta)、フナリア・フラビカンス(Funaria flavicans)、フナリア・グロウチアナ(Funaria groutiana)、フナリア・ヒグロメトリカ(Funaria hygrometrica)、フナリア・ヒグロメトリカ変種アルクチカ(Funaria hygrometrica var. arctica)、フナリア・ヒグロメトリカ変種カルベセンス(Funaria hygrometrica var. calvescens)、フナリア・ヒグロメトリカ変種コンボルタ(Funaria hygrometrica var. convoluta)、フナリア・ヒグロメトリカ変種ムラリス(Funaria hygrometrica var. muralis)、フナリア・ヒグロメトリカ変種ウタヘシス(Funaria hygrometrica var. utahensis)、フナリア・ミクロストマ(Funaria microstoma)、フナリア・ミクロストマ変種オブツシホリア(Funaria microstoma var. obtusifolia)、フナリア・ムヘレンベルギ(Funaria muhlenbergii)、フナリア・オルクチイ(Funaria orcuttii)、フナリア・プラノ-コンベキサ(Funaria plano-convexa)、フナリア・ポラリス(Funaria polaris)、フナリア・ラベネリ(Funaria ravenelii)、フナリア・ルブリセタ(Funaria rubriseta)、フナリア・セラッタ(Funaria serrata)、フナリア・ソノラエ(Funaria sonorae)、フナリア・スブリンバツス(Funaria sublimbatus)、フナリア・ツクソニ(Funaria tucsoni)、フィスコミトレラ・カリホルニカ(Physcomitrella californica)、ヒメツリガネゴケ、フィスコミトレラ・レアデリ(Physcomitrella readeri)、フィスコミトリウム・アウストラレ(Physcomitrium australe)、フィスコミトリウム・カリホルニクス(Physcomitrium californicum)、フィスコミトリウム・コレンキマツム(Physcomitrium collenchymatum)、フィスコミトリウム・コロラデンセ(Physcomitrium coloradense)、フィスコミトリウム・クプリレルム(Physcomitrium cupuliferum)、フィスコミトリウム・ドルモンジ(Physcomitrium drummondii)、フィスコミトリウム・エウリストマム(Physcomitrium eurystomum)、フィスコミトリウム・フレキシホリウム(Physcomitrium flexifolium)、フィスコミトリウム・ホーケリ(Physcomitrium hookeri)、フィスコミトリウム・ホーケリ変種セラタム(Physcomitrium hookeri var. serratum)、フィスコミトリウム・イメルスム(Physcomitrium immersum)、フィスコミトリウム・ケレルマニ(Physcomitrium kellermanii)、フィスコミトリウム・メガロカルプム(Physcomitrium megalocarpum)、フィスコミトリウム・ピリホルメ(Physcomitrium pyriforme)、フィスコミトリウム・ピリホルメ変種セラタム(Physcomitrium pyriforme var. serratum)、フィスコミトリウム・ルフィペス(Physcomitrium rufipes)、フィスコミトリウム・サンドベルギ(Physcomitrium sandbergii)、フィスコミトリウム・スブスファエリウム(Physcomitrium subsphaericum)、フィスコミトリウム・ワシントニエンセ(Physcomitrium washingtoniense)、フウロソウ科、例えば、ペラルゴニウム属(Pelargonium)、ココス属(Cocos)、オレウム属(Oleum)、例えば、以下の属及び種ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera)、ペラルゴニウム・グロサラリオイデス(Pelargonium grossularioides)若しくはオレウム・ココイス(Oleum cocois)[ココナッツ]、イネ科(Gramineae)、例えば、サッカラム属(Saccharum)、例えば、以下の属及び種サッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum)、クルミ科、例えば、ジャグランス属(Juglans)、ワリア属(Wallia)、例えば、以下の属及び種ジャグランス・レギア(Juglans regia)、ジャグランス・アイランチフォリア(Juglans ailanthifolia)、ジャグランス・シエボルディアナ(Juglans sieboldiana)、ジャグランス・シネレア(Juglans cinerea)、ワリア・シネレア(Wallia cinerea)、ジャグランス・ビキシビ(Juglans bixbyi)、ジャグランス・カリフォルニカ(Juglans californica)、ジャグランス・ヒンドシ(Juglans hindsii)、ジャグランス・インテルメディア(Juglans intermedia)、ジャグランス・ジャマイセンシス(Juglans jamaicensis)、ジャグランス・メジャー(Juglans major)、ジャグランス・ミクロカルパ(Juglans microcarpa)、ジャグランス・ニグラ(Juglans nigra)若しくはワリア・ニグラ(Wallia nigra)[クルミ]、クスノキ科、例えば、ペルセア属(Persea)、ラウラス属(Laurus)、例えば、以下の属及び種ラウラス・ノビリス(Laurus nobilis)[ゲッケイジュ]、ペルセア・アメリカーナ(Persea americana)、ペルセア・グラチシマ(Persea gratissima)若しくはペルセア・ペルセア(Persea persea)[アボカド]、マメ科(Leguminosae)、例えば、アラキス属(Arachis)、例えば、以下の属及び種アラキス・ヒポゲア(Arachis hypogaea)[ピーナッツ]、アマ科、例えば、リナム属(Linum)、デノリナム属(Adenolinum)、例えば、以下の属及び種リナム・ウシタチシマム(Linum usitatissimum)、リナム・ヒュミレ(Linum humile)、リナム・オーストリアカム(Linum austriacum)、リナム・ビエネ(Linum bienne)、リナム・アングスチフォリウム(Linum angustifolium)、リナム・カタルチカム(Linum catharticum)、リナム・フラバム(Linum flavum)、リナム・グランジフロラム(Linum grandiflorum)、アデノリナム・グランジフロラム(Adenolinum grandiflorum)、リナム・レウィシ(Linum lewisii)、リナム・ナルボネンセ(Linum narbonense)、リナム・ペレネ(Linum perenne)、リナム・ペレネ変種レウィシ(Linum perenne var. lewisii)、リナム・プラテンセ(Linum pratense)若しくはリナム・トリギナム(Linum trigynum)[亜麻仁]、ザクロ科(Lythrarieae)、例えば、プニカ属(Punica)、例えば、以下の属及び種プニカ・グラナタム(Punica granatum)[ザクロ]、アオイ科、例えば、ゴシピウム属(Gossypium)、例えば、以下の属及び種ゴシピウム・ヒルサタム、ゴシピウム・アルボレウム(Gossypium arboreum)、ゴシピウム・バルバデンセ(Gossypium barbadense)、ゴシピウム・ヘルバセウム(Gossypium herbaceum)若しくはゴシピウム・タルベリ(Gossypium thurberi)[ワタ]、ゼニゴケ科、例えば、ゼニゴケ属、例えば、以下の属及び種マーチャンチア・ベルテロチア(Marchantia berteroana)、メーチャンチア・フォリアセア(Marchantia foliacea)、マーチャンチア・マクロポラ(Marchantia macropora)、バショウ科(Musaceae)、例えば、ムサ属(Musa)、例えば、以下の属及び種ムサ・ナナ、ムサ・アクミナタ(Musa acuminata)、ムサ・パラジシアカ(Musa paradisiaca)、ムサ属の種[バナナ]、アカバナ科、例えば、カミソニア属(Camissonia)、エノテラ属(Oenothera)、例えば、以下の属及び種オエノテラ・ビエニス(Oenothera biennis)若しくはカミソニア・ブレビペス(Camissonia brevipes)[マツヨイグサ]、ヤシ科(Palmae)、例えば、エラシス属(Elacis)、例えば、以下の属及び種エラエイス・ギネンシス(Elaeis guineensis)[油ヤシ]、ケシ科、例えば、パパベル属(Papaver)、例えば、以下の属及び種パパベル・オリエンタレ(Papaver orientale)、パパベル・ロエアス(Papaver rhoeas)、パパベル・デュビウム(Papaver dubium)[ケシ]、ゴマ科、例えばセサマム属(Sesamum)、例えば、以下の属及び種セサマム・インジカム(Sesamum indicum)[ゴマ]、コショウ科、例えば、
ピペル属(Piper)、アルタンテ属(Artanthe)、ペペロミア属(Peperomia)、ステフェンシア属(Steffensia)、例えば、以下の属及び種ピペル・アダンカム(Piper aduncum)、ピペル・アマラゴ(Piper amalago)、ピペル・アングスチフォリウム(Piper angustifolium)、ピペル・アウリタム(Piper auritum)、ピペル・ベテル(Piper betel)、ピペル・クベバ(Piper cubeba)、ピペル・ロンガム(Piper longum)、ピペル・ニグラム(Piper nigrum)、ピペル・レトロフラクタム(Piper retrofractum)、アルタンテ・アダンカ(Artanthe adunca)、アルタンテ・エロンガタ(Artanthe elongata)、ペペロミア・エロンガタ(Peperomia elongata)、ピペル・エロンガタム(Piper elongatum)、ステフェンシア・エロンガタ(Steffensia elongata)[カイエンヌペッパー]、イネ科(Poaceae)、例えば、ホルデウム属(Hordeum)、セカレ属(Secale)、アベナ属(Avena)、モロコシ属(Sorghum)、アンドロポゴン属(Andropogon)、ホルカス属(Holcus)、パニカム属(Panicum)、オリザ属(Oryza)、ゼア属(Zea)(トウモロコシ)、リチカム属(Triticum)属及び種、例えば、以下の属及び種ホルデウム・バルガレ(Hordeum vulgare)、ホルデウム・ジュバタム(Hordeum jubatum)、ホルデウム・ムリナム(Hordeum murinum)、ホルデウム・セカリナム(Hordeum secalinum)、ホルデウム・ジスチコン(Hordeum distichon)、ホルデウム・エギセラス(Hordeum aegiceras)、ホルデウム・ヘキサスチコン(Hordeum hexastichon)、ホルデウム・ヘキサスチカム(Hordeum hexastichum)、ホルデウム・イレグラレ(Hordeum irregulare)、ホルデウム・サチバム(Hordeum sativum)、ホルデウム・セカリナム(Hordeum secalinum)[オオムギ]、セカレ・セレアレ(Secale cereale)[ライムギ]、アベナ・サチバ(Avena sativa)、アベナ・ファツア(Avena fatua)、アベナ・ビザンチナ(Avena byzantina)、アベナ・ファツア変種サチバ(Avena fatua var. sativa)、アベナ・ハイブリダ(Avena hybrida)[オートムギ]、ソルガム・ビコロル(Sorghum bicolor)、ソルガム・ハレペンセ(Sorghum halepense)、ソルガム・サッカラタム(Sorghum saccharatum)、ソルガム・バルガレ(Sorghum vulgare)、アンドロポゴン・ドラモンジ(Andropogon drummondii)、ホルカス・ビコロル(Holcus bicolor)、ホルカス・ソルガム(Holcus sorghum)、ソルガム・エチオピカム(Sorghum aethiopicum)、ソルガム・アルンジナセウム(Sorghum arundinaceum)、ソルガム・カフロラム(Sorghum caffrorum)、ソルガム・セルナム(Sorghum cernuum)、ソルガム・ドクナ(Sorghum dochna)、ソルガム・ドラモンジ(Sorghum drummondii)、モロコシ・デュラ(Sorghum durra)、ソルガム・ギネンセ(Sorghum guineense)、ソルガム・ランセオラタム(Sorghum lanceolatum)、ソルガム・ネルボサム(Sorghum nervosum)、ソルガム・サッカラタム、ソルガム・サブグラブレセンス(Sorghum subglabrescens)、ソルガム・ベルチシリフロラム(Sorghum verticilliflorum)、ソルガム・バルガレ、ホルカス・ハレペンシス(Holcus halepensis)、ソルガム・ミリアセウム(Sorghum miliaceum)、パニカム・ミリタセウム(Panicum militaceum)[キビ]、オリザ・サチバ(Oryza sativa)、オリザ・ラチフォリア(Oryza latifolia)[イネ]、ゼア・マイス(Zea mays)[トウモロコシ]、トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum)、トリチカム・デュラム(Triticum durum)、トリチカム・ツルギダム(Triticum turgidum)、トリチカム・ヒベルナム(Triticum hybernum)、トリチカム・マチャ(Triticum macha)、トリチカム・サチバム(Triticum sativum)若しくはトリチカム・バルガレ(Triticum vulgare)[コムギ]、チノリモ(Porphyridiaceae)科、例えば、クロテス属(Chroothece)、フリンチエラ属(Flintiella)、ペトロバネラ属(Petrovanella)、チノリモ属(Porphyridium)、ロデラ属(Rhodella)、ロドソラス属(Rhodosorus)、バンホエフェニア属(Vanhoeffenia)、例えば、以下の属及び種ポルフィリジウム・クルエンタム(Porphyridium cruentum)、ヤマモガシ科(Proteaceae)、例えば、マカダミア属(Macadamia)、例えば、以下の属及び種マカダミア・インテルグリフォリア(Macadamia intergrifolia)[マカダミア]、プラシノ藻綱、例えば、ネフロセルミス属、プラシノコッカス属(Prasinococcus)、シェルフェリア属(Scherffelia)、テトラセルミス属(Tetraselmis)、マントニエラ属(Mantoniella)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、例えば、以下の属及び種ネフロセルミス・オリバセア(Nephroselmis olivacea)、プラシノコッカス・カプスラタス(Prasinococcus capsulatus)、シェルフェリア・デュビア(Scherffelia dubia)、テトラセルミス・チュイ(Tetraselmis chui)、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、マントニエラ・スクアマタ(Mantoniella squamata)、オストレオコッカス・タウリ、アカネ科(Rubiaceae)、例えば、コフィア属(Coffea)、例えば、以下の属及び種コフィア属の種(Cofea spp.)、コフィア・アラビカ(Coffea arabica)、コフィア・カネフォラ(Coffea canephora)若しくはコフィア・リベリカ(Coffea liberica)[コーヒー]、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、例えば、ベルバスカム属(Verbascum)、例えば、以下の属及び種ベルバスカム・ブラッタリア(Verbascum blattaria)、ベルバスカム・シャイキシ(Verbascum chaixii)、ベルバスカム・デンシフロラム(Verbascum densiflorum)、ベルバスカム・ラグラス(Verbascum lagurus)、ベルバスカム・ロンギフォリウム(Verbascum longifolium)、ベルバスカム・リクニティス(Verbascum lychnitis)、ベルバスカム・ニグラム(Verbascum nigrum)、ベルバスカム・オリンピカム(Verbascum olympicum)、ベルバスカム・フロモイデス(Verbascum phlomoides)、ベルバスカム・フェニカム(Verbascum phoenicum)、ベルバスカム・パルベルレンタム(Verbascum pulverulentum)若しくはベルバスカム・タプサス(Verbascum thapsus)[モウズイカ]、ナス科、例えば、カプシカム属(Capsicum)、ニコチアナ属(Nicotiana)、ソラナム属(Solanum)、リコペルシコン属(Lycopersicon)、例えば、以下の属及び種カプシカム・アナム(Capsicum annuum)、カプシカム・アナム変種グラブリウスクラム(Capsicum annuum var. glabriusculum)、カプシカム・フルテセンス(Capsicum frutescens)[コショウ]、カプシカム・アナム(Capsicum annuum)[パプリカ]、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・アラタ(Nicotiana alata)、ニコチアナ・アテヌアタ(Nicotiana attenuata)、ニコチアナ・グラウカ(Nicotiana glauca)、ニコチアナ・ラングスドルフィ(Nicotiana langsdorffii)、ニコチアナ・オブツシフォリア(Nicotiana obtusifolia)、ニコチアナ・クアドリバルビス(Nicotiana quadrivalvis)、ニコチアナ・レパンダ(Nicotiana repanda)、ニコチアナ・ラスティカ(Nicotiana rustica)、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotiana sylvestris)[タバコ]、ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)[ジャガイモ]、ソラナム・メロンゲナ(Solanum melongena)[ナス]、リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)、リコペルシコン・リコペルシカム(Lycopersicon lycopersicum)、リコペルシコン・ピリフォルメ(Lycopersicon pyriforme)、ソラナム・インテグリフォリウム(Solanum integrifolium)若しくはソラナム・リコペルシカム[トマト]、アオギリ科(Sterculiaceae)、例えば、テオブロマ属(Theobroma)、例えば、以下の属及び種テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)[カカオ]、又はツバキ科(Theaceae)、例えば、カメリア属(Camellia)、例えば、以下の属及び種カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)[チャ]。特に、本発明によるトランスジェニック植物として使用される好ましい植物は、油果実作物であり、これには、大量の脂質化合物が含まれ、例えば、ピーナッツ、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、サフラワー、ケシ、マスタード、アサ、トウゴマ、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、モウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、ベイ、カボチャ/スカッシュ、亜麻仁、ダイズ、ピスタチオ、ルリジサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ、クルミ)、又は作物、例えば、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ワタ、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ナス科植物、例えば、ジャガイモ、タバコ、ナス及びトマト、ソラマメ属の種(Vicia species)、エンドウマメ、アルファルファ若しくはやぶ状(bushy)植物(コーヒー、カカオ、チャ)、ヤナギ属の種(Salix species)、及び多年生牧草及び家畜用農作物が挙げられる。本発明による好ましい植物は、油料作物植物、例えば、ピーナッツ、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、マスタード、アサ、トウゴマ、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、カボチャ/スカッシュ、亜麻仁、ダイズ、ルリジサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ)である。特に好ましいのは、ヒマワリ、ベニバナ、タバコ、ミューレイン、ゴマ、ワタ、カボチャ/スカッシュ、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、アサ、アザミ又はベニバナである。非常に特に好ましい植物は、ベニバナ、ヒマワリ、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、又はアサなどの植物、又は最も好ましいのはアブラナ科の植物である。
本発明はまた、植物又はその部分中に、特に植物油中に高含量のVLC-PUFAを確立するための構築物を提供することに関する。
このように、本発明は、植物において標的遺伝子を発現させるT-DNAであって、T-DNAは、左右の境界エレメント、並びにプロモーター、それに作動可能に連結された標的遺伝子、及びその下流にあるターミネーターを含む少なくとも1つの発現カセットを含み、T-DNAの長さは、左の境界エレメントから右の境界エレメントまでを測定すると、標的遺伝子を含めて、少なくとも30000bpの長さを有する前記T-DNAを提供する。一実施形態において、発現カセットは、長さが少なくとも500bpのセパレータによってT-DNAの最も近い境界から分離される。別の実施形態において、発現カセットは、長さが少なくとも100bpのセパレータによってT-DNAの最も近い境界から分離される。別の実施形態において、発現カセットは、長さが少なくとも200bpのセパレータによってT-DNAの最も近い境界から分離される。
また、本発明は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載される様々なデサチュラーゼ遺伝子及びエロンガーゼ遺伝子の発現カセットを含む構築物に関する。
本明細書の他の箇所に記載されるように、本発明のT-DNA又は構築物は、種々の、すなわち複数のタンパク質をコードする複数の発現カセットを含み得る。一実施形態において、本発明のT-DNA又は構築物は、上記で言及したデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードする発現カセット間にセパレータを含んでもよい。一実施形態において、発現カセットは、少なくとも100塩基対のセパレータによって互いに分離され、好ましくは、それらは100-200塩基対のセパレータによって分離される。したがって、各発現カセット間にセパレータが存在する。
したがって、本発明は、核酸、すなわちポリヌクレオチドを提供する。本発明によるポリヌクレオチドは、本発明によるT-DNAである又はそれを含む。したがって、本発明によるT-DNAはポリヌクレオチドである、好ましくはDNAであり、最も好ましくは二本鎖DNAである。本発明による「T-DNA」は、植物の遺伝物質(ゲノム)への最終的な組み込みが可能な核酸である。当業者は、このような組み込みのために、それぞれの植物材料の形質転換が必要であり、好ましい形質転換法及び植物発生法が本明細書に記載されていることを理解する。
本発明によれば、本発明に従って定義されるT-DNA又は構築物を含む核酸がまた提供される。例えば、本発明のT-DNA又は構築物は、環状核酸、例えば、プラスミドに含めることができ、その結果、追加の核酸切片が、左右の境界エレメント間、すなわち、本発明による発現カセット(複数可)の「反対」に存在する。このような環状核酸は、任意の出発点を用いて直線形態にマッピングすることができ、例えば、その結果、「左の境界エレメント-発現カセット-右の境界エレメント-発現カセットと反対の追加の核酸切片」という定義は、「発現カセット-右の境界エレメント-発現カセットと反対の追加の核酸切片-左の境界エレメント」の定義と同じ環状核酸を定義する。追加の核酸切片は、好ましくは、全核酸、すなわちT-DNA及び追加の核酸切片を含む核酸分子を複製させるための1つ以上の遺伝子エレメントを、1つ以上の宿主微生物に、好ましくはエシェリキア属(Escherichia)の微生物、好ましくは大腸菌、及び/又はアグロバクテリウムに含む。好ましい宿主微生物は、以下により詳細に記載される。本発明のT-DNAを含むこのような環状核酸は、形質転換ベクターとして特に有用であり、このようなベクターは、以下により詳細に記載される。
本明細書で言及されるポリヌクレオチドは、好ましくは、それらを植物中に導入した後の植物において発現される。したがって、本発明の方法はまた、ポリヌクレオチドを植物に導入するステップを含み得る。好ましくは、ポリヌクレオチドは形質転換によって、特にアグロバクテリウムを媒介した形質転換によって植物中に導入される。一実施形態において、植物は、表11に示されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードする発現カセットなどの、本発明に関連して記載されたポリヌクレオチド及び/又は発現カセットを含む構築物又はT-DNAを用いて形質転換される。したがって、植物が本発明のT-DNA又は構築物を用いて形質転換される(されている)ことが想定される。導入に使用される構築物又はT-DNAは、好ましくは、発現されるべきすべてのポリヌクレオチドを含む。したがって、単一の構築物又はT-DNAが形質転換に使用され、換言すれば、デサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、同じT-DNAに含まれる。しかしながら、T-DNAの1つ以上のコピーが植物に含まれる得ることが理解されるべきである。
T-DNAの長さは、好ましくは大きく、すなわち、最小長が少なくとも30000bp、好ましくは30000bp超、より好ましくは少なくとも40000bp、さらにより好ましくは少なくとも50000bp、最も好ましくは少なくとも60000bpである。好ましくは、T-DNAの長さは、上記の最小長のいずれかから120000bpまでの範囲、より好ましくは上記の最小長のいずれかから100000bpまでの範囲、さらにより好ましくは上記の最小長さのいずれかから90000bpまでの範囲、さらにより好ましくは上記の最小長のいずれかから80000bpまでの範囲である。このような最小長では、各個々の遺伝子が少なくとも1つのプロモーター及び少なくとも1つのターミネーターに作動可能に連結されるように、発現カセットの形態で多数の遺伝子を導入することが可能である。以下の実施例のセクションに示されるように、本発明は、植物、例えば、油糧種子植物、好ましくはアブラナ属の植物におけるVLC-PUFA生成の代謝経路に必要とされる遺伝子を導入するためにこのような最小長のT-DNAを利用する。また、T-DNAの長さは、取り扱いを容易にするために、好ましくは、以前に記載されるように制限する。
さらに、本発明の構築物は、最小長が少なくとも30000bp、好ましくは30000bp超、より好ましくは少なくとも40000bp、さらにより好ましくは少なくとも50000bp、最も好ましくは少なくとも60000bpであってよい。
一実施形態において、T-DNAの左の境界エレメントの3'方向又はT-DNAの右の境界エレメントの5'方向に、標的遺伝子を含む発現カセットから離れてそれぞれの境界エレメントを設定するセパレータが存在する。両方のセパレータが以下に示される更なる要件を満たす限り、T-DNAの左の境界エレメントの3'方向のセパレータは、T-DNAの右の境界エレメントの5'方向のセパレータと必ずしも同じ長さ及び/又は配列を有する必要はない。
別の実施形態において、発現カセットは、少なくとも100塩基対のセパレータ、好ましくは100〜200塩基対のセパレータによって互いに分離される。したがって、発現カセット間にセパレータが存在する。
セパレータ又はスペーサーは、その長さによって主に定義されるDNAの切片である。その機能は、標的遺伝子をT-DNAの左又は右の境界からそれぞれ分離することである。実施例に示されるように、セパレータを導入することにより、T-DNAをゲノムDNA内に挿入した後に、隣接するゲノム位置によって及ぼされる主要な影響から目的とする遺伝子を効果的に分離する。例えば、全てのゲノム遺伝子座が標的遺伝子の発現に等しく適しているわけではなく、同じプロモーター及びターミネーターの制御下にある同じ遺伝子が、植物ゲノム中の標的遺伝子(及びその対応するプロモーター及びターミネーター)の組み込み領域に依存して、植物において異なる強度で発現され得ることが一般的に考えられている。一般的に、植物ゲノムの異なる領域は、例えば、これらの領域がヒストンの周りにしっかりと巻かれ、及び/又は染色体骨格(例えば、Deal et al., Curr Opin Plant Biol. Apr 2011; 14(2): 116-122参照)又は他の足場材料(例えば、Fukuda Y., Plant Mol Biol. 1999 Mar; 39(5): 1051-62参照)に結合しているため、転写因子及び/又はポリメラーゼ酵素に対して異なる容易さでアクセス可能であると考えられている。本発明のT-DNAによる上記の利点を達成するメカニズムは容易に理解されない。そのため、隣接するヒストン若しくは染色体骨格又は他の足場付着領域によるDNA巻き取りによりもたらされる歪みを補償するためのバッファーを物理的に提供する手段としてスペーサーを考えるのが便利である。モデルとして、標的遺伝子を転写するためには、DNAを部分的に巻き戻さなければならないと考えることができる。例えば、核酸鎖の回転が制限されるようにヒストンのまわりにしっかりと巻き付けられている、又は足場若しくは骨格に結合されているため、標的遺伝子の隣接領域がこのような巻き戻しに抵抗する場合、スペーサーは、巻き戻しの試みによって生じた歪みを分配させ、それにより、標的遺伝子で巻き戻すのに必要とされる力を減少させることができる。
一実施形態において、セパレータは、長さが少なくとも500bpである。したがって、セパレータは、500bpより長くてよく、好ましくは少なくとも800bpの長さであり、より好ましくは少なくとも1000bpである。より長いスペーサーは、標的遺伝子と最も近いゲノム隣接領域の間でさらにより物理的な分離を可能にする。
別の実施形態において、スペーサーは、長さが少なくとも100bpである。好ましくは、スペーサーは、長さが100〜200塩基対である。
セパレータは、好ましくは、マトリックス又は足場結合シグナルを欠失している配列を有する。好ましくは、セパレータ又はスペーサーは、500bpの長さについて一回を超えて含まず、好ましくは1000bpの長さについて一回を超えて含まず、5タプルは、20回以上について、実施例において以下に記載されるスペーサーにおいて生じ、実施例に示される全てのスペーサーにわたって概要される。それらのタプルは、実施例に示されたスペーサーにおいて、頻度が増加して存在する:AGCCT、CGTAA、CTAAC、CTAGG、GTGAC、TAGGC、TAGGT、AAAAA、AACGC、TTAGC、ACGCT、GCTGA、ACGTT、AGGCT、CGTAG、CTACG、GACGT、GCTTA、AGCTT、CGCTA、TGACG、ACGTG、AGCTG、CACGT、CGTGA、CGTTA、AGCGT、TCACG、CAGCT、CGTCA、CTAGC、GCGTC、TTACG、GTAGC、TAGCG、TCAGC、TAGCT、AGCTA、GCTAG、ACGTA、TACGT。実施例に示されたセパレータ又はスペーサーと比較して、1つ以上の前述のタプルの出現頻度を減少させることにより、T-DNA中の標的遺伝子の発現のさらなる増加を達成することができる。
セパレータは、選択可能なマーカーを含んでもよい。選択マーカーは、その存在が、植物の発芽又は完全な成長を待つ必要なく、好ましくは、種子において確認され得る核酸切片である。好ましくは、選択マーカーは、種子又は成長中の植物に表現型特性を与え、例えば、除草剤耐性、着色、種子表面特性(例えば、皺)、発光又は蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼが含まれる。表現型の特徴を示すために、マーカー遺伝子の発現が必要な場合、セパレータは、選択マーカーとして、好ましくは発現カセットの形態でマーカー遺伝子を相応に含む。セパレータに選択マーカーを含めることは、マーカーが非形質転換植物材料を容易に廃棄することができるため、特に有利である。また、スペーサーの長さ及び/又は核酸塩基組成が、隣接するゲノムDNAによって引き起こされる遺伝子サイレンシング効果を克服するには不十分である植物ゲノムの位置にT-DNAが組み込まれるという予期しない場合において、選択マーカーは、このような不運にも悪く実施される例外的な形質転換体を容易に廃棄することができる。したがって、好ましくは、セパレータは、除草剤耐性遺伝子を発現させるための発現カセットを含む。このようなセパレータは、選択マーカー遺伝子の発現さえも大きく低下させ又は完全に阻害するようにサイレンシング効果が非常に強い形質転換体を栽培しなければならない可能性を大幅に減少させる。本発明によれば、セパレータは、好ましくはデサチュラーゼ遺伝子若しくはエロンガーゼ遺伝子を含まず、さらに好ましくはプロモーターを含まず、又はデサチュラーゼ遺伝子若しくはエロンガーゼ遺伝子に作動可能に連結されていない。したがって、好ましい実施形態における本発明のT-DNAは、隣接するゲノム植物DNAによって引き起こされる効果の任意の影響から、VLC-PUFAの生成に本質的なデサチュラーゼ遺伝子及びエロンガーゼ遺伝子の効果的な分離に有用である。
隣接するゲノム位置によってもたらされる主要な影響からT-DNAを単離する別の方法は、隣接遺伝子からのT-DNA挿入物の距離を最大にする。さらに、隣接する遺伝子を破壊すると、宿主植物に予期しない影響をもたらす可能性がある。O'Malley et al 2007 Nature Protocols 2(11):2910-2917に記載されているアダプターライゲーション媒介性PCRなどの、当業者に公知の様々な方法を用いてT-DNAのゲノム挿入部位を決定することができる。このような方法は、T-DNAが内因性遺伝子から所望の距離に挿入されているトランスジェニック植物の選択を可能にする。T-DNAが、隣接するコード配列から1000bpを超えて離れているトランスジェニック事象を同定することが好ましい。最も好ましいのは、T-DNAが2500bp離れていて、最も好ましくはT-DNAが最も近いコード配列から5000以上離れている。
したがって、一実施形態において、本発明の植物に含まれるT-DNA又は複数のT-DNAは、内因性コード配列を破壊しない。好ましくは、T-DNAは、隣接するコード配列から1000bpを超えて離れている。より好ましくは、T-DNAは、2500bp離れていて、最も好ましくはT-DNAは最も近いコード配列から5000以上離れている。
植物におけるVLC-PUFAの生成のために、本発明はまた、実施例に示される表の任意の単一遺伝子のコード配列(特に、デサチュラーゼ及びエロンガーゼのコード配列)を含む、好ましくは、実施例に示される表の任意の単一遺伝子のコード配列及びプロモーター、より好ましくは、実施例に示される表の任意の単一遺伝子のコード配列並びにプロモーター及びターミネーター、最も好ましくは実施例の表の任意の単一遺伝子の発現カセットを含む、T-DNA又は構築物を提供する。
一実施形態において、本発明はまた、実施例の表11及び130に示される(特に、デサチュラーゼ及びエロゲナーゼの)コード配列を含む、好ましくは実施例の表11に示されるコード配列(特に、デサチュラーゼ及びエロゲナーゼの)コード配列、並びにプロモーター及びターミネーターを含む、最も好ましくはVC-LTM593-1qcz rc(実施例のセクション参照、配列番号3)に存在する本発明の方法の文脈で言及したデサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現カセットを含む構築物又はT-DNAを提供する。
また、本発明は、植物におけるVLC-PUFAの生成のためのT-DNAを提供し、T-DNAは、左右の境界エレメント、及びその間に1つ以上の発現カセット(複数可)を含み、T-DNAの長さは、左から右の境界エレメントまでを測定すると、1つ以上の発現カセットを含めて、少なくとも30000bpの長さを有する。一実施形態において、左又は右の境界エレメントに最も近い発現カセット(複数可)は、少なくとも500bpの長さのセパレータによってT-DNAの前記最も近い境界エレメントから分離される。作動可能に連結されるプロモーター、及びその下流にターミネーターを含み、それぞれの発現カセットの標的遺伝子は、VLC-PUFAの生成に必要とされるデサチュラーゼ遺伝子又はエロンガーゼ遺伝子であることが理解されるべきである。好ましくは、標的遺伝子の少なくとも1つ、最も好ましくは全てが、実施例のセクションの表のいずれかに与えられるようなデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードし、さらに好ましくは、少なくとも1つの、最も好ましくは全ての発現カセットは、以下の実施例のいずれかに示されるように、プロモーター、デサチュラーゼ/エロンガーゼ遺伝子及びターミネーターを含む。一実施形態において、本発明の植物は、1つ以上のd6Des(デルタ6デサチュラーゼ)、1つ以上のd6Elo(デルタ6エロンガーゼ)、1つ以上のd5Des(デルタ5デサチュラーゼ)、1つ以上のo3Des(オメガ3デサチュラーゼ)、1つ以上のd5Elo(デルタ5エロンガーゼ)及び1つ以上のD4Des(デルタ4デサチュラーゼ)をコードする、好ましくは少なくとも1つのCoA依存性D4Des及び1つのリン脂質依存性D4Desをコードする、1つ以上の発現カセットを含む本発明の1つ以上のT-DNAを含む。一実施形態において、T-DNAはまた、1つ以上のd12Des(デルタ12デサチュラーゼ)をコードする。一実施形態において、デサチュラーゼ及びエロンガーゼは、上記で開示した生物に由来する。したがって、一実施形態において、本発明の植物は、デルタ-6-デサチュラーゼ(好ましくはCoA依存性デルタ-6-デサチュラーゼ)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、デルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド(好ましくは、CoA依存性D4Desについて少なくとも1つ、及びリン脂質依存性d4Desについて少なくとも1つ)を含む、本発明の1つ以上のT-DNAを含む。
上記で言及したデサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードする好ましいポリヌクレオチド配列は、本明細書の他の場所に開示されている(表130の配列番号も参照されたい)。
特定の好ましい実施形態において、デサチュラーゼ及びエロンガーゼは、上記で開示された生物に由来する。したがって、一実施形態において、本発明の植物は、デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、デルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-4-デサチュラーゼ(好ましくは、少なくとも1つのCoA依存性D4Des及び1つのリン脂質依存性d4Des)をコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドを含む本発明の1つ以上のT-DNAを含む。
本発明の更なる好ましい実施形態において、本発明の植物は、ヒメツリガネゴケ由来のdelta-6エロンガーゼのための1つの発現カセット、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼのための1つの発現カセット、スラウストキトリウム属の種由来の(特に、スラウストキトリウム属の種ATCC21685由来の)デルタ-5デサチュラーゼのための2つの発現カセット、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼのための2つの発現カセット、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼのための1つの発現カセット、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼのための1つの発現カセット、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼのための1つの発現カセット、及びパブロワ・ルテリのデルタ-4デサチュラーゼのための1つの発現カセットを含む本発明の1つ以上のT-DNAを含む。デサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドの配列は、T-DNAベクターであるVC-LTM593-1qcz(配列番号3)に見出すことができる。詳細については、表11も参照されたい。さらにより好ましい実施形態において、本発明の植物は、1つ以上のT-DNAを含み、T-DNAは、VC-LTM593-1qczのデサチュラーゼ及びエロンガーゼのための発現カセットを含む(T-DNAは、例えば、表11を参照されたい)。さらに、本発明の植物は、本発明の1つ以上のT-DNAを含み、T-DNAは、ベクターVC-LTM593-1qczのT-DNAの配列を有することが想定される。ベクター中のT-DNAの位置を表11に示す。ベクターは、配列番号3に示される配列を有する。
好ましい実施形態において、本発明のT-DNA、構築物又は植物は、以下のデサチュラーゼ及びエロンガーゼ、特に以下の順序でコードするポリヌクレオチドを含む:ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼ、スラウストキトリウム由来(特に、スラウストキトリウム属ATCC21685由来)のデルタ-5デスサラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6デサチュラーゼ、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼ、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼ;ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼ、スラウストキトリウム由来(特に、スラウストキトリウム属ATCC21685由来)のデルタ-5デスサラーゼ、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼ、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、パブロバ・ルセリ由来のデルタ-4デサチュラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼ。したがって、本発明のT-DNA、構築物又は植物は、スラウストキトリウム由来のデルタ-5デサチュラーゼの2コピー及びスラウストキトリウム由来のデルタ-5デサチュラーゼの2コピーを含む。また、その改変体も包含される。
本明細書の他の箇所に記載されるように、T-DNAは、好ましくは、長さが少なくとも30000bpである。
一実施形態において、本明細書に記載される本発明の植物又はその部分は、少なくとも2つのd6Des、少なくとも2つのd6Elo及び/又は少なくとも2つのo3Desをコードする本発明の1つ以上のT-DNAを含む。一実施形態において、本発明の植物又はその部分は、少なくとも1つのCoA依存性d4Des及び少なくとも1つのリン脂質依存性d4Desをコードする1つ以上の発現カセットを含むT-DNAを含む。一実施形態において、本発明の植物又はその部分において1つ以上のT-DNAによって発現される酵素の活性は、表19の第1欄に示される活性を有するコードされ、発現されたポリペプチドである。一実施形態において、本発明の植物は、表13の第1〜9欄に示される少なくとも1つのT-DNAを含む。一実施形態において、本発明の1つのT-DNAは、表13に列挙された活性又は酵素をコードする1つ以上の遺伝子発現カセットを含む。
一実施形態において、少なくとも1つのT-DNAは、少なくとも1つのd12Desをコードする発現カセットをさらに含む。一実施形態において、T-DNA又は複数のT-DNAは、1つ以上のd5Des(Tc_GA)、o3Des(Pir_GA)、d6Elo(Tp_GA)及び/又はd6Elo(Pp_GA)をコードする1つ以上の発現カセットを含む。このような本発明の植物は、3世代以上にわたり、異なる栽培条件下で、特に高い量及び濃度のVLC-PUFAを示した。
一実施形態において、本発明のT-DNAは、表19に開示される第1欄の活性、好ましくは表13に開示される遺伝子の組合せ、さらにより好ましくは表13に記載されるプロモーター-遺伝子の組合せをコードする。
VLC-PUFAの量に対するT-DNA中に存在する各デサチュラーゼ及びエロンガーゼ遺伝子からの寄与を評価することが困難であるが、例えば、図2に示される式を使用することにより、各経路ステップの変換効率を計算することができる。計算は、対象とする組織又は油の脂肪酸組成に基づき、特定の酵素の基質から形成される生成物の脂肪酸(及び下流の生成物)の量を示す。計算の中には、反応に影響を与える可能性のあるすべての因子を考慮していないと認められるため、変換効率は「見掛けの」変換効率と呼ばれることがある。それにもかかわらず、VLC-PUFAの全生成に対する各デサチュラーゼ又はエロンガーゼ反応の寄与を評価するために、変換効率値を使用することができる。変換効率を比較することにより、様々な個々の種子、植物、バルク種子バッチ、事象、アブラナ遺伝資源又はトランスジェニック構築物の間の所与の酵素ステップの相対的有効性を比較することができる。
本発明の一実施形態において、植物はブラシカ・ナプス植物である。好ましくは、植物は、本発明の少なくとも1つのT-DNA(したがって、1つ以上のT-DNA)を含む。T-DNAは、長さが少なくとも10,000塩基対、特に少なくとも30,000塩基対である。
本明細書の他の箇所に記載されているように、本発明に含まれるT-DNAは、デサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現カセットを含む。一実施形態において、T-DNAは、デルタ-5デサチュラーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは1つ)、オメガ-3デサチュラーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは3つ)、デルタ12デサチュラーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは1つ)、デルタ4デサチュラーゼ(好ましくは、1つのCoA依存性d4des及び1つのリン脂質依存性d4des)のための1つ以上の発現カセット、デルタ-5エロンガーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは1つ)、デルタ-6デサチュラーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは1つ)、及びデルタ-6エロンガーゼのための1つ以上の発現カセット(好ましくは2つ)を含む。好ましくは、T-DNAは、スラウストキトリウム属の種のデルタ-5デサチュラーゼのための2つの発現カセット、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼのための2つの発現カセット、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3-デサチュラーゼのための1つの発現カセット、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼのための1つの発現カセット、パブロバ・ルセリのデルタ-4デサチュラーゼのための1つの発現カセット、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼのための1つの発現カセット、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6デサチュラーゼのための1つの発現カセット、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼのための1つの発現カセット、及びタラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼのための1つの発現カセットを含む。配列番号を表130に示す。さらに、前述の酵素の改変体のための発現カセットを使用することができることが想定される。
植物は、より詳細には本明細書の他の箇所に記載されているように、油を生成する。本発明に関連して、植物は以下の特徴:
(i)約28%より大きい、又は約34%より大きい、又は約40%より大きいバルク種子におけるデルタ6デサチュラーゼ変換効率、
(ii)約40%より大きい単一種子におけるデルタ6デサチュラーゼ変換効率、
(iii)約75%より大きい、又は約82%より大きい、又は約89%より大きいバルク種子におけるデルタ6エロンガーゼ変換効率、
(iv)約86%より大きい単一種子におけるデルタ6エロンガーゼ変換効率、
(v)T-DNA挿入物又は複数の挿入物は、(本明細書の他の箇所に記載されているように)内因性コード配列を破壊しない、
(vi)挿入されたT-DNA配列と最も近い内因性遺伝子の間の距離は、約1000塩基対、又は約2000塩基対、又は約5000塩基対である、
(vii)T-DNA挿入物又は複数の挿入物は、挿入位置周辺のいずれものDNAの再配列を引き起こさない、
(viii)部分的なT-DNA挿入物がない(したがって、全長T-DNAがゲノムに組み込まれる)
(ix)T-DNA挿入物又は複数の挿入物は、アブラナのCゲノムに排他的に生じる、
(x)全ての挿入された導入遺伝子は、完全に機能的である(したがって、遺伝子にコードされる酵素はそれらの機能を保持する)
の1つ以上を有することが想定される。
デルタ6-エロンガーゼのデルタ-6-デサチュラーゼについての変換効率の計算の仕方は、当該技術分野において周知である。一実施形態において、変換効率は、図2に示す式を使用することによって計算される。さらに、変換効率は、実施例19〜22に記載されるように計算されることが想定される。
実施例において詳細に記載されるように、VLC-PUFAの生成に関して、3つのデサチュラーゼ遺伝子は、これらのそれぞれの遺伝子を含む発現カセットの数を増加させることにより、他の遺伝子の発現カセットの数を増加させることよりも、植物油中のVLC-PUFAレベルのより強い増加がもたらされるように、遺伝子用量効果(「コピー数効果」とも呼ばれる)に特になりやすい。これらの遺伝子は、デルタ-12-デサチュラーゼ活性、デルタ-6-デサチュラーゼ活性及びオメガ-3-デサチュラーゼ活性についてコードする遺伝子である。したがって、本発明によれば、デルタ-12-デサチュラーゼ、デルタ-6-デサチュラーゼ又はオメガ-3-デサチュラーゼをコードする遺伝子を含む各発現カセットは、セパレータ及び任意選択で1つ以上の発現カセットにより、それぞれの最も近い左又は右の境界エレメントから分離される。本発明のT-DNAが同じ機能の遺伝子を含む1を超える発現カセットを含む場合、これらの遺伝子は、それらの核酸配列又はそれにコードされるポリペプチド配列に関して同一である必要はないが、機能的なホモログでなければならないことを理解する必要がある。したがって、例えば、本明細書に記載される遺伝子用量効果を利用するために、本発明によるT-DNAは、デルタ-6-デサチュラーゼ及び/又はオメガ-3-デサチュラーゼをコードする多数の遺伝子に任意選択で追加して、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含む2つ、3つ、4つ又はそれを超える発現カセットを含んでもよく、それぞれの遺伝子にコードされるデルタ-12-デサチュラーゼポリペプチドはそれらのアミノ酸配列において相違する。同様に、本発明のT-DNAは、デルタ-12-デサチュラーゼ及び/又はオメガ-3-デサチュラーゼをコードする多数の遺伝子に任意選択で追加して、デルタ-6-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含む2つ、3つ、4つ又はそれを超える発現カセットを含んでもよく、それぞれの遺伝子にコードされるデルタ-6-デサチュラーゼポリペプチドはそれらのアミノ酸配列において相違し、又は、本発明のT-DNAは、デルタ-12-デサチュラーゼ及び/又はデルタ-6-デサチュラーゼをコードする多数の遺伝子に任意選択で追加して、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含む2つ、3つ、4つ又はそれを超える発現カセットを含んでもよく、それぞれの遺伝子にコードされるオメガ-3-デサチュラーゼポリペプチドはそれらのアミノ酸配列において相違する。
本発明によれば、T-DNA、構築物又は植物はまた、上記のコード配列の1つ以上の代わりに、その機能的なホモログを含み得る。コード配列の機能的なホモログは、置換されたコード配列と同じ代謝機能を有するポリペプチドをコードする配列である。例えば、デルタ-5-デサチュラーゼの機能的なホモログは、別のデルタ-5デサチュラーゼであり、デルタ-5-エロンガーゼの機能的なホモログは、別のデルタ-5-エロンガーゼである。コード配列の機能的なホモログは、好ましくは、実施例の対応する表に示される対応するコード配列によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし、より好ましくは少なくとも41%、より好ましくは少なくとも46%、より好ましくは少なくとも48%、より好ましくは少なくとも56%、より好ましくは少なくとも58%、より好ましくは少なくとも59%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、より好ましくは少なくとも66%、より好ましくは少なくとも73%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも77%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%である。同様に、プロモーターの機能的なホモログは、コード配列に最も近いプロモーターTATAボックスから3000bpの距離内にある、近位プロモーター又は遠位プロモーターに対しては500bp内に位置するコード配列の転写を開始するための配列である。再度、植物種子特異的プロモーターの機能的なホモログは、別の植物種子特異的プロモーターである。対応して、ターミネーターの機能的なホモログは、核酸配列の転写を終了させる配列である。
実施例は、特に好ましいT-DNA配列を記載する。上記されるように、当業者は、そこに記載されているコード配列、プロモーター及びターミネーターがそれらの機能的なホモログで置換され得ることを理解する。しかしながら、実施例はまた、本発明によれば、本発明によれば、プロモーターとコード配列の特定の組合せ、又はそれらの対応するコード配列の発現を駆動するプロモーターの特定の組合せ、又は特定のコード配列又はそれらの組合せが、特に有利であることを記載する;このような組合せ又は個々のコード配列は、本発明によれば、それぞれのエレメントの機能的なホモログ(ここでは、コード配列又はプロモーター)に置換されるべきではない。
本発明のT-DNA又は構築物は、好ましくは、2つ以上の遺伝子、好ましくは全ての遺伝子を含み、遺伝子用量効果を受け易い。本明細書に記載されているように、所望の活性を有する酵素をコードする2つ以上の遺伝子を植物細胞に導入することは、特定の酵素活性、例えば、デルタ-12-デサチュラーゼ、デルタ-6-デサチュラーゼ及び/又はオメガ-3-デサチュラーゼ活性の高い変換効率を達成するために有利である。植物細胞にT-DNAを導入する場合、一般的には、植物細胞を微生物に曝露することを伴う形質転換法が用い、例えば、本明細書に記載されているものである。各微生物は、本発明のT-DNAを含む1を超える核酸を含み得るため、細胞の遺伝物質に独立して組み込まれた本発明の2つ以上のT-DNAを含む組換え植物細胞がしばしば得られる。このように、形質転換のための1つの構築物に対する遺伝子用量効果を受けやすい遺伝子を組み合わせることにより、形質転換の独立性を容易に利用して、このようなT-DNAの複数の挿入頻度を高めることができる。これは、例えば、形質転換される各構築物のサイズを低く維持するために、共形質転換に依存する形質転換法に有用であり得る。
したがって、本発明はまた、本発明によるT-DNAを含む構築物を提供し、構築物は、微生物を媒介した形質転換、好ましくはアグロバクテリウムを媒介した形質転換による植物細胞の形質転換のためのベクターである。対応して、本発明はまた、好ましくは前記T-DNAを含む構築物として、本発明による1つのT-DNAを含む形質転換微生物を提供する。好ましくは、微生物は、アグロバクテリウム属のもの、好ましくはその安全化された菌株、好ましくはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)種、又はさらにより好ましくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)種である。対応する菌株は、例えば、国際公開第06/024509A2号に記載され、このような微生物を用いる植物形質転換のための方法は、例えば、国際公開第13/014585A1号に記載されている。これらの国際公開公報は、このような微生物の作製、選択及び使用に関する貴重な情報を含んでいるため、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
用語「ベクター」は、好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルスベクター、並びに人工染色体、例えば、細菌又は酵母の人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、標的化構築物のゲノムDNAへのランダム組み込み又は部位特異的な組み込みを可能にする標的化構築物に関する。このような標的構築物は、好ましくは、以下に詳細に記載するように、相同組換え又は異種組換えのいずれかのために十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における繁殖及び/又は選択のための選択マーカーをさらに含む。ベクターは、当該技術分野において周知である様々な技術によって宿主細胞に組み込むことができる。宿主細胞に導入される場合、ベクターは細胞質に存在してもよく、又はゲノムに組み込まれてもよい。後者の場合、ベクターは、相同組換え又は異種挿入を可能にする核酸配列をさらに含み得ることが理解されるべきである。ベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術を介して原核細胞又は真核細胞に導入することができる。本文脈において使用される「形質転換」及び「トランスフェクション」、コンジュゲーション及び形質導入という用語は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための多数の先行技術のプロセスを含むことが意図され、例えば、リン酸カルシウム、塩化ルビジウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランを媒介したトランスフェクション、リポフェクション、天然コンピーテンス、炭素系クラスター、化学的に媒介した移動、エレクトロポレーション又は粒子ボンバードメントが挙げられる。植物細胞を含む宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションに適した方法は、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、及び他の実験室マニュアル、例えば、Methods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, Ed.: Gartland and Davey, Humana Press, Totowa, New Jerseyに見出すことができる。あるいは、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーション技術によって導入することができる。ベクターがウイルスである場合、宿主細胞に適用する前に適切なパッケージング細胞株を用いてin vitroでパッケージしてもよい。
好ましくは、本明細書で言及されるベクターは、クローニングベクターとして適切であり、すなわち、微生物系において複製可能である。このようなベクターは、細菌、好ましくは酵母又は菌類における効率的なクローニングを確実にし、植物の安定した形質転換を可能にする。言及しなければならないものは、特に、T-DNAを媒介した形質転換に適した種々のバイナリー及び同時組み込みされるベクター系である。このようなベクター系は、概して、アグロバクテリウムを媒介した形質転換に必要とされるvir遺伝子、及びT-DNA(T-DNA境界)の範囲を定める配列を少なくとも含むことを特徴とする。これらのベクター系はまた、好ましくは、プロモーター及びターミネーター、並びに/又は、適切に形質転換された宿主細胞又は生物を同定することができる選択マーカーなどのシス調節領域をさらに含む。同時組み込みされたベクター系は、同じベクター上に配置されたvir遺伝子及びT-DNA配列を有するが、バイナリー系は、少なくとも2つのベクターに基づくものであり、それらのうちの1つはvir遺伝子を有するがT-DNAを有さず、2つ目のものはT-DNAを有するが、vir遺伝子は有しない。結果として、最後に言及したベクターは比較的小さく、操作が容易であり、大腸菌とアグロバクテリウムの両方で複製することができる。これらのバイナリーベクターには、pBIB-HYG、pPZP、pBecks、pGreenシリーズ由来のベクターが含まれる。好ましくは、本発明に従って使用されるものは、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTV及びpCAMBIAである。バイナリーベクターの概要及びそれらの使用は、Hellensら、Trends in Plant Science(2000)5, 446-451に見出すことができる。さらに、適切なクローニングベクターを使用することにより、ポリヌクレオチドを宿主細胞又は植物若しくは動物などの生物に導入することができ、例えば、Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), chapter 6/7, pp. 71-119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, 15-38; B. Jenes et al., Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128-143; Potrykus 1991, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42, 205-225において公開され、引用されているものである。
より好ましくは、本発明のベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターにおいて、すなわち、ベクターは、原核生物の植物細胞又はそれらの単離された画分中に発現を可能にする発現制御配列(「発現カセット」とも呼ばれる)に作動可能に連結された核酸配列を有する本発明のポリヌクレオチドを含む。
最も重要なことに、本発明はまた、ゲノムに組み込まれた、本発明のT-DNA又は構築物を含む植物又はその種子を提供する。
したがって、構築物又はT-DNAは、植物又は植物細胞のゲノムに安定に組み込まれる。一実施形態において、植物はT-DNAについてホモ接合性である。別の実施形態において、植物はT-DNAに対して半接合性である。植物が1つの遺伝子座で1つのT-DNAについてホモ接合性である場合、これは、それにもかかわらず、本明細書では単一のコピーとして、すなわち1コピーとみなされる。本明細書中で使用される二重コピーは、2つのT-DNAが1つ又は2つの遺伝子座に挿入され、半接合状態又はホモ接合状態にある植物を指す。
T-DNAの安定性は、トランスジェニック事象の2以上のその後の世代においてT-DNAの存在を決定することによって評価することができる。T-DNAの存在の決定は、サザンブロット分析、PCR、DNA配列決定、又は特定のDNA配列の検出に適した他の方法によって達成することができる。T-DNAの安定性には、T-DNAの1を超えるのコピーを含むトランスジェニック事象のコピー数測定値も含まれていなければならない。この場合、T-DNAの単一コピーの不安定性は、1つの安定なT-DNAコピーの存在が他方の不安定性をマスクする可能性があるため、形質、すなわちVLC-PUFA含量(conent)を選択することによって検出できないことがある。長さが少なくとも30000bpの大きなT-DNAを用いて、及びある配列の複数のコピー(例えば、同じプロモーターの2つのコピー)を用いて作業する場合、T-DNA内の複数の位置で存在及びコピー数を確認することが特に重要である。長いT-DNAの境界は、連鎖平衡にある可能性が高く、重複配列は相同組換えの可能性を増加させる。連鎖平衡にあることの効果及び相同組換えの可能性は、T-DNAの導入遺伝子が世代にわたって破壊又は失われる可能性があることを意味する。したがって、左右の境界の領域及びT-DNAの内部にある領域を含む、T-DNA上の3を超える位置で大きなT-DNA(少なくとも30000bp)の存在及びコピー数をしけるすることが好ましい。5を超える領域の存在及びコピー数を試験することがより好ましく、T-DNA上の少なくとも7つの領域の存在及びコピー数を試験することが最も好ましい。
このようなT-DNA又は構築物は、好ましくは、植物、特にその種子、特に油糧種子植物、最も有益には、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくは、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ及びブラシカ・ラパ種の1つ又は2つのメンバーのゲノムを含む種、したがって、好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・カリナタ、ブラシカ・ジュンセア、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・ラパ種の植物又は種子において、VLC-PUFAの生成に必要とされる全ての遺伝子の発現を可能にする。本発明において特に好ましいのは、種ブラシカ・ナプス及びブラシカ・カリナタ種の植物及び種子である。
本発明の植物は、必ずトランスジェニックであり、すなわち、それらは、対応する野生型植物中に存在しない遺伝物質、又は対応する野生型植物中に異なって配置された遺伝物質、例えば遺伝子エレメントの数が異なる遺伝物質を含む。例えば、本発明の植物は、野生型植物にも見出されるプロモーターを含むが、本発明の植物は、プロモーター及びコード配列のこの組合せが対応する野生植物では見出されないように、コード配列に作動可能に連結されたこのようなプロモーターを含む。したがって、デサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、組換えポリヌクレオチドである。
本発明の植物及び種子は、VLC-PUFAの生成のためのこれまでに製造された植物と、多くの有利な特徴で異なり、そのいくつかは実施例に詳細に記載されている。特に、本発明のT-DNAは、形質転換植物(「組換え植物」とも呼ばれる)及びその種子を、高頻度で、自己受精植物の複数世代にわたってT-DNA挿入物の高い安定性で、VLC-PUFA生成以外の不変であり、損なわれていない表現型及び農業上の特徴を有して、このような形質転換植物及びそれらの対応する後代の集団の油中でのVLC-PUFA、特にEPA及び/又はDHAの高含量及び高濃度で、生じさせることを可能にする。
種子あたりのVLC-PUFA量における種子間の変動性及び植物間の変動性は、同一の温室条件下で並べて栽培された同一クローンについてさえも高い。また、VLC-PUFAの濃度は、ブラシカ・ナプスの種子油含量と負の相関があることが、現に発見され、以下の実施例において報告される。植物油の総脂肪酸%(w/w)におけるVLC-PUFA濃度の単なる記述は、農業(すなわち、大規模)の対応するクローンの増殖によって達成可能なVLC-PUFA量を示すものではない。VLC-PUFA量又は濃度は、どの遺伝子、プロモーター、遺伝子-プロモーターの組合せ、遺伝子-遺伝子の組合せなどが、油糧種子植物におけるVLC-PUFA合成に有益であるかに依存する。その群を生じさせるために使用された種子に基づく種子群の異なるクラスは、以下の通りである:
(i)「個体種子」又は「単一種子」は、1つの植物からの1つの種子を指す。
(ii)「個々の植物」に由来する種子は、種子間の変動性に基づいて選択する努力なしに、単一の植物上で栽培される全ての種子を指す。
(iii)「種子のバッチ」又は「種子バッチ」は、植物間又は種子間の変動性に基づいて選択することなく、特定数の植物から採取される全ての種子を指す。バッチで言及される植物の特定数は、1つの植物のバッチが個々の植物と同等であることが理解される任意の数、1つ又はそれを超えるものであり得る。
(iv)「大量の(bulked)種子」は、植物間又は種子間の変動性に基づいて種子を選択する努力なしに、非常に多数の植物(100個又はそれを超える)から集められた種子の全てを指す。
また、VLC-PUFAの量又は濃度は、機能的に同一の遺伝子の発現カセットの数を増やすことによって、実際に増加させることができることに留意することは重要である。さらに、多くの先行技術文献が適用可能な技術的教示を含む、例えば、特定の特性、例えばCoA依存性を有するデサチュラーゼを組み合わせると主張するとしても、実践するために、このように主張されている技術的教示をどのように減少させるかについては知られてなく、特に、例えば、このような文献は要件(すなわち、機能的主張の特徴)のみを教示しているが、これらの要件(すなわち、構造的特徴)に関して解決策を教示していないことに留意することは重要である。例えば、このような先行技術文献は、しばしば、単一の遺伝子の1つの例のみを含み、それらの機能的要件を満たす他の任意の酵素が存在する限り、そこに与えられた機能的な定義を満たす他の酵素を見出すための研究プログラムを開始する指示を読者に残している。
他に記載がない限り、本発明のT-DNA又は構築物を含む本発明の植物は、本発明のT-DNA又は構築物の部分を含む植物であってもよく、この場合、このような部分は、本発明の対応する完全T-DNA又は構築物においてコードされるデサチュラーゼ及び/又はエロンガーゼの生成に十分である。このような植物は、最も好ましくは、先の文章で定義された本発明のT-DNAの部分に加えて、本発明の少なくとも1つの完全なT-DNA又は構築物を含む。このような植物は、以下、「部分二重コピー」植物とも呼ばれる。事象LBFDAUは、本発明のT-DNAの部分を含む植物の例であり、依然として本発明の植物である。一実施形態において、T_DNAは完全なT-DNAである。
本発明の好ましい植物は、1つ以上のd5Des、1つ以上のd6Elo、1つ以上のd6Des、1つ以上のd6Des、1つ以上のo3Des、1つ以上のd5Elo及び1つ以上のD4Des、好ましくは少なくとも1つのCoA依存性D4Des及び1つのリン脂質依存性d4Desをコードする1つ以上の遺伝子を含む発現カセットを含む、本発明の1つ以上のT-DNA(単数若しくは複数)又は構築物を含む。一実施形態において、少なくとも1つのT-DNAは、少なくとも1つのd12Desをコードする発現カセットをさらに含む。一実施形態において、T-DNA又は複数のT-DNAは、1つ以上のd5Des(Tc_GA)、o3Des(Pir_GA)、d6Elo(Tp_GA)及び/又はd6Elo(Pp_GA)をコードする1つ以上の発現カセットをさらに含み、括弧内には省略についての説明が示され、例えば、表130においては、例えば、d6Elo(Tp_GA)は、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼであり、d6Elo(Pp_GA)は、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼである。本発明のこのような植物は、3つ以上の世代にわたり、異なる増殖条件下で、特に高い量及び濃度のVLC-PUFAを示した。
本発明による好ましい植物は、油糧種子作物植物である。
最も好ましくは、本発明の植物は、「Uの三角形」に見出される植物であり、すなわち、アブラナ属:ブラシカ・ナプス(AACCゲノム、n=19)の植物は、アブラナ属の複2倍体植物であるが、ブラシカ・ラパ(AAゲノム、n=10)及びブラシカ・オレラセア(CCゲノム、n=9)のハイブリダイゼーションからもたらさせたと考えられる。ラシカ・ジュンセア(AABBゲノム、n=18)は、ブラシカ・ラパとブラシカ・ニグラ(BBゲノム、n=8)のハイブリダイゼーションからもたらされたと一般的に考えられている、アブラナ属の複2倍体植物である。いくつかの栽培条件下で、B.ジュンセアは、B.ナプスに対してある種の優れた形質を有する可能性がある。これらの優れた形質には、より高い収量、良好な干ばつ及び熱耐性、及び良好な耐病性が含まれ得る。ブラシカ・カリナタ(BBCCゲノム、n=17)は、アブラナ属の両複2倍体植物であるが、ブラシカ・ニグラ及びブラシカ・オレラセアのハイブリダイゼーションからもたらされたと考えられる。いくつかの栽培条件下で、B.カリナタは、B.ナプスに対して優れた形質を有する可能性がある。特に、B.カリナタは、同じT-DNAで形質転換された場合、B.ナプスと比較して少なくとも20%VLC-PUFA濃度の増加を可能にする。
本発明の植物は、好ましくは「キャノーラ」植物である。キャノーラは、カナダの植物育種者によって、その油及び粕の特質、特にその低レベルの飽和脂肪について特別に開発された菜種の遺伝的変種である。キャノーラは、一般的に、種子油中に2重量%未満のエルカ酸(デルタ13-22:1)及び油分なしの粕の1グラムあたり30マイクロモル未満のグルコシノレートを有するブラシカ種の植物を指す。典型的には、キャノーラ油は、パルミチン酸及びステアリン酸として知られる飽和脂肪酸、オレイン酸として知られる一価不飽和脂肪酸、並びにリノール酸及びリノレン酸として知られる多価不飽和脂肪酸を含み得る。キャノーラ油は、約7%(w/w)未満の全飽和脂肪酸(主にパルミチン酸及びステアリン酸)及び40%(w/w)超のオレイン酸(総脂肪酸パーセントとして)を含むことができる。伝統的に、キャノーラ作物には、ブラシカ・ナプス及びブラシカ・ラパの品種が含まれる。本発明の好ましい植物は、スプリング・キャノーラ(ブラシカ・ナプス亜種オレイフェラ変種ヌア(Brassica napus subsp. oleifera var. annua))及び冬キャノーラ(ブラシカ・ナプス亜種オレイフェラ変種ビエンニス(Brassica napus subsp. oleifera var. biennis))である。さらに、他のキャノーラタイプに類似した油及び粕の特性を有するキャノーラ品質のブラッシカ・ジュンカ品種が、キャノーラ作物ファミリーに加えられている(2001年10月16日に発行されたPottsらの米国特許第6,303,849号、Yaoらの米国特許第7,423,198号、Potts and Males, 1999、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)。同様に、ブラシカ・ナプスのキャノーラ品質の変種をブラシカ・ニグラと交配し、適切にその後代を選択することにより、任意選択で、B.カリナタ、B.ナプス及び/又はB.ニグラをさらに戻し交配した後、キャノーラ品質のB.カリナタ変種を確立することができる。
本発明はまた、アブラナ科、好ましくはアブラナ属の植物又はその種子であって、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有し、
i)本発明のT-DNA若しくは構築物及び/又はこのようなT-DNAの一部を含む、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタの植物を、前記T-DNA及び/又はその一部を含まない、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタの植物と交配して、F1雑種を得るステップ、
ii)少なくとも1世代にわたってF1雑種を自殖させるステップ、並びに
iii)VLC-PUFAを含む種子を製造することができる本発明のT-DNAを含む、ステップ(ii)の後代を同定するステップ
を含む方法によって調製される後代系統から得ることができる又は得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有する、アブラナ科、好ましくはアブラナ属の植物又はその種子を提供する。
好ましくは、後代は、本明細書の他の箇所に記載される油を含む種子を製造することができる(特に、本発明の油の定義を参照されたい)。より好ましくは、後代は、18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくは、EPAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも12%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも2%(w/w)であるように、VLC-PUFAを含む種子を製造することができる。また、好ましくは、18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量は、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくは、EPAの含量は、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも5%(w/w)であり、具体的には少なくとも8%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも1%(w/w)であり、具体的には少なくとも1.5%(w/w)である。
この方法は、アブラナ科、好ましくはアブラナ属の他のメンバーの遺伝物質を、本発明のT-DNA又は構築物を含む植物のゲノムに効果的に組み込むことを可能にする。この方法は、本発明のT-DNA又は構築物を、アブラナ科の他のメンバーに示される有益な形質に関与する遺伝物質と組み合わせるのに特に有用である。アブラナ科の他のメンバーの有益な形質は、本明細書に例示的に記載され、有益な形質の出現に関与する他の有益な形質又は遺伝子及び/又は調節エレメントは、他の箇所に記載されている場合がある。
本発明のT-DNA及び構築物又はその一部を含まない親植物は、好ましくは農学的にエリートな親である。特に、本発明は、異種材料を本発明の植物又は種子から異なるゲノムバックグラウンド、例えば異なる品種又は種に移すことを教示する。
特に、本発明は、T-DNA若しくはその一部(後者は、本発明の全T-DNAに加えて、本発明のT-DNAの一部を含む、本発明の植物に特に関連し、前記一部は、好ましくは、少なくとも1つの発現カセットを含み、発現カセットは、好ましくは、デサチュラーゼ又はエロンガーゼ、好ましくは、デルタ-12-デサチュラーゼ、デルタ-6-デサチュラーゼ及び/又はオメガ-3-デサチュラーゼをコードする遺伝子を含む)、又は構築物をブラシカ・カリナタ属の種に移し、あるいは、ブラシカ・カリナタ又はブラシカ・ニグラからの遺伝物質を、本発明のT-DNA及び/又はその一部若しくは1以上の部分を含む本発明の植物に移すことを教示する。本発明によれば、ブラシカ・ナプスに見出され、又はブラシカ・ナプスに見出されるホモログに加えて追加される、ブラシカ・ニグラの属を置換するそれらのホモログは、植物種子及びその油中のVLC-PUFA量をさらに増加させるのに特に役立つ。
また、本発明は、本発明のT-DNA及び/又はその一部を含む新規な植物品種を教示する。このような品種は、適切な交配パートナーを選択することにより、特に、例えば、選択された気候栽培条件、除草剤耐性、ストレス耐性、菌類耐性、草食動物耐性、油含量の増加若しくは減少、又は他の有益な特徴に適合させることができる。以下の実施例に示されるように、収穫時の油含量が、本発明の植物の油中のVLC-PUFA量及び/又は該油中のVLC-PUFA濃度を改善するように、同じ品種の対応する野生型植物の油含量より低い本発明の植物を提供することは、特に有益である。
また、本発明は、
i)本発明のトランスジェニック植物を、本発明のT-DNA又はその一部を含を含まない、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタの植物と交配して、F1雑種を得るステップ、
ii)少なくとも1世代にわたってF1雑種を自殖させるステップ、並びに
iii)VLC-PUFAを含む種子を製造することができる本発明のT-DNAを含む、ステップ(ii)の後代を同定するステップ
を含む方法によって調製される後代系統から得ることができる又は得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有する植物を作製する方法を提供する。
好ましくは、後代は、本明細書の他の箇所に記載される油(特に、本発明の油)を含む種子を製造することができる。より好ましくは、後代は、18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくはEPAの含量が、少なくとも8%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、30%(w/w)の油分である、好ましくは35%(w/w)の油分である、より好ましくは40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも1%(w/w)であるように、VLC-PUFAを含む種子を製造することができる。
本方法は、本発明の植物の新規改変体及びトランスジェニック種、並びにそれらの種子の作製を可能にする。このような植物及び種子は、本発明の上記の利点を示す。好ましくは、EPAの含量は、油の総脂質含量の少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも8重量%、さらにより好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも13%(w/w)である。また、好ましくは、DHAの含量は、油の総脂質含量の少なくとも1.0重量%、より好ましくは少なくとも1.5%、さらにより好ましくは少なくとも2%(w/w)である。本発明は、最初に、農業条件下で、すなわち、本発明の植物が植えられた少なくとも1haの商業的な圃場の種子から得られる実際の収量を代表して、種子中にこのような高レベルのVLC-PUFAを確実に達成することを可能にし、ここで、植物は、前記植物中のEPA及び/又はDHAの生成のための経路を実施するための遺伝子の定義されたコピー数を有し、そのコピー数は低く、すなわち単一コピー又は部分的な二重コピーである。
本発明の植物はまた、戻し交配(非トランスジェニックである、同質遺伝子の親系統への交配)によって、Uの三角形の他の生殖質と交配することによって、得ることができる又は得られる植物を含む。したがって、本発明は、
i)本発明のトランスジェニック植物(「非再発性親」とも呼ばれる)を、本発明のT-DNAに含まれる遺伝子を発現しない、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタである親植物と交配して、雑種後代を得るステップ、
ii)雑種後代を親と再度交配して、別の雑種後代を得るステップ、
iii)任意選択でステップii)を反復するステップ、及び
iv)本発明のT-DNAを含む雑種後代を選択するステップ
を含む方法によって調製される後代系統から得ることができる又は得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有する植物を作製する方法を提供する。
戻し交配法、例えば、上記されるものは、本発明のT-DNAを含む植物系統に特徴を改善又は導入するために、本発明とともに使用することができる。このような雑種後代は、所定のパラメータを満たすステップiv)において選択される。それにより、本発明の戻し交配方法は、再発性親の所望の遺伝物質の残りの本質的に全て、したがって、親系統の所望の生理学的及び形態学的な構成を維持しながら、非再発性親から、所望の遺伝子、又は好ましくは本発明のT-DNAを有する再発性親の遺伝物質の修飾を有利に促進する。次に、選択された雑種後代は、好ましくは、繁殖され、本明細書に記載される系統を構成する。ステップii)の反復のために有用な後代の選択は、ゲノムマーカーの使用によってさらに促進され得る。例えば、このような後代は、前の交配ステップで得られた他の後代と比較して、ステップii)の反復のために選択され、大部分のマーカーはまた、親において見出され、及び/又は僅かなマーカーはまた、本発明の所望のT-DNA若しくはその一部を除いて、非再発性親において見出される。
好ましくは、例えば、本発明のT-DNAの追加部分を雑種植物の遺伝物質に組み込むことによって、本発明のT-DNAを含み、さらにより好ましくは、また本発明の非再発性親由来の少なくとも1つの更なる発現カセットを含む雑種後代が選択される。
さらに好ましくは、親の所望の形態学的及び生理学的特性の本質的に全てが、同一環境条件下で栽培された場合に5%の有意水準で決定される非再発性親由来の遺伝物質に加えて、変換された植物において回復される雑種後代が得られる。
さらに好ましくは、本明細書の他の箇所に記載される油(すなわち、本発明の油)を含む種子を製造する雑種後代が選択される。特に、18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくはEPAの含量が、少なくとも8%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、30%(w/w)の油分である、好ましくは35%(w/w)の油分である、より好ましくは40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも1%(w/w)であるように、VLC-PUFAを含む種子を製造する雑種後代が選択される。
このような種子VLC-PUFA含量は、単一の種子から及び個々の植物の種子から測定されるのではないが、少なくとも100個の植物、さらにより好ましくは少なくとも200個の植物、さらにより好ましくはその半分が異なる年に圃場試験において栽培された少なくとも200個の植物の種子VLC-PUFA含量、特に、少なくとも100個の植物の、さらにより好ましくは少なくとも200個の植物の、さらにより好ましくはその半分が異なる年に圃場試験において栽培された少なくとも200個の植物の大量(bulked)の種子VLC-PUFA含量の数平均に言及されるものであることを理解する必要がある。
特定の非再発性親の選択は、戻し交配の目的に依存する。主要な目的の1つは、いくつかの商業的に望ましく、農業的に重要な形質を追加することである。
用語「系統」とは、その指定を共有する個体間の全体的な変動をほとんど示さない植物群を意味する。「系統」は、一般的に、少なくとも1つの形質について個体間の遺伝的変異をほとんど示さない又は全く示さない植物群を指す。本出願で使用される「DH(倍加半数体)系統」は、一倍体組織を培養し、次に細胞分裂を伴わずに染色体含量を倍加することによって生じる植物群であって、各染色体対が2つの重複染色体で構成される、二倍体染色体数を有する植物を生じる植物群を指す。したがって、DH系統は、通常、形質について個体間で遺伝的変異をほとんど示さない又は全く示さない。非再発性親における本発明のT-DNAにもともと含まれる1つ以上の遺伝子を含む系統はまた本発明の植物を構成する。
本発明はまた、
i)本発明の植物を栽培して油を含有する種子を得るステップ、
ii)前記種子を収穫するステップ、及び
iii)ステップii)において収穫された前記種子から油を抽出するステップ
を含む、植物油を製造する方法に関する。
好ましくは、油は、本明細書の以下においてより詳細に記載される油(すなわち、本発明の油)である。より好ましくは、油は、総脂質含量に基づいて少なくとも1重量%のDHA含量及び/又は総脂質含量に基づいて少なくとも8重量%のEPA含量を有する。また、好ましくは、油は、総脂肪酸含量に基づいて少なくとも1重量%のDHA含量及び/又は総脂肪酸含量に対して少なくとも8重量%のEPA含量を有する。
再度好ましくは、EPAの含量は、油の総脂質含量の少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも13重量%である。また、好ましくは、DHAの含量は、油の総脂質含量の少なくとも1.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも2%(w/w)である。本明細書に記載されるように、本発明の植物は、植物油を生成するこのような方法の目的のために、好ましくは本発明のT-DNA(又は構築物)及び任意選択でその1つ以上のさらなる部分を含み、ここで、1つ以上の部分はそれぞれ、本発明のT-DNAの少なくとも1つの発現カセットを含む。
本発明はまた、本発明の植物の部分に関する。用語「植物の部分」には、本発明の植物由来のものが含まれ、細胞、組織、根、茎、葉、生きていない収穫物、サイレージ、種子、種子粕及び花粉などの植物部分が挙げられる。好ましくは、このような植物部分は、本発明のT-DNAを含み、及び/又は総脂質含量の少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも13%(w/w)のEPA含量を含む。また、好ましくは、DHAの含量は、植物部分の総脂質含量の少なくとも1.0重量%、より好ましくは少なくとも1.5%、さらにより好ましくは少なくとも2%(w/w)である。野生型植物と比較して、本発明の植物の部分は、本発明の高い含量のEPA及び/若しくはDHA、又は油若しくは脂質を含み、縦お場、豪州特許出願公開第2011289381A号及びその特許ファミリーのメンバーに記載されるように、飼料目的のためにも、例えば、水産養殖用食餌の目的に特に有用である。
本発明の植物は、必ずしも本発明の完全なT-DNAを含む必要はない。上述されるように、交配(又は戻し交配)法により、ある系統の任意の遺伝物質を別の系統に移すことが可能である。したがって、このような交配又は戻し交配を適用することによって、本発明の植物(本発明のT-DNAを含むこのような植物)に含まれる1つ以上の、さらにはすべての発現カセットを別の植物系統に移すことが可能であり、それによって、例えば、左若しくは右の境界エレメント(又はその両方)及び/又はスペーサーを消失させることが可能である。
したがって、本発明はまた、実施例24に示されるプライマーにハイブリダイズする遺伝物質を含む植物を提供する。
また、本発明は、遺伝物質に挿入された異種核酸セグメントを含む植物を提供する。挿入は、本発明によれば、以下に列挙された隣接領域の1つに、又は一対の隣接領域間にある。植物間の変動のために、各隣接領域は、少なくとも100ntの連続ストレッチ全体で計算されたせいぜい10%、好ましくは、100ntについて少なくとも-より好ましくは同一性のパーセントが増加する-90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99、好ましくは100%同一性である、連続ストレッチ全体で計算されたせいぜい5%で、以下に示された隣接領域と異なっていてもよい。さらにより好ましくは、隣接領域(複数可)は、以下に示される隣接領域の断片と同一である50個の連続ヌクレオチドについて、少なくとも-より好ましくは同一性のパーセントが増加する-90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99、好ましくは100%同一性を含み、さらにより好ましくは、連続する同一ヌクレオチドの長さは少なくとも100である。
実施例24は、その表に列挙された各事象について得られた全ての遺伝子座の隣接配列の全ての概要を提供する。さらに、事象特異的な検出のための事象特異的なプライマー及びプローブは表176に開示される。それらのプライマー及びプローブを使用する方法は、実施例24に記載される。
実施例に示されるように、これらの隣接領域における挿入は、現在、種子中のVLC-PUFAの驚くほど高い生成をもたらすことが判明していて、このような生成は、多数の世代にわたって、異なる生育条件下で安定である。したがって、また、これらの挿入位置に他の遺伝物質を挿入することにより、植物ゲノムの他の位置における挿入と比較して、挿入された遺伝子の安定した高発現をもたらす。
本発明はまた、効率的な代謝VLC-PUFA合成経路の確立及び最適化に関する。この目的のために、本発明は、
i)脂肪酸部分及び頭部基を含む検出可能に標識された分子をデサチュラーゼに提供するステップ、
ii)デサチュラーゼを標識された分子上で反応させるステップ、及び
iii)不飽和生成物を検出するステップ
を含む、デサチュラーゼ反応特異性を分析する方法を提供する。
標識された分子は、好ましくは、脂肪酸-補酵素A又は脂肪酸-リン脂質であり、後者は、好ましくは、リゾホスファチジルコリンに結合した脂肪酸である。この方法は、有利には、補酵素A結合脂肪酸が不飽和であるかどうか及び/又はリン脂質結合脂肪酸が不飽和であるかどうかを検出することによって、デサチュラーゼ頭部選択又は頭部特異性さえも決定することを可能にする。
好ましくは、デサチュラーゼは、生物、好ましくは酵母のミクロソーム画分として提供される。対象とするデサチュラーゼを発現するトランスジェニック酵母は、調製及び取り扱いが容易であり、機能的デサチュラーゼを含むミクロソーム画分は、大きな負担なしに、確実に及び再現性よく調製することができる。ミクロソーム画分、特に酵母の、最も好ましくはサッカロマイセス・セレビシエのミクロソーム画分はまた、酵母の天然LPCATを用いて、脂肪酸-補酵素A分子を他の頭部基に結合した脂肪酸に変換することを可能にする。同様に、ミクロソーム画分は、他の細胞及び生物から調製することができる。
好ましくは、分子は、非放射性同位体の代わりに放射性同位体を含ませることによって検出可能に標識される。同位体は、好ましくは[14C]である。このような標識は、検出が容易であり、生化学反応に介在せず、実質的に任意の炭素含有分子に取り込まれ、それにより、不飽和生成物を感度良く検出し及び特徴付けることができる。
脂肪酸部分は、好ましくはPUFA部分であり、より好ましくはVLC-PUFA部分であり、最も好ましくはVLC-PUFA部分である。このようにして、経済的に重要なデサチュラーゼの頭部基の選択又は特異性は、生きている生物又は生きている細胞の誤りがちであり及び厄介な給餌に頼る必要なしに決定することができる。
標識された分子上でデサチュラーゼを反応させる。デサチュラーゼが標識された分子を基質として受け入れることができる場合、不飽和化反応が行われる。好ましくは、この方法は、陽性対照として、デサチュラーゼの基質であることが確認された標識分子を含むことによって反復される。
検出は、好ましくはクロマトグラフィー、最も好ましくは薄層クロマトグラフィーを使用して達成される。この技術は当業者に周知であり、容易に入手可能であり、非常に感度が良く、非常に類似した分子間でさえも区別することができる。したがって、陽性対照分子が目的とする分子と類似している場合でさえも、不飽和化生成物の明確な検出(分子の不飽和化が生じた場合)が依然として可能である。
上記の方法は、各デサチュラーゼ、ミクロソーム画分の種類(例えば、酵母、植物細胞由来など)、脂肪酸部分及び頭部基に関する一群の特異性データの準備を可能にする。したがって、本方法は、所与の必要性についてデサチュラーゼを選択し、例えば、エロンガーゼへの更なる提示のために植物細胞中のCoA結合脂肪酸を受け入れるために使用することができる。この方法はまた、目的とする生物又は器官、例えば、酵母、植物葉細胞又は植物種子細胞におけるデサチュラーゼの基質特異性を確立することを可能にする。
本発明はまた、
i)検出可能に標識された伸長基質及び伸長されるべき分子をエロンガーゼに提供するステップ、
ii)エロンガーゼにより、標識された伸長基質を使用して伸長させるべき分子を伸長させるステップ、及び
iii)伸長生成物を検出するステップ
を含む、エロンガーゼの反応特異性を分析するための方法を提供する。
特に言及しない限り、エロンガーゼ反応特異性を分析するための方法は、対応する理由により、デサチュラーゼ反応特異性を分析するための方法に対応させて行われる。伸長基質は、好ましくはマロニル-CoAである。伸長基質は、好ましくは放射能標識され、最も好ましくは[14C]マロニル-CoAである。放射性標識は、伸長生成物の容易であり、感度の良い検出を可能にする。また、伸長される分子の代わりに伸長基質を標識することにより、伸長されるべき分子の混合物をエロンガーゼに提示させることができ、伸長生成物だけが、取り込まれたかなりの量の標識を容易に検出できるようになる。したがって、単一の反応容器において、伸長される多数の潜在的分子をアッセイして、これらの分子のどれが実際に伸長されているか、及びそれぞれの分子に対するエロンガーゼの相対的親和性を決定することができる。
両方の方法を組み合わせることにより、不飽和化及び伸長反応の複雑な配列さえも分析することが可能である。したがって、本発明はまた、
i)代謝経路の酵素、及び前記経路の1つ以上の第1の酵素によって使用される1つ以上の基質を提供するステップ、
ii)酵素及び基質を反応させて生成物を生成し、次に、さらに生成物を経路の酵素に潜在的基質として曝露するステップ、及び
iii)生成物の蓄積を決定するステップ
を含む、経路を最適化する方法を提供する。
この方法は、特に、デサチュラーゼ及びエロンガーゼを提供して経路を形成することを可能にする。これは、経路の生成物(複数可)及び望ましくない副生成物の収率を決定するのに有用である。また、同じ代謝機能を果たす2つ以上の異なる酵素を提供することにより、例えば、特定の不飽和化ステップ、例えば、デルタ-5の不飽和化では、1を超える種類の酵素の存在が生成物形成、特に生成物形成速度に影響を及ぼすかどうかを分析することが可能である。このような分析のために、結果を、少なくとも2つの酵素のうちの1つのみで実施される方法と比較する。したがって、同じ代謝機能を行う酵素の添加が収量又は生成物形成速度の増加をもたらす場合、この代謝ステップは遺伝子用量効果の対象となる。生物における経路を最適化するために、必要に応じて2つ以上の酵素を使用して経路ステップを実施するように、相応に努める。
また、この方法は、有利には、対象とする酵素の作用様式を決定することを可能にする。この目的のために、ヘルパー酵素は、標的酵素のための基質を生成するために提供される。ヘルパー酵素の作用様式は公知である。次に、ヘルパー酵素は、標的酵素の基質として用いることができる生成物にする基質とともに提供される。標的酵素による生成物の生成は、好ましくは、時間あたりの生成物の量、又は生成物の最終量をヘルパー酵素によって変換された基質の量で割って測定することによって決定される。次に、異なる作用機序のヘルパー酵素を用いてこの方法を反復し、標的酵素による生成物の生成も決定される。各作用様式に対する標的酵素による生成物生成を比較することにより、標的酵素の作用様式は、標的酵素による生成物の最も強い生成を生じさせるヘルパー酵素の作用様式であると定義される。
例えば、標的デサチュラーゼの作用様式を決定するために、アシルCoA基質を利用し、アシル-CoA生産物を生成するというテキストブックの知識であるヘルパーエロンガーゼが提供される。次に、標的デサチュラーゼによる生成物生成を測定する。別のステップにおいて、ホスファチジルコリン結合脂肪酸を生成することが確立されたヘルパーデサチュラーゼが提供される。再度、標的デサチュラーゼによる生成物生成を測定する。標的デサチュラーゼの生成物生成を比較すると、標的デサチュラーゼは、CoA結合脂肪酸がヘルパー酵素によって提供される条件下での標的デサチュラーゼの生成物生成が、ホスファチジルコリン結合脂肪酸がヘルパー酵素によって提供される条件下より激しい場合(例えば、高い変換効率)に、CoA依存性デサチュラーゼであると定義することができる。
したがって、本発明はまた、
i)標的デサチュラーゼの基質を生成するためにエロンガーゼを提供し、標的デサチュラーゼの変換効率を決定するステップ、及び
ii)標的デサチュラーゼの基質を生成するために非CoA依存性デサチュラーゼを提供し、標的デサチュラーゼの変換効率を決定するステップ、及び
iii)ステップi)及びii)の標的デサチュラーゼ変換効率を比較するステップ
を含む、標的デサチュラーゼのCoA依存性を決定する方法を提供する。
標的デサチュラーゼの変換効率がステップii)におけるよりもステップi)において大きい場合、標的デサチュラーゼはCoA依存性である。当然に、両方のステップは同等の条件下で実施されなければならず、特に、標的デサチュラーゼの基質制限を避けなければならない。
本方法はまた、標的デサチュラーゼの基質を使用するエロンガーゼを提供することによって実施することができる。したがって、本発明は、
i)標的デサチュラーゼの生成物を伸長させるためにエロンガーゼを提供し、エロンガーゼの変換効率を決定するステップ、
ii)非CoA依存性であることが知られている比較デサチュラーゼの生成物を伸長させるためにエロンガーゼを提供し、エロンガーゼの変換効率を決定するステップ、
iii)ステップi)及びii)のエロンガーゼ変換効率を比較するステップ
を含む、標的デサチュラーゼのCoA依存性を決定する方法を提供する。
エロンガーゼ変換効率がステップii)におけるよりもステップi)において高い場合、標的デサチュラーゼはCoA依存性である。いかなる特定の理論にも束縛されることなく、このような場合、不飽和化された生成物を伸長可能なCoA結合脂肪酸に変換する必要がないことから、不飽和化された生成物は、蓄積せずにエロンガーゼによって即座に利用することができる。当然に、両方のステップは同等の条件下で実施されなければならず、特に、エロンガーゼの基質制限を避けなければならない。
本発明はまた、前述の方法によって得ることができる多価不飽和脂肪酸を含む油に関する。さらに、本発明はまた、前述の方法によって得ることができる多価不飽和脂肪酸を含む脂質又は脂肪酸組成物に関する。
用語「油」は、トリグリセリドにエステル化される不飽和及び/又は飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物を指す。好ましくは、本発明の油中のトリグリセリドは、上記で言及されたPUFA又はVLC-PUFA部分を含む。エステル化されたPUFA及び/又はVLC-PUFAの量は、好ましくは約30%であり、50%の含量がより好ましく、60%、70%、80%又はそれを超える含量がさらにより好ましい。油は、遊離脂肪酸、好ましくは、上記で言及したPUFA及びVLC-PUFAをさらに含み得る。分析のために、脂肪酸含量は、例えば、エステル交換によって脂肪酸をメチルエステルに変換した後のGC分析によって決定することができる。油又は脂肪中の種々の脂肪酸の含量は、特に、供給源に応じて変化し得る。しかしながら、油は、PUFA及び/又はVLC-PUFAの組成及び含量に関して、天然に存在しない組成を有する。植物油中の脂肪酸の大部分は、トリアシルグリセリドにおいてエステル化されていることは公知である。したがって、本発明の油において、PUFA及びVLC-PUFAはまた、好ましくは、トリアシルグリセリド中でエステル化された形態で生じる。油のトリグリセリド中のPUFA及びVLC-PUFAのこのような独特な油組成及び独特なエステル化パターンは、上記の特定される本発明の方法を適用することによってのみ得ることができることは理解される。さらに、本発明の油は、同様に、他の分子種も含むことができる。具体的には、それは、本発明のポリヌクレオチド又はベクターの微量不純物(及び、したがって少量)を含み得るが、しかしながら、PCRなどの高感度技術によってのみ検出することができる。
上記されるように、これらの油、脂質又は脂肪酸組成物は、好ましくは、100%に基づいて、及び生物の総脂肪酸含量に基づいて各場合において、4〜15%のパルミチン酸(実施形態では6〜15%のパルミチン酸)、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のバクセン酸、0.1〜1%のアラキドン酸、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%の一価不飽和脂肪酸、及び60〜85%の多価不飽和脂肪酸(好ましくは重量比)を含む。脂肪酸エステル又は脂肪酸混合物中に存在する好ましいVLC-PUFAは、好ましくは、総脂肪酸含量に基づいて、少なくとも5.5〜20%のDHA及び/又は9.5〜30%のEPAである(好ましくは重量比)。
本発明による油、脂質又は脂肪酸は、好ましくは、生産宿主細胞、生物、有利には、植物、例えば、特に、油料穀物、例えば、ダイズ、アブラナ、ココナツ、油ヤシ、ベニバナ、アマ、アサ、ヒマシ油植物、カレンデュラ、ピーナッツ、カカオ豆、ヒマワリ又は上記の他の単子葉若しくは双子葉植物の油作物の総脂肪酸含量に基づいて、DHAの少なくとも1%、1.5%、2%、3%、4%、5.5%、6%、7%又は7.5%、より好ましくは少なくとも8%、9%、10%、11%又は12%、及び最も好ましくは少なくとも13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%(好ましくは重量比)、又は、EPAの少なくとも5%、8%、9.5%、10%、11%又は12%、より好ましくは少なくとも13%、14%、14.5%、15%又は16%、及び最も好ましくは少なくとも17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%又は30%(好ましくは重量比)を含む。一実施形態において、本発明による油、脂質又は脂肪酸は、好ましくは、生産宿主細胞、生物、有利には、植物、例えば、特に、油料穀物、例えば、ダイズ、アブラナ、ココナツ、油ヤシ、ベニバナ、アマ、アサ、ヒマシ油植物、カレンデュラ、ピーナッツ、カカオ豆、ヒマワリ又は上記の他の単子葉若しくは双子葉植物の油作物の総脂肪酸含量に基づいて、少なくとも1%のDHA及び/又は少なくとも8%のEPAを含む。
好ましくは、本発明の油、脂質又は脂肪酸組成物は、植物油、植物脂質、又は植物脂肪酸組成物である。好ましくは、前記油又は脂質は、植物から、より好ましくは植物又は複数の植物(特に、本発明の植物又は複数の植物)の種子から抽出され、得られ、得ることができ又は生成される。このように油又は脂質は、本発明の方法によって得ることができる。特に、植物油又は植物脂質は、抽出された植物油又は脂質である。また、好ましくは、上記油又は脂質は、植物から、より好ましくは、植物又は複数の植物(特に、本発明の植物)の種子又は大量の(bulked)種子のバッチから抽出され、得られ、得ることができ又は生成される。
好ましくは、油又は脂質に関連して「抽出される」という用語は、植物から、特に植物又は植物の種子から抽出された油又は脂質を指す。より好ましくは、油又は脂質に関連して「抽出される」という用語は、植物から、特に植物若しくは複数の植物の種子又は大量の(bulked)種子のバッチから抽出された油又は脂質を指す。このような油又は脂質は、粗製組成物であり得る。しかしながら、精製された油又は脂質であってもよく、これらは、例えば、水は除去されている。一実施形態において、油又は脂質は、他の供給源由来の脂肪酸と混和されない。
本発明の油又は脂質はまた、植物の種子中の油又は脂質であってもよい。好ましくは、上記植物はトランスジェニック植物である。より好ましくは、上記植物は本発明の植物である。特定の好ましい実施形態において、植物はアブラナ植物である。
本発明の油又は脂質は、脂肪酸を含む。特に、油又は脂質は、エステル化された形態の脂肪酸を含む。したがって、脂肪酸はエステル化される。好ましくは、本発明の油又は脂肪酸は、以下の脂肪酸(エステル化された形態である)の1つ以上を含む:オレイン酸(OA)、リノール酸(LA)、ガンマ-リノレン酸(GLA)、アルファ-リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸(SDA)、20:2n-9((Z,Z)-8,11-エイコサジエン酸)、ミード酸(20:3n-9)、ジホモ-ガンマ-リノレン酸(DHGLA)、エイコサペンタエン酸(ティムノドン酸、EPA、20:5n-3)、クルパノドン酸(DPA n-3)、及びDHA((Z,Z,Z,Z,Z,Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸)。より好ましくは、油又は脂質は、EPA、DHA及びミード酸を含む。さらにより好ましくは、油又は脂質はEPA、DHA、ミード酸、DPA n-3及びDHGLAを含む。最も好ましくは、油又は脂質は、この段落で述べた脂肪酸を含む。
特に、本発明の油又は脂質は、EPAとDHAの両方を含むことが想定される。EPA及びDHAの好ましい含量は、本明細書の他の箇所に記載されている。
さらに、油又は脂質は、EPA、DHA及びDPA n-3を含むことが想定される。一実施形態において、油又は脂質は、ミード酸をさらに含む。
また、油又は脂質は、EPA、DHA及びDHGLAを含むことが想定される。一実施形態において、油又は脂質は、ミード酸をさらに含む。
さらに、油又は脂質は、EPA、DHA、DPA n-3及びDHGLAを含み得る。一実施形態において、油又は脂質は、ミード酸をさらに含む。
したがって、本発明の発現カセット、構築物又はT-DNAは、植物、種子及び/又は植物の種子油中の上記脂肪酸の1つ以上の含量を、対照とする植物と比較して、調節するため、特に増加させるために使用することができる。
本発明の脂質又は油の総脂肪酸含量における上記の脂肪酸の好ましい含量は、以下でさらに記載される。以下においては、含量の範囲が示される。脂肪酸の含量(レベル)は、(総脂肪酸の総重量)の、特に(油又は脂質中に存在する総脂肪酸の総重量)のパーセント(特定の脂肪酸の重量)として表される。したがって、含量は、好ましくは、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の重量パーセント(%(w/w))として与えられる。したがって、「%」は、好ましくは、脂肪酸の総重量と比較した脂肪酸(又は脂肪酸の組合せ)について「%(w/w)」を意味する。
好ましくは、脂肪酸は、エステル化された形態で存在する。したがって、脂肪酸は、エステル化された脂肪酸である。
好ましくは、油又は脂質は、オレイン酸(OA)を含む。好ましくは、オレイン酸(OA)の含量は、総脂肪酸含量の10%〜45%、より好ましくは20%〜38%、最も好ましくは26%〜32%である。
好ましくは、油又は脂質は、リノール酸(LA)を含む。好ましくは、リノール酸(LA)の含量は、総脂肪酸含量の5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、最も好ましくは20%〜35%である。
好ましくは、油又は脂質は、ガンマ-リノレン酸(GLA)を含む。好ましくは、ガンマ-リノレン酸(GLA)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜6%、より好ましくは0.1%〜3%、最も好ましくは0.5%〜2%である。
好ましくは、油又は脂質は、アルファ-リノレン酸(ALA)を含む。好ましくは、アルファ-リノレン酸(ALA)の含量は、総脂肪酸含量の2%〜20%、より好ましくは4%〜10%、最も好ましくは4%〜7%である。
好ましくは、油又は脂質は、ステアリドン酸(SDA)を含む。好ましくは、ステアリドン酸(SDA)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜10%、より好ましくは0.1%〜5%、最も好ましくは0.1%〜1%である。
SDAの含量は驚くほど低かった。一実施形態において、SDAの含量は、2%より低く、特に1%よりも低い。
好ましくは、油又は脂質は20:2n-9を含む。好ましくは、20:2n-9((Z,Z)-8,11-エイコサジエン酸)の含量は、総脂肪酸含量の0.1〜3%、より好ましくは0.1〜2%、最も好ましくは0.1〜1%である。
好ましくは、油又は脂質はミード酸(20:3n-9)を含む。好ましくは、ミード酸(20:3n-9)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜2%、より好ましくは0.1%〜1%、最も好ましくは0.1%〜0.5%である。別の実施形態において、ミード酸(20:3n-9)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜0.3%である。
好ましくは、油又は脂質は、ジホモ-ガンマ-リノレン酸(DHGLA)を含む。好ましくは、ジホモ-ガンマ-リノレン酸(DHGLA)の含量は、総脂肪酸含量の0.1〜10%、より好ましくは1〜6%、最も好ましくは1〜5%、特に2〜4%である。この中間体の蓄積は、必ずしも予期されるものではなかった。
好ましくは、油又は脂質はEPA(20:5n-3)を含む。好ましくは、エイコサペンタエン酸(ティムノドン酸、EPA、20:5n-3)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜20%、より好ましくは2%〜15%、最も好ましくは5%〜10%である。
さらに、EPA含量は、総脂肪酸含量の5%〜15%であることが想定される。
好ましくは、油又は脂質はクルパノドン酸(DPA n-3)を含む。好ましくは、クルパノドン酸(DPA n-3)の含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜10%、より好ましくは1%〜6%、最も好ましくは2%〜4%である。さらに、DPAn-3の含量は、総脂肪酸の少なくとも2%であり得る。
好ましくは、油又は脂質はDHAを含む。好ましくは、DHAの含量は、総脂肪酸含量の1%〜10%、より好ましくは1%〜4%、最も好ましくは1%〜2%である。
さらに、DHAの含量は、総脂肪酸含量の1%〜3%であることが想定される。
好ましい実施形態において、本発明の油又は脂質は、総脂肪酸含量の1%〜4%のDHA含量及び2%〜15%のEPA含量を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の油又は脂質は、総脂肪酸含量の1%〜3%のDHA含量及び5%〜15%のEPA含量を有する。
別の好ましい実施形態において、本発明の油又は脂質は、総脂肪酸含量の1%〜2%のDHA含量及び5%〜10%のEPA含量を有する。
本発明の油又は脂質はまた、16:0(パルミチン酸)及び/又は18:0(ステアリン酸)などの飽和脂肪酸を含んでもよい。16:0及び18:0の含量は、野生型植物と比較して有利に低い。低飽和脂肪は、健康の観点から望ましい特徴である。
したがって、油又は脂質は16:0を含み得る。好ましくは、16:0の含量は、総脂肪酸含量の6%未満である。より好ましくは、16:0の含量は、総脂肪酸含量の3%〜6%である
したがって、油又は脂質は18:0を含み得る。好ましくは、18:0の含量は、総脂肪酸含量の4%未満、特に3%未満である。より好ましくは、18:0の含量は、総脂肪酸含量の1.5%〜4%、特に2%〜3%である。
本発明の油又は脂質の一実施形態において、EPA、DHA及びDPA n-3の総含量は、好ましくは、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の6%超であり、SDA含量は2%よりも低い。より好ましくは、EPA、DHA及びDPA n-3の含量は、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の7%〜14%であり、SDAの含量は1%よりも低い。
本発明の油又は脂質の別の好ましい実施形態において、DPA n-3の含量は、好ましくは、総脂肪酸含量の少なくとも2%であり、EPA及びDHAの総含量は、総脂肪酸含量の少なくとも3%である。より好ましくは、DPA n-3の含量は、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の2%〜5%であり、EPA及びDHAの総含量は6%〜12%である。
本発明の油又は脂質の一実施形態において、16:0の含量は、好ましくは、総脂肪酸含量の6%よりも低くく、EPA及びDHAの総含量は。総脂肪酸含量の少なくとも3%である。より好ましくは、16:0の含量は、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の2%〜6%であり、EPA及びDHAの総含量は6%〜12%である。
本発明の油又は脂質の一実施形態において、16:0の含量は、好ましくは総脂肪酸含量のよりも低く、EPA、DHA、DPA n-3の総含量は、総脂肪酸含量の少なくとも6%である。より好ましくは、16:0の含量は2%〜5%であり、EPA、DHA、及びDPAの総含量は、油又は脂質中に存在する総脂肪酸の8%〜14%である。
興味深いことに、種子、特に種子油中の総脂肪酸のEPA含量は、DHA含量よりも大きかった。これは必ずしもそうではありません。これは、いつでもあてはまるものではなく、例えば、米国特許出願公開第2015/0299676A1号及び国際公開第2015/089587号を参照されたい。したがって、本発明の油及び脂質は、DHAよりも多くのEPAを含むことが特に想定される。したがって、EPAの含量はDHAの含量よりも大きい。好ましくは、総脂肪酸含量のEPA含量は、総脂肪酸含量のDHA含量の3〜7倍である。より好ましくは、総脂肪酸含量のEPA含量は、総脂肪酸含量のDHA含量の4〜5倍である。
好ましくは、全てのオメガ-3多不飽和[n-3(C18-C22)]脂肪酸の総含量は、総脂肪酸含量の1%〜40%、より好ましくは10%〜30%、最も好ましくは15%〜22%である。
さらに好ましくは、全てのオメガ-6多価不飽和[n-6(C18-C22)]脂肪酸の総含量は、総脂肪酸含量の0.1%〜50%、より好ましくは20%〜50%、最も好ましくは37%〜42%である。
本発明の油又は脂質は、野生型の対照ブラシカ・ナプス脂質又は油に天然には存在しない脂肪酸を含み得て、総脂肪酸含量の好ましくは10%超、より好ましくは12%〜25.2%、最も好ましくは16%〜25.0%である。好ましくは、天然には存在しない脂肪酸は、18:2n-9、GLA、SDA、20:2n-9、20:3n-9、20:3n-6、20:4n-6、22:2n-6、22:5n-6、22:4n-3、22:5n-3、及び22:6n-3である。したがって、本発明の油又は脂質中のこれらの脂肪酸の総含量は、好ましくは総脂肪酸含量の10%超、より好ましくは12%〜25.2%、最も好ましくは16%〜25.0%である。
実施例32において、特定のTAG(トリアシルグリセリド)種が減少し、特定のTAG種が本発明の植物の種子(特に本発明の植物から抽出された種子油)において増加したことが示されている。
野生型のKumily植物における5つの最も豊富なTAG(トリアシルグリセリド)種は、TAG(18:1 18:1 18:3)、TAG(18:1 18:2 18:3)、TAG(18:1 18:1) 18:2)、TAG(18:1 18:1 18:1)、及びTAG(18:1 18:2 18:2)であった。一緒にすると、これらは、全てのTAG種(野生型植物の油中)の64.5%を占める。これらの種は、本発明の植物において特異的に減少する(実施例32、表192を参照されたい)。トランスジェニックのキャノーラ試料中の2つの最も豊富なDHA含有TAG種は、TAG(18:1 18:22:6)及びTAG(18:2 18:2 22:6)であった。興味深いことに、EPA及びDHAは、18:1及び18:2と一緒にTAGに最も頻繁にエステル化されることが見出されている。この構成は、複数のPUFAを含むTAG種よりも酸化的に安定である可能性が高い(Wijesundra 2008、Lipid Technology 20(9):199-202参照)。詳細は、実施例32及び表192を参照されたい。
したがって、本発明の油又は脂質は、特定のTAG種を含み得る。好ましくは、油又は脂質は、以下のTAG種:TAG(18:1 18:2 20:5)、TAG(18:1 18:1 20:5)、TAG(18:2 18:2 20:5)、TAG(18:1 18:2 22:6)及びTAG(18:2 18:2 22:6)の1つ以上を含む。より好ましくは、本発明の油又は脂質油は、前述のTAG種の全てを含む。代替的又は追加的に、本発明の油又は脂質は、TAG(18:118:1 22:6)を含み得る。
本明細書で使用されるトリアシルグリセリドの命名は、当該技術分野において周知であり、当業者には十分に理解されている。トリアシルグリセリドTAG(x1:y1x2:y2:x3:y3)は、好ましくは、トリアシルグリセリドが3つの脂肪酸エステル残基を含むことを意味するものとして示され、ここで、1つの脂肪酸エステル残基はx1:y1であり、この残基がx1炭素原子を含み、y1が二重結合を含むことを意味し、1つの脂肪酸エステル残基はx2:y2であり、この残基がx2炭素原子を含み、y2が二重結合を含むことを意味し、1つの脂肪酸エステル残基はx3:y3であり、この残基がx3炭素原子を含み、y3が二重結合を含むことを意味する。好ましくは、これらの脂肪酸エステル残基のいずれかは、グリセロールの任意の前のヒドロキシル基に結合してもよい。
本発明の脂質又は油の総TAG含量の上記TAG種の好ましい含量は、以下でさらに説明される。以下の範囲が含量ついて与えられる。TAGの含量(レベル)は、油又は脂質中に存在する総TAG(すなわち、全てのTAG)の総重量のパーセント(特定のTAGの重量、又はTAGの組合せの重量)として表される。このようにして、含量は、好ましくは重量パーセント(%(w/w))として与えられる。したがって、「%」は、好ましくは、「TAGの総重量と比較したTAG(又はTAGの組合せ)の%(w/w)」を意味する。
好ましくは、油又は脂質は、TAG(18:1 18:2 20:5)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:2 20:5)の含量は、総TAG含量の0.1%〜20%、より好ましくは5%〜15%、最も好ましくは7%〜12%である。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:1 20:5)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:1 20:5)の含量は、総TAG含量の1.5%〜15%、より好ましくは2%〜10%、最も好ましくは4%〜7.6%である。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:2 18:2 20:5)を含む。好ましくは、TAG(18:2 18:2 20:5)の含量は、総TAG含量の3%〜20%、より好ましくは3%〜15%、最も好ましくは3.5%〜9%である。
また、好ましくは、TAG(18:1 18:2 20:5)、TAG(18:1 18:1 20:5)及びTAG(18:2 18:2 20:5)の含量の合計、すなわち、これらの3つのTAG種の合せた含量は、総TAG含量の5%〜55%、より好ましくは10%〜45%、最も好ましくは20%〜26%である。
したがって、最も豊富なTAG種は、エステル化されたEPAを含有するものである。いくつかの健康上の理由から、EPAは、DHAより良好である。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:2 22:6)を含む。好ましくは、TAG(18:118:22:6)の含量は、総TAG含量の0.1%〜15%、より好ましくは0.1%〜10%、最も好ましくは0.5%〜3%である。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:2 18:2 22:6)を含む。好ましくは、TAG(18:2 18:2 22:6)の含量は、総TAG含量の0.1%〜15%、より好ましくは0.1%〜10%、最も好ましくは0.5%〜2%である。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1、18:1 22:6)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:1 22:6)の含量は、総TAG含量の0.1%〜15%、より好ましくは0.1%〜10%、最も好ましくは0.3%〜1%である。
また、好ましくは、TAG(18:1 18:22:6)、TAG(18:2 18:2 22:6)及びTAG(18:1 18:1 22:6)の含量の合計、すなわち、これらの3つのTAG種の合せた含量は、総TAG含量の0.3%〜45%、より好ましくは1%〜30%、最も好ましくは1%〜5%である。
本発明の油又は脂質はまた、TAG(18:3 18:3 20:5)及び/又はTAG(18:3 18:3 22:6)を含み得る。実施例から見て取れるように、少量のこれらのTAG種が観察された(表192参照)。少量は、酸化安定性の利点を有することができる。
好ましくは、TAG(18:3 18:3 20:5)の含量は、総TAG含量の0.1%〜2%、より好ましくは0.1%〜1%、最も好ましくは0.1%〜0.5%である。
好ましくは、TAG(18:3 18:3 22:6)の含量は、総TAG含量の0.03%〜2%、より好ましくは0.03%〜1%、最も好ましくは0.03%〜0.5%である。さらに、TAG(18:3 18:3 22:6)の含量は、総TAG含量の0.03%〜0.2%であることが意図される。
上記されるように、野生型のKumily植物における最も豊富なTAG種は、TAG(18:1 18:1 18:3)、TAG(18:1 18:2 18:3)、TAG(18:1 18: 1 18:2)、TAG(18:1 18:1 18:1)、及び(TAG 18:1 18:2 18:2)であった。野生型の油と比較して、トランスジェニックのアブラナ植物からの種子油中のこれらの種の含量は有利に減少した。これらの種の1つであるTAG(18:1 18:1 18:3)は、油中に検出されなかった。
したがって、本発明の油又は脂質は、以下の特徴の1つ以上をさらに有し得る。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:1 18:3)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:1 18:3)の含量は、総TAG含量の0%〜10%、より好ましくは0%〜5%、最も好ましくは0%〜3%である。
また、好ましくは、総TAG含量のTAG(18:1 18:1 18:3)の含量は、3%より低く、特に1%より低くてもよい。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:2 18:3)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:2 18:3)の含量は、総TAG含量の3%〜19%、より好ましくは4%〜18%、最も好ましくは4%〜7%である。
また、好ましくは、総TAG含量のTAG(18:1 18:2 18:3)の含量は、7%より低くてもよい。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:1 18:2)を含む。好ましくは、TAG(18:118:1 18:2)の含量は、総TAG含量の1%〜10%、より好ましくは2%〜10%、最も好ましくは2%〜5%である。
また、好ましくは、総TAG含量のTAG(18:1 18:1 18:2)の含量は、5%より低くてもよい。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:1 18:1)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:1 18:1)の含量は、総TAG含量の0.1%〜8%、より好ましくは0.5%〜5%、最も好ましくは1%〜3%である。
また、好ましくは、総TAG含量のTAG(18:1 18:1 18:1)の含量は、3%より低くてもよい。
上記されるように、油又は脂質は、好ましくはTAG(18:1 18:2 18:2)を含む。好ましくは、TAG(18:1 18:2 18:2)の含量は、総TAG含量の0.1%〜13%、より好ましくは3%〜11%、最も好ましくは4%〜10%である。
また、好ましくは、総TAG含量のTAG(18:1 18:2 18:2)の含量は、10%より低くてもよい。
また、好ましくは、総含量、したがって、TAG(18:1 18:1 18:3)、TAG(18:1 18:2 18:3)、TAG(18:1 18:1 18:3)、TAG(18:1 18:1 18:1)、及びTAG(18:1 18:2 18:2)の含量の合計は、総TAG含量の5%〜50%、より好ましくは10%〜30%、最も好ましくは14%〜22%である。一実施形態において、総TAG含量の上記TAG種の総含量は、総TAG含量の21.2%よりも低い。
実施例32から得られるように、EPA及びDHAは、18:1及び/又は18:2であるTAGに最も頻繁にエステル化されることが見出されている。脂肪酸のこれらの組合せは、1を超えるPUFAを有するTAG種よりも酸化的に安定であるため、有利である。本発明の油又は脂質の好ましい実施形態において、油又は脂質に含まれる総TAG種の21%未満が、1を超えるEPA、DPA、及びDHA n-3残基を含有する。
本発明の油又は脂質は、TAG(トリアシルグリセリド)、DAG(ジアシルグリセリド)及びDAG(ジアシルグリセリド)を含む。記載されるように、本発明の植物の種子(特に、本発明の植物の種子油)において、特定のTAG(トリアシルグリセリド)種が減少し、特定のTAG種が増加した。加えて、本発明の植物の種子(特に、本発明の植物の種子油)において、特定のMAG種及びDAG種が減少し、特定のMAG種及びDAG種が増加した。
例えば、実施例は、MAG中よりもDAG中に多くのエステル化されたEPA及びDHAが存在することを示す。したがって、DAG中のエステル化されたEPA及びDHAの含量(DAG中の全エステル化された脂肪酸含量と比較して)は、MAG中のエステル化されたEPA及びDHA含量(MAG中の全エステル化された総脂肪酸含量と比較して)よりも大きい。好ましくは、MAG中のエステル化されたEPA及びDHAの含量(DAG中の全エステル化された脂肪酸総含量と比較する)に対するDAG中のエステル化されたEPA及びDHA含量(MAG中の全エステル化された脂肪酸含量と比較する)の比は約1.5である。
さらに、実施例は、DHAがホスファチジルコリン(PC)画分に蓄積されることを示す。これは、リン脂質とCoA依存性d4Desの両方の発現によって達成されると考えられる。リン脂質中のDHAはより容易に消化可能であると考えられるため、有利であり得る。
好ましくは、本発明の油又は脂質中のホスファチジルコリン(PC)画分中のDHAの含量は、PC画分の総脂肪酸含量の2〜12%、より好ましくは2〜10、最も好ましくは5〜9%である(好ましくは%w/w)。
さらに、本発明の油又は脂質のTAG画分の含量に対するPC画分のDHA含量の比は1より大きいことが想定される。
さらに、本発明の根底にある研究は、DPA n-3に対するDHAの比が、中性脂質画分(MAG、DAG及びTAG)よりもPC及びPE(ホスファチジルエタノールアミン)画分において高いことを示した。実施例30を参照されたい。これは、PC及びPEの画分を潜在的により高価値とする。本発明の油又は脂質の一実施形態において、PC及びPE画分中のすべての脂肪酸のDPA n-3の含量に対するPC及びPE画分中の全ての脂肪酸のDHAの含量の比は、MAG、DAG及び/又はTAG画分中の全ての脂肪酸のDPA n-3の含量に対するMAG、DAG及び/又はTAG画分中の全ての脂肪酸のDHAの含量の比よりも大きい。
さらに、本発明の油又は脂質中のリン脂質画分におけるDHA量は、リン脂質画分中のEPA量よりも多いことが想定される。対照的に、本発明の油又は脂質中のTAG画分におけるEPA量は、TAG画分中のDHA量よりも多い。「量」とは、この段落において、好ましくは絶対量を意味する。
実施例31は、EPA又はDHAを含有する豊富なPC(ホスファチジルコリン)種が、PC(18:2、22:6)及びPC(18:2、20:5)であることを示す。この大多数のPUFAは、18:3又は別のPUFAと組み合わせた場合よりも安定した18:2と組み合わされる。
したがって、本発明の油又は脂質は、好ましくはPC(18:2、2:6)、PC(18:2、20:5)又はその両方を含む。本発明の油又は脂質中の種の好ましい含量を以下に示す。種の含量(レベル)は、油又は脂質中に存在する全PC(すなわち、全てのPC)の総重量のパーセント(特定のPC種の重量)として表される。このようにして、含量は、好ましくは重量パーセント(%(w/w))として与えられる。したがって、「%」は、好ましくは、「PCの総重量と比較したPC(又はPCの組合せ)の%(w/w)を意味する。
好ましくは、PC(18:2 20:5)の含量は、全ホスファチジルコリン含量の2.5%〜15%、より好ましくは2.5%〜12%、最も好ましくは3%〜10%である。また、好ましくは、この種の含量は少なくとも3%である。
好ましくは、PC(18:2、22:6)の含量は、全ホスファチジルコリン含量の0.5%〜10%、より好ましくは1%〜7%、最も好ましくは1%〜6%である。また、好ましくは、この種の含量は少なくとも1.4%である。
本発明はまた、本発明の油を含む種子を含む植物に関する。さらに、本発明は、本発明の油を含む種子に関する。好ましい植物種は、本明細書において上記に記載されている。好ましくは、植物及び種子(複数可)は、本発明の文脈において記載される1つ以上のポリヌクレオチド、発現カセット、T-DNA及び/又は構築物を含む。
本発明はまた、本発明の植物の種子、特に大量の(bulked)種子に関する。種子/複数の種子は、本発明の油又は脂質を含有する。
さらに、実施例に示すされるように、事象LBFGKNからの大量の(bulked)種子は、25.7mg EPA+DHA/g種子を有すると判定され、事象LBFDAU由来の大量の(bulked)種子は、47.4mg EPA+DHA/g種子を有すると判定された。したがって、本発明は、1gの種子が、少なくとも10mg、特に少なくとも20mgのEPA及びDHAを合わせた含量を含む種子、特にアブラナ種子に関する。さらに、本発明の種子1gは、好ましくは15〜75mg、より好ましくは20〜60mg、最も好ましくは25〜50mgのEPA及びDHAを合わせた含量を含むことが想定される。
好ましくは、本発明の種子は、本発明の少なくとも1つのT-DNAを含む。したがって、前記種子はトランスジェニックであることが想定される。
本発明はまた、本発明の種子、特に本発明の大量の(bulked)種子から生成される種子粕及び種子ケーキにも関する。
興味深いことに、本発明の根底にある研究の文脈で生成された種子は、予期されるよりも高い収量及びより多くの種子油含量を有していた(例えば、実施例18、表152及び153のEPA/DHA、並びに表154の油を参照されたい)。不飽和及び伸長の程度は、対照と比較してトランスジェニック種子油において増加した。これらの増加を達成するために、導入されたデサチュラーゼ及びエロンガーゼは、対照と比較して、更なるATP及びNADHを消費する。したがって、本発明者らが導入したデサチュラーゼ及びエロンガーゼは、ATP及びNADHもまた必要とするデノボ脂肪酸及び油合成と直接競合する(全ての伸長は2つのNADH及び1つのATPを必要とし、全ての不飽和化は1つのNADHを必要とする)。さらに、脂肪酸を伸長させるためのマロニル-CoAの提供は、CO2の形態で炭素の消失をもたらす(Schwender et al 2004 Nature 432:779-782を参照されたい)。したがって、本発明者らは、NADH、ATPの消費が増加し、CO2の消失が増加するため、収量又は油含量が低下することを予期した。しかしながら、本発明者らは、対照と比較して収量又は油含量に差がない、多量のEPA及びDHAを含有する種子を製造した(実施例18及び表154を参照されたい)。例えば、EPA/DHA及び38.2%を超える油を含有する種子が生成された。これは、油とPUFA含量の間の負の相関が観察されたために予期されなかった(実施例を参照)。したがって、本発明の種子、及び本発明の植物又は複数の植物の種子は、好ましくは、種子油含量が少なくとも38%である。より好ましくは、種子油含量は38〜42%であり、特に38%〜40%である。好ましくは、種子油含量は、種子の総重量の油重量のパーセントとして表される。また、好ましくは、種子油は、圃場で栽培された場合、対照植物と変わらない種子収量を有する植物において生成される。
本発明の植物は、好ましくはトランスジェニックなB.ナプス植物である。本明細書の他の箇所に記載されるように、植物は、EPAとDHAの両方を生成する。大量の(bulked)種子からの油は、天然には存在しないPUFAを12%を超えて含むことが想定される。したがって、天然には存在しない脂肪酸の含量は、総脂肪酸含量の12%超である。別の実施形態において、大量の(bulked)種子からの油は、16%を超える天然に存在しないPUFAを含有する。別の実施形態において、大量の(bulked)種子からの油は、18%を超える天然に存在しないPUFAを含有する。「天然には存在しない」という表現は、好ましくは、野生型アブラナ植物において天然に存在しないPUFAを意味する。好ましくは、上記の非天然PUFASは、18:2n-9、GLA、SDA、20:2n-9、20:3n-9、20:3n-6、20:4n-6、22:2n-6、22:5n-6、22:4n-3、22:5n-3、及び22:6n-3である。これらのPUFAは、アブラナ植物において天然には存在しないが、それにもかかわらず、他の非トランスジェニック生物にも存在し得る。
本発明の植物の一実施形態において、トランスジェニック植物の各T-DNAコピーは、T-DNA上の3つ以上の位置でコピー数分析によって決定される複数の世代にわたって安定である。本発明の植物の一実施形態において、B.ナプス植物に挿入されたトランスジェニック構築物は、1又は2のコピー数を有する。したがって、本発明のT-DNAの1つ又は2つのコピーが植物に存在する。本発明の植物の好ましい実施形態において、B.ナプス植物に挿入されたトランスジェニック構築物は、コピー数が1である。好ましくは、挿入された全ての導入遺伝子は、完全に機能的である(したがって、遺伝子によってコードされる酵素は、それらの機能を保持する)。好ましくは、遺伝子挿入は、任意の内因性遺伝子から>5000塩基対離れて位置する。一実施形態において、この距離は、左右の境界の端部から測定される。
好ましくは、本発明の植物、特に記載されている植物は、EPA及びDHAを含有する油の生成に使用する方法を用いられる。油は、本明細書の他の箇所で詳細に記載されている。一実施形態において、油は、上記される天然に存在しないPUFAを含む。
油を生成するための方法は、本発明の植物を栽培して、油含有種子を得るステップ、前記種子を収穫するステップ、及び前記種子から油を抽出するステップを含んでもよい。
さらに、本発明は、上記される植物によって生成されるEPA及びDHAを含有する油を想定する。
本発明によるさらなる実施形態は、以下に詳細に記載されるように、飼料、食料品、栄養補助食品、化粧品又は医薬組成物中の油、脂質、脂肪酸及び/又は脂肪酸組成物の使用である。本発明による油、脂質、脂肪酸又は脂肪酸混合物は、動物起源、例えば魚油起源の他の油、脂質、脂肪酸又は脂肪酸混合物と混合するために使用することができる。
したがって、本発明は、飼料、食料品及び栄養補助食品を想定する。一実施形態において、飼料、食料品及び栄養補助食品は、本発明の植物、本発明の植物の部分、特に、種子又は複数の種子、及び/又は本発明の油若しくは脂質を含む。
一実施形態において、飼料、食料品及び栄養補助食品は、本発明の植物、特に本発明の植物の種子から生成された種子ケーキ又は種子粕を含む。したがって、本発明はまた、本発明の植物、特に本発明の植物の種子から生成された種子ケーキ又は種子粕に関する。一実施形態において、種子粕又は種子ケーキは、本発明の少なくとも1つのT-DNAを含む。
飼料、食料品及び栄養補助食品は、脂肪酸エステル、又は本発明の植物から(又は部分、特に種子から)生成された脂肪酸を含むことができる。
本発明の飼料は、水産養殖に使用することができる。飼料を使用することにより、魚のVLC-PUFAの含量を増加させることができる。一実施形態において、魚はサーモンである。
用語「組成物」とは、固体、液体又は気体の形態で処方される任意の組成物を指す。前記組成物は、任意選択で適切な補助化合物、例えば希釈剤若しくは担体又はさらなる成分と一緒に、本発明の化合物を含む。これに関連して、本発明は、補助化合物、すなわち、所望の目的のための組成物の適用時に本発明の化合物によって誘発される効果に寄与しない化合物と、さらなる成分、すなわち、本発明の化合物のさらなる効果に寄与し又はその効果を調節する化合物の間を区別する。適切な希釈剤及び/又は担体は、組成物が使用される目的及び他の成分に依存する。当業者は、このような適切な希釈剤及び/又は担体を、更なる労力なしに決定することができる。適切な担体及び/又は希釈剤の例は、当該技術分野において周知であり、緩衝液などの生理食塩水、水、油/水エマルションなどのエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤などを含む。
油性、脂肪酸又は脂質含有組成物のより好ましい実施形態において、上記組成物は、医薬組成物、化粧品組成物、食料品、飼料、好ましくは魚飼料又は栄養補助食品としてさらに製剤化される。
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用するとき、本発明の化合物及び場合により1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。本発明の化合物は、医薬として許容される塩として製剤化することができる。許容される塩は、酢酸塩、メチルエステル、Hel、硫酸塩、塩化物などを含む。医薬組成物は、好ましくは、局所的又は全身に投与される。薬物投与のために慣用的に使用される適切な投与経路は、経口、静脈内、又は非経口投与並びに吸入である。しかしながら、化合物の性質及び作用様式に依存して、医薬組成物は、同様に他の経路によって投与されてもよい。例えば、ポリヌクレオチド化合物は、ウイルスベクター又はウイルス若しくはリポソームを使用することにより遺伝子治療アプローチで投与され得る。
さらに、化合物は、共通の医薬組成物において、又は別の医薬組成物として、他の薬物と組み合わせて投与することができ、前記の別の医薬組成物は、キットの一部の形態で提供することができる。化合物は、好ましくは、慣用の手順に従って、薬物を標準的な医薬担体と組み合わせることによって調製される従来の剤形で投与される。これらの手順は、必要に応じて所望の製剤のために、成分を混合し、造粒し、圧搾し又は溶解することを伴ってもよい。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形態及び特徴は、組み合わされる有効成分の量、投与経路及び他の周知の変数によって決定されることが理解される。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害でないという意味において許容されなければならない。使用される医薬担体は、例えば、固体、ゲル又は液体であり得る。固形担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、ピーナッツ油及びオリーブ油などの油、水、エマルション、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などである。同様に、担体又は希釈剤は、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートなどの当該技術分野で周知の時間遅延材料を単独で又はワックスとともに含んでもよい。前記適切な担体は、上述されるもの、及び当該技術分野において周知な他のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。希釈剤(複数可)は、組合せの生物活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定化剤などを含むこともできる。治療有効用量とは、本明細書で言及される疾患又は状態に付随する症状を予防、改善又は治療する本発明の医薬組成物において使用されるべき化合物の量を指す。このような化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。投与レジメンは、主治医及び他の臨床的要因によって決定され、好ましくは上記の方法のいずれかに従う。医学の分野において周知であるように、いずれかの患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的な健康状態、及び同時に投与される他の薬物などの多数の因子に依存する。進捗状況は、定期的な評価によってモニターすることができる。典型的な用量は、例えば、1〜1000μgの範囲であり得、しかしながら、特に上記の因子を考慮して、この例示的な範囲より下回る又は上回る用量が想定される。しかしながら、対象及び投与様式に依存して、物質投与の量は広範囲にわたって変化し得る。本明細書で言及される医薬組成物及び製剤は、本明細書に列挙される疾患又は状態を治療又は改善又は予防するために、少なくとも1回投与される。しかしながら、前記医薬組成物は1回より多く、例えば、1日に1〜4回から非限定的な日数まで投与することができる。特定の医薬組成物は、製薬分野において周知である方法で調製され、混合物中に、又は医薬として許容される担体若しくは希釈剤と組み合わせて、本明細書において上記で言及した少なくとも1つの活性化合物を含む。これらの特定の医薬組成物を製造するために、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合される、あるいはカプセル、サシェ、カシェ、ペーパー又は他の適切な容器若しくは媒体に封入又はカプセル化される。得られる製剤は、投与様式、すなわち、錠剤、カプセル、坐剤、溶液、懸濁液などの形態で採用されるべきである。投与量の推奨は、考慮されるレシピエントに応じて投与量の調整を予測するために、処方者又は使用者の指示書に示される。
用語「化粧品組成物」は、上記の医薬組成物について記載したように処方することができる組成物に関する。化粧用組成物についても、同様に、本発明の化合物はまた、好ましくは、実質的に純粋な形態で使用されることが想定される。しかしながら、不純物は、医薬組成物よりも重大性が低い場合がある。化粧品組成物は、好ましくは、局所的に適用されるべきである。
本発明の化合物を含む好ましい化粧品組成物は、ヘアトニック、育毛剤、シャンプー、パウダー、ゼリー、ヘアリンス、軟膏、ヘアローション、ペースト、ヘアクリーム、ヘアスプレー及び/又はヘアエアロゾルとして製剤化され得る。
以下の実施例のセクションにおいて詳細に記載された3つの事象の種子は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約下でATCCに寄託されている。すなわち、事象「LBFLFK」の種子=ATCC指定「PTA-121703」、事象「LBFDHG」の種子=ATCC指定「PTA-121704」、及び事象「LBFDAU」の種子=ATCC指定「PTA-122340」である。出願人は、生物材料の移転又は商業における移送に関する法律によって課されたいかなる制限を放棄する権限を有していない。出願人は、この特許の下で付与される権利、又は植物品種保護法(7 USC sec. 2321、以下)、許可されていない種子の増殖が禁止されている寄託された事象に適用される権利のいかなる侵害も放棄しない。この種子は、国内法に従って規制されることがある。種子の寄託は、当業者の便宜のためにだけなされたものであり、寄託された種子が本発明を完全に記載するために、本発明を完全に実施可能にするために、あるいは本発明又はその一部若しくは態様を実施するために必要とされるいずれもの自白、承認、宣誓又は主張を構成及び示唆するものではない。また、種子の寄託は、このような種子又はこのような種子に含まれる任意の材料、例えば、核酸、タンパク質又はこのような核酸若しくはタンパク質の任意の断片の適用に、本発明のいずれかの方法の適用を制限するいずれもの推奨を構成及び示唆するものではない。
寄託された種子は、配列番号3に示される配列を有するT-DNAベクターで形質転換された植物に由来する。
事象LBFLFK及びLBFDAUは、本明細書においてより詳細に説明される。一実施形態において、本発明の植物は、LBFLFK及びLBFDAUによって、好ましくはゲノム中の位置に(LBFLFK及びLBFDAUと称される植物において)含まれるT-DNAを含む。
したがって、一実施形態において、本発明は、ATCC指定「PTA-121703」として寄託されたトランスジェニックなアブラナ事象LBFLFKを含むアブラナ植物を提供する。アブラナ事象LBFLFKは、バイナリーT-プラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAの2つの挿入物を含有し、挿入物はLBFLFK遺伝子座1及びLBFLFK遺伝子座2と称される。この実施形態のアブラナ植物は、アブラナ事象LBFLFKと区別することができない後代を含む(このような後代がまたLBKLFK遺伝子座1及び/又はLBFLFK遺伝子座2に対応する少なくとも1つの対立遺伝子を含有する程度)。この実施形態のアブラナ植物は、各LBFLFK挿入のための固有のゲノムDNA/導入遺伝子接合点、結果として2つの固有の接合領域:少なくとも配列番号282のポリヌクレオチド配列又は少なくとも配列番号283のポリヌクレオチド配列を有するLBFLFK遺伝子座1のための接合領域、及び少なくとも配列番号291のポリヌクレオチド配列又は少なくとも配列番号292のポリヌクレオチド配列を有するLBFLFK遺伝子座2のための接合領域を含む。この実施形態においてはまた、アブラナ事象LBFLFK及びその後代に由来する種子、植物部分、植物細胞、及びアブラナ植物生成品が含まれる。別の実施形態において、本発明は、アブラナ事象LBFLFK及び/又はその後代から生成されるキャノーラ油及び粕を含む商品生成物を提供する。
別の実施形態において、本発明は、ATCC指定「PTA-122340」として寄託されたトランスジェニックなアブラナ事象LBFDAUを含むアブラナ植物を提供する。アブラナ事象LBFDAUは、バイナリーT-プラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAの2つの挿入物を含有し、挿入物はLBFDAU遺伝子座1及びLBFDAU遺伝子座2と称される。この実施形態のアブラナ植物は、アブラナ事象LBFDAUと区別することができない後代を含む(このような後代がまた挿入されたDNAに対応する少なくとも1つの対立遺伝子を含有する程度)。この実施形態のアブラナ植物は、各LBFDAU挿入のための固有のゲノムDNA/導入遺伝子接合点、結果として2つの固有の接合領域:少なくとも配列番号300のポリヌクレオチド配列又は少なくとも配列番号301のポリヌクレオチド配列を有するLBFDAU遺伝子座1のための接合領域、及び少なくとも配列番号309のポリヌクレオチド配列又は少なくとも配列番号310のポリヌクレオチド配列を有するLBFDAU遺伝子座2のための接合領域を含む。この実施形態においてはまた、アブラナ事象LBFDAU及びその後代に由来する種子、植物部分、植物細胞、及びアブラナ植物生成品が含まれる。別の実施形態において、本発明は、アブラナ事象LBFDAU及び/又はその後代から生成されるキャノーラ油及び粕を含む商品生成物を提供する。
本発明の上述の植物は、本発明の文脈における方法において使用することができる。例えば、本発明の油、脂肪酸、又は脂質は、植物から得ることができる(及び抽出することができる)。
本発明の植物は、実施例のセクションに記載される形質転換バイナリーT-プラスミドVC-LTM593-1qcz rc(配列番号3)によって修飾されている。このベクターのT-DNA(本発明のT-DNAである)は、VLC-PUFA生合成経路の以下の酵素をコードするポリヌクレオチドを(好ましくは、以下の順番で)含む:ヒメツリガネゴ由来のデルタ-6エロンガーゼ、スラウストキトリウム属の種ATCC21685由来のデルタ-5デサチュラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6デサチュラーゼ、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼ、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼ、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼ、スラウストキトリウム属の種ATCC21685由来のデルタ-5デサチュラーゼ、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼ、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、パブロバ・ルセリ由来のデルタ-4デサチュラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼ。したがって、本発明の上記T-DNAは、スラウストキトリウム属の種ATCC21685由来のデルタ-5デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの2コピー、及びピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの2つのコピーを含む。
VC-LTM593-1qcz(配列番号3)のT-DNAは、イミダゾリノン除草剤に対する耐性を付与する、選択マーカーアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
本発明はさらに、アブラナ事象LBFLFK及びLBFDAUの各々におけるT-DNA挿入物、並びにゲノムDNA/導入遺伝子の挿入物、すなわち、アブラナ事象LBFLFKを含むアブラナ植物又は種子中に見られる遺伝子座1及び遺伝子座2の接合領域、ゲノムDNA/導入遺伝子の挿入物、すなわち、アブラナ事象LBFDAUを含むアブラナ植物又は種子中に見られる遺伝子座1及び遺伝子座2の接合領域、それぞれのゲノムDNA/導入遺伝子の挿入物、すなわち、事象LBFLFK又は事象LBFDAUを含むアブラナ植物又は種子及びその後代におけるそれぞれの遺伝子座1及び遺伝子座2の接合領域の検出に関する。
再生された植物の後代、改変体及び変異体はまた、その後代、改変体及び変異体がLBFLFK又はLBFDAU事象を含むという条件で、本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、後代、改変体及び変異体は、バイナリーT-プラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAの2つの挿入物を含有し、挿入物はLBFLFK遺伝子座1及びLBFLFK遺伝子座2と称され、ただし、その後代、改変体及び変異体は、バイナリーT-プラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAの2つの挿入物を含み、挿入物はLBFDAU遺伝子座1及びLBFDAU遺伝子座2と称される。
トランスジェニックな「事象」は、好ましくは、目的とする1つ以上の導入遺伝子(複数可)を含む核酸発現カセットを含む異種DNA構築物(複数可)を用いた植物細胞の形質転換、それぞれが、挿入された導入遺伝子(複数可)を含む細胞からの植物集団の再生、及び特定のゲノム位置への挿入によって特徴付けられる特定の植物の選択によって生成される。事象は、導入遺伝子(複数可)の発現によって表現型的に特徴付けられる。遺伝子レベルでは、事象は植物の遺伝的構成の一部である。用語「事象」とは、異種DNAを含む元の形質転換体及びその形質転換体の後代を指す。用語「事象」とはまた、異種DNAを含む、形質転換体と別の品種の間の性的外転により生成される後代を指す。反復親に反復して戻し交配した後でさえ、挿入されたDNA及び形質転換された親からの隣接DNAは、同じ染色体位置での交配の後代に存在する。用語「事象」とはまた、挿入されたDNA及び挿入されたDNAにすぐ隣接する隣接配列を含む元の形質転換体からのDNAを指し、これは、挿入されたDNAを含む1つの親系統(例えば、元の形質転換体及び自己由来の後代)、及び挿入されたDNAを含有しない親系統の性的交配の結果としての後代に移されることが期待される。本発明によれば、アブラナLBFLFK事象の後代は、好ましくは、LBFLFK遺伝子座1又はLBFLFK遺伝子座2のいずれか、又はLBFLFK遺伝子座1とLBFLFK遺伝子座2の両方を含む。同様に、アブラナLBFDAU事象の後代は、好ましくは、LBFDAU遺伝子座1又はLBFDAU遺伝子座2のいずれか、又はLBFDAU遺伝子座1とLBFDAU遺伝子座2の両方を含む。
本明細書で使用される「隣接領域」又は「隣接配列」とは、好ましくは、少なくとも20、50、100、200、300、400、1000、1500、2000、2500又は5000塩基対以上の配列であって、元の外来挿入DNA分子のすぐ上流に隣接して位置される、又はそのすぐ下流に隣接して位置される配列を指す。LBFLFK事象の隣接領域の非限定的な例は、遺伝子座1については、配列番号284のヌクレオチド1〜570、配列番号285のヌクレオチド229〜811を含み、及び遺伝子座2については、配列番号293のヌクレオチド1〜2468、及び/又は配列番号294のヌクレオチド242〜1800を含み、それら改変体及び断片を含む。LBFDAU事象の隣接領域の非限定的な例は、遺伝子座1については、配列番号302のヌクレオチド1〜1017、配列番号303のヌクレオチド637〜1677を含み、遺伝子座2については、配列番号311のヌクレオチド1〜1099及び配列番号312のヌクレオチド288〜1321を含み、それらの改変体及び断片を含む。
LBFLFK事象からの接合DNAの非限定的な例は、遺伝子座1については、配列番号282、配列番号283を含み、及び遺伝子座2については、配列番号291及び/又は配列番号292を含み、それらの相補体、又はそれらの改変体及び断片を含む。LBFDAU事象からの接合DNAの非限定的な例は、遺伝子座1について、配列番号300、配列番号301を含み、及び遺伝子座2については、配列番号309及び/又は配列番号310を含み、それらの相補体、又はそれらの改変体及び断片を含む。
本発明の前述の植物の油は、好ましくは、本明細書の他の箇所で特定される油である。
一実施形態において、本発明のトランスジェニックなアブラナ植物は、事象LBFLFK(ATCC指定PTA-121703)を含む。事象LBFLFKの種子及び後代はまたこの実施形態に包含される。別の実施形態において、本発明のトランスジェニックなアブラナ植物は、事象LBFDAU(ATCC指定PTA-122340)を含む。事象LBFDAUの種子及び後代はまたこの実施形態に包含される。
アブラナ植物LBFLFK及びLBFDAUは、典型的にはアブラナから得られた商品を製造するために使用することができる。LBFLFK及びLBFDAUの種子は、粕又は油に加工することができ、並びに陸生動物と水生動物の両方の動物飼料中の油源として使用することができる。
アブラナ事象LBFLFKに具体化される本発明によれば、LBFLFK遺伝子座1ゲノムDNA/導入遺伝子接合領域及び/又はLBFLFK遺伝子座2ゲノムDNA/導入遺伝子結合領域は、アブラナ植物LBFLFK(ATCC寄託番号PTA-121703)及びその後代に存在する。LBFLFK遺伝子座1DNA/導入遺伝子の右境界接合領域は配列番号282を含み、LBFLFK遺伝子座1の左境界接合領域は配列番号283を含み、LBFLFK遺伝子座2の右境界接合領域は配列番号291を含み、LBFLFKの左境界接合領域は配列番号292を含む。配列番号280の561〜580位に対応する配列番号282;配列番号280の44318〜44337位に対応する配列番号283、配列番号289の2459〜2478位に対応する配列番号291、配列番号289の46232〜46251位に対応する配列番号292、及びそれらの組合せからなる群から選択される事象LBFLFKの少なくとも1つの接合領域配列を含むDNA配列が提供され、アブラナDNAを含有する生物学的試料中のこれらの配列の検出は、上記試料中のアブラナ事象LBFLFK DNAの存在についての特徴的である。これらのDNA分子を含むブラシカ事象LBFLFK及びアブラナ種子は、本発明の一態様である。
例えば、性的交配から生じたアブラナ植物が事象LBFLFK由来のトランスジェニックDNAを含有するか否かを決定するために、アブラナ植物組織サンプルから抽出されたDNAは、(i)(a)LBFLFK遺伝子座1隣接配列に由来する第1のプライマー、及び(b)LBFLFK遺伝子座1挿入異種DNAに由来する第2のプライマーを含む第1のプライマー対、ここで、第1及び第2のプライマーの増幅は事象LBFLFK遺伝子座1DNAの存在に特徴的であるアンプリコンを生成する、並びに(ii)(a)LBFLFK遺伝子座2隣接配列に由来する第3のプライマー、及び(b)LBFLFK遺伝子座2挿入異種DNAに由来する第4のプライマーを含む第2のプライマー対、ここで、第3及び第4のプライマーの増幅は事象LBFLFK遺伝子座2DNAの存在に特徴的であるアンプリコンを生成する、を使用した核酸増幅法に供されてもよい。
アブラナ事象LBFLFKにおける標的配列に特異的なプライマーDNA分子は、LBFLFK遺伝子座1及び遺伝子座2の挿入DNA、隣接領域及び/又は接合領域の任意の部分の少なくとも11個の連続したヌクレオチドを含む。例えば、LBFLFK遺伝子座1プライマーDNA分子は、LBFLFK遺伝子座1を検出するために、配列番号280、配列番号281、配列番号282若しくは配列番号283のいずれか;配列番号284若しくは配列番号285、又はこれらの組合せに由来してもよい。同様に、LBFLFK遺伝子座2プライマーDNA分子は、LBFLFK遺伝子座2を検出するために、配列番号293、配列番号294、配列番号291若しくは配列番号292のいずれか;配列番号290若しくは配列番号289、又はこれらの組合せに由来してもよい。当業者は、これらのプライマーを使用して、公知のDNA増幅法を用いてLBFLFK遺伝子座1及び遺伝子座2のアンプリコンを生成するためのプライマー対を設計することができる。DNA増幅法においてこれらのDNAプライマーを用いて生成されるLBFLFK遺伝子座1及び遺伝子座1アンプリコンは、増幅産物が、LBFLFK遺伝子座1接合領域の配列番号282若しくは配列番号283又はその相補体を含むアンプリコン、及びLBFLFK遺伝子座2接合領域の配列番号291若しくは配列番号292又はその相補体を含むアンプリコンを含有する場合に、アブラナ事象LBFLFKに特徴的である。
アブラナ事象LBFDAUに具体化された本発明によれば、LBFDAU遺伝子座1ゲノムDNA/導入遺伝子接合領域及び/又はLBFDAU遺伝子座2ゲノムDNA/導入遺伝子接合領域は、アブラナ事象LBFDAU(ATCC寄託番号PTA-122340)及びその後代に存在する。LBFDAU遺伝子座1DNA/導入遺伝子の右境界接合領域は配列番号300を含み、LBFDAU遺伝子座1左境界接合領域は配列番号301を含み、LBFDAU座2右境界接合領域は配列番号309を含み、LBFDAU左境界接合領域は配列番号310を含む。配列番号300(図4に示され、配列番号298の1008〜1027位に対応する)、配列番号301(図4に示され、配列番号298の44728〜44747位に対応する)、配列番号309(図5に示され、配列番号307の1090〜1109位に対応する)、及び配列番号310(図5に示され、配列番号307の38577〜38596位に対応する)、並びにそれらの相補体からなる群から選択される事象LBFDAUの少なくとも1つの接合領域を含むDNA配列が提供され、ここで、アブラナDNAを含有する生物学的試料中のこれらの配列の検出は、前記試料中のアブラナ事象LBFDAU DNAの存在に特徴的である。これらのDNA分子を含むアブラナ事象LBFDAU及びアブラナ種子は本発明の一態様である。
例えば、性的交配から生じたアブラナ植物が事象LBFDAU由来のトランスジェニックDNAを含有するか否かを決定するために、アブラナ植物組織試料から抽出されたDNAは、(i)(a)LBFDAU遺伝子座1隣接配列に由来する第1のプライマー、及び(b)LBFDAU遺伝子座1挿入異種DNAに由来する第2のプライマーを含む第1のプライマー対、ここで、第1及び第2のプライマーの増幅は事象LBFDAU遺伝子座1DNAの存在に特徴的であるアンプリコンを生成する、並びに/又は(ii)(a)LBFDAU遺伝子座2隣接配列に由来する第3のプライマー、及び(b)LBFDAU遺伝子座2挿入異種DNAに由来する第4のプライマーを含む第2のプライマー対、ここで、第3及び第4のプライマーの増幅は事象LBFDAUK遺伝子座2DNAの存在に特徴的であるアンプリコンを生成する、を使用した核酸増幅法に供されてもよい。
植え付けのため又は商品生成物のために販売するためのアブラナ事象LBFLFK又はアブラナ事象LBFDAUに由来する種子は、本発明の一態様である。このような商品生成物には、限定されないが、EPA及びDHAを含むVLC-PUFAを含有するキャノーラ油又は粕が含まれる。アブラナ事象LBFLFKに由来する商品生成品は、検出可能な量で、配列番号282、配列番号283、配列番号291及び/又は配列番号292を含むDNA分子を含む。アブラナ事象LBFDAUに由来する商品生成品は、検出可能な量で、配列番号300、配列番号301、配列番号309及び/又は配列番号310を含むDNA分子を含む。事象LBFLFK及びLBFDAUに由来する例示的な商品生成品には、限定されないが、食用油、サラダ油、ショートニング、栄養強化食品、動物飼料、医薬組成物、化粧品組成物、ヘアケア製品などが含まれる。
本発明はまた、植物材料の、好ましくは種子の商業的に関連する供給源を提供する。このように、本発明は、少なくとも5kg、好ましくは少なくとも10kg、より好ましくは少なくとも50kg、さらにより好ましくは少なくとも100kg、さらにより好ましくは少なくとも500kg、さらにより好ましくは少なくとも1t、さらにより好ましくは少なくとも2t、さらにより好ましくは少なくとも5tの大量の植物材料を提供し、ここで、植物材料は、本発明に従って記載されるVLC-PUFAを含む。本明細書に記載されるように、農業的に信頼できるVLC-PUFA植物油の供給源を初めて提供することが本発明の長所であり、この目的のために大量の植物材料が提供される。植物材料は、好ましくは植物種子であり、さらにより好ましくは、18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくは、EPAの含量が、30%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも10%(w/w)であり、DHAの含量が、少なくとも1%(w/w)であるような種子を製造するVLC-PUFAの種子、又はこのような種子の粕である。また、本発明は、植物種子を少なくとも5kg、好ましくは少なくとも10kg、より好ましくは少なくとも50kg、さらにより好ましくは少なくとも100kg、さらにより好ましくは少なくとも500kgの量で含有する容器を提供するさらにより好ましくは少なくとも1t、さらにより好ましくは少なくとも2t、さらにより好ましくは少なくとも5tの量で含む容器を提供する。したがって、本発明は、実験室規模のVLC-PUFA含有植物の事例的な発見を十分に上回っており、その代わりに、植物油及び植物材料中のVLC-PUFA、特にEPA及び/又はDHAのための信頼できる供給源を大規模に提供するための追加的な要件を克服したことを実証する。
本発明は、(対照植物と比較して)修飾された脂肪酸組成物を含む植物の生成を可能にする。したがって、本明細書に開示されるT-DNA、発現カセット、ベクター、ポリヌクレオチド(特にポリヌクレオチドの組合せ)及びポリペプチド(特にポリヌクレオチドの組合せ)は、植物の脂肪酸組成を改変するために使用され得る。一実施形態において、表18又は181に開示される少なくとも1つの脂肪酸の含量は、種子油中で改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。別の実施形態において、表18又は181に開示される少なくとも1つの脂肪酸の含量は、種子油のモノアシルグリセロール(MAG)画分、ジアシルグリセロール(DAG)画分、トリアシルグリセロール(TAG)画分、ホスファチジルコリン画分及び/又はホスファチジルエタノールアミン(PE)画分において改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。別の実施形態において、表189に示される少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン種の含量は、種子油中で改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。別の実施形態において、表190に示される少なくとも1つのホスファチジルエタノールアミン種の含量は、種子油中で改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。別の実施形態において、表191に示される少なくとも1種のリゾホスファチジルエタノールアミン種の含量は、種子油中で改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。別の実施形態において、表192に示される少なくとも1つのトリアシルグリセロール種の含量は、種子油中で改変される(対照植物の種子油中の含量と比較して増加又は減少させる)。
本明細書において上記で示された定義及び説明は、好ましくは、以下に(例えば、「植物」、「対照植物」などに関して)準用される。
生成された植物がミード酸(20:3n-9、実施例29を参照)を生成するということが、本発明の根底にある研究の文脈において示されている。ミード酸は、18:1n-9を用いて、d6Des、d6Elo及びd5Desの副活性から作製され、18:2n-9(d6Desによる)、次に20:2n-9(d6Eloによる)、次に20:3n-9(d5Desによる)が作製され得る。興味深いことに、菌類のミード酸は、d12Desが変異して不活性である場合にのみに作製される(Takeno et al. 2005 App. Environ. Microbiol. 71(9): 5124-51288)。しかしながら、本発明の根底にある研究は、驚くべきことに、d12Desが過剰発現された場合でさえもミード酸が植物において生成されることを示す。
したがって、本発明は、対照植物と比較して、植物中のミード酸(20:3n-9)の含量を増加させるための方法に関し、植物において、デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることを含む。
さらに、本発明は、対照植物と比較して、ミード酸(20:3n-9)を生成するための方法に関し、植物において、デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることを含む。
上述の方法は、さらに、更なるデサチュラーゼ又はエロンガーゼの発現、特に、デルタ-12-デサチュラーゼ、オメガ-3-デサチュラーゼ、デルタ-5-エロンガーゼ、及びデルタ-4-デサチュラーゼのうちの1つ以上の発現をさらに含み得る。したがって、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は特に4つのさらなる酵素活性が植物において発現され得る。
一実施形態において、本方法は、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む。
一実施形態において、本方法は、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む。
一実施形態において、本方法は、デルタ-5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む。
一実施形態において、本方法は、デルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む。一実施形態において、少なくとも1つのCoA依存性デルタ-4-デサチュラーゼ及び少なくとも1つのリン脂質依存性デルタ-4デサチュラーゼが発現される。
特定の好ましい実施形態において、本方法は、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む。
デサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードする好ましいポリヌクレオチドは上記に記載される。
上述の遺伝子用量効果はまた、ミード酸を生成し、又は植物中のミード酸含量を増加させるために使用することができる。
したがって、デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドを発現させることが意図される。さらに、デルタ-12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、オメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド、デルタ-5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及び/又はデルタ-4-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド(好ましくは、少なくとも1つのCoA依存性デルタ-4-デサチュラーゼ及び少なくとも1つのリン脂質依存性デルタ-4デサチュラーゼ)をさらに発現させることができる。
一実施形態において、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼ、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びスラウストキトリウム属の種由来のデルタ-5デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドをコードする、少なくとも1つのポリヌクレオチドが発現される。さらに、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリペプチド、及び/又はパブロバ・ルセリ由来のデルタ-4デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることができる。
好ましくは、発現されるポリヌクレオチドは、組換えポリヌクレオチドである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、植物のゲノムに含まれる1つのT-DNA上に存在する。したがって、T-DNAはゲノムに安定に組み込まれる。好ましくは、本明細書に記載されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、同じT-DNAに含まれる。
好ましくは、デサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチド(すなわち、各々がポリヌクレオチドである)は、発現制御配列(定義については本明細書の他の箇所を参照)に作動可能に連結される。さらに、ポリヌクレオチドは、ターミネーターに連結され得、それによって発現制御配列、標的遺伝子及びターミネーターを含む発現カセットを形成する。
特定の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、植物の種子中で発現される。したがって、発現制御配列は、種子特異的プロモーターであってもよい。好ましい種子特異的プロモーターは、例えば、実施例のセクションの表11に開示される。
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、植物にポリヌクレオチドを導入し、発現させることによって発現される。ポリヌクレオチドを植物に導入する方法は、当該技術分野において周知である。好ましい方法は、本明細書の他の箇所に記載されている。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、アグロバクテリウムを媒介した形質転換によって植物に導入される。
一実施形態において、ミード酸含量は、対照植物の種子中のミード酸と比較して、種子中で増加する。好ましくは、種子油中のミード酸含量は、対照植物の種子油中のミード酸と比較して増加する。
好ましい植物は上記に記載されている。一実施形態において、植物は油糧種子植物である。好ましくは、植物は、アマ(アマ属の種(Linum sp.)、アブラナ(アブラナ属の種)、ダイズ(ダイズ属の種(Glycine and Soja sp.))、ヒマワリ(ヒマワリ属の種(Helianthus sp.))、ワタ(ワタ属の種(Gossypium sp.))、トウモロコシ(トウモロコシ(Zea mays))、オリーブ(オリーブ属の種(Olea sp))、ベニバナ(ベニバナ属の種(Carthamus sp.))、ココア(テオブロマ・カカオ)、ピーナッツ(ラッカセイ属の種(Arachis sp.))、アサ、カメリナ、クランベリー、オイルパーム、ココナッツ、アメリカホドイモ、ゴマ種子、トウゴマの実、レスケレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、タングナッツ、カポックフルーツ、ポピーシードオイル、ホホバシードオイル、及びエゴマからなる群から選択される。より好ましくは、植物は、アブラナ科の植物、好ましくはアブラナ属の植物、最も好ましくはブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ及びブラシカ・ラパ種の1つ又は2つのメンバーのゲノムを含む種、したがって、特にブラシカ・ナプス、ブラシカ・カリナタ、ブラシカ・ジュンセア、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・ラパ種の植物である。
一実施形態において、この方法は、特に種子油に、増加したミード酸含量を有する植物を選択するステップをさらに含む。実施形態において、選択は、ミード酸含有量に基づいて行われる。したがって、このステップは、種子中のミード酸含量、又は植物の種子油を決定するステップを含み得る。ミード酸含量を決定する方法は、例えば、実施例29に記載されている。
ミード酸は、好ましくはエステル化されたミード酸である。
植物の種子中で上記に言及されたポリヌクレオチドを発現させると、ミード酸が生成される。したがって、前記ポリヌクレオチドを発現する植物、特に植物の種子は、ミード酸を含む/生成する。好ましくは、植物の種子油中のミード酸(20:3n-9)の含量は、種子油の総脂肪酸含量(特に、エステル化された脂肪酸の総含量)の約0.1%〜2%、より好ましくは約0.1%〜1%、最も好ましくは約0.1%〜0.5%である。さらに、VLC-PUFAは、(本発明の油との関連で本明細書の他の箇所に記載される)種子油中に存在してもよい。
本発明はまた、ミード酸の含量を増加させるための方法の文脈において言及したように、デサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現カセットを含む構築物又はT-DNAに関する。したがって、本発明はまた、デルタ-6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、デルタ-6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、及びデルタ-5-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含む構築物に関する。構築物又はT-DNAは、デルタ-12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、オメガ-3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、デルタ-5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、及び/又はデルタ-4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含み得る。
一実施形態において、構築物又はT-DNAは、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、及びスラウストキトリウム属の種(特に、スラウストキトリウム属の種ATCC21685)由来のデルタ-5デサチュラーゼのための少なくとも2つの発現カセット、並びに任意選択で、ピレウス・アレグレアレ由来のオメガ-3デサチュラーゼのための少なくとも2つの発現カセット、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、及びスラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、及び/又はパブロワ・ルテリ由来のデルタ-4デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含む。
本発明はさらに、a)対照植物(特に、対照植物の種子中)と比較して、植物(特に、種子中)のミード酸含量を増加させるための、又は植物注のミード酸、特に、植物の種子注のミード酸を生成するための、i)本発明の構築物又はT-DNA、又はii)デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの使用に関する。
好ましくは、ミード酸を増加させるための方法の文脈において言及したようなデサチュラーゼ及び/又はエロンガーゼをコードする更なるポリヌクレオチド(例えば、デルタ-12-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチド)もまた使用され得る。
本発明はまた、i)本発明の構築物又はT-DNA、又はii)デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを用いて形質転換された若しくはそれを含む植物又は植物細胞に関する。一実施形態において、植物又は植物細胞は、さらに、使用され得るミード酸を増加させるための文脈で言及したようにデサチュラーゼ及び/又はエロンガーゼをコードするさらなるポリヌクレオチド(デルタ-12-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチド)で形質転換され又はそれを含む。デサチュラーゼ及びエロンガーゼの好ましいポリヌクレオチド配列は、上記に開示されている。
さらに、本発明は、ミード酸を生成するための方法に関し、以下:
i)ために本発明の植物を栽培して、油含有する種子を得るステップ、
ii)前記種子を収穫するステップ、及び
iii)ステップiiで収穫された種子からミード酸を含む油を抽出するステップを含む。
好ましくは、油は、本明細書において上記される油である。特に、油は、上記されるミード酸含量を有する。
上記されるように、本発明は、VLC-PUFAを生成する植物(及びミード酸を生成する植物)に関する。前記植物は、本明細書において詳細に説明される特定のデサチュラーゼ及びエロンガーゼについての発現カセットを含む1つ以上のT-DNAを含む。好ましくは、前記発現カセットは、同じT-DNA(又は構築物)によって含まれる。
本発明の一実施形態において、本発明のT-DNA又は構築物は、さらに、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS酵素、またアセト乳酸シンターゼとしても公知である)をコードするポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの発現カセットをさらに含み、ここで、前記アセトヒドロキシ酸シンターゼは、イミダゾリノンの除草剤に対する耐性を付与する。したがって、AHAS酵素は、好ましくは変異したAHAS酵素である。
イミダゾリノンの除草剤に対する耐性を付与する変異型AHAS酵素は、当該技術分野において公知であり、例えば、国際公開第2008/124495号パンフレットに開示され、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態において、変異型AHAS酵素は、変異したアラビドプシス・タリアナAHAS酵素である。野生型酵素と比較して、想定される酵素は2つの位置で変異している。想定された酵素は、653位でセリンがアスパラギンで置換され、122位でアラニンがスレオニンに置換されている。
また、好ましくは、イミダゾリノンの除草剤に対する耐性を付与するAHAS酵素をコードするポリヌクレオチドは、以下から選択される:
a)配列番号277に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列、
b)配列番号278に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
c)配列番号277に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列と少なくとも70%、80%、又は90%同一である核酸配列、
d)配列番号278に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも60%、70%、80又は90%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列、及び
e)i)配列番号277に示されるヌクレオチド配列を有する核酸配列、又はii)配列番号278に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列。
前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、イミダゾリノンの除草剤に対する耐性を与えるものと理解するべきである。したがって、一実施形態において、ポリペプチドは、配列番号278の653位に対応する位置にセリン-アスパラギン置換を有し、及び/又は配列番号278の122位に対応する位置にアラニン-スレオニン置換を有する。
イミダゾリノンの除草剤は、好ましくは、イマゼタピル、イマザピク、イマザモックス、イマザキン、イマゼタベンズ、及びイマザピルから選択され、特にイマザモクス(IUPAC:(R/S)-2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-5-メトキシメチルニコチン酸)である。より具体的には、イミダゾリノンの除草剤は、限定されないが、2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-ニコチン酸、[2-(4-イソプロピル)-4-][メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-3-キノリン]カルボン酸、[5-エチル-2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-ニコチン酸、2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-5-(メトキシメチル)-ニコチン酸、[2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-5-メチルニコチン酸から選択することができる。5-エチル-2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル)-ニコチン酸及び[2-(4-イソプロピル-4-メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-)イル]-5-(メトキシメチル)-ニコチン酸が好ましい。[2-(4-イソプロピル-4-)メチル-5-オキソ-2-イミダゾリン-2-イル]-5-(メトキシメチル)-ニコチン酸の使用が特に好ましい。
さらに、本発明は、本発明の植物の近傍にある雑草を防除する方法に関し、前記方法は、雑草及び本発明の植物にイミダゾリノンの少なくとも1つの除草剤を施用することを含み、それにより、本発明の植物の近傍にある雑草の生育を抑制する。
上記方法に関連する本発明の植物は、本明細書の他の箇所で説明されるデサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現カセット(好ましくは、発現カセットを含む少なくとも1つのT-DNA)、及びアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、ここで、上記アセトヒドロキシ酸シンターゼは、イミダゾリノンの除草剤に対する耐性を付与する。一実施形態において、デサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現カセット及びアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットは、同じT-DNAに含まれる。また、本発明は、上記植物に関する。
好ましくは、上記されるアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするポリヌクレオチドは過剰発現される。一実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、構成的プロモーターに作動可能に連結される。一実施形態において、前記構成的プロモーターはCaMV 35Sプロモーターである。別の実施形態において、前記構成的プロモーターは、パセリユビキチンプロモーター(配列番号3の位置については、実施例において変異させたAHAS遺伝子を発現させるために使用されるプロモーター、表11参照)である。
したがって、本発明の好ましい植物は、イミダゾリノンの除草剤耐性遺伝子を含有し、植物のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)遺伝子を阻害する。耐性を付与する遺伝子は、AHASの改変体である。アセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするポリヌクレオチドのための発現カセットは、本明細書で言及されるエロンガーゼ及びデサチュラーゼのための発現カセットと同じT-DNA、又は異なるT-DNAによって含まれ得る。好ましくは、発現カセットは、同じT-DNAによって含まれる。
一実施形態において、本発明のT-DNA又は構築物は、以下の酵素をコードするポリヌクレオチド(特に、この順序で)含む:ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼ、スラウストキトリウム属の種ATCC21685由来のデルタ-5デサチュラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6デサチュラーゼ、タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼ、フィトフトラ・ソジャ由来のデルタ-12デサチュラーゼ、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、フィトフトラ・インフェスタンス由来のオメガ-3-デサチュラーゼ、スラウストキトリウム属の種(特にATCC21685)由来のデルタ-5デサチュラーゼ、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼ、ピシウム・イレグラレ由来のオメガ-3デサチュラーゼ、パブロバ・ルセリ由来のデルタ-4デサチュラーゼ、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-5エロンガーゼ、及びアセトヒドロキシ酸シンターゼを含み、これは、イミダゾリノン除草剤に対する耐性を付与する(上記の定義を参照)。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの配列は、例えば、表130に示される。
興味深いことに、酵素AHASは、脂肪酸生合成(ピルビン酸塩)と共通の代謝前駆体を共有する。AHASの過剰発現の1つの結果は、ピルビン酸塩の消費を増加させ、油含量の減少及びアミノ酸又はタンパク質含量の潜在的増加をもたらし得る(例えば、Blombach et al 2009, Applied and Environment Microbiology 75(2):419-427参照、ここでは、AHASの過剰発現は細菌におけるリシン生成の増加をもたらし、さらに、Muhitch 1988 Plant Physiol 83:23-27参照、ここでは、アミノ酸供給におけるAHASの役割が記載されている)。したがって、AHAS改変体の過剰発現は、特にAHAS阻害除草剤と組み合わせて、種子中のタンパク質、油、又はVLC-PUFA含量に変化をもたらさなかったことは驚くべきことである(実施例18を参照されたい)。このように、本発明は、圃場生育植物にAHAS阻害性除草剤を噴霧する、VLC-PUFAの生成方法を提供する。好ましくは、前記除草剤はイミダゾリノンのものである。
本発明は、添付の実施例及び図面によってさらに説明されるが、本明細書に記載された本発明の範囲を限定することを意図しない。
[実施例1]
一般的なクローニング方法
クローニング方法、例えば、特定の部位で二本鎖DNAを切断するための制限エンドヌクレアーゼ、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロース及びナイロン膜への核酸の移行、DNA断片の結合、大腸菌細胞の形質転換、及び細菌の培養の使用は、Sambrook et al.(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press:ISBN 0-87965-309-6)に記載のとおり行った。ポリメラーゼ連鎖反応は、製造業者の指示に従って、Phusion(商標)High-Fidelity DNA Polymerase(NEB、Frankfurt、Germany)を用いて行った。一般には、PCR中に用いられるプライマーは、そのプライマーの3'末端の少なくとも20ヌクレオチドが、テンプレートと完全にアニーリングして、増幅するように設計した。制限部位を、プライマーの5'末端に対して認識部位の対応するヌクレオチドを結合することによって加えた。例えば、K. Heckman及びL. R. Pease, Nature Protocols (2207) 2, 924-932に記載の融合PCRを、目的の2つの断片を連結するために(例えば、ある遺伝子に対するプロモーター、又はターミネーターに対するある遺伝子)別の方法として用いた。例えば、Czarらによって記載されるような遺伝子合成(Trends in Biotechnology, 2009, 27(2): 63-72)を、Life Technologiesによって、彼らのGeneart(登録商標)サービスを用いて行った。WO2013049227に記載のGeneart(登録商標)技術によって、長さが2〜3塩基対(bp)の遺伝子エレメントの生成が可能になり、かつこれを本発明に用いて、約60,000bpという全プラスミドを生成した。ヌクレオチドをポリヌクレオチドに化学合成するには、短いDNA断片を使用し、次いで、これをWO2013049227に記載のような従来のクローニング技術の組み合わせを漸増サイズの断片に対して用いて、連続的なモジュール方式で組み合わせた。
[実施例2]
植物ゲノム中への複数のタンパク質をコードする多重発現カセットの移動に適切な種々のタイプの植物形質転換プラスミド
アグロバクテリア系の植物形質転換のために、DNA構築物は好ましくは、以下の多数の基準を満たす:(1)この構築物は、「T-DNA左境界」(LB)及び「T-DNA右境界」の間のいわゆるTトランスファーDNA(T-DNA)上の植物ゲノムへ挿入することを意図している多数の遺伝子エレメントを保持する(2)この構築物は、大腸菌中で複製する。なぜなら、ほとんどのクローニングステップは、大腸菌中でDNA増幅ステップを要するからである。(3)この構築物は、アグロバクテリウム(例えば、A.ツメファシエンス又はA.リゾゲネスにおいて複製する。なぜなら植物形質転換法は、アグロバクテリウムに感染された細胞の植物ゲノムへの目的の遺伝子エレメントを挿入するためにアグロバクテリウムを用いることに依るからである。(4)この構築物は、植物細胞の感染のために、並びにアグロバクテリウムに感染された植物細胞の植物ゲノムへの所望の遺伝子エレメントの移入及び組み込みのために必要であるタンパク質をコードする支持性遺伝子エレメントを含むか、又はこの構築物を、同じアグロバクテリウム細胞中に存在したこのような支持性遺伝子エレメントを含む第二の構築物と組み合わせて用いた。(5)この構築物は、全体的な構築物を含む細菌細胞の選択又は特定、及び所望の遺伝子エレメントを含む植物細胞の選択又は特定を容易にするために選択マーカーを含んでもよい。利用可能なプラスミドの概説は、Komori et al (2007)に示す。
アグロバクテリア媒介性形質転換は、植物細胞の染色体中への所望の遺伝子エレメントのほとんどランダムな組み込み(多数の因子によって誘導されるいくつかのバイアスがある)を生じる。形質転換の目標は、ランダムな染色体のランダムな位置へのT-DNA左境界からT-DNA右境界への全T-DNAの組み込みであった。例えば、T-DNAによってコードされる遺伝子の植物発現レベルを増大するために、ゲノムへ全T-DNAを2〜3回組み込むことも望ましい場合がある。複数の組み込みの複雑なメンデル分離を回避するために、1つの遺伝子位置(「遺伝子座」)で全てのT-DNA挿入を有することが好ましかった。植物ゲノムへ25,000bp超のT-DNAを挿入することは、本発明では特別な課題であることが見出された。具体的には、本発明では、大腸菌及び/又はアグロバクテリウムにおけるプラスミド複製のためのColE1/pVS1複製起点を保持するプラスミドは、約25,000bpを超えて安定ではないことが見出された。本発明のこのようなプラスミドは、実施例3に記載される。この制限のせいで、約4〜5以下の遺伝子発現カセットを、植物ゲノム中への1つのT-DNA含有プラスミド上で移入してもよい。しかし、本発明に関しては、最大13の遺伝子発現カセットが、植物ゲノムに移入される必要がある約44,000bpの複合サイズを有している。大腸菌及び/又はアグロバクテリウム中の高コピーのプラスミド複製のためのColE1/pVS1複製起点を含むプラスミドと対照的に、BiBACプラスミド(Hammilton 1997)は、約60,000bpのサイズまで、本発明で安定であることが見出された大腸菌及び/又はアグロバクテリウム中の単一コピープラスミド複製のための第F因子/pRi複製起点を含んでいる。本発明のこのようなプラスミドは、実施例4に記載される。上記の両方のアプローチとも、本発明に従った。
[実施例3]
ColE1/pVS1複製起点を含むTプラスミド内のEPA及びDHA合成に必要な遺伝子のアセンブリ ブラシカ・ナプスの種子におけるVLC-PUFAの合成のために、代謝のVLC-PUFA経路のタンパク質をコードする遺伝子のセットを、発現エレメント(プロモーター、ターミネーター、イントロン)と組み合わせて、植物のアグロバクテリア媒介性の形質転換に用いたバイナリーtプラスミドに移した。各々1つのタンパク質の発現を促進する多数の発現カセットに起因して、完全なセットのタンパク質のクローニングに用いられる2つのバイナリーtプラスミドは、EPA及びDHA合成に必要であった。この目的を達成するために、図3に示す一般的なクローニングストラテジーを使用した。図3は、一般的なストラテジーを示しているが、実施例10〜14に記載される最終の植物発現ベクターのクローニングは、このストラテジーには制限されなかった;具体的には、当業者に公知の全ての方法、例えば、クローニング、スティッキー及びブラントエンドの生成のための制限エンドヌクレアーゼの使用、合成及び融合PCRの組み合わせを用いた。図3に示されるモジュラークローニングスキーム後、遺伝子は、GeneArt(Regensburg)によって合成するか、又はcDNAから製造業者の指示に従って、Phusion(商標)High-Fidelity DNA Polymerase(NEB、Frankfurt、Germany)を用いてPCR増幅した。両方の場合とも、5'末端のNcoI及び/又はAscI制限部位、並びに3'末端のPacI制限部位(図3A)を導入して、これらの制限部位を用いて、プロモーター及びターミネーターのような機能的エレメントの間でこれらの遺伝子のクローニングを可能にした(本実施例の以下下を参照のこと)。プロモーター-ターミネーターモジュール又はプロモーター-イントロン-ターミネーターモジュールを、GeneArt(Regensburg)による完全な合成によって、又は実施例1に記載の融合PCRを用いる対応する発現エレメントを連結すること、及び製造業者の指示に従って、TOPO-ベクターpCR2.1(Invitrogen)中にこのPCR産物をクローニングすることによって作製した(図3B)。全カセットの合成を介して、又は融合PCRを用いてのいずれかで、プロモーター配列又はプロモーター-イントロン配列にターミネーター配列を連結しながら、図3に示される制限エンドヌクレアーゼの認識配列を、モジュールのいずれかの側に加えて、制限エンドヌクレアーゼNcoI、AscI及びPacIの認識部位を、プロモーターとターミネーターとの間、又はイントロンとターミネーターとの間に導入した(図3Bを参照のこと)。最終の発現モジュールを得るために、PCR増幅遺伝子を、プロモーターとターミネーターとの間、又はイントロンとターミネーターとの間に、NcoI及び/又はPacI制限部位を介してクローニングした(図3C)。それらの発現モジュールの最大3つまでのカスタムなマルチクローニング部位(MCS)を使用することを、必要に応じて、pENTR/A、pENTR/B又はpENTR/Cのいずれか1つによって保持される発現カセットと組み合わせた(図3D)。最終的に、Multi-site Gateway(商標)System(Invitrogen)を用いて、pENTR/A、pENTR/B及びpENTR/Cが保持する3つの発現カセットと組み合わせ(図3E)、植物形質転換のための最終のバイナリーpSUN Tプラスミドを得た:VC-LJB2197-1qcz、VC-LJB2755-2qcz rc、VC-LLM306-1qcz rc、VC-LLM337-1qcz rc、VC-LLM338-3qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rc。バイナリーベクター及びそれらの用途の概説は、Hellens at al. Trends in Plant Science (2000) 5: 446-451によって示される。
プラスミドVC-LJB2197-1qcz、VC-LJB2755-2qcz rc、VC-LLM306-1qcz rc、VC-LLM337-1qcz rc、VC-LLM338-3qcz rc、VC-LLM391-2qcz rc、及びVC-LTM217-1qcz rcの構造を、表1、表2、表3、表4、表5、表6及び表7に示した。
遺伝子エレメントの命名法:
j-は、2つの遺伝子エレメントの間の接合を示す
c-コード配列
t-ターミネーター
p-プロモーター
i-イントロン
T-DNA トランスファーされたDNA
RB T-DNAの右境界
LB T-DNAの左境界
[実施例4]
第F因子/pRI複製起点を含むBiBAC Tプラスミド内のEPA及びDHA合成に必要な遺伝子のアセンブリ
ブラシカ・ナプス種子中のVLC-PUFAの合成のために、代謝のVLC-PUFA経路のタンパク質をコードする遺伝子のセットを発現エレメント(プロモーター、ターミネーター及びイントロン)と組み合わせ、植物のアグロバクテリア媒介性形質転換に用いられたバイナリーt-プラスミド中に移入した。各々1つのタンパク質の発現を促進する多数の発現カセットは、実施例3で、2つのバイナリーt-プラスミドT-DNA上に分布されたが、この実施例では、全ての発現カセットを、単一のバイナリーT-プラスミド上に組み合わせた。DNA合成の進歩によって、多くの会社が、化学合成及び分子生物学的技術の組み合わせを用い、最初のテンプレートなしで、微生物のゲノムのサイズまでのポリヌクレオチドを新規に合成する、サービスを提供することが可能になっている。本実施例で記載されるプラスミドの構築に用いられる合成は、それらのGeneart(登録商標)サービスを用いて、ライフテクノロジーズ(Life Technologies)が行った。WO2013049227に記載のGeneart(登録商標)技術によって、2〜3塩基対(bp)長の遺伝子エレメントの生成が可能になり、本発明ではこれを用いて、各々の構築物に関して約61.000bpの総サイズを有する、植物形質転換体VC-RTP10690-1qcz_F、VC-RTP10691-2qcz、VC-LTM595-1qcz rc及びVC-LTM593-1qcz rcのバイナリーT-プラスミドを生成した。プラスミドVC-RTP10690-1qcz_F、VC-RTP10691-2qcz、VC-LTM595-1qcz rc及びVC-LTM593-1qcz rcの構築を、表8、表9、表10及び表11に示す。
表13は、全ての異なる構築物及び構築物の組み合わせの中で遺伝子発現カセットの順序を、これらの発現カセットについての短い期間を用いて比較する(定義については表12を参照のこと)。実施例10〜19のデータは、トランスジェニック種子中で測定されたPUFAプロファイルに関する種々の構築物又は構築物の組み合わせの間の有意な相違を示す。構築物の間の相違、及び構築物の組み合わせは、PUFAレベルに影響する全ての他のソース(例えば、異なる環境、植物間の変動、種子油含量、T-DNAコピー数)を排除したときでさえ、明らかであった。例えば、VC-RTP10690-1qcz_F及びVC-LMT593-1qcz rcは、同質遺伝子的であり、すなわち、2つの構築物は、正確に同じ遺伝子発現カセットを含んだ。RTP10690-1qcz_FとVC-LMT593-1qczとの間の類似性のおかげで、当業者は、例えば、全ての単一のコピー事象の平均の変換効率を比較する場合、同じ経路ステップの変換効率を正確に予測するであろう。しかし、図39によって、VC-RTP10690-1qcz_Fが、32%というデルタ-4デサチュラーゼ変換効率(52の単一コピーT0事象のT1種子の平均)を有することが示されたが、VC-LMT593-1qcz rcは、47%というデルタ-4デサチュラーゼ変換効率を有したことが示される(241の単一コピーT0事象のT1種子の平均)。これは、予想されたことではなく、転写レベルによって説明可能で、この転写レベルが次にタンパク質レベルを決定する。転写レベルは、VC-LMT593-1qcz rc中のデルタ-4デサチュラーゼカセットに隣接する遺伝子エレメントによって影響される。2つの構築物の間の観察は、予想されない知見であり、かつこれによって、ゲノムだけでなく、T-DNA自体もデルタ-4デサチュラーゼ変換効率に影響すること、実施例19に記載される「遺伝子用量」に対して依存性であることが示される。さらに、実施例10〜19のデータによって、このような効果から発現カセットを隔離することが可能であったことが示される。実施例10〜19からわかるように、全ての単一のコピー事象は、PUFAレベルに影響する全ての他のソース(例えば、異なる環境、植物間の変動、種子油含量)を排除した場合、ほぼ正確に同じVLC-PUFAレベルを生成できた。これは特に、実施例18の全ての単一のコピー事象と比較して、顕著であった。全てのC20+C22VLC-PUFA含量(デルタ-12デサチュラーゼによって、及びデルタ-6デサチュラーゼによってどれくらい変換されたかによって大きく制御された)を比較して、構築物の組み合わせVC-LJB2197-1qcz+VC-LLM337-1qcz rcから得られた、例えば単一のコピー事象LNPMZと、実施例18に列挙される全ての単一のコピー事象との間に実質上相違はなかったことが顕著に観察された。この目的を達成するために、全体の経路(実施例15〜18)又はARA及びEPA生成までの経路の少なくとも最初のステップ(実施例10〜14)のいずれかをコードするT-DNAの片側が、除草剤耐性を付与するが、VLC-PUFA経路に関与しなかったAHAS遺伝子を常に含むことに注目することが重要である。T-DNAの他の側は、全体的な経路(実施例15〜18)又はARA及びEPA産生までの経路の少なくとも第一のステップ(実施例10〜14)のいずれかを、ほとんどの場合、ヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼをコードする(実施例13及び14は除く)。実施例19に記載のとおり、ヒメツリガネゴケ遺伝子によってコードされるデルタ-6-エロンガーゼタンパク質は、最大変換効率(>90%)付近まで作用し、従って、転写レベルを増大するなんらかの影響に起因するデルタ-6エロンガーゼ酵素レベルのいかなる増大も、C20及びC22 VLC-PUFAレベルにも事実上影響しない。効率的に、VLC-PUFA蓄積の総レベルを決定するT-DNAは、発現レベルの相違がVLC-PUFA蓄積に影響がない遺伝子を両側に隣接される。これらの2つの遺伝子は、大きさが数千bpの発現カセットでコードされるので、T-DNAの内側の遺伝子は、ゲノム環境がそれらの遺伝子の発現レベルに有し得るなんらかの効果から遮蔽/隔離されたと思われる(例えば、実施例19と比較、デルタ-12-デサチュラーゼ)。この効果は、二重のコピー事象が総C20及びC22 VLC-PUFAレベルでかなり異なるという観察と一致した:多くの場合と同様、追加のT-DNA挿入は、完全ではなく(実施例10〜18を参照のこと)、これによって、ゲノムに対するT-DNA内部遺伝子の暴露が生じる。これらの遺伝子が、遺伝子用量効果に感受性である(それらの遺伝子の変換効率が、実施例19と比較して、転写の量及び酵素の誘導量に依存する)場合、いくつかのゲノムの位置では、ゲノム環境は、転写レベルをブーストした。
[実施例5]
同時形質転換アプローチを用いるトランスジェニック植物の生成のための手順
一般には、トランスジェニックのアブラナ(rapeseed)植物を、DeBlock et al. 1989, Plant Physiology, 91:694-701)に従う改変プロトコールによって生成した。2つの異なるT-DNAについてトランスジェニックのアブラナ植物の生成のために、実施例3に記載のバイナリーベクターをアグロバクテリウム・リゾゲネスSHA001中に形質転換した(用いたアグロバクテリウムの詳細な説明に関しては、WO2006024509A2を参照のこと)。アブラナ植物(栽培品種クミリ(cv Kumily))の形質転換のために、同時形質転換ストラテジーを用いた。形質転換を、表14に列挙し、実施例3、実施例4、実施例6及び/又は実施例7に詳細に記載される2つの異なるプラスミドの1つを保有する2つの異なるアグロバクテリア株で行った。
同時形質転換することを意図した2系統の一晩培養物を、抗生物質(20mg/Lのクロラムフェニコール、5mg/Lテトラサイクリン、25mg/Lのスペクチノマイシン)を含有するYEB培地中で調製して、28℃で増殖した。翌日、培養物の光学密度を600nmの波長でチェックした。光学密度は約1.0に達した。低い光学密度の培養物を、培養期間に増殖させた。1.3を超える光学密度を有する培養物を、YEB培地を用いて約0.2のODまで希釈し、それらが1.0のODに達するまで培養した。
培養物を、約4000gでペレットにして、液体のMS培地(Murashige and Skoog 1962)、pH5.8、3%スクロース、(100mg/LのAcetosyringone含有)中に再懸濁して、0.1というOD600nmに達した。同時形質転換すべき2つの構築物の各々に相当するアグロバクテリウム懸濁液を、等部分混合し、5日齢の黄化した実生から調製した胚軸部分の接種に用いた。
種子を、Duchefa(Duchefa Biochemie、PO Box 809 2003 RV Haarlem、Netherlands)由来のMSB5培地、pH5.8、3%スクロース及び0.8%オキシドアガーを用いて、低光量の条件(<50Mol/m2s)下で出芽させた。光条件下での発芽によって、外植体が生じ、これは、黄化した胚軸と比較して安定であって、かつ取扱いが容易である。4〜7mm長の胚軸部分を、最大4分まで穏やかに振盪しながらアグロバクテリウムの細胞の浴の中に接種し、続けて外植体をふるい分けた。感染した外植体を、同時培養培地を有するペトリ皿中に移した(MS培地、pH5.6、3%スクロース、0.6g/LのMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、18g/Lマンニトール、0.7%フィトアガー(Duchefa Biochemie、PO Box 809 2003 RV Haarlem、Netherlands、パーツ番号SKU:P1003)、100mg/Lのアセトシリンゴン、200mg/LのL-システイン、1mg/Lの2,4D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸))(その表面上に1層のワットマン濾紙を保持する)。ペトリ皿を、テープでシールして、3日間長日性条件(16時間明/8時間暗)下で、23℃でインキュベートした。3日後、同時培養期間の外植体を、MS培地、pH5.6、3%スクロース、0.6g/LのMES、18g/Lのマンニトール、07%のフィトアガー、1mg/Lの2,4D及び500mg/Lのカルベニシリンに移して、アグロバクテリウム増殖を防ぎ、7日間の同時培養についてと同じ物理的条件下で回復期間の間インキュベートした。
選択的な再生のために、外植体は、回復期間の後に、MS培地、pH5.8、3%スクロース、0.7%フィトアガー、2.5mg/LのAgNO3、3mg/LのBAP(6-ベンジルアミノプリン)、0.1mg/LのGA(ジベレリン酸)、0.1mg/LのNAA(1-ナフタレン酢酸)、500mg/Lのカルベニシリン、100nMのImazethapyr(Pursuit)に移し、上記のように長日性の条件下で2週間培養した。小培養物を、2週ごとにとる。ホルモンは、以下のとおり段階的に低下した:BAP3〜0.5〜0.05mg/L;GA(ジベレリン酸)0.1〜0.25〜0.25mg/L;NAA0.1〜0〜0mg/L。発育中の苗条を、選択的再生の第二サイクルの後に収集してもよい。苗条を切り、伸長/発根培地(MS培地、pH5.8、2%スクロース、100mg/Lのミオ-イノシトール、40mg/L硫酸アデニン、500mg/L MES、0.4%のSigma Agar、150mg/LのTimentin、0.1mg/LのIBA(インドール-3-酪酸))に、又はロックウール/ストーンウール若しくはフォームマット(Grodan, GRODAN Group P.O.Box 1160, 6040 KD Roermond The Netherlands、又はOasis, 919 Marvin Street, Kent, OH 44240 USA)(カバーボックス中でex vitroの長日性条件下で、スクロースなし、MS培地、pH5.8の1/10容積で水和した)のいずれかに移した。
新芽を伸長させ、in vitroの培地中で発根させ、直接、土壌に移した。
in vitroの新芽又は新芽に適合したGHのいずれかを分子分析のためにサンプリングした。
培地は、オートクレーブするか(ただし、抗生物質、ホルモン、添加物、例えば、L-システイン、アセトシリンゴン、イミダゾリノン成分を除く)、又は濾過滅菌で調製した(アガー成分はオートクレーブして、42℃まで冷却させた後に用いた)。
[実施例6]
BiBACを用いるトランスジェニック植物の生成のための手順
BiBAC形質転換のためには、構築物を1つだけ用いたことを除いて、同時形質転換アプローチに記載するのと同じプロトコールを用いた。バイナリープラスミドの原核生物カナマイシン耐性遺伝子によれば、50mg/Lのカナマイシンを、アグロバクテリウム増殖のためにスペクチノマイシンの代わりに用いた。BiBACを保持するアグロバクテリウムは極めて緩徐に増殖し、植物形質転換体における使用のための最適を考慮した液体培養OD600nmに達するには18時間要する場合が多いことが本研究の経過の間に観察された。
下の表は、構築物LTM593の形質転換の間に証明されたいくつかの重要なデータについての例を示す。
上記の植物形質転換プロトコールによって生じた単一コピー事象の量は、それぞれ、構築物LTM593及びLTM595の形質転換が単一のコピー事象であった後に選択したベクター骨格フリー事象の45%及び38%であった(表15を参照のこと)。
首尾よい形質転換のための1つの重要な知見は、アグロバクテリウム株の選択であった。もとの方法(De Block et al. (1989) Plant Physiology 91:694-701)は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株C58C1 pMP90を用いたが、記載の方法は、アグロバクテリウム・リゾゲネス株SHA001に基づいた(SHA001及びSHA017については、WO2006024509A2を参照のこと)。アグロバクテリウム・リゾゲネス株の中でさえ、本発明者らは、用いる株及び構築物に対して形質転換の成功という明らかな応答を実現した(表16を参照のこと)。
[実施例7]
温室及び圃場での種子の発芽及び植物の増殖
形質転換された植物を、温室及び圃場の両方で種子の産生及び表現型のアセスメントのために培養した。温室増殖条件は、16時間の明期、続いて、8時間の暗期であった。温度は明期(日中期間とも呼ぶ)の間は摂氏20度で、光のレベルは、光子m-2 s-1の200〜300マイクロモルに相当し(これは、植物の頂部の光の頻度であり、光は植物からの距離に関して調節し、この率を得た)。日中期間の間、温室内の光の範囲は、光子m-2 s-1の130〜500マイクロモルで変化した。ちょうど述べた日内範囲を出れば、200〜300マイクロモルまでのレベルの光子m-2 s-1をもたらす人工光の使用、又は200〜300マイクロモルのレベルまでもどる光子m-2 s-1をもたらす光の遮蔽及び/若しくは遮断のいずれかを誘導した。暗期(夜間とも呼ばれる)温度は18℃であった。明期の4時間前、暗期の残りの期間、温度を15℃まで下げることを始めた。プレートに水を与え、必要に応じて昆虫に関して処理した。土壌の種類は、50%のFloradur B種子+50%のFloradur Bカッティング(砂及びパーライトを含む)(Floragard(Oldenburg、Germany)が提供)であった。植物増殖は、栄養物補充で増強した。栄養物は、毎日の水やりと組み合わせた。0.1%(w/v)の肥料溶液(Hakaphos Blue 15(N)-10(P)-15(K), Compo GmbH & Co KG, Munster, Germany)を用いて、植物に水を与えた。水は、需要に応じて供給した(例えば、植物増殖段階、水消費などに応じて)。異花受粉を回避するために、植物を最初の花が開いた時点で取り除いた。植物を、毎日チェックして、全ての開いた花をバッグで確実に覆った。適切に覆われていなかった開いた花は除去した。
圃場で成長した植物に関して、植物は、6つの位置で増殖し、この位置は、USDA成長ゾーン3a-4b及び5aに気候的に相当し、5つの位置は、気候的には、USDA成長ゾーン8a-9b及び11に相当した。USDA成長ゾーン3a-4b及び5aに相当する領域で増殖した植物は、夏に成長し、USDA成長ゾーン8a-9b及び11に対応する領域で増殖した植物は、冬に成長した。キャノーラについて標準の園芸作業を続けて行った。鳥類及び昆虫から保護するための網掛け及び他の手段を、栽培者が必要であるとみなせば用い、除草剤及び肥料の適用も同様とした。全ての位置に関する植え付け密度は1平方メートルあたり80の種子で、発芽率は95パーセント以上であった。
種子の品質保証若しくは品質管理の目的のための発芽率を決定することが必要だった場合、又は子葉若しくは種子組織を得るために種子を発芽させることが有利であった場合、以下のプロトコールを用いた:
150mm×15mmのペトリ皿、及び120mmディスクに切ったワットマン(no.2)濾紙を用いた。その濾紙は、無菌の脱イオン水で予め湿らせた。適切なラインの100の種子を得て、予め湿した濾紙の上に均一に広げた。
清浄かつ無菌のピンセットを用いて、種子を広げて、上記で示す均一なパターンを得た。追加の滅菌水を添加して、種子及び濾紙を湿らせたが、浮かせてはいない。1枚のペトリ皿あたりに用いる水の総量は約20mLであった。3つのプレートを、試験した各々の遺伝子型について行った。プレートを、外科用テープ、VWR(1050 Satellite Blvd.Suwanee,GA 30024 USA)カタログ番号56222-110でシールした。プレートをシールした後、次に、プレートを、摂氏20度の日中温度及び摂氏15度の夜間温度である、16時間の光期間に設定した、90%湿度に設定した発芽チャンバ中でインキュベートした。光強度は、1秒あたり1平方メートルあたり、90〜120マイクロモルであった。発芽は、2回スコア付けし、1度は、増殖チャンバへプレートを入れた後4日で、及び再度はインキュベーション後8日であった。
[実施例8]
植物油の脂質抽出及び脂質解析
植物中の、又は所望の分子、例えば、特定の脂肪酸の生成に対する遺伝子修飾の結果は、例えば、上記のように、適切な条件下で植物を増殖すること、並びに増殖培地及び/又は細胞成分を所望の分子、例えば、脂質又は特定の脂肪酸の生成増強について分析することによって決定した。脂質は、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd.A2, S.89-90 und S.443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A., et al., (1987) "Applications of HPLC in Biochemistry" in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17; Rehm et al. (1993) Biotechnology, Bd. 3, Kapitel III: "Product recovery and purification", S. 469-714, VCH: Weinheim; Belter, P.A., et al. (1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, J.F., und Cabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, J.A., und Henry, J.D. (1988) Biochemical Separations, in: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd. B3; Kapitel 11, S.1-27, VCH: Weinheim;並びにDechow, F.J.(1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publicationsを含む標準的な文献に記載されるように抽出した。
脂質及び脂肪酸の抽出は、Cahoon et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940及びBrowse et al. (1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載のように、上記で引用されたプロトコール以外のプロトコールを用いて行ってもよい。脂質又は脂肪酸の定量的及び定性的な分析のために用いられるプロトコールは、Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2); Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids.A Practical Guide - Ayr,Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307S. (Oily Press Lipid Library;1);"Progress in Lipid Research, Oxford:P ergamon Press, 1 (1952)-16(1977) u.d.T.: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載される。
種子中のEPA及びDHAの生成のための実施例3及び4に記載の遺伝子エレメントを含むトランスジェニック植物を生成するために、アブラナ(ブラシカ・ナプス)を、実施例5及び6に記載のように形質転換した。実施例3及び4に記載の遺伝子エレメントを含む選択された植物を、実施例7に述べた条件下で成熟種子の発達まで成長させた。収集された種子由来の脂肪酸を上記のとおり抽出して、本明細書に記載のとおりガスクロマトグラフィーを用いて分析した。脂肪酸の含量(レベル)は、本発明全体を通じて、パーセンテージ(全ての脂肪酸の総重量のうちの特定の脂肪酸の重量)として表現する。同様に、他の成分の油の含量は、w/w%で示す。例えば、TAG又はPCの含量(レベル)は、本発明を通じてパーセンテージ(全てのTAG又はPCの総重量、具体的には本発明の油又は脂質中に存在する全てのTAG又はPCの総重量のうちの特定のTAG又はPCの重量)として表現する。ある実施形態では、化合物の含量は、実施例に記載のとおり決定する。例えば、その含量は、実施例29、31又は32のとおり決定してもよい。種子油含量は、本発明全体にわたって、種子の総重量のうちの油の重量のパーセンテージとして表現する。
[実施例9]
実生の単一の子葉中の脂質の非破壊解析
実施例5及び実施例6に記載の方法による植物の形質転換は、ゲノムへのT-DNAのランダムな組み込みを生じる。このような組み込みはまた、特別な方式で生じ得、さらに完全及び部分的なT-DNAの複数の組み込みが生じ得ることが公知であった。T0植物の自家受粉は、T1種子の生成を生じ、これは、Gregor Mendel(Mendel, 1866)が観察した、ライフサイエンスにおいて現在では基本的な一般的知識となっている比によってT-DNA挿入に関して分離されている。メンデル型分離に起因して、T-DNAの各々の組み込みに関して、T1種子の四分の一(約25%)が組み込みを失い、「ヌル分離個体」と呼ばれ得る。T1種子のうち50%が、母系染色体(25%)又は父系染色体(25%)のいずれかにT-DNA組み込みを保持する;これらの種子は、T-DNA組み込みに関して「ヘテロ接合性」又は「ヘミ接合性」である。T1種子の残りの四分の一(約25%)は、母系及び父系の染色体上にT-DNAを保持する;これらの種子は、T-DNA組み込みに関して「ホモ接合性」である。このような実生繁殖に従う植物に関しては、T-DNA組み込み(複数可)に関してホモ接合性である後代を選択することによって、T-DNA組み込み(複数可)を遺伝子的に固定することが必須である。
形質について必須である各々のT-DNAが存在した(理想的にはホモ接合性)T1実生を特定するために、当業者は、T-DNA組み込み(複数可)のコピー数を直接測定するために定量的なPCRを行ってもよい。或いは、当業者は、目的の全てのT-DNAを含まない(ヌル-分離個体)全ての種子の特定を少なくとも可能にする、T-DNAの存在によって授けられる形質を分析し得る。実施例10〜実施例14に記載される全ての構築物に関して、及び示す場合、VLC-PUFA生成の非破壊的解析を行った。この目的を達成するために、T1種子を、湿した濾紙上で3日間暗野で発芽させた。3日後、2つの子葉のうちの1つを切り取って、これを実施例8に記載のように脂質解析に供した。他の子葉、例としては、胚軸及び根を、土壌に植えた。例としては、実施例11に記載の構築物の組み合わせから得た事象LANPMZの分離性のT1実生からのこれらの子葉の脂質含量解析からの結果を、図22に示す;実施例15に記載の構築物組み合わせから得た事象LBDIHNの結果を図23に示す。これらの図の両方では、種子のうち四分の一が、有意な量のVLC-PUFAを生じないが、野性型レベルのオレイン酸を生じることが観察される(ヌル分離個体実生)。当業者はさらに、種々の量のVLC-PUFAを生じる実生の2つの追加のクラスターを両方の図面で見ることができる。図23を参照のこと。これらのそれぞれのクラスター中の種子の数をカウントすれば、1:2:1の分離比が、(約0 VLC-PUFA)を生じるクラスターに関して観察された:(中間体レベルのVLC-PUFA):(高レベルのVLC-PUFA)。この観察によって、ゲノム中に存在するT-DNAのコピー数であった「遺伝子用量」とVLC-PUFAレベルとの間の関係が実証される。実施例10〜13に記載の全ての構築物に関し、示した場合、この関係は、少なくとも1つのT-DNA遺伝子座が、ホモ接合性になっているか、又は複数のT-DNA組み込み遺伝子座が、少なくとも存在するか、又は他はなお分離体であるがいくつかはホモ接合性である、T1植物を特定するまで活かされた。この方法の適応性は、事象LANPMZについて実証され得(図22を参照のこと)、VLC_PUFAを生じる事象LANPMZの全てのヘテロ接合性(ヘミ接合性)及びホモ接合性T1種子は、EPA及びDHAの両方を生じ得る。DHA生成は、両方のT-DNAの存在を必要とするので、VC-LJB2197-1qczのT-DNAの少なくとも1つのコピー及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAの1つのコピーが、おそらく同じ遺伝子剤で、ゲノムに挿入されたと結論され得る。最高のVLC-PUFAレベルを有する事象LANPMZの288の実生のうち13のT1実生を選択して、植物が成熟するまで成長させた。表40に示すこれらの13の選択された植物でのコピー数分析によって、T-DNAの両方が、単一コピーに存在すること、及び13のT1植物の平均の結果に対するT0植物のコピー数の結果の比較によって、これらの単一のT-DNA挿入が、ホモ接合性であること(倍加したコピー数)が示される。組み合わされた全ての結果によって、事象LANPMZが、各々1つのコピー中に構築物VC-LJB2197-1qczのT-DNA及び構築物VC-LLM337-1qcz rc中のT-DNAを含み、それによって、両方のT-DNAが単一の遺伝子座で同時分離するという情報が得られる。
ゲノムへの単一のT-DNA組み込みに関して、4つのT1種子のうちの1つは、そのT-DNA組み込みに関してホモ接合性であると予想される。各々の追加のT-DNA組み込みに関して、全ての他のT-DNA組み込みについてホモ接合性の全ての種子のうちちょうど四分の一が、追加のT-DNA組み込みについてホモ接合性であり、結果として、ゲノムへの2つのT-DNA組み込み事象について、16のT1種子のうち1つが、両方のT-DNA組み込みに関してホモ接合性であると予想される;ゲノムへの3つのT-DNA組み込みについて、64のT1種子のうち1つが、3つの全てのT-DNA組み込みに関してホモ接合性であると予想される;ゲノムへの4つのT-DNA組み込みについて、256のT1種子のうち1つが、4つの全てのT-DNA組み込みに関してホモ接合性であると予想される、などである。実施例10〜実施例14の全ての植物が、VLC-PUFA:DHA及びEPA、並びにARAを生成するのに十分にPUFA経路を再構成するために全ての必要な酵素を生成するために全ての必要な遺伝子を植物が含むように、最小の2つのT-DNA挿入事象(各々のプラスミドから1つ)を含む。
[実施例10]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rc(実施例5の組み合わせA)のT-DNAを含む植物
この実施例では、EPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントを、2つの異なるT-DNA上の植物ゲノム中に移入した。この目的を達成するために、2つの異なるプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rc(アグロバクテリア中にクローニングされた2つの異なるT-DNAを含む)及び植物組織を、VC-LJB2197-1qcz又はVC-LLM306-1qcz rcのいずれかを含有することは別にして同一である、これらの2つのアクロバクテリアの培養物と同時に、実施例5に従って、インキュベートした。選択性の除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、少なくともVC-LJB2197-1qczのT-DNAを含んだ。遺伝子発現及び遺伝子コピー数決定のために用いたPCRの説明を含む、実施例24に記載のように行う、PCRによって確認されるようにプラスミドVC-LLM306-1qcz rcのt-DNAも含んだ植物のみを維持した。プラスミドVC-LJB2197-1qczのT-DNA及びプラスミドVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAの両方を含む植物のみが、種子中のEPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントの全てを含む。VC-LJB2197-1qczの遺伝子エレメント、及び各々のエレメントの機能を、表1に列挙する。VC-LLM306-1qcz rcの遺伝子エレメント、及び各々エレメントの機能を、表3に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子で発現される全ての酵素を追加して、表19に列挙する。
夏の間に温室で栽培された、プラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表20、表21及び表22のデータによって、植物中のT-DNAの各々の2つのコピーに対して(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rc)1つを比較する場合、DHA及びEPAの含量に増大があったことが示される。構築物VC-LJB2197-1qczのコピー数は、T0生成におけるT-DNAの左境界を測定することによって決定され、及びこれはT-DNAを伴う他の遺伝子エレメントではない(表20を参照のこと)。単一のコピーのカテゴリーに相当する88の植物が、実際に追加の部分的T-DNA挿入を含むこと、及び二重コピーのカテゴリーに相当する86の植物が、実際T-DNAの1つの一部を欠くことが可能になった。従って、「単一コピー」及び「二重コピー」群へT0植物を正確に分類するには不十分なデータのせいで、両方の集団が重複する。T-DNAの2つのコピーと3つのコピーとの間の比較によって、DHA及びEPA中の増大が最小であることが明らかになり、それによって、各々の遺伝子の2つのコピーが、最大3つまでのコピー数を考慮した場合、VLC-PUFA生合成経路(C20及びC22 PUFAs、これらに限定はしないがEPA、DHA及びARAを含む)の最大能力に達するのに十分であったことが示唆された。注目すべきは、この実施例の挿入のほとんどが、1又は2つのコピー事象であるということであった。表23は、PUFA経路、又はPUFA経路の遺伝子をコードするT-DNAのコピー数に関して、植物が目的のT-DNAの1、2又は3つのコピーを保持する場合、植物の形態又は発達に有意に影響しなかったことを示す。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
コピー数解析によって、LALTHKは、VC-LJB2197-1qcz T-DNAの2つのコピーに関してホモ接合性であり、かつ、VC-LLM306-1qcz rcの1つのコピーに関してホモ接合性であるが、LALJCXは、両方のT-DNAの2つのコピーについてホモ接合性であったことが示される(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rc)。他の事象は部分的にはなおT-DNAに関して分離されていたが、全ての植物中で各々のT-DNAの少なくとも1つのコピーを含んだ。事象LALTHKは、DHAの蓄積を有さず、これによって、T-DNAの挿入の間に生じ得る短縮の効果が例示される。この事象は、LALTHKを除いて、EPA+DHA蓄積に関して互いと誤差の範囲内で同様である。事象のコピー数の類似性(表23を参照のこと)によって、遺伝子発現を増強又は抑制し得る挿入の副作用が、全ての事象に等しく影響されることが示される。EPA及びDHA蓄積において有意なばらつきがないことで、構築物設計において干渉効果があり得、その結果T-DNA中の遺伝子発現における位置的効果を最小にする方式でゲノムへT-DNAが組み込まれることが示唆される。VLC-PUFA蓄積が最高の事象、具体的にはEPA及びDHAは、LALFWAであって、これは、成熟種子中の総脂肪酸含量に関して、4.2パーセントのDHA及び16パーセントのEPAという最大蓄積であったが、平均は他の事象と同様であった。
夏の間に温室で栽培したプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
コピー数解析(表28を参照のこと)によって、選択された事象は、VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNA上にコードされた遺伝子について大きくホモ接合性であることが示される。LALTLE以外の全ての事象は、ゲノムへ挿入されたT-DNAの2つのコピーを有した。LALTLEは、まだいくつかの分離が進行中の3つ以上のコピーを有すると思われた。コピー数解析に基づいて、LALJDFは、1コピーのd4Des(Eg_GA)遺伝子を組み込んでおり、LALTLEは、その遺伝子の1つ又は2つのコピーに関して分離されていた。表29及び表30のEPA及びDHAのデータによって、表30に基づいて、DHAの蓄積が少ないおそらくLALJDFによってこの事象が等しく十分に行われることが示された。植物形態学は、試験した全ての事象について同じであった。温室で成長したT1植物について上記で考察されたとおり、事象間の変動は最低限であって、これによって、挿入部位の位置効果(陰性及び陽性の両方)の影響が全ての事象について同様であったことが示唆された。挿入部位効果がないことによって、プラスミド設計/T-DNAのトポロジーが、正規化の効果を発揮していたか/挿入部位効果を軽減するかが示される。
夏の間にUSDA成長ゾーン3a-4b及び5aでの圃場試験で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表32及び表33にある圃場データは、T2及びT3についての世代にまたがる一定能力を示す。このデータによって、PUFA(EPA及びDHA)蓄積が、温室成長植物について高かったことが示される。VLC-PUFA中のレベル以外に、温室と比較して観察された種子油含量には相違もあった(例えば、表34及び表31を比較)。この解析の結果は、実施例20に記載される。この圃場データによってまた、全体的なレベルではないが、EPA及びDHA蓄積に関して、温室データが事象の間の一貫性を正確に示したことも示される。温室で成長したT1及びT2植物について上記で顕著であるとおり、事象の間の変動は、この構築物に関しては低く、これによって、このT-DNA(複数可)設計は、遺伝子サイレンシング及び他の位置効果に対する緩衝/軽減効果を発揮するらしいことが示された。
[実施例11]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rc(実施例5中の組み合わせB)のT-DNAを含有する植物
本実施例では、EPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントを、2つの異なるT-DNA上の植物ゲノムへ移入した。この目的を達成するために、2つの異なるT-DNAを含む2つの異なるプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcを、アグロバクテリア中にクローニングし、植物組織を、VC-LJB2197-1qcz又はVC-LLM337-1qcz rcのいずれかを含む以外は同一であったこれらの2つのアグロバクテリア培養物と同時に実施例5に従ってインキュベートした。選択可能な除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、VC-LJB2197-1qczのT-DNAを含んだ。遺伝子発現及びコピー数解析の両方のためにPCRプロトコールを含む、実施例24に記載のように行ったPCRで確認されたとおり、プラスミドVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAも含んだ植物のみを維持した。プラスミドVC-LJB2197-1qczのT-DNA、並びにプラスミドVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを含む植物のみが、種子中のEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを組み合わせた。VC-LJB2197-1qczの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を、表1に列挙した。VC-LLM337-1qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を、表4に列挙した。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現された全ての酵素を、表35上に追加して列挙する。
夏の間に温室中で栽培される、プラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表34によって、T-DNAは、主に単一及び二重のコピーとして組み込まれたことが示される。実施例10で観察されるとおり、2つの構築物由来のT-DNAの1コピーと2コピーとの間でEPA及びDHAの増大があった(表36を参照のこと)が、2コピーと3コピーとの間の相違は少なかった。表37のT1データは、同様にこれを反映する。実施例10に注記されるとおり、両方の構築物由来のT-DNAを保有する植物の表現型では、コピー数にかかわらず(3つまで)変更は観察されなかった。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表39のデータによって、これらの2つのT-DNAの組み込み(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rc)は、所定のT-DNAに対して個々の遺伝子のコピー数変動を導入する方法で行った(挿入されている複数のコピーとともに短縮及び欠失を示している)ことが示される。例えば、表39上の事象LAMABLを、AHASの単一のコピー(ホモ接合性)、j-t-StCAT_p2_p-LuPXRの2つのコピー(ホモ接合性)、可能性としては、c-d6Elo(Pp_GA)の3つのコピー(おそらくホモ接合性)について分離したが、これは、j-i-Atss18_c-d6Elo(Pp_GA2)の3つのコピー(3つ全てに関してホモ接合性ではない)、及び3つのコピー(3つ全てについてホモ接合性)であり得る。脂肪酸プロファイルについて表42〜表45のデータによって、事象の間のいくつかのバリエーションが示されるが、大きな相違ではない。表41上に列挙される事象についてDHA及びEPAの両方についての最高の事象の標準は、LAMRHLであって、これは、種子の総脂肪酸含量のパーセントに関して1.9のDHA及び10.5のEPAを有し、かつなお分離中のVC-LJB2197-1qczのT-DNAの単一コピーであった可能性が高いものを含むが、VC-LLM337-1qcz rcは、単一コピーホモ接合性挿入であると思われる。この事象LANMGCは、組み合わせたEPA及びDHAのレベルが最低であって、種子の総脂肪酸含量のパーセントに対して3.7というEPA及び0.8というDHAを含んだ。LANMGCは、VC-LJB2197についてホモ接合性の単一のコピーであるらしく、VC-LLM337の少なくとも2つの別の組み込みを保持した。EPA及びDHAの最高の単一の植物レベルに関して、事象LAPWLPは、種子中の総脂肪酸のパーセンテージに関して3.2パーセントのDHA及び15.9パーセントのEPAを有した(表43)。このデータによって、挿入部位の位置は、構築物のこの組み合わせにおいてEPA及びDHA蓄積に関して重要であることが示される。前の実施例でわかるとおり、二重コピー挿入に対する単一コピー挿入の比較によって、単一コピーと二重コピーを含む植物の間で、VLC-PUFAレベルが増大したが、二重及び三重のコピーを含む植物の間では、差異が少なかったことが明らかになった。表46は、表現型のスコアリング/アセスメントを提示しており、かつ事象の間の空中の表現型における、並びに形質転換植物と非形質転換の参照との間におけるいくつかの小さい相違を示す。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表48は、選択事象のコピー数解析を示す。この事象は、1〜2つのホモ接合性を含み、かついくつかは、まだ分離されている追加の挿入を有した。例えば、LANBCHは、各々の構築物に関して1つのT-DNA挿入についてホモ接合性として分離されたが、LANPMZは、各々の構築物に関して2つのT-DNA挿入についてホモ接合性として分離された。LALXOLは、VC-LLM337-1qcz rcの1つの挿入について分離体だが非ホモ接合性と思われ、j-t-StCAT_p2_p-LuPXR周囲の領域を除いてホモ接合性ではなかった別のコピーを有するLJB2197-1qcz_Fの1つのホモ接合性挿入については、これは、各々のコピーについて二重コピー事象ホモ接合性であると思われる。選択されたT2事象に関しては、組み合わせたDHA及びEPAレベルは、種子中に存在する総脂肪酸の9〜13パーセントであった。選択されたT3事象は、11〜23パーセントに変化する合わせたDHA及びEPAレベルを有し、LALWPAは、種子中の総脂肪酸含量に対して、5パーセントのDHAレベル及び18パーセントのEPAレベルを有する(表50を参照のこと)。この選択された事象は、互いに対して又は野性型に対して形態学的な欠損も解剖学的な欠損も示さなかった。
夏の間にUSDA成長ゾーン3a-4b及び5aにおいて圃場試験で栽培したプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル
T3種子由来の圃場データによって、温室で観察されたよりもEPA及びDHAに関して圃場の値は低く、値は、合わせたEPA及びDHAについて種子の総脂肪酸含量の6〜13パーセントにわたったことが示される。これらのデータによって、温室と比較して圃場研究で観察された種子油含量の相違が示される(例えば、表54と表51とを比較)、また実施例10も参照のこと。この解析の結果を、実施例20に記載する。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT3植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
このデータによって、EPA及びDHAが、T4種子/生成において植物によってなお合成されていることが示される。
冬の間にUSDA成長ゾーン8a-9aにおいて圃場試験で栽培したプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT3植物の脂肪酸プロファイル及び表現型
このデータによって、圃場では、T4種子は、EPA及びDHAを作成しており、ただし、夏の圃場試験で見られる(上記、夏に圃場で栽培されるT2植物)より低レベルであることが示される。温室データは、夏の圃場試験と比較して高い油分を示す(表54との表61の比較)。このデータを、実施例20で詳細に解析した。
夏の間のUSDA成長ゾーン3a-4b及び5aにおける圃場試験で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを保持するT4植物の脂肪酸プロファイル及び表現型
このデータによって、T5世代を通じて、形質転換体は、夏のT2植物の圃場試験と一致したレベルでEPA及びDHAをなお産生していることが示される。追加の観察は、油量が、これらの2つの圃場試験の間で匹敵するということである。
[実施例12]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rc(実施例5での組み合わせC)のT-DNAを含む植物。
本実施例では、EPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントを、2つの異なるT-DNA上の植物ゲノムに移入した。この目的を達成するために、アグロバクテリア中にクローニングされた2つの異なるT-DNAを含む2つの異なるプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rc、並びに植物組織を、VC-LJB2197-1qcz又はVC-LLM338-3qcz rcのいずれかを含むことは別として同一であるこれらの2つのアグロバクテリウム培養物と同時に実施例5によってインキュベートした。選択性の除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、VC-LJB2197-1qczのT-DNAを含んだ。実施例5に記載のとおり行った、PCRによって確認されたプラスミドVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAも含んだ、植物のみを維持した。プラスミドVC-LJB2197-1qczのT-DNA及びプラスミドVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを含む植物のみが、種子中でEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを組み合わせる。VC-LJB2197-1qczの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表1に列挙する。VC-LLM338-3qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表5に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要であるVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現された全ての酵素を、表65に追加して列挙する。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表67及び表68のデータによって、この構築物に関しては、EPA及びDHA中の増大は、二重コピー事象に対して単一コピーを比較する場合、さらにわずかであったが、二重コピー事象はなお、単一コピー事象を超えてEPA及びDHAの増大を有したことが示される。他の実施例で観察されるとおり、両方の構築物由来のT-DNAを保有する植物の表現型の変更の有意な観察はなかった。
[実施例13]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rc(実施例5の組み合わせD)のT-DNAを含む植物
本実施例では、EPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントを2つの異なるT-DNA上の植物ゲノムに移入した。この目的を達成するために、アグロバクテリア中にクローニングされた2つの異なるT-DNAを含むVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rc、並びに植物組織を、VC-LJB2755-2qcz rc又はVC-LLM391-2qcz rcのいずれかを含むこと以外は同一であるこれらの2つのアグロバクテリア培養物と同時に実施例5に従ってインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、VC-LJB2755-2qcz rcのT-DNAを含んだ。実施例5に記載のとおり行った、PCRによって確認されたプラスミドVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAも含んだ、植物のみを維持した。プラスミドVC-LJB2755-2qcz rcのT-DNA及びプラスミドVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを含む植物のみが、種子中でEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを組み合わせる。VC-LJB2755-2qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表2に列挙する。VC-LLM391-2qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表6に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要であるVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現された全ての酵素を、表70に追加して列挙する。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表72、表73及び表74のデータによって、構築物のこの組み合わせが、ゲノムへT-DNAを挿入できたが、EPA及びDHA蓄積はここでも、前の実施例で観察されるよりもわずかなレベルであったことが示される。それにもかかわらず、この構築物は首尾よく経路を反復利用して、植物の空中部分に対する影響なしでEPA及びDHA及びARAを生成した。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表75、表76、表77、表78、表79、表80、表81及び表82のデータによって、構築物のこの対が、VLC-PUFA(C20及びC22、EPA、DHA及びARAを含む)を生成するための経路を首尾よく反復していたことが示される。各々の遺伝子についてのコピー数は、T-DNAの一部の挿入に対するT-DNAのホモ接合性の単一挿入及び/又はゲノムへの挿入後T-DNAの欠失から変化した。この脂肪酸プロファイルによって、いくつかの事象(表78、事象LAPCSCを参照のこと)によって、最大18パーセントの合わせたEPA及びDHAまで蓄積できたことが示された。表75によって、LAPCSCは、構築物VC-LJB2755-2qcz(そのマーカーの周囲の領域の少なくとも4つのコピーを含んだ)上のj-p-LuPXR_i-Atss15の領域を除いて各々のT-DNAの単一の挿入について大部分はホモ接合性であったことが示される。表81上に存在したデータによって、構築物VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rcに相当するT-DNAを保有する植物の表現型の明らかな変更はなかったことが示される。
夏の間温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表83のデータによって、選択された事象のコピー数は、T3種子中でホモ接合性であった単一挿入であったことが示される。脂肪酸プロファイル測定(表84及び表85を参照のこと)によって、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rc由来のT-DNAの組み合わせが、VLC-PUFA経路において、ARA、EPA及びDHAを首尾よく蓄積し得ることが示された。表86のデータによって、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rcがもたらした植物の空中部分に対して有意な影響がなかったことが示される。
夏の間、USDA成長ゾーン3a-4b及び5aで、圃場試験で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表87及び表88に示される、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rc由来のT-DNAを保持する事象からのT3種子についての圃場データによって、植物が圃場でVLC-PUFAを作成し得る(ARA、EPA及びDHA)が、温室で観察されるレベルでは作製し得なかったことが示される。しかし、温室と比較して、観察された種子油含量には相違もあった(例えば、表89と表86とを比較する)。これらの観察は、以前の実施例と一致しており、ここでは、VLC-PUFA、具体的には、EPA、DHA及びARAの低下と一致して圃場で成長した植物中で油分の増大が観察された。油分及びVLC-PUFAに関する観察のさらに詳細な説明は、実施例20に示す。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT3植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rc(表90を参照のこと)の両方由来のT-DNAについてホモ接合性であった事象LAODDN由来のT3植物由来のT4種子は、VLC-PUFA(具体的には、ARA、EPA及びDHA、表91及び表92を参照のこと)を蓄積した。EPA及びDHAの組み合わせは、この事象について種子中の総脂肪酸含量の最大約10%までであった。
冬に、USDA成長ゾーン8a-9aで、圃場試験で栽培した、プラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT3植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rc由来のホモ接合性T-DNA挿入を保持する2つの事象のT4種子についての圃場データ(表83及び表90及び表84、表87、表91を参照のこと)によって、温室及び圃場で成長した場合、これらの事象は、EPA、DHA及びARAを蓄積することが示されるが、一貫して観察されるとおり、圃場成長物質は、温室で観察される程度まで、VLC-PUFA(ARA、EPA、DHA)を蓄積しなかった(表91、表92、表87及び表88と比較して、表94及び表95を参照のこと)。実施例11パートFで観察されるとおり、夏の圃場試験と比較して高い油分が観察された(表89との表96の比較)。この現象は、実施例20で詳細に解析する。
夏の間にUSDAゾーン3a-4b及び5aにおいて圃場試験で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcのT-DNAを保持するT4植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
このデータによって、T5世代を通じて、事象LAODDNは、圃場試験と一致したレベルでEPA及びDHAをなお生成していたことが示される(パートDに記載される)。また油分は、これらの2つの圃場試験の間で匹敵していた。
[実施例14]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rc(実施例5中の組み合わせE)のT-DNAを含む植物
本実施例では、EPA及びDHA合成に必要な遺伝子エレメントを、2つの異なるT-DNA上の植物ゲノムに移した。この目的を達成するために、2つの異なるT-DNAを含む、2つの異なるプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcを、アグロバクテリア中にクローニングして、植物組織を、VC-LJB2755-2qcz rc又はVC-LTM217-1qcz rc rcのいずれかを含むこと以外は同一のこれらの2つのアグロバクテリア培養物と同時に実施例5に従ってインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、VC-LJB2755-2qcz rcのT-DNAを含んだ。実施例5に記載のように行った、PCRで確認されたプラスミドVC-LTM217-1qcz rcのT-DNAも含んだ植物のみを維持した。プラスミドVC-LJB2755-2qcz rcのT-DNA及びプラスミドVC-LTM217-1qcz rcのT-DNAを含む植物のみが、種子中でEPA及びDHA合成について必要な全ての遺伝子エレメントを組み合わせた。VC-LJB2755-2qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を、表2に列挙する。VC-LTM217-1qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を、表7に列挙した。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現された全ての酵素をさらに、表100に列挙する。
冬の間に温室中で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察。
表102及び表103によって、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LTM217-1qcz rcの挿入のための単一コピー事象が、二重コピー事象ほど多くEPA及びDHAを蓄積しなかったことが示される。表103によって、T1種子中の最高のプロデューサーのために、合わせたEPA及びDHA含量が、種子の総脂肪酸含量の15パーセントの範囲であったことが示される(総種子脂肪酸含量の5%がDHAであって、10%がEPAである)。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
選択されたT1事象由来の植物で行った測定によって、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LTM217-1qcz rcに相当するT-DNAの単一コピーのホモ接合性挿入(表104、具体的には、表の説明文を参照のこと)及びT2がT1と同様のレベルでEPA及びDHAを蓄積することが示された。T2種子での測定(表106及び表107を参照のこと)によって、EPA及びDHAは、種子の総脂肪酸含量の最大13%まで蓄積した(種子の総脂肪酸含量の約3%がDHAである)。
[実施例15]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドRTP10690-1qcz_FのT-DNAを含む植物
この実施例で記載されるEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを、植物ゲノム中へBiBACプラスミドを用いて単一のT-DNA上に移した。この目的を達成するために、プラスミドRTP10690-1qcz_Fを、アグロバクテリア中にクローニングして、植物組織を、このアグロバクテリアの培養物とともに実施例6に従ってインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、RTP10690-1qcz_FのT-DNAを含んだ。RTP10690-1qcz_Fの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表8に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なRTP10690-1qcz_FのT-DNAの両方を保持する植物の種子中で発現された全ての酵素を、さらに表109に列挙する。
冬の間に温室で栽培したプラスミド RTP10690-1qcz_FのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表110にあるように、他の構築物についてよりもこの構築物で観察された挿入事象が少なく、二重コピーよりも単一のコピー事象が多く、ほぼ四倍までであったことが示される。表111及び表112の脂肪酸プロファイルデータによって、DHA及びEPAは、誤差内で単一コピー事象と二重コピー事象との間で同様の能力であるT1中の総種子脂肪酸含量の4%まで蓄積し得ることが示された。表113によって、T0中のこの構築物と関連した有意な空中の表現型はなかったことが示される。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドRTP10690-1qcz_FのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表115及び表116のデータによって、EPA及びDHAに関してT1種子のものと同様の能力のT2種子が示される(比較に関しては、表111及び表112も参照のこと)。選択された事象は全て同様のレベルで行い、各々の遺伝子の1〜2つのコピーについて分離した。
[実施例16]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドRTP10691-2qczのT-DNAを含有する植物
この実施例で記載したEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを、単一のT-DNA上で、BiBACプラスミドを用いて、植物ゲノム中に移した。この目的を達成するために、プラスミドRTP10691-2qczをアグロバクテリア中にクローニングして、植物組織を実施例6に従って、このアグロバクテリア培養物とともにインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーに起因して、再生された植物は、RTP10691-2qczのT-DNAを含んだ。RTP10691-2qczの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を、表9に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なRTP10691-2qczの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現された全ての酵素をさらに表118に列挙する。
[実施例17]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LTM595-1qcz rcのT-DNAを含む植物
本実施例に記載のEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを、単一T-DNA上で、BiBACプラスミドを用いて、植物ゲノム中に移した。この目的を達成するために、プラスミドVC-LTM595-1qcz rcをアグロバクテリア中にクローニングして、植物組織を、実施例6に従って、アグロバクテリア培養物とともにインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーによれば、再生された植物は、VC-LTM595-1qcz rcのT-DNAを含んだ。VC-LTM595-1qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表10に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なVC-LTM595-1qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子中で発現される全ての酵素をさらに、表119に列挙する。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LTM595-1qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
VC-RTP10690-1qcz_Fと同様に、T-DNA全体の挿入の数は、多重構築物形質転換で得たものほど高くなかった(表120を参照のこと)。表121及び表122は、単一、二重及び三重のコピーのT-DNAについての脂肪酸プロファイル測定を示しており、かつEPA及びDHA蓄積に関して、二重コピー構築物は、単一コピー構築物よりもわずかに優れており、おそらく、三重コピー構築物よりもわずかに優れていることを示す。この脂肪酸プロファイルデータによってさらに、T1種子におけるEPA及びDHAの蓄積が、総脂肪酸の10%までであって、種子中の総脂肪酸の最大2%までがDHAであることが示される。表123に示される表現型の測定によって、開花時間におけるいくつかの変動が示された(DFFが示すとおり)。
冬の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LTM595-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定及び表現型観察
このデータ表124、表125及び表126によって、T-DNAに含まれた遺伝子についてのコピー数の変動が得られ、コピー数は、1〜3に及んだことが示される。脂肪酸プロファイルの測定のために選択された事象の能力(表127及び表128を参照のこと)は、前の実施例で観察されたものと同様であって、EPA及びDHAの合わせた値は値の上限について、種子の総脂肪酸含量の約10パーセントである。表129のデータによって、この構築物に関して前の世代で観察されたとおり(実施例17、パートAを参照のこと)、種々の事象の間に開花時間のある程度の変化があったことが示される。
[実施例18]
種子中のEPA及びDHAの生成のためのプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを含む植物
本実施例に記載のEPA及びDHA合成に必要な全ての遺伝子エレメントを、単一T-DNA上でBiBACプラスミドを用いて、植物ゲノム中に移した。この目的を達成するために、アグロバクテリアにクローニングされたプラスミドVC-LTM593-1qcz rc、及び植物組織を、実施例6に従って、このアグロバクテリア培養物とともにインキュベートした。選択性除草剤耐性マーカーにより、再生された植物は、VC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを含んだ。VC-LTM593-1qcz rcの遺伝子エレメント及び各々のエレメントの機能を表11に列挙する。便宜上、EPA及びDHA合成に必要なVC-LTM593-1qcz rcの両方のT-DNAを保持する植物の種子で発現される全ての酵素を、追加して表130に列挙する。
夏の間に温室で栽培されたプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを保持するT0植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表131のデータからの1つの観察は、実施例16又は17におけるBiBAC構築物から得たVC-LTP593-1qczから多数の挿入事象が得られたということであった。表132及び表133のデータによって、VLC-PUFA蓄積、具体的には、EPA及びDHAに関して、二重コピー事象は、単一コピー事象よりも蓄積したこと、及び三重コピー事象は、二重コピー事象よりも多く蓄積し、三重コピー事象についての蓄積は、総脂肪酸の約8パーセントである(EPA及びDHAの組み合わせ、総脂肪酸の1.6%の蓄積がDHAである)ことが示される。蓄積した最高量は、EPA及びDHAの組み合わせである種子中の総脂肪酸含量の約15パーセントであって、総種子脂肪酸含量3パーセントがDHAである(表133を参照のこと)。T0植物及びT1種子中のこの構築物の空中の表現型は、実施例16又は17に示されるよりも示す変動が少なかった。
冬の間に温室で栽培したプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
特定の事象を、コピー数についてさらに検討し、二重挿入を伴う単一挿入から部分的な二重挿入へのT-DNAについての挿入数の変動を示した。さらに、遺伝子コピー数にある程度の変動があった(部分的な挿入及び潜在的な欠失を伴う)(表135、表136及び表137を参照のこと)。表138及び表139に示す脂肪酸プロファイルデータによって、総種子脂肪酸含量の18パーセントのEPA及びDHAの組み合わせの蓄積の上限が示される(事象LBFDAU)。事象LBFDAUでは、T1において、総種子脂肪酸含量のパーセントはEPAで15%であり、かつ総種子脂肪酸含量はDHAで3%である。LBFDAUを、部分的な二重コピーの指標であるコピー数で解析した。高レベルのEPA及びDHAを有する特定の事象の別の例は、LBFGKNであって、総種子脂肪酸含量の約12パーセントは、EPA及びDHAであり、総種子脂肪酸含量の10パーセントはEPAで、2%がDHAである。LBFGKNのT1世代は、VC-LTM593-1qcz rcについて単一のコピー挿入事象のみを有したが、表140、表141及び表142のデータによって、二重コピー二重遺伝子座事象が、T2種子脂肪酸プロファイルに対して他のコピー及び遺伝子座数よりも、合わせたEPA及びDHAより多く蓄積する傾向であったことが示される。この観察は、挿入部位の効果の性質、及び選り抜きの事象の生成に影響する種々の要因に反映する可能性が高い。表142によって、36〜48のDFF(最初の開花までの日)で示されるように、植物の空中の表現型について、ある範囲の開花時間があったことが示される。事象LBFDAUは、43という値のDFFを有する他の事象のほとんどと有意に異なることはなかったので、T1植物及びT2種子において、空中の表現型に対する有意な影響も、種子中の総油又はタンパク質の蓄積に対する有意な影響も示さなかった。
冬の間にUSDA成長ゾーン11で、圃場試験で栽培したプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを保持するT1植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
より高レベルのEPA及びDHAを有した特定の事象を、T1世代の脂肪酸プロファイル、空中の表現型(もしあれば)、及びコピー数について、圃場で試験して、検査した。種々の構築物を検査し、これには、代表的な、部分的な二重コピー挿入、単一コピー挿入及び二重コピー挿入を有するものを含む(表144を参照のこと)。表145によって、LBFDAUが、総種子脂肪酸含量の約13%のEPA含量、及び約3%のDHA含量、並びに総種子脂肪酸の3.6%というDHA及び17%というEPAについての最大含量を有したことが示される(表146)。LBFDAU由来の単一種子の測定は、26%EPA及び4.6%のDHA程度を有した。表147を参照のこと。LBFDAUの圃場の能力全般は、温室の能力に適合したか又は超えていた。
夏の間に温室で栽培したプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察
表148のデータによって、選択された事象のコピー数は、T3種子においてホモ接合性である単一の挿入であったことが示される。脂肪酸プロファイル測定(表149及び表150を参照のこと)によって、VC-LTM593-1qcz rc由来のT-DNAの組み合わせが、VLC-PUFA経路において、ARA、EPA及びDHAを首尾よく蓄積できることが示された。表151のデータによって、VC-LTM593-1qcz rcで生じた植物の空中の一部に対して有意な影響がなかったことが示される。
夏の間にUSDA成長ゾーン3a-4b及び5aで、圃場試験で栽培したプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを保持するT2植物の脂肪酸プロファイル、コピー数測定、及び表現型の観察 表152及び表153に示される、VC-LTM593-1qcz rc由来のT-DNAを保持する事象由来のT3種子についての圃場データによって、植物は、圃場でVLC-PUFA(ARA、EPA及びDHA)を作成できるが、温室で観察されたレベルではないことが示される。ANOVAは、ソフトウェアJMP11.0を用いて行った。解析は、Tukey検定を用いて95%信頼レベルで行った。圃場試験から得られたデータ中の不均衡について補償するために(例えば、天候に起因して)、最小二乗とは、統計的な解析で用いる手段の代わりを意味する。表154、表155及び表156中の共通の文字は、最小二乗平均の有意な相違は示さない。表154によって、農学的パラメータの統計学的な解析が示される。
温室と比較して、種子の油分に相違が観察され(例えば、表151及び表154と比較して)、これによって、油分及び脂肪酸プロファイルが関連し得ることが示された。これらの観察は、以前の実施例(実施例10、11及び13)と一致しており、ここでは、圃場で成長した植物における油分の増大は、VLC-PUFA、具体的には、EPA、DHA及びARAの低下を伴っていることが観察された。油分及びVLC-PUFAに関する観察のさらに詳細な説明を実施例20に示す。
表152におけるEPA及びDHAの%(脂肪酸の総重量と比較した各脂肪酸についての%(w/w))を、表154における油の量と組み合わせて、トランスジェニック事象で生成される1gの種子あたりのEPA+DHAのmgを算出してもよい。この算出を用いて、事象LBFGKNからのバルクの種子は、1gの種子あたり25.7mgのEPA+DHAを有することが確認され、事象LBFDAU由来のバルクの種子は、種子1gあたり47.4mgのEPA+DHAを有することが確認された。
種子の収率(1haあたりのkg、図88)に関しては、イミダゾリノン除草剤での処置の有無について、圃場で成長した場合、野性型のKumilyに対して事象を比較して、統計学的に関連する相違は見出されなかった(Tukeyを用いて試験、0.05%レベル)。従って、一実施形態では、本発明は、1つ以上のトランスジェニック植物、好ましくはB.ナプス植物(複数可)(EPA及びDHAを生成する)に関し、従って、本発明によれば、植物の種子収率は、対照の植物に対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一である。好ましくは、この植物の種子収率は、イミダゾリノン除草剤での処置なしで成長した対照と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であるが、本発明の植物は、イミダゾリン除草剤処理で成長する。
一実施形態では、本発明の植物から、好ましくは圃場で成長した植物からバルク種子を収集することは、対照の植物の収率よりも15%、8%、4%、又は好ましくは1%以下である測定された収率(1haあたりの種子のkg)を有する。好ましくは、植物の収集されたバルク種子の収率は、イミダゾリノン除草剤での処置なしで成長した対照と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であったが、本発明の植物は、イミダゾリン除草剤処理で成長する。
従って、本発明のトランスジェニックB.ナプス植物は、バルク種子中で、油中で1%超のEPH+DHAを生成可能で、好ましくは、この植物は、バルク種子中で、2%超、例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%超又は10%超の油を生成する。好ましくは、本発明の植物のバルク種子中の油は、イミダゾリノン除草剤での処置なしで増殖した対照の植物と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超えて同一であるが、本発明の植物は、イミダゾリン除草剤処理で成長する。この内容物は、総脂肪酸(油又は脂質中に存在する)の総重量のパーセンテージ(EPA+DHAの重量)として表現される。従って、含量は好ましくは、重量パーセンテージとして示す(%(w/w))。
対照の植物は好ましくは、本発明の植物に対して、例えば、本実施例で記載される植物に対して、少なくとも遺伝子的に90%、95%、96%、97%、98%、又は好ましくは99%若しくは99.5%を超えて同一であるが、同じ条件下で成長するVLC-PUFAをまったく生じない植物、例えば、同じ条件下で成長する野性型である。
除草剤処理はまた、イミダゾリノンを噴霧されなかった植物と比較して種子中のEPA及びDHA(図89)、油(図90)、又はタンパク質(図91)の含量に一貫性のある効果を有さなかった。従って、一実施形態では、本発明は、1つ以上のトランスジェニック植物、好ましくは本発明によるB.ナプス植物(複数可)(EPA及びDHAを生成する)に関し、従って、植物の油(図90)、又はタンパク質(図91)の含量は、対照の植物に対して、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一である。
対照の植物は、好ましくは、本発明の植物に対して、例えば、本実施例に記載される植物に対して、少なくとも遺伝子的に90%、95%、96%、97%、98%、又は好ましくは99%若しくは99.5%を超えて同一であるが、VLC-PUFAをまったく生成しない植物、具体的には、イミダゾリノン除草剤での処置なしに成長する対照植物を生成せず、本発明の植物は、イミダゾリン除草剤処理で成長する。
従って、一実施形態では、本発明のトランスジェニック植物のバルク種子は、EPA及びDHAを含む種子油を含み、ここで種子油中のEPA及びDHAの含量は、イミダゾリノン除草剤での処置後でさえ、種子油中の総脂肪酸含量の2%、3,%、4%、5%、5.9%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%超である。
圃場での植物の稔性は、各々のプロットからの複数の植物に対して無菌ポッドのパーセントを格付けすることによって評価した。稔性はWTのKumilyに関して、並びに事象LBFDGG、LBFGKN、LBFIDT、LBFIHE、LBFLDI、及びLBFPRAに関して評価した。0〜10のスケールでは、0のスコアとは、ポッドの0%が無菌であることを意味し、1は、ポッドの10%が無菌であったことを意味し、2は、ポッドの20%が無菌であったことを意味するなどであって、10とは、ポッドの100%が無菌であったことを意味する。全てのプロットにまたがる野性型Kumily対照植物の平均の稔性スコアは、0.17であって、これは、ポッドの1.7%が無菌であったことを意味する。トランスジェニック事象の平均スコアは、0.33〜0.63に及び、これは、ポッドの3.3〜5.3%が無菌であったことを意味する。
興味深いことに、本明細書に言及されるようなデサチュラーゼ又はエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドの発現は、生成された植物の稔性に有意に影響しなかった。対照の植物(野性型植物)と比較して、稔性はわずかにのみ低下した。
従って、本発明は、一実施形態では、トランスジェニック植物、好ましくは、トランスジェニックB.ナプス植物種子(圃場条件で成長させた場合、2%、2,5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%;9%、10%、12%以上のEPA及びDHAを種子油中に含む)に関する。無作為に多数の植物を選択することによって、次いで、1つ以上の無菌ポッド/芽を有する植物のパーセントを観察することによって、測定した平均の植物の稔性は、対照植物で、例えば、同じ条件下で成長した野性型植物中で観察された同じ測定の30%以下、又は20%以下、又は約10%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3.3%以下、好ましくは1%〜10%、さらに好ましくは3%〜7%、例えば、3.3%〜5.3%である。
好ましくは、対照の植物は、好ましくは、本発明の植物に対して、例えば、この実施例に記載される植物に対して、少なくとも遺伝子的に90%、95%、96%、97%、98%、又は好ましくは99%若しくは99.5%以上同一であるが、VLC-PUFAを生じない植物である。
一実施形態では、本発明の植物は、中(>10,000塩基対)又は大(>30,000塩基対)のT-DNA挿入、例えば、この実施例に記載のT-DNAで形質転換した。一実施形態では、このT-DNAは、1000bps〜10,000 bps,例えば、3000bps〜9000bps、好ましくは4000bps〜8500bpsからなる。
[実施例19]
各々の経路の段階で観察された変換効率に対する遺伝子コピー数の効果。
本発明で列挙された種々の構築物のVLC-PUFAレベルを分析する場合、T-DNAコピー数が増えるとき、経路ステップでの変換効率に別個の相違が観察された。これは、(1)単一コピーT-DNA挿入、対、二重コピーT-DNA挿入を有する事象、(2)ヘテロ接合性植物、対、ホモ接合性植物、及び(3)実施例9に記載され、かつ図22及び図23に示されるような分離性の単一の種子を解析する場合、のVLC-PUFAレベルを比較するときに観察された。これによって、ゲノム中に存在するT-DNAコピーの数である「遺伝子用量」とVLC-PUFAレベルとの間の関係が示される。さらなる検討の際に、その段階での遺伝子数及び/又は遺伝子並びに活性の発現レベルが増大するとき、経路に対する影響に関して、VLC-PUFA経路の特定の遺伝子/段階は、さらに有益であることが明らかである。同一の活性を有する酵素をコードする複数の遺伝子が存在する場合、存在する各遺伝子からの寄与は、評価が困難であるが(例えば、2つの異なるオメガ-3-デサチュラーゼは、評価することが技術的に困難である)、図2に示される等式を用いることによって、各経路ステップについて変換効率を計算することが可能であった。各々の経路ステップについてのこれらの変換効率を、特定の遺伝子用量に相当する植物の種々の集団について算出して、変換効率における観察された増大が、1つ以上の個々の経路ステップに割り当てられ得るか否かを検討した(例えば、経路中の1つの早期段階での遺伝子用量の増大に起因する、変換効率の増大は、制限基質をより多く簡単に提供して、後の段階で変換効率を増大し得る)。
変換効率は、時に、「みかけの」変換効率と呼ばれる。なぜなら、いくつかの算出に関しては、計算は、反応に影響し得る全ての要因を考慮しないことが認識されるからである。反応に影響し得るが、変換効率の計算の間に考慮されない要因の例としては;デルタ-6-デサチュラーゼの基質が、リン脂質のsn-2位置で結合したまま生成されるが、脂肪酸がCoAに結合されたままでデルタ-6-デサチュラーゼの生成が行われる。従って、図33に示される低いデルタ-6-デサチュラーゼ変換効率が、PC(ホスファチジルコリン)結合のLA/ALAからCoA結合のLA/ALAへのトランス-エステル化を介したデルタ-6-デサチュラーゼへの基質の不十分な供給に起因しているか、又はデルタ-6-デサチュラーゼ(desature)が低い活性/低い変換効率を有したか否かは直ちに明らかではない。
変換効率の解釈のために、生成するための基質の任意の触媒された変換は、基質濃度、触媒(酵素)濃度、及び生成物の濃度に依存することに注意することも重要であった。
経路ステップによってデータ経路ステップを分析して、以下の観察を、図32〜図39で行うことができる。
デルタ-12-不飽和化の変換効率
デルタ-12-デサチュラーゼ変換効率は、基質濃度、生成物濃度、及び酵素濃度に影響する全てのステップを包含する。実施例12のデータから、デルタ-12-デサチュラーゼ、c-d12Des(Ps_GA)は酵素的に、ホスファチジルコリン結合の18:2n-6を生成することが証明され(図26、パネルA)、これはこの基質が、ホスファチジルコリン結合18:1n-9であったことを意味する。新しく形成された18:1n-9の主なフラックスは、プラスチド生成18:1n-9に由来し、これは、サイトゾルに輸送されて、ここでCoAに結合された。従って、デルタ-12-不飽和化の必要条件は、LPCAT(リゾホスファチジルコリンアセチルトランスフェラーゼEC2.3.1.23)を介するか、又はLPAAT(リゾフォスファチジン酸アシルトランスフェラーゼE.C.2.3.1.51)を介してホスファチジルコリンのsn2位置へのCoA-結合の18:1n-9の組み込みであって、その後に、形成された(sn2)18:1n-9-ホスファチジン酸の(sn2)18:1n-9-DAGへの変換(DAGは、ジアシルグリセロールの略号)が続き、それによって(sn2)18:1n-9-DAGは、直接、デルタ-12-デサチュラーゼの基質である(sn2)18:1n-9-PC(PCは、ホスファチジルコリンの略号)に、PDCT(ホスファチジルコリンジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ EC 2.7.8.2)を介して変換されるか、又は(sn2)18:1n-9-PCへ変換されるべきCPT(CPTは、sn-1,2-ジアシルグリセロール:コリンホスホトランスフェラーゼEC 2.7.8.2の略号)を介してホスホコリン頭部基を得る。プラスミド合成の18:1n-9のこの組み込みの有効性は、デルタ-12-デサチュラーゼ基質濃度に直接影響する。既に述べたとおり、PCは、PDCTによってDAGへ変換され、DAGは引き続いてTAGに変換された。従って、PC結合したデルタ-12-デサチュラーゼ基質及びデルタ-12-デサチュラーゼ反応の一部であった生成物の量はまた、PDCTの基質特異性に直接関連した。
デルタ-12-不飽和化変換効率と、デルタ-12-デサチュラーゼのコピー数との間には強力な相関があった(図32)。これは、T0単一コピー植物の平均変換効率(1構築物あたり全ての事象にまたがる)と、T0二重コピー植物(1構築物あたり全ての事象にまたがる)の平均の変換効率とを比較した場合に証明された。同じ相関が、T1世代で見ることができる。デルタ-12-不飽和化変換効率と、デルタ-12-デサチュラーゼのコピー数との強力な相関がまた、異種接合性対ホモ接合性のT-DNA組み込みに起因するコピー数相違を比較した場合にも見られた:T0世代は常に、ヘテロ接合性植物からなるが、T1世代はほとんど、実施例10〜実施例18に適用される選択に起因してホモ接合性植物からなる。デルタ-12-不飽和化変換効率は、T0単一コピー植物の平均変換効率(1構築物あたり全ての事象にまたがる)と、T1単一コピー植物の平均変換効率(1構築物あたり全ての事象にまたがる)とを比較した場合、増大する。同様に、デルタ-12-不飽和化変換効率は、T0二重コピー植物の平均変換効率(1構築物あたり全ての事象にまたがる)と、T1二重コピー植物の平均変換効率(1構築物あたり全ての事象にまたがる)とを比較した場合、増大する。唯一例外は:
1)T0単一コピー事象、対、T0二重コピー事象(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを含む)である:ただし、VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcについてほど顕著ではなく、デルタ-12-デサチュラーゼ変換効率にはここではわずかな相違があった。このわずかな相違は、構築物VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを含む事象について2つのコピー数カテゴリーに対して事象を正確に割り当てるには不十分なT0世代におけるデータに起因する、並びに
2)T0単一コピー事象、対、T0二重コピー事象(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを含む):ただし、VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcについてほど顕著ではなく、またここでのデルタ-12-デサチュラーゼ変換効率におけるわずかな相違は、構築物VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを含む事象について2つのコピー数カテゴリーに対して事象を正確に割り当てるには不十分なT0世代におけるデータに起因する、並びに3)T1単一コピー事象、対、T1単一コピー(単一の遺伝子座)事象(構築物VC-LTM593-1qcz rcを含む):これらの群の間の2倍のコピー数相違に起因して変換効率に影響はなかった。単一コピーの群(単一遺伝子座)事象の群は、追加の現象によって影響され、それによって、このホモ接合性群のT1植物のT2種子における平均VLC-PUFAレベルは、ヘテロ接合性T0植物の分離性T1種子と比較して増大ではなく低下する。この群が異常であったというさらなる徴候を図35にみることができ、ここでは、デルタ-5-デサチュラーゼ変換効率は、ヘテロ接合性植物と比較してホモ接合性植物では有意に低かったことが証明された。
デルタ-12-デサチュラーゼの高い変換効率を考えれば、LPCATを介する基質の供給は、ボトルネックではない可能性が高い。またこのデータによって、デルタ-12-デサチュラーゼ生成物の効率的な除去は、高い変換効率に起因することが示唆される。しかし;油中に蓄積された高レベルの18:2n-6、及び低いデルタ-6-変換効率を考慮すれば、全てのデルタ-12-不飽和化 18:2n-6が、CoA(次の経路ステップのための作用の部位)へのトランスエステル化を介してPCから除去されたのではないことが証明された。18:2n-6の運命に関して;本発明者らの観察では、デルタ-12-不飽和化18:2n-6は、Bates et al. (2012) Plant Physiology 160: 1530-1539によって考察されるとおり、PDCTを介してDAGへの不飽和化PCの直接変換によって除去される可能性が高かった。PDCTのこの活性は、デルタ-12-デサチュラーゼに対して新鮮な18:1n-9-PC基質を提供することによって、高いデルタ-12-デサチュラーゼ変換効率を強力に支持するが、同時に、18:2n-6-PC生成物を(DAGへの変換によって)除去する。しかし、後者の活性は、経路の継続には強力なボトルネックとなる(これは低いデルタ-6-デサチュラーゼ変換効率によって証明される)。
デルタ-12-デサチュラーゼの変換効率の増大の効果は、300超の多重遺伝子構築物をキャノーラ及びシロイヌナズナへ形質転換することによって得た6,000を超える植物のPUFAプロファイルを分析した場合に観察され、それによってこれらの構築物の全てが、アラキドン酸合成に必要な必須の活性を有する遺伝子を保持した。これらの300を超える構築物にまたがって、10を超える異なるデルタ-12-デサチュラーゼ酵素を検討した。
デルタ-6-不飽和化の変換効率
デルタ-6-不飽和化のために、この段階で観察された変換効率が、基質濃度(これは、CoA結合のリノール酸であった)、触媒濃度(デルタ-6-デサチュラーゼであった)、及び生成物濃度に依存するということを強調することが特に重要であった。これは、デルタ-12-デサチュラーゼによって生じるPC結合した18:2n-6は、デルタ-6-不飽和化が生じ得る前にCoAにトランスエステル化される必要があるということであった。実施例10〜18における18:3n-6及び18:4n-3の蓄積がないことで、CoA-結合した18:3n-6及びCoA-結合した18:4n-3は、デルタ-6-エロンガーゼによって効率的に変換され、18:3n-6及び18:4n-3の任意の有意な蓄積を効率的に妨げることが強力に示される。一般には、デルタ-6-デサチュラーゼ変換効率は、全ての構築物に関して低い。生成物の効率的な除去はボトルネックではなかったことを考慮して、低い変換効率は、デルタ-6-デサチュラーゼ酵素の低い活性に起因し得るか、又はCoA結合基質へのPC結合基質の不十分な変換を理由とするかのいずれかであり得る。これにもかかわらず、デルタ-6-不飽和化変換効率とデルタ-6-デサチュラーゼのコピー数との明らかな相関があった。デルタ-12-デサチュラーゼのものと同様の方式では、これは、コピー数増大の理由(ヘテロ接合性Vsホモ接合性、単一コピーゲノム組み込み、対、二重コピーゲノム組み込み)にかかわらず見られた。実際、構築物の組み合わせVC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcの植物は、T-DNA上にデルタ-6-デサチュラーゼの追加のコピーを含む。従って、これによって、22個の二重コピーT1植物の群は、T2種子において、異なる構築物の全ての類似の二重コピー群の最高のデルタ-6-デサチュラーゼ変換効率を有することと一致した。
デルタ-6-デサチュラーゼに関しては、デルタ-12-デサチュラーゼについてとこのコピー数効果に対して同じ例外が見られる。これらの例外がなぜ観察されるかというデルタ-12-デサチュラーゼについて述べられた解釈について同じことが、デルタ-6-デサチュラーゼについてもこの場合にあてはまる理由と思われる。これらの例外とは:
1)T0単一コピー事象、対、T0二重コピー事象(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM306-1qcz rcのT-DNAを含む)
2)T0単一コピー事象、対、T0二重コピー事象(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM337-1qcz rcのT-DNAを含む)
3)T0単一コピー事象、対、T0二重コピー事象(VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを含む)、並びに
4)T1単一コピー事象、対、T1単一コピー(単一遺伝子座)事象(構築物VC-LTM593-1qcz rcを含む)。
デルタ-12-デサチュラーゼに関して実証されるとおり、デルタ-12-デサチュラーゼ生成物の量は、デルタ-6-デサチュラーゼの基質の量の増大を意味する、デルタ-12-デサチュラーゼのコピー数とともに増大する。デルタ-12-デサチュラーゼ及びデルタ-6-デサチュラーゼの両方とも、実施例10〜18の全てにおいて同じT-DNA上に含まれるので、デルタ-6-デサチュラーゼのコピー数はまた、デルタ-12-デサチュラーゼのコピー数が増大するとき増大し、その例外は、T-DNAの短縮挿入が、デルタ-12-サチュラーゼを含みデルタ-6-デサチュラーゼを含まないか、又はその逆かという事象である。
まとめると、デルタ-12-デサチュラーゼの遺伝子コピー倍化の効果だけでなく、驚くべきことに、デルタ-6-デサチュラーゼのコピー数増大がデルタ-6-デサチュラーゼタンパク質の量の増大を伴い、タンパク質のこの量の増大が、追加量のデルタ-12-不飽和化脂肪酸を、変換率の増大を伴って変換し得るということも予期しなかった。この効果を例示するために、ここで、2つの群の比較の実施例を実施例10〜18に示しており、ここでは「4つ」の遺伝子コピー数相違がある。
A群:構築物VC-LTM593-1qcz rcのT-DNAの単一のコピーを含む全275個のヘテロ接合性T0植物
B群:2つの異なる染色体遺伝子座での構築物VC-LTM593-1qcz rcの2つのコピーのT-DNAを含む全64個のホモ接合性T1植物。
A群では、デルタ-12-デサチュラーゼの活性に起因する二重結合を含む脂肪酸の総計は、47.3%であって、デルタ-6-デサチュラーゼの活性に起因する二重結合を含む脂肪酸の総計は、11.2%であった。結果として、デルタ-12-不飽和化を受けた全脂肪酸の23.7%がまた、デルタ-6-不飽和化を受けた。
B群では、デルタ-12-デサチュラーゼの活性に起因する二重結合を含む脂肪酸の総計は、61%であって、デルタ-6-デサチュラーゼの活性に起因する二重結合を含む脂肪酸の総計は、23.7%であった。結果として、デルタ-12-不飽和化を受けた全脂肪酸の38.8%が、デルタ-6-不飽和化も受けた。
その結果として、この経路中のデルタ-6-デサチュラーゼの下流の全ての脂肪酸の合計は、A群に対してB群では2倍を超えた。
デルタ-6-デサチュラーゼの変換効率の増大のこの効果は、300を超える多重遺伝子構築物をキャノーラ(Canloa)及びシロイヌナズナへ形質転換すること(これによって、これらの構築物の全てが、アラキドン酸合成に必要な必須の活性を有する遺伝子を保持した)によって得られた6,000を超える植物のPUFAプロファイルを分析した場合、観察された。これらの300を超える構築物にまたがって、5つを超える異なるデルタ-6-デサチュラーゼ酵素を検討した。
デルタ-6-伸長の変換効率
図34で証明されるとおり、デルタ-6-伸長の変換効率は、コピー数にかかわらず極めて高かった。そのおかげで、変換効率に対するコピー数媒介効果は、時には有意ではなかったが、時には明確に観察される。例えば、構築物の組み合わせVC-LJB2755-2qcz rc+VC-LLM391-2qcz rcについて、並びに組み合わせLJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcについて得られた事象は、全ての構築物の最低のデルタ-6-伸長変換効率を含み、これは、これらの構築物の組み合わせが、2つの[(c-d6Elo(Tp_GA2),c-d6Elo(Pp_GA2)]の代わりに、1つだけデルタ-6-伸長酵素[c-d6Elo(Tp_GA2)]をコードするという事実に起因し得る。
デルタ-5-不飽和化の変換効率
図35のデータは、デルタ-5-デサチュラーゼに依存して独立したコピー数の一貫した構築物を示さない。
オメガ-3-不飽和化の変換効率
図36は、図2に示されるC18基質及び生成物(それによってオメガ-3-デサチュラーゼのデルタ-15-デサチュラーゼ特異性活性が排除される)を除いて、算出されたオメガ-3-デサチュラーゼ変換効率を示す。図37は、C18基質及び生成物を含み、これによってオメガ-3-デサチュラーゼのデルタ-15-デサチュラーゼ特異的活性を含むことによって算出されたオメガ-3-デサチュラーゼ変換効率を示す。本発明に用いられるオメガ-3-デサチュラーゼは両方とも、実際には、デルタ-15-デサチュラーゼ活性を有さないので、オメガ-3-デサチュラーゼに対するコピー数の効果に対する結論は、図36からもっともよく導かれる。デルタ-12-デサチュラーゼ又はデルタ-6-デサチュラーゼについて観察されたほど顕著ではないが、多くの場合、オメガ-3-デサチュラーゼのコピー数とオメガ-3-デサチュラーゼ変換効率との間には明確な関連がある。これは、VC-LJB2197-1qcz+VC-LLM338-3qcz rcとしての構築物の組み合わせの植物が、全ての他の構築物の最低のオメガ-3-デサチュラーゼ変換効率を示すものとして特に証明され、これは、この構築物の組み合わせが、2つの[(c-o3Des(Pi_GA2)、c-o3Des(Pir_GA)]の代わりに、ただ1つのオメガ-3-デサチュラーゼ酵素[c-o3Des(Pi_GA2)]をコードするという事実に起因し得る。オメガ-3-デサチュラーゼ変換効率のコピー数依存性に対する例外は以下である:
1)構築物RTP10690-1qcz_fのT-DNAを含む植物、並びに
2)構築物VC-LTM595-1qcz rcのT-DNAを含む植物、並びに
3)VC-LJB2197-1qcz及びVC-LLM338-3qcz rcのT-DNAを含む植物、並びに。
デルタ-5-伸長の変換効率
互いの間の全ての経路ステップの変換効率の複雑な相互依存性は、図38と図35とを比較することによってわかる:構築物VC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを含む植物の2つの群(二重コピー群の813のT1植物、二重コピー/単一遺伝子座群の700の植物)についての高いデルタ-5-伸長変換効率は、実際には、高いデルタ-5-伸長変換効率に起因するのではなく、デルタ-5-デサチュラーゼ経路ステップでのデルタ-5-エロンガーゼ(elogase)に対する基質の不十分な供給に起因する。オメガ-3-デサチュラーゼと同様に、デルタ-12-デサチュラーゼ又はデルタ-6-デサチュラーゼについてほど顕著ではないが、デルタ-5-エロンガーゼコピー数とデルタ-5-エロンガーゼ変換効率との間には関連があった。
デルタ-4-不飽和化の変換効率
図39に示されるとおり、デルタ-4-デサチュラーゼコピー数に対するデルタ-4-デサチュラーゼ変換効率の依存性に関して直接の証拠はなかった。最高のデルタ-4-デサチュラーゼ変換効率が、構築物LJB2755-2qcz rc及びVC-LTM217-1qcz rcのT-DNAを含む植物に関して観察された。この構築物組み合わせは、c-d4Des(PI_GA)2でd4Des(Eg)を置き代えることで、組み合わせVC-LJB2755-2qcz rc+VC-LLM391-2qcz rcとだけ異なる。実施例10〜18に示される植物データ、及び実施例22に示される酵母データの結論として、デルタ-4-不飽和化変換効率は、遺伝子コピー数の増大では克服できない、遺伝子c-d4Des(Tc_GA)及びD4Des(Eg)を用いる上限に達することが明らかに示され得る。d4Des(Eg)の代わりにc-d4Des(PI_GA)2をコードする全ての構築物は、より高いデルタ-4-不飽和化変換効率を有し、その唯一の例外は、構築物RTP10690-1qcz_Fを含む植物である。実施例25に示されるとおり、これは、両方のデルタ-4-デサチュラーゼの極めて低い発現に起因した。これによって、次に、変換効率は、遺伝子発現に依存しないが、上限を克服できないことが強調される。
[実施例20]
VLC-PUFAレベルに対する環境効果。油分、VLC-PUFAレベル、及び各経路ステップで観察された変換効率の間の相関
実施例10〜18に示されるVLC-PUFAレベルを解析して、本発明者らは、ほとんどの場合に、植物の遺伝子的に同一の集団内(例えば、全植物が遺伝子的に同一である遺伝子的に安定な事象)で、あるレベルの変動があることを、防除された温室環境でこれらの植物を成長させる場合でさえ、観察した。効果をより明確にあらわすために、いくつかの種類の植物集団の間で最高のEPA+DHAレベルを有する種子バッチのVLC-PUFAプロファイルを、実施例10〜18に示す。このような植物集団は、(1)T-DNA組み込みに起因して遺伝子的に同一である(すなわち、同じ事象の全ての植物、ここで全ての又は少なくともほとんどが、それらの事象において全てのT-DNA組み込みについてホモ接合性である)、又は(2)T-DNAコピー数に関して同一であり、及びこれらの集団は、同じ環境で成長した。例えば、249の分離性のT1実生のうち、事象LBFDAUに関する10個のT1植物(実施例18を参照のこと)は、1つの完全なT-DNA組み込み、及び1つの短縮されたT-DNA組み込みを有することで同一であることが温室で特定され、それによって両方のT-DNA挿入は、ホモ接合性であることが見出された(表135)。並行して行った圃場試験では、分離性のT1実生に関して、4つの植物が、両方のT-DNA挿入についてホモ接合性であると特定された(表144)。これらの10の温室で成長させた植物の種子バッチからの無作為に選択された種子で測定した平均のEPA+DHA含量は、13.9%のEPA+2.6%のDHAであることが見出された。同様に、4つの圃場成長植物のEPA+DHA含量は、13.4%のEPA+2.7%のDHAであることが見出された。とりわけ、10の温室成長植物は、最大15.1%のEPA+3.0%のDHAを生成した植物であった(表139)。同様に、4つの圃場成長植物は、最大17.6%のEPA+3.6%のDHAを生成した植物であった(表146)。この圃場の成長植物の単一種子を分析すれば、最大で26.2%のEPA+4.9%のDHA、又は23.6%のEPA+5.8%のDHAを有する単一種子が見出された(表147)。これらの95の種子の間で見出された最低のEPA+DHA含量は、13.5%のEPA及び2.5%のDHAを含み、これらの種子の間の平均含量は、18.2%のEPA及び3.7%のDHAであって、これは、表146に示されるような2回の15の種子の無作為な選択で測定した含量と一致した(17.6%のEPA+3.6%のDHA)。この事象LBFDAUは、あらゆる事象についてそれを図示するまさに代表的な例であり、かつ全ての構築物について、植物間の変動、及び種子間の変動がある。植物間の変動の程度は、実施例10〜18に示されており、ここでは、特定の集団の平均PUFAプロファイル(例えば、同じ事象に属しており、かつ遺伝子的に同一である全ての植物、又は単一のコピーでありヘテロ接合性である全ての植物)は、個々の植物で観察されるプロファイルと常に異なることが示される。この変動の大きさを示すために、実施例10〜18は、このような集団の平均PUFAプロファイルを示しており、かつまた最高のEPA+DHAレベルを有する単一植物のプロファイルも示す。
事象LBFDAUは、遺伝子的に同一の植物集団において、所定の環境で約13.5%のEPA+2.6%のDHAを生成し得るが、この植物によって生成される全ての種子の平均として、最大約18%のEPA+3.7%のDHAを生じるこの集団内の個々の植物があり、この植物の単一の種子は、最大約26%のEPA及び約5%のDHAに達し得る。EPA+DHAレベルにおけるこれらの相違は、環境内の事象の遺伝子構成の相互作用に起因する。しかし、圃場と比較して温室では、匹敵する集団が高いVLC-PUFAレベルを生じることが一貫して観察された。この傾向は通常は、圃場に比較して、温室での低い油含量と相関する。この観察をさらに詳細に検討するために、単一コピー事象LANPMZ(実施例11に記載の事象)の全てのホモ接合性種子バッチで測定した油分を、同じ種子バッチ中で測定したデルタ-12-デサチュラーゼの下流である全てのVLC-PUFAの合計に対して図40にプロットした(図2を参照のこと)。同じことを、事象LAODDN(実施例13に記載の事象)についても行い、図41にプロットする。この解析はまた、実施例18に記載の2つの事象について、すなわち、事象LBFGKN(図42)について、及び事象LBFLFK(図43)についても行った。これらの2つのパラメータの間に強力な相関が観察された。野性型についての同じ分析(図72)ではこのような相関は明らかにならず、代わりに、図72は、温室成長と圃場成長の野性型植物の間の相違を示し、ここでは圃場成長の野性型植物は、温室成長の野性型植物と比較して、高レベルの18:2n-6及び18:3n-3、並びに低い18:1n-9を有する。
図40の事象LANPMZについて示されるこの相関が、特定の経路ステップに起因し得るかを詳細に解析するため、各々の経路ステップについて、及び図40で解析した各種子バッチについての変換効率を算出し、図44、図48、図52、図56、図60、図64、及び図68にプロットした。同じ解析を事象LAODDNについて行い、図45、図49、図53、図57、図61、図65及び図69にプロットする。同じ解析をまた、事象LBFGKNについて(図46、図50、図54、図58、図62、図66及び図70にプロット)、及び事象LBFLFKについて(図47、図51、図55、図59、図63、図67及び図71)も行った。全てのこれらの図を比較して、当業者には、図40及び図41で観察される相関が主に、デルタ-12-デサチュラーゼ経路ステップ(図44〜図47)、デルタ-6-デサチュラーゼ経路ステップ(図48〜図51)、及びデルタ-4-デサチュラーゼ経路ステップ(図68〜図71)に大部分起因することがわかる:これらの図では、経路ステップと可視の種子の油分との間に構築物及び事象依存性の負の相関があり、これは、他の経路ステップについては観察できない。
事象LANPMZにおける種子の油分とのデルタ-12-デサチュラーゼ経路の負の相関は、図72に示されるとおり、野性型植物で観察された。さらに、図72では、圃場成長野性型植物は、温室成長の野性型植物と比較して高レベルの18:2n-6及び18:3n-3及び低レベルの18:1n-9を有することが示される。これは、前の観察(Xiao et al.2014)で説明できる可能性が高く、すなわち天然のキャノーラの内因性のデルタ-12-デサチュラーゼを、温度で調節し、デルタ-12-デサチュラーゼのその温度調節は、転写レベル及びタンパク質レベルで、植物中の再発性のテーマであり(Kargiotidou et al. 2008,Tang et al.2005,Sanchez-Garcia et al.2004)、それによって、圃場条件下では、デルタ-12-デサチュラーゼは、温室条件に比較して上方制御されよう。しかし、野性型キャノーラ植物で観察される油分とは独立して、デルタ-12-デサチュラーゼの調節がなかったことが結論できる。図40〜図43までと図72を結果的に比較して、導入された導入遺伝子デルタ-12-デサチュラーゼのみを、種子の油分依存性であった調節に供したとさらに結論できる。
さらなる観察は、圃場成長のトランスジェニック植物が、図72の野性型植物について明確に観察された場合でさえ、温室成長植物と比較して高いデルタ-12-デサチュラーゼ変換効率を有さないということである。内因性の天然のデルタ-12-デサチュラーゼは、本発明のトランスジェニック植物において全体的に観察されたデルタ-12-デサチュラーゼ変換効率に有意に寄与しないことが結論できる。
種子の油分に対して経路ステップの変換効率をプロットすることに加えて、いくつかの重要な脂肪酸のレベルを、種子の油分に対してプロットした(図81、図82、図83、図84)。そのデータは、回帰の勾配を決定するために全ての描写された事象の全てのデータポイントを用いることによって、及び引き続いて単一事象について全てのデータポイントを用いて(図81、図82、図83、図84)に示される回帰のx軸(0%油分)との回帰線の切片を決定することによって、図面中にあてはめた。この解析の結果を表158に示す。
[実施例21]
酵素活性のin vitroの実証
トランスジェニック酵母から単離したミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性
デサチュラーゼ及びエロンガーゼの発現は、サッカロマイセス・セレビシエ中で達成した。要するに、適切なプラスミドを含む酵母株を、30℃で(SD-培地-ウラシル+ラフィノース中で)一晩増殖させ、次いで、これを用いて、より大きい培養物を開始OD600=0.2で接種した(SD培地-ウラシル+ラフィノース+ガラクトース中で)。30℃で24時間後、培養物(典型的にはOD600=0.6-0.8)を遠心分離によって収集して、25mMのTris緩衝液(pH7.6)中で1回洗浄した。デサチュラーゼ及びエロンガーゼをコードする遺伝子を発現する酵母からの粗抽出物及びミクロソームの調製は、標準的な手順を用いて達成した。要するに、デサチュラーゼを発現する細胞を、2mlのデサチュラーゼDisruption緩衝液(0.1M、リン酸カリウム、pH7.2、0.33Mスクロース、4mmのNADH、1mg/mlのBSA(脂肪酸なし)、4000U/mlのカタラーゼ及びプロテアーゼインヒビター(完全EDTAなし(Roche))中に再懸濁し、及びシリカ/ジルコニウムビーズを用いて、BeadBeater中で破壊した。その粗抽出物を、8,000×gで、4℃で2回遠心分離することによって清明にした。100,000×g(4℃で30分)の追加の遠心分離後、ミクロソームをペレットにして、最終的に、デサチュラーゼ分離緩衝液(300マイクロリットル)中に再懸濁した。粗抽出物及びミクロソームの両方のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)手順(Smith, P.K., et al (1985) Anal. Biochem. (150): 76-85)を用いて測定した。
一般的なデサチュラーゼ活性アッセイ:
デサチュラーゼアッセイでは、[14C]標識したアシル-CoAを基質として提供し、反応後アシル-CoA(及びリン脂質)を加水分解し、かつ脂肪酸メチルエステル(FAME)にメチル化し、これを銀染色-TLCを用いて解析した。一般的なアッセイ条件は、Banas et al.(Banas et al. (1997) Physiology, Biochemistry and Molecular Biology of Plant Lipids (Williams, J.P., Khan, M.U. and Lem, N.W. eds.) pp.57-59)から改変した。
このアッセイは、以下を含んだ:1mgの酵素(粗抽出物)又は150μg(ミクロソーム画分)、10nmol[14C]-アシル-CoA(3000dpm/nmol)、7.2mmのNADH(総)、0.36mgのBSA(総)が含まれる緩衝液(200μlの総容積中で0.1MのK-リン酸塩pH7.2、0.33Mスクロース、4mMのNADH、1mg/mlのBSA及びプロテアーゼインヒビターから構成される)。30℃で所望の時間のインキュベーションの後、MeOH:H2O(1:4)中に含まれる200μlの2MのKOHを添加して、90℃で20分間インキュベートした。脂肪酸を、3MのHCl(200μl)、1.5mlのMeOH:CHCl3(2:1)及びCHCl3(500μl)の添加によって抽出した。クロロホルム相を回収し、N2(g)下で乾燥し、脂肪酸を、2mlのMeOH(2%のH2SO4含有)の添加、及び90℃で30分のインキュベーションによってメチル化した。FAMEを、2mlのH2O及び2mlのヘキサンの添加によって抽出し、AgNC3-TLC及びヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)を溶媒として分離した。放射性脂質を可視化し、インスタントイメージャーを用いて電気的オートラジオグラフィーによって定量した。
デルタ-12デサチュラーゼ(フィトフトラ・ソジャ)、c-d12Des(Ps_GA)酵素活性:酵素アッセイは、c-d12Des(Ps_GA)タンパク質を発現する酵母株から単離した再懸濁したミクロソームを用いて行い、空のベクター(LJB2126)を含む対照の酵母株から単離したミクロソームと比較した。[14C]18:1n-9-CoAの存在下では、16:0-ホスファチジルコリン(LPC)、及びNADH膜(c-d12Des(Ps_GA)を含む)は、[14C]18:2-脂肪酸を形成し、これは、メチルエステルとして単離してもよく、公知の合成の標準と同様のAgNO3-TLC[ヘプタン:ジエチルエーテル(90:10)]上で分離する。この酵素活性は、NADHを要し、空のベクター対照株から単離した膜中で観察されなかった。16:0-LPCなしの対照のアッセイは、酵母ミクロソーム中で見出される内因性の16:0-LPCにおそらく起因して、少量の活性を含む。さらに、酵素反応後の遊離の脂肪酸からのリン脂質の分離及び分離可能な脂肪酸メチルエステルの特徴付けによって、全てのc-d12Des(Ps_GA)が、酵素的に生成した18:2n-6-脂肪酸メチルエステル(FAME)が、ホスファチジルコリン画分で見出されることが実証された。
c-d12Des(Ps_GA)酵素活性はまた、限定するものではないが、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAを含み得る他の[14C]アシル-CoAを用いて実証され得る。
デルタ-6デサチュラーゼ(オストレオコッカス・タウリ)、c-d6Des(Ot_febit)酵素活性:c-d6Des(Ot_febit)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的なアッセイにおいて、[14C]アシル-CoAを用いて、c-d6Des(Ot_febit)タンパク質を発現する酵母株から単離したミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが、[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAが挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルを、AgNO3-TLC及びヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)を溶媒として用いて分離してもよい。さらに、c-d6Des(Ot_febit)酵素は、以前の報告(Domergue et al. (2005) Biochem. J. 389: 483-490)に示唆されるとおり、「Desaturase Headgroup (CoA vs PC)Preference」に記載のように、アシル-CoA基質を直接不飽和化することが示され得る。
デルタ-5デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種)、c-d5Des(Tc_GA2)酵素活性:c-d5Des(Tc_GA2)酵素活性及び基質特異性は、上記のような[14C]アシル-CoAの一般的アッセイを用いてc-d5Des(Tc_GA2)タンパク質を発現する酵母株から単離したミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAを挙げることができる。酵素的基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
オメガ-3デサチュラーゼ(フィトフトラ・インフェスタンス)、c-o3Des(Pi_GA2)酵素活性:c-o3Des(Pi_GA2)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的アッセイにおいて[14C]アシル-CoAを用いて、c-o3Des(Pi_GA2)タンパク質を発現する酵母株から単離したミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAが挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相-TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
オメガ-3デサチュラーゼ(ピシウム・イレグラレ)、c-o3Des(Pir_GA)酵素活性:c-o3Des(Pir_GA)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的アッセイにおいて[14C]アシル-CoAを用いて、c-o3Des(Pir_GA)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAが挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相-TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
デルタ-4デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種)、c-d4Des(Tc_GA)酵素活性:c-d4Des(Tc_GA)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的アッセイにおいて[14C]アシル-CoAを用いて、c-d4Des(Tc_GA)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAが挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相-TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
デルタ-4デサチュラーゼ(Paylova lutherl)、c-d4Des(PI_GA)酵素活性:c-d4Des(PI_GA)2酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的アッセイにおいて[14C]アシル-CoAを用いて、c-d4Des(PI_GA)2タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoAが挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相-TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
デルタ-4デサチュラーゼ(ユーグレナ・グラシリス)、c-d4Des(Eg)酵素活性:c-d4Des(Eg)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的アッセイにおいて[14C]アシル-CoAを用いて、c-d4Des(Eg)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。[14C]アシル-CoAとしては、限定するものではないが:[14C]18:1n-9-CoA、[14C]18:2n-6-CoA、[14C]20:3n-6-CoA、[14C]20:4n-6-CoA、[14C]22:5n-3-CoA、が挙げられる。酵素基質及び生成物由来の単離された脂肪酸メチルエステルは、逆相-TLC(シリカゲル60 RP-18)及びアセトニトリル(100%)を溶媒として用いて分離してもよい。
トランスジェニックブラシカ・ナプスから単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ活性
ドコサヘキサエン酸(22:6n-3)を合成できる組み換えのデサチュラーゼ及びエロンガーゼを含むミクロソームを、Bafor, M. et al. Biochem J. (1991) 280, 507-514から適合された手順を用いてトランスジェニックB.ナプスの未熟な種子から単離した。要するに、未熟な種子を最初に、キャノーラのポッドから分離して、発達中の胚を種子の被膜から分離して、氷冷の0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)に移した。次いで、発達中の胚を新鮮なリン酸緩衝液で洗浄し、氷冷した乳鉢に移して、抽出緩衝液(0.1Mのリン酸塩、pH7.2、0.33Mのスクロース、1mg/mlのBSA(本質的に脂肪酸なし)、4000U/mlカタラーゼ、4mMのNADH及びプロテアーゼインヒビター-完全EDTAなし(Roche))中で均一な溶液まで挽いた。溶解した発達中の胚を、追加の抽出緩衝液を用いて20倍希釈して、2層のMiraclothを通して遠心分離管に通過させた。4℃で18,000×gで10分間の遠心分離後、清澄化した上清を、Miraclothを通して、超遠心分離管に通過させた。4℃で60分間105,000×gでの遠心分離後、上清をミクロソームのペレットから取り出して、次いで、これを抽出緩衝液を用いて1回洗浄し、次いで、Dounceホモジナイザーを用いて、抽出緩衝液(500の胚あたり約1ml)中の均一溶液として再懸濁した。
酵素活性は、酵母発現株から単離されたミクロソームの「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」において上記されたアッセイを用いてデサユラーゼについて実証され得る。
まとめると、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」では、本発明者らは、脂肪アシルデサチュラーゼ酵素活性の明白な呈示を可能にする方法を提供した。本発明者らは、(1)遺伝子c-d12Des(Ps_GA)が、このタンパク質を発現する、トランスジェニック酵母(図24、パネルA)から、及びトランスジェニックB.ナプス事象(図25、パネルA)から単離された両方のミクロソーム中でオレイン酸(18:1n-9)を不飽和化してリノール酸(18:2n-6)を形成するフィトフトラ・ソジャ(c-d12Des(Ps_GA))由来のデルタ-12デサチュラーゼタンパク質をコードする、(2)遺伝子c-o3Des(Pi_GA2)が、アラキドン酸(20:4n-6)を不飽和化するフィトフトラ・インフェスタンス(c-o3Des(Pi_GA2))由来のタンパク質をコードして、エイコサペンタエン酸(20:5n-3)を、このタンパク質を発現するトランスジェニック酵母(図24、パネルB)から単離されたミクロソーム中で形成する、(3)遺伝子c-o3Des(Pir_GA)が、アラキドン酸(20:4n-6)を不飽和化するピシウム・イレグラレ(c-o3Des(Pir_GA))由来のオメガ-3デサチュラーゼタンパク質をコードして、このタンパク質を発現するトランスジェニック酵母(図24、パネルB)から単離されたミクロソーム中でエイコサペンタエン酸(20:5n-3)を形成し、(4)アラキドン酸(20:4n-6)を不飽和化してエイコサペンタエン酸(20:5n-3)を形成し得る、ミクロソームに局在する、少なくとも1つの酵素を含む、フィトフトラ・インフェスタンス(c-o3Des(Pi_GA2))及びピシウム・イレグラレ(c-o3Des(Pir_GA))の両方由来のオメガ-3-デサチュラーゼタンパク質をコードする遺伝子を含むトランスジェニックB.ナプス事象(図85、パネルC)、(5)遺伝子c-d4Des(Tc_GA)は、スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼタンパク質(c-d4Des(Tc_GA))をコードし、このタンパク質は、このタンパク質を発現するトランスジェニック酵母(図24、パネルC)から単離されたミクロソーム中で、ドコサペンタエン酸(22:5n-3)を不飽和化して、ドコサヘキサエン酸(22:6n-3)を形成する、(6)遺伝子c-d4Des(PI_GA)2は、パブロバ・ルセリ(c-d4Des(PI_GA))2由来のデルタ-4デサチュラーゼタンパク質をコードし、これは、ドコサペンタエン酸(22:5n-3)を不飽和化して、ドコサヘキサエン酸(22:6n-3)を、トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中で形成する(図24、パネルD)、(7)スラウストキトリウム属の種由来のデルタ-4デサチュラーゼタンパク質をコードする遺伝子、遺伝子c-d4Des(Tc_GA)、及びパブロバ・ルセリ由来の遺伝子c-d4-Des(PI_GA)をコードする両方の遺伝子を含むトランスジェニックB.ナプス事象は、ドコサペンタエン酸(22:5n-3)を不飽和化してドコサヘキサエン酸(22:6n-3)を形成し得る、ミクロソームに局在する、少なくとも1つの酵素を含む(図25、パネルC)、(8)リノール酸(18:2n-6)を不飽和化してガンマ-リノレン酸(18:3n-6)を形成し得る、オストレオコッカス・タウリ由来のデルタ-6デサチュラーゼタンパク質(c-d6Des(Ot_febit))をコードする遺伝子を含むトランスジェニックB.ナプス事象(図85、パネルA)、並びに(9)ジホモ-ガンマ-リノレン酸(20:3n-6)を不飽和化してアラキドン酸(20:4n-6)を形成し得る、スラウストキトリウム属の種(Thraustachytrium ssp.)(c-d5Des(Tc_GA2))由来のデルタ-5デサチュラーゼタンパク質をコードする遺伝子を含むトランスジェニックB.ナプス事象(図85、パネルB)。アブラナ属中で公知の内因性酵素を有する、c-d12Des(Ps_GA)を除いて、示した全ての他の実施例は、対照の酵母株(図24)又は対照のアブラナ属株のいずれかから単離されたミクロソーム中で検出可能な内因性のデサチュラーゼ活性を含まない(図25及び図85)。
デサチュラーゼタンパク質について、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」で記載の方法を用いて、発現のレベル又は検出された酵素活性は、天然のタンパク質に対する融合タグの有無によって影響され得る。デサチュラーゼに対する融合タグ又はタンパク質は、そのタンパク質のアミノ末端(N末端融合)又はカルボキシ末端(C末端融合)に結合されてもよく、これには限定するものではないが、以下を含む:FLAG、ヘキサ-ヒスチジン、マルトース結合タンパク質、及びキチン結合タンパク質。
本発明者らは、キャノーラ中のオレイン酸(18:1n-9)からドコサヘキサエン酸(docosohexaenoic acid)(DHA,22:6n-3)を生合成する遺伝子操作経路で必要な酵素触媒不飽和化反応を確立する方法を提供した。実施例21に提示の方法「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」を開発して、個々のデサチュラーゼを発現する酵母株中のデサチュラーゼ活性を実証し、さらにこれを用いて、実施例21「トランスジェニックのブラシカ・ナプスから単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Brassica napus)」に記載され、実証されるようなトランスジェニックのキャノーラ中のそれぞれのデサチュラーゼ酵素活性を確認してもよい。さらにこれらの方法を、当業者によって組み込んで、他の生物体、例としては、限定するものではないが、サッカロマイセス・セレビシエ、アラビドプシス・タリアナ、アブラナ属の種、カメリナ・サチバ(Camelina sativa)、カルタムス・チンクトリウス、及びサルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)中のデサチュラーゼ酵素活性を測定してもよい。
デサチュラーゼ頭部基(CoA対PC)優先
脂肪酸デサチュラーゼは、脂肪酸の炭化水素鎖から2つの水素原子の除去を触媒して、不飽和脂肪酸中で二重結合を形成し、それらの基質がアシル-CoA、アシル-ACP(ACP、アシルキャリアタンパク質)又はアシル-脂質に結合された骨格によって分類できる。現在のところ、アシル-CoA基質が確認された例は少ない。これらは、精製された酵素を含み、かつ例としては、リノールオイル-CoAデサチュラーゼ(Okayasu et al. (1981) Arch. Biochem. Biophys. 206: 21-28)、ラット肝臓由来のステアロイル-CoAデサチュラーゼ(Strittmatter et al (1974) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 71: 4565-4569)、及びアボガド由来のステアロイル-ACPデサチュラーゼ(Shanklin J and Somerville C (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:2510-2514)が挙げられる。
或いは、Heinz及び共同研究者は、デサチュラーゼを発現する酵母株に対してin vivoの基質の供給を使用して、デサチュラーゼの基質特異性を検査するストラテジーを報告している(Domergue et al. (2003) J. Biol. Chem. 278: 35115-35126、Domergue et al. (2005) Biochem. J. 389: 483-490)。これらの研究では、アシル-脂質基質のデサチュラーゼ優先度の予測は、成長の時間経過にまたがって、CoA、リン脂質及び中性の脂質のプール中の不飽和化生成物の徹底した解析から得られたデータに基づいた。しかし、種々のプール(例えば、CoA、ACP、及び脂質)の間のアシル基を移動する高度に活性な内因性のアシルトランスフェラーゼは、これらのデータに影響するか、又は複雑にし得る(Domergue et al. (2005) Biochem. J. 389: 483-490、Meesapyodsuk, D., Qui, X. (2012) Lipids 47: 227-237)。従って、このアプローチはさらに、目的のデサチュラーゼによって利用される基質骨格の包括的決定に必要な、in vitroアッセイから得られるような、直接の証拠がないことによって制限された。
ここでは、本発明者らは、タンパク質のミクロソーム調製を用いて、リン脂質連結脂肪酸を不飽和化する酵素からアシル-CoA、脂肪酸を不飽和化する酵素の間を区別する、以前には報告されていない方法を提供する。本発明者らは、(1)リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)によって触媒される最初のアシル-移動反応をモニタリングして、全ての[14C]-アシル-CoAが消費されたことを確認すること、及び(2)外因性のリゾホスファチジルコリン(LPC)を含むことによって、インサイチュで[14C]-ホスファチジルコリンアナログを生成するストラテジーの最初の報告(Stymne, S., and Stobart, A.K. (1986) Biochem. J. 240: 385-393、Griffiths, G., Stobart, A.K., and Stymne, S. (1988) Biochem. J. 252: 641-647)を改善した。従って、本発明者らの改善によって、[14C]ホスファチジルコリンアナログのみが、デサチュラーゼアッセイの開始の際に存在し、かつそれらの対応するリゾ脂質を添加することによって他のリン脂質の試験を可能にすることが確実になる。さらに、「ホスファチジルコリン特異性の実証」に記載される、アシル-リン脂質基質の不飽和化のためのアッセイ試験は、アシル-CoA型で基質の不飽和化をモニターするために開発されたアッセイで試験することによって補完され得る。具体的には、本発明者らは、「アシル-CoA特異性の実証」に記載のストラテジーを考案し、ここでは、試験すべき基質は、そのアシル-CoA型で残り、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)によって、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)中に組み込まれることはない。基質が、アシル-CoA型と比べて、アシルリン脂質型であるアッセイで観察された、相対的なデサチュラーゼ活性を比較することによって、不飽和化脂肪酸生成物に共有結合された正確な骨格(例えば、ホスファチジルコリン又はCoA)が決定され得る。
ホスファチジルコリン特異性の実証:
デサチュラーゼが、アシル-脂質(例えば、リン脂質)基質を受け入れるか否かを試験するために、酵素反応を、上記「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」のように、ただし、外因性リゾホスファチジルコリン(LPC)の存在下でのプレインキュベーション後に行った。目的の酵素を発現する酵母株のミクロソーム画分を、16:0-リゾホスファチジルコリン(典型的には50μMであったが、0〜500μMの範囲でよい)の存在下で、[14C]標識のアシル-CoA基質とプレインキュベートした。プレインキュベーションの間、ミクロソーム中に存在する、内因性のリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)は、[14C]脂肪酸をCoAから16:0-LPCに移し、インサイチュで[14C]脂肪酸-ホスファチジルコリン(PC)を生成する(Jain et al. (2007) J. Biol. Chem. 282: 30562-30569、Riekhof et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:36853-36861、Tamaki et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:34288-34298))。プレインキュベーション後(典型的には15分、ただし、1〜300分の範囲であってもよい)、本質的に全ての[14C]標識のアシル-CoA基質が、水相のシンチレーションカウント及びTLC解析によって測定されたとおり、消費された。
反応を停止して、脂質をBligh and Dyer(Bligh, E.G., and Dyer, J.J. (1959) Can J. Biochem. Physiol. 37: 911-918)の方法を用いて、200μlの0.15Mの酢酸及び1mlのMeOH:CHCl3(1:1)の添加によって抽出した。CHCl3相(ホスファチジルコリン(PC)及び遊離脂肪酸(FFA)を含む)の一部(約10%)を、シンチレーションカウンティングによって解析し、残りをシリカ薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートに供した。そのプレートを最初に、極性の溶媒[CHCl3:MeOH:酢酸(90:15:10:3)]中で、次いでヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)中に展開して、PCへの組み込み及びFFA(おそらくチオエステラーゼによって生成される)の量を測定した。PC及びFFAを、プレートから剥がして、2%のH2SO4を含むMeOHの添加によって90℃で30分間メチル化した。メチルエステルを、ヘキサン中で抽出して、上記のとおりそれぞれの酵素について解析した(実施例21、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」)について上記されたとおり解析した。反応混合抽出物の上(水)相は、アシル-CoAを含み、かつ等容積の2MのKOH(MeOH:H2O(1:4)中に含有)の添加によって加水分解し、20分間、90℃でインキュベートした。次いで、水相の一部をシンチレーションカウントによって分析した後、脂肪酸を、3MのHCl(0.7ml)、1.4mlのMeOH及びCHCl3(1.9ml)の添加によって抽出した。クロロホルム相を回収し、N2(g)下で乾燥し、脂肪酸を、2%のH2SO4を含有する2mLのMeOHの添加及び90℃で30分のインキュベーションによってメチル化した。FAMEを2mlのH2O及び2mlのヘキサンの添加によって抽出し、AgNO3-TLC及びヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)を溶媒として、又は逆相-TLC (アセトニトリル(100%)を用いるシリカゲル60 RP-18)によって分離した。放射性脂質を可視化して、インスタントイメージャーを用いて電気的オートラジオグラフィーによって定量した。
デルタ-12デサチュラーゼ(フィトフトラ・ソジャ)、c-d12Des(Ps_GA)基質優先度:
「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」で実証されたc-d12Des(Ps_GA)酵素活性をさらに特徴付けて、オレイン酸基質の骨格を確立してもよい。16:0-リゾホスファチジルコリン(LPC)を含む「デサチュラーゼ頭部基(CoA対PC)優先度」に記載のデサチュラーゼアッセイでは、実質的な不飽和化が観察された。有意に低下したが、検出可能なデサチュラーゼ活性を、d12Des(Ps_GA)タンパク質を含む酵母ミクロソーム中に存在する内因性LPCのアシル化から生じる可能性が高い、16:0-LPCを欠いている対照の反応中で観察した。しかし、20:1n-9-CoAによるプレインキュベーションによって、20:1n-9で飽和されたPCが生じ、これによって、PCへの[14C]-18:1n-9の組み込みが邪魔される(「アシル-CoA特異性の実証」に記載)。さらに、酵素反応後の遊離脂肪酸からのリン脂質の分離、及び分離可能な脂肪酸メチルエステルの特徴付けによって、全てのd12Des(Ps_GA)が酵素的に生成した18:2n-6-脂肪酸メチルエステル(FAME)が、ホスファチジルコリン画分で見出されたことが実証された(図26、パネルA及び図86、パネルA)。さらに、d12Des(Ps_GA)活性は、アシル-CoA特異性の実証のためのアッセイでは無視でき(図86、パネルB)、これによって、18:1n-9-アシル-CoAが、デルタ-12デサチュラーゼ(フィトフトラ・ソジャ)の好ましい基質ではないことが示される。結論として、デルタ-12デサチュラーゼ(フィトフトラ・ソジャ)は明らかに、PCに共有結合した18:1n-9を不飽和化するが、18:1n-9-アシルCoA基質は不飽和化しない。
デルタ-4デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種、c-d4Des(Tc_GA)基質優先度:「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」で実証されたc-d4Des(Tc_GA)酵素活性をさらに特徴付けて、ドコサペンタエン酸(docosopentaenoic acid)基質の骨格を確立してもよい。16:0-リゾホスファチジルコリン(LPC)追加なしの「デサチュラーゼ頭部基(CoA対PC)優先度」に記載のデサチュラーゼアッセイでは、不飽和化が観察され(図26、パネルB)、c-d4Des(Tc_GA)タンパク質を含む膜に存在する内因性の16:0-LPCの存在から生じる可能性が高い。c-d4Des(Tc_GA) デサチュラーゼ活性は、このアッセイ中に追加の16:0-LPCを含むことによって劇的に刺激され(図26、パネルB)、これは、ミクロソーム中に存在する、内因性のリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)が[14C]22:5n-3をCoAから16:0-LPCに移動し、不飽和化された[14C]22:5n-3-ホスファチジルコリン(PC)を生じるという観察と一致していた。さらに、酵素反応後の遊離脂肪酸からのリン脂質の分離、及び分離可能な脂肪酸メチルエステルの特徴付けによって、本質的に全てのc-d4Des(Tc_GA)が酵素的に生成した22:6n-3-脂肪酸メチルエステル(FAME)が、ホスファチジルコリン画分で見出されたことが実証された(図26、パネルB及びパネルC)。
アシル-CoA特異性の実証:
アッセイ条件は、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」において上記されたとおりであった。目的の酵素を発現する酵母株のミクロソーム画分を、10nmolの20:1n-9-CoA(50μΜ)及び0.5mMのDTNB(5,5'-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)と10分間プレインキュベートした後に、NADH及び[14C]標識のアシル-CoA基質を添加した。20:1n-9-CoAとのプレインキュベーションによって、PCへの[14C]標識の基質の組み込みを最小にする。DTNBは、LPCATの逆転反応を妨げ、それによって、アシル交換を介したPCへのアシル-CoAの進入を妨げる。このアッセイはまた、代替的なアシル-CoA、例えば、18:1n-9-CoA、18:2n-6-CoA、20:3n-6-CoA、20:4n-6-CoA、22:5n-3-CoAを包含し得る。この反応を停止して、脂質を、Bligh及びDyerの方法(Bligh, E.G., and Dyer, J.J. (1959) Can J. Biochem. Physiol. 37, 911-918)を用いて、200μlの0.15Mの酢酸及び1mlのMeOH:CHCl3(1:1)を添加することによって抽出した。CHCl3相(ホスファチジルコリン(PC)及び遊離脂肪酸(FFA)を含む)の一部(約10%)を、シンチレーションカウントによって解析し、その残りをシリカ薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートに供した。そのプレートを最初に、極性溶媒[CHCl3:MeOH:酢酸(90:15:10:3)]中、次にヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)中で展開し、PCへの組み込み及びFFAの量(おそらく、チオエステラーゼによって生成される)を測定した。PC及びFFAを、プレートから剥がして、90℃で30分間、2%のH2SO4を含有するMeOHの添加によってメチル化した。メチルエステルを、ヘキサン中で抽出して、それぞれの酵素について上記したとおり分析した。「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」。反応混合物抽出物の上(水)相は、アシル-CoAを含み、かつMeOH:H2O(1:4)中の等容積の2MのKOHの添加によって加水分解し、90℃で20分間インキュベートした。脂肪酸を、3MのHCl(0.7ml)、1.4mlのMeOH及びCHCl3(1.9ml)の添加によって抽出した。クロロホルム相を回収して、N2(g)下で乾燥し、脂肪酸を、2%のH2SO4を含有する2mlのMeOHの添加及び90℃で30分のインキュベーションによってメチル化した。FAMEを、2mlのH2O及び2mlのヘキサンの添加によって抽出し、AgNO3-TLC及びヘプタン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1)を溶媒として、又は逆相-TLC(アセトニトリル(100%)を用いるシリカゲル60RP-18)によって分離した。放射性脂質を可視化して、インスタントイメージャーを用いて電気的オートラジオグラフィーによって定量した。
アシル-CoAの依存性を実証するために、両方の方法を試験する。不飽和化は、PC特異性を決定するための方法では生じず(LPC追加、及びNADH追加前のプレインキュベーション)、アシル-CoA特異性を決定するための方法(20:1-CoA及びDTNB添加)が、H2O相で不飽和化生成物(又は、任意の脂質プールPC/FFA/H2O中の生成物、基質がPCに組み込まれない場合、PC依存性酵素は活性になれないので)をもたらす場合(図86、パネルBを参照のこと)、酵素がアシル-CoA依存性であったと結論され得る(図27及び図87、パネルA及びBを参照のこと)。同様に、デサチュラーゼが、PC-特異的アッセイで活性を実証するが、基質がアシル-CoAとして提示されるアッセイでは活性を示さない場合、この酵素は、基質としてホスファチジルコリンに共有結合した脂肪酸を利用すると結論できる。
デルタ-9デサチュラーゼ(サッカロマイセス・セレビシエ)、d9Des(Sc)基質優先度:
アシル-CoA依存性の実証のためのアッセイにおける、d9Des(Sc)反応の間の[14C]-分布の解析によって、95%超の放射性活性(基質及び生成物)が、H2O(CoA)及びFFA-プール(データ示さず)に存在することが示され、これによって、PCへの組み込みは、有意であったことが示される。反応の間、アシル-CoAプール中の生成物(16:1n-9)は直線的に60分まで増大し、これは、この酵素がCoAに共有結合した16:0を優先的に変換することを示す(図87、パネルB)。次いで、H2O画分中の16:1n-9の量は水平になるか、又はわずかに低下するが、FFAプール中の16:1n-9は、単離された膜に存在するチオエステラーゼによるアシル-CoAの分解に起因して増大する。
PC特異性を実証するためのアッセイでは、d9Des(Sc)は、活性を示さず(図87、パネルA)、これによって、16:0脂肪酸が、PC(又はFFA)に結合した場合、これは好ましい基質ではないことが示される。
「ホスファチジルコリン特異的」アッセイにおいて活性がないことと比較して「アシル-CoA特異的」アッセイにおけるデサチュラーゼ活性の明らかな存在によって、デルタ-9デサチュラーゼ(サッカロマイセス・セレビシエ)が、コエンザイムAに共有結合した16:0を利用することが実証される。興味深いことに、ヒト及びマウスの両方のステアロイル-コエンザイムAデサチュラーゼの近年の結晶構造はステアロイルCoA結合を有することが報告されており、これによって、このデサチュラーゼが、コエンザイムA基質を利用することが確認される(Wang et al (2015) Nat Struct Mol Bio 22: 581-585及びBai et al (2015) Nature 524: 252-257)。
まとめると、本発明者らは、脂肪酸に連結されたリン脂質を不飽和化する酵素からアシル-CoA脂肪酸を不飽和化する酵素の間を識別するための前に報告された方法を示した。本発明のこの実施形態は、酵素のミクロソーム調製を用い、前の実施例にあるように、目的の酵素の精製を要することはない。さらに、この実施形態によって、インタクトな不飽和化された酵素生成物の単離が可能になり、連結された(例えば、脂質-、CoA-、又は遊離脂肪酸)骨格の特徴付けが可能になる。重要な考慮は、酵母由来のミクロソーム中に存在する内因性のリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)が、広範なアシル-CoAを利用し得(Jain et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:30562-30569、Riekhof et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:36853-36861、Tamaki et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:34288-34298)、これによって、デサチュラーゼ酵素をアッセイするための広範な種々の異なるホスファチジルコリン誘導体を生成することに適切になるということであった。LPCATは、18:1n-9-CoA及び20:4n-6-CoAを許容可能で、この酵素は、22:5n-3-CoAを用いてLPCをアシル化できる。任意の細胞又は組織から単離されたミクロソームは、本発明のこの実施形態で用いられてもよく、この例としては、限定するものではないが、細菌細胞(例えば、大腸菌、緑膿菌(Psuedomonas aeruginosa)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis))、哺乳動物組織(例えば、肝臓)及び植物組織(例えば、葉、根、種子、及びポッド)が挙げられ、必要に応じて、サッカロマイセス・セレビシエ由来の外因的に供給されたリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼを使用し得る。本明細書に提示される一般的方法に対するわずかな改変は、潜在的なデサチュラーゼ基質ではなく、別のアシル-CoAとのプレインキュベーションを含んでもよく、これは、膜に存在する内因性のLPCに起因して観察されたバックグラウンドを低下し得、また酵素基質又は生成物アシル-CoAのチオエステラーゼ分解を最小限にし得る。
エロンガーゼ活性
酵母中のエロンガーゼ酵素の発現は、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」でデサチュラーゼ酵素について上記されたとおりに行った。発現されたエロンガーゼを含むミクロソームの単離は、一般には、「トランスジェニック酵母から単離されたミクロソーム中のデサチュラーゼ酵素活性(Desaturase Enzyme Activity in Microsomes Isolated from Transgenic Yeast)」において、及びDenic(Denic, V. and Weissman (2007) Cell 130, 663-677)によって上記されているとおりであった。要するに、酵母発現培養物(50ml)由来の細胞を、1mlのエロンガーゼ分解緩衝液(20mm Tris-HCl、pH7.9、10mMのMgCl2、1mMのEDTA、5%グリセロール、0.3Mの硫酸アンモニウム、プロテアーゼインヒビター)中に再懸濁し、1mlのシリカ/ジルコニウムビーズ(0.5mm)と混合して、BeadBeater中で破壊した。遠心分離(5分間、8000×gで4℃で2回)の後、粗抽出物を回収して、第二の遠心分離(100,000×g、4℃で2時間)後、ミクロソーム画分を、500μlのアッセイ緩衝液(50mMのHEPES-KOH pH6.8、150mMのKOAc、2mMのMgOAc、1mMのCaCl2、プロテアーゼインヒビター)中に再懸濁した。ミクロソーム中のタンパク質濃度は、BCA法によって測定した。再懸濁されたミクロソームを、アリコートにして、N2(l)中で凍結し、-80℃で保管した。
エロンガーゼアッセイでは、[14C]標識したマロニル-CoA及び非標識のアシル-CoAを基質として提供した。反応を適切な時間(これは、実験の目的次第で0〜300分の間で変化し得る)進行させた後、その反応混合物を、加水分解及びメチル化に供して、FAMEを、インスタントイメージャーを用いて電気的オートラジオグラフィーと組み合わせたRP-TLCによって解析した。
このアッセイは、約170μgのミクロソームのタンパク質、7.5nmol[14C]マロニル-CoA(3000dpm/nmol)、5nmolアシル-CoAを、100μlの総容積中に含む。30℃で所望の時間のインキュベーションの後、反応を、MeOH(1:4)中に含まれる100μlの2MのKOHの添加、続いて90℃で20分のインキュベーションによって停止した。脂肪酸を、3MのHCl(100μl)、0.75mlのMeOH:CHCl3(2:1)及びCHCl3(250μl)の添加によって抽出した。クロロホルム相を取り出し、N2(g)下で乾燥し、脂肪酸を、2%のH2SO4含有の2mlのMeOHの添加及び90℃で30分のインキュベーションによってメチル化した。FAMEを2mlのH2O及び2mlのヘキサンの添加によって抽出して、アセトニトリル:テトラヒドロフラン(85:15)の溶媒を用いて、逆相-TLC(シリカゲル60RP-18)によって分離した。放射性脂質を可視化して、インスタントイメージャーを用いる電気的オートラジオグラフィーによって定量した。
さらに、アッセイは、追加の成分(例えば、1mMのNADPH、2mMのMgCl2、及び100μΜセルレニン)を含み、内因性の酵母酵素による脂肪酸還元サイクルを完成し得るが、アシル-CoAのさらなる伸長を制限し得る。
デルタ-6 エロンガーゼ(タラシオシラ・シュードナナ)、c-d6Elo(Tp_GA2)酵素活性:c-d6Elo(Tp_GA2)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的なエロンガーゼアッセイで、[14C]マロニル-CoA及びアシル-CoAを用いるc-d6Elo(Tp_GA2)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。アシル-CoAとしては、限定するものではないが:18:1n-9-CoA、18:2n-6-CoA、18:3n-6-CoA、20:3n-6-CoA、20:4n-6-CoA、20:5n-3-CoA、22:5n-3-CoAが挙げられる。
デルタ-6エロンガーゼ(ヒメツリガネゴケ)、c-d6Elo(Pp_GA2)酵素活性:c-d6Elo(Pp_GA2)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的なエロンガーゼアッセイで、[14C]マロニル-CoA及びアシル-CoAを用いて、c-d6Elo(Tp_GA2)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。アシル-CoAとしては、限定するものではないが:18:1n-9-CoA、18:2n-6-CoA、18:3n-6-CoA、20:3n-6-CoA、20:4n-6-CoA、20:5n-3-CoA、22:5n-3-CoAが挙げられる。
デルタ-5 エロンガーゼ(オストレオコッカス・タウリ)、c-d5Elo(Ot_GA3)酵素活性:c-d5Elo(Ot_GA3)酵素活性及び基質特異性は、上記の一般的なエロンガーゼアッセイで、[14C]マロニル-CoA及びアシル-CoAを用いて、c-d5Elo(Ot_GA3)タンパク質を発現する酵母株から単離されたミクロソーム中で実証され得る。アシル-CoAとしては、限定するものではないが:18:1n-9-CoA、18:2n-6-CoA、18:3n-6-CoA、20:3n-6-CoA、20:4n-6-CoA、20:5n-3-CoA、22:5n-3-CoAが挙げられる。
NADPH及び[14C]マロニル-CoAの存在下では、18:3n-6-CoAは、図28、パネルA及びパネルBに示されるとおり、タラシオシラ・シュードナナ(Tp)及びヒメツリガネゴケ(Pp)から単離したデルタ-6エロンガーゼによって、20:3 n-6-CoAまで伸長された。両方のデルタ-6エロンガーゼ反応において、観察されたFAME生成物は、20:3n-6-メチルエステル標準と同時遊走して、[14C]-マロニル-CoAから18:3n-6-CoAへの2つの炭素の移動と一致して放射性であった。NADPHの存在下では、脂肪酸還元サイクルが完了して、飽和された酵素の生成物が生じた。しかし、NADPHの非存在下では、直接の酵素の生成物の誘導体、3-ケト-20:3n-6-CoAが、FAMEとして単離された。単離された酵素の生成物を、脱炭酸して前に記載のとおり2-ケト-19:3n-6-FAMEに変換した(Bernert, J.T及びSprecher, H. (1977) J. Biol. Chem. 252:6736-6744及びPaul et al (2006) J. Biol. Chem. 281: 9018-9029)。適切な対照によって、この伸長反応が、デルタ-6 Elo(Tp)又はデルタ-6 Elo(Pp)のいずれかに依存し、内因性の酵母酵素によって触媒されなかったことが示される。
NADPH及び[14C]マロニル-CoAの存在下では、20:5n-3-CoAを22:5n-3-CoAまで、c-d5Elo(Ot_GA3)によって伸長し、これはN末端FLAGタグ又はC末端FLAGタグのいずれかを、図28、パネルCに示すとおり含んだ。デルタ-5エロンガーゼ反応では、観察されたFAME生成物は、22:5n-3-メチルエステル標準と同時移動して、2つの炭素の[14C]-マロニルCoAから20:5n-3-CoAへの移動と一致して放射性であった。NADPHの存在下では、脂肪酸還元サイクルを完了して、飽和された酵素の生成物を生じた。しかし、NADPHの非存在下では、直接の3-ケト-22:5n-3-CoA生成物の誘導体を、FAMEとして単離した。単離された酵素の生成物を脱炭酸して、及び2-ケト-21:5n-3-FAMEは前に記載のとおり(Bernert, J.T and Sprecher, H. (1977) J. Biol. Chem. 252:6736-6744及びPaul et al (2006) J. Biol. Chem. 281: 9018-9029)であった。適切な対照によって、この伸長反応は、デルタ-5 Elo(Ot)に依存性であって、内因性の酵母酵素によって触媒されなかったことが実証される。
ここでは、高度に反応性のエロンガーゼアッセイを用いて、本発明者らは、用いたデルタ-6エロンガーゼ(図28、パネルA及びB)及びデルタ-5エロンガーゼ(図28、パネルC)(ドコサヘキサエン酸を生合成するために遺伝子操作されたキャノーラに対して重要な酵素)の酵素活性を実証した。これらのエロンガーゼの各々について、本発明者らは、[14C]マロニル-CoA及び適切な脂肪-アシルCoAエステル基質の存在下で、これらの酵素が、2つの炭素([14C]を含む)をマロニル-CoAから適切な脂肪-アシル-CoAエステルに移して、2つの炭素によって伸長された新しい脂肪酸を合成し得ることを示した。いくつかの場合には、エロンガーゼの直接酵素の生成物(3-ケト-acylCoAエステル)の誘導体(脱炭酸した2-ケト化合物)を観察したが、NADPHの非存在下では、Napier(Bernert, J.T and precher, H. (1977) J. Biol. Chem. 252:6736-6744、並びにPaul et al (2006) J. Biol. Chem. 281: 9018-9029)による以前の観察と一致して、この脱炭酸2-ケト化合物のみが観察された。
まとめると、本発明者らは、脂肪アシル伸長酵素活性の明瞭な実証を可能にする方法を提供した。本発明者らは、以下を実証するデータを提供する;(1)遺伝子c-d6Elo(Tp_GA2)は、トランスジェニック酵母(図28、パネルA)から単離されたミクロソーム中で18:3n-6-CoAを20:3n-6-CoAに変換する、タラシオシラ・シュードナナ(c-d6Elo(Tp_GA2))由来のデルタ-6エロンガーゼタンパク質をコードする、(2)遺伝子c-d6Elo(Pp_GA2)は、トランスジェニック酵母(図28、パネルB)から単離されたミクロソーム中で18:3n-6-CoAを20:3n-6-CoAに変換する、ヒメツリガネゴケ(c-d6Elo(Pp_GA2))由来のデルタ-6エロンガーゼタンパク質をコードする、(3)タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼタンパク質をコードする遺伝子、遺伝子c-d6Elo(Tp_GA2)の両方、及びヒメツリガネゴケ由来のデルタ-6エロンガーゼタンパク質の遺伝子をコードする遺伝子、遺伝子c-d6Elo(Pp_GA2)を含むトランスジェニックB.ナプス事象は、18:3n-6-CoAを20:3n-6-CoAへ伸長し得る、ミクロソームに局在する少なくとも1つの酵素を含む(図28、パネルA)、(4)遺伝子c-d5-Elo(Ot_GA3)は、トランスジェニック酵母(図28、パネルC)及びトランスジェニックB.ナプス事象(図29、パネルB)の両方から単離されたミクロソーム中で20:5n-3-CoAを22:5n-3-CoAに変換するオストレオコッカス・タウリ(c-d5Elo(Ot_GA3))由来のデルタ-5エロンガーゼタンパク質をコードする。示される全ての実施例で、内因性のエロンガーゼ活性を、対照の酵母株(図28)又は対照のアブラナ属株(図29)のいずれかから単離されたミクロソーム中で検出した。
エロンガーゼタンパク質について、「エロンガーゼ活性」に記載の方法を用いて、発現又は検出された酵素活性のレベルは、天然のタンパク質に対する融合タグの有無によって影響され得る。デサチュラーゼに対する融合タグ又はタンパク質は、タンパク質のアミノ末端(N末端融合)又はカルボキシ末端(C末端融合)に結合されてもよく、これには限定するものではないが:FLAG、ヘキサ-ヒスチジン、マルトース結合タンパク質、及びキチン結合タンパク質が挙げられる。
本発明者らは、キャノーラ中でオレイン酸(18:1n-9)からドコサヘキサエン酸(docosohexaenoic acid)(DHA、22:6n-3)を生合成する遺伝子操作された経路に必要な酵素触媒されたエロンガーゼ反応を確立する方法を提供した。実施例21に示す方法は、個々のエロンガーゼを発現する酵母株中でエロンガーゼ活性を実証するために開発され、さらにこれを用いて、トランスジェニックのキャノーラ中でそれぞれのエロンガーゼ酵素活性を確認してもよい。さらに、これらの方法を、当業者によって組み込んで、限定するものではないが、サッカロマイセス・セレビシエ、アラビドプシス・タリアナ、アブラナ属の種、カメリナ・サチバ、カルタムス・チンクトリウス、及びサルビア・ヒスパニカを含む他の生物体においてエロンガーゼ酵素活性を確立してもよい。
[実施例22]
作用機序のin vivoの実証:基質特異性、基質選択性
酵母発現ベクターへの遺伝子のクローニング:
単一遺伝子の発現のために、酵母発現ベクターpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)を用いた。隣接するプライマーを製造業者の指示に従って設計し、遺伝子を、プルーフリーディングポリメラーゼPhusion高忠実度ポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて植物発現ベクターから増幅した。アガロースゲル電気泳動の後、PCR断片を切り出して、EZ-10スピンカラムゲル抽出キット(Bio Basic Inc.)を用いて精製し、酵母発現ベクターpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)中にクローニングして、大腸菌中に形質転換し、遺伝子の方向をPCRによってチェックした。複数の遺伝子の同時発現のために、遺伝子をpESC酵母発現ベクター(Stratagene)中に、GAL1プロモーターの制御下でクローニングした。これを行うために、適切な制限部位を、PCRを介してコード領域の上流及び下流に導入し、続いて、断片を単離し、pGEM-Tベクター中にTAクローニングし、酵素消化によって遺伝子断片を遊離し、pESCベクターにライゲーションした。全ての構築物に関して、プラスミドを、EZ-10スピンカラムプラスミドDNAミニプレップキット(Bio Basic Inc.)を用いて単離した。全ての構築物を、酵母形質転換の前に配列決定した。配列決定後、プラスミドを、製造業者のプロトコールに従って、Sc EasyComp Transformation Kit(Invitrogen)を用いて、サッカロマイセス・セレビシエ(酵母)株INVSd(Invitrogen)中に形質転換し、適切なアミノ酸を欠くプレート上で選択した。
酵母中の異種遺伝子の発現:
酵母培養物は、2%グルコースを含む、ドロップアウト塩基(DOB-URA:1.7g/L酵母窒素塩基、5g硫酸アンモニウム、及び完全補充混合物から選択用の適切なアミノ酸を除いたもの)中で、30℃で一晩増殖した。一晩の酵母培養物のOD600を得て、培養濃度を試料の間で標準化した。試料を、2%ガラクトースを含有するDOB-URAを用いて洗浄し、発現を、外因性の脂肪酸及び0.01%のテルギトール(tergitol)を補充した同じ培地中で、20℃で3日間行った。外因性の脂肪酸供給のために、他に示した場合を除いて、細胞に0.25mMの適切な脂肪酸を供給した。脂肪酸基質及びFAME標準を、Nu-Chek Prep Inc(Elysian,MN)から購入した。
ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸解析:
5mLの培養物を遠心分離によって沈殿させて、誘導緩衝液を用いて1回、及び水を用いて1回洗浄した。上清を取り除き、2mLの3Nのメタノール-HCl(Supelco)を、細胞ペレットに添加した。穏やかに混合した後、その混合物を80℃で40分間インキュベートして、室温まで冷却し、1mLの0.9%NaClプラス2mlのヘキサンを添加した。試料をボルテックスして、遠心分離して、ヘキサン相を取り除き、窒素ガス下で乾燥した。脂肪酸メチルエステル(FAME)を100μlのヘキサン中に再懸濁して、ガスクロマトグラフィーによって、Agilent 6890Nガスクロマトグラフ(DB-23カラムを装備した)によって解析した。用いた熱プログラムは、160℃で1分であり、次いで温度を1分あたり4℃の速度で240℃まで上げた。FAMEを、公知の標準に基づいて特定し、変換パーセントは、以下のとおり算出した:[(生成物)×100%]/(基質+生成物)。
時間経過研究:
試料を、30℃で一晩増殖させ、試料濃度は、供給の前に標準化し、培養物は、20℃で誘導した。いくつかの時間経過研究に関しては、試料を、結果に示されるとおり供給前に一晩事前誘導した。試料(培養物の1ml)を示した時間間隔で収集し、0.5%のtergitolを用いて1回、及び2回蒸留水を用いて1回洗浄し、ペレットを、時間経過が終了するまで-80℃で保管した。脂肪酸抽出物及びGC解析は基本的に、「ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸解析」に記載される方法に従い、しかし、1mLのメタノールHCl及び0.5mLの0.9%NaCl及び1mLのヘキサンを、脂肪酸抽出のために用い、最終の再懸濁を、100μLヘキサン中で行った。
個々の脂肪酸での供給研究:
試料を30℃で一晩培養し、試料濃度を、供給前に標準化し、培養物を、20℃で3日間誘導した。少なくとも3つのクローンからの測定を用いて平均を算出した。
複数の脂肪酸を用いる供給試験:
同時供給のための脂肪酸を、上記の実験からの結果に基づいて選択し、ここでは各々の構築物を発現する細胞に、全ての可能な基質を供給した。所定の酵素についての陽性の基質を一緒に供給したが、1つの基質が、これも公知の基質であった生成物を形成した場合(例えば、特定のエロンゲーゼで)、別々の混合物を用いた。オメガ-3-デサチュラーゼのために、2つの混合物(各々が標準としてSDAを含む)を供給に用いた。最初に、培養物に、0.25mMの総脂肪酸基質を含む混合物を供給した。しかし、取り込みの相違に起因して、基質A+生成物Aのレベルが、基質B+生成物Bと±5%内で等しくなるように、脂肪酸混合物を最適化する必要があった。用いられる最終の脂肪酸混合物もまたGCに供して、相対的取り込みの推定を得た。適切な脂肪酸混合物を得た後、誘導及び供給を、上記のとおり行った(「酵母中の異種遺伝子の発現」)。誘導後、酵母細胞を20℃で3日間誘導した後に、上記のように細胞の回収及びGC解析を行った(「酵母での異種遺伝子の発現」及び「ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸解析」)。全ての実験は、3回繰り返した。
酵母での同時発現異種遺伝子:
遺伝子の同時発現のためのプロトコールは、基本的に、単一遺伝子発現実験のために提供されるプロトコールに従った。培養物を30℃で一晩増殖し、試料濃度は、供給の前に標準化し、培養物を、20℃で3日間誘導した。以下のセットの遺伝子が同時発現された(pY=pYES2.1/V5-His-TOPO;pT=pESC-Typ,pL=pESC-Leu):
1)pY-c-d12Des(Ps_GA)/pT-c-d6Des(Pir_GA)
2)pY-c-d12Des(Ps_GA)/pT-c-d6Des(Ot_febit)
3)pY-c-d6Elo(Tp_GA2)/pT-c-d6Des(Ot_febit)
4)pY-c-d6Elo(Tp_GA2)/pT-c-d6Des(Pir_GA)
5)pL-c-d6Elo(Tp_GA2)/pY-c-d5Des(Tc_GA2)
6)pL-c-d8Des(Eg)/pY-c-d5Des(Tc_GA2)
7)pL-c-d6Elo(Tp_GA2)/pY-c-d5Des(Sa)
8)pL-c-d8Des(Eg)/pY-c-d5Des(Sa)
脂質の単離及び解析:
デサチュラーゼ又はエロンガーゼの発現のために、酵母培養物を、30℃で一晩、2%グルコースを含む、ドロップアウトベース(DOB-ura)中で成長させた。試料を、2%のガラクトースを含む誘導培地(DOB-ura)を用いて洗浄し、発現は、20℃で3日間、適切な脂肪酸及び0.01%のtergitol(NP-40)を補充した、同じ培地中で誘導した。インキュベーションの3日後、酵母細胞を、遠心分離によって収集し、蒸留水を用いて2回洗浄した。15mLのクロロホルム:メタノール(1:1)を、この収集した酵母ペレットに加え、試料を室温で3時間振盪しながらインキュベートした。3時間のインキュベーション後、試料を遠心分離して、水相を収集し、-20℃で保管した。クロロホルム:メタノール(2:1)を、このペレットに添加し、これを4℃で一晩インキュベートし、次いで遠心分離に供した。水相を収集して、前に収集した水相とプールした。9mLの0.45%のNaClをこのプールした水相に添加し、その試料をボルテックスして、有機相を、1500×gで3分間の遠心分離後によって分離した後に収集した。その有機相を、窒素ガス下で乾燥し、100uLのクロロホルム中に再懸濁して、総脂肪酸画分を得た。5uLの総脂肪酸画分をGCによって解析し、残りを下記のようにTLCによって分離した。
TLCプレートを、使用前に120℃で少なくとも3時間活性化した。脂肪酸を分離するために用いた移動相は、クロロホルム:メタノール:酢酸(65:35:8)から構成され、プリムライン(primuline)(100mLのアセトン:水、80:20中で5mg)を用いて、分離された脂質画分をUV光下で可視化した。個々の脂質画分(PC、PE、PI+PS、及び中性脂質)を、標準を用いて特定し、TLCプレートから別々に取り除いた。シリカから脂質を抽出するために、400uLの水、2mlのクロロホルム及び2mLのメタノールを添加し、試料を激しくボルテックスして、2mLの0.2MのH3PO4/1MのKClを添加した。より低い有機相を収集し、残りの水相を、2mLのクロロホルムを添加することによって再抽出した。プールした有機相を窒素ガス下で乾燥し、個々の脂質画分の脂肪酸プロファイルをガスクロマトグラフィーによって解析した。GCは、2mLの3NのメタノールHClの添加、続いて、80℃で40分間のインキュベーションによって、次いで1mlの0.9%NaCl及び2mLのヘキサンを添加すること、並びにボルテックスによって行った。ヘキサン相を収集し、窒素ガス下で乾燥し、GC解析のために100μLのヘキサン中に再懸濁した。ガスクロマトグラフィーを、Agilent 6890Nガスクロマトグラフ(DB-23カラムを装備)、及び160℃で1分、続いて4℃/分の速度で温度を240℃まで増大することからなる熱プログラムを用いて行った。最初のGC解析の後、低濃度の試料を40μLのヘキサンに再懸濁して、再分析した。
時間経過研究:
最初に、ある範囲の条件をc-d5Des(Tc_GA2)で試験した(図30)。誘導の開始の際、培養物に0.25mMの外因性基質を供給した場合、生成物及び基質の量、並びに不飽和化パーセンテージは、約48〜92時間安定に保持された(図30、パネルA)。従って、これらの条件を、さらなる時間経過実験に用いた。
これらの条件が全ての遺伝子構築物に関して許容可能であったか否かを決定するために、個々に全ての10個の遺伝子を発現する酵母培養物で時間経過を行った。各々の酵素についての好ましい基質は、外因性に供給した(図31)。
脂肪酸の取り込みの速度、及び酵素の活性は変化したが、生成物、基質のレベル、及び伸長パーセント又は不飽和化のパーセントは、72時間の時点では比較的安定であった(図31)。従って、72時間のデータ収集を、別段示す場合を除いて、全てのさらなる実験に用いた。
全ての脂肪酸での全ての酵素の解析:
植物構築物中で用いた各々のデサチュラーゼ及びエロンガーゼの主な活性は、遺伝子単離の際に決定した。しかし、多くのデサチュラーゼ及びエロンガーゼは、二次的な活性を有する。全ての酵素が一緒に存在する場合、このような二次的な活性は、所望の脂肪酸の全体的な生成速度に影響するか、又は副産物の生成をもたらした。この実験では、本発明者らは、全ての10個の遺伝子を発現する植物中に存在すると期待され得る全ての脂肪酸で全ての酵素を試験した。この実験で用いた酵素及び脂肪酸を下に列挙する。
酵素 脂肪酸
c-d12Des(Ps_GA) 18:1n-9
c-d6Des(Ot_febit) LA(18:2n-6)
c-d6Elo(Pp_GA2) ALA(18:3n-3)
c-d6Elo(Tp_GA2) GLA(18:3n-6)
c-d5Des(Tc_GA2) SDA(18:4n-3)
c-o3Des(Pi_GA2) DHGLA(20:3n-6)
c-o3Des(Pir_GA) ETA(20:4n-3)
c-d5Elo(Ot_GA3) ARA(20:4n-6)
c-d4Des(PI_GA)2 DTA(22:4n-6)
c-d4Des(Tc_GA) DPAn-3(22:5n-3)
DPAn-6(22:5n-6)
DHAn-3(22:6n-3)
各々の個々の基質脂肪酸を、各々の個々の酵素で試験したが、結果は、脂肪酸/酵素の組み合わせについてのみ示しており、ここでは検出可能なレベルの活性を得た(表159、表160、及び表161を参照のこと)。
本発明者らは、デサチュラーゼによるいくつかの副活性、例えば、GLAのSDAへのc-d5Des(Tc_GA2)による変換、及びDHGLAのARAへのc-d4Des(Tc_GA)による変換を見たが、これらの活性レベルは低く、DHA合成経路で期待される脂肪酸を生成する(表159)。
本発明者らはまた、c-d12Des(Ps_GA)及びc-d4Des(PI_GA)2の単一ポイント変異体の基質プロファイルも解析した。c-d12Des(Ps_GA)においてF83L突然変異をもたらす単一ヌクレオチド変化は、c-d12Des(Ps_GA)の野性型バージョンに対して不飽和化の基質優先又は有効性のいずれにおいても有意な変化をまったくもたらさなかった(データは表159に示す)。同様に、d4Des(PI_GA)2におけるA102S突然変異をもたらす単一ヌクレオチド変化は、d4Des(PI_GA)2の野性型バージョンに対して不飽和化の基質優先又は有効性のいずれにおいても有意な変化をまったくもたらさなかった(データは表159に示す)。
エロンガーゼは一般に、より高いレベルの副活性を示した(表160、表161)。2つのデルタ-6エロンガーゼは、主な基質GLA及びSDAについて同様の変換割合を示したが、ヒメツリガネゴケの酵素は、LA及びALAに対して高レベルの活性を示し、ヒメツリガネゴケのデルタ-6エロンガーゼのみが、検出可能な活性のARA及びEPAを示した。それにもかかわらず、活性レベルは、GLA及びSDAでは実質的に高く、これによって、(経路中で利用可能であると予想された)これらの脂肪酸が、酵素の好ましい基質であるか否かが示唆される。
c-d5Elo(Ot_GA3)は、ほとんどの脂肪酸を連続伸長できた(表161)。しかし、大きいマージンによる最高の変換は、所望のEPAからDPAn-3変換についてであった。遺伝子操作された植物系では、2つのデルタ-4デサチュラーゼがDPAn-3を不飽和化して、さらなる伸長を妨げるのに利用可能である。このエロンガーゼによって生成される24個の炭素を含む脂肪酸のレベルは、もし高レベルの基質が酵母系に存在し競合する酵素が存在しないならば、小さい。
20:4n-3は、市販されていなかったので、他のデサチュラーゼ又はエロンガーゼの各々とのc-d6Elo(Tp_GA2)の同時発現によってin vivoで生成した。従って、外因性SDAを供給する際、20:4n-3は、c-d6Elo(Tp_GA2)によって生成し、第二酵素によるこの脂肪酸の変換の効率を測定した。
c-d4Des(Tc_GA)、c-d5Des(Tc_GA2)、c-d6Des(Ot_febit)、及びc-d5Elo(Ot_GA3)は、20:4n-3を基質として用いることができた(表162)。c-d5Des(Tc_GA2)は、最高の変換パーセンテージを示し、これによって、20:4n-3がデルタ-5デサチュラーゼの公知の基質であったと予想される。c-d5Elo(Ot_GA3)はまた、22:4n-3を効率的に生成できた。1構築物中で2つのデルタ-6エロンガーゼを用いる場合、遺伝子用量効果が観察された;2つのc-d6Elo(Tp_GA2)の存在下で増大したデルタ-6エロンガーゼ活性、又はc-d6Elo(Tp_GA2)及びc-d6Elo(Pp_GA2)からなる遺伝子対。
本発明のデサチュラーゼ及びエロンガーゼの脂肪酸特異性
酵素は、2つの基質が同時に存在した場合に、相対活性の比較を可能にするために脂肪酸の混合物を提供された;酵素は、それらが個々に供給される場合、基質Aに対して、基質Bよりも活性であり得るが、それらが同時に供給される場合、各々の基質に対する酵素の相対活性は変化し得る。同じ長さの脂肪酸は好ましくは同時に提供された。なぜなら、それらは、同時に植物中に存在する可能性が高いだろうからである。脂肪酸の混合物は、(基質1+生成物1)=(基質2+生成物2)のレベルが±5%内であるように調節した。
表163に記載のとおり、オメガ-3デサチュラーゼの相対的活性は、早期に記載されたのと同じ順序に従う(表159)が、両方のオメガ-3デサチュラーゼの活性とも、DHGLA及びARAが利用可能であった場合に、DTAよりも低かった。両方のデルタ-4デサチュラーゼとも、オメガ-3及びオメガ-6基質が当量で存在した場合、オメガ-3基質について優先度を示した。オメガ-3基質に関するc-d6Des(Ot_febit)の優先度はまた、両方の基質が利用可能である場合にも増大した(表163)。デルタ-5エロンガーゼに関して、二次的な基質の相対的伸長は一般には、一次の場合に低下するか、又は好ましい基質が利用可能であった(表163)。
MoAを支持する追加の酵素活性(CoA対PC)
S.アルクチカ及びスラウストキトリウム属の種由来のデルタ-5デサチュラーゼ遺伝子を、pYES2.1/V5-His-TOPO発現ベクター中にクローニングして、c-d6Elo(Tp_GA2)及びc-d8Des(Eg)の両方を、pESC-Leu発現ベクター中にクローニングした。酵母を、適切なベクター対、及びDOB-ウラシル-ロイシンでの選択で形質転換した。陽性の培養物を成長させて、誘導し、GC解析を実施例23で上記のとおり行った。全ての培養物を同時に成長させた。
表164に記載のとおり、DHGLAに対するc-d5Des(Sa)のデルタ-5デサチュラーゼ活性は、DHGLAが、コエンザイムA(CoA)プール中の伸長に由来するか、又はホスファチジルコリン(PC)プール中の不飽和化に由来するかにかかわらず同様であった。逆に、表164によってまた、c-d5Des(Tc_GA2)のデルタ-5デサチュラーゼ活性は、DHGLA基質が、CoAプール中の伸長に由来した場合にかなり高かったことが示される。TLCによる脂質解析からのデータと組み合わせて、これによって、c-d5Des(Tc_GA2)は、CoAプール中の基質を不飽和化し得ることが示唆されるが、不飽和化はこのプールに限定されたとは示されない。
PCプール中で活性なデサチュラーゼ(c-d6Des(Pir_GA))及びCoAプール中で活性であると考えられるデサチュラーゼ(c-d6Des(Ot_febit))によるデサチュラーゼによる不飽和化後のデルタ-6-伸長のレベルを決定した。伸長は、アシル-CoAプール中で生じるので、さらに効率的な伸長が、アシルCoA依存性デサチュラーゼによる不飽和化後に生じ得る。2つのデサチュラーゼをまた、引き続くデルタ-6-不飽和化の有効性を比較することを可能にするために、PC基質上で活性であったデルタ-12デサチュラーゼの存在でも発現させた。最終的に、エロンガーゼ及びデサチュラーゼの活性に対する個々のデサチュラーゼ遺伝子及びデサチュラーゼ遺伝子の対の効果を比較して、投薬効果を決定した。
c-d6Elo(Tp_GA2)によるGLA変換は、c-d6Des(Pir_GA)での不飽和化に由来するGLAと比較してc-d6Des(Ot_febit)による不飽和化に由来するGLAで高かった(表165)。これによって、c-d6Des(Ot_febit)が、アシル-CoAプール中で作用し、これによって、得られた基質は、デルタ-6エロンガーゼについてさらに容易に利用可能であり、従ってより高いエロンガーゼ活性を生じることが示される。対応して、c-d6Des(Ot_febit)のデルタ-6デサチュラーゼ活性は、基質がPCプール中のデルタ-12不飽和化由来である場合、ほぼ半分まで低下された(表165及び表166)一方で、c-d6Des(Pir_GA)のデルタ-6デサチュラーゼ活性は、基質(LA)がPCプール中のOAのデルタ-12-不飽和化由来であったか、又は外因性に供給されたかと同様であった(表165及び表166)。外因性に供給された基質は、アシル-CoAの形態で酵母細胞に入ると考えられた。TLCによる脂質解析からのデータと組み合わせて、このデータによって、c-d6Des(Ot_febit)が、以前の予測(Domergue et al. (2005) Biochem. J. 389: 483-490)と一致して、アシル-CoA依存性酵素であったことが示唆される。
c-d6Elo(Tp_GA2)及びc-d6Des(Ot_febit)(CoA)を同時発現する場合、より高いエロンガーゼ変換効率が、n-3又はオメガ-6基質が外因性に供給されたか否かにかかわらず、同時発現のc-d6Elo(Tp_GA2)及びc-d6Des(Pir_GA)(PC)と比較して達成された(表167、表168)。これによって、関連のデサチュラーゼ遺伝子が、pYesベクター、又はpESC-trpベクター中にクローニングされたか否かを観察した。不飽和化効率のわずかな増大が、2つのデサチュラーゼ遺伝子の存在下で、特に、オメガ-3基質ALAを供給された培養物中で観察された。単一のc-d6Des(Ot_febit)を保持する培養物と比較して、伸長された基質の割合は、2つのアシル-CoA依存性c-d6Des(Ot_febit)の存在下で、又は両方のデサチュラーゼの存在下でごくわずかに向上した。2つのコピーのc-d6Des(Pir_GA)(PC)とのc-d6Elo(Tp_GA2)の同時発現は、2つのデサチュラーゼを保持する培養物の間で最低の伸長変換レベルを生じた。アシル-CoA依存性のデルタ-6デサチュラーゼの存在は、より高いデルタ-6伸長活性に対して、これが単独で発現されても、又は第二のデサチュラーゼとともに発現されても寄与し、さらにこれによって、VLC-PUFA合成に関してこの遺伝子の有用性が示された。
種々のデルタ-4デサチュラーゼに関する基質プールの効果は、CoAプールで作用することが公知であったヘルパー酵素c-d5Elo(Ot_GA3)の存在下で決定された。デルタ-4デサチュラーゼ遺伝子の遺伝子用量効果もまた決定された。
P.ルセリ及びc-d4Des(Tc_GA)によって達成された不飽和化レベルは同様であった。2つのデルタ-4デサチュラーゼを用いた場合、P.ルセリ/スラウストキトリウム属の種対でのみ有意な遺伝子用量効果が観察され、スラウストキトリウム属の種デサチュラーゼの2つのコピーで最低であった。これらの傾向は、伸長されたARA(表170)及びEPA(表169)の存在下で観察された。しかし、n-6伸長基質(ARA)では、不飽和化変換パーセンテージは一般には、オメガ-3基質(EPA)と比較してわずかに低かった。
[実施例23]
転写因子結合モチーフを含むスペーサー領域
実施例3及び4に示されるとおり、本発明に用いられる構築物中の各々の発現カセットの間に、100〜200塩基対のスペーサー領域がある。BiBACのT-DNAに関して、同時形質転換ベクター中にマルチクローニング部位及びゲートウェイ(Gateway)部位配列を有した遺伝子カセットの間の短いストレッチの配列を、無作為化に供して、GC含量を維持し、同一の配列の複数の繰り返しを取り除いた。当業者は、構築物、具体的には、大型の複数の遺伝子の構築物内の複数の反復の存在が、プラスミドが、大腸菌にクローニングされて、用いられたアグロバクテリウム株/種を通じて継代されるにつれて、内部欠失及び再配列を生じ得ることを認識する。Gc含量の反復及び調節の除去後、スペーサー領域の配列を次に、転写因子及び他のDNA相互作用タンパク質についての任意の可能な結合部位について検査した。用いられるスペーサー領域配列は、RTP10690_1〜RTP10690_12、例としては、AtAHASプロモーター及びターミネーター、RTP10690_5'、LJB2197_5'及びLJB2197_1からLJB2197_4までである。下線の数はまた、先行するカセット中でGOIのセンス方向で、スペーサー領域が、右境界から左境界へ向かうカセット読み取りで見られる順序に相当する。例えば、RTP10690_1は、構築物VC-RTP10690-1qcz_F中の、最初のカセットのターミネーターの後で、かつ第二のカセットのプロモーターの前の配列であった。AHAS選択カセットのターミネーター及び第一カセットの5'領域も検査した。
>RTP10690_1
TTAATTCAGCTAGCTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGCGTCACGTGACGTTAGCTAACGCTAGGTAGCGTCAGCTGAGCTTACGTAAGCGCTTAGCAGATATTT
>RTP10690_2
TTACTGATTGTCTACGTAGGCTCAGCTGAGCTTACCTAAGGCTACGTAGGCTCACGTGACGTTACGTAAGGCTACGTAGCGTCACGTGAGCTTACCTAACTCTAGCTAGCCTCACGTGACCTTAGCTAACACTAGGTAGCGTCAGCTCGACGGCCCG
>RTP10690_3
GGCGGAGTGGGGCTACGTAGCGTCACGTGACGTTACCTAAGCCTAGGTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGGCTCAGCTGACACGGGCAGGACATAG
>RTP10690_4
GAATGAAACCGATCTACGTAGGCTCAGCTGAGCTTAGCTAAGCCTACCTAGCCTCACGTGAGATTATGTAAGGCTAGGTAGCGTCACGTGACGTTACCTAACACTAGCTAGCGTCAGCTGAGCTTAGCTAACCCTACGTAGCCTCACGTGAGCTTACCTAACGCTACGTAGCCTCACGTGACTAAGGATGACCTACCCATTCTT
>RTP10690_5
GCGGCCGCTAGCTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGCGTCACGTGACGTTAGCTAACGCTAGGTAGCGTCAGCTGAGCTTACGTAAGCGCCACGGGCAGGACATAGGGACTACTACAA
>RTP10690_6
CGAATGAAACCGATCTACGTAGGCTCAGCTGAGCTTACCTAAGGCTACGTAGGCTCACGTGACGTTACGTAAGGCTACGTAGCGTCACGTGAGCTTACCTAACTCTAGCTAGCCTCACGTGACCTTAGCTAACACTAGGTAGCGTCAGCTTAGCAGATAT>RTP10690_7
CCGTTCAATTTACTGATTGTCTACGTAGCGTCACCTGACGTTACGTAAGGCTACCTAGGCTCACGTGACGTTACGTAACGCTACGTAGCGTCAGGTGAGGTTAGCTAACGCTAGCTAGCCTCACCTGACGTTAGGTAAGGCTACGTAGCGTCACCTGAGATTAGCTAAGCCTACCTAGACTCACGTGACCTTAGGTAACGCTACGTAGCGTCAAAGCTTTACAACGCTACACAAA
>RTP10690_8
TTACCTAACTTAGAACTAAAATCAACTCTTTGTGACGCGTCTACCTAGAGTCAGCTGAGCTTAGCTAACGCTAGCTAGTGTCAGCTGACGTTACGTAAGGCTAACTAGCGTCACGTGACCTTACGTAACGCTACGTAGGCTCAGCTGAGCTTAGCTAACCCTAGCTAGTGTCACGTGAGCTTACGCTACTATAGAAAATGTGTTATAT
>RTP10690_9
TTCAGTCTAAAACAACTACGTAGCGTCACGTGACGTTACCTAAGCCTAGGTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGGCTCAGCTGACTGCAGCAAATTTACACATTGCCA
>RTP10690_10
TAATTCGGCGTTAATTCAGCTACGTAGGCTCAGCTGAGCTTACCTAAGGCTACGTAGGCTCACGTGACGTTACGTAAGGCTACGTAGCGTCACGTGAGCTTACCTAACTCTAGCTAGCCTCACGTGACCTTAGCTAACACTAGGTAGCGTCAGCACAGATGAATACTAGCTGTTGTTCA
>RTP10690_11
ATCATGATGCTTCTCTGAGCCGTGTTTGCTAGCTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGCGTCACGTGACGTTAGCTAACGCTAGGTAGCGTCAGCTGAGCTTACGTAAGCGCACAGATGAATACTAGCTGTTGTTCACA
>RTP10690_12
CTTCTCTGAGCCGTGTTTGCTAGCTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGGTAGCGTCACGTGACGTTAGCTAACGCTAGGTAGCGTCAGCTGAGCTTACGTAAGCGCTTAATTAAAGTACTGATATCGGTACCAAATCGAATCCAAAAATTACGGATATGAATAT
>RTP10690_5'
ATTACAACGGTATATATCCTGCCAGTCAGCATCATCACACCAAAAGTTAGGCCCGAATAGTTTGAAATTAGAAAGCTCGCAATTGAGGTCTACAGGCCAAATTCGCTCTTAGCCGTACAATATTACTCACCGGTGCGATGCCCCCCATCGTAGGTGAAGGTGGAAATTAATGGCGCGCCTGATCACTGATTAGTAACTATTACGTAAGCCTACGTAGCGTCACGTGACGTTAGCTAACGCTACGTAGCCTCAGCTGACGTTACGTAAGCCTACGTAGCGTCACGTGAGCTTAGCTAACGCTACCTAGGCTCAGCTGACGTTACGTAACGCTAGCTAGCGTCACTCCTGCAGCAAATTTACACA
>t-AtAHASL
GAGATGAAACCGGTGATTATCAGAACCTTTTATGGTCTTTGTATGCATATGGTAAAAAAACTTAGTTTGCAATTTCCTGTTTGTTTTGGTAATTTGAGTTTCTTTTAGTTGTTGATCTGCCTGCTTTTTGGTTTACGTCAGACTACTACTGCTGTTGTTGTTTGGTTTCCTTTCTTTCATTTTATAAATAAATAATCCGGTTCGGTTTACTCCTTGTGACTGGCTCAGTTTGGTTATTGCGAAATGCGAATGGTAAATTGAGTAATTGAAATTCGTTATTAGGGTTCTAAGCTGTTTTAACAGTCACTGGGTTAATATCTCTCGAATCTTGCATGGAAAATGCTCTTACCATTGGTTTTTAATTGAAATGTGCTCATATGGGCCGTGGTTTCCAAATTAAATAAAACTACGATGTCATCGAGAAGTAAAATCAACTGTGTCCACATTATCAGTTTTGTGTATACGATGAAATAGGGTAATTCAAAATCTAGCTTGATATGCCTTTTGGTTCATTTTAACCTTCTGTAAACATTTTTTCAGATTTTGAACAAGTAAATCCAAAAAAAAAAAAAAAAATCTCAACTCAACACTAAATTATTTTAATGTATAAAAGATGCTTAAAACATTTGGCTTAAAAGAAAGAAGCTAAAAACATAGAGAACTCTTGTAAATTGAAGTATGAAAATATACTGAATTGGGTATTATATGAATTTTTCTGATTTAGGATTCACATGATCCAAAAAGGAAATCCAGAAGCACTAATCAGACATTGGAAGTAGG
>LJB2197_5'
ACATACAAATGGACGAACGGATAAACCTTTTCACGCCCTTTTAAATATCCGATTATTCTAATAAACGCTCTTTTCTCTTAGGTTTACCCGCCAATATATCCTGTCAAACACTGATAGTTTAAACTGAAGGCGGGAAACGACAATCTGATCACTGATTAGTAACTAAGGCCTTTAATTAATCTAGAGGCGCGCCGGGCCCCCTGCAGGGAGCTCGGCCGGCCAATTTAAATTGATATCGGTACATCGATTACGCCAAGCTATCAACTTTGTATAGAAAAGTTGCCATGATTACGCCAAGCTTGGCCACTAAGGCCAATTTCGCGCCCTGCAGCAAATTTACACA
>LJB2197_1
CAATTTACTGATTGTGTCGACGCGATCGCGTGCAAACACTGTACGGACCGTGGCCTAATAGGCCGGTACCCAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCATGATTACGCCAAGCTTGGCCACTAAGGCCAATTTAAATCTACTAGGCCGGCCATCGACGGCCCGGACTGTA
>LJB2197_2
GGCGGAGTGGGGGGCGCCTACTACCGGTAATTCCCGGGATTAGCGGCCGCTAGTCTGTGCGCACTTGTATCCTGCAGGTTAGGCCGGCCACACGGGCAGGACATAGGG
>LJB2197_3
AAACCGAATGAAACCGATGGCGCCTACCGGTATCGGTCCGATTGCGGCCGCTTAAAGGGCGAATTCGTTTAAACACTGTACGGACCGTGGCCTAATAGGCCGGTACCACCCAGCTTTCTTGTACAAAGTGGCCATGATTACGCCAAGCTTGGCCACTAAGGCCAATTTAAATCTACTAGGCCGGCCATAAGGATGACCTACCCATTCTT
>LJB2197_4
TTAATTCAGGGCCGGCCAAAGTAGGCGCCTACTACCGGTAATTCCCGGGATTAGCGGCCGCTAGTCTGTGCGCACTTGTATCCTGCAGGTTAGGCCGGCCATTAGCAGATATTT
転写因子は、DNAの特定の配列に結合することが公知であり、染色体との相互作用のこのポイントから、それらは、特定の遺伝子又は遺伝子のサブセットの転写を調節する。転写因子によって結合される特定の配列は、DNA結合モチーフと呼ばれ、10塩基対からわずか4塩基対程度までの範囲であってもよい。ほとんどのDNA結合モチーフは、10塩基対未満からなるが、それらのモチーフは、必須であることが証明され、そして、それらに対して結合する転写因子による転写の調節を上げる(下げる)するのに十分である。例えば、転写因子モチーフ及びモチーフを支持するために用いられる可能なデータはHattori et al., 2002、Keller et al., 1995、Kim et al., 2014、Lopez et al., 2013、Machens et al., 2014、Muino, 2013、Sarkar, 2013、Dubos et al., 2014を参照のこと)。特定されたモチーフは、公的にアクセスされ、クエリーされ得る、PLACE(Higo et al., 1999)のような種々のデータベースで共有され、かつ記録されている。特定の特徴付けられたプロモーターを主な手段として用いて、本発明における所定の導入遺伝子の発現を調節するが、導入遺伝子の別の調節が、スペーサー領域中の1つ以上の活性な転写因子結合モチーフの存在に起因して本発明に記載される植物中で生じていた可能性があった。公的な文献中の人工/合成のプロモーターの例では、このラインの理由が支持される;ヌクレオチドの無作為なアセンブリ及び反復試験によってできるプロモーターの例、並びに人工的なプロモーターを作成するためにアセンブルされた公知の転写活性の特定の断片については、Kong et al. (2014)、Nishikata et al. (2013)、及びBrown et al. (2014)を参照のこと。従って、本発明における所定の導入遺伝子の調節領域としてはまた、用いられるイントロン、ターミネーター及びプロモーターに加えて、導入遺伝子を含むカセットの前のスペーサー領域も挙げられる。
表172で特に注目されるのは、構築物VC-RTP10690-1qcz_Fのアブシジン酸関連転写因子結合モチーフを含む、驚くべき多数の配列であった。アブシジン酸は、種子の成熟、乾燥及びストレス反応に関与する植物ホルモンであって、包括的な概説に関しては、Cutler et al.(2010)を参照のこと。アブシジン酸及び種子成熟に対するその効果について公知であったことに基づいて、アブシジン酸に応答する遺伝子発現の調節に関係がある観察された多数のモチーフは、観察された転写レベル、及びVC-RTP10690-1qcz_Fにおける遺伝子についての遺伝子発現のタイミングにおいてある役割を果たしたであろう。転写に対する可能性のある影響に加えて、トポグラフィーは、GC含量に影響されるという文献でこれが公知であり(Wachter et al., 2014を参照のこと)、かつできるだけ多くの宿主のものにマッチするT-DNA中のGC含量を有することが賢明である。欠失及び再配置の可能性を減らすことに加えて、反復の量を減らすことは、DNAトポグラフィー及び遺伝子調節に影響し得る(Ramamoorthy et al. 2014)。スペーサー領域は、局所クロマチン構造においてT-DNAの全体的な影響に寄与し、これが次に、その領域中の遺伝子が調節されて転写される方法に影響する(Parker et al. 2009, Meggendorfer et al. 2010)。
[実施例24]
遺伝子発現、コピー数決定及び事象検出
野性型に相当する植物材料、BiBAC VC-RTP10690-1qcz_F、及び同時形質転換構築物:VC-LJB2197-1qczとVC-LLM337-1qcz rc、VC-LJB2755-2qcz rcとVC-LLM391-2qcz rc及びVC-LJB2755-2qcz rcとVC-LTM217-1qcz rcを、授粉後の日によって収集した。構築物の詳細(遺伝子及びプロモーター)は、表1、表2、表4、表6、表7及び表8に見出される。使用した成長条件下で発達段階と相関する授粉後の日に基づいて、種子をプールに組み合わせた。プールした種子を液体窒素中で直ちに凍結し、その後に-80℃で保管した。凍結した未熟な種子のうち三分の一を、7mlのチューブ及び2つのセラミックビーズ中でPrecelly(登録商標)24-Dualテクノロジーを用いてホモジナイズした(6500Hz、2〜3回、20秒)。各々のプールから、組織の50〜70mgの3つのアリコートを用いて、RNAを単離した。凍結した組織を微細な粉末に挽いて、当業者に周知の基本的手順に従って抽出した(未熟な種子及び試料からのRNA抽出、並びにRNA取扱いについての概説については、Ruuska et al. 2000、並びにFocks and Benning, 1998、同様にSambrook et al.1989を参照のこと)。RNAは、Spectrum Plant Total RNA-KITパート番号STRN50(SIGMA-ALDRICH GmbH、Munich 、Germany)を用いてプロトコール「SG-MA_0007-2009 RNA単離」によって抽出した。平均して総RNAの濃度は、約450ng/μlであった。260/280の比は、2.2で、260/230の比は、2.3であった。
qPCRについてcDNA合成のために、1μgの総RNAを、供給業者のプロトコールに従ってDNAsel(DEOXYRIBU NUCLEASE I(AMP-D1,Amplification Grade from SIGMA-Aldrich,GmbH)で処理した。DNAsel処理後、逆転写反応を、qRT-PCRについてSuperscript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen、カタログ番号11752-250)を用い、オリゴdT及びランダムヘキサマーの組み合わせを用いて行い、長さにかかわらず、全ての転写物の完全かつ均一な提示を確実にした。
定量的リアルタイムpcrプロトコール
定量的リアルタイムPCRによる転写物測定は、当業者に標準と考えられる手順を用いて行った;Livak and Schmittgen (2001)を参照のこと。qPCR反応は、simplex TaqMan反応として行った。内因性の参照遺伝子は、実験室内で単離して、発達の間にアラビドプシス・タリアナのオルソログに対応する転写物の観察された安定性に基づいた転写物の予想される安定性に起因して用いた。キャノーラオルソログを単離して、遺伝子、配列番号は、グリコシル-ホスファチジルイノシトールアミノトランスフェラーゼ経路(GPI)の一部であった。上記のcDNA反応を、1:4に希釈した。25ngの総RNAに相当した2μlのcDNAを、JumpStart TAQ ReadyMix(P2893-400RXN Sigma-Aldrich,GmbH)との10μlのqPCR反応について用いた。プライマー/プローブ濃度は、フォワードプライマー及びリバースプライマーについて900nmolであり、TaqManプローブは100nmolであった。目的の標的についてのTaqManプローブは、FAM/BHQ1で標識して、参照遺伝子は、Yakima Yellow/BHQ1で標識した。
各々のqPCRアッセイは、プールVC-RTP10690-1qcz_F由来のcDNA、テンプレート対照なし、3つの-RT対照(VC-RTP10690-1qcz_F、VC-LTM593-1qcz rc(約4w)及び同時形質転換VC-LJB2197-1qcz+VC-LLM337-1qcz rc)を用いる1:1希釈曲線(5希釈段階)を含んだ。各々のプールから、cDNAの3つの独立したアリコートを技術的反復として測定した。ABI PRISM(登録商標)7900配列検出システム(Applied Biosystem)は、以下のPCR条件を用いて使用した。
最初の変性 95℃で300秒 1サイクル
増幅 95℃で15秒/60℃で60秒 40サイクル繰り返す
生データは、それぞれ、標的及び内因性の参照遺伝子についてのCt値であった。dCt値は、差引きによって算出した:Ct(GOI)-Ct(Ref)。参照dCt値は、ゼロに等しく設定し、これは、GPIと目的の遺伝子との間に相違がない場合(dCt=0)、発現は=1であったことを意味すると解釈された。倍数の表現は、2-dCtに等しかった(ここでは、dCt=(Ct(GOI)-Ct(Ref)-0))。各々のプール由来の3つの試料を採取して、幾何平均並びに幾何的な陽性及び陰性の偏差を算出した。希釈曲線の勾配を、目的の各々の遺伝子及び内因性の参照遺伝子(GPI)について、増幅効率についての指標として算出した。表173、表174及び表175は、qPCRアッセイについて遺伝子を増幅するために用いたプローブ及びプライマーを示す。
BiBACの遺伝子発現及び同時形質転換の時間経過の転写解析
4つの構築物由来の形質転換体を、上記のとおりアッセイして、単一の標準に対して豊富な転写物を、当業者に公知の標準のプロトコール、及び使用されるキットで提供される指示に従って、記載のとおり測定した。図16、図17、図18、図19、図20及び図21のグラフは、幾何的な陽性及び陰性の偏差によって提示される誤差とともに経時的に列挙した遺伝子の量に相当する。時間は横軸に列挙し、授粉後の日数であって、縦軸は、内部標準に対して目的の遺伝子の発現を含む(キャノーラGPI)。列挙した2つの構築物でのラインは、同時形質転換の事象に相当する。
CaMV35SターミネーターとともにVfUSPプロモーターによって駆動される遺伝子o3Des(Pi_GA2)は、VC-LJB2755-2qcz、VC-LLM337-1qcz rc及びVC-RTP10960-1qcz_F中に存在した。当業者は、図16において、VC-RTP10960-1qcz_Fが、比較的低い転写物蓄積を有するが、VC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qcz rcの同時形質転換組み合わせは、遺伝子o3Des(Pi_GA2)由来の転写物の最高の蓄積を含むことを観察する。プロモーターの前のプロモーター、ターミネーター、イントロン及びスペーサー領域を有するこの転写物に関する全体的な傾向は、種子発達に伴って増大することであった。
AgrOCS 192bp[LED12]ターミネーターを伴うLuCnlプロモーターによって駆動される遺伝子d4Des(PI_GA)2は、VC-LTM217-1qcz rc、及びVC-RTP10960-1qcz_Fの両方に存在した。当業者は、図19において、両方の構築物について、GPI参照に対する蓄積が、種子の発達に伴い徐々に蓄積して4〜12倍の範囲であり、VC-RTP10960-1qcz_F蓄積は、VC-LTM217-1qcz rcよりも少なかったことを観察する。
o3Des(Pir_GA)遺伝子は、AtPXR 400bp[LLL823]ターミネーターを伴うLuCnlプロモーターによって駆動されたVC-LJB2755-2qcz及びVC-RTP10960-1qcz_F中に存在したが、これは、StCATHD-pAターミネーターを伴うVfSBP_perm3プロモーターによって駆動されたVC-LLM337-1qcz rc中に存在した。誤差内で、いずれかの構築物に対するパターンに帰することが困難であったが、図17に示されるとおり、構築物組み合わせVC-LJB2755-2qcz及びVC-LLM391-2qczの単一コピー事象は、いずれの他の構築物でも観察されなかった種子成熟に向かうピークを有した。BnSETLプロモーターによって駆動され、BnSETLターミネーターによって終わる遺伝子の追加のコピーは、RTP10960-1qcz_Fに存在した。しかし、同じセットの制御エレメントで制御されたd5Des(Tc_GA2)遺伝子と同様、p-BnSETLプロモーターの制御下のo3Des(Pir_GA)コピーは、異なる制御エレメントを有する他の遺伝子よりも低レベルで発現された(図18)。
遺伝子 d4Des(Tc_GA)は、VC-LLM337-1qcz rc、RTP10960-1qcz_F及びVC-LTM217-1qcz rcに含まれ、そしてpvarcターミネーターを伴うARC5_perm1プロモーターによって駆動された。この遺伝子の単一ポイント突然変異体;d4Des(Tc_GA)_T564Gは、VC-LLM391-2qcz rcに含まれ、かつpvarcターミネーターを伴うARC5_perm1プロモーターによって調節された。このスペーサー領域、プロモーター及びターミネーター組み合わせによる発現の全体的傾向は、種子発達に伴う増大であって、次いで種子成熟へ向かう低下であった(図20に示す)。興味深いことに、VC-LLM391-2qcz rcとの構築物の対VC-LJB2755-2qczは、この傾向に固まるのではなく、種子発達に伴って増大し続けて、他の構築物及び構築物組み合わせよりも堅調な発現を有した。以前に観察されたとおり、VC-RTP 10960-1qcz_Fは、発現のレベルが最低であった。
VC-LLM337-1qcz rc及びVC-LLM391-2qcz rcは、AgrOCS 192bp[LED12]ターミネーターを伴うLuCnlプロモーターによって駆動されるd4Des(Eg_GA)を含む。図21でわかるとおり、これらの2つの構築物のいずれか1つを含む単一コピー事象で観察された種子発達の間に増大した発現レベルは同様である。
コピー数
PUFA生合成のための全体的な経路が、植物にもたらされたか否か、並びにどの程度の複製及び/又は欠失が選択された事象で生じていたかを評価するためにT-DNAを伴う特定の遺伝子のコピー数解析を行った。
DNA抽出物
3つの事象からの褐色のスポットの未熟な種子を、2つのさらなる事象の出芽する実生の子葉に加えて解析した。gDNAを、Sambrook et al., 1982と一致した標準のプロトコールに従って単離した。植物組織DNAを単離するために、Wizard Magnetic 96 DNA Plant Systemを用いた(Promega,Madison,WI USAパートナンバーFF3760)。供給されたプロトコールは、実行されている列挙した変化に従い、抽出されたDNAの量を増大した:抽出緩衝液の容積を、200マイクロリットルまで増大し、用いたビーズの容積は、90マイクロリットルまで増大し、溶出緩衝液の容積は、20マイクロリットルまで低下させた。
二重qPCR反応は、定量的PCR用のJumpStart TaqReadyMix for Quantitative PCR(Sigma,D7440)を用いて行った。qPCRアッセイは、qPCRについての標準プロトコールに従って確証した。Demeke and Jenkins (2010)、並びにLivak and Schmittgen (2001)を参照のこと。ゲノムのコピー数は、公知の単一コピー事象のプールの参照dCt値の平均に基づいてddCt法で算出した。Excelの関数「頻度(frequency)」を用いて、0、1、2、3、>4の群を両方の標的及び事象関連でカウントした。カイ二乗検定を、仮説を試験するために行い、ファミリーは、単一のT-DNAについて分離した。P値のカットオフは、単一のT-DNA分離について>0.0499で設定した。
コピー数解析のPCRは、プライマーを用いて行い、プローブは、当業者に用いられる標準的なプロトコールに従って列挙した。Livak and Schmittgen (2001)並びにDemekes T.及びJenkins RG (2010)を参照のこと。
プライマー対及びプローブは下の名称で列挙し、配列は、配列表で見出すことができる:
(トランスジェニック事象由来のゲノム隣接配列の単離)
事象LANBCH、LBFDGG、LBFDHG、LBFGKN、LBFIHE、LBFLFK、LBFPRA、及びLBFDAUにおける各々の挿入T-DNAに隣接するゲノムDNA配列を決定した。温室成長植物由来の葉の試料を収集して凍結した。葉の組織を粉砕して、ゲノムDNAを、植物のゲノムDNA抽出のための標準的なプロトコールを用いて抽出した。次いで、各々の事象由来のゲノムDNAのアリコートの量を用いて、O'Malley et al. 2007 Nature Protocols 2(11):2910-2917に記載のようなアダプター連結媒介性PCRによって隣接する配列を単離した。この技術を用いて、T-DNAの境界及び隣接するゲノムDNAの配列を含んだPCR生成物を生成した。各々の事象について、各々のT-DNA遺伝子座の左境界及び右境界に相当する、別個のPCR生成物を得た。個々のPCR生成物を単離して、標準的なDNA配列決定プロトコールを用いて配列決定して、隣接する領域の配列を決定した。事象LANBCHの隣接配列は、配列番号212、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号216、及び配列番号217である。事象LBFDGGの隣接する配列は、配列番号218及び配列番号219である。事象LBFDHGの隣接配列は、配列番号220、配列番号221、配列番号222、及び配列番号223である。事象LBFGKNの隣接する配列は、配列番号224及び配列番号225である。事象LBFIHEの隣接する配列は、配列番号226及び配列番号227である。事象LBFLFKの隣接する配列は、配列番号228、配列番号229、配列番号230、及び配列番号231である。事象LBFPRAの隣接する配列は、配列番号232、配列番号233、配列番号234、配列番号235、及び配列番号236である。事象LBFDAUの隣接する配列は、配列番号237、配列番号238、配列番号239、及び配列番号240である。この隣接する配列は、T-DNA挿入のゲノム位置を決定し、挿入の周りのゲノムDNAの組み込みのために有用である。例えば、事象LBFGKNは、プラスミドVC-LTM593-1qcz rcの単一T-DNA挿入を含む。配列番号224及び配列番号3のDNA配列アラインメントを用いて、T-DNAの右境界に相当する隣接配列の一部を明らかにしてもよい。従って、T-DNAに同一でない隣接する配列の一部は、T-DNAの右境界に隣接するゲノムDNAに相当する。同様に、配列番号225及び配列番号3は、T-DNA左境界に隣接するゲノムDNA配列を特定するために整列されてもよい。事象LBFGKNに関して、T-DNAの右及び左境界に隣接するゲノムDNAの断片を、B.ナプスDarmor参照ゲノムの染色体C04にマッピングしてもよい。B.ナプス参照ゲノムのアノテーションに基づいて、事象LBFGKNのT-DNAは、任意の予想の遺伝子又はコード領域とは5000bp超離れて挿入される。さらに、ゲノムDNAに相当する隣接配列の一部は、T-DNA挿入の周囲のゲノムDNAの再配列がないことを示す。
従って、一実施形態では、本発明の植物は、EPA及び/又はDHAの生成のための1つ以上の遺伝子の発現のための1つ以上のT-DNAを含み、それによって挿入された各々のT-DNAコピーが遺伝子をまったく破壊しない、例えば、内因性遺伝子もトランスジェニック遺伝子も破壊されない、トランスジェニック植物、好ましくは、EPA及び/又はDHA、好ましくはEPA及びDHAを生成する本発明のトランスジェニックB.ナプス植物である。好ましくは、バルクの種子中のEPA及びDHA含量は、種子1gあたりに10mg、15mg、20mg、24mg、30mg、31mg、35mg、38mg、又はそれ以上のEPA及びDHAである。一実施形態では、バルクの種子中のEPA及びDHAの含量は、10mg〜70mg、15mg〜60mg、20mg〜50mg、又は24mg〜38mgである。
一実施形態では、T-DNAの遺伝子挿入は、任意の内因性遺伝子とは>5000塩基対よりも離れて位置する。
本発明の植物は、1つ以上のコピーの1つのT-DNAを含んでもよい。一実施形態では、この植物は、互いのホモ接合性遺伝子座に組み込まれた1つのコピーのT-DNAとホモ接合性であり、別の実施形態では、互いのホモ接合性遺伝子座に組み込まれた2つのコピーのT-DNAとホモ接合性である。さらに、本発明の植物は、1つのヘテロ接合性遺伝子座に組み込まれる例えば、1つ又は2つのコピーのT-DNAによってヘテロ接合性であり得る。
事象特異的検出
事象LANBCH、LBFDGG、LBFDHG、LBFGKN、LBFIHE、LBFLFK、LBFPRA、及びLBFDAUから単離された隣接する配列を、優先のT-DNA挿入について試験するための事象特異的検出アッセイの設計に用いた。特異的プライマー対をこの実施例で提供するが、開示された隣接配列を用いて、各々の事象の各々の遺伝子座について診断アンプリコンを生成するための異なるプライマー対を設計してもよい。遺伝子座検出のためのエンドポイントTaqman qPCRアッセイを開発して、この実施例に記載する。他の方法も公知である場合があり、事象LANBCH、LBFDGG、LBFDHG、LBFGKN、LBFIHE、LBFLFK、LBFPRA、及びLBFDAUの検出のために当業者によって用いてもよい。アッセイに用いるオリゴヌクレオチドプライマーを表176に列挙する。LBFDAU及びLBFLFK由来の各々の遺伝子座の検出は、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブの特定の組み合わせの使用を必要とする。目的の標的用のTaqManプローブは、FAM/BHQ1で標識した。本明細書に記載の方法は、Life TechnologiesのQuantstudio(商標)12K Flex Real-Time PCRシステムについて最適化しているが、方法は、当業者に公知のわずかな修飾によって他のシステムに適合され得る。エンドポイントTaqman qPCRアッセイは、1ウェルあたりに10マイクロリットルの総容積中で384ウェルのプレート(Life technologies、カタログ番号4309849)において、JumpStart TaqReadyMix(Sigma,P2893)を用いて行った。1反応あたり、2μlのテンプレートDNAを、8マイクロリットルのqPCR反応混合物と混合する。そのプレートをMicroAmp(登録商標)Optical Adhesive Film(Life Technologies、カタログ番号4311971)でシールした。
事象特異的な検出のために、qPCR反応混合物を以下のとおり調製した。
期待されるアンプリコンサイズは、下に塩基対で示す(±10bp)
[実施例25]
タンパク質レベル
4週齢の長角果由来のプールした種子材料をタンパク質抽出に用いた。膜タンパク質を富化し、バックグラウンドシグナルを減少するために、挽いた種子組織から単離したミクロソームを用いて、以下の酵素:c-o3Des(Pi_GA2)、c-o3Des(Pir_GA)、d4Des(Eg)、c-d4Des(PI_GA)2、及びc-d6Elo(Tp_GA2)のタンパク質レベルを分析した。c-o3Des(Pir_GA)及びc-d6Elo(Tp_GA2)に関して、そのミクロソームをさらに、界面活性剤で抽出して、ELISAに用いた。種々のバージョンの所定の遺伝子(GA、GA2などと呼ぶ)は全てが、列挙された遺伝子に相当する同一のタンパク質をコードした。
最初に、液体窒素で冷却した乳鉢中で、種子を抽出緩衝液(25mm Tris、pH7.4;140mMのNaCl;3mMのKCl;3mMのDTT;200mMのソルビト-ル;及びEDTAなしのプロテアーゼインヒビター(Roche))中で、1g種子/4ml緩衝液の比で、微細な粉末まで挽いた。植物細胞破片を、遠心分離(5000×g、10分、4℃)によって取り除き、1.5mlの抽出緩衝液を用いて上記のように2回目の粉砕によって再抽出し、次いで、遠心分離によって再度分離した(5000×g、10分、4℃)。これらの2つの抽出物からの上清を組み合わせて、無細胞抽出物とする(通常は、1gの種子あたり3.5ml)。この無細胞抽出物から、超遠心分離(100,000×g、60分、4℃)によって、ミクロソームのペレットを得た。c-o3Des(Pi_GA2)、d4Des(Eg)、c-d4Des(PI_GA)2の酵素について、ミクロソームのペレットを、Suspension緩衝液(1xTBST+1%TritonX-100)中に懸濁した。1×TBSTは、50mMのTris、150mMのNaCl、0.05%のツイーン20界面活性剤から構成され、4℃で7.6の最終pHである。
c-o3Des(Pir_GA)及びc-d6Elo(Tp_GA2)に関して、ミクロソーム画分は、上記のとおり単離して、タンパク質は、1×TBST緩衝液及び選り抜きの界面活性剤で可溶化した(詳細に関しては、下の表を参照のこと)。c-d4Des(Tc_GA)、c-d5Elo(Ot_GA3)、c-d5Des(Tc_GA2)、c-d6Des(Ot_febit)、c-d6Elo(Pp_GA2)、c-d12Des(Ps_GA)に関して、種子粉末をさらに、液体窒素中で挽いて、1×TBST+1%Triton X100+プロテアーゼインヒビター(1:3のW/V比で)を用いて抽出した。その上清を、微量遠心分離を用いて4℃で、13,000gで20分間清澄化して、続いて13,000gで10分スピンした。この清澄化した上清をELISA及び総タンパク質アッセイに用いた。
抗体/抗原ハイブリダイゼーション条件:プレートを、300μl/ウェルの新鮮に作製したブロッキング溶液でブロックした。そのプレートをシールして、連続振盪しながら1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、そのプレートを1×TBSTを用いて2回洗浄した。
上記由来の抽出物をELISAアッセイで用いた。プレートを、振盪せずに、100μlの標準又は試料抽出物とともに4℃で一晩インキュベートした。標準は、1:3に連続希釈した。そのプレートをシールして、4℃で一晩インキュベートした。プレートを一晩インキュベートした後、そのプレートを、1×TBSTを用いて5回洗浄した。洗浄後、そのプレートを100μlの検出抗体とともにブロッキング溶液中で1時間インキュベートし、連続振盪しながらシールした。そのプレートを、1時間のインキュベーションステップの終わりに1×TBSTを用いて5回洗浄した。次いで、そのプレートを、連続振盪しながら、シールしたプレート中で、1時間ブロッキング溶液中で、100mlのHRPコンジュゲートしたロバ抗動物の検出抗体の二次抗体(1:10,000)とともにインキュベートした。次いでそのプレートを、ブロッキングステップの終わりに1×TBSTを用いて5回洗浄した。次いで、100μlの1ステップでTMBを添加し、そのプレートを、室温で20分間インキュベートし、連続振盪しながらシールした。20分後、100μlの1MのHCl溶液を添加して、プレートを450nmで読み取った。
c-d6Elo(Tp_GA2)のみに関しては:全てのステップは、他のタンパク質に関してと同じであったが、他について用いたHRPコンジュゲートロバ抗体系の代わりに、100μlのビオチンコンジュゲートしたロバ抗ウサギIgG(2%のBSA/1×TBST中で1:40,000希釈)を用いた。そのプレートをシールして、このインキュベーションステップ(これは1時間行った)の間に連続して振盪した。そのプレートを、このステップの終わりに1×TBSTを用いて5回洗浄した。このプレートを読み取るために、このプレートを、100μlのエキストラビジン-ペルオキシダーゼ(2%のBSA/1×TBST中で1:40,000希釈)とともにインキュベートし、シールして、連続振盪しながら1時間インキュベートした。次いで、そのプレートを1×TBSTを用いて5回洗浄した。そのプレートを450nmで読み取った。
[実施例26]
これらの酵素を発現するキャノーラの事象で観察された脂肪酸プロファイルと比較して酵母で観察された、デサチュラーゼ及びエロンガーゼ基質の特異性及び選択性
実施例10〜18に示されるとおり、オレイン酸(18:1n-9)及びLA(18:2n-6)などの内因性の脂肪酸を20:5n-3及び22:6n-3に変換するキャノーラの遺伝子操作は、いくつかのデサチュラーゼ及びエロンガーゼの誘導を必要とする。バイオインフォマティクスは、大型の十分研究されたクラスの酵素、例えば、デルタ-12デサチュラーゼの機能を予測するために有用であるが、酵素の正確な基質耐性は、経験的に決定しなければならない。従って、本発明者らは、実施例21及び22に示すとおり、キャノーラに導入された各々のデサチュラーゼ及びエロンガーゼについて基質耐性を決定した(実施例10〜18)。導入された酵素の各々についての基質プロファイルを理解することで、キャノーラの最適な遺伝子操作を行い、以下:
(1)3つの最も優勢なキャノーラの内因性の脂肪酸(OA、LA、及びALA、実施例10〜18のKumilyのプロファイルを参照のこと)からEPA及びDHAへの変換、
(2)副反応の生成を最小限にすること、及び
(3)EPA及びDHAの生合成へ副生成物を別ルートで戻すプルーフリーディング機構を提供すること、
によってEPA及びDHAを生成することが可能になった。
本明細書に提供される実施例は、導入されたデサチュラーゼ及びエロンガーゼの推定の特異性がどのようにキャノーラの最適の遺伝子操作を行い、EPA及びDHAの富化された油を生成することを可能にしたかをさらに詳細に示す。
デルタ-6-デサチュラーゼ:
酵母の供給研究(表159及び表163)によって、デルタ-6-デサチュラーゼ(オストレオコッカス・タウリ)が、LA(18:2n-6)及びALA(18:3n-3)を含む基質を容易に許容できることが示される。表148〜152に示すとおり、得られたGLA(18:3n-6)デルタ-6-デサチュラーゼ(オストレオコッカス・タウリ)生成物は、デルタ-6-エロンガーゼ(ヒメツリガネゴケ又はタラシオシラ・シュードナナ)のいずれか、続いてデルタ-5-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種ATCC21685)によって、オメガ-3-デサチュラーゼ(フィトフトラ・インフェスタンス又はピシウム・イレグラレ)、デルタ-5-エロンガーゼ(オストレオコッカス・タウリ)のいずれか、及び最終的には、デルタ-4-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種及びパブロバ・ルセリ)のいずれかによって処理して、DHA(22:6n-3)を生成してもよい。得られたALA不飽和化生成物、SDA(18:4n-3)は、デルタ-6-エロンガーゼ(ヒメツリガネゴケ又はタラシオシラ・シュードナナ)のいずれかによって、脂肪酸含有20:4n-3(表160参照のこと)に変換してもよく、これは、デルタ-5-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種ATCC21685)によって受容されて、表162に示すような脂肪酸に連結されたEPA(20:5n-3)を生成し得る。実施例(10〜18)の遺伝子操作されたキャノーラ株について示される脂肪酸解析データによって、ALAの20:5n-3及び22:6n-3への遺伝子操作された変換と一致して非トランスジェニックのKumily対照に対して有意に低いレベルのALAが示される。
デルタ-6-エロンガーゼ:
酵母供給研究(表160及び表163)によって、デルタ-6-エロンガーゼ、ヒメツリガネゴケ及びタラシオシラ・シュードナナの両方とも18-炭素鎖の基質を許容するが、好ましい分子は、炭素-6で不飽和化された分子であることが示される(GLA(18:3n-6)及びSDA(18:4n-3)対LA(18:2n-6)及びALA(18:3n-3)を参照のこと)。タラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6-エロンガーゼは、デルタ-6-不飽和化脂肪酸を認識するのにヒメツリガネゴケ由来のものよりもかなりストリンジェントである。実施例(10〜18)に示される遺伝子操作されたキャノーラ株の脂肪酸解析では、それぞれLA及びALAの不飽和から生じた20:2n-6及び20:3n-3が検出される。ヒメツリガネゴケ及びタラシオシラ・シュードナナ由来のこれらの特異的なエロンガーゼの包含によって、炭素-6で不飽和化された脂肪酸の好ましい変換が可能になり、これによって、GLA及びSDAからのEPA及びDHAの最大変換が提供される。LTM593(実施例18)株の脂肪酸プロファイルによって、キャノーラへの導入の際、ヒメツリガネゴケ及びタラシオシラ・シュードナナ由来のデルタ-6エロンガーゼの特異性を確認する、野性型Kumilyで見出されたものとほぼ同じレベルの20:2n-6及び20:3n-3が示される。
デルタ-5-デサチュラーゼ:
酵母供給研究(表159及び表162及び表163)によって、デルタ-5-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種ATCC21685)がDHGLA(20:3n-6)及び20:4n-3を許容することが示される。上記のとおり(実施例26(このセクション)、デルタ-6-デサチュラーゼ)、デルタ-5-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種ATCC21685)が20:4n-3を不飽和化する能力は、ALA及びSDAの20:5n-3及び22:6n-3への変換に重要である。
オメガ-3-デサチュラーゼ:
酵母供給研究によって、両方のオメガ-3-デサチュラーゼ、(フィトフトラ・インフェスタンス及びピシウム・イレグラレ)が、ARA(20:4n-6)、DTA(22:4n-6)、及びDHGLA(20:3n-6)を許容し得ることが示される。これらのオメガ-3-デサチュラーゼは4つの二重結合を有する分子を好む。実施例(10-18)に記載のトランスジェニックのキャノーラ株では、これらのオメガ-3-デサチュラーゼが、表163に示されるように22:4n-6を基質として利用する能力によって、デルタ-5-エロンガーゼ(オストレオコッカス・タウリ)によって伸長されたARA(20:4n-6)の再方向付けは、DHA(22:6n-3)の合成のために22:5n-3(遺伝子操作されたデルタ-4デサチュラーゼの基質)として経路に戻すことが可能になる。LTM593(実施例18)株の脂肪酸プロファイルによって、DHAを合成するために遺伝子操作された記載されたキャノーラをin vivoで22:5n-3に変換するこの脂肪酸と一致して、検出可能だが低いレベルの22:4n-6が示される。
デルタ-5-エロンガーゼ:
酵母供給研究によって(表161及び表163)、デルタ-5-エロンガーゼ(オストレオコッカス・タウリ)は、20-炭素鎖の基質、EPA(20:5n-3)及びARA(20:4n-6)を優先するが、またSDA(18:4n-3)及びALA(18:3n-3)のような18炭素鎖を含む脂質も延長し得ることが示される。遺伝子操作されたキャノーラ(実施例10〜18)では、オメガ-3-デサチュラーゼ(フィトフトラ・インフェスタンス及びピシウム・イレグラレ)の存在によって、ARAの伸長から得られた22:4n-6生成物が、22:5n-3に変換されることが可能になり、次いでこれはデルタ-4-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種及びパブロバ・ルセリ)によって不飽和化されて、最終生成物22:6n-3が生成される。実施例10〜18に記載のトランスジェニックのキャノーラ株の脂肪酸解析によって、おそらく、オメガ-3デサチュラーゼがこの脂質を22:6n-6の生合成に戻すことを再指向する能力に起因して、わずかなレベルの22:4n-6が示される。SDAの伸長から生成された20:4n-3は、デルタ-5-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種ATCC21685)によって認識される基質であり、デルタ-5-エロンガーゼの好ましい基質である20:5n-3に変換され得る(オストレオコッカス・タウリ)。
デルタ-4-デサチュラーゼ:
酵母供給研究(表159及び表163)によって、両方のデルタ-4-デサチュラーゼ(スラウストキトリウム属の種及びパブロバ・ルセリ)とも、22:5n-3及びDTA(22:4n-6)を許容し得、22:5n-3がわずかに好ましいことが示される。
[実施例27]
示差的に標識された重いペプチドを用いて定量的LC-MSにおける消化効率をモニターする 記載した方法は、標的されたプロテオミクス実験で消化有効性を定量するための手段を提供する。ほとんどのMRM LC-MS適用では、消化有効性を測定することは、別のLC-MS実験で検出された完全に消化されたペプチドの数に対して、検出された失われた切断ペプチドの数を比較することによって、試料のペプチドプロファイルを検査する、間接的な測定に依拠する。このデータは、実験内のトリプシン有効性の全体的な展望を提供するが、MRM実験でモニターされる標的配列の特異的な消化にはほとんど取り組まない。全体的な消化有効性を測定することは、トリプシン活性中の潜在的な配列特異的バイアスに取り組まず、標的量の誤った提示を生じる場合がある。実際には、トリプシン消化の反応速度論が、配列状況によって強力に影響されたという見解が増していた(Proc J. et al. 2010. Journal of Proteome Res. 9:5422-5437及びLowenthal M. et al. 2014. Anal Chem. 86:551-558)。配列特異的な消化有効性を測定するために、本発明者らは、2つの示差的に標識された重いペプチドを用いて、消化有効性についての比を得る(スキーム1)。ペプチド3は、天然のペプチドを生成する2つのトリプシン切断部位に対してアミノ及びカルボキシルの両方の4つのアミノ酸を含むことによって、標的について正確な配列状況を含む。一般には3つのアミノ酸が、その切断部位を特定するためにトリプシンについて十分とみなされ(Makriyannis T. and Y. Clonis. 1997. Biotech Bioeng. 53:49-57)、加水分解速度は、最も近い2つのアミノ酸によってのみ影響された(Lowenthal M. et al. 2014. Anal Chem. 86:551-558)。このスキームによって、本発明者らは、同時に特定の消化有効性を評価し、また標的分子の定量データを得ることも可能になる。このデザインでは、2つのペプチドを、消化前に試験試料中に等モル濃度でスパイクした。試料分析の間、移行を、標的ペプチド及び2つの重いペプチド生成物についてモニターした。2つの重いペプチドから得たピーク強度を比較して、消化効率についての比を得て、標的ペプチド強度を定量のために用いた。
スキーム1
実施例のタンパク質:03D(Pir)
配列:
MASTSAAQDAAPYEFPSLTEIKRALPSECFEASVPLSLYYTARSLALAGSLAVALSYARALPLVQANALLDATLCTGYVLLQGIVFWGFFTVGHDCGHGAFSRSHVLNFSVGTLMHSIILTPFESWKLSHRHHHKNTGNIDKDEIFYPQREADSHPVSRHLVMSLGSAWFAYLFAGFPPRTMNHFNPWEAMYVRRVAAVIISLGVLFAFAGLYSYLTFVLGFTTMAIYYFGPLFIFATMLVVTTFLHHNDEETPWYADSEWTYVKGNLSSVDRSYGALIDNLSHNIGTHQIHHLFPIIPHYKLNDATAAFAKAFPELVRKNAAPIIPTFFRMAAMYAKYGVVDTDAKTFTLKEAKAAAKTKSS
標的ペプチド(下線)、消化効率のために合成ペプチドに含まれる天然の配列(二重下線)。
ペプチド
DEIFYPQR(試料から測定した天然のペプチド)
DEIFYPQ(15N13CR)(標準曲線、及び正規化のため)
NIDKDEIFY(15N13CP)Q(15N13CR)EADS(消化効率のため)
標準ペプチド(2)(3)は、タンパク質分解の前に同じ濃度で試験試料中にスパイクした。タンパク質分解後、生成物ペプチドの移行、(2)及びDEIFY(15N13CP)Q(15N13CR)を、生成物のイオン強度で比較して、以下の式に従って、天然の配列の状況内で標的配列の消化有効性を決定した:
従って、消化効率%を試験試料中で直接測定し、これを用いて検出された標的濃度に対する影響を評価してもよい。
[実施例28]
VLC-PUFAの生成物を最適化するための異なる生殖質の使用
カメリナ・サチバ(Ruiz-Lopez et al., 2014)のような異なる宿主植物中の同じ又は極めて類似の遺伝子セットの発現は、ブラシカ・ナプスにおいて、達成可能なより大きい収率のVLC-PUFAが生じると思われる。この概念は、表179のデータによって例示される。表179は、ほぼ同一のT-DNA及びそれぞれの野性型の対照で形質転換されたトランスジェニックB.ナプス(LBJ1671)及びトランスジェニックC.サチバ(RRes_EPA_株)の種子由来の脂肪酸データを含む。2つのトランスジェニック株を作製するために用いられる構築物の間の唯一の相違は、トランスジェニックB.ナプス(LBJ1671)を作製するために用いたTDNAが、右境界に隣接した余分なGFP発現カセットを有するということである。WTのKumily対照に対してトランスジェニックのB.ナプス(LJB1671)を比較した場合、18:1の量の低下、並びに18:2及び18:3の脂肪酸の量の増大がある。18:2及び18:3の脂肪酸は、LJB1671によって誘導される経路の中間体であり、従って、20Cの脂肪酸への18:2及び18:3の脂肪酸の伸長は、B.ナプスにおけるボトルネック反応とみなされ得る。他方では、WT対照に対してトランスジェニックC.サチバ(RRes_EPA_株)を比較するとき、18:1において、並びに18:2及び18:3においても脂肪酸の低下がある。従って、18:2及び18:3の脂肪酸の伸長は、C.サチバにおいてボトルネックではない。C.サチバ中のこのボトルネックがないことで、トランスジェニックB.ナプスと比較して10倍高い20:5n-3(EPA)含量が生じる。
18:1から18:2の変換、及び18:2から18:3への変換は、リン脂質膜で大きく生じるが、18C脂肪酸の20C脂肪酸への伸長は、アシル-CoAプール中で厳密に生じる。基質特異性におけるこの相違は、18C脂肪酸が、膜リン脂質から放出されて、伸長されなければならないことを意味する。この放出は、みたところ、B.ナプスにおけるボトルネックであるが、C.サチバのボトルネックではない。これらの2つの種の間のPCからCoAプールへの18:2のフラックスの相違は、:1)ホスホリパーゼ、2)アシル-CoAシンテターゼ、3)リゾ-PCアシルトランスフェラーゼ、4)リン脂質-ジアシルグリセロールコリントランスフェラーゼ、5)リン脂質-ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ、などを含む、多数の酵素の活性における相違に起因し得る。これらの観察の結論として、種々の種及び生殖質への実施例11〜実施例18の任意の構築物の形質転換(いわゆるUの三角における他のアブラナ属の生殖質など)は、本発明の好ましい実施形態を生じ得る(例えば、より多量のEPA及びDHA、並びに/又はより低い量の18:2n-6)。
[実施例29]
キャノーラ油及び市販の油及び固体試料の脂肪酸解析(総FAME解析)
キャノーラ種子:
10〜15個のキャノーラ種子を、96フォーマットのラック上のチューブに移し、キャップストリップで閉じた。種子を、30Hzで2×2分間、3mmビーズを用いてスイングミル中で挽いた。次いでラックを4000rpmで5分間遠心分離して、蓋から粉末を除去した。油の抽出は、この試料に800μLのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を添加し、続いてスイングミル中で2×30秒の30Hzでの抽出を続けることによって行った。4000rpmで10分の遠心分離後、40μLの透明な上清を96ウェルのマイクロラックに移し、260μLのMTBEを用いて希釈した。脂質を、各々の試料中に20μLのトリメチルスルホニウムヒドロキシド溶液(TMSH、メタノール中で0.2M)を添加することによって、脂肪酸メチルエステル(FAME)中で誘導体化した。そのラックを、シリコン/PTFEキャップマットを用いて閉じて、室温で20分間インキュベートした。
シロイヌナズナの種子:
20mgの種子を、96フォーマットのラック上のチューブに移した。キャノーラ種子プロトコールは、全てのさらなるステップに従った。
キャノーラ油及び市販の油試料:
20μLの油を、ガラスバイアルに移し、1mLのMTBEを用いて希釈した。20〜80μLの試料溶液を96ウェルのマイクロラックに移して、260μLのMTBEを用いて希釈した。脂質を、20μLのトリメチルスルホニウムヒドロキシド溶液(TMSH、0.2Mをメタノール中に含有)を、各々の試料に添加することによってFAME中で誘導体化した。ラックをシリコーン/PTFEキャップマットを用いて閉じて、室温で20分間インキュベートした。
市販の固体試料:
固体試料を、解析前に凍結乾燥した。20mgの固体試料を、96フォーマットのラック上のチューブ中に移した。全てのさらなるステップにおいてキャノーラ種子プロトコールに従った。
以下の表に試料の概要を示す。
(GC解析:)
Agilentフレームイオン化検出器にカップリングされたAgilent 7890Aガスクロマトグラフを、FAME解析に用いた。FAMEの分離は、0.8mL/分の流速で担体ガスとしてH2を用いてDB-225キャピラリーカラム(20m×180μm×0.2μm、Agilent)で行った。GCは、250℃の注入温度で1:50のスプリット比を用いてスプリット方式で操作し、注入容積は1μLであった。オーブン温度は、190℃で3分保持し、15℃/分で220℃まで上昇させた。温度をさらに6分間220℃で保持した。ピークの検出及び組み込みは、Agilent GC ChemStationソフトウェア(Rev.B.04.02 SP1)を用いて行った。
市販のSupelco(登録商標)37 Component FAME Mixを用いて、34の標的脂肪酸から22個の保持時間を特定し、10個のさらなる脂肪酸をmix中にスパイクするか、又は別々に分析して、保持時間を得た。標的FAのうちの2つについて、市販の標準は利用できなかった。
検出された標的脂肪酸のピーク面積を、総ピーク面積を得るまで加えた。次いで、個々の脂肪酸の脂肪酸プロファイル及びパーセンテージを総ピーク面積のピーク面積パーセントとして算出した。
結果を表182に示す。全ての場合に、油のデータは、温室環境由来の単一種子由来ではなく、圃場成長植物から収集したバルク種子由来のデータである。
20:3n-6(DHGLA)は、本発明者らのトランスジェニックのキャノーラ試料において1.6〜3.1%におよぶ。しかし、他のEPA DHA含有試料、例えば、トランスジェニックシロイヌナズナ種子、魚油、及び藻類油(EPA及びDHAを合わせて1%超)は、1.1%を超えるDHGLAを含まない。DHGLAは、GLAに作用するデルタ-6-エロンガーゼの生成物である。
20:3n-9(ミード酸)は、本発明者らのトランスジェニックのキャノーラでは、0.05〜0.23%に及んだ。本発明者らはまた、20:3n-9をトランスジェニックキャノーラ及び卵黄中でも観察する。しかし、他のEPA DHA含有試料、例えば、魚油及び藻類油(合わせたEPA及びDHAが1%超)は、ミード酸を含まない。従って、ミード酸の蓄積は、常にEPA DHA生成を伴うとは限らない。ミード酸の生成は、18:1n-9に対するデルタ-6-デサチュラーゼ活性の結果であり、それにデルタ-6-エロンガーゼ及びデルタ-5-デサチュラーゼの活性が続き、これは、ミード酸の生成を生じる本発明者らの酵素の合わせた特性である。
22:5n-3(DPA)は、トランスジェニックのキャノーラ試料中で1.9〜4.1%におよぶ。DPAの量は、藻類油試料の1つでは3.3%に達するが、トランスジェニックシロイヌナズナのみが、0.1%のDPAを蓄積する。DPA蓄積は通常は、トランスジェニックカメリナ中で、及び遺伝子操作されたキャノーラ中で2%未満であり、EPA及びDHAを生成する(Petrie et al.2014 PLoS One 9(1)e85061、及びWO2015/089587)。2%を超えるDPA蓄積が、デルタ-4-デサチュラーゼがトランスジェニックブラシカ・ナプスで不活性化され(かつDHAが生成されない)場合のみ達成される。この実施例で試験した事象では、2つのコピーのデルタ-4-デサチュラーゼがあり、本発明者らは、DHAを生成し、従って、DPAが蓄積することは驚くべきである。
本発明者らのトランスジェニックのキャノーラ中の飽和された脂肪酸の総量は、低い。16:0は、4.4〜5.2%に及び、18:0は、2.5〜2.7%におよぶ。
18:4n-3(SDA)は、トランスジェニックのキャノーラ試料中で0.1〜0.4%におよぶ。このレベルのSDAは、驚くほど低い。なぜなら本発明者らのデルタ-6-デサチュラーゼは、LAよりもALAでわずかに高い活性を有するからである(表163)。
WT Kumily植物中で生じないトランスジェニック事象で生じる種々のVLC-PUFAがある。これらの脂肪酸としては、18:2n-9、GLA、SDA、20:2n-9、20:3n-9、20:3n-6、20:4n-6、22:2n-6、22:5n-6、22:4n-3、22:5n-3、及び22:6n-3が挙げられる。これらの脂肪酸の合わせた量は、トランスジェニックのキャノーラ試料中で15.1%〜24.8%におよんだ。
[実施例30]
キャノーラ油及び市販の油試料の脂質プロファイリング:
キャノーラ種子:
12〜15キャノーラ種子を、96フォーマットのラックでマイクロチューブに移して、キャップストリップで閉じた。種子をスイングミル中で、3mmのビーズを用いて2×2分間30Hzで挽いた。次いで、ラックを4000rpmで5分間遠心分離して、蓋から粉末を除去した。油の抽出は、この試料に800μLのジクロロメタン/メタノール(DCM/MeOH、2:1v/v)を添加し、続いてスイングミル中で2×30秒の30Hzでの抽出を続けることによって行った。4000rpmで10分の遠心分離後、100μLの透明な上清をガラスバイアルに移し、乾燥して溶媒を除去した。
シロイヌナズナの種子:
20mgの種子を、96フォーマットのラック上のチューブに移した。キャノーラ種子プロトコールは、全てのさらなるステップに従った。
キャノーラ油及び市販の油試料:
200μLの油を、96フォーマットのラックでマイクロチューブに移して、キャップストリップで閉じた。油の抽出は、この試料に800μLのジクロロメタン/メタノール(DCM/MeOH、2:1v/v)を添加し、続いてスイングミル中で2×30秒の30Hzでの抽出を続けることによって行った。4000rpmで10分の遠心分離後、100μLの透明な上清をガラスバイアルに移し、乾燥して溶媒を除去した。
正常な相の画分:
乾燥残渣を、100μLの2,2,4-トリメチルペンタン及びイソプロピルアルコール(TMP/IPA(9:1,v/v))中に再懸濁して、徹底的にボルテックスした。オキアミ油試料をさらに、TMP/IPAを用いて1:30希釈した。トリアシルグリセロール(TAG)単離のために、油試料を、500μLのTMP/IPA中に再懸濁した後に、脂質のクラスの画分の分離を、脂肪酸鎖の長さではなく、脂質の相互作用、及び脂質種(例えば、リン脂質の場合頭部基)に基づく定常相がもたらされる、正常な相HPLCを用いて行った。G1322A脱気剤、G1311Aクォータナリポンプ、G1310Aアイソクラティックポンプ、G1316Aサーモスタット付きカラムコンパートメント(TCC)、G1367B HiPオートサンプラー、G1330B FC/ALS サーモスタット及びG1364 Fraction Collector(全てAgilent)と連結され、並びにAlltech 3300蒸発光散乱検出器(ELSD、Grace)から構成されたAgilent 1200シリーズのHPLCを用いた。TMP、MTBE、アセトニトリル(MeCN)、DCM、ギ酸(FA)、ギ酸アンモニウム(0.5M)及び水由来の四次勾配を、0.4mL/分の初期流速で、PVA-Silカラム(150mm×3mm×5μm、YMC)上での脂質種の分離のために用いた。注射容積は50μLであった。トリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の画分を、ガラスバイアル中に収集した。溶媒を除去して、その残渣を100μLのトルエン中に再懸濁した。その後の脂肪酸プロファイリングのためのFAMEへの脂質種の誘導体化は、20μLのTMSHを用いて行った。FAME解析は、2μLの注射容積を用いて実施例29について前に記載のとおり行った。
結果を表183〜187に示す。
表183、184、及び185のデータを比較して、トランスジェニックのキャノーラ植物が、TAG又はMAGと比較してDAG中で高いパーセンテージのEPA及びDHAを有することが証明される。LBFLFK油に関して、MAGに対するDAG中のEPAの比は、1.6であり、LBFDAU油では、比は1.5である。DAGは、MAGより多くEPAを有し、TAGは驚くべきであるという事実、特に所定の以前の報告によって、EPA及びDHAは、少なくともカメリナ中では、sn-2位置に存在する可能性は低いことが示されている(Ruiz-Lopez et al 2013 The Plant Journal 77, 198-208及びPetrie et al 2014 PLoS One 9(1) e85061)。MAG又はTAGよりもEPA DHAを有するDAGを考慮すれば、DAGのsn-2位置により多くのEPA DHAがあることが示され得る。
表186及び187のデータによって、PC及びPEはそれぞれ、トランスジェニックのキャノーラ中でTAGが有するよりも高濃度のDHAを有することが示される。事象LANPMZでは、TAG中でのちょうど1%と比較してPC中には8.53%のDHA(及びPE中では8.5%)があるが、事象LBFLFKについては、TAG中の1.2%と比較してPC中に3.3%のDHAがある。LANPMZと比較して事象LBFLFK中のPCに対するTAG中のDHAのより効率的な蓄積は、事象LANPMZにおいて2つのリン脂質依存性酵素ではなく、リン脂質依存性である1つのデルタ-4-デサチュラーゼ(d4Des(Tc))及びCoA依存性であるもの(d4Des(PI))を有する結果であり得る。
表183〜187のデータによって、トランスジェニックのキャノーラ試料についてDPAとDHAとの間の比の相違も示される。全てのトランスジェニックのキャノーラ試料について、中性の脂質中(MAG、DAG、及びTAG)のDHAよりも多くのDPAがあるが、極性の脂質中にDPAよりも多くのDHAがある(PC及びPE)。
表183〜187のデータによって、トランスジェニックのキャノーラ試料について、DHAに対するEPAの比は、極性脂質(PC、PE)中ではDHAに対するEPAの比よりも中性の脂質(MAG、DAG、及びTAG)が高い。天然の脂質中にはDHAよりもEPAが多くあるが、極性脂質中にはEPAよりも多くのDHAがある。
[実施例31]
リン脂質の種のプロファイリング
実施例30からの希釈された抽出物を、リン脂質種の解析に用いた。
PC種プロファイリング
ホスファチジルコリン(PC)種の分離は、API5500トリプル四重極MS(ABSciex)に連結した1290 Agilent HPLCで行った。HPLCは、G4227A Flex Cube、G4226Aオートサンプラー、G1330Bサーモスタット及びG4220Aバイナリーポンプから構成された。PC種の分離は、Phenomenex Kinetex C8カラム(150mm×2.1mm×1.7μm)で行った。移動相は、溶媒AとしてH2O/MeOH/酢酸ナトリウム(50mM)及び溶媒BとしてMeOH/酢酸ナトリウム(50mM)から、0.5ml/分の流速で構成された。初期条件は、7分の総泳動時間で40%のA、続いて、直線の勾配で25%Aまでであった。MSは、スケジューリングされたマルチ反応モニタリング(scheduled multiple reaction monitoring:sMRM)及び1μLの注射容積を用いて、550℃のソース温度によって正のESIモードで操作した。データ獲得は、Analyst 1.5.1を用いて行い、一方でデータ解析は、Multiquant3.0.1(AB Sciex)で行った。C14:0、C16:0、C16:1、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C20:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6の脂肪酸を含むホスファチジルコリン種由来の全ての理論的[M+Na]+を算出して、全部で78のPC種を得た。sMRM-モードでは、脂肪酸のニュートラルな損失をモニターした。種々のキャノーラ油、魚油及び藻類油の供給源由来の試験試料の代表的なセットに存在しないPC種のMRMを、遷移リストから取り出した。
標的PC種の全てのピーク面積を、総ピーク面積に添加した。10.000カウント未満のピーク面積を有する種は、計算に含まなかった。なぜなら、それらは、シグナル対ノイズ比が劣っており定量限界未満とみなされたからである。次いでPC種プロファイルを、総PC種のPC種パーセントとして算出した。
LPC種プロファイリング
リゾホスファチジルコリン(LPC)種の分離は、API5500トリプル四重極MS(ABSciex)と連結した1290 Agilent HPLCで行った。HPLCは、G4227A Flex Cube、G4226Aオートサンプラー、G1330Bサーモスタット及びG4220Aバイナリーポンプから構成された。LPC種の分離は、Phenomenex Kinetex C8カラム(150mm×2.1mm×1.7μm)で行った。移動相は、溶媒AとしてH2O/MeOH/ギ酸及び溶媒BとしてMeOHから、0.5mL/分の流速で、及び4分という総泳動時間にまたがって80%のA〜0%のAの直線勾配から構成された。MSは、マルチ反応モニタリング(MRM)及び1μLの注射容積を用いて、550℃のソース温度によって正のESIモードで操作した。データ獲得は、Analyst 1.5.1を用いて行ったが、データ解析は、Multiquant3.0.1(AB Sciex)で行った。C14:0、C16:0、C16:1、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C20:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6の脂肪酸を含むLPC種由来の全ての理論的[M+H]+を算出した。sMRM-モードでは、脂肪酸のニュートラルな損失をモニターした。
標的LPC種の全てのピーク面積を、総ピーク面積に添加した。12.500カウント未満のピーク面積を有する種は、計算に含まなかった。なぜなら、それらは、シグナル対ノイズ比が劣っている定量限界未満とみなされたからである。次いでLPC種プロファイルを、総LPC種のLPC種パーセントとして算出した。
PE/LPE種プロファイリング
ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びリゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)種の分離は、API5500トリプル四重極MS(ABSciex)と連結した1290 Agilent HPLCで行った。HPLCは、G4227A Flex Cube、G4226Aオートサンプラー、G1330Bサーモスタット及びG4220Aバイナリーポンプから構成された。PE/LPE種の分離は、Phenomenex Kinetex C8カラム(150mm×2.1mm×1.7μm)で行った。移動相は、溶媒AとしてH2O/MeOH/ギ酸アンモニウム及び溶媒BとしてMeOH/ギ酸アンモニウムから、0.5mL/分の流速で構成された。初期条件は、16分の総泳動時間にまたがって100%のA、続いて、直線の勾配で0%Aであった。MSは、スケジューリングされたマルチ反応モニタリング(scheduled multiple reaction monitoring:sMRM)及び1μLの注射容積を用いて、550℃のソース温度によって負のESIモードで操作した。データ獲得は、Analyst 1.5.1を用いて行い、一方でデータ解析は、Multiquant3.0.1(AB Sciex)で行った。C14:0、C16:0、C16:1、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C20:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6の脂肪酸を含むPE及びLPE種由来の全ての理論的[M+H]-を算出して、全部で78のPE種及び12のLPE種を得た。
種々のキャノーラ油、魚油及び藻類油の供給源由来の試験試料の代表的なセットに存在しないPE/LPE種のMRMを、遷移リストから取り出した。
標的PE種及びLPE種の全てのピーク面積を、別々に総ピーク面積に添加した。シグナル対ノイズ比が劣っているせいで計算に含まれなかったLPEについてのピーク面積カットオフは、2000カウントであって、PEに関しては、これは5000カウントであった。次いで、PE及びLPE種のプロファイルを、総PE種のPE種パーセントとして、及び総LPE種のLPE種パーセントとして算出した。
結果は、表188〜191に示す。
より多くのリン脂質種は、油試料中よりも種子試料中で検出可能であった。これはおそらく、リン脂質が、油の精錬の間に除去されるという事実に起因する。表186及び表187によって、トランスジェニックのキャノーラに関して、試料PCがいずれかの脂質画分のほとんどのDHAを含むことが示された。全てのトランスジェニックのキャノーラ試料に関しては、DHAを含む最も豊富なPC種は、PC18:2 22:6であり、かつEPAを含む最も豊富なPC種は、PC 18:2 20:5である(表188)。DHAは、魚油及び藻類油試料のPC中で見出され、ただし、PC 18:3 22:6においてのみであった。1つの例外はオキアミ油であったが、PC 18:2 22:6は総計でPC種のちょうど0.1%になった。DHAを含む最も豊富なPE種は、PE 18:2 22:6である(表190)。トランスジェニックのキャノーラ試料で最も低下したPC種は、PC 18:1 18:1であったが、PC18:2 18:2は、最も増大した種である。従って、LPC18:2は、トランスジェニックのキャノーラ試料で最も豊富なリゾPC種である。
[実施例32]
TAG種解析
実施例29由来の希釈した抽出物を、TAG(トリアシルグリセロール)種解析に用いた。TAG種解析は、API5500トリプル四重極MS(ABSciex)と連結した1290 Agilent HPLCで行った。HPLCは、G4227A Flex Cube、G4226Aオートサンプラー、G1330Bサーモスタット及びG4220Aバイナリーポンプから構成された。TAG種の分離は、Thermo Accucore C30カラム(250mm×2.1mm×2.6μm)で行った。移動相は、溶媒AとしてMeCN/IPA及び溶媒BとしてIPAから、0.4mL/分の流速で構成された。初期条件は、30分の総泳動時間にまたがって100%、続いて、直線の勾配で20%のAであった。注射容積は1μLであった。質量分析計は、スケジューリングされたマルチ反応モニタリング(scheduled multiple reaction monitoring:sMRM)を用いて、300℃のイオンソース温度によって正のAPCIモードで操作した。データ獲得は、Analyst 1.5.1を用いて行い、一方でデータ解析は、Multiquant3.0.1(AB Sciex)で行った。C14:0、C16:0、C16:1、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C20:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6の脂肪酸を含むTAG種由来の全ての理論的[M+H]+を算出して、全部で364のTAG種を得た。MRMモードで、脂肪酸のニュートラルな損失をモニターし、従って、全ての理論的生成物イオンを、同様に算出した。第一四重極は、脂肪酸の損失につながった、第二の四重極で引き続いて断片化された標的TAG種の[M+H]+のみをフィルタリングするように設定した。3つの異なる脂肪酸を含むTAG種について、3つの生成物イオンを第三四重極でモニターしたが、一方、2つの異なる脂肪酸を有するこれらの種は、2つの生成物イオンにつながった。脂肪酸を1つだけ有するTAG種の場合、1つの遷移のみをモニターしてもよい。
TAG(16:0/16:0/16:0)、(16:1/16:1/16:1)、(17:0/17:0/17:0)、(18:0/18:0/18:0)、(18:1/18:1/18:1)、(18:2/18:2/18:2)、(18:3/18:3/18:3)、(20:5/20:5/20:5)、(22:6/22:6/22:6)、(16:0/16:0/18:1)、(16:0/18:0/18:2)、(16:0/18:1/18:1)、(16:0/18:2/18:2)、(18:0/18:0/18:2)、(18:0/18:1/18:1)、(18:0/18:1/18:2)、(18:1/18:1/18:3)及び(18:1/18:2/18:2)の単一及び混合の標準を流して、TAG種の間で保持時間パターンを特定した。種々のキャノーラ油、魚油及び藻類油の供給源由来の試験試料の代表的な設定に存在しないTAG種のMRMを、遷移リストから取り出した。全ての他の種について、保持時間を特定して、所定の時間ウインドウ中のMRMのスケジューリングされたモニタリングによって1遷移あたりより多くのデータポイントを可能にし、それによってデータをより優れた質にした。
全てのTAG種のベースラインの分離は合理的なランタイム内では達成できないので、ピーク高をピーク面積の代わりに用いた。全遷移の合計を用いて、総ピーク高さを算出した。1000カウント未満のピーク高を有する種は、計算には含まなかった。なぜなら、それらは、シグナル対ノイズ比が劣っている定量限界未満とみなされたからである。次いでTAG種プロファイルを、総TAG種のTAG種パーセントとして算出した。
結果を表192に示す。
Kumilyオイル中の5つの最も豊富なTAG種は、TAG 181 181 183、TAG 181 182 183、TAG 181 181 182、TAG 181 181 181、及びTAG181 182 182である。まとめると、これらは、全てのTAG種のうち64.5%を占める。これらの種は、トランスジェニックのキャノーラ試料中で特異的に低下し、ここでそれらの総計は、14.3〜21.2%におよぶ。代わりに、トランスジェニックのキャノーラ株中の最も豊富な単一のTAG種は、TAG181 182 205であり、続いてTAG181 181 205及びTAG182 182 205である。まとめると、これらの3種は、トランスジェニックのキャノーラ試料で観察される総TAG種の20.6〜25.5%を構成する。このトランスジェニックのキャノーラ試料中の2つの最も豊富なDHA含有タグ種は、TAG181 182 226及びTAG182 182 226であり、これらはまとめて、全てのTAG種の1.5〜3.3%に相当する。EPA及びDHAは、18:1及び18:2と一緒にTAGに対して最も頻繁にエステル化されることが見出されることが注目される。この構成は、複数のPUFAを含むそのTAG種を酸化的にさらに安定にする可能性が高い。トランスジェニックのキャノーラ試料では、単一のEPA、DPA、又はDHAを有する全てのTAG種の合計は、42.3〜50.3%であるが、1つ以上のEPA、DPA、及び/又はDHAを有する全てのTAG種の合計は、3.4〜6.6%である。魚油及び藻類油では、1つ以上のEPA、DPA、及び/又はDHA範囲を有する全てのTAG種の合計は、21.1〜60.3%におよぶ。従って、トランスジェニックのキャノーラ試料は、最高の割合の酸化的に安定なTAG種を有する。トランスジェニックのキャノーラ試料はまた、低量のTAG183 183 205及びTAG183 183 226も有し、ここで総TAG種の範囲はちょうど0.2〜0.6%である。
本発明の配列
表193は、本発明の配列をそれらの名称によって、及び付随する配列表の配列番号を示す。本発明のさらなる配列は、配列表に含まれる。
本発明はまた、本発明による植物を作製する方法を最適化する手段を提供する。この点に関して、本発明は、酵素特異性を分析する方法、特にデサチュラーゼ反応特異性を分析する方法及びエロンガーゼ特異性を分析する方法、代謝経路の最適化の方法、並びに標的デサチュラーゼのCoA依存性を決定する方法のシステムを提供する。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
植物において標的遺伝子を発現させるT-DNAであって、該T-DNAは、左右の境界エレメント、並びにプロモーター、それに作動可能に連結された標的遺伝子、及びその下流にあるターミネーターを含む少なくとも1つの発現カセットを含み、該T-DNAの長さは、左の境界エレメントから右の境界エレメントまでを測定すると、標的遺伝子を含めて、少なくとも30000bpの長さを有する、前記T-DNA。
[項目2]
実施例に示される表の任意の単一遺伝子のコード配列を含み、好ましくは実施例に示される表の任意の単一のコード配列及びプロモーターを含み、より好ましくは実施例に示される表の任意の単一のコード配列及びプロモーター及びターミネーターを含み、最も好ましくは実施例の表の任意の単一の発現カセットを含むT-DNAであって、特に実施例に示される表11のデサチュラーゼ及びエロンガーゼのコード配列を含む、前記T-DNA。
[項目3]
ゲノムに組み込まれた、本発明の異種T-DNAを含む植物又はその種子若しくは部分。
[項目4]
1つ以上のd5Des、1つ以上のd6Elo、1つ以上のd6Des、1つ以上のo3Des、1つ以上のd5Elo及び1つ以上のD4Desをコードする1つ以上の発現カセットを含む1つ以上のT-DNAを含む植物。
[項目5]
少なくとも2つのd6Des、少なくとも2つのd6Elo及び/又は少なくとも2つのo3Desをコードする1つ以上のT-DNAを含む、項目3又は4記載の植物。
[項目6]
少なくとも1つのCoA依存性d4Des及び少なくとも1つのリン脂質依存性d4DesをコードするT-DNAを含む、項目3〜5のいずれか1項記載の植物又はその部分。
[項目7]
1つ以上のd12Desをさらにコードする、項目3〜6のいずれか1項記載の植物又はその種子若しくは部分。
[項目8]
i)項目1又は2記載のT-DNA及び/又はこのようなT-DNAの一部を含む、アブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)、最も好ましくはブラシカ・ナプス(Brassica napus)、ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)又はブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)の植物を、前記T-DNA及び/又はその一部を含まない、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタの植物と交配して、F1雑種を得るステップ、
ii)少なくとも1世代にわたって前記F1雑種を自殖させるステップ、並びに
iii)18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくは、EPAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも6%、好ましくは少なくとも7.5%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも0.8%(w/w)、好ましくは1.2%であるように、VLC-PUFAを含む種子を製造することができる本発明のT-DNAを含む、ステップ(ii)の後代を同定するステップ、
を含む方法によって調製される後代系統から得ることができるか又は得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有する、アブラナ科、好ましくはアブラナ属の植物又はその種子。
[項目9]
i)項目3又は4記載のトランスジェニック植物を、項目1又は2記載のT-DNA又はその一部を含まない、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、最も好ましくはブラシカ・ナプス、ブラシカ・オレラセア、ブラシカ・ニグラ又はブラシカ・カリナタである植物と交配して、F1雑種を得るステップ、
ii)少なくとも1世代にわたって前記F1雑種を自殖させるステップ、並びに
iii)18:1n-9の下流にある全VLC-PUFAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも40%(w/w)であり、又は好ましくは、EPAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも6%、好ましくは少なくとも7.5%(w/w)であり、及び/又はDHAの含量が、40%(w/w)の油分である総種子脂肪酸含量の少なくとも0.8%(w/w)、好ましくは1.2%(w/w)であるように、VLC-PUFAを含む種子を製造することができる本発明のT-DNAを含む、ステップ(ii)の後代を同定するステップ、
を含む方法によって調製される後代系統から得ることができるか又は得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を付与する遺伝子型を有する植物を作製する方法。
[項目10]
前記T-DNAがホモ接合体である、項目9記載の方法又は項目8記載の植物。
[項目11]
i)項目3〜8のいずれか1項記載の植物を栽培して、油を含有するその種子を得るステップ、
ii)前記種子を収穫するステップ、及び
iii)ステップii)において収穫された種子から油を抽出するステップであって、該油は総脂質含量に基づいて少なくとも1重量%のDHA含量を有し、及び/又は総脂質含量に基づいて少なくとも8重量%のEPA含量を有する、前記ステップ、
を含む、植物油を製造する方法。
[項目12]
項目11記載の方法によって得ることができるか又は得られる多価不飽和脂肪酸を含む植物油。
[項目13]
i)脂肪酸部分及び頭部基を含む検出可能に標識された分子をデサチュラーゼに提供するステップ、
ii)前記デサチュラーゼを前記標識分子上で反応させるステップ、及び
iii)不飽和化生成物を検出するステップ
を含む、デサチュラーゼの反応特異性を分析する方法。
[項目14]
i)検出可能に標識された伸長基質及び伸長されるべき分子をエロンガーゼに提供するステップ、
ii)前記エロンガーゼにより、前記標識された伸長基質を使用して前記伸長させるべき分子を伸長させるステップ、及び
iii)伸長生成物を検出するステップ、
を含む、エロンガーゼの反応特異性を分析する方法。
[項目15]
i)代謝経路の酵素、及び前記経路の1つ以上の第1の酵素によって使用される1つ以上の基質を提供するステップ、
ii)前記酵素及び前記基質を反応させて生成物を生成し、次に、さらに前記生成物を前記経路の酵素に潜在的基質として曝露するステップ、及び
iii)生成物の蓄積を決定するステップ、
を含む、代謝経路を最適化する方法。
[項目16]
i)標的デサチュラーゼの基質を生成するためにエロンガーゼを提供し、該標的デサチュラーゼの変換効率を決定するステップ、及び
ii)前記標的デサチュラーゼの基質を生成するために非CoA依存性デサチュラーゼを提供し、該標的デサチュラーゼの変換効率を決定するステップ、及び
iii)ステップi)及びii)の標的デサチュラーゼ変換効率を比較するステップ、
を含む、標的デサチュラーゼのCoA依存性を決定する方法。
[項目17]
i)標的デサチュラーゼの生成物を伸長させるためにエロンガーゼを提供し、該エロンガーゼの変換効率を決定するステップ、
ii)非CoA依存性であることが知られている比較デサチュラーゼの生成物を伸長させるために前記エロンガーゼを提供し、該エロンガーゼの変換効率を決定するステップ、
iii)ステップi)及びii)のエロンガーゼ変換効率を比較するステップ、
を含む、標的デサチュラーゼのCoA依存性を決定する方法。
[項目18]
デルタ-6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、デルタ-6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及びデルタ-5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物に発現させることを含む、対照植物と比較して、植物におけるミード酸(20:3n-9)の含量を増加させる方法。
[項目19]
デルタ-12-デサチュラーゼ、オメガ-3-デサチュラーゼ、デルタ-5-エロンガーゼ、及び/又はデルタ-4-デサチュラーゼの発現をさらに含む、項目18記載の方法。