JP2021165426A - ナノサイズの金属粒子作製装置および金属粒子作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】直径1μm以下のナノサイズの金属粒子を効率良く製造するための金属粒子作製装置を提供する。【解決手段】ナノサイズの金属粒子作製装置100は、第1の溶媒101とマイクロサイズの第1の金属粒子102とを含む懸濁液が満たされる第1の容器103と、第1の容器103を浸漬させる第2の溶媒104が満たされる第2の容器105と、第1の容器103から懸濁液を汲み出す吸引装置106と、第1の容器103の中に設けられ、吸引装置106と接続されており、第1の容器103の中に懸濁液を噴射可能な噴射口107と、第2の溶媒104中であって、第1の容器103の外側に配置され、第1の容器103に向けて超音波を照射可能な超音波振動子108と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、鉛を含まない耐熱性を有する接合部を形成する接合材料の作製装置および作製方法に関する。より詳細には、例えばSi、GaN、SiC等の材料で形成された半導体素子とリードフレームとを接合する接合材料に用いる粒子径1μm以下のナノスケールの金属粒子の作製装置および作製方法に関する。
近年、Siチップよりも高速動作が可能なGaNチップや高出力動作が可能なSiCチップが使われることが多くなっている。GaNチップやSiCチップは、Siチップと比較して動作時の発熱量が多いため、そのような半導体素子と絶縁回路基板との線膨張係数の差に由来する応力が接合部に加わった際に、接合部が歪みに耐え切れずに破壊するクラック不良が発生し得る。従来は、ベースプレートにアルミニウム製の冷却フィン等を取り付けて熱を逃がしていたが、発熱量が多くなると、熱流束断面積の小さい接合部が放熱の律速となるため、十分に熱を逃がすことが困難になりつつある。このために、接合部の耐熱性の向上が必要となっている。
そこで、耐熱性を向上させた第1の接合材料として、Agナノ粒子とバインダーとを混合したAgナノペーストが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この接合材料を構成する銀ナノ粒子は、平均粒子径200nm以下の粒子が用いられており、そのような平均粒子径を有する銀ナノ粒子を使用することで、耐熱性の高い接合体を形成することができる。
上述の第1の接合材料は、金属材料が銀であるため接合材料の価格が非常に高くなる。そのため用途が付加価値の高い製品に限定されている。この問題に対して安価な卑金属を超音波でナノ粒子化して接合材料に適用することが提案されている。具体的には、超音波キャビテーションによるナノ粒子合成法は、金属組成物の融点未満の温度に保持した媒体中に金属組成物を投入し、機械的な撹拌をすることなく超音波を照射して粒子を作製する方法である。超音波を照射することで媒体中にキャビテーションが発生し、キャビテーション圧壊時の衝撃圧を利用して固体の金属組成物を微細な粒子として分散させる。この方法では直径1μm以下の粒子を製造することができる(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、金属組成物と媒体との比重差によって金属組成物は媒体の下部に堆積するため、キャビテーションが発生している媒体中の反応場を有効利用できずナノ粒子の合成効率が低いという問題がある。
金属組成物の堆積を抑制する方法として機械的撹拌法がある(例えば、特許文献3参照。)。具体的には、金属組成物の融点以上の温度に保持した高温の加熱媒体中に金属組成物を投入し、機械的な撹拌を行いながら超音波エネルギーを負荷して溶融した金属組成物を微細な液滴として分散させ、ついで冷却凝固させて微細粒子を製造する方法である。
しかしながら、キャビテーションが発生している媒体の内部で撹拌羽根を高速回転させると、撹拌羽根の表面でキャビティ周囲に圧力差が生じてキャビティが破壊される。そのため、キャビテーションによる粒子生成の効果が低下するという問題がある。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、直径1μm以下のナノサイズの金属粒子を効率良く製造するための金属粒子の作製装置を提供することを目的とする。
上記目標を達成するために、本発明に係るナノサイズの金属粒子作製装置は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされる第1の容器と、
前記第1の容器を浸漬させる第2の溶媒が満たされる第2の容器と、
前記第1の容器から前記懸濁液を汲み出す吸引装置と、
前記第1の容器の中に設けられ、前記吸引装置と接続されており、前記第1の容器の中に前記懸濁液を噴射可能な噴射口と、
前記第2の溶媒中であって、前記第1の容器の外側に配置され、前記第1の容器に向けて超音波を照射可能な超音波振動子と、
を備える。
前記第1の容器を浸漬させる第2の溶媒が満たされる第2の容器と、
前記第1の容器から前記懸濁液を汲み出す吸引装置と、
前記第1の容器の中に設けられ、前記吸引装置と接続されており、前記第1の容器の中に前記懸濁液を噴射可能な噴射口と、
前記第2の溶媒中であって、前記第1の容器の外側に配置され、前記第1の容器に向けて超音波を照射可能な超音波振動子と、
を備える。
また、本発明に係るナノサイズの金属粒子作製方法は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子からなる懸濁液が満たされた第1の容器が、第2の溶媒中に浸漬され、
前記第1の容器から吸引装置で汲み出した前記懸濁液を前記第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、
同時に、前記第2の溶媒中であって前記第1の容器の外側に配置した超音波振動子から前記第1の容器に向けて20〜40kHzの超音波を照射し、前記第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製する。
前記第1の容器から吸引装置で汲み出した前記懸濁液を前記第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、
同時に、前記第2の溶媒中であって前記第1の容器の外側に配置した超音波振動子から前記第1の容器に向けて20〜40kHzの超音波を照射し、前記第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製する。
以上のように、本発明に係るナノサイズの金属粒子作製装置によれば、撹拌部材でキャビティを壊すことがない。このため、キャビテーション反応場を有効に使うことができ、ナノ粒子の合成効率を向上させることができる。
第1の態様に係るナノサイズの金属粒子作製装置は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされる第1の容器と、
前記第1の容器を浸漬させる第2の溶媒が満たされる第2の容器と、
前記第1の容器から前記懸濁液を汲み出す吸引装置と、
前記第1の容器の中に設けられ、前記吸引装置と接続されており、前記第1の容器の中に前記懸濁液を噴射可能な噴射口と、
前記第2の溶媒中であって、前記第1の容器の外側に配置され、前記第1の容器に向けて超音波を照射可能な超音波振動子と、
を備える。
前記第1の容器を浸漬させる第2の溶媒が満たされる第2の容器と、
前記第1の容器から前記懸濁液を汲み出す吸引装置と、
前記第1の容器の中に設けられ、前記吸引装置と接続されており、前記第1の容器の中に前記懸濁液を噴射可能な噴射口と、
前記第2の溶媒中であって、前記第1の容器の外側に配置され、前記第1の容器に向けて超音波を照射可能な超音波振動子と、
を備える。
上記構成によって、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することが可能となる。
第2の態様に係るナノサイズの金属粒子作製装置は、上記第1の態様において、前記噴射口が前記第1の容器の鉛直上方に設けられ、鉛直下方に向けて開口していてもよい。
第3の態様に係るナノサイズの金属粒子作製装置は、上記第1の態様において、前記噴射口が前記第1の容器の鉛直下方に設けられ、鉛直上方に向けて開口していてもよい。
第4の態様に係るナノサイズの金属粒子作製装置は、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記吸引装置と前記噴射口との間に前記懸濁液の温度を制御するための冷却装置を備えていてもよい。
第5の態様に係るナノサイズの金属粒子作製方法は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされた第1の容器が、第2の溶媒中に浸漬され、
前記第1の容器から吸引装置で汲み出した前記懸濁液を前記第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、
同時に、前記第2の溶媒中であって前記第1の容器の外側に配置した超音波振動子から前記第1の容器に向けて20〜40kHzの超音波を照射し、前記第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製する。
前記第1の容器から吸引装置で汲み出した前記懸濁液を前記第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、
同時に、前記第2の溶媒中であって前記第1の容器の外側に配置した超音波振動子から前記第1の容器に向けて20〜40kHzの超音波を照射し、前記第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製する。
第6の態様に係るナノサイズの金属粒子作製方法は、上記第5の態様において、前記第1の容器の体積を前記噴射口から噴射する前記懸濁液の1秒当たりの流量で割った数値が3.6〜9.7であってもよい。
第7の態様に係るナノサイズの金属粒子の作製方法は、上記第6の態様において、前記噴射口から0.6m/s〜1.6m/sの流速の前記懸濁液を噴出させてもよい。
第8の態様に係るナノサイズの金属粒子作製方法は、上記第5から第7のいずれかの態様において、前記第1の容器に満たされる前記懸濁液は、前記第1の溶媒に対する金属濃度が0.033〜0.200g/mLであってもよい。
第9の態様に係るナノサイズの金属粒子作製方法は、上記第5から第8のいずれかの態様において、前記第1の金属粒子は、Sn、Ag、Cu、Bi、及びSbから選ばれた少なくとも1つの元素を含んでもよい。
以下、実施の形態に係るナノサイズの金属粒子作製装置および金属粒子作製方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
(実施の形態1)
<装置構造>
図1(a)は、実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置100の縦断面を示す模式断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A方向から見た横断面を示す模式図である。なお、図面では、便宜上、鉛直上方をZ方向として示し、水平面内をX−Y面として、紙面右側に向かってX方向としている。
実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置100は、第1の溶媒101とマイクロサイズの第1の金属粒子102からなる懸濁液が満たされる第1の容器103と、前記第1の容器103を浸漬させる第2の溶媒104が満たされる第2の容器105と、前記第1の容器103から前記懸濁液を汲み出す吸引装置106と、前記第1の容器103に設けられた噴射口107と、前記第1の容器103の外側に配置した前記第2の溶媒中104の超音波振動子108と、を備えている。この構成にすることで、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができるため、直径1μm以下のナノサイズの金属粒子を効率的に作製することが可能となる。
<装置構造>
図1(a)は、実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置100の縦断面を示す模式断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A方向から見た横断面を示す模式図である。なお、図面では、便宜上、鉛直上方をZ方向として示し、水平面内をX−Y面として、紙面右側に向かってX方向としている。
実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置100は、第1の溶媒101とマイクロサイズの第1の金属粒子102からなる懸濁液が満たされる第1の容器103と、前記第1の容器103を浸漬させる第2の溶媒104が満たされる第2の容器105と、前記第1の容器103から前記懸濁液を汲み出す吸引装置106と、前記第1の容器103に設けられた噴射口107と、前記第1の容器103の外側に配置した前記第2の溶媒中104の超音波振動子108と、を備えている。この構成にすることで、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができるため、直径1μm以下のナノサイズの金属粒子を効率的に作製することが可能となる。
第1の容器103には送入部109、吸引装置106と噴射口107の間には排出部110が接続されており、送入部109と排出部110との各流路を開放および閉鎖することのできる送入部バルブ機構111と排出部バルブ機構112とが備えられている。このバルブ機構111、112の開閉によって懸濁液の出し入れができる構造になっている。送入部109は、例えば、図1(a)に示すように、第1の容器103の上部(鉛直上方)から第1の容器103の壁面に沿って第1の容器103の底部(鉛直下方)に向けて設けられていてもよい。
第2の容器105には第2の溶媒104が満たされており、第1の容器103は、第2の溶媒104に浸漬されている。更に、第1の容器103の外側には図1(b)に図示するように超音波振動子108が設置されており、第2の溶媒104と第1の容器103とを介して第1の容器103内の懸濁液に超音波を照射することができる構造になっている。
以下に、この金属粒子作製装置100を構成する各部材について説明する。
<第1の容器103>
送入部109のバルブ機構を開放して、マイクロサイズの第1の金属粒子を混合した懸濁液を第1の容器103内に送入する。第1の容器103内の液面が上限まで達すると、液面センサ(図示せず)が作動し、送入部バルブ機構111を閉鎖して送入を停止する。つぎに、吸引装置106を作動させ、懸濁液を噴射口107から噴射しながら、超音波振動子108を作動させる。所定時間の超音波照射が完了したら排出部110の排出部バルブ機構112を開放して、マイクロサイズの第1の金属粒子と微細なナノサイズの金属粒子とを含む懸濁液を回収する。
送入部109のバルブ機構を開放して、マイクロサイズの第1の金属粒子を混合した懸濁液を第1の容器103内に送入する。第1の容器103内の液面が上限まで達すると、液面センサ(図示せず)が作動し、送入部バルブ機構111を閉鎖して送入を停止する。つぎに、吸引装置106を作動させ、懸濁液を噴射口107から噴射しながら、超音波振動子108を作動させる。所定時間の超音波照射が完了したら排出部110の排出部バルブ機構112を開放して、マイクロサイズの第1の金属粒子と微細なナノサイズの金属粒子とを含む懸濁液を回収する。
第1の容器103は、図1(a)に示すような円筒形ではない形状でも構わない。図2(a1)乃至(a3)は、第1の容器103の直径が上部(鉛直上方)と下部(鉛直下方)とで異なる形状を示す図である。図2(a1)に示すように、第1の容器103の上部の直径を大きくすることで、第1の容器103上部での懸濁液の金属濃度を低くすることができるため、超音波の減衰が抑えられ、より微細なナノサイズの金属粒子を作製することができる。また、図2(a2)に示すように、第1の容器103の上部の直径を小さくすることで、第1の容器103上部での懸濁液の金属濃度を高くすることができるため、吸引装置106による循環効率が向上し、収量を高めることができる。さらに、図2(a3)に示すように、第1の容器103の下部を凹面形状にすることで、噴射口107からの懸濁液の噴射エネルギーを集中させることができるため、マイクロサイズの第1の金属粒子102を効率的に分散させることができる。
図2(b1)乃至(b3)は、第1の容器103の横断面形状が円形ではない形状を示す図である。図2(b1)では第1の容器103のX−Y平面内の横断面形状は正方形であり、図2(b2)では五角形であり、図2(b3)では六角形である。図2(b1)乃至(b3)の場合には、超音波振動子108を、第1の容器103の横断面の形状に合わせてZ方向に互いに平行に配置してもよい。
<冷却装置>
図3は、吸引装置106と噴射口107との間に懸濁液の温度を制御するための冷却装置109を備えたナノサイズの金属粒子作製装置100aの縦断面を示す模式断面図である。
この金属粒子作製装置100aでは、第1の溶媒101に超音波振動子108から超音波を照射すると、第1の溶媒101の内部でキャビテーションが発生する。キャビテーションは、気泡の膨張と収縮の繰り返しであり、気泡の圧壊時には5000Kに達する高温のホットスポットが発生する。このため、超音波照射に伴い第1の溶媒101の温度は上昇していく。温度が上昇すると第1の溶媒101の蒸気圧が高くなるためキャビテーション発生頻度が低下し、ナノサイズの金属粒子の収量が低下する。吸引装置106と噴射口107との間に第1の溶媒101とマイクロサイズの第1の金属粒子102からなる懸濁液の温度を制御するための冷却装置109を備えることによって、ナノサイズの金属粒子の収率を高めることができる。
図3は、吸引装置106と噴射口107との間に懸濁液の温度を制御するための冷却装置109を備えたナノサイズの金属粒子作製装置100aの縦断面を示す模式断面図である。
この金属粒子作製装置100aでは、第1の溶媒101に超音波振動子108から超音波を照射すると、第1の溶媒101の内部でキャビテーションが発生する。キャビテーションは、気泡の膨張と収縮の繰り返しであり、気泡の圧壊時には5000Kに達する高温のホットスポットが発生する。このため、超音波照射に伴い第1の溶媒101の温度は上昇していく。温度が上昇すると第1の溶媒101の蒸気圧が高くなるためキャビテーション発生頻度が低下し、ナノサイズの金属粒子の収量が低下する。吸引装置106と噴射口107との間に第1の溶媒101とマイクロサイズの第1の金属粒子102からなる懸濁液の温度を制御するための冷却装置109を備えることによって、ナノサイズの金属粒子の収率を高めることができる。
<粒子作製性能>
実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置を用いて、マイクロサイズの第1の金属粒子102に粒子径30μmのCu−38質量%Snを原料として金属粒子の作製を行った。第1の溶媒101として2−プロパノールを用い、第2の溶媒104として水道水を用いた。第1の容器103の外側には周波数26kHzで出力100Wの超音波振動子108を図1(b)に図示するように円形断面の周囲の円周上に沿って12台配置した。図1(b)では、12台の超音波振動子108を円形断面の円周上に等間隔に配置している。なお、超音波振動子108の配置は、円形断面の円周上に等間隔に配置する場合に限定されない。
実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置を用いて、マイクロサイズの第1の金属粒子102に粒子径30μmのCu−38質量%Snを原料として金属粒子の作製を行った。第1の溶媒101として2−プロパノールを用い、第2の溶媒104として水道水を用いた。第1の容器103の外側には周波数26kHzで出力100Wの超音波振動子108を図1(b)に図示するように円形断面の周囲の円周上に沿って12台配置した。図1(b)では、12台の超音波振動子108を円形断面の円周上に等間隔に配置している。なお、超音波振動子108の配置は、円形断面の円周上に等間隔に配置する場合に限定されない。
ここで、超音波振動子108を合計1200Wで動作させると、輻射面から疎密波が発生して第1の容器103の内部でキャビテーションが発生する。このキャビテーションが圧壊する際に発生する衝撃圧がマイクロサイズの第1の金属粒子102の表面に作用して、金属粒子のナノサイズの個片が発生する。発生した金属粒子のナノサイズの個片は、第1の容器103内部でクラスタ化してナノサイズの金属粒子が形成される。
<金属粒子の収量と粒子径>
図4の表1は、実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置を用いて超音波を1時間照射して作製した金属粒子の収量と粒子径とを示す図である。表1において、金属粒子の収量は、第1の容器に送入前の溶媒に混合した第1の金属粒子の質量と、第1の容器から排出した溶媒を30分間静置後に沈殿した金属粒子にならずに残っていた第1の金属粒子の質量の差分である。質量は0.0001gまで測定可能な精密天秤で測定した。
図4の表1は、実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子作製装置を用いて超音波を1時間照射して作製した金属粒子の収量と粒子径とを示す図である。表1において、金属粒子の収量は、第1の容器に送入前の溶媒に混合した第1の金属粒子の質量と、第1の容器から排出した溶媒を30分間静置後に沈殿した金属粒子にならずに残っていた第1の金属粒子の質量の差分である。質量は0.0001gまで測定可能な精密天秤で測定した。
金属粒子の大きさに関しては、「メジアン粒子径」なる概念を用いる。このメジアン粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定によって得られる体積基準の粒子径分布の積算値の50%径、いわゆるDv50を意味する。このメジアン粒子径は、レーザー光を照射した時の散乱光のゆらぎを計測して算出している。本明細書において言及する金属粒子のメジアン径は、サブミクロンサイズの粒子径分布測定に一般的に使用される動的光散乱法粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製、製品番号:ゼータサイザーナノZS)を用いて分散媒として純水を使用して測定した。
<実施例及び比較例>
表1の判定の欄において、収量の所定の目安を30g/hとし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の収量を満たさない評価を意味する。収量に関して○または◎の評価であった実験例を「実施例」とし、評価が×であった実験例を「比較例」としている。
表1の判定の欄において、収量の所定の目安を30g/hとし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の収量を満たさない評価を意味する。収量に関して○または◎の評価であった実験例を「実施例」とし、評価が×であった実験例を「比較例」としている。
[実施例1]
マイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを2−プロパノールと混合して懸濁液とし、内径1.4cmのノズルから、流速1.1m/sで噴射させながら、周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射して金属粒子を作製した。この時の金属粒子はメジアン粒子径278nm、収量48g/hであり、この数値は十分な収量であった。
マイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを2−プロパノールと混合して懸濁液とし、内径1.4cmのノズルから、流速1.1m/sで噴射させながら、周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射して金属粒子を作製した。この時の金属粒子はメジアン粒子径278nm、収量48g/hであり、この数値は十分な収量であった。
[実施例2〜6および比較例1〜2]
マイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例1と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
マイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例1と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
図4の表1から分かるように、実施例2から実施例6の条件であれば収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。比較例1と比較例2の条件の場合は収量が30g/h未満に低下するため、収量は必ずしも十分とは言えない。
かかる構成によれば、超音波反応場に撹拌部材を置かず、噴射口から懸濁液を噴射して撹拌することで、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することができる。つまり、本実施の形態1に係る金属粒子作製装置によれば、キャビティを壊すことがないため、キャビテーション反応場を有効に使うことができ、ナノスケールの金属粒子の合成効率を向上させることができる。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
<効果>
かかる構成によれば、超音波反応場に撹拌部材を置かず、噴射口から懸濁液を噴射するエネルギーにより発生させた圧力で撹拌することで、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することができる。つまり、本実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子の作製方法によれば、キャビティを壊すことがないため、キャビテーション反応場を有効に使うことができ、ナノスケールの金属粒子の合成効率を向上させることができる。
かかる構成によれば、超音波反応場に撹拌部材を置かず、噴射口から懸濁液を噴射するエネルギーにより発生させた圧力で撹拌することで、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することができる。つまり、本実施の形態1に係るナノサイズの金属粒子の作製方法によれば、キャビティを壊すことがないため、キャビテーション反応場を有効に使うことができ、ナノスケールの金属粒子の合成効率を向上させることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされた第1の容器が、第2の溶媒中に浸漬され、吸引装置で汲み出した懸濁液を第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、同時に第1の容器の外側に配置した第2の溶媒中の超音波振動子から第1の容器に向かって20〜40kHzの超音波を照射し、第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製することを特徴とする。
実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法は、第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされた第1の容器が、第2の溶媒中に浸漬され、吸引装置で汲み出した懸濁液を第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、同時に第1の容器の外側に配置した第2の溶媒中の超音波振動子から第1の容器に向かって20〜40kHzの超音波を照射し、第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製することを特徴とする。
まず、実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の具体的な作製プロセスを説明する。
<ナノサイズの金属粒子の作製プロセス>
図5は、実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法のフローチャートである。
実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法は、排出部バルブの閉鎖工程201と、送入部バルブの開放工程202と、マイクロサイズの第1の金属粒子と第1の溶媒とを含む懸濁液を第1の容器に送入する懸濁液送入工程203と、送入部バルブの閉鎖工程204と、吸引装置を作動させて噴射口から懸濁液を噴射させる噴射工程205と、超音波照射工程206と、排出部バルブの開放工程207と、懸濁液排出工程208と、排出部バルブの閉鎖工程209と、を有する。
図5は、実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法のフローチャートである。
実施の形態2に係るナノサイズの金属粒子の作製方法は、排出部バルブの閉鎖工程201と、送入部バルブの開放工程202と、マイクロサイズの第1の金属粒子と第1の溶媒とを含む懸濁液を第1の容器に送入する懸濁液送入工程203と、送入部バルブの閉鎖工程204と、吸引装置を作動させて噴射口から懸濁液を噴射させる噴射工程205と、超音波照射工程206と、排出部バルブの開放工程207と、懸濁液排出工程208と、排出部バルブの閉鎖工程209と、を有する。
以下に、ナノサイズの金属粒子の作製方法の各工程について説明する。
(1)排出部バルブの閉鎖工程201は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する前準備であり、第1の容器の排出口を密閉する工程である。
(2)送入部バルブの開放工程202は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する前準備であり、第1の容器の送入口を開放する工程である。
(3)懸濁液送入工程203は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する工程であり、マイクロサイズの第1の金属粒子の融点未満である固体状の原料を第1の容器の中に送入する工程である。
(4)送入部バルブの閉鎖工程204は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液が第1の容器から送入口側に逆流することを防止する工程であり、第1の容器の送入口を閉鎖する工程である。
(5)吸引装置による懸濁液の噴射工程205は、吸引装置を作動させて第1の容器から懸濁液を吸い上げ、噴射口から第1の容器内に噴射する工程であり、金属と溶媒の比重差によって、第1の金属粒子が第1の容器の底部に堆積することを防止する工程である。
(6)超音波照射工程206は、第1の容器の外側に配置した超音波振動子から超音波を照射する工程である。この工程は、固体状の第1の金属粒子に超音波を照射してキャビテーションの衝撃圧を作用させて第1の金属粒子の表面から金属粒子の個片を分離させ、それらをクラスタ化してナノサイズの金属粒子を作製する工程である。なお、吸引装置による懸濁液の噴射工程205と超音波照射工程206とは並行して実施する工程である。
(7)排出部バルブの開放工程207は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出する前準備であり、第1の容器の排出口を開放する工程である。
(8)懸濁液排出工程208は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出する工程であり、作製したナノサイズの金属粒子を第1の容器から回収する工程である。
(9)排出部バルブの閉鎖工程209は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出した後の最終工程であり、第1の容器の排出口を閉鎖する工程である。
以上によって、ナノサイズの金属粒子を得ることができる。
(1)排出部バルブの閉鎖工程201は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する前準備であり、第1の容器の排出口を密閉する工程である。
(2)送入部バルブの開放工程202は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する前準備であり、第1の容器の送入口を開放する工程である。
(3)懸濁液送入工程203は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液を第1の容器に供給する工程であり、マイクロサイズの第1の金属粒子の融点未満である固体状の原料を第1の容器の中に送入する工程である。
(4)送入部バルブの閉鎖工程204は、ナノサイズの金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子と溶媒との混合物である懸濁液が第1の容器から送入口側に逆流することを防止する工程であり、第1の容器の送入口を閉鎖する工程である。
(5)吸引装置による懸濁液の噴射工程205は、吸引装置を作動させて第1の容器から懸濁液を吸い上げ、噴射口から第1の容器内に噴射する工程であり、金属と溶媒の比重差によって、第1の金属粒子が第1の容器の底部に堆積することを防止する工程である。
(6)超音波照射工程206は、第1の容器の外側に配置した超音波振動子から超音波を照射する工程である。この工程は、固体状の第1の金属粒子に超音波を照射してキャビテーションの衝撃圧を作用させて第1の金属粒子の表面から金属粒子の個片を分離させ、それらをクラスタ化してナノサイズの金属粒子を作製する工程である。なお、吸引装置による懸濁液の噴射工程205と超音波照射工程206とは並行して実施する工程である。
(7)排出部バルブの開放工程207は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出する前準備であり、第1の容器の排出口を開放する工程である。
(8)懸濁液排出工程208は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出する工程であり、作製したナノサイズの金属粒子を第1の容器から回収する工程である。
(9)排出部バルブの閉鎖工程209は、作製したナノサイズの金属粒子と溶媒の混合物を第1の容器から排出した後の最終工程であり、第1の容器の排出口を閉鎖する工程である。
以上によって、ナノサイズの金属粒子を得ることができる。
<粒子形成メカニズム>
図6(a1)乃至(a3)と図6(b)とは、マイクロサイズの第1の金属粒子210からナノサイズの金属粒子211が作製されるプロセスを示した模式図である。
図6(a1)乃至(a3)は、固体状のマイクロサイズの第1の金属粒子210から金属粒子のナノサイズの個片212が発生する経時プロセスを示す図である。このプロセスは、図5の超音波照射工程206である。
第1の溶媒213に浸漬させたマイクロサイズの第1の金属粒子210は、第1の金属粒子210の融点未満の固体状である。ここに超音波214を照射すると、疎密波によって第1の溶媒213中に微小な気泡215が発生する。この気泡215が疎と密の状態を繰り返すことで膨張と収縮を繰り返して徐々に成長する(図6(a1))。そして、大きく成長した気泡が収縮に耐えられなくなった時に気泡が圧壊して高圧の衝撃波216が発生する(図6(a2))。この衝撃波216がマイクロサイズの第1の金属粒子210の表面に作用することで微細なナノサイズの金属粒子の個片212が発生する(図6(a3))。
図6(b)は、発生した金属粒子のナノサイズの個片212がクラスタ化する経時プロセスを示す図である。このプロセスも、図5の超音波照射工程206である。
図6(a1)乃至(a3)と図6(b)とは、マイクロサイズの第1の金属粒子210からナノサイズの金属粒子211が作製されるプロセスを示した模式図である。
図6(a1)乃至(a3)は、固体状のマイクロサイズの第1の金属粒子210から金属粒子のナノサイズの個片212が発生する経時プロセスを示す図である。このプロセスは、図5の超音波照射工程206である。
第1の溶媒213に浸漬させたマイクロサイズの第1の金属粒子210は、第1の金属粒子210の融点未満の固体状である。ここに超音波214を照射すると、疎密波によって第1の溶媒213中に微小な気泡215が発生する。この気泡215が疎と密の状態を繰り返すことで膨張と収縮を繰り返して徐々に成長する(図6(a1))。そして、大きく成長した気泡が収縮に耐えられなくなった時に気泡が圧壊して高圧の衝撃波216が発生する(図6(a2))。この衝撃波216がマイクロサイズの第1の金属粒子210の表面に作用することで微細なナノサイズの金属粒子の個片212が発生する(図6(a3))。
図6(b)は、発生した金属粒子のナノサイズの個片212がクラスタ化する経時プロセスを示す図である。このプロセスも、図5の超音波照射工程206である。
第1の溶媒213の内部に数多くの微細なナノサイズの金属粒子の個片212が浮遊している。この個片がファンデルワールス力によって凝集してクラスタ化することで微細なナノサイズの金属粒子211が形成される。
<流量係数>
図7は、吸引装置を作動させ、噴出口から懸濁液を噴出させながら周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射後の収量を示す図である。横軸は、噴出口から噴出する懸濁液の流速であり、縦軸は、第1の容器の体積を、噴射口から1秒当たりに噴射される懸濁液の体積で除した流量係数なる数値である。
図7は、吸引装置を作動させ、噴出口から懸濁液を噴出させながら周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射後の収量を示す図である。横軸は、噴出口から噴出する懸濁液の流速であり、縦軸は、第1の容器の体積を、噴射口から1秒当たりに噴射される懸濁液の体積で除した流量係数なる数値である。
図7において、金属粒子の収量は、第1の容器に送入前の溶媒に混合した第1の金属粒子の質量と、第1の容器から排出した溶媒を30分間静置後に沈殿した金属粒子にならずに残っていた第1の金属粒子の質量との差分である。質量は0.0001gまで測定可能な精密天秤で測定した。収量が40g/h以上の場合は二重丸印(◎)、40g/h未満かつ30g/h以上の場合は丸印(〇)、30g/h未満の場合はバツ印(×)で表している。
流速が0.6〜1.6m/sであり、かつ流量係数が3.6〜9.7の場合は収量が30g/h以上であり良い結果である。さらに、流速が1.0〜1.2m/sであり、かつ流量係数が5.5〜7.6の場合は収量が40g/h以上であり十分に良い結果である。流速が0.6〜1.6m/sの範囲であっても流量係数が9.7を超えるか、あるいは3.6を下回ると、収量は30g/h未満になる。また、流量係数が3.6〜9.7の範囲であっても流速が1.6m/sを超えるか、0.6m/sを下回ると、収量は30g/h未満になる。流速が1.6m/sを超えると乱流が顕著になるためキャビテーションが破壊され金属粒子の微細化が進みにくくなっていると考えられる。この現象は流量係数が小さくなると、更に顕著になると考えられる。また、流速が0.6m/sを下回るとマイクロサイズの金属粒子の撹拌効果が低下するため金属粒子の微細化が進みにくくなっていると考えられる。この現象は流量係数が大きくなると、更に顕著になると考えられる。
<第1の金属粒子>
金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子102は、例えば、Cu−38質量%Snの合金であるが、マイクロサイズの第1の金属粒子はCu−38質量%Snの合金に限らずCuとSnの混合比率を変化させた合金であってもよい。また、Cu−Snの組み合わせに限らず、Sn、Ag、Cu、Bi、Sbから選ばれた少なくとも1種類の元素を含む金属であればよく、さらにそれら金属からなる金属酸化物でもよい。また、マイクロサイズの第1の金属粒子は、直径5〜100μmの粒子であれば、金属粒子を作製することができるが、直径20〜40μmの粒子であれば更に効率的に作製することができる。
金属粒子の原料であるマイクロサイズの第1の金属粒子102は、例えば、Cu−38質量%Snの合金であるが、マイクロサイズの第1の金属粒子はCu−38質量%Snの合金に限らずCuとSnの混合比率を変化させた合金であってもよい。また、Cu−Snの組み合わせに限らず、Sn、Ag、Cu、Bi、Sbから選ばれた少なくとも1種類の元素を含む金属であればよく、さらにそれら金属からなる金属酸化物でもよい。また、マイクロサイズの第1の金属粒子は、直径5〜100μmの粒子であれば、金属粒子を作製することができるが、直径20〜40μmの粒子であれば更に効率的に作製することができる。
<金属粒子の収量と粒子径>
図8の表2は、第1の溶媒と混合したマイクロサイズの第1の金属粒子に1200Wの超音波を1時間照射した後の金属粒子の収量と粒子径とを示す図である。表2において、金属粒子の収量は、第1の容器に送入前の溶媒に混合した第1の金属粒子の質量と、第1の容器から排出した溶媒を30分間静置後に沈殿した金属粒子にならずに残っていた第1の金属粒子の質量との差分である。質量は0.0001gまで測定可能な精密天秤で測定した。
金属粒子の大きさに関しては、実施の形態1と同じく「メジアン粒子径」の概念を用いている。
図8の表2は、第1の溶媒と混合したマイクロサイズの第1の金属粒子に1200Wの超音波を1時間照射した後の金属粒子の収量と粒子径とを示す図である。表2において、金属粒子の収量は、第1の容器に送入前の溶媒に混合した第1の金属粒子の質量と、第1の容器から排出した溶媒を30分間静置後に沈殿した金属粒子にならずに残っていた第1の金属粒子の質量との差分である。質量は0.0001gまで測定可能な精密天秤で測定した。
金属粒子の大きさに関しては、実施の形態1と同じく「メジアン粒子径」の概念を用いている。
<実施例及び比較例>
図8の表2の判定の欄において、収量の所定の目安を30g/hとし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の収量を満たさない評価を意味する。収量に関して○または◎の評価であった実験例を「実施例」とし、評価が×であった実験例を「比較例」としている。
図8の表2の判定の欄において、収量の所定の目安を30g/hとし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の収量を満たさない評価を意味する。収量に関して○または◎の評価であった実験例を「実施例」とし、評価が×であった実験例を「比較例」としている。
[実施例7]
図8の表2の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを2−プロパノールと混合して懸濁液とし、内径1.4cmのノズルから、流速1.0m/sで噴射させながら、周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射して金属粒子を作製した。この時の金属粒子はメジアン粒子径223nm、収量45g/hであり、この数値は十分な収量であった。
図8の表2の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを2−プロパノールと混合して懸濁液とし、内径1.4cmのノズルから、流速1.0m/sで噴射させながら、周波数26kHzの超音波を1200Wで1時間照射して金属粒子を作製した。この時の金属粒子はメジアン粒子径223nm、収量45g/hであり、この数値は十分な収量であった。
[実施例8〜18および比較例3〜4]
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、噴射口からの流速が0.6〜1.6m/sであり、流量係数が3.6〜9.7であり、かつ金属濃度が0.03〜0.20g/mLであれば収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。一方、流速が1.8m/s、あるいは流速が0.3m/sでは収量は30g/h未満に低下するため、収量が必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、十分な収量を得るために必要な流量は0.6〜1.6m/sであり、また、40g/h以上の収量を得るためには流速を1.0〜1.2m/sであり、かつ流量係数を5.5〜7.6にすることが好ましい。
[実施例19〜20]
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、超音波周波数が20〜40kHzであれば収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、超音波周波数が20〜40kHzであれば収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。
[実施例21〜24]
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として実施例7とは異なる金属種を用いて、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、Cu−38質量%Sn以外の第1の金属粒子の場合も収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として実施例7とは異なる金属種を用いて、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、Cu−38質量%Sn以外の第1の金属粒子の場合も収量は30g/hを超えており、十分な収量が得られる。
[比較例5〜6]
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、流量係数が3.6未満、または9.7超では収量は30g/h未満に低下するため、収量が必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、十分な収量を得るために必要な流量係数は3.6〜9.7であり、また、40g/h以上の収量を得るためには流量係数を5.5〜7.6にすることが好ましい。
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、流量係数が3.6未満、または9.7超では収量は30g/h未満に低下するため、収量が必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、十分な収量を得るために必要な流量係数は3.6〜9.7であり、また、40g/h以上の収量を得るためには流量係数を5.5〜7.6にすることが好ましい。
[比較例7〜8]
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、金属濃度が0.03g/mL未満、または0.23g/mL超では収量は30g/h未満に低下するため、収量が必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、十分な収量を得るために必要な金属濃度は0.03〜0.20g/mLである。
図8の表2のマイクロサイズの第1の金属粒子として直径30μmのCu−38質量%Snを用いて、実施例7と同様に、金属粒子を作製して収量を測定した。
表2から分かるように、金属濃度が0.03g/mL未満、または0.23g/mL超では収量は30g/h未満に低下するため、収量が必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、十分な収量を得るために必要な金属濃度は0.03〜0.20g/mLである。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本発明に係るナノサイズの金属粒子作製装置および金属粒子作製方法では、超音波反応場に撹拌部材を置かず、噴射口から懸濁液を噴射するエネルギーにより発生させた圧力で撹拌する。これによって、超音波で発生したキャビティを撹拌羽根によって壊すことがなく有効に利用することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することができる。このため、直径1μm以下の金属粒子を効率的に作製することが可能である。そこで、例えば、Si、GaN、SiC等の材料で形成された半導体素子とリードフレームとを接合する接合材料に用いる粒子径1μm以下のナノサイズの金属粒子の作製装置および方法の用途に適用できる。
100、100a 金属粒子作製装置
101 第1の溶媒
102 マイクロサイズの第1の金属粒子
103 第1の容器
104 第2の溶媒
105 第2の容器
106 吸引装置
107 噴射口
108 超音波振動子
109 送入部
110 排出部
111 送入部バルブ機構
112 排出部バルブ機構
101 第1の溶媒
102 マイクロサイズの第1の金属粒子
103 第1の容器
104 第2の溶媒
105 第2の容器
106 吸引装置
107 噴射口
108 超音波振動子
109 送入部
110 排出部
111 送入部バルブ機構
112 排出部バルブ機構
Claims (9)
- 第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされる第1の容器と、
前記第1の容器を浸漬させる第2の溶媒が満たされる第2の容器と、
前記第1の容器から前記懸濁液を汲み出す吸引装置と、
前記第1の容器の中に設けられ、前記吸引装置と接続されており、前記第1の容器の中に前記懸濁液を噴射可能な噴射口と、
前記第2の溶媒中であって、前記第1の容器の外側に配置され、前記第1の容器に向けて超音波を照射可能な超音波振動子と、
を備えた、ナノサイズの金属粒子作製装置。 - 前記噴射口が前記第1の容器の鉛直上方に設けられ、鉛直下方に向けて開口している、請求項1に記載のナノサイズの金属粒子作製装置。
- 前記噴射口が前記第1の容器の鉛直下方に設けられ、鉛直上方に向けて開口している、請求項1に記載のナノサイズの金属粒子作製装置。
- 前記吸引装置と前記噴射口との間に前記懸濁液の温度を制御するための冷却装置を備えた、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノサイズの金属粒子作製装置。
- 第1の溶媒とマイクロサイズの第1の金属粒子とを含む懸濁液が満たされた第1の容器が、第2の溶媒中に浸漬され、
前記第1の容器から吸引装置で汲み出した前記懸濁液を前記第1の容器の中に設けられた噴射口から噴射し、
同時に、前記第2の溶媒中であって前記第1の容器の外側に配置した超音波振動子から前記第1の容器に向けて20〜40kHzの超音波を照射し、前記第1の金属粒子からナノサイズの金属粒子を作製する、ナノサイズの金属粒子作製方法。 - 前記第1の容器の体積を前記噴射口から噴射する前記懸濁液の1秒当たりの流量で割った数値が3.6〜9.7である、請求項5に記載のナノサイズの金属粒子作製方法。
- 前記噴射口から0.6m/s〜1.6m/sの流速の前記懸濁液を噴出させる、請求項6に記載のナノサイズの金属粒子作製方法。
- 前記第1の容器に満たされる前記懸濁液は、前記第1の溶媒に対する金属濃度が0.033〜0.200g/mLである、請求項5から7のいずれか一項に記載のナノサイズの金属粒子作製方法。
- 前記第1の金属粒子は、Sn、Ag、Cu、Bi、及びSbから選ばれた少なくとも1つの元素を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載のナノサイズの金属粒子作製方法。
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