JP6726536B2 - 多結晶ナノダイヤモンドを分散させた光散乱性被膜及び光散乱性被膜形成用塗布液 - Google Patents

多結晶ナノダイヤモンドを分散させた光散乱性被膜及び光散乱性被膜形成用塗布液 Download PDF

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Description

本発明は、多結晶ナノダイヤモンドを分散させた光散乱性被膜に関し、特に、透明性及び光散乱性(鮮鋭性)に優れた光散乱性被膜に関するものである。
街の商業ビルのショーウィンドウや、案内板等に、光透過性を保持したまま広告等の情報を投影表示する透明スクリーンが、建築物分野において近年注目を集めている。また、建築物の分野だけでなく、自動車のフロントガラスに位置情報等を投影するディスプレイとしての透明スクリーンの利用も近年盛んに研究されており、自動車分野でも注目を集めている。
従来、透明スクリーンとして、2枚のガラスの間にホログラムを封入した合わせガラスタイプや、透明基材表面に光散乱体を含有する樹脂フィルムを貼ったフィルムタイプ、光散乱体を透明基材に練りこんだパネルタイプ、透明な分散媒体中に光散乱体を分散させた光散乱性被膜をガラス等の透明基材表面に塗布した塗膜タイプなどが知られている。
ショーウィンドウや、案内板等に用いられる透明スクリーンは、正面からだけでなく、斜めからも見られることが多く、スクリーン面の外観が白濁等しておらず、光散乱性が良好なことや、斜めの角度からでもスクリーン面の映像を鮮明に見られることが求められる。
また、歩行者や、自動車のドライバーが、透明スクリーンの表面に触れることが想定される用途においては、塗膜タイプの場合は簡単には表面の塗膜が剥がれないように、実使用に耐えうる硬度を有する透明スクリーンが望まれている。
特許文献1には、ナノダイヤモンド粒子をポリビニルアルコール(PVA)によって被覆(表面改質)し、これを更にシクロオレフィンポリマー(COP)中に分散させてなる「ナノダイヤモンド複合体」が開示されている。当該「ナノダイヤモンド複合体」を含有する樹脂シートは、透明性が高く、かつ適度な光散乱性を有するため、当該樹脂シートをガラス基板上に配置することによって、優れた透明光拡散体が得られることが、記載されている。
特許文献2には、高屈折率ナノ粒子として、ナノダイヤモンドを用い、これをポリビニルアルコール(PVA)又はシクロオレフィンポリマー(COP)中に分散させた上で、シート(ナノダイヤモンド複合体)に成型する技術が開示されている。このシート(ナノダイヤモンド複合体)は、透明であり、かつ良好な光散乱性を兼ね備えるため、透明スクリーン用に好適に使用できることが報告されている。
特許文献3には、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、透明ポリマービーズなどの微粒子を光拡散材とし、これらを反応性シリル基含有エポキシ化合物の存在下、ポリエステル系樹脂等の媒体(結合剤)に分散させてなる、光拡散層形成用塗布液が開示されている。該塗布液をガラス基材上に塗布し、乾燥・硬化したところ、密着性、透明性に優れた、光拡散板が作製できたことが報告されている。
特許文献4には、ダイヤモンド微粒子のコアと有機ポリマー又はシリカのシェルとからなるコア/シェル型複合粒子を作製し、この粒子を光散乱体としてポリビニルブチラール樹脂中に分散させ、塗膜を得る技術が開示されている。該塗膜をガラス表面に接着させたところ、優れた透過型の透明スクリーンが得られたことが、記載されている。
特許文献5には、特定の方法で製造したダイヤモンド粒子、及びガラス質材料粉末(ガラスフリット)を、アクリル樹脂、酢酸セルロース等の媒体(バインダー)に分散させて塗料を作製する技術が開示されている。該塗料をガラス基材に塗装したところ、光散乱性(映像の鮮鋭性)と透明性を両立する透過型の透明スクリーンが得られたことが、記載されている。
特開2013−164569号公報 特開2014−153708号公報 再公表WO2008−016088号公報 特開2011−113068(特許5214577)号公報 特開2011−215568(特許5255023)号公報
実用上、透明性の要求されるガラス等に対する「映像の鮮鋭性」の要求度は高い。その点、上記の通り、特許文献1〜5においては、光拡散材(高屈折率粒子)を有機高分子(樹脂)に分散させ、得られた高屈折率粒子/有機高分子の複合体を、ガラス等の基材上に配置することによって、透明性と光散乱性(映像の鮮映性に対応する)を両立する透過型の透明スクリーンを作製することに、成功している。
しかしながら、これらは何れも有機高分子(樹脂)を媒体とするものである。一方で、これらの媒体を配置する基材として最も典型的なのは、無機物質である「ガラス」である。すなわち、これらの発明においては、ガラスを基材として用いる場合、「有機高分子(樹脂)」と「ガラス」という、異質なものどうしを接着させることになる。このため、両者の接着において、密着性を確保することが比較的難しい、という技術的制約があった。
なお、上記特許文献1〜5の技術によっても、ガラス基材と被膜の間の一定の密着性は満足する。しかし、風雨に晒されたり、日光に晒されたりする場所に設置される透明スクリーンなど、耐久性を要求される場合には、ガラス基材に対する密着性の一段と高い「無機酸化物高分子(例えばシリカ高分子)」を媒体とする光散乱性被膜の開発が、求められていた。
ところが、ナノダイヤなどの高屈折率粒子を、無機酸化物高分子中に良好に分散させることは大変難しい。本発明者らが種々検討を行った限り、「透明性」と「光散乱性」が両立する光散乱性被膜は、簡単に作製できるものではなかった。つまり、「透明性」を確保しようとすると、「光散乱性」は十分でなく、逆に「光散乱性」を確保しようとすると、「透明性」が十分でなく、無機酸化物高分子を媒体とする場合には、光散乱性被膜はなかなか作製することができなかった。
従って、本発明の課題は、多結晶ナノダイヤモンドのような高屈折率粒子を、シリカなどの無機酸化物高分子媒体に分散させることより、風雨に晒されたり、日光に晒されたりする屋外の場所に設置される場合においても優れた耐久性を有する光散乱性被膜を提供するとともに、同時に、透明性と、光散乱性との両立性を図ることのできる光散乱性被膜を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、(1)多結晶ナノダイヤモンド粒子と、(2)前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも小さい屈折率を有し、かつ光散乱性被膜が適用される透明基材に対して付着性を有する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、(3)該多結晶ナノダイヤモンド粒子と、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体との間に介在して、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の凝集を防止する有機高分子凝集防止剤とを組合せることにより、優れた耐久性と、両立された透明性及び光散乱性と、を有する光散乱性被膜が得られることを見出した。特に、多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)と、有機高分子凝集防止剤の質量(B)と、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)との合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)が0.1〜10.0質量%であり、かつB/Aが0.05以上とすると、優れた透明な光散乱性被膜が得られた。この特徴は、少量の単結晶ナノダイヤモンド粒子では得られず、少量の多結晶ナノダイヤモンド粒子において、優れた光散乱性被膜が得られたことは、予想外のことであった。この光散乱性被膜をガラスなどの透明基材上に設けることにより、透過型の透明スクリーンが得られる。また、透明基材と光散乱性被膜の間や光散乱性被膜の上に高屈折率の透明層を設けることにより、反射型の透明スクリーンが得られ、光散乱性被膜の上層に金属層を設けることにより、ミラー型スクリーンが得られる。
本発明によれば、耐久性に優れた光散乱性被膜を提供するとともに、同時に、透明性と、光散乱性との両立性を図ることのできる光散乱性被膜を提供出来る。
光散乱性を評価する方法を概念的に示す透過型の透明スクリーンに関する図である。 光散乱性を評価する方法を概念的に示す反射型の透明スクリーンに関する図である。 光散乱性を評価する方法を概念的に示すミラー型スクリーンに関する図である。 透過型の透明スクリーンの一例を模式的に表した図である。 反射型の透明スクリーンの一例を模式的に表した図である。 ミラー型スクリーンの一例を模式的に表した図である。
本発明は、このような新規な知見に基づいて創作された発明である。
本発明で使用される透明基材は、耐熱性、耐候性などの耐久性などの性質を有するものであれば、特に限定されることなく、各種の基材を使用することができる。透明基材としては、典型的には、ガラス基板であるが、ガラス材料としては、強化ガラスや、フィルム付着ガラス、合わせガラスなどが挙げられ、材質からは、ソーダ石灰ガラスやアルミノシリケイトガラス、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスなど、各種のガラス材料を板状にして使用することができる。その他の透明基材としては、プラスチック製の樹脂板やフィルム基材、例えば、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、その他のプラスチック製の透明基材を使用することできる。耐熱性や、耐候性などの耐久性の点からは、プラスチック製の透明基材よりも、ガラス等の金属酸化物の透明基材が好ましい。
ガラス板等の透明基材は、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体との密着性を確保するために、酸化セリウム等で予め充分に研磨し、表面の汚れ等を丁寧に除去しておくことが好ましい。
透明基材は、通常、矩形の形態で使用されるが、その他の形態、例えば、円形や、楕円形、三角形など各種の形状であってもよい。
大きさは、用途に応じて、適宜決められるものである。また、厚みは、用途に応じて、例えば、使用される態様において必要とされる強度などに通常設定される。
透明基材としては、表面が平坦な基材だけでなく、表面に凹凸がある基材やパターンを形成した基材や、曲率を持った形状の基材でも良い。表面に凹凸がある基材やパターンを形成した基材に光散乱性被膜を塗布した透明スクリーンやミラー型スクリーンでは、光散乱性に加えて表面の凹凸やパターンによる光学反射の効果も得られ、表面が平坦な基材に光散乱性被膜を形成した透明スクリーンやミラー型スクリーンとは異なる外観を得ることが出来る。例えば、透明スクリーンやミラー型スクリーンを見る角度によって色が変わる、ホログラムのような外観を得られ、意匠性を高めることができる。
本発明で使用される多結晶ナノダイヤモンド粒子は、市場において容易に入手可能であり、例えば、商品として、V−ダイヤ(ビジョン開発製)やスミダイヤ(住友電気工業製)などとして、購入することができる。多結晶ナノダイヤモンドは、単結晶ナノダイヤモンドとは異なり、劈開性を有さず、また、硬度も高く、摩耗し難い性質を有する。
多結晶ナノダイヤモンドの製造方法は、既に公知であり、例えば、WO2013015347号公報や、特表平9−509005号公報などの多くの文献に記載されている。
多結晶ナノダイヤモンド粒子は、通常、可視光に対する光散乱体として使用できるように、ミー散乱が起こる程度の平均粒径(150〜550nm)に調整して使用される。ここで言う平均粒径は、動的光散乱法によりエタノール溶媒中での体積分布を測定して得られた粒度分布におけるD50値(累積50%粒径)としての平均粒径を意味する。
本発明においては、多結晶ナノダイヤモンド粒子の平均粒径は、150〜550nm、好ましくは、150〜350nmであることが好ましい。平均粒径が150nmより小さいと、光散乱性被膜の光散乱性を向上させにくい。一方、平均粒径が550nmより大きいと、光散乱性被膜の外観が、白濁等の不良を生じやすくなる。
粒度の調整は、例えば、ビーズミルなどを用いた粉砕操作や、濾過、遠心分離、デカンテーションなどの分級操作により、容易に行うことができる。なお、比較的大きな粒子、例えば、平均粒径800〜10000nm、好ましくは、1000〜8000nm程度の多結晶ナノダイヤモンド粒子をわずかに含むと、少量で高い輝度(鮮鋭度)を有する光散乱性被膜を得ることができる。その場合、比較的大きな粒子は、全体の多結晶ナノダイヤモンド粒子の中で、例えば、0.1〜5体積%、好ましくは、0.3〜3体積%で存在させることが好ましい。多結晶ナノダイヤモンド粒子は、屈折率(n)が高く、通常、2.42程度を有する。
多結晶ナノダイヤモンド粒子は、複数の結晶ドメイン(数10〜数100nm)が粒子中に存在しており、切削剤として用いられることがあることから分かるように、硬度が高い密な構造をもつ粒子である。一方、類似のナノダイヤモンド粒子として、単結晶ナノダイヤモンド粒子があるが、単結晶ナノダイヤモンド粒子は一般に、2〜10nm程度のナノサイズの一次粒子が凝集してなる平均粒径30〜250nmの二次粒子凝集体であり、多結晶ナノダイヤモンド粒子のほうが密な構造である。そのために多結晶ナノダイヤモンド粒子の方が、見かけの屈折率の点で有利となり、被膜に添加するナノダイヤモンド粒子の量が比較的少なくても、十分な光散乱特性を有する被膜が得られる。それに伴って、有機高分子凝集防止剤の添加量も少なく出来るため、耐久性の面で好ましい。
本発明で使用される被膜形成性酸化物網目状高分子媒体は、ガラスなどの透明基材との密着性がよく、光散乱性被膜の耐久性を付与するとともに、その被膜形成性酸化物網目状高分子媒体において、多結晶ナノダイヤモンド粒子を均一に分散された状態で保持する媒体であり、透明基材に塗布された後には、透明基材とともに、透明性を示すものが使用される。このような被膜形成性酸化物網目状高分子媒体としては、多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも小さいものが使用される。被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の屈折率が大きく、多結晶ナノダイヤモンド粒子との屈折率差が小さい場合には、実質的に光散乱が生じないために、光散乱性被膜として用いることが困難になる。
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の屈折率としては、例えば、1.2〜2.0、好ましくは、1.2〜1.6程度であることが好ましい。
本発明においては、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体として使用されるものとしては、ケイ素や、チタン、ジルコニウム、鉄、亜鉛、錫、ハフニウム、タングステンなどの原子を中心として、酸素原子を介して、網目状に高分子化した無機酸化物高分子であり、例えば、シリカ等のケイ素酸化物や、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ハフニウム、酸化タングステンなどの原料又は出発材料を挙げることができ、またこれらを混合して用いることもできる。これらは何れも、最終的に光散乱性被膜を形成するまでに、酸素原子を介して、中心元素(金属・半金属原子)が互いに結合し合い、網目上の無機酸化物高分子構造を有する膜となる。中でも、ケイ素酸化物が、環境にとりわけ優しい材料である点や、耐久性が高い点から特に好ましく、また、その屈折率が、1.40〜1.45の範囲にあり、多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも低く、好適である。
有機高分子凝集防止剤は、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、多結晶ナノダイヤモンド粒子が、分散して保持されるようにする機能を有するものである。多結晶ナノダイヤモンド粒子の分散状態は、当業者であれば、例えば、走査型電子顕微鏡などの装置を使用して容易に確認することができる。分散不良により多結晶ナノダイヤモンド粒子が凝集してしまうと、多結晶ナノダイヤモンド粒子のみかけの粒子径が大きくなり、散乱モードがミー散乱から幾何散乱となってしまうため、透明性が失われる。有機高分子凝集防止剤は、透明性と光散乱性との両立を達成するために重要な働きをする。
このような有機高分子凝集防止剤としては、親水性重合体(側鎖として、水酸基や、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、チオール基、ラクタム構造といった親水性部位を有する重合体をいう)が、好ましく、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)や、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、ポリビニルアミン、ポリビニルアセトアミドなどの親水性ポリビニル化合物を始め、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。中でも、ポリビニルピロリドンは、優れた光散乱性被膜を形成する上で、一層好ましい。
有機高分子凝集防止剤の分子量は、質量平均分子量として、好ましくは、20万〜50万、更に好ましくは、30〜40万が好適である。該質量平均分子量が20万より小さ過ぎると、塗布液中での高屈折率粒子と、溶媒や水との親和性を向上させにくく、高屈折率粒子の分散性を向上させる効果が小さくなり、結果として被膜の外観に不具合が生じることがある。一方、該質量平均分子量が50万より大き過ぎると、塗布液中での多結晶ナノダイヤモンド粒子の被膜形成性酸化物網目状高分子媒体における分散が不十分と成り易く、結果として光散乱性被膜の外観に不具合が生じ易い。但し、有機高分子凝集防止剤の分子量が比較的小さい場合においても、高濃度の溶液として多結晶ナノダイヤモンド粒子を分散させるなどの工夫をすることにより、比較的分子量が小さい場合でも本発明の光散乱性被膜を製造することは可能である。
本発明の光散乱性被膜は、溶媒中において、以下の成分から構成される光散乱性被膜形成用塗布液により形成することができる。
(1)多結晶ナノダイヤモンド粒子。
(2)前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも小さい屈折率を有し、かつ前記透明基材に対して付着性を有する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体。
(3)該多結晶ナノダイヤモンド粒子と、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体との間に介在して、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の凝集を防止する有機高分子凝集防止剤。
この光散乱性被膜形成用塗布液は、多結晶ナノダイヤモンド粒子の分散性を考慮すると、多結晶ナノダイヤモンド粒子の分散液(第1液)、有機高分子凝集防止剤又はその溶液又は分散液(第2液)、そして、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の溶液又は分散液(第3液)を予め準備しておき、順次又は同時にこれらの液を混合することによって調製することができる。これらの添加順序は、当業者には自明である。
溶液又は分散液として混合される場合に使用される有機溶媒として、メタノールや、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、エチルラクテート、ブチルラクトン、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、2−プロパノン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルブチル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、モルフォリン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を用いることが出来る。これらの溶媒は、準備する液の種類(第1液、第2液及び第3液)に含まれる成分の種類に応じて、適宜選択される。
多結晶ナノダイヤモンド粒子や、有機高分子凝集防止剤、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と溶媒との混合分散は、例えば、超音波ホモジナイザーや、超音波槽、高圧ホモジナイザー、ビーズミル、ジェットミルによって行うことが好ましい。必要に応じて遠心分離などで分級しても良い。
水や、メタノール、エタノールは、多結晶ナノダイヤモンド粒子を分散しやすく、好ましい。
第1液における多結晶ナノダイヤモンド粒子の割合は、一般に、0.1〜20質量%、好ましくは、2.0〜15質量%であることが適当である。
第2液における有機高分子凝集防止剤を溶液又は分散液として使用する場合には、その割合は、一般に、10〜40質量%、好ましくは、15〜30質量%であることが適当である。
第3液における被膜形成性酸化物網目状高分子媒体としての固形分は、一般に、0.5〜30質量%、好ましくは、5〜15質量%であることが適当である。
第3液の調製においては、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を構成するための成分又はモノマーに、重合に必要な成分、例えば、水や、酸を添加しておくことが好ましい。
例えば、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を、酸化ケイ素のポリマーとして形成する場合には、テトラエトキシシランのようなテトラアルコキシシランと、必要に応じて、官能基を有するアルキルトリアルコキシシラン、例えば、γ−グリシドキシプロピルシランなどと一緒に、硝酸などの酸により、溶媒中で加水分解させることにより、形成されるが、それらの原料を水(精製水)や、その他の溶媒の存在下に配合することにより調製することができる。ケイ素原子以外の原子を中心として、酸素原子を介して重合する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の分散液の調製は、ケイ素原子についての上記説明に準じて、同様に調製することができる。
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の原料としては、具体的には、シロキサンポリマー(シリカ)を形成する場合を例にとると、R1 4-a−Si−Xa(但し、R1は、水素原子、又は、アルキル基などの一価の有機基、Xは、炭素数1〜3のアルコキシ基又はハロゲン、aは、1〜4の整数)から選ぶことができる。それらは次の(a)及び(b)の2つのタイプに分類できる。
(a)タイプ:上記式において、aが4である場合。この場合、Siの4つの結合手の全てが加水分解を受けて水酸基に変換する構造を有する。具体的には、テトラエトキシシランや、テトラメトキシシラン、テトラクロロシランなどが挙げられる。
(b)タイプ:上記式において、aが、1、2又は3である場合。この場合、Siの4つの結合手の一部のみが加水分解を受けて水酸基に変換する構造を有する。残るR1基は、不変のままである。具体的には、モノメチルトリエトキシシランや、モノメチルトリメトキシシラン、トリクロロシラン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジクロロシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。例えば、次のγ−グリシドキシプロピルシラン
Figure 0006726536
は、加水分解処理を行うと、3つのメトキシ基は全て加水分解され、Si−O−Siの網目構造の形成に関与することになる。「γ−グリシドキシプロピル基」は、そのような網目構造の形成には関与せず、Si−O−Si結合による網目構造とは別の「側鎖」として、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中に残り、任意の機能を発揮する。このような基を残す被膜形成性酸化物網目状高分子媒体も、本発明の被膜形成性酸化物網目状高分子媒体として有効に機能する。
上記原料の中で、特に、テトラエトキシシラン(TEOS)と、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)とを併用すると、例えば、1〜15μmの膜厚で光散乱性被膜を安定的に得やすいなどの利点が生じる。両者の混合比に特別な制限はないが、TEOSをSiO2に質量換算し、GPTMSをR−SiO3/2(Rは、γ-グリシジルオキシプロピル基)に質量換算して計算した場合に、TEOS 99〜30%に対して、GPTMS 1〜70%の割合で、好ましくは、TEOS 70〜40%に対して、GPTMS 30〜60%の割合で用いることが好適である。
本発明の光散乱性被膜形成用塗布液中には、有機溶媒は、例えば、1〜99質量%、好ましくは、50〜95質量%含有してもよい。有機溶媒は、最終的に基材に塗布された後は揮発し、被膜中には残らない。有機溶媒は、多結晶ナノダイヤモンド粒子を有機高分子凝集防止剤を利用して被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中に、円滑に分散させ、塗布を容易化するために、比較的多めに有機溶媒を使うことが望ましい。多結晶ナノダイヤモンド粒子を有機溶媒に分散させるに際して、分散液に対する多結晶ナノダイヤモンド粒子の含量は、例えば、1〜10質量%が好ましい態様の1つである。なお、必要に応じて、他の成分を追加する場合には、有機溶媒を追加し、分散状態を良好に保つことが好ましい。
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を形成する場合、水や、酸も共存させてもよい。酸や水によって腐食される基材でない限り、水や、酸が共存していても、光散乱性被膜形成用塗布液として何ら問題はない。例えば、基材がガラスである場合、塗布液中に水、酸が共存していても何ら問題はない。これら水、酸は、最終的には揮発して、被膜の構成成分ではなくなる。
光散乱性被膜形成用塗布液には、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の原料の加水分解・重縮合反応を進行させるために水が添加される。原料として液体の水や水溶液を用いても良いし、大気中から取り込まれる水分を利用しても良い。また、別途加える酸が、水溶液である場合には、その水でも代用できる。
光散乱性被膜形成用塗布液中には、水は、例えば、0.1〜60質量%含有することができる。被膜形成性酸化物網目状高分子媒体がシリカである場合、TEOSなどの加水分解は、触媒的に進行する。そのため、一般にはそれほど過剰な量の水は必要とされない。原料の量(合計)が1gであれば、水の量は、例えば、0.1〜1gで足りることが多く、これも当業者の知識で最適化できる。
光散乱性被膜形成用塗布液において、加水分解や重縮合反応を促進するために酸が添加される。光散乱性被膜形成用塗布液に用いる酸としては、硝酸や、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、クエン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、グリコール酸等を用いることが出来る。この中では硝酸が、入手が容易である上、加水分解作用が大きく、光散乱性被膜形成用塗布液を円滑に製造できるので、好ましい。
本発明の光散乱性被膜形成用塗布液中の酸の濃度は、例えば、0.001〜1質量%であることが好ましい。0.001質量%より少な過ぎると、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の原料の加水分解や重縮合反応を促進する効果が小さく、1質量%より多過ぎると上記反応が早く進み過ぎて、塗布液のポットライフが短くなりやすい。
また、光散乱性被膜形成用塗布液中には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の界面活性剤や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤等の成分が含有されていてもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤(商品名「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−370」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−3455」、以上BYK社)や、アクリル系界面活性剤(商品名「BYK−350」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−392」、「BYK−394」、「BYK−3441」、以上BYK社)、フッ素系界面活性剤(メガファック、DIC社)等が挙げられる。
光散乱性被膜形成用塗布液をガラスなどの透明基材の表面に塗布する場合には、生産性などの面からは、例えば、スピンコート法、バーコート法、リバースロールコート法、その他のロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ノズルコート法、ディスペンサーコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの公知手段が採用でき、適宜マスキングすることにより、部分的な成膜はもちろん、任意の形状、図柄に被膜を形成することができる。なお、これらの塗布法で塗布成膜する際の光散乱性被膜形成用塗布液中の全固形分濃度としては0.1〜20質量%、好ましくは、1〜10質量%程度が好ましい。
光散乱性被膜形成用塗布液を基材に塗布した後、基材を加熱して、該基材表面に光散乱性被膜を形成する。加熱温度は、例えば、40〜300℃、好ましくは、50〜250℃であり、加熱温度は、例えば、1〜240分間、好ましくは、5〜120分間であることが好適である。加熱は、常圧下だけではなく、加圧下や、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。
上記の加熱温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、光散乱性被膜が形成される基材は特に限定されるものではない。例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されているフロート板ガラス、又はロールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス、又はダウンドロー法で製造されたガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。基材の厚みは適宜選択すればよく、薄いものを用いて浮遊感のある外観を得たり、厚いものを用いて立体感のある外観を得たりできる。また、安全性などの観点から、基材として強化ガラスや、フィルム貼付ガラス、合わせガラスを使用することができ、省エネなどの観点から、透明基材として複層ガラスを使用することができる。更に、光散乱性被膜と基材との間や、光散乱性被膜の上層に屈折率を調整する層を形成していてもよいし、基材の光散乱性被膜側、及び光散乱性被膜が塗布されていない反対側の面に低反射層や低放射層、防汚層、防曇層などを形成していてもよく、既知のスパッタリングなどの物理成膜法、化学蒸着や、湿式コーティングなどの化学成膜法、フィルム貼付にて形成できる。低反射層としては誘電体多層膜やフッ素化合物を用いた膜、シリカ膜、中空粒子を用いた膜などが挙げられる。低放射層としては銀を用いた多層膜が挙げられる。防汚層としてはシリコーン系化合物やフルオロアルキル基を持つ化合物、フルオロエーテル構造を持つ化合物を含む低表面エネルギーの膜、親水性膜、光触媒性膜などが挙げられる。防曇層としては透明酸化物導電膜や金属ワイヤグリッド(温度を上げて結露を防止する方法)、吸水性膜(結露水を吸収する方法)、超親水性膜やナノ凸凹構造膜(結露水を薄膜化する方法)などが挙げられる。
本発明における光散乱性被膜を有する透明スクリーンは、通常はプロジェクターなどの映像を投射する映写装置と組み合わせて使用される。透明スクリーンにセンサーをつけることでタッチスクリーンとし、ユーザーと双方向通信することは容易であり、抵抗膜式、静電容量式、赤外線式、カメラ式など公知のセンサーを選択して組み込み、汎用のコンピュータなどで制御すればよい。映像と連動して音を生じさせるスピーカーを組み合わせてもよく、更にはスクリーン自体を振動体として振動させ、音を発生させることもできる。
本発明の光散乱性被膜を利用する反射型の透明スクリーンは、光散乱性被膜の上層、又は基材と光散乱性被膜の間に、酸化チタンや窒化チタン、ステンレスなどを含む、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体よりも高い屈折率の透明層又は透明基材(以下、高屈折率層とも呼ぶ)を設けることで形成できる。このような構成にすると、該高屈折率層による光反射によって散乱光強度が増強され、フロントプロジェクション用の反射型の透明スクリーンとして用いた場合の映像が鮮鋭化する。該高屈折率層が酸化チタン層である場合は、1〜100nm程度が透明性や光学干渉の点で好ましく、30〜80nmがより好ましい。
本発明の光散乱性被膜を利用するミラー型スクリーンは、光散乱性被膜の上層に、銀などを含む光反射層を設けることで形成できる。光散乱性被膜と光反射層の併用により、光反射層による反射像と光散乱性被膜によるスクリーン映像とを重ねて視認でき、通常の鏡の特性にスクリーン性能を付加したミラー型スクリーンとすることができる。光反射層は、金や、銀、銅、アルミニウムなどの金属を含むことが好ましく、反射率や生産性の観点から銀が好ましい。膜厚は50〜100nm程度以上で光が透過しない厚みがあればよい。金属の酸化を防ぐため、例えば銀の場合は更に上層に犠牲層としての銅、及び裏どめの塗料を塗布することが、建築材料用途として用いられる鏡の構成として一般的である。光反射層は、蒸着法や銀鏡反応などの無電解めっき法を用いて設けることができる。また金属の薄片状粒子を塗布してもよいし、金属層をあらかじめ設けたフィルムを貼付してもよい。
本発明においては、多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)、有機高分子凝集防止剤の質量(B)、及び被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)相互の関係も重要である。特に、多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)、有機高分子凝集防止剤の質量(B)、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)の合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)は0.1〜10.0質量%、好ましくは、0.2〜5.0質量%である。
また、B/Aの比率は0.05以上、好ましくは、0.3以上である。上限としては、例えば、10程度であろう。有機高分子凝集防止剤が、多結晶ナノダイヤモンド粒子に比べて、質量にして0.05倍以上添加されることにより、一見すると意外であるが、透明性と光散乱性との両立が容易に達成できることが興味深い。
なお、本発明における被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)は、加水分解/脱水硬化を完全に行った後の化学形態(シリカであればSiO2)に換算した質量として計算したものである。
本発明の光散乱性被膜においては、多結晶ナノダイヤモンド粒子と、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体が、光散乱性被膜の耐久性や硬度を向上させる効果を持つ。すなわち、多結晶ナノダイヤモンド粒子と、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の含量が高い方が、光散乱性被膜の耐久性をより良好にし、硬度を大きくしやすい。
尤も多結晶ナノダイヤモンド粒子の量(A)は、上記のように、通常、本発明においては10質量%よりも大きい値を取ることがない、又はそれよりも少ない量でよいので、実際上、光散乱性被膜の耐久性に主として寄与するのは、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の量(C)である。そして、この被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の量(C)は、多結晶ナノダイヤモンド粒子の量(A)と、有機高分子凝集防止剤の量(B)の残余の量として決まる。つまり、本発明において[(A+C)/(A+B+C)]を無制限に高めることはできない。
本発明の光散乱性被膜のヘーズは、0.5〜40%が好ましく、2〜30%がより好ましい。ヘーズが0.5%未満では映像の鮮鋭性が十分でなく、40%を超えると透明性が不十分となる。
また、本発明の透過型の透明スクリーンにおける光散乱性被膜の透過率は、60〜99%が好ましく、70〜99%がより好ましい。透過率が60%未満では映像の鮮鋭性が十分でなくなってしまう。
また、本発明の透過型の透明スクリーンにおける光散乱性被膜の光散乱性は、10×10-6以上が好ましく、50×10-6以上がより好ましい。10×10-6未満では映像の鮮鋭性が十分でなくなってしまう。
本発明の透明スクリーンやミラー型スクリーンにおける光散乱性被膜の膜厚は、例えば、1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。1μm未満では、被膜中の多結晶ナノダイヤモンド粒子の単位面積当たりの含有量が小さくなり、光散乱性を良好にし難い。一方、15μmを超えると、被膜の硬度を大きくするのが難しくなり易い。なお、光散乱性被膜中に多結晶ナノダイヤモンド粒子が完全に埋まっている状態、被膜の表面に多結晶ナノダイヤモンド粒子の一部が露出している状態、両状態が混合されている状態のいずれであっても良い。
本発明において、光散乱性被膜は、透明基材などの上に形成されて、透過型の透明スクリーンや、反射型の透明スクリーン、ミラー型スクリーンなどとしての性質を付与するための膜として使用される。その光散乱性被膜は、透明基材の上に塗布することなく、予め光散乱性被膜形成用塗布液自体をそのまま、固化し、その固化したフィルムを、透明基材の上に付着してもよい。また、光散乱性被膜に金属や酸化金属などの膜を形成し、次いで、必要に応じて、基材上に適用してもよい。
上記のように調製された光散乱性被膜は、改善された耐久性を有するとともに、透明性と、光散乱性との両者に優れた光散乱性被膜となる。これまで、耐久性に優れ、かつ透明性と、光散乱性との両者に優れた、光散乱性被膜を設けた透明スクリーンやミラー型スクリーンは、得られていない。
本発明は、第1液、第2液及び第3液を別々に準備したキットの形態で、光散乱性被膜を有する基材を形成するための光散乱性被膜形成用塗布液キットとすることも企図される。
以下において、本発明について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例で得られる光散乱性被膜を有する透明スクリーン、反射型スクリーン及びミラー型スクリーンは、以下に示す方法により品質(特性)評価を行った。実施例で調製された、反射型スクリーン及びミラー型スクリーンは、ガラス基板の片側の全面に光散乱性被膜を有する構成とした。
[外観]
目視にて膜を観察した。表面のブツの有無、ナノダイヤの凝集、膜むらを評価した。
○:いずれの欠陥もなく、良好な外観である。
△:一部分に、ブツやナノダイヤの凝集、膜ムラのいずれか、もしくは全ての欠陥が見られる。
×:全面的に、ブツやナノダイヤの凝集、膜ムラのいずれか、もしくは全ての欠陥が見られる。
[ヘーズ、透過率]
JIS-R3212の規格に従って、ヘーズメーター(日本電色工業製、NDH2000)を用いて測定した。
透過性(%)は、この値が大きいほど、透明性が高いことを示す。
ヘーズ(%)は、この値が大きいほど、白濁していることを示す。
[鉛筆硬度]
JIS-K5600の規格に従って、測定した。
Hに付される数値が大きいほど、膜表面の硬度が高いことを示す。
[膜厚]
サーフコーダー(小坂研究所、ET-4000A)を用いて測定した。
[光散乱性]
透過型の透明スクリーン(実施例1〜28)については、図1に示すように、試料膜面に対して垂直に緑色(550 nm)レーザー光を入射し、散乱光の強度を検出器の角度を変えながら測定した。入射方向に透過した光の強度に対する、試料膜面に垂直に透過する方向から60°傾いた方向における光散乱強度の割合を光散乱性の指標とした。具体的には、光散乱性は、以下の式で評価した。
光散乱性(%)=(60°方向の散乱光強度)/(透過光強度)×100%
反射型の透明スクリーン(実施例29〜33)については、図2に示すように、実施例29〜30の場合は基材面に対して、実施例31〜33の場合は試料膜面に対して、45°の入射角で緑色(550 nm)レーザー光を入射し、散乱光の強度を検出器の角度を変えながら測定した。入射方向に透過した光の強度に対する、試料膜面に垂直に散乱する方向における光散乱強度の割合を光散乱性の指標とした。具体的には、光散乱性は、以下の式で評価した。
光散乱性(%)={(基材面又は試料膜面に対して垂直に反射する方向の散乱光強度)/(透過光強度)}×100%
ミラー型スクリーン(実施例34、35)については、図3に示すように、基材面に対して45°の入射角で緑色(550 nm)レーザー光を入射し、散乱光の強度を検出器の角度を変えながら測定した。正反射した光の強度に対する、試料膜面に垂直に散乱する方向における光散乱強度の割合を光散乱性の指標とした。具体的には、光散乱性は、以下の式で評価した。
光散乱性(%)={(試料膜面に対して垂直に反射する方向の散乱光強度)/(正反射光強度)}×100%
[耐久性;SWOM試験]
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、S80)を用い、JIS K7350−4:2008の規格に従って、耐候性促進試験(SWOM試験)を行った。ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1サイクル60分間のうちの12分間を水噴霧とし、膜面側光照射と基材面側光照射との両方を行った。試験時間1000時間後に試験サンプルを取り出して、透過型の透明スクリーン及び反射型の透明スクリーンの場合は、クラックの発生や膜剥離の確認、透過率及びヘーズの測定を行い、クラックや膜剥離がなく、透過率及びヘーズの変化がどちらも±2%以内のものを合格とした。ミラー型スクリーンの場合は、クラックの発生や膜剥離、白濁、銀の酸化(黒色化)の確認を行い、クラックや膜剥離、銀の酸化がないものを合格とした。
[官能評価/透明性]
実際の目視と、数値測定の結果とを比較しながら決定した。
1:プロジェクタ方向の背景が極めてくっきりと見える。
2: プロジェクタ方向の背景がくっきりと見える。
3: プロジェクタ方向の背景がやや白っぽくなるが十分見える。
4: プロジェクタ方向の背景が白っぽくなるがわずかに見える。
5: プロジェクタ方向の背景が白っぽくなりほぼ見えない。
6: プロジェクタ方向の背景が全く見えない。
[官能評価/鮮映性]
実際の目視と、数値測定の結果とを比較しながら決定した。
1:投射された映像の発色が極めて鮮やかで、輪郭が極めてはっきりと見える。
2:投射された映像の発色が鮮やかで、輪郭がはっきりと見える。
3:投射された映像の発色がよく、輪郭が十分見える。
4:投射された映像が全体的に白っぽく、輪郭が薄い。
5:投射された映像の色合いがほとんど区別できず、輪郭がほとんど認識できない。
6:投射された映像が見えない。
[官能評価/視野角]
実際の目視と、数値測定の結果とを比較しながら決定した。
1:斜め60°方向からでも投射された映像の発色が鮮やかで、輪郭がはっきりと見える。
2:斜め60°方向からでも投射された映像の発色がよく、輪郭が十分見える。
3:斜め60°方向から映像が見えない。
実施例1
(基材の準備)
100mm角で厚さ2.0mmのフロートガラス板の表面を酸化セリウムで研磨した後、イオン交換水で洗浄後、乾燥させてガラス基材を準備した。
(光散乱性被膜形成用塗布液の調製:組成A1)
光散乱性被膜形成用塗布液の成分として、以下の材料を使用した。
多結晶ナノダイヤモンド粒子
ダイヤモンド粒子(ビジョン開発製、商品名V−ダイヤ、屈折率2.42、平均粒径280nm、粒径分布0〜2μm)を使用。
有機高分子凝集防止剤
ポリビニルピロリドン(PVP)(キシダ化学製、質量平均分子量36万)
被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の原料組成:
テトラエトキシシラン
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
溶媒として、エタノール及びイオン交換水
加水分解や重縮合を促進するための酸として、硝酸
形成する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の屈折率 1.4
ガラス容器に、上記で得られた多結晶ナノダイヤモンド粒子(0.20 g)に、水(9.00 g)を添加し(多結晶ナノダイヤモンド粒子 約2質量%)、洗浄槽にて25℃で10分間超音波分散した。次いで、得られた多結晶ナノダイヤモンド粒子の分散液に、ポリビニルピロリドン(PVP)(0.80 g)を加え、更に10分間超音波分散した後に、1晩攪拌して、多結晶ナノダイヤモンド粒子及びポリビニルピロリドンの分散液A(ナノダイヤ濃度:2質量%)を準備した。
次に、ガラス容器に、エタノール(6.03 g)、イオン交換水(2.58 g)、テトラエトキシシラン(TEOS、1.01 g)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、0.29 g)、1N-硝酸(0.08 g)を添加し、更に、上記多結晶ナノダイヤモンド粒子及びポリビニルピロリドンの分散液A(0.15 g)を添加して、室温(20℃)で2時間攪拌して、光散乱性被膜形成用塗布液A(多結晶ナノダイヤモンド粒子度0.6質量%、全固形分濃度5.0質量%)(以下の表1の組成A1)を得た。
なお、ここで、全固形分は、(1)多結晶ナノダイヤモンド粒子+(2)ポリビニルピロリドン(PVP)+(3)TEOSのうちSiO2換算分+(4)GPTMSのうちR−SiO3/2換算分(Rは、3−グリシジルオキシプロピル基)として計算した。
透過型の透明スクリーンの形成
上記酸化セリウムで研磨した透明ガラス基板(厚さ2 mm)の上に、上記で調製した塗布液(本発明の実施例にかかる塗布液は、以下の表1において、「Aシリーズ」として表示する)をスピンコート法にて500 rpmの回転速度で成膜した後、260℃の電気炉内で10分間焼成し、光散乱性被膜を有する透過型の透明スクリーンを作製した。
得られた透過型の透明スクリーンについて、上記の評価方法に記載した要領で評価した。ここで、表1は、光散乱性被膜形成用塗布液の組成を示す表である。表3は、実施例1で得られた透過型の透明スクリーンについての特性及び官能を評価した結果を示す。
表3に示されるように、実施例1により得られた透過型の透明スクリーンは、透過性、画像の鮮鋭性及び視野角において、良好な評価となった。透過型の透明スクリーンの外観に白濁や膜ムラはなく良好であった。また、鉛筆硬度は9Hと大きかった。これは、被膜材料の設計において、前記[(A+C)/(A+B+C)]の値を、97.6%と、比較的大きく設定できたことに起因すると考えされる。
実施例2〜28
透過型の透明スクリーンの形成
表1に示す組成を有する光散乱性被膜形成用塗布液を準備し、実施例1と同様にして、実施例2〜28の透過型の透明スクリーンを調製した。
表3に記載の結果より明らかなように、実施例1と同様に、実施例2〜28の透明スクリーンについても、膜むら、白濁、クラックなどの外観上の不具合が実質的に無く、透過性と光散乱性(映像の鮮鋭性)も満足すべきレベルであった。
実施例29〜30
反射型の透明スクリーンの形成(「基材−光散乱性被膜−高屈折率層」の構成)
光散乱性被膜形成用塗布液A1を使用する実施例2、又は、光散乱性被膜形成用塗布液A12を使用する実施例20で得られた、光散乱性被膜をあらかじめ設けたガラス基材を基材ホルダーに保持させ、真空チャンバー内に所望のターゲットを設置した。マグネトロンスパッタリング装置において、Tiターゲットを使用し、その裏側にマグネットを配置し、真空チャンバー内を真空ポンプによって排気した。次に、ターゲットへ電力を印加した。この時、真空ポンプを連続的に稼動させながら、真空チャンバー内にアルゴンガス、酸素ガスを導入した。この操作により、光散乱性被膜上に膜厚50nmの高屈折率の酸化チタン層を成膜し、実施例29〜30の反射型の透明スクリーンを作製した。
実施例31〜33
反射型の透明スクリーンの形成(「基材−高屈折率層―光散乱性被膜」の構成)
実施例31において、実施例20と同様にして光散乱性被膜をガラス基材面に設ける前に、実施例29で採用したのと同様にして、ガラス基材面に高屈折率層の酸化チタン層を形成した後、酸化チタン層の上に光散乱性被膜を形成したことを除いて、実施例20を繰り返し反射型透明スクリーンを形成した。酸化チタン層の厚みは50nmであった。
実施例32において、真空チャンバー内に導入するガスを窒素ガス、酸素ガスとすることで高屈折率層を酸化チタンから窒化チタンとしたことを除いて、実施例31を繰り返し、反射型透明スクリーンを形成した。窒化チタン層の厚みは50nmであった。
実施例33において、ガラス基材面と窒化チタン層の間にステンレス層を形成したことを除いて、実施例32を繰り返し、反射型透明スクリーンを形成した。ステンレス層の形成は、ステンレスターゲットを使用したマグネトロンスパッタリング装置を用いて、アルゴンガス、窒素ガスを導入することで行った。ステンレス層の厚みは15nm、窒化チタン層の厚みは40nmであった。
実施例34〜35
ミラー型スクリーンの形成
実施例2又は実施例25で作製した光散乱性被膜上に、銀鏡反応を利用して銀層の成膜を行った。この銀層の形成に際しては、まず、めっき増感処理液として、イオン交換水40gに塩化スズ(II)0.4gを溶かし希塩酸を加えて、pH2.0とした。増感処理として、光散乱性被膜上にスプレー塗布し、15分後に水洗、風乾した。次に、硝酸銀0.75gをイオン交換水39.25gに溶かし、ここに0.15mol/lの水酸化ナトリウム水溶液40gを投入して褐色沈殿させた。更にアンモニア水を液が透明になるまで滴下し、「銀めっき液」とした。続けて、酒石酸ナトリウムカリウムを0.15g、グルコースを1.5gをイオン交換水37.5gに溶かし、更にメタノールを37.5g加えて「還元液」とした。銀めっき液と還元液とを等量で混合し、その後速やかに、増感処理された光散乱性被膜上にスプレー塗布し、30分後に水洗、風乾することで、光散乱性被膜上に80nmの均一な銀めっきを形成した。次いで、銀の酸化防止のために、銅めっき、裏止め塗膜、縁塗り塗膜を塗布した。この処理に際しては、まず、硫酸銅1.16gをイオン交換水38.49gに溶かし、ここに濃硫酸0.32g、酒石酸カリウムナトリウム0.03gを投入して、銅めっき液を形成した。次いで、鉄粉0.30g、亜鉛粉0.05gをイオン交換水39.6gに溶かし、銅還元液を調製した。銅めっき液と銅還元液とを等量で混合し、その後速やかに、銀めっきされた光散乱性被膜上にスプレー塗布し、30分後に水洗、風乾することにより、50nmの均一な銅めっきを形成した。更に、銀めっき及び銅めっきを施した光散乱性被膜上に、エポキシ樹脂及び硬化剤を85g、シクロヘキサン−ホルムアルデヒド樹脂を15gのバインダーと顔料とが重量比で顔料/バインダー=2.0であり、かつ顔料組成物中6.0質量%の硫酸鉛を含有する有鉛顔料からなる裏止め塗料を、フローコーターにより塗布した後、乾燥炉で140℃になるように硬化させ乾燥後の膜厚50μmの裏止め塗膜を形成した。得られたその端縁部をシーミング加工し、光散乱性被膜、銀めっき、銅めっきが露呈している加工部に、刷毛塗りにて縁塗り塗膜の形成を実施した。シーミング加工に使用される主剤は、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂(エポキシ等量184〜194)40g、ビスフェノール型固形状エポキシ樹脂(エポキシ等量900〜1000)60g及びルソクレゾール/ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ等量205〜230)3gに、レオロジーコントロール剤 4g、レベリング剤 0.5g、消泡剤 0.5gを加え、溶剤としてメチルイソブチルケトンを100g加えて粘度調整し、調製した。主剤と併用される硬化剤は、アミン価235〜265、活性水素等量150のポリアミド樹脂を用いた。これらの主剤及び硬化剤を塗布前に混合して使用し、縁塗り塗膜を形成した。
比較例1
実施例1において、多結晶ナノダイヤモンドを含まない、表2に記載の「Bシリーズ」としての塗布液B1を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、被膜を形成した。しかしながら、光を散乱しないため、映像を投影しても視認性はなかった。
比較例2
実施例1において、多結晶ナノダイヤモンド粒子の代わりに単結晶ダイヤモンドナノ粒子(ビジョン開発製、平均粒径250nm、粒径分布150〜550nm)を含み、有機高分子抗凝集防止剤を含まない表2の塗布液B2を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、光散乱性被膜を形成した。しかしながら、有機高分子凝集防止剤を含まない組成で成膜すると、被膜形成性酸化物網目状高分子中で多結晶ナノダイヤモンドが凝集するため、良好な外観の膜が得られなかった。
比較例3
実施例1において、多結晶ナノダイヤモンド粒子の代わりに単結晶ダイヤモンドナノ粒子(ビジョン開発製、平均粒径250nm、粒径分布150〜550nm)を含み、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を含まない表2の塗布液B3を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、光散乱性被膜を形成した。しかしながら、被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を含まない組成で成膜すると、外観は良好だが、SWOM試験で膜剥離が生じ、耐久性が大変劣っていた。
比較例4
実施例1において、多結晶ナノダイヤモンド粒子の代わりに、単結晶ナノダイヤモンド粒子(ビジョン開発製、平均粒径250nm、粒径分布150〜550nm)を含む表2の塗布液B4を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、光散乱性被膜を形成した。しかしながら、光散乱性が十分には得られず、多結晶ナノダイヤモンドを使用する実施例1と比較して映像の鮮鋭性が低く、視野角も狭かった。
比較例5
比較例4において、単結晶ナノダイヤモンド粒子と、有機高分子凝集防止剤とを1:1の比率で含む表2の塗布液B5を使用したことを除いて、比較例4を繰り返した。この場合、単結晶ダイヤモンドナノ粒子の凝集を十分に抑制することはできず、良好な外観の膜が得られなかった。
表1:光散乱性被膜形成用塗布液の組成(質量は、A+B+Cを100として示す)
Figure 0006726536
表2:光散乱性被膜形成用塗布液の比較例の組成
(質量は、A+B+Cを100として示す)
Figure 0006726536
表3
Figure 0006726536


Figure 0006726536
表4(比較例)
Figure 0006726536
(作用効果)
上記の結果より、本発明によれば、例えば、以下の優れた作用効果が得られる。
1.単結晶ダイヤモンドナノ粒子の場合よりも少ない量の多結晶ナノダイヤモンド粒子を使用しても、優れた光散乱性が得られる。
2.有機高分子凝集防止剤を比較的多く配合できるため、多結晶ナノダイヤモンド粒子の分散性に優れ、透明性と、光散乱性との両立性を大幅に改善することができる。
3.被膜形成性酸化物網目状高分子媒体を使用することにより、ガラス基板などの基板との密着性に優れ、屋外での使用において、大幅な耐久性の改善を達成することができる。
本発明の光散乱性被膜を有する透明スクリーンや、反射型スクリーン、ミラー型スクリーンは、建築物分野や自動車分野において、例えば、屋外での使用も可能な、プロジェクタ投影用のスクリーンや、照明機器の光拡散体として用いることが出来る。

Claims (12)

  1. 光散乱性被膜形成用塗布液であって、溶媒中において、
    (1)多結晶ナノダイヤモンド粒子と、
    (2)前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも小さい屈折率を有する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、
    (3)該多結晶ナノダイヤモンド粒子と、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体との間に介在して、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の凝集を防止する有機高分子凝集防止剤と、
    を含むことを特徴とする光散乱性被膜形成用塗布液。
  2. 前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記有機高分子凝集防止剤の質量(B)、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)との合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)が、0.1〜10.0質量%であり、かつB/Aが0.05以上である、請求項1に記載の光散乱性被膜形成用塗布液。
  3. 前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記有機高分子凝集防止剤の質量(B)、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)との合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)が0.2〜5.0質量%であり、かつB/Aが0.3以上である、請求項1に記載の光散乱性被膜形成用塗布液。
  4. 透明基材の表面に、請求項1に記載の光散乱性被膜形成用塗布液を塗布し、乾燥し、加熱硬化することを特徴とする、透明スクリーン又はミラー型スクリーンの製造方法。
  5. 前記加熱が、200℃以上で行われる請求項4に記載の透明スクリーン又はミラー型スクリーンの製造方法。
  6. 光散乱性被膜であって、
    (1)多結晶ナノダイヤモンド粒子と、
    (2)前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の屈折率よりも小さい屈折率を有する被膜形成性酸化物網目状高分子媒体と、
    (3)該多結晶ナノダイヤモンド粒子と、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体との間に介在して、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体中において、前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の凝集を防止する有機高分子凝集防止剤と、
    を有することを特徴とする光散乱性被膜。
  7. 前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記有機高分子凝集防止剤の質量(B)、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)との合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)が0.1〜10.0質量%であり、かつB/Aが0.05以上である、請求項6に記載の光散乱性被膜。
  8. 前記多結晶ナノダイヤモンド粒子の質量(A)と、前記有機高分子凝集防止剤の質量(B)、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体の質量(C)との合計値(A+B+C)を100質量%としたとき、A/(A+B+C)が0.2〜5.0質量%であり、かつB/Aが0.3以上である、請求項7に記載の光散乱性被膜。
  9. 透明基材の上に、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光散乱性被膜が設けられている、透明スクリーン。
  10. 透明基材の上に、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光散乱性被膜が設けられ、更に、該光散乱性被膜の上に、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体よりも高い屈折率の透明層が設けられている、透明スクリーン。
  11. 透明基材の上に、前記被膜形成性酸化物網目状高分子媒体よりも高い屈折率の透明層が設けられ、更に、該高い屈折率の透明層の上に、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光散乱性被膜が設けられている、透明スクリーン。
  12. 透明基材の上に、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光散乱性被膜が設けられ、更に、前記光散乱性被膜の上に、金属層が設けられている、ミラー型スクリーン。
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