JP2021159089A - 衣類 - Google Patents

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Abstract

【課題】生地と、生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、汗冷えしにくく、しかも電極が生地から剥離しにくく、生体情報を安定して計測できる衣類を提供する。【解決手段】生地と、前記生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、前記電極は、接着層を介して前記生地の肌側面に形成されており、前記生地の肌側面における少なくとも前記接着層が形成されている領域に、獣毛繊維を3〜100質量%含む紡績糸が存在しており、JIS L1086(2013)に基づいて算出される前記生地と前記電極との間の剥離強度は6N/cm以上である衣類。【選択図】なし

Description

本発明は、生地と、生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類に関する。詳細には、生地の肌側面に、着用者の生体情報を検出するための生体情報計測用の電極が形成されている衣類に関する。
近年、ヘルスモニタリング分野や医療分野、療育分野、リハビリテーション分野において、ウェアラブル生体情報計測用衣類が注目されている。ウェアラブル生体情報計測用衣類とは、生体情報計測装置が設けられている衣類であり、この衣類を着用することによって着用者の生体情報を簡便に計測できる。
ウェアラブル生体情報計測用衣類はこれまでに種々の種類が知られており、例えば本発明者らは特許文献1において、生体情報を安定的に計測できる測定位置を特定し、密着性の高いフレキシブル電極を取り付けたセンシングウェアを開示している。
特開2017−29692号公報
こうしたウェアラブル生体情報計測用衣類の生地の素材には、速乾性を向上させ、発汗による不快感を解消するために、ポリエステルなどの合成繊維を用いることが多い。しかし、合成繊維製の衣類であっても発汗量が多すぎると乾燥が追いつかず、生地が浸潤し、汗冷えすることがあった。
ところで、冬場の登山など極寒地で着用する衣類の生地には保温効果と汗冷えがしにくいことが要求されるため、羊毛などの獣毛繊維が用いられることが多い。獣毛繊維の表面は撥水性を呈するスケールに覆われているため、汗を繊維表面に留めにくく、汗冷えがしにくい利点がある。しかし、こうした獣毛繊維からなる生地に電極を形成すると、電極が生地から剥離しやすく、生体情報を安定して計測することは難しかった。また、獣毛繊維は保水性が高いことから速乾性に乏しく、大量に汗を吸った生地は重くなり易かった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、生地と、生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、汗冷えしにくく、しかも電極が生地から剥離しにくく、生体情報を安定して計測できる衣類を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る衣類は、以下の通りである。
[1] 生地と、前記生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、前記電極は、接着層を介して前記生地の肌側面に形成されており、前記生地の肌側面における少なくとも前記接着層が形成されている領域に、獣毛繊維を3〜100質量%含む紡績糸が存在しており、JIS L1086(2013)に基づいて算出される前記生地と前記電極との間の剥離強度は6N/cm以上である衣類。
[2] 前記獣毛繊維は、脱スケール処理が施されているか、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されているか、または脱スケール処理が施された後、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されているものである[1]に記載の衣類。
[3] 前記ウレタン系樹脂は、ポリエーテル系ポリウレタンである[2]に記載の衣類。
[4] 前記紡績糸は更に長繊維を含み、該長繊維が合成繊維である[1]〜[3]のいずれかに記載の衣類。
[5] 前記生地100質量%中、前記紡績糸を70質量%以上含むものである[1]〜[4]のいずれかに記載の衣類。
[6] 前記接着層は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含むものである[1]〜[5]のいずれかに記載の衣類。
[7] 前記電極は、前記生地の肌側面側に形成されている絶縁層と、前記絶縁層の上に形成されている導電層とを備えるものである[1]〜[6]のいずれかに記載の衣類。
[8] 前記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、及び顔部のうち少なくとも一部を覆うものである[1]〜[7]のいずれかに記載の衣類。
本発明によれば、上記構成により、汗冷えしにくく、しかも電極が生地から剥離しにくいため生体情報を安定して計測できる衣類を提供できる。
一般に、アクリル、ポリエステル、などの化学合成繊維の多くは、負帯電性が強い。天然繊維においても木綿のような植物系の繊維は比較的負帯電性であり、人体表面との摩擦により負に帯電しやすい性質を持つ。そのため、これらの化学合成繊維や木綿を主体とする生地を用いた衣類に、生体情報計測のための電極を設けた装置においては、着用時に生地の帯電が生じやすく、潜在的に静電気放電によるノイズの影響を受けやすい。この問題は、繊維素材が適度な吸湿性を持つために帯電による電荷が、静電気放電に至る前に除電されることにより顕在化しない。しかし、冬季などの乾燥時期においてはこの限りではなく、特に乾燥肌の高齢者の生体情報計測時には測定結果に静電気放電ノイズが混入したり、場合によっては放電ノイズによる測定機器の誤動作などを招くことがある。
一方、ウールに代表される獣毛繊維は、人体皮膚との摩擦による帯電が生じにくく、乾燥時においても静電気ノイズの発生が抑制されるため、獣毛繊維を所定量含む混紡素材は、乾燥時期に使用する衣服型の生体情報計測装置の生地として好ましいといえる。さらに、獣毛繊維を長繊維と混紡して用いることにより、紡績糸の細番手化が可能であり、すなわち薄手の生地を実現できるため、生体情報計測用電極を備えるインナー素材として使用するに好適な生地とすることができる。
図1は、獣毛繊維、短繊維の合成繊維、および長繊維の合成繊維を含む紡績糸を製造する装置の一構成例を示す模式図である。
本発明の衣類は、生地と、該生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、前記電極は、接着層を介して前記生地の肌側面に形成されており、前記生地の肌側面における少なくとも前記接着層が形成されている領域に、獣毛繊維を3〜100質量%含む紡績糸が存在しており、JIS L1086(2013)に基づいて算出される前記生地と前記電極との間の剥離強度は6N/cm以上であるものである。上記の通り、生地の肌側面に所定の紡績糸を存在させることにより、汗冷えしにくく、しかも電極が生地から剥離しにくくなるため生体情報を安定して計測できる衣類を実現できる。
以下、本発明の衣類について詳細に説明する。
本発明の衣類は、生地と、生地の肌側面に形成されている電極とを備えるものである。電極の電極面が着用者の肌に直接接触することによって、身体からの電気信号を検出でき、生体情報を計測できる。
生体情報としては、電極で取得した電気信号を電子ユニットで演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの身体の情報が得られる。
電極としては、心電図を計測できる電極が好ましい。心電図とは、心臓の動きによる電気的な変化を、生体表面の電極を介して検出し、波形として記録された情報である。心電図は、一般的には、横軸に時間、縦軸に電位差をプロットした波形として記録される。心電図に現れる心拍1回ごとの波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在する。また、Q波の始めからS波の終わりまでは、QRS波と呼ばれることがある。このうち、少なくともR波を検知できる電極が好ましい。R波を検知できる電極を設けることにより、心拍数も計測できる。即ち、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間は一般にRR間隔(秒)と呼ばれ、1分間当たりの心拍数は下記式に基づいて算出できる。なお本明細書においては、特に注釈のない限りQRS波もR波に含まれるものとする。電極の具体的な構成については後述する。
心拍数(回/分)=60/RR間隔
電極は、接着層を介して生地の肌側面に形成されており、生地の肌側面における少なくとも接着層が形成されている領域に紡績糸が存在している。そして、本発明の衣類は、上記領域に存在している紡績糸が、獣毛繊維を3〜100質量%含むものである。獣毛繊維を3質量%以上含むことにより、着用者が汗をかいたり、衣類が雨や雪で濡れても汗冷えしにくくなる。紡績糸全体における獣毛繊維の含量は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
一方、例えば通常の羊毛であれば、紡績糸全体における羊毛の含量が増加すると接着層との密着性が極端に悪くなり、電極が剥離しやすくなるが、本発明では羊毛に特別な処理を施すことにより、羊毛が100質量%の紡績糸であっても電極の接着強度を保持することができ、接着層を介して生地の肌側面に形成されている電極との間の剥離強度を6N/cm以上に高めることができる。剥離強度が6N/cm以上で電極が生地に固定された衣類は、生体情報を安定して計測できるため、生体情報計測用衣類として好適に用いることができる。生地と電極との間の剥離強度は、より好ましい態様では7N/cm以上に高めることができる。剥離強度の上限は特に設定されないが、例えば20N/cm以下であってもよい。生地と電極との間の剥離強度は、JIS L1086(2013)に基づいて算出できる。
獣毛繊維としては、例えば、羊毛、山羊(カシミヤ、モヘアを含む)、ラマ、アルパカ、キャメル、アンゴラ、その他の陸生の哺乳動物から採取される繊維表面にスケール(鱗片層)を有する繊維などが挙げられる。特に汎用性、風合い、触感から羊毛またはカシミヤが好ましく、最も汎用性のある羊毛が適している。
紡績糸に含まれる獣毛繊維の繊度(直径)は、5〜35μmが好ましい。紡績糸に含まれる獣毛繊維の繊度がこの範囲であることにより、生地と電極との間の剥離強度が向上する。紡績糸に含まれる獣毛繊維の繊度は、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
紡績糸に含まれる獣毛繊維の有効繊維長(あるいはカット長)は、紡績糸における繊維の絡み合い、風合い、品質等の点で短い方が好ましく、例えば、100mm以下が好ましい。紡績糸に含まれる獣毛繊維の有効繊維長の下限は、例えば、20mm以上である。
獣毛繊維は、脱スケール処理が施されているか、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されていることが好ましい。獣毛繊維に脱スケール処理が施されているか、或いは獣毛繊維の表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されていることによって洗濯等による縮みを防止できると共に、接着層との密着性を向上させることができ、生地と電極との間の剥離強度を高めることができる。また、獣毛繊維の表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されていることにより繊維の収束性が高まるとともに繊維同志が絡まりにくくなるため、抗ピリング性が向上する。獣毛繊維は、脱スケール処理が施された後、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されていてもよい。
脱スケール処理とは、繊維表面の鱗片層を除去する処理であり、公知の方法を採用できる。例えば、酸化処理(塩素化処理を含む)を単独で行う方法や、酸化処理の前工程および/または後工程として蛋白質分解酵素による処理を行う方法などが挙げられる。また、有機塩素化合物(例えば、ジクロロイソシアヌル酸またはそのアルカリ金属塩など)による塩素化処理後、脱塩処理(例えば、酸性亜硫酸ナトリウムを用いた処理など)を行ってもよい。
なお、獣毛繊維に脱スケール処理が施されているかどうかは、獣毛繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、繊維表面のスケール(鱗片層)を観察することで確認できるが、スケールの除去率にはムラが多いため、脱スケール処理が施された繊維表面の構造を直接規定することは困難である。また、羊毛のスケールは発汗により濡れてもベタツキにくく快適であったり、汗冷えがしにくい等の利点も大きいため、本発明でスケール除去処理する場合にもスケールが必ずしも完全除去されている必要はなく、脱スケール処理された獣毛繊維のスケール輪郭が少なくともなだらかになっていることが確認できればよい。脱スケール処理が進むにつれて獣毛繊維自体の劣化も進むが、獣毛繊維の劣化が大きすぎると逆に生地と電極との間の剥離強力が低下しやすくなるので、スケールの除去率は獣毛の繊維強度とのバランスがとれるところで適宜設定すればよい。なお、脱スケールの状況は、獣毛繊維の表面を走査型電子顕微鏡で、1500倍で撮影して観察すればよい。
獣毛繊維の表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂を形成する方法(以下、ポリウレタン加工と呼ぶことがある)は、公知の方法を採用でき、例えば、ウレタン系樹脂を含む防縮加工剤を繊維に付着させた後、加熱処理する方法が挙げられる。
ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタンなどを用いることができ、なかでもポリエーテル系ポリウレタンを用いることがより好ましい。ポリエーテル系ポリウレタンとしては、三官能以上のアルコールを用いたポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。ポリエーテルポリオールは、例えば、三官能以上のアルコールにアルキレンオキサイドを重付加することにより合成することができる。三官能以上のアルコールは特に限定されないが、例えば、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。アルキレンオキサイドも特に限定されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
原料ポリエーテルポリオールの分子量も特に限定されないが、分子量が20000を超えるとウレタンプレポリマーの合成が困難になることから、分子量は20000以下が好ましい。
ポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物とを反応させることにより、ウレタンプレポリマーを得ることができる。イソシアネート化合物は特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族イソシアネート;などの有機ポリイソシアネート化合物が挙げられる。なかでも、無黄変性を考慮する場合は、XDI、TMXDIなどの芳香族イソシアネート;HMDIなどの脂肪族イソシアネート;IPDIなどの脂環族イソシアネート;が好ましい。具体的には、ポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物(特に、有機ポリイソシアネート化合物)とを、NCO基/活性水素基のモル比が1.0以上となる任意の割合で混合し、公知の方法により、温度30〜130℃で30分間〜50時間反応させることにより、遊離イソシアネート基を0.45〜4.0質量%有するウレタンプレポリマーが得られる。
次いで、得られたウレタンプレポリマーにおける遊離イソシアネート基を重亜硫酸塩でブロックすることで本発明に用いるポリエーテル系ウレタンとすることができる。このようなポリエーテル系ポリウレタンの具体的な薬剤としては、例えば、大原パラヂウム社製の「パラレジン(登録商標)」、ランクセス社製の「シンタプレット(登録商標)」、第一工業製薬社製の「エラストロン(登録商標)」などを用いることができる。なかでも特に「エラストロンBAP(品種)」や「エラストロンNEW BAP−15(品種)」、「パラレジンSSW−28」などを好適に用いることができる。
ウレタン系樹脂の付着量は、生地の目付、獣毛繊維の混率等で適宜設定すればよいが、例えば薬剤中の固形分量で生地質量に対して0.5〜20質量%の付着量になるように付与すればよい。ウレタン系樹脂の付着量が0.5質量%に満たない場合は、電極の接着力が低下しやすくなる。ウレタン系樹脂の付着量は、好ましくは1.0質量%以上である。しかし、ウレタン系樹脂の付着量が20質量%を超えると生地の風合いが固くなって着心地が悪くなりやすくなる。ウレタン系樹脂の付着量は、好ましくは5.0質量%以下である。
獣毛繊維にウレタン系樹脂を形成する工程はバラ毛の状態でも紡績糸や布帛、衣料品のいずれでもよいが、布帛の状態で処理することが生産性や効果の点から好ましい。布帛への付着方法は特に限定されず、例えば、パディング法、スプレー法、吸尽法等が挙げられ、なかでもパディング法が好適に用いられる。
パディング法で処理する場合の条件としては、ウレタン系樹脂が絞り後に前記の付着量になるように、パディング浴のポリウレタン固形分濃度に調整し、触媒(例えば、第一工業製薬製の「エラストロンCAT−21」)を浴中ポリウレタン固形分濃度に対して更に2〜3%になるように添加し、布帛にパディング付与してマングルで絞ることで所定量のポリウレタンを付与する。その後乾燥して、120℃〜180℃で熱処理することで繊維表面に強固なウレタン系樹脂被膜を形成させることができる。
なお、獣毛繊維の表面にウレタン系樹脂が形成されているかどうかは、獣毛繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察することによって確認できるが、ウレタン系樹脂の被覆量にはムラが多いため、ウレタン系樹脂が形成されている繊維表面の構造を直接規定することは困難である。生地表面において、紡績糸表面に露出している獣毛繊維の任意部分を走査型電子顕微鏡で、1500倍で撮影し、写真に写っている獣毛繊維の合計表面積に対してウレタン系樹脂が被覆されている部分の合計面積の割合が50%以上である場合を、獣毛繊維の表面にウレタン系樹脂が形成されていると評価する。
紡績糸は、獣毛繊維以外に合成繊維を含んでもよい。合成繊維を含めることにより、獣毛繊維の吸放湿性や保温性、汗冷え低減効果が低下するが、その一方で、ポリウレタン加工による剥離強度向上効果を高めることができる。合成繊維としては、例えば、アクリル繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;等が挙げられる。合成繊維は、短繊維でもよいし、長繊維でもよいし、短繊維および長繊維の両方であってもよく、長繊維および短繊維の両方を含むことが好ましい。長繊維はマルチフィラメントであることが好ましい。
短繊維の繊度は、0.5〜2.5dtexが好ましい。短繊維の繊度がこの範囲であることにより、生地に対する電極の剥離強度が向上する。短繊維の繊度は、より好ましくは0.6dtex以上、更に好ましくは0.7dtex以上であり、より好ましくは2.0dtex以下、更に好ましくは1.1dtex以下である。
短繊維の繊維長は、紡績糸における繊維の絡み合い、風合い、糸の品質等の点で、短い方が好ましく、例えば、100mm以下がより好ましい。短繊維の繊維長は、更に好ましくは55mm以下、更により好ましくは45mm以下、特に好ましくは40mm以下である。短繊維の繊維長の下限は、例えば、20mm以上であり、好ましくは28mm以上、より好ましくは30mm以上である。繊維長は、JIS L 1019(2006)「綿繊維試験方法」で規定される繊維長のA法(ダブルソータ法)に基づいて測定できる。
紡績糸が合成繊維の短繊維を含む場合の短繊維の含量は、紡績糸100質量%に対して30質量%以上が好ましい。短繊維の含量は、35質量%以上がより好ましく、更に好ましくは40質量%以上である。短繊維の含量は、70質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
紡績糸に含める長繊維の単糸繊度は、0.1〜2.5dtexが好ましい。長繊維の単糸繊度がこの範囲であることにより、生地に対する電極の剥離強度が向上する。長繊維の単糸繊度は、より好ましくは0.3dtex以上、更に好ましくは0.5dtex以上であり、より好ましくは2.0dtex以下、更に好ましくは1.5dtex以下である。
紡績糸が合成繊維の長繊維を含む場合の長繊維の含量は、紡績糸100質量%に対して15質量%以上が好ましい。長繊維の含量は、20質量%以上がより好ましく、更に好ましくは23質量%以上である。長繊維の含量は、40質量%以下が好ましく、より好ましくは38質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
獣毛繊維、短繊維の合成繊維、および長繊維の合成繊維を含む紡績糸としては、例えば、獣毛繊維と、短繊維の合成繊維とを含む粗糸と、長繊維の合成繊維のマルチフィラメントを電気開繊したものとを複合紡績したもの(以下、長短複合紡績糸ということがある。)であることが好ましい。長繊維の合成繊維のマルチフィラメントを電気開繊してから紡績することにより長繊維と短繊維が均一に混合され、紡績糸中で長繊維が短繊維の収束性を高めるため、抗ピリング性が向上する。また、得られる生地と接着層との密着性が向上し、電極が剥離しにくくなる。その結果、生体情報を安定して計測できる。
長短複合紡績糸は、例えば図1に示す精紡機を用いて製造できる。図1に示した精紡機は、バックローラ1、クレードル2、フロントローラ3を順に配置し、フロントローラ3の下方にスネルワイヤ4およびさらに下方にリングとトラベラ5を備えた捲き取り装置を配置している。フロントローラ3の送り込み側の上方に上から静電気印加用の開繊電極6およびその下方に楕円上の環状ガイド7を設置している。
長短複合紡績糸は次の手順で製造できる。まずパーン8に捲かれたマルチフィラメント糸Aを解除し、ガイド9を経て開繊電極6で静電気を印加して開繊させ、続いて環状ガイド7を通して開繊幅および供給位置を規制しつつフロントローラ3に供給する。一方、粗糸Bをバックローラ1に供給し、クレードル2、フロントローラ3間でドラフトし、フリース状の短繊維束としてフロントローラ3に供給する。フロントローラ3に供給された開繊したマルチフィラメント糸Aとフリース状の短繊維束はフロントローラ3のニップ点で混合されるが、この時、短繊維フリースは最大開き幅の10〜90%の長さ分をマルチフィラメントの最大開き幅と重ね合わせて混合される。フロントローラ3を通過したマルチフィラメントと短繊維フリースは、加撚されることにより横断面が渦巻き状の特異な糸構造をなし、スネルワイヤ4を経てリングとトラベラ5により管糸10に捲き取られる。
紡績糸は、任意の繊維として、合成繊維以外に第三の繊維を含んでもよい。第三の繊維としては、天然繊維、再生繊維、および半合成繊維よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等が挙げられる。これらのうち綿が好ましい。紡績糸が綿を含むことにより、吸湿性、吸水性、保温性等が向上する。なお天然繊維は、そのまま用いることができるが、親水処理や防汚処理等の後加工を施してもよい。再生繊維としては、例えば、モダール等のレーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセル等が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート、トリアセテート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
紡績糸は綿番手に換算すると5〜100が好ましい。綿番手が5以上であることにより、生地の柔軟性を向上することができ、着用者の着心地を改善できる。紡績糸の綿番手は、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上である。一方、紡績糸の綿番手が100以下であることにより、生地の強度を高めることができる。紡績糸の綿番手は、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下、更により好ましくは60以下である。紡績糸の綿番手は、後記する実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の衣類は、生地の肌側面における少なくとも接着層が形成されている領域に、上記紡績糸が存在しており、衣類の肌側面100面積%に対して上記紡績糸が存在している生地の面積率は、20面積%以上が好ましく、より好ましくは50面積%以上、更に好ましくは90面積%以上、更により好ましくは95面積%以上である。衣類のうち紡績糸含有生地以外の領域には、他の公知の生地が配置されていてもよい。
衣類を構成する生地は、該生地100質量%中、紡績糸を70質量%以上含むことが好ましい。これにより生地と接着層の密着性を高めることができ、生地と電極との間の剥離強度を高めることができる。また、汗冷えを低減できる。紡績糸の含量は、生地100質量%中、80質量%以上がより好ましく、更に好ましくは85質量%以上、更により好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。一方、紡績糸の含量の上限は特に限定されず、100質量%、即ち、紡績糸のみからなる生地であってもよいし、紡績糸の含量は、99質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。
生地は、編物または織物であることが好ましい。
編物は、横編物または経編物が好ましく、横編物がより好ましい。なお横編物には丸編物も含まれる。横編物(丸編物)としては特に限定しないが、少なくとも片面がフラットな組織である方が生地と電極の剥離強度を高めることができるので好ましい。代表的な横編物としては例えば、天竺編(平編)、ベア天竺編、ウエルト天竺編、フライス編(ゴム編)、パール編、片袋編、スムース編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等の編組織を有するものが挙げられる。なかでも本発明では、天竺編、フライス編、スムース編等が好まししい。経編物としては、例えば、シングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、トリコット編、ハーフトリコット編、ラッセル編、ジャガード編等の編組織を有するものが挙げられる。
織物としては、例えば、平織、綾織(ツイル)、朱子織、多重織、ドビー織、ジャガード織等の織組織を有するものが挙げられる。織物は、異なる色の先染め糸を複数種用いてストライプやチェック等の柄物にしてもよいし、ジャガード織機にて織柄物にしてもよい。特に生地をシャツ地、ブラウス地等の衣類に用いる場合には、平織、綾織(ツイル)が好ましい。また生地と電極の間の剥離強度を高めるには、肌側面の凹凸や糸の浮きが少ない組織の方がよいため、平織がより好ましい。
生地の目付は80〜200g/m2が好ましい。生地の目付が80g/m2以上であることにより、生地の強度が高くなりやすい。生地の目付は、より好ましくは100g/m2以上、更に好ましくは130g/m2以上である。一方、生地の目付が200g/m2以下であることにより、生地を軽量化し易くすることができる。生地の目付は、より好ましくは190g/m2以下、更に好ましくは180g/m2以下である。生地の目付は、後記する実施例に記載の方法により測定できる。
衣類は、例えば、胸部、手部、脚部、足部、頸部、及び顔部のうち少なくとも一部を覆うものであることが好ましい。衣類の形態は特に限定されず、例えば、肌着、帯状物等が挙げられる。肌着としては、例えば、上半身用の肌着または下半身用の肌着が好ましい。上半身用の肌着としては、例えば、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、ブラジャー、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。下半身用の肌着としては、例えば、パンツ、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。帯状物としては、例えば、ベルトが挙げられ、具体的には胸部用ベルト、腹部用ベルト等が挙げられる。
次に、生地の肌側面に形成されている電極について説明する。
電極は、主として皮膚接触によって身体からの電気信号(生体電位)を検出するためにコネクタ等の電気接点として用いてもよく、近接的非接触的なセンサーの検知端として用いてもよい。電極は、着用者(被測定者)の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。電極は、シート状であることが好ましい。電極をシート状にすることによって、電極面を広くできるため着用者の肌との接触面積を確保できる。シート状の電極は、曲げ性を有するものが好ましく、更に伸縮性を有するものが好ましい。
電極面の面積は5〜100cm2が好ましい。電極の平均厚みは10〜500μmが好ましい。電極の形状は、電極を配置する位置に相当する身体の曲線に沿い、且つ身体の動きに追随して密着しやすい形状であることが好ましく、例えば、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。電極の形状が多角形の場合は、頂点に丸みを付けて肌を傷付けないようにしてもよい。
電極は、生地の肌側面側に形成されている絶縁層と、該絶縁層の上に形成されている導電層とを備えるものが好ましい。導電層の衣類側に絶縁層を設けることによって、絶縁層が生地の伸びを抑制し、導電層が過度に伸長されるのを防止できる。絶縁層は、絶縁作用を有する層であればよく、絶縁作用の他に着用時に絶縁層が積層された生地の反対側(即ち、衣類の外側)からの水分が導電層に達することを防ぐ止水層として作用させてもよい。また絶縁層は、接着性を有するものであってもよい。なお、絶縁層は、生地の肌側面に直接形成されていてもよいが、後記する接着層を介して生地の肌側面に接着されることにより固定されていてもよい。
絶縁層は、絶縁性を有する樹脂を含むことが好ましい。絶縁性を有する樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂は接着性に優れるため、より好ましい。樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また絶縁層は、一層に限らず、二層であってもよい。
絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させる方法が挙げられる。また、市販されている絶縁性を有する樹脂シートまたは絶縁性を有する樹脂フィルムを用いることもできる。
絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。絶縁層の平均膜厚が10μm以上であることにより、絶縁効果および生地の伸び止め効果が発揮され易くなる。絶縁層の平均膜厚は、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。一方、絶縁層の平均膜厚が200μm以下であることにより伸縮性が向上する。絶縁層の平均膜厚は、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
導電層は、身体からの電気信号(生体電位)を検知、伝達できるものであればよい。導電層は、導電フィラーと樹脂を含むことが好ましく、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含むことがより好ましく、導電性フィラーとエラストマーを含むことが更に好ましい。これらは各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。なお、導電層は、上記絶縁層を介さず、生地の肌側面に直接形成されていてもよいし、後記する接着層を介して生地の肌側面に接着されることにより固定されていてもよい。
導電性フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属以外の導電材料等が挙げられる。導電性フィラーは、1種でもよいし2種以上でもよい。金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉、卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉、卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉等が挙げられる。これらの中でも、銀粉および/または銅粉が好ましく、低コストで、高い導電性を発現させることができる。金属ナノ粒子としては、上述した金属粉のうち、粒子径が数ナノ〜数十ナノの粒子が挙げられる。金属以外の導電材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系材料が挙げられる。金属粉以外の導電材料は、表面に、メルカプト基、アミノ基、ニトリル基を有するか、表面が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることが好ましい。
導電層に含まれる導電性フィラーの量(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める導電性フィラーの量)は、25質量%以上が好ましい。導電性フィラーの含量が25質量%以上であることにより導電性が向上する。導電性フィラーの含量は、40質量%以上がより好ましく、更に好ましくは60質量%以上である。導電層に含まれる導電性フィラーの量は、98質量%以下が好ましい。導電性フィラーの含量が98質量%以下であることにより導電層の伸縮性を向上させることができ、電極等を伸長したときにクラック等が発生し難くなる。導電性フィラーの含量は、95質量%以下がより好ましく、更に好ましくは90質量%以下である。
導電層は、単層でもよいし、導電性フィラーの種類や、導電性フィラーの添加量等を変化させた2種類以上の導電層を積層したり、配列させて、複数の導電層を一体化したものであってもよい。
導電層に含有させる伸縮性を有する樹脂としては、例えば、硫黄原子を含有するゴムおよび/またはニトリル基を含有するゴムを含むことが好ましい。硫黄原子やニトリル基は、導電性フィラー(特に、金属粉)との親和性が高く、またゴムは伸縮性が高く、伸長時にもクラック等の発生を回避し易くできる。
硫黄原子を含有するゴムとしては、硫黄原子を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。硫黄原子は、ポリマーの主鎖のスルフィド結合やジスルフィド結合、側鎖や末端のメルカプト基などの形で含有される。硫黄原子を含有するゴムとしては、例えば、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。特に、メルカプト基を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴムが好ましい。硫黄原子を含有するゴム中の硫黄原子の量は10〜30質量%が好ましい。
ニトリル基を含有するゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。特にブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であるアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムが好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、日本ゼオン製のNipol(登録商標)「1042」、Nipol(登録商標)「DN003」等が好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴム中のニトリル基の量(特に、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中のアクリロニトリル量)は、18〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜45質量%である。アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量が50質量%以下であることにより、ゴム弾性を向上できる。一方、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量が18質量%以上であることにより導電性フィラー、特に金属粉との親和性が向上する。
導電層に含有させる伸縮性を有する樹脂100質量%中、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムの合計量は95質量%以上が好ましく、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
導電層に含まれる樹脂(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める樹脂固形分)は、2質量%以上、75質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
導電層は、上述した各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、絶縁層等の上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。導電層は、導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで絶縁層上に積層して形成してもよい。導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を採用して調製すればよく、伸縮性を有する樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することによって調製できる。例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などと、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散すればよい。これらの手段は、複数を組み合わせて用いることができる。導電性ペーストを塗布または印刷する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などの印刷法などを採用できる。
導電層の乾燥膜厚は、10〜150μmが好ましい。導電層の乾燥膜厚が10μm以上であることにより、電極が繰り返し伸縮を受けても劣化し難くなる。導電層の乾燥膜厚は、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。一方、導電層の乾燥膜厚が150μm以下であることにより、電極の伸縮性が向上する。導電層の乾燥膜厚は、より好ましくは130μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
電極は、導電性組織で構成されているシート状の電極であってもよい。導電性組織で構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維または導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属によって表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物等が挙げられる。これらの導電性組織は、後記する接着層を介して生地の肌側面に接着されて固定されていてもよい。
電極は、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けられていることが好ましい。電極を衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることによって、生体情報を安定して測定し易くなる。電極は、衣類のうち、着用者の第七肋骨上端と第九肋骨下端との間の肌に接触する領域に設けることがより好ましい。電極は、衣類のうち、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。電極は、着用者の胴回りに沿って、円弧状に設けることが好ましい。
衣類に設ける電極の数は、少なくとも2つであり、2つの電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることが好ましく、2つの電極を、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。なお、電極を3つ以上設ける場合は、3つ目以降の電極を設ける位置は特に限定されず、例えば、後身頃生地に設けてもよい。
衣類は、電極と、該電極に接続される配線を有することが好ましい。配線により電極と、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続することができる。配線は、生地の肌側面に形成された第一絶縁層と、第一絶縁層の肌側面に形成された導電層と、導電層の肌側面に形成された第二絶縁層とを有するものであることが好ましい。第一絶縁層としては上記電極の絶縁層を参照することができ、第一絶縁層と上記電極の絶縁層は同じ素材により構成され一体化されて形成されていることが好ましい。また配線の導電層は、上記電極の導電層と同じ素材により構成され一体化されて形成されていることが好ましい。
配線は、上述の通り、導電層の上に第二絶縁層が形成されていることが好ましい。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗などの水分が導電層に接触することを防止できる。第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した第一絶縁層を構成する樹脂と同様のものが挙げられ、好ましく用いられる樹脂も同じである。第二絶縁層を構成する樹脂も、1種のみでもよいし2種以上でもよい。第二絶縁層を構成する樹脂は、第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層の被覆性および配線の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。第二絶縁層は、第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
第二絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。第二絶縁層の平均膜厚が10μm以上であることにより、絶縁効果および伸び止め効果が発揮され易くなる。第二絶縁層の平均膜厚は、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。一方、第二絶縁層の平均膜厚が200μm以下であることにより伸縮性が向上する。第二絶縁層の平均膜厚は、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
配線として、導電性繊維または導電性糸を用いてもよい。導電性繊維または導電性糸としては、絶縁物である繊維表面に金属をメッキしたもの、細い金属線を糸に撚り込んだもの、導電性の高分子をマイクロファイバーなどの繊維間に含浸させたもの、細い金属線等を用いることができる。
配線の平均厚みは、10〜500μmが好ましい。配線の厚みが薄すぎると導電性が不充分になることがある。配線の平均厚みは、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、配線の厚みが厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。配線の平均厚みは、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
配線の形状は特に限定されず、直線、曲線、幾何学パターンであってもよい。幾何学パターンとしては、例えば、ジグザグ状、連続馬蹄状、波状などが挙げられる。幾何学パターンの電極は、例えば金属箔を用いて形成できる。また配線としての導電性繊維、導電性糸は、刺繍等により生地に固定されていてもよい。
生地に電極や配線を形成する方法としては、電極および配線の伸縮性を妨げない方法であれば特に限定されず、例えば、接着層を介した積層や熱プレスによる積層等の方法が挙げられる。接着層を形成するための接着剤の付与方法としては、例えば粉末塗布、スプレー塗布、コーティング、プリントや、接着剤シート貼付後に熱処理や圧着等を行う方法が挙げられる。
接着剤としては、例えば、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、溶剤形接着剤、水性形接着剤、反応形接着剤、ホットメルト接着剤等を用いることができる。溶剤形接着剤として、例えば、酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系溶剤形接着剤、その他の樹脂系溶剤形接着剤等を用いることができる。水性形接着剤としては、例えば、EVA樹脂系エマルジョン形接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン形接着剤等を用いることができる。反応形接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等を用いることができる。ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリエチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、軟質ポリ塩化ビニル系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いることができる。これらのうちポリウレタン系接着剤は柔軟性が高く、接着後の電極周辺部の柔軟性を高く維持できるため好ましく、熱可塑性ポリウレタン系接着剤を用いることがより好ましい。ホットメルト接着剤としては、シート形状、粉状、液状等の種々の形態のものを用いることができるが、これらのうちシート形状のものは、生地と電極との間の剥離強度を向上し易いため好ましい。なお絶縁層と接着層は同じ素材のものを用いてもよい。上記接着剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。これらのうちホットメルト接着剤が好ましく、より好ましくは熱可塑性ポリウレタン系接着剤である。
衣類は、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等を備えていることが好ましい。電極で取得した電気信号を電子ユニット等において演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの生体情報が得られる。衣類は、電子ユニットとの接続に用いる留め金を備えることが好ましい。留め金は、いわゆるホックであり、例えばステンレススチール製のホックが挙げられる。留め金を介して導電層等と電子ユニットとを電気的に接続できる。電子ユニット等は、衣類に着脱できることが好ましい。電子ユニット等は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタなどを有することが好ましい。電子ユニット等は、例えば、気温、湿度、気圧、高度などの環境情報を計測できるセンサーや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサーなどを備えてもよい。
本発明の衣類を用いることにより、人の心理状態や生理状態を把握する技術への応用もできる。例えば、リラックスの度合いを検出してメンタルトレーニングしたり、眠気を検出して居眠り運転を防止したり、心電図を計測してうつ病やストレス診断等を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、部は、質量部を意味する。
(実施例1)
羊毛として、平均繊維長が84mmで、繊度(直径)が19.5μmのオーストラリア産メリノ種のトップを準備し、洗浄し、下記に示す成分組成を有する処方1の水溶液にて浴比1:10として常温で10分間処理した。
処方1:ノニオン系浸透剤が0.1%sol.,芒硝が20%o.w.f(対羊毛質量%)で、酢酸でpH4.5に調整。
次に、上記水溶液にジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを純分換算で3%o.w.fを加えて常温で15分間処理し、脱スケール処理を行った。更に上記水溶液に酸性亜硫酸ナトリウムを2g/L加え、40℃で20分間処理することにより脱塩素処理し、その後十分に水洗した。脱スケール処理して得られたトップのみ(100%)を用いて、通常の羊毛の梳毛工程を通してメートル番手で1/52の紡績糸を作製した。撚係数を2.8としてS撚とZ撚の両方を作製した。得られた紡績糸のみを用い、福原精機製のシングルニット機33“−20Gで、S撚Z撚の一本交互の天竺を製編した。得られた編地を常法にて、生地煮じゅう、洗じゅうして前加工したのち、ポリウレタン加工を行った。ポリウレタン加工は、ポリエーテル系ポリウレタンを含む防縮加工剤を編地に付着させた後、加熱処理して行った。具体的には、ポリエーテル系ポリウレタンとして第一工業製薬製の「エラストロンBAP(固形分は約15%)」を20%sol.用い、触媒として第一工業製薬製の「エラストロンCAT−21」を0.5%sol.、pH調製剤として重炭酸ソーダを0.3%sol.を添加した水溶液を作製してパディング浴とした。拡布したニット生地を上記パディング浴に浸漬して、ピックアップ率100%にてマングルで絞り、続いて乾燥した。その後、140℃×1分間テンターにて熱処理を行って生地(天竺の編地)を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は145g/m2であった。なお、生地の目付は、JIS L 1096(2010) 8.3.2に規定されている「標準状態における単位面積当たりの質量」に基づいて測定した(以下、同じ)。
(実施例2)
実施例1と同様、平均繊維長が84mmで、繊度(直径)が19.5μmのオーストラリア産メリノ種のトップを準備し、脱スケール処理をせずに、トップのみ(100%)を用いて実施例1と同じ条件で紡績糸を作製し、実施例1と同じ条件でポリウレタン加工して生地(天竺の編地)を作製した。得られた生地の巾長さは140cm、目付は150g/m2であった。
(実施例3)
羊毛として、脱スケール処理を行っていない有効繊維長が40mmで、繊度(直径)が19.5μmの羊毛繊維と、カット長が38mmで、繊度が1.0dtexのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)短繊維を用いて、後述の混打綿工程を通すことにより羊毛繊維とポリエステル短繊維を用いて粗糸を作製した。即ち、羊毛繊維とポリエステル短繊維とを通常の混打綿工程で均一混紡し、カード、連條工程、粗紡工程を経て、100ゲレン/15ヤードの粗糸を作製した。
次いで、図1に示した精紡機を用い、電気開繊した56dtex、24filamentのポリエステルマルチフィラメントを上記粗糸のフリース上で混合し、羊毛繊維とポリエステル短繊維とポリエステル長繊維が均一に混合された長短複合紡績糸を作製した。長短複合紡績糸の綿番手は40番手とした。なお、長短複合紡績糸の綿番手は、JIS L 1095(2010) 9.4.2に基づいて測定した(以下、同じ)。長短複合紡績糸における各繊維の混用率は、質量%で、羊毛繊維:20%、ポリエステル短繊維:52%、ポリエステル長繊維:28%であった。次いで、得られた長短複合紡績糸のみ(100%)を用い、ダブルニット機30“−20Gを用いて、490mm/100Wの条件でフライス編にて製編し、ニット生機を作製した。得られたニット生機に対し、常法の精練、分散染料によるポリエステルの染色、および酸性染料による染色を行った後、ポリウレタン加工を行った。ポリウレタン加工は、ポリウレタン加工剤として「大原パラヂウム製パラレジンSSW−28」を10%sol.用い、触媒として第一工業製薬製の「エラストロンCAT−21」を0.3%sol.pH調製剤として重炭酸ソーダを0.3%sol.を添加した水溶液を作製してパディング浴とした。拡布したニット生地を上記パディング液に浸漬して、ピックアップ率100%にてマングルで絞り、続いて乾燥した。その後、140℃×1分間テンターにて熱処理を行って本発明の生地(フライス編)を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は160g/m2であった。
(実施例4)
実施例3において、長短複合紡績糸における各繊維の混用率を、質量%で、羊毛繊維:30%、ポリエステル短繊維:42%、ポリエステル長繊維:28%とした以外は、実施例3と同じ条件で長短複合紡績糸を作製し、実施例3と同じ条件でポリウレタン加工して生地(フライス編)を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は160g/m2であった。
(比較例1)
実施例1において、脱スケール処理をしない平均繊維長が84mm、直径19.5μmのオーストラリア産メリノ種のトップを用いたこと、およびポリウレタン加工しないことを除いて実施例1と同様に天竺の編地を作製した。得られた生地の巾長さは140cm、目付は145g/m2であった。
(比較例2)
実施例3において、羊毛繊維を含まない紡績糸を用い、生地を作製した。即ち、図1に示した装置を用い、繊度が1.0dtex、カット長が38mmのポリエステル短繊維と、電気開繊した56dtex、24filamentのポリエステル長繊維(ポリエステルマルチフィラメント)とを、精紡機にて均一に混合し、ポリエステル短繊維とポリエステル長繊維が均一に混合された紡績糸を作製した。紡績糸の綿番手は40番手とした。紡績糸における各繊維の混用率は、質量%で、ポリエステル短繊維:72%、ポリエステル長繊維:28%であった。次いで、得られた紡績糸のみ(100%)を用い、上記実施例3と同じ条件でフライスを作製し、その後、ポリウレタン加工をしないこと以外は実施例3と同様にして生地を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は160g/m2であった。
(比較例3)
実施例3で得られた粗糸を、一般的な精紡機にて紡績し、紡績糸を作製した。紡績糸の綿番手は40番手とした。紡績糸における各繊維の混用率は、質量%で、羊毛繊維:20%、ポリエステル短繊維:80%であった。次いで、得られた紡績糸のみ(100%)を用い、上記実施例3と同じ条件でニット生機を作製した。得られたニット生機に対し、常法の精練、分散染料によるポリエステルの染色、および酸性染料による染色を行った後、ポリウレタン加工を行わずに生地(フライス編)を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は160g/m2であった。
(比較例4)
比較例3において、紡績糸における各繊維の混用率を、質量%で、羊毛繊維:30%、ポリエステル短繊維:70%とした以外は、比較例3と同じ条件で生地を作製した。得られた生地の巾長さは148cm、目付は160g/m2であった。
次に、上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた生地について、下記の方法でピリング評価を行った。
(ピリング評価)
JIS L 1076(2012)「織物及び編物のピリング試験方法」で規定されるA法(ICI形試験機を用いる方法)に基づいて、得られた生地から100mm×120mmの試験片をたて方向およびよこ方向に2枚ずつ切り出し、ピリング試験用ゴムに巻き付けICI形試験機にて5時間回転させ、ピリング発生の程度を等級判定し、ピリング評価を行った。
次に、下記の手順で導電ペーストを作製した。
(導電性ペースト)
ニトリルゴム[日本ゼオン社製のNipol(登録商標)「DN003」]20部を、イソホロン80部に溶解し、NBR溶解液を作製した。得られたNBR溶液100部に銀粉(DOWAエレクトロニクス製の「凝集銀粉G−35」、平均粒子径5.9μm)110部を配合し、3本ロールミルにて混練して導電ペーストを作製した。
次に、得られた導電性ペーストを用い、上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた各生地に、以下の条件により電極および配線を形成して生体情報計測用の衣類(肌着)を作製した。
(電極および配線)
上記導電性ペーストを長さ12cm、幅2cmの離型シートの上に塗布し、熱風乾燥オーブンで、120℃で30分以上乾燥することによって、離型シート付きシート状導電層を作製した。次に、得られた離型シート付きシート状導電層の導電層表面に、ポリウレタンホットメルトシートを貼り合わせた後、ホットプレス機を用い圧力0.5kg/cm2、温度130℃、プレス時間20秒の条件で積層した。次に、上記離型シートを剥がしてポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層を得た。次に、得られたポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層(長さ12cm、幅2cm)のポリウレタンホットメルトシート側を、別途作製した長さ13cm、幅2.4cmのポリウレタンホットメルトシートに向けて、長さ方向の一端を揃えて積層し、ポリウレタンホットメルトシートとシート状導電層との積層体を作製した。ここではポリウレタンホットメルトシートが、上述した第一絶縁層に相当する。次に、上記第一絶縁層およびシート状導電層の一部を覆うように、長さ5cm、幅2.4cmの領域に、上記第一絶縁層を形成したものと同じポリウレタンホットメルトシートを端から2cm離した部分から積層することにより、上記シート状導電層の一部の上に第二絶縁層を形成した。即ち、端部に導電層が露出した長さ2cm×幅2cmのデバイス接続部、第一絶縁層/導電層/第二絶縁層の積層構造を有する絶縁部、反対の端部に導電層が露出した長さ5cm×幅2cmの電極がこの順で長手方向に配置された伸縮性電極パーツを作製した。デバイス接続部において露出している導電層が電極に相当し、絶縁部における導電層が配線に相当している。次に、上記実施例1〜4、比較例1〜4で得られた生地の前身頃の内側の肌側面、即ち、着用者の肌に電極面が接触する側の所定位置に、上記のようにして製造された伸縮性電極パーツを2枚、左右対称になる形で貼り付けて、生体情報計測用の肌着を作製した。前身頃生地に設けた電極の数は2個とし、電極2個の電極面の合計面積は22cm2、電極の平均厚みは90μmであった。
次に、伸縮性電極パーツを貼り付けた肌着について、JIS L 1086(2013)「接着芯地及び接着布試験方法」に基づいて、生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度を測定した。
次に、肌着に電子ユニットを取り付けたものを被験者に着用させ、下記の方法で被験者の心拍数を測定した。また、下記の方法で、肌着の快適性を評価した。被験者は30歳男性であり、身長170cm、体重70kg、肩幅45cm、胸囲85cm、胴囲80cmであった。
(心拍数の測定および快適性の評価)
寒冷環境下(10℃×40%RH)にて、足踏み歩行運動を30分間行い、発汗を確認した後、その場で30分間静止して安静状態を保った。運動時および運動後の安静状態(安静時)における心拍数を測定した。また、運動時および運動後の安静状態(安静時)に汗冷えしているかどうかを官能評価し、肌着の快適性を評価した。
実施例1で得られた生地のピリング等級は3.5級、実施例2で得られた生地のピリング等級は3.5級、実施例3で得られた生地のピリング等級は4.0級、実施例4で得られた生地のピリング等級は4.0級であり、いずれも生地においても毛玉の発生が繰り返し着用に問題ないレベルに抑制されていた。また、実施例1で得られた生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は8.0N/cm、実施例2で得られた生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は7.0N/cm、実施例3で得られた生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は8.5N/cm、実施例4で得られた生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は7.0N/cmであり、いずれの生地においても生地から電極が剥離することを防止できていた。また、実施例1〜4で得られた生地で構成される肌着を着用して運動した結果、運動時および運動後の安静時の両方において、心拍数を安定して測定できた。また、いずれの実施例においても測定結果に静電気ノイズの影響は見られなかった。また、運動時であっても肌着内の湿度は適度に保たれ、ムレ感を覚えることなく、快適に過ごすことができた。また、運動後の安静時においても肌着内の湿度は適度に保たれ、汗冷えすることなく快適に過ごすことができた。
比較例1で得られた生地は、ピリング等級が1.5級であり、繰り返し着用で毛玉が発生した。また、生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は2.8N/cmであり、生地から電極が剥離しやすく、運動時において心拍数を安定して測定できなかった。なお、測定結果に静電気ノイズの影響は見られなかった。一方、比較例1で得られた生地で構成される肌着を着用して運動した結果、運動時であっても肌着内の湿度は適度に保たれ、ムレ感を覚えることなく、快適に過ごすことができた。また、運動後の安静時においても肌着内の湿度は適度に保たれ、汗冷えすることなく快適に過ごすことができた。
比較例2で得られた生地のピリング等級は3.5級であり、毛玉の発生が繰り返し着用に問題ないレベルに抑制されていた。また、生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は6.0N/cmであり、電極は生地から剥離しにくく、比較例2で得られた生地で構成される肌着を着用して運動した結果、運動時および運動後の安静時の両方において、心拍数を安定して測定できた。しかし、測定結果に静電気ノイズの影響が見られた。比較例2においては生地と皮膚との間の摩擦で静電気が発生し、放電時の影響がノイズとして測定結果に混入したものと考えられる。また、運動時には、肌着内に熱気がこもり、ムレ感が発生し、不快感があった。また、運動後の安静時には汗冷えがあり、寒く感じられた。
比較例3で得られた生地のピリング等級は1〜2級であり、見栄えが悪く、衣料品として堪えられないレベルであった。また、生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は3.9N/cmであり、電極は生地から剥離しやすく、比較例3で得られた生地で構成される肌着を着用して運動した結果、運動時および運動後の安静時の両方において、心拍数は安定して測定できなかった。なお、測定結果に静電気ノイズの影響は見られなかった。一方、運動時であっても肌着内の湿度は適度に保たれ、ムレ感を覚えることなく、快適に過ごすことができた。また、運動後の安静時においても肌着内の湿度は適度に保たれ、汗冷えすることなく快適に過ごすことができた。
比較例4で得られた生地のピリング等級は1〜2級であり、見栄えが悪く、衣料品として堪えられないレベルであった。また、生地と伸縮性電極パーツとの間の剥離強度は3.7N/cmであり、電極は生地から剥離しやすく、比較例4で得られた生地で構成される肌着を着用して運動した結果、運動時および運動後の安静時の両方において、心拍数は安定して測定できなかった。なお、測定結果に静電気ノイズの影響は見られなかった。なお、運動時であっても肌着内の湿度は適度に保たれ、ムレ感を覚えることなく、快適に過ごすことができた。また、運動後の安静時においても肌着内の湿度は適度に保たれ、汗冷えすることなく快適に過ごすことができた。
Figure 2021159089

Claims (8)

  1. 生地と、前記生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類であって、
    前記電極は、接着層を介して前記生地の肌側面に形成されており、
    前記生地の肌側面における少なくとも前記接着層が形成されている領域に、獣毛繊維を3〜100質量%含む紡績糸が存在しており、
    JIS L1086(2013)に基づいて算出される前記生地と前記電極との間の剥離強度は6N/cm以上であることを特徴とする衣類。
  2. 前記獣毛繊維は、脱スケール処理が施されているか、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されているか、または脱スケール処理が施された後、表面の少なくとも一部にウレタン系樹脂が形成されているものである請求項1に記載の衣類。
  3. 前記ウレタン系樹脂は、ポリエーテル系ポリウレタンである請求項2に記載の衣類。
  4. 前記紡績糸は更に合成繊維を含み、該合成繊維が長繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の衣類。
  5. 前記生地100質量%中、前記紡績糸を70質量%以上含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の衣類。
  6. 前記接着層は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
  7. 前記電極は、前記生地の肌側面側に形成されている絶縁層と、前記絶縁層の上に形成されている導電層とを備えるものである請求項1〜6のいずれかに記載の衣類。
  8. 前記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、及び顔部のうち少なくとも一部を覆うものである請求項1〜7のいずれかに記載の衣類。
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