JP2023148468A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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光亮 柳澤
Mitsuaki Yanagisawa
尚志 本間
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Abstract

【課題】優れた耐欠損性を有する被覆工具の提供【解決手段】NaCl型の面心立方構造の柱状の結晶粒を有するAlとCrとTiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含み、その組成は、(AlXCrYTi1-X-Y)(CαN1-α)(X、Y、αの平均値であるXavg、Yavg、αavgが、0.600≦Xavg≦0.950、0.010≦Yavg≦0.300、0.610≦Xavg+Yavg≦0.990、0.0000≦αavg≦0.0050)、Alの含有量変化を有する結晶粒を有し、前記Xの最大値Xmaxと同最小値Xminが、0.020≦Xmax-Xmin≦0.400、A*=0.4045×Xavg+0.4148×Yavg+0.4242×(1-Xavg-Yavg)であるA*(nm)とXRDパターンから算出される格子定数A(nm)は、|A-A*|<0.0010である表面被覆切削工具【選択図】図1

Description

本発明は、表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金等の基体の表面に、被覆層を形成した被覆工具が知られており、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
そして、被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、基体と、その基体上に形成された硬質被覆層とを備える表面被覆切削工具であって、硬質被覆層は、AlまたはCrのいずれか一方または両方の元素と、周期表4、5、6族元素およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素およびホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物と、塩素とを含むことにより、硬質被覆層の耐摩耗性と耐酸化性とを飛躍的に向上することが提案されている。
特開2006-82207号公報
本発明は、前記事情や前記提案を鑑みてなされたものであって、例えば、高速断続切削加工であっても、優れた耐熱性と耐チッピング性を有する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具は、
基体と該基体の表面に被覆層を有し、
(a)前記被覆層は、NaCl型の面心立方構造の柱状の結晶粒を有するAlとCrとTiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物は、(AlCrTi1-X-Y)(Cα1-α)(X、Y、αの平均値であるXavg、Yavg、αavgがそれぞれ、0.600≦Xavg≦0.950、0.010≦Yavg≦0.300、0.610≦Xavg+Yavg≦0.990、0.0000≦αavg≦0.0050)であり、
(c)前記複合窒化物層または複合炭窒化物層には、Alの含有量変化を有する結晶粒を有し、前記Xの最大値Xmaxと同最小値Xminが、0.020≦Xmax-Xmin≦0.400を満足し、
(d)A=0.4045×Xavg+0.4148×Yavg+0.4242×(1-Xavg-Yavg)であるA(nm)と、XRDパターンから算出される格子定数A(nm)とは、
|A-A|<0.0010を満足する。
さらに、前記実施形態に係る表面被覆切削工具は、以下の(1)を満足してもよい。
(1)前記複合窒化物層または複合炭窒化物層には、前記Alの含有量変化とCrの含有量変化の両方を有する結晶粒を有し、前記Yの最大値Ymaxと同最小値Yminが、0.010≦Ymax-Ymin≦0.200を満足すること。
前記表面被覆工具は、耐熱性と耐チッピング性が向上している。
本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具の縦断面の一例を示す模式図である。 本実施形態に係る表面被覆切削工具を製造するための装置の一例のガス供給管の一部分の斜視模式図である。 図1のガス供給管の断面模式図である。
本発明者は、前記特許文献1に記載されている被覆工具は、耐摩耗性、耐酸化特性を向上させることを意図しているが、高速断続切削等の衝撃が伴うような切削条件下では、耐チッピング性が十分でないと認識した。そこで、AlとCrとTiの複合窒化物層または複合炭窒化物層(以下、「(AlCrTi)CN」と記載することがある)に着目し、その耐熱性と耐チッピング性の向上について鋭意検討した。その結果、AlとCrとTiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を単に被覆するだけでは十分な耐熱性と耐摩耗性を得ることはできないが、ベガードの法則(Vegard’s law)に準じて組成をもとに計算された格子定数とXRDから求めた格子定数との間に所定の関係が成り立つとき、同層の耐熱性と耐チッピング性が向上するという知見を得た。
また、Alおよび/またはCrの含有量(組成)変化を有する結晶が存在し、それぞれの、含有量について、最大値と最小値の差が所定の範囲を満足すると、耐熱性と耐チッピング性がより向上するという知見も得た。
以下では、本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具について説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「L~M」(L、Mはともに数値)で表現するときは、「L以上、M以下」と同義であって、その範囲は上限値(M)および下限値(L)を含んでおり、上限値のみに単位が記載されているときは、上限値(M)と下限値(L)の単位は同じである。
1.被覆層
図1に示すように、基体(1)に設けられた被覆層(2)は、(AlCrTi)CN層(3)の他に、後述する下地層(4)と上部層(5)を有してもよいが、これらの存在は必須ではない。以下、順に説明する。
1-1.(AlCrTi)CN層
被覆層に必ず含まれる(AlCrTi)CN層について説明する。
(1)平均厚さ
本実施形態の被覆層では、平均厚さが1.0~20.0μmの(AlCrTi)CN層を有することが好ましい。
(AlCrTi)CN層の平均厚さをこの範囲とする理由は、平均厚さが1.0μm未満であると被覆層がもたらす耐熱性と耐チッピング性が発揮できず、一方、20.0μmを超えると耐チッピング性が低下するためである。
平均厚さは、3.0~15.0μmがより好ましい。
(2)結晶粒の形状
(AlCrTi)CN層において、柱状の結晶粒を有することが好ましい。ここで、柱状の結晶粒とは、アスペクト比が1.5以上である結晶粒をいう。その理由は、柱状の結晶粒であれば、基体に平行な方向に存在する粒界が少ないため、この粒界を起点としたチッピング発生を抑制することができるからである。
アスペクト比が1.5以上である柱状結晶粒は、後述する縦断面において、50面積%以上が好ましい。この面積%以上(100面積%であってもよい)であればチッピング発生を防止することができる。
また、アスペクト比は、2.0以上がより好ましく、アスペクト比が2.0以上である柱状結晶粒が占める面積割合は、縦断面において、70面積%以上、100面積%以下であることがより好ましい。
その理由は、70面積%以上であれば(100面積%、すなわち、全ての結晶粒が、アスペクト比が2.0以上である柱状組織を有する結晶粒であってよい)、チッピング発生を確実に抑えることができるためである。
ここで、縦断面とは、インサートでは、基体の表面の凹凸を無視して基体の表面が平面と考えたときの基体に垂直な断面であり、軸物工具では軸に対して垂直な断面である。
なお、アスペクト比の上限に制約はないが、10.0がより好ましい。その理由は、アスペクト比が10.0を超えると柱状結晶組織が破断しやすくなり、大きなチッピングを生じることがあるためである。
(3)組成
(3-1)平均組成
(AlCrTi)CN層は、式:(AlCrTi1-X-Y)(Cα1-α)において、X、Y、αの平均値であるXavg、Yavg、αavgがそれぞれ、0.600≦Xavg≦0.950、0.010≦Yavg≦0.300、0.610≦Xavg+Yavg≦0.990、0.000≦αavg≦0.050であることが好ましい。
avgの含有量を前記範囲とする理由は、Xavgが0.600未満では、(AlCrTi)CN層の硬さが不十分で、耐摩耗性が低下し、一方、0.950を超えると同層のウルツ鉱の六方晶構造が形成しやすく偏摩耗等の異常損傷発生の原因となるためである。
avgの含有量を前記範囲とする理由は、Yavgが0.010未満では、(AlCrTi)CN層の耐熱性の向上が不十分で、高温となる切削刃先の耐摩耗性が低下し、一方、0.300を超えると同層の耐熱性の向上が不十分で、高温硬さが不十分となって耐摩耗性が低下するためである。
avg+Yavgの含有量を前記範囲とする理由は、下限値はXavgとYavgの下限値を満足するためであり、一方、0.990を超えると(AlCrTi)CN層の硬さが不十分となって同層の耐摩耗性が低下するためである。
avg、Yavg、およびXavg+Yavgは、それぞれ、0.760≦Xavg≦0.900、0.020≦Yavg≦0.050、0.780≦Xavg+Yavg≦0.950がより好ましい。
αavgの含有量を前記範囲とする理由は、この範囲にあるとき(AlCrTi)CN層の耐摩耗性が向上し、一方、この範囲を逸脱すると偏摩耗等の異常損傷発生するためである。αavgは、0.002≦αavg≦0.035がより好ましい。
Clは、製造工程により不可避的に含有され、その含有量は、AlとTiとCrとCとNとClの合計原子数に占めるClの原子数割合Zは、0.005原子%以上、0.500原子%以下であることがより好ましい。
その理由は、0.005原子%未満では(AlCrTi)CN層の潤滑性が不十分となって耐摩耗性が低下してしまうことがあり、一方、0.500原子%を超えると硬さが低下し、同層のすくい面の耐摩耗性が不十分で早期に摩滅してしまうことがあるためである。Zは、0.005原子%以上、0.100原子%以下であることがより一層好ましい。
(3-2)含有量変化
Alの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒が存在することが好ましい。
Al含有量Xの最大値Xmaxと最小値Xminが、0.020≦Xmax-Xmin≦0.400を満足すること、さらに、このAlの含有量変化とCrの含有量変化の両方を有する結晶粒が存在し、このCr含有量Yの最大値Ymaxと同最小値Yminが、0.010≦Ymax-Ymin≦0.200を満足すること、がより好ましい。
これにより、被覆工具の耐チッピング性がより向上する。
この含有量の変化を粒内に有する結晶粒の存在割合は、縦断面において、50面積%以上、より好ましくは、70面積%以上(100面積%であってもよい)である。その理由は、Al、Crの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒の割合が70面積%未満であると、高速断続切削に供したときの被覆工具の耐チッピング性が低下することがあるためである。
(3-3)(AlCrTi1-X-Y)と(Cα1-α)との比
(AlCrTi1-X-Y)と(Cα1-α)との比は特に限定されるものではないが、(AlCrTi1-X-Y)を1とするとき、(Cα1-α)との比は0.8~1.2とすることが好ましい。その理由は、(AlCrTi1-X-Y)に対する(Cα1-α)の比が前記範囲内であれば、より確実に前述の目的が達成できるためである。
(3-4)NaCl型面心立方構造
(AlCrTi)CN層の層には、NaCl型面心立方構造を有する結晶粒が含まれていることが好ましい。すなわち、縦断面において、NaCl型の面心立方構造の結晶粒の割合が50面積%以上であることが好ましく、70面積%以上がより好ましい。そして、全ての結晶粒(面積割合が100%)がNaCl型の面心立方構造であってもよい。
(4)格子定数の差
(AlCrTi)CN層の組成から求めた格子定数(A(nm))とXRDから求めた格子定数(A)(nm))の差が所定値であることが好ましい。
すなわち、
は、ベガードの法則に準じて次式から求めたものであり、
=0.4045×X+0.4148×Y+0.4242×(1-X-Y)である。
これに対して、Aは、残留応力の影響を排除した状態(研磨、エッチング等によって基材を極力除去した後、皮膜を粉砕する)にて粉末X線回折測定により、得られたX線回折パターンの111回折線と200回折線の回折角から、それぞれの面間隔d(111)あるいはd(200)の値を算出し、A(111)=√3d(111)、A(200)=2d(200)で定義されるA(111)またはA(200)を算出し、これらの平均値として算出できる。
|A-A|<0.0010であることが好ましい。
その理由は、0.0010以上であるとNaCl型面心立方構造以外の結晶構造を有する結晶粒が増え、(AlCrTi)CN層の耐摩耗性が低下するためである。
1-2.その他の層
(1)下地層
本実施形態の(AlCrTi)CN層は、それだけでも十分に前記目的を達成するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層(これらのTi化合物層の組成は化学量論的組成に限定されない)からなり、0.1~20.0μmの合計平均層さを有す下地層を設けた場合には、(AlCrTi)CN層と基体との密着性がより向上し、被覆工具としてより優れた特性が発揮される。ここで、下地層の合計平均厚さが0.1μm未満では、前述の下地層の働きが十分に発揮されず、一方、20.0μmを超えると結晶粒が粗大化しやすくなり、チッピングを発生しやすくなる。
(2)上部層
また、本実施形態の(AlCrTi)CN層に、酸化アルミニウム(化学量論的組成に限定されない)層を含む合計の平均厚さが0.1~25.0μmとなる上部層を設けると、より耐摩耗性が優れて好ましい。ここで、上部層の合計平均厚さが0.1μm未満であると、前述の上部層の働きが十分に発揮されず、一方、25.0μmを超えると、チッピングが発生しやすくなる。
2.基体
(1)材質
材質は、従来公知の基体の材質であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体のいずれかであることが好ましい。
(2)形状
基体の形状は、切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はなく、インサートの形状、ドリルの形状が例示できる。
3.製造方法
本実施形態の(AlCrTi)CN層の製造方法は、例えば、NH、Ar、Hからなるガス群Aと、TiCl、CrCl、AlCl、Ar、N、C、Hからなるガス群Bを用いて、CVD法により行うことができる。
ここで、ガス群Aとガス群Bとは、熱CVD装置の反応容器内の空間で被成膜物の直前までガスを分離して供給し、被成膜物の直前でガス群Aとガス群Bが混合し、反応させるようにする。これは、互いに反応活性の高いガス種を成膜領域にわたって均一に成膜するために有効であり、詳細な技術内容は、例えば、特許6358420号公報に開示されている。
同公報に記載されている成膜装置は、図2、3に示すガス供給管を有しており、その構造を説明する。
図1、2に示すように、その中心を中心に所定の回転速度で回転する円筒管であるガス供給管(6)は、その軸心方向に沿って延びる仕切部材により、内部をほぼ二等分され、ガス群A流通部(9)とガス群B流通部(10)を有している。
ガス供給管(6)には、図1に示すようにほぼ同じ高さの位置にある噴出口対を構成するガス群A噴出口(7)とガス群B噴出口(8)が高さ方向に沿って複数設けられている。
図2に示すガス群A噴出口(7)とガス群B噴出口(8)は、同じ噴出口対に属しており、ガス群A噴出口(7)の外周側開口端の中心(11)とガス群B噴出口(8)の外周側開口端の中心(12)の中心との距離(14)が規定されている。また、ガス群A噴出口(7)の外周側開口端の中心(11)とガス供給管の回転軸中心(13)とガス群B噴出口(8)の外周側開口端の中心(12)の中心とのなす角を回転軸と垂直な面に投影した角度(15)が規定されている。
4.測定方法
以下、本実施形態の各数値の測定方法を説明する。
以下の説明でいう縦断面は、被覆層を集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシャー(CP:Cross section Polisher)等を用いて、研磨して作製する。
(1)平均厚さ
縦断面(被覆工具がインサートのときは逃げ面を含む縦断面が好ましい)を横方向(基体表面に平行な方向)100μm、縦方向(被覆層の厚さ方向)に被覆層厚さが観察可能な四角形を測定領域として、走査型電子顕微鏡による観察を行い、複数箇所(例えば5箇所)で測定した厚さの平均値を、平均厚さとする。
(2)アスペクト比とアスペクト比が1.5および2.0以上の柱状の結晶粒の占める面積割合
縦断面の前記測定領域において、電子線後方散乱解析装置(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)を用いて、例えば、(AlTiV)CN層の厚みが全て含まれ、測定対象の結晶粒が20個以上含まれる測定領域に、例えば、70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流にて、0.01μmの間隔で照射して得られる電子線後方散乱回折像に基づき、個々の結晶粒の結晶構造を解析することにより、結晶構造の異なる領域の境界を画定する。
特定した結晶粒に対して画像処理を行い、ある結晶粒iにおける基体の表面と垂直方向の最大長さHi、結晶粒iにおける基体と水平方向(基体の表面を平らな面と扱ったとき、この面に平行な方向)の最大長さである粒子幅Wi、結晶粒iの面積Siを求める。結晶粒iのアスペクト比AiはAi=Hi/Wiとして算出する。そして、[数1]に従って、アスペクト比Aを求める([数1]のnは20以上である)。
Figure 2023148468000002
(3)X、Yおよびαの値
(AlCrTi)CN層の組成を規定するX、Yは、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyser)を用い、被覆層の表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均により求める。また、被覆層の縦断面の研磨面に対してエネルギー分散型X線分析法(EDS:Energy dispersive X-ray spectroscopy)を用い、電子線を縦断面から照射し、被覆層の厚さ方向に複数の線分析(例えば、5本)を行って得られたAlとTiとCrの組成解析結果をもとに平均値として求めることもできる。
また、αは、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によって求める。すなわち、イオンビームによる面分析とスパッタイオンビームによるエッチングを交互に繰り返すことにより、被覆層の深さ方向の含有量の測定を行う。具体的には、(AlCrTi)CN層の表面から、厚さ方向に0.1μm以下のピッチで少なくとも1μmの長さで測定を行ったCとNの含有量の平均値を求め、これを少なくとも10箇所行って算出したC/(C+N)の平均値を、Cの含有量として求める。
また、Alおよび/またはCrの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒のAl含有量Xの最大値Xmaxと最小値Xmin、Cr含有量Yの最大値Ymaxと同最小値YminとAl、Crの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒の前記被覆層に占める面積割合とは、例えば、以下のように求めることができる。
走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)に付属するエネルギー分散型X線分光器を用いて、被覆層を倍率160000倍から320000倍で観察する。
そして、被覆層の縦断面において、基体の表面に平行な方向の幅が2μm以上であり、被覆層の厚みが全て含まれるよう設定された長方形の観察視野全体にわたって、AlのCrとTiとAlの合量に占める含有量(X)とCrのCrとTiとAlの合量に占める含有量(Y)を求める。
この観察視野全体に含まれる各結晶粒(NaCl型面心立方構造のものに限定されない)に対して、AlのCrとTiとAlの合量に占める含有量(X)と、CrのCrとTiとAlの合量に占める含有量(Y)の分布を求め、その最大値Xmax*と最小値Xmin*や、最大値Ymax*と最小値Ymin*がともにその平均値(Xavg*やYavg*)に対して±1%以上の差を生じている場合には、当該結晶粒はAlおよび/またはCrの所定の含有量(組成)変化を含むと判定する。
すなわち、Alおよび/またはCrの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒とは、Alおよび/またはCrの所定の含有量変化を含むと判定された結晶粒をまとめた(合計した)領域をいう。そして、各結晶粒にて測定された最大値Xmax*、最小値Xmin*のそれぞれの平均値を最大値Xmax、最小値Xmin、最大値Ymax*、最小値Ymin*のそれぞれの平均値を最大値Ymax、最小値Yminとする。
なお、Alの含有量変化を含む領域において平均値(xavg*)に対して+1%以上の差を生じている領域(高Al含有の領域)と、-1%以上の差を生じている領域(低Al含有の領域)が網目状、層状または粒状に分布していることがより好ましい。さらに、低Al含有の領域により隔てられた高Al含有の領域の外縁同士、もしくは高Al含有の領域により隔てられた低Al含有の領域の外縁同士の間隔の最小値は1nm以上50nm未満となることが更に好ましい。
その理由は、Alの含有量変化の間隔の最小値がこの範囲にあると被覆工具の耐熱性と耐チッピング性が向上するが、1nm未満であると耐熱性の向上が十分ではなく、50nm以上であると耐チッピング性の向上が十分でないことがあるためである。
前記観察視野における、前記Alおよび/またはCrの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒の面積の合計が占める割合を、Alおよび/またはCrの所定の含有量(組成)変化を粒内に有する結晶粒が前記被覆層に占める面積割合とする。
また、(AlCrTi)CN層は微量の酸素等の不可避的不純物(意図せず含まれてしまう不純物)を含んでいても前述の目的の達成には支障がない。
(4)Zの値
(AlCrTi)CN層に含まれるClの含有量は、例えば、電子線マイクロアナライザを用い、表面を研磨した試料において、試料表面に電子線を照射し、得られた特性X線の解析結果より塩素の含有量を求める。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。すなわち、基体の材質としてWC基超硬合金を用いたインサート切削工具をあげるが、基体の材質は前述のものであればよく、その形状は前述のとおりドリル等の形状であってもよい。
1.基体の製造
原料粉末として、WC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に記載される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形した。
その後、この圧粉体を5Paの真空中、1420℃の温度にて1時間保持した条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.06mmのホーニング加工を施した三菱マテリアル社製のSEMT13T3AGSN-JMのインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体A~C、および、焼結後、切刃部にR:0.05mmのホーニング加工を施した三菱マテリアル社製のCNMG120408-MAのインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体D~Fを製造した。
2.成膜
基体A~Fの表面に、CVD装置を用いて、(AlCrTi)CN層を成膜し、表5に示す実施例1~10を得た。成膜条件は、表2に示すとおりであったが、概ね、次のとおりであった。
反応ガス組成(ガス成分の含有量(%)は、ガス群Aとガス群Bの合計を100体積%とする体積%である):
ガス群A
TiCl:0.01~0.19%、AlCl:0.30~0.90%、
CrCl:0.10~1.40%、Ar:5.0~10.0%、
:0.0~10.0%、C:0.0~0.5%、H:残
ガス群B:
NH:1.00~1.90%、N:0.0~10.0%、H:30.0~50.0%
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~900℃
ここで、ガス群Aとガス群Bは、それぞれ、前述の特許6358420号公報に記載されたCVD装置の、原料ガスA、原料ガスBとして供給された。ガス供給管の回転速度、ガス供給管のガス群A噴出口(7)の外周側開口端の中心(11)とガス群B噴出口(8)の外周側開口端の中心(12)の中心との距離(14)、ガス群A噴出口(7)の外周側開口端の中心(11)とガス供給管の回転軸中心(13)とガス群B噴出口(8)の外周側開口端の中心(12)の中心とのなす角を回転軸と垂直な面に投影した角度(15)は以下のとおりである。
ガス供給管の回転速度:20rpm
距離(14):6mm
角度(15):16度
なお、実施例1~10については、表3に示す条件により表4に示す下地層および/または上部層を成膜した。
比較のために、基体A~Fの表面に表1に示す成膜条件によって、(AlCrTi)CN層を成膜し、表5に示す比較例1~10を得た。
実施例では、ガス群Aとガス群Bとは、熱CVD装置の反応容器内の空間で被成膜物の直前までガスを分離して供給し、被成膜物の直前でガス群Aとガス群Bが混合し、反応させるようにしたが、比較例では、原料ガスを2系統に分離せずに1本のガス供給管から熱CVD装置の反応容器内に供給した。そのため、ガス群A噴出口(9)とガス群B噴出口(10)の区別はなく噴出口対は存在しないガス供給管を用いた。
なお、比較例1~10については、表3に示す条件により表4に示す下地層および/または上部層を成膜した。
Figure 2023148468000003
Figure 2023148468000004
Figure 2023148468000005
Figure 2023148468000006
表4において、「-」は該当する層がないことを示している。
Figure 2023148468000007
表5において、Yavgが0.001未満、αavgが0.0001未満、Zが0.001原子%未満では分析限界以下であり、0.000と見なすことができることを表す。また、Ymax-Yminの「-」は、Yavgが0.001未満で、Cr元素が検出限界以下であり、Ymax-Yminを計算することができないことを示している。
また、「網目状、層状、粒状での存在」とは、「AlとTiの含有量変化を含む領域において平均値(xavg*)に対して+1%以上の差を生じている領域(高Al含有の領域)と、-1%以上の差を生じている領域(低Al含有の領域)が網目状、層状または粒状に分布していること」であり、「○」が分布していることを示し、「-」は分布していないことを示し、「各領域の外縁同士の間隔の最小値」とは、「低Al含有の領域により隔てられた高Al含有の領域の外縁同士、もしくは高Al含有の領域により隔てられた低Al含有の領域の外縁同士の間隔の最小値」のことをいう。
つづいて、実施例1~10および比較例1~10について、いずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下の切削加工試験1および2を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削加工試験1: 乾式高速正面フライス、センターカット切削加工
カッタ径: 125mm
被削材: JIS S55C 幅100mm、長さ400mmブロック材
回転速度: 1146/min
切削速度: 450m/min
切り込み: 1.5mm
一刃送り量: 0.2mm/刃
切削時間: 10.5分
(通常切削速度は、150~250m/min)
切削加工試験2: 乾式高速断続切削加工
被削材: JIS S55C 長さ方向等間隔4本の縦溝入り丸棒
切削速度: 400m/min
切り込み: 1.5mm
送り: 0.2mm/rev
切削時間: 6分
(通常切削速度は、150~200m/min)
表6、7に、それぞれ、切削加工試験1、切削加工試験2の結果を示す。なお、比較例1~10については、切削時間終了前にチッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
Figure 2023148468000008
Figure 2023148468000009
表6、7において、「寿命に至る切削時間(分)」とは、刃先欠損が原因で寿命に至るまでの切削時間(分)を示している。
表6、7に示す結果から明らかなように、実施例はいずれもチッピングの発生がなく、耐欠損生が向上しており、長期にわたって優れた切削性能を発揮する。
これに対して、比較例1~10は、いずれも切削時間終了前にチッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
1 基体
2 被覆層
3 (AlCrTi)CN層
4 下地層
5 上部層
6 ガス供給管
7 ガス群A噴出口
8 ガス群B噴出口
9 ガス群A流通部
10 ガス群B流通部
11 ガス群A噴出口の外周側開口端の中心
12 ガス群B噴出口の外周側開口端の中心
13 回転軸中心
14 距離
15 角度

Claims (2)

  1. 基体と該基体の表面に被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
    (a)前記被覆層は、NaCl型の面心立方構造の柱状の結晶粒を有するAlとCrとTiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含み、
    (b)前記複合窒化物または複合炭窒化物は、(AlCrTi1-X-Y)(Cα1-α)(X、Y、αの平均値であるXavg、Yavg、αavgがそれぞれ、0.600≦Xavg≦0.950、0.010≦Yavg≦0.300、0.610≦Xavg+Yavg≦0.990、0.0000≦αavg≦0.0050)であり、
    (c)前記複合窒化物層または複合炭窒化物層には、Alの含有量変化を有する結晶粒を有し、前記Xの最大値Xmaxと同最小値Xminが、0.020≦Xmax-Xmin≦0.400を満足し、
    (d)A=0.4045×Xavg+0.4148×Yavg+0.4242×(1-Xavg-Yavg)であるA(nm)と、XRDパターンから算出される格子定数A(nm)とは、
    |A-A|<0.0010を満足する
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記複合窒化物層または複合炭窒化物層には、前記Alの含有量変化とCrの含有量変化の両方を有する結晶粒を有し、前記Yの最大値Ymaxと同最小値Yminが、0.010≦Ymax-Ymin≦0.200を満足することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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