JP2021154981A - 車両の減速度演算装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動二輪車の減速度演算装置において、車両が旋回する際のタイヤ径に変化に起因する車輪速度誤差の影響が補償され得るを提供する。【解決手段】 車両の減速度演算装置は、車体に設けられた減速度センサにて検出される検出減速度のゼロ点ドリフトを補償するものであって、「車輪の回転速度である車輪速度に基づいて車両の減速度を演算減速度として演算する演算部」と、「検出減速度の時間変化量である検出勾配と演算減速度の時間変化量である演算勾配との一致に基づいてゼロ点ドリフトを補償する補償部」と、を備える。そして、補償部は、車体の横加速度の時間変化量である横加速度勾配が第1しきい値以上となった場合に、一致の判定を遅らせる遅延部を含んで構成される。また、補償部は、車体の上下加速度の時間変化量である上下加速度勾配が第2しきい値以上となった場合に、一致の判定を遅らせる遅延部を含んで構成されてもよい。【選択図】 図2

Description

本開示は、車両の減速度演算装置に関する。
出願人は、後輪浮き抑制制御に用いられる減速度演算装置において、ゼロ点ドリフトの誤差が低減されるよう、特許文献1に記載されるような装置を開発している。具体的には、減速度演算装置には、「減速度センサからの検出信号を検出減速度として取得する取得部」と、「車両の車輪の回転速度に基づいて車両の減速度を演算減速度として演算する演算部」と、「検出減速度と演算減速度とに基づいて後輪浮き抑制制御に適用される減速度である積算減速度として決定する決定部」と、が備えられる。そして、決定部では、検出減速度の時間変化量と演算減速度の時間変化量とが一致した場合の演算減速度が基準減速度として決定され、該基準減速度に検出減速度の時間変化量が順次積算されて、積算減速度が演算される。
上記の決定部では、検出減速度の時間変化量と演算減速度の時間変化量とが一致した場合の演算減速度が基準減速度として決定されるが、該決定において、各種の誤差が考慮される必要がある。例えば、自動二輪車両は旋回する際に車体を傾ける必要があることから、四輪車両用タイヤのトレッド面が偏平であるのに対して、二輪車両用タイヤは、その断面形状が円に近い形状となっている。このため、自動二輪車両においては、旋回のために車体が傾けられると、タイヤ径(車軸とタイヤの接地面との距離)が小さくなり、車輪速度センサVWの検出結果(即ち、車輪速度)Vwが小さくなる。減速度演算装置では、このような誤差が補償されることが望まれている。
特願2020−012146号
本発明の目的は、自動二輪車の減速度演算装置において、車両が旋回する際のタイヤ径(車輪の半径)に変化に起因する車輪速度誤差の影響が補償され得るを提供することである。
本発明に係る車両の減速度演算装置は、車両の車体に設けられた減速度センサ(GX)にて検出される検出減速度(Gx)のゼロ点ドリフトを補償するものであって、「前記車両(WH)の車輪の回転速度である車輪速度(Vw)に基づいて前記車両の減速度を演算減速度(Ge)として演算する演算部(XE)」と、「前記検出減速度(Gx)の時間変化量である検出勾配(dGx)と前記演算減速度(Ge)の時間変化量である演算勾配(dGe)との一致に基づいて前記ゼロ点ドリフトを補償する補償部(XH)」と、を備える。そして、前記補償部(XH)は、前記車体の横加速度(Gy)の時間変化量である横加速度勾配(dGy)が第1しきい値(dgy)以上となった場合に、前記一致の判定を遅らせる遅延部(XT)を含んで構成される。また、前記補償部(XH)は、前記車体の上下加速度(Gz)の時間変化量である上下加速度勾配(dGz)が第2しきい値(dgz)以上となった場合に、前記一致の判定を遅らせる遅延部(XT)を含んで構成されてもよい。
本発明に係る車両の減速度演算装置では、前記遅延部(XT)は、前記一致の判定を禁止時間(ty)に亘って禁止する。或いは、前記補償部(XH)は、前記検出減速度(Gx)の時間変化量である検出勾配(dGx)と前記演算減速度(Ge)の時間変化量である演算勾配(dGe)との偏差(hD)が監視偏差(Hx)未満である状態が監視時間(Tk)に亘って継続したことに基づいて前記一致の判定を行い、前記遅延部(XT)は、前記監視偏差(Hx)を減少する修正、及び、前記監視時間(Tk)を増加する修正のうちの少なくとも1つを実行する。
二輪車のタイヤ断面形状は、円に近い形状となっているため、旋回で車体が傾けられると、車輪半径が小さくなり、車輪速度Vwに、車両旋回に起因する誤差が含まれることとなる。上記構成によれば、車両が旋回中である蓋然性が高い場合には、一致判定が遅延されるため、車両旋回に起因する車輪半径の誤差が適切に補償(排除)され得る。
本発明に係る減速度演算装置GHを搭載する車両を説明するための全体構成図である。 減速度演算装置GHの演算処理を説明するためのブロック図である。 補償部XHでの第1処理例を説明するためのフロー図である。 補償部XHでの第2処理例を説明するためのフロー図である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「f」、「r」は、車両の前後方向において、それが何れに関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「f」は前輪、「r」は後輪を示す。例えば、車輪において、前輪WHf、及び、後輪WHrと表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は、その総称を表す。例えば、「CWf」は前輪ホイールシリンダを表し、「CWr」は後輪ホイールシリンダを表し、「CW」は前輪、後輪ホイールシリンダを表す。加えて、接続路HSにおいて、マスタシリンダCMに近い側が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側が「下部」と称呼される。
<本発明に係る減速度演算装置GHを搭載する車両>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る車両の減速度演算装置GHを搭載する車両について説明する。車両としては、自動二輪車(「モータサイクル」ともいう)が想定されている。車両には、2系統の流体路(即ち、2つの制動系統)が採用される。2つの制動系統のうちの一方では、前輪マスタシリンダCMfが、前輪接続路HSfを介して、前輪ホイールシリンダCWfに接続される。2つの制動系統のうちの他方では、後輪マスタシリンダCMrが、後輪接続路HSrを介して後輪ホイールシリンダCWrに接続される。ここで、前輪、後輪接続路HSf、HSr(=HS)は流体路である。「流体路」は、作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットHUの流路、ホース等が該当する。
車両には、制動操作部材BP(=BPf、BPr)、ホイールシリンダCW(=CWf、CWr)、及び、マスタシリンダCM(=CMf、CMr)、及び、制動制御装置SCが備えられる。
制動操作部材BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。例えば、前輪制動操作部材BPfとして、ブレーキレバーが採用され、後輪制動操作部材BPrとして、ブレーキペダルが採用される、また、スクータでは、制動操作部材BPf、BPrとして、共に、ブレーキレバーが採用される。制動操作部材BPが操作されることによって、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWr(=CW)内の液圧(前輪、後輪ホイールシリンダ液圧)Pwf、Pwrが調整される。その結果、前輪、後輪制動トルクTqf、Tqr(=Tq)が調整され、前輪、後輪制動力Fxf、Fxr(=Fx)が発生される。ここで、前輪、後輪ホイールシリンダ液圧Pwf、Pwrは、「前輪、後輪制動液圧Pwf、Pwr(=Pw)」とも称呼される。
車両の車輪WH(=WHf、WHr)には、前輪、後輪回転部材KTf、KTr(=KT)が固定される。そして、回転部材KT(例えば、ブレーキディスク)を挟み込むように前輪、後輪ブレーキキャリパCPf、CPr(=CP)が配置される。ブレーキキャリパCPには、ホイールシリンダCWが設けられ、その内部の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクTqが発生される。この制動トルクTqによって、車輪WHに制動力Fxが生じる。
前輪、後輪マスタシリンダCMf、CMr(=CM)の内部には、前輪、後輪液圧室Rmf、Rmr(=Rm)が形成されている。制動操作部材BPが操作されると、液圧室Rmの体積が減少され、制動液BFが、液圧室Rmから、接続路HSを介して、ホイールシリンダCWに圧送される。つまり、ホイールシリンダCWの液圧Pwが、マスタシリンダCMの液圧(「マスタシリンダ液圧」という)Pmによって増加される。
車両には、前輪、後輪車輪速度センサVWf、VWr(=VW)、及び、前後加速度センサ(「減速度センサ」ともいう)GXが備えられる。各車輪WHに設けられた車輪速度センサVWによって、前輪、後輪車輪速度Vwf、Vwr(=Vw)が検出される。車両の車体に設けられた減速度センサGXによって、車両の前後方向(進行方向)の加速度(前後加速度であり、「検出減速度」ともいう)Gxが検出される。車輪速度Vw、及び、検出減速度Gxの信号は、車輪WHのロック傾向(即ち、過大な減速スリップ)を抑制するアンチロックブレーキ制御、後輪WHrのリフトアップを抑制する後輪浮き抑制制御等の制動力制御に利用される。
更に、車両には、横加速度センサGY、及び、上下加速度センサGZが備えられる。車両の車体に設けられた横加速度センサGYによって、車両の横方向(車幅方向)の加速度(「横加速度」という)Gyが検出される。また、車両の車体に設けられた上下加速度センサGZによって、車両の上下方向(垂直方向)の加速度(「上下加速度」という)Gzが検出される。各センサ(VW等)によって検出された車輪速度Vw、各種の加速度Gx(検出減速度)、Gy(横加速度)、Gz(上下加速度)は、制動コントローラECU(単に、「コントローラ」ともいう)に入力される。
≪制動コントローラECU≫
制動制御装置SCは、減速度演算装置GHの演算結果に基づいて、車輪WHの制動液圧Pw(結果、制動力Fx)を調整する。制動制御装置SCは、制動コントローラECU、及び、流体ユニットHUにて構成される。制動コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサ等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。
制動コントローラECU(電子制御ユニット)によって、流体ユニットHUの電気モータMT、及び、電磁弁VI、VOが制御(駆動)される。具体的には、マイクロプロセッサ内の制御アルゴリズムに基づいて、電磁弁VI、VOを制御するための駆動信号Vi、Voが演算される。同様に、電気モータMTを制御するための駆動信号Mtが演算される。
コントローラECUには、電磁弁VI、VO、及び、電気モータMTを駆動するよう、駆動回路が備えられる。駆動回路には、電気モータMTを駆動するよう、スイッチング素子(MOS−FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。モータ駆動信号Mtに基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMTの出力が制御される。また、駆動回路では、駆動信号Vi、Voに基づいて、スイッチング素子が駆動され、電磁弁VI、VOへの通電状態(即ち、励磁状態)が制御される。駆動回路には、電気モータMT、及び、電磁弁VI、VOの実際の通電量を検出する通電量センサが設けられる。例えば、通電量センサとして、電流センサが設けられ、電気モータMT、及び、電磁弁VI、VOへの供給電流が検出される。
制動コントローラECUには、減速度演算装置GHが含まれている。減速度演算装置GHは、マイクロプロセッサにプログラムされたアルゴリズムである。減速度演算装置GHによって、車輪速度Vw、及び、検出減速度Gxに基づいて、例えば、後輪浮き抑制制御に適用される補償減速度Ghが演算される。補償減速度Ghの詳細については後述する。
≪流体ユニットHU≫
流体ユニットHUは、車輪WHの制動力Fxを個別に制御するアクチュエータである。前輪、後輪マスタシリンダCMf、CMrの前輪、後輪液圧室Rmf、Rmrと、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrとは、前輪、後輪接続路(流体路)HSf、HSr(=HS)にて接続される。接続路HSにおいて、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとの間には流体ユニットHUが設けられる。流体ユニットHUは、インレット弁VI、アウトレット弁VO、電気モータMT、流体ポンプHP、及び、低圧リザーバRWにて構成される。
前輪、後輪インレット弁VIf、VIr(=VI)は、通電に応じて閉弁する、常開型の電磁弁(例えば、オン・オフ弁)である。インレット弁VIは、接続路HSの途中に設けられている。インレット弁VIは、コントローラECUからの駆動信号Viに基づいて制御される。インレット弁VIによって、接続路HSを通じた、ホイールシリンダCWとマスタシリンダCMとの間の制動液BFの移動が、開弁時には許容され、閉弁時には遮断される。
接続路HSにおいて、インレット弁VIとホイールシリンダCWとの間(即ち、インレット弁VIの下部)には、流体路である前輪、後輪戻し路HRf、HRr(=HR)の一方の端部が接続される。戻し路HRの他方の端部は、「前輪、後輪低圧リザーバRWf、RWr(=RW)」、及び、「接続路HSにおいて、マスタシリンダCMとインレット弁VIとの間(即ち、インレット弁VIの上部)」に接続される。換言すれば、戻し路HRは、インレット弁VIを迂回するよう、接続路HSにおいて、インレット弁VIの上部と、インレット弁VIの下部とを接続する流体路である。
前輪、後輪アウトレット弁VOf、VOr(=VO)は、通電に応じて開弁する、常閉型の電磁弁(例えば、オン・オフ弁)である。アウトレット弁VOは、戻し路HRに設けられる。アウトレット弁VOは、コントローラECUからの駆動信号Voに基づいて制御される。アウトレット弁VOによって、戻し路HRを通じた、ホイールシリンダCWからマスタシリンダCMの側への制動液BFの移動が、開弁時には許容され、閉弁時には遮断される。
前輪、後輪流体ポンプHPf、HPr(=HP)が、前輪、後輪戻し路HRf、HRr(=HR)に設けられる。また、低圧リザーバRWが、戻し路HRに接続される。詳細には、流体ポンプHPは、アウトレット弁VOと「インレット弁VIの上部における接続路HSと戻し路HRとの接続部」との間に設けられる。また、低圧リザーバRWは、アウトレット弁VOと流体ポンプHPとの間で、戻し路HRに接続される。
2つの流体ポンプHPは、1つの電気モータMTによって駆動される。電気モータMTは、制動コントローラECUからの駆動信号Mtに基づいて制御される。流体ポンプHPによって、制動液BFが、低圧リザーバRW、又は、ホイールシリンダCWから汲み上げられ、インレット弁VIの上部(例えば、マスタシリンダCMの液圧室Rm)に戻される。
アンチロックブレーキ制御、又は、後輪浮き抑制制御によって、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉位置にされ、アウトレット弁VOが開位置される。制動液BFのインレット弁VIからの流入が阻止され、ホイールシリンダCW内の制動液BFは、低圧リザーバRWに流出し、制動液圧Pwは減少される。また、制動液圧Pwを増加するためには、インレット弁VIが開位置にされ、アウトレット弁VOが閉位置される。制動液BFの低圧リザーバRWへの流出が阻止され、マスタシリンダCMの液圧(マスタシリンダ液圧)Pmが、ホイールシリンダCWに導入され、制動液圧Pwが増加される。更に、ホイールシリンダCW内の液圧(制動液圧)Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが、共に閉弁される。つまり、電磁弁VI、VOを制御することによって、制動液圧Pw(即ち、制動トルクTqであり、結果、制動力Fx)が、各車輪WHのホイールシリンダCWにて、独立に調整可能である。
<減速度演算装置GHの演算処理>
図2のブロック図を参照して、減速度演算装置GHでの演算処理について説明する。例えば、減速度演算装置GHの演算結果Gh(「補償減速度」という)は、後輪浮き抑制制御を含む制動制御装置SCに適用される。補償減速度Ghは、検出減速度Gx(減速度センサGXの出力結果)におけるゼロ点ドリフトの誤差が補償されたものである。なお、「後輪浮き抑制制御」は、前輪制動力Fxfが減少されることによって、後輪WHrが路面から離れる状況(「後輪浮き」、又は、「後輪リフトアップ」という)を回避するものである。
減速度演算装置GHは、コントローラECU内にプログラムされた制御アルゴリズムを含み、取得部XA、演算部XB、及び、補償部XHにて構成される。なお、以下で説明する補償減速度Gh、検出減速度Gx、及び、演算減速度Geは、車両を減速する側の値が「正符号(+)」で表される。
取得部XAにて、減速度センサGXから検出減速度Gxが取得される。具体的には、コントローラECUでは、先ず、アナログ信号である減速度センサGXの出力(検出信号)が、アナログ/デジタル変換回路によって、デジタル信号に変換される。そして、アナログ/デジタル変換後の減速度センサGXの出力にフィルタ処理が施されて、検出減速度Gxが取得(決定)される。
演算部XBにて、車輪速度Vwに基づいて、演算減速度Geが演算される。具体的には、演算部XBでは、先ず、前輪車輪速度Vwf、及び、後輪車輪速度Vwrのうちの速い方の車輪速度に基づいて、車体速度Vxが演算される。車体速度Vxの演算において、その時間変化量において制限が設けられてもよい。即ち、車体速度Vxの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。
次に、車体速度Vxが時間微分されて、演算減速度Geが演算される。つまり、演算部XBでは、車輪速度Vwに基づいて車体速度Vxが演算され、車体速度Vxに基づいて演算減速度Geが演算される。
補償部XHにて、横加速度Gy(横加速度センサGYの検出値)、検出減速度Gx、及び、演算減速度Geに基づいて、ゼロ点ドリフトの誤差が補償された補償減速度Ghが演算される。補償部XHでは、先ず、横加速度Gyの時間変化量dGy、検出減速度Gxの時間変化量dGx、及び、演算減速度Geの時間変化量dGeが演算される。ここで、時間変化量dGyは、「横加速度勾配」とも称呼され、横加速度Gyの時間微分値である。時間変化量dGxは、「検出勾配」とも称呼され、検出減速度Gxの時間微分値である。時間変化量dGeは、「演算勾配」とも称呼され、演算減速度Geの時間微分値である。次に、補償部XHでは、「時間変化量(検出勾配)dGxと時間変化量(演算勾配)dGeとが一致しているか、否か」が判定される。該判定が、「一致判定」と称呼される。
補償部XHには、一致判定(検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致/不一致の判定)が適切に行われるように、遅延部XTが含まれる。補償部XHの遅延部XTでは、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上である場合(即ち、「dGy≧dgy」)に、一致判定が遅らせられる。該処理が、「遅延処理」、又は、「補償処理」と称呼される。一方、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy未満(即ち、「dGy<dgy」)である場合には、一致判定は遅延されない。ここで、第1しきい値dgyは、予め設定された所定値(定数)である。
補償部XHでは、横加速度Gyに代えて(又は、加えて)、上下加速度Gz(上下加速度センサGZの検出値)が参酌されて、上記の一致判定が行われてもよい。具体的には、補償部XHでは、上下加速度Gzの時間変化量dGzが演算される。ここで、時間変化量dGzは、「上下加速度勾配」とも称呼され、上下加速度Gzの時間微分値である。そして、遅延部XTでは、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上である場合(即ち、「dGz≧dgz」)に、一致判定が遅らせられる。一方、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz未満(即ち、「dGz<dgz」)である場合には、一致判定は遅延されない。ここで、第2しきい値dgzは、予め設定された所定値(定数)である。なお、第1しきい値dgyと第2しきい値dgzとの大小関係は、同一値であってもよいし、異なる値であってもよい。
以下、一致判定の遅延処理(補償処理)の例について説明する。説明では、横加速度センサGYによって検出された横加速度Gyが利用される場合を想定している。以下の説明で、上下加速度センサGZによって検出された上下加速度Gzが利用される場合の説明は、「横加速度」が「上下加速度」に、「横加速度勾配」が「上下加速度勾配」に、「第1しきい値」が「第2しきい値」に、「Gy」が「Gz」に、「dGy」が「dGz」に、「dgy」が「dgz」に、夫々、読み替えることによってなされる。
《遅延部HTの第1の補償処理例》
例えば、補償部XHでは、「dGy<dgy」である場合には、一致判定が、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとの偏差(「勾配偏差」という)hDが基準量hx未満になったこと」によって行われる。更に、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致」は、「勾配偏差hDが基準量hx未満である状態が所定時間(「基準時間」という)txに亘って継続された時点(対応する演算周期)」で判定されてもよい。ここで、基準量hx、及び、基準時間txは、予め設定された所定値(定数)である。
一方、補償部XH(特に、遅延部XT)では、「dGy≧dgy」の条件が成立する場合には、一致判定の処理が禁止時間tyに亘って行われない。つまり、一致判定が禁止されることによって、一致判定が、禁止時間tyだけ遅延される。ここで、禁止時間tyは、予め設定された所定値(定数)である。
《遅延部HTの第2の補償処理例》
例えば、補償部XHでは、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致(一致判定)」が、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとの勾配偏差hDが監視偏差Hx未満になった状態が、監視時間Tkに亘って継続された時点(対応する演算周期)」で判定され得る。ここで、監視偏差Hx(一致判定のための監視に用いられる偏差)、及び、監視時間Tk(一致判定のための監視に用いられる時間)は、「横加速度勾配dGyと第1しきい値dgyとの比較結果」に基づいて定まる値である。
「dGy<dgy」である場合には、監視偏差Hx、及び、監視時間Tkは、夫々、或る値(所定値であり、例えば、上記の基準値hx(基準量)、tx(基準時間))に設定されている。そして、補償部XH(特に、遅延部XT)では、「dGy≧dgy」の条件が成立する場合には、「監視偏差Hxを或る値(例えば、基準量hxであって、「初期偏差」ともいう)から減少する修正」、及び、「監視時間Tkを或る値(例えば、基準時間txであって、「初期時間」ともいう)から増加する修正」のうちの少なくとも1つが実行される。監視偏差Hxの減少修正、及び、監視時間Tkの増加修正のうちの少なくとも1つによって、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が判定され難くなり、結果、一致判定が遅延される。
《補償減速度Ghの演算》
補償部XHでは、検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致した場合における演算減速度Geが基準減速度ghとして決定される。以下、基準減速度ghに基づく、補償減速度Ghについて説明する。補償減速度Ghは、例えば、車両(車体)の減速度として、後輪浮き抑制制御に適用される。
補償減速度Ghは、基準減速度ghに検出減速度Gxの時間変化量(検出勾配)dGxが演算周期毎に順次積算されて演算される。つまり、基準減速度ghが設定された演算周期の次回の演算周期では、以下の式(1)にて、補償減速度Ghが演算される。なお、以下の式において、[n]は今回の演算周期に対応し、[n−1]は前回の演算周期に対応する状態量(変数)を表す。
Gh[n]=gh+dGx[n] …式(1)
初回の補償減速度Ghが演算された後は、前回演算周期の補償減速度Gh[n−1]に、今回演算周期の検出勾配dGx[n]が加算されて、補償減速度Gh[n]が演算される。即ち、式(2)に示す様に、補償減速度Gh[n−1]に、検出勾配dGx[n]が演算周期毎に順次加算されて、補償減速度Gh[n]が演算される。
Gh[n]=Gh[n−1]+dGx[n] …式(2)
後輪浮き抑制制御では、補償減速度Gh(車体の減速度)が所定減速度gx以上になった場合に、前輪制動力Fxfが減少される。ここで、所定減速度gxは、予め設定された制御しきい値(所定の定数)である。
検出減速度Gxには、ゼロ点ドリフトの誤差が含まれる。しかしながら、検出勾配dGxは、時間に対する変化量であるため、ゼロ点ドリフトの誤差は含まれない。減速度演算装置GHでは、検出勾配dGxが、演算周期毎に、順次積算されることによって、補償減速度Ghが演算される。従って、補償減速度Ghでは、ゼロ点ドリフトの誤差が補償されている。
演算減速度Geは、車輪速度Vwに基づいて演算されるため、車輪WHの減速スリップ(車輪WHの回転方向のスリップであり、車体速度Vxと車輪速度Vwとの差)の影響を受ける。特に、後輪浮き抑制制御が実行される場合は、車体減速度が大きい急制動であるため、減速スリップが増大し易い。車輪WHの減速スリップの影響を受けないよう、減速度演算装置GHでは、検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致した場合の演算減速度Geが基準値(基準減速度)ghとされて、検出勾配dGxの積算が開始される。
二輪車両用タイヤの断面形状は、円に近い形状となっているため、自動二輪車の旋回で車体が傾けられると、タイヤ半径(車軸とタイヤの接地面との距離)が小さくなり、車輪速度Vwに、車両旋回に起因する誤差が含まれることとなる。検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致は、「dGy≧dgy」の場合には、その判定が遅らされる。これは、横加速度勾配dGyが、第1しきい値dgy(所定値)以上である場合には、車両が旋回中である蓋然性が高いことに基づく。この遅延処理によって、補償減速度Ghの演算において、車両旋回に起因する車輪半径の誤差が適切に補償(排除)され得る。
同様に、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致は、「dGz≧dgz」の場合にも、その判定は遅らされる。これは、上下加速度勾配dGzが、第2しきい値dgz(所定値)以上である場合には、車両が旋回中である蓋然性が高いことに基づく。この遅延処理によっても、車両旋回に起因する車輪半径の誤差が適切に補償され得る。
<補償部XHの第1処理例>
図3のフロー図を参照して、補償部XH(特に、遅延部XT)での第1の処理例(補償処理)について詳細に説明する。図2と図3との関係については、ステップS110が、取得部XA、及び、演算部XBに相当し、ステップS120〜ステップS160が、補償部XHに相当する。
ステップS110にて、減速度センサGX、横加速度センサGY、及び、上下加速度センサGZから、検出減速度Gx、横加速度Gy、及び、上下加速度Gzが取得される。また、ステップS110にて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算され、車体速度Vxに基づいて演算減速度Geが演算される。ステップS120にて、検出減速度Gxの時間変化量(検出勾配)dGx、演算減速度Geの時間変化量(演算勾配)dGe、横加速度Gyの時間変化量(横加速度勾配)dGy、及び、上下加速度Gzの時間変化量(上下加速度勾配)dGzが演算される。
ステップS130にて、横加速度勾配dGy、及び、上下加速度勾配dGzのうちの少なくとも1つに基づいて、「遅延条件が満足されるか、否か」が判定される。具体的には、「横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上であること」、及び、「上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上であること」のうちの少なくとも1つが満足される場合には、ステップS130の判定は肯定され、処理は、ステップS140に進められる。一方、「横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy未満であること」、及び、「上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz未満であること」の両条件が満足される場合には、ステップS130の判定は否定され、処理は、ステップS150に進められる。なお、第1、第2しきい値dgy、dgzは、予め設定された所定値(定数)であって、第1しきい値dgyと第2しきい値dgzとの大小関係は、同一値であってもよいし、異なる値であってもよい。
ステップS140にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致の判定を禁止する処理(「禁止処理」という)が実行される。具体的には、ステップS140では、ステップS130の判定処理が、初めて肯定された時点(ステップS130において、否定状態から肯定状態に切り替わった時点に該当する演算周期)から、時間Tがカウント(積算)される。そして、積算された時間Tが、禁止時間tyに達するまでは、後述するステップS150の処理(一致判定)が行われない(即ち、禁止される)。つまり、一致判定は、禁止時間tyに亘って禁止され、遅延される。ここで、禁止時間tyは、予め設定された所定値(定数)である。なお、第1処理例において、ステップS140が、図2の遅延部XTに相当する。
ステップS150にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの比較に基づいて、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致したか、否か(一致判定)」が判定される。例えば、一致判定は、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの比較結果(勾配偏差)hD(=|dGx−dGe|)が、基準量hx未満であることによって判定される。或いは、一致判定は、「hD<hx」の状態が、基準時間tx(所定時間)に亘って継続された時点(対応する演算周期)にて行われてもよい。なお、基準量hx、基準時間txは、予め設定された所定値である。
ステップS150にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が否定される場合には、処理は、ステップS110に戻される。一方、ステップS150にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が肯定される場合には、処理は、ステップS160に進められる。
ステップS160にて、補償減速度Ghが演算される。補償減速度Ghは、検出減速度Gxのゼロ点ドリフトが補償された、車体の減速度を表現する状態変数(状態量)である。具体的には、ステップS160では、ステップS150の判定処理が、初めて肯定された時点(ステップS150において、否定状態から肯定状態に切り替わった時点に該当する演算周期)での演算減速度Geが、基準減速度ghとして演算される。その直後の演算周期においては、基準減速度ghに検出勾配dGxが加算される。そして、演算周期毎に、前回の補償減速度Ghに検出勾配dGxが順次加算されて、該当する演算周期における(即ち、今回の)補償減速度Ghとして決定される(上記の式(1)(2)を参照)。
また、ステップS160では、ステップS150の判定処理が初めて肯定された時点(検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致した演算周期)での、演算減速度Geと検出減速度Gxとの偏差hG(「減速度偏差」という)に基づいて、補償減速度Ghが演算されてもよい。減速度偏差hGは、検出減速度Gxのゼロ点ドリフト成分に相当する。このため、検出減速度Gxから減速度偏差hGが減算されることによって、補償減速度Ghが演算され得る(即ち、「Gh=Gx−hG」)。
検出減速度Gxには、ゼロ点ドリフトが含まれるが、検出勾配dGxには、この誤差は含まれない。また、車輪速度Vwは減速スリップが含まれるため、演算減速度Geは振動的になり、演算勾配dGeは変動する。「検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致」は、演算減速度Geの変動が収束したことを意味する。従って、減速度演算装置GHでは、検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致した場合の減速度Ge(演算減速度)、Gx(検出減速度)に基づいて、補償減速度Ghが演算される。このため、補償減速度Ghにおいては、ゼロ点ドリフト、減速スリップに起因する誤差影響が補償され得る。
加えて、減速度演算装置GHでは、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上である場合には、上記の一致の判定が、予め設定された所定の禁止時間tyに亘って禁止されることによって遅延される。同様に、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上である場合にも、上記の一致の判定が、予め設定された所定の禁止時間tyに亘って禁止されることによって遅延される。「dGy≧dgy」、又は、「dGz≧dgz」の場合には、検出減速度Gxに旋回に起因する車輪半径の誤差影響が及んでいる可能性がある。従って、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上であること、及び、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上であることのうちの少なくとも1つが満足される場合には、一致判定が遅延される。換言すれば、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy未満であり、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz未満である場合には、上記の一致が遅延されることなく判定される。このため、補償減速度Ghにおいて、車両旋回に起因する誤差影響が、適切に補償され得る。
<補償部XHの第2処理例>
図4のフロー図を参照して、補償部XH(特に、遅延部XT)での第2の処理例(補償処理)について詳細に説明する。第1の処理例では、一致判定の遅延処理(遅延部XTの処理)として、禁止時間tyに亘る禁止処理(ステップS140を参照)が採用された。第2の処理例では、禁止処理に代えて、一致判定がされ難くなる処理が採用される。なお、図2と図4との関係については、ステップS210が、取得部XA、及び、演算部XBに相当し、ステップS220〜ステップS260が、補償部XHに相当する。
ステップS210、および、ステップS220の処理は、ステップS110、及び、ステップS120の処理と同じであるため、説明を省略する。ステップS230では、ステップS130と同様に、横加速度勾配dGy、及び、上下加速度勾配dGzのうちの少なくとも1つに基づいて、「遅延条件が満足されるか、否か」が判定される。つまり、「横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上であること」、及び、「上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上であること」のうちの少なくとも1つに該当する場合には、ステップS230の判定は肯定され、処理は、ステップS240に進められる。一方、「横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy未満であること」、及び、「上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz未満であること」の2つの条件が満足される場合には、ステップS230の判定は否定され、処理は、ステップS250に進められる。第1処理例と同様に、第1、第2しきい値dgy、dgzは、予め設定された所定値(定数)であって、第1しきい値dgyと第2しきい値dgzとの大小関係は、同一値であってもよいし、異なる値であってもよい。
ステップS240では、後述するステップS250にて一致判定の監視に用いられる値Hx(監視偏差)、Tk(監視時間)が演算される。具体的には、ステップS240では、ステップS230の判定処理が、初めて肯定された時点(ステップS230において、否定状態から肯定状態に切り替わった時点に該当する演算周期)において、監視偏差Hxが減少するように修正され、監視時間Tkが増加するように修正される。監視偏差Hxは、初期値として値hx(基準量であって、予め設定された所定値)に設定されていて、これから減少調整される。また、監視時間Tkは、初期値として値(基準時間)tx(予め設定された所定値)に設定されてて、これから増加調整される。つまり、ステップS240にて、監視偏差Hxは初期値hx(基準量)から小さくされ、監視時間Tkは初期値tx(基準時間)から長くされる。
監視偏差Hxの減少量は、所定の値に予め設定されている。或いは、監視偏差Hxの減少量は、勾配dGy、dGzが大きいほど大きくされてもよい。また、監視時間Tkの増加量も、所定の値に予め設定されている。或いは、監視時間Tkの増加量は、勾配dGy、dGzが大きいほど大きくされてもよい。なお、第2処理例において、ステップS240が、図2の遅延部XTに相当する。
ステップS250にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの比較に基づいて、「検出勾配dGxと演算勾配dGeとが一致したか、否か(一致判定)」が判定される。具体的には、一致の判定は、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの比較結果(勾配偏差)hD(=|dGx−dGe|)が監視偏差Hx未満である状態が、監視時間Tkに亘って継続された時点(該当する演算周期)にて行われる。
ステップS250にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が否定される場合には、処理は、ステップS210に戻される。一方、ステップS250にて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が肯定される場合には、処理は、ステップS260に進められる。ステップS260にて、ステップS160と同様の方法で、補償減速度Ghが演算される。
第2の処理例では、検出勾配dGx(検出減速度Gxの時間変化量)と演算勾配dGe(演算減速度Geの時間変化量)との偏差hDが監視偏差Hx未満である状態が監視時間Tkに亘って継続したことに基づいて、検出勾配dGxと演算勾配dGeとの一致が判定される。そして、「横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上であること」、及び、「上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上であること」のうちの少なくとも1つが満足される場合には、ステップS240にて、一致判定がされ難くなるように、監視偏差Hx、及び、監視時間Tkが調整される。これにより、一致判定が遅延され、第1の処理例と同様に、車両旋回の際の車輪半径の変化に起因する誤差が補償(解消)され得る。
第2の処理例では、監視偏差Hxの減少修正、及び、監視時間Tkの増加修正のうちの何れか一方が省略され得る。従って、第2の処理例では、監視偏差Hxを減少する修正、及び、監視時間Tkを増加する修正のうちの少なくとも1つが実行される。この場合であっても、一致判定は遅延されるため、上記同様の効果を奏する。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(自動二輪車における旋回時のタイヤ半径(車輪半径)の変化に起因する誤差補償)を奏する。
上記実施形態では、前後加速度(検出減速度)Gx、横加速度Gy、及び、上下加速度Gz(総称して、「3軸加速度」ともいう)を検出するために、前後加速度センサ(減速度センサ)GX、横加速度センサGY、及び、上下加速度センサGZの、3つの個別のセンサが採用された。これに代えて、3軸加速度Gx、Gy、Gzが、1つの加速度センサ(「3軸加速度センサ」という)によって検出されてもよい。
上記実施形態は、横加速度センサGY、及び、上下加速度センサGZを共に備える車両に適用された。これに代えて、横加速度センサGY、及び、上下加速度センサGZのうちの何れか1つが省略され得る。例えば、上下加速度センサGZが省略される構成では、ステップS120、S220では、上下加速度勾配dGzは演算されない。そして、ステップS130、S230にて、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy以上であることが判定される場合には、ステップS140、S240にて遅延処理(補償処理)が実行される。一方、横加速度勾配dGyが第1しきい値dgy未満である場合には、遅延処理は実行されず、ステップS150、S250にて、一致判定が行われる。
逆に、横加速度センサGYが省略される構成では、ステップS120、S220では、横加速度勾配dGyは演算されない。そして、ステップS130、S230にて、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz以上であることが判定される場合には、ステップS140、S240にて遅延処理(補償処理)が実行される。一方、上下加速度勾配dGzが第2しきい値dgz未満である場合には、遅延処理は実行されず、ステップS150、S250にて、一致判定が行われる。
上記実施形態では、車輪WHの制動トルクTq(結果、制動力Fx)を調節するアクチュエータとして、制動液BFを介した液圧式のユニットHUが例示された。これに代えて、電気モータによって駆動される、電動式のアクチュエータが採用され得る。電動式アクチュエータでは、電気モータの回転動力が、直線動力に変換され、これによって、摩擦部材が回転部材KTに押し付けられる。従って、制動液圧Pwに依らず、電気モータによって、直接、制動トルクTqが付与され、制動力Fxが発生される。更に、前輪WHf用として、制動液BFを介した液圧式のアクチュエータが採用され、後輪WHr用として、電動式のアクチュエータが採用された、複合型であってもよい。何れのアクチュエータが採用されても、後輪浮き抑制制御では、補償減速度Ghに基づいて、前輪制動力Fxfが減少される。
GH…減速度演算装置、XA…取得部、XB…演算部、XH…補償部、XT…遅延部、SC…制動制御装置、BP…制動操作部材、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、HU…流体ユニット、MT…電気モータ、HP…流体ポンプ、VI…インレット弁、VO…アウトレット弁、UA…調圧弁、ECU…コントローラ、VW…車輪速度センサ、GX…減速度センサ、GY…横加速度センサ、GZ…上下加速度センサ、Vw…車輪速度、Vx…車体速度、Gx…検出減速度、Ge…演算減速度、Gh…補償減速度、Gy…横加速度、Gz…上下加速度、gh…基準減速度、dGx…検出勾配(検出減速度Gxの時間変化量)、dGe…演算勾配(演算減速度Geの時間変化量)、dGy…横加速度勾配(横加速度Gyの時間変化量)、dGz…上下加速度勾配(上下減速度Gzの時間変化量)、dgy…第1しきい値(所定値)、dgz…第2しきい値(所定値)、ty…禁止時間(所定値)、Hx…監視偏差、Tk…監視時間、hx…基準量(所定の初期値)、tx…基準時間(所定の初期値)、Fx…制動力。


Claims (4)

  1. 車両の車体に設けられた減速度センサにて検出される検出減速度のゼロ点ドリフトを補償する車両の減速度演算装置であって、
    前記車両の車輪の回転速度である車輪速度に基づいて前記車両の減速度を演算減速度として演算する演算部と、
    前記検出減速度の時間変化量である検出勾配と前記演算減速度の時間変化量である演算勾配との一致に基づいて前記ゼロ点ドリフトを補償する補償部と、を備え、
    前記補償部は、
    前記車体の横加速度の時間変化量である横加速度勾配が第1しきい値以上となった場合に、前記一致の判定を遅らせる遅延部を含んで構成される、車両の減速度演算装置。
  2. 車両の車体に設けられた減速度センサにて検出される検出減速度のゼロ点ドリフトを補償する車両の減速度演算装置であって、
    前記車両の車輪の回転速度である車輪速度に基づいて前記車両の減速度を演算減速度として演算する演算部と、
    前記検出減速度の時間変化量である検出勾配と前記演算減速度の時間変化量である演算勾配との一致に基づいて前記ゼロ点ドリフトを補償する補償部と、を備え、
    前記補償部は、
    前記車体の上下加速度の時間変化量である上下加速度勾配が第2しきい値以上となった場合に、前記一致の判定を遅らせる遅延部を含んで構成される、車両の減速度演算装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の減速度演算装置において、
    前記遅延部は、前記一致の判定を禁止時間に亘って禁止する、車両の減速度演算装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の車両の減速度演算装置において、
    前記補償部は、
    前記検出減速度の時間変化量である検出勾配と前記演算減速度の時間変化量である演算勾配との偏差が監視偏差未満である状態が監視時間に亘って継続したことに基づいて前記一致の判定を行い、
    前記遅延部は、
    前記監視偏差を減少する修正、及び、前記監視時間を増加する修正のうちの少なくとも1つを実行する、車両の減速度演算装置。
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