以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の実施形態に係る全自動突合せ接合装置を示し、当該全自動突合せ接合装置は、例えば、電磁鋼板等の帯状金属板をプレス加工するタンデムプレスラインに設置されており、タンデムプレスラインの搬送ライン上を流れている先行の帯状金属板W1の終端に新しい後行の帯状金属板W2の始端を自動的に突合せ溶接により接合し、先行の帯状金属板W1に引き続いて新しい後行の帯状金属板W2を搬送ライン上へ供給できるようにしたものである。
尚、タンデムプレスラインは、図示していないが、コイル状に巻き取られている帯状金属板を繰り出し自在且つ回転自在に支持するアンコイラー(巻きほぐし装置)、帯状金属板の巻き癖を取るレベラー(矯正装置)、一つの金型をそれぞれセットした複数台のプレス機、帯状金属板の送り装置等(この送り装置は、レベラーやプレス装置等に組み込んだ送り、或いは、独立して設置されている)を直列状に並べたものであり、アンコイラーから繰り出された帯状金属板をレベラーで巻き癖を取り除きつつプレス装置へ連続的に送り込むことによって、各種製品を生産できるようになっている。
また、タンデムプレスラインにおいては、図示していないが、帯状金属板の送り異常等を防止するために、アンコイラーから繰り出された帯状金属板に弛みを持たせ、帯状金属板を弛んだ状態で送り装置によりプレス機へ送り込むようにしており、帯状金属板の弛んだ部分を複数のループテーブル(図示省略)で支持するようにしている。前記複数のループテーブルは、全自動突合せ接合装置を使用する場合には、全自動突合せ接合装置と干渉しない位置へ退避できるように構成されている。
本発明の実施形態に係る全自動突合せ接合装置は、図1に示す如く、アンコイラー(図示省略)とレベラー(図示省略)との間に配設したマグネットコンベアの下方位置に前後方向へ進退移動自在に設置されており、帯状金属板W1,W2の搬送ラインの後方(図3の右方向)に位置する待機位置(図3の一点鎖線位置)と、全自動突合せ接合装置の一部分が帯状金属板W1,W2の搬送ラインの下方に位置する溶接作業位置(図3の実線位置)とに亘って前後方向(図3の左右方向)へ進退移動自在に構成されている。
前記全自動突合せ接合装置は、タンデムプレスラインからライン停止信号が発せられると、ライン停止信号を受信して待機位置から溶接作業位置へ前進し、先行の帯状金属板W1の終端と後行の帯状金属板W2の始端とを突合せ溶接して接合し、また、溶接終了後に溶接作業位置から待機位置へ後退するように構成されている。
尚、前記マグネットコンベアは、全自動突合せ接合装置よりも高い位置に設置されてアンコイラーから繰り出された帯状金属板W1,W2の始端部をレベラー側へ下面搬送するものであり、全自動突合せ接合装置で先行の帯状金属板W1と後行の帯状金属板W2の接合作業を行う際に、磁力がOFFの状態になって後行の帯状金属板W2の始端部が全自動突合せ接合装置側へ垂れ下がるように構成されている。このとき、先行の帯状金属板W1の終端部もレベラー側から全自動突合せ接合装置側へ垂れ下がった状態となっている。
前記全自動突合せ接合装置は、前後方向へ進退移動自在なキャビネット本体1と、キャビネット本体1に帯状金属板W1,W2の長手方向へ往復移動自在に設けられ、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ水平姿勢で支持し得ると共に、先行の帯状金属板W1の終端と後行の帯状金属板W2の始端とを突き合せる左右のテーブル2と、左右のテーブル2に帯状金属板W1,W2の幅方向へそれぞれ往復移動自在に設けられ、左右のテーブル2上の先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を吸着保持して帯状金属板W1,W2の幅方向へ移動させる左右の吸着保持装置3と、帯状金属板W1,W2の搬送ラインから垂れ下がった先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ水平姿勢にして左右のテーブル2上へ案内する左右のガイド板4と、左右のテーブル2にそれぞれ設けられ、先行の帯状金属板W1の一方の側縁及び後行の帯状金属板W2の一方の側縁にそれぞれ当接して帯状金属板W1,W2の幅方向位置を一定の位置に位置決めすると共に、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ左右のテーブル2上へ保持固定する左右のクランプ5と、左右のテーブル2間に設けられ、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を幅方向に沿って切断する切断装置6と、左右のガイド板4に案内された先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ切断装置6へ送り込む左右の送り込み装置7と、両帯状金属板W1,W2の突合せ部近傍を上下方向から挟持固定するクランプ機構8と、両帯状金属板W1,W2の突合せ部に沿って往復移動し、両帯状金属板W1,W2の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接用トーチ9を有する溶接装置10と、先行の帯状金属板W1及び後行の帯状金属板W2の位置を検出する複数の検出器11〜16と、を備えている。
前記キャビネット本体1は、図1〜図3に示す如く、床面に設置したベース61上にリニアガイド62(リニアレール62a及びリニアレール62a上を摺動するスライダー62bから成る)を介して帯状金属板W1,W2の幅方向(図2の上下方向及び図3の左右方向)に沿って往復移動自在に支持されており、モータ、ラック及びピニオンギヤから成る駆動装置(図示省略)によりキャビネット本体1が帯状金属板W1,W2の搬送ラインの後方(図3の右方向)に位置する待機位置(図3の一点鎖線位置)と、キャビネット本体1の一部分(左右のテーブル2及び左右のガイド板4等を設置した部分)が帯状金属板W1,W2の搬送ラインの下方に位置する溶接作業位置(図3の実践位置)とに亘って前後方向へ進退移動自在に構成されている。
また、キャビネット本体1は、左右のテーブル2、左右のガイド板4、切断装置6及び左右の送り込み装置7等が配設される平面形状が矩形に形成された水平姿勢のテーブルベース17を備えており、当該テーブルベース17の上面には、図5及び図6に示す如く、左右のテーブル2を収容支持する上方が開放された矩形状の枠体18と、枠体18内の左右方向(図5及び図6の左右方向)中央部に帯状金属板W1,W2の幅方向(図5の上下方向)に沿う姿勢で且つテーブルベース17の左右方向(図5及び図6の左右方向)に一定の間隔を空けて配設され、枠体18内の空間を左右に区切る一対の仕切壁19とが設けられている。
更に、キャビネット本体1の内部には、図示していないが、溶接用電源装置及びその制御装置、溶接用ガスボンベ及びその付属品、切断装置6及び溶接装置10等の各種装置の制御装置等がそれぞれ格納されている。
前記テーブルベース17の上面に設けた枠体18及び一対の仕切壁19は、左右のテーブル2を支持するものであり、枠体18の左右の側壁内面には、図5に示す如く、先行の帯状金属板W1の終端を検出する終端検出器11と、後行の帯状金属板W2の始端を検出する始端検出器12とが設けられている。前記終端検出器11及び始端検出器12には、近接センサーが使用されている。
尚、図1において、20はタッチパネル、21は主操作パネル、22は手元操作パネル、23はカバーケース、24は表示灯、25は作業灯、26はスクラップケースである。
前記左右のテーブル2は、図4〜図6に示す如く、キャビネット本体1のテーブルベース17の左右方向中央部に配設した切断装置6の左右位置に帯状金属板W1,W2の長手方向へ往復移動自在に配設されており、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ水平姿勢で支持し得ると共に、先行の帯状金属板W1の終端と後行の帯状金属板W2の始端とを突き合せるものである。
即ち、左右のテーブル2は、何れも平面形状が矩形状に形成されており、中央部分には、左右の吸着保持装置3である電磁石29が配設される矩形状の開口2aが形成されている。
また、左右のテーブル2は、図5及び図6に示す如く、テーブルベース17上の枠体18内に水平姿勢で配設されており、枠体18及び枠体18内を仕切る仕切壁19に一対のリニアガイド27を介して帯状金属板W1,W2の長手方向(図4〜図6の左右方向)へ往復移動自在に支持されている。
前記一対のリニアガイド27は、図5及び図6に示す如く、枠体18内に帯状金属板W1,W2の長手方向に沿って配設され、枠体18の左右側壁と一対の仕切壁19との間に架設されたリニア軸27aと、リニア軸27aに摺動自在に嵌合され、左右のテーブル2の下面に固定されたスライダー27bとを備えている。
更に、左右のテーブル2は、枠体18と左右のテーブル2との間にそれぞれ介設したテーブル用駆動装置28により帯状金属板W1,W2の長手方向へ往復移動自在となっている。
前記テーブル用駆動装置28は、図4〜図6に示す如く、枠体18に固定した正逆回転自在なモータ28aと、モータ28aの出力軸に取り付けたピニオン28bと、左右のテーブル2の下面に帯状金属板W1,W2の長手方向に沿って固定され、ピニオン28bに噛み合うラック28cとを備えており、モータ28aによりピニオン28bを正逆回転させると、ラック28cを介して左右のテーブル2が帯状金属板W1,W2の長手方向へ往復移動するようになっている。
前記左右の吸着保持装置3は、図5、図6及び図8に示す如く、電磁石29、電磁石用テーブル30及び電磁石用テーブル駆動装置31等を備えており、電磁石29が左右のテーブル2上の先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を磁力により吸着保持すると共に、前記電磁石29が帯状金属板W1,W2を吸着保持した状態で帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に構成されている。
前記電磁石29は、図5及び図8に示す如く、左右のテーブル2に形成した開口2a内に帯状金属板W1,W2の長手方向に沿って二列の状態で配設されており、左右のテーブル2の開口2aの下方位置に一対のリニアガイド32を介して帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された電磁石用テーブル30の上面に固定されている。この電磁石29の磁力は、帯状金属板W1,W2を吸着保持した状態で帯状金属板W1,W2を幅方向へ移動させることができ且つ帯状金属板W1,W2の側縁が後述する左右のクランプ5の位置決め部材5aに当接したときに帯状金属板W1,W2が電磁石29上で摺動して姿勢を変えられるように設定されている。
前記一対のリニアガイド32は、左右のテーブル2の開口周縁部下面に垂設した対向状の支持ブラケット33に帯状金属板W1,W2の幅方向に沿って架設されたリニア軸32aと、リニア軸32aに摺動自在に嵌合され、電磁石用テーブル30の下面に固定されたスライダー32bとを備えている。
また、電磁石29は、支持ブラケット33と電磁石用テーブル30との間に介設した電磁石用テーブル駆動装置31により帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動自在となっている。
前記電磁石用テーブル駆動装置31は、支持ブラケット33に固定した正逆回転自在なモータ31aと、モータ31aと電磁石用テーブル30との間に介設したボールネジ機構(図示省略)とを備えており、モータ31aを正逆回転させると、ボールネジ機構により電磁石用テーブル30及び電磁石29が帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動するようになっている。
尚、上記の実施形態においては、左右の吸着保持装置3は、帯状金属板W1,W2を磁力により吸着保持する電磁石29としたが、他の実施形態においては、帯状金属板W1,W2を真空吸着により吸着保持する真空吸着機構としても良い。
前記真空吸着機構は、図示していないが、電磁石用テーブル30の上面に配設され、真空吸引により帯状金属板W1,W2の裏面を吸引する複数の真空吸着盤と、各真空吸着盤にホース及び電磁弁等を介して接続された真空ポンプとを備えている。
前記左右のガイド板4は、図4及び図7に示す如く、鋼板材により平面形状がほぼ矩形状に形成されており、テーブルベース17上の枠体18の上面に左右のテーブル2の上面を覆う状態で固定されている。このとき、左右のテーブル2は、その上面が左右のガイド板4の下面に接触しているが、左右のガイド板4の下面を摺動しながら帯状金属板W1,W2の長手方向へ往復移動できるようになっている。
また、左右のガイド板4は、図6に示す如く、枠体18の左右両側から外方へ突出し且つ上方へ向かって湾曲しており、帯状金属板W1,W2の搬送ラインから垂れ下がった先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ水平姿勢にして左右のテーブル2上へ案内するようになっている。
更に、左右のガイド板4には、図7に示す如く、左右のテーブル2に形成した矩形状の開口2aに合致し且つ左右のテーブル2の開口2aよりも若干大きい矩形状の大開口4aと、左右の送り込み装置7を形成するピンチローラの外周面の一部が上方へ突出自在な矩形状の切欠4b及び複数の矩形状の小開口4cとがそれぞれ形成されている。また、一方のガイド板4(先行の帯状金属板W1を案内する右側のガイド板4)には、枠体18の一方の側壁に設けた終端検出器11が望む終端検出器用開口4dが形成され、他方のガイド板4(後行の帯状金属板W2を案内する左側のガイド板4)には、枠体18の他方の側壁に設けた始端検出器12が望む始端検出器用開口4eが形成されている。
そして、左右のガイド板4のうち、一方のガイド板4(先行の帯状金属板W1を案内する右側のガイド板4)の上方へ湾曲した部分の外側面には、全自動突合せ接合装置が待機位置から溶接作業位置に前進する際に、搬送ラインから垂れ下がった先行の帯状金属板W1の終端部を検出する終端部検出器13と、先行の帯状金属板W1の終端部側縁を検出する終端部側縁検出器14とが設けられ(図4参照)、また、他方のガイド板4(後行の帯状金属板W2を案内する左側のガイド板4)の上方へ湾曲した部分の外側面には、全自動突合せ接合装置が待機位置から溶接作業位置に前進する際に、搬送ラインから垂れ下がった後行の帯状金属板W2の始端部を検出する始端部検出器15と、先行の帯状金属板W1の始端部側縁を検出する始端部側縁検出器16とが設けられている(図4参照)。前記各検出器13〜16には、近接センサーが使用されている。また、左右のガイド板4の湾曲した部分には、各検出器13〜16が望む開口(図示省略)が形成されている。
前記左右のクランプ5は、図4〜図6及び図8に示す如く、左右のテーブル2の奥側部分の左右位置に一対配設されており、左右のテーブル2の奥側部分上面に固定され、先行の帯状金属板W1の終端部奥側の側縁及び後行の帯状金属板W2の終端部奥側の側縁にそれぞれ当接して両帯状金属板W1,W2の幅方向位置を一定の位置に位置決めする側面形状が倒立L字状に形成された位置決め部材5aと、位置決め部材5aに鉛直姿勢で固定され、ロッドが下向きのクランプ用流体圧シリンダ5bと、クランプ用流体圧シリンダ5bのロッドに固定され、左右のテーブル2上の先行の帯状金属板W1の終端部奥側の側縁部上面及び後行の帯状金属板W2の始端部奥側の側縁部上面にそれぞれ当接自在なクランプ板5cと、クランプ板5cの下面に貼り付けたウレタン部材の等のクッション材5dとを備えている。
前記左右のクランプ5によれば、クランプ用流体圧シリンダ5bの短縮時には、クランプ板5cに貼り付けたクッション材5dと左右のテーブル2の上面との間に帯状金属板W1,W2の奥側の側縁部を挿入できる間隙が形成され(図8(A)及び(B)参照)、また、クランプ用流体圧シリンダ5bの伸長時には、クランプ板5cが下降してクランプ板5cの下面に貼り付けたクッション材5dにより帯状金属板W1,W2を左右のガイド板4を介して左右のテーブル2上面へ保持固定するようになっている(図8(C)参照)。
前記切断装置6は、図4〜図6及び図10〜図13に示す如く、テーブルベース17上に設けた一対の仕切壁19の上端部に帯状金属板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定された左右の固定刃34と、テーブルベース17の左右方向中央部に形成した上下方向の貫通穴に挿通されて一対の仕切壁19間に昇降自在に支持され、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が挿入される挿入穴35aを形成した枠状の切断ヘッド35と、切断ヘッド35の挿入穴35aの内周縁部上縁側に帯状金属板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で固定され、左右の固定刃34との協働作用により先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を幅方向に沿って一緒に切断する左右の可動刃36と、テーブルベース17の下面に垂設された支持フレーム37に設けられ、切断ヘッド35を昇降動させる縦向き姿勢の二本の可動刃用流体圧シリンダ38と、一方の仕切壁19に水平姿勢で設けられ、左右の仕切壁19に形成したロック穴19a及び切断ヘッド35に形成したロック穴35bに挿入されて切断ヘッド35を下降した位置にロックするロックピン39aを有するロック用流体圧シリンダ39とを備えている。
また、切断装置6の切断ヘッド35は、可動刃用流体圧シリンダ38の伸長動作により切断ヘッド35の挿入穴35aの一部が左右の仕切壁19よりも上方へ突出して挿入穴35a内に先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を挿入できる上昇位置(図12A及び図13A参照)と、可動刃用流体圧シリンダ38の短縮動作により切断ヘッド35の上端部が左右の仕切壁19内に位置する下降位置(図12B及び図13B参照)とを取り得るようになっている。
而して、前記切断装置6によれば、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を上昇位置にある切断ヘッド35の挿入穴35a内に挿入し、この状態で切断ヘッド35を可動刃用流体圧シリンダ38により上昇位置から下降位置へ下降させることによって、左右の可動刃36と左右の固定刃34との間で帯状金属薄板の終端部及び始端部を幅方向に沿って一緒に切断することができ、また、ロック用流体圧シリンダ39を作動させることによって、切断ヘッド35を下降位置にロックすることができるようになっている。
前記左右の送り込み装置7は、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ挟持して搬送する一対のピンチローラ42,44を備えており、前記一対のピンチローラ42,44は、間隔を調整自在に構成されていると共に、一対のピンチローラ42,44間に位置する帯状金属板W1,W2を抜き差しできる開放位置(図9A参照)と帯状金属板W1,W2を抜き差しできない閉鎖位置(図9(B)及び(C)参照)とに亘って開閉自在に構成されている。
即ち、左右の送り込み装置7は、図4〜図6及び図9に示す如く、テーブルベース17の奥側部分に設けた軸受台40と、軸受台40に複数の軸受41を介して片持ち状態で回転自在に支持され、左右のガイド板4に形成した矩形状の切欠4b及び複数の矩形状の小開口4cの上方位置に帯状金属板W1,W2の幅方向に沿う水平姿勢で配置された上方のピンチローラ42と、左右のガイド板4の切欠4b及び小開口4cの下方位置に位置してテーブルベース17の上面に配設されたローラ受け台43と、ローラ受け台43に帯状金属板W1,W2の幅方向に沿う水平姿勢で回転自在に支持され、上方のピンチローラ42の下方に位置して上方のピンチローラ42に対向する下方のピンチローラ44と、テーブルベース17の下面に設けられ、ローラ受け台43を昇降自在に支持して上方のピンチローラ42と下方のピンチローラ44の間隔を調整する一対の昇降用流体圧シリンダ45と、軸受台40に設けられ、上方のピンチローラ42を回転駆動するローラ駆動装置46と、テーブルベース17に設けられ、上方のピンチローラ42の遊端部(先端部)と下方のピンチローラ44の一端部(手前側端部)との間を開閉するローラ開閉機構47とを備えている。
前記左右の送り込み装置7は、図9(C)に示す如く、昇降用流体圧シリンダ45によりローラ受け台43及び下方のピンチローラ44を上昇させ、上方のピンチローラ42と下方のピンチローラ44との間に位置する帯状金属板W1,W2を両ピンチローラ42,44で挟持し、ローラ駆動装置46を駆動して上方のピンチローラ42を回転させることによって、帯状金属板W1,W2を切断装置6側へ送り込むことができる。
前記上方のピンチローラ42及び下方のピンチローラ44は、ローラ軸42a,44aと、ローラ軸42a,44aに嵌着された合成ゴム製又は合成樹脂製のローラ本体42b,44bとを備えている。また、下方のピンチローラ44は、図9に示す如く、ローラ本体44bの外周面の一部が左右のガイド板4に形成した矩形状の切欠4b及び複数の矩形状の小開口4cから上方へ突出できるように所定の間隔で切り欠かれている。
また、前記ローラ駆動装置46は、図6及び図9に示す如く、軸受台40に設けたモータ46aと、モータ46aの出力軸と上方のピンチローラ42のローラ軸との間に介設したベルト伝動機構46b(モータの出力軸に嵌着した駆動プーリ、上方のピンチローラ42のローラ軸端部に嵌着した従動プーリ及び両プーリに巻き回されたベルトから成る)とを備えており、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ切断装置6側へ送り込めるように上方のピンチローラ42を回転駆動するように構成されている。
更に、前記ローラ開閉機構47は、図5、図6及び図9に示す如く、テーブルベース17の前側上面に固定した二つの軸受台47aと、二つの軸受台47aにテーブルベース17の左右方向に沿う姿勢で回転自在に支持された回転軸47bと、回転軸47bに設けたアーム部材47cと、回転軸47bに嵌着され、上方のピンチローラ42のローラ軸42a先端部に抜き差し自在に嵌合される開閉板47dと、テーブルベース17とアーム部材47cとの間に介設され、回転軸及び開閉板を90°正逆回転させる開閉用流体圧シリンダ47eとを備えており、開閉用流体圧シリンダ47eを短縮状態にすると、開閉板47dが水平位置に回動し、上方のピンチローラ42の遊端部(先端部)と下方のピンチローラ44の一端部(手前側端部)との間が開放されて一対のピンチローラ42,44間に位置する帯状金属板W1,W2を抜き差し自在となり、また、開閉用流体圧シリンダ47eを短縮状態から伸長状態にすると、開閉板47dが水平位置から鉛直一へ回動し、開閉板47dに形成した貫通穴に上方のピンチローラ42のローラ軸42a先端部が挿入され、上方のピンチローラ42の遊端部(先端部)と下方のピンチローラ44の一端部(手前側端部)との間が閉鎖されて帯状金属板W1,W2を抜き差しできないようになっている。
そして、前記左右の送り込み装置7は、先行の帯状金属板W1の終端を検出する終端検出器11からの検出信号及び後行の帯状金属板W2の始端を検出する始端検出器12からの検出信号に基づいて先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ一定の速度で切断装置6側へ送り込み、一定時間経過後に停止するように構成されている。
前記クランプ機構8は、図20に示す如く、切断装置6の上方位置(両帯状金属板W1,W2の突合せ部の上方位置)に前後方向へ水平移動自在に配設した溶接装置10の上部フレーム52の下面側に設けられ、左右のテーブル2により突き合された先行の帯状金属板W1及び後行の帯状金属板W2の突合せ部近傍の上面に当接自在な左右の上部クランプ8aと、切断装置6の切断ヘッド35の上端部に設けられ、左右の上部クランプ8aとの間で両帯状金属板W1,W2の突合せ部近傍を挾持固定する下部治具8bとを備えており、溶接装置10の上部フレーム52を前進させて左右の上部クランプ8aを下部治具8bの上方位置へ移動させた後、切断ヘッド35を上昇させることによって、両帯状金属板W1,W2の突合せ部近傍を左右の上部クランプ8aと下部治具8bとで上下方向から緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
即ち、左右の上部クランプ8aは、図14、図15及び図17に示す如く、銅材により両帯状金属薄板の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、溶接装置10の上部フレーム52の下面に両帯状金属板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隔を空けて対向状に配設されている。この左右の上部クランプ8aは、両帯状金属薄板の突合せ部を溶接する際に、主にアークの拡がりを遮断して両帯状金属板W1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるものである。尚、左右の上部クランプ8aは、突合せ溶接する両帯状金属薄板の厚みに応じて左右の上部クランプ8aの間隔を調整できるようにしても良い。
一方、下部治具8bは、図11及び図13に示す如く、銅材により帯状金属板W1,W2の幅よりも長めの角柱状に形成されて切断装置6の切断ヘッド35の上端面に形成した溝状の凹部に挿入固定されたバックバーから成り、その上面には、帯状金属薄板の溶接時にアルゴンガス等のシールドガスが流れるガス溝と、ガス溝内へシールドガスを供給する複数のガス孔とが形成されている。この下部治具8bは、両帯状金属薄板の突合せ部を突合せ溶接する際に、余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、両帯状金属薄板の熱歪等を防止すると共に、両帯状金属薄板の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
前記溶接装置10は、キャビネット本体1内に収納された待機位置と、一部分が切断装置6の下降位置にある切断ヘッド35の上方に位置する溶接作業位置(両帯状金属薄板の突合せ部の上方に位置する状態)とに亘って帯状金属薄板の幅方向へ往復移動自在に構成されており、両帯状金属薄板の突合せ溶接する際に、前方へ引き出されて溶接用トーチが所定の速度で両帯状金属薄板の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
即ち、溶接装置10は、図14〜図17示す如く、キャビネット本体1内に配設した水平姿勢のベース48と、ベース48の上面にレール49a及びスライダー49bから成るリニアガイド49を介して帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された移動台50と、移動台50の上面に配設した門型フレーム51と、門型フレーム51の上面に設けた略枠状の上部フレーム52と、ベース48に設けられ、移動台50及び門型フレーム51を帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動させて上部フレーム52を待機位置と溶接作業位置とに亘って往復移動させるロッドレスシリンダ53と、上部フレーム52の上面にレール54a及びスライダー54bから成るリニアガイド54を介して帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持されたトーチ走行台55と、上部フレーム52内に位置してトーチ走行台55に昇降自在に支持されたトーチ上下用アーム56と、トーチ上下用アーム56の先端部に取り付けた狭窄ノズル9aを有するTIG溶接用トーチ9と、トーチ走行台55に設けられ、トーチ上下用アーム56及びTIG溶接用トーチ9を上下動させるトーチ上下用モータ57及びボールネジ機構58と、トーチ走行台55及びTIG溶接用トーチ9を両帯状金属板W1,W2の幅方向へ往復走行させるトーチ前後用モータ59及びベルト伝動機構60とを備えている。
また、TIG溶接用トーチ9は、図18に示す如く、シールドノズル9bと、シールドノズル9bの内側に設けられ、タングステン電極棒9cが同芯状に挿入される狭窄ノズル9aと、シールドガスGを層流化するガスレンズ9dと、タングステン電極棒9cを把持するコレットチャック9eと、コレットチャック9eの締め付け部材9fと、シールドガス供給口9gとを備えており、シールドガス供給口9gから供給されたシールドガスGが、ガスレンズ9dを通って狭窄ノズル9aとシールドノズル9bの間を流れるシールドガスGと、ガスレンズ9dを通らずに狭窄ノズル9aの内側を流れるシールドガスGとに分流され、狭窄ノズル9aの内側を流れるシールドガスGが狭窄ノズル9aとシールドノズル9bの間を流れるシールドガスGより高速となって吐出されるようになっている。
前記TIG溶接用トーチ9には、特開2012−139704号公報や国際公開第2013/157036号パンフレットに記載されたものが使用されている。尚、狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチ9は、風の影響に左右されず、アークのエネルギー密度、指向性、硬直性を保つことができると共に、高速速度を行えるうえ、溶接部の曲げ延性の向上を図れる等の利点を有する。
次に、上述した全自動突合せ接合装置を用いて先行の帯状金属板W1の終端と後行の帯状金属板W2の始端を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
尚、溶接電流、アーク長、シールドガスの供給量及び種類、TIG溶接用トーチ9の走行速度等は、帯状金属板W1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されている。また、本実施形態においては、帯状金属板W1,W2には、厚さが0.35mm、幅が500mmの電磁鋼板が使用されている。
タンデムプレスラインに供給されている先行の帯状金属板W1がなくなると、タンデムプレスラインから待機位置にある全自動突合せ接合装置にプレス停止信号が発せられる。このとき、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部は、帯状金属板W1,W2の搬送ラインから下方へ垂れ下がった状態となっている。
全自動突合せ接合装置は、プレス停止信号を受信すると、待機位置から溶接業位置に前進し、左右のガイド板4に設けた終端部検出器13、終端部側縁検出器14、始端部検出器15、始端部側縁検出器16により先行の帯状金属板W1の終端部及び終端部側縁と後行の帯状金属板W2の始端部及び始端部側縁とをそれぞれ検出し、帯状金属板W1,W2の幅に応じた溶接作業位置で停止する。
全自動突合せ接合装置は、溶接作業位置に停止すると、タンデムプレスライン側に帯状金属板W1,W2の供給可能信号を発信する。
そうすると、タンデムプレスラインの送り装置が作動し、帯状金属板W1,W2の搬送ラインから下方へ垂れ下がった先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部をそれぞれ左右のガイド板4側へ繰り出す。また、左右の送り込み装置7も送り装置と同期して作動し、左右の送り込み装置7により先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が切断装置6側へ送り出される。
左右の送り込み装置7により先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を切断装置6側へ送り出す際に、テーブルベース17上の枠体18に設けた先行の帯状金属板W1の終端検出器11及び後行の帯状金属板W2の始端検出器12により先行の帯状金属板W1の終端及び後行の帯状金属板W2の始端がそれぞれ検出される。
終端検出器11及び始端検出器12により先行の帯状金属板W1の終端及び後行の帯状金属板W2の始端がそれぞれ検出されると、左右の送り込み装置7は、終端検出器11及び始端検出器12からの検出信号に基づいて先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が切断装置6に至るまで一定時間作動する。即ち、左右の送り込み装置7は、先行の帯状金属板W1の終端及び後行の帯状金属板W2の始端が切断装置6の上昇位置にある切断ヘッド35の挿入穴35a内に入るまで作動する。
左右の送り込み装置7が先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を切断装置6に送り込むと、左右の送り込み装置7が停止すると共に、左右の吸着保持装置3の電磁石29がONの状態になって先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が電磁石29に吸着保持される。
先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が左右の吸着保持装置3により吸着保持されると、左右の送り込み装置7の上方のピンチローラ42の遊端部(先端部)と下方のピンチローラ44の一端部(手前側端部)との間が開放されると共に、下方のピンチローラ44が下降して両帯状金属板W1,W2の挟持状態が解除される。
両帯状金属板W1,W2の挟持状態が解除されると、左右の吸着保持装置3の電磁石用テーブル30が左右のクランプ5側へ移動して両帯状金属板W1,W2の奥側の側縁を左右のクランプ5の位置決め部材5aに当接させ、両帯状金属板W1,W2の幅方向位置を一定の位置に位置決めすると共に、両帯状金属板W1,W2を電磁石29上で摺動させて両帯状金属板W1,W2の両側縁が一直線状になるように両帯状金属板W1,W2の曲がりを修正する。
両帯状金属板W1,W2の幅方向位置が位置決めされて両帯状金属板W1,W2の曲がりが修正されると、左右のテーブル2に設けた左右のクランプ5が作動し、左右のクランプ5により両帯状金属板W1,W2が左右のガイド板4を介して左右のテーブル2上に保持固定される。
両帯状金属板W1,W2が左右のクランプ5により保持固定されたら、切断装置6が作動して上昇位置にある切断ヘッド35が下降位置に下降し、先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が幅方向に沿って同時に切断される。このとき、両帯状金属板W1,W2の切れ端は、切断ヘッド35の挿入穴35aから排出されてスクラップケースへ回収される。
先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部が幅方向に沿って切断されたら、左右のテーブル2が近付く方向へ移動し、先行の帯状金属板W1の切断された終端と後行の帯状金属板W2の切断された始端とが密着状態で突き合される。
先行の帯状金属板W1の終端と後行の帯状金属板W2の始端とが突き合されたら、溶接装置10の上部フレーム52が待機位置から溶接作業位置に前進し、左右の上部クランプ8aを両帯状金属板W1,W2の突合せ部の上方位置へ移動させると共に、切断装置6の切断ヘッド35が上昇して両帯状金属板W1,W2の突合せ部近傍を左右の上部クランプ8aと下部治具8bとで挟持固定する。
両帯状金属板W1,W2の突合せ部近傍が左右の上部クランプ8a及び下部治具8bにより上下方向から挟持固定されたら、溶接装置10のTIG溶接用トーチ9が自動的に高さ調整された後、TIG溶接用トーチ9と下部治具8bとの間にアークを発生させる。アークが安定したら、この状態でトーチ走行台が両帯状金属板W1,W2の幅方向に沿って移動し、TIG溶接用トーチ9により両帯状金属板W1,W2の突合せ部が突合せ溶接される。
両帯状金属板W1,W2が突合せ溶接されて接合されたら、左右のクランプ5が開放されて両帯状金属板W1,W2の保持固定状態が解除されると共に、溶接装置10の上部フレーム52が待機位置へ後退する。また、電磁石29がOFFの状態になり、両帯状金属板W1,W2の吸着保持状態が解除される。更に、全自動突合せ接合装置が溶接作業位置から待機位置へ後退すると共に、切断装置6の切断ヘッド35が上昇した後、全自動突合せ接合装置がタンデムプレスラインに接合完了信号を出力する。
このように、前記全自動突合せ接合装置は、先行の帯状金属板W1及び後行の帯状金属板W2の位置検出、左右のテーブル2及び切断装置6への両帯状金属板W1,W2の送り込み、両帯状金属板W1,W2の切断、両帯状金属板W1,W2の位置決め、両帯状金属板W1,W2の突合せ溶接等の各作業の全てを自動で行え、先行の帯状金属板W1と後行の帯状金属板W2の突合せ溶接を全自動で行える。その結果、前記全自動突合せ接合装置は、高品質な突合せ接合を行えると共に、作業能率の大幅な向上を図れる。
また、全自動突合せ接合装置は、TIG溶接用トーチ9が、シールドガスGを外側と内側に分流し且つ内側のシールドガスGを外側のシールドガスGより高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えているため、溶接欠陥のない高品質の安定した溶接を行える。
更に、全自動突合せ接合装置は、左右のガイド板4が左右のテーブル2の吸着保持装置を設けた部分を除いた部分をほぼ覆うようにしているため、帯状金属板W1,W2の搬送ラインから垂れ下がった先行の帯状金属板W1の終端部及び後行の帯状金属板W2の始端部を切断装置6側へ円滑且つスムースに送り込むことができる。