JP2021154430A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】合金鋼の高速断続切削加工において、十分な耐久性を有する被覆工具を提供する。【解決手段】工具基体と、該工具基体の表面に下部層と上部層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、前記下部層はTiの化合物層であり、前記上部層は2.0〜20.0μmの平均層厚を有し、Al2O3層を含み、該Al2O3層内において隣接する2のAl2O3結晶粒の粒界において、TiとSが共存して偏析している粒界の数が、全粒界の数の20%以上である。【選択図】図2

Description

本発明は、表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
切削工具の切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金等の工具基体の表面に、Ti化合物等の硬質被覆層を蒸着法により被覆形成した被覆工具がある。これは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られているが、さらなる硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体と、該工具基体上に形成された1以上の被膜(硬質被覆層)とを備え、前記被膜は、少なくとも酸化アルミニウム多層被膜を含み、前記酸化アルミニウム多層被膜は、添加元素を含有する酸化アルミニウムによって構成される単位層を2種以上含み、かつその2種以上の単位層を周期的に繰り返して積層させた構造を有し、前記単位層の各々は、前記添加元素の種類または組み合せが異なっており、前記添加元素は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Y、Ca、Mg、BおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である被覆工具が記載され、この被覆工具は、耐摩耗性が向上しているとされている。
また、例えば、特許文献2には、チタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物から選ばれる単層、または、2層以上の複層からなるチタン系下層と、α型結晶構造をなす酸化アルミニウム層とからなる硬質被覆層を備え、硫化チタン(Ti(x>0、y>0))部が前記チタン系下層の界面から前記酸化アルミニウム層内に突出した状態で前記酸化アルミニウム層内に分散分布する被覆工具が記載され、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄等の切削においても、この被覆工具は、優れた耐チッピング性、耐欠損性を有するとされている。
特開2008−168364号公報 特開2006−205301号公報
近年の切削加工における省力化および省エネルギー化の要求は強く、これに伴い、被覆工具の硬質被覆層には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわたって優れた耐久性が求められている。
しかし、前記特許文献1および2に記載された被覆工具は、それぞれの文献に記載された切削条件では耐久性を有するものの、合金鋼の高速断続切削加工においては、耐チッピング性や耐欠損性が十分とはいえず、満足する耐久性を有しているとはいえなかった。
本発明は、この状況を鑑みて、合金鋼の高速断続切削加工おいて、十分な耐久性を有する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は、下部層としてTiの化合物層、上部層として酸化アルミニウム(以下、Alで示すことがある)層の2層を含む硬質被覆層を有する切削工具の耐久性の向上について鋭意検討を重ねた。その結果、上部層のAl層を構成する結晶粒の粒界にTiとSが共存して偏析していると、耐摩耗性を発揮しつつ、耐欠損性および耐チッピング性を備えた硬質被覆層が得られ、合金鋼の高速断続切削加工おいて耐久性が向上するという知見を得た。
本発明は、この知見に基づくもので、次のとおりのものである。
「(1)工具基体と、該工具基体の表面に下部層と上部層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
前記下部層はTiの化合物層であり、
前記上部層は2.0〜20.0μmの平均層厚を有し、Al層を含み、該Al層内において隣接する2のAl結晶粒の粒界において、TiとSが共存して偏析している粒界の数が、全粒界の数の20%以上である
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記Al層は、α型の結晶構造を有し、Σ3〜Σ29の構成原子共有格子点分布グラフにおいてΣ3に最高ピークを有し、Σ3の全体に占める割合は60%以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記Al層内にTiとSが共存しているAl結晶粒界の割合がすべてのAl結晶粒界数に対して30〜80%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
本発明の被覆工具は、合金鋼の高速断続切削加工おいて優れた耐久性を有する。
観察領域内におけるAl層のAl結晶粒とその粒界の一例を模式的に示した図である。 Al層のAl結晶粒の粒界を中心にTiとSの組成の線分析を行った結果、TiとSの偏析があると判断される一例を模式的に示した図である。 後述する本発明被覆工具5における、対応粒界分布グラフを示す。 後述する比較被覆工具3における、対応粒界分布グラフを示す。
本発明について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「A〜B」(A、Bはともに数値)で表現するときは、その範囲は上限値(B)および下限値(A)を含んでおり、上限値(B)と下限値(A)の単位は同じである。
また、後述するTiC層等のTi化合物層、およびAl層の組成は、化学量論的組成に限定されず、従来公知のすべての原子比の組成を含むものである。
硬質被覆層:
硬質被覆層は、TiC層等を含むTiの化合物層である下部層とAl層を含む上部層を有する。以下、順にこれら層について説明する。
下部層:
下部層に含まれるTi化合物層(例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層の少なくとも1つ)は、工具基体とAl層を含む上部層の間に存在し、単層であっても複数層であってもよく、その高い硬度によって、硬質被覆層に対して耐摩耗性を付与するものである。また、Ti化合物層は、工具基体の表面、および、Al層を含む上部層のいずれとも密着性を付与する役割を有する。
下部層の平均層厚は、3.0〜20.0μmがより好ましい。3.0〜20.0μmにあるとき、より耐久性が向上し、長期にわたって耐チッピング性や耐欠損性、耐摩耗性を発揮することができる。平均層厚は、5.0〜15.0μmがより一層好ましい。
上部層:
<平均層厚>
上部層は、Al層を含み、その平均層厚は、2.0〜20.0μmであることが好ましい。その理由は、2.0μm未満であると、薄いため長期の使用にわたって耐久性を十分に確保することができず、一方、20.0μmを超えると、結晶粒が大きくなってしまいチッピングが発生しやすくなるためである。
<TiとSの偏析>
TiとSの偏析がある粒界の割合は、例えば、次のようにして確認する。
(1)観察領域の決定
Al層の縦断面(工具基体の表面に垂直な断面)において、工具基体の表面に平行な方向に10μm、Al層の層厚方向に平均層厚以上の長さの領域の少なくとも10箇所を観察領域と決定する。
(2)各観察領域内の粒界の決定
この各観察領域に対して、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用い、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM:High−angle Annular Dark Field Scanning TEM)により観察を行う。図1は、この観察結果の一例を示す模式図である。本発明でいう粒界とは、結晶粒界のうち隣接する2の結晶粒に接する部分であり、この部分を1個の粒界とする。すなわち、1個の結晶粒界は複数の粒界から構成される。ちなみに、図1では、A〜Hの8の結晶粒が図示されている。例えば、Bの結晶粒についてみると、A、C、EおよびFの各結晶粒と粒界を有し、その中でAおよびFの結晶粒との粒界を粒界として図示している。図1において、すべての結晶粒における粒界の総数(この観察領域における全粒界の数)は13である。
(3)各組成の線分析
この粒界のすべてに対して、当該粒界を中心として隣接する2の結晶粒の粒界に対して垂直な方向に、エッジオン条件にて、該粒界を中心にこの粒界を跨いで測定長100nmの領域にてTiとSにつき、エネルギー分散型X線分光法(EDS:Energy dispersive X−ray spectroscopy)による組成の線分析を実施する。
ここで、エッジオン条件とは、粒界と平行な軸を中心に試料を傾けたときに電子線入射方向と粒界の深さ方向が平行となる角度にて測定を行う条件のことをいう(例えば、特開2017−5004号公報を参照)。
(4)各観察領域におけるTiとS偏析の有無の確認
各粒界に対して組成の線分析を行った結果、TiとSの検出強度の最大値を与える(TiとSの濃度の最大値に対応する)位置が、前記粒界から前記2の結晶粒内へ10nm以内の領域内に存在し、かつ、前記最大値が粒界から10nmを超えて50nmまでの前記2の結晶粒内の領域におけるTiとSの検出強度の最大値と比較してそれぞれ2.00倍以上であることを満たしているとき(濃度の比が2.00倍以上のとき)、当該粒界はTiとS元素が共存して粒界へ偏析していると判断する。
図2は、TiとSが共存して偏析があると判断されるTiとSの検出濃度の変化の一例を模式的に示したものであり、同図では、粒界が横軸の測定長の50nmの位置となるように測定の起点を定めている。
(5)各観察領域におけるTiとSが共存して偏析している粒界の割合の算出
このTiとSの粒界への偏析があると判断される粒界の数が全粒界の数(各観察領域におけるすべての結晶粒における粒界の総数)に占める割合(個数割合)を求める。
(6)TiとSが共存して偏析がある粒界の割合の導出
こうして、観察領域ごとに求めた個数割合の算術平均を算出して、TiとSが共存して偏析している粒界の数が、全粒界の数に占める割合を導出する。
そして、前記割合が20%以上であるときに粒界の強度が向上し、硬質被覆層の靭性が向上する。その理由は、定かではないが、TiとS原子の偏析が適切になされ、強度を損なうことなくAl層内の残留応力が緩和され、耐欠損性が向上するためと考えられる。この割合は、20%以上であれば、その上限に制約はないが、30〜80%の割合であると耐欠損性を向上する効果がより確実に発揮されるため、30〜80%がより好ましい。
また、Al層結晶粒は、α型の結晶構造を有し、構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークを有し、Σ3のΣN+1全体に占める分布割合は、60%以上であることがより好ましい。60%以上であると、さらに、粒界強度が高まり、耐摩耗性向上効果を高めることができる。この割合の上限に制約はないが、60〜90%のとき、ここの耐摩耗性向上効果がより一層確実に発揮される。
ここで、構成原子共有格子点は、以下の方法により、測定、算出される。
すなわち、前記α型の結晶構造を有するAl層結晶粒について、結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線が、観察研磨面に法線となす傾斜角を測定する。前記結晶粒は、格子点にAlおよび酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方晶の結晶構造を有する。測定により得られた傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)からなる対応粒界の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態からなる対応粒界をΣN+1で表した個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを求める。
上部層における構成原子共有格子点分布グラフの作成方法:
硬質被覆層の上部層のAl結晶粒について、HAADF−STEMを用いて、Al結晶粒の結晶格子面のそれぞれの法線が、観察研磨面の法線となす角度を測定するとともに、その測定結果より、隣接する結晶格子相互の結晶方位関係を算出することにより、上部層のAlの対応粒界分布グラフを求める。
上部層の界面領域および表面領域のそれぞれの断面を研磨面(研磨面とする手段は、後述する平均層厚を測定する際に用いる手段を使用できる)とした状態で、前記被覆工具を電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記断面の研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記断面の研磨面の測定範囲内に存在するコランダム型六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射する。より詳細には、電子線後方散乱回折装置を用い、工具基体表面に平行する方向に50μm、工具基体の表面に直交する方向にAl層の層厚を上限とする領域で0.1μm/stepの間隔で電子線を照射し、電子線が照射された各測定点において前記結晶粒を構成する結晶格子の各面の法線の方位を測定する。
この測定結果から、隣接する測定点における結晶格子相互の結晶方位関係を算出した。すなわち、隣接する相互の測定点間において、結晶方位角度差が5度以上である測定点間に結晶粒界が存在するとみなし、この結晶粒界に囲まれた測定点の集合を1つの結晶粒と特定し、全体の結晶粒を特定する。
それとともに、結晶格子界面を構成する測定点間の結晶方位関係が、対応粒界を構成する結晶粒間のなす角度の値に対して誤差Δθ=5°の範囲内となった場合に、その測定点間に対応粒界が存在するとみなし、全粒界長に対するΣN+1対応粒界の割合を求める。
その他の層:
上部層の上部に、TiC層、TiCN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり0.1〜5.0μmの合計平均層厚を有する最外層を設けると、より一層優れた耐溶着性、耐摩耗性が発揮されて好ましい。ここで、合計平均層厚が0.1μm未満であると、最外層を設けた効果が十分に発揮されず、一方、5.0μmを超えると、チッピングが発生しやすくなる。
平均層厚の測定:
ここで、硬質被覆層を構成する各層の平均層厚は、例えば、集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシャー装置(CP:Cross section Polisher)等を用いて、硬質被覆層を任意の位置で切断して観察用の試料を作製し、その縦断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)またはTEM、走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)、あるいはSEMまたはTEM付帯のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X−ray spectrometry)装置を用いて複数箇所(例えば、5箇所)で観察して、その結果を平均することにより得ることができる。
工具基体:
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(Tiの炭化物、Tiの窒化物、Tiの炭窒化物等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体であり、これらのいずれかであることが好ましい。
製造方法:
本発明の被覆工具の硬質被覆層は、(1)下部層の成膜工程、(2)上部層の成膜工程、そして、(3)上部層のエッチング工程の3工程を含む工程により作製される。
(1)下部層の成膜工程
Tiの炭窒化物層を有するTiの化合物層である下部層は、例えば、平均層厚が3.0〜20.0μmとなるように、公知の成膜条件によって成膜することができる。
(2)上部層の成膜工程
この工程は、Sが粒界に偏析するAl層を含む上部層を、その平均層厚が2.0〜20.0μmとなるように成膜する。成膜条件として、例えば、
反応ガス:AlCl 1.0〜1.8%、CO 3.0〜5.0%、
HCl 1.0〜3.0%、HS 0.75〜1.50%、H 残部
反応雰囲気温度:900〜1000℃
反応雰囲気圧力:5.0〜10.0kPa
をあげることができる。
(3)上部層のエッチング工程
この工程は、上部層の成膜後、Tiを含むガスによりエッチングと熱処理を行うことにより、上部層のAl層の結晶粒の粒界にTiとSを共存させて偏析させることができる。エッチング条件として、例えば、
反応ガス組成(容量%):TiCl 1.0〜2.0%、H 残部
反応雰囲気温度:900〜1000℃
反応雰囲気圧力:5.0〜15.0kPa
処理時間:30〜120分
をあげることができる。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明の被覆工具の実施例として、工具基体としてWC基超硬合金を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、前記したものを用いた場合であっても同様であるし、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体A〜Cのそれぞれを、化学蒸着装置に装入し、以下の手順にて本発明被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
(a)まず、表2に示される条件にて、表4に示される目標合計平均層厚の下部層(第1層、第2層、第3層の順に工具基体に近い)としてのTi化合物層を蒸着形成した。
(b)次に、表3に示される条件にて、化学蒸着にてAl層を成膜後、TiClとガスHガスの混合ガスによるエッチング工程を経て、表4に示される目標平均層厚の上部層としてのAl層を得た。
これら、表2および3に記載されている条件は、前述の製造方法一例として記載されたものである。
また、比較の目的のために、本発明で規定する事項を満足しない硬質被覆層を形成すべく、表2および3に記載された条件にて成膜を行うことにより、表5に示される比較被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
また、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面にて測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。測定結果を表4に示す。
また、それぞれ、前述の方法により、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の前記Al層内のAl結晶粒についてTiとSの粒界への偏析の有無を確認し、TiとSの偏析のある結晶粒界数の全結晶粒の全粒界数に対して占める割合、α型Al結晶粒における対応粒界分布グラフのピーク位置およびΣ3対応界面割合(%)を求めた。測定結果を表4、表5に示す。加えて、図3に本発明被覆工具5の対応粒界分布グラフ、図4に比較被覆工具3の対応粒界分布グラフを示す。
Figure 2021154430
Figure 2021154430
Figure 2021154430
Figure 2021154430
Figure 2021154430
次に、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の各種の被覆工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下に示す切削試験、クロムモリブデン合金鋼の湿式高速高切込切削試験(切削条件A)、および、クロムモリブデン合金鋼の湿式高速断続切削試験(切削条件B)を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定し、表6にその測定結果を示す。なお、切削試験の途中で硬質被覆層の剥離やチッピングが発生したものについては、これらが発生までの切削時間を測定した(表6の下部のチッピング発生とは硬質被覆層の剥離を含む)。
切削条件A;
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り棒材、
切削速度:350m/min
切り込み:2.0mm
送り :0.25mm/rev
切削時間:5分
(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、200m/min、1.5mm、0.20mm/revである。)
切削条件B;
被削材:JIS・SCM440 4スリット材
切削速度:250m/min
切り込み:1.5mm
1回転あたりの送り:0.25mm/rev
切削時間:5分
(通常の切削速度、切り込み、送りは、それぞれ、200m/min、1.0mm、0.2mm/revである。)
Figure 2021154430
表6に示される結果より、本発明被覆工具1〜10は、硬質被覆層が、上部層としてAl層を少なくとも含み、前記Al層内のAl結晶粒の粒界部にTiとSを共存して偏析させることにより、剥離やチッピングを発生することなく、優れた切削性能を発揮するものである。
これに対して、比較例被覆工具1〜10は、硬質被覆層の剥離発生や、チッピングの発生により、比較的短時間で使用寿命に至っている。
前述のとおり、本発明の被覆工具は、合金鋼の高速断続切削においても、優れた耐摩耗性と耐剥離性および耐チッピング性を発揮し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化および切削加工の省力化、さらには、低コスト化に十分満足するものである。

Claims (3)

  1. 工具基体と、該工具基体の表面に下部層と上部層を含む硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
    前記下部層はTiの化合物層であり、
    前記上部層は2.0〜20.0μmの平均層厚を有し、Al層を含み、該Al層内において隣接する2のAl結晶粒の粒界において、TiとSが共存して偏析している粒界の数が、全粒界の数の20%以上である
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記Al層は、α型の結晶構造を有し、Σ3〜Σ29の構成原子共有格子点分布グラフにおいてΣ3に最高ピークを有し、Σ3の全体に占める割合は60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記Al層内にTiとSが共存しているAl結晶粒界の割合がすべてのAl結晶粒界数に対して30〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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