JP2021152403A - 転がり軸受 - Google Patents

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直哉 嘉村
良典 杉崎
Yoshinori Sugisaki
良典 杉崎
工 藤田
Takumi Fujita
工 藤田
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【課題】嵌め合わせ応力による軌道輪のクリープ変形の抑制、嵌め合わせ応力による軌道輪の割損の抑制及び軌道面における硬さの維持が可能な軌道輪を提供する。【解決手段】転がり軸受は、軌道面を有する軌道輪と、軌道輪に接触するように配置された転動体とを備える。軌道輪は鋼からなる。鋼中における炭素濃度は、0.15重量パーセント以上1.2重量パーセント以下である。軌道輪は、軌道面にある第1領域と、第1領域を取り囲む第2領域とからなる。第1領域における硬さは、500Hv以上である。第2領域における残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である。第1領域と第2領域との間の境界において、軌道面からの距離を転動体と軌道面との接触楕円の短軸の長さで除した値は、1.3である。【選択図】図1

Description

本発明は、転がり軸受に関する。
転がり軸受は、内輪と、外輪とを有している(以下においては、内輪及び外輪を合わせて軌道輪ということがある)。転がり軸受は、内輪に軸が固定され、外輪がハウジングに固定されることにより、使用される。転がり軸受は、荷重が加わった際に軸と内輪との間及びハウジングと外輪との間に、ラジアル方向(径方向)、アキシアル方向(軸方向)及び回転方向(周方向)における相対的な動きが生じないようになっている。
ラジアル軸受(主としてラジアル荷重を受ける転がり軸受)の使用態様には、内輪が回転輪になるとともに外輪が固定輪になる場合(第1の場合)と、内輪が固定輪になるとともに外輪が回転輪になる場合(第2の場合)とがある。第1の場合においては、内輪が軸に締まり嵌めされ、第2の場合においては、外輪がハウジングに締まり嵌めされる。軌道輪が軸又はハウジングに締まり嵌めされる際に軌道輪に作用する応力を、嵌め合い応力という。
軸又はハウジングに対する軌道輪のクリープ(軸又はハウジングと軌道輪との間の相対的な位置ずれ)は、嵌め合い応力により抑制されている。しかしながら、転がり軸受の使用に伴う軌道輪の寸法変化により嵌め合い応力が減少した場合、クリープが発生してしまう。特許文献1(特開2010−112490号公報)、特許文献2(特許第4466743号公報)及び特許文献3(特開2009−221493号公報)には、クリープを抑制するための技術が記載されている。
特許文献1に記載の転がり軸受においては、内輪の内周面に溝が形成されている。内輪は、内周面において、軸に嵌め合わされている。溝には、Oリングが装着されている。特許文献2に記載の転がり軸受においては、外輪の外周面に逃げ溝が形成されている。外輪は、外周面において、ハウジングに嵌め合わされている。
特許文献3に記載の転がり軸受においては、軌道面における残留オーステナイトの体積比率が25パーセント以上45パーセント以下になっているとともに、軌道面とは反対側にある面(内輪の場合は内周面、外輪の場合は外周面)における残留オーステナイトの体積比率が15パーセント以下になっている。
特開2010−112490号公報 特許第4466473号公報 特開2009−221493号公報
転がり軸受の使用に伴う軌道輪の寸法変化に起因したクリープは、軌道輪に予め相対的に大きな嵌め合い応力を加えておくことにより、抑制することができる。しかしながら、相対的に大きな嵌め合い応力を軌道輪に加えることは、軌道輪の割損の原因となるおそれがある。
特許文献1に記載の転がり軸受においては、内輪の内周面に溝を形成するとともに、溝にOリングを装着することにより、クリープが抑制されている。しかしながら、特許文献1に記載の転がり軸受においては、溝の形成に伴う加工コストの上昇や溝への応力集中が懸念されるため、クリープに対する対策としては、改善の余地がある。特許文献2に記載の転がり軸受にも、特許文献1に記載の転がり軸受と同様の問題がある。
特許文献3に記載の転がり軸受においては、軌道面とは反対側にある面における残留オーステナイトの体積比率が15パーセント以下にされているため、転がり軸受の使用に伴う残留オーステナイトの分解に起因した寸法変化が抑制されることになり、クリープの発生が抑制されている。しかしながら、本発明者らが見出した知見によると、特許文献3に記載の転がり軸受においては、嵌め合わせ応力による軌道輪のクリープ変形(応力が継続的に付加され続けた際の時間経過に伴う変形)の抑制に改善の余地がある。また、本発明者らが見出した知見によると、特許文献3に記載の転がり軸受においては、軌道面近傍における硬さが不十分となるおそれがある。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、嵌め合わせ応力による軌道輪のクリープ変形の抑制、嵌め合わせ応力による軌道輪の割損の抑制及び軌道面における硬さの維持が可能な軌道輪を提供するものである。
本発明の一態様に係る転がり軸受は、軌道面を有する軌道輪と、軌道輪に接触するように配置された転動体とを備えている。軌道輪は、鋼からなる。鋼中における炭素濃度は、0.15重量パーセント以上1.2重量パーセント以下である。軌道輪は、軌道面にある第1領域と、第1領域を取り囲む第2領域とからなる。第1領域における硬さは、500Hv以上である。第2領域における残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である。第1領域と第2領域との間の境界において、軌道面からの距離を転動体と軌道面との接触楕円の短軸の長さで除した値は、1.3である。
上記の転がり軸受では、軌道面からの距離を転動体と軌道面との接触楕円の短軸の長さで除した値が0.1未満となる位置において、残留オーステナイトの体積比率が、7パーセント以上25パーセント以下であってもよい。上記の転がり軸受では、軌道面が、浸炭窒化されていてもよい。上記の転がり軸受では、鋼がJIS規格に定められているSUJ2、SUJ3及びSCM420のいずれかであってもよい。上記の転がり軸受では、鋼がSCr435であってもよい。
上記の転がり軸受では、鋼は、シリコンの含有量が0.9質量パーセント以上2.5質量パーセント以下であるとともに、シリコン以外の成分の含有量がJIS規格に定められているSUJ2と同一であってもよい。上記の転がり軸受では、鋼は、シリコンの含有量が0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下であるとともに、シリコン以外の成分の含有量がJIS規格に定められているSUJ2と同一であってもよい。
本発明の一態様に係る転がり軸受によると、嵌め合わせ応力による軌道輪のクリープ変形の抑制、嵌め合わせ応力による軌道輪の割損の抑制及び軌道面における硬さの維持が可能となる。
転がり軸受100の断面図である。 軌道面10da近傍における内輪10の拡大断面図である。 軌道面20ca近傍における外輪20の拡大断面図である。 転がり軸受100の軌道輪の製造方法を示す工程図である。 鋼中の残留オーステナイトの体積比率とクリープ変形との関係を調査するために行った4点曲げクリープ試験の模式図である。 4点曲げクリープ試験における加熱保持時間と試験片50の反り量との関係を示すグラフである。 第1サンプル及び第2サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示すグラフである。 第1サンプル、第4サンプル及び第5サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示す第1のグラフである。 第1サンプル及び第5サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示す第2のグラフである。 距離Z1を長さb1で除した値と最大せん断応力τmaxを最大接触面圧Pmaxで除した値との関係を示すグラフである。
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
(実施形態に係る転がり軸受の構成)
以下に、実施形態に係る転がり軸受(以下においては、「転がり軸受100」とする)の構成を説明する。
<全体構成>
転がり軸受100は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受100は、これに限られるものではない。図1は、転がり軸受100の断面図である。図1に示されるように、転がり軸受100は、内輪10と、外輪20と、転動体30と、保持器40とを有している。以下においては、内輪10及び外輪20を、軌道輪ということがある。
内輪10は、環状形状を有している。内輪10は、上面10aと、底面10bと、内周面10cと、外周面10dとを有している。上面10a及び底面10bは、内輪10の中心軸に沿う方向における端面である。底面10bは、上面10aの反対面である。
内周面10cは、上面10a及び底面10bに連なっている。内周面10cは、周方向に沿って延在している。内周面10cは、径方向において、内側(内輪10の中心軸側)を向いている。
外周面10dは、上面10a及び底面10bに連なっている。外周面10dは、周方向に沿って延在している。外周面10dは、径方向において、外側(内輪10の中心軸とは反対側)を向いている。すなわち、外周面10dは、径方向における内周面10cの反対面である。外周面10dは、軌道面10daを有している。軌道面10daは、転動体30に接している外周面10dの部分である。軌道面10daは、断面視において、内周面10c側に向かって凸の曲線形状を有している。
外輪20は、環状形状を有している。外輪20は、上面20aと、底面20bと、内周面20cと、外周面20dとを有している。上面20a及び底面20bは、外輪20の中心軸に沿う方向における端面である。底面20bは、上面20aの反対面である。
内周面20cは、上面20a及び底面20bに連なっている。内周面20cは、周方向に沿って延在している。内周面20cは、径方向において、内側(外輪20の中心軸側)を向いている。内周面20cは、軌道面20caを有している。軌道面20caは、転動体30に接している内周面20cの部分である。軌道面20caは、断面視において、外周面20d側に向かって凸の曲線形状を有している。
外周面20dは、上面20a及び底面20bに連なっている。外周面20dは、周方向に沿って延在している。外周面20dは、径方向において、外側(外輪20の中心軸とは反対側)を向いている。すなわち、外周面20dは、径方向における内周面20cの反対面である。
外輪20は、内周面20cが外周面10dと対向するように(軌道面20caが軌道面10daと対向するように)、内輪10の外側に配置されている。
転動体30は、球状形状を有している。転動体30は、軌道面10da及び軌道面20caと接するように、内輪10と外輪20との間に配置されている。保持器40は、環状形状を有している。保持器40は、内輪10と外輪20との間に配置されている。保持器40は、周方向における転動体30の間隔が一定範囲内になるように、転動体30を保持している。
内輪10、外輪20及び転動体30は、鋼からなる。内輪10、外輪20及び転動体30を構成している鋼中における炭素濃度は、0.15重量パーセント以上1.2重量パーセント以下である。
内輪10、外輪20及び転動体30を構成している鋼は、例えば、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定められているSUJ2又はSUJ3である。内輪10、外輪20及び転動体30を構成している鋼は、JIS規格(JIS G 4053:2008)に定められているSCM420であってもよい。
内輪10、外輪20及び転動体30を構成している鋼は、JIS規格(JIS G 4053:2016)に定められているSCr435であってもよい。表1には、SCr435の成分が示されている。
Figure 2021152403
なお、SUJ2、SUJ3、SCM420及びSCr435中における炭素濃度は、いずれも、0.15重量パーセント以上1.2重量パーセントの範囲内にある。内輪10、外輪20及び転動体30は、表面が浸炭窒化(又は浸炭)されていてもよい。
内輪10、外輪20及び転動体30を構成している鋼は、シリコンの含有量が0.9質量パーセント以上2.5質量パーセント以下であり、シリコン以外の成分の含有量がSUJ2と同一になっている鋼により構成されていてもよい。この鋼中におけるシリコンの含有量は、好ましくは0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下である。
<軌道輪の詳細構成>
図2は、軌道面10da近傍における内輪10の拡大断面図である。図2に示されるように、内輪10は、第1領域11と、第2領域12とからなる。内輪10のうち、第1領域11以外の領域が、第2領域12である。第1領域11は、軌道面10daにある。第2領域12は、第1領域11を取り囲んでいる。第1領域11と第2領域12との間の境界を、境界13とする。
軌道面10daからの距離を、距離Z1とする。距離Z1は、軌道面10daに直交する方向に沿って測定される。軌道面10daと転動体30との間の接触面は、楕円形状になることが知られている(この接触面を、接触楕円という)。転動体30と軌道面10daとの接触楕円の短軸の長さを、長さb1(図示せず)とする。距離Z1を長さb1で除した値は、境界13において、1.3となっている。このことを別の観点から言えば、第1領域11は、Z1/b1の値が1.3以下となる領域であり、第2領域12は、Z1/b1の値が1.3を超えている領域である。
第1領域11における硬さは、500Hv以上である。第1領域11における硬さは、JIS規格(JIS Z 2244:2009)に定められているビッカース硬さ試験法に基づいて測定される。
距離Z1を長さb1で除した値が0.1未満となる位置を、位置P1(図示せず)とする。位置P1は、第1領域11中にある。位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以上25パーセント以下であることが好ましい。
位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、X線回折法により測定される。すなわち、位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、マルテンサイト相及びオーステナイト相の回折X線強度分布の積分強度を用いて算出される。
第2領域12における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である。ここで、「第2領域12における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である」には、第2領域12における鋼中の残留オーステナイトの体積比率が0パーセントである場合も含まれている。すなわち、内輪10を構成している鋼は、第2領域12において、残留オーステナイトを含んでいなくてもよい。なお、第2領域における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率と同様の方法により測定される。
図3は、軌道面20ca近傍における外輪20の拡大断面図である。図3に示されるように、外輪20は、第1領域21と、第2領域22とからなる。外輪20のうち、第1領域21以外の領域が、第2領域22である。第1領域21は、軌道面20caにある。第2領域22は、第1領域21を取り囲んでいる。第1領域21と第2領域22との間の境界を、境界23とする。
軌道面20caからの距離を、距離Z2とする。距離Z2は、軌道面20caに直交する方向に沿って測定される。転動体30と軌道面20caとの接触楕円の短軸の長さを、長さb2とする。距離Z2を長さb2で除した値は、境界23において1.3となっている。このことを別の観点から言えば、第1領域21は、Z2/b2の値が1.3以下となる領域であり、第2領域22は、Z2/b2の値が1.3を超えている領域である。
第1領域21における硬さは、500Hv以上である。第1領域21における硬さは、JIS規格に定められているビッカース硬さ試験法に基づいて測定される。
距離Z2を長さb2で除した値が0.1未満となる位置を、位置P2(図示せず)とする。位置P2は、第1領域21中にある。位置P2における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以上25パーセント以下であることが好ましい。位置P2における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率と同様の方法により測定される。
第2領域22における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である。ここで、「第2領域22における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下である」には、第2領域22における鋼中の残留オーステナイトの体積比率が0パーセントである場合も含まれている。すなわち、外輪20を構成している鋼は、第2領域22において、残留オーステナイトを含んでいなくてもよい。なお、第2領域22における鋼中の残留オーステナイトの体積比率は、位置P1における鋼中の残留オーステナイトの体積比率と同様の方法により測定される。
(実施形態に係る転がり軸受の軌道輪の製造方法)
以下に、転がり軸受100の軌道輪の製造方法を説明する。
図4は、転がり軸受100の軌道輪の製造方法を示す工程図である。図4に示されるように、転がり軸受100の軌道輪の製造方法は、準備工程S1と、焼き入れ工程S2と、第1焼き戻し工程S3と、第2焼き戻し工程S4と、後処理工程S5とを有している。
準備工程S1においては、加工対象部材が準備される。加工対象部材は、環状形状を有している。加工対象部材は、転がり軸受100の軌道輪と同一の鋼からなる。
焼き入れ工程S2においては、加工対象部材に対する焼き入れが行われる。加工対象部材に対する焼き入れは、加工対象部材を構成している鋼のA変態点以上の温度に加工対象部材を保持した後に、加工対象部材を構成している鋼のMs変態点以下の温度に加工対象部材を冷却することにより行われる。
第1焼き戻し工程S3においては、加工対象部材に対する焼き戻しが行われる。加工対象部材に対する焼き戻しは、加工対象部材を構成している鋼のA変態点未満の温度に加工対象部材を保持することにより行われる。
第2焼き戻し工程S4においては、加工対象部材に対して、追加的な焼き戻しが行われる。第2焼き戻し工程S4における加熱は、誘導加熱により行われる。誘導加熱は、後処理工程S5の完了後に軌道面となる面とは反対側の面(内輪10を製造する場合は加工対象部材の内周面、外輪20を製造する場合は加工対象部材の外周面)から行われる。
誘導加熱における加熱温度及び加熱時間の調整により、第1領域11(第1領域21)における残留オーステナイトの体積比率及び硬さ、第2領域12(第2領域22)における残留オーステナイトの体積比率を調整することができる。誘導加熱に際して、後処理工程S5の完了後に軌道面となる側の面(内輪10を製造する場合は外周面、外輪20を製造する場合は内周面)は、水、油等の冷却液又は固体との接触により冷却されていることが好ましい。
後処理工程S5においては、加工対象部材に対する後処理が行われる。後処理には、加工対象部材に対する研磨、研削等の機械加工、加工対象部材に対する洗浄が行われる。以上により、転がり軸受100の軌道輪が製造される。なお、転がり軸受100の軌道輪の表面に対して浸炭窒化処理が行われる場合、焼き入れ工程S2に先立って、浸炭窒化工程が行われる。浸炭窒化工程は、例えば、Rガス及びアンモニアガスを含む雰囲気ガス中において加工対象部材を加熱保持することにより行われる。
(実施形態に係る転がり軸受の効果)
以下に、転がり軸受100の効果を説明する。
<軌道輪の割損抑制>
上記のとおり、軌道輪の軸又はハウジングに対するクリープは、転がり軸受の使用に伴う軌道輪の寸法変化に起因する。軌道輪の寸法変化は、鋼中の残留オーステナイトの分解に起因する。内輪10においては、第2領域12における残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以下であり、外輪20においては、第2領域22における残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以下であるため、転がり軸受100の軌道輪においては、転がり軸受100の使用に伴う寸法変化が小さく、過大な嵌め合い応力を加えずとも、軸又はハウジングに対するクリープを抑制することができる。そして、クリープを抑制するために過大な嵌め合い応力を加える必要がなくなる結果、転がり軸受100においては、嵌め合い応力に起因した軌道輪の割損を抑制することができる。
<軌道輪のクリープ変形の抑制>
図5は、鋼中の残留オーステナイトの体積比率とクリープ変形との関係を調査するために行った4点曲げクリープ試験の模式図である。図5に示されるように、4点曲げクリープ試験には、試験片50が用いられた。試験片50の長さは140mmであり、試験片50の幅は20mmであり、試験片50の厚さは3mmである。試験片50は、第1主面50aと、第2主面50bとを有している。
試験片50は、SUJ3からなる。試験片50に対しては、焼き入れ及び焼き戻しが行われている。試験片50に対する焼き戻しにおいては、表2に示されるように、焼き戻し温度を180℃、230℃及び260℃に変化させることにより、試験片50を構成している鋼中の残留オーステナイトの体積比率が、それぞれ、0パーセント、7.5パーセント及び15パーセントになっている。
Figure 2021152403
試験片50は、長手方向に沿って、第1位置51、第2位置52、第3位置53及び第4位置54において支持されている。試験片50の長手方向における第1位置51と第2位置52との間の距離は、120mmである。試験片50の長手方向における第3位置53と第4位置54との間の距離は、60mmである。
第3位置53及び第4位置54は、試験片50の長手方向において、第1位置51と第2位置52との間にある。試験片50の長手方向における第1位置51と第2位置52との中間位置は、試験片50の長手方向における第3位置53と第4位置54との中間位置に一致している。試験片50は、第1位置51及び第2位置において第1主面50a側から支持されており、第3位置53及び第4位置54において第2主面50b側から支持されている。
第3位置53及び第4位置54を第2主面50bから第1主面50aに向かう方向に沿って移動させることにより、試験片50に曲げ応力が印加される。試験片50に印加される曲げ応力は、試験片50を構成している鋼の降伏応力よりも低い応力とされる。より具体的には、試験片50に印加される曲げ応力は、200MPaである。
試験片50に対する曲げ応力の印加が行われている間、試験片50は、試験片50を構成している鋼中の残留オーステナイトが分解しない温度に保持される。より具体的には、試験片50は、曲げ応力が印加された状態で、130℃で所定時間(加熱保持時間)保持される。
図6は、4点曲げクリープ試験における加熱保持時間と試験片50の反り量との関係を示すグラフである。図6中において、横軸は、加熱保持時間(単位:時間)であり、横軸は、試験片50の反り量(単位:μm)である。試験片50の反り量の測定においては、試験片50の長手方向における一方端から6mmにある第1主面50a上の位置と試験片50の長手方向における他方端から6mmにある第1主面50a上の位置との間において第1主面50aの母線形状が測定される。この母線形状の板厚方向座標における最大値と最小値との差により、試験片50の反りが決定される。
図6に示されるように、試験片50の反り量は、加熱保持時間が増加するに伴い、大きくなっている。このことから、転がり軸受100の軌道輪に加わる嵌め合い応力が降伏応力以下であっても、転がり軸受100の軌道輪にはクリープ変形が生じることが分かる。
しかしながら、試験片50を構成している鋼中の残留オーステナイトの体積比率が小さくなるほど、試験片50の反り量が小さくなる傾向がある。上記のとおり、内輪10においては、第2領域12における残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以下になっており、外輪20においては、第2領域22における残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以下になっているため、転がり軸受100の軌道輪においては、嵌め合い応力によるクリープ変形が抑制される。
SUJ3からなる試験片50(以下においては、「第1サンプル」とする)及びSCr435からなる試験片50(以下においては、「第2サンプル」とする)に対して4点曲げクリープ試験を行うことにより、鋼種による違いを調査した。第1サンプル及び第2サンプルに対しては、180℃又は260℃における焼き戻しが行われている。なお、第1サンプル及び第2サンプルに対しては、浸炭処理は行われていない。4点曲げクリープ試験の条件及び方法は、上記と同一である。
図7は、第1サンプル及び第2サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示すグラフである。図7中において、横軸は加熱保持時間(単位:時間)であり、縦軸は第1サンプル(第2サンプル)の反り量(単位:μm)である。表3は、第1サンプル及び第2サンプルの加熱保持を50時間行った後におけるクリープ変形量(反り量)を示す表である。
Figure 2021152403
図7及び表3に示されるように、同一の焼き戻し温度で比較すると、第2サンプルにおけるクリープ変形量は、第1サンプルにおけるクリープ変形量よりも小さい。より具体的には、180℃で焼き戻しを行った場合、50時間の加熱保持を行った後における第1サンプルのクリープ変形量が244.7μmであった一方で、50時間の加熱保持を行った後における第2サンプルのクリープ変形量が141.2μmであった。また、260℃で焼き戻しを行った場合、50時間の加熱保持を行った後における第1サンプルのクリープ変形量が64.8μmであった一方で、50時間の加熱保持を行った後における第2サンプルのクリープ変形量が29.5μmであった。このように、転がり軸受100の軌道輪(内輪10及び外輪20)をSCr435で形成することにより、軸又はハウジングに対するクリープをさらに抑制することができる。
第1サンプル、SUJ2からなる試験片50(以下においては、「第4サンプル」とする)及びシリコンの含有量が0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下であり、シリコン以外の成分の含有量がSUJ2と同一の鋼からなる試験片50(以下においては、「第5サンプル」とする)に対して4点曲げクリープ試験を行うことにより、鋼種による違いをさらに調査した。
第1サンプルに対しては、180℃、230℃、260℃、300℃又は350℃における焼き戻しが行われている。第4サンプルに対しては、180℃又は260℃における焼き戻しが行われている。第5サンプルに対しては、180℃、230℃、260℃、300℃又は350℃における焼き戻しが行われている。4点曲げクリープ試験の条件及び方法は、上記と同一である。
図8は、第1サンプル、第4サンプル及び第5サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示す第1のグラフである。図9は、第1サンプル及び第5サンプルに対して行われた4点曲げクリープ試験の結果を示す第2のグラフである。図8及び図9中において、横軸は加熱保持時間(単位:時間)であり、縦軸は各サンプルの反り量(単位:μm)である。表4は、第1サンプル、第4サンプル及び第5サンプルの加熱保持を50時間行った後におけるクリープ変形量(反り量)を示す表である。
Figure 2021152403
図8及び表4に示されるように、同一の焼き戻し温度で比較すると、焼き戻し温度が230℃以下である場合、第5サンプルにおけるクリープ変形量は、第1サンプルにおけるクリープ変形量及び第4サンプルにおけるクリープ変形量よりも小さい。
このように、転がり軸受100の軌道輪(内輪10及び外輪20)をシリコンの含有量が0.90質量パーセント以上2.5質量パーセント以下(好ましくは、0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下)であり、シリコン以外の成分の含有量がSUJ2と同一の鋼で形成することにより、軸又はハウジングに対するクリープをさらに抑制することができる。
図8、図9及び表4に示されるように、同一の焼き戻し温度で比較すると、焼き戻し温度が260℃である場合、第5サンプルにおけるクリープ変形量は、第1サンプルにおけるクリープ変形量と同程度になる。また、焼き戻し温度が300℃及び350℃である場合、第5サンプルにおけるクリープ変形量は、第1サンプルにおけるクリープ変形量よりも大きい。しかしながら、焼き戻し温度が260℃以上の場合、鋼中の残留オーステナイトの体積比率が7体積パーセントを超えるとともに、硬さも低下する。
そのため、転がり軸受100の軌道輪(内輪10及び外輪20)をシリコンの含有量が0.90質量パーセント以上2.5質量パーセント以下(好ましくは、0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下)であり、シリコン以外の成分の含有量がSUJ2と同一の鋼で形成するとともに、焼き戻し温度を230℃未満とすることにより、軸又はハウジングに対するクリープを抑制しつつ、転がり軸受100の転動疲労寿命を改善することができる。
<軌道面における硬さ維持>
図10は、距離Z1を長さb1で除した値と最大せん断応力τmaxを最大接触面圧Pmaxで除した値との関係を示すグラフである。図10中において、横軸は、距離Z1を長さb1で除した値(無次元)であり、縦軸は、最大せん断応力τmaxを最大接触面圧Pmaxで除した値(無次元)である。
図10に示されるように、内輪10においては、Z1/b1の値が0.78となる位置において最大せん断応力τmaxが最大値を示している。内輪10においては、Z1/b1の値が1.3以下のとなる領域(第1領域11)において硬さが500Hv以上になっており、外輪20においては、Z2/b2の値が1.3以下となる領域(第1領域21)において硬さが500Hv以上となっているため、転がり軸受100の軌道輪は、軌道面近傍において、通常の使用条件で十分な転動寿命が得られる硬さが維持されている。
<その他の効果>
転がり軸受100の軌道輪の軌道面が浸炭窒化されている場合、軌道面を起点とする軌道輪の損傷を抑制することができる。また、内輪10においてZ1/b1の値が0.1未満となる位置での残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以上25パーセント以下であり、外輪20においてZ2/b2の値が0.1未満となる位置での残留オーステナイトの体積比率が7パーセント以上25パーセント以下である場合、軌道輪の耐表面損傷性を高めることができる。
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
上記の実施形態は、転がり軸受に特に有利に適用される。
100 転がり軸受、10 内輪、10a 上面、10b 底面、10c 内周面、10d 外周面、10da 軌道面、11 第1領域、12 第2領域、13 境界、20 外輪、20a 上面、20b 底面、20ca 軌道面、20d 外周面、21 第1領域、22 第2領域、23 境界、30 転動体、40 保持器、50 試験片、50a 第1主面、50b 第2主面、51 第1位置、52 第2位置、53 第3位置、54 第4位置、P1,P2 位置、Pmax 最大接触面圧、τmax 最大せん断応力、S1 準備工程、S2 焼き入れ工程、S3 第1焼き戻し工程、S4 第2焼き戻し工程、S5 後処理工程、Z1,Z2 距離、b1,b2 長さ。

Claims (7)

  1. 軌道面を有する軌道輪と、
    前記軌道輪に接触するように配置された転動体とを備え、
    前記軌道輪は、鋼からなり、
    前記鋼中における炭素濃度は、0.15重量パーセント以上1.2重量パーセント以下であり、
    前記軌道輪は、前記軌道面にある第1領域と、前記第1領域を取り囲む第2領域とからなり、
    前記第1領域における硬さは、500Hv以上であり、
    前記第2領域における残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以下であり、
    前記第1領域と前記第2領域との間の境界において、前記軌道面からの距離を前記転動体と前記軌道面との接触楕円の短軸の長さで除した値は、1.3である、転がり軸受。
  2. 前記値が0.1未満となる位置において、残留オーステナイトの体積比率は、7パーセント以上25パーセント以下である、請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記軌道面は、浸炭窒化されている、請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
  4. 前記鋼は、JIS規格に定められているSUJ2、SUJ3及びSCM420のいずれかである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  5. 前記鋼は、JIS規格に定められているSCr435である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  6. 前記鋼は、シリコンの含有量が0.9質量パーセント以上2.5質量パーセント以下であるとともに、シリコン以外の成分の含有量がJIS規格に定められているSUJ2と同一である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  7. 前記鋼は、シリコンの含有量が0.95質量パーセント以上1.05質量パーセント以下であるとともに、シリコン以外の成分の含有量がJIS規格に定められているSUJ2と同一である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
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