JP2020130910A - 衣類 - Google Patents

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【課題】激しい運動を行っても生体情報を安定的に精度良く計測できる生体情報計測用衣類を提供する。【解決手段】生地と、上記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、上記生地は、多層構造の織編物であり、上記生地の肌側面のうち50cm2以上は上記電極に覆われておらず露出しており、上記生地の肌側面は、単糸繊度:0.1〜3.0dtexの単糸Aが主に配置され、上記生地の肌側面とは反対側の表面は、単糸繊度:1.0〜5.0dtexの単糸Bが主に配置され、且つ、上記単糸Bの単糸繊度の上記単糸Aの単糸繊度に対する比は1.3〜20.0である衣類。【選択図】なし

Description

本発明は、電極が形成されている衣類に関し、詳細には、着用者の生体情報を検出するための生体情報測定用の電極が形成されている衣類に関する。具体的には、着用者の肌に直接接触する電極、または近接的非接触に生体情報を取得できるセンサーの検知端となる電極を有する生体情報測定用の衣類に関する。
近年、ヘルスモニタリング分野や医療分野、療育分野、リハビリテーション分野において、ウェアラブル生体情報計測装置(センシングウェア)が注目されている。ウェアラブル生体情報計測装置とは、生体情報計測装置が、例えばベルト、ストラップなどに設けられており、これらを着用することによって心電図などの生体情報を簡便に計測できる装置である。生体情報計測装置としては、例えば、着用者の肌に接触する生体情報計測用の電極が形成されているものが知られている。
衣類型のウェアラブル生体情報計測装置の場合は、例えば、織物や編物で構成される身頃生地に電極が設けられており、この衣類を着用して日常生活を過ごすことによって、日常の様々な状況における心拍の変動等の生体情報を簡便に計測できる。
ウェアラブル生体情報計測装置における生体情報の計測精度を高めるには、電極の測定面と身体とを密着させる必要がある。そのため、衣類型のウェアラブル生体情報計測装置の場合は、衣類本体としてコンプレッションウェアのような上半身を強く締め付けるものが用いられており、この締め付けによって電極の測定面と身体とを密着させていた。このようにコンプレッションウェアに生体情報計測装置を設けた場合でも、電極から生体情報を安定的に精度良く計測することは難しかった。特に被測定者がウォーキングやジョギング、ランニングなどの運動を行うと、被測定者の動作によっては電極の測定面と身体とが充分に密着していない状態になることがあり、生体情報を計測できないことがあった。
これまでに種々の生体電極が知られており、例えば本発明者らは特許文献1において、生体情報を最も安定的に計測できる測定位置を特定し、密着性の高いフレキシブル電極を取り付けたセンシングウェアを提案した。
その他に特許文献2では、電極の密着性の向上のために凹凸形状を有する凹凸層と電極層とを積層した積層体からなる生体電極が開示されている。また特許文献3では、繊維編地により構成された電極層を備え、その繊維編地の表面における水接触角が85°以下である生体電極が開示されている。
特開2017−29692号公報 特開2018−102404号公報 特開2018−42720号公報
従来では、特許文献1、2のように電極の密着性を向上させてノイズを低減したり、特許文献3のように編地表面における水接触角を制御したりすることにより、生体情報の測定精度を向上させる試みがなされているが、激しい運動を行う際の測定精度の向上が求められている。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、激しい運動を行っても生体情報を安定的に精度良く計測できる生体情報計測用衣類を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る衣類は、以下の構成からなる。
[1]生地と、上記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、
上記生地は、多層構造の織編物であり、
上記生地の肌側面のうち50cm以上は上記電極に覆われておらず露出しており、
上記生地の肌側面は、単糸繊度:0.1〜3.0dtexの単糸Aが主に配置され、
上記生地の肌側面とは反対側の表面は、単糸繊度:1.0〜5.0dtexの単糸Bが主に配置され、且つ、
上記単糸Bの単糸繊度の上記単糸Aの単糸繊度に対する比は1.3〜20.0であることを特徴とする衣類。
[2]上記生地は編物であり、上記生地の完全組織において、
上記生地の肌側面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが糸Aにより構成されており、
上記生地の肌側面とは反対側の表面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが糸Bにより構成されており、
上記糸Aは、上記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Aであり、
上記糸Bは、上記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Bである[1]に記載の衣類。
[3]上記編物は丸編により構成されたものであり、
上記生地の肌側面を形成するループは、タックループを含まずニットループのみである[2]に記載の衣類。
[4]上記生地は、緯二重織、又は経二重織であり、上記生地の完全組織において、
上記生地の肌側面における織組織上の糸Aの出現割合が50%以上であり、
上記生地の肌側面とは反対側の表面における織組織上の糸Bの出現割合が50%以上であり、
上記糸Aは、上記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Aであり、
上記糸Bは、上記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Bである[1]に記載の衣類。
[5]上記生地の肌側面は、朱子織、又は綾織により形成されている[1]または[4]に記載の衣類。
[6]上記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる密着力が2gf以上、60gf以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の衣類。
[密着力の測定方法]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.2mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。
[7]上記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる最大密着力が20gf以上、60gf以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の衣類。
[最大密着力の測定方法]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.1mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、上記圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。その後、水0.1mlを滴下して密着力を測定する操作を、水滴下量の合計が1.0mlに至るまで繰り返し、水を1.0ml滴下するまでの間の最大の密着力を最大密着力とする。
[8]上記糸Bは、撥水性を有するものである[1]〜[7]のいずれかに記載の衣類。
[9]上記電極は、導電フィラーとエラストマーを含む[1]〜[8]のいずれかに記載の衣類。
[10]上記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うものである[1]〜[9]のいずれかに記載の衣類。
従来の生体に接触するタイプの電極では、電極と肌表面とのズレによってノイズが生じ、信号品質が劣化することが多かった。このようなズレは、着用者の運動に伴って衣類が引っ張られること等により生じていた。一方、本発明の衣類は、上記構成により生地の肌側面に汗を溜めておき、その汗の表面張力を利用することによって生地を肌に密着させることができる。その結果、激しい運動を行っても生地がずれ難くなり、生地のずれに伴う電極のずれや剥離を防止し易くすることができる。即ち、本発明の衣類は、上記構成により着用者の汗を利用して肌と電極との密着性を維持し易くすることができるため、激しい運動を行っても生体情報を安定的に精度良く計測することができる。
図1は、メッシュリバース組織の編物の組織図である。 図2は、モックミラノリブ組織の編物の組織図である。 図3(a)は、タブ付きTシャツの正面図である。(b)は、タブ付きTシャツの背面図である。 図4は、袋綴じ構造の電極支持部の斜視図である。 (a)は、緯二重織の完全組織の組織図の一例である。(b)は、(a)の緯二重織の肌側面から見た組織図である。(c)は、(a)の緯二重織の表面から見た組織図である。
本発明の衣類は、生地と、上記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、上記生地は、多層構造の織編物であり、上記生地の肌側面のうち50cm以上は上記電極に覆われておらず露出しており、上記生地の肌側面は、単糸繊度:0.1〜3.0dtexの単糸Aが主に配置され、上記生地の肌側面とは反対側の表面は、単糸繊度:1.0〜5.0dtexの単糸Bが主に配置され、且つ、上記単糸Bの単糸繊度の上記単糸Aの単糸繊度に対する比は1.3〜20.0である。
上記衣類は、生地と、生地の肌側面側に形成されている電極とを備えるものである。電極の電極面が、着用者の肌に直接接触することによって、身体からの電気信号を測定でき、生体情報を計測できる。生体情報としては、電極で取得した電気信号を電子ユニットで演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの身体の情報が得られる。即ち、上記衣類は、生体情報測定ウエアとして用いることができる。
上記電極としては、心電図を測定できる電極が好ましい。心電図とは、心臓の動きによる電気的な変化を、生体表面の電極を介して検出し、波形として記録された情報を意味する。心電図は、一般的には、横軸に時間、縦軸に電位差をプロットした波形として記録される。心拍1回ごとに心電図に現れる波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在する。また、Q波の始めからS波の終わりまでは、QRS波と呼ばれることがある。
このうち、少なくともR波を検知できる電極が好ましい。R波は、左右両心室の興奮を示し、電位差が最も大きい波である。R波を検知できる電極を設けることにより、心拍数も計測できる。即ち、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間は、一般に、RR間隔(秒)と呼ばれ、1分間当たりの心拍数は、下記式に基づいて算出できる。なお、本明細書においては、特に注釈のない限り、QRS波もR波に含まれる。
心拍数(回/分)=60/RR間隔
上記電極の具体的な構成については、後で詳述する。
上記生地は、多層構造の織編物である。織編物とは、織物または編物を意味する。多層構造の織編物は、一枚の生地中に少なくとも表層と裏層の2層以上の構造をもつ織編物が挙げられる。多層構造の編物としては、後述するように両面にニットループを有するものが挙げられ、丸編であればフライス編機や両面編機等で編まれたダブルニットが挙げられ、経編であれば二枚以上の筬で編まれたものが挙げられる。織物であれば、二重織以上の重ね織したものが挙げられる。このような多層構造の各層における汗の保持性能に差をもたせ、上記生地の肌側面に汗を集中させて、その汗の表面張力を利用することにより、密着性を向上させてノイズを低減し易くすることができる。具体的には、上記生地の肌側面側に単糸繊度が小さい単糸Aを主に配置し、生地の肌側面とは反対側の表面に単糸繊度が大きい単糸Bを主に配置することにより、肌側の汗の保持性能を向上し易くすることができ、その結果、密着力を向上し易くすることができる。
上記記生地の肌側面のうち50cm以上は電極に覆われておらず露出している。これにより電極のずれや剥離を防止し易くすることができる。上記生地の肌側面の露出面積は、好ましくは100cm以上、より好ましくは200cm以上、更に好ましくは400cm以上である。一方、上記生地の肌側面の露出面積の上限は、例えば4000cm以下であってもよく、2000cm以下であってもよく、1000cm以下であってもよい。
上記生地の肌側面は、単糸繊度:0.1〜3.0dtexの単糸Aが主に配置されている。上記肌側面に主に配置されている単糸Aの単糸繊度が3.0dtex以下であることにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。そのため、単糸Aの単糸繊度は、好ましくは2.0dtex以下、より好ましくは1.5dtex以下、更に好ましくは1.3dtex以下である。一方、上記肌側面に主に配置されている単糸Aの単糸繊度が0.1dtex以上であることにより、肌のささくれ等への単糸Aの引っ掛かりを回避し易くすることができ、取り扱い性を向上することができる。そのため、単糸Aの単糸繊度は、好ましくは0.2dtex以上、より好ましくは0.3dtex以上、更に好ましくは0.5dtex以上である。
単糸繊度は、例えばJIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することにより求めることができる。
上記生地の肌側面とは反対側の表面は、単糸繊度:1.0〜5.0dtexの単糸Bが主に配置されている。上記表面に主に配置されている単糸Bの単糸繊度が1.0dtex以上であることにより、上記表面の汗の保持性を低下させて上記肌側面から上記表面への汗の移行を阻害し易くすることができる。これにより肌と電極との間に汗を浸透させ易くすることができ、その結果、汗の電気伝導により生体情報を電極に伝え易くすることができ、更に汗の表面張力により電極と肌の密着性を向上し易くすることもできる。そのため、単糸Bの単糸繊度は、好ましくは1.2dtex以上、より好ましくは1.4dtex以上、更に好ましくは1.5dtex以上である。一方、上記表面に主に配置されている単糸Bの単糸繊度が5.0dtex以下であることにより、上記生地を柔軟にし易くすることができ、上記生地の肌への密着性を向上し易くすることができる。そのため、単糸Bの単糸繊度は、好ましくは3.0dtex以下、より好ましくは2.5dtex以下である。
上記単糸Bの単糸繊度の上記単糸Aの単糸繊度に対する比(単糸繊度比)は1.3〜20.0である。上記単糸繊度比は、大きい程、上記肌側面への汗の偏在化を促進することができる。そのため、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上である。一方、上記単糸繊度比を20.0以下とすることにより、上記表面を柔軟にし易くすることができ、上記生地の肌への密着性を向上し易くすることができる。また風合いを向上し易くすることができる。そのため上記単糸繊度比は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7以下である。
上記糸Aの総繊度は、好ましくは50dtex以上、350dtex以下である。350dtex以下であることにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。そのため糸Aの総繊度は、より好ましくは200dtex以下、更に好ましくは150dtex以下である。一方、上記糸Aの総繊度が50dtex以上であることにより、上記生地の強度を向上し易くすることができる。そのため、上記糸Aの総繊度は、より好ましくは50dtex以上、更に好ましくは80dtex以上である。
上記糸Bの総繊度は、好ましくは50dtex以上、350dtex以下である。50dtex以上であることにより、上記肌側面から上記表面への汗の移行の阻害作用が発揮され易くなる。そのため、上記糸Aの総繊度は、より好ましくは50dtex以上、更に好ましくは80dtex以上である。一方、350dtex以下であることにより、上記生地を柔軟にし易くすることができ、上記生地の肌への密着性を向上し易くすることができる。そのため、糸Aの総繊度は、より好ましくは200dtex以下、更に好ましくは150dtex以下である。
上記糸Bの総繊度(dtex)の上記糸Aの総繊度(dtex)に対する比は0.7〜1.3であることが好まし。これにより上記生地の肌側面をフラットにして密着力を向上し易くすることができる。上記比は、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1、最も好ましくは1である。
糸の総繊度は、例えばJIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とすることができる。
上記糸A、上記糸Bは、フィラメント糸、紡績糸のいずれであってもよいが、フィラメント糸が好ましい。フィラメント糸として、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられるが、マルチフィラメント糸が好ましい。上記糸A、上記糸Bの断面形状は、特に限定されないが、例えば丸型、三角型、扁平型、中空型、Y型、十字型等が挙げられる。
上記糸A、上記糸Bとして、ゴム状弾性を持たない非弾性糸が挙げられる。非弾性糸により、生地の伸び過ぎを防止し易くすることができる。非弾性糸として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、アラミド繊維、アクリル、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される合成繊維のマルチフィラメント;レーヨン、アセテートに代表される化学繊維;綿、羊毛、シルクに代表される天然繊維;等を含む糸が挙げられる。非弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記糸A、上記糸Bは、ゴム状弾性を持つ弾性糸であってもよい。弾性糸により、生地の伸縮性が向上し、衣類の着用時の着圧を低減し易くすることができる。また伸縮性が向上することにより、着用者が激しい運動を行っても、衣類が引きつる感覚を低減することができ、着用者の不快感を軽減できる。弾性糸として、ポリウレタン弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリオレフィン系弾性糸、天然ゴム糸、合成ゴム糸、伸縮性を有する複合繊維からなる糸等が挙げられる。弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。これらのうちポリウレタン弾性糸は、糸の弾性、熱セット性、耐薬品性等に優れているため好ましい。ポリウレタン弾性糸として、例えば融着タイプのポリウレタン弾性糸、合着タイプのポリウレタン弾性糸等を用いることができる。
上記糸Bは、疎水性を有する糸(疎水性糸)であることが好ましく、撥水性を有する糸(撥水性糸)であることがより好ましい。具体的には、仕上がった生地に含まれる上記糸Bは、後記する実施例に記載のデュポン(DUPONT)法による撥水性測定法において、2級以上、12級以下のものであることが好ましい。撥水度が2級以上であることにより汗を肌側に保持する性能が向上させることができ、肌側面の密着性を向上し易くすることができる。そのため、より好ましくは3級以上、更に好ましくは4級以上である。一方、撥水度が7級以下であっても十分な密着性を得られるため、コスト的にメリットがある。そのため、より好ましくは6級以下、更に好ましくは5級以下である。なお上記生地の肌側面とは反対側の表面における水の接触角は、90°以上、170°以下であることが好ましい。
撥水性糸を構成する繊維としては、繊維そのものが撥水性を有するフッ素系繊維(ETFE:エチレン・テトラフルオロチレン共重合体)等の撥水性繊維を用いたり、繊維に撥水加工を施したもの等を用いることができる。撥水加工は、フッ素系、シリコン系、パラフィン系撥水剤等の一般的な繊維用撥水剤を用いて行えばよいが、フッ素系撥水剤が撥水性能や洗濯耐久性に優れるため好ましい。なお撥水加工は、織編物を作る前の糸に対して行うことが好ましい。繊維として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維等が挙げられ、ポリエステル系繊維が好ましい。これらは1種でも良いし、2種以上用いてもよい。
疎水性糸、撥水性糸として、合成繊維フィラメント、紡績糸、フィラメントと紡績糸の複合糸等のいずれを使用することもできる。フィラメントを用いる場合、フラットヤーンでも仮撚加工糸など捲縮のあるタイプでも良いが、肌触り感、ピリング性を重視する場合は仮撚加工糸など捲縮のあるタイプが望ましい。糸の断面形状は、特に限定されないが、例えば丸型、三角型、扁平型、中空型、Y型、十字型等が挙げられる。
次に、以下では上記生地が編物、織物のそれぞれの場合における好ましい態様について説明する。
[編物]
上記生地が編物である場合、上記生地の完全組織において、上記生地の肌側面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが上記糸Aにより構成されていることが好ましい。これにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更により好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。
ニットループの個数をカウントするに当たっては、完全組織を分解してカウントしてもよいし、完全組織を顕微鏡により表面観察してカウントしてもよい。なお編物の組織は一区間の単位組織の繰り返しにより構成されるが、その一区間の単位組織が完全組織である。
一方、上記生地の完全組織において、上記生地の肌側面とは反対側の表面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが糸Bにより構成されていることが好ましい。これにより、上記表面の汗の保持性を低下させて上記肌側面からの汗の移行を阻害し易くすることができる。より好ましくは50%超、更に好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。
上記糸Aは、上記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Aであることが好ましい。これにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%である。
上記糸Bは、上記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Bであることが好ましい。これにより、上記表面の汗の保持性を低下させて上記肌側面からの汗の移行を阻害し易くすることができる。より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%である。
上記編物は、緯編物であってもよいし経編物であってもよいが、緯編物が好ましい。なお緯編物には丸編物も含まれる。
上記編物は丸編により構成されたものであり、生地の肌側面を形成するループは、タックループを含まずニットループのみであることがより好ましい。これにより、肌側面の凹凸を顕著に低減することができるため、生地と肌との密着力を一層向上し易くすることができる。更に、生地の肌側面にはウェルトが形成されていないことが更により好ましい。
上記編物が丸編により構成される場合、編み方としては、ダブルニットやシングルニットの場合、両面編機やフライス編機等で編めばよい。またプレーテイング方式で表と裏を編み分ける方法の場合、肌側に糸Aが配置される編み方が好ましい。上記編物が緯編により構成される場合、編込む弾性糸の糸長は、編機ゲージや編組織、糸の太さに基づいて適宜調整すればよい。弾発性や伸長回復性を効果的に発現させるために弾性糸を使う場合の糸長は、100ウェール当り200mm以上、600mm以下が好ましく、230mm以上、550mm以下がより好ましく、250mm以上、500mm以下が更に好ましい。
両面編の編組織として、メッシュリバース、モックミラノリブ、モックロディ、シングルピケ、クロスミスインターロック、ロイヤルインターロック、テクシーピケ等の編組織が挙げられる。このうちメッシュリバース、モックミラノリブが好ましい。
上記編物が経編により構成される場合、編組織としては、例えばシングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、トリコット編、ハーフトリコット編、ラッセル編、ジャガード編等の編組織が好ましく、サテン編、ラッセル編等の編組織がより好ましく、サテンネット組織が更により好ましい。サテンネット組織のうち、弾性糸を経方向に挿入したラッセル編においてバック筬に単繊度が小さい単糸Aを挿入したサテンネット組織が特に好ましい。
上記編物が経編により構成される場合、編み方としては、二枚以上の筬で編む方法が挙げられる。編込む糸の糸長は、編機ゲージや編組織、糸の太さに基づいて適宜調整すればよい。弾発性や伸長回復性を効果的に発現させるため、弾性糸の糸長は、ラック当り800mm以上、2200mm以下が好ましく、より好ましくは850mm以上、2100mm以下、更に好ましくは900mm以上、2000mm以下である。挿入組織の場合の弾性糸の糸長は、ラック当り70mm以上、150mm以下が好ましく、80mm以上、120mm以下がより好ましい。
単糸Aは、肌側面に配置されるようにミドル筬またはバック筬に挿入組織で配置されることが好ましい。またイベイションラップ組織を用いたり、シンカーループ面に単糸Aを配置してもよい。
上記生地の肌側面のコース密度は30コース/2.54cm以上、85コース/2.54cm以下であることが好ましい。コース密度が高い程ループ密度が高くなり、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、密着性を向上し易くすることができる。そのためコース密度は、より好ましくは40コース/2.54cm以上、更に好ましくは55コース/2.54cm以上である。一方、コース密度を85コース/2.54cm以下とすることにより生産性を向上し易くすることができる。そのためコース密度は、より好ましくは80コース/2.54cm以下、更に好ましくは75コース/2.54cm以下である。
上記生地の肌側面のウエール密度は25ウエール/2.54cm以上、75ウエール/2.54cm以下であることが好ましい。ウエール密度が高い程、ループ密度が高くなって、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、密着性を向上し易くすることができる。そのためウエール密度は、より好ましくは30ウエール/2.54cm以上、更に好ましくは40ウエール/2.54cm以上である。一方、ウエール密度を75ウエール/2.54cm以下とすることにより生産性を向上し易くすることができる。そのため、コース密度は、より好ましくは70ウエール/2.54cm以下、更に好ましくは65ウエール/2.54cm以下である。
[織物]
上記生地が織物である場合、織物は二重織であることが好ましい。なお織物は、二重織に限らず、三重織や四重織等の多重組織であってもよい。具体的には緯二重織、経二重織、経緯二重織、ふくれ織、風通織物、昼夜織等が挙げられる。このうち緯二重織、又は経二重織が好ましい。
上記生地の完全組織において、上記生地の肌側面における織組織上の糸Aの出現割合は50%以上であることが好ましい。これにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。より好ましくは50%超、更に好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
一方、上記生地の肌側面とは反対側の表面における織組織上の糸Bの出現割合は50%以上であることが好ましい。これにより、上記表面の汗の保持性を低下させて上記肌側面からの汗の移行を阻害し易くすることができる。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更により好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
なお織物の組織は一区間の単位組織の繰り返しにより構成されるが、その一区間の単位組織が完全組織である。
次に図5(a)に緯二重織の完全組織の組織図の一例を示す。当該完全組織は、5本の第1の緯糸と、5本の第2の緯糸と、10本の経糸により構成されている。図5(a)に示す緯二重織の完全組織の組織図は、緯二重織の肌側面から見た組織と、緯二重織の表面から見た組織とを一つにまとめた組織図である。
本発明において、上記糸A、上記糸Bの上記出現割合を算出するに当たっては、例えば図5(a)の緯二重織の完全組織に対応する図5(b)に示す緯二重織の肌側面から見た組織図と、図5(c)に示す緯二重織の表面から見た組織図に基づいて算出するものとする。具体的には、上記生地の肌側面における織組織上の糸Aの出現割合は、図5(b)に示すような緯二重織の肌側面から見た組織図において、全区画に対する糸Aが観察される区画(A区画)の個数割合により算出することができる。同様に上記表面における組織上の糸Bの出現割合は、図5(c)に示すような緯二重織の表面から見た組織図において、全区画に対する糸Bが観察される区画(B区画)の個数割合により算出することができる。
次に、図5(a)の緯二重織の完全組織において、5本の第1の緯糸が上記糸Aにより構成されており、5本の第2の緯糸と10本の経糸が上記糸Bにより構成されている場合を例として、上記糸A、上記糸Bの出現割合の算出方法について説明する。図5(b)、(c)中、各面において第1の緯糸が観察される区画を区画101、第2の緯糸が観察される区画を区画102、経糸が観察される区画を区画103としている。その場合、図5(b)に示す緯二重織の肌側面から見た組織図は50区画よりなり、上記糸Aが観察される区画(区画101)は40区画であるため、上記肌側面における織組織上の糸Aの出現割合は80%となる。一方、図5(c)に示す緯二重織の表面から見た組織図も50区画よりなり、上記糸Bが観察される区画(区画102と区画103)は50区画であるため、上記表面における織組織上の糸Bの出現割合は100%となる。
上記糸Aは、上記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Aであることが好ましい。これにより、上記生地の肌側面に汗を溜め易くすることができる。より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%である。
上記糸Bは、上記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が上記単糸Bであることが好ましい。これにより、上記表面の汗の保持性を低下させて上記肌側面からの汗の移行を阻害し易くすることができる。より好ましくは92%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%である。
上記生地の肌側面は、朱子織、又は綾織により形成されていることが好ましい。これにより、上記肌側面の密着力を向上し易くすることができる。上記生地の肌側面は十分な密着性が得られる限り、朱子織や綾織以外の平織や石目織、斜子織等で形成されていてもよく、それらの複合組織であってもよい。
上記生地の肌側面は、経糸の総繊度の緯糸の総繊度に対する比を0.7〜1.3とすることが好ましい。経糸と緯糸の繊度が近い程、表面がフラットになり密着力を向上し易くすることができる。上記生地の肌側面における上記比は、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.9〜1.1、最も好ましくは1である。また緯糸として糸Aを用いることが好ましい。
次に、以下では上記生地の構成や物性等について詳述する。上記生地は、上記糸Aと上記糸B以外の糸(以下では、その他の糸と呼ぶ場合がある)を含んでいてもよい。その他の糸として、上記弾性糸や上記非弾性糸が挙げられる。また、その他の糸は、フィラメント糸、紡績糸のいずれであってもよいが、フィラメント糸が好ましい。フィラメント糸として、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられるが、マルチフィラメント糸が好ましい。
上記生地100質量%における上記弾性糸の混率は、5質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。弾性糸の混率が5質量%以上であることにより、伸長率を向上し易くすることができる。弾性糸の混率は、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。一方、弾性糸の混率を60質量%以下とすることにより、編成および染色加工を行い易くすることができ生産性が向上する。更に、フィット性を向上し、寸法変化を起こし難くさせることができる。弾性糸の混率は、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
上記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる密着力が2gf以上、60gf以下であることが好ましい。
[密着力の測定方法]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.2mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。
上記密着力が2gf以上であることにより、生地の肌側面が汗で濡れたときの密着力を向上させることができる。密着力は、好ましくは3gf以上、より好ましくは5gf以上である。一方、密着力が60gf以下であることにより、生地の肌への貼り付き感が強くなり過ぎることに伴う不快感を軽減することができる。密着力は、好ましくは50gf以下、より好ましくは40gf以下、更により好ましくは20gf以下である。
上記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる最大密着力が20gf以上、60gf以下であることが好ましい。
[最大密着力の測定方法]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.1mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、上記圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。その後、水0.1mlを滴下して密着力を測定する操作を、水滴下量の合計が1.0mlに至るまで繰り返し、水を1.0ml滴下するまでの間の最大の密着力を最大密着力とする。
上記最大密着力が5gf以上であることにより、生地の肌側面が汗で濡れたときの密着力を向上させることができる。最大密着力は、好ましくは20gf以上、より好ましくは30gf以上である。一方、最大密着力が60gf以下であることにより、生地の肌への貼り付き感が強くなり過ぎることに伴う不快感を軽減することができる。最大密着力は、好ましくは50gf以下、より好ましくは40gf以下である。
[肌側面の保水率]
肌側面の保水率は15%以上であることが好ましい。保水率が15%以上であることにより、肌側面の水分存在下における密着力を向上し易くすることができる。肌側面の保水率は、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。一方、肌側面の保水率の上限は、例えば80%以下、70%以下、60%以下であってもよい。肌側面の保水率は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
[表面の保水率]
表面の保水率は、20%以下であることが好ましい。表面の保水率が20%以下であることにより、汗等の水分を肌側面に保持し易くすることができる。そのため、表面の保水率は、より好ましくは15%以下、更に好ましくは12%以下、更により好ましくは8%以下、最も好ましくは0%である。表面の保水率は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
[肌側面と表面の保水率比]
肌側面の保水率(%)の表面の保水率(%)に対する比(肌側面の保水率(%)/表面の保水率(%))は、1.2以上であることが好ましい。肌側面の保水率が、表面の保水率よりも大きいことにより、汗等の水分を肌側面に保持し易くすることができる。そのため、保水率比は、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上である。一方、保水率比の上限は、例えば95以下、90以下、80以下であってもよい。
上記電極の表面における着圧は、1.5kPa以下であることが好ましい。着圧が1.5kPa以下であることにより、衣類の着用の圧迫感や締め付け感を軽減することができる。着圧は、より好ましくは1.3kPa以下、更に好ましくは1.2kPa以下である。一方、電極の表面における着圧が、0.1kPa以上であると電極がずれ難くなる。そのため、着圧は好ましくは0.1kPa以上、より好ましくは0.3kPa以上、更に好ましくは0.4kPa以上である。電極の表面における着圧は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
伸長率、及び伸長回復率は、生地を構成する糸の選択(具体的には、種類、太さなど)、織組織、編組織、染色仕上げ工程でのセット条件(具体的には、加工温度、時間、仕上げ密度など)によって調整することができる。
上記生地の目付は、好ましくは80g/m以上、250g/m以下、より好ましくは120g/m以上、220g/m以下である。上記生地の厚みは、好ましくは300μm以上、2000μm以下、より好ましくは500μm以上、1500μm以下である。
上記生地が形成されている領域は、衣類の20面積%以上であることが好ましく、より好ましくは50面積%以上である。上記生地が形成されている領域の上限は、特に限定されないが、100面積%であってもよいし、80面積%以下であってもよい。上記衣類のうち上記生地が形成されていない領域には、他の公知の生地を用いることができる。
本発明の衣類は、電極が形成されていればよく、その形態は特に限定されず、例えば、スポーツインナー、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、肌着、下着、病衣、または寝間着やベルトなどが挙げられる。これらの中でも、ベルトが好ましく、女性用の場合ブラジャーが好ましい。上記衣類が、袖を有する場合は、半袖、五分袖、七分袖、長袖等のいずれであってもよく、袖の形状は、ラグラン袖であってもよい。
上記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うものであることが好ましい。上記衣類は、生体情報計測用衣類であることが好ましい。
次に、上記衣類に設ける電極について説明する。上記電極は、主として皮膚接触によって生体電位を検出するために用いられるが、コネクタ等の電気接点として用いてもよく、その他の近接的非接触的なセンサーの検知端として用いてもよい。電極は、被測定者の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。伸縮性を有する電極としては、例えば、導電性組織で構成されている電極や、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成されたシート状の電極が挙げられる。導電性組織で構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維または導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属によって表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物を導電性組織からなる電極として用いることができる。
上記導電性組織は、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。伸長率が3%以上であると、電極が衣類の生地の動きに充分に追従し易くなり、生地から電極が剥がれることを防止し易くすることができる。従って上記伸長率は、3%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。一方、伸長率が60%以下であると、電極の伸び過ぎを防止し易くすることができる。従って上記伸長率は、60%以下が好ましく、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。伸長率は、身丈方向または身幅方向で上記範囲を満足することが好ましく、身丈方向および身幅方向の両方において上記範囲を満足することがより好ましい。伸長率は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記シート状の電極の材料としては、例えば、導電性が高い導電性フィラーを用いることによって、繊維状電極よりも電気抵抗値を低くすることができるため、微弱な電気信号を検知できる。
上記電極は、上記生地の肌側面に形成された第一絶縁層と、第一絶縁層の肌側面に形成された導電層とを有するものであることが好ましい。
また、上記衣類は、電極の他、該電極と、該電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続する配線を有することが好ましい。配線は、上記生地の肌側面に形成された第一絶縁層と、第一絶縁層の肌側面に形成された導電層と、導電層の肌側面に形成された第二絶縁層とを有するものであることが好ましい。
以下、導電層、第一絶縁層、第二絶縁層について具体的に説明する。
(導電層)
導電層は、生体の電気的情報を検知できるものであり、導通を確保するために必要である。導電層は、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含むことが好ましく、より好ましくは導電性フィラーとエラストマーを含むものであり、各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。
上記導電性フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などを用いることができる。上記導電性フィラーは、1種でもよいし、2種以上でもよい。金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉、卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉、卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉等が挙げられる。これらの中でも、銀粉および/または銅粉が好ましく、低コストで、高い導電性を発現させることができる。銀粉および/または銅粉は、導電性フィラーとして用いる金属粉の主成分であることが好ましく、主成分とは、合計で50質量%以上を意味する。金属ナノ粒子としては、上述した金属粉のうち、粒子径が数ナノ〜数十ナノの粒子が挙げられる。
上記導電性フィラーに占める金属粉の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。上記導電性フィラーに占める金属ナノ粒子の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属ナノ粒子の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属ナノ粒子は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。
上記金属粉以外の導電材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系材料が挙げられる。上記金属粉以外の導電材料は、表面に、メルカプト基、アミノ基、ニトリル基を有するか、表面が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることが好ましい。一般に、金属粉以外の導電材料自体は凝集力が強く、アスペクト比が高い金属粉以外の導電材料は、樹脂中への分散性が悪くなるが、表面にメルカプト基、アミノ基またはニトリル基を有するか、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることによって、樹脂に対する親和性が増して、分散し、有効な導電性ネットワークを形成でき、高導電性を実現できる。導電性フィラーに占める金属粉以外の導電材料の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉以外の導電材料の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉以外の導電材料は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが好ましい。
上記導電層は、導電性フィラーの種類や、導電性フィラーの添加量等を変化させた2種類以上の導電層を積層したり、配列させて、複数の導電層を一体化したものであっても構わない。導電層に占める上記導電性フィラー(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める導電性フィラー)は、15〜45体積%が好ましく、より好ましくは20〜40体積%である。導電性フィラーが少なすぎると、導電性が不充分になる虞がある。一方、導電性フィラーが多すぎると、導電層の伸縮性が低下する傾向があるため、電極および配線を伸長したときにクラック等が発生し、良好な導電性を保持できない虞がある。
上記伸縮性を有する樹脂としては、例えば、硫黄原子を含有するゴムおよび/またはニトリル基を含有するゴムを少なくとも含むことが好ましい。硫黄原子やニトリル基は、導電性フィラー(特に、金属粉)との親和性が高く、またゴムは伸縮性が高いため、電極および配線の10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重を低減でき、伸長時にもクラック等の発生を回避できる。また、電極および配線が伸長されても導電性フィラーを均一な分散状態で保持できるため、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率を小さくすることができ、優れた導電性を発現させることができる。また、電極および配線の厚みを薄くしても、優れた導電性を発現させることができる。これらの中でも、ニトリル基を含有するゴムがより好ましく、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率を一段と低減できる。
上記硫黄原子を含有するゴムとしては、硫黄原子を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。硫黄原子は、ポリマーの主鎖のスルフィド結合やジスルフィド結合、側鎖や末端のメルカプト基などの形で含有される。硫黄原子を含有するゴムとしては、例えば、メルカプト基、スルフィド結合またはジスルフィド結合を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。特に、メルカプト基を含有する、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、ポリアクリレートゴム、シリコーンゴムが好ましい。硫黄原子を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、例えば、液状多硫化ゴムである東レ・ファインケミカル製の「チオコール(登録商標)LP」等が好ましく挙げられる。硫黄原子を含有するゴム中の硫黄原子の含有量は、10〜30質量%が好ましい。また、硫黄原子を含有しないゴムとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(S−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(S−メルカプトブチレート)、メルカプト基含有シリコーンオイルなどの硫黄含有化合物を配合した樹脂を用いることもできる。
上記ニトリル基を含有するゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムの他、エラストマーでもよい。特に、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であるアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムが好ましく挙げられる。上記ニトリル基を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、日本ゼオン製のNipol(登録商標)1042、Nipol(登録商標)DN003等が好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴム中のニトリル基量(特に、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中のアクリロニトリル量)は、18〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは28〜41質量%である。特に、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量が多くなり過ぎると、導電性フィラー、特に、金属粉との親和性は増大するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。
上記導電層を形成する伸縮性を有する樹脂は、1種でもよいし、2種以上でもよい。即ち、上記導電層を形成する伸縮性を有する樹脂は、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムのみで構成されることが好ましいが、導電性、伸縮性、導電層形成時の塗布性などを損なわない範囲で、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴム以外に、伸縮性を有する樹脂を含んでいてもよい。伸縮性を有する他の樹脂を含む場合、全樹脂中、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムの合計量は、95質量%以上が好ましく、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。導電層に占める上記伸縮性を有する樹脂(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める伸縮性を有する樹脂固形分)は、55〜85体積%が好ましく、より好ましくは58〜83体積%、更に好ましくは60〜80体積%である。伸縮性を有する樹脂が少なすぎると、導電性は高くなるが、伸縮性が悪くなる傾向がある。一方、伸縮性を有する樹脂が多すぎると、導電層の伸縮性はよくなるが、導電性は低下する傾向がある。
上記導電層は、上述した各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、後述する第一絶縁層上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。上記導電層は、上記導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで後述する第一絶縁層上に積層して形成してもよい。上記導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を採用して調製すればよく、伸縮性を有する樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することによって調製できる。例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などと、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散すればよい。これらの手段は、複数を組み合わせて用いることができる。上記導電性ペーストを塗布または印刷する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などの印刷法などを採用できる。
上記導電層の乾燥膜厚は、10〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜130μm、更に好ましくは30〜100μmである。上記導電層の乾燥膜厚が薄すぎると、電極および配線が、繰り返し伸縮を受けて劣化しやすく、導通が阻害ないし遮断される虞がある。一方、上記導電層の乾燥膜厚が厚すぎると、伸縮性が阻害され、また、電極および配線が厚くなりすぎ、着心地が悪くなる虞がある。
(第一絶縁層)
上記第一絶縁層は、絶縁層として作用する他、電極および配線の導電層を生地に形成するための接着層として作用すると共に、着用時に第一絶縁層が積層された生地の反対側(即ち、衣類の外側)からの水分が導電層に達することを防ぐ止水層としても作用する。また、導電層の衣類側に第一絶縁層を設けることによって、第一絶縁層が、生地の伸びを抑制し、導電層が過度に伸長されるのを防ぐことができる。その結果、第一絶縁層にクラックが発生することを防止できる。これに対し、上述したように、上記導電層は、良好な伸長性を有するものであるが、生地が導電層の伸長性を超えた伸び性に富む素材の場合、生地表面に導電層を直接形成すると、生地の伸びに追随して導電層が伸ばされ過ぎ、その結果、導電層にクラックが発生すると考えられる。
上記第一絶縁層は、絶縁性を有する樹脂で構成すればよく、樹脂の種類は特に制限されない。樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂がより好ましく、導電層との接着性が一層良好となる。上記第一絶縁層を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。第一絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させることによって形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第一絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第一絶縁層が薄すぎると、絶縁効果および伸び止め効果が不充分になることがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第一絶縁層が厚すぎると、電極および配線の伸縮性が阻害されることがある。また、電極および配線が分厚くなりすぎ、着心地が悪くなるおそれがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
(第二絶縁層)
上記配線は、上記導電層の上に、第二絶縁層が形成されていることが好ましい。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗などの水分が導電層に接触することを防止できる。第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した第一絶縁層を構成する樹脂と同様のものが挙げられ、好ましく用いられる樹脂も同じである。第二絶縁層を構成する樹脂も、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。第二絶縁層を構成する樹脂は、上記第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層の被覆性および配線の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。第二絶縁層は、上記第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第二絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第二絶縁層が薄すぎると、繰り返し伸縮したときに劣化しやすく、絶縁効果が不充分になることがある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第二絶縁層が厚すぎると、配線の伸縮性が阻害され、また配線の厚みが厚くなりすぎて着心地が悪くなる虞がある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
上記電極および配線は、10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が、100N/cm以下であることが好ましい。10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が100N/cmを超えると、電極および配線の伸長が、生地の伸長に追従し難くなり、衣類を着用したときの着心地を阻害することがある。従って10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重は、100N/cm以下が好ましく、より好ましくは80N/cm以下、更に好ましくは50N/cm以下である。
上記電極および配線は、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍以下であることが好ましい。20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍を超えると、導電性の低下が著しくなる。従って20%伸長時における電気抵抗の変化倍率は5倍以下であることが好ましく、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
上記電極と配線は、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されていることが好ましい。上記電極と配線を同じ材料で構成する場合は、配線の幅は1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。配線幅の上限は特に限定されないが、例えば、10mm以下とすることが好ましく、より好ましくは9mm以下、更に好ましくは8mm以下である。
上記電極および配線は、衣類を構成する生地に直接形成することが好ましい。上記電極および配線を生地に形成する方法としては、電極および配線の伸縮性を妨げない方法であれば特に限定されず、着用時の身体へのフィット性や運動時、動作時の追従性などの観点から、例えば、接着剤による積層や熱プレスによる積層など、公知の方法が採用できる。接着剤による積層や熱プレスによる積層を行う場合、上記生地には、シリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤のように、接着性を損なう材料が付着していないことが好ましい。生地に付着しているシリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤などの量は、生地の染色加工工程において精練処理による弾性糸等に用いられているシリコン系柔軟剤を除去したり、生地の仕上げセット時に用いる加工剤の種類を選定するなどの方法によって、調整できる。
上記電極は、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けられていることが好ましい。上記電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることによって、生体情報を精度良く測定できる。上記電極は、衣類のうち、着用者の第七肋骨上端と第九肋骨下端との間の肌に接触する領域に設けることがより好ましい。上記電極は、衣類のうち、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。上記電極は、着用者の胴回りに沿って、円弧状に設けることが好ましい。上記衣類に設ける電極の数は、少なくとも2つであり、2つの電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることが好ましく、2つの電極を、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。なお、電極を3つ以上設ける場合は、3つ目以降の電極を設ける位置は特に限定されず、例えば、後身頃生地に設けてもよい。
上記電極面の電気抵抗値は、1000Ω/cm以下が好ましく、より好ましくは300Ω/cm以下、更に好ましくは200Ω/cm以下、特に好ましくは100Ω/cm以下である。特に、上記電極の形態がシート状の場合は、電極面の電気抵抗値を、通常、300Ω/cm以下に抑えることができる。
上記電極の形態は、シート状が好ましい。電極をシート状にすることによって、電極面を広くできるため、着用者の肌との接触面積を確保できる。上記シート状の電極は、曲げ性が良好であるものが好ましい。また、上記シート状の電極は、伸縮性を有するものが好ましい。上記シート状の電極の大きさは、身体からの電気信号を計測できれば特に限定されないが、電極面の面積は5〜100cmであり、電極の平均厚みは10〜500μmが好ましい。上記電極面の面積は、より好ましくは10cm以上、更に好ましくは15cm以上である。上記電極面の面積は、より好ましくは90cm以下、更に好ましくは80cm以下である。電極が薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下である。電極の形状は、電極を配置する位置に相当する身体の曲線に沿い、且つ身体の動きに追随して密着しやすい形状であれば特に限定されず、例えば、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。電極の形状が多角形の場合は、頂点に丸みを付け、肌を傷付けないようにしてもよい。
上記配線は、導電性繊維または導電性糸を用いて形成してもよい。上記導電性繊維または導電性糸としては、絶縁物である繊維表面に金属をメッキしたもの、細い金属線を糸に撚り込んだもの、導電性の高分子をマイクロファイバーなどの繊維間に含浸させたもの、細い金属線等を用いることができる。配線の平均厚みは、10〜500μmが好ましい。厚みが薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚みが厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。配線の形状は特に限定されず、直線、曲線の他、冗長性を有する幾何学パターンであってもよい。冗長性を有する幾何学パターンとしては、例えば、ジグザグ状、連続馬蹄状、波状などが挙げられる。冗長性を有する幾何学パターンの電極は、例えば、金属箔を用いて形成できる。
上記衣類は、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等を備えていることが好ましい。上記電子ユニット等において、電極で取得した電気信号を演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの生体情報が得られる。
上記衣類は、上記生地の肌側面とは反対側の表面に、電子ユニットとの接続に用いる留め金を備えることが好ましい。留め金は、いわゆるホックであり、例えばステンレススチール製のホックが挙げられる。留め金を介して、導電層と電子ユニットとを電気的に接続することができる。
上記電子ユニット等は、衣類に着脱できることが好ましい。上記電子ユニット等は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタなどを有することが好ましい。上記電子ユニット等は、例えば、気温、湿度、気圧などの環境情報を計測できるセンサーや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサーなどを備えてもよい。
上記衣類を用いることにより、人の心理状態や生理状態を把握する技術への応用もできる。例えば、リラックスの度合いを検出してメンタルトレーニングしたり、眠気を検出して居眠り運転を防止したり、心電図を計測してうつ病やストレス診断等を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[単糸繊度]
単糸繊度は、JIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することにより単糸繊度を求めた。
[肌側面の密度]
織物の場合は、JIS L1096(2010)8.6.1のA法の測定方法に基づいて測定した。編物の密度は、JIS L1096(2010)8.6.2の測定方法に基づいて測定した。
[保水率]
温度20℃、湿度65%RHで調湿した編地から10cm×10cmのサイズの試験片を3枚採取し、それぞれの試験片の重量(Wt1)を測定した。次いで、ガラス板上に蒸留水1.0mlを滴下した後、上記ガラス板上に上記試験片のうちの1枚を肌側面が蒸留水に接するように載せて30秒間放置し、その後、上記試験片を別のガラス板上に移した。次いで、同じサイズの濾紙A(重量:WA1)と濾紙B(重量:WB1)を用意して、濾紙Aを上記肌側面に当て、濾紙Bを肌側面とは反対側の表面に当てて、上記試験片をサンドイッチ状に挟み込んで、荷重:5g/cmの面圧を加えて30秒間放置した。次いで除重した後、上記試験片の重量(Wt2)、濾紙Aの重量(WA2)、及び濾紙Bの重量(WB2)をそれぞれ測定し、下記式に基づいて上記試験片の肌側面の保水率、表面の保水率、及び表面の保水率に対する肌側面の保水率の比(保水率比)を算出した。この操作を3枚全ての試験片に対して行って、その平均値をとった。
肌側面の保水率(%)=(WA2−WA1)/(Wt2−Wt1+WB2―WB1)×100
表面の保水率(%)=(WB2―WB1)/(Wt2−Wt1+WA2−WA1)×100
保水率比=肌側面の保水率(%)/表面の保水率(%)
[糸の撥水性]
糸の撥水性はデュポン(DUPONT)法に基づいて判定を行った。詳細には、生地から撥水糸のみを抜き出して、抜出した撥水糸同士を結んで10mの長さにつなぎ合せた。次いで、0.1g/dtexの張力をかけながら、10cm四方の厚紙に隙間が空かないように撥水糸を捲きつけて、隙間なく糸が揃った状態の板巻を用意した。その後、下記12段階の濃度(重量%)のイソプロピルアルコール(IPA)水溶液のうち1級のIPA水溶液から順にスポイドで一滴ずつ水平に置いた板巻の撥水糸に滴下した。滴下から10秒経過する前に浸透した時点におけるIPA水溶液の等級を糸の撥水度とした。
<等級判定液>
[最大密着力]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.1mlの水を滴下した。その後、カトーテック社製の圧縮試験機(KES−G5)にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、上記圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加えた。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とした。その後、水0.1mlを滴下して密着力を測定する操作を、水滴下量の合計が1.0mlに至るまで繰り返し、水を1.0ml滴下するまでの間の最大の密着力を肌側面の最大密着力とした。この測定を3回行ってその平均値を採用した。同様に肌側面とは反対側の表面についても最大密着力を測定した。
[密着力の測定方法]
上記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、上記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.2mlの水を滴下した。その後、カトーテック社製の圧縮試験機(KES−G5)にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、上記生地と上記天然ゴム板が離れるためにかかった力を肌側面の密着力とした。この測定を3回行ってその平均値を採用した。同様に肌側面とは反対側の表面についても密着力を測定した。
[着圧]
着圧の測定には株式会社エイエムアイ・テクノ製の接触圧測定器AMI3037−10と受圧センサ(直径20mmの円形エアパック)を使用した。被験者に電子ユニット付Tシャツを着用させて、受圧センサを電極の中央部と、電極が接触する肌の間に挿入してから、被験者の呼気と吸気の間(呼吸による胸囲変化の中央値)に呼吸を止めた状態で着圧を測定した。
[着用試験]
実施例1〜6、比較例1で作製した電子ユニット付Tシャツを着用し、20℃、65%RHの室内環境で、トレッドミルを用いて30分間、7km/hのジョギングしている時の心電図を測定し、心電図の波形のうちR波の振幅の分散をシグナル(S)とし、R波とR波の間の波形の振幅の分散をノイズ(N)とし、S/Nの式でSN比を求めた。ノイズが少なく、SN比が良好で、容易にR波を検出できる心電図波形を計測できた場合は「良」、安定的な検出ができなかった場合は「不良」と評価した。
[実施例1]
28ゲージ、33インチのダブルニット編機を使用し、肌側面とは反対側の層(表層)に84dtex/48フィラメント(f)のセミダルの丸断面ポリエチレンテレフタレートフィラメント(酸化チタン:0.5重量%含有)の2ヒーター仮撚加工糸を糸Bとして使用し、糸長が250mm/100wになるように設定した。肌側の層(裏層)には84dtex/72fのセミダルの丸断面ポリエチレンテレフタレートフィラメント(酸化チタン:0.5重量%含有)の2ヒーター仮撚加工糸を糸Aとして使用し、糸長が290mm/100wになるよう設定した。このような条件で、図1に示すメッシュリバース組織に配置したニット生機を作製した。なお図1中、F1〜F4は、編糸の第1給糸口〜第4給糸口を示す。図1の組織図においては、各行の上側の縦線はダイアル針を示し、下側の縦線はシリンダー針を示す。得られたニット生機に、常法のリラックス、プレセット、分散染料による染色を行った後、親水加工、帯電防止加工を行って生地を得た。
次に、得られた生地を用いて、下記条件で肌側面に電極と配線が形成されたTシャツを得て、肌側面とは反対側の表面に電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを作製した。
(導電性ペースト)
ニトリルゴム(日本ゼオン社製のNipol(登録商標)DN003)20質量部をイソホロン80質量部に溶解し、NBR溶液を作製した。得られたNBR溶液100質量部に、銀粒子(DOWAエレクトロニクス製の「凝集銀粉G−35」、平均粒子径5.9μm)110質量部を配合し、3本ロールミルにて混練し、導電ペーストを得た。
(電極および配線)
上記導電性ペーストを離型シートの上に塗布し、120℃の熱風乾燥オーブンで30分以上乾燥することによって、離型シート付きシート状導電層を作製した。
次に、離型シート付きシート状導電層の導電層表面に、ポリウレタンホットメルトシートを貼り合わせた後、上記離型シートを剥がし、ポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層を得た。上記ポリウレタンホットメルトシートは、ホットプレス機を用い、圧力0.5kg/cm、温度130℃、プレス時間20秒の条件で積層した。
別途、長さ13cm、幅2.4cmのポリウレタンホットメルトシートを用意し、その上に、上記ポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層(長さ12cm、幅2cm)のポリウレタンホットメルトシート側を、長さ方向の一端を揃えて積層した。なお、これらのポリウレタンホットメルトシートは第一絶縁層に相当する。
次に、上記第一絶縁層と導電層の一部を覆うように、長さ5cm、幅2.4cmの領域に、上記第一絶縁層を形成したものと同じポリウレタンホットメルトシートを端から2cm離した部分から積層することにより、一部の導電層の上に第二絶縁層を形成した。即ち、一端部に導電層が露出した長さ2cm×幅2cmのデバイス接続部、第一絶縁層/導電層/第二絶縁層の積層構造を有する絶縁部、反対の端部に導電層が露出した長さ5cm×幅2cmの電極がこの順で長手方向に配置された伸縮性電極パーツを作製した。
次に、得られた生地で構成されたTシャツの肌側面の所定位置に、上記伸縮性電極パーツを2枚、左右対称になるように貼り付けることにより、電極と配線が形成されたTシャツを得た。更に肌側面とは反対側の表面にユニオンツール社製の電子ユニット(My Beat WHS−2)を取り付けて電子ユニット付Tシャツを作製した。前身頃生地に設けた電極の数は2つとし、検出用の電極2個の電極面の合計面積は20cm、電極の平均厚みは90μmであった。
得られた電子ユニット付Tシャツを着用した時の着用圧は1.0Kpaであり、着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[実施例2]
実施例1の裏層の84dtex/72fの2ヒーター仮撚加工糸を、78dtex/216fの2ヒーター仮撚加工糸に代えたこと以外は実施例1と同様にして生地を得た。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[実施例3]
実施例1の表層の84dtex/48fの2ヒーター仮撚加工糸を、110dtex/48fの2ヒーター仮撚加工糸に変更し、実施例1の裏層の84dtex/72fの2ヒーター仮撚加工糸を、167dtex/144fの2ヒーター仮撚加工糸に変更したこと以外は実施例1と同様して生地を得た。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[実施例4]
実施例1の編組織を図2のモックミラノリブに変更して、表層を構成する表糸(F2、F5)を実施例1と同じ84dtex/48fの2ヒーター仮撚加工糸を用いて、繋ぎ糸と裏層を構成する糸(F1、F3、F4)を実施例1と同じ84dtex/72fの2ヒーター仮撚加工糸を用いて生機を作製して、実施例1と同様にして生地を得た。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[実施例5]
実施例1の表層の84dtex/48fの2ヒーター仮撚加工糸に対して、製編前に下記の撥水加工を行ったこと以外は、実施例1同様にして生地を得た。撥水加工は、まず上記仮撚加工糸を0.29g/cmの密度にチーズ状に捲き直し、プレスして0.45g/cmの密度のチーズ状にした。次に、オーバーマイヤー糸染染色機で精練した後、フッソ系撥水加工剤「アサヒガードAG−E061」を5g/L溶液で40℃×20分処理し、脱水して、乾燥させた。このときの脱水時のピックアップ率は40%であった。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[実施例6]
経糸と、表層を構成する緯糸に84dtex/48fの1ヒーター仮撚加工糸を糸Bとして用いて、裏層を構成する緯糸としてセミダル丸断面の78dtex/216fの仮撚加工を行わない生糸を糸Aとして用いて、図5(a)〜(c)に示す緯二重組織で製織した。生機を連続精練、プレセット、染色を行った後、帯電防止剤、親水加工剤を付与して仕上げた。仕上がった生地の密度は、経密度110本/2.54cm、表層緯密度45本/2.54cm、裏層緯密度45本/2.54cmであった。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験においても電極がずれる事もなく精度の良い計測が可能であった。
[比較例1]
表層の糸を実施例1の裏層の糸に、裏層の糸に実施例1の表層の糸にして、表裏の糸使いを逆にしたこと以外は実施例1と同様にして生地を得た。更に、実施例1と同様に電極および配線を形成すると共に、電子ユニットを取り付けて電子ユニット付Tシャツを製造した。得られた電子ユニット付Tシャツの着用による締め付け感は無かった。更に上記着用試験において電極がずれ計測が困難になった。
これらの生地の物性や各評価結果を表1に示す。
上記実施例1で得られた生地を用いて図3(a)、(b)に示すタブ付きTシャツを作製した。図3(a)は、タブ付きTシャツの正面図、図3(b)は、タブ付きTシャツの背面図を示す。図3(a)、(b)の電極支持部4には、図4に示す電極部61が設けられており、以下の手順にて作製した。
(導電性ペースト)
バインダー樹脂として、三洋化成工業株式会社製コートロンKYU−1(ガラス転移温度−35℃)、銀粒子として三井金属鉱業株式会社製微小径銀粉SPH02J(平均粒子径1.2μm)、カーボン粒子としてライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用い、バインダー10質量部、銀粒子70質量部、カーボン粒子1質量部、溶剤19質量部の配合で導電ペーストを調製した。当該調製に当たっては、所定の溶剤量の半分量の溶剤にバインダー樹脂を溶解し、次いで金属系粒子、炭素系粒子を添加して予備混合した後、三本ロールミルにて分散することによりペースト化して導電性ペーストを得た。
(カーボンペースト)
ガラス転移温度が−19℃のニトリルブタジエンゴム樹脂を40質量部、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC300Jを20質量部、溶剤としてエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50質量部を予備撹拌の後、三本ロールミルにて分散化して、カーボンペーストを得た。
表面をシリコーン系離型剤により処理したPET製離型シートに伸縮性カーボンペーストを短径18mm×長径28mmの楕円形状にスクリーン印刷し、さらに短径16mm×長径26mmの楕円形状に伸縮性導体ペーストを、伸縮性導体ペーストのエッジがそれぞれ1mm幅内側になる様に配置して重ねてスクリーン印刷した。さらに第一絶縁層に相当する短径22mm×長径32mmの楕円形状の両面ホットメルトシートを、それぞれ両面ホットメルトシートのエッジが、伸縮性カーボンペースト層の2mm外側になるように配置してラミネートし、離型シート上に楕円形状の電極を形成した。次に上記実施例1で得られた生地100mm×42mmの肌側面上にアイロンを用いて上記電極を転写して電極部61付き生地を形成した。次に、図4に示すように前身頃2と後身頃9との縫合部14において、袋綴じの状態で電極部61付き生地を縫い付けて、電極支持部4を形成した。なお縫合部14と電極部61端の最短距離は5mmとした。更に電極部61から縫合部14まで銀コート紙をジグザグに刺繍して配線とし、配線に重なるように前身頃2と後身頃9の脇腹部分の縫い目から、袖と後身頃9の縫い目を経由し、前身頃2と後身頃9の肩部分の縫い目を利用して後頸部まで銀コート糸の配線を引いた。その後、後頸部に接続用のスナップホックを形成して配線と接続し、脱着式電子ユニットをスナップホックに接続して、タブ付きTシャツの生体情報計測用衣類を得た。得られたタブ付きTシャツの生体情報計測用衣類を着用して上記着用試験を行った結果、精度の良い計測が可能であった。
2 前身頃
4 電極支持部
6 襟周り
9 後身頃
14 縫合部
21 袖部
61 電極部

Claims (10)

  1. 生地と、前記生地の肌側面側に形成されている電極とを備える衣類であって、
    前記生地は、多層構造の織編物であり、
    前記生地の肌側面のうち50cm以上は前記電極に覆われておらず露出しており、
    前記生地の肌側面は、単糸繊度:0.1〜3.0dtexの単糸Aが主に配置され、
    前記生地の肌側面とは反対側の表面は、単糸繊度:1.0〜5.0dtexの単糸Bが主に配置され、且つ、
    前記単糸Bの単糸繊度の前記単糸Aの単糸繊度に対する比は1.3〜20.0であることを特徴とする衣類。
  2. 前記生地は編物であり、前記生地の完全組織において、
    前記生地の肌側面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが糸Aにより構成されており、
    前記生地の肌側面とは反対側の表面を形成するニットループのうち、個数割合で50%以上のニットループが糸Bにより構成されており、
    前記糸Aは、前記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が前記単糸Aであり、
    前記糸Bは、前記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が前記単糸Bである請求項1に記載の衣類。
  3. 前記編物は丸編により構成されたものであり、
    前記生地の肌側面を形成するループは、タックループを含まずニットループのみである請求項2に記載の衣類。
  4. 前記生地は、緯二重織、又は経二重織であり、前記生地の完全組織において、
    前記生地の肌側面における織組織上の糸Aの出現割合が50%以上であり、
    前記生地の肌側面とは反対側の表面における織組織上の糸Bの出現割合が50%以上であり、
    前記糸Aは、前記糸Aを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が前記単糸Aであり、
    前記糸Bは、前記糸Bを構成する単糸のうち90%以上の本数の単糸が前記単糸Bである請求項1に記載の衣類。
  5. 前記生地の肌側面は、朱子織、又は綾織により形成されている請求項1または4に記載の衣類。
  6. 前記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる密着力が2gf以上、60gf以下である請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
    [密着力の測定方法]
    前記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、前記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.2mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、前記生地と前記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。
  7. 前記生地の肌側面は、下記測定方法により求められる最大密着力が20gf以上、60gf以下である請求項1〜6のいずれかに記載の衣類。
    [最大密着力の測定方法]
    前記生地を5cm×5cmの寸法に切り取り、前記生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.1mlの水を滴下する。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、前記圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加える。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、前記生地と前記天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とする。その後、水0.1mlを滴下して密着力を測定する操作を、水滴下量の合計が1.0mlに至るまで繰り返し、水を1.0ml滴下するまでの間の最大の密着力を最大密着力とする。
  8. 前記糸Bは、撥水性を有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の衣類。
  9. 前記電極は、導電フィラーとエラストマーを含む請求項1〜8のいずれかに記載の衣類。
  10. 前記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うものである請求項1〜9のいずれかに記載の衣類。
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