JP4876759B2 - タイヤの制駆動時動特性評価方法および装置 - Google Patents

タイヤの制駆動時動特性評価方法および装置 Download PDF

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本発明は、制駆動時におけるタイヤの動特性を評価する方法および装置に関し、特に、タイヤにスリップ率入力を与えた際、このスリップ率入力に応じてタイヤに発生するブレーキングフォースやドライビングフォースなど制駆動力の、過渡的な応答の特性を定量的に評価する方法および装置に関する。
今日、自動車車両の多くには、ABS(antilock−brake system)が装着されている。周知のように、ABSは、車輪と路面間の摩擦力と車輪の回転を確保することで,制動安定性と操縦性を得るためのシステムであり、一般的に、車速と車輪回転速度を検出してブレーキを自動的にコントロールする。このようなABSが装着された今日の自動車車両は、制御性が大幅に向上されている。
タイヤに発生する制動力の大きさは、タイヤのスリップ率に対して変化する。タイヤのスリップ率を、スリップ率0(ゼロ)から上昇させていくと、タイヤの制動力は上昇し、あるスリップ率で制動力が最大になり、その後は減少していくことが知られている。ABS装置では、基本的には、このようなスリップ率(S)とタイヤの制動力(制動時のタイヤの摩擦係数μに対応)との関係(μ−Sカーブ)に基いて、なるべく大きな制動力が得られるよう、車両のブレーキを自動的にコントロールする。
これまで、ABS装置による車両の制動力を向上させるために、タイヤの制動力の最大値(μピーク性能)を向上させる方向で、タイヤ開発が行なわれてきた。しかし、車両の制動動作は、ある速度で走行している状態から、時間をかけて減速走行状態へと移行する過渡的な動作である。様々な状況で、ABS装置によってより高い制動力を実現するためにも、スリップ率の変動に対するタイヤ制動力の過渡的な応答特性に着目して、タイヤの開発を行なうことも重要であると考えられている。このような高い制動特性をもつタイヤの開発の要求にともない、タイヤ固有の制駆動時の動特性を、定量的に精度良く評価することができる方法や装置が求められている。なお、タイヤの制駆動時の動特性とは、スリップ率Sが時間的に変化する際の、この時間変化に対するタイヤに発生する力や変位の応答特性のことをいう。ここで、タイヤの回転角速度ωとタイヤ半径rとで表されるタイヤの転動速度をV=rω、タイヤ軸に対する路面の移動速度をVとしたとき、例えばタイヤ制動時のスリップ率SはS=(V−V)/Vで表され、例えばタイヤ駆動時のスリップ率SはS=(V−V)/Vで表される。なお、本発明においてスリップ率Sとは、タイヤの転動速度に対する、タイヤ軸に対する路面の移動速度の大きさの程度を表す値であればよく、スリップ率Sの定義は、上記した式に限定されるものではない。
例えば、実際の路面(実路)上に自動車を走行させて、自動車車両に装着されているタイヤの速度(車輪速度)を検出し、検出した車輪速度信号に基づいて、路面外乱から車輪速までの伝達特性の追従周波数を表す車輪速周波数特性量を推定し、推定された車輪速周波数特性量から路面状態を表す物理量を推定する路面状態推定装置が、下記特許文献1に記載されている。
特開2002−120709号公報
しかし、引用文献1では、実際の車両に路面上を走行させた際の車輪の転動速度を検出し、検出した車輪速信号に基づいて、路面外乱から車輪速までの伝達特性の追従周波数を表す車輪速周波数特性量を推定しているのみであり、路面状態を表す物理量を推定することしかできない。引用文献1では、タイヤ単体の開発に有効な情報となる、タイヤ固有の制駆動過渡特性を得ることはできない。また、引用文献1では、車両のサスペンション前後共振やタイヤ回転振動による共振の影響も考慮されてはいるが、これらの影響を完全に除去した評価値が得られるわけではない。引用文献1で得られる評価値は、定量性および再現性で不十分なものである。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、制駆動時におけるタイヤの動特性を、定量的に、精度良く評価することが可能な、タイヤの制駆動時動特性評価方法および装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、制駆動時におけるタイヤの動特性を評価する方法であって、接地面を転動するタイヤのスリップ率を時間変化させつつ、前記タイヤと前記接地面との接地領域に発生する、前記スリップ率の変化に応じたタイヤ前後力の出力信号を得る測定ステップと、前記測定ステップで変化させた前記スリップ率の時系列データと、前記測定ステップで得た前記出力信号の時系列データとを用いて、前記タイヤの回転軸に対する前記接地面の移動速度と前記スリップ率の周波数とで表される距離周波数に対する、前記タイヤ前後力の周波数応答特性を求めて、求めた前記タイヤ前後力の周波数応答特性情報を出力する分析ステップと、前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータの値を同定し、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、同定した前記伝達関数のパラメータの値を出力するパラメータ同定ステップと、を有することを特徴とするタイヤの制駆動時動特性評価方法を提供する。
なお、前記測定ステップでは、時間変化する制駆動トルクを前記タイヤに入力することで、前記タイヤのスリップ率を時間変化させることが好ましい。また、前記測定ステップでは、周波数の異なる複数の制駆動トルクを前記タイヤに順次入力することが好ましい。
また、前記パラメータ同定ステップでは、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した下記式(1)に示す伝達関数G(s)を用い、
前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記伝達関数のパラメータである、タイヤの等価周剛性Ktおよびタイヤのタイヤ前後力スティフネスKxの値を同定して出力することが好ましい。
Figure 0004876759

s:ラプラス演算子
Fx(s):タイヤ前後力
S:スリップ率
V:走行速度(タイヤ軸に対する路面の移動速度)
Kt:タイヤの等価周剛性(N/m)(前後方向剛性)
Kx:制駆動力スティフネス(N)
また、前記パラメータ同定ステップでは、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した前記伝達関数G(s)で、前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報をフィッティングすることで、前記伝達関数のパラメータである、タイヤの等価周剛性Ktおよびタイヤの制駆動力スティフネスKxの値を同定することが好ましい。
また、前記パラメータ同定ステップでは、さらに、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、前記伝達関数の時定数を算出して出力することが好ましい。
また、前記測定ステップで時間変化させる前記タイヤのスリップ率の最大値は、前記タイヤが前記接地面に接地した状態で、前記接地領域に発生する前記タイヤ前後力が最大となる際のスリップ率の値よりも小さいことが好ましい。
また、前記測定ステップで時間変化させる前記タイヤのスリップ率の最大値は、5%以下であることが好ましい。
本発明は、また、制駆動時におけるタイヤの動特性を評価する装置であって、接地面を転動するタイヤのスリップ率を時間変化させつつ、前記タイヤと前記接地面との接地領域に発生する、前記スリップ率の変化に応じたタイヤ前後力の出力信号を得る測定手段と、前記測定手段で変化させた前記スリップ率の時系列データと、前記測定手段で得た前記出力信号の時系列データとを用いて、前記タイヤの回転軸に対する前記接地面の移動速度と前記スリップ率の周波数とで表される距離周波数に対する、前記タイヤ前後力の周波数応答特性を求めて、求めた前記タイヤ前後力の周波数応答特性情報を出力する分析手段と、前記分析手段で求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータの値を同定し、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、同定した前記伝達関数のパラメータの値を出力するパラメータ同定手段と、を有することを特徴とするタイヤの制駆動時動特性評価装置を、併せて提供する。
本発明のタイヤの制駆動時動特性評価方法および装置によれば、様々な車両走行条件中の様々な制動状態や駆動状態それぞれについて、タイヤ固有の制駆動時動特性を、定量的に、精度良く評価することができる。
以下、タイヤの制駆動時動特性評価方法および装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤの制駆動時動特性評価装置の一例である、制駆動時動特性評価装置10(装置10)について説明する概略構成図である。図1は、装置10を用い、測定対象タイヤであるタイヤ12のスリップ率を時間変化させつつ、このスリップ率入力に対するタイヤ前後力の応答特性(応答出力)を計測し、入力したスリップ率の時系列データと、計測したタイヤ前後力の応答の時系列データとに基いて、制駆動時のタイヤの動特性を定量的に評価する場合について示している。
本明細書では、スリップ率Sが時間的に変化する際の、この時間変化に対するブレーキングフォースの応答特性や、この時間変化に対するドライビングフォースの応答特性などを併せて、タイヤ前後力の応答特性としている。なお、ブレーキングフォースとは、周知のように、タイヤ転動速度rωに対して路面移動速度Vが大きい場合に、タイヤと路面との接地領域において発生する、路面移動速度Vを減少させるように作用するタイヤ前後力である。また、ドライビングフォースとは、周知のように、タイヤ転動速度rωに対して路面移動速度Vが小さい場合に、タイヤと路面との接地領域において、路面移動速度Vを増加させるように作用するタイヤ前後力である。なお、タイヤ前後力とは、タイヤと接地面との接地領域に発生する、タイヤ赤道面と接地面との交線に沿った方向の力である。上述したタイヤの制駆動時の動特性のうち、スリップ率の時間変化に対する、タイヤ前後力の応答特性は特に重要である。
装置10は、室内転動試験機14と測定・評価ユニット16とを有して構成されている。なお、測定・評価ユニット16には、ディスプレイ18が接続されている。室内転動試験機14は、タイヤ軸22に軸支したタイヤ12を、ベルト20の表面である代用路面24に接地させ、ベルト20を回転駆動させることで、タイヤ12にベルト20の代用路面24上を走行(転動)させる、公知のフラットベルト型室内試験機である。本実施形態の室内転動試験機14では、代用路面24上を走行中のタイヤ12に対して、周波数の異なる複数の制駆動トルク入力を順次与えて、代用路面24上を走行するタイヤ12のスリップ率を時間変化させ、このスリップ率入力に応じて発生するタイヤ前後力を計測する。装置10では、ベルト20の表面である代用路面24(路面24)に、タイヤ12が接地した状態で、タイヤ12の赤道面と路面24との交線に沿って路面24が移動するよう調整されている。具体的には、タイヤ12を軸示するタイヤ軸22の方向(軸心に沿った方向)が、ベルト20の表面である代用路面24の移動方向(図1中のX軸)と垂直となるよう、タイヤ軸22の角度が調整されている。
ベルト20は、ローラ対28に掛けまわされている。このローラ対28は、図示しないモータを有して構成された駆動ユニット26と接続されており、この駆動ユニット26のモータによってローラ対28が回転して、ベルト20の代用路面24が移動する構成となっている。駆動ユニット26は、測定・評価ユニット16の、後述する測定手段40と接続されている。
タイヤ軸22は、タイヤ軸支持部材32に設けられている。タイヤ軸22は、スリップ率調整手段であるトルク付与手段34と接続されている。トルク付与手段34は、タイヤ12に対して、タイヤ軸22周りの回転トルク(すなわち制駆動トルク[制動トルクまたは駆動トルク])を与える部位であり、図示しないモータなどの回転力付与手段と、図示しない回転速度計測手段とを備えて構成されている。トルク付与手段34は、後述する測定手段40と接続されている。トルク付与手段34は、タイヤ軸22に、測定手段40から送信される制御信号に応じた回転トルク(制駆動トルク)を付与するとともに、タイヤ軸22の回転速度ωを計測し、計測して得られたタイヤ軸22の回転速度ωのデータを、後述の測定手段40の転動速度データ取得部47に送る。
タイヤ軸支持部材32には、また、タイヤ12にかかる図中X軸方向の力(タイヤ前後力)を計測可能なセンサ35が設けられている。図中X軸は、タイヤ12の赤道面と路面24との交線に対応している。なお、センサ35は、圧電素子を用いたものや、歪みゲージを用いたもの等、タイヤ12にかかる前後力を計測できる装置であればよく、特に限定されない。また、タイヤ軸支持部材32は、図示しない荷重負荷手段と接続されており、タイヤ12の転動中、この荷重負荷手段から所定の荷重が印加されることで、タイヤ軸22に支持されたタイヤ12が、所定の接地荷重で、ドラム20の代用路面24と接地される。センサ35は、測定・評価ユニット16の、後述する測定手段40と接続されている。
測定・評価ユニット16は、測定手段40と評価手段50とを有して構成されている。図2は、測定・評価ユニット16について説明する概略構成図である。測定・評価ユニット16は、測定手段40と、評価手段50と、CPU17と、メモリ19とを有する。測定・評価ユニット16は、メモリ19に記憶されたプログラムをCPU17が実行することで、測定手段40および評価手段50に示される各部が機能するコンピュータである。
測定手段40は、条件設定部42、動作制御部44、およびデータ取得部45を有して構成されている。評価手段50は、スリップ率導出部51、データ処理部52、データ統合部54、パラメータ同定部56、および評価値算出部58を有して構成されている。
測定手段40の条件設定部42は、路面24上を転動中のタイヤ12に順次与える、異なる複数の制駆動トルク入力の周波数や、タイヤ12の転動速度の条件を設定する部位である。
図3に、転動中のタイヤ12および路面24をそれぞれ表す、タイヤモデル62および路面モデル64を示している。例えば、スチールラジアルタイヤは、タイヤ周方向の曲げ剛性がきわめて大きいスチールベルトをもっている。タイヤモデル62は、タイヤ周方向には曲がらないがタイヤ半径方向には曲がるベルトモデル66と、弾性体であるトレッド表面を表すトレッドモデル68とで構成されている。図3に示すモデルにおいては、タイヤ12の接地部における周方向の縮みはないものと仮定する。図3に示すように、タイヤ半径rとし、転動速度rω(回転角速度ω)でベルトモデル66が回転しながら、タイヤモデル62のタイヤ軸に対して路面モデル64が進行速度Vで進んでいるものとする。制動時(タイヤに制動トルクが入力されている状態)では、ベルトモデル66の転動速度rωが、路面モデル64の進行速度Vよりも遅く、また、駆動時(タイヤに駆動トルクが入力されている状態)は、ベルトモデル66の回転速度rωが、路面モデル64の進行速度Vよりも速い。このように、制駆動時、すなわちタイヤに制駆動トルクが入力されている状態では、ベルトモデルと路面モデルとの速度差ΔVが発生する。
タイヤ軸(タイヤ軸22に対応)に固定された座標系から、タイヤモデル62の接地部を見た場合、路面モデル64が速度V、ベルトモデル66が速度rωで後方に移動し、接地面の前端で路面と接触したトレッドモデル68は、ベルトモデル66と路面モデル64との速度差ΔVによって、接地面の後方に移動するにしたがい大きな剪断変形を受ける。すなわち、制動時および駆動時とも、路面とベルトとの相対変位量は、接地前端からの距離に比例して大きくなる。この結果、トレッドゴムモデル68に発生する、単位体積あたりの前後力は、接地面前端からの距離に比例して直線的に増加し、路面との摩擦力以上になった点ですべり出し、接地面前端で零に戻る。このように、タイヤモデル62と路面モデル64との接地面では、接地面の前半に粘着域が、後半部にはすべり域が現れる。このような粘着域やすべり域それぞれの大きさや、トレッドモデル68に発生する単位体積あたりの前後力は、タイヤの転動速度と路面移動速度との速度差が変化することに対応して、すなわち、このような速度差を表すスリップ率の変化に応じて変化する。
以上のような考察からも、タイヤに制駆動トルクを与えてスリップ率を変化させつつ路面上を移動させた場合、このタイヤに発生するタイヤ前後力は、タイヤの移動距離に応じて前後力が応答し、やがて定常値になるような一時遅れ系のモデルで表されることがわかる。すなわち、所定の移動速度で路面上を移動するタイヤに制駆動トルクを与えてスリップ率を変化させた場合、スリップ率の時間周波数f(Hz=cycle/s=2πrad/s)と路面の移動速度v(m/s)とで表される距離周波数PF=f/v(cycle/m=2πrad/m)に対する、タイヤに発生するタイヤ前後力(ブレーキングフォースやドライビングフォース)の応答も、1次遅れ系として表せる。測定手段40は、コーナリング試験機14の各部の動作を制御して、所定の移動速度で路面24上を移動するタイヤ12に周期的に変化する制駆動トルクを入力することで、タイヤ12のスリップ率を周期的に時間変化させ、このような一次遅れ系で表すことができる(近似することができる)タイヤ前後力の出力信号を取得する。
図4は、制動時における、タイヤ接地領域のスリップ率とタイヤ接地領域に発生するブレーキングフォース(タイヤ前後力)の大きさとの関係を示すグラフである。一般的なタイヤでは、制動時に発生するブレーキングフォースは、このような傾向を示すことが知られており、駆動時のドライビングフォースも、同様な傾向を示すことが知られている。スリップ率が極端に小さい状態では、上述のすべり域は無視でき、タイヤ接地面に発生する前後力(ブレーキングフォースやドライビングフォース)の大きさは直線的に増加する。スリップ率がある程度大きくなると、すべり域が徐々に大きくなり、スリップ率が1.0の、タイヤロック時制動力まで低下する。
この条件設定部42は、タイヤ前後力の出力信号取得時の、路面24の移動速度およびタイヤ12に入力する時系列の制駆動トルクの大きさ(振幅)や周波数等を設定する部位である。装置10では、時間変化させるスリップ率の大きさ(振幅)の範囲として、タイヤ12のスリップ率の変化に対して、発生する前後力(ブレーキングフォースやドライビングフォース)の大きさが直線的に増加するような、比較的小さいスリップ率の大きさ(振幅)の範囲を設定する。すなわち、条件設定部42では、入力する制駆動トルクの大きさ(振幅)の範囲として、制駆動トルクの入力にともなって生じるタイヤのスリップ率が、このような比較的小さいスリップ率の範囲となるよう、比較的小さい制駆動トルクの大きさ(振幅)の範囲を設定する。
このように、制駆動トルクの入力にともなって時間変化するスリップ率の大きさ(振幅)の範囲を、発生する前後力が直線的に増加するような、比較的小さなスリップ率の大きさ(振幅)の範囲に設定するのは、時間的に変化するスリップ率入力に対する、タイヤに発生するタイヤ前後力の応答を、1次遅れ系のモデルを用いて精度良く表し、ひいては、後述する伝達関数のパラメータを高精度に導出するためである。このような効果を得るために、本実施形態では、例えば、スリップ率の振幅、すなわち、時間変化するスリップ率の大きさ(振幅)の最大値を、例えば5%以下に設定しておく。このような比較的小さなスリップ率の大きさ(振幅)の範囲における、タイヤ接地面に発生する前後力(ブレーキングフォースやドライビングフォース)の立ち上がりの勾配(図4に角度αで示す)は、制駆動力スティフネスとよばれ、1次遅れ系のモデルを用いて表した際、タイヤに発生するタイヤ前後力の応答を特徴づける値である。
動作制御部44は、条件設定部42で設定された、路面24の転動速度およびタイヤ12に入力する制駆動トルクの大きさ(振幅)や周波数等に基づき、室内転動試験機14の各部の動作を制御する部位である。動作制御部44は、制駆動トルク制御部48と路面速度制御部49とで構成されている。制駆動トルク制御部48はトルク付与手段34と接続されており、路面速度制御部49は駆動ユニット26と接続されている。路面速度制御部49は、条件設定部42で設定された路面移動速度で路面24が移動するよう、駆動ユニット26の動作(モータの回転速度など)を制御する。なお、この際、路面速度制御部49は、路面24の現在の移動速度Vのデータを、後述する評価手段50のスリップ率導出部51に送信する。また、動作制御部44の制駆動トルク制御部48は、条件設定部で設定されているタイヤ12に入力する時系列の制駆動トルクに応じて、トルク付与手段34の動作を制御する。
なお、制駆動トルク入力の周波数は、トルク付与手段34によって制御されるが、トルク付与手段34の能力にともない、入力可能な周波数には限界がある。そこで、条件設定部42では、タイヤに与える複数の制駆動トルク入力の周波数範囲を、トルク付与手段34によって比較的精度良く制御できる周波数範囲(例えば0.1Hz〜5.0Hz)に設定した状態で、所望の入力距離周波数PFの範囲に渡ってデータが取得できるよう、路面移動速度を複数設定する。この際、各路面移動速度における距離周波数PFの範囲それぞれの少なくとも一部が、少なくとも異なる1つの路面移動速度における距離周波数の範囲と重複するよう、路面24の移動速度を複数設定することが好ましい。例えば、入力する制駆動トルクの周波数範囲が、例えば0.1Hz〜5.0Hzである場合、路面24の移動速度を、例えば50km/h、70km/h、90km/hと3つ設定しておく。
データ取得部45は、前後力データ取得部46と転動速度データ取得部47とを有して構成されている。前後力データ取得部46は、設定した路面移動速度で路面24を移動させた状態で、タイヤ12に周波数の異なる複数の制駆動トルク入力を順次与えた際の、センサ35から出力される、この制駆動トルク入力に対応したタイヤ前後力の時系列の出力信号(タイヤ前後力の応答の信号)を取得する。そして、前後力データ取得部46は、取得したタイヤ前後力の時系列の出力信号を、評価手段50のデータ処理部52に送る。転動速度データ取得部47は、設定した路面移動速度で路面24を移動させた状態で、タイヤ12に周波数の異なる複数の制駆動トルク入力を順次与えた際の、トルク付与手段34から出力される、この制駆動トルク入力に対応したタイヤ軸22の回転速度ωを受け取る。そして、メモリ19に予め記憶されているタイヤの半径rを用い、タイヤ12の現在の転動速度V=rωのデータを、後述の評価手段50のスリップ率導出部51に送信する。
スリップ率導出部51では、路面速度制御部49から送信された、路面24の現在の移動速度Vと、転動速度データ取得部47から送信されたタイヤ12の転動速度V=rωとを用いて、タイヤ12に生じたスリップ率Sを、時系列に順次算出する。
図5および図6は、測定・評価ユニット16において取得・算出された各種データについて説明するグラフである。図5(a)および図6(a)は、それぞれ、条件設定部12において設定されて、トルク付与手段34によってタイヤに付与された制駆動トルクの時系列データと、スリップ率導出部51において導出されたスリップ率Sの時系列データと、データ取得部46が取得したタイヤ前後力の時系列データの一例である。また、図5(b)および図6(b)は、図6(a)および図5(a)にそれぞれ示す、スリップ率Sとタイヤ前後力との対応の時間履歴を表すグラフである。図5(a)および(b)は、制駆動トルクの入力周波数が0.1(Hz)の場合のグラフであり、図6(a)および(b)は、制駆動トルクの入力周波数は4.91(Hz)の場合のグラフである。制駆動トルクの入力周波数が比較的低い場合、図5(a)および図6(a)から判断できるように、タイヤに発生する前後力は、制駆動トルクの入力(すなわちスリップ率の変動)に対して時間遅れを殆ど生じない。一方、制駆動トルクの入力周波数が比較的高い場合、図5(b)および図6(b)から判断できるように、タイヤに発生する前後力には、制駆動トルクの入力(すなわちスリップ率の変動)に対して明確な遅れ(位相差)が発生している。装置10では、タイヤ12に、このような複数の異なる周波数の制駆動トルクを順次入力し、スリップ率を変動させ、各入力周波数それぞれについて、タイヤ前後力の時系列データを取得する。
評価手段50のデータ処理部52は、上記スリップ率の時系列データと、発生するタイヤ前後力の出力信号の時系列データとを用いて周波数分析を行ない、距離周波数に対する、タイヤ前後力の応答(周波数応答)の情報を求める部位である。データ処理部52では、例えば公知のFFT(Fast Fourier Transformation)法等を用いて、所定の周波数分解能(距離周波数分解能)で、例えば図7にボード線図で示すような、スリップ率情報と出力タイヤ前後力情報との振幅比(ゲイン)や、位相角(位相遅れ)の情報を求める。データ処理部52では、ます、第1路面移動速度(例えば50km/h)で路面24を移動させた状態における、タイヤ12のスリップ率の時系列データと、発生するタイヤ前後力の出力信号の時系列データとを用いて周波数分析を行なう。そして、第1路面移動速度(例えば50km/h)で路面24を移動させた状態における、距離周波数に対する、タイヤ前後力の周波数応答の情報を求める。そして、次に、第2路面移動速度(例えば70km/h)で路面24を移動させた状態における、スリップ率の時系列データと、発生するタイヤ前後力の出力信号の時系列データとを用いて周波数分析を行ない、第2路面移動速度(例えば70km/h)で路面24を移動させた状態における、距離周波数に対する、タイヤ前後力の周波数応答の情報を求める。そして、引き続き、第3路面移動速度(例えば90km/h)でタイヤ12を転動させ、この状態において同様の処理を繰り返す。各路面移動速度それぞれの周波数応答の情報は、メモリ19に順次記憶される。なお、本発明において、タイヤ前後力の周波数応答の情報を求める手法は、FFTに限定されない。例えば、公知のサインカーブフィッティング法を用いて、タイヤ前後力の出力の振幅比(ゲイン)や、位相角(位相遅れ)の情報を求めてもよい。
評価手段50のデータ統合部54は、各路面移動速度それぞれでのタイヤ前後力の周波数応答の振幅比(ゲイン)が、距離周波数の重複範囲において略一致するように、各路面移動速度それぞれのタイヤ前後力の周波数応答の情報を統合する。図7は、それぞれ異なる各路面移動速度それぞれにおけるタイヤ前後力の周波数応答の情報を、同一の距離周波数軸に表したグラフである。データ統合部54では、このように、比較的広い距離周波数の範囲に渡って表された、タイヤ前後力の周波数応答の情報を得る。
例えば、データ統合部54では、各路面移動速度それぞれにおけるタイヤ前後力の周波数応答の情報、特に上記の振幅比(ゲイン)の情報それぞれに基き、各路面移動速度の距離周波数の重複範囲で、重複する振幅比(ゲイン)の情報がそれぞれ略一致するように、各路面移動速度それぞれでのタイヤ前後力の周波数応答の情報を統合する。統合部54では、このようにして、比較的広い入力距離周波数の範囲にわたって表された、タイヤ前後力の周波数応答の情報(振幅比(ゲイン)や、位相角(位相遅れ)の情報)を導出する。なお、統合部54では、メモリ19に予め記憶されている、距離周波数が0(rad/m)におけるタイヤ前後力の周波数応答の情報、特に上記の振幅比(ゲイン)の情報それぞれに基づいて、各路面移動速度それぞれでのタイヤ前後力の周波数応答の情報を統合してもよい。
パラメータ同定部56では、データ統合部54で導出された、比較的広い入力距離周波数の範囲にわたって表された、図7に示すようなタイヤ前後力の周波数応答の情報に基づいて、入力距離周波数PFに対するタイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータの値を同定する。詳しくは、入力距離周波数PFに対するタイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した下記式(1)に示す伝達関数で、入力距離周波数PFの範囲にわたって表された、タイヤ前後力の周波数応答の情報をフィッティングする(図8参照)ことで、下記式(1)に示す伝達関数のパラメータ(Kt、Kx)を求める。このようなフィッティングは、例えば最小二乗法など公知の手法を用いて行なえばよい。Ktは、タイヤの特性値である等価周剛性に対応し、Kxは、一次遅れ要素を表す伝達関数(式(1)で表す伝達関数)のゲイン定数であり、本実施形態のようにスリップ率が微小な範囲では、図4に示す、スリップ率−タイヤ前後力曲線の線型領域における傾きの大きさαを表す、制駆動力スティフネス(ブレーキングスティフネスやドライビングスティフネス)に対応しているといえる値である。このように同定されたパラメータKt、Kxは、評価値算出部58に送られる。
Figure 0004876759

s:ラプラス演算子
Fx(s):タイヤ前後力
S:スリップ率
V:走行速度(タイヤ軸に対する路面の移動速度)
Kt:タイヤの等価周剛性(N/m)(前後方向剛性)
Kx:制駆動力スティフネス(N)
評価値算出部58は、パラメータ同定部56から送られたパラメータである、KtおよびKxを用い、タイヤ前後力の周波数応答の評価値として、上記伝達関数(式(1)で表す伝達関数)の時定数T(=Kx/Kt)を求める。この時定数は、周知のように、上記伝達関数で表された一次遅れ要素の時間応答における、応答波形のふるまいの過渡期における立ち上がり時間に影響を与え、定常値に至る時間の遅れを決定づけている。時定数T(=Kx/Kt)は、タイヤ前後力の過渡応答特性を定量的に表し、制駆動時におけるタイヤの動特性を定量的に表しているといえる。
ディスプレイ18は、評価値算出部58で求められた、制駆動時におけるタイヤの動特性を定量的に表す時定数T(=Kx/Kt)を表示出力する。なお、ディスプレイ18は、この他、この測定・評価ユニット16において導出される、図7にボード線図で示すような、スリップ率情報とタイヤ前後力の出力情報との振幅比(ゲイン)や位相角(位相遅れ)の情報、図6に示す、タイヤ前後力の周波数応答の情報、図8に示すフィッティング結果の情報、パラメータKtおよびKxなど、各種情報も表示出力することができる。
図9は、このような装置10において実施される、本発明のタイヤの制駆動時動特性評価方法の一例のフローチャート図である。まず条件設定部42が、タイヤ前後力の出力信号取得時の、路面24の移動速度およびタイヤ12に入力する制駆動トルクの周波数を設定する(ステップS102)。上述したように、条件設定部42では、タイヤに与える複数の制駆動トルク入力の周波数範囲を、トルク付与手段34によって比較的精度良く制御できる周波数範囲(例えば0.1Hz〜5.0Hz)に設定した状態で、例えば50km/h、70km/h、90km/h、と3つの路面移動速度を設定する。
そして、路面速度制御部49が、駆動ユニット26の動作(モータの回転速度など)を制御して、条件設定部42で設定された第1路面移動速度(例えば50km/h)で路面20を移動させる(ステップS104)。そして、路面20が第1路面移動速度で移動している状態で、制駆動トルク制御部48がトルク付与手段34の動作を制御して、条件設定部42で設定された複数の周波数で、制駆動トルクをタイヤ12に入力する(ステップS106)。
そして、前後力データ取得部46が、設定した移動速度で路面20を移動させた状態で、タイヤ12に周波数の異なる複数の制駆動トルク入力を順次与えて、スリップ率を変動させた際に、センサ34から出力される、タイヤに発生するタイヤ前後力の出力信号を時系列に取得する(ステップS108)。また、これとともに、転動速度データ取得部47が、設定した路面移動速度で路面24を移動させた状態で、タイヤ12に周波数の異なる複数の制駆動トルク入力を順次与えた際の、トルク付与手段34から出力される、この制駆動トルク入力に対応したタイヤ軸22の回転速度ωを受け取る。そして、メモリ19に予め記憶されているタイヤの半径rを用い、タイヤ12の現在の転動速度V=rωのデータとして、後述の評価手段50のスリップ率導出部51に送信する。そして、スリップ率導出部51において、路面速度制御部49から送信された、路面24の現在の移動速度Vと、転動速度データ取得部47から送信されたタイヤ12の転動速度V=rωとを用いて、タイヤ12に生じたスリップ率Sを、時系列に導出する(ステップS109)。
そして、評価手段50のデータ処理部52が、導出したスリップ率の時系列データと、タイヤ前後力の出力信号の時系列データとを用いて、第1路面移動速度における、距離周波数に対するタイヤ前後力の周波数応答の特性(振幅比(ゲイン)や、位相角(位相遅れ)の周波数特性)を求めて、メモリ19に記憶する(ステップS110)。
第1路面移動速度における、距離周波数に対するタイヤ前後力の周波数応答の特性をメモリ19に記憶すると、条件設定部42で設定した全ての路面移動速度について、タイヤ前後力の周波数応答の特性が導出・メモリされたか否かが判定される(ステップS112)。第1路面移動速度についてのタイヤ前後力の周波数応答の特性がメモリされた時点では、ステップS112の判定は否定され(Noとなり)、タイヤ12の設定路面移動速度が、条件設定部42で設定されたその他の路面移動速度(この場合、第2路面移動速度、例えば70km/h)に変更される(ステップS114)。そして、この第2路面移動速度(例えば70km/h)で路面20を移動させ(ステップS104)、その後、ステップS106〜S112の処理が繰り返され、この第2路面移動速度における、距離周波数に対するタイヤ前後力の周波数応答の特性(振幅比(ゲイン)や位相角(位相遅れ)の周波数特性)が、メモリ19に記憶される。第2路面移動速度に続いて、第3路面移動速度における、距離周波数に対するタイヤ前後力の周波数応答の特性(振幅比(ゲイン)や位相角(位相遅れ)の周波数特性)が、メモリ19に記憶されると、ステップS112の判定はOK(Yes)となる。
ステップS112の判定がOK(Yes)となると、データ統合部54が、各路面移動速度それぞれにおけるタイヤ前後力の振幅比(ゲイン)に基づいて、各転動速度それぞれにおいて取得されたタイヤ前後力の周波数応答の特性を統合する(ステップS116)。これにより、比較的広い入力距離周波数PFの範囲にわたって表された、タイヤ前後力の周波数特性(図6参照)が導出される。
次に、パラメータ同定部56が、統合部54で導出された、上記入力距離周波数PFの範囲にわたって表された、タイヤ前後力の周波数特性に基づいて、入力距離周波数PFに対するタイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータを同定する(ステップS118)。そして、評価値算出部58が、パラメータ同定部56から送られたパラメータである、KtおよびKxを用い、制駆動時のタイヤの動特性を表す評価値として、上記伝達関数(式(1)で表す伝達関数)の時定数T(=Kx/Kt)を求める(ステップS120)。そして、ディスプレイ18に、評価値算出部58で求められた、時定数T(=Kx/Kt)を表示出力する(ステップS122)。
本発明のタイヤの制駆動時動特性評価方法は、このように実施される。なお、本発明のタイヤの制駆動時動特性評価装置を用いれば、タイヤ軸支持部材32の図示しない荷重負荷手段からタイヤにかける荷重を種々変更して、様々な荷重条件における制駆動時タイヤ動特性をそれぞれ評価することもできる。
まず、比較例として、従来公知の方法を用いて、それぞれ異なるタイヤA〜Cについて、タイヤ静特性と動特性とを評価した。各タイヤのタイヤサイド部の剛性(サイド部縦剛性S、サイド部横剛性S、サイド部周剛性Sθそれぞれ)を測定した結果を、図10(a)に示す。また、各タイヤA〜Cを、それぞれ同一の車両に装着した各場合について、制動試験を行なった結果を図10(b)に示す。図10(a)および(b)のいずれの結果も、タイヤAにおける測定結果を100とした指数(index)で表している。図10(a)は、公知の室内走行試験機を用いて測定したデータであり、従来公知の方法によって取得した、タイヤ単体の静特性のデータであるといえる。また、図10(b)は、同一の車両に各タイヤを装着した場合それぞれについて、それぞれ同一の比較的滑り安い路面(摩擦係数が比較的低い、いわゆる低μ路)を、この車両に走行させた際の、制動距離のデータである。図10(b)には、各タイヤを装着して上記車両を100km/hで走行させた状態で、ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んでから車両が完全に停止するまで(ABSシステムが作動した状態で車両が減速し、走行速度が0km/hとなるまで)の制動距離の情報と、全ドイツ自動車クラブ(ADAC;Allgemeiner Deutscher Automobilclub)の試験規格にのっとって測定した、上記100km/hからの制動時の、走行速度90km/hの状態から20km/hに減速するまでの距離の情報と、を併せて示している。
このように、従来公知の方法によって取得した各タイヤ単体の静特性のデータと、各タイヤを実際の車両に装着して走行させて得られた、図10(b)に示す実際の制動距離のデータとは、相関が低い。例えば、図10(a)に示すように、タイヤ単体の静特性では、タイヤAとタイヤCとので明確な違いは認められず、また、タイヤBの剛性は他のタイヤよりも際立って大きく、他のタイヤと明確に異なる特徴を有している。しかし、各タイヤを実際に車両に装着して制動距離を測定した場合、タイヤA、タイヤB、タイヤCの順に制動距離が短くなっている。すなわち、車両に実際にタイヤを装着した場合は、タイヤBは、タイヤAの特性とタイヤCの特性の中間の特性を有している。また、車両に実際にタイヤを装着した場合、タイヤAとタイヤCとで、特性が明確に異なる。このように従来公知の方法で導出したタイヤ単体の静特性は、タイヤの制駆動時の動特性を精度良く表しているとはいえない。
これに対し、実施例として、本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を実施した結果について示す。図11(a)および(b)は、それぞれ異なる3つの仕様のタイヤA〜Cそれぞれについて、本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を用いて得られた、上記距離周波数に対するタイヤ前後力(制駆動力)の応答を表すボード線図である。そして、図12(a)および(b)は、図11(a)および(b)に示す周波数応答と上記式(1)とを用いて導出された、各タイヤA〜Bそれぞれの、制駆動力スティフネスKxとタイヤの等価周剛性Kt(前後方向剛性)とを示している。詳しくは、上述したように、式(1)に示す伝達関数で、タイヤ前後力の周波数応答の情報をフィッティングすることで求めた、式(1)に示す伝達関数のパラメータ(Kt、Kx)の値である。
図12(b)と図10(b)とを比較すると、各タイヤの傾向はよく一致していることがわかる。本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を用いた場合、実際に車両に装着された際のタイヤの動特性を表すパラメータを、精度良く求めることができることが確認できる。また、図11(a)および図12(a)とを比較すると、タイヤ単体の静特性を表すパラメータについても、各タイヤの傾向がよく一致していることがわかる。本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を用いた場合、タイヤ単体の静特性を表すパラメータについても、精度良く求めることができる。
このように、本発明のイヤの制駆動時動特性評価方法および装置によれば、タイヤに入力するスリップ率の周波数と路面の移動速度とで表される、比較的広い範囲の距離周波数において、制駆動時におけるタイヤ固有の動特性を定量的に精度良く評価することができる。
以上、本発明のタイヤの制駆動時動特性評価方法および本発明のタイヤの制駆動時動特性評価装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明のタイヤの制駆動時動特性評価装置の一例について説明する概略構成図である。 図1に示すタイヤの制駆動時動特性評価装置の、測定・評価ユニットについて説明する概略構成図である。 路面を転動するタイヤに発生するタイヤ前後力について説明する図であり、転動中のタイヤおよび路面をそれぞれ表す、タイヤモデルおよび路面モデルである。 制動時における、タイヤ接地領域のスリップ率とタイヤ接地領域に発生するブレーキングフォース(タイヤ前後力)の大きさとの関係を示すグラフである。 (a)および(b)は、それぞれ、図1に示すタイヤの制駆動時動特性評価装置の測定・評価ユニットにおいて取得・算出された各種データについて説明する図であり、制駆動トルクの入力周波数が0.1(Hz)の場合のグラフである。 (a)および(b)は、それぞれ、図1に示すタイヤの制駆動時動特性評価装置の測定・評価ユニットにおいて取得・算出された各種データについて説明する図であり、制駆動トルクの入力周波数が4.91(Hz)の場合のグラフである。 図1に示すタイヤの制駆動時動特性評価装置おける、スリップ率情報と出力タイヤ前後力情報との振幅比(ゲイン)や、位相角(位相遅れ)の情報を表すボード線図の一例であり、各路面移動速度それぞれにおけるタイヤ前後力の周波数応答の情報を、同一の距離周波数軸に表したグラフである。 入力距離周波数に対するタイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数を用い、図7に示すタイヤ前後力の周波数応答の情報をフィッティングすることで得られた曲線のグラフを示している。 本発明のタイヤの制駆動時動特性評価方法の一例のフローチャート図である。 (a)は、従来公知の方法を用いて、それぞれ異なる複数のタイヤそれぞれの、タイヤ静特性を評価した結果を示すグラフであり、(b)は、各タイヤを同一車両に装着した場合それぞれの、車両の制動距離の評価結果のグラフである。 (a)および(b)は、図10で用いた複数のタイヤそれぞれについて、本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を用いて得られた、上記距離周波数に対するタイヤ前後力(制駆動力)の応答を表すボード線図である。 (a)および(b)は、本発明のタイヤ制駆動時動特性評価方法を用いて得られた、図10で用いた複数のタイヤそれぞれの、制駆動力スティフネスKxとタイヤの等価周剛性Kt(前後方向剛性)の評価結果のグラフである。
符号の説明
10 タイヤの制駆動時動特性評価装置
12 タイヤ
14 室内転動試験機
16 測定・評価ユニット
17 CPU
18 ディスプレイ
19 メモリ
20 ベルト
22 タイヤ軸
24 代用路面
26 駆動ユニット
28 ローラ対
32 タイヤ軸支持部材
34 トルク付与手段
35 センサ
40 測定手段
42 条件設定部
44 動作制御部
45 データ取得部
46 前後力データ取得部
47 転動速度データ取得部
48 制駆動トルク制御部
49 路面速度制御部
50 評価手段
51 スリップ率導出部
52 データ処理部
54 データ統合部
56 パラメータ同定部
58 評価値算出部
62 タイヤモデル
64 路面モデル
66 ベルトモデル
68 トレッドモデル

Claims (9)

  1. 制駆動時におけるタイヤの動特性を評価する方法であって、
    接地面を転動するタイヤのスリップ率を時間変化させつつ、前記タイヤと前記接地面との接地領域に発生する、前記スリップ率の変化に応じたタイヤ前後力の出力信号を得る測定ステップと、
    前記測定ステップで変化させた前記スリップ率の時系列データと、前記測定ステップで得た前記出力信号の時系列データとを用いて、前記タイヤの回転軸に対する前記接地面の移動速度と前記スリップ率の周波数とで表される距離周波数に対する、前記タイヤ前後力の周波数応答特性を求めて、求めた前記タイヤ前後力の周波数応答特性情報を出力する分析ステップと、
    前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータの値を同定し、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、同定した前記伝達関数のパラメータの値を出力するパラメータ同定ステップと、を有することを特徴とするタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  2. 前記測定ステップでは、時間変化する制駆動トルクを前記タイヤに入力することで、前記タイヤのスリップ率を時間変化させることを特徴とする請求項1記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  3. 前記測定ステップでは、周波数の異なる複数の制駆動トルクを前記タイヤに順次入力することを特徴とする請求項2記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  4. 前記パラメータ同定ステップでは、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した下記式(1)に示す伝達関数G(s)を用い、
    前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記伝達関数のパラメータである、タイヤの等価周剛性Ktおよびタイヤのタイヤ前後力スティフネスKxの値を同定して出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
    Figure 0004876759

    s:ラプラス演算子
    Fx(s):タイヤ前後力
    S:スリップ率
    V:走行速度(タイヤ軸に対する路面の移動速度)
    Kt:タイヤの等価周剛性(N/m)(前後方向剛性)
    Kx:制駆動力スティフネス(N)
  5. 前記パラメータ同定ステップでは、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した前記伝達関数G(s)で、前記分析ステップで求めた前記周波数応答特性情報をフィッティングすることで、前記伝達関数のパラメータである、タイヤの等価周剛性Ktおよびタイヤの制駆動力スティフネスKxの値を同定することを特徴とする請求項4記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  6. 前記パラメータ同定ステップでは、さらに、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、前記伝達関数の時定数を算出して出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  7. 前記測定ステップで時間変化させる前記タイヤのスリップ率の最大値は、前記タイヤが前記接地面に接地した状態で、前記接地領域に発生する前記タイヤ前後力が最大となる際のスリップ率の値よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  8. 前記測定ステップで時間変化させる前記タイヤのスリップ率の最大値は、5%以下であることを特徴とする請求項7記載のタイヤの制駆動時動特性評価方法。
  9. 制駆動時におけるタイヤの動特性を評価する装置であって、
    接地面を転動するタイヤのスリップ率を時間変化させつつ、前記タイヤと前記接地面との接地領域に発生する、前記スリップ率の変化に応じたタイヤ前後力の出力信号を得る測定手段と、
    前記測定手段で変化させた前記スリップ率の時系列データと、前記測定手段で得た前記出力信号の時系列データとを用いて、前記タイヤの回転軸に対する前記接地面の移動速度と前記スリップ率の周波数とで表される距離周波数に対する、前記タイヤ前後力の周波数応答特性を求めて、求めた前記タイヤ前後力の周波数応答特性情報を出力する分析手段と、
    前記分析手段で求めた前記周波数応答特性情報に基づいて、前記距離周波数に対する前記タイヤ前後力の応答を1次遅れ系として表した伝達関数のパラメータの値を同定し、前記制駆動時におけるタイヤの動特性を表す評価値として、同定した前記伝達関数のパラメータの値を出力するパラメータ同定手段と、を有することを特徴とするタイヤの制駆動時動特性評価装置。
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