JP2021179454A - 透明スクリーン、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダイヤモンド粒子の光散乱に基づく透過型透明スクリーンにおいて、明るい照明を供される環境での、投影像の視認性が改善された透過型透明スクリーンを提供する。【解決手段】透明基材と、前記透明基材2上の可視光散乱性被膜3とを備える透明スクリーン1であって、前記可視光散乱性被膜は、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、前記媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子と、を含み、前記透明スクリーンの主面の法線方向から45度の角度の入射光に対する透過方向側の法線方向の散乱光輝度(YT)が2.8以上であり、前記透過方向の法線方向とは反対側の法線方向の散乱光輝度(YR)が11未満であり、(YT)と(YR)との比:(YT)/(YR)が5.5以上であり、全光線透過率が50%以上であり、前記(YT)と、%オーダーのヘーズ値との比:(YT)/ヘーズが0.5以上であること。【選択図】図1

Description

本発明は、投影機から出射された投影光を、観察者に映像として視認可能に表示する可視光散乱性被膜が形成された透明スクリーンに関し、特に可視光散乱体としてダイヤモンド粒子を用いた透明スクリーンに関する。
街の商業ビルのショウウィンドウや、案内板等に、透明性を保持したまま広告等の情報
を投影表示するデジタルサイネージ(「電子看板」、「電子広告」などと呼ばれる)用の透明スクリーンが、建築物分野において近年注目を集めている。また、建築物の分野だけでなく、自動車のフロントガラスに位置情報等を投影するディスプレイとしての透明スクリーンの利用も近年盛んに研究されており、自動車分野でも注目を集めている。上記のような透明スクリーンは、該透明スクリーンを透過した背景を視認可能である。その為、透明スクリーン設置時の美観の向上や、建築物等の開口部に設けた場合の採光性の維持、さらには透明スクリーンに映像を投影することで新たな映像表現が可能になることが期待される。
ショウウィンドウや、案内板等に用いられる透明スクリーンは、正面からだけでなく、斜めからも見られることが多く、スクリーン面の外観が白濁等しておらず透視性が高いこと、光散乱性が良好なことや、斜めの角度からでもスクリーン面の映像を鮮明に見られることが求められる。また、商業施設における歩行者や、自動車のドライバーが、透明スクリーンの表面に触れることが想定される用途においては、簡単には表面が傷つかないように、実使用に耐えうる硬度や耐久性を有する透明スクリーンが望まれている。
特許文献1には、高屈折率ナノ粒子として、ナノダイヤモンドを用い、これをポリビニルアルコール(PVA)又はシクロオレフィンポリマー(COP)中に分散させた上で、シート(ナノダイヤモンド複合体)に成型する技術が開示されている。このシート(ナノダイヤモンド複合体)は、透明であり、かつ良好な光散乱性を兼ね備えるため、透過型透明スクリーン用に好適に使用できることが報告されている。
特許文献2には、ダイヤモンド微粒子のコアと有機ポリマー又はシリカのシェルとからなるコア/シェル型複合粒子を作製し、この粒子を光散乱体としてポリビニルブチラール樹脂中に分散させ、塗膜を得る技術が開示されている。該塗膜をガラス表面に接着させたところ、優れた透過型(リアプロジェクション方式)の透明スクリーンが得られたことが、記載されている。
特許文献3には、特定の方法で製造したダイヤモンド粒子、及びガラス質材料粉末(ガラスフリット)を、アクリル樹脂、酢酸セルロース等の媒体(バインダー)に分散させて塗料を作製する技術が開示されている。該塗料をガラス基材に塗装したところ、光散乱性と透明性を両立する透過型の透明スクリーンが得られたことが、記載されている。
特許文献4には、多結晶ナノダイヤモンド粒子と、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、有機高分子凝集防止剤と、を含む光散乱性被膜を用いた透明スクリーンが記載されており、実施例において、高い透明性、映像の鮮明性を兼ね備え、さらに鉛筆硬度は9Hである高い耐久性を持った透過型の透明スクリーンが示されている。さらに透明スクリーンの製造プロセスとして、光散乱性被膜形成用塗布液を用いて透明基材の表面上に塗布し、乾燥し、加熱硬化することが示されており、大面積なスクリーンを低コストで製造できることから近年注目を集めている。
このような透明スクリーンでは、映像光だけでなく、照明からの光照射でも可視光散乱体での可視光散乱が生じうる。特許文献5では、光吸収材料を含む光散乱性層にて、投影機から映像光を投射しない状態での、前記光散乱層の照明や太陽光による光散乱層での光散乱を抑制し、スクリーンが白濁して見える現象を抑制している。
特開2014−153708号公報 特開2011−113068号公報 特開2011−215568号公報 特開2018−4758号公報 再公表2016/068087号公報
上記のような光学特性、耐久性に優れた光散乱性被膜を利用した透過型の透明スクリーンを用いることで、商業施設、公共施設、店舗などに汎用される窓ガラスなど建築物を利用した大型デジタルサイネージとして透明スクリーンを設置することが期待される。
しかしながら、例えば商業施設にデジタルサイネージとして前記の透明スクリーンを導入する場合に、環境照明の影響を考慮する必要がある。すなわち、スクリーン上に表示される情報の受け手は通路等を歩く通行人が想定され、通路等には通常は照明が供される。例えばJIS Z9110:2010において、人々の諸活動が、安全、容易、かつ、快適に行えるための照明設計基準が規定されている。
特許文献4の実施例では、平均粒径280nm、粒径分布0〜2μmの多結晶ダイヤモンド粒子を用いた透明スクリーンが作製されており、膜厚や粒子の添加量を増加させることで多結晶ダイヤモンド粒子の含有量を増加させ、光散乱性(映像の輝度)を向上させられることが示されている。
ダイヤモンド粒子などの高屈折率粒子での光散乱に基づく透明スクリーンの場合、投影機からの投影光に対する光散乱だけでなく、前述の人工照明からの照明光に対する光散乱も生じる。白色の照明下であれば、前記散乱性被膜にて、白色散乱光が生じるため、前記投影光に対する投影像と、前記白色散乱光とが重なって表示される。そのため、投影像のコントラストが低下し、透明スクリーンでの映像の視認性が低下することになる。例えば、会議室や駐車場等の比較的暗所での使用では、投影機からの投影光の照度が照明光の照度よりも十分大きいので問題とはなりにくいが、商業施設の店舗等の1000ルクス超の明るい照明を供された環境で透明スクリーンを用いる場合には、投影像のコントラストが低下しやすいものとなる。
特許文献4の実施例を参考に、単純に多結晶ダイヤモンド粒子の含有量のみを増やしていった場合は、投影像の輝度は増加していくものの、照明光の散乱も同様に増加してしまい、明るい環境においては投影像の視認性は高いものとはならない。
以上から、本発明は、ダイヤモンド粒子の光散乱に基づく透明スクリーンにおいて、明るい照明を供される環境での、投影像の視認性が改善された透明スクリーンを提供することを課題とする。
本発明は、透明基材と、前記透明基材上の可視光散乱性被膜とを備える透明スクリーンであって、
前記可視光散乱性被膜は、
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、
前記媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子と、を含み、
前記透明スクリーンの主面の法線方向から45度の角度の入射光の透過方向側の法線方向の散乱光輝度(Y)が2.8以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、
反射方向の法線方向の散乱光輝度(Y)が11未満、好ましくは9未満、より好ましくは7未満であり、
(Y)と(Y)との比:(Y)/(Y)が5.5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、
全光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上であり、
前記(Y)と、%オーダーのヘーズ値との比:(Y)/ヘーズが0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であることを特徴とする。
前記透明スクリーンでは、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体に保持されたダイヤモンド粒子によって、投影光が、その進行方向に対して前方および後方に散乱される。前方への散乱と、後方への散乱とを比べると、前方への散乱の方が強いので、投影機からの映像光の前記透明スクリーンの投影像は、後述する「透過方向側」から視認することができる。
前記透明スクリーンと、前記(Y)と、前記(Y)と、前記投影光との関係は、図1で説明される。図1では、投影機4と、照明光の光源5との間に前記透明スクリーン1(2は、透明基材、3は可視光散乱性被膜)が配置されている。投影機4が配置された側を「投影側」、前記透明スクリーンを挟んでその反対側の照明光の光源5が配置された側を「透過方向側」とする。図1では、前記透明スクリーン1に対して、第一の入射光として、投影光41が入射角45度で前記透明スクリーン1に入射される。これによって可視光散乱性被膜3に投影像が形成され、透過方向側から視認性の高い投影像として視認できる。
前記(Y)は、投影機4からの投影光41の透過方向側の法線方向での散乱光輝度である。これは、透明スクリーン1に投影された映像光の、前記法線方向で観測される映像の輝度に相当する。
また、図1では、前記透明スクリーン1に対して、第二の入射光として、照明5からの照明光51が入射角45度で前記透明スクリーン1に入射される。前記(Y)は、照明5からの照明光51が、前記透明スクリーン1での反射による散乱光の、前記透明スクリーンの法線方向の散乱光輝度である。この法線方向は、先に述べた「透過方向側の法線方向」と同じである。この散乱光輝度は、照明光51による前記透明スクリーン1の発光とも言うことができる。
前記(Y)の値は、分光変角色差計(例えば、日本電色工業製、GC5000が使用される)を用いた測定において、投影光の光源をD65光源、視野を2度視野とし、付属の標準白色板を用いて校正し、入射角度を45°として透過測定を行い、入射角度に対して45°ずれた角度(主面の法線方向)での透過方向の散乱光の輝度(Yxy表色系におけるY)として得られたものが使用される。
また、前記(Y)の値は、前記(Y)と同様に、分光変角色差計(例えば、日本電色工業製、GC5000が使用される)を用いた測定において、照明光の光源5をD65光源、視野を2度視野とし、付属の標準白色板を用いて校正し、透明スクリーンの主面に対する入射角度を45°として反射測定を行い、入射角度に対して45°ずれた角度(主面の法線方向)での反射方向の散乱光の輝度(Yxy表色系におけるY)として得られたものが使用される。
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、該媒体中に分散されたダイヤモンド粒子とに基づく光散乱では、第一の入射光による、入射方向に対して反射方向の散乱光輝度と、第二の入射光による、入射方向に対して反射方向の散乱光輝度とが同じとなる。そのため、(Y)を測定する光学系において、反射方向の散乱光輝度を測定し、これを(Y)としてもよい。
前記透明スクリーンにおいて、全光線透過率が50%以上とし、前記(Y)を2.8以上と、前記(Y)を11未満とし、(Y)/(Y)が5.5以上、(Y)/ヘーズが0.5以上であれば、1000ルクス超の明るい照明を供された環境でも、前記透明スクリーンに投影された投影像の視認性が改善される。
前記透明スクリーンは、
可視光散乱性被膜形成塗布液を調製する工程と、
透明基材の表面に前記可視光散乱性被膜形成塗布液を塗布し、乾燥し、加熱硬化する工程と、
を含み、
前記可視光散乱性被膜形成塗布液を、
溶媒と、
ダイヤモンド粒子と、
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体と、を含み、
前記ダイヤモンド粒子を、動的光散乱法により水中での体積分布を測定して得られた粒度分布における累積50%粒径(D50)が320nm〜550nm、
累積10%粒径(D10)が、前記D50の1/2以上、
累積90%粒径(D90)が850nm以下とすることで製造することができる。
前記透明スクリーンは、前記媒体中に分散されたダイヤモンド粒子によって生じる光散乱の内、前方散乱を向上させ、後方散乱を抑制すれば達成することができる。特定の粒度分布を備えたダイヤモンド粒子が、これを達成することに適しているものであった。前記ダイヤモンド粒子の大きさが小さくなると、可視光に対する光散乱の散乱方向が等方的となりやすく、Y/Yが小さくなる傾向がある。他方で、前記ダイヤモンド粒子の大きさが大きくなると、幾何反射の影響が生じてくるため、後方散乱性が増加し、Y/Yを5.5以上とすることが難しくなる。
本発明によれば、明るい環境、例えば、1000ルクス超の明るい照明を供された環境において、前記透明スクリーンの投影された投影像の視認性が改善される。
商業施設などで、前記透明スクリーンが設置される場合、投影側は店舗で、透過方向側は照明が供される通路となり、投影像は通路側から視認されることが想定される。このような使用環境で、通路に高い照度の照明が供されても、本発明によれば、前記透明スクリーンに投影された投影像を視認することができる。
本発明の透明スクリーンと、(Y)と、(Y)と、前記投影光との関係を説明する図である。 実施例、比較例で使用されたダイヤモンド粒子の粒度分布を示す図である。 1500ルクスの環境照度で、透明スクリーンに投影像を表示させた例を示す図面代用写真である((左)が、実施例3、(右)が、比較例7)。
本発明は、透明基材2と、前記透明基材2上の可視光散乱性被膜3とを備える透明スクリーン1であって、
前記可視光散乱性被膜3は、
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、
前記媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子と、を含み、
前記透明スクリーンの主面の法線方向から45度の角度の投影光の透過方向側の法線方向の散乱光輝度(Y)が2.8以上、好ましくは5以上、より好ましく10以上であり、
反射方向の法線方向の散乱光輝度(Y)が11未満、好ましくは9未満、より好ましく7未満であり、
(Y)と(Y)との比:(Y)/(Y)が5.5以上、好ましくは6以上、より好ましく7以上であり、
全光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上であり、
前記(Y)と、%オーダーのヘーズ値との比:(Y)/ヘーズが0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上である。
プロジェクターなどの投影機4の投影光41は、前記透明スクリーン1に対して斜めの角度(実際の使用態様は45度とは限らない。)でスクリーン1に入射する。観察者は主として透過方向側から、前記可視光散乱性被膜3に投影された投影像を観察する。本発明の透明スクリーンは、前記透明スクリーン1の、透過方向側の法線方向の散乱光輝度(Y)が、2.8以上である。(Y)は透過方向側にいる観察者に視認される、透明スクリーン1に投影された映像光の輝度、すなわち、観察者に視認される投影像の輝度に対応する。(Y)が2.8より小さいと、明るい環境で使用する際に、投影像の輝度が十分でなく、映像の視認性が不足しやすい。前記(Y)は、好ましくは5.0以上、より好ましく10.0以上としてもよい。
前記透明スクリーン1は、前記透明スクリーン1の、投影側の法線方向の散乱光輝度(Y)が、11未満である。前記(Y)は、投影光41に基づいて定義されたものであるが、透過方向側に設置された人工照明の光源5からの照明光による前記可視光散乱性被膜3での光散乱も(Y)の値に依存する。商業施設などでの前記透明スクリーン1の実使用を想定すると、透過方向側に設置された人工照明は、通路の人工照明に相当するので、前記(Y)は、実使用における投影像のコントラストに影響する。Yが11より大きいと、明るい環境での投影像のコントラストが低下しやすいものとなる。前記(Y)は、好ましくは9.0未満、より好ましく7.0未満としてもよい。
そして、前記(Y)と前記(Y)との比、すなわち、(Y)/(Y)を5.5以上とすることで、観察者が視認する投影像のコントラストが向上し、明るい環境での投影像の視認性が改善される。前記透明スクリーン1の、(Y)/(Y)は、好ましくは6以上、より好ましく7以上としてもよい。図3には、前記(Y)が同程度で(Y)/(Y)が異なる透明スクリーンに対して、明るい環境である1500ルクスの環境照度にて、文字を投影し表示させた例が示されている。図3の左側に示される、(Y)/(Y)を5.5以上としたものでは、白色の投影文字および黒色の投影文字ともに、映像の視認性が高く保たれているのに対して、右側に示される(Y)/(Y)が5.5未満のものでは、映像輝度に相当する(Y)は前述の範囲内であり、投影像は視認できるものの、コントラストが低く、視認性が低下している。特に照明光の影響を受けやすいために、黒色の投影文字のコントラストが大きく低下している。これは、透明スクリーンをデジタルサイネージとして用いる場合、通行人等の興味を引くための高コントラスト映像を表示する際に不都合が生じやすい。
前記透明スクリーン1は、その全光線透過率を50%以上、好ましくは60%以上とすることで、高い透明性を有するものとなる。また、前記透明スクリーン1の透明性と、前記投影像の視認性とのバランスを考慮すると、前記透明スクリーン1のヘーズは、好ましくは2%〜60%、より好ましくは4%〜55%としてもよい。
前記(Y)と、前記ヘーズは、ともに光の媒体透過に伴って生じる光の散乱に関する指標である。被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子の含有量の増加により、前記(Y)と、前記ヘーズ値とは、両方とも上昇する傾向がある。ダイヤモンド粒子の含有量は、前記可視光散乱性被膜の膜厚の調整や、前記可視光散乱性被膜形成用塗布液中のダイヤモンド粒子含有量の調整により、当業者が最適化できる。しかしながら、本発明での検討により、投影像のコントラストを向上させるためには、前記ヘーズの上昇は抑制しつつ、前記(Y)を向上させることが効果的であることがわかった。そのため、前記(Y)と、%オーダーのヘーズ値との比、すなわち、(Y)/ヘーズは、0.5以上、好ましくは、0.6以上、より好ましくは0.7以上とされる。
前記透明スクリーン1は、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体に保持されたダイヤモンド粒子が光散乱の役割を担うため、可視光散乱性被膜3を投影側に備えていても、透過方向側に備えていても、その光散乱特性に実質的な違いはないが、映像投影システムとしては、可視光散乱性被膜3を投影側に、透明基材2を透過方向側に備えることが好ましい。そのような配置であると、ガラス基材などからなる透明基材2が通路側に配置された映像投影システムとしやすい。通路側は、不特定多数の通行人によって部材が傷つけられる、汚染されるやすい環境ではあるが、透明基材2は、被膜3よりも修復、清掃などのメンテナンスが容易である。
前記透明基材2は、耐熱性、耐候性などの耐久性などの性質を有するものであれば、特に限定されることなく、各種の基材を使用することができる。透明基材としては、典型的には、ガラス基板であるが、ガラス材料としては、強化ガラスや、フィルム付着ガラス、合わせガラスなどが挙げられ、材質からは、ソーダ石灰ガラスやアルミノシリケイトガラス、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスなど、各種のガラス材料を板状にして使用することができる。その他の透明基材としては、プラスチック製の樹脂板やフィルム基材、例えば、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、その他のプラスチック製の透明基材を使用することできる。耐熱性や、耐候性などの耐久性の点からは、プラスチック製の透明基材よりも、ガラス等の金属酸化物の透明基材が好ましい。
ガラス基材等の透明基材2は、可視光散乱性被膜3との密着性を確保するために、酸化セリウム等で予め充分に研磨し、表面の汚れ等を丁寧に除去しておくことが好ましい。透明基材は、通常、矩形の形態で使用されるが、その他の形態、例えば、円形や、楕円形、三角形など各種の形状であってもよい。大きさは、用途に応じて、適宜決められるものである。また、厚みは、用途に応じて、例えば、使用される態様において必要とされる強度などに通常設定される。例えば、0.5〜30mm、好ましくは1〜30mmとしてもよい。また、透明基材としては、表面が平坦な基材だけでなく、表面に凹凸がある基材やパターンを形成した基材や、曲率を持った形状の基材でも良い。表面に凹凸がある基材やパターンを形成した基材に可視光散乱性被膜を塗布した透明スクリーンでは、光散乱性に加えて表面の凹凸やパターンによる光学反射の効果も得られ、表面が平坦な基材に可視光散乱性被膜を形成した透明スクリーンとは異なる外観を得ることが出来る。
前記可視光散乱性被膜3は、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、前記媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子と、を含むものである。前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体は、ケイ素や、チタン、ジルコニウム、鉄、亜鉛、錫、ハフニウム、タングステンなどの原子を中心として、酸素原子を介して、網目状に高分子化された無機酸化物高分子が好適である。例えば、シリカ等のケイ素酸化物や、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ハフニウム、酸化タングステンや、これらの混合物などが例示される。中でも、ケイ素酸化物が、環境にとりわけ優しい材料である点や、耐久性が高い点から特に好ましく、また、その屈折率が、波長633nmにおいて、1.40〜1.45の範囲にあり、ダイヤモンド粒子との屈折率差が大きく、特に、好適である。
本発明において、「無機酸化物高分子」「ケイ素酸化物」「シリカ」としては、「中心原子が全て酸素と結合した純粋な酸化物(例えばSiOで表される網目状の高分子)」に限定されず、「中心元素の一部が、別の置換基と結合した化合物」も使用可能である。むしろ後者(中心元素の一部が、別の置換基と結合した化学種」)の方が、後述の範囲の膜厚を安定して形成しやすく好ましい。
前記可視光散乱性被膜3の膜厚は、例えば、0.1〜500μmであることが好ましい。0.1μm未満だと、光散乱性粒子を被膜中に含有可能な量が限られるため、十分な光散乱性が得られず、映像の視認性が不足する場合がある。また、500μmより大きい膜厚では、光散乱性被膜に対して斜めから表示映像を視認した際、可視光散乱性被膜上に表示される映像が膜厚方向ににじんでしまい、映像の解像度や輝度が不足しやすい。表示される映像をにじみなく精細に保つためには、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜70μmとしてもよい。
前記ダイヤモンド粒子は、前記媒体中に分散されたもので、投影光41の散乱源となるものである。前記ダイヤモンド粒子は、市場で入手可能なものを使用してよく、そのようなものとして、例えば、V−ダイヤ(ビジョン開発製)や多結晶ダイヤモンドパウダー(ケメットジャパン製)などが例示される。ダイヤモンド粒子は、可視光領域における屈折率が被膜形成性酸化物網目状高分子媒体よりも大きく、波長633nmにおいて、2.4程度の屈折率を有する。そのため、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体とダイヤモンド粒子との屈折率差を大きくしやすいため、透明性を維持したまま投影像の輝度を向上させやすい。さらに色収差が小さいことに加え、硬度が高いため、ダイヤモンド粒子を含む可視光散乱性被膜は、当該被膜に投影する投影像の再現性が良好なだけでなく、被膜3の耐久性を向上させやすい。
前記ダイヤモンド粒子は、多結晶ダイヤモンド粒子であることが好ましい。多結晶ダイヤモンド粒子は、複数の結晶ドメイン(数10nm〜数100nm)が粒子中に存在しており、切削剤として用いられることがあることから分かるように、硬度が高い密な構造をもつ粒子である。一方、類似のダイヤモンド粒子として、単結晶ダイヤモンド粒子があるが、単結晶ダイヤモンド粒子は一般に、2nm〜10nm程度のナノサイズの一次粒子が凝集してなる平均粒径30nm〜500nm(ここでの平均粒径は累積50%粒径とする)の二次粒子凝集体であり、多結晶ダイヤモンド粒子の方が密な構造である。そのために多結晶ダイヤモンド粒子の方が、見かけの屈折率の点で有利となり、被膜に添加するダイヤモンド粒子の量が比較的少なくても、十分な光散乱特性を有する被膜が得られる。それに伴って、多重散乱が生じにくく、先述の前方散乱性が失われにくいため、映像のコントラストを向上させる点で好ましい。
前記ダイヤモンド粒子は、動的光散乱法により水中での体積分布を測定して得られた粒度分布における累積50%粒径(D50)が320nm〜550nm、
累積10%粒径(D10)が、前記D50の1/2以上、
累積90%粒径(D90)が850nm以下である、ことが好ましい。
前記ダイヤモンド粒子がこのような粒度分布を有するように調整されたものを用いると、前記可視光散乱性被膜3の、(Y)を、2.8以上、(Y)を、11未満、(Y)/(Y)を、3.3以上、そして、(Y)/ヘーズを、0.5以上としやすくなる。
前記D50が、320nmより小さいと、あるいは550nmより大きいと、可視光散乱性被膜の光散乱が等方的になってくるために、相対的に照明光に対する散乱性が高くなってしまい、結果として投影像のコントラストを向上させにくいものとなる。これらを考慮すると、D50は、好ましくは、360nm〜550nm、より好ましくは、360nm〜500nm、さらに好ましくは、360nm〜450nmとしてもよい。
また、D50が前記範囲であったとしても、前記ダイヤモンド粒子の粒度分布が広い範囲に調整されたものを用いる場合、前記ダイヤモンド粒子中に前方散乱性が高いダイヤモンド粒子が含まれる率が小さくなるため、投影像のコントラストを向上させることが難しくなる。そのため、D10は、前記D50の1/2以上の大きさ、前記D90は、850nm以下とすることが好ましい。同様の理由で、前記ダイヤモンド粒子の粒度分布は、単一ピークの頻度分布曲線を描くことが好ましい。
さらにD10は160nmから240nm、D90は560nmから850nmであることが好ましい。D10が160nmより小さいと、前述のとおり光散乱が等方的に近づきやすい。また、散乱効率の波長依存性が強くなるため、散乱光が青みがかることが多い。加えてD10が240nmより大きいと、あるいはD90が560nmより小さいと、前述のD50に対する制約とあわせて極めてシャープな粒度分布となるため、過剰な分級処理などによる調整が必要となりやすく、高コストとなりやすい。
前記のような粒度分布の調整は、例えば、ビーズミルなどを用いた粉砕操作や、濾過、遠心分離、デカンテーションなどの分級操作などの既知の方法により、容易に行うことができる。
前記可視光散乱性被膜3は、可視光吸収性かつ可視光非散乱性粒子(以降、可視光吸収体ともいう)を含んでもよい。ここで、可視光非散乱性粒子とは、被膜中で可視光の散乱を起こさないもののことを言い、例えば、絶対値で、粒子径が150nm以下のものが好適に用いられる。前記可視光散乱性被膜3は、可視光吸収体を含むことで、透明スクリーン1は、投影光41を吸収する。そのため、投影像の輝度の低下が生じうる。しかしながら、照明光を吸収し、光散乱を抑制する効果が生じる。透過方向側からの投影像の観察では、後者の効果の方が、前者の投影像の輝度低下という効果を上回るため、投影像のコントラストが向上する。
可視光吸収体は黒色である方が好ましい。黒色以外、つまり可視光域において吸収帯に偏りがあると、透明スクリーン越しに見える背景が着色して見えることや、投影像の色相が元の色相から大きくずれることがある。
可視光吸収体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、チタンブラック、マグネタイト、銅、亜鉛、クロムなどの複合酸化物などの無機顔料粒子や有機染料粒子を用いることができ、広く市販されている。可視光散乱性被膜形成用塗布液中における添加量は限定されるものではなく、透明性の低下や色調のずれなどを考慮して適宜決定される。
前記透明スクリーン1の好適な製造方法は、
可視光散乱性被膜形成塗布液を調製する工程(a)と、
透明基材の表面に前記可視光散乱性被膜形成塗布液を塗布し、乾燥し、加熱硬化する工程(b)と、
を含み、
前記可視光散乱性被膜形成塗布液は、
溶媒と、
ダイヤモンド粒子と、
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体と、を含み、
前記ダイヤモンド粒子は、動的光散乱法により水中での体積分布を測定して得られた粒度分布における累積50%粒径(D50)が320nm〜550nm、
累積10%粒径(D10)が、前記D50の1/2以上、
累積90%粒径(D90)が850nm以下であること、
というものである。
『工程(a)』
<可視光散乱性被膜形成塗布液>
前記可視光散乱性被膜形成塗布液は、
(1)溶媒、
(2)ダイヤモンド粒子、
(3)被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体を含み、
好ましくは、
(4)重量平均分子量50万超300万以下の親水性ポリマー、
を含むものである。
<溶媒>
前記溶媒として、水、メタノールや、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、エチルラクテート、ブチルラクトン、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、2−プロパノン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルブチル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、モルフォリン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を用いることが出来る。これらの溶媒は、その他の成分との相溶性や沸点に応じて、適宜選択される。
<ダイヤモンド粒子>
前記の、ダイヤモンド粒子に関する説明が、本欄にも適用される。
<被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体>
前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体は、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体から形成される。具体的には、シリカを例にとると、該無機酸化物高分子を形成するための「前駆体」としては、R 4−A−Si−X(但し、Rは、水素原子、または、C原子で中心のSi原子と結合する1価の有機基、Xは炭素数1〜3のアルコキシ基又はハロゲン、Aは1〜4の整数)から選ぶことができる。それらは次の(A)(B)、2つのタイプに分類できる。
(A)タイプ:上記「前駆体」の化学式において、Aが4である場合。この場合、Siの4つの結合手の全てが加水分解を受けて「OH基」に変換する。具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラクロロシランが挙げられる。
(B)タイプ:上記「前駆体」の化学式において、Aが1、2、または3である場合。この場合、Siの4つの結合手の一部のみが加水分解を受けて「OH基」に変換する。残るR基は不変のままである。具体的には、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、トリクロロシラン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、加水分解処理を行うと、3つのメトキシ基は全て加水分解され、Si−O−Siの網目構造に取り込まれるが、「3−グリシドキシプロピル基」だけは反応せず、Si−O−Si結合による網目構造とは別の「側鎖」として、「無機酸化物高分子」中に残り続ける。このような「側鎖」を部分的に残す高分子も、本発明の「無機酸化物高分子」媒体として有効に機能することから、本発明では、こうしたものも「無機酸化物高分子」「ケイ素酸化物」「シリカ」の概念に含めることとする。
この中では、テトラエトキシシラン(TEOS)と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を併用して、前駆体として用いると、上述した「0.1〜500μm」という膜厚の膜を安定的に得やすいので、特に好ましい。両者の混合比に特別な制限はないが、SiOの質量換算で、TEOSが99〜40%に対して、GPTMSを1〜60%の割合で用いることは好ましい態様である。
<親水性ポリマー>
親水性ポリマーは、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、ダイヤモンド粒子が、分散して保持されることを促進する機能を有するものである。ダイヤモンド粒子の分散状態は、当業者であれば、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの装置を使用して容易に確認することができる。分散不良によりダイヤモンド粒子が凝集してしまうと、ダイヤモンド粒子のみかけの粒子径が大きくなり、前述したダイヤモンド粒子の適切な粒度分布から外れてしまうため、コントラストが低下する。さらに凝集が進むと透明性が失われる場合もある。親水性ポリマーは、透明性と光散乱性との両立を達成するために重要な働きをする。
このような親水性ポリマーとしては、側鎖として、水酸基や、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、チオール基、ラクタム構造といった親水性部位を有する重合体が好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンや、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、ポリビニルアミン、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどの親水性ポリビニル化合物を始め、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。中でも、ポリビニルピロリドンやポリ−N−ビニルアセトアミドは、優れた可視光散乱性被膜を形成する上で、一層好ましい。
本発明の親水性ポリマーの分子量は、重量平均分子量として、50万超300万以下である。前記重量平均分子量が50万以下の場合、前記ダイヤモンド粒子の分散保持の効果が小さく、凝集などにより前記可視光散乱性被膜形成塗布液の経時劣化が生じ、工業的に透明スクリーンを生産する上で問題となりうる。他方で、前記重量平均分子量が300万超の場合では、前記ダイヤモンド粒子の分散性を向上させる効果、及び経時的な前記塗布液の安定性発現の効果が小さいようである。これらを考慮すると、前記重量平均分子量は、好ましくは、52万超、より好ましくは、55万超としてよい。また、上限側においては、前記重量平均分子量は、好ましくは、260万以下、より好ましくは、220万以下としてもよい。
<その他>
可視光散乱性被膜形成塗布液には、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体の加水分解、重縮合反応を進行させるために水が添加される。原料として液体の水や水溶液を用いても良いし、大気中から取り込まれる水分を利用してもよい。また、別途加える酸が、水溶液である場合には、その水でも代用できる。
可視光散乱性被膜形成塗布液中には、水は、例えば、0.1〜60質量%含有することができる。被膜形成性酸化物網目状高分子媒体がシリカである場合、TEOSなどの加水分解は、触媒的に進行する。そのため、一般にはそれほど過剰な量の水は必要とされない。原料の量(合計)が1gであれば、水の量は、例えば、0.1〜1gで足りることが多く、これも当業者の知識で最適化できる。
可視光散乱性被膜形成塗布液には、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体の加水分解や重縮合反応を促進するために酸を添加してもよい。可視光散乱性被膜形成塗布液に用いる酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、クエン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、グリコール酸等を用いることが出来る。この中では硝酸が、大量の入手が容易である上、前記前駆体化合物を加水分解する作用が大きく、塗布液を円滑に製造できるため好ましい。
本発明の可視光散乱性被膜形成塗布液中の酸の濃度は、0.01〜50質量%であることが好ましい。0.01質量%より少な過ぎると、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体の加水分解や重縮合反応を促進する効果が小さく、50質量%より多過ぎると上記反応が早く進み過ぎて、塗布液のポットライフが短くなりやすい。
また、可視光散乱性被膜形成塗布液中には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤等の成分が含有されていてもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤(商品名「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−370」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−3455」、以上BYK社)やアクリル系界面活性剤(商品名「BYK−350」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−392」、「BYK−394」、「BYK−3441」、以上BYK社)やフッ素系界面活性剤(商品名メガファック DIC社)等が挙げられる。
さらに、可視光散乱性被膜形成塗布液中には、可視光吸収体を添加してもよい。可視光散乱性被膜形成用塗布液中に可視光吸収体を添加することで、可視光散乱性被膜中に可視光吸収体が保持され、投影機からの投影光および照明光を吸収する。後述の実施例において、可視光吸収体の添加によりコントラストが向上する効果が発現することが明らかとなった。これは光源と観察者の位置関係によるものだと推察される。投影側からの投影光の散乱光は、可視光散乱性被膜に対して透過方向に進行するのに対し、透過方向側からの照明光の散乱光は、可視光散乱性被膜に対して反射方向に進行するため、可視光吸収体を含む可視光散乱性被膜中の散乱光の光路長が、照明光の散乱光の方が長くなるためと考えている。
<組成比>
前記可視光散乱性被膜形成塗布液が、前記親水性ポリマーを含む場合、前記塗布液は、ダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記親水性ポリマーの質量(B)とが、質量比A/Bにおいて0.02〜25となるように調製される。A/Bが0.02未満の場合、前記塗布液が均質なものとはなり難く、他方で、25超の場合、得られる被膜の耐久性が低下する傾向がある。これらを考慮すると、前記比は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.04以上としてもよい。他方で、上限側においては、前記比は、好ましくは24以下、より好ましくは、22以下としてもよい。
また、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)とし、前記A、B、Cの合計を100質量%としたときの、A/(A+B+C)が0.1〜15.0質量%とすることが好ましい。A/(A+B+C)が0.1質量未満の場合、可視光散乱性被膜の光散乱性を良好にしにくい。他方、15.0質量%超の場合、可視光散乱性被膜の透明性が低下することがある。これらを考慮すると、A/(A+B+C)は、好ましくは、0.1〜12.0質量%、より好ましくは0.1〜9.0質量%としてもよい。
前記可視光散乱性被膜形成塗布液は、前記溶媒を1〜99質量%含有されていてもよい。前記溶媒は、基材に塗布された後は揮発し、被膜中には残らない成分であるが、ダイヤモンド粒子を円滑に分散させ、塗布を滞りなく行うためには、比較的多めに溶媒を使うことが望ましい。反対に塗布後被膜に残る成分として、可視光散乱性被膜形成塗布液の質量に対する(A+B+C)の割合は、0.1〜30質量%であることが好ましい。これらの最適の量は、当業者が最適化することができる。
<可視光散乱性被膜形成塗布液の調製>
前述のように、本発明の可視光散乱性被膜形成塗布液は、溶媒、ダイヤモンド粒子、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体、親水性ポリマーを含むものであり、例えば、溶媒中にその他のものを混合することで得られるが、可視光散乱性被膜形成塗布液を製造する上では、まずはダイヤモンド粒子分散液を調製し、その後溶媒中に被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体を含む溶液に、前記ダイヤモンド粒子分散液を混合する方が、調製の簡便性、およびダイヤモンド粒子の分散安定性の面で好ましい。これらの添加順序は、当業者には自明である。
前記ダイヤモンド粒子分散液は、溶媒、ダイヤモンド粒子、親水性ポリマーからなる。溶媒としては水やメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールがダイヤモンド粒子の分散安定性の面から好ましく、水、メタノールがより好ましい。ダイヤモンド粒子の濃度は分散安定性の面から20質量%以下が好ましい。ダイヤモンド粒子分散液中におけるダイヤモンド粒子の質量(D)と親水性ポリマーの質量(E)との質量比D/Eは0.1〜10であることが好ましく、最終的に可視光散乱性被膜形成塗布液が前述のA/Bの範囲を満たすように設定すればよい。また、ダイヤモンド粒子の分散を促すために、超音波照射などの処理を行ってもよい。
『工程(b)』
<塗布工程>
可視光散乱性被膜形成塗布液をガラスなどの透明基材の表面に塗布する場合には、生産性などの面からは、例えば、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、ディスペンサーコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの公知手段が採用でき、適宜マスキングすることにより、部分的な成膜はもちろん、任意の形状、図柄に被膜を形成することができる。
<乾燥工程>
透明基材の表面に塗布された可視光散乱性被膜形成塗布液は、含まれる溶媒の一部分もしくはすべてを揮発乾燥させることで、流動性が減少した状態とできる。同時に被膜のレベリングを促し、平滑な被膜とすることができる。乾燥温度は、例えば、20℃から100℃とすることができ、常圧下だけではなく、加圧下や、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。乾燥工程に必要な時間は溶媒の揮発性やレベリング性を考慮して設定すればよく、特に限定されないが、例えば1〜120分間としてもよい。
<加熱硬化工程>
可視光散乱性被膜形成用塗布液を透明基材に塗布、乾燥した後、基材を加熱して、該基材表面に可視光散乱性被膜を形成する。加熱温度は、例えば、200〜400℃、好ましくは、220〜300℃であり、加熱温度は、例えば、1〜240分間、好ましくは、5〜120分間であることが好適である。加熱は、常圧下だけではなく、加圧下や、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。
上記の加熱温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、可視光散乱性被膜が形成される基材は特に限定されるものではない。例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されているフロート板ガラス、又はロールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス、又はダウンドロー法で製造されたガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。基材の厚みは適宜選択すればよく、薄いものを用いて浮遊感のある外観を得たり、厚いものを用いて立体感のある外観を得たりできる。また、安全性などの観点から、基材として強化ガラスや、フィルム貼付ガラス、合わせガラスを使用することができ、省エネなどの観点から、透明基材として複層ガラスを使用することができる。
本発明の実施例及び比較例を以下に記載する。しかし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
<粒度分布測定>
サンプルとして市販のダイヤモンド粒子を入手した。サンプルをdiamond1(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD1/8)、diamond2(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD1/4)、diamond3(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD1/3)、diamond4(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD0−1)、diamond5(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD0−2)、diamond6(サミットスーパーアブレーシブ製多結晶ダイヤモンドPCD2−4)に分けた。さらに、diamond2とdiamond3を質量比で25:75として混合したものをdiamond7とした。
実施例及び比較例で用いられるダイヤモンド粒子を水中に懸濁させ、粒度分布計(スペクトリス製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、動的光散乱法による粒度分布測定および解析を行った。得られた結果を表1および図2に示した。
<光学特性と官能評価>
実施例及び比較例で得た測定用サンプルを用いて、以下の膜厚、光学特性、鉛筆硬度を測定、及び官能評価を行なった。
(1)膜厚
サーフコーダー(小坂研究所製、ET−4000A)を用いて測定した。
(2)ヘーズ、全光線透過率
測定用サンプルのヘーズ、全光線透過率を、JIS K7136:2000、JIS K7361−1:1997の規格に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機製、HZ−T)を用いて測定した。得られた結果を表3に示した。
(3)(Y)、(Y
測定用サンプルの(Y)、(Y)を、分光変角色差計(日本電色工業製、GC5000)を用いて測定した。入射光の光源をD65光源、視野を2度視野とし、付属の標準白色板を用いて校正し、入射角度を45°として透過測定を行い、入射角度に対して45°ずれた角度(主面の法線方向)での透過方向の散乱光の輝度(Yxy表色系におけるY)として(Y)を得た。また同様に、入射光の光源をD65光源、視野を2度視野とし、付属の標準白色板を用いて校正し、入射角度を45°として反射測定を行い、入射角度に対して45°ずれた角度(主面の法線方向)での反射方向の散乱光の輝度(Yxy表色系におけるY)として(Y)を得た。得られた結果を表3に示した。
(4)鉛筆硬度
測定用サンプルにおける可視光散乱性被膜側の鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4:1999の規格に準拠して測定した。得られた結果を表3に示した。
(5)官能評価
実施例及び比較例で得た測定用サンプルを用いて、以下の方法で官能評価を行なった。なお、いずれの評価時も、測定用サンプルの映像表示面が床に対して垂直になるように測定用サンプルを設置した。得られた結果を表3に示した。
[透明性]
測定用サンプルの透過方向側の面に対し垂直方向へ1m離れた位置に観察者が立ち、投影側の面から3m離れた位置に置いた物体を、該透明スクリーン越しに目視で観察することで、透明スクリーンの透過視認性を評価した。これを透明スクリーンの透明性とする。なお、この評価は、室内の環境照度を200ルクスとした場合と、1500ルクスとした場合との2条件で行われた。各評価基準を以下に示す。
1:物体がはっきりと見える
2:物体が白っぽく見える
3:物体が大まかに認識できる
4:物体がほとんど見えない
評価1及び2を合格とした。
[投影像の視認性]
市販のプロジェクター(ASUS製P3B)を用いて、各測定用サンプルに映像を表示させ、投影像の視認性について評価した。この時、測定用サンプルの中央部に対し角度45°で投影光を入射させ、測定用サンプルにカラー映像を投影し、映像の視認性を確認した。
映像の観察は測定用サンプルの透過方向側から行い、該測定用サンプルに対して正対し、視認角度を変えながら観察するものとする。なお、室内の環境照度を200ルクスとした場合と、1500ルクスとした場合との2条件で評価を行った。また、プロジェクターの解像度はWXGA(1280x800)、投影像のサイズはおよそ320x200mmで固定した。各評価基準を以下に示す。
1:投影された映像が極めてはっきりと見える
2:投影された映像が見える
3:映像が薄い、もしくは映像のコントラストが低くてめりはりがない
4:映像が見えない
評価1及び2を合格とした。
<測定用サンプルの作製>
以下に記載する方法で、各測定用サンプルを作製した。また、用いたダイヤモンド粒子、各膜の組成比、及び膜厚を表2、3に記載した通りとした。
[実施例1]
(基材の準備)
200mm角で板厚4mmのクリア系のフロートガラス板の表面を酸化セリウムで研磨した後、イオン交換水で洗浄後、乾燥させてガラス基材を準備した。
(可視光散乱性被膜形成塗布液の調製)
表1にdiamond3として示される粒度分布を有する多結晶ダイヤモンド粒子2gと、イオン交換水38gを混合し、超音波洗浄槽にて25℃で10分間超音波分散し、さらにポリ−N−ビニルアセトアミド(PNVA、昭和電工製、重量平均分子量90万)の10質量%水溶液を10g加えて攪拌して、分散液A(ダイヤモンド濃度:4質量%)を得た。次に、ガラス容器に、エタノール(20.69g)、イオン交換水(4.79g)、PNVA10質量%水溶液(0.56g)、テトラエトキシシラン(TEOS、2.49g)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、1.06g)、及び1規定硝酸(0.23g)を加え、更に上記の分散液A(0.19g)を加え、室温(20℃)で2時間攪拌して、可視光散乱性被膜形成塗布液(全固形分濃度5質量%、内、多結晶ダイヤモンド粒子0.5質量%)を得た。
なお、上記の全固形分は、(1)多結晶ダイヤモンド粒子、(2)PNVA、(3)TEOSのSiO換算分、(4)GPTMSのR−SiO3/2換算分(Rは、3−グリシドキシプロピル基)の合計値(1)+(2)+(3)+(4)とした。
Figure 2021179454
(光散乱性被膜の形成)
ガラス基材の一方の表面に、前記可視光散乱性被膜形成塗布液をスピンコート法にて膜厚が2μmとなるように塗布した後、260℃の電気炉内で10分間焼成し、光散乱性被膜の形成されたガラス基材である透過型透明スクリーンを作製した。尚、本実施例と、以下で述べられる各実施例の、可視光散乱性被膜中の各成分の濃度(質量%)は、表2に、各比較例の可視光散乱性被膜中の各成分の濃度(質量%)は表3にまとめられた。各実施例、各比較例で使用されたダイヤモンド粒子のサンプル番号は、その表2、3内に明記されている。
Figure 2021179454
Figure 2021179454
上述のようにして得られた透過型透明スクリーンに対して、前記した、可視光散乱性被膜層の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、(Y)、(Y)、鉛筆硬度を評価し、さらに官能評価を行った。結果を表4に示す
Figure 2021179454
Figure 2021179454
[実施例2〜8]
表2に示した組成となるように可視光散乱性被膜形成塗布液を調製し、実施例1と同様に透過型透明スクリーンを用意した。結果を表4に示す。
[実施例9]
表2に示した組成となるように、可視光吸収体としてカーボンブラック(東海カーボン製Aqua−Black162、D50:110nm)を含有させた可視光散乱性被膜形成塗布液を調製し、実施例1と同様に透過型透明スクリーンを用意した。結果を表4に示す。
[比較例1]
実施例1のガラス基材を透過型透明スクリーンとした。結果を表5に示す。
[比較例2〜比較例17]
表2に示した組成となるように可視光散乱性被膜形成塗布液を調製し、実施例1と同様に透過型透明スクリーンを用意した。結果を表5に示す。
実施例3、比較例7のそれぞれで得られた透明スクリーンを、1500ルクスの環境照度で、投影像を表示させたときの映像写真を図3に示す。図3では、左側が実施例3、右側が比較例7である。(Y)の評価から、いずれもほぼ同等の投影像の輝度を示すことが分かるが、実施例3の方が、比較例7よりも映像が鮮明で、投影された文字をより認識しやすいものであることがわかる。
前記透過型透明スクリーン1は、投影機4との組合せにて、デジタルサイネージ等に用いられる映像投影システムを構成することができる。前記投影機4として、汎用されているプロジェクターが使用されてもよい。前記映像システムを商業施設などに設置する場合、投影側は店舗側で、透過方向側は通路側となるように配置される。このレイアウトとすると、通路に高い照度の照明が供されても、前記透明スクリーンに投影された投影像は通路側から視認されやすいものとすることができる。

Claims (13)

  1. 透明基材と、前記透明基材上の可視光散乱性被膜とを備える透過型透明スクリーンであって、
    前記可視光散乱性被膜は、
    被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、
    前記媒体中に分散された、可視光を散乱させるダイヤモンド粒子と、を含み、
    前記透明スクリーンの投影側主面の法線方向から45度の角度の投影光に対する、
    透過方向側の法線方向の散乱光輝度(Y)が2.8以上であり、
    前記透明スクリーンの透過方向側主面の法線方向から45度の角度の照明光に対する、
    反射方向の法線方向の散乱光輝度(Y)が11未満であり、
    (Y)と(Y)との比:(Y)/(Y)が5.5以上であり、
    全光線透過率が50%以上であり、
    前記(Y)と、%オーダーのヘーズ値との比:(Y)/ヘーズが0.5以上であり、
    投影機と照明光の光源との間に配置されて用いられる
    ことを特徴とする透過型透明スクリーン。
  2. 前記ダイヤモンド粒子が、動的光散乱法により水中での体積分布を測定して得られた粒度分布における累積50%粒径(D50)が320nm〜550nm、
    累積10%粒径(D10)が、前記D50の1/2以上、
    累積90%粒径(D90)が850nm以下である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の透明スクリーン。
  3. 前記D50が、360nm〜550nmであることを特徴とする請求項2に記載の透明スクリーン。
  4. 前記可視光散乱性被膜は、可視光吸収性かつ可視光非散乱性粒子を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の透明スクリーン。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の透明スクリーンの製造方法であって、
    可視光散乱性被膜形成塗布液を調製する工程と、
    透明基材の表面に前記可視光散乱性被膜形成塗布液を塗布し、乾燥し、加熱硬化する工程と、
    を含み、
    前記可視光散乱性被膜形成塗布液は、
    溶媒と、
    ダイヤモンド粒子と、
    被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の前駆体と、を含み、
    前記散乱光輝度(Y)及び(Y)を前記ダイヤモンド粒子の粒度分布によって調整する
    ことを特徴とする、
    透明スクリーンの製造方法。
  6. 前記ダイヤモンド粒子は、動的光散乱法により水中での体積分布を測定して得られた粒度分布における累積50%粒径(D50)が320nm〜550nm、
    累積10%粒径(D10)が、前記D50の1/2以上、
    累積90%粒径(D90)が850nm以下であることを特徴とする、
    請求項5に記載の透明スクリーンの製造方法。
  7. 前記可視光散乱性被膜形成塗布液は、重量平均分子量50万超300万以下の親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の透明スクリーンの製造方法。
  8. 前記ダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記親水性ポリマーの質量(B)とが、質量比A/Bにおいて、0.02〜25である、請求項7に記載の透明スクリーンの製造方法。
  9. 前記可視光散乱性被膜形成塗布液が、さらに可視光吸収性かつ可視光非散乱性粒子を含む、請求項5乃至8のいずれかに記載の透明スクリーンの製造方法。
  10. 前記加熱が、200℃以上で行われる請求項5乃至9のいずれかに記載の透明スクリーンの製造方法。
  11. 前記ダイヤモンド粒子は、単一ピークの粒度分布を備えることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の透明スクリーンの製造方法。
  12. 投影機と、
    請求項1乃至4のいずれかに記載の透過型透明スクリーンと、前記透明スクリーンを挟んで反対側に配置された照明用光源と、
    を含む、映像投影システム。
  13. デジタルサイネージシステムとして用いられることを特徴とする請求項12に記載の映像投影システム。

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