JP6954847B2 - 衣類 - Google Patents

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  • Measurement And Recording Of Electrical Phenomena And Electrical Characteristics Of The Living Body (AREA)

Description

本発明は、着用者の肌に接触する電極が形成されている生体情報測定用の衣類に関する。
近年、ヘルスモニタリング分野や医療分野、療育分野、リハビリテーション分野において、ウェアラブル生体情報計測装置(センシングウェア)が注目されている。ウェアラブル生体情報計測装置とは、生体情報計測装置が、例えば、衣類やベルト、ストラップなどに設けられており、これらを着用することによって心電図などの生体情報を簡便に計測できる装置である。生体情報計測装置としては、例えば、着用者の肌に接触する生体情報計測用の電極が形成されている。
衣類型のウェアラブル生体情報計測装置の場合は、例えば、織物や編物で構成される身頃生地に、電極が設けられており、この衣類を着用して日常生活を過ごすことによって、日常の様々な状況における心拍の変動等の生体情報を簡便に計測できる。
ウェアラブル生体情報計測装置における生体情報の計測精度を高めるには、電極の測定面と身体とを密着させる必要がある。そのため、衣類型のウェアラブル生体情報計測装置の場合は、衣類本体としてコンプレッションウェアのような上半身を強く締め付けるものが用いられており、この締め付けによって電極の測定面と身体とを密着させている。しかし、着用者は締め付けられることによって、圧迫感を感じることがあった。また、コンプレッションウェアに生体情報計測装置を設けた場合でも、電極から生体情報を安定的に、精度良く計測することは難しかった。特に、被測定者がウォーキングやジョギング、ランニングなどの運動を行うと、被測定者の動作によって、電極の測定面と身体とが充分に密着していない状態になることがあり、生体情報を計測できないことがあった。そこで、コンプレッションウェアに生体情報計測装置を設けた場合には、電極と身体との密着性を高めるために、電極を事前に水で濡らしたり、運動によって発汗した水分を利用して密着性を高め、計測精度を高めている。また、コンプレッションウェアは、着圧が高いため、脱ぎ着しにくい。
本発明者らは、特許文献1において、生体情報を、最も安定的に計測できる測定位置を特定し、密着性の高いフレキシブル電極を取り付けたセンシングウェアを提案した。
特開2017−29692号公報
インナー用に使用される衣類は、軽量だけでなく、保温性に優れることが要求される。更に生体情報測定に用いる衣類は、電極を密着させるために生地となる編地に強い伸縮性を持たせているので編地は重くなりやすく、締め付け感(着用時の圧迫感)も大きかった。
本発明の課題は、保温性と軽量性を兼ね備えており、特にインナー用編物に適した生体情報測定用の衣類を提供することにある。更に好ましくは、着用時の圧迫感が少なく、生体情報の測定安定性にも優れた生体情報測定用の衣類を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の衣類は以下の構成からなる。
[1]着用者の肌に接触する電極が形成されている衣類であって、前記衣類は、60〜250g/m2の目付及び0.2〜0.9mmの厚みを有する編地であって、単繊維繊度が0.2〜0.9dtexである短繊維Aと;繊維軸方向の熱伝導率が1.2W/m・k以下、単繊維繊度が0.8〜2.5dtexであり、且つ、前記短繊維Aとの単繊維繊度の差が0.4dtex以上である短繊維Bと;を3:7〜8:2の質量比で混紡した混紡糸を、編地全体に対して50質量%以上含み、前記混紡糸の繊度は40〜100番手であることを特徴とする衣類。
[2]前記編地の横方向において、50%伸長時の1cm幅あたりの伸長応力が10〜80cN、且つ、50%伸長を10回繰返した後の伸長回復率が98〜100%である[1]に記載の衣類。
[3]前記混紡糸の繊維軸方向に対して垂直な横断面を見たときに繊維間の空隙率が55〜70%であり、且つ、前記編地の比容積が3〜6cm3/gである[1]または[2]に記載の衣類。
[4]前記編地の保温率が20%以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の衣類。
本発明によれば、着用したときに暖かくて保温性に優れ、着用感(風合)が良く、軽量な生体情報測定用の衣類を提供することができる。更に本発明によれば、着用時の圧迫感がなく、生体情報の測定安定性にも優れた生体情報測定用の衣類を提供することができる。
皮膚接触型の電極を用いる生体情報の測定においては、肌と電極とが低インピーダンスで電気的に接触することが求められる。しかしながら、低湿度環境下では肌が乾燥して良好な電気的接触を得ることが難しい。この傾向は特に高齢者において著しい。本発明に係る生体情報測定用の衣類は、高い保温性を有する生地(編地)を用いているため、身体からの水分発散を促進し、且つ、発散された水分が生地にて保たれるため、電極と肌との間の湿潤度が高められるという効果を奏する。このため、乾燥時または高齢者に多く見られる乾燥肌であっても、導通用のジェルなどを用いずに、ドライ電極にて良好な測定環境を実現することができる。
通常、皮膚接触型の電極においては、金属コートされた導電糸、または金属フィラーが分散された伸縮性の導電層など、何らかの形で金属が用いられる場合が多い。このような金属併用部分は熱伝導性が高いために着用者の肌に触れるとヒヤリと冷たく感じ、特に寒い季節に不快感を感じさせることが多い。しかしながら、本発明に用いられる編地で構成される生体情報測定用の衣類は、上記金属併用部分を、低熱伝導で且つ高保温性の生地が取り囲むように形成されているため、金属併用部分が肌に触れた場合であっても、必要以上に熱吸収が行われず、ヒヤリとした冷感が低減される。
本発明の衣類は、着用者の肌に接触する電極が形成されている。そして、上記衣類は、60〜250g/m2の目付及び0.2〜0.9mmの厚みを有する編地であって、単繊維繊度が0.2〜0.9dtexである短繊維Aと;繊維軸方向の熱伝導率が1.2W/m・k以下、単繊維繊度が0.8〜2.5dtexであり、且つ、前記短繊維Aとの単繊維繊度の差が0.4dtex以上である短繊維Bと;を3:7〜8:2の質量比で混紡した混紡糸を、編地全体に対して50質量%以上含み、前記混紡糸の繊度は40〜100番手である点に特徴がある。
以下、本発明の衣類について、詳細に説明する。
上記衣類には、着用者の肌に接触する電極が設けられており、電極の電極面が、着用者の肌に直接接触することによって、身体からの電気信号を測定でき、生体情報を計測できる。生体情報としては、電極で取得した電気信号を電子ユニットで演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの身体の情報が得られる。
上記電極としては、心電図を測定できる電極を設けることが好ましい。心電図とは、心臓の動きによる電気的な変化を、生体表面の電極を介して検出し、波形として記録された情報を意味する。心電図は、一般的には、横軸に時間、縦軸に電位差をプロットした波形として記録される。心拍1回ごとに心電図に現れる波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在する。また、Q波の始めからS波の終わりまでは、QRS波と呼ばれることがある。
これらの波のなかでも、本発明の衣類には、少なくともR波を検知できる電極を設けることが好ましい。R波は、左右両心室の興奮を示し、電位差が最も大きい波である。R波を検知できる電極を設けることにより、心拍数も計測できる。即ち、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間は、一般に、RR間隔(秒)と呼ばれ、1分間当たりの心拍数は、下記式に基づいて算出できる。なお、本明細書においては、特に注釈のない限り、QRS波もR波に含まれる。
心拍数(回/分)=60/RR間隔
上記電極の具体的な構成については、後で詳述する。
上記衣類には、以下に詳述する編地が形成されているため、保温性がありながら軽量であるという効果が得られる。
以下、本発明に用いられる編地について詳述する。
上記編地は、単繊維繊度が0.2〜0.9dtexである短繊維A(極細繊維)と;繊維軸方向の熱伝導率が1.2W/m・k以下、単繊維繊度が0.8〜2.5dtex(通常繊度繊維)であり、且つ、短繊維Aとの単繊維繊度の差が0.4dtex以上である短繊維Bと;を一定の質量比で混紡した混紡糸が、編地全体に対して50質量%以上混用されている。このように極細繊維の短繊維Aと通常繊度繊維の短繊維Bを一定の質量比で混紡することにより、繊維間の細かな空隙が増加し、繊維に対して垂直方向の熱伝導を抑制することができる。更に繊維軸方向の熱伝導率が低い短繊維Aを使用することにより、繊維軸方向、垂直方向ともに優れた保温性を得ることができる。更に極細繊維の短繊維Aを一定以上混用することによって、40番手以上の細番手糸を紡出することが可能となり、細くて暖かい紡績糸を実現できる。以下、更に詳述する。
本発明において「短繊維」とは、長さが百数十mm程度以下の短い繊維である。但し、紡績が可能な繊維長であれば長さは特に限定されない。繊維素材の種類は特に限定されず、例えば綿、羊毛等の天然繊維の場合、短繊維としてそのまま用いることができる。また、繊維素材が化学繊維の場合、フィラメントを束ねたトウを所定の長さに切断して短繊維とすれば良い。
まず単繊維Aの単繊維繊度は0.2〜0.9dtexであり、好ましくは0.3〜0.7dtex、より好ましくは0.4〜0.6dtexである。単繊維繊度が0.2dtex未満では、染色したときの色濃度が極端に低下して、混紡糸の均一な染色性が得られ難くなる。一方、単繊維繊度が0.9dtexを超えると短繊維Bとの単繊維繊度の差が小さくなり、繊維間空隙が低下して保温性が上がらないと共に、均一な細番手紡績糸を紡出するのが難しくなる。
一方、単繊維Bの単繊維繊度は0.8〜2.5dtexであり、好ましくは0.9〜1.2dtexである。単繊維繊度が0.8dtex未満では、短繊維Aとの単繊維繊度差が小さくなり、保温性が低下する。一方、単繊維繊度が2.5dtexを超えると、編地の風合が硬くなる傾向があると共に、目的の保温性が得られ難くなる。
更に短繊維Aと短繊維Bとの単繊維繊度の差は0.4dtex以上であり、好ましくは0.5dtex以上である。上記の差が0.4dtex未満では保温性が低下しやすい。なお、短繊維Aと短繊維Bとの単繊維繊度の差の上限は、上記観点からは特に限定されないが、おおむね、1.3dtex以下であることが好ましい。
上記短繊維Bの繊維軸方向の熱伝導率は、1.2W/m・k以下であり、好ましくは1.1W/m・k以下である。このように繊維軸方向の熱伝導率が低い短繊維Bを使用することにより繊維軸方向、垂直方向ともに優れた保温性を得ることができる。なお、その下限は上記観点からは特に限定されないが、衣料繊維に用いることができる素材であることを考慮すると、おおむね0.4W/m・k以上である。
一方、上記短繊維Aの繊維軸方向の熱伝導率は上記短繊維Bの熱伝導率が上記要件を満足する限り特に限定されないが、好ましくは1.2W/m・k以下であり、より好ましくは1.1W/m・k以下である。その下限は、上記短繊維Bと同様の理由により、おおむね0.4W/m・k以上であることが好ましい。
なお短繊維Aおよび短繊維Bの各熱伝導率は、上記範囲を満足する限り、同じであっても良いし、異なっていても良い。
上記短繊維Aと短繊維Bの混紡比率(混率)は質量比で3:7〜8:2であり、好ましくは4:6〜8:2である。短繊維Aの混率が上記範囲を超えると、繊維間空隙が少なくなり保温性が上がらない。一方、短繊維Aの混率が少なすぎると、所望とする細番手糸の生産が難しくなる。混紡糸の状態で混率を測定する方法としては、例えばメタルセクション法により光学顕微鏡にて糸の断面写真を撮影して、その断面写真より混紡糸を構成する繊維の本数を測定し、各繊維の構成本数と単糸繊度を掛け合わせて総繊度を求めて、各繊維の総繊度の比率から求めることができる。
本発明に用いられる短繊維A及び短繊維Bは、上記の要件を満たす限り任意の繊維を使用することができる。このような繊維としては、細繊度繊維の生産性、衣料品に必要な染色性などの観点からアクリル繊維が好適である。アクリル繊維を用いる場合、アクリル繊維全体に対してアクリロニトリルを50質量%以上含有するアクリロニトリル系ポリマーからなるアクリル繊維の使用が好ましい。アクリロニトリル系ポリマーがアクリロニトリルを50質量%以上含有する場合、アクリロニトリル単独ポリマーであってもよいが、経済性の観点から、アクリロニトリルとアクリロニトリルに共重合可能な不飽和モノマーとのコポリマーであって、アクリロニトリルを50〜95質量%含有するコポリマーであることが好ましい。アクリロニトリルの含有量が50質量%未満では、染色鮮明性、発色性等のアクリル繊維としての特徴が有効に発揮されない。更に熱特性をはじめとする他の物性も低下する傾向となる。
ここで、アクリロニトリルに共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和モノマーなどが挙げられる。
更に染色性等改良の目的で共重合されるモノマーとしては、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
アクリロニトリル系ポリマーの分子量は、アクリル繊維の製造に通常用いられる範囲のものであれば特に限定されない。但し、分子量が低すぎると紡糸性が低下すると同時に原糸の糸質も悪化する傾向にあり、一方、分子量が高すぎると紡糸原液に最適粘度を与えるポリマー濃度が低くなり、生産性が低下する傾向にあるので、紡糸条件に従って適宜選択することが好ましい。
アクリル繊維の製造方法は特に限定されないが、例えばアクリロニトリルを50質量%以上含有するアクリロニトリル系ポリマーを、溶剤に溶解して紡糸原液とし、紡糸するという湿式紡糸法により製造することができる。ここで、紡糸の際に用いられる溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γーブチロラクトン、アセトン等の有機溶剤;硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛等の無機溶剤が挙げられる。
上記短繊維Aと短繊維Bで構成される混紡糸の繊度(綿番手)は40〜100番手の細繊度紡績糸である。好ましくは45〜90番手である。繊度が40番手より太い場合、本発明の目的とする軽くて、暖かい編地を得ることが難しくなる。一方、繊度が100番手より細い場合、編地が薄くなりすぎて保温性が低下する。
更に上記混紡糸の繊維軸方向に対して垂直な横断面(糸断面と略記する場合がある。)を見たときに繊維間の空隙率は55〜70%であることが好ましい。ここで空隙率とは、糸断面を構成する繊維と空間の比率を言う。空隙率が55%未満の場合、目標とする保温率が得られ難い。一方、空隙率が70%を超えると、保温率は得られるものの、糸強力が低下し、衣料品にしたときにピリング等の消費性能が低下することがある。より好ましくは58〜65%である。
更に上記混紡糸の撚係数(K)は2.8〜4.5が好ましい。撚係数が2.8未満の場合、繊維間空隙率は高くなるが、糸強度が低下して紡績性、製編性が悪くなり、生産が困難になる。一方、撚係数が4.5を超えると、紡績性および製編性は良くなるが、繊維間空隙率が低く、目標とする保温性が得られ難い。より好ましくは3.0〜4.1である。
本発明に用いられる編地は、上記の混紡糸を、編地全体に対して50質量%以上含む。これにより所望とする編地が得られる。混紡糸の好ましい含有比率は68質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
本発明では、上記混紡糸の混率が50質量%以上を満足する範囲内で、他の糸を交編することができる。この場合、軽量という本発明の特性を維持するために、交編される他の糸は80番手以上の細い糸条であることが好ましい。80番手以上の細い糸であれば特に限定されないが、例えば50dtex以下のフィラメントや、紡績糸または複合糸が好適に用いられる。具体的にはナイロンやポリエステルのフィラメント、またはその仮撚加工糸、短繊維や長繊維と弾性繊維とを複合した被覆弾性糸等が挙げられる。
ここで被覆弾性糸としては、フィラメントと弾性糸とを合撚したFTY(フィラメント ツイスティッド ヤーン)、シングル(ダブル)カバーリング糸、エアーカバード糸、仮撚加工と同時混繊する仮撚複合糸等が用いられる。また短繊維と弾性糸との複合糸として、コアスパンヤーン、プライヤーン等が用いられる。上記弾性糸はポリウレタン系スパンデックス、ポリオレフィン系弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリエステル系潜在捲縮糸等を用いることができる。上記弾性糸の繊度は22〜160dtexのものを用いることが好ましい。上記弾性糸の繊度が22dtex未満であると、着圧が低くなりすぎて生体情報を安定的に測定することが難しくなり易い。一方、上記弾性糸の繊度が160dtexを超えると着圧が強すぎて着用快適性が低下しやすい。より好ましくは23〜120dtex、更に好ましくは23〜80dtexである。混繊時の弾性糸ドラフト率は1.5〜2.5倍の低倍率にすることが好ましく、1.8〜2.2倍程度が更に好ましい。弾性糸ドラフト率が2.5倍を超えると、伸縮のパワーが強すぎて編地の収縮が大きくなり、軽い編地が得られ難くなる。
例えば、軽量でありながら保温性に優れるという本発明に用いられる編地の特性を損なわない交編態様として、40dtex以下のナイロン被覆弾性糸を10〜40質量%の割合で交編する態様が挙げられる。
特に本発明では、上記「他の糸」として、弾性糸が用いられる。弾性糸の種類は特に限定されないが、好ましくはポリウレタン系弾性糸が用いられる。このようなポリウレタン系弾性糸の例として、例えば特開2011−195970号公報、特開2014−198914号公報、特開2015−94044号公報に記載のものが好ましく用いられる。
ポリウレタン系弾性糸は、乾式紡糸又は溶融紡糸したものを使用でき、ポリマーや紡糸方法は特に限定されない。ポリウレタン系弾性糸の破断伸度は400%〜1000%程度のもので、かつ、伸縮性に優れ、染色加工時のプレセット工程の通常処理温度180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また上記ポリウレタン系弾性糸に、特殊ポリマーや粉体添加により、高セット性、抗菌性、吸湿、吸水性等の機能性を付与したものも使用可能である。ポリウレタン系弾性糸の繊度は、10〜80dtexが好ましい。運動追随性を良好な編地とするため、上記繊度は20〜60dtex程度であることがより好ましい。更に上記弾性糸に非弾性糸を巻きつけたカバーリング糸、撚糸した糸、及び非弾性糸と弾性糸とを空気噴射等により混繊した混繊糸等のような被覆弾性糸の使用も可能である。
本発明に用いられる編地は、60〜250g/m2の目付及び0.2〜0.9mmの厚みを有している。これらの要件は、上記編地が、軽いことを示す指標となる。目付が60g/m2未満では暖かさが得られない。一方、目付が250g/m2を超えると本発明が意図する軽い生地の範疇を超えてしまう。好ましい目付は、80〜230g/m2である。また厚みが0.2mm未満では薄くなりすぎて暖かさが実感できない。一方、厚みが0.9mmを超えると本発明が意図する薄い生地の範疇から外れてしまう。好ましい厚みは0.3〜0.8mmである。
上記編地(シート電極を取り付ける身頃生地)の伸縮性は、横方向において、50%伸長時の1cm幅当たりの伸長応力(以下、単に伸長応力と略記する場合がある。)が10〜80cN/cmであることが好ましい。より好ましくは、20〜70cN/cm、更に好ましくは30〜60cN/cmである。これにより、着用時の圧迫感および生体測定情報の測定安定性が高められる。詳細には通常、電極部周辺の着圧を調整するため、衣服を着圧調整治具で電極部周辺の身頃生地を軽く引っ張って着用するが、伸長応力が80cN/cmより高いと日常に使用するインナー用途には着圧が高くて圧迫感が強くなり、快適な着心地が得られ難くなる。一方、伸長応力が10cN/cmを下回ると、電極の肌への密着性が低下して生体信号を安定的に採取して測定するのが難しくなる。
更に上記編地の伸縮性に関し、横方向において、50%伸長を10回繰返した後の伸長回復率は98%以上であることが好ましい。より好ましくは99%以上である。98%を下回ると着用中に生地の着圧が低下して測定が不安定になりやすい。
本発明に用いられる編地の比容積は3〜6cm3/gであることが好ましく、より好ましくは3.5〜5.5cm3/gである。上記比容積の数値は保温編地としてはさほど高くない値である。この理由は、軽い編地にしたことに原因があると推察されるが、微細な空隙がある暖かい紡績糸の効果により、見かけの比容積に比べて高い保温性を実現しているものと考えられる。
本発明に用いられる編地の保温率は20%以上であることが好ましく、実際には約20〜30%である。保温率が20%未満では着用したときの暖かみが感じ難くなる。一方、保温率が30%より高くなると軽量化が難しくなる。
本発明に用いられる編地は編組織を特に限定しないが、厚みが所定範囲に制御されるように考慮すべきである。例えば、上記編地としては、丸編のシングルニット、ダブルニット、また経編でも良い。編地の厚みが大きくなり難い組織で好適なものとしては、例えば片袋、リバーシブル、ベア天竺、ベアフライス等が挙げられる。
更に軽い素材とするには、これらの編組織を適正な密度に設定することが好ましい。適正密度は編み組織により変動するが、例えばウエール密度20〜50個/inch、コース密度30〜100個/inchの範囲で適宜設定すればよい。
本発明に用いられる編地の染色加工は、通常のアクリル繊維や、他の繊維との混用編地の加工方法であれば特に限定されないが、本発明に用いられる紡績糸の繊維間空隙構造を潰さないよう注意して加工することが必要である。例えば、乾燥や熱処理時に、必要以上に編地にテンションや厚み方向の圧縮等をかけて加工しないこと等が求められる。また、精練や染色等の後に液温を下げるとき、急速に液温を下げるとアクリル繊維がへたるため、降温は出来るだけゆっくり行なうようにする。
本発明に用いられる編地は、柔軟剤や帯電防止剤などのような一般的な仕上加工剤を付与することが好ましい。また上記編地は、その他の各種機能加工が単独または併用して施されていても良い。機能加工の例としては、例えば親水加工などの防汚加工、UVカット加工、静電加工、スキンケア加工などが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の衣類は、着用者の肌に接触する電極が形成されていればよく、その形態は特に限定されず、例えば、スポーツインナー、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、肌着、下着、病衣、または寝間着などが挙げられる。これらの中でも、肌着などのインナー用衣類が好ましく、特に女性用の肌着が好ましい。
上記衣類が、袖を有する場合は、半袖、五分袖、七分袖、長袖等のいずれであってもよく、袖の形状は、ラグラン袖であってもよい。
上記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うことが好ましい。
次に、上記衣類に設ける電極について説明する。
上記電極は、被測定者の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。
上記伸縮性を有する電極としては、例えば、導電性ファブリックで構成されている電極や、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成されたシート状の電極が挙げられる。
上記導電性ファブリックで構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した繊維状の電極が挙げられる。
上記導電性ファブリックは、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。上記伸長率が下限値を下回ると、電極が衣類の生地の動きに充分に追従しにくくなり、生地から電極が剥がれることがある。従って上記伸長率は、3%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。しかし、伸長率が上限値を超えると、電極が伸びすぎて生体情報を精度良く計測できないことがある。従って上記伸長率は、60%以下が好ましく、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
上記伸長率は、身丈方向または身幅方向で上記範囲を満足することが好ましく、身丈方向および身幅方向の両方において上記範囲を満足することがより好ましい。
上記シート状の電極の材料としては、例えば、導電性が高い導電性フィラーを用いることによって、繊維状電極よりも電気抵抗値を低くすることができるため、微弱な電気信号を検知できる。
上記電極は、生体の電気的情報を検知できる導電層を含み、更に肌とは逆側、即ち、導電層の衣類側に絶縁層を有することが好ましい。以下、衣類側の絶縁層を、第一絶縁層ということがある。
また、上記衣類は、電極の他、該電極と、該電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続する配線を有している。上記配線は、電極で検知した生体の電気信号を電子ユニット等へ伝達するための導電層を含み、更に肌とは逆側、即ち、導電層の衣類側に絶縁層(第一絶縁層)を有することが好ましい。上記配線は、導電層の肌側にも絶縁層を有することが好ましい。以下、肌側の絶縁層を、第二絶縁層ということがある。
以下、導電層、第一絶縁層、第二絶縁層について具体的に説明する。
(導電層)
導電層は、導通を確保するために必要である。
上記導電層は、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含むことが好ましく、各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。
上記導電性フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などを用いることができる。上記導電性フィラーは、1種でも良いし、2種以上でもよい。
上記金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉;銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉;卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉;卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉等が挙げられる。これらの中でも、銀粉および/または銅粉が好ましく、低コストで、高い導電性を発現させることができる。
上記金属粉としては、フレーク状粉または不定形凝集粉を主体に(例えば、50質量%以上)用いることが好ましい。フレーク状粉および不定形凝集粉は、球状粉などよりも比表面積が大きいため、低充填量でも導電性ネットワークを形成できるので好ましい。
上記フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法によって測定した平均粒子径(50%D)が0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜12μmである。平均粒子径が20μmを超えると微細配線の形成が困難になることがある。平均粒子径が0.5μm未満では、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化することがある。上記フレーク状粉としては、例えば、フレーク状銀粉を用いることが好ましい。
上記不定形凝集粉とは、球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。上記不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネットワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
上記不定形凝集粉としては、例えば、不定形凝集銀粉を用いることが好ましい。
上記金属ナノ粒子としては、上述した金属粉のうち、粒子径が数ナノ〜数十ナノの粒子を意味する。
上記導電性フィラーに占める金属ナノ粒子の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属ナノ粒子の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属ナノ粒子は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが望ましい。
上記金属粉以外の導電材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系材料が挙げられる。上記金属粉以外の導電材料は、表面に、メルカプト基、アミノ基、ニトリル基を有するか、表面が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることが好ましい。一般に、金属粉以外の導電材料自体は凝集力が強く、アスペクト比が高い金属粉以外の導電材料は、樹脂中への分散性が悪くなるが、表面にメルカプト基、アミノ基またはニトリル基を有するか、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることによって、樹脂に対する親和性が増して、分散し、有効な導電性ネットワークを形成でき、高導電性を実現できる。
上記導電性フィラーに占める金属粉以外の導電材料の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉以外の導電材料の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉以外の導電材料は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが望ましい。
上記導電層は、導電性フィラーの種類や、導電性フィラーの添加量等を変化させた2種類以上の導電層を積層したり、配列させて、複数の導電層を一体化したものであっても構わない。
上記導電層に占める上記導電性フィラー(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める導電性フィラー)は、15〜45体積%が好ましく、より好ましくは20〜40体積%である。導電性フィラーが少なすぎると、導電性が不充分になる虞がある。一方、導電性フィラーが多すぎると、導電層の伸縮性が低下する傾向があるため、電極および配線を伸長したときにクラック等が発生し、良好な導電性を保持できない虞がある。
上記導電層は、非導電性粒子を含んでもよく、該非導電性粒子は、平均粒子径が0.3〜10μmが好ましい。
上記非導電性粒子としては、例えば、金属酸化物の粒子を用いることができ、具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫酸バリウム粒子などの金属の硫酸塩、金属の炭酸塩、金属のチタン酸塩等を用いることができる。これらの中でも、硫酸バリウム粒子を用いることが好ましい。
上記ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。
上記ニトリル基含有ゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18〜60質量%が好ましく、40〜55質量%が特に好ましい。
上記導電層は、上述した各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、後述する第一絶縁層上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。上記導電層は、上記導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで後述する第一絶縁層上に積層して形成してもよい。
上記導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を採用して調製すればよく、伸縮性を有する樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することによって調製できる。例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などと、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散すればよい。これらの手段は、複数を組み合わせて用いることができる。
上記導電性ペーストを塗布または印刷する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などの印刷法などを採用できる。
上記導電層の乾燥膜厚は、10〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜130μm、更に好ましくは30〜100μmである。上記導電層の乾燥膜厚が薄すぎると、電極および配線が、繰り返し伸縮を受けて劣化しやすく、導通が阻害ないし遮断される虞がある。一方、上記導電層の乾燥膜厚が厚すぎると、伸縮性が阻害され、また、電極および配線が厚くなりすぎ、着心地が悪くなる虞がある。
(第一絶縁層)
上記第一絶縁層は、絶縁層として作用する他、電極および配線の導電層を生地に形成するための接着層として作用すると共に、着用時に第一絶縁層が積層された生地の反対側(即ち、衣類の外側)からの水分が導電層に達することを防ぐ止水層としても作用する。また、導電層の衣類側に第一絶縁層を設けることによって、第一絶縁層が、生地の伸びを抑制し、導電層が過度に伸長されるのを防ぐことができる。その結果、第一絶縁層にクラックが発生することを防止できる。これに対し、上述したように、上記導電層は、良好な伸長性を有するものであるが、生地が導電層の伸長性を超えた伸び性に富む素材の場合、生地表面に導電層を直接形成すると、生地の伸びに追随して導電層が伸ばされ過ぎ、その結果、導電層にクラックが発生すると考えられる。
上記第一絶縁層は、絶縁性を有する樹脂で構成すればよく、樹脂の種類は特に制限されない。
上記樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂がより好ましく、導電層との接着性が一層良好となる。
上記第一絶縁層を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記第一絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させることによって形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第一絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第一絶縁層が薄すぎると、絶縁効果および伸び止め効果が不充分になることがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第一絶縁層が厚すぎると、電極および配線の伸縮性が阻害されることがある。また、電極および配線が分厚くなりすぎ、着心地が悪くなるおそれがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
(第二絶縁層)
上記配線は、前記導電層の上に、第二絶縁層が形成されていることが好ましい。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗などの水分が導電層に接触することを防止できる。
上記第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した第一絶縁層を構成する樹脂と同様のものが挙げられ、好ましく用いられる樹脂も同じである。
上記第二絶縁層を構成する樹脂も、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記第二絶縁層を構成する樹脂は、上記第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層の被覆性および配線の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。
上記第二絶縁層は、上記第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第二絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第二絶縁層が薄すぎると、繰り返し伸縮したときに劣化しやすく、絶縁効果が不充分になることがある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第二絶縁層が厚すぎると、配線の伸縮性が阻害され、また配線の厚みが厚くなりすぎて着心地が悪くなる虞がある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
上記電極および配線は、10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が、100N/cm以下であることが好ましい。10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が100N/cmを超えると、電極および配線の伸長が、生地の伸長に追従し難くなり、衣類を着用したときの着心地を阻害することがあった。従って10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重は、100N/cm以下が好ましく、より好ましくは80N/cm以下、更に好ましくは50N/cm以下である。
上記電極および配線は、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍以下であることが好ましい。20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍を超えると、導電性の低下が著しくなる。従って20%伸長時における電気抵抗の変化倍率は5倍以下であることが好ましく、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
上記電極と配線は、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されていることが好ましい。
上記電極と配線を同じ材料で構成する場合は、配線の幅は1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。配線幅の上限は特に限定されないが、例えば、10mm以下とすることが好ましく、より好ましくは9mm以下、更に好ましくは8mm以下である。
上記電極および配線は、衣類を構成する生地に直接形成することが好ましい。
上記電極および配線を生地に形成する方法としては、電極および配線の伸縮性を妨げない方法であれば特に限定されず、着用時の身体へのフィット性や運動時、動作時の追従性などの観点から、例えば、接着剤による積層や熱プレスによる積層など、公知の方法が採用できる。これら接着剤による積層や熱プレスによる積層を行う場合、生地にシリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤のような、接着性を損なう材料が多く付着していない事が望ましい。これらは、生地の染色加工工程において、精練処理による弾性糸等に用いられているシリコン系油剤の除去および、生地の仕上げセット時の加工剤の選定により、調整することが出来る。
上記電極は、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けられていることが好ましい。上記電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることによって、生体情報を精度良く測定できる。上記電極は、衣類のうち、着用者の第七肋骨上端と第九肋骨下端との間の肌に接触する領域に設けることがより好ましい。
上記電極は、衣類のうち、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。
上記電極は、着用者の胴回りに沿って、円弧状に設けることが好ましい。
上記衣類に設ける電極の数は、少なくとも2つであり、2つの電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることが好ましく、2つの電極を、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。なお、電極を3つ以上設ける場合は、3つ目以降の電極を設ける位置は特に限定されず、例えば、後身頃生地に設けてもよい。
上記電極面の電気抵抗値は、1000Ω/cm以下が好ましく、より好ましくは300Ω/cm以下、更に好ましくは200Ω/cm以下、特に好ましくは100Ω/cm以下である。特に、上記電極の形態がシート状の場合は、電極表面の電気抵抗値を、通常、300Ω/cm以下に抑えることができる。
上記電極の形態は、シート状が好ましい。電極をシート状にすることによって、電極面を広くできるため、着用者の肌との接触面積を確保できる。上記シート状の電極は、曲げ性が良好であるものが好ましい。また、上記シート状の電極は、伸縮性を有するものが好ましい。
上記シート状の電極の大きさは、身体からの電気信号を計測できれば特に限定されないが、電極面の面積は5〜100cm2であり、電極の平均厚みは10〜500μmが好ましい。
上記電極面の面積は、より好ましくは10cm2以上、更に好ましくは15cm2以上である。上記電極面の面積は、より好ましくは90cm2以下、更に好ましくは80cm2以下である。
上記電極が薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下である。
上記電極の形状は、電極を配置する位置に相当する身体の曲線に沿い、且つ身体の動きに追随して密着しやすい形状であれば特に限定されず、例えば、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。電極の形状が多角形の場合は、頂点に丸みを付け、肌を傷付けないようにしてもよい。
上記配線は、導電性繊維または導電性糸を用いて形成してもよい。
上記導電性繊維または導電性糸としては、絶縁物である繊維表面に金属をメッキしたもの、細い金属線を糸に撚り込んだもの、導電性の高分子をマイクロファイバーなどの繊維間に含浸させたもの、細い金属線等を用いることができる。
上記配線の平均厚みは、10〜500μmが好ましい。厚みが薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚みが厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
上記配線の形状は特に限定されず、直線、曲線の他、冗長性を有する幾何学パターンであってもよい。冗長性を有する幾何学パターンとしては、例えば、ジグザグ状、連続馬蹄状、波状などが挙げられる。冗長性を有する幾何学パターンの電極は、例えば、金属箔を用いて形成できる。
上記衣類は、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等を備えていることが好ましい。上記電子ユニット等において、電極で取得した電気信号を演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの生体情報が得られる。
上記電子ユニット等は、衣類に着脱できることが好ましい。
上記電子ユニット等は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタなどを有することが好ましい。
上記電子ユニット等は、例えば、気温、湿度、気圧などの環境情報を計測できるセンサや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサなどを備えてもよい。
上記衣類を用いることにより、人の心理状態や生理状態を把握する技術への応用もできる。例えば、リラックスの度合いを検出してメンタルトレーニングしたり、眠気を検出して居眠り運転を防止したり、心電図を計測してうつ病やストレス診断等を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
本実施例では、表1に記載の各編地を用いて、着用者の肌に接触する電極が前身頃に形成されていると共に電子ユニットが取り付けられた衣類を製造し、以下の方法で着用試験を行って、保温快適性(暖かさ)、着用時の圧迫感、および測定安定性をそれぞれ評価した。
1.シート電極の作製
本実施例では、以下のようにしてシート電極を作製した。
(導電性ペースト)
ニトリルゴム(日本ゼオン社製の「Nipol DN003」)20質量部を、イソホロン80質量部に溶解し、NBR溶液を作製した。得られたNBR溶液100質量部に、銀粒子(DOWAエレクトロニクス製の「凝集銀粉G−35」、平均粒子径5.9μm)110質量部を配合し、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを得た。
(電極および配線)
上記導電性ペーストを離型シートの上に塗布し、120℃の熱風乾燥オーブンで30分以上乾燥することによって、離型シート付きシート状導電層を作製した。
次に、離型シート付きシート状導電層の導電層表面に、ポリウレタンホットメルトシートを貼り合わせた後、上記離型シートを剥がし、ポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層を得た。上記ポリウレタンホットメルトシートは、ホットプレス機を用い、圧力0.5kg/cm2、温度130℃、プレス時間20秒の条件で積層した。
次に、長さ13cm、幅2.4cmのポリウレタンホットメルトシート上に、長さ12cm、幅2cmのポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層のポリウレタンホットメルトシート側を、長さ方向の一端を揃えて積層し、ポリウレタンホットメルトシートとシート状導電層の積層体を作製した。ポリウレタンホットメルトシートが、上述した第一絶縁層に相当する。
次に、上記第一絶縁層と導電層の一部を覆うように、長さ5cm、幅2.4cmの領域に、上記第一絶縁層を形成したものと同じポリウレタンホットメルトシートを端から2cm離した部分から積層することにより、一部の導電層の上に第二絶縁層を形成した。即ち、端部に導電層が露出した長さ2cm×幅2cmのデバイス接続部、第一絶縁層/導電層/第二絶縁層の積層構造を有する絶縁部、反対の端部に導電層が露出した長さ5cm×幅2cmの電極がこの順で長手方向に配置された伸縮性電極パーツ(シート電極)を作製した。
2.表1に記載の編地の作製
表1に記載の各編地の詳細を以下のようにして作製した。
実施例1(ベア天竺)
表1に記載の短繊維Aおよび短繊維Bを用いて、以下の方法により実施例1の編地を作製した。
詳細には、まず短繊維Aとして極細タイプのカチオン可染アクリル短繊維(日本エクスラン工業製UFタイプ、単繊維繊度0.5dtex、繊維長32mm)を70%と;短繊維Bとして制電・抗ピルタイプのカチオン可染性アクリル繊維(日本エクスラン工業製822タイプ、単繊維繊度1.0dtex、繊維長38mm)30%を、OHARA製混綿機を用いて混綿混紡した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーとし、原織機製練条機に2回通して250ゲレン/6ydのスライバーとした。更に、このようにして得られたスライバーを豊田自動織機製粗紡機に通して粗糸を作製した。そして、豊田自動織機製リング精紡機を用いてトラベラ回転数10000rpmで紡出して英式番手50′sの紡績糸(混紡糸)を得た。上記紡績糸の詳細は表1に示す通りである。
次いで上記紡績糸Aと;表1に記載の交編糸として繊度22dtexの溶融紡糸スパンデックス(東洋紡(株)製エスパM;以下、ポリウレタン弾性糸を「Uy」と略記する場合がある)とを用いてベア天竺(生機)を編み立てた。それぞれの糸長は250mm/100wとした。スパンデックスのドラフト率は2.5倍とした。得られた生機の混率はアクリル94%、Uy6%であった。
ここで、上記糸長(緯編の編成糸長)は、仕上生地の100W(ウェール)当りの糸長を測定して、1ループ当りの糸長として100で除した値(mm)である。
上記生機を開反して、ヒラノテクシード製ピンテンターを用いて160℃×2分のプリセットを行った。その後、日阪製作所製液流染色機NSタイプを用いて常法にて精練した後、カチオン染料にてブルーに染色し、吸水加工・柔軟剤処理を行なって、染色機から取り出した。次に遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、目付210g/m2、仕上巾135cmの最終生地(編地)を得た。
実施例2(ベア天竺)
上記実施例1において、混紡糸の繊維間の空隙率、繊度、および撚係数を表1のように変更し、且つ、編地の混紡糸混率を表1のように変更したこと以外は上記実施例1と同様にして最終生地(編地)を得た。
実施例3(片袋)
上記実施例2において、混紡糸の撚係数を表1のように変更したこと以外は実施例2と同様の方法で混紡糸(紡績糸)を得た。
次いで、ポリウレタン17dtex(東洋紡(株)製エスパ(登録商標))をドラフト倍率1.8倍として、28dtexフィラメント数34のナイロンフィラメント(東洋紡(株)製シルファイン(登録商標))と複合して、表1に記載の交編糸(SCY)を得た。
このようにして得られたSCYと、前述した紡績糸とを用いて、18′′−18Gのフライス編機により編成糸長330mm/100W(ウエール)の片袋編地を編成した。
次に、上記実施例1と同様にして染色加工し、最終生地(編地)を得た。
実施例4(ESS混ベア天竺)
上記実施例1において、短繊維Aとして単繊維繊度が0.3dtexで繊維長38mmのポリエチレンテレフタレート繊維を用いたこと、及び、短繊維Bの含有率を50%としたこと以外は実施例1と同様にして紡績糸を得た。上記紡績糸の詳細は表1に示す通りである。
次いで、上記紡績糸と、上記実施例1に記載の交編糸とを用いて、実施例1と同様にしてベア天竺(生機)を編み立てた。このようにして得られた生機の混率はポリエステル47%、アクリル47%、Uy6%であった。
次に、上記実施例1と同様にして染色加工し、最終生地(編地)を得た。
比較例1(フライス)
ここでは、短繊維Bのみを用い、上記実施例2と同様の方法により英式番手80番手の紡績糸を得た。
上記紡績糸を用い、18インチ−18ゲージのフライス編機LRB(永田精機)にてフライスを製編した。製編時の編成条件は糸長480mm/100ウェールであった。
次に、編成した編地を開反せず、液流染色機にて精練し、カチオン染料でアクリルをブルーに染色した。次いで、柔軟処理を行ってから染色機から取り出した後、遠心脱水して、荒繰り、丸セット仕上げを行って、最終生地として丸巾(W)35cmの最終生地(編地)を得た。
比較例2(トリコット)
ここでは、本発明で規定する短繊維Aおよび短繊維Bを用いず、表1に示すNy長繊維を用いた。
詳細には、カールマイヤー社製トリコット編機(HKS2/筬巾180インチ・28ゲージ)を用いて、ミドル筬にポリウレタン弾性糸44dtex−40フィラメント、フロント筬とバック筬にナイロン6の78デシテックス−68フィラメント(△ブライト)を組合せて、組織はフロントオサ10/23、ミドルオサ00/33、バックオサは10/34の生機を編成した。得られた生機を、上記実施例1(ベア天竺)と同様の方法により仕上げた。このようにして得られた生地は、経密度98コース/2.54cm、横密度60コース/2.54cm、生地目付210g/m2であった。
このようにして得られた各編地の性能の評価結果を表1に示す。ここで「編地の性能」の欄に記載の各項目は、以下の方法で測定したものである。
3.電極が形成された生体情報測定用衣類の製造
次に、上記のようにして作製された各編地で構成された衣類の前身頃生地の内側、即ち、着用者の肌に電極面が接触する側の所定位置に、上記の伸縮性電極パーツを2枚、左右対称になる形で貼り付け、電極が形成された衣類を製造した。前身頃生地に設けた電極の数は2つとした。
4.表1に記載の項目の測定方法
各項目の測定方法は以下の通りである。
(編地の目付)
編地の目付は、JIS L1096(2010)の「8.3.2 標準状態における単位面積当たりの質量」に記載のA法に基づいて測定した。測定はn=3回とし、平均値を求めた。
(編地の厚み)
編地の厚みは、JIS L1096(2010)の「8.42 厚さA法」に基づいて測定した。
(繊度)
繊度は、JIS−L1095の「9.4.2 見掛テックス・番手」に記載の方法に基づいて測定し、綿番手(=英式番手)を求めた。
(繊維軸方向の熱伝導率)
繊維軸方向の熱伝導率は、日本繊維機械学会誌39,T−184(1986)に記載されている「単繊維の異方性熱伝導率の測定」に準じて測定された値である。
詳細には、カトーテック(株)製サーモラボIIを用いて下記のように測定を行った。
まず上記学会誌のFig.2に記載のヒートチャックおよびベースチャック(銅製)を用いて繊維を平行に並べて把持した。下部のベースチャック温度Tbを定温水で一定に保持した。上部のヒートチャック温度THは、内蔵ヒーターと、同じくチャック内に内蔵の50Ω白金温度センサーによってΔT=TH−Tbが10℃に保たれるよう制御されている。チャック間隔はL=3〜7mm、試料クランプ幅は30mm、繊維の総断面積は3〜5×10-62程度である。繊維束はできる限り単層状に配列し、クランプで把持される部分をアルミホイルで包んでプレス処理した。試料の実測値から試料を取付けないで測るリーク値を差引いて温度差ΔTを求めるが、毎回試料を取替えながら実測値とリーク値を交互に各10回測定して、平均値を採用した。下記式にて繊維軸方向の熱伝導率KLを求めた。
繊維軸方向の熱伝導率KL=qL/ΔTA(Jm-1-1-1
式中、L:厚さm、A:面積m2、ΔT:温度差K、q:熱流量JS-1(=W)
(伸長応力)
伸長応力は、JIS L1018(1999)の「8.14.1 定伸長時伸長力」に記載のカットストリップ法によって、以下のようにして測定した。
試験片は、生地のウェール方向(横方向)に採取した。
試験幅が2.5cm、つかみ間の距離が10cmの試験片を、1分間当り30cmの引張速度(30cm/min)で引き伸ばし、50%伸張したときの引張応力を測定し、10%伸長力(N)とした。
(伸長回復率)
伸長回復率は、JIS L1018(1999)の「8.15.2 B法(定荷重法)」に基づいて測定した。試験片は、生地の横方向(ウェール方向)に採取した。最大伸長率は50%とし、50%伸長を10回繰り返した後の伸長回復率(伸長弾性率)を求めた。
(混紡糸における、繊維間の空隙率)
まず混紡糸を編地より静かに取出し、SEMの試料台に粘着テープで固定した。液体窒素で試料台ごと糸条を凍らした状態でカミソリで繊維軸方向に垂直にカットして横断面を切出して、走査型電子顕微鏡(SEM)により繊維横断面の写真を撮った。この横断面写真から混紡糸が占める全体面積より、実際に単糸が占める面積を除いた空間の面積との比率を測定した。
繊維間の空隙率(%)
=(混紡糸が占める全体面積−実際に単糸が占める面積)×100/紡績糸が占める全体面積
上記式中、「実際に単糸が占める面積」は、断面写真における、単糸それぞれの断面積を合計した値とした。
(編地の比容積)
編地の比容積は、上記のようにして算出された、編地の厚みおよび目付の各測定値を用いて下記式により算出した。
比容積=編地の厚み(mm)/編地の目付(g/m2)×1000
(保温率)
保温率は以下のようにして測定した。
まずカトーテック社製のサーモラボIIを用い、20℃、65%RHの環境下で、BT−BOXのBT板(熱板)を人の皮膚温度を想定して35℃に設定し、その上に試料を置き、熱移動量が平衡になったときの消費電力量Wを測定した。また、試料を置かない条件での消費電力量W0を計測した。そして以下の式で保温率を計算した。
保温率(%)={(W0−W)/W0}×100
ここでBT板は10cm×10cmのサイズであるが、試料は20cm×20cmのサイズとした。通常は試料を熱板に接触させて測定するが、本発明では、熱板の上に断熱性のある発砲スチロール等のスペーサーを設置して試料との空隙を5mm設けて保温率を計測した。
(紡績糸の撚係数)
紡績糸の撚係数(K)は、JIS−L1095 9.15のA法により測定した。詳細には、シキボー製TC50オートツイストカウンターにより測定した値であり、下式に基づいて算出される。詳細には測定長10inchとして、50回測定した平均値とした。
撚係数(K)=撚数(T/インチ)/(英式番手)1/2(Ne)
(編地の密度)
編地の密度は、JIS−L1096−8.6.2編物の密度測定法に準拠して測定した。
5.着用試験
着用者(被験者)は身長170cm、体重70kg、肩幅45cm、胸囲85cm、胴囲80cmの30才男性である。着用試験の測定環境は、18℃×50%RHの冬場の室内環境に設定した。
上記室内環境にて安静にして15分経過後、15分間の歩行を2回繰り返した。15分間の歩行後における、衣類の着用感(保温快適性、着用時の圧迫感、および測定安定性)を下記項目に従って官能評価した。
(1)保温快適性(暖かさ)
下記5段階の基準で保温快適性を評価した。
5:着用中に寒さを全く感じない
4:着用中に寒さを殆ど感じない
3:着用中に寒さを感じる
2:着用中に寒さをやや感じる
1:着用中に寒さを強く感じる
(2)着用時の圧迫感
下記5段階の基準で着用時の圧迫感を評価した。
5:圧迫感を全く感じない
4:やや圧迫感を感じる
3:圧迫感を感じる
2:強い圧迫感を感じる
1:非常に強い圧迫感を感じる
(3)測定安定性
15分間の歩行後に心電図を測定し、下記基準で測定安定性を評価した。
〇:測定時、ノイズが少なくSN比が良好であり、R波が容易に検出可能な心電図波形が得られた
×:R波の検出可能な心電図波形が得られなかった
このようにして得られた着用試験の評価結果を表1に併記する。
Figure 0006954847
表1より、本発明の要件を満足する実施例1〜4の衣類は、保温快適性、着用時の圧迫感、および測定安定性の全てに優れていることが分かる。
これに対し、比較例1は短繊維Bのみを用いた例であり、保温快適性が低下し、測定時の心電図波形も極めて不安定であった。
また比較例2は、本発明で規定する短繊維Aおよび短繊維Bを使用しなかった例であり、保温快適性が低下し、着用時の圧迫感が非常に強いものであった。

Claims (4)

  1. 着用者の肌に接触する電極が形成されている衣類であって、
    前記衣類は、
    125〜250g/m2の目付及び0.2〜0.9mmの厚みを有する編地であって、
    単繊維繊度が0.2〜0.9dtexである短繊維Aと;
    繊維軸方向の熱伝導率が1.2W/m・k以下、単繊維繊度が0.8〜2.5dtexであり、且つ、前記短繊維Aとの単繊維繊度の差が0.4dtex以上である短繊維Bと;を
    3:7〜8:2の質量比で混紡した混紡糸を、編地全体に対して50質量%以上含み、
    前記混紡糸の繊度は40〜100番手であることを特徴とする衣類。
  2. 前記編地の横方向において、
    50%伸長時の1cm幅あたりの伸長応力が10〜80cN、且つ、
    50%伸長を10回繰返した後の伸長回復率が98〜100%である請求項1に記載の衣類。
  3. 前記混紡糸の繊維軸方向に対して垂直な横断面を見たときに繊維間の空隙率が55〜70%であり、且つ、
    前記編地の比容積が3〜6cm3/gである請求項1または2に記載の衣類。
  4. 前記編地の保温率が20%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の衣類。
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