JP2021173812A - 投写光学装置およびプロジェクター - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストおよび重量を低減する投写光学装置およびプロジェクターを提供すること。【解決手段】投写光学装置60は、第1反射素子611を備える投写光学系600と、投写光学系600を収容する鏡筒61と、を備え、鏡筒61は、フランジ630aを有し、投写光学系600を収容するフレーム630と、第1反射素子611を保持する保持部650と、を備え、保持部650は、第1反射素子611を保持する保持面650aと、保持面650aから保持面650aと交差する方向に延出し、フランジ630aに嵌合される延出部650bと、を有し、保持部650の材質は、フレーム630の材質と異なることを特徴とする。【選択図】図4
Description
本発明は、投写光学装置およびプロジェクターに関する。
従来、プロジェクターなどの投写型表示装置に適用される、屈曲型の投写光学装置が知られていた。このような投写光学装置には、投写レンズや投写する表示画像の投写方向を変えるためのミラーが備わる。例えば、特許文献1には、光路折り曲げ手段として2つのミラーを備えた投写用光学系が開示されている。
しかしながら、特許文献1の投写用光学系では、装置の製造コストおよび重量が増加し易いという課題があった。詳しくは、強度や精度を確保しつつ複数のミラーやレンズ群を保持するには、アルミダイカストなどの金属部品がフレームとして用いられる。そのため、フレームの材料費や加工費、および重量が増加する場合があった。すなわち、従来よりも装置の製造コストおよび重量を低減する投写光学装置が求められていた。
投写光学装置は、第1反射素子を備える投写光学系と、前記投写光学系を収容する鏡筒と、を備え、前記鏡筒は、フランジを有し、前記投写光学系を収容するフレームと、前記第1反射素子を保持する保持部と、を備え、前記保持部は、前記第1反射素子を保持する保持面と、前記保持面から前記保持面と交差する方向に延出し、前記フランジに嵌合される延出部と、を有し、前記保持部の材質は、前記フレームの材質と異なることを特徴とする。
プロジェクターは、光源装置と、前記光源装置から射出された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置によって変調された光を投写する上記の投写光学装置と、を備えることを特徴とする。
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交するXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を−方向とする。また、以降の説明において、+Z方向を上方といい、−Z方向を下方ということもある。
1.第1実施形態
1.1.プロジェクターの構成
本実施形態では、光変調装置である液晶パネルを3個備えたプロジェクター1を例示する。まず、本実施形態に係るプロジェクター1の構成について図1を参照して説明する。
1.1.プロジェクターの構成
本実施形態では、光変調装置である液晶パネルを3個備えたプロジェクター1を例示する。まず、本実施形態に係るプロジェクター1の構成について図1を参照して説明する。
図1に示すように、プロジェクター1は、本体部2の内部に、光源装置10、色分離光学系20、リレー光学系30、光変調装置としての液晶パネル40R,40G,40B、色合成光学系50、および投写光学装置60を備える。液晶パネル40R,40G,40Bは、光源装置10から射出された光を変調する。投写光学装置60は、液晶パネル40R,40G,40Bによって変調された光を投写する。投写光学装置60は、本発明の投写光学装置の一例である。
光源装置10は光源11を有する。光源11は、放電型のランプであって、光を色分離光学系20へ射出する。光源装置10において、光源11と色分離光学系20との間には、図示しない、フライアイレンズや偏光変換素子などを含むインテグレーター光学系が備わる。光源11は、放電型のランプに限定されず、発光ダイオード、レーザーなどの固体光源であってもよい。
色分離光学系20は、ダイクロイックミラー21,22、反射ミラー23、フィールドレンズ24,25を備える。光源装置10から色分離光学系20に入射した光は、ダイクロイックミラー21,22にて、各々異なる波長域の3色の色光に分離される。3色の色光とは、略赤色の光であるR光、略緑色の光であるG光、略青色の光であるB光である。
ダイクロイックミラー21は、R光を透過させると共にG光およびB光を反射させる。ダイクロイックミラー21を透過したR光は、反射ミラー23で反射され、フィールドレンズ24を透過してR光用の液晶パネル40Rを照明する。
ダイクロイックミラー22は、B光を透過させると共にG光を反射させる。ダイクロイックミラー22で反射されたG光は、フィールドレンズ25を透過してG光用の液晶パネル40Gを照明する。ダイクロイックミラー22を透過したB光は、リレー光学系30に入射する。
リレー光学系30は、入射側レンズ31、反射ミラー32,34、リレーレンズ33、およびフィールドレンズとしての射出側レンズ35を有する。B光は、R光やG光と比べて光路が長く光束が大きくなりやすい。そのため、リレーレンズ33によって光束の拡大が抑えられる。色分離光学系20から入射したB光は、反射ミラー32で反射されると共に、入射側レンズ31によってリレーレンズ33の近傍で収束される。そして、B光は、反射ミラー34および射出側レンズ35に向かって発散する。反射ミラー34で反射されたB光は、射出側レンズ35を透過してB光用の液晶パネル40Bを照明する。
液晶パネル40R,40G,40Bは、各々の入射面から入射した色光を、それぞれ対応する画像信号に応じた強度の光に変換し、変換光として色合成光学系50へ射出する。液晶パネル40R,40G,40Bには、透過型の液晶パネルが採用される。
光変調装置としての液晶パネル40R,40G,40Bは、透過型に限定されず、反射型であってもよい。また、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスなどを採用してもよい。さらに、複数の色光毎にそれぞれ光変調装置を備える構成に限定されず、1個の光変調装置により、複数の色光を時分割にて変調する構成としてもよい。
色合成光学系50は、クロスダイクロイックプリズムであって、液晶パネル40R,40G,40Bから入射した各色の変換光を合成する。これにより、R光、G光、およびB光の3色の変換光から、カラー画像を表示する合成光Lが生成される。合成光Lは投写光学装置60へ射出される。
投写光学装置60は、レンズ装着部70を介して本体部2に装着される。投写光学装置60は本体部2に対して着脱が可能である。投写光学装置60に入射した合成光Lは、投写光学装置60を介して、画像光として図示しないスクリーンなどの投写対象に拡大表示される。
1.2.投写光学装置の構成
投写光学装置60の構成について図2および図3を参照して説明する。なお、図3では、投写光学装置60、本体部2の色合成光学系50、およびレンズ装着部70以外の構成を省略している。
投写光学装置60の構成について図2および図3を参照して説明する。なお、図3では、投写光学装置60、本体部2の色合成光学系50、およびレンズ装着部70以外の構成を省略している。
図2に示すように、投写光学装置60は、屈曲型の投写レンズであって、+X方向側からの平面視で略U字状に屈曲された光学系を有する。投写光学装置60の下方の端部には、−Y方向に向けて円筒部62が設けられる。投写光学装置60が本体部2に装着される際には、上述したレンズ装着部70に円筒部62が挿入される。
投写光学装置60の上方の端部には、開閉可能なレンズカバー64が設けられる。図2は、レンズカバー64が閉じた状態を示している。レンズカバー64は、投写光学装置60の使用時には開いて画像光が射出され、投写光学装置60を用いない場合には閉じて投写光学装置60内を保護する。レンズカバー64は投写光学装置60に対して着脱可能であってもよい。
円筒部62とレンズカバー64との間には、鏡筒61が備わる。鏡筒61の内部には、後述する投写光学系などが配置される。
図3に示すように、投写光学装置60の円筒部62が、レンズ装着部70に挿入されて本体部2に装着される。色合成光学系50から、+Y方向へ射出された合成光Lは、円筒部62の−Y方向の端面から投写光学装置60に入射する。
投写光学装置60は、投写光学系600と、投写光学系600を収容する鏡筒61と、を備える。投写光学装置60は、色合成光学系50から入射した合成光Lを、2段階に順次屈曲させる。そのため、合成光Lは、プロジェクター1の−Y方向へ反転されて画像光として射出される。
投写光学系600は、第1反射素子611、第2反射素子621、第1レンズ群613、および第2レンズ群623を備える。第1レンズ群613は第1反射素子611の後段に配置される。第2反射素子621は第1反射素子611の前段に配置される。第2レンズ群623は第2反射素子621の前段に配置される。第1反射素子611は、X-Y平面に対して、−Y方向の端部が約45度起き上がって配置される。第2反射素子621は、X-Y平面に対して、+Y方向の端部が約45度起き上がって配置される。
ここで、本明細書において、前段とは光源装置10に近い側をいい、後段とは光源装置10から遠い側、すなわち投写対象に近い側をいう。したがって、前段は投写光学系600の縮小側であり、後段は投写光学系600の拡大側である。つまり、投写光学系600の各構成は、合成光Lの進行方向に向かって、第2レンズ群623、第2反射素子621、第1反射素子611、第1レンズ群613の順番で配置される。なお、図3では、第2レンズ群623のうちで最も色合成光学系50に近いレンズのみを図示し、第1レンズ群613のうちで最も投写対象に近いレンズのみを図示し、その他のレンズを省略している。
鏡筒61は、フレーム630と保持部650とを備える。フレーム630には、投写光学系600が収容される。ここで、図3では、投写光学系600のうち、第1反射素子611および第2反射素子621がフレーム630に収容される構成を図示したが、これに限定されない。フレーム630は、第1レンズ群613および第2レンズ群623も収容する構成であってもよい。フレーム630および保持部650の詳細は後述する。
第1反射素子611および第2反射素子621は、第1レンズ群の光軸A1と、第2レンズ群の光軸A2とが略平行となるように合成光Lの光路を折り曲げる。詳しくは、投写光学装置60に入射した合成光Lは、第2レンズ群623の光軸A2に沿って進行し、第2反射素子621に至る。第2反射素子621は、合成光Lの進行方向を、光軸A2と略直交し、Z軸にほぼ沿う方向へ反射させて屈曲させる。第2反射素子621で反射された合成光Lは、第1反射素子611に至る。第1反射素子611は、合成光Lの進行方向を、Z軸と略直交し、Y軸にほぼ沿う方向へ反射させて屈曲させる。第1反射素子611で反射された合成光Lは、光軸A1に沿って進行して第1レンズ群613へ入射する。
第1レンズ群613は、+Y方向から入射した合成光Lの光束を拡大して、−Y方向へ射出する。そして、第1レンズ群613から射出された合成光Lは、画像光として拡大され、投写光学装置60からプロジェクター1上方の−Y方向へ向けてあおり投写される。
ここで、第1反射素子611と、第2反射素子621との間の光路上に第3レンズ群を配置してもよい。第3レンズ群によれば、第2反射素子621で反射されて第1反射素子611に向かう合成光Lの光束を拡幅または収束させることができる。
投写光学装置60は、屈曲型でない投写レンズと比べて、プロジェクター1を短焦点化する。屈曲型の投写光学装置60を用いることにより、投写対象に近い位置で投写することが可能となる。なお、屈曲型の投写光学装置60は、本体部2から射出された合成光Lの光路を屈曲させて射出可能であれば、上記の構成に限定されない。
1.3.フレームおよび保持部の構成
フレーム630および保持部650の構成について図4から図6を参照して説明する。図4および図5に示すように、フレーム630と保持部650とは一体に組み立てられる。
フレーム630および保持部650の構成について図4から図6を参照して説明する。図4および図5に示すように、フレーム630と保持部650とは一体に組み立てられる。
フレーム630は、+X方向からの平面視にて略台形状であって、−Y方向の下底が+Y方向の上底よりも長い。フレーム630は、この台形を底面とする四角柱状であって、X軸に沿う方向が、四角柱の高さ方向と一致する。上記下底に相当する領域は、−Y方向からの平面視で矩形の枠状を成している。
フレーム630は、上記枠状の領域の−Y方向に4個のフランジ630aを有する。詳しくは、フランジ630aは、−Y方向からの平面視にて、上記枠状の領域における、下方の2つの角に1個ずつと、Z軸に沿う方向の中程でX軸に沿う方向に対向して1個ずつとが設けられる。なお、フランジ630aの個数および配置は上記に限定されない。
4個のフランジ630aには、保持部650の、後述する延出部650bが嵌合される。それと共に、4個のフランジ630aと延出部650bとは、各1個ずつのねじ670によって固定される。なお、フランジ630aと延出部650bとの固定手段は、ねじ670を用いる方法に限定されない。
フレーム630は、上述したように略四角柱状であると共に、−Y方向の面が開放されている。上記台形の脚に相当する部位において、上方の面には開口部631が設けられ、下方の面には開口部632が設けられる。フレーム630の−Y方向、つまりフレーム630の内側には、開口部631を介して、第1反射素子611の反射面である第1面611aが露出する。詳細は後述するが、第1反射素子611は保持部650に保持される。
開口部632には、第2反射素子621が取り付けられ、フレーム630の内側に第2反射素子621の反射面621aが露出する。第1面611aと反射面621aとによって、フレーム630の内側の内部空間には、上述した合成光Lの光路が形成される。
保持部650は、保持面650aと延出部650bとを有する。保持面650aには第1反射素子611が保持される。保持面650aは、第1反射素子611と共に、フレーム630の開口部631を覆う。延出部650bは、保持部650から保持面650aと略直交するように交差する方向へ延出する。つまり、保持部650では、フレーム630のフランジ630aに固定され、そこから延在する一対の延出部650bにより、開口部631を橋渡しするように覆って保持面650aが支持される。
保持部650の材質は、フレーム630の材質とは異なる。保持部650の材質はフレーム630の材質よりも剛性が高いことが好ましい。これによれば、保持部650の剛性が比較的に高くなり、第1反射素子611をより精度よく保持することができる。なお、ここでいう剛性とは、例えば曲げ剛性である。
具体的には、保持部650の材質としては、例えば、ステンレスおよびアルミニウム合金などの金属が挙げられる。また、保持部650は、平板から板金加工によって製造される部材であることが好ましい。これによれば、例えば、鋳造で製造される場合と比べて、製造コストを低減することができる。
フレーム630の材質としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマーなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの樹脂が挙げられる。フレーム630は、これらの樹脂の他に、ガラス繊維などの充填材や添加剤などを含有してもよい。
図6に示すように、保持部650は、第1反射素子611を保持部650に固定するために、固定手段としての接着部672を複数備える。詳しくは、第1反射素子611は略矩形であって、−Y方向の第1面611aにおいて、第1領域611a1と第2領域611a2とを有する。第1領域611a1は、略矩形状であり、第1面611aの外周に枠状に設けられた第2領域611a2の内側に配置される。フレーム630と保持部650とが組み立てられると、開口部631と第1領域611a1とは重なるように配置される。そのため、第1領域611a1がフレーム630の内側に露出する。すなわち、第1領域611a1は、開口部631を介して、第2反射素子621から到達する光としての合成光Lを反射する。
接着部672は、第1面611aの4つの角に1個ずつ配置される。第2領域611a2は、4個の接着部672を介して保持面650aに固定される。つまり、4個の接着部672は、保持部650に対して第2領域611a2を接着して固定する。接着には、例えば、紫外線硬化型などの接着剤を用いて以下の様に行う。保持面650aの4個の接着部672に紫外線硬化型接着剤を塗布してから、第1反射素子611を保持面650aに仮設置する。次いで、第1反射素子611の位置を微調整した後、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させ、第1反射素子611を固定する。なお、フレーム630に対する第2反射素子621の固定方法は、特に限定されず、例えば第1反射素子611と同様な方法を採用してもよい。
ここで、接着部672の個数と配置とは上記に限定されない。また、保持部650と第1反射素子611との固定手段は、接着に限定されず、ねじを用いる方法、および板金部材を用いる方法を採用してもよい。
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
投写光学装置60において、従来よりも製造コストおよび重量を低減することができる。詳しくは、保持部650とフレーム630とは、互いに異なる材質で形成されて組み立てられる。そのため、保持部650には、第1反射素子611を精度よく保持する、比較的に頑強な材質を採用し、フレーム630には、比較的に軽量な材質を採用することが可能となる。したがって、フレーム630および保持部650の合計の重量を低く抑えることができる。
また、フレーム630および保持部650をダイカストなどで一体成形する場合と比べて、各々の形状を簡素化し易くなり、加工費などが低減される。これに加えて、フレーム630および保持部650のそれぞれに要求される特性に応じた材質を、材料費なども勘案して選択可能となる。したがって、フレーム630および保持部650の製造コストを低く抑えることができる。以上により、製造コストおよび重量を低減した投写光学装置60を提供することができる。
保持部650の材質が金属であり、フレーム630の材質が樹脂であることから、保持部650により第1反射素子611をさらに精度よく保持することができる。それと共に、フレーム630が軽量になり、フレーム630および保持部650の合計の重量をさらに低く抑えることができる。また、フレーム630を射出成形などの簡便な方式で成形可能となり、加工費などがより低減される。さらに、フレーム630の材料費も低く抑えることができる。
固定手段としての接着部672を複数備えることから、第1反射素子611を保持部650に着実に固定することができる。また、第2領域611a2が保持部650に固定されるため、第1領域611a1が遮られず、合成光Lの反射を妨げられない。さらに、保持部650と第2領域611a2とは接着によって固定されるため、ねじや嵌合による固定と比べて第1反射素子611を簡便に固定することができる。
投写光学装置60をプロジェクター1に適用すると、投写光学装置60を+Z方向から平面視した場合に、投写光学装置60から投写される画像などの投写方向が約180°屈曲する。そのため、プロジェクター1の設置の自由度を向上させることができる。また、軽量で製造コストに優れるプロジェクター1を提供することができる。
1.4.実施例および比較例
以下、実施例および比較例を示して、本発明の効果をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。
以下、実施例および比較例を示して、本発明の効果をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。
実施例に係る、組み立てられたフレーム630および保持部650と、比較例に係る一体の部材とについて、25℃から45℃の20℃の温度差における変位量の分布をシミュレーションした。以下の説明において、実施例に係る、組み立てられたフレーム630および保持部650を実施例のユニット690とし、実施例のユニット690に相当する、比較例の一体部材を比較例のユニット990とする。
具体的には、実施例のユニット690は、フレーム630をガラス繊維30質量%含有のポリカーボネート樹脂(PC−GF30)部材とし、保持部650をSUS304の板金部材として、これらの2部材を組み立てた構成とした。比較例のユニット990は、実施例のユニット690と近似形状の部材を、PC−GF30にて一体に形成した構成とした。実施例のシミュレーションでは、上述したフランジ630aを基準、すなわち固定位置とした。比較例のシミュレーションでは、実施例のフランジ630aに相当する部位を基準とした。実施例のユニット690の変位量シミュレーション結果を図7および図8に示す。比較例のユニット990の変位量シミュレーション結果を図9に示す。
ここで、図7から図9では、変位量の単位をmmとして、変位量の大小をグラデーションの濃淡で表現している。グラデーションが濃い部位程、温度差による変位量が大きいことを示す。なお、図7および図8と、図9とでは、グラデーションの濃淡を区分する閾値が異なる。また、図7および図8の実施例では、第1反射素子611と第2反射素子621とを表示している。これに対して、図9の比較例では反射素子であるミラーの表示を省略しているが、シミュレーションの結果に影響するものではない。
図7および図8に示すように、実施例のユニット690では、上方の部位の変位量が約0.14mm程度と最大となっているのに対し、第1反射素子611が固定される保持面650aの変位量は0.07mm以下に抑えられている。これは、保持部650が板金部材である点、およびフレーム630と別体である点によるものである。
一方、図9に示すように、比較例のユニット990では、上方の部位の変位量が0.15mm以上である。これに加えて、反射素子が取り付けられる部位の変位量は約0.14mmとなっている。このことは、比較例のユニット990では、実施例のユニット690と比べて、25℃から45℃の温度変化によって反射素子の位置が大きくずれることを示唆する。
一般に、屈曲型の投写光学装置では、スネルの法則により入射角の2倍の角度で光軸がずれ易く、複数の反射素子を採用する構成から、屈曲型でない投写光学装置と比べて高精度が要求される。また、プロジェクターに投写光学装置を採用すると、投写光学装置近傍の雰囲気温度が上昇する。これに加えて、近年普及している高光束のプロジェクターの場合には、投写光学装置自体も高温となり易い。特に、反射素子などの光学部品を保持する上記ユニットなどは高温に曝されることになり、比較例のユニット990のような、安価な樹脂の一体部材では、光学部品の位置精度を維持することが困難となる。この位置精度の維持の問題は、上記ユニットをダイカスト製とすることで改善されるが、上述した通り、製造コストおよび装置重量の増加という問題が生じる。
これに対して、実施例のユニット690は、光学部品の位置精度の確保と、製造コストおよび重量の低減とを実現するものである。詳しくは、保持部650を板金部材とすることによって、上記シミュレーション結果の通り、光学部品の位置精度が確保される。また、ユニット690は、樹脂部材と板金部材の2ピース構成であることから、アルミダイカストの一体部材と比べて軽量で製造し易いものとなる。さらに、保持部650は、樹脂などと比べて熱伝導率が高い板金部材であるため、光学部品の熱が延出部650bなどを介して放熱され、第1反射素子611などを冷却する効果がある。すなわち、ユニット690を採用することにより、プロジェクター1の光学的な精度が向上し、投写される画像光の表示品質を向上させることができる。
以上の結果から、実施例のユニット690は、樹脂の一体成形部材である比較例のユニット990に対して、温度変化に強く、光学部品の位置精度を維持できるものであることも示された。
2.第2実施形態
本実施形態では、上記実施形態のプロジェクター1に装着可能な投写光学装置を例示する。本実施形態に係る投写光学装置は、第1反射素子を備える投写光学系と、投写光学系を収容する鏡筒と、を備える。鏡筒は、フランジを有し、投写光学系を収容するフレームと、第1反射素子を保持する保持部と、を備える。保持部は、第1反射素子を保持する保持面と、保持面から保持面と交差する方向に延出し、フランジに嵌合される延出部と、を有する。保持部の材質は、フレームの材質と異なる。
本実施形態では、上記実施形態のプロジェクター1に装着可能な投写光学装置を例示する。本実施形態に係る投写光学装置は、第1反射素子を備える投写光学系と、投写光学系を収容する鏡筒と、を備える。鏡筒は、フランジを有し、投写光学系を収容するフレームと、第1反射素子を保持する保持部と、を備える。保持部は、第1反射素子を保持する保持面と、保持面から保持面と交差する方向に延出し、フランジに嵌合される延出部と、を有する。保持部の材質は、フレームの材質と異なる。
投写光学系は、第1反射素子の後段に配置された第1レンズ群と、第1反射素子の前段に配置された第2レンズ群と、を備え、第1反射素子は、第1レンズ群の光軸と、第2レンズ群の光軸とが略直交するように光路を折り曲げる。
すなわち、本実施形態の投写光学装置は、第1実施形態の投写光学装置60に対して、第2反射素子を有しない点が異なり、プロジェクター1から入射した合成光Lを約90°屈曲させて投写する。本実施形態の投写光学装置は、所謂L字型の投写光学装置である。本実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
1…プロジェクター、10…光源装置、40R,40G,40B…光変調装置としての液晶パネル、60…投写光学装置、61…鏡筒、600…投写光学系、611…第1反射素子、611a…第1面、611a1…第1領域、611a2…第2領域、613…第1レンズ群、621…第2反射素子、623…第2レンズ群、630…フレーム、630a…フランジ、650…保持部、650a…保持面、650b…延出部、672…固定手段としての接着部、A1…第1レンズ群の光軸、A2…第2レンズ群の光軸、L…光としての合成光。
Claims (10)
- 第1反射素子を備える投写光学系と、前記投写光学系を収容する鏡筒と、を備え、
前記鏡筒は、フランジを有し、前記投写光学系を収容するフレームと、前記第1反射素子を保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記第1反射素子を保持する保持面と、前記保持面から前記保持面と交差する方向に延出し、前記フランジに嵌合される延出部と、を有し、
前記保持部の材質は、前記フレームの材質と異なることを特徴とする投写光学装置。 - 前記第1反射素子を前記保持部に固定する固定手段を複数備えることを特徴とする、請求項1に記載の投写光学装置。
- 前記第1反射素子の第1面において、光を反射する第1領域と、前記固定手段によって前記保持部に固定される第2領域と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の投写光学装置。
- 前記固定手段は、前記保持部に対して前記第2領域を接着して固定することを特徴とする、請求項3に記載の投写光学装置。
- 前記投写光学系は、前記第1反射素子の後段に配置された第1レンズ群と、前記第1反射素子の前段に配置された第2レンズ群と、を備え、
前記第1反射素子は、前記第1レンズ群の光軸と、前記第2レンズ群の光軸とが略直交するように光路を折り曲げることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投写光学装置。 - 前記投写光学系は、前記第1反射素子の後段に配置された第1レンズ群と、前記第1反射素子の前段に配置された第2反射素子と、前記第2反射素子の前段に配置された第2レンズ群と、を備え、
前記第1反射素子および前記第2反射素子は、前記第1レンズ群の光軸と、前記第2レンズ群の光軸とが略平行となるように光路を折り曲げることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投写光学装置。 - 前記第1反射素子と、前記第2反射素子との間の光路上に第3レンズ群を備えることを特徴とする、請求項6に記載の投写光学装置。
- 前記保持部の材質は、前記フレームの材質よりも剛性が高いことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の投写光学装置。
- 前記保持部の材質は、金属であり、
前記フレームの材質は、樹脂であることを特徴とする、請求項8に記載の投写光学装置。 - 光源装置と、
前記光源装置から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって変調された光を投写する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の投写光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
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