JP2023112597A - 衣類、及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な、衣類を提供する。【解決手段】衣類1であって、衣類1は、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部2と、導電性部2同士の間に配される非導電性部3と、を表面にそれぞれ有し、少なくとも一組の導電性部2同士の間の距離が4~20mmであり、少なくとも一つの導電性部2は、非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部を有し、突出部は、導電性繊維を含み、突出部の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、かつ、導電性部2を含む部位の着圧が、5~40hPaである。【選択図】図1

Description

本発明は、衣類、及びその用途等に関する。
筋の活動状態に関する情報を取得するため、生理学的な生体電気信号の1種である、筋電位(EMG;Electromyogram)が活用されている。筋電位は、筋内に刺入する針電極により計測される針筋電位と、筋から体組織を介して生体表面にまで伝搬され、生体表面に設置した電極により計測される表面筋電位と、に大別される。このうち、表面筋電位は、侵襲性を伴わないため、産業的な応用が進んでいる。従来の主要な用途であった、筋神経系疾患の医学的評価に留まらず、アスリートの運動パフォーマンスの評価、及びリハビリテーションの介入効果の評価、並びに、筋電義肢装具の制御、及び遠隔操作ロボットの運動制御等にも、表面筋電位が活用され始めている。
表面筋電位を計測する方法として、例えば、下記の手法が知られている。まず、円板形状の電極を3枚用意する。このうち2枚の電極を、検出電極として、筋電位の計測対象となる筋の筋繊維走行方向に沿って、一定の間隔を隔てた配置となるように生体表面に貼付する。そして、残る1枚の電極を、基準電極として、上記2枚の検出電極の中点付近、又は筋活動の影響を受け難い生体の所定箇所の表面、に貼付する。そして、その上記基準電極と、それぞれの検出電極と、の電位差に基づいて、双極誘導法により、計測対象となる筋の筋電位を計測する。このような表面筋電位の計測方法においては、各電極と、生体表面と、の密着性を高めるため、各電極に、及び/又は生体表面の電極設置個所に、導電性を有する電解ペーストを塗布すること、また、電極の皮膚接触面に電解ペーストが予め保持された該電極を用いることが多い。
この点、各電極に電解ペーストを塗布する作業には手間が嵩む、という指摘がある(例えば、特許文献1参照)。そこで、特許文献1では、「タオル地の如き布製の電極支持部材の表面に、金属等の導電材料性からなる電極を複数個ずつ列設する」等の構成を備える、筋電位計測用電極装置が提案されている。特許文献1には、「電極支持部材が、着用者の皮膚表面の凹凸形状に追従させて変形するため、電極と皮膚との密着性を高く保持でき、これにより、電解ペーストを用いずとも生体電気信号が計測可能である」旨が記載されている。
また、導電性ゲル又は導電性クリームの使用は生体に不快感を与える、また、導電性ゲル又は導電性クリームは長期間の使用又は繰り返しの使用には不適切である、という指摘もある(例えば、特許文献1参照)。そこで、特許文献2では、「導電体を含有するゴムで形成されたゴム電極」等の構成を備える、生体電極装置が提案されている。特許文献2には、「ゴムが生体の輪郭に応じて変形するため、導電性ゲルまたは導電性クリームを用いずとも、生体への接触面積を安定して確保することができる」旨が記載されている。
特開2007-159722号公報 特開2019-136055号公報
しかしながら、特許文献1の装置では、一般的に硬い金属である電極を用いるため、皮膚との接触面に強い接触圧が局所的に生じ易く、着用者に圧迫感を与え、これにより着用者が不快感を抱く懸念があった。
また、特許文献2の装置では、ゴム電極は一般に金属電極と比べて比抵抗が大きいため、微弱な生体電気信号の検出が困難であった。また、金属電極と比べて柔らかいとは言えど、ゴム電極による、長時間に亘る生体への圧迫を考慮すると、着用者に圧迫感を与える懸念があった。
以上より、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な手段は、未だ明らかではなかった。
本発明が解決しようとする課題は、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を着用者に与えることなく、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な、衣類、及びその用途を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、かかる衣類に関する、筋電義手、筋電位計測システム、クロス、筋電位のセンシング性能の評価方法を提供することである。
本発明に係る実施形態の例は、以下のとおりである。
[1]
衣類であって、
前記衣類は、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部と、前記導電性部同士の間に配される非導電性部と、を表面にそれぞれ有し、
少なくとも一組の前記導電性部同士の間の距離が4~20mmであり、
少なくとも一つの前記導電性部は、前記非導電性部の平均高さよりも突出する突出部を有し、
前記突出部は、導電性繊維を含み、
前記突出部の平均高さと、前記非導電性部の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、かつ、前記導電性部を含む部位の着圧が、5~40hPaである、衣類。
[2]
前記導電性繊維の比抵抗が1000Ω・cm以下である、項目1に記載の衣類。
[3]
前記突出部は、前記導電性繊維がカットボス編みされた編地を備える、項目1又は2に記載の衣類。
[4]
前記突出部が、2ウェール以上連続したウェルト組織を含む編地を備える、項目1~3のいずれか1項に記載の衣類。
[5]
曲げ剛性が、0超0.200gf・cm/cm以下である、項目1~4のいずれか1項に記載の衣類。
[6]
前記2つ以上の導電性部の表面積が、それぞれ0.1cm~8.0cmである、項目1~5のいずれか1項に記載の衣類。
[7]
着用者の筋電位を計測することができる、項目1~6のいずれか1項に記載の衣類。
[8]
計測される筋電位に基づく信号を送信する無線装置を更に備える、項目7に記載の衣類。
[9]
着用者の腕、胸、胴、下半身から成る群より選択される少なくとも一つに適用可能である、項目1~8のいずれか1項に記載の衣類。
[10]
前記衣類は、大径開口及び小径開口を有する、筒型状又は袋型状に適用可能である、項目1~9のいずれか1項に記載の衣類。
[11]
アームカバー型である項目10に記載の衣類と、
前記衣類の前記小径開口側に配される他の衣類と、を備え、
前記他の衣類は、制御回路を有しており、前記衣類に対して物理的に着脱可能、かつ、
前記制御回路は、前記導電性部に対して電気的に接続可能である、筋電義手。
[12]
項目8~10のいずれか1項に記載の衣類と、外部機構と、を備え、
前記外部機構は、計測される筋電位に基づく信号を受信する受信装置を有し、前記信号に基づき筋電位を計測可能である、筋電位計測システム。
[13]
衣類として適用可能なクロスであって、
前記クロスは、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部と、前記導電性部同士の間に配される非導電性部と、を表面にそれぞれ有し、
少なくとも一組の前記導電性部同士の間の距離が4~20mmであり、
少なくとも一つの前記導電性部は、前記非導電性部の平均高さよりも突出する突出部を有し、
前記突出部は、導電性繊維を含み、
前記突出部の平均高さと、前記非導電性部の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、
前記導電性部を含む部位の着圧が、5~40hPaであるように、着用者に衣類として適用可能な、クロス。
[14]
衣類を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法であって、
前記衣類に配される、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部は、導電性繊維を含み、
前記2つ以上の導電性部のうち、
第1の前記導電性部を肘側、かつ、第2の前記導電性部を手首側に、電解ペーストを用いずそれぞれ接続したときに得られる筋電位に基づく値を、所定の閾値と比較する、
衣類を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法。
本発明によれば、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な、衣類、及びその用途を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる衣類に関する、筋電義手、筋電位計測システム、クロス、筋電位のセンシング性能の評価方法を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る衣類(アームカバー型)の、内観(裏返した状態の外観)の一例を示す模式図。 図2は、本実施形態に係る衣類における導電性部の一例を示す模式図。 図3は、本実施形態に係る衣類における導電性部の一例を示す模式図。 図4は、本実施形態に係る筋電義手の一例を示す模式図。
以下、本発明に係る実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。本実施形態において、「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の両端に記載された数値をその範囲内に含む。本実施形態において、段階的な記載の数値範囲における、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載における数値範囲の上限値又は下限値に置き換えることができる。本実施形態において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に記載の値に置き換えることもできる。本実施形態において、図面に示される各部の、縮尺、形状及び長さ等の構成は、明確性を更に図るため、誇張して描写されている場合がある。
[実施形態1]
[衣類]
〔概略構成〕
図1は、本実施形態に係る衣類1(アームカバー型)の、内観(裏返した状態の外観)の一例を示す模式図である。本実施形態は、衣類1であって、
該衣類1は、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部2と、導電性部2同士の間に配される非導電性部3と、を表面にそれぞれ有し、
少なくとも一組の導電性部2同士の間の距離が4~20mmであり、
少なくとも一つの導電性部2は、非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部を有し、
突出部の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、かつ、導電性部2を含む部位の着圧が、5~40hPaである。
本実施形態によれば、電解ペーストの量を低減できるため、電解ペーストによる不快感を低減できる。電解ペーストを不使用とする場合には、電解ペーストによる不快感を着用者に与えない、加えて、本実施形態によれば、電極による圧迫感をも低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。衣類1に関し、その用途、筋電義手、筋電位計測システム、クロス、筋電位のセンシング性能の評価方法が提供される。
一態様において、本実施形態は、皮膚に接触させて着用可能な衣類1であって、
該衣類1の皮膚接触面において、
非導電性部3と、
互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部2と、を含み、
導電性部2同士が最も近接する点間の距離が4~20mmであり、
2つ以上の導電性部2はいずれも、その少なくとも一部が非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部を有し、
突出部は、導電性繊維を含み、
突出部の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、かつ、導電性部2を含む部位の着圧が、5~40hPa。
かかる態様であっても、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。かかる態様の衣類1に関しても、その用途、筋電義手、筋電位計測システム、クロス、筋電位のセンシング性能の評価方法が提供される。
<形態>
衣類1は、皮膚に接触させて着用可能である。腕を含む部位に着用する形態でればアームカバー型、下半身に着用する形態であればタイツ型、胴及び胸に着用する形態であればシャツ型、の衣類が例示される。計測したい部位の皮膚に接触し、そして、その部位の筋を押圧できる形態であれば、特に制限されない。衣類1は、本発明の効果を阻害しない限り、各種のセンサデバイスを備えてよい。本明細書において、「衣類」は、上記で例示した、アームカバー型、タイツ型、シャツ型のような、開口に身体を通して着用する着用物だけでなく、身体に巻き付けて着用可能なクロス型の着用物も含まれる。クロス型の着用物としては、マフラー、サリー等が挙げられる。衣類1は、身体のいかなる部位にも適用できるが、好適に筋電信号を取得する観点から、着用者の腕、胸、胴、下半身から成る群より選択される少なくとも一つに適用可能であることが好ましい。
<着圧>
衣類1は、導電性部2を含む部位の着圧が5~40hPaである。すなわち、導電性部2を含む部位の着圧が5~40hPaとなるように衣類1を着用することが予定される。着圧を5hPa以上とすることで、皮膚と導電性部2との密着性を高め、明瞭な筋電信号ひいては明瞭な表面筋電位を計測することができる。また、着圧を40hPa以下とすることで、着圧増加による着用者の圧迫感を抑制することができる。上記と同様の観点から、着圧は、好ましくは10~30hPaである。着圧は、実施例に記載の手法に基づいて取得することができる。
<曲げ剛性>
衣類1は、その曲げ剛性が0超0.200gf・cm/cmであることが好ましい。曲げ剛性が0.200gf・cm/cm以下であることで、導電性部2を含む部位が、皮膚表面の複雑な凹凸形状に追従し易くなり、その結果、明瞭な筋電信号ひいては明瞭な表面筋電位を計測し易い。また、曲げ剛性が0.200gf・cm/cm以下である依頼は、適度に柔らかいため、着用者に圧迫感を与え難い。曲げ剛性は、実施例に記載の手法に基づいて取得することができる。
〔導電性部〕
<構成及び製造方法>
衣類1は、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部2を備える。導電性部2は、着用者の表面筋電位を計測するための電極として機能することができる。すなわち、導電性部2から得られる筋電信号に基づき、着用者の筋表面電位が計測可能である。衣類1は、筋表面電位を計測するための、任意の装置(制御回路及び外部装置等)を備えてよい。
導電性部2は、少なくとも、衣類1の皮膚接触面に配されることができる。例えば、導電性部2
は、衣類1における、一面側、及び/又は他面側に、露出して配されることができる。衣類1は、上記のとおり皮膚に接触させて着用可能であればよく、更に言えば、衣類1の使用時に、導電性部2が皮膚に接触する態様とされればよい。従って、導電性部2は、衣類1の皮膚接触面に配されたうえで、衣類の未使用時に、任意の保護層が配されてよい。かかる保護層は、衣類1の使用時に剥離され、これにより、導電性部2は、衣類1における、一面側、及び/又は他面側に露出する。導電性部2は、皮膚接触面以外の部分に配されてよい。2つ以上の各導電性部2の構成(形状、素材、及びサイズ等)、は同一でも異なってもよい。
<導電性繊維>
導電性部2は、繊維を含む。繊維は、金属電極に比べて柔らかく、そのため、皮膚に対する押圧が強くなり難い。一態様において、導電性部2は、導電性繊維を含む構成であり、また、導電性を有しない繊維(非導電性繊維)を含んでよい。導電性部2は、より具体的には、導電性繊維のみから成る構成、導電性繊維と非導電性繊維とのみから成る構成、等であることができる。導電性繊維と非導電性繊維とを含む構成である場合、導電性部2の構成は、例えば、
非導電性繊維から成る生地に、導電性繊維が皮膚接触面側に露出するように編み込まれている構成(図2);
非導電性繊維から成る生地に、導電性繊維を含むシート状構造物が積層されている構成(図3);等である。
上記シート状構造物としては、導電性繊維を含む繊維構造物が挙げられる。繊維構造物は、織物、編物、不織布等の布から成ることができる。導電性繊維を含む布から成る繊維構造物の、構成及び製造方法としては、
複数の給糸口を有する編機に、導電性繊維又は非導電性繊維を給糸することにより、導電性繊維と非導電性繊維とがボーダー状に配置された生地を編成する方法;
非導電性繊維からなる生地に導電性繊維を刺繍する方法;
非導電性繊維からなる生地に、導電性繊維から成る導電布(導電性繊維を含む布)を縫製する方法;
等が例示される。上記方法は、その工程の少なくとも一部又は全部を組み合わせてよい。風合いの観点から、編機を用いること、及び、導電性繊維を含む布から成る繊維構造物を得ること、が好ましい。
<比抵抗>
導電性繊維は、JIS C 2139により計測した比抵抗(体積抵抗率)が、1000Ω・cm以下であることが好ましい。これによれば、筋電信号を明瞭に計測し易い。比抵抗は、0超えでよい。比抵抗は、実施例に記載の手法に基づいて取得することができる。
上記の比抵抗を実現するための、導電性繊維の好ましい材料としては、金属繊維、金属被覆繊維、導電性ポリマー含有繊維、炭素繊維等が例示される。金属繊維及び金属被覆繊維における金属成分としては、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロム、鉄、銅、亜鉛、アルミ、タングステン、ステンレス、チタン、マグネシウム、錫、バナジウム、コバルト、モリブデン、タンタル等の金属;及びそれらの合金;等が好ましい。導電性繊維としては、金属被覆繊維が好ましく、なかでも、銀を主成分とする金属皮膜を化学繊維に形成した繊維が、導電性及び風合いの観点で好ましい。
銀を主成分とする金属皮膜を化学繊維に形成した繊維としては、ミツフジ株式会社製AG-POSS、日本新素材株式会社製シルベルン等が例示される。導電性ポリマー含有繊維の導電性ポリマーとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸(PEDOT-PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-パラトルエンスルホン酸(PEDOT-PTS)等が例示され、従って、これらを繊維表面に保持した、導電性繊維又は導電布が好ましい。炭素繊維としては、クラレトレーディング株式会社製クラカーボ等が例示され、特にカーボンナノチューブを紡糸した炭素繊維が、導電性及び風合いの観点で好適である。
<距離>
2つ以上の導電性部2同士が最も近接する点間の距離(例えば、最短距離)は、4~20mmである。距離が4mm以上であることで、その隣接する導電性部2で計測される電位が明確に異なるため、双極誘導法により、明瞭な表面筋電位を計測することができる。距離を20mm以下とすることで、導電性部2を小型化でき、これにより、生体の任意の筋上で計測することができる。距離は、衣類1の皮膚接触面において上記距離を満足すればよく、その他の部分において、導電性部2同士の距離は制限されない。
ここで、図1に示す衣類1は、大径開口1A及び小径開口1Bを有する、筒型状に適用可能である。そして、上記の距離が4~20mmである、少なくとも一組の導電性部2が、小径開口1Bよりも大径開口1Aに近い位置に配されている。これによれば、着用者の腕又は足に衣類1を着用し、その腕の付け根側又は足の付け根側において筋電信号を取得し易い。ただし、導電性部2は、衣類1における任意の箇所に配置可能であり、少なくとも一組の導電性部2が、小径開口1Bよりも大径開口1Aに遠い位置に配されてもよい。また、筒型状の衣類1が有する、複数の開口の径のそれぞれは、互いに同一であっても異なってもよい。なお、「筒型状に適用可能」は、すでに筒型状の構成を有している場合だけでなく、筒型状の構成を有していない着用物を着用者に巻き付けて筒形状にすることができる場合も含まれる。
図示しないものの、衣類は、袋型状に適用可能であってよい。袋型状の衣類は、上記の筒型状の衣類1において、少なくとも一つの開口を残し、それ以外の開口を閉じることで容易に得られる。残された開口は、着用者にとって、衣類の着用口となる。着用者は、着用口から手又は足を衣類に挿入することができ、すなわち、袋型状の衣類は、靴下又は手袋のように扱われることができる。上記のような筒型状に関する態様だけでなく、このような袋型状に関する態様も、本発明の範囲に含まれる。
図1に示す衣類1では、3つの導電性部2が、大径開口1A側及び小径開口1B側2を結ぶ線に沿って、等間隔に配されている。従って、図1に示す衣類1において、上記距離は、例えば、
大径開口1A側の導電性部2(第1の導電性部2)と、中央の導電性部2(第3の導電性部2)との間の距離;
中央の導電性部2(第3の導電性部2)と、小径開口1B側の導電性部2(第2の導電性部2)との間の距離;
に相当する。2つ以上の導電性部2のうち、50%以上、70%以上、又は100%が、上記距離の関係を満たすことが好ましい。
<導電性部の表面積>
導電性部2の表面積は、それぞれ0.1~8.0cmであることが好ましい。表面積が0.1cm以上であることで、導電性部2と皮膚との接触面が増えるため、S/N比(signal-noise ratio)が改善され易く、これにより、明瞭に表面筋電図を計測し易い。表面積が8.0cm以下であることで、導電性部2を小型化し易く、これにより、生体の任意の筋上で計測し易い。導電性部2の表面積は、実施例に記載の手法に基づいて取得することができる。
<突出部>
少なくとも一つの導電性部2は、非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部を有する。一態様において、2つ以上の導電性部2はいずれも、その少なくとも一部が非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部を有する。これによれば、突出部において筋電信号を明瞭に計測することができる。
突出部は、上記の導電性繊維を含んでよい。突出部(図2及び図3に示す突出部4)は、図2に例示するように、導電性部2の一部分が非導電性部3から突出するように構成されてよく、また、図3に例示するように、導電性部2の全面が非導電性部3から突出するように構成されてよい。また、一つの導電性部2が、複数の突出部4を有してよい。
突出部4が突出する方向は、衣類1における、皮膚に接触する側の方向である。かかる方向は、衣類1の厚み方向に相当する。そのため、非導電性繊維からなる生地を用いて衣類1が構成される場合、非導電性部3の平均高さは、衣類1の平均厚さに相当し得る。非導電性部3の平均高さは、突出部4の平均高さの測定対象である導電性部2の近傍において取得されることが好ましい。突出部4の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、は実施例に記載の手法に基づいて取得することができる。突出部4の平均高さは、上記距離を満たす導電性部2を対象に測定される。
突出部4は、
導電性繊維を含む、カットボス編み又はパイル織物を含む構成;
導電性材料が接着又は縫着された構成;
導電性材料によるエンボス加工が施された構成;
等の構成が挙げられ、なかでも、導電性繊維を含むカットボス編みされた編地を備えることが好ましい。
導電性繊維は、2ウェール以上連続したウェルト組織を含むことが好ましく、4ウェール以上連続したウェルト組織を含むことがより好ましい。2ウェール以上連続したウェルト組織を含むことで、衣類1の皮膚接触面側に向かって導電性繊維のループが突出した構造を実現し易く、これにより、皮膚と導電性部2の密着性を高め易くなり、その結果、明瞭な表面筋電位を計測し易くなる。導電性繊維は、20ウェール以下の連続したウェルト組織を含んでよい。
<高さの差>
突出部4の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、の差(図2及び図3で示す符号5であり、以下、「高さの差」ともいう。)は0.1~5.0mmである。高さの差を0.1mm以上とすることで、皮膚と導電性部2との密着性を高め、これにより、明瞭な筋電信号をひいては明瞭な表面筋電位を計測することができる。高さの差を5.0mm以下とすることで、突出部4による局所的な接触圧の増加を回避でき、着用者への圧迫感を抑制することができる。突出部4が変形し易い素材(繊維等)で構成される場合、高さの差を5.0mm以下とすることで、突出部4が変形することを防止でき、これにより、隣接する導電性部2同士が電気的に接触すること、ひいてはそれによりショートすること、を防ぎ易くなる。明瞭な表面筋電位を計測し、かつ、着用者への圧迫感を抑制する観点から、高さの差は、0.2mm以上、又は0.5mm以上、また、4.0mm以下、又は3.0mm以下であることが好ましい。高さの差は、各突出部4で同一でもよく異なってもよい。
<非導電性部>
非導電性部3は、導電性を有しない部分であり、一態様において、2つ以上の導電性部2同士の間に配される。具体的に、非導電性部3は、上記距離を満たす2つ以上の導電性部2同士の間に配されてよい。非導電性部3は、非導電性材料から成る構成を採用でき、その構成(形状、素材、及びサイズ等)は限定されないが、衣服への加工のし易さの観点から、繊維であることが好ましく、編地であることがより好ましい。
非導電性材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、セルロース系樹脂等の素材を用いることができる。非導電性材料として繊維を用いる場合、フィラメント糸又は紡績糸のいずれでもよい。
非導電性材料は、フィラメント糸の場合、モノフィラメントとマルチフィラメントとのいずれでもよいが、マルチフィラメントの方が、風合いが良いため好ましい。フィラメント糸の素材としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、塩化ビニル系繊維等の、化学合成繊維から成るものを用いることが好ましく、他方、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の、再生セルロース繊維を用いてもよい。フィラメント糸の形態は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸等のいずれでもよい。フィラメント糸における繊維の断面形状は、○型状、△型状、十字型状、W型状、M型状、C型状、I型状、ドッグボーン型状、中空糸型状等、いずれでもよい。
非導電性材料は、紡績糸の場合、木綿、羊毛、麻等の天然繊維、上記の化学合成繊維による短繊維、再生セルロース繊維による短繊維が単独又は混合して紡績されたものでよい。混紡方法は、特に限定されないが、ピリングの発生がし難いMVS(Murata Vortex Spinner)方式で得られる紡績糸が好ましい。
導電性繊維を含むカットボス編みの突出部4は、例えば、以下の工程により得ることができる。すなわち、カットボス編みが可能な、靴下編機又はパンスト編機等の編機を用いて、非導電性繊維により非導電性部3を、導電性繊維のカットボス編みにより導電性部2及び突出部4を、一工程で作製することができる。
<伝送設計>
伝送設計は、電気信号及び/又は制御情報を送信するための、有線又は無線による機構である。一態様において、導電性部2は、計測された表面筋電位を外部に送信するための導線(ケーブルオ及びプリント配線等)が接続されてよい。導線の種類は限定されないが、外部からの雑音の混入を防止する観点で、同軸ケーブルが好ましい。
導電性部2と導線との接続方法としては、はんだ、及び導電性接着剤等を用いて接着する方法、かしめ具を用いて圧着する方法、等が例示され、耐久性に優れるという観点で、かしめ具を用いて圧着する方法が好ましい。
導線を通して送信される信号は、通常、増幅器等を介して電圧が増幅され、制御上、筋電位波形が検出される。このとき、筋電位波形には種々の雑音が混入しているため、任意のデジタルフィルタ又はアナログフィルタを用いて、雑音をキャンセル又は低減する処理を行ってよい。小型の電源、及び小型の筋電計測用IC、並びに導線を衣類1に取り付け、各導電性部2で計測した表面筋電位を増幅した後、又は、増幅後に表面筋電位をデジタル信号に変換した後に、導線を通じて送信してよい。衣類1は、計測される表面筋電位に基づく信号を発信する無線装置を備えることで、計測される表面筋電位を無線データとして外部に送信することができる。
筋電位波形から把握される筋活動状態を取得するための指標としては、整流化平均値(ARV:Average Rectified Value)、RMS値(Root Mean Square Value)、積分値、平均周波数(MPF:Mean Power Frequency)、メジアン周波数(Median Frequency)等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の指標を用いてよい。これら指標は、そのまま用いられてよく、適宜補正されたうえで、また、該指標に相関する値に適宜置き換えられたうえで、制御に用いられてよい。
[筋電義手]
本実施形態に係る筋電義手6は、
アームカバー型である上記の衣類1と、
衣類1の小径開口1B側に配される他の衣類7と、を備え、
他の衣類7は、制御回路を有しており、衣類1に対して物理的に着脱可能、かつ、
制御回路は、導電性部2に対して電気的に接続可能である
本実施形態によれば、上記衣類1を用いて筋電義手6を提供でき、そして、かかる筋電義手6では、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。
一態様において、本実施形態に係る筋電義手6は、
アームカバー型の上記衣類1と、制御回路を含む他の衣類(ハンド部7)と、を備え、
導電性部2と、ハンド部7と、が電気的に接続されている。
かかる態様であっても、上記衣類1を用いて筋電義手6を提供でき、そして、かかる筋電義手6では、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。
別の一態様において、本実施形態に係る筋電義手6は、
アームカバー型の上記衣類1と、
電源、駆動部、及び制御回路を含むハンド部7と、を備え、
導電性部2と、ハンド部7と、が電気的に接続されている。
かかる態様であっても、上記衣類1を用いて筋電義手6を提供でき、そして、かかる筋電義手6では、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。
筋電義手6の一例を、図4を参照しつつ説明する。衣類1及びハンド部7は、物理的に着脱可能である。衣類1からハンド部7を取り外せるように、接続部8にて、面ファスナー、ボタン、ベルト、紐等のコネクタにより、接続/未接続を可逆的に切り替えることができる。このような構成によれば、電源及び制御回路を含むハンド部7とは別に、衣類1を取り外してそれを洗濯に供することができるため、衛生面に優れる。特に、導電性部2が、洗浄可能な繊維である場合には、その導電性部2を含めて衣類1を丸洗いできる。
前腕部又は上腕部に、通気性の低いソケットを密着させて着用者に装着させ、その上に義手を装着する構成である場合、蒸れ易い、着用者が不快感を抱き易い、衛生面の手入れが煩雑である、等の課題が想定される。本実施形態に係る筋電義手は、かかる構成の場合に想定される課題をも解決することができる。
ハンド部7は、着用者の手首及びそれより末端側の形状に合わせて裁縫されて成る。ハンド部7は、手袋形状を有する。ハンド部7は、他の衣類を用いて作製される。他の衣類は、制御回路を有しており、導電性部2に対して電気的に接続可能である。他の衣類の素材は、上記衣類1の素材と同一でもよく異なってもよい。
ハンド部7が備える電源は、既知の構成を備え、ハンド部7が備える制御回路は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されてよい。ハンド部7が備える駆動部は、電源及び制御回路以外の部分であって、各種の電気信号及び制御信号によって駆動する部分を言う。
[筋電位計測システム]
本実施形態に係る筋電位計測システムは、
上記衣類1と、外部機構と、を備え、
外部機構は、計測される筋電位に基づく信号を受信する受信装置を有し、その信号に基づき筋電位を計測可能である。
本実施形態によれば、上記衣類1を用いて筋電位計測システムを提供でき、そして、かかる筋電位計測システムでは、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能である。
外部機構において、受信装置は、例えば無線により、筋電位に基づく信号を受信することができる。外部機構において、受信装置と、基づき筋電位を計測するための装置と、は一体とされてもよく、別体とされてもよい。外部機構の構成要素として、携帯端末が挙げられる。携帯端末としては、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、ノートPC等でよい。外部機構の構成要素の、少なくとも一部が、クラウド上に配されてもよい。
また、外部機構の構成要素としては、ロボットアーム、仮想空間を構築するコンピュータ等も挙げられる。上記システムでは、現実の人間の動作を、ロボット及び仮想空間にて再現することができるため、人間拡張技術に貢献することができる。
[他の実施形態]
以上、本実施形態について説明した。本発明は、上記の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、衣類1を用いた筋電義手6(左手用)の例を説明した。他方、衣類1を用いて筋電義手6(右手用)を構成してもよく、筋電義足を構成してもよい。筋電義足が構成される場合、ハンド部は、フット部に代替される。フット部は、着用者の足首及びそれより末端側の形状に合わせて裁縫されて成る。
図2に示す、導電性繊維が皮膚接触面側に露出するように編み込まれている構成と、図3に示す、導電性繊維を含むシート状構造物が積層されている構成と、は互いに組み合わせて用いられてよい。
衣類は、筒型状等に適用するときに利用される、縮径機構又は拡径機構を有してよい。衣類を筒型状等に適用するときの開口の径を、縮径又は拡径できれば、着用者の体格、着用場所等の制限を受け難い。縮径機構又は拡径機構は、例えば、
面ファスナー同士の接着による縮径、若しくは、面ファスナーの解除による拡径;
一又は複数のボタンを締めることによる縮径、若しくは、ボタンの解除による拡径;
ベルトを締めることによる縮径、若しくは、ベルトの解除による拡径;
等を用いて構成可能である。衣類の一部にトンネル型の通路を配し、かかる通路内に紐を連通させ、縮径時には紐を引っ張り、拡径時にはその紐を解除するようにしてもよい。ここでの「拡径」は、縮径した経から元の径に戻る意味も含まれる。
本実施形態の他の形態は、衣類として適用可能なクロスであって、
クロスは、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部2と、導電性部2同士の間に配される非導電性部3と、を表面にそれぞれ有し、
少なくとも一組の導電性部2同士の間の距離が4~20mmであり、
少なくとも一つの導電性部2は、非導電性部3の平均高さよりも突出する突出部4を有し、
突出部4は、導電性繊維を含み、
突出部4の平均高さと、非導電性部3の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、
導電性部2を含む部位の着圧が、5~40hPaであるように、着用者に衣類1として適用可能な、クロスである。
かかる実施形態によれば、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な、衣類1を提供することができる。かかるクロスを含めて、本実施形態の衣類は、着用者への着圧を調整するための、着圧調整機構を有してよい。着圧調整機構としては、例えば、上記の縮径機構又は拡径機構で例示した構成と同趣旨の構成を採用することができる。着圧調整機構によって、着用者への着圧を調整すること、及び、所定の着圧で保持すること、等が容易となる。例えば、着用者にクロスを強く巻き付け、その状態を着圧調整機構によって維持することで、比較的高めの着圧を維持することができ、逆に、着用者にクロスを緩く巻き付け、その状態を着圧調整機構によって維持することで、比較的低めの着圧を維持することができる。着圧調整機構として例示した、面ファスナー、ボタン、ベルト、及び紐等による拘束力を調整することで、着圧を容易に調整することができる。
本実施形態の更に他の形態は、衣類1を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法であって、
衣類1に配される、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部は、導電性繊維を含み、
2つ以上の導電性部のうち、
第1の導電性部2を肘側、かつ、第2の導電性部2を手首側に、電解ペーストを用いずそれぞれ接続したときに得られる筋電位に基づく値を、所定の閾値と比較する、
衣類1を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法である。
かかる実施形態によれば、電解ペーストによる不快感、かつ、電極による圧迫感を低減でき、その上、筋電信号を明瞭に計測可能な、筋電位のセンシング性能の評価方法を提供することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に説明する。
(1)突出部の非導電性部に対する高さ
4cm×4cmのサイズを有する部分であって、かつ、導電性部を含む部分を、衣類から切り出し、これを試料とした。キーエンス社製デジタルマイクロスコープVR-3200を用いて、試料における導電性部の、皮膚接触面の画像を撮影した。なお、撮影条件は、倍率12倍を採用した。導電性部、及び非導電性部を含む撮影画像から、突出部の平均高さ、及び非導電性部の平均高さをそれぞれ求め、「突出部の平均高さ/非導電性部に対する高さ」の算出値を、上記「突出部の非導電性部に対する高さ」として採用した。
「突出部における平均高さ」とは、図2のような、突出構造の集合体の場合は、各突出構造の最高点の平均の高さを、図3のような、連続した面からなる突出構造の場合は、該連続した面の平均の高さを意味する。
(2)導電性部を含む部位の着圧
店研創意社製全身腰受けリアルマネキン(紳士)の左腕における、総指伸筋に相当する部分(総指伸筋相当部,周径24.5cm)に導電性部が接するよう、該左腕にアームカバー型の衣類を着用させた。次いで、エイエムアイ・テクノ社製接触圧測定器AMI3037-2を用いて、導電性部を含む部位の着圧を測定した。衣類を脱がせ、再び着用させた後に上記と同様に着圧を測定する作業を、上記を含めて計5回繰り返し、その平均値を、上記「導電性部を含む部位の着圧」として採用した。
(3)曲げ剛性
アームカバー型の衣類から20cm×20cmのサイズで切り出した試料を、カトーテック社製KES-FB2-AUTO-Aを用いて、下記条件;
SENS:2×1、
曲げ剛性:B K=0.5~1.5c-1
ヒステリシス:2HB K=1.0c-1
のもと、曲げ剛性を3回測定し、その平均値を、上記「曲げ剛性」として採用した。
(4)導電性部の表面積
上記(1)と同様、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVR-3200を用いて、試料における導電性部の、皮膚接触面の画像を撮影した。なお、撮影条件は、倍率12倍を採用した。撮影された導電性部の表面積を計3回測定し、その平均値を、上記「導電性部の表面積」として採用した。
(5)着用時の快適性
被験者10名に試料を、7時間に亘って着用し続けてもらった。その後、快適性に関する主観評価を以下の基準で実施し、その平均値を、上記「快適性(着用時の快適性)」として採用した。下記基準で、3以上(3、4又は5)を合格として扱った。
5 : 圧迫感が全くなく、非常に快適である。
4 : 圧迫感が殆どなく、かなり快適である。
3 : 多少の圧迫感があるが、快適である。
2 : 圧迫感があり、かなり不快である。
1 : 圧迫感がかなりあり、非常に不快である。
(6)筋電信号の明瞭さ(手首動作時の筋電のRMS値)
上記(2)と同様、左腕にアームカバー型の衣類を着用させた。そして、筋電計(インタークロス社製のintercross-415)の正極を、衣類にある3つの導電性部のうち肘側に配される該導電性部に、負極を、手首側に配される導電性部に、アースを、中央に配される導電性部に、それぞれ接続した。手首の掌屈・背屈動作の1セットを1回として、かかる動作を10回行ったときの筋電を計測した。10回の掌屈・背屈動作を行ったときの筋電の波形を解析し、得られたRMS(Root Mean Square)値を、筋電のセンシング性能、すなわち、上記「筋電信号の明瞭さ」として採用した。
下記の略称「SCY1」及び「SCY2」は、以下のとおりに理解される。
SCY1:ポリウレタン弾性糸である「RоicaBZCF44T」を「ナイロン78T/68f」で被覆した、S撚り(右撚り)のシングルカバリングヤーン。
SCY2:ポリウレタン弾性糸である「RоicaBZCF44T」を「ナイロン78T/68f」で被覆した、Z撚り(左撚り)のシングルカバリングヤーン。
[実施例1]
LONATI社製パンスト編み機「LB41TV」(釜径4.0インチ、針本数352本)を用いて、肘から手首を覆う部分を、1F-1及び3F-1にSCY1を採用し、2F-1及び4F-1にSCY2を採用して、いずれも天竺組織(天竺編み)でアームカバーを編成した。なお、肘から手首に編成する途中、1F-6、2F-6、3F-6、4F-6における、総指伸筋相当部に接触する位置に、導電性部を3つ作製した。導電性部は、導電性繊維である、日本新素材社製の銀イオンメッキ繊維;シルベルンZAG140Dを用いて、表2の組織Aに示されるカットボス編みにより作製した。なお、後加工後の導電性部のサイズがウェール方向0.5cm×コース方向2.5cm、かつ、後加工後の導電性部同士の間隔がウェール方向6mmとなるように、上記導電性部を作製した。その後、編成したアームカバーに対して、精錬加工、及び染色加工を施し、筋電位計測用衣類を得た。なお、上記の「○F-△」という表記において、「○」は、編機における給糸口の番号を示し、「△」は、給糸口における糸道の番号を意味する。
[実施例2]
導電性繊維のシンカーループをより引き出す事で、皮膚接触面における導電性部の高さを高くした以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[実施例3]
導電性繊維を、より比抵抗の大きい炭素複合繊維140Dに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[実施例4]
導電性繊維によるカットボス編みを行わない以外は、実施例1と同様の方法で非導電性部のみからなるアームカバーを作製した。加えて、導電性繊維として、日本新素材社製の銀イオンメッキ繊維;シルベルンZAG140Dを用いて、丸編み機で表2の組織Bの天竺組織の編地を作製し、導電性編地を得た。アームカバーの総指伸筋該当部にウェール方向0.5cm×コース方向2.5cmに切り出した導電性編地を、コース方向に5mmの間隔で3つ縫着し、導電性部を形成した。その後、精錬加工、染色加工をした後に、筋電位計測用衣類を得た。
[実施例5]
表2の組織Cに示されるカットボス編みに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[実施例6]
1F-1及び3F-1に採用したSCY1と、2F-1及び4F-1に採用したSCY2と、の度目を、実施例1と比べて詰めた以外は、実施例1と同様の方法により筋電位計測用衣類を得た。
[比較例1]
導電性繊維として、より繊度の低い導電性繊維(日本新素材社製の銀イオンメッキ繊維;シルベルンZAG70D)に変更した以外は、実施例4と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[比較例2]
1F-1及び3F-1に採用したSCY1と、2F-1及び4F-1に採用したSCY2と、の度目を、実施例1と比べて粗くする以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[比較例3]
導電性繊維のシンカーループを、実施例2と比べて引き出した、すなわち、皮膚接触面における導電性部の高さを、実施例2と比べて高くした以外は、実施例2と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。本比較例の衣類では、電極同士がショートしたため、筋電を検出することができなかった。
[比較例4]
1F-1及び3F-1に採用したSCY1と、2F-1及び4F-1に採用したSCY2と、の度目を実施例6と比べて詰めた以外は、実施例6と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。
[比較例5]
後加工後の導電性部同士の間隔がウェール方向2mmとなるように導電性部を作製した以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。本比較例の衣類では、筋電を検出することができなかった。
[比較例6]
後加工後の導電性部同士の間隔がウェール方向23mmとなるように導電性部を作製した以外は、実施例1と同様の方法により、筋電位計測用衣類を得た。本比較例の衣類では、測定対象以外に由来する筋電のノイズが入ったため、筋電を明瞭に測定することができなかった。
実施例及び比較例に関する結果を、下表に示す。また、実施例及び比較例で用いた組織(編み組織)を、下表し示す。表中、Kはニット、Wはウェルトを示す。
Figure 2023112597000002
Figure 2023112597000003
本発明は、筋電信号が明瞭に計測可能であり、かつ、着用者に圧迫感を感じさせ難くする衣類であるため、筋電センサとして好適に利用可能であり、筋電義手、ロボットアーム等の遠隔操作システムへの応用が可能である。
1 :衣類
2 :導電性部
3 :非導電性部
4 :突出部
5 :高さの差(突出部の平均高さと、非導電性部の平均高さと、の差)
6 :筋電義手
7 :他の衣類(ハンド部)
8 :接続部

Claims (14)

  1. 衣類であって、
    前記衣類は、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部と、前記導電性部同士の間に配される非導電性部と、を表面にそれぞれ有し、
    少なくとも一組の前記導電性部同士の間の距離が4~20mmであり、
    少なくとも一つの前記導電性部は、前記非導電性部の平均高さよりも突出する突出部を有し、
    前記突出部は、導電性繊維を含み、
    前記突出部の平均高さと、前記非導電性部の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、かつ、前記導電性部を含む部位の着圧が、5~40hPaである、衣類。
  2. 前記導電性繊維の比抵抗が1000Ω・cm以下である、請求項1に記載の衣類。
  3. 前記突出部は、前記導電性繊維がカットボス編みされた編地を備える、請求項1又は2に記載の衣類。
  4. 前記突出部が、2ウェール以上連続したウェルト組織を含む編地を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の衣類。
  5. 曲げ剛性が、0超0.200gf・cm/cm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の衣類。
  6. 前記2つ以上の導電性部の表面積が、それぞれ0.1cm~8.0cmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の衣類。
  7. 着用者の筋電位を計測することができる、請求項1~6のいずれか1項に記載の衣類。
  8. 計測される筋電位に基づく信号を送信する無線装置を更に備える、請求項7に記載の衣類。
  9. 着用者の腕、胸、胴、下半身から成る群より選択される少なくとも一つに適用可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の衣類。
  10. 前記衣類は、大径開口及び小径開口を有する、筒型状又は袋型状に適用可能である、請求項1~9のいずれか1項に記載の衣類。
  11. アームカバー型である請求項10に記載の衣類と、
    前記衣類の前記小径開口側に配される他の衣類と、を備え、
    前記他の衣類は、制御回路を有しており、前記衣類に対して物理的に着脱可能、かつ、
    前記制御回路は、前記導電性部に対して電気的に接続可能である、筋電義手。
  12. 請求項8~10のいずれか1項に記載の衣類と、外部機構と、を備え、
    前記外部機構は、計測される筋電位に基づく信号を受信する受信装置を有し、前記信号に基づき筋電位を計測可能である、筋電位計測システム。
  13. 衣類として適用可能なクロスであって、
    前記クロスは、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部と、前記導電性部同士の間に配される非導電性部と、を表面にそれぞれ有し、
    少なくとも一組の前記導電性部同士の間の距離が4~20mmであり、
    少なくとも一つの前記導電性部は、前記非導電性部の平均高さよりも突出する突出部を有し、
    前記突出部は、導電性繊維を含み、
    前記突出部の平均高さと、前記非導電性部の平均高さと、の差が0.1~5.0mmであり、
    前記導電性部を含む部位の着圧が、5~40hPaであるように、着用者に衣類として適用可能な、クロス。
  14. 衣類を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法であって、
    前記衣類に配される、互いに電気的に絶縁される2つ以上の導電性部は、導電性繊維を含み、
    前記2つ以上の導電性部のうち、
    第1の前記導電性部を肘側、かつ、第2の前記導電性部を手首側に、電解ペーストを用いずそれぞれ接続したときに得られる筋電位に基づく値を、所定の閾値と比較する、
    衣類を用いた、筋電位のセンシング性能の評価方法。
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