本発明の衣類は、着用者の肌に接触する電極が形成されている。そして、上記衣類には、電極が配置された部位を含む少なくとも100cm2以上の領域に生地が形成されており、上記生地は、親水基としてカルボキシル基および塩型カルボキシル基の少なくとも一方を有し、水分を吸着して発熱する吸湿発熱機能を有する点に特徴がある。
以下、本発明の衣類について、詳細に説明する。
上記衣類には、着用者の肌に接触する電極が設けられており、電極の電極面が、着用者の肌に直接接触することによって、身体からの電気信号を測定でき、生体情報を計測できる。生体情報としては、電極で取得した電気信号を電子ユニットで演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの身体の情報が得られる。
上記電極としては、心電図を測定できる電極を設けることが好ましい。心電図とは、心臓の動きによる電気的な変化を、生体表面の電極を介して検出し、波形として記録された情報を意味する。心電図は、一般的には、横軸に時間、縦軸に電位差をプロットした波形として記録される。心拍1回ごとに心電図に現れる波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在する。また、Q波の始めからS波の終わりまでは、QRS波と呼ばれることがある。
これらの波のなかでも、本発明の衣類には、少なくともR波を検知できる電極を設けることが好ましい。R波は、左右両心室の興奮を示し、電位差が最も大きい波である。R波を検知できる電極を設けることにより、心拍数も計測できる。即ち、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間は、一般に、RR間隔(秒)と呼ばれ、1分間当たりの心拍数は、下記式に基づいて算出できる。なお、本明細書においては、特に注釈のない限り、QRS波もR波に含まれる。
心拍数(回/分)=60/RR間隔
上記電極の具体的な構成については、後で詳述する。
上記衣類には、上記電極が配置された部位を含む少なくとも100cm2以上の領域に生地が形成されている。上記領域に、以下に詳述する生地が形成されているため、高い吸湿性と優れた持続保温性の両方の効果が得られる。すなわち、上記効果に優れた生地が電極の近くに形成されていると、着用直後に体からの不感蒸汗を吸着し、吸湿発熱効果により、電極部の温度も上昇する。その結果、冬の乾燥状態の肌においても肌との密着性が向上し、肌表面とのインピーダンスが下がるため、生体情報を計測しやすくなる。また、体からの湿気を吸湿することにより、蒸れによる不快感が抑えられ、発汗し難くなると同時に、発汗時でも肌面の水分を吸収するため、運動直後の汗による冷えを抑える効果もあり、着用快適性に優れる。
上記生地が形成されている領域は、前記衣類の50面積%以上が好ましく、より好ましくは80面積%以上、更に好ましくは95面積%以上である。
本発明に用いられる生地は、親水基としてカルボキシル基および塩型カルボキシル基の少なくとも一方を有し、水分を吸着して発熱する吸湿発熱機能を有している。このように水分を吸着する時に発生する熱(吸着熱)を利用した吸湿発熱繊維を用いれば、ムレ感のないドライな暖かさを、長く保温できるため、吸湿性および持続保温性が著しく向上する。更に優れた水分発散能力を有しており、吸収した水分をそのまま発散するため、乾燥性にも非常に優れている。
ここで、親水基としてカルボキシル基および塩型カルボキシル基の少なくとも一方を有する生地としては、アクリル酸やメタクリル酸などの、カルボキシル基を有するモノマーを綿や糸の状態で、グラフト重合などにより付与した繊維を用いて作られた生地;生地の状態で染色加工工程において、アクリル酸やメタクリル酸などの、カルボキシル基を有するモノマーをグラフト重合して作られた生地;カルボキシル基および塩型カルボキシル基の少なくとも一方を有するポリマーを表面上に形成した生地;などが挙げられる。上記グラフト重合に用いられるベース繊維材料としては、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維;コットン、リネン、ウールなどの天然繊維;アセテート、レーヨンなどの半合成繊維が挙げられる。
上記吸湿発熱繊維の代表例として、高架橋ポリアクリレート系繊維および当該高架橋ポリアクリレート系繊維を疎水化処理した疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維が挙げられる。ここで高架橋ポリアクリレート系繊維を選択した理由は、上記繊維は、ウール、コットン、ポリエステル等の他の繊維に比べて吸着熱が高いためである。本発明では、これらの繊維(改変された繊維も含む)が全て適用される。
このうち前者の高架橋ポリアクリレート系繊維は一般に、アクリル系繊維をヒドラジン等の架橋剤で架橋して湿潤時の膨潤を抑制し、かつ親水性基を導入することによって得られる。親水性基としてカルボキシル基(−COOH)及び/又はアルカリ金属塩等の塩型カルボキシル基(例えば−COONa)が挙げられる(例えば特公平7−59762号公報)。更に上記の改良技術も種々提案されており、例えば特開平9−59872号公報には、アクリル系繊維のニトリル基量を大きく変化させることによって衣類内の温度および湿度が適度に調節可能な吸湿性架橋アクリル系繊維が開示されている。これらに限定されず、本発明では種々の高架橋ポリアクリレート系繊維を使用することができる。
また後者の疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維は、上記高架橋ポリアクリレート系繊維に疎水化剤が導入されたものである。疎水化剤を導入することにより上記繊維の特性が改質されて、吸湿発熱性の持続効果の更なる向上、衣類に要求される他の特性向上(例えば風合い、紡績工程通過性等)といった効果が得られる。
このような疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維の一例として、親水性基としてカルボキシル基及び/又は塩型カルボキシル基を有し、水分を吸着して発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維に、疎水化剤が0.2omf%以上2.5omf%以下の範囲で結合しており、液相の水分に対しては疎水性であり、液相の水分と接触しても水分をはじき、水分を吸着して吸湿発熱し、温度20℃、湿度45%RHの雰囲気下にある液相水分(水)に浮べた時、21℃以上の温度に発熱している持続時間が10分以上である疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維が挙げられる。上記繊維を用いれば、水分を吸着して発熱する高架橋ポリアクリレート系繊維に対して、特定量の疎水化剤を結合させたことにより、多量発汗や雨がかかる等、液相(液体)の水分と接触しても水をはじき、吸湿発熱が持続するという効果が得られる。また、繊維に対して疎水化剤を0.2omf%以上2.5omf%以下の範囲で結合させることにより、風合いを良好に保つことができ、かつ紡績工程通過性も良好である。
上記高架橋ポリアクリレート系繊維を疎水化するには、高架橋ポリアクリレート系繊維に対して疎水性物質をイオン吸着結合させれば良い。例えば、前記高架橋ポリアクリレート系繊維の表面にフッ素ガスを接触させてフッ素を結合させるか、あるいは、フッ素含有化合物、シリコーン化合物、フッ素含有シリコーン化合物又は炭化水素系化合物を含む疎水化剤を結合させることにより発現される。疎水化剤とは、相手物質を疎水化する化合物であり、例えば撥水剤のことをいう。
上記繊維は、側鎖に親水性の官能基を有しており、疎水化剤はこれらの官能基と結合させるのが好ましい。洗濯を繰り返しても疎水性を低下させないためである。使用可能な疎水化剤としては、例えばフッ素系疎水化剤が挙げられる。具体的には、例えば市販品の“アサヒガードGS10”(商品名)(旭硝子社製、フッ素系疎水剤エマルジョン)、“NKガードFGN700T”(商品名)、“NKガードNDN7000”(商品名)(いずれも日華化学社製、フッ素系疎水剤エマルジョン)等がある。また、使用可能な他の疎水化剤としては、例えば変性シリコーン系疎水化剤が挙げられる。具体的には、エポキシ変性シリコーン系疎水化剤、カチオン系アミノ変性シリコーン系疎水化剤等があり、市販品としては、信越シリコーン社製の“X−22−9002”(商品名、側鎖両末端型エポキシ変性シリコーン)、“X−22−163A”(商品名、両末端型エポキシ変性シリコーン)“KF−8012”(商品名、カチオン系両末端アミノ変性シリコーン)などがある。そのほか、カチオン系フッ素含有シリコーン化合物[市販品として、例えば日華化学社製、商品名“NKガードS−07”、“NKガードS−09”]、カチオン系フッ素化合物[市販品として、例えば“AG−E061”(商品名)、“AG−E081”(商品名)、“AG−E082”(商品名)、“AG−E092”(商品名)、“AG−E500D”(商品名)(いずれも旭硝子社製、カチオン系フッ素系疎水剤エマルジョン)]、カチオン系炭化水素系化合物[例えば、高融点ワックスエマルジョン:日華化学社製、商品名“TH−44”]などが挙げられる。
これらの中でもカチオン系フッ素含有シリコーン化合物、カチオン系フッ素含有化合物、カチオン系アミノ変性シリコーン化合物及びカチオン系炭化水素化合物から選ばれる少なくとも一つの疎水化剤が好ましい。この理由は、上記高架橋ポリアクリレート系繊維は、前記のとおり親水性基として塩型カルボキシル基、例えば−COONa基を有する繊維であり、カチオン系疎水化剤であれば前記塩型カルボキシル基とイオン的に吸着結合し易いからである。特にカチオン系フッ素含有シリコーン化合物が好ましい。カチオン系フッ素含有シリコーン化合物は、一例としてフロロアルキル基とシリコーン基(有機ケイ素基)と第4級アンモニウム塩などのカチオン基を含む化合物が挙げられる。他の例としては、フロロアルキル基とシリコーン基(有機ケイ素基)とを含む化合物にカチオン系界面活性剤を混合して水性エマルジョンに調製したものが挙げられる。
これら疎水化剤は水に分散させた状態で繊維に付着させるのが好ましい。繊維を処理液に浸漬する、繊維に噴霧する、あるいはパッドする方法などにより接触させ、その後キュアセットによる熱処理により結合固定できる。
疎水化剤の結合量は繊維に対して、0.2〜2.5質量%(質量%はomf%ともいう。omfはon the mass of fiberの略。)であり、好ましくは0.22〜2.0omf%である。上記の範囲であれば、繊維は液相の水分と接触しても水をはじき、気相(蒸気)の水分を吸着して発熱が持続し、風合いは良好で紡績工程通過性も良好である。疎水化剤の結合量が0.2質量%未満では好ましい疎水性は得難く、2.5質量%を超えると風合いも紡績工程通過性も低下する。
上記疎水化剤による処理は、繊維綿状態で行っても良いが、糸の状態で行っても良いし、生地(織物、編物、不織布)の状態で行っても良い。疎水化処理方法は、浸漬、パッド、プリント等の一般的に行われている処理方法を採用できる。
上記疎水化高架橋ポリアクリレート系繊維の詳細は、例えば特許第5721746号公報を参照することができる。
上記生地は、前述したポリアクリレート系繊維を10質量%以上含むことが好ましい。これにより、上記効果が一層有効に発揮される。より好ましくは12質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上である。なおその上限は特に限定されないが、生地の強力や堅牢度などの実用耐久性などを考慮すると、60質量%以下であることが好ましい。
なお、上記ポリアクリレート系繊維以外の他の繊維としては、例えば、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、羊毛などが挙げられる。好ましくは羊毛であり、これにより、肌触りの改善、風合いの改善などの効果が得られる。生地中に占める上記「他の繊維」の含有量は、上記ポリアクリレート系繊維の含有量を満足する限り、特に限定されない。
本発明に係る衣類のうち、上記生地が形成されていない領域の生地は、特に限定されず、公知の生地を用いることができる。
本発明の衣類は、着用者の肌に接触する電極が形成されていればよく、その形態は特に限定されず、例えば、スポーツインナー、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、肌着、下着、病衣、または寝間着などが挙げられる。これらの中でも、肌着が好ましく、特に女性用の肌着が好ましい。
上記衣類が、袖を有する場合は、半袖、五分袖、七分袖、長袖等のいずれであってもよく、袖の形状は、ラグラン袖であってもよい。
上記衣類は、胸部、手部、脚部、足部、頸部、または顔部のいずれかを少なくとも覆うことが好ましい。
次に、上記衣類に設ける電極について説明する。
上記電極は、被測定者の運動動作に追従できるように伸縮性を有することが好ましい。
上記伸縮性を有する電極としては、例えば、導電性ファブリックで構成されている電極や、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成されたシート状の電極が挙げられる。
上記導電性ファブリックで構成されている電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した繊維状の電極が挙げられる。
上記導電性ファブリックは、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。上記伸長率が下限値を下回ると、電極が衣類の生地の動きに充分に追従しにくくなり、生地から電極が剥がれることがある。従って上記伸長率は、3%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。しかし、伸長率が上限値を超えると、電極が伸びすぎて生体情報を精度良く計測できないことがある。従って上記伸長率は、60%以下が好ましく、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
上記伸長率は、身丈方向または身幅方向で上記範囲を満足することが好ましく、身丈方向および身幅方向の両方において上記範囲を満足することがより好ましい。
上記シート状の電極の材料としては、例えば、導電性が高い導電性フィラーを用いることによって、繊維状電極よりも電気抵抗値を低くすることができるため、微弱な電気信号を検知できる。
上記電極は、生体の電気的情報を検知できる導電層を含み、更に肌とは逆側、即ち、導電層の衣類側に絶縁層を有することが好ましい。以下、衣類側の絶縁層を、第一絶縁層ということがある。
また、上記衣類は、電極の他、該電極と、該電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等とを接続する配線を有している。上記配線は、電極で検知した生体の電気信号を電子ユニット等へ伝達するための導電層を含み、更に肌とは逆側、即ち、導電層の衣類側に絶縁層(第一絶縁層)を有することが好ましい。上記配線は、導電層の肌側にも絶縁層を有することが好ましい。以下、肌側の絶縁層を、第二絶縁層ということがある。
以下、導電層、第一絶縁層、第二絶縁層について具体的に説明する。
(導電層)
導電層は、導通を確保するために必要である。上記導電層は、導電性フィラーと柔軟性を有する樹脂を含むことが好ましく、各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。
上記導電性フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などを用いることができる。上記導電性フィラーは、1種でも良いし、2種以上でもよい。
上記金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉;銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉;卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉;卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉等が挙げられる。これらの中でも、銀粉および/または銅粉が好ましく、低コストで、高い導電性を発現させることができる。
上記金属粉としては、フレーク状粉または不定形凝集粉を主体に(例えば、50質量%以上)用いることが好ましい。フレーク状粉および不定形凝集粉は、球状粉などよりも比表面積が大きいため、低充填量でも導電性ネットワークを形成できるので好ましい。
上記フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法によって測定した平均粒子径(50%D)が0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜12μmである。平均粒子径が20μmを超えると微細配線の形成が困難になることがある。平均粒子径が0.5μm未満では、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化することがある。上記フレーク状粉としては、例えば、フレーク状銀粉を用いることが好ましい。
上記不定形凝集粉とは、球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。上記不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネットワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
上記不定形凝集粉としては、例えば、不定形凝集銀粉を用いることが好ましい。
上記金属ナノ粒子としては、上述した金属粉のうち、粒子径が数ナノ〜数十ナノの粒子を意味する。
上記導電性フィラーに占める金属ナノ粒子の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属ナノ粒子の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属ナノ粒子は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが望ましい。
上記金属粉以外の導電材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素系材料が挙げられる。上記金属粉以外の導電材料は、表面に、メルカプト基、アミノ基、ニトリル基を有するか、表面が、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることが好ましい。一般に、金属粉以外の導電材料自体は凝集力が強く、アスペクト比が高い金属粉以外の導電材料は、樹脂中への分散性が悪くなるが、表面にメルカプト基、アミノ基またはニトリル基を有するか、スルフィド結合および/またはニトリル基を含有するゴムで表面処理されていることによって、樹脂に対する親和性が増して、分散し、有効な導電性ネットワークを形成でき、高導電性を実現できる。
上記導電性フィラーに占める金属粉以外の導電材料の割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。金属粉以外の導電材料の含有割合が多すぎると、樹脂中に均一に分散させ難くなることがあり、また一般に上述のような金属粉以外の導電材料は高価であることからも、上記範囲に使用量を抑えることが望ましい。
上記導電層は、導電性フィラーの種類や、導電性フィラーの添加量等を変化させた2種類以上の導電層を積層したり、配列させて、複数の導電層を一体化したものであっても構わない。
上記導電層に占める上記導電性フィラー(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める導電性フィラー)は、15〜45体積%が好ましく、より好ましくは20〜40体積%である。導電性フィラーが少なすぎると、導電性が不充分になる虞がある。一方、導電性フィラーが多すぎると、導電層の伸縮性が低下する傾向があるため、電極および配線を伸長したときにクラック等が発生し、良好な導電性を保持できない虞がある。
上記導電層は、非導電性粒子を含んでもよく、該非導電性粒子は、平均粒子径が0.3〜10μmが好ましい。
上記非導電性粒子としては、例えば、金属酸化物の粒子を用いることができ、具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫酸バリウム粒子などの金属の硫酸塩、金属の炭酸塩、金属のチタン酸塩等を用いることができる。これらの中でも、硫酸バリウム粒子を用いることが好ましい。
上記柔軟性を有する樹脂としては、例えば、弾性率が1〜1000MPaの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどが挙げられるが、膜の伸縮性を発現させるためには、ゴムが好ましい。上記柔軟性を有する樹脂は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
上記柔軟性を有する樹脂の弾性率は、より好ましくは3〜600MPa、更に好ましく10〜500MPa、特に好ましくは30〜300MPaである。
上記ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。
上記ニトリル基含有ゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18〜60質量%が好ましく、40〜55質量%が特に好ましい。
上記導電層は、上述した各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、後述する第一絶縁層上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。上記導電層は、上記導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで後述する第一絶縁層上に積層して形成してもよい。
上記導電性ペーストは、粉体を液体に分散させる従来公知の方法を採用して調製すればよく、柔軟性を有する樹脂中に導電性フィラーを均一に分散することによって調製できる。例えば、金属粉、金属ナノ粒子、金属粉以外の導電材料などと、樹脂溶液を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロールミル法、ボールミル法などで均一に分散すればよい。これらの手段は、複数を組み合わせて用いることができる。
上記導電性ペーストを塗布または印刷する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング法、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷などの印刷法などを採用できる。
上記導電層の乾燥膜厚は、10〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜130μm、更に好ましくは30〜100μmである。上記導電層の乾燥膜厚が薄すぎると、電極および配線が、繰り返し伸縮を受けて劣化しやすく、導通が阻害ないし遮断される虞がある。一方、上記導電層の乾燥膜厚が厚すぎると、伸縮性が阻害され、また、電極および配線が厚くなりすぎ、着心地が悪くなる虞がある。
(第一絶縁層)
上記第一絶縁層は、絶縁層として作用する他、電極および配線の導電層を生地に形成するための接着層として作用すると共に、着用時に第一絶縁層が積層された生地の反対側(即ち、衣類の外側)からの水分が導電層に達することを防ぐ止水層としても作用する。また、導電層の衣類側に第一絶縁層を設けることによって、第一絶縁層が、生地の伸びを抑制し、導電層が過度に伸長されるのを防ぐことができる。その結果、第一絶縁層にクラックが発生することを防止できる。これに対し、上述したように、上記導電層は、良好な伸長性を有するものであるが、生地が導電層の伸長性を超えた伸び性に富む素材の場合、生地表面に導電層を直接形成すると、生地の伸びに追随して導電層が伸ばされ過ぎ、その結果、導電層にクラックが発生すると考えられる。
上記第一絶縁層は、絶縁性を有する樹脂で構成すればよく、樹脂の種類は特に制限されない。
上記樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂がより好ましく、導電層との接着性が一層良好となる。
上記第一絶縁層を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記第一絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させることによって形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第一絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第一絶縁層が薄すぎると、絶縁効果および伸び止め効果が不充分になることがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第一絶縁層が厚すぎると、電極および配線の伸縮性が阻害されることがある。また、電極および配線が分厚くなりすぎ、着心地が悪くなるおそれがある。従って上記第一絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
(第二絶縁層)
上記配線は、前記導電層の上に、第二絶縁層が形成されていることが好ましい。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗などの水分が導電層に接触することを防止できる。
上記第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した第一絶縁層を構成する樹脂と同様のものが挙げられ、好ましく用いられる樹脂も同じである。
上記第二絶縁層を構成する樹脂も、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記第二絶縁層を構成する樹脂は、上記第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層の被覆性および配線の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。
上記第二絶縁層は、上記第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。
上記第二絶縁層の平均膜厚は10〜200μmが好ましい。上記第二絶縁層が薄すぎると、繰り返し伸縮したときに劣化しやすく、絶縁効果が不充分になることがある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。しかし、上記第二絶縁層が厚すぎると、配線の伸縮性が阻害され、また配線の厚みが厚くなりすぎて着心地が悪くなる虞がある。従って上記第二絶縁層の平均膜厚は200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
上記電極および配線は、10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が、100N/cm以下であることが好ましい。10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重が100N/cmを超えると、電極および配線の伸長が、生地の伸長に追従し難くなり、衣類を着用したときの着心地を阻害することがあった。従って10%伸長時にかかる単位幅当りの荷重は、100N/cm以下が好ましく、より好ましくは80N/cm以下、更に好ましくは50N/cm以下である。
上記電極および配線は、20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍以下であることが好ましい。20%伸長時における電気抵抗の変化倍率が5倍を超えると、導電性の低下が著しくなる。従って20%伸長時における電気抵抗の変化倍率は5倍以下であることが好ましく、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
上記電極と配線は、異なる材料で構成されていてもよいが、同じ材料で構成されていることが好ましい。
上記電極と配線を同じ材料で構成する場合は、配線の幅は1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。配線幅の上限は特に限定されないが、例えば、10mm以下とすることが好ましく、より好ましくは9mm以下、更に好ましくは8mm以下である。
上記電極および配線は、衣類を構成する生地に直接形成することが好ましい。
上記電極および配線を生地に形成する方法としては、電極および配線の伸縮性を妨げない方法であれば特に限定されず、着用時の身体へのフィット性や運動時、動作時の追従性などの観点から、例えば、接着剤による積層や熱プレスによる積層など、公知の方法が採用できる。これら接着剤による積層や熱プレスによる積層を行う場合、生地にシリコン系柔軟剤やフッ素系撥水剤のような、接着性を損なう材料が多く付着していない事が望ましい。これらは、生地の染色加工工程において、精練処理による弾性糸等に用いられているシリコン系油剤の除去および、生地の仕上げセット時の加工剤の選定により、調整することが出来る。
上記電極は、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けられていることが好ましい。上記電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることによって、生体情報を精度良く測定できる。上記電極は、衣類のうち、着用者の第七肋骨上端と第九肋骨下端との間の肌に接触する領域に設けることがより好ましい。
上記電極は、衣類のうち、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。
上記電極は、着用者の胴回りに沿って、円弧状に設けることが好ましい。
上記衣類に設ける電極の数は、少なくとも2つであり、2つの電極を、衣類の胸郭部または胸郭下腹部に設けることが好ましく、2つの電極を、着用者の左右の後腋窩線に平行な線であって、着用者の後腋窩線から着用者の背面側に10cm離れた場所に引いた線同士で囲まれる着用者の腹側の領域に設けることが好ましい。なお、電極を3つ以上設ける場合は、3つ目以降の電極を設ける位置は特に限定されず、例えば、後身頃生地に設けてもよい。
上記電極面の電気抵抗値は、1000Ω/cm以下が好ましく、より好ましくは300Ω/cm以下、更に好ましくは200Ω/cm以下、特に好ましくは100Ω/cm以下である。特に、上記電極の形態がシート状の場合は、電極表面の電気抵抗値を、通常、300Ω/cm以下に抑えることができる。
上記電極の形態は、シート状が好ましい。電極をシート状にすることによって、電極面を広くできるため、着用者の肌との接触面積を確保できる。上記シート状の電極は、曲げ性が良好であるものが好ましい。また、上記シート状の電極は、伸縮性を有するものが好ましい。
上記シート状の電極の大きさは、身体からの電気信号を計測できれば特に限定されないが、電極面の面積は5〜100cm2であり、電極の平均厚みは10〜500μmが好ましい。
上記電極面の面積は、より好ましくは10cm2以上、更に好ましくは15cm2以上である。上記電極面の面積は、より好ましくは90cm2以下、更に好ましくは80cm2以下である。
上記電極が薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下である。
上記電極の形状は、電極を配置する位置に相当する身体の曲線に沿い、且つ身体の動きに追随して密着しやすい形状であれば特に限定されず、例えば、四角形、三角形、五角形以上の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。電極の形状が多角形の場合は、頂点に丸みを付け、肌を傷付けないようにしてもよい。
上記配線は、導電性繊維または導電性糸を用いて形成してもよい。
上記導電性繊維または導電性糸としては、絶縁物である繊維表面に金属をメッキしたもの、細い金属線を糸に撚り込んだもの、導電性の高分子をマイクロファイバーなどの繊維間に含浸させたもの、細い金属線等を用いることができる。
上記配線の平均厚みは、10〜500μmが好ましい。厚みが薄すぎると導電性が不充分になることがある。従って平均厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。しかし、厚みが厚くなり過ぎると、着用者に異物感を感じさせ、不快感を与えることがある。従って平均厚みは500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
上記配線の形状は特に限定されず、直線、曲線の他、冗長性を有する幾何学パターンであってもよい。冗長性を有する幾何学パターンとしては、例えば、ジグザグ状、連続馬蹄状、波状などが挙げられる。冗長性を有する幾何学パターンの電極は、例えば、金属箔を用いて形成できる。
上記衣類は、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子ユニット等を備えていることが好ましい。上記電子ユニット等において、電極で取得した電気信号を演算、処理することによって、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗などの生体情報が得られる。
上記電子ユニット等は、衣類に着脱できることが好ましい。
上記電子ユニット等は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタなどを有することが好ましい。
上記電子ユニット等は、例えば、気温、湿度、気圧などの環境情報を計測できるセンサや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサなどを備えてもよい。
上記衣類を用いることにより、人の心理状態や生理状態を把握する技術への応用もできる。例えば、リラックスの度合いを検出してメンタルトレーニングしたり、眠気を検出して居眠り運転を防止したり、心電図を計測してうつ病やストレス診断等を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
本実施例では、下記実施例1および比較例1の生地を用い、以下のようにして電極および配線を形成すると共に電子ユニットを取り付けて衣類を製造し、快適性および心拍数を測定した。
(実施例1)
吸湿発熱機能を有するポリアクリレート系繊維として日本エクスラン工業(株)エクス(2.2t38mm、「t」はデシテックスの略号で短繊維を構成している繊維の太さを表わす)と、アクリル繊維(日本エクスラン工業(株)製)(1.0t38mm)とを質量比30:70で混紡し、メートル番手64番手の紡績糸を作製した。次に、上記紡績糸を用いてニット(編地)を製編した。ニットの製編には17インチ19ゲージのダブルニット機を用いた。具体的には、上記紡績糸をリブ目に編成糸長693mm/100Wとし、天竺目にはポリウレタンのナイロンをカバリングしたFTY(17T56T)を254mm/100で製編し、片袋組織を作製した。
このようにして製編された編地を開反せず、液流染色機にて精練、染色、柔軟処理して、染色機から取り出し、遠心脱水して、粗繰り、丸セット仕上げを行った。最終仕上げの生地は131g/m、丸巾(W)は38cmであった。また、生地全体に占めるポリアクリレート系繊維の混用率は26%であった。
(比較例1)
ここでは、上記実施例1のように吸湿発熱機能を有するポリアクリレート系繊維を使用せず、アクリル繊維(日本エクスラン工業(株)製)(1.0t38mm)100%からなる、メートル番手64番手の紡績糸を作製した。次いで、上記実施例1と同様にして最終仕上げの生地[129g/m、丸巾(W)は38cm]を得た。
このようにして得られた各生地に、以下のようにして電極および配線を形成した。
(導電性ペースト)
ニトリルゴム(日本ゼオン社製のNipol DN003)20部を、イソホロン80部に溶解し、NBR溶解液を作製した。得られたNBR溶液100部に、銀粒子(DOWAエレクトロニクス製の「凝集銀粉G−35」、平均粒子径5.9μm)110部を配合し、3本ロールミルにて混練して導電ペーストを得た。
(電極および配線)
上記導電性ペーストを離型シートの上に塗布し、120℃の熱風乾燥オーブンで30分以上乾燥することによって、離型シート付きシート状導電層を作製した。
次に、このようにして得られた離型シート付きシート状導電層の導電層表面に、ポリウレタンホットメルトシートを貼り合わせた後、上記離型フィルムを剥がしてポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層を得た。ここで上記ポリウレタンホットメルトシートは、ホットプレス機を用い、圧力0.5kg/cm2、温度130℃、プレス時間20秒の条件で積層した。
次に、長さ13cm、幅2.4cmのポリウレタンホットメルトシートの上に、長さ12cm、幅2cmのポリウレタンホットメルトシート付きシート状導電層のポリウレタンホットメルトシート側を、長さ方向の一端を揃えて積層し、ポリウレタンホットメルトシートとシート状導電層との積層体を作製した。ここではポリウレタンホットメルトシートが、上述した第一絶縁層に相当する。
次に、上記第一絶縁層およびシート状導電層の一部を覆うように、長さ5cm、幅2.4cmの領域に、上記第一絶縁層を形成したものと同じポリウレタンホットメルトシートを端から2cm離した部分から積層することにより、上記シート状導電層の一部の上に第二絶縁層を形成した。即ち、端部に導電層が露出した長さ2cm×幅2cmのデバイス接続部、第一絶縁層/導電層/第二絶縁層の積層構造を有する絶縁部、反対の端部に導電層が露出した長さ5cm×幅2cmの電極がこの順で長手方向に配置された伸縮性電極パーツを作製した。
次に、上記実施例1および比較例1で得られた衣類の前身頃生地の内側、即ち、着用者の肌に電極面が接触する側の所定位置に、上記のようにして製造された伸縮性電極パーツを2枚、左右対称になる形で貼り付けて衣類(肌着)を製造した。前身頃生地に設けた電極の数は2個とし、電極2個の電極面の合計面積は22cm2、電極の平均厚みは90μmであった。
次いで、電子ユニットを取り付けて得られた衣類を被験者に着用させ、下記の評価を行った。被験者は30歳男性であり、身長170cm、体重70kg、肩幅45cm、胸囲85cm、胴囲80cmであった。
寒冷環境下(10℃×40%RH)にて、足踏み歩行運動を5分間行った後、その場で5分間静止して安静状態を保ち、運動時および着用後の安静状態(安静時)における快適性を官能評価すると共に、心拍数を測定した。
その結果、実施例1の生地で作製した肌着を着用した場合、運動時では、吸湿発熱効果により肌着内部は適温に保たれ、汗もかき難く、快適に過ごすことができた。安静時においても、保温効果により肌着内部は適温に保たれ、汗冷え等もなく快適に過ごすことができた。また、運動時および安静時の両方において、心拍データの異常も見られなかった。
これに対し、比較例1の生地で作製した肌着を着用した場合、運動時では、肌着内部は適温に保たれているものの、蒸れがやや発生し、発汗が若干みられ、やや不快感が生じた。更に安静時では、汗冷えが発生し、寒く感じられた。また心拍数は、着用直後から運動開始に至るまでは肌になじまず、ノイズがやや多くエラーが発生したが、運動途中から測定できるようになり、心拍データの異常は見られなかった。