JP2021160356A - 衛生設備部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなる部材であって、前記表面層は、撥水性であり、かつ、XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内であり、前記部材の表面は、SCE方式の分光測色法により測定されるb値が−0.10以上+0.10以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなる部材であって、
前記表面層は、
撥水性であり、かつ
XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内であり、
前記部材の表面は、SCE方式の分光測色法により測定されるb値(以下、「SCE_
b値」という。)が−0.10以上+0.10以下であることを特徴とする。
本発明による部材1は、図1に示すように、基材10と、基材10上にある表面層40とを備えてなる。部材1は、基材10と表面層40との間に中間層30および着色層20をさらに含んでいてもよい。
1-1-1 表面の性状
表面層40の表面、すなわち部材1の表面は、SCE方式の分光測色法により測定されるb値(以下、「SCE_b値」という。)が−0.10以上+0.10以下である。SCE_b値がこの範囲にあることは、本発明の部材の表面が、表面凹凸の影響を受けやすい低波長の可視光の散乱が抑えられた表面であることを表わし、それ故、本発明の部材の表面がナノメートルオーダーで平滑化された表面であることを数値化して示すことを可能とする指標となる。
簡潔に言えば、部材表面のSCE_b値が−0.10以上+0.10以下であることは、部材表面の写像性が高い、すなわち部材表面での可視光線の散乱が小さいという性質を示す。また、部材表面が非常に平滑であり、かつ、均質な組織であることを示す。
本発明の部材の表面は、SCE_b値が上記範囲にあることにより、汚れの拭き取りにかかる力を低減でき、また汚れの拭き取り回数を低減できる。さらに表面層の摺動による劣化を低減する(つまり、耐摺動性を向上する)ことができる。本発明の部材の表面は、SCE_b値が−0.10以上0以下であることが好ましく、−0.08以上0以下であることがさらに好ましい。これにより、部材表面をさらに平滑とし、汚れの拭き取りにかかる力や拭き取り回数をさらに低減できる。さらに表面層の摺動による劣化をさらに低減する(つまり、耐摺動性をさらに向上する)ことができる。
装飾用のニッケルクロムめっきのように視覚的には鏡面である表面にも、ナノスケールでは微細な表面凹凸が存在する。ナノスケールの表面凹凸をもつ基材の上にナノスケールの膜厚を持つ有機層を形成した場合、耐摺動性には基材の凹凸形状が大きな影響を及ぼす。これは、摺動時に有機層の凸部に摺動の相手材が接触するため凸部に局所的に強いせん断応力が発生して優先的に摩耗されてしまうためである。一方で、ナノスケールで平滑な表面の場合には摺動時のせん断応力は面内に分散され、摩耗の速度は低下し耐摺動性が高まる。また、ナノスケールで表面が平滑な時には表面での光の散乱にも影響があり、特に波長が短く散乱されやすい青色の光の表面での散乱が抑えられる。従って、分光測色計での測定では青色光の影響が大きいb値の絶対値が減少する。
本発明における表面層40は、有機分子を含む撥水性の層であり、表面層40より下の基材10や着色層20などの他の層の色味を損なわない程度に透明かつ薄い。表面層40が撥水性の層であることで、ケイ素、カルシウム(水垢の原因物質)を含む水道水に接する衛生設備部材において、水垢の付着が抑制され、また付着した水垢を容易に除去することができる。
本発明において、表面層40は、高分子層、低分子層または単分子層であってよい。
本発明において、疎水基Rはアルキル鎖を含むものである。疎水基Rは、アルキル鎖の水素の一部がフッ素により置換されたものを含んでもよいし、アルキル鎖の炭素の一部が他の原子に置換されたものを含んでもよい。例えば、疎水基Rは、炭化水素基、フルオロアルキル基、フルオロ(ポリ)エーテル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアシル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
本発明において、表面層40は、疎水基Rおよび金属元素に対し配位性を有する官能基Xを含む層であり、表面層40が単層で形成された単分子層であることが好ましく、後述する非高分子の有機配位子R−Xからなる自己組織化単分子層(self assembled monolayers、SAM)であることがより好ましい。自己組織化単分子層は、分子が緻密に集合した層となるため、撥水性に優れる。
本発明の好適な態様において、SAMは、有機分子が固体表面に吸着する過程で、当該固体表面上に形成される分子集合体であり、分子同士の相互作用によって集合体構成分子が密に集合する。SAMはアルキル基を含むことが好ましい。これによって、分子同士に疎水性相互作用が働き、分子が密に集合することができるため、汚れの易除去性に優れた衛生設備部材を得ることができる。
本発明の好ましい態様において、非高分子の有機配位子R−Xは、疎水基Rと、着色層20または中間層30に含まれる金属元素に対し配位性を有する官能基Xとを備える。非高分子の有機配位子R−Xは、官能基Xを介して中間層と結合する。ここで、「非高分子」とは、国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集(日本語訳)の定義1.1(すなわち、相対分子質量の大きい分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的または概念的に得られる単位の多数回の繰返しで構成された構造をもつもの。http://main.spsj.or.jp/c19/iupac/Recommendations/glossary36.htmlを参照)に該当しない化合物を意味する。SAMは、このような非高分子の有機配位子R−Xを用いて形成される層である。
本発明の好ましい態様において、表面層40は非高分子の有機配位子R−Xを用いて形成される層である。疎水基Rは、前述に記載されたものを用いることができる。疎水基Rは、CとHとからなる炭化水素基を含むことが好ましい。疎水基Rが有する炭化水素基の骨格内の1ないし2個所で炭素以外の原子が置換されていても良い。置換される原子としては、酸素、窒素、硫黄が挙げられる。好ましくは、疎水基Rの片末端(Xとの結合端ではない側の端部)はメチル基である。これによって、部材1の表面が撥水性となり、汚れの易除去性を高めることができる。
本発明において、官能基Xは、ホスホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシル基、シラノール基(あるいは、アルコキシシリル基などのシラノールの前駆体)、βジオール基、アミノ基、水酸基、ヒドロキシアミド基、αまたはβ−ヒドロキシカルボン酸基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
一般式R−Xで表される有機ホスホン酸化合物は、好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ペルフルオロデシルホスホン酸、ペルフルオロヘキシルホスホン酸、ペルフルオロオクチルホスホン酸であり、より好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸である。さらに、より好ましくは、オクタデシルホスホン酸である。
本発明の好ましい態様によれば、基材10と表面層40との間に中間層30を設けてもよい。中間層30は表面層40および基材10と良好な密着性を得ることができる。中間層30の好ましい例としては、金属原子と酸素原子とを含む層が挙げられる。中間層30において、前記金属原子は酸素原子と結合している。つまり、中間層30には、酸化状態の金属元素が含まれる。本発明においては、金属元素は、Cr、Zr、Siからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、中間層30は、下地の色味を損なわないため、表面層40と同じ程度のまたはそれ未満の厚みが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、基材10と表面層40との間に着色層20を設けてもよい。着色層20は、着色層20を有しない部材1の表面を対照として、着色層20を有する部材1の表面のΔL*、Δa*およびΔb*の少なくとも1つの絶対値が0を超える色を呈する層である。本発明において、着色層20は、ZrまたはCを含んでなる層であることが好ましい。本発明において、着色層20は、ZrまたはCを含んでなる無機質の層であることがより好ましい。これにより、部材1の耐久性が優れる。
本発明において、基材10の材質は特に制限されず、例えば衛生設備部材の基材として一般的に使用されているものを使用することができる。
基材10は、支持材10aを含んでなる。すなわち、基材10は支持材10aからなるものであるか、支持材10aと他の要素とを備えてなるか、または、支持材10aの表面層40の側に、後述する領域10bを含んでなるものか、のいずれかである。支持材10aの材質は、金属でもよいし、樹脂やセラミック、陶器、ガラスであってもよい。
基材10は領域10bを含んでいてもよい。領域10bは支持材10aの表面層側の面に備えられる。領域10bは、金属を含む層または炭素を主として含む無機化合物からなる層であることが好ましい。領域10bは、例えば、金属めっきや物理蒸着法(PVD)により形成されることができる。領域10bは、金属元素のみから構成されていてもよいし、金属窒化物(例えば、TiN、TiAlNなど)、金属炭化物(例えば、CrCなど)、金属炭窒化物(例えば、TiCN、CrCN、ZrCN、ZrGaCNなど)等を含んでいてもよい。領域10bは支持材10aの上に直接形成されていてもよいし、領域10bと支持材10aの間に異なる層を含んでいてもよい。領域10bが設けられる基材10としては、例えば、黄銅や樹脂で形成された支持材10aに金属めっき処理により領域10bを設けた金属めっき製品が挙げられる。一方、領域10bが設けられない基材10としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)のような金属成型品が挙げられる。基材10の形状は、特に限定されるものではなく、単純な平板のような形状であっても立体形状であっても良い。本発明によれば、見る方向、角度よって色の変化が少ない部材とすることができるため、立体形状の基材10に本発明は好ましく適用できる。
本発明における部材1の特定方法は、以下の方法を用いることができる。先ず、部材1の表面が撥水性であることを確認し、部材1が表面層40を有することを確認する。次に、表面層40を構成する元素をXPS測定により特定する。また、表面層40および中間層30の厚みはXPS測定で元素の存在比を測定しながらスパッタリングすることで得られる。次に、着色層20および基材10の特定については、断面をSEM観察することで着色層20と基材10の境界を識別する。上記の測定の前には表面に付着した汚れを除去するために前処理を行う。詳細を下記にて説明する。
本発明において、測定前に部材1の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを十分に除去する。例えば、測定前に部材1の表面をエタノールによる拭取り洗浄、および中性洗剤によるスポンジ摺動洗浄の後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行う。また、部材1が、表面にヘアライン加工やショットブラスト加工などが施された、表面粗さが大きな部材の場合は、測定する部位として、できるだけ平滑性の高い平面の部分を選んで測定する。平滑性の高い部分とは、例えば、粗い部分に比べて光を拡散するため、分光測色計等を用いて色差測定した場合に正反射成分を含まないSCE方式によるL*が5未満の点のことを指す。
1-6-2-1 表面層の疎水基Rの特定
本発明において、表面層40は以下の手順で詳細に確認することができる。先ず、表面層40の撥水性を評価し、撥水性の表面層40が形成されていることを確認する。撥水性の評価方法としては、後述の水滴接触角の評価等を用いることができる。この撥水性の表面層40に対し、XPS分析にて表面元素分析を行い、表面層40に含まれる元素を確認する。
まず、測定対象の衛生設備部材に用いられている基材のみ(基材表面に表面層等が形成されていないもの)を参照として測定する。なお、ここで、衛生設備部材に用いられている基材の代用として、測定対象の基材と同一の材料で構成された板材等を用いても良い。その後、切り出した衛生設備部材1を測定することでIRスペクトルを得る。IRスペクトルは、横軸は、波数(cm−1)、縦軸は透過率又は吸光度である。
本発明において、表面層40が、疎水基Rおよび金属元素に対し結合性を有する官能基Xを含む層であり、さらに単層で形成された単分子層である場合、表面層40がRおよびXを含む層であることは下記の方法により特定することができる。
飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF−SIMS)装置には、例えば、TOF−SIMS5(ION−TOF社製)を用いる。測定条件は、照射する1次イオン:209Bi3++、1次イオン加速電圧25kV、パルス幅10.5or7.8ns、バンチングあり、帯電中和なし、後段加速9.5kV、測定範囲(面積):約500×500μm2、検出する2次イオン:Positive、Negative、Cycle Time:110μs、スキャン数16とする。測定結果として、RおよびXに由来する2次イオンマススペクトル(m/z)を得る。2次イオンマススペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
高分解能質量分析装置として飛行時間型タンデム質量分析装置(Q−TOF−MS)、例えば、Triple TOF 4600(SCIEX社製)を用いる。測定には、例えば、切り出した基材をエタノールに浸漬させ、表面層40を形成するために用いた成分(RおよびX)を抽出し、不要成分をフィルターろ過後、バイアル瓶(1mL程度)に移した後に測定する。測定条件は、例えば、イオン原:ESI/Duo Spray Ion Source、イオンモード(Positive/Negative)、IS電圧(−4500V)、ソース温度(600℃)、DP(100V)、CE(40V)でのMS/MS測定を行う。測定結果として、MS/MSスペクトルを得る。MS/MSスペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
表面層40、中間層30および着色層20の組成は、X線光電子分光法(XPS)により求める。測定前に、部材1を中性洗剤でスポンジ摺動後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行うことが好ましい。XPS装置には、PHI QanteraII(アルバック・ファイ製)を用いることが好ましい。各元素を後述の「XPS測定条件」および「スパッタ条件1」を用いてXPS深さ方向分析を行うことによりスペクトルを得る。
本明細書に記載の全てのXPS測定において、下記の「XPS測定条件」を用いる。
XPS測定条件
X線条件:単色化AlKα線、25W、15kV
分析領域:100μmφ
中和銃条件:1.0V、10μA
光電子取り出し角:45°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:112eV
分析元素(エネルギー範囲):Zr3d(177−187eV)、C1s(281−296eV)、N1s(394−406eV)、O1s(524−540eV)、Cr2p3(572−582eV)、Ti2p(452−463eV)、Si2p(98―108eV)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:500V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:10秒
なお、スパッタ電圧とはArイオン銃に印加する電圧、スパッタ範囲とはスパッタリングにより削る表面の範囲を指す。また、スパッタサイクルとは深さ方向の一測定ごとにArガスを連続して照射した時間を指し、スパッタサイクルの総和をスパッタ時間とする。
本発明において、表面層40は、XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層40の終点とし、スパッタの開始から終点までのスパッタ時間は5分以内であり、好適には3分以内である。またスパッタ時間の下限値は1分以上であることが好ましい。好適な範囲はこれらの上限値と下限値とを適宜組み合わせることが出来る。この時間が表面層の厚さの指標となる。このように表面層は視認できない薄い層であり、基材の色味を維持したまま部材に機能付与することが出来る。ここで、「XPS深さ方向分析で得られるプロファイル」とは、上述の「XPS測定条件」と「スパッタ条件1」を用いて、XPS深さ方向分析を行って得られたプロファイルを指す。また、XPS深さ方向分析は、無作為の3点を選んで測定し、これら3点の平均値を表面層の厚さと認定することが好ましい。
本発明において、表面層40が炭化水素基を含む場合、表面層40の炭素原子濃度は、好ましくは35at%以上であり、より好ましくは40at%以上であり、さらに好ましくは43at%以上であり、最も好ましくは45at%以上である。また、炭素原子濃度は、好ましくは70at%未満であり、より好ましくは65at%以下であり、さらに好ましくは60at%以下である。炭素原子濃度の好適な範囲はこれらの上限値と下限値とを適宜組み合わせることができる。炭素原子濃度をこのような範囲とすることにより、水垢易除去性を高めることができる。
本発明において、表面層40の金属原子濃度は、好ましくは1.0at%以上10at%未満である。金属原子濃度をこの範囲とすることで、表面層40は緻密であることを示している。これによって、十分な耐水性を有し、水垢易除去性に優れた衛生設備部材を得ることができる。より好ましくは、金属原子濃度は1.5at%以上10at%未満である。これによって、さらに耐水性、および水垢易除去性を高めることができる。
1-6-5-1 写像性の測定
部材の写像性(色味)の測定は、例えば以下のように行われる。
部材の色味の測定には分光測色計(CM−2600D、コニカミノルタ)を用いる。測定前に校正板を用いて白色校正を行う。その後、部材に対し目視でも明らかな傷や汚れを避けて3箇所ずつ色味の測定を行い、測定パラメータの平均値を算出する。
写像性の測定に使用可能な分光測色計の構成は例えば以下のとおりである。
装置:分光測色計CM−2600D(コニカミノルタ製)
バージョン:1.42
測定パラメータ:SCI/SCE
表色系:L*a*b*、ΔE*
UV設定:UV0%
光源:D65
観察視野角:10°
測定径:φ3mm
測定波長間隔:10nm
測定回数:3回
測定前待ち時間:0秒
校正:ゼロ校正後、白色校正(ゼロ校正:遠方の空間で校正、白色校正:校正用の白色板で校正)
部材の表面粗さの測定には原子間力顕微鏡(AFM)(SFT−4500、島津製作所)を用いることができる。測定前に、カンチレバーに照射するレーザーの位置を調整し、十分な反射光強度が得られるようにする。装置および測定条件は以下を利用することができる。
カンチレバー:OMCL−AC240TS−C3(オリンパス製)
測定モード:ダイナミック
走査範囲:5μm×5μm
走査速度:1Hz
画素数:512×512:走査角度0°
オペレーティングポイント:0.115V
Pゲイン:0,001
Iゲイン:1200
オフセット:0
zレンジ:1倍
走査モード:力一定
範囲:AC240 1−100kHz
振幅:Standard 0.3V
で装置上で自動チューンを行った。
原子間力顕微鏡を用いた測定により得られた画像は、傾き補正した後にフィルタ処理を行う。傾き補正には、装置付属の解析ソフトウェアのラインフィットを用いる。フィルタ処理は、表面からうねりの成分を除去するL−フィルタを使用する。L−フィルタのカットオフ値は800nmを用いる。面粗さのパラメータはJIS B 0681−2で定められる算術平均高さSaを用いる。
本発明において、部材1が中間層30を含むか否かは、XPS深さ方向分析により認定できる。先ず、「XPS測定条件」と「スパッタ条件1」を用いて、で10分間XPS深さ方向分析を行い、炭素原子の検出が1点前の測定点との差が1.0at%以下となった点において、10at%以上検出される金属元素を確認する。当該元素の濃度が10分間分析した時に3.0at%以下になった場合、当該元素の存在範囲を中間層と認定できる。当該元素の濃度が10分間分析した時に3.0at%以下に下がらなかった場合、部材は中間層を含まないとする。
本発明において、着色層20は、以下の方法により特定できる。まず、部材1を層の積層方向と垂直方向(図1のZ方向)に切断し、イオンミリング装置を用いて断面ミリングを行い、平滑な断面を得る。この断面に対して、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)を用いて観察を行うことで、着色層および基材の識別ができる。観察領域は、着色層20と基材10の界面が収まるようにSEM画像を取得する。そのSEM画像に対して、EDXによるマッピング分析を行うことで、着色層および基材の元素分布を視覚的に確認することができる。この元素分布の異なる境界面を、着色層20および基材10の境界面と識別する。これにより、着色層20を特定することができる。
本発明の衛生設備部材1、言い換えると、表面層40の水滴接触角は、好ましくは90°以上であり、より好ましくは100°以上である。水滴接触角は、静的接触角を意味する。静的接触角は、表面層40に2μlの水滴を滴下し、1秒後の水滴を基材側面から撮影することによって求められる。測定装置としては、例えば接触角計(型番:SDMs−401、協和界面科学株式会社製)を用いることができる。
本発明の部材は以下の工程:
(a)表面のSCE_b値が−0.10以上+0.10以下である基材を用意する工程と、
(b)前記基材の表面に表面層を形成する工程と
を含んでなる方法により製造されることが好ましい。
基材の表面をナノオーダーで平滑化したあとに、表面層を形成することで、汚れの拭き取りにかかる力を低減でき、汚れの拭き取り回数を低減でき、耐摺動性を向上させることができる。
本発明において、「衛生設備」とは、建物の給排水設備または室内用の備品である。好ましくは、室内用の備品である。また、好ましくは、水、例えば生活用水(工業用水でも良い)がかかり得る環境で用いられるものである。
このような部位は水栓の背面または下面に比べて清掃時に手が届きやすく、また力もかけやすいことから清掃時の材料への負荷が大きく、表面が摩耗しやすい。このような部位に本発明で示す平滑な表面を設けることで、水垢がより小さい力で除去できるようになり、また耐摺動性が向上することで部材の外観を長期間保つことができる。
(実施例1)
ニッケルクロムメッキした黄銅板を弱アルカリ性研磨剤(製品名:きらりあ、TOTO製)で擦り洗いし、基材を作製した。
次いで、炭化水素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄した。その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、基材をイオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材を2.5M水酸化ナトリウム水溶液に60℃・5分間浸漬したのち、イオン交換水にて十分にすすぎ洗いを行った。
表面層を形成するための処理剤として、オクタデシルホスホン酸(ODPA)(製品コード:O0371、東京化成工業製)をエタノール(富士フイルム和光純薬製、和光一級)に溶解させた溶液を用いた。基材を処理剤の中に1分以上浸漬し、エタノールにて掛け洗い洗浄した。その後、乾燥機にて120℃で10分間乾燥させ、基材表面に表面層を形成させた。こうして、実施例1の部材を作製した。
ニッケルクロムメッキを施した黄銅板を自動研磨機(ビューラー製)によりバフ研摩し、基材を作製した。研摩粒子には、平均粒径が0.05μmのアルミナ粒を用いた。
次いで、この基材の表面に実施例1と同様の手順で表面層を形成し、実施例2の部材を作製した。
ニッケルクロムメッキを施した黄銅板を弱アルカリ性研磨剤(製品名:きらりあ、TOTO製)で擦り洗いし、基材を作製した。
次いで、フッ化炭素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄した。その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、基材をイオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材へ紫外光(波長:254nm、照射強度:15mW/cm2程度)を10分間照射した。
その後、シリコーン系プライマー(製品名:KBM403、信越化学製)をイソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬製)に溶解させた溶液を、不織布(製品名:ベンコットM3−II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、10分間自然乾燥させて中間層を形成した。
表面層を形成するための処理剤として、フッ化アルキル基を含有するコーティング剤(製品名:SURECO2101S、AGC製)を用いた。この処理剤を不織布(製品名:ベンコットM3−II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、乾燥機にて120℃で30分間乾燥させ、中間層の表面に表面層を形成した。
こうして、実施例3の部材を作製した。
ニッケルクロムメッキを施した黄銅板を自動研磨機(ビューラー製)によりバフ研摩し、基材を作製した。研摩粒子には、平均粒径が0.05μmのアルミナ粒を用いた。
次いで、この基材の表面に実施例3と同様の手順で表面層を形成し、実施例4の部材を作製した。
ニッケルクロムメッキを施した黄銅板を基材とし、この基材の表面に実施例1と同様の手順で表面層を形成し、比較例1の部材を作製した。
ニッケルクロムメッキを施した黄銅板を基材とし、この基材の表面に実施例3と同様の手順で表面層を形成し、比較例2の部材を作製した。
上記のとおり作製した各部材に対し、以下の試験を行った。
測定前に、アルカリ性洗剤を用いて各部材をウレタンスポンジで擦り洗いし、超純水で十分にすすぎを行った。各部材の水滴接触角測定には、接触角計(型番:SDMs−401、協和界面科学株式会社製)を用いた。測定用のプローブ液体は超純水を用い、滴下する水滴サイズは2μlとした。接触角は、いわゆる静的接触角であり、水を滴下してから1秒後の値とし、異なる5か所を測定した平均値を求めた。ただし、5カ所の中に異常値が現れた場合は、異常値を除いて平均値を算出した。ただし、5か所中4か所の平均値±20°以上乖離する値を異常値とみなし、5か所の中に異常値を示す測定点が現れた場合は、異常値を除いて平均値を算出した。結果を、接触角(初期)として表1に示す。
乾燥炉中で50℃に加熱した各部材の表面に、水道水を200μl滴下し、液体が乾燥するまで放置した。この操作を1サイクルとした。同一の操作を再び行い、すなわち1サイクル後に形成された水垢の上にさらに水道水を滴下し、乾燥させ、2サイクル分の水垢を形成した。さらに同一の操作を繰り返し行い3サイクル、5サイクル分の水垢を作製した。水垢が形成された部材を以下の手順で評価した。
(ii)水垢の除去を確認出来れば試験を終了する。水垢の残りが存在する場合は(i)を繰り返した。
水垢除去の可否は、部材の表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した後、部材の表面に水垢が残存しているかを目視で判断した。
5回で除去できたとき 3点
10回で除去できたとき 2点
15回で除去できたとき 1点
15回で除去できなかったとき 0点
結果を、水垢除去性(初期)として表1に示す。
各部材の表面を、マイクロファイバー布巾(激落ちクロス、レック製)を用いて、布巾に水を含ませた状態で、部材面に対して荷重(25gf/cm2)をかけながら、2200往復摺動させた。摺動後、部材表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した。摩耗試験後の各部材について、上記と同様に、水滴接触角測定および水垢除去性試験を行った。結果を、接触角(摺動後)および水垢除去性(摺動後)として表1に示す。
上記のとおり作製した各部材に対し、以下の測定を行った。
各部材の色味の測定には分光測色計(CM−2600D、コニカミノルタ)を用いた。測定前に校正板を用いて白色校正を行った。その後、各部材に対し目視でも明らかな傷や汚れを避けて3箇所ずつ色味の測定を行い、測定パラメータの平均値を算出した。
なお、使用した分光測色計の構成は以下のとおりである。
装置:分光測色計CM−2600D(コニカミノルタ製)
バージョン:1.42
測定パラメータ:SCI/SCE
表色系:L*a*b*、ΔE*
UV設定:UV0%
光源:D65
観察視野角:10°
測定径:φ3mm
測定波長間隔:10nm
測定回数:3回
測定前待ち時間:0秒
校正:ゼロ校正後、白色校正(ゼロ校正:遠方の空間で校正、白色校正:校正用の白色板で校正)
各部材のSCE_b値を表1に示す。
表面粗さの測定には原子間力顕微鏡(AFM)(SFT−4500、島津製作所)を用いた。測定前に、カンチレバーに照射するレーザーの位置を調整し、十分な反射光強度が得られるようにした。
カンチレバー:OMCL−AC240TS−C3(オリンパス製)
測定モード:ダイナミック
走査範囲:5μm×5μm
走査速度:1Hz
画素数:512×512
走査角度:0°
オペレーティングポイント:0.115V
Pゲイン:0,001
Iゲイン:1200
オフセット:0
zレンジ:1倍
走査モード:力一定
範囲:AC240 1−100kHz
振幅:Standard 0.3V
で装置上で自動チューンを行った。
原子間力顕微鏡を用いた測定により得られた画像は、傾き補正した後にフィルタ処理を行った。傾き補正には、装置付属の解析ソフトウェアのラインフィットを用いた。フィルタ処理は、表面からうねりの成分を除去するL−フィルタを使用した。L−フィルタのカットオフ値は800nmを用いた。面粗さのパラメータはJIS B 0681−2で定められる算術平均高さSaを用いた。各部材の算術平均高さSaを表1に示す。
前述の「XPS測定条件」と「スパッタ条件1」を用いて、XPS深さ方向分析を行い、プロファイルを得た。このプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から終点までのスパッタ時間(分)を表1に示す。
表面層が疎水基を含むことを下記の方法により確認した。表面増強ラマン分光法を用いて確認した。表面増強ラマン分光分析装置としては、以下を用いた。表面増強ラマンセンサとして、特許第6179905号の実施例1に記載される透過型表面増強センサを用いた。共焦点顕微ラマン分光装置としてNanoFinder30(東京インスツルメンツ)を用いた。測定には、切り出した部材の表面に透過型表面増強ラマンセンサを配置し、測定した。測定条件は、Nd:YAGレーザー(532nm、1.2mW)スキャン時間(10秒)、グレーチング(800 Grooves/mm)、ピンホールサイズ(100μm)を用いた。
Claims (7)
- 基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなる部材であって、
前記表面層は、
撥水性であり、かつ
XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内であり、
前記部材の表面は、SCE方式の分光測色法により測定されるb値(以下、「SCE_b値」という。)が−0.10以上+0.10以下である、部材。 - 水栓、トイレを構成する部材、または浴室を構成する部材として用いられる、請求項1に記載の部材。
- 水栓、トイレを構成する部材、または浴室を構成する部材の正面、上面または側面として、その表面が適用される、請求項2に記載の部材。
- 前記部材の表面は、JIS B 0681−2(2018)で定められる表面粗さ(Sa)が3nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部材。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の部材の製造方法であって、
(a)表面のSCE_b値が−0.10以上+0.10以下である基材を用意する工程と、
(b)前記基材の表面に表面層を形成する工程と
を含んでなる、方法。 - 前記工程(a)は、
(a1)支持材を用意する工程と、
(a2)前記支持材の表面を研磨し、前記基材を作製する工程と
を含んでなる、請求項5に記載の方法。 - 前記工程(a1)と前記工程(a2)の間に、前記支持材の表面にめっきを施し、めっき層を表面に備えた支持材を作製する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
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