JP2021176125A - 燃料電池用の積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の積層体を構成する電解質膜の厚みが10μm以下という薄膜になっても、MPL表面の凹凸による触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制し、電池の耐久性を向上させることのできる、燃料電池用の積層体を提供する。【解決手段】電解質膜側から、マイクロポーラス層、及び多孔質基材層が、この順に積層されているガス拡散層において、多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径を特定の範囲にするとともに、多孔質基材層の密度、及びマイクロポーラス層の厚みを特定の範囲とすることで、拡散層基材の表面の凹凸が転写されて形成されるMPL表面の凹凸による、触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制する。【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池用の積層体に関する。
水素等のアノードガスと、酸素等のカソードガスとを、化学反応させることによって発電を行う、燃料電池が知られている。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に、それぞれ、水素等のアノードガス(燃料ガス)と酸素等のカソードガス(酸化剤ガス)を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する。
アノードガスとして水素が供給されたアノード(燃料極)では、下記式(1)の反応が進行する。
→ 2H + 2e ・・・(1)
上記式(1)で生じる電子(e)は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後に、カソード(酸化剤極)に到達する。他方で、上記(1)式で生じたプロトン(H)は、水と水和した状態で、電気浸透により、アノードとカソードとに挟まれた電解質膜内を、アノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは、電解質膜を通過した上記式(1)で生じたプロトン(H)と、カソードガスとして供給された酸素と、外部回路を経由した上記式(1)で生じた電子(e)とが、下記式(2)の反応を進行させる。
2H + 1/2O + 2e → HO ・・・(2)
したがって、電池全体では下記式(3)に示す化学反応が進行し、起電力が生じて、外部負荷に対して電気的仕事がなされる。
+ 1/2O → HO ・・・(3)
このような燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体を基本構造とする単セルを、複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、等の利点を有することから、特にモバイル機器等の携帯用、あるいは電気自動車等の移動体用の電源として期待されている。
ここで、固体高分子電解質型燃料電池の単セルの構成としては、例えば、アノード側セパレーター、アノード側ガス拡散層、アノード側触媒層、電解質膜、カソード側触媒層、カソード側ガス拡散層、及びカソード側セパレーターが、この順に積層された積層体が知られている。
そして、ガス拡散層は、カーボンペーパーやカーボンクロス等の導電性多孔質の拡散層基材の表面に、マイクロポーラス層(MPL)が積層された積層体となっている。マイクロポーラス層(MPL)は、拡散層基材の表面に、材料となるペーストを塗工することで形成される。MPLが形成されたガス拡散層は、優れたガス拡散性を有する。
しかしながら、拡散層基材の表面にMPL形成用ペーストを塗工する際に、その吐出圧によって基材が上下に振動することで、塗工の欠損部分(未塗工部分)が発生する虞があった。
これに対して、拡散層基材のバネ性を高くして、拡散層基材内でMPL形成用ペーストの吐出圧を吸収し、拡散層基材の振動を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2018−181536号公報
しかしながら、本発明者は、電解質膜の厚みが10μm以下に薄膜化すると、拡散層基材の表面の凹凸が、MPLを介して、触媒層と電解質膜とに機械的ダメージを与え、電池の耐久性能を劣化させる場合があるとの知見を得た。
具体的には、燃料電池は、その製造過程で、面圧を印加して局所面圧を上昇させる工程を有しており、当該工程において、MPL表面の凹凸は、隣接する触媒層と電解質膜とに転写され、機械的ダメージを与える。また、燃料電池の使用の過程においても、MPL表面の凹凸は、隣接する触媒層と電解質膜とに機械的ダメージを与える。そして、電解質膜の厚みが10μm以下という薄膜の状況となると、ダメージの影響は大きいものとなり、得られる燃料電池の耐久性は大きく低下することとなる。
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、燃料電池の積層体を構成する電解質膜の厚みが10μm以下という薄膜になっても、MPL表面の凹凸による触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制し、電池の耐久性を向上させることのできる、燃料電池用の積層体を提供することを目的とする。
本発明者は、多孔質基材層、及びマイクロポーラス層(MPL)が、積層されているガス拡散層においては、MPL表面の凹凸は、拡散層基材の表面の凹凸が転写されて形成されることに着目した。そして、多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径を特定の範囲にするとともに、多孔質基材層の密度、及びマイクロポーラス層の厚みを特定の範囲とすれば、拡散層基材の表面の凹凸が、触媒層と電解質膜に与える機械的ダメージを抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
ガス拡散層と、電解質膜と、を備える燃料電池用の積層体であって、
前記電解質膜の膜厚は、10μm以下であり、
前記ガス拡散層は、前記電解質膜側から、マイクロポーラス層、及び多孔質基材層が、この順に積層されており、
前記多孔質基材層の前記マイクロポーラス層側の表面における細孔径が、70〜100μmであり、
前記多孔質基材層の密度が、300mg/cm以上であり、かつ、
前記マイクロポーラス層の厚みが、20μm以上である、
燃料電池用の積層体。
本発明の燃料電池用の積層体によれば、電解質膜の厚みが10μm以下という薄膜であっても、拡散層基材表面の凹凸に起因する触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制することができ、その結果、電池の耐久性を向上させることができる。
一実施形態に係る本発明の燃料電池用の積層体の断面図である。 多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径と、初期出力及びクロスリーク耐久性との関係を示すグラフである。 多孔質基材層の密度とクロスリーク耐久性との関係を示すグラフである。 マイクロポーラス層の厚みとクロスリーク耐久性との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、種々変形して実施することができる。
.
《燃料電池用の積層体》
本発明の燃料電池用の積層体は、燃料電池セルを構成する積層体の少なくとも一部であり、ガス拡散層と、電解質膜と、を必須の構成要素として備える。そして、ガス拡散層は、電解質膜側から、マイクロポーラス層、及び多孔質基材層が、この順に積層された構成を有する。
本発明の燃料電池用の積層体は、ガス拡散層と、電解質膜と、を必須の構成要素としていれば、その他の層が存在していてもよい。その他の層としては、例えば、触媒層やセパレーター等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一般的な燃料電池セルに格納される積層体の構成としては、例えば、アノード側セパレーター、アノード側ガス拡散層、アノード側触媒層、電解質膜、カソード側触媒層、カソード側ガス拡散層、及びカソード側セパレーターが、この順に積層された積層体が挙げられる。
本発明の燃料電池用の積層体は、燃料電池セルを構成する積層体の少なくとも一部であればよい。したがって、例えば、アノード側のガス拡散層から電解質膜までの領域となる積層体であってもよいし、カソード側のガス拡散層から電解質膜までの領域となる積層体であってもよい。また、アノード側及びカソード側の双方のガス拡散層であってもよい。本発明においては、最大の効果を享受できることから、アノード側及びカソード側の両者ともに、本発明の構成であることが好ましい。
図1は、一実施形態に係る本発明の燃料電池用の積層体の断面図である。本発明の一実施形態に係る積層体100は、アノード側多孔質基材層11及びアノード側マイクロポーラス層12が積層された構成のアノード側ガス拡散層10、アノード側触媒層15、電解質膜30、カソード側触媒層25、並びに、カソード側多孔質基材層21及びカソード側マイクロポーラス層22が積層された構成のカソード側ガス拡散層20が、この順に積層された積層体である。
図1に示される積層体100においては、本発明の燃料電池用の積層体において必須の構成要素となる、ガス拡散層と電解質膜の間に、アノード側及びカソード側それぞれにおいて、触媒層が存在している。そして、アノード側及びカソード側それぞれのマイクロポーラス層が、当該触媒層に面している。
本発明の燃料電池用の積層体は、ガス拡散層における多孔質基材層のマイクロポーラス層側表面の細孔径を特定の範囲にするとともに、多孔質基材層の密度、及びマイクロポーラス層の厚みを特定の範囲とすることで、電解質膜の厚みが10μm以下という薄膜であっても、拡散層基材表面の凹凸に起因する触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制することができ、その結果、電池の耐久性を向上させることができる。
なお、図1に示される積層体100においては、Aが、アノード側ガス拡散層におけるアノード側多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面を示しており、Bが、カソード側ガス拡散層におけるカソード側多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面を示している。
本発明において、「マイクロポーラス層側の表面における細孔径」とは、マイクロポーラス層側の表面から50μmまでの深さの領域をX線CTにより観察し、得られた画像を解析して得られる細孔径をいう。すなわち、図1における積層体100においては、領域A及び領域Bは、それぞれの表面から50μmまでの深さの領域である。
<電解質膜>
電解質膜は、本発明の燃料電池用の積層体において、必須の構成層である。電解質膜は、電子及びガスの流通を阻止するとともに、アノードで発生したプロトン(H)を、アノード側触媒層からカソード側触媒層に移動させる機能を有する。
本発明の燃料電池用の積層体において、電解質膜の膜厚は、10μm以下である。電解質膜の膜厚は、8μm以下、又は6μm以下であってよい。また、この膜厚は、1μm以上、又は3μm以上であってよい。
電解質膜の膜厚が10μm以下という薄膜化した状況下では、拡散層基材の表面の凹凸が、MPLを介して触媒層と電解質膜に機械的ダメージを与え、その結果、電池の耐久性能が劣化する場合があった。しかしながら、本発明の積層体によれば、電解質膜の膜厚が10μm以下という薄膜であっても、拡散層基材表面の凹凸に起因する触媒層と電解質膜への機械的ダメージを抑制することができ、その結果、電池の耐久性を向上させることができる。
なお、本発明における電解質膜の膜厚は、電解質膜の任意の10箇所を測定した平均値であってよい。
電解質膜としては、特に限定されるものではなく、燃料電池に用いられる電解質膜として公知の膜を用いることができる。電解質膜として固体高分子電解質膜を用いる固体高分子電解質型燃料電池の場合には、例えば、パーフルオロスルホン酸(PFSA)アイオノマー等のスルホン酸基を含む高分子電解質樹脂で形成された、イオン伝導性を有するイオン交換膜が挙げらる。なお、スルホン酸基に限定されるものではなく、例えば、リン酸基やカルボン酸基等、他のイオン交換基(電解質成分)を含む膜であってもよい。
本発明においては、市販されているイオン交換膜を適用してもよく、パーフルオロスルホン酸(PFSA)アイオノマーなどの固体高分子材料である高分子電解質樹脂で形成されており、イオン伝導性を有する高分子膜を電解質とするイオン交換膜からなる。スルホン酸基を含むフッ素樹脂系イオン交換膜の市販品としては、例えば、デュポン社のナフィオン(登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(登録商標)等が挙げられる。
<ガス拡散層>
ガス拡散層は、本発明の燃料電池用の積層体において、必須の構成層である。ガス拡散層は、供給される反応ガスを拡散させて均一にし、隣接する触媒層にガスを行き渡らせる機能を有する。
本発明においてガス拡散層は、多孔質基材層、及びマイクロポーラス層が、積層された積層体となっている。そして、マイクロポーラス層が、隣接する触媒層に面する。
(多孔質基材層)
ガス拡散層における多孔質基材層は、隣接する触媒層に、反応ガスを供給する多孔質の層である。多孔質基材層は、ガス透過性を有するとともに、導電性を有する材料で構成されることが好ましい。
本発明においては、多孔質基材層として一般的に用いられる材料であれば、特に限定されることなく用いることができ、例えば、カーボンペーパー若しくはカーボンクロス等のカーボン多孔質体、又は金属メッシュ若しくは発泡金属等の金属多孔質体等を挙げることができる。なお、カーボンペーパー若しくはカーボンクロス等のカーボン多孔質体は、例えば、炭素繊維、及びポリテトラフルオロエチレン等のバインダ等から形成されていてもよい。
本発明においてガス拡散層を構成する多孔質基材層は、マイクロポーラス層側の表面における細孔径が、70〜100μmである。
マイクロポーラス層側の表面における細孔径は、80μm以上、又は90μm以上であってもよく、90μm以下、又は80μm以下であってもよい。
多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径が70μm未満の場合には、細孔径が小さすぎて反応ガスの拡散性が低下する。一方で、細孔径が100μmを超える場合には、多孔質基材層上にマイクロポーラス層(MPL)を形成する際にMPL材料が多孔質基材層に含浸するため、反応ガスの拡散性が低下するとともに、多孔質基材層の上に形成されるMPL表面の凹凸を抑制することが困難となり、得られる燃料電池の耐久性が低下することとなる。
また、本発明においてガス拡散層を構成する多孔質基材層の密度は、300mg/cm以上である。
多孔質基材層の密度は、310μm以上、又は320μm以上であってもよく、340μm以下、又は330μm以下であってもよい。
多孔質基材層の密度が、300mg/cm以上であれば、多孔質基材層上にマイクロポーラス層(MPL)を形成する際に、MPL材料の多孔質基材層への含浸を抑制することができ、その結果、より平滑な表面を有するMPLを形成することができる。
多孔質基材層の密度は、基材の単位体積あたりの質量であり、多孔質基材層の原料となる炭素繊維やバインダ等の量を増減することにより、調整することができる。
なお、本発明において、ガス拡散層を構成する多孔質基材層の厚みは、特に限定されるものではなく、形成される燃料電池の要求性能に応じて、適宜設定することができる。
(マイクロポーラス層(MPL))
ガス拡散層におけるマイクロポーラス層は、多孔質基材層の上に存在し、触媒層と隣接する層である。燃料電池用の積層体を構成するガス拡散層にMPLが形成されることにより、燃料電池セルにおけるガス拡散性が向上する。
マイクロポーラス層(MPL)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、多孔質基材層の表面に、MPL形成用スラリーをダイコータ等によって塗工し、あるいは、MPL形成用ペーストを塗工ヘッドから吐出して塗工し、その後、乾燥及び焼成する方法が挙げられる。
MPL形成用スラリー、又はMPL形成用ペーストは、特に限定されるものではないが、一般に、炭素粒子と撥水性樹脂とを、主成分として含む組成物である。したがって、MPLは、これらを主成分とする層となる。
炭素粒子としては、例えば、カーボンブラック、グラフェン、又は黒鉛等の粒子等を挙げることができる。
炭素粒子の平均一次粒子径は、25nm〜70nmであってよい。炭素粒子の平均一次粒子径は、25nm以上、45nm以上、又は65nm以上であってよく、70nm以下、60nm以下、又は50nm以下であってよい。
なお、炭素粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡を用いて、無作為に選択した100個以上の粒子について定方向径(Feret径)を測定し、得られた測定値を算術平均した値である。
撥水性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系の高分子材料や、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。
本発明においてガス拡散層を構成するマイクロポーラス層(MPL)の厚みは、20μm以上である。
MPLの厚みは、22μm以上、又は24μm以上であってもよく、30μm以下、又は28μm以下であってもよい。
MPLの厚みが、20μm以上であれば、多孔質基材の表面の凹凸の転写を抑制することができ、その結果、より平滑な表面を有するMPLを形成することができる。
なお、本発明におけるMPLの厚みは、面内の任意の10箇所を測定した平均値であってよい。
<触媒層>
本発明の燃料電池用の積層体において、その他の層として含まれる触媒層としては、特に限定されるものではなく、燃料電池セルを構成する積層体に用いられる公知の触媒層を適用することができる。
アノード側触媒層は、反応ガスである水素(H)を、プロトン(H)と電子(e)に分解する機能を有する。一方で、カソード側触媒層は、プロトン(H)と電子(e)と酸素(O)から、水(HO)を生成する機能を有する。
アノード側及びカソード側の触媒層は、同様の材料で形成することができる。例えば、白金や白金合金等の触媒を担持した導電性の担体が用いられ、更に具体的には、例えば、導電性物質として機能するカーボンブラック等の炭素粒子に触媒が担持された、触媒担持炭素粒子と、上記した電解質膜の構成成分である、イオン交換基によりプロトン伝導性を発現する電解質成分と、から構成される層が挙げられる。触媒担持炭素粒子が、プロトン伝導性を有するアイオノマー等の電解質成分により被覆されて形成された層であってもよい。
以下、実験結果を示して、本発明を更に詳細に説明する。
《実験例1》多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径と、初期出力及びクロスリーク耐久性との関係
実験例1においては、ガス拡散層における、多孔質基材層の密度とマイクロポーラス層(MPL)の厚みは固定し、多孔質基材層のマイクロポーラス層(MPL)側の表面における細孔径を変化させて、8つの燃料電池を作製した。得られた8つの燃料電池について、クロスリーク耐久性及び初期出力を評価した。
<燃料電池の作製>
(ガス拡散層の作製)
多孔質基材として、厚みが160μm、密度が370mg/cmであり、表面の細孔径が異なる8種類のカーボンペーパーを2枚ずつ準備した。
それぞれのカーボンペーパーの表面に、炭素粒子とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むマイクロポーラス層(MPL)形成用スラリーを、ダイコータによって塗工し、乾燥の後に焼成することで、2枚1組となる、多孔質基材層にマイクロポーラス層(MPL)が積層されたガス拡散層を作製した。形成したマイクロポーラス層(MPL)の厚みは、40μmであった。
(積層体の作製)
上記で得られたガス拡散層のうち、多孔質基材層のマイクロポーラス層側表面の細孔径が同じ大きさの1組を、アノード側及びカソード側のガス拡散層として用いて、アノード側ガス拡散層/アノード側触媒層/電解質膜/カソード側触媒層/カソード側ガス拡散層が、この順に積層された積層体を構成し、一対のセパレータで挟み込むことで、多孔質基材層のマイクロポーラス層(MPL)側の表面における細孔径が互いに異なる、8種類の燃料電池を作製した。
なお、アノード側触媒層及びカソード側触媒層には、それぞれに隣接するガス拡散層のマイクロポーラス層(MPL)が面するように配置した。また、用いた電解質膜の厚みは、9μmであった。
<電池の評価>
(初期出力)
作製した8種類の燃料電池について、初期出力の評価を実施した。初期出力は、作製した燃料電池に反応ガスを流して電流を掃引したときの、最大出力点における出力とした。結果を、図2に示す。
(クロスリーク耐久性)
作製した8種類の燃料電池について、クロスリーク耐久性を評価した。評価にあたっては、燃料電池のオンオフの繰り返しを模擬する耐久操作を実施し、その後に評価を行った。得られた結果を、多孔質基材層のマイクロポーラス層(MPL)側の表面における細孔径が60μmの場合を基準とした相対値として、図2に示す。
(評価結果)
図2は、多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径と、初期出力及びクロスリーク耐久性との関係を示す図である。グラフの横軸は、多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径(μm)であり、グラフの縦第1軸は、得られた燃料電池のクロスリーク耐久性であり、グラフの縦第2軸は、得られた燃料電池の初期出力を示す。
図2より、多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面における細孔径が70〜100μmの範囲であれば、初期出力が高く、耐久性も高い燃料電池が得られることが判る。
《実験例2》多孔質基材層の密度とクロスリーク耐久性との関係
実験例2においては、ガス拡散層における、多孔質基材層のマイクロポーラス層(MPL)側の表面における細孔径とマイクロポーラス層(MPL)の厚みは固定し、多孔質基材層の密度を変化させて、6つの燃料電池を作製した。得られた6つの燃料電池について、クロスリーク耐久性を評価した。
<燃料電池の作製>
(ガス拡散層の作製)
多孔質基材として、厚みが160μm、表面の細孔径が90μmであり、密度が異なる6種類のカーボンペーパーを2枚ずつ準備した。
続いて、実験例1と同様の方法にて、2枚1組となる、多孔質基材層にマイクロポーラス層(MPL)が積層されたガス拡散層を作製した。形成したマイクロポーラス層(MPL)の厚みは、40μmであった。
(積層体の作製)
上記で得られたガス拡散層のうち、多孔質基材層の密度が同じ1組を、アノード側及びカソード側のガス拡散層として用いて、実験例1と同様の方法で、多孔質基材層の密度が互いに異なる、6種類の燃料電池を作製した。用いた電解質膜の厚みは、9μmであった。
<電池の評価>
(クロスリーク耐久性)
作製した6種類の燃料電池について、実験例1と同様の方法で、クロスリーク耐久性を評価した。得られた結果を、多孔質基材層の密度が300mg/cmの場合を基準とした相対値として、図3に示す。
(評価結果)
図3は、多孔質基材層の密度とクロスリーク耐久性との関係を示す図である。グラフの横軸は、多孔質基材層の密度(mg/cm)であり、グラフの縦軸は、得られた燃料電池のクロスリーク耐久性を示す。
図3より、多孔質基材層の密度が300mg/cm以上であれば、耐久性の高い燃料電池が得られることが判る。
《実験例3》マイクロポーラス層の厚みとクロスリーク耐久性との関係
実験例3においては、ガス拡散層における、多孔質基材層のマイクロポーラス層(MPL)側の表面における細孔径と多孔質基材層の密度は固定し、マイクロポーラス層(MPL)の厚みを変化させて、8つの燃料電池を作製した。得られた8つの燃料電池について、クロスリーク耐久性を評価した。
<燃料電池の作製>
(ガス拡散層の作製)
多孔質基材として、厚みが145μm、表面の細孔径が90μm、密度が370mg/cmであるカーボンペーパーを、16枚準備した。
続いて、実験例1と同様の方法にて、多孔質基材層にマイクロポーラス層(MPL)が積層されたガス拡散層を作製した。このとき、形成されるマイクロポーラス層(MPL)の厚みが、2枚1組で同じ厚みとなるように、8種類のガス拡散層を作製した。
(積層体の作製)
上記で得られたガス拡散層のうち、マイクロポーラス層(MPL)の厚みが同じ1組を、アノード側及びカソード側のガス拡散層として用いて、実験例1と同様の方法で、マイクロポーラス層(MPL)の厚みが異なる、8種類の燃料電池を作製した。用いた電解質膜の厚みは、9μmであった。
<電池の評価>
(クロスリーク耐久性)
作製した8種類の燃料電池について、実験例1と同様の方法で、クロスリーク耐久性を評価した。得られた結果を、マイクロポーラス層(MPL)の厚みが20μmの場合を基準とした相対値として、図4に示す。
(評価結果)
図4は、マイクロポーラス層の厚みとクロスリーク耐久性との関係を示す図である。グラフの横軸は、マイクロポーラス層の厚み(μm)であり、グラフの縦軸は、得られた燃料電池セルのクロスリーク耐久性を示す。
図4より、マイクロポーラス層(MPL)の厚みが20μm以上であれば、耐久性の高い燃料電池が得られることが判る。
100 積層体
10 アノード側ガス拡散層
11 アノード側多孔質基材層
12 アノード側マイクロポーラス層
15 アノード側触媒層
20 カソード側ガス拡散層
21 カソード側多孔質基材層
22 カソード側マイクロポーラス層
25 カソード側触媒層
30 電解質膜
A アノード側多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面
B カソード側多孔質基材層のマイクロポーラス層側の表面

Claims (1)

  1. ガス拡散層と、電解質膜と、を備える燃料電池用の積層体であって、
    前記電解質膜の膜厚は、10μm以下であり、
    前記ガス拡散層は、前記電解質膜側から、マイクロポーラス層、及び多孔質基材層が、この順に積層されており、
    前記多孔質基材層の前記マイクロポーラス層側の表面における細孔径が、70〜100μmであり、
    前記多孔質基材層の密度が、300mg/cm以上であり、かつ、
    前記マイクロポーラス層の厚みが、20μm以上である、
    燃料電池用の積層体。
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