JP2021154792A - タイヤ摩耗推定方法、及び、タイヤ摩耗形状判別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤの摩耗形状に係らず、走行中のタイヤの摩耗の度合いを精度よく推定できる方法を提供する。【解決手段】タイヤに装着された加速度センサーにより検出したタイヤ径方向加速度の時系列波形を微分した径方向加速度波形に出現する正負のピークのいずれか一方もしくは両方の大きさから算出されたタイヤ接地端部またはタイヤ接地端部近傍における変形速度の指標と、前記正のピークと負のピークとの時間間隔である接地時間と前記正負のピークのいずれか一方のピークの時間間隔である前記タイヤの回転時間との比である接地時間比と、前記タイヤの無荷重時の半径であるタイヤ半径と前記タイヤの走行時の半径である有効半径との差であるたわみ量とを用いて、前記タイヤの摩耗の度合いを推定するようにした。【選択図】図5
Description
本発明は、タイヤの摩耗の度合いを推定する方法と、走行中のタイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別する方法とに関する。
従来、タイヤの摩耗の度合いを推定する方法としては、タイヤ内に加速度センサーを配置し、この加速度センサーで検出され蹴り出したタイヤ径方向の加速度の微分波形に出現する正負のピークのいずれか一方もしくは両方の大きさである、タイヤ接地端部における変形速度の指標を算出するとともに、前記正のピークと負のピークとの時間間隔である接地時間と前記正負のピークのいずれか一方のピークの時間間隔である前記タイヤの回転時間との比である接地時間比を算出し、これら算出された変形速度の指標と接地時間比とを、予め求めておいたタイヤの摩耗の度合いである残溝量と変形速度の指標と接地時間比と関係を示すマップとから当該タイヤの摩耗の度合いを推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記特許文献1のように、変形速度の指標と接地時間比とからタイヤの残溝量を推定した場合、摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤでは、実際の残溝量が新品側に検出されてしまう(推定された摩耗量が、実際の摩耗量よりも小さくなってしまう)、といった問題点があった。
図12は、新品タイヤ(□;New)と、残溝量が新品タイヤの半分である摩耗形状の異なる2種類のタイヤ(○,△;Mid-worm)と、スリップサインの近くまで摩耗したタイヤ(■;Full-worm)の4種類の試験タイヤ搭載した車両を一定速度で走行させて測定したタイヤ径方向加速度の微分ピーク値(Derivative Peak)と接地時間比(Contact Time Ratio)との関係を示す図で、○印は摩耗形状がセンター摩耗(Center)であるタイヤ、△印は摩耗形状が均等摩耗(Even)であるタイヤである。この例では、荷重を変化させることで、複数の接地時間比におけるタイヤ径方向加速度の微分ピーク値を測定した。
同図からわかるように、摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの変形速度の指標と接地時間比との関係は、新品タイヤ側にずれていることがわかる。
図12は、新品タイヤ(□;New)と、残溝量が新品タイヤの半分である摩耗形状の異なる2種類のタイヤ(○,△;Mid-worm)と、スリップサインの近くまで摩耗したタイヤ(■;Full-worm)の4種類の試験タイヤ搭載した車両を一定速度で走行させて測定したタイヤ径方向加速度の微分ピーク値(Derivative Peak)と接地時間比(Contact Time Ratio)との関係を示す図で、○印は摩耗形状がセンター摩耗(Center)であるタイヤ、△印は摩耗形状が均等摩耗(Even)であるタイヤである。この例では、荷重を変化させることで、複数の接地時間比におけるタイヤ径方向加速度の微分ピーク値を測定した。
同図からわかるように、摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの変形速度の指標と接地時間比との関係は、新品タイヤ側にずれていることがわかる。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別する方法と、タイヤの摩耗形状に係らず、走行中のタイヤの摩耗の度合いを精度よく推定できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、走行中のタイヤの摩耗の度合い(残溝量もしくは摩耗量)を推定する方法であって、タイヤに装着された加速度センサーにより検出したタイヤ径方向加速度の時系列波形を微分した径方向加速度波形に出現する正負のピークのいずれか一方もしくは両方の大きさ(接地端の微分ピーク値)から算出した、タイヤ接地端部またはタイヤ接地端部近傍における変形速度の指標と、前記正のピークと負のピークとの時間間隔である接地時間と前記正負のピークのいずれか一方のピークの時間間隔である前記タイヤの回転時間との比である接地時間比と、前記タイヤの無荷重時の半径であるタイヤ半径と前記タイヤの走行時の半径である有効半径(車軸と路面との距離)との差であるたわみ量とを用いて、前記タイヤの摩耗の度合いを推定することを特徴とする。
このように、走行中のタイヤの変形速度の指標と接地時間比とに加えて、タイヤのたわみ量を摩耗のメジャーとしてタイヤの摩耗の度合いを推定したので、当該タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かにかかわらず、タイヤの摩耗の度合いを高精度に推定することができる。
なお、タイヤの摩耗の度合いは、予め求めておいた、変形速度の指標と接地時間比とたわみ量とを変数とする回帰式から求めてもよいし、摩耗形状がセンター摩耗か否かを判別し、センター摩耗である場合には、変形速度の指標と接地時間比とから推定した摩耗の度合いを補正してもよい。
あるいは、均等摩耗のマスターカーブとセンター摩耗のマスターカーブの2つのマスターカーブを準備し、摩耗形状により、マスターカーブを選択するようにしてもよい。
このように、走行中のタイヤの変形速度の指標と接地時間比とに加えて、タイヤのたわみ量を摩耗のメジャーとしてタイヤの摩耗の度合いを推定したので、当該タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かにかかわらず、タイヤの摩耗の度合いを高精度に推定することができる。
なお、タイヤの摩耗の度合いは、予め求めておいた、変形速度の指標と接地時間比とたわみ量とを変数とする回帰式から求めてもよいし、摩耗形状がセンター摩耗か否かを判別し、センター摩耗である場合には、変形速度の指標と接地時間比とから推定した摩耗の度合いを補正してもよい。
あるいは、均等摩耗のマスターカーブとセンター摩耗のマスターカーブの2つのマスターカーブを準備し、摩耗形状により、マスターカーブを選択するようにしてもよい。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係るタイヤ摩耗推定装置10の構成を示す図で、タイヤ摩耗推定装置10は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bと、加速度微分波形演算手段12と、微分ピーク値算出手段13と、接地時間比算出手段14と、角速度推定手段15と、たわみ量算出手段16と、記憶手段17と、残溝量推定手段18とを備える。
加速度微分波形演算手段12〜残溝量推定手段18の各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェア、及び、RAM等のメモリーから構成される。以下、これら加速度微分波形演算手段12〜残溝量推定手段18の各手段を演算部10Bという。本例では、演算部10Bを車体側に設置したが、タイヤ内に設けてもよい。
図2(a),(b)に示すように、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bは、ともに、タイヤ1のインナーライナー部2のタイヤ気室3側のほぼ中央部に配置されたセンサーケース11内に収納されて、路面からトレッド4に入力する振動を加速度として検出する。
第1の加速度センサー11Aは、検出方向がタイヤ径方向になるように配置されて、路面から入力するタイヤ径方向加速度aR(t)を検出し、第2の加速度センサー11Bは、検出方向がタイヤ周方向になるように配置されて、タイヤ周方向加速度aT(t)を検出する。なお、各図において、x方向は車両進行方向、y方向は車両幅方向(タイヤ幅方向)、z方向は上下方向である。
また、図は省略するが、センサーケース11には、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの出力をそれぞれ増幅する増幅器やA/D変換器、及び、A/D変換された信号を、演算部10Bに送信する送信機などが収納されている。なお、演算部10Bを、センサーケース11などのタイヤ1内に設置した場合には、演算部10Bで得られた推定結果を、車体側に設けられたの車両制御装置(図示せず)に送信すればよい。
第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの大きさは、タイヤ1の大きさに対してかなり小さいので、ほぼ同一の位置にあると見做せる。以下、図2(b)の点Aに示す、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの位置を計測点という。
図1は、本実施の形態1に係るタイヤ摩耗推定装置10の構成を示す図で、タイヤ摩耗推定装置10は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bと、加速度微分波形演算手段12と、微分ピーク値算出手段13と、接地時間比算出手段14と、角速度推定手段15と、たわみ量算出手段16と、記憶手段17と、残溝量推定手段18とを備える。
加速度微分波形演算手段12〜残溝量推定手段18の各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェア、及び、RAM等のメモリーから構成される。以下、これら加速度微分波形演算手段12〜残溝量推定手段18の各手段を演算部10Bという。本例では、演算部10Bを車体側に設置したが、タイヤ内に設けてもよい。
図2(a),(b)に示すように、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bは、ともに、タイヤ1のインナーライナー部2のタイヤ気室3側のほぼ中央部に配置されたセンサーケース11内に収納されて、路面からトレッド4に入力する振動を加速度として検出する。
第1の加速度センサー11Aは、検出方向がタイヤ径方向になるように配置されて、路面から入力するタイヤ径方向加速度aR(t)を検出し、第2の加速度センサー11Bは、検出方向がタイヤ周方向になるように配置されて、タイヤ周方向加速度aT(t)を検出する。なお、各図において、x方向は車両進行方向、y方向は車両幅方向(タイヤ幅方向)、z方向は上下方向である。
また、図は省略するが、センサーケース11には、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの出力をそれぞれ増幅する増幅器やA/D変換器、及び、A/D変換された信号を、演算部10Bに送信する送信機などが収納されている。なお、演算部10Bを、センサーケース11などのタイヤ1内に設置した場合には、演算部10Bで得られた推定結果を、車体側に設けられたの車両制御装置(図示せず)に送信すればよい。
第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの大きさは、タイヤ1の大きさに対してかなり小さいので、ほぼ同一の位置にあると見做せる。以下、図2(b)の点Aに示す、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bの位置を計測点という。
加速度微分波形演算手段12は、第1の加速度センサー11Aで検出されたタイヤ径方向加速度の時系列波形である径方向加速度波形を抽出し、この抽出された径方向加速度波形を時間微分した波形である加速度微分波形を求める。
図3(a)は、径方向加速度波形の一例を示す図で、横軸は時間[sec.]、縦軸は加速度[G]である。同図の破線で囲った、負の傾きが最大になる箇所が踏み込み側の接地端pfで、正の傾きが最大になる箇所pkが蹴り出し側の接地端である。
また、図3(b)は、加速度微分波形の一例を示す図で、横軸は時間[sec.]、縦軸は加速度微分値[G/sec.]である。この加速度微分波形には、2つのピークが出現する。波形の前側、すなわち、時間的に先に現れるピークが踏み込み端側のピークPfで、時間的に後に現れるピークが蹴り出し端側のピークPkである。径方向加速度波形の接地端pf,pkにおける傾きが大きいほど、加速度微分波形におけるピークPf,Pkの大きさは大きくなる。
図3(c)に示すように、加速度微分波形における踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPkとの間隔が接地時間Ttで、時間的に隣接する2つの蹴り出し端側のピークPk,Pk+1の間隔が、タイヤが一回転する時間である回転時間Trである。なお、踏み込み側のピークの時間間隔から回転時間Trを求めてもよい。
図3(a)は、径方向加速度波形の一例を示す図で、横軸は時間[sec.]、縦軸は加速度[G]である。同図の破線で囲った、負の傾きが最大になる箇所が踏み込み側の接地端pfで、正の傾きが最大になる箇所pkが蹴り出し側の接地端である。
また、図3(b)は、加速度微分波形の一例を示す図で、横軸は時間[sec.]、縦軸は加速度微分値[G/sec.]である。この加速度微分波形には、2つのピークが出現する。波形の前側、すなわち、時間的に先に現れるピークが踏み込み端側のピークPfで、時間的に後に現れるピークが蹴り出し端側のピークPkである。径方向加速度波形の接地端pf,pkにおける傾きが大きいほど、加速度微分波形におけるピークPf,Pkの大きさは大きくなる。
図3(c)に示すように、加速度微分波形における踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPkとの間隔が接地時間Ttで、時間的に隣接する2つの蹴り出し端側のピークPk,Pk+1の間隔が、タイヤが一回転する時間である回転時間Trである。なお、踏み込み側のピークの時間間隔から回転時間Trを求めてもよい。
微分ピーク値算出手段13では、踏み込み端側のピークPfの大きさである踏み込み端側の微分ピーク値VRfを算出してこれを変形速度指標VRとし、これを残溝量推定手段18に送る。なお、変形速度指標VRとしては、蹴り出し端側の加速度微分値である蹴り出し端側微分ピーク値VRkを用いてもよいし、踏み込み端側微分ピーク値VRfと蹴り出し端側微分ピーク値VRkとの平均値を用いてもよい。
接地時間比算出手段14では、図3(c)に示した、蹴り出し端側のピークPkが現れた時間T1とこの蹴り出し端側のピークがタイヤ1が1周してから再び現れるまでの時間T2との時間差である回転時間Trと、踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPk間の時間である接地時間Ttとを算出し、この算出した接地時間Ttを回転時間Trで除算した接地時間比Rcを算出する。算出された接地時間比Rcは、残溝量推定手段18に送られる。
なお、Tr=T2−T1で、Rc=(Tt/Tr)である。
角速度推定手段15は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bでそれぞれ検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、タイヤ1の回転角速度ω(t)を推定する。
たわみ量算出手段16は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bでそれぞれ検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)と、角速度推定手段15で推定した回転角速度ω(t)とから、計測点Aの軌跡を演算して、走行時のタイヤ1の縦断面形状であるタイヤ1の外形を求め、このタイヤ1の外形からたわみ量dを推定する。たわみ量dは、タイヤ1の無荷重時の半径であるタイヤ半径をR、タイヤの走行時の半径である有効半径をReffとすると、d=R−Reffと表わせる。
回転角速度ω(t)の推定方法と、たわみ量dの算出方法については、後述する。
接地時間比算出手段14では、図3(c)に示した、蹴り出し端側のピークPkが現れた時間T1とこの蹴り出し端側のピークがタイヤ1が1周してから再び現れるまでの時間T2との時間差である回転時間Trと、踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPk間の時間である接地時間Ttとを算出し、この算出した接地時間Ttを回転時間Trで除算した接地時間比Rcを算出する。算出された接地時間比Rcは、残溝量推定手段18に送られる。
なお、Tr=T2−T1で、Rc=(Tt/Tr)である。
角速度推定手段15は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bでそれぞれ検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、タイヤ1の回転角速度ω(t)を推定する。
たわみ量算出手段16は、第1及び第2の加速度センサー11A,11Bでそれぞれ検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)と、角速度推定手段15で推定した回転角速度ω(t)とから、計測点Aの軌跡を演算して、走行時のタイヤ1の縦断面形状であるタイヤ1の外形を求め、このタイヤ1の外形からたわみ量dを推定する。たわみ量dは、タイヤ1の無荷重時の半径であるタイヤ半径をR、タイヤの走行時の半径である有効半径をReffとすると、d=R−Reffと表わせる。
回転角速度ω(t)の推定方法と、たわみ量dの算出方法については、後述する。
記憶手段17は、予め求めておいた、複数のRc−VRマップ17M1〜17Mnを記憶する。Rc−VRマップ17M1〜17Mnは、タイヤ1の摩耗の度合いを推定するためのマップで、たわみ量dk(k=1〜n)毎に作成される。なお、本例では、摩耗の度合いとして残溝量Hを用いているが、摩耗量Mを摩耗の度合いとしてもよい。摩耗量Mは、新品時におけるタイヤ1の溝深さをH0、残溝量をHとすると、M=H0−Hで表される。
図4に示すように、たわみ量がdkであるRc−VRマップ17Mkは、予め求めておいた残溝量がHjである摩耗品の接地時間比Rcと変形速度指標VRとの関係を示すマスターラインLjを、横軸を接地時間比Rc、縦軸を変形速度指標VRとした平面上に描画したもので、本例では、マスターラインLjを、H1=8mm(New)、H2=6mm、H3=4mm、H4=2mm(Full-worm)の4本(j=1〜4)とした(j=1〜4)が、3本(New、Mid-worm、Full-worm)でもよいし、5本以上としてもよい。
Rc−VRマップ17M1〜17Mnは、新品タイヤ(New)及びスリップサインの近くまで摩耗したタイヤ(Full-worm)を含む、残溝量HMと摩耗形状の異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータと、たわみ量dのデータとを用いて求められる。
なお、ショルダー摩耗の場合は、センター部の残溝量が均等摩耗の残溝量とほぼ同じならば、接地時間比Rc、変形速度指標VR、及び、たわみ量dは、均等摩耗の場合とほぼ同じになるので、本例では、摩耗形状を、センター摩耗と均等摩耗の2種類とした。
図4に示すように、たわみ量がdkであるRc−VRマップ17Mkは、予め求めておいた残溝量がHjである摩耗品の接地時間比Rcと変形速度指標VRとの関係を示すマスターラインLjを、横軸を接地時間比Rc、縦軸を変形速度指標VRとした平面上に描画したもので、本例では、マスターラインLjを、H1=8mm(New)、H2=6mm、H3=4mm、H4=2mm(Full-worm)の4本(j=1〜4)とした(j=1〜4)が、3本(New、Mid-worm、Full-worm)でもよいし、5本以上としてもよい。
Rc−VRマップ17M1〜17Mnは、新品タイヤ(New)及びスリップサインの近くまで摩耗したタイヤ(Full-worm)を含む、残溝量HMと摩耗形状の異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータと、たわみ量dのデータとを用いて求められる。
なお、ショルダー摩耗の場合は、センター部の残溝量が均等摩耗の残溝量とほぼ同じならば、接地時間比Rc、変形速度指標VR、及び、たわみ量dは、均等摩耗の場合とほぼ同じになるので、本例では、摩耗形状を、センター摩耗と均等摩耗の2種類とした。
残溝量推定手段18は、微分ピーク値算出手段13で算出した変形速度指標VRと、接地時間比算出手段14で算出した接地時間比Rcと、たわみ量算出手段16で算出したわみ量dと、記憶手段17に記憶しておいたRc−VRマップ17M1〜17Mnとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する。
Rc−Pマップ17M1〜17Mnは、上記のように、残溝量Hと摩耗形状の異なる試験タイヤを搭載した車両を走行させて検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを用いて求められたものであるから、このRc−VRマップ17M1〜17Mnを用いれば、摩耗形状がセンター摩耗であるか否かにかかわらず、残溝量Hを精度よく推定することができる。
なお、図4に示すように、Rc−VRマップ17M1〜17Mnに代えて、予め求めておいた、接地時間比Rc、変形速度指標VR、及び、たわみ量dの3つを変数とした残溝量Hの回帰式H=F(Rc,VR,d)を用いて、タイヤ1の残溝量Hを推定してもよい。この回帰式H=F(Rc,VR,d)も、上記のRc−VRマップ17M1〜17Mnと同様に、残溝量Hと摩耗形状の異なる試験タイヤを搭載した車両を走行させて検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを用いて求められる。したがって、回帰式H=F(Rc,VR,d)を用いても、当該タイヤ1の残溝量Hを精度よく推定できる。
Rc−Pマップ17M1〜17Mnは、上記のように、残溝量Hと摩耗形状の異なる試験タイヤを搭載した車両を走行させて検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを用いて求められたものであるから、このRc−VRマップ17M1〜17Mnを用いれば、摩耗形状がセンター摩耗であるか否かにかかわらず、残溝量Hを精度よく推定することができる。
なお、図4に示すように、Rc−VRマップ17M1〜17Mnに代えて、予め求めておいた、接地時間比Rc、変形速度指標VR、及び、たわみ量dの3つを変数とした残溝量Hの回帰式H=F(Rc,VR,d)を用いて、タイヤ1の残溝量Hを推定してもよい。この回帰式H=F(Rc,VR,d)も、上記のRc−VRマップ17M1〜17Mnと同様に、残溝量Hと摩耗形状の異なる試験タイヤを搭載した車両を走行させて検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを用いて求められる。したがって、回帰式H=F(Rc,VR,d)を用いても、当該タイヤ1の残溝量Hを精度よく推定できる。
次に、本実施の形態1に係るタイヤ摩耗推定方法について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、摩耗の度合いを推定する際、タイヤ1を搭載した車両は、平坦な路面を一定速度V0で直進しているものとする。
まず、タイヤ1のインナーライナー部2に設置された第1及び第2の加速度センサー11A,11Bにて、路面からタイヤ1に入力するタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)を、それぞれ検出する(ステップS10)。
次に、タイヤ径方向加速度aR(t)を時間微分した波形である加速度微分波形を求め(ステップS11)、この加速度微分波形の踏み込み端側のピークPfの大きさである踏み込み端側微分ピーク値VRfを算出してこれを変形速度指標VRとする(ステップS12)とする。更に、加速度微分波形における踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPkとの間隔である接地時間Ttと、2つの蹴り出し端側のピークPk1,Pk2の間隔である回転時間Trとを算出(ステップS13)した後、この算出された接地時間Ttと回転時間Trとの比である接地時間比Rcを算出する(ステップS14)。接地時間比Rcは、Tt/Trで表わせる。
次に、上記のステップS10で検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、タイヤ1の回転角速度ω(t)を算出する(ステップS15)。そして、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)と回転角速度ω(t)とから、タイヤ1のたわみ量dを算出する(ステップS16)。
なお、変形速度指標VRの算出と、接地時間比Rcの算出と、たわみ量dの算出とは、必ずしも、この順で行う必要はなく、順板を入替えてもよいし、並列処理してもよい。
最後に、ステップS13で算出した変形速度指標VRと、ステップS15で算出した接地時間比Rcと、ステップS16〜S17で算出したたわみ量dと、記憶予め求めておいたRc−VRマップ17M1〜17Mnとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する(ステップS17)。
まず、タイヤ1のインナーライナー部2に設置された第1及び第2の加速度センサー11A,11Bにて、路面からタイヤ1に入力するタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)を、それぞれ検出する(ステップS10)。
次に、タイヤ径方向加速度aR(t)を時間微分した波形である加速度微分波形を求め(ステップS11)、この加速度微分波形の踏み込み端側のピークPfの大きさである踏み込み端側微分ピーク値VRfを算出してこれを変形速度指標VRとする(ステップS12)とする。更に、加速度微分波形における踏み込み端側のピークPfと蹴り出し端側のピークPkとの間隔である接地時間Ttと、2つの蹴り出し端側のピークPk1,Pk2の間隔である回転時間Trとを算出(ステップS13)した後、この算出された接地時間Ttと回転時間Trとの比である接地時間比Rcを算出する(ステップS14)。接地時間比Rcは、Tt/Trで表わせる。
次に、上記のステップS10で検出したタイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、タイヤ1の回転角速度ω(t)を算出する(ステップS15)。そして、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)と回転角速度ω(t)とから、タイヤ1のたわみ量dを算出する(ステップS16)。
なお、変形速度指標VRの算出と、接地時間比Rcの算出と、たわみ量dの算出とは、必ずしも、この順で行う必要はなく、順板を入替えてもよいし、並列処理してもよい。
最後に、ステップS13で算出した変形速度指標VRと、ステップS15で算出した接地時間比Rcと、ステップS16〜S17で算出したたわみ量dと、記憶予め求めておいたRc−VRマップ17M1〜17Mnとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する(ステップS17)。
ステップS15の回転角速度ω(t)の推定方法は、以下の通りである。
まず、図6(a),(b)に示すように、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、それぞれ、タイヤ1回転分の波形を切り出す。
次に、タイヤ周方向加速度aT(t)から、以下の式(1)を用いて、タイヤ周方向速度v(t)を計算する。
ここで、V0は車速であり、タイヤの回転周期とタイヤ半径、GPSデータ等から計算することができる。v(t)は、中心化などの前処理を行うこともある。
図6(c)に示すように、タイヤ周方向速度v(t)は、踏み込み端に近づくにつれて減少し、接地領域に入るとまた増加するが、接地領域の中心付近から再び減少し、蹴り出し端で最小となり、その後、上昇することがわかる。
次に、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向速度v(t)とから、以下の式(2)により、タイヤ1の回転角速度ω(t)を推定する。
ω(t)=aR(t)/v(t) ……(2)
図6(d)は回転角速度ω(t)の推定値の時間変化を示す。
上記の式(2)は、センサー(計測点A)がある時刻tにおいて等速円運動をしていると仮定して導出したもので、計測点Aが等速円運動をしているときの加速度aR(t)及び速度v(t)は、以下の式で表せる。
aR(t)=v2(t)/R(t)
v(t)=R(t)ω(t)
ここで、R(t)は時刻tにおける曲率半径である。
上記の2つの式からR(t)を消去してω(t)について解けば、上記式(2)が得られる。
まず、図6(a),(b)に示すように、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから、それぞれ、タイヤ1回転分の波形を切り出す。
次に、タイヤ周方向加速度aT(t)から、以下の式(1)を用いて、タイヤ周方向速度v(t)を計算する。
図6(c)に示すように、タイヤ周方向速度v(t)は、踏み込み端に近づくにつれて減少し、接地領域に入るとまた増加するが、接地領域の中心付近から再び減少し、蹴り出し端で最小となり、その後、上昇することがわかる。
次に、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向速度v(t)とから、以下の式(2)により、タイヤ1の回転角速度ω(t)を推定する。
ω(t)=aR(t)/v(t) ……(2)
図6(d)は回転角速度ω(t)の推定値の時間変化を示す。
上記の式(2)は、センサー(計測点A)がある時刻tにおいて等速円運動をしていると仮定して導出したもので、計測点Aが等速円運動をしているときの加速度aR(t)及び速度v(t)は、以下の式で表せる。
aR(t)=v2(t)/R(t)
v(t)=R(t)ω(t)
ここで、R(t)は時刻tにおける曲率半径である。
上記の2つの式からR(t)を消去してω(t)について解けば、上記式(2)が得られる。
次に、ステップS16のたわみ量dの算出方法について説明する。
本例では、たわみ量dを、計測点Aの軌跡から算出する。
まず、以下の式(3)を用いて、回転角速度ω(t)の推定値を積分し、回転角θの時間変化波形を求める。計測点の回転角θは、図7(a)に示すように、タイヤ1の中心から見たときの計測点Aの回転角度で、初期値θ0は0(接地中心)や−π(最上部)など、適当な値を設定することができる。
図7(a)に回転角θ(t)の時間変化を示す図で、回転角θ(t)は、ほぼ直線的に変化するが、同図の丸で囲んだ接地中心付近(t=0.1sec付近)では、回転角速度ω(t)が小さくなることに対応し、その変化が小さくなっていることがわかる。
次に、以下の式(4),(5)に示すように、上記の回転角θ(t)を用いて、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを、グローバル座標系(x,z)の加速度である前後方向加速度ax(t)と上下方向加速度az(t)とに座標変換する。グローバル座標系(x,z)は、図2(a),(b)に示した、x方向を車両進行方向、y方向を車両幅方向(タイヤ幅方向)、z方向を上下方向とした座標系である。
前後方向加速度ax(t)と上下方向加速度az(t)の時間変化波形を、図7(b),(c)に示す。
本例では、たわみ量dを、計測点Aの軌跡から算出する。
まず、以下の式(3)を用いて、回転角速度ω(t)の推定値を積分し、回転角θの時間変化波形を求める。計測点の回転角θは、図7(a)に示すように、タイヤ1の中心から見たときの計測点Aの回転角度で、初期値θ0は0(接地中心)や−π(最上部)など、適当な値を設定することができる。
次に、以下の式(4),(5)に示すように、上記の回転角θ(t)を用いて、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とを、グローバル座標系(x,z)の加速度である前後方向加速度ax(t)と上下方向加速度az(t)とに座標変換する。グローバル座標系(x,z)は、図2(a),(b)に示した、x方向を車両進行方向、y方向を車両幅方向(タイヤ幅方向)、z方向を上下方向とした座標系である。
次に、グローバル座標系に変換された加速度を積分し、以下の式(6),(7)を用いて計測点Aの前後方向速度vx(t)と上下方向速度vz(t)とを算出する。
但し、ax(t),a z(t)は、中心化などの前処理を伴うこともある。また、初期値vx0,v z0は任意の値に設定することができる。
前後方向速度vx(t)と上下方向速度vz(t)の時間変化波形を、図8(a),(b)に示す。
更に、速度を積分し、以下の式(8),(9)を用いて計測点Aの前後方向の変位ux(t)と上下方向の変位uz(t)とを算出する。
但し、vx(t),v z(t)は、中心化などの前処理を伴うこともある。また、初期値ux0,u z0は任意の値に設定することができる。
前後方向の変位ux(t)と上下方の変位uz(t)の時間変化波形を、図9(a),(b)に示す。
そして、時間成分を除き、変位ux(t),uz(t)を2次元平面に図示することで、図9(c)に示すような、計測点Aの軌跡を得る。
この計測点Aの軌跡に対して、円をフィッテイングして回帰円Cfitを求め、その半径である回帰半径Rfitとを求めるとともに、タイヤ1がたわんだ状態の半径である有効半径Reffとを求める。本例では、図9(d)の模式図に示すように、有効半径Reffを、同図の破線で示す、回帰円Cfitの中心Oから計測点Aまでの距離の最小値とした。
最後に、以下の式により、たわみ量dを算出する。
d=Rfit−Reff
なお、摩耗の度合いを推定するためのたわみ量d、もしくは、後述するセンター摩耗判定に使用する特長量としては、たわみ量dでも良いし、たわみ率kd=d/Rfitでもよい。
前後方向速度vx(t)と上下方向速度vz(t)の時間変化波形を、図8(a),(b)に示す。
更に、速度を積分し、以下の式(8),(9)を用いて計測点Aの前後方向の変位ux(t)と上下方向の変位uz(t)とを算出する。
前後方向の変位ux(t)と上下方の変位uz(t)の時間変化波形を、図9(a),(b)に示す。
そして、時間成分を除き、変位ux(t),uz(t)を2次元平面に図示することで、図9(c)に示すような、計測点Aの軌跡を得る。
この計測点Aの軌跡に対して、円をフィッテイングして回帰円Cfitを求め、その半径である回帰半径Rfitとを求めるとともに、タイヤ1がたわんだ状態の半径である有効半径Reffとを求める。本例では、図9(d)の模式図に示すように、有効半径Reffを、同図の破線で示す、回帰円Cfitの中心Oから計測点Aまでの距離の最小値とした。
最後に、以下の式により、たわみ量dを算出する。
d=Rfit−Reff
なお、摩耗の度合いを推定するためのたわみ量d、もしくは、後述するセンター摩耗判定に使用する特長量としては、たわみ量dでも良いし、たわみ率kd=d/Rfitでもよい。
実施の形態2.
図10は、本実施の形態2に係るタイヤ摩耗推定装置20の構成を示す図で、同図において、11A,11Bは第1及び第2の加速度センサー、12は加速度微分波形演算手段、13は微分ピーク値算出手段、14は接地時間比算出手段、15は角速度推定手段、16はたわみ量算出手段、21は識別モデル記憶手段、22は摩耗形状判別手段、23はR−Vマップ記憶手段、24は残溝量推定手段である。
第1及び第2の加速度センサー11A,11B〜たわみ量算出手段16までの、実施の形態1と同符号の各手段は、実施の形態1と同一構成なので、その説明を省略する。
図10は、本実施の形態2に係るタイヤ摩耗推定装置20の構成を示す図で、同図において、11A,11Bは第1及び第2の加速度センサー、12は加速度微分波形演算手段、13は微分ピーク値算出手段、14は接地時間比算出手段、15は角速度推定手段、16はたわみ量算出手段、21は識別モデル記憶手段、22は摩耗形状判別手段、23はR−Vマップ記憶手段、24は残溝量推定手段である。
第1及び第2の加速度センサー11A,11B〜たわみ量算出手段16までの、実施の形態1と同符号の各手段は、実施の形態1と同一構成なので、その説明を省略する。
識別モデル記憶手段21は、予め求めておいた、摩耗形状識別モデル21Mを記憶する。
摩耗形状識別モデル21Mは、図11に示すように、タイヤ1の摩耗形状が均等摩耗(Even wear;以下、N状態という)であるか、センター摩耗(Center wear;以下、M状態という)であるかを識別する識別関数fNM(x)により分離するための基準特徴ベクトルYZSVと、基準特徴ベクトルYZSVを重み付けするラグランジュ乗数λZとを備える(Z=NまたはM)。
基準特徴ベクトルYZSVとラグランジュ乗数λZとは、残溝量Hと摩耗形状の異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータと、たわみ量dのデータとを成分とする特徴ベクトルYZ=(RcZ,VRZ,dZ)を求めた後、これら特徴ベクトルYZを学習データとして、サポートベトルターマシーン(SVM)により求められる。
摩耗形状識別モデル21Mは、図11に示すように、タイヤ1の摩耗形状が均等摩耗(Even wear;以下、N状態という)であるか、センター摩耗(Center wear;以下、M状態という)であるかを識別する識別関数fNM(x)により分離するための基準特徴ベクトルYZSVと、基準特徴ベクトルYZSVを重み付けするラグランジュ乗数λZとを備える(Z=NまたはM)。
基準特徴ベクトルYZSVとラグランジュ乗数λZとは、残溝量Hと摩耗形状の異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータと、たわみ量dのデータとを成分とする特徴ベクトルYZ=(RcZ,VRZ,dZ)を求めた後、これら特徴ベクトルYZを学習データとして、サポートベトルターマシーン(SVM)により求められる。
摩耗形状判別手段22は、微分ピーク値算出手段13で算出した変形速度指標VRと、接地時間比算出手段14で算出した接地時間比Rcと、たわみ量算出手段16で算出したわみ量dとを成分とする特徴量ベクトルX(Rc,VR,d)と、識別モデル記憶手段21に記録されているサポートベクトルYNSVとYMSVV、及び、ラグランジュ乗数λN,λMを用いて、カーネル関数KN(X,YNSV),KM(X,YMSVV)を算出した後、これらのカーネル関数KN(X,YNSV),KM(X,YMSVV)を用いて、タイヤの摩耗形状を識別するための識別関数fNM(x)の値を求め、この識別関数fNM(x)の値により、当該タイヤ1の摩耗形状がN状態(均等摩耗)であるか、M状態(センター摩耗)であるかを判別する。摩耗形状判別手段22の判別結果は、残溝量推定手段24に送られる。
なお、カーネル関数KN,KMとしては、例えば、ガウシアンカーネルなどが好適に用いられる。
なお、カーネル関数KN,KMとしては、例えば、ガウシアンカーネルなどが好適に用いられる。
R−Vマップ記憶手段23は、予め求めておいた、残溝量がHjでかつ摩耗形状が均等摩耗である摩耗品の接地時間比Rcと変形速度指標VRとの関係を示す第1のマスターラインLNjと、残溝量がHjでかつ摩耗形状がセンター摩耗である摩耗品の接地時間比Rcと変形速度指標VRとの関係を示す第2のマスターラインLMjとを、それぞれ、横軸を接地時間比Rc、縦軸を変形速度指標VRとした平面上に描画した第1のRc−VRマップ23N(Even-Map)と第2のRc−VRマップ23M(Center-Map)とを記憶する。
第1及び第2のRc−VRマップ23N,23Mは、いずれも、接地時間比Rcと変形速度指標VRとから摩耗の度合いを推定するためマップで、第1のRc−VRマップ21Nは、摩耗形状が均等摩耗で、かつ、残溝量Hの異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータとを用いて求められる。
一方、第2のRc−VRマップ21Mは、摩耗形状がセンター摩耗で、かつ、残溝量Hの異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータとを用いて求められる。
残溝量推定手段24は、微分ピーク値算出手段13で算出した変形速度指標VRと、接地時間比算出手段14で算出した接地時間比Rcと、R−Vマップ記憶手段23に記憶しておいた第1のRc−VRマップ23Nもしくは第2のRc−VRマップ23Mとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する。
具体的には、摩耗形状判別手段22により、当該タイヤ1の摩耗形状が均等摩耗であると判定された場合には、算出された変形速度指標VRと接地時間比Rc、及び、第1のRc−VRマップ23Nとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定し、摩耗形状がセンター摩耗であると判定された場合には、算出された変形速度指標VRと接地時間比Rc、及び、第2のRc−VRマップ23Mを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する。
第1及び第2のRc−VRマップ23N,23Mは、いずれも、接地時間比Rcと変形速度指標VRとから摩耗の度合いを推定するためマップで、第1のRc−VRマップ21Nは、摩耗形状が均等摩耗で、かつ、残溝量Hの異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータとを用いて求められる。
一方、第2のRc−VRマップ21Mは、摩耗形状がセンター摩耗で、かつ、残溝量Hの異なる複数の試験タイヤを搭載した車両を、様々な荷重状態で走行させたときの接地時間比Rcのデータと、変形速度指標VRのデータとを用いて求められる。
残溝量推定手段24は、微分ピーク値算出手段13で算出した変形速度指標VRと、接地時間比算出手段14で算出した接地時間比Rcと、R−Vマップ記憶手段23に記憶しておいた第1のRc−VRマップ23Nもしくは第2のRc−VRマップ23Mとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する。
具体的には、摩耗形状判別手段22により、当該タイヤ1の摩耗形状が均等摩耗であると判定された場合には、算出された変形速度指標VRと接地時間比Rc、及び、第1のRc−VRマップ23Nとを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定し、摩耗形状がセンター摩耗であると判定された場合には、算出された変形速度指標VRと接地時間比Rc、及び、第2のRc−VRマップ23Mを用いて、当該タイヤ1の摩耗の度合いである残溝量Hを推定する。
このように、微分ピーク値算出手段13にて変形速度指標VRを、接地時間比算出手段14にて接地時間比Rcを、たわみ量算出手段16にてたわみ量dを算出した後、上記算出された変形速度指標VR、地時間比Rc、及び、たわみ量dを成分とする特徴量ベクトルX(Rc,VR,d)と、予め摩耗形状ごとに求めておいた特徴量ベクトルであるサポートベクトルYZ=(RcZ,VRZ,dZ)を学習データとして構築した判別モデル(摩耗形状識別モデル21M)とに基づいて、機械学習のアルゴリズムを用いて、前記タイヤの摩耗形状が均等摩耗であるか、センター摩耗であるかを判別したので、当該タイヤ1の摩耗形状を精度よく判別することができる。
また、摩耗形状を考慮して当該タイヤ1の摩耗の度合いを推定したので、タイヤの摩耗形状に係らず、走行中のタイヤの摩耗の度合いを精度よく推定することができる。
また、摩耗形状を考慮して当該タイヤ1の摩耗の度合いを推定したので、タイヤの摩耗形状に係らず、走行中のタイヤの摩耗の度合いを精度よく推定することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
例えば、前記実施の形態1,2では、タイヤ径方向加速度aR(t)とタイヤ周方向加速度aT(t)とから回転角速度ω(t)を推定したが、振動ジャイロなどの角速度センサーを用いて回転角速度ω(t)を直接計測してもよい。角速度センサーは、計測点Aに設置することが好ましい。
また、たわみ量dについても、タイヤ1が取付けられている車両に距離センサーを設置して、車両と路面までの距離を計測し、この車両と路面間と距離からたわみ量dを算出してもよい。具体的には、距離センサーの設置位置と路面との距離を車軸と路面との距離に換算してこれを有効半径Reffとし、この有効半径とタイヤ半径Rとの差をたわみ量dとすればよい。
また、前記実施の形態2では、摩耗形状判別手段22を、サポートベクトルマシーン(SVM)から構成したが、ロジスティック回帰やランダムフォーレスト、ニューラルネットワークなどの他の機械的学習のアルゴリズムを用いてもよい。
また、前記実施の形態2では、摩耗形状により、摩耗の度合いを推定するマップを選択する構成としたが、第1のRc−VRマップ23Nのみ準備するとともに、予め、接地時間比Rcと変形速度指標VRとが同じ、摩耗形状が均等摩耗であるときの残溝量HNと、摩耗形状がセンター摩耗における残溝量HMとの差である補正量ΔHを求めておき、摩耗形状がセンター摩耗である場合には、第1のRc−VRマップ23Nで求めた残溝量H’を、H=H’+ΔHと補正して出力するようにしてもよい。なお、摩耗形状がセンター摩耗でない場合には、補正の必要はなく、H’とをそのまま出力すればよい。
また、たわみ量dについても、タイヤ1が取付けられている車両に距離センサーを設置して、車両と路面までの距離を計測し、この車両と路面間と距離からたわみ量dを算出してもよい。具体的には、距離センサーの設置位置と路面との距離を車軸と路面との距離に換算してこれを有効半径Reffとし、この有効半径とタイヤ半径Rとの差をたわみ量dとすればよい。
また、前記実施の形態2では、摩耗形状判別手段22を、サポートベクトルマシーン(SVM)から構成したが、ロジスティック回帰やランダムフォーレスト、ニューラルネットワークなどの他の機械的学習のアルゴリズムを用いてもよい。
また、前記実施の形態2では、摩耗形状により、摩耗の度合いを推定するマップを選択する構成としたが、第1のRc−VRマップ23Nのみ準備するとともに、予め、接地時間比Rcと変形速度指標VRとが同じ、摩耗形状が均等摩耗であるときの残溝量HNと、摩耗形状がセンター摩耗における残溝量HMとの差である補正量ΔHを求めておき、摩耗形状がセンター摩耗である場合には、第1のRc−VRマップ23Nで求めた残溝量H’を、H=H’+ΔHと補正して出力するようにしてもよい。なお、摩耗形状がセンター摩耗でない場合には、補正の必要はなく、H’とをそのまま出力すればよい。
1 タイヤ、2 インナーライナー部、3 タイヤ気室、4 トレッド、
10 タイヤ摩耗推定装置、11 センサーケース、11A 第1の加速度センサー、
11B 第2の加速度センサー、12 加速度微分波形演算手段、
13 微分ピーク値算出手段、14 接地時間比算出手段、15 角速度推定手段、
16 たわみ量算出手段、17 記憶手段、17M1〜17Mn Rc−VRマップ、
18 残溝量推定手段。
10 タイヤ摩耗推定装置、11 センサーケース、11A 第1の加速度センサー、
11B 第2の加速度センサー、12 加速度微分波形演算手段、
13 微分ピーク値算出手段、14 接地時間比算出手段、15 角速度推定手段、
16 たわみ量算出手段、17 記憶手段、17M1〜17Mn Rc−VRマップ、
18 残溝量推定手段。
Claims (7)
- タイヤに装着された加速度センサーにより検出したタイヤ径方向加速度の時系列波形を微分した径方向加速度波形に出現する正負のピークのいずれか一方もしくは両方の大きさから算出されたタイヤ接地端部またはタイヤ接地端部近傍における変形速度の指標と、前記正のピークと負のピークとの時間間隔である接地時間と前記正負のピークのいずれか一方のピークの時間間隔である前記タイヤの回転時間との比である接地時間比と、前記タイヤの無荷重時の半径であるタイヤ半径と前記タイヤの走行時の半径である有効半径との差であるたわみ量とを用いて、前記タイヤの摩耗の度合いを推定するタイヤ摩耗推定方法。
- 前記タイヤのタイヤ径方向加速度、タイヤ周方向加速度、及び、回転角速度を計測するとともに、前記計測されたタイヤ径方向加速度、タイヤ周方向加速度、及び、回転角速度を用いて算出した当該タイヤの変位の軌跡から前記たわみ量を推定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ摩耗推定方法。
- 前記タイヤのタイヤ径方向加速度とタイヤ周方向加速度とを計測し、前記計測されたタイヤ径方向加速度とタイヤ周方向加速度とから前記タイヤの回転角速度を推定するとともに、前記計測されたタイヤ径方向加速度とタイヤ周方向加速度、及び、前記推定された回転角速度を用いて算出した当該タイヤの変位の軌跡から前記たわみ量を推定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ摩耗推定方法。
- 前記有効半径を、前記タイヤが取付けられている車両に搭載された距離センサーにより検出された前記車両と路面との距離から算出することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ摩耗推定方法。
- 前記変形速度の指標と前記接地時間比と前記たわみ量とを特徴量とし、これらの特徴量から、機械学習アルゴリズムにより、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別する判別ステップと、
前記タイヤの摩耗の度合いを推定するステップとを備え、
前記判別ステップでは、
前記特徴量と、予め求めておいた摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの特徴量とセンター摩耗ではない摩耗形状のタイヤの特徴量とを学習データとして構築した判別モデルとに基づいて、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別し、
前記タイヤの摩耗の度合いを推定するステップでは、
前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であると判別された場合は、
前記算出された変形速度の指標と、前記接地時間比と、予め求めておいた、タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの前記変形速度の指標と前記接地時間比とタイヤの摩耗の度合いとの関係とを用いて前記タイヤの摩耗の度合いを推定し、
前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗ではないと判別された場合は、
前記算出された変形速度の指標と、前記接地時間比と、予め求めておいた、タイヤの摩耗形状がセンター摩耗ではないタイヤの前記変形速度の指標と前記接地時間比と摩耗の度合いとの関係とを用いて、前記タイヤの摩耗の度合いを推定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のタイヤ摩耗推定方法。 - 前記変形速度の指標と前記接地時間比とを用いて、前記タイヤの摩耗の度合いを推定する推定ステップと、
前記変形速度の指標と前記接地時間比と前記たわみ量とを特徴量とし、これらの特徴量から、機械学習アルゴリズムにより、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別する判別ステップと、
前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であると判別された場合には、前記推定された摩耗の度合いを補正する補正ステップと、を備え、
前記判別ステップでは、
前記特徴量と、予め求めておいた摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの特徴量とセンター摩耗ではない摩耗形状のタイヤの特徴量とを学習データとして構築した判別モデルとに基づいて、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別し、
前記補正ステップでは、
前記予め求めておいた、摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの摩耗の度合いと摩耗形状がセンター摩耗でないタイヤの摩耗の度合いとの差を用いて、前記推定された摩耗の度合いを補正することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のタイヤ摩耗推定方法。 - 走行中のタイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別する方法であって、
タイヤに装着された加速度センサーにより検出したタイヤ径方向加速度の時系列波形を微分した径方向加速度波形に出現する正負のピークのいずれか一方もしくは両方の大きさから算出した、タイヤ接地端部またはタイヤ接地端部近傍における変形速度の指標を求めるステップと、
前記正のピークと負のピークとの時間間隔である接地時間と前記正負のピークのいずれか一方のピークの時間間隔である前記タイヤの回転時間との比である接地時間比を求めるステップと、
前記タイヤの無荷重時の半径であるタイヤ半径と前記タイヤの走行時の半径である有効半径との差であるたわみ量を求めるステップと、
前記求められた変形速度の指標と接地時間比とたわみ量とを特徴量とし、これらの特徴量から、機械学習アルゴリズムにより、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗か否かを判別する判別ステップと、を備え、
前記判別ステップでは、
前記特徴量と、予め求めておいた摩耗形状がセンター摩耗であるタイヤの特徴量とセンター摩耗ではない摩耗形状のタイヤの特徴量とを学習データとして構築した判別モデルとに基づいて、前記タイヤの摩耗形状がセンター摩耗であるか否かを判別することを特徴とするタイヤ摩耗形状判別方法。
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