JP2021156194A - 舶用エンジンの掃気室構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストを抑制しつつ、掃気効率を向上させる。【解決手段】エンジン1の掃気室100は、シリンダジャケット13と、シリンダジャケット13に挿入される円筒状のシリンダライナ14と、を備え、シリンダライナ14に沿ってピストン21が往復移動することで、シリンダジャケット13からシリンダライナ14内へ空気を吸い出すように構成される。シリンダライナ14には、該シリンダライナ14の周方向に沿って配置される掃気ポート14aが設けられる。シリンダジャケット13の内壁部13eは、シリンダライナ14の中心軸C方向に直交しかつ掃気ポート14aを通過する横断面で見たときに、シリンダライナ14と同軸の円形状をなす。【選択図】図4
Description
本開示は、舶用エンジンの掃気室構造に関する。
例えば特許文献1には、渦巻き状の内壁部を有するシリンダジャケットが開示されている。具体的に、特許文献1に係るシリンダジャケットの内壁部は、横断面で見たときに、インボリュート曲線をなす。すなわち、この内壁部は、中心(特に、シリンダライナの中心)からの距離を一定とした円形の曲線ではなく、同距離を徐々に長くした曲線を描くように形成される。
さらに、前記特許文献1に係るシリンダジャケットには、内壁部の渦巻き形状に沿って傾斜した入口が形成される。前記特許文献1によれば、シリンダジャケットの入口から空気が流入したときに、その入口によってスワールを形成するとともに、そうして形成されたスワールを渦巻き状の内壁部に沿って導くことで、シリンダライナの各掃気ポートに流入する空気量を均一にすることができる。
また、特許文献2には、シリンダジャケットの別例が開示されている。具体的に、特許文献2に係るシリンダジャケットの内部空間(掃気室)は、シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ掃気ポートを通過する横断面で見たときに、矩形状に形成されるようになっている。
さらに、前記特許文献2に係る掃気室の掃気流入口には、掃気流の向きを制御するためのガイド板が設けられる。同文献によれば、掃気流入口にガイド板を設けることで、掃気室内でのシリンダライナ円周方向における掃気流の分布を均一化することができる。
ところで、前記特許文献2に係るシリンダジャケットのように、断面矩形状の内部空間を用いた場合、その内部空間の角部において掃気流が不均一になり、掃気効率に悪影響を及ぼす可能性があった。そのため、同文献に開示されているように、掃気流入口にガイド板を設けることが考えられる。しかしながら、ガイド板を設ける場合、部品点数を増加させることになるため、製造コストという点では望ましくない。
そこで、前記特許文献1に開示されているように、シリンダジャケットの内壁部を渦巻き状に形成するとともに、その渦巻き形状に沿って傾斜した入口を形成することも考えられる。しかしながら、前記特許文献1に開示されている構成は、シリンダジャケットの内壁部および入口に高精度な曲面加工が要求されるため、製造コストという点でやはり望ましくない。
またそもそも、前記特許文献1に開示されている構成は、シリンダジャケットの入口から掃気が流れ込むことを前提とした構成である。そのため、入口の形状、配置等が制限されてしまうという問題も存在する。このことは、多種多様なエンジンに用いるには不都合である。
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストを抑制しつつ、掃気効率を向上させることにある。
本開示の第1の態様は、掃気トランクに接続されるシリンダジャケットと、前記シリンダジャケットに挿入される円筒状のシリンダライナと、を備え、前記シリンダライナに沿ってピストンが往復移動することで、前記シリンダジャケットから前記シリンダライナ内へ空気を吸い出すように構成された舶用エンジンの掃気室構造に係る。
そして、本開示の第1の態様によれば、前記シリンダライナには、該シリンダライナの周方向に沿って配置される掃気ポートが設けられ、前記シリンダジャケットの内壁部は、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートを通過する横断面で見たときに、前記シリンダライナと同軸の円形状をなす。
前記第1の態様によれば、シリンダジャケットの内壁部は、所定の横断面で見たときに、シリンダライナと同軸の円形状をなす。このように構成することで、掃気トランクからシリンダジャケット内に流入した空気が、円形状の内壁部に沿って流れるようになる。これにより、シリンダジャケット内に、円周方向に沿って流れる一様な掃気流を実現することができる。そのことで、掃気流の均一化を図り、ひいては、掃気効率を向上させることができる。また、前記内壁部とシリンダライナとを同軸に構成することで、シリンダジャケットの内壁部と、シリンダライナの外壁部と、の間隔を略一定に保つことができる。このことも、掃気流の均一化に資する。
また、前記第1の態様は、ガイド板のような別体の部品を必要としたり、シリンダジャケットの入口の形状に工夫を凝らしたりする必要がない。そのため、製造コストの抑制にも資する。
このように、前記第1の態様によれば、製造コストを抑制しつつ、掃気効率を向上させることができる。
また、本開示の第2の態様によれば、前記シリンダジャケットの内壁部は、下方に向かって拡径する円錐形状をなす、としてもよい。
前記第2の態様によれば、前記横断面付近のボリュームをより大きくすることができる。これにより、掃気流の流動性を高めることができ、掃気効率の向上にさらに有利になる。
また、本開示の第3の態様によれば、前記シリンダライナの外壁部のうち、前記掃気ポートよりも上方に位置する部分を第1部分とし、前記掃気ポートよりも下方に位置する部分を第2部分とすると、前記第2部分は、その少なくとも一部が前記第1部分に比して小径に形成される、としてもよい。
前記第3の態様によれば、シリンダジャケットの内壁部を下方に向かって拡径させたことと、第2部分の少なくとも一部を相対的に小径に形成したことと、が相まって、シリンダジャケットの内壁部と、シリンダライナの外壁部と、の間のスペースを可能な限り広げることができる。これにより、掃気流の流動性を高めることができ、掃気効率の向上にさらに有利になる。
また、本開示の第4の態様によれば、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートを通過する横断面で見たときに、前記シリンダジャケットの断面積をA1とし、前記シリンダライナの断面積をA2とすると、
A1−A2≧A2
の関係が成立する、としてもよい。
A1−A2≧A2
の関係が成立する、としてもよい。
前記第4の態様によれば、シリンダジャケットの内壁部と、シリンダライナの外壁部と、の間のボリュームをより大きくすることができ、掃気流の流動性を高めることができる。そのことで、掃気効率の向上にさらに有利になる。
また、本開示の第5の態様によれば、前記掃気ポートは、上下方向に沿って延び、前記関係は、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートの上端部を通過する横断面で見たときと、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートの下端部を通過する横断面で見たときと、の双方において成立する、としてもよい。
前記第5の態様によれば、シリンダジャケットの内壁部と、シリンダライナの外壁部と、の間のボリュームを可能な限り大きくすることができ、掃気流の流動性を高めることができる。そのことで、掃気効率の向上にさらに有利になる。
以上説明したように、本開示によれば、製造コストを抑制しつつ、掃気効率を向上させることができる。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、舶用エンジン(以下、単に「エンジン1」ともいう)の構成を例示する模式図である。
エンジン1は、複数のシリンダ16を備えた直列多気筒式のディーゼルエンジンである。このエンジン1は、ユニフロー掃気方式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。
船舶に搭載されたエンジン1は、その船舶を推進させるための主機関として用いられる。そのために、エンジン1の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することにより、その出力がプロペラに伝達されて、船舶が推進するように構成されている。
特に、本開示に係るエンジン1は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。すなわち、このエンジン1においては、下方からピストン21を支持するピストン棒22と、クランクシャフト23に連接される連接棒24と、がクロスヘッド25により連結されている。
(1)主要構成
以下、エンジン1の要部について説明する。
以下、エンジン1の要部について説明する。
図1に示すように、エンジン1は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられるシリンダジャケット13と、を備えている。台板11、架構12及びシリンダジャケット13は、上下方向に延びる複数のタイボルト及びナットにより締結されている。エンジン1はまた、シリンダジャケット13内に設けられるシリンダ16と、シリンダ16内に設けられるピストン21と、ピストン21の往復移動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト23)と、を備えている。
台板11は、エンジン1のクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト23と、クランクシャフト23を回転自在に支持する軸受26と、を収容している。クランクシャフト23には、クランク27を介して連接棒24の下端部が連結されている。
架構12は、一対のガイド板28と、連接棒24と、クロスヘッド25と、を収容している。このうち、一対のガイド板28は、ピストン軸方向に沿って設けられた一対の板状部材からなり、エンジン1の幅方向(図1の紙面左右方向)に間隔を空けて配置されている。連接棒24は、その下端部がクランクシャフト23に連結された状態で、一対のガイド板28の間に配置されている。連接棒24の上端部は、クロスヘッド25を介してピストン棒22の下端部に連結されている。
具体的に、クロスヘッド25は、一対のガイド板28の間に配置されており、各ガイド板28に沿って上下方向に摺動する。すなわち、一対のガイド板28は、クロスヘッド25の摺動を案内するように構成されている。クロスヘッド25は、クロスヘッドピン29を介してピストン棒22及び連接棒24と接続されている。クロスヘッドピン29は、ピストン棒22に対しては一体的に上下動するよう接続されている一方、連接棒24に対しては、連接棒24の上端部を支点として、連接棒24を回動させるように接続されている。
シリンダジャケット13は、内筒としてのシリンダライナ14を支持する。シリンダライナ14は、円筒状に形成されており、シリンダジャケット13に挿入される。シリンダジャケット13の内部空間S1は、シリンダライナ14の内部空間S2と連通する(図3及び図4を参照)。シリンダライナ14の内部には、前述のピストン21が配置されている。このピストン21は、シリンダライナ14の内壁に沿って上下方向に往復移動する。また、シリンダライナ14の上部にはシリンダカバー15が固定されている。シリンダカバー15は、シリンダライナ14とともにシリンダ16を構成している。
また、シリンダカバー15には、不図示の動弁装置によって作動される排気弁18が設けられている。排気弁18は、シリンダライナ14及びシリンダカバー15から構成されるシリンダ16、並びに、ピストン21の頂面とともに燃焼室17を区画している。排気弁18は、その燃焼室17と排気管19との間を開閉するものである。排気管19は、燃焼室17に通じる排気口を有しており、排気弁18は、その排気口を開閉するように構成されている。
また、シリンダカバー15には、燃焼室17に燃料を供給するための燃料噴射弁31が設けられている。燃料噴射弁31は、燃焼室17の室内にディーゼル燃料を噴射する。
さらに、本実施形態に係るエンジン1は、燃料噴射弁31にディーゼル燃料を圧送する燃料ポンプ32を備えている。図1に示すように、燃料ポンプ32は、シリンダ16の近傍にレイアウトされており、不図示の燃料噴射管を介して燃料噴射弁31と流体的に接続されている。
シリンダ16の近傍には、排気マニホールド41も配置される。この排気マニホールド41は、排気管19を介して燃焼室17と接続される。排気マニホールド41は、燃焼室17から排気管19を通じて排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスを一時貯留して、この排ガスの動圧を静圧に変える。
エンジン1は、空気等の燃焼用気体を過給する過給機42と、過給機42によって圧縮された燃焼用気体を一時的に貯留する掃気トランク43と、をさらに備えている。過給機42は、排ガスの圧力を利用してタービン(不図示)とともにコンプレッサ(不図示)を回転させ、このコンプレッサによって燃焼用気体を圧縮する。掃気トランク43は、シリンダジャケット13の内部空間S1と連通するように設けられる。過給機42によって圧縮された燃焼用気体(以下、「圧縮気体」ともいう)は、掃気トランク43からシリンダジャケット13の内部空間S1に流入し、この内部空間S1から掃気ポート14aを通じてシリンダライナ14の内部空間S2に送給される。
エンジン1の運転に際しては、燃焼室17の室内に、燃料噴射弁31からディーゼル燃料が供給されるとともに、掃気トランク43からシリンダジャケット13等を通じて圧縮気体が供給される。これにより、燃焼室17内においては、ディーゼル燃料が圧縮気体によって燃焼する。
そして、ディーゼル燃料の燃焼により生じたエネルギーによって、ピストン21は、シリンダライナ14に沿って上下方向に往復移動をする。このとき、排気弁18が作動して燃焼室17が開放されると、燃焼によって生じた排ガスが排気管19に押し出される。また、シリンダライナ14に沿ってピストン21が往復移動することで、シリンダジャケット13からシリンダライナ14内へ圧縮気体(空気)が吸い出されて、これをピストン21が押し込むことで、燃焼室17内に圧縮気体が新たに導入される。このような行程を繰り返すことで、ディーゼル燃料の燃焼と、シリンダ16内の掃気と、が繰り返し実行される。
また、燃焼によってピストン21が往復移動をすると、ピストン21とともにピストン棒22が上下方向に往復移動をする。これにより、ピストン棒22に連結されたクロスヘッド25が、上下方向に往復移動をする。このクロスヘッド25は、連接棒24の回動を許容するようになっており、クロスヘッド25との接続部位を支点として、連接棒24を回動させる。そして、連接棒24の下端部に接続されるクランク27がクランク運動し、そのクランク運動に応じてクランクシャフト23が回転する。こうして、クランクシャフト23は、ピストン21の往復移動を回転運動に変換し、プロペラ軸とともに船舶のプロペラを回転させる。これにより、船舶が推進する。
ところで、シリンダ16内の掃気効率は、掃気トランク43からシリンダジャケット13を介してシリンダライナ14内へ至る空気流(以下、これを「掃気流」ともいう)の状態に左右される。
本願発明者らは、シリンダジャケット13及びシリンダライナ14によって構成される掃気室100の構造に工夫を凝らすことで、掃気効率を向上させるに至った。
以下、掃気室100に関連した各部の構造について詳述する。
(2)エンジンの掃気室構造
図2はエンジン1の掃気室構造を例示する斜視図である。また、図3はエンジン1の掃気室構造を例示する縦断面図であり、図4はその横断面図である。前述のように、エンジン1の掃気室100は、掃気トランク43に接続されるシリンダジャケット13と、このシリンダジャケット13に挿入される円筒状のシリンダライナ14と、によって構成される。
図2はエンジン1の掃気室構造を例示する斜視図である。また、図3はエンジン1の掃気室構造を例示する縦断面図であり、図4はその横断面図である。前述のように、エンジン1の掃気室100は、掃気トランク43に接続されるシリンダジャケット13と、このシリンダジャケット13に挿入される円筒状のシリンダライナ14と、によって構成される。
シリンダジャケット13は、シリンダライナ14の下部を覆う外衣として機能する。具体的に、シリンダジャケット13は、図2及び図3に示すように、略直方状の箱体として構成される。
また、シリンダジャケット13は、図2及び図3に示すように、箱体の一側面に開口する第1開口部13aと、第1開口部13aとは反対側の側面に開口する第2開口部13bと、箱体の下面に開口する第3開口部13cと、箱体の上面に開口する第4開口部13dと、内部空間S1を区画する内壁部13eと、を有する。
このうち、第1開口部13a及び第2開口部13bは、それぞれ、上下方向に延びる長円状に形成される。図3に示すように、上下方向における第1開口部13aの寸法は、同方向における第2開口部13bの寸法よりも長い。また、第1開口部13a及び第2開口部13bのうち、第1開口部13aには、掃気トランク43が接続される(図示省略)。この接続によって、掃気トランク43と、シリンダジャケット13の内部空間S1と、が連通することになる。第2開口部13bは、不図示の蓋部等によって閉塞される。
第3開口部13cは、図3に示すように、ピストン棒22を挿入可能に構成される。ピストン棒22は、第3開口部13c付近に配置された軸受(不図示)によって、上下動可能に支持される。
第4開口部13dは、図3に示すように、シリンダライナ14の下部(具体的には、被支持部14cよりも下方に位置する部分)を挿入可能に構成される。第4開口部13dの周縁部は、シリンダライナ14における被支持部14cを下方から支持するようになっている。
内壁部13eは、図3に示すように、第1開口部13a、第2開口部13b、第3開口部13c及び第4開口部13dを通じて外部と連通する。内壁部13eは、シリンダライナ14の下部を取り囲んで覆うようになっている。また、図3に示すように、本実施形態に係る内壁部13eは、上方に向かって先細に形成されている。すなわち、第4開口部13d付近における内壁部13eの横断面は、第3開口部13c付近における内壁部13eの横断面よりも小さい。
シリンダライナ14は、ピストン21の往復移動を案内する内筒として機能する。具体的に、シリンダライナ14は、図2及び図3に示すように、上下方向に沿って延びる円筒状に形成される。
また、シリンダライナ14は、図2及び図3に示すように、該シリンダライナ14の下部に設けられる掃気ポート14aと、シリンダライナ14の内部空間S2を区画するライナ内壁部14bと、シリンダジャケット13によって支持される被支持部14cと、を有する。
このうち、掃気ポート14aは、該シリンダライナ14の周方向に沿って配置される。詳しくは、本実施形態に係る掃気ポート14aは、図2等に例示されるように、上下方向に延びる長円状に形成されており、図4に例示されるように、シリンダライナ14の周方向に沿って複数にわたって配置される。
また、各掃気ポート14aは、上下方向においては、シリンダライナ14のうちシリンダジャケット13内に挿入された部分(シリンダライナ14の下部に相当し、被支持部14cよりも下方に位置する部分に等しい)に配置される。
具体的に、各掃気ポート14aは、図3に示すように、下死点に位置するピストン21よりも上方に位置するとともに、シリンダジャケット13における第4開口部13dの下方に位置するようになっている。さらに、図3に示すように、上下方向における各掃気ポート14aの寸法は、同方向における第1開口部13a及び第2開口部13bの寸法よりも短い。各掃気ポート14aは、シリンダジャケット13の内部空間S1と、シリンダライナ14の内部空間S2と、を連通させる。各掃気ポート14aはまた、ピストン21が下死点付近に位置するときに開状態となり、シリンダジャケット13及びシリンダライナ14を介して掃気トランク43と燃焼室17とを連通させる。
ライナ内壁部14bは、ピストン21の往復移動を案内する。具体的に、本実施形態に係るライナ内壁部14bは、図3に示すように、ピストン21の移動方向に沿った中心軸Cを有する円筒状に形成され、ピストン21をスライド可能に挿入してなる。
被支持部14cは、シリンダライナ14の外壁部に設けられる。具体的に、本実施形態に係る被支持部14cは、シリンダライナ14の外壁部を径方向外方に突出させてなる。この被支持部14cは、シリンダジャケット13の第4開口部13dよりも大径に形成されており、この第4開口部13dの周縁部によって下方から支持されるようになっている。
前述のように、シリンダライナ14のうち被支持部14cの下方に位置する部分が、シリンダジャケット13に挿入される。図3に例示されるように、被支持部14cの下方に位置する部分は、掃気ポート14aよりも上方に位置する部分と、下方に位置する部分に2分される。
ここで、シリンダライナ14の外壁部のうち、掃気ポート14aよりも上方に位置する部分を第1部分P1とし、掃気ポート14aよりも下方に位置する部分を第2部分P2とすると、第2部分P2は、その少なくとも一部が第1部分P1に比して小径に形成される。具体的に、第2部分P2の上端部(掃気ポート14aとの境界部)付近には、該第2部分P2を縮径させた縮径部14dが設けられる。これにより、第2部分P2のうち縮径部14dよりも下方に位置する部分は、第1部分P1に比して小径となる。
ところで、ライナ内壁部14bは、前述のように円筒状に形成される。本実施形態においては、シリンダジャケット13の内壁部13eもまた、ライナ内壁部14bと同様に円形に形成される。
具体的に、シリンダジャケット13の内壁部13eは、シリンダライナ14の中心軸C方向に直交しかつ掃気ポート14aを通過する横断面(図4に示す横断面)で見たときに、シリンダライナ14と同軸の円形状をなす。
詳しくは、シリンダジャケット13の内壁部13eは、下方(換言すれば、ピストン21の下死点)に向かって拡径する円錐形状をなす。この円錐の上端部は、第4開口部13dによって切り欠けられている。また、この円錐の中心軸は、シリンダライナ14の中心軸Cと一致する。
また、本実施形態においては、図4に示す横断面で見たときに、シリンダジャケット13の断面積をA1とし、シリンダライナ14の断面積をA2とすると、
A1−A2≧A2 …(1)
の関係が成立する。具体的に、シリンダジャケット13の内壁部13eとシリンダライナ14の外壁部との間の間隔(=R2)は、シリンダライナ14の外径(=2R1)と、シリンダジャケットの内径(=2R1+2R2)と、に応じて定められる。
A1−A2≧A2 …(1)
の関係が成立する。具体的に、シリンダジャケット13の内壁部13eとシリンダライナ14の外壁部との間の間隔(=R2)は、シリンダライナ14の外径(=2R1)と、シリンダジャケットの内径(=2R1+2R2)と、に応じて定められる。
前記(1)の関係は、R1とR2を用いることで、
(R1+R2)2−R1 2≧R1 2 …(2)
と表すこともできる。
(R1+R2)2−R1 2≧R1 2 …(2)
と表すこともできる。
前述のように、シリンダジャケット13の内壁部13eは、下方に向かって拡径している。そのため、前記断面積A1,A2の大きさは、掃気ポート14aの上端部を通過する横断面(図3の破線H1を通過する断面)で見たときと、掃気ポート14aの下端部を通過する横断面(図3の破線H2を通過する断面)で見たときと、で相違する。
本実施形態においては、前記(1)及び(2)の関係は、シリンダライナ14の中心軸C方向に直交しかつ掃気ポート14aの上端部を通過する横断面で見たときと、シリンダライナ14の中心軸C方向に直交しかつ掃気ポート14aの下端部を通過する横断面で見たときと、の双方において成立するようになっている。
(3)掃気効率について
図5は、掃気室構造の従来例を示す図4対応図である。この従来例に係る掃気室100’は、本実施形態と同様に、掃気トランク(不図示)に接続されるシリンダジャケット13’と、このシリンダジャケット13’に挿入される円筒状のシリンダライナ14’と、を備え、シリンダライナ14’に沿ってピストン(不図示)が往復移動することで、シリンダジャケット13’からシリンダライナ14’内へ空気を吸い出すように構成されている。
図5は、掃気室構造の従来例を示す図4対応図である。この従来例に係る掃気室100’は、本実施形態と同様に、掃気トランク(不図示)に接続されるシリンダジャケット13’と、このシリンダジャケット13’に挿入される円筒状のシリンダライナ14’と、を備え、シリンダライナ14’に沿ってピストン(不図示)が往復移動することで、シリンダジャケット13’からシリンダライナ14’内へ空気を吸い出すように構成されている。
また、本実施形態と同様に、従来例に係るシリンダライナ14’には、該シリンダライナ14’の周方向に沿って配置される掃気ポート14a’が設けられる。
しかしながら、従来例に係るシリンダジャケット13’の内壁部13e’は、シリンダライナ14’の中心軸C方向に直交しかつ掃気ポート14a’を通過する横断面(図5に示す横断面)で見たとき、本実施形態とは異なり、矩形状に形成される。
従来例の場合、図5の矢印f1’〜f3’に示すように、内壁部13e’の角部付近において、掃気流が一様にならず、不均一になってしまうという問題があった。掃気流が不均一になってしまっては、掃気効率の向上に不都合である。
対して、本実施形態によれば、シリンダジャケット13の内壁部13eは、図4に例示される横断面で見たときに、シリンダライナ14と同軸の円形状をなす。このように構成すると、図4の矢印f1〜f3に示すように、掃気トランク43からシリンダジャケット13内に流入した空気が、円形状の内壁部13eに沿って流れるようになる。これにより、シリンダジャケット13内に、円周方向に沿って流れる一様な掃気流を実現することができる。そのことで、掃気流の均一化を図り、ひいては、掃気効率を向上させることができる。また、前記内壁部13eとシリンダライナ14とを同軸に構成することで、シリンダジャケット13の内壁部13eと、シリンダライナ14の外壁部と、の間隔(=R2)を略一定に保つことができる。このことも、掃気流の均一化に資する。
また、本実施形態は、ガイド板のような別体の部品を必要としたり、シリンダジャケット13の入口(第1開口部13a)の形状に工夫を凝らしたりする必要がない。そのため、製造コストの抑制にも資する。
このように、本実施形態によれば、製造コストを抑制しつつ、掃気効率を向上させることができる。
また、図3に例示したように、シリンダジャケット13の内壁部13eを下方に向かって拡径させることで、前記横断面付近のボリュームをより大きくすることができる。これにより、掃気流の流動性を高めることができ、掃気効率の向上にさらに有利になる。
また、図3に例示したように、シリンダジャケット13の内壁部13eを下方に向かって拡径させたことと、第2部分P2の少なくとも一部を相対的に小径に形成したことと、が相まって、シリンダジャケット13の内壁部13eと、シリンダライナ14の外壁部と、の間のスペース(間隔R2)を可能な限り広げることができる。これにより、掃気流の流動性を高めることができ、掃気効率の向上にさらに有利になる。
また、図4に例示したように、前記(1)及び(2)の関係が成立するように掃気室100を設計することで、シリンダジャケット13の内壁部13eと、シリンダライナ14の外壁部と、の間のボリュームをより大きくすることができる。これにより、掃気流の流動性を高めることができ、掃気効率の向上にさらに有利になる。
1 舶用エンジン
13 シリンダジャケット
13e シリンダジャケットの内壁部
14 シリンダライナ
14a 掃気ポート
14d 縮径部
21 ピストン
43 掃気トランク
100 掃気室
C シリンダライナの中心軸
P1 第1部分
P2 第2部分
13 シリンダジャケット
13e シリンダジャケットの内壁部
14 シリンダライナ
14a 掃気ポート
14d 縮径部
21 ピストン
43 掃気トランク
100 掃気室
C シリンダライナの中心軸
P1 第1部分
P2 第2部分
Claims (5)
- 掃気トランクに接続されるシリンダジャケットと、前記シリンダジャケットに挿入される円筒状のシリンダライナと、を備え、前記シリンダライナに沿ってピストンが往復移動することで、前記シリンダジャケットから前記シリンダライナ内へ空気を吸い出すように構成された舶用エンジンの掃気室構造であって、
前記シリンダライナには、該シリンダライナの周方向に沿って配置される掃気ポートが設けられ、
前記シリンダジャケットの内壁部は、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートを通過する横断面で見たときに、前記シリンダライナと同軸の円形状をなす
ことを特徴とする舶用エンジンの掃気室構造。 - 請求項1に記載された舶用エンジンの掃気室構造において、
前記シリンダジャケットの内壁部は、下方に向かって拡径する円錐形状をなす
ことを特徴とする舶用エンジンの掃気室構造。 - 請求項2に記載された舶用エンジンの掃気室構造において、
前記シリンダライナの外壁部のうち、前記掃気ポートよりも上方に位置する部分を第1部分とし、前記掃気ポートよりも下方に位置する部分を第2部分とすると、
前記第2部分は、その少なくとも一部が前記第1部分に比して小径に形成される
ことを特徴とする舶用エンジンの掃気室構造。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載された舶用エンジンの掃気室構造において、
前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートを通過する横断面で見たときに、前記シリンダジャケットの断面積をA1とし、前記シリンダライナの断面積をA2とすると、
A1−A2≧A2
の関係が成立する
ことを特徴とする舶用エンジンの掃気室構造。 - 請求項4に記載された舶用エンジンの掃気室構造において、
前記掃気ポートは、上下方向に沿って延び、
前記関係は、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートの上端部を通過する横断面で見たときと、前記シリンダライナの中心軸方向に直交しかつ前記掃気ポートの下端部を通過する横断面で見たときと、の双方において成立する
ことを特徴とする舶用エンジンの掃気室構造。
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