JP2021155606A - 架橋アクリル系樹脂及び架橋アクリル系樹脂の製造方法、並びに塗料 - Google Patents

架橋アクリル系樹脂及び架橋アクリル系樹脂の製造方法、並びに塗料 Download PDF

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陽 久保
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Abstract

【課題】水酸基をアクリル系樹脂中に特異的に添加したアクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋させた架橋アクリル系樹脂を提供する。【解決手段】tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びに、tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及び、ジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、一般式(m)(一般式(m)中、Raは、水素原子又はメチル基を表し、Rbは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかを表し、Rcは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を重合させて得られるアクリル系樹脂と、他の樹脂とを架橋して得られる架橋アクリル系樹脂。【選択図】 なし

Description

本発明は、架橋アクリル系樹脂およびその製造方法に関するものである。また、架橋アクリル系樹脂を含む塗料に関するものである。
従来、アクリル塗料用樹脂の製造方法として、特定の重合開始剤(例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等)を使用する方法は周知である。
また、アクリル系樹脂を、イソシアノエート樹脂やメラニン樹脂で架橋させて塗膜を形成させる塗料が知られている。このような塗料に用いられるアクリル系樹脂は、アクリルモノマーや水酸基含有モノマーなどの複数のモノマーを共重合させたものであり、イソシアノエート樹脂やメラミン樹脂との架橋性能を上げるために分子構造中に水酸基を含有する必要がある。この場合、水酸基は、アクリル系樹脂全分子中に必ず一つ以上含有する必要があり、通常は、アクリルモノマーに対して水酸基含有モノマーを過剰に使用して重合を行い、水酸基含有アクリル樹脂を得ている。
アクリル系樹脂の製造方法として、例えば、特許文献1では、100℃での分解半減期が10分以上である有機過酸化物(t−ブチルハイドロパーオキサイド等)を重合開始剤とし、低分子アクリル共重合体の製造法を製造する方法を開示している。
特許文献2では、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のt−アルキル部分に少なくとも5個の炭素原子を有するアルキルハイドロパーオキサイドもしくはその誘導体を使用し、アクリル系単量体を溶液重合させる、分子量分布の狭いアクリル塗料用樹脂の製造法が記載されている。
また、特許文献3では、セルロース誘導体(a−1)と、アルキド樹脂および/またはポリエステル樹脂(a−2)と、スチレンまたはその誘導体(a−3)とをグラフト重合して得られるポリオール(A)と、イソシアネートプレポリマー(B)とを含んで成る、塗料樹脂組成物が記載されている。
特開昭56−53115号公報 特開平8−269386号公報 特開平2−142872号公報
アクリル系樹脂中に水酸基を均一に分布させることは難しく、目的の架橋性能を持った水酸基含有アクリル系樹脂を重合するためには水酸基含有モノマーを過剰に添加せざるを得ない。例えば、従来、アクリル系樹脂中に水酸基を付加させるためにはヒドロキシルアクリル酸系のモノマーを相当量使用して、有機過酸化物、アゾ開始剤を重合開始剤として重合を行ってきた。水酸基含有モノマーは水酸基以外で同構造を持つモノマーに比べ高価であり、重合効率も良くない。また、アクリル系樹脂を他の樹脂と架橋した架橋アクリル系樹脂の設計の自由度も高いとはいえない。
そこで、本発明は、その構造中に水酸基を特異的に付与したアクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋させた架橋アクリル系樹脂およびその製造方法、ならびに架橋アクリル系樹脂を含む塗料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来法の問題点を長期にわたり鋭意、研究した結果、それらの問題点を改善する架橋アクリル系樹脂およびその製造方法を見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、下記一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を重合させて得られるアクリル系樹脂と、他の樹脂とを架橋して得られる架橋アクリル系樹脂。
Figure 2021155606
(一般式(m)中、Raは、水素原子又はメチル基を表し、Rbは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかを表し、Rcは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
<2> 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドが、下記一般式(1)に示される化合物である前記<1>に記載の架橋アクリル系樹脂。
Figure 2021155606
(一般式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
<3> 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類が、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)に示される化合物である前記<1>または<2>に記載の架橋アクリル系樹脂。
Figure 2021155606
(一般式(2)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R6は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R7は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R8は、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
Figure 2021155606
(一般式(3)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
<4> 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシケタール類が、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)に示される化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
Figure 2021155606
(一般式(4)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
Figure 2021155606
(一般式(5)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R9、R10は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
<5> 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド類が、下記一般式(6)に示される化合物である前記<1>から<4>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
Figure 2021155606
(一般式(6)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、R3は、水素原子又は水酸基を表し、R4は、メチル基又はエチル基を表し、R5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
<6> 前記一般式(m)で示されるアクリル系単量体が、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルである前記<1>から<5>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
<7> 前記他の樹脂が、ポリイソシアノエート樹脂又はメラミン樹脂である前記<1>から<6>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
<8> 水酸基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基及びアミド基からなる群から選択される1以上を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂を含む塗料。
<10> tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、下記一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を溶液重合させてアクリル系樹脂を得る重合工程と、前記アクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋する架橋工程とを有する架橋アクリル系樹脂の製造方法。
Figure 2021155606
(一般式(m)中、Raは、水素原子又はメチル基を表し、Rbは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかを表し、Rcは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
本発明によれば、その構造中に水酸基を特異的に付与したアクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋させた架橋アクリル系樹脂およびその製造方法が提供される。また、架橋アクリル系樹脂を含む塗料が提供される。これにより、架橋アクリル系樹脂の設計の自由度を向上させたり、塗料物性を向上させたりすることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
<架橋アクリル系樹脂>
本発明は、tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、下記一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を重合させて得られるアクリル系樹脂と、他の樹脂とを架橋して得られる架橋アクリル系樹脂(以下、「本発明の架橋アクリル系樹脂」と記載する場合がある。)に関するものである。
Figure 2021155606
本発明では、架橋アクリル系樹脂を構成するアクリル系樹脂を重合する際に有用である有機過酸化物として、その構造中に水酸基を有するものを使用する。すなわち発生するラジカル自体に水酸基を含有させることで、本発明の架橋アクリル系樹脂を構成するアクリル系樹脂に効率よく水酸基を付加することができる。これにより、水酸基含有アクリルモノマーを使用しない場合やその使用量を低減した場合も、アクリル系樹脂と、イソシアノエート樹脂やメラミン樹脂などの他の樹脂とを効率よく架橋した架橋アクリル系樹脂にすることができる。
また、アクリル系樹脂は、tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤(以下、「水酸基含有tert−アルキルハイドロポオキサイド類」という場合がある。)の存在下で重合させたものである。水酸基含有tert−アルキルハイドロパーオキサイド類は、水素引き抜き力が弱く、選択性に優れるラジカルを生成する。水素引き抜き力が低下することにより分子量分布(MWD)を狭く、溶液粘度を低くすることができる。これにより、樹脂を塗料用途で用いる際、作業性が向上するという利点がある。
これまで述べたように、水酸基含有tert−アクリルハイドロパーオキサイド類を用いたアクリル系樹脂は、水酸基含有アクリルモノマーを使用しない場合やその使用量を低減した場合も、本発明の架橋アクリル系樹脂を構成するアクリル系樹脂の構造中に効率よく水酸基を付加させることができる。これにより、他の樹脂との架橋性能が向上し、本発明の架橋アクリル系樹脂の耐久性、伸張性、外観、耐摩擦性が向上する。
[アクリル系樹脂]
本発明の架橋アクリル系樹脂を構成するアクリル系樹脂は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を、水酸基含有tert−アルキルハイドロポオキサイド類を重合開始剤として重合させたものである。アクリル系樹脂は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体に由来する構成単位が主成分である。
(モノマー(M))
モノマー(M)は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むものである。モノマー(M)は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体からなるものであってもよく、これに共重合可能なモノマーを含むものであってよい。
(一般式(m)で示されるアクリル系単量体)
本発明において、アクリル系単量体は、下記一般式(m)で示されるモノマー(以下、「モノマー(a)」という場合がある。)である。
Figure 2021155606
一般式(m)中のRaは、水素原子又はメチル基である。反応性の観点から、Raは、水素原子が好ましい。
一般式(m)において、Rbは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかである。プロピル基は、直鎖状又は分岐状である。反応性の観点から、Rbは、水素原子又はメチル基が好ましい。
一般式(m)において、Rcは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。炭素数3〜20のアルキル基は、直鎖状又は分岐状である。また、Rcで示されるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
具体的には、一般式(m)中のRcが水素原子であるモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。
一般式(m)中のRcが炭素数1〜20のアルキル基であるモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、イタコン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
一般式(m)で示されるアクリル系単量体は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
反応が進行しやすいことから、一般式(m)で示されるアクリル系単量体は、Raが水素原子又はメチル基であることが好ましい。すなわち、一般式(m)で示されるアクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを意味する。
(一般式(m)で示されるアクリル系単量体と共重合可能なモノマー)
一般式(m)で示されるアクリル系単量体と共重合可能なモノマー(以下、「モノマー(b)」という場合がある。)としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコールなどの水酸基含有アクリル系モノマー;アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどのフェニル基含有アクリル系モノマー;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸t−ブチルアミノエチルなどアミノ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;無水マレイン酸、3−(2−メタクリルオキシエチル)−2,2−スピロシクロヘキシルオキゾリデン等が挙げられる。
これらの共重合可能なモノマーは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
中でも、アクリル系単量体と共重合可能なモノマーは、水酸基含有アクリル系モノマー及び/又はスチレン系モノマーがより好ましい。
(重合開始剤)
モノマー(M)の重合反応を開始させる重合開始剤は、tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
(tert−アルキルハイドロパーオキサイド)
tert−アルキルハイドロパーオキサイドとしては、下記一般式(1)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2021155606
一般式(1)中のR1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表す。プロピル基は、直鎖状又は分岐状である。
一般式(1)中のR2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。
一般式(1)中のR3は、水素原子又は水酸基を表す。
一般式(1)中のR4は、メチル基又はエチル基を表す。
一般式(1)中のR5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。
具体的には、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
(tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類)
tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類としては、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2021155606
Figure 2021155606
一般式(2)及び一般式(3)中のR1〜R5は、一般式(1)中のR1〜R5と同義である。
また、一般式(2)中のR6は水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表す。プロピル基は、直鎖状又は分岐状である。
7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。炭素数3〜6のアルキル基は、直鎖状又は分岐状である。
8は水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。炭素数3〜7のアルキル基は、直鎖状又は分岐状である。R8は、水素原子、メチル基、エチル基及び炭素数3〜7の分岐状のアルキル基であることが好ましい。
例えば、一般式(2)は、R6及びR7は水素原子であり、R8は水素原子又は炭素数3〜7の分岐状のアルキル基とできる。また、一般式(2)は、R6は水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかであり、R7は炭素数1〜6のアルキル基であり、R8は水素原子とできる。
具体的には、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシイソブチレート、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシアセテート、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシプロピオネート、2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシベンゾエート、2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
(tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシケタール類)
tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシケタール類としては、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2021155606
Figure 2021155606
一般式(4)及び一般式(5)中のR1〜R5は、一般式(1)中のR1〜R5と同義である。
一般式(5)中のR9、R10は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表す。プロピル基は、直鎖状又は分岐状である。
具体的には、1,1−ジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)プロパン、2,2−ジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)ブタン、3,3−ジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)ペンタン、2,2−ジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)ヘプタン、2,2−ジ−(2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ)プロパン等が挙げられる。
(tert−アルキルハイドロパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド類)
tert−アルキルハイドロパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド類としては、下記一般式(6)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2021155606
一般式(6)中のR1〜R5は、一般式(1)中のR1〜R5と同義である。
具体的にはジ−(3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチル)パーオキサイド、ジ−(2,3−ジヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチル)パーオキサイド等が挙げられる。
重合開始剤として用いられる水酸基含有tert−アルキルハイドロパーオキサイド類は、好ましくは1時間半減期温度50〜190℃を持つものであり、より好ましくは60〜170℃を持つものである。
ここで、「X時間半減期温度」とは、重合開始剤の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間がX時間となる温度である。例えば、1時間半減期温度50℃の重合開始剤とは、50℃で1時間反応させたときに、初期濃度の半分に濃度が減少する性質を有する重合開始剤である。
重合開始剤は、モノマー(M)100質量部に対して、0.1〜20.0質量部であることが好ましく、1.0〜10.0質量部であることがより好ましく、2.0〜5.0質量部であることが更に好ましい。
モノマー(M)が、アクリル系単量体(モノマー(a))と共重合可能なモノマー(モノマー(b))を含む場合、アクリル系樹脂は、モノマー(a)とモノマー(b)との共重合体であり、モノマー(a)に由来する構成単位と、モノマー(b)に由来する構成単位を有する。上記の通り、アクリル系樹脂は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体(モノマー(a))に由来する構成単位が主成分であり、アクリル系樹脂中のモノマー(a)に由来する構成単位の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。
本発明では、モノマー(M)が水酸基を有さない場合でも、重合開始剤の有する水酸基によりアクリル系樹脂に水酸基が導入され、他の樹脂と架橋させることができる。そのため、水酸基を有さないモノマー(a)の割合を増やすことができる。アクリル系樹脂中のモノマー(a)に由来する構成単位の含有量は、70質量%以上や、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上などとしてもよい。
中でも、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が、上記範囲であることが好ましい。
また、モノマー(b)として、水酸基含有アクリル系モノマー等の水酸基含有モノマーを用いる場合も、本発明では、アクリル系樹脂中の水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が15質量%以下や、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下などとなるように、水酸基含有モノマーの使用を低減可能である。
また、後述するように、アクリル系樹脂は、モノマー(M)、水酸基含有tert−アルキルハイドロポオキサイド類以外に、従来公知の重合開始剤を含んでもよい
[他の樹脂]
本発明の架橋アクリル系樹脂を構成する他の樹脂は、水酸基と反応可能な基(以下、「反応基」という。)を有する樹脂であり、反応基を2つ以上有することが好ましい。
反応基としては、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、エステル基などが挙げられる。
このような反応基を有する他の樹脂としては、ポリイソシアノエート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、ポリイソシアノエート樹脂又はメラミン樹脂が好ましい。
他の樹脂は、アクリル系樹脂100質量部に対して、10〜150質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。
架橋アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋させたものである。アクリル系樹脂と他の樹脂の構造に応じて、アクリル系樹脂と他の樹脂との間に、ウレタン基(ウレタン結合)や、ウレア基(ウレア結合)、エーテル基(エーテル結合)などの結合を介した架橋構造が形成される。また、架橋アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂や他の樹脂の構造に応じて、水酸基やカルボキシル基、エステル基、アミド基を有する構造となる。
中でも、架橋アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基及びアミド基からなる群から選択される1以上を有することが好ましい。
また、架橋アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂、他の樹脂以外のその他の成分を含んでよく、顔料や紫外線吸収剤、防錆剤などのその他の成分を含んでよい。
架橋アクリル系樹脂は、例えば、硬度20〜70の樹脂とすることができる。硬度の測定方法については、実施例にて後述する。
<架橋アクリル系樹脂の製造方法>
本発明は、tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を溶液重合させてアクリル系樹脂を得る重合工程と、前記アクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋する架橋工程とを有する架橋アクリル系樹脂の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
[重合工程]
重合工程は、一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を、水酸基含有tert−アルキルハイドロパーオキサイド類の存在下で溶液重合させてアクリル系樹脂を得る工程である。
重合工程では、モノマー(M)と重合開始剤、溶媒を所定比で配合し、溶液重合を行い、アクリル系樹脂を得る。
従来、樹脂溶液粘度を低くし、十分な分子性能を保つためにt−アルキル部分に少なくとも5個のアルキル基を有するアルキルハイドロパーオキサイドもしくはその誘導体を重合開始剤として使用してきた。
本発明の製造方法のように、水酸基含有tert−アルキルハイドロパーオキサイド類を重合開始剤として使用すると、t−アルキル部分に少なくとも5個のアルキル基を有するアルキルハイドロパーオキサイドもしくはその誘導体を使用したときと同等もしくはそれ以上の分子量を持つポリマー生成物を低粘度で製造することができる。さらに、水酸基含有tert−アルキルハイドロパーオキサイド類を重合開始剤として使用することで、アクリル系樹脂中に水酸基を容易に付与できる。これにより、他の樹脂との架橋性に優れたアクリル系樹脂が得られる。
モノマー(M)、重合開始剤、溶媒等の各種材料の混合、添加方法は特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(3)などが挙げられる。各種材料の混合、添加方法は、必要に応じ、どの方法を選択しても良い。
(1)モノマー(M)、重合開始剤、溶媒の混合物を重合系内に添加しながら撹拌する方法。
(2)モノマー(M)と重合開始剤の混合物を撹拌中の溶媒に添加する方法。
(3)モノマー、重合開始剤、溶媒をそれぞれ添加しながら撹拌する方法。
モノマー(M)および重合開始剤は、上記の通りである。
また、モノマー(M)と重合開始剤との比率についても上記の通りであり、重合開始剤は、モノマー(M)100質量部に対し、好ましくは0.1〜20.0質量部、より好ましくは1.0〜10質量部、さらに好ましくは2.0〜5.0質量部である。0.1質量部よりも少ない場合、反応効率が低く、未反応のモノマーが残存しやすくなるため好ましくない。また、20.0質量部よりも多い場合、反応性が高すぎ目的の樹脂性能が得ることが困難となる。
重合開始剤濃度(モノマー(M)100質量部に対する重合開始剤の質量部の比)を低くすると高分子量のアクリル系樹脂を容易に製造でき、重合開始剤濃度を高くすれば低分子量のアクリル系樹脂を製造できる。
そのいずれもt−ブチルハイドロパーオキサイド誘導体で重合した同分子量を持つアクリル系樹脂よりも狭いMWDを示し、低粘度となる。
例えば、重合開始剤としてヒドロキシルアルキルハイドロパーオキサイドを使用し、目的のアクリル系樹脂(例えば、t−アミルハイドロパーオキサイドを用い重合させたアクリル系樹脂と同様の分子量を持つアクリル系樹脂)を得るためには、t−アミルハイドロパーオキサイドと同様の活性酸素量になるようにヒドロキシルアルキルハイドロパーオキサイドを使用すればよい。
なお、「活性酸素量」は、以下の式で算出されるものである。
活性酸素量=重合開始剤の純度×(16×(ペルオキシ基の数)/重合活性剤の分子量)
ここで、tert−アルキルハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類は、ペルオキシ基(−O−O−)の数が1であり、パーオキシケタール類は、ペルオキシ基の数が2である。
(溶媒)
重合工程で用いることのできる溶媒としては、トルエンや、キシレン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチルアルコール、酢酸オキソ−ヘキシル、酢酸オキソ−ヘプチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ミネラルスピリット、他の慣用的に用いられる脂肪族、芳香族の炭化水素類などが挙げられる。
適した溶媒を選択するために考慮する点は、価格、毒性、揮発性及び、連鎖移動作用である。また、溶媒の種類は重合開始剤自体の性能(分子量及びMWD)にはあまり影響はないが、樹脂液の粘度に影響する。これらのことから、好適な溶媒の一つとして、トルエンやキシレン等の芳香族の炭化水素類の溶媒が挙げられる。
モノマー(M)に対する溶媒の質量比(溶媒の質量/モノマー(M)の質量)は、0.1〜3が好ましく、0.2〜1がより好ましい。
更に重合系内の未反応のモノマー残存を防ぐため、通常の重合開始剤を追触媒として添加しても良い。
(反応時間)
反応時間は、好ましくは1〜15時間であり、3〜11時間がより好ましい。
好ましい重合法は、所望の温度において、重合容器内の溶媒に所定の速度でモノマー(M)及び重合開始剤を制御添加する方法であり、モノマー(M)及び重合開始剤の添加の終了時に達成し得るモノマー(M)のポリマーへの転化率は約90〜95%又はそれ以上であることが好ましい。
モノマー(M)及び重合開始剤は、単独あるいは組み合わせて添加時間が好ましくは1〜12時間、より好ましくは3〜10時間になる様な速度に計算して反応器内に供給する。1時間よりも短い場合、均一の分子量を得ることが難しい。また、12時間より長い場合、経済的に不利となるため好ましくない。
モノマー(M)及び重合開始剤を別々に計量して供給する場合、両者の添加速度は同じであっても異なっても良い。一般に、モノマー(M)及び重合開始剤の添加速度は溶媒中における消費/重合の速度がほぼ等しくなるように調節する。
また、モノマー(M)及び重合開始剤の添加終了後に、一定時間さらに重合させることが好ましく、0.5〜5時間重合反応を行うことがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜3時間である。
(重合温度)
重合温度は、90℃〜200℃とすることが好ましい。
また、重合開始剤の半減期が所定の時間となるように重合温度に設定することが好ましい。すなわち、重合温度は、重合開始剤の半減期温度で管理することが好ましい。重合温度が高いほど、半減期が短くなるため、例えば、1時間半減期温度は1分半減期温度よりも低い温度となる。
具体的には、重合温度は、重合開始剤の半減期が1分〜60分となる温度に設定することが好ましく、5分〜20分となる温度に設定することがより好ましい。すなわち、重合は、重合開始剤の1分〜60分半減期温度で行うことが好ましく、5分〜20分半減期温度で行うことがより好ましい。重合開始剤の1分半減期温度よりも高い温度では、反応速度の制御が困難となる。また、重合開始剤の60分半減期温度(1時間半減期温度)よりも低い温度で重合を行っても、反応に時間を要するため非経済的となり好ましくない。
[架橋工程]
架橋工程は、アクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋する工程である。
アクリル系樹脂と他の樹脂とを加熱混合することで、アクリル系樹脂の水酸基と他の樹脂の反応基とが反応し架橋構造が形成される。
他の樹脂は、上記の通りである。また、上記の通り、アクリル系樹脂100質量部に対して、他の樹脂は10〜150質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。
加熱温度や加熱時間は、アクリル系樹脂と他の樹脂とが反応できる範囲であれば特に限定されない。例えば、架橋アクリル系樹脂の硬度等の観点から、120℃〜180℃で、1〜100分で架橋させることができる。また、加熱後に、一定時間(1日〜10日)、室温で養生することで、架橋反応をさらに進行させることができる。
アクリル系樹脂と他の樹脂との架橋反応は、溶媒存在下で行ってもよい。例えば、全樹脂100質量部に対して溶媒を10〜50質量部として架橋反応を行うこともできる。溶媒としては、重合工程で用いることのできる溶媒と同様の溶媒を使用できる。
また、顔料や紫外線吸収剤、防錆剤などのその他の成分を含んだ状態で、架橋反応を行ってよい。
<塗料>
本発明の架橋アクリル系樹脂は、例えば、塗料として使用することができる。本発明の架橋アクリル系樹脂を含む塗料は、本発明の架橋アクリル系樹脂以外の成分を含んでよく、顔料や紫外線吸収剤、防錆剤、溶媒などの成分を含んでよい。
塗装方法は、従来公知の方法を使用することができ、スプレーや刷毛などを用いて、対象の基材の表面に塗装することができる。
以下、実施例に本発明の内容を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらの実施例に限定されるものでないことは云うまでもない。
<実施例に使用した材料,略号の定義>
(重合開始剤)
・Lup575:t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
・Lup665:3−ヒドロキシ−1,1,−ジメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(モノマー(a))
・BA:アクリル酸ブチルモノマー
・BMA:メタクリル酸ブチルモノマー
(モノマー(b))
・HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチルモノマー
・STY:スチレン
この例は、ポリウレタンとの架橋性について、従来のt−アルキルパーオキサイドと、水酸基を有すアルキルハイドロパーオキサイド類とを比較する例である。
重合に際し、重合開始剤はいずれも同活性酸素量となるように添加し、重合温度は15分半減期温度とし比較を行った。
<表面硬度>
ポリウレタン樹脂と架橋後の硬度をJISK6301に準じた硬度計にて測定した。
<実施例1>
(重合工程)
撹拌機、輸液ポンプ、環流冷却器、ガス導入管を有する500mL四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、キシレン80gを入れる。油槽中で103℃まで昇温し、撹拌しながらモノマー(BA/BMA/STY=56/56/23(質量比))135gとLup665を10.8gの混合液を、輸液ポンプで3時間かけて均一速度で添加した。添加後1時間継続し重合を行った。
(架橋工程)
重合工程で得られたアクリル系樹脂の固形分を65%に統一後、アクリル系樹脂:ポリイソシアノエート樹脂=5:3(w/w)で混合し、130℃で3時間加熱後、室温にて保管した。
1週間保管するとゲル化が見られた。
<比較例1>
実施例1において、Lup665の代わりにLup575を9.5g使用する以外は実施例1の方法に準じた。比較例1は実施例1と同活性酸素を持つにもかかわらず、ポリイソシアノエート樹脂との混合物に変化は見られなかった。
<実施例2>
実施例1の重合工程のモノマー比を、モノマー比(BA/BMA/HEA/STY=53/53/6/23(質量比))に変更する以外は実施例1の方法に準じた。
但し、ポリイソシアノエート樹脂との混合物は、130℃で3時間加熱した直後及び室温保管後(3日後,1週間後)の表面硬度を測定した。
<実施例3>
実施例1の重合工程のモノマー比を、モノマー比(BA/BMA/HEA/STY=50/50/12/23(質量比))に変更する以外は実施例1の方法に準じた。
<実施例4>
実施例1の重合工程のモノマー比を、モノマー比(BA/BMA/HEA/STY=47/47/18/23(質量比))に変更する以外は実施例1の方法に準じた。
<比較例2>
実施例2において、Lup665の代わりにLup575を9.5g使用する以外は実施例2の方法に準じた。
<比較例3>
実施例3において、Lup665の代わりにLup575を9.5g使用する以外は実施例3の方法に準じた。
<比較例4>
実施例4において、Lup665の代わりにLup575を9.5g使用する以外は実施例4の方法に準じた。
Figure 2021155606
同活性酸素を持つ実施例2,3,4,比較例2,3,4はいずれも固化が見られたが,表面硬度は各々実施例2,3,4が硬い結果が得られた。
実施例3,比較例4は、1週間後の表面硬度が同等の結果を得られた。
架橋アクリル系樹脂は、建築資材用、自動車用等多岐にわたる塗料として使用でき、産業上有用である。

Claims (10)

  1. tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、下記一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を重合させて得られるアクリル系樹脂と、
    他の樹脂とを架橋して得られる架橋アクリル系樹脂。
    Figure 2021155606
    (一般式(m)中、
    aは、水素原子又はメチル基を表し、
    bは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかを表し、
    cは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
  2. 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドが、下記一般式(1)に示される化合物である請求項1に記載の架橋アクリル系樹脂。
    Figure 2021155606
    (一般式(1)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
  3. 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類が、下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)に示される化合物である請求項1または2に記載の架橋アクリル系樹脂。
    Figure 2021155606
    (一般式(2)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    6は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    7は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、
    8は、水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
    Figure 2021155606
    (一般式(3)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
  4. 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシケタール類が、下記一般式(4)及び/又は下記一般式(5)に示される化合物である請求項1から3のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
    Figure 2021155606
    (一般式(4)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
    Figure 2021155606
    (一般式(5)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    9、R10は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
  5. 前記tert−アルキルハイドロパーオキサイドのジアルキルパーオキサイド類が、下記一般式(6)に示される化合物である請求項1から4のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
    Figure 2021155606
    (一般式(6)中、
    1は、水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    2は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表し、
    3は、水素原子又は水酸基を表し、
    4は、メチル基又はエチル基を表し、
    5は、水素原子、メチル基及び水酸基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
  6. 前記一般式(m)で示されるアクリル系単量体が、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルである請求項1から5のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
  7. 前記他の樹脂が、ポリイソシアノエート樹脂又はメラミン樹脂である請求項1から6のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
  8. 水酸基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基及びアミド基からなる群から選択される1以上を有する請求項1から7のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の架橋アクリル系樹脂を含む塗料。
  10. tert−アルキル部分に少なくとも1個の水酸基を有する、tert−アルキルハイドロパーオキサイド並びにtert−アルキルハイドロパーオキサイドのパーオキシエステル類、パーオキシケタール類及びジアルキルパーオキサイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合開始剤の存在下で、下記一般式(m)で示されるアクリル系単量体を含むモノマー(M)を溶液重合させてアクリル系樹脂を得る重合工程と、
    前記アクリル系樹脂と他の樹脂とを架橋する架橋工程と
    を有する架橋アクリル系樹脂の製造方法。
    Figure 2021155606
    (一般式(m)中、
    aは、水素原子又はメチル基を表し、
    bは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、カルボキシル基及びCH2COOHからなる群から選択されるいずれかを表し、
    cは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
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