JP7291519B2 - 衣類 - Google Patents

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Description

本発明は、生地と、生地の肌側面に形成されている電極とを備える衣類に関する。詳細には、着用者の生体情報を検出するための生体情報測定用の電極が形成されている衣類に関する。具体的には、着用者の肌に直接接触する電極、または近接的非接触に生体情報を取得できるセンサーの検知端となる電極を有する生体情報測定用の衣類に関する。
近年、ヘルスモニタリング分野や医療分野、療育分野、リハビリテーション分野において、ウェアラブル生体情報計測装置(センシングウェア)が注目されている。ウェアラブル生体情報計測装置とは、生体情報計測装置が、例えばベルト、ストラップなどに設けられており、これらを着用することによって心電図などの生体情報を簡便に計測できる装置である。生体情報計測装置としては、例えば、着用者の肌に接触する生体情報計測用の電極が形成されているものが知られている。
衣類型のウェアラブル生体情報計測装置の場合は、例えば、織物や編物で構成される身頃生地に電極が設けられており、この衣類を着用して日常生活を過ごすことによって、日常の様々な状況における心拍の変動等の生体情報を簡便に計測できる。
これまでに種々の衣類型のウェアラブル生体情報計測装置が知られており、例えば本発明者らは特許文献1において、生体情報を最も安定的に計測できる測定位置を特定し、密着性の高いフレキシブル電極を取り付けたセンシングウェアを提案した。
特開2017-29692号公報
従来、生体情報の測定精度を向上させる試みがなされているが、運動を行った際に電極の位置ずれが生じてしまうことにより、生体情報の信号品質が劣化する場合があった。更に着心地の向上も求められている。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、着用して運動を行っても電極の位置ずれが生じ難く、着心地のよい生体情報計測用衣類を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る衣類は、以下の構成からなる。
[1]生地と、上記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、
上記生地は、弾性糸と、断面のアスペクト比が3以上、10以下である非弾性糸とを含む経編物であり、
上記非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上、3針以下となるように編まれており、
上記生地の肌側面のうち30cm以上は上記電極に覆われておらず露出していることを特徴とする衣類。
[2]上記弾性糸は、1コース毎の振り幅が3針以下となるように編まれているものである[1]に記載の衣類。
[3]上記非弾性糸の1コース毎の振り幅は、上記弾性糸の1コース毎の振り幅と同じか、または上記弾性糸の1コース毎の振り幅よりも1針以上大きいものである[1]または[2]に記載の衣類。
[4]上記生地の肌側面にはニードルループが存在し、上記ニードルループのうち個数割合で30%以上のニードルループが上記非弾性糸を含むものである[1]~[3]のいずれかに記載の衣類。
[5]上記生地の肌側面にはシンカーループが存在し、上記シンカーループのうち個数割合で30%以上のシンカーループが上記非弾性糸を含むものである[1]~[4]のいずれかに記載の衣類。
[6]上記衣類の肌側面のうち上記生地の肌側面の面積率は20面積%以上である[1]~[5]のいずれかに記載の衣類。
[7]上記生地の目付は150g/m以上、260g/m以下である[1]~[6]のいずれかに記載の衣類。
[8]上半身用の肌着である[1]~[7]のいずれかに記載の衣類。
[9]下半身用の肌着である[1]~[7]のいずれかに記載の衣類。
[10]帯状物である[1]~[7]のいずれかに記載の衣類。
本発明によれば上記構成により、着用して運動を行っても電極の位置ずれが生じ難く、着心地のよい生体情報計測用衣類を提供することができる。更に、本発明の衣類は、特に周期的に衝撃が加わるような運動に対して効果的である。より具体的には、ジョギング、長距離走などの運動時には、走行のリズムに応じて、各々の足が着地する際に身体にスパイク状の衝撃負荷が加わり、この周期が比較的心拍のリズムに近い帯域であるために、心拍とスパイク状負荷によるノイズが逆相になった際に心拍を読み飛ばすエラーが生じることがある。本発明の衣類によれば、扁平非弾性糸により電極周辺の生地が体表面に密着すると同時に、生地の組織が特定のニット構造であるために、着地の衝撃負荷を生地と体表面が一体的に緩やかに吸収し、電極近傍と同時に着脱式の電子デバイスに加わるスパイク状の衝撃負荷を丸め込むため、かかるノイズを抑制することができる。その結果、本発明の衣類を用いれば、特にジョギング、長距離走、ランニング、運動時の生体情報計測において、高い信頼性を持つデータを取得することができる。
図1は、実施例1の経編物の組織図である。 図2は、実施例2の経編物の組織図である。 図3は、実施例3の経編物の組織図である。 図4は、比較例1の経編物の組織図である。 図5は、比較例2の経編物の組織図である。 図6は、DS式織物摩擦係数試験機の構造を示す図である。 図7(a)は、タブ付きTシャツの正面図である。(b)は、タブ付きTシャツの背面図である。 図8は、袋綴じ構造の電極支持部の斜視図である。
本発明の衣類は、生地と、生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、生地は、弾性糸と、断面のアスペクト比が3以上、10以下である非弾性糸とを含む経編物であり、非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上、3針以下となるように編まれており、生地の肌側面のうち30cm以上は電極に覆われておらず露出していることを特徴とするものである。
上記構成により、生地と肌の密着性を向上することができるため、運動時における生地の動きを低減することができ、その結果、生地の動きに伴う電極の位置ずれを低減することができる。更に着心地を向上することもできる。以下では各構成について詳述する。
衣類は、生地と、生地の肌側面側に形成されている電極とを備えるものである。電極の電極面が、着用者の肌に直接接触することによって、身体からの電気信号を測定でき、生体情報を計測できる。生体情報としては、電極で取得した電気信号を電子ユニットで演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの身体の情報が得られる。
電極としては、心電図を測定できる電極が好ましい。心電図とは、心臓の動きによる電気的な変化を、生体表面の電極を介して検出し、波形として記録された情報を意味する。心電図は、一般的には、横軸に時間、縦軸に電位差をプロットした波形として記録される。心拍1回ごとに心電図に現れる波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在する。また、Q波の始めからS波の終わりまでは、QRS波と呼ばれることがある。このうち、少なくともR波を検知できる電極が好ましい。R波は、左右両心室の興奮を示し、電位差が最も大きい波である。R波を検知できる電極を設けることにより、心拍数も計測できる。即ち、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間は一般にRR間隔(秒)と呼ばれ、1分間当たりの心拍数は下記式に基づいて算出できる。なお本明細書においては、特に注釈のない限りQRS波もR波に含まれるものとする。電極の具体的な構成については、後で詳述する。
心拍数(回/分)=60/RR間隔
上記生地は経編物であり、経編物としては、例えばシングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、シングルコード編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、トリコット編、ハーフトリコット編、ラッセル編、ジャガード編等の編組織を有するものが好ましく、シングルコード編、シングルデンビー編、サテン編等の編組織を有するものがより好ましい。
上記生地は、弾性糸と、断面のアスペクト比が3以上、10以下である非弾性糸(以下では、扁平非弾性糸と呼ぶ場合がある)とを含む経編物である。上記断面とは、繊維軸方向に対し垂直な断面(以下では、横断面と呼ぶ場合がある)を意味する。上記非弾性糸の横断面の形状として、楕円形状や長方形形状等が挙げられる。
扁平非弾性糸の横断面のアスペクト比が3以上であることにより、扁平非弾性糸が肌に密着して滑り止め効果が発揮され易くなる。更に、複数の扁平非弾性糸間における毛管現象が促進されて生地の吸水拡散性が向上し易くなる。そのため扁平非弾性糸の断面のアスペクト比は、好ましくは3.5以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは4.5以上である。一方、扁平非弾性糸の断面のアスペクト比が10以下であることにより、生地が肌に密着し過ぎることによる不快感を低減し易くすることができる。そのため扁平非弾性糸の断面のアスペクト比は、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下である。
扁平非弾性糸の横断面のアスペクト比は、例えば下記方法により求めることができる。繊維軸方向に対し垂直に繊維断面が観察できるよう切断し、その断面を走査型電子顕微鏡等を用いて観察し、明確な輪郭を有している扁平状の単繊維20本を抽出する。各繊維において、繊維の外周上における異なる2点間を結ぶ線分の中で、最も長さが長い線分を長辺とし、繊維の外周上における異なる2点間を結ぶ線分であって、長辺に垂直に交わる線分の中で最も長いものを短辺として各辺の長さを測定して、(長辺の長さ)/(短辺の長さ)の値を求める。この平均値を算出することによりアスペクト比を求めることができる。
扁平非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上、3針以下となるように編まれているものである。振り幅について、後記する実施例1の経編物の組織図である図1を参照しながら説明する。図1中、Xはウェール方向、Yはコース方向、Lはフロント筬による編組織、Lはバック筬による編組織、符号1は扁平非弾性糸、符号2は弾性糸、符号1aは編針により形成されるニードルループ、符号1bはシンカーにより形成されるシンカーループをそれぞれ示す。図1の経編組織では、扁平非弾性糸1がコース方向Yに1コース進む毎にウェール方向Xに2針振られた状態で編まれている。このように扁平非弾性糸1がウェール方向Xに1針以上振られた状態で編まれることにより、シンカーループ1bが長くなるため、扁平非弾性糸1が肌と密着性し易くなる。更にこれにより、ウェール方向Xに隣接する扁平非弾性糸1どうし互いに絡み合うため吸水拡散性が向上し易くなって、汗を拡散し易くすることができ快適性を向上することができる。一方、1コース毎の振り幅が3針以下であることにより、生地の柔軟性を向上し易くすることができる。これにより着心地を向上することができる。そのため扁平非弾性糸は、1コース毎の振り幅が2針となるように編まれていることがより好ましい。また扁平非弾性糸1は、図1に示すように1コース毎に左右交互に1針以上、3針以下の振り幅で編まれていることが好ましい。更に左右の振り幅は、同じであることがより好ましい。
扁平非弾性糸は、ゴム状弾性を持たない非弾性糸である。即ち扁平非弾性糸は、弾性糸よりも伸縮性が低いものであり、生地の伸び過ぎを防止し易くすることができる。扁平非弾性糸として、フィラメント糸、または紡績糸のいずれも用いることができる。扁平非弾性糸として、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、アラミド繊維、アクリル、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される合成繊維のマルチフィラメント;レーヨン、アセテートに代表される化学繊維(半合成繊維);又は綿、羊毛、シルクに代表される天然繊維;等を含む糸が挙げられる。扁平非弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
扁平非弾性糸は、フィラメント糸、紡績糸のいずれであってもよいが、フィラメント糸が好ましい。フィラメント糸として、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられるが、マルチフィラメント糸が好ましい。
扁平非弾性糸の単糸繊度は0.1dtex以上、3.0dtex以下であることが好ましい。扁平非弾性糸の単糸繊度が0.1dtex以上であることにより生地の強度を向上し易くすることができる。そのため扁平非弾性糸の単糸繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは1.0dtex以上、更に好ましくは1.2dtex以上である。一方、3.0dtex以下であることにより、扁平非弾性糸の肌に対する密着性や、吸水拡散性が向上し易くなる。そのため、扁平非弾性糸の単糸繊度は、より好ましくは2.0dtex以下、更に好ましくは1.7dtex以下、更により好ましくは1.5dtex以下である。
単糸繊度は、例えばJIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することにより求めることができる。
扁平非弾性糸の総繊度は、好ましくは10dtex以上、200dtex以下である。扁平非弾性糸の総繊度が10dtex以上であることにより生地の強度を向上し易くすることができる。そのため扁平非弾性糸の総繊度は、より好ましくは30dtex以上、更に好ましくは40dtex以上、更により好ましくは45dtex以上である。一方、200dtex以下であることにより、扁平非弾性糸の肌に対する密着性や、吸水拡散性が向上し易くなる。そのため、扁平非弾性糸の総繊度は、より好ましくは100dtex以下、更に好ましくは80dtex以下、更により好ましくは70dtex以下である。
扁平非弾性糸の上記生地100質量%における混率は、40質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。扁平非弾性糸の混率が40質量%以上であることにより、生地の肌に対する密着力と吸水拡散性を向上し易くすることができる。扁平非弾性糸の混率は、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。一方、扁平非弾性糸の混率を90質量%以下とすることにより、生地が肌に密着し過ぎることによる不快感を低減し易くすることができる。扁平非弾性糸の混率は、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
弾性糸は、ゴム状弾性を持った糸である。生地が弾性糸を含むことにより、伸縮性が向上し、衣類の着用時の着圧を低減し易くすることができる。弾性糸は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれも用いることができる。弾性糸として、具体的にはポリウレタン弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリオレフィン系弾性糸、天然ゴム糸、合成ゴム糸、伸縮性を有する複合繊維からなる糸等が挙げられる。弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。これらのうちポリウレタン弾性糸は、糸の弾性、熱セット性、耐薬品性等に優れているため好ましい。ポリウレタン弾性糸として、例えば融着タイプのポリウレタン弾性糸、合着タイプのポリウレタン弾性糸等を用いることができる。
弾性糸は、1コース毎の振り幅が3針以下となるように編まれていることが好ましい。1コース毎の振り幅が3針以下であることにより、弾性糸の伸縮性が発揮され易くなる。そのため、1コース毎の振り幅が2針以下であることがより好ましい。一方、ウェール方向に隣接する弾性糸どうし互いに絡み合うことによっても吸水拡散性が向上し易くなる。そのため、扁平非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上となるように編まれていることが好ましい。また図1に示す様に弾性糸2は1コース毎に左右交互に1針以上、3針以下の振り幅で編まれていることが好ましい。更に左右の振り幅は、同じであることがより好ましい。
扁平非弾性糸の1コース毎の振り幅は、弾性糸の1コース毎の振り幅と同じか、または弾性糸の1コース毎の振り幅よりも1針以上大きいものであることが好ましい。これにより、扁平非弾性糸の肌との密着性や吸水拡散性が発揮され易くなる。また図1のように扁平非弾性糸1の1コース毎の振り幅は、弾性糸2の1コース毎の振り幅よりも1針以上大きいことがより好ましい。
弾性糸の総繊度は10dtex以上、180dtex以下であることが好ましい。弾性糸の総繊度が10dtex以上であることにより生地の伸縮性を向上し易くすることができる。そのため弾性糸の総繊度は、好ましくは20dtex以上、より好ましくは30dtex以上、更に好ましくは40dtex以上である。一方、180dtex以下であることにより、生地を軽量化し易くすることができる。そのため、弾性糸の総繊度は、より好ましくは100dtex以下、更に好ましくは70dtex以下、更により好ましくは60dtex以下である。
弾性糸の上記生地100質量%における混率は、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。弾性糸の混率が10質量%以上であることにより、生地の伸縮性を向上し易くすることができる。弾性糸の混率は、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。一方、弾性糸の混率を60質量%以下とすることにより、編成および染色加工を行い易くすることができ生産性が向上する。更に、フィット性を向上し、寸法変化を起こし難くさせることができる。弾性糸の混率は、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは35質量%以下である。
上記生地100質量%における扁平非弾性糸と弾性糸の混率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、98質量%以上であることが更により好ましく、100質量%であることが最も好ましい。上記生地は、扁平非弾性糸と弾性糸以外の糸を含んでいてもよく、例えば断面のアスペクト比が3未満である非弾性糸や、断面のアスペクト比が10超である非弾性糸を含んでいてもよい。
上記生地の肌側面のうち30cm以上は電極に覆われておらず露出している。これにより、電極の位置ずれや剥離を防止し易くすることができる。上記生地の肌側面の露出面積は、好ましくは50cm以上、より好ましくは100cm以上、更に好ましくは200cm以上、更により好ましくは400cm以上である。一方、上記生地の肌側面の露出面積の上限は、例えば4000cm以下であってもよく、2000cm以下であってもよく、1000cm以下であってもよい。
衣類の肌側面のうち上記生地の肌側面の面積率は20面積%以上であることが好ましい。これにより電極の位置ずれや剥離を防止し易くすることができる。より好ましくは50面積%以上、更に好ましくは80面積%以上、更により好ましくは95面積%以上であり、最も好ましくは100面積%である。
上記生地の肌側面にはニードルループが存在し、ニードルループのうち個数割合で30%以上のニードルループが扁平非弾性糸を含むものであることが好ましい。これにより上記生地の肌側面の肌に対する密着性を向上することができる。そのため上記生地の肌側面において、ニードルループのうち個数割合で40%以上のニードルループが扁平非弾性糸を含んでいることがより好ましく、更に好ましくは45%以上である。一方、上限は特に限定されないが、例えば90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、55%以下であってもよい。
上記生地の肌側面にはシンカーループが存在し、シンカーループのうち個数割合で30%以上のシンカーループが扁平非弾性糸を含むものであることが好ましい。これにより上記生地の肌側面の肌に対する密着性を向上することができる。そのため上記生地の肌側面において、シンカーループのうち個数割合で40%以上のシンカーループが扁平非弾性糸を含んでいることがより好ましく、更に好ましくは45%以上である。一方、上限は特に限定されないが、例えば90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、55%以下であってもよい。
ニードルループやシンカーループの個数をカウントするに当たっては、完全組織を分解してカウントしてもよいし、完全組織を顕微鏡により表面観察してカウントしてもよい。なお編物の組織は一区間の単位組織の繰り返しにより構成されるが、その一区間の単位組織が完全組織である。
扁平非弾性糸のランナー長は、シンカーループ長を調整するために重要である。例えば振り幅が3針の場合、ランナー長は150cm以上、220cm以下とすることが好ましく、160cm以上、200cm以下とすることがより好ましい。一方、振り幅が2針の場合、ランナー長は120cm以上、180cm以下とすることが好ましく、130cm以上、170cm以下とすることがより好ましい。ランナー長の下限を上記の通りにすることにより、十分なシンカーループ長が得られ易くなり、肌との密着性が向上し易くなる。また、ランナー長の上限を上記の通りにすることにより、密着性が強くなり過ぎることにより生じる着用時の不快感や、衣類の重量化や、ピリング性の低下等を回避し易くなる。
弾性糸のランナー長は、扁平非弾性糸のランナー長とのバランスを考慮して適宜調整すればよいが、60cm以上、120cm以下とするのが好ましく、70cm以上、110cm以下とすることがより好ましい。下限を上記の通りにすることにより、テンションが高くなり過ぎることによる編成時の糸の切断を回避し易くすることができる。一方、上限を上記の通りにすることにより、編成時の糸テンションが低くなることに伴う糸キレを回避し易くすることができると共に、生地のキックバックの悪化も回避し易くすることができる。
上記生地の編み目は、開き目、閉じ目のどちらを用いてもよいが、開き目が好ましい。開き目であれば、糸が重ならなくなる分、生地の肌側面がフラットになりやすく、また生地の厚さを低減し易くすることができる。これにより、生地密着力、摩擦が向上し易くなる。なお生地の閉じ目とはループの一部が開いた状態のものであり、例えば実施例1の経編物の組織図である図1においては、扁平非弾性糸1により開き目が形成されている。一方、閉じ目とは、ループの一部が開いていない状態のものであり、例えば図1においては、弾性糸2により閉じ目が形成されている。
上記生地の目付は150g/m以上、260g/m以下であることが好ましい。生地の目付が150g/m以上であることにより生地の強度が向上し易くなる。そのため目付は、より好ましくは160g/m以上、更に好ましくは170g/m以上である。一方、上記生地の目付が260g/m以下であることにより、生地を軽量化して着心地を向上することができる。そのため上記地の目付は、より好ましくは250g/m以下、更に好ましくは230g/m以下である。生地の目付は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記生地の経密度は50本/2.54cm以上、150本/2.54cm以下であることが好ましい。経密度が高い程ループ密度が高くなり、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、生地と肌の密着性を向上し易くすることができる。そのため経密度は、より好ましくは70本/2.54cm以上、更に好ましくは80本/2.54cm以上、更により好ましくは90本/2.54cm以上である。一方、経密度を150本/2.54cm以下とすることにより生産性を向上し易くすることができる。そのため経密度は、より好ましくは130本/2.54cm以下、更に好ましくは120本/2.54cm以下、更により好ましくは110本/2.54cm以下である。
上記生地の緯密度は20本/2.54cm以上、80本/2.54cm以下であることが好ましい。緯密度が高い程、ループ密度が高くなって、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、生地と肌の密着性を向上し易くすることができる。そのため緯密度は、より好ましくは30本/2.54cm以上、更に好ましくは40本/2.54cm以上、更により好ましくは45本/2.54cm以上である。一方、緯密度を80本/2.54cm以下とすることにより生産性を向上し易くすることができる。そのため緯密度は、より好ましくは70本/2.54cm以下、更に好ましくは65本/2.54cm以下、更により好ましくは60本/2.54cm以下である。
上記生地の経密度と緯密度は、JIS L1096(2010)8.6.2の測定方法に基づいて測定することができる。
上記生地の肌側面は、静摩擦係数が0.7以上であることが好ましい。これにより運動中でも電極がずれ難くなるため、生体情報を安定的に計測し易くすることができる。静摩擦係数は、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、更により好ましくは1.0以上である。一方、静摩擦係数が5.0以下であることにより、衣類を着脱し易くすることができる。そのため静摩擦係数は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下、更により好ましくは2.5以下である。静摩擦係数は、上記生地の肌側面において、生地のタテ方向、及びヨコ方向のいずれか一方において上記範囲を満足することが好ましく、生地のタテ方向、及びヨコ方向の両方において上記範囲を満足することがより好ましい。なお静摩擦係数は後記する実施例に記載のDS式織物摩擦係数試験機を用いる方法により測定することができる。
上記生地の肌側面は、JIS L 1907(2010)(滴下法)の方法で測定される吸水速度が18秒以下であることが好ましい。これにより衣類の快適性が向上する。より好ましくは10秒以下、更に好ましくは5秒以下、更により好ましくは3秒以下である。
衣類は、電極が形成されていればその形態は特に限定されず、例えば、肌着、帯状物等が好ましい。また衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うものであってもよい。
肌着として、上半身用の肌着、または下半身用の肌着が好ましい。上半身用の肌着として、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、ブラジャー、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。下半身用の肌着として、パンツ、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。
帯状物として、ベルトが挙げられ、具体的には、胸部用ベルト、腹部用ベルト等が挙げられる。
次に、衣類に設ける電極について説明する。電極は、主として皮膚接触によって生体電位を検出するために用いられるが、コネクタ等の電気接点として用いてもよく、その他の近接的非接触的なセンサーの検知端として用いてもよい。電極は、被測定者の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。伸縮性を有する電極としては、例えば、導電性組織で構成されている電極や、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成されたシート状の電極が挙げられる。導電性組織で構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維または導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属によって表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物を導電性組織からなる電極として用いることができる。
シート状の電極の材料としては、例えば、導電性が高い導電性フィラーを用いることによって、繊維状電極よりも電気抵抗値を低くすることができるため、微弱な電気信号を検知できる。
電極は、生地の肌側面に形成された後記する第一絶縁層と、第一絶縁層の肌側面に形成された後記する導電層とを有するものであることが好ましい。
また、衣類は、電極の他、該電極と、該電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続する配線を有することが好ましい。配線は、生地の肌側面に形成された第一絶縁層と、第一絶縁層の肌側面に形成された導電層と、導電層の肌側面に形成された第二絶縁層とを有するものであることが好ましい。
以下、導電層、第一絶縁層、第二絶縁層について具体的に説明する。
(導電層)
導電層は、生体の電気的情報を検知できるものであり、導通を確保するために必要である。導電層は、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含むことが好ましく、より好ましくは導電性フィラーとエラストマーを含むものであり、各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。
導電性フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などを用いることができる。導電性フィラーは、1種でもよいし、2種以上でもよい。金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉、卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉、卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉等が挙げられる。これらの中でも、銀粉および/または銅粉が好ましく、低コストで、高い導電性を発現させることができる。銀粉および/または銅粉は、導電性フィラーとして用いる金属粉の主成分であることが好ましく、主成分とは、合計で50質量%以上を意味する。金属ナノ粒子としては、上述した金属粉のうち、粒子径が数ナノ~数十ナノの粒子が挙げられる。
導電性フィラーに占める金属粉の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。導電性フィラーに占める金属ナノ粒子の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属ナノ粒子の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属ナノ粒子は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。
金属粉以外の導電材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系材料が挙げられる。金属粉以外の導電材料は、表面に、メルカプト基、アミノ基、ニトリル基を有するか、表面が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることが好ましい。一般に、金属粉以外の導電材料自体は凝集力が強く、アスペクト比が高い金属粉以外の導電材料は、樹脂中への分散性が悪くなるが、表面にメルカプト基、アミノ基またはニトリル基を有するか、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることによって、樹脂に対する親和性が増して、分散し、有効な導電性ネットワークを形成でき、高導電性を実現できる。導電性フィラーに占める金属粉以外の導電材料の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉以外の導電材料の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉以外の導電材料は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。
導電層は、導電性フィラーの種類や、導電性フィラーの添加量等を変化させた2種類以上の導電層を積層したり、配列させて、複数の導電層を一体化したものであっても構わない。導電層に占める導電性フィラー(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める導電性フィラー)は、15~45体積%が好ましく、より好ましくは20~40体積%である。導電性フィラーが少なすぎると、導電性が不充分になる虞がある。一方、導電性フィラーが多すぎると、導電層の伸縮性が低下する傾向があるため、電極および配線を伸長したときにクラック等が発生し、良好な導電性を保持できない虞がある。
伸縮性を有する樹脂としては、例えば、硫黄原子を含有するゴムおよび/またはニトリル基を含有するゴムを少なくとも含むことが好ましい。硫黄原子やニトリル基は、導電性フィラー(特に、金属粉)との親和性が高く、またゴムは伸縮性が高いため、電極および配線の10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重を低減でき、伸長時にもクラック等の発生を回避できる。また、電極および配線が伸長されても導電性フィラーを均一な分散状態で保持できるため、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率を小さくすることができ、優れた導電性を発現させることができる。また、電極および配線の厚みを薄くしても、優れた導電性を発現させることができる。これらの中でも、ニトリル基を含有するゴムがより好ましく、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率を一段と低減できる。
硫黄原子を含有するゴムとしては、硫黄原子を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。硫黄原子は、ポリマーの主鎖のスルフィド結合やジスルフィド結合、側鎖や末端のメルカプト基などの形で含有される。硫黄原子を含有するゴムとしては、例えば、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。特に、メルカプト基を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴムが好ましい。硫黄原子を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、例えば、液状多硫化ゴムである東レ・ファインケミカル製の「チオコール(登録商標)LP」等が好ましく挙げられる。硫黄原子を含有するゴム中の硫黄原子の含有量は、10~30質量%が好ましい。また、硫黄原子を含有しないゴムとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(S-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(S-メルカプトブチレート)、メルカプト基含有シリコーンオイルなどの硫黄含有化合物を配合した樹脂を用いることもできる。
ニトリル基を含有するゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。特に、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であるアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムが好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、日本ゼオン製のNipol(登録商標)1042、Nipol(登録商標)DN003等が好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴム中のニトリル基量(特に、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中のアクリロニトリル量)は、18~50質量%が好ましく、より好ましくは20~45質量%、更に好ましくは28~41質量%である。特に、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量が多くなり過ぎると、導電性フィラー、特に、金属粉との親和性は増大するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。
導電層を形成する伸縮性を有する樹脂は、1種でもよいし、2種以上でもよい。即ち、導電層を形成する伸縮性を有する樹脂は、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムのみで構成されることが好ましいが、導電性、伸縮性、導電層形成時の塗布性などを損なわない範囲で、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴム以外に、伸縮性を有する樹脂を含んでいてもよい。伸縮性を有する他の樹脂を含む場合、全樹脂中、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムの合計量は、95質量%以上が好ましく、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。導電層に占める伸縮性を有する樹脂(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める伸縮性を有する樹脂固形分)は、55~85体積%が好ましく、より好ましくは58~83体積%、更に好ましくは60~80体積%である。伸縮性を有する樹脂が少なすぎると、導電性は高くなるが、伸縮性が悪くなる傾向がある。一方、伸縮性を有する樹脂が多すぎると、導電層の伸縮性はよくなるが、導電性は低下する傾向がある。
導電層は、上述した各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、後述する第一絶縁層上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。導電層は、導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで後述する第一絶縁層上に積層して形成してもよい。導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を採用して調製すればよく、伸縮性を有する樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することによって調製できる。例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などと、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散すればよい。これらの手段は、複数を組み合わせて用いることができる。導電性ペーストを塗布または印刷する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などの印刷法などを採用できる。
導電層の乾燥膜厚は、10~150μmが好ましく、より好ましくは20~130μm、更に好ましくは30~100μmである。導電層の乾燥膜厚が薄すぎると、電極および配線が、繰り返し伸縮を受けて劣化しやすく、導通が阻害ないし遮断される虞がある。一方、導電層の乾燥膜厚が厚すぎると、伸縮性が阻害され、また、電極および配線が厚くなりすぎ、着心地が悪くなる虞がある。
(第一絶縁層)
第一絶縁層は、絶縁層として作用する他、電極および配線の導電層を生地に形成するための接着層として作用すると共に、着用時に第一絶縁層が積層された生地の反対側(即ち、衣類の外側)からの水分が導電層に達することを防ぐ止水層としても作用する。また、導電層の衣類側に第一絶縁層を設けることによって、第一絶縁層が、生地の伸びを抑制し、導電層が過度に伸長されるのを防ぐことができる。その結果、第一絶縁層にクラックが発生することを防止できる。これに対し、上述したように、導電層は、良好な伸長性を有するものであるが、生地が導電層の伸長性を超えた伸び性に富む素材の場合、生地表面に導電層を直接形成すると、生地の伸びに追随して導電層が伸ばされ過ぎ、その結果、導電層にクラックが発生すると考えられる。
第一絶縁層は、絶縁性を有する樹脂で構成すればよく、樹脂の種類は特に制限されない。樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂がより好ましく、導電層との接着性が一層良好となる。第一絶縁層を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。第一絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させることによって形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
第一絶縁層の平均膜厚は10~200μmが好ましい。第一絶縁層が薄すぎると、絶縁効果および伸び止め効果が不充分になることがある。従って第一絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、第一絶縁層が厚すぎると、電極および配線の伸縮性が阻害されることがある。また、電極および配線が分厚くなりすぎ、着心地が悪くなるおそれがある。従って第一絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
(第二絶縁層)
配線は、導電層の上に、第二絶縁層が形成されてなるものであることが好ましい。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗などの水分が導電層に接触することを防止できる。第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した第一絶縁層を構成する樹脂と同様のものが挙げられ、好ましく用いられる樹脂も同じである。第二絶縁層を構成する樹脂も、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。第二絶縁層を構成する樹脂は、第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層の被覆性および配線の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。第二絶縁層は、第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
第二絶縁層の平均膜厚は10~200μmが好ましい。第二絶縁層が薄すぎると、繰り返し伸縮したときに劣化しやすく、絶縁効果が不充分になることがある。従って第二絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、第二絶縁層が厚すぎると、配線の伸縮性が阻害され、また配線の厚みが厚くなりすぎて着心地が悪くなる虞がある。従って第二絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
電極および配線は、10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が、100N/cm以下であることが好ましい。10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が100N/cmを超えると、電極および配線の伸長が、生地の伸長に追従し難くなり、衣類を着用したときの着心地を阻害することがある。従って10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重は、100N/cm以下が好ましく、より好ましくは80N/cm以下、更に好ましくは50N/cm以下である。
電極および配線は、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍以下であることが好ましい。20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍を超えると、導電性の低下が著しくなる。従って20%伸長時における電気抵抗の変化倍率は5倍以下であることが好ましく、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
電極と配線は、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されていることが好ましい。電極と配線を同じ材料で構成する場合は、配線の幅は1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。配線幅の上限は特に限定されないが、例えば、10mm以下とすることが好ましく、より好ましくは9mm以下、更に好ましくは8mm以下である。
電極および配線は、衣類を構成する生地に直接形成することが好ましい。電極および配線を生地に形成する方法としては、電極および配線の伸縮性を妨げない方法であれば特に限定されず、着用時の身体へのフィット性や運動時、動作時の追従性などの観点から、例えば、接着剤による積層や熱プレスによる積層など、公知の方法が採用できる。接着剤による積層や熱プレスによる積層を行う場合、生地には、シリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤のように、接着性を損なう材料が付着していないことが好ましい。生地に付着しているシリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤などの量は、生地の染色加工工程において精練処理による弾性糸等に用いられているシリコン系柔軟剤を除去したり、生地の仕上げセット時に用いる加工剤の種類を選定するなどの方法によって、調整できる。
電極は、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けられていることが好ましい。電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることによって、生体情報を精度良く測定できる。電極は、衣類のうち、着用者の第七肋骨上端と第九肋骨下端との間の肌に接触する領域に設けることがより好ましい。電極は、衣類のうち、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。電極は、着用者の胴回りに沿って、円弧状に設けることが好ましい。衣類に設ける電極の数は、少なくとも2つであり、2つの電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることが好ましく、2つの電極を、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。なお、電極を3つ以上設ける場合は、3つ目以降の電極を設ける位置は特に限定されず、例えば、後身頃生地に設けてもよい。
電極面の電気抵抗値は、1000Ω/cm以下が好ましく、より好ましくは300Ω/cm以下、更に好ましくは200Ω/cm以下、特に好ましくは100Ω/cm以下である。特に、電極の形態がシート状の場合は、電極面の電気抵抗値を、通常、300Ω/cm以下に抑えることができる。
電極の形態は、シート状が好ましい。電極をシート状にすることによって、電極面を広くできるため、着用者の肌との接触面積を確保できる。シート状の電極は、曲げ性が良好であるものが好ましい。また、シート状の電極は、伸縮性を有するものが好ましい。シート状の電極の大きさは、身体からの電気信号を計測できれば特に限定されないが、電極面の面積は5~100cmであり、電極の平均厚みは10~500μmが好ましい。電極面の面積は、より好ましくは10cm以上、更に好ましくは15cm以上である。電極面の面積は、より好ましくは90cm以下、更に好ましくは80cm以下である。電極が薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下である。電極の形状は、電極を配置する位置に相当する身体の曲線に沿い、且つ身体の動きに追随して密着しやすい形状であれば特に限定されず、例えば、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。電極の形状が多角形の場合は、頂点に丸みを付け、肌を傷付けないようにしてもよい。
配線は、導電性繊維または導電性糸を用いて形成してもよい。導電性繊維または導電性糸としては、絶縁物である繊維表面に金属をメッキしたもの、細い金属線を糸に撚り込んだもの、導電性の高分子をマイクロファイバーなどの繊維間に含浸させたもの、細い金属線等を用いることができる。配線の平均厚みは、10~500μmが好ましい。厚みが薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚みが厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。配線の形状は特に限定されず、直線、曲線の他、冗長性を有する幾何学パターンであってもよい。冗長性を有する幾何学パターンとしては、例えば、ジグザグ状、連続馬蹄状、波状などが挙げられる。冗長性を有する幾何学パターンの電極は、例えば、金属箔を用いて形成できる。
衣類は、生地の肌側面とは反対側の表面に、電子ユニットとの接続に用いる留め金を備えることが好ましい。留め金は、いわゆるホックであり、例えばステンレススチール製のホックが挙げられる。留め金を介して、導電層と電子ユニットとを電気的に接続することができる。
電子ユニット等は、衣類に着脱できることが好ましい。電子ユニット等は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタなどを有することが好ましい。電子ユニット等は、例えば、気温、湿度、気圧などの環境情報を計測できるセンサーや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサーなどを備えてもよい。
衣類を用いることにより、人の心理状態や生理状態を把握する技術への応用もできる。例えば、リラックスの度合いを検出してメンタルトレーニングしたり、眠気を検出して居眠り運転を防止したり、心電図を計測してうつ病やストレス診断等を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
繊度:単糸繊度は、JIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することにより単糸繊度を求めた。
目付:JIS L 1096(2010) 8.3.2に規定されている「標準状態における単位面積当たりの質量」に準拠して測定した。
経編物の密度:JIS L1096(2010)8.6.2の測定方法に基づいて測定した。
吸水性:JIS L 1907(2010)(滴下法)に従って、経編物の肌側面の吸水速度(秒)を求めた。具体的には20cm×20cmの試料を5枚採取して、水を経編物の肌側面に1滴滴下し、水が肌側面に到達した時点から完全に吸水されるまでの時間(秒)を測定した。
ピリング:JIS L1076(2010)A法(ICI形 5時間)の測定方法に基づいて測定した。
静摩擦係数:興亜商会製のDS式織物摩擦係数試験機を使用して、下記測定条件により経編物の肌側面のタテ方向(コース方向)についての静摩擦係数を測定した。具体的には、図6に示すように滑り台32の上に、摩擦布39、測定試料35、滑り片31、荷重34を順に積み重ね、DS式織物摩擦係数試験機を稼働して、荷重リード線36により滑り片31を引っ張り、滑り台32に対して滑り片31が滑り始めた瞬間の荷重を、荷重用指針37が指す測定部33の目盛の値を静摩擦力Fsとした。静摩擦力Fs、荷重34の重量、測定試料35の重量を下記式に当てはめて静摩擦係数を算出した。なお、摩擦布39として綿布(金巾3号)を使用し、測定試料35として経編物を絶乾した後、48時間調湿したものを用いた。測定環境は20±2℃、65±3%RHとして、引張速度は7.5cm/分、荷重は98.1cNで試験を行った。
静摩擦係数=静摩擦力Fs/(滑り片31の重量+荷重34の重量+測定試料35の重量)
実施例1
経編28ゲージのトリコット機にて、扁平非弾性糸であるポリエチレンテレフタレート繊維からなるエステル扁平糸50T36(50dtex、36フィラメント、アスペクト比:5)をフロント筬に用い、弾性糸である旭化成ロイカPu44T(44dtex)をバック筬に用いて製編して生機を得た。そのときの編組織は下記の通りであり、図1に組織図を示す。
フロント筬:01/32
バック筬:12/10
得られた生機を190℃でプレセットした後、分散染料を用いて130℃で染色した後、170℃で最終セットを行った。得られた経編物は、経密度100本/インチ、緯密度56本/インチ、目付が200g/mであった。得られた経編物の肌側面には扁平非弾性糸により形成されたシンカーループが露出しており、このシンカーループは2針振りされていたため2針隣の糸のニードルループと絡み合うように編組織を形成していた。
実施例2
実施例1のエステル扁平糸50T36(50dtex、36フィラメント、アスペクト比:5)の代わりに、ナイロン6の扁平繊維44dtex、34フィラメント、アスペクト比:9)を用いたこと、下記編組織、即ち図2に記載の編み組織としたこと以外は実施例1と同様にして生機を作成した。更に得られた生機を分散染料の代わりに酸性染料を用いて90℃で染色したこと以外は、同様にして経編物を仕上げた。なお図2中の各符号は図1と同じ意味である。
フロント筬:10/23
バック筬:12/10
実施例3
実施例1の編組織を下記編組織、即ち図3に記載の編み組織としたこと以外は実施例1と同様にして、生機、経編物を得た。なお図3中の各符号は図1と同じ意味である。
フロント筬:10/34
バック筬:12/10
比較例1
経編28ゲージのトリコット機にて、扁平非弾性糸であるエステル扁平糸50T36(50dtex、36フィラメント、アスペクト比:5)をフロント筬に用い、弾性糸である旭化成ロイカPu44T(44dtex)をバック筬に用いて製編して生機を得た。そのときの編組織は下記の通りであり図4に組織図を示す。なお図4中の各符号は図1と同じ意味である。
フロント筬:10/01
バック筬:12/10
得られた生機を190℃でプレセットした後、分散染料を用いて130℃で染色した後、170℃で最終セットを行った。得られた経編物は、経密度100本/インチ、緯密度40本/インチ、目付が160g/mであった。得られた経編物の肌側面には扁平非弾性糸が露出していたが針振りされていなかったため、扁平非弾性糸により形成されたシンカーループは隣の糸のニードルループと絡み合わない編組織を形成していた。
比較例2
実施例3の編組織を下記編組織、即ち図5に記載の編み組織としたこと、及び扁平非弾性糸としてエステル丸断面糸50T36(50dtex、36フィラメント、丸断面、アスペクト比:1)をフロント筬に用いたこと以外は実施例3と同様にして、生機、経編物を得た。なお図5中の各符号は図1と同じ意味である。
フロント筬:10/45
バック筬:12/10
これらの経編物の物性や各評価結果を表1に示す。
Figure 0007291519000001
次に、実施例1~3、比較例1、2で得られた経編物の肌側面に下記条件で電極および配線を形成した。
(導電性ペースト)
ニトリルゴム(日本ゼオン社製のNipol(登録商標)DN003)20質量部をイソホロン80質量部に溶解し、NBR溶液を作製した。得られたNBR溶液100質量部に銀粒子(DOWAエレクトロニクス製の「凝集銀粉G-35」、平均粒子径5.9μm)110質量部を配合し、3本ロールミルにて混練して導電性ペーストを得た。
(電極および配線)
得られた導電性ペーストを離型シートの上に塗布し、120℃の熱風乾燥オーブンで30分以上乾燥することによって、離型シート付きシート状導電層を作製した。次に、離型シート付きシート状導電層の導電層側の表面にポリウレタンホットメルトシートを貼り合わせて、ホットプレス機を用い、圧力0.5kgf/cm、温度130℃、プレス時間20秒の条件で積層して、上記離型シートを剥がしてポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層(長さ12cm、幅2cm)を得た。
別途、長さ13cm、幅2.4cmのポリウレタンホットメルトシートを用意し、その上に、上記ポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層(長さ12cm、幅2cm)のポリウレタンホットメルトシート側をポリウレタンホットメルトシートに向けて、長さ方向の一端を揃えて積層した。なお、これらのポリウレタンホットメルトシートは第一絶縁層に相当する。
次に、第一絶縁層と導電層の一部を覆うように、長さ5cm、幅2.4cmの領域に、第一絶縁層と同じポリウレタンホットメルトシートを端から2cm離れた部分から積層することにより、第二絶縁層を導電層の上に形成した。即ち、一端部側に導電層が露出した長さ2cm×幅2cmの電極(デバイス接続部)、第一絶縁層/導電層/第二絶縁層の積層構造を有する配線部、他端部側に導電層が露出した長さ5cm×幅2cmの電極(検出部)がこの順に長手方向に配置された伸縮性電極パーツを作製した。得られた伸縮性電極パーツを、第一絶縁層側を経編物の肌側面に向けて貼り付けた。
次に、得られた経編物で構成されたTシャツの肌側面の所定位置に、上記伸縮性電極パーツを2枚、左右対称になるように貼り付けることにより、電極と配線が形成されたTシャツを得た。更に肌側面とは反対側の表面にユニオンツール社製の電子ユニット(My Beat WHS-2)を取り付けて電子ユニット付Tシャツを作製した。前身頃生地に設けた電極の数は2つとし、検出用の電極2個の電極面の合計面積は20cm、電極の平均厚みは90μmであった。
得られた電子ユニット付Tシャツを着用して着用試験、着用快適性試験を行った。
[着用試験]
実施例1~3、比較例1、2の経編物を用いて作製した電子ユニット付Tシャツを着用し、20℃、65%RHの室内環境で、トレッドミルを用いて30分間、7km/hのジョギングしている時の心電図を測定し、心電図の波形のうちR波の振幅の分散をシグナル(S)とし、R波とR波の間の波形の振幅の分散をノイズ(N)とし、S/Nの式でSN比を求めた。ノイズが少なく、SN比が良好で、容易にR波を検出できる心電図波形を計測できた場合は「良」、安定的な検出ができなかった場合は「不良」と評価した。
[着用快適性試験]
上記ジョギング中の衣類の軽さ、動きやすさを評価した。極めて軽く動作し易かったものを◎、軽く感じて動作し易くかったものを〇、重く動き難かったものを×として評価した。
実施例1~3の経編物で作製した電子ユニット付Tシャツの場合、上記着用試験において電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であり、結果は「良」であった。更に上記着用快適性試験の結果も良好な結果を示した。
一方、比較例1の経編物で作製した電子ユニット付Tシャツの場合、上記着用試験において電極がずれてしまい、安定的な検出ができなかったため、結果は「不良」であった。また比較例2の経編物で作製した電子ユニット付Tシャツの場合、上記着用快適性試験において重く動き難かったため、結果は×であった。
更に、上記実施例1で得られた経編物を用いて図7(a)、(b)に示すタブ付きTシャツを作製した。図7(a)は、タブ付きTシャツの正面図、図7(b)は、タブ付きTシャツの背面図を示す。図7(a)、(b)の電極支持部4には、図8に示す電極部61が設けられており、以下の手順にて作製した。
(導電性ペースト)
バインダー樹脂として、三洋化成工業株式会社製コートロンKYU-1(ガラス転移温度-35℃)、銀粒子として三井金属鉱業株式会社製微小径銀粉SPH02J(平均粒子径1.2μm)、カーボン粒子としてライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用い、バインダー10質量部、銀粒子70質量部、カーボン粒子1質量部、溶剤19質量部の配合で導電ペーストを調製した。当該調製に当たっては、所定の溶剤量の半分量の溶剤にバインダー樹脂を溶解し、次いで金属系粒子、炭素系粒子を添加して予備混合した後、三本ロールミルにて分散することによりペースト化して導電性ペーストを得た。
(カーボンペースト)
ガラス転移温度が-19℃のニトリルブタジエンゴム樹脂を40質量部、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC300Jを20質量部、溶剤としてエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50質量部を予備撹拌の後、三本ロールミルにて分散化して、カーボンペーストを得た。
表面をシリコーン系離型剤により処理したPET製離型シートに伸縮性カーボンペーストを短径18mm×長径28mmの楕円形状にスクリーン印刷し、さらに短径16mm×長径26mmの楕円形状に伸縮性導体ペーストを、伸縮性導体ペーストのエッジがそれぞれ1mm幅内側になる様に配置して重ねてスクリーン印刷した。さらに第一絶縁層に相当する短径22mm×長径32mmの楕円形状の両面ホットメルトシートを、それぞれ両面ホットメルトシートのエッジが、伸縮性カーボンペースト層の2mm外側になるように配置してラミネートし、離型シート上に楕円形状の電極を形成した。次に上記実施例1で得られた経編物100mm×42mmの肌側面上にアイロンを用いて上記電極を転写して電極部61付き生地を形成した。次に、図8に示すように前身頃3と後身頃9との縫合部14において、袋綴じの状態で電極部61付き生地を縫い付けて、電極支持部4を形成した。なお縫合部14と電極部61端の最短距離は5mmとした。更に電極部61から縫合部14まで銀コート紙をジグザグに刺繍して配線とし、配線に重なるように前身頃3と後身頃9の脇腹部分の縫い目から、袖と後身頃9の縫い目を経由し、前身頃3と後身頃9の肩部分の縫い目を利用して後頸部まで銀コート糸の配線を引いた。その後、後頸部に接続用のスナップホックを形成して配線と接続し、脱着式電子ユニットをスナップホックに接続して、タブ付きTシャツの生体情報計測用衣類を得た。得られたタブ付きTシャツの生体情報計測用衣類を着用して上記着用試験を行った結果、精度の良い計測が可能であった。
1 扁平非弾性糸
1a ニードルループ
1b シンカーループ
2 弾性糸
3 前身頃
4 電極支持部
6 襟周り
9 後身頃
14 縫合部
21 袖部
31 滑り片
32 滑り台
33 測定部
34 荷重
35 測定試料
36 荷重リード線
37 荷重用指針
39 摩擦布
61 電極部

Claims (10)

  1. 生地と、前記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、
    前記生地は、弾性糸と、断面のアスペクト比が3以上、10以下である非弾性糸とを含む経編物であり、
    前記非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上、3針以下となるように編まれており、
    前記生地の肌側面のうち30cm以上は前記電極に覆われておらず露出しており、
    前記生地の肌側面にはニードルループが存在し、前記ニードルループのうち個数割合で30%以上のニードルループが前記非弾性糸を含むものであることを特徴とする衣類。
  2. 生地と、前記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、
    前記生地は、弾性糸と、断面のアスペクト比が3以上、10以下である非弾性糸とを含む経編物であり、
    前記非弾性糸は、1コース毎の振り幅が1針以上、3針以下となるように編まれており、
    前記生地の肌側面のうち30cm以上は前記電極に覆われておらず露出しており、
    前記生地の肌側面にはシンカーループが存在し、前記シンカーループのうち個数割合で30%以上のシンカーループが前記非弾性糸を含むものであることを特徴とする衣類。
  3. 前記弾性糸は、1コース毎の振り幅が3針以下となるように編まれているものである請求項1または2に記載の衣類。
  4. 前記非弾性糸の1コース毎の振り幅は、前記弾性糸の1コース毎の振り幅と同じか、または前記弾性糸の1コース毎の振り幅よりも1針以上大きいものである請求項1~3のいずれかに記載の衣類。
  5. 前記生地の肌側面にはニードルループが存在し、前記ニードルループのうち個数割合で30%以上のニードルループが前記非弾性糸を含むものである請求項に記載の衣類。
  6. 前記衣類の肌側面のうち前記生地の肌側面の面積率は20面積%以上である請求項1~5のいずれかに記載の衣類。
  7. 前記生地の目付は150g/m以上、260g/m以下である請求項1~6のいずれかに記載の衣類。
  8. 上半身用の肌着である請求項1~7のいずれかに記載の衣類。
  9. 下半身用の肌着である請求項1~7のいずれかに記載の衣類。
  10. 帯状物である請求項1~7のいずれかに記載の衣類。
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